(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】差込みコネクタおよび差込みコネクタユニット
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
H01R13/631
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552842
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2021052395
(87)【国際公開番号】W WO2021175523
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】102020202822.2
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュワナス クリスタッパ バダミ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ヴァレンシュタイナー
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FC31
5E021FC40
5E021HB02
5E021HB04
5E021HB05
(57)【要約】
本発明は、差込み方向(Z)に沿って、対応差込みコネクタケーシング(2)を有する対応差込みコネクタ(20)に嵌め合わせる差込みコネクタ(1)であって、差込みコネクタ(1)は、差込みコネクタケーシング(3)と、差込みコネクタケーシング(3)内に配置された複数の電気的なコンタクト部材(40)と、差込みコネクタケーシング(3)に回動可能に支持されており、差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌め合わせおよび/または取外しに際して操作力を低下させる第1のレバーユニット(5)とを有し、第1のレバーユニット(5)は、第1の脚部(51)と第2の脚部(52)とを有し、第2の脚部(52)は、第1のジョイントピン(53)を介して旋回可能に第1の脚部(51)に配置されており、第1のジョイントピン(53)は、差込みコネクタケーシング(3)に設けられた、実質的に差込み方向(Z)に沿って延在する第1のガイドスリット(32)内で可動であり、第1の脚部(51)と差込みコネクタケーシング(3)との間に第1のガイドユニット(6)を有し、前記第1のガイドユニット(6)は、第1のガイド部材(51)と、第1のガイド部材を収容する第1のガイド収容部とを有し、第2の脚部(52)と差込みコネクタケーシング(3)との間に第2のガイドユニット(7)を有し、第2のガイドユニットは、第2のガイド部材と、第2のガイド部材を収容する第2のガイド収容部とを有し、第1の脚部(51)に配置されておりかつ対応コネクタケーシング(2)に設けられた第1の対応部材(21)に係合するように構成された第1の係合部材(8)を有し、第2の脚部(52)に配置されておりかつ対応コネクタケーシング(2)に設けられた第2の対応部材(22)に係合するように構成された第2の係合部材(9)を有している、差込みコネクタ(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込み方向(Z)に沿って、対応差込みコネクタケーシング(2)を有する対応差込みコネクタ(20)に嵌め合わせる差込みコネクタ(1)であって、当該差込みコネクタ(1)は、
差込みコネクタケーシング(3)と、
前記差込みコネクタケーシング(3)内に配置された複数の電気的なコンタクト部材(40)と、
前記差込みコネクタケーシング(3)に回動可能に支持されており、当該差込みコネクタと前記対応差込みコネクタとの嵌め合わせおよび/または取外しに際して操作力を低下させる第1のレバーユニット(5)と
を有し、
前記第1のレバーユニット(5)は、
第1の脚部(51)および第2の脚部(52)であって、該第2の脚部(52)は、第1のジョイントピン(53)を介して旋回可能に前記第1の脚部(51)に配置されており、前記第1のジョイントピン(53)は、前記差込みコネクタケーシング(3)に設けられた、実質的に前記差込み方向(Z)に沿って延在する第1のガイドスリット(32)内で可動である、第1の脚部(51)および第2の脚部(52)と、
前記第1の脚部(51)と前記差込みコネクタケーシング(3)との間の第1のガイドユニット(6)であって、該第1のガイドユニット(6)は、第1のガイド部材と、該第1のガイド部材を収容する第1のガイド収容部とを有する、の第1のガイドユニット(6)と、
前記第2の脚部(52)と前記差込みコネクタケーシング(3)との間の第2のガイドユニット(7)であって、該第2のガイドユニットは、第2のガイド部材と、該第2のガイド部材を収容する第2のガイド収容部とを有する、第2のガイドユニット(7)と、
前記第1の脚部(51)に配置されておりかつ前記対応差込みコネクタケーシング(2)に設けられた第1の対応部材(21)に係合するように構成された第1の係合部材(8)と、
前記第2の脚部(52)に配置されておりかつ前記対応差込みコネクタケーシング(2)に設けられた第2の対応部材(22)に係合するように構成された第2の係合部材(9)と、
を有している、
差込みコネクタ(1)。
【請求項2】
第3の脚部(151)と第4の脚部(152)とを有する第2のレバーユニット(15)であって、該第4の脚部(152)は、第2のジョイントピン(153)を介して前記第3の脚部(151)に配置されており、前記第2のジョイントピン(153)は、前記差込みコネクタケーシング(3)に設けられた、実質的に前記差込み方向(Z)に沿って延在する第2のガイドスリット(33)内で可動に配置されている、第2のレバーユニット(15)と、
前記第3の脚部(151)と前記差込みコネクタケーシング(3)との間の第3のガイドユニット(16)をであって、前記第3のガイドユニットは、第3のガイド部材と、該第3のガイド部材を収容する第3のガイド収容部とを有する、第3のガイドユニット(16)と、
前記第4の脚部(152)と前記差込みコネクタケーシング(3)との間の第4のガイドユニット(17)であって、該第4のガイドユニットは、第4のガイド部材と、該第4のガイド部材を収容する第4のガイド収容部とを有する、第4のガイドユニット(17)と、
前記第3の脚部(151)に配置されておりかつ前記対応差込みコネクタケーシング(2)に設けられた第3の対応部材(23)に係合するように構成された第3の係合部材(18)と、
前記第4の脚部(152)に配置されておりかつ前記対応差込みコネクタケーシング(2)に設けられた第4の対応部材(24)に係合するように構成された第4の係合部材(19)と、
をさらに有している、
請求項1記載の差込みコネクタ。
【請求項3】
前記ガイドユニット(6,7,16,17)は、それぞれ前記ガイド部材としてピン(10)を有しかつ前記ガイド収容部として溝(11)を有し、前記ピン(10)の位置は、前記溝(11)内で可変である、請求項1または2記載の差込みコネクタ。
【請求項4】
1つの前記脚部(51,52,151,152)にそれぞれ1つの前記ピン(10)が配置されておりかつ前記差込みコネクタケーシング(3)にそれぞれ1つの前記溝(11)が配置されている、請求項3記載の差込みコネクタ。
【請求項5】
前記溝(11)は、実質的に前記差込み方向(Z)に対して横方向に、特に直角に延在している、請求項3または4記載の差込みコネクタ。
【請求項6】
前記第1のレバーユニット(5)と前記第2のレバーユニット(15)とは、結合部材(50)を介して互いに結合されている、請求項2から5までのいずれか1項記載の差込みコネクタ。
【請求項7】
前記第1および第2のガイドスリット(32,33)は、直線的に形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の差込みコネクタ。
【請求項8】
前記第1および第2のガイドスリット(32,33)は、前記差込み方向(Z)に沿って配置されている、請求項7記載の差込みコネクタ。
【請求項9】
前記第1のジョイントピン(53)は、前記第1の脚部(51)に配置されており、前記第2のジョイントピン(153)は、前記第3の脚部(151)に配置されている、請求項2から8までのいずれか1項記載の差込みコネクタ。
【請求項10】
前記ガイドユニット(6,7,16,17)は、直線的な溝(11)を有している、または前記ガイドユニットは、円弧状の溝を有している、請求項3から9までのいずれか1項記載の差込みコネクタ。
【請求項11】
前記ガイドスリット(32,33)は、前記差込み方向(Z)に沿って見て、前記溝(11)の下側に位置する下端部を有し、かつ/または前記ガイドスリット(32,33)は、前記差込み方向(Z)に沿って見て、前記溝(11)の上側に位置する上端部を有している、請求項3から10までのいずれか1項記載の差込みコネクタ。
【請求項12】
差込みコネクタユニットであって、
請求項1から11までのいずれか1項記載の差込みコネクタ(1)と、
対応差込みコネクタ(20)と
を有し、
前記対応差込みコネクタ(20)は、対応部材(21,22,23,24)を備えた対応差込みコネクタケーシング(2)を有している、
差込みコネクタユニット。
【請求項13】
前記対応差込みコネクタ(20)は、複数の電気的な対応コンタクト部材を有し、該対応コンタクト部材は、前記対応差込みコネクタケーシング(2)内に配置されておりかつ前記差込みコネクタと前記対応差込みコネクタとが嵌め合わせられた状態で前記差込みコネクタ(1)の電気的なコンタクト部材にコンタクトするように構成されている、請求項12記載の差込みコネクタユニット。
【請求項14】
前記差込みコネクタケーシング(2)に設けられた前記対応部材(21,22,23,24)は、嵌め合わせに際して、前記差込みコネクタケーシング(3)に設けられた相補的な対応部材構造(12)に結合されており、かつ
前記対応部材(21、22、23、24)は、嵌め合わせの際に、前記差込みコネクタケーシングに対して相対的に前記差込み方向(Z)に沿って変位する、
請求項12または13記載の差込みコネクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、差込み方向に沿って対応差込みコネクタに嵌め合わせる差込みコネクタ、例えばワイヤハーネスに取り付けられていて、車両の制御装置の対応差込みコネクタに嵌め合わせ可能な差込みコネクタ、ならびに差込みコネクタユニットに関する。
【0002】
差込みコネクタおよび対応差込みコネクタは、従来技術から様々な構成で知られている。差込みコネクタに設けられているコンタクト部材の数の増大に基づき、このような差込みコネクタと対応差込みコネクタとはますます大型になり、差込みコネクタの着脱には、ますます大きな(差込み)力がもたらされねばならない。例えば、差込みコネクタ内には複数のコンタクト部材が配置されており、これらのコンタクト部材はそれぞれ、ワイヤハーネスの導線に圧着されている。コンタクト部材は、例えばソケットコンタクト部材であってもよい(雌型コンタクト部材)。差込みコネクタを対応差込みコネクタに嵌め合わせる場合には、例えばピンまたはコンタクトブレード(雄型対応コンタクト部材)の形態の対応差込みコネクタの対応コンタクト部材を、コンタクト部材に差し込むことができる。雄型コンタクト部材を有する差込みコネクタおよび雌型コンタクト部材を有する対応差込みコネクタも存在する、ということは自明である。
【0003】
この場合、所定の差込み位置に最大の差込み力が与えられていることが多い。これは例えば、いわゆる開口ピーク(Aufschnaebelpeak)が克服されねばならない差込み位置であってもよい。この位置において例えばコンタクト薄板は、侵入するピンもしくはコンタクトブレードにより、差込み方向に対して横方向に変位させられる。全てのコンタクト部材の開口ピークが累積すると、極めて高い差込み力を生ぜしめることができる。
【0004】
組立工が差込みコネクタと対応差込みコネクタとを嵌め合わせる際に、過度に高い操作力に直面させられないようにするためには、例えば操作力を減少させるためにレバーユニットおよび/またはスライダユニットを備えた差込みコネクタが知られている。例えば、最大でも75Nの操作力を上回るべきではない。
【0005】
欧州特許出願公開第0933836号明細書から公知の差込みコネクタでは、対応する対応差込みコネクタに嵌め合わせる際の操作力を、レバーと、レバーにより操作されるスライダとを組み合わせることで減少させようとする。ただしこの構成では、差込み方向に対して横方向に比較的大きなスペースが必要となる。それというのも、スライダが差込み過程中に差込み方向に対して横方向に変位させられるからである。さらに、レバーとスライダとを備えた差込みコネクタの構造は、比較的複雑である。
【0006】
したがって本発明の課題は、簡単かつ廉価な構造で差込み接続部の確実な着脱を可能にすると同時に、差込み力に比べて低減された操作力を必要とする、差込みコネクタおよび差込みコネクタと対応差込みコネクタとを備えた差込みコネクタユニットを提供することにある。さらに、一方では組立工の負担を軽減するために、かつ他方では最小限の構成空間もしくは操作空間を提供する必要があるために、差込みコネクタは、最小限の操作距離で、対応する対応差込みコネクタに嵌め合わせ可能であることが望ましい。
【0007】
発明の開示
この課題は、請求項1記載の特徴を備えた差込みコネクタならびに請求項12記載の特徴を備えた差込みコネクタユニットにより解決される。
【0008】
従属請求項には、本発明の好適な改良が示されている。
【0009】
すなわち、請求項1記載の特徴を備えた本発明による差込みコネクタは、差込みコネクタユニットの差込みコネクタと対応差込みコネクタとの簡単かつ確実な接続が可能である、という利点を有している。この場合、差込み方向Zに沿って嵌め合わせると、差込みコネクタの電気的なコンタクトもしくはコンタクト部材と、対応差込みコネクタの対応コンタクトもしくは対応コンタクト部材とが互いに接触する。この場合、(嵌め合わせられた差込みコネクタと対応差込みコネクタとから成る)差込み接続部の差込みおよび取外しに必要な(操作)力を、例えば75Nのしきい値未満、例えばそれどころか50Nのしきい値未満、またはそれどころか例えば40Nのしきい値未満に保つことができ、この場合、電気的なコンタクトの数は、特に20よりも多い。さらに有利には、この操作力低下は、小さな操作距離を伴うことができる。
【0010】
この場合、本発明では、差込みコネクタに、差込み過程中の効率的な力伝達を可能にするレバー装置もしくはレバーユニットが設けられている。特に、特に大きな操作力低下はとりわけ、特に高い差込み力が発生する差込み区間中に生ぜしめられる。換言すると、レバー装置もしくはレバーユニットは、差込み過程中の操作力を、特に非線形にもしくは特に操作距離にわたって可変の力伝達比を用いて低下させるように構成されている。
【0011】
この場合、差込みコネクタは、差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌め合わせおよび/または取外しに際して操作力を低下させる第1のレバーユニットを有している。この場合、第1のレバーユニットは、差込みコネクタの差込みコネクタケーシングに回動可能に配置されている。対応差込みコネクタは、対応差込みコネクタケーシングを有している。差込みコネクタと対応差込みコネクタとは、特にこれらのケーシング部材同士は、嵌め合わせの際に、互いに機械的に結合され得る。第1のレバーユニットは、第1および第2の脚部を有しており、第2の脚部は、第1のジョイントピンを介して旋回可能に第1の脚部に配置されている。この場合、第1のジョイントピンは、差込みコネクタケーシングに設けられた、実質的に差込み方向Zに沿って延在する第1のガイドスリット内で可動もしくは変位可能である。さらに、第1の脚部と差込みコネクタケーシングとの間に第1のガイドユニットが設けられており、この場合、第1のガイドユニットは、第1のガイド部材と、第1のガイド部材を収容する第1のガイド収容部とを有している。第2の脚部と差込みコネクタケーシングとの間には、第2のガイドユニットが設けられている。第2のガイドユニットは、第2のガイド部材と、第2のガイド部材を収容する第2のガイド収容部とを有している。さらに、第1および第2の係合部材が設けられている。第1の係合部材は、第1の脚部に配置されており、対応コネクタケーシングに設けられた第1の対応部材に係合するように構成されている。第2の係合部材は、第2の脚部に配置されており、対応コネクタケーシングに設けられた第2の対応部材に係合するように構成されている。好適には、第1および第2の係合部材はそれぞれ、第1および第2の脚部の自由端部に配置されている。これにより、第1および第2の係合部材は、差込みコネクタケーシングが対応差込みコネクタケーシングに載置されるとすぐに、対応差込みコネクタケーシングに設けられた対応部材に接触するようになっている。
【0012】
この場合、差込みコネクタもしくはレバーユニットの機能形式は、以下の通りである。(例えば差込み方向に対して横方向に延び、例えば差込みコネクタケーシングの互いに反対の側に位置する2つの長辺を通る軸を中心として)レバーユニットを回動させると、第1の脚部に配置された第1のガイドユニットに基づき、第1の脚部は、第1のガイドユニットにより設定された方向に沿って(例えば差込み方向に対して横方向にかつ軸に対して横方向に外側に向かって)変位させられる。この場合、第1のジョイントピンは、回動運動用の回動点もしくは一種の回動軸として用いられてもよい。第1のガイドユニットにより設定された方向に基づき、曲げ剛性の第1の脚部の変位を可能にするためには、同時に第1のジョイントピンが、第1のガイドスリット内で(例えば上から下に向かって、つまり差込み方向に沿って)変位する。
【0013】
同様に、第2の脚部も第2のガイドユニットを介して、第1のレバーユニットの回動運動中に所望の方向に沿って、例えば差込み方向に対して横方向に、かつ軸に対して横方向に外側に向かって、ただし例えば第1の脚部とは反対の方向に変位することができる。
【0014】
換言すると、第1のガイドユニットは、第1の脚部と差込みコネクタもしくは差込みコネクタケーシングとの間に、所望のもしくは好適な方向での所望の相対運動を生ぜしめる。第2のガイドユニットは、第2の脚部と差込みコネクタもしくは差込みコネクタケーシングとの間に、所望のもしくは好適な方向での所望の相対運動を生ぜしめる。
【0015】
差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌め合わせに際して、第1の係合部材が第1の対応部材に係合するか、または反対に第1の対応部材が第1の係合部材に係合すると(同じことは第2の係合部材と第2の対応部材とにも当てはまる-これについて以下でさらに説明はしない)、上述の組み合わせられた変位に基づき、差込みコネクタと対応差込みコネクタとが差込み方向に沿って互いに引き付けられ、差込み接続部が閉じられる。
【0016】
第1のガイドスリット内の第1のジョイントピンの動きと、第1のガイドユニット内の第1の脚部(ひいては第1の係合部材)の動きとの組合せにより、レバーユニットの回動中に、第1の対応部材に対するレバーの操作端部の距離と同時に、第1の対応部材に対する第1のジョイントピンの別の間隔とが変化する。これら2つの距離相互の比は、レバーユニットの伝達比ひいては操作力低下の係数を生ぜしめる。この伝達比は、例えばレバーユニットの操作距離もしくはレバーユニットの回動角度に応じて可変であり得る。
【0017】
第1のガイドユニット(および第2のガイドユニット)を第1のガイドスリットに対して相対的に構成することにより、伝達比を回動運動中に変化させることができ、これにより有利には、極めて簡単な構造でもって、嵌め合わせ時の効率的な操作が生ぜしめられる。それというのも、小さな差込み力しか生じ得ない差込みコネクタと対応差込みコネクタとの間の距離区間では伝達比が小さくなるため、僅かな回動運動で大きな差込み距離が得られるからである。高い差込み力を生ぜしめる差込み区間では、伝達比をより高くすることができ、これにより確かに、差込み方向に沿った同一区間に対してはより大きな回転角度が必要になる。ただし、これらの部分区間におけるより高い伝達比に基づき、操作力もより大幅に低下されている。
【0018】
つまり本発明によるユニットは、有利には極めて簡単、頑丈かつコンパクトな構造でもって、嵌め合わせに必要な操作力の低下を可能にする。有利には、別個のまたはレバーユニットにより駆動されるスライダ部材および/または歯車構造もしくはラック構造を省くことができる。さらに有利には、同時に、嵌め合わせに必要な操作距離を短縮することができる。
【0019】
さらに有利には、第1および第2のガイドユニットならびに第1のガイドスリットは、嵌め合わせ時の差込みコネクタおよび対応差込みコネクタの(互いに対して相対的な)傾倒および/または傾斜を防止する。
【0020】
本出願の文脈において、「有する」という表現は、基本的に「含む」という表現と同義であると理解され得る。
【0021】
差込み方向は、例えばデカルト座標系においてZ方向もしくは鉛直方向と呼ばれてもよい。第1のレバーユニットの回転軸線の方向は、Y方向と呼ばれてもよい。Y軸に対してもZ軸に対しても垂直な方向は、X方向(例えば、この方向に沿って例えば差込みコネクタケーシングの長辺が延びる方向)と呼ばれてもよい。
【0022】
差込みコネクタと対応差込みコネクタとが嵌め合わせられる第1のレバーユニットの回動方向は、C方向と呼ばれてもよい。
【0023】
-差込み方向に対して横方向で-差込みコネクタケーシングの外側から内側に向かう方向は、半径方向内向きと呼ばれてもよく、(内側から外側に向かう)反対方向は、半径方向外向きと呼ばれてもよい。
【0024】
この場合、脚部と差込みコネクタケーシングとの間にガイドユニットが設けられている、という表現は、脚部と差込みコネクタケーシングとが、ガイドユニットを介して相互に作用する、ということを意味する。
【0025】
各係合部材は、単に例示的にスリットまたは溝として形成されていてもよく、対応する対応部材は、ピンまたはボルトとして形成されていてもよい。基本的に、係合部材がピンまたはボルト等として形成されていてもよく、対応部材が溝またはスリット、切欠き等として形成されていてもよい。
【0026】
「実質的に差込み方向に沿って」という用語は、差込み方向に対して最大+/-30°で延びる方向を意味し得る。
【0027】
例えば、第1のガイドスリットは、第1のガイドユニットと第2のガイドユニットとの間に配置されている、ということが想定されていてもよい。このことは、例えばX軸に沿って見た場合であり得る。このようにして、有利には差込み接続部の嵌め合わせもしくは取外しに際して、差込みコネクタの、対応差込みコネクタに対して相対的な自己センタリングを行うことができる。これにより有利には、傾倒もしくは傾斜ひいては差込み力の増大および/またはコンタクト部材に対する横方向力の発生のリスクが低下する。例えば、第1のガイドユニットは第2のガイドユニットに対して、その幾何学形状の寸法の点で同一にもしくは鏡面対称に形成されている、ということが想定されていてもよい。これにより、自己センタリングがさらに促進される。
【0028】
さらに好適には、差込みコネクタは、さらに第2のレバーユニットを有している。第2のレバーユニットは、好適には第1のレバーユニットと同様に構成されている。第2のレバーユニットは、第3および第4の脚部を有しており、第4の脚部は、第2のジョイントピンを介して第3の脚部に配置されている。第2のジョイントピンは、差込みコネクタケーシングに設けられた、実質的に差込み方向に沿って延在する第2のガイドスリット内に可動に配置されている。この場合、第1のガイドスリットと第2のガイドスリットとは、好適には互いに平行に方向付けられている。さらに第2のレバーユニットは、第3の脚部と差込みコネクタケーシングとの間に第3のガイドユニットを有しており、第3のガイドユニットは、第3のガイド部材と、第3のガイド部材を収容する第3のガイド収容部とを有している。第2のレバーユニットにおいて、第4の脚部と差込みコネクタケーシングとの間に第4のガイドユニットが設けられており、第4のガイドユニットは、第4のガイド部材と、第4のガイド部材を収容する第4のガイド収容部とを有している。さらに、第3の係合部材と第4の係合部材とが設けられている。第3の係合部材は、第3の脚部に配置されており、対応差込みコネクタケーシングに設けられた第3の対応部材に係合するように構成されている。さらに、第4の係合部材は、第4の脚部に配置されており、対応差込みコネクタケーシングに設けられた第4の対応部材に係合するように構成されている。
【0029】
例えば、第2のガイドスリットは、第3のガイドユニットと第4のガイドユニットとの間に配置されている、ということが想定されていてもよい。このことは、例えばX軸に沿って見た場合であり得る。このようにして、有利には差込み接続部の嵌め合わせもしくは取外しに際して、差込みコネクタの、対応差込みコネクタに対して相対的な自己センタリングを行うことができる。これにより有利には、傾倒もしくは傾斜ひいては差込み力の増大および/またはコンタクト部材に対する横方向力の発生のリスクが低下する。例えば、第3のガイドユニットは第4のガイドユニットに対して、その幾何学形状の寸法の点で同一にもしくは鏡面対称に形成されている、ということが想定されていてもよい。これにより、自己センタリングがさらに促進される。例えば、4つ全てのガイドユニットが、その幾何学形状の寸法の点で互いに同一にもしくは鏡面対称に形成されている、ということが想定されていてもよい。
【0030】
この場合、特に好適には、第1および第2のレバーユニットは、差込みコネクタケーシングの互いに反対の側に配置されている。これにより有利には、差込み接続部の差込み過程中および取外し中に、第1および第2のレバーユニットを介した均一な力導入をもたらすことが可能である。さらに有利には、このようにして、差込みコネクタと対応差込みコネクタとを嵌め合わせる際の傾斜のリスクを低下させることができる。つまりこれにより有利には、操作力が両方のレバーユニットに分散するため、第1のレバーユニットおよび第2のレバーユニットを、よりコンパクトにまたはより少ない材料で形成することができる。
【0031】
特に好適には、各ガイドユニットは、ガイド部材としてそれぞれ1つのピンを有しておりかつガイド収容部としてそれぞれ1つの溝を有しており、この場合、各ピンの位置は、その対応する溝内で可変である。これにより、有利にはガイドユニットの特に簡単かつ頑丈な構成が生ぜしめられる。
【0032】
この場合、溝の形状設定により、レバー回動運動中の伝達比を一緒に構成することができる。つまり、ガイドユニット(溝、ピン)のこの構成により、特に簡単に実現可能で様々な要求(操作力低下/操作距離短縮)に適合可能なガイドユニットひいてはレバーユニットが提供され得る。レバーユニットの脚部のうちの1つにそれぞれ1つのピンが配置されておりかつ差込みコネクタケーシングにそれぞれ1つの溝が配置されていると、特にコンパクトな構造が可能である。ピンおよび溝の配置は逆転していてもよく、これにより、溝は脚部に設けられており、ピンは差込みコネクタケーシングに設けられている、ということに留意されたい。溝の代わりに、ガイド収容部としてガイド面が設けられていてもよく、ガイド面に沿って、ガイド部材、例えばピンまたはボルトまたはレール、玉軸受の玉等がガイドされている。このようなガイド収容部またはガイド面は、例えばガードレール状の制限手段を有していてもよい。ガイドユニットもしくはガイド収容部は、例えばリンク構造であってもよい。さらに、一方の脚部には溝が配置されており、他方の脚部にはピンが配置されていてもよい。
【0033】
ガイドユニットの溝は、実質的に差込み方向Zに対して横方向(+/-30°)に、つまり例えば実質的にX方向に沿って、特に直角に延在している。差込み方向Zは、好適には鉛直方向であり、溝は、特に好適には鉛直方向に対して垂直に、水平方向(例えばX方向)に延びている。
【0034】
これにより、ガイドユニットの特に簡単な構成が実現可能である。
【0035】
ただし、溝は、差込み方向に対して90°未満の角度で延びていてもよい、ということに留意されたい。
【0036】
溝は、特に一定の半径を有する円弧状に設けられていてもよい。
【0037】
特に簡単な取扱いを可能にするために、第1のレバーユニットと第2のレバーユニットとは、結合部材を介して互いに結合されている。これにより、実質的にU字形のレバーが生ぜしめられ、U字形のレバーの両方の脚部が、第1および第2のレバーユニットを形成している。
【0038】
これにより有利には、嵌め合わせる際の傾倒および/または傾斜のリスクも低下させられる。
【0039】
さらに好適には、第1および第2のガイドスリットは、直線的に形成されている。これにより、有利には差込みコネクタの特に簡単な構成が可能になる。
【0040】
1つの改良では、第1および第2のガイドスリットは、鉛直方向に配置されている。これにより有利には、差込みコネクタの特に簡単な構成が可能になる。さらにこれにより、有利には特に摩擦の少ない操作が可能になる。
【0041】
さらに好適には、第1の脚部に第1のジョイントピンが配置されている。これにより、有利には第1の脚部の特に安定した構成が可能になる。
【0042】
この場合、第2の脚部は、第1のジョイントピンに対応して形成された開口を有しており、これにより、第1のジョイントピンを中心として旋回することができるようになっている。
【0043】
択一的または追加的に、第3の脚部に第2のジョイントピンが配置されている。これにより、有利には第3の脚部の特に安定した構成が可能になる。
【0044】
この場合、さらに好適には、第4の脚部は、第2のジョイントピンに対応して形成された開口を有しており、これにより、第2のジョイントピンを中心として旋回することができるようになっている。
【0045】
例えば直線的な溝または円弧状の溝としてのガイドユニットの溝の、それぞれ異なる幾何学形状の構成の他に、さらに好適には、溝は、共通の水平面に配置されていること、またはそれぞれ異なる水平方向位置に設けられていることも可能である。
【0046】
差込みコネクタケーシングに設けられたガイドスリットは、好適には差込み方向Zに沿って見て、ガイドスリットが、ガイドユニットの溝の下側に位置する下端部を有するように配置されている。さらに好適には、ガイドスリットは、差込み方向に沿って見て、溝の上側に位置する上端部を有している。上端部は、好適にはガイドスリットの残りの部分よりも大きな横断面を備えて形成されている。さらに、溝の溝壁の側方に、段付けされたガイド面が設けられており、ピンが、それぞれ1つの環状溝を有しており、これにより、ピン端部がヘッドとして形成されておりかつ環状溝はネック状の切込み部を形成しており、このようにして、ピンのヘッドがガイド面に沿ってガイドされ得る。これにより、ピンが不本意にガイドスリットから外れることが防止され得る。
【0047】
さらに本発明は、本発明による差込みコネクタと対応差込みコネクタとを備えた差込みコネクタユニットに関し、この場合、対応差込みコネクタは、対応差込みコネクタケーシングを有しており、かつ差込みコネクタの係合部材に係合するように構成された、対応差込みコネクタケーシングに設けられた対応部材、例えばピンを有している。
【0048】
好適には、差込みコネクタユニットは、対応差込みコネクタに複数の電気的な対応コンタクト部材を有しており、対応コンタクト部材は、対応差込みコネクタケーシング内に配置されておりかつ差込みコネクタと対応差込みコネクタとが電気的に接続するように嵌め合わせられた状態で差込みコネクタの電気的なコンタクト部材にコンタクトするように構成されている。対応コンタクト部材は、例えばピンまたはコンタクトブレードとして形成されている(雄型対応コンタクト部材)。対応コンタクト部材は、好適にはコンタクト舌片もしくはコンタクト薄板を備えた雌型対応コンタクト部材として形成されていてもよい、ということは自明であり、この場合、コンタクト舌片もしくはコンタクト薄板に、差込みコネクタのピン等の形態のコンタクト部材が差し込まれる。
【0049】
さらに好適には、当該差込みコネクタユニットでは、対応差込みコネクタケーシングに設けられた対応部材は、嵌め合わせに際して、差込みコネクタケーシングに設けられた相補的な対応部材構造に結合されており、対応部材は、嵌め合わせの際に、差込みコネクタケーシングに対して相対的に差込み方向に沿って変位する。
【0050】
これにより、有利には差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌め合わせの際の傾斜のリスクが低下させられる。
【0051】
例えば、対応部材は、対応コネクタケーシングに設けられたピンまたは突起として形成されていてもよい。この場合、対応部材構造は、例えば溝またはスリットの形態で形成されていてもよい。
【0052】
差込みコネクタユニットは、好適には自動車分野において制御装置に使用される。特に、複数の電気的なコンタクト、特に20よりも多くのコンタクト、さらに好適には50よりも多くのコンタクト、さらに好適には100よりも多くのコンタクトを備えたワイヤハーネスを被せ嵌める場合に、本発明による差込みコネクタユニットは、75N以下の力を使って差込み接続部の差込みおよび取外しを可能にするために、極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
以下に、添付の図面を参照しながら本発明の好適な実施例を詳しく説明する。
【
図1】カバー無しの差込みコネクタを示す概略斜視図である。
【
図2】対応差込みコネクタを示す概略斜視図である。
【
図3】
図1に示した差込みコネクタのレバーユニットを示す概略斜視図である。
【
図4】
図1に示した差込みコネクタのレバーユニットを示す概略斜視図である。
【
図5】まだ嵌め合わせられていない状態の差込みコネクタユニットを示す概略側面図である。
【
図6】
図5に示した差込みコネクタユニットの概略側面図であり、差込みコネクタは、対応差込みコネクタに載置されており、差込み過程はまだ開始されていない。
【
図7】
図7~
図10は、差込みコネクタケーシングもしくは差込みコネクタのレバーユニットの平行平面を断面して示す、それぞれ異なる断面図である。
【
図8】
図7~
図10は、差込みコネクタケーシングもしくは差込みコネクタのレバーユニットの平行平面を断面して示す、それぞれ異なる断面図である。
【
図9】
図7~
図10は、差込みコネクタケーシングもしくは差込みコネクタのレバーユニットの平行平面を断面して示す、それぞれ異なる断面図である。
【
図10】
図7~
図10は、差込みコネクタケーシングもしくは差込みコネクタのレバーユニットの平行平面を断面して示す、それぞれ異なる断面図である。
【
図11】
図1に示した差込みコネクタケーシングの側面を示す概略部分断面図である。
【
図12】
図12~
図14は、差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌合わせ過程の最中のレバーユニットの動作推移をそれぞれ異なるレバー位置で概略的に示す図である。
【
図13】
図12~
図14は、差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌合わせ過程の最中のレバーユニットの動作推移をそれぞれ異なるレバー位置で概略的に示す図である。
【
図14】
図12~
図14は、差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌合わせ過程の最中のレバーユニットの動作推移をそれぞれ異なるレバー位置で概略的に示す図である。
【
図15】
図12~
図14に示したレバーユニットの動作推移を、レバーユニットのそれぞれ異なる角度位置を示す単独図で概略的に示す図である。
【
図16】差込み過程中の、第1のレバー端部から対応差込みコネクタに設けられた対応部材までの第1の長さA:ガイドユニットのガイド部材の、対応部材までの第2の長さBの比Vを概略的に示すグラフおよび表である。
【
図17】本発明の第2の実施例による差込みコネクタユニットの概略図である。
【
図18】本発明の第3の実施例による差込みコネクタユニットの概略図である。
【
図19】本発明の第4の実施例による差込みコネクタユニットの概略図である。
【
図20】別の択一的な差込みコネクタユニットを示す概略図である。
【
図21】別の択一的な差込みコネクタユニットを示す概略図である。
【
図22】別の択一的な差込みコネクタユニットを示す概略図である。
【
図23】別の択一的な差込みコネクタユニットを示す概略図である。
【
図24】本発明の第5の実施例による差込みコネクタユニットの概略図である。
【0054】
発明の実施形態
次に
図1~
図16を参照しながら、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ20とを備えた差込みコネクタユニット100を詳細に説明する。
【0055】
差込みコネクタユニット100は、例えば自動車分野において使用され得る。差込みコネクタ1は、例えば自動車のワイヤハーネスの端部に設けられた差込みコネクタであってもよい。対応差込みコネクタ20は、例えば制御装置に配置されていてもよい。
【0056】
図1および
図2から判るように、電気的な差込みコネクタユニット100は、差込みコネクタ1(
図1)と、対応差込みコネクタ20(
図2)とを含む。差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ20とは、互いに相補的に形成されていて、差込み方向Zに沿って嵌め合わせられるように構成されている(
図5)。
【0057】
差込みコネクタ3は、差込みコネクタケーシング3を有しており、差込みコネクタケーシング3内には、複数の電気的なコンタクト部材40が配置されている。コンタクト部材は、ここでは例えば差込みコネクタケーシング3内の複数のコンタクト室42内に配置されている。コンタクト部材40にはそれぞれ導線43が、例えば圧着固定により固定されていてもよい。導線43はまとまって1つのワイヤハーネス(ここには図示せず)を生ぜしめ、ワイヤハーネスの端部に差込みコネクタ1が配置されている。ワイヤハーネスは、差込みコネクタ1から側方に、例えばカバー30(
図5に図示)により差込みコネクタ1から導出され得る。
【0058】
対応差込みコネクタ20は、対応差込みコネクタケーシング2を有している。対応差込みコネクタケーシング2内には、複数の対応コンタクト部材41が配置されている。これらは例えば、コンタクトブレードまたはピンとして形成されていてもよい。本実施例では、対応差込みコネクタケーシング2の外側に4つの対応部材21,22,23,24が配置されており、対応差込みコネクタケーシング2の各長辺に2つずつ配置されている。
【0059】
差込みコネクタ1は、差込み方向Z(
図5参照)に沿って対応差込みコネクタ20に載置され(
図6)、次いでレバー装置もしくはレバーユニットによりさらに対応差込みコネクタ20に被せ嵌められ、このとき、電気的なコンタクト部材40と電気的な対応コンタクト部材41との間に電気的なコンタクトが生ぜしめられる。
【0060】
差込み方向Zは、本実施例では鉛直方向であり、この場合、ここでは差込みコネクタ1の差込み過程全体にわたり、対応差込みコネクタ20に対して相対的に専ら鉛直方向にのみ動かされる。これにより、差込み過程中に、例えば電気的なコンタクト部材40と電気的な対応コンタクト部材41とに横方向力が加えられることはない。さらに、例えば力の伝達がX軸に沿って移動可能なスライダ部材により生ぜしめられる構成とは異なり、操作力が大幅に低減される。それというのも、スライダ部材を備えた構成では、差込み方向Zに沿った嵌め合わせ過程の際に、(X方向に沿った)横方向力により増大させられた摩擦力も発生するからである。同じことが、差込みコネクタユニットの取外し(嵌合い解除)過程にも当てはまる。
【0061】
コネクタ1は、ここではさらに、差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌合わせおよび/または取外しの際の操作力を低下させる第1のレバーユニット5と第2のレバーユニット15とを含み、第1のレバーユニット5および第2のレバーユニット15は、差込みコネクタケーシング3に回動可能に支持されている。基本的に、1つの(第1の)レバーユニット5だけが設けられている、ということも可能である。第1のレバーユニット5および第2のレバーユニット15は、ブリッジの形態の結合部材50を介してレバーの一方の端部において互いに結合されている(
図6参照)。この場合、第1のレバーユニット5および第2のレバーユニット15は、それぞれ差込みコネクタケーシング3の側方に配置されており、これにより、差込み接続部の差込み過程および取外しの最中の均一なてこ力導入が可能である。
【0062】
第1のレバーユニット5および第2のレバーユニット15は、本実施例では技術的に同様に構成されている。特に
図3および
図4から判るように、第1のレバーユニット5は、第1の脚部51と第2の脚部52とを含む。第2の脚部52は、ここでは例えば第1の脚部51よりも短くなっている。第2の脚部52は、本実施例では第1のジョイントピン53を介して第1の脚部51に旋回可能に配置されている。第1のジョイントピンが、第2の脚部52に配置されていてもよく、例えば第1の脚部51の開口内に配置もしくは固定されている、ということは自明である。また第1のジョイントピン53は、第1の脚部51および第2の脚部52の開口に差し通されたもしくはそこに固定された例えば別個の部材として設けられていてもよい。
【0063】
第2のレバーユニット15は、第3の脚部151と第4の脚部152とを含む。第4の脚部152は、ここでは例示的に第3の脚部151よりも短くなっている。第4の脚部152は、第2のジョイントピン153を介して第3の脚部151に旋回可能に配置されている。
【0064】
さらに
図3および
図4から判るように、各レバーユニット5,15は、係合部材8,9,18,19を有している。より正確には、第1の脚部51の自由端部に第1の係合部材8が配置されており、第2の脚部52に第2の係合部材9が配置されている。第3の脚部151に第3の係合部材18が配置されており、第4の脚部152に第4の係合部材19が配置されている。4つの係合部材8,9,18,19は、本実施例では固定式のトングジョーを備えたグリッパとして形成されており、この場合、トングジョーの間には、各係合部材8,9,18,19のそれぞれ1つのスリットもしくは溝もしくは切欠きが設けられている。この場合、これらの係合部材8,9,18,19は、スリットでもって、対応コネクタケーシング2に形成された対応部材21,22,23,24に係合する(
図2参照)。この場合、対応差込みコネクタ20は、第1の側面に、第1の対応部材21と第2の対応部材22とを有している。第1の側とは反対の側に位置する第2の側に、対応差込みコネクタ20は第3の対応部材23と第4の対応部材24とを有している。対応部材は、本実施例では単に例示的に全て同一に構成されているに過ぎない。対応部材は、ここでは筒状ピンの形態で、この場合は円筒ピンの形態で形成されている。別の基本形状、例えば矩形、楕円形等の基本形状も可能である。この場合、ピンは例示的に、ここではほぼ矩形の横断面を有する基部(直方体形)に載置されている。この場合、基部の長手方向軸線は、差込み方向Zに沿って方向付けられている。基部は、ここでは例えばその上端部と下端部とが丸み付けられている。この場合、基部は2つの機能を有していてもよい。すなわち一方では、基部は、対応部材21,22,23,24のピンを安定化させる。それというのも、この限りにおいてこれらのピンが細い横断面でもって差込みコネクタケーシング3から突出することは最早ないからである。他方では、基部は、対応部材構造に改良されたガイドを生ぜしめることができる。
【0065】
図7~
図10に基づき、差込みコネクタ1の別の構造および対応差込みコネクタ20との協働が明確に示されており、この場合、
図7~
図10にはそれぞれ、レバーユニットもしくは差込みコネクタケーシング3のそれぞれ異なる深さにおける鉛直方向断面が示されている。この場合はとりわけ、第2のレバーユニット15およびその部材が示されている。ただし説明は、第1のレバーユニット5に転用可能である。
【0066】
さらに
図1、
図3、
図4および
図24から判るように、各レバーユニット5,15は、各脚部と差込みコネクタケーシング3との間にガイドユニットを有している。より正確には、第1のガイドユニット6(
図24参照)が、第1の脚部51と差込みコネクタケーシング3との間に設けられている。第2のガイドユニット7(
図24参照)は、第2の脚部52と差込みコネクタケーシング3との間に設けられている。第3のガイドユニット16(例えば
図8および
図10参照)は、第3の脚部151と差込みコネクタケーシング3との間に設けられている。第4のガイドユニット17(例えば
図8および
図10参照)は、第4の脚部152と差込みコネクタケーシング3との間に設けられている。第3および第4のガイドユニット16,17は、
図8および
図10から詳細に判る。
【0067】
4つのガイドユニット6,7,16,17はそれぞれ、ここでは例示的にピン10を有しており、ピン10は、ピン10用のガイド収容部を形成する溝11内でガイドされている。溝11は、第1の実施例では(X方向に沿った)水平方向に向けられている。ピン10は、例示的に過ぎないが筒状に、ここでは例えば円筒状に形成されている。4つのガイドユニットは、2つのジョイントピン53,153と協働して、レバーユニット5,15(特にその脚部51,52,151,152)と差込みコネクタケーシング3との間の相対運動を保証する。ひいては差込み方向Zに沿った、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ20との間の相対運動も保証する。
図8から判るように、差込みコネクタケーシング3には第2のガイドスリット33の左右に2つの溝11が設けられている。同様に、差込みコネクタケーシング3の他方の側に配置された第1のレバーユニット5においても、第1のガイドスリット32および溝11が設けられている。
【0068】
図7および
図8は、まだ閉じられていない状態の差込みコネクタユニット100の2つの異なる断面図を示している。嵌め合わせ過程開始時の状態が示されている。
【0069】
図7に示すように、差込みコネクタ1を対応差込みコネクタ20に載置した後に、係合部材8,9,18,19は対応する対応部材21,22,23,24に係合する。この場合、
図7は、レバー装置が既にやや旋回させられており(矢印C)、係合部材8,9,18,19が対応部材21,22,23,24に係合している、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ20との間の位置を示している。この場合、ジョイントピン53,153は既にやや、差込み方向Zにおいてガイドスリット32,33内でガイドされている(つまりこの図ではやや下方に変位させられている)。
【0070】
第3のガイドユニット16の溝11内のピン10と、第4のガイドユニット17の溝11内のピン10とがそれぞれ、各ガイドユニット16,17の、第2のガイドスリット33に面した端部の極近くに支持されていることが良好に認められる。回動方向(矢印C参照)に沿って第2のレバー装置もしくは第2のレバーユニット15をさらに回動もしくは旋回させると、2つのピン10は第2のガイドスリット33に対して、この第2のガイドスリット33からますます外側に離れるように(X軸に沿って)変位する。同時に第2のジョイントピン153は、ピン10に結合された第3の脚部151および第4の脚部152の、ガイドユニット16,17により強制された動きの結果として、ますます下方に向かって変位させられる。
【0071】
この場合、対応部材21,22,23,24は、レバーユニットをさらに回動または旋回させると差込みコネクタ1を対応差込みコネクタ20に引き寄せる係合部材8,9,18,19に係合するだけではない。対応部材21,22,23,24は、第1~第4の対応部材構造27,28(
図11も参照)内でもガイドされている(ここに示す図面において第1および第2の対応部材構造は見えない)。第3および第4の対応部材構造27,28は、ここでは差込みコネクタケーシング3に溝もしくはスリット12として形成されており、差込み方向Zに沿って延在している。このようにして、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ20との、傾き無しでガイドされた均一な嵌め合わせが改善される。同じことが、ここでは見えない第1および第2の対応部材構造にも当てはまる。
【0072】
図7では(
図9と同様に)、脚部151,152により覆い隠されたピン10および溝11ならびに第2のガイドスリット33の上側部分が破線で示されている。
【0073】
次に
図8および
図9は、差込みコネクタユニット100の終端位置を示しており、終端位置において差込みコネクタ1は、対応差込みコネクタ20に完全に被せ嵌められており、電気的なコンタクトが実行されている。特に
図9から判るように、この場合、第1および第2のレバーユニット5,15の係合部材8,9,18,19は、水平位置を超えて旋回させられているため、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ20との間で、位置固定された差込み接続部の位置が達成されており、この位置では、差込み接続部の不本意な解離は不可能である。この位置では、係合部材8,9,18,19は完全に対応部材21,22,23,24内に係合しており、この場合、対応部材21,22,23,24は、係合部材8,9,18,19のトング状のジョーもしくはトングジョーの間の溝もしくはスリットの端部に位置している(
図9参照)。差込みコネクタユニット100の、
図9に示す位置に対応する溝11内のピン10の位置は、
図10に示されている。
図10から判るように、この場合、対応部材21、22、23、24は、ピン10に隣接して位置決めされている。
【0074】
さらに、第2のジョイントピン153は、第2のガイドスリット33内でその下端部33cに変位させられていることが良好に認められる。
【0075】
第3および第4のガイドユニット16,17および第2のガイドスリット33の配置および賦形は、第2のレバーユニット15の特に可変の操作力低下およびひっかかりのない回動が生ぜしめられるように選択されている。同じことは、第1のレバーユニット5およびその部材にも同様に当てはまる。
【0076】
さらに、差込みコネクタケーシング3には4つの鉛直方向スリット12が設けられており、これらの鉛直方向スリット12内で、対応部材21,22,23,24はそれぞれ鉛直方向に、すなわち差込み方向Zに可動である。このことは再度、差込み過程中に差込みコネクタ1は差込み方向Zにおいてのみ対応差込みコネクタ20に被せ嵌められる、ということを明確に示しており、これにより、電気的なコンタクト部材40と電気的な対応コンタクト部材41とは半径方向力に晒されず、差込み方向Zの力だけを被るに過ぎない。
【0077】
図11は、コネクタケーシング3の、コネクタケーシング3の内部に面した内壁を例示的に示しており、内壁には、第2のガイドスリット33と、第3および第4のガイドユニット16,17の、X方向に沿って水平に延びる2つの溝11と、第3および第4の対応部材構造27,28の、差込み方向Zに沿って鉛直に延びる2つの溝とが形成されている。反対側に位置する、第1のガイドスリット32と第1および第2のガイドユニット6,7とを備えた壁も、同様に形成されていてもよい。
【0078】
差込み(嵌め合わせ)過程中の確実なガイドを保証するためには、差込みコネクタ1の片側に関して
図11に例示的に示すように、ガイドスリット33にそれぞれ、ガイドスリット33のスリット壁に沿ったガイド面33aが設けられている。これらのガイド面33aは、例えば壁に設けられた段部により形成されていてもよい。
【0079】
この場合、第2のガイドスリット33は、-ここでは閉じられた-上端部33bに、例示的に直径拡大部を有している。この上端部33bを介して、第2のジョイントピン153を外側から半径方向内側に向かって差し通すことができる。この場合、第2のジョイントピン153は、すぐ隣接するピンの領域に比べて拡大された直径を有する一種のキャップを有していてもよい(
図3および
図4も参照)。この場合、キャップは、ピンに面した側でもってガイド面33a上を下方に滑動することができる。拡大された直径に基づき、有利には、第2のジョイントピン153が第2のガイドスリット33の上端部33bから離れる方向に変位した後に内室から半径方向外側に滑落することは、最早不可能である。さらに有利には、キャップと、壁内に後退させられたガイド面とにより、第2のジョイントピン153は、差込みコネクタケーシング3の内室には全くまたは極僅かにしか突入しない、ということが生ぜしめられてもよい。
【0080】
拡大された上端部33bは、さらに有利には、差込みコネクタケーシング3にレバー装置もしくは第2のレバーユニット15を取り付ける際の、第2のジョイントピン153の損傷のリスクを低下させる。それというのも、第2のジョイントピンは差込みコネクタケーシング3に回動可能かつ変位可能に取り付けられねばならず、このようにして、第2のジョイントピンを簡単かつ損傷無しに、拡径された上端部33bを通して差し込むことができるからである。
図11は、溝11に対する鉛直方向スリット12の、ここでは直角の配置を、再度詳細に示している。
【0081】
再度述べておくと、
図7~
図11には差込みコネクタ1の片側のみを示して説明したが、この場合、第1のレバーユニット5が配置されている反対側は、
図7~
図11に示した側と同様に構成されている。
【0082】
図8、
図10および
図11からさらに判るように、ガイドスリット32,33は、鉛直方向に所定の長さを有しており、これにより、第2のガイドスリット33の下端部33cは、ここでは例示的に第3および第4のガイドユニット16,17の一部である溝11の下側に位置している。これにより、第1および第2のレバーユニット5,15を備えたレバー装置を、水平面を越えて下方に押圧することができるため、対応差込みコネクタ20に差込みコネクタ1が差し込まれた状態での、レバー装置の位置固定位置が可能である。この状態は、
図9および
図10に示されている。終端位置は、好適にはさらに、例えば係止係合等により位置固定され得る。
【0083】
本発明による差込みコネクタ1を備えた本発明による差込みコネクタユニット100の機能を、
図12~
図16に基づき再度概略的に説明する。
【0084】
図12には、差込み過程開始前の出発位置が概略的に示されている。差込みコネクタ1は、対応差込みコネクタ20の上側に配置され、これにより、4つの係合部材8,9,18,19が4つのピン状の対応部材21,22,23,24の上側に位置することになる。次いで差込みコネクタ1は、差込み方向Zに移動させられ、これにより係合部材8,9,18,19は、
図12に概略的に破線で示す対応部材23’,24’により示唆されているように、対応部材21,22,23,24に当接することになる。次いで第1および第2のレバーユニット5,15が、
図13に矢印Cにより示唆されているように(ここでは反時計回り方向に)回動させられる。これにより一方では、ピン10間の、溝11に対して相対的な相対位置が変化させられ(ピン10は、中心からそれぞれ外側に向かって移動する)、かつ他方では、係合部材8,9,18,19が対応部材21,22,23,24に係合させられる。第1および第2のジョイントピン53,153は、差込み方向Zにおいて第1もしくは第2のガイドスリット32,33内で鉛直方向下側に向かって(差込み方向Zに沿って)動かされる。この場合、
図13には、第1もしくは第3の脚部151と水平面との間の角度αが、
図12に示した出発状態を起点としてやや、約10°だけ縮小された状態が示されている。
【0085】
次いで
図14には、差し込まれた差込みコネクタ1が対応差込みコネクタ20において占める終端位置が示されている。この場合、ジョイントもしくは第1および第2のジョイントピン53,153が差込み方向Zに沿って、溝11が配置されている水平面Eを越えて動かされたため、差込み接続部が位置固定されている。つまり、第1および第2のジョイントピン53,153は、水平面Eの下側に位置している。よって、レバー装置は過剰に押圧された状態に移行させられている。
【0086】
図15および
図16は、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ20との間の接続過程を再度明確に示している。
【0087】
この場合、
図15は、第3の脚部151の自由端部151aの、第3の対応部材23の中心点までの第1の距離Aを、角度α=40°を起点としてそれぞれ10°ずつ段階的に示しており、第1の距離Aは、
図15では10°ずつの各段階に相応してA40,A30,A20,A10,A0およびA-10(Aマイナス10°)で示されている。
【0088】
さらに
図15には、ピン10の中心と第3の対応部材23の中心との間の第2の距離Bが同様に、B40を起点としてB30,B20,B10,B0およびB-10(Bマイナス10°)にわたる10°ずつの各段階に相応して示されている。この場合、位置A-10およびB-10は、
図14に相応する、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ20との間が位置固定された差込み位置を表す。さらに
図15には、第2のガイドスリット33内の第2のジョイントピン153の位置が、それぞれレバー装置の回動に応じて10°ずつ段階的に示されている。
【0089】
図16の表には、それぞれが第3の脚部151と水平面との間の角度αに相応する第1の距離Aと第2の距離Bとに基づく比V=A/Bが示されている。この比は、レバーユニット5,15による力の伝達に相応する。例えばV=2の比は、操作力(摩擦損失無し)が差込み力に対して相対的に1/2に低下されている(相応して、操作距離は差込み距離の2倍に延長されている)ことを意味する。
【0090】
この場合、
図16の表の上側には、角度α(°)にわたる比V=A/Bのグラフが示されている。この場合、本実施例に関して最大の比は、α=0°の範囲に存在することが明らかである。すなわち、レバーユニット5,15が水平面Eに対して平行に方向付けられている場合、すなわち角度α=0°の場合に、力の伝達が最大になる。ここに示す実施例では、差込み過程がこの角度では完全に終了しているため、電気的なコンタクト部材40は、電気的な対応コンタクト部材41に完全にコンタクトしている。次いで差込み過程は、差込み接続部を位置固定するために、角度α=-10°まで継続される。
【0091】
図16のグラフからはさらに、減少する角度にわたり変化する比V=A/Bに基づき、最大のてこ力が±0°の角度αの範囲に存在していることが明らかになる。換言すると、差込みコネクタ1が対応差込みコネクタ20内に差し込まれかつレバーユニット5,15が操作されると、てこの伝達比は、α=40°からa=0°まで連続的に増大する。このことは特に、嵌め合わせ時に必要とされる差込み力が、ここでは差込み方向Zに進む距離が増大するにつれてますます大きくなるため、有利である(差込み力は、ここでは例えばコンタクト部材40を対応コンタクト部材41にコンタクトさせる接触力、空気が抜かれていない差込みコネクタケーシングの場合の緊密な差込み接続部において上昇する内部圧力を克服するための力等から合成され得る)。つまり本発明に係る差込みコネクタ1は、てこ比を差込み距離にわたり連続的に変化させることで、差込み過程および力付与をユーザが最適に支援することができるようになっている。これにより、差込み力が増大しても、組立工の操作力を、操作距離が極度に大幅に増大すること無しに、所定のしきい値を下回るように保つことができる。つまり、対応差込みコネクタ20内への差込みコネクタ1の差込みに必要な力が最大であっても、この場合、差込みコネクタユニット100のユーザの支援が最大になる。このことは特に、複数の電気的なコンタクトもしくはコンタクト部材を有する差込みコネクタユニットにおいて大きな利点である。
【0092】
伝達比が増大するにつれて、上述のように、操作距離も増大する。この場合に存在する可変の非線形のもしくは一定でないてこ伝達比に基づき、簡単な手段で倍増された利点が得られる。
【0093】
それというのも一方では、可変の伝達比に基づき操作力が、差込み距離のあらゆる箇所において危機的なしきい値を下回ったままであること(例えば75Nまたは50Nまたは40N)が保証されているからである。ただし同時に、差込み力がそれほど高くない差込み距離の区間では、より小さなてこ伝達比に基づき、最大伝達比における操作距離に比べ、操作距離が短縮され得る。有利には全く歯車、ラックまたはスライダ部材無しで間に合うこの可変のてこ伝達比は、差込みコネクタユニットに応じて、ガイドユニットおよびガイドスリットの適切な賦形ならびにガイドユニットとガイドスリットとの相対的な相互配置により、小さな手間で、操作力および操作距離に関する所望の周辺条件に適合させることができる。
【0094】
図17には、本発明の第2の好適な実施例による差込みコネクタ1および差込みコネクタユニット100が示されており、この場合、同じもしくは同じ機能の構成部材には、同じ符号を付してある。第1の実施例とは異なり、第2の実施例では、差込みコネクタ1における係合部材の配置と、幾何学形状的に対応する、対応差込みコネクタ20における対応部材の配置とが逆転している。
図17に示すように、第3および第4の脚部151,152における係合部材として、ここでは例えば円筒形または円錐形のピン18a,19aが設けられており、ピン18a,19aは、対応差込みコネクタ20または対応差込みコネクタケーシング22に相応する幾何学形状に形成されたトング状もしくはスリット状もしくは溝状の対応部材23a,24aに係合する。
図17は、第2のレバーユニット15の図のみを概略的に示している。ただし、第2の実施例の第1のレバーユニット5も第2のレバーユニット15と同様に構成されている。その他の点では、本実施例は先行実施例に相応するため、そこに記載した説明を参照されたい。
【0095】
図18および
図19は、本発明の第3および第4の実施例を示しており、この場合もやはり、同じもしくは機能的に同じ構成部材には同じ符号を付してある。
図18の第3の実施例では、第3および第4の係合部材が円弧状の自由端部を備えて形成されており、円弧状の自由端部は、第2のジョイントピン153もしくは第2のガイドスリット33に向かって内向きに曲げられている。
【0096】
図19に示す第4の実施例でも同様に、第3および第4の係合部材19が円弧状の端部を備えて形成されているが、ただしこれらの円弧状の端部は、その自由端部において外向きに、つまり第2のガイドスリット33から離反する方向に曲げられている。
【0097】
別の択一的な実施例が、
図20~
図23に概略的に示されている。
【0098】
図20および
図21では、差込みコネクタケーシング3の溝11が例示的に、最早水平に形成されているのではなく、X方向に沿って延在する水平面に対して所定の角度、好適には15°で直線的に形成されている。
図22および23では、溝11が円弧状に、水平面に対して一方の図では凹状に、他方の図では凸状に形成されている。
【0099】
このような、直線的な溝の山形配置(
図20および
図21)または溝11の円弧状配置(
図22および
図23)により、差込み行程中のてこ力に、的確に影響を及ぼすことができる。このことは例えば、電気的なコンタクト部材40が、例えば電気的な舌片もしくはコンタクト薄板を有しており、電気的な舌片もしくはコンタクト薄板が、差込み過程に際して電気的な対応コンタクト部材41により押し退けられねばならない場合に有利である。これにより、差込み過程にもたらされるべき力を大幅に高めることができ(開口ピーク)、このことは、溝11の的確な幾何学形状構成により適合させることができ、これにより、差込み過程を実施する最大の挿入力もしくは差込み力が必要なときに、最大のてこ伝達比(ひいては相対的に最小の操作力)が存在していることになる。
【0100】
図24には、本発明の第5の実施例による差込みコネクタユニット100の差込みコネクタ1が示されている。同じもしくは機能的に同じ構成部材には、再び同じ符号を付してある。第5の実施例は、実質的に第1の実施例に相応しており、この場合、第1の実施例とは異なり、第1のジョイントピン53と、ピン10と、第1の係合部材8とは、最早共通の直線上に位置してはいない。換言すると、ピン10は、例えば第1の係合部材8のスリットに対して偏心的に配置されていてもよい。
図24から判るように、特にピン10と、第1の係合部材8もしくは(別の)ピン10と、第2の係合部材9との間の結合部が、山形もしくは偏心的に形成されている。これにより、差込み過程の実施に必要な力を大幅に低下させることができる。この場合、
図24は、差込みコネクタ1がちょうど対応差込みコネクタ20に載置されており、これにより、係合部材8,9が対応する対応部材21,22に接触している差込み過程の状態を示している。
【0101】
図24もやはり、第1のレバーユニット5における差込みコネクタ1の片側のみを示している。第2のレバーユニット15を含む差込みコネクタ1の第2の側も同様に構成されているため、最早詳細に説明はしない。
【0102】
説明した実施例について述べておくと、当然のことながら、様々な組合せが可能である。特に、
図20、
図21、
図22および
図23に示した溝11は、説明した全ての実施例において使用され得る。
【0103】
また、
図18、
図19および
図24に示した係合部材は、説明した全ての実施例において使用され得る、ということも可能である。
【0104】
さらに述べておくと、溝11は、差込みコネクタケーシング3に設けられているのではなく、レバーユニット5,15に設けられており、この場合、相応してピン10は、差込みコネクタケーシング3に設けられている、ということも可能である。換言すると、レバーユニット5,15および差込みコネクタケーシング3に設けられたガイドユニット6,7,16,17および係合部材8,9,18,19は、それぞれ他方の構成部材に設けられていてもよい。
【0105】
さらに、全ての実施例が単一のレバーユニットだけを備えて形成されていてもよい、ということは自明である。この場合、第2のレバーユニット15の図は、必ず2つのレバーユニット5,15が設けられねばならない、ということを意味するわけではない。
【0106】
さらに、差込みコネクタケーシング3の同じ長辺に配置された、ここでは例示的に溝11として形成されたガイドユニットもしくはガイド収容部は、同じ高さに(すなわちZ軸に沿って見て)配置される必要はない、ということも自明である。このことは例えば、差込みコネクタケーシング3の同じ長辺に配置された対応部材21,22もしくは23,24が(Z軸に関して)異なる高さに配置されている場合に有意であり得る。同様に、第1および第2のガイドスリット32,33は、例えば差込み方向Zに対して(やや)傾斜して、例えば最大30°だけ、好適には最大15°だけ、特に好適には最大10°だけ傾斜して延在していてもよい。
【0107】
提案した差込みコネクタは、可変の差込み力低下のためにリンク構造を有しているレバーユニットを備えた差込みコネクタに比べ、操作時の摩擦力が大幅に低減されている、という利点を有している。
【0108】
提案した差込みコネクタは、操作力低下のためにスライダ部材を備えた差込みコネクタに比べ、操作時の摩擦力が大幅に低減されている、という利点を有している。さらに、提案した構成は、嵌め合わせおよび/または取外しの際に自己センタリング式に働くため、差込み接続部の嵌め合わせまたは取外し時に傾倒または傾斜するリスクが低減されている。
【0109】
提案した差込みコネクタは、歯車相互の噛合いにより形成された、操作力低下のためのレバーユニットを備えた差込みコネクタに比べ、簡単な手段と少ない摩擦とでもって、可変の伝達比を調整することができると共に、各用途に適合させることができる、という利点を有している。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込み方向(Z)に沿って、対応差込みコネクタケーシング(2)を有する対応差込みコネクタ(20)に嵌め合わせる差込みコネクタ(1)であって、当該差込みコネクタ(1)は、
差込みコネクタケーシング(3)と、
前記差込みコネクタケーシング(3)内に配置された複数の電気的なコンタクト部材(40)と、
前記差込みコネクタケーシング(3)に回動可能に支持されており、当該差込みコネクタと前記対応差込みコネクタとの嵌め合わせおよび/または取外しに際して操作力を低下させる第1のレバーユニット(5)と
を有し、
前記第1のレバーユニット(5)は、
第1の脚部(51)および第2の脚部(52)であって、該第2の脚部(52)は、第1のジョイントピン(53)を介して旋回可能に前記第1の脚部(51)に配置されており、前記第1のジョイントピン(53)は、前記差込みコネクタケーシング(3)に設けられた
、前記差込み方向(Z)に沿って延在する第1のガイドスリット(32)内で可動である、第1の脚部(51)および第2の脚部(52)と、
前記第1の脚部(51)と前記差込みコネクタケーシング(3)との間の第1のガイドユニット(6)であって、該第1のガイドユニット(6)は、第1のガイド部材と、該第1のガイド部材を収容する第1のガイド収容部とを有する、の第1のガイドユニット(6)と、
前記第2の脚部(52)と前記差込みコネクタケーシング(3)との間の第2のガイドユニット(7)であって、該第2のガイドユニットは、第2のガイド部材と、該第2のガイド部材を収容する第2のガイド収容部とを有する、第2のガイドユニット(7)と、
前記第1の脚部(51)に配置されておりかつ前記対応差込みコネクタケーシング(2)に設けられた第1の対応部材(21)に係合するように構成された第1の係合部材(8)と、
前記第2の脚部(52)に配置されておりかつ前記対応差込みコネクタケーシング(2)に設けられた第2の対応部材(22)に係合するように構成された第2の係合部材(9)と、
を有している、
差込みコネクタ(1)。
【請求項2】
第3の脚部(151)と第4の脚部(152)とを有する第2のレバーユニット(15)であって、該第4の脚部(152)は、第2のジョイントピン(153)を介して前記第3の脚部(151)に配置されており、前記第2のジョイントピン(153)は、前記差込みコネクタケーシング(3)に設けられた
、前記差込み方向(Z)に沿って延在する第2のガイドスリット(33)内で可動に配置されている、第2のレバーユニット(15)と、
前記第3の脚部(151)と前記差込みコネクタケーシング(3)との間の第3のガイドユニット(16)をであって、前記第3のガイドユニットは、第3のガイド部材と、該第3のガイド部材を収容する第3のガイド収容部とを有する、第3のガイドユニット(16)と、
前記第4の脚部(152)と前記差込みコネクタケーシング(3)との間の第4のガイドユニット(17)であって、該第4のガイドユニットは、第4のガイド部材と、該第4のガイド部材を収容する第4のガイド収容部とを有する、第4のガイドユニット(17)と、
前記第3の脚部(151)に配置されておりかつ前記対応差込みコネクタケーシング(2)に設けられた第3の対応部材(23)に係合するように構成された第3の係合部材(18)と、
前記第4の脚部(152)に配置されておりかつ前記対応差込みコネクタケーシング(2)に設けられた第4の対応部材(24)に係合するように構成された第4の係合部材(19)と、
をさらに有している、
請求項1記載の差込みコネクタ
(1)。
【請求項3】
前記第1のレバーユニット(5)と前記第2のレバーユニット(15)とは、結合部材(50)を介して互いに結合されている、請求項2記載の差込みコネクタ(1)。
【請求項4】
前記第1および第2のガイドスリット(32,33)は、直線的に形成されている、請求項2または3記載の差込みコネクタ(1)。
【請求項5】
前記第1および第2のガイドスリット(32,33)は、前記差込み方向(Z)に沿って配置されている、請求項4記載の差込みコネクタ(1)。
【請求項6】
前記第1のジョイントピン(53)は、前記第1の脚部(51)に配置されており、前記第2のジョイントピン(153)は、前記第3の脚部(151)に配置されている、請求項2から5までのいずれか1項記載の差込みコネクタ(1)。
【請求項7】
前記ガイドユニット(6,7,16,17)は、それぞれ前記ガイド部材としてピン(10)を有しかつ前記ガイド収容部として溝(11)を有し、前記ピン(10)の位置は、前記溝(11)内で可変である、請求項2から6までのいずれか1項記載の差込みコネクタ(1)。
【請求項8】
1つの前記脚部(51,52,151,152)にそれぞれ1つの前記ピン(10)が配置されておりかつ前記差込みコネクタケーシング(3)にそれぞれ1つの前記溝(11)が配置されている、請求項7記載の差込みコネクタ(1)。
【請求項9】
前記溝(11)は
、前記差込み方向(Z)に対して横方向に、特に直角に延在している、請求項7または8記載の差込みコネクタ(1)。
【請求項10】
前記溝(11)は、直線
的または円弧状
である、請求項
7から9までのいずれか1項記載の差込みコネクタ
(1)。
【請求項11】
前記ガイドスリット(32,33)は、前記差込み方向(Z)に沿って見て、前記溝(11)の下側に位置する下端部を有し、かつ/または前記ガイドスリット(32,33)は、前記差込み方向(Z)に沿って見て、前記溝(11)の上側に位置する上端部を有している、請求項
7から10までのいずれか1項記載の差込みコネクタ
(1)。
【請求項12】
差込みコネクタユニットであって、
請求項1から11までのいずれか1項記載の差込みコネクタ(1)と、
対応差込みコネクタ(20)と
を有し、
前記対応差込みコネクタ(20)は、対応部材(21,22,23,24)を備えた対応差込みコネクタケーシング(2)を有している、
差込みコネクタユニット。
【請求項13】
前記対応差込みコネクタ(20)は、複数の電気的な対応コンタクト部材を有し、該対応コンタクト部材は、前記対応差込みコネクタケーシング(2)内に配置されておりかつ前記差込みコネクタと前記対応差込みコネクタとが嵌め合わせられた状態で前記差込みコネクタ(1)の電気的なコンタクト部材にコンタクトするように構成されている、請求項12記載の差込みコネクタユニット。
【請求項14】
前記差込みコネクタケーシング(2)に設けられた前記対応部材(21,22,23,24)は、嵌め合わせに際して、前記差込みコネクタケーシング(3)に設けられた相補的な対応部材構造(12)に結合されており、かつ
前記対応部材(21、22、23、24)は、嵌め合わせの際に、前記差込みコネクタケーシングに対して相対的に前記差込み方向(Z)に沿って変位する、
請求項12または13記載の差込みコネクタユニット。
【国際調査報告】