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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ステロイドのヒドロキシ化方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 33/06 20060101AFI20230413BHJP
   C12N 9/06 20060101ALI20230413BHJP
   C12N 9/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C12P33/06 A ZNA
C12N9/06 Z
C12N9/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552804
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2021055615
(87)【国際公開番号】W WO2021176066
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】20161537.4
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522348675
【氏名又は名称】アンニッキ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】508304332
【氏名又は名称】ファーマツェル・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタウニッヒ、ニコール
(72)【発明者】
【氏名】ドンスバッハ、カイ オリビエ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD02
4B050KK03
4B050LL05
4B064AH07
4B064BJ15
4B064CA21
4B064CB12
4B064CC24
4B064DA01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの酸化還元パートナー系、及び酸化還元パートナー系を再生するための系の存在下で7-デオキシステロイドをチトクロムP450酵素又はその機能的変異体で変換する工程を含む、ステロイドを調製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)を有するステロイドを調製する方法であって、
【化1】

式中、
及びXは、独立して、H、Cl、F、Br、I、CF、C~Cアルキル基、OH、C~Cアルコキシ基、CN、NO、N(R、エポキシ基、CHO又はCO基であり、式中、
は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph、-C(O)CHPhであり、
及びRは、独立して、H、OH、OR又はOであり、式中、
は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph、-C(O)CHPhであり、
は、H、OH、OR、C~C10アルキル基、C~C10アルケニル基、-CHO、-C(O)(CH)、-C(O)(CHOH)、-CH(CH)C(O)CH、-CH(CH)((CHCO)又は-CH(CH)((CHCONHR)であり、式中、
は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph又は-C(O)CHPhであり、
は、-CH、-CHCOOH、-CHCH、-CH(CH、-(CHCH、-(CHSOH、C(CH、-(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CHCH(CH、アリール基又はアルキルアリール基であり、
は、H、OH又は-OR10であり、式中、
10は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph又は-C(O)CHPhであり、
は、H、CF、C~Cアルキル基、C~Cアルケニル基、OH、O又はC~Cアルコキシ基であり、式中、破線は任意の二重結合を示し、但し、A環がC4~C5二重結合を有する場合、B環は二重結合を有さず、X及びXがエポキシ基を形成する場合、C環は二重結合を有さず、
一般式(II)を有する7-デオキシステロイドを
【化2】

少なくとも1つの酸化還元パートナー系及び酸化還元パートナー系を再生するための系の存在下でチトクロムP450ヒドロキシラーゼ又はその機能的変異体で変換する工程を含み、前記チトクロムP450酵素は、配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも90%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項2】
、X、R及びRは、Hであり、
及びRは、独立して、H、OH、OR又はOであり、式中、
は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph、-C(O)CHPhであり、
は、C~C10アルキル基、C~C10アルキレン基、-CH(CH)((CHCO)又は-CH(CH)((CHCONHR)であり、式中、
は、-CH、-CHCOOH、-CHCH、-CH(CH、-(CHCH、-(CHSOH、C(CH、-(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CHCH(CH、アリール基又はアルキルアリール基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アリール基が、フェニル基、F、Cl、Br、NO又はCHで置換されたフェニル基及びヘテロアリールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルキルアリール基が、ベンジル基、ハロゲンがF、Cl又はBrであるハロゲン化ベンジル基、及びNOで置換されたベンジル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
は、OHであり、Rは、O又はOHであり、Rは、CH(CH)((CHCO)であり、Rは、Hであり、Rは、Hであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記一般式(I)を有するステロイドが、7β,12α-ジヒドロキシ-3-ケト-5β-コラン-24-酸、3α,7β-ジヒドロキシ-12-ケト-5β-コラン-24-酸、7β-ヒドロキシ-3,12-ジケト-5β-コラン-24-酸、3α,7β-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸及び3β,7β-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記7-デオキシステロイドが、3α,12α-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3α,12β-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3β,12α-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3β,12β-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3β-ヒドロキシ-12-ケト-5β-コラン-24-酸、3-ケト,12β-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3-ケト,12α-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3α-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3-ケト-5β-コラン-24-酸、3β-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸及びそれぞれの酸のエステルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記チトクロムP450酵素が、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号6の核酸配列と少なくとも90%、特に100%同一の核酸によってコードされることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの酸化還元パートナー系が、
(i)フェレドキシン、フェレドキシンレダクターゼ及びNAD(P)H、
(ii)チトクロムP450レダクターゼ及びNAD(P)H又は
(iii)NAD(P)H
を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フェレドキシンが、アドレノドキシン、プチダレドキシン及びフラボドキシンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフェレドキシンレダクターゼが、フラボドキシンレダクターゼ及びプチダレドキシンレダクターゼの群から選択されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化還元パートナー系を再生するための系が、少なくとも1つの酸化還元酵素、及び前記少なくとも1つの酸化還元酵素の少なくとも1つの基質を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの酸化還元酵素が、酸化還元酵素(EC:1.1.1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC:1.2.1)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC:1.4.1)、フラビンレダクターゼ(EC:1.5.1)、トランスヒドロゲナーゼ(EC:1.6.1)、亜硝酸レダクターゼ(EC:1.7.1)及びホスホナートデヒドロゲナーゼ(EC:1.20.1)からなる群から選択され、好ましくはアルコールデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、亜リン酸デヒドロゲナーゼ及び糖デヒドロゲナーゼからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの酸化還元酵素が、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、アラビノースデヒドロゲナーゼ、キシロースデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ、12α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、20α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、17α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3β-ヒドロキシ-δ5デヒドロゲナーゼ、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの酸化還元酵素の前記少なくとも1つの基質が、アラビノース、キシロース、グルコース、ソルビトール、キシリトール、コラン-24-酸、3α,12α-ジヒドロキシコラン-24-酸-2,3-ブタンジオール、アセトイン、2-プロパノール、グルタマート、エタノール、ホスホナート、ホスフィット、ニトリット、4-メチル-2-ペンタノール、2-ブタノール、2-オクタノール、シクロヘキサノール、エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1-プロパノール、1-ブタノール、ホルマート及び3-ヒドロキシブタノアートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの有機溶媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの有機溶媒が、プロトン性又は非プロトン性溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの有機溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルアセトアミド(DMA)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項16又は17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイドのヒドロキシル化のための手段及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,7,12-トリヒドロキシル化胆汁酸、例えばコール酸(3α,7α,12α-トリヒドロキシ-5β-コラン酸)又はウルソコール酸(3α,7β,12α-トリヒドロキシ-5β-コラン酸)は、とりわけウルソデオキシコール酸(UDCA)を製造するための出発材料として、工業的に重要な化学物質である。ウルソデオキシコール酸は、とりわけ、軽微なX線陰性胆石を溶解するため、並びに肝疾患の原発性毛様体(ciliary)肝硬変及び原発性硬化性胆管炎を治療するための医薬品として使用される。
【0003】
3,7,12-トリヒドロキシル化胆汁酸の工業的に最も重要な供給源は、肉生産において屠殺場廃棄物として蓄積する胆嚢からの胆汁液である。他の動物種に加えて、ウシの胆汁が使用されることが多い。3,7,12-トリヒドロキシル化胆汁酸の工業的に関連する全合成はない。胆汁酸の産生は別の製品(肉)に関連しているため、需要の増加に対する応答は非常に限られる可能性がある。このため、原料胆汁をできるだけ効率的に使用することは非常に興味深い。
【0004】
胆汁は胆汁酸、脂質、コレステロール及び他の物質の水性混合物であるので、胆汁酸の抽出中の成分の分離は特に重要である。胆汁酸はまた、その成分がヒドロキシル基の数及び位置が異なる混合物を構成する。コール酸に加えて、ウシ胆汁はまた、有意な割合のデオキシコール酸を含有し、これは、7位にOH基が欠損しているという点でコール酸とは異なる(3α,12α-ジヒドロキシ-5β-コラン酸)。デオキシコール酸は、3,7,12-トリヒドロキシル化胆汁酸よりも商業的価値がはるかに低い。したがって、7位にヒドロキシル基を選択的に導入することによって、デオキシコール酸を3,7,12-トリヒドロキシル化胆汁酸に変換することに工業的関心がある。
【0005】
ヒドロキシル化中、酸素原子は、酸化反応において(非活性化)C-H結合に正式に導入される。有機化学では、これらは実行が非常に困難な反応である。OH基は、例えばC=C二重結合に水を添加することによって、迂回路を通して導入されることが多い。いくつかの化学的に(ほぼ)等価なC-H結合が存在するため、複合分子(例えば、胆汁酸など)の特定の位置での選択的ヒドロキシル化は問題がある。
【0006】
7β-ヒドロキシラーゼを使用してリトコール酸をウルソデオキシコール酸に酵素的に変換する方法は、国際公開第2018/227940号に開示されている。
【0007】
Schmitzら(Microbial Cell Factories 13(1):1-13(2014))は、チトクロムP450モノオキシゲナーゼを用いた変換によるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)又はプレグネノロン(PREG)の7-ヒドロキシル誘導体の産生を記載している。
【0008】
中国特許第102002518号は、ヒドロキシラーゼによる3-β-コレステロールアセタートの7-β-ヒドロキシル-3-β-コレステロールアセタートへの変換を開示している。
【0009】
国際公開第2020/109776号には、とりわけステロイドであるプレグネノロンからの種々の有機化合物をチトクロムP450でヒドロキシル化又は脱アルキル化する方法が開示されている。
【0010】
本発明の目的は、特にこの時点で、7位に水素を有しヒドロキシル基を有さない、胆汁酸及びその誘導体などのステロイドをヒドロキシル化する手段及び方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による目的は、一般式(I)を有するステロイドを調製する方法により達成され、
【化1】

式中、
及びXは、独立して、H、Cl、F、Br、I、CF、C~Cアルキル基、OH、C~Cアルコキシ基、CN、NO、N(R、エポキシ基、CHO又はCO基であり、式中、
は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph、-C(O)CHPhであり、
及びRは、独立して、H、OH、OR又はOであり、式中、
は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph、-C(O)CHPhであり、
は、H、OH、OR、C~C10アルキル基、C~C10アルケニル基、-CHO、-C(O)(CH)、-C(O)(CHOH)、-CH(CH)C(O)CH、-CH(CH)((CHCO)又は-CH(CH)((CHCONHR)であり、式中、
は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph又は-C(O)CHPhであり、
は、-CH、-CHCOOH、-CHCH、-CH(CH、-(CHCH、-(CHSOH、C(CH、-(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CHCH(CH、アリール基又はアルキルアリール基であり、
は、H、OH又は-OR10であり、式中、
10は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph又は-C(O)CHPhであり、
は、H、CF、C~Cアルキル基、C~Cアルケニル基、OH、O又はC~Cアルコキシ基であり、式中、破線は任意の二重結合を示し、但し、A環がC4~C5二重結合を有する場合、B環は二重結合を有さず、X及びXがエポキシ基を形成する場合、C環は二重結合を有さず、
一般式(II)を有する7-デオキシステロイドを
【化2】

少なくとも1つの酸化還元パートナー系及び酸化還元パートナー系を再生するための系の存在下でチトクロムP450ヒドロキシラーゼ又はその機能的変異体で変換する工程を含み、チトクロムP450酵素は、配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも90%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0012】
驚くべきことに、チトクロムP450及びその機能的断片は、コール酸などのステロイド、及びそれぞれ、7位に式(I)を有するその誘導体をヒドロキシル化することができることが示されている。この反応を少なくとも1つの酸化還元パートナー系及び酸化還元パートナー系を再生するための系とカップリングさせることによって、反応の平衡を最終生成物に向かってシフトさせることができ、したがってその収率を有意に増加させることができる。この場合、酸化還元パートナー系の再生は、好ましくは少なくとも1つの酸化還元酵素及び少なくとも1つの酸化還元酵素の少なくとも1つの基質を含む第2の系(再生系)の存在下で起こり得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
還元等価物NAD(P)Hの酸化を必要とするチトクロムP450及びその機能的変異体は、驚くべきことに、例えば7-デオキシコール酸などの7-デオキシステロイド及び7位のその誘導体を選択的にヒドロキシル化することができる。
【0014】
本発明によれば、チトクロムP450酵素は、配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも90%、特に100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0015】
チトクロムP450は、多数の内因性及び外因性基質のモノオキシゲナーゼ反応を触媒する。それらは、とりわけ、ステロイド、エイコサノイド、脂肪酸及び胆汁酸、並びに薬物、殺虫剤及び化学的発癌物質などの外因性基質の代謝に関与している。
【0016】
本発明によるチトクロムP450は、例えば、アクチノバクテリアなどの細菌から、特に例えばストレプトマイセス(Streptomyces)属から使用することができる。この場合、配列は、例えば、公知の技術を用いてゲノムDNA又はcDNAライブラリーから単離することができる。
【0017】
本発明によるチトクロムP450及びそれらの機能的変異体は、それらの元の生物に存在してもよいか、又はそれらから単離されてもよいか、又はそれらは組換え発現されるか、又は合成的に産生される。組換え発現ポリペプチドを本発明に従って使用することが好ましい。
【0018】
例えば、大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)又はピキア酵母(Pichia pastoris)などの様々な確立された微生物を、本発明による酵素の組換え発現に使用することができる。この点に関する適切なプロトコルは、関連する専門文献に詳細に記載されているか、又は当業者に公知である。
【0019】
本発明によれば、酵素/ポリペプチドは、好ましくは、大腸菌(E.coli)で組換え過剰発現されたタンパク質として使用され、対応する細胞溶解物は、好ましくは、更なる処理/精製なしで、又は比較的単純な処理工程(例えば、遠心分離、沈殿、濃縮又は凍結乾燥)の後に使用される。使用される酵素の組換え過剰発現後、大腸菌(E.coli)細胞は、代替的に、細胞崩壊なしに、又は例えば凍結/解凍サイクル後に直接反応に使用することもできる。適切な発現プラスミドは当業者に公知であり、商業的に購入することができることが多い。
【0020】
チトクロムP450の「機能的変異体」は、チトクロムP450の断片又は変異変異変異体であってもよく、ここで、チトクロムP450の断片は「機能的断片」とも呼ぶことができる。チトクロムP450の「機能的変異体」は、変異体が由来するタンパク質と同じ反応を触媒することができる。変異体が機能的であるかどうか、すなわち変異体が由来するタンパク質と同じ反応を触媒するかどうかは、変異体が同じ反応を触媒することを確立することによって決定することができる。この目的のために、従来技術又は本明細書に記載されている方法がそれぞれ確立されている。本発明による機能的変異体による基質の変換率は、変異体が由来するチトクロムP450の変換率から逸脱する可能性がある。
【0021】
「7-デオキシステロイドの誘導体」は、7-デオキシステロイドに由来し、上で定義したような多種多様な修飾を有する化合物を含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、X、X、R及びRは、Hであり、
及びRは、独立して、H、OH、OR又はOであり、式中、
は、-C(O)H、-C(O)CH、-C(O)CHCH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH、-C(O)(CHCH、-C(O)CH(CH)CHCH、-C(O)CHCH(CH、-C(O)C(CH、-C(O)Ph、-C(O)CHPhであり、
は、C~C10アルキル基、C~C10アルキレン基、-CH(CH)((CHCO)又は-CH(CH)((CHCONHR)であり、式中、
は、-CH、-CHCOOH、-CHCH、-CH(CH、-(CHCH、-(CHSOH、C(CH、-(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CHCH(CH、アリール基又はアルキルアリール基である。
【0023】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、アリール基は、フェニル基、F、Cl、Br、NO又はCHで置換されたフェニル基及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0024】
本発明の更に別の好ましい実施形態によれば、アルキルアリール基は、ベンジル基、ハロゲンがF、Cl又はBrであるハロゲン化ベンジル基、及びNOで置換されたベンジル基からなる群から選択される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、RはOHであり、RはO又はOHであり、RはCH(CH)((CHCO)であり、RはHであり、RはHである。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、一般式(II)を有する7-デオキシステロイドは、3α,12α-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3α,12β-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3β,12α-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3β,12β-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3β-ヒドロキシ-12-ケト-5β-コラン-24-酸、3-ケト,12β-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3-ケト,12α-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3α-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、3-ケト-5β-コラン-24-酸、3β-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸及びそれぞれの酸のエステルからなる群から選択される。
【0027】
一般式(II)を有する7-デオキシステロイド及びその誘導体の、一般式(I)を有するステロイド又はその誘導体へのヒドロキシル化のために本発明に従って使用されるチトクロムP450酵素は、配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む。
配列番号1:
【化3】

配列番号2:
【化4】
【0028】
配列番号1及び2のアミノ酸配列は、好ましくは配列番号3及び4の核酸配列によってコードされ、配列番号5及び6の核酸配列は大腸菌(E.coli)における発現のために最適化されている。
配列番号3:
【化5】

配列番号4:
【化6】

配列番号5:
【化7】

配列番号6:
【化8】
【0029】
本明細書において「同一」とは、重ね合わせた場合、2つ以上のアミノ酸配列が互いに一定の「同一性」(同一位置の一致するアミノ酸残基)を有し得ることを意味する。「同一性」は、本発明では、開始配列のアミノ酸と同一である適格なアミノ酸配列のアミノ酸の割合として、すなわち、「タンパク質BLAST」プログラム(blastp、Altschul et al.,J.Mol.Biol.(1997)215:403-410、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi、本明細書では一般に「BLAST」と呼ばれる)によって生成される最大パーセントの配列同一性を達成するために、必要に応じて、2つの配列のアラインメント及びギャップの導入後に、全ての可変パラメータをデフォルト値に設定した状態で定義される。ここで、アルゴリズム「blastp(タンパク質-タンパク質-BLAST)」は、以下のパラメータである「expect threshold」:0.05、「word size」:6、matrix:BLOSUM62、「gap cost」:「Existence」11、「Extension」1、条件付き合成スコア行列調整、フィルタなし及びマスクなしで使用した。アミノ酸配列同一性のパーセント(%)値は、一致する同一のヌクレオチドの数を、同一性をパーセントで記録した配列長で割ることによって決定される。
【0030】
本発明による方法を使用して、配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも90%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むチトクロムP450酵素を用いて、一般式(II)を有する7-デオキシステロイド又はそれぞれのその誘導体を、チトクロムP450又はその機能的変異体を用いて、一般式(I)を有するステロイド又はそれぞれのその誘導体に変換することができる。この変換は、酸化還元パートナー又はヒドロキシル化反応のための電子を提供することができる酸化還元パートナー系の存在下で起こる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの酸化還元パートナー系は、
(i)フェレドキシン、フェレドキシンレダクターゼ及びNAD(P)H、
(ii)チトクロムP450レダクターゼ及びNAD(P)H又は
(iii)NAD(P)H
を含む。
【0032】
本発明に従って使用される酸化還元パートナー系は、フェレドキシン、フェレドキシンレダクターゼ及びNAD(P)H、チトクロムP450レダクターゼ及びNAD(P)H、又はNAD(P)H単独を含むことができ、フェレドキシン、フェレドキシンレダクターゼ及びNAD(P)Hを含む酸化還元パートナー系が特に好ましい。
【0033】
したがって、本発明によるチトクロムP450又はそれぞれのその機能的変異体の酸化還元反応を行うために、本発明による方法において少なくとも酸化還元補因子NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPHを使用することが有利である。これに関連して、NAD+はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの酸化型を示し、NADHは還元型を示し、NADP+はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の酸化型を示し、NADPHは還元型を示す。
【0034】
反応混合物中の酸化還元補因子NAD(P)+及び/又はNAD(P)Hの濃度は、好ましくは0.001mM~10mM、より好ましくは0.05mM~1mMである。
【0035】
特に好ましくは、フェレドキシンが酸化還元パートナーとして使用され、これはNAD(P)+及び少なくとも1つのフェレドキシンレダクターゼの存在下で再生することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのフェレドキシンは、アドレノドキシン、プチダレドキシン及びフラボドキシンからなる群から選択され、場合により、それらの組み合わせも同様に使用することができる。
【0036】
酸化還元パートナーの可能な対は、好ましくは、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来のプチダレドキシン及びプチダレドキシンレダクターゼを含む。更に、当業者は、本発明によるチトクロムP450の潜在的な酸化還元パートナーである更なるフェレドキシンタンパク質及びフェレドキシンレダクターゼを同定することができる。酸化還元パートナーとしての適合性は、例えば例3~5に記載されているように、機能アッセイで検証することができる。これらの例で使用されるプチダレドキシン及び/又はそこで使用されるプチダレドキシンレダクターゼは、それぞれ可能な代替タンパク質又は酵素で置き換えることができる。所望の生成物(例えば、ウルソコール酸)の十分な形成が観察される場合、試験した酸化還元パートナーは、プチダレドキシン及び/又はプチダレドキシンレダクターゼの機能的代替物と見なすことができる。
【0037】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、本発明による方法で使用されるフェレドキシンは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含み、Xはメチオニン残基であるか、又はアミノ酸ではない。
配列番号7:
【化9】
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのフェレドキシンレダクターゼは、フラボドキシンレダクターゼ及びプチダレドキシンレダクターゼの群から選択される。
【0039】
本発明によるヒドロキシル化反応の過程で酸化されたフェレドキシンは、フェレドキシンレダクターゼ及びNAD(P)Hの助けを借りて還元することができる。結果として、還元されたフェレドキシンが再び提供されるか、又はそれぞれ、本発明による基質の更なるヒドロキシル化反応のためにNAD(P)Hを消費しながら再生される。フェレドキシンレダクターゼは、フラボドキシンレダクターゼ及び/又はプチダレドキシンレダクターゼであってもよい。
【0040】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、本発明による方法で使用されるフェレドキシンレダクターゼは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む。
配列番号8:
【化10】
【0041】
配列番号7及び8のアミノ酸配列は、好ましくは、それぞれ配列番号9及び10の核酸配列によってコードされ、配列番号11及び12の核酸配列は、大腸菌(E.coli)における発現のために最適化されている。
配列番号9:
(ATG)0又は1
【化11】

配列番号10:
【化12】

配列番号11:
(ATG)0又は1
【化13】

配列番号12:
【化14】
【0042】
細菌、特に大腸菌(E.coli)における本発明によるチトクロムP450並びにフェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼの発現は、配列番号5、配列番号6、配列番号11及び/又は配列番号12の核酸配列を有する核酸を使用する場合に特に有利である。したがって、本発明の更なる態様は、配列番号5、配列番号6、配列番号11及び配列番号12からなる群から選択される核酸配列を有する核酸(DNA及び/又はRNA)並びにそれらの配列の少なくとも1つを含むベクター及び/又は細胞、特に大腸菌(E.coli)細胞に関する。
【0043】
上述のフェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼが産生株(例えば、大腸菌(E.coli)株)においてチトクロムP450と共に発現(共発現)されると、有利であることが示されている。フェレドキシン、フェレドキシンレダクターゼ及びチトクロムP450はまた、互いに別々に発現することができる。フェレドキシン及びチトクロムP450又はフェレドキシンレダクターゼ及びチトクロムP450を共発現することも有利である。理想的には同じプロモータの下での3つのタンパク質又はそれぞれの酵素の共発現により、酵素間の理想的なバランスを確立することができ、これは基質の酵素的変換に特に有利な効果を有する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの酸化還元酵素は、酸化還元酵素(EC:1.1.1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC:1.2.1)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC:1.4.1)、フラビンレダクターゼ(EC:1.5.1)、トランスヒドロゲナーゼ(EC:1.6.1)、亜硝酸レダクターゼ(EC:1.7.1)及びホスホナートデヒドロゲナーゼ(EC:1.20.1)からなる群から選択され、好ましくはアルコールデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、亜リン酸デヒドロゲナーゼ及び糖デヒドロゲナーゼからなる群から選択される。
【0045】
本発明による方法で使用される酸化還元パートナー系、特にプロセスで使用される補因子(NADH/NAD及び/又はNADPH/NADP)を再生するために、一般式(I)を有するステロイドを一般式(II)を有する7-デオキシステロイドに変換する間に、変換反応が生成物に向かって進むように、酸化還元パートナー系、有利には酸化還元酵素を再生するための系を反応混合物に添加することが有利である。酸化還元酵素は、還元及び酸化によって基質を変換し、これらの反応の過程で、NADHがNADに酸化され、NADPHがNADPに酸化されるか、又はそれぞれNAD+がNADHに還元され、NADPがNADPHに還元される。したがって、酸化還元パートナー系を再生するための系は、好ましくは、少なくとも1つの酸化還元酵素、及び少なくとも1つの酸化還元酵素の少なくとも1つの基質を含む。
【0046】
本発明による方法で使用される酸化還元酵素は、好ましくはアルコール及び/又は糖デヒドロゲナーゼである。
【0047】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、酸化還元酵素は、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、アラビノースデヒドロゲナーゼ、キシロースデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ、12α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、20α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、17α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3β-ヒドロキシ-δ5デヒドロゲナーゼ、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼからなる群から選択される。
【0048】
上述の酸化還元酵素の1つ又はいくつかの使用は、変換反応に使用される補因子を再利用するのに特に有利である。
【0049】
基質の生成物への高い変換を達成するために、アラビノースデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ及び/又はキシリトールデヒドロゲナーゼを反応混合物に添加することが特に有利であることが示されている。
【0050】
反応混合物は、少なくとも1つの酸化還元酵素及び1つのヒドロキシラーゼを含むことができる。2つ又は3つ以上の酸化還元酵素の組み合わせを反応混合物に添加することが特に有利であり、12α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼと7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの組み合わせ、又はそれぞれ12α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ及びNAD(P)Hオキシダーゼ、又はそれぞれNADH依存性アルコールデヒドロゲナーゼとヒドロキシラーゼ、又はそれぞれNADPH依存性アルコールデヒドロゲナーゼとヒドロキシラーゼが、基質混合物、例えばコール酸の天然に存在する混合物の同時酸化及びヒドロキシル化に特によく適している。
【0051】
本発明による方法の反応混合物中の補因子の酸化又はそれぞれ還元反応を触媒するために、その中に存在する酸化還元酵素のための少なくとも1つの基質を提供することが必要である。したがって、反応混合物は、アラビノース、キシロース、グルコース、ソルビトール、キシリトール、コラン-24-酸、3α,12α-ジヒドロキシコラン-24-酸-2,3-ブタンジオール、アセトイン、2-プロパノール、グルタマート、エタノール、ホスホナート、ホスフィット、ニトリット、4-メチル-2-ペンタノール、2-ブタノール、2-オクタノール、シクロヘキサノール、エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1-プロパノール、1-ブタノール、3-ヒドロキシブタノアート及びホルマートからなる群から選択される少なくとも1つの酸化還元酵素の少なくとも1つの基質を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、10℃~40℃、好ましくは15℃~38℃、より好ましくは20℃~30℃、より好ましくは22℃~26℃の温度で行われる。本発明によれば、本発明による反応のためのチトクロムP450の酵素活性がこの領域で特に高いことが示されている。
【0052】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、6.5~8.5、好ましくは7~8、より好ましくは7.2~7.8のpHで行われる。このpH値では、基質の適切な変換を可能にするためにチトクロムP450の酵素活性が最も高い。
【0053】
デオキシステロイド又はそれぞれデオキシステロイド誘導体のヒドロキシル化は、ステロイド骨格の7位で位置選択的に行うことができる。このようにして、特に、例えば、ウルソコール酸及び/又はウルソコール酸誘導体を生成することができるように、7β-ヒドロキシル基を立体選択的に導入することができる。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明による方法は、少なくとも1つの有機溶媒の存在下で行われる。好ましくは、単相系が提供されるように、単一の有機溶媒が使用される。本発明によれば、単相系が提供されるように、互いに混和性である2つ以上の有機溶媒の混合物を使用することも可能である。有機溶媒はプロトン性又は非プロトン性であってもよく、非プロトン性溶媒が好ましい。
【0055】
驚くべきことに、有機溶媒、特に非プロトン性有機溶媒の存在は、本発明による方法により、一般式(II)の7-デオキシステロイドの一般式(I)のステロイドへの変換を有意に増加させ得ることが見出された。更に、有機溶媒の存在下での本発明による方法の実施は、驚くべきことに、酸化還元パートナー系の再生を可能にする。
【0056】
例えば、アルコール、エーテル、エステル、グリコール、ケトン、アミド、スルホキシド、有機酸、シクロアルカン、芳香族及び塩素化炭化水素を有機溶媒として使用することができる。適切な有機溶媒の例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルアルコール、MIBA)、ジエチルエーテル(EtO)、ジイソプロピルエーテル(iPrO)、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)、酢酸エチル、エチレングリコール、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2-ブタノン、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、シクロヘキサン、トルエン、トリクロロメタン(CHCl)、ジクロロメタン(CHCl)、ヘキサン又はそれらの混合物である。適切な混合物は、例えば、ヘキサン及び酢酸エチル又はイソプロパノールの混合物、並びにトリクロロメタン及びフェノールの混合物である。本発明は、上記の例示的な溶媒のリストに限定されない。
【0057】
有機溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルアセトアミド(DMA)からなる群より選ばれる溶媒が特に好ましい。
【0058】
本発明によれば、有機溶媒の量は、一般式(II)の化合物が完全に溶解し、酵素活性が保存されるように選択される。好ましくは、式(II)の化合物、例えばリトコール酸は、溶解限界まで有機溶媒に溶解される。好ましい実施形態では、酵素の基質は有機溶媒中に入れられる。
【0059】
本発明による方法では、生成物の単離を異なる方法で行うことができる。例えば、生成物は、適切な有機溶媒によって反応混合物から抽出することができる。基材に応じて、そのような溶媒は文献に記載されている。本発明によれば、コール酸及びその誘導体は、場合により反応混合物を例えばHClで酸性化した後に、例えば酢酸エチルとの反応混合物から単離することができる。胆汁酸が塩、例えばナトリウム塩の形態で水溶液中に存在する方法は、特別な場合を構成する。
【0060】
この場合、生成物の沈殿は、反応混合物を酸性化することによって行うことができる。この目的のために、例えば、HCl又は希HClを十分な量で反応混合物に添加することができる。例えば、1~4、好ましくは2~3のpH値がプロセスにおいて達成される場合、生成物は主に懸濁液の形態で存在する。次いで、生成物を、例えば濾過又は遠心分離などの一般的な方法によって反応混合物から除去することができる。例えばアフィニティークロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法は、例えば生成物の単離に使用することができる別の代替法である。更には、例えば、反応溶媒を蒸発させることにより生成物を得ることができる。
【0061】
或いは、本発明による方法では、生成物はまた、例えば、更に多くの反応を行い、場合によりそれらの反応の完了時に最終生成物を単離するために、反応後に反応混合物中に残っていてもよい。本発明による方法のための1つ又は複数の基質は、以前の反応又は並行して行われる反応によって同じ反応バッチで製造されることも考えられる。
【0062】
本発明の更なる態様は、フェレドキシン、フェレドキシンレダクターゼ及び酸化還元酵素からなる群から選択されるポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子が直接又はスペーサを介して結合している3’末端及び/又は5’末端に上で定義したチトクロムP450酵素をコードする核酸分子を含む核酸構築物に関する。
【0063】
本発明による核酸構築物は、最初に定義されたステロイドの産生に特に適している。チトクロムP450酵素と、フェレドキシン、フェレドキシンレダクターゼ及び酸化還元酵素からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質とを、核酸構築物から出発して発現させることによって、これらの酵素又はそれぞれのタンパク質を、本発明による方法の効率的な実施に必要な量で産生することが可能になる。これらのタンパク質の全てが、本発明による核酸構築物上の同じプロモータの制御下で発現される場合、特に有利である。本発明の更なる態様は、本発明による核酸構築物を含むベクターである。
【0064】
チトクロムP450酵素をコードする核酸分子は、本発明による方法で使用することができる酵素又はそれぞれタンパク質をコードする更なる核酸分子に直接又はスペーサ若しくはそれぞれスペーサ配列を介して結合することができる。そのような構築物の利点は、そのような構築物が、本発明による方法で使用される酵素及びタンパク質、特にチトクロムP450並びにフェレドキシン及び/又はフェレドキシンレダクターゼを同程度の量で発現させることを可能にすることである。
【0065】
本明細書で使用される「スペーサ」又はそれぞれ「スペーサ配列」は、終止コドンも他の機能モチーフも有さない核酸配列である。スペーサ又はそれぞれスペーサ配列は、必要に応じて、これらのORFの転写を改善するために、2つのORF間の距離ホルダーとして働く。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によれば、チトクロムP450酵素は、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号6の核酸配列と少なくとも90%、特に100%同一の核酸によってコードされる。
【0067】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、フェレドキシンは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0068】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、フェレドキシンレダクターゼは、アドレノドキシンレダクターゼ、好ましくはプチダレドキシンレダクターゼである。
【0069】
フェレドキシンレダクターゼは、好ましくは配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0070】
本発明の別の態様は、本発明による核酸構築物を含むベクターに関する。
【0071】
本発明によるベクターは、クローニング又は発現ベクターであってもよく、ベクターが導入される生物に応じて、例えばORFの転写を可能にするために適切な部分を有することができる。
【0072】
本発明の更に別の態様は、本発明による核酸構築物を含む宿主細胞に関する。
【0073】
本発明による宿主細胞は、組換え的に導入され、核酸構築物上に位置するORFをクローニング又は発現するために使用することができる。
【0074】
そのような宿主細胞の溶解物は、宿主細胞が本発明による方法で必要とされる酵素又はそれぞれのタンパク質の少なくとも1つを細胞内又は細胞外に発現することを条件として、本発明による方法で使用することができる。一般式(II)を有する7-デオキシステロイド又はその誘導体は、それによって、本発明による宿主細胞の培養上清及び/又は溶解物中の細胞懸濁液又は細胞と接触させることが好ましい。したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(II)を有する7-デオキシステロイド又はその誘導体を、少なくとも1つのフェレドキシン、少なくとも1つのフェレドキシンレダクターゼ及び/又は少なくとも1つの酸化還元酵素を発現することができる少なくとも1つの宿主細胞の少なくとも1つの培養上清及び/又は溶解物と接触させる。
【0075】

以下の例を使用して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0076】
例1:細菌株の試験
微生物及び細胞培養のドイツ菌株コレクション(DSMZ[Deutsche Stammsammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen])から、以下の菌株であるサッカロスリクス・ロンギスポラ(Saccharothrix longispora)(DSM-43749)、カテラトスポラ・シトラエ(Catellatospora citrae)(DSM-44097)、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス亜種ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus subsp.hygroscopicus)(DSM-40578)及びアサノア・フェッルギネア(Asanoa ferruginea)(DSM-44099)を得た。株を、DSMZによって推奨される標準的な条件下で培養した。培養物の増殖が目に見える濁りに達したらすぐに、デオキシコール酸(0.5mM)を添加し、更に最大72時間培養した。遠心分離工程後、培養物の上清を酢酸エチルで抽出し、HPLC及びGC/MSによって分析した。ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)との反応のHPLCクロマトグラムでは、その保持時間がウルソコール酸の保持時間に対応するピークが認められた。GC/MS分析により、潜在的なウルソコール酸ピークが3個のヒドロキシル基を有する胆汁酸に由来することが示された。他の株の検査では、デオキシコール酸の7-ヒドロキシル化生成物は示されなかった。
【0077】
例2:P450遺伝子のゲノム配列決定及びアノテーション
ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス亜種ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus subsp.hygroscopicus)(DSM-40578)をDSMZの規定に従って培養したところ、この株のゲノムDNAが単離された(Kieser et al.(2000),Practical Streptomyces genetics(Norwich:John Innes Foundation))。Illumina MiSeqを使用してゲノム配列決定を行い、公知のストレプトマイセス・ラパミシニカス(Streptomyces rapamycinicus)のゲノムに基づくアセンブリを行った(スイスのMicrosynth GmbH)。相同性比較によって42個のP450遺伝子を同定することができた。
【0078】
例3:発現系のクローニング
制限酵素XhoIを使用して、プチダレドキシンレダクターゼ(PtR)及びプチダレドキシン(Ptx)のコード領域を含む以下の構築物をプラスミドpJ411(DNA2.0)にクローニングした。
【0079】
合成DNA(Life Technologies):5’、XhoI界面、HindIII界面、約50bpのスペーサDNA、リボソーム結合部位(rbs)、ORF(オープンリーディングフレーム)プチダレドキシンレダクターゼ(PtR)、約50bpのスペーサDNA、rbs、ORFプチダレドキシン(Ptx)、XhoI界面、3’。
【0080】
クローニング工程の結果を、制限酵素消化及びDNA配列決定によって確認した。
【0081】
続いて、制限酵素NdeI及びHindIIIを使用して、例2で同定したP450酵素をコードするORFを上記合成DNA及びプラスミドにそれぞれ1つクローニングした(Life Technologies)。この結果を再度、制限酵素消化及びDNA配列決定によって検証した。この例で使用される発現ベクター及び使用される酸化還元パートナーは、本発明によるチトクロムP450酵素を発現させる1つの方法のみを構成し、その方法は一例として選択されている。
【0082】
同定されたP450候補を用いて産生された発現プラスミド(例2を参照)は、それぞれのP450タンパク質をプチダレドキシンレダクターゼ及びプチダレドキシンと一緒に共同で発現させるために使用することができる。それぞれの発現プラスミドの3つのORFは、共通のmRNA上のT7プロモータの制御下で発現されるが、別個のポリペプチドとして発現される。
【0083】
例4:P450/Ptx/PtRの発現
ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス亜種ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus subsp.hygroscopicus)のゲノム配列決定後、可能性のあるデオキシコール酸-7-ヒドロキシラーゼの候補として42個のP450配列が検討された。探している酵素を同定するために、候補のORFを例3に記載の発現系にクローニングし、プチダレドキシンレダクターゼ(PtR)及びプチダレドキシン(Ptx)のコード領域なしでpJ411(DNA2.0)発現ベクターにクローニングした。発現には以下のプロトコルを使用した。
【0084】
TB-P450発現培地:
Terrific broth(TB)培地
+50μg/mlカナマイシン
+0.5mM 5-アミノレブリン酸(100×親溶液から)
+1mMチアミン(100×親溶液から)
+1mM MgCl+2.5mM硫酸アンモニウム+50μM FeCl(100×親溶液から)
+0.5mM IPTG(1M親溶液から)
(添加剤はそれぞれ0.2μm滅菌濾過した)
P450溶解緩衝液:
100mM Tris pH7.5
20%(v/v)グリセリン
1mg/mlリゾチーム
【0085】
試験するP450候補の構築物を大腸菌(E.coli)発現株BL21(DE3)に形質転換した。一晩培養物を単一コロニー(LB(溶原性ブロス)+カナマイシン)から播種した。翌日、1:100発現培養物にこれを播種し(150mlのTB(terrific broth)-P450発現培地)、最初にバッフル付フラスコ(1L)中37℃で3時間振盪した。その後、温度を24℃に下げ、更に22時間振盪した。培養物を5000gで10分間の遠心分離によって回収し、0.9%(w/v)NaClで1回洗浄し、ペレットを-80℃で凍結させた。細胞ペレットを解凍し、秤量し、等量のP450溶解緩衝液で再懸濁し、氷上で1時間インキュベートし、次いで超音波処理装置を使用して消化した。遠心分離(30分、21000g)し、上清を試験反応に使用した。
【0086】
例5:DAヒドロキシル化のためのP450候補の試験
反応混合物:
10~80μlの100mM NADH(酸化還元補因子)
250μlの1M Tris-HCl pH7.5
17.5μlのグリセリン(50%)
100μlの50mMデオキシコール酸溶液pH8.5(最終10mM)
50μlの大腸菌(E.coli)溶解物P450/PtR/Ptx(例4参照)
17.5-87.5 μl dH
【0087】
反応物を1.5mlのスクリュートップ瓶に入れ、アルミニウム箔で蓋をした。箔の数カ所に穴を開けた。これを24℃で18時間穏やかに振盪した。200μlの反応バッチを600μlのアセトニトリル/5μlのHPO(50%)で希釈し、55℃で15分間インキュベートした。その後、サンプルを20817rcfで5分間遠心分離し、HPLC/DAD(例えば、Agilent1200シリーズ、カラム:メルク社製Purospher STAR RP-18e 125×4mm、5μm、
流速:1.5ml/分、勾配HO+HPO(pH=2.6)/アセトニトリル)を使用して分析した。調べた候補の1つ(「P450_c866」は、デオキシコール酸をウルソコール酸にヒドロキシル化することができた。使用したデオキシコール酸は、このプロセスで変換された(以下の表を参照)。生成物ウルソコール酸の同一性をGC/MS分析及び2D NMRによって検証した。
【表1】
【0088】
この例では、酸化還元補因子(NADH)がP450/Ptx/PtR反応によって酸化される。
【0089】
例6:アラビノースデヒドロゲナーゼの補因子リサイクルによるDAヒドロキシル化のためのP450候補の試験
反応混合物:
65μlの100mM NADH(最終0.5mM)
1mlの1M Tris-HCl pH7.5+20%(v/v)グリセリン
130μlの50mMデオキシコール酸溶液pH8.5(最終0.5mM)
6.5μlのクロラムフェニコール溶液(最終20μg/ml)
100μlのL-アラビノースデヒドロゲナーゼ
(大腸菌(E.coli)で組換え発現されたバークホルデリア・ビエトナミエンシス(Burkholderia vietnamiensis)から、400U/ml)
98mgのL-アラビノース(最終50mM)
2.0mlの大腸菌(E.coli)溶解物P450/PtR/Ptx(例4参照)
9.6mlのdH
【0090】
50mlのバッフルのない三角フラスコに反応物を入れ、アルミニウム箔で密封した。フィルムの数カ所に穴を開けた。これを24℃で16時間穏やかに振盪した。上清中に存在する物質を酢酸エチルで抽出し、蒸発させた。これをより少量のHPLC溶離液(メタノール/アセトニトリル/HO+HPO(pH=3.0)、40:30:33)に溶解した。続いて、HPLC/RID(例えば、Agilent 1200シリーズ、カラム:Agilent ZORBAX Eclipse XDB-C18 4.6×150mm、5μm、流速:0.8ml/分)を使用してサンプルを分析した。調べた候補の1つ(「P450_c866」は、デオキシコール酸をウルソコール酸にヒドロキシル化することができた。使用したデオキシコール酸は、このプロセスでほぼ完全に変換された(95%超)。生成物ウルソコール酸の同一性をGC/MS分析及び2D NMRによって検証した(データは示さず)。
【0091】
この例では、酸化還元補因子(NADH)がP450/Ptx/PtR反応によって酸化される。酸化還元補因子は、補因子再生(この場合、例えば、糖デヒドロゲナーゼアラビノースデヒドロゲナーゼを使用すること)によって元の状態に還元される(この場合、アラビノースはアラビノラクトン/アラボン酸に酸化される)。これにより、準化学量論量の酸化還元補因子の使用が可能になる。
【0092】
例7:例:補因子リサイクルによる補因子濃度変換に依存する変換
反応混合物:
10μlの10mM NAD+
250μlの100mM TEA pH8.2
25μlのグリセリン(50%)
100μlの50mMデオキシコール酸溶液pH8.0(最終10mM)
100mM TEA pH8.0及び25%グリセリン中の22.5%懸濁液としての6.75mgの細胞(wW)
5μlカタラーゼ(ウシ、Sigma社4mg/ml)
1.7ユニットのキシリトール/ソルビトールデヒドロゲナーゼ
25μlの2Mソルビトール(最終100mM)
70.8 μl dH
【0093】
反応物を1.5mlのスクリュートップ瓶に入れ、アルミニウム箔で蓋をした。箔の数カ所に穴を開けた。これを24℃で18時間穏やかに振盪した。
【0094】
NADHの回収は、ソルビトール及びNADの存在下でソルビトール又はそれぞれキシリトールデヒドロゲナーゼによって行った。
【0095】
200μlの反応バッチを600μlのアセトニトリル/5μlのHPO(50%)で希釈し、55℃で15分間インキュベートした。その後、サンプルを20817rcfで5分間遠心分離し、HPLC/DAD(例えば、Agilent1200シリーズ、カラム:メルク社製Purospher STAR RP-18e 125×4mm又はAgilent Zorbax XDB-C8mm 150×4.6mm、3.5μm、5μm、流速:1.5ml/分、勾配HO+HPO(pH=2.6)/アセトニトリル)を使用して分析した。
【0096】
使用したデオキシコール酸は、上記の条件下で定量的に(100%変換)ウルソコール酸に変換された。生成物ウルソコール酸の同一性をGC/MS分析及び2D NMRによって検証した。
【0097】
本例では、補因子リサイクル系ソルビトール/キシリトールデヒドロゲナーゼ/ソルビトール/NADによって得られた酸化還元補因子(NADH)をヒドロキシル化反応に使用する。しかし、補因子リサイクルのための他の系も使用することができる(以下の表を参照)。
【表2】
【0098】
例8:定量的LCA(リトコール酸)変換
反応混合物:
10μlの10mM NAD+
250μlの100mM TEA pH8.2
10mM(最終)リトコール酸
100mM TEA pH8.0及び25%グリセリン中の22.5%懸濁液としての9.2mgの細胞(wW)
5μlカタラーゼ(ウシ、Sigma社4mg/ml)
1.7ユニットのキシリトール/ソルビトールデヒドロゲナーゼ
25μlの2Mソルビトール(最終100mM)
176 μl dH
【0099】
反応物を1.5mlのスクリュートップ瓶に入れ、アルミニウム箔で蓋をした。箔の数カ所に穴を開けた。これを24℃で18時間穏やかに振盪した。
【0100】
NADHの回収は、ソルビトール及びNADの存在下でソルビトール又はそれぞれキシリトールデヒドロゲナーゼによって行った。
【0101】
200μlの反応バッチを600μlのアセトニトリル/5μlのHPO(50%)で希釈し、55℃で15分間インキュベートした。その後、サンプルを20817rcfで5分間遠心分離し、HPLC/DAD(例えば、Agilent1200シリーズ、カラム:メルク社製Purospher STAR RP-18e 125×4mm又はAgilent Zorbax XDB-C8mm 150×4.6mm、3.5μm、5μm、流速:1.5ml/分、勾配HO+HPO(pH=2.6)/アセトニトリル)を使用して分析した。
【0102】
上記の条件下では、変換後にウルソデオキシコール酸のみが検出された。
【0103】
例9:有機溶媒の存在下でのLCA(リトコール酸)のウルソデオキシコール酸への変換
まず、LCA及びUDCAの各種有機溶媒に対する溶解限界を測定した。この目的のために、それぞれ10mg又は100mgのLCA又はUDCAを15mLフラスコに入れた。有機溶媒を100μLずつ添加し、混合物をボルテックスシェーカ及び場合により超音波浴中で振盪することによって処理した。透明な溶液が存在するかどうかについて視覚的に評価した。
【0104】
以下の表は、分析された溶媒について決定された溶解限界をまとめたものである。
【表3】
【0105】
溶媒の存在下でのLCAのUDCAへの変換を以下の表に示すように測定した。
【表4】
【0106】
例10:非プロトン性溶媒の存在下で基質濃度を増加させたリトコール酸のウルソデオキシコール酸への変換
反応混合物:
10μlの10mM NAD+
10.8%グリセリンを含む250μlの200mM TEA pH8.4
DMF中の25μlの500mMリトコール酸
100mM TEA pH9.0中の30%懸濁液として30mgの細胞(wW)
5μlカタラーゼ(ウシ、Sigma社4mg/ml)
1.7ユニットのキシリトール/ソルビトールデヒドロゲナーゼ
25μlの2Mソルビトール(最終100mM)
73 μl dH
【0107】
反応物を1.5mlのスクリュートップ瓶に入れ、アルミニウム箔で蓋をした。箔の数カ所に穴を開けた。これを24℃で18時間穏やかに振盪した。
【0108】
NADHの回収は、ソルビトール及びNADの存在下でソルビトール又はそれぞれキシリトールデヒドロゲナーゼによって行った。
【0109】
反応バッチを空気流中で完全に蒸発させ、1.1mlのIPA+0.5%TFAで再溶解した。その後、サンプルを20817rcfで5分間遠心分離し、上清をHPLC/RID(例えば、Agilent 1200シリーズ、カラム:Phenomenex Luna(登録商標)Silica 100Å、250×4.6mm、5μm、流速:1.0ml/分、n-ヘキサン/IPA 4:1+0.05% TFA均一濃度)で分析した。
【0110】
上記の条件下では、変換後に70%のウルソデオキシコール酸が検出された。
【配列表フリーテキスト】
【0111】
配列表5 <223>E.coli コドンが最適化された配列番号3
配列表6 <223>E.coli コドンが最適化された配列番号4
配列表7 <223>Xaaはメチオニンまたはアミノ酸無し
配列表9 <223>nはAまたはヌクレオチド無し
配列表9 <223>nはTまたはヌクレオチド無し
配列表9 <223>nはGまたはヌクレオチド無し
配列表11 <223>E.coli コドンが最適化された配列番号9
配列表11 <223>nはAまたはヌクレオチド無し
配列表11 <223>nはTまたはヌクレオチド無し
配列表11 <223>nはGまたはヌクレオチド無し
配列表12 <223>E.coli コドンが最適化された配列番号10
【配列表】
2023516682000001.app
【国際調査報告】