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特表2023-516590管腔内シーリング装置及び関連する使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】管腔内シーリング装置及び関連する使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
A61B17/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550881
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 US2021019332
(87)【国際公開番号】W WO2021173613
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/981,733
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フォラン、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】モンタギュー、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マクナーン、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ファブロー、ジョン ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ライアン、ショーン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD38
4C160DD55
4C160DD62
4C160DD65
4C160DD70
4C160MM43
(57)【要約】
医療システムは、対象の体内の標的部位に配置される多孔質体と、管ルーメンを画定する壁を含む管であって、管の第1の端において多孔質体に接続される管と、体内管腔から標的部位をシールするシーリング装置と、を含む。シーリング装置が体内管腔から標的部位をシールするとき、管は標的部位から体内管腔の中へと延びる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムにおいて、
本医療システムは、対象の体内の標的部位に配置されるように構成された多孔質体を備え、
本医療システムは、管ルーメンを画定する壁を含む管を備え、該管は、当該管の第1の端において前記多孔質体に接続されており、
本医療システムは、体内管腔から前記標的部位をシールするように構成されたシーリング装置を備え、
前記シーリング装置が前記体内管腔から前記標的部位をシールするとき、前記管は前記標的部位から前記体内管腔の中へと延びるように構成される医療システム。
【請求項2】
前記シーリング装置はステントであり、前記ステントは、前記管と前記ステントとが移植されたときに、(1)前記体内管腔の側壁、及び(2)前記管と接触するように構成される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記ステントはステントルーメンを画定する壁を含み、取付け装置が前記壁から前記ステントルーメンの中に延びる、請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記ステントの前記壁は、前記ステントの外面に沿って延びるチャネルを画定する、請求項2又は3に記載の医療システム。
【請求項5】
前記ステントの前記壁は、前記チャネルの長さに沿って、半径方向に外向きの凹面と半径方向に内向きの凸面とを含む、請求項4に記載の医療システム。
【請求項6】
前記チャネルは、前記管と前記ステントとが移植されたときに前記管と整合するように構成されるとともに、前記管は前記チャネル内に延びて、前記体内管腔から前記標的部位をシールするように構成される、請求項4又は5に記載の医療システム。
【請求項7】
前記チャネルは、前記ステントルーメンの中央長さ方向軸線に関して斜めの傾斜面を含み、前記傾斜面は管を収容するように構成される、請求項4~6の何れか1項に記載の医療システム。
【請求項8】
前記シーリング装置は、弁ルーメンを画定する弁であり、前記弁は、前記体内管腔を画定する壁の開口の、前記標的部位と前記体内管腔との間に配置されるように構成され、前記管は前記標的部位から前記弁ルーメンを通って前記体内管腔の中へと延びるように構成される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項9】
前記弁は、(1)前記弁が前記管と接触する閉状態と(2)前記弁が前記管と接触しない開状態とを有する、請求項8に記載の医療システム。
【請求項10】
前記弁は、前記体内管腔を画定する前記壁の蠕動運動によって前記弁ルーメンの大きさが変化するように構成される、請求項8及び9の何れか1項に記載の医療システム。
【請求項11】
前記弁の外面はU字型である、請求項8~10の何れか1項に記載の医療システム。
【請求項12】
前記標的部位からの流体は、前記標的部位から前記管ルーメン及び前記弁ルーメンを介して排出されるように構成される、請求項8~11の何れか1項に記載の医療システム。
【請求項13】
前記管の第1の端は、前記スポンジに埋め込まれた複数の分枝を含む、請求項1~12の何れか1項に記載の医療システム。
【請求項14】
前記管は、複数のコルゲーションを含み、前記管は前記複数のコルゲーションを介して折れ曲がるように構成される、請求項1~13の何れか1項に記載の医療システム。
【請求項15】
前記管は複数の一方向弁を含み、前記複数の一方向弁は、流体が前記標的部位から前記体内管腔へと通過でき、前記流体が体内管腔から標的部位へは通過できないように構成される、請求項1~14の何れか1項に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は低侵襲性(例えば、内視鏡及び/又は腹腔鏡)医療装置及びそれに関連する使用方法に関する。実施形態において、本開示は胃腸管の穿孔、漏出部、又は創傷をシールするための1つ又は複数の装置、これらのシーリング装置を前進させる装置、及び関連する使用方法その他の態様に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡及び胃腸(GI)管の内視鏡及び切開手術には、例えば結腸切除術、肥満手術、食道切除術、胃バイパス術、及びスリーブ状胃切除術等が含まれる。これらの処置の結果として、胃腸管の穿孔、術後漏出部、又はその他の創傷が生じ得る。このような創傷の管理には限定的な治療選択肢しかなく、その罹患率及び死亡率はかなり高い。選択肢には、再手術と内視鏡下でのステント又はクリップの留置が含まれる。手術は比較的侵襲性が高く、罹患率と死亡率も高い。内視鏡下ステント留置は低侵襲的選択肢である。しかしながら、留置されたステントは所期の位置から移動し、及び/又は標的部位での感染を閉じ込め、ドレナージを阻害する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
ある態様によれば、医療システムは、対象の体内の標的部位に配置されるように構成された多孔質体と、管ルーメンを画定する壁を含む管であって、管の第1の端において多孔質体に接続される管と、体内管腔から標的部位をシールするように構成されたシーリング装置と、を含み、シーリング装置が体内管腔から標的部位をシールするとき、管は標的部位から体内管腔の中へと延びるように構成される。
【0004】
シーリング装置はステントであり得、ステントは、管とステントとが移植されたときに、(1)体内管腔の側壁、及び(2)管と接触するように構成され得る。
ステントはステントルーメンを画定する壁を含み得て、取付け装置が壁からステントルーメンの中に延び得る。
【0005】
ステントの壁は、ステントの外面に沿って延びるチャネルを画定し得る。
ステントの壁は、チャネルの長さに沿って、半径方向に外向きの凹面と、半径方向に内向きの凸面と、を含み得る。
【0006】
チャネルは、管とステントとが移植されたときに管と整合するように構成され得て、管はチャネル内に延びて、体内管腔から標的部位をシールするように構成され得る。
チャネルは、ステントルーメンの中央長さ方向軸線に関して斜めの傾斜面を含み得て、傾斜面は管を収容するように構成され得る。
【0007】
シーリング装置は、弁ルーメンを画定する弁であり得、弁は、体内管腔を画定する壁の開口の、標的部位と体内管腔との間に配置されるように構成され得、管は標的部位から弁ルーメンを通って体内管腔の中へと延びるように構成され得る。
【0008】
弁は、(1)弁が管と接触する閉状態と(2)弁が管と接触しない開状態とを有し得る。
弁は、体内管腔を画定する壁の蠕動運動によって弁ルーメンの大きさが変化するように構成され得る。
【0009】
弁の外面はU字型であり得る。
標的部位からの流体は、標的部位から管ルーメン及び弁ルーメンを介して排出されるように構成され得る。
【0010】
管の第1の端は、スポンジに埋め込まれた複数の分枝を含み得る。
管は、複数のコルゲーションを含み得て、管は複数のコルゲーションを介して折れ曲がるように構成され得る。
【0011】
管は複数の一方向弁を含み得て、複数の一方向弁は、流体が標的部位から体内管腔へと通過できるように構成され得て、流体が体内管腔から標的部位へは通過できないようにし得る。
【0012】
他の態様によれば、医療装置は多孔質体と、管と、を含み、管は管の第1の端から管の第2の端へと延び、管の第1の端において多孔質体に接続される管ルーメンを含み、管は、流体が管の第1の端から管の第2の端へと通過でき、流体が管の第2の端から管の第1の端へは通過できないように構成された少なくとも1つの一方向弁を含み、管ルーメンは、管の第1の端において多孔質体に流体接続される。
【0013】
管の第1の端は、多孔質体に埋め込まれた複数の分枝を含み得て、管ルーメンは、複数の分枝の各分枝を通って延び得て、複数の分枝の各分枝は管ルーメンを多孔質体に流体接続する開口を含み得る。
【0014】
管は複数のコルゲーションを含み得て、管は複数のコルゲーションを介して折れ曲がるように構成され得る。
他の態様によれば、流体を胃腸管に隣接する標的部位から除去する方法は、多孔質体を標的部位において展開するステップを備え、該ステップにおいて管が多孔質体から胃腸管の中へと延び、及び、ステントを胃腸管内で展開して、標的部位を胃腸管からシールするステップを備える。
【0015】
本方法は、ステントの一方の端をステントルーメン内に移動させるステップと、多孔質体を胃腸管から抜去するステップと、第2の多孔質体を標的部位に展開するステップと、ステントの端をステントルーメンから延ばして標的部位を胃腸管からシールするステップと、をさらに含む。
【0016】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、各種の例示的実施形態を表し、説明と共に開示されている実施形態の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】ある実施形態による管腔内陰圧療法(EVAC)システムの断面図。
図1B】ある実施形態による図1AのEVACシステムの線A-Aに沿った断面図。
図2】ある実施形態による、折り返されたステントを有する図1AのEVACシステムの図。
図3】他の実施形態によるEVACシステムの断面図。
図4A】ある実施形態による図3のEVACシステムの線A-Aに沿った断面図。
図4B】ある実施形態による図3のEVACシステムの線B-Bに沿った断面図。
図5A】他の実施形態によるEVACシステムの断面図。
図5B】ある実施形態による図5AのEVACシステムの弁の線D-Dに沿った断面図。
図5C】ある実施形態による図5AのEVACシステムの弁の線D-Dに沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
説明しやすくするために、開示されている装置及び/又はその構成要素の部分は近位部分及び遠位部分と呼ばれる。留意すべき点として、本明細書において、「近位」という用語は、装置の使用者に近い方の部分を指そうとしており、「遠位」という用語は、使用者から遠い方の部分を指すために使用される。同様に、「遠位方向に延びる」とは、構成要素が遠位方向に延びることを示し、「近位方向に延びる」とは、構成要素が近位方向に延びることを示す。さらに、本明細書で使用されるかぎり、「約」、「ほぼ」、「実質的に」という用語は、明示又は黙示された値の+/-10%内の数値の範囲を示す。構成要素/表面の幾何学形状を示す用語は、正確な形状及び近似的形状を指す。本開示は、以下の説明及び添付の図面を参照すると理解されるかもしれず、図中、同様の要素には同じ参照番号が付されている。
【0019】
管腔内陰圧療法(EVAC)が提案されている。EVACは、例えばGI管内の創傷部位に、その終端にスポンジを有する経鼻胃管を通じて陰圧が送達される。スポンジは内視鏡下で穿孔、漏出部、又はその他の創傷の中に設置される。その後、陰圧が加えられる。しかしながら、EVACに適した装置とシステムは限定されている。
【0020】
本開示の実施形態は、管腔内陰圧療法(EVAC)のための装置、システム、及び方法を含む。例えば、EVACは、スポンジ又はその他同様の物質の、穿孔、漏出部、嚢腫、吻合部等を含む創傷(例えば、標的)部位への管腔内留置を含む。物質の留置は、自然の開口からGI管に挿入されたカテーテル、スコープ(内視鏡、気管支鏡、大腸内視鏡、十二指腸内視鏡、胃内視鏡等)、管、又はシースを介して行われ得る。開口は例えば、鼻、口、又は肛門とすることができ、留置は、食道、胃、十二指腸、大腸、又は小腸を含むGI管の何れの部分とすることもできる。物質の留置はまた、GI管を介して到達可能な他の器官内で行うこともできる。
【0021】
図1Aは、本開示の一例によるEVACシステム10を示す。システム10は、患者の体内に、例えばGI管80内の標的部位70へと、慢性創傷の治療のために挿入され得る。しかしながら、本明細書で述べられているように、体内のシステム10の位置は限定されない。システム10は一般に、EVAC装置20とステント60とを含む。本例はGI管80に関しているが、システム10は何れの体内管腔においても使用され得る。
【0022】
EVAC装置20は、スポンジ30(又は他のメッシュ状材物質又は多孔質体)と真空管40を含み得る。スポンジ30は真空管40の遠位端に取り付けられ得る。スポンジ30は、その外面に開口32を含み得る。開口32は、何らかの穴又は小孔でもあり得る。開口32は、スポンジ30全体にわたる相互接続チャネル及び小孔(図示せず)へのアクセスを提供する(参照しやすくするために、開口32のみが示されている)。開口32は、異なる大きさ及び/又は形状を有し得て、開口32の大きさと形状は、体内の治療場所に基づいて選択され得る。流体及び/又はその他の物質は、標的部位70から除去され得る。理解しやすくするために、流体は標的部位70内にあり、及び/又はそこから取り除かれるあらゆる流体、物質、又はその他のデブリを含む。
【0023】
スポンジ30は球形を有するように示されているが、円柱、立方体、不規則形状その他を含む何れの形状でもあり得る。本明細書で述べられるように、スポンジ30は標的部位へと挿入している間はより低いプロファイルへと圧縮され得て、標的部位で展開されている間には膨張し得る。スポンジ30は当初、第1の形状及び大きさを有し得て、医療処置中に、例えば医療用鋏等を使ってトリミングされて、標的部位70の大きさと形状に応じてスポンジ30の大きさ及び/又は形状を変更され得る。
【0024】
本開示の実施形態において、スポンジは、陰圧によって液体を吸収し、及び/又は液体がその中を通過できるようにし得る何れの適当な生体適合材料でもあり得る。物質は、柔軟、圧縮可能、多孔質、親水性、滅菌、及び/又は使い捨てであり得る。スポンジ材料は、連続気泡発泡体であり得る。適当な材料には、ポリウレタン、エステル、エーテル、複合材料、及びあらゆる医療用材料が含まれる。
【0025】
引き続き図1Aを参照すると、管40は経鼻胃管であり得、1つ又は複数のルーメン44を画定する外壁42を含む。ルーメン44は、管40の遠位端に開口を含み、遠位端に1つの開口を含み得る。代替的に、管40は、管40の端においてスポンジ30内に1つ又は複数の分枝(例えば、図3の分枝40a’参照)を含み得る。外壁42は、真空管40の遠位端の円周に沿って、ルーメン44と流体連通する複数の穴(図示せず)を含み得る。これらの穴によって、ルーメン44の中への流体の流れが増大し得る。真空管40の遠位端は、縫合、接着剤、又はその他を介してスポンジ30に取り付けられ得る。一例において、スポンジ30は、例えばスポンジ30をほぼ同じ大きさの半分ずつに切ることによって、スポンジ30の内部が露出するように切られ得る。管40の遠位端とほぼ同じ形状及びほぼ同じ大きさに対応するチャネルが、スポンジ30の各半分に形成され得る。管40は、スポンジ30のチャネル内に設置及び/又は取り付けられ得て、スポンジ30の各半分は接着剤、縫合又はその他を使って再結合され得る。これによって、スポンジ30と管40との間に追加の構造的支持が得られ得て、及び/又はそれによってスポンジ30は管40の周囲に形成され得る。例えば、管40が不規則な形状である例において、及び/又は管40が分枝40a’を含む場合、スポンジ30は管40の周囲に形成され得る。代替的に、スポンジ30は管40の遠位端の周囲に電界紡糸、3次元(3D)プリンティング又はその他によって形成され得る。
【0026】
体内に設置されると、管40の近位端は近位方向に、すなわち図1Aの矢印Pにより示される方向と反対方向に延び得て、これは挿入開口に向かう方向であり得る。矢印Pは、GI管80による蠕動動作の方向を示し、これについては後でより詳しく説明する。管40の近位端の延長方向により、流体は標的部位70から挿入開口に向かって、例えば管40の近位端に取り付けられた吸引装置により流出され得る。管40は曲がり得て、管40はGI管80内で適正な方向に延び得る。例えば、管40が曲がりやすくなるように、管40の外壁42の直径若しくは厚さが縮小され得て、及び/又は異なる材料が使用され得る。
【0027】
図1Aを引き続き参照すると、ステント60はルーメン64を画定する外壁62を含み得る。ステント60は、標的部位70とGI管80との間にシールを作り得る。このシールは、流体がGI管80から標的部位70に入るのを防止しながら、流体と栄養物はステント60のルーメン64を通過できるようにし得る。流体と栄養物は、体がこれらの物質を吸収する通常の過程でGI管80により摂取又は吸収され得る。ステント60は、ステント60の近位端から遠位方向に延びるチャネル66を含み得て、チャネル66はステント60の遠位端の近位側で終結し得る。図1Bは、図1Aの線A-Aに沿ったシステム10の断面図である。チャネル66は、ステント60のU字型断面部分61により画定され得る。U字型部分61は、半径方向に内向きの凸面61aと半径方向に外向きの凹面61bを画定する。ステント60の、チャネル66を有する部分は、ルーメン64の断面積がステント60のチャネル66のない部分より小さい。チャネル66はまた、ステント60の長さ方向軸線に関して斜めであり、その端においてチャネル66のU字型部分61に向かう、壁62の傾斜面66aを含み得る。チャネル66は、EVAC装置20とステント60が体内で展開されたときに管40を受けるような大きさと形状であり得、それは標的部位70とGI管80との間をよりよくシールし得る。例えば、チャネル66はGI管80の内壁に対して管40をシールし得て、物質及び/又は流体がそこを通って標的部位70の中へと流入し得る捩れや折れ曲がりができない。ステント60は何れの材料でもあり得、これにはキトサンが含まれるがそれに限定されない。ステント60はまた、何れの適当な材料で製作される何れの被覆、編目状、又はメッシュステントも含み得る。(適当な金属及び金属合金の幾つかの例には、304V、304L、及び316LVステンレス鋼等のステンレス鋼、軟鋼、線形弾性及び/又は超弾性ニチノール等のニッケルチタン合金、ニッケルクロムモリブデン合金(例えば、INCONEL(登録商標)625等のUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)等のUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)等のUNS:N10276、その他のHASTELLOY(登録商標)合金及びその他)、ニッケル銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400、及びその他等のUNS:N04400)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)及びその他等のUNS:R30035)、ニッケルモリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)等のUNS:N10665)、その他のニッケルクロム合金、その他のニッケルモリブデン合金、その他のニッケルコバルト合金、その他のニッケル鉄合金、その他のニッケル銅合金、その他のニッケルタングステン又はタングステン合金及びその他のニッケル合金、コバルトクロム合金、コバルトクロムモリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)及びその他等のUNS:R30003)、プラチナ富化ステンレス鋼、チタン、プラチナ、パラジウム、金、それらの組合せ、又は他のあらゆる適当な材料が含まれる)。カバーには例えば、何れの適当なポリマ、プラスチック、又はエラストマが含まれ得て、網目又はメッシュは何れの適当なプラスチック、金属、又は合金でもあり得る。ステント60は、柔軟、屈曲可能、及び/又はより小径へと収縮可能且つより大径へと拡張可能であり得る。幾つかの例において、ステント60は、自己拡張材料(例えば、ニチノール)で形成され得て、コーティング(例えば、キトサン、シリコーン、ウレタン、Chronoflex、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))を自己拡張材料の少なくとも一部の上に含み得る。例えば、ステント60の近位及び遠位端は、標的部位70の開口にまたがる材料とは異なる材料を含み得る。追加的又は代替的に、ステント60の近位及び遠位端は、移動防止のために組織成長を促進するようにコーティングされないままとされ得る。
【0028】
ステント60はまた、ルーメン64の内面にループ68a(例えば、フック、縫合糸、又はその他の把持機構)も含み得る。ループ68aは、例えばステント60の被覆された網目の一部に接続され得る。ループ68aは、ツール90(図2)によって把持され、ステント60を裏返しにし、又は折り返し得る。ツール90は、標的部位70まで進められた、ループ68aと係合してステント60を移動させるように構成された何れの医療器具でもあり得る。適当な器具には、グラスパ、鉗子及びその他が含まれる。ステント60を折り返すことによって、ステント60を取り外さずにEVAC装置20を抜去及び/又は交換でき得て、それによって処置時間が短縮され得、及び/又は外傷が軽減され得る。例えば、図2は、ステント60の近位端がループ68aによって遠位方向に移動されて、ステント60の近位部分が遠位方向に移動され、その部分がステント60の遠位部分へと裏返されていることを示している。
【0029】
ステント60はチャネル66がステント60の近位端から遠位方向に延びているように示されているが、ステント60は、チャネル66がステント60の遠位端から近位方向に延びるように体内で展開され得る(例えば、図3参照)。
【0030】
次に、システム10の挿入方法を説明する。EVAC装置20は、開口(例えば、自然の体の開口)を介して導入され、例えばカテーテルを使って標的部位70まで前進させられ得る。スポンジ30は、標的部位70に設置され、管40が近位方向に、例えば図2において矢印Pで示される方向とは反対方向に延び得るように配置され得る。幾つかの例において、流体が導入されて、収縮形態から拡張形態へとスポンジ30を拡張させる。流体は、カテーテル又はそれに関連するツールにより導入され得る。その後、ステント60が開口を介して導入され、例えばステント送達カテーテル及び/又は当業界で知られている他の何れかの適当な医療用ステント送達装置を使って標的部位70へと前進させられ得る。ステント60は、拡張状態で留置され得る。代替的に、ステント60は、そのプロファイルを小さくするために収縮され、巻かれ、又は折り返され得て、標的部位70に隣接して配置されたところで、例えばステント送達機構を使って拡張状態へと移動され得る。ステント60を標的部位70に隣接して位置付けた後、ステント60は、チャネル66が管40と整合するように位置調整され得る。例えば、初期留置の前又は後に、ステント60をその軸の周囲で回転させることによりチャネル66と管40を整列させ得て、及び/又は軸方向に並進移動させることにより標的部位70と整列させ得る。その後、カテーテル及び他のあらゆる関連ツールは、開口を通じて体内から抜去され得る。
【0031】
幾つかの例において、EVAC装置20を所定の期間の後に交換し、標的部位70の組織の治癒に伴って、新しい、より小さいスポンジ30(又は、異なる機械的及び/又は化学的特性を有するスポンジ)を挿入し得る。ある例によれば、ツール90を開口から前進させ得て、ループ68aと係合させ得る。例えば、図2において、ツール90はステント60の近位端においてループ68aと係合し得る。ツール90は、遠位側に移動させ得て、ステント60を折り返して(ステント60を裏返して)スポンジ30と管40を露出され得る。カテーテル及び/又は把持ツールはEVAC装置20を把持し得て、EVAC装置20が本体から抜去され得る。代替的に、管40は近位方向に引っ張られ得て、それによってスポンジ30と管40は挿入開口に向かって移動する。すると、異なるEVAC装置20が標的部位70まで前進させられ得て、スポンジ30が標的部位70に設置され得る。管40は、GI管80の中で挿入開口に向かって近位側に延びるように配置され得る。ツール90はすると、近位方向に引っ張られ得て、それによってステント60が元に戻り、標的部位70を覆う。ステント60が戻る際、管40はチャネル66の中に入り、スポンジ30と標的部位70をGI管80からシールする。
【0032】
他の例によるシステム10’が図3に示されている。システム10’は、EVAC装置20’とステント60’を含む。システム10’は、GI管80内の標的部位70に挿入され得る。
【0033】
EVAC装置20’は、EVAC装置20と同様であり得る。例えば、EVAC装置20’は、スポンジ30’と、スポンジ30’から延びる管40’を含み得る。スポンジ30’は開口32’を含み得て、これは、管40’の近位端と流体接続され得るチャネル又は小孔に接続される。本明細書に記載されているように、管40’の近位端は分枝40a’を含み得て、これはスポンジ30’の中に埋め込まれ得て、スポンジ30’と流体連通する管40’の数及び/又は面積を増大させ得る。このように開口の数が増えると、管40’が取り入れる流体が増大し得る。管40’は、管40より短いものであり得る。例えば、管40’の長さは約200mmであり得る。管40’の長さは、ステント60’の長さに依存し得る。例えば、ステント60’の長さは約40mm~約160mmであり得、管40’の長さはステント60’より長いものであり得る。幾つかの例において、複数のステント60’が重複して装置20’の位置を保持するような方法で使用され得る。この例では、管40’は重複するステント60’の合計長さより長いものであり得る。管40’の長さはまた、患者の体内構造、例えば膨張した胃又は直腸貯留嚢にも基づき得る。管40’の長さは、処置中に、例えば管40’を切断することにより調整して、関連する装置及び/又は体内構造に応じた適当な長さを取得し得る。
【0034】
体内に設置されると、管40’の遠位端は遠位方向に、すなわち図3の矢印Pで示される方向に延び得て、これは挿入開口とは反対の方向であり得る。管40’の遠位端の延長方向によって、流体は標的部位70から、例えば胃及び/又は肛門等の自然の出口開口に向かって流出することができる。管40’はまた、コルゲート区間46’も含み得て、それによって管40’は管40’とスポンジ30’との間の接続点の付近でより曲がりやすく、管40’はGI管80内で適正な方向に延びることができる。代替的に、又は追加的に、管40’を曲げやすくするために、管40’の外壁42’の厚さ又は直径が減少され得るか、及び/又はコルゲート区間46’の付近で異なる材料が使用され得る。
【0035】
管40’はまた、1つ又は複数の一方向弁48’も含み得て、これは蠕動運動により生じる流体の流れがない場合には閉じ得て、矢印Pにより示される方向に沿った蠕動運動により生じる流体の流れが存在すると開放し得る。例えば、矢印Pの方向への蠕動運動により、スポンジ30’は標的部位70の壁を含むGI管80の壁により締め付けられ得て、それによってスポンジ30’に圧力が生じ得て、スポンジ30’は標的部位70からの流体を取り込み、及び/又はスポンジ30’は流体を管40’へと放出する。流体は標的部位70’から、管40’を通って移動し得て、管40’の遠位端においてGI管80の中へと排出され得る。蠕動運動中にスポンジ30’から排出された流体により加えられる圧力は、弁48’を開くのに十分であり得、それによって流体はスポンジ30’から管40’の遠位端に向かって流れることができ得る。弁48’は、蠕動運動がないときに、標的部位70でスポンジ30’により取り込まれた流体、物質等が管40’内に、及び/又は標的部位70に逆流するのを防止し得る。
【0036】
ステント60’は図1A及び図2に示されるステント60と同様であり得、外壁62’により画定されるルーメン64’を含み得る。ステント60’は、標的部位70とGI管80との間にシールを作り得る。ステント60と異なり、ステント60’のチャネル66’はステント60’の遠位端から近位方向に延び、ステント60’の近位端の遠位側で終結する。チャネル66’を有するように示されているが、ステント60’はチャネル66’を含まなくてもよい。この例では、ステント60’は十分に柔軟であり、ステント60’とGI管80の壁との間に管40’のためのスペースができる。さらに、図示されていないが、ステント60’は取付又は把持要素を含み得て、これはステント60’を体内に挿入している間及び/又はステント60’を折り返し(裏返し)、又は元に戻すときに役立ち得る。
【0037】
図4A及び図4Bは、システム10’の、それぞれ線B-B及びC-Cに沿った断面図である。チャネル66’は、ステント60’のU字型の断面部分61’により画定され得る。U字型部分61’は、半径方向に内向きの凸面61a’と半径方向に外向きの凹面61b’を画定する。ステント60’の、チャネル66’を有する部分のルーメン64’の断面積は、ステント60’の、チャネル66’のない部分より小さい。チャネル66’はまた、ステント60’の長さ方向軸線に関してチャネル66’のU字形部分61’に向かって、その端において斜めである壁62’の傾斜面66a’も含み得る。チャネル66’は、EVAC装置20’とステント60’が体内で展開されたときに管40’を受けるような大きさ及び形状であり得、これは標的部位70とGI管80との間をより良くシールし得る。例えば、チャネル66’は管40’をGI管80の内壁に対してシールし得て、それを通じて物質及び/又は流体が標的部位70の中へと流入し得る捩れや折れ曲がりができない。
【0038】
システム10’は、システム10に関して述べたものと同様にしてGI管80の中の標的70に挿入され得る。例えば、EVAC装置20’は、標的部位70へと前進されられ得る。スポンジ30’は標的部位70に挿入され得て、管40’はGI管80の中に延びて、標的部位70の遠位側へと延び得る。ステント60’は、GI管80の中に挿入されて、標的部位70をGI管80からシールするように展開され得る。
【0039】
他の例によるシステム10’’が図5Aに示されている。システム10’’は、EVAC装置20’と弁100を含む。弁100は、標的部位70をGI管80からシールするように付勢され得て、さらに「開」状態を保持して、蠕動運動中にさらに多くの流体を部位70から放出させ得る。図3のシステム10’と同様に、スポンジ30’は標的部位70に設置され、管40’はスポンジ30’からGI管80へと延び得る。弁100は、標的部位70内のスポンジ30’とGI管80との間に提供され得て、流体がGI管80から標的部位70へと移動するのを防止し得る。
【0040】
弁100は(複数の)第1のリング106を含み得て、その外径は第2のリング108の外径より大きい。第2のリング108は、第1のリング106間に配置され得て、それによって第1及び第2のリング106、108は弁100のU字型の(砂時計型の)外側側面を形成する。第1及び第2のリング106、108は、弁100の位置をGI管80と標的部位70との間に保持し得る。例えば、GI管80の外壁の組織は、第1のリング106間に延び得る(例えば、第1のリング106の外側リップ間に挟まれ得て)。また、GI管80の外壁の組織は、第1のリング106の1つがGI管80の内側にあり、第1のリング106の他の1つがGI管80の外側にあるように、展開中に第2のリング108と接触し得る。第1のリング106はGI管80の壁と接触し得て、弁100が使用中に移動するのを防止し得る。換言すれば、弁100のスポンジ30’に面する部分と弁100のGI管80に面する部分は、弁100のそれらの間の部分より比較的大きい直径を有する。
【0041】
弁100は、中実の一体構造であり得、スポンジ30’及びGI管80に面する表面は概ね平らであり、何れの適当な形状も有する。例えば、弁100は一体の材料片であり得る。弁100はまた、開口の形状に応じて円形、多角形、長方形、又は不規則形状でもあり得る。ある例において、弁100の特定の形状は弁100の位置を開口内に、GI管80の組織間に挟まれた状態に保持するのにより適当であり得る。弁100はまた、GI管80と標的組織70との間の開口より大きく、展開中に弁100の位置を保持し得る。
【0042】
線D-Dに沿った弁100の断面を示す図5B及び図5Cに示されるように、弁100はリング106、108を通って延びる中央ルーメン104を含み得る。管40’はルーメン104を通過して、流体及び物質が標的部位70からGI管80へと通過できるようにし得る。図5Bは弁100の開状態を示し、図5Cは弁100の閉、又は半閉状態を示す。蠕動運動がないとき、GI管80の壁が第2のリング108の外面に押し付けられ得て、弁100が倒れる。この例では、リング106、108の一部がこれらのリングを形成する硬度の低い材料によってルーメン104内へと倒れ得る。この倒れた状態で、弁100は図5Cに示されるように、管40’の円周に沿って管40’に近付き、及び/又は接触し得る。この状態で、弁100は流体及び物質が標的部位70に入るのを防止する。図5Cにおいて弁100は概して円形の外面を有しているが、組織によって、弁100は倒れた状態で、GI管80の組織が弁100にかける様々な力に基づいて、不規則形状等、何れの形状でも有し得る。
【0043】
蠕動運動が生じると、標的部位70は締め付けられ得て、標的部位70内の圧力が上昇する。本明細書で述べられているように、蠕動運動は、材料及び流体をスポンジ30’から管40’を通じて押し出し得る。それに加えて、標的部位70内の流体及び物質にかかる上昇した圧力が弁100にあるGI管80の壁の力を克服し得て、それによって弁100は図5Bに示されるような拡張状態を保持でき得る。拡張したルーメン104により、物質及び流体は標的部位70からGI管80へと流れることができる。蠕動運動が終わると、弁100は管40’の周囲で倒れてルーメン104を閉じ得る。このようにして、システム10’’がさらに多くの物質と流体を標的部位70から蠕動運動の波動と共に排出する能力が増大する。弁100は、医療用に適した何れの材料でもあり得、これにはゴム、ポリマ又はその他が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
次に、システム10’’を挿入する方法を説明する。EVAC装置20’は、システム10及び10’に関して述べたものと同様の方法で挿入され得る。スポンジ30’が標的部位70に配置されると、弁100は、例えばカテーテル及び/又は関連する送達ツールを使って標的部位70’へと前進させられ得る。管40’は弁100のルーメン104を通過し得て、弁100は標的部位70とGI管80との間に設置され得る。GI管80の壁は、第1及び第2のリング106、108により画定されるU字型空間の中にフィットするように操作され得る。カテーテル及び/又は何れの関連ツールもその後、開口を通じて体内から抜去され得る。代替的に、管40’は挿入前に弁100のルーメン104を通って延び得る。それゆえ、EVAC装置20’及び弁100は、同時に標的部位70まで前進させられ得る。スポンジ30’は、標的部位70に設置され得る。GI管80の壁は、U字型空間の中及び弁100の第1のリング106間に設置され得る。
【0045】
スポンジ又はメッシュ装置と流体又はその他の物質を標的部位から除去するように構成された管を含む何れのEVAC装置も、単独で、又は本明細書に記載の1つ又は複数のシーリング装置と組み合わせて使用され得ると理解されたい。
【0046】
異なる医療システムが説明されているが、これらのEVACシステムの要素の特定の配置が限定されることはないと理解されたい。さらに、EVACシステムの大きさ、形状、及び/又は材料は限定されない。本明細書に記載されているように、スポンジ及び体内管腔から標的部位をシールするためのパッチ又はシール装置が含まれる。例えば、各種の医療処置の実行は、標的部位と体内管腔内のあらゆるデブリや物質との間の適正なシールを確保することによって改良され得る。このシールにより、これらの物質(例えば、排泄物)が、例えば術後漏出部を通じて標的部位に入り、他の器官に侵入して、感染やその他の医学的問題を引き起こすのを防止し得る。
【0047】
当業者にとっては、本開示の範囲から逸脱することなく本開示の装置に様々な改良や変更を加えることができることが明らかであろう。本開示の他の実施形態は、当業者にとっては、明細書の検討と本明細書で開示されている発明の実施から明らかとなるであろう。明細書と例は例示とみなされるものとし、本発明の実際の範囲と主旨は以下の特許請求の範囲により示される。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】