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特表2023-516513系統連系インバーターの継電器吸着制御方法及び制御装置
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  • 特表-系統連系インバーターの継電器吸着制御方法及び制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】系統連系インバーターの継電器吸着制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230413BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544860
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 CN2021099367
(87)【国際公開番号】W WO2022166060
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110144620.2
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521339212
【氏名又は名称】浙江艾羅網絡能源技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SOLAX POWER NETWORK TECHNOLOGY(ZHEJIANG)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.288,Shizhu Road,Tonglu Economic Development Zone,Tonglu County,Hangzhou,Zhejiang 311500(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】肖 永利
(72)【発明者】
【氏名】蒋 飛
(72)【発明者】
【氏名】周 瑜
(72)【発明者】
【氏名】孔 建
(72)【発明者】
【氏名】侯 堅
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA17
5H770BA11
5H770DA03
5H770EA01
5H770HA03Y
5H770HA03Z
5H770JA17Y
5H770LA02Z
5H770LB07
(57)【要約】
本発明は、電力系統の電圧と継電器の状態をそれぞれ検出し、電力系統の電圧と継電器が正常状態にあると判断したら、電力系統の電圧の振幅に基づいて、インバーターの交流出力電圧を変調することで、この交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きくなるようにし、継電器吸着のコマンドを送信し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させる系統連系インバーターの継電器吸着制御方法および制御装置を提供する。
本発明によれば、継電器の吸着瞬間にインバーターに生じる大電流を有効的に減少させ、継電器の吸着後に電力系統からのエネルギーがインバーターに逆流する問題を回避でき、インバーターおよび継電器の作動安定性を有効的に向上させ、また、上記方法によれば、オープンループ制御によって、インバーターの電圧に対する制御の難しさを有効的に低減させることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法であって、
以下のステップA~ステップCを有し、
ステップA:電力系統の電圧と継電器の状態をそれぞれ検出し、電力系統の電圧と継電器が正常状態にあるか否かを判断し、正常状態にあれば、次のステップに移行し、
ステップB:電力系統の電圧の振幅に基づいて、インバーターの交流出力電圧を変調することで、この交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きくなるようにし、
ステップC:継電器吸着のコマンドを送信し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させる、
ことを特徴とする系統連系インバーターの継電器吸着制御方法。
【請求項2】
前記ステップBは、具体的に、以下のステップb1~ステップb3を有し、
ステップb1:電力系統の電圧をサンプリングし、電力系統の位相を固定することで、電力系統の位相固定角cos(wt)の情報を得、そのうちのwは電力系統の周波数であり、tは時間であり、
ステップb2:位相固定角cos(wt)に対して人為的に進み位相角φを増加して、電力系統の電圧の位相を進んだ進み位相固定角cos(wt-φ)を得、
ステップb3:進み位相固定角cos(wt-φ)に基づいて、インバーターの交流出力電圧を変調し、変調信号はVm=M*cos(wt-φ)で、そのうちのMは変調信号の振幅であり、
その後、変調信号の振幅Mを徐々に増加することで、インバーターの交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きくなるようにする、
ことを特徴とする請求項1に記載の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法。
【請求項3】
前記ステップb3において、変調信号Vmと三角波キャリア信号とを比較して、インバーターの電力増幅管を駆動する方形波信号を生成し、
その後、インバーターによって、直流バス電圧を方形波信号に変調し、さらにLCフィルターを経て、インバーターの交流出力電圧を生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法。
【請求項4】
前記ステップBにおいて、交流出力電圧の振幅が、電力系統の電圧の振幅より1V~5V大きくなっている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法。
【請求項5】
前記ステップb2において、進み位相角φを増加することで、インバーターの交流出力電圧の位相角が電力系統の電圧の位相角より進むようにしている、
ことを特徴とする請求項2に記載の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法。
【請求項6】
前記ステップb2における進み位相角φの値は、

【数1】
(そのうち、Eは電力系統電圧の定格電圧の振幅であり、wは電力系統の周波数であり、Lは系統連系インバーターと電力系統の間のインダクタンス値である)によって、インダクターを流れる電流値
【数2】
を算出したときに、電流値
【数3】
の数値が、インバーターの定格電流より小さくかつ0に近い数値であるようになっている。
ことを特徴とする請求項5に記載の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法。
【請求項7】
前記ステップCにおけるインバーターが単相インバーターである場合、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させ、
前記ステップCにおけるインバーターが三相インバーターである場合、各相ごとの電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、各相ごとの電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法。
【請求項8】
前記ステップCにおいて、インバーターが三相インバーターである場合、進み位相固定角cos(wt-φ)によって回転座標変換を行い、インバーターの電圧の交流信号を直流信号に変換して、進み位相角φとインバーターの交流電圧を変調する、
ことを特徴とする請求項7に記載の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法に用いられる制御装置であって、
インバーター(1)の出力端子に接続されるインバーター電圧検出装置(2)と、
電力系統(3)に接続される電力系統電圧検出装置(4)と、を備え、
インバーター電圧検出装置(2)と電力系統電圧検出装置(4)の外部には制御モジュール(5)が接続され、制御モジュール(5)の外部には、インバーター駆動モジュール(6)及び継電器駆動モジュール(7)が接続されている、ことを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統連系インバーターの吸着制御方法に関し、特に、系統連系インバーターの継電器吸着制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
安全面から考慮して、電力系統と電気的に遮蔽するために、系統連系インバーターは、その出力端子に継電器が実装されている。また、安全要求仕様に合うように、通常、各相の出力端子には、2つまたは複数の継電器を直列接続する必要がある。継電器吸着のときに、系統連系インバーターには電力系統が既に接続されているが、インバーターの出力端子の内側にはフィルターコンデンサーが配置されているため、継電器の吸着瞬間に、コンデンサーは電力系統によって急速充電され、充電により形成される大電流が継電器を流れることで、継電器にある程度のダメージを与える。長期間にかけて継電器が大電流状態で吸着すると、継電器の使用寿命を大幅に縮減させ、吸着電流が継電器の定格電流を超えると、継電器が即座に破損される可能性もあり、さらに、インバーターの系統連系発電ができなくなり、重大な損失をもたらしてしまう。
【0003】
上記の問題に対して、通常の解決方法としては、継電器が電力系統のゼロクロス付近で吸着するようにする方法があるが、吸着のコマンドを送信してから継電器が実際に吸着するまでには時間がかかるとともに、この時間は、通常、数msから数十msと固定したものではないので、この方法によると、継電器が実際に吸着する瞬間に電力系統もゼロクロス付近にあるように制御することが難しく、大電流が継電器を流れることを根本的に回避することはできない。また、三相の系統連系インバーターの場合、継電器は通常1つの駆動命令信号を使用しているので、三相上の継電器が同時に三相の電力系統電圧のゼロクロス付近で吸着することはさらに確保できない。
【0004】
また、もう1つの解決方法としては、継電器の吸着前に、まず、電力系統の電圧の振幅に近くなるようにインバーターの出力電圧を制御し、周波数と位相は同等に制御し、その後に継電器吸着する方法がある。しかし、この方法には、継電器が実際に吸着する瞬間に、インバーターと電力系統が既に接続されていて、インバーターは作動中でもあるので、インバーターに対する制御がうまくできないと、瞬時大電流が電力系統からインバーターに流入して、インバーターのバスコンデンサーの電圧が高くなり、その結果、軽微の場合は、インバーターが保護を要求する警報を鳴らし、深刻な場合は、インバーターのバスコンデンサーが過電圧により破損されたり、電力増幅管が破損されたりするという問題がある。
【0005】
後者の方法に基づいて、上記の問題を解決するために、中国特許CN109842154Aに開示された「系統連系インバーターの継電器制御方法および装置」では、系統連系インバーターの継電器制御方法をさらに改良しており、この制御方法では、まず、インバーターの電圧に対するクローズドループフィードバック制御によって、インバーターの出力端子の電圧を電力系統電圧の振幅に近付くように制御してから安定させ、その後に、継電器を吸着し時間を計時する。
時間を計時する間は、インバーター電圧のフィードバック制御外部ループを遮断し、内部電流のフィードバック制御ループによってインバーターの電流を制御することで、継電器を流れる電流を抑制する。
【0006】
しかし、この方法には、以下のような問題点が存在する。
まず、継電器の吸着瞬間に電力系統のエネルギーがインバーターに逆流する問題を原理上根本的に解決できておらず、次に、この方法による制御方式は煩雑しすぎて、インバーターの電圧フィードバックループと電流フィードバックループを用いてダブルループフィードバック制御を行う必要がある。
また、制御誤差および回路の遅延が存在することから、継電器が実際に吸着する瞬間に、瞬間大電流が電力系統からインバーターに逆流する可能性がある。しかし、この特許による効果は、逆変換電流が過電流保護値より大きいときに、逆変換電流を予め設定の電流範囲内までに減少させることで、突入電流を抑制し、継電器の吸着動作の完了が検出されると、系統連系インバーターを制御してその作動を停止させるのみである。すなわち、継電器の吸着瞬間にインバーターのバスコンデンサーの電圧が高くなって、インバーターの電力増幅管が直接破損される問題を根本的に解決することができない。
【0007】
よって、従来の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法には、インバーターおよび継電器の作動安定性が悪く、制御が難しいという問題がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、インバーターおよび継電器の作動安定性を有効的に向上させ、吸着過程に対する制御を便利にする系統連系インバーターの継電器吸着制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の技術方案は、以下の通りになっている。
本発明の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法は、以下のステップA~ステップCを有する。
ステップA:電力系統の電圧と継電器の状態をそれぞれ検出し、電力系統の電圧と継電器が正常状態にあるか否かを判断し、正常状態にあれば、次のステップに移行する。
ステップB:電力系統の電圧の振幅に基づいて、インバーターの交流出力電圧を変調することで、この交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きくなるようにする。
ステップC:継電器吸着のコマンドを送信し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させる。
【0010】
前記の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法において、前記Bステップは、具体的に、以下のステップb1~ステップb3を有する。
ステップb1:電力系統の電圧をサンプリングし、電力系統の位相を固定することで、電力系統の位相固定角cos(wt)の情報を得、そのうちのwは電力系統の周波数であり、tは時間である。
ステップb2:位相固定角cos(wt)に対して人為的に進み位相角φを増加して、電力系統電圧の位相を進んだ進み位相固定角cos(wt-φ)を得る。
ステップb3:進み位相固定角cos(wt-φ)に基づいて、インバーターの交流出力電圧を変調し、変調信号はVm=M*cos(wt-φ)で、そのうちのMは変調信号の振幅である。そして、変調信号の振幅Mを徐々に増加することで、インバーターの交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きくなるようにする。
【0011】
前記の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法において、前記ステップb3において、変調信号Vmと三角波キャリア信号とを比較して、インバーターの電力増幅管を駆動する方形波信号を生成し、その後、インバーターによって、直流バス電圧を方形波信号に変調し、さらにLCフィルターを経て、インバーターの交流出力電圧を生成する。
【0012】
前記の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法において、前記ステップBにおいて、交流出力電圧の振幅が、電力系統の電圧の振幅より1V~5V大きくなっている。
【0013】
前記の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法において、前記ステップb2において、進み位相角φを増加することで、インバーターの交流出力電圧の位相角が電力系統の電圧の位相角より進むようにしている。
【0014】
前記の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法において、前記ステップb2における進み位相角φの値は、式
【数1】
(そのうち、Eは電力系統電圧の定格電圧の振幅であり、wは電力系統の周波数であり、Lは系統連系インバーターと電力系統の間のインダクタンス値である)によって、インダクターを流れる電流値
【数2】
を算出したときに、電流値
【数3】
の数値が、インバーターの定格電流より小さくかつ0に近い数値であるようになっている。
【0015】
前記の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法において、
前記ステップCにおけるインバーターが単相インバーターである場合、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させ、
前記ステップCにおけるインバーターが三相インバーターである場合、各相ごとの電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、各相ごとの電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させる。
【0016】
前記の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法において、前記ステップCにおけるインバーターが三相インバーターである場合、進み位相固定角cos(wt-φ)によって回転座標変換を行い、インバーター電圧の交流信号を直流信号に変換して、進み位相角φとインバーターの交流電圧を変調する。
【0017】
上記した系統連系インバーターの継電器吸着制御方法に用いられる制御装置は、インバーターの出力端子に接続されるインバーター電圧検出装置と、電力系統に接続される電力系統電圧検出装置と、を備え、インバーター電圧検出装置と電力系統電圧検出装置の外部には制御モジュールが接続され、制御モジュールの外部には、インバーター駆動モジュール及び継電器駆動モジュールが接続されている。
【0018】
従来技術に比べて、本発明は、以下の特徴を有する。
【0019】
(1)本発明では、インバーターの交流出力電圧の振幅を電力系統の電圧の振幅より高くし、交流出力電圧の位相角を電力系統の電圧の位相角より進むようにすることで、インバーターが継電器を吸着する瞬間に、エネルギーがインバーターから電力系統に流れるようにすることができ、エネルギーが電力系統からインバーターに逆流することによってインバーターおよび継電器がダメージを受けることを回避することができ、インバーターおよび継電器の作動安定性を有効的に向上させることができる。
【0020】
(2)本発明では、位相固定によって数値検出を行っているが、回路遅延および位相ロックループ遅延の存在により、通常、インバーターの交流出力電圧の位相角は電力系統の電圧の位相角より遅れている。
これに対して、本発明では、電力系統の位相固定角に対して人為的に進み位相角φを増加することで、インバーターの交流出力電圧の位相角が電力系統の電圧の位相角より進むようにすることができ、継電器吸着瞬間にエネルギーが電力系統からインバーターに逆流する問題を原理上から根本的に解決し、インバーター及び継電器の作動安定性を向上させることができる。
【0021】
(3)交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より1V~5V大きくなるようにすることで、インバーターの出力電圧に対するオープンループ制御を実現することができ、すなわち、制御過程において、フィードバック制御を必要とせず、インバーターの出力電圧と電力系統電圧の間の電圧差に対して、制御パラメーターをフィードバックおよび補正する必要もない。これにより、制御プロセスの複雑さ及び必要とする制御精度を効率的に低減させ、本発明における吸着過程に対する制御を便利にするとともに、継電器吸着の用途に幅広く適用することができる。
【0022】
(4)吸着する前に、インバーターの交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きくなるようにし、継電器の吸着後に、インバーターの作動を停止させることで、継電器の吸着後にインバーターに生じるエネルギーの相互流入問題を効率的に防止し、継電器の安定的な吸着を確保するとともに、インバーターの作動安定性をさらに向上させることができる。
【0023】
したがって、本発明によれば、インバーターおよび継電器の作動安定性を効率的に向上させることができ、継電器およびインバーターの故障のリスクを低減させ、さらに、継電器の使用寿命を向上させ、吸着過程に対する制御を便利にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面と実施例に基づいて、本発明をさらに説明するが、この説明は、本発明に対して如何なる限定をするものではない。
【0026】
(実施例)
本発明の系統連系インバーターの継電器吸着制御方法は、以下のステップA~ステップCを有する。
ステップA:電力系統の電圧と継電器の状態をそれぞれ検出し、電力系統の電圧と継電器が正常状態にあるか否かを判断する。
そのうち、NB/T32004:2018の規定により、電力系統の電圧が正常状態にあるとは、0.9Un≦U≦1.1Unを意味し、そのうちのUnは、電力系統の定格相電圧220Vであり、電力系統の電圧の周波数範囲は、49.5Hz~50.2Hzである。
継電器については、通常の継電器検出ロジックによって、正常状態(接点の粘着および吸着不能の故障無し)にあるか否かを判断し、正常状態にあれば、次のステップに移行する。
ステップB:電力系統の電圧の振幅に基づいて、インバーターの交流出力電圧を変調することで、この交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きくなるようにする。
ステップC:継電器吸着のコマンドを送信し、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、商用電源の半周期内(半周期に限らず、時間はもっと短くても長くても良い)に、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値(5V以内)未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させる。
【0027】
前記ステップBは、具体的に、以下のステップb1~ステップb3を有する。
ステップb1:インバーターにおけるデジタルコントロールチップによって電力系統の電圧をサンプリングし、電力系統の位相を固定(ロック)することで、電力系統の位相固定角cos(wt)の情報を取得し、そのうちのwは電力系統の周波数であり、tは時間である。
ステップb2:位相固定角cos(wt)に対して人為的に進み位相角φを増加して、電力系統電圧の位相を進んだ進み位相固定角cos(wt-φ)を得る。
ステップb3:進み位相固定角cos(wt-φ)に基づいて、インバーターの交流出力電圧を変調し、変調信号はVm=M*cos(wt-φ)で、そのうちのMは変調信号の振幅である。そして、変調信号の振幅Mを徐々に増加することで、インバーターの交流出力電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きくなるようにする。
【0028】
前記ステップb3において、変調信号Vmと所定周期の三角波キャリア信号とを比較して、インバーターの電力増幅管を駆動するための方形波信号を生成し、この方形波信号は、インバーターの電力増幅管のON/OFFを制御するためのものである。そして、回路を駆動することで、インバーターによって直流バス電圧を電圧の方形波信号に変調し、さらにLCフィルターを経て、インバーターの交流出力電圧を生成する。
【0029】
前記ステップBにおいて、交流出力電圧の振幅は、電力系統の電圧の振幅より1V大きくなっている。
【0030】
前記ステップb2において、進み位相角φを増加することで、インバーターの交流出力電圧の位相角が電力系統電圧の位相角より進むようにしている。また、進み位相角φの値の最小の単位は、インバーターのPWMの中断周期によって決められ、20kHzの中断周期のインバーターの場合、進み位相角φの最小進み角は0.9度である。すなわち、進み位相角φの値は、0.9度、1.8度、2.7度及びこれ以上の値を取ることができる。
【0031】
前記ステップb2における進み位相角φの値は、以下の関係が設立するように、決められる。
電力系統の電圧が複素平面で
【数4】
に示され、系統連系インバーターの電圧が複素平面で
【数5】
に示され、そのうちのΔEはインバーターの電圧の振幅が電力系統の電圧の振幅より大きい差値であり、iは複素平面の虚数単位であり、φはインバーターの電圧の位相が電力系統の電圧の位相より進んだ差値であり、インバーターと電力系統の間のインダクタンス値をLとし、誘導リアクタンス値をjwLとし、そのうちのjは複素平面の虚数単位であるとすると、インダクターを流れる電流は、
【数6】
である。
【0032】
また、インバーターと電力系統の間に、位相差がなく、電圧差ΔEしかない場合、すなわちφ=0である場合、インダクターを流れる電流値は、
【数7】
であり、電力系統に流入する電力は、無効電力
【数8】
である。
【0033】
また、インバーターと電力系統の間に、電圧差ΔEがなく、位相差φしかない場合、すなわちΔE=0である場合、インダクターを流れる電流値は、
【数9】
であり、電力系統に流入する電力は、有効電力
【数10】
である。
【0034】
上記に基づいて、進み位相角φの値を決めてから、式
【数11】
によって、インダクターを流れる電流値
【数12】
を算出し、そのうちのEは電力系統電圧の定格電圧の振幅であり、wは電力系統の周波数であり、Lは系統連系インバーターと電力系統の間のインダクタンス値である。そして、電流値
【数13】
によって進み位相角φの値を最適化し、電流値
【数14】
の数値は、インバーターの定格電流値より小さく、かつ0に近いほど好ましい。
【0035】
電力系統電圧の定格電圧の振幅を220Vとし、インダクタンス値を2mHとし、電力系統の周波数を50Hzとした場合、進み位相角φの値が1°であれば、電流値
【数15】
は、
【数16】
であると算出することができる。
この計算から分かるように、この電流値
【数17】
は、インバーターの定格電流値の範囲内にあり、進み位相角φの値として1°を取ることができることを説明する。
【0036】
前記ステップCにおけるインバーターが単相インバーターである場合、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、商用電源の半周期内に、電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させる。
また、前記ステップCにおけるインバーターが三相インバーターである場合、各相ごとの電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値をそれぞれ検出し、商用電源の半周期内に、各相ごとの電力系統の電圧とインバーターの交流出力電圧のリアルタイム値が同等、またはその電圧差が閾値未満であると検出されると、インバーターの作動を停止させる。
【0037】
前記ステップCにおいて、インバーターが三相インバーターである場合、必要に応じて、進み位相固定角cos(wt-φ)によって回転座標変換を行って、三相交流信号をabc固定座標系からdq0回転座標系の元に変換し、インバーター電圧の交流信号を直流信号に変換した後に、さらにインバーターの交流電圧の変調を行い、その変換関係は、以下の式に示す通りである。
【数18】
そのうち、xa、xb、xcは交流量であり、cos wtとsin wtは位相固定の情報であり、座標系の変換を経た後には、xd、xq、x0の三つの直流量に変換される。
【0038】
前記した系統連系インバーターの継電器吸着制御方法に用いられる制御装置の構成は、図1に示す通りであり、この制御装置は、インバーター1の出力端子に接続されるインバーター電圧検出装置2と、電力系統3に接続される電力系統電圧検出装置4と、を備え、インバーター電圧検出装置2と電力系統電圧検出装置4の外部には制御モジュール5が接続され、制御モジュール5は、デジタルシグナルプロセッサーDSPまたはマイクロコントローラーユニットMCUから選択可能であり、制御モジュール5の外部には、インバーター駆動モジュール6及び継電器駆動モジュール7が接続され、インバーター駆動モジュール6の端部はインバーター1に接続され、継電器駆動モジュール7の端部は継電器に接続されている。
【0039】
本発明の作動原理は、以下のようになっている。
インバーター1と電力系統3が接続された後は、インバーター1の出力電圧の振幅、周波数及び位相が電力系統3の電圧の振幅、周波数及び位相と完全同等であるときのみに、継電器の吸着瞬間にエネルギーのバランスが取れて、エネルギーの相互流入の問題が生じない。しかし、実際には、完全同等に制御することができず、近似同等にしか制御できない。これにより、継電器の吸着瞬間に、エネルギーが電力系統3からインバーター1に逆流して、インバーター3がダメージを受ける問題が生じる。
これに対して、本願発明では、継電器の吸着前に、まず、制御モジュール5によってインバーター電圧検出装置2と電力系統電圧検出装置4を制御して、インバーターの出力電圧及び電力系統の電圧をそれぞれ検出し、この検出結果に基づいて変調信号Vmを算出し、変調信号Vmを方形波信号に変えてから、インバーター駆動モジュール6によってインバーター1の交流出力電圧を変更することで、インバーター1の出力電圧の振幅が電力系統3の電圧の振幅より大きくなるようにし、かつ、インバーター1の出力電圧の位相が電力系統の電圧の位相より進むようにしている。
【0040】
変調信号Vmによって変調するときには、人為的に1つの進み位相角φを増加することで、インバーターの交流出力電圧の位相角が電力系統の電圧の位相角より進むようにするとともに、進み位相角φと電流値
【数19】
は連携する必要がある。すなわち、進み位相角φによって計算して得た電流値
【数20】
は定格電流値より小さい必要があり、0に近い。さらに、上記の条件にしたがって進み位相角φを算出することで、継電器の吸着瞬間に、位相差によるエネルギー逆流の問題を回避できるとともに、電流が大きすぎることによる継電器へのダメージを回避することができる。
【0041】
インバーター電圧検出装置2と電力系統電圧検出装置4によって、インバーター1の出力電圧の振幅が電力系統3の電圧の振幅より5V以内の大きさで大きいことを検出した場合、制御モジュール5によって継電器駆動モジュール7を制御して継電器を吸着させ、継電器の吸着完了を検出したら、インバーター1の作動を停止させることで、継電器の吸着瞬間に、大電流が継電器を流れることがないという効果を達成でき、これにより、継電器の使用寿命を大幅に向上し、継電器とインバーターが故障または破損されるリスクを徹底的に除去することができる。
【0042】
上記のようにすることで、継電器の吸着瞬間に、大電流が継電器を流れることがないように確保することができ、エネルギーがインバーター1から電力系統3に安定的に流れることを確保することができ、これにより、エネルギーが電力系統3から逆流することによりインバーター1が破損されることを回避できる。
【0043】
また、本発明では、インバーター1の電圧に対する制御は、クローズドループフィードバック制御によって実現するものではなく、オープンループ変調を利用するのみで良い。また、インバーターの交流出力電圧に対する制御の難しさおよび制御精度を有効的に低減させ、継電器が小電流で吸着する用途に幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…インバーター
2…インバーター電圧検出装置
3…電力系統
4…電力系統電圧検出装置
5…制御モジュール
6…インバーター駆動モジュール
7…継電器駆動モジュール
図1
【国際調査報告】