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特表2023-516491核酸配列決定のための磁気センサアレイならびにそれらの製造方法および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】核酸配列決定のための磁気センサアレイならびにそれらの製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/74 20060101AFI20230412BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20230412BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20230412BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20230412BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230412BHJP
【FI】
G01N27/74
H10N50/10 Z
H10N50/10 U
G01R33/02 R
G01R33/09
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554492
(86)(22)【出願日】2021-03-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 US2021021274
(87)【国際公開番号】W WO2021183403
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/987,831
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ブラガンカ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ニール
(72)【発明者】
【氏名】トポランチク,ユライ
(72)【発明者】
【氏名】アスティエ,ヤン
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
4B063
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA08
2G017AD55
2G017BA15
2G053AA04
2G053AA06
2G053AB01
2G053BA08
2G053BB08
2G053CA06
2G053CB21
2G053DB03
4B063QA13
4B063QQ41
4B063QR08
4B063QR31
4B063QR62
4B063QS28
4B063QX02
5F092AB01
5F092AB10
5F092AC08
5F092AC12
5F092AD23
5F092AD25
5F092BB16
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB31
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB42
5F092BB43
5F092FA08
(57)【要約】
本明細書では、磁気標識(例えば、磁性粒子)および磁気センサを使用する核酸配列決定のための装置が開示される。また、そのような装置を製造および使用する方法も開示される。核酸配列決定のための装置は、複数の磁気センサと、複数の磁気センサの上方に配置された複数の結合領域であって、結合領域のそれぞれが流体を保持するためのものである、複数の結合領域と、複数の磁気センサのうちの少なくとも第1の磁気センサの特性を検出するための少なくとも1つのラインであって、特性が、第1の磁気センサに関連する第1の結合領域に結合された1つ以上の磁性ナノ粒子の存在または非存在を示す、少なくとも1つのラインと、を備える。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸配列決定のための装置であって、
複数の磁気センサと、
前記複数の磁気センサの上方に配置された複数の結合領域であって、前記結合領域のそれぞれが流体を保持するためのものである、複数の結合領域と、
前記複数の磁気センサのうちの少なくとも第1の磁気センサの特性を検出するための少なくとも1つのラインであって、前記特性が、前記第1の磁気センサに関連する第1の結合領域に結合された1つ以上の磁性ナノ粒子の存在または非存在を示す、少なくとも1つのラインと、を備える装置。
【請求項2】
前記第1の磁気センサが磁気抵抗素子を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁気抵抗素子が、
固定層と、
自由層と、
前記固定層と前記自由層との間に配置されたバリア層と、を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の結合領域に結合された前記1つ以上の磁性ナノ粒子の非存在下で、前記固定層の磁気モーメントが前記自由層の磁気モーメントからおよそ90度である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の磁気センサの形状が、実質的に円筒形または実質的に直方体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の磁気センサの横方向寸法が、およそ10ナノメートルからおよそ1マイクロメートルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのラインを介して前記複数の磁気センサに結合された検知回路をさらに備え、前記検知回路が、
前記少なくとも1つのラインに電流を印加して、前記第1の磁気センサの前記特性を検出するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記特性が、磁場または抵抗を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記特性が、磁場の変化または抵抗の変化を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記検知回路が磁気発振器を備え、前記特性が、前記磁気発振器に関連する信号の周波数または前記磁気発振器によって発生される信号の周波数を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記特性がノイズレベルを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の磁気センサと前記複数の結合領域との間に配置された絶縁材料をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記絶縁材料が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、または窒化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記絶縁材料が、酸化物または窒化物のうちの少なくとも一方を含む、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の磁気センサの上部と前記第1の結合領域との間の前記絶縁材料の厚さが、およそ3ナノメートルからおよそ20ナノメートルである、請求項12から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つのラインが、前記第1の磁気センサの上面の上方に配置された第1のラインを含み、前記第1の結合領域が、前記第1のライン内のトレンチ内に位置し、前記トレンチが、前記第1の磁気センサの前記上面の上方にある、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記複数の磁気センサが矩形アレイに配置され、前記少なくとも1つのラインが、少なくとも第1のラインおよび第2のラインを含み、前記第1のラインが前記第1の磁気センサの上方に配置され、前記第2のラインが前記第1の磁気センサの下方に配置される、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の結合領域が、前記第1のライン内のトレンチ内に位置する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記第1のラインが前記矩形アレイの行に結合され、前記第2のラインが前記矩形アレイの列に結合されるか、またはその逆である、請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
前記第1の結合領域が、核酸を前記第1の結合領域に固定するように構成された構造を備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記構造が、空洞または隆起部を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
複数の磁気センサと、前記複数の磁気センサの上方に配置された複数の結合領域であって、前記結合領域のそれぞれが流体を保持するためのものである、複数の結合領域と、前記複数の磁気センサのうちの少なくとも第1の磁気センサの特性を検出するための少なくとも1つのラインと、を備える装置を使用して核酸を配列決定する方法であって、
(a) 少なくとも1つの核酸鎖を第1の結合領域に結合することと、
(b) 1回または複数回の付加において、前記第1の結合領域に、伸長可能プライマーおよび核酸ポリメラーゼを付加することと、
(c) 前記第1の結合領域に、第1の開裂可能な磁気標識によって標識された第1のヌクレオチド前駆体を付加することと、
(d) 前記核酸鎖を配列決定することであって、前記核酸鎖を配列決定することが、
前記少なくとも1つのラインを使用して、前記第1の磁気センサの前記特性を検出することであって、前記特性が、前記第1の開裂可能な磁気標識の存在または非存在を示す、検出することを含む、配列決定することと、を含む方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの核酸鎖を増幅することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの核酸鎖を前記第1の結合領域に結合した後、前記少なくとも1つの核酸鎖を増幅することをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記増幅の結果として、1つ以上のアンプリコンが前記第1の結合領域に結合される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸鎖を配列決定することが、
前記特性が前記第1の結合領域に結合された前記1つ以上の磁性ナノ粒子の存在を示すという決定に応答して、前記第1のヌクレオチド前駆体の相補的塩基を前記核酸鎖の核酸配列の記録に記録することをさらに含む、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のヌクレオチド前駆体が前記核酸ポリメラーゼによって伸長不可能であり、
前記特性を検出した後、前記第1の開裂可能な磁気標識を除去し、前記第1のヌクレオチド前駆体を前記核酸ポリメラーゼによって伸長可能にすることをさらに含む、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のヌクレオチド前駆体が前記核酸ポリメラーゼによって伸長可能でない、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のヌクレオチド前駆体が化学的開裂によって伸長可能にされる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸鎖を配列決定した後、酵素的または化学的開裂によって前記開裂可能な磁気標識を除去することをさらに含む、請求項22から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
各反復中に異なるヌクレオチド前駆体を用いてステップ(c)および(d)を反復することであって、前記異なるヌクレオチド前駆体のそれぞれが磁気的に標識される、反復することをさらに含む、請求項22から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
第1のおよび異なるヌクレオチド前駆体のそれぞれが、磁気標識されたアデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはそれらの等価物から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(c)の前に前記第1の結合領域を洗浄することをさらに含む、請求項22から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の開裂可能な磁気標識が第1の磁気特性を有し、前記方法が、
前記1回または複数回の付加において、前記第1の結合領域に、第2の磁気特性を有する第2の開裂可能な磁気標識によって標識された第2のヌクレオチド前駆体を付加することをさらに含む、請求項22から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記1回または複数回の付加において、前記第1の結合領域に、第3の磁気特性を有する第3の開裂可能な磁気標識によって標識された第3のヌクレオチド前駆体、および第4の磁気特性を有する第4の開裂可能な磁気標識によって標識された第4のヌクレオチド前駆体を付加することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの核酸鎖を前記第1の結合領域に結合することが、
前記少なくとも1つの核酸鎖のそれぞれ1つの末端にアダプタを結合することと、
前記第1の結合領域にオリゴヌクレオチドを結合することであって、前記オリゴヌクレオチドが前記アダプタにハイブリダイズすることができる、結合することと、を含む、請求項22から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの核酸鎖を前記第1の結合領域に結合することが、前記少なくとも1つの核酸鎖のそれぞれを前記第1の結合領域に共有結合することを含む、請求項22から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの核酸鎖を前記第1の結合領域に結合することが、分子間の不可逆的な受動吸着または親和性を介して前記少なくとも1つの核酸鎖を固定化することを含む、請求項22から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の結合領域が空洞または隆起部を備え、前記少なくとも1つの核酸鎖を前記第1の結合領域に結合することが、ヒドロゲルを前記空洞または前記隆起部に適用することを含む、請求項22から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(c)の後、前記第1の結合領域に、前記核酸ポリメラーゼのさらなる分子を付加することをさらに含む、請求項22から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の開裂可能な磁気標識が磁性ナノ粒子を含む、請求項22から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記磁性ナノ粒子が分子である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記磁性ナノ粒子が超常磁性ナノ粒子である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記磁性ナノ粒子が強磁性ナノ粒子である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記第1のヌクレオチド前駆体が、dATP、dGTP、dCTP、dTTPまたは等価物のうちの1つを含む、請求項22から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記核酸ポリメラーゼが、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くB型ポリメラーゼを含む、請求項22から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記核酸ポリメラーゼが熱安定性ポリメラーゼを含む、請求項22から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つのラインを使用することが、前記少なくとも1つのラインに電流を印加することを含む、請求項22から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記特性が、磁場または抵抗を含む、請求項22から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記特性が、磁気発振器に関連する信号の周波数または磁気発振器によって発生される信号の周波数を含む、請求項22から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記特性がノイズレベルを含む、請求項22から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記特性が、磁場の変化または抵抗の変化を含む、請求項22から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記特性が、磁場の変化または抵抗の変化から生じる、請求項22から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
核酸配列決定装置を製造する方法であって、
第1のラインを製造することと、
複数の磁気センサを製造することであって、各磁気センサが下面および上面を有し、各下面が前記第1のラインに結合される、複数の磁気センサを製造することと、
前記磁気センサ間に絶縁材料を堆積させることと、
複数の追加のラインを製造することであって、前記複数の追加のラインのそれぞれが、前記複数の磁気センサのうちのそれぞれの磁気センサの前記上面に結合される、複数の追加のラインを製造することと、
複数の結合領域を形成することと、を含む、方法。
【請求項55】
前記第1のラインを製造することが、
基板上に金属層を堆積させることと、
前記金属層を前記第1のラインにパターニングすることと、を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記基板上に前記金属層を堆積させることが、物理蒸着またはイオンビーム蒸着を使用して前記金属層を堆積させることを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記金属層を第1のラインにパターニングすることが、フォトリソグラフィ、フライス加工、またはエッチングのうちの1つ以上を使用して前記金属層をパターニングすることを含む、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記第1のラインを製造した後、前記複数の磁気センサを製造する前に、
前記第1のライン上に絶縁材料を堆積させることと、
前記第1のラインを露出させることと、をさらに含み、
前記複数の磁気センサを製造することが、露出させた前記第1のライン上に前記複数の磁気センサを製造することを含む、請求項54から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記第1のラインを露出させることが、化学機械研磨(CMP)を使用することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記複数の磁気センサを製造することが、
前記第1のライン上に複数の層を堆積させることと、
前記複数の層をパターニングして前記複数の磁気センサを形成することであって、前記複数の磁気センサのそれぞれが所定の形状を有する、形成することと、を含む、請求項54から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記複数の層を堆積させることが、
第1の強磁性層を堆積させることと、
前記第1の強磁性層上に金属または絶縁体層を堆積させることと、
前記金属または絶縁体層上に第2の強磁性層を堆積させることと、を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記複数の層をパターニングして前記複数の磁気センサを形成することが、フォトリソグラフィまたはエッチングのうちの少なくとも一方を実行することを含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
前記所定の形状が、実質的に円筒形または実質的に直方体である、請求項60から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記複数の磁気センサのそれぞれの横方向寸法が、およそ10ナノメートルからおよそ1マイクロメートルである、請求項54から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記複数の磁気センサを製造することが、前記複数の磁気センサを矩形アレイに製造することを含み、
前記第1のラインが、前記矩形アレイの行に対応し、前記複数の追加のラインのそれぞれが、前記矩形アレイの列に対応する、請求項54から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記複数の磁気センサを製造することが、前記複数の磁気センサを矩形アレイに製造することを含み、
前記第1のラインが、前記矩形アレイの列に対応し、前記複数の追加のラインのそれぞれが、前記矩形アレイの行に対応する、請求項54から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記磁気センサ間に前記絶縁材料を堆積させた後、前記複数の追加のラインを製造する前に、
化学機械研磨ステップを実行して、前記複数の磁気センサのそれぞれの前記上面を露出させることを含む、請求項54から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記複数の追加のラインを製造することが、
金属層を堆積させることと、
フォトリソグラフィを実行して前記複数の追加のラインを画定ことと、
前記金属層の一部を除去することと、を含む、請求項54から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記複数の結合領域を形成することが、
前記複数の結合領域上にマスクを適用することと、
前記マスク上に金属層を堆積させることと、
前記マスクを持ち上げることと、を含む、請求項54から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記マスクを持ち上げた後に、前記複数の追加のラインおよび前記複数の結合領域上に追加の絶縁材料を堆積させることをさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記追加の絶縁材料の厚さが、およそ3ナノメートルからおよそ20ナノメートルである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記追加の絶縁材料が、酸化物または窒化物を含む、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記追加の絶縁材料が、二酸化ケイ素(SiO)を含む、請求項70から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
堆積させることが、原子層堆積を実行することを含む、請求項70から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
製造することが、堆積させることを含む、請求項54から74のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願は、2020年3月10日に出願された「MAGNETIC SENSOR ARRAYS FOR NUCLEIC ACID SEQUENCING AND METHODS OF MAKING AND USING THEM」と題する米国仮出願第62/987,831号(代理人整理番号ROA-1001P-US/P35967-US)の優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
合成による配列決定(SBS)は、大量のDNA配列決定データを得るための成功した商業的に実行可能な方法であった。SBSは、プライマーにハイブリダイズしたテンプレートDNAの結合、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の組み込み、および組み込まれたdNTPの検出を含む。
【0003】
現在の配列決定システムは、蛍光シグナル検出を使用する。4つの蛍光標識ヌクレオチドが使用されて、数百万のクラスタを並行して配列決定する。DNAポリメラーゼは、DNA合成の連続サイクル中に蛍光標識dNTPのDNAテンプレート鎖への取り込みを触媒する。各サイクルの間に、単一の標識dNTPが核酸鎖に付加される。ヌクレオチド標識は、重合のための「可逆的ターミネーター」として働く。dNTPが組み込まれた後、レーザー励起および撮像によって蛍光色素が識別され、次いで、酵素的に開裂されて次の組み込みを可能にする。塩基は、各サイクル中の信号強度測定値から直接識別される。
【0004】
蛍光シグナル検出に依拠する最先端の配列決定システムは、実行当たり最大200億リードのスループットを提供することができる。しかしながら、そのような性能を達成することは、塩基検出を成功させるのに十分な蛍光信号を生成するために、大面積フローセル、高精度の自由空間撮像光学系、および高価な高出力レーザーを必要とする。
【0005】
2つの一般的な戦略は、SBSスループットの漸進的な増加を可能にした(例えば、ランあたりの塩基リードを特徴とする)。第1の手法は、シーケンサ内のフローセルのサイズおよび数を増加させることによる外向きスケーリングであった。この手法は、追加の高出力レーザーおよび高精度ナノポジショナーを必要とするため、試薬のコストと配列決定システムの価格の双方を増加させる。
【0006】
第2の手法は、固定サイズのフローセル内の配列決定されたDNA鎖の数がより多くなるように個々のDNA試験部位のサイズを縮小する内向きスケーリングを含む。この第2の手法は、消耗品のコストを同じに保ちながら、追加のコストがより良好な撮像光学系の実装のみを含むため、全体的な配列決定コストを削減するためにより魅力的である。しかしながら、隣接するフルオロフォアからの信号を区別するために、より高い開口数(NA)のレンズを使用しなければならない。レイリー基準は、分解可能な光源間の距離を0.61λ/NAにするため、すなわち、高度な光学撮像システムであっても、配列決定された2本のDNA鎖間の最小距離がおよそ400nmを超えて縮小されることはできないため、この手法には限界がある。これまで達成された最小ピクセルサイズが1μm未満である場合、撮像アレイの上部における直接配列決定に同様の分解能限界が適用される。レイリー基準は、現在、光学SBSシステムの内向きスケーリングの基本的な制限を表している。これらの制限を克服することは、高度に多重化されたシステムではまだ達成されていない超解像撮像技術を必要となる場合がある。したがって、この段階では、光学SBSシーケンサのスループットを増加させる唯一の実用的な方法は、より大きなフローセルならびにより高価な光学走査および撮像システムを構築することである。
【0007】
したがって、SBSを改善する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の目的、特徴、および利点は、添付の図面と併せて、特定の実施形態の以下の説明から容易に明らかになるであろう。
【0009】
図1】いくつかの実施形態にかかる、磁気センサの一部を示している。
図2A】いくつかの実施形態にかかる磁気抵抗(MR)センサの抵抗を示している。
図2B】いくつかの実施形態にかかる磁気抵抗(MR)センサの抵抗を示している。
図3A】いくつかの実施形態にかかるスピントルク発振子(STO)センサを使用する概念を示している。
図3B】いくつかの実施形態にかかる、AC磁場がSTOを横切って印加されたときの遅延検出回路を通るSTOの実験的応答を示している。
図3C】いくつかの実施形態にかかる、STOがナノスケール磁場検出器としてどのように使用されることができるかを示している。
図3D】いくつかの実施形態にかかる、STOがナノスケール磁場検出器としてどのように使用されることができるかを示している。
図4A】いくつかの実施形態にかかる配列決定装置の一部の平面図である。
図4B図4Aに示される配列決定装置の一部の断面図である。
図4C図4Aに示される配列決定装置の一部の断面図である。
図4D】いくつかの実施形態にかかる、図4A図4B、および図4Cの装置の構成要素を示すブロック図である。
図5A】いくつかの実施形態にかかる磁気センサを選択するための2つの手法を示している。
図5B】いくつかの実施形態にかかる磁気センサを選択するための2つの手法を示している。
図6】いくつかの実施形態にかかる配列決定装置の製造方法を示している。
図7】いくつかの実施形態にかかる、核酸配列決定のために配列決定装置を使用する方法を示している。
図8】いくつかの実施形態にかかる、複数のヌクレオチド前駆体が実質的に同時に導入される配列決定装置を使用する方法を示している。
【0010】
理解を容易にするために、可能であれば、図に共通する同一の要素を示すために同一の参照符号が使用されている。一実施形態で開示された要素は、特定の記載なしに他の実施形態で有益に利用されることができることが企図される。
【0011】
さらに、1つの図面の文脈における要素の説明は、その要素を示す他の図面にも適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、磁気標識(例えば、磁性粒子)および磁気センサを使用する核酸配列決定のための装置が開示される。また、そのような装置を製造および使用する方法も開示される。簡単にするために、以下の議論のいくつかは、例としてDNAの配列決定を指す。本明細書の開示は、一般に核酸配列決定に適用されることを理解されたい。
【0013】
本発明者らは、従来技術のSBSにおいて使用される蛍光顕微鏡法およびCMOSイメージャの分解能限界は、電荷(例えば、シリコンナノワイヤ電界効果トランジスタ(FET))または磁場センサ(例えば、スピンバルブ、磁気トンネル接合部(MTJ)、スピントルクオシレータ(STO)など)には適用されず、検知素子のサイズは、最先端のSBSシステムよりも一桁小さく、多重化のレベルはかなり高いことを認識した。SBSにおける磁場検知は、DNAおよび配列決定試薬が非磁性であり、CMOS構成要素における電子輸送変調に基づく電荷検知スキームと比較して、信号対雑音比(SNR)の大幅な改善を可能にするため、特に魅力的である。さらにまた、磁気検知は、組み込まれた基部が接合部と直接接触することを必要としない。小型磁場センサが使用されてナノスケールの磁性ナノ粒子を検出し、SBSを行うことができる。
【0014】
磁気センサアレイを使用してSBSを実行することは、配列決定システムにおける高出力レーザーおよび高解像度光学系の必要性を排除しながら、例えばおよそ100倍の追加の内向きスケーリングを提供することによって、スループットを劇的に増加させ、配列決定のコストを削減することができる。
【0015】
この文献は、磁気検出素子のアレイ(例えば、MTJ、STO、スピンバルブなど)を含む配列決定装置と併せて磁気標識ヌクレオチド前駆体を使用するSBSプロトコルを開示している。装置はまた、(例えば、絶縁体の薄層を使用して)磁気センサを損傷から保護しながら、磁気センサが磁気標識ヌクレオチド前駆体中の磁気標識を検出することを可能にする1つ以上のエッチングされた結合領域を含む。
【0016】
本明細書の開示の中には、核酸配列決定のための装置であって、複数の磁気センサと、複数の磁気センサの上方に配置された複数の結合領域であって、結合領域のそれぞれが流体を保持するためのものである、複数の結合領域と、複数の磁気センサのうちの少なくとも第1の磁気センサの特性を検出するための少なくとも1つのラインであって、特性が、第1の磁気センサに関連する第1の結合領域に結合された1つ以上の磁性ナノ粒子の存在または非存在を示す、少なくとも1つのラインと、を備える、装置の開示がある。いくつかの実施形態では、第1の磁気センサは、磁気抵抗(MR)装置を備える。MR装置は、固定層と、自由層と、固定層と自由層との間に配置されたバリア層とを備えることができる。いくつかのそのような実施形態では、第1の結合領域に結合された1つ以上の磁性ナノ粒子が存在しない場合、固定層の磁気モーメントは、自由層の磁気モーメントからおよそ90度である。
【0017】
第1の結合領域は、核酸を第1の結合領域に固定するように構成された構造(例えば、空洞または隆起部)を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の磁気センサの形状は、実質的に円筒形または実質的に直方体である。いくつかの実施形態では、第1の磁気センサの横方向寸法は、およそ10ナノメートル(nm)からおよそ1マイクロメートルである。
【0019】
装置はまた、少なくとも1つのラインを介して複数の磁気センサに結合された検知回路を含むことができる。検知回路は、第1の磁気センサの特性(例えば、磁場、抵抗、磁場の変化、抵抗の変化、ノイズレベルなど)を検出するために少なくとも1つのラインに電流を印加するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、検知回路は、磁気発振器を備え、特性は、磁気発振器に関連する信号の周波数または磁気発振器によって発生される信号の周波数である。
【0020】
装置は、複数の磁気センサと複数の結合領域との間に配置された絶縁材料(例えば、酸化物(例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど)、窒化物(例えば、窒化ケイ素など))を有することができる。第1の磁気センサの上部と第1の結合領域との間の絶縁材料の厚さは、例えば、およそ3nmからおよそ20nmであってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのラインは、第1の磁気センサの上面の上方に配置された第1のラインを含み、第1の結合領域は、第1のライン内のトレンチ内に位置し、トレンチは、第1の磁気センサの上面の上方にある。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の磁気センサは、矩形アレイに配置され、少なくとも1つのラインは、少なくとも第1のラインおよび第2のラインを含み、第1のラインは、第1の磁気センサの上方に配置され、第2のラインは、第1の磁気センサの下方に配置される。1つ以上の結合領域は、第1のラインのトレンチ内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のラインは、矩形アレイの行に結合され、第2のラインは、矩形アレイの列に結合され、またはその逆である。
【0023】
核酸配列決定のための装置を製造する方法も本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、核酸配列決定装置を製造する方法は、第1のラインを製造することと、複数の磁気センサを製造することと、磁気センサ間に絶縁材料を堆積させることと、複数の追加のラインを製造することと、複数の結合領域を形成することと、を含む。いくつかの実施形態では、各磁気センサの下面は、第1のラインに結合され、各磁気センサの上面は、追加のラインのそれぞれ1つに結合される。
【0024】
第1のラインを製造することは、(例えば、物理蒸着、イオンビーム蒸着などを使用して)基板上に金属層を堆積することと、(例えば、フォトリソグラフィ、フライス加工、および/またはエッチングを使用して)金属層を第1のラインにパターニングすることと、を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のラインを製造した後、複数の磁気センサを製造する前に、絶縁材料が第1のライン上に堆積され、次いで第1のラインが(例えば、化学機械研磨(CMP)を使用して)被覆されず、複数の磁気センサが被覆されていない第1のライン上に製造される。
【0026】
複数の磁気センサは、第1のライン上に複数の層を堆積させ、(例えば、フォトリソグラフィおよび/またはエッチングを使用して)複数の層をパターニングして複数の磁気センサを形成することによって製造されることができ、複数の磁気センサのそれぞれは、所定の形状(例えば、実質的に円筒形、実質的に直方体など)を有する。複数の層を堆積させることは、第1の強磁性層を堆積させることと、第1の強磁性層上に金属または絶縁体層を堆積させることと、金属または絶縁体層上に第2の強磁性層を堆積させることと、を含むことができる。複数の磁気センサのそれぞれの横方向寸法は、例えば、およそ10nmからおよそ1マイクロメートルであってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、複数の磁気センサは、矩形アレイにあり、第1のラインは、矩形アレイの行に対応し、複数の追加のラインのそれぞれは、矩形アレイの列に対応し、またはその逆である。
【0028】
いくつかの実施形態では、磁気センサ間に絶縁材料を堆積させた後、複数の追加のラインを製造する前に、化学機械研磨ステップが実行されて、複数の磁気センサのそれぞれの上面を露出させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、複数の追加のラインを製造することは、金属の層を堆積することと、複数の追加のラインを画定するためにフォトリソグラフィを実行することと、金属の層の一部を除去することと、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、複数の結合領域を形成することは、複数の結合領域上にマスクを適用することと、(例えば、原子層堆積を使用して)マスク上に金属層を堆積させることと、マスクを持ち上げることと、を含む。次いで、マスクを持ち上げた後に、複数の追加のラインおよび複数の結合領域上に追加の絶縁材料(例えば、およそ3nmからおよそ20nmの厚さの酸化物(二酸化ケイ素など)または窒化物)が堆積されることができる。
【0031】
開示された核酸配列決定装置を使用して核酸を配列決定する方法も本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)少なくとも1つの核酸鎖を第1の結合領域に結合させることと、(b)1回または複数回の付加において、第1の結合領域に、伸長可能なプライマーおよび核酸ポリメラーゼを付加することと、(c)第1の結合領域に、第1の開裂可能な磁気標識によって標識された第1のヌクレオチド前駆体を付加することと、(d)核酸鎖を配列決定することと、を含む。第1の開裂可能な磁気標識は、磁性ナノ粒子(例えば、分子、超常磁性ナノ粒子、強磁性ナノ粒子など)を含むことができる。第1の結合領域は、ステップ(c)の前に洗浄されてもよい。ステップ(c)の後に、核酸ポリメラーゼのさらなる分子が第1の結合領域に付加されることができる。ステップ(c)および(d)は、各反復中に異なるヌクレオチド前駆体を用いて反復されてもよく、異なるヌクレオチド前駆体のそれぞれは、磁気的に標識される。第1のヌクレオチド前駆体は、dATP、dGTP、dCTP、dTTP、または等価物のうちの1つを含むことができる。第1のヌクレオチド前駆体および異なるヌクレオチド前駆体のそれぞれは、磁気標識アデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはそれらの等価物から選択されることができる。
【0032】
核酸鎖の配列決定は、第1の磁気センサの特性を検出するために少なくとも1つのラインを使用することを含むことができ、特性は、第1の開裂可能な磁気標識の存在または非存在を示す。特性は、例えば、磁場または抵抗、磁気発振器に関連する信号の周波数または磁気発振器によって発生される信号の周波数、ノイズレベル、または磁場の変化または抵抗の変化であってもよい。特性は、磁場の変化または抵抗の変化に起因してもよい。
【0033】
本方法はまた、少なくとも1つの核酸鎖を増幅するステップを含むことができる。行われる場合、増幅ステップは、少なくとも1つの核酸鎖を第1の結合領域に結合する前または後に行われることができる。増幅の結果として、1つ以上のアンプリコンが第1の結合領域に結合されることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、特性が第1の結合領域に結合された1つ以上の磁性ナノ粒子の存在を示すという決定に応答して、第1のヌクレオチド前駆体の相補的塩基が核酸鎖の核酸配列の記録に記録される。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド前駆体は、核酸ポリメラーゼによって伸長不可能であり、本方法は、特性を検出した後、第1の開裂可能な磁気標識を除去し、第1のヌクレオチド前駆体を核酸ポリメラーゼによって伸長可能にすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド前駆体は、核酸ポリメラーゼによって伸長可能ではない。第1のヌクレオチド前駆体は、化学的開裂によって伸長可能にされることができる。
【0036】
核酸鎖を配列決定した後、開裂可能な磁気標識は、酵素的または化学的開裂によって除去されることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1の開裂可能な磁気標識は、第1の磁気特性を有し、本方法は、1回または複数回の付加において、第1の結合領域に、第2の磁気特性を有する第2の開裂可能な磁気標識によって標識された第2のヌクレオチド前駆体を付加することをさらに含む。いくつかのそのような実施形態では、本方法は、1回または複数回の付加において、第1の結合領域に、第3の磁気特性を有する第3の開裂可能な磁気標識によって標識された第3のヌクレオチド前駆体、および第4の磁気特性を有する第4の開裂可能な磁気標識によって標識された第4のヌクレオチド前駆体を付加することをさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの核酸鎖を第1の結合領域に結合することは、少なくとも1つの核酸鎖のそれぞれ1つの末端にアダプタを結合することと、第1の結合領域にオリゴヌクレオチドを結合することであって、オリゴヌクレオチドがアダプタにハイブリダイズすることができる、結合することと、を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの核酸鎖を第1の結合領域に結合することは、少なくとも1つの核酸鎖のそれぞれを第1の結合領域に共有結合することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの核酸鎖を第1の結合領域に結合することは、分子間の不可逆的な受動吸着または親和性を介して少なくとも1つの核酸鎖を固定化することを含む。いくつかの実施形態では、第1の結合領域は、空洞または隆起部を備え、少なくとも1つの核酸鎖を第1の結合領域に結合することは、ヒドロゲルを空洞または隆起部に適用することを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くB型ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは、熱安定性ポリメラーゼである。
【0040】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのラインを使用することは、少なくとも1つのラインに電流を印加することを含む。
【0041】
磁気標識
本明細書に記載の核酸配列決定方法は、開裂可能な磁気標識を含む磁気標識ヌクレオチド前駆体の使用に依拠する。これらの開裂可能な磁気標識は、例えば、磁性ナノ粒子、例えば分子、超常磁性ナノ粒子、または強磁性粒子を含むことができる。磁気標識は、高い磁気異方性を有するナノ粒子とすることができる。高い磁気異方性を有するナノ粒子の例は、Fe、FePt、FePdおよびCoPtを含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドへの化学的結合を促進するために、粒子が合成され、SiOによってコーティングされることができる。例えば、M.Aslam,L.Fu,S.Li,およびV.P.Dravid,「Silica encapsulation and magnetic properties of FePt nanoparticles」、Journal of Colloid and Interface Science,Volume 290,Issue 2,2005年10月15日,pp.444-449を参照されたい。このサイズの磁気標識は、永久的な磁気モーメントを有し、その方向は、非常に短い時間スケールでランダムに変動するため、以下にさらに説明するいくつかの実施形態は、磁気標識の存在によって引き起こされる磁場の変動を検出する高感度検知スキームに依拠する。
【0042】
ヌクレオチド前駆体に磁気標識を結合させ、ヌクレオチド前駆体の組み込み後に磁気標識を開裂する方法はいくつかある。例えば、磁気標識は、塩基に結合されてもよく、その場合、化学的に開裂されてもよい。別の例として、磁気標識は、リン酸に結合されてもよく、その場合、それらはポリメラーゼによって開裂されてもよく、またはリンカーを介して結合されている場合、リンカーを開裂することによって開裂されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、磁気標識は、ヌクレオチド前駆体の窒素塩基(A、C、T、G、または誘導体)に連結される。ヌクレオチド前駆体の組み込みおよび配列決定装置(例えば、以下にさらに詳細に説明するように)による検出の後、磁気標識は、組み込まれたヌクレオチドから開裂される。
【0044】
いくつかの実施形態では、磁気標識は、開裂可能なリンカーを介して結合される。開裂可能なリンカーは、当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第7,057,026号明細書、米国特許第7,414,116号明細書、ならびにそれらの継続および改良に記載されている。いくつかの実施形態では、磁気標識は、アリル基またはアジド基を含むリンカーを介して、ピリミジンの5位またはプリンの7位に結合される。他の実施形態では、リンカーは、ジスルフィド、インドール、またはシーバー基を含む。リンカーは、アルキル(C1-6)またはアルコキシ(C1-6)、ニトロ、シアノ、フルオロ基または同様の特性を有する基から選択される1つ以上の置換基をさらに含有してもよい。簡潔に言えば、リンカーを、水溶性ホスフィンまたはホスフィンベースの遷移金属含有触媒によって開裂することができる。他のリンカーおよびリンカー開裂機構は、当該技術分野において公知である。例えば、トリチル、p-アルコキシベンジルエステルおよびp-アルコキシベンジルアミドならびにtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)基ならびにアセタール系を含むリンカーが、プロトン放出性開裂剤によって酸性条件下で開裂されることができる。チオアセタールまたは他の硫黄含有リンカーは、ニッケル、銀、または水銀などのチオフィリック金属を使用して開裂されることができる。適切なリンカー分子を調製するために、開裂保護基も考慮することができる。エステルおよびジスルフィド含有リンカーは、還元的条件下で開裂されることができる。トリイソプロピルシラン(TIPS)またはt-ブチルジメチルシラン(TBDMS)を含有するリンカーは、Fイオンの存在下で開裂されることができる。反応混合物の他の構成要素に影響を及ぼさない波長によって開裂される光開裂可能なリンカーは、O-ニトロベンジル基を含むリンカーを含む。ベンジルオキシカルボニル基を含むリンカーは、Pd系の触媒によって開裂されることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド前駆体は、例えば、米国特許第7,405,281号明細書および米国特許第8,058,031号明細書に記載されているように、ポリリン酸部分に結合した標識を含む。簡潔に言えば、ヌクレオチド前駆体は、ヌクレオシド部分と、酸素原子の1つ以上が場合により、例えばSによって置換されている3つ以上のリン酸基の鎖とを含む。標識は、α、β、γ以上のリン酸基(存在する場合)に直接またはリンカーを介して結合されることができる。いくつかの実施形態では、標識は、例えば、米国特許第8,252,910号明細書に記載されているように、非共有結合リンカーを介してリン酸基に結合している。いくつかの実施形態では、リンカーは、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリル、置換または非置換ヘテロアリル、置換または非置換シクロアルキル、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルから選択される炭化水素である。例えば、米国特許第8,367,813号明細書を参照されたい。リンカーはまた、核酸鎖を含んでもよい。例えば、米国特許第9,464,107号明細書を参照されたい。
【0046】
磁気標識がリン酸基に連結されている実施形態では、ヌクレオチド前駆体は、検出可能な磁気標識も開裂して放出する核酸ポリメラーゼによって新生鎖に組み込まれる。いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第9,587,275号明細書に記載されているように、リンカーを開裂することによって磁気標識が除去される。
【0047】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド前駆体は、伸長不可能な「ターミネーター」ヌクレオチド、すなわち、ブロッキング「ターミネーター」基によって次のヌクレオチドの付加からブロックされた3’末端を有するヌクレオチドである。ブロッキング基は、本明細書に記載の鎖合成プロセスを継続するために除去されることができる可逆的ターミネーターである。除去可能なブロッキング基をヌクレオチド前駆体に結合させることは、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第7,541,444号明細書、米国特許第8,071,739号明細書、ならびにそれらの継続および改良を参照されたい。簡潔に言えば、ブロッキング基は、水溶液中でホスフィンまたは窒素-ホスフィン配位子の存在下で金属-アリル錯体と反応することによって開裂されることができるアリル基を含むことができる。合成による配列決定に使用される可逆的ターミネーターヌクレオチドの他の例は、2019年12月16日に出願され、国際公開第2020/131759号として2020年6月25日に公開された「3’-protected Nucleotides」と題する国際出願第PCT/US2019/066670号に記載されている修飾ヌクレオチドを含み、これは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
磁気センサ
本明細書に開示される実施形態は、例えば上記のように、ヌクレオチド前駆体に結合した磁気標識の存在を検出するために磁気センサを使用する。
【0049】
図1は、いくつかの実施形態にかかる磁気センサ105の一部を示している。図1の例示的な磁気センサ105は、下面108および上面109を有し、非磁性スペーサ層107によって分離された3つの層、例えば2つの強磁性層106A、106Bを含む。非磁性スペーサ層107は、例えば、銅または銀などの金属材料であってもよく、その場合、構造はスピンバルブ(SV)と呼ばれ、または例えば、アルミナまたは酸化マグネシウムなどの絶縁体であってもよく、その場合、構造は磁気トンネル接合(MTJ)と呼ばれる。強磁性層106A、106Bに使用するのに適した材料は、例えば、Co、Ni、およびFeの合金(他の元素と混合されることもある)を含む。いくつかの実施形態では、強磁性層106A、106Bは、それらの磁気モーメントがフィルムの平面内またはフィルムの平面に対して垂直に配向されるように設計される。界面平滑化、テクスチャリング、および装置100をパターニングするために使用される処理からの保護などの目的を果たすために、図1に示す3つの層106A、106B、および107の下方および上方の双方に追加の材料が堆積されることができるが、磁気センサ105の活性領域は、この三層構造にある。したがって、磁気センサ105と接触している構成要素は、3つの層106A、106B、または107のうちの一方と接触していてもよく、または磁気センサ105の別の部分と接触していてもよい。
【0050】
図2Aおよび図2Bに示すように、MRセンサの抵抗は、1-cos(θ)に比例し、θは、図1に示す2つの強磁性層106A、106Bのモーメント間の角度である。磁場によって生成される信号を最大化し、印加された磁場に対する磁気センサ105の線形応答を提供するために、磁気センサ105は、磁場の非存在下で2つの強磁性層106A、106Bのモーメントが互いに対してπ/2または90度に配向されるように設計されてもよい。この配向は、当該技術分野において公知の任意の数の方法によって達成されることができる。例えば、1つの解決策は、反強磁性体を使用して交換バイアスと呼ばれる効果によって強磁性層のうちの1つ(「FM1」と呼ばれる106Aまたは106Bのいずれか)の磁化方向を「ピン留め」し、次いで絶縁層および永久磁石を有する二重層によってセンサをコーティングすることである。絶縁層は、磁気センサ105の電気的短絡を回避し、永久磁石は、FM1のピン止め方向に垂直な「ハードバイアス」磁場を供給し、その後、第2の強磁性体(「FM2」と呼ばれる106Bまたは106Aのいずれか)を回転させ、所望の構成を生成する。次いで、FM1に平行な磁場は、FM2をこの90度の構成の周りで回転させ、抵抗の変化は、磁気センサ105に作用する磁場を測定するために較正されることができる電圧信号をもたらす。このように、磁気センサ105は、磁場電圧変換器として機能する。
【0051】
直上で論じた例は、それらのモーメントが互いに対して90度でフィルムの平面内に配向されている強磁性体の使用を説明したが、代替的に、垂直構成は、強磁性層106A、106Bのうちの一方のモーメントをフィルムの平面外に配向することによって達成されることができ、これは、垂直磁気異方性(PMA)と呼ばれるものを使用して達成されることができることに留意されたい。
【0052】
いくつかの実施形態では、磁気センサ105は、スピントランスファートルクとして知られる量子力学的効果を使用する。そのようなデバイスでは、SVまたはMTJ内の1つの強磁性層106A(または106B)を通過する電流は、層のモーメントに平行なスピンを有する電子を優先的に透過させるが、スピン反平行を有する電子は反射される可能性が高い。このようにして、電流は、一方のスピンタイプの電子が他方よりも多くなるようにスピン分極される。次いで、このスピン分極電流は、第2の強磁性層106B(または106A)と相互作用し、層のモーメントにトルクを及ぼす。このトルクは、異なる状況では、第2の強磁性層106B(または106A)のモーメントを強磁性体に作用する有効磁場の周りで歳差運動させることができるか、またはモーメントを系内で誘導される一軸異方性によって定義される2つの向きの間で可逆的に切り替えさせることができる。得られたスピントルク発振子(STO)は、それらに作用する磁場を変化させることによって周波数調整可能である。したがって、それらは、STOセンサを使用する概念を示す図3Aに示すように、磁場対周波数(または位相)トランスデューサとして作用する能力を有する。図3Bは、1GHzの周波数および5mTのピークツーピーク振幅を有するAC磁場がSTOにわたって印加されたときの遅延検出回路を通るSTOの実験応答を示している。この結果ならびに短いナノ秒の磁場パルスについて図3Cおよび図3Dに示されている結果は、これらの発振器がナノスケールの磁場検出器としてどのように使用されることができるかを示している。さらなる詳細は、T.Nagasawa,H.Suto,K.Kudo,T.Yang,K.Mizushima,およびR.Sato,「Delay detection of frequency modulation signal from a spin-torque oscillator under a nanosecond-pulsed magnetic field」,Journal of Applied Physics,Vol.lll,07C908(2012)に見出すことができる。
【0053】
核酸配列決定装置
図4A図4Bおよび図4Cは、いくつかの実施形態にかかる核酸配列決定のための装置100の一部を示している。図4Aは、装置の平面図である。図4Bは、図4Aの「4B」とラベル付けされた一点鎖線の位置における断面図であり、図4Cは、図4Aの「4C」とラベル付けされた一点鎖線の位置における断面図である。図4Aに示すように、装置100は、複数の磁気センサ105を含む磁気センサアレイ110を備え、アレイ110には16個の磁気センサ105が示されている。図面を不明瞭にすることを避けるために、図4Aでは、磁気センサ105のうちの7つ、すなわち磁気センサ105A、105B、105C、105D、105E、105F、および105Gのみがラベル付けされている。(簡単にするために、この文書では、概して磁気センサを参照符号105によって参照している。個々の磁気センサには、参照符号105の後に文字が付されている。)装置100はまた、少なくとも1つのライン120と、磁気センサ105の少なくともいくつかについて、これらの磁気センサ105のそれぞれについての結合領域115とを含み、これらは双方とも、以下にさらに詳細に説明される。
【0054】
磁気センサ105および磁気センサアレイ110内のライン120の一部は、装置100の平面図では見えない可能性があることを示すために破線を使用して示されている。以下にさらに詳細に説明するように、磁気センサ105は、装置100に埋め込まれ、結合領域115の内容物から保護される(例えば、絶縁体によって)。したがって、様々な図示された構成要素(例えば、ライン120、磁気センサ105など)は、装置100の物理的インスタンス化(例えば、絶縁体などの保護材料に埋め込まれるか、または保護材料によって被覆されてもよい)では見えない可能性があることを理解されたい。
【0055】
いくつかの実施形態では、磁気センサアレイ110の磁気センサ105のそれぞれは、磁気抵抗(MR)効果を使用して、以下にさらに詳細に説明する関連する結合領域115内の磁気標識を検出する薄膜装置である。以下により詳細に説明するように、各磁気センサ105は、検知された磁場の強度および/または方向が変化するにつれて変化する抵抗を有するポテンショメータとして動作することができる。
【0056】
図4Aの例示的な実施形態における例示的な磁気センサアレイ110は矩形アレイであり、磁気センサ105は、行および列に配置されている。すなわち、磁気センサアレイ110の複数の磁気センサ105は、矩形格子パターンで配置されている。図4Aに示すような格子パターンの磁気センサ105の配置は、多くの可能な配置のうちの1つであることを理解されたい。磁気センサ105の他の配置も可能であり、本明細書の開示の範囲内であることが当業者には理解されよう。
【0057】
ここで図4Aに関連して図4Bおよび図4Cを参照すると、装置100の例示的な実施形態に示される各磁気センサ105は、円筒形状を有する。しかしながら、一般に、磁気センサ105は、任意の適切な形状を有することができることを理解されたい。例えば、磁気センサ105は、三次元の直方体であってもよい。さらに、異なる磁気センサ105は、異なる形状(例えば、一部は直方体であり、他の一部は円筒形などであってもよい)を有することができる。
【0058】
図4A図4B、および図4Cの例示的な実施形態に示すように、結合領域115は、各磁気センサ105の上方に配置される。例えば、結合領域115Aは、磁気センサ105Aの上方にある。結着領域115Bは、磁気センサ105Bの上方にある。結合領域115Cは、磁気センサ105Cの上方にある。結合領域115Dは、磁気センサ105Dの上方にある。結合領域115Eは、磁気センサ105Eの上方にある。結合領域115Fは、磁気センサ105Fの上方にある。結着領域115Gは、磁気センサ105Gの上方にある。図4Aに示す他のラベル付けされていない9つの磁気センサ105のそれぞれもまた、対応する結合領域115(図4Aにおいてもラベル付けなし)の下方に配置される。
【0059】
結合領域115は、流体を保持する。磁気センサ105は、結合領域115内にある磁気標識(例えば、ナノ粒子)を検出することができる。したがって、いくつかの実施形態では、各結合領域115の表面116は、磁気センサ105が結合領域115内にある磁気標識を検出することを依然として可能にしながら、結合領域115内にあるいかなる流体からも磁気センサ105を保護する特性および特徴を有する。表面116(および場合によっては結合領域115の残りの部分)の材料は、絶縁体であってもよく、または絶縁体を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、表面116は、ポリプロピレン、金、ガラス、またはシリコンを含む。表面116は、磁気センサ105の上方に存在するライン120の上に配置された多層構造の露出面であってもよいことを理解されたい。例えば、表面116が導体(例えば、金)を含む実施形態では、絶縁材料の層が使用されて、磁気センサ105上のライン120から導体を分離することができる。(図4Bおよび図4Cを参照されたい。)表面116の厚さは、磁気センサ105が結合領域115内の磁気標識を検出することができるように、磁気センサ105が結合領域115からある距離にあるように選択されることができる。いくつかの実施形態では、表面116は、およそ3から20nmの厚さであるため、磁気センサ105の検出層(以下にさらに説明する)は、その対応する結合領域115内の磁気標識からおよそ5nmからおよそ40nmの間にある。
【0060】
いくつかの実施形態では、結合領域115の表面116は、核酸を表面116に固定するように構成された構造(または複数の構造)を有する。例えば、構造(または複数の構造)は、空洞または隆起部を含むことができる。さらにまた、いくつかの実施形態では、表面116は、核酸の増幅を促進する特性を有する。例えば、装置100は、ブリッジ増幅を促進して、各結合領域115内の単一核酸鎖のクローンクラスタの生成を促進することができる。
【0061】
図4A図4B、および図4Cの例示的な実施形態に示す各結合領域115は、形状が直方体である(例えば、図4Aに示すように、各結合領域115は、上面から見て正方形の形状を有し、断面で見て長方形である)が、結合領域115は、他の形状(例えば、円形、楕円形、八角形など)を有することができることを理解されたい。例えば、結合領域の形状は、磁気センサ105の形状と同様または同一とすることができる(例えば、磁気センサ105が三次元で円筒形である場合、結合領域115はまた、磁気センサ105の半径よりも大きく、小さく、または同じサイズとすることができる半径を有する円筒形とすることができる。磁気センサ105が三次元の直方体である場合、結合領域115はまた、磁気センサ105などの上部よりも大きい、小さい、または同じサイズの表面116を有する直方体とすることができる。)。さらに、異なる結合領域115および異なる表面116は、異なる形状(例えば、いくつかの表面116は円形とすることができ、いくつかは長方形とすることができ、いくつかは正方形とすることができるなど)を有することができる。さらに、図4Bおよび図4Cは、結合領域115が垂直な辺を有することを示しているが、辺が垂直である必要はない。一般に、結合領域115およびそれらの表面116は、磁気センサ105による結合領域115内の磁性ナノ粒子の検出を容易にする任意の形状および特性を有することができる。
【0062】
図4A図4B、および図4Cに示す例示的な実施形態などのいくつかの実施形態では、複数の磁気センサ105のそれぞれは、少なくとも1つのライン120に結合される。(簡単にするために、この文書は、一般に、参照符号120によって行を参照する。個々の行には、参照符号120とそれに続く文字が与えられている。)図4A図4B、および図4Cに示す例示的な実施形態では、磁気センサアレイ110の各磁気センサ105は、2つのライン120に結合される。例えば、磁気センサ105Aは、ライン120Aおよび120Hに結合される。磁気センサ105Bは、ライン120Bおよび120Hに結合される。磁気センサ105Cは、ライン120Cおよび120Hに結合される。磁気センサ105Dは、ライン120Dおよび120Hに結合される。磁気センサ105Eは、ライン120Dおよび120Eに結合される。磁気センサ105Fは、ライン120Dおよび120Fに結合される。磁気センサ105Gは、ライン120Dおよび120Gに結合される。図4A図4B、および図4Cの例示的な実施形態では、ライン120A、120B、120C、および120Dは、磁気センサ105の下方に存在するように示されており、ライン120E、120F、120G、および120Hは、磁気センサ105の上方に存在するように示されている。
【0063】
図4Bは、ライン120Dおよび120Eに関連する磁気センサ105E、ライン120Dおよび120Fに関連する磁気センサ105F、ライン120Dおよび120Gに関連する磁気センサ105G、ならびにライン120Dおよび120Hに関連する磁気センサ105Dを示している。図4Cは、ライン120Dおよび120Hに関連する磁気センサ105D、ライン120Cおよび120Hに関連する磁気センサ105C、ライン120Bおよび120Hに関連する磁気センサ105B、ならびにライン120Aおよび120Hに関連する磁気センサ105Aを示している。
【0064】
図4A図4B、および図4Cの例示的な実施形態におけるライン120のそれぞれは、磁気センサアレイ110の行または列を識別する。例えば、ライン120A、120B、120C、および120Dのそれぞれは、磁気センサアレイ110の異なる行を識別し、ライン120E、120F、120G、および120Hのそれぞれは、磁気センサアレイ110の異なる列を識別する。図4Bに示すように、ライン120E、120F、120G、120Hのそれぞれは、断面に沿って磁気センサ105のうちの1つと接触しており(すなわち、ライン120Eは、磁気センサ105Eの上部と接触しており、ライン120Fは、磁気センサ105Fの上部と接触しており、ライン120Gは、磁気センサ105Gの上部と接触しており、ライン120Hは、磁気センサ105Dの上部と接触している)、ライン120Dは、磁気センサ105E、105F、105G、105Dのそれぞれの下部と接触している。同様に、図4Cに示すように、ライン120A、120B、120C、120Dのそれぞれは、断面に沿って磁気センサ105のうちの1つの下部と接触しており(すなわち、ライン120Aは、磁気センサ105Aの下部と接触しており、ライン120Bは、磁気センサ105Bの下部と接触しており、ライン120Cは、磁気センサ105Cの下部と接触しており、ライン120Dは、磁気センサ105Dの下部と接触している)、ライン120Hは、磁気センサ105D、105C、105B、105Aのそれぞれの上部と接触している。
【0065】
いくつかの実施形態では、結合領域115の一部または全部は、磁気センサ105を通過するライン120内のトレンチ内に存在する。例えば、図4Cに示すように、ライン120Hは、磁気センサ105の間よりも磁気センサ105の上の方が細い。例えば、ライン120Hは、磁気センサ105Dの上方の第1の厚さ、磁気センサ105Dと105Cとの間の第2のより大きい厚さ、および磁気センサ105Cの上方の第1の厚さを有する。
【0066】
説明を簡単にするために、図4A図4B、および図4Cは、磁気センサアレイ110内に16個のみの磁気センサ105、16個のみの対応する結合領域115、および8本のライン120を有する例示的な装置100を示している。装置100は、磁気センサアレイ110内のより少ないまたはより多くの磁気センサ105を有することができ、より多いまたはより少ない結合領域115を有することができ、より多いまたはより少ないライン120を有することができることを理解されたい。一般に、磁気センサ105が結合領域115内の磁気標識を検出することを可能にする磁気センサ105および結合領域115の任意の構成が使用されることができる。同様に、磁気センサ105が1つ以上の磁気標識を検知したかどうかの決定を可能にする1つ以上のライン120の任意の構成が使用されることができる。
【0067】
図4Dは、いくつかの実施形態にかかる装置100の構成要素を示すブロック図である。図示のように、装置100は、ライン120によって検知回路130に結合された磁気センサアレイ110を含む。動作中、検知回路130は、ライン120に電流を印加して、磁気センサアレイ110内の複数の磁気センサ105のうちの少なくとも1つの特性を検出することができ、特性は、結合領域115内の磁気標識ヌクレオチド前駆体の存在または非存在を示す。例えば、いくつかの実施形態では、特性は、磁場もしくは抵抗、または磁場の変化もしくは抵抗の変化である。いくつかの実施形態では、特性は、ノイズレベルである。いくつかの実施形態では、磁気センサは、磁気発振器を備え、特性は、磁気発振器に関連する信号の周波数または磁気発振器によって発生される信号の周波数である。
【0068】
いくつかの実施形態では、検知回路130は、磁気センサアレイ110内の磁気センサ105の一部または全部の磁気環境の偏差または変動を検出する。例えば、磁気標識の非存在下におけるMR型の磁気センサ105は、磁気標識からの磁場変動が検知強磁性体のモーメントの変動を引き起こすため、磁気標識の存在下における磁気センサ105と比較して、特定の周波数を超える比較的小さいノイズを有するべきである。これらの変動は、ヘテロダイン検出(例えば、雑音電力密度を測定することによって)を使用して、または磁気センサ105の電圧を直接測定することによって測定されることができ、結合領域115を検知しないダミーセンサ素子と比較するためにコンパレータ回路を使用して評価されることができる。磁気センサ105がSTO素子を含む場合、磁気標識からの変動磁場は、周波数の瞬間的な変化に起因して磁気センサの位相のジャンプを引き起こし、これは位相検出回路を使用して検出されることができる。別の選択肢は、磁気標識の存在が振動をオフにするように、STOが小さい磁場範囲内でのみ振動するようにそれを設計することである。上記で提供された例は、単なる例示であることを理解されたい。他の検出方法も考えられ、本開示の範囲内である。
【0069】
いくつかの実施形態では、磁気センサアレイ110は、隣接する要素を通過して磁気センサアレイ110の性能を低下させる可能性がある「スニーク」電流の可能性を低減するセレクタ要素を含む。図5Aおよび図5Bは、いくつかの実施形態にかかる2つの手法を示している。図5Aでは、CMOSトランジスタは、磁気センサ105と直列に結合されている。図5Aに示される構成についてのより詳細については、B.N.Engel,J.Akerman,B.Butcher,R.W.Dave,M.DeHerrera,M.Durlam,G.Grynkewich,J.Janesky,S.V.Pietambaram,N.D.Rizzo,J.M.Slaughter,K.Smith,J.J.Sun,およびS.Tehrani,「A 4-Mb Toggle MRAM Based on a Novel Bit and Switching Method」,IEEE Transactions on Magnetics,Vol.41,132(2005)を参照されたい。
【0070】
図5Bでは、ダイオードまたはダイオード様素子が磁性膜とともに堆積され、次いで「クロスポイント」アーキテクチャに配置され、磁気センサアレイ110の周辺のCMOSトランジスタが個々のライン120(例えば、ワードラインおよびビットライン)をオンにして、アレイ内の個々の磁気センサ105をアドレス指定する。CMOS選択トランジスタの使用は、フロントエンド(例えば、CMOSトランジスタおよび下層の回路を構築するための全てのナノ加工)を製造するために利用可能なファウンドリの普及のためにより単純とすることができるが、動作に必要な電流のタイプは、最終的に磁気センサアレイ110に必要な密度に到達するためにクロスポイント設計を必要とすることがある。図5Bに示される構成に関するさらなる詳細は、C.Chappert,A.Fert,およびF.N.Van Daul,「The emergence of spin electronics in data storage」,Nature Materials,Vol.6,813(2007)に見出すことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、装置100の使用は、例えば、ブリッジ増幅(以下にさらに説明する)を使用するなど、核酸の増幅を可能にする。以下により詳細に説明するような増幅手順によって作成されたクローンクラスタ内の個々の鎖間の距離は、磁気センサアレイ110内の磁気センサ105のサイズおよび密度を選択するために推定されることができる。例えば、距離を推定するために、多くの核酸配列決定用途の平均鎖長が200BPであり、二本鎖DNAは、一本鎖DNAより柔軟性が低く、したがって上限を提供するため、選択された200塩基対(BP)二本鎖DNAの輪郭長(例えば、DNAの直線化された鎖の長さ)と持続長(例えば、ブリッジ増幅手順中に屈曲した後の鎖の平均長さ)の双方を考慮することができる。平均輪郭長は、約65nmであり、持続長は、およそ35nmである(例えば、S.Brinkersら,「The persistence length of double stranded DNA determined using dark field tethered particle motion」,J.Chem.Phys.(2009)130:215105)。DNAは、ブリッジ増幅プロセス中に屈曲するため、増幅されたクローン間の平均距離は、輪郭長と持続長との間のどこかでなければならない。したがって、その距離は、およそ40nmと推定されることができる。信号対雑音比(SNR)の観点から、元々結合された各標的鎖を配列決定するために数十から数百のコピー鎖を有することが望ましい場合があると仮定すると、磁気センサ105は、例えば、およそ10nmからおよそ1μm程度の寸法を有することができる。配列決定は、蛍光ではなく磁性ナノ粒子を使用するため、隣接する磁気センサ105間の間隔は、回折効果によって制限される光学系に必要な間隔よりもはるかに小さくすることができることを理解されたい。例えば、本明細書に開示される装置100の実施形態では、隣接する磁気センサ105は、およそ20nmからおよそ30nm離れていてもよい。
【0072】
配列決定装置の製造方法
いくつかの実施形態では、装置100は、フォトリソグラフィプロセスおよび薄膜堆積を使用して製造される。
【0073】
図6は、いくつかの実施形態にかかる装置100を製造する方法150を示している。152において、本方法が開始する。154において、例えば、基板上に金属層を堆積させ、金属層を少なくとも1つのライン120にパターニングすることによって、基板上に少なくとも1つのライン120(例えば、第1のライン120)が製造される。金属層は、例えば、物理蒸着(PVD)またはイオンビーム蒸着(IBD)を使用して堆積されることができる。少なくとも1つのライン120内に金属層をパターニングすることは、フォトリソグラフィ、フライス加工、および/またはエッチングを使用して達成されることができる。
【0074】
任意に、156において、少なくとも1つのライン120上に絶縁材料が堆積されることができ、次いで、任意に、158において、少なくとも1つのライン120が露出されることができる。例えば、少なくとも1つのライン120は、化学機械研磨(CMP)を使用して露出されることができる。
【0075】
160において、複数の磁気センサ105(例えば、磁気センサアレイ110)が少なくとも1つのライン120上に製造される。複数の磁気センサ105は、例えば、少なくとも1つのライン120上に複数の層を堆積し、次いで複数の層をパターニングして複数の磁気センサ105を形成することによって製造されることができる。複数の層は、任意の適切な技術を使用して堆積されてもよい。例えば、複数の層は、第1の強磁性層(例えば、図1に示す層106B)を堆積し、第1の強磁性層上に金属または絶縁体層(例えば、図1に示す層107)を堆積し、金属または絶縁体層上に第2の強磁性層(例えば、図1に示す層106A)を堆積することによって堆積されてもよい。複数の層をパターニングして複数の磁気センサ105を形成することは、例えばフォトリソグラフィまたはエッチングなどの任意の適切な技術を使用して達成されることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、磁気センサアレイ110の各磁気センサ105は、下面108および上面109を有する。(例えば、図1を参照されたい。)下面108は、少なくとも1つのライン120のうちの一方に結合される(例えば、下面108は、第1のライン120に結合される)。いくつかの実施形態では、各磁気センサ105の下面108は、少なくとも1つのライン120のうちの1つ(例えば、第1のライン120)と接触している。
【0077】
いくつかの実施形態では、複数の磁気センサ105のそれぞれは、所定の形状を有し、これは複数の磁気センサ105の全ての磁気センサ105について同じであってもよく、または2つ以上の磁気センサ105について異なっていてもよい。所定の形状は、例えば、実質的に円筒形または実質的に直方体を含む任意の適切な形状であってもよい。複数の磁気センサ105のそれぞれの横方向寸法は、例えば、およそ10nmからおよそ1μmであってもよい。本明細書で使用される場合、「横方向寸法」という用語は、例えば装置100を上面から見たときの、図4Aに示されるx-y平面内の寸法を意味する。例えば、磁気センサ105が円筒形である場合、横方向寸法は、円筒の上面109の直径である。別の例として、磁気センサ105が直方体である場合、その横方向寸法は、その上面の寸法(例えば、その上面109の長さ、幅、または対角寸法)を含む。
【0078】
再び図6の方法実施形態を参照すると、162において、絶縁材料(例えば、誘電材料)が、磁気センサアレイ110の磁気センサ105の間に堆積される。絶縁材料は、例えば、酸化物または窒化物などの任意の適切な材料であってもよい。例えば、絶縁材料は、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、または窒化ケイ素(Si)を含んでもよい。
【0079】
任意に、164において、化学機械研磨ステップが実行されて、複数の磁気センサ105のそれぞれの上面109を露出させることができる。
【0080】
166において、少なくとも1つの追加のライン120が、任意の適切な技術を使用して製造される。例えば、少なくとも1つの追加のライン120は、金属の層を堆積させ、フォトリソグラフィを実行して少なくとも1つの追加のライン120を画定し、金属の層の一部を除去し、それによって少なくとも1つの追加のライン120を残すことによって製造されることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加のライン120のそれぞれは、磁気センサアレイ110内の少なくとも1つの磁気センサ105の上面109に結合される。いくつかの実施形態では、各磁気センサ105の上面109は、同じライン120と接触している。いくつかの実施形態では、磁気センサ105の下面108は、第1のライン120Aと接触しており、磁気センサ105の上面109は、第2のライン120Bと接触している。
【0082】
いくつかの実施形態では、複数の磁気センサ105は、矩形磁気センサアレイ110内にある。そのような実施形態では、少なくとも1つのライン120(例えば、第1のラインまたは下部ライン120)は、矩形アレイの1つ以上の行に対応することができ、少なくとも1つの追加のライン120(例えば、第2のラインまたは第1のライン120)は、矩形アレイの1つ以上の列に対応することができ、その逆も可能である。
【0083】
168において、任意の適切な技術を使用して複数の結合領域115が形成される。例えば、複数の結合領域115は、複数の結合領域115に対応する領域上にマスクを適用し、マスク上に金属層を堆積し、マスクを持ち上げることによって形成されることができる。例えば、フォトリソグラフィが実行されて、磁気センサ105の直上を除いて、上部ライン120と重なるポリマーの窓を有するマスクを画定することができる。その後、磁気センサ105から離れるように上部ライン120を厚くするために後続の金属堆積および持ち上げが実行されることができ、これは、各磁気センサ105の上方に浅いトレンチを形成し、上部ライン120の抵抗を低減してノイズ性能を改善する。これらの浅いトレンチは、結合領域115を画定することができる。
【0084】
したがって、いくつかの実施形態では、複数の結合領域115は、磁気センサ105の上部に対応する位置において上部ライン120にトレンチを作製し、次いでトレンチ上に絶縁材料を堆積させることによって形成される。例えば、複数の磁気センサ105が矩形アレイ110に配置され、いくつかのライン120(下部ライン120)が磁気センサ105の下方にあり、他のライン120(上部ライン120)が磁気センサ105の上方にある実施形態では、トレンチは、上部ライン120のそれぞれにおいて、それらが磁気センサ105を通過する位置においてエッチングされてもよい。次いで、結合領域115は、磁気センサ105の上方のトレンチによって画定される(例えば、図4Cに示すように)。
【0085】
いくつかの実施形態では、結合領域115を形成した後(例えば、上述したマスクを持ち上げた後および/またはトレンチを形成した後)、追加の絶縁材料(例えば、SiOなどの酸化物または窒化物)の薄層が、(例えば、原子層堆積を使用して)複数の追加のライン120および複数の結合領域115上に堆積される。追加の絶縁材料の厚さは、例えば、およそ3nmからおよそ20nmであってもよい。磁気センサ105を結合領域115内の磁気標識から電気的に絶縁し、結合領域115に追加されると予想される流体から磁気センサ105を保護する任意の適切な絶縁材料が、この目的のために使用されることができる。例えば、追加の絶縁材料は、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(AlO)、または窒化ケイ素(SiN)などを含むことができる。
【0086】
170において、本方法150は終了する。
【0087】
配列決定方法
いくつかの実施形態では、核酸は、磁気センサアレイ110の磁気センサ105の近くで装置100にテザリングされた固定化核酸鎖(潜在的にクローンクラスタ内)を使用して配列決定される。次いで、4種類の可逆的ターミネーター塩基(RT塩基)を一緒にまたは一度に1つずつ加えてもよく、組み込まれていないヌクレオチドが洗い流される。次いで、磁気標識は、次の配列決定サイクルが始まる前に、末端3’ブロッカーとともに核酸鎖から化学的に除去されることができる。
【0088】
核酸鎖は、任意の適切な方法で調製されることができる。例えば、核酸鎖は、核酸試料のランダム断片化、その後の5’および3’アダプタライゲーションによって調製されることができる。次いで、核酸のこれらの鎖は、結合領域115の少なくともいくつかの表面116に結合または付着したオリゴ上に捕捉されることができる。配列決定の前に鎖を増幅するために、ブリッジ増幅を含む線形または指数関数的増幅が使用されることができる。
【0089】
ブリッジ増幅および他の増幅技術は、当該技術分野において周知であり、いくつかの実施形態にかかる装置100とともに使用されることができる。ブリッジ増幅を開始するために、例えばヒドロゲル中に固定化されたアダプタ鎖を使用して、配列決定される核酸が基材に結合されることができる。次いで、ポリメラーゼ、プライマー、およびヌクレオチド前駆体が結合領域115に導入されて、一本鎖標的鎖から二本鎖核酸を形成することができる。次に、二本鎖が変性され、それにより、両面核酸鎖を互いに相補的である2つの一本鎖に分離する。ブリッジ形成は、一本鎖を折り畳んで、図示のように基材上に固定化された相補的なアダプタ鎖に結合させる化学反応を含む。再び、ポリメラーゼ、プライマー、およびヌクレオチド前駆体が結合領域115に導入されて、個々の一本鎖「ブリッジ」を両側鎖に変換する。このステップに続いて、二本鎖が変性されて相補的な一本鎖を生成し、一方は元の「順方向」鎖であり、他方はコピーされた「逆方向」鎖である。これらのステップを何度も繰り返した後、クローンクラスタが正コピーおよび逆コピーの双方で形成される。次いで、2つのクラスタのうちの一方(例えば、逆鎖)は、残りのクラスタを配列決定する前に(例えば、前鎖)結合領域115から開裂されることができる。
【0090】
核酸配列決定のための装置100に関連する増幅手順の使用は、配列決定プロセスのSNRを改善し、それによって配列決定の精度を改善することができる。SNRの改善は、結合領域115内に配列決定される同じ核酸鎖の多数のコピーの存在が、より多数の磁気標識ヌクレオチド前駆体を結合領域115内に組み込むことを可能にするために生じる。多数の磁気標識ヌクレオチド前駆体の組み込みは、その結合領域115に関連する磁気センサ105が結合領域115内の磁気標識の存在を検出する可能性を高める。したがって、配列決定される鎖のより多くのコピーを有することは、磁気センサ105が磁気的に標識されたヌクレオチド前駆体の取り込みを逃し、それによって配列決定エラーを引き起こす可能性を低減する。
【0091】
核酸鎖を配列決定するために、以下に記載されるように、磁気標識ヌクレオチド前駆体を一度に1つずつまたは一度に全て導入されることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、一度に1つずつ導入される。そのような実施形態では、全てのヌクレオチド前駆体に対して同じ磁気標識が使用されることができる。本明細書で使用される場合、「同じ磁気標識」という語句は、単一の磁気標識の同じ物理的インスタンスを指すものではないことを理解されたい(すなわち、物理標識の特定のインスタンスが再使用されることを意味するものではない)。代わりに、それは、磁気標識の複数の物理的インスタンス化を指し、それらの全ては、それらの個々のインスタンスを互いに区別することができないようにする同一の特徴または特性を有する。対照的に、「異なる磁気標識」という語句は、個別にまたは群としてにかかわらず、個別にまたは群として、他の磁気標識と区別されることを可能にする異なる特徴または特性を有する磁気標識を指す。
【0093】
いくつかの実施形態では、核酸鎖は一度に一ヌクレオチドずつ伸長され、磁気センサアレイ110は、結合された磁気標識ヌクレオチド前駆体を識別するために使用される。
【0094】
図7は、いくつかの実施形態にかかる、核酸配列決定のために、装置100、または磁気センサを使用して磁気標識の存在または非存在を検知する別の装置を使用する方法200を示すフローチャートである。202において、本方法が開始する。204において、上述したように、配列決定装置100の1つ以上の結合領域115の表面116に、1つ以上の核酸鎖が結合される。表面116に1本以上の核酸鎖を結合させる方法はいくつかある。例えば、核酸鎖は、核酸鎖の末端にアダプタを結合し、オリゴヌクレオチドを結合領域115の表面116に結合することによって表面116に結合されることができ、オリゴヌクレオチドはアダプタに相補的である。別の例として、核酸鎖は、核酸鎖を表面116に共有結合することによって表面116に結合されることができる。さらに別の例として、核酸鎖は、分子間の不可逆的な受動吸着または親和性を介して核酸鎖を固定化することによって表面116に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、表面116は、上述したように空洞または隆起部を備え、核酸鎖を近位壁に結合させることは、ヒドロゲルを空洞または隆起部に適用することを含む。
【0095】
任意のステップ206において、核酸鎖は、任意の適切な方法を使用して、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または線形増幅を活用することなどによって増幅されることができる。
【0096】
208において、伸長可能なプライマーが結合領域115に添加される。
【0097】
210において、核酸ポリメラーゼが結合領域115に添加される。核酸ポリメラーゼは、任意の適切な核酸ポリメラーゼとすることができる。核酸配列決定に使用される核酸ポリメラーゼ(DNAポリメラーゼなど)の所望の特性は、以下のうちの1つ以上を含む:核酸テンプレートおよびヌクレオチド前駆体についての速い会合速度、または核酸テンプレートおよびヌクレオチド前駆体についての遅い解離速度(会合および解離速度は、定義された一連の反応条件下での核酸ポリメラーゼの速度論的特徴である);低いもしくは検出不能な3’-5’エキソヌクレアーゼ(校正)活性または低いもしくは検出不能な5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を含む、高忠実度、低いもしくは検出不能なエキソヌクレアーゼ活性;有効なDNA鎖置換、高い安定性、高い加工性(長いリード長を含む)、耐塩性および本明細書に記載の前駆体を含む修飾ヌクレオチド前駆体を組み込む能力。
【0098】
適切なポリメラーゼのいくつかの例は、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くBファミリー(B型)ポリメラーゼを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、熱安定性ポリメラーゼである。熱安定性核酸ポリメラーゼは、Thermus aquaticus Taq DNAポリメラーゼ、Thermus sp.Z05ポリメラーゼ、Thermus flavusポリメラーゼ、Thermotoga maritimaポリメラーゼ、例えばTMA-25およびTMA-30ポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)、Pyrococcus woesei(Pwo)、Thermatoga maritima(Tma)およびThermococcus Litoralis(TliまたはVent)などを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、検出可能な5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。5’から3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠くDNAポリメラーゼの例は、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片;N末端235アミノ酸を欠くThermus aquaticus DNAポリメラーゼ(Taq)(「Stoffel断片」)を含む。米国特許第5,616,494号明細書を参照のこと。他の例は、5’-3’ヌクレアーゼ活性を担うドメインを排除または不活性化するのに十分な欠失(例えば、N末端欠失)、変異または修飾を有する熱安定性DNAポリメラーゼを含む。例えば、米国特許第5,795,762号明細書を参照されたい。
【0101】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、検出可能な3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くDNAポリメラーゼの例は、Taqポリメラーゼおよびその誘導体、ならびに校正ドメインの天然に存在するまたは操作された欠失を有する任意のBファミリー(B型)ポリメラーゼを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、3’-修飾ヌクレオチドなどのヌクレオチド類似体の取込みを可能にするかまたは増強するように修飾または操作されている;例えば、米国特許第10,150,454号明細書、米国特許第9,677,057号明細書、および米国特許第9,273,352号明細書を参照されたい。
【0103】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、5’-リン酸修飾ヌクレオチドなどのヌクレオチド類似体の取り込みを可能にするかまたは増強するように修飾または操作されている;例えば、米国特許第10,167,455号明細書および米国特許第8,999,676号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態では、そのようなポリメラーゼは、phi29由来ポリメラーゼである;例えば、米国特許第8,257,954号明細書および米国特許第8,420,366号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態では、そのようなポリメラーゼは、phiCPV4由来のポリメラーゼである;例えば、米国特許出願公開第20180245147号明細書を参照されたい。
【0104】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、所望の修飾ヌクレオチドを首尾よく取り込むために、または所望の精度および加工性でヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を取り込むために選択によって修飾または操作される。そのような修飾ポリメラーゼを選択する方法は、当該技術分野において公知である;例えば、「Polymerase Compositions and Methods of Making and Using Same」と題する米国特許出願公開第20180312904号明細書を参照されたい。
【0105】
ステップ208および210は、組み合わされてもよく、またはそれらの順序が逆であってもよいことを理解されたい。
【0106】
場合により、ステップ214において磁気標識ヌクレオチド前駆体を添加する前に、212において結合領域115が洗浄されてもよい。
【0107】
228において、磁気標識ヌクレオチド前駆体が配列決定サイクルのために選択される。いくつかの実施形態では、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはそれらの等価物から選択される。いくつかの実施形態では、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、磁気標識dATP、dGTP、dCTP、dTTP、または等価物のうちの1つを含む。磁気標識ヌクレオチド前駆体は、従来の、天然の、非従来の、または類似のヌクレオチドで標識されることができる。ヌクレオチド前駆体に言及する場合の「従来の」または「天然の」という用語は、天然に存在するもの(すなわち、DNAの場合、これらはdATP、dGTP、dCTPおよびdTTPである)を指す。ヌクレオチド前駆体に言及する場合の「非従来の」または「類似の」という用語は、ヌクレオチド前駆体中の従来の塩基、糖部分、またはヌクレオチド間結合の修飾または類似体を含む。例えば、dITP、7-デアザ-dGTP、7-デアザ-dATP、アルキル-ピリミジンヌクレオチド(プロピニルdUTPを含む)は、非従来の塩基を有するヌクレオチドの例である。いくつかの非従来の糖修飾は、2’位における修飾を含む。例えば、2’-OH(すなわち、ATP、GTP、CTP、UTP)を有するリボヌクレオチドは、DNAポリメラーゼにとって従来にないヌクレオチドである。他の糖類似体および修飾は、D-リボシル、2’または3’D-デオキシリボシル、2’,3’-D-ジデオキシリボシル、2’,3’-ジデヒドロジデオキシリボシル、2’または3’アルコキシリボシル、2’または3’アミノリボシル、2’または3’メルカプトリボシル、2’または3’アルコキシリボシル、非環式、炭素環式または他の修飾された糖部分を含む。さらなる例は、ターミネーターヌクレオチドである2’-PO類似体を含む。(例えば、米国特許第7,947,817号明細書または本明細書に記載の他の実施例を参照されたい)。非従来の連結ヌクレオチドは、ホスホロチオエートdNTP([α-S]dNTP)、5’-[α-ボラノ]-dNTPおよび[α]-メチル-ホスホネートdNTPを含む。
【0108】
214において、選択された磁気標識ヌクレオチド前駆体が結合領域115に添加される。
【0109】
216において、選択された磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合しているか、または伸長可能プライマーに組み込まれているかを決定するために配列決定が行われる。配列決定ステップ216は、図7に示すように、複数のサブステップを含むことができる。例えば、サブステップ218において、装置100の1つ以上のライン120は、磁気センサアレイ110の磁気センサ105の特性を検出するために使用される。上述したように、特性は、例えば、抵抗、抵抗の変化、磁界、磁界の変化、周波数、周波数の変化、またはノイズであってもよい。
【0110】
決定点220において、検出結果が、磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合したこと、または伸長可能プライマーに組み込まれたことを示すかどうかが決定される。例えば、決定は、特性の存在または非存在に基づいてもよく、例えば、特性が検出された場合、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ポリメラーゼに結合しているか、または伸長可能プライマーに組み込まれているとみなされ、特性が検出されない場合、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ポリメラーゼに結合していないか、または伸長可能プライマーに組み込まれているとみなされる。別の例として、決定は、特徴の大きさまたは値に基づいてもよく、例えば、大きさまたは値が指定された範囲内にある場合、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ポリメラーゼに結合しているかまたは伸長可能プライマーに組み込まれているとみなされ、大きさまたは値が指定された範囲内にない場合、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ポリメラーゼに結合していないかまたは伸長可能プライマーに組み込まれているとみなされる。
【0111】
検出(サブステップ218)および決定(決定点220)は、磁気センサアレイ110内の磁気センサ105の全てまたは全てよりも少ないものを使用するかまたは依拠することができる。特性が存在するか否か、または特性の値(決定点220)の決定は、磁気センサアレイ110内の磁気センサ105の一部または全てからの検出結果(サブステップ218)を集約、平均化、または処理することに基づくことができる。
【0112】
決定点220において、磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合した、または伸長可能プライマーに組み込まれたと決定された場合、ステップ222において、磁気標識ヌクレオチド前駆体の相補的塩基の表示が核酸鎖の核酸配列の記録に記録される。
【0113】
いくつかの実施形態では、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、核酸ポリメラーゼによって伸長不可能であり、したがって、特性を検出した後、磁気標識ヌクレオチド前駆体を核酸ポリメラーゼによって伸長可能にするために磁気標識が除去されなければならない。いくつかの実施形態では、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体の部分は、核酸ポリメラーゼによって伸長可能ではなく、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体の部分は、化学的開裂によって伸長可能にされる。図7に示すように、追加の配列決定サイクルが実行される場合(決定点224の「いいえ」経路)、磁気標識は、226において、任意の適切な手段(例えば、化学的に、酵素的に、または他の手段によって)を使用して除去される。
【0114】
226において磁気標識が除去された後、228において別の磁気標識ヌクレオチド前駆体が選択される。次いで、完了したばかりのサイクルで使用されたものと同じであっても異なっていてもよい新たに選択された磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ステップ214において結合領域115に添加され、配列決定ステップ216が再び実行されて、新たに選択された磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合しているか、伸長可能なプライマーに組み込まれているかが決定される。
【0115】
決定点220において、磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合しておらず、伸長可能プライマーに組み込まれていないと決定された場合、本方法は、ステップ228に進み、そこで別の磁気標識ヌクレオチド前駆体が選択される。この場合、以前に試行された磁気標識ヌクレオチド前駆体は一致しなかったため、選択された磁気標識ヌクレオチド前駆体は、完了したばかりのサイクルで使用されたものとは異なるべきである。
【0116】
図7は、ステップ210と214との間に行われる単一の任意の洗浄ステップ212を示しているが、追加の洗浄ステップが本方法に含まれてもよいことを理解されたい。例えば、結合領域115は、ステップ228と214との間またはステップ226の後に洗浄されてもよい(例えば、先に導入された磁気標識ヌクレオチド前駆体およびステップ226において除去された任意の磁気標識を実質的に除去するために)。230において、本方法200は終了する。
【0117】
いくつかの配列決定サイクルの後、ポリメラーゼを補充するために、ステップ210を実行して核酸ポリメラーゼのさらなる分子を結合領域115に付加することが望ましいかまたは必要であり得ることを理解されたい。
【0118】
上述した図7は、磁気標識ヌクレオチド前駆体が一度に1つずつ導入される実施形態を示している。他の実施形態では、複数のヌクレオチド前駆体(例えば、2個、3個または4個のヌクレオチド前駆体)が実質的に同時に導入される。そのような実施形態では、実質的に同時に導入される異なるヌクレオチド前駆体に対して異なる磁気標識が使用される。導入された前駆体の磁気標識のそれぞれは、磁気センサ105が、実質的に同時に導入される異なるヌクレオチド前駆体に使用される異なる磁気標識を区別することを可能にする異なる磁気特性を有する。
【0119】
図8は、複数のヌクレオチド前駆体を装置100または検出のために磁気センサおよび磁気標識を使用する別の装置に実質的に同時に導入される方法250の実施形態を示している。例示目的のために、図8は、実質的に同時に導入された4つのヌクレオチド前駆体を示すが、開示された方法が使用されて4つよりも多いまたは少ないヌクレオチド前駆体を試験することができることを理解されたい。
【0120】
252において、本方法250が開始する。ステップ254、256、258、260および262は、図7の文脈で示され説明されたステップ204、206、208、210および212と同じである。その説明はここでは繰り返さない。
【0121】
ステップ264において、最大4つの磁気標識ヌクレオチド前駆体が装置100の結合領域115に添加される。追加された磁気標識ヌクレオチド前駆体のそれぞれは、磁気センサ105が異なる磁気標識ヌクレオチド前駆体を区別することができるように、異なる磁気標識によって標識される。具体的には、それぞれの磁気標識は、異なる区別可能な磁気特性を有する(例えば、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体に使用される第1の磁気標識は、第1の磁気特性を有し、第2の磁気標識ヌクレオチド前駆体に使用される第2の磁気標識は、第2の磁気特性を有するなど)。
【0122】
266において、添加された磁気標識ヌクレオチド前駆体のどれがポリメラーゼに結合したか、または伸長可能プライマーに組み込まれたかを決定するために配列決定が行われる。配列決定ステップ266は、図8に示すように、複数のサブステップを含むことができる。例えば、図8に示す方法250では、サブステップ268において、装置100の1つ以上のライン120が使用されて、磁気センサアレイ110の磁気センサ105の特性を検出し、特性は、組み込まれた磁気標識ヌクレオチド前駆体の磁気特性を識別する。上述したように、特性は、例えば、抵抗、抵抗の変化、磁界、磁界の変化、周波数、周波数の変化、またはノイズであってもよい。
【0123】
決定点270において、第1の磁気特性が検出されたかどうかが決定され、第1の磁気特性は、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合したか、または伸長可能プライマーに組み込まれたことを示す。決定は、例えば、第1の磁気特性の存在または非存在に基づいてもよく、例えば、第1の磁気特性が検出された場合、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ポリメラーゼに結合しているかまたは伸長可能プライマーに組み込まれているとみなされ、第1の磁気特性が検出されない場合、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ポリメラーゼに結合していないかまたは伸長可能プライマーに組み込まれていないとみなされる。別の例として、決定は、第1の磁気特性の大きさまたは値に基づいてもよく、例えば、大きさまたは値が指定された範囲内にある場合、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ポリメラーゼに結合しているかまたは伸長可能プライマーに組み込まれているとみなされ、大きさまたは値が指定された範囲内にない場合、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体は、ポリメラーゼに結合していないかまたは伸長可能プライマーに組み込まれていないとみなされる。
【0124】
決定点270において第1の磁気特性が検出されたと決定された場合、本方法は、ステップ278に進み、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体に基づく相補体が核酸鎖の核酸配列の記録に記録される。
【0125】
決定点270において、第1の磁気特性が検出されなかったと決定された場合、本方法250は、決定点272に移動し、そこで第2の磁気特性が検出されたかどうかが決定され、第2の磁気特性は、第2の磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合したか、または伸長可能プライマーに組み込まれたことを示す。決定は、第1の磁気特性の決定について上述した任意の方法で行うことができる。決定点272において第2の磁気特性が検出されたと決定された場合、本方法は、ステップ278に進み、そこで第2の磁気標識ヌクレオチド前駆体に基づく相補性が核酸鎖の核酸配列の記録に記録される。
【0126】
決定点272において、第2の磁気特性が検出されなかったと決定された場合、本方法250は、決定点274に進み、そこで第3の磁気特性が検出されたかどうかが決定され、第3の磁気特性は、第3の磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合したか、または伸長可能プライマーに組み込まれたことを示す。決定は、第1の磁気特性の決定について上述した任意の方法で行うことができる。決定点274において、第3の磁気特性が検出されたと決定された場合、本方法は、ステップ278に進み、ここで、第3の磁気標識ヌクレオチド前駆体に基づく相補体が核酸鎖の核酸配列の記録に記録される。
【0127】
最後に、決定点274において、第3の磁気特性が検出されなかったと決定された場合、本方法250は、決定点276に移動し、そこで第4の磁気特性が検出されたかどうかが決定され、第4の磁気特性は、第4の磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合したか、または伸長可能プライマーに組み込まれたことを示す。決定は、第1の磁気特性の決定について上述した任意の方法で行うことができる。決定点276において第4の磁気特性が検出されたと決定された場合、本方法は、ステップ278に進み、そこで第3の磁気標識ヌクレオチド前駆体に基づく相補体が核酸鎖の核酸配列の記録に記録される。決定点276において、第4の磁気特性が検出されなかったと決定された場合、本方法250は、ステップ264に戻る。
【0128】
検出(サブステップ268)および決定(決定点270、272、274、276)は、磁気センサアレイ110内の磁気センサ105の全てまたは全てよりも少ないものを使用するかまたは依拠することができる。特定の磁気特性が存在するか否か、または特性の値の決定は、磁気センサアレイ110内の磁気センサ105の一部または全部からの検出結果(サブステップ268)を集約、平均化、または他の方法で処理することに基づくことができる。
【0129】
図8に示す実施形態では、添加された磁気標識ヌクレオチド前駆体のどれがポリメラーゼに結合しているかまたは伸長可能プライマーに組み込まれているかの決定は、候補磁気標識ヌクレオチド前駆体のそれぞれに対する別個の「はい/いいえ」決定の結果である。あるいは、決定は、例えば、検出された特性の値をキーと比較することなどによって、単一のステップで行うことができることを理解されたい。例えば、キーは、磁気センサ105によって検出された特性が第1の範囲内の値を有する場合、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合しているか、または伸長可能プライマーに組み込まれていること;磁気センサ105によって検出された特性が第2の範囲内の値を有する場合、第2の磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合しているか、または伸長可能プライマーに組み込まれていること;磁気センサ105によって検出された特性が第3の範囲内の値を有する場合、第3の磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合しているか、または伸長可能プライマーに組み込まれていること;および磁気センサ105によって検出された特性が第4の範囲内の値を有する場合、第4の磁気標識ヌクレオチド前駆体がポリメラーゼに結合しているか、または伸長可能プライマーに組み込まれていることを示すことができる。特性の値は、磁気センサアレイ110内の磁気センサ105の一部または全部からの検出結果を集約、平均化、または処理すること(サブステップ268)に基づくことができる。
【0130】
上で説明したように、いくつかの実施形態では、磁気標識ヌクレオチド前駆体は、核酸ポリメラーゼによって伸長不可能であり、したがって、特徴を検出した後、磁気標識ヌクレオチド前駆体を核酸ポリメラーゼによって伸長可能にするために磁気標識が除去されなければならない。いくつかの実施形態では、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体の部分は、核酸ポリメラーゼによって伸長可能ではなく、第1の磁気標識ヌクレオチド前駆体の部分は、化学的開裂によって伸長可能にされる。磁気的に標識されたヌクレオチド前駆体が核酸ポリメラーゼによって伸長不可能である実施形態では、核酸鎖の核酸配列の記録がステップ278において増強された(または開始された)後、決定点280において、追加の配列決定サイクルを実行するかどうかが決定される。そうである場合(決定点280の「いいえ」分岐)、組み込まれたヌクレオチド前駆体の磁気標識が除去される。磁気標識は、化学的に、酵素的に、または当該技術分野において公知の他の手段によって除去されてもよく、本方法250は、ステップ264に進み、最大4つの磁気標識ヌクレオチド前駆体が結合領域115に添加される(潜在的に、図示されたステップ262と同様または同一の洗浄ステップを行った後)。次いで、配列決定ステップ266が再度実行されて、ポリメラーゼに結合する次の磁気標識ヌクレオチド前駆体を識別する。
【0131】
決定点280において、追加の配列決定サイクルが実行されるべきでないと決定された場合(決定点280の「はい」分岐)、本方法250は、284において終了する。
【0132】
前述の説明および添付の図面では、開示された実施形態の完全な理解を提供するために特定の用語が記載されている。場合によっては、用語または図面は、本発明を実施するために必要とされない特定の詳細を意味することができる。
【0133】
本開示を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の構成要素は、ブロック図形式で示され、および/または詳細には説明されず、または場合によっては全く説明されない。
【0134】
本明細書において特に明確に定義されていない限り、全ての用語には、本明細書および図面から暗示される意味、ならびに当業者によって理解される意味、および/または辞書、論文などで定義されている意味を含む、可能な限り最も広い解釈が与えられるべきである。本明細書に明示的に記載されているように、いくつかの用語は、それらの通常または通例の意味と一致しない場合がある。
【0135】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を除外しない。「または」という単語は、特に明記しない限り、包括的であると解釈されるべきである。したがって、「AまたはB」という句は、以下の全てを意味すると解釈されるべきである:「AおよびBの双方」、「AであるがBではない」、および「BであるがAではない」。本明細書におけるいかなる「および/または」の使用も、「または」という単語が単独で排他性を意味することを意味しない。
【0136】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ、」、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ、」、「A、B、またはCのうちの1つ以上」、および「A、B、およびCのうちの1つ以上」という形式の語句は交換可能であり、それぞれ以下の意味の全てを包含する:「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「AおよびBであるがCではない」、「AおよびCであるがBではない」、「BおよびCであるがAではない」、および「A、B、およびCの全て」。
【0137】
「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、およびそれらの変形が詳細な説明または特許請求の範囲において使用される限り、そのような用語は、「備える(comprising)」という用語と同様の方法で包括的であること、すなわち、「含むが限定されない(including but not limited to)」を意味することを意図している。「例示的な(exemplary)」および「実施形態(embodiment)」という用語は、例を表すために使用され、選好または要件を表すために使用されない。「結合された」という用語は、本明細書では、直接接続/取り付け、および1つ以上の介在要素または構造を介した接続/取り付けを表すために使用される。
【0138】
「上(over)」、「下(under)」、「間(between)」、および「上(on)」という用語は、本明細書では、他の特徴に対する1つの特徴の相対位置を指す。例えば、別の特徴の「上」または「下」に配置された1つの特徴は、他の特徴と直接接触してもよく、または介在材料を有してもよい。さらに、2つの特徴「の間」に配置された1つの特徴は、2つの特徴と直接接触してもよく、または1つ以上の介在する特徴または材料を有してもよい。対照的に、第2の特徴「上の」第1の特徴は、その第2の特徴と接触している。
【0139】
「実質的に(substantially)」および「およそ(approximately)」という用語は、大部分またはほぼ述べられているような構造、構成、寸法などを説明するために使用されるが、製造公差などに起因して、実際には、構造、構成、寸法などが常にまたは必ずしも述べられているように正確ではない状況をもたらすことがある。例えば、2つの長さを「実質的に等しい」または「ほぼ等しい」と記述することは、2つの長さが全ての実用的な目的で同じであることを意味するが、十分に小さいスケールで正確に等しくなくてもよい(およびそうである必要がなくてもよい)。別の例として、「実質的に垂直」または「ほぼ垂直」である構造は、水平に対して正確に90度ではない場合であっても、全ての実用的な目的のために垂直であるとみなされる。
【0140】
図面は必ずしも縮尺通りではなく、特徴の寸法、形状、およびサイズは、図面に示されている方法とは実質的に異なっていてもよい。
【0141】
特定の実施形態が開示されているが、本開示のより広い精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および変形を行うことができることは明らかであろう。例えば、実施形態のいずれかの特徴または態様は、少なくとも実行可能な場合には、実施形態の他のいずれかと組み合わせて、またはその対応する特徴または態様の代わりに適用されることができる。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味でみなされるべきである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8
【国際調査報告】