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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】がんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230413BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 31/145 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 31/4427 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230413BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K31/145
A61K31/47
A61K31/4427
A61P43/00 121
G01N33/574 A
A61K31/44
A61K31/165
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552144
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2021019871
(87)【国際公開番号】W WO2021173970
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/983,300
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520170726
【氏名又は名称】ザ ブロード インスティチュート,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521462484
【氏名又は名称】ダナ-ファーバー・キャンサー・インスティチュート・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴラブ,トッド,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ツベコフ,ピーター
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC17
4C086BC28
4C086BC50
4C086BC73
4C086EA17
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA71
4C206JA72
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書では、銅イオノフォアを使用したがんの処置に関する方法及び組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍及び/又は免疫細胞の成長又は増殖を阻害する方法であって、
(a)腫瘍及び/又は免疫細胞が閾値レベルを超えるタンパク質リポイル化のレベルを含むか否かを決定するステップ;及び
(b)タンパク質リポイル化のレベルが閾値レベルを超える場合、腫瘍及び/又は免疫細胞を銅イオノフォアと接触させるステップ
を含む方法。
【請求項2】
銅イオノフォアが、腫瘍細胞死及び/又は免疫細胞死を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リポイル化タンパク質が、リポイル-DLAT(リポイル-ジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ)、リポイル-DLST(リポイル-ジヒドロリポイルスクシニルトランスフェラーゼ)、リポイル-GCSH(リポイル-グリシン切断系タンパク質H)、又はリポイル-DBT(リポイル-ジヒドロリポアミド分岐鎖トランスアシラーゼE2)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
腫瘍及び/又は免疫細胞が閾値レベルを超えるタンパク質リポイル化のレベルにより特徴付けられるか否かを決定するステップが、腫瘍及び/又は免疫細胞の細胞内のタンパク質リポイル化のレベルを測定することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
腫瘍及び/又は免疫細胞が閾値レベルを超えるミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベルにより特徴付けられるか否かを決定するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
腫瘍及び/又は免疫細胞が閾値レベルを超えるミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベルにより特徴付けられるか否かを決定するステップが、腫瘍及び/又は免疫細胞の細胞内のミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベルを測定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ミトコンドリアタンパク質が、銅イオノフォアに結合する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
銅イオノフォアが、ジチオカルバメートである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
銅イオノフォアが、ピリチオン亜鉛である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
銅イオノフォアが、テトラメチルチウラムモノスルフィドである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
銅イオノフォアが、オキシキノリン(8HQ)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
銅イオノフォアが、チラムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
銅イオノフォアが、Cu(GTSM)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
銅イオノフォアが、NSC-319726である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
銅イオノフォアが、FR-122047である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
銅イオノフォアが、Cu(isapn)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
銅イオノフォアが、パウロンベースの錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
銅イオノフォアが、カシオペイナ(Casiopeina)ベースの錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
銅イオノフォアが、ビス(セミカルバゾン)Cu錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
銅イオノフォアが、イサチン-シッフベースの錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
銅イオノフォアが、(D-グルコピラノース)-4-フェニルチオセミカルバジドCu錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
銅イオノフォアが、BCANa2である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
銅イオノフォアが、BCSNa2である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
銅イオノフォアが、BCSANa2である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
銅イオノフォアが、PTAである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
銅イオノフォアが、DAPTAである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
銅イオノフォアが、可溶性チオセミカルバゾン錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
銅イオノフォアが、シッフ塩基錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
銅イオノフォアが、ジチオカルバメートである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
銅イオノフォアが、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
銅イオノフォアが、式Aの化合物又はその塩:
【化1】
[式中、
Yは、共有結合若しくは場合により置換された直鎖ヒドロカルビル基である、又は、Yは、それが結合している両方の>C=Z基と一緒になって、場合により置換された芳香族基であり;
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成し;
R7及びR8は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、又は場合により置換されたアリール基であり;
Zは、O又はSである]
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
銅イオノフォアが、式B1の化合物又はその塩:
【化2】
[式中、
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成し;
R7及びR8は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、又は場合により置換されたアリール基であり;
Zは、O又はSである]
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
銅イオノフォアが、式B2の化合物又はその塩:
【化3】
[式中、
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成する]
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
銅イオノフォアが、式Cの化合物又はその塩:
【化4】
[式中、
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成し;
R5及びR6は、独立して、-H又は低級アルキルであり;
R7及びR8は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、又は場合により置換されたアリール基であり;
Zは、O又はSである]
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
銅イオノフォアが、式Dの化合物又はその塩:
【化5】
[式中、
各Zは、独立して、S、O又はSeであり、但しZの両方がOではあり得ず;
R1及びR2は、それぞれ独立して、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル;場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換された複素環式基であって、炭素-炭素連結を介してチオカルボニル炭素に結合した複素環式基、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~7員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリールであって、ヘテロアリール基は炭素-炭素連結を介してチオカルボニル炭素に結合したヘテロアリール、-NR12R13、-OR14、-SR14及び-S(O)pR15からなる群から選択され;
R3及びR4は、それぞれ独立して、水素、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換された複素環式基、及び場合により置換された5~6員アリール若しくはヘテロアリール基からなる群から選択され;又は
R1及びR3及び/若しくはR2及びR4は、それらが結合している原子と一緒になって、場合により置換された複素環式基若しくは場合により置換されたヘテロアリール基を形成し;
R5は、-CR6R7-、-C(=CHR8)-又は-C(=NR8)-であり;
R6及びR7は、両方とも-H又は場合により置換された低級アルキルであり;
R8は、-OH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたシクロアルキル又は場合により置換された複素環式基;-NR10R11、及び-COR9からなる群から選択され;
R9は、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5員又は6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたシクロアルキル又は場合により置換された複素環式基であり;
R10及びR11は、それぞれ独立して、-H、-OH、アミノ、(ジ)アルキルアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたシクロアルキル若しくは場合により置換された複素環式基及び-COR9からなる群から選択され、又は、R10及びR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5~6員ヘテロアリール基を形成し;
R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、-H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたフェニル若しくは場合により置換されたベンジルであり、又は、R12及びR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、場合により置換された複素環式基若しくは場合により置換されたヘテロアリール基を形成し;
R15は、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール又は場合により置換されたヘテロアリールであり、
pは、1又は2であり;
但し、両方のZがSでありR3及びR4が両方ともメチルである場合、R1及びR2の両方が非置換フェニルではない]
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
銅イオノフォアが、式Eの化合物又はその塩:
【化6】
[式中、
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成する]
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
銅イオノフォアが、以下の式の化合物又はその塩:
【化7】
[式中、
R1及びR2は、独立して、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、ハロ、ニトロ、シアノ、グアニジノ、-OR17、-NR19R20、-C(O)R17、-C(O)OR17、-OC(O)R17、-C(O)NR19R20、-NR18C(O)R17、-OP(O)(OR17)2、-SP(O)(OR17)2、-SR17、-S(O)pR17、-OS(O)pR17、-S(O)pOR17、-NR18S(O)pR17、又は-S(O)pNR19R20であり;
R3及びR4は、独立して、-H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアリール又は場合により置換されたヘテロアリールであり;
R7及びR8は、それぞれ独立して、-H若しくは場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクリルであり、又は、R7は-Hであり、R8は場合により置換されたアリール若しくは場合により置換されたヘテロアリール;及びR1、R2、R3であり;
R12は、独立して、-H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、又はハロである]
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
銅イオノフォアが、ALDH阻害剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
銅イオノフォアが、エレスクロモールである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ミトコンドリアタンパク質が、FDX1(フェレドキシン1)である、請求項5~7又は39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
銅イオノフォアが、ジスルフィラムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ミトコンドリアタンパク質が、ALDHA1(アルデヒドデヒドロゲナーゼA1)又はALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2)である、請求項1~7又は10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ミトコンドリアタンパク質が、リポ酸生合成に関与するタンパク質である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項44】
リポ酸生合成に関与するタンパク質が、LIAS(リポ酸シンセターゼ)、LIPT1(リポイルトランスフェラーゼ1)若しくはLIPT2(リポイルトランスフェラーゼ2)、又はDLD(ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ)である、請求項5、6又は43に記載の方法。
【請求項45】
腫瘍及び/又は免疫細胞を銅イオノフォアと接触させるステップが、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体、分岐鎖アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体、及び/又はグリシン切断を阻害する、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
腫瘍及び/又は免疫細胞を、銅イオノフォアと併せて別の抗がん剤で処置するステップをさらに含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
銅イオノフォアが、抗がん剤単独に比べて抗がん剤の効果を増強する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
抗がん剤が、化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、又はプロテアソーム阻害剤である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
抗がん剤が、化学療法剤である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
化学療法剤が、シタラビンである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
化学療法剤が、b-raf阻害剤である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
化学療法剤が、ドセタキセルである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
化学療法剤が、イマチニブである、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
抗がん剤が、EGFR阻害剤である、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
EGFR阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
EGFR阻害剤が、ゲフィチニブである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
EGFR阻害剤が、オシメルチニブである、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
銅イオノフォアが、抗がん剤単独に比べて抗がん剤の腫瘍細胞死及び/又は免疫細胞死を増強する、請求項46~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
銅イオノフォアが、銅(II)を予め担持している、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
銅イオノフォアが、エレスクロモールである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
銅イオノフォアが、ジスルフィラムである、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
対象における抗がん剤による処置に対して難治性のがんを処置する方法であって、
(a)がんが閾値レベルを超えるタンパク質リポイル化のレベルにより特徴付けられるか否かを決定するステップ;及び
(b)がんが閾値レベルを超えるタンパク質リポイル化のレベルにより特徴付けられる場合、銅イオノフォア及び抗がん剤を併せて対象に投与するステップを含む方法。
【請求項63】
抗がん剤が、化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、又はプロテアソーム阻害剤である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
抗がん剤が、化学療法剤である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
化学療法剤が、シタラビンである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
化学療法剤が、b-raf阻害剤である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
化学療法剤が、ドセタキセルである、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
化学療法剤が、イマチニブである、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
抗がん剤が、EGFR阻害剤である、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
EGFR阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
EGFR阻害剤が、ゲフィチニブである、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
EGFR阻害剤が、オシメルチニブである、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
リポイル化タンパク質が、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、又はリポイル-DBTである、請求項62~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
がんが閾値レベルを超えるタンパク質リポイル化のレベルにより特徴付けられるか否かを決定するステップが、がんの細胞内のタンパク質リポイル化のレベルを測定することを含む、請求項62~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
がんが閾値レベルを超えるミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベルにより特徴付けられるか否かを決定するステップをさらに含む、請求項62~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
がんが閾値レベルを超えるミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベルにより特徴付けられるか否かを決定するステップが、がんの細胞内のミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベルを測定することを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
銅イオノフォアが、ミトコンドリアタンパク質に結合する、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項78】
銅イオノフォアが、ジチオカルバメートである、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
銅イオノフォアが、ピリチオン亜鉛である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
銅イオノフォアが、テトラメチルチウラムモノスルフィドである、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
銅イオノフォアが、オキシキノリン(8HQ)である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
銅イオノフォアが、チラムである、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
銅イオノフォアが、Cu(GTSM)である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
銅イオノフォアが、NSC-319726である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
銅イオノフォアが、FR-122047である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
銅イオノフォアが、Cu(isapn)である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
銅イオノフォアが、パウロンベースの錯体である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
銅イオノフォアが、カシオペイナ(Casiopeina)ベースの錯体である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
銅イオノフォアが、ビス(チオセミカルバゾン)Cu錯体である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
銅イオノフォアが、イサチン-シッフベースの錯体である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
銅イオノフォアが、(D-グルコピラノース)-4-フェニルチオセミカルバジドCu錯体である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
銅イオノフォアが、BCANa2である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
銅イオノフォアが、BCSNa2である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
銅イオノフォアが、BCSANa2である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
銅イオノフォアが、PTAである、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
銅イオノフォアが、DAPTAである、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
銅イオノフォアが、可溶性チオセミカルバゾン錯体である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
銅イオノフォアが、シッフ塩基錯体である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
銅イオノフォアが、ジチオカルバメートである、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
銅イオノフォアが、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
銅イオノフォアが、式Aの化合物又はその塩:
【化8】
[式中、
Yは、共有結合若しくは場合により置換された直鎖ヒドロカルビル基であり、又は、Yは、それが結合している両方の>C=Z基と一緒になって、場合により置換された芳香族基であり;
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成し;
R7及びR8は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、又は場合により置換されたアリール基であり;
Zは、O又はSである]
である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
銅イオノフォアが、式B1の化合物又はその塩:
【化9】
[式中、
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成し;
R7及びR8は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、又は場合により置換されたアリール基であり;
Zは、O又はSである]
である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
銅イオノフォアが、式B2の化合物又はその塩:
【化10】
[式中、
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であるか、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成する]
である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
銅イオノフォアが、式Cの化合物又はその塩:
【化11】
[式中、
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成し;
R5及びR6は、独立して、-H又は低級アルキルであり;
R7及びR8は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、又は場合により置換されたアリール基であり;
Zは、O又はSである]
である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
銅イオノフォアが、式Dの化合物又はその塩:
【化12】
[式中、
各Zは、独立して、S、O又はSeであり、但しZの両方がOではあり得ず;
R1及びR2は、それぞれ独立して、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル;場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換された複素環式基であって、炭素-炭素連結を介してチオカルボニル炭素に結合した複素環式基、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~7員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリールであって、ヘテロアリール基は炭素-炭素連結を介してチオカルボニル炭素に結合したヘテロアリール、-NR12R13、-OR14、-SR14及び-S(O)pR15からなる群から選択され;
R3及びR4は、それぞれ独立して、水素、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換された複素環式基、及び場合により置換された5~6員アリール若しくはヘテロアリール基からなる群から選択され;又は
R1及びR3及び/若しくはR2及びR4は、それらが結合している原子と一緒になって、場合により置換された複素環式基若しくは場合により置換されたヘテロアリール基を形成し;
R5は、-CR6R7-、-C(=CHR8)-又は-C(=NR8)-であり;
R6及びR7は、両方とも-Hであるか、又は場合により置換された低級アルキルであり;
R8は、-OH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたシクロアルキル又は場合により置換された複素環式基;-NR10R11、及び-COR9からなる群から選択され;
R9は、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5員又は6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたシクロアルキル又は場合により置換された複素環式基であり;
R10及びR11は、それぞれ独立して、-H、-OH、アミノ、(ジ)アルキルアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたシクロアルキル若しくは場合により置換された複素環式基及び-COR9からなる群から選択され、又は、R10及びR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5~6員ヘテロアリール基を形成し;
R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、-H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたフェニル若しくは場合により置換されたベンジルであり、又は、R12及びR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、場合により置換された複素環式基若しくは場合により置換されたヘテロアリール基を形成し;
R15は、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール又は場合により置換されたヘテロアリールであり、
pは、1又は2であり;
但し、両方のZがSでありR3及びR4が両方ともメチルである場合、R1及びR2の両方が非置換フェニルではない]
である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
銅イオノフォアが、式Eの化合物又はその塩:
【化13】
[式中、
R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成する]
である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
銅イオノフォアが、以下の式の化合物又はその塩:
【化14】
[式中、
R1及びR2は、独立して、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、ハロ、ニトロ、シアノ、グアニジノ、-OR17、-NR19R20、-C(O)R17、-C(O)OR17、-OC(O)R17、-C(O)NR19R20、-NR18C(O)R17、-OP(O)(OR17)2、-SP(O)(OR17)2、-SR17、-S(O)pR17、-OS(O)pR17、-S(O)pOR17、-NR18S(O)pR17、又は-S(O)pNR19R20であり;
R3及びR4は、独立して、-H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアリール又は場合により置換されたヘテロアリールであり;
R7及びR8は、それぞれ独立して、-H若しくは場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクリルであり、又は、R7は-Hであり、R8は場合により置換されたアリール若しくは場合により置換されたヘテロアリール;及びR1、R2、R3であり;
R12は、独立して、-H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、又はハロである]
である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
銅イオノフォアが、ALDH阻害剤である、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
銅イオノフォアが、エレスクロモールである、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
ミトコンドリアタンパク質が、FDX1である、請求項75~77又は109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
銅イオノフォアが、ジスルフィラムである、請求項62~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
ミトコンドリアタンパク質が、ALDHA1又はALDH2である、請求項75~77又は111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
ミトコンドリアタンパク質が、リポ酸生合成に関与するタンパク質である、請求項75又は76に記載の方法。
【請求項114】
リポ酸生合成に関与するタンパク質が、LIAS、LIPT1、LIPT2、又はDLDである、請求項75、76又は113に記載の方法。
【請求項115】
腫瘍及び/又は免疫細胞を銅イオノフォアと接触させるステップが、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体、分岐鎖アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体、及び/又はグリシン切断を阻害する、請求項62~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
銅イオノフォアが、銅(II)を予め担持している、請求項62~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
銅イオノフォアが、エレスクロモールである、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
銅イオノフォアが、ジスルフィラムである、請求項116に記載の方法。
【請求項119】
候補抗がん剤を特定する方法であって、
(a)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;
(b)細胞試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルを測定するステップ;及び
(c)細胞タンパク質リポイル化のレベルが、試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップ
を含む方法。
【請求項120】
試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルが、試験薬剤と接触させる前の細胞試料における細胞タンパク質リポイル化のレベルである、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルが、対応する対照細胞試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルである、請求項119又は120に記載の方法。
【請求項122】
試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルが、試験薬剤と接触させた細胞試料を代表する1種以上の参照試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルである、請求項119~121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
リポイル化タンパク質が、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、又はリポイル-DBTである、請求項119~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
細胞試料におけるミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベル又は活性を測定するステップ、及びミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベル又は活性が、試験薬剤と接触させていない細胞試料のミトコンドリアタンパク質及び/又はミトコンドリアタンパク質をコードする核酸のレベル又は活性と比較して減少しているか否かを決定するステップをさらに含む、請求項119~123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
ミトコンドリアタンパク質が、FDX1、ALDHA1、ALDH2、LIAS、LIPT1、LIPT2、DLD、又はピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体、分岐鎖アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体、及び/又はグリシン切断である、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
細胞試料における細胞死のレベルを測定するステップ、及び細胞死のレベルが試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞死のレベルと比較して増加しているか否かを決定するステップをさらに含む、請求項119~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
腫瘍及び/又は免疫細胞における増加したミトコンドリア代謝を決定する方法であって、腫瘍及び/又は免疫細胞内のリポ酸を染色するステップを含む方法。
【請求項128】
候補抗がん剤を特定する方法であって、
(a)細胞試料を銅補足培地と共にインキュベートするステップ;
(b)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;
(c)細胞試料の細胞生存能力を測定するステップ;及び
(d)細胞生存能力のレベルが、銅補足培地と共にインキュベートし試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞生存能力のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップ
を含む方法。
【請求項129】
候補抗がん剤を特定する方法であって、
(a)細胞試料を銅キレート剤と共にインキュベートするステップ;
(b)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;
(c)細胞試料の細胞死を測定するステップ;及び
(d)細胞死のレベルが、銅キレート剤と共にインキュベートし試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞死のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップ
を含む方法。
【請求項130】
候補抗がん剤を特定するためのキットであって、試験薬剤及び細胞タンパク質リポイル化を測定するためのアッセイを含むキット。
【請求項131】
候補抗がん剤を特定するためのキットであって、銅補足培地、試験薬剤及び細胞生存能力を測定するためのアッセイを含むキット。
【請求項132】
候補抗がん剤を特定するためのキットであって、銅キレート剤、試験薬剤及び細胞死を測定するためのアッセイを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月28日に出願された米国仮特許出願第62/983,300号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞は、生き残るために細胞毒性ストレッサーに適応し、細胞死経路を変化させる驚くべき能力を発揮する。がん細胞が、がん標的治療に耐えることができる最初の能力は、解糖から、増加したミトコンドリア代謝への、代謝の転換に関連している。増加したミトコンドリア代謝への転換は、いくつかのがんモデルにおいて薬物抵抗性に関連している。さらに、この薬物抵抗性状態は、エレスクロモールと名付けられた銅イオノフォアに対する脆弱性の増加を示す。エレスクロモールは銅と結合して細胞死を促進し、エレスクロモールに誘導される細胞死は、細胞内及び細胞外の両方における銅の利用可能性に依存する。細胞が解糖から、増加したミトコンドリア代謝に転換すると、エレスクロモールによる細胞死誘導は著しく増強される。近年、複数の全ゲノム及び代謝遺伝子に着目したCRISPR/Cas9に基づく遺伝子欠失スクリーニングにより、リポ酸経路の遺伝子の欠失、及びミトコンドリアタンパク質フェレドキシン1(FDX1)をコードする遺伝子の欠失がエレスクロモール誘導性細胞死から細胞を救済することが明らかとなった。さらに、遺伝学的及び生化学的解析により、FDX1がリポ酸経路の上流の重要な制御因子であり、銅イオノフォア、例えばエレスクロモールによる細胞死誘導の主要な制御因子であることが明らかとなった。これらの発見から、銅及びリポ酸経路の、増加したミトコンドリア代謝への転換促進における役割が明らかとなった。このようなミトコンドリア代謝の理解は、がんの処置、特に既存の内因性薬物抵抗性、及び薬物曝露後の獲得薬物抵抗性に対抗するアンメット・ニーズがあるがんにおいて、非常に重要である。
【発明の概要】
【0003】
特定の態様では、腫瘍及び/又は免疫細胞の成長又は増殖を阻害することに関する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍及び/又は免疫細胞が閾値レベルを超えるタンパク質リポイル化のレベルにより特徴付けられるか否かを決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、タンパク質リポイル化のレベルが閾値レベルを超える場合、腫瘍及び/又は免疫細胞を銅イオノフォアと接触させるステップを含む。
【0004】
特定の態様では、抗がん剤による処置に対して難治性であるがんについて対象を処置することに関する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、がんが閾値レベルを超えるタンパク質リポイル化のレベルを含むか否かを決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、がんが閾値レベルを超えるタンパク質リポイル化のレベルにより特徴付けられる場合、銅イオノフォア及び抗がん剤を併せて対象に投与するステップを含む。
【0005】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定することに関する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞試料を試験薬剤と接触させるステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルを測定するステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞タンパク質リポイル化のレベルが、試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞タンパク質リポイル化のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む。
【0006】
特定の態様では、腫瘍及び/又は免疫細胞における増加したミトコンドリア代謝を決定することに関する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍及び/又は免疫細胞内のリポ酸を染色するステップを含む。
【0007】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定することに関する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞試料を銅補足培地と共にインキュベートするステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞試料を試験薬剤と接触させるステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞試料の細胞生存能力を測定するステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞生存能力のレベルが、銅補足培地と共にインキュベートし試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞生存能力のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む。
【0008】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定することに関する方法が本明細書で提供される。そのような方法は、細胞試料を銅キレート剤と共にインキュベートするステップ、細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ、及び/又は細胞試料の細胞死を測定するステップを含んでもよい。そのような方法において、細胞死のレベルが、銅キレート剤と共にインキュベートし試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞死のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤は候補抗がん剤として特定され得る。
【0009】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定するためのキットであって、試験薬剤及び細胞タンパク質リポイル化を測定するためのアッセイを含むキットが本明細書で提供される。
【0010】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定するためのキットであって、銅補足培地、試験薬剤及び細胞生存能力を測定するためのアッセイを含むキットが本明細書で提供される。
【0011】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定するためのキットであって、銅キレート剤、試験薬剤及び細胞死を測定するためのアッセイを含むキットが本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エレスクロモールの殺傷における銅の役割を実証する、例示的な結果を示す図である。
図2】Tsvetkovら、Nat Chem Bio、2019年による、全ゲノムCRISPRレスキュースクリーニングの例示的な結果を示す図である。
図3】Tsvetkovら、Nat Chem Bio、2019年による、エレスクロモール感受性のPRISMバイオマーカー解析を示す図である。
図4】Tsvetkovら、Nat Chem Bio、2019年による、エレスクロモール結合残基を着色したFDX1のリボン構造を示す図である。
図5】Tsvetkovら、Nat Chem Bio、2019年による、エレスクロモールの非存在下(対照)、又は5倍のエレスクロモール若しくは10倍のエレスクロモールの存在下におけるFe-S集合体の経時変化を示す図である。
図6】Tsvetkovら、Nat Chem Bio、2019年による、エレスクロモール-Cu(II)がFDX1のネオ基質であることを示す例示的な結果を示す図である。
図7-1】ミトコンドリア代謝レベルの上昇により、エレスクロモール感受性が予測されることを示す例示的な結果を示す図である。
図7-2】同上。
図8】FDX1が細胞内のリポ酸経路を制御すること、リポ酸が銅と結合すること、及びエレスクロモールが細胞内のリポ酸を還元することを示す例示的な結果を示す図である。
図9】例示的化合物によるがん細胞の銅依存性細胞死の促進を示す図である。
図10】エレスクロモール感受性の腫瘍におけるミトコンドリア代謝レベルの上昇をリポ酸染色で示す図である。
図11】ミトコンドリア銅毒性が非アポトーシス細胞死を引き起こすことを示す例示的な結果を示す図である。
図12】PRISM Repurposing二次スクリーニングの例示的な結果を示す図である。ヒートマップは、各化合物ペアの全用量間の最大ピアソン相関を用いて着色されている。
図13】10μM FeCl2、FeCl3、ZnCl2、NiCl、CuCl2、又はCoCl2の存在下で、指定薬物の用量を増やして処置した後のMON細胞生存能力を示す図である。
図14】10μM FeCl2、FeCl3、ZnCl2、NiCl、CuCl2、又はCoCl2の存在下で、指定薬物の用量を増やして処置した後のNCIH2030細胞生存能力を示す図である。
図15】BCPAP細胞及びPSN1細胞において、血清中の銅存在量がエレスクロモールの毒性を決定することを示す図である。
図16】A549細胞において、血清中の銅存在量がエレスクロモールの毒性を決定することを示す図である。
図17】3000種の代謝関連遺伝子を標的としたライブラリー(遺伝子あたり約10gRNA)を用いたA549細胞におけるCRISPR-Cas9ポジティブセレクションスクリーニングの実験セットアップを示す図である。
図18】A549細胞におけるFDX1の欠失により、エレスクロモール-Cu(II)及びジスルフィラム-銅(II)に対して相対的な抵抗性が付与され、OVISE細胞におけるLIAS又はFDX1の欠失により、エレスクロモール-Cu(II)に対して抵抗性が付与されることを示す図である。
図19】FDX1の欠失が、2つの異なる経路の構成成分の欠失と相関していることを示す図である。
図20】FDX1の欠失により、OVISE細胞及びK562細胞の両方において細胞内のリポイル化タンパク質が排除されることを実証する、例示的なウェスタンブロットを示す図である。
図21】FDX1の欠失により、OVISE細胞及びK562細胞の両方において細胞内のリポイル化タンパク質が排除されることを実証する、例示的な顕微鏡画像を示す図である。
図22】リポ酸経路におけるFDX1機能の提案モデルを示す図である。
図23】により試験した、724の細胞株の生存能力分布を示す図である。
図24】FDX1発現レベルの実験的検証を示す図である。
図25】抵抗性細胞及び感受性細胞におけるリポイル化タンパク質のウェスタンブロット解析を示す図である。
図26】A549細胞を1μM エレスクロモール(+CuCl2)で処置した後、リポイル化のレベルが低下することを示す図である。
図27】1μM CuCl2若しくは1μM CuCl2のいずれかでインキュベートした細胞の、24時間の対照処置又は100nM エレスクロモールによる処置の例示的な顕微鏡写真を示す図である。
図28】エレスクロモール又はエレスクロモール-Cu(1:1の比率)のいずれかで処置した後の、5つの卵巣がん細胞株の生存能力を示す図である。
図29】アポトーシス経路を示す図である。実験的に阻害された標的は赤で示されている。
図30】グルコース又はガラクトースのいずれかを含有する培地で成長させた143B及び143B Rho0細胞の、72時間後の例示的な生存能力の結果を示す図である。
図31】143B及び143B Rho0細胞を、指示濃度のエレスクロモール-Cu(1:1の比率)で処置した72時間後の例示的な生存能力の結果を示す図である。
図32-1】A~F:異なる化合物(ピリチオン-Cuは、ピリチオン-CuCl2(1:1);TMT-Cuは、TMT-CuCl2(1:1);8HQ-Cuは、8-HQ-CuCl2(1:1);ジスルフィラム-Cuは、ジスルフィラム-CuCl2(1:1);NSC319726-Cuは、NSC319726-Cu Cl2 1(1:1);AntiAは、アンチマイシンAである)の指示濃度で処置した後のHCM18対照細胞又はBax及びBax欠失細胞の例示的な生存能力の結果を示す図である。
図32-2】G~L:培地中10mMグルコース又は10mMガラクトースの存在下で成長させたNCHIH2030細胞の、72時間後の例示的な生存能力の結果を示す図である(ピリチオン-Cuは、ピリチオン-CuCl2(1:1);TMT-Cuは、TMT-CuCl2(1:1);8HQ-Cuは、8-HQ-CuCl2(1:1);ジスルフィラム-Cuは、ジスルフィラム-CuCl2(1:1);NSC319726-Cuは、NSC319726-Cu Cl2 1(1:1);AntiAは、アンチマイシンAである)。
図32-3】M~U:指定濃度の指示された化合物(ピリチオン-Cuは、ピリチオン-CuCl2(1:1);TMT-Cuは、TMT-CuCl2(1:1);8HQ-Cuは、8-HQ-CuCl2(1:1);ジスルフィラム-Cuは、ジスルフィラム-CuCl2(1:1);NSC319726-Cuは、NSC319726-Cu Cl2 1(1:1);AntiAは、アンチマイシンAである)で72時間処置した後の143B及び143B Rho0細胞の例示的な生存能力の結果を示す図である。
図33】A~D:CRISPR-Cas9遺伝子ノックアウトスクリーニングの例示的な結果を示す図である。
図34】リポ酸経路の概略図である。Fe-Sクラスター酵素LIASは、DLATを含む酵素のリシンリポイル化を制御する。
図35】FDX1 KO K562細胞とAAVS1 K562対照細胞との間における代謝物の平均Log2倍率変化を関数表記で区切って示す図である。オレンジ色でマークされた代謝物は、リポ酸経路に関連するものである。
図36】指示濃度のエレスクロモールで8時間処置し、リポイル化タンパク質含量について解析したMON細胞の例示的なウェスタンブロットを示す図である。
図37】40nM エレスクロモールで細胞を6時間処置した後の、リポイル化DLAT及びDLSTレベルの例示的な定量化を示す図である。
図38】FDX1遺伝子コピー変化解析の例示的な結果を示す図である。
図39】1,583種の化合物による第1の薬物スクリーニングの結果(左図)、851種の化合物による第2の薬物スクリーニングの結果(中図)、及び例示的な銅イオノフォア(右図)を示す図である。第1の薬物スクリーニングは、プロテアソーム阻害剤抵抗性細胞対対照のモデルで、1,583種の化合物を4~5用量で実施した。第2の薬物スクリーニングは、高いOXPHOS対解糖系細胞代謝のモデルで、851種の化合物を5用量で実施した。銅イオノフォアは、高いOXPHOS及びPI抵抗性の両方の状態にある細胞を優先的に殺傷する唯一の化合物群である。
図40】古典的な細胞死経路(アポトーシス、ネクロトーシス、フェロトーシス)及びキュプロプトーシス(cupropotosis)細胞死経路の概略図である。キュプロプトーシスは、他の制御型細胞死プログラム、例えばアポトーシス、フェロトーシス及びネクロトーシスと共通しない、異なる下流制御因子を有する新しい形態の制御型細胞死である。
図41】2種の銅イオノフォアを用いた全ゲノムCRISPR/Cas9欠失スクリーニングの例示的な結果(左図)、及びキュプロプトーシスから救済する全ての遺伝子欠失がFDX1制御タンパク質リポイル化に関連していることを示すベン図(右図)を示す図である。2種の異なる銅結合イオノフォア(エレスクロモール-Cu及びCu-DDC)をポジティブセレクションした、全ゲノム標的CRISPR/Cas9欠失スクリーニングでは、欠失により両方の化合物に対する抵抗性が促進される共通の遺伝子クラスが1つ明らかとなった。これらの遺伝子には、FDX1、タンパク質リポイル化酵素(LIAS、LIPT1、及びDLD)、並びにリポイル化タンパク質複合体ピルビン酸デヒドロゲナーゼのサブユニット(DLAT、PDHA1、及びPDHB)が含まれていた。
図42】タンパク質リポイル化経路の概略図である。
図43】FDX1がタンパク質リポイル化の上流制御因子であることを立証したタンパク質リポイル化経路の概略図(左図)、及び数百のがん細胞株における遺伝子欠失依存性のDepMap解析(右図)を示す図である。数百のがん細胞株における遺伝子依存性解析により、FDX1の遺伝子依存性はリポイル化に関与するタンパク質の依存性と高い相関があることが明らかとなった。
図44】エレスクロモール感受性細胞株及びエレスクロモール抵抗性細胞株におけるFDX1及びリポイル化タンパク質のタンパク質レベルを実証する、例示的なグラフを示す図である。
図45】異なる発生源の数百の腫瘍におけるリポイル化タンパク質の免疫組織化学(IHC)染色アッセイに基づく例示的なグラフを示す図である。患者層別化のためのタンパク質バイオマーカーとしてのタンパク質リポイル化を立証している。
図46】胃腸間質腫瘍(GIST)の例示的なIHC顕微鏡写真(左図)及びSDH(コハク酸デヒドロゲナーゼ)欠損-GISTの円グラフを示す図である。ほぼ全てのSDHB欠損-GIST腫瘍が、高レベルのタンパク質リポイル化を示している。染色結果より、ミトコンドリア複合体IIタンパク質であるSDHBが枯渇した特定のGIST腫瘍(主にSDHA及びDHB遺伝子の突然変異による)では、特に高いレベルのLA染色を示すことが明らかとなった。
図47】バイオマーカー陽性マウス異種移植モデルを立証する例示的なグラフを示す図である。
図48】エレスクロモールスキャフォールドに基づく例示的な新しい銅イオノフォアを示す図である。設計は、扱いやすい構造活性相関、及び構造物性相関に基づく。エレスクロモールの6種の類似体が、初期の扱いやすいSARで合成された。
図49】細胞におけるエレスクロモール-Cu(II)類似体の細胞毒性が、その酸化還元電位に依存することを示す図である。銅と結合した場合の異なるエレスクロモール類似体の酸化還元電位は、該化合物が効率的に細胞を死滅させるために、-50mV~-400mVである(MD-MBA455ではIC50<300nM)。
図50】489の細胞株に対する1,448種の薬物の成長阻害推定値を含む、PRISM Repurposing二次スクリーニングの結果を示す図である。銅イオノフォアは、薬物空間においてクラスター化している。
図51】創薬パイプラインの概略図である。
図52-1】A~C:ヒト乳癌腫(n=67)、卵巣癌腫(n=84)、及びヒト非小細胞肺癌腫(NSCLC)切除(N=57、1症例あたり2複製)においてLA及びFDXをIHC染色し、発現を半定量的に2人の病理医により採点した(S.C.、S.S.)組織マイクロアレイ(TMA)解析の例示的なグラフを示す図であり、LA発現とFDX発現との間に強い直接相関があることを示す(平均±S.D.;p<0.0001)。
図52-2】D~F:例示的なIHC染色顕微鏡写真を示す図である。IHCによるLA及びFDX1の相関した低発現(上段)及び高発現(下段)を示す乳癌腫(D)、卵巣癌腫(E)及びNSCLC(F)の代表的な症例である(スケールバー20μm)。
図53-1】A~D:PSN1(A~B)、BCPAP(C)及びABC1細胞(D)において、FDX1の欠失により細胞内のリポイル化タンパク質(DLAT及びDLST)が排除されることを実証する、例示的なウェスタンブロットを示す図である。
図53-2】E~H:ABC1細胞(E~F)及びPSN1細胞(G~H)の両方において、FDX1の欠失により呼吸が止まることを実証する、例示的なグラフを示す図である。律速リポイル化酵素LIASを参照対照(reference control)として用いた。
図54】A~E:2つの濃度のエレスクロモール-Cu(40nM及び100nM)に対するA549細胞株の、2回の全ゲノムCRISPR/Cas9欠失スクリーニングによるFDX1(A)、DLAT(B)、DLD(C)及びLIAS(D)遺伝子のlog倍率変化対計算p値の例示的プロットを示す図である。(E)異なる濃度のエレスクロモールについて、あらかじめ決められた(4)724のがん細胞株の生存能力及びFDX1 mRNA発現の相関スコアである。
図55】A~C:対照AAVS1又はFDX1遺伝子欠失のいずれかを有するABC1細胞の単一細胞クローンの例示的なウェスタンブロット及びグラフを示す図である。図Aは、FDX1、リポイル化DLAT及びDLST、並びにビンキュリン(ローディングコントロールとして)を示す。各単一細胞クローンのエレスクロモール(1μM CuCl2存在下)に対する相対的感受性を図Aの下部から図Bで測定した。図Cは、エレスクロモールのEC50及び相対的FDX1タンパク質レベルの相関を示す。FDX1がある閾値を超えて減少すると、細胞のエレスクロモールに対する抵抗性が増加する。
図56-1】マウスモデルで前述した薬物動態(PK)特性を模倣する条件におけるエレスクロモールの有効性を試験した例示的なグラフを示す図である。図Aは、バイオマーカー陽性(FDX1遺伝子高発現)細胞が、バイオマーカー陰性細胞よりもエレスクロモールへの感受性が高いことを実証する。図B及びCは、培地中に1μM CuCl2の存在下で100nM エレスクロモールを2時間パルス後、指定時点で測定した、バイオマーカー陽性細胞-ABC1(図B)及びバイオマーカー陰性-A549(図C)細胞の生存能力を示す。図D及び図Eは、100nM エレスクロモールで2時間パルス処置を行った24時間後にABC1(D)及びA549(E)で測定された代謝物の相対的な変化を示す。図Fは、100nM エレスクロモールでパルス処置した後のABC1細胞におけるセドヘプツロース-7-リン酸の変化を示す。図Gは、1nM エレスクロモールで24時間処置した対照AAVS1細胞及びFDX1 KO ABC1細胞におけるセドヘプツロース-7-リン酸の変化を示す。
図56-2】同上。
図56-3】同上。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概要
特定の態様では、本明細書で提供される方法及び組成物は、部分的に、特定のバイオマーカーを発現する腫瘍細胞は銅イオノフォアで効果的に処置することが可能であるという発見に基づく。例示的な銅イオノフォアとしては、米国特許出願第2018/0353445号において先に開示されたエレスクロモール及びジスルフィラムが挙げられる。本明細書で提供されるのは、腫瘍細胞における特定のバイオマーカー、例えばリポイル化タンパク質(例えば、リポイル-DLAT、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、リポイル-DBT)及びリポ酸生合成タンパク質(例えば、LIAS、LIPT1、LIPT2、DLD)のレベルを測定する方法である。また、本明細書では、銅イオノフォア(例えば、FDX1、ALDHA1、ALDH2)と結合する特定のミトコンドリアタンパク質と結合したバイオマーカーを測定する方法も提供される。特定の態様では、本明細書で提供される方法及び組成物は、腫瘍の成長若しくは増殖を阻害し、難治性がんを処置し、及び/又は候補抗がん剤を特定するために有利に用いられ得る。例えば、特定の実施形態では、本明細書で提供される方法及び組成物は、標的薬物療法に抵抗性のあるがんの処置に特に有用である。
【0014】
定義
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲にて用いられる特定の用語をここに集めた。
【0015】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の、1つ又は2つ以上(つまり、少なくとも1つ)の目的語を指すために本明細書で用いられる。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0016】
本明細書で用いられる場合、用語「投与する」は、医薬品又は組成物を対象に提供することを意味し、限定するものではないが、医療従事者による投与及び自己投与を含む。
【0017】
用語「剤」は、任意の物質、化合物(例えば、分子)、超分子複合体、材料、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物を指す。
【0018】
用語「抗体」は、無傷抗体及びその抗原結合性断片の両方を指す場合がある。無傷抗体は、ジスルフィド結合によって相互に結合した、少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)及び重鎖定常領域を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)及び軽鎖定常領域を含む。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域、及びCDRが散在する、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存性の高い領域にさらに細分化され得る。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の最初の構成成分(Clq)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。用語「抗体」は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、単鎖抗体及び抗原結合抗体断片を含む。
【0019】
用語「生体試料」、「組織試料」、又は単に「試料」はそれぞれ、対象の組織から得られた細胞の集合体を指す。組織試料の供給源は、新鮮、凍結及び/若しくは保存された臓器、組織試料、生検、若しくは吸引物からのような固体組織;血液若しくは任意の血液成分、血清、血液;体液、例えば脳脊髄液、羊水、腹膜液若しくは間質液、尿、唾、便、涙;又は対象の妊娠若しくは発育の任意の時点における細胞であり得る。
【0020】
用語「結合する」又は「相互作用する」は、例えば、生理的条件下での静電的、疎水的、イオン的及び/又は水素結合的な相互作用による、2つの分子間の会合(安定した会合である場合もある)を指す。
【0021】
用語「測定する」は、試料中の物質の存在、不在、分量、又は有効量(そのような物質の濃度レベルを含む)を決定することを指す。
【0022】
用語「難治性」は、処置に対して反応しないがんを指す。反応の欠如は、例えば、腫瘍成長阻害の欠如若しくは腫瘍成長の増大;腫瘍細胞数減少の欠如若しくは腫瘍細胞数の増加;隣接する末梢臓器及び/若しくは組織への腫瘍細胞浸潤の増加;転移の増加;処置後の生存期間の減少;並びに/又は死亡率によって評価することができる。がんは、処置開始時に抵抗性であってもよく、処置中に抵抗性になってもよい。
【0023】
本明細書で用いられる場合、用語「対象」は、処置又は治療のために選択されたヒト又は非ヒト動物を意味する。
【0024】
用語「治療(処置)すること」は、予防的及び/又は治療的処置を含む。用語「予防的又は治療的」処置は当技術分野で認識され、1種以上の対象組成物の、宿主への投与を含む。望ましくない状態(例えば、疾患又は宿主動物の他の望ましくない状態)の臨床的発現に先立って投与される場合には、処置は予防的であり(即ち、望ましくない状態を発症することから宿主を保護する)、一方で、望ましくない状態の発現後に投与される場合には、処置は治療的である(即ち、存在する望ましくない状態又はその副作用をなくすか、改善するか、又は安定化することが意図される)。
【0025】
本明細書で用いられる場合、障害又は状態を「予防する」治療薬とは、統計試料で、処置済み試料において、未処置の対照試料と比較して、障害若しくは状態の出現を減少させるか、又は未処置の対照試料と比較して、障害若しくは状態の開始を遅らせるか、又は1つ以上の症状の重症度を低減する化合物を指す。
【0026】
特定の実施形態では、治療的化合物は、単独で用いられてもよく、別の種類の治療剤(例えば、本明細書に開示される免疫療法剤又は化学療法剤)と併せて投与されてもよい。本明細書で用いられる場合、語句「併せて投与する」は、既に投与された治療的化合物が身体に依然として効果がある間に第2の化合物が投与されるような、2つ以上の異なる治療的化合物の任意の形態における投与を指す。(例えば、この2つの化合物が患者において同時に効果があり、これは2つの化合物の相乗的効果を含み得る)。例えば、異なる治療的化合物は、同一の製剤として又は別々の製剤としてのいずれかで、同時又は経時的のいずれかで投与され得る。特定の実施形態では、異なる治療的化合物は、互いに1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、又は1週間以内に投与され得る。したがって、そのような処置を受ける個体は、異なる治療的化合物の組み合わせ効果が有益であり得る。
【0027】
特定の実施形態では、治療的化合物を1つ以上の付加的な治療剤(例えば、1つ以上の付加的な化学療法剤)と併せて投与することは、化合物(例えば、銅イオノフォア)又は1つ以上の付加的な治療剤のそれぞれ個々の投与と比較して、有効性の改善をもたらす。特定のそのような実施形態では、併せて投与することは相加的効果をもたらし、相加的効果とは、治療的化合物及び1つ以上の付加的な治療剤の個々の投与におけるそれぞれの効果の総計を指す。
【0028】
医薬組成物及び投与
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、医薬組成物、及び医薬組成物を用いる方法である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、銅イオノフォア(例えば、エレスクロモール、ジスルフィラム)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、抗がん剤(例えば、化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、又はプロテアソーム阻害剤)を含む。
【0029】
本発明はまた、それを必要とする対象を処置するために利用され得る組成物及び方法を提供する。特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、がん、場合により薬物抵抗性がん、例えば、リポイル化のバイオマーカーを有する薬物抵抗性がんを有する。対象、例えば、ヒトに投与される場合、組成物又は化合物は、好ましくは、例えば、治療的化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される。薬学的に許容される担体、例えば、水溶液、例えば、水若しくは生理学的に緩衝された生理食塩水、又は他の溶媒若しくはビヒクル、例えば、グリコール、グリセロール、油、例えば、オリーブ油若しくは注射可能な有機エステルは、当該技術分野で周知である。特定の実施形態では、そのような医薬組成物がヒトへの投与用のもの、特に侵襲性投与経路(即ち、経路、例えば、上皮バリアを通した輸送又は拡散を回避した注射又は埋込みなど)用のものであれば、該水溶液は、パイロジェンフリー又は実質的にパイロジェンフリーである。例えば薬剤の遅延放出をもたらすように、又は1種以上の細胞、組織若しくは臓器を選択的に標的にするように、賦形剤を選択することができる。医薬組成物は、単位投与剤型、例えば、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、顆粒、再構成される凍結乾燥物、粉末、溶液、シロップ、坐剤、注射などであり得る。該組成物はまた、経皮送達システム、例えば皮膚パッチ中に存在し得る。該組成物はまた、外用投与に適した溶液中、例えば点眼薬中に存在し得る。
【0030】
特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いられる語句「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル封入材料を意味する。薬学的に許容される担体は、例えば安定化させるように、溶解度を上昇させるように、又は化合物の吸収を増加させるように働く、生理学的に許容される薬剤を含有し得る。そのような生理学的に許容される薬剤としては、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース若しくはデキストラン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸若しくはグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質、又は他の安定化剤若しくは賦形剤が挙げられる。生理学的に許容される薬剤を含む薬学的に許容される担体の選択は、例えば該組成物の投与経路に依存する。調製物又は医薬組成物は、自己乳化薬物送達システム又は自己微小乳化薬物送達システムであり得る。該医薬組成物(調製物)はまた、例えば治療的化合物を内部に取り込み得るリポソーム又は他のポリマーマトリックスであり得る。例えばリン脂質又は他の脂質を含むリポソームは、作製及び投与することが比較的簡単であり、非毒性で生理学的に許容され、代謝可能な担体である。
【0031】
語句「薬学的に許容される」は、サウンドメディカルジャッジメントの範囲内で、人類及び動物の組織と接触させる使用に適し、過剰な毒性、過敏症、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を生じず、合理的な利益/リスク比にふさわしい、それらの化合物、材料、組成物及び/又は投与剤型を指すために本明細書で用いられる。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、例えば経口(例えば、水性若しくは非水性溶液又は懸濁液、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、ボーラス、粉末、顆粒、舌へ塗布されるペーストなどの飲薬);口腔粘膜を通した吸収(例えば、舌下);経肛門、経直腸又は経腟(例えば、ペッサリー、クリーム又はフォームとして);非経口(筋肉内、静脈内、皮下又は髄腔内など、例えば滅菌溶液又は懸濁液として);鼻内;腹腔内;皮下;経皮(例えば、皮膚へ付着させるパッチとして);及び外用(例えば、皮膚へ塗布されるクリーム、軟膏若しくはスプレーとして、又は点眼薬として)を含む複数の投与経路のいずれかによって対象に投与され得る。該化合物はまた、吸入用に配合され得る。特定の実施形態では、化合物は、単に滅菌水中に溶解又は懸濁され得る。適切な投与経路及びそれに適した組成物の詳細は、例えば米国特許第6,110,973号、同第5,763,493号、同第5,731,000号、同第5,541,231号、同第5,427,798号、同第5,358,970号及び同第4,172,896号、並びに本明細書に引用された特許に見出され得る。
【0033】
該製剤は、簡便には単位投与剤型中に存在し得、薬剤の技術分野で周知の任意方法によって調製され得る。単一投与剤型を製造するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、処置される宿主、特定の投与様式に応じて変動するであろう。単一投与剤型を製造するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、一般には治療効果を生じる化合物の量であろう。一般に、100%のうち、この量は、有効成分約1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲内であろう。
【0034】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、活性化合物を担体、及び場合により1種以上の補助成分と混合するステップを含む。一般に該製剤は、化合物を液状担体若しくは微細固体担体又はそれらの両方と均一且つ密接に混合し、その後、必要に応じて生成物を成形すること、によって調製される。
【0035】
経口投与に適した製剤は、それぞれが化合物の所定量を有効成分として含有する、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、カシェ、丸薬、錠剤、トローチ錠(香味ベース、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカントを用いる)、凍結乾燥物、粉末、顆粒の形態、或いは水性若しくは非水性液中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンとして、又はエリキシル若しくはシロップとして、又はパステル剤(不活性ベース、例えば、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアを用いる)及び/又は洗口液としてなどであり得る。組成物又は化合物はまた、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与され得る。
【0036】
経口投与のための固体投与剤型(カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤、丸薬、糖剤、粉末、顆粒など)を調製するために、有効成分が、薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウム及び/又は以下のもののいずれかの1種以上と混和される:(1)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/又はアカシア;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイトクレイ;(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物;(10)錯化剤、例えば、修飾及び非修飾シクロデキストリン;並びに(11)着色剤。カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤及び丸薬の場合、該医薬組成物はまた、緩衝剤を含み得る。類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖のような賦形剤及び高分子量ポリエチレングリコールなどを用いた軟及び硬充填ゼラチンカプセルへの充填剤として用いられ得る。
【0037】
錠剤は、場合により1種以上の補助成分と共に、圧縮又は成形することによって作製され得る。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、若しくは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤又は分散剤を用いて調製され得る。成形錠は、不活性液体希釈剤で加湿された該粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製され得る。
【0038】
医薬組成物の錠剤及び他の固体投与剤型、例えば糖剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、丸薬及び顆粒は、場合により刻み目が付けられているか、又はコーティング及びシェル、例えば腸溶性コーティング及び医薬配合の技術分野で周知の他のコーティングと共に調製され得る。それらはまた、所望の放出プロファイルを提供するために、例えば様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はミクロスフェアを用いて、有効成分の徐放又は制御放出を提供するように配合され得る。それらは、例えば細菌捕捉フィルターを通す濾過により、又は使用直前に滅菌水若しくは何らかの他の滅菌注射可能媒体に溶解され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより、滅菌され得る。これらの組成物はまた、場合により乳白剤を含有することができ、そして場合により徐放性で、胃腸管の特定部位のみで、又はそこに優先的に、有効成分を放出する組成物であり得る。用いられ得る埋入組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。有効成分はまた、適宜、上記賦形剤の1種以上との、マイクロカプセル化形態であり得る。
【0039】
経口投与に有用な液体投与剤型としては、薬学的に許容されるエマルジョン、再構成される凍結乾燥物、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。液体投与剤型は、有効成分に加えて当該技術分野で一般に用いられる不活性希釈剤、例えば水又は他の溶媒、シクロデキストリン及びその誘導体、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含有し得る。
【0040】
経口組成物はまた、不活性希釈剤の他にアジュバント、例えば、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤及び防腐剤を含み得る。
【0041】
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガカント、並びにそれらの混合物を含有し得る。
【0042】
経直腸、経腟又は尿道投与のための医薬組成物の製剤は、坐剤として存在することができ、該坐剤は、1種以上の活性化合物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス又はサリチル酸塩を含む1種以上の適切な非刺激性賦形剤又は担体と混合することにより調製され得、室温では固体であるが体温では液体となり、それにより直腸又は腟腔で融解して活性化合物を放出する。
【0043】
口へ投与するための医薬組成物の製剤は、洗口液若しくは経口スプレー又は経口軟膏として存在し得る。
【0044】
或いは、又は加えて、組成物は、カテーテル、ステント、ワイヤー又は他の腔内デバイスを介した送達のために配合され得る。そのようなデバイスを介した送達は、膀胱、尿道、尿管、直腸又は腸への送達に特に有用であり得る。
【0045】
経腟投与に適した製剤としては、当該技術分野において適切であることが公知である担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤も挙げられる。
【0046】
外用又は経皮投与用の投与剤型としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容される担体及び必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝剤又は噴射剤と混和され得る。
【0047】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物性及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、サリチル酸、タルク及び酸化亜鉛、又はそれらの混合物を含有し得る。
【0048】
粉末及びスプレーは、活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含有し得る。加えてスプレーは、慣用される噴射剤、例えばクロロフルオロヒドロカーボン及び揮発性非置換炭化水素、例えばブタン及びプロパンを含有し得る。
【0049】
本明細書で用いられる語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、通常は注射による、腸内及び外用投与以外の投与様式を意味し、限定するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内及び胸骨内の注射及び輸液を含む。非経口投与に適した医薬組成物は、1種以上の活性化合物を、1種以上の薬学的に許容される滅菌等張水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョン、又は滅菌粉末と併せて含み、該滅菌粉末は、使用直前に滅菌注射可能溶液若しくは分散液に再構成され得、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、該製剤を予定のレシピエントの血液と等張性にする溶質、又は懸濁若しくは増粘剤を含有し得る。
【0050】
医薬組成物中で用いられ得る適切な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、並びに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。適度な流動性が、コーティング材料、例えばレシチンの使用により、分散物の場合には必要となる粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により、維持され得る。
【0051】
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含有し得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの含有によって確実になり得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含ませることが望ましい場合もある。加えて、注射可能な医薬形態の長期吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの吸収を遅延させる薬剤の含有によってもたらされ得る。
【0052】
いくつかの例において、薬物の効果を延長するためには、皮下又は筋肉注射からの薬物の吸収を緩徐にすることが望ましい。これは、難水溶性である結晶又は非晶質材料の懸濁液の使用によって完遂され得る。その場合、薬物の吸収速度は、溶解速度に依存し、そして溶解速度もまた、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。或いは、非経口投与された薬物形態の吸収遅延が、油性ビヒクルに薬物を溶解又は懸濁させることによって完遂される。
【0053】
注射可能なデポー形態は、生体分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド中で対象の化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成させることによって作製される。ポリマーに対する薬物の比率、及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度が制御され得る。他の生体分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(酸無水物)が挙げられる。デポー注射可能製剤は、身体組織と適合性があるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を封入することによっても調製される。
【0054】
特定の実施形態では、活性化合物は、そのままで、又は例えば0.1~99.5%(より好ましくは0.5~90%)の有効成分を薬学的に許容される担体と併せて含有する医薬組成物として、与えられ得る。
【0055】
導入方法は、再充填性又は生体分解性デバイスによっても提供され得る。タンパク質性生物製剤を含む様々な徐放性ポリマーデバイスが、近年になり薬物の制御送達用に開発され、in vivoでテストされた。生分解性及び非分解性ポリマーの両方を含む様々な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を用いて、特定の標的部位における化合物の持続放出のためのインプラントを形成させることができる。
【0056】
医薬組成物中の有効成分の、実際の投与レベルは、対象への毒性を生じずに、特定の対象、投与組成及び様式に関する所望の治療反応を実現するのに効果的な有効成分量を得るように変動され得る。
【0057】
所望なら、活性化合物の有効1日用量が、場合により単位投与剤型で、1、2、3、4、5、6、又はそれよりも多くの分割用量として、1日のうちに適度な間隔をおいて別々に投与され得る。特定の実施形態では、活性化合物は、1日に2又は3回投与され得る。いくつかの実施形態では、活性化合物は、1日1回投与される。
【0058】
特定の実施形態では、化合物は、単独で用いられてもよく、別の種類の治療剤(例えば、本明細書に開示される免疫療法剤又は化学療法剤)と併せて投与されてもよい。本明細書で用いられる場合、語句「併せて投与する」は、既に投与された治療的化合物が身体に依然として効果がある間に第2の化合物が投与されるような、2つ以上の異なる治療的化合物の任意の形態における投与を指す。(例えば、この2つの化合物が患者において同時に効果があり、これは2つの化合物の相乗的効果を含み得る)。例えば、異なる治療的化合物は、同一の製剤として又は別々の製剤としてのいずれかで、同時又は経時的のいずれかで投与され得る。特定の実施形態では、異なる治療的化合物は、互いに1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、又は1週間以内に投与され得る。したがって、そのような処置を受ける個体は、異なる治療的化合物の組み合わせ効果が有益であり得る。
【0059】
特定の実施形態では、治療的化合物を1つ以上の付加的な治療剤(例えば、1つ以上の付加的な化学療法剤)と併せて投与することは、化合物(例えば、銅イオノフォア)又は1つ以上の付加的な治療剤のそれぞれ個々の投与と比較して、有効性の改善をもたらす。特定のそのような実施形態では、併せて投与することは相加的効果をもたらし、相加的効果とは、治療的化合物及び1つ以上の付加的な治療剤の個々の投与におけるそれぞれの効果の総計を指す。
【0060】
特定の実施形態では、化合物の薬学的に許容される塩を、本明細書で提供される方法において用いることができる。適切な塩としては、限定するものではないが、HCl、トリフルオロ酢酸(TFA)、マレイン酸塩、アルキル、ジアルキル、トリアルキル又はテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。特定の実施形態では、想定される塩としては、限定するものではないが、L-アルギニン、ベネンタミン(benenthamine)、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール(deanol)、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リシン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、及び亜鉛塩が挙げられる。特定の実施形態では、想定される塩としては、限定するものではないが、Na、Ca、K、Mg、Zn、銅、コバルト、カドミウム、マンガン、又は他の金属塩が挙げられる。
【0061】
湿潤剤、乳化剤及び滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤、防腐剤及び抗酸化剤もまた、該組成物中に存在し得る。
【0062】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)脂溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法で用いられる治療的化合物は、銅イオノフォアである。例示的な銅イオノフォアが表1に示されている。
【0064】
【表1】
【0065】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はパウロンベースの錯体であり、その代表的な2つの構造を以下に示す。
【0066】
【化1】
【0067】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はカシオペイナ(Casiopeina)ベースの錯体であり、その代表的な2つの構造を以下に示す。
【0068】
【化2】
【0069】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はビス(チオセミカルバゾン)Cu錯体であり、その代表的な構造を以下に示す。
【0070】
【化3】
【0071】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はイサチン-シッフベースの錯体であり、その代表的な2つの構造を以下に示す。
【0072】
【化4】
【0073】
いくつかの実施形態では、治療的化合物は(D-グルコピラノース)-4-フェニルチオセミカルバジドCu錯体であり、その代表的な構造を以下に示す。
【0074】
【化5】
【0075】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はBCANa2であり、その代表的な構造を以下に示す。
【0076】
【化6】
【0077】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はBCSNa2であり、その代表的な構造を以下に示す。
【0078】
【化7】
【0079】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はBCSANa2であり、その一般的な構造を以下に示す。
【0080】
【化8】
【0081】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はPTAであり、その構造を以下に示す。
【0082】
【化9】
【0083】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はDAPTAであり、その構造を以下に示す。
【0084】
【化10】
【0085】
いくつかの実施形態では、治療的化合物は可溶性チオセミカルバゾン錯体であり、その代表的な構造を以下に示す。
【0086】
【化11】
【0087】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はシッフ塩基錯体であり、その代表的な構造を以下に示す。
【0088】
【化12】
【0089】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はジチオカルバメートである。いくつかの実施形態では、ジチオカルバメートは、テトラエチルチウラムジスルフィド(ジスルフィラム;CAS登録番号97-77-8)であり、その構造を以下に示す。
【0090】
【化13】
【0091】
いくつかの実施形態では、治療的化合物は化合物339と称されるジスルフィラム類似体である(Sharma, V.ら、Mol Carcinog.2015年11月24日 doi: 10.1002/mc.22433.[Epub ahead of print])。いくつかの実施形態では、化合物はジスルフィラム代謝物である。いくつかの実施形態では、ジチオカルバメートはピロリジンジチオカルバメート(PDTC)である。
【0092】
いくつかの実施形態では、治療的化合物はビス(チオ-ヒドラジドアミド)である。例示的なビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、米国特許第6,762,204号、同第6,800,660号、同第6,924,312号、同第7,001,923号、同第7,037,940号、米国特許出願公開第2003/0045518号、同第2003/0119914号、同第2003/0195258号、及び同第2008/0119440号に記載されている。例えば、いくつかの実施形態において、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)(bis(thio-hydrazamide amide))は、米国特許第6,800,660号に開示された構造式(I)~(VI)のいずれかによって表され、様々な変数及び化学用語はそこに記載されたとおりに定義される。いくつかの実施形態では、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、米国特許出願公開第2008/0119440号(US20080119440)に開示された構造式I、II、IIIa、IIIb、IVa、IVb又はVのいずれかによって表され、様々な変数及び化学用語はそこに記載されたとおりに定義される。便宜上、特定のそのような用語の定義は、以下に記載されている。いくつかの実施形態では、例えば、化合物は、以下の構造式(US20080119440に記載されている式1):
【0093】
【化14】
[式中、Yは、共有結合若しくは場合により置換された直鎖ヒドロカルビル基である、又は、Yは、それが結合している両方の>C=Z基と一緒になって、場合により置換された芳香族基であり;R1~R4は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたアリール基であり、又は、R1及びR3は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、及び/若しくは、R2及びR4は、それらが結合している炭素及び窒素原子と一緒になって、芳香環に場合により縮合した非芳香環を形成し;R7及びR8は、独立して、-H、場合により置換された脂肪族基、又は場合により置換されたアリール基であり;Zは、O又はSである]を有する。特定の実施形態では、ZはOである。特定の実施形態では、R1、R2、又はその両方は、場合により置換されたフェニル基である。いくつかの実施形態では、R1及びR2は同じである。いくつかの実施形態では、R3及びR4は、低級アルキル基、例えばメチル基である。いくつかの実施形態では、R3及びR4は同じである。特定の実施形態では、YはCH2である。特定の実施形態では、ZはOであり;R1、R2又はその両方は、場合により置換されたフェニル基であり、これらは場合により同じであり;R3及びR4は、低級アルキル基(C1~C8の直鎖又は分枝アルキル基、又はC3~C8の環状アルキル基)、例えば、メチル基であり、これらは場合により同じであり;YはCH2である。特定の実施形態では、ZはOであり;R1、R2又はその両方は、場合により置換されたシクロプロピル基であり、これらは場合により同じであり;R3及びR4は、低級アルキル基(C1~C8の直鎖又は分枝アルキル基、又はC3~C8の環状アルキル基)、例えば、メチル基であり、これらは場合により同じであり;YはCH2である。特定の実施形態では、R3、R4、又はその両方はシクロプロピルである。特定の実施形態では、R3、R4、又はその両方はメチルシクロプロピルである。本明細書で用いられる場合、単結合はダッシュ記号(-)で表され、二重結合は等号(=)で表される。
【0094】
いくつかの実施形態では、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、以下の式(US20080119440に記載されている式Mb):
【0095】
【化15】
[式中、Z、R1、R2、R3、R4、R7、及びR8は、式Aについて上で定義したとおりである]を有する。いくつかの実施形態では、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、以下の式(US20080119440に記載されている式V):
【0096】
【化16】
[式中、R1、R2、R3、及びR4は、式Aについて上で定義したとおりである]を有する。
【0097】
式B1又はB2の化合物におけるいくつかの実施形態では、R1及びR2は、両方ともフェニルであり、R3及びR4は、両方ともO-CH3-フェニルであり;R1及びR2は、両方ともO-CH3C(O)O-フェニルであり、R3及びR4はフェニルであり;R1及びR2は、両方ともフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともフェニルであり、R3及びR4は、両方ともエチルであり;R1及びR2は、両方ともフェニルであり、R3及びR4は、両方ともn-プロピルであり;R1及びR2は、両方ともp-シアノフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともp-ニトロフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともフェニルであり、R3及びR4は、両方ともn-ブチルであり;R1及びR2は、両方ともp-クロロフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも3-ニトロフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも3-シアノフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも3-フルオロフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2-フラニルであり、R3及びR4は、両方ともフェニルであり;R1及びR2は、両方とも2-メトキシフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも3-メトキシフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2-メトキシ-5-クロロフェニルであり、R3及びR4は、両方ともエチルであり;R1及びR2は、両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2,5-ジクロロフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2,5-ジメチルフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2-メトキシ-5-クロロフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも3,6-ジメトキシフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともフェニルであり、R3及びR4は、両方とも2-エチルフェニルであり;R1及びRは、両方とも2-メチル-5-ピリジルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;又は、R1はフェニルであり;R2は2,5-ジメトキシフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともメチルであり、R3及びR4は、両方ともp-CH3-フェニルであり;R1及びR2は、両方ともメチルであり、R3及びR4は、両方ともO-CH3-フェニルであり;R1及びR2は、両方とも-(CH2)3COOHであり;R3及びR4は、両方ともフェニルであり;R1及びR2は、両方とも以下の構造式:
【0098】
【化17】
によって表され、R3及びR4は、両方ともフェニルであり;R1及びR2は、両方ともn-ブチルであり、R3及びR4は、両方ともフェニルであり;R1及びR2は、両方ともn-ペンチルであり、R3及びR4は、両方ともフェニルであり;R1及びR2は、両方ともメチルであり、R3及びR4は、両方とも2-ピリジルであり;R1及びR2は、両方ともシクロヘキシルであり、R3及びR4は、両方ともフェニルであり;R1及びR4は、両方ともメチルであり、R3及びR4は、両方とも2-エチルフェニルであり;R1及びR2は、両方ともメチルであり、R3及びR4は、両方とも2,6-ジクロロフェニルであり;R1~R4は全てメチルであり;R1及びR2は、両方ともメチルであり、R3及びR4は、両方ともt-ブチルであり;R1及びR2は、両方ともエチルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともt-ブチルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともシクロプロピルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともシクロプロピルであり、R3及びR4は、両方ともエチルであり;R1及びR2は、両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2-メチルシクロプロピルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも1-フェニルシクロプロピルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方とも2-フェニルシクロプロピルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともシクロブチルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1及びR2は、両方ともシクロペンチルであり、R3及びR4は、両方ともメチルであり;R1はシクロプロピルであり、R2はフェニルであり、R3及びR4は、両方ともメチルである。いくつかの実施形態では、例えば、R1及びR2は置換又は非置換フェニル基であり、R3及びR4は、低級アルキル基(例えば、メチル)であり、いくつかの実施形態では、(i)R1及びR2は同じである;(ii)R3及びR4は同じである;又は(iii)R1及びR2は同じであり、R3及びR4は同じである。
【0099】
いくつかの実施形態では、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、以下の式(US20080119440に記載されている式IIIa):
【0100】
【化18】
[式中、Z、R1、R2、R3、R4、R7、及びR8は、式Aについて上で定義したとおりであり、R5及びR6は、独立して、-H又は低級アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピルである]を有する。いくつかの実施形態では、ZはOである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、及びR4は、式B1又はB2について定義したとおりであり、R5及びR6は、独立して、-H又は低級アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピルである。
【0101】
本明細書で用いられる場合、別途指示がない限り、US20080119440と一致して、「アルキル基」は、飽和直鎖又は分枝鎖の、線状又は環状炭化水素基である。典型的には、直鎖又は分岐アルキル基は、1~約20個の炭素原子、好ましくは1~約10個の炭素原子を有し、環状アルキル基は、3~約10個の炭素原子、好ましくは3~約8個の炭素原子を有する。アルキル基は、好適には、直鎖又は分岐アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチル若しくはオクチル、又は3~約8個の炭素原子を有するシクロアルキル基である。C1~C8直鎖若しくは分岐アルキル基、又はC3~C8環状アルキル基は、上記のように、「低級アルキル」基とも称される。
【0102】
「直鎖ヒドロカルビル基」は、アルキレン基、即ち、-(CH2)y-であり、1個以上(好ましくは1個)の内部メチレン基(-(CH2)-)が場合により連結基で置き換えられている。yは正の整数(例えば、1~10)、好ましくは1~6、より好ましくは1又は2である。本文脈中、「連結基」は、直鎖ヒドロカルビル中のメチレンを置き換える官能基を指す。適切な連結基の例としては、ケトン(-C(O)-)、アルケン、アルキン、フェニレン、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、又はアミン(-N(R3)-)が挙げられ、ここでRは以下に定義される。
【0103】
「脂肪族基」は、完全に飽和しているか、又は1つ以上の不飽和単位を含有する直鎖、分枝又は環状非芳香族炭化水素である。典型的には、直鎖又は分岐脂肪族基は、1~約20個の炭素原子、好ましくは1~約10個の炭素原子を有し、環状脂肪族基は、3~約10個の炭素原子、好ましくは3~約8個の炭素原子を有する。脂肪族基は、好適には、直鎖又は分岐アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチル若しくはオクチル、又は3~約8個の炭素原子を有するシクロアルキル基である。
【0104】
用語「芳香族基」は、「アリール」、「アリール環」、「芳香環」、「アリール基」及び「芳香族基」と同じ意味で用いられ得る。芳香族基としては、炭素環式芳香族基、例えばフェニル、ナフチル、及びアントラシル、並びにヘテロアリール基、例えばイミダゾリル、チエニル、フラニル、ピリジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾール、オキサゾリル、テトラゾールが挙げられる。用語「ヘテロアリール基」は、「ヘテロアリール」、「ヘテロアリール環」、「ヘテロ芳香環」及び「ヘテロ芳香族基」と同じ意味で用いられ得る。ヘテロアリール基は、環構造中にヘテロ原子、例えば、硫黄、酸素、窒素を1個以上含む芳香族基である。好ましくは、ヘテロアリール基は、1~4個のヘテロ原子を含む。芳香族基にはまた、炭素環式芳香環又はヘテロアリール環が1つ以上の他のヘテロアリール環に縮合した縮合多環式芳香環系も含まれる。例としては、ベンゾチエニル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイミダゾール、キノリニル、イソキノリニル及びイソインドリルが挙げられる。非芳香族複素環は、環内にヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄を1個以上含む非芳香環である。環は、5員、6員、7員又は8員であり得る。好ましくは、複素環式基は、1~約4個のヘテロ原子を含む。例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、及びチアゾリジニルが挙げられる。
【0105】
アリール基又は脂肪族基に対する適切な置換基の例は、米国特許出願公開第2008/0119440号に記載されている。例えば、いくつかの実施形態では、置換基は、Ra、-OH、-Br、-Cl、-F、-O-CORa、-CN、-NCS、-NO2、-COOH、-NH2、-N(RaRb)、-COORa、-CHO、-CONH2、-CONHRa、-CON(RaRb)、-NHCORa、-NRCCORa、-NHCONH2、-NHCONRaH、-NHCON(RaRb)、-NRcCONH2、-NRCCONaH、-NRcCON(RaRb)、-C(=NH)-NH2、-C(=NH)-NHW、-C(=NH)-N(RaRb)、-C(NRc)-NH2、-C(=NRc)-NHRa、-C(=NRc)-N(RaRb)、-NH-C(=NH)-NH2、-NH-C(=NH)-NHRa、-NH-C(=NH)-N(RaRb)、-NH-C(=NRc)-NH2、-NH-C(=NRc)-NHa、-NH-C(=NRc)-N(RaRb)、-NRd-C(=NH)-NH2、-NRd-C(=NH)-NHRa、-NRd-C(=NH)-N(RaRb)、-NRd-C(=NRc)-NH2、-NRd-C(=NRc)-NHRa、-NRd-C(=NRc)-N(RaRb)、-NHNH2、-NHNHRa、-NHNRaRb、-SO2NH2、-SO2NHRa、-SO2NRaRb、-CH=CHRa、-CH=CRaRb、-CRcCRaRb、-CRc=CHRa、-CRc=CRaRb、-CCRa、-SH、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Raから選択される基であり、Ra~Rdはそれぞれ独立して、アルキル基、芳香族基、非芳香族複素環式基である;又は、-N(RaRb)は、一緒になって、場合により置換された非芳香族複素環式基を形成し、Ra~Rdで表されるアルキル、芳香族及び非芳香族複素環式基、及び-N(RaRb)で表される非芳香族複素環式基が、それぞれ場合により、且つ独立して、R#[ここで、Rは、R+、-O(ハロアルキル)、-SR+、-NO2、-CN、-NCS、-N(R+)2、-NHCO2R+、-NHC(O)R+、-NHNHC(O)R+、-NHC(O)N(R+)2、-NHNHC(O)N(R+)2、-NHNHCO2R+、-C(O)C(O)R+、-C(O)CH2C(O)
R+、-CO2R+、-C(O)R+、C(O)N(R+)2、-OC(O)R+、-OC(O)N(R+)2、-S(O)2R-、-SO2N(R+)2、-S(O)R+、-NHSO2N(R+)2、-NHSO2R+、-C(=S)N(R+)2、又は-C(=NH)-N(R+)2であり;R+は、-H、C1~C4アルキル基、単環式ヘテロアリール基、非芳香族複素環式基又はアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロ、-CN、-NO2、アミン、アルキルアミン若しくはジアルキルアミンで場合により置換されたフェニル基である;又は、-N(R+)2は非芳香族複素環式基であり、但しR+及び-N(R+)2で表される非芳香族複素環式基のうち、第二級環アミンを構成するものは、場合によりアシル化又はアルキル化されている]で表される1つ以上の基で置換されている。
【0106】
特定の実施形態において、フェニル基の置換基、例えば、R1~R4で表される位置に存在してもよいフェニル基としては、C1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルキル、C1~C4ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2又は-CNが挙げられる。特定の実施形態において、シクロアルキル基の置換基、例えば、R1及びR2で表される位置に存在してもよいシクロアルキル基は、アルキル基、例えばメチル基又はエチル基である。特定の実施形態では、R1及びR2は、両方とも少なくとも1つのアルキル基で場合により置換されたC3~C8シクロアルキル基である。
【0107】
いくつかの実施形態では、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、米国特許出願公開第2008/0119440号に記載されている化合物(1)~(18)のいずれかである。いくつかの実施形態では、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、エレスクロモールであり、その構造は以下のとおりである。
【0108】
【化19】
【0109】
いくつかの実施形態では、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、エレスクロモール又はその類似体である。適切な類似体のいくつかの例は、以下のとおりである。
【0110】
【化20】
【0111】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるビス(チオ-ヒドラジドアミド)化合物のいずれか(例えば、エレスクロモール又はその類似体)を、プロテアソーム阻害剤のいずれか(例えば、ボルテゾミブ(bortezomib)、カルフィルゾミブ(carfilzomib)、オプロゾミブ(opmzomib)、イキサゾミブ(ixazoinib)、デランゾミブ(delanzomib)、又はこれらのいずれかの類似体)と併用して、がんの処置を必要とする対象を処置する。がんは、プロテアソーム阻害剤に対して抵抗性であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるビス(チオ-ヒドラジドアミド)化合物(例えば、エレスクロモール又はその類似体)及びプロテアソーム阻害剤は、同じ組成物中で投与される。いくつかの実施形態では、それらは別々に投与される。いくつかの実施形態では、方法は、1回以上のプロテアソーム阻害剤投与を受けた、又は受けることが予想される対象に、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)を投与するステップを含む。プロテアソーム阻害剤投与を受けることが予想される対象は、プロテアソーム阻害剤が処方された対象、又は対象の医療提供者、例えば対象のがん専門医によって、プロテアソーム阻害剤を処方若しくは投与する計画が有形媒体に付された対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の投与から4週間以内にプロテアソーム阻害剤投与を受けることが予想される。いくつかの実施形態では、方法は、1回以上のビス(チオ-ヒドラジドアミド)投与を受けた、又は受けることが予想される対象に、プロテアソーム阻害剤を投与するステップを含む。ビス(チオ-ヒドラジドアミド)投与を受けることが予想される対象は、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)が処方された対象、又は対象の医療提供者、例えば対象のがん専門医によって、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)を処方若しくは投与する計画が有形媒体に付された対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、プロテアソーム阻害剤の投与から4週間以内にビス(チオ-ヒドラジドアミド)投与を受けることが予想される。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるビス(チオ-ヒドラジドアミド)化合物のいずれか(例えば、エレスクロモール又はその類似体)を、任意の1種以上のEGFR阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、チロシンキナーゼ阻害剤又はこれらのいずれかの類似体)と併用して、がんの処置を必要とする対象を処置し得る。がんは、EGFR阻害剤に対して抵抗性であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるビス(チオ-ヒドラジドアミド)化合物(例えば、エレスクロモール又はその類似体)及びEGFR阻害剤は、同じ組成物中で投与される。他の実施形態では、それらは別々に投与される。いくつかの実施形態では、方法は、1回以上のEGFR阻害剤投与を受けた、又は受けることが予想される対象、例えば、EGFR阻害剤が処方された対象、又は対象の医療提供者、例えば対象のがん専門医によって、EGFR阻害剤を処方若しくは投与する計画が有形媒体に付された対象にビス(チオ-ヒドラジドアミド)を投与するステップを含む。いくつかのそのような実施形態では、対象は、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の投与から4週間以内にEGFR阻害剤投与を受けることが予想され得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、方法は、1回以上のビス(チオ-ヒドラジドアミド)投与を受けた、又は受けることが予想される対象、例えば、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)が処方された対象、又は対象の医療提供者、例えば対象のがん専門医によって、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)を処方若しくは投与する計画が有形媒体に付された対象にEGFR阻害剤を投与するステップを含む。いくつかのそのような実施形態では、対象は、EGFR阻害剤の投与から4週間以内にビス(チオ-ヒドラジドアミド)投与を受けることが予想される。
【0114】
いくつかの態様では、単一のC=S部分を含有するエレスクロモール類似体を、エレスクロモールについて本明細書に記載される目的のいずれかに用いることが企図される。例えば、エレスクロモール又は上記式A若しくはBの他のビス(チオ-ヒドラジドアミド)におけるC=S部分の1つは、C=O部分で置き換えられていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、化合物は以下のとおりである。
【0115】
【化21】
【0116】
いくつかの実施形態では、米国特許出願公開第2012/0065206号(US20120065206)に提示されているような式(I)の化合物を、本明細書に記載されるようにエレスクロモール(又は他のビス(チオ-ヒドラジドアミド))が用いられ得る目的のいずれかに用いることが企図される。そのような化合物は、本開示の目的上、エレスクロモール類似体と考えられる。スルホニルヒドラジド化合物と称され得るそのような化合物は、以下のように示されている。
【0117】
【化22】
[式中、各Zは、独立して、S、O又はSeであり、但しZの両方がOではあり得ず;R1及びR2は、それぞれ独立して、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル;場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換された複素環式基であって、炭素-炭素連結を介してチオカルボニル炭素に結合した複素環式基、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~7員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリールであって、ヘテロアリール基は炭素-炭素連結を介してチオカルボニル炭素に結合したヘテロアリール、-NR12R13、OR14、-SR14及び-S(O)pR15からなる群から選択され;R3及びR4は、それぞれ独立して、水素、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換された複素環式基、及び場合により置換された5~6員アリール若しくはヘテロアリール基からなる群から選択され;又はR1及びR3及び/若しくはR2及びR4は、それらが結合している原子と一緒になって、場合により置換された複素環式基若しくは場合により置換されたヘテロアリール基を形成し;R5は、-CR6R7-、-C(=CHR8)-又は-C(=NR8)-であり;R6及びR7は、両方とも-H又は場合により置換された低級アルキルであり;R8は、-OH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケンオキシ(alkenoxy)、アルキンオキシル(alkynoxyl)、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたシクロアルキル又は場合により置換された複素環式基;-NR10R11、及び-COR9からなる群から選択され;R9は、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5員又は6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたシクロアルキル又は場合により置換された複素環式基であり;R10及びR11は、それぞれ独立して、-H、-OH、アミノ、(ジ)アルキルアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、場合により置換されたフェニル、場合により置換された二環式アリール、場合により置換された5~6員単環式ヘテロアリール、場合により置換された9~14員二環式ヘテロアリール、場合により置換されたシクロアルキル若しくは場合により置換された複素環式基及び-COR9からなる群から選択され、又は、R10及びR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5~6員ヘテロアリール基を形成し;R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、-H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたフェニル若しくは場合により置換されたベンジルであり、又は、R12及びR13は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、場合により置換された複素環式基若しくは場合により置換されたヘテロアリール基を形成し;R15は、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール又は場合により置換されたヘテロアリールであり、pは、1又は2であり;但し、両方のZがSであり、R3及びR4が、両方ともメチルである場合、R1及びR2の両方が非置換フェニルではない]。いくつかの実施形態では、R10及びR11の両方が-Hではない。特定の実施形態では、両方のZがSであり、R3及びR4が、両方ともメチルであり、R1及びR2が、両方とも非置換フェニルである、上記式Dの化合物を用いることが企図される。式Dの特定の実施形態では、少なくとも1つのZはSである。式Dの特定の実施形態では、両方のZがSである。いくつかの実施形態では、両方のZがSであり、R3及びR4がメチルであり、R1及びR2が、両方とも低級アルキル、例えば、シクロプロピル又はメチルシクロプロピルである、式Dの化合物を用いることが企図される。特定の実施形態では、化合物は、US20120065206に示されている化合物1~91のいずれかであり得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、Z、R1、R2、R3、R4、R7、及びR8が上記式Aについて定義されたとおりである式Dの化合物を、本明細書に記載されるようにエレスクロモール(又は他のビス(チオ-ヒドラジドアミド))が用いられ得る目的のいずれかに用いることが企図される。特定の実施形態では、化合物は、以下の式:
【0119】
【化23】
[式中、R1、R2、R3、及びR4は、式A又はDについて上で定義したとおりである]の化合物である。特定の実施形態では、R1、R2、又はその両方は、フェニル又は低級アルキル、例えば、メチル、プロピル、シクロプロピル又はメチルシクロプロピルである。特定の実施形態では、R3、R4、又はその両方は、低級アルキル、例えば、メチルである。いくつかの実施形態では、R1及びR2は同じである。特定の実施形態では、R3及びR4は同じである。いくつかの実施形態では、化合物は、以下の構造:
【0120】
【化24】
を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、米国特許出願公開第2015/0025042号に提示されているような構造(I)、(III)、(IV)、(VII)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)又は(XIV)の化合物を、本明細書に記載されるようにエレスクロモール(又は他のビス(チオ-ヒドラジドアミド))が用いられ得る目的のいずれかに用いることが企図される。いくつかの実施形態では、化合物は、少なくとも1つのC=S部分を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、2つのC=S部分を含む。特定の実施形態では、化合物は、以下の式:
【0122】
【化25】
[式中、R1、R2、R3、R4、R7、R8、及びR12は、米国特許出願公開第2015/0025042号に定義されているとおりである]の化合物である。
【0123】
本開示が特定の刊行物(例えば、特許、特許出願、雑誌論文など)に開示された化合物に言及する場合、そのような化合物は、そのような文献に開示された様々な属、亜属、及び種のそれぞれを含むことが理解されるべきである。
【0124】
いくつかの実施形態では、がん細胞の成長を選択的に阻害する化合物は、銅、Cu(II)と錯体を形成することができる化合物である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、銅-薬剤錯体は、銅を介した酸化ストレスを発生させる可能性がある。いくつかの実施形態では、銅と錯体を形成可能な化合物は、ビス(チオヒドラジド)アミド又はジチオカルバメートである。いくつかの実施形態では、化合物は、加えて又は代わりに、亜鉛と錯体を形成可能である。
【0125】
いくつかの実施形態では、がん細胞の成長を選択的に阻害する化合物は、該化合物が接触する細胞において1種以上の活性酸素種(ROS)レベルの増加を引き起こす薬剤である。ROSは、酸素を含有する化学的反応性分子である。例示的なROSは、過酸化物(例えば、過酸化水素)、超酸化物、ヒドロキシルラジカル、及び一重項酸素である。1種以上のROSのレベルを増加させる化合物は、「ROS誘導剤」と称され得る。ROS誘導剤は、例えば、通常ROSを減少させる(例えば、ROSをより反応性の低い種に変換する)役割を果たす酵素又は生物学的経路若しくはプロセスを阻害するか、或いは、細胞内でROSを増加させる酵素又は生物学的経路若しくはプロセスを活性化し得る。ROSレベルの増加は、多くの場合、とりわけ、細胞に対して有毒な多数のアルデヒド種を生成し得る脂質過酸化をもたらす。いくつかの実施形態では、がん細胞の成長を選択的に阻害する化合物は、酸化ストレス促進剤である薬剤である。用語「酸化ストレス促進剤」は、ROS誘導剤、及びROSの結果として生成される有害な種を代謝、阻害、又は除去する細胞又は生物の能力を損なう薬剤を指す。例えば、酸化ストレス促進剤は、通常、酵素、例えばROSによる酸化で生成した反応性タンパク質又は脂質種を反応性の低い形態に変換する役割を担うアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)を阻害し得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、ROS誘導剤は、ジチオカルバメート(例えば、ジスルフィラム又はその類似体若しくは活性代謝物)、或いはビス(チオ-ヒドラジドアミド)(例えば、エレスクロモール又はその類似体若しくは活性代謝物)である。いくつかの実施形態では、ROS誘導剤は、金属によって単一の電子が受容又は供与され得る酸化還元サイクルを行うことができる金属、例えば鉄、銅、クロム、バナジウム、及びコバルトである。この作用は、反応性ラジカル及び活性酸素種の産生を触媒する。いくつかの実施形態では、ROS誘導剤は、このような金属と錯体を形成する化合物である。
【0127】
いくつかの実施形態では、がん細胞の成長を選択的に阻害する化合物は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)阻害剤である。アルデヒドデヒドロゲナーゼは、アルデヒドの対応するカルボン酸への不可逆的酸化を触媒し、それによって細胞をアルデヒドによる細胞毒性から保護する。ヒトALDHスーパーファミリーは、19種のALDHポリペプチド:ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH1A3、ALDH1B1、ALDH1L1、ALDH1L2、ALDH2、ALDH3A1、ALDH3A2、ALDH3B1、ALDH3B2、ALDH4A1、ALDH5A1、ALDH6A1、ALDH7A1、ALDH8A1、ALDH9A1、ALDH16A1、及びALDH18A1を含む。これらの酵素は、NAD+依存性又はNADP+依存性の反応において、アルデヒド(例えば、内因性アルデヒド、例えば代謝中に生成するもの、又は外因性アルデヒド)の各カルボン酸への酸化を触媒する。ALDHポリペプチドの例示的なアミノ酸配列(例えば、ヒト配列)及び該配列をコードする核酸は、当該技術分野で公知であり、公開データベース、例えば、NCBI RefSeqデータベースで利用可能である。
【0128】
「ALDH阻害剤」は、ALDHスーパーファミリーの少なくとも1つのメンバーの発現又は活性を阻害する薬剤を指す。ALDH阻害剤に関する、本明細書に記載される方法又は組成物のいずれかにおけるいくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH1A3、ALDH1B1、ALDH1L1、ALDH1L2、ALDH2、ALDH3A1、ALDH3A2、ALDH3B1、ALDH3B2、ALDH4A1、ALDH5A1、ALDH6A1、ALDH7A1、ALDH8A1、ALDH9A1、ALDH16A1、及びALDH18A1のうちの1つ以上の発現及び/又は活性を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH1ファミリー(ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH1A3、ALDH1B1、ALDH1L1、及びALDH1L2)の1つ以上のメンバーの発現及び/又は活性を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、少なくともALDH1A1の発現及び/又は活性を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、少なくともALDH1 A2の発現及び/又は活性を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH2の発現及び/又は活性を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH3ファミリー(ALDH3A1、ALDH3A2、ALDH3B1、及びALDH3B2)の1つ以上のメンバーの発現及び/又は活性を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH4A1、ALDH5A1、ALDH6A1、ALDH7A1、ALDH8A1、ALDH9A1、ALDH16A1、及び/又はALDH18A1の発現及び/又は活性を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH1ファミリー及びALDH2の1つ以上のメンバーの発現及び/又は活性を阻害する。
【0129】
ALDH阻害剤は、低分子、核酸(例えば、siRNA、アプタマー)、又はタンパク質(例えば、抗体又は非抗体ポリペプチド)を含み得る。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDHポリペプチドに結合し、その活性を阻害する。いくつかの実施形態では、結合は可逆的である。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤とALDHとの間で安定な共有結合が形成される。例えば、酵素の活性部位(例えば、Cys302)にあるアミノ酸への共有結合が形成され得る。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、少なくとも部分的にその阻害活性を媒介する1つ以上の活性代謝物へと代謝される。多種多様なALDH阻害剤のいずれかが当該技術分野で公知であり、本明細書に記載される組成物及び方法において用いることができる。ALDH及び特定のALDH阻害剤に関するさらなる情報は、Koppaka, V.ら、Pharmacological Reviews(2012)64:520~539に記載されている。
【0130】
特定の実施形態では、ALDH阻害剤は、ジチオカルバメート、例えば、ジスルフィラム、又はジチオカルバメートの類似体若しくは代謝物、例えば、ジスルフィラム代謝物である。ジスルフィラムは、ALDH1A1及びALDH2を阻害する。ALDH阻害剤であるジスルフィラム代謝物としては、例えば、N,N-ジエチルジチオカルバメート、S-メチルN,N-ジエチルジチオカルバメート、S-メチルN,N-ジエチルジチオカルバメートスルホキシド、S-メチルN,N-ジエチルチオカルバメートスルホキシド、S-メチルN,N-ジエチルジチオカルバメートスルホン、及びS-メチルN,N-ジエチルチオカルバメートスルホンが挙げられる。ジスルフィラム及び特定の他のALDH阻害剤は、アルコール依存症の処置において臨床的に用いられる。ジスルフィラムで処置を受けている患者のアルコール摂取により、アセトアルデヒドが蓄積し、多くの不快な症状が引き起こされる。該症状は患者にアルコール摂取を控えさせる。ジスルフィラムはまた、ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ阻害剤であり、コカイン中毒の処置にも用いられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、米国特許出願公開第2008/0249116号に記載されている以下の式:
【0132】
【化26】
[式中、R1、R2、R3、W、及びVは該文献に記載されているとおりである]のキナゾリノン誘導体である。
【0133】
いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、米国特許出願公開第2004/0068003号に記載されている以下の式:
【0134】
【化27】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は該文献に記載されているとおりである]の化合物である。
【0135】
いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、以下の式:
【0136】
【化28】
[式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して、置換された若しくは置換されていない直鎖若しくは分岐のC1~C6アルキル基を表す]の化合物、又はその塩である。
【0137】
いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、「ALDHYDE DEHYDROGENASE INHIBITORS AND METHODS OF USE THEREOF」と題するPCT/US2014/067943(WO/2015/084731)に記載されている化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は、以下の式I:
【0138】
【化29】
[式中、XはO又は-C=Oであり;R1はH、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール(heteroatyl)、又は置換ヘテロアリールであり;R5はH、アルキル、置換アルキル、ハロ、アルコキシ又は置換アルコキシであり;R7はH又はハロである]の化合物である。
【0139】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の式II:
【0140】
【化30】
[式中、XはO又は-C=Oであり;Yはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル又は置換アルキニルであり;R5はアルキル、置換アルキル、ハロ、アルコキシ又は置換アルコキシであり;R7はH又はハロであり;R8はシクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである]の化合物である。
【0141】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の式III:
【0142】
【化31】
[式中、nは1又は2であり;XはO又は-C=Oであり;WはN又はOであり、WがOの場合R9は存在せず;R5はH、アルキル、置換アルキル、ハロ、アルコキシ又は置換アルコキシであり;R7はET又はハロであり;R9はH又は-(CH2)mR10であり、mは1~6の整数であり;R10はH、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリ-ルである]の化合物である。
【0143】
他のALDH阻害剤としては、コプリン、シアナミド、1-アミノシクロプロパノール(ACP)、ダイジン(即ち、4',7-ジヒドロキシイソフラボンの7-グルコシド)、CVT-10216(3-[[[3-[4-[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル]-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-7-イル]オキシ]メチル]安息香酸;CAS登録番号1005334-57-5)、セファロスポリン、抗糖尿病性スルホニル尿素、メトロニダゾール(metronidazole)、ジエチルジチオカルバメート、フェネチルイソチオシアネート(PEITC)、プルネチン(4% 5-ジヒドロキシ-7-メトキシイソフラボン)、5-ヒドロキシダイゼイン(ゲニステイン(genistein))、トリクロロアセトアルデヒド一水和物(又はクロラール(chloral))、4-アミノ-4-メチル-2-ペンチンチオイン酸(S)-メチルエステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH1及びALDH3酵素の不可逆的阻害剤である4-アミノ-4-メチル-2-ペンチン-1-アル(AMPAL)又は2-メチル-5-(メチルスルファニル)-5-オキソペンタン-2-アミニウムを含む。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ベノミル(メチル-[1-[(ブチルアミノ)カルボニル]-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]カルバメート)を含む。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は経口血糖降下剤、例えばクロルプロパミド(chlorpropamide)又はトルブタミド(tolbutamide)である。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ゴシポール又はその類似体である。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、2,2'-ビス-(ホルミル-1,6,7-トリヒドロキシ-5-イソプロピル-3-メチルナフタレン)である。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、以下のCAS登録番号:1069117-57-2、1069117-56-1、1069117-55-0、1055417-23-6、1055417-22-5、1055417-21-4、1055417-20-3、1055417-19-0、1055417-18-9、1055417-17-8、1055417-16-7、1055417-15-6及び1055417-13-4のいずれかを有する化合物である。
【0144】
いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、Buchman, CDら、Chemico-Biological Interactions(2015年)234:38~44に記載されている芳香族ラクトンである。
【0145】
いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH遺伝子の発現又は活性を阻害する核酸を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、ALDH遺伝子の発現を阻害するRNA(薬剤(例えば、siRNA))である。例示的な核酸ALDH阻害剤及び該阻害剤を含む製剤は、米国特許出願公開第2014/0248338号に記載されている。
【0146】
いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、1つ以上の他のALDH酵素と比較して、1つ以上のALDH酵素に対して選択的である。本明細書で用いられる場合、阻害剤は、第1の酵素に対する薬剤のIC50が第2の酵素に対する薬剤のIC50よりも少なくとも5倍低い場合、第2の酵素と比較して第1の酵素に対して選択的であると考えられる。いくつかの実施形態では、IC50値の差は、少なくとも10倍、少なくとも100倍、又は少なくとも1000倍である。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、ALDH2と比較して、1つ以上のALDH1ファミリーメンバー(例えば、ALDH1A1)に対して選択的である。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、他のALDHスーパーファミリーメンバーの少なくとも一部(例えば、ALDH3A1)と比較して、1つ以上のALDH1ファミリーメンバー(例えば、ALDH1A1)及びALDH2に対して選択的である。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、他のデヒドロゲナーゼ、例えば、15-ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ(HPGD)並びにヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ4型(HSD17β4)HPGD及びHSD17β4と比較して、1つ以上のALDH酵素に対して選択的である。
【0147】
ALDH阻害剤に関する、本明細書に記載される組成物又は方法のいずれかにおけるいくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦100nM、例えば、50nM~100nMのKdで、少なくとも1つのALDHスーパーファミリーメンバーに結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦50nM、例えば、10nM~50nMのKdで、少なくとも1つのALDHポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦10nM、例えば、1nM~10nMのKdで、少なくとも1つのALDHスーパーファミリーメンバーに結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、<1nM、例えば、0.1nM~1nM又は0.01nM~0.1nMのKdで、少なくとも1つのALDHスーパーファミリーメンバーに結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦100nM、例えば、50nM~100nMのKdで、少なくとも1つのALDH1ファミリーメンバーに結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦50nM、例えば、10nM~50nMのKdで、少なくとも1つのALDH1ファミリーメンバーに結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦10nM、例えば、1nM~10nMのKdで、少なくとも1つのALDH1ファミリーメンバーに結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦1nM、例えば、0.1nM~1nM又は0.01nM~0.1nMのKdで、少なくとも1つのALDH1ファミリーメンバーに結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦100nM、例えば、50nM~100nMのKdで、ALDH2に結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦50nM、例えば、10nM~50nMのKdで、ALDH2に結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦10nM、例えば、1nM~10nMのKdで、ALDH2に結合する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、≦1nM、例えば、0.1nM~1nM又は0.01nM~0.1nMのKdで、ALDH2に結合する。
【0148】
ALDH阻害剤に関する、本明細書に記載される組成物又は方法のいずれかにおけるいくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、1nM~5μM、例えば、1nM~5nM、5nM~10nM、10nM~20nM、20nM~30nM、30nM~50nM、50nM~100nM、100nM~500nM、500nM~1μ、又は1~5μMのIC50で、1種以上のALDHポリペプチドを阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、1nM~5μM、例えば、1nM~5nM、5nM~10nM、10nM~20nM、20nM~30nM、30nM~50nM、50nM~100nM、100nM~500nM、500nM~1μM、又は1μM~5μMのIC50で、1つ以上のALDH1ポリペプチドを阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、1nM~5μM、例えば、1nM~5nM、5nM~10nM、10nM~20nM、20nM~30nM、30nM~50nM、50nM~100nM、100nM~500nM、500nM~1μM又は1μM~5μMのIC50で、ALDH1A1を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、1nM~5μM、例えば、1nM~5nM、5nM~10nM、10nM~20nM、20nM~30nM、30nM~50nM、50nM~100nM、100nM~500nM、500nM~1μM又は1μM~5μMのIC50で、ALDH1A2を阻害する。いくつかの実施形態では、ALDH阻害剤は、1nM~5μM、例えば、1nM~5nM、5nM~10nM、10nM~20nM、20nM~30nM、30nM~50nM、50nM~100nM、100nM~500nM、500nM~1μM、又は1μM~5μMのIC50で、ALDH2を阻害する。
【0149】
腫瘍の成長及び増殖を阻害する方法
特定の態様では、本明細書で提供されるのは、腫瘍の成長及び/又は増殖を阻害することに関連する方法であって、腫瘍細胞を含む腫瘍試料中のバイオマーカーのレベルを決定するステップ、並びに試料部分が少なくとも閾値のバイオマーカーのレベルを有する場合、腫瘍を治療的化合物と接触させるステップを含む、方法である。特定の実施形態では、腫瘍と接触させるために用いられる治療的化合物は、銅イオノフォアである。特定の実施形態では、バイオマーカーは、リポイル化タンパク質である。例示的なリポイル化タンパク質バイオマーカーは、表2に記載されている。特定の実施形態では、バイオマーカーは、ミトコンドリアタンパク質である。特定の実施形態では、ミトコンドリアタンパク質は、リポ酸の生合成に関与している。特定の実施形態では、ミトコンドリアタンパク質は、鉄-硫黄クラスタータンパク質である。特定の実施形態では、ミトコンドリアタンパク質は、ミトコンドリア複合体Iタンパク質である。関連するミトコンドリアタンパク質バイオマーカーをコードする例示的なミトコンドリア遺伝子は、表3に記載されている。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
特定の実施形態では、本方法は、腫瘍試料中のタンパク質リポイル化(例えば、リポイル-DLAT(リポイル-ジヒドロリポアミドアセチルトランスフェラーゼ)、リポイル-DLST(リポイル-ジヒドロリポイルサクシニルトランスフェラーゼ)、リポイル-GCSH(リポイル-グリシン切断系タンパク質H)、リポイル-DBT(リポイル-ジヒドロリポアミド分岐鎖トランスアシラーゼE2)、又はそれらの任意の組み合わせ)のレベルを決定するステップ、及び試料中のタンパク質リポイル化のレベルが閾値レベルを超える場合に、腫瘍を治療的化合物と接触させるステップを含む。特定の実施形態では、本方法は、腫瘍試料中のタンパク質リポイル化(例えば、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、リポイル-DBT、又はそれらの任意の組み合わせ)のレベルを決定するステップ、ミトコンドリアタンパク質発現(例えば、FDX1(フェレドキシン1)、ALDHA1(アルデヒドデヒドロゲナーゼA1)、ALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2)、LIAS(リポ酸シンセターゼ)、LIPT1(リポイルトランスフェラーゼ1)、LIPT2(リポイルトランスフェラーゼ2)、DLD(ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ)又はそれらの任意の組み合わせ)のレベルを決定するステップ、並びに試料中のタンパク質リポイル化のレベルが閾値レベルを超える場合、及び試料中のミトコンドリアタンパク質発現のレベルが閾値レベルを超える場合に、腫瘍を治療的化合物と接触させるステップを含む。
【0153】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がリポイル-DLATを発現している場合、試料中のリポイル-DLATを発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0154】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がリポイル-DLSTを発現している場合、試料中のリポイル-DLSTを発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0155】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がリポイル-GCSHを発現している場合、試料中のリポイル-GCSHを発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0156】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がリポイル-DBTを発現している場合、試料中のリポイル-DBTを発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0157】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がFDX1を発現している場合、試料中のFDX1を発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0158】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がALDHA1を発現している場合、試料中のALDHA1を発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0159】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がALDH2を発現している場合、試料中のALDH2を発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0160】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がLIASを発現している場合、試料中のLIASを発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0161】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がLIPT1を発現している場合、試料中のLIPT1を発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0162】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がLIPT2を発現している場合、試料中のLIPT2を発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0163】
特定の実施形態では、試料の少なくとも0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がDLDを発現している場合、試料中のDLDを発現する全腫瘍細胞の閾値レベルが満たされている。
【0164】
いくつかの実施形態では、関連するバイオマーカーの発現を検出することができる任意のアッセイが、本明細書で提供される方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、バイオマーカーエピトープに結合する標識抗体を用いた免疫染色により検出される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、免疫組織化学により検出される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、ウェスタンブロットにより検出される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのmRNAが、qPCRを使用して検出される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して検出される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、顕微鏡法(例えば蛍光顕微鏡法)を使用して検出される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、ELISAを使用して検出される。
【0165】
様々な抗体のいずれも、検出方法に使用され得る。そのような抗体は、例えば、ポリクローナル、モノクローナル(mAb)、組換え、ヒト化又は部分ヒト化、単鎖、Fab、及びそれらの断片を含む。抗体は、任意のアイソタイプ、例えばIgM、各種IgGアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2a等であってもよく、ヤギ、ウサギ、マウス、ニワトリ等を含む抗体を産生する任意の動物種に由来し得る。タンパク質「に特異的な抗体」という用語は、抗体がタンパク質中の定義された配列のアミノ酸、又はエピトープを認識し、タンパク質に選択的に結合するが、抗体への結合を意図しないタンパク質には一般に結合しないことを意味する。特異的結合を達成するために必要なパラメーターは、当技術分野における従来の方法を使用して慣例的に決定され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、バイオマーカー(例えば、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、リポイル-DBT、FDX1、ALDHA1、ALDH2、LIAS、LIPT1、LIPT2、DLD)に特異的な抗体が表面上に固定され(例えば、アレイ、例えばマイクロアレイ上の反応性エレメントである、又は表面プラズモン共鳴(SPR)ベース技術、例えばBiacoreに使用されるような別の表面上にある)、試料中のタンパク質が、抗体に特異的に結合するその能力により検出される。あるいは、試料中のタンパク質は表面上に固定され、抗体に特異的に結合するその能力により検出され得る。特異的結合に効果的な条件を含む表面を調製し分析を実行する方法は、当技術分野において従来の方法であり周知である。
【0167】
多くの種類の好適なイムノアッセイの中には、免疫組織化学的染色、ELISA、ウェスタンブロット(免疫ブロット)、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)等がある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法において使用されるアッセイは、比色による読み出し、蛍光による読み出し、質量分析法、目視検査等に基づいてもよい。
【0168】
上述のように、バイオマーカーの発現レベルは、核酸量(例えばmRNA量及び/又はゲノムDNA)を測定することにより測定され得る。核酸量の決定は、当業者に知られている様々な技術によって実行され得る。例えば、核酸の発現レベル、代替のスプライシングバリアント、染色体再配列及び遺伝子コピー数が、マイクロアレイ分析(例えば、米国特許第6,913,879号、米国特許第7,364,848号、米国特許第7,378,245号、米国特許第6,893,837号及び米国特許第6,004,755号を参照されたい)及び定量PCRにより決定され得る。コピー数の変化が、例えばIllumina Infinium II全ゲノム遺伝子型決定アッセイ又はAgilentヒトゲノムCGHマイクロアレイ(Steemersら、2006)により検出されてもよい。mRNA量を測定する方法の例は、リアルタイムPCRを含む逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、マイクロアレイ分析、ナノストリング、ノーザンブロット分析、示差的ハイブリダイゼーション及びリボヌクレアーゼ保護アッセイを含む。そのような方法は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、現行版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、及びAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & sons、New York、N.Yに記載されている。
【0169】
がんを処置する方法
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って治療化合物を対象に投与することにより、対象におけるがんを処置する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、治療化合物は、銅イオノフォアである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、任意のがん性、前がん性腫瘍、及び/又は免疫細胞を処置するために使用され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍及び/又は免疫細胞を銅イオノフォアと接触させるステップは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体、分岐鎖アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体、及び/又はグリシン切断を阻害する。いくつかの実施形態では、銅イオノフォアは、銅(II)を予め担持している(例えば予め錯体化されている)。
【0170】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。本明細書で提供される方法及び組成物により処置され得るがんは、これらに限定するものではないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、睾丸、舌、又は子宮からのがん細胞を含む。さらに、がんは、具体的には、これらに限定するものではないが、以下の組織型であってもよい:新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨細胞及び紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行細胞癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管細胞癌;肝細胞癌;肝細胞癌及び胆管細胞癌の組合せ;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープにおける腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌腫;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌;乳頭腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌;乳頭及び濾胞状腺癌;非カプセル化硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器官癌;アポクリン腺癌;脂腺腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性管癌;髄質癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質性腫瘍;悪性莢膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫;及び悪性神経芽細胞腫(roblastoma);セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胚性癌腫;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル芽細胞線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性グリオーマ;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳性肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性悪性大細胞型リンパ腫;悪性濾胞性リンパ腫;菌状息肉腫;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;並びにヘアリー細胞白血病。
【0171】
治療化合物の実際の用量レベルは、患者への毒性を生じずに、特定の患者、組成物及び投与様式に対する所望の治療応答を実現するのに効果的な量を得るように変動され得る。
【0172】
選択される用量レベルは、使用される特定の薬剤の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄又は代謝速度、処置期間、用いられる特定の化合物と併用される他の薬物、化合物及び/又は材料、処置される患者の年齢、性別、体重、病気、一般的健康状態及び過去の医療歴、並びに医療の技術分野で周知の類似因子を含む種々の因子に依存するであろう。
【0173】
特定の実施形態では、本明細書で開示される治療化合物は、抗がん剤、例えば化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、及び/又はプロテアソーム阻害剤と併せて投与され得る。処置方法は、他の形態の従来の治療(例えば、当業者に周知のがんに対する標準治療処置)と併せて、従来の治療と連続的に、その前に又はその後に施され得る。例えば、これらの調整剤は、治療有効用量の化学療法剤と共に投与され得る。別の実施形態では、これらの調整剤は、化学療法剤の活性及び有効性を増強するために、化学療法と併せて投与される。本明細書で開示される特定の態様では、治療化合物は、免疫チェックポイント阻害剤と併せて投与され得る。チェックポイント阻害剤治療は、免疫応答を刺激又は阻害する、免疫系の重要な制御因子を標的とする。そのような免疫チェックポイントは、免疫系による攻撃を回避するために、がん疾患状態(例えば腫瘍による)において利用され得る。本明細書で開示される特定の態様では、治療化合物は、プロテアソーム阻害剤と併せて投与され得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、がん(例えば、乳がん、肺がん、例えば非小細胞肺がん、前立腺がん、結腸がん、膀胱がん、胃がん、卵巣がん、黒色腫、及び腎臓がん)を処置又は予防する方法は、化合物を1種以上の他の化学療法剤と併せて投与するステップを含んでもよい。治療化合物と併せて投与され得る化学療法剤は、ABT-263、アファチニブジマレエート、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、アキシチニブ、b-raf阻害剤(例えばベムラフェニブ、ダブラフェニブ)、カルメット-ゲラン桿菌ワクチン(bcg)、ベバシズマブ、BEZ235、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブスルファン、カボザンチニブ、カンプトテシン(campothecin)、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、セリチニブ、クロラムブシル、クロロキン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コビメチニブ、コルヒチン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デメトキシビリジン、デキサメタゾン、ジクロロ酢酸、ジエンエストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、EGFR阻害剤(例えばチロシンキナーゼ阻害剤、ゲフィチニブ、オシメルチニブ)、エピルビシン、エリブリン、エルロチニブ、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル及び5-フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、GSK1120212、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イキサベピロン、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、ロニダミン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトホルミン、メトトレキセート、ミルテホシン、MK2206、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ムタマイシン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オラパリブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、パゾパニブ、ペメトレキセド、ペントスタチン、ペリホシン、PF-04691502、プリカマイシン、ポマリドミド、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ラムシルマブ、リツキシマブ、ロミデプシン、ルカパリブ、セルメチニブ、シロリムス、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、スラミン、タラゾパリブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ベムラフェニブ、ベリパリブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及びボリノスタット(SAHA)を含む。例えば、治療化合物と併せて投与され得る化学療法剤は、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン(campothecin)、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デメトキシビリジン、ジクロロ酢酸、ジエンエストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、ロニダミン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトホルミン、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、ペリホシン、プリカマイシン、ポマリドミド、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンを含む。他の実施形態では、治療化合物と併せて投与され得る化学療法剤は、ABT-263、デキサメタゾン、5-フルオロウラシル、PF-04691502、ロミデプシン、及びボリノスタット(SAHA)を含む。本明細書に記載の特定の実施形態では、治療化合物と併せて投与される化学療法剤は、タキサン化学療法剤、例えばパクリタキセル又はドセタキセルである。本明細書に記載の特定の実施形態では、治療化合物と併せて投与される化学療法剤は、ドキソルビシンである。本明細書に記載の特定の実施形態では、治療化合物は、タキサン化学療法剤(例えばパクリタキセル)及びドキソルビシンと併せて投与される。
【0175】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法により特定された抗がん剤を含む抗がん組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗がん組成物は、本明細書に記載のプロテアソーム阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、オプロゾミブ、イキサゾミブ、デランゾミブ、又はこれらのいずれかの類似体である。
【0176】
いくつかの実施形態では、方法は、免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-1、PD-L1、CTLA-4、又は別の免疫チェックポイントタンパク質に結合する抗体を投与するステップを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、銅イオノフォアは、抗がん剤単独に比べて抗がん剤の腫瘍細胞死及び/又は免疫細胞死を増強する。
【0178】
抗がん剤をスクリーニングする方法
本開示のいくつかの態様は、候補抗がん剤を特定するために1種以上の試験薬剤をスクリーニングする方法であって、細胞試料(例えばがん細胞)を試験薬剤と接触させるステップ、リポイル化タンパク質(例えば、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、リポイル-DBT)を測定するステップ、及びリポイル化タンパク質のレベルが、試験薬剤と接触させていない対応する細胞試料のリポイル化タンパク質のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む方法に関する。試験薬剤と接触させていない対応する細胞試料のリポイル化タンパク質のレベルは、任意の好適な参照、例えば対照試料又は参照試料であってもよく、これは、いくつかの実施形態では正常なミトコンドリア代謝を代表するものであってもよく、また他の実施形態では増加したミトコンドリア代謝を代表するものであってもよい。いくつかの実施形態では、試験薬剤と接触させていない細胞試料は、リポイル化タンパク質を発現しない、又は低減したレベルのリポイル化タンパク質を含む。
【0179】
本発明のいくつかの実施形態では、リポイル化タンパク質(例えば、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、リポイル-DBT)のレベルが少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、90%、99%又はそれ以上減少している場合、試験薬剤は候補抗がん剤として特定される。本発明のいくつかの実施形態では、リポイル化タンパク質(例えば、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、リポイル-DBT)のレベルが1倍、2分の1、3分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1又はそれ以下に減少している場合、試験薬剤は候補抗がん剤として特定される。
【0180】
いくつかの実施形態では、方法は、接触させた細胞試料のミトコンドリアタンパク質(例えば、FDX1、ALDHA1、ALDH2、LIAS、LIPT1、LIPT2、DLD)のレベル又は活性を測定するステップ、及び接触させた細胞のミトコンドリアタンパク質のレベル又は活性が試験薬剤と接触させていない対応する細胞試料のミトコンドリアタンパク質のレベル又は活性と比較して減少しているか否かを決定するステップをさらに含む。
【0181】
本発明のいくつかの実施形態では、ミトコンドリアタンパク質(例えば、FDX1、ALDHA1、ALDH2、LIAS、LIPT1、LIPT2、DLD、DLAT、DLST、DBT、GSH、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体、分岐鎖アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体、グリシン切断複合体)のレベル又は活性が少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、90%、99%又はそれ以上減少している場合、試験薬剤は候補抗がん剤として特定される。本発明のいくつかの実施形態では、ミトコンドリアタンパク質(例えば、FDX1、ALDHA1、ALDH2、LIAS、LIPT1、LIPT2、DLD、DLAT、DLST、DBT、GSH、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体、分岐鎖アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体、グリシン切断複合体)のレベル又は活性が1倍、2分の1、3分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1又はそれ以下に減少している場合、試験薬剤は候補抗がん剤として特定される。
【0182】
いくつかの実施形態では、関連タンパク質(例えば、リポイル-DLAT、リポイル-DLST、リポイル-GCSH、リポイル-DBT、FDX1、ALDHA1、ALDH2、LIAS、LIPT1、LIPT2、DLD、DLAT、DLST、DBT、GSH、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体、分岐鎖アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体、グリシン切断複合体)の発現を検出することができる任意のアッセイが、本明細書で提供される方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、タンパク質エピトープに結合する標識抗体を用いた免疫染色により検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、免疫組織化学により検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、ウェスタンブロットにより検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質のmRNAが、qPCRを使用して検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、顕微鏡法(例えば蛍光顕微鏡法)を使用して検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、ELISAを使用して検出される。
【0183】
いくつかの実施形態では、方法は、接触させた細胞試料の細胞死を測定するステップ、及び接触させた細胞の細胞死が試験薬剤と接触させていない対応する細胞試料の細胞死と比較して増加しているか否かを決定するステップをさらに含む。試験薬剤と接触させていない対応する細胞試料の細胞死のレベルは、任意の好適な参照、例えば対照試料又は参照試料であってもよく、これは、いくつかの実施形態では正常なミトコンドリア代謝を代表するものであってもよく、また他の実施形態では増加したミトコンドリア代謝を代表するものであってもよい。
【0184】
例えば、FDX1によるエレスクロモールに結合したCu(II)の毒性Cu(I)形態への還元は、増加したミトコンドリア代謝状態における細胞死を促進する(以下に示される通り)。
【0185】
【化32】
【0186】
いくつかの実施形態では、試験薬剤による処置後に細胞死を検出することができる任意のアッセイが、本明細書で提供される方法において使用され得る。細胞死は、典型的には、膜泡形成、細胞質の凝縮、及び内因性エンドヌクレアーゼの活性化により特徴付けられる。がん細胞に対するこれらの効果のいずれかの決定は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)ががんの処置に有用であることを示す。
【0187】
細胞生存能力は、細胞において、染料、例えばニュートラルレッド、トリパンブルー又はALAMAR(商標)ブルーの取込みを決定することにより測定され得る(例えば、Pageら、1993、Intl. J. Oncology 3:473-476を参照されたい)。そのようなアッセイでは、細胞が染料を含有する培地中でインキュベートされ、細胞が洗浄され、染料の細胞取込みを反映する残りの染料が分光光度法で測定される。タンパク質結合性染料スルホローダミンB(SRB)もまた、細胞毒性を測定するために使用され得る(Skehanら、1990、J. Natl. Cancer Inst. 82:1107-12)。
【0188】
あるいは、テトラゾリウム塩、例えばMTTが、死んでいない生細胞を検出することによる哺乳動物細胞生存及び増殖の定量的比色アッセイに使用される(例えば、Mosmann、1983、J. Immunol. Methods 65:55~63を参照されたい)。
【0189】
細胞死は、例えば、DNA断片化を測定することにより定量され得る。DNA断片化の定量的in vitro決定のための商業的測光法が利用可能である。TUNEL(断片化DNA中の標識ヌクレオチドの組込みを検出する)及びELISAベースのアッセイを含むそのようなアッセイの例は、Biochemica、1999、no.2、34~37頁(Roche Molecular Biochemicals)に記載されている。
【0190】
細胞死は、細胞における形態学的変化を測定することによっても決定され得る。例えば、壊死の場合のように、原形質膜の完全性の喪失が、特定の染料(例えば蛍光染料、例えばアクリジンオレンジ又は臭化エチジウム等)の取込みを測定することにより決定され得る。細胞死の数を測定する方法は、Duke及びCohen、Current Protocols in Immunology(Coliganら編、1992、3.17.1-3.17.16頁)により説明されている。細胞はまた、DNA染料(例えば、アクリジンオレンジ、臭化エチジウム又はヨウ化プロピジウム)で標識され得、細胞は、核内膜に沿ったクロマチン凝縮及び辺縁趨向について観察され得る。細胞死を決定するために測定され得る他の形態学的変化は、例えば、細胞質の凝縮、膜泡形成の増加、及び細胞収縮を含む。
【0191】
細胞死の存在は、培養物の付着した、及び「浮遊」した区画の両方において測定され得る。例えば、両方の区画は、上清を除去し、付着した細胞をトリプシン処理し、遠心洗浄ステップ(例えば2000rpmで10分間)後に調製物を合わせ、(例えばDNA断片化を測定することにより)細胞死を検出することによって収集され得る(例えば、Piazzaら、1995、Cancer Research 55:3110-16を参照されたい)。
【0192】
特定の態様では、腫瘍及び/又は免疫細胞における増加したミトコンドリア代謝を決定する方法であって、腫瘍及び/又は免疫細胞内のリポ酸を染色するステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0193】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定する方法であって、(a)細胞試料を銅補足培地と共にインキュベートするステップ;(b)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;(c)細胞試料の細胞生存能力を測定するステップ;及び(d)細胞生存能力のレベルが、銅補足培地と共にインキュベートし試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞生存能力のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む方法が本明細書で提供される。試験薬剤と接触させていない対応する細胞試料の細胞生存能力のレベルは、任意の好適な参照、例えば対照試料又は参照試料であってもよく、これは、いくつかの実施形態では正常なミトコンドリア代謝を代表するものであってもよく、また他の実施形態では増加したミトコンドリア代謝を代表するものであってもよい。
【0194】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定する方法であって、(a)細胞試料を銅キレート剤と共にインキュベートするステップ;(b)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;(c)細胞試料の細胞死を測定するステップ;及び(d)細胞死のレベルが、銅キレート剤と共にインキュベートし試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞死のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む方法が本明細書で提供される。試験薬剤と接触させていない対応する細胞試料の細胞死のレベルは、任意の好適な参照、例えば対照試料又は参照試料であってもよく、これは、いくつかの実施形態では正常なミトコンドリア代謝を代表するものであってもよく、また他の実施形態では増加したミトコンドリア代謝を代表するものであってもよい。
【0195】
いくつかの実施形態では、銅キレート剤は、テトラチオモリブデート(TTM)である。TTMによる銅のキレート化の例を以下に示す。
【0196】
【化33】
【0197】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定する方法であって、(a)細胞試料を金属補足培地と共にインキュベートするステップ;(b)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;(c)細胞試料の細胞生存能力を測定するステップ;並びに(d)細胞生存能力のレベルが、金属補足培地と共にインキュベートし、及び/又は試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞生存能力のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0198】
一実施形態では、金属補足培地は、亜鉛補足培地(Zn補足培地)である。別の実施形態では、金属補足培地は、マンガン補足培地(Mn補足培地)である。別の実施形態では、金属補足培地は、コバルト補足培地(Co補足培地)である。さらに別の実施形態では、金属補足培地は、ニッケル補足培地(Ni補足培地)である。さらに別の実施形態では、金属補足培地は、鉄補足培地(Fe補足培地)である。
【0199】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定する方法であって、(a)細胞試料を金属キレート剤と共にインキュベートするステップ;(b)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;(c)細胞試料の細胞死を測定するステップ;及び(d)細胞死のレベルが、金属キレート剤と共にインキュベートし試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞死のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0200】
一実施形態では、金属キレート剤は、亜鉛(Zn)キレート剤である。別の実施形態では、金属キレート剤は、マンガン(Mn)キレート剤である。別の実施形態では、金属キレート剤は、コバルト(Co)キレート剤である。さらに別の実施形態では、金属キレート剤は、ニッケル(Ni)キレート剤である。さらに別の実施形態では、金属キレート剤は、鉄(Fe)キレート剤である。
【0201】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定する方法であって、(a)細胞試料をグルコース補足培地と共にインキュベートするステップ;(b)グルコース補足培地を除去し、次いで細胞試料をガラクトース補足培地と共にインキュベートするステップ;(c)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;(d)細胞試料の細胞生存能力を測定するステップ;及び(e)細胞生存能力のレベルが、最初にグルコース補足培地と共にインキュベートし、次いでグルコース補足培地を除去した後にガラクトース補足培地と共にインキュベートし、試験薬剤と接触させていない細胞試料の細胞生存能力のレベルと比較して減少している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む方法が本明細書で提供される。試験薬剤と接触させていない対応する細胞試料の細胞死のレベルは、任意の好適な参照、例えば対照試料又は参照試料であってもよく、これは、いくつかの実施形態では正常なミトコンドリア代謝を代表するものであってもよく、また他の実施形態では増加したミトコンドリア代謝を代表するものであってもよい。
【0202】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定する方法であって、(a)細胞試料を培地中でインキュベートするステップであって、細胞試料はミトコンドリアタンパク質をコードする遺伝子の欠失を含むステップ;(b)細胞試料を試験薬剤と接触させるステップ;(c)細胞試料の細胞生存能力を測定するステップ;及び(d)細胞生存能力のレベルが、ミトコンドリアタンパク質をコードする遺伝子の欠失を含まない、試験薬剤と接触させた細胞試料の細胞生存能力のレベルと比較して増加している場合、その試験薬剤を候補抗がん剤として特定するステップを含む方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアタンパク質は、フェレドキシン1(FDX1)である。ミトコンドリアタンパク質をコードする遺伝子の欠失を含む、試験薬剤と接触させた対応する細胞試料の細胞生存能力のレベルは、任意の好適な参照、例えば対照試料又は参照試料であってもよく、これは、いくつかの実施形態では正常なミトコンドリア代謝を代表するものであってもよく、また他の実施形態では増加したミトコンドリア代謝を代表するものであってもよい。
【0203】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定するためのキットであって、試験薬剤及び細胞タンパク質リポイル化を測定するためのアッセイを含むキットが本明細書で提供される。
【0204】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定するためのキットであって、銅補足培地、試験薬剤及び細胞生存能力を測定するためのアッセイを含むキットが本明細書で提供される。
【0205】
特定の態様では、候補抗がん剤を特定するためのキットであって、銅キレート剤、試験薬剤及び細胞死を測定するためのアッセイを含むキットが本明細書で提供される。
【0206】
例示
エレスクロモールは、抗がん治療剤として開発された化合物である。Synta Pharmaceuticalsは、エレスクロモールが、パクリタキセル(paclitaxel)との併用で、がんの無進行生存期間を延長し得ることを示唆する第II相試験の結果を生み出した(O'Dayら、J Clin Oncol、2009年、参照によりその全体が組み込まれる)。しかし、その後のSynta Pharmaceuticalsの第III相試験は失敗に終わった。第III相試験の結果の事後解析により、高レベルの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)とエレスクロモールの有効性との間の相関が明らかとなった(O'Dayら、J Clin Oncol、2013年、参照によりその全体が組み込まれる)。LDHは嫌気性呼吸における主要な酵素である。第III相試験が失敗した理由として、1)エレスクロモールの作用機序が不明であったこと、2)患者選択のための利用可能なバイオマーカーがなかったこと、3)エレスクロモールが最適でない製剤で投与されたこと、が考えられる。
【0207】
Tsvetkovら、Nat Chem Bio、2019年で報告された最近の発見により、エレスクロモールの殺傷が銅に依存していることが明らかとなっている(図1)。さらに、ミトコンドリアタンパク質フェレドキシン1(FDX1)がエレスクロモールの直接の標的であることが判明した(図4)。全ゲノムCRISPRレスキュースクリーニングにより、FDX1の欠失が2つの異なるエレスクロモール類似体に対する抵抗性を付与することが明らかとなった(図2)。加えて、PRISMバイオマーカー解析により、FDX1の高発現はエレスクロモールに対する感受性の増加と相関していることが明らかとなった(図3)。Tsvetkovら、Nat Chem Bio、2019年により、エレスクロモールがin vitroでFDX1活性を阻害し、エレスクロモール-Cu(II)がFDX1のネオ基質であることが実証された(図5及び図6)。著者らは、多くの薬物抵抗性モデルに存在するミトコンドリア代謝のレベル上昇により、エレスクロモール感受性が予測されることを実証した(図7)。
【0208】
[実施例1]
FDX1がリポ酸経路を制御する
CRISPR KO FDX1細胞株又はCRISPR KO LIAS細胞株を作製し、ウェスタンブロットによりリポイル化タンパク質リポイル-DLAT及びリポイル-DLSTのレベルについて評価した(図8)。ウェスタンブロット解析の結果、CRISPR KO細胞株では、対照細胞と比較して、リポイル化タンパク質レベルが劇的に減少していることが明らかとなった。さらに、細胞を1μM エレスクロモールで6時間処置すると、リポイル-DLAT及びリポイル-DLSTタンパク質レベルが経時的に減少することが示された。結論として、FDX1がリポ酸経路を制御していることが判明した(図8)。
【0209】
[実施例2]
リポ酸染色はエレスクロモールに対する感受性のバイオマーカーである
FDX1 KO細胞では、リポ酸を免疫組織化学的アッセイにより染色した。顕微鏡画像により、FDX1 KO細胞ではリポ酸レベルが対照細胞と比較して劇的に減少していることが実証された(図10)。結腸腺癌腫の組織の染色により、リポ酸レベルが組織内で上昇していることが実証された。結論として、腫瘍におけるリポ酸の染色は、ミトコンドリア代謝のレベルが上昇した腫瘍のバイオマーカーとして機能し得る。加えて、腫瘍中のリポ酸レベルの増加は、銅結合化合物、例えばエレスクロモール及びジスルフィラムへの感受性があることが判明した。
【0210】
[実施例3]
異なる化合物が銅依存性細胞死を促進する
エレスクロモールに加えて、他の化合物もがん細胞の銅依存性細胞死を促進することが判明した(図9)。
【0211】
[実施例4]
化合物生存能力プロファイルのクラスタリングにより、銅依存性細胞死を促進する化合物の特有のクラスターが明らかとなっている
がん細胞死を促進し得る新しい特有の経路標的薬を明らかにするために、1448種の化合物を489の細胞株でテストした化合物生存能力プロファイルのクラスタリングを解析した。この解析により、金属結合分子の特有のクラスターが明らかとなった(図12)。興味深いことに、これらの化合物の多くは、銅と特異的に結合することが示された。抗乱用化合物であるジスルフィラム、並びに構造的に類似した類似体、例えばチラム及びテトラメチルチウラムモノスルフィド(TMT)は、銅依存性の表現型を促進することが示された。種々の金属と結合するオキシキノリン(8-HQ)は、βプロテアソームを介した分解の銅依存性誘導、及び酵母の銅依存性細胞死を促進するピリチオンを促進し得る。特に、銅と結合してミトコンドリアまでシャトリングし、細胞に有益な結果及び有害な結果の両方をもたらす化合物エレスクロモールは興味深いものであった。これらの銅結合分子が特有のモジュールにクラスタリングしていることから、特定の細胞は銅結合分子に対して、このコホートの他の探索化合物とは異なる特有の感受性を有する可能性があることが示唆される。
【0212】
金属結合化合物は、必須因子からの金属封鎖(キレート化)、又は毒性である細胞コンパートメントへの金属のシャトリング(例えば、イオノフォア)のいずれかにより、毒性表現型を誘導し得る。クラスターで観察された化合物が、特定の金属のキレート化又はシャトリングによって細胞死を促進するかどうかを決定するために、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛の存在下又は非存在下で、各化合物に誘導される細胞毒性を試験した。全ての試験されたケースにおいて、銅の添加は、クラスター内の全ての化合物による細胞死誘導を著しく増強させた(図13)。程度はより低いが、亜鉛とジスルフィラム、NSC319756、又はピリチオン、及び鉄と8HQも細胞死を促進することができた。このように、銅結合及び銅誘導性細胞死は、異なる化合物のクラスターに共通する表現型である。
【0213】
[実施例5]
銅誘導性細胞死は、非アポトーシス又は非フェロトーシスである。
エレスクロモールはクラスターの中で銅に最も選択的に結合することが示されている(図13)。細胞のエレスクロモールに対する感受性は、銅の利用可能性に依存する。銅を生理的濃度(1μM)又は該化合物と1:1の比のいずれかで培地に添加すると、両方ともエレスクロモール誘導性細胞死を著しく増強させた(図15)。テトラチオモリブデン酸(TTM)で培地から銅をキレート化すると、複数の細胞株モデルでエレスクロモール誘導性細胞死が完全にブロックされる(図27)。銅は培地(RPMI)に補足されないため、銅の利用可能性は血清中の銅存在量に制限され、該存在量は著しく変動し得る。そのため、血清を含まない培地においてエレスクロモールで処置した細胞は抵抗性の増加を示し、培地への銅の添加により完全に逆転した(図16)。卵巣がん細胞株のサブセットで示されたように、培地への銅の補足によりエレスクロモールの有効性の変動が著しく低減される(図28)。このことは、外因性の銅レベルが低い場合、細胞内の銅レベルもエレスクロモールに対する感受性を決定し得ることを示唆している。したがって、エレスクロモールの有効性は、細胞外及び細胞内の銅の利用可能性に依存する。
【0214】
鉄及び銅は、両方ともフェントン反応により、細胞内でO2・-及びH2O2から反応性の高いヒドロキシルラジカル(・OH)を生成し得る。鉄の場合、該反応は非アポトーシス細胞死であるフェロトーシスを誘導する脂質ラジカルをもたらし得る。これまでの発見では、エレスクロモールはROS依存性アポトーシス細胞死を誘導することが示唆されていた。しかし、最近、エレスクロモール誘導性細胞死は、カスパーゼ-3の有意な活性化を伴わないことが示された。そのため、エレスクロモール誘導性細胞死がアポトーシスであるかどうかを決定するために、重要なアポトーシスエフェクター(Bak及びBax)をノックアウトしたHCM18細胞を用いて、遺伝的アプローチを行った(図29)。Bak/Bax欠失細胞では、予想とおり、アポトーシスを誘導するパクリタキセル(paclitaxel)の有効性が著しく阻害された(図11)。しかし、エレスクロモール-銅の細胞死誘導能は影響を受けなかった(図11)。他の銅結合分子もこれらの細胞株でテストしたが、全てのケースについて、これらの化合物の有効性は、アポトーシス経路の遺伝的摂動に影響を受けなかった(図32)。
【0215】
エレスクロモールによる銅依存性細胞死をどの細胞死経路が媒介し得るのかをさらに立証するために、公知の細胞死経路の重要なニッチをブロックする化合物を用いた化学的アプローチが行われた。アポトーシス(汎カスパーゼ阻害剤)、フェロトーシス(フェロスタチン-1)、ネクロトーシス(ネクロスタチン-1)、並びに他の抗酸化物質及び細胞死制御経路をブロックする化合物で細胞を前処置したが、エレスクロモール-銅誘導性細胞死はブロックされなかった。対照として、フェロトーシスを誘導するGPX4阻害剤(ML162)及びアポトーシスを誘導するプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ(bortezomib))を用いた。テストした3つの細胞株では、TTMによる銅キレート化のみがエレスクロモール誘導性細胞死をブロックすることができた(図11)。フェロトーシス又はアポトーシスを変化させる化合物は(ML162及びボルテゾミブ(bortezomib)対照にて示すように)、エレスクロモール-銅誘導性細胞死に影響を与えなかった。これらの発見と一致して、エレスクロモール-銅により、フェロトーシス誘導において一般に観察される脂質過酸化の重大な変化は誘導されなかった。観察されたわずかな変化は、該分子の銅キレート化特性によるものであると思われる。エレスクロモール-銅はTTMにより、毒性の増加、並びに脂質過酸化及び銅キレートレベルの減少を示した。これらの発見を総合すると、エレスクロモール-銅及び他の銅結合化合物は、アポトーシスともフェロトーシスとも化学的・遺伝学的に異なる細胞死を誘導することが示唆される。この細胞死経路の銅による絶対的な依存性及び制御を考慮し、簡単のため、このプロセスを「キュプロプトーシス」と称する。
【0216】
[実施例6]
FDX1が制御するリポイル化は、エレスクロモールに対する感受性の重要な制御因子である
エレスクロモールによるキュプロプトーシスは、ミトコンドリア代謝によって制御されている。培地中のグルコースをガラクトースに置き換えることにより強制的に増加したミトコンドリア代謝に切り替えられた細胞は、エレスクロモールに対する感受性がより高くなる(図7及び図30)。このミトコンドリア代謝への転換はまた、他の銅結合分子の有効性も著しく高め、一部の分子は他の分子よりも強い効果を示した。8-HQ、ピリチオン、及びTMTに対するミトコンドリア代謝の効果はかなり穏やかであるのに対して、ジスルフィラム及びNSC-319726に対する効果は、エレスクロモールに対して示されたのと類似であった(図32)。この効果が電子移動連鎖(ETC)を介しているかどうかを立証するために、143B rho0細胞(ミトコンドリアDNA欠損)及びその未処理(parental)対照(143B)をテストした。驚くべきことに、143B rho0細胞は、銅結合化合物によって、エレスクロモール及びジスルフィラムの場合は細胞死への感受性がわずかに高く、TMT、NSC319726、ピリチオン、8HQの場合は細胞死への感受性が同等であった(図31図32)。このことから、エレスクロモール、及び他の銅結合化合物による細胞死促進のためには機能的ETCが必要であるという可能性は除外された。
【0217】
フェレドキシン1(FDX1)がエレスクロモールによる毒性発現の重要な伝達物質であることは既に示されている。エレスクロモールはFDX1に直接結合し、エレスクロモールと結合した銅を還元してキュプロプトーシスを促進することができる。キュプロプトーシスの下流伝達物質の可能性をより良く理解するために、CRISPR/Cas9欠失戦略を用いた。エレスクロモール単独、及び銅の補足と組み合わせた場合の両方に対して付与された抵抗性を失う遺伝子を特定するため、接着性肺がん細胞株A549において、3000種の代謝酵素に着目した標的スクリーニングを行った。全ての条件下で、FDX1遺伝子が最も高いスコアでのヒットであり、エレスクロモールを介した毒性におけるこの遺伝子の重要性が強調された(図33)。興味深いことに、2つの異なる機能的経路:ミトコンドリア複合体I及びリポ酸経路から複数のヒットが得られた。リポ酸経路は、特定の酵素(DLAT、DLST、DBT、GCSH)のリシンリポイル化を媒介するが、該リポイル化は、該酵素の機能にとって重要である(図34)。興味深いことに、リポイル化酵素(LIAS)及び下流のリポイル化標的酵素(PDH複合体)の両方が、遺伝学的改変因子スクリーニングにおけるヒットであった。このことにより、細胞のリポイル化状態がエレスクロモールによる毒性を媒介する役割を担うことが強く示唆された。この仮説は、リポイル化がミトコンドリア呼吸に必要であり、リポ酸が銅と高い親和性で結合することが示されていることから、特に魅力的なものであった。該発見を検証し、実際に、複数の細胞モデルで、FDX1の欠失によりエレスクロモール-Cu(II)及び同様にジスルフィラム-Cu(II)に対する抵抗性が付与されることが示された(図18)。また、リポイル化酵素であるLIASの欠失もエレスクロモールへの抵抗性を促進するのに十分であった(図18)。
【0218】
[実施例7]
FDX1はリポイル化の上流制御因子である
FDX1に焦点を当てた研究は数多くあるが、FDX1の細胞内における本来の機能については依然として議論されている。一方では、FDX1がミトコンドリアFe-Sクラスター経路に関与していることが示された。そして他方では、FDX1が異なる役割を有することを示唆する、これらの発見と矛盾する証拠がある。がん細胞におけるFDX1の役割を決定するため、数百のがん細胞株を対象に、CRISPR/Cas9でノックアウトした場合に類似の生存能力効果を示す遺伝子を特定するための解析を実施した。この解析により、FDX1欠失は、ミトコンドリア複合体I及びリポ酸経路という2つの機能的カテゴリーのタンパク質と高い相関があることが明らかとなった(図19)。これらの結果は、エレスクロモールを用いた遺伝子欠失レスキュースクリーニングにおける機能的ヒットとほぼ同一である(図33)。これらの結果は、FDX1及びリポ酸経路遺伝子の両方が同じ機能的経路にあることを強く示唆している。
【0219】
FDX1がタンパク質リポイル化経路の上流にあるかどうかを立証するために、FDX1及びリポイル化経路における他の重要な酵素(LIPT1、LIAS、LIPT2)をノックアウトした。DLAT及びDLSTのリポイル化状態は、リポイル化されたリシンを認識する抗体を用いて評価した。ウェスタンブロット解析及びIHCの両方で観察されたように、FDX1欠失により、立証されたLA経路の酵素欠失と同様に、リポイル化されたDLAT及びDLSTのレベルが完全になくなった(図20及び図21)。
【0220】
評価から、FDX1 KO細胞では、AAVS1標的対照及びK562未処理細胞の両方と比較して多くの代謝物が変化しており、これはタンパク質リポイル化の制御におけるFDX1の新しく発見された役割と一致した(図35)。特に、コハク酸(succinate)の枯渇に伴うピルビン酸(pyruvate)及びa-KGの蓄積があるが、これはDLAT及びDLSTの活性が阻害された場合に予想されることである(図22)。また、NAD/NADH比の著しい増加が見られ、乳酸レベルには有意な変化がなかった。興味深いことに、全体のSAMレベルも蓄積しており、これらの細胞ではタンパク質リポイル化によって消費されたSAMが、細胞全体のSAMにおけるかなりの部分を構成していることが示唆された。総合すると、これらのメタボロミクスデータは、FDX1がタンパク質リポイル化の上流制御因子であるという発見を強く支持する。
【0221】
以前のPRISM実験で感受性又は抵抗性のいずれかであることが示された細胞株を選び、細胞内でのエレスクロモールの効果をさらに決定した(図23)。これらの細胞は平均してFDX1 mRNAの発現が多く、全体的な感受性の差を再現することができた(図26)。群としての感受性細胞は、FDX1タンパク質及びリポイル化タンパク質の発現レベルにおいて全体的により高レベルを示した(図27)。リポ酸は銅と強く結合するため、エレスクロモールと結合した銅がリポイル化タンパク質に直接影響を与える可能性があると考えられる。実際、10nMという低濃度のエレスクロモールの添加により、タンパク質レベルへの劇的な影響なく、リポイル化タンパク質のレベルが低下した(図36及び図37)。
【0222】
[実施例8]
銅結合薬物の用量増加後の細胞生存能力
10μM FeCl2、FeCl3、ZnCl2、NiCl、CuCl2、又はCoCl2の存在下で、指定薬物の用量を増やして処置した後のMON細胞生存能力を測定した(図13)。10μM FeCl2、FeCl3、ZnCl2、NiCl、CuCl2、又はCoCl2の存在下で、指定薬物の用量を増やして処置した後のNCIH2030細胞生存能力を測定した(図14)。
【0223】
[実施例9]
A549細胞におけるCRIPSR/Cas9ポジティブセレクションスクリーニング
A549細胞におけるCRIPSR/Cas9ポジティブセレクションスクリーニングの実験セットアップを図17に示す。このスクリーニングでは、3000種の代謝関連遺伝子を標的としたライブラリー(遺伝子あたり約10gRNA)を用いた。スクリーニングにおいて40nM エレスクロモール-Cu(II)で処置した細胞で最もポジティブにエンリッチされたsgRNAを表4に示す。
【0224】
【表4】
【0225】
機能別:Fe-Sクラスター経路、リポ酸経路、複合体I、その他、に遺伝子を分類した。A549細胞におけるFDX1欠失により、エレスクロモール-Cu(II)及びジスルフィラム-Cu(II)に対して相対的な抵抗性が付与されることが判明した。OVISE細胞におけるLIAS及びFDX1欠失により、エレスクロモール-Cu(II)に対して抵抗性が付与されることが判明した(図18)。
【0226】
スクリーニングの結果に基づく相関解析により、FDX1欠失は、リポ酸経路及び複合体Iという2つの異なる経路の構成成分の欠失と相関があることが明らかとなった(図19)。
【0227】
FDX1欠失により、OVISE細胞及びK562細胞の両方で、細胞内のリポイル化タンパク質が排除されることが判明した(図20及び図21)。
【0228】
結論として、リポ酸経路におけるFDX1機能のモデルを図22に示す。
【0229】
[実施例10]
PRISMアッセイ
724の細胞株の生存能力分布を、PRISMアッセイにより試験した。対照と比較して、感受性細胞株ではFDX1 mRNAの発現レベルが増加していることが判明した(図23)。FDX1の発現レベルは、図24で検証された。ウェスタンブロット解析により、抵抗性細胞は感受性細胞よりもFDX1タンパク質レベルの増加、及びリポイル化タンパク質レベルの低下を示すことが明らかとなった(図25)。A549細胞を1μM エレスクロモール(+CuCl2)で処置した後、リポイル化のレベルが低下する(図26)。
【0230】
[実施例11]
遺伝子コピー変化解析
ミトコンドリア代謝のレベル上昇に関連するバイオマーカーについて、The Cancer Genome Atlas(TCGA)データセットプラットフォームから遺伝子コピー変化解析を実施した。その結果、FDX1の発現は、11番染色体のコピー数(CN)変化と高い相関があることが実証された(図38)。
【0231】
[実施例12]
バイオマーカー陽性マウス異種移植モデルの立証
バイオマーカー陽性細胞は、マウス薬物動態試験で測定された濃度及び動態に対応して、エレスクロモール-Cu(II)処置に対して感受性であった。
【0232】
細胞培養ウォッシュアウト
試験において、エレスクロモール-Cu(II)の薬物動態(PK)特性を模倣した短い曝露時間をシミュレートする。
【0233】
結果
200nMで2時間曝露し、その後ウォッシュアウトすることで、バイオマーカー選択的細胞死滅をもたらすのに十分である。結果を図48に示す。データは、Cmaxによる活性プロファイルを支持している。細胞は、異なる銅イオノフォアの有効性が分析され得るSubQ異種移植モデルを立証するために用いられる。
【0234】
均等物
当業者であれば、本明細書に記載される発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、日常の実験以上のものを用いずに認識するか、又は確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の請求項に包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図17
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図19
図20
図21
図22
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32-1】
図32-2】
図32-3】
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52-1】
図52-2】
図53-1】
図53-2】
図54
図55
図56-1】
図56-2】
図56-3】
【国際調査報告】