(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】化学界面活性剤に置き換わる組成物
(51)【国際特許分類】
C12P 1/04 20060101AFI20230413BHJP
C12P 19/44 20060101ALI20230413BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230413BHJP
C07K 7/54 20060101ALI20230413BHJP
C09K 8/58 20060101ALI20230413BHJP
E21B 43/22 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C12P1/04 Z
C12P19/44
C12P21/02 A
C07K7/54
C09K8/58
E21B43/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564332
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 US2021021524
(87)【国際公開番号】W WO2021183526
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519246261
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アリベック,ケン
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】クラフツォフ,セルゲイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AF41
4B064AG37
4B064CA02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA50
4H045CA11
4H045EA35
(57)【要約】
本発明は、様々な産業用途で使用するための化学界面活性剤に置き換わる方法及び組成物を提供する。より具体的には、本発明は、所望の用途に基づく1つ以上の正確な機能特性を有する多機能生物学的表面活性組成物の製造を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の所望の機能特性を有する環境に優しい界面活性剤組成物を製造する方法であって、特定の機能特性を有するバイオサーファクタント分子を同定し、バイオサーファクタント生成微生物を培養することによって前記バイオサーファクタント分子を製造することを含み、
前記組成物及び/又は前記バイオサーファクタント分子の前記機能特性は、HLB値、CMC値、及び/又はKB値によって測定される、方法。
【請求項2】
前記バイオサーファクタント分子を、前記環境に優しい界面活性剤組成物に望ましい前記1つ以上の機能特性が生じる比率で、特定の機能特性を有する1つ以上の追加のバイオサーファクタント分子と混合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイオサーファクタント分子の構造は、前記バイオサーファクタント生成微生物を培養する間に発酵のパラメータを変更することによって、前記バイオサーファクタントの生成の間に改変される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオサーファクタント分子の構造は、前記バイオサーファクタントの製造後に改変される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオサーファクタント分子は、糖脂質又はリポペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオサーファクタント生成微生物は、
B. acillus amyloliquefaciens NRRL B-67928である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記
B. amyloliquefaciens NRRL B-67928は、サーファクチン、リケニシン、フェンギシン及びイツリンからなる群より選択される1つ以上のリポペプチドを生成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の所望の機能特性を有する環境に優しい界面活性剤組成物であって、1つ以上のバイオサーファクタント分子を含み、前記1つ以上のバイオサーファクタント分子の同一性、比率、及び構造が、所望の機能特性への寄与に基づいて選択される、環境に優しい界面活性剤組成物。
【請求項9】
前記1つ以上のバイオサーファクタント分子は、ソホロ脂質、ラムノ脂質、トレハロース脂質、及びマンノシルエリトリトール脂質からなる群から選択される糖脂質である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記1つ以上のバイオサーファクタント分子は、サーファクチン、リケニシン、フェンギシン及びイツリンからなる群から選択されるリポペプチドである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記1つ以上のバイオサーファクタント分子は、
Bacillus amyloliquefaciens NRRL B-67928によって生成される、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記1つ以上のバイオサーファクタント分子は、
Starmerella bombicolaによって生成される、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記1つ以上のバイオサーファクタント分子は、
Wickerhamomyces anomalusによって生成される、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
化学界面活性剤を置き換える及び/又は減少するために使用される、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記バイオサーファクタントは、5nm未満のミセルサイズを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
20nm未満の細孔サイズを有する油含有層から油を回収する方法であって、請求項5に記載の組成物を含む坑井処理流体が前記層に導入され、前記処理流体は20nm未満の細孔に存在する油に接触し、そこから油を移動させることにより、前記油は、化学界面活性剤を前記坑井処理流体に使用した場合よりも多い量で前記層から回収される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2020年3月10日出願の米国仮特許出願第62/987,529号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、表面活性の両親媒性分子であり、ほぼ全ての産業分野において潜在的な用途がある。従って、現在、数千の異なる表面活性分子からなる界面活性剤の市場は急速に成長している。約60%の界面活性剤は、パーソナルケア製品のための洗剤及び化合物として使用される。他の用途としては、例えば、医薬品及びサプリメント、油及びガス回収、バイオレメディエーション、農業、化粧品、コーティング及び塗料、織物製造、食品製造及び加工、建設が挙げられる。
【0003】
界面活性分子の特性は、親水性-親油性バランス(HLB)によって測定することができる。HLBは、表面活性分子の親水性部分と親油性部分のサイズ及び強度のバランスである。特定のHLB値は、例えば、安定なエマルジョンを形成するために必要とされる。水/油及び油/水エマルジョンでは、表面活性分子の極性部分は、水に向かって配向し、非極性基は、油に向かって配向して、油相と水相との間の界面張力を低下させる。
【0004】
HLB値は、0~約20の範囲であり、低いHLB(例えば、10以下)は、油溶性で、油中水型エマルジョンに好適であり、高いHLB(例えば、10以上)は、水溶性であり、水中油型エマルジョンに好適である。他の特性、例えば、発泡、湿潤、洗浄力及び可溶化能力もまた、HLBに応じている。
【0005】
合成及び化学界面活性剤は、製造が容易で、それらの分子構造に基づいて所望の機能を果たすように調整できる点で、有利である。このように、数千の異なる界面活性剤が開発されており、それぞれが特定の機能を有している。界面活性剤が使用される商品を製造するときに選択可能な選択肢が多くあるが、つまり、界面活性剤機能の特異性は複数の機能を有する商品を製造するために、より多くの種類及び組み合わせの界面活性剤が必要とされることを意味している。例えば、湿潤剤として有用な界面活性剤は必ずしも洗剤として有用ではなく、乳化剤として有用な界面活性剤は必ずしも防食剤として有用ではない。
【0006】
その結果、数十年にわたって化学界面活性剤の過剰使用及び過剰生産となってきた。消費者の増大と規制の認識により、化学界面活性剤の欠点が表面化し始めており、例えば、活性の狭さ、ヒト及び動物に対する潜在的及び既知の毒性、水生環境、土壌及び地下水を含む環境における持続性、製造及び適用中の気候変動への寄与、ならびに他の化学物質との不適合性が挙げられる。
【0007】
生物分解性であり、低い毒性の生物学的表面活性分子を作製する試みがなされてきたが、特定の物理的及び化学的特性を有する生成物を生成するために改変するのは難しい。生物学的表面活性分子の1つの特定の基には、微生物又はバイオサーファクタントにより生成されるものが含まれる。バイオサーファクタントは、極性(親水性)部分と非極性(疎水性)基の2つの部分からなる構造的に多様な群の界面活性物質である。
【0008】
それらの両親媒性構造のために、バイオサーファクタントは、例えば、疎水性の水不溶性物質の表面積を増加させ、そのような物質の水バイオアベイラビリティを増加させ、細菌細胞表面の特性を変化させることができる。バイオサーファクタントはまた、水と油の間の界面張力を低下させることができ、従って、毛細管の影響を打ち消すために捕捉された液体を移動させるのに必要な静水圧を低下させることができる。バイオサーファクタントは、界面に蓄積し、これにより界面張力を減少させ、溶液中に凝集ミセル構造が形成される。ミセルの形成は、例えば、移動する水相中の油を動かすための物理的メカニズムを提供する。バイオサーファクタントが細孔を形成し、生物学的膜を不安定化する能力によってまた、例えば、害虫及び/又は微生物の増殖を制御するための抗菌剤、抗真菌剤及び溶血剤として使用することもできる。
【0009】
典型的には、バイオサーファクタントの親水性基は、糖(例えば、モノ-、ジ-、又は多糖)又はペプチドであり、一方、疎水性基は、典型的には脂肪酸である。従って、例えば、糖の種類、糖の数、ペプチドのサイズ、どのアミノ酸がペプチド中に存在するか、脂肪酸の長さ、脂肪酸の飽和度、追加のアセチル化、追加の官能基、エステル化、分子の極性及び電荷に基づいて、バイオサーファクタント分子の無数の潜在的変異が存在する。
【0010】
これらの変異は、例えば、糖脂質(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリスリトール脂質及びトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アンスロファクチン及びリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル化合物、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体等の高分子量ポリマーを含む、様々な部類を含む分子群をもたらす。各部類内のバイオサーファクタントの各種類は、さらに変性された構造を有するサブタイプをさらに含むことができる。
【0011】
化学界面活性剤と同様に、各バイオサーファクタント分子は、その構造に応じてそれ自体のHLB値を有するが、単一のHLB値又は範囲を有する単一の分子となる化学界面活性剤の製造とは異なり、1周期のバイオサーファクタント製造は、典型的には、バイオサーファクタント分子(例えば、そのサブタイプ及び異性体)の混合物となり、その各々がそれ自体のHLBを有する。従って、単一の微生物培養物から収集されたバイオサーファクタント混合物は、典型的には、それらを生成することに関与する生物学的プロセスの変動性のために、変動する曖昧なHLB値を有する。
【0012】
界面活性剤は、世界中の産業生産性の重要な側面である。例えば、特定の界面活性剤によって引き起こされる毒性や汚染の認識の増大、環境及び健康規制、ならびに「環境に優しい」製品という要望に対する社会的傾向を含む、界面活性剤産業に対する課題の増大のために、表面活性分子を製造及び使用するための改善されたアプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、様々な産業用途で使用するための化学界面活性剤に置き換わる方法及び組成物を提供する。より具体的には、本発明は、所望の用途に基づく1つ以上の正確な機能特性を有する多機能生物学的表面活性組成物の製造を提供する。利点としては、好ましい実施形態において、組成物は、製造と使用において、非毒性で、生分解性で、環境に優しいことが挙げられる。
【0014】
特定の実施形態において、1つ以上のバイオサーファクタント分子を含むカスタマイズ可能なバイオサーファクタント組成物が提供され、1つ以上のバイオサーファクタントの同一性、比率、及び/又は分子構造は、組成物の所望の用途に基づいて組成物の特定の機能特性を達成するために予め決められる。
【0015】
特定の実施形態において、1つ以上の所望の機能特性を有する環境に優しい界面活性剤組成物が提供され、組成物は、1つ以上のバイオサーファクタント分子を含み、1つ以上のバイオサーファクタント分子の同一性、比率及び構造は、所望の機能特性に対するそれらの寄与に基づいて選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、機能特性は、例えば、親水性-親油性バランス(HLB)、臨界ミセル濃度(CMC)、及び/又はカウリ-ブタノール値(KB)によって測定される。
【0017】
特定の実施形態において、組成物は、例えば、糖脂質、リポペプチド、フラボ脂質、リン脂質、脂肪酸エステル化合物、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体から選択される部類に属する1つ以上のバイオサーファクタント分子を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、組成物は、同じバイオサーファクタント部類に属する複数のバイオサーファクタント分子を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらのバイオサーファクタント部類のうちの2つ以上に属するバイオサーファクタント分子を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、組成物は、糖脂質、例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、トレハロース脂質、セロビオース脂質及び/又はマンノシルエリトリトール脂質を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、界面活性剤、フェンギシン、アンスロファクチン、リケニシン、イツリン及び/又はビスコシン等のリポペプチドを含む。
【0020】
利点としては、特定の予め決めた比率で、組成物中に複数のバイオサーファクタント分子を含めると、親水性か疎水性のいずれかのより広い範囲を有する組成物を作製されることである。さらに、この組成物は、複数の機能について同時に、例えば、異なるHLB値やHLB範囲を必要とする機能についても有用である。すなわち、1つ以上のバイオサーファクタント分子を含む1つの生物学的生成物は、環境に優しい様式で広範囲の化学的生成物と置き換えることができる(
図1を参照のこと)。
【0021】
追加及び/又は変形実施形態において、組成物は、組成物内のバイオサーファクタント分子の同一性及び比率に基づいて、特定の、場合によっては、非常に正確なHLB値を有するように調整することができる。
【0022】
特定の実施形態において、組成物は、例えば、アルキルベンゼンスルホネート、鎖状アルキルベンゼンスルホネート、アルコールエトキシレート、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、塩化アルキルアンモニウム、アルキルグルコシド、及び本明細書に記載されたその他等の化学界面活性剤を含む組成物と置き換えるために使用することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明は、1つ以上の所望の機能特性を有する「環境に優しい」界面活性剤組成物を製造するための方法を提供し、この方法は、特定の機能特性を有するバイオサーファクタント分子を同定し、バイオサーファクタントの製造に好ましい条件下でバイオサーファクタント生成微生物を培養することによってバイオサーファクタント分子を製造することを含む。
【0024】
特定の実施形態において、この方法は、バイオサーファクタント分子を1つ以上のさらなるバイオサーファクタント分子と組み合わせる工程をさらに含み、その同一性、比率及び/又は分子構造は、組成物の所望の用途に基づいて決定される。従って、例えば、表面/界面張力低下、粘度低下、乳化、解乳化、溶解性、洗浄力、及び/又は抗菌作用を含む、1つ以上の所望の機能特性を有する組成物が製造される。
【0025】
いくつかの実施形態において、本方法は、組成物中で使用する前に、バイオサーファクタント分子の構造を改変することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、環境に優しい界面活性剤組成物中のバイオサーファクタント分子の同一性、比率、及び/又は分子構造は、例えば、個々の分子のHLB、CMC、及び/又はKBに基づいて決定される。いくつかの実施形態において、バイオサーファクタント分子の同一性、比率、及び/又は分子構造は、組成物全体の理論的又は実際の所望のHLB、CMC、及び/又はKB値に基づいて決定される。
【0027】
好ましい実施形態において、環境に優しい界面活性剤組成物は、化学界面活性剤を典型的に含む製品において、化学界面活性剤の代わりに利用することができ、ここで、1つ以上のバイオサーファクタントが、化学界面活性剤と同じ又は類似の機能特性を有するように選択される。
【0028】
従って、いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上の化学界面活性剤、及び任意で1つ以上の追加の成分を含む既知の組成物を選択すること、及び化学界面活性剤の代わりに、本発明の環境に優しい界面活性剤組成物を使用することによって、既知の組成物の環境に優しいものを製造することを含む。環境に優しい界面活性剤組成物は、存在する場合、任意の追加の成分と混合することができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明の方法及び組成物は、競合する化学界面活性剤を利用する方法及び組成物よりも良好に機能する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明に従って利用されるバイオサーファクタントの構造及び/又はサイズは、化学的界面活性剤によって達成されるものよりも向上した表面張力低下及び/又は界面張力低下を可能にする。利点としては、特定の実施形態において、表面張力及び/又は界面張力の所望の減少を達成するのに、必要とされる本発明によるバイオサーファクタント分子は、競合する化学界面活性剤に必要とされるよりも低用量であることである。
【0030】
利点としては、本発明の方法及び組成物は、化学界面活性剤の必要性を完全に低減する、及び/又は置き換えることによって、界面活性剤の製造及び使用によって典型的に引き起こされるコスト及び環境への影響を低減することである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、特定の化学界面活性剤(上部)及びSLP分子(下部)のHLB値を示す。本方法の実施形態に従って製造される1つのSLP組成物(黒星印の付いた両側矢印で示される)は、複数の個々の化学界面活性剤に置き換えることができる。
【
図2】
図2は、SLP分子の変形がどのように分子のHLB値を調節することができるかを示す。
【
図3】
図3は、リポペプチド分子の変形がどのように分子のHLB値を調節することができるかを示す。
【
図4】
図4は、表面活性分子の応用及び応用に必要な対応するHLB値のチャートを示す。チャートはまた、このようなHLB範囲を達成するために、より多くのLSL又はASLが組成物中に必要とされるかどうかを示す。
【
図5】
図5は、RLP分子の変形がどのように分子のHLB値を調節することができるかを示す。
【
図6】
図6は、異なる数の糖部分及び/又は脂肪酸、異なる脂肪酸長、ならびに脂肪酸における異なる飽和度を有する、ラムノ脂質分子の可能な変形形態のリストを示す。これらの58種類のそれぞれは、HLBを含む異なる特性を有する。
【
図7】
図7は、MEL分子の変形がどのように分子のHLB値を調節することができるかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、石油及びガス産業、農業、化粧品、ヘルスケア及び環境浄化、ならびに様々な他の用途に使用することができる「環境に優しい」界面活性剤組成物を製造するための材料及び方法を提供する。具体的には、本発明は、1つ以上のバイオサーファクタント分子を含む普遍的に適用可能なバイオサーファクタント由来の組成物の製造のための材料及び方法を提供し、ここで、組成物は、その中のバイオサーファクタント分子の種類及び比率に基づいて1つ以上の正確な機能特性を示すように改変することができる。
【0033】
利点としては、本発明の方法に従って製造された環境に優しい界面活性剤組成物は、例えば、所望のHLB、CMC及び/又はKB値、又はこれらの値の所望の範囲を有する特定の機能性生成物を得るために、正確な所定の比率のバイオサーファクタント分子を含むことができることである。
【0034】
選択された定義
本明細書で使用される「環境に優しい」化合物又は材料とは、少なくとも95%が、植物、動物、ミネラル及び/又は微生物等の自然な、生物学的及び/又は再生可能な供給源に由来することを意味し、さらに、化合物又は材料は生分解性である。さらに、「環境に優しい」化合物又は材料は、ヒトに対して毒性が最小であり、LD50>5000mg/kgである。「環境に優しい」生成物は、好ましくは、非植物系のエトキシル化界面活性剤、鎖状アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、エーテル硫酸塩界面活性剤又はノニルフェノールエトキシレート(NPE)のいずれも含有しない。
【0035】
本明細書中で使用される「バイオフィルム」は、細菌、酵母、又は真菌等の微生物の複合凝集体であり、ここで、細胞は、細胞外マトリックスを使用して、互いに及び/又は表面に接着する。バイオフィルム中の細胞は、液体培地中を浮遊又は泳動することができる単一細胞である同じ生物のプランクトン細胞とは生理学的に異なる。
【0036】
本明細書中で使用される「単離された」又は「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、又は、小分子(例えば、以下に記載されるもの)等の有機化合物は、天然起源の細胞物質等の他の化合物を実質的に含まない。精製又は単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA))は、天然に存在する状態においてそれに隣接する遺伝子又は配列を含まない。精製又は単離されたポリペプチドは、天然に存在する状態においてそれに隣接するアミノ酸又は配列を含まない。単離された微生物株とは、その株が天然に存在する環境から除去されることを意味する。従って、単離された菌株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、又は担体と会合した胞子(又は菌株の他の形態)として存在する。
【0037】
特定の実施形態において、精製化合物は、目的の化合物の少なくとも60重量%である。好ましくは、調製物は、目的の化合物の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%である。例えば、精製化合物は、重量で少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、又は100%(w/w)の所望の化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準的な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定される。
【0038】
「代謝物」とは、代謝によって生成される任意の物質、又は特定の代謝プロセスに関与するのに必要な物質をいう。代謝物は、代謝の出発物質、中間体、又は最終生成物である有機化合物である。代謝物の例としては、酵素、酸、溶媒、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸、バイオポリマー及びバイオサーファクタントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書中で使用される「微生物由来の組成物」とは、微生物又は他の細胞培養物の増殖の結果として生成された成分を含む組成物を意味する。従って、微生物由来の組成物は、微生物自体及び/又は微生物増殖の副生成物を含むことができる。微生物は、植物状態、胞子形態、菌糸形態、任意の他の形態の繁殖体、又はこれらの混合物であってよい。微生物は、プランクトンであっても、バイオフィルム形態であっても、又は両方の混合物であってもよい。成長副生成物は、例えば、代謝物、細胞膜成分、発現タンパク質、及び/又は他の細胞成分である。微生物は、そのままの状態であっても溶解されていてもよい。微生物は組成物中に存在してもよいし、組成物から除去されてもよい。微生物は、微生物由来の組成物中に、それらが増殖されたブロスと共に存在することができる。細胞は、例えば、組成物の1ミリリットル当たり少なくとも1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012以上の複数のCFUの濃度で存在する。
【0040】
本発明はさらに、所望の結果を達成するために実際に適用される生成物である「微生物由来の生成物」を提供する。微生物由来の生成物は、単に、微生物培養プロセスから採取された微生物由来の組成物である。あるいは、微生物由来の生成物は、添加されたさらなる成分を含んでいてもよい。これらの追加の成分としては、例えば、安定剤、緩衝剤、水や塩溶液や任意の他の適切な担体等の担体、さらなる微生物増殖をサポートするための添加された栄養素、非栄養増殖促進剤、及び/又はそれが適用される環境中の微生物及び/若しくは組成物の追跡を容易にする薬剤を挙げることができる。また、微生物由来の生成物は、微生物由来の組成物の混合物を含み得る。また、微生物由来の生成物は、濾過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等のような、しかしこれらに限定されない、何らかの方法で処理された微生物由来の組成物の1つ以上の成分を含んでもよい。
【0041】
本明細書で提供される範囲は、その範囲内の全ての値について簡潔にしたものであると理解される。例えば、1~20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び20からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は下位範囲、ならびに、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、及び1.9等の前述の整数の間のすべての介在する10進値を含むと理解される。下位範囲に関して、範囲のいずれかの終点から延びる「ネストされたサブ範囲」が特に企図される。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子下位範囲は、一方向に1~10、1~20、1~30、及び1~40、又は他方向に50~40、50~30、50~20、及び50~10を含むことができる。
【0042】
本明細書で使用される「減少」は負の変化を意味し、「増加」は、正の変化を意味し、負の又は正の変化が少なくとも0.001%、0.01%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である。
【0043】
本明細書で使用される「界面活性剤」とは、2つの液体間又は液体と固体の間の表面張力(界面張力)を低下させる化合物をいう。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、及び/又は分散剤として作用する。「バイオサーファクタント」は、生細胞により生成される表面活性物質である。
【0044】
「バイオサーファクタント」及び「バイオサーファクタント分子」という語句は、任意のバイオサーファクタント部類(例えば、糖脂質)及び/又はそのサブタイプ(例えば、ソホロ脂質)のすべての形態、同位体、オルソログ、異性体、ならびに天然及び/又は人為的改変を含む。
【0045】
「有する」又は「含有する」と同義である「含む」という移行句は、包含的又はオープンエンドであり、追加の引用されていない要素又は方法ステップを除外しない。対照的に、「からなる」という移行句は、請求項に記載されていない要素、ステップ又は成分を除外する。「から実質的になる」という移行句は、請求項の範囲を、特定の材料又はステップ、及び請求された発明の「基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。「含む」という用語の使用は、記載された構成要素「からなる」又は「本質的にからなる」他の実施形態を包含するものである。
【0046】
具体的に述べられていないか、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」という用語は、包括的であると理解される。具体的に述べられているか、文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「1つの」、「及び」、「その」という用語は、単数形又は複数形であると理解される。
【0047】
具体的に述べられていないか、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差内と理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。文脈から特に明確でない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、用語「約」によって修正される。
【0048】
本明細書に記載される可変の任意の定義における化学基の列挙の再引用は、任意の1つの基又は列挙された基の組み合わせとしてその可変の定義を含む。
【0049】
本明細書中の可変又は態様用の実施形態の列挙は、その実施形態を任意の単一の実施形態として、もしくは任意の他の実施形態又はその一部と組み合わせて含む。
【0050】
本明細書に引用されている全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
環境に優しい界面活性剤組成物及び製造方法
本発明は、化学界面活性剤組成物の代替物としての環境に優しい界面活性剤組成物、その製造方法及び使用方法を提供する。より具体的には、本発明は、1つ以上のバイオサーファクタント分子を含む普遍的に適用可能なバイオサーファクタント由来の組成物の製造を提供し、ここで、組成物は、バイオサーファクタント分子の同一性、比率及び/又は分子構造を変更することによって、所望の使用に基づいて1つ以上の機能的特徴を示すように改変される。いくつかの実施形態において、機能特性は、例えば、親水性-親油性バランス(HLB)、臨界ミセル濃度(CMC)、及び/又はカウリ-ブタノール値(KB)によって測定される。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明は、1つ以上の所望の機能特性を有する「環境に優しい」界面活性剤組成物を生成するための方法を提供し、本方法は、特定の機能特性を有するバイオサーファクタント分子を同定し、バイオサーファクタントの製造に好ましい条件下でバイオサーファクタント生成微生物を培養することによってバイオサーファクタント分子を製造することを含む。
【0053】
特定の実施形態において、本方法は、バイオサーファクタント分子を1つ以上のさらなるバイオサーファクタント分子と組み合わせることをさらに含み、同一性、比率及び/又は分子構造は、組成物の所望の用途に基づいて決定される。従って、例えば、表面/界面張力低下、粘度低下、乳化、解乳化、溶解性、洗浄力、及び/又は抗菌作用を含む、1つ以上の所望の機能特性を有する組成物が製造される。
【0054】
いくつかの実施形態において、環境に優しい界面活性剤組成物中のバイオサーファクタント分子の同一性、比率、及び/又は分子構造は、例えば、個々の分子のHLB、CMC、及び/又はKBに基づいて決定される。いくつかの実施形態において、バイオサーファクタント分子の同一性、比率、及び/又は分子構造は、組成物全体の理論的又は実際の所望のHLB、CMC、及び/又はKB値に基づいて決定される。
【0055】
1つ以上のバイオサーファクタントは、小規模から大規模の培養方法を用いて製造することができる。最も顕著な点として、本方法は、産業的規模、すなわち、商業的用途、例えば、油回収を向上させる組成物の製造のための需要を満たす量でバイオサーファクタントを供給する際に使用するのに適した規模に規模を変更することができる。好ましい実施形態において、バイオサーファクタントは、集中型の場所、いくつかの実施形態において、環境に優しい界面活性剤組成物が使用される場所から300マイル、200マイル、100マイル、又は10マイルを超えない場所で生成され、任意で改変され、混合される。
【0056】
バイオサーファクタントを製造するために利用される微生物は、天然の微生物であっても、遺伝的に改変された微生物であってもよい。例えば、微生物は、特定の特徴を示すために特定の遺伝子で形質転換される。また、微生物は、所望の菌株の突然変異体であってもよい。本明細書中で使用される「変異体」は、基準微生物の菌株、遺伝的変異体又はサブタイプを意味し、変異体は基準微生物と比較して、1つ以上の遺伝的変異(例えば、点変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、欠失、重複、フレームシフト変異又は反復拡大)を有する。変異体を作製するための手順は、微生物学的技術分野において周知である。例えば、UV突然変異誘発及びニトロソグアニジンは、この目的のために広く使用されている。
【0057】
一実施形態において、微生物は酵母又は真菌である。本発明による使用に適した酵母及び真菌種としては、Aureobasidium(例えば、A. pullus)、Blakeslea、Candida(例えば、C. apicola、C. bombicola、C. nodaensis)、Cryptococcus、Debaryomyces(例えば、D. hansenii)、Entomophthora、Hanseniaspora(例えば、H. uvarum)、Hansenula、Issatchenkia、Kluyveromyces(例えば、K. phaffii)、Mortierella、Meyerozyma guilliermondii、Penicillium、Phycomyces、Pichia(例えば、P. anomala、P. guilliermondii、P. occidentalis、P. kudriavzevii)、Pleurotus spp.(例えば、P. ostreatus)、Pseudozyma(例えば、P. aphidis)、Saccharomyces(例えば、S. boulardii sequela、S. cerevisiae、S. torula)、Starmerella(例えば、S. bombicola)、Torulopsis、Trichoderma(例えば、T. reesei、T. harzianum、T. hamatum、T. viride)、Ustilago(例えば、U. maydis)、Wickerhamomyces(例えば、W. anomalus)、Williopsis(例えば、W. mrakii)、Zygosaccharomyces(例えば、Z. bailii)、及びその他が挙げられる。
【0058】
特定の実施形態において、微生物は、グラム陽性及びグラム陰性細菌を含む細菌である。細菌は、例えば、Agrobacterium(例えば、A. radiobacter)、Azotobacter(A. vinelandii、A. chroococcum)、Azospirillum(例えば、A. brasiliensis)、Bacillus(例えば、B. amyloliquefaciens、B. circulans、B. laterosporus、B. licheniformis、B. megaterium、B. mucilaginosus、B. subtilis)、Burkholderia(例えば、B. thailandensis)、Frateuria(例えば、F. aurantia)、Microbacterium(例えば、M. laevaniformans)、myxobacteria(例えば、Myxococcus xanthus、Stignatella aurantiaca、Sorangium cellulosum、Minicystis rosea)、Paenibacillus polymyxa、Pantoea(例えば、P.agglomerans)、Pseudomonas(例えば、P. aeruginosa、P. chlororaphis subsp. aureofaciens(Kluyver)、P. putida)、Rhizobium spp.、Rhodospirillum(例えば、R. rubrum)、Sphingomonas(例えば、S. paucimobilis)及び/又はThiobacillus thiooxidans(Acidothiobacillus thiooxidans)である。
【0059】
特定の実施形態において、追加の微生物はBacillus spp.である。特定の一実施形態において、Bacillus sp.は、B. subtilis株B1、B2又はB3(その全体が参照により組み込まれる、米国特許第10,576,519号を参照のこと)、又はB. subtilis subp. locusB4である。特定の実施形態において、Bacillusは、B. amyloliquefaciens株NRRL B-67928(「B.amy」)である。
【0060】
B. amyloliquefaciens「B.amy」微生物の培養物は、農業研究事業団北部地域研究所(Agricultural Research Service Northern Regional Research Laboratory)(NRRL), 1400 Independence Ave, S. W、Washington、DC,20250、USAに寄託されている。寄託は、寄託機関によって受託番号NRRL B-67928が割り当てられ、2020年2月26日に寄託された。
【0061】
本発明の培養物は、37CFR1.14及び35U.S.C.122に基づき、特許商標長官により権利が与えられると決定されたものに対して、本特許出願の係属中に培養物へのアクセスが利用可能であることを保証する条件下で寄託されている。寄託物は、本出願の対応物又はその孫出願が提出される国において、外国特許法によって要求されるように入手可能である。しかしながら、寄託物の利用可能性は、政府の措置によって付与された特許権を失効させて本発明を実施するためのライセンスを構成しないことを理解されたい。
【0062】
さらに、本培養物の寄託は、微生物の寄託に関するブダペスト条約の規定に従い、保存され、一般に公開される。すなわち、寄託のサンプル提供の直近の要請後の最低5年間、また、いずれにせよ、寄託日から最低30年間、又は培養物を開示する可能性のある特許の法的強制力のある存続期間、汚染されず生存可能なように、必要なすべての注意を払って保存される。寄託者は、寄託の条件のために、寄託機関が要求に応じてサンプルを提供することができない場合、寄託を交換する義務が付される。本培養寄託物の公への利用可能性に関するすべての制限は、それを開示する特許の付与に際して、撤回不能で解除される。
【0063】
一実施形態において、本方法は、液体増殖培地を含む発酵反応器にバイオサーファクタント生成微生物を接種して培養物を製造し、バイオサーファクタントの製造に好ましい条件下で培養物を培養することを含む。
【0064】
本発明に従って使用される微生物増殖容器は、産業的使用のための任意の発酵槽又は培養反応器である。一実施形態において、容器は、機能制御/センサを有してもよく、又はpH、酸素、圧力、温度、撹拌機シャフト出力、湿度、粘度及び/又は微生物密度及び/又は代謝物濃度等の培養プロセスにおける重要な因子を測定するために機能制御/センサに接続されてもよい。
【0065】
さらなる実施形態において、容器は、容器内の微生物の増殖(例えば、細胞数及び増殖期の測定)をモニタリングすることもできる。あるいは、サンプルを、計数、純度測定、バイオサーフサクタント濃度、及び/又は目視油面モニタリングのために容器から採取してもよい。例えば、一実施形態において、サンプリングは24時間毎に行うことができる。
【0066】
本方法による微生物の接種材料は、好ましくは、任意の公知の発酵方法を用いて調製することができる、所望の微生物の細胞及び/又は繁殖体を含む。接種材料は、所望であれば、水及び/又は液体増殖培地と予め混合しておくことができる。
【0067】
特定の実施形態において、培養方法は、液体増殖培地中の浸漬発酵を利用する。一実施形態において、液体成長培地は、炭素源を含む。炭素源は、グルコース、デキストロース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、及び/又はマルトース等の炭水化物、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、及び/又はピルビン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、及び/又はグリセロール等のアルコール、キャノーラ油、大豆油、米ぬか油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ゴマ油、及び/又はアマニ油等の油脂、粉末糖蜜等である。これらの炭素源は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい実施形態において、親水性炭素源、例えば、グルコース、及び疎水性の炭素源、例えば、油又は脂肪酸が使用される。
【0068】
一実施形態において、液体増殖培地は、窒素源を含む。窒素源は、例えば、酵母エキス、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素、及び/又は塩化アンモニウムである。これらの窒素源は、単独で、又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0069】
一実施形態において、1つ以上の無機塩も、液体増殖培地に含まれていてもよい。無機塩としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸一カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び/又は炭酸ナトリウムを挙げることができる。これらの無機塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
一実施形態において、微生物の増殖因子及び微量栄養素が培地に含まれる。これは、それらが必要とするビタミンの全てを製造することができない微生物を増殖させる場合に特に好ましい。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン及び/又はコバルトのような微量元素を含む無機栄養素もまた、培地に含まれる。さらに、ビタミン、必須アミノ酸、タンパク質及び微量元素の供給源は、例えば、トウモロコシ粉、ペプトン、酵母エキス、ジャガイモエキス、ビーフエキス、大豆エキス、バナナピールエキス等、又は精製された形態で含まれる。例えば、タンパク質の生合成に有用なアミノ酸もまた含まれる。
【0071】
培養方法は、増殖培養に酸素化をさらに提供することができる。一実施形態では、低酸素含有空気を除去し、酸素化空気を導入するために、空気の緩慢な動きを利用する。酸素化空気は、液体の機械的撹拌のためのインペラー、及び液体中への酸素の溶解のために液体に気泡を供給するための空気スパージャーを含む機構を介して毎日補充される周囲空気でよい。特定の実施形態において、溶存酸素(DO)レベルは、空気飽和の約25%~約75%、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、又は約50%に維持される。
【0072】
いくつかの実施形態において、培養のための方法は、培養プロセスの前及び/又は間に、液体培地中に追加の酸及び/又は抗菌剤を添加することをさらに含んでもよい。抗菌剤又は抗生物質(例えば、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン)は、培養物を汚染から保護するために使用される。しかしながら、いくつかの実施形態において、酵母培養物によって製造される代謝物は、培養物の異物の混入を防止するのに十分な抗菌効果を提供する。
【0073】
一実施形態において、接種の前に、液体培養培地の成分は、任意で滅菌される。一実施形態において、液体増殖培地の滅菌は、液体増殖培地の成分を約85~100℃の温度の水に入れることによって達成することができる。一実施形態において、滅菌処理は、成分を1:3(w/v)の比率で1~3%の過酸化水素に溶解することによって達成することができる。
【0074】
一実施形態において、培養に使用される装置は無菌である。反応器/容器のような培養装置は、滅菌ユニット、例えば、オートクレーブから分離されてもよいが、接続されてもよい。また、培養装置は、接種を開始する前に、インサイチュで滅菌する滅菌ユニットを有してもよい。ガスケット、開口部、管及び他の機器部品には、例えば、イソプロピルアルコールを噴霧することができる。空気は、当技術分野で公知の方法によって滅菌することができる。例えば、周囲空気は、容器内に導入される前に、少なくとも1つのフィルタを通過する。他の実施形態において、培地は、低温殺菌されてもよく、又は任意で、全く加熱されなくてもよく、pH及び/又は低い水分活性の使用を利用して、望ましくない微生物の増殖を制御してもよい。
【0075】
培養物のpHは、目的の微生物に適したものとすべきであり、培養物中に特定のバイオサーファクタント分子を生成するために、所望に応じて変更される。緩衝液、及び炭酸塩やリン酸塩等のpH調節剤を使用して、pHを好ましい値付近に安定化させることができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、pHは、約2.0~約7.0である。いくつかの実施形態において、pHは、約2.5~約5.5、約3.0~約4.5、又は約3.5~約4.0である。一実施形態において、培養は、一定のpHで連続的に行うことができる。別の実施形態において、培養は、変化するpH値にさらされてもよい。
【0077】
一実施形態において、培養方法は、約5℃~約100℃、約15o~約60℃、約20o~約45℃、約22o~約30℃、又は約24o~約28oCで実施される。一実施形態において、培養は、一定温度で連続的に行うことができる。別の実施形態において、培養は、変化する温度にさらされてもよい。
【0078】
本方法によれば、微生物は、所望の効果、例えば、所望の量の細胞バイオマスの製造、又は所望の量の1つ以上の微生物増殖副生成物を達成するのに十分な期間、発酵系中でインキュベートされる。微生物によって生成される微生物増殖副生成物は、微生物中に保持され、及び/又は増殖培地中に分泌される。バイオマス含量は、例えば、5g/l~180g/l以上、又は10g/l~150g/lである。
【0079】
特定の実施形態において、酵母培養物の発酵は、約48~150時間、又は約72~150時間、又は約96~約125時間、又は約110~約120時間行われる。
【0080】
発酵サイクルが完了した後、本方法は、いくつかの実施形態において、バイオサーファクタント分子を抽出、濃縮及び/又は精製することを含む。
【0081】
特定の実施形態において、本発明の方法は、廃棄物が最小からゼロとなるように実行され、それによって、下水及び廃水システムに排出される、及び/又は埋め立て地に処分される発酵廃棄物の量が減少する。
【0082】
バイオサーファクタントの抽出後に培養物から収集された細胞バイオマスは、典型的には不活性化され、廃棄される。しかしながら、本方法は、細胞バイオマスを収集し、それを生きた状態のまま又は不活性形態で使用すること、これらに限定されるものではないが、土壌改良剤、家畜飼料サプリメント、油井処理、及び/又はスキンケア製品を含む様々な目的のために使用することをさらに含むことができる。細胞バイオマスは、直接使用することができるか、又は意図された用途についての特定添加剤と混合することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、バイオサーファクタントを抽出及び/又は精製するために使用される水又は他の非毒性液体は、残留バイオサーファクタント、栄養素及び/又は細胞物質を含有することができる。従って、特定の実施形態において、液体は、植物のための土壌又は葉面処理剤として、ヒト及び動物のための安全な栄養及び/又は水分補給剤として、洗浄組成物として、及び/又は発酵廃棄物を減少させるための無数の他の使用のために、潅漑滴下線又はスプリンクラーで使用される。
【0084】
いくつかの実施形態において、本方法は、バイオサーファクタント分子を組成物に添加する前に、その構造を改変することを含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、発酵のパラメータを調節することにより、培養物中の1つ以上の特定のバイオサーファクタント分子の改変及び/又は製造、及び/又は特定の比率の複数のバイオサーファクタント分子の製造となる。これらのパラメータは、例えば、微生物の特定の菌株を使用すること、増殖培地組成を調節すること、アンタゴニスト及び/又は影響を与える微生物と微生物を共培養すること、栄養培地に阻害剤及び/又は刺激化合物を添加すること、発酵の温度、pH及び/又は通気を調節すること、及びその他が含まれる。
【0086】
いくつかの実施形態において、発酵サイクルから得られるバイオサーファクタント分子は、例えば、エステル化、重合、アミノ酸の添加、金属の添加、及び脂肪酸鎖長の変更によって、発酵後に改変される。
【0087】
利点としては、特定の予め決定された比率で、組成物中に複数のバイオサーファクタント分子を含めると、親水性又は疎水性のいずれかのより広い範囲を有する組成物が作られることである。さらに、この組成物は、複数の機能、例えば、異なるHLB値又はHLB範囲を必要とする機能についても、同時に有用である。言い換えれば、1つ以上のバイオサーファクタント分子を含む1つの生物学的生成物は、環境に優しい様式で広範囲の化学的生成物に置き換えることができる(
図1を参照のこと)。
【0088】
追加及び/又は代替の実施形態において、組成物は、組成物内のバイオサーファクタント分子の同一性及び比率に基づいて、特定の、場合によっては、非常に正確なHLB値を有するように調整することができる。
【0089】
特定の実施形態において、組成物は、例えば、糖脂質、リポペプチド、フラボ脂質、リン脂質、脂肪酸エステル化合物、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体から選択される部類に属する1つ以上のバイオサーファクタント分子を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、組成物は、同じバイオサーファクタント部類に属する複数のバイオサーファクタント分子を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、これらのバイオサーファクタント部類のうちの2つ以上に属するバイオサーファクタント分子を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、トレハロース脂質、セロビオース脂質及び/又はマンノシルエリトリトール脂質等の糖脂質を含む。
【0092】
特定の実施形態において、組成物は、0重量%~100重量%、5重量%~95重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、40重量%~60重量%、45重量%~55重量%、又は50重量%のソホロ脂質分子を含む。「ソホロ脂質」又は「ソホロ脂質分子」は、例えば、酸性(鎖状)(ASL)及びラクトン性(LSL)ソホロ脂質、ならびに、例えば、モノアセチル化ソホロ脂質、ジアセチル化ソホロ脂質、エステル化ソホロ脂質、種々の疎水性鎖長を有するソホロ脂質、ソホロ脂質-金属錯体、結合した脂肪酸-アミノ酸錯体を有するソホロ脂質、及び本明細書に記載されるその他を含む、全ての可能な誘導体を含むことができる。
【0093】
特定の実施において、組成物は、ラムノ脂質分子を重量で0%~100%、5%~95%、10%~90%、15%~85%、20%~80%、25%~75%、30%~70%、35%~65%、40%~60%、45%~55%、又は50%含むことができる。「ラムノ脂質」又は「ラムノ脂質分子」は、例えば、モノラムノ脂質及びジラムノ脂質、その全ての可能な誘導体、及び本明細書中に記載されるような他の形態を含む。
【0094】
特定の実施において、組成物は、重量で0%~100%、5%~95%、10%~90%、15%~85%、20%~80%、25%~75%、30%~70%、35%~65%、40%~60%、45%~55%、又は50%のマンノシルエリスリトール脂質分子を含むことができる。「マンノシルエリトリトール脂質」又は「マンノシルエリトリトール脂質分子」は、例えば、トリアシル化、ジアシル化、モノラルアシル化、トリアセチル化、ジアセチル化、モノラルアセチル化及び非アセチル化MEL、ならびにそれらの立体異性体及び/又は構成異性体を含むことができる。特定の実施形態において、MELは、MEL A(ジアセチル化)、MEL B(C4でモノアセチル化)、MEL C(C6でモノアセチル化)、MEL D(非アセチル化)、トリアセチル化MEL A、トリアセチル化MEL B/C、ならびに本明細書に記載の他の形態の群として特徴付けられる。
【0095】
いくつかの実施形態において、組成物は、重量で0%~100%、5%~95%、10%~90%、15%~85%、20%~80%、25%~75%、30%~70%、35%~65%、40%~60%、45%~55%、又は50%のリポペプチド、例えば、サーファクチン、フェンギシン、アルスロファクチン、リケニシン、イツリン及び/又はビスコシン等のリペプチドを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、2つ以上の精製されたバイオサーファクタント分子は、互いに混合される。いくつかの実施形態において、2つ以上の未精製又は粗形態のバイオサーファクタントが、互いに混合される。粗形態は、例えば、残渣栄養培地、微生物細胞、及び/又は発酵中に生成される他の微生物代謝物を含むことができる。いくつかの実施形態において、精製されたバイオサーファクタント分子は、粗型バイオサーファクタントと混合される。
【0097】
好ましい実施形態において、環境に優しい界面活性剤組成物は、化学界面活性剤を典型的に含む製品において、化学界面活性剤の代わりに利用することができ、1つ以上のバイオサーファクタントは、化学界面活性剤と同じ又は類似の機能特性を有するように選択される。
【0098】
このように、いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上の化学界面活性剤、及び任意で1つ以上の追加の成分を含む既知の組成物を選択し、化学界面活性剤の代わりに本発明の環境に優しい界面活性剤組成物を使用することによって、既知の組成物の環境に優しいものを生成することを含む。環境に優しい界面活性剤組成物は、存在する場合、1つ以上の任意の追加の成分と混合することができる。
【0099】
特定の実施形態において、組成物は、化学界面活性剤を含む組成物と置き換えるために使用することができる。典型的な化学又は合成界面活性剤(非生体情報界面活性剤を意味する)は疎水性基を含み、これは、通常、分岐していてもいなくてもよい長い炭化水素鎖(C8~C18)であり、一方、親水性基は、カルボキシレート、硫酸塩、スルホネート(アニオン性)、アルコール、ポリオキシエチレン化鎖(非イオン性)及び第四級アンモニウム塩(カチオン性)等の部分によって形成される。
【0100】
本発明の方法及び組成物を利用する界面活性剤組成物において置き換えることができる非生物学的界面活性剤としては、これらに限られるものではないが、アニオン性界面活性剤、ラウリル硫酸アンモニウム(SDS、ドデシル硫酸ナトリウムとも呼ばれる)、アルキルエーテル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)としても知られている)、ミレス硫酸ナトリウム、ドキュセート、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホネート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAB)、アルキル-アリールエーテルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、カルボキシレート、アルキルカルボキシレート(石鹸)、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、カルボキシレート由来のフルオロ界面活性剤、ペルフルオロノナン酸塩、ペルフルオロオクタン酸塩、陽イオン性界面活性剤、pH依存性第一級、第二級、又は第三級アミン、オクテニジン二塩酸塩、永久荷電第四級アンモニウムカチオン、アルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CATB)(別名ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、塩化セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ベンズアルコニウムクロリド(BAC)、塩化ベンゾニウム(BZT)、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DODAB)、双性イオン(両性)界面活性剤、サルテインCHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ベタイン、コカミドプロピルベタイン、ホスファジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、非イオン性界面活性剤、エトキシレート、長鎖アルコール、脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(Brij)、CH3-(CH2)10-16-(O-C2H4)1-25-OH(オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル)、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、CH3-(CH2)10-16-(O-C3H6)1-25-OH、グルコシドアルキルエーテル、CH3-(CH2)10-16-(O-グルコシド)1-3-OH(デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド)、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル:C8H17-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OH(トリトンX-100)、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル:C9H19-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OH(ノノキシノール-9)、グリセロールアルキルエステル(ラウリン酸グリセリル)、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(ポリソルベート)、ソルビタンアルキルエステル(スパン)、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体(ポロキサマー)、及びポリエトキシル化タローアミン(POEA)が挙げられる。
【0101】
アニオン性界面活性剤は、その頭部に、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、及びカルボン酸塩等のアニオン性官能基を有する。主なアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS、ドデシル硫酸ナトリウムとも呼ばれる)、及びラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)としても知られる関連アルキルエーテル硫酸ナトリウム、及びミレス硫酸ナトリウムが含まれる。カルボキシレートは、最も一般的な界面活性剤であり、ステアリン酸ナトリウム等のアルキルカルボキシレート(石鹸)を含む。
【0102】
カチオン性頭部基を有する界面活性剤には、pH依存性第一級、第二級、又は第三級アミン、オクテニジンジヒドロクロリド、アルキルトリメチルアンモニウム塩のような永久荷電第四級アンモニウムカチオン、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)別名ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンズアルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化セトリモニウム及び臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)が含まれる。
【0103】
双性イオン(両性)界面活性剤は、同じ分子に結合したカチオンとアニオン中心の両方を有する。カチオン部分は、第一級、第二級、又は第三級アミン又は第四級アンモニウムカチオンに基づく。アニオン性部分は、可変で、スルホネートを含む。双性イオン界面活性剤は、一般に、リン脂質ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンに見られるような、アミン又はアンモニウムを有するリン酸アニオンを有する。
【0104】
非荷電親水性部分を有する界面活性剤、例えば、エトキシレートは、非イオン性である。多くの長鎖アルコールは、いくつかの界面活性剤特性を示す。
【0105】
組成物
特定の実施形態において、1つ以上のバイオサーファクタント分子を含む多官能性バイオサーファクタント由来の組成物が提供される。特定の実施形態において、組成物は、バイオサーファクタント分子の同一性、比率及び/又は構造を調整することによって、特定の目的のためにカスタマイズすることができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、バイオサーファクタント分子の同一性、比率及び/又は構造は、所望の親水性-親油性バランス(HLB)を達成するように調整される。特定の実施形態において、組成物中の個々のバイオサーファクタント分子の各々は、例えば、組成物が高いHLBを必要とする機能及び低いHLBを必要とする機能のために使用できるように、環境に個別に作用する。例えば、水中油型乳化(HLB13-18)及び油中水型乳化(HLB3-6)が可能な組成物を製造することができる。例示の組成物のW/O乳化の強度に対するO/W乳化の強度は、低HLB分子に対する高HLB分子の比率に依存する。
【0107】
特定のさらなる及び/又は代替の実施形態において、バイオサーファクタント由来の組成物は、全体として、特定の、及びいくつかの例では、正確なHLB値を特徴とし、特定のHLB値は、組成物中のバイオサーファクタント分子の比率を調整することによって特別に調整することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、バイオサーファクタント分子の同一性、比率及び/又は構造は、所望の臨界ミセル濃度(CMC)値を達成するように調整される。CMCは、ミセルの凝集体が形成され、添加される全てのさらなる界面活性剤がミセルを形成する表面活性分子又は組成物の濃度である。CMCに達する前に、表面張力は、界面活性剤の濃度が増加するにつれて減少する。CMCに達した後は、表面張力は比較的一定である。
【0109】
いくつかの実施形態において、バイオサーファクタント分子の同一性、比率及び/又は構造は、所望のカウリブタノール(KB)値を達成するように調整される。KBは物質の洗浄力と同様に、物質の溶媒強度を表すために使用される。
【0110】
さらなる成分を、特定の用途のために必要に応じて組成物に添加することができる。添加剤は、例えば、緩衝剤、担体、同じ又は異なる施設で製造された他の微生物由来の組成物、粘度調整剤、防腐剤、微生物増殖のための栄養素、植物成長のための栄養素、溶剤、医薬品、機能性食品、追跡剤、農薬、除草剤、動物飼料、消毒剤、ビルダー、共界面活性剤、芳香剤、食品成分及び意図された用途に特定他の成分である。
【0111】
本発明はさらに、例えば、改善されたバイオレメディエーション、マイニング、石油及びガスの製造、廃棄物の処分及び処理、ヒトの健康の増進、家畜及び他の動物の健康の増進、防腐剤及び/又は乳化剤等の食品添加物、化粧品添加物、ならびに植物の健康及び生産性の増進を含む、多くの状況におけるこれらの製品の使用を提供する。
【0112】
いくつかの実施形態において、本発明の方法及び組成物は、競合する化学界面活性剤を利用する方法及び組成物よりも良好に機能する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明に従って利用されるバイオサーファクタントの構造及び/又はサイズは、化学界面活性剤によって達成されるものよりも向上した表面張力低下及び/又は界面張力低下を可能にする。利点としては、特定の実施形態において、表面張力及び/又は界面張力の所望の減少を達成するのに、必要とされる本発明によるバイオサーファクタント分子は、競合する化学界面活性剤に必要とされるよりも低用量であることである。
【0113】
特定の実施形態において、本発明によるバイオサーファクタント分子及び/又はミセルのサイズは、10nm未満、好ましくは、8nm未満、より好ましくは、5nm未満である。特定の実施形態において、サイズは、0.8nm~1.5nm、又は約1.0~1.2nmである。利点としては、このような小さいサイズによって、動植物の細胞間、細胞膜中、及びバイオフィルムマトリックス中の、地中の油含有層中のようなナノメートルサイズの空間及び細孔中へのバイオサーファクタントの浸透が増強できることである。
【0114】
従来技術による微生物バイオサーファクタントの培養は複雑で、時間がかかり、資源を消費するプロセスであり、多段階を必要とする。利点としては、本発明の方法は、複雑な装置又は高いエネルギー消費を必要とせず、従って、微生物及びそれらの代謝物を大規模に製造する資本及び労働コストが低減されることである。さらに、界面活性剤が使用される任意の用途、例えば、石油及びガス産業、農業産業、及び/又は化粧品産業に使用することができる、様々な界面活性機能を実施するために、本発明に従って製造された生成物のみあればよい。従って、本発明は、これらの産業における化学界面活性剤の使用を置き換え及び/又は低減するために使用することができる。
【0115】
実施例
例示としての以下の実施例から、本発明及びその多くの利点が深く理解されるであろう。以下の実施例は、本発明の方法、用途、実施形態及び変形のいくつかを例示するものである。本発明を限定するものではない。本発明に関して、多くの変更及び修正を行うことができる。
【0116】
実施例1-ソホロ脂質の製造
ソホロ脂質は、例えば、Starmerellaクレードの種々の酵母によって生成される糖脂質バイオサーファクタントである。SLPは、長鎖ヒドロキシ脂肪酸に結合した二糖サホロースからなり、17-L-ヒドロキシオクタデカン酸又は17-L-ヒドロキシ-Δ9-オクタデセン酸にβ-グリコシド結合した部分アセチル化2-O-β-D-グルコピラノシル-D-グルコピラノース単位を含む。ヒドロキシ脂肪酸は、一般に、16又は18個の炭素原子であり、1つ以上の不飽和結合を含む。さらに、ソホロース残基は、6及び/又は6'位置でアセチル化される。脂肪酸カルボキシル基は、遊離(酸性又は鎖状形態(一般式1))であってもよく、又は4"位で内部エステル化されていてもよい(ラクトン形態(一般式2))。S. bombicolaは、S. bombicolaラクトンエステラーゼと呼ばれる特異的酵素を生成し、これは、鎖状SLPのエステル化を触媒して、ラクトンSLPを生成する。
【0117】
好ましい実施形態において、本発明によるSLPは、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表され、異なる脂肪酸鎖長(R3)を有し、場合によってはR1 及び/又はR2でアセチル化又はプロトン化を有する30種類以上の構造相同体の集合体として得られる。
【0118】
【0119】
一般式(1)又は(2)において、R0は、水素原子又はメチル基のいずれであってもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又はアセチル基である。R3は、飽和脂肪族炭化水素鎖、又は少なくとも1つの二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素鎖であり、1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0120】
置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、低級(C1~6)アルキル基、ハロ低級(C1~6)アルキル基、ヒドロキシ低級(C1~6)アルキル基、ハロ低級(C1~6)アルコキシ基等が挙げられるがこれらに限られるものではない。R3は、典型的には、11~20個の炭素原子、好ましくは、13~17個の炭素原子、より好ましくは14~16個の炭素原子を有する。
【0121】
SLPを生成するために、発酵反応器にStarmerella bombicola酵母を接種する。発酵温度は、23~28oCに保つ。約22~26時間後、培養物のpHを、20%NaOHを用いて約3.0~4.0、又は約3.5に設定する。発酵反応器は、pHをモニターし、pHが3.5のままとなるように、塩基を投与するために使用されるポンプを制御するコンピューターを含む。
【0122】
培養の約6~7日後(120時間+/1時間)、7.5mlのSLP層が見え、油は見えず、グルコースが検出されない場合、バッチは採取の準備ができている。
【0123】
発酵中のSLP生成物の改変
本発明の方法によって生成されるSLP分子の構造は、発酵パラメータを変更することによって、複数の方法で改変することができる。1つのやり方は、長鎖脂肪アルコール(例えば、C4からC26アルコール)を栄養培地中に含めることである。得られるSLP分子は、長さがC36までの疎水性部分を含み、組成物の疎水性、乳化及び洗浄能力を増大させる。
【0124】
別のやり方は、発酵培地中の糖及び/又は油の量を制限することである。例えば、いくつかの実施形態において、グルコースの量は約25g/L~約75g/Lに制限され、及び/又はカノーラ油の量は約25ml/L~約75ml/Lに制限される。特定の実施形態において、これは、培養物中で生成されるASLの量を増加させる。
【0125】
疎水性のSLP分子(例えば、LSL及びいくつかのASL)の量を増加させるために、酵母は、約22℃~約28℃の温度、及び約2.5~4.0のpHで培養される。pHは約4.0で始め、これを減少して、培養中、約2.5で安定化される。
【0126】
培養物中のASLの量を増加させるために、酵母を約5.5のpH及び約35℃の温度で培養する。さらに、酵母Candida kuoiを利用することにより、ASLのみを含む組成物を得ることができる。この酵母がASLのみを生成するからである。
【0127】
発酵後のSLP生成物の改変
SLP分子のいくつかの改変は、培養周期が終了した後に起こる。例えば、無機酸、アルカリ性物質及び/又は塩をSLPと混合して溶解度を変化させることができる。
【0128】
さらに、SLPに加えて、酵母はまた、リパーゼやエステラーゼといった酵素を酵母培養物中に生成する。特定の酵素は、アミノ酸のSLP分子への接着を触媒する。このようにして、アミノ酸は酵母培養物に添加されて、アミノ酸の特徴及びSLP分子の所望の特徴に基づいて選択される。カチオン性、アニオン性、極性及び非極性アミノ酸は、SLP分子に結合すると、SLP分子の特性をカチオン性、アニオン性、極性又は非極性に変化させることができる。
【0129】
さらに、特定の酵素は、アルコール及び脂肪酸の存在下でSLP分子のエステル化を触媒する。
【0130】
発酵サイクルが完了すると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、又はヘプタノールから選択されるアルコール(例えば、10%v/v)を酵母培養物に添加する。液体発酵培地は、好ましくは、脂肪酸源、例えば、カノーラ油を既に含む。しかしながら、特定のエステル化生成物が望ましい場合には、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ラウリン酸、及びミリスチン酸等の脂肪酸の精製された形態の追加の脂肪酸を添加することができる。
【0131】
アルコール及び脂肪酸を含む酵母培養物を24時間混合する。24時間後、混合を停止すると、培養物は、添加されたアルコール、ソホロース、及び脂肪酸エステル、例えば、メタノール及びオレイン酸が使用されるときに形成されるメタノールソホロ脂質オレイン酸エステルを含むSLPエステルを含むこととなる。
【0132】
実施例2-サンプルSLP組成物
精製LSL
本発明の実施形態による方法を用いて生成及び精製されたLSLは、83.5%のSLP(45.13%のLSL及び38.36%のASL)を含んでいた。脂肪酸(7.5%)及び水(9%)が生成物の残部を構成していた。HLBは、1.65~2.99であった。
【0133】
ASLが精製生成物中に存在していたという事実にもかかわらず、それらは不純物として処理されなかった。ASLは、一般に、性質上、親水性であり、LSLは、性質上、一般に、親油性である。ここで、ASLは親油性を示した。従って、組成物の特性は、特にHLBに関して、より純度の高いLSLと一致した。
【0134】
精製ASL
本発明の実施形態による方法を用いて生成及び精製されたASLは、92%のSLP(80%のASL及び12%のLSL)を含んでいた。脂肪酸(6%)、グルコース(2%)及び水(0.5%)が生成物の残部を構成していた。HLBは、20以上であった。
【0135】
ここで、ASLは典型的な親水性を示したが、少量の親油性LSLはさらなる精製によって除去することができる不純物として扱われる。
【0136】
実施例3-所望の機能のためのSLPを含む組成物の調整
以下の原則は、組成物中のSLP分子の種類及び/又は比率を調整する場合に参照される(表1、
図2も参照のこと)。
【0137】
【0138】
実施例4-SLP組成物の分析
S. bombicolaの発酵を50回繰り返し、以下のLSL対ASLの比率を有する50ロットのSLPを生成した(表2)。
【0139】
【0140】
ロット中のASLのパーセンテージを用いて線形回帰分析を行った。次の式が得られた。0.17+(ASLの0.365x%)=HLB値
【0141】
この式は、SLP中のASLのパーセンテージを使用してHLB値を予測するために使用することができる。異なる比率のLSLとASLを混合して、実際のデータが仮想曲線にどのように適合するかを調べた。結果は以下に示すように、計算式をサポートするものである(表3)。
【0142】
【0143】
実施例5-所望の機能のためのRLPを含む組成物の調整
いくつかの実施形態において、組成物は、ラムノ脂質(RLP)を含む。ラムノ脂質は、グリコシル頭部基(すなわち、ラムノース)部分、及び3-(ヒドロキシアルカノイルオキシ)アルカン酸(HAA)脂肪酸尾、例えば、3-ヒドロキシデカン酸を含む。ラムノ脂質の2つの主要サブタイプ、モノ-及びジ-ラムノ脂質が存在し、これらはそれぞれ1つ又は2つのラムノース部分を含む。HAA部分は、例えば、増殖培地及び環境条件に依存して、長さ及び分岐の程度が変化し得る。
【0144】
本発明によるラムノ脂質は、以下の構造を有することができる。
【化3】
式中、mは2、1又は0であり、nは1又は0であり、R
1 及びR
2 は、互いに独立して、2~24個、好ましくは5~13個の炭素原子を有する同一又は異なる有機官能基、特に、置換又は非置換、分岐又は非分岐アルキル官能基であり、これらは不飽和であってもよく、アルキル官能基は、8~12個の炭素原子を有する線状飽和アルキル官能基であるか、又はノニルもしくはデシル官能基もしくはそれらの混合物である。
【0145】
これらの化合物の塩も本発明に含まれる。本発明において、「ジ-ラムノ脂質」という用語は、nが1である上式の化合物又はその塩を意味すると理解され、従って、本発明において、「モノ-ラムノ脂質」は、nが0である一般式の化合物又はその塩を意味すると理解される。
【0146】
図3~4に示されるように、RLP分子の構造は、機能に大きく影響し得る。
【0147】
実施例6-所望の機能のためのMELを含む組成物の調整
いくつかの実施形態において、組成物は、マンノシルエリトリトール脂質(MEL)、親水性部分として4-O-B-D-マンノピラノシル-メソ-エリトリトール又は1-O-B-D-マンノピラノシル-メソ-エリトリトールのいずれかを含むバイオサーファクタントの部類と、疎水性部分として脂肪酸基及び/又はアセチル基とを含む。
【0148】
MELサブタイプは、異なるカーボン長鎖又は異なる数のアセチル及び/又は脂肪酸基を含むことができる。MELサブタイプには、例えば、トリ-アシル化、ジ-アシル化、モノ-アシル化、トリ-アセチル化、ジ-アセチル化、モノ-アセチル化及び非アセチル化MELのほか、立体異性体及び/又はその構成異性体が含まれる。さらに、1~3個のエステル化脂肪酸、6~12個の炭素、又はそれ以上の鎖長が存在し得る。
【0149】
特定の実施形態において、MELは、MEL A(ジアセチル化)、MEL B(C4でモノアセチル化)、MEL C(C6でモノアセチル化)、MEL D(非アセチル化)、トリアセチル化MEL A、トリアセチル化MEL B/C、及びこれらの基の部の全ての可能な異性体をさらに含む基として特徴付けられる。本発明によるMELは、以下の構造を有することができる。
【化4】
式中、R
2及びR
3=C
2-C
18の脂肪酸、MEL A:R
4=R
6=アセチル基、MEL B:R
4=H、R
6=アセチル基、MEL C:R
4=アセチル基、R
6=H及びMEL D:R
4=R
6=H
【0150】
図5に示すように、MEL分子の構造は、機能に大きく影響し得る。
【0151】
実施例7-所望の機能のためのリポペプチドを含む組成物の調整
いくつかの実施形態において、組成物はリポペプチドを含む。リポペプチドは、大きい多酵素錯体を用いて細菌によって合成されるオリゴペプチドである。抗生物質化合物としてよく使用され、界面活性剤活性に加えて、広い抗菌スペクトルを示す。リポペプチドは全て、ペプチド部分に組み込まれたβ-アミノ又はβ-ヒドロキシ脂肪酸からなる一般的な環状構造を共有する。
【0152】
サーファクチンリポペプチドは、13~15個の炭素原子を有するβ-ヒドロキシ脂肪酸を含有するヘプタペプチドからなる。プリパスタチンを含むフェニピンリポペプチドは、β-ヒドロキシ脂肪酸を有するデカペプチドである。イツリンA、マイコサブチリン、及びバシロマイシンによって表されるイツリンリポペプチドは、β-アミノ酸脂肪酸を有するヘプタペプチドである。
【0153】
様々な有用な特徴を示す他のリポペプチドが同定されている。いくつか例を挙げると、クルスタキン、アンスロファクチン、ビスコシン、グロモスポリン、アンフィシン、及びシリンゴマイシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
図6に示すように、リポペプチド分子の構造は、機能に大いに影響し得る。
【0155】
特定の実施形態において、リポペプチドは、一般的な構造Aがイツリンであり、一般的な構造Bがサーファクチンであり、一般的な構造Cがフェンギシンである以下の一般的な構造のうちの1つを有する。
【化5】
【0156】
実施例8-意図された特性に基づく界面活性剤HLB値
市販の界面活性剤由来の生成物は、食品製造、医薬品、化粧品、パーソナルケア製品、洗剤、塗料、織物、燃料、天然及び合成油、多くの他の用途に使用される。農業においては、殺虫剤及び/又は肥料として使用することができる。それらはまた、鉱石濃縮、生体異物の修復、石油及びガス回収に使用することができる。
【0157】
界面活性剤の選択は、特定の意図される用途に依存し、HLB値に基づいて決定される。表4は、所望の特性に基づく例示的なHLB値を示す(
図7も参照のこと)。
【0158】
【0159】
実施例9-意図される用途-石油産業に基づく界面活性剤HLB値
界面活性剤は、例えば、原油回収の増進、油井及びガス井の刺激(油井への油の流れを改善するため)、ロッド、チュービング、ライナー、タンク及びポンプのような器具からのパラフィン、アスファルテン及びスケールのような汚染物及び/又は障害物の除去、油及びガス製造物及び運搬装置の腐蝕の防止、原油及び天然ガス中のH2S濃度の減少、原油の粘性の減少、重質原油及びアスファルテンの軽質炭化水素留分へのアップグレード、タンク、フローライン及びパイプラインの洗浄、選択的及び非選択的閉塞による水フラッディング中の油の移動性の増進、ならびに流体の破砕を含む、油及びガス回収に広く使用されている。
【0160】
界面活性剤の選択は、特定の意図される用途に依存し、HLB値に基づいて決定される。以下は、所望の用途に基づく例示的なHLB値である。利点としては、本発明の方法は、表面活性組成物を提供するものであり、油及びガス回収について、以下の表5に示す機能の全てを実行するように調整することができることである。
【0161】
【0162】
特定の例示的な実施形態において、ミセルサイズは、油及びガス産業においてバイオサーファクタントを使用するための別の有利な態様である。化学界面活性剤及びナノ粒子含有流体は、層中の細孔及び水圧破壊からの油の回収を促進するために使用されることが多い。これらの化合物のサイズは、15~18nm、約100nmまでの範囲である。例えば、シェールを含有する特定の層において、層の細孔サイズは低ナノメートル範囲、13~18nmであることが多く、従って、例えば、サイズが1.5nm未満である本発明によるバイオサーファクタントを利用することは、最小の細孔に到達する手段を提供するものであり、他の処理では不可能である油を動かすものである。
【0163】
従って、20nm未満、18nm未満、15nm未満、及び/又は13nm未満の細孔サイズを有する油含有層から油を回収するための方法が提供され、本発明に従って生成されたバイオサーファクタントを含む坑井処理流体が層に導入され、処理流体は細孔内に存在する油と接触し、そこから油を動かし、油は、化学界面活性剤が坑井処理流体中で使用された場合よりも多い量で層から回収される。
【0164】
実施例10-意図される用途-農業産業に基づく界面活性剤HLB値
界面活性剤は、農業産業において広く使用されている。界面活性剤の選択は、特定の意図される用途に依存し、HLB値に基づいて決定される。以下は、所望の用途に基づく例示的なHLB値である。利点としては、本発明の方法は、表面活性組成物を提供するものであり、農業について、以下の表6に示す機能の全てを実行するように調整することができることである。
【0165】
【0166】
特定の例示的な実施形態において、ミセルサイズは、農業産業においてバイオサーファクタントを使用するための別の有利な態様である。いくつかの例において、小さいミセルサイズは、植物の根及び維管束系へのバイオサーファクタント、水及び可溶化された栄養素の浸透及び取り込みを可能にし、植物内の表面張力の減少、植物細胞への栄養素及び水の輸送の増加、そして細胞からの毒素及び老廃物の排泄の増加を可能にする。このように、結果として植物の健康及び成長を増加させることができる。
【0167】
実施例11-意図される用途-化粧品及びパーソナルケアに基づく界面活性剤HLB値
界面活性剤は、化粧品及びパーソナルケア製品産業において広く使用されている。界面活性剤の選択は、特定の意図される用途に依存し、HLB値に基づいて決定される。以下は、所望の用途に基づく例示的なHLB値である。利点としては、本発明の方法は、表面活性組成物を提供するものであり、化粧品及びパーソナルケアについて、以下の表7に示す機能の全てを実施するように調整することができることである。
【0168】
【0169】
実施例12-意図される用途-洗浄製品に基づく界面活性剤HLB値
界面活性剤は、家庭用、施設用及び産業用(HI&I)洗浄製品に広く使用されている。界面活性剤の選択は、特定の意図される用途に依存し、HLB値に基づいて決定される。以下は、所望の用途に基づく例示的なHLB値である。利点としては、本発明の方法は、表面活性組成物を提供するものであり、HI&I洗浄製品について、以下の表8に示す機能の全てを実施するように調整することができることである。
【0170】
【0171】
実施例13-意図された用途-建設に基づく界面活性剤HLB値
界面活性剤は、建設に広く使用されている。界面活性剤の選択は、特定の意図される用途に依存し、HLB値に基づいて決定される。以下は、所望の用途に基づく例示的なHLB値である。利点としては、本発明の方法は、表面活性組成物を提供するものであり、建設について、以下の表9に示す機能の全てを実施するように調整することができることである。
【0172】
【0173】
実施例14-意図される用途-家畜の健康に基づく界面活性剤HLB値
界面活性剤は、動物の健康にために広く使用されている。界面活性剤の選択は、特定の意図される用途に依存し、HLB値に基づいて決定される。以下は、所望の用途に基づく例示的なHLB値である。利点としては、本発明の方法は、表面活性組成物を提供するものであり、家畜及びその他のペットの健康について、以下の表10に示す機能の全てを実施するように調整することができることである。
【0174】
【0175】
特定の例示的な実施形態において、ミセルサイズは、畜産業においてバイオサーファクタントを使用するための別の有利な態様である。いくつかの例において、小さいミセルサイズは腸上皮細胞を通した、バイオサーファクタント、水、可溶化栄養素、及び薬物の浸透及び取り込みと、細胞からの毒素及び老廃物の排泄の増加を可能にする。いくつかの例において、小さいミセルサイズはまた、消化管を含む表面上のバイオフィルムに浸透したり、破壊するのにも有益であり、これは、腸溶性メタン生成バイオフィルムならびに他の病原性バイオフィルムを減少させるために有用である。
【0176】
本明細書に記載した実施例及び態様は例示のためのみであり、それを考慮した様々な修正又は変更が当業者に示唆され、それらは、本明細書の趣旨及び範囲内に含まれるものとする。
【0177】
本明細書に言及又は引用した全特許、特許出願、仮出願、及び刊行物はそれらが本明細書の明白な開示と矛盾しない限り、その図面及び表を含む全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【国際調査報告】