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特表2023-516631ディスバイオシスの防止および処置のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ディスバイオシスの防止および処置のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/63 20060101AFI20230413BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230413BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230413BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20230413BHJP
【FI】
A61K36/63
A61K8/41
A61K8/9789
A61K8/34
A61Q11/00
A61P17/00
A61P1/02
A61P15/02
A61P11/00
A61P37/08
A61P17/10
A61P17/16
A61P11/06
A61P43/00 121
A61P29/00
A61P35/00
A61P17/08
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552124
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2021054896
(87)【国際公開番号】W WO2021170834
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20382147.5
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520039238
【氏名又は名称】ムコサ イノバティオンズ,エセ エレ
【氏名又は名称原語表記】MUCOSA INNOVATIONS,S.L.
【住所又は居所原語表記】C/Araquil,11 28023 MADRID(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ビラボア,デボラ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA121
4C083AC441
4C083AC471
4C083AC711
4C083CC41
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE14
4C083EE23
4C083EE33
4C083EE34
4C088AB64
4C088AC04
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA04
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA59
4C088ZA67
4C088ZA81
4C088ZA90
4C088ZB11
4C088ZB13
4C088ZB26
4C088ZB35
4C088ZC52
4C088ZC75
(57)【要約】
本発明は、ディスバイオシスの防止および/または処置への使用のための組成物に関する。また、ディスバイオシスの防止および/または処置のための医薬を調製するための前記組成物の使用に関する。さらにその上、前記組成物がその必要がある対象に投与されるディスバイオシスを防止および/または処置する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ産物がオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである、ディスバイオシスの防止および/または処置への使用のためのオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物。
【請求項2】
ディスバイオシスが粘膜ディスバイオシスまたは皮膚ディスバイオシスである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
粘膜ディスバイオシスが口腔ディスバイオシスである、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
ディスバイオシスが皮膚ディスバイオシスである、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
粘膜ディスバイオシスが膣ディスバイオシスである、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
粘膜ディスバイオシスが肺ディスバイオシスである、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
口腔ディスバイオシスが、口臭ディスバイオシス、カリエスディスバイオシス、歯周ディスバイオシス、アフタ性のディスバイオシス、インプラント周囲炎ディスバイオシス、扁平苔癬ディスバイオシス、天疱瘡ディスバイオシス、睡眠時無呼吸ディスバイオシス、ストレスディスバイオシス、トゥースウェアディスバイオシス、糖尿口腔ディスバイオシス、癌口腔ディスバイオシス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
皮膚ディスバイオシスが、アトピー性皮膚炎ディスバイオシス、尋常性ざ瘡ディスバイオシス、乾癬ディスバイオシス、乾皮症ディスバイオシス、皮膚アレルギーディスバイオシス、放射線皮膚炎ディスバイオシス、日光皮膚炎ディスバイオシス、接触皮膚炎ディスバイオシス、脂漏性皮膚炎ディスバイオシス、頭皮ディスバイオシス、体の悪臭ディスバイオシス、早期皮膚老化ディスバイオシス、扁平苔癬ディスバイオシス、天疱瘡ディスバイオシス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
肺ディスバイオシスが、慢性肺ディスバイオシス、慢性閉塞性肺ディスバイオシス、嚢胞性線維症ディスバイオシス、喘息ディスバイオシス、気管炎ディスバイオシス、気管支炎ディスバイオシス、感染性呼吸器ディスバイオシスからなる群から選択される、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
オリーブ果実エキスがオリーブ果実乾燥エキスおよび/またはオリーブ果実抽出液である、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
オリーブ果実エキスが少なくとも20%w/wのヒドロキシチロソールを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
オリーブ油がエクストラバージンオリーブ油、バージンオリーブ油、またはそれらの組み合わせであり、より好ましくはオリーブ油がエクストラバージンオリーブ油である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
ベタインが、トリメチルグリシン、コカミドプロピルベタイン、ジメチルアミンベタイン、アルキル(C12-C18)アミドベタイン、アルキル(C-C18)ベタイン、アミドベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホヒドロキシベタイン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
ベタインがトリメチルグリシンである、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
組成物が0.05重量%~5.1重量%のオリーブ産物を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
組成物が0.05重量%~0.1重量%のオリーブ果実エキスおよび/または0.1重量%~5重量%のオリーブ油を含む、請求項15に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
組成物が0.1重量%~10重量%のベタインを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
組成物が1.0重量%~6重量%のベタイン、好ましくは1.2%~5%を含む、請求項17に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
組成物が1重量%~20重量%のキシリトールを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
組成物が1重量%~15重量%のキシリトールを含む、請求項19に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
組成物が、加えて、好ましくはヒドロキシチロソール、チロソール、オレウロペイン、およびそれらの混合物、好ましくはヒドロキシチロソール、チロソール、およびオレウロペイン、および/またはビタミンからなる群から選択される抗酸化剤を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
組成物が、フェイシャルおよび/もしくはボディモイスチャライザー、デオドラントクリーム、リジェネラティブバリアクリーム、ボディジェル、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアローション、スキンアンプル、トニック、カプセル、錠剤、スプレー、ジェル、潤滑ジェル、外陰部用外用ジェル、練り歯磨き、洗口液、チューインガム、チュアブル錠、舐め用のカプセル、舐め用のロゼンジ、口蓋シート、キャンディ、含浸口腔スワブ、含浸口腔用ガーゼ、リップスティック、バーム、鼻腔内吸入剤、鼻腔内スプレー、鼻腔内エアロゾル、鼻腔内ジェル、口腔咽頭用シロップ、口腔咽頭用ジェル、またはエアロゾルカプセルとして製剤される、請求項1~21のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
組成物がさらにプレバイオティクスおよび/またはプロバイオティクスを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
組成物がオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを唯一の活性成分として含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
ヒトの体の口腔または皮膚の衛生への使用のための、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
ヒトの体の粘膜または皮膚の自然な加湿を維持することへの使用のための、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
フケ症、脂漏性皮膚炎、慢性の炎症性病態、皮膚癌、口腔癌、および呼吸器感染からなる群から選択されるディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態の防止への使用のための、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
ディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態が、フケ症、脂漏性皮膚炎、慢性の炎症性病態、皮膚癌、口腔癌、および呼吸器感染からなる群から選択される、アジュバントとしてのディスバイオシスによって悪化する病態の処置への使用のための請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
呼吸器感染が感冒、Covid-19、および肺炎からなる群から選択される、請求項27または28に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバイオームならびに健康および疾患とのその関係の分野に関する。具体的には、ディスバイオシスの防止および処置への使用のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロバイオームおよび微生物叢は場合によっては類似の用語として用いられる。微生物叢は我々の体内または体表に生きる細菌、真菌、古細菌、ウイルス、および寄生虫によって構成される微生物のセットを意味し、マイクロバイオームは微生物のみならずそれらの遺伝子および代謝物ならびにそれらの生態系をもまた包含する全ハビタットを言う、より広い用語である。この目に見えない3Dアーキテクチャ構造は細胞外マトリックスに依拠し、これはバイオフィルムの物理化学的足場としての用をなし、本発明者らの見解では、ディスバイオシスの始まりおよび健康(ユーバイオシス)の回復の鍵である。この足場は化学的特性を有するのみならず、それは物理的にもまたこの小宇宙の形状に寄与し、環境からの侵害(とりわけ、湿気の変化、pHシフト、温度の揺れ、消毒薬、抗細菌薬、ストレス)からの防護を提供する。理想的には、それは細胞の活動にとっての必要物、つまり水、栄養素をもまた収納し、有害な因子の透過を制限するべきである。
【0003】
バイオフィルムは、3次元的に構造化された具体的な表面に付着した体の異なる部分に生きる特定の微生物叢およびその生態系として理解される。バイオフィルムの例は口腔、歯、皮膚、および膣バイオフィルムである。
【0004】
微生物叢は、分娩経路(膣または帝王切開)、母親のマイクロバイオーム、栄養の型、地理、習慣、心理、および生活様式に依存して、出産によって体内または体表に漸進的に定着化する。それは個々の個性を宿主に授け、宿主および微生物叢の間の双方向性の対話を確立し、逆もまた真である。生活様式、ストレス、教育、性格、年齢、地理、気候は微生物叢およびその生態系を変化させることが公知であり、同時に、微生物叢は、生態系を、それから究極的には個人を変化させ得る。薬、タバコ、ならびにアルコール、ストレス、創傷、口呼吸、睡眠時無呼吸、摂食障害、および他の全身性疾患、例えばとりわけ癌および糖尿は、口、肺、腸、膣、および皮膚などの異なる部位の体の粘膜のマイクロバイオームに負のインパクトを及ぼし、種々の重症度の新たに認識されたかつ新興のディスバイオシスの新興のポートフォリオに道を譲る。
【0005】
粘膜は、外部に至る体腔および管腔、主として呼吸器、消化器、および泌尿生殖器の膜の裏打ちである。これらは、とりわけ、口、鼻、瞼、気管、肺、胃、腸、尿管、尿道、膣、および異なる場所間のつながりを包含する。体の粘膜は全ての脈管および器官を裏打ちし、共通の組織学的特徴および粘液の分泌を共有し、これはバリアとして働き、異なる部位(乳頭、微絨毛など)に適応している。体中の皮膚もまた共通の組織学的特徴を見せ、場所(毛髪、汗腺など)に依存していくつかの適応上の特殊性を有するバリア機能をもまた有する。粘膜および皮膚は、最も大規模なマイクロバイオームハビタットであり、異なる部位をつなげるマイクロバイオームの不均衡またはディスバイオシスに対して最も易罹患性である。
【0006】
ディスバイオシスと一般的な健康との間の関係は、異なるマイクロバイオーム間のつながりを提唱する異なる学派を産み出したいくつかの研究によって記載され、今日では口-腸軸、口-肝臓軸、口-肺軸、口-腸-肝臓軸、口-脳軸、口-心血管軸、腸-肺軸、腸-皮膚軸、口-関節軸、口-乳部軸(Lira-Junior & Bostrom, 2018)、および本明細書において新たに記載される口-皮膚軸(下を見よ)として公知のものを創始している。
【0007】
口腔-肺軸について、炎症性メディエーターのソースとしての歯周炎ディスバイオシスは、肺疾患の悪化に関係づけられている(Paju & Scannapieco, 2007)。肺マイクロバイオームの役割、ならびに肺疾患の進行および重症度に対するそのインパクトについての増大して行く証拠が、肺炎、感冒、インフルエンザ、嚢胞性線維症、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの異なる群において研究されている。
【0008】
腸マイクロバイオーム不均衡に関連した皮膚の炎症性疾患による腸-皮膚軸の証拠は、これまでのところ、腸マイクロバイオームによって皮膚状態を改善するためのプロバイオティクスの潜在的利益の認識へと橋渡し研究されている(Atarashi, Wataru, & Chengwei, 2017)。移植措置は、健康な個人(ドナー)からのこの下位宇宙を病気の対象(受容体)に複製するための試みから最近になって現れ出た。類似に、いくつかの臨床医は、病原体S.アウレウスに対する抗生物質の代わりに、アトピー性皮膚炎の症状および臨床経過を改善するために健康な対象の皮膚微生物叢移植を提唱している。残念ながら、マイクロバイオーム移植治療はさらなる開発を必要とし、費用のかかるアプローチのように見え、これまでのところ、病院環境に残された実用上の適用をほとんど有さず、日常的な習慣になるには程遠く見える。
【0009】
これまでのところ、置換もしくは移植(プロバイオティクス科学)または除菌(抗生物質治療)の手段によってディスバイオシス的な有害性のマイクロバイオームを直すための試みは、不確実な安全性および有効性の問題を実証している。よって、ディスバイオシスの防止および処置のための改善された治療の必要が依然としてある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Atarashi, K., Wataru, S., & Chengwei, L. (2017). Ectopic colonization of oral bacteria in the intestine drives TH1cell induction and inflammation. Science, 358(6361), 359-365. doi:10.1126/science.aan4526
【非特許文献2】Dawes, C. (2003). What is the critical pH and Why does a tooth dissolve in acid? J Can Dent Assoc, 69(11), 722-724.
【非特許文献3】Hezel, M., & Weitzberg, E. (2015). The oral microbiome and nitric oxide homeostasis. Oral Diseases, 21(7).
【非特許文献4】Lee, Y. B., Byun, E. J., & Kim, H. S. (2019). Potential Role of the Microbiome in Acne: A Comprenhensive Review. Journal of Clinical Medicine, 987.
【非特許文献5】Lira-Junior, R., & Bostrom, E. (2018). Oral-gut connection: one step closer to an integrated view of the gastrointestinal tract? Mucosa Immunology, 11(2), 316-318. doi:10.1038/mi.2017.116
【非特許文献6】Lussi, A., & Carvalho, T. (2015). The future of fluorides. Caries Res, 49, 18-29. doi:10.1159/000380886
【非特許文献7】Paju, S., & Scannapieco, F. (2007). Oral biofims, periodontitis, and pulmonary infections. Oral Dis, 13(6), 508-512. doi:10.1111/j.1601-0825.2007.1410a.x
【非特許文献8】Segata, N., Kinder Haake, S., & Mannon, P. (2012). Composition of the adult digestive tract bacterial microbiome based on seven mouth surfaces, tonsils, throat and stool samples. Genome Biology, 13, R42.
【非特許文献9】Sudhakara, P., Gupta, A., & Bhardwaj, A. (2018). Oral dysbiotic communities and their implications in systemic diseases. Dent. J, 6(16). doi:10.3390/dj6020010
【非特許文献10】Szanto, M., Dozsa, A., & Antal, D. (2019). Targeting the gut-skin axis-Probiotics as new tools for skin disorder management? Experimental Dermatology, 1210-1218.
【非特許文献11】Van Dyke, T. (2017). Pro-resolving Mediators in the Regulation of Periodontal Disease. Mol Aspect Med, 58, 21-36. doi:10.1016/j.mam.2017.04.006
【非特許文献12】Vaughn, A. R., Notay, M., Clark, A. K., & Sivamani, R. K. (2017). Skin-gut axis: The relationshio between intestinal bacteria and skin health. World Journal of Dermatology, 52-58.
【非特許文献13】Wallen-Russell, C. (2019). The role of every-day cosmetics in altering the skin microbiome: A study using biodiversity. Cosmetics, 6(2). doi:10.3990/cosmetics6010002
【非特許文献14】Yang, H., Wang, W., & Romano, K. (2018). A common antimicrobial additive increases colonic inflammation and colitil-associated colon tumorigenesis in mice. Sci Transl Med. doi:10.1126/scitransmed.aan4116
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、ディスバイオシスの防止および/または処置への使用のためのオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物に関し、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。
【0012】
本発明の第2の態様は、ディスバイオシスの防止および/または処置のための医薬の調製のためのオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物の使用に関し、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。
【0013】
本発明の第3の態様は、その必要がある対象におけるディスバイオシスを処置する方法に関し、オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む治療上有効量の組成物を投与することを含み、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。
【0014】
本発明の第4の態様は、対象におけるディスバイオシスを防止する方法に関し、これはオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む予防上有効量の組成物を対象に投与することを含み、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。
【0015】
本発明の第5の態様は、口腔、鼻腔、膣、および/または皮膚の衛生のためのオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物の使用に、ならびにヒトの体の粘膜および/または皮膚の自然な加湿を維持するための使用に関し、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。
【0016】
本願の他の目的、特徴、利点、および態様は、次の記載および添付の請求項から当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】皮膚および粘膜の間の類似性および平行性を強調する皮膚および粘膜(口腔粘膜)構造の模式的な図面。
図2】ユーバイオシスおよびディスバイオシスのマイクロバイオーム動態モデル。生態系は、共生(健康)を促進しおよびディスバイオシス(疾患)を防止するためのマイクロバイオームの自己修復的なサイクルの一部であるが、ディスバイオシスを永久化するためのマイクロバイオームの悪循環の役者でもまたある。
図3】本発明の組成物によるマイクロバイオーム動態。本発明の組成物は生態系のレジリエンスを増強し、健康な環境および微生物叢均衡ならびにユーバイオシスを促進する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
文脈が明確に別様に指示しない限り、本明細書において用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は、それらの対応する複数形を包含する。別様に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の業者によって普通に理解される同じ意味を有する。本発明の文脈における特定の用語の理解を助長および意味を明確化するために、本発明の異なる態様の全ての実施形態に適用可能な次の定義およびそれらの具体的なかつ好ましい実施形態が提供される。
【0019】
本明細書において用いられる「マイクロバイオーム」は、ヒトの体内および体表に持続的におよび一過的に生きる両方の微生物、ならびにそれらの遺伝学的内容を言い、真核生物、古細菌、細菌、およびウイルス(細菌ウイルス(すなわちファージ)を包含する)を包含する。「遺伝学的内容」は、ゲノムDNA、RNA、例えばリボソームRNA、エピゲノム、プラスミド、および全ての他の型の遺伝情報を包含する。健康なマイクロバイオームは、病原体の幅広いスペクトルに対する定着抵抗性、必須栄養素生合成および吸収、ならびに健康な上皮および適当にコントロールされた全身免疫を維持する免疫刺激を包含する複数の利益を宿主に提供する。マイクロバイオームは、健康な個人および疾患を被ったものにおいてキャラクタリゼーションされ得る。健康な個人では、マイクロバイオームは正常として定義される。
【0020】
ユーバイオシスとは正反対に、ディスバイオシスは、微生物叢のシフトまたはマイクロバイオームの生態系の変化どちらかを原因とするマイクロバイオーム内の均衡の損失の結果として起こる。
【0021】
「ディスバイオシス」は、生態学的ネットワークの正常な多様性または機能が遮断されている粘膜および皮膚表面を包含する体のいずれかのエリアのマイクロバイオームの状態を言う。それゆえに、具体的な実施形態では、ディスバイオシスは粘膜ディスバイオシス、皮膚ディスバイオシス、またはそれらの組み合わせである。かかるディスバイオシスが健康の検出可能な減少をもたらさない場合でさえも、微生物叢の好ましい(例えば、理想的な、正常な)状態からのいずれかの遮断はディスバイオシスと考えられ得る。ディスバイオシスのこの状態は不健康であり得るか、それはある種の条件下でのみ不健康であり得るか、またはそれは対象がより健康になることを防止し得る。ディスバイオシスは同時に疾患の原因または帰結であり得、疾患の経過を助長および/または重症化させ得る。ディスバイオシスは、多様性の減少、1つもしくはより多くの病原体もしくはパソビオントの過度の成長、ある種の遺伝学的もしくは環境的条件が患者に存在するときにのみ疾患を引き起こすことができる共生生物、または有益な機能をもはや宿主に提供せず、よってもはや健康を促進しない生態学的ネットワークへのシフトを原因とし得る。ディスバイオシスは、病気(糖尿、癌、感染、肥満、抑うつ)、作用物質(例えば、抗生物質、例えば常在フローラを縮減する抗生物質)による処置(例えば乱用)、または他の環境因子(pH変化、炎症、食事、薬)によって誘導され得る。
【0022】
「ディスバイオシス」または遮断された共生の状況においては、マイクロバイオーム機能は失われるかまたは混乱し、病原体に対する増大した易罹患性、変調した代謝プロファイル、または局所性のもしくは全身性の炎症もしくは自己免疫をもたらし得る炎症誘発性シグナルの誘導をもたらし得る。
【0023】
本発明の態様のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、ディスバイオシスは、粘膜ディスバイオシス、皮膚ディスバイオシス、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0024】
本発明の態様のいずれか1つに従う別の具体的な実施形態では、ディスバイオシスは口腔ディスバイオシス、肺ディスバイオシス、皮膚ディスバイオシス、および/または膣ディスバイオシスから選択される。
【0025】
「口腔ディスバイオシス」は、対象の口腔粘膜および/または歯の一部または全てを冒すディスバイオシスを言う。
【0026】
「皮膚ディスバイオシス」は、対象の一部のまたは全ての皮膚を冒すディスバイオシスを言う。
【0027】
「膣ディスバイオシス」は膣症を言う。
【0028】
「肺ディスバイオシス」は、肺および/またはその近辺(例えば気管)の粘膜の全てまたは一部を冒すディスバイオシスを言う。
【0029】
用語「防止する」または「防止」は、疾患ならびに/または疾患に関連する徴候および/もしくは症状の重症度を防止、遅延、および/または縮減することを意味する。
【0030】
「予防上有効量」は、送達されるときに、疾患ならびに/または疾患に関連する徴候および/もしくは症状の重症度を防止、遅延、および/または縮減する量を言う。
【0031】
「処置」は、疾患ならびに/または疾患に関連する徴候および/もしくは症状の縮減または消失を言う。
【0032】
「治療上有効量」は、疾患ならびに/または疾患に関連する徴候および/もしくは症状を縮減または消失させるために有効である量を言う。
【0033】
具体的には、本発明において、疾患は、ディスバイオシス、またはディスバイオシスによって助長されるかもしくは悪化する病態である。
【0034】
ヒト口腔マイクロバイオームデータベース(HOMD)は、ほぼ620のタクソンに達する口腔タクソンおよび門、株を記載している。これらのうち、65%がこれまでのところ培養されているが、体の他の部位では、かろうじて1%が培養されている。ファーミキューテス、バクテロイデテス、プロテオバクテリア、アクチノバクテリア、スピロヘータ門、およびフソバクテリアが95%に該当する。皮膚では、4つの支配的な門はアクチノバクテリア、プロテオバクテリア、ファーミキューテス、およびバクテロイデテスである。皮膚および口腔は両方とも異なる微小環境に関係した多様な地形学的集団を見せる。口では、歯の口蓋および舌側面は、体の重層部および下部の部分の皮膚におけるより高い多様性を有する門に対する体の上部の部分の脂性の環境との平行性によって、歯肉縁下またはバッカルまたは舌に異なる門を呼ぶ。皮膚および口腔は両方とも前に言われた通り環境によって決定づけられる高い地形学的多様性を有し、個人において高い時間的な変動性を有するが、個人あたり一生に渡ってかなり安定である。近年に多くの研究者によって注目された存在量は、今日では疾患の相対的なマーカーとのみ見なされる。なぜなら、全ての個人は、皮膚について話せばスタフィロコッカス、プロピオニバクテリウム、およびコリネバクテリウムを、口のことになるとストレプトコッカス・ミュータンスおよびポルフィロモナス・ジンジバリスを示すであろうからである。現行の研究は、皮膚(ストレプトコッカス・エピデルミディス)または口(ストレプトコッカス・ミュータンス)どちらかの生息ファーミキューテス門に圧力をかけることが、スタフィロコッカスの門の別のファーミキューテスが炎症性の状態を利用して皮膚を透過することを実現可能にするということを支持する。口では、ストレプトコッカス・ミュータンス集団を減少させる抗カリエス薬剤によって課されるシフトは、これらの細菌からの酸性の代謝物の減少に至り、pHの増大を増強するであろう。これは、歯周炎に至る嫌気性の歯肉縁下グラム陰性細菌を意味するより高いpHおよびより低い酸素勾配を好む糖非分解性細菌によって用いられるであろう。歯周炎は、口腔潰瘍化の後に2番目に普通の口腔粘膜疾患であることが報告されている普通の慢性自己免疫皮膚粘膜疾患の口腔扁平苔癬(OLP)を有する患者の皮膚において、普通にスタフィロコッカス透過に関連する。OLP患者の20から35パーセントは皮膚、頭皮、および/または膣にもまた病変を有する。
【0035】
口腔の最も普通の微生物叢はストレプトコッカス、ラクトバチルス、およびプレボテラである。誤嚥リスクがある肺炎を有する患者の呼吸器細菌分析は、口腔のストレプトコッカスが、気管支および肺両方において検出される最も普通の細菌門であるということを示した。
【0036】
均衡した非炎症性の健康な状態においては、マイクロバイオームおよびヒト細胞が両組織の全延長に渡って異なるコンパートメントにあるという意味で、皮膚および粘膜は両方ともバリア様の特性を見せる。共生的な二元的な宿主-微生物相互作用のためには、微生物叢および宿主上皮細胞の間の極小の分離が必要とされる。創傷または炎症性状態において見られるもののように、皮膚または粘膜が遮断されるときには、メカニズムは宿主およびマイクロバイオームの間の変調した関係に至り、ディスバイオシス的な炎症性疾患の世界のみならず、ついには発癌にもまた至る。今日では、口腔の研究は、口腔ディスバイオシスおよびディスバイオシス的なバイオフィルムがカリエスおよび歯周炎のような普通の高度に優勢な疾患の背後にあるという所見と整合する。本研究実施者の見解では、歯は、共生による限り、攻撃からそれらを防護するそれら自身のマイクロバイオームを有する。同時に、歯それら自体は、健康なときには、それらが萌出の間に口腔粘膜を貫通する瞬間から上顎骨に対するバリアである。バリア機能はヒトの生存にとって必須であるので、ついに歯が失われるときには、粘膜がそれに取って代わり、ギャップを埋める。皮膚および粘膜について前に言われた通り、歯およびそのマイクロバイオームは両方とも互いに物理化学的に付着した異なるコンパートメントにあり、両方のコンパートメントのインテグリティが健康およびバリア機能にとって必須である。例えば両方のコンパートメントの分離およびインテグリティが失われるか、遮断されるか、または消滅するゆえに、マイクロバイオームが損害されるときには、宿主およびマイクロバイオームの間の新たなディスバイオシス的な関係が、共生的でない炎症性状態(歯周炎ディスバイオシス)または/および増大した歯透過性(過敏性、脱灰、および歯構造の損失)に至る。このマイクロバイオームが失われるか、遮断されるか、または損害されるときには、歯のバリアが失われる。過敏性、脱灰、カリエス、および物理的、化学的、または混合的な起源(歯ぎしり、酸蝕、アブフラクション、咬耗)どちらかのトゥースウェアが起こる。遮断されたマイクロバイオームバリアは親油性のシールドとして作用することを止め、歯は酸性のまたは極度に酸性の媒体に溶解し始める。あらゆる口は異なる。歯のミネラル内容およびエナメルの厚さもまた個人間で様々である。唾液の流れおよび唾液のミネラル飽和のような他の変数は、全部で、なぜいくつかの歯が他よりも良い抵抗力があるであろうかを説明し、これを臨界pHと呼ぶ(Dawes, 2003)。インビトロの条件は、生きている微生物およびそれらの生態系を無視している。これらも、ヒトの歯が溶解することを止め、防止するミネラル、水、ペプチド、および所有する代謝の大きな貯蔵器であり得る。この理論は、歯垢がない場合には、唾液を刺激することさえもミネラル蓄積を促進することができないであろうという事実によって支持される。本発明者らの見解では、ディスバイオシス的なマイクロバイオームは、いくつかの著者が検討し始めているように唾液を刺激することによってまたはミネラルもしくは再石灰化剤を補給することによって歯を再石灰化するための努力を不毛にする(Lussi & Carvalho, The future of fluorides, 2015)。歯が物理的にこすられ、すり減るときには、当初には隠れた象牙質が現れ出るので、ハビタットは変化させられ、変調した支持をマイクロバイオームに提供する。
【0037】
トゥースウェアおよび歯構造損失が多いほど、付着するためのより平坦なかつ変調した歯表面を見出す口腔微生物叢に対する攻撃は大々的である。トゥースウェアの進んだケースでは、隣接歯間エリアが全ての咬合表面の消滅に後続し、特定の微生物叢ハビタットの損失を有する。最後に、咀嚼が障害され、本発明者らによって記載されるディスバイオシスの悪循環の例の、歯のさらなる損失によるより柔らかい食事およびより深刻な口腔ディスバイオシスへのシフトを有する。
【0038】
殺生物剤、消毒剤、化学的または物理的デブリードマンの手段による歯垢または歯のバイオフィルムのいずれかの形態に対する戦いは、歯肉炎または歯周炎のような歯周状態および早期歯損失の背後のカリエスを除菌することにおいて有効だとは判明していない。歯科インプラントによって処置された患者の増大して行く数は、インプラント周囲炎と呼ばれる新たな状態を生起させた。角化していない歯肉の部位に置かれた厚い粘膜バリアを欠くインプラントは、抗生物質では防止も処置もされ得ない特定のインプラント周囲炎ディスバイオシスの潜在力を見せる。補綴物または歯科修復を装着している患者、および歯科矯正処置中の患者の急速に成長して行く群もまた、人工の材料によって課されるハビタットの変化の不均衡なマイクロバイオームの帰結の結果として口腔ディスバイオシスを患い得る。
【0039】
口腔だけでなく、皮膚は、異なる皮膚の型および部位について特定の微生物叢を有する大規模なマイクロバイオームの住処である。皮膚は粘膜のように高い落屑および細胞リノベーション率を見せる。脂性のまたは水性の分泌の度に依存して、我々は皮膚の3つの異なる型を見出し得る:
-脂性のエリアは、頭皮、額、背中、耳介後の皺、および鼻翼の皺を包含する。
-湿潤なエリアは、腋窩、鼠蹊部の皺、臀部の皺、足の裏、膝窩、および肘窩を包含する。
-乾燥したエリアは前腕、尻、および手の種々の部分を包含する。
【0040】
異なるグレードの炎症および潰瘍化は皮膚疾患の最も普通の徴候である。皮膚が健康なステータスを失うときには、それは障害されたバリア機能、ひび割れ、および紅化と共に出現する。
【0041】
皮膚に対する日常的な攻撃のうち、石鹸およびクリームからのアルコールおよび洗浄剤は、他のメカニズムの中でも脂質の除去によって表皮バリアのインテグリティを破損し得る。これはいくつかの有害な細菌(スタフィロコッカス・アウレウス)の定着を助長する。これはアトピー性皮膚炎に当てはまる。これにおいては、皮膚炎の炎症の間に、細菌定着が、健康な皮膚と相容れない低い多様性の生物種へのシフトを惹起する。類似の状況が乾癬に適用される。
【0042】
いくつかの医学的状態、例えば慢性の炎症性状態および癌と粘膜および皮膚マイクロバイオーム両方との間にはつながりがある。糖尿II型のような慢性の炎症性状態では、口腔および皮膚マイクロバイオームはこの複雑な代謝状態の病理および経過に関わるのみならず、糖尿は口腔、皮膚、および腸マイクロバイオームの環境を変化させ、糖尿ディスバイオシスの確立の増大して行く証拠を有する。糖尿口腔ディスバイオシスはより高いカリエスリスク、より高い歯周炎有病率および重症度を経過し、糖尿皮膚ディスバイオシスは足の潰瘍化、逓減した皮膚弾力、減少した脂腺活性、およびより少ない脂質のマントを経過する。
【0043】
その上、皮膚および口腔マイクロバイオームは、メラノーマおよび口腔癌に至る発癌性の変化に関連付けられている。天秤の他の側において、癌ディスバイオシスは癌と生きる結果として起こる。この癌ディスバイオシスは、低い罹患率だがクオリティ・オブ・ライフに対する高い負のインパクトを有する徴候および症状のコホートを再結成する。癌口腔ディスバイオシスは、とりわけ口のヒリヒリ、味覚障害(変調した風味)、高い破折率、高いカリエス率、口角びらん症(口角の亀裂)、口の痛み、およびさらには摂食の障害の1つ、いくつか、または全てを経過するかまたは特徴とし、皮膚において驚くべき類似性を有する。癌皮膚ディスバイオシスは、とりわけ皮膚のヒリヒリ、変調した触知、高い亀裂率、爪囲炎、痛み、ならびに体の遠位部分、主に手および足の皮膚だが背中、脚、および胴体の皮膚にもまた関係する機能的障害の1つ、いくつか、または全てを経過するかまたは特徴とする。
【0044】
口腔粘膜は、体のいずれかの粘膜のように、多くの点で皮膚に類似である。口腔粘膜は2つの別個の層:重層扁平上皮および粘膜固有層からなる。口腔のいくつかの所において、口腔粘膜は緩い結合組織コンポーネントの粘膜下層によって基礎の構造に付着している。これらの3つの層は皮膚の表皮、真皮、および皮下組織層と相似である(図1を見よ)。事実、扁平苔癬および天疱瘡などの病態は皮膚および口腔粘膜両方に影響する。それゆえに、本発明では、それらは口腔ディスバイオシスおよび皮膚ディスバイオシス両方の実施形態である。
【0045】
肺ディスバイオシスは肺マイクロバイオームの遮断に後続し、これはホメオスタシスを失い、ディスバイオシスを始める。肺ディスバイオシスの最も普通のイニシエーターは、とりわけ脱水、酸素療法による乾燥、温度の変化、pH変化、タバコ、タバコ代替品(ベイピング)、生活様式習慣、アルコール、食事、汚染、放射線、酸素勾配、薬の摂取、疾患、例えば癌、感染および糖尿、肥満、および老化などの環境変化である。興味深いことに、体内の異なる微小環境のマイクロバイオームの多様性および特異性の減少が高齢集団において見出され、生物種の豊富さの損失に関連する老化における増大した脆弱性を説明する。
【0046】
肺ディスバイオシスは、減少した多様性を有する微生物叢に遭遇する細菌、ウイルス、または真菌の粘膜透過の帰結としてもまた起こり得る。例えば、マイクロバイオームの変化が肺炎の発生の原因または帰結であるのか、または単に疾患ステータスと併存もしくは関連するのかどうかは、論議を呼ぶ疑問のままである。しかしながら、本研究実施者の見解では、本発明のユーバイオシスおよびディスバイオシスのマイクロバイオーム動態モデルとして記載されるマイクロバイオームの悪循環と疾患におけるディスバイオシスおよびディスバイオシスにおける疾患の永久化とは、なぜ肺の健康が宿主およびマイクロバイオームの間の複雑な相互作用のアウトカムであるかを説明する。
【0047】
全ての上のことを心に留めて、本発明のいずれかの態様の具体的な実施形態では、「口腔ディスバイオシス」は、口臭ディスバイオシス、カリエスディスバイオシス、歯周ディスバイオシス、アフタ性のディスバイオシス、インプラント周囲炎ディスバイオシス、扁平苔癬ディスバイオシス、天疱瘡ディスバイオシス、睡眠時無呼吸ディスバイオシス、ストレスディスバイオシス、トゥースウェアディスバイオシス、糖尿口腔ディスバイオシス、癌口腔ディスバイオシス、およびそれらの組み合わせを包含するが、これらに限定されない。好ましくは、口腔ディスバイオシスは、カリエスディスバイオシス、トゥースウェアディスバイオシス、歯周ディスバイオシス、アフタ性のディスバイオシス、インプラント周囲炎ディスバイオシス、睡眠時無呼吸ディスバイオシス、糖尿口腔ディスバイオシス、癌口腔ディスバイオシス、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0048】
同様に、本発明のいずれかの態様の具体的な実施形態では、「皮膚ディスバイオシス」は、アトピー性皮膚炎ディスバイオシス、尋常性ざ瘡ディスバイオシス、乾癬ディスバイオシス、乾皮症ディスバイオシス、皮膚アレルギーディスバイオシス、放射線皮膚炎ディスバイオシス、日光皮膚炎ディスバイオシス、接触皮膚炎ディスバイオシス、脂漏性皮膚炎ディスバイオシス、頭皮ディスバイオシス(フケ症、脱毛症)、体の悪臭ディスバイオシス(脇の下、足)、早期皮膚老化ディスバイオシス、扁平苔癬ディスバイオシス、天疱瘡ディスバイオシス、およびそれらの組み合わせを包含するが、これらに限定されない。好ましくは、皮膚ディスバイオシスは、アトピー性皮膚炎ディスバイオシス、尋常性ざ瘡ディスバイオシス、乾癬ディスバイオシス、乾皮症ディスバイオシス、体の悪臭ディスバイオシス、早期皮膚老化ディスバイオシス、頭皮ディスバイオシス、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0049】
本発明のいずれかの態様の具体的な実施形態において、「肺ディスバイオシス」は慢性肺ディスバイオシス、慢性閉塞性肺ディスバイオシス(COPD)、嚢胞性線維症ディスバイオシス、喘息ディスバイオシス、気管炎ディスバイオシス、気管支炎ディスバイオシス、および呼吸器感染性ディスバイオシスを包含するが、これらに限定されない。
【0050】
具体的な実施形態では、呼吸器感染は、細菌定着(例えばストレプトコッカス)、ウイルス定着(例えばインフルエンザ、パラインフルエンザ、コロナウイルス、コロナウイルスSARS-CoV-2、呼吸器合胞体ウイルス)、または真菌定着(例えばカンジダ、ニューモシスチス)を原因とする下気道感染である。より具体的には、呼吸器感染は、感冒、肺炎、インフルエンザ、およびコロナウイルスSARS-CoV-2疾患(Covid-19)からなる群から選択される。それゆえに、本発明に従う具体的な実施形態では、肺ディスバイオシスは感冒ディスバイオシス、肺炎ディスバイオシス、インフルエンザディスバイオシス、またはコロナウイルスSARS-CoV-2ディスバイオシスである。
【0051】
本発明の具体的な実施形態では、口腔ディスバイオシスが、臨床パラメータ(徴候および症状)、例えば:歯間ブラッシングによる歯茎出血、歯の敏感さ、炎症した歯茎または炎症した乳頭の存在、ディスバイオシスに関連する悪臭、歯の変色、トゥースウェア(酸蝕、咬耗、歯ぎしり)および/またはカリエス、粘膜落屑、粘膜脱水、潰瘍化、アフタ性潰瘍、痛み、味覚障害(味の変化または不在)、弾力の欠如、インプラント周囲炎によって評価される。同様に、皮膚ディスバイオシスが、臨床パラメータ、例えば:皮膚の乾燥、かゆみ、発赤、落屑、潰瘍化、痛み、出血、弾力の欠如、触知の敏感さの欠如(変調したまたは不在の触知)、太陽暴露後の水疱または水ぶくれによって評価される。
【0052】
本発明の別の具体的な実施形態では、肺ディスバイオシスが、臨床パラメータ、例えば痰、鼻漏、うっ血、結膜炎、頭痛、筋肉痛、鈍痛および痛み、咳、乾燥、喉のヒリヒリ、荒れ、嗄声、味覚障害-味覚喪失、無臭覚、障害された酸素化レベル、胸の痛みもしくは圧迫感、息切れ、呼吸困難、または/および発熱によって評価される。
【0053】
複雑なCovid-19は未だにその起源およびその処置両方において未知の実体である。しかしながら、疾患の経過における変調したマイクロバイオームの役割の増大して行く証拠は、防止および処置両方にとっての新たな視点をオファーする。健康な対象と比較してCovid-19患者における細菌多様性に見出される減少は、上気道および腸マイクロバイオームの平行したかつ同時の再確立が軽症のCovid-19患者のほとんどにおいて生ずるという事実と一緒になって、肺を超えて影響するコロナウイルス疾患に関連するディスバイオシスの理論を支持する。さらにその上、老化に内在する年輩の個人のマイクロバイオーム環境のほとんどにおける減少した多様性は、Covid-19の急速に重症の進行と高率の致命的なアウトカムとをついに説明し得る。本研究実施者の見解では、コロナウイルスディスバイオシスはマイクロバイオームの遮断を利用し、これは肺の粘膜から消化系のような他の粘膜だが皮膚にもまた不法侵入し、口-肺-腸-皮膚軸の具体例である。事実、コロナウイルスディスバイオシスに関連する症状および徴候は、口、肺および上気道、消化系、ならびに皮膚に出現し、症状および徴候のリストは継続的にアップデートされている。いずれにせよ、本発明において、Covid-19ディスバイオシスは肺ディスバイオシスの具体的な実施形態と考えられる。なぜなら、それは元々呼吸器感染として記載されたからである。
【0054】
前に挙げられた順序に留意すると、コロナウイルスディスバイオシスの徴候および症状は、口では、粘膜の乾燥(ドライマウス)、味の損失または不在(味覚障害または味覚喪失)、小水疱型病変、アフタ様の病変、臭いの損失または不在(無臭覚)、上気道および肺では、呼吸器粘膜の乾燥(空咳)、音声変調、喉のヒリヒリ、呼吸困難、ならびに息切れ、腸では、下痢、皮膚では、皮膚発疹、手指および足指の変色である。
【0055】
第1の態様では、本発明は、ディスバイオシスの防止および/または処置への使用のための、オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物(これ以降では本発明の組成物と言われる)に関する。例7に照らして、それは、ディスバイオシスの防止および/または処置へのアジュバントとしての使用のための本発明の組成物にもまた関する。
【0056】
オリーブ産物、例えばオリーブ油、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物は、他の無関係な使用についてだが、従来技術において既に公知である。例えばEP2119477A1およびWO2019/025366A1を見よ。具体的には、EP2119477の組成物は口腔乾燥症の処置に用いられ得る。従来技術の何事も、適切な唾液機能がディスバイオシスが起こることを防止するであろうということも、口腔乾燥症を持たない患者がディスバイオシスリスクを持たないであろうということも示唆してはいない。十分な唾液産生はユーバイオシスの保証ではない。さもなければ、カリエス、歯周炎、および他の口腔ディスバイオシスは正常な唾液の流れによって防止されるであろう。事実、歯周炎である最も優勢な口腔ディスバイオシスにおける唾液の流れの防止作用については何事も書かれていない。逆もまた真であり、口腔乾燥症を有する患者は歯周炎のより高いリスクを見せない。類似に、摂食障害または胃食道逆流症を患う患者は、唾液の補償的な溢出を経験するが、それでも、第1に歯の舌側面、第2に咬合表面(咀嚼表面)、および最後にバッカルの歯のバイオフィルムの遮断からなる容易に認識されるトゥースウェア口腔ディスバイオシスを患う。歯はついに全ての親油性の内容を欠乏し、この歯バイオフィルムが果たすべきバリア効果を緩め、歯を破壊する。これはいずれかの種類のマウスピースの手段によって救済され得ない。
【0057】
WO2019/025366A1の組成物は、化学および/または放射線療法どちらかによる処置を受けている癌患者にとって生命を脅かす状態のオンコロジー処置によって誘導される口腔消化管粘膜炎(OTIOM)の処置のために用いられ得る。このOTIOMは、それが自己限定的であり、それが皮膚にも歯にも影響せず、それがいずれかの起源のマイクロバイオームにも病原体にも関連付けられないという意味で、口腔および皮膚ディスバイオシスとは異なる。それは口腔消化管粘膜の毒性の急性の遮断であり、これは癌治療の単一の最も恐れられる併発症であり、これは抗生物質によって、プロバイオティクスでもプレバイオティクスでも処置されない。事実、プロバイオティクスは敗血症の高いリスクからOTIOMの間には絶対禁忌である。
【0058】
興味深いことに、例に示される通り、それはディスバイオシスの防止および/または処置にとって有用であるので、オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む本発明の組成物は、新たな医学的使用を有する。驚くべきことに、オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物は、前記成分の1つのみまたはオリーブ産物およびベタインの組み合わせを含む組成物と比べて予想外の相乗効果を示す(例1、3、4、および8を見よ)。その上、異なる例は、粘膜ディスバイオシスおよび皮膚ディスバイオシス両方の処置および/または防止にとっての本発明の組成物の有用性を示す。
【0059】
ディスバイオシスの具体的なかつ好ましい実施形態は上に記載されたものであり、本発明の全ての態様に適用可能である。
【0060】
本発明の第1の態様に従う具体的な実施形態では、オリーブ産物はオリーブ油、オリーブ果実エキス、およびそれらの混合物から選択される。オリーブ果実エキスはオリーブ果実抽出液(オリーブ果実液エキスとしてもまた公知)、オリーブ果実乾燥エキス(オリーブ果実乾燥粉末エキスとしてもまた公知)、またはそれらの混合物であり得る。好ましくは、オリーブ果実エキスはオリーブ果実抽出液およびオリーブ果実乾燥エキスである。
【0061】
オリーブ果実エキスは当業者には公知であり、市販で入手可能である。同様に、オリーブ果実からの抽出の方法は周知である。前記方法の例はWO2008142178A1およびES2051238A1に開示されている。具体的な実施形態では、オリーブ果実エキスはヒドロキシチロソールに富むオリーブ果実エキスである。より具体的には、オリーブ果実エキスは少なくとも20%(w/w)のヒドロキシチロソールを含む。これらのエキスの例は、とりわけNutexa IncおよびNatacによって入手可能である。
【0062】
好ましくは、オリーブ産物はオリーブ油である。より好ましくは、オリーブ油は、エクストラバージンオリーブ油、バージンオリーブ油からなる群から選択される。さらにより好ましくは、オリーブ油はエクストラバージンオリーブ油(EVOO)であり、これは、例に示される通り、ディスバイオシスを処置および防止することにおいて傑出した効果を有する。
【0063】
ベタインは、その剤形のいずれかにおいて、水溶液または粉末どちらかとして用いられ得る。先行する実施形態のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、ベタインは、トリメチルグリシン(TMG)、コカミドプロピルベタイン、ジメチルアミンベタイン、アルキル(C12-C18)アミドベタイン、アルキル(C-C18)ベタイン、アミドベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホヒドロキシベタイン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、ベタインはトリメチルグリシンであり、これは、例に示される通り、ディスバイオシスを処置および防止することにおいて傑出した効果を有する。より好ましくは、トリメチルグリシンは粘膜および皮膚のための製剤のために選ばれる。
【0064】
オリーブ油はその抗細菌、抗真菌、抗ウイルス特性から防腐剤として食品産業において用いられる。それは刺激性だと公表されており、辛味と、さらにはアトピー性皮膚炎ありのまたはなしの対象における皮膚への外用での適用後の増大した経表皮水分蒸散量(TEWL)の手段による角質インテグリティに対するバリア遮断効果とを有する。皮膚では、オリーブ油は、接触皮膚炎を引き起こすことと、抗炎症的な利益だが刺激性の副作用をもまた有し、バリア遮断の帰結を有することとが主張されている。その消毒活性から洗口液に普通に用いられるベタインは、2週に渡って用いられるときにはバイオフィルムの健康な均衡を撹乱するリスクを有する。
【0065】
キシリトールは周知の抗発癌性成分であり、消費者にますます普通に導入されている。キシリトールは、特にそれだけで再石灰化剤として用いられるときに抗ストレプトコッカス活性を立証している。しかしながら、rRNA遺伝子シーケンシングを用いる最新の計算科学から利する最近の研究は、口腔微生物叢の組成に対するキシリトールのインパクトを検討し、キシリトールまたはソルビトールどちらかの使用後に、先に立証されたカリエスに関連するまたはカリエス防護性の生物種についても証拠を示していない。これはキシリトールの歯科的な利益についての新たな1つの論争である。興味深いことに、口腔衛生組成物に包含されるときには、それが再石灰化潜在力を有する他のミネラルおよび塩を伴う場合には、キシリトールの抗プラーク効果の証明された減少が見出されている。高いパーセンテージでまたは長時間に渡って経口的に消費されるときのヒトにとってのキシリトールの可能な有益な効果にもかかわらず(動物にとっては高度に毒性)、後続する消化の変調(腫れ、下痢)は、望ましくない腸マイクロバイオーム不均衡のマーカーであり得、これは摂取の中止によってホメオスタシスに戻る(Storey, Lee, & Bornet, 2007)。皮膚ディスバイオシスおよび/または膣ディスバイオシス(膣症)では、高い濃度のキシリトールも望ましくない。なぜなら、それはバチルス(ラクトバチルス)およびストレプトコッカスおよびスタフィロコッカス型の門をシフトさせ得るからである。驚くべきことに、本発明の組成物はこれらの有害な効果のいずれかを示さない。事実、本発明の組成物は、それらだけのときのオリーブ油、ベタイン、およびキシリトールの抗微生物特性を行使することなしに、親水性細菌および親油性細菌を保持する。
【0066】
本発明の組成物は、外用で適用されるときに、ハザードが出現するときに所有する微生物叢を維持することを助ける3D構造を形成することによって、粘膜および皮膚のディスバイオシスを防止することに有効であることが判明した。
【0067】
本発明の組成物は3次元の両親媒性の足場を提供し、これは雰囲気からもまた水を組み込み、マイクロバイオームの生態系に加湿し、同時に人間の皮膚および粘膜に加湿し、究極的には、外部からの侵害(とりわけ、湿気の欠乏、pHシフト、温度の揺れ、消毒薬、洗浄剤、放射線)からの防護、有害な因子の透過の制限、ならびに細胞の活動にとっての必要物、つまり水および栄養素の家を提供する。
【0068】
マイクロバイオーム生態系は本発明の組成物によって増強される。なぜなら、それは、単なる水中の溶液または二相溶液よりも持続的なモイスチャライザーの、雰囲気からのモイスチャーを捕捉するオリーブ油の疎水性、ベタインの保水、およびキシリトールの保湿効果によって、固有の微生物叢のより良い付着のために改善されるからである。事実、ベタインおよびキシリトールの不在下のオリーブ油のエマルションは、皮膚および粘膜両方において望まれるヒューメクタントのモイスチャー効果を提供することはできない。
【0069】
上皮ホメオスタシスのコンセプトは、より表層の細胞の落屑による細胞の継続的な置き換えがあり、微生物定着を限定する正の効果と固有の微生物叢が部分的に失われる際の負の効果とを有するということを説明する。
【0070】
しかしながら、これらの生きている微生物は定着化するためにはそれらの生態系を必要とする。
【0071】
研究者は健康の背後の良い細菌および逆に疾患の背後の集団を同定することを意図した。同じ細菌型が有疾患者および対照において異なる割合だが見出されるので、残念ながら、この単純化は間違いだと判明した。微生物叢シフトが疾患それ自体の起源であるということを結論することは未だにできていない。因果的以上に関連的な関係が推測され、後者は感染条件において優勢である。換言すると、病気のある種の微生物叢は、かかる状態を起源とする以上に関連するように見える。
【0072】
天然では、ハビタットの生態学的な変化が始まり、それから、ある種の生物種の適応または消滅どちらかが起こる。微生物叢を介して作用することによって安定なマイクロバイオームを維持しようとすることは、これまでのところ議論の余地がある結果を有している。本発明の発明者らは生態系を損害の第1の受容者と見なす。これは、翻って、それ自体が環境変化の原因である微生物叢シフトの原因となる。これは、本発明者らがユーバイオシスおよびディスバイオシスのマイクロバイオーム動態モデルとして定義するものによって描出される(図2)。
【0073】
ヒトの進化は、健康が常態である本来の共生またはユーバイオシスをもたらした。しかしながら、ディスバイオシスが出現するときに、非共生的な微生物集団は、変調した生態系と一緒になって、肥満または抑うつのような悪循環を永久化する。両方の実体は、今日ではディスバイオシス的なマイクロバイオームとの関係から、食事および心理療法両方に対するフラストレーションを与える抵抗感と共に理解される。
【0074】
我々の体は、日常的な侵害、具体的にはストレス、汚染、ハイパーコネクティビティ、WIFI、化学薬品、消毒薬、抗生物質、薬物、洗浄剤、放射線、酸化ストレス、感染性病原体、ファストフード、口腔および皮膚衛生、シャンプー、女性用衛生、創傷、摂食障害、口呼吸、睡眠時無呼吸、我々のマイクロバイオームに対するインパクトを有する全身性のおよび慢性の状態と向かい合っている。
【0075】
ある種の個人は、マイクロバイオームを修復するための必要な内的または外的条件を欠き、ゆえに疾患を発生する。ひとたび微生物叢がシフトすると、細菌の健康な集団の再建は、直接的に微生物叢にまたは間接的に環境に作用し得る健康促進因子を必要とする。驚くべきことに、本発明の組成物は、健康な環境の生態系のための支持を増強することによって、健康な微生物叢およびその生態系を修復および促進することができる。本発明者らのアプローチは、部位が何であれ、健康な微生物叢の維持および再確立にとって好都合である環境条件および生態系を増強することに向かう。組成物は、これまでのところ研究された状態および疾患のほとんどとの因果関係を有する1つまたはいくつかの微生物を同定することが未だに不可能であったため、固有の微生物叢のコンパートメントを増強する。例に示される通り、生態系コンパートメントを介してヒトマイクロバイオームを改善することは、より部位特異的でない。このメカニズムは図3に模式的なやり方で描出されている。
【0076】
先の実施形態のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、組成物はいずれかの他の植物油を含まない。より具体的には、それはパセリ油を含まない。このように、より低い品質の油、例えばパーム油の使用は回避される。しかしながら、組成物は精油を含み得る。それゆえに、具体的な実施形態では、精油を例外として、組成物はいずれかの他の植物油を含まない。
【0077】
先行する実施形態のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、組成物は0.05重量%~5.1重量%のオリーブ産物、好ましくは0.05%~4.1%、より好ましくは0.05~2.6%のオリーブ産物を含む。好ましくは、オリーブ産物がオリーブ果実エキスであるかまたはそれを含むときには、組成物は0.05%~0.1%のオリーブ果実エキスを含み、オリーブ産物がオリーブ油であるかまたはそれを含むときには、組成物は0.1%~5%、より好ましくは0.1%~4%、さらにより好ましくは0.2%~2.5%のオリーブ油を含む。
【0078】
先行する実施形態のいずれか1つに従う別の具体的な実施形態では、組成物は0.1重量%~10重量%のベタイン、好ましくは1.0%~6%、より好ましくは1.20%~5%を含む。
【0079】
先行する実施形態のいずれか1つに従う別の具体的な実施形態では、組成物はキシリトール、好ましくは1重量%~20重量%のキシリトール、より好ましくは1%~15%を含む。有利には、より小さい濃度(例えば≦20%)で、キシリトールはモイスチャライザーおよびリフレッシャーとして作用し、ディスバイオシスの防止および処置を改善することを助ける。
【0080】
別様に申し立てられない限り、本発明において与えられる全てのパーセンテージはトータルの組成物の重量あたりの重量(w/w)で与えられる。
【0081】
例に示される通り、上で定義された範囲内の量のオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物は、ディスバイオシスの処置および防止に非常に有効である。別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、例に記載される製剤のいずれか1つで定義された量のオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む。
【0082】
先行する実施形態のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、組成物は抗酸化剤および/またはビタミンを含む。好ましくは、抗酸化剤は天然の抗酸化剤、より好ましくはオレア・エウロパエアからの抗酸化剤である。好ましくは、抗酸化剤は、ヒドロキシチロソール、チロソール、オレウロペイン、およびそれらの混合物の群から選択される。興味深いことに、ヒドロキシチロソール、チロソール、およびオレウロペインはオリーブ油の抗炎症および抗酸化活性をポテンシエーションし、組成物を安定化することができるように見える(すなわち、さらなる保存料を縮減またはさらには消失させ、これは製剤を対象によってより忍容可能にするであろう)。それゆえに、好ましい実施形態では、組成物はヒドロキシチロソールおよび/またはチロソールおよび/またはオレウロペインを含む。好ましくは、それはヒドロキシチロソール、チロソール、およびオレウロペインを含む。
【0083】
所望の剤形/製剤に従って、組成物は、所望の官能的およびレオロジー的形態を提供するために必要な全てのコンポーネントを包含する。それゆえに、先行する実施形態のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、組成物は、さらに:再石灰化剤、粘度調整剤、保湿剤、保存料、着色料、pH調整剤(緩衝剤)、甘味料、乳化剤、蛋白質分解酵素、ホワイトニング剤、プロバイオティクス、研磨剤、精油、瘢痕化剤、アロマ、動物または植物ゼラチン、レオロジー剤、溶媒、賦形剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたはより多くのコンポーネントを含む。
【0084】
本発明の組成物のこれらのさらなるコンポーネントは当業者には普通に公知であり、前記化合物の限定しない例は下で与えられる。先行する実施形態のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、これらの化合物は次の例から選択される。再石灰化剤は、フッ化物アニオン、リン酸アニオン、カルシウムカチオン、カリウムカチオン、およびそれらの混合物から選ばれ得る。レオロジー剤は、アラビアガム、トラガカントガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カーボポール型ポリマー、ペクチン、ムチン、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。保湿剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、およびそれらの混合物、好ましくはグリセリンからなる群から選択され得る。保存料は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸、ジアゾリジニル尿素、イミダゾリニル尿素、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。甘味料は、マルチトール、イソマルチトール、マニトール、ラクチトール、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、シクラメート、ソーマチン、スクラロース、ステビア・レバウディアナ、ネオヘスペリジンDC、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。乳化剤は、ポリエチレングリコール(PEG)40、水添ひまし油、レシチン、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0085】
最近の研究は、一般使用のための練り歯磨きへの殺生物剤の使用と体の離れた部分における複数のかつ重篤な直接的副作用との間の関係性を証明した。多機関的な大学の動物研究は、口腔ケア製品に広く用いられるトリクロサンが口腔への適用によって血中に検出され、とりわけ大腸炎、腸の炎症性の変化、癌の最も普通の形態の結腸癌のようないくつかの病態的な状態に直接的に関係するということを証明した(Yang, Wang, & Romano, 2018)。研究の著者らは動物-ヒトの橋渡し研究の特殊性を認識しているが、医学および健康の当局および専門家に警告している。なぜなら、それらは、研究において得られた結果はトリクロサンに対する小さい暴露後に起こったということを概説しており、人間はそれを長い一生の期間に渡って広く口腔衛生のために1日3回用いるからである。
【0086】
抗真菌薬は、フケ症を処置することにとって有効だと判明しているが、何週か後の酵母からの再定着を止めることはできない。しかしながら、本発明の組成物は、マラセジア属からの酵母のような病原体微生物からの顕著な定着を止めることを助けるであろう頭皮マイクロハビタットにとって必要な条件を提供することによって、微生物の均衡を増強することができる。
【0087】
それゆえに、先の実施形態のいずれかに従う具体的な実施形態では、本発明の組成物はいずれかの追加の活性成分(例えば抗生物質、抗真菌剤)を含まない。具体的には、それはトリクロサンを含まない。
【0088】
本発明の組成物は、皮膚および粘膜の維持および修復されるべき健康な均衡した微生物叢を助ける理想的な物理化学的条件(pH、バリアインテグリティ、および栄養素)を提供する。あらゆる生態学的ニッチはそれ自身の状態をとりわけpHによって定義される(表1)。体の部位に依存して、pHは体内における特殊性を尊重するように調整されるであろう。pHは緩衝剤によって調整されるであろう。それゆえに、具体的な実施形態では、本発明の組成物は緩衝剤を含む。本発明の組成物では、従来技術において公知のいずれかの緩衝剤が用いられ得る。具体的には、緩衝剤は、乳酸、乳酸塩、クエン酸、クエン酸塩、リンゴ酸およびその塩、水酸化ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0089】
【表1】
【0090】
驚くべきことに、異なる皮膚および/または粘膜の場所にとって必要なpHが何であれ、本発明の組成物はその有益な効果を維持する。
【0091】
当業者は、ディスバイオシスの防止および/または処置への単純な使用を許すいずれかの好適な剤形で、本発明の組成物を製剤し得る。先行する実施形態のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、組成物は、フェイシャルおよび/またはボディモイスチャライザー、デオドラントクリーム、リジェネラティブバリアクリーム、ボディジェル、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアローション、スキンアンプル、トニック、カプセル、錠剤、スプレー、ジェル、潤滑ジェル、外陰部用外用ジェル、鼻腔内吸入剤、鼻腔内スプレー、エアロゾル溶液、エアロゾルスプレー、エアロゾルカプセル、練り歯磨き、洗口液、チューインガム、チュアブル錠、舐め用のカプセル、舐め用のロゼンジ、口蓋シート、キャンディ、含浸口腔スワブ、含浸口腔用ガーゼ、リップスティック、バームとして製剤される。
【0092】
好ましい実施形態では、ジェルは、ゲル化剤、例えば寒天、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、ペクチン酸、トラガカントガム、カルボマー、ポリマー、およびシリカを用いることによって形成される。
【0093】
乾燥オリーブ果実エキスはロゼンジまたはパスティーユの製剤にとって好ましく、オリーブ油、好ましくはEVOO、および液体または乾燥果実エキスは、ジェル、練り歯磨き、洗口液、シャンプー、コンディショナー、ヘアローション、クリーム、マスク、リップスティック、スプレー、セラム、デオドラント、カプセル、腟座薬、シャワージェルの製剤のためのオリーブ産物の好ましいソースである。アフタ性の口腔ディスバイオシスの処置は、オリーブ産物のソースとしてEVOOによるジェルの形態で、その強力な抗酸化作用からヒドロキシチロソールを有し、オリーブ果実風味を有する(ピリピリ風味なしの)好ましい実施形態を有する。再発性アフタ性潰瘍(RAU)は、練り歯磨きの形態の同じアプローチを用いる予防衛生から利し、これは、再石灰化剤、天然の非刺激性の風味、ビタミン、および快適な衛生のための必要物をもまた有し得る。炎症性腸疾患(IBD)もしくはクローンまたはグルテン不耐症を有する患者もまたアフタ性のディスバイオシスを患い、同じ措置の候補である。ストレス&トゥースウェア口腔ディスバイオシス、ならびに睡眠時無呼吸口腔ディスバイオシスおよび摂食障害または胃の逆流に関連する口腔ディスバイオシスでは、ジェルが、理想的には、1日あたり数回、口腔衛生後に、特に就寝前および目覚め時に外用で口腔組織に適用されるように製剤される。
【0094】
肺ディスバイオシスを防止または処置するための本発明の組成物の投与は、いずれかの公知の投与経路によってされ得る。限定しない例は、鼻腔内吸入剤、鼻腔内スプレー、鼻腔内エアロゾル、鼻腔内ジェル、口腔咽頭用シロップ、および口腔咽頭用ジェルのための液体剤形、ならびにエアロゾルカプセルとしての固体剤形である。
【0095】
本発明の組成物は異なる皮膚および粘膜エリアのためのケアおよび衛生製品に包含され得る。
【0096】
「ケア」は、ハザードが自然なかつ健康なマイクロバイオームを危うくするときはいつであれ、必要な粘膜および皮膚微生物叢の回復、改善、または防護を言う(すなわち、苛性製品またはアルコール、洗浄剤などによる衛生)。
【0097】
「衛生」は、自然なかつ健康なマイクロバイオームの撹乱を惹起する易罹患性の過剰な残余の細胞および天然に産生される他の物質を我々が消失させる行為を言う。
【0098】
組成物が適用される体内/体表のエリアに依存して、異なる製剤ならびに基剤および/または賦形剤が用いられるべきである。当業者には、とりわけ組織のpHおよび組織の他の具体的な物理化学的特性に依存して、いかに各組成物を体の各エリアに適応させるかは公知である。
【0099】
例えば、皮膚のいくつかのエリアは他よりも脂性であるか、湿潤であるか、または乾燥している。ケアおよび衛生製品はこの特性に適応させられるであろう。
【0100】
同じ意味で、口のものまたは膣のものが互いに非常に異なるように、異なる製品が異なる粘膜に適応させられるであろう。具体的な実施形態では、洗浄剤が衛生のために包含されるときに、例で見られる通り、本発明の組成物は継続して生態系にとっての有益な効果を送達しおよびユーバイオシスを修復する。歯または皮膚どちらかのためのホワイトニング成分を包含する剤形では、本発明の組成物は、そのマイクロバイオームに有益な活性を行使し、ホワイトニング成分の可能な刺激性、落屑、または敏感さの効果をもまた縮減する。
【0101】
ヒトの体表において、微生物叢はいくつかの特殊性を有して異なるハビタットに適応している。ヒトマイクロバイオームプロジェクトに従うと、消化器内の10個の異なる具体的な部位、例えばバッカル、歯肉、および硬口蓋(群1)ならびに唾液、舌、扁桃腺、および喉(群2)の間には異なる微生物コミュニティがある(Segata, Kinder Haake, & Mannon, 2012)。この地形学的変動は驚くべきことに異なる個人間でより高い。類似に、皮膚は脂性の部位(頭皮、背中、前腕)および湿潤な場所を有し、口腔粘膜だけでなく、時間的変動をまた有するがほとんどの時は長い期間に渡って安定なままである部位特異的な微生物叢を有する。今日では、地形学的なおよび時間的な挙動および豊富さまたは存在量が研究されている。口腔の親油性細菌は顕著に硬口蓋、歯の舌側面、角化した歯肉、およびバッカル粘膜に居るという事実における類似性が見出された。本発明の著者らによって見られた通り、これらの細菌は消化系の酸および食塊通過に対するより多くの抵抗性を示すのみならず、それらはトリグリセリドを代謝することによって脂肪酸をもまた生成する。これらは口腔の残りを脂質のマントに浸し、これは防護、潤滑としての用をなし、口腔バイオフィルムの脂質系コンポーネントを永久化することを助ける。同じ様式で、本発明の発明者らは本組成物によるこの天然の親油性の防護の正の増強を提案する。
【0102】
多様性が高いか(口腔粘膜)または低いか(頭皮、背中、および前腕、または膣)にかかわらず、このバイオフィルムは、共生的な(健康な)やり方で挙動するときには、観客の免疫防御、栄養、代謝、さらには成長および個性のような貴重な機能を果たすように見える。いつおよびなぜそれが未だに未発見の引き金によってディスバイオシス的(疾患)にシフトするのかは、依然として不明確なままである。それは、要石の病原体、またはストレスのような大きな環境的攻撃、またはより印象的には、前に申し立てられた通り衛生であり得る。
【0103】
微生物叢は一定の動きおよびリノベーション下にあり、同時に、変化に対するレジリエンスを示す。ある種の解剖学的部位のコアのマイクロバイオームまたは特定のディスバイオシスの鍵の病原体を同定することは、先の培養に基づくテクノロジーよりも少ないバイアスを提供する次世代シーケンシングの到来にもかかわらず、とてつもない作業のままである。これは、世界人口の最も高度に優勢な疾患に該当する口腔ディスバイオシスの歯周炎に当てはまる。多年に渡って、歯周病学者らは、グラム陰性細菌が歯周炎の原因となるということを信ずることから、グラム陽性およびグラム陰性が当初の歯肉炎から発達した歯周炎へのシフトの背後にあり、発症は酸素欠乏に適応した(嫌気性の)ヘモ依存性の細菌と真に因果的ではなく関連的であり(「レッドコンプレックス」細菌;トレポネーマ・デンティコラ、タンネレラ・フォーサイシア、およびポルフィロモナス・ジンジバリス)、元々は二次的な炎症であると思料されたものから益することを受け入れることへと発展した。物事をより複雑にすることには、歯周炎のランドマーク病原体として広く認識されたP.ジンジバリスが正常な常在微生物叢をシフトすることによって炎症性応答を始め、これがそれからディスバイオシス的に変ずる場合に、または低存在量条件にある場合でさえも、この病原体が、最近にのみ見出された休眠状態のいわゆる難培養性の微生物と共に共生的な有害性の挙動を有するかどうかは未だに無視されている。これはフィリファクター・アロシスに当てはまり、これは大きな口腔ディスバイオシスに関わっているように見える。なぜなら、それは健康な個人においては稀にしか見出されないからである。驚くべきことに、F.アロシスは、低い酸素勾配を有する歯肉縁下エリアに住むグラム陽性の糖非分解性の嫌気性細菌であり、短鎖脂肪酸によって生きることができる。これは代謝されるときにアンモニウムを放出し、pHを中性範囲まで増大させる。これは、翻って、ストレプトコッカス・ミュータンスのような酸性代謝を有するグラム陽性の酸素依存性細菌を排除する。これはカリエスのリスクではなく歯周の易罹患性を見せる患者の背後の理由であり、逆もまた真である。高度に酸化的な条件において繁殖するF.アロシスの能力がさらなる酸化ストレスに至る場合に、潜在的に他のディスバイオシスを招きやすい環境変化がOLPまたは発癌性の変化を好むかどうかは未だに公知ではない。
【0104】
ディスバイオシスの不均衡な状況においては、変調した微生物叢は改変された環境雰囲気(温度、pH、湿気、および酸素条件)においてヒトの体と相互作用し、これは微生物シフトを永久化する傾向がある。
【0105】
微生物が置き換えられるのみならず、生態系が同時に変化し、この二元的なシフトは、負の状態、例えば炎症、バリア破損、出血、落屑、刺激、脱水、および場合によっては体の感染またはついには発癌性の変化の手段によって臨床的に検出される。
【0106】
ここで言及される疾患のような皮膚および口腔ディスバイオシスにおけるヒトマイクロバイオームの役割は、今日では研究によって確立されているが、前には疑われた。なぜなら、未知の起源を有するこれらの負の状態の多くは抗生物質(AB)によって改善したからである。残念ながら、AB耐性および副作用が普通の欠点である。例に示される通り、本発明の組成物は、これらの負の状態を逆戻りさせ、生態系増強を介して健康を改善することができ、最後にユーバイオシスを達成する。それゆえに、先行する実施形態のいずれかに従う本発明の具体的な実施形態では、組成物は抗生物質を含まない。
【0107】
マイクロバイオームを介して健康を増大させるための試みは、主として、微生物叢を改変しようとすること、通常は、推定上有益な微生物、いわゆるプロバイオティクスを追加することによってされており、議論の余地がある結果を有する。いずれにせよ、本発明はプレおよびプロバイオティクスと適合性である。それゆえに、先行する実施形態のいずれか1つに従う具体的な実施形態では、組成物はさらにプレバイオティクスおよび/またはプロバイオティクスを含む。好ましい実施形態では、組成物は舐め用のロゼンジであり、これがオリーブ乾燥果実エキス、ベタイン、キシリトール、およびプロバイオティクスを含む。より好ましくは、それは、乾燥した剤形としてそれを製剤するための必要な成分をもまた含む。
【0108】
本発明の組成物は、より長時間に渡って組織に付着し、蒸発を防止する脂質性-親油性画分(オリーブ産物)と、この足場内の湿気を引きつける親水性画分(ベタインおよびキシリトール)とを含んで、宿主およびその生態系との微生物叢相互作用を可能化する。マイクロバイオーム生態系はこの組成物によって増強される。なぜなら、それは固有の微生物叢のより良い付着のために改善されるからである。
【0109】
例に示される通り、本発明の組成物は前例のない有益な特性を有する。これらは、外用で用いられるオリーブ油またはベタインの負の効果を中和するのみならず、皮膚および粘膜に直接的に適用されるときの口腔および皮膚マイクロバイオームにとっての予想外の利益をもまた増幅する。
【0110】
皮膚および粘膜は病原体および水損失に対する効率的なバリアを提供する。皮膚および粘膜バリアの遮断は、血管の拡張および増大した血流を表す炎症性の発赤に至る。本発明の組成物の使用は、炎症を縮減することおよび同時に損害した組織を再生することを実証した。この特性はヒトにおいていずれかの他の組成物では得られていないので、他の炎症阻害剤は組織を再生することができないということを強調することは重要であり、この組成物を独特にすることである(Van Dyke, 2017)(例えば例4を見よ)。
【0111】
細菌の選択が、変調した皮膚または粘膜の帰結として起こる。歯茎の炎症はコラーゲンペプチド、血漿蛋白質、およびヘモグロビンを増大させ、これらは、栄養素としての必須アミノ酸およびヘミンの使用を特徴とする特定の細菌を選択する。
【0112】
本発明の組成物は透過性を縮減し、組織を再生し、ディスバイオシスを促進する栄養素(コラーゲンペプチド、血漿蛋白質、およびヘモグロビン)の放出を回避し、それゆえに、組織に棲息する細菌の自然なかつ健康な平衡を得る。同時に、これらの分子の放出を回避することは、粘膜、歯、および皮膚どちらかの自然な健康な色を維持することを助ける。
【0113】
本発明において、組成物は充分な口腔および皮膚バイオフィルムを消失させずに増強して、均衡したかつ多様な微生物叢を促進し、基礎の組織について所有するマイクロバイオームを維持および修復する。
【0114】
さらにその上、口腔および皮膚ディスバイオシスを処置および防止するならびに口腔および皮膚ホメオスタシスを増強する本発明の組成物の発見は、ディスバイオシス的な刺激の引き金を引くかまたは広め得る常在微生物に対するいずれかの圧力を行使することなしに、口腔および皮膚マイクロバイオームにとっての充分な環境を支持する。
【0115】
本発明の組成物は、より長時間に渡って組織に付着し、蒸発を防止する脂質性-親油性画分(オリーブ産物)を、この足場内の湿気を引きつける親水性画分(ベタインおよびキシリトール)と共に有して、宿主およびその生態系との微生物叢相互作用を可能化する。マイクロバイオーム生態系はこの組成物によって増強される。なぜなら、それは固有の微生物叢のより良い付着のために改善されるからである。
【0116】
本発明者らの知る限り、従来技術の何事も口-皮膚軸を予期してはいない。歯肉炎は尋常性ざ瘡を患う患者において頻繁に起こる。ざ瘡の皮膚炎症では、患者は、場合によっては皮膚の破壊前でさえも、歯茎の出血および腫れをもまた経験する。両方の状態は、通常は青年期においてだが未成年においてもまた起こり、成人においては珍しくない。両方の状態は西洋風の食事、ストレスに関係し、専門医を訪ねる最も普通の理由のうちである。重症度は、ざ瘡における開放または閉鎖面皰(黒にきびおよび白にきび)から明確に炎症性の病変(膿疱、さらにはのう胞)までと歯肉の炎症から出血および潰瘍化(潰瘍壊死性病変)までとの間の範囲である。今日の趨勢は、尋常性ざ瘡を、プロピオニバクテリウム・アクネスの定着を皮膚の環境状態の変化によって助長される関連的な因子とする皮膚ディスバイオシスと考えることである。歯肉炎では、グラム陽性細菌もまた見出される。しかしながら、今までは、病原体は同定されておらず、ざ瘡に類似に、バリアを中断および定着を許容する宿主からの増大した反応がある。例に示される通り、歯肉の改善はざ瘡の改善と関係づけられ、この新たに記載される口-皮膚軸と整合するものである。
【0117】
最後に、従来技術の何事も、トゥースウェアを口腔ディスバイオシスと関連付けてはいない。しかしながら、本発明の見解では、酸蝕損害におけるミネラル損失の背後のミネラル交換の不均衡が、均衡にあるときの口腔微生物叢の適当なバリア機能の修復によって防止され得る。例に示されかつ先の議論で説明されている通り、良好な生態系における均衡した微生物叢は酸の攻撃を中和し、本発明の組成物を用いた後には、歯の過敏性の間接的改善が起こる。具体的には練り歯磨きおよび洗口液の形態の本発明の組成物の使用は、ディスバイオシスを防止し、ホメオスタシスを修復する。ディスバイオシスが存在する場合には、全てのこれらの状態は、ディスバイオシスの早期の始まりにおいてユーバイオシスに逆戻りするために、理想的にはジェルまたはスプレーの形態の前記組成物の外用での適用から利する。
【0118】
今日では、皮膚-腸軸は、腸マイクロバイオームおよび皮膚健康の間の関係と、これらの一見つながっていない体の部位の間のこれまでのところ理解し難いコミュニケーションと、腸マイクロバイオームおよび皮膚治療を改善することの橋渡し研究の潜在力とを説明ならびに記載することを狙う大学間の研究の焦点である(Salem, Ramser, Isham, & Ghannoum, 2018)(Lee, Byun, & Kim, 2019)(Vaughn, Notay, Clark, & Sivamani, 2017)(Szanto, Dozsa, & Antal, 2019)。
【0119】
本発明の著者らの知る限り、口腔マイクロバイオームと、睡眠時無呼吸または閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と呼ばれ、著者らによってディスバイオシスと考えられる睡眠の間の口の機能不全として起こる全身効果とについては、従来技術においては何事も明示されてはいない。睡眠時無呼吸はいびきから重症の形態の呼吸の真の中断まで様々であり、これらは夜間の頻繁な目覚めおよび不良な眠りによって睡眠品質に負のインパクトを及ぼす。日中のイライラ、集中力の欠如、昼間睡眠、抑うつ、および不安が、高い心血管系リスクと一緒に、CPAPとして公知の機械的な持続陽圧呼吸につなげられる睡眠の代替として侵襲性のまたは非侵襲性の(可撤性マウススプリント)下顎前方移動治療のために顎顔面外科医および歯科医に患者を送る医師ならびに患者によって経験される。問題の起源としてもそれの帰結としても、OSAにおける口腔マイクロバイオームの役割については何事も書かれてはいない。本発明は、睡眠時無呼吸ディスバイオシスが口呼吸者で起こるものに類似の変調した環境において始まるということを考える。粘膜の湿気条件の激しいかつ遷延的な変化は、粘膜構造アーキテクチャを、また、OSAにおける空気の流入にとって重大な潰れた経路を有するマイクロバイオームコンパートメントを障害する。目覚め時に水をちびちび飲みすることによる加湿は短期的な解決であるのみであり、夜間頻尿を強いる。OSAは、繰り返される睡眠の中断、不良な夜間の眠り、ならびに個人の社会的、心理的、および健康的な側面における日中の帰結を経過する。口腔-脳軸のつながりは前に言及された通り記載されており、これは十分に、かかるつながりの別の例であり得る。就寝前および夜間の目覚め時に適用されるスプレーの形態の本発明の組成物を用いる患者は、睡眠時無呼吸ディスバイオシスに関連する徴候および症状、例えば夜間の眠りの質、日中の刺激反応性、夜間の目覚めのエピソード、夜間の水のちびちび飲みのエピソードの有意な改善を示す。水のスプレーと比較されたときに、組成物を用いたCPAPの患者はより良いコンプライアンスを有した。
【0120】
最後に、上で説明された通り、本発明の組成物はディスバイオシスを防止および/または処置するための用をなす。有利には、例5に示される通り、それは、ディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態を防止するための用をもまたなす。その上、それは、具体的にはアジュバント処置として、前記病態の処置のための用をなし得る。前記病態はディスバイオシスによって悪化し得る。なぜなら、ディスバイオシスは前記病態のエピソード数を増大させるからであり、またはディスバイオシスは前記病態の徴候および/または症状を悪化させるからである。徴候および/または症状は、バラエティー、強さ、および/または持続時間の点でディスバイオシスによって悪化し得る。それゆえに、本発明の第1の態様は、ディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態の防止へのおよび/またはアジュバント処置としての使用のための、上で言及された実施形態のいずれかに記載されている本発明の組成物にもまた関する。
【0121】
最近の研究は、頭皮マイクロバイオームの非均衡をフケ症または脂漏性皮膚炎などの状態の大きな寄与因子として考えることで一致している。いくつかの医学的状態、例えば慢性の炎症性状態および癌と粘膜および皮膚マイクロバイオーム両方との間にはつながりがある。事実、皮膚および口腔マイクロバイオームは、皮膚癌(例えばメラノーマ)および口腔癌に至る発癌性の変化と関連付けられている。
【0122】
肺では、いずれかのディスバイオシスにおいて起こることに類似に、有益な常在細菌の損失は、定着によってディスバイオシスを永久化するであろう細菌、真菌、およびウイルスのような日和見病原体に対する逓減した防護を含意する。その上、同時に、肺ディスバイオシスは、存在する場合には、さもなければ普通の経過を有するであろう異なる性質の状態および疾患を悪化させ得る。ヒトの肺は空気中浮遊粒子および病原体の透過を防止するように進化しており、常態は、ディスバイオシスが存在しない限り若年者および他の年齢群によって享受されるユーバイオシスおよび健康である。これは、無症状の経過または軽症の感冒症状を感冒ディスバイオシスの一部として経験し、数日以内にホメオスタシスに逆戻りするコロナウイルスに暴露された若年集団に当てはまる。通常はユーバイオシスから利するこの若年群は、コロナウイルスCovid-19に直面したときには、大多数のケースでは重症の形態を患わず、真のコロナウイルス疾患まで進行しない軽症のまたはさらには無症状の経過を経験するが、ディスバイオシスが存在する場合には、高齢群で起こるように、ディスバイオシスによって引き起こされる悪化の結果として、コロナウイルス侵入はもっと重症の形態で経過するであろう(例えば、多くの回数の入院ならびに酸素および/または換気の使用を要求するより重症の呼吸困難)。コロナウイルスはウイルスの大きいファミリーであり、これらは、普通感冒からより重症の疾患、例えば中東呼吸器症候群(MERS)および重症急性呼吸器症候群(SARS)の範囲である病気を引き起こすことが公知である。
【0123】
口腔、皮膚、および膣衛生は、バイオフィルムを遮断および破壊さえもし、マイクロバイオームコンパートメントを劣化させる。300以上の異なる通性嫌気性細菌の軽視された集団(とりわけストレプトコッカス・サリバリウス、S.ミティス、S.アウレウス、S.エピデルミディス、コリネバクテリウム)が舌の背部の陰窩に生きており、食事中の硝酸を体の天然の血管拡張因子かつ胃保護促進因子の亜硝酸へと還元する独特の特性を有する。驚くべきことに、血圧、血小板機能、および骨髄生理、ならびに脳血流および末梢動脈疾患における口腔マイクロバイオームの役割は疑問の余地がないが、印象的には、全てのこれらの有益な効果は、抗細菌洗口液を用いるときに消滅する。劇的に、抗細菌洗口液を用いる緑色葉物不足の食事の健康な対象では、血漿中亜硝酸の縮減に明確に関係する収縮期および拡張期血圧の有意な増大は、抗細菌洗口液の慢性的な使用が血圧の上昇および帰結としてより高い心血管系リスクに至るかどうかを証明するための未だになされていない必須の研究に反映されていない。その上、歯周炎ディスバイオシスおよび心血管系疾患は、多くの場合に、抗細菌薬を口に用いてい得る同じ患者において起こる(Hezel & Weitzberg, 2015)。
【0124】
それゆえに、とりわけ、ディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態は、フケ症、脂漏性皮膚炎、慢性の炎症性病態、皮膚癌(例えばメラノーマ)、口腔癌、および呼吸器感染からなる群から選択され得る。後のものは、細菌感染(例えばストレプトコッカスによる)、ウイルス感染(例えば、インフルエンザ、パラインフルエンザ、コロナウイルス、コロナウイルスSARS-CoV-2、呼吸器合胞体ウイルスによる)、または真菌感染(例えばカンジダ、ニューモシスチスによる)であり得る。
【0125】
好ましい実施形態では、ディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態は呼吸器感染である。より好ましくは、呼吸器感染は感冒、Covid-19、または肺炎である。例5に示される通り、それは感冒エピソード数を縮減するので、本発明の組成物の使用は驚くべきことに感冒を防止する。
【0126】
本発明の第2の態様は、ディスバイオシスの防止および/または処置のための医薬の調製のための、オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物の使用に関し、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。同様に、それは、ディスバイオシスによって助長されるかもしくは悪化する病態の防止のための医薬の調製のための、またはディスバイオシスによって助長されるかもしくは悪化する病態の処置のためのアジュバントの調製のための、オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物の使用に関する。
【0127】
本発明の第3の態様は、その必要がある対象におけるディスバイオシス、またはディスバイオシスによって助長されるかもしくは悪化する病態を処置する方法に関し、オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含み、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。
【0128】
本発明の第4の態様は、対象におけるディスバイオシスを防止する方法に関し、これはオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む予防上有効量の組成物を対象に投与することを含み、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。同様に、それは、対象におけるディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態を防止する方法に関し、これはオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む予防上有効量の組成物を対象に投与することを含み、オリーブ産物はオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである。
【0129】
最後に、最近の発表は、口腔衛生が口腔マイクロバイオームのディスバイオシスの第1のかつ最重要の原因であることを明示している(Sudhakara, Gupta, & Bhardwaj, 2018)。同じことが、皮膚健康欠乏のマーカーとして生物多様性の減少を用い、日常的な化粧品の合成成分の効果を実証して、皮膚衛生および皮膚ディスバイオシスについて皮膚研究者によって申し立てられている(Wallen-Russell, 2019)。それゆえに、本発明の第5の態様は、ヒトの体の口腔、鼻腔、膣、および/または皮膚の衛生のための本発明の第1の態様の実施形態のいずれかにおいて定義された組成物の使用と、ヒトの体の口腔、鼻腔、膣および/もしくは皮膚の衛生への使用のためのならびに/またはヒトの体の粘膜もしくは皮膚の自然な加湿を維持することへの使用のための本発明の第1の態様の実施形態のいずれかにおいて定義された組成物とに関する。同様に、それは、ヒトの体の口腔、鼻腔、膣および/または皮膚の衛生のための方法にもまた関し、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかにおいて定義された組成物の投与を含む。同様に、ヒトの体の粘膜および/または皮膚の自然な加湿を維持するための本発明の第1の態様の実施形態のいずれかにおいて定義された組成物の使用と、ヒトの体の粘膜および/または皮膚の自然な加湿を維持することへの使用のための本発明の第1の態様の実施形態のいずれかにおいて定義された組成物ともまた本発明の目的である。同様に、ヒトの体の粘膜および/または皮膚の自然な加湿を維持するための方法もまた本発明の目的であり、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかにおいて定義されている組成物の投与を含む。好ましくは、投与は外用でなされる。好ましくは、粘膜は口腔粘膜である。
【0130】
本発明の組成物の具体的なかつ好ましい実施形態、本発明の第1の態様について記載されているディスバイオシスおよびディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態は、本発明の第2、第3、第4、および第5の態様に適用可能である。
【0131】
本発明の全ての態様の実施形態のいずれか1つに従う本発明の具体的な実施形態では、本発明の組成物の投与プロトコールは下の例に記載されているものである。
【実施例
【0132】
その範囲を限定することなしに本発明を例解するための用をなす本発明の特定の実施形態が、下で詳細に記載される。
【0133】
例1.-歯周ディスバイオシス
口では、歯周病は口腔ディスバイオシスの後期の結果である。これは、多くの場合には、炎症とその高い出現率を原因として正常だと理解されてきた他の変化とによって先行される。我々は歯茎出血、臭い息、歯の敏感さ、および他のような症状を参照する。
次の研究では、ディスバイオシスの徴候および症状を、歯周ディスバイオシスの既往を有する外来患者の集団において研究した。対象は割り当てられた組成物を用いて始めにおよび15日後に愁訴の強さを0から10のスケールで格付けした。
練り歯磨きとして製剤されたいくつかの組成物(表2)を、2分に渡る歯ブラシによる歯のブラッシングの手段によって、通常の衛生手順として1日3回適用した。これの後には、水によるすすぎを行なった。歯間ブラッシングを例外として、他の口腔衛生措置は研究実施期間に行なわなかった。
表2は各組成物(comp)の定性的なおよび定量的な組成を示す。
ディスバイオシスを分析し、次の徴候/症状を評価した:
1.歯茎、乳頭炎症(G、PI)
2.発赤またはシミ(R、B)
3.ブラッシングによる出血(BB)
4.歯間ブラッシングによる出血(BIB)
5.敏感さ(S)
6.第三者による呼気時の検出可能な悪臭の存在(H)
7.歯変色(TD)。
【0134】
【表2】
【0135】
研究の始めの(t=0)および15日後の(t=15)各群の5人の患者の0から10で格付けされた歯茎、乳頭炎症(G、PI)、発赤またはシミ(R、B)、ブラッシングによる出血(BB)、歯間ブラッシングによる出血(BIB)、敏感さ(S)、口臭の存在(H)、歯変色(TD)の平均強さとしての結果が、表3に示されている。
研究の始めの(t=0)および15日後の(t=15)各群の5人の患者の0から10で格付けされた異なる徴候/症状についての愁訴の平均強さとしての結果が、表3に示されている。
【0136】
【表3】
【0137】
t=0およびt=15日の間に各組成物について評価された愁訴の強さの変化としての結果が、表4に示されている。
【0138】
【表4】
【0139】
全ての徴候/症状が一緒に考えられたときに、愁訴縮減の平均は組成物1.aでは4.97、組成物1.bでは1.34、組成物1.cでは0.46、組成物1.dでは0.09であった。
それゆえに、15日の使用後に各組成物について得られた口腔ディスバイオシスに関連する徴候および症状の愁訴縮減を比較するときには、統計的に有意な効果が、オリーブ油、ベタイン、およびキシリトールを含む本発明の組成物で示される。驚くべきことに、他の組成物(1.b~1.d)と比較して、本発明の組成物(1.a)では予想外の相乗効果が得られる。
徴候または症状の改善は、均衡したマイクロバイオームの回復、そのため、ディスバイオシスからユーバイオシスへのシフトを意味する。それゆえに、本発明の組成物はディスバイオシスを処置することができ、ディスバイオシスをユーバイオシスに変貌させる。
【0140】
加えて、歯周病原体ポルフィロモナス・ジンジバリスの検出可能な存在の関連性を測定するために、群1.aおよび1.dの患者に別の15日に渡って割り当てられた練り歯磨きを用いることを継続するように依頼した。この期間の終わりに、P.ジンジバリスを検出するための市販可能な入手可能な試験による歯周プロービングを、製造者の説明書を踏襲して行なった(Genspeed BiotechによるPerioPOC(登録商標))。
また、ディスバイオシスのいずれかの可能な再燃を検出するために、かつユーバイオシス維持の評価として、患者には前と同じ質問(歯茎の強さ、乳頭炎症、発赤またはシミ、ブラッシングによる出血、歯間ブラッシングによる出血、敏感さ、口臭の存在、歯変色)に答えるように再び依頼した。P.ジンジバリスについてのスクリーニングの結果は表5に見られる。
【0141】
【表5】
【0142】
ディスバイオシスの症状および徴候について、本発明の組成物を用いた群では、ユーバイオシスからディスバイオシスへの再燃は見出されず、対照群は症状のいずれかが改善しなかった。
口腔歯周ディスバイオシスへの本発明の組成物の維持された使用のアウトカムは、ディスバイオシスを処置することおよびユーバイオシスを維持することに有効であることが見出され、対照群では、ディスバイオシスの状態は歯のブラッシングの可能な利益にもかかわらず症状を永久化した。
【0143】
例2.-アトピー性皮膚炎ディスバイオシス
本発明の組成物が皮膚のディスバイオシスに関連する徴候および/または症状を改善するキャパシティーを評価するために、本発明の組成物を、6から14歳までのアトピー性皮膚炎と診断された7人の患者の皮膚に適用した。徴候および症状は製品の適用の前に(t=0日)および15日後に患者によって評価された。対象は100mmの水平線に愁訴の強さを指示するための垂直線をマークした(ビジュアルアナログスケール(VAS))。
加湿ジェルとして製剤された組成物(表6)を、手による穏やかな分配の手段によって通常の加湿手順として1日3回適用した。他の加湿または化粧用のクリームも研究実施期間には適用しなかった。
分析されるべき徴候/症状:
1.乾燥肌感
2.かゆみ
3.発赤
4.落屑。
【0144】
【表6】
【0145】
研究の始めの(t=0)および15日後の(t=15)7人の患者の愁訴の平均強さとしての結果が、表7に示され、変化の%が表8に示されている。
【0146】
【表7】
【0147】
【表8】
【0148】
表8に示される通り、試験された全ての徴候および症状は、本発明の組成物による加湿ジェルを用いて15日後に有意に改善した。試験された全ての徴候および症状は直接的または間接的に皮膚マイクロバイオームに関係づけられる。徴候または症状の縮減は、均衡したマイクロバイオームの回復、そのため、皮膚におけるディスバイオシスからユーバイオシスへのシフトを意味する。それゆえに、本発明の組成物は皮膚ディスバイオシスを処置することができ、ディスバイオシスをユーバイオシスに変貌させる。
【0149】
例3.-乾皮症ディスバイオシス
皮膚では、落屑、乾燥、および他の皮膚ディスバイオシス徴候は、その高い出現率を原因として、正常だと理解されてきた。我々はとりわけ乾燥、かゆみ、発赤、落屑、および刺激反応性のような症状を参照する。
次の研究では、徴候および症状を、乾皮症ディスバイオシスの既往を有する対象の集団において研究した。対象は、それらが割り当てられた組成物を用いて始めのおよび15日後のそれらの主観的格付けを与えた0~10スケール上の値にマークした。
【0150】
加湿ジェルとして製剤されたいくつかの組成物(表9)を、シャワー後におよび就寝する前に1日2回適用した。
分析されるべき徴候/症状:
1.乾燥肌感(DS)
2.かゆみ(I)
3.発赤(R)
4.落屑(DQ)
5.刺激反応性(IR)
6.ひび割れた皮膚(CS)
7.落ち着き感(SS)
8.増大した弾力(E)
9.加湿(H)
【0151】
【表9】
【0152】
研究の始めの(t=0)および15日後の(t=15)各群の上で指示されている徴候/症状の平均強さとしての結果が、表10に示されている。
【0153】
【表10】
【0154】
各組成物について評価された愁訴の強さの縮減(表ではint)と各組成物について有益な効果の増大とが表11に示されている。
【0155】
【表11】
【0156】
最後に、ジェルの15日の使用後の全ての愁訴平均縮減および全ての有益な効果平均増大が、表12の全ての群について描出されている。
【0157】
【表12】
【0158】
結論
皮膚ディスバイオシスの徴候および症状を包含する愁訴は、オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む本発明の組成物を15日に渡って用いるときに有意に縮減される。オリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含むジェルを15日に渡って用いた後には、有益な効果がずっと大量に改善される。15日の使用後に各組成物によって得られた愁訴縮減および有益な改善を比較するときには、有利な相乗効果が本発明の組成物で見られ得る。
【0159】
例4.-アフタ性の口腔ディスバイオシス
アフタ性の口腔ディスバイオシスを、アフタ性の口腔ディスバイオシスに関連する痛みおよび潰瘍などの症状を有する患者の群においてアッセイした。痛みおよびアフタまたは潰瘍治癒を測定し、異なる組成物を用いる4つの群間で比較した(表13)。
製品をジェルとして製剤し、アフタ寛解まで毎夕食の前におよび就寝する前に適用した。日中の痛みの場合には、臨時の適用をもまた許した。
【0160】
【表13】
【0161】
16人の患者を研究に包含し、ランダムに4つの群に分けた。
3つのパラメータを記録した:
1.寛解のための時間
2.口腔衛生の間の痛み
3.発話の間の痛み。
【0162】
4つの群についてアフタの寛解のために要求された平均日数としての結果が表14に示されている。表から見られる通り、オリーブ油、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物を用いた患者は、オリーブ油およびベタインによる組成物を用いた群の3.25日、キシリトールによる組成物を用いた群の5日と比較して、2.25日という平均の潰瘍/アフタ治癒時間を経験した。対照群は潰瘍治癒のためには平均で7日以上待たなければならなかった。これらの所見は、口腔衛生および発話の間の痛みの平均強さの測定と相関する。これは研究の始めに(t=0)および24時間製品を用いた後に(t=24)測定され、4つの群について表15に描出されている。
【0163】
【表14】
【0164】
【表15】
【0165】
本発明の組成物は、口腔ディスバイオシス、かかるアフタ性の口腔ディスバイオシスにおいて相乗効果を有し、他の組成物と比較して潰瘍治癒および痛み管理の統計的に有意な改善を有する。
アフタ性のディスバイオシスの従来の管理は外用鎮痛剤および消毒剤によって駆動される。ヒアルロン酸または/およびアロエベラ製剤は潰瘍のためのバリア防護を主張するが、アルコールのような消毒薬と高い濃度で組み合わせられる。本発明の組成物は消毒薬の不在下において粘膜バリア機能を修復することができ、痛みの即座の緩和を有した。
痛みは即座に止まり、ブラッシングおよび発話の可能性が24時間の適用後に測定された。本発明の組成物は痛みを即座に緩和し、オリーブ産物およびベタインによる組成物と比較されるときには、即時の痛みの緩和による統計的に有意な正の総和の効果を示し、キシリトールのみを活性成分とする組成物と比較するときにはさらにもっとそうであった(表16)。
【0166】
【表16】
【0167】
例5.-感冒
肺の粘膜は、いずれかの他の粘膜のように、ユーバイオシスにあってマイクロバイオームホメオスタシスから利するときには、マイクロバイオームのモイスチャー作用と有害因子の透過に対するマイクロバイオームの防御的な防護バリア効果とを享受し、加湿、痛みの不在、および咳の不在という安楽を経験する。逆に、脱水の感覚、空咳の存在、および感冒エピソードの症状が、感染または感染の悪化の増大したリスクを有するディスバイオシスおよびマイクロバイオームシフトの存在に関連している。マイクロバイオームが特異性を失い、高齢患者を感染に対してより弱くするので、年齢はディスバイオシスのイニシエーターである。
患者の群が本発明の組成物の予防効果を試験し、本発明の組成物を用いて粘膜の加湿の主観的感覚および呼吸器エピソード数(感冒)を測定した。77歳の平均を有する19人の隠遁修道女が、本発明の組成物(表17)による鼻、口、および喉に適用される外用ジェルを用いる研究時間に発生し、前年に発生したエピソード数と比較された感冒エピソード数をカウントした。それらは質問「今は粘膜がより加湿されていると感じますか。はいまたはいいえ」にもまた答えた(表18)。
【0168】
【表17】
【0169】
【表18】
【0170】
表19は、前年と比較して、研究実施期間に19人の修道女によって発生した感冒エピソード数を示す。
【0171】
【表19】
【0172】
表19に示される通り、エピソード数の違いは統計的に有意な違いを有する。
この研究の結果は、本発明の組成物の使用がディスバイオシスを有意に防止し、感冒数を縮減することを助け得るということを実証している。
【0173】
例6.-COPDディスバイオシス
次の研究では、味の変化または不在(味覚障害または味覚喪失)の発達を、普通の肺ディスバイオシスの慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断された8人の患者の群において研究した。患者を2つの群に分割し、各群を2つの異なる錠剤;オリーブ果実乾燥エキス、ベタイン、およびキシリトールを含む本発明の組成物を包含するもの、ならびにキシリトールを有する市販の舐め用の錠剤によるものによって処置した(表20aおよび20b)。
【0174】
【表20】
【0175】
対象は、錠剤を用いることの前におよび5日のそれらを用いることの後に、質問「食べ物の味を知覚しますか?」に答えた。
1日あたり3つの錠剤を舐めて始めの(t=0)および5日後の(t=5)質問に対する答えとしての結果が、表21に示されている。
【0176】
【表21】
【0177】
粘膜ディスバイオシス、具体的には肺ディスバイオシスの普通の症状の味覚障害または味覚喪失を有する患者は、通常は、味の変化をマスキングまたは味を改善するためのキャンディおよび/またはロゼンジを舐める。これらの錠剤は通常は風味付けされ、甘い。この研究では、高い濃度のキシリトールを有する市販錠剤の使用は、5日後の食べ物の味の回復を助けなかった。対照的に、本発明の組成物による錠剤は、COPDディスバイオシスに関連して、味の回復における驚くべき正のアウトカムを有した。
【0178】
例7.-OLPディスバイオシス
口腔扁平苔癬(OLP)は、皮膚、口、または両方いずれかを冒し得るディスバイオシスである。それはコルチコステロイドによって処置される。疾患の経過の間の口腔衛生は苦痛であり、OLPを有する患者では、歯周炎の進行は不本意であり、重症である。OLPの炎症では、摂食および衛生が障害され得る。
この研究では、本発明の組成物がOLPの処置に用いられるときにコルチコイドの効力を改善することができるかどうかを分析した。
OLPの20人の患者を研究に包含した。
それぞれ10人の患者の2つの群を次の通り分けた:
群1.-コルチコステロイドによってかつ練り歯磨きとしての本発明の組成物を用いる特別な衛生措置によって処置された患者(表22の組成物7.a)。
群2.-コルチコステロイドによってかつ本発明の組成物なしの衛生措置によって処置された患者(表22の組成物7.b)。
【0179】
【表22】
【0180】
処置は30日続き、1から10の段階的なスケールが、研究の始めの(T0)、15日の処置後の(T15)、および30日の処置後の(T30)痛みについて回収された。結果は表23に示されている。
【0181】
【表23】
【0182】
表23に示される通り、本発明の組成物を包含する練り歯磨きとコルチコステロイドを組み合わせる処置は、15および30日の処置後にコルチコステロイドの効力を改善する。なぜなら、本発明の組成物によって処置された患者によって、より少ない痛みが記録されたからである。
【0183】
例8.-口臭ディスバイオシス
口臭ディスバイオシスは、嫌気性細菌、例えばとりわけポルフィロモナス・ジンジバリス、トレポネーマ・デンティコラ、およびタンネレラ・フォーサイシアへの口腔マイクロバイオームのシフトから生起する。マイクロバイオームシフトは、炎症の原因となる環境と蛋白質分解の帰結としての揮発性硫黄化合物(VSC)とを経過する。公知のVSCのいくつかは硫化水素、メチルメルカプタン、およびジメチルスルフィドである。
歯周病ディスバイオシス疾患を有する患者に存在するVSCレベルは、非歯周ディスバイオシス患者のものよりも8倍多大だと見出されるということが報告されている。しかしながら、口臭ディスバイオシスは食事制限においてもまた見出され、他の口腔ディスバイオシスに関連する。
この研究は、4週の使用後の口臭ディスバイオシスに対する異なる組成物の効果を検討する。
【0184】
材料および方法
口臭ディスバイオシスと診断された20人の患者を4つの群に分割した。各群は4つの組成物(表24)の1つをマウススプレーの形態で用い、口腔に2回スプレーすることによってそれらを1日3回用いた。
【0185】
【表24】
【0186】
方法
硫黄化合物の量を測定するデバイスの使用によって口のVSCを測定した。
VSC結果解釈
正常値(口臭ディスバイオシスなし):0から100ppb
弱い口臭ディスバイオシス:101から150ppb
強い口臭ディスバイオシス:151から300ppb
非常に強い口臭ディスバイオシス:300ppbよりも上。
対象数および測定
20人の患者を研究に包含した。当初のベースラインVSCスコアを測定し、4つの群を形成し、群間の統計的な違いを許すことなしにスコアの患者を分配した。全ての患者に、割り当てられた製品を4週に渡って用いるように命じた。最後のスコアを研究の終わりに測定し、群間の比較をなした。次々に2つの測定をし、2つの測定の平均値を計算した。
【0187】
結果
研究の始めおよび終わりにおける各群のVSC(ppb)平均が表25に示されている。
【0188】
【表25】
【0189】
試験された組成物を用いて、4週後のVSCの減少が組成物8.a(122.2ppb)、組成物8.b(30ppb)、および組成物8.c(39ppb)で観察され、軽い増大が組成物8.d(10ppb)で観察された。
【0190】
結論
キシリトール、オリーブ油、およびベタインを含む本発明の組成物(comp 8.a)は、口臭ディスバイオシスに対する有益な効果を示す。驚くべきことに、本発明の組成物では、それぞれキシリトールおよびオリーブ油を欠く組成物8.bおよび8.cと比較して相乗的な改善が得られた。
【0191】
例9.-睡眠時無呼吸およびトゥースウェアディスバイオシス
本発明の記載において説明された通り、マイクロバイオームは共生の状態において攻撃から歯を防護する。ストレス、トゥースウェアおよび睡眠時無呼吸の口腔ディスバイオシス、ならびに摂食障害または胃の逆流に関連する口腔ディスバイオシスでは、マイクロバイオームの遮断または変調が歯の過敏性および脱灰に至る。マイクロバイオームが変調するかまたは遮断されるときには、過敏性、脱灰、カリエス、および/またはトゥースウェアが起こり(例えば歯ぎしり、酸蝕、アブフラクション、咬耗を原因とする)、歯は酸性のまたは極度に酸性の媒体に溶解し始め、これらのディスバイオシスの第1の症状は過敏性である。
【0192】
材料および方法
睡眠時無呼吸ディスバイオシスと診断され、トゥースウェアおよび過敏性を示す8人の患者をリクルートし、2つの群に分けた。
第1の群は、従来の市販過敏性ジェルとフッ化物源(フッ化ナトリウム)および硝酸カリウムを含有する洗口液とによって処置された。前記成分の内容は公知であるが、定量的な組成の残りは未知である。そのため、それは表26に表示されていない。
第2の群は、洗口液およびジェルで適用された本発明の組成物によって処置された。両方の群の組成物は表26に示されている。組成物9.aは本発明の組成物による洗口液であり、組成物9.bは本発明の組成物によるジェルであり、組成物9.cは市販洗口液であり、組成物9.dは市販ジェルである。
患者は、洗口液をブラッシング後に2分に渡って1日3回適用し、ジェルを朝におよび就寝前にすすぎ後に口腔に外用で適用した。
処置は両方の群について15日続いた。
【0193】
【表26】
【0194】
方法
次の質問に対する自己報告の答えを記録した:
-冷たい水を飲めますか?
-冷蔵庫からの果物の切身を食べられますか?
-歯をブラッシングする間に敏感さを感じますか?
-口が加湿されていると感じますか?
-夜間に歯ぎしりしますか?
【0195】
結果
質問に対する答えが、15日の処置の前および後の両方の群について表27に示され、はいまたはいいえと言う対象数が示されている。
【0196】
【表27】
【0197】
結論
本発明の組成物を用いる群は症状のアウトカムの100%改善を有したが、市販製品を用いる群はいずれかの改善(加湿)を有さないか、または25から50%のみ改善した(症状の残り)。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ産物がオリーブ油および/またはオリーブ果実エキスである、ディスバイオシスの処置および/または防止への使用のためのオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを含む組成物。
【請求項2】
ディスバイオシスが粘膜ディスバイオシスまたは皮膚ディスバイオシスである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
粘膜ディスバイオシスが口腔ディスバイオシスであり、前記口腔ディスバイオシスは、好ましくは口臭ディスバイオシス、カリエスディスバイオシス、歯周ディスバイオシス、アフタ性のディスバイオシス、インプラント周囲炎ディスバイオシス、扁平苔癬ディスバイオシス、天疱瘡ディスバイオシス、睡眠時無呼吸ディスバイオシス、ストレスディスバイオシス、トゥースウェアディスバイオシス、糖尿口腔ディスバイオシス、癌口腔ディスバイオシス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ディスバイオシスが皮膚ディスバイオシスであり、前記皮膚ディスバイオシスは、好ましくはアトピー性皮膚炎ディスバイオシス、尋常性ざ瘡ディスバイオシス、乾癬ディスバイオシス、乾皮症ディスバイオシス、皮膚アレルギーディスバイオシス、放射線皮膚炎ディスバイオシス、日光皮膚炎ディスバイオシス、接触皮膚炎ディスバイオシス、脂漏性皮膚炎ディスバイオシス、頭皮ディスバイオシス、体の悪臭ディスバイオシス、早期皮膚老化ディスバイオシス、扁平苔癬ディスバイオシス、天疱瘡ディスバイオシス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
粘膜ディスバイオシスが膣ディスバイオシスである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
粘膜ディスバイオシスが肺ディスバイオシスであり、前記肺ディスバイオシスは、好ましくは慢性肺ディスバイオシス、慢性閉塞性肺ディスバイオシス、嚢胞性線維症ディスバイオシス、喘息ディスバイオシス、気管炎ディスバイオシス、気管支炎ディスバイオシス、感染性呼吸器ディスバイオシスからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
オリーブ果実エキスがオリーブ果実乾燥エキスおよび/またはオリーブ果実抽出液である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
オリーブ果実エキスが少なくとも20%w/wのヒドロキシチロソールを含む、および/または、
オリーブ油がエクストラバージンオリーブ油、バージンオリーブ油、またはそれらの組み合わせであり、好ましくはオリーブ油がエクストラバージンオリーブ油である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ベタインが、トリメチルグリシン、コカミドプロピルベタイン、ジメチルアミンベタイン、アルキル(C12-C18)アミドベタイン、アルキル(C-C18)ベタイン、アミドベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホヒドロキシベタイン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはベタインがトリメチルグリシンである、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物が0.05重量%~5.1重量%のオリーブ産物を含み、好ましくは組成物が0.05重量%~0.1重量%のオリーブ果実エキスおよび/または0.1重量%~5重量%のオリーブ油を含む、および/または、
組成物が0.1重量%~10重量%のベタインを含み、好ましくは1.0重量%~6重量%のベタインを含み、および/または、
組成物が1重量%~20重量%のキシリトールを含み、好ましくは1重量%~15重量%のキシリトールを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物が、加えて、好ましくはヒドロキシチロソール、チロソール、オレウロペイン、およびそれらの混合物、および/またはビタミンからなる群から選択される抗酸化剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、フェイシャルおよび/もしくはボディモイスチャライザー、デオドラントクリーム、リジェネラティブバリアクリーム、ボディジェル、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアローション、スキンアンプル、トニック、カプセル、錠剤、スプレー、ジェル、潤滑ジェル、外陰部用外用ジェル、練り歯磨き、洗口液、チューインガム、チュアブル錠、舐め用のカプセル、舐め用のロゼンジ、口蓋シート、キャンディ、含浸口腔スワブ、含浸口腔用ガーゼ、リップスティック、バーム、鼻腔内吸入剤、鼻腔内スプレー、鼻腔内エアロゾル、鼻腔内ジェル、口腔咽頭用シロップ、口腔咽頭用ジェル、またはエアロゾルカプセルとして製剤される、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物がさらにプレバイオティクスおよび/またはプロバイオティクスを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物がオリーブ産物、ベタイン、およびキシリトールを唯一の活性成分として含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
ヒトの体の口腔、鼻腔、膣、または皮膚の衛生への使用のための、または、
ヒトの体の粘膜または皮膚の自然な加湿を維持することへの使用のための、または、
フケ症、脂漏性皮膚炎、慢性の炎症性病態、皮膚癌、口腔癌、および呼吸器感染からなる群から選択されるディスバイオシスであり、前記呼吸器感染が好ましくは感冒、Covid-19、および肺炎からなる群から選択される、ディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態の防止への使用のための、または、
ディスバイオシスによって助長されるかまたは悪化する病態が、フケ症、脂漏性皮膚炎、慢性の炎症性病態、皮膚癌、口腔癌、および呼吸器感染からなる群から選択され、前記呼吸器感染が好ましくは感冒、Covid-19、および肺炎からなる群から選択される、アジュバントとしてのディスバイオシスによって悪化する病態の処置への使用のための、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【国際調査報告】