(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】マットレス用生地及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20230413BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20230413BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20230413BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A47C27/12 E
D04B21/00 B
D04B21/16
D02G3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530996
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2021006791
(87)【国際公開番号】W WO2021182102
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0029592
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】522207361
【氏名又は名称】ディアイティーグリーン シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヒョ-ショプ
(72)【発明者】
【氏名】イー、ウー-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ミ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】大関 達郎
【テーマコード(参考)】
3B096
4L002
4L036
【Fターム(参考)】
3B096AD04
4L002AA05
4L002AA07
4L002AA08
4L002AB01
4L002AC00
4L002AC05
4L002AC07
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4L002DA01
4L002EA04
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4L036MA04
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4L036MA35
4L036MA39
4L036PA31
4L036PA33
4L036UA06
(57)【要約】
本発明は、難燃レーヨン、モダクリル繊維、ポリイミド繊維、及び低融点ポリエステル繊維を含む混紡糸を製編してなる編成物を含むマットレス用生地に関する。前記マットレス用生地は、難燃レーヨン、モダクリル繊維、ポリイミド繊維、及び低融点ポリエステル繊維を含む混紡糸を製造し、前記混紡糸を製編してなる編成物を製造することで得ることができる。
本発明によると、難燃性に優れ、マットレスを覆う作業生に優れ、混紡糸の強度が低下せずに、生地におけるピリングの発生が抑制され、人体の接触にも影響を及ぼさない安全なマットレス用生地を提供することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃レーヨン繊維20~70重量%、モダクリル繊維10~30重量%、ポリイミド繊維10~30重量%、及び低融点ポリエステル繊維5~20重量%を含む混紡糸を製編してなる編成物を含み、
前記ポリイミド繊維は、捲縮数が3~12回/インチであり、
KS K 0503:2006に基づいて回転数14,400回の条件下で測定したピリング性が4~5級以上であることを特徴とするマットレス用生地。
【請求項2】
前記難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維、ポリイミド繊維、及び低融点ポリエステル繊維は、いずれも、繊度が2~5dであり、長さが37~127mmである請求項1に記載のマットレス用生地。
【請求項3】
韓国防炎性の基準KOFEIS 1001に基づいて測定した炭化面積が20cm
2以下であり、かつ炭化長が8cm以下である請求項1又は2に記載のマットレス用生地。
【請求項4】
韓国防炎性の基準KOFEIS 1001に基づいて測定した残炎時間が0秒、かつ残じん時間が0秒である請求項1~3のいずれかに記載のマットレス用生地。
【請求項5】
経方向の伸長回復率及び緯方向の伸長回復率が、いずれも90%以上である請求項1~4のいずれかに記載のマットレス用生地。
【請求項6】
前記混紡糸は、強度が1.29cN/dtexを超える請求項1~5のいずれかに記載のマットレス用生地。
【請求項7】
難燃レーヨン繊維20~70重量%、モダクリル繊維10~30重量%、ポリイミド繊維10~30重量%、及び低融点ポリエステル繊維5~20重量%を含むように紡績して混紡糸を製造する段階;及び
前記混紡糸を製編して編成物を製造する段階を含み、
前記ポリイミド繊維は、捲縮数が3~12回/インチであるマットレス用生地の製造方法。
【請求項8】
前記難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維、ポリイミド繊維、及び低融点ポリエステル繊維は、いずれも、繊度が2~5dであり、長さが37~127mmである請求項7に記載のマットレス用生地の製造方法。
【請求項9】
前記編成物に対して150~180℃の温度で乾熱処理を行う、請求項7又は8に記載のマットレス用生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を有する混紡糸を利用したマットレス用生地及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マットレスは、一般的に、各家庭で使用されるベッド(寝台)を構成するベッドフレームに置かれて人々が快適な睡眠と休息を取る時に使用されるものであり、マットレスのテンション力を備えているテンション要素の外周面にカバー部材が覆われている。
【0003】
一般的に、マットレスの基本性能は、保温性、通気性、復元性であり、長時間使用しても嵩を維持する耐久性である。すわなち、使用者の体温を維持する保温性と、マットレス内外の空気の通気をスムーズに行い、使用者の荷重による収縮性と復元性も良い必要がある。
【0004】
マットレスは、通常、長方形の形状となっており、一般的に、芯材、内装材及びカバーで構成されている。芯材は、マットレスが与える感触に最も大きい影響を及ぼしており、スプリング、ラテックス、メモリーフォーム(登録商標)等が素材として使用されている。内装材は、芯材とカバーの間において、マットレスの多様な機能を発現する。カバーは、体と直接的に接触する部位である。
【0005】
内装材とカバーは、人体に影響を与えるため、主に抗菌性と殺菌性、消臭機能を追求していることから、使用時には何の不便さと問題点はないが、使用中に予期せぬ火災が発生し、炎がマットレスに点火された場合、シンプルな繊維素材からなる内装材とカバーが簡単に焼却されることはもちろん、焼却時に人体に有害な有毒ガス等が発生することにより、より大きい火災と人命被害が発生する問題が生じている。
【0006】
内装材とカバーは、通常、内部から外部へ、不織布、パッティング、生地の順で積層されるようにした状態で公知のキルティング工法によって一体化して作製されており、マットレス火災の拡散の主な要因として、これらに使用される材料が指摘されている。
【0007】
したがって、マットレスに使用される各種繊維材料には難燃性又は防炎性が求められている。
【0008】
難燃性又は防炎性を有する繊維として、ガラス繊維系又はアラミド系の耐熱性に優れる材料を原料とする繊維製品が主に使用される。しかし、このような場合、難燃性又は防炎性の機能は確保できるが、マットレスに要求される人体親和性、風合い、弾力性、柔らかさ、伸縮性等が、寝具用インテリア素材として使用するには不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2006-0066073号(マットレス又はマットレスセット用単一層防火織物、及びそれの防火処理方法)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような問題点を解決するために、防炎性を有するとともに、寝具用インテリア素材に適した機能を有するマットレス用生地及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、1以上の実施形態において、難燃レーヨン繊維20~70重量%、モダクリル繊維10~30重量%、ポリイミド繊維10~30重量%、及び低融点ポリエステル繊維5~20重量%を含む混紡糸を製編してなる編成物を含み、上記ポリイミド繊維は、捲縮数が3~12回/インチであり、KS K 0503:2006に基づいて回転数14,400回の条件下で測定したピリング性が4~5級以上であるマットレス用生地に関する。
【0012】
本発明は、1以上の実施形態において、難燃レーヨン繊維20~70重量%、モダクリル繊維10~30重量%、ポリイミド繊維10~30重量%、及び低融点ポリエステル繊維5~20重量%を含むように紡績して混紡糸を製造する段階;及び上記混紡糸を製編して編成物を製造する段階を含み、上記ポリイミド繊維は、捲縮数が3~12回/インチであるマットレス用生地の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、難燃性繊維素材を組み合わせて優れた難燃性を維持しながら、混紡糸の強度が低下せず、製編の作業性が低下しない状態で編成物へ適用されて伸縮性が向上するため、マットレスを覆う作業性に優れ、生地におけるピリングの発生が抑制され、人体との接触にも影響を与えない安全なマットレス用生地を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために、検討を重ねた。その結果、所定の捲縮数を有するポリイミド繊維と、難燃レーヨン(FR-Rayon)繊維、モダクリル(Modacrylic)繊維、及び低融点ポリエステル(Low Melting Polyester, LM PET)を所定の配合量で組み合わせて混紡糸にし、該混紡糸を製編した編成物をマットレス用生地に含ませることで、防炎性に優れるとともに、生地におけるピリングの発生が抑制され、人体との接触にも影響を与えない安全なマットレス用生地が得られることを見出した。
【0015】
具体的には、難燃繊維である難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維に加えて、所定の捲縮数を有するポリイミド繊維及び低融点ポリエステル繊維を複合した混紡糸を用いることで、燃焼時にポリイミド繊維及び低融点ポリエステル繊維によって形成される炭化膜が燃焼の進行を抑制するため、編成物の防炎性が格段に向上する。
また、ポリイミド繊維は、通常、繊維の表面が滑らかで、かつ伸度が高いことから、他の繊維と混合することが容易でないが、本発明では、所定の捲縮数を有するポリイミド繊維を用いることで、混紡糸からポリイミド繊維が脱落することやピリング現象の発生を抑制するとともに、ポリイミド繊維による防炎性向上効果が発揮しやすくなる。
また、低融点ポリエステル繊維により、混紡糸における繊維間の結束を高め、モダクリル繊維やポリイミド繊維によって生じやすいピリング現象を効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明の1以上の実施形態において、マットレス用生地は、難燃レーヨン繊維20~70重量%、モダクリル繊維10~30重量%、ポリイミド繊維10~30重量%、及び低融点ポリエステル繊維5~20重量%を含む混紡糸を製編してなる編成物を含む。
【0017】
本発明の1以上の実施形態において、マットレス用生地は、難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維、ポリイミド繊維、及び低融点ポリエステル繊維を含んでなる混紡糸を製造し、上記混紡糸を編成物に製編して製造される。
【0018】
本発明の1以上の実施形態において、混紡糸は、難燃レーヨン繊維20~70重量%、モダクリル繊維10~30重量%、ポリイミド繊維10~30重量%、及び低融点ポリエステル(Low Melting Polyester, LM PET)繊維5~20重量%を含んでなる。
【0019】
レーヨンは、アウターの裏地や下着等の用途に多様に使用されており、静電気を防止する帯電防止機能及び肌触りが卓越であり、静電気による使用者の不便を防止することができる繊維材料である。
【0020】
難燃レーヨン繊維は、レーヨン繊維に難燃性が付与された繊維である。例えば、レーヨンの紡糸段階でリン系難燃剤を添加することで改質して製造することができる。難燃レーヨン繊維は、難燃性及び洗濯耐久性を有し、染色も可能である。難燃レーヨン繊維は、繊度が2~5d(デニール、denier)のものを使用することが好ましい。
【0021】
上記混紡糸において、難燃レーヨン繊維が20重量%未満であれば、柔軟性及び弾力性が低下し、70重量%を超える場合は、簡単に火の元を取り除いても、生地に燃え移った火がすぐには消えないため、難燃性が低下してしまう。
【0022】
モダクリル繊維は、アクリロニトリルを主に含む重合体から製造されたアクリル合成繊維である。好ましくは、重合体は30乃至70重量%のアクリロニトリル、及び30乃至70重量%のハロゲン含有ビニル単量体を含む共重合体である。ハロゲン含有ビニル単量体は、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等から選択された少なくとも一つの単量体である。共重合可能なビニル単量体の例は、アクリル酸、メタクリル酸、そのような酸の塩又はエステル、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、酢酸ビニル等がある。
【0023】
好適なモダクリル繊維は、塩化ビニリデンと組み合わせたアクリロニトリルの共重合体であり、該共重合体は、改善される難燃性のために、さらに、1種以上のアンチモン酸化物を有することができる。
【0024】
モダクリルは、燃焼中に酸素の遮断剤としての難燃ガスを生成する。しかし、かなりの量の酸性ガスも生成する。
【0025】
モダクリル繊維は、それ自体が強度、弾力性、防炎性及び耐薬品性に優れる。また、難燃性を有する繊維の中、価格が比較的に安価であり、作業服、難燃実験服、カーペット、カーテン等に広く使用される。しかし、日光に露出されると、変色が生じやすく、染色性が悪く、染色時の伸縮性に劣り、単独で使用するには制約がある。
【0026】
上記混紡糸において、モダクリル繊維が10重量%未満である場合、燃焼時に可燃性物質と酸素との接触を抑制する、空気より重い難燃ガスの発生が低減して難燃性と防炎性(火炎遅延)が低下し、30重量%を超える場合は、燃焼時に熱抵抗性が低く、炭化(Char)長が増え、有害煙が多く発生して公害を誘発して人体に有害であり、ピリング(Pilling)が多く発生して製編性が低下するとともに、生地の表面に起毛現象が発生することになる。
【0027】
ポリイミド繊維は、450℃以上の温度で分解されるため、耐熱性及び熱遮断性に優れ、熱安定性を有し、酸とアルカリに対する耐化学性を有し、強度に優れる。
【0028】
上記混紡糸において、ポリイミド繊維が混合されることによって、熱的安定性、熱遮断特性、及び寸法安定性が向上されることになる。これにより、本発明の混紡糸からなる編成物は、炭化がより早く進行し、難燃性及び防炎性が向上する。
【0029】
一方、高い熱抵抗性を有するポリイミドが、炭化膜において、柔軟な補強材(flexible stiffener)として機能することで、炭化膜が破損しない。これにより、編成物における更なる燃焼を抑制して炭化長を減少させることになる。
【0030】
また、炭化膜が堅固に維持されるため、熱や燃焼が内部に伝達されないようにして更なる燃焼が起こらないようにする。
【0031】
上記混紡糸において、ポリイミド繊維が10重量%未満であれば、熱的特性が低下し、炭化された部分が増加し、燃焼が早く中断されず、30重量%を超えると、紡績性が低下し、効果の向上が僅かであり、経済的に望ましくない。
【0032】
低融点ポリエステル(Low Melting Polyester, LM PET)繊維は、150~200℃の融点を有し、上記温度範囲内で溶融され、融着の機能を示すことになる。
【0033】
上記混紡糸又は混紡糸を使用した編成物の加工処理において、熱が加えられる場合に、低融点ポリエステル繊維が融着によって接着剤としての役割を果たすため、混紡糸の機械的強度及び耐久性が向上し、紡績糸の欠点であるピリングの発生を抑制することになる。
【0034】
また、燃焼時に、最初に溶融され、熱分解され、編成物で炭化膜を形成することになり、該炭化膜が編成物の収縮を抑制し、編成物の空隙を埋める膜を形成するため、編成物における難燃性及び防炎性が向上することになる。
【0035】
また、混紡糸を構成する各々の繊維の収縮率が互いに異なるため、生地を製造するための各種工程において、繊維の接触性が低下することになるが、LM PET繊維がそれぞれの繊維を結束して接触性、機械的強度及び耐久性が向上することになる。
【0036】
上記混紡糸において、低融点ポリエステル繊維が5重量%未満であれば、編成物にピリングが発生し、機械的強度及び耐久性が低下し、20重量%を超えると、熱融着によって生地が硬くなり、熱による収縮が発生し、急激に難燃性及び防炎性が低下することになる。
【0037】
低融点ポリエステル繊維の融点が150℃未満であれば、マットレス用生地の製造過程において、下記の湿熱処理によって、低融点ポリエステル繊維の特性低下及び脱離が発生することになり得る。
【0038】
本発明の1以上の実施形態において、混紡糸の製造は、難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維、ポリイミド繊維及び低融点ポリエステル繊維の短繊維を混合して紡績してもよく、これらのそれぞれをスライバーに製造して合わせてもよく、1種のスライバーに他の紡績糸を巻いてもよく、このような方法を組み合わせた方法にしてもよい。
【0039】
上記難燃レーヨン繊維、モダクリル繊維、ポリイミド繊維及び低融点ポリエステル繊維の短繊維は、いずれも繊度が2~5dであり、長さは37~127mmであることが、紡績が容易であり、混紡糸が柔軟性を有しながら、引張強度が向上することができ、これにより、編成物が伸縮性及び弾力性を有するとともに、機械的強度が向上されることになる。
【0040】
繊度が2d未満であれば、機械的強度が低下し、5dを超えると、混紡糸を構成する短繊維の減少によって、逆に、機械的強度が低下し、混紡糸の加工性、柔軟性が劣ることになる。
【0041】
上記短繊維の長さが37mm未満であれば、機械的強度が低下し、127mmを超えると、機械的強度が増加するが、紡績性が劣ることになる。
【0042】
通常、紡績糸は、複数の短繊維を混合して作られ、この場合、各構成繊維の特性が互いに異なり、混合、紡績等の加工過程において、各構成繊維の機械的特性が十分に発現されない。
【0043】
ポリイミド短繊維は、表面が滑らかで、低モジュラス、高伸度の特性を示し、他の繊維の補強用として適当でない。
【0044】
本発明において、上記ポリイミド短繊維が紡績時に少量で混合されても、ポリイミド短繊維の特性が混紡糸で示され、混紡糸の要求特性を低下しないようにするために、ポリイミド短繊維の捲縮数は3~12回/インチであることが好適であり、3回/インチ未満であれば、柔軟性が低下して混紡糸から抜け出し、ピリングが発生することや、接触した場合にチクチクすることがあり、12回/インチを超えると、曲げが発生し、機械的強度が低下することになる。
【0045】
ポリイミド繊維は、加工過程において、機械等で摩擦が発生されるようになるが、このような摩擦によってフィブリル化されやすく、これにより、加工過程で繊維の脱落が発生しやすい。
【0046】
上記混紡糸の太さは5~30番手であり、より数は10~20回/インチであることが、混紡糸の機械的強度が低下せず、短繊維が抜け出ず、製編性が劣ることがない。
【0047】
上記混紡糸は、特に限定されないが、機械的強度に優れる観点から、強度(引張強度)が1.29cN/dtexを超えることが好ましく、1.35cN/dtex以上であることがより好ましく、1.40cN/dtex以上であることがさらに好ましい。
【0048】
マットレス用生地として適用するためには、上記混紡糸を製編して、緯編、丸編、経編等のようないずれの形態の編成物に製造してもよい。
【0049】
生地において、織物では、緯糸と経糸が組織点を形成するため、糸は自由に動くことが困難であり、原糸の伸縮性が良くないと、十分な伸度を発現することが困難である。
【0050】
反対に、原糸が輪を形成し、輪が繋がって製編される編成物は、組織点がなく、原糸の移動が自由であり、つなぎ目が力の方向に変形されるため、伸度が織物に比べて非常に優れている。
【0051】
本発明のマットレス用生地は、伸縮性が向上されるため、マットレスの芯材を覆う作業が容易に行われるようにする。
【0052】
上記編成物の目付が200~500g/m2であることが、軽量でありながら、機械的強度及び耐久性を発現することになる。
【0053】
上記編成物を熱処理し、低融点ポリエステル繊維を融着させてマットレス生地を得ることができる。熱処理は、例えばテンターで行うことができる。好ましくは、上記編成物を150~180℃の温度で乾熱処理することで、マットレス用生地を得る。これにより、低融点ポリエステル繊維が融着し、混紡糸を構成する繊維の接合強度が向上する。それゆえ、混紡糸を構成する繊維の結束性が良好になり、ピリングの発生を抑制しやすくなる。具体的には、上記編成物をテンターにて150~180℃の温度で1~10分間乾熱処理を行うことができる。
【0054】
テンター(TENTER)は、生地の使用用途及び仕様を合わせるために、熱で生地を固定する機械として一般的に広く使用される機械である。テンターの役割は、伸縮性を良くするために、チャンバー別温度、処理速度、チャンバー別風量を設定し、設定された条件に基づいて、繊維生地に熱を加え、優れた難燃性及び伸縮性を維持させるものである。
【0055】
本発明において、上記混紡糸又は編成物を高い湿度の雰囲気で130~145℃、10~90分の湿熱処理を行った後、上記編成物をテンターにて150~180℃の温度で1~10分間乾熱処理をさらに行うことができる。
【0056】
この際、湿熱処理は、オートクレーブにて高圧蒸気を利用してもよく、高圧染色機にて実施することができる。
【0057】
上記湿熱処理によって、混紡糸にピリングが発生しても、ピリングが容易に脱離され、上記乾熱処理によって、低融点ポリエステル繊維が融着されるため、構成繊維が混紡糸から抜き出にくく、ピリングの発生が抑制される。
【0058】
上記のような方法で製造された本発明のマットレス用生地は、ポリイミド繊維によって、有毒ガスの発生と炭化長の低減が達成されるため、難燃性及び防炎性が向上される。また、低融点ポリエステル繊維によって、混紡糸の構成繊維間の接着強度が増加するため、混紡糸の機械的強度及び耐久性が向上し、紡績糸の欠点であるピリングが発生することを抑制することになる。
【0059】
一方、捲縮数が3~12回/インチであるポリイミド短繊維によって、混紡糸製造及び編成物製造の繊維加工工程において、加工性が向上するため、繊維製品としての特性が向上されることになる。
【0060】
上記マットレス用生地は、抗ピリング性により優れる観点から、KS K 0503:2006に基づいて回転数14,400回の条件下で測定したピリング性が4~5級以上であることが好ましい。
【0061】
上記マットレス用生地は、防炎性により優れる観点から、韓国防炎性の基準KOFEIS 1001に基づいて測定した炭化面積が20cm2以下であり、かつ炭化長が8cm以下であることが好ましい。
【0062】
上記マットレス用生地は、防炎性により優れる観点から、韓国防炎性の基準KOFEIS 1001に基づいて測定した残炎時間が0秒、かつ残じん時間が0秒であることが好ましい。
【0063】
上記マットレス用生地は、マットレスを覆う作業性により優れる観点から、経方向の伸長回復率及び緯方向の伸長回復率が、いずれも90%以上であることが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を、下記実施例及び比較例に基づいて、より詳細に説明する。
【0065】
但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明が下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を遺脱しない範囲内で、置換及び均等な他実施例に変形し得ることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明らかである。
【0066】
[実施例1]
難燃レーヨン短繊維(2d×51mm)60重量%、モダクリル短繊維(3d×51mm)10重量%、ポリイミド短繊維(2d×51mm、捲縮数8回/インチ)10重量%及び融点が150℃のLM PET短繊維(2d×51mm)20重量%の原料を混打綿工程にて混合し、梳綿-練条-粗紡-精紡の紡績工程を実行して、番手10、より数12回/インチの混紡糸を製造した。
【0067】
上記混紡糸をトリコット編み機で、経編み組織に製編し、250g/m2の編成物を製造した。
【0068】
上記編成物を180℃のテンターにて3分間処理し、マットレス用生地を製造した。
【0069】
上記マットレス用生地を幅6cm×長さ25cmの試料とし、上記試料を試料幅の中央部にて幅2.5cmのジョウ(jaw)でつかみ、長さ15cm、引張速度15cm/分に設定し、テンシロン型引張試験機にて4.9N/cmの応力がかかるまで伸長させ、次いで、同じ速度で変位0の位置まで戻す方法で伸長率を測定した。
【0070】
伸長回復率は、下記の数学式1によって算出した。
【0071】
[数学式1]
伸長回復率(%)=(L1-L0)×100
L1:4.9N/cmの伸長長さ(cm)
L0:回復後応力が0になった時点の原点からの長さ(cm)
【0072】
測定結果、経方向伸長率が21%、伸長回復率が95%、緯方向伸長率が83%、伸長回復率が91%と測定された。
【0073】
上記マットレス用生地は、マットレスの芯材を覆う作業が容易に行われ、これは、マットレス用生地が上記したとおり、伸長特性が優れたことに起因することが確認された。
【0074】
[実施例2]
上記実施例1において、上記混紡糸を製編する前に、チーズ状態で140℃にて30分間湿熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法を使用してマットレス用生地を製造した。
【0075】
[比較例1-6]
上記実施例1において、混紡糸を構成する短繊維の含量とポリイミド短繊維の捲縮数を下記表1のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法を使用してマットレス用生地を製造した。
【0076】
【0077】
上記実施例及び比較例で製造されたマットレス用生地について、防炎性を下記の方法で測定し、その結果を下記表2に示した。
【0078】
この時、防炎性能測定実験は、一般的な防炎性能基準であるKOFEIS 1001に基づいて実施した。
【0079】
【0080】
上記実施例及び比較例で製造された混紡糸の特性を下記表3に示した。
【0081】
【0082】
上記実施例及び比較例で製造されたマットレス用生地のピリング性をKS K 0503:2006に基づいて回転数14,400回の条件で測定した。
【0083】
その結果を下記表4に示した。
【0084】
【0085】
上記の評価結果から、本発明のマットレス用生地は、防炎性が向上し、マットレスを覆う作業性に優れ、混紡糸の強度が低下せずに、生地におけるピリングの発生が抑制され、人体の接触にも影響を及ぼさない安全な素材を提供することが確認される。
【国際調査報告】