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特表2023-516538UCART細胞を精製する方法及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】UCART細胞を精製する方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20230413BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230413BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230413BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230413BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230413BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/12
C12N15/09 110
C12N15/62 Z
C12N15/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540776
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2020141566
(87)【国際公開番号】W WO2021136415
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/129955
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520047082
【氏名又は名称】博雅▲緝▼因(北京)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】EDIGENE BIOTECHNOLOGY INC.
【住所又は居所原語表記】Life Science Park,Floor 2,Building 2,22 KeXueYuan Road,Changping District,Beijing 102206,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲鵬▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】牛 立超
(72)【発明者】
【氏名】付 建▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】谷 ▲豊▼
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
(57)【要約】
ユニバーサルヒトCAR-T細胞を精製する方法は、(i)遺伝子編集技術により前記ヒトCAR-T細胞における14番染色体の23016448位から23016490位までのTRAC遺伝子領域、及び15番染色体の45003745位から45003788位までのB2M遺伝子領域を破壊するステップと、(ii)次にTCRα/βを標的するmRNAを遺伝子編集後のCAR-T細胞に導入するステップと、(iii)前述したように処理されたCAR-T細胞集団をインビトロで培養するステップとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニバーサルヒトCAR-T細胞を精製する方法であって、
(i)遺伝子編集技術によって前記ヒトCAR-T細胞におけるTRACゲノム領域及びB2Mゲノム領域を破壊するステップと、
(ii)次に、TCRα/βを標的とするmRNAを、ステップ(i)の遺伝子編集後のCAR-T細胞に導入するステップとを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記TCRα/βを標的とするmRNAを一過性トランスフェクションによりCAR-T細胞に導入する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法で得られた細胞集団を、適切な時間、インビトロで培養して、TCRα/β陽性細胞を除去するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記適切な時間は、4~8日間、好ましくは、5~7日間、最も好ましくは6日間である、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記TRACゲノム領域は、ヒト14番染色体の23016448位から23016490位までのゲノム領域を含み、且つ前記B2Mゲノム領域は、ヒト15番染色体の45003745位から45003788位までのゲノム領域を含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記TCRα/βを標的とするmRNAにコードされるのは、抗TCRα/βのscFv分子であり、
抗TCRα/βのscFv分子の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:19(QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK)に示すとおりであり、
抗TCRα/βのscFv分子の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:20(EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSA)に示すとおりである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
scFv分子の軽鎖可変領域とscFv分子の重鎖可変領域とは、(G)n(S)mを含むアミノ酸配列であるリンカーを介して連結され、ここで、nは1~20の正の整数であり、mは1~10の正の整数である、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リンカー配列は、SEQ ID NO:21に示される配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSである、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記TCRα/βを標的とするmRNAにコードされるアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示される配列QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELKGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSAである、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記TRACゲノム領域及びB2Mゲノム領域は、相同組換え、ジンクフィンガーヌクレアーゼの遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術又はCRISPR/Cas遺伝子編集技術により破壊される、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子編集技術は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術である、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(i)前記TRACゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)を該T細胞に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成し、及び/又は、
(ii)前記B2Mゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)を該T細胞に導入して、前記B2Mゲノム領域の編集を達成する、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(i)前記TRACゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)は、SEQ ID NO:2~5から選択されるいずれか1つの配列を有し、
(ii)前記B2Mゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)は、SEQ ID NO:6~13から選択されるいずれか1つの配列を有する、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)前記TRACゲノムをコードするsgRNAとCas9をコードするヌクレオチドをT細胞に共同又は別々に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成し、及び/又は、
(ii)前記B2MゲノムをコードするsgRNA及びCas9をコードするヌクレオチドを該T細胞に共同又は別々に導入して、前記B2Mゲノム領域の編集を達成する、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記sgRNAは、化学修飾されている、ことを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記化学修飾は、2’-O-メチル類縁体修飾又はヌクレオチド間3’チオ修飾を含む、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化学修飾は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/又は3つの塩基及び/又は3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体修飾である、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記sgRNAを、Cas9をコードするヌクレオチド配列とともに電気穿孔方式により該T細胞に導入する、ことを特徴とする請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記電気穿孔条件は、150~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;及び250V、0.5msのいずれかから選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記TRAC及びB2Mがそれぞれノックアウトされる効率は、90%以上であり、同時にノックアウトされる効率は、75%以上である、ことを特徴とする請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法で得られた細胞集団において、TCR陰性細胞の比率が全CAR-T細胞の98%又は99%以上を占める、ことを特徴とする請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
精製されたユニバーサルヒトCAR-T細胞であって、
(i)前記CAR-T細胞におけるTRACゲノム領域とB2Mゲノム領域は、遺伝子編集により破壊されており、
(ii)該CAR-T細胞には、TCRα/βを標的とするmRNAが導入されている、ことを特徴とするユニバーサルヒトCAR-T細胞。
【請求項23】
TCRα/β、クラスIHLAタンパク質、PD-1、TIM3、及びLAG3から選択される1つ又は複数のタンパク質が、低レベルで発現され、又は発現されていない、ことを特徴とする請求項22に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞。
【請求項24】
請求項22又は23のいずれか1項に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞を含む生物製品。
【請求項25】
98%又は99%以上の前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞がTCR陰性である、ことを特徴とする請求項23に記載の生物製品。
【請求項26】
被験者の疾患を治療するための医薬の製造における請求項22又は23のいずれか1項に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞又は請求項24又は25のいずれか1項に記載の生物製品の使用。
【請求項27】
被験者の疾患を治療する方法であって、被験者に有効量の請求項22又は23に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞又は請求項24又は25に記載の生物製品を投与することを含む方法。
【請求項28】
前記疾患は、腫瘍である、ことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記腫瘍は、血液系腫瘍である、ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍は、リンパ腫又は白血病である、ことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、T細胞を標的とする一過性に発現されたCARに関し、具体的には、腫瘍細胞を標的とする同種CAR-T細胞を加えたインビトロ培養と遺伝子編集とを組み合わせる二重遺伝子ノックアウト技術に関し、培養過程においてTCRα/βの標的を一過性に発現することができるmRNAを加えることにより、TCRα/β陰性が約97%以上のユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法を得る。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍は、身体の健康と生命を深刻に脅かす疾患になり、腫瘍の治癒は、常に人間の夢である。近年、腫瘍免疫療法は、広く注目されており、特に、CAR-T(Chimeric Antigen Receptor T Cells)技術の出現のため、腫瘍の制御が画期的に発展している。CAR-T技術は、1989年に初めて適用された。2012年にペンシルバニア大学のCarl June教授がリードするチームは、Emily Whiteheadを治癒した。2017年にFDA腫瘍薬物専門家諮問委員会(ODAC)は、10:0の圧倒的な投票結果として、NovartisCAR-T医薬CTL019が十代後半のB細胞急性リンパ性白血病(r/rAll)を治療するために用いられることを承認するように推奨した。
【0003】
一般的に、従来のCAR-T技術のT細胞は、主に患者自身に由来し、GMP環境でT細胞をインビトロで単離し、活性化し、CARを導入し、培養で増幅し、最後に品質制御を経て患者体内に再注入する。患者自身の条件の影響のため、採血に適しないか、又は採血してT細胞を単離した後に増幅しにくいという問題が現れる。患者の状態が重篤である場合、T細胞の単離からCAR-Tの再注入までのフロー全体の待ち時間も、自己再注入が直面する重大な問題である。これらの問題は、CAR-T技術の広範な応用に制限をもたらし、そのため、現在のCAR-T細胞治療の重要な研究方向は、どのように健康なドナーのT細胞を用いて大量のCAR-T細胞を調製し、患者の臨床上の使用を満たすことである。この技術の確立は、CAR-T療法のコストを大幅に低減し、均一に調製された細胞品質をよく保証することができ、且つ患者は、必要な時に、すぐにCAR-T細胞を得て治療することができる。また、同種CART治療もその不利点があり、例えば、GvHDを引き起こしやすいが、従来技術で抗体精製技術的手段を利用するコストが高く、プロセスが複雑で、手間がかかる。したがって、新たな精製方法の確立は、差し迫っている。
【0004】
本明細書全体では、数件の文書が引用されている。ここでの各文書(任意の学術論文又は要約、公開又は非公開の特許出願、登録特許、メーカーのプロトコール、使用説明書などを含む)は、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書に引用される文書が実際に本発明の従来技術であることを認めない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の技術的解決手段を実施して当技術分野に存在する上記問題を解決する。本願は、CRISPR/Cas9システムを利用してCAR-T細胞に対して二重遺伝子(TRAC及びB2M)ノックアウトを行い、そのノックアウト効率は、80%以上に達する。しかしながら、依然として、約20%の陽性CAR-T細胞発現は、GvHDのTCRα/βを引き起こすことができる。したがって、電気穿孔の送達プラットフォームを利用し、TCRα/βを標的とするCARをCAR-T細胞に一過性に導入し、精製のステップを省くことができるだけでなく、労力、物力及び財力を節約する。また、T細胞TCRα/βを標的とするターゲットに対し、本願は、初めて発表され、これは、遺伝子編集技術を確立して養子免疫と組み合わせて腫瘍及びウイルス性感染症(例えば、HIV/AIDS)を治療するために方法を提供し、且つ関連疾患治療の研究に強固な技術基礎を定める。
【0006】
したがって、本発明は、遺伝子編集技術、例えばCRISPR/Cas9システムを利用してCAR-T細胞に対して効率的なノックアウトを行い、それにより、遺伝子編集されたCAR-T細胞を取得し、また、電気穿孔伝達システムを利用してTCRα/βの標的を発現することができるCARをCAR-T細胞(TCRα/β CARを除く)に一過性にトランスフェクトし、この時に一過性にトランスフェクトされたCARは、TCRα/β陽性細胞集団を除去することができ、それにより、ユニバーサルCAR-T細胞を直接取得する方法を提供する。該方法は、従来の方法におけるTCRα/β陽性細胞集団の除去を行うだけでなく、コストを節約し、手間も時間も節約する方法である。
【0007】
具体的には、本願は、以下を提供する。
【0008】
項1.ユニバーサルヒトCAR-T細胞を精製する方法であって、該方法は、
(i)遺伝子編集技術によって前記ヒトCAR-T細胞におけるTRACゲノム領域及びB2Mゲノム領域を破壊するステップと、
(ii)次に、TCRα/βを標的とするmRNAを、ステップ(i)の遺伝子編集後のCAR-T細胞に導入するステップとを含む、方法。
項2.TCRα/βを標的とする前記mRNAを一過性トランスフェクションによりCAR-T細胞に導入するが、ゲノムに組み込まない、項1に記載の方法。
項3.前記方法で得られた細胞集団を、適切な時間、インビトロで培養して、TCRα/β陽性細胞を除去するステップをさらに含む、項1又は2に記載の方法。
項4.前記適切な時間は、4~8日間、好ましくは、5~7日間、最も好ましくは6日間である、項3に記載の方法。
項5.前記TRACゲノム領域は、ヒト14番染色体の23016448位から23016490位までのゲノム領域を含み、且つ前記B2Mゲノム領域は、ヒト15番染色体の45003745位から45003788位までのゲノム領域を含む、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
項6.TCRα/βを標的とする前記mRNAがコードするのは、抗TCRα/βのscFv分子であり、
抗TCRα/βのscFv分子の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:19(QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK)に示すとおりであり、
抗TCRα/βのscFv分子の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:20(EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSA)に示すとおりである、項1~5のいずれか1項に記載の方法。
項7.scFv分子の軽鎖可変領域とscFv分子の重鎖可変領域とは、(G)n(S)mを含むアミノ酸配列であるリンカーを介して連結され、ここで、nは1~20の正の整数であり、mは1~10の正の整数である、項6に記載の方法。
項8.前記リンカー配列は、SEQ ID NO:21に示される配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSである、項7に記載の方法。
項9.TCRα/βを標的とする前記mRNAがコードするアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示される配列QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELKGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSAである、項1~8のいずれか1項に記載の方法。
項10.前記TRACゲノム領域及びB2Mゲノム領域は、相同組換え、ジンクフィンガーヌクレアーゼの遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術又はCRISPR/Cas遺伝子編集技術により破壊される、項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【0009】
項11.前記遺伝子編集技術は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術である、項10に記載の方法。
項12.(i)前記TRACゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)を該T細胞に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成し、及び/又は、
(ii)前記B2Mゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)を該T細胞に導入して、前記B2Mゲノム領域の編集を達成する、項11に記載の方法。
項13.(i)前記TRACゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)は、SEQ ID NO:2~5から選択されるいずれか1つの配列を有し、
(ii)前記B2Mゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)は、SEQ ID NO:6~13から選択されるいずれか1つの配列を有する、項12に記載の方法。
項14.(i)前記TRACゲノムをコードするsgRNAとCas9をコードするヌクレオチドをT細胞に共同又は別々に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成し、及び/又は、
(ii)前記B2MゲノムをコードするsgRNA及びCas9をコードするヌクレオチドを該T細胞に共同又は別々に導入して、前記B2Mゲノム領域の編集を達成する、項13に記載の方法。
項15.前記sgRNAは、化学修飾されている、項12~14のいずれか1項に記載の方法。
項16.前記化学修飾は、2’-O-メチル類縁体修飾又はヌクレオチド間3’チオ修飾を含む、項15に記載の方法。
項17.前記化学修飾は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/又は3つの塩基及び/又は3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体修飾である、項16に記載の方法。
項18.前記sgRNAとCas9をコードするヌクレオチド配列を電気穿孔方式により該T細胞に導入する、項14~17のいずれか1項に記載の方法。
項19.前記電気穿孔条件は、150~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;及び250V、0.5msのいずれかから選択される、項18に記載の方法。
項20.前記TRAC及びB2Mがそれぞれノックアウトされる効率は、90%以上であり、同時にノックアウトされる効率は、75%以上である、項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0010】
項21.前記方法で得られた細胞集団において、TCR陰性細胞の比率が98%又は99%以上である、項1~20のいずれか1項に記載の方法。
項22.精製されたユニバーサルヒトCAR-T細胞であって、
(i)前記CAR-T細胞におけるTRACゲノム領域とB2Mゲノム領域は、遺伝子編集により破壊され、
(ii)該CAR-T細胞には、TCRα/βを標的とするmRNAが導入されている、ユニバーサルヒトCAR-T細胞。
項23.TCRα/β、クラスIHLAタンパク質、PD-1、TIM3、及びLAG3から選択される1つ又は複数のタンパク質を低レベルで発現する、又は発現しない、項22に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞。
項24.項22又は23のいずれか1項に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞を含む生物製品。
項25.98%又は99%以上の前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞がTCR陰性である、項23に記載の生物製品。
項26.被験者の疾患を治療するための医薬の製造における項22又は23のいずれか1項に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞又は項24又は25のいずれか1項に記載の生物製品の使用。
項27.被験者の疾患を治療する方法であって、被験者に有効量の項22又は23に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞又は項24又は25に記載の生物製品を投与することを含む方法。
項28.前記疾患は、腫瘍である、項27に記載の方法。
項29.前記腫瘍は、血液系腫瘍である、項28に記載の方法。
項30.前記腫瘍は、リンパ腫又は白血病である、項29に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、細胞の電気穿孔後の成長生存率の変化状況を示し、T細胞とDKO CAR-T細胞の生存率が比較的よく、且つ培養時間の増加に伴って細胞の生存率が90%以上に達するが、DKO CAR-T+mRNAは、2回目の電気穿孔後、その生存率が著しく低下し、培養時間の増加に伴ってその生存率が徐々に回復し、MIX(DKO CAR-T:DKO CAR-T+mRNA 1:1)細胞は、6日間に混合培養した後、その生存率も顕著に低下し、培養時間の増加につれて生存率が徐々に回復する。14日間培養すると生存率がほぼ90%以上に達する。
図2図2は、細胞の電気穿孔後の各群の成長状況を示し、T cellの前期増殖速度が最も速く、13日後に増殖速度が遅くなり、DKO CAR-Tの成長傾向がT cellとほぼ同じであり、14日まで培養し、その増殖速度がほぼ同じである。DKO CAR-T+mRNAは、編集されたT cellを6日間培養して2回の電気穿孔を行い、その成長速度が比較的遅い。MIXは、6日間培養されたDKO CAR-Tと2回電気穿孔されたDKO CAR-T+mRNAを1:1で混合培養し、混合培養後にその増殖速度は、DKO CAR-TとDKO CAR-T+mRNAとの間にある。
図3図3は、TCRα/β-CARを標的とするmRNAの導入後の、遺伝子編集されたCAR-T細胞を培養した表現型分析を示す。この結果から、TCRα/β-CARを添加したDKO-T細胞は、培養後に、そのTCRα/β陰性細胞の比率は、99%以上である。
図4図4は、MIX(DKO CAR-T:DKO CAR-T+mRNA1:1)を培養した後に、そのTCRα/β陽性変化状況を示し、2日間混合培養し後に、そのTCRα/β陰性細胞の比率は99%以上である。
図5図5は、STEMCELLを用いてTRAC/B2M(DKO CAR-T)がノックアウトされたT細胞をスクリーニングして精製した精製回収率を示し、図から分かるように回収率が低く、基本的に20%~30%である。
図6図6は、T細胞、CAR-T及びDKO CAR-T+mRNA細胞殺傷機能の検証と結果の比較を示す。この実験では、T及びCAR-T及びDKO CAR-T+mRNA細胞をエフェクター細胞とし、エフェクター対標的比(エフェクター細胞対標的細胞比)を10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.625:1としてインビトロ殺傷実験を行う。
図7図7は、T細胞、CAR-T及びDKO CAR-T+mRNA細胞IFN-γ因子の放出を示す。該実験で、Rajiを標的細胞とし、T細胞、CAR-T及びDKO CAR-T+mRNA細胞をエフェクター細胞とし、エフェクター対標的比を10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.625:1としてインビトロで共培養した後、1.25:1で上清を取ってそのIFN-γを検出する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態を参照して本願をさらに詳細に説明し、説明された実施例は、本発明をより完全に理解するためのものであり、且つ、本発明の範囲を完全に当業者に伝達することができるものである。
【0013】
説明すべきものとして、明細書及び特許請求の範囲において特定の用語を用いて特定の部材を指す。当業者であれば、技術者は、異なる用語で同一の部材を呼ぶ可能性があると理解すべきである。本明細書及び特許請求の範囲は、用語の差異を部品を区別する方式とせず、部品の機能上の差異を区別基準とする。本明細書及び特許請求の範囲で言及される「含む」又は「含める」は、オープン用語であるため、「含むが、限定されない」と解釈されるべきである。明細書の後続の説明は、本発明を実施する好ましい実施形態であるが、前記説明は、一般的原理を説明する目的のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0014】
本願の第1態様によれば、ユニバーサルヒトCAR-T細胞を精製する方法が提供され、1つの具体的な実施形態では、該方法は、
(i)遺伝子編集技術によって前記ヒトCAR-T細胞におけるTRACゲノム領域及びB2Mゲノム領域を破壊するステップと、
(ii)次に、TCRα/βを標的とするmRNAを、ステップ(i)の遺伝子編集後のCAR-T細胞に導入するステップとを含む。
【0015】
「CAR-T」は、「キメラ抗原受容体T細胞」の略語であり、キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞に標的細胞(例えば、腫瘍)抗原をHLA非依存的に認識する能力を付与するCAR-Tのコア部分であり、これは、CARによって操作されたT細胞が、天然T細胞表面受容体TCRよりも広い標的を認識することを可能にする。いくつかの実施形態では、腫瘍を標的とするCARは、腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen、TAA)結合ドメイン(例えば、一般的にはモノクローナル抗体の抗原結合ドメインに由来するscFVセグメント)、細胞外ヒンジ領域、膜貫通領域、及び細胞内シグナルドメインを含むように設計される。標的抗原の選択は、CARの特異性、有効性、及び遺伝子操作されたT細胞自体の安全性の両方にとって重要な決定因子である。
【0016】
「ユニバーサルCAR-T細胞」は、特異的な標的細胞(例えば腫瘍)に関連するマークを標的とし細胞表面TCR及びMHC機能を不活性化することができ、同種異系細胞治療に起因する免疫拒絶反応を低減することができるCAR-T細胞を指す。
【0017】
自己細胞のCAR-Tによる治療は、血液を抽出して患者自身のTリンパ球を単離して調製する必要があり、一方、患者自身の病状及びTリンパ球の状態が異なり、CAR-T調製過程の影響要因が多いため、規格化し製造することができず、安全性に影響を与え、他方、一部の患者自身のTリンパ球が化学療法を経た後に活性及び数が不足であり、又は、腫瘍環境の影響を受けてTリンパ球の活性及び増殖能力が制限され、このような細胞は、CAR-Tを調製する難易度が大きく、治療の安全性及び有効性が影響を受け、又は、CAR-T細胞の調製過程において突発的な状況が発生したら、用意された細胞が患者にタイムリーに戻されないと、治療効果に影響を与え、さらに、自己Tリンパ球状態の影響を受けて一部の腫瘍患者は、自己のCAR-T細胞の養子治療を受けることができない。同種異系療法に使用可能なユニバーサルCAR-T又はユニバーサルTリンパ球は、この状況において大きな利点を有する。
【0018】
養子細胞療法(Adoptive cellμlar therapy、ACT)、養子免疫療法(adoptive immunotherapy)、例えば、腫瘍養子免疫療法(tumor adoptive immunotherapy)は、免疫細胞をインビトロで処理し、例えば、特異的な抗原を加え、免疫細胞が発現する分子を修飾するか又はサイトカインを利用してそれを刺激する等の方法で、高度に特異的な標的細胞(例えば腫瘍)のキラー免疫エフェクター細胞をスクリーニングして大量に増幅し、次に患者に戻し、標的細胞(例えば、腫瘍)を殺傷させる治療方法であり、受動免疫療法である。
【0019】
本願では、T細胞は、健康なヒトに由来する。いくつかの実施形態では、T細胞は、癌患者などの患者、例えば、化学療法又は放射線療法前の癌患者に由来する。いくつかの実施形態では、T細胞は、臍帯血、骨髄、又は末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell、PBMC)などに由来する。いくつかの実施形態では、T細胞は、幹細胞、例えば、各分化段階にある造血幹細胞に由来する。本願に記載の調製方法は、例えば、PBMC又は幹細胞においてTRAC、B2Mをノックアウトし、対応する遺伝子操作されたT細胞をさらに培養、分化、及び/又は精製するために用いられてもよい。
【0020】
本願における「T細胞受容体(TCR)」は、CD3に結合してTCR-CD3複合体を形成する全てのT細胞表面の特徴的なマーカーである。TCRは、α、βという2本のペプチド鎖で構成され、各ペプチド鎖は、さらに、可変領域(V領域)、定常領域(C領域)、膜貫通領域、及び細胞質領域に分けることができる。TCR分子は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、その抗原特異性は、V領域に存在し、V領域(Vα、Vβ)には、それぞれCDR1、CDR2、CDR3という3つの超可変領域があり、そのうち、CDR3の変異が最も大きく、TCRの抗原結合特異性を直接決定する。TCRがMHC-抗原ペプチド複合体を認識すると、CDR1、CDR2は、MHC分子抗原結合溝の側壁を認識して結合し、CDR3は、抗原ペプチドに直接結合される。TCRは、TCR1及びTCR2という2種類に分けられ、TCR1は、γ及びδという2本の鎖からなり、TCR2は、α及びβという2本の鎖からなる。末梢血において、90%~95%のT細胞がTCR2を発現するが、いずれかのT細胞は、TCR2及びTCR1のうち1つだけを発現する。
【0021】
「β2ミクログロブリン(B2M)」は、細胞表面ヒト白血球抗原(HLA)のβ鎖(軽鎖)部分であり、分子質量が11800で、99個のアミノ酸からなる一本鎖ポリペプチドである。
【0022】
本願の具体的な実施形態では、TCRα/βを標的とする前記コーディングヌクレオチドは、mRNAであり、例えば、ARCAキャップを含有するmRNAである。いくつかの実施形態では、該mRNAを、電気穿孔の送達システムを用いてCAR-T細胞内に送達する。一過的に発現したTCRα/βを標的とするタンパク質は、TCRα/β陽性の細胞を特異的に認識し、培養の過程でTCRα/β陽性細胞を除去し、GvHDの発生を回避する効果を達成することができる。
【0023】
一過性トランスフェクション(transient transfection)は、mRNAを真核細胞に導入する手段の1つである。一過性トランスフェクションでは、組換えmRNAを、目的遺伝子の一時的な高レベルの発現を得るために、感染性が強い細胞株に導入する。トランスフェクトされたmRNAを宿主染色体に組み込む必要はない。一過性トランスフェクションで導入されたmRNAは、細胞中に遊離しているが、ゲノムに組み込まれず、安定的なトランスフェクションよりも短い時間でトランスフェクトされた細胞を取得することができ、より短い時間でより高い発現効率を得ることができる。一過的発現法は、操作が簡単で周期が短く、発現効率が高く、安全で高効率であり、遺伝子のスクリーニングを必要としないという多くの利点を有する。
【0024】
「移植片対宿主反応(GvHD)」は、ドナーとレシピエントとの間に免疫遺伝学的差異が存在し、例えば、一方で、ドナー細胞、例えば、免疫学的に活性なドナーのTリンパ球が、レシピエント患者に入ってある程度増殖した後に、レシピエント患者の正常細胞又は組織を標的と誤認して攻撃することによって生じる反応を意味する。他方で、同種異系細胞に対して、レシピエント内の正常な免疫系もまた、それらを除去し、「移植片対宿主反応(HVGR)」を生じさせる可能性がある。
【0025】
HVGR及びGVHR関連遺伝子は、TCR、HLA分子関連遺伝子を含み、これらの遺伝子が同時にノックアウトされたTリンパ球を同種異系患者に再輸注する時に、移植片対宿主病(GvHD)を引き起こさないため、「ユニバーサルT細胞」と呼ぶことができる。例えば、単一のTRAC遺伝子は、TCRα鎖をコードする遺伝子とTCRβをコードする2つのTRBC遺伝子で形成された完全で機能的なTCR複合体であり、TRACのノックアウトは、TCRを不活性化することができるが、B2Mは、MHCI関連遺伝子である。この2つの遺伝子が同時にノックアウトされたTリンパ球は、同種異系患者に戻される時に移植片対宿主病(GvHD)を引き起こさない。
【0026】
1つの具体的な実施形態では、該方法は、TCRα/βが陽性発現した細胞集団を除去するために、得られた細胞集団を、適切な時間、インビトロで培養することをさらに含む。好ましい実施形態では、インビトロ培養の時間は、4~8日間、さらに好ましくは、5~7日間、最も好ましくは、6日間である。
【0027】
1つの具体的な実施形態では、TCRα/βを標的とする前記mRNAがコードするのは、抗TCRα/βのscFv分子である。「scFv」は、一本鎖抗体(single chain antibody fragment、scFv)を意味し、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を、15~20アミノ酸の短ペプチド(linker、即ち、リンカー)を介して連結される抗体である。scFv分子は、軽鎖可変領域、リンカー、及び重鎖可変領域からなるCAR分子の細胞外部分として理解され得る。
【0028】
1つの具体的な実施形態では、抗TCRα/βのscFv分子の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:19(QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK)に示すとおりであり、抗TCRα/βのscFv分子の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:20(EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSA)に示すとおりである。
【0029】
さらに、scFv分子の軽鎖可変領域及びscFv分子の重鎖可変領域は、(G)n(S)mを含むアミノ酸配列であるリンカーを介して連結され、ここで、nは1~20の正の整数であり、mは1~10の正の整数である。具体的には、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であるが、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であってもよい。ここで、Gは、グリシンの略語であるが、Glyと略記してもよい。ここで、Sは、セリンの略語であるが、Serと略記してもよい。
【0030】
さらに、前記リンカー配列は、SEQ ID NO:21に示す配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSである。
【0031】
1つの具体的な実施形態では、TCRα/βを標的とする前記mRNAによりコードされるアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示す配列
【0032】
【化1】
【0033】
である。
【0034】
本願の別の態様によれば、遺伝子編集されたCAR-T細胞を調製する方法が提供され、遺伝子編集技術によって、前記CAR-T細胞のうち、
(i)14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域と、(ii)15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域とを破壊することを含む。
【0035】
具体的な実施形態では、前記TRACゲノム領域、B2Mゲノム領域の両方は編集される。
【0036】
1つの具体的な実施形態では、前記TRACゲノム領域及びB2Mゲノム領域は、相同組換え、ジンクフィンガーヌクレアーゼの遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術又はCRISPR/Cas遺伝子編集技術により破壊される。
【0037】
1つの更なる具体的な実施形態では、前記遺伝子編集技術は、CRISPR/Cas9技術である。
【0038】
本願で説明したように、「CRISPR/Cas」は、天然に存在するか又は人工的に設計された様々なCRISPR/Casシステム、例えばCRISPR/Cas9システムを含むが、それらに限定されない遺伝子編集技術である。天然に存在するCRISPR/Casシステム(Naturally occurring CRISPR/Cas system)は、細菌及び古細菌が長期的進化過程で形成される適応免疫防御であり、侵入するウイルス及び外因性DNAに対抗するために使用することができる。例えば、CRISPR/Cas9の作用原理は、crRNA(CRISPR-derived RNA)が、塩基対合により、tracrRNA(trans-activating RNA)と結合してtracrRNA/crRNA複合体を形成し、この複合体が、ヌクレアーゼCas9タンパク質を、crRNAとペアリングする配列の標的部位で二本鎖領域DNAを切断するように誘導する。tracrRNA及びcrRNAを人工的に設計することにより、Cas9のDNAに対する部位特異的な切断に十分なガイド作用を果たすsgRNA(single guide RNA)を改良し形成することができる。RNA誘導型のdsDNA結合タンパク質として、Cas9エフェクターヌクレアーゼは、RNA、DNA、及びタンパク質を共局在化することができ、それによって、巨大な改変能力を有する。CRISPR/Casシステムは、クラス1、クラス2又はクラス3のCasタンパク質を使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、前記方法は、Cas9を使用する。他の適切なCRISPR/Casシステムは、WO2013176772、WO2014065596、WO2014018423、US8697359に記載のシステム及び方法を含むが、それらに限定されない。
【0039】
1つの具体的な実施形態では、本願は、遺伝子編集されたCAR-T細胞を調製する方法を提供し、遺伝子編集技術によって、前記CAR-T細胞のうち、(i)SEQ ID NOs:2~5から選択されたいずれかの配列に相補的なTRACゲノム標的ヌクレオチド配列と、(ii)SEQ ID NOs:6~13から選択されるいずれかの配列に相補的なB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列とを破壊することを含む。そのうち、前記TRACゲノム領域及びB2Mゲノム領域は、相同組換え、ジンクフィンガーヌクレアーゼの遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術又はCRISPR/Cas遺伝子編集技術により破壊される。
【0040】
1つの具体的な実施形態では、本願は、遺伝子編集されたT細胞を調製する方法を提供し、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって、前記T細胞のうち、
(i)SEQ ID NO:2の配列に相補的なTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列と、
(ii)SEQ ID NO:8の配列に相補的なB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列とを破壊する。
【0041】
1つの具体的な実施形態では、本願は、遺伝子編集されたCAR-T細胞を調製する方法を提供し、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって、前記T細胞のうち、
(i)SEQ ID NO:2の配列に相補的なTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列と、
(ii)SEQ ID NO:8の配列に相補的なB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列と、を破壊する。
【0042】
1つの具体的な実施形態では、本願は、遺伝子編集されたT細胞を調製する方法を提供し、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって、前記CAR-T細胞のうち、
(i)SEQ ID NO:3の配列に相補的なTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列と、
(ii)SEQ ID NO:7の配列に相補的なB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列とを、破壊する。
【0043】
さらに、1つの具体的な実施形態では、本願は、遺伝子編集されたCAR-T細胞を調製する方法を提供し、該方法は、
(i)前記TRACゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)を該T細胞に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成し、及び/又は、
(ii)前記B2Mゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)を該T細胞に導入して、前記B2Mゲノム領域の編集を達成する。
【0044】
1つの具体的な実施形態では、該方法は、前記sgRNAをコードするヌクレオチド配列とCas9をコードするヌクレオチド配列を前記T細胞に共同又は別々に導入することを含む。
【0045】
本願で、「sgRNA(single guide RNA」及び「gRNA(guide RNA)」、又は、「単一ガイドRNA」、「合成ガイドRNA」又は「ガイドRNA」は、互換的に使用され得る。本願のsgRNAは、標的配列を標的とするガイド配列(guide sequence)を含む。
【0046】
1つの具体的な実施形態では、sgRNAは、TCR2のα鎖及び/又はβ鎖の定常領域のコード遺伝子を標的とし、それによって、CAR-T細胞表面TCRの構造を破壊し、該分子に機能を失わせる。
【0047】
1つの具体的な実施形態では、sgRNAは、β2ミクログロブリン(B2M)のコード遺伝子を標的とし、例えば、B2Mタンパク質をコードする遺伝子の最初のエクソン領域を標的とし、それによって、B2Mの構造を破壊し、分子に機能を失わせる。
【0048】
さらに、1つの具体的な実施形態では、遺伝子編集されたCAR-T細胞を調製する方法を提供し、該方法は、(i)SEQ ID NOs:2~5から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAをT細胞に導入して前記TRACゲノム領域に対する編集を達成するステップと、(ii)SEQ ID NOs:6~13から選択されたのいずれかの配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して前記B2Mゲノム領域に対する編集を達成するステップとを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、前記sgRNAをコードするヌクレオチド配列とCas9をコードするヌクレオチド配列を前記T細胞に共同又は別々に導入することを含む。
【0049】
本願の1つの具体的な実施形態では、ユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法を提供し、該方法は、(i)TRAC-sg3 sgRNAをT細胞に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成するステップと、(ii)B2M-sg2 sgRNAをT細胞に導入して前記B2Mゲノム領域の編集を達成するステップとを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、前記sgRNAをコードするヌクレオチド配列とCas9をコードするヌクレオチド配列を前記T細胞に共同又は別々に導入することを含む。
【0050】
本願の1つの具体的な実施形態では、ユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法を提供し、該方法は、(i)SEQ ID NOs:2又は3の配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成するステップと、(ii)SEQ ID NOs:7~11から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAをT細胞に導入して前記B2Mゲノム領域の編集を達成する。いくつかの実施形態では、該方法は、Cas9又はそのコードヌクレオチドをCAR-T細胞に導入することを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、上記sgRNAは、化学修飾されている。例えば、2’-O-メチル類縁体及び/又はヌクレオチド間3’チオにより修飾されている。いくつかの実施形態では、前記化学修飾は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/又は3つの塩基及び/又は3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体修飾である。
【0052】
一般に、sgRNAのうちのガイド配列は、標的配列にハイブリダイズして、CRISPR複合体を標的配列の配列と特異的に結合するようにガイドするために、標的ポリヌクレオチド配列に十分に相補的な任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、適切なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントする場合、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、約80%、85%、90%、95%、97.5%、99%又はそれ以上である。最適なアラインメントは、配列をアラインメントするための任意の適切なアルゴリズムを使用して決定することができ、その非限定的な例として、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wimschアルゴリズム、Burrows-Wheeler Transformに基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustai X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies)、 ELAND(Illumina、San Diego、CA)、SOAP(soap.genomics.org.cnから取得することができる)及びMaq(maq.sourceforge.netから取得することができる)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ガイド配列の長さは、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又はそれ以上のヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、ガイド配列の長さは、約75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、12又はより少ないヌクレオチドの長さである。ガイド配列がCR1SPR複合体を標的配列の配列と特異的に結合するようにガイドする能力は、任意の適切な測定方法で評価することができる。例えば、対応する標的配列を有する宿主細胞に、CRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPRシステムの成分(試験対象のガイド配列を含む)を提供することができ、これは、例えばCRISPR配列成分をコードするベクターによりトランスフェクションしてから、標的配列内の優先的切断を評価することによって行うことができる。同様に、標的ポリヌクレオチド配列の切断は、標的配列、CRISPR複合体(試験対象のガイド配列及びガイド配列とは異なる対照ガイド配列を含む)の成分を提供し、標的配列における試験及び対照ガイド配列の結合又は切断率を比較することによって、試験管内で評価することができる。上記測定及び評価は、当業者に公知の他の測定方法を用いて行うこともできる。
【0053】
1つの具体的な実施形態では、電気穿孔方法で前記sgRNAとCas9をコードするmRNAヌクレオチド配列を前記T細胞に共導入する。
【0054】
具体的には、TRACを標的とする前記sgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/又はCas9をコードするヌクレオチド(例えば、mRNA)を該T細胞に電気穿孔によって導入する。いくつかの実施形態では、TRACを標的とする前記sgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びCas9をコードするヌクレオチドは、T細胞に電気穿孔によって共同に導入する。
【0055】
具体的には、前記Cas9をコードするヌクレオチドは、mRNAであり、例えば、ARCAキャップを含有するmRNAである。いくつかの実施形態では、前記Cas9をコードするヌクレオチドは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターにある。いくつかの実施形態では、前記Cas9をコードするヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に記載の配列を含む。いくつかの実施形態では、前記TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びCas9をコードするヌクレオチドは、同じベクターにある。
【0056】
いくつかの具体的な実施形態では、前記電気穿孔条件は、150~250V、0.5-2ms;180-250V、0.5-2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;250V、0.5msから選択されるいずれかである。
【0057】
本願のいくつかの実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAは、CAR-T細胞に同時に導入される。具体的な実施形態では、TRACを標的とするsgRNAと、B2Mを標的とするsgRNAとは、CAR-T細胞に同時に導入される場合、TRACを標的とするsgRNAと、B2Mを標的とするsgRNAとの間の量は、近似又は同じであってよい。いくつかの実施形態では、TRACを標的とするsgRNAと、B2Mを標的とするsgRNAは、任意の適切な順序で1つずつCAR-T細胞に導入される。いくつかの実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びCas9をコードするヌクレオチドは、同時にCAR-T細胞に導入される。いくつかの実施形態では、Cas9をコードするヌクレオチドは、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAの前にCAR-T細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、Cas9をコードするヌクレオチド又はCas9タンパク質を含む。
【0058】
さらに、本願は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子操作されたCAR-T細胞を調製する方法を提供し、ここで、
(i)SEQ ID NOs:2~5から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域の編集を達成し、
(ii)SEQ ID NOs:6~13から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域の編集を達成する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本願は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子操作されたCAR-T細胞を調製する方法を提供し、
(i)SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:3から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域の編集を達成し、
(ii)SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:8から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域の編集を達成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子操作されたCAR-T細胞を調製する方法を提供し、
(i)SEQ ID NO:2の配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域の編集を達成し、
(ii)SEQ ID NO:8の配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域の編集を達成する。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子操作されたCAR-T細胞を調製する方法を提供し、
(i)SEQ ID NO:3の配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域の編集を達成し、
(ii)SEQ ID NO:7の配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域の編集を達成する。
【0062】
いくつかの実施形態では、該CAR-T細胞にTRACを標的とする前記sgRNAと、B2Mを標的とするsgRNAとを同時に導入する。いくつかの実施形態では、前記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、及びB2Mを標的とするsgRNAを含む)は、2’-O-メチル類縁体及び/又はヌクレオチド間3’チオで修飾されているものである。いくつかの実施形態では、前記化学修飾は、前記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA)の5’末端の最初の1つ、2つ、及び/又は3つの塩基及び/又は3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体修飾である。
【0063】
いくつかの実施形態では、上記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAを含む)を、電気穿孔方式(エレクトロポレーション法)により前記CAR-T細胞に導入する。いくつかの実施形態では、上記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA)は、Cas9をコードするヌクレオチド(例えば、mRNA)と共に、電気穿孔方式によって該CAR-T細胞に導入される。いくつかの実施形態では、前記電気穿孔条件は、150~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;250V、0.5msから選択されるいずれかを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集されたCAR-T細胞からTRAC及びB2Mの発現量が低いCAR-T細胞をスクリーニングすることをさらに含む。例えば、遺伝子編集されたCAR-T細胞における前記TRAC及びB2Mの発現量は、遺伝子編集されていないCAR-T細胞の発現量の2/10である。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記TRAC及びB2Mがそれぞれノックアウトされる効率は90%以上であり、また、ノックアウトされる効率は、75%以上である。さらに、二重遺伝子の同時ノックアウト効率は、80%以上である。従来技術に比べ、本発明のT細胞遺伝子のノックアウト方法は、効率的な遺伝子ノックアウト効率を取得する。
【0066】
「ノックアウト効率」は、遺伝子レベルで、遺伝子ノックアウトを生じるINDELの効率で表され、又は、細胞レベルで、前記遺伝子ノックアウトによる該遺伝子発現タンパク質の消失又は有意に減少する細胞のパーセントとして表すことができる。本発明で、「ノックアウト効率」とは、後者に基づいて算出されるノックアウト効率を意味する。当業者であれば、高いノックアウト効率は、標的細胞の収率を向上させ、製造コスト及び治療コストを低減することができると理解することができる。本願で使用される「Indel」は、全称が挿入/欠失、即ち、挿入及び欠失変異と呼ばれる。
【0067】
本願に係る方法では、遺伝子編集されたCAR-T細胞には、TCRα/β抗体を発現するmRNAを導入し、24~48hの発現期間の後に、それは、TCRα/β陽性のT細胞を特異的に認識し除去し、培養の過程で高純度の二重遺伝子(TRAC及びB2M)がノックアウトされたCAR-T細胞を達成することができる。前記方法で得られた細胞集団において、TCR陰性細胞の比率は、98%又は99%以上である。該方法は、製造時間とコストを節約するだけでなく、労力と物力コストも節約する。
【0068】
本願の別の態様は、さらに、ユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法に関し、該方法は、
(i)キメラ抗原受容体(CAR)又はそのコードヌクレオチドを、活性化されたT細胞に導入するステップを含む。
【0069】
いくつかの実施形態で、前記方法は、さらに、Cas9又はそのコードヌクレオチドを活性化されたT細胞に導入するステップ、
(ii)14番染色体の23016448位~23016490位を標的とするTRACゲノムを含むsgRNAをT細胞に導入して前記TRACゲノム領域を破壊するステップ、及び/又は
(iii)15番染色体の45003745位~45003788位を標的とするB2Mゲノム領域を含むsgRNAを該T細胞に導入し、前記B2Mゲノム領域を破壊するステップ、及び
(iv)TCRα/βを標的とするmRNA、即ち、
【0070】
【化2】
【0071】
(ただし、下線部は、リンカー(linker)配列である)を遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入し、TCRα/β陽性の細胞を除去することにより、最終産物であるユニバーサルCAR-T細胞を得るステップを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記ユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法は、
(i)キメラ抗原受容体(CAR)のコードヌクレオチドをヒトT細胞のゲノムに導入してCAR-T細胞を調製するステップを含み、
前記方法は、さらに、CAS9又はそのコードヌクレオチドをT細胞に導入することを含むステップ、及び
(ii)SEQ ID NOs:2~5から選択されるいずれかを含むsgRNAをT細胞に導入して14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域の編集を達成するステップ、
(ii)SEQ ID NOs:6~13から選択されるいずれかを含むsgRNAをT細胞に導入して15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域の編集を達成するステップ、及び
(iv)TCRα/βを標的とするmRNAを遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入し、TCRα/β陽性の細胞を除去することにより、最終産物であるユニバーサルCAR-T細胞を得るステップとを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記ユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法は、
(i)キメラ抗原受容体(CAR)のコードヌクレオチドをヒトT細胞のゲノムに導入するステップを含み、
前記方法は、さらに、CAS9又はそのコードヌクレオチドをT細胞に導入することを含むステップ、及び
(i)SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:3から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域の編集を達成するステップ、及び/又は
(ii)SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:8から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAをCAR-T細胞に導入して15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域の編集を達成するステップ、及び
(iv)TCRα/βを標的とするmRNAを遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入し、TCRα/β陽性の細胞を除去することにより、最終産物であるユニバーサルCAR-T細胞を得るステップとを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記ユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法は、
(i)キメラ抗原受容体(CAR)のコードヌクレオチドをヒトT細胞のゲノムに導入するステップを含み、
前記方法は、さらに、Cas9又はそのコードヌクレオチドをT細胞に導入するステップ、
(ii)SEQ ID NO:2の配列を含むsgRNAをT細胞に導入して14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域の編集を達成するステップ、
(iii)SEQ ID NO:8の配列を含むsgRNAをT細胞に導入して15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域の編集を達成するステップ、及び
(iv)TCRα/βを標的とするmRNAを遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入し、TCRα/β陽性の細胞を除去することにより、最終産物であるユニバーサルCAR-T細胞を得るステップとを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記CAR-T細胞を調製する方法は、
(i)キメラ抗原受容体(CAR)のコードヌクレオチドをT細胞のゲノムに導入するステップを含み、
前記方法は、さらに、CAS9又はそのコードヌクレオチドをT細胞に導入することを含むステップ、及び
(ii)SEQ ID NO:3の配列を含むsgRNAをT細胞に導入して14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域の編集を達成するステップ、
(iii)SEQ ID NO:7の配列を含むsgRNAをT細胞に導入して15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域の編集を達成するステップ、及び
(iv)TCRα/βを標的とするmRNAを遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入し、TCRα/β陽性の細胞を除去することにより、最終産物であるユニバーサルCAR-T細胞を得るステップとを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、活性化されたT細胞にキメラ抗原受容体(CAR)のコードヌクレオチドを導入する。上記CAR-TにTRACを標的とする前記sgRNAとB2Mを標的とするsgRNAを同時に導入する。いくつかの実施形態では、前記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、及びB2Mを標的とするsgRNAを含む)は、2’-O-メチル類縁体及び/又はヌクレオチド間3’チオで修飾されているものである。いくつかの実施形態では、前記化学修飾は、前記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA)の5’末端の最初の1つ、2つ、及び/又は3つの塩基及び/又は3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体修飾である。
【0077】
いくつかの実施形態では、CARのコードヌクレオチドを、T細胞を活性化するためにT細胞ゲノムに導入する。
【0078】
いくつかの実施形態では、上記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAを含む)を、電気穿孔方式により前記CAR-T細胞に導入する。いくつかの実施形態では、上記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA)は、Cas9をコードするヌクレオチド(例えば、mRNA)と共に、電気穿孔方式によって該T細胞に導入される。いくつかの実施形態では、前記電気穿孔条件は、150~250V、0.5~2ms;180~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;250V、0.5msから選択されるいずれかひとつを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、TCRα/βを標的とするmRNAを遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入し、TCRα/β陽性の細胞を除去する。
【0080】
一態様では、本発明は、上記方法によって調製されたユニバーサルCAR-T細胞に関する。
【0081】
一態様では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する上記遺伝子操作されたT細胞を含むCAR-T細胞に関する。
【0082】
一態様では、本発明は、CAR-T細胞に関し、そのうち、前記CAR-T細胞において、
(i)14番染色体の23016448位から23016490位までのTRACゲノム領域が編集され、
(ii)15番染色体の45003745位から45003788位までのB2Mゲノム領域が編集された。
【0083】
本発明の以上の内容に言及したTRACゲノム領域、B2Mゲノム領域の位置情報は、データベースにおけるGRCh37(hg19)における前記遺伝子の野生型配列位置情報を参照して決定した。当業者であれば、他のデータベースを参照して上記ゲノム領域の対応する位置情報を得る方法を知っている。
【0084】
一態様では、本発明は、また、上記遺伝子操作されたT細胞、CAR-T細胞を含む組成物(例えば、医薬組合せ)、キット、及び医療物品に関する。
【0085】
一態様では、本発明は、有効量の上記CAR-T細胞を被験者に投与することを含む、被験者の疾患を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、前記疾患は、腫瘍である。いくつかの実施形態では、前記腫瘍は、血液系腫瘍である。いくつかの実施形態では、前記腫瘍は、リンパ腫又は白血病である。
【0086】
一態様では、本発明は、遺伝子編集されたT細胞及び/又はCAR-T細胞を精製して99%のTCRα/β陰性のユニバーサルCAR-T細胞を得る方法に関する。いくつかの実施形態では、TCRα/βを標的とし、TCRα/β陽性細胞を除去する効果を有する前記mRNAが翻訳された後に発現するタンパク質配列は、QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK;EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSAであり、
リンカー(Linker)配列は、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSである。
【0087】
一態様では、本発明は、SEQ ID NOs:2~13のいずれかを含むsgRNA又はそのベクターに関する。いくつかの実施形態では、前記sgRNAは、化学修飾されているものであり、前記化学修飾は、例えば、2’-O-メチル類縁体及び/又はヌクレオチド間3’チオ修飾である。いくつかの実施形態では、化学修飾は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/又は3つの塩基及び/又は3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体修飾である。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明のユニバーサルCAR-T細胞のTCR及び/又はHLA遺伝子は、ノックアウトされる。
【0089】
いくつかの具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(即ち、TRAC)遺伝子はノックアウトされる。B2Mのコード領域は、ノックアウトされる。
【0090】
いくつかの具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(即ち、TRAC)遺伝子はノックアウトされる。例えば、具体的な実施形態では、本発明のTCRα鎖定常コード領域の遺伝子は、前記細胞に導入されたTRAC-sg 2、3、4、6分子の1つ(表1)及びCas9分子によりノックアウトされる。好ましくは、前記TCRのα鎖定常コード領域の遺伝子は、細胞に導入されたTRAC-sg 2及びCas9分子又はTRAC-sg 3及びCas9分子によりノックアウトされる。
【0091】
【表1】
【0092】
他の具体的な実施形態では、前記HLAの定常コード領域のB2M遺伝子は、ノックアウトされている。例えば、具体的な実施形態では、本発明のB2M定常コード領域の遺伝子は、前記細胞に導入されたB2M-sg 1~8分子の1つ(表1)及びCas9分子によりノックアウトされ、好ましくは、前記B2Mの定常コード領域の遺伝子は、細胞に導入されたB2M-sg 2又はB2M-sg 6分子及びCas9分子によりノックアウトされる。
【0093】
他の具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(即ち、TRAC)遺伝子及びB2M遺伝子は、ノックアウトされる。例えば、具体的な実施形態では、本発明のTRAC及びB2M遺伝子は、前記細胞に導入されたTRAC-sg3及びB2M-sg2分子(表1)及び9分子によりノックアウトされる。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明は、CAR-T細胞を効率的に編集する方法を提供し、前記方法は、
CAR-T細胞にsgRNA分子及びCas9分子を導入するステップを含み、
いくつかの実施形態では、前記sgRNA分子は、TCR由来のα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子、B2M遺伝子の定常コード領域の遺伝子標的領域に相補的な標的ドメインを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、前記sgRNA分子は、標的DNA配列を認識してCas9分子を標的部位を切断するように誘導することができる、ノックアウトされる遺伝子の標的領域に相補的な標的ドメインを含む核酸配列のセグメントを指し、これは、対応する部位の効率的な(ノックアウト効率85%超)ノックアウトを達成することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、前記sgRNA分子が含む標的ドメインの配列は、表1のうちの1つに示すとおりである。
【0097】
いくつかの好ましい実施形態では、前記標的ドメインの配列は、T2、B3に示すとおりである。
【0098】
いくつかの好ましい実施形態では、電気穿孔技術により前記sgRNA分子及びCas9分子をコードするmRNAを前記CAR-T細胞に導入する。
【0099】
いくつかの具体的な実施形態では、上記方法で使用されるT細胞は、健康なヒト、例えば、健康な成人末梢血、又は自然分娩で出産された健康なヒトの臍帯血に由来する。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明の第3態様は、特異的に修飾された、高い編集効率を有するsgRNA配列(表1)を提供する。
【0101】
いくつかの具体的な実施形態では、化学的方法でsgRNAを合成及び修飾し、sgRNAが一般的なインビトロ転写(IVT)によって得られるsgRNAよりも安定で、高い編集効率を有するようにする。好ましくは、電気穿孔方法でCAR-T細胞を1回電気穿孔し、化学的に合成され修飾されたsgRNA遺伝子による編集効率は、一般的なIVTで取得されたsgRNAの10倍以上である。
【0102】
いくつかの実施形態では、一般的なインビトロ転写(IVT)方法でTCRα/βの標的を発現するmRNAを得て、電気穿孔送達方法でそれを遺伝子編集されたCAR-T細胞に送達する。時間の経過と共に成長し、収穫した時にTCRα/β陰性のユニバーサルCAR-T細胞を得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、疾患(例えば、腫瘍)を治療するための医薬の調製のための、本発明に記載のユニバーサルCAR-T細胞の使用が提供される。
【0104】
いくつかの具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子、HLAの定常コード領域のB2M遺伝子である。例えば、具体的な実施形態では、本発明のTCRα鎖定常コード領域の遺伝子が前記細胞に導入されたTRAC-sg 2分子、本発明のB2M定常コード領域の遺伝子が前記細胞に導入されたB2M-sg6分子及びCas9分子、好ましくは、前記TCRのα鎖定常コード領域の遺伝子は細胞に導入されたTRAC-sg2、B2M定常コード領域の遺伝子は、細胞に導入されたB2M-sg6及びCas9分子によりノックアウトされる。
【0105】
本願の別の態様によれば、CAR-T細胞(例えば、ユニバーサルCAR-T細胞)を調製する方法は提供される。いくつかの実施形態では、該方法は、CAR又はそのコードヌクレオチド又はベクターを、本発明に記載のいずれかの遺伝子操作されたT細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)に導入するステップを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞を調製する方法は提供され、該方法は、
(i)キメラ抗原受容体(CAR)又はそのコード核酸を該T細胞へ導入するステップ、及び
(ii)14番染色体の23016448位~23016490位を標的とするTRACゲノムを含むsgRNAをT細胞に導入して前記TRACゲノム領域を破壊するステップ、
(iii)15番染色体の45003745位~45003788位を標的とするB2Mゲノム領域を含むsgRNAを該T細胞に導入し、前記B2Mゲノム領域を破壊するステップ、及び
(iv)2番染色体の242800936位から242800978位を標的とするPD-1ゲノム領域、又は2番染色体の242795009位から242795051位を標的とするPD-1のゲノム領域を含むsgRNAを該T細胞に導入して前記B2Mのゲノム領域を破壊するステップ、
(v)TCRα/βを標的とするmRNAを遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入し、TCRα/β陽性の細胞を除去することにより、最終産物であるユニバーサルCAR-T細胞を得るステップとを含む。
【0107】
CAR又はそのコード核酸及びTRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAとCAR又はそのコードヌクレオチドは、任意の適切な順序でT細胞に導入することができるが、TCRα/βを標的とするmRNAは、遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入されなければならず、それによって最終産物であるユニバーサルCAR-T細胞を得る。いくつかの実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAとCAR又はそのコードヌクレオチドは、該T細胞に同時に導入され、次に、TCRα/βを標的とするmRNAを、遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入する。いくつかの実施形態では、CAR又はそれをコードするヌクレオチドは、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAよりも前に該T細胞に導入され、次に、TCRα/βを標的とするmRNAを遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入する。いくつかの実施形態では、CAR又はそれをコードするヌクレオチドは、既に遺伝子編集されたT細胞に導入され、該T細胞のTRAC、B2Mゲノム領域は、編集によって破壊される。いくつかの実施形態では、該方法は、さらに、Cas9又はそれをコードするヌクレオチドを前記sgRNAと共に該T細胞に導入し、次に、TCRα/βを標的とするmRNAを遺伝子編集されたCAR-T細胞に導入することを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明のユニバーサルCAR-T細胞によって発現されるCARは、癌化細胞を標的とするTCRα/β以外の任意のCARであってもよく、さらに殺傷作用を果たす。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明のCAR-T細胞で発現されるCARは、順序で接続されたシグナルペプチド、細胞外結合領域、ヒンジ領域、膜貫通領域、及び細胞内シグナルドメインを含む。本明細書で使用される用語「シグナルペプチド」は、新たに合成されたタンパク質の分泌経路への移動をガイドする短い(例えば、長さが5~30アミノ酸の)ペプチド鎖を指す。本発明では、ヒトの体内の様々なタンパク質のシグナルペプチド、例えば、体内で分泌されるサイトカインタンパク質、白血球分化抗原(CD分子)のシグナルペプチドを使用することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、前記シグナルペプチドは、CD8シグナルペプチドであり、例えば、そのアミノ酸配列は、特許出願US20140271635A1に示すとおりである。
【0111】
いくつかの実施形態では、前記ヒンジ領域は、様々な異なる抗体又は抗原受容体のヒンジ領域、特にCD分子のヒンジ領域を使用することができる。1つの具体的な実施形態では、前記ヒンジ領域は、CD8又はCD28などのタンパク質のヒンジ領域から選択することができる。前記CD8又はCD28は、T細胞表面の天然マーカーである。
【0112】
本発明では、様々なヒト体内タンパク質の膜貫通領域、特に様々な異なる抗原受容体の膜貫通領域を使用することができる。好ましく使用される膜貫通領域は、CD分子の膜貫通領域である。いくつかの実施形態では、前記膜貫通領域は、CD8タンパク質の膜貫通領域から選択される。
【0113】
いくつかの実施形態では、前記ヒンジ領域は、CD8aヒンジ領域(CD8-hinge)であり、そのアミノ酸配列は、特許出願US20140271635A1に示すとおりである。
【0114】
前記「細胞外結合領域」は、標的抗原を特異的に認識する領域を含むことを指す。いくつかの実施形態では、該細胞外結合領域は、標的腫瘍細胞表面抗原を特異的に認識する領域を含む。例えば、この領域は、scFv又は他の抗体の抗原結合断片であってもよい。本明細書で使用される用語「scFv」は、リンカー(linker)を介して接続された重鎖可変領域(variable region of heavy chain、VH)及び軽鎖可変領域(variable region of light chain、VL)の組換えタンパク質を指し、リンカー(linker)は、この2つのドメインを関係付けし、最終的に抗原結合部位を形成する。scFvは、一般的に、ヌクレオチド鎖によってコードされるアミノ酸配列である。上記scFvは、さらに、その誘導体を含んでもよい。
【0115】
本発明で使用されるCAR及びその各ドメインは、アミノ酸欠失、挿入、置換、付加、及び/又は組換え、及び/又は他の修飾方法などの当技術分野で公知の従来技術を個々に、又は組み合わせて使用することによって、さらに修飾される。抗体のアミノ酸配列に基づいてそのDNA配列にこのような修飾を導入する方法は当業者に公知である(例えば、Sambrook分子クローニング:実験マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)N.Y.)。前記修飾は、好ましくは、核酸レベルで行われる。
【0116】
本明細書で使用される用語「特異的に認識」は、本発明の抗原認識領域が、標的抗原以外の任意のポリペプチドと交差反応しない、又は実質的に交差反応しないことを指す。その特異性の程度は、免疫ブロット、免疫アフィニティクロマトグラフィー、フローサイトメトリー解析などを含むが、これらに限定されない免疫学的技法で決定される。
【0117】
いくつかの実施形態では、前記細胞外結合領域は、TCRα/β標的以外のものを特異的に認識する抗原結合領域である。
【0118】
本発明では、前記細胞内シグナルドメインは、CD137(4-1BB)タンパク質の細胞内シグナルドメインである。CD3分子は、5つのサブユニットからなり、そのうち、CD3ζサブユニット(CD3zetaとも呼ばれ、ζと略称される)は、TCR-CD3複合体における重要なシグナル変換領域である3つのITAMモチーフを含有する。FcεRI yは、主にマスト細胞及び好塩基球の表面に分布し、それは、CD3ζと構造的、分布的及び機能的に類似した1つのITAMモチーフを含有する。また、前述したように、CD137は共刺激シグナル分子であり、それぞれのリガンドと結合した後にその細胞内シグナルセグメントで発生する共刺激作用は、T細胞の持続的な増殖を引き起こし、且つT細胞がIL-2及びIFN-γなどのサイトカインを分泌するレベルを向上させることができ、同時にCAR-T細胞のインビボでの生存周期及び抗腫瘍効果を向上させる。
【0119】
本発明において、インビトロで転写(IVT)された、TCRα/βを標的とし、それを表現するためのmRNA配列は、電気穿孔によりそれを遺伝子編集後のCAR-T細胞に送達され、インビボ翻訳により、TCRα/βを標的とするタンパク質を発現し、一過性トランスフェクションであるため、該タンパク質は、4-5日しか存在できず、それがTCRα/βT細胞を除去する機能を発揮した後に消失する。最終的に得られた製品が純粋なユニバーサルCAR-Tであることを確保する。
【0120】
いくつかの実施形態では、CAR単独で生成されるシグナルは、天然T細胞を完全に活性化するには不十分であるため、TCRにより抗原依存性一次活性化を開始する配列(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)、及び抗原非依存的に作用して共刺激シグナルを提供する配列(共刺激ドメイン)を必要とする。一次シグナル伝達ドメインは、刺激性方法又は阻害性方法でTCR複合体の一次活性化を調節する。刺激性方法で作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)と呼ばれるシグナル伝達モチーフを含有し得る。本発明におけるITAMを含有する一次細胞質シグナル伝達配列は、CD3ζである。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、修飾ITAMドメインを含み、例えば、天然ITAMドメインと比較して活性が変化した(例えば、増加又は減少した)変異ITAMドメイン、又は切断型(truncated)ITAMの一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ以上のITAMモチーフを含む。
【0121】
共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むTCRの部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な反応に必要な、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。本発明の共刺激分子領域は、4-1BB(CD137)である。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明は、CAR-T細胞、例えば、ユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法を提供し、前記方法は、以下を含む。
1)前記T細胞にCAR分子を導入する。
いくつかの実施形態では、前記sgRNA分子は、標的DNA配列を認識してCas9分子を標的部位を切断するように誘導することができる、ノックアウトされる遺伝子の標的領域に相補的な標的化ドメインを含む核酸配列のセグメントを指し、これは、対応する部位の効率的な(ノックアウト効率85%超)ノックアウトを達成することができる。
【0123】
2)CAR-T細胞にsgRNA分子及びCas9分子を導入する。
いくつかの実施形態では、前記sgRNA分子は、TCR由来のα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子、HLA定常コード領域B2M遺伝子、及びPD-1の定常コード領域の遺伝子標的領域に相補的な標的ドメインを含む。
【0124】
3)CAR-T細胞にTCRα/βを標的とするmRNA分子を導入する。
いくつかの実施形態では、前記TCRα/βを標的とするmRNA分子は、細胞内でタンパク質に翻訳され、細胞膜で表現され、TCRα/β陽性T細胞を除去するように作用することができるインビトロ転写分子である。
【0125】
いくつかの実施形態では、前記Cas9分子は、sgRNAの誘導下で標的部位を切断することができるCas9mRNAを指す。
【0126】
いくつかの具体的な実施形態では、前記sgRNA分子が含む標的ドメインの配列は、表1のうちの1つに示すとおりである。
【0127】
いくつかの好ましい実施形態では、前記標的ドメインの配列は、T2、B3に示すとおりである(表1)。
【0128】
いくつかの好ましい実施形態では、電気穿孔技術により前記sgRNA分子及びCas9分子をコードするmRNAを前記T細胞に導入する。
【0129】
いくつかの実施形態では、前記CAR分子を、例えば、レンチウイルストランスフェクション技術により前記T細胞に導入する。
【0130】
いくつかの具体的な実施形態では、健康なヒト末梢血又は臍帯血由来のT細胞を単離及び/又は活性化するステップを含む。好ましくは、前記方法は、上記ステップ2)の後にユニバーサルCAR-T細胞を選別するステップをさらに含み、上記ステップ3)を行った後に得られたCAR-T細胞、例えば、ユニバーサルCAR-T細胞に対して機能的検証を行う。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明は、疾患(例えば、腫瘍)を治療するための医薬の調製のための、上記CAR-T細胞の使用を提供する。
【0132】
本発明は、一態様において、本明細書に記載の有効量のCAR-T細胞を被験者に投与することを含む、被験者の疾患を治療する方法を提供する。本発明の前記治療方法は、いくつかの前記方法は、癌及びHIV/AIDSを含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、該疾患は、リンパ腫又は白血病などの血液系腫瘍を含む腫瘍である。いくつかの実施形態では、CARは、TCRα/β抗原以外の癌細胞標的を標的とすることができる。いくつかの実施形態では、前記T細胞は、被験者から得られたものではない。例えば、前記T細胞は、健康なドナーに由来し得る。
【0133】
本発明に関連するCAR-T細胞は、それを必要とする被験者に、細胞成分を含む医薬製剤を投与する従来の使用経路、例えば、静脈内注入経路によって投与することができる。投与量は、被験者の病状及び一般的な健康状態に基づいて具体的に決定され得る。
【0134】
本願では、T細胞の供給源にも関する。増幅及び遺伝子改変の前に、被験者からT細胞の供給源を得る。用語「被験者」は、免疫応答を引き起こすことができる生体生物(例えば、哺乳動物)を含むことを意図する。被験者の例は、ヒトを含む。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む様々な供給源から得ることができる。本発明のT細胞は、また、各分化段階の造血幹細胞に由来し得る。造血幹細胞は、定方向分化培養条件下でT細胞に分化される。本発明のある態様では、当技術分野で入手可能な様々なT細胞株を使用することができる。
【0135】
本発明のある態様では、T細胞は、当業者に公知の様々な技術を使用することができ、例えば、FicollTMは、被験者から収集された血液から単離することができる。アフェレーシス(apheresis)により個体の循環血液から細胞を得ることもできる。アフェレーシス産物は、一般的には、T細胞、単核細胞、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球及び血小板を含むリンパ球を含有する。一態様では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿部分を除去し、細胞をその後の処理ステップのために適切な緩衝液又は媒体に入れることができる。
【0136】
赤血球を溶解し、例えば、PERCOLLTM勾配遠心分離又は向流遠心パンニによって単核細胞を枯渇させることにより、末梢血リンパ球からT細胞を単離することができる。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+及びCD45RO+T細胞などの特定のT細胞サブセットは、陽性又は陰性選択技術によってさらに単離することができる。例えば、一態様では、T細胞は、抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)結合ビーズ、例えば、DYNABEADSTM M-450CD3/CD28Tと共に、所望のT細胞の陽性選択に十分な時間でインキュベートして単離する。腫瘍組織から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離することができる。
【0137】
本願の一態様では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAも提供される。前記sgRNAは、SEQ ID NO:2~22から選択されるいずれかのヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態では、前記sgRNAは、化学修飾されている。
【0138】
本願は、sgRNA組成物、キット又は製品をさらに含み、それは、本発明が関連するsgRNA又はそのベクターを含む。いくつかの実施形態では、該キットは、i)SEQ ID NOs:2~5から選択されたいずれかの配列を含むsgRNA、(ii)SEQ ID NOs:6~13から選択されたいずれかの配列を含むsgRNA、及び/又は(iii)SEQ ID NOs:15~22から選択されたいずれかの配列を含むsgRNAを含む。いくつかの実施形態では、該キットは、(i)SEQ ID NO:3配列を含むsgRNA、(ii)SEQ ID NO:16配列を含むsgRNA、及び(iii)SEQ ID NO:7配列を含むsgRNAを含む。いくつかの実施形態では、該キットは、Cas6をコードする核酸又はそのベクターをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記sgRNAは、化学修飾されている。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明のT細胞遺伝子操作方法は、化学修飾されたsgRNAを使用する。本発明者らが用いた化学修飾されたsgRNAが以下の2つの利点を有すると考えられる。第一は、sgRNAが一本鎖形態のRNAであるため、その半減期が非常に短く、細胞に入った後、迅速に分解される(最も長い場合は、12時間を超えない)が、Cas9タンパク質がsgRNAと結合して遺伝子編集作用を発揮するために、少なくとも48hrsを必要とする。そのため、化学修飾されたsgRNAを用いて、細胞に入った後、安定的に発現し、Cas9タンパク質と結合した後、ゲノムを効率的に遺伝子編集してIndelsを生成することができる。第二は、未修飾のsgRNAが細胞膜に浸透する能力が低く、細胞又は組織に効果的に入って対応する機能を発揮することができない。しかしながら、化学修飾されたsgRNAが細胞膜に浸透する能力は、一般に増強される。本発明においては、sgRNAの安定性(半減期の延長)を向上させ、細胞膜に入る能力を向上させることができれば、当技術分野で一般的に使用される化学修飾方法を用いることができる。実施例で使用される具体的な化学修飾に加えて、他の修飾方法、例えば、Deleavey GF1、Damha MJ.Designing chemically modified oligonucleotides for targeted gene silencing.Chem Biol.2012 Aug 24、19(8):937-54、及びHendel et al.Chemically modified guide RNAs enhance CRISPR-Cas genome editing in human primary cells.Nat Biotechnol.2015 Sep、33(9):985-989文献に報告された化学修飾方法を含む。
【0140】
本発明は、化学修飾されたsgRNAとCas9をコードする遺伝子を共に電気穿孔によりT細胞に導入し、効率的な遺伝子編集効率(例えば、Indels%で表示する)を達成し、そのうちsgRNAの化学修飾は、本発明における重要な要素の1つである。実施例におけるデータは、Cas9 mRNAと共に電気穿孔により導入されたのが化学修飾されていないsgRNAであると、そのIndels効率が化学修飾されるsgRNAを電気穿孔する時に達成されるIndels効率よりも遥かに低いことを示す。
【0141】
以下、具体的な実施例により本発明の内容を説明する。理解すべきものとして、前記具体的な実施形態は、説明するためのものであり、本発明の内容が具体的な実施例に限定されることを意味しない。
【0142】
本明細書全体では、数件の文書が引用されている。本明細書の各文書(任意の学術論文又は要約、公開又は非公開の特許出願、登録特許、メーカーのプロトコール、使用説明書などを含む)は、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書に引用される文書が実際に本発明の従来技術であることを認めない。
【実施例
【0143】
以下、具体的な実施形態を参照しながら本願の内容を説明するが、本願の範囲は、これに限定されない。
【0144】
特に説明がない限り、以下の実施形態において使用される試薬及び機器は、当技術分野における一般的な試薬及び機器であり、購入することができる。使用された方法は、いずれも一般的な実験方法であり、当業者は、実施例の内容に基づいて前記形態を疑いなく実施して対応する結果を得ることができる。
【0145】
実施例1:ユニバーサルCAR-T細胞の調製
ユニバーサルCAR-T細胞の調製と増幅
サイトカインを利用して選別されたT細胞を活性化した後、T細胞培地で細胞密度を1×10細胞/mLに調整した。24h後にCAR(細胞外領域CD19 scFv)、リンク領域(Linker)、CD8 alphaヒンジ領域(CD8 alpha hinge)、CD8膜貫通領域(CD8 transmemberane domain)、4-11BBシグナル領域(4-11BB signaling domain)及びCD3 zetaを含み、具体的な構造は、US20140271635A1を参照し、具体的な配列は、表2に示すとおりである)のウイルスをMOI=4でT細胞に感染させ、72h後に細胞の状態を観察し、細胞懸濁液を収集し、300gで7min遠心分離し、上清を捨て、DPBS溶液(メーカー:Gibco、品番: 1924294)で2回洗浄した後、細胞密度を、電気穿孔試薬培地を用いて、2.5×10細胞/mLに調整した。
【0146】
【表2】
【0147】
HISCRIBE TM T7 ARCA mRNA Kit(with Tailing)(メーカー:NEB、品番:cat#E2060S)により調製されたCas9 mRNA及び合成されたsgRNA(TRAC配列を標的とするsgRNA:GCUGGUACACGGCAGGGUCA、B2M配列を標的とするsgRNA:GAGUAGCGCGAGCACAGCUA)を使用し、T細胞とRNAを混合し、その最終濃度を100μLあたり、2.5×10個の細胞と8μgのRNA(Cas9 mRNA とsgRNAをそれぞれ4μg)を含有する最終濃度とした後、電気穿孔装置BTX Agile pμlse MAXを利用してRNAを細胞に導入した後に培養した。5日目まで培養する時、HISCRIBE TM T7 ARCA mRNA Kit(with Tailing)(メーカー:NEB、品番:cat#E2060S)で調製されたTCRα/βを標的とするmRNA
【0148】
【化3】
【0149】
(ここで、下線部は、リンカー(linker)配列である)をCAR-T細胞と混合し、その最終濃度を200μlあたりに2×10個の細胞を含有し、次に電気穿孔装置BTX Agile pμlse MAXを用いてRNAを細胞に導入した後、該細胞と該mRNAが電気穿孔されていない細胞を1:2の細胞数で混合培養した。毎日に細胞の成長状況を観察し、一日おきに細胞をカウントして補液を行った。図1に示すように、細胞が増幅培養過程における生存率を監視し、TCRα/βを標的とするmRNAを添加した後、後期の細胞生存率が低く、細胞がTCRα/β陽性のT細胞を自己殺傷させることができるためであるが、培養時間の増加に伴い、細胞生存率は、他の2群に比べて明らかな差がなかった。図2は、細胞が14日培養された増幅倍数を示した。CARを添加した細胞が自己殺傷するため、増殖倍率は他の対照群よりも低かった。
【0150】
図3は、TCRα/β-CARを標的とするmRNAの導入後の、遺伝子編集されたCAR-T細胞を培養した表現型分析を示した。この結果から、TCRα/β-CARを添加したDKO-T細胞は、培養後に、そのTCRα/β陰性細胞の比率は、99%以上であった。
【0151】
図4は、MIX(DKO CAR-T:DKO CAR-T+mRNA 1:1)を培養した後に、そのTCRα/β陽性変化状況を示し、2日混合培養し後に、そのTCRα/β陰性細胞の比率は99%以上であった。
【0152】
図5は、STEMCELLを用いてTRAC/B2M(DKO CAR-T)がノックアウトされたT細胞をスクリーニングして精製した精製回収率を示し、図から分かるようにその回収率が低く、実質的に20%~30%であった。
【0153】
本実施例では、TCR陽性率は1%であり、TCR及びB2M DKOのT細胞陽性率は<1%であった。
【0154】
実施例2:ユニバーサルCAR-Tの機能検証
実施例1で得られたユニバーサルCAR-T細胞(すなわちエフェクター細胞)のB細胞型急性リンパ芽球性白血病細胞に対する殺傷作用を観察した。
【0155】
ユニバーサルCAR-Tの特異的腫瘍細胞に対するインビトロ殺傷作用
本発明の実験ステップは、以下のとおりであった。
【0156】
第1ステップ:標的細胞の標識
CELL TRACETM Far Red Cell Proliferation Kit(メーカー:Gibco、品番:1888569)を使用して標的細胞を標識した(ヒトバーキットリンパ腫細胞Raji、K562、全ての細胞がATCCに由来する)。
1、Cell TraceTM Far Red Cell Proliferationを二重蒸留水で1mmolの溶液に希釈し、
2、1×10個の標的細胞400gを5分間遠心分離した後に上清を除去し、
3、Cell TraceTM Far Red Cell Proliferation溶液を1μl加え、暗所下で37℃で20minインキュベートし、
4、細胞をT細胞培地に添加し、37℃で5minインキュベートし、
5、400gを5分間遠心分離した後に上清を除去し、標識を完了した。
【0157】
第2ステップ:エフェクター細胞による標的細胞の殺傷検出
標識された標的細胞をR1640+10%FBS培養液で2×10細胞/mLの密度で再懸濁し、500μL取って48ウェルプレートに加えた。適当なエフェクター対標的比(2.5:1、1.25:1、0.6:1)で、500μLのエフェクター細胞をウェルごとに加え、また、T細胞と健常ヒト臍帯血CAR-T細胞(T細胞が2日目まで培養された時に、CARをパッケージングしたレンチウイルス(CARの構造は、抗CD19 scFv、リンク領域(Linker)、CD8 alphaヒンジ領域(CD8 alpha hinge)、CD8膜貫通領域(CD8 transmembrane domain)、4-11BBシングル領域(4-11BB signaling domain)及びCD3 zetaで構成される)をMOI=2-10の比率で加え、その配列は、前記のとおりであり、調製されたCAR-Tを対照とする)を対照細胞とし、各群に3つの並行があり、単独な標的細胞群を設計し、その死亡率を検出し、37℃、5%のCO2で12-16h培養し、400gで5min遠心分離し、細胞ペレットを取り、150μl のDPBS(メーカー:Gibco、品番:1924294)を再懸濁した。PI(メーカー:Sigma、品番:P4170)で染色した後、フローサイトメータを用いて標的細胞の死亡率を検出し、結果は、図6に示すとおりであり、ユニバーサルCAR-Tは、他のCAR-T細胞に比べて標的細胞の特異的殺傷作用において基本的に一致し、効果は、いずれもT細胞より優れた。また、非特異的な標的細胞に対する殺傷機能は、ほとんどなかった。
【0158】
第3ステップ:サイトカインの放出に対するELISAの検出
標識された標的細胞を、RPMI 1640+10%FBSで2×10個/mLの密度で再懸濁し、500μLを48ウェルプレートに加えた。適切なエフェクター対標的比(10:1)に応じて各ウェルに、500μLのエフェクター細胞を加え、また、T細胞及び健康なヒト臍帯血のCAR-Tを対照細胞とし、各群は3つの並行があり、単独な標的細胞群を設計し、37℃、5%のCOで12~16h培養し、各ウェルに培養上清を100μlを取り、400gで5min遠心分離して沈殿を除去し、上清を取った後にLEGEND MAXTM Human IL-2/IFN-gama(メーカー:Biolegend、品番がそれぞれ、431807、430108)キットを利用してサイトカインの放出を検出した。
【0159】
具体的な実験ステップは、以下のとおりである。
1、標準品を希釈した。
2、ウェルあたりに300μlのWash Buffer((1×)でプレートを4回洗浄し、ウェルあたりに50μlのAssay Bufferを加えた。
3、サンプルをウェル当たりに50μl加えた。
4、200rpmで2h振盪しインキュベートした。
5、300μlのWash Buffer(1×)でプレートを4回洗浄し、ウェルあたりにDetection Antibody solutionを100μl加え、200rpmで1h振盪しインキュベートした。
6、300μlのWash Buffer(1×)でプレートを4回洗浄し、ウェルあたりにSvidin-HRP A solutionを100μl添加し、200rpmで30min振盪しインキュベートした。
7、300μlのWash Buffer(1×)でプレートを5回洗浄し、Solution Fを加え、暗所下で20minインキュベートした。
8、ウェルあたりにStop Solutionを100μl加えた。
9、マイクロプレートリーダーを用いて、450nmと570nmでの吸光度値を読み取った。
【0160】
得られた結果は図7に示すとおりであり、該実験で、Rajiを標的細胞とし、T細胞、CAR-T及びDKO CAR-T+mRNA細胞をエフェクター細胞とし、エフェクター対標的比が10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.625:1でインビトロで共培養した後、1.25:1で上清を取ってそのIFN-γを検出した。それから分かるように、ユニバーサルCAR-TのRaji細胞に対する殺傷能力は、一般的なCAR-T殺傷能力とほぼ一致するか、又は一般的なCAR-Tの殺傷能力よりも僅かに良く、特に、TCRneg CAR-T IFN-rの放出量は、一般的なCAR-Tよりも遥かに高く、いずれもK 562に対する殺傷能力が低く、したがって、サイトカインの放出量が比較的少なかった。これは、on-target off-tumorの現象を示さないCARの標的化の特異性を示した。
【0161】
以上は、本願の好適な実施例に過ぎず、本願をいかなる形で限定するものではない。当業者は、いずれも、上記に開示された技術内容を利用して同等に変化した等価実施例に変更又は修正することができる。しかしながら、本願の技術的解決手段の内容から逸脱しない限り、本願の技術的実質に基づいて以上の実施例に対して行われたいかなる簡単な修正、同等変化及び変形は、依然として本願の技術的解決手段の保護範囲に属する。
【0162】
配列表
SEQ ID No.1:Cas9 mRNA配列
gacaagaaguacagcaucggccuggacaucggcaccaacucugugggcugggccgugaucaccgacgaguacaaggugcccagcaagaaauucaaggugcugggcaacaccgaccggcacagcaucaagaagaaccugaucggagcccugcuguucgacagcggcgaaacagccgaggccacccggcugaagagaaccgccagaagaagauacaccagacggaagaaccggaucugcuaucugcaagagaucuucagcaacgagauggccaagguggacgacagcuucuuccacagacuggaagaguccuuccugguggaagaggauaagaagcacgagcggcaccccaucuucggcaacaucguggacgagguggccuaccacgagaaguaccccaccaucuaccaccugagaaagaaacugguggacagcaccgacaaggccgaccugcggcugaucuaucuggcccuggcccacaugaucaaguuccggggccacuuccugaucgagggcgaccugaaccccgacaacagcgacguggacaagcuguucauccagcuggugcagaccuacaaccagcuguucgaggaaaaccccaucaacgccagcggcguggacgccaaggccauccugucugccagacugagcaagagcagacggcuggaaaaucugaucgcccagcugcccggcgagaagaagaauggccuguucggcaaccugauugcccugagccugggccugacccccaacuucaagagcaacuucgaccuggccgaggaugccaaacugcagcugagcaaggacaccuacgacgacgaccuggacaaccugcuggcccagaucggcgaccaguacgccgaccuguuucuggccgccaagaaccuguccgacgccauccugcugagcgacauccugagagugaacaccgagaucaccaaggccccccugagcgccucuaugaucaagagauacgacgagcaccaccaggaccugacccugcugaaagcucucgugcggcagcagcugccugagaaguacaaagagauuuucuucgaccagagcaagaacggcuacgccggcuacauugacggcggagccagccaggaagaguucuacaaguucaucaagcccauccuggaaaagauggacggcaccgaggaacugcucgugaagcugaacagagaggaccugcugcggaagcagcggaccuucgacaacggcagcaucccccaccagauccaccugggagagcugcacgccauucugcggcggcaggaagauuuuuacccauuccugaaggacaaccgggaaaagaucgagaagauccugaccuuccgcauccccuacuacgugggcccucuggccaggggaaacagcagauucgccuggaugaccagaaagagcgaggaaaccaucacccccuggaacuucgaggaagugguggacaagggcgcuuccgcccagagcuucaucgagcggaugaccaacuucgauaagaaccugcccaacgagaaggugcugcccaagcacagccugcuguacgaguacuucaccguguauaacgagcugaccaaagugaaauacgugaccgagggaaugagaaagcccgccuuccugagcggcgagcagaaaaaggccaucguggaccugcuguucaagaccaaccggaaagugaccgugaagcagcugaaagaggacuacuucaagaaaaucgagugcuucgacuccguggaaaucuccggcguggaagaucgguucaacgccucccugggcacauaccacgaucugcugaaaauuaucaaggacaaggacuuccuggacaaugaggaaaacgaggacauucuggaagauaucgugcugacccugacacuguuugaggacagagagaugaucgaggaacggcugaaaaccuaugcccaccuguucgacgacaaagugaugaagcagcugaagcggcggagauacaccggcuggggcaggcugagccggaagcugaucaacggcauccgggacaagcaguccggcaagacaauccuggauuuccugaaguccgacggcuucgccaacagaaacuucaugcagcugauccacgacgacagccugaccuuuaaagaggacauccagaaagcccagguguccggccagggcgauagccugcacgagcacauugccaaucuggccggcagccccgccauuaagaagggcauccugcagacagugaaggugguggacgagcucgugaaagugaugggccggcacaagcccgagaacaucgugaucgaaauggccagagagaaccagaccacccagaagggacagaagaacagccgcgagagaaugaagcggaucgaagagggcaucaaagagcugggcagccagauccugaaagaacaccccguggaaaacacccagcugcagaacgagaagcuguaccuguacuaccugcagaaugggcgggauauguacguggaccaggaacuggacaucaaccggcuguccgacuacgauguggaccauaucgugccucagagcuuucugaaggacgacuccaucgacaacaaggugcugaccagaagcgacaagaaccggggcaagagcgacaacgugcccuccgaagaggucgugaagaagaugaagaacuacuggcggcagcugcugaacgccaagcugauuacccagagaaaguucgacaaucugaccaaggccgagagaggcggccugagcgaacuggauaaggccggcuucaucaagagacagcugguggaaacccggcagaucacaaagcacguggcacagauccuggacucccggaugaacacuaaguacgacgagaaugacaagcugauccgggaagugaaagugaucacccugaaguccaagcugguguccgauuuccggaaggauuuccaguuuuacaaagugcgcgagaucaacaacuaccaccacgcccacgacgccuaccugaacgccgucgugggaaccgcccugaucaaaaaguacccuaagcuggaaagcgaguucguguacggcgacuacaagguguacgacgugcggaagaugaucgccaagagcgagcaggaaaucggcaaggcuaccgccaaguacuucuucuacagcaacaucaugaacuuuuucaagaccgagauuacccuggccaacggcgagauccggaagcggccucugaucgagacaaacggcgaaaccggggagaucgugugggauaagggccgggauuuugccaccgugcggaaagugcugagcaugccccaagugaauaucgugaaaaagaccgaggugcagacaggcggcuucagcaaagagucuauccugcccaagaggaacagcgauaagcugaucgccagaaagaaggacugggacccuaagaaguacggcggcuucgacagccccaccguggccuauucugugcuggugguggccaaaguggaaaagggcaaguccaagaaacugaagagugugaaagagcugcuggggaucaccaucauggaaagaagcagcuucgagaagaaucccaucgacuuucuggaagccaagggcuacaaagaagugaaaaaggaccugaucaucaagcugccuaaguacucccuguucgagcuggaaaacggccggaagagaaugcuggccucugccggcgaacugcagaagggaaacgaacuggcccugcccuccaaauaugugaacuuccuguaccuggccagccacuaugagaagcugaagggcucccccgaggauaaugagcagaaacagcuguuuguggaacagcacaagcacuaccuggacgagaucaucgagcagaucagcgaguucuccaagagagugauccuggccgacgcuaaucuggacaaagugcuguccgccuacaacaagcaccgggauaagcccaucagagagcaggccgagaauaucauccaccuguuuacccugaccaaucugggagccccugccgccuucaaguacuuugacaccaccaucgaccggaagagguacaccagcaccaaagaggugcuggacgccacccugauccaccagagcaucaccggccuguacgagacacggaucgaccugucucagcugggaggcgac
【0163】
TRAC-sg 2(T2)配列:SEQ ID NO:2
gcugguacacggcaggguca
【0164】
TRAC-sg 3(T3)配列:SEQ ID NO:3
cucucagcugguacacggca
【0165】
TRAC-sg 4(T4)配列:SEQ ID NO:4
auuuguuugagaaucaaaau
【0166】
TRAC-sg 6(T6)配列:SEQ ID NO:5
ucucucagcugguacacggc
【0167】
B2M-sg 1(B1)配列:SEQ ID NO:6
acucucucuuucuggccugg
【0168】
B2M-sg 2(B2)配列:SEQ ID NO:7
gaguagcgcgagcacagcua
【0169】
B2M-sg 3(B3)配列:SEQ ID NO:8
cgcgagcacagcuaaggcca
【0170】
B2M-sg 4(B4)配列:SEQ ID NO:9
ucacgucauccagcagagaa
【0171】
B2M-sg 5(B5)配列:SEQ ID NO:10
gcuacucucucuuucuggcc
【0172】
B2M-sg 6(B6)配列:SEQ ID NO:11
uuugacuuuccauucucugc
【0173】
B2M-sg 7(B7)配列:SEQ ID NO:12
cgugaguaaaccugaaucuu
【0174】
B2M-sg8(B8)配列:SEQ ID NO:13
cucgcgcuacucucucuuuc
【0175】
抗TCRα/βのscFvのアミノ酸配列:SEQ ID NO:14
【0176】
【化4】
【0177】
ここで、下線部は、リンカー(すなわち、リンカー)配列である。
【0178】
CD8 alphaヒンジ領域のヌクレオチド配列:SEQ ID NO:15
accacgacgccagcgccgcgaccaccaacaccggcgcccaccatcgcgtcgcagcccctgtccctgcgcccagaggcgtgccggccagcggcggggggcgcagtgcacacgagggggctggacttcgcctgtgat
【0179】
CD8膜貫通領域のヌクレオチド配列:SEQ ID NO:16
atctacatctgggcgcccttggccgggacttgtggggtccttctcctgtcactggttatcaccctttactgc
【0180】
4-11BBシグナル領域のヌクレオチド配列:SEQ ID NO:17
aaacggggcagaaagaaactcctgtatatattcaaacaaccatttatgagaccagtacaaactactcaagaggaagatggctgtagctgccgatttccagaagaagaagaaggaggatgtgaactg
【0181】
CD3 zetaのヌクレオチド配列:SEQ ID NO:18
agagtgaagttcagcaggagcgcagacgcccccgcgtacaagcagggccagaaccagctctataacgagctcaatctaggacgaagagaggagtacgatgttttggacaagagacgtggccgggaccctgagatggggggaaagccgagaaggaagaaccctcaggaaggcctgtacaatgaactgcagaaagataagatggcggaggcctacagtgagattgggatgaaaggcgagcgccggaggggcaaggggcacgatggcctttaccagggtctcagtacagccaccaaggacacctacgacgcccttcacatgcaggccctgccccctcgc
【0182】
抗TCRα/βのscFvの軽鎖可変領域のアミノ酸配列:SEQ ID NO:19
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK
【0183】
抗TCRα/βのscFvの重鎖可変領域のアミノ酸配列:SEQ ID NO:20
EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSA
【0184】
scFvの軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを連結するリンカーのアミノ酸配列:SEQ ID NO:21
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
【0185】
CD19軽鎖コードDNA:SEQ ID NO: 22
Gacatccagatgacacagactacatcctccctgtctgcctctctgggagacagagtcaccatcagttgcagggcaagtcaggacattagtaaatatttaaattggtatcagcagaaaccagatggaactgttaaactcctgatctaccatacatcaagattacactcaggagtcccatcaaggttcagtggcagtgggtctggaacagattattctctcaccattagcaacctggagcaagaagatattgccacttacttttgccaacagggtaatacgcttccgtacacgttcggaggggggaccaagctggagatcaca
【0186】
リンク領域コードDNA:SEQ ID NO: 23
ggtggcggtggctcgggcggtggtgggtcgggtggcggcggatct
【0187】
CD19重鎖コードDNA:SEQ ID NO: 24
Gaggtgaaactgcaggagtcaggacctggcctggtggcgccctcacagagcctgtccgtcacatgcactgtctcaggggtctcattacccgactatggtgtaagctggattcgccagcctccacgaaagggtctggagtggctgggagtaatatggggtagtgaaaccacatactataattcagctctcaaatccagactgaccatcatcaaggacaactccaagagccaagttttcttaaaaatgaacagtctgcaaactgatgacacagccatttactactgtgccaaacattattactacggtggtagctatgctatggactactggggccaaggaacctcagtcaccgtctcctca
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023516538000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニバーサルヒトCAR-T細胞を精製する方法であって、
(i)遺伝子編集技術によって前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞におけるTRACゲノム領域及びB2Mゲノム領域を破壊するステップと、
(ii)次に、TCRα/βを標的とするmRNAを、ステップ(i)の遺伝子編集後の前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞に導入するステップとを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記TCRα/βを標的とするmRNAを一過性トランスフェクションにより前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞に導入する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法で得られた細胞集団を、適切な時間、インビトロで培養して、前記TCRα/β陽性細胞を除去するステップをさらに含
前記適切な時間は、好ましくは、4~8日間、より好ましくは、5~7日間、最も好ましくは6日間である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記TRACゲノム領域は、ヒト14番染色体の23016448位から23016490位までのゲノム領域を含み、且つ前記B2Mゲノム領域は、ヒト15番染色体の45003745位から45003788位までのゲノム領域を含む、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記TCRα/βを標的とするmRNAにコードされるのは、抗TCRα/βのscFv分子であり、
抗TCRα/βのscFv分子の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:19(QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK)に示すとおりであり、
抗TCRα/βのscFv分子の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:20(EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSA)に示すとおりであ
好ましくは、scFv分子の軽鎖可変領域とscFv分子の重鎖可変領域とは、(G)n(S)mを含むアミノ酸配列であるリンカーを介して連結され、ここで、nは1~20の正の整数であり、mは1~10の正の整数であり、
より好ましくは、前記リンカーの配列は、SEQ ID NO:21に示される配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSであり、
さらに好ましくは、前記TCRα/βを標的とするmRNAにコードされるアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示される配列QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELKGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSAである、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記TRACゲノム領域及び前記B2Mゲノム領域は、相同組換え、ジンクフィンガーヌクレアーゼの遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術又はCRISPR/Cas遺伝子編集技術のいずれかの遺伝子編集技術により破壊され、
好ましくは、前記遺伝子編集技術は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(i)TRACゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)をT細胞に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成し、及び/又は、
(ii)B2Mゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)をT細胞に導入して、前記B2Mゲノム領域の編集を達成
好ましくは、(i)前記TRACゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)は、SEQ ID NO:2~5から選択されるいずれか1つの配列を有し、
(ii)前記B2Mゲノムを標的とするガイドRNA(sgRNA)は、SEQ ID NO:6~13から選択されるいずれか1つの配列を有し、
さらに好ましくは、(i)前記TRACゲノムをコードするsgRNAとCas9をコードするヌクレオチドを前記T細胞に共同又は別々に導入して前記TRACゲノム領域の編集を達成し、及び/又は、
(ii)前記B2MゲノムをコードするsgRNA及びCas9をコードするヌクレオチドを前記T細胞に共同又は別々に導入して、前記B2Mゲノム領域の編集を達成する、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記sgRNAは、化学修飾され、
好ましくは、前記化学修飾は、2’-O-メチル類縁体修飾又はヌクレオチド間3’チオ修飾を含み、
さらに好ましくは、前記化学修飾は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/又は3つの塩基及び/又は3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体修飾である、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記sgRNAを、Cas9をコードするヌクレオチド配列とともに電気穿孔方式により該T細胞に導入
好ましくは、前記電気穿孔方式の条件は、150~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;及び250V、0.5msのいずれかから選択される、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記TRACゲノム領域及び前記B2Mゲノム領域がそれぞれノックアウトされる効率は、90%以上であり、同時にノックアウトされる効率は、75%以上である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法で得られた細胞集団において、TCR陰性細胞の比率が全CAR-T細胞の98%又は99%以上を占める、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
精製されたユニバーサルヒトCAR-T細胞であって、
(i)前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞におけるTRACゲノム領域とB2Mゲノム領域は、遺伝子編集により破壊されており、
(ii)前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞には、TCRα/βを標的とするmRNAが導入され、
好ましくは、前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞は、TCRα/β、クラスIHLAタンパク質、PD-1、TIM3、及びLAG3から選択される1つ又は複数のタンパク質が、低レベルで発現され、又は発現されていない、ことを特徴とするユニバーサルヒトCAR-T細胞。
【請求項13】
請求項12に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞を含む生物製品であって、
好ましくは、前記生物製品は98%又は99%以上の前記ユニバーサルヒトCAR-T細胞がTCR陰性である、ことを特徴とする生物製品
【請求項14】
被験者の疾患を治療するための医薬の製造における請求項12に記載のユニバーサルヒトCAR-T細胞又は請求項13に記載の生物製品の使用。
【請求項15】
前記疾患は、腫瘍であ
好ましくは、前記腫瘍は、血液系腫瘍であり、さらに好ましくは、前記腫瘍は、リンパ腫又は白血病である、ことを特徴とする請求項14に記載の使用
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
一態様では、本発明は、遺伝子編集されたT細胞及び/又はCAR-T細胞を精製して99%のTCRα/β陰性のユニバーサルCAR-T細胞を得る方法に関する。いくつかの実施形態では、TCRα/βを標的とし、TCRα/β陽性細胞を除去する効果を有する前記mRNAが翻訳された後に発現するタンパク質配列は、QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSATSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK(SEQ ID NO: 19);EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYKFTSYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDVTKYNEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVHYCARGSYYDYDGFVYWGQGTLVTVSA(SEQ ID NO: 20)であり、
リンカー(Linker)配列は、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO: 21)である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0147
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0147】
HISCRIBE TM T7 ARCA mRNA Kit(with Tailing)(メーカー:NEB、品番:cat#E2060S)により調製されたCas9 mRNA及び合成されたsgRNA(TRAC配列を標的とするsgRNA:GCUGGUACACGGCAGGGUCA、SEQ ID NO: 2、B2M配列を標的とするsgRNA:GAGUAGCGCGAGCACAGCUA、SEQ ID NO: 7)を使用し、T細胞とRNAを混合し、その最終濃度を100μLあたり、2.5×10個の細胞と8μgのRNA(Cas9 mRNA とsgRNAをそれぞれ4μg)を含有する最終濃度とした後、電気穿孔装置BTX Agile pμlse MAXを利用してRNAを細胞に導入した後に培養した。5日目まで培養する時、HISCRIBE TM T7 ARCA mRNA Kit(with Tailing)(メーカー:NEB、品番:cat#E2060S)で調製されたTCRα/βを標的とするmRNA
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
SEQ ID NO: 25、ここで、下線部は、リンカー(linker)配列である)をCAR-T細胞と混合し、その最終濃度を200μlあたりに2×10個の細胞を含有し、次に電気穿孔装置BTX Agile pμlse MAXを用いてRNAを細胞に導入した後、該細胞と該mRNAが電気穿孔されていない細胞を1:2の細胞数で混合培養した。毎日に細胞の成長状況を観察し、一日おきに細胞をカウントして補液を行った。図1に示すように、細胞が増幅培養過程における生存率を監視し、TCRα/βを標的とするmRNAを添加した後、後期の細胞生存率が低く、細胞がTCRα/β陽性のT細胞を自己殺傷させることができるためであるが、培養時間の増加に伴い、細胞生存率は、他の2群に比べて明らかな差がなかった。図2は、細胞が14日培養された増幅倍数を示した。CARを添加した細胞が自己殺傷するため、増殖倍率は他の対照群よりも低かった。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023516538000001.app
【国際調査報告】