(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】熱処理システムにおけるワークピースの透過ベースの温度測定
(51)【国際特許分類】
G01K 11/12 20210101AFI20230413BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20230413BHJP
G01K 11/125 20210101ALI20230413BHJP
H01L 21/26 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
G01K11/12 D
G01J5/00 101C
G01K11/125
H01L21/26 J
H01L21/26 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551813
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2021019429
(87)【国際公開番号】W WO2021173682
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502278714
【氏名又は名称】マトソン テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mattson Technology, Inc.
【住所又は居所原語表記】47131 Bayside Parkway, Fremont, CA 94538, USA
(71)【出願人】
【識別番号】520111187
【氏名又は名称】ベイジン イータウン セミコンダクター テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing E-Town Semiconductor Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Building, No. 28 Jinghai Er Rd., Economic and Technical Development Zone, 100176 Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ストレク
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ブレーメンスドルファー
(72)【発明者】
【氏名】マークス リーベラー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エックス. ヤン
【テーマコード(参考)】
2F056
2G066
【Fターム(参考)】
2F056VF11
2G066AC20
2G066BA23
2G066BA30
2G066BA34
2G066BB01
2G066BC30
2G066CA15
(57)【要約】
熱処理を実行するための熱処理システムは、ワークピースを支持するように構成されたワークピース支持プレートと、ワークピースを加熱するように構成された熱源とを含みうる。熱処理システムは、測定波長範囲内の電磁放射に対して透過性である透過性領域と、測定波長範囲の一部内の電磁放射に対して不透過性である不透過性領域とを有する窓を含みうる。温度測定システムは、赤外放射を放出するように構成された複数の赤外線エミッタと、測定波長範囲内の赤外放射を測定するように構成された複数の赤外線センサとを含むことができ、透過性領域が少なくとも部分的に赤外線センサの視野内にある。コントローラは、ワークピースに関連付けられた透過率測定値および反射率測定値を取得することと、測定値に基づいて、約600℃未満のワークピースの温度を決定することとを含む動作を実行するように構成されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ワークピースの熱処理を実行するための熱処理システムであって、前記熱処理システムは、
ワークピースを支持するように構成されたワークピース支持プレートと、
前記ワークピースを加熱するように構成された1つ以上の熱源と、
前記ワークピース支持プレートと前記1つ以上の熱源との間に配設されており、測定波長範囲内の電磁放射の少なくとも一部に対して透過性である1つ以上の透過性領域と、前記測定波長範囲の前記一部内の電磁放射に対して不透過性である1つ以上の不透過性領域とを含む、1つ以上の窓と、
前記ワークピースの温度を示す温度測定値を取得するように構成された温度測定システムと
を含み、前記温度測定システムは、
赤外放射を放出するように構成された複数の赤外線エミッタと、
各赤外線センサが前記複数の赤外線エミッタのうちの1つに対応する複数の赤外線センサであって、該複数の赤外線センサの各々が、前記測定波長範囲内の赤外放射を測定するように構成されており、かつ前記1つ以上の透過性領域のうちの少なくとも1つが該複数の赤外線センサのうちの少なくとも1つの視野内に少なくとも部分的にあるように配設されている、複数の赤外線センサと、
コントローラであって、
前記複数の赤外線センサから、前記ワークピースに関連付けられた少なくとも1つの第1の透過率測定値、少なくとも1つの第2の透過率測定値、および少なくとも1つの反射率測定値を取得することと、
前記ワークピースの温度が約600℃未満であるときに、前記少なくとも1つの第1の透過率測定値、前記少なくとも1つの第2の透過率測定値、および前記少なくとも1つの反射率測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースの温度を決定することと
を含む動作を実行するように構成されたコントローラと
を備える、熱処理システム。
【請求項2】
前記動作は、
前記複数の赤外線センサから、前記ワークピースによって放出された放出放射の強度を示す1つ以上のエミッション測定値を取得することと、
前記ワークピースの温度が約600℃よりも高いときに、前記1つ以上のエミッション測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースの温度を決定することと
をさらに含む、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項3】
前記1つ以上の赤外線エミッタは、前記ワークピースの中央部分に向かって放射を放出するように動作可能な中央エミッタと、前記ワークピースのエッジ部分に向かって放射を放出するように動作可能なエッジエミッタとを含み、
前記1つ以上の赤外線センサは、前記中央エミッタに対応する中央センサと、前記エッジエミッタに対応するエッジセンサとを含む、
請求項2記載の熱処理システム。
【請求項4】
前記1つ以上の熱源は、前記ワークピースを加熱するために広帯域放射を放出するように構成されている、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項5】
前記1つ以上の不透過性領域は、前記熱源によって放出され、前記測定波長範囲内にある広帯域放射の少なくとも一部を遮断するように構成されている、請求項4記載の熱処理システム。
【請求項6】
前記1つ以上の不透過性領域はヒドロキシルドープ石英を含み、前記1つ以上の透過性領域はヒドロキシルフリー石英を含む、請求項5記載の熱処理システム。
【請求項7】
前記複数の赤外線エミッタのうちの少なくとも1つは、パルス周波数でパルス化される、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の透過率測定値、前記少なくとも1つの第2の透過率測定値、または前記少なくとも1つの反射率測定値のうちの少なくとも1つは、前記パルス周波数に少なくとも部分的に基づいて前記複数の赤外線センサから分離されている、請求項7記載の熱処理システム。
【請求項9】
前記パルス周波数は130Hzである、請求項7記載の熱処理システム。
【請求項10】
前記測定波長範囲は、2.3マイクロメートルまたは2.7マイクロメートルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項11】
前記熱処理システムは、前記複数の赤外線センサのうちの少なくとも1つの視野内に少なくとも部分的に配設された少なくとも1つの光学ノッチフィルタを含み、前記光学ノッチフィルタは、前記複数の赤外線センサのうちの前記少なくとも1つによって測定可能な波長の範囲から前記測定波長範囲の少なくとも一部を選択するように構成されている、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項12】
前記複数の赤外線センサは1つ以上のパイロメータを含む、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項13】
前記ワークピースの温度が約600℃未満であるときに、前記少なくとも1つの第1の透過率測定値、前記少なくとも1つの第2の透過率測定値、および前記少なくとも1つの反射率測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ワークピースの温度を決定することが、
前記少なくとも1つの第1の透過率測定値および前記少なくとも1つの反射率測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースの放射率を決定することと、
前記少なくとも1つの第2の透過率測定値および前記ワークピースの前記放射率に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースの温度を決定することと
を含む、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1の透過率測定値および前記少なくとも1つの反射率測定値は、前記測定波長範囲の第1の波長に関連付けられており、前記少なくとも1つの第2の透過率測定値は、前記測定波長範囲の第2の波長に関連付けられており、前記1つ以上の不透過性領域は前記第1の波長に対して不透過性でありかつ前記第2の波長に対して透過性である、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項15】
前記コントローラは、ワークピース処理システム内にワークピースが存在しない場合に、前記複数の赤外線センサのうちの少なくとも1つの基準強度を、
前記複数の赤外線エミッタのそれぞれのエミッタから第1の量の赤外放射を放出することと、
前記複数の赤外線センサのそれぞれのセンサに入射する第2の量の赤外放射を決定することと、
前記第1の量と前記第2の量との間の変動に少なくとも部分的に基づいて、前記それぞれのエミッタおよび前記それぞれのセンサに関連付けられた前記基準強度を決定することと
によって決定するように構成されている、請求項1記載の熱処理システム。
【請求項16】
熱処理システム内のワークピースの温度を測定する方法であって、前記方法は、
1つ以上の赤外線エミッタにより、ワークピースの1つ以上の表面に方向付けられた赤外放射を放出することと、
1つ以上の窓により、前記ワークピースを加熱するように構成された1つ以上の加熱ランプによって放出された広帯域放射の少なくとも一部が1つ以上の赤外線センサに入射することを遮断することと、
前記1つ以上の赤外線センサにより、前記1つ以上の赤外線エミッタのうちの少なくとも1つによって放出されて前記ワークピースの前記1つ以上の表面を通過する赤外放射の透過部分を測定することと、
前記1つ以上の赤外線センサにより、前記1つ以上の赤外線エミッタのうちの少なくとも1つによって放出されて前記ワークピースの前記1つ以上の表面で反射された赤外放射の反射部分を測定することと、
前記透過部分および前記反射部分に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースの温度を示す第1の温度測定値を決定することであって、前記ワークピースの温度は約600℃未満である、ことと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記方法が、
前記1つ以上の赤外線センサにより、前記ワークピースによって放出された赤外放射を示す放出放射測定値を測定することと、
前記放出放射測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ワークピースの温度を示す第2の温度測定値を決定することであって、前記ワークピースの温度は約600℃よりも高い、ことと
をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記放出放射測定値に少なくとも部分的に基づいて前記ワークピースの温度を示す第2の温度測定値を決定することであって、前記ワークピースの温度は約600℃よりも高い、ことが、
前記放出放射測定値を前記ワークピースに関連付けられた黒体放射曲線と比較すること
を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記透過部分および前記反射部分に少なくとも部分的に基づいて前記ワークピースの温度を決定することであって、前記ワークピースの温度は約600℃未満である、ことが、
前記透過部分および前記反射部分に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースの放射率を決定することと、
前記透過部分および前記ワークピースの前記放射率に少なくとも部分的に基づいて、前記ワークピースの温度を決定することと
を含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、
前記1つ以上の赤外線エミッタのうちの少なくとも1つをパルス周波数でパルス化することと、
前記パルス周波数に少なくとも部分的に基づいて、前記1つ以上の赤外線センサから少なくとも1つの測定値を分離することと
をさらに含む、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年2月28日付にて出願された“Transmission-Based Temperature Measurement of a Workpiece in a Thermal Processing System”と題する米国仮出願第62/983064号の優先権の利益を主張するものであり、この仮出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、全体として、熱処理システム、例えばワークピースの熱処理を実行するように動作可能な熱処理システムに関する。
【0003】
発明の背景
本明細書で使用される熱処理チャンバは、半導体ワークピース(例えば半導体ワークピース)などのワークピースを加熱するデバイスを指す。こうしたデバイスは、1つ以上のワークピースを支持するための支持プレートと、加熱ランプ、レーザー、または他の熱源などの、ワークピースを加熱するためのエネルギ源とを含みうる。熱処理中、ワークピースは、処理レジームに従って制御された条件下で加熱することができる。
【0004】
多くの熱処理プロセスでは、ワークピースをデバイスに加工する際に種々の化学的および物理的変換を生じさせることができるよう、ワークピースをある範囲の温度にわたって加熱することが必要となる。例えば、急速熱処理中、ワークピースは、通常数分未満である持続時間にわたって、支持プレートを通してランプのアレイにより、約300℃~約1200℃の温度まで加熱されうる。これらのプロセス中、ワークピースの温度を確実かつ正確に測定することが主な目標となりうる。
【0005】
発明の概要
本開示の実施形態の態様および利点は、以下の説明において部分的に記載され、または説明から教示され、または実施形態の実施を通して教示されうる。
【0006】
本開示の1つの例示的な態様は、半導体ワークピースの熱処理を実行するための熱処理システムに関する。熱処理システムは、ワークピースを支持するように構成されたワークピース支持プレートを含みうる。熱処理システムは、ワークピースを加熱するように構成された1つ以上の熱源を含みうる。熱処理システムは、ワークピース支持プレートと1つ以上の熱源との間に配設された1つ以上の窓を含みうる。1つ以上の窓は、測定波長範囲内の電磁放射の少なくとも一部に対して透過性である1つ以上の透過性領域と、測定波長範囲の一部内の電磁放射に対して不透過性である1つ以上の不透過性領域とを含みうる。
【0007】
種々の実施形態のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照してよりよく理解されるであろう。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す添付の図面は、本開示の実施形態を示し、説明とともに、関連する原理を説明する役割を果たす。
【0008】
当業者を対象とする実施形態の詳細な説明は、添付の図面を参照する本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の例示的な態様による例示的な熱処理システムを示す図である。
【
図2】本開示の例示的な態様による、ワークピースの放射率を測定するように構成された例示的な熱処理システムを示す図である。
【
図3】本開示の例示的な態様による、ワークピースの温度を測定するように構成された例示的な熱処理システムを示す図である。
【
図4】本開示の例示的な態様による例示的な温度測定システムを示す図である。
【
図5A】本開示の例示的な態様による例示的な不透過性領域材料の透過率プロットを示す図である。
【
図5B】本開示の例示的態様による例示的な透過性領域材料の透過率プロットを示す図である。
【
図6A】本開示の例示的な態様による例示的なワークピースタイプの透過率プロットを示す図である。
【
図6B】本開示の例示的な態様による例示的な正規化ワークピース透過率の透過率プロットを示す図である。
【
図7】本開示の例示的な態様による、熱処理システムにおけるワークピースの温度測定のための方法を示す図である。
【
図8】本開示の例示的な態様による、熱処理システム内のセンサの基準強度を較正する方法を示す図である。
【0010】
詳細な説明
次に、実施形態を詳細に参照し、その1つ以上の例を図面に示す。各例は、本開示の限定ではなく、実施形態の説明のために提供される。実際に、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、実施形態に対して種々の修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の部分として図示または説明される特徴は、別の実施形態とともに使用されて、さらなる実施形態をもたらすことができる。したがって、本開示の態様は、こうした修正および変形を包含することが意図されている。
【0011】
本開示の例示的な態様は、半導体ワークピース(例えばシリコンワークピース)などのワークピースのための急速熱処理(RTP)システムなどの熱処理システムを対象とする。特に、本開示の例示的な態様は、熱処理システム内のワークピースの少なくとも部分の温度を示す温度測定値を取得することを対象とする。例えば、温度測定は、ワークピース上で熱処理が実行されている間にワークピースの温度を監視する際に有用でありうる。
【0012】
本開示の例示的な態様は、ワークピースが実質的に透過性であり、かつ/または有意な黒体放射を放出しないワークピース温度において温度測定値を取得する際に特に有益でありうる。幾つかのケースでは、これらの温度付近でワークピース温度を測定することは、従来の方法では困難でありうる。特に、非金属化ワークピース(例えば軽度にドープされたシリコンワークピース)などの幾つかのワークピースは、従来の方法で約600℃未満の温度を測定することが困難でありうる。例えば、ワークピースは、約600℃未満の温度で従来透過率測定に使用されている多くの波長に対して、実質的に透過性でありうる。さらに、ワークピースが冷たすぎるために、従来の波長で実際に測定可能な黒体放射が放出されないこともある。
【0013】
したがって、本開示の例示的な態様は、約600℃未満、例えば約400℃~600℃などの低温において、ワークピースの正確な透過率ベースの放射率補償された温度測定を可能にしうる。加えて、約600℃未満のワークピース温度について透過率ベースの温度測定値を取得する際に使用されるセンサは、再利用することができ、かつ/または該センサを使用して、約600℃を超えるような、ワークピースが実質的に不透過性であり、かつ/もしくは有意な黒体放射を放出するワークピース温度について、ワークピースのエミッションベースの温度測定を行うこともできる。加えて、測定波長および/または特定の測定の位相ロックを含む他のプロセス態様は、熱処理システムの種々の機能間の干渉を最小限に抑えるように選択することができる。これにより、本開示の例示的な態様によるシステムおよび方法は、従来のシステムおよび方法と比較して、増大した範囲、例えば約600℃未満の温度を含む増大した範囲にわたって温度を測定することが可能となりうる。加えて、これにより、システムおよび方法が、追加のセンサおよび/またはセンサの再構成を必要とすることなく、ワークピースが実質的に測定可能な黒体放射を放出しない温度(例えば約600℃未満)についての透過率ベースの温度測定から、ワークピースが測定可能な放射を放出する温度(例えば約600℃超)についてのエミッションベースの温度測定へ円滑に移行することが可能となりうる。これは、ワークピースがもはや少なくとも部分的に透過性でなくなると、透過率ベースの温度測定に使用される同じセンサを、エミッションベースの温度測定に使用することができるためである。
【0014】
本開示の例示的な態様によれば、急速熱処理システムなどの熱処理システムは、ワークピースを支持するように構成されたワークピース支持プレートを含みうる。例えば、ワークピースは、熱処理システムによって処理される基板などのワークピースでありうる。ワークピースは、シリコンワークピースなどの半導体ワークピースなどの任意の好適なワークピースであるかまたはこれを含みうる。幾つかの実施形態では、ワークピースは、軽度にドープされたシリコンワークピースであるか、またはこれを含みうる。例えば、軽度にドープされたシリコンワークピースは、シリコンワークピースの抵抗率が約0.1Ωcmより大きくなるように、例えば約1Ωcmより大きくなるようにドープすることができる。
【0015】
ワークピース支持プレートは、ワークピースを支持する(例えば、熱処理システムの熱処理チャンバ内でワークピースを支持する)ように構成された任意の適切な支持構造でありうるかまたはこれを含みうる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレートは、熱処理システムによる同時熱処理のために複数のワークピースを支持するように構成することができる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレートは、ワークピースが回転ワークピース支持プレートによって支持されている間にワークピースを回転させるように構成された回転ワークピース支持体であるかまたはこれを含みうる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレートは、少なくとも一部の電磁放射がワークピース支持プレートを少なくとも部分的に通過することを可能にするように透過性であってよく、かつ/またはそれ以外の形式で構成されていてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレートの材料は、ワークピースおよび/もしくはエミッタによって放出されかつ/または熱処理システム内のセンサによって測定される電磁放射など、所望の電磁放射がワークピース支持プレートを通過できるように選択することができる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレートは石英材料製であるかまたはこれを含みうる。
【0016】
本開示の例示的な態様によれば、熱処理システムは、ワークピースを加熱するように構成された1つ以上の加熱源(例えば加熱ランプ)を含みうる。例えば、1つ以上の加熱ランプは、ワークピースを加熱するために電磁放射(例えば広帯域電磁放射)を放出することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の加熱ランプは、例えば、アークランプ、タングステンハロゲンランプ、および/または任意の他の好適な加熱ランプ、および/またはこれらの組み合わせでありうるかまたはこれらを含みうる。幾つかの実施形態では、例えばリフレクタ(例えばミラー)などの指向性要素は、1つ以上の加熱ランプからの電磁放射をワークピースおよび/またはワークピース支持プレートに方向付けるように構成することができる。
【0017】
本開示の例示的な態様によれば、熱処理システムは、熱処理システム内のワークピースの温度を測定するように構成された温度測定システムを含みうる。例えば、温度測定システムは、熱処理システム内(例えば熱処理チャンバ内)の種々の点で電磁放射を測定するように構成された複数の放射センサ(例えば赤外線センサ)を含みうる。付加的にかつ/または代替的に、温度測定システムは、複数の放射エミッタ(例えば赤外線エミッタ)を含むことができ、該複数の放射エミッタは、ワークピース、チャンバ窓、ワークピース支持プレート、および/または他の適切な構成要素などの熱処理システム内の種々の構成要素を通過する電磁放射を熱処理システム(例えば熱処理チャンバ)内に放出するように構成されている。エミッタによって放出された放射および/またはセンサによって測定された放射に基づいて、温度測定システムは、以下でより詳細に説明するように、ワークピースの温度を決定(例えば推定)することができる。例えば、透過率ベースの温度測定の一例として、ワークピースの部分について決定された透過率を、正規化透過率曲線などの透過率曲線と比較して、ワークピースの部分の温度を決定することができる。エミッションベースの温度測定の一例として、ワークピースの温度Tは、次式、すなわち
【数1】
に従って、ワークピースによって放出される放射I
waferに基づいて決定することができる。
【0018】
本開示の例示的な態様によれば、熱処理システム(例えば温度測定システム)は、複数の赤外線エミッタを含みうる。赤外線エミッタは、1つ以上の赤外線波長(例えば約700ナノメートル~約1ミリメートルの波長)で電磁放射を放出するように構成することができる。例えば、赤外線エミッタは、少なくとも部分的にワークピースに方向付けられた赤外放射を放出することができる。ワークピースに方向付けられた赤外放射の少なくとも一部は、ワークピースを透過することができる。さらに、ワークピースに方向付けられた赤外放射の少なくとも一部は、ワークピースで反射されうる。幾つかの実施形態では、赤外線エミッタは、ワークピース処理チャンバの外側に位置決めすることができる。例えば、ワークピース処理チャンバの外側に位置決めされた赤外線エミッタは、放射がワークピースを通過する前に最初にチャンバ側壁(例えばチャンバ窓)を通過するように、放射を放出することができる。幾つかの実施形態では、赤外線エミッタは、加熱要素(例えば加熱ランプ)のアレイと直列に配設されうる。付加的にかつ/または代替的に、赤外線エミッタは、加熱ランプよりもワークピースの近くにおよび/またはワークピースから遠くに配設されうる。
【0019】
本開示の例示的な態様によれば、熱処理システムは、複数の赤外線センサを含みうる。赤外線センサは、赤外線センサに入射する赤外線波長を有する電磁放射など、電磁放射の測定値を取得するように構成することができる。幾つかの実施形態では、赤外線センサは、パイロメータであるかまたはこれを含みうる。幾つかの実施形態では、パイロメータは、赤外放射の第1の波長を測定するように構成された第1のヘッドと、赤外放射の第2の波長を測定するように構成された第2のヘッドとを含むデュアルヘッドパイロメータであるかまたはこれを含みうる。幾つかの実施形態では、第1の波長および/または第2の波長は、測定波長範囲内でありうる。幾つかの実施形態では、第1の波長は約2.3マイクロメートルであってよく、かつ/または第2の波長は約2.7マイクロメートルであってよい。
【0020】
本開示の例示的な態様によれば、1つ以上の窓(例えばチャンバ窓)を、ワークピースおよび/またはワークピース支持プレートと1つ以上の加熱ランプとの間に配設することができる。1つ以上のチャンバ窓は、1つ以上の加熱ランプによって放出された電磁放射(例えば、広帯域放射)の少なくとも一部が熱処理チャンバの部分に入る(例えば、ワークピースおよび/またはワークピース支持プレートおよび/または1つ以上のセンサに入射する)ことを選択的に遮断するように構成されうる。例えば、1つ以上のチャンバ窓は、1つ以上の不透過性領域および/または1つ以上の透過性領域を含みうる。本明細書で使用される場合、「不透過性」とは、概して、所与の波長に対して約0.4(40%)未満の透過率を有することを意味し、「透過性」とは、概して、所与の波長に対して約0.4(40%)を超える透過率を有することを意味する。
【0021】
1つ以上の不透過性領域および/または1つ以上の透過性領域は、不透過性領域が加熱ランプからの一部の波長の迷放射を遮断し、透過性領域が例えばエミッタおよびセンサが不透過性領域によって遮断された波長の熱処理チャンバ内の放射と自由に相互作用することを可能にするように位置決めすることができる。このようにして、窓は、エミッタおよびセンサを加熱ランプによる汚染から効果的に遮蔽することができる一方で、依然として加熱ランプがワークピースを加熱することを可能にする。1つ以上の不透過性領域および1つ以上の透過性領域は、概して、特定の波長に対してそれぞれ不透過性および透過性として定義することができる。すなわち、少なくとも特定の波長の電磁放射に対して、不透過性領域は不透過性であり、透過性領域は透過性である。例えば、幾つかの実施形態では、透過性領域は、測定波長範囲内の電磁放射の少なくとも一部に対して透過性でありうる。幾つかの実施形態では、不透過性領域は、測定範囲内の電磁放射の少なくとも一部に対して不透過性でありうる。測定範囲は、熱処理システム内の少なくとも1つのセンサによって電磁放射の強度が測定される波長であるかまたはこれを含みうる。
【0022】
1つ以上の不透過性領域および/または1つ以上の透過性領域を含む1つ以上のチャンバ窓は、任意の好適な材料および/または構造で形成することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上のチャンバ窓は、石英材料製であるかまたはこれを含みうる。さらに、幾つかの実施形態では、1つ以上の不透過性領域は、ヒドロキシルドープ石英(例えばヒドロキシルでドープされた石英)などのヒドロキシル(OH)含有石英であるかまたはこれを含んでいてよく、かつ/または1つ以上の透過性領域は、ヒドロキシルフリー石英(例えばヒドロキシルでドープされていない石英)であるかまたはこれを含んでいてよい。ヒドロキシルドープ石英およびヒドロキシルフリー石英の利点として、製造の容易さが挙げられる。例えば、ヒドロキシルフリー石英領域をモノリシック石英窓のヒドロキシルドープ中に遮蔽して、モノリシック窓内にヒドロキシルドープ領域(例えば不透過性領域)およびヒドロキシルフリー領域(例えば透過性領域)の両方を生成することができる。加えて、ヒドロキシルドープ石英は、本開示による望ましい波長遮断特性を示すことができる。例えば、ヒドロキシルドープ石英は、熱処理システム内の幾つかのセンサが動作する測定波長に対応しうる約2.7マイクロメートルの波長を有する放射を遮断することができるが、ヒドロキシルフリー石英は、約2.7マイクロメートルの波長を有する放射に対して透過性を有しうる。したがって、ヒドロキシルドープ石英領域は、熱処理システム内の(例えば加熱ランプからの)迷放射からセンサを遮蔽することができ、ヒドロキシルフリー石英領域は、センサの視野(例えばセンサが赤外放射を測定するように構成された領域)内に少なくとも部分的に配設して、センサによる熱処理システム内での測定値の取得を可能にすることができる。加えて、ヒドロキシルドープ石英は、約2.3マイクロメートルの波長を有する放射に対して部分的に不透過性(例えば約0.6または60%の透過率を有する)とすることができ、これにより、熱処理システムにおける迷放射からの(例えば加熱ランプからの)汚染を少なくとも部分的に低減することができる。
【0023】
赤外線エミッタによって放出され、かつ/または赤外線センサによって測定される赤外放射は、1つ以上の関連する波長を有することができる。例えば、幾つかの実施形態では、赤外線エミッタは、放出放射の波長範囲が数値の10%以内などの数値の許容範囲内にあるように放射を放出する狭帯域赤外線エミッタであるかまたはこれを含むことができ、この場合、エミッタは該数値によって参照される。幾つかの実施形態では、これは、広帯域スペクトル(例えばプランクスペクトル)を放出する広帯域エミッタと、広帯域スペクトル内の狭帯域のみを通過させるように構成された光学ノッチフィルタなどの光学フィルタとの組み合わせによって達成することができる。同様に、赤外線センサは、ある数値で(例えばある数値の許容範囲内で)赤外線狭帯域の赤外放射の強度を測定するように構成されうる。例えば、幾つかの実施形態では、パイロメータなどの赤外線センサは、特定の狭帯域波長を測定する(例えば測定のために選択する)ように構成された1つ以上のヘッドを含みうる。
【0024】
幾つかの実施形態では、赤外線エミッタによって放出され、かつ/または赤外線センサによって測定される赤外放射は、測定波長範囲内であってよく、連続範囲および/または非連続範囲であるかまたはこれらを含んでいてもよい。測定波長範囲は、ワークピースおよび/またはワークピース処理システムの特性に基づいて選択することができる。例えば、測定波長範囲は、ワークピースおよび/または1つ以上のチャンバ窓内の透過性領域が少なくとも約600℃未満の温度に対して透過性である波長を含みうる。付加的にかつ/または代替的に、測定波長範囲は、1つ以上のチャンバ窓内の不透過性領域が少なくとも約600℃未満の温度に対して不透過性である波長を含みうる。このようにして、エミッタは、透過性領域を実質的に透過する放射であって、センサに入射する前に加熱ランプによる汚染から不透過性領域によって少なくとも部分的に保護される放射を放出することができる。幾つかの実施形態では、測定波長範囲内の加熱ランプによる汚染を排除することが望ましいとされうるが、にもかかわらず、測定波長範囲は、加熱ランプからの汚染を有する波長(例えば不透過性領域を少なくとも部分的に通過しうる波長)を含むことがある。付加的にかつ/または代替的に、測定波長範囲は、ワークピースが少なくとも約600℃より高い温度に対して有意な(例えば測定可能な)黒体放射を放出する波長を含みうる。幾つかの実施形態では、測定波長範囲は、約2.3マイクロメートルおよび/または約2.7マイクロメートルを含みうる。例えば、幾つかの実施形態では、1つ以上の赤外線センサは、約2.3マイクロメートルでセンサの視野内の赤外放射の強度を測定するように構成することができる。同様に、1つ以上の赤外線センサは、約2.7マイクロメートルでセンサの視野内の赤外放射の強度を測定するように構成することができる。
【0025】
幾つかの実施形態では、温度測定システムは、ワークピースの放射率を測定(例えば推定)するように構成された放射率測定システムを含みうる。ワークピースの放射率を測定する一例として、放射率測定システムは、ワークピースに向けて赤外放射を放出するように構成された赤外線エミッタを含みうる。幾つかの実施形態では、赤外線エミッタは、ワークピースの表面に向かって斜めの角度で(例えばワークピースの表面から90度未満の角度で)方向付けられた赤外放射を放出することができる。このようにして、放出放射の透過部分はワークピースを透過し、放出放射の反射部分はワークピースの表面で反射されうる。反射部分の反射角は、ワークピース特性に基づいて予測および/または知ることができる。赤外線センサは、透過部分および/または反射部分を測定するように位置決めすることができる。第1の部分および/または第2の部分に少なくとも部分的に基づいて、放射率測定システムは、ワークピースの放射率を決定することができる。幾つかの実施形態では、エミッタおよび/またはセンサなどの放射率測定システムは、測定波長範囲の第1の波長で動作することができる。例えば、第1の波長は、チャンバ窓の透過性領域が透過性を有しかつ/または不透過性領域が不透過性を有する波長でありうる。幾つかの実施形態では、第1の波長は、約2.7マイクロメートルであるか、またはこれを含みうる。
【0026】
付加的にかつ/または代替的に、熱処理システム(例えば温度測定システム)は、透過率測定システムを含みうる。透過率測定システムは、ワークピースの1つ以上の透過率測定値を取得するように構成することができる。例えば、幾つかの実施形態では、透過率測定システムは、(例えば中央パイロメータなどの中央センサによって)ワークピースの中央部分の中央透過率測定値と、(例えばエッジパイロメータなどのエッジセンサによって)ワークピースのエッジ部分のエッジ透過率測定値とを取得することができる。幾つかの実施形態では、透過率測定システムは、ワークピースの表面に直交して方向付けられた赤外放射を放出するように構成された1つ以上の赤外線エミッタを含みうる。加えて、透過率測定システムは、1つ以上の赤外線エミッタに対向して配設された1つ以上の赤外線センサであって、1つ以上の赤外線エミッタによって放出され、ワークピースを通過する赤外放射の一部を測定するように構成された1つ以上の赤外線センサを含みうる。
【0027】
ワークピースの透過率に基づいてワークピースの温度を決定することが可能でありうる。しかしながら、ワークピースの透過率は温度のみと相関しているわけではない。例えば、バルクドープレベル、ワークピース表面の反射特性、およびワークピース厚さなどのワークピース特性は全て、透過率に影響を及ぼす可能性がある。このように、温度測定システムは、幾つかの実施形態では、ワークピース温度と相関する正規化透過率測定値を決定することができる。例えば、正規化透過率測定値は、ワークピース特性にかかわらず、0~1の範囲でありうる。
【0028】
付加的にかつ/または代替的に、ワークピースの透過率を決定するために使用されるセンサ測定値は、チャンバ内の他の構成要素、例えば、ワークピース支持プレート、チャンバ窓、および/または任意の他の構成要素、特に、エミッタによって放出されセンサによって測定される赤外放射を通過させる必要がある構成要素などによって影響を受ける可能性がある。本開示の例示的な態様によれば、熱処理システム(例えば温度測定システム)は、熱処理システム内の1つ以上のセンサの各々について、本明細書ではI0として示される基準強度を決定することができる。基準強度は、ワークピースが処理チャンバ内に存在しない場合に、エミッタによって放出された放射および/またはセンサに入射する放射に対応しうる。換言すれば、基準強度は、熱処理システム内のワークピース以外の構成要素からの寄与によってのみ、エミッタが放出する放射の強度から減少させることができる。これは、ワークピースによる100%の透過率の場合にさらに対応しうる。幾つかの実施形態では、基準強度は、2つのワークピースの熱処理の間など、処理チャンバ内にワークピースを挿入する前に測定することができる。
【0029】
幾つかの実施形態では、透過率測定システムは、放射率測定システムと同じ波長(例えば第1の波長)で動作することができる。付加的にかつ/または代替的に、透過率測定システムは、第1の波長とは異なる第2の波長で動作することができる。例えば、幾つかの実施形態では、第2の波長は、チャンバ窓の1つ以上の不透過性領域が、第1の波長に対しては不透過性であるが第2の波長に対しては不透過性ではない波長であってよく、その結果、第1の波長の放射は不透過性領域によって遮断され、第2の波長の放射は不透過性領域を少なくとも部分的に通過することができる。例えば、第2の波長における不透過性領域の透過率は、第1の波長における透過率よりも大きくすることができる。幾つかの実施形態では、第2の波長は2.3マイクロメートルでありうる。
【0030】
幾つかのケースでは、チャンバ窓によって完全に遮蔽されていない第2の波長を透過率測定システムに使用することが望ましく、かつ/または必要でありうる。例えば、空間的な考慮、干渉の考慮、および/または他の要因によって、第1の波長における熱処理システムが望ましくないものとなる可能性がある。一例として、放射率測定システムは、ワークピースの温度に相関しうる放射率を決定するために使用される透過率測定値を含みうるが、ワークピースの複数の領域で温度測定値を取得することが望ましいことがある。例えば、中央部分および/またはエッジ部分などの複数の領域で温度測定値を取得することで、プロセス均一性の監視を改善することが可能となりうる。しかしながら、複数の領域にわたって温度測定値を取得するために追加のセンサが必要となる可能性がある。さらに、透過率測定は、エミッタを追加のセンサに対向して配置する必要がある可能性があり、これは、幾つかのケースでは、透過率測定が第1の波長で機能するように、透過性領域がエミッタの視野内に配設されることも必要となる可能性がある。しかしながら、幾つかの実施形態では、これらの追加のセンサは、透過率測定のために使用されることに加えて、本開示の例示的な態様によるエミッション測定のために使用されうる。これらの透過性領域は、幾つかのケースでは、特にセンサがエミッション測定に使用される場合に、追加のセンサからの測定における加熱ランプからの汚染に寄与する可能性がある。したがって、この問題を解決する1つの方法は、追加の透過性領域を有するチャンバを構成することであるが、以下でより詳細に説明するように、エミッションおよび/またはセンサ測定の位相ロックを含む他の解決策を採用することもできる。
【0031】
幾つかの実施形態では、複数の赤外線エミッタおよび/または複数の赤外線センサは、位相ロック可能である。例えば、幾つかの実施形態では、1つ以上のエミッタによって放出される放射は、パルス周波数でパルス化することができる。パルス周波数は、熱処理システムにおいて放射成分をほとんどまたは全く有さない周波数であるかまたはこれを含むように選択することができる。例えば、幾つかの実施形態では、パルス周波数は約130Hzでありうる。幾つかの実施形態では、130Hzのパルス周波数は、加熱ランプが130Hzの周波数を有する放射を実質的に放出しないので、特に有利でありうる。1つ以上のエミッタをパルス化する一例として、1つ以上のエミッタからの一定の放射流が間欠的にパルス周波数でチョッパホイールを通過できるように、1つ以上のスリットを有するチョッパホイールを1つ以上のエミッタの視野内で回転させることができる。したがって、一定の放射流は、チョッパホイールの回転によって、パルス周波数のパルス放射流に変換することができる。
【0032】
付加的にかつ/または代替的に、1つ以上のセンサは、パルス周波数に基づいて位相ロック可能である。例えば、透過率測定システムは、パルス周波数に基づいてセンサから測定値を分離するように構成することができる。一例として、透過率測定システムは、パルス周波数で行われた測定の直前の測定値を差し引いて、パルス周波数での成分からの信号寄与を干渉成分から分離することなどによって、パルス周波数での測定値とパルス周波数以外の箇所での測定値とを比較することができる。換言すれば、パルス周波数に位相ロックされていないセンサ測定値(例えば、パルス周波数に対して同じもしくはこれよりも高い周波数で取得された測定値、および/または位相ロック測定値に対して位相のずれた測定値)は、チャンバ内の迷放射のみを示すことができ、かつ/またはパルス周波数に位相ロックされたセンサ測定値は迷放射とエミッタから放出された放射との和を示すことができる。したがって、放出放射は、位相ロックされていない測定値から既知の量の迷放射を差し引くことによって分離することができる。一例として、パルス周波数が130Hzである場合、センサは260Hz以上で測定値を取得することができ、これにより、1つ以上の迷強度測定値が各位相ロック測定値に関連付けられる。このようにして、透過率測定システムは、センサからの測定値における迷放射(例えば迷光)からの干渉を低減することができる。
【0033】
本開示の例示的態様によるシステムおよび方法は、ワークピースの熱処理に関連する幾つかの技術的効果および利点を提供することができる。一例として、本開示の例示的な態様によるシステムおよび方法は、ワークピースが実質的に透過性であり、かつ/または有意な黒体放射を放出しないワークピース温度で正確な温度測定を提供することができる。例えば、本開示の例示的な態様によるシステムおよび方法は、ワークピースの組成にかかわらず、約600℃未満の正確な温度測定を可能にしうる。
【0034】
本開示の別の技術的効果は、温度測定の範囲を改善することでありうる。例えば、本開示の例示的な態様によるシステムは、約600℃未満、例えば約400℃~600℃などの低温でのワークピースの正確な透過率ベースの放射率補償された温度測定を可能にしうる。加えて、約600℃未満のワークピース温度について透過率ベースの温度測定値を取得する際に使用されるセンサは、再利用することができ、かつ/または該センサを使用して、約600℃を超えるような、ワークピースが実質的に不透過性であり、かつ/もしくは有意な黒体放射を放出するワークピース温度について、ワークピースのエミッションベースの温度測定を行うこともできる。加えて、測定波長および/または特定の測定の位相ロックを含む他のプロセス態様は、熱処理システムの種々の機能間の干渉を最小限に抑えるように選択することができる。これにより、本開示の例示的な態様によるシステムおよび方法は、従来のシステムおよび方法と比較して、増大した範囲、例えば約600℃未満の温度を含む増大した範囲にわたって温度を測定することが可能となりうる。加えて、これにより、システムおよび方法が、追加のセンサおよび/またはセンサの再構成を必要とすることなく、ワークピースが実質的に測定可能な黒体放射を放出しない温度(例えば約600℃未満)についての透過率ベースの温度測定から、ワークピースが測定可能な放射を放出する温度(例えば約600℃超)についてのエミッションベースの温度測定へ円滑に移行することが可能となりうる。これは、例えばワークピースがもはや少なくとも部分的に透過性でなくなると、透過率ベースの温度測定に使用される同じセンサを、エミッションベースの温度測定に使用することができるためである。
【0035】
本開示のこれらの例示的な実施形態に対して変形および修正を行うことができる。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の指示対象を含む。「第1の」、「第2の」、「第3の」などの使用は識別子として使用され、必ずしも暗示される順序付けまたは他の何らかの順序付けを示すものではない。例示的な態様は、例示および説明の目的で、「基板」、「ワークピース」、または「ワークピース」を参照して説明されうる。当業者は、本明細書で提供される開示を使用して、本開示の例示的な態様が任意の適切なワークピースとともに使用されうることを理解するであろう。なお、数値に関連する「約」とは、記載された数値の20%以内を意味する。
【0036】
図面を参照して、本開示の例示的な実施形態をここで詳細に説明する。
図1は、本開示の例示的な実施形態による例示的な急速熱処理(RTP)システム100を示している。図示のように、RTPシステム100は、上部101および底部102を含むRTPチャンバ105と、窓106、108と、ワークピース110と、ワークピース支持プレート120と、熱源130、140(例えば加熱ランプ)と、赤外線エミッタ150、152、154と、センサ165、166、167、168(例えばデュアルヘッドパイロメータなどのパイロメータ)と、コントローラ175と、側壁/ドア180と、ガス流コントローラ185とを含む。
【0037】
処理対象のワークピース110は、ワークピース支持プレート120によってRTPチャンバ105(例えば石英RTPチャンバ)内で支持される。ワークピース支持プレート120は、熱処理中にワークピース110を支持するように動作可能なワークピース支持体でありうる。ワークピース110は、シリコンワークピースなどの半導体ワークピースなどの任意の好適なワークピースであるかまたはこれを含みうる。幾つかの実施形態では、ワークピース110は、軽度にドープされたシリコンワークピースであるかまたはこれを含みうる。例えば、軽度にドープされたシリコンワークピースは、シリコンワークピースの抵抗率が約0.1Ωcmより大きくなるように、例えば約1Ωcmより大きくなるようにドープすることができる。
【0038】
ワークピース支持プレート120は、RTPチャンバ105内でワークピース110を支持するなど、ワークピース110を支持するように構成された任意の適切な支持構造であるかまたはこれを含みうる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレート120は、熱処理システムによる同時熱処理のために複数のワークピース110を支持するように構成することができる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレート120は、熱処理の前、中間、および/または後にワークピース110を回転させることができる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレート120は、少なくとも一部の電磁放射がワークピース支持プレート120を少なくとも部分的に通過することを可能にするように透過性であってよく、かつ/またはそれ以外の形式で構成されていてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレート120の材料は、ワークピース110および/またはエミッタ150、152、154によって放出される電磁放射など、所望の電磁放射がワークピース支持プレート120を通過できるように選択することができる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレート120は、ヒドロシキルフリー石英材料などの石英材料製であるかまたはこれを含みうる。
【0039】
ワークピース支持プレート120は、ワークピース支持プレート120から延在する少なくとも1つの支持ピン115を含みうる。幾つかの実施形態では、ワークピース支持プレート120は、上部プレート116から離間されうる。幾つかの実施形態では、支持ピン115および/またはワークピース支持プレート120は、熱源140から熱を伝達し、かつ/またはワークピース110から熱を吸収することができる。幾つかの実施形態では、支持ピン115、ガードリング109、および上部プレート116は、石英で作製することができる。
【0040】
ガードリング109を使用して、ワークピース110の1つ以上のエッジによる放射のエッジ効果を低減することができる。側壁/ドア180は、ワークピース110の進入を可能にし、閉鎖されると、ワークピース110上で熱処理が実行可能となるようにチャンバ105を密閉することができる。例えば、プロセスガスをRTPチャンバ105に導入することができる。RTPチャンバ105内のワークピース110を加熱するように動作可能な熱源130、140(例えばランプまたは他の適切な熱源)の2つのバンクが、ワークピース110の両側に示されている。窓106、108は、以下でより詳細に説明するように、熱源130、140によって放出される放射の少なくとも一部を遮断するように構成することができる。
【0041】
RTPシステム100は、熱源130、140を含みうる。幾つかの実施形態では、熱源130、140は、1つ以上の加熱ランプを含みうる。例えば、1つ以上の加熱ランプを含む熱源130、140は、ワークピース110を加熱するために電磁放射(例えば広帯域電磁放射)を放出することができる。幾つかの実施形態では、例えば、熱源130、140は、アークランプ、タングステンハロゲンランプ、および/または任意の他の好適な加熱ランプ、および/またはこれらの組み合わせであるかまたはこれらを含みうる。幾つかの実施形態では、例えばリフレクタ(例えばミラー)などの指向性要素(図示せず)は、熱源130、140からの電磁放射をRTPチャンバ105内に方向付けるように構成することができる。
【0042】
本開示の例示的な態様によれば、窓106、108は、ワークピース110と熱源130、140との間に配設することができる。窓106、108は、熱源130、140によって放出された電磁放射(例えば広帯域放射)の少なくとも一部が急速熱処理チャンバ105の部分に入ることを選択的に遮断するように構成することができる。例えば、窓106、108は、不透過性領域160および/または透過性領域161を含みうる。本明細書で使用される場合、「不透過性」とは、概して、所与の波長に対して約0.4(40%)未満の透過率を有することを意味し、「透過性」とは、概して、所与の波長に対して約0.4(40%)を超える透過率を有することを意味する。
【0043】
不透過性領域160および/または透過性領域161は、不透過性領域160が熱源130、140からの一部の波長の迷放射を遮断し、透過性領域161が例えばエミッタ150、152、154および/またはセンサ165、166、167、168に不透過性領域160によって遮断された波長のRTPチャンバ105内の放射との自由な相互作用を可能にさせるように位置決めすることができる。このようにして、窓106、108は、熱源130、140がワークピース110を加熱することを依然として可能にしながら、所与の波長における熱源130、140による汚染からRTPチャンバ105を効果的に遮蔽することができる。不透過性領域160および透過性領域161は、概して、特定の波長に対してそれぞれ不透過性および透過性として定義することができる。すなわち、少なくとも特定の波長の電磁放射に対して、不透過性領域160は不透過性であり、透過性領域161は透過性である。
【0044】
不透過性領域160および/または透過性領域161を含むチャンバ窓106、108は、任意の適切な材料および/または構造で形成することができる。幾つかの実施形態では、チャンバ窓106、108は、石英材料製であるかまたはこれを含みうる。さらに、幾つかの実施形態では、不透過性領域160は、ヒドロキシルドープ石英(例えばヒドロキシルでドープされた石英)などのヒドロキシル(OH)含有石英であるかまたはこれを含んでいてよく、かつ/または透過性領域161は、ヒドロキシルフリー石英(例えばヒドロキシルでドープされていない石英)であるかまたはこれを含んでいてよい。ヒドロキシルドープ石英およびヒドロキシルフリー石英の利点として、製造の容易さが挙げられる。例えば、ヒドロキシルフリー石英領域をモノリシック石英窓のヒドロキシルドープ中に遮蔽して、モノリシック窓内にヒドロキシルドープ領域(例えば不透過性領域)およびヒドロキシルフリー領域(例えば透過性領域)の両方を生成することができる。加えて、ヒドロキシルドープ石英は、本開示による望ましい波長遮断特性を示すことができる。例えば、ヒドロキシルドープ石英は、熱処理システム100内の幾つかのセンサ(例えばセンサ165、166、167、168)が動作する測定波長に対応しうる約2.7マイクロメートルの波長を有する放射を遮断することができるが、ヒドロキシルフリー石英は、約2.7マイクロメートルの波長を有する放射に対して透過性でありうる。したがって、ヒドロキシルドープ石英領域は、急速熱処理チャンバ105内の(例えば、熱源130、140からの)迷放射からセンサ(例えばセンサ165、166、167、168)を遮蔽することができ、ヒドロキシルフリー石英領域は、センサの視野内に少なくとも部分的に配設して、センサが熱処理システム内で測定値を取得することを可能にすることができる。加えて、ヒドロキシルドープ石英は、約2.3マイクロメートルの波長を有する放射に対して部分的に不透過性(例えば約0.6または60%の透過率を有する)とすることができ、これにより、急速熱処理システム100における迷放射からの(例えば熱源130、140からの)汚染を少なくとも部分的に低減することができる。
【0045】
ガスコントローラ185は、RTPシステム100を通るガス流を制御することができ、該ガス流には、ワークピース110と反応しない不活性ガス、および/またはワークピース110(例えば半導体ワークピースなど)の材料と反応してワークピース110上に層を形成する酸素または窒素などの反応性ガスが含まれうる。幾つかの実施形態では、RTPシステム100内の雰囲気に電流を流して、ワークピース110の表面と反応するイオンを生成し、表面に高エネルギイオンを衝突させることでこの表面に過剰エネルギを付与することができる。
【0046】
コントローラ175は、RTPチャンバ内の種々の構成要素を制御して、ワークピース110の熱処理を指示する。例えば、コントローラ175を使用して熱源130および140を制御することができる。付加的にかつ/または代替的に、コントローラ175を使用して、ガス流コントローラ185、ドア180、および/または例えばエミッタ150、152、154および/またはセンサ165、166、167、168を含む温度測定システムを制御することができる。コントローラ175は、ワークピースの温度を測定するように構成することができ、これについては、以下の図に関してより詳細に説明する。例えば、
図2は、熱処理システム100の1つ以上の構成要素を含む熱処理システム200を示しており、該熱処理システム200は、ワークピースのインサイチュ放射率決定を実行するように構成されている。
図3は、熱処理システム100の1つ以上の構成要素を含む熱処理システム300を少なくとも示しており、該熱処理システム300は、ワークピースの透過率ベースおよび/またはエミッションベースの温度測定を実行するように構成されている。同様に、
図4は、熱処理システム100の1つ以上の構成要素を含む温度測定システム400を示しており、該温度測定システム400は、ワークピースの透過率ベースおよび/またはエミッションベースの温度測定を実行するように構成されている。
【0047】
本明細書で使用されるように、コントローラ、制御システム、または類似物は、1つ以上のプロセッサおよび1つ以上のメモリデバイスを含みうる。1つ以上のプロセッサは、1つ以上のメモリデバイスに格納されたコンピュータ可読命令を実行して、本明細書に記載の熱処理システムを制御するための任意の動作などの動作を実行するように構成することができる。
【0048】
図1は、例示および説明のために例示的な熱処理システム100を示している。当業者は、本明細書で提供される開示を使用して、本開示の態様が、本開示の範囲から逸脱することなく、ワークピースのための他の熱処理システムとともに使用されうることを理解するであろう。
【0049】
図2は、例示および説明のために例示的な熱処理システム200を示している。特に、熱処理システムは、
図1の熱処理システム100に関して説明したような1つ以上の構成要素を含む。特に、
図2は、少なくともエミッタ150ならびにセンサ165および166を含む、ワークピース110のインサイチュ放射率測定値の決定に有用な構成要素を少なくとも示している。
図2に示されているように、エミッタ150は、ワークピース110に対して斜めの角度で方向付けられた赤外放射を放出するように構成することができる。エミッタ150によって放出された放出放射の透過部分は、ワークピース110を透過し、透過率センサ165に入射する。エミッタ150によって放出された放出放射の反射部分は、ワークピース110で反射され、反射率センサ166に入射する。ワークピースの放射率は、透過部分および放射部分によって決定することができる。例えば、ワークピース110の透過率は、透過率センサ165に入射する放射の強度によって表すことができる。加えて、ワークピース110の反射率は、反射率センサ166に入射する放射の強度によって表すことができる。透過率および反射率から、透過率τおよび反射率ρは、それぞれ、ワークピースが熱処理システム200内に存在しない場合のセンサ165、166における強度を表しうる基準強度I
0に対する透過率および反射率の比として決定することができる。これにより、放射率εは、
ε=1-(ρ+τ)
のように計算することができる。
【0050】
本開示の例示的な態様によれば、1つ以上の透過性領域161は、エミッタ150および/またはセンサ165、166の視野内に少なくとも部分的に配設することができる。例えば、エミッタ150および/またはセンサ165、166は、透過性領域161が透過する測定波長範囲で動作することができる。例えば、幾つかの実施形態では、エミッタ150および/またはセンサ165、166は、2.7マイクロメートルで動作することができる。
図2に示されているように、透過性領域161は、放射流(矢印で概ね示される)が窓106、108(例えば不透過性領域160)によって妨害されることなく、エミッタ150から透過性領域161を通ってセンサ165、166に流れることができるように位置決めすることができる。同様に、不透過性領域160は、ワークピース110、特にセンサ165、166を熱源130、140からの測定波長範囲の放射から遮蔽するために、放射流の外側にある窓106、108上の領域に配設することができる。例えば、幾つかの実施形態では、2.7マイクロメートルの波長で動作するセンサおよび/またはエミッタのために、透過性領域161が含まれうる。
【0051】
幾つかの実施形態では、エミッタ150および/またはセンサ165、166は位相ロック可能である。例えば、幾つかの実施形態では、エミッタ150および/またはセンサ165、166は、位相ロックレジームに従って動作することができる。例えば、不透過性領域160は、第1の波長で熱源130、140からのほとんどの迷放射を遮断するように構成することができるが、幾つかのケースでは、それでもなお、上述したように、迷放射がセンサ165、166によって感受されることがある。位相ロックレジームに従ってエミッタ150および/またはセンサ165、166を動作させることで、迷放射の存在にもかかわらず、強度測定における精度の改善に寄与することができる。
【0052】
例えば、幾つかの実施形態では、エミッタ150によって放出される放射は、パルス周波数でパルス化することができる。パルス周波数は、熱処理システム200において放射成分をほとんどまたは全く有さない周波数であるかまたはこれを含むように選択することができる。例えば、幾つかの実施形態では、パルス周波数は約130Hzでありうる。幾つかの実施形態では、130Hzのパルス周波数は、熱源130、140が130Hzの周波数を有する放射を実質的に放出しないので、特に有利でありうる。付加的にかつ/または代替的に、センサ165、166は、パルス周波数に基づいて位相ロック可能である。例えば、熱処理システム200(例えば
図1のコントローラ175などのコントローラ)は、パルス周波数に基づいてセンサ165、166から測定値(例えば強度測定値)を分離することができる。このようにして、熱処理システム200は、センサ165、166からの測定値における迷放射からの干渉を低減することができる。
【0053】
例示的な位相ロックレジームを、プロット250、255、260に関して説明する。プロット250は、エミッタ150によって測定波長範囲内で放出された放射IIRの放射強度を経時的に(例えば、ワークピース110上で実行される熱プロセスの持続時間にわたって)示している。プロット250に示されているように、エミッタ150によって放出される放射強度は、パルス251として放出されうる。例えば、エミッタ150は、チョッパホイール(図示せず)によってパルス化することができる。チョッパホイールは、1つ以上の遮断部分および/または1つ以上の通過部分を含みうる。チョッパホイールは、エミッタ150からの一定の放射流がパルス周波数で遮断部分によって断続的に遮断されかつ通過部分を通して通過するように、エミッタ150の視野内で回転させることができる。したがって、エミッタ150によって放出される一定の放射流は、チョッパホイールの回転によって、パルス周波数のパルス放射流に変換することができる。
【0054】
プロット255は、透過率センサ165によって測定された透過放射強度ITを経時的に示している。同様に、プロット260は、反射率センサ166によって測定された反射放射強度IRを経時的に示している。プロット255および260は、経時的に(例えばワークピース110の温度が上昇するにつれて)、チャンバ内の迷放射(それぞれ迷放射曲線256および261によって示される)が増大しうることを示している。これは、例えば、ワークピース110の温度の上昇、熱源130、140の強度の増大、および/またはワークピース110の熱処理に関連する種々の他の要因に対して、ワークピース110の透過度が低下し、かつ/またはワークピース110のエミッションが増大することに起因しうる。
【0055】
エミッタ150が放射を放出していない時点の間、センサ165、166は、迷放射曲線256、261にそれぞれ対応する測定値(例えば迷放射測定値)を取得することができる。同様に、エミッタ150が放射(例えばパルス251)を放出している時点の間、センサ165、166は、全放射曲線257、262にそれぞれ対応する測定値(例えば全放射測定値)を取得することができる。したがって、(例えば透過率τに起因する)透過放射強度ITを、時間調整された(例えば後続の)全放射測定値(例えば曲線257を表す)と迷放射測定値(例えば曲線256を表す)との間の差に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。さらに、透過率τは、基準強度I0に対する透過放射強度ITの比によって決定することができる。同様に、(例えば反射率ρに起因する)反射放射強度IRを、時間調整された(例えば後続の)全放射測定値(例えば曲線262を表す)と迷放射測定値(例えば曲線261を表す)との間の差に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。さらに、反射率ρは、基準強度I0に対する反射放射強度IRの比によって決定することができる。幾つかの実施形態では、基準強度I0は、ワークピース110が熱処理システム200内に存在しない場合、エミッタ150からのパルスおよび/または一定の放射の結果としてセンサ165、166によって測定することができる。透過率τおよび反射率ρから、放射率εは、
ε=1-(ρ+τ)
によって計算することができる。
【0056】
図3は、本開示の例示的な態様による例示的な熱処理システム300を示している。熱処理システム300は、ワークピース110に対して熱処理を実行するように、かつ/またはワークピース110の温度を測定するように構成することができる。特に、熱処理システムは、
図1の熱処理システム100に関して説明したような1つ以上の構成要素を含みうる。特に、
図3は、少なくとも中央エミッタ152および中央センサ167を含む、ワークピース110の透過率ベースおよび/またはエミッションベースの温度測定値の決定に有用な構成要素を少なくとも示している。幾つかの実施形態では、エッジエミッタ154および/またはエッジセンサ168は、
図3に関して説明したように、ワークピース110のエッジ部分上の中央エミッタ152および/または中央センサ154と同様に動作することができるが、説明のために
図3には示されていない。これについては、
図4に関して以下でさらに説明する。
【0057】
図3に示されているように、中央エミッタ152は、
図3の矢印で示されている、ワークピース110の表面に対して直交方向に方向付けられた赤外放射を放出するように構成することができる。中央エミッタ152によって放出された放射の透過部分は、ワークピース110を透過し、中央センサ167に入射する。幾つかの実施形態では、窓106、108の透過性領域161は、中央エミッタ152および/またはセンサ167の視野内に配設されうる。例えば、中央エミッタ152および/または中央センサ167は、透過性領域161が透過性である測定波長範囲で動作することができる。例えば、幾つかの実施形態では、中央エミッタ152および/または中央センサ167は、2.7マイクロメートルで動作することができる。
図3に示されているように、透過性領域161は、放射流(おおよそが矢印で示されている)が、窓106、108(例えば不透過性領域160)によって妨害されることなく、中央エミッタ152から透過性領域161を通って中央センサ167に流れることができるように位置決めすることができる。同様に、不透過性領域160は、ワークピース110、特に中央センサ167を熱源130、140からの測定波長範囲の放射から遮蔽するために、放射流の外側にある窓106、108上の領域に配設することができる。例えば、幾つかの実施形態では、2.7マイクロメートルの波長で動作するセンサおよび/またはエミッタのために、透過性領域161が含まれうる。
【0058】
しかしながら、幾つかの実施形態では、中央エミッタ152の視野内に配設された窓106に透過性領域161を含めることにより、望ましくないことに、熱源130によって放出された放射により、熱処理システム300内の中央センサ167および/または他のセンサ(図示せず)による測定を汚染することが可能となりうる。例えば、幾つかの実施形態では、中央センサ167は、透過性領域161が透過性である測定波長範囲でワークピース110によって放出される熱放射を測定するようにさらに構成されうる。透過性領域161が中央エミッタ152の視野内に配設される場合、熱源130によって放出される放射は、このワークピースエミッション測定を汚染するリスクを増大させる可能性がある。
【0059】
この問題に対する1つの解決策は、中央エミッタ152の視野内の透過性領域161を省略し、代わりに不透過性領域160を含めることである。加えて、中央エミッタ152および/または中央センサ167は、不透過性領域160が少なくとも部分的に透過性である測定波長範囲内の第2の波長で動作させることができる。例えば、幾つかの実施形態では、第2の波長は2.3マイクロメートルでありうる。このようにして、不透過性領域160が存在するにもかかわらず、中央エミッタ152によって放出された放射は、潜在的に汚染を生じる透過性領域を含める必要なしに、窓106および108を通過し、中央センサ167によって測定可能となる。さらに、不透過性領域160を含めたことにより、(例えば約600℃を超えるような、ワークピース110が放射を放出する温度で)ワークピース110によって放出された放出放射の強度を示す中央センサ167からの測定値(例えば放出放射測定値)は、迷放射によって汚染されることはない。しかしながら、上述した解決策では新たな問題が発生する可能性がある。中央エミッタ152からの第2の波長の放射は不透過性領域160を通過することができるので、例えば熱源130、140からの第2の波長の迷放射も通過してしまう可能性がある。
【0060】
したがって、幾つかの実施形態では、中央エミッタ152および/または中央センサ167は位相ロック可能である。幾つかの実施形態では、中央エミッタ152および/または中央センサ167は、位相ロックレジームに従って動作することができる。例えば、不透過性領域160は、熱源130、140からの第1の波長の迷放射の大部分を遮断するように構成することができるが、幾つかのケースでは、迷放射、特に第2の波長の迷放射は、それでもなお、上述したように中央センサ167によって感受される可能性がある。位相ロックレジームに従って中央エミッタ152および/または中央センサ167を動作させることで、迷放射の存在にもかかわらず、強度測定における精度の改善に寄与することができる。
【0061】
例えば、幾つかの実施形態では、中央エミッタ152によって放出される放射は、パルス周波数でパルス化することができる。パルス周波数は、熱処理システム300において放射成分をほとんどまたは全く有さない周波数であるかまたはこれを含むように選択することができる。例えば、幾つかの実施形態では、パルス周波数は約130Hzでありうる。幾つかの実施形態では、130Hzのパルス周波数は、熱源130、140が130Hzの周波数を有する放射を実質的に放出しないので、特に有利でありうる。付加的にかつ/または代替的に、中央センサ167は、パルス周波数に基づいて位相ロック可能である。例えば、熱処理システム300(例えば
図1のコントローラ175などのコントローラ)は、パルス周波数に基づいて中央センサ167から測定値(例えば強度測定値)を分離することができる。このようにして、熱処理システム300は、中央センサ167からの測定値における迷放射からの干渉を低減することができる。
【0062】
例示的な位相ロックレジームを、プロット310および320に関して説明する。プロット310は、中央エミッタ152によって測定波長範囲内で放出された放射IIRの放射強度を経時的に(例えばワークピース110上で実行される熱プロセスの持続時間にわたって)示している。プロット320は、中央センサ167によって測定された透過放射強度ITを経時的に示している。プロット310に示されているように、中央エミッタ152によって放出される放射強度は、パルス311として放出されうる。例えば、中央エミッタ152は、チョッパホイール302によってパルス化することができる。チョッパホイール302は、1つ以上の遮断部分305および/または1つ以上の通過部分306を含みうる。チョッパホイール302は、中央エミッタ152からの一定の放射流がパルス周波数で遮断部分305によって断続的に遮断されかつ通過部分306を通して通過するように、中央エミッタ152の視野内で回転させることができる。したがって、中央エミッタ152によって放出される一定の放射流は、チョッパホイール302の回転によって、パルス周波数のパルス放射流に変換することができる。
【0063】
中央エミッタ152が放射を放出していない時点の間、中央センサ167は、迷放射曲線312に対応する測定値(例えば迷放射測定値)を取得することができる。同様に、中央エミッタ152が放射(例えばパルス311)を放出している時点の間、中央センサ167は、全放射曲線313に対応する測定値(例えば全放射測定値)を取得することができる。したがって、(例えば透過率τに起因する)透過放射強度I
Tを、時間調整された(例えば後続の)全放射測定値(例えば曲線313を表す)と迷放射測定値(例えば曲線312を表す)との間の差に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。さらに、透過率τは、基準強度I
0に対する透過放射強度I
Tの比によって決定することができる。例えば、基準強度I
0は、ワークピース110が熱処理システム300内に存在しない場合、中央エミッタ152からのパルスおよび/または一定の放射の結果として、中央センサ167によって測定することができる。透過率τを、透過率曲線(例えば、特定のワークピース組成に対する
図6Aのワークピース透過率曲線602、604、606、および/または
図6Bの正規化ワークピース透過率曲線652)と比較して、ワークピースの温度を決定することができる。
【0064】
プロット320は、経時的に(例えばワークピース110の温度が上昇するにつれて)、チャンバ内の迷放射(迷放射曲線312によって示される)が増大しうることを示している。これは、例えば、ワークピース110の温度の上昇、熱源130、140の強度の増大、および/またはワークピース110の熱処理に関連する種々の他の要因に対して、ワークピース110の透過度が低下し、かつ/またはワークピース110のエミッションが増大することに起因しうる。例えば、プロット320に見られるように、迷放射曲線312および全放射曲線313は、時間が経過するにつれて(例えば温度が上昇するにつれて)収束する傾向がある。これは、例えば、温度上昇に対してワークピース110の透過度が低下することの結果でありうる。したがって、幾つかのケースでは(例えばシリコンワークピースの場合)、上述したような透過率ベースの温度測定は、ある温度(例えば約600℃)を超えると信頼性が低下する可能性がある。したがって、本開示の例示的な態様によれば、熱処理システム(例えば熱処理システム100、200、300のいずれか)は、ある温度閾値において、第1の温度測定プロセス(例えば透過率ベースの温度測定プロセス)から第2の温度測定プロセス(例えばエミッションベースの温度測定プロセス)に移行することができる。例えば、この温度閾値は約600℃でありうる。温度閾値は、ワークピース110が中央センサ167によって検出されうる波長で実質的な黒体放射を示すワークピース温度に対応しうる。付加的にかつ/または代替的に、温度閾値は、ワークピース110が中央エミッタ152によって放出される放射に対して不透過性であるワークピース温度に対応しうる。例えば、幾つかの実施形態では、温度閾値は、迷放射曲線312および全放射曲線313が収束する点、または換言すれば、透過放射強度ITの大きさが大きさ閾値未満となる点に対応しうる。
【0065】
例えば、幾つかの実施形態では、中央センサ167は、測定波長範囲でワークピース110によって放出される放射を測定するように構成することができる。例えば、幾つかの実施形態では、中央センサ167は、測定波長範囲の第1の波長を測定するように構成された第1のヘッドを有するデュアルヘッドパイロメータでありうる。不透過性領域160がヒドロキシルドープ石英を含む実施形態では、第1の波長は、透過性領域161が透過性を有しかつ/または不透過性領域160が不透過性を有する波長、例えば2.7マイクロメートルなどであるかまたはこれを含みうる。第1の波長はさらに、ワークピース110によって放出される黒体放射の波長に対応しうる。加えて、中央センサ167は、測定波長範囲の第2の波長を測定するように構成された第2のヘッドを有することができる。不透過性領域160がヒドロキシルドープ石英を含む実施形態では、第2の波長は、不透過性領域160が不透過性でない波長、例えば2.3マイクロメートルなどであるかまたはこれを含みうる。第2の波長は、さらに、中央エミッタ152によって放出される波長に対応しうる。
【0066】
したがって、本開示の例示的な態様によれば、中央センサ167は、温度閾値未満のワークピース110の温度についてワークピース110の透過率に関連する透過率測定値を取得することができ、加えて、温度閾値を超える温度についてワークピース110によって放出される黒体放射の強度に関連するエミッション測定値を取得することができる。したがって、ワークピース110の温度は、上述したように、温度閾値未満の温度における透過率測定によって決定することができる。付加的にかつ/または代替的に、ワークピース110の温度は、温度閾値を超える温度でのエミッション測定によって決定することができる。例えば、ワークピースの温度は、次式、すなわち
【数2】
に基づき、エミッション測定によって決定することができる。
【0067】
図4は、本開示の例示的な態様による例示的な温度測定システム400を示している。温度測定システム400は、支持リング109によって少なくとも部分的に支持されうるワークピース110の温度を測定するように構成することができる。温度測定システム400は、中央エミッタ152およびエッジエミッタ154を含みうる。加えて、温度測定システム400は、中央センサ167およびエッジセンサ168を含みうる。エミッタ152、154および/またはセンサ167、168は、
図3の中央エミッタ152および/または中央センサ167に関して説明したように動作することができる。例えば、中央エミッタ152および中央センサ167は、中央エミッタ152によって放出された放射がワークピース110の中央部分111を通過し、次いで中央センサ167に入射するように配設することができる。同様に、エッジエミッタ154およびエッジセンサ168は、エッジエミッタ154によって放出された放射がワークピース110のエッジ部分112を通過し、エッジセンサ168に入射するように配設することができる。このようにして、中央センサ167は中央部分111の温度測定値を取得するように構成することができ、かつ/またはエッジセンサ168はエッジ部分112の温度測定値を取得するように構成することができる。幾つかの実施形態では、中央部分111は、ワークピースの半径rの約50%未満、例えば半径rの約10%によって画定されるワークピースの部分を含みうる。幾つかの実施形態では、エッジ部分は、ワークピースの半径rの約50%超、例えば半径rの約90%によって画定されるワークピースの部分を含みうる。
【0068】
図5Aは、例示的な不透過性領域を構成する例示的な材料についての例示的な透過率曲線502のプロット500を示している。例えば、透過率曲線502は、ヒドロキシルドープ石英などの例示的な材料について示されている。
図5Aに示されているように、例示的な不透過性領域は、一部の波長に対して実質的に不透過性であり、他の波長に対して実質的に透過性でありうる。特に、例示的な透過率曲線502は、不透過性範囲504および部分的不透過性範囲506を含む。本明細書で説明しているように、測定波長範囲は、有利には、不透過性範囲504および/または部分的不透過性範囲506内の波長を含みうる。例えば、不透過性範囲504および/または部分的不透過性範囲506内の放射は、例示的な不透過性領域によって少なくとも部分的に遮断することができる。これにより、加熱ランプによって放出された放射が熱処理チャンバに入り、不透過性範囲504および/または部分的不透過性範囲506を測定するように構成されたセンサの測定を汚染することを防止することができる。
【0069】
図5Bは、例示的な透過性領域を構成する例示的な材料についての例示的な透過率曲線522のプロット520を示している。例えば、透過率曲線522は、ヒドロキシルフリー石英などの例示的な材料について示されている。
図5Bに示されているように、例示的な透過性領域は、一部の波長にわたって実質的に透過性でありうる。例示的な透過率曲線522は、大部分の波長にわたって実質的に透過性であるように示されているが、例示的な透過性領域は、不透過性範囲をさらに含みうる。概して、例示的な透過性領域は、測定範囲において(例えば
図5Aの不透過性範囲504および/または部分的不透過性範囲506に対応する波長において)透過性であることが望ましい。
【0070】
図6Aは、3つの例示的なワークピースタイプについての例示的な透過率曲線602、604、606のプロット600を示している。例えば、曲線602は、より低い反射率を有するワークピースに関連付けられ、曲線604は、中程度の反射率を有するワークピース(例えばベアのワークピース)に関連付けられ、曲線606は、より高い反射率を有するワークピースに関連付けられている。
図6Aに示されているように、曲線602、604、606の各々は一般的な傾向に従うが、各ワークピースの透過率の値は、ワークピースの表面特性(例えば反射率)に基づいて変化しうる。そのため、
図6Bは、例示的な正規化または公称ワークピース透過率曲線652のプロット650を示している。
図6Bに示されているように、正規化ワークピース透過率曲線652は、特定のワークピースについての最大1から最小0までの透過率を表しているが、ワークピースの特定の透過率値とは無関係である。換言すれば、正規化ワークピース透過率曲線652は、低反射ワークピース、ベアワークピース、および/または高反射ワークピースの各々に対して類似および/または同一でありうる。したがって、ワークピースについて取得された正規化透過率測定値は、正規化ワークピース透過率曲線652と比較することができ、その結果、ワークピースの表面特性に関係なく、透過率を温度に直接に相関させることができる。
【0071】
図7は、例えば、
図1~
図3の熱処理システム100、200または300などの熱処理システム内のワークピースの温度を測定するための例示的な方法700のフローチャートを示している。
図7は、例示および説明のために特定の順序で実行されるステップを示している。当業者は、本明細書で提供される開示を使用して、本明細書で説明される方法のいずれかの種々のステップが、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の方法で、省略、拡張、同時に実行、再配置、および/または修正されうることを理解するであろう。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の追加のステップ(図示せず)を実行することができる。
【0072】
方法700は、702において、1つ以上の赤外線エミッタによって、ワークピースの1つ以上の表面に方向付けられた赤外放射を放出することを含みうる。例えば、幾つかの実施形態では、1つ以上の赤外線エミッタが第1の波長を有する放射を放出することができ、1つ以上の赤外線エミッタが第2の波長を有する放射を放出することができる。
【0073】
方法700は、704において、1つ以上の窓によって、ワークピースを加熱するように構成された1つ以上の加熱ランプによって放出された広帯域放射の少なくとも一部が1つ以上の赤外線センサに入射することを遮断することを含みうる。例えば、幾つかの実施形態では、1つ以上の窓は、測定範囲の少なくとも一部内にある広帯域放射の少なくとも一部を遮断することができる。
【0074】
方法700は、706において、1つ以上の赤外線センサによって、1つ以上の赤外線エミッタのうちの少なくとも1つによって放出されてワークピースの1つ以上の表面を通過する赤外放射の透過部分を測定することを含みうる。例えば、透過部分の第1の部分を第1の透過率センサに入射させて、第1の透過率測定値を取得することができる。第1の透過部分は、放射率測定システムのエミッタおよび/またはセンサに対応しうる。第1の透過部分は、幾つかの実施形態では、関連する第1の波長を有することができる。付加的にかつ/または代替的に、透過部分の第2の部分を少なくとも1つの第2の透過率センサに入射させて、少なくとも1つの第2の透過率測定値を取得することができる。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの第2の透過率センサは、ワークピースによって放出される放射を測定するようにさらに構成することができる。幾つかの実施形態では、第2の透過部分は、関連する第2の波長を有することができる。幾つかの実施形態では、第1の波長は1つ以上の窓によって遮断することができ、かつ/または第2の波長を1つ以上の窓によって少なくとも部分的に通過させることができる。例えば、幾つかの実施形態では、第1の透過部分は測定波長範囲の第1の波長に関連付けられ、第2の透過部分は測定波長範囲の第2の波長に関連付けられ、1つ以上の窓は第1の波長の放射を遮断し、第2の波長の放射を透過させる。
【0075】
方法700は、708において、1つ以上の赤外線センサにより、1つ以上の赤外線エミッタのうちの少なくとも1つによって放出されてワークピースの1つ以上の表面で反射された赤外放射の反射部分を測定することを含みうる。例えば、反射部分を反射率センサに入射させて、反射率測定値を取得することができる。幾つかの実施形態では、反射率センサは、放射率測定システムの部分でありうる。
【0076】
幾つかの実施形態では、1つ以上の赤外線センサにより、1つ以上の赤外線エミッタのうちの少なくとも1つによって放出された赤外放射の一部(例えば透過部分および/または反射部分)を測定することは、1つ以上の赤外線センサおよび/または1つ以上の赤外線エミッタを位相ロックすることを含みうる。例えば、1つ以上の赤外線センサおよび/または1つ以上の赤外線エミッタを位相ロックすることは、パルス周波数で1つ以上の赤外線エミッタのうちの少なくとも1つをパルス化することを含みうる。1つ以上のエミッタをパルス化する一例として、1つ以上のエミッタからの一定の放射流が間欠的にパルス周波数でチョッパホイールを通過できるように、1つ以上のスリットを有するチョッパホイールを1つ以上のエミッタの視野内で回転させることができる。したがって、一定の放射流は、チョッパホイールの回転によって、パルス周波数のパルス放射流に変換することができる。
【0077】
付加的にかつ/または代替的に、1つ以上の赤外線センサおよび/または1つ以上の赤外線エミッタを位相ロックすることは、パルス周波数に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上の赤外線センサから少なくとも1つの測定値を分離することを含みうる。一例として、パルス周波数にあるおよび/またはパルス周波数と同相である1つ以上の赤外線センサからの測定値(例えば1つ以上の赤外線センサに入射する放射の強度を示す測定値)は、2倍のパルス周波数での後続の測定値を差し引くことなどによって、パルス周波数にない測定値および/またはパルス周波数と同相である測定値と位相ずれしている測定値と比較することができる。したがって、パルス周波数の構成要素(例えばエミッタ)からの信号寄与は、干渉構成要素(例えば加熱ランプなどの迷放射)から分離することができる。換言すれば、パルス周波数に位相ロックされていないセンサ測定値(例えば、パルス周波数と同じまたはこれよりも高い周波数で取得された測定値、および/または位相ロック測定値に対して位相のずれた測定値)は、チャンバ内の迷放射のみを示すことができ、かつ/またはパルス周波数に位相ロックされたセンサ測定値は、迷放射とエミッタから放出された放射との和を示すことができる。したがって、エミッタによって放出された放出放射を示す測定値は、位相ロックされていない測定値によって示される迷放射の量を差し引くことによって分離することができる。一例として、パルス周波数が130Hzである場合、センサは260Hz以上で測定値を取得することができ、これにより、1つ以上の迷強度測定値が各位相ロック測定値に対応する。このようにして、熱処理システムは、センサからの測定値における迷放射(例えば迷光)からの干渉を低減することができる。
【0078】
方法700は、710において、透過部分および反射部分に少なくとも部分的に基づいて、ワークピースの温度を決定することを含みうる。710におけるワークピースの温度は、約600℃未満でありうる。例えば、幾つかの実施形態では、ワークピースの温度を決定することは、透過部分および反射部分に少なくとも部分的に基づいて、ワークピースの放射率を決定することと、透過部分およびワークピースの放射率に少なくとも部分的に基づいて、ワークピースの温度を決定することとを含みうる。例えば、幾つかの実施形態では、ワークピースの放射率は、第1の透過率測定値および反射率測定値に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。
【0079】
方法700は、712において、1つ以上の赤外線センサにより、ワークピースによって放出された赤外放射を示す放出放射測定値を測定することを含みうる。例えば、放出放射測定値は、ワークピースによって放出され、1つ以上のセンサに入射する赤外放射の強度を示すことができる。本開示の例示的な態様によれば、ワークピースの温度が十分に高くなって、ワークピースがエミッタからの赤外放射に対して透過性でなくなり、かつ/または1つ以上の赤外線センサにより測定されるように構成された波長において(例えば測定波長範囲の少なくとも一部の範囲内で)有意な黒体放射を放出し始めると、放出放射測定値を取得することができる。
【0080】
幾つかの実施形態では、放出放射測定値は、1つ以上の窓によって遮断される赤外放射の波長に対応しうる。例えば、放出放射測定値は、測定波長範囲の一部であり、かつ/またはその一部に含まれる波長に対応しうる。例えば、幾つかの実施形態では、放出放射測定値は、2.7マイクロメートルの波長を有する赤外放射の強度に対応しうる。
【0081】
方法700は、714において、放出放射測定値に少なくとも部分的に基づいて、ワークピースの温度を決定することを含みうる。714におけるワークピースの温度は、約600℃超でありうる。例えば、約600℃よりも高いワークピースの温度を決定することは、放出放射測定値をワークピースに関連付けられた黒体放射曲線と比較することを含みうる。黒体放射曲線は、測定された強度(例えば放出放射測定値)に基づいて温度を決定することができるように、放出された黒体放射の強度を温度に相関させることができる。
【0082】
方法700を実装するシステムは、ワークピースの温度が測定されうる温度範囲を増大させることができる。例えば、方法700は、透過部分および反射部分に少なくとも部分的に基づいて、放出放射測定値を実際に取得することができない温度(例えば約600℃未満)について、例えば、ステップ702~710に従ってワークピースの温度を決定することを含みうる。加えて、方法700は、放出放射測定値に少なくとも部分的に基づいて、放出放射測定値を実際に取得することができる温度(例えば約600℃超)について、例えば、ステップ712~714に従ってワークピースの温度を決定することを含みうる。
【0083】
図8は、例えば、
図1~3の熱処理システム100、200、または300などの熱処理システム内のセンサの基準強度を較正するための例示的な方法800のフローチャートを示している。
図8は、例示および説明のために特定の順序で実行されるステップを示している。当業者は、本明細書で提供される開示を使用して、本明細書で説明される方法のいずれかの種々のステップが、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の方法で、省略、拡張、同時に実行、再配置、および/または修正されうることを理解するであろう。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の追加のステップ(図示せず)を実行することができる。
【0084】
方法800は、802において、複数の赤外線エミッタのそれぞれのエミッタから第1の量の赤外放射を放出することを含みうる。方法800は、804において、複数の赤外線センサのそれぞれのセンサに入射する第2の量の赤外放射を決定することを含みうる。方法800は、806において、第1の量と第2の量との間の変動に少なくとも部分的に基づいて、それぞれのエミッタおよびそれぞれのセンサに関連付けられた基準強度を決定することを含みうる。
【0085】
本開示の例示的な態様によれば、本明細書においてI0として示される基準強度は、熱処理システム内の1つ以上のセンサの各々について決定することができる。基準強度は、ワークピースが処理チャンバ内に存在しない場合に、エミッタによって放出された放射および/またはセンサに入射する放射に対応しうる。換言すれば、基準強度は、熱処理システム内のワークピース以外の構成要素からの寄与によってのみ、エミッタが放出する放射の強度から減少させることができる。これは、ワークピースによる100%の透過率の場合にさらに対応しうる。幾つかの実施形態では、基準強度は、2つのワークピースの熱処理の間など、処理チャンバ内にワークピースを挿入する前に測定することができる。
【0086】
本主題を、その特定の例示的な実施形態に関して詳細に説明してきたが、当業者であれば、前述の内容を理解すると、こうした実施形態の変更形態、変形形態、および等価物を容易に生み出すことができることが理解されよう。したがって、本開示の範囲は、限定としてではなく例としてのものであり、本開示は、当業者に容易に明らかになるように、本主題に対するこうした修正、変形および/または追加の包含を排除するものではない。
【国際調査報告】