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特表2023-516452アベナンスラミドおよびβ-グルカンを含む組成物またはエンバク抽出物
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  • 特表-アベナンスラミドおよびβ-グルカンを含む組成物またはエンバク抽出物 図1
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  • 特表-アベナンスラミドおよびβ-グルカンを含む組成物またはエンバク抽出物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】アベナンスラミドおよびβ-グルカンを含む組成物またはエンバク抽出物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20230412BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230412BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20230412BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230412BHJP
   A23G 4/06 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K8/42
A61K8/73
A61Q19/00
A61K36/899
A61P17/00
A61P9/00
A61P37/08
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/12
A61P17/06
A61P17/08
A61P17/04
A61P17/10
A61P17/02
A61K31/167
A61P43/00 121
A61K31/716
A23L33/105
A23G4/06
A61K131:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553575
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020056118
(87)【国際公開番号】W WO2021175450
(87)【国際公開日】2021-09-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッペ,ホルガー
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B014GB13
4B014GG01
4B014GG07
4B014GG18
4B014GK05
4B014GL10
4B018LB01
4B018MD49
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
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4C083AA111
4C083AA112
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4C083AB032
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4C083AB222
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4C083AC012
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4C083AC112
4C083AC122
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4C083AC212
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC372
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4C083AC582
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4C083AC642
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(57)【要約】
本発明は一般的に、少なくとも1種のアベナンスラミド化合物またはその類似体および少なくとも1種のβ-グルカン化合物を既定の比で含み、低い塩含有量を有する組成物またはエンバク抽出物に関する。加えて、本発明は、このようなエンバク抽出物を調製するための方法、前記方法で得られるエンバク抽出物、および食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物の調製のための、前記組成物またはエンバク抽出物の使用に関する。最後に、本発明は、前記組成物またはエンバク抽出物を含む食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体、少なくとも1種のβ-グルカンおよび塩を含むまたはこれらからなる、組成物またはエンバク抽出物であって、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、
- 少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体の、少なくとも1種のβ-グルカンまたは全β-グルカンに対する重量比が1:4~4:1の範囲であり、
- 塩の含有量が1.0重量%以下、特に0.5重量%以下である、
組成物またはエンバク抽出物。
【請求項2】
少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体の、少なくとも1種のβ-グルカンまたは全β-グルカンに対する重量比が1:3~3:1、特に1:1.5~1.5:1の範囲である、請求項1に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項3】
遊離アミノ酸、特にフェニルアラニンおよび/またはトリプトファンをさらに含むまたはこれらからなる、請求項1または2に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項4】
選択されたエンバク供給源が、Avena sativa種もしくはAvena nuda種の粉砕されたもしくは粉砕されていない穀粒またはエンバクわらである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項5】
少なくとも1種のアベナンスラミドが、アベナンスラミドA、B、C、G、H、K、LおよびRからなる群から選択されるか、または全アベナンスラミドがアベナンスラミドA、B、C、G、H、K、L、およびRからなる群から選択されるアベナンスラミドを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項6】
組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、
- 0.5~7.0重量%、好ましくは1.0~6.5重量%の全アベナンスラミド、特にアベナンスラミドA、BおよびC;
- 1.0~3.3重量%、好ましくは1.5~2.8重量%のβ-グルカン;
- 1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の塩;
- 0.5~1.5重量%、好ましくは0.6~0.9重量%の全遊離アミノ酸;
- 0.05重量%超、好ましくは0.075重量%超のフェニルアラニン;および
- 0.25重量%超、好ましくは0.3重量%超のトリプトファン;
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項7】
ABTSアッセイで決定した場合、少なくとも70%のラジカルスカベンジング活性を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項8】
エンバク抽出物を調製するための方法であって、
(1)エンバク供給源を準備するステップ;
(2)少なくとも1種の抽出溶媒(抽出剤)を使用して温度30~80℃でエンバク供給源を抽出して、抽出混合物または懸濁液を得るステップ;
(3)抽出された不溶性エンバク供給源を抽出混合物または懸濁液から除去して、抽出液を得るステップ;
(4)有機抽出溶媒を抽出液から除去して、水性抽出液を得るステップ;
(5)吸着剤を準備し、コンディショニングし、吸着剤を吸着装置の中に提供するステップ;
(6)水性抽出液を、吸着装置内の吸着剤に通して、水性抽出液の成分を吸着させるステップ;
(7)少なくとも1種の溶出溶媒を使用して、水性抽出液の吸着成分を吸着剤から溶出して、溶出物を得るステップ;および
(8)任意選択で溶出溶媒を溶出物から除去して、エンバク抽出画分を得るステップ
を含む、方法。
【請求項9】
ステップ(6)と(7)との間に、
(i)吸着装置内の吸着剤を水で洗浄して、洗浄水を得るステップ、および
(ii)吸着装置内の過剰の水を除去するステップ
をさらに含む、請求項8に記載のエンバク抽出物を調製するための方法。
【請求項10】
選択されたエンバク供給源が、Avena sativa種もしくはAvena nuda種の粉砕されたもしくは粉砕されていない穀粒またはエンバクわらである、請求項8または9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の抽出溶媒が、食料品または化粧品または薬学的調製物に適切な水と有機溶媒の混合物、特に水とアルコールまたはアセトンの混合物からなる群から選択され、アルコールが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールおよびこれらの混合物、すなわち組合せからなる群から選択される、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
抽出ステップが、40~70℃、特に50~60℃の範囲の温度で実施される、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
吸着剤が、架橋ポリスチレン、特に、エチルビニルベンゼンとジビニルベンゼン、ビニルピロリドンとジビニルベンゼン、ビニルピリジンとジビニルベンゼン、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、アクリル酸、ジビニルベンゼンおよび脂肪族ジエンのコポリマー、ならびに他のポリマー、特に多環芳香族、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレン、ポリエステルおよびポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluorethylene)、ならびに特にLewatit(登録商標)およびAmberliteからなる群から選択される、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の溶出溶媒が、食料品または化粧品または薬学的調製物に適切な有機溶媒からなる群から選択され、有機溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、アセトンまたはこれらの任意の混合物、すなわち組合せからなる群から選択されるか、またはそれぞれが水との混合物である、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項8から14のいずれか一項に記載の方法を使用して得ることが可能なエンバク抽出物。
【請求項16】
1,2-ペンタンジオールをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物もしくはエンバク抽出物または請求項15に記載のエンバク抽出物。
【請求項17】
皮膚科用化粧品としての、特にスキンケア、頭皮ケア、ヘアケア、ネイルケアにおける使用のための、または皮膚状態、我慢できないおよび敏感肌、皮膚刺激、皮膚発赤、膨疹、掻痒症(痒み)、皮膚の老化、しわの形成、皮膚体積の減少、肌の弾力の喪失、色素斑、色素異常、または乾燥肌、すなわち皮膚の保湿を必要とする乾燥肌の予防および/もしくは処置における、請求項1から7、15および16のいずれか一項に記載の組成物またはエンバク抽出物の使用。
【請求項18】
医薬としての使用のための、請求項1から7、15および16のいずれか一項に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項19】
皮膚疾患もしくは角質疾患、特にバリアに関連した、炎症性、免疫アレルギー性、アテローム生成性、乾燥性もしくは過剰増殖性の構成成分を有する皮膚疾患もしくは角質疾患の予防および/もしくは処置における、またはROS生成の増加に伴う皮膚疾患の予防および/もしくは処置における、または心血管疾患、アレルギー反応、冠動脈心疾患の予防および/もしくは処置における、血清中のLDLコレステロールおよび脂質のレベルを低減させるための、血圧を減少させるための、インスリン感受性を改善するための、ならびに血糖値の制御を可能にするための、請求項18に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項20】
皮膚障害または角質障害が、湿疹、乾癬、脂漏症、皮膚炎、紅斑、掻痒症(痒み)、耳炎、炎症、刺激、線維症、扁平苔癬、ばら色粃糠疹、癜風、自己免疫性の水疱性疾患、じんま疹様、アンジオダーマルおよびアレルギー性皮膚反応、ならびに創傷治癒からなる群から選択され、ならびに/またはROS生成の増加に伴う皮膚疾患がアトピー性皮膚炎、神経皮膚炎、乾癬、酒さ、ざ瘡様発疹、皮脂欠乏症および乾燥症からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物またはエンバク抽出物。
【請求項21】
食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物を調製するための、請求項1から7、15および16のいずれか一項に記載の組成物またはエンバク抽出物の使用。
【請求項22】
請求項1から7、15および16のいずれか一項に記載の組成物またはエンバク抽出物を含む、特に組成物またはエンバク抽出物を、組成物の総重量に基づき、0.0001~10重量%の量で含む、食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、少なくとも1種のアベナンスラミド化合物またはその類似体および少なくとも1種のβ-グルカン化合物を既定の比で含み、低い塩含有量を有する組成物またはエンバク抽出物に関する。加えて、本発明は、このようなエンバク抽出物を調製するための方法、前記方法で得られるエンバク抽出物、および食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物の調製のための、前記組成物またはエンバク抽出物の使用に関する。最後に、本発明は、前記組成物またはエンバク抽出物を含む食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
Poaceaeは、Gramineaeとしても公知であり、イネ科植物として公知の単子葉顕花植物の大きなおよびほぼ至る所に存在するファミリーである。イネ科植物は植物の経済的に重要なファミリーである。イネ科植物は6,000年もの間家畜の飼料として栽培され、イネ科植物の穀粒、例えば、小麦、米、トウモロコシ(コーン)、オオムギ、ソルガム、雑穀およびエンバクは、これまでヒトの最も重要な食用作物であり、依然としてそうである。
【0003】
穀物は生物活性のある化合物の中で多くの独特な物質、例えば、食用繊維(アラビノキシラン、β-グルカン、セルロース、リグニンおよびリグナン)、ステロール、トコフェロール、トコトリエノール、フェノール系化合物、ビタミンおよび微量元素の優れた供給源である。
【0004】
フェノール系化合物は抗酸化特性を有し、反応性酸素種(すなわちスーパーオキシドアニオン、ヒドロキシル基およびペルオキシ基)が関与する変性疾患(例えば、心疾患およびがん)から防御することができる。フェノール系化合物の一般的な定義は、1つまたは複数のヒドロキシル基を有するベンゼン環を含有する任意の化合物である。フェノール系の酸、フラボノイド、濃縮タンニン、クマリンおよびアルキルレゾルシノールがその例である。穀物中で、これら化合物は主に果皮内に位置し、穀粒を剥皮してふすまを生成することにより濃縮することができる。フェノール系化合物は、フラボノイド(フラボノール、フラボン、イソフラボン、アントシアニン、フラバノール、フラバノンなどに下位分類される)および非フラボノイドにグループ化することができる。フェノール系化合物は遊離フェノールまたはグリコシド形態で存在することができる。フェノール系化合物は、比較的極性の傾向にあり、通常純粋または水性アルコール、例えば、エタノールおよびメタノールまたは水性アセトンに溶解する。穀物中の多くのフェノール系化合物(例えば、フェノール系の酸およびフラボノイド)は果実および植物にもまた報告されているが、一部のフェノールは、1つの植物種、例えば、エンバクアベナンスラミドに特有のものである[Dykesら、Cereal Foods World、2007、105~111ページ]。穀物の中でも、エンバクのみがアベナンスラミドを含有する。これらの化合物は抗病原菌であり、例えば、菌類などの病原菌への曝露に応答して植物により生成される。
【0005】
中でもβ-グルカンは穀物の食用繊維の主要な画分である。β-グルカンは糊粉層細胞とふすまの壁に生じる。オオムギ、エンバク、ライムギおよび小麦の穀粒中のβ-グルカンの平均全含有量はそれぞれ4.0~7.0%、2.2~7.8%、1.2~2.9%および0.4~1.4%である。一般的にβ-グルカンと呼ばれる(1→3)、(1→4)-β-D-グルカンは、1つのβ-(1→3)-グリコシド連結によりD-グルコピラノース単位を2つ、3つまたは4つおきに分離するβ-(1→4)-グリコシド結合により連結したD-グルコピラノース残基からなる。β-グルカンの構造はこれらの物理化学的(水中での溶解度、粘度およびゲルの形成)および機能的特徴を決定づける。β-グルカンは、例えば、冠動脈心疾患の発症を減少させる、血清中のLDLコレステロールおよび脂質のレベルを低減させる、血圧を減少させる、インスリン感受性を改善する、ならびに血糖値の制御を可能にする、ならびに抗酸化性および抗炎症性活性などの多くの利益を有する[Siurekら、Food Science and Technology International、2012、18巻(6号)、559~568ページ]。
【0006】
エンバクは2つの主要な種、Avena sativa L.およびAvena nuda L.(同義語としてGilletおよびMagneによるAvena sativa subsp.nuda(L.)、およびKoernによるAvena sativa var.nuda(L.)が挙げられる)に存在する。A.sativaはエンバク(common oat)または殻付きエンバクとしても公知であり、寒冷温帯気候、特に北欧州および北アメリカの寒く、湿った領域で主に栽培されている。A.nudaは、収穫物が収集された時点で殻が除去され、小麦と類似した、殻を含まない脱穀性を有するので、ハダカエンバクまたは皮を取ったエンバクとして公知である。殻付きエンバクは地球規模でのエンバクの生産の大部分を代表するものであるが、ただし、ハダカエンバクが最も一般的な種類である中国は除く。
【0007】
アベナンスラミド(これより以下、Avnsまたは単一のアベナンスラミド化合物Avnと略記する)は、アントラニル酸およびヒドロキシケイ皮酸部分を含有するフェノール系アミドであり、A.sativaもA.nudaエンバクも自然発生のフェノール系アミドの群である(表1を参照されたい)。エンバクはおよそ40の異なる種類のAvnsを含有し、これらはエンバク穀粒と葉の両方に存在する。最も豊富なのはAvn A(N-(4’-ヒドロキシシンナモイル)-5-ヒドロキシアントラニル酸)、Avn B(N-(4’-ヒドロキシ-3’-メトキシシンナモイル)-5-ヒドロキシアントラニル酸)、およびAvn C(N-(3’,4’-ジヒドロキシシンナモイル)-5-ヒドロキシアントラニル酸)である。図1および表1を参照されたい。これらAvnsは構成的に種実に発現し、ほとんどすべての粉砕画分に出現するが、これらの最も高い濃度はふすまおよび種実の外層において生じる[Boz H.、Czech Journal of Food Sciences、2015、33巻(5号):399~404ページ]。エンバク穀粒中のアベナンスラミド(Avns)の全含有量は、品種および農学的処置に応じて約2~700mg/kg(0.0002~0.07%)であることが判明した[Maliarova M.ら、Journal of the Brazilian Chemical Society、2015、26巻(11号)、2369~2378ページ]。
【0008】
Avnsがin vitroとin vivoの両方で強い抗酸化活性、ならびに細胞の酸化的機能障害および酸化ストレス関連疾患、例えば、神経変性および心血管疾患の発生を阻止または制限し得る抗炎症性、抗刺激性、抗アテローム生成および抗増殖性活性を有し、皮膚刺激、老化、CHDおよびがんに対する追加の保護を提供することをいくつかの研究が実証した[Perrelli A.ら、Oxidative Medicine and Cellular Longevity、2018、DOI:10.1155/2018/6015351]。
【0009】
Avnsの抗酸化活性は、典型的な穀物構成成分フェルラ酸、ゲンチシン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸(protocagtechuic acid)、シリング酸、バリニン酸およびバニリンの抗酸化活性より10~30倍高いことが判明した。Avnsは抗酸化活性が異なり、Avn Cが最も高い活性を有し、Avn BおよびAvn Aがこれに続く。Avns富化エンバク抽出物はin vitroでLDL酸化を阻害する。エンバク抗酸化剤が、血清コレステロールを低下させ、LDLコレステロール酸化および過酸化を阻害することによって、心血管の危険性を減少させる潜在能力を有することが、動物の研究でもヒト臨床試験でも確認された。エンバクおよびエンバクふすまの消費は、これらの高い繊維含有量ばかりでなく、Avnsによってもまた結腸がんの危険性を減少させ得ることを別の研究は示した。さらに、Avns富化エンバク抽出物は、アテローム動脈硬化症およびNF-kB転写因子の活性化を阻害することが示されており、NF-kB転写因子は感染症および炎症の調整剤である[Hueseyin Boz、Phenolic Amides(Avenanthramides)in Oats-A Review、Czech J.Food Sci.、33巻、2015(5号)、399~404ページ]。
【0010】
エンバクからのAvnsの抽出は、様々な溶媒組成物、例えば、純粋または希釈されたエタノールおよびメタノールを使用して行った。異なる時間にわたり室温でまたは制御された加熱下で、例えば、ハダカエンバク、50%水性エタノールなどを用いて抽出手順が達成された[Tong Lら、Journal of Integrative Agriculture、2014、13巻、1809ページ]。
【0011】
Maliarova、M.ら、Journal of the Brazilian Chemical Society、2015、26巻(11号)、2369~2378ページは、ハダカエンバクふすまからのAvnsの抽出について、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールの効率を比較した。Avnsの最も高い収率に対する最適条件は、メタノール濃度70%、抽出温度55℃および抽出時間165分間であった。
【0012】
エンバクにおいて、可溶性繊維の主成分はエンバクβ-グルカンを含む。エンバクβ-グルカンは胚乳細胞壁内に位置し、胚乳細胞壁は、下位の糊粉層の中で糊粉層に隣接する最も厚い細胞壁である。エンバクβ-グルカンを単離および精製するプロセスは極めて困難である。エンバクβ-グルカンに対する抽出方法は温水およびアルカリ溶液中の溶解度に基づく。精製は、例えば、等電沈殿により同時抽出したタンパク質を分離すること、および硫酸アンモニウム、2-プロパノールまたはエタノールを使用して、β-グルカンを沈殿させることにより達成することができる。[Daou C.およびZhang H.、Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety、2012、11巻、355~365ページ]。
【0013】
穀物フェノール系化合物およびβ-グルカン化合物は、強力な有益な生物学的活性を有し、これによって、これらの化合物は、ヒトおよび動物のための局所的適用および/または経口的適用のための化粧品、栄養および健康的使用のための価値のあるおよび極めて興味深い天然活性成分となっている。しかし、フェノール系化合物(例えば、Avns)またはβ-グルカン化合物が豊富な抽出物を調製することを目標とする抽出プロセスの、これまでに記載された問題とは、2種の物質クラスのうちの1種のみの富化しか達成できないことにある。これらの異なる溶解度特性および結果として生じる抽出性により、これらの化合物は異なる溶媒で抽出可能であり、よって通常異なる抽出物または抽出画分に生じる、すなわちβ-グルカンは水抽出物中に生じ、フェノール系化合物は純粋なまたは水性アルコール(例えば、エタノールおよびメタノール)または水性アセトン抽出物中に生じる。さらに、これらはエンバク穀粒中に非常に異なる濃度範囲で存在する、すなわち、それぞれAvnsの平均全含有量は約0.0002~0.07%であり、β-グルカンの平均全含有量は約2.2~7.8%である。
【0014】
両方の物質クラスが極めて興味深い生物学的利益、例えば、抗酸化性および抗炎症性活性を示すため、穀物抽出物のより強力なおよび顕著な全体的活性が、両種類の化合物を同時に含有する抽出物または抽出画分から得られることを予想することができる。
【0015】
EP1185241A2およびEP1522304A2は、1~1500百万分率(ppm)のAvnsを有するAvn富化エンバク抽出物の調製について記載しており、このエンバク抽出物は、オートミールを、50%水性エタノールで、40℃で30分間抽出し、1Nの塩酸を使用してpHを2.5(実施例1)または3.5(実施例2)に調節し、エタノールを加え、これに続いて10分子量未満のカットオフ値(MWCO、実施例1)または5000MWCO(実施例2)の膜を介した膜濾過により、抽出物を浄化することにより得られる。得られた、Avn富化抽出物は、0.01重量%未満のβ-グルカンを含有する。よって、分子量35~3100kDaを有するエンバクβ-グルカン[Siurekら、Food Science and Technology International、2012、18巻(6号)、559~568ページ]は、記載されているカットオフ値で、膜濾過により除去される。
【0016】
Renら、Journal of Agricultural and Food Chemistry、2011、59巻、206~211ページは、Chinese Academy of Agricultural Sciences(Beijing、China)により提供されたハダカエンバクからの、Avn富化抽出物(ARE)の調製について記載している。乾燥および洗浄したエンバクをミルで処理して、エンバクふすま画分を得た。エンバクふすま試料は固体液体比1:8のエタノール/水/酢酸(80:20:0.1v/v/v)で、40℃で2時間抽出し、次いで1250gで10分間遠心分離した。上澄み液を濾過し、同じ溶媒を使用して固体の残渣を40℃で2回さらに抽出した。3種の抽出した上澄み液のすべてをプールし、濃縮し、次いでAB-8樹脂上に充填した。0.1%酢酸を使用して、AB-8樹脂を洗浄し、続いて95%エタノールを使用して、吸収されたAvnsをカラムから溶出した。エタノール画分をスプレーし、分析用またはクロマトグラフィーの等級純度の標準物質を使用して、生成したARE粉末をHPLCで分析した。3種の主要なAvns、すなわちAvn C(=Bc)、Avn A(=Bp)、およびAvn B(=Bf)は、6.07%、4.37%および5.36%の割合をそれぞれ占めた。β-グルカンは、水またはアルカリ性水溶液で抽出可能であるため、得られたAvn富化抽出物(ARE)は、かなりの含有量のβ-グルカンを同時に含有するとは予想できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の主要な目標は、両方の物質クラスの存在により、改善された有益な生物学的活性および特性を有するAvnsおよびβ-グルカンを含む新規組成物またはエンバク抽出物を提供すること、ならびにエンバクAvnsおよびβ-グルカンが同時に富化されることを可能にし、よって、両方の物質クラスが1つの抽出画分内に存在することにより、改善された有益な生物学的活性および特性を有する抽出画分を提供することを可能にする新規プロセスを提供することである。理想的には、得られる抽出画分は両方の物質クラスをほぼ等しい濃度範囲で含有する。得られる抽出画分はまた、化粧品としてまたは薬学的に認められた液体もしくは固体担体または食品もしくは栄養補助食品における使用と相容性のある溶媒および担体を使用することにより、使用および投与が簡単な、安定した、簡単に貯蔵可能な液体または固体形態で提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような方式で富化されたエンバクAvnsおよびβ-グルカンは、特定の抽出プロセス、これに続く適切な吸着樹脂を使用した吸着脱着ステップにより得ることができることが驚くことに発見された。
【0019】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体、少なくとも1種のβ-グルカンおよび塩を含むまたはこれらからなる組成物またはエンバク抽出物であって、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、
- 少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体の、少なくとも1種のβ-グルカンまたは全β-グルカンに対する重量比が、1:4~4:1、特に1:3~3:1であり、
- 塩の含有量が1.0重量%以下、特に0.5重量%以下である、
組成物またはエンバク抽出物に関する。
【0020】
第2の態様では、本発明は、エンバク抽出物を調製するための方法であって、
(1)エンバク供給源を準備するステップ;
(2)少なくとも1種の抽出溶媒(抽出剤)を使用して温度30~80℃でエンバク供給源を抽出して、抽出混合物または懸濁液を得るステップ;
(3)抽出された不溶性エンバク供給源を抽出混合物または懸濁液から除去して、抽出液を得るステップ;
(4)有機抽出溶媒を抽出液から除去して、水性抽出液を得るステップ;
(5)吸着剤を準備し、コンディショニングし、吸着剤を吸着装置の中に提供するステップ;
(6)水性抽出液を、吸着装置内の吸着剤に通して、水性抽出液の成分を吸着させるステップ;
(7)少なくとも1種の溶出溶媒を使用して、水性抽出液の吸着成分を吸着剤から溶出して、溶出物を得るステップ;および
(8)任意選択で溶出溶媒を溶出物から除去して、エンバク抽出画分を得るステップ
を含む方法に関する。
【0021】
第3の態様では、本発明は、本発明による方法を使用して得ることが可能なエンバク抽出物に関する。
【0022】
第4の態様では、本発明は、スキンケア、頭皮ケア、ヘアケア、ネイルケアのための皮膚科用化粧品として、または皮膚状態、我慢できないおよび敏感肌、皮膚刺激、皮膚発赤、膨疹、掻痒症(痒み)、皮膚の老化、しわの形成、皮膚体積の減少、肌の弾力の喪失、色素斑、色素異常、または乾燥肌、すなわち皮膚の保湿を必要とする乾燥肌の予防および/もしくは処置における、本発明による組成物またはエンバク抽出物の使用に関する。
【0023】
第5の態様では、本発明は、医薬としての使用、特に皮膚疾患または角質疾患、特にバリアに関連した、炎症性、免疫アレルギー性、アテローム生成性、乾燥性もしくは過剰増殖性の構成成分を有する皮膚疾患もしくは角質疾患の予防および/もしくは処置における、またはROS生成の増加に伴う皮膚疾患の予防および/もしくは処置における、または心血管疾患、アレルギー反応、冠動脈心疾患の予防および/もしくは処置における、血清中のLDLコレステロールおよび脂質のレベルを低減させるための、血圧を減少させるための、インスリン感受性を改善するための、ならびに血糖値の制御を可能にするための、使用のための、本発明による組成物またはエンバク抽出物に関する。
【0024】
第6の態様では、本発明は、食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物を調製するための、本発明による組成物またはエンバク抽出物の使用に関する。
【0025】
最後に、本発明は、本発明による組成物またはエンバク抽出物を含む、食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】マルトデキストリンDE17~20と組み合わせた、スプレー乾燥させたエンバク抽出画分の粒径分布を示す図である。
【0027】
図2】マルトデキストリンDE8と組み合わせた、スプレー乾燥させたエンバク抽出画分の粒径分布を示す図である。
【0028】
図3】実施例7の乾燥させたエタノール溶出物のHPLCクロマトグラムである。
【0029】
図4】WO2004/047833A1の実施例14によるエンバクわら抽出物の乾燥メタノール/水溶出物のHPLCクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は添付の特許請求の範囲において特定されている。しかし、本発明それ自体、およびその好ましい変化形、他の目的および利点はまた、添付の実施例および図と併せて以下の詳細な説明からも明らかとなる。
【0031】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体、少なくとも1種のβ-グルカンおよび塩を含むまたはこれらからなる組成物またはエンバク抽出物であって、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、
- 少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体の、少なくとも1種のβ-グルカンまたは全β-グルカンに対する重量比が1:4~4:1、特に1:3~3:1の範囲であり、
- 塩の含有量が1重量%以下、特に0.5重量%以下である、
組成物またはエンバク抽出物に関する。
【0032】
本発明による組成物またはエンバク抽出物は、少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体および少なくとも1種のβ-グルカンをその主要成分として含むまたはこれらからなる。
【0033】
「少なくとも1つの」という句は、本記録に使用されている場合、組成物またはエンバク抽出物が、例えば、1つのアベナンスラミドもしくは1つより多くのアベナンスラミドのいずれかを含むことができる、または例えば、1つのβ-グルカンもしくは1つより多くのβ-グルカンのいずれかを含むことができることを意味する。さらに、「少なくとも1つの」という句は、リストに適用された場合、リストの中で特定された項目の任意の組合せを意味する。
【0034】
本発明の第1の態様による組成物は、以下にさらに詳細に記載されている特定された成分を組み合わせることにより調製される。
【0035】
本発明の第1の態様による抽出物はエンバクから調製される。エンバクの2つの主要な種はAvena sativa L.およびAvena nuda L.(同義語としてGilletおよびMagneによるAvena sativa subsp.nuda(L.)およびKoernによるAvena sativa var.nuda(L.)が挙げられる)。A.sativaはエンバク(common oat)または殻付きエンバクとしても公知である。A.nudaは、殻は収穫物が収集された時点で除去されるので、ハダカエンバクまたは皮を取ったエンバクとして公知である。エンバクは、処理して、エンバク穀粒、殻およびトリコームを含む構成物質画分へと分離することができる。好ましい変化形では、エンバク抽出物のための出発原料は、Avena sativa種もしくはAvena nuda種の粉砕されたもしくは粉砕されていない穀粒またはエンバクわらである。
【0036】
本発明の文脈内で、「エンバク抽出物」という用語は、一般的に、エンバクから得られる化合物または化合物の混合物を包含することが意図されている。抽出物は、任意のエンバク種、新鮮なもしくは乾燥した、またはその部分、例えば、穀粒、殻、トリコームまたはエンバクわらから抽出により得ることができる。抽出溶媒の組成を改変することにより、抽出物の組成を変え、これによって、その生物学的活性を増強または減少させることができる。米国特許第5,169,660号を結果としてもたらしたコリンズによる研究は、アベナンスラミドが自然に生じ、エンバク穀粒から抽出することができることを初めて示すことができた。
【0037】
本発明の文脈内で、「アベナンスラミド」(アントラニル酸アミド)という用語は、主にエンバク(Avena sativa)に見出されるが、モンシロチョウの卵(Pieris brassicaeおよびP.rapae)および菌類に感染したカーネーション(Dianthus caryophyllus)にも存在するフェノール系アルカロイドの群のメンバーを意味すると考えられている。
【0038】
本発明の組成物中のアベナンスラミドは、天然の供給源、例えば、穀粒から単離および精製することができ、アベナンスラミドは末梢領域または殻またはわらに最も高濃度であるように見える。50種より多くの明確に異なるアベナンスラミドがエンバク穀粒から単離されている[Collins、Journal of Agricultural and Food Chemistry、37巻(1989)、60~66ページ]。
【0039】
Avnsは以下の一般式1で表すことができる:
【化1】
【0040】
以下の表1は、一般式1に基づく自然発生の単離したおよび/または合成したAvnsの例を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
エンバク中の最も豊富なアベナンスラミドは、アベナンスラミドA(2p、AF-1またはBpとも呼ばれる)、アベナンスラミドB(2f、AF-2またはBfとも呼ばれる)、アベナンスラミドC(2c、AF-6またはBcとも呼ばれる)、アベナンスラミドL(非コリンズ略語;CAS番号172549-38-1)(アベナンスラミドO(コリンズ略語)または2pdとも呼ばれる)、アベナンスラミドP(2fdとも呼ばれる)およびアベナンスラミドQ(2cdとも呼ばれる)である。いくつかの研究は、これら天然産物が抗炎症性、抗酸化性、抗痒み、抗刺激性および抗アテローム生成の活性を有することを実証している。
【0043】
代わりに、天然供給源から単離した、自然に生じるアベナンスラミド化合物はまた、有機合成により生成することもできる。当技術分野で公知の合成の方法が、例えば米国特許第6,096,770号および米国特許第6,127,392号、日本特許第J60019754号およびハンガリー特許第HU200996B号に例示されている。
【0044】
前記調製した合成アベナンスラミド物質は、エンバクから抽出した対応する自然発生のアベナンスラミド化合物と同一である。
【0045】
本発明の組成物における非自然発生のアベナンスラミド類似体は、以下の式2:
【化2】

(式中、m=0、1、2または3であり、p=0、1または2であり、n=0、1または2であり、
ただし、n=1または2である場合、p+m>0であり、
n=1または2である場合、RおよびRは、それぞれの対において、それぞれHを表すか、または別の化学結合を一緒に表し(例えば、ケイ皮酸誘導体などとして)、
m=1、2または3である場合、各Xは、独立して、OH、OアルキルまたはOアシルを表し、
p=1または2である場合、各Yは、独立して、OH、OアルキルまたはOアシルを表し、
p+m>0である場合、XおよびYのうちの少なくとも1つはOHおよびOアシルからなる群から選択されることを条件とし、
は、-Hまたはアルキル(特に-CH、または2~30個のC原子を有する他の直鎖もしくは分枝のアルキル鎖であり、この文脈において、Rはまた対応する薬学的に許容される塩に対して-Hでもある)
によるものであり、重要な生物学的特性を有しており、例えば、WO2004/047833A1またはWO2007/062957A1に付与された有機合成方法で人為的に生成されている。
【0046】
本発明による式2の特に好ましい化合物は、
n=1または2であり、p+m>0であり、および/または
p+m>0であり、XまたはY、XおよびYのうちの少なくとも1つはOHおよびOアルキルからなる群から選択される化合物である。
【0047】
特に好ましくは、n=1であり、p+m>2であり、ただし、XおよびYのうちの少なくとも2つはOHおよびOアルキルを含む群から一緒に選択されることを条件とする式2の化合物が使用される。
【0048】
n=1であり、m=1、2または3であり、ただし、少なくとも1つのXがOHおよびOアルキルを含む群から選択され、ならびに/またはP=1もしくは2であることを条件とし、少なくとも1つのYがOHおよびOアルキルを含む群から選択されることを条件とする式2の化合物を使用することもまた好ましい。
【0049】
nが値1を有する場合、RおよびRはそれぞれ好ましくはHであり、ただし、RおよびRが一緒になって別の化学結合となることもまた可能である。
【0050】
式2およびWO2004/047833A1またはWO2007/062957A1に開示された特定のアベナンスラミド化合物の定義に関して、前記文献における対応する開示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0051】
式2のアベナンスラミド類似体化合物は好ましくは、
【化3-1】

【化3-2】

【化3-3】

【化3-4】

からなる群から選択される。
【0052】
上記例示は、n=1である式2の化合物に本質的に関する。
【0053】
しかし、n=0である式2の化合物の使用もまた多くの場合好ましく、この場合、m+p=0であるか、またはm+p>1もしくは2であり、ただし、置換基XおよびYのうちの少なくとも2つはOHおよびOアルキルを含む群から選択されることを条件とすることが好ましい。
【0054】
【化4-1】

【化4-2】

【化4-3】

を含む群から選択される式2(n=0)の化合物を使用することが特に好ましい。
【0055】
特に好ましいと記載され、これらの構造式で示された化合物において、Rは常にHである。
【0056】
これらの好ましい化合物の代わりに、各事例において、RがCHであるか、または2~30個のC原子を有する直鎖もしくは分枝のアルキルである対応する化合物を使用することもまた好ましい。
【0057】
上記アベナンスラミド類似体化合物から、化合物番号8(ジヒドロアベナンスラミドD)および番号27が特に好ましい。
【0058】
上記自然発生のアベナンスラミドおよび非自然発生のアベナンスラミド類似体に加えて、N-(4’-ヒドロキシシンナモイル)-3-ヒドロキシアントラニル酸(YAvn I)およびN-(3’-4’-ジヒドロキシシンナモイル)-3-ヒドロキシアントラニル酸(YAvn II)を含めて、組換え酵母中に新規のアベナンスラミド類似体が生成され、これらは、フェノール系エステルの生合成に関与している主要タンパク質をコードしている2種の植物遺伝子(タバコ由来の4cl-2およびアーティチョーク由来のhct)を用いてSaccharomyces cerevisiae株をエンジニアリングすることにより生成された。注目すべきことに、YAvn IおよびYAvn IIはAvn AおよびAvn Cと構造的類似点をそれぞれ共有する。
【0059】
本発明の文脈で、自然供給源から得た自然発生のアベナンスラミドまたは合成的に生成された自然発生のアベナンスラミドが好ましく、同様に使用される。
【0060】
「アベナンスラミドまたはその類似体」という用語は、存在するこれらの様々な異性体、とりわけ自然発生のtrans-異性体ならびにcis-異性体、例えば、光曝露による光異性化で誘発された、cis-異性化二重結合(n=1を有する式1または2)または1、もしくは2つのcis-異性化二重結合(n=2を有する式1または2)を有するアベナンスラミドなども含むことを意図する。
【0061】
特に、本発明の文脈内で、アベナンスラミドは、一般式1で表され、表1で定義されたアベナンスラミド化合物のうちのいずれか1種であり、またはその任意の異性体もしくはアベナンスラミド類似体は、上に記載されているような一般式2およびその定義で表されるアベナンスラミド類似体化合物もしくはその任意の異性体のうちのいずれか1種である。
【0062】
第1の態様による本発明の好ましい変化形では、組成物は、アベナンスラミドA、B、C、G、H、K、LおよびRからなる群から選択される少なくとも1種のアベナンスラミドを含む。
【0063】
別の変化形では、本発明の組成物は、アベナンスラミドA、B、C、G、H、K、L(非コリンズ略語;CAS番号172549-38-1)(アベナンスラミドO(コリンズ略語)または2pdとも呼ばれる)およびRからなる群から選択される2種、3種、4種またはさらにこれよりも多くの異なるアベナンスラミドの混合物を含む。アベナンスラミドの混合物または組合せは、よってアベナンスラミドの以下の組合せのうちのいずれか1つを含むことができる:A/B;A/C;A/G;A/H;A/K;A/L;A/R;B/C;B/G;B/H;B/K;B/L;B/R;C/G;C/H;C/K;C/L;C/R;G/H;G/K;G/L;G/R;H/K;H/L;H/R;K/L;K/R;L/R;A/B/C;A/B/G;A/B/H;A/B/K;A/B/L;A/B/R;A/C/G;A/C/H;A/C/K;A/C/L;A/C/R;A/G/H;A/G/K;A/G/L;A/G/R;A/H/K;A/H/L;A/H/R;A/K/L;A/K/R;A/L/R;B/C/G;B/C/H;B/C/K、B/C/L;B/C/R;C/G/H;C/G/K、C/G/L;C/G/R、G/H/K;G/H/L;G/H/R;H/K/L、H/K/R;K/L/R;A/B/C/G;A/B/C/H;A/B/C/K;A/B/C/L;A/B/C/R;A/C/G/H;A/C/G/K;A/C/G/L;A/C/G/R;A/G/H/K;A/G/H/L;A/G/H/R;A/H/K/L;A/H/K/R;A/K/L/R;B/C/G/H;B/C/G/K;B/C/G/L;B/C/G/R;C/G/H/K;C/G/H/L;C/G/H/R;G/H/K/L;G/H/K/RおよびH/K/L/R。
【0064】
しかし、アベナンスラミドの最も好ましい混合物はA/B、A/C、B/CおよびA/B/Cである。
【0065】
上記アベナンスラミド化合物またはアベナンスラミド組合せに加えて、組成物は、アベナンスラミドA、B、C、G、H、K、L(非コリンズ略語;CAS番号172549-38-1)(アベナンスラミドO(コリンズ略語)または2pdとも呼ばれる)およびR以外の1種または複数のアベナンスラミド、例えば、アベナンスラミドD、E、FU、X、Y(2とも呼ばれる)、AA、CCもしくはOOまたは表1に特定された残りのアベナンスラミド化合物のうちのいずれかをさらに含むことができる。
【0066】
以下に詳細に記載されている方法により得られる、本発明の第1の態様によるエンバク抽出物は、アベナンスラミドA、B、C、G、H、K、L(非コリンズ略語;CAS番号172549-38-1)(O(コリンズ略語)または2pdとも呼ばれる)およびRからなる群から選択される少なくとも1種のアベナンスラミドを含む。
【0067】
別の変化形では、エンバク抽出物は、アベナンスラミドA、B、C、F、G、H、L(非コリンズ略語;CAS番号172549-38-1)(O(コリンズ略語)または2pdとも呼ばれる)およびRからなる群から選択される2種、3種、4種またはさらにこれよりも多くの異なるアベナンスラミドの混合物を含む。よって、アベナンスラミドの混合物または組合せは、アベナンスラミドの以下の組合せのうちのいずれかを含むことができる:A/B;A/C;A/G;A/H;A/K;A/L;A/R;B/C;B/G;B/H;B/K;B/L;B/R;C/G;C/H;C/K;C/L;C/R;G/H;G/K;G/L;G/R;H/K;H/L;H/R;K/L;K/R;L/R;A/B/C;A/B/G;A/B/H;A/B/K;A/B/L;A/B/R;A/C/G;A/C/H;A/C/K;A/C/L;A/C/R;A/G/H;A/G/K;A/G/L;A/G/R;A/H/K;A/H/L;A/H/R;A/K/L;A/K/R;A/L/R;B/C/G;B/C/H;B/C/K、B/C/L;B/C/R;C/G/H;C/G/K、C/G/L;C/G/R、G/H/K;G/H/L;G/H/R;H/K/L、H/K/R;K/L/R;A/B/C/G;A/B/C/H;A/B/C/K;A/B/C/L;A/B/C/R;A/C/G/H;A/C/G/K;A/C/G/L;A/C/G/R;A/G/H/K;A/G/H/L;A/G/H/R;A/H/K/L;A/H/K/R;A/K/L/R;B/C/G/H;B/C/G/K;B/C/G/L;B/C/G/R;C/G/H/K;C/G/H/L;C/G/H/R;G/H/K/L;G/H/K/RおよびH/K/L/R。
【0068】
しかし、エンバク抽出物中のアベナンスラミドの最も好ましい混合物はA/B、A/C、B/CおよびA/B/Cである。
【0069】
上記アベナンスラミド化合物またはアベナンスラミド組合せに加えて、エンバク抽出物は、エンバクにおいて自然に生じる、アベナンスラミドA、B、C、G、H、K、L(非コリンズ略語;CAS番号172549-38-1)(O(コリンズ略語)または2pdとも呼ばれる)およびR以外の1種または複数のアベナンスラミド、例えば、アベナンスラミドD、E、FU、X、Y(2とも呼ばれる)、AA、CCまたはOOまたは表1に特定された残りのアベナンスラミド化合物のうちのいずれかをさらに含むことができる。
【0070】
上に記載されているような少なくとも1種のアベナンスラミドまたはアベナンスラミドの混合物は、組成物またはエンバク抽出物中に、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、0.5~7.0重量%の濃度または総量で存在し得る。好ましい変化形では、組成物またはエンバク抽出物は、少なくとも1種のアベナンスラミドまたはアベナンスラミドの混合物を、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、1.0~6.5重量%の濃度または総量で、さらにより好ましくは、2.0~5.0重量%の濃度または総量で含む。
【0071】
好ましい変化形では、組成物またはエンバク抽出物中のアベナンスラミドの総量は、アベナンスラミドA、BおよびCの総量より1.1~2.5倍高く、さらにより好ましくはアベナンスラミドの総量はアベナンスラミドA、BおよびCの総量より1.3~2.0倍高い。
【0072】
組成物またはエンバク抽出物は、少なくとも1種のβ-グルカン化合物をさらに含む。β-グルカンはβ-グルカンと一般的に名付けられ、穀物、細菌および真菌の細胞壁に自然に生じ、供給源に応じて有意に異なる生理化学的特性を示す高分子β-D-グルコース多糖のグループである。穀物(エンバクおよびオオムギ)においてβ-グルカンは混合結合(1→3)(1→4)-β-D-グルコース単位で構成され、その一方でマッシュルームおよび酵母においてβ-グルカンは、(1→3)(1→6)-β-D-グルコース単位の混合結合で構成される。
【0073】
β-グルカンは、D-グルコピラノース単位を2、3または4つごとに、1つのβ-(1→3)グリコシドの結合/連結で分離するβ-(1→4)グリコシド結合/連結により連結されたD-グルコピラノース残基からなる。3つおよび4つのグルコース残基からなるセルロース様断片はそれぞれDP3およびDP4と名付けられている。
【0074】
エンバク可溶性繊維の主成分は、直鎖状の多糖(1→3)、(1→4)-β-D-グルカンであり、普通β-グルカンと呼ばれる。これらグルカンは、分子量35~3100kDA、DP3値54.2~60.9、DP4値33.8~36.7およびDP3/DP4比1.5~2.3を有する[Siurekら、Food Science and Technology International、2012、18巻(6号)、559~568ページ]。
【0075】
本発明の文脈内で、少なくともβ-グルカンは、混合したβ-(1→3)-β-(1→4)-連結したグルコピラノシル骨格を有するグルカンから選択され、異なる分子量を有し、これらは好ましくは穀物供給源から誘導され、さらにより好ましくはエンバク供給源から誘導される。
【0076】
β-グルカンは、冠動脈心疾患の発症を減少させる、血清中のLDLコレステロールおよび脂質のレベルを低減させる、血圧を減少させる、インスリン感受性を改善する、ならびに血糖値の制御を可能にする、ならびに抗酸化性および抗炎症性活性などの多くの利益を有することが公知である。
【0077】
本発明による組成物またはエンバク抽出物中に存在するβ-グルカンの量は、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、1.0~3.3重量%の間であることができる。好ましい変化形では、少なくとも1種のβ-グルカンまたは全β-グルカンの濃度は、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、1.5~2.8重量%であり、さらにより好ましくは、1.7~2.6重量%である。
【0078】
組成物またはエンバク抽出物中の少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体および少なくともβ-グルカンまたは全β-グルカンの濃度は、少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体の、少なくとも1種のβ-グルカンまたは全β-グルカンに対する重量比が1:4~4:1の範囲となるような方式で選択または調節される。好ましい変化形では、組成物またはエンバク抽出物は、少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体および少なくともβ-グルカンまたは全β-グルカンを、1:3~3:1の範囲、より好ましくは1:2~2:1の範囲およびさらにこれよりも好ましくは1:1.5~1.5:1の範囲の重量比で含む。最も好ましい組成物またはエンバク抽出物は、少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体の、少なくとも1種のβ-グルカンまたは全β-グルカンに対する濃度がほとんど等しい、すなわち1:1の比である組成物またはエンバク抽出物である。
【0079】
本発明の第1の態様による組成物またはエンバク抽出物は、非常に低い塩含有量、すなわち、従来の技術のアベナンスラミド/β-グルカン組成物またはエンバク抽出物と比較した場合、組成物またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、塩含有量1.0重量%以下を特徴とする。塩含有量は、好ましくはNa、K、Mg2+、Ca2+、Cl、SO 2-およびPO 3-からなる群から選択されるカチオンおよびアニオンで主に構成される。好ましい変化形では、組成物またはエンバク抽出物中の塩含有量は、さらにより低く、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、0.5重量%以下、さらにより好ましくは、0.25重量%以下である。
【0080】
このような低い塩含有量は有利である。一方では、水中油型(o/w)乳剤は最も人気のある種類の市販のパーソナルケア乳剤である。このような乳剤では、外相は、水および水溶性構成成分を含む水性であり、内相は、油および油溶性構成成分を含む。溶液中の高濃度のイオン化材料(カチオンおよびアニオン)は、乳剤境界面を不安定にする可能性がある。したがって、塩含有量を低下させることは、乳剤安定性に有益であると考えることができる。他方では、金属イオンは、例えば、パーソナルケア製品で使用されている成分の分解を触媒することができるため、これらは化学的プロセスおよび多くの製品の性能に強力な影響を有する。したがって、金属カチオンの含有量の低下は、製品および成分の安定性に有益であると考えることができる。
【0081】
本発明の第1の態様による組成物またはエンバク抽出物は、遊離アミノ酸の比較的低い含有量をさらに特徴とする。遊離アミノ酸の全含有量は、0.5~1.5重量%、好ましくは0.5~1.0重量%、より好ましくは0.6~0.9重量%の範囲である。組成物またはエンバク抽出物のアミノ酸画分において、フェニルアラニンおよびトリプトファンは最も主要なアミノ酸である。
【0082】
L-フェニルアラニンおよびトリプトファンは必須α-アミノ酸であり、これは、L-フェニルアラニンおよびトリプトファンがヒトおよび他の動物の体内で新規に合成することができず、栄養素を介して取得しなければならないことを意味する。
【0083】
L-フェニルアラニンは、チロシンに対する天然の前駆体であり、モノアミン神経伝達物質カテコールアミンドーパミン、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、およびエピネフリン(アドレナリン)へとまたは皮膚色素メラニンへとさらに変換される。ヒト表皮は全部のカテコールアミン生合成に対する能力を有する。カテコールアミンの生合成は、L-フェニルアラニンから合成されるL-チロシンの入手の可能性に依存する。
【0084】
L-フェニルアラニンは、食物製品(例えば、卵、ニワトリ、肝臓、牛肉、ミルク、チーズ、ダイズ)または栄養補給剤(例えばアスパルテーム)と共に導入することができ、大腸菌(Escherichia coli.)を使用することにより工業的に生産されている。L-フェニルアラニンは、異なる疾患(例えば、うつ病、注意欠陥-多動性障害、パーキンソン病、慢性疼痛、骨関節炎、関節リウマチ)の処置のための薬に広く使用されている。
【0085】
正常な成長のために必要とされるトリプトファンは、タンパク質の合成に使用され、ニコチンアミド(ビタミンB6)、セロトニン、メラトニン、トリプタミン、キヌレニン、3-ヒドロキシキヌレニン、およびキノリン酸およびキサンツレン酸を含むいくつかの生理活性化合物のためのin vivo前駆体としての機能を果たす。
【0086】
第1の態様による本発明の別の好ましい変化形では、組成物またはエンバク抽出物は、組成物の乾燥重量またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、
- 0.5~7.0重量%、好ましくは1.0~6.5重量%の全アベナンスラミド、好ましくはアベナンスラミドA、BおよびC;
- 1.0~3.3重量%、好ましくは1.5~2.8重量%の全β-グルカン;
- 1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の塩;
- 0.5~1.5重量%、好ましくは0.6~0.9重量%の全遊離アミノ酸;
- 0.05重量%超、好ましくは0.075重量%超のフェニルアラニン;および
- 0.25重量%超、好ましくは0.3重量%超のトリプトファン
を含むまたはこれらからなる。
【0087】
本発明の第1の態様による組成物またはエンバク抽出物は、上に記載されているように、以下の実施例4において実証されたように、ラジカルスカベンジング活性の手段により優れた抗酸化能を示し、これによって組成物またはエンバク抽出物は抗酸化剤として有益となる。本発明による組成物またはエンバク抽出物は、ABTSアッセイを使用して決定した場合、少なくとも70%またはさらにこれよりも多くのラジカルスカベンジング活性を有する。本発明の好ましい変化形では、本発明による組成物またはエンバク抽出物は、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%のラジカルスカベンジング活性を有する。
【0088】
「抗酸化性」という用語は、本文書において使用される場合、被酸化性基質分子(例えば、被酸化性生物学的分子または被酸化性指標)を含有する混合物または構造中に存在する場合、被酸化性基質分子の酸化を有意に遅らせる、阻止するまたは阻害さえする物質または組成物を指す。抗酸化剤は、生物学的に重要な反応性フリーラジカルまたは他の反応性酸素種(例えば、O2-、H、HOCl、フェリル、ペルオキシル、ペルオキシ亜硝酸およびアルコキシル種)をスカベンジングすることにより、またはこれらの形成を阻止することにより、またはフリーラジカルもしくは他の反応性酸素種を反応性の低い種に触媒作用により変換することによって、作用することができる。
【0089】
アベナンスラミドおよびβ-グルカンが富化された、理想的には2種の物質をほとんど等しい濃度で有する組成物またはエンバク抽出物は、両方の物質の存在により、改善された有益な生物学的活性および特性、例えば、抗酸化能を示す。組成物またはエンバク抽出物は、以下の実施例において実証されているように、化粧品としてまたは薬学的に認められた液体または固体担体を使用することにより、安定した(すなわち酸化安定性および光安定性を示す)使用および投与が簡単である、簡単に貯蔵可能な液体または固体形態で提供することができる。
【0090】
第2の態様では、本発明は、エンバク抽出物を調製するための方法であって、
(1)エンバク供給源を準備するステップ;
(2)少なくとも1種の抽出溶媒を使用して温度30~80℃でエンバク供給源を抽出して、抽出混合物または懸濁液を得るステップ;
(3)抽出された不溶性エンバク供給源を抽出混合物または懸濁液から除去して、抽出液を得るステップ;
(4)有機抽出溶媒を抽出液から除去して、水性抽出液を得るステップ;
(5)吸着剤を準備し、コンディショニングし、吸着剤を吸着装置の中に提供するステップ;
(6)水性抽出液を、吸着装置内の吸着剤に通して、水性抽出液の成分を吸着させるステップ;
(7)少なくとも1種の溶出溶媒を使用して、水性抽出液の吸着成分を吸着剤から溶出して、溶出物を得るステップ;および
(8)任意選択で溶出溶媒を溶出物から除去して、エンバク抽出画分を得るステップ
を含む方法に関する。
【0091】
本発明による方法の第1ステップでは、任意のエンバク種のエンバク供給源、新鮮なもしくは乾燥した、またはその部分、例えば、穀粒、殻、トリコームまたはエンバクわらが出発原料として提供される。エンバクの2つの主要な種はAvena sativa L.およびAvena nuda L.である。(同義語としてGilletおよびMagneによるAvena sativa subsp.nuda(L.)およびKoernによるAvena sativa var.nuda(L.)が挙げられる)。A.sativaはエンバク(common oat)または殻付きエンバクとしても公知である。A.nudaは、殻は収穫物が収集された時点で除去されるので、ハダカエンバクまたは皮を取ったエンバクとして公知である。エンバクは、処理して、エンバク穀粒、殻およびトリコームを含む構成物質画分へと分離することができる。好ましい変化形では、エンバク抽出物のための出発原料は、Avena sativa種もしくはAvena nuda種の粉砕されたもしくは粉砕されていない穀粒またはエンバクわらである。
【0092】
全穀粒、すなわち粉砕されていない穀粒から得られる抽出物は、粉砕された穀粒から得られる抽出物より高いアベナンスラミドA~Cの全含有量を含有することを結果が示している。対照的に、粉砕された穀粒からの抽出物のβ-グルカン含有量は、全穀粒、すなわち粉砕されていない穀粒からの抽出物より高い。
【0093】
第2のステップでは、少なくとも1種の抽出溶媒(抽出剤)を使用して、上記に記載されているエンバク供給源のいずれか1種が抽出されて、抽出混合物または懸濁液が得られる。抽出は好ましくは撹拌しながらまたは振盪機を使用することにより実施される。
【0094】
エンバク供給源を有利に抽出し、アベナンスラミドおよびβ-グルカンを富化するための抽出溶媒(抽出剤)は、水と有機溶媒の混合物からなる群から選択され、有機溶媒は、好ましくは食料品または化粧品または薬学的調製物に適した溶媒である。言うまでもなく、このような溶媒は、食品、化粧品または薬学的調製物の調製に適切であり、適合しなくてはならない。
【0095】
より好ましい変化形では、抽出溶媒は水とアルコールまたはアセトンの混合物を含む。アルコールは、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールおよびこれらの混合物、すなわち組合せからなる群から選択される。本発明の抽出ステップに対して最も好ましい抽出溶媒(抽出剤)は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールもしくはアセトンまたは前記溶媒の任意の混合物のそれぞれの組合せであり、それぞれは水との混合物である。水はβ-グルカンを抽出しないので、抽出溶媒としての純水の使用は良くない。純粋な有機溶媒の使用もまた、トリグリセリドの同時抽出により有利ではない。
【0096】
抽出溶媒中の、水の、有機溶媒に対する混合比、好ましくは水のアルコールに対する混合比または水のアセトンに対する混合比は、いずれの場合も、生成した抽出溶媒に対して、10:90~90:10(v/v)の範囲であり、好ましくは20:80~80:20(v/v)の範囲であり、最も好ましくは30:70~70:30(v/v)の範囲である。
【0097】
特に好ましい抽出溶媒(抽出剤)は、メタノール/水(3:7)、メタノール/水(1:1)、メタノール/水(7:3)、エタノール/水(3:7)、エタノール/水(1:1)、エタノール/水(1:4)、エタノール/水(7:3)、イソプロパノール/水(3:7)、イソプロパノール/水(1:1)、イソプロパノール/水(7:3)、アセトン/水(3:7)、アセトン/水(1:1)、アセトン/水(7:3)である。前記抽出溶媒(抽出剤)により得られるエンバク抽出物は、Avnsおよびβ-グルカンを上記に記載されている有益な比で含有する(実施例13および表20を参照されたい)。
【0098】
抽出収率を改善するため、エンバク供給源は、30~80℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは50~60℃の範囲の温度で抽出される。粉砕されたエンバク穀粒に対する抽出収率は、40~70℃の間で温度が増加すると共に増加することを結果は示している。アベナンスラミドA~Cの全含有量は40~60℃の間で並行して増加するが、次いで70℃で低減する。粉砕されたエンバクからの抽出は、50~60℃の間の温度で収率およびアベナンスラミド含有量に関して最も良い結果を生じ、したがって好ましい。粉砕されていないエンバク穀粒からの抽出は、50~60℃の温度でアベナンスラミドA~Cのより高い含有量をもたらす。
【0099】
本発明による方法の任意選択のバージョンでは、抽出ステップにおいて得られる抽出混合物または懸濁液は、好ましくは室温に冷却する。
【0100】
加えて、抽出ステップは、可溶性物質をエンバク供給源から十分に長い時間、好ましくは少なくとも2時間の期間にわたり抽出することによって、有益なおよび最大の抽出物収率を得るために実施される。
【0101】
抽出プロセスを使い果たすために、抽出ステップは繰り返すことができ、抽出したエンバク供給源は、第1の抽出溶媒と同じまたは異なる組成を有する抽出溶媒を使用して、新鮮な抽出溶媒で再度抽出することができる。例えば、異なる極性を有する抽出溶媒を使用して、抽出することになる物質の範囲を広げることができる。エンバク供給源は、2回またはさらには3回でも抽出することができる。この場合、抽出ステップから生成した抽出混合物は合わせる。
【0102】
こうして得た抽出混合物または懸濁液は2つの画分を含む:(a)抽出溶媒に可溶性の抽出したエンバク物質を含有する液体画分;および(b)抽出溶媒に不溶性である抽出したエンバク供給源を含有する固体画分。
【0103】
本発明の第2の態様による方法の以下のステップでは、抽出画分の液体画分も固体画分も分離される、すなわち、抽出された不溶性エンバク供給源を抽出混合物または懸濁液から除去して、抽出液を得る。この分離ステップは、公知の方法および条件による沈降、抽出液の放出、濾過または遠心分離により実施することができる。好ましいバージョンでは、固体画分は、遠心分離および濾過により液体画分から分離される。得られる抽出液は、可溶性エンバク物質、例えば、アベナンスラミド、β-グルカン、塩およびアミノ酸を含有する。
【0104】
次のステップおよび吸着ステップの前に、抽出溶媒(抽出剤)の有機構成成分は、蒸留、好ましくは真空下で、先行するステップで得た抽出液から大部分がまたは完全に除去される。これを行うことで、水性抽出液が得られる。水性抽出液は、最大でも5%(v/v)の量で有機溶媒構成成分を含む。こうして得た水性抽出液は任意選択で、水で希釈して、抽出した物質の沈殿を阻止する。こうして得た水性抽出液は次いで以下の吸着ステップで処理する。
【0105】
本発明の第2の態様による方法の第5のステップにおいて、吸着剤が準備され、吸着装置に移される。
【0106】
本発明に従い、吸着/脱着プロセスのために普通提供される任意の適切な吸着材料(吸着剤)を本発明による方法のステップ(5)で使用することができる。
【0107】
ポリマー性吸着剤樹脂は、標的分子の精製および抽出に対して特定の特性および選択性を示し、互いに非常に異なる。ポリマー性吸着剤は規定された細孔構造および高い表面積を有する球状の合成ポリマーである。ポリマー性吸着剤は、周辺の条件、例えば、温度、pH、競合分子、溶媒などに応じて異なる方式で分子と相互作用する。合成吸着剤の疎水性は、樹脂の化学構造により制御され、標的化合物に適切な吸着剤を選択する際に最も重要な特徴である。芳香族ポリスチレン吸着剤、例えば、PuroSorb(商標)およびMacronet(登録商標)樹脂は、疎水性分子に対して強い親和性を有する。
【0108】
本発明に適切な装置は、一般的にガラスまたはステンレススチールで作製されたカラムであり、その内部容積は普通数ミリリットルから数千リットル、好ましくは1~500リットル、より好ましくは20~400リットルの範囲である。
【0109】
本発明によるカラムに使用される好ましい吸着材料(吸着剤)には、様々な架橋ポリスチレン、好ましくは、エチルビニルベンゼンとジビニルベンゼン、ビニルピロリドンとジビニルベンゼン、ビニルピリジンとジビニルベンゼン、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、アクリル酸、ジビニルベンゼンおよび脂肪族ジエンのコポリマーばかりでなく、また他のポリマー、例えば、好ましくは多環芳香族、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレン、ポリエステルおよびポリテトラフルオロエチレンなども含まれる。
【0110】
これらのうち、本発明による方法に使用される好ましい吸着剤の例には、ポリマー、例えば、塩化物形態のトリアルキルアンモニウム基を有するスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーであるLewatit(登録商標)、およびポリスチレンポリマーまたはアクリル酸エステルベースのポリマーであるAmberliteが含まれる。
【0111】
吸着剤を吸着装置に移す前に、吸着剤は好ましくは洗浄し、吸着剤の吸着能力を最適化するよう、製造元の指示に従い水中で調整する。
【0112】
本発明による方法の吸着ステップにおいて、抽出した可溶性エンバク物質を含有する水性抽出液をカラムに適用し、吸着装置内の吸着剤に通し、これによって、可溶性エンバク物質、例えば、エンバク供給源から生じたアベナンスラミドおよびβ-グルカンを吸着剤に吸着させる。
【0113】
吸着剤材料の選択性により、無機塩、例えば、Na、K、Mg2+およびCa2+カチオンおよびCl、SO 2-およびPO 3-アニオンは、吸着剤材料上に微量な程度にのみ吸着させ、カラムを通過する抽出液中に主として残留させる。
【0114】
本発明による方法における吸着ステップの別の好ましい実施形態では、水性抽出液の流速は、少なくとも吸着手順の一部の間、1~20 l/mの範囲内に調節する。この文脈内で、流速パラメーターは、吸着材料と、抽出液中の抽出されたエンバク物質との間の局所的分布係数に共同で関与する。流速は好ましくは2.5~15l/分、より好ましくは5~10l/分の範囲内である。
【0115】
本発明による方法における吸着プロセスの別の好ましい実施形態では、抽出液の温度は、少なくとも吸着手順の一部の間10~70℃の範囲である。温度パラメーターは同様に局所的分布係数に共同で関与する。20~60℃の温度範囲がより好ましく、20~50℃の温度範囲が特に好ましい。
【0116】
吸着ステップは、重力により誘発される流速で、水性抽出液をカラムに通すことにより実施される。別の好ましい実施形態では、吸着ステップは逆圧を使用して実施される。吸着装置の内側の逆圧は吸着手順の間0.1~4.0バールの範囲内にある。吸着装置の内側の逆圧は、吸着手順のステップ(5)において、吸着装置を介して抽出液がポンプで送り込まれた場合、吸着材料の抵抗により生成される圧力である。0.3~2.5バールの範囲内の逆圧が好ましく、0.8~1.5バールの範囲が特に好ましい。
【0117】
本発明の第2の態様による方法の以下のステップでは、抽出液から生じた吸着物質を、少なくとも1種の溶出溶媒を使用した溶出により吸着剤から脱着して、溶出物を得る。
【0118】
吸着したエンバク物質、特に少なくとも1種のアベナンスラミドまたはその類似体および少なくともβ-グルカンを有利に脱着させるための溶出溶媒は、有機溶媒または水とのこれらの任意の混合物からなる群から選択され、有機溶媒は好ましくは食料品または化粧品または薬学的調製物に適した溶媒である。言うまでもなく、このような溶媒は、食品、化粧品または薬学的調製物の調製に対して適切であり、相容性がなくてはならない。
【0119】
有機溶出溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、アセトンまたはこれらの任意の混合物、すなわち組合せからなる群から選択される。メタノール、エタノールおよびイソプロパノールは好ましくは溶出溶媒として使用される。溶出ステップに対して最も好ましい溶出溶媒はエタノールおよびイソプロパノールである。上記有機溶出溶媒は純粋な形態または水との任意の混合物のいずれかで使用される。
【0120】
水の、有機溶媒に対する、好ましくは水の、アルコールに対する混合比は、いずれの場合も、生成した溶出溶媒に対して、10:90~90:10(v/v)の範囲、好ましくは20:80~80:20(v/v)の範囲、最も好ましくは30:70~70:30(v/v)の範囲である。
【0121】
好ましい変化形では、本発明による方法における脱着ステップは、単一の、すなわち純粋な溶出溶媒を使用して実施される。純粋エタノールの使用が最も好ましい。
【0122】
本発明による脱着ステップの1つの好ましい変化形は、1~20l/mの範囲内で調節される溶出溶媒の流速を特徴とする。この文脈内で、流速パラメーターは、吸着材料と、脱着される物質との間の局所的分布係数に共同で関与する。流速は好ましくは2.5~15l/分、より好ましくは5~10l/分の範囲内である。
【0123】
別の好ましい変化形では、本発明による方法における脱着ステップの溶出溶媒の温度は、少なくとも脱着ステップの一部の間、10~70℃の範囲である。温度パラメーターもまた吸着剤と溶出溶媒との間の局所的分布係数に共同で関与する。15~60℃の温度範囲がより好ましく、20~50℃の温度範囲が特に好ましい。
【0124】
本発明による方法における脱着ステップは、重力により誘発される流速で、溶出溶媒をカラムに通すことにより実施される。別の好ましい変化形では、脱着ステップは、脱着手順の間の0.05~2.0バールの範囲の装置内側の逆圧を特徴とする。装置内側の逆圧は、吸着装置を介して溶出溶媒がポンプで送り込まれた場合、吸着材料の抵抗により生成される圧力であり、マノメーターで示される。0.1~1.5バールの範囲内の逆圧が好ましく、0.2~1.0バールの範囲が特に好ましい。
【0125】
本発明による方法における吸着および脱着プロセスの別の好ましい実施形態に従い、吸着手順および脱着手順は同じ方向または反対方向を示すことができる。
【0126】
本発明の第2の態様による方法における脱着ステップに従い、エンバク供給源抽出液から生じた吸着および脱着物質を含有する溶出物が得られる。
【0127】
こうして得た溶出物、好ましくは、アルコール性溶出物は、それ自体、食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物の調製に使用することができる。任意選択で、溶出溶媒は、溶出物から部分的にまたは完全に除去して、濃縮または乾燥エンバク抽出画分を得ることができる。溶出溶媒は真空蒸発または蒸留で好ましくは除去される。
【0128】
本発明による方法の好ましい変化形では、カラムおよび吸着剤は、吸着ステップ(6)と脱着ステップ(7)との間に水で洗浄して、非吸収物質を吸着剤から除去し、その後の方法ステップにおいて純粋なエンバク抽出物を生成する。任意選択で、吸着装置内の過剰の水は、真空または吸着剤を介して窒素を吹き込むことにより除去する。
【0129】
本発明の第2の態様による方法は、少なくとも1種のアベナンスラミドまたはその類似体、少なくとも1種のβ-グルカンおよび塩を含むまたはこれらからなることを特徴とするエンバク抽出画分を結果として生じる。少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体の、少なくともβ-グルカンに対するまたは全β-グルカンに対する重量比は、1:4~4:1の範囲、好ましくは1:3~3:1の範囲、より好ましくは1:2~2:1の範囲、さらにこれよりも好ましくは1:1.5~1.5:1の範囲である。最も好ましいエンバク抽出物は、少なくとも1種のアベナンスラミドもしくはその類似体または全アベナンスラミドもしくはその類似体の、少なくとも1種のβ-グルカンまたは全β-グルカンに対する濃度が、ほとんど等しい、すなわち1:1であるエンバク抽出物である。エンバク抽出物の塩含有量は、組成物またはエンバク抽出物の乾燥重量に基づき、1.0重量%以下、特に0.5重量%以下である。
【0130】
驚くことに、エンバクアベナンスラミドおよびβ-グルカンが富化されたエンバク抽出物は、抽出ステップを、本発明による方法の文脈内での吸着樹脂を使用する吸着脱着ステップと組み合わせて実施することにより得ることができ、この場合アベナンスラミドおよびβ-グルカンは理想的にほとんど等しい濃度で存在する。よって、アベナンスラミドとβ-グルカンの両方の有益な生物学的活性および特性を1つの抽出画分中で組み合わせたエンバク抽出物が提供される。
【0131】
本発明の第3の態様では、本発明の第2の態様による方法を使用して得ることが可能なエンバク抽出物が提供される。その成分、好ましい変化形、特性および有益な作用に関しては、本発明の第1の態様による組成物またはエンバク抽出物の詳細な説明を参照されたい。
【0132】
以下の実施例により実証されているように、本発明による方法により得られるエンバク抽出画分は、化粧品としてまたは薬学的に認められた液体または固体担体を使用することにより、使用および投与が簡単な、安定した、簡単に貯蔵可能な液体または固体形態で提供することができる。
【0133】
別の有益な作用は、アベナンスラミドおよびβ-グルカンが富化されたエンバク抽出画分が、液体または固体担体と組み合わせてスプレー乾燥することができることである。スプレー乾燥させた固形粉末または粒状体は取扱いおよび投与が簡単であるという利点を有する。スプレー乾燥は高温への非常に短い曝露(1分未満)のみを必要とするので、非常に穏やかな乾燥技術であり、このため敏感な成分に対して特に適切である。スプレー乾燥はまた比較的安価な技術であり、これによって、乾燥物質が少ない、粘度が低い溶液の乾燥も可能となる。スプレー乾燥は、商業規模で利用可能な、十分確立された乾燥技術であり、これによって、製品パラメーターに影響を与える賦形剤、例えば、デキストリンまたはシクロデキストリン、他の加工デンプンまたはアラビアゴムの使用も可能となる。
【0134】
粒径はまた、それぞれの必要性および必要条件に応じて、例えば、スプレー床乾燥技術を使用して、例えば、凝集された粉末を生成することにより、より小さな粒子(0.07mm周辺)からより大きな粒子(0.4mm周辺まで)まで適応することもできる。これによって、自由流動性の、ほとんどダストを含まない粉末の調製を可能にする。
【0135】
アベナンスラミドおよびβ-グルカンが富化された、スプレー乾燥させたエンバク抽出画分もまた、以下の実施例により実証されているように、酸化分解に対して、および光誘発性分解に対して完全に安定している。
【0136】
本発明による組成物またはエンバク抽出物は、好ましくは、ポリオール、例えば、化粧品中成分として一般的に使用される公知の化合物である、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール(ブチレングリコール)、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールおよびグリセロールを単独でまたは水との混合物として組み合わせて使用する。実施例9において明確に示されているように、グリセロールおよび1,2-ペンタンジオールと組み合わせた、アベナンスラミドおよびβ-グルカンが富化されたエンバク抽出画分は、酸化分解に対して、および光誘発性分解に対して安定している。アベナンスラミドおよびβ-グルカンが富化されたエンバク抽出画分はまた従来の技術による抽出物より明るい色を有する。
【0137】
ほとんど等しい濃度でのアベナンスラミドとβ-グルカンの両方の存在、およびアベナンスラミドとβ-グルカンの両方の増強した抗酸化性、抗炎症性、抗痒み、抗刺激性および抗アテローム生成活性により、本発明によるアベナンスラミドおよびβ-グルカンが富化された組成物またはエンバク抽出画分は、皮膚障害の予防および処置において、皮膚科用化粧品または医薬として有利に使用することができる。20年間以上にわたり公知の、アベナンスラミドおよびβ-グルカンのこれらの抗酸化性および強いコレステロールおよびトリグリセリド低下特性により、本発明による組成物およびエンバク抽出画分はまた、ROS生成の増加に伴う皮膚疾患の予防および/もしくは処置、または心血管疾患およびアレルギー反応の予防および/または処置に有利に使用することができる。
【0138】
したがって、本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様による組成物またはエンバク抽出物の化粧品または医薬としての使用に関する。
【0139】
その改善された有益な生物学的活性および特性のため、アベナンスラミドとβ-グルカンの両方の存在により、本発明の第1の態様による組成物またはエンバク抽出物は、スキンケア、頭皮ケア、ヘアケア、ネイルケアにおいて、または皮膚状態、我慢できないおよび敏感肌、皮膚刺激、皮膚発赤、膨疹、掻痒症(痒み)、皮膚の老化、しわの形成、皮膚体積の減少、肌の弾力の喪失、色素斑、色素異常、または乾燥肌、すなわち皮膚の保湿を必要とする乾燥肌の予防および/もしくは処置に対して有益となるように適切である。
【0140】
加えて、本発明の第1の態様による組成物またはエンバク抽出物は、皮膚疾患または角質疾患、好ましくは、バリアに関連した、炎症性、免疫アレルギー性、アテローム生成性、乾燥性もしくは過剰増殖性タイプの構成成分を有する皮膚疾患もしくは角質疾患の予防および/もしくは処置における、またはROS生成の増加に伴う皮膚疾患の予防および/もしくは処置における、または心血管疾患、アレルギー反応、冠動脈心疾患の予防および/もしくは処置における、血清中のLDLコレステロールおよび脂質のレベルを低減させるための、血圧を減少させるための、ならびにインスリン感受性を改善するための、ならびに血糖値の制御を可能にするための、使用に対して有益となるように適切である。
【0141】
皮膚障害または角質障害は、湿疹、乾癬、脂漏症、皮膚炎、紅斑、掻痒症(痒み)、耳炎、炎症、刺激、線維症、扁平苔癬、ばら色粃糠疹、癜風、自己免疫性の水疱性疾患、じんま疹様、アンジオダーマル(angiodermal)およびアレルギー性皮膚反応、ならびに創傷治癒からなる群から選択され、ならびに/またはROS生成の増加に伴う皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、神経皮膚炎、乾癬、酒さ、ざ瘡様発疹、皮脂欠乏症および乾燥症からなる群から選択される。
【0142】
これらのそれぞれの目的に対する組成物またはエンバク抽出物の使用は、治療有効量の組成物またはエンバク抽出物を添加することにより物質にそれぞれの治療的活性を付与するための方法に対応する。
【0143】
本発明の文脈内で、組成物の有効量とは、利益、例えば、障害、疾患または処置される状態に伴う症状の減少を示すのに十分な各活性成分の量である。本発明の場合のように、組合せに適用された場合、この用語は、利益をもたらす組み合わせた活性成分の量を指す。
【0144】
その著しいラジカルスカベンジング活性、したがって抗酸化作用により、本発明の第1の態様による組成物またはエンバク抽出物は、食品、栄養補助食品または獣医用製品の調製に対して有益となるように適切である。
【0145】
本発明による組成物またはエンバク抽出物は、従来の食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物に簡単に組み込むことができる。
【0146】
したがって、本発明の最終態様は、本発明による組成物またはエンバク抽出物を含む、および/または本発明による方法を使用して得られる食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物に関する。本発明の好ましい変化形では、本発明による組成物またはエンバク抽出物を含む機能性食品は、上記障害を予防または回復させるための有効な成分として提供される。
【0147】
好ましい変化形では、食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物は、本発明による方法を使用して、組成物の総重量に基づき、0.0001~10重量%、より好ましくは0.0005~5重量%、最も好ましくは0.001~1重量%の量で、本発明による組成物またはエンバク抽出物を含む、または得られる。
【0148】
本文脈内で、本発明による組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物を、他の活性化合物、例えば、他の相乗的に強化する物質、例えば、以下に詳細に記載および例示されているような、抗炎症性、抗細菌性または抗真菌性物質、発赤緩和作用もしくは痒み緩和作用を有する物質、皮膚軟化剤、保湿剤および/もしくは清涼化剤および/もしくは抗酸化剤、防腐剤、(金属)キレート剤、浸透促進剤、および/もしくは化粧品として、または薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることもまた可能であり、場合によっては有利である。
【0149】
活性物質は、主要な有用性を組成物または製剤に付与する物質または化合物を意味する。このような活性物質の例として、抗酸化剤、防腐剤、(金属)キレート剤、浸透促進剤などが挙げられる。賦形剤とは、加工または製造の結果として、化粧品または医薬品を製剤化するために使用される不活性物質を指す。
【0150】
皮膚病状態または皮膚疾患は多くの場合、乾燥肌、ひっかいた皮膚、皮膚病変または炎症を伴うので、組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品および/もしくは薬学的調製物は特に有利には、皮膚保湿および/もしくは水分保持物質、清涼化剤、オスモライト、角質溶解物質、栄養物質、抗炎症性、抗細菌性もしくは抗真菌性物質ならびに/または発赤緩和作用もしくは痒み緩和作用を有する物質ならびに/または皮膚軟化剤を含有する。
【0151】
痒みは、皮膚が乾燥した場合、特定の強度と共に生じる。皮膚保湿および/または水分保持物質の使用は痒みを有意に緩和することができる。したがって、組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、1種または複数の皮膚保湿および/または水分保持物質と特に有利に組み合わせることができる。したがって、本発明による組成物もしくはエンバク抽出物または化粧品もしくは薬学的調製物はまた、以下の保湿および/または水分保持物質を有利に含有することができる:乳酸ナトリウム、ウレア、ウレア誘導体、アルコール、グリセロール、ジオール、例えば、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオールまたは前記ジオールの混合物、特に1,2-ヘキサンジオールおよび1,2-オクタンジオールの混合物、コラーゲン、エラスチンまたはヒアルロン酸、アジピン酸ジアシル、ワセリン、ウロカニン酸、レシチン、パンテノール、フィタントリオール、リコピン、(擬似)セラミド、グリコスフィンゴリピド、コレステロール、フィトステロール、キトサン、コンドロイチン硫酸、ラノリン、ラノリンエステル、アミノ酸、アルファヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)およびこれらの誘導体、単糖、二糖およびオリゴ糖、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、フルクトースおよびラクトース、ポリシュガー、例えば、R-グルカン、特にエンバク由来の1,3-1,4-β-グルカン、アルファ-ヒドロキシ脂肪酸、トリテルペン酸、例えば、ベツリン酸またはウルソル酸、ならびに藻抽出物。
【0152】
物質に応じて、使用される水分保持調整剤の濃度は、すぐに使える化粧品または医薬品最終生成物の総重量に対して、0.1~10%(m/m)の間であり、好ましくは0.5~5%(m/m)の間である。これらのデータは、特に、有利に使用されるようなジオール、例えば、ヘキシレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールおよび1,2-デカンジオール、ならびに1,2-ヘキサンジオールと1,2-オクタンジオールの混合物に適用される。
【0153】
清涼化剤の使用は痒みを緩和することができる。したがって、組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、特に有利には、1種または複数の清涼化剤と組み合わせることができる。本発明の枠組み内での使用に対して好ましい個々の清涼化剤が以下に列挙されている。当業者であれば、多くの他の清涼化剤をこのリストに加えることができる;列挙された清涼化剤は互いに組み合わせて使用することもできる:l-メントール、d-メントール、ラセミメントール、メントングリセロールアセタール(商標名:Frescolat(登録商標)MGA)、乳酸メンチル(商標名:Frescolat(登録商標)ML;乳酸メンチルは好ましくはl-乳酸メンチル、特にl-メンチルl-ラクテートである)、置換メンチル-3-カルボキサミド(例えば、メンチル-3-カルボン酸N-エチルアミド)、2-イソプロピル-N-2,3-トリメチルブタンアミド、置換シクロヘキサンカルボキサミド、3-メントキシプロパン(menthoxypropane)-1,2-ジオール、2-ヒドロキシエチルメンチルカーボネート、2-ヒドロキシプロピルメンチルカーボネート、N-アセチルグリシンメンチルエステル、イソプレゴール、ヒドロキシカルボン酸メンチルエステル(例えば、メンチル3-ヒドロキシブチレート)、コハク酸モノメンチル、2-メルカプトシクロデカノン、メンチル2-ピロリジン-5-オンカルボキシレート、2,3-ジヒドロキシ-p-メンタン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノングリセロールケタール、3-メンチル-3,6-ジ-およびトリオキサアルカノエート、3-メンチルメトキシアセテートおよびイシリン。
【0154】
これらの特定の相乗効果により好ましい清涼化剤は、l-メントール、d-メントール、ラセミメントール、メントングリセロールアセタール(商標名:Frescolat(登録商標)MGA)、乳酸メンチル(好ましくはl-乳酸メンチル、特にl-メンチルl-ラクテート(商標名:Frescolat(登録商標)ML))、置換メンチル-3-カルボキサミド(例えば、メンチル-3-カルボン酸N-エチルアミド)、2-イソプロピル-N-2,3-トリメチルブタンアミド、置換シクロヘキサンカルボキサミド、3-メトキシプロパン-1,2-ジオール、2-ヒドロキシエチルメンチルカーボネート、2-ヒドロキシプロピルメンチルカーボネートおよびイソプレゴールである。
【0155】
特に好ましい清涼化剤は、l-メントール、ラセミメントール、メントングリセロールアセタール(商標名:Frescolat(登録商標)MGA)、乳酸メンチル(好ましくはl-乳酸メンチル、特にl-メンチルl-ラクテート(商標名:Frescolat(登録商標)ML))、3-メトキシプロパン-1,2-ジオール、2-ヒドロキシエチルメンチルカーボネートおよび2-ヒドロキシプロピルメンチルカーボネートである。
【0156】
非常に特に好ましい清涼化剤は、l-メントール、メントングリセロールアセタール(商標名:Frescolat(登録商標)MGA)および乳酸メンチル(好ましくはl-乳酸メンチル、特にl-メンチルl-ラクテート(商標名:Frescolat(登録商標)ML)である。
【0157】
物質に応じて、使用される清涼化剤の濃度は、すぐに使える化粧品または医薬品最終生成物の総重量に対して、好ましくは0.01~20重量%の間、特に好ましくは0.1~5重量%の間である。
【0158】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、1種または複数のオスモライトとも一緒に使用することができる。ここで述べることができるオスモライトの例として、糖アルコール(ミオイノシトール、マンニトール、ソルビトール)、第4級アミン、例えば、タウリン、コリン、ベタイン、ベタイングリシン、エクトイン、ジグリセロールホスフェート、ホスホリルコリンまたはグリセロホスホリルコリン、アミノ酸、例えば、グルタミン、グリシン、アラニン、グルタメート、アスパルテートまたはプロリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、無機リン酸塩、および前記化合物のポリマー、例えば、タンパク質、ペプチド、ポリアミノ酸およびポリオールを含む群由来の物質が挙げられる。すべてのオスモライトは皮膚保湿作用を同時に有する。
【0159】
好ましくは、角質溶解物質もまた本発明による組成物またはエンバク抽出物と組み合わせることができる。角質溶解化合物として、アルファヒドロキシ酸の大きな群が挙げられる。例えばサリチル酸が好ましくは使用される。
【0160】
例えば、乾燥および/または痒みのある皮膚の局所的化粧品または医薬的処置のため、本発明による組成物またはエンバク抽出物を含有する化粧品または薬学的調製物において、特に高い割合の栄養物質もまた、親油性構成成分による経表皮性水の損失を減少させるために特に有利である。好ましい一実施形態では、化粧品または薬学的調製物は、1種または複数の栄養を与える動物および/または植物脂肪、ならびに油、例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、精製したダイズ油、パーム油、ゴマ油、ナタネ油、アーモンド油、ルリジサ油、マツヨイグサ油、ヤシ油、シアバター、ホホバ油、マッコウクジラ油、タロウ、牛脚油およびラード、ならびに任意選択で他の栄養を与える構成成分、例えば、8~30個のC原子を有する脂肪族アルコールを含有する。ここで使用される脂肪族アルコールは、飽和または不飽和のいずれかおよび直鎖もしくは分枝のいずれかであることができる。本発明による混合物と特に好ましく組み合わせることができる栄養物質はまた、特にセラミド、ここでは、角質層の水保持能力を著しく改善する、N-アシルスフィンゴシン(スフィンゴシンの脂肪酸アミド)またはこのような脂質の合成類似体(いわゆる擬似セラミド)を意味すると理解されているセラミド;リン脂質、例えば、ダイズレシチン、卵レシチンおよびセファリン;ならびにワセリン、パラフィン油およびシリコーン油を含み、後者は中でもジアルキル-およびアルキルアリールシロキサン、例えば、ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンならびにこれらのアルコキシ化および四級化誘導体を含む。
【0161】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、他の抗炎症性活性化合物または抗発赤および抗痒み活性を示す活性化合物を含有することができる。この文脈内で、任意の抗炎症性活性化合物ならびに発赤および痒みを緩和し、化粧品および/または皮膚病への用途において適切または慣習的である活性化合物を使用することができる。有利には、使用される抗炎症性活性化合物ならびに発赤および/または痒みを緩和する活性化合物は、コルチコステロイド種のステロイド系抗炎症性物質、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンホスフェート、メチルプレドニゾロンまたはコルチゾンであり、このリストは他のステロイド系抗炎症剤を加えることにより拡張することができる。非ステロイド抗炎症剤、例えば:オキシカム、例えば、ピロキシカムまたはテノキシカム;サリチレート、例えば、アスピリン、Disalcid(登録商標)、Solprin(登録商標)またはフェンドサル;酢酸誘導体、例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチンまたはクリンダナク;フェナム酸、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸またはニフルム酸;プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン;またはピラゾール、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン、フェブラゾンまたはアザプロパゾンもまた使用することができる。代わりに、天然の抗炎症性物質ならびに発赤および/または痒みを緩和する物質も使用することができる。植物抽出物、特別な高活性の植物抽出物画分、さらに植物抽出物から単離した極めて純粋な活性物質を使用することができる。カモミール、アロエベラ、Commiphora種、Rubia種、ヤナギ、ヤナギソウ、ショウガ、マリーゴールド、アルニカ、Glycyrrhiza種、Echinacea種、Rubus種および純粋な物質由来の抽出物、画分および活性物質、例えば、中でもビサボロール、アピゲニン、アピゲニン-7-グルコシド、ギンゲロール、例えば、[6]-ギンゲロール、パラドール、例えば、[6]-パラドール、ボスウェル酸、フィトステロール、グリチルリチン、グラブリジンまたはリコカルコンAが特に好ましい。ヒスタミン放出阻害剤を含有する調製物はまた、2種以上の抗炎症性活性化合物の混合物を含有することができる。
【0162】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、保存目的のための活性化合物を含有することができ、化粧品および/または皮膚病への用途において適切または慣習的であり、有利には、例えば、中でも安息香酸、そのエステルおよび塩;プロピオン酸およびその塩;サリチル酸およびその塩;2,4-ヘキサン酸(ソルビン酸)およびその塩;ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒド;2-ヒドロキシビフェニルエーテルおよびその塩;2-亜鉛スルフィドピリジンN-オキシド;無機亜硫酸塩および亜硫酸水素塩;ヨウ素酸ナトリウム;クロロブタノール;4-ヒドロキシ安息香酸およびその塩およびエステル;デヒドロ酢酸;ギ酸;1,6-ビス(4-アミジノ-2-ブロモフェノキシ)-n-ヘキサンおよびその塩;エチル水銀-(II)-チオサリチル酸のナトリウム塩;フェニル水銀およびその塩;10-ウンデシレン酸およびその塩;5-アミノ-1,3-ビス(2-エチルヘキシル)-5-メチルヘキサヒドロピリミジン;5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン;2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール;2,4-ジクロロベンジルアルコール;N-(4-クロロフェニル)-N’-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア;4-クロロ-m-クレゾール;2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシ-ジフェニルエーテル;4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール;1,1’-メチレン-ビス(3-(1-ヒドロキシメチル-2,4-ジオキシイミダゾリジン-5-イル)ウレア);ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩;2-フェノキシエタノール;ヘキサメチレンテトラミン;1-(3-クロロアリル)-3,5,7-トリアザ-1-アゾニアアダマンタンクロリド;1-(4-クロロ-フェノキシ)-1(1H-イミダゾール-1-イル)-3,3-ジメチル-2-ブタノン;1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオン;ベンジルアルコール;Octopirox(登録商標);1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタン;2,2’-メチレン-ビス(6-ブロモ-4-クロロ-フェノール);ブロモクロロフェン;5-クロロ-2-メチル-3(2H)-イソチアゾリノンおよび2-メチル-3(2H)イソチアゾリノンと塩化マグネシウムおよび硝酸マグネシウムの混合物;2-ベンジル-4-クロロフェノール;2-クロロアセトアミド;クロルヘキシジン;酢酸クロルヘキシジン;グルコン酸クロルヘキシジン;塩酸クロルヘキシジン;1-フェノキシ-プロパン-2-オール;N-アルキル(C12~C22)トリメチルアンモニウムブロミドおよびクロリド;4,4-ジメチル-1,3-オキサゾリジン;N-ヒドロキシメチル-N-(1,3-ジ(ヒドロキシメチル)-2,5-ジオキソイミダゾリジン-4-イル)-N’-ヒドロキシメチルウレア;1,6-ビス(4-アミジノフェノキシ)-n-ヘキサンおよびその塩;グルタルアルデヒド5-エチル-1-アザ-3,7-ジオキサビシクロ(3.3.0)オクタン;3-(4-クロロフェノキシ)-1,2-プロパンジオール;ハイアミン;アルキル(C8~C18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド;アルキル(C8~C18)ジメチルベンジルアンモニウムブロミド;アルキル(C8~C18)ジメチルベンジルアンモニウムサッカリネート;ベンジルヘミホルマール;3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート;またはナトリウム((ヒドロキシメチル)アミノ)アセテートなどの防腐剤からなる群から選択される任意の防腐剤を使用することができる。
【0163】
他の抗細菌または抗真菌活性物質もまた、組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物において特に有利に使用することができ、化粧品および/または皮膚病への用途において適切または慣習的である任意の抗細菌または抗真菌活性物質を使用することができる。従来の抗生剤の大きな群に加えて、ここで有利な他の製品として、化粧品に関連するもの、例えば、特にトリクロサン、クリンバゾール、オクトキシグリセリン、Octopirox(登録商標)(1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2(1H)-ピリドン2-アミノエタノール塩)、キトサン、ファルネソール、モノラウリン酸グリセロールまたは前記物質の組合せが挙げられ、これらは中でも脇の下の匂い、足の匂いまたはフケに対して使用される。
【0164】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品および/もしくは薬学的調製物はまた、1種または複数の皮膚軟化剤を含有することができ、化粧品および/または医薬品への用途において適切または慣習的である任意の皮膚軟化剤、例えば、アルファ-ビサボロール、アズレン、グアイアズレン、18-β-グリチルレチン酸、アラントイン、アロエベラジュースまたはゲル、Hamamelis virginiana(マンサク)の抽出物、Echinacea種、Centella asiatica、カモミール、Arnica monatana、Glycyrrhiza種、藻、海藻およびCalendula officinalis、ならびに植物油、例えば、スイートアーモンド油、バオバブ油、オリーブ油およびパンテノール、ラウレス-9、トリデセス-9および4-t-ブチルシクロヘキサノールを使用することができる。
【0165】
加えて、組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、身体の匂いを制御するための発汗阻害活性化合物(制汗剤)と組み合わせて特に有利に使用することができる。使用される発汗阻害活性化合物として、特にアルミニウム塩、例えば、塩化アルミニウム、クロロ水和物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などが挙げられる。しかし、亜鉛、マグネシウムまたはジルコニウム化合物の使用もまた有利となり得る。アルミニウム塩および、いくらか低い程度ではあるが、アルミニウム/ジルコニウム塩の組合せが化粧用の制汗剤および皮膚科用の制汗剤において有用と証明されている。したがって、部分的に中和されたアルミニウムヒドロキシクロリドは、皮膚に対してより許容されるが、あまり有効でないこともまた注目すべきである。アルミニウム塩以外の物質もまた使用することができる、例えば、(a)汗腺の表面密閉を引き起こすタンパク質沈殿物質、例えば、中でもホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、天然および合成タンニング剤およびトリクロロ酢酸;(b)局所麻酔薬、例えば、リドカイン、プリロカインの希薄溶液またはこれらの混合物を含み、末梢神経経路を遮断することにより汗腺への交感神経供給のスイッチを切る;(c)X、AまたはY型のゼオライト、これらは汗分泌の減少および悪臭の吸着剤としても作用する;ならびに(d)ボツリヌス毒素(細菌Chlostridium botulinumの毒素)、また多汗症(汗分泌物の病理学的増加)においても使用され、その作用は汗の分泌に関連する伝達物質アセチルコリンの放出の不可逆的遮断に基づく。
【0166】
(金属)キレート剤との組合せもまた、組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物において有利となることができ、化粧品および/または皮膚病の用途において適切または慣習的である任意の金属キレート剤を使用することができる。好ましい(金属)キレート剤として、α-ヒドロキシ脂肪酸、フィチン酸、ラクトフェリン、α-ヒドロキシ酸、例えば、中でも、グルコン酸、グリセリン酸、グリコール酸、イソクエン酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ならびにフミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジンまたはEDTA、EGTAおよびこれらの誘導体が挙げられる。1種または複数のキレート剤の使用は、組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物の安定性を改善する。
【0167】
使用のため、本発明による組成物またはエンバク抽出物を含有する調製物は、化粧品および皮膚科用製品で慣習的であるような方式で、十分な量で皮膚および/または毛髪に適用される。この文脈内で、本発明による混合物を含有し、日焼け止め剤としてもさらに作用する化粧品および皮膚科用調製物は特定の利点を提供する。有利には、これら調製物は少なくとも1種のUVAフィルターおよび/または少なくとも1種のUVBフィルターおよび/または少なくとも1種の無機顔料を含有する。この文脈内で、調製物は、例えば、このタイプの調製物、例えば、溶液、油中水型(W/O)乳剤、水中油型(O/W)乳剤またはマルチプルエマルジョン、例えば、水中油中水型(W/O/W)乳剤、ゲル、ヒドロ分散剤、固体スティックまたはエアゾール剤に対して通常利用される様々な形態を取ることができる。
【0168】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物は、UVB領域内でUV放射線を吸収する物質と有利に組み合わせて、フィルター物質の総量が、調製物の乾燥重量に対して、例えば、0.01~40%(m/m)、好ましくは0.1~10%(m/m)、特に1.0~5.0%(m/m)である、全領域の紫外線から毛髪および/または皮膚を保護する化粧品調製物を提供することができる。これらは毛髪に対する日焼け止め剤として機能することもできる。本発明による調製物がUVBフィルター物質を含有する場合、これらは油溶性であってもよいし、水溶性であってよい。有利な油溶性UVBフィルターとして以下が挙げられる:3-ベンジリデンカンファー誘導体、好ましくは3-(4-メチルベンジリデン)カンファー、3-ベンジリデンカンファー;4-アミノ安息香酸誘導体、好ましくは2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、アミル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;ケイ皮酸エステル、好ましくは2-エチルヘキシル4-メトキシシンナメート、イソペンチル4-メトキシシンナメート;サリチル酸エステル、好ましくはサリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸4-イソプロピルベンジル、サリチル酸ホモメンチル;ベンゾフェノンの誘導体、好ましくは2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;ベンザルマロン酸エステル、好ましくはジ(2-エチルヘキシル)4-メトキシベンザルマロネート、2,4,6-トリアニリノ-(p-カルボ-2’-エチル-1’-ヘキシルオキシ)-1,3,5-トリアジン。有利な水溶性UVBフィルターとして、2-フェニルベンゾイミダゾール-5-スルホン酸の塩、例えば、そのナトリウム塩、カリウム塩またはトリエタノールアンモニウム塩、ならびにスルホン酸それ自体;ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、好ましくは2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸およびその塩;3-ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、例えば、4-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)ベンゼンスルホン酸、2-メチル-5-(2-オキソ-3-ボルニリデン-メチル)スルホン酸およびこれらの塩、さらに1,4-ジ(2-オキソ-10-スルホ-3-ボルニリデンメチル)-ベンゼンおよびその塩(対応する10-スルファト化合物、例えば、対応するナトリウム塩、カリウム塩およびトリエタノールアンモニウム塩)、およびベンゼン-1,4-ジ(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル-10-スルホン酸が挙げられる。
【0169】
UVAフィルター、例えば、化粧品調製物に通常含有されるUVAフィルターを利用することが有利となり得る。これらの物質は好ましくはジベンゾイルメタンの誘導体、特に1-(4’-tert-ブチルフェニル)-3-(4’-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオンおよび1-フェニル-3-(4’-イソプロピルフェニル)プロパン-1,3-ジオンである。UVB組合せに対して使用する量を類似して使用することができる。
【0170】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、有利には、例えば、このような調製物に通常使用される他の化粧品助剤、例えば、抗酸化剤、香油、消泡剤、着色剤、着色作用を有する顔料、増粘剤、界面活性物質、乳化剤、可塑化物質、湿潤化および/または水分保持物質、脂肪、油、ワックスまたは化粧品調製物の他の従来の構成物質、例えば、アルコール、ポリオール、ポリマー、泡安定剤、電解質、有機溶媒またはシリコーン誘導体と組み合わせることができる。化粧品および/または皮膚病の用途において適切または慣習的である、任意の想像できる抗酸化剤、香油、消泡剤、着色剤、着色作用を有する顔料、増粘剤、界面活性物質、乳化剤、可塑化物質、湿潤化および/または水分保持物質、脂肪、油、ワックス、アルコール、ポリオール、ポリマー、泡安定剤、電解質、有機溶媒またはシリコーン誘導体を本発明に従いここで使用することができる。
【0171】
高い含有量の処置物質は、皮膚の局所的、予防的または化粧品による処置のための、本発明による組成物またはエンバク抽出物を含有する調製物において普通有利である。好ましい実施形態に従い、組成物は、1種または複数の動物および/または植物処置脂肪および油、例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、精製されたダイズ油、パーム油、ゴマ油、ナタネ油、アーモンド油、ルリジサ油、マツヨイグサ油、ヤシ油、シアバター、ホホバ油、マッコウクジラ油、牛脂、牛脚油およびラード、および任意選択で他の処置構成物質、例えば、C8~C30脂肪族アルコールを含有する。ここで使用される脂肪族アルコールは、飽和または不飽和および直鎖または分枝の脂肪族アルコールであり、例として、デカノール、デセノール、オクタノール、オクテノール、ドデカノール、ドデセノール、オクタジエノール、デカジエノール、ドデカジエノール、オレイルアルコール、リシノレイルアルコール、エルカアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、アラキジルアルコール、カプリルアルコール、カプリックアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコールおよびベヘニルアルコール、ならびにこれらのゲルベアルコールを挙げることができる。このリストは、所望する場合、構造的、化学的に関連した他のアルコールを含むように拡張することができる。脂肪族アルコールは、好ましくは天然脂肪酸から生じ、普通脂肪酸の対応するエステルから還元により調製される。自然発生の脂肪および脂肪油から還元により形成される脂肪族アルコール画分、例えば、牛脂、ピーナッツ油、ナタネ油、綿実油、ダイズ油、ヒマワリ油、パーム核油、あまに油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ナタネ油、ゴマ油、ココアバターおよびココア脂肪もまた使用することができる。
【0172】
本発明による組成物またはエンバク抽出物と好ましく組み合わせることができる処置物質として、以下もまた挙げることができる:セラミド、N-アシルスフィンゴシンと考えられているもの(スフィンゴシンの脂肪酸アミド)またはこのような脂質の合成類似体(いわゆる擬似セラミド)であり、これらは角質層の水保持能力を明確に改善する;リン脂質、例えばダイズレシチン、卵レシチンおよびセファリン;vaseline、パラフィンおよびシリコーン油、後者は中でもジアルキル-およびアルキルアリール-シロキサン、例えば、ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサン、ならびにこれらのアルコキシ化されたおよび四級化された誘導体を含む。
【0173】
加水分解した動物および/または植物タンパク質もまた、本発明による組成物またはエンバク抽出物を含有する調製物に有利に加えることができる。この関連で有利な例として、特にエラスチン、コラーゲン、ケラチン、乳タンパク質、ダイズタンパク質、エンバクタンパク質、マメタンパク質、アーモンドタンパク質および小麦タンパク質画分または対応する加水分解タンパク質、ならびにこれらの脂肪酸との縮合物、さらに四級化加水分解タンパク質が挙げられ、加水分解植物タンパク質の使用が好ましい。
【0174】
本発明による組成物またはエンバク抽出物を含有する化粧品または皮膚病の調製物が溶液またはローション剤である場合、使用することができる溶媒として以下が挙げられる:水または水溶液;脂肪油、脂肪、ワックスおよび他の天然および合成の脂肪体、好ましくは、脂肪酸と低いC数を有するアルコール、例えば、イソプロパノール、プロピレングリコールまたはグリセロールとのエステル、または脂肪族アルコールと、低いC数を有するアルカン酸とのエステルまたは脂肪酸とのエステル;アルコール、低いC数を有するジオールまたはポリオール、およびこれらのエーテル、好ましくはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルまたはモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチルまたはモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルおよび類似の生成物。上記の溶媒の混合物が特に使用される。アルコール性溶媒の場合、水は追加の構成物質であることができる。
【0175】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた抗酸化剤を含有することもでき、化粧品および/または皮膚病の用途において適切または慣習的である任意の抗酸化剤を使用することができる。有利には、抗酸化剤は、アミノ酸(例えばグリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびこれらの誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)およびこれらの誘導体、ペプチド、例えば、D,L-カルノシン、D-カルノシン、L-カルノシンおよびこれらの誘導体(例えばアンセリン)、カロチノイド、カロテン(例えばα-カロテン、β-カロテン、リコピン)およびこれらの誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えば、ジヒドロリポ酸)、金チオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミンおよびこれらのグリコシル、N-アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチルおよびラウリル、パルミトイル、オレイル、γ-リノレイル、コレステリルおよびグリセリルエステル)およびこれらの塩、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジプロピオン酸およびこれらの誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび塩)ならびにスルホキシミン化合物(例えばブチオニンスルホキシミン、ホモシステインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-チオニンスルホキシミン)(これらは非常に低い許容される用量で)、さらに(金属)キレート剤、例えば、α-ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTAおよびこれらの誘導体、不飽和脂肪酸およびこれらの誘導体(例えば、γ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールおよびこれらの誘導体、ビタミンCおよびその誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル、リン酸マグネシウムアスコルビル、酢酸アスコルビル)、トコフェロールおよびこれらの誘導体(例えば、ビタミンEアセテート)、ビタミンAおよびその誘導体(例えば、ビタミンAパルミテート)、さらにベンゾイン樹脂の安息香酸コニフェリル、ルチン酸およびその誘導体、フェルラ酸(ferrulic acid)およびその誘導体、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアイアシン酸、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO)、セレンおよびその誘導体(例えば、セレンメチオニン)、スチルベンおよびこれらの誘導体(例えば、スチルベンオキシド、trans-スチルベンオキシド)、ならびに前記活性化合物の誘導体(例えば、塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)、例えば、本発明に従い適切であるものからなる群から選択される。
【0176】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまたビタミンおよびビタミン前駆体を含有することもでき、化粧品および/または皮膚病の用途において適切または慣習的である任意のビタミンおよびビタミン前駆体を使用することができる。ビタミンおよびビタミン前駆体、例えば、トコフェロール、ビタミンA、ニコチン酸およびニコチンアミド、他のB-複合体ビタミン、特にビオチン、およびビタミンCをここで特に挙げることができる。使用されるのが好ましいこの群内の他の例として、パントテニールアルコールおよびその誘導体、特にそのエステルおよびエーテル、ならびにカチオン的に得たパントテニールアルコールの誘導体、例えば、パントテニールアルコールトリアセテート、パントテニールアルコールモノエチルエーテルおよびそのモノアセテートおよびまたカチオン性パントテニールアルコール誘導体が挙げられる。
【0177】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、美白作用を有する活性化合物を含有することができ、化粧品および/または皮膚病の用途において適切または慣習的である任意の美白活性化合物を本発明に従い使用することができる。この関連で有利な美白活性化合物として、中でも美白スチルベン誘導体を含有する、コウジ酸、ヒドロキノン、アルブチン、アスコルビン酸、リン酸マグネシウムアスコルビル、レゾルシノール、カンゾウの根抽出物およびこれらの構成物質グラブリジンまたはリコカルコンA、またはRumexおよびRamulus種からの抽出物、マツ種(ピヌス)からの抽出物またはVitis種からの抽出物が挙げられる。
【0178】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品調製物はまた、皮膚タンニング作用を有する活性化合物を含有することができ、化粧品および/または皮膚病の用途において適切または慣習的である任意の皮膚タンニング活性化合物が使用され得る。ジヒドロキシアセトン(DHA;1,3-ジヒドロキシ-2-プロパノン)を例としてここで述べることができる。DHAはモノマーまたはダイマーのいずれかの形態で提供されてもよく、ダイマーの割合は結晶形態において主要である。
【0179】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、単糖、二糖およびオリゴ糖類、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノースおよびラクトースを含有することもできる。
【0180】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、植物抽出物を含有することもでき、これらは普通完全な植物を抽出することにより調製されるが、個々の事例は植物の花および/または葉、木材、樹皮もしくは根だけからでも調製される。本発明に従い使用することができる植物抽出物に関しては、特に、Leitfaden zur Inhaltsstoffdeklaration kosmetischer Mittel(Guide to the Declaration of Constituents of Cosmetic Agents)、Industrieverband Koerperpflegemittel und Waschmittel e.V.(IKW)(Industrial Association for Toiletries and Detergents)刊、フランクフルト、第3版、44ページから始まる表に列挙された抽出物を参照されたい。特に有利な抽出物として、アロエ、Hamamelis、藻、オーク樹皮、ヤナギソウ、イラクサ、オドリコソウ、ホップ、カモミール、ノコギリソウ、アルニカ、カレンデュラ、ゴボウ根、ツクシ、サンザシ、リンデンブロッサム、キュウリ、アーモンド、松葉、セイヨウトチノキ、ビャクダン、ジュニパー、ココナッツ、マンゴ、アンズ、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、リンゴ、緑茶、グレープフルーツ種子、小麦、エンバク、オオムギ、セージ、タイム、バジル、ローズマリー、カバノキ、ゼニアオイ、タネツケバナ、ヤナギ樹皮、ハリモクシュク、フキタンポポ、ビロードアオイ、ジンセングおよびショウガ根が挙げられる。これらのうち、特に好ましい抽出物として、アロエベラ、カモミール、藻、ローズマリー、カレンデュラ、ジンセング、キュウリ、セージ、イラクサ、リンデンブロッサム、アルニカおよびHamamelisが挙げられる。2種以上の植物抽出物の混合物もまた利用することができる。前記植物抽出物を調製するために使用することができる抽出薬剤として、水、アルコールおよびこれらの混合物が挙げられる。この文脈において好ましいアルコールは、低級アルコール、例えば、エタノールおよびイソプロパノール、しかし多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびブチレングリコールもまた好ましく、具体的には唯一の抽出剤として、および水との混合物として両方好ましい。本発明に従い、植物抽出物は、純粋な形態または希釈形態で使用することができる。
【0181】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、特に結晶性または微結晶性固体、例えば無機マイクロ顔料が本発明による調製物に組み込まれる場合、アニオン性、カチオン性、非イオン性および/または両性の界面活性剤を含有することができる。界面活性剤は、水中に有機、非極性物質を溶解することができる両親媒性物質である。界面活性剤は分子の親水性部分の性質および電荷により一般的に分類される。4つの群がここで分化され得る:アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤。
【0182】
アニオン性界面活性剤は普通、カルボキシレート、スルフェートまたはスルホネート基を官能基として含有する。水溶液中で、これらは酸性または中性媒体中に負荷電の有機イオンを形成する。カチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム基の存在によりほとんど独占的に特徴付けられる。水溶液中で、これらは酸性または中性媒体中で正荷電の有機イオンを形成する。両性界面活性剤はアニオン性基とカチオン性基の両方を含有し、したがってpH値に応じて、水溶液中でアニオン性またはカチオン性の界面活性剤のように挙動する。これらは強酸性媒体中で正電荷を有し、アルカリ性媒体中で負電荷を有する。中性pH領域では、対照的に、これらは両性イオンである。ポリエーテル鎖は非イオン性界面活性剤の典型である。非イオン性界面活性剤は水性媒体中ではイオンを形成しない。
【0183】
有利に使用することができるアニオン性界面活性剤として以下が挙げられる:アシルアミノ酸(およびこれらの塩)、例えば、アシルグルタメート、例えば、アシルグルタミン酸ナトリウム、ジ-TEA-パルミトイルアスパルテートおよびカプリル酸/カプリン酸グルタミン酸ナトリウム;アシルペプチド、例えばパルミトイル加水分解乳タンパク質、ココイル加水分解ダイズタンパク質ナトリウムおよびココイル加水分解コラーゲンナトリウム/カリウム;サルコシネート、例えば、ミリストイルサルコシン、ラウロイルサルコシンTEA、ラウロイルサルコシンナトリウムおよびココイルサルコシンナトリウム;タウレート、例えばタウリン酸ラウロイルナトリウムおよびタウリン酸メチルココイルナトリウム;ラクチル酸アシル、例えばラクチル酸ラウロイルおよびラクチル酸カプロイル;アラニネート;カルボン酸および誘導体、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸アルミニウム、マグネシウムアルカノレート(magnesium alkanolate)およびウンデシル酸亜鉛;エステルカルボン酸、例えば、ステアロイルラクチレートカルシウム、ラウレス-6シトレートおよびPEG-4ラウラミドカルボン酸ナトリウム;エーテルカルボン酸、例えばラウレス-13カルボン酸ナトリウムおよびPEG-6コカミドカルボン酸ナトリウム;リン酸エステルおよび塩、例えば、DEA-オレス-10ホスフェートおよびジラウレス-4リン酸;スルホン酸および塩、例えば、イセチオン酸アシル、例えば、ココイルイセチオン酸ナトリウム/アンモニウム;アルキルアリールスルホン酸塩;スルホン酸アルキル、例えばココモノグリセリドスルホン酸ナトリウム、オレフィン(C12~14)スルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムおよびPEG-3コカミド硫酸マグネシウム;スルホスクシネート、例えば、ジオクチルソジウムスルホスクシネート、スルホコハク酸ラウレス二ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムおよびスルホコハク酸ウンデシレナミドMEA-二ナトリウム;および硫酸エステル、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、例えばラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸マグネシウム、ラウレス硫酸MIPA、ラウレス硫酸TIPA、ミレス硫酸ナトリウムおよびC12~13パレス硫酸ナトリウム、および硫酸アルキル、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムおよびラウリル硫酸TEA。
【0184】
有利に使用することができるカチオン性界面活性剤として、アルキルアミン、アルキルイミダゾール、エトキシ化アミンおよび第四級界面活性剤が挙げられる。
【0185】
第四級界面活性剤は、4つのアルキル基またはアリール基に共有結合した少なくとも1個のN原子を含有する。これはpH値に関係なく正電荷をもたらす。アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタインおよびアルキルアミドプロピルヒドロキシスルファン(hydroxysulphaine)が有利である。使用されるカチオン性界面活性剤はまた、好ましくは第四級アンモニウム化合物の群、特に塩化ベンジルトリアルキルアンモニウムまたは臭化ベンジルトリアルキルアンモニウム、例えば、塩化ベンジルジメチルステアリルアンモニウム、ならびにアルキルトリアルキルアンモニウム塩、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウムまたは臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムまたは臭化アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムまたは臭化ジアルキルジメチルアンモニウム、アルキルアミドエチルトリメチルアンモニウムエーテルスルフェート、アルキルピリジニウム塩、例えば、塩化ラウリルピリジニウムまたは塩化セチルピリジニウム、イミダゾリン誘導体およびカチオン性性質の化合物、例えば、アミンオキシド、例えば、アルキルジメチルアミンオキシドまたはアルキルアミノエチルジメチルアミンオキシドから選択することができる。セチルトリメチルアンモニウム塩は特に有利に使用することができる。
【0186】
有利に使用することができる両性界面活性剤として、アシル/ジアルキルエチレンジアミン、例えばアシルアンホ酢酸ナトリウム、アシルアンホジプロピオン酸二ナトリウム、アルキルアンホ二酢酸二ナトリウム、スルホン酸アンホヒドロキシプロピルアシルナトリウム、アシルアンホ二酢酸二ナトリウムおよびアシルアンホプロピオン酸ナトリウム;N-アルキルアミノ酸、例えばアミノプロピルアルキルグルタミド、アルキルアミノプロピオン酸、アルキルイミドジプロピオン酸ナトリウムおよびラウロアンホカルボキシグリシネートが挙げられる。
【0187】
有利に使用することができる非イオン性界面活性剤として、アルコール;アルカノールアミド、例えば、コカミドMEA/DEA/MIPA、アミンオキシド、例えば、ココアミドプロピルアミンオキシド;カルボン酸の酸化エチレン、グリセロール、ソルビタンまたは他のアルコールとのエステル化により形成されるエステル;エーテル、例えば、エトキシ化/プロポキシ化アルコール、エトキシ化/プロポキシ化エステル、エトキシ化/プロポキシ化グリセロールエステル、エトキシ化/プロポキシ化コレステロール、エトキシ化/プロポキシ化トリグリセリドエステル、エトキシ化/プロポキシ化ラノリン、エトキシ化/プロポキシ化ポリシロキサン、プロポキシ化POEエーテルおよびアルキルポリグリコシド、例えば、ラウリルグルコシド、デシルグリコシドおよびヤシグリコシド;スクロースエステルおよびエーテル;ポリグリセロールエステル、ジグリセロールエステル、モノグリセロールエステル;メチルグルコースエステル、ヒドロキシ酸のエステルが挙げられる。
【0188】
アニオン性および/または両性界面活性剤と、1種または複数の非イオン性界面活性剤との組合せの使用もまた有利である。界面活性物質は、本発明によるヒスタミン放出阻害剤を含有する調製物中に、調製物の乾燥重量に対して1~98%(m/m)の間の濃度で存在することができる。
【0189】
組成物もしくはエンバク抽出物または本発明による組成物もしくはエンバク抽出物を含有する化粧品もしくは薬学的調製物はまた、局所的用途に適した形態、例えば、ローション剤、水性もしくは水性-アルコール性ゲル、ベシクル分散剤、または単純もしくは複雑な乳剤として(O/W、W/O、O/W/OまたはW/O/W)、液体、半液体もしくは固体、例えば、ミルク、クリーム剤、ゲル剤、クリーム剤-ゲル剤、ペースト剤またはスティック剤へと製剤化することもでき、任意選択でエアゾール剤としてパッケージされてもよいし、ムースもしくはスプレーの形態を取ることもできる。これらの組成物は通常の方法により調製される。
【0190】
乳剤を調製するために、油相は、以下の物質の群から有利に選択することができる:鉱油、ミネラルワックス;脂肪油、脂肪、ワックスならびに他の天然および合成脂肪体、好ましくは脂肪酸と低いC数を有するアルコール、例えば、イソプロパノール、プロピレングリコールもしくはグリセロールとのエステル、または脂肪族アルコールと、低いC数を有するアルカン酸とのもしくは脂肪酸とのエステル;安息香酸アルキル;シリコーン油、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンおよびその混合した形態。有利には、3~30個のC原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分枝および/または直鎖アルカンカルボン酸と、3~30個のC原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分枝および/または直鎖アルコールとのエステル、芳香族カルボン酸と、3~30個のC原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分枝および/または直鎖アルコールとのエステルの群からのものを使用することができる。好ましいエステル油として、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n-ブチル、ラウリン酸n-ヘキシル、オレイン酸n-デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、2-エチルヘキシルラウリン酸、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシルならびにこのようなエステルの合成、半合成および天然混合物、例えばホホバ油が挙げられる。
【0191】
油相はまた、分枝および直鎖炭化水素およびワックス、シリコーン油、ジアルキルエーテルを含む群、飽和または不飽和、分枝または直鎖アルコール、および脂肪酸トリグリセリドを含む群、具体的には8~24、特に12~18個のC原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または直鎖アルカンカルボン酸のトリグリセロールエステルから有利に選択することもできる。脂肪酸トリグリセリドは、例えば、合成、半合成および天然油、例えばオリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ピーナッツ油、ナタネ油、アーモンド油、パーム油、ヤシ油、パーム核油などを含む群から有利に選択することができる。このような油およびワックス構成成分の任意の混和物もまた有利に使用することができる。場合によっては、油相の唯一の脂質成分としてワックス、例えばパルミチン酸セチルを使用することも有利であり、油相は、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、オクチルドデカノール、イソノナン酸イソトリデシル、イソエイコサン、2-ヤシ油脂肪酸エチルヘキシル、C12~15安息香酸アルキル、カプリル酸-カプリン酸トリグリセリドおよびジカプリリルエーテルからなる群から有利に選択される。C12~15安息香酸アルキルとイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物、C12~15安息香酸アルキルとイソノナン酸イソトリデシルの混合物ならびにC12~15安息香酸アルキル、イソステアリン酸2-エチルヘキシルおよびイソノナン酸イソトリデシルの混合物が特に有利である。炭化水素パラフィン油、スクワランおよびスクアレンもまた有利に使用することができる。油相はまた有利には、環式または直鎖シリコーン油を含有するまたはこれから完全になることもできるが、1種または複数のシリコーン油に加えて、他の油相構成成分の追加の含有量が好ましくは使用される。シクロメチコン(例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン)をシリコーン油として有利に使用することができる。しかし、他のシリコーン油、例えば、ウンデカメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサンおよびポリ(メチルフェニルシロキサン)を有利に使用することもできる。シクロメチコンとイソノナン酸イソトリデシルの混合物およびシクロメチコンとイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物もまた特に有利である。
【0192】
本発明による組成物またはエンバク抽出物を含有し、乳剤の形態で提供される調製物の水相は、低いC数を有するアルコール、ジオールまたはポリオール、およびこれらのエーテル、好ましくはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルまたはモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチルまたはモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルおよび類似の生成物、ならびに低いC数を有するアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、1,2-プロパンジオール、グリセロールおよび特に1種または複数の増粘剤を含むことができ、増粘剤は、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、多糖およびこれらの誘導体を含む群、例えば、ヒアルロン酸、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、特に有利には、ポリアクリレートを含む群、好ましくはいわゆるカーボポールを含む群由来のポリアクリレート、例えば、カーボポール型980、981、1382、2984、5984から、それぞれこれら自体でまたは組み合わせて、有利に選択することができる。
【0193】
本発明による組成物またはエンバク抽出物を含有し、乳剤の形態で提供される組成物もしくはエンバク抽出物または化粧品もしくは薬学的調製物は、化粧品または薬学的調製物を調製するために当技術分野で一般的に使用される1種または複数の乳化剤を有利に含有する。
【0194】
本発明による組成物またはエンバク抽出物を含有する組成物もしくはエンバク抽出物または化粧品もしくは薬学的調製物はまた、化粧品としてまたは薬学的に許容される担体、例えば、当技術分野で一般的に使用される以下のうちの1種を含むことができる(これらに限定されない):ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ剤、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油など。化粧品または薬学的調製物はまた、上記構成成分に加えて、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液、防腐剤などを含むことができる。適切な薬学的に許容される担体および調製物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)に詳細に記載されている。
【0195】
薬学的調製物は経口投与されても、または非経口的に投与されてもよい。非経口的に投与される場合、医薬組成物は、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔内注射、局所的投与、皮膚投与、経鼻投与などにより投与され得る。
【0196】
本発明による薬学的調製物の適切な用量は、例えば、製剤化方法、年齢、体重、性別または病気に起因する状態、食物、投与時間、投与経路、排出速度および患者の反応感受性などの要素に応じて様々に処方され得る。
【0197】
本発明による医薬組成物は、単位剤形で、本発明が関係する技術分野の平均的当業者により簡単に実行され得る方法により、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を使用して製剤化することにより、製造されてもよい。
【0198】
本発明は、以下の実施例を参照してここで詳細に記載されるが、これら実施例は単に本発明の例示であるので、本発明の内容は以下の実施例により、または以下の実施例に限定されるわけではない。
【実施例
【0199】
本発明の実施例は以下に記載されている。しかし、本発明は、詳述された実施例に限定されると解釈されるものではない。
【実施例1】
【0200】
粉砕されたおよび粉砕されていないハダカエンバク(Avena nuda)穀粒の抽出
植物材料は通常小さな小片へと、粉砕され、破砕され、または切断されて、より完全な抽出を可能にする。したがって、粉砕されたおよび粉砕されていないハダカエンバク穀粒の抽出を比較した。
【0201】
100グラムの有機ハダカエンバク穀粒(Salomon品種、Bohlenser Muehleから購入し、ドイツにて栽培)は、そのままで、または粉砕して、300グラムの50%水性エタノール(w/w)を使用して、60℃で2時間撹拌しながら抽出した。混合物を室温に冷却し、穀粒を遠心分離および濾過により抽出液から分離した。エバポレーターを使用して、抽出溶媒を真空で除去し、得た乾燥抽出物を秤量して、抽出収率を決定した。
【0202】
アセトニトリル/水/0.1%ギ酸勾配を使用して、ODS-AQカラム(YMC)上、330nmでHPLCにより、乾燥抽出物中のAvnsを定量化し、Megazymeのβ-グルカンアッセイキット(混合結合)を使用して、製造元の指示に従いβ-グルカンおよびモノマーグルコースを定量化した。
【0203】
このアッセイキットは、エンバク、オオムギなどの穀物およびこれら由来の製品、例えば、エンバク繊維製品、麦芽およびビールに生じる混合結合(1→3、1→4)β-グルカンに対して特異的である。
【0204】
アッセイの原理:試料をpH6.5の緩衝液に懸濁させ、水和させ、次いで精製されたリケナーゼ酵素と共にインキュベートし、濾過した。次いでアリコートの濾液を、精製されたβ-グルコシダーゼを用いて完全に加水分解した。生成されたD-グルコースは、その後グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ試薬を使用して、判定する。
【0205】
【表2】
【0206】
全穀粒(粉砕されていない)から得た水性エタノール性抽出物は、粉砕された穀粒から得た抽出物より1.9倍高いAvns A~Cの全含有量(5900ppm対3091ppm)を含有することを結果は示している。対照的に、粉砕された穀粒からの水性エタノール性抽出物のβ-グルカン含有量は、全穀粒(粉砕されていない)からの抽出物中のβ-グルカン含有量より2.4倍高い。粉砕されていない、ハダカエンバク全穀粒の抽出は、ずっと簡単であり、より速く、よってより安価での、抽出後の抽出液からの植物材料の分離を可能にする追加の利益を有する。
【実施例2】
【0207】
粉砕されたおよび粉砕されていないエンバク(Avena sativa)穀粒の抽出
【0208】
50グラムのエンバク穀粒(Max品種、ドイツにて栽培)は、そのままで、または粉砕して、300グラムの50%水性エタノール(w/w)を使用して、異なる温度で2時間撹拌しながら抽出した。混合物を室温に冷却し、穀粒を遠心分離および濾過により抽出液から分離した。エバポレーターを使用して、抽出溶媒を真空で除去し、得た乾燥抽出物を秤量して、抽出収率を決定した。実施例1に記載されているように、乾燥抽出物中のAvnsを定量化した。
【0209】
【表3】
【0210】
粉砕されたエンバク穀粒に対して、抽出収率は、温度が増加すると共に、40℃で3.5%から70℃で4.4%まで増加することを結果が示している。Avns A~Cの全含有量は、40℃で1880ppmから、60℃で2056ppmに並行して増加するが、次いで70℃で1894ppmに低減する。よって、収率およびAvn含有量に基づき、50~60℃の間の温度での粉砕されたエンバクの抽出が最も良い結果をもたらす。
【0211】
最も適切な温度60℃での粉砕されていないエンバク穀粒の抽出は、粉砕されたエンバク穀粒から得た抽出物よりも2.0倍高いAvns A~C含有量を有する乾燥抽出物をもたらした。
【実施例3】
【0212】
Avnsおよびβ-グルカンを含有するAvena nuda(ハダカエンバク)穀粒の抽出画分の調製
【0213】
1000グラムの粉砕されていない有機ハダカエンバク穀粒(Bohlenser Muehleから購入し、ドイツにて栽培;実施例1で使用したバッチと同じバッチ)は、2000グラムの50%水性エタノール(w/w)を使用して、60℃で2時間撹拌しながら抽出した。混合物を室温に冷却し、穀粒を遠心分離し、濾過により抽出液から分離した。抽出した穀粒を、もう1500グラムの50%水性エタノール(w/w)を使用して、60℃で2時間撹拌しながら、2回目の抽出を行い、抽出液を上に記載されているように分離した。2回の抽出の抽出液を合わせて、2700グラムを得た。真空で、エバポレーターを使用して118グラムのアリコートから抽出溶媒を除去することによって、乾燥物質含有量および抽出収率を決定した。結果として、1.57グラムの乾燥抽出物をもたらし、これは乾燥抽出物収率3.6重量%に対応するものであった。
【0214】
真空で、エバポレーターを使用して、残りの抽出液からエタノールを除去して、900グラムの水性抽出液を得た。生成した水性抽出液の乾燥物質含有量を決定し、100グラムの水を加えて、1000グラムの3.0重量%溶液を得た。塩酸を使用して、pH値を3.0に調節し、形成された沈殿物を遠心分離で除去した。
【0215】
製造元の指示に従い洗浄し、水中で調整した、250グラムのLewatit(登録商標)VP OC1064MD PH樹脂(Lanxess)を直径4cmのオープンガラスカラムに充填し、水性抽出液をその中に入れた。重力により誘発される流速で、溶液をカラムに通した。次いで、カラムを300グラムの水で洗浄し、真空によりまたは樹脂を介して窒素を吹き込むことにより過剰の水を除去した。次いで、600グラムのエタノールを使用して吸着された抽出物成分を樹脂から溶出した。
【0216】
濾過水および洗浄水を合わせ、凍結乾燥して、20グラムのドライウォーター画分を得た。これは、エンバク穀粒に基づく収率2.0重量%に対応するものであった。
【0217】
エタノールをエタノール性溶出物から真空により除去して、7.5グラムの乾燥エタノール画分を得た。これはエンバク穀粒に基づく収率0.8重量%に対応するものであった。
【0218】
乾燥させた抽出画分を実施例1に記載されているように特徴付けた。
【0219】
【表4】
【0220】
乾燥させたエタノール溶出物画分は、乾燥させた水性エタノール抽出物より5.4倍高いAvns含有量(全Avns A~C含有量22239ppm対4134ppm)を含有することを結果が示している。
【0221】
驚くことに、乾燥させたエタノール溶出物画分はまた、β-グルカンが水溶性であったとしても、乾燥させた水性エタノール抽出物より2.7倍高いβ-グルカン含有量、乾燥させた濾過水画分より3.9倍高い含有量を含有する。全Avns A~C含有量2.2重量%(22239ppm)およびβ-グルカン含有量2.8重量%を有する、乾燥させたエタノール溶出物画分は、興味深いことに、同じ抽出画分において両方の物質クラスとも非常に類似の含有量を含有する。
【0222】
乾燥させた水性エタノール性抽出物および乾燥させたエタノール溶出物画分はまた、イオンクロマトグラフィーによりこれらのカチオンおよびアニオン含有量について、およびHPLCにより遊離アミノ酸について、カラム後のニンヒドリン誘導化を用いて分析を行った。
【0223】
【表5】
【0224】
決定されたカチオンおよびアニオン(全部で0.24%対5.40%)から分かるように、乾燥させたエタノール溶出物画分中の塩含有量は、乾燥させた水性エタノール抽出物中の塩含有量よりずっと低いことを結果は示している。
【0225】
これは2つの利点を有する。一方では、水中油型(o/w)乳剤は市販のパーソナルケア乳剤のうちの最も人気のあるタイプである。このような乳剤では、外相は水性であり、水および水溶性構成成分を含み、内相は油および油溶性構成成分を含む。溶液中の高濃度のイオン化材料(カチオンおよびアニオン)は乳剤境界面を不安定にし得る。実際に、塩を乳化した材料に加えることは、乳剤を不安定にし、その中の材料を分離または精製するために、水処置植物において使用される一般的な戦略である。したがって、塩含有量を低下させることは、乳剤安定性に有益であると考えることができる。
【0226】
他方では、金属イオンは、例えば、パーソナルケア製品に使用されている成分の分解を触媒することができるため、これらは化学的プロセスに対して、および多くの製品の性能に対して強力な影響を有する。したがって、金属カチオンの含有量の低下は、製品および成分安定性に有益であると考えることができる。
【0227】
乾燥させたエタノール溶出物画分は、乾燥させた水性エタノール抽出物よりも4分の一少ない全遊離アミノ酸を含有する(2.44対0.60%)ことを結果がまた示している。しかし、興味深いことに、乾燥させたエタノール溶出物画分は、乾燥させた水性エタノール抽出物より3.8倍多くのフェニルアラニンおよび4.3倍多くのトリプトファンを含有している。
【実施例4】
【0228】
ABTSアッセイ
【0229】
Avnsおよびβ-グルカンは、抗酸化性有効性を示すことが公知であるため、ABTSアッセイを使用して、実施例3で得た抽出物および抽出画分のラジカルスカベンジング活性を決定した。
【0230】
ABTSアッセイの助けを借りて、試験物質の抗酸化能を測定した。2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)を過硫酸カリウムにより、ブルーグリーンラジカルカチオンABTS・+に変換した。抗酸化剤(試験物質)の添加を介してラジカルカチオンを還元し、変色が生じ、これを測光法で、734nmで決定した。
【数1】

(式中、試験物質とは、試験物質を用いたウェルの吸収を意味し、対照とは、試験物質なしでのウェルの吸収を意味する。
【0231】
試験試料の一連の希釈物中のラジカル形成の阻害[%]からIC50を計算した。これはラジカル形成が50%阻害される濃度である。結果は表6に示されている。
【0232】
【表6】
【0233】
IC50値の比較は、乾燥させたエタノール溶出物画分が、乾燥させた水性エタノール抽出物より5.7倍活性があり、乾燥させた濾過水画分より9.1倍活性があることを示している。
【実施例5】
【0234】
Avnsおよびβ-グルカンを含有するAvena nuda(ハダカエンバク)穀粒の抽出画分の調製-pH3.0と非調節のpHを比較
【0235】
501グラムの粉砕されていない有機ハダカエンバク穀粒(Salomon品種、Bohlenser Muえhleから購入し、ドイツで栽培;実施例1または3で使用されたものとは異なるバッチ)は、800グラムの50%水性エタノール(w/w)を使用して、60℃で2時間撹拌しながら抽出し、実施例3に記載されているように2回抽出した。2回の抽出の抽出液を合わせて、1070グラムを得た。エバポレーターを使用して、115グラムアリコートから真空により抽出溶媒を除去することにより、乾燥物質含有量および抽出収率を決定した。結果として、1.54グラムの乾燥抽出物をもたらし、これは乾燥抽出物収率2.9重量%に対応するものであった。
【0236】
残りの抽出液を2つの部分に分割した。第1の部分では:
(A)エバポレーターを使用して、エタノールを真空により抽出液485グラムから除去して(6.5グラムの乾燥抽出物)、130グラムを得、水を加えることによりこれを希釈して、500グラムの水性抽出液(1.3重量%乾燥物質)を得た。次いで、pH値を塩酸の手段により3.0に調節した。
【0237】
製造元の指示に従い洗浄し、水中で調整した、250グラムのLewatit(登録商標)VP OC1064MD PH樹脂(Lanxess)を直径4cmのガラスカラムに充填し、pH調節した水性抽出液をこれに入れた。重力により誘発される流速で、溶液をカラムに通した。得た濾液をカラムに2回再投入した。次いで、カラムを200グラムの水で洗浄し、過剰の水を、真空によりまたは樹脂を介して窒素を吹き込むことにより除去した。次いで、600グラムのエタノールを使用して、吸着した抽出物成分を樹脂から溶出させた。
【0238】
濾過水および洗浄水を合わせ、凍結乾燥して、4.0グラムのドライウォーター画分を得た。これは、エンバク穀粒に基づく収率1.8重量%に対応するものであった。
【0239】
エタノールを、エタノール性溶出物から真空により除去して、2.1グラムの乾燥エタノール画分を得た。これはエンバク穀粒に基づく収率1.0重量%に対応するものであった。
【0240】
第2の部分では:
(B)もう485グラムの抽出液(6.5グラムの乾燥抽出物)を(A)に記載されているように処理して、500グラムの水性抽出液(1.3重量%の乾燥物質)を得た。この溶液のpH値は6.4であり、調節しなかった。
【0241】
製造元の指示に従い洗浄し、水中で調整した、250グラムのLewatit(登録商標)VP OC1064MD PH樹脂(Lanxess)を直径4cmのガラスカラムに充填し、pH調節なしで、水性抽出液をその中に入れた。吸着および溶出を(A)に記載されているように実施した。
【0242】
濾過水および洗浄水を合わせ、凍結乾燥して、4.4グラムのドライウォーター画分を得た。これはエンバク穀粒に基づく収率2.0重量%に対応するものであった。
【0243】
エタノールをエタノール性溶出物から真空により除去して、2.0グラムの乾燥エタノール画分を得た。これはエンバク穀粒に基づく収率0.9重量%に対応するものであった。
【0244】
乾燥させた抽出物およびエタノール溶出物画分を上に記載されているように特徴付けた。結果は表7において要約されている。
【0245】
【表7】
【0246】
両方の乾燥させたエタノール溶出物画分は、乾燥させた水性エタノール抽出物と比較して、より高いAvns含有量を示すことを結果は示している。pH調節なしで、水性抽出液から得た乾燥させたエタノール溶出物画分、およびpH3を有する水性抽出液から得た乾燥させたエタノール溶出物画分は、それぞれ3.1倍および2.7倍高いAvns A~C全含有量を含有する(10544および9146ppm対3363ppm)。
【0247】
しかし、pH調節なしで水性抽出液から得た乾燥させたエタノール溶出物画分は、pH3に調節して得たものと比較して、20%(1.2倍)高いAvns A~C全含有量を含有する(10544対9146ppm)。
【0248】
驚くことに、乾燥させたエタノール溶出物画分はまた、β-グルカンが水溶性としても、乾燥させた水性エタノール抽出物よりも1.9倍(A)および1.8倍(B)高いβ-グルカン含有量を含有する。
【0249】
Avns A~C全含有量1.05重量%(10544ppm)、β-グルカン含有量2.21重量%を有する、水性抽出液からpH調節なしで得た乾燥させたエタノール溶出物画分(A)は、興味深いことに、両方の物質クラスを、pH3.0で得た乾燥させたエタノール溶出物画分(B)と類似の含有量で含有する。
【0250】
上記実験に加えて、合計およそ500百万分率のAvns A~Cを含有する溶液の調製物を調査した。2グラムの1,3-プロパンジオールを、(A)および(B)からそれぞれ得た109ミリグラムの乾燥させたエタノール溶出物画分に加えて、赤茶色がかった溶液を得た。これは、例えば、化粧品調製物において使用および取扱いが簡単である。
【0251】
実施例4に記載されているABTSアッセイを使用して、2種のエタノールの乾燥させたエタノール溶出物画分の抗酸化能を決定した。結果は表8に示されている。
【0252】
【表8】
【0253】
IC50値の比較により、両方の乾燥させたエタノール溶出物画分が同等の抗酸化能を示すことが示されている。
【実施例6】
【0254】
Avnsおよびβ-グルカンを含有するAvena nuda(ハダカエンバク)穀粒の抽出画分の調製-全穀粒(粉砕されていない)および粉砕された穀粒(pH調節なし)からの抽出物を比較する
【0255】
1200グラムの50%水性エタノール(w/w)を使用して、60℃で2時間撹拌しながら、500グラムの粉砕されていない有機ハダカエンバク穀粒(Bohlenser Muehleから購入し、ドイツにて栽培;実施例1、3または5で使用されているバッチとは異なるバッチ)を抽出し、実施例3に記載されているように2回抽出した。抽出収率を実施例5に記載されているように決定した。これは結果として抽出収率2.8重量%をもたらした。
【0256】
エタノールを水性エタノール性抽出液から除去し、追加の水を加えて、実施例5に記載されているように、乾燥物質含有量およそ1重量%を有する水性抽出液を得た。
【0257】
製造元の指示に従い洗浄し、水中で調整した、250グラムのLewatit(登録商標)VP OC1064MD PH樹脂(LANXESS)を直径4cmのガラスカラムに充填し、水性抽出液(そのpH値は調節していない)をその中に入れた。溶液を100ml/分の流速でカラムに通した。得た濾液を再度カラムに2回入れた。水での洗浄およびエタノールでの溶出を実施例5に記載されているように実施した。
【0258】
エンバク穀粒に基づく濾過水およびエタノール溶出物の収率を乾燥により決定し、それぞれ2.0および0.7重量%であることが判明した。
【0259】
粉砕された穀粒を用いて全プロセスを繰り返した:全穀粒(粉砕されていない)の抽出物から得た0.6グラムの乾燥させたエタノール溶出物を、30℃で撹拌しながら、49グラムのグリセロールと水との1:1(wt/wt)混合物に溶解した。次いで、Avns含有量をHPLCにより決定した。
【0260】
乾燥させた抽出物、乾燥させた抽出画分およびグリセロール/水溶液を上に記載されているように特徴付けた。結果は表9に要約されている。
【0261】
【表9】
【0262】
吸着ステップは、粉砕された穀粒を使用して得た抽出物に対して実施した場合、Avnsもβ-グルカンも予想された富化は得られないことを結果は明確に示している。同時抽出されるエンバク穀粒の内側部分からの成分が吸着を妨げることによって、分画およびAvns富化を妨害する。
【0263】
全穀粒(粉砕されていない)の抽出物から得た乾燥させたエタノール溶出物画分はこの場合も同様に、3.1倍高いAvns A~C全含有量(8311ppm対2722ppm)、3.1倍高いAvn L含有量(792ppm対256ppm)および2.2倍高いβ-グルカン含有量(2.08対0.96%)を含有する。
【実施例7】
【0264】
スケールアップ
【0265】
860キロのエタノール(96.5容量%)と800kgの水との混合物を使用して、500キロ(キログラム)の粉砕されていない有機ハダカエンバク穀粒(Oliver品種、Bohlenser Muehleから購入し、ドイツにて栽培;実施例1、3、5または6で使用されたバッチとは異なるバッチ)を55~60℃で2時間抽出した。抽出液の分離後、同量のエタノールおよび水を使用して、抽出したエンバク穀粒の抽出を繰り返した。抽出した穀粒からの抽出液の分離後、2つの抽出液を合わせ、アリコートを乾燥させることにより、実施例5に記載されているように抽出収率を決定し、抽出収率は2.6重量%であることが判明した。
【0266】
エタノールを真空蒸留により、水性エタノール性抽出液から除去し、追加の水を加えて、およそ0.5~1.0重量%の乾燥物質含有量を有する水性抽出液を得た。
【0267】
Lewatit(登録商標)VP OC1064MD PH樹脂(Lanxess)を充填した20リットルスチールカラムに、得た水性抽出液(非調節のpH値を有する)を入れ、製造元の指示に従い洗浄し、水中で調整した。10~5l/分の流速で溶液をカラムに通した。次いで、残留する水を、真空によりまたはカラムを介して窒素を吹き込むことによりカラムから除去し、140キロのエタノール(96.5容量%)を使用して、吸着した抽出物成分を溶出した。
【0268】
アリコートを乾燥させることによって、エンバク穀粒に基づくエタノール溶出物の収率を決定し、収率は0.2重量%であることが判明した。
【0269】
アセトニトリル/水/0.1%ギ酸勾配を使用して、ODS-AQカラム(YMC)(陽性および陰性イオンモードのAmazonSLイオントラップ)上で、乾燥させたエタノール溶出物を、Avnについて、HPLC-DAD-MS測定により分析した。結果は表10に要約されている。
【0270】
300~360nmでの乾燥させたエタノール溶出物のHPLCクロマトグラムが図3に示されている。
【0271】
【表10-1】

【表10-2】
【0272】
グリセロールおよび水は一般的な化粧品溶媒であるので、グリセロールおよび水をエタノール溶出溶液に直接加え、次いでエタノールを除去することは、単純で、時間消費の少ない、エネルギー消費の低い、グリセロール/水ベース溶液の調製方式である。
【0273】
グリセロール99.5%および水をエタノール溶出溶液に加え、エタノールを真空蒸留により混合物から除去した。次いで、ソルビン酸カリウムを加え、保存目的のために、混合物を乳酸の手段によりpH4.5~pH3.5の間に調節した。50重量%の水、48.8重量%のグリセロールおよび0.2重量%のソルビン酸カリウムの混合物中の1%エンバク抽出液をこうして得た。最後に、濾過プレート上で溶液を濾過して、透明からわずかに濁った液体を得た。これにより、一般的な化粧品調製において製剤化するのが簡単な、簡単に使用できる、化粧品として認められている製品が得られる。
【0274】
乾燥させた抽出物、乾燥させたエタノール溶出物画分およびグリセロール/水溶液を上に記載されているように特徴付けた。結果は表11に要約されている。
【0275】
【表11】
【0276】
生産スケールで実施した場合、Avns A~C含有量がほんの1614ppmであることから分かるように、使用したエンバクが比較的低量のAvnsを含有したとしても、吸着ステップは、Avnsを、16020百万分率のAvns A~Cへと予想されたように富化させたことを結果は明確に示している。
【0277】
β-グルカン含有量もまた、この場合も同様に富化され、吸着ステップ後、同等の含有量のAvns(1.60重量%)およびβ-グルカン(1.65重量%)を有する抽出画分を生成した。
【0278】
同じ製造元からのハダカエンバク穀粒の250キロの異なるバッチを使用し、エンバク穀粒の抽出溶媒に対する比を保持してプロセスを繰り返した。上に記載されているように、エタノール溶出物画分中のAvnsの乾燥物質含有量に対してグリセロールおよび水の量を調節することにより、合計100~120百万分率のAvns A~Cを含有するエタノール溶出物画分のグリセロール/水ベース溶液を調製した。2つの抽出の結果を以下の表12で比較した。
【0279】
【表12】
【0280】
上記結果から分かるように、吸着ステップで得たAvnsの富化は、低いおよび高いAvns A~C含有量の両方のエンバク穀粒抽出物(1614対5758ppm)で効率的に達成される。
【0281】
ミネラルの含有量を、乾燥抽出物および乾燥させたエタノール溶出物画分に対してICにより決定した。結果は表13に示されている。
【0282】
【表13】
【0283】
これらの結果は実施例3で付与された結果と一致する。塩は乳剤安定性を減少させることが公知であり、カチオンは酸化反応を触媒することが公知であるため、観察されたミネラル(カチオンおよびアニオン)の減少は調製における用途に対して特に有益である。
【実施例8】
【0284】
1,2-ペンタンジオールならびに富化されたAvnおよびβ-グルカンを有するエンバク抽出画分の液体溶液
【0285】
乾燥物質含有量0.75重量%および乾燥物質中Avns A~C含有量16020ppmを有する、実施例7に記載されている通りに得た、100グラムのエンバクエタノール溶出物のアリコートを、50グラムの99.5%グリセロール、5グラムの1,2-ペンタンジオール(Hydrolite-5、Symrise)および30グラムの水と混合した。エタノールを真空により除去し、生成した溶液に水を加えて、100グラムを得た。溶液を濾過プレート上で濾過し、Avnsおよびβ-グルカンが富化された、わずかに濁った黄褐色の液体エンバク抽出画分を生成し、これは、Avns A~C含有量105ppm(15百万分率のAvn C、43百万分率のAvn A、47百万分率のAvn B)、Avn L含有量7ppm、および0.02%のβ-グルカンを特徴とした。
【実施例9】
【0286】
異なるAvnを含有する液体エンバク抽出画分溶液の安定性試験
【0287】
膜濾過(よって、β-グルカンは除去されている;Ceaproにより供給)で得たエンバク抽出画分のグリセロール/水ベース溶液に対して、同等のAvns A~C全含有量およびβ-グルカンを有する、実施例7および8で得たエタノール溶出物画分のグリセロール/水ベース溶液の酸化安定性および光安定性を評価した。
【0288】
液体は、Oxipressデバイスを使用して5バールの酸素に70℃で24時間曝露するか、またはXenotest440装置(60W、1294kJ/m、波長300~400nm)を使用して、6時間照射した。
【0289】
処理前および処理後に、Avnsの含有量をHPLCで決定し、色を比色で測定した(Hach Lange Lico690装置)。
【0290】
【表14】
【0291】
実施例7に従い得られたような、Avnsおよびβ-グルカンが富化され、カチオン含有量が減少したエンバク抽出画分は、酸化分解に対して、Ceaproから購入したAvn富化製品より安定していることを結果は明確に示しており、これは、使用されている方法により、Ceaproから購入したAvn富化製品から抗酸化性β-グルカンが除去されるのに対して、酸化分解触媒カチオンは除去されないからである。これはAvn C含有量および変色において特に観察可能である。
【0292】
表15に示されているLab colour値から分かるように、Ceaproから入手したエンバクのグリセロール/水ベース溶液はまたさらに濃い色を有する。
【0293】
【表15】
【0294】
実施例7に従い得たような、富化されたAvnsおよびβ-グルカンを有するエンバク抽出画分はまた、光誘発性分解に対して、β-グルカンを除去し、カチオンを除去していない、Ceaproから購入したAvn富化製品よりわずかに安定していることを結果が示している。これはAvn C含有量において特に観察可能である。
【実施例10】
【0295】
スプレー乾燥させたエンバク抽出画分
【0296】
乾燥物質含有量0.75重量%および乾燥物質中Avns A~C含有量16020ppmを有する、実施例7に記載されている通りに得た、220グラムのエンバクエタノール溶出物のアリコートに、440グラムの水を加えた。次いで、198グラムのコーン由来のマルトデキストリンDE17~20を水性エタノール溶液に溶解して、わずかに濁っているが、均質な黄色がかった溶液を得、次いでこれをスプレー乾燥して、図1に示されている粒径分布(Mastersizer2000、Malvern)を有する160グラムの白色粉末を生成した。図1では、10%の粒子はd(0.1)=2.868μmであり、50%の粒子はd(0.5)=8.518μmであり、90%の粒子はd(0.9)=18.294μmであり、比表面積は1.34m/gである。
【0297】
コーン由来のマルトデキストリンDE8を使用して、同じ実験を繰り返し、図2に示されている粒径分布(Mastersizer2000、Malvern)を有する160グラムの白色粉末を生成した。図2では、10%の粒子はd(0.1)=4.440μmであり、50%の粒子はd(0.5)=11.022μmであり、90%の粒子はd(0.9)=22.736μmであり、比表面積は0.96m/gである。
【0298】
【表16】
【0299】
同じ乾燥技術を使用して、エンバクエタノール画分濃縮粉末を調製した:1200gのマルトデキストリンDE17~20を1500gの水に溶解した。透明な溶液に、802ppmのAvn C、1429ppmのAvn A、2203ppmのAvn B(合計Avn A~C=4434ppm)および202ppmのAvn Lを含有する、上に記載されているような方法を使用して得た、エタノール/水1:1(w/w)中エンバクエタノール溶出物の10重量%溶液300gを撹拌下で加えた。次いで、得られた、濁っているが、均質な茶色がかった溶液をスプレー乾燥して、196ppmのAvn C、360ppmのAvn A、562ppmのAvn B(合計Avns A~C=1118ppm)および63ppmのAvn Lを含有し、色値、L*=91.60、a*=-0.12、b*=11.36を特徴とする薄いベージュ色の粉末970gを得た。
【0300】
スプレー乾燥させた固形粉末または粒状体は、取扱いおよび投与が簡単であるという利点を有する。スプレー乾燥は、高温への非常に短い曝露(1分未満)のみを必要とするので、非常に穏やかな乾燥技術であり、これによって、スプレー乾燥は敏感な成分に対して特に適切となる。また比較的安価な技術であり、よって、低量の乾燥物質および低い粘度を有する溶液の乾燥も可能となる。スプレー乾燥は十分確立された乾燥技術であり、商業規模で利用可能であり、これによって、製品パラメーターに影響を与える賦形剤、例えば、デキストリンまたはシクロデキストリン、他の加工デンプンまたはアラビアゴムの使用も可能となる。
【0301】
粒径はまた、それぞれの必要性および必要条件に応じて、例えば、スプレー床乾燥技術を使用して、例えば、凝集した粉末を生成することによって、より小さな粒子(0.07mm周辺)からより大きな粒子(0.4mm周辺まで)まで適応することができる。これは自由流動性があり、ほとんどダストを含まない粉末の調製を可能にする。
【実施例11】
【0302】
Avnsおよびβ-グルカンが富化された、スプレー乾燥させたエンバク抽出画分の安定性
【0303】
実施例10で得られたような、Avnsおよびβ-グルカンが富化されたスプレー乾燥させたエンバク抽出画分の酸化安定性および光安定性を、Oxipressデバイスを使用してこれらを5バールの酸素に60℃で72時間曝露することによって、またはXenotest440装置(60W、1294kJ/m、波長300~400nm)を使用してこれらに6時間照射することによって評価した。
【0304】
処理前および処理後に、Avnsの含有量をHPLCで決定し、色を比色により測定した。
【0305】
【表17】
【0306】
実施例10に従い得られたような、Avnsおよびβ-グルカンが富化されたスプレー乾燥させたエンバク抽出画分は、Avnsの含有量が影響を受けておらず、変色が観察されていないので、酸化分解に対して完全に安定していることを結果が明確に示している。
【0307】
【表18】
【0308】
実施例10に従い得られたような、Avnsおよびβ-グルカンが富化された、スプレー乾燥させたエンバク抽出画分は、Avnsの含有量が影響を受けておらず、変色が観察されていないので、光曝露に対して完全に安定していることを結果が明確に示している。
【0309】
実施例10に従い得られた、マルトデキストリンDE8上でスプレー乾燥させたエタノール溶出物に対して、酸化および光曝露に対して同等の結果を得た。これは、使用したマルトデキストリンDE値が安定性に影響を与えないことを示している。
【実施例12】
【0310】
Avnsおよびβ-グルカンを含有するAvena sativa(エンバク)穀粒の抽出画分の調製-pH3.0と非調節のpHの比較
【0311】
第1および第2の抽出において、1800および1200グラムの50%水性エタノール(w/w)をそれぞれ使用して、各事例において60℃で2時間撹拌しながら、950グラムの粉砕されていない有機エンバク穀粒(Nordlicht Naturkostから入手し、ドイツにて栽培)を実施例3に記載されている通り2回抽出した。実施例5に記載されているように抽出収率を決定し、これは結果として抽出収率2.2重量%をもたらした。
【0312】
残りの1920グラムの抽出液を2つの部分に分割した。第1の部分では:
(A)エバポレーターを使用して真空により、エタノールを抽出液990グラムから除去して(9.4グラムの乾燥抽出物)、400グラムを得た。水を加えることによって希釈して、800グラムの水性抽出液を得た(1.2重量%の乾燥物質)。次いで、pH値を、塩酸の手段により3.0に調節した。
【0313】
製造元の指示に従い洗浄し、水中で調整した、250グラムのLewatit(登録商標)VP OC1064MD PH樹脂(Lanxess)を直径4cmのガラスカラムに充填し、pH調節した水性抽出液をこれに入れた。重力により誘発される流速で、溶液をカラムに通した。得られた濾液を再度カラムに2回入れた。次いで、カラムを300グラムの水で洗浄し、過剰の水を真空により、または樹脂を介して窒素を吹き込むことにより除去した。次いで、600グラムのエタノールを使用して、吸着した抽出物成分を樹脂から溶出した。
【0314】
濾過水および洗浄水を合わせ、凍結乾燥して、4.5グラムのドライウォーター画分を得た。これは、エンバク穀粒に基づく収率1.1重量%に対応するものであった。
【0315】
エタノールを真空によりエタノール性溶出物から除去して、3.0グラムの乾燥エタノール画分を得た。これはエンバク穀粒に基づく収率0.7重量%に対応するものであった。
【0316】
第2の部分では:
(B)抽出液もう930グラムを(8.8グラムの乾燥抽出物)を、(A)に記載されているように処理して、800グラムの水性抽出液(1.1重量%乾燥物質)を得た。この溶液のpH値は調節しなかった。
【0317】
製造元の指示に従い洗浄し、水中で調整した、250グラムのLewatit(登録商標)VP OC1064MD PH樹脂(Lanxess)を直径4cmのガラスカラムに充填し、pH調節なしで水性抽出液をこれに入れた。吸着および溶出を(A)に記載されているように実施した。
【0318】
濾過水および洗浄水を合わせ、凍結乾燥させて、6.3グラムのドライウォーター画分を得た。これは、エンバク穀粒に基づく収率1.6重量%に対応するものであった。
【0319】
エタノールをエタノール性溶出物から、真空により除去して、2.1グラムの乾燥エタノール画分を得た。これは、エンバク穀粒に基づく収率0.5重量%に対応するものであった。
【0320】
乾燥させた抽出物および画分を上に記載されているように特徴付けた。結果が表19に要約されている。
【0321】
【表19】
【0322】
両方の乾燥させたエタノール溶出物画分が乾燥させた水性エタノール抽出物と比較して、より高いAvns含有量を示すことを結果は示している。pH調節なしの水性抽出液から得た乾燥させたエタノール溶出物画分は、3.8倍高いAvns A~C全含有量を含有し、pH3に調節した水性抽出液から得た乾燥させたエタノール溶出物画分は、3.0倍高いAvns A~C全含有量(5294および4189ppm対1385ppm)を含有する。
【0323】
しかし、pH調節なしの水性抽出液から得た乾燥させたエタノール溶出物画分は、pH3に調節した水性抽出液と比較して、26%(1.26倍)高いAvns A~C全含有量を含有する(5294対4189ppm)。
【0324】
驚くことに、乾燥させたエタノール溶出物画分(A)はまた、β-グルカンが水溶性であったとしても乾燥させた水性エタノール抽出物よりも2.2倍高いβ-グルカン含有量を含有する。
【実施例13】
【0325】
異なる抽出溶媒(抽出剤)を用いた、粉砕されていないハダカエンバク(Avena nuda)穀粒の抽出
【0326】
100gのハダカエンバク穀粒(Bohlenser Muehleから購入、ドイツにて栽培、品種Oliver)を、以下の表に付与されたような抽出剤300gで(w/w)、55℃で、2時間撹拌下で抽出した。混合物を室温に冷却し、遠心分離および濾過により穀粒を抽出液から分離した。抽出した穀粒を、第2の部分の300gの抽出剤を用いて再度、55℃で2時間抽出し、抽出液を上に記載されているように穀粒から分離した。2つの抽出液を合わせ、エバポレーターを使用することにより、抽出溶媒を真空下で除去し、得た乾燥抽出物を秤量して、抽出収率を決定した。実施例1に記載されているように、Avnsを乾燥抽出物中で定量化した。
【0327】
【表20】
【0328】
水単独での抽出では、Avns含有量は低く、β-グルカンは検出不可能であったため、適切な抽出物が得られないことを結果が明確に示している。有機溶媒と水の混合物により得たすべての抽出物は、Avnsおよびβ-グルカンを同時に含有するので適切であり、よって、以前に実施例に記載されているように、これらを吸着ステップにより分画することは、一般的に適切である。抽出物収率は2.2~3.7%の間であり、抽出物は、1.25~2.73%の間のβ-グルカンおよび752~4348ppmの間のAvns A~Cの合計を含有した。
【実施例14】
【0329】
本発明によるエンバク抽出物(実施例7)とWO2004/047833A1によるエンバク抽出物の比較:
【0330】
WO2004/047833A1の実施例3に記載されているような栽培したエンバクわら(Avena sativa)から得られる、アントラニル酸アミド含有抽出物の抽出:
【0331】
143kgのエタノール/水7:3(v/v)を9kgの栽培したエンバクわらに加え、混合物を室温で3日間浸軟させる。濾過後、抽出物を真空下で水相に濃縮する(17.4kg、固形成分含有量:2.5%;乾燥抽出物中のアベナンスラミドA、BおよびCの合計:0.093%)。
【0332】
Amberlite XAD-16(270g)と共に撹拌することにより、水溶液を少しずつ抽出する(2kg)。フリットを介して、吸着樹脂を分離し、水で洗浄し、メタノール/水1:1(v/v)で溶出する。合わせた溶出物は真空下で溶媒から取り除く。乾燥抽出物:8.5g;アベナンスラミドA、BおよびCの合計:1.2%。
【0333】
この乾燥抽出物をエタノール/水1:1(v:v)中に溶解させ、エタノール/水1:1(v/v)での希釈により、アベナンスラミド含有量、すなわち全アベナンスラミドA、BおよびC500ppmに調節する。
【0334】
文献に記載されているように、エンバクわらもまたβ-グルカン:Hager Rom2006、Hagers Handbuch der Drogen und Arzneistoffe:Avenae stramentum(エンバクわら):成分:炭水化物、β-グルカン[8]、セルロース、キシランおよびオリゴ糖ケストース、ネオケストース、ビフルコース、ネオビフルコース;[7]アベナリン[53]、ペクチン0.8%[17]またはD.M.Gibeautら、Plant Physiol.、1990、94巻、411~416ページ:エンバク、および、よって同様にエンバクわらにおける、葉-葉鞘の葉枕[=成長に依存しない動作を促進する植物の葉または葉状部分の基部にある関節様の肥厚である(Wikipedia)]中のβ-グルカンを含有する。
【0335】
【表21】

実施例7によるプロセス(76.4%対WO2004/047833における実施例3によるプロセスでは25.2%のみ)を使用することにより、エンバク供給源からのアベナンスラミドの回収率はずっとより効率的となることを比較が明確に示している。
【0336】
Avnsに対して、ODS-AQカラム(YMC)(陽性および陰性イオンモードでのBruker Esquireイオントラップ)上のアセトニトリル/水/0.1%ギ酸勾配を使用して、WO2004/047833A1によるエンバクわら抽出物の乾燥させたメタノール/水1:1(v/v)の溶出物をHPLC-DAD-MS測定により分析した。結果は表22に要約されている。
【0337】
328~332nmでの、乾燥させたメタノール/水1:1(v/v)溶出物のHPLCクロマトグラムが図4に示されている。
【表22】
【実施例15】
【0338】
エンバク抽出画分中のアベナンスラミド、β-グルカンおよび塩の含有量
【0339】
【表23】
【0340】
少なくとも1種のアベナンスラミドまたは全アベナンスラミドの、β-グルカンに対する重量比は0.25:1~4:1の範囲、より好ましくは0.3:1~3:1の範囲である。
【0341】
【表24】
【0342】
エンバク抽出物中の塩の含有量は1重量%以下、特に0.5重量%以下である。
【実施例16】
【0343】
製剤例
【0344】
製剤例1~11において、以下の2種の香油PFO1およびPFO2をそれぞれ香料として使用した(DPG=ジプロピレングリコール)。
【0345】
【表25】
【0346】
【表26】
【0347】
【表27-1】

【表27-2】

【表27-3】

【表27-4】

【表27-5】

【表27-6】

【表27-7】

【表27-8】

【表27-9】

【表27-10】

【表27-11】

【表27-12】
【0348】
【表28】
【0349】
【表29】
【0350】
【表30】
【0351】
【表31】
【0352】
【表32】
【0353】
【表33】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】