(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ポリウレタンで形成する結合系のための煙を抑制する添加物
(51)【国際特許分類】
B22C 1/02 20060101AFI20230413BHJP
B22C 1/22 20060101ALI20230413BHJP
B22C 1/10 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B22C1/02 Z
B22C1/22 P
B22C1/10 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552380
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 US2021020189
(87)【国際公開番号】W WO2021178268
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517387317
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴァス,パウラ
(72)【発明者】
【氏名】ショフナー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ホルヴァート,リー
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA01
4E092AA02
4E092AA23
4E092AA32
4E092AA55
4E092BA12
4E092CA03
(57)【要約】
ポリウレタン型の結合系を有するノーベーク鋳造用の混合組成物に用いるための砂添加物は、砂添加物を用いない場合と比較して、組成物から形成された主型及び中子が溶融金属に曝された際に放出される煙の量を低減する。砂添加物は、化学式がFe(OH)3の黄色酸化鉄を含む。砂添加物は、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトのうちの1以上を更に含むことができる。上述の場合、黄色酸化鉄は、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトの混合重量の約10重量パーセント~約40重量パーセントを占め、好適には、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトの混合重量の約20重量パーセント~約30重量パーセントを占める。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2の部分で提供され、第1部分がポリオール成分を含み、第2部分がポリイソシアネート成分を含むポリウレタン結合剤の前駆物質と、
液体の硬化触媒と、
好適な鋳造骨材と、
黄色酸化鉄を含む砂添加物と
を備える
鋳造用混合組成物。
【請求項2】
前記砂添加物は、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトのうちの1以上を更に含む
請求項1に記載の鋳造用混合組成物。
【請求項3】
前記砂添加物は、前記好適な鋳造骨材を基準として、約3重量パーセント~約5重量パーセントの量である
請求項1又は2に記載の鋳造用混合組成物。
【請求項4】
前記砂添加物における前記黄色酸化鉄は、前記黄色酸化鉄、前記赤色酸化鉄、前記黒色酸化鉄、及び前記ウスタイトの混合重量の約10重量パーセント~約40重量パーセントを占める
請求項3に記載の鋳造用混合組成物。
【請求項5】
前記砂添加物における前記黄色酸化鉄は、前記黄色酸化鉄、前記赤色酸化鉄、前記黒色酸化鉄、及び前記ウスタイトの混合重量の約20重量パーセント~約30重量パーセントを占める
請求項4に記載の鋳造用混合組成物。
【請求項6】
前記液体の硬化触媒は、前記ポリウレタン結合剤の成分の前記第1部分の重量を基準として、約4重量パーセント~約8重量パーセントの範囲にある
請求項1に記載の鋳造用混合組成物。
【請求項7】
前記液体の硬化触媒は、前記ポリウレタン結合剤の前駆物質の少なくとも前記第2部分と別個に、使用まで維持される
請求項6に記載の鋳造用混合組成物。
【請求項8】
前記好適な鋳造骨材は、ケイ砂である
請求項1に記載の鋳造用混合組成物。
【請求項9】
煙の放出を低減するためのノーベーク鋳造用の混合組成物に用いるための、黄色酸化鉄を備える砂添加物。
【請求項10】
赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトのうちの1以上を更に備える
請求項9に記載の砂添加物。
【請求項11】
前記砂添加物における前記黄色酸化鉄は、前記黄色酸化鉄、前記赤色酸化鉄、前記黒色酸化鉄、及び前記ウスタイトの混合重量の約10重量パーセント~約40重量パーセントを占める
請求項10に記載の砂添加物。
【請求項12】
前記砂添加物における前記黄色酸化鉄は、前記黄色酸化鉄、前記赤色酸化鉄、前記黒色酸化鉄、及び前記ウスタイトの混合重量の約20重量パーセント~約30重量パーセントを占める
請求項11に記載の砂添加物。
【請求項13】
ポリオール成分を含む第1部分と、ポリイソシアネート成分を含む第2部分と、液体の硬化触媒とを組み合わせることによって、使用時に調製されるポリウレタン結合剤と、
黄色酸化鉄を含有する砂添加物を含む好適な鋳造骨材と
を備え、
前記砂添加物は、前記好適な鋳造骨材の重量の約3パーセント~約5パーセントの量であり、
前記ポリウレタン結合剤は、前記好適な鋳造骨材と混合される
鋳造用混合物。
【請求項14】
前記砂添加物は、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトのうちの1以上を更に含み、
前記黄色酸化鉄は、前記砂添加物の全重量の約10重量パーセント~約40重量パーセント、好適には約20重量パーセント~約30重量パーセントを構成する
請求項13に記載の鋳造用混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンで形成する結合系を用いて形成された主型及び中子を用いて金属部品を鋳造するために用いられる、結合系用の添加物に関する。更に具体的には、本開示は、好適な鋳造骨材及び2つのポリウレタン結合剤の前駆物質を含む鋳造用混合物に関する。液体触媒は、前駆物質の混合により形成されるポリウレタンを硬化させるために用いられる。結合剤において用いられる有機化合物の分解により生じる煙は、黄色酸化鉄(「YIO」)の添加物の使用を通して抑制される。
【背景技術】
【0002】
金属物品の鋳造に用いられる主型(mold)及び中子は、鋳造骨材及び/又は鋳物砂から作製でき、鋳造用結合剤によって結合される。いくつかの工程が上述のために用いられる。
【0003】
「ノーベーク(no-bake)」工程においては、鋳造用混合物は、好適な骨材を結合剤及び硬化触媒と混合することによって調製される。鋳造用混合物を型に詰めた後、鋳造用混合物を硬化することにより、鋳造形状が、主型又は中子として有用となる。
【0004】
「コールドボックス(cold box)」工程においては、鋳造用混合物は、好適な骨材を結合剤と混合することによって調製される。鋳造用混合物を型に押し入れた後、触媒蒸気が鋳造用混合物を通過させることにより、鋳造用混合物が硬化され、鋳造形状が主型又は中子として有用となる。
【0005】
更に別の工程においては、鋳造用混合物は、熱反応性の結合剤及び触媒と骨材を混合することによって調製される。鋳造用混合物は、鋳造用混合物を硬化させる加熱された型に、鋳造用混合物を詰めることによって形成されることにより、鋳造形状が、主型又は中子として有用となる。
【0006】
ノーベーク工程に着目すると、鋳造産業においてノーベーク工程に広範に用いられている結合剤の一部は、フェノールウレタンノーベーク結合剤、エステル硬化型のフェノールノーベーク結合剤、及びフルフリルアルコール酸硬化型のノーベーク結合剤を含む。
【0007】
本開示の譲受人は、40年を超える期間、鋳造用結合剤を提供することに相当に従事してきた。代表的な米国特許及び米国公開出願の一部は、Robinsの特許文献1及び2、Changの特許文献3~5、Hutchingsの特許文献6、Chenの特許文献7、及びDandoの特許文献8を含む。
【0008】
結合剤のパッケージを調合する際に、いくつかの変数が考慮されてきた。例えば、Kiuchiの特許文献9は、従来のノーベーク結合剤は硬化速度が遅く、初期強度が低い傾向があったことを教示している。結合剤が十分に調整され、硬化した鋳型を型から除去可能にするのに長い時間を要するため、型の利用効率が悪くなる。本明細書の用語においては、「離型時間(strip time)」とは、Chenの共有特許文献7に教示されているように、ミシガン州デトロイトのHarry W.Dietert社が販売する計器を用いた、結合剤成分が砂又は骨材と混合された時から、形成された鋳造形状が生型硬度(Green Hardness)「B」尺度で90のレベルに到達するまでに経過する時間である。Kiuchiの特許文献9は、離型時間を短く維持するために、初期引張強度を大きくすることが所望の結果であることを教示している。
【0009】
従来技術及び本明細書において用いられる別の用語は、「作業時間(work time)」である。本明細書においては、作業時間の厳密な定義は、Dietert社の計器を更に用いた、結合剤成分と骨材及び砂とが混合された時点と、形成された鋳造形状が生型硬度「B」尺度で60の水準に達する時点との間の時間である。鋳物に適用可能との観点においては、「作業時間」は、主型及び中子を形成する際に砂混合物を効果的に加工可能な概算時間を定義する。したがって、離型時間と作業時間との間の差は、成形されている鋳型の加工が不可能であるが、型からの除去が未だ不可能な待ち時間(dead time)の総計である。離型時間に対する作業時間の比(W/S)は、上述の概念を無次元的に表現し、(少なくとも理論的には)0~1の範囲である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3485797号
【特許文献2】米国特許第3676392号
【特許文献3】米国特許第6391942号
【特許文献4】米国特許第6479567号
【特許文献5】米国特許第7125914号
【特許文献6】米国特許第6559203号
【特許文献7】米国特許第6602931号
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0009950号明細書
【特許文献9】米国特許第5616631号
【特許文献10】米国特許第7984750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
最終的に、鋳造用の結合系の設計者は、固体の外壁面が鋳型の中子の形状を再現する鋳型内の金属に形成された時点で、注入された溶融金属からの熱を用いて、結合剤を分解する結合系を提供するという目的を有する。上述の分解により、砂及び/又は他の骨材を容易に回収及び再利用することが可能となる。Pedersonの特許文献10に教示されているように、鋳型が、鋳鉄が注入される約1000℃よりも低い温度で注入された金属で用いられる場合、結合剤は分解する必要がある。アルミニウム及びマグネシウムは、上述の金属の例である。
【0012】
結合剤を分解する能力と概ね同等に重要なのは、環境的に許容可能な結合剤を提供することである。鋳造前と鋳造後の双方の鋳造用混合物に作業者が曝されるため、煙、毒性、及び臭気のような問題は、効果的に含まれる材料については排除よりも減少という議論に限定されるものの考慮しなければならない。
【0013】
環境上の健康及び安全性の遵守を確保するために一部の妥協を要する場合があるが、好適な引張強度及び作業時間を提供する能力は卓越しており、煙及び臭気を抑制するように作用する任意の添加物は鋳造品質を犠牲にしてはならないことは明らかである。
【0014】
したがって、煙の生成を少なくとも抑制すると同時に、作業能力を満たす、改良された結合系を提供することが目的となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本目的及び他の目的は、鋳造用混合組成物によって処理され、当該鋳造用混合組成物は、2の部分で提供され、第1部分がポリオール成分を含み、第2部分がポリイソシアネート成分を含むポリウレタン結合剤の前駆物質と、液体の硬化触媒と、好適な鋳造骨材と、黄色酸化鉄を含む砂添加物とを含む。
【0016】
多数の実施形態においては、液体の硬化触媒はポリウレタン結合剤の成分の第1部分の重量を基準として、約4重量パーセント~約8重量パーセントの範囲にある。多数の実施形態においては、液体の硬化触媒は、ポリウレタン結合剤の前駆物質の少なくとも第2部分と別個に、使用まで維持される。
【0017】
多数の実施形態においては、砂添加物は、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトのうちの1以上を更に含む。
【0018】
多数の実施形態においては、砂添加物は、鋳造骨材を基準として、約3重量パーセント~約5重量パーセントである。
【0019】
多数の実施形態においては、砂添加物における黄色酸化鉄は、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトの混合重量の約10重量パーセント~約40重量パーセントを占める。更に好適には、砂添加物における黄色酸化鉄は、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトの混合重量の約20重量パーセント~約30重量パーセントを占める。
【0020】
多数の実施形態においては、好適な鋳造骨材は、ケイ砂を含む。
【0021】
本発明の概念の実施形態の一部は、煙の放出を低減するためのノーベーク鋳造用の混合組成物に用いるための、黄色酸化鉄を備える砂添加物である。上述の実施形態の多数においては、砂添加物は、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトのうちの1以上を更に備える。
【0022】
上述の実施形態の一部においては、砂添加物における黄色酸化鉄は、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトの全重量の約10重量パーセント~約40重量パーセントを占める。更に好適には、砂添加物における黄色酸化鉄は、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びウスタイトの全重量の約20重量パーセント~約30重量パーセントを占める。
【発明を実施するための形態】
【0023】
赤色酸化鉄(「RIO」)の添加物の含有により煙を抑制することはほとんどないか、あるいは全くなかったが、黄色酸化鉄(「YIO」)の含有により、約1桁程度まで、煙の生成が劇的に低くなったことが、金属鋳造における有機物の結合系の使用に由来する煙の強度に関連する研究において、本発明者によって観察された。別の酸化鉄は、黒色酸化鉄、磁鉄鉱、又は酸化鉄(II、III)として多様に知られており、化学式は、Fe3O4であり、CAS番号は、1317-61-9である。更に別の酸化鉄は、ウスタイト又は酸化鉄(II)として知られ、化学式はFeOである。
【0024】
赤色酸化鉄は、化学式がFe2O3の酸化鉄(III)であり、赤鉄鉱とも称される。CAS番号は90452-21-4である。
【0025】
黄色酸化鉄は、酸化水酸化鉄(III)であり、一水和物の化学式は、FeO(OH)(H2O)であり、CAS番号は51274-00-1である。黄色酸化鉄は、水酸化鉄(III)、Fe(OH)3、水酸化鉄、又は、顔料用途においてはピグメントイエロー42(Pigment Yellow 42)とも称される。加温時に分解し、Fe2O3として再結晶する。
【0026】
VEINO ULTRA350は、金属鋳造において生じるベイニングの量を低減すべく用いられる市販の砂添加物である。当該砂添加物は、Fe2O3、Fe3O4、及びFeOの配合物を含む。
【0027】
PEP SET MAGNA1215/2215は、ポリウレタンで形成する市販の結合系である。結合系は、2の別個に包装された成分で販売されている。第1部分は、一般的にはパートI(Part I)と称され、1215と命名され、レゾール型フェノール樹脂、二塩基エステル、及びソルベントナフサを、性能添加物とともに含む。第2部分は、一般的にはパートII(Part II)と称され、2215と命名され、イソシアネート成分、ナタネメチルエステル、及びソルベントナフサを、性能添加物とともに提供する。パートI及びパートIIは混合され、液体のアミン触媒が添加される。PEP SET3401 CATALYSTは、4-(3-フェニルプロピル)ピリジンと、ソルベントナフサとを含む。
【0028】
実験手順においては、試験用の中子が作製された。1215成分及び触媒、当該事例においては市販の3401触媒は、WEDRON410の砂として市販されている円形のケイ砂と混合された。次いで、2215成分が添加された。2215成分に対する1215成分の重量比は、触媒を除いて60/40であり、結合剤の水準は、砂を基準とした場合(BOS:based on sand)において、1.2重量パーセントであった。触媒は、パート1を基準として、4重量パーセントで添加した。1つの事例においては、基線を確立すべく、煙を抑制する添加物は添加されなかった。上述に対して、BOSにおいて3重量パーセントのVEINO ULTRA350(VU350)が試験され、同様に、VEINO ULTRA350と黄色酸化鉄(YIO)との混合物は、70/30の比率において試験された。混合物は更に、BOSにおいて3重量パーセントであった。
【0029】
混合された時点で、得られた鋳造用混合物は、形成した中子の型を用いて、ドッグボーン(dogbone)の形状の引張試験片に成形した。得られた供試体(「ドッグボーン」)は、1時間、3時間、及び24時間で、引張強度について試験し、当該最後の実施例は、1時間及び3時間の試験と同一の湿度水準で実施した。中子の型から除去した後に、24時間、高い相対湿度(RH)で試験を更に行った。
【0030】
試験は、引張強度(単位:psi)について、以下のデータを提供する。
【0031】
【0032】
上述から、引張強度は、VU350が基準の事例に添加される場合において経時的に低下し、YIOをVU350と混合することにより、更に低下したことに留意されたい。しかしながら、上述は、砂添加物の既知の効果であるが故に、引張強度の閾値に合致している限り、引張強度の更なる低下は本質的には問題ではない。
【0033】
第1試験が4%の触媒で実施されたため、触媒の水準を8%に増加させ、添加物の混合物の重量比を調整しつつ、同一の結合系を用いて更なる一連のデータが生成された。
【0034】
上述を行った場合、8%の触媒で以下のデータが得られた。
【0035】
【0036】
上述のデータは表1、具体的には表1の基線である「添加物なし」の事例と直接比較できる。
【0037】
「離型時間(strip time)」及び「作業時間(work time)」という用語は、Kiuchiの特許文献9を引用して、上で詳述している。更なる詳細は、Chenの共有特許文献7に記載がある。ノーベーク結合剤は、硬化速度が小さく、初期強度が低い傾向があることは周知であるため、煙を低減する任意の添加物の、当該特性に対する効果を理解することが望ましい。
【0038】
離型時間と作業時間との間の差は、成形されている鋳型の加工が不可能であるが、型からの除去が未だに不可能な待ち時間の総計である。離型時間に対する作業時間の比(W/S)は、上述の概念を無次元的に表現し、(少なくとも理論的には)0~1の範囲である。作業時間が長く、W/Sの比率が高いことが望ましい。
【0039】
表1及び表2における調合物は、「作業時間」及び「離型時間」について試験し、データは表3に提供する。
【0040】
【0041】
上述のデータは、4%の触媒と70/30のVU350/YIOの混合物との組み合わせが、作業時間が顕著に長いことを示している。添加物がVU350のみの4%の触媒を除いて、全てのW/Sの比率は近接している。
【0042】
前述のデータに基づいて、一部の選択を開始可能である。最初の判断基準は、許容不可能な引張強度の損失を犠牲にして、煙の低減が達成されるべきではないという事実に基づいている。上述の実験における基準を、触媒が4%の「添加物なし」の系についての上述の282.6psiの引張強度と定義して、4%の触媒で3%のVEINO ULTRA350を用いて得られた207.6psiの引張強度が、最新の系で達成可能な結果を実証することを決定することにより、比較ができる。例えば、表1のデータによると、VEINO ULTRA350の系は、75psiの強度を損失し、「添加物なし」からは26.5%の損失を呈している。以下の表4においては、2の系は、VU350の系よりも3時間後の引張強度損失が少ないことが示されているが、双方とも更に高い触媒の水準を要する。
【0043】
他の2の系は、引張強度の損失がVU350の系を超えるが、関心が尽きない作業時間とW/Sの比率とを呈示した。
【0044】
更に、表4は、煙の低減に関するデータがある。
【0045】
【0046】
表4の煙の低減のデータは、PEP SET MAGNA1215/2215結合系を用いて作製したポリウレタンノーベーク型の中子から得られた。全ての添加物は、BOSにおいて3.0%で行われ、測定を行う前に24時間、中子を静置させた。次いで、中子は、同様の塊片に切断され、測定直前に700℃で2分間加熱した。炉から除去した時点で、中子は、計器の台上に載置され、チャンバの内部に引き上げた。上述の計器においては、放出された煙は、一方の側に光のアレイを有し、反対側に光電池を有する垂直管を通過する。当該管を通過する光の透過の減少は、「煙の放出(smoke emission)」の割合と考えられる。計器は、0.2秒ごとに試料から放出される煙の割合を測定し、データファイルに速度データを記録した。180秒後、各々の試料の放出は、概ね0に戻ったので、記録装置を停止し、中子を除去した。次いで、台を空気で洗浄し、各々の試料を2回試験した。
【0047】
測定間の中子の寸法の微小な変動を相殺するために、全てのデータは、全ての試料の中子の平均質量に対して正規化した。各々の試料についてなされた2の測定値は、上述のように正規化し、次いで、ともに平均化した。各々の試料の総排出量を経時的に決定するために、平均的な排出率曲線下の面積を呈示する積分が必要であった。上述は、180秒にわたる平均測定値を合計し、0.2(実験のサンプリング速度)を乗算することによってなされた。次いで、全ての試料は、実験における基線として、「添加物のない」試料と比較した。
【0048】
排出の低減の別の試験においては、あるいは、更に記述的には、BTXN排出の削減の試験においては、中子の同一の作製工程を別個の設備で行った。上述の試験では、950℃で2分間加熱した後に、排ガスは、試験中に放出されたベンゼン(「B」)、トルエン(「T」)、キシレン(「X」、オルトキシレン、パラキシレン、及びメタキシレンを含む)、及びナフタレン(「N」)の総量に関して分析し、同様に、各々の試料の2の試料の正規化積分を行った。光透過率の変化ではない、個々の成分についての化学分析は、表4のデータとの若干の差異、及び試料における実験的差異をもたらすことに留意しつつ、表5のデータが得られ、各々の事例に4%の触媒が用いられた。各々の事例において、報告された数量は、中子の重量に対するmg/kgである。低減の比率は、「添加物なし」の試験との比較に基づいている。
【0049】
【0050】
観察されたBTXN排出量の減少は、各々の事例において、光透過試験で観察されたものと非常に匹敵するものであった。上述は、用いられる試験の全く異なる性質を考慮すると、特に注目すべきである。
【0051】
試験した全ての場合において、砂添加物は、VU350であるかVU350/YIOの混合物であるかにかかわらず、結合剤の添加前に砂と配合した。試験のいずれにおいても、砂添加物は、形成された鋳造形状に、多くの場合、被覆物としては添加されなかった。しかしながら、鋳物の形状における砂添加物の分散及び表面上への砂添加物の被覆により、必然的に明らかに別個の結果となると考える理由はない。
【国際調査報告】