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特表2023-516485シード層、シード層を備えるヘテロ構造、及びシード層を使用して材料層を形成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】シード層、シード層を備えるヘテロ構造、及びシード層を使用して材料層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20230412BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/365
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554483
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 SG2021050118
(87)【国際公開番号】W WO2021183050
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】10202002196X
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517435434
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティー オブ シンガポール
【氏名又は名称原語表記】National University of Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エチルマズ、バルバロス
(72)【発明者】
【氏名】トー、チー タット
(72)【発明者】
【氏名】アビディ、イルファン ハイダー
【テーマコード(参考)】
5F045
【Fターム(参考)】
5F045AA12
5F045AB07
5F045AB09
5F045AB10
5F045AB14
5F045AB21
5F045AB22
5F045AB23
5F045AC07
5F045AC16
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AE15
5F045AF01
5F045AF02
5F045AF03
5F045AF04
5F045AF06
5F045AF07
5F045AF09
5F045AF10
5F045AF19
5F045CA10
5F045CA13
5F045DA52
5F045HA16
(57)【要約】
核形成を誘発して材料層106を形成するためのシード層102が記載される。一実施形態では、シード層102は、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子をシード層102の表面に結合する電位井戸を形成して、材料層を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、電位井戸はそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子をシード層の表面上で捕捉する。シード層を形成する方法、シード層102を備えるヘテロ構造100、シード層を備えるヘテロ構造を形成する方法300、ヘテロ構造を備えるデバイス、及び吸着原子とシード層の表面との間のvdW相互作用を向上させる方法に関連する実施形態も記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核形成を誘発して材料層を形成するためのシード層であって、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子を前記シード層の表面に結合する電位井戸を形成して、前記材料層を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、
前記電位井戸がそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子を前記シード層の前記表面上で捕捉する、シード層。
【請求項2】
前記2D単層非晶質材料の層が、2D単層非晶質炭素を含む、請求項1に記載のシード層。
【請求項3】
前記シード層が、550nm~800nmの光波長で98%を超える光透過性を有する、請求項2に記載のシード層。
【請求項4】
前記シード層が700℃の温度で熱的に安定している、請求項2又は3に記載のシード層。
【請求項5】
前記シード層が、前記2D単層非晶質材料の層上に堆積させた2D単層非晶質材料の1つ又は複数の追加の層を更に備えて、前記シード層の多層構造を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシード層。
【請求項6】
シード層を形成する方法であって、前記シード層が、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子を前記シード層の表面に結合する電位井戸を形成して、材料層を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、前記電位井戸がそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子を前記シード層の前記表面上で捕捉し、
前記方法が、
レーザーアシスト化学気相成長(LCVD)を使用して、前記シード層を基板上に成長させることを含む、方法。
【請求項7】
前記LCVDが20℃から400℃の範囲の温度で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に形成されたシード層とを備え、前記シード層が、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子を前記シード層の表面に結合する電位井戸を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、前記電位井戸がそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子を前記シード層の前記表面上で捕捉する、ヘテロ構造。
【請求項9】
前記基板が、金属、半導体、絶縁体、ガラス、ポリマー、シリコン、炭化シリコン、サファイア、III-V族基板、II-VI族基板、又は酸化物のうち1つを含む、請求項8に記載のヘテロ構造。
【請求項10】
前記基板が結晶質基板であり、前記シード層が、前記結晶質基板の結晶性によってもたらされる効果をスクリーニングするように適合される、請求項8又は9に記載のヘテロ構造。
【請求項11】
前記シード層上に形成された材料層を更に備え、前記材料層が、前記ファンデルワールス(vdW)相互作用によって、材料の吸着原子を前記シード層の前記表面に結合することによって形成される、請求項8から10のいずれか一項に記載のヘテロ構造。
【請求項12】
前記材料層が、2D材料の1つ又は複数の層を備え、前記2D材料が、グラフェン、ボロフェン、窒化ホウ素、ペロブスカイト、遷移金属ジカルコゲナイド、又はブラックフォスフォレンのうち1つを含む、請求項11に記載のヘテロ構造。
【請求項13】
前記材料層が、III-V族半導体材料の1つ又は複数の層を含む、請求項11に記載のヘテロ構造。
【請求項14】
前記III-V族半導体材料が、GaAs、GaN、AlN、InP、及びInNのうち1つを含む、請求項13に記載のヘテロ構造。
【請求項15】
前記材料層が、II-VI族半導体材料の1つ又は複数の層を含む、請求項11に記載のヘテロ構造。
【請求項16】
前記II-VI族半導体材料が、CdTe、CdS、及びZnSのうち1つを含む、請求項15に記載のヘテロ構造。
【請求項17】
前記材料層が、酸化物の1つ又は複数の層を含む、請求項11に記載のヘテロ構造。
【請求項18】
前記酸化物が、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、ペロブスカイト、又はスピネルのうち1つを含む、請求項17に記載のヘテロ構造。
【請求項19】
前記シード層が2D単層非晶質炭素を含む、請求項8から18のいずれか一項に記載のヘテロ構造。
【請求項20】
請求項8から19のいずれか一項に記載のヘテロ構造を備えるデバイス。
【請求項21】
材料層を基板上に形成する方法であって、
シード層を前記基板上に形成することであって、前記シード層が、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子を前記シード層の表面に結合する電位井戸を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、前記電位井戸がそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子を前記シード層の前記表面上で捕捉する、シード層を前記基板上に形成することと、
前記ファンデルワールス(vdW)相互作用によって材料の吸着原子を前記シード層の前記表面に結合することによって、前記材料層を前記シード層上に形成することと、を含む方法。
【請求項22】
前記材料の前記吸着原子と前記シード層の前記表面との間の前記vdW相互作用の強度を調整するために、前記2D単層非晶質材料の層の前記無秩序な原子構造を変化させることを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ハンドリング層を前記材料層上に形成することと、
前記シード層及び前記材料層を備える自立膜を形成するために、前記シード層を前記基板から分離することと、を更に含む請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記シード層を前記基板上に形成することが、レーザーアシスト化学気相成長(LCVD)を使用して前記シード層を前記基板上に成長させることを含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記レーザーアシストCVDが20℃~400℃の温度で実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
材料層をシード層上に形成するための、吸着原子と前記シード層の表面との間のファンデルワールス(vdW)相互作用を向上させる方法であって、前記シード層が二次元(2D)単層の層を備え、
無秩序な原子構造を前記シード層内に形成することであって、前記シード層の前記無秩序な原子構造が、局在電子状態を作り出して、vdW相互作用によって前記吸着原子を前記シード層の前記表面に結合する電位井戸を形成して、前記材料層を形成するように適合され、前記電位井戸がそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子を前記シード層の前記表面上で捕捉する、無秩序な原子構造を前記シード層内に形成することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シード層、シード層を備えるヘテロ構造、及びシード層を使用して材料層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種材料の統合は、高性能な半導体デバイスを作製するための重要な態様である。例えば、発光ダイオード、赤外(IR)センサ、光検出器、及び太陽電池など、高速かつ高効率の光電子デバイスは、一般に、III-V族半導体(GaAs、GaN、InP、及びその他)ならびにII-VI族半導体(CdTe、CdS、ZnS、酸化物、及びその他)とシリコン(Si)マイクロエレクトロニクスとの統合を要する、多層ヘテロ構造を伴う。かかる統合の利点は、III-V族又はII-VI族材料から得られるすぐれた光電子特性、ならびにSiと相補型金属酸化物半導体(CMOS)技術との経済性及び適合性にある。
【0003】
かかる多層ヘテロ構造の形成に用いられる従来技法は、基板上に成長させた材料のエピ層が下にある基板材料に共有結合される、エピタキシャル成長である。しかしながら、かかる多層ヘテロ構造の適切な品質を達成するために、厳しい要件を満たす必要があり、それによって多層ヘテロ構造の汎用性が制限される。例えば、従来のエピタキシャル成長方法を使用した、Si上へのIII-V族又はII-VI族材料の直接ヘテロエピタキシーは、III-V族又はII-VI族材料とSiとの間の熱膨張、極性、及び格子不整合により、一般に不可能である。
【0004】
これを克服する1つの方法は、ファンデルワールスエピタキシー(vdWE)技法を使用することによるものである。ファンデルワールスエピタキシー(vdWE)技法は、吸着原子と基板表面との間の非共有相互作用に基づく。非共有相互作用は、格子整合の要件を緩和し、不整合が比較的大きい材料が互いの上に成長することを可能とする。二次元(2D)材料の成長に対する適合性があるため、vdWE技法は、近年、半導体デバイスの作製を促進する注目の材料成長方法となっている。残念ながら、結晶質2D材料は一般的に、表面上にダングリングボンドを有さず、したがって、後続のエピタキシャル成長中の吸着原子の表面エネルギー及び吸着エネルギーが非常に低くなる。これにより、均一でひずみがない膜を得るための、vdWE技法を使用したヘテロ構造の成長が困難になっており、後続のエピタキシャル成長に関して、島状の成長、低い成長速度、不良膜がもたらされる場合が多い。これは、結果として得られるデバイスのデバイス性能に意図せず影響を及ぼす。2D材料上への三次元(3D)材料の統合は、このvdWE技法で用いられるvdW相互作用が弱いことを考えると、より一層困難である。弱いvdW相互作用により、一般的な3D材料による2D材料表面のぬれ性が非常に低くなるので、均一で平坦な膜の代わりに、不均一でひずみがあり、クラスタ化した3D材料膜が形成される。
【0005】
したがって、上述の問題に対処し、ならびに/又は有用な代替案を提供する、シード層、シード層を備えるテロ構造、及びシード層を使用して材料層を形成する方法を提供することが望ましい。更に、後続の詳細な説明及び添付の請求の範囲を、添付図面及び本開示のこの背景技術と併せ読むことにより、他の望ましい特徴及び特性が明白となるであろう。
【発明の概要】
【0006】
本出願の態様は、シード層、シード層を形成する方法、シード層を備えるヘテロ構造、ヘテロ構造を備えるデバイス、シード層を使用して材料層を形成する方法、及び吸着原子とシード層の表面との間のファンデルワールス(vdW)相互作用を向上させる方法に関する。
【0007】
第1の態様によれば、核形成を誘発して材料層を形成するためのシード層が提供される。シード層は、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子をシード層の表面に結合する電位井戸を形成して、材料層を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、電位井戸はそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子をシード層の表面上で捕捉する。
【0008】
無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備えるシード層を使用することにより、無秩序な原子構造によって局在電子状態が作り出されて、vdW相互作用によって材料層を成長させる間、吸着原子を吸着するための高エネルギーサイトとして作用する電位井戸が形成される。これにより、(例えば、従来のvdWエピタキシーと比較して)吸着原子とシード層の表面との間の相互作用がより強力になり、シード層の表面上における吸着原子の核形成密度がより高くなって、それらがともに働いて、均一で平坦な材料層成長を達成するための、シード層の表面上における吸着原子のぬれ性が向上する。更に、下にある基板と材料層との間の相互作用を調整するため、シード層の無秩序な原子構造を、完全非晶質相からナノ結晶相へと調整することもでき、それにより、この材料層の成長を遠隔的に制御するための有用なハンドリングがもたらされる。更に、材料層の成長は、吸着原子とシード層との間のvdW相互作用から得られるので、シード層は、任意の材料層を任意の基板上に成長させることを可能にする、汎用的なシード層として機能する。更にまた、シード層の表面と材料層との間のより強力なvdW相互作用により、成長させた材料層を下にある基板から分離させて、ヘテロ構造電子デバイスの設計において有利なことがある、自立膜を作成することが可能になる。
【0009】
2D単層非晶質材料の層は、2D単層非晶質炭素を含んでもよい。
【0010】
シード層は、550nm~800nmの光波長で98%を超える光透過性を有してもよい。
【0011】
シード層は、室温から700℃まで、室温から600℃まで、室温から500℃まで、室温から400℃まで、室温から300℃まで、室温から200℃まで、室温から100℃まで、あるいは600℃~700℃、500℃~700℃、400℃~700℃、300℃~700℃、200℃~700℃、100℃~700℃、20℃~700℃、又は700℃の温度で、熱的に安定していてもよい。
【0012】
シード層は、2D単層非晶質材料の層上に堆積させた2D単層非晶質材料の1つ又は複数の追加の層を備えて、シード層の多層構造を形成してもよい。
【0013】
第2の態様によれば、シード層を形成する方法が提供され、シード層は、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子をシード層の表面に結合する電位井戸を形成して、材料層を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、電位井戸はそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子をシード層の表面上で捕捉し、方法は、レーザーアシスト化学気相成長(LCVD)を使用して、シード層を基板上に成長させることを含む。
【0014】
LCVDは、光分解プロセスを利用することによって、低温で様々な基板(金属、半導体、絶縁体、ガラス、及びポリマー)上に直接シード層を非触媒成長させることができる。光分解とは、1つ又は複数の光子を使用して分子の化学反応を誘発して、分子をより単純な粒子へと分解することを指す。これによって多数の利点がもたらされる。第一に、レーザーアシストCVDを使用することにより、対象の基板上にシード層を直接成長させることが可能になり、したがって、シード層又は対象の材料を特定のベース基板上にのみ成長させることができる場合に必要となる、通常実践される時間がかかる転移方法を避けることが可能になる。第二に、シード層を対象の基板上に成長させ、転移方法を避けることができることにより、材料層の成長を同じCVD又は成長プロセスにおいてその位置で形成することができるため、後続の材料層の成長のためにより清浄なシード層が提供される。これにより、シード層の表面上の潜在的な不純物が低減されるため、欠陥がなく均一で平坦な材料層をシード層上に形成することが可能になる。明瞭にするため、後続の材料層の成長はLCVDに限定されないことが認識されるべきである。成長プロセスをその位置で実現できる場合、材料層(例えば、2D、3D、又は酸化物材料)を形成するための他の好適な成長プロセスを使用することができる。第三に、LCVDプロセスは、特に、ベース基板の材料の熱安定性が低い(例えば、300℃又は400℃未満の温度で熱的に安定である)場合、ベース基板上にシード層をより低温で成長させることが可能であり、それによって、後続の成長のためにベース基板の材料の無垢な表面及び結晶性を保持することができる。第四に、低温レーザーアシストCVDプロセスは、従来の半導体処理技術とも適合性がある。
【0015】
第3の態様によれば、基板と、基板上に形成されたシード層とを備えるヘテロ構造が提供され、シード層は、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子をシード層の表面に結合する電位井戸を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、電位井戸はそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子をシード層の表面上で捕捉する。
【0016】
基板は、金属、半導体、絶縁体、ガラス、ポリマー、シリコン、炭化シリコン、サファイア、III-V族基板、II-VI族基板、又は酸化物のうち1つを含んでもよい。
【0017】
基板が結晶質基板である場合、シード層は、結晶質基板の結晶性によってもたらされる効果をスクリーニングするように適合されてもよい。
【0018】
ヘテロ構造は、シード層上に形成された材料層を備えてもよく、材料層は、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって、材料の吸着原子をシード層の表面に結合することによって形成される。
【0019】
材料層は、2D材料の1つ又は複数の層を備えてもよく、2D材料は、グラフェン、ボロフェン、窒化ホウ素、ペロブスカイト、遷移金属ジカルコゲナイド、又はブラックフォスフォレンのうち1つを含む。
【0020】
材料層は、III-V族半導体材料の1つ又は複数の層を含んでもよい。
【0021】
III-V族半導体材料は、GaAs、GaN、AlN、InP、及びInNのうち1つを含んでもよい。
【0022】
材料層は、II-VI族半導体材料の1つ又は複数の層を含んでもよい。
【0023】
II-VI族半導体材料は、CdTe、CdS、及びZnSのうち1つを含んでもよい。
【0024】
材料層は、酸化物の1つ又は複数の層を含んでもよい。
【0025】
酸化物は、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、ペロブスカイト、又はスピネルのうち1つを含んでもよい。
【0026】
シード層は、2D単層非晶質炭素を含んでもよい。
【0027】
第4の態様によれば、いずれかの上述のヘテロ構造を備えるデバイスが提供される。
【0028】
第5の態様によれば、材料層を基板上に形成する方法が提供される。方法は、シード層を基板上に形成することであって、シード層が、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子をシード層の表面に結合する電位井戸を形成するように適合された、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備え、電位井戸がそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子をシード層の表面上で捕捉する、シード層を基板上に形成することと、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって材料の吸着原子をシード層の表面に結合することによって、材料層をシード層上に形成することとを含む。
【0029】
方法は、2D単層非晶質材料の層の無秩序な原子構造を変化させることによって、材料の吸着原子とシード層の表面との間のvdW相互作用の強度を調整することを含んでもよい。
【0030】
方法は、ハンドリング層を材料層上に形成することと、シード層を基板から分離して、シード層及び材料層を備える自立膜を形成することとを含んでもよい。
【0031】
シード層を基板上に形成することは、レーザーアシスト化学気相成長(LCVD)を使用してシード層を基板上に成長させることを含んでもよい。
【0032】
レーザーアシストCVDは、室温(例えば、20℃)~400℃、20℃~50℃、20℃~100℃、20℃~150℃、20℃~200℃、20℃~300℃、100℃~200℃、100℃~300℃、200℃~300℃、200℃~400℃、又は300℃~400℃の温度で実施されてもよい。いくつかの実施形態では、20℃~300℃又は20℃~400℃の温度範囲は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)技術が一般的にこれらの温度範囲内の温度制限を有することを考慮すると、工業プロセスに対して相補的であるため有利なことがある。例えば、薄膜材料におけるナノメートルサイズのドメインは、300℃又は400℃を超える高温に暴露された場合に損傷を受けることがある。いくつかの実施形態では、LCVD成長プロセスには加熱が不要であり、したがって使用される成長機器がヒータ又は好適な熱分離/閉じ込めを具備する必要がないことがあるため、LCVDを使用して室温でシード層を成長させることが有利となり得る。更に、シード層のLCVD成長のための加熱を排除することで、消費エネルギーも低減され、したがって材料成長の総コストが低減される。
【0033】
第6の態様によれば、材料層をシード層上に形成するための、吸着原子とシード層の表面との間のファンデルワールス(vdW)相互作用を向上させる方法が提供される。シード層は、二次元(2D)単層の層を備え、方法は、無秩序な原子構造をシード層内に作り出すことを含み、シード層の無秩序な原子構造は、局在電子状態を作り出して、vdW相互作用によって吸着原子をシード層の表面に結合する電位井戸を形成して、材料層を形成するように適合され、電位井戸はそれぞれ、周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有して、吸着原子をシード層の表面上で捕捉する。
【0034】
1つの態様に関する特徴は、他の態様に適用可能であってもよいことが認識されるべきである。したがって、実施形態は、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備えるシード層を提供し、無秩序な原子構造によって局在電子状態が作り出されて、vdW相互作用によって材料層を成長させる間、吸着原子を吸着するための高エネルギーサイトとして作用する電位井戸を形成する。これにより、吸着原子とシード層の表面との間の相互作用がより強力になり、シード層の表面上における吸着原子の核形成密度がより高くなって、それらがともに働いて、均一で平坦な材料層成長を達成するための、シード層の表面上における吸着原子のぬれ性が向上する。更に、下にある基板と材料層との間の相互作用を調節するため、シード層の無秩序な原子構造を、完全非晶質相からナノ結晶相へと調整することもでき、それにより、この材料層の成長を遠隔的に制御するための有用なハンドリングがもたらされる。更に、シード層の表面と材料層との間のより強力なvdW相互作用により、成長させた材料層を下にある基板から分離させて、ヘテロ構造電子デバイスの設計において有利となり得る、自立膜を作成することが可能になる。
【0035】
ここで、実施形態について、単に例として、以下の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】一実施形態による、シード層を備えるヘテロ構造を概略的に示す構造図である。
図2】一実施形態による、単層非晶質炭素(MAC)を含むシード層を示す概略平面図である。
図3図1のヘテロ構造を形成する方法のステップを示すフローチャートである。
図4図1のヘテロ構造を使用してシード層及び材料層を備える自立膜を形成する方法のステップを示すフローチャートである。
図5図4に関連する自立膜を形成する方法のステップを示す概略図である。
図6】一実施形態による、3つの別々の基板、つまりチタン、ガラス、及び銅の上の成長させたMAC膜を撮った写真である。
図7図6の成長させたMAC膜のラマンスペクトルを示す図である。
図8】一実施形態による、MAC膜の格子構造内において局在ひずみを誘発する、MAC膜内の面外構造緩和の理論的シミュレーションを示す図である。
図9】MACの原子構造における局在電子分布を示す、波動関数の二乗の係数を上に重ねた図8の理論的シミュレーションに使用されるモデルを示す図である。
図10】一実施形態による、MACの光透過スペクトルのプロットを示す図である。
図11A】一実施形態による、2つの異なる構造上の変化を有するシード層の走査型透過電子顕微鏡(STEM)画像を示す図であり、図11Aは、MAC膜のSTEM画像を示す図である。
図11B図11Bは、ナノ結晶質グラフェン膜のSTEM画像を示す図である。
図12A】一実施形態による、約700℃での温度処理前及び後のMACのラマンスペクトルを示す図であり、図12Aは、温度処理前のMACのラマンスペクトルを示す図である。
図12B図12Bは、温度処理後のMACのラマンスペクトルを示す図である。
図13】温度処理後の図12BのMACの透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。
図14】一実施形態による、基板上のシード層上に成長させた二次元(2D)材料を備えるヘテロ構造を示す概略図である。
図15】一実施形態による、基板上のシード層上に成長させた三次元(3D)材料を備えるヘテロ構造を示す概略図である。
図16A】一実施形態による、3つの異なる表面上に成長させたMoSの光学画像を示す図であり、図16Aは、二酸化シリコン(SiO)上に成長させたMoSの光学画像を示す図である。
図16B図16Bは、SiO上の単層のMAC上に成長させたMoSの光学画像を示す図である。
図16C図16Cは、SiO上の数層のMAC上に成長させたMoSの光学画像を示す図である。
図17A】一実施形態による、サファイア基板を使用して成長させたMoSの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図であり、図17Aは、サファイア基板上に直接、及びサファイア基板上のMACの単層上に成長させたMoSのSEM画像を示す図である。
図17B図17Bは、サファイア基板上のMACの単層上に成長させたMoSの拡大SEM画像を示す図である。
図18A】一実施形態による、サファイア基板を使用して成長させたMoSの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図であり、図18Aは、サファイア基板上に直接、及びサファイア基板上の数層のMAC上に成長させたMoSのSEM画像を示す図である。
図18B図18Bは、サファイア基板上の数層のMAC上に成長させたMoSの拡大SEM画像を示す図である。
図19】一実施形態による、SiO基板上の単層のMAC上に成長させたInSeの原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
例示的実施形態は、シード層、シード層を形成する方法、シード層を備えるヘテロ構造、ヘテロ構造を備えるデバイス、シード層を使用して材料層を形成する方法、及び吸着原子とシード層の表面との間のvdW相互作用を向上させる方法に関する。
【0038】
本出願では、別段の具体的な指定がない限り、単数形の使用は複数形を含むことが認識される。本明細書及び添付の請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によって別段の明示がない限り、複数形を含むことが注目されるべきである。更に、「~を含む(including)」、「~を備える(comprising)」、及び「~を有する(having)」という用語、ならびに「含む(include)」、「備える(comprise)」、「有する(have)」などの他の形態の使用は、限定とはみなされない。
【0039】
本出願では、本明細書に記載するようなデバイス及び/又はヘテロ構造は、様々な向きで実施可能であってもよく、したがって、「上」、「基部」、「下にある」などの用語は、以下の記載において使用されるとき、便宜上、相対位置又は方向の理解を助けるために使用されるものであり、デバイス及び/又はヘテロ構造の向きを限定しようとするものではないことが理解されるべきである。
【0040】
本明細書で使用するとき、「及び/又は」という用語は、関連して列挙される項目の1つ又は複数のあらゆる組み合わせを含む。
【0041】
本発明の実施形態では、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を備えるシード層を使用し、無秩序な原子構造によって局在電子状態が作り出されて、電位井戸を形成することによって、シード層に、vdW相互作用によって材料層を成長させる間、吸着原子を吸着するための高エネルギーサイトが提供される。局在電子状態とは、互いに重なり合うように延長されていない2D単層非晶質材料内の電子状態の分布を指す。特に、無秩序な材料系では、これらの局在電子状態は互いから十分に隔離され、これは2D単層非晶質材料の電気伝導をなくすことを導き得る。2D単層非晶質材料の局在電子状態によって形成される電位井戸とは、利用可能な周囲の熱エネルギーよりも大きい電位エネルギーを有することによって、シード層の表面上の、好ましくはこれらの電位井戸の位置にある吸着原子を捕捉する、トラップサイトを指す。2D単層非晶質材料の無秩序な原子構造によって作り出される局在電子状態によって形成されるこれらの電位井戸は、吸着原子とシード層の表面との間の強力な相互作用と、シード層の表面上における吸着原子の高い核形成密度とをもたらし、それらがともに働いて、後続の均一で平坦な材料層成長を達成するための、シード層の表面上における吸着原子のぬれ性が向上する。本例では、吸着原子のぬれ性を向上させることとは、吸着原子とシード層の表面との間の引力を改善して、この引力が吸着原子間の引力相互作用力よりも強くなるようにすることを指す。吸着原子のぬれ性を向上させることで、シード層の表面上に吸着原子のクラスタが形成される代わりに、表面上に吸着原子の均一な分布が形成される。更に、下にある基板と材料層との間の相互作用を調整するため、シード層の無秩序な原子構造を、完全非晶質相からナノ結晶相へと調整することもでき、それにより、この材料層の成長を遠隔的に制御するための有用なハンドリングがもたらされる。更に、シード層の表面と材料層との間の強力なvdW相互作用により、成長させた材料層を下にある基板から分離させて、ヘテロ構造電子デバイスの設計において有利となり得る、自立膜を作成することが可能になる。現在の文脈では、「非晶質材料」という用語は、結晶質材料に典型的である長距離秩序がない材料を指す。「単層」という用語は、厚さ数オングストローム(Å)から数ナノメートルの範囲であってもよい、1原子厚さの層を指す。
【0042】
図1は、一実施形態による、ヘテロ構造100の概略構造を示している。ヘテロ構造100は、基板104上に形成されたシード層102を備える。図1に示されるように、シード層102は基板104上に直接形成される(即ち、シード層102は基板104の上に隣接して形成される)。基板104は、シード層102に対して構造的支持を提供する。ヘテロ構造100はまた、シード層102上に形成された材料層106を含む。材料層106は任意の対象材料を含み、これについては、下記の図14及び図15に関連して更に記載する。シード層102は、無秩序な原子構造を有する二次元(2D)単層非晶質材料の層を含む。無秩序な原子構造は、局在電子状態を作り出して、ファンデルワールス(vdW)相互作用によって吸着原子をシード層102の表面に結合するための電位井戸を形成して、材料層106を形成するように適合される。2D単層非晶質材料の層を含むシード層102は、シード層102が、吸着原子とシード層102の表面との間のvdW相互作用を向上させる電位井戸を形成するための局在電子状態を作り出す、無秩序な原子構造を有する限り、任意の2D材料によって形成されてもよい。
【0043】
後述する実施形態では、単層非晶質炭素(MAC)が、シード層102のための例示的な2D単層非晶質材料として使用される。図2図19は、MACの1つ又は複数の層をシード層102として使用することに関連して記載する。MACはsp結合炭素格子を含み、これはグラフェン単層と同様のvdW相互作用を保持するが、追加のvdW相互作用をその無秩序な原子構造から提供し、それによって、吸着原子をMACの表面に対して面内で整列させるための駆動力として作用することができる局在電子状態が作り出される。MACをシード層102として使用すると、これによって、シード層102の表面上における吸着原子の表面ぬれ性が(例えば、グラフェン又は他の結晶質2D材料と比較して)より高くなり、それによって材料層106の均一で平坦な成長が可能になる。これにより、MACが、例えばグラフェンとは対照的に、様々な材料膜をエピタキシャル及び/又は非エピタキシャル成長させるためのシード層102の理想的な候補となる。
【0044】
図2は、MACを含むシード層の平面図200の概略を示している。図2に示されるように、MACは、結晶粒界を有さず(均質の)二次元(2D)の無秩序なsp炭素(C)原子の連続ネットワークを有する無秩序な原子配置を備える。これは、結晶粒界で分離された(不均質な)秩序化された結晶質ドメインを含む、従来の多結晶質グラフェンとは対照的である。結晶粒界がMACシード層102にないことにより、開示するMACシード層102は超強力であって、曲げ及び伸展などの変形を要することがある用途に適するようになっている。MACでは、六角形炭素環と炭素環の総数(即ち、六角形及び非六角形炭素環の総数)との比は、1未満であってもよい。
【0045】
図3は、図1のヘテロ構造100を形成する方法300のステップを示すフローチャートを示している。
【0046】
ステップ302で、シード層102が基板104上に形成される。本実施形態では、シード層102は単層非晶質炭素(MAC)を含み、基板104はサファイア基板を含む。本実施形態では、MACは、室温で、炭化水素を前駆体(例えば、CH、Cなど)として用いて、レーザーアシスト化学気相成長(LCVD)プロセスを使用して形成される。水素ガス(H)及びアルゴンガス(Ar)も前駆体と混合されてもよい。このLCVDプロセスでは、レーザーは、光分解と呼ばれるプロセスにおいて前駆体ガスを分解するエネルギー源、及び局所熱源の両方として機能する。本実施形態では、MACシード層102を作成するためのLCVDプロセスは、次のパラメータを使用する。(i)プロセスガス:C;(ii)チャンバ圧:2×10-2mbar;(iii)レーザーフルエンス:70mJ/cm;(iv)成長時間:1分;(v)プラズマ出力:5W。本実施形態では、MACを形成するのにLCVDプロセスが使用されるが、他の実施形態では、非炭素ベースのシード層102を形成するのにもLCVDプロセスを使用できることが認識されるであろう。
【0047】
上述の例示的なプロセスは、成長プロセスのための成長チャンバ内でアセチレン(C)を使用することを採用する。成長中のチャンバ内のガス圧は、全体を通して2×10-2mbarで制御される。このガスは、5Wの出力で動作するプラズマ発生器の存在下におけるものである。成長は、フルエンス70mJ/cm及びパルス周波数50Hzで248nmのエキシマレーザーがサファイア基板104の表面上に露光されると始まる。連続MACシード層102を基板104上で得るため、レーザー露光時間(即ち、成長持続時間)は1分に設定される。この成長では、ステージヒータは使用されない。本明細書に開示する複数のパラメータは、前駆体としての炭化水素、前駆体の混合、光分解プロセス及び機器に対する調整、温度調整、基板温度調整、C値の変更、原子層の数の変更、sp対spの比の変更、ならびに基板104に対する接着の変更を含むが、それらに限定されず、開示するMACシード層102の性質を制御及び/又は変更するために調整されてもよい。本実施形態では、MACシード層102の厚さは、約1原子層厚さであるように設計される。
【0048】
更に、上述したようなシード層102を形成するための光分解の方策の使用は、例えば熱CVD(TCVD)を使用する、2D材料膜を形成する一般的な方策とは別であることが認識されるべきである。特に、TCVDは、吸着原子の結合破壊及び結合形成の化学反応を基板の表面上で起こすために熱基板を要する。しかしながら、かかる反応を起こすのに必要な温度は、一般的に、2D材料の結晶化温度よりもはるかに高い。これは、2D材料膜を基板の表面上に形成するのに必要な最小成長温度において、基板表面上に堆積される2D材料の原子は運動性が高く(例えば、表面拡散)、再配列して2D材料の形成中にある程度結晶化されることを意味する。結果として、形成される2D材料膜の結晶性の程度は様々となり、完全又は全体に非晶質ではあり得ない。対照的に、光分解の方策を使用することによって、レーザーからのエネルギーが前駆体ガスの結合を破壊し、2D材料の原子が低温で(例えば、室温で、又は結晶化温度未満の温度で)基板表面上に堆積されるとき、後続の2D材料膜形成のための追加のエネルギーを提供する。したがって、低温で光分解の方策を使用することによって、2D材料の堆積された原子の運動性はより低く、基板の表面上に達した後に移動しにくい。原子の原子運動(表面拡散)がこのように制限されることで、2D材料の結晶形成が妨げられる。したがって、単層非晶質膜を形成することができる。
【0049】
上述したようなMACシード層102を形成するための光分解方法を使用することによって、多数の利点を提供することができる。第一に、LCVDによって合成されるようなMACシード層102は、既存の半導体処理技術を用いて統合することができる。特に、LCVDは、大面積膜の高スループットを達成することができる工業的にスケーラブルなプロセスである。したがって、シード層形成のためのLCVDプロセスは、現在の半導体処理技術と簡単に統合して、プロセスを工業的に適合性がありかつスケーラブルにすることができる。加えて、LCVDは、60秒未満で基板104の表面全体をMAC膜で被覆することができる、超高速堆積技術である。したがって、LCVDは、広く用いられている原子層堆積(ALD)プロセスよりも効率的である。
【0050】
第二に、LCVDを使用することは、MACシード層102を300℃未満の低温で(例えば、200℃の低温又は更には室温で)合成できることを意味し、これはシリコンベースの技術と適合性がある。また、グラフェンの成長とは対照的に、約1000℃の温度を要するグラフェンの従来の熱化学気相成長と比較して、LCVD成長に必要なエネルギーが少ないため、LCVDを使用したMAC成長のコストは大幅に低い。更に、合成温度の低下(例えば、20℃~150℃の温度)により、OLED及び可撓性エレクトロニクスに使用されるポリマー性基板上における直接MAC成長を可能にすることができてもよい。シード層102としてのMACの低温成長は、単結晶基板の格子又は表面再構築の破壊を最小限に抑えて、シード層102と基板104との間の無垢で平滑な境界面を保持するという点でも有利である。
【0051】
第三に、LCVDによるMACの低温光分解成長を用いて、様々な基板(Si、単結晶、多結晶質、金属、ガラス、ポリマー、及びその他を含む)上でMACシード層102の直接成長を実施することができる。また、シード層102上における材料層106の後続の成長は、MACシード層の表面と吸着する吸着原子とのvdW相互作用によって支配され、それによって、この後続の材料成長に対する基板104の役割が最小限に抑えられる。特に、MACの1つ又は複数の層は、基板104の下にある結晶質の情報をスクリーニングし、またしたがって後続の成長メカニズムを支配するように適合させることができる。
【0052】
ステップ304で、材料層106がシード層102上に形成又は堆積される。シード層102の無秩序な原子構造によって提供されるような、吸着原子とシード層102の表面との間のより強いvdW相互作用を考慮すると、材料層106を形成するのに様々な材料を使用することができる。これは、図14及び図15に関連して更に記載される。したがって、材料層106に使用される材料に応じて、多数の成長又は堆積技法を、材料層106を形成するのに使用できることが認識されるであろう。適用されてもよい堆積技法の例としては、分子線エピタキシー(MBE)、常圧CVD(APCVD)、有機金属CVD(MOCVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、熱CVD(TCVD)、及び原子層堆積(ALD)が挙げられる。材料層106を形成するのに使用される異なる材料の実施形態は、図16A図19に関連して議論される。
【0053】
図4は、図1のヘテロ構造100を使用してシード層102及び材料層106を備える自立膜を形成する方法400のステップを示すフローチャートを示している。
【0054】
ステップ402で、ハンドリング層が材料層106上に形成される。言い換えると、ハンドリング層が材料層106上に隣接して形成される。ハンドリング層としては、金属ストレッサ層、可撓性テープ層、又は、シード層102と基板104との間の接着と比較して、下にある材料層106に対してより強い接着を有することができる、接着材料の層が挙げられる。
【0055】
ステップ404で、シード層102が基板104から分離されて自立膜が形成される。これは、材料層106及びシード層102を基板104から剥脱又は剥離して、自立膜を形成し、続いて、材料層106に形成又は付着されていたハンドリング層を除去することによって達成される。剥脱は、基板104との間と比較して、シード層102と材料層106との間のより強い相互作用によって支配される。シード層102と材料層106との間のより強い境界面、及びシード層102と下にある基板104との非共有結合は、自立膜を基板104から剥脱させる助けとなる。これは、シード層102及び材料層106を備える自立膜を、例えば、可撓性の透明な光電子デバイスで使用するために隔離することができ、基板104を再使用することができるので、有利である。
【0056】
図5は、図4の自立膜を形成する方法400のステップを示す概略図500を示している。本実施形態では、二層MACが基板510上に形成され、シード層512として使用される。二層2D材料は、材料層514としてシード層512上に形成される。
【0057】
概略図502によって示されるように、ハンドリング層516は材料層514の上に形成される。これは、上述のステップ402に対応する。
【0058】
概略図504によって示されるように、材料層514及びシード層512の基板510からの剥脱又は剥離は、ハンドリング層516を使用して実施される。分離された自立層518は、材料層514及びシード層512を備える。
【0059】
概略図506によって示されるように、ハンドリング層516は続いて自立層518から除去される。ハンドリング層516は、例えば、次の手法によって除去されてもよい。ハンドリング層516が金属ストレッサ層である場合、ハンドリング層516を金属エッチング剤に浸漬することによって除去されてもよい。ハンドリング層516が可撓性テープ層である場合、可撓性テープ層は、テープを加熱することによって又はUV光に暴露することによってそれぞれ除去することができる、熱剥離型又はUV剥離型接着剤を含んでもよい。
【0060】
図6は、3つの別々の基板、つまりチタン、ガラス、及び銅の上の成長させたMAC膜を撮った写真600を示している。図6に示されるように、写真602は、チタン基板上に成長させたMAC膜を示し、写真604は、ガラス基板上に成長させたMAC膜を示し、写真606は、銅基板上に成長させたMAC膜を示している。少なくとも写真604から、堆積されたMAC膜は可視光中で透明であることが明白である。
【0061】
図7は、図6の成長させたMAC膜のラマンスペクトルを示している。ラマンスペクトル702は、ガラス基板上に成長させたMAC膜を使用して得られ、ラマンスペクトル704は、チタン基板上に成長させたMAC膜を使用して得られ、ラマンスペクトル706は、銅基板上に成長させたMAC膜を使用して得られる。図7のラマンスペクトル702、704、706の全てに示されるように、結晶質グラフェン単層に典型的である(約2700cm-1における)2Dピークは存在しない。対照的に、ラマンスペクトル702、704、706は全て、広い(約1600cm-1における)Gピーク708及び(約1350cm-1における)Dピーク710を示している。D及びGピークの拡幅は、通常、ナノ結晶質グラフェンから非晶質膜への遷移を示す。ラマンスペクトル702、704、706はまた、約0.5~1の範囲のD/G比を明らかにしている。このD/G比が、2Dピークが存在しないことと組み合わされて、MACの無秩序な原子構造が、2Dグラフェン及びダイヤモンドの構造と区別される。ラマンスペクトル702、704、706によって、これら3つの別々の基板上における成長させたMAC膜の成長も検証された。
【0062】
図8は、MAC膜802の格子構造内において局在ひずみを誘発する、MAC膜802内の面外構造緩和の理論的シミュレーションを示す図800を示している。本理論的シミュレーションでは、モデルにおけるMAC膜802の原子の原子座標は、最初に平面の2D面に配置される。これらの原子間の相互作用力を考慮に入れることによって、これら原子の原子再配置が3D空間内で行われ、MAC膜802の原子の原子座標は、MAC膜802の構造が最も低い内部エネルギーを有する最も安定した構成となる、それらの新しい平衡位置を占める。図800に示されるように、シミュレートされたMAC膜802は単層のものであり、約6.5Åの厚さ804を有する。MAC膜802の非晶質の又は無秩序な原子構造は、局在電子分布を有するひずみ2D格子を生成し、それによって比較的高いエネルギーを有する表面がもたらされる。かかる表面は、吸着する吸着原子との強い相互作用を開始して、均一な平面の2D及び/又は3D材料膜形成に必要なより高い表面ぬれ性をもたらす。これは、2D結晶質材料の表面における固有の低い表面エネルギーによる、vdWエピタキシーのための2D表面上における3D材料膜の低いぬれ性を克服する助けとなる。
【0063】
更に、無秩序な原子配置及び向上されたvdW相互作用による、MAC 802のより高い表面エネルギーにより、MACシード層上の吸着された吸着原子のための多数の核形成部位がもたらされる。多数の核形成部位(又はより高い核形成密度)は、後続の材料層成長のための成長速度及び温度の要件を実質的に低下させることができ、それによって成長プロセスのエネルギー及びコスト効率をより良くする。更に、MAC802(即ち、シード層)と材料層(又はエピ層)との間のvdW相互作用の向上により、後続の高温成長プロセス中であっても安定である、より強い境界面がもたらされる。これは、後続の平面の材料層形成における均一性を確保し、材料層のこの後続の成長中における島及び/又はクラスタの形成を防止又は低減させる。材料層における島及び/又はクラスタの形成は、かかる非平面の材料層を使用して形成される後続のデバイスのデバイス性能にとって有害である非平面のアクティブ層の材料膜をもたらすことが留意される。
【0064】
図9は、図8の理論的シミュレーションに使用されるモデル900を示している。モデル900に波動関数の二乗の係数が重ねられて、MAC802の原子構造における局在電子分布902が示されている。
【0065】
図9のモデル900に示されるように、MAC膜は、その構造における六角形及び非六角形環の混合を有する1原子厚さの炭素膜である。環は互いに完全に接続されて、少なくともミクロン単位の大きさの大面積膜における多角形のネットワークを形成する。六角形環の数と炭素環の総数(即ち、六角形及び非六角形環の総数)との比は、結晶性(又は非晶質性)Cの指標である。非六角形は、4、5、6、7、8、9員環の形態である。結晶質グラフェンに典型的である規則的な6員環908とは対照的に、5員環904及び7員環906が図9に示されている。開示の実施形態は、0.5~0.8の、それらの値を含むC値の範囲に対応してもよい。これは、純粋な六角形ネットワークに対してC=1であるグラフェンとは異なる。
【0066】
図10は、一実施形態による、MAC1002の光透過スペクトルのプロット1000を示している。
【0067】
プロット1000は、光波長の範囲にわたるMAC1002の光透過性を示している。図10に示されるように、光透過性は550nmの光波長で約98.1%であり、光波長の増加とともに透過性が増加する。したがって、本発明の実施形態は、550nm以上の波長で98%以上の光透過性を有するMACを提供する。開示するMACはグラフェンとは異なる。線1004は、グラフェンの光透過性に対する97.7%の理論的限界を示している。したがって、少なくともプロット1000から、本実施形態のMAC1002が、約550nm以上の波長においてグラフェンよりも高い光透過性を示すことが証明されている。特に、MAC1002の透過性は、短波長(<400nm)において急速に減少しない。これは部分的には、MAC1002は転移方法を使用することなく任意の基板上に成長させることができるので、MAC1002の成長プロセスにおける汚染が少ないことによるものであり得る。可視光範囲内におけるMACの高い光透過性(550nmにおいて約98.1%であり、より高波長では光透過性が増加する)により、MACは、透明デバイスのために後続のアクティブ半導体膜を形成するための、透明基板(例えば、ガラス又は好適なポリマー)上のシード層の理想的な候補となる。
【0068】
図11A及び図11Bは、一実施形態による、2つの異なる構造上の変化を有するシード層の走査型透過電子顕微鏡(STEM)画像1100、1110を示しており、図11Aは、MAC膜のSTEM画像1100を示し、図11Bは、ナノ結晶質グラフェン膜のSTEM画像1110を示している。図11Bに示されるような「白い」クラスタ1112は、ナノ結晶質グラフェン膜の表面上で吸収される汚染に関連し、その原子構造の結晶性には関連しない。
【0069】
合成条件に応じて、完全な非晶質層(例えば、MAC)からナノ結晶質sp炭素層(例えば、ナノ結晶質グラフェン層)まで、炭素ベースのシード層内における広範囲の原子構造上の変化があり得る。更に、シード層も、単層から多層スタックまでに及んで、基板上に形成することができる。かかる構造上の変化は、シード層と材料層(又はエピ層)との間のvdW相互作用を調整することができ、成長中に材料層を形成するため、基板と吸着原子との間の相互作用を遠隔的に調整することができる。例えば、シード層の結晶性を完全な非晶質からナノ結晶質へと調整することによって、2D非晶質シード層の無秩序な原子構造の電位井戸によって基板の結晶性作用のスクリーニングが提供されるので、基板と吸着原子との間のより多くの相互作用を達成することができる。
【0070】
炭素ベースのシード層の結晶性調整の一例は、ステップ302に関連して記載したのと同様のレーザーベースの成長条件を使用することによって、ただし例えば、メタン前駆体ガス及び銅箔基板を用いて行うことができる。例えば、図11Bに示されるような、ナノ結晶質炭素膜を形成する場合、銅箔の温度を500℃~600℃の範囲に設定することができ、図11Aに示されるもののような、全体に非晶質の膜を形成する場合、銅箔の温度を400℃未満に設定することができる。これは、成長中のより高い基板温度がより結晶質の材料に結び付くことによる。
【0071】
図12A及び図12Bは、一実施形態による、約700℃での温度処理前及び後のMACのラマンスペクトル1200、1210を示しており、図12Aは、温度処理前のMACのラマンスペクトル1200を示し、図12Bは、温度処理後のMACのラマンスペクトル1210を示している。
【0072】
図12Aは、Dバンド1204及びGバンド1206が適合された、温度処理前のMACのラマン分光法から得られた生データ1202を示し、図12Bは、Dバンド1214及びGバンド1216が適合された、温度処理後のMACのラマン分光法から得られた生データ1212を示している。ラマンスペクトル1200、1210に示されるように、Dバンド1204、1214及びGバンド1206、1216の形状、ならびにそれらのD/G比は類似している。これは、約700℃で熱処理を行った後のMACの結晶性又は粒径に観察可能な変化がないことを検証している。したがって、MACは、約700℃の高温で熱的に安定しており、MACを、材料層の後続の高温成長に対する安定したシード層にしている。MACは約700℃の温度で熱的に安定しているので、700℃未満の任意の温度でも熱的に安定していることが認識されるであろう。
【0073】
図13は、温度処理後の図12BのMACの透過型電子顕微鏡(TEM)画像1300を示している。MACのTEM画像1300は10×10nmのサイズを有し、その場合、図13に示されるようなクラスタ1302は、MACの一部の範囲を覆う汚染である。汚染クラスタ1302は、基板(例えば、銅箔)から、このTEM画像1300を得るためのTEMグリッドへの転移プロセスによって形成される場合があり、MACの結晶性には関連しない。図13の差込み図1304は、TEM画像1300のフーリエ変換であり、TEM画像1300の回折パターンを示している。特に、差込み図1304は、ナノ結晶質グラフェン又は多結晶質グラフェンをそれぞれ示す鮮明な環又は個々の点の代わりに、非晶質のハローリングを示している。
【0074】
MACが熱的に安定した層であることに加えて、MACは高い熱伝導性も有し、それによって、熱をヒートシンクに伝達する、アクティブな半導体エピ層を備えるヘテロ構造における熱拡散層として機能できるようになっている。熱管理がLEDなどの薄膜デバイスの本質的な側面であるため、これは有利である。MACが熱を迅速に拡散させる能力は、過熱及びデバイス性能の劣化を回避する助けとなる。
【0075】
図14は、一実施形態による、基板1406上のシード層1404上に成長させた二次元(2D)材料層1402を備えるヘテロ構造1400の概略図を示している。ヘテロ構造1400は、図1に示されるようなヘテロ構造100と同様の構造を有し、図3の方法300を使用して形成又は作製することができる。
【0076】
シード層1404は、基板1406上に直接成長させた、単層の非晶質2D材料(例えば、本実施形態ではMACであるが、他の単層2D非晶質材料も使用することができる)を備える。本実施形態の基板1406は、SiOを含むが、Si、SiC、サファイア、III-V族材料、II-VI族材料、酸化物などの他の基板も使用することができる。基板1406上に成長させたシード層1404は、2D材料層1402の吸着原子とシード層1404の表面との間の強いvdW相互作用を使用した、2D材料層1402の後続の成長を安定化させるように機能する。これは有利には、2D材料層1402の成長を安定させるために専用の基板を使用するという厳しい要件を回避するのを支援する。
【0077】
図14は、シード層1404としての単層非晶質炭素(MAC)を示しているが、直接成長又は転移方法のどちらかによって、多層MACを用いることもできる。成長させた2D材料層1402は、単層2D非晶質膜、2D結晶質膜、グラフェン、ブラックフォスフォレン、ボロフェン、六角形窒化ホウ素(hBN)もしくは窒化ホウ素、遷移金属ジカルコゲナイド(TMD)、ペロブスカイト及び/又はリン化ホウ素(BP)の1つ又は複数の層を含む。2D材料層1402は、有機金属化学気相成長(MOCVD)、熱化学気相成長(TCVD)、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)、原子層堆積(ALD)などの堆積技法を使用して、シード層1404上に成長させることができる。2D-2D複合構造(即ち、層1402、1404を備える自立構造)は、成長後に基板1406から分離させて自立スタックを形成することができ、それを更に、薄膜及び可撓性光電子デバイスの製作プロセスにおいて統合することができる。
【0078】
図15は、一実施形態による、基板1506上のシード層1504上に成長させた三次元(3D)材料層1502を備えるヘテロ構造1500の構造を示している。ヘテロ構造1500は、図1に示されるようなヘテロ構造100と同様の構造を有し、図3の方法300を使用して形成又は製作することができる。ヘテロ構造1500とヘテロ構造1400との違いは、ヘテロ構造1400に含まれる2D材料層1402とは対照的に、シード層1504上に成長させた材料層1502が3D材料層であるという点である。
【0079】
異なるタイプの3D材料及び使用される基板を含む、異なる実施形態について以下に記載する。
【0080】
(i)CMOS適合性基板(例えば、Si又はGe)とIII-V半導体の平坦な薄膜との統合
この実施形態では、MAC層はSi又はGe基板1506上に形成される。MACは、既存の堆積技法(MOCVD、TCVD、PECVD、ALDなど)を使用した、III-V半導体(GaAs、GaN、AlN、InP、InNなど)の1つ又は複数の層1502における後続のエピタキシャル又は非エピタキシャル成長のためのシード層1504として機能する。III-V半導体材料は、発光ダイオード(LED)、赤外(IR)センサ、光検出器、及び他の光電子デバイスなどの用途向けの、アクティブ層として使用することができる。
【0081】
ii)II-VI半導体薄膜
II-VI薄膜半導体(例えば、CdTe、CdS、ZnSなど)を任意の基板(例えば、Si、半導体材料、ガラス、金属箔、ポリマーなど)上に統合する能力は、太陽電池、光電池、及び航空用途に有利である。上述したように、vdWエピタキシーによって均一で平坦な材料層を達成することは、エピタキシャル表面上のぬれ性が低いため、困難である。本実施形態では、シード層1504として機能するMAC層1504は、II-VI半導体の3D平坦膜の層1502をエピタキシャル又は非エピタキシャル成長させるため、基板1506上に形成することができる。3DII-VI族半導体材料膜の例としては、CdTe、CdS、ZnSなどが挙げられる。
【0082】
iii)酸化物薄膜
単純金属酸化物(Hf、Al、MnOなど)及び複合酸化物(ペロブスカイト、スピネルなど)を含む酸化物薄膜は、それらの機能的特性により、様々な電子、スピン工学、磁気電気、及びエネルギー貯蔵デバイスにおいて重要な役割を果たす。これらの酸化物は、誘電体、圧電体、焦電体などとして機能してもよい。図15に示されるのと同様のスキームを使用して、MACをシード層1504として使用して、酸化物1502の1つ又は複数の層を基板1506上に堆積させることができる。本出願における基板1506は、Si、半導体材料、ガラス、金属箔、ポリマーなどのいずれかの任意の基板であることができる。酸化物膜の堆積された層1502はまた、図4及び図5に関連して記載したような方法400を使用して、自立膜を得るために剥脱することができる。
【0083】
図16A図16B、及び図16Cは、一実施形態による、3つの異なる表面上に成長させたMoSの光学画像1600、1610、1620を示しており、図16Aは、二酸化シリコン(SiO)上に成長させたMoSの光学画像1600を示し、図16Bは、SiO上の単層のMAC上に成長させたMoSの光学画像1610を示し、図16Cは、SiO上の数層のMAC上に成長させたMoSの光学画像1620を示している。
【0084】
本実施形態では、MACを最初に、図3のステップ302に関連して記載したように、LCVD法を使用して、SiO基板上に成長させる。SiO基板上におけるMACの成長条件は、ステップ302に関連してサファイア基板について記載したのと同じであり、これらは、簡潔にするためここでは繰り返さない。1つ又は複数のMAC層は、MoS層の後続の成長のためのシード層として作用する。MoSの層は、熱CVDによって1つ又は複数のMAC層の上に成長させた2D材料である。MoS層の熱CVD成長に対するパラメータは次の通りである。MoO+S、常圧化学気相成長(APCVD)、750℃、20sccm Ar、及び10分の成長時間。
【0085】
図16A図16B、及び図16Cで証明されているように、MoSの層は、3つの異なる表面(即ち、それぞれ、MACなし、単層MAC、及び数層のMAC)上で異なるように成長する。図16Aの光学画像1600に示されるように、SiO上に成長させた標準的なMoSは、三角形の結晶1602を形成する。図16Bの光学画像1610は、単一のMAC層をシード層として使用することで、不規則形状及び多層中心を有するMoS結晶1612の成長がもたらされることを示している。図16Cの光学画像1620に示されるように、数層のMACをシード層として使用することで、MoS結晶の高密度核形成がもたらされる。
【0086】
図17A及び図17Bは、一実施形態による、サファイア基板を使用して成長させたMoSの走査型電子顕微鏡(SEM)画像1720、1704、1710を示しており、図17Aは、サファイア基板上に直接、及びサファイア基板上の単層のMAC上に、それぞれ成長させたMoSのSEM画像1702、1704を示し、図17Bは、サファイア基板上の単層のMAC上に成長させたMoSの拡大SEM画像1710を示している。図18A及び図18Bは、一実施形態による、サファイア基板を使用して成長させたMoSの走査型電子顕微鏡(SEM)画像1802、1804、1810を示しており、図18Aは、サファイア基板上に直接、及びサファイア基板上の数層のMAC上に、それぞれ成長させたMoSのSEM画像1802、1804を示し、図18Bは、サファイア基板上の数層のMAC上に成長させたMoSの拡大SEM画像1810を示している。
【0087】
本実施形態では、MACを最初に、図3のステップ302に関連して記載したように、LCVD法を使用して、サファイア基板上に成長させる。1つ又は複数のMAC層は、MoS層の後続の成長のためのシード層として作用する。サファイア基板上におけるMACの成長条件は、ステップ302に関連して上述しており、これらは、簡潔にするためここでは繰り返さない。MoSの層は、熱CVDによって1つ又は複数のMAC層の上に成長させた2D材料である。MoS層の熱CVD成長に対するパラメータは次の通りである。MoO+S、常圧化学気相成長(APCVD)、850℃、20sccm Ar、及び5分の成長時間。
【0088】
図17A図17B図18A、及び図18Bで証明されているように、MoSの層は、3つの異なる表面(即ち、それぞれ、MACなし、単層MAC、及び数層のMAC)上で異なるように成長する。図17A及び図18AそれぞれのSEM画像1702及び1802に示されるように、サファイア上に成長させた標準的なMoSは、三角形の結晶1706、1806を形成する。図17BのSEM画像1710は、単一のMAC層をシード層として使用することで、三角形形状1712を有するMoS結晶の高密度核形成がもたらされることを示している。図18BのSEM画像1810に示されるように、数層のMACをシード層として使用することで、樹枝形状を有するMoS結晶の高密度核形成がもたらされる。
【0089】
図19は、一実施形態による、SiO基板上の単層のMAC上に成長させたセレン化インジウム(InSe)の原子間力顕微鏡(AFM)画像1900を示している。
【0090】
MACは最初に、SiO基板上に成長又は転移され、その場合、MACはInSeの後続の成長のためのシード層として機能する。InSeは、分子線エピタキシー(MBE)技法を使用してMAC上に続いて成長させられる、2D材料である。本実施形態では、InSeは、基底圧約6×10-10トルでMBEチャンバ内で成長させた。超高純度InSe粉末(99.99%)を、温度を150℃で維持して電子線源によって加熱したるつぼから蒸発させた。成長中のチャンバ圧は約6×10-9トルであった。
【0091】
InSeの層は、単層のMACをシード層として使用したとき、InSeの層をグラフェン上に、又はMACなしでSiO基板上に直接成長させるのと比較して、異なるように成長する。AFM画像1900に示されるように、単層のMACをシード層として使用して形成されるInSe結晶1902は、厚さが数Å(即ち、単層の厚さ)から約7nm厚さに及ぶ三角形の切子面を保持する。他方で、InSeをSiO基板上のグラフェンの層上に成長させる場合、成長させたInSe結晶は、三角形形状を有する単層厚さのものになる。InSeをSiO基板上に直接成長させる場合、成長させたInSe結晶は、非常に無秩序なバルク(3D)構造を有する。
【0092】
本発明の代替実施形態は、次のことを含む。(i)シード層102は、非晶質MoS、非晶質InSe、非晶質遷移金属ジカルコゲナイド、非晶質ブラックフォスフォレン、非晶質ボロフェン、非晶質窒化ホウ素のうち1つ又は複数から選択された、2D非晶質材料の1つ又は複数の層を備える。(ii)基板104は、Si、SiC、サファイア、III-V族材料、II-VI族材料、酸化物半導体材料、ガラス、金属、及びポリマーのうち1つから選択される。(iii)材料層106は、2D材料又は3D材料から選択され、2D材料及び3D材料の例は、図14及び図15に関連して提供される。(iv)材料層106は、LPCVD、APCVD、MOCVD、TCVD、PECVD、MBE、及びALDなど、様々な堆積技法によって形成することができる。
【0093】
本発明の特定の実施形態のみを詳細に記載してきたが、添付の請求の範囲にしたがって多くの変形例が可能である。例えば、一実施形態に関連して記載した特徴が、1つ又は複数の他の実施形態に組み込まれてもよく、その逆もまた可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
【国際調査報告】