(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】センサネットワーク
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20230413BHJP
F24B 1/18 20060101ALI20230413BHJP
A62C 3/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
E04G23/02 F
F24B1/18 Z
A62C3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549231
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021053463
(87)【国際公開番号】W WO2021160806
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522322952
【氏名又は名称】エアーモント アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルガルスボーエン、オーレ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ケーラーバッケン、モーガン
(72)【発明者】
【氏名】ホーゲン、カール-マグヌス
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA13
2E176BB38
(57)【要約】
煙突保守スケジュールを決定するためのセンサネットワークシステムは、煙突(6)内または煙突(6)に近接して配置されるように構成されているセンサユニット(16)を備える。センサユニットは、煙突(6)のパラメータを測定し、かつ測定されたパラメータを使用して煙突(6)に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成されている少なくとも1つのセンサを備える。センサユニットは、煙突健康データを遠隔分析ユニット(18)に送信する(20)ように構成されている送信モジュールを含む。遠隔分析ユニット(18)は、煙突(6)に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信し、それぞれの煙突健康データおよび煙突プロファイルデータから煙突(6)に関連付けられた煙突健康レベルを推定するように構成されている。遠隔分析ユニット(18)は、推定された煙突健康レベルから煙突保守スケジュールを決定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙突保守スケジュールを決定するためのセンサネットワークシステムであって、前記センサネットワークは、
煙突の中または前記煙突の近くに配置されるように構成されているセンサユニットであって、前記センサユニットは、煙突のパラメータを測定し、かつ前記測定したパラメータを使用して前記煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成されている少なくとも1つのセンサを備え、前記センサユニットは、前記煙突健康データを送信するように構成されている送信モジュールをさらに備える、センサユニットと、
前記煙突健康データを受信するように構成されている受信モジュールを備える遠隔分析ユニットであって、前記遠隔分析ユニットは、前記煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信するように構成されている、遠隔分析ユニットと、を備え、
前記遠隔分析ユニットは、前記それぞれの煙突健康データおよび前記煙突プロファイルデータから、前記煙突に関連付けられた煙突健康レベルを推定するように構成されており、
前記遠隔分析ユニットは、前記推定された煙突健康レベルから前記煙突保守スケジュールを決定する、センサネットワークシステム。
【請求項2】
前記センサユニットは、前記煙突の温度を測定するように構成されている温度センサを備える、請求項1に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項3】
前記パラメータは、前記煙突の温度を含む、請求項2に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項4】
前記パラメータは、ある期間にわたる温度プロファイルを含む、請求項2または3に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項5】
前記温度プロファイルは、前記煙突の前記温度の時間微分および/または前記煙突の前記温度の時間積分を含む、請求項4に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項6】
前記パラメータは、発火頻度および/または発火強度を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項7】
前記センサユニットは、前記煙突内に異物がいつ存在するかを決定し、および/または前記煙突内の異物の厚さを測定するように構成されている超音波センサを備える、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項8】
それぞれの煙突内または前記それぞれの煙突に近接して配置されるように各々構成されている複数のセンサユニットを備え、各センサユニットは、前記それぞれの煙突のパラメータを測定し、かつ前記測定したパラメータを使用して前記煙突に関連付けられたそれぞれの煙突健康データを生成するように構成されている少なくとも1つのセンサを備え、各センサユニットは、前記煙突健康データを前記遠隔分析ユニットに送信するように構成されているそれぞれの送信モジュールをさらに備える、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項9】
前記遠隔分析ユニットは、各センサユニットから前記煙突健康データを受信し、前記それぞれの煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信するように構成されており、前記遠隔分析ユニットは、前記それぞれの煙突健康データおよび前記煙突プロファイルデータから前記それぞれの煙突に関連付けられた煙突健康レベルを推定するように構成されており、前記遠隔分析ユニットは、前記推定された煙突健康レベルから前記煙突保守スケジュールを決定する、請求項8に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項10】
第1の建物の第1の煙突内または前記第1の煙突に近接して配置されるように構成されている第1のセンサユニットと、
第2の建物の第2の煙突内または前記第2の煙突に近接して配置されるように構成されている第2のセンサユニットと、を備え、
前記第1のセンサユニットおよび前記第2のセンサユニットの各々は、前記それぞれの煙突のパラメータを測定し、かつ前記測定されたパラメータを使用して前記それぞれの煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成されている少なくとも1つのセンサをそれぞれ備え、各センサユニットは、前記煙突健康データを送信するように構成されている送信モジュールをさらに備える、請求項8または9に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項11】
前記送信および受信モジュールは、各々無線モジュールを備える、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項12】
前記無線通信送信および受信モジュールは、建物間ネットワークを介して通信するように構成されている、請求項11に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項13】
前記無線通信送信および受信モジュールは、セルラーネットワークを介して通信するように構成されており、任意選択的に、前記セルラーネットワークは、セルラーモノのインターネット(IoT)ネットワークを備え、および/または前記無線通信送信および受信モジュールは、LoRa(登録商標)通信リンクを介して通信するように構成されている、請求項11または12に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項14】
前記無線通信送信および受信モジュールは、Bluetooth(登録商標)通信リンクおよび/またはWi-Fi(商標)ネットワークを介して通信するように構成されている、請求項11~13のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項15】
前記センサネットワークは、メッシュネットワークを備える、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項16】
前記遠隔分析ユニットは、クラウドベースである、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項17】
前記煙突プロファイルデータは、どの種類のソースが前記煙突に接続されているかに関する情報を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項18】
前記煙突プロファイルデータは、前記煙突に関連付けられた燃料情報を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項19】
前記煙突プロファイルデータは、前記煙突の掃除履歴を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項20】
前記推定された煙突健康レベルと目標煙突健康レベルとの差が閾値を超えたときに、警報を生成するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項21】
前記煙突の前記パラメータが閾値を超えたときに、緊急警報信号を生成するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項22】
前記遠隔分析ユニットは、前記煙突健康データおよび/または前記煙突プロファイルデータから排出レベルを推定するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項23】
前記センサユニットは、環境データを測定するようにさらに構成されており、任意選択的に、前記環境データは、空気品質パラメータ、汚染物質の濃度、および空気粒子の濃度を含む群のうちの少なくとも1つを含む、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワーク。
【請求項24】
前記遠隔分析ユニットは、前記煙突健康データおよび/または前記煙突プロファイルデータから火災危険性レベルを推定するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項25】
前記センサユニットは、前記煙突の上部に取り付けられるように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項26】
前記センサユニットは、少なくとも部分的に前記煙突の煙道内に取り付けられるように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項27】
前記センサユニットは、電池給電される、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項28】
前記センサユニットは、太陽光発電パネルに接続される、先行請求項のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項29】
煙突内または前記煙突に近接して配置されるように構成されているセンサユニットであって、
前記煙突のパラメータを測定し、前記測定されたパラメータを使用して前記煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成されている、少なくとも1つのセンサと、
前記煙突健康データを遠隔分析ユニットに送信するように構成されている送信モジュールと、を備える、センサユニット。
【請求項30】
煙突保守スケジュールを決定するためのセンサネットワークシステムを動作させる方法であって、前記センサネットワークは、少なくとも1つのセンサおよび送信モジュールを備えるセンサユニットと、受信モジュールを備える遠隔分析ユニットと、を備え、前記方法は、
前記センサを使用して前記煙突のパラメータを測定することと、
前記測定されたパラメータを使用して、前記煙突に関連付けられた煙突健康データを生成することと、
前記送信モジュールを使用して前記煙突健康データを送信することと、
前記受信モジュールを使用して前記煙突健康データを受信することと、
前記煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信することと、
前記それぞれの煙突健康データおよび前記煙突プロファイルデータから、前記煙突に関連付けられた煙突健康レベルを推定することと、
前記推定された煙突健康レベルから前記煙突保守スケジュールを決定することと、を含む、方法。
【請求項31】
プロセッサによって実行されたときに、煙突保守スケジュールを決定するためのセンサネットワークシステムを動作させる方法を前記プロセッサに実施させる命令を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記センサネットワークは、少なくとも1つのセンサおよび送信モジュールを備えるセンサユニットと、受信モジュールを備える遠隔分析ユニットと、を備え、前記方法は、
前記センサを使用して前記煙突のパラメータを測定することと、
前記測定されたパラメータを使用して前記煙突に関連付けられた煙突健康データを生成することと、
前記送信モジュールを使用して前記煙突健康データを送信することと、
前記受信モジュールを使用して前記煙突健康データを受信することと、
前記煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信することと、
前記それぞれの煙突健康データおよび前記煙突プロファイルデータから、前記煙突に関連付けられた煙突健康レベルを推定することと、
前記推定された煙突健康レベルから前記煙突保守スケジュールを決定することと、を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサネットワークに関し、特に、1つ以上の煙突の保守要件を評価するためのネットワーク化されたセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの建物、特に家屋、アパートなどの居住用建物には、暖炉、ボイラー、ストーブ、焼却炉、などのソースから発生するガスおよび煙の排出のための煙突が設けられている。通常、煙突は、建物内または建物の側面にある実質的に垂直な建築構造物であり、排気のソースから煙突の長さを通り外界に至る煙道を通る建物からのガスおよび煙のルートを決定する。煙突はまた、ソース内での燃焼のために空気を提供するための吸気経路を提供する。
【0003】
居住用建物と同様に、煙突は商業用および工業用建物に設けられることがあり、そのような煙突はより「酷使」されることがある。ノルウェーには約200万本、北欧地域には700万本以上、ヨーロッパ全体では2億4000万本以上の煙突があると推定されている。
【0004】
時間の経過とともに、汚染物質および異物が煙突の内側、煙道の周囲に蓄積する。この望ましくない蓄積は、火災を引き起こす危険性があり得、煙突の適切な機能を妨げる、すなわち、煙道を通るガスの適切な流れを阻害または妨げる可能性がある。空気の流れを妨げると、一酸化炭素などの有害ガスが建物内に漏れる危険性も高まる。
【0005】
例えば、燃焼プロセスで燃やされる燃料として木材が使用されるときに、クレオソートが煙突の内壁(つまり、煙道の周囲)に蓄積し、煙道の断面積が減少し、それによって流れが阻害される可能性がある。さらに、これらのクレオソート堆積物は可燃性であるため、堆積物への引火による火災の危険性がある。
【0006】
したがって、異物の蓄積を防ぐために、各煙突の継続的な清掃と保守を実施することが重要である。このような保守は、煙突の点検と煙突の内部の清掃を伴うことがあり、煙突の掃除と称されることもある。一般に、煙突は毎年清掃および検査することが推奨されており、煙突の定期的な検査および清掃を義務付けている国もある。
【0007】
このような検査および清掃は、民間の煙突掃除業者によって実施されることもあれば、公的機関によって実施されることもある。ノルウェーなどの一部の国では、煙突の検査および清掃は消防署の責任であり、公共サービスとなっている。
【0008】
しかしながら、出願人は、煙突の使用量が大きく異なることを認識している。煙突をまったく使用しないかもしれない人よりもはるかに多く煙突を使用する人もいる。同様に、燃焼される燃料の量および種類も、煙道内の物質の蓄積および蓄積される物質の種類に大きな影響を与える。例えば、木材は煙道の壁にクレオソートを残す可能性が高くなることがあるが、天然ガスはよりきれいに燃焼し、残留物がほとんど残らない。さらに、例えば、家を暖めるための主な手段として頻繁に燃料を燃やす人もいれば、ガスボイラーまたは電気ボイラーを使用するセントラルヒーティングシステムなどの別の暖房システムにほとんど依拠し、例えば、家に暖かく居心地の良い雰囲気を作り出すために、たまにしか暖炉を使用しない人もいる。
【0009】
しかしながら、使用量に関係なく、煙道が外部環境にさらされるために、経時的に物質が蓄積するのが一般的であり、例えば、たとえ煙突自体が頻繁に使用されていない場合でも、空気中の粒子および/または破片(樹木の葉)が経時的に煙突内に蓄積することがある。
【0010】
例えば、煙突が毎年(または他の頻度で)検査および清掃される場合、定期的な保守スケジュールが使用されることがあるが、出願人は、必要なときにのみ煙突の保守をスケジュールすることによって、資源をより効率的に使用することが有利であることを認識している。特に、あまり頻繁に使用されず、あまり蓄積されない煙突は、保守を長く待つことができるが、物質が蓄積しやすい別の煙突は、より定期的な保守が必要になることがある。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様から見るときに、本発明は、煙突保守スケジュールを決定するためのセンサネットワークシステムを提供し、センサネットワークは、
煙突の中または煙突の近くに配置されるように構成されたセンサユニットであって、センサユニットは、煙突のパラメータを測定し、かつ測定されたパラメータを使用して煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成された少なくとも1つのセンサを備え、センサユニットは、煙突健康データを送信するように構成された送信モジュールをさらに備える、センサユニットと、
煙突健康データを受信するように構成された受信モジュールを備える遠隔分析ユニットであって、遠隔分析ユニットは、煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信するように構成されている、遠隔分析ユニットと、を備え、
遠隔分析ユニットは、それぞれの煙突健康データおよび煙突プロファイルデータから、煙突に関連付けられた煙突健康レベルを推定するように構成されており、
遠隔分析ユニットは、推定された煙突健康レベルから煙突保守スケジュールを決定する。
【0012】
本発明の第1の態様は、煙突内または煙突に近接して配置されるように構成されているセンサユニットにまで拡張され、センサユニットは、煙突のパラメータを測定し、かつ測定されたパラメータを使用して煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成されている少なくとも1つのセンサと、煙突健康データを遠隔分析ユニットに送信するように構成されている送信モジュールと、を備える。
【0013】
本発明の第1の態様はまた、煙突保守スケジュールを決定するためのセンサネットワークシステムを動作させる方法にまで拡張され、センサネットワークは、少なくとも1つのセンサおよび送信モジュールを備えるセンサユニットと、受信モジュールを備える遠隔分析ユニットと、を備え、方法は、
センサを使用して煙突のパラメータを測定することと、
測定されたパラメータを使用して、煙突に関連付けられた煙突健康データを生成することと、
送信モジュールを使用して煙突健康データを送信することと、
受信モジュールを使用して煙突健康データを受信することと、
煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信することと、
それぞれの煙突健康データおよび煙突プロファイルデータから、煙突に関連付けられた煙突健康レベルを推定することと、
推定された煙突健康レベルから煙突保守スケジュールを決定することと、を含む。
【0014】
本発明の第1の態様は、さらに、プロセッサによって実行されると、煙突保守スケジュールを決定するためのセンサネットワークシステムを動作させる方法をプロセッサに実施させる命令を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体にまで拡張され、センサネットワークは、少なくとも1つのセンサおよび送信モジュールを備える、センサユニットと、受信モジュールを備える遠隔分析ユニットと、を含む、ネットワークであって、方法は、
センサを使用して煙突のパラメータを測定することと、
測定されたパラメータを使用して、煙突に関連付けられた煙突健康データを生成することと、
送信モジュールを使用して煙突健康データを送信することと、
受信モジュールを使用して煙突健康データを受信することと、
煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信することと、
それぞれの煙突健康データおよび煙突プロファイルデータから、煙突に関連付けられた煙突健康レベルを推定することと、
推定された煙突健康レベルから煙突保守スケジュールを決定することと、を含む。
【0015】
したがって、本発明の実施形態は、煙突内または煙突に近接して配置されるセンサが、煙突の測定されたパラメータに関するデータを遠隔分析ユニットに送信するシステムを提供すると理解されよう。遠隔分析ユニットは、センサユニットから受信したデータおよび煙突プロファイルを取得し、保守が必要かどうか、および/または保守をいつスケジュールするべきかを決定するために、煙突の健康、つまり煙突の動作状態を決定する。煙突プロファイルデータは、煙突に関して先験的に知られている情報に対応し、すなわち、センサからの動的データではなく、既存のデータであり、その実施例を以下でさらに詳細に説明する。センサユニットからの動的データと既存のプロファイルデータの両方が遠隔分析ユニットに供給され、遠隔分析ユニットは、好適なモデルを使用して煙突の保守が必要かどうか、いつ必要かを決定し得る。
【0016】
例えば、遠隔分析ユニットは、煙突健康データおよび煙突プロファイルデータから、煙突が許容レベルを超える異物を有し、緊急の保守が必要であることを決定し得る。逆に、遠隔分析ユニットは、煙突が現在比較的きれいであり、しばらくの間は清掃が必要ないと決定し得、これにより、保守を、一例に過ぎないが、6ヶ月スケジュールしないように、煙突保守スケジュールを設定し得る。
【0017】
センサユニットは、煙突に関するパラメータを各々が測定する1つ以上の異なる種類のセンサを備え得る。いくつかの実施形態では、センサユニットは、煙突の温度を測定するように構成されている温度センサを備える。温度センサは、煙突の瞬間温度を測定し得る。
【0018】
したがって、煙突のパラメータは、いくつかの実施形態では、煙突の温度を含み得る。この温度は、煙突の煙道のある地点でのガスおよび/または煙の温度であり得る。追加的または代替的に、温度センサは、煙突自体の構成要素の温度、例えば、煙道の温度および/または煙突の外壁の温度を測定し得る。
【0019】
追加的または代替的に、パラメータは、いくつかの実施形態では、発火頻度を含み得る。当業者は、「発火頻度」という用語が、煙突が接続されているソース(例えば、ガスストーブ、暖炉など)が点火される頻度を意味すると理解するであろう。温度センサは、火が煙突の下で点火されることにより、温度が上昇したときからこれを決定し得る。発火頻度の高い煙突は、発火頻度の低い煙突と比較して、煙道壁上の堆積物が増加することがある。
【0020】
いくつかの重複する可能性のある実施形態では、パラメータは発火強度を含み得る。当業者は、「発火強度」という用語が、点火されたときのソースがどのくらい熱いかを意味すると理解するであろう。温度センサは、煙突の下で点火された火によって温度が上昇したときの温度の大きさからこれを決定し得る。出願人は、例えば、煙道壁上の異物の蓄積が点火強度と相関し得ることを認識している。
【0021】
さらに重複する可能性のある実施形態では、パラメータは、ある期間にわたる温度プロファイルを含み得る。温度プロファイルは、煙突の下で火が点火されたときの温度変化率の表示を提供し、煙道内の異物の現在の蓄積を示し得る。
【0022】
したがって、温度プロファイルは、経時的な温度の「軌跡」の表示を提供することができ、温度プロファイルは、いくつかの実施形態では、期間中の複数の温度測定点を含み得る。プロファイルの「形状」は、煙突の現在の状態、つまり温度を時間の関数としてプロットしたときの曲線の形状を示し得る。
【0023】
温度プロファイルは、追加的または代替的に、温度の変化率の尺度、すなわち時間温度勾配の「急峻さ」の尺度を提供するために、温度の時間微分を含み得る。温度の複数の時間微分が取得され得る。煙道内の温度の「加速度」(つまり、変化率自体がどのくらい速く変化しているか)を決定するために、温度の1つ以上の二次時間微分が追加的または代替的に使用され得る。当然ながら、さらに高次時間微分が取得され得る。そのような時間微分は、温度プロファイル自体の一部として含まれ得るか、または温度プロファイルには、温度測定値(つまり、様々な時点で測定された温度)のみが含められ、時間微分は、例えば、煙突健康レベルを推定するときに、例えば、遠隔分析ユニットによって別個に決定される。
【0024】
同様に、温度プロファイルは、追加的または代替的に、温度の時間積分、すなわち時間の関数としての温度のプロットの「曲線下面積」を含み得る。代替的に、時間積分は、例えば、煙突健康レベルを推定するときに、遠隔分析ユニットによって決定され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、センサユニットは、煙突内に異物がいつ存在するかを決定し、および/または煙突内の異物の厚さを測定するように構成されている超音波センサを備える。超音波信号を送信し、それらの信号の反射を受信することによって、超音波トランスデューサは、異物が存在するかどうか、および/またはそれがどのくらいあるかを決定し得る。例えば、受信した信号の振幅を閾値と比較することによって、センサユニットは、反射(したがって、減衰)の量から、超音波信号を反射した物質の種類を決定し得る。さらに、超音波信号の受信振幅および/または往復飛行時間(TOF)は、煙突内の異物の厚さを示し得る。例えば、超音波センサは、異物層によって反射されたパルス、および煙道壁によって反射された別のパルスという、2つの反射パルスを受信し得、受信した反射間の時間差は異物層の厚さに比例する。追加的または代替的に、超音波センサは、煙突内の流れおよび/または温度を測定するように構成され得る。
【0026】
センサユニットは、保守スケジュールを決定するために使用されるパラメータの適切な測定を可能にするために、任意の好都合な場所に配置され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、センサユニットは、煙突の上部に取り付けられるように構成される。いくつかの重複する可能性のあるいくつかの実施形態では、センサユニットは、少なくとも部分的に煙突の煙道内に取り付けられるように構成されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、センサユニットは電池給電される。センサユニットに電池を設けることは、商用電源への接続を必要としないセンサユニットために好都合な電源を有利に提供し、それによって商用電源から煙突への電気配線を提供する必要性を回避し得る。
【0028】
いくつかの重複する可能性のある実施形態では、センサユニットは、太陽光発電パネルに接続される。太陽光パネルは、家の屋根に好都合に位置付けられ得るため、センサユニットに給電するのに十分に適している。そのような太陽光パネルは、センサユニットに直接給電し得るが、追加的にまたは代替的に、センサユニットに給電するのに役立つ電池を充電し得る。
【0029】
追加的または代替的に、センサユニットは、圧電セル、熱セル、ボルタ電池、および/または無線周波数(RF)整流器に接続され得る。当業者は、RF整流器が、デバイスの周囲の環境に存在するRF信号の電力を(すなわち、電磁エネルギーから)「収集する」デバイスであることを理解するであろう。
【0030】
分析ユニットが「遠隔」であること、すなわち、センサユニットとは別個のハードウェアデバイスであることは容易に理解されよう。分析ユニットは、有利なことに、センサユニット自体が何らかの決定を行う必要性を取り除き、また、センサネットワーク内の複数のセンサユニットに集中分析機能を提供し得る。したがって、いくつかの実施形態では、センサネットワークは、それぞれの煙突内またはそれぞれの煙突に近接して配置されるように各々構成された複数のセンサユニットを備え、各センサユニットは、それぞれの煙突のパラメータを測定し、かつ煙突に関連付けられたそれぞれの煙突健康データを生成するように測定されたパラメータを使用するように構成された少なくとも1つのセンサを備え、各センサユニットは、煙突健康データを遠隔分析ユニットに送信するように構成されたそれぞれの送信モジュールをさらに備える。
【0031】
いくつかのこのような実施形態では、遠隔分析ユニットは、各センサユニットから煙突健康データを受信し、それぞれの煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信するように構成されており、遠隔分析ユニットは、それぞれの煙突健康データおよびそれぞれの煙突プロファイルデータからそれぞれの煙突に関連付けられた健康レベルを推定するように構成されており、遠隔分析ユニットは、推定された煙突健康レベルから煙突保守スケジュールを決定する。したがって、遠隔分析ユニットは、多数の異なる数の煙突に対応する煙突健康データを受信し、各煙突に対する好適な保守スケジュールを決定し得る。各遠隔分析ユニットは、広い地理的領域、例えば、多くの家屋、集合住宅、近隣地域、村、町、都市などにサービスを提供し得る。センサネットワークは、追加的または代替的に、各遠隔分析ユニットが1つ以上のセンサユニットと通信するような複数の遠隔分析ユニットを備える。
【0032】
複数の煙突が単一の建物に位置し得るが、特定の実施形態のセットでは、複数のセンサユニットは、異なる建物のそれぞれの煙突内または煙突に近接して配置されるように各々構成された2つ以上のセンサユニットを含む。したがって、いくつかの実施形態では、センサネットワークシステムは、
第1の建物の第1の煙突内または第1の煙突に近接して配置されるように構成されている第1のセンサユニットと、
第2の建物の第2の煙突内または第2の煙突に近接して配置されるように構成されている第2のセンサユニットと、を備え、
第1のセンサユニットおよび第2のセンサユニットの各々は、それぞれの煙突のパラメータを測定し、かつ測定されたパラメータを使用して、それぞれの煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成されている少なくとも1つのセンサをそれぞれ備え、各センサユニットは、煙突健康データを送信するように構成されている送信モジュールをさらに備える。以下に概説するように、分散無線通信ネットワークの使用は、複数の建物にわたって複数のセンサユニットが提供される構成において特に有利である。
【0033】
このような実施形態のセットでは、センサネットワークシステムは、それぞれのさらなる建物のそれぞれの煙突内または煙突に近接して配置されるように各々構成されている1つ以上のさらなるセンサユニットを備え、さらなるセンサユニットは、それぞれの煙突のパラメータを測定し、かつ測定したパラメータを使用してそれぞれの煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成された少なくとも1つのセンサを備え、各さらなるセンサユニットは、煙突健康データを送信するように構成されている送信モジュールをさらに備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、送信および受信モジュールは、無線通信モジュールである。センサユニットと遠隔分析ユニットとの間で無線通信を使用することは、これらのユニット間のデータ交換に有線が不要であることを有利に意味する。いくつかの実施形態では、遠隔分析ユニットは、クラウドベースである。クラウドベースであるということは、遠隔分析ユニットが、例えば、好適なデータセンタ内のオンデマンドコンピューティングリソースによって提供されることを意味し、そのため、遠隔分析ユニットがサーバを含むことが理解されよう。
【0035】
センサユニットと遠隔分析ユニットとの間のデータ交換を提供するのに好適な多数の無線通信技術がある。いくつかの実施形態では、無線通信送信および受信モジュールは、セルラーネットワークを介して通信するように構成されている。セルラーネットワークはモバイルネットワークであり、多数の「セル」にわたって地理的に分散された通信ネットワークであり、各セルには、データがセンサユニットおよび/または遠隔分析ユニットで交換される少なくとも1つのセルラーネットワークトランシーバが提供される。いくつかの実施形態では、セルラーネットワークは、セルラーモノのインターネット(IoT)ネットワークを含み、その非限定的な実施例は、3GPP(登録商標)標準化団体によって指定され得る。
【0036】
重複する可能性のある実施形態のセットでは、無線通信送信および受信モジュールは、LoRa(登録商標)通信リンクを介して通信するように構成されている。当業者は、LoRa(登録商標)が当技術分野でそれ自体知られているセルラーのような無線通信技術であると理解するであろう。
【0037】
いくつかの重複する可能性のある実施形態では、無線通信送信および受信モジュールは、Bluetooth(登録商標)通信リンクを介して通信するように構成されている。Bluetooth(登録商標)は、比較的波長の短い超高周波数(UHF、Ultra High Frequency)電波を利用してデータを交換する無線通信規格であり、一般的には、2.4GHz程度の周波数で動作する。「従来の」Bluetooth(登録商標)に加えて、本明細書で使用される場合、「Bluetooth(登録商標)通信リンク」という用語は、Bluetooth Low Energy(登録商標)を含むがこれに限定されないBluetooth(登録商標)規格の他の変形を含むと理解されるべきである。
【0038】
いくつかの重複する可能性のある実施形態では、無線通信送信および受信モジュールは、Wi-Fi(商標)ネットワークを介して通信するように構成されている。「Wi-Fi(商標)」は、IEEE802.11ファミリーの規格に基づいた無線通信規格のファミリーであることが理解されよう。センサユニットには、例えば、煙突が属する建物内の家庭用無線ネットワークである近くのWi-Fiネットワークに接続できるようにするWi-Fiモジュールが装備され得る。
【0039】
(例えば、無線通信ネットワークを含むがこれに限定されない上記のタイプのもの)通信ネットワークは、例えば、スターまたはツリーネットワークである任意の好適なトポロジを有し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、センサネットワークは、メッシュネットワークを備える。「メッシュ」ネットワークは、ネットワークノードがネットワーク内のできるだけ多くの他のノードに(多くの場合、直接的に)接続され、一般には、可能な限り効率的にデータをルーティングする目的でそれらの間でデータをルーティングするトポロジであることが理解されよう。したがって、センサネットワークが複数のセンサユニットを備える実施形態では、センサユニットは、それらの間で「ピアツーピア」通信を提供して、煙突健康データを、メッシュネットワークを介して、遠隔分析ユニットにルーティングするように構成され得る。
【0040】
実施形態の特定のセットでは、通信ネットワークは、例えば、「低電力広域ネットワーク(LPWAN)」を使用して、「長距離」での通信を可能にする無線通信ネットワークを備えることが理解されよう。これは、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(商標)などの「短距離」通信技術とは異なる。LPWAN技術は、場合によっては、センサユニットが煙突内または煙突に近接して設置されるときに有利である、一般に低電力消費を利用するため、「従来の」セルラー通信技術(例えば、2G、3G、4G)よりも優先され得、「無制限」の給電することは困難なことがあり得、代わりにセンサユニットは電池および/または断続的な電力源(例えば、太陽光発電)に依拠する。
【0041】
したがって、いくつかの実施形態では、無線通信ネットワークは建物間ネットワークを備える。これは、特定の建物内などの狭いエリアで通信を交換するためにローカルエリアネットワーク(LAN)が使用される構成とは特に異なる。当然ながら、必要とされる実際の範囲は、関連する建物がどれだけ接近しているかに依存するが、いくつかの実施形態では、無線通信ネットワークは、少なくとも100m、任意選択的に少なくとも500m、さらに任意選択的に少なくとも1km、さらに任意選択的に少なくとも2km、さらに任意選択的に少なくとも5kmの通信範囲を有し得る。
【0042】
長距離通信ネットワークの使用は、センサユニットが広い地域に分散されている場合、例えば、センサユニットが完全に異なる建物にある煙突内または煙突に近接して配設されている場合に特に有益であり、センサユニットの分散ネットワークを広域(例えば、町または都市わたって)分散させることを可能にする。
【0043】
センサユニットおよび/または遠隔分析ユニット間の通信に使用するのに特に十分に適しているLPWAN技術の例は、ロングタームエボリューション(LTE、Long Term Evolution)狭帯域モノのインターネット(NB-IoT)、LoRa(登録商標)およびSigfoxを含む。例えば、数キロメートルの距離は、LPWAN技術で達成可能である。例えば、NB-IoTは、1km(都市部)~10km(地方)のおおよその範囲を有し、LoRa(登録商標)は、5km(都市部)~20km(地方)のおおよその範囲を有し、Sigfoxは、10km(都市)~40km(地方部)のおおよその範囲を有する。
【0044】
当然ながら、この好適な技術のリストは網羅的なものではなく、建物間の通信を可能にする他の好適な技術を容易に使用し得、本発明の範囲内に収まることが理解されよう。さらに、ここで提供される範囲は、必ずしも本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、代わりに、そのようなセンサネットワークシステムを使用してカバーし得る地理的範囲に関する文脈を提供することを意図している。上で概説したように、遠隔分析ユニットは、煙突に関連付けられた煙突プロファイルデータを受信する。この煙突プロファイルデータは、煙突に関して先験的に知られている情報に対応し、すなわち、動的データではなく、既存のデータである。
【0045】
煙突プロファイルデータは、どの種類のソースが煙突に接続されているか、例えば、煙突が暖炉、ストーブ、ボイラー、焼却炉などに役立つかどうかに関する情報を含み得る。実際には、1つの煙突が複数の目的に役立ち得、これらの各々は、煙突プロファイルデータにおいて表され得る(例えば、プロファイルデータは、所与の煙突が2つの暖炉および1つのストーブに役立つことを示し得る)。ソース情報は、ソースに関連するモデル、年数、サイズ、サービス履歴などを含み得る。
【0046】
いくつかの重複する可能性のある実施形態では、煙突プロファイルデータは、煙突に関連付けられた燃料情報を含む。これは、どの種類の燃料が煙突に接続されたソースによって燃焼されるか、例えば、木材、石炭、天然ガス、または石油が燃焼されているかどうかを示し得る。この情報は、煙道内に蓄積する異物の種類、燃焼される所与の種類の燃料の異物レベルに関連付けられた火災の危険性、および異物の蓄積の予想変化率に関する表示を与え得る。
【0047】
いくつかのさらなる重複する可能性のある実施形態では、煙突プロファイルデータは、煙突の掃除履歴を含む。煙突に対して実施された以前の掃除活動を考慮に入れることによって、煙突の清掃および保守の必要性について、より情報に基づいた分析を実施し得る。例えば、比較的最近煙突を掃除したにもかかわらず、大量の異物が堆積している場合、これは、特定の煙突が平均よりも速い速度で異物の蓄積を経験していることを示し得るため、より頻繁に清掃を必要とし得る。
【0048】
煙突保守スケジュールは、煙突が次の保守を受けるべきときの推定を含み得、締め切りまたは時間ウィンドウであり得る。この情報は、煙突の所有者、建物の管理者、または煙突の保守を担当する組織、例えば、民間企業または消防署などの公共団体に中継され得る。
【0049】
保守スケジュールを提供することに加えて、少なくともいくつかの実施形態では、センサネットワークは、推定された煙突健康レベルと目標煙突健康レベルとの差が閾値を超えたときに、警報を生成し得る。例えば、煙道内に安全と見なされるよりも大きな異物の蓄積があると決定された場合(例えば、重大な火災の危険性がある)、緊急の保守が必要であることを示す警報が発せられ得る。この警報は、遠隔分析ユニットまたは別のハードウェアユニット、例えば緊急警報ユニットによって発せられ得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、センサネットワークシステムは、煙突のパラメータが閾値を超えたときに緊急警報信号を生成するように構成されている。例えば、温度が決定される場合、温度が、例えば、家庭火災を示す閾値を超えたときに警報が生成され得る。このような警報は、建物内で可聴警報(ベル、音響器、またはサイレンなど)を鳴らすために使用され得、および/または消防隊などの好適な当局に警告するために使用され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、遠隔分析ユニットは、煙突健康データおよび/または煙突プロファイルデータから放出レベルを推定するように構成されている。したがって、システムは、煙突が接続されているソースの放出プロファイルを決定することが可能であり得る。一例に過ぎないが、古いオーブンは新しいオーブンよりも多くの粒子を放出することがある。同様に、ペレットを燃やすオーブンは、木材を燃やすオーブンよりも放出量が少ないことがある。温度測定は、上記で概説したように、発火頻度および/または発火強度に関する情報を提供し得る。この情報は、ソース(例えば、オーブンまたは別の種類のソース)の年数および/またはモデルについての情報と結合されて、ソースによって生成される放出(例えば、粒子状物質)を予測し得る。
【0052】
特定の実施形態のセットでは、遠隔分析ユニットは、複数のセンサユニットに関連付けられた煙突健康データおよび/または煙突プロファイルデータから地域の空気品質レベルを推定するように構成され得る。出願人は、特に有利な実施形態のセットでは、特定の地理的領域(例えば、多くの家屋、集合住宅、近隣地域、村、町、市、自治体、郡、地区、国など)にわたって分散された複数の煙突からデータを取得され得ることを理解している。この「クラウドソーシングされた」データを使用して、現在の空気の品質に関して地域の空気品質を推定するだけでなく、その地理的地域の空気品質の将来の変化および傾向を予測し得る。例えば、特定の地域における煙突の使用量(例えば、発火強度および/または頻度)が増加している場合、空気品質に悪い影響が出る可能性がすぐにあると決定され得、これは、予防措置または緩和措置を積極的に取る必要があることを示し得る。逆に、多くの人が汚染の少ない燃料に切り替えている、または使用量を減らしているように見える場合は、空気品質に良い影響が検出され得る。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態では、センサネットワークは、
第1の建物の第1の煙突内または第1の煙突に近接して配置されるように構成されている第1のセンサユニットと、
第2の建物の第2の煙突内または第2の煙突に近接して位置するように構成されている第2のセンサユニットと、を備え、
第1のセンサユニットおよび第2のセンサユニットの各々は、それぞれの煙突のパラメータを測定し、かつ測定されたパラメータを使用して、それぞれの煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成された少なくとも1つのセンサをそれぞれ備え、各センサユニットは、煙突健康データを送信するように構成された送信モジュールをさらに備え、
遠隔分析ユニットは、センサユニットの各々から受信した煙突健康データおよび/または煙突プロファイルデータから地域の空気品質レベルを推定するように構成されている。
【0054】
このような実施形態のセットでは、センサネットワークは、それぞれのさらなる建物のそれぞれの煙突内または煙突に近接して配置されるように各々構成されている1つ以上のさらなるセンサユニットを備え、さらなるセンサユニットは、それぞれの煙突のパラメータを測定し、かつ測定したパラメータを使用してそれぞれの煙突に関連付けられた煙突健康データを生成するように構成された少なくとも1つのセンサを備え、各さらなるセンサユニットは、さらに、煙突健康データを送信するように構成されている送信モジュールを備え、遠隔分析ユニットは、さらなるセンサユニットから受信した煙突健康データおよび/または煙突プロファイルデータを使用して地域の空気品質を推定するように構成されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、遠隔分析ユニットは、煙突健康データおよび/または煙突プロファイルデータから火災の危険性レベルを推定するように構成されている。したがって、システムは、センサユニットからのデータおよび/またはプロファイルデータによって与えられる事前の知識に基づいて、煙突内の火災の危険性が何であるかを決定し得る。この危険性レベルは、例えば、煙突内で火災が起きる可能性であり得る(または関連し得る)。この火災の危険性レベルは、例えば、当局または煙突を有する建物の所有者/居住者に報告され得る。これにより、火災の危険性を管理するための積極的な措置を取ることができるので有利であり得る。
【0056】
先に概説したように、火災の危険性レベルは、煙道の壁に蓄積した異物の量に基づいて決定され得る。追加的または代替的に、火災の危険性レベルは、発火強度および/または発火頻度に基づき得る。例えば、暖炉の使用量の増加が検出された場合は、火災の危険性が高いことを示し得る。
【0057】
遠隔分析ユニットは、単一のハードウェアユニットであってもよいが、本発明の実施形態によるその様々な機能が複数の異なるハードウェアユニットにわたって実施される分散システムであってもよいことが理解されよう。同様に、いくつかの実施形態では、センサユニットのハードウェア構成要素が共通のハウジング内に収容されてもよいが、センサユニットの1つ以上の構成要素が、本発明の実施形態に関して本明細書に説明された機能を提供するように一緒に接続された別個のハードウェアである他の実施形態が想定される。
【0058】
上で概説したように、いくつかの実施形態では、遠隔分析ユニットは、煙突健康データおよび/または煙突プロファイルデータから、放出レベルおよび/または地域の空気品質レベルを推定し得る。いくつかの重複する可能性のある実施形態では、センサネットワーク内のセンサユニットを使用して、煙突の周囲の領域の空気品質に関する情報を取得し得る。例えば、センサユニットは、空気品質パラメータ、1つ以上の汚染物質の濃度、空気粒子(例えば、特定のサイズを有する粒子)の濃度などの環境データを取得し得る。センサユニットは、関連する環境データを取得するための1つ以上の好適なセンサを備え得る。次いで、環境データを分析して、センサユニットの周囲の領域に関連付けられた空気品質測定基準を決定し得る。この分析は、例えば、遠隔分析ユニットによって実施され得る。
【0059】
以下、本発明の特定の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】従来技術の煙突構成の断面を示す概略図である。
【
図2】異物の蓄積を伴う
図1の煙突構成を示すさらなる概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるセンサネットワークのブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるセンサネットワークを示す概略図である。
【
図5】
図4のセンサネットワーク内の煙突構成の断面を示す概略図である。
【
図6】
図3および
図4の遠隔分析ユニットの動作を例解するデータフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、先行技術の煙突構成2の断面を示す概略図である。居住用建物の側方に位置し得る煙突構成2は、暖炉4と、煙道8が垂直に上昇する煙突スタック6と、を備える。
【0062】
煙道8は、矢印で示されるように、暖炉4内の火10によって生成されたガスおよび煙が暖炉4から外界に排出される経路を提供する。煙道8はまた、暖炉4内で燃焼するための(すなわち、
図1の矢印とは反対の方向の)空気の取り入れ経路を提供するが、例解を容易にするために空気の取り入れは示されていない。
【0063】
この特定の実施例では、火10は木材を燃焼させた結果である。しかしながら、木材が燃焼すると、
図2に見られるように、煙道8の内壁にクレオソート12の堆積物が残る。これらの堆積物12は、経時的に蓄積し、
図1よりも細い矢印によって示されるように、煙道8を通る空気の流れを阻害する。このクレオソート堆積物12の蓄積は危険であり、それは、堆積物12自体が可燃性であり、点火しやすく、壊滅的な結果となり得る(すなわち、住宅火災が発生し得る)ためである。
【0064】
このような問題を回避するために、煙突スタック6の煙道8を定期的に、例えば、年1回、堆積物12を除去するために清掃しなければならない。
【0065】
図3は、本発明の一実施形態によるセンサネットワーク14のブロック図である。センサネットワーク14は、センサユニット16および遠隔分析ユニット18を備え、センサユニット16および遠隔分析ユニット18は、無線通信リンク20を介して互いに通信するように構成されている。この特定の実施例では、無線通信リンク20はセルラー接続である(すなわち、「モバイルネットワーク」を利用する)が、追加的または代替的に、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(登録商標)、Wi-Fi(商標)、他の好適な無線通信規格を使用するか、またはネットワークの状況(例えば、距離、信号対雑音比など)に従って、必要に応じて代わりに独自の無線通信方式を使用して実施することができる。
【0066】
この実施例では、センサユニット16は、温度センサ22、超音波センサ24、プロセッサ26、および無線トランスデューサモジュール28を備える。具体的には、無線トランスデューサモジュール28は、セルラートランスデューサモジュールであり、当技術分野でそれ自体が知られている方法でセルラーネットワークを介して通信するのに好適である。センサユニット16が遠隔分析ユニット18に報告するために、無線トランスデューサモジュール28は送信機能のみを有することができるが、この実施例では受信能力も有する。
【0067】
プロセッサ26は、データが無線トランスデューサモジュール28を介して断続的に送信されるように、データをメモリ27にバッファするように構成されている。これは、センサユニット16が特定の間隔で低電力モードから「ウェイクアップ」してバッファされたデータを送信することのみを可能にすることによって電力節約を提供し得る。
【0068】
遠隔分析ユニット18は、無線トランスデューサモジュール30、プロセッサ32、およびメモリ34を備える。センサユニット16の無線トランスデューサモジュール28と同様に、遠隔分析ユニット18の無線トランスデューサモジュール30はセルラートランスデューサモジュールであり、無線トランスデューサモジュール30は受信機能のみを有することができるが、この実施例では送信能力も有する。
【0069】
センサユニット16および遠隔分析ユニット18の動作は、以下でさらに詳細に説明する。
【0070】
図4は、
図3のセンサネットワーク14のネットワークトポロジを示す概略図であり、複数のセンサユニット16a~eが、それぞれの無線通信リンク20a~eを介して遠隔分析ユニット18に接続されている。この実施形態では、無線通信リンク20a~eのすべてがセルラー通信リンクであるが、異なるタイプのワイヤレス通信リンクを使用することができ、いくつかのセンサユニット16a~eが、他とは異なる無線通信規格(および/または独自の通信方式)を使用するような異なる無線通信リンクの混合がある実施形態が想定される。代替的に、有線通信リンクを、無線通信リンク20a~eのうちの1つ以上の代わりに使用することができる。
【0071】
遠隔分析ユニット18によって生成された煙突保守スケジュール36は、一例に過ぎないが、消防署、地方自治体、公共団体、民間の煙突監視組織などの外部エンティティ38に提供され得る。
【0072】
図5は、
図4のセンサネットワーク14内の煙突構成2の断面を示す概略図である。煙突構成2は、
図1および2の煙突構成に対応するが、本発明の一実施形態による遠隔分析ユニット18と通信するセンサユニット16が設けられており、同様の参照番号は同様の要素を示している。
【0073】
センサユニット16の温度センサ22は、煙道8内の温度27を測定するように構成されている。温度27を経時的に監視することにより、暖炉4内の火10の発火頻度(すなわち、火10がどのくらい頻繁に点火されるか)、および火10の発火強度(すなわち、火10がどのくらい熱いかに対応する)を決定することができる。さらに、温度プロファイル(すなわち、煙道8内の温度がどのように経時的に変化するかの尺度)を決定し得る。
【0074】
超音波センサ24は、超音波信号25a、例えば、超音波パルスを送信し、送信した超音波信号の反射25bを受信するように構成されている。超音波センサ24は、受信した反射25bから、堆積物12が存在するかどうか、および堆積物12の厚さがどのくらいかを決定することができる。堆積物12の堆積が不均一である場合、測定された厚さは、1つの特定のスポットでの厚さの測定を提供する「スポットテスト」であることがあるが、複数の超音波センサを使用することで、最大厚さおよび/または平均厚さが必要に応じて決定され得るように複数の測定値が取られてもよい。超音波センサ24はまた、煙突内の流量および/または温度を決定し得る。
【0075】
これらのセンサ22、24の各々からの測定パラメータは、照合される煙突健康データ40をセンサユニット16の無線送信モジュール28に渡すプロセッサ26によって照合される。無線送信モジュール28は、この煙突健康データ40を遠隔分析ユニット18に送信し、遠隔分析ユニット18は、その無線受信モジュール30を介して煙突健康データ40を受信する。
【0076】
無線受信モジュール30は、煙突健康データ40を遠隔分析ユニット18のプロセッサ32に渡す。プロセッサ32はまた、メモリ34から煙突プロファイルデータ42を受信し、この煙突プロファイルデータ42は、
図3および4の遠隔分析ユニット18の動作を例解するデータフロー図である
図6に示されている。
【0077】
プロセッサ32によって受信されるデータは、発火持続時間および強度データ44が、温度プロファイルデータ46、暖炉情報データ48(例えば、暖炉のモデルおよび年数)、掃除履歴データ50を含む。点火持続時間および強度データ44ならびに温度プロファイルデータ46は、センサユニット16から煙突健康データとして受信され得、暖炉情報データ48および掃除履歴データ50は、メモリ27から煙突プロファイルデータ42として受信され得る(このデータ48、50を囲む点線によって例解されている)。プロセッサ32はまた、履歴温度プロファイルデータならびに/または発射強度および持続時間データ(図示せず)を受信し得る。
【0078】
プロセッサは、例えば、人工知能(AI)アルゴリズムなどを使用して、様々なデータソースを組み合わせる。例えば、温度プロファイルデータ46の緩やかな勾配は、煙突が煙道壁上に大量の堆積物を有することを示し得(センサユニットに近接して温度が上昇する速度が遅くなる)、より急な勾配は、「よりクリーンな」煙突を示し得る。しかしながら、例えば、この勾配に影響を与える可能性のある発火強度および持続時間には、ある程度の依存性があり得る。このデータの経時的な分析は、暖炉のモデルおよび/または年数に関する事前の知識、以前の掃除活動に関する情報(例えば、いつ最後に掃除されたか、以前の掃除中にどのくらい汚れていたかなど)と一緒に、煙突の現在の状態と、それがどのように経時的に変化しているかについて結論を出すことに役立ち得る。次いで、これはプロセッサが、先に概説したようにシステムによって出力される煙突保守スケジュール36を生成するために使用される。
【0079】
したがって、当業者によって、本発明の実施形態が、煙突の状態および健康に関連するデータが、このデータを煙突に関して既知の以前の情報と組み合わせる遠隔分析ユニットに送信されるネットワーク化されたシステムを提供することが理解されよう。このようなシステムは、一般的な(例えば、固定された)スケジュールによるのではなく、動作上のニーズに基づいて保守をスケジュールすることにより、リソースの「よりスマートな」使用を可能にし得る。特定の実施形態を詳細に説明されてきたが、当業者であれば、本明細書に記載された本発明の原理を使用して多くの変形および修正が可能であることを理解するであろう。
【国際調査報告】