(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ロック機構を有する多部品眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552613
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 IB2021051739
(87)【国際公開番号】W WO2021176357
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】カマル ケー.ダス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイコブ スペンナー ドラ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC12
4C097CC19
4C097SA03
4C097SA08
(57)【要約】
基部上に着座し、ロック機構によって固定される交換可能な光学部品を有する多部品眼内レンズ(IOL)。光学部品は、基部のリングの直径よりも大きい直径を有する前面を備える。光学部品の後側は、後面と、基部と接触するための遷移領域と、遷移領域の径方向外側の側壁及びタブとを有する。側壁及びタブは、リングの少なくとも一部に重なって、光学部品の偏心及び傾斜を低減又は防止さえする。各タブは、基部に結合するための横方向延在部を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズアセンブリであって、
基部であって、
リングであって、
リング厚さを画成する前面と後面と、
リング直径を画成する外面と、
前記リングの前記外面から延在する一対のハプティックであって、各ハプティックがガセット領域、エルボー領域、及び遠位領域を備え、前記ガセット領域の内面及び前記リングの前記外面がリング-ハプティック接合部を形成する、一対のハプティックと、を備えるリング、を備える基部と、
光学部品であって、
前記リング直径よりも大きい前面直径を画成する前面を有する前側と、
後側であって、
後面と、
前記後面の径方向外側の遷移領域と、
前記遷移領域の径方向外側に位置する一対の側壁であって、各側壁が側壁高さを有する、一対の側壁と、
前記遷移領域の径方向外側に位置する一対のタブと、を備え、
各タブは、タブ高さを画成し、各タブは横方向延在部を備え、タブは、前記タブが前記リング-ハプティック接合部に位置決めされる場合に、前記一対のハプティックのうちの一方のハプティックの後面よりも後方に前記横方向延在部を位置決めする、後側と、 を備える光学部品と、
を備える、眼内レンズアセンブリ。
【請求項2】
前記側壁高さは前記リング厚さよりも大きい、請求項1に記載の眼内レンズアセンブリ。
【請求項3】
前記一対のハプティックは、第1の軸を画成し、
前記一対のタブは、第2の軸上に配置され、
前記リング-ハプティック接合部内に各タブを位置決めすることは、前記第2の軸を前記第1の軸と整列させる、
請求項1に記載の眼内レンズアセンブリ。
【請求項4】
前記ハプティック上の第1の対の開口部は、前記第1の軸を画成し、
前記光学部品上の第2の対の開口部は、前記第2の軸を画成し、
前記ハプティック上の前記第1の対の開口部に対して前記光学部品上の前記第2の対の開口部を整列させることは、前記第2の軸を前記第1の軸と整列させる、
請求項3に記載の眼内レンズアセンブリ。
【請求項5】
各横方向延在部は、前面を備え、
前記タブが前記リング-ハプティック接合部に位置決めされる場合に前記基部に対する前記光学部品の回転は、前記横方向延在部の前記前面と前記ハプティックの前記後面との間の接触のために前記タブを前記ハプティックに近接して位置決めする、
請求項1に記載の眼内レンズアセンブリ。
【請求項6】
前記リングの内面は溝を備える、請求項1に記載の眼内レンズアセンブリ。
【請求項7】
更に、前記溝内に位置決めされる第2の光学部品を備える、請求項6に記載の眼内レンズアセンブリ。
【請求項8】
各ハプティックは、各タブの前記横方向延在部を受け入れるための切欠きを備える、請求項1に記載の眼内レンズアセンブリ。
【請求項9】
各横方向延在部の前記前面は、隆起特徴部を受け入れるための凹部を備える、請求項1に記載の眼内レンズアセンブリ。
【請求項10】
眼内レンズ(IOL)アセンブリであって、
基部であって、
リングであって、
リング厚さを画成する前面と後面と、
リング直径を画成する外面と、
前記リングから径方向に延在する一対のポストと、
を備えるリング、を備える基部と、
光学部品であって、
前記リング直径よりも大きい前面直径を画成する前面を有する前側と、
後側であって、
後面曲率半径を有する後面と、
前記後面の径方向外側の遷移領域と、
前記遷移領域の径方向外側に位置する一対の側壁であって、各側壁が側壁高さを有する、一対の側壁と、
後方向に延在する一対のタブであって、各タブは、タブ高さを画成し、各タブは横方向延在部を備え、前記一対のタブは、前記光学部品が前記基部上に着座する場合、前記横方向延在部を前記一対のポストの後方に位置決めする、タブと、を備える、後側と、を備える、
光学部品と、を備える、
眼内レンズ(IOL)アセンブリ。
【請求項11】
前記一対のポストは、前記リングの前記外面から径方向外側に延在し、
前記一対のタブは、前記光学部品の前記後面の径方向外側に位置し、
前記一対のタブは、前記光学部品が前記基部上に着座する場合、前記横方向延在部を前記一対のポストの後方に位置決めし、
前記基部に対する前記光学部品の回転は、各横方向延在部の前面を前記一対のポストのうちの一方のポストの後面と接触させる、
請求項10に記載のIOLアセンブリ。
【請求項12】
前記ポストは、前記リングの内面から径方向内側に延在し、
前記一対のタブは、前記光学部品の前記後面上に位置し、
前記一対のタブは、前記光学部品が前記基部上に着座する場合、前記横方向延在部を前記一対のポストの後方に位置決めし、
前記基部に対する前記光学部品の回転は、各横方向延在部の前面を前記一対のポストのうちの一方のポストの後面と接触させる、
請求項10に記載のIOLアセンブリ。
【請求項13】
前記一対のポストは、第1の軸を画成し、
前記一対のタブは、第2の軸を画成し、
前記一対のタブを前記一対のポストと結合することは、前記第2の軸を前記第1の軸と整列させる、
請求項10に記載のIOLアセンブリ。
【請求項14】
前記遷移領域の幅と前記リングの幅とが略等しい、請求項10に記載のIOLアセンブリ。
【請求項15】
光学部品及び基部を備える眼内レンズ(IOL)を組み立てるための方法であって、前記基部は、リング厚さを画成する前面と後面と、リング直径を画成する外面と、前記外面から延在する一対のハプティックとを有するリングを備え、前記方法は、
前記リング上に前記光学部品を位置決めすることであって、
前記光学部品の後側を前記リングの前記前面と接触させて位置決めすることであって、前記光学部品は、前記リングの前記外面の径方向外側に一対の側壁を備え、各側壁は、前記光学部品が前記リング上に着座する場合、前記リングの少なくとも一部と重なるよう構成される側壁高さを有する、ことと、
前記基部内のリング-ハプティック接合部に対して前記光学部品上に一対のタブの各タブを位置決めすることであって、
各ハプティックは、ガセット領域、エルボー領域、及び遠位領域を備え、
前記ガセット領域の内面及び前記リングの前記外面は、前記リング-ハプティック接合部を形成し、
各タブは、タブ高さを画成し、
各タブは横方向延在部を備え、
各タブは、前記タブが前記リング-ハプティック接合部に位置決めされる場合に、前記一対のハプティックのうちの一方のハプティックの後面よりも後方に前記横方向延在部を位置決めする、ことと、
前記基部に対して前記光学部品を回転させて、前記一対のハプティックのうちの一方のハプティックの前記後面に近接して前記横方向延在部を位置決めすることと、
を含む、前記リング上に前記光学部品を位置決めすることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2020年3月5日出願の米国仮特許出願第62/985,419号明細書、発明の名称「MULTI-PART INTRAOCULAR LENS WITH LOCKING MECHANISM」、発明者Kamal K.Das及びWilliam Jacob Spenner Dollaによる優先権の利益を主張し、その全てを十分且つ完全に本明細書中に記載するように引用し、組み込む。
【0002】
本開示は、一般に、多部品眼内レンズ(IOL)に関する。詳細には、本開示は、基部に結合するためのロック機構を有する交換可能な光学部品の実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
人間の眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通して光を透過させ、水晶体によって網膜上で像に焦点を合わせることによって視力を提供するよう機能する。焦点の合った像の質は、眼の大きさ及び形状、並びに角膜及び水晶体の透明度を含む多くの要因に依存する。
【0004】
水晶体は、眼内の透明な両凸構造体であり、角膜と共に、光を屈折させて網膜上で焦点を合わせること役立つ。水晶体は、その形状を変化させることによって、様々な距離にある物体に焦点を合わせることができるように眼の焦点距離を変化させるよう機能し、従って、対象物体の鮮明な実像が網膜上に形成されることを可能にしている。この水晶体の調整は、調節として知られており、そのレンズの移動による写真カメラの焦点合わせに類似している。
【0005】
老化又は他の眼疾患は、水晶体の透明度を低下させ(例えば、混濁させ)、網膜に伝達され得る光が減少するため、視力が低下する。眼の水晶体におけるこの欠陥は、医学的に白内障として知られている。この状態に対する現在利用可能な治療は、水晶体嚢から水晶体を外科的に除去し、水晶体嚢内に人工眼内レンズ(IOL)を配置することである。白内障水晶体の大部分は、超音波水晶体乳化吸引術と呼ばれる外科的手法によって除去される。この処置の間、開口部(嚢切開)が水晶体嚢の前側に形成され、超音波水晶体乳化吸引用の細い切断チップが罹患水晶体内に挿入され、超音波により振動させる。振動切断チップは、水晶体が水晶体嚢から吸引されてもよいように、水晶体を液化又は乳化する。白内障水晶体は、一旦除去されると、IOLに置き換えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に説明するIOLの実施形態は、基部と光学コンポーネントとが組み合わされる多部品IOLを含んでいる。基部は、一般に、リングと、リングを水晶体嚢内に位置決めし、安定させるための一対のハプティックとを有する。光学部品は、治療される眼の症状に基づいて選択され、次いで、基部に結合されてIOLを完成させる。
【0007】
一実施形態において、基部は、リングと、一対のハプティックと、リングの前面に着座させるために構成される光学部品とを含む。光学部品上の側壁は、基部と重なって、光学部品の偏心及び傾斜を低減又は防止さえし、光学部品上のタブは、ハプティックと係合して、光学部品を基部に固定する。
【0008】
リングは、リング厚さを画成する前面及び後面と、リング幅を画成する内面及び外面と共に形成される。ある実施形態において、リングは溝を有していてもよい。
【0009】
光学部品は、光学部品の直径にわたって形成される前面を有する。前面は、患者の眼の所望の視覚結果に基づく曲率半径を有する。光学部品はまた、後面直径が前面直径よりも小さい後面を有する後側を有する。後側はまた、リングの前面と接触するための遷移領域を含む。光学部品の後側の側壁は、遷移領域の径方向外側に位置し、光学部品が基部上に着座する場合に、基部の少なくとも一部に重なるよう構成される。側壁の高さは、重なりを特定し、IOLが患者に移植されると、傾斜及び偏心を低減するか又は防止さえするように選択される。横方向延在部を有するタブも、光学部品の後側に位置する。タブは、基部上の特徴部の後方に位置決めされて、光学部品を基部に繋止することができる横方向延在部を有する。幾つかの実施形態において、これらの特徴部はハプティックである。他の実施形態において、特徴部は、特徴部がタブによる係合のために既に利用可能であるように、基部の一部である。他の実施形態において、基部は、特徴部と共に形成される。特徴部は、基部からのポスト又は他の物理的延在部であってもよいか、又は基部に形成される凹部若しくは開口部であってもよい。
【0010】
本明細書中に説明するIOLの実施形態は、より大きく、水晶体嚢内でより前方に位置決めされる光学部品を提供してもよく、それは、偏心に対してより敏感ではなく、移植後の異常光視症の発生率を低減し、グリントの有病率を低減し、他の利益を提供する可能性がある。リング厚さよりも大きい側壁高さを有する側壁を有する光学部品を備えるIOLは、後嚢混濁(PCO)と称する細胞増殖を低減する可能性がある。
【0011】
本開示の実施形態の様々な他の態様及び利点を、以下の詳細な説明及び図面において説明する。
【0012】
図面は、本開示の例示的な実施形態を示している。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、同じ番号が付けられた同様の要素を含む可能性があり、必ずしも限定ではない一例として、寸法(ミリメートル単位)及び角度(度単位)を含む可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示による多部品IOLの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す多部品IOLにおいて使用可能な基部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す多部品IOLにおいて使用可能な基部を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ロック機構の代替位置を示す多部品IOLのための基部の平面図である。
【
図7】
図7は、ロック機構の代替位置を示す多部品IOLのための基部の平面図である
【
図8】
図8は、ロック機構の代替位置を示す多部品IOLのための基部の平面図である
【
図9】
図9は、代替ロック機構を有するIOLの拡大部分図である。
【
図10】
図10は、追加の光学部品を有する、
図1に示す多部品IOLの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、添付図面に示す本開示の実施例を詳細に参照する。可能な限り、同一の参照番号を図面全体を通して用いて、同一又は同様の部分を参照する。以下の検討において、「約(about)」、「略(substantially)」、「およそ(approximately)」等の相対的な用語は、他の変動を示していない限り、記載する値、数値等において±10%の可能な変動を示すために用いられる。
【0015】
以下の詳細な説明は、多部品IOL及び多部品IOLシステムの様々な実施形態を説明している。任意の1つの実施形態を参照して説明する特徴は、他の実施形態に適用され、それらに組み込まれてもよい。
【0016】
I.交換可能な光学部品及びロック機構を有する多部品IOL-概要
図1は、眼の症状を治すよう水晶体嚢内への挿入及び組み立てを容易にするために設計された多部品眼内レンズ(IOL)10を示している。IOL 10は、基部14の上部(前方)に着座する交換可能な光学部品12を含んでいる。
図1は、更に、光学部品12上の1対の側壁16のうちの1つの側壁16と、以下でより詳細に検討するロック機構の一部を形成する1対のハプティック20に対して位置決めされる1対のタブ18のうちの1つのタブ18と、を示している。
【0017】
手術中、外科医は、基部14を水晶体嚢内に挿入且つ位置決めし、光学部品12を水晶体嚢内に挿入し、次いで、光学部品12が基部14上に着座するように、光学部品12を基部14に位置合わせ且つ結合することができる。光学部品12上に形成される側壁16及びタブ18は、手術中に、基部14上への光学部品12の位置決め又は基部14に対して光学部品12を正しい方向に置くことを容易にするよう、基部14の少なくとも一部に重ねる。光学部品12が基部14上に位置決めされる場合、側壁16及びタブ18は、光学部品12の傾き及び偏心を減少させるか、更には防止する。
【0018】
II.多部品IOLにおいて光学部品を支持するための基部
図2及び3は、多部品IOL 10において用いるための基部14の実施形態の斜視図を示している。一般に、基部14の様々な設計及び構成は、ハプティック20と共に形成されるリング22を含んでいる。
【0019】
図2及び
図3に示すように、リング22は、前面24、後面26、内面28、及び外面30と共に形成されている。前面24と後面26との間の距離は、リングの厚さを画成している。外面30はリング円周を画成している。内面28及び外面30はリング幅を画成している。
図2を参照すると、前面24、後面26、内面28、及び外面30のうちの1つ以上は、平滑な連続面として形成されてもよい。
図3は、前面24、後面26、内面28、及び外面30のうちの1つ以上が、外科医がより容易に基部14を挿入及び操作するか、又はIOL 10を組み立てることを可能にする開口部32と共に形成される、基部14の種類を示している。内面28は、他の種類の光学部品を保持するために一般的に用いられる径方向内向きの凹部又は溝34と共に形成されてもよい。
【0020】
更に
図2及び3を参照すると、基部14は、リング22に結合されるハプティック20を含んでいる。ハプティック20は、基部14を水晶体嚢内に位置決めし、安定させるために成形されている。ハプティック20のそれぞれは、ガセット領域20a、エルボー領域20b、及び遠位領域20cを有する。ガセット領域20aは、ハプティック20の取り付け位置をリング22から径方向外向きに移動させるよう構成されてもよく、外科医が基部14を挿入及び操作することを可能にする開口部36を有していてもよい。ハプティック20内の一対の開口部36は、以下でより詳細に検討する基部14の軸(B-B)を画成してもよい。遠位領域20cは、ハプティック20と水晶体嚢との間に接触領域を提供するよう構成されてもよい。エルボー領域20bは、ハプティック20の可撓性を提供して、遠位領域20cが水晶体嚢内にリング22を位置決め及び安定化させるために水晶体嚢に係合することを可能にするよう構成されてもよい。ガセット領域20aの内面及びリング22の外面30は、リング-ハプティック接合部38を形成する。幾つかの実施形態において、ハプティック20及びリング-ハプティック接合部38は、以下でより詳細に検討するIOL 10のロック機構の一部を形成するよう構成される。
【0021】
III.基部のリング上に着座するための光学部品
一般に、光学部品(図示せず)がリング(
図3に示すリング22等)の内側に位置決めされる場合、光学部品はリングの内径よりも小さな直径を有する。結果として、この種類の光学部品は、リング内に位置決めすることがより困難となり、光学部はより小さくなり、リングは、グレア又は他の効果を増加させる可能性を有する。
【0022】
図4A及び4Bは、それぞれ、リング22上に着座する(その中に着座する代わりに)ことが可能な大型光学部と共に構成される、光学部品12の正面図及び側面図を示している。
図4Aを参照すると、光学部品12は、光学部分が光学部品12の光学直径(D
OPTIC)にわたって画成されてもよい前面40を備えている。光学部品12がリング22上に又はそれを覆って位置決めされることにより、光学部品は、従って、より前方に位置決めされるだけでなく、より大きな前面40を有していてもよい。光学部品12のこれらの特徴は、例えば、望ましくない光の現象を緩和すること、及びグリントの有病率を低減すること等の利益を提供してもよい。幾つかの実施形態において、前面は、以下で検討する開口部50を含んでいる。光学部品12は、後面42がD
OPTICよりも小さい光学後面径(D
POS)に対する曲率半径を画成する後側を有する。光学後面径(D
POS)は、リング22の内面28の直径以上であってもよい。光学部品12の後側は、更に、後面42と側壁16との間の遷移領域44を含んでいる。ある特定の実施形態において、後面42と遷移領域44の交点は角度を形成する。ある特定の実施形態において、後面42のDPOSは、遷移領域44の幅がリング22の幅と等しくなるように、リング22の内面28の直径と略同じである。
【0023】
光学部品12は、更に、ロック機構の一実施形態に用いられるコンポーネントを備える。
図4A及び4Bに示すように、光学部品12の後側は、光学部品12の外周付近に形成される側壁16及びタブ18を含む。各側壁16は高さ(H
SIDEWALL)と共に構成され、各タブ18は、側壁16及びタブ18が後方向に延在して基部(
図2又は
図3に示す基部14等)に重なるように、高さ(H
TAB)と共に構成される。側壁16及びタブ18は、それぞれ、高さ(H
SIDEWALL)及び(H
TAB)と共に形成されて、手術中の基部14上の光学部品12の位置決めを容易にし、手術後の偏心及び傾斜を低減又は防止さえする。
図4Bに示すように、側壁16の高さ(H
SIDEWALL)は、周方向に変化してもよく、各側壁16は、有用性を改善するようテーパ状又は曲線状であってもよい。幾つかの実施形態において、側壁16は、側壁16がリング22の一部に重なるが、それを完全に覆わないように、リング22の厚さよりも低い高さ(H
SIDEWALL)と共に形成される。他の実施形態において、側壁16は、側壁16がリング22後方の距離を延在するよう重なるように、リング22の厚さ以上の高さ(H
SIDEWALL)と共に形成される。
【0024】
IV.多部品IOLのためのロック機構
IOL 10は、光学部品12が所望の向きで基部14上に着座したままであることを容易にするロック機構を含んでいる。
図2、3、4A及び4Bは、ロック機構の一実施形態の一部を示している。
図2及び3を参照すると、リング22はハプティック20を備え、
図4A及び4Bはタブ18を示し、ここで各タブ18は横方向延在部46を含んでいる。光学部品12がリング22上に着座する場合、ハプティック20の後方に横方向延在部46を位置決めすることにより、光学部品12を基部14に繋止してもよい。幾つかの実施形態において、光学部品12がリング22の前面24上に着座する場合、タブ18の高さH
TABは、横方向延在部46が概してハプティック20の後方に位置決めされることを確実にする。横方向延在部46が概してハプティック20の後方に位置決めされる場合、光学軸(OA)に対する第1の方向(例えば、時計回り)の光学部品12の回転は、光学部品12及びリング22が接続されるように、横方向延在部46をハプティック20の後方及び近接して位置決めする。幾つかの実施形態において、光学部品12は、横方向延在部46の前面48がハプティック20の後面に接触して光学部品12を基部14に繋止するまで、第1の方向に回転可能である。
【0025】
ロック機構は、光学部品12が基部14から繋止解除されることを可能にする。光学部品12を基部14から繋止解除するために、光学部品12及びリング22が接続され、光学部品12が反対方向(例えば、光軸OAに対して反時計回り)に回転された場合、横方向延在部46は、光学部品12及びリング22を切り離し、光学部品12をリング22から分離することができるように、ハプティック20に近接する位置からハプティック20に近接しない位置に移動させてもよい。
【0026】
V.交換可能な光学部品及びロック機構による多部品IOLのアセンブリ
基部14及び光学部品12を含む多部品IOL 10は、種々の外科的手法を用いて移植されてもよい。多部品IOL 10は、角膜切開を通して、嚢切開部を通して、水晶体嚢内に挿入される注入器(インサータ又は送出管としても公知)を用いて、巻かれた構成で水晶体嚢内に基部14を最初に送出することによって移植されてもよい。
【0027】
基部14は、注入器から排出され、展開するよう可能にされてもよい。穏やかな操作により、基部14のハプティック20は、水晶体嚢の内側赤道及び嚢切開部に対する中央リング22に係合する。ハプティック20における開口部36は、基部14の取り扱いを容易にし、基部14の向きに関連する軸(B-B)を含む基部14の向きを示してもよい。
【0028】
光学部品12はまた、注入器を用いて巻かれた構成で送出され、その遠位先端を基部14に隣接して位置決めしてもよい。光学部品12は、注入器から排出され、展開するよう可能にされてもよい。穏やかな操作により、光学部品12は嚢切開部に対して中央に配置される。光学部品12は、水晶体嚢への挿入を容易にするための、水晶体嚢から光学部品12を取り出すための、及び基部14に対して光学部品12を整列させることを助けるよう、開口部50を有してもよい。
図5Aを参照すると、光学部品12は、光学部品12の向きを示すよう、光学部品12の一方の側に2つの開口部50を有し、反対側に1つの開口部50を有していてもよい。開口部50は、光学部品12に関連する軸(O-O)を識別することを容易にしてもよい。開口部50はまた、幾つかの実施形態において、光学部品12、及びより一般的にはIOL 10の整列を更に容易にするトーリックマーカ又はインジケータとして機能してもよい。
【0029】
光学部品12が水晶体嚢内に送出され、展開されると、光学部品12は基部14に接続されてもよい。
【0030】
光学部品12は、第1に光学部品12を基部14上に着座させることによって、基部14に接続されてもよい。光学部品12は、側壁16がリング22の少なくとも一部に重なるように、基部14上に位置決めされてもよい。遷移領域44がリング22の前面24に接触するまで、小さな力を印加してもよい。
図5A及び5Bは、それぞれ、基部14上に着座する光学部品12と共にIOL 10の斜視図及び拡大部分斜視図を示している。
【0031】
依然として
図5A及び5Bを参照すると、光学部品12が基部14上に着座すると、光学部品12は、概して、タブ18をリング-ハプティック接合部38内に位置決めするよう操作されてもよい。タブ18がリング-ハプティック接合部38に位置決めされた状態で、光学軸(OA)に対する光学部品12の回転は、ハプティック20の下に横方向延在部46を位置決めしてもよい。幾つかの実施形態において、ハプティック20の下に横方向延在部46を位置決めすることにより、横方向延在部46の前面48とハプティック20の後面との間の接触が生じる。タブ18が、概して、リング-ハプティック接合部38内に位置決めされる
図5A及び5Bに示す実施形態において、光学軸(OA)に対する光学部品12の時計回りの回転は、前面48がハプティック20の後面に接触するように、横方向延在部46をハプティック20の後方に位置決めする。
【0032】
図3及び5Aを参照すると、基部14は第1の軸(B-B)を有していてもよく、光学部品12は第2の軸(O-O)を有していてもよい。基部14は、水晶体嚢内に挿入され、第1の軸(B-B)を向けるよう操作されてもよい。基部14上の開口部36は、第1の軸(B-B)を向けることを含んでいてもよい基部14の挿入及び操作を容易にしてもよい。更に、光学部品12上の開口部50は、基部14に対して光学部品12を整列させるよう、第1の軸(B-B)に対して第2の軸(O-O)を整列させることを含む光学部品12の挿入及び操作を容易にしてもよい。
【0033】
必要に応じて、光学部品12及び基部14を含むIOL 10は、上で説明したステップを略逆にすることによって除去されてもよい。IOL 10の除去は、基部14に対して光学部品12を回転させて、ハプティック20からタブ18を係脱することによって開始する。
図5A及び5Bに示す実施形態において、光学部品12の反時計回りの回転は、横方向延在部46がハプティック20の後方にあるがハプティック20に近接しないように、横方向延在部46をハプティック20から係脱させる。
【0034】
プローブ又は同様のデバイスが、多部品IOL 10を含む水晶体嚢に入ってもよい。プローブ又は同様のデバイスは、光学部品12内の開口部50に係合し、光学部品12を回転させてもよい。光学部品12を回転させるにつれて、横方向延在部46がハプティック20から係脱する。穏やかな操作により、光学部品12は、光学部品12及び基部14が切り離されるように持ち上げられてもよい。プローブは、光学部品12及び基部14のうちの1つ以上を除去してもよい。
【0035】
VI.代替ロック機構
ハプティック20に係合する横方向延在部46を有するタブ18は、基部14と光学部品12との間のインターロック接続を提供する。より一般的には、1つ以上のインターロック接続が基部14と光学部品12との間に設けられてもよい。各インターロック接続は、1対のインターロック部材を含んでいてもよく、ここでインターロック部材の一方又は両方が作動可能である。
図6~8は、IOL 10のためのロック機構において使用可能な特徴と共に形成される基部14の実施形態を示している。
【0036】
図6を参照すると、一対のポスト52がリング22の外面30上に形成されてもよい。光学部品12(
図6には図示せず)は、
図4A及び4Bに関して上で説明したようなタブ18と共に構成されてもよい。光学部品12は、基部14上に着座し、上で説明したように回転されてもよい。しかし、横方向延在部46がハプティック20に係合する代わりに、横方向延在部46はリング22の外側のポスト52に係合する。
図7を参照すると、一対のポスト52がリング22の内面28上に形成されてもよい。光学部品12(図示せず)は、遷移領域44の径方向内側に位置するタブ18と共に構成されてもよい。光学部品12は、基部14上に着座し、上で説明したように回転されてもよい。しかし、横方向延在部46がハプティック20に係合する代わりに、横方向延在部46はリング22の内側のポスト52に係合する。
【0037】
図8を参照すると、一対の開口部54がリング22に形成されてもよい。タブ18は、光学部品12(図示せず)の遷移領域44に形成されてもよい。光学部品12が基部14上に着座する場合、タブ18は、リング22に対する光学部品12の回転により、横方向延在部46をリング22の後面26に係合させるように、開口部54を通って延在する。
【0038】
図6~8に示す実施形態の利点は、ハプティック20が存在する場合であっても、ハプティック20を用いることなく光学部品12を基部14に結合することができることであってもよい。更に、タブ18が光学部品径(D
OPTIC)の径方向内側にある実施形態において、側壁16は、追加の安定性及び他の利点を提供するよう、円周のより大きな部分に及ぶことができる。
【0039】
図9を参照すると、IOL 10は、横方向延在部46の前面48が、角度56によって示すように傾斜するロック機構を利用してもよい。基部14に対する光学部品12の回転により、横方向延在部46の前面48がハプティック20の後面58と接触する。回転を続けると、タブ18に引張力が生じ、これにより光学部品12を基部14上に着座させることを助けてもよい。
【0040】
図9はまた、ハプティック20上に形成される切欠き60を示している。切欠き60は、光学部品12が基部14上に着座し、横方向延在部46が切欠き60内に位置決めされる場合に、タブ18がハプティック20の後面と面一になる(即ち、それを超えて延在しない)ように、タブ18及び横方向延在部46を受け入れてもよい。
【0041】
図9は、更に、ハプティック20の対応する接合特徴部上の隆起特徴部64に対応してもよい凹部62を有する横方向延在部46を示している。凹部62内に位置決めされる隆起特徴部64は、光学部品12が基部14から切り離されることを抑制するか、更には防止する。
【0042】
VII.追加光学部品を支持する多部品IOL
図10を参照すると、本明細書中に説明する実施形態は、他の光学コンポーネントをIOL 10に追加することを可能にしている。
図10に示すように、IOL 10は、基部14上に着座する光学部品12を含み、更に、(第1の)光学部品12上に着座する第2の光学部品66を示している。上で説明した技法及び特徴を用いて、外科医は、基部14を挿入し、(第1の)光学部品12を基部14に挿入及び結合し、第2の光学部品66を(第1の)光学部品12に挿入及び結合することができる。更に、
図10に示す基部14は、別の光学コンポーネント(図示せず)を基部14によって支持することができるように、溝34を備えている。増加した光学部を有する安定した構造内に複数の光学コンポーネントを有する能力は、眼の症状の治療のための多部品IOL 10の有用性を増加させる。更に、IOL 10は、ハプティック20が第2の光学部品66を追加するために必要ではないように組み立てられてもよい。
【0043】
一般に、本明細書中に説明する代替の実施形態を含む、基部14及び光学部品12を備える多部品IOL 10は、手術中又は手術後のどちらか一方において、基部14を所定位置に残したまま光学部品12を調整又は交換することを可能にする。これが望ましい可能性がある場合の実施例には、手術中に検出された準最適な屈折結果を矯正するよう光学部品12を交換すること、手術後に検出された準最適な屈折結果(残留屈折誤差)を矯正するよう光学部品12を交換すること、トーリック矯正を微調整するよう基部14に対して光学部品12を回転させて調整すること、真の光軸(水晶体嚢の中心ではない可能性がある)と光学部品12の整列のために基部14に対して光学部品12を横方向に調整すること、及び長期間にわたって変化する患者の光学的必要性又は要望に対処するよう光学部品12を交換することを含むが、これらに限定されない。後者の例には、彼/彼女が成熟するにつれて元の光学矯正を変更する必要がある成人又は小児のIOL患者、単焦点IOLからプレミアムIOL(トーリック、多焦点、調節又は他の将来のレンズ技術)にアップグレードしたいと望んでいる患者、プレミアムIOLに満足せず、単焦点IOLにダウングレードしたいと望んでいる患者、及びIOL又は特定の種類のIOLが禁忌である病状を発症している患者を含むが、これらに限定されない。
【0044】
例として、必ずしも限定ではないが、本開示の実施形態によるIOLは、白内障、近視(myopic)(近視(near-sighted))眼、遠視(hyperopic)(遠視(far-sighted))眼、及び乱視眼における大きな光学誤差、水晶体偏位、無水晶体眼、偽水晶体眼、及び核硬化を治療するために用いられてもよい。しかし、説明の目的のために、本開示のIOL実施形態は、多くの場合、高齢者集団において生じる白内障を参照して説明している。
【0045】
本開示の前記検討は、例証及び説明の目的のために提示した。上記は、本開示を本明細書中に開示した単数又は複数の形態に限定することを意図するものではない。本開示は、1つ以上の実施形態及びある特定の変形例並びに変更例の説明を含んでいるが、他の変形例及び変更例は、本開示を理解した後に、例えば、当業者の技能及び知識の範囲内である可能性があるように、本開示の適用範囲内にある。かかる代替の、交換可能な、及び/又は同等の構造、機能、範囲、又はステップが本明細書中に開示されているかどうかに関わらず、且つ任意の特許性のある主題を公に捧げることを意図せずに、特許請求の範囲に記載するものに対する代替の、交換可能な、及び/又は同等の構造、機能、範囲、又はステップを含む、許容される範囲に対する代替の実施形態を含む権利を得ることを目的としている。
【国際調査報告】