(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】変換器機構、および変換器機構を有する試験台
(51)【国際特許分類】
H02M 7/04 20060101AFI20230413BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230413BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H02M7/04 Z
H02M7/48 Z
H02M3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551026
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 AT2021060080
(87)【国際公開番号】W WO2021174281
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521104458
【氏名又は名称】エイヴィエル リスト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AVL List GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans-List-Platz 1, 8020 Graz, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ライジンガー, エルウィン
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA04
5H006BB05
5H006DB01
5H730AS17
5H770BA01
5H770DA03
(57)【要約】
本発明は、プラス極およびマイナス極を含む、直流電圧VDCを提供するための直流電圧中間回路(1)と、直流電圧VDCを交流電圧または別の直流電圧へと変換するための少なくとも1つの機械変換器(2)とを含む変換器機構に関し、直流電圧中間回路(1)には少なくとも1つのエネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)が配置され、エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)に対して直列に、高い周波数のもとで低い周波数のもとでよりも高い電気抵抗を有する周波数依存的な抵抗(4)が配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換器機構において、
a.プラス極およびマイナス極を含む、直流電圧V
DCを提供するための直流電圧中間回路(1)と、
b.直流電圧V
DCを交流電圧または別の直流電圧へと変換するための少なくとも1つの変換器、特に機械変換器(2)とを含み、
前記直流電圧中間回路(1)には前記プラス極と前記マイナス極との間に少なくとも1つのエネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)が配置される、変換器機構において、
前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)に対して直列に、高い周波数のもとで低い周波数のもとでよりも高い電気抵抗を有する周波数依存的な抵抗(4)が配置されることを特徴とする、変換器機構。
【請求項2】
前記周波数依存的な抵抗(4)は高い周波数のもとで、特に10kHzを超える周波数のもとで、低い周波数のもとでよりも、特に500Hzを下回る周波数のもとでよりも、数倍だけ、好ましくは少なくとも係数10だけ、または係数12だけ、高い電気抵抗を有することを特徴とする、請求項1に記載の変換器機構。
【請求項3】
前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)は、1mFを超える、好ましくは6mFのキャパシタンスを有する特別に蓄積能力の高いコンデンサであり、たとえば電解コンデンサであることを特徴とする、請求項1または2に記載の変換器機構。
【請求項4】
第1のエネルギー蓄積コンデンサ(3)と、直列につながれた第2のエネルギー蓄積コンデンサ(3’)とが設けられ、前記周波数依存的な抵抗(4)は前記第1のエネルギー蓄積コンデンサ(3)と前記第2のエネルギー蓄積コンデンサ(3’)との間で直列に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)に対して並列に、特別に交番負荷耐性の高い1つまたは複数の中間回路コンデンサ(5,5’)が配置され、前記中間回路コンデンサ(5,5’)のキャパシタンスに対する前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)のキャパシタンスの比率は好ましくは5よりも大きく、特別に好ましくは10よりも大きいことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項6】
前記中間回路コンデンサ(5,5’)はフィルムコンデンサおよび/またはセラミックのコンデンサの形態で製作されることを特徴とする、請求項5に記載の変換器機構。
【請求項7】
前記中間回路コンデンサ(5,5’)は個々のコンデンサの並列回路と直列回路によって製作されることを特徴とする、請求項5または6に記載の変換器機構。
【請求項8】
第1の中間回路コンデンサ(5)は約100kHzのカットオフ周波数を有するフィルムコンデンサとして製作されることを特徴とする、請求項5から7のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項9】
第2の中間回路コンデンサ(5’)は約1MHzおよびこれ以上のカットオフ周波数を有するセラミックのコンデンサとして製作されることを特徴とする、請求項5から8のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項10】
前記コンデンサ(3,3’,5,5’)は350Vを上回る、好ましくは500Vを上回る、特別に好ましくは約850Vの、または約1400Vの直流電圧のために製作されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項11】
前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)は配線板(6)またはその他の支持体の上に配置され、前記周波数依存的な抵抗(4)は前記配線板(6)または前記支持体の下面に配置されることを特徴とする、請求項4から10のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項12】
前記周波数依存的な抵抗(4)は長手方向延在Lと直径Dとを有する実質的に円筒の形状を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項13】
前記直径Dは前記長手方向延在Lに沿って平均値D
0+/-ΔDだけ周期的に変化し、D
0は好ましくは約10mmであり、ΔDは好ましくは約1mmであることを特徴とする、請求項12に記載の変換器機構。
【請求項14】
直流電圧V
DCを提供する直流電圧源、たとえばバッテリ、または多相の電源電圧を直流電圧に変換するために製作される電源変換器(7)が設けられることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項15】
電源変換器(7)と、請求項1から14のいずれか1項に記載の変換器機構と、交流電圧によって駆動される電気機械とを含む、車両または駆動装置のための試験台。
【請求項16】
電気機械と、請求項1から15のいずれか1項に記載の変換器機構とを有する車両のためのドライブトレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を交流電圧に、または別の直流電圧に、変換するための変換器機構に関し、および、このような種類の変換器機構を有する試験台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、直流電圧を交流電圧へ変換するための(逆変換器)、または別の電圧レベルを有する直流電圧へ変換するための(直流電圧コンバータ)、電気式の変換器機構が知られている。これらは、たとえばパルス幅変調(PWM)などの変調方式によって、高い周波数(数kHzから20kHz超)の短いパルスからなる正弦波交流電圧を模倣する半導体ブリッジ回路を有する、切換式の逆変換器を利用する。このような逆変換器は正弦波インバータとも呼ばれる。半導体スイッチが直流電圧を高い周波数で切り換える;パルス幅変調された高周波の切換周波数の平均値が、出力交流電圧となる。
【0003】
このような種類の逆変換器は、特に車両のための試験台で適用される。このような種類の試験台では、負荷付与機械のために必要な電気出力が中央の直流電圧中間回路またはバッテリを介して提供され、逆変換器(いわゆる機械変換器)が直流電圧を、たとえば電気モータなどのそれぞれの電気式の負荷付与機械のために必要な交流電圧へと変換する。同様に、別の極性または別の電圧推移を有する直流電圧を生成するために、切換式の直流電圧コンバータが設けられていてもよい。
【0004】
このような種類の変換器は特に双方向の動作のために構成されていてよく(いわゆるアクティブ・フロント・エンド・変換器)、それにより、電気出力を直流電圧中間回路から取り込むだけでなく、送り返すこともできる。
【0005】
直流電圧中間回路には、提供される直流電圧を安定化するために、通常、非常に高いキャパシタンスを有するエネルギー蓄積コンデンサが配置される。エネルギー蓄積コンデンサは約850Vの範囲の直流電圧に適していなくてはならない。エネルギー蓄積コンデンサとして、通常は低速の、すなわち高い周波数には適さないコンデンサが利用され、これは多くの場合、独自のコンデンサベンチの形態でスイッチボックスの中に配置される。供給回線の長さによって比較的高いインダクタンスが生じ、そのため、従来式の機構ではエネルギー蓄積コンデンサが高周波妨害(リップル電流)による負荷をわずかしか受けない。
【0006】
しかし、このような種類の変換器機構が現代の試験台で適用される場合、テストされるべき動的な試験パターンが、すなわち試験体に伝達されるべき有効信号が、たとえば数百ヘルツから1000Hzに及ぶ高い周波数を有するという問題が生じる。それと同時にエネルギー蓄積コンデンサは、コンパクトな設計形態を可能にするために、できる限り切換式の逆変換器の近傍に配置されるのがよい。それによって、切換式の逆変換器により生成される高周波妨害がエネルギー蓄積コンデンサに影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0007】
そこで本発明の課題は、一方では、エネルギー蓄積コンデンサに負荷をかけることなく高周波妨害が導出されることを保証し、他方では、エネルギー蓄積コンデンサが比較的低周波の有効信号に追従できることを保証することにある。機械変換器(DC-ACコンバータ)または直流電圧コンバータ(DC-DCコンバータ)として車両用の試験台で利用することができ、エネルギー蓄積コンデンサへの長い接続回線を必要とせず、直流電圧中間回路を過度に妨害せず、駆動される電気機械をリップル電流で負荷することがない、コンパクトな変換器機構が可能化されるのがよい。
【0008】
この課題およびその他の課題は、独立請求項に記載されている変換器機構および試験台によって解決される。
【0009】
本発明による変換器機構は、プラス極およびマイナス極を含む、直流電圧VDCを提供するための直流電圧中間回路と、少なくとも1つの変換器とを含む。この変換器は、直流電圧VDCを多相交流電圧へと変換するための機械変換器(DC-ACコンバータ)であってよい。あるいはこれは、直流電圧中間回路の余剰の電気エネルギーを多相電源へと送り返す、双方向に作動する電源変換器(AC-DCコンバータ)であってもよい。同様に本発明による変換器は、直流電圧VDCを別の極性または別の電圧レベルの直流電圧へと変換する直流電圧コンバータ(DC-DCコンバータ)であってよい。
【0010】
直流電圧中間回路は、試験台の変換器機構で利用される場合、約850Vまたはこれ以上の範囲内の直流電圧VDCを有することができる。別の用途では、直流電圧中間回路がこれよりも低い直流電圧を有することもでき、たとえば本発明による変換器機構が車両で利用される場合(自動車分野)、中間回路での約48Vの電圧VDCが意図されていてもよい。
【0011】
直流電圧中間回路には、プラス極とマイナス極との間に1つまたは複数のエネルギー蓄積コンデンサが配置され、エネルギー蓄積コンデンサに対して直列に、高い周波数のもとで低い周波数のもとでよりも高い電気抵抗を有する周波数依存的な抵抗が配置される。
【0012】
それにより、低周波の有効信号はエネルギー蓄積コンデンサにより受信して緩衝することができ、それに対して、典型的には高周波で切り換えられる逆変換器で、特に正弦波インバータで発生する高周波妨害は遮断されることが実現される。したがってエネルギー蓄積コンデンサが保全され、逆変換器でのエネルギー蓄積コンデンサの直接的な配置が可能である。
【0013】
本発明によると、周波数依存的な抵抗は高い周波数のもとで、特に10kHzを超える、16kHzを超える、または20kHzを超える周波数のもとで、低い周波数のもとでよりも、特に500Hzを下回る周波数のもとでよりも、数倍だけ、好ましくは少なくとも係数10だけ、係数12だけ、またはこれよりも大きい係数だけ、高い電気抵抗を有することが意図されていてよい。500Hzを下回る周波数のもとでの抵抗は、特にミリオーム範囲であってよい。
【0014】
このように周波数依存的な抵抗は、エネルギー蓄積コンデンサを高周波妨害から保護する機能を担うが、具体的なカットオフ周波数は適用ケースに依存していてよい。たとえば車両での変換器機構の特定の用途(自動車分野)では約150kHzのカットオフ周波数を意図することができ、それにより、抵抗は約150kHzの周波数のもとでもまだ低い抵抗を有し、2MHzの範囲内の周波数のもとで初めて明らかに高い電気抵抗をとることになる。
【0015】
本発明によると、特にエネルギー蓄積コンデンサは1mFを超える、好ましくは6mFのキャパシタンスを有する特別に蓄積能力の高いコンデンサであり、たとえば電解コンデンサであることが意図されていてよい。あるいはこれ以外の設計形態のコンデンサも、本発明に基づいて意図される。特に自動車分野では、非常に高い周波数のもとで、たとえば150kHzを超える周波数のもとで、エネルギー蓄積コンデンサが電解コンデンサとしてではなく、フィルムコンデンサまたはセラミックコンデンサとして構成されることが意図されていてよい。このような適用ケースでは、電解コンデンサが意図されないのが好ましい。
【0016】
本発明によると、直流電圧中間回路における高い直流電圧のもとで、特に500Vを超える直流電圧のもとで、第1のエネルギー蓄積コンデンサと、直列につながれた第2のエネルギー蓄積コンデンサとが設けられることが意図されていてよい。
【0017】
このケースでは周波数依存的な抵抗は、第1のエネルギー蓄積コンデンサと第2のエネルギー蓄積コンデンサとの間で直列に配置されていてよい。2つよりも多いエネルギー蓄積コンデンサが直列に配置されていてもよい。さらに、複数のエネルギー蓄積コンデンサの並列回路が本発明に基づいて意図されていてもよい。
【0018】
エネルギー蓄積コンデンサに対して並列に、特別に交番負荷耐性の高い1つまたは複数の中間回路コンデンサが配置されていてよい。これは高周波妨害を、特に切換式の逆変換器によって生成される妨害を、導出するための役目を果たす。中間回路コンデンサのキャパシタンスに対するエネルギー蓄積コンデンサのキャパシタンスの比率は好ましくは5よりも大きく、特別に好ましくは10よりも大きくてよい。たとえば中間回路コンデンサは180μFのキャパシタンスを有し、エネルギー蓄積コンデンサは1mFのキャパシタンスを有する。
【0019】
本発明によると、中間回路コンデンサはフィルムコンデンサおよび/またはセラミックのコンデンサの形態で製作されることが意図されていてよい。しかしながら、これ以外の設計形態のコンデンサが本発明に基づいて意図されていてもよい。中間回路コンデンサは、特に、個々のコンデンサの並列回路と直列回路によって製作されていてよい。
【0020】
たとえば、第1の中間回路コンデンサは約100kHzのカットオフ周波数を有するフィルムコンデンサとして設けられていてよく、第2の中間回路コンデンサは1MHzおよびこれ以上のカットオフ周波数を有するセラミックのコンデンサとして設けられていてよい。後者は特に、特別に高いカットオフ周波数のもとで特別に低いインダクタンスを有する、いわゆるCera-Linkセラミックコンデンサであってよい。それにより、非常に高周波の妨害でも特別に良好な導出が実現され、エネルギー蓄積コンデンサに負荷を与えることがない。このような実施形態は、本発明による変換器機構が試験台で利用される場合に推奨される。
【0021】
本発明によるとこのケースでは、コンデンサは350Vを上回る、好ましくは500Vを上回る、特別に好ましくは約850Vの、または約1400Vの、直流電圧のために製作されていてよい。
【0022】
それに対して、本発明による変換器機構が車両で利用される場合、中間回路電圧はこれよりも大幅に低くなり、たとえば48Vの範囲内であり、切換周波数は大幅に高くなるので、電解コンデンサではなく、本発明によるとセラミックコンデンサおよびフィルムコンデンサだけが適用される。このようなケースでは、第1および/または第2の中間回路コンデンサは、約2MHzの範囲内のカットオフ周波数を有するフィルムコンデンサまたはセラミックコンデンサとして設けられていてよい。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、配線板またはその他の支持体の上に配置される、直列につながれた2つのエネルギー蓄積コンデンサが設けられ、周波数依存的な抵抗はこれら両方のコンポーネントの間に配置され、特に配線板または支持体の下面に配置される。それにより、本発明による機構の特別に省スペースな集積化がもたらされる。
【0024】
周波数依存的な抵抗は、長手方向延在Lと直径Dとを有する実質的に円筒の形状を有することができる。直径Dは、長手方向延在Lに沿って平均値D0+/-ΔDだけ周期的に変化することができ、D0は好ましくは約10mmであり、ΔDは好ましくは約1mmである。
【0025】
直流電圧VDCを提供する直流電圧源が設けられていてよく、たとえばバッテリや、多相の電源電圧を直流電圧に変換するために製作された切換式の整流器の形態の電源変換器が設けられていてよい。
【0026】
さらに本発明は、本発明による変換器機構を有する、車両または任意の駆動装置のための、たとえば産業用駆動装置のための、試験台を含む。
【0027】
このような種類の試験台は、電源変換器と、本発明による変換器機構と、生成される交流電圧によって駆動される電気機械とを含むことができる。このとき中間回路電圧は約850Vの範囲内にあり、電解コンデンサの形態のエネルギー蓄積コンデンサ、ならびに第1および第2の中間回路コンデンサが設けられていてよい。
【0028】
さらに本発明は、電気機械と本発明による変換器機構とを有する、車両のためのドライブトレーンを含む。このケースでは中間回路電圧は約48Vであり、エネルギー蓄積コンデンサは最大150kHzの信号周波数に合わせて設計され、すなわち、周波数依存的な抵抗は150kHzよりも高い周波数から初めて電流を遮断する。このケースではエネルギー蓄積コンデンサは、フィルムコンデンサまたはセラミックコンデンサであるのが好ましい。それに対して中間回路コンデンサは、約2MHzの範囲内の周波数について設計され、特別に交番負荷耐性の高いフィルムコンデンサまたはセラミックコンデンサとして製作される。
【0029】
本発明に基づくその他の構成要件は、特許請求の範囲、図面、および実施例の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
次に、他を排除するのではない実施例を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示す:
【0031】
【
図1a】本発明による変換器機構の模式的な回路図である。
【
図1b】本発明による周波数依存的な抵抗の実施形態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1aは、車両のための試験台で適用するための、本発明による変換器機構の模式的な回路図を示している。この変換器機構は、電源変換器7から提供される約850Vの大きさの直流電圧を有する直流電圧中間回路1を含んでいる。
【0033】
直流電圧中間回路1は、切換式の逆変換器として作動する機械変換器2に供給を行う。これは試験台のための電気式の負荷付与機械を作動させるための、たとえば電気モータを作動させるための、交流電圧を提供する。
【0034】
直流電圧中間回路はプラス極とマイナス極を有している。プラス極とマイナス極の間に2つのエネルギー蓄積コンデンサ3,3’が直列回路で配置されており、両方のエネルギー蓄積コンデンサ3,3’の間に周波数依存的な抵抗4が配置されている。エネルギー蓄積コンデンサ3,3’は、本実施例では、約1mFのキャパシタンスを有する電解コンデンサである。エネルギー蓄積コンデンサ3,3’に対して並列に、中間回路コンデンサ5,5’が配置されている。これらはたとえば180μFの範囲内の低いキャパシタンスを有し、高周波妨害を導出するための役目を果たす。
【0035】
エネルギー蓄積コンデンサ3,3’と中間回路コンデンサ5,5’はいずれも切換式の変換器の、すなわち電源変換器7および機械変換器2の、すぐ近傍にある。本実施例では2つの型式の中間回路コンデンサが利用され、すなわち一方では、最大で1MHzのカットオフ周波数の非常に高速の電流についてのセラミックのCera-Linkコンデンサであり、他方では、最大で約100kHzのカットオフ周波数の電流についてのフィルムコンデンサである。中間回路コンデンサ5,5’はそれぞれ850Vの電圧について設計されており、低いインダクタンスで、すなわち長い接続回線を回避したうえで、中間回路に直接的に接続される。
【0036】
エネルギー蓄積コンデンサ3,3’も、本実施例では中間回路に直接的に接続されており、それにより、わずかな導線インダクタンスしか発生しない。エネルギー蓄積コンデンサ3,3’のリップル電流負荷を小さく抑え、ただしそれにもかかわらず、最大で約1000Hzの高い周波数の電流変化を伴う試験パターンを可能にするために、周波数依存的な抵抗4がエネルギー蓄積コンデンサ3,3’に対して直列につながれている。
【0037】
図示しない実施例では、変換器の全蓄積キャパシタンスをいっそう向上させるために、エネルギー蓄積コンデンサと周波数依存的な抵抗とを含む複数の並列分路が設けられる。
【0038】
周波数依存的な抵抗4は、1000Hz以下の周波数については比較的低抵抗であり、切換周波数に比例する電流すなわち16kHzまたはこれ以上の周波数を有する電流については比較的高抵抗である。16kHzと500Hzの周波数のもとでの電気抵抗の比率は、本実施例では約12である。そのようにして、低いインダクタンスと結合されるエネルギー蓄積コンデンサ3,3’が、高い切換周波数によって負荷を受けることが防止される。したがって、エネルギー蓄積コンデンサ3,3’の大きすぎる加熱が生じることがなく、これらをいっそう良好に活用することができる。
【0039】
図1bは、本発明による周波数依存的な抵抗4の実施形態の模式的な断面図を示している。本実施例では周波数依存的な抵抗4は、電気的な表皮効果が利用されるように製作されている;高い電気的な周波数のもとでは、電流が抵抗の外面へと追いやられる;外面は直径の周期的な変化によって広くなっており、それによりいっそう高い電気抵抗が生じる。このような表皮効果の特性が、ここでは非線形のオーム抵抗を惹起して、すでに述べたエネルギー蓄積コンデンサを高周波電流から保護するために利用されるのが好ましい。このような実施形態の利点は、本発明による周波数依存的な抵抗4が、エネルギー蓄積コンデンサ3のための保護部として、非線形かつ非振動性の抵抗4として製作され、たとえばインピーダンスやキャパシタンスなどの振動性の成分なしに済まされることにある。このようにエネルギー蓄積コンデンサ3のキャパシタンスを自由に選択可能であり、たとえば振動性回路の場合に該当するように、1つの周波数に結合されるのではない。
【0040】
模式的に示唆している第1のエネルギー蓄積コンデンサ3と、直列につながれた第2のエネルギー蓄積コンデンサ3’とが設けられており、周波数依存的な抵抗4は、第1のエネルギー蓄積コンデンサ3と第2のエネルギー蓄積コンデンサ3’との間で直列に配置されている。11.両方のエネルギー蓄積コンデンサ3,3’は配線板6の上に配置されており、周波数依存的な抵抗4はこの配線板6の下面に配置されている。
【0041】
図1cは
図1bの詳細図を示しており、すなわち、周波数依存的な抵抗4の形状を示している。周波数依存的な抵抗4は、長手方向延在Lと直径Dとを有する実質的に円筒の形状を有している。直径Dは長手方向延在Lに沿って、平均値D
0+/-ΔDだけ周期的に変化しており、ここではD
0は約10mmであり、ΔDは約1mmである。
【0042】
本発明の図示しない実施例は、電源変換器7と、本発明による変換器機構と、生成される交流電圧によって駆動される電気機械とを備える、車両のための試験台を含む。
【0043】
しかしながら本発明は本実施例に限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲の枠内にある一切の装置を含む。
【0044】
変換器、電源変換器、機械変換器など、ここで使用している概念はあまりに狭く解釈されるべきでない。本発明による変換器とは、それが機械変換器であるか電源変換器であるかを問わず、制御されるあらゆる電気回路および/または電子回路であって、直流電圧を別の直流電圧または交流電圧に変換するもの、あるいは交流電圧を別の交流電圧または直流電圧に変換するものであると理解することができる。このような種類の回路は、例示として、ただし他を排除することなく、ダイレクトコンバータ、マトリクスコンバータ、交流電圧変換器、直流電圧変換器、切換式のブリッジインバータ、切換式のブリッジ整流器などであってよい。変換器の具体的な回路工学上の具体化は重要ではない。本発明に基づいて意図される変換器は内部の電気的分断も意図することができ、高い電気出力のために、たとえば850Vの直流電圧ないし300kVAの交流電流出力のもとでの100kWの範囲の出力のために、意図されていてよい。
【符号の説明】
【0045】
1 直流電圧中間回路
2 機械変換器
3,3’ エネルギー蓄積コンデンサ
4 抵抗
5,5’ 中間回路コンデンサ
6 配線板
7 電源変換器
【手続補正書】
【提出日】2022-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換器機構において、
a.プラス極およびマイナス極を含む、直流電圧V
DCを提供するための直流電圧中間回路(1)と、
b.直流電圧V
DCを交流電圧または別の直流電圧へと変換するための少なくとも1つの変換器、特に機械変換器(2)とを含み、
前記直流電圧中間回路(1)には前記プラス極と前記マイナス極との間に少なくとも1つのエネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)が配置され
、前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)に対して直列に、高い周波数のもとで低い周波数のもとでよりも高い電気抵抗を有する周波数依存的な抵抗(4)が配置され
る、変換器機構において、前記周波数依存的な抵抗(4)は高い周波数のもとで、特に10kHzを超える周波数のもとで、低い周波数のもとでよりも、特に500Hzを下回る周波数のもとでよりも、数倍だけ、好ましくは少なくとも係数10だけ、または係数12だけ、高い電気抵抗を有することを特徴とする、変換器機構。
【請求項2】
前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)は、1mFを超える、好ましくは6mFのキャパシタンスを有する特別に蓄積能力の高いコンデンサであり、たとえば電解コンデンサであることを特徴とする、請求項
1に記載の変換器機構。
【請求項3】
第1のエネルギー蓄積コンデンサ(3)と、直列につながれた第2のエネルギー蓄積コンデンサ(3’)とが設けられ、前記周波数依存的な抵抗(4)は前記第1のエネルギー蓄積コンデンサ(3)と前記第2のエネルギー蓄積コンデンサ(3’)との間で直列に配置されることを特徴とする、請求項1から
2のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項4】
前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)に対して並列
に特別に交番負荷耐性の高い1つまたは複数の中間回路コンデンサ(5,5’)が配置され、前記中間回路コンデンサ(5,5’)のキャパシタンスに対する前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)のキャパシタンスの比率は好ましくは5よりも大きく、特別に好ましくは10よりも大きいことを特徴とする、請求項1から
3のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項5】
前記中間回路コンデンサ(5,5’)はフィルムコンデンサおよび/またはセラミックのコンデンサの形態で製作されることを特徴とする、請求項
4に記載の変換器機構。
【請求項6】
前記中間回路コンデンサ(5,5’)は個々のコンデンサの並列回路と直列回路によって製作されることを特徴とする、請求項
4または5に記載の変換器機構。
【請求項7】
第1の中間回路コンデンサ(5)は約100kHzのカットオフ周波数を有するフィルムコンデンサとして製作されることを特徴とする、請求項
4から6のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項8】
第2の中間回路コンデンサ(5’)は約1MHzおよびこれ以上のカットオフ周波数を有するセラミックのコンデンサとして製作されることを特徴とする、請求項5から
7のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項9】
前記コンデンサ(3,3’,5,5’)は350Vを上回る、好ましくは500Vを上回る、特別に好ましくは約850Vの、または約1400Vの直流電圧のために製作されることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項10】
前記エネルギー蓄積コンデンサ(3,3’)は配線板(6)またはその他の支持体の上に配置され、前記周波数依存的な抵抗(4)は前記配線板(6)または前記支持体の下面に配置されることを特徴とする、請求項
3から9のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項11】
前記周波数依存的な抵抗(4)は長手方向延在Lと直径Dとを有する実質的に円筒の形状を有することを特徴とする、請求項1から
10のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項12】
前記直径Dは前記長手方向延在Lに沿って平均値D
0+/-ΔDだけ周期的に変化し、D
0は好ましくは約10mmであり、ΔDは好ましくは約1mmであることを特徴とする、請求項
11に記載の変換器機構。
【請求項13】
直流電圧V
DCを提供する直流電圧源、たとえばバッテリ、または多相の電源電圧を直流電圧に変換するために製作される電源変換器(7)が設けられることを特徴とする、請求項1から
12のいずれか1項に記載の変換器機構。
【請求項14】
電源変換器(7)と、請求項1から
13のいずれか1項に記載の変換器機構と、交流電圧によって駆動される電気機械とを含む、車両または駆動装置のための試験台。
【請求項15】
電気機械と、請求項1から
14のいずれか1項に記載の変換器機構とを有する車両のためのドライブトレーン。
【国際調査報告】