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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】工具ホルダのクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/26 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
B23B31/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548930
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021052364
(87)【国際公開番号】W WO2021165028
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20157695.6
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワスタールンド, ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】マトリック, グンナル
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032KK06
(57)【要約】
工具ホルダシャンク(91)を解放可能に保持するためのクランプ装置であって、-ハウジング(2)と、-ハウジング内のボア(3)内で軸方向に移動可能な引張棒(5)と、-引張棒の影響下で移動可能で、工具ホルダシャンクとロック係合する係合部材(20)と、-ボア内に回転可能に配置された作動部材(14)とを備える、クランプ装置。作動部材が回転すると、作動部材に固定的に接続された運動伝達要素(50)の接触面が、引張棒に固定的に接続された別の運動伝達要素(40)の接触面を押圧することによって、引張棒の軸方向移動を達成する。前記接触面の少なくとも1つは、相互に異なるピッチを有する2つのセクションを備え、それにより、第1の回転方向に回転したときの作動部材の同じ角度変位により、回転移動の第1の段階における引張棒の軸方向移動は、その最終段階におけるよりも長くなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具ホルダシャンクを解放可能に保持するためのクランプ装置であって、前記クランプ装置(1)は、
-前端部(2a)と、後端部(2b)と、前記前端部と交差し、前記前端部から後方に延びるボア(3)とを有するハウジング(2)であって、前記工具ホルダシャンク(91)を受けるための取付部分(10)が、前記ボア(3)の前端部に設けられる、ハウジング(2)と、
-前進解放位置と後退ロック位置との間でその長手方向軸(L)に沿って前記ボア内で往復移動可能であるように、前記ボア(3)の内部に摺動可能に取り付けられた引張棒(5)と、
-前記引張棒(5)の周りで前記引張棒(5)の前端部に配置された係合部材(20)であって、前記係合部材(20)は、前記引張棒(5)が前記前進解放位置から前記後退ロック位置へ移動する影響下で、前記係合部材(20)により前記工具ホルダシャンク(91)が前記ボア(3)の前記取付部分(10)に出入りすることが可能になる第1の位置から、前記係合部材(20)が前記工具ホルダシャンク(91)とロック係合し、前記工具ホルダシャンク(91)を前記ハウジング(2)に固定したままにする第2の位置まで移動可能である、係合部材(20)と
を備え、
-前記クランプ装置(1)は、前記長手方向軸(L)を中心に回転可能であるように前記ボア(3)内に回転可能に配置された作動部材(14)を備え、前記作動部材(14)は、前記ハウジング(2)に対して軸方向に固定され、それにより、前記長手方向軸(L)に沿って移動するのを防止されることと、
-前記クランプ装置(1)は、前記ハウジング(2)の内部に配置された運動伝達機構を備え、前記運動伝達機構は、前記ハウジング(2)に対する第1の回転方向(D1)への前記作動部材(14)の回転移動を、前記前進解放位置から前記後退ロック位置への前記引張棒(5)の軸方向移動に伝達するように構成されることと、
-前記運動伝達機構が、
・前記引張棒と共に前記長手方向軸(L)に沿って移動可能であるように前記引張棒(5)に固定されるか又は固定的に接続され、前記ハウジングの前記前端部(2a)に面する第1の受圧接触面(41)が設けられた第1の運動伝達要素(40)と、
・前記作動部材と共に前記ハウジング(2)及び前記引張棒(5)に対して回転可能であるように前記作動部材(14)に固定され、前記第1の受圧接触面(41)に接触するために前記ハウジングの前記後端部(2b)に面する第1の加圧接触面(51)が設けられた第2の運動伝達要素(50)であって、前記第1の加圧接触面(51)は、前記作動部材(14)が前記第1の回転方向(D1)に回転するときに前記第1の受圧接触面(41)に対して摺動及び押圧することによって前記引張棒(5)を前記前進解放位置から前記後退ロック位置に押圧するように構成される、第2の運動伝達要素(50)と
を備えることと、
-前記接触面(41、51)のうちの少なくとも1つは、関連する前記運動伝達要素(40、50)に沿って異なる位置に配置された第1の接触面セクション(41a、51a)及び第2の接触面セクション(41b、51b)を備え、それにより、前記作動部材(14)が前記第1の回転方向(D1)に移動すると、前記第1の接触面セクション(41a、51a)は、前記移動の第1の段階中に他方の接触面(51、41)に対して摺動するように構成され、前記第2の接触面セクション(41b、51b)は、前記移動の最終段階中に前記他方の接触面(51、41)に対して摺動するように構成され、前記第1の接触面セクション(41a、51a)は第2の接触面セクション(41b、51b)よりも大きなピッチを有し、それにより、前記ハウジング(2)に対する前記第1の回転方向(D1)の回転に関連する前記作動部材(14)の同じ角度変位は、前記第1の段階において、前記最終段階よりも大きい前記引張棒(5)の軸方向移動をもたらすことと
を特徴とする、クランプ装置。
【請求項2】
前記ピッチは前記第2の接触面セクション(41b、51b)に沿って一定であることを特徴とする、請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記ピッチは前記第1の接触面セクション(41a、51a)に沿って一定であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記第2の接触面セクション(41b、51b)は、前記第2の接触面セクション(41b、51b)が前記第1の接触面セクション(41a、51a)の直後に続くように、関連する前記運動伝達要素(40、50)上で前記第1の接触面セクション(41a、51a)に隣接するように位置決めされることを特徴とする、請求項3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記第2の接触面セクション(41b、51b)は、前記作動部材(14)並びに前記第1及び前記第2の運動伝達要素(40、50)の影響下で前記引張棒が前記後退ロック位置に押し込まれたときに、前記第1及び前記第2の運動伝達要素(40、50)が前記作動部材(14)を前記引張棒(5)に対して自己ロック回転位置に保つようなピッチを有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記第1の受圧接触面(41)は、そのような第1及び第2の接触面セクション(41a、41b)を備えることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記第1の加圧接触面(51)は、そのような第1及び第2の接触面セクション(51a、51b)を備えることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記第1の加圧接触面(51)の前記第1の接触面セクション(51a)は、前記第1の回転方向(D1)への前記作動部材(14)の前記回転移動の前記第1の段階中に、前記第1の受圧接触面(41)の前記第1の接触面セクション(41a)に対して摺動及び押圧するように構成され、前記第1の加圧接触面(51)の前記第2の接触面セクション(51b)は、この回転移動の前記最終段階中に、前記第1の受圧接触面(41)の前記第2の接触面セクション(41b)に対して摺動及び押圧するように構成されることを特徴とする、請求項6と組み合わせた請求項7に記載のクランプ装置。
【請求項9】
-前記第1の加圧接触面(51)の前記第1の接触面セクション(51a)は、前記第1の受圧接触面(41)の前記第1の接触面セクション(41a)と同じピッチを有することと、
-前記第1の加圧接触面(51)の前記第2の接触面セクション(51b)は、前記第1の受圧接触面(41)の前記第2の接触面セクション(41b)と同じピッチを有することと
を特徴とする、請求項8に記載のクランプ装置。
【請求項10】
前記第1及び前記第2の運動伝達要素(40、50)は、互いにねじ係合して配置された2つのねじ山の一部を形成し、前記接触面(41、51)はねじ面の形態を有することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項11】
-前記第1の運動伝達要素(40)は、前記引張棒(5)に固定されたシャフト(15、15’)の包絡面上に外部突起の形態を有することと、
-前記作動部材(14)はスリーブ形状であり、前記シャフト(15、15’)を取り囲み、前記第2の運動伝達要素(50)は前記作動部材(14)上に内部突起の形態を有することと
を特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項12】
前記運動伝達機構は、前記第1の回転方向(D1)とは反対の第2の回転方向(D2)への前記作動部材(14)の回転移動を、前記後退ロック位置から前記前進解放位置への前記引張棒(5)の軸方向移動に伝達するように構成されることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項13】
-前記第1の運動伝達要素(40)には、前記ハウジングの前記後端部(2b)に面する第2の受圧接触面(42)が設けられることと、
-前記運動伝達機構は、前記作動部材と共に前記ハウジング(2)に対して回転可能であるように前記作動部材(14)に固定され、前記第2の受圧接触面(42)に接触するために前記ハウジングの前記前端部(2a)に面する第2の加圧接触面(62)が設けられた第3の運動伝達要素(60)を備え、前記第2の加圧接触面(62)は、前記作動部材(14)が前記第2の回転方向(D2)に回転するときに前記第2の受圧接触面(42)に対して摺動及び押圧することによって、前記引張棒(5)を前記後退ロック位置から前記前進解放位置に押圧するように構成されることと
を特徴とする、請求項12に記載のクランプ装置。
【請求項14】
前記第2の受圧接触面(42)は、前記第1の運動伝達要素(40)に沿って異なる位置に配置された第1の接触面セクション(42a)及び第2の接触面セクション(42b)を備え、それにより、前記作動部材(14)が前記第2の回転方向(D2)に移動すると、前記第2の加圧接触面(62)は、この移動の第1の段階中に前記第2の受圧接触面(42)の前記第1の接触面セクション(42a)に対して、及びこの移動の最終段階中に前記第2の受圧接触面(42)の前記第2の接触面セクション(42b)に対して摺動して押圧するように構成され、前記第2の受圧接触面(42)の前記第1の接触面セクション(42a)は、前記第2の受圧接触面(42)の前記第2の接触面セクション(42b)よりも小さいピッチを有し、それにより、前記作動部材(14)の前記ハウジング(2)に対する前記第2の回転方向(D2)への回転に関連する同じ角度変位が、この回転移動の前記最終段階において、この回転移動の前記第1の段階よりも大きい前記引張棒(5)の軸方向移動をもたらすことを特徴とする、請求項13に記載のクランプ装置。
【請求項15】
前記運動伝達機構は、そのような運動伝達要素の2つ以上のセットを備え、各セットは、第1の運動伝達要素(40)及び関連する第2の運動伝達要素(50)を備え、これらのセットは、前記作動部材(14)の周方向に互いに離間していることを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダを工作機械に接続するために使用されるように意図された、請求項1の前文に記載のクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属切削のための工作機械の分野では、金属材料の加工片を機械加工するために使用される、例えばドリル、ミリング工具又は旋盤工具の形態の切削工具は、工具ホルダに固定されることが多く、工具ホルダは工作機械に取り付けられるクランプ装置に取り外し可能に固定される場合がある。そのような工具ホルダのシャンクを、ハウジング内に配置されたクランプ機構によってクランプ装置のハウジングにクランプすることが、従来知られている。ドリル及びミリング工具の形態の切削工具用の工具ホルダは、通常、スピンドルの形態の回転可能なハウジングにクランプされるが、旋盤工具用の工具ホルダは、回転不能に配置されたハウジングにクランプされる場合がある。切削工具を交換する必要があるとき、工具ホルダはクランプ装置のハウジングから解放され、別の切削工具を有する新しい工具ホルダがハウジングにクランプされる。このタイプのクランプ装置は、例えば、工作機械に含まれる工具タレットの周囲に着脱可能に固定される場合がある。
【0003】
上述のタイプの多くの従来知られているクランプ装置は、工具ホルダのクランプ又は解放を行うために手動操作を必要とする。自動工具交換動作に適合されたクランプ装置も存在し、例えば、クランプ機構の状態を制御するために油圧ピストンが使用される。しかしながら、そのような自動的に動作するクランプ機構は、通常はかなりかさばり、特に長手方向に多くの空間を必要とし、そのため、クランプ装置に利用可能な軸方向空間が制限されている工作機械の工具タレットでの使用には適さない。
【0004】
自動工具交換動作に適合されたクランプ機構を有するスピンドルの形態のハウジングを備えるクランプ装置は、欧州特許第1468767号明細書から従来知られている。欧州特許第1468767号明細書によるクランプ装置では、第1の引張棒の形態の作動部材が、スピンドルの内部に摺動可能に取り付けられ、引張棒の間に配置されたいくつかの協働するくさびを備える力増幅機構を介して、第2の引張棒の軸方向変位をもたらすように構成される。スピンドルの内部のガスばねが、2つの引張棒を、工具ホルダがスピンドルにクランプされる後退ロック位置に付勢するように構成され、油圧ピストンが、ガスばねの後端部のピストンに作用して、工具ホルダがスピンドルから解放され得る前進解放位置への2つの引張棒の変位を達成するように構成されてもよい。しかしながら、この従来知られているクランプ装置は、比較的長い軸方向範囲を有し、したがって、クランプ装置に利用可能な軸方向空間が制限されている工具タレットの周囲に工具ホルダが着脱可能に固定される場合に、このタイプのクランプ装置を使用するのには適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規の有利な設計を有し、工作機械の工具タレットと共に使用するのに適した上述のタイプのクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、前記目的は、請求項1に定義された特徴を有するクランプ装置によって達成される。
【0007】
本発明によるクランプ装置は、
-前端部と、後端部と、前記前端部と交差し、前記前端部から後方に延びるボアとを有するハウジングであって、前記工具ホルダシャンクを受けるための取り付け部分が、前記ボアの前端部に設けられる、ハウジングと、
-前進解放位置と後退ロック位置との間でその長手方向軸に沿って前記ボア内で往復移動可能であるように、前記ボアの内部に摺動可能に取り付けられた引張棒と、
-前記引張棒の前端部において前記引張棒の周りに配置された係合部材であって、前記係合部材は、前記引張棒が前記前進解放位置から前記後退ロック位置に移動する影響下で、前記係合部材により前記工具ホルダシャンクが前記ボア前記取付部分に出入りすることが可能になる第1の位置から、前記係合部材が前記工具ホルダシャンクとロック係合し、前記工具ホルダシャンクを前記ハウジングに固定したままにする第2の位置まで移動可能である、係合部材と、
-前記長手方向軸を中心に回転可能であるように前記ボア内に回転可能に配置された作動部材であって、前記長手方向軸に沿って移動することが防止されるように前記ハウジングに対して軸方向に固定される、作動部材と、
-前記ハウジングの内部に配置された運動伝達機構であって、前記ハウジングに対する第1の回転方向における前記作動部材の回転移動を、前記前進解放位置から前記後退ロック位置への前記引張棒の軸方向移動に伝達するように構成された運動伝達機構と
を備える。
【0008】
上述の運動伝達機構は、
-前記引張棒と共に前記長手方向軸に沿って移動可能であるように前記引張棒に固定されるか又は固定的に接続され、前記ハウジングの前端部に面する第1の受圧接触面が設けられる第1の運動伝達要素と、
-前記作動部材と共に前記ハウジング及び前記引張棒に対して回転可能であるように作動部材に固定され、前記第1の受圧接触面に接触するために前記ハウジングの前記後端部に面する第1の加圧接触面が設けられる第2の運動伝達要素であって、前記第1の加圧接触面は、前記作動部材が前記第1の回転方向に回転されるときに前記第1の受圧接触面に対して摺動及び押圧することによって前記引張棒を前記前進解放位置から前記後退ロック位置に押圧するように構成される、第2の運動伝達要素と
を備える。
【0009】
引張棒の軸方向移動を制御するために上述の作動部材及び運動伝達機構を使用することにより、引張棒の軸方向移動を制御するために軸方向に多くの空間を占めるガスばね又は類似物が必要とされず、軸方向においてクランプ装置を省スペースにすることができることを意味する。したがって、このクランプ装置は、工具タレットでの使用に適している。
【0010】
本発明によれば、上述の接触面のうちの少なくとも1つ、すなわち第1の受圧接触面及び第1の加圧接触面の少なくとも1つは、関連する運動伝達要素に沿って異なる位置に配置された第1の接触面セクション及び第2の接触面セクションを備え、それにより、作動部材が第1の回転方向に移動すると、第1の接触面セクションは、移動の第1の段階中に他方の接触面に対して摺動するように構成され、ここで、第2の接触面セクションは、移動の最終段階中に他方の接触面に対して摺動するように構成され、第1の接触面セクションは第2の接触面セクションよりも大きいピッチを有し、それにより、ハウジングに対する第1の回転方向の回転に関連する作動部材の同じ角度変位は、前記第1の段階において、前記最終段階よりも大きな引張棒の軸方向移動をもたらす。これにより、引張棒は、より大きなピッチの影響下で、クランプの初期段階中に軸方向に迅速に移動することができる。この初期クランプ段階は、大きな力を必要としない。しかしながら、クランプの最終段階は、より大きな力を必要とする。実際のクランプが行われると、すなわち、係合部材が上述の第2の位置をとると、引張棒は、より小さなピッチの影響下で軸方向に移動し、それにより、引張棒の軸方向移動は、作動部材の角度変位と比較して小さくなり、その結果、「出力ブースト」とも呼ばれる力増幅効果が生じる。引張棒の初期軸方向移動により大きなピッチを使用することにより、作動部材のかなり小さな角度変位で、前進解放位置から後退ロック位置への引張棒の軸方向移動全体を達成することが可能になる。
【0011】
クランプ装置の上述のハウジングは、回転可能なスピンドルの形態を有する場合があり、工作機械の工具タレット内の駆動機構に接続される又は接続可能である場合がある。しかしながら、本発明のクランプ装置は、工具タレットでの使用に限定されず、回転可能なスピンドルの形態のそのようなハウジングは、代替として、工作機械の主スピンドルを構成するか、又は中間工具タレットなしでそのような主軸に接続されてもよい。ハウジングが回転可能なスピンドルの形態を有する場合、クランプ装置は、ドリル若しくはミリング工具又は他のタイプの回転工具が設けられた工具ホルダをクランプするために使用される場合がある。本発明のクランプ装置に含まれるハウジングは、さらなる代替として、回転不能なハウジングであってもよい。後者の場合、クランプ装置は、旋盤工具又は他のタイプの非回転工具が設けられた工具ホルダをクランプするために使用されてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、ピッチは、前記第2の接触面セクションに沿って一定である。ピッチはまた、好ましくは、前記第1の接触面セクションに沿っても一定であるが、当然、第2の接触面セクションのピッチよりも大きい。第1の接触面セクションに沿った一定の第1のピッチ及び/又は第2の接触面セクションに沿った一定の第2のピッチを使用することで、運動伝達要素の製造が容易になる。しかしながら、代替として、第1の接触面セクション及び/又は第2の接触面セクションは、問題の接触面セクションに沿って変化するピッチを有してもよい。
【0013】
前記第2の接触面セクションは、好ましくは、第2の接触面セクションが第1の接触面セクションの直後に続くように、前記第1の接触面セクションに隣接する関連する運動伝達要素上に位置決めされる。しかしながら、代替として、第1及び第2の接触面セクションのピッチから逸脱する一定又は変化するピッチを有する1つ又は複数の中間接触面セクションが、問題の運動伝達要素上の第1及び第2の接触面セクション間に設けられてもよい。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、前記第2の接触面セクションは、引張棒が作動部材並びに第1及び第2の運動伝達要素の作用下で後退ロック位置に押し込まれたときに、第1及び第2の運動伝達要素が作動部材を引張棒に対して自己ロック回転位置に保つようなピッチを有する。これにより、引張棒を、アクチュエータからの外力を必要とせずに後退ロック位置に保持することができ、このことは、作動部材が、工具交換動作に関連して、例えば油圧アクチュエータの形態のアクチュエータからの外力を受けるのみでよいことを意味する。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、運動伝達機構は、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向への作動部材の回転移動を、後退ロック位置から前進解放位置への引張棒の軸方向移動に伝達するように構成される。これにより、作動部材はまた、工具交換動作に関連して、引張棒を後退ロック位置から前進解放位置に移動させるために使用されてもよい。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、運動伝達機構は、そのような運動伝達要素の2つ以上のセットを備え、各セットは、第1の運動伝達要素及び関連する第2の運動伝達要素を備え、これらのセットは、作動部材の周方向に互いに離間している。前記セットは、好ましくは、作動部材の周方向に均等に分配される。これにより、良好な力分布を有するバランスのとれたクランプ装置が得られる。
【0017】
本発明によるクランプ装置のさらなる有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項から明らかになるであろう。
【0018】
以下、添付図面を参照して、実施例として挙げた本発明の実施形態を具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるクランプ装置及び工具ホルダを通る長手方向断面図であり、クランプ装置の引張棒は後退ロック位置にあり、工具ホルダはクランプ装置のハウジングにクランプされている。
図2図1に示すクランプ装置及び工具ホルダの側面図である。
図3図2の線III-IIIによる断面図である。
図4】引張棒が前進解放位置に示されている、図1に対応する長手方向断面図である。
図5図4に示すクランプ装置及び工具ホルダの側面図である。
図6図5の線VI-VIによる断面図である。
図7図1のクランプ装置及び工具ホルダの分解図である。
図8図1のクランプ装置及び工具ホルダの別の方向からの分解図である。
図9図1のクランプ装置の部分切断斜視図である。
図10図1のクランプ装置に含まれる構成要素の側面図である。
図11図1のクランプ装置に含まれる作動部材の一部の側面図である。
図12】本発明の別の実施形態によるクランプ装置及び工具ホルダの斜視図である。
図13】クランプ装置のアクチュエータベーンが第1の位置に示されている、図12のクランプ装置の断面図である。
図14図13の線XIV-XIVによるクランプ装置の一部の長手方向断面図である。
図15図13に対応する断面図であるが、アクチュエータベーンが第2の位置に示されている。
図16図15の線XVI-XVIによるクランプ装置の一部の長手方向断面図である。
図17図12のクランプ装置及び工具ホルダの分解図である。
図18図17では組み立てられた状態で示されている部分の分解図である。
図19図12のクランプ装置及び工具ホルダの別の方向からの分解図である。
図20図18に対応するが別の方向から見た分解図である。
図21図12のクランプ装置の部分切断斜視図である。
図22図12のクランプ装置に含まれる構成要素の側面図である。
図23図12のクランプ装置に含まれる作動部材の一部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の異なる実施形態によるクランプ装置1が図1図23に示されている。クランプ装置1は、工具ホルダ90(図面では非常に概略的に示されている)をクランプ装置のハウジング2に解放可能にクランプし、工具ホルダ90に固定された切削工具(図示せず)による加工片の機械加工を可能にするように構成される。
【0021】
ハウジング2は、前端部2aと、後端部2bと、前端部2aと交差し、前端部2aから後方に延びるボア3とを有する。したがって、ボア3は、ハウジングの前端部2aにおいて入口開口3aを有する。
【0022】
図1図11に示す実施形態では、ハウジング2は機械スピンドルの形態を有し、このスピンドル形状のハウジング2は、転がり軸受によって周囲のケーシング内に回転可能に取り付けられてもよい。この場合、ハウジング2は、ハウジング2が駆動機構によって回転駆動されることを可能にするために、工作機械の駆動機構、例えば工作機械の工具タレット内の駆動機構に接続可能であってもよい。
【0023】
図12図23に示す実施形態では、ハウジング2は回転不能なハウジングとして設計されている。この場合、ハウジング2は、その後端部においてハウジング2から延びる接続部材4を介して工作機械の工具タレットに接続可能である。
【0024】
引張棒5は、前進解放位置(図4及び図16参照)と後退ロック位置(図1及び図14参照)との間で、ボア3内でその長手方向軸Lに沿って往復移動可能であるように、ボア3の内部に摺動可能に取り付けられる。引張棒5は、ボア3の入口開口3aに面する前端部と、反対側の後端部とを有する。引張棒5の前端部には、ヘッド部分6及びネック部分7が設けられる。ヘッド部分6は、引張棒の長手方向に見てネック部分7の前方に位置し、ヘッド部分6は、ヘッド部分6の後ろ向き傾斜面8を介してネック部分7に接続される。引張棒5とボア3の内面との間にシールリング9が配置される。図示の例では、このシールリング9は、引張棒5の外側の溝に受けられる。
【0025】
ボア3の前端部には、工具ホルダ90の取付シャンク91を受けるための取付部分10が設けられる。この取付シャンク91は、ここでは工具ホルダシャンクと呼ばれる。
【0026】
図12図23に示す実施形態では、ハウジング2は、ベース部12と、ハウジングの前端部2aでベース部12に取り付けられたエンドピース13とを備える。エンドピース13は、上述のボア3の一部を形成する軸方向貫通孔を有するスリーブの形態を有する。この場合、上述の取付部分10は、エンドピース13内に位置する。
【0027】
図1図11に示す実施形態では、ボア3を収容するハウジング2の部分は、上述のタイプのエンドピース13なしで一体に形成される。
【0028】
工具ホルダシャンク91は、ハウジング2の前端部2aの入口開口3aを介して、ボア3の取付部分に挿入可能である。引張棒のヘッド部分6は、工具ホルダシャンク91内の係合ボア92内に受けられ、工具ホルダシャンクの管状壁93は、ヘッド部分6とボア3の内面との間の空間内に受けられる。図示の実施形態では、ボア3の取付部分10は、円錐形状であり、同様の形状の工具ホルダシャンク91を受けるように適合された幾分「三角形」又は多角形の非円形断面形状を有する。円錐形状は、工具ホルダシャンク91とハウジング2との間の半径方向及び軸方向の遊びのない接続を保証し、一方、非円形断面は、工具ホルダシャンク91のハウジング2への回転不能な固定を保証する。しかしながら、ボア3の取付部分10はまた、他のタイプの工具ホルダシャンクを受けるための任意の他の適切な形状を有してもよい。
【0029】
セグメントの形態の係合部材20は、引張棒5の前端部において引張棒5の周りに配置される。引張棒5の前進解放位置から後退ロック位置への移動の影響下で、係合部材20は、係合部材20により工具ホルダシャンク91がボア3の取付部分に出入りすることが可能になる第1の位置(図4及び図16参照)から、係合部材20が工具ホルダシャンク91の係合ボア92内の係合溝94とロック係合し、それによって工具ホルダシャンク91をハウジング2に固定したままにする第2の位置(図1及び図14参照)まで移動可能である。
【0030】
図示の実施形態では、係合部材20は、引張棒5のネック部分7の周りに配置され、ボア3内に配置されてネック部分7を取り囲むリテーナリング21及び弾性Oリング22によってネック部分の周りの定位置に保持される。各係合部材20は、リテーナリング21の内側溝に係合する外向きフランジ部分23を有する。Oリング22は、各係合部材20の後端部において外向きの溝に受けられる。圧縮ばね24もまた、ボア3内に配置され、引張棒5を取り囲むように構成される。圧縮ばね24は、図1図11に示す実施形態では、引張棒5の肩部とスラストリング25との間に取り付けられ、図12図23に示す実施形態では、引張棒5の肩部とリテーナリング21との間に取り付けられる。圧縮ばね24は、リテーナリング21及び係合部材20を前方に付勢するように構成される。図1図11に示す実施形態では、ボア3の入口開口に向かうリテーナリング21の前方移動は、ボア3の内面の溝に取り付けられた停止リング26によって制限される。図12図23に示す実施形態では、ボア3の入口開口に向かうリテーナリング21の前方移動は、エンドピース13の内側端面の肩部によって制限される。
【0031】
各係合部材20には、その前端部に、係合部材20が上述の第2の位置にあるときに工具ホルダシャンク91の係合溝94と係合するように構成された外向き係合フランジ27が設けられる。引張棒5が前進解放位置にあるとき、図4及び図16に示すように、係合部材20の前端部は、引張棒5のヘッド部分6の背後に位置し、係合フランジ27は、工具ホルダシャンク91の係合溝94との係合から外れている。引張棒5がボア3内でその長手方向軸Lに沿って軸方向後方に移動すると、引張棒のヘッド部分6の傾斜面8は、係合部材20の前端と接触し、係合部材20の前端部は、この傾斜面8上を摺動して外向きに押圧され、それにより、係合部材の係合フランジ27は工具ホルダシャンク91の係合溝94と係合し、その後、工具ホルダシャンク91は、引張棒5によって引っ張られて、上述の取付部分10においてハウジング2の内面と堅固に接触する。
【0032】
クランプ装置1は、作動部材14をさらに備え、作動部材14は、長手方向軸Lを中心として引張棒5及びハウジング2に対して回転可能であるようにボア3内に回転可能に配置され、長手方向軸Lに沿ってハウジング2に対して移動するのが防止されるようにハウジング2に対して軸方向に固定される。作動部材14は、引張棒5と同心である。
【0033】
運動伝達機構は、ハウジング2の内部に配置され、ハウジング2に対する第1の回転方向D1への作動部材14の回転移動を、前進解放位置から後退ロック位置への引張棒5の軸方向移動に伝達するように構成される。この運動伝達機構は、
-引張棒と共に長手方向軸Lに沿って移動可能であるように引張棒5に固定されるか又は固定的に接続され、ハウジングの前端部2aに面する第1の受圧接触面41が設けられた第1の運動伝達要素40と、
-作動部材と共にハウジング2及び引張棒5に対して回転可能であるように作動部材14に固定され、第1の受圧接触面41に接触するためにハウジングの後端部2bに面する第1の加圧接触面51が設けられた第2の運動伝達要素50と
を備える。
【0034】
第1の加圧接触面51は、作動部材14が第1の回転方向D1に回転するときに、第1の受圧接触面41に対して摺動及び押圧することにより、引張棒5を前進解放位置から退避ロック位置に押圧するように構成される。
【0035】
第1の受圧接触面41は、第1の運動伝達要素40に沿って異なる位置に配置された第1の接触面セクション41a及び第2の接触面セクション41bを備える。第1の加圧接触面51は、第2の運動伝達要素50に沿って異なる位置に配置された第1の接触面セクション51a及び第2の接触面セクション51bを備える。作動部材14が第1の回転方向D1に移動すると、第1の加圧接触面51の第1のセクション51aは、移動の第1の段階中に第1の受圧接触面41の第1のセクション41aに対して摺動及び押圧するように構成され、第1の加圧接触面51の第2のセクション51bは、移動の最終段階中に第1の受圧接触面41の第2のセクション41bに対して摺動及び押圧するように構成される。第1の受圧接触面41の第1のセクション41aは、第1の受圧接触面41の第2のセクション41bよりもピッチが大きい。同様に、第1の加圧接触面51の第1のセクション51aは、第1の加圧接触面51の第2のセクション51bよりもピッチが大きい。これにより、ハウジング2に対する第1の回転方向D1の回転に関連する作動部材14の同じ角度変位は、前記第1の段階において、前記最終段階よりも大きな、長手方向軸Lに沿った引張棒5の軸方向移動をもたらす。第1の受圧接触面41の第1のセクション41aのピッチは、好ましくは、第1の受圧接触面41の第2のセクション41bのピッチの5~8倍程度の大きさであり、第1の加圧接触面51の第1のセクション51aのピッチは、好ましくは、第1の加圧接触面51の第2のセクション51bのピッチの5~8倍程度n大きさである。
【0036】
第1の加圧接触面51の第1のセクション51aは、好ましくは、第1の受圧接触面41の第1のセクション41aと同じピッチを有する。同様に、第1の加圧接触面51の第2のセクション51bは、好ましくは、第1の受圧接触面41の第2のセクション41bと同じピッチを有する。
【0037】
図示の実施形態では、ピッチは、第1の受圧接触面41の第1のセクション41aに沿って一定であり、第1の受圧接触面41の第2のセクション41bに沿っても一定であるが、より小さい。図示の実施形態では、ピッチはまた、第1の加圧接触面51の第1のセクション51aに沿って一定であり、第1の加圧接触面51の第2のセクション51bに沿っても一定であるが、より小さい。しかしながら、ピッチは、代替として、第1の受圧接触面41の上述のセクション41a、41bの一方又は両方に沿って、及び第1の加圧接触面51の上述のセクション51a、51bの一方又は両方に沿って変化してもよい。
【0038】
図示の実施形態では、第1の受圧接触面41の第1及び第2のセクション41a、41bは、第2のセクション41bが第1のセクション41aの直後に続くように、第1の運動伝達要素40上で互いに隣接するように位置決めされる。同様に、第1の加圧接触面51の第1及び第2のセクション51a、51bは、第2のセクション51bが第1のセクション51aの直後に続くように、第2の運動伝達要素50上で互いに隣接するように位置決めされる。しかしながら、代替として、第1の受圧接触面41は、第1の運動伝達要素40上で、第1の受圧接触面41の第1のセクション41aと第2のセクション41bとの間に位置決めされた中間セクションを備えてもよい。同様に、第1の加圧接触面51は、第2の運動伝達要素50上で、第1の加圧接触面51の第1のセクション51aと第2のセクション51bとの間に位置決めされた中間セクションを備えてもよい。
【0039】
図示の実施形態によれば、運動伝達機構はまた、ハウジング2に対して第1の回転方向D1とは反対の第2の回転方向D2への作動部材14の回転移動を、後退ロック位置から前進解放位置への引張棒5の軸方向移動に伝達するように構成される。この目的のために、第1の運動伝達要素40には第2の受圧接触面42が設けられ、第2の受圧接触面42は、ハウジングの後端部2bに面し、第3の運動伝達要素60に設けられた第2の加圧接触面62と協働するように構成される。この要素60は、作動部材と共にハウジング2及び引張棒5に対して回転可能となるように、作動部材14に固定される。第2の加圧接触面62は、第2の受圧接触面42に接触するためにハウジングの前端部2aに面しており、第2の加圧接触面62は、作動部材14が第2の回転方向D2にハウジング2に対して回転するときに、第2の受圧接触面42に対して摺動及び押圧することによって、引張棒5を後退ロック位置から前進解放位置に押圧するように構成される。
【0040】
第2の受圧接触面42は、第1の運動伝達要素40に沿って異なる位置に配置された第1の接触面セクション42a及び第2の接触面セクション42bを備えてもよく、第2の加圧接触面62は同様に、第3の運動伝達要素60に沿って異なる位置に配置された第1の接触面セクション62a及び第2の接触面セクション62bを備えてもよい。作動部材14が第2の回転方向D2に移動すると、第2の加圧接触面62の第1のセクション62aは、この移動の第1の段階中に第2の受圧接触面42の第1のセクション42aに対して摺動及び押圧するように構成され、第2の加圧接触面62の第2のセクション62bは、この移動の最終段階中に第2の受圧接触面42の第2のセクション42bに対して摺動及び押圧するように構成される。第2の受圧接触面42の第1のセクション42aは、第2の受圧接触面42の第2のセクション42bよりもピッチが小さい。同様に、第1の加圧接触面62の第1のセクション62aのピッチは、第1の加圧接触面62の第2のセクション62bのピッチよりも小さい。これにより、ハウジング2に対する第2の回転方向D2の回転に関連する作動部材14の同じ角度変位は、この回転移動の最終段階において、この回転移動の第1の段階よりも大きい、長手方向軸Lに沿った引張棒5の軸方向移動をもたらす。第2の受圧接触面42の第2のセクション42bのピッチは、好ましくは、第2の受圧接触面42の第1のセクション42bのピッチの5~8倍程度の大きさであり、第2の加圧接触面62の第2のセクション62bのピッチは、好ましくは、第2の加圧接触面62の第1のセクション62aのピッチの5~8倍程度の大きさである。
【0041】
第2の加圧接触面62の第1のセクション62aは、好ましくは、第2の受圧接触面42の第1のセクション42aと同じピッチを有する。同様に、第2の加圧接触面62の第2のセクション62bは、好ましくは、第2の受圧接触面42の第2のセクション42bと同じピッチを有する。
【0042】
図示の実施形態では、ピッチは、第2の受圧接触面42の第1のセクション42aに沿って一定であり、第2の受圧接触面42の第2のセクション42bに沿っても一定であるが、より大きい。図示の実施形態では、ピッチはまた、第2の加圧接触面62の第1のセクション62aに沿って一定であり、第2の加圧接触面62の第2のセクション62bに沿っても一定であるが、より大きい。しかしながら、ピッチは、代替として、第2の受圧接触面42の上述のセクション42a、42bの一方又は両方に沿って、及び第2の加圧接触面62の上述のセクション62a、62bの一方又は両方に沿って変化してもよい。
【0043】
図示の実施形態では、第2の受圧接触面42の第1及び第2のセクション42a、42bは、第2のセクション42bが第1のセクション42aの直後に続くように、第1の運動伝達要素40上で互いに隣接するように位置決めされる。同様に、第2の加圧接触面62の第1及び第2のセクション62a、62bは、第2のセクション62bが第1のセクション62aの直後に続くように、第3の運動伝達要素60上で互いに隣接するように位置決めされる。しかしながら、代替として、第2の受圧接触面42は、第1の運動伝達要素40上で、第2の受圧接触面42の第1のセクション42aと第2のセクション42bとの間に位置決めされた中間セクションを備えてもよい。同様に、第2の加圧接触面62は、第3の運動伝達要素60上で、第2の加圧接触面62の第1のセクション62aと第2のセクション62bとの間に位置決めされた中間セクションを備えてもよい。
【0044】
第1の運動伝達要素40は、第2の運動伝達要素50と第3の運動伝達要素60との間の間隙に受けられる。したがって、第2及び第3の運動伝達要素50、60は、作動部材14の軸方向に見て、第1の運動伝達要素40の両側に配置される。
【0045】
上述のタイプの運動伝達要素40、50、60は、2つ以上のセットで配置されてもよく、各セットは、第1の運動伝達要素40と、関連する第2及び第3の運動伝達要素50、60とを備える。これらのセットは、作動部材14の周方向に互いに離間している。図示の実施形態では、クランプ装置1の運動伝達機構は、2つのそのような運動伝達要素のセットを備える。
【0046】
図示の実施形態では、運動伝達要素40、50、60は、互いにねじ係合して配置された2つのねじ山の一部を形成する。この場合、第1及び第2の受圧接触面41、42並びに第1及び第2の加圧接触面51、62は、ねじ面の形態を有する。代替として、第1及び第2の加圧接触面51、62の各々が、ピン様形状の運動伝達要素上に配置されたかなり短く凸状の面の形態を有し、第1及び第2の受圧接触面41、42が、第1及び第2の加圧接触面のカム面として作用してもよい。後者の場合、第1及び第2の受圧接触面41、42のみが上記のように第1及び第2の接触面セクション41a、41b、42a、42bに分割される。
【0047】
さらなる代替として、第1及び第2の受圧接触面41、42の各々が、ピン様形状の第1の運動伝達要素上に配置されたかなり短く凸状の面の形態を有し、第1及び第2の加圧接触面51、62が、第1及び第2の受圧接触面のカム面として作用してもよい。後者の場合、第1及び第2の加圧接触面51、62のみが上記のように第1及び第2の接触面セクション51a、51b、62a、62bに分割される。
【0048】
第1の受圧接触面41の第2の接触面セクション41b及び/又は第1の加圧接触面51の第2の接触面セクション51bは、好ましくは、作動部材14並びに第1及び第2の運動伝達要素40、50の作用下で引張棒が後退ロック位置に押し込まれたときに、第1及び第2の運動伝達要素40、50が作動部材14を引張棒5に対して自己ロック回転位置に保つようなピッチを有する。自己ロック回転位置では、第1の加圧接触面51と第1の受圧接触面41との間の摩擦力によって、作動部材14が上述の第2の回転方向D2に回転することが防止される。
【0049】
図示の実施形態では、第1及び第2の受圧接触面41、42はシャフト15、15’の外側に設けられ、シャフト15、15’は引張棒5に固定され、引張棒と共に長手方向軸Lに沿って移動するように構成される。引張棒5及びシャフト15は、図1及び図4に示すように、一体に形成されてもよい。しかしながら、シャフト15’は、代替として、例えば、図14及び図16に示すように、シャフト15’の雌ねじ16aと、引張棒5の対応する雄ねじ16bとによって形成されたねじ継手を介して、引張棒5に固定された別個の構成要素として形成されてもよい。しかしながら、シャフト15’は、当然ながら、任意の他の適切な方法で引張棒5に固定されてもよい。図示の例では、第1の運動伝達要素40の各々は、シャフト15、15’の包絡面上の外部突起の形態を有する。
【0050】
図示の実施形態では、作動部材14はスリーブ形状であり、前記シャフト15、15’を取り囲み、ここで、第1及び第2の加圧接触面51、62は作動部材の内側に設けられている。クランプ装置1の組み立てを容易にするために、スリーブ形状の作動部材14は、スリーブを形成するために接合され、クランプリング17によって互いにクランプされた2つの別個のスリーブセクタ14a、14bによって適切に形成される。図示の例では、第2及び第3の運動伝達要素50、60の各々は、作動部材14の内側に内部突起の形態を有する。
【0051】
図示の実施形態では、作動部材14並びに第2及び第3の運動伝達要素50、60は、シャフト15、15’及び第1の運動伝達要素40によって形成されたねじと協働するように構成されたナットを共に形成する。
【0052】
代替として、作動部材14は、シャフトの形態を有してもよく、第1及び第2の加圧接触面51、62は、作動部材の外側に設けられる。この場合、第1及び第2の受圧接触面41、42はスリーブの内側に設けられ、スリーブはシャフト形状の作動部材を取り囲み、引張棒5に固定され、引張棒と共に長手方向軸Lに沿って移動するように構成される。引張棒5及びこのスリーブは、一体に形成されてもよい。しかしながら、スリーブは、代替として、例えばねじ継手を介して引張棒5に固定される別個の構成要素として形成されてもよい。
【0053】
引張棒5は、ハウジング2に対して回転することが防止される。図1図11に示す実施形態では、引張棒5には、引張棒の周壁から半径方向に突出し、引張棒の中心軸の周りに分布するいくつかの停止ラグ30が設けられる。これらの停止ラグ30は、引張棒5とハウジング2との間の相互回転を防止するために、ボア3内の壁面上のそれぞれの長手方向溝31内に摺動可能に受けられる。図12図23に示す実施形態では、細長い停止部材32が、ハウジング2の内部に回転不能に取り付けられたプレート34のアパーチャ33を通って延び、この停止部材32は、引張棒5とハウジング2との間の相互回転を防止するために、シャフト15’の軸方向に延びる凹部35に摺動可能に受けられる。当然、引張棒5とハウジング2との間の相互回転もまた、任意の他の適切な方法で防止されてもよい。
【0054】
クランプ装置1はまた、作動部材14を第1及び第2の回転方向D1、D2に回転させるための、1つ又は複数の油圧、空気圧、又は電気アクチュエータなどの追加の構成要素を備えてもよい。クランプ装置1の制御は、このようなアクチュエータによって自動化されてもよい。したがって、本発明に係るクランプ装置1は、自動工具交換作業における使用に適している。しかしながら、本発明によるクランプ装置1は、手動操作に適合されてもよい。
【0055】
図示の実施形態では、クランプ装置1は、ハウジング2内に配置されるか又はハウジング2に取り付けられ、作動部材14をハウジング2に対して回転させるように構成された油圧アクチュエータ70、70’を備える。図示の実施形態では、油圧アクチュエータ70、70’は、クランプ装置のハウジング2に一体化されている。しかしながら、油圧アクチュエータ70、70’は、代替として、クランプ装置のハウジングに固定された別個のアクチュエータケーシングを備えてもよい。
【0056】
図1図11に示す実施形態では、油圧アクチュエータ70は、その回転軸が作動部材14の回転軸と整列して配置された回転可能なアクチュエータシャフト71を備える。作動部材14は、上述の第1及び第2の回転方向D1、D2において、アクチュエータシャフト71と共にハウジング2に対して回転可能に構成される。油圧アクチュエータ70はまた、2つのアクチュエータベーン72を備え、2つのアクチュエータベーン72はアクチュエータシャフト71に固定され、アクチュエータシャフトの回転軸を中心にアクチュエータシャフト71と共に回転可能に構成される。アクチュエータベーン72は、アクチュエータシャフト71から半径方向に反対方向に突出する。アクチュエータベーン72及びアクチュエータシャフト71は、好ましくは一体に形成される。各アクチュエータベーン72は、油圧アクチュエータ70の内部空間73に移動可能に受けられ、この内部空間73を、アクチュエータベーンの第1の側の第1の油圧チャンバ74aと、アクチュエータベーンの反対側の第2の側の第2の油圧チャンバ74bとに分割するように構成される。例えば油圧油の形態の油圧流体は、それぞれ第1の入口及び出口ポート75aを介して第1の油圧チャンバ74aに供給及び排出され、それぞれ第2の入口及び出口ポート75bを介して第2の油圧チャンバ74bに供給及び排出されてもよい。作動部材14は、アクチュエータシャフト71及びアクチュエータベーン72と共に、第1の油圧チャンバ74aへの油圧流体の供給によって第1の回転方向D1に回転可能であり、第2の油圧チャンバ74bへの油圧流体の供給によって第2の回転方向D2に回転可能である。
【0057】
図1図11に示す実施形態では、油圧アクチュエータ70は、ハウジング2の円筒壁77によって半径方向外側に制限された円筒形キャビティ76を備え、上述の内部空間73は、この円筒形キャビティ76の一部を形成する。アクチュエータシャフト71は、円筒形キャビティ76内に回転可能に配置され、その長手方向軸は円筒形キャビティの中心軸と一致する。各アクチュエータベーン72の長手方向外縁部72aは、円筒壁77に接触する。所望に応じて、各アクチュエータベーン72の長手方向外縁部72aに沿って細長いシール部材を配置して、アクチュエータベーン72と円筒壁77との間の界面に液密シールを形成し、それにより、油圧流体がこの界面を通って一方の油圧チャンバから他方の油圧チャンバに漏れるのを防止してもよい。しかしながら、油圧アクチュエータ70の機能性を損なうことのない、油圧チャンバ74a、74b間の油圧流体の僅かな漏れは許容することができるので、このようなシール部材は不要である。
【0058】
上述の内部空間73の各々は、第1及び第2のチャンバ壁78a、78bの間で円筒形キャビティ76の周方向に延び、第1及び第2のチャンバ壁78a、78bは円筒形キャビティ76の内部に配置され、その長手方向に油圧チャンバ74a、74bに沿って延びる。第1のチャンバ壁78aは、第1の油圧チャンバ74aに面し、円筒形キャビティ76の周方向においてこの油圧チャンバ74aを制限するように構成される。第2のチャンバ壁78bは、第2の油圧チャンバ74bに面し、円筒形キャビティ76の周方向においてこの油圧チャンバ74bを制限するように構成される。アクチュエータベーン72は、図6に示すように、引張棒5が前進解放位置に達したときに第1のチャンバ壁78aと接触し、それにより、ハウジング2の前端部2aに向かう引張棒5のさらなる移動を防止するように構成される。
【0059】
ボア3内の引張棒5の正確な軸方向位置は、工具ホルダシャンク91及び取付部分10の公差に依存し、したがって、第1の回転方向D1におけるアクチュエータベーン72の正確な最終位置を予測することは不可能である。したがって、アクチュエータベーン72は、引張棒5がその後退ロック位置をとるときに第2のチャンバ壁78bに達するように構成することができない。その結果、各アクチュエータベーン72は、図3に示すように、引張棒5が後退ロック位置に達したときに、関連する第1のチャンバ壁78aと第2のチャンバ壁78bとの間のどこかの位置をとるように構成される。
【0060】
第1及び第2のチャンバ壁78a、78bは、有利には、好ましくは中実体の形態の細長い仕切り要素79の一部を形成するように構成され、細長い仕切り要素79は円筒形キャビティ76の内部に取り付けられ、円筒形キャビティ76に沿ってその長手方向に延びる。これらの仕切り要素79は、例えばねじ80によって円筒壁77に固定される。
【0061】
図1図11に示す実施形態では、上述の内部空間73は、作動部材14上の後端壁14cによって第1の軸方向に制限され、ハウジング2にその後端部2bで固定されたエンドピース81によって反対の軸方向に制限される。
【0062】
図1図11に示す実施形態では、各アクチュエータベーン72の前端部にある端部72bは、作動部材14の後端壁14cにおいて半径方向に延びる凹部に受けられ、アクチュエータベーン72から作動部材14へのトルクの伝達を可能にし、作動部材がアクチュエータベーン72及びアクチュエータシャフト71に対して回転するのを防止する。しかしながら、作動部材14は、当然ながら、任意の他の適切な方法でアクチュエータベーン72及び/又はアクチュエータシャフト71に回転不能に接続されてもよい。
【0063】
図1図11に示す実施形態では、油圧アクチュエータ70は、2つのアクチュエータベーン72を備える。しかしながら、油圧アクチュエータは、代替として、アクチュエータシャフト71の周りに均等に分配され、油圧アクチュエータのそれぞれの内部空間に受けられる2つより多くのアクチュエータベーン72、又は単一のアクチュエータベーン72を備えてもよい。
【0064】
図12図23に示す実施形態では、油圧アクチュエータ70’は、アクチュエータベーン72’を備え、アクチュエータベーン72’は作動部材14に固定され、作動部材14と共にハウジング2に対して回転可能に構成される。アクチュエータベーン72’は、作動部材14から半径方向に突出している。アクチュエータベーン72’と、作動部材14のスリーブセクタ14aのうちの1つとは、好ましくは一体に形成される。アクチュエータベーン72’は、油圧アクチュエータの内部空間73’に移動可能に受けられ、この内部空間73’を、アクチュエータベーンの第1の側の第1の油圧チャンバ74a’と、アクチュエータベーンの反対側の第2の側の第2の油圧チャンバ74b’とに分割するように構成される。例えば油圧油の形態の油圧流体は、第1の入口及び出口ポート75a’を介して第1の油圧チャンバ74a’に供給及び排出され、第2の入口及び出口ポート75b’を介して第2の油圧チャンバ74b’に供給及び排出されてもよい。作動部材14は、アクチュエータベーン72’と共に、第1の油圧チャンバ74a’への油圧流体の供給によって第1の回転方向D1に回転可能であり、第2の油圧チャンバ74b’への油圧流体の供給によって第2の回転方向D2に回転可能である。
【0065】
アクチュエータベーン72’の回転方向で見て、第1のチャンバ壁78a’は内部空間73’の第1の端部に配置され、第2のチャンバ壁78b’は内部空間73’の反対側の第2の端部に配置され、第1のチャンバ壁78a’は第1の油圧チャンバ74a’に面し、第2のチャンバ壁78b’は第2の油圧チャンバ74b’に面する。アクチュエータベーン72’は、図16に示すように、引張棒5が前進解放位置に達したときに第1のチャンバ壁78a’と接触し、それにより、ハウジング2の前端部2aに向かう引張棒5のさらなる移動を防止するように構成される。アクチュエータベーン72’は、図14に示すように、引張棒5が後退ロック位置に達したときに、第1のチャンバ壁78a’と第2のチャンバ壁78b’との間のどこかの位置をとるように構成される。
【0066】
図12図23に示す実施形態では、ハウジング2は、ハウジングの上述のベース部12に、ベース部の外壁のアパーチャ83(図19参照)を介して取り付けられる挿入片82を備える。挿入片82は、2つの脚部84を備え、作動部材14のための本質的にU字形の座部85がこれらの脚部の間に形成され、作動部材14は、この座部85に回転可能に受けられる。アクチュエータベーン72’は、脚部84の自由端の間に設けられた開口を通って延びる。上述の第1のチャンバ壁78a’は、一方の脚部84の自由端の表面によって形成され、第2のチャンバ壁78b’は、他方の脚部84の自由端の表面によって形成される。
【0067】
工具ホルダ90がハウジング2にクランプされる場合、図4及び図16に示すように、引張棒5が前進解放位置に位置決めされた状態で、工具ホルダシャンク91がボア3の取付部分10に挿入される。これにより、引張棒のヘッド部分6は、工具ホルダシャンク91の係合ボア92内に受けられ、工具ホルダシャンク91の係合溝94は、係合部材20の係合フランジ27の外側に位置決めされる。その結果、アクチュエータシャフト14を第1の回転方向D1に回転させるために、油圧流体が第1の油圧チャンバ74a’又はチャンバ74aに供給される。作動部材14のこの回転移動の第1の段階の間、第1の加圧接触面51の第1のセクション51aは、第1の受圧接触面41の第1のセクション41aに対して摺動及び押圧する。これにより、引張棒5は、後退ロック位置に向かってボア3内で後方へと軸方向に変位する。前記セクション41a、51aの比較的大きいピッチは、引張棒5の比較的迅速な変位をもたらす。引張棒5の初期変位は大きな力を必要としないため、比較的大きなピッチが有利である。第1の加圧接触面51の第1及び第2のセクション51a、51b並びに第1の受圧接触面41の第1及び第2のセクション41a、41bは、第1の加圧接触面51の第1のセクション51aが第1の受圧接触面41の第1のセクション41aを通過し、第1の加圧接触面51の第2のセクション51bが第1の受圧接触面41の第2の部分41bに達するような角度変位を、作動部材14が受けたとき、すなわち、これらのそれぞれのセクションの間の移行時に、引張棒5がボア3内のその最終的な後退位置にほぼ達するように配置される。したがって、大きな力が有益である最終的なクランプ段階では、第1の加圧及び受圧接触面41、51の第2のセクション51b、41bがアクティブである。この段階では、作動部材14の比較的大きな角度変位は、引張棒5の非常に小さな軸方向変位をもたらし、その結果、引張棒5が大きな力で工具ホルダシャンク91を引っ張ってハウジング2と堅固に係合することを可能にする力増幅効果をもたらす。さらに、第1の加圧及び受圧接触面51、41の第2のセクション51b、41bの小さなピッチは、自己ロック効果を提供し、いかなる追加のロック手段も必要とせずにクランプ装置1がクランプ状態のままであることを確実にする。これにより、作動部材14への力は、引張棒5が後退ロック位置に達したときに解放されてもよい。
【0068】
工具交換動作が行われ、工具ホルダ90がハウジング2から解放されるとき、油圧流体は、アクチュエータ部材14を第2の回転方向D2に回転させるために、第2の油圧チャンバ74b’又はチャンバ74bに供給される。作動部材14が第2の回転方向D2に十分な力を受けると、第1の加圧及び受圧接触面51、41の第2のセクション51b、41b間の自己ロック摩擦係合が解放され、その後、作動スリーブ14は、引張棒5を前進解放位置に向かってボア3内において軸方向前方に押すために、ハウジング2に対して第2の回転方向D2に回転可能になる。作動部材14のこの回転移動の第1の段階中、第2の加圧接触面62の第1のセクション62aは、第2の受圧接触面42の第1のセクション42aに対して摺動及び押圧し、その後、第2の加圧接触面62の第2のセクション62bは、作動部材14のこの回転移動の後続の最終段階中に、第2の受圧接触面42の第2のセクション42bに対して摺動及び押圧する。引張棒5が前進解放位置に向かって移動すると、引張棒5のヘッド部分6の外側端部は、工具ホルダシャンク91の係合ボア92内の表面95に衝突し、それによって工具ホルダシャンク91をハウジング2から解放する。
【0069】
本発明は、当然、上記実施形態に何ら限定されるものではない。むしろ、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の基本的な概念から逸脱することなく、その修正に対する多くの可能性が当業者には明らかであろう。
図1
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【国際調査報告】