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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ガラス組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20230413BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 33/08 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 33/16 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 33/22 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230413BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230413BHJP
   C03C 3/23 20060101ALI20230413BHJP
   C03C 3/14 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q11/00
A61K8/21
A61K33/08
A61K33/16
A61K33/22
A61P1/02
A61P29/00
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/04
A61K47/32
A61K47/46
C03C3/23
C03C3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552602
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 CA2021050271
(87)【国際公開番号】W WO2021174353
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/984,621
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/985,207
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521091664
【氏名又は名称】アイアール サイエンティフィック インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ボイド
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン ナオミ マクドナルド-パーソンズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4G062
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076BB22
4C076CC01
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD55
4C076EE09
4C076EE11
4C076EE58
4C076FF70
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB151
4C083AB152
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB312
4C083AB322
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC781
4C083AC782
4C083AD091
4C083AD092
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD41
4C083EE07
4C083EE32
4C083EE38
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA04
4C086HA05
4C086HA21
4C086HA24
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA08
4G062AA01
4G062BB08
4G062CC10
4G062DA01
4G062DA02
4G062DB01
4G062DC05
4G062DC06
4G062DC07
4G062DC08
4G062DD01
4G062DD02
4G062DD03
4G062DD04
4G062DE01
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4G062EA10
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4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM20
4G062NN34
(57)【要約】
本開示は、45モル%~約95モル%のB、約3モル%~約60モル%の、KO、NaO、CaO及びMgOからなる群より選ばれる1つ以上のガラス成分、及び、約2モル%~約45モル%の、CaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせを含むガラス組成物であって、該ガラスは、30モル%未満のCaF、SnF又はそれらの組み合わせを含む、ガラス組成物を提供する。該ガラスは、実質的にCuOを含まず、0.1モル%未満のLiO、0.1モル%未満のRbO、0.1モル%未満のBaO、0.1モル%未満のP、0.1モル%未満のSiO、及び、30モル%未満のMgOを含む。ガラス組成物は、象牙質を脱感作するために使用することができる。本開示はまた、象牙質脱感作性組成物、ならびに開示されたガラス組成物の方法及び使用も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
45モル%~約95モル%のB
約3モル%~約60モル%の、KO、NaO、CaO及びMgOからなる群より選ばれる1つ以上のガラス成分、及び、
約2モル%~約45モル%、例えば約5モル%~約15モル%の、CaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせ、
を含む、ガラス組成物であって、
前記ガラス組成物はB及びMgOを含み、
前記ガラス組成物は、CuOを実質的に含まず、
0.1モル%未満のLiO、
0.1モル%未満のRbO、
0.1モル%未満のBaO、
0.1モル%未満のP
0.1モル%未満のSiO
30モル%未満のMgO、
30モル%未満のCaF又はSnF、並びに
30モル%未満の、CaF及びSnFの組み合わせ、
を含む、ガラス組成物。
【請求項2】
前記ガラス組成物は、B、MgO及びCaOを含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
前記ガラス組成物は、(a)B、(b)MgO及び場合によりCaO、並びに(c)NaO及びKOのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項4】
前記ガラス組成物は、B、MgO、CaO、並びに、NaO及びKOのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項5】
前記ガラス組成物は、NaF、KF及びCaFのうちの1つ以上を、好ましくは約5モル%~約15モル%の量で含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項6】
前記ガラス組成物は45モル%~約55モル%のBを含む、請求項1又は5に記載のガラス組成物。
【請求項7】
前記ガラス組成物は約5モル%~約15モル%のKOを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項8】
前記ガラス組成物は約5モル%~約15モル%のNaOを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項9】
前記ガラス組成物は約10モル%~約20モル%のCaOを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項10】
前記ガラス組成物は1モル%~約30モル%のMgOを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項11】
前記ガラス組成物は約10モル%~約25モル%のMgOを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項12】
前記ガラス組成物は、0.1モル%未満のZnO及び0.1モル%未満のSrOを含み、例えば実質的にZnOを含まず、そして実質的にSrOを含まない、請求項1~11のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項13】
前記ガラス組成物は、実質的にCuOを含まず、実質的にLiOを含まず、実質的にRbOを含まず、実質的にBaOを含まず、そして実質的にPを含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項14】
前記組成物は、約5モル%~約10モル%のCaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせ、並びに、約90モル%~約95モル%のB、NaO、MgO及びCaOの組み合わせを含まず、前記ガラス組成物中のホウ素、マグネシウム、ナトリウム及び存在するならばカリウムの組み合わせ、及びCaは、それぞれ約20:約4:約6:約3の元素比で存在する、請求項1~13のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項15】
前記組成物は、約50モル%のB、約15モル%のNaO、約20モル%のMgO、約10モル%のCaO及び約5モル%のNaF、KF、CaF、SnF又はそれらの任意の組み合わせを含まない、請求項14に記載のガラス組成物。
【請求項16】
約5モル%~約10モル%のCaF、SnF、NaF、KF又はそれらの組み合わせ、並びに
約90モル%~約95モル%のB、NaO、MgO及びCaOの組み合わせ、を含み、
前記ガラス組成物中のホウ素、マグネシウム、ナトリウム及び存在するならばカリウムの組み合わせ、並びにCaは、それぞれ約20:約4:約6:約3の元素比で存在する、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項17】
約50モル%のB
約15モル%のNaO、
約20モル%のMgO、
約10モル%のCaO、及び、
約5モル%のNaF、KF、CaF、SnF又はそれらの任意の組み合わせ、
を含む、請求項16に記載のガラス組成物。
【請求項18】
約50モル%のB、約15モル%のNaO、約20モル%のMgO、約10モル%のCaO及び約5モル%のCaFを含む、請求項16に記載のガラス組成物。
【請求項19】
約48モル%のB、約9モル%のNaO、約19モル%のMgO、約14モル%のCaO及び約10モル%のNaFを含む、請求項16に記載のガラス組成物。
【請求項20】
前記ガラス組成物は、サイズが約1~約50μmである粒子を含む粒状材料である、請求項1~19のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項21】
前記粒子の少なくとも75%は、50μm未満のサイズである、請求項20に記載のガラス組成物。
【請求項22】
前記粒子の少なくとも85%は、50μm未満のサイズである、請求項20に記載のガラス組成物。
【請求項23】
前記粒子の少なくとも95%は、50μm未満のサイズである、請求項20に記載のガラス組成物。
【請求項24】
前記粒子の少なくとも5%は、7μm未満のサイズである、請求項20~23のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項25】
粒子の少なくとも5%は、35μm未満のサイズであり、
粒子の少なくとも5%は、15μm未満のサイズであり、かつ
粒子の少なくとも5%は、7μm未満のサイズである、
請求項20~23のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項26】
粒子の少なくとも5%は、約15μm~約35μmのサイズであり、
粒子の少なくとも5%は、約6μm~約15μmのサイズであり、かつ
粒子の少なくとも5%は、約3μm~約7μmのサイズである、請求項20~24のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項27】
粒子の約10%は、5μm未満のサイズであり、
粒子の約50%は、15μm未満のサイズであり、かつ
粒子の約90%は、30μm未満のサイズである、請求項20に記載のガラス組成物。
【請求項28】
前記ガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも5質量%を失う、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項29】
前記ガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも20質量%を失う、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項30】
前記ガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも40質量%を失う、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項31】
前記ガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも60質量%を失う、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項32】
前記ガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも80質量%を失う、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項33】
請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物を、含む練り歯磨きであって、前記練り歯磨きの約0.5~約15質量%の量、好ましくは約5質量%の量で含む、
練り歯磨き。
【請求項34】
請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物を含む練り歯磨きであって、
前記練り歯磨きは、約500ppm(m/m)~約1,500ppm(m/m)のフッ化物、例えば、約750ppm~約1,500ppmのフッ化物、又は約1,000ppm~約1,500ppmのフッ化物をもたらすのに十分な量の前記ガラス組成物を含む、
練り歯磨き。
【請求項35】
前記練り歯磨きは、純粋グリセロール等のグリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、シリカ、カルボポール940、及びスペアミントオイル等の香味剤を更に含む、請求項33又は34に記載の練り歯磨き。
【請求項36】
約85質量%のグリセロール、約1.2質量%のラウリル硫酸ナトリウム、約7.5質量%のシリカ、約0.5質量%のカルボポール940、約1.0質量%の香味剤、及び約5.0質量%のガラス組成物を含む、請求項35に記載の練り歯磨き。
【請求項37】
請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物を含む、予防ペースト。
【請求項38】
請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物を含む予防ペーストであって、
前記練り歯磨きは、約1,000ppm(m/m)~約1,500ppm(m/m)のフッ化物をもたらすのに十分な量の前記ガラス組成物を含む、
予防ペースト。
【請求項39】
請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物を含む、歯科用バーニッシュ。
【請求項40】
請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物を含む、歯科用バーニッシュであって、
前記練り歯磨きは、約1,000ppm(m/m)~約5000ppm(m/m)のフッ化物をもたらすのに十分な量の前記ガラス組成物を含む、
歯科用バーニッシュ。
【請求項41】
敏感な歯に関連する痛みを少なくとも一時的に軽減するための、請求項33~36のいずれか1項に記載の練り歯磨きの使用。
【請求項42】
敏感な歯に関連する痛みを少なくとも一時的に軽減するための、請求項37又は38に記載の予防ペーストの使用。
【請求項43】
敏感な歯に関連する痛みを少なくとも一時的に軽減するための、請求項39又は40に記載の歯科用バーニッシュの使用。
【請求項44】
個体において敏感な歯に関連する痛みを少なくとも一時的に軽減する方法であって、
請求項33~36のいずれか1項に記載の練り歯磨き、
請求項37若しくは38に記載の予防ペースト、又は、
請求項39若しくは40に記載の歯科用バーニッシュ、
を個体の象牙質に適用することを含む方法。
【請求項45】
象牙質を脱感作するための、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項46】
敏感な歯に関連する痛みを一時的に軽減するための、請求項45に記載の象牙質を脱感作するためのガラス組成物。
【請求項47】
(i)請求項20~27、45及び46のいずれか1項に記載のガラス組成物、並びに、
(ii)水不含の口腔適合性キャリア、
を含む、
象牙質脱感作性組成物。
【請求項48】
前記口腔適合性キャリアは、マウスウォッシュである、請求項47に記載の象牙質脱感作性組成物。
【請求項49】
前記口腔適合性キャリアは、マウスウォッシュと混合するように配合される、請求項47に記載の象牙質脱感作性組成物。
【請求項50】
前記口腔適合性キャリアは、口腔適合性粘性キャリアである、請求項47に記載の象牙質脱感作性組成物。
【請求項51】
前記口腔適合性粘性キャリアは、30℃で約100cP~30℃で約150,000cPの粘度を有する、請求項50に記載の象牙質脱感作性組成物。
【請求項52】
前記口腔適合性粘性キャリアは、練り歯磨き、デンタルジェル、予防ペースト、歯科用バーニッシュ又は結合剤である、請求項51に記載の象牙質脱感作性組成物。
【請求項53】
請求項1~17のいずれか1項に記載のガラス組成物であって、
前記ガラスは、請求項19~26のいずれか1項に記載の粒状ガラス組成物を調製するためのバルクガラスである、
ガラス組成物。
【請求項54】
表面エナメル質微小硬度を増加させるための、請求項33~36のいずれか1項に記載の練り歯磨きの使用。
【請求項55】
請求項33~36のいずれか1項に記載の練り歯磨きを個体のエナメル質に適用することを含む、表面エナメル質微小硬度を増加させる方法。
【請求項56】
表面エナメル微小硬度を増加させるための、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項57】
表面エナメル質を少なくとも部分的に再石灰化するための、請求項33~36のいずれか1項に記載の練り歯磨きの使用。
【請求項58】
表面エナメル質を少なくとも部分的に再石灰化する方法であって、
請求項33~36のいずれか1項に記載の練り歯磨きを個体のエナメル質に適用することを含む、
方法。
【請求項59】
表面エナメル質を少なくとも部分的に再石灰化するための、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項60】
1つ以上の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞するための、請求項33~36のいずれか1項に記載の練り歯磨きの使用。
【請求項61】
請求項33~36のいずれか1項に記載の練り歯磨きを個体の象牙質細管に適用することを含む、1つ以上の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞する方法。
【請求項62】
1つ以上の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞するための、請求項20~27のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2020年3月3日に出願された米国出願第62/984,621号及び2020年3月4日に出願された米国出願第62/985,207号からの優先権の利益を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
分野
本開示は、象牙質脱感作性組成物のために配合されうるガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
以下のパラグラフは、それらで議論されているものが先行技術又は当業者の知識の一部であることを認めるものではない。
【0004】
象牙質過敏は、熱、蒸発、触覚、浸透圧、化学的又は電気的刺激などの刺激に反応して、露出した象牙質表面から生じる歯の痛みである。象牙質過敏は、歯根表面の露出に伴う歯肉退縮(歯茎の後退)、セメント質層及びスミア層の喪失、歯の磨耗、酸蝕症、歯周ルートプレーニング又は歯の漂白によって引き起こされる可能性がある。
【0005】
象牙質は、歯髄から外側に放射状に広がる何千もの微細管状構造を含む。象牙質細管に存在する血漿様生体液の流れの変化は、歯髄面に位置する神経に存在するメカノレセプタを誘発し、それによって疼痛反応を誘発する可能性がある。この流体力学的流れは、寒さ、空気圧、乾燥、糖、酸味(脱水化学物質)、又は歯に作用する力によって増加されうる。熱い又は冷たい食べ物又は飲み物及び物理的圧力は、歯が過敏な個体にとって典型的な引き金である。
【0006】
歯科過敏症の痛みを長期にわたって確実に軽減する、広く受け入れられている至適基準となる処置法はない。しかしながら、処置は、インオフィス処置(すなわち、歯科医又は歯科療法士が適用することを意図したもの)、又は、店頭入手可能又は処方箋によって自宅で実行できる処置に分けることができる。
【0007】
これらの処置の作用機序は、象牙質細管の閉塞、又は、神経線維の脱感作/神経伝達の遮断のいずれかである。
【0008】
前書き
以下の前書きは、読者に本明細書を紹介することを意図したものであり、発明を規定することを意図したものではない。1つ以上の発明は、以下又は本文書の他の部分で記載される装置要素又は方法工程の組み合わせ又は部分組み合わせに存在しうる。本発明の発明者は、特許請求の範囲にこのような他の1つ以上の発明を記載していないという理由だけで、本明細書に開示された1つ以上の発明に対する権利を放棄する又は棄権することはない。
【0009】
当該技術分野で知られている象牙質脱感作性組成物の1つの例は、PCT公開番号WO2007144662A1に開示されている。開示された練り歯磨きは、ストロンチウムを含む生物活性ガラスを含む。開示された生物活性ガラスは、象牙質細管を閉塞し、炭酸化ヒドロキシアパタイトの沈殿及び結晶化を誘発する。開示された生物活性ガラスは、誘導された組織内部成長の速度と同じ速度で分解するように設計されている。
【0010】
当該技術分野で知られている象牙質脱感作性組成物の1つの例は、米国特許第5,735,942号明細書に開示されている。開示された練り歯磨きは、CaO、NaO、P及びSiOから構成されるミネラル組成物を含む。開示されたミネラル組成物は、象牙質の表面と化学的に反応し、歯の構造に密接に結合する。
【0011】
記載される1つ以上の実施形態は、象牙質細管を閉塞する非分解性粒状材料を含む象牙質脱感作性組成物に伴う1つ以上の欠点に対処し又は改善しようとする。幾つかの実施形態において、開示された粒状材料は、環境条件下で12時間~24時間で実質的に分解する。幾つかの実施形態において、開示された粒状材料は、同じ期間にわたってフッ化物の制御放出を提供する。
【発明の概要】
【0012】
本開示によるガラス組成物は、45モル%~約95モル%のB、約3モル%~約60モル%の、KO、NaO、CaO及びMgOからなる群より選ばれる1つ以上のガラス成分、及び、約2モル%~約45モル%の、CaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせを含む。ガラス組成物は、30モル%未満のMgO、30モル%未満のCaF又はSnF、及び、30モル%未満のCaF及びSnFの組み合わせを含む。ガラス組成物は実質的にCuOを含まず、LiO、RbO、BaO、P及びSiOのそれぞれを0.1モル%未満で含む。
【0013】
本開示によるガラス組成物は、Bと、MgO及びCaOのうちの1つ以上とを含むことができる。そのような組成物は、場合により、NaO及びKOのうちの1つ以上を含むことができる。幾つかの例示的な組成物において、ガラスは、B、MgO、CaO、及び、NaO及びKOのうちの1つ以上を含む。
【0014】
本開示によるガラス組成物は、NaF、KF及びCaFのうちの1つ以上を、好ましくは約5モル%~約15モル%の量で含むことができる。
【0015】
本開示によるガラス組成物は、45モル%~約55モル%のBを含むことができる。約5モル%~約15モル%のKO、約5モル%~約15モル%のNaO、約10モル%~約20モル%のCaO、約10モル%~約25モル%のMgO又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0016】
幾つかの例において、本開示によるガラス組成物は、0.1モル%未満のZnO及び0.1モル%未満のSrOを含む。幾つかの実施形態において、ガラス組成物は、CuOを実質的に含まず、LiOを実質的に含まず、RbOを実質的に含まず、BaOを実質的に含まず、そしてPを実質的に含まない。
【0017】
幾つかの例において、本開示によるガラス組成物は、(i)約5モル%~約10モル%のCaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせ、及び(ii)約90モル%~約95モル%のB、NaO、MgO及びCaOの組み合わせを含まず、前記ガラス組成物中のホウ素、マグネシウム、ナトリウムと存在するならばカリウムの組み合わせ、及びCaは、それぞれ約20:約4:約6:約3の元素比で存在する。幾つかの特定の例において、本開示によるガラス組成物は、約50モル%のB、約15モル%のNaO、約20モル%のMgO、約10モル%のCaO及び約5モル%のNaF、KF、CaF、SnF又はそれらの任意の組み合わせを含まない。
【0018】
特定の例において、本開示によるガラス組成物は、47.6モル%のB、9.5モル%のNaO、14.3モル%のCaO、19.1モル%のMgO及び9.5モル%のNaFを含む。
【0019】
本開示によるガラス組成物は、バルクガラス、又はバルクガラスから調製された粒状材料の形態であることができる。化学組成は、バルクガラスと、それから形成された粒状材料との間で同じである。粒状材料は、サイズが約1~約50μmの粒子を含むことができる。粒子の少なくとも75%はサイズが50μm未満であることができ、粒子の少なくとも5%はサイズが7μm未満であることができ、又はその両方であることができる。
【0020】
粒状材料として配合されたガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも5質量% を失う可能性がある。幾つかの例示的な組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60又は少なくとも80質量%を失う可能性がある。
【0021】
本開示によるガラス組成物は、練り歯磨き、予防ペースト、歯科用バーニッシュ、マウスウォッシュ、デンタルジェル又は結合剤などの象牙質脱感作性組成物に配合されうる。本開示による象牙質脱感作性組成物は実質的に水を含まない。
【0022】
本開示によるガラス組成物は、本開示による練り歯磨き、予防ペースト、歯科用バーニッシュ、マウスウォッシュ、デンタルジェル又は結合剤を個体の象牙質に適用することを含む方法などにおいて、象牙質を脱感作するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面の簡単な説明
ここで、本開示の実施形態を、添付の図面を参照しながら、単なる例として記載する。
【0024】
図1図1は、37℃の模擬体液(SBF)中で30分後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの10,000Xでの画像である。
図2図2は、37℃の模擬体液(SBF)中で3時間後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの10,000Xでの画像である。
図3図3は、37℃の模擬体液(SBF)中で12時間後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの10,000Xでの画像である。
図4図4は、37℃の模擬体液(SBF)中で30分後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの別の写真である。
図5図5は、37℃の模擬体液(SBF)中で30分後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの1,000X及び10,000Xでの2つの画像である。
図6図6は、37℃の模擬体液(SBF)中で3時間後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの1,000X及び10,000Xでの2つの画像である。
図7図7は、37℃の模擬体液(SBF)中で12時間後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの1,000X及び10,000Xでの2つの画像である。
図8図8は、37℃の模擬体液(SBF)中で24時間後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの1,000X及び10,000Xでの2つの画像である。
図9図9は、37℃の模擬体液(SBF)中で20分後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの10,000Xでの画像である。
図10図10は、エネルギー分散型X線分光法によって収集された10,000Xでの6つの画像のセットであり、37℃の模擬体液(SBF)中で30分後の、本開示による例示的なガラス組成物からのフッ化物、ナトリウム、マグネシウム、リン、カルシウム及び酸素のマッピングを示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
本開示によるガラス組成物は、45モル%~約95モル%のB、約3モル%~約60モル%のKO、NaO、CaO及びMgOからなる群より選ばれる1つ以上のガラス成分、及び、約2モル%~約45モル%のCaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせを含み、ガラスは、30モル%未満のCaF、SnF又はそれらの組み合わせを含む。ガラスは、実質的にCuOを含まず、0.1モル%未満のLiO、0.1モル%未満のRbO、0.1モル%未満のBaO、0.1モル%未満のP、0.1モル%未満のSiO及び30モル%未満のMgOを含む。
【0026】
ガラス組成物は、サイズが約1~約50μmである粒子を含む粒状材料として配合することができる。ガラス組成物は、象牙細管を管腔的に閉塞するようにサイズ決定され、それによって象牙質を脱感作する少なくとも幾つかの粒子を含むことができる。本開示の関係において、象牙細管を管腔的に閉塞するサイズの粒子は、粒子が象牙細管の中又は上に止まり、象牙質液の動きを減少させることを意味すると理解されるべきである。ガラス組成物は、象牙質細管の表面閉塞を提供し、それによって象牙質を脱感作するようにサイズ決定された少なくとも幾つかの粒子を含むことができる。
【0027】
「約3モル%~約50モル%の1つ以上のガラス成分」は、ガラス成分の総モル%を指し、個々の成分のモル%パーセントを指すものではないことを理解されたい。例えば、本開示によるガラス組成物は、示された3モル%の追加のガラス成分を提供するために、NaO、CaO及びMgOのそれぞれを1モル%含むことができる。
【0028】
「約Xモル%」は、報告された百分率の±2%以内の任意の値を指すことを理解されたい。例えば、「約10モル%」は、8モル%~12モル%の値を指す。これらの値はすべて、報告された10%の±2%以内に収まるためである。また、「約50モル%」は、48モル%~52モル%の値を指す。これらの値はすべて、報告された50%の±2%以内に収まるためである。
【0029】
考えられる値の範囲は、終点を含む、示された範囲内の任意の値又は部分範囲の開示でもあることを理解されたい。例えば、「1~100」の考えられる範囲は、例えば、1、10、25~57、32~84、25~84及び32~75の開示でもある。
【0030】
粒子サイズの関係における「約Xμm」は、示されたサイズの試験ふるいでASTM E-11による許容誤差に基づいて決定されることを理解されたい。例えば、50μmの試験ふるいの許容誤差は3μmである。従って、「約50μm」は、サイズが47μm~53μmの粒子を指す。別の例において、35μmの試験ふるいの許容誤差は2.6 μmである。従って、「約35μm」は、サイズが32.4μm~38.6μmまでの粒子を指す。25μmふるいのASTM許容誤差は2.2μmである。標準の許容誤差のない試験ふるい(20μm未満の試験ふるいなど)では、「約Xμm」という表現は、5~15μmのサイズでは±15%、5μm未満のサイズでは±50%を指す。例えば、「約1μm」は、サイズが0.5~1.5μmの粒子を指す。
【0031】
本開示による「ガラス」は、室温を超えるガラス転移温度を示すセラミック材料であり、その主要相は、主に非晶質であり、例えば、少なくとも50%非晶質、少なくとも75%非晶質、少なくとも90%非晶質、少なくとも95%非晶質又は少なくとも97%非晶質あることを理解されたい。幾つかの例において、本開示によるガラスは、識別可能な結晶種を実質的に含まないか、又は完全に含まない。
【0032】
ガラス組成物
本開示によるガラス組成物は、約2モル%~約45モル%のCaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせを含み、ここで、ガラスは、30モル%未満のCaF、SnF又はそれらの組み合わせを含む。ガラス組成物にフッ化物を含めると、ガラスが分解するときにフッ化物が放出される。放出されたフッ化物は、象牙質細管内又はその周囲にフルオロアパタイト(Ca(POF)などのフッ化アパタイトを形成することができ、これは保護沈殿物を形成し、象牙質の感受性をさらに低下させることができる。
【0033】
幾つかの例において、フッ化物源は、約5モル%~約15モル%であることができる。CaF又はSnFを含む組成物は、NaF、NaPOF又はKFを使用する組成物と比較して、出発材料1モル当たり2倍の量のフッ化物を提供する。幾つかの例において、本開示によるガラス組成物は、NaF、KF及びCaFのうちの1つ以上を含むことができる。
【0034】
幾つかの例において、ガラス組成物は、0.1gの粒状材料が、1、2、4、8、12、18又は24 時間にわたって約0.5ppm/時~約2000ppm/時の平均速度で10mLの緩衝生理食塩水溶液中にフッ化物を放出するのに十分なフッ化物を含む。本開示の関係において、フッ化物の放出速度を決定するときに、ppmは質量/体積として測定される。特定の例において、ガラス組成物は、1時間にわたって毎時約4~約6ppmのフッ化物が放出されるのに十分なフッ化物を含む。
【0035】
幾つかの例では、本開示によるガラス組成物は、B、ならびにMgO及びCaOのうちの1つ以上(B、MgO及びCaOなど)を含む。他の例において、本開示によるガラス組成物は、(a)B、(b)MgO及びCaOのうちの1つ以上、及び(c)NaO及びKOのうちの1つ以上を含む。さらに他の例において、本開示によるガラス組成物は、B 、MgO、CaO、ならびに、NaO及びKOのうちの1つ以上を含む。
【0036】
本開示によるガラス組成物は、45~約55モル%のB、約5~約15モル%のKO、約5~約15モル%のNaO、約10~約20モル%のCaO、約10~約25モル%のMgO又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0037】
本開示によるガラス組成物は、0.1モル%未満のZnO及び0.1モル%未満のSrOを含むことができ、例えば、実質的にZnOを含まず、実質的にSrOを含まない。本開示によるガラス組成物の特定の例において、ガラス組成物は、CuOを実質的に含まず、LiOを実質的に含まず、RbOを実質的に含まず、BaOを実質的に含まず、Pを実質的に含まず、SiOを実質的に含まない。「実質的にない」という表現は、ガラス組成物が微量の前述の酸化物成分を含むことができるが、さもなければガラス組成物は上述の酸化物成分を欠いていることを意味すると理解される。
【0038】
本開示によるガラス組成物は、約5モル%~約10モル%のCaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせ、及び、約90モル%~約95モル%のB 、NaO、MgO及びCaOの組み合わせを含むことができ、ここで、ガラス組成物中のホウ素、マグネシウム、ナトリウムと存在するならばカリウムの組み合わせ、及びCaは、それぞれ約20:約4:約6:約3の元素比で存在する。
【0039】
そのようなガラス組成物の1つの例は、約50モル%のB 、約15モル%のNaO、約20モル%のMgO、約10モル%のCaO及び約5モル%のNaF、KF、CaF、SnF又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0040】
このようなガラス組成物の1つの特定の例は、約50モル%のB 、約15モル%のNaO、約20モル%のMgO、約10モル%のCaO及び約5モル%のCaFを含む。この組成物は、本明細書において組成物「PBF1」と呼ぶことができる。
【0041】
このようなガラス組成物の別の特定の例は、約48モル%のB、約9モル%のNaO、約19モル%のMgO、約14モル%のCaO及び約10モル%のNaFを含む。この組成物は、本明細書において組成物「PBF1-Na」と呼ぶことができる。
【0042】
PBF1-Na組成物の特定の例において、本開示によるガラス組成物は、47.6モル%のB、9.5モル%のNaO、19.1モル%のMgO、14.3モル%のCaO及び9.5モル%のNaFを含む。
【0043】
本開示による幾つかのガラス組成物は、約5モル%~約10モル%のCaF、SnF、NaF、KF、NaPOF又はそれらの組み合わせ、及び、約90モル%~約95モル%のB、NaO、MgO及びCaOの組み合わせを含まず、ここで、ガラス組成物中のホウ素、マグネシウム、ナトリウムと存在するならばカリウムの組み合わせ、及びCaは、それぞれ約20:約4:約6:約3の元素比で存在する。例えば、本開示による幾つかのガラス組成物は、約50モル%のB、約15モル%のNaO、約20モル%のMgO、約10モル%のCaO及び約5モル%のNaF、KF、CaF、SnF又はそれらの任意の組み合わせを含まない。
【0044】
粒子サイズ分布
本開示によるガラス組成物は、サイズが約1~約50μmである粒子を含む粒状材料として配合することができる。このようなガラス組成物は、「粒状ガラス組成物」と呼ばれることがある。幾つかの例において、粒子の少なくとも一部は、象牙細管の中又は上に止まるようにサイズ決めされる。象牙細管の直径は自然に様々であり、主に約0.5~約8μmのサイズ、例えば約0.5~約5μmのサイズである。したがって、粒状材料として配合される本開示のガラス組成物は象牙質を脱感作するために使用することができ、それは敏感な歯に関連する痛みを一時的に軽減することができる。
【0045】
幾つかの例において、粒状材料を構成する粒子の少なくとも75%は、サイズが50μm未満である。他の例において、粒子の少なくとも85%又は少なくとも95%は、サイズが50μm未満である。幾つかの例において、粒状材料を構成する粒子の少なくとも5%は、サイズが7μm未満である。
【0046】
特定の例において、粒状材料は複数の粒子から構成され、ここで、粒子の少なくとも5%はサイズが35μm未満であり、粒子の少なくとも5%はサイズが15μm未満であり、粒子の少なくとも5%はサイズが7μm未満である。
【0047】
特定の例において、粒状材料は、粒子の少なくとも5%が約15μm~約35μmのサイズであり、粒子の少なくとも5%が約6μm~約15μmのサイズであり、粒子の少なくとも5%が約3μm~約7μmのサイズである、複数の粒子から構成されている。
【0048】
幾つかの特定の例において、粒状材料は、粒子サイズ分布が約5μmのDx10、約15μmのDx50及び約30μmのDx90である複数の粒子から構成されている。
【0049】
分解
本開示によるガラス組成物は、生理学的条件下で分解し、例えば、本開示による粒状ガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも5質量%を失うことができる。幾つかの例において、ガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液にさらされたときに、24時間以内に少なくとも20質量%、少なくとも40質量%、少なくとも60質量%又は少なくとも80質量%を失うことができる。
【0050】
表面微小硬度及び再石灰化
本開示によるガラス組成物、例えば、本開示による粒状ガラス組成物は、表面エナメル微小硬度を増加させることができる。幾つかの例において、本開示による練り歯磨き、バーニッシュ又は予防ペーストを使用して、表面エナメル微小硬度を増加させることができる。本開示の関係において、微小硬度の増加は、本開示の組成物を適用する前の表面エナメル微小硬度と比較したものである。幾つかの例において、表面エナメル微小硬度は、本開示のガラス組成物を欠く他の点では同一の練り歯磨き、バーニッシュ又は予防ペーストに関連する増加よりも大きな量で増加しうる。
【0051】
本開示によるガラス組成物、例えば本開示による粒状ガラス組成物は、表面エナメル質を再石灰化しうる。理論に束縛されることを望むものではないが、本開示の著者は、この再石灰化が表面エナメル微小硬度の増加に少なくとも部分的に寄与している可能性があると考えている。
【0052】
幾つかの例において、本開示による練り歯磨き、バーニッシュ又は予防ペーストを使用して、表面エナメル質を少なくとも部分的に再石灰化することができる。本開示の関係において、表面エナメル質の再石灰化は、本開示の組成物の適用前の表面エナメル質石灰化と比較される。幾つかの例において、表面エナメル質は、本開示のガラス組成物を欠く他の点では同一の練り歯磨き、バーニッシュ又は予防ペーストに関連する再石灰化よりも大きな量で再石灰化されうる。
【0053】
本開示による練り歯磨きは、個体のエナメル質に、例えば、30秒~2分間、1日1回又は2回適用することができる。一部の個体において、約2、3又は4日後に表面エナメル微小硬度は上昇することがある。他の個体において、表面エナメル微小硬度は5日以上後に増加することがある。一部の個体において、表面エナメル質は、約2、3又は4日後に少なくとも部分的に再石灰化されうる。他の個体において、表面エナメル質は、5日以上後に少なくとも部分的に再石灰化されうる。
【0054】
象牙質脱感作性組成物
本開示による粒状ガラス組成物は、水を含まない口腔適合性キャリアを含む象牙質脱感作性組成物に配合されることができる。ガラス組成物が水にさらされると分解するため、本開示によるこのような象牙質脱感作性組成物は、水を含まない。
【0055】
本開示の関係において、「無水」又は「水を含まない」とは、象牙質脱感作性組成物が含水量が非常に少ないため、ガラス組成物が製品の期待寿命にわたって象牙質感受性を低下させることができるままであることを意味すると理解されるべきである。製品の期待寿命とは、象牙質脱感作性組成物が製造されてから、象牙質脱感作性組成物が完全に使い尽くされるか又は廃棄されるまでの最長の期待時間を指す。
【0056】
象牙質脱感作性組成物に使用される口腔適合性キャリアは、マウスウォッシュであることができ、追加の成分と混合してマウスウォッシュを形成するように配合されるキャリアであることができ、又は、口腔適合性粘性キャリアであることができ、例えば、練り歯磨き、デンタルジェル、予防ペースト、歯科用バーニッシュ、結合剤又は追加の成分と混合して練り歯磨きを形成するように配合されるキャリアである。口腔適合性粘性キャリアは、30℃で約100cP~30℃で約150,000cPまでの粘度を有することができる。
【0057】
象牙質脱感作性組成物は、脱感作性組成物が約100ppm~約5,000ppmのフッ化物を含むのに十分な量で、本開示による粒状ガラス組成物を含むことができる。本開示の関係において、脱感作性組成物中のフッ化物の濃度を決定するときに、ppmは質量/質量で測定される。
【0058】
理論に束縛されることを望むものではないが、本開示の著者は、KO、KF又はその両方の形態などのカリウムを含む本開示による幾つかのガラス組成物は、有益な象牙質脱感作特性を有することができると考えている。このようなガラス組成物中のカリウムは、象牙質細管に見られる神経の周囲の細胞外カリウムイオン濃度を増加させることができる。高レベルの細胞外カリウムイオンは、神経線維膜を脱分極し及び/又は再分極する能力を低下させることができ、これは患者の痛みを改善する。閉塞剤及び別個のカリウム塩を含む象牙質脱感作性組成物において、閉塞剤は、カリウム塩が神経にアクセスするのを阻害し、それによって、別個のカリウム塩が患者の痛みを改善する能力を低下させる可能性がある。対照的に、本開示による幾つかのカリウム含有ガラス組成物は、象牙質細管を閉塞している間に分解し、カリウムの濃度が患者の痛みを緩和するのに十分に高い十分なカリウムイオンを象牙質細管内に放出することができる。
【0059】
本開示による象牙質脱感作性組成物の1つの例は、本開示による粒状ガラス組成物と、研磨剤、ラウリル硫酸ナトリウムなどの洗浄剤、フッ化物源、抗細菌剤、香味剤、再石灰化剤、グリセロール、ソルビトール又はキシリトールなどの糖アルコール、別の象牙質脱感作剤、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマー又はそれらの任意の組み合わせとを含む練り歯磨きである。粒状ガラス組成物は、練り歯磨きの約0.5~約15質量%であることができる。
【0060】
本開示による象牙質脱感作性組成物の1つの特定の例は、本開示による粒状ガラス組成物と、グリセリン、シリカ、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、二酸化チタン、カルボマー及び甘味剤(例えば、アセスルファムカリウム又はサッカリンナトリウム)を含む練り歯磨きである。
【0061】
本開示による象牙質脱感作性組成物の別の特定の例は、本開示による粒状ガラス組成物と、α-カルボマー、DL-リモネン、グリセリン、ミントフレーバー、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-8)、シリカ、二酸化チタン、ラウリル硫酸ナトリウム及び甘味剤 (例えば、アセスルファムカリウム又はサッカリンナトリウム)とを含む練り歯磨きである。
【0062】
本開示による象牙質脱感作性組成物の別の特定の例は、本開示による粒状ガラス組成物と、グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、シリカ(二酸化ケイ素とも呼ばれる)、カルボポール(Carbopol) 940(架橋ポリアクリル酸ポリマー、カルボマー(Carbomer) 940 とも呼ばれる)及び香味剤(例えば、スペアミントオイル)とを含む練り歯磨きである。グリセリンは純粋なグリセロールであることができる。
【0063】
特定の例において、練り歯磨きは、約85質量%のグリセロール、約1.2質量%のラウリル硫酸ナトリウム、約7.5質量%のシリカ、約0.5質量%のカーボポール940、約1.0質量%の香味剤及び約5.0質量%の本開示による粒状ガラス組成物を含むことができる。粒状ガラス組成物は≦25μmの粒子を得るためにふるいにかけられたPBF1-Naであることができる。
【0064】
本開示による象牙質脱感作性組成物の別の例は、本開示による粒状ガラス組成物を含むキャリアであり、このキャリアは、練り歯磨きを形成するために追加の成分と混合されるように配合される。
【0065】
本開示による象牙質脱感作性組成物のさらに別の例は、マウスウォッシュを形成するために追加の成分と混合するように配合されるキャリアである。キャリアの特定の例は、本開示による粒状ガラス組成物と、無水アルコール、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、エッセンシャルオイル、安息香酸、ポロキサマー、安息香酸ナトリウム、香料、着色料又は任意の組み合わせを含む。マウスウォッシュを形成するためにキャリアと混合される追加の成分としては、水、過酸化物、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、エッセンシャルオイル、アルコール、安息香酸、ポロキサマー、安息香酸ナトリウム、香味剤、着色剤又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。キャリア及び追加の成分は別々のコンパートメントに保持され、混合物がマウスウォッシュとして使用される前に一緒に混合されることができる。別個のコンパートメントは、分岐ボトルなどの多室ボトルの形態であることができる。
【0066】
本開示による象牙質脱感作性組成物の別の例は、本開示による粒状ガラス組成物を含む予防ペースト(「プロフィーペースト」とも呼ばれる)である。考えられるプロフィペーストの特定の例は、本開示によるガラス組成物と、軽石、グリセリン、珪藻土(好ましくは細粒)、ケイ酸ナトリウム、サリチル酸メチル、リン酸一ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、甘味剤(例えば、アセスルファムカリウム又はサッカリンナトリウム)、香味剤、着色剤又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0067】
方法
本開示によるガラス組成物は、適切なモル量の出発試薬を混合すること、前駆体ブレンドを白金ロジウムるつぼ(XRF Scientific、パースオーストラリア)に装填すること、600~750℃の初期滞留温度で、装填されたるつぼを炉(Carbolite、RHF 14/3)に入れること、温度を60分間保持すること、温度を1,200℃の滞留温度まで(例えば、20℃/分の速度で)傾斜させること、温度を60分間保持すること、及び、2枚のステンレススチール板の間でガラス溶融物を急冷することによって合成することができる。
【0068】
ガラスが溶融する限り、上記に開示された特定の傾斜速度、時間及び温度を変更できることを理解されたい。毎分10~20℃の傾斜速度及び滞留温度での保持により、ガラスから少なくとも幾らかの気泡が除去されうる。
【0069】
得られるガラス組成物は酸化物を含むが、出発試薬は酸化物、炭酸塩又はその両方を含むことができる。例えば、出発試薬は、酸化ホウ素、炭酸ナトリウム及びフッ化カルシウムを含むことができる。炭酸カルシウム及び炭酸ナトリウムは炉内で分解してCOを放出し、対応する酸化物を生成する。
【0070】
得られた急冷ガラスは、遊星マイクロミル (Pulverisette 6、フリッチュ、ドイツ) 内で個別に破砕/粉砕し、ASTM E-11準拠のふるい (Cole Palmer、米国) でふるいにかけ、≦25μmの粒子を得ることができる。ガラスは、密封された保存バイアル内で乾燥条件下にて保存されうる。
【0071】
フッ化物放出は、15mlファルコンチューブ中の10mlのTRIS緩衝生理食塩水溶液(BioUltra、Sigma Aldrich、カナダ)中に0.1gの粒状ガラス組成物を入れることによって測定される。溶液を120rpmで攪拌し、1、3、6、12又は24時間などの所望の放出期間、37℃の温度に保つ。完了したら、遠心分離 (15分間、1500 RCF) によって固形分を分離し、液体を新しいきれいな15mlファルコンチューブにデカントし、ふたをして、フッ化物の量が定量されるまで4℃で保存する。放出されたフッ化物の濃度は、電極フッ化物コンビネーション(Accumet(登録商標))を備えたAccumet(登録商標)AB250 pH/イオン選択電極メータを使用して定量化される。標準溶液は、特にイオン選択電極のためのフッ化物分析標準(NaF、0.1M F、Sigma Aldrich、カナダ)を使用して調製され、検量曲線は分析前に取得される。各組成物の抽出から得られた液体抽出物は、電極製造者の指示に従ってイオン分析用に調製された。イオン濃度は、n=3の平均±SDとして報告される。
【0072】
本開示の関係において、ガラス組成物の質量損失は、秤量した15mlファルコンチューブ中で0.1gの粒状ガラス組成物を10mlのTRIS緩衝生理食塩水溶液(BioUltra、Sigma Aldrich、カナダ)に入れることにより測定される。溶液を120rpmで攪拌し、1、3、6、12又は24時間などの所望の放出期間、37℃の温度に保つ。指定された時点が経過した後に、チューブをインキュベータから取り出し、溶液を直ちに1500RCFで15分間遠心分離した。上清を新しい15mLファルコンチューブにデカントした。ペレットをそれぞれのファルコンチューブ内で70℃のオーブンで一定質量まで乾燥させ、ガラスの残留質量を評価して、質量損失の計算を可能にした。
【0073】
走査型電子顕微鏡写真分析を、Phenon PRoX走査型電子顕微鏡 (Thermofisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州) を使用して実行した。
【0074】
ガラスサンプルの熱分析は、Pt/Rh るつぼ (NETZSCH Instruments North America、バーリントン、マサチューセッツ州、米国)内で炭化ケイ素炉を備えた高温示差走査熱量計であるDSC 404 F3A-0230で完了した。約0.025グラムのサンプルを秤量してPt/Rhるつぼに装填した。流量50mL/分の窒素 (Praxair、Danbury Connecticut、USA)保護ガス下で100pts/分の取得速度で、20~900 ℃まで10K/分の速度でサンプルを加熱した。開始温度(To)、変曲温度(Ti)、最終温度(Tf)及び結晶化開始温度(Tp1)を、Netzsch Proteus Thermal Analysis Software (VERSION 6.1.0)を使用して決定した。表3に報告されているガラス転移温度は、サンプルの開始温度(To) から取得される。
【実施例
【0075】

表1に示すガラス組成物はすべて、分析グレードの試薬(酸化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム及びフッ化ナトリウム)(Sigma Aldrich、カナダ) の決められた量を秤量することによって合成した。均一性を確保するために、個々の配合物を乾燥粉末ブレンダで少なくとも60分間混合した。各前駆体ブレンドを100mLの白金ロジウムるつぼ (XRF Scientific、パース オーストラリア) に入れて装填した。次いで装填したるつぼを炉(カーボライト、RHF 14/3)内に600~750℃の初期滞留温度で置き、60分間保持した。次に、温度を1,200℃の最終保持温度まで上昇させ(20℃/分)、60分間保持した。取り出したときに、各ガラス溶融物は、2枚のステンレススチール板の間で急冷された。得られた急冷ガラスを、遊星マイクロミル (Pulverisette 6、フリッチュ、ドイツ)内で個別に破砕/粉砕し、ASTM E-11準拠のふるい(Cole Palmer、米国)でふるいにかけ、≦25μmの粒子を得た。
【表1】
【0076】
表1の例示的なガラスの粒子の幾つかを、上記の方法を使用して、1、12及び24時間にわたって緩衝生理食塩水溶液中でのフッ化物放出について、そして質量損失について評価した。1、12及び24時間後の放出されたフッ化物のppm(質量/体積)値及び質量損失率を表2に示す。
【表2】
【0077】
ガラス粉末の密度は、1cmインサートを備えたAccuPyc 1340ヘリウム比重計(Micromeritics、米国)を使用して測定した。使用前に、追跡可能な容量標準を使用して比重計を校正した。ガラス分析では、インサートに約1グラムのガラス粉末を装填した。各測定値は10回の読み値の平均である。
【0078】
サンプルのアモルファス相の百分率は、Cu源及びLynxeye リニアアレイ検出器(Bruker AXS Inc, Maddison Wisconsin, USA) を備えたD2 Phaser X 線回折計を使用して評価した。細かく破砕されたサンプルの回折スペクトルは、ステップサイズ0.02度、滞留時間2秒で、10~60°の2シータ角度で収集した。非晶質材料の相対体積は、バックグラウンド曲線をアモルファスハローに適合させ、未補正のグローバル領域に対するバックグラウンド補正縮小領域の相対強度を計算することによって計算した。%アモルファス相は、式(%結晶化度)+(%アモルファス相)=100によって%結晶化度に関連付けられる。
【0079】
表1の例示的なガラスの粒子は、以下のバルク特性を有した。
【表3】
【0080】
表1にリストされている2~19及び21~31の番号が付けられた組成物は、デザインスペースを反映する。試験した組成物の結果は以下の式を提供し、異なる組成物の相対的な比較を可能にし、及び/又は、組成物の異なる成分に関連する傾向を識別するのに有用であることができる。実験誤差及びモデル化誤差により、ガラスの特性を絶対的に予測することはできないが、式を使用してガラス組成物の設計を導き、改良することができる。一緒に使用すると、これらのモデルは、試験された組成空間内で多成分組成を調整する際にどの要因がトレードオフされる可能性があるかを示唆するのに役立つことができる。以下の式において、リストされている成分の値は百分率である(分数又は小数ではない)。例えば、50モル%のBは「50」とする(「0.5」ではない)。
【0081】
溶融物の結晶化度は、一般に、以下の式を使用して、試験された急冷条件下で予測できる。
結晶化度=0.395399[B]+6.41123[MgO]+0.189429「CaO」-0.45475[NaO]+0.11216[KF]-027423[NaF]-0.10068[B][MgO]-0.09012[MgO] [CaO]-0.04963[MgO] [NaO]-0.0954[MgO][KF]-0.06405[MgO][NaF]
【0082】
ガラスの密度は、一般に以下の式を使用して予測できる。
ρ=0.018214[B]+0.023091[MgO]+0.034759[CaO]+0.021377[NaO]+0.026828[KF]+0.029437[NaF]+0.000148[B][MgO]+0.000184[B][NaO]-0.00017[CaO][NaO]
約1.3g/cm~約2.2g/cmのガラス密度は、非水性口腔ケア製剤において特に有用であることができる。非水性練り歯磨きの主要な液体成分及び固体成分であるグリセロール及びシリカの密度は、それぞれ1.3及び2.2g/cmである。
【0083】
ガラス転移温度(Tg)は、一般に、以下の式を使用して予測できる。
Tg=5.11431[B]+6.112305[MgO]+7.69080[CaO]2.40780[NaO]+1.24655[KF]+2.97520[NaF]
相分離したガラスは複数のガラス転移を示すことがあり、その大きさは必ずしも相の体積分布を表すものではないことを理解すべきである。上記の式はガラス転移の開始を予測するが、相分離が発生するならば、予測された開始は組成物の優勢なガラス転移ではない可能性がある。したがって、予測されるガラス転移温度は、測定された優勢なガラス転移温度とは有意に異なる可能性がある。
【0084】
試験条件下での1時間後の質量損失率に関する式は次のとおりである。
(100)/(1+e)
上式中、y=0.086782[B]+0.179717[MgO]-0.103676[CaO]+0.014547[NaO]-0.0.054198[NaF]-0.011137[KF]-0.005920[B][MgO]
【0085】
試験条件下での1時間後のフッ化物の放出(ppm)に関連する式は以下のとおりである。
(2000)/(1+e)
上式中、y=-0.05697[B]-0.01494[MgO]-0.04459[CaO]+0.18275[NaO]+0.031136[KF]+0.14157[NaF]-0.00448[CaO][NaF]+0.003851[NaO][KF]
上記の式は、すべてのガラス組成物に対して放出されるフッ化物の量を正確に推定するものではないが、このモデルは、組成の変化に伴って発生すると予想されるフッ化物放出の相対的な変化を予測するのに役立つことができる。
【0086】
PBF1組成物は、11.60gのB、5.30gのNaCO、2.69gのMgO、3.33gのCaCO及び0.7gのCaF (Sigma Aldrich、カナダ)を秤量することによって合成した。均一性を確保するために出発材料を60分間混合した。混合物を50mLの白金ロジウムるつぼ(ペンシルベニア州ノーブルメタルのジョンソン・マッセイ)に入れて装填した。次いで、装填したるつぼを室温で炉(カーボライト、RHF1600)に入れた。炉を600℃の初期滞留温度まで加熱し(25℃/分)、60分間保持した。次に、温度を1,200℃の最終保持温度まで傾斜させ(20℃/分)、60分間保持した。取り出したときに、ガラス溶融物を2枚のステンレススチール板の間で急冷した。得られた急冷ガラスを、遊星マイクロミル (Pulverisette 7、フリッチュ、ドイツ)内で個別に破砕/粉砕し、ASTM E-11準拠のふるい(Cole Palmer、米国)でふるいにかけ、≦25μmの粒子を得た。
【0087】
比較ガラス組成物(比較例(CE)1及び2と呼ぶ)を、5.80gのB、23.66gのP、5.30gのNaCO、1.34gのMgO、6.67gのCaCO及び0.70gのCaFを使用して同様に合成し、CE1:約25モル%のB、約25モル%のP、約15モル%のNaO、約10モル%のMgO、約20モル%のCaO及び約5モル%のCaF及び5.80gのB、23.66gのP、7.07のNaCO、1.34gのMgO、5.00gのCaCO及び0.70gのCaFを得て、そして、CE2:約25モル%のB、約25モル%のP、約20モル%のNaO、約10モル%MgO、約15モル%のCaO及び約5モル%のCaFを得た。
【0088】
ガラス粉末の密度は、1cmインサートを備えたAccuPyc 1340 ヘリウム比重計(Micromeritics、米国) を使用して測定した。使用前に、追跡可能な容量標準を使用して比重計を校正した。ガラス分析において、インサートに約1グラムのガラス粉末を装填した。各ガラスの3つのサンプルを試験し、各測定値は10回の読み取り値の平均である。
【0089】
PBF1組成物の密度は、2.5951±0.0072g/cmと測定された。CE1の密度は2.7079±0.0021g/cmと測定された。CE2の密度は2.6749±0.0013g/cmと測定された。
【0090】
PBF1、CE1及びCE2について、フッ化物の放出及び質量損失を測定した。サンプルを15mLコニカル試験管(n=3)で調製し、重量を測定して記録した。0.1グラムの各ガラス粉末(≦25ミクロン)を別々に秤量し、秤量した15mLファルコンチューブ内の10mLのTRIS緩衝生理食塩水溶液(BioUltra、Sigma Aldrich、カナダ) に入れた。チューブをパラフィルムで密封した後に、37℃の振とうインキュベータに入れ、120rpmで4つの別々の時点: 5分、30分、1 時間、3時間、24時間及び48 時間で攪拌した。指定された時点が経過した後に、チューブをインキュベータから取り出し、溶液を直ちに1500RCFで15分間遠心分離した(Eppendorf, Centrifuge 5702)。ペレットは、それぞれのファルコンチューブ内で50~70℃のオーブンで乾燥させた。
【0091】
フッ化物イオンの放出は、フッ化物電極を備えたAccumet AB250 pH/イオン選択メータ(Fisher Scientific)を使用して測定した。プローブを較正するために、特にイオン選択電極のためのフッ化物分析標準 (NaF、0.1F、Sigma Aldrich、カナダ)を使用して、6つの標準溶液を調製した。標準のフッ化ナトリウム濃度は、溶媒としてTRIS緩衝生理食塩水溶液(BioUltra、Sigma Aldrich、カナダ) を使用して、それぞれ1000ppm、100ppm、10ppm、1ppm、0.01ppm及び 0.001ppmで合成した。TISAB濃縮液(4.5mL)を較正の前に各標準に添加した(製造元の指示に従って)。プローブを較正したら、標準の傾きをチェックして、使用説明書の範囲内にあることを確認した。TISAB濃縮物(1.0mL)をデカントした上清に添加し、次いで、較正プローブを使用してそのフッ化物濃度を測定した。イオン濃度は、平均±SDとして報告される。
【0092】
PBF1組成物によって放出されたフッ化物イオンの量は次のように測定された:5分で89±2ppm、30分で94±3ppm、1時間で105±5 ppm、3時間で 94±7ppm。CE1又はCE2によって放出された測定可能なフッ化物イオンはなかった。
【0093】
質量の損失は、TRIS緩衝生理食塩水溶液にさらした後の乾燥サンプルの質量をサンプルの初期質量と比較することによって計算した。PBF1組成物の質量損失は、5分後に42.0±2.1%、30分後47.3±2.7%、1時間後51.5±4.3%、3時間後41.7±5.7%、24時間後に70.1±6.8%、48時間後に100%であった。
【0094】
模擬体液中のアパタイト形成はPBF1組成物で確認されたが、CE1又はCE2では明らかでなかった。擬似体液は、Kokubo及びTakadamaによって公開された方法及び指示に従って合成した(Kokubo, T. and Takadama, H. Biomaterials (2006) 27:15, pp 2907-2915)。
【0095】
SBFの1Lのバッチを1000mL ナルゲン(Nalgene)ボトル(FEPボトル)中で調製した。調製されたSBFは、合成後すぐに室温で24時間保存し、実験に使用する前に安定性を確保した。SBFは、蓋をしっかりと閉めたナルゲンボトルに保存し、すぐに必要ない場合は6℃で保存した(実験用に最大30日間)。
【0096】
TCO4法(Macon, A.L.B., Kim, T.B., Valliant, E.M. ら、J Mater Sci: Mater Med (2015) 26:115 で公開)に従って、各ガラス組成物(n=3)のガラス粉末0.75gをポリエチレン容器中の上記に従って合成された50mLのSBF中に浸漬した。次に、容器を37℃の培養オービタルシェーカに入れ、120rpmで3つの時点まで攪拌した:30分、3時間、12時間。それらの時点が経過した後に、Whatman 42 又は 5 グレードのろ紙 (2.5μmの粒子保持) で各試料を真空ろ過して、溶液から固体材料を回収した。固体を蒸留水及びアセトンで直ちに洗浄して、それ以上の反応を止めた。
【0097】
ろ過された試料を、さらなる分析のために真空デシケータで乾燥した。各試料の画像化は、1000x及び10000xの倍率で3KV及び15mAで動作する Hitachi S-4700 FEG (Hitachi, Chula Vista, Ca)走査型電子顕微鏡を使用して行った。サンプルを、両面カーボンテープを使用してスタブに取り付け、70秒間金-パラジウムでスパッタコーティングした(Leica EM ACE200、Wetzlar、ドイツ)。30分、3時間、12時間でのPBF1の走査型電子顕微鏡像を図1~4に示す。
【0098】
PBF1組成物は、適用プロトコルを開発し、2人の評価者がカテゴリー閉塞スケールに従って等級付けしたSEM画像を統計分析することにより、象牙細管閉塞についても評価された。ヒト象牙質の切片(厚さ約1~1.5mm)は、ダイヤモンドディスクソーを使用して、歯根の長軸に垂直な、う蝕のない未修復の臼歯の歯冠から作成した。各切片を 10%のクエン酸で2分間エッチングし、続いて60秒間水ですすぎ、2分間超音波処理し、さらに水で60秒間すすいだ。各切片を直径25mmのモールドに入れ、深さ3mmのアクリル樹脂で覆った。樹脂が硬化したら、象牙質面を800番、2500番のペーパーで順次研磨し、鏡面仕上げした。脱イオン水ですすいだ後に、表面をエッチングし、超音波処理し、もう一度すすいだ。サンプルの完全性、細管密度及び開通性を光学顕微鏡でもう一度チェックし、次にSEMでチェックした。
【0099】
単一の象牙質サンプルを各処置群に割り当てた。象牙質サンプルは、(i)例示的なガラス粒子の調合されていない混合物、(ii)例示的なガラス粒子の混合物を含む試験練り歯磨き、又は(iii)追加のガラス粒子を含まない対照練り歯磨きで処置された。非粉末ニトリル手袋をはめた指を使用して、配合されていない混合物を10秒間適用した。試験及び対照の練り歯磨きを、電動歯ブラシでサンプルに10秒間適用した。練り歯磨きを30秒間放置した後に、目に見える練り歯磨きがすべて除去されるまですすいだ。これを合計4回の練り歯磨きの適用で繰り返した。
【0100】
象牙質サンプルを37℃の炉で1時間乾燥させ、金でスパッタコーティングし、Phenom ProX 走査型電子顕微鏡を使用して視覚化した。x3000の倍率の5つの画像を、各サンプルの異なる部分で撮影した。細管は表面に対して垂直であった。各x3000の顕微鏡写真は、象牙質細管閉塞の程度について、5点のカテゴリスケールに基づいて、2人の単一盲検評価者によって検査した。等級分類を次のように定義した。
1. 閉塞(100%閉塞)
2. ほぼ閉塞 (75%閉塞)
3. 等しい (50%閉塞)
4. ほとんど閉塞していない (25%閉塞)
5. 閉塞なし (0%閉塞)
【0101】
各画像の平均スコアを2人の評価者のスコアから導き出した。標準偏差を計算したが、処置群ごとに1つのみの象牙質サンプルを使用していたため、正式な統計的な比較は行わなかった。
【0102】
表4に示されているように、7つの異なる処置群を試験した。
【表4】
【0103】
上記のように、象牙質サンプルに対して各サンプル処置群を試験し、各サンプルの5つのSEM顕微鏡写真をx3000で撮影した。各顕微鏡写真を、2人の評価者によってカテゴリー評価した。各顕微鏡写真の平均スコア及びサンプルごとの5つの顕微鏡写真を組み合わせて、群の平均スコア及び標準偏差を得た(表5を参照されたい)。
【表5】
【0104】
処置群1の4.90という平均ベースラインスコアは、事実上すべての象牙質細管が閉塞されていなかったことを示している。象牙質サンプルに直接こすりつけた未配合のPBF1の平均スコア1.50は、ほぼ完全な細管閉塞を示している。処置群5、6及び7(PBF1を欠く対照群又は本開示による任意の他のガラス組成物)は、3.2~3.6までの平均閉塞スコアを有した。処置群3及び4(5%又は15% PBF1 w/wで配合された市販の練り歯磨き)は平均閉塞スコアが低く、細管閉塞の度合いが高いことを示している。市販の練り歯磨きSensodyne(商標)コンプリートプロテクションの閉塞度は、15% w/wのPBF1を添加すると、約30%の閉塞(スコア3.6)から約50%の閉塞(スコア2.5)に増加した。
【0105】
PBF1組成物は、2.5%及び5%w/wのPBF1ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)ペーストを使用して象牙細管閉塞についてさらに評価された。この評価において、PBF1練り歯磨き及び対照練り歯磨きを、各処置群について3つの異なる象牙質サンプルに適用した。サンプルはそれぞれ、処置練り歯磨きで2分間1回ブラッシングされた。具体的には、各象牙質サンプルを0.25gの処置練り歯磨きで120秒間ブラッシングし、続いてDI水で30秒間すすいだ。2.5%のPBF-1 SLSペーストの平均閉塞スコアは3.52±0.71であった。5% PBF1-SLSペーストの平均閉塞スコアは 2.7±0.84であった。PBF1のないSLSペーストは、平均閉塞スコア3.80±1.03をもたらした。Sensodyne(商標)リペア&プロテクトを使用した対照試験では、平均閉塞スコアは3.90±0.66であった。
【0106】
上述のプロトコルに従ってPBF1-Na組成物を調製した。簡単に説明すると、ガラスを、11.05gのB、3.36gのNaCO、2.56gのMgO、4.77gのCaCO及び1.33gのNaF(Sigma Aldrich, カナダ)を計量することにより合成した。均一性を確保するために出発材料を60分間混合した。このブレンドを50mLの白金ロジウムるつぼ(XRF Scientific、パース、オーストラリア)に入れて装填した。次いで、装填したるつぼを室温で炉(カーボライト、RHF 14/3)に入れた。るつぼを600℃の初期滞留温度に置き、60分間保持した。次に、温度を1,200℃の最終保持温度まで傾斜させ(20℃/分)、60分間保持した。取り出したときに、ガラス溶融物を2枚のステンレススチール板の間で急冷した。得られた急冷ガラスを、遊星マイクロミル (Pulverisette 6、フリッチュ、ドイツ)内で個別に破砕/粉砕し、ASTM E-11準拠のふるい (Cole Palmer、米国)でふるいにかけ、≦25μmの粒子を得た。
【0107】
PBF1-Na組成の10個の異なるサンプルの粒子サイズを上記のように測定した。
【表6】
【0108】
10個の異なるサンプルの密度、%結晶化度及びガラス転移温度も上記のように測定した。
【表7】
【0109】
10個の異なるサンプルの24時間後の質量損失及びフッ化物放出も、上記のように測定した。
【表8】
【0110】
ガラスサンプルをSBF中で37℃にてインキュベートし、ろ過した試料を乾燥させ、上記のように走査型電子顕微鏡を使用して画像化した。30分、3時間、12時間、24時間後のPBF1-Naの1,000倍及び10,000倍の走査型電子顕微鏡画像を図 5~8に示す。
【0111】
SEMで画像化された沈殿物がフッ素化アパタイトであることを確認するために、エネルギー分散型X線分光法を使用して、フッ化物、ナトリウム、マグネシウム、リン、カルシウム及び酸素の存在をマッピングした(ホウ素のマッピングは、原子量が小さく、軽元素に関連するX線相互作用が減少されるために省略された)。EDSスペクトルは、Hitachi S-4700 FEG (Hitachi, Chula Vista, Ca)を使用して、x10,000の倍率で 500カウントにわたって収集された。元素マッピングの対象領域のSEMを図9に、元素マップを図10に示す。
【0112】
PBF1-Na(具体的には、47.62モル%のB+9.52モル%のNaO+14.29モル%のCaO+19.05モル%のMgO+9.52モル%のNaFからなるガラス組成物)を使用して、以下の表による例示的な練り歯磨き(「5%SIP-OG」)を調製した。
【表9】
【0113】
5% SIG-OG練り歯磨きにおいて、9.52モル%のNaFからなるガラス組成物は800ppmのフッ化物を含む練り歯磨きをもたらした。
【0114】
ガラス粒子をふるいにかけ、≦25ミクロンの粒子を回収した。粒子サイズ分析により、粉末粒子が象牙質細管を閉塞するのに適切なサイズであることが確認された。その象牙質細管は、典型的に、直径が1~5μmである。ガラスの平均粒子サイズ分布は、D10=4.84μm、D50=14.3μm及び D90=29.80μmであった。ここで、Dxは直径であり、分布のX%はDxより小さい直径を有する。
【0115】
例示的な練り歯磨き5% SIP-OGは、単一時点及び複数時点の象牙質閉塞研究で試験した。
【0116】
単一時点の象牙質閉塞研究
5% SIP-OG練り歯磨きを市販の練り歯磨き製品:(対照物品♯1) NOVAMIN(登録商標)を含むSensodyne(登録商標)リペアアンドプロテクト(5% ノバミン及びフッ化ナトリウムとして1040ppmのフッ化物)、及び (対照物品♯2) Colgate(登録商標)センシティブプロリリーフ(商標)(8%アルギニン、35%炭酸カルシウム、モノフルオロリン酸ナトリウムとして 1320ppmのフッ化物)に対して、単一時点の象牙質閉塞研究において比較した。
【0117】
1日2回、2分間の模擬ブラッシングと、清潔な指を使用してエンドウ豆大の量を敏感な領域に直接塗布することの両方を使用して処置した象牙質サンプルの分析により、処置の一日後に、対象の練り歯磨きによる象牙質細管の閉塞の程度を測定した。象牙質細管閉塞の程度は、象牙質過敏症を軽減する能力の間接的な尺度であると当該技術分野で一般的に理解されている。つまり、閉塞のレベルが上がると、象牙質液の流れが減少し、その結果、痛みの感覚が減少する。象牙質液の流れの減少は感受性を低下させ、フッ化アパタイトの沈殿は迅速な緩和のための障壁を提供する。う蝕又は虫歯の予防に役立つフッ素化アパタイトは、ミネラルに取り込まれる溶液中のフッ化物イオンの存在下で形成されうる。
【0118】
ヒト象牙質サンプル(厚さ約1.0~約1.5mm)を、ダイヤモンドディスクソーを使用して、歯根の長軸に垂直なう蝕のない未修復の臼歯の歯冠から調製した。各切片を 10%クエン酸で2分間エッチングし、続いて60秒間水ですすぎ、脱イオン水で2分間超音波処理し、さらに水で60秒間すすいだ。各切片をモールドに入れ、アクリル樹脂で覆った。硬化したら、象牙質面を研磨して鏡面仕上げした。脱イオン水ですすいだ後に、表面をエッチングし、超音波処理し、再度すすいだ。サンプルの完全性、細管密度及び開通性を走査型電子顕微鏡(SEM)で検証した。
【0119】
人工唾液(30mM塩化カリウム、13mM塩化ナトリウム、10mMオルトリン酸二水素カリウム、3mM塩化カルシウム脱水物、0.22% w/w タイプ II ブタ胃ムチン及び0.02%w/wアジ化ナトリウム)を調製した。象牙質サンプルを練り歯磨きで処置する前に、人工唾液に37℃で少なくとも60分間浸した。
【0120】
ブラッシング適用では、0.67gの練り歯磨きを振動Oral-B プレシジョン歯ブラシを使用して象牙質サンプルに10秒間適用した。直接適用では、0.25gの練り歯磨きを象牙質サンプルに軽い圧力で押し付け、手袋をはめた指で円動作で10秒間適用した。象牙質サンプル処置及び適用条件を以下の表10に要約する。
【表10】
【0121】
どちらの適用方法でも、サンプルを適用後に脱イオン水で30秒間すすぎ、練り歯磨きの目に見える痕跡を除去し、次いで、少なくとも1時間人工唾液中に保存してから、1日 2回の使用をシミュレートするように適用サイクルを繰り返した。2回目の適用後に、サンプルを模擬唾液で60秒間処理し、その後に、乾燥させてSEMイメージングの準備をした。
【0122】
金スパッタコーティングで処置された象牙質サンプルを、Phenon ProX 走査型電子顕微鏡を使用して画像化し、各サンプルについてx3000の倍率で3つの画像を収集した。各SEM画像は、以下の等級分類を使用して、5段階のカテゴリスケールに基づいて、2人の二重盲検評価者が歯の閉塞の程度を評価した。
1.閉塞
2.ほとんど閉塞
3.等しい
4.ほとんど閉塞されていない
5.閉塞していない
【0123】
Minitab 18ソフトウェアを使用してデータ分析を行った。すべての処置群を評価し、群平均、標準偏差、最小値、最大値及びレプリカ数の記述統計を提供した。次に、すべてのデータセットの正規性を試験した。正規性の仮定に合格したデータセットについては、2サンプルt検定を使用して、データセット間の対比較を行った。1つ以上のデータセットが正規性の仮定を満たさなかったペアリングについては、マンホイットニー試験を使用してペアごとの統計的比較を行った。すべての統計試験は、有意水準0.05で行った。
【0124】
初期性能データは、5% SIP-OG練り歯磨きが有効であり、象牙質細管を部分的に閉塞する能力があることを裏付けている。平均閉塞スコアは以下のとおりである。
【表11】
【0125】
5% SIP-OG練り歯磨きで処置した象牙質細管のSEM画像は、象牙質細管内又は象牙質表面に保持された大きな未分解粒子と、象牙質細管内の小さなミネラル沈着物の発生の両方による細管閉塞を示している。
【0126】
管内閉塞に加えて、露出した象牙質表面上の層の形成は、細管を遮断しうる。ガラス組成物が分解するにつれて、その速度は粒子サイズに影響され、有益なイオンが放出されて、フッ化物含有アパタイトを含むアパタイトの形成を促進する。
【0127】
NOVAMIN(登録商標)を含むSensodyne(登録商標)リペアアンドプロテクトは、ブラッシング適用及び直接適用の両方で、象牙質細管の閉塞において最悪の性能を発揮する練り歯磨きであった。マーケティング資料によると、NOVAMIN(登録商標)を含むSensodyne(登録商標)リペアアンドプロテクトは「1週間目から効果を発揮する」とされており、ここで Sensi-IP(登録商標)が示しているような即座に得られる効果でなく、数日かけてより多くの蓄積効果を発揮しうるということを裏付けている。Novamin Technologyの基礎である、初期生物活性ガラス組成物45S5についての国際ガラス委員会(TCO4)の第4技術委員会が実施した独自のインビボ研究は、インビトロでの表面反応の効果が見られるようになるまでに24時間かかったことが判った(J Mater Sci: Mater Med 2015)。
【0128】
対照的に、TCO4法を使用した5% SIP-OGのインビトロ試験では、石灰化の最初の証拠が30分で観察されたことを示し、実質的に速い石灰化反応が示された。この5% SIP-OGの反応速度の増加は、ポリマー粉末粒子による直接細管閉塞と、フッ化アパタイトの沈降の促進による歯の表面の急速な石灰化の二重効果とに寄与するようである。
【0129】
複数時点象牙質閉塞研究
上記の5% SIP-OG練り歯磨きは、5日間の模擬処置にわたって複数時点の象牙質閉塞研究において、市販の練り歯磨き製品(対照物品#1)NOVAMIN(登録商標)を含むSensodyne(登録商標)リペアアンドプロテクト(商標)(5%のNovamin及び1040ppmのフッ化ナトリウムとしてのフッ化物)及び(対照物品#2)Colgate(登録商標)センシティブプロリリーフ(商標)(8%のアルギニン、35%の炭酸カルシウム、1320ppmのモノフルオロリン酸ナトリウムとしてのフッ化物)とも比較された。
【0130】
2分間の模擬ブラッシングを1~5日間使用して1日2回処置した象牙質サンプルの分析は、数日間にわたる対象の練り歯磨きによる象牙質細管の閉塞の程度の測定を提供した。象牙質細管閉塞の程度は、象牙質過敏症を軽減する能力の間接的な尺度であると当該技術分野で一般的に理解されている。つまり、閉塞のレベルが上がると、象牙質液の流れが減少し、その結果、痛みの感覚が減少する。
【0131】
ヒト象牙質サンプルは、上記の単一時点象牙質閉塞研究と同じ方法で調製した。
【0132】
人工唾液(30mM塩化カリウム、13mM塩化ナトリウム、10mMオルトリン酸二水素カリウム、3mM塩化カルシウム脱水物、0.22%w/wタイプIIブタ胃ムチン及び0.02%w/wアジ化ナトリウム)を調製した。象牙質サンプルを、練り歯磨きによる最初の処置の前に、人工唾液に37℃で少なくとも60分間浸漬した。
【0133】
振動歯ブラシを用いて練り歯磨き0.67gで10秒間ブラッシングすることにより、サンプルを練り歯磨き(表12)で1日2回処理した。
【表12】
【0134】
サンプルを、表13に概説するように1~5日間処置した。サンプルを、適用後に脱イオン水で30秒間すすぎ、練り歯磨きの目に見える痕跡を除去し、次に、少なくとも1時間人工唾液中に保存し、その後に、適用サイクルを繰り返して、1日2回の使用をシミュレートした。1日2回の適用後に、サンプルを模擬唾液に3時間浸した後に、次の処置時点まで湿らせた組織に移した。
【表13】
【0135】
金スパッタコーティングを含む、処置された象牙質サンプルを、Phenon ProX 走査型電子顕微鏡を使用して画像化し、各サンプルについてx3000の倍率で3つの画像を収集した。各SEM画像は、次の等級分類を使用して、5段階のカテゴリスケールに基づいて、2人の二重盲検評価者が歯の閉塞の程度を評価した。
1.閉塞
2.ほとんど閉塞
3.等しい
4.ほとんど閉塞されていない
5.閉塞されていない
【0136】
Minitab 18 ソフトウェアを使用してデータ分析を行った。すべての処置群を評価し、群平均、標準偏差、最小値、最大値及び反復回数の記述統計を提供した。次に、すべてのデータセットの正規性を試験した。正規性の仮定に合格したデータセットについては、2サンプルt検定を使用して、データセット間の対比較を行った。1つ以上のデータセットが正規性の仮定を満たさなかったペアリングについては、マンホイットニー試験を使用して対ごとの統計的比較を行った。すべての統計試験は、0.05の有意レベルで行った。
【0137】
初期性能データは、5% SIP-OG練り歯磨きが有効であり、象牙質細管を部分的に閉塞する能力があることを裏付けている。平均閉塞スコアは以下のとおりである。
【表14】
【0138】
完全な閉塞 (閉塞スコア1で表される)は、5% SIP-OG練り歯磨きを2日間適用した後に、Sensi-IP(登録商標)練り歯磨きで処置された一部の象牙質サンプルで達成された。他の練り歯磨きは、処置期間にわたって処置されたサンプルのいずれについても、1の閉塞スコアを達成しなかった。
【0139】
NOVAMIN(登録商標)を含むSensodyne(登録商標)リペアアンドプロテクト及びColgate(登録商標)センシティブプロリリーフ(商標)は、すべての時点で等しい性能を示し、視覚的な閉塞を提供するために5% SIP-OG練り歯磨きよりも劣っていた。
【0140】
表面の微小硬度
約4x4mmのエナメルブロックをウシの口唇切歯からスライスし、ラッピングして 0.04μmのグリットに研磨した。1つの角を、サンプルの配向を可能にするために削り取り、サンプルを保存し、冷蔵し、使用するまで0.1%チモールで湿らせた。
【0141】
ベースラインの表面微小硬度測定値を、Wilson Tukon 1202 微小硬度試験機を使用して評価した。50gの負荷及び10秒の滞留時間を使用して、一連の8つのくぼみを100μmの間隔で作成した。くぼみサイズの測定は、50X 対物レンズを使用して行った。サンプルは、SMH≧250HK、標準偏差≦20HKの組み入れ基準で研究に受け入れた。ベースライン評価に続いて、サンプルを1ブロックあたり8mlの脱石灰化溶液に37℃で60分間浸し、続いて脱イオン水ですすぐことにより、最初の脱石灰化チャレンジを適用した。研究に含めるための品質チェックとしての脱石灰化の前で最初の脱石灰化処理後、及び、pHサイクル処置後の両方で、各エナメルブロックの表面微小硬度測定を行った。
【表15】
【0142】
SIP-OGを含まない同等の練り歯磨きシャーシからなるネガティブコントロールペーストを、SIP-OGを含まない同等のシャーシからなり、1040ppmのNaFとしてのFを添加したポジティブコントロールとともに、比較のために使用した。
【0143】
表面微小硬度(SMH)は、50gの荷重及び10秒の滞留時間を使用して、100μmの間隔で作成された一連の8つのくぼみを使用して分析した。くぼみの測定を50X 対物レンズを使用して行い、硬度を硬度ヌープとして表した。
【0144】
表面微小硬度回復率(SMHR)を以下の式を使用して計算した。
【数1】
【0145】
すべての統計分析を、Minitab 18 ソフトウェアを使用して行った。各実験について、各処置群及び時点の要約統計量(n、平均、標準偏差)を生成した。アンダーソン-ダーリング(Anderson-Darling)試験を使用して、すべてのデータセットの正規性を試験した。各実験及び時点について、処置群間で対比較を行った。エナメル表面微小硬度実験では、すべてのデータセットが仮定基準を満たし、一元配置分散分析を使用して実験結果を比較した。視覚的閉塞実験とフッ化物取り込み試験では、正規性の仮定が満たされる場合に2サンプルT試験を使用して閉塞スコア間で対比較を行い、対の1つ以上が正規性試験を満たさない場合にマンホイットニー試験を使用して比較を行った。すべての統計試験は、0.05の有意レベルで行った。
【表16】
【0146】
上記の記載において、説明の目的で、例の完全な理解を提供するために多数の詳細が示されている。しかしながら、これらの特定の詳細が必要でないことは、当業者に明らかであろう。したがって、記載したことは、記載した例の応用を単に例示するものであり、上記の教示に照らして多数の変更及び変形が可能である。
【0147】
上記の記載は例を提供するので、当業者は特定の例に対して変更及び変形を行うことができることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に記載された特定の例によって限定されるべきではなく、全体として明細書に一貫するように解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】