(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】屈曲カメラのレンズ設計
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20230412BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553112
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 IB2021056357
(87)【国際公開番号】W WO2022018582
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515347201
【氏名又は名称】コアフォトニクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シャブタイ,ガル
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデンバーグ,エフライム
(72)【発明者】
【氏名】ルドニック,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴウリンスキ,ナダヴ
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087PA08
2H087PA17
2H087PB08
2H087QA03
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA41
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087UA01
(57)【要約】
総トラック長(TTL)を有し、fナンバーは1.2より小さく、例えば少なくとも60°の大きな視野を有する、屈曲カメラである。かかる屈曲カメラは、(i)N≧7個のレンズ素子を有するレンズと、(ii)イメージセンサと、(iii)物体と上記レンズとの間の屈曲光路を提供するための光路屈曲素子と、を備え得る。ここで、前記レンズの開口絞りは、前記物体に面する第1のレンズ素子の第1の表面に対して、d/TTL=0.2を満たす距離dよりも近くに位置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)有効焦点距離(EFL)を有し、かつレンズ光軸に沿ってN≧7個のレンズ素子L
iを含むレンズであって、第1のレンズ素子L
1は、物体側に面する、レンズと、
a)前記レンズを担持するレンズバレルと、
b)イメージセンサと、
c)前記イメージセンサを含む平面に対して平行な第1の光路を、前記第1の光路に対して垂直であり、かつ前記レンズ光軸に対して平行な第2の光路へと屈曲させる光路屈曲素子(OPFE)と、
を備える、屈曲カメラであって、
前記屈曲カメラは、総トラック長(TTL)を有し、
前記レンズの開口絞りは、前記物体に面する前記第1のレンズ素子の第1の表面に対して、d/TTL=0.2を満たす距離dよりも近くに位置し、
前記屈曲カメラは、fナンバーf/#<1.2を有する、屈曲カメラ。
【請求項2】
f/#<1.1である、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項3】
f/#≦1.0である、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項4】
前記レンズと前記イメージセンサとの間に位置する光学素子をさらに含む、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項5】
前記屈曲カメラは、60°より大きい対角視野(FOV)を有する、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項6】
複数の前記レンズ素子のうちの少なくとも一部のレンズ素子は、高さH
Liよりも大きい幅W
Liを有するカットされたレンズ素子であり、
H
Liは、前記第1の光路に対して平行な方向に沿って測定され、
W
Liは、前記第1の光路に対して垂直であり、かつ前記第2の光路に対して垂直な方向に沿って測定される、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項7】
複数の前記レンズ素子のうちの少なくとも一部のレンズ素子は、W
Li/H
Li>1.1を満たす幅W
Liおよび高さH
Liを有する、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項8】
複数の前記レンズ素子のうちの少なくとも一部のレンズ素子は、W
Li/H
Li>1.2を満たす幅W
Liおよび高さH
Liを有する、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項9】
前記レンズバレルは、レンズバレル高さ≦5.5mmを有する、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項10】
前記イメージセンサは、センサ対角線SD>6mmを有する、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項11】
前記OPFEは、高さH
Oを有し、
前記レンズは、高さH
Lを有し、
H
O>H
Lであり、
H
OおよびH
Lは、前記第1の光路に対して平行な方向に沿って測定される、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項12】
OPFE高さH
Oおよびレンズバレル高さH
LBについて、H
O>H
LBであり、
H
OおよびH
LBは、前記第1の光路に対して平行な方向に沿って測定される、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項13】
前記屈曲カメラは、前記OPFEの高さH
Oにより決定される高さH
Cを有し、
H
OおよびH
Cは、前記第1の光路に対して平行な方向に沿って測定される、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項14】
1≦i≦3に対して、|f
i|>5×EFLである、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項15】
レンズ素子L
5は、すべてのレンズ素子の中で最も強い光学パワーを有し、i≠5に対して、|f
5|<|f
i|である、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項16】
f
5<EFLである、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項17】
レンズ素子L
4およびレンズ素子L
5を含むサブレンズ系は、正の屈折力を有する、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項18】
L
4の焦点距離f
4およびL
5の焦点距離f
5は、|f
4|<4×f
5を満たす、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項19】
L
4の焦点距離f
4およびL
5の焦点距離f
5は、|f
4|<3×f
5を満たす、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項20】
前記レンズは、条件STD<0.020に従うレンズ素子間のエアギャップを少なくとも1つ含み、
STDは、正規化ギャップ標準偏差である、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項21】
レンズ素子L
4とレンズ素子L
5との間のエアギャップは、STD<0.020を満たし、
STDは、正規化ギャップ標準偏差である、請求項1に記載の屈曲カメラ。
【請求項22】
a)有効焦点距離(EFL)を有し、かつレンズ光軸に沿ってN≧7個のレンズ素子L
iを含むレンズであって、各レンズ素子は、それぞれの焦点距離f
iを有し、かつ、それぞれの前面S
2i-1およびそれぞれの後面S
2iを備え、複数の前記レンズ素子面は、S
k(ただし、1≦k≦2N)と印され、各レンズ素子面S
kは、クリアハイト値CH(S
k)を有し、最後の表面S
2Nのクリアハイト値CH(S
2N)は、表面S
2から表面S
2N-1までの各表面のクリアハイト値以上である、レンズと、
b)イメージセンサと、
c)前記イメージセンサを含む平面に対して平行な第1の光路を、前記第1の光路に対して垂直であり、かつ前記レンズ光軸に対して平行な第2の光路へと屈曲させる光路屈曲素子(OPFE)と、
を備える、屈曲カメラであって、
d)前記屈曲カメラは、fナンバーf/#<1.2を有する、
屈曲カメラ。
【請求項23】
f/#<1.1である、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項24】
f/#≦1.0である、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項25】
前記屈曲カメラは、60°より大きい対角視野(FOV)を有する、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項26】
1≦i≦3に対して、|f
i|>4×EFLである、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項27】
1≦i≦3に対して、|f
i|>5×EFLである、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項28】
レンズ素子L
5は、すべてのレンズ素子の中で最も強い光学パワーを有し、i≠5に対して、|f
5|<|f
i|である、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項29】
f
5<EFLである、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項30】
レンズ素子L
4およびレンズ素子L
5を含むサブレンズ系は、正の屈折力を有する、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項31】
L
4の焦点距離f
4およびL
5の焦点距離f
5は、|f
4|<4×f
5を満たす、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項32】
L
4の焦点距離f
4およびL
5の焦点距離f
5は、|f
4|<3×f
5を満たす、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項33】
前記レンズは、条件STD<0.020に従うレンズ素子間のエアギャップを少なくとも1つ含み、
STDは、正規化ギャップ標準偏差である、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項34】
前記レンズは、条件STD<0.010に従うレンズ素子間のエアギャップを少なくとも1つ含み、
STDは、正規化ギャップ標準偏差である、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項35】
レンズ素子L
4とレンズ素子L
5との間のエアギャップは、STD<0.020を満たし、
STDは、正規化ギャップ標準偏差である、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【請求項36】
前記レンズと前記イメージセンサとの間に位置する光学素子をさらに含む、請求項22に記載の屈曲カメラ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔既存出願の相互参照〕
本出願は、2020年7月22日に出願された米国仮特許出願第63/054,862号の優先権を主張するものである。その全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
〔分野〕
本開示に係る主題は概して、デジタルカメラの分野に関し、特に、かかるカメラにおける屈曲光学設計に関する。
【0003】
〔定義〕
本出願において、本明細書および図面の全体を通じて言及される光学的特性およびその他の特性に対して、以下の記号および略語が使用される。これらはすべて、当技術分野において知られているものである:
-総トラック長(Total track length:TTL):レンズを含むカメラシステムが無限遠の物体距離に焦点合わせされるときの、光軸に対して平行な方向に沿って測定された、レンズ(または「レンズアセンブリ」)の第1のレンズ素子L1の前面S1の点とイメージセンサとの間の最大距離。
【0004】
-後方焦点距離(Back focal length:BFL):レンズを含むカメラシステムが無限遠の物体距離に焦点合わせされるときの、第1の光軸に対して平行な方向に沿って測定された、レンズ(または「レンズアセンブリ」)の最後のレンズ素子LNの後面S2Nの点とイメージセンサとの間の最小距離。
【0005】
-有効焦点距離(Effective focal length:EFL):レンズ素子L1~LNのレンズアセンブリの後方主点P´と後方焦点F´との間の距離。
【0006】
-fナンバー(f/#):入射瞳の直径に対する、EFLの比。
【0007】
〔背景〕
スマートフォン等のモバイルデバイス用のデュアルカメラまたはトリプルカメラ(または一般にマルチカメラ)が知られている。典型的なトリプルカメラでは、1つのカメラは、ウルトラワイド(Ultra-Wide:UV)の視野(field of view:FOV)FOVUWを有し、別のカメラは、FOVUWよりも狭いワイド(Wide)の視野FOVWを有し、さらに別のカメラは、FOVWよりも狭いテレ(Tele)の視野FOVTを有する。また、本明細書において、これらのカメラはそれぞれ、ウルトラワイド(またはUW)カメラ、ワイド(またはW)カメラ、およびテレ(またはT)カメラとも称される。一般に、ワイドカメラは、スマートフォンのメインカメラであると考えられている。
【0008】
カメラレンズのfナンバー(「f/#」)は、カメラの入射瞳の直径Dに対する、有効焦点距離(EFL)の比である:f/#=EFL/D。入射瞳は、レンズ系の前部開口(front aperture)を通して「見える」ような、開口絞りの光学像である。前部開口は、レンズの物体側の開口である。f/#が小さいことは、スマートフォンのメインカメラにとって望ましい。以下に論じるように、それは次の3つの主要な利点を有するからである:微光感度(low light sensitivity)の良好さ、「自然な」ぼけ効果(Bokeh effect)の強さ、および、画像解像度の大きさ:
1.微光感度は、例えばデジタル一眼レフ(digital single-lens reflex:DSLR)カメラと比較したときの、今日のモバイルデバイス対応カメラの主要な性能上の欠点である。例えば、(同じEFLに対して)カメラのf/#を半分にすると、開口面積は4倍になる。これは、4倍多くの光がカメラに入ることを意味する。特に、微光シーンをとらえるとき、この差が重要になる。
【0009】
2.ぼけ(Bokeh)は、焦点の外れた(ピンぼけした)画像部分内に生じるぼやけの美的な質であり、今日のスマートフォンに強く求められる特徴である。ぼけ効果は、像の被写界深度(depth of field:DOF)と逆相関の関係にある。ここで、DOF~f/#である。f/#が小さいことは、強い「自然な」ぼけ効果をサポートするのに有益である。今日のスマートフォンカメラにおけるf/#は、「自然な」ぼけを十分に提供するものではないため、「人工的な」ぼけ、すなわち、焦点の外れた画像部分に、人工的にぼやけを加えることにより、強いぼけに対する要求に応えている。
【0010】
3.モバイルデバイスに進出したイメージセンサは、画素解像度が絶えず増加している。2019年には、画素解像度が初めて、100メガピクセルを超えた。(その他の要因の中でも)これは、単一画素のサイズを縮小することにより、すなわち、空間画素周波数(spatial pixel frequency)を増加させることにより、達成される。画素解像度を画像解像度に変換するために、カメラのレンズは、センサの空間画素周波数kPixelをサポートする必要がある。十分に設計された(回折限界を有する)カメラレンズの場合、レンズの分解可能な空間周波数kLensは、f/#の逆数に依存する:kLens~1/f/#。すなわち、f/#がより小さいことは、画像解像度がより大きいことに対応する(十分な空間画素周波数を有するイメージセンサを仮定している)。
【0011】
最新のプレミアムスマートフォンには、f/#が約f/1.9のメインワイドカメラ(Huawei P40 Pro)およびf/1.8のメインワイドカメラ(Apple iphone 11 Pro Max)が搭載されている。f/#の小さいカメラにおける主要な課題は、必要な大きな前部開口による強い収差を補正するレンズ、例えば色収差を補正するためのレンズを設計することである。この課題は通常、レンズ素子をより多く含む、より複雑なレンズを設計することによって対処される。だがその結果、総トラック長(TTL)およびカメラモジュール高さは、一般的にはより大きなものになってしまう。スリムなスマートフォンを設計するという目標にとって、これは不利である。
【0012】
モバイルテレカメラにおける最近の進展には、テレカメラを「屈曲させる(fold)」ために、プリズムを使用することが含まれる:ホストデバイスの後面に対して垂直な方向から、当該ホストデバイスの後面に対して平行な方向へと、光が伝播する方向を「屈曲させる」(偏向させる)ために、反射素子または光路屈曲素子(optical path folding element)(「OPFE」)が光路に追加される。屈曲カメラにより、スリムなカメラ設計において、TTLを大きなものにすることが可能になる。
【0013】
スマートフォンのメインカメラの改善には、f/#が小さい屈曲ワイドカメラ設計を有することが有益であろう。
【0014】
〔概要〕
さまざまな実施形態において、(i)N≧7個のレンズ素子Liを有し、かつ有効焦点距離(EFL)を有するレンズであって、各Liは、それぞれの焦点距離fiを有し、第1のレンズ素子L1は、物体側に面する、レンズと、(ii)イメージセンサと、(iii)物体と上記レンズとの間の屈曲光路をレンズ光軸に対して提供するためのOPFEと、を備える、屈曲カメラであって、総トラック長(TTL)を有し、前記レンズの開口絞りは、前記物体に面する前記第1のレンズ素子の第1の表面に対して、d/TTL=0.2を満たす距離dよりも近くに位置し、前記屈曲カメラのfナンバーf/#は、1.2よりも小さい、屈曲カメラが提供される。
【0015】
さまざまな実施形態において、(i)有効焦点距離(EFL)を有し、かつ第1の光軸を有しN≧7個のレンズ素子Liを含むレンズであって、各レンズ素子は、それぞれの焦点距離fiを有し、かつ、それぞれの前面S2i-1およびそれぞれの後面S2iを備え、複数の前記レンズ素子面は、Sk(ただし、1≦k≦2N)と印され、各レンズ素子面Skは、クリアハイト値CH(Sk)を有し、表面S17のクリアハイト値CH(S17)は、表面S2から表面S2N-1までの各表面のクリアハイト値以上である、レンズと、(ii)イメージセンサと、(iii)物体と複数の上記レンズ素子との間の屈曲光路を提供するためのOPFEと、を備える、屈曲カメラであって、前記屈曲カメラのfナンバーf/#は、1.2よりも小さい、屈曲カメラが提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、f/#<1.1である。
【0017】
いくつかの実施形態において、f/#≦1.0である。
【0018】
いくつかの実施形態において、0.8<f/#≦1.0である。
【0019】
いくつかの実施形態において、上述または後述の屈曲カメラは、60°より大きい対角FOVを有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、1≦i≦3に対して、|fi|>4・EFLである。
【0021】
いくつかの実施形態において、1≦i≦3に対して、|fi|>5・EFLである。
【0022】
いくつかの実施形態において、L5は、最も強い光学パワーを有するレンズ素子である、すなわち、i≠5に対して、|f5|<|fi|である。
【0023】
いくつかの実施形態において、f5<EFLである。
【0024】
いくつかの実施形態において、レンズ素子L4およびレンズ素子L5を含むサブレンズ系は、正の屈折力を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、L4の焦点距離f4およびL5の焦点距離f5は、|f4|<4・f5を満たす。
【0026】
いくつかの実施形態において、L4の焦点距離f4およびL5の焦点距離f5は、|f4|<3・f5を満たす。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記レンズは、条件STD<0.020に従うレンズ素子間のエアギャップを少なくとも1つ含む。ここで、STDは、正規化ギャップ標準偏差である。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記レンズは、条件STD<0.010に従うレンズ素子間のエアギャップを少なくとも1つ含む。ここで、STDは、正規化ギャップ標準偏差である。
【0029】
いくつかの実施形態において、レンズ素子L4とレンズ素子L5との間のエアギャップは、STD<0.020を満たす。ここで、STDは、正規化ギャップ標準偏差である。
【0030】
〔図面の簡単な説明〕
このパラグラフの後に列挙される本明細書に添付された図面を参照しつつ、本明細書に開示された実施形態の非限定的な実施例を、以下に説明する。図面および説明は、本明細書に開示された実施形態を明確かつ明瞭にすることを意図するものであり、限定性を有するものとは決してみなされるべきではない。種々の図面中の同様の要素は、同様の数字により示されてもよい。図面中の要素は、必ずしも縮尺どおりには描かれていない。図面において:
図1Aは、ワイドカメラとして動作し得る、公知のデジタル屈曲カメラを示す斜視図である;
図1Bは、
図1Aのカメラを示す側面図である;
図1Cは、
図1Aおよび
図1Bにおけるもののような屈曲カメラを「直立」(非屈曲)カメラと共に含む、公知のデュアルカメラを示す図である;
図2Aは、本開示に係る主題のいくつかの実施例による、屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図2Bは、本開示に係る主題のいくつかの実施例による、別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図2Cは、本開示に係る主題のいくつかの実施例による、さらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図2Dは、本開示に係る主題のいくつかの実施例による、さらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図3Aは、
図2A~
図2Dにおける系のレンズの光軸に直交する平面P上への、2つの衝突点IP
1およびIP
2の正射影IP
orth,1、IP
orth,2を示す図である;
図3Bは、
図2A~
図2Dにおける系のレンズの光軸に直交する平面P上への、2つの衝突点IP
3およびIP
4の正射影IP
orth,3、IP
orth,4を示す図である;
図4は、クリアハイトの定義を図により示す;
図5は、クリアアパーチャの定義を図により示す;
図6は、レンズ素子L
iの直径H
Liの図解を示す;
図7は、レンズ素子の幅W
Liおよびレンズ素子の高さH
Liを示す、レンズ素子の分解図である。
【0031】
〔発明を実施するための形態〕
以下の詳細な説明では、完全な理解を提供するために、数多くの特定的な詳細が記載される。しかしながら、本開示に係る主題がこれらの特定的な詳細なしに実施されてもよいことは、当業者ならば理解するだろう。別の例では、周知の方法は、本開示に係る主題を不明瞭にすることがないように、詳細な説明をしていない。
【0032】
明確さのために別個の実施形態の文脈において説明される本開示に係る主題の特定の複数の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈において説明される本開示に係る主題のさまざまな特徴は、別々に、または、任意の適切な下位の組み合わせにおいて提供されてもよい。
【0033】
さらに、明確さのため、「実質的に」という用語は、許容可能な範囲内の値の変動(バリエーション)の可能性を含意するために、本明細書において使用されている。一例によれば、本明細書において使用される「実質的に」という用語は、任意の特定の値を最大で10%上回る可能な変動、または、任意の特定の値を最大で10%下回る可能な変動を含意するものと解釈されるべきである。別の例によれば、本明細書において使用される「実質的に」という用語は、任意の特定の値を最大で5%上回る可能な変動、または、任意の特定の値を最大で5%下回る可能な変動を含意するものと解釈されるべきである。さらに別の例によれば、本明細書において使用される「実質的に」という用語は、任意の特定の値を最大で2.5%上回る可能な変動、または、任意の特定の値を最大で2.5%下回る可能な変動を含意するものと解釈されるべきである。
【0034】
図1Aおよび
図1Bは、例えばワイドカメラとして動作し得る、公知のデジタル屈曲カメラ100を示す。カメラ100は、光路屈曲素子(OPFE)102(例えば、プリズム)と、(この描写では見ることができないが、例えば
図2A~
図2Dに見ることができる)複数のレンズ素子を有するレンズ104と、イメージセンサ106と、を備える。(
図2A~
図2Dにおける実施形態等の)いくつかの実施形態において、当該複数のレンズ素子は、第1の光軸108に沿って軸対称である。他の実施形態において、当該複数のレンズ素子は、軸対称でなくてもよい。例えば
図2Bに例示されているように、複数のレンズ素子は、非円形形状にカット(またはダイシングまたはスライス)されてもよい。
【0035】
当該複数のレンズ素子のうちの少なくとも一部のレンズ素子は、「バレル」110と称される構造により、保持されてもよい。バレルは、光軸108に沿って長手方向の対称性を有し得る。
図1A~
図1Cにおいて、このバレルの断面は円形である。しかしながら、このことは必須ではなく、例えばカットされたレンズ素子を保持するために、他の形状が用いられてもよい。
【0036】
物体(図示せず)からイメージセンサ106への光線の経路によって、光路(光路の一部を表した光路112および光路114を参照)が定められる。
【0037】
OPFEは、第1の光路112から第2の光路114へと、光路を屈曲させる。光路114は、光軸108に対して実質的に平行である。このため、光路は「屈曲光路(folded optical path)」(光路112および光路114により示される)と称され、カメラ100は「屈曲カメラ(folded camera)」と称される。
【0038】
特に、いくつかの実施例では、OPFE102は、光軸108に対して、実質的に45°傾斜している。
図1Aにおいて、OPFE102は、光路112に対しても、実質的に45°傾斜している。
【0039】
いくつかの公知の実施例では、イメージセンサ106は、光軸108に対して実質的に垂直なX-Y平面内に存在する。しかしながら、これは限定的なものではなく、イメージセンサ106は、異なる向きを有してもよい。例えば、国際公開第2016/024192号に記載されているように、イメージセンサ106は、XZ平面内にあってもよい。この場合、イメージセンサ106に向かって光線を反射させるために、追加のOPFEが使用されてもよい。
【0040】
2つのカメラ、例えば、ワイドカメラ100および通常のUWカメラ130が、デジタルカメラ150内に含まれてもよい(デュアルカメラとも称される)。可能な構成を、
図1Cに示す。
【0041】
UWカメラ130は、(カメラの物体側を示す)開口132と、Y方向における対称(光)軸136を有する光学レンズ系134(または「ワイドレンズモジュール」)と、UWイメージセンサ138と、を含んでもよい。UWカメラは、UW像を提供するように構成されたUWレンズ系を備える。すでに上に示したように、UWカメラは、ワイドカメラの視野FOVWよりも大きな視野FOVUWを有する。例えば、FOVUWは、80°~130°であってもよく、FOVWは、60°~90°であってもよい。特に、他の例では、複数のワイドカメラおよび/または複数のテレカメラを、単一のデジタルカメラ内に組み込んで動作させてもよい。テレカメラのFOVTは、例えば20°~50°であってもよい。
【0042】
さて、
図2Aに注目する。
図2Aは、本明細書に開示された光学レンズ系(番号200)を概略的に示す。レンズ系200は、OPFE202と、レンズ(または「レンズアセンブリ」)204と、光学素子206と、イメージセンサ208と、を備える。系200は、光線追跡と共に示されている。光学素子206は、例えば、赤外線(IR)フィルタ、および/または、ガラスイメージセンサダストカバーであってもよい。(プリズム202により反射された後の)光線は、レンズ204を通過し、イメージセンサ208上に像を形成する。
図2Aは、各々3つの光線(上側周縁光線、下側周縁光線および主光線)を有する3つのフィールドを示す。
図2Aの実施例では、光線は、イメージセンサ208に突き当たる前に、光学素子206を通過する。しかしながら、これは限定的なものではなく、いくつかの実施例では、光学素子206は存在しない。すなわち、いくつかのレンズ系では、光学素子は任意選択的である。
【0043】
レンズ204は、N個の複数のレンズ素子Li220(ここで、「i」は1~Nの整数)を含む。L1は、物体(プリズム)側に最も近いレンズ素子であり、LNは、像側、すなわち、イメージセンサが配置されている側に最も近いレンズ素子である。この順序は、本明細書に開示されたすべてのレンズおよびレンズ素子について成り立つ。レンズ素子Liは、例えば、上記のカメラ100のレンズ素子として使用することができる。N個のレンズ素子は、光軸210に沿って軸対称である。各レンズ素子Liは、それぞれの前面S2i-1(添字「2i-1」は、前面の番号)、および、それぞれの後面S2i(添字「2i」は、後面の番号)を備える。ここで、「i」は1~Nの整数である。この番号付け規約は、本明細書全体を通じて用いられる。あるいは、本明細書全体を通じて行われるように、レンズ表面は、「Sk」(kは、1から2Nまで走る)と印される。いくつかの場合には、前面および後面は、非球面であってもよい。しかしながら、これは限定的なものではない。
【0044】
本明細書で使用されているように、各レンズ素子の「前面」という用語は、カメラの入口(カメラの物体側)に対してより近くに位置する、レンズ素子の表面を指す。また、「後面」という用語は、イメージセンサ(カメラの像側)に対してより近くに位置する、レンズ素子の表面を指す。
【0045】
レンズ系200において、(Z方向に沿った向きを有する)プリズムの第1の水平面は、T1と印されており、10.93mmである。(図示しないが、X方向に沿った向きを有する)プリズムの第2の水平面は、T2と印されており、12.6mmである。(Yに沿った向きを有する)プリズムの垂直面は、Vと印されており、8.68mmである。プリズムの角度は、45°である。プリズムサイズを比較的大きなものにすることにより、カメラに入る光の量を大きくすることができる。これにより、この実施例では、カメラは、1.0という低いf/#を有することができる。他の実施形態において、f/#は、0.8~1.2であり得る。レンズ204の開口絞りは、S2から、すなわち第1のレンズ素子の第1の表面から、d=-0.042mmの距離に配置されている。レンズ系200に示す非ゼロフィールドについては、光の約80%が、イメージセンサ208に到達する。
【0046】
以下に説明するように、各表面S
k(ただし、1≦k≦2N)について、クリアハイト(clear height)値CH(S
k)を定義することができ、各表面S
k(ただし、1≦k≦2N)について、クリアアパーチャ(clear aperture)値CA(S
k)を定義することができる。CA(S
k)およびCH(S
k)は、各レンズ素子の各表面S
kの光学的特性を定める。以下のように、CHという語は、
図4を参照して定義され、CAという用語は、
図5を参照して定義される。
【0047】
さらに、各レンズ素子L
iについて、高さ(「H
Li」、1≦i≦N)が定義される。各レンズ素子L
iについて、H
Liは、レンズ素子の光軸に対して垂直な方向に沿って測定されたレンズ素子L
iの最大の高さに対応する。所与のレンズ素子について、この高さは、この所与のレンズ素子の前面および後面のクリアハイト値CHおよびクリアアパーチャ値CAよりも大きいか、または等しい。
図6に示すように、軸対称レンズ素子の場合、H
Liは通常、レンズ素子L
iの直径である。軸対称レンズ素子の場合、通常、H
Li=max{CA(S
2i-1),CA(S
2i)}+機械部品のサイズである。
【0048】
一般に、レンズ設計において、機械部品のサイズは、レンズの光学的特性に寄与しないものと定められる。このため、レンズの2つの高さが定義される:光学的に活性な領域(点を付した領域)の光学的高さHopt(CA値に対応)、および、光学的に活性な領域と光学的に不活性な領域とに及ぶレンズの幾何学的(または機械的)高さHLである。HLiに対する機械部品のサイズの寄与は通常、200μm~1000μmである。
【0049】
レンズ204において、最後のレンズ素子L8の最後の表面S17のクリアアパーチャであるCA17は、複数のレンズ素子の他のすべての表面SiのCAよりも大きい、すなわち、i<17に対して、CA17>CAiである。最後のレンズ素子L8の第1の表面S16のCAであるCA16は、複数のレンズ素子の前にあるすべての表面SiのCAよりも大きい、すなわち、i<16に対して、CA16>CAiである。
【0050】
レンズ系200において、Nは8に等しい。しかしながら、これは限定的なものではなく、異なる数のレンズ素子を使用してもよい。一部の実施例によれば、Nは7以上である。例えば、Nは、7、8、9または10に等しくてもよい。
【0051】
レンズ系200において、複数のレンズ素子の表面の一部は、凸面として表現されており、一部は凹面として表現されている。しかしながら、
図2Aの表現は限定的なものではなく、用途、所望の光学パワー等のさまざまな要因に応じて、凸面および/または凹面の異なる組み合わせを使用してもよい。
【0052】
レンズバレル110等のレンズバレルは、レンズ204を担持してもよい。いくつかの実施形態において、レンズバレルは、レンズバレル110のように円形であってもよい。他の実施形態において、レンズバレルは、円形でなくてもよく、
図7のレンズ素子のような形状を有してもよい。
図7を参照すると、非円形レンズバレルは、対称軸としてX軸またはY軸を有してもよい。非円形レンズバレルは、例えば、レンズ204´等のレンズのカットされたレンズ素子に従った形状であってもよい。レンズバレルの高さは、レンズ内の最大の高さを有するレンズ素子よりもわずかに高いだけでよい。例えば、レンズバレルは、最も高いレンズ素子よりも0mm~0.5mm高くてもよい。最も高いレンズ素子と同一の高さを有するレンズバレルは、例えば、共同所有の国際特許出願PCT/IB2018/050988に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0053】
図3A、
図3Bおよび
図4に示すように、表面S
k(1≦k≦2N)を通過する各光線は、衝突点(impact point)IP上において、当該表面に突き当たる。光線は、表面S
1から光学レンズ系200に入り、S
2からS
2Nまでの表面を通過する。一部の光線は、任意の表面S
kに突き当たることはできるが、イメージセンサ208に到達することはできない/到達しない。所与の表面S
kについて、イメージセンサ208上に像を形成することができる光線のみが考慮される。CH(S
k)は、レンズ素子の光軸に直交する平面P上に位置する、2つの最も近い可能な平行線(
図4の線400および線402を参照)の間の距離として定義される。
図3Aおよび
図3Bの表現では、全衝突点IPの平面P上への正射影IP
orthがこの2つの平行線の間に位置するように、平面Pは、平面X‐Yに対して平行であり、かつ光軸103に直交している。CH(S
k)は、各表面S
k(前面および後面、1≦k≦2N)について定義することができる。
【0054】
CH(Sk)の定義は、現在結像されている物体に依存しない。イメージセンサ上に像を形成「可能な」光線を、それが指し示すからである。このため、光を発生しない黒の背景中に現在結像されている物体が位置していたとしても、この定義は、この黒の背景を指し示すものではない。イメージセンサに到達して像を形成「可能な」任意の光線(例えば、黒の背景とは対照的に、光を放射するであろう背景によって、放射される光線)を、それが指し示すからである。
【0055】
例えば、
図3Aは、光軸103に直交する平面P上への2つの衝突点IP
1およびIP
2の正射影IP
orth,1、IP
orth,2を示す。例として、
図3Aの表現では、表面S
kは凸面である。
【0056】
図3Bは、2つの衝突点IP
3およびIP
4の平面P上への正射影IP
orth,3、IP
orth,4を示す。例として、
図3Bの表現では、表面S
kは凹面である。
【0057】
図4では、表面S
kの全衝突点IPの平面P上への正射影IP
orthは、平行線400と402との間に位置する。したがって、CH(S
k)は、線400と線402との間の距離になる。
【0058】
図5に注目する。本開示に係る主題に従って、クリアアパーチャCA(S
k)は、所与の各表面S
k(ただし、1≦k≦2N)について、円の直径として定義される。この円は、光軸108に直交する平面P内に位置し、かつ、全衝突点の平面P上への全正射影IP
orthを包囲する、最小の可能な円である。CH(S
k)に関して上述したように、CA(S
k)の定義もまた、現在結像されている物体に依存しないことに留意する。
【0059】
図5に示すように、外接して囲まれた、全衝突点IPの平面P上への正射影IP
orthは、円500である。円500の直径は、CA(S
k)を定める。
【0060】
図2Aのレンズ素子の実施例に関して、詳細な光学データおよび表面データを表1~表3に示す。これらの実施例のために提供される値は、純粋に例示的なものであり、他の実施例に従って、他の値を使用してもよい。
【0061】
表面タイプは、表1において定められており、表面に関する諸係数は、表2において定められている:
表面タイプは、以下の通りである:
a)プラノ:平面、曲率なし
b)Qタイプ1(QT1)表面サグ式(sag formula):
【0062】
【数1】
ここで、{z、r}は、標準円筒極座標であり、cは、表面の近軸曲率であり、kは、円錐パラメータであり、r
normは、一般に、表面のクリアアパーチャの二分の一であり、A
nは、レンズデータ表に示す多項式係数である。Z軸は、像に向かって正である。
【0063】
【表1】
CAに関する値は、クリアアパーチャ半径として、すなわちCA/2として与えられている。基準波長は、555.0nmである。屈折率(「率」)およびアッベ数を除き、単位はmmである。各レンズ素子L
iは、表1に与えられた、それぞれの焦点距離f
iを有する。
【0064】
【表2】
図2Aの実施例では、以下の光学的特性が実現される:
-TTL=8.34mm
-BFL=1.08mm
-EFL=4.14mm
-CA(S
17)>CA(S
k)、1<k≦2N
-CA(S
16)>CA(S
k)、1<k≦2N-1
-CA(S
15)>CA(S
k)、1<k<2N-2
-f/#=1.0
-センサ対角線(SD)は、7mm、センサの幅/高さ比は、4:3
-最小CA/SD比:CA(S
4)/SD=0.57
-最大CA/SD比:CA(S
17)/SD=0.94
-対角FOV=80.44°、水平FOV=68.32°、垂直FOV=53.48°、
-開口絞りからS
2までの距離d:d=-0.042mm
-L
1、L
2およびL
3は相対的に小さいパワー(大きさ)を有し、1≦i≦3に対して、|f
i|>5・EFLである
-L
4およびL
5はともに正のパワーを有し、互いに厚さdだけ離れたL
4およびL
5を含むサブレンズ系は、表1に与えるように、焦点距離1/(f
4+f
5)=[1/f
4+1/f
5-d/(f
4f
5)]>0を有する
-L
5は、次式に従う:f
5<EFL
-L
4およびL
5は、次式を満たす:|f
4|<3×f
5
-L
4とL
5との間の最小ギャップ:Gap
Min=0.04mm
-L
4とL
5との間の最大ギャップ:Gap
Max=0.0745mm
-L
4とL
5との間の平均ギャップAVG
4:AVG
4=0.048mm
-L
4とL
5との間の平均ギャップAVG
4(r)からのSTD
4:STD
4=3.42・10
-3mm。
【0065】
レンズ204は、例えば6.57mm~7.2mmのレンズバレル高さを有するレンズバレルによって、担持されてもよい。
【0066】
本明細書において、「ギャップ」または「エアギャップ」とは、連続する複数のレンズ素子間にある空間を指す。レンズ素子4およびレンズ素子5の場合、「ギャップ」とは、L4の最後の表面とL5の第1の表面との間の空隙を指す。
【0067】
1つのギャップごとに、複数の関数および定数が定義される:
1.「Gapi(r)」関数(iは、レンズ素子番号であり、rは、式1に用いられているのと同じ変数である)は、以下の通りである:
a)i=1の場合:Gap1(r)=L2S1のz(r)+(プリズム出射面とL2S1との間の第2の光軸に沿った距離);
b)i>1の場合:Gapi(r)=Li+1S1のz(r)+(LiS2とLi+1S1との間の第2の光軸に沿った距離)-LiS2のz(r);
c)r=0に対して、「軸上ギャップ(on-axis gap)」(OA_Gapi)は、Gapi(r=0)と定義される;
2.「ギャップ平均」(AVGi)定数は、次式で与えられる:
【0068】
【数2】
ここで、jは、0からNまで走る離散変数である。Nは、整数>10であり、r
normは、複数の表面{L
iS
2、L
i+1S
1}における最小のD/2の値である。
【0069】
3.正規化ギャップ標準偏差(STDi)定数は、次式で与えられる:
【0070】
【数3】
ここで、r
normは、複数の表面{L
iS
2、L
i+1S
1}における最小のD/2の値であり、Nは、整数>10であり、AVG
iは、式2のように定義される。
【0071】
さて、
図2Bに注目する。
図2Bは、本明細書に開示された別の光学レンズ系(番号200´)を概略的に示す。レンズ系200´は、OPFE202と、複数のレンズ素子を有するレンズ204´と、光学素子206と、イメージセンサ208と、を備える。光線追跡は、
図2Aに示したようになされる。詳細な光学データおよび表面データを、表1および表2に示す。ただし、L
6およびL
8の全表面に関する開口半径、ならびに、L
7の表面S
15に関する開口半径についてのデータは、y方向において2.5mmに置き換わる(x方向における変更はない)。
【0072】
f/#が小さく、しかもレンズ高さが小さい屈曲レンズ系を実現するために、レンズ素子は、非円形形状にカットされている(しばしば「カットレンズ」または「Dカットレンズ」と称される)。レンズ素子は、レンズ204´の大きなレンズ素子を(Y方向に)5mmの高さにカットすることによって得られる。すなわち、高さH
Li>5mmを有するレンズ204´のレンズ素子L
i(すなわち、L
6、L
7およびL
8)は、5mmにカットされている。カットされたレンズ素子は、レンズ素子204のような円対称性を有しないが、その幅は、その高さよりも大きい、すなわち、W
Li>H
Liである(
図7の例を参照)。高さH
Li≦5mmを有するレンズ204のレンズ素子L
iについては変更されていない。このカットの時点で、レンズ素子L
6、L
7およびL
8は、CHは小さいながらも、CAが大きい。これは有利である。カメラ高さは一般に、ホストデバイスの高さによって制限されるが、屈曲レンズの設計では、当該カメラの高さがレンズ高さH
Lにより決定され得るからである。大きなCAおよび小さなCHを有するレンズは、例えばスマートフォンの高さの制約に適合したf/#が小さい屈曲レンズに関して有益である。レンズ204´のレンズ素子は、Y方向にカットされている。これは、レンズ素子の高さH
Liがその幅W
Liよりも小さいことを意味する。レンズ素子L
1~L
5のCAは、Y方向等の任意の方向の向きを有してもよい。カット設計の時点で、レンズ素子L
6、L
7およびL
8のCAは、X方向の向きを有する(図示せず)。他の実施形態では、1つのみのレンズ素子L
iまたは2つのみのレンズ素子L
iが、カットされてもよい、すなわち、W
Li>H
Liを有してもよい。さらに他の実施形態では、3つのレンズ素子よりも多くのレンズ素子L
iが、カットされてもよい、すなわち、W
Li>H
Liを有してもよい。さらに他の実施形態では、すべてのレンズ素子L
iが、カットされてもよい、すなわち、W
Li>H
Liを有してもよい。他の実施形態では、レンズ204´は、レンズ204の大きなレンズ素子を(Y方向に)例えば4.5mmまたは4mmの高さにカットすることによって、実現されてもよい、すなわち、高さH
Li>4.5mmを有するレンズ素子L
i(すなわち、L
4、L
5、L
6、L
7およびL
8)、または、高さH
Li>4mmを有するレンズ素子L
i(すなわち、L
1~L
8)は、それぞれ、4.5mmまたは4mmにカットされてもよい。さらに他の実施形態では、レンズ204´は、レンズ204の大きなレンズ素子を(Y方向に)例えば3.5mmまたは3mmの高さにカットすることによって、形成されてもよい。
【0073】
レンズ系200´において、プリズムの寸法は、レンズ系200におけるものと同一である:T1=10.93mm、T2=12.6mmおよびV=8.68mm。
【0074】
図2Aに記載された特性に加えて、
図2Bの実施例では、以下の光学的特性が実現される:
-CA(S
12)=1.03×CH(S
12)=2.58mm
-CA(S
13)=1.03×CH(S
13)=2.58mm
-CA(S
15)=1.14×CH(S
15)=2.85mm
-CA(S
16)=1.19×CH(S
16)=2.97mm
-CA(S
17)=1.32×CH(S
12)=3.29mm
-CA(S
17)>CA(S
k)、1<k≦2N
-CA(S
16)>CA(S
k)、1<k≦2N-1
-CA(S
15)>CA(S
k)、1<k<2N-2
-全レンズ表面CH(S
k)≦5mm
-f/#=1.0
-最小CA/SD比:CA(S
4)/SD=0.57
-最大CA/SD比:CA(S
17)/SD=0.71
レンズ204´は、例えば5.0mm~5.5mmのレンズバレル高さを有するレンズバレルによって担持されてもよい。
【0075】
図2Cは、本明細書に開示された別の光学レンズ系(番号200´´)を概略的に示す。レンズ系200´´は、OPFE202´と、レンズ204と、光学素子206と、イメージセンサ208と、を備える。光線追跡は、
図2Aに示したようになされる。詳細な光学データおよび表面データを、表1および表2に示す。
図2Aおよび
図2Bに示すOPFEと比較して、OPFE202´は、7.82mmという、より小さいプリズム高さ(「V」)を有する。プリズムの高さが小さいほど、スリムな屈曲カメラを実現するのに有益であり得る。
【0076】
ここで、T1=9.815mm、T2=12.6mmおよびV=7.82mmである。レンズ系200´´の非ゼロフィールドについては、光学レンズ系200および光学レンズ系200´と比較したときの光の減少は、8%以下である。ゼロフィールドについては、カメラに入る光の量に変化はない。カメラに入る光の量が多いことにより、1.0というカメラの小さなf/#が可能になる。他の実施形態では、f/#は、0.8~1.2であり得る。
【0077】
図2Dは、本明細書に開示されたさらに別の光学レンズ系(番号200´´´)を概略的に示す。レンズ系200´´´は、OPFE202´´と、レンズ204と、光学素子206と、イメージセンサ208と、を備える。光線追跡は、
図2Aに示したようになされる。詳細な光学データおよび表面データを、表1、2に示す。
図2Cに示すOPFE202´と比較して、OPFE202´´は、7.02mmという、より小さいプリズム高さ(「V」)を有する。
【0078】
ここで、T1=8.75mm、T2=12.6mmおよびV=7.02mmである。レンズ系200´´´の非ゼロフィールドについては、レンズ系200およびレンズ系200´と比較したときの光の減少は、19%以下である。ゼロフィールドについては、カメラに入る光の量に変化はない。カメラに入る光の量が多いことにより、1.0というカメラの小さなf/#が可能になる。他の実施形態では、f/#は、0.8~1.2であり得る。
【0079】
図2Eは、本明細書に開示されたさらに別の光学レンズ系(番号200´´´´)を概略的に示す。レンズ系200´´´´は、OPFE202´´´と、レンズ204´´と、光学素子206と、イメージセンサ208と、を備える。光線追跡は、
図2Aに示したようになされる。詳細な光学データおよび表面データを、表1、2に示す。ただし、L
6およびL
8の全表面に関する開口半径、ならびに、L
5の表面S
11およびL
7の表面S
15に関する開口半径についてのデータは、y方向において2.45mmに置き換わる(x方向における変更はない)。(Y軸に沿って測定された)プリズム高さは、レンズ204´´の高さよりも大きい。(Y軸に沿って測定された)レンズ系200´´´´全体の高さは、プリズム高さのみによって決定される、すなわち、レンズ204´´によりもたらされる追加の「高さに関する不利(height penalty)」はない。
【0080】
図2Dに示すOPFE202´´と比較して、OPFE202´´´は、6.00mmという、より小さいプリズム高さを有する。
【0081】
レンズ204´´のレンズ素子は、レンズ204´´の大きなレンズ素子を(Y方向に)4.9mmの高さにカットすることによって得られる。すなわち、高さH
Li>4.9mmを有するレンズ204´´のレンズ素子L
i(すなわち、L
6、L
7およびL
8)は、4.9mmにカットされる。カットされたレンズ素子は、レンズ素子204のような円対称性を有しないが、その幅は、その高さよりも大きい、すなわち、W
Li>H
Liである(
図7の例を参照)。他の実施形態では、レンズ204´´は、レンズ204の大きなレンズ素子を(Y方向に)例えば4.5mmまたは4mmの高さにカットすることによって、実現されてもよい、すなわち、高さH
Li>4.5mmを有するレンズ素子L
i(すなわち、L
4、L
5、L
6、L
7およびL
8)、または、高さH
Li>4mmを有するレンズ素子L
i(すなわち、L
1~L
8)は、それぞれ、4.5mmまたは4mmにカットされてもよい。
【0082】
カットされたレンズについてのさらなる説明は、
図2Bの説明において提供されている。ここで、T1=6.95mm、T2=12.6mmおよびV=6.00mmである。レンズ系200´´´´に示す非ゼロフィールドについては、約55%~約60%の光がイメージセンサ208に到達する。レンズ系200´´´´の非ゼロフィールドについては、レンズ系200およびレンズ系200´のそれぞれの非ゼロフィールドと比較したときの光の減少は、約30%である。この光の減少は主に、より大きなレンズ素子をDカットしたことによってではなく、プリズム寸法がより小さいことによって生じる。この光の減少は、上側周縁光線および下側周縁光線について、対称的に起こる。レンズ系200´´´´におけるDカットレンズ、および非Dカットレンズについて、イメージセンサ208に到達する光の量の差は、<5%に達する。ゼロフィールドについては、カメラに入る光の量に変化はない。カメラに入る光の量が多いことにより、1.0というカメラの小さなf/#が可能になる。他の実施形態では、f/#は、0.8~1.2であり得る。レンズ204´´は、例えば4.9mm~5.5mmのレンズバレル高さを有するレンズバレルによって担持されてもよい。
【0083】
いくつかの実施例によれば、複数のレンズ素子のうちの少なくとも一部のレンズ素子は、円形でない(光学レンズ系に直交し、かつ一般に光軸に一致する、平面X-Yにおける)断面形状(プロファイル)を有してもよい。特に、例えば
図7に示すように、レンズバレル710内に組み込まれた複数のレンズ素子のうちの少なくとも一部のレンズ素子は、(Y軸に沿って測定された)高さH
Liよりも大きい(X軸に沿って測定された)幅W
Liを有してもよい。高さH
Liは、レンズ素子の(機械部品を含む)全高に対応し得る。いくつかの実施形態では、レンズ系700内のレンズ素子は、Y軸に関する対称性および/またはX軸に関する対称性を有してもよい。
【0084】
いくつかの実施例によれば、WLiは、HLiよりも実質的に大きい(例えば、WLiは、HLiよりも20%以上大きい。ただし、この値は限定性を有するものではない)。いくつかの実施例では、WLiは、HLiよりも20%~70%大きくてもよい。一例として、屈曲レンズ204´のレンズ素子L8を考える:WL8は、HL8よりも32%大きい。別の例は、屈曲レンズ204´´のレンズ素子L8である:WL8は、HL8よりも44%大きい。
【0085】
別段の定めがない限り、列挙された選択肢のうちの最後の二者間における表現「および/または」の使用は、当該列挙された選択肢のうちの1または複数の選択肢を選択することが、適切であり、かつ、なされてもよいことを示す。
【0086】
特許請求の範囲または明細書が冠詞「a」または「an」の付された要素に言及する場合、その要素のうちの1つのみが存在しているものとしてかかる言及が解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0087】
本明細書において言及される全ての特許および特許出願は、あたかも個々の特許または特許出願の各々が参照によって本明細書に援用されるよう具体的かつ個別的に示されているのと同程度に、その全体が参照により本明細書に援用される。さらに、本出願におけるいかなる参考文献の引用または特定も、かかる参考文献が本開示に対する先行技術として利用可能であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1A】ワイドカメラとして動作し得る、公知のデジタル屈曲カメラを示す斜視図である。
【
図1C】
図1Aおよび
図1Bにおけるもののような屈曲カメラを「直立」(非屈曲)カメラと共に含む、公知のデュアルカメラを示す図である。
【
図2A】本開示に係る主題のいくつかの実施例による、屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図2B】本開示に係る主題のいくつかの実施例による、別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図2C】本開示に係る主題のいくつかの実施例による、さらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図2D】本開示に係る主題のいくつかの実施例による、さらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図3A】
図2A~
図2Dにおける系のレンズの光軸に直交する平面P上への、2つの衝突点IP
1およびIP
2の正射影IP
orth,1、IP
orth,2を示す図である。
【
図3B】
図2A~
図2Dにおける系のレンズの光軸に直交する平面P上への、2つの衝突点IP
3およびIP
4の正射影IP
orth,3、IP
orth,4を示す図である。
【
図7】レンズ素子の幅W
Liおよびレンズ素子の高さH
Liを示す、レンズ素子の分解図である。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
〔図面の簡単な説明〕
このパラグラフの後に列挙される本明細書に添付された図面を参照しつつ、本明細書に開示された実施形態の非限定的な実施例を、以下に説明する。図面および説明は、本明細書に開示された実施形態を明確かつ明瞭にすることを意図するものであり、限定性を有するものとは決してみなされるべきではない。種々の図面中の同様の要素は、同様の数字により示されてもよい。図面中の要素は、必ずしも縮尺どおりには描かれていない。図面において:
図1Aは、ワイドカメラとして動作し得る、公知のデジタル屈曲カメラを示す斜視図である;
図1Bは、
図1Aのカメラを示す側面図である;
図1Cは、
図1Aおよび
図1Bにおけるもののような屈曲カメラを「直立」(非屈曲)カメラと共に含む、公知のデュアルカメラを示す図である;
図2Aは、本開示に係る主題のいくつかの実施例による、屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図2Bは、本開示に係る主題のいくつかの実施例による、別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図2Cは、本開示に係る主題のいくつかの実施例による、さらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図2Dは、本開示に係る主題のいくつかの実施例による、さらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図2Eは、本明細書に開示されたさらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である;
図3Aは、
図2A~
図2Dにおける系のレンズの光軸に直交する平面P上への、2つの衝突点IP
1およびIP
2の正射影IP
orth,1、IP
orth,2を示す図である;
図3Bは、
図2A~
図2Dにおける系のレンズの光軸に直交する平面P上への、2つの衝突点IP
3およびIP
4の正射影IP
orth,3、IP
orth,4を示す図である;
図4は、クリアハイトの定義を図により示す;
図5は、クリアアパーチャの定義を図により示す;
図6は、レンズ素子L
iの直径H
Liの図解を示す;
図7は、レンズ素子の幅W
Liおよびレンズ素子の高さH
Liを示す、レンズ素子の分解図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
【
図1A】ワイドカメラとして動作し得る、公知のデジタル屈曲カメラを示す斜視図である。
【
図1C】
図1Aおよび
図1Bにおけるもののような屈曲カメラを「直立」(非屈曲)カメラと共に含む、公知のデュアルカメラを示す図である。
【
図2A】本開示に係る主題のいくつかの実施例による、屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図2B】本開示に係る主題のいくつかの実施例による、別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図2C】本開示に係る主題のいくつかの実施例による、さらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図2D】本開示に係る主題のいくつかの実施例による、さらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図2E】
本明細書に開示されたさらに別の屈曲光学レンズ系を示す概略図である。
【
図3A】
図2A~
図2Dにおける系のレンズの光軸に直交する平面P上への、2つの衝突点IP
1およびIP
2の正射影IP
orth,1、IP
orth,2を示す図である。
【
図3B】
図2A~
図2Dにおける系のレンズの光軸に直交する平面P上への、2つの衝突点IP
3およびIP
4の正射影IP
orth,3、IP
orth,4を示す図である。
【
図7】レンズ素子の幅W
Liおよびレンズ素子の高さH
Liを示す、レンズ素子の分解図である。
【国際調査報告】