(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】熱硬化性粉体コーティング組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 167/06 20060101AFI20230413BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20230413BHJP
C09D 175/14 20060101ALI20230413BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C09D167/06
C09D5/03
C09D175/14
C09D163/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552848
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 CN2021084715
(87)【国際公開番号】W WO2022160461
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110133348.8
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522348859
【氏名又は名称】佛山宜可居新材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】FOSHAN YIKEJU NEW MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Workshop 6, China-Europe Technological Cooperation Industrial Zone, Huasha Road, Shishan Town, Nanhai District Foshan, Guangdong 528000 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】伍明
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB001
4J038DD181
4J038DG202
4J038DG262
4J038KA04
4J038NA01
4J038NA11
4J038NA12
4J038NA23
4J038NA26
4J038PA02
4J038PA19
(57)【要約】
【課題】本発明は粉体コーティング分野に関し、具体的には熱硬化性粉体コーティング組成物及びその製造方法を開示している。
【解決手段】前記粉体コーティング組成物は、i)マイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分と、ii)マイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分と、iii)少なくとも1種の(半)結晶性固体反応希釈剤を含むC成分と、iv)少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分と、v)少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分と、を備える。対応して、本発明は、上記熱硬化性粉体コーティング組成物を製造する製造方法を開示している。本発明によれば、超低温で硬化可能であり、硬化温度が90~110℃と低く、硬化時間が短い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)マイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分と、
ii)マイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分と、
iii)少なくとも1種の(半)結晶性固体反応希釈剤を含むC成分と、
iv)少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分と、
v)少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分と、
を備えることを特徴とする熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項2】
前記C成分が、少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項3】
前記C成分が、ビニルエーテル官能基を有する少なくとも1種の(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項4】
前記C成分が、ビニルエーテル基又はビニルエステル基又はビニルエーテル-エステル基を有する化合物及び/又はその誘導体と、イソシアネート基を有する化合物及び/又はその誘導体との反応生成物であることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート基を有する化合物は、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項6】
前記トルエンジイソシアネートが、トルエン2,6-ジイソシアネートとトルエン2,4-ジイソシアネートとの混合物であることを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項7】
前記ビニルエーテル基を有する化合物が、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項8】
前記C成分は、
ビニルエーテル基を有する化合物、助剤、水を反応装置に添加し、窒素雰囲気で撹拌し、35~50℃まで加熱昇温するステップと、
イソシアネート基を有する化合物を、35~50℃の保温条件下で、反応装置にゆっくりと滴下するステップと、
イソシアネート基を有する化合物を添加した後、反応装置の温度を110℃未満に制御し、30分間保持した後、真空引きして低分子揮発物を除去して最終生成物を得るステップと、
を含む方法により製造されることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項9】
前記C成分は、下記条件のうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
a、前記C成分は、数平均分子量Mnが100~8000Daである;
b、前記C成分は、当量重量が100~4000g/molであるビニルエーテル官能基を有する;
c、前記C成分は、融点が30~110℃であり、結晶点が20~80℃である;
d、前記C成分は、100℃の温度での粘度が0.01~20Pa.sである。
【請求項10】
前記A成分が、下記の分子構造を有するC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を2個以上有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
(式中、RはH、アルキル基又は芳香族基であり、XとYは同じ基でもよいし、異なる基でもよく、XとYはアルコキシ基、アルキル基、芳香族基又はアラルキル基である。)。
【請求項11】
前記A成分が、マロン酸、アセト酢酸、マロンアミド、アセトアミド又はシアノ酢酸エステルによって提供される、2個以上のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項10に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項12】
前記A成分は、下記条件のうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項10に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
a、前記A成分は、数平均分子量Mnが500~20000Daである;
b、前記A成分のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基の当量重量が150~15000g/molである;
c、前記A成分のガラス転移温度Tgが、30~110℃である;
d、前記A成分は、160℃の温度での粘度が400Pa.s未満である。
【請求項13】
前記B成分が、2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項14】
前記B成分が、アクリル酸とフマル酸及びマレイン酸からなるブテンジオン酸単量体とを共重合してなる非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項13に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項15】
前記B成分は、下記条件のうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項13に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
a、前記B成分は、数平均分子量Mnが500~20000Daである;
b、前記B成分の不飽和C=C官能基の当量重量が150~15000g/molである;
c、前記B成分のガラス転移温度Tgが30~110℃である;
d、前記B成分は、160℃の温度での粘度が400Pa.s未満である。
【請求項16】
前記D成分が、エポキシ基含有エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリルポリエステル、またはエポキシ系硬化剤であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項17】
前記D成分が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック変性エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ基含有エポキシ樹脂であり、
前記エポキシ基含有エポキシ樹脂およびエポキシ基含有アクリルポリエステルの数平均分子量が200~2000Daであり、エポキシ当量が100~1000g/当量であることを特徴とする請求項16に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項18】
前記D成分が、トリグリシジルイソシアヌレート、多価安息香酸グリシジルエステルからなる群より選択される1種以上のエポキシ系硬化剤であることを特徴とする請求項16に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項19】
前記E成分が、70~100℃でエポキシ樹脂の開環反応を促進する少なくとも1種の塩基性触媒を含有することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項20】
前記E成分は、第三級アミン系触媒、第三級ホスフィン系触媒、またはイミダゾール系触媒であることを特徴とする請求項19に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項21】
前記A成分、B成分およびC成分の添加量の合計を100wt%とし、
前記D成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.1~50wt%であり、
前記E成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.05~30wt%であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項22】
前記A成分の添加量が1~90wt%であり、前記B成分の添加量が0.5~90wt%であり、前記C成分の添加量が0.1~60wt%であり、前記A成分、B成分およびC成分の添加量の合計を100wt%とし、
前記D成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の3~40wt%であり、
前記E成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.3~15wt%であることを特徴とする請求項21に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項23】
前記A成分の添加量が10~65wt%であり、
前記B成分の添加量が5~60wt%であり、
前記C成分の添加量が2~30wt%であることを特徴とする請求項22に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項24】
前記D成分の添加量が、前記A成分、B成分、およびC成分の合計量の3~40wt%であり、
前記E成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.3~15wt%であることを特徴とする請求項21に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項25】
充填剤、顔料、助剤からなる群より選択される1種以上を含むH成分を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法であって、
D成分を、同じ重量または異なる重量の2つのF成分およびG成分に分けるステップ1)と、
A成分、B成分、C成分、E成分およびF成分を一緒に混合して、第1の予備混合物を得るステップ2)と、
第1の予備混合物を押出混合し、常温まで冷却して押出物を得るステップ3)と、
冷却された押出物を粉砕して、第1の粉体粒子を得るステップ4)と、
G成分を粉砕して、第2の粉体粒子を得るステップ5)と、
前記第1の粉体粒子及び第2の粉体粒子を混合し、粉砕して、粉体コーティング組成物の完成品を得るステップ6)と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項27】
前記F成分の使用量が、前記A成分、B成分及びC成分の合計量の1~35wt%であり、前記G成分の使用量が、前記A成分、B成分及びC成分の合計量の1~35wt%であることを特徴とする請求項26に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法。
【請求項28】
前記第1の粉体粒子は、粒径が(D50)15~130μmであり、
前記第2の粉体粒子は、粒径が(D50)1~130μmであることを特徴とする請求項26に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法。
【請求項29】
G成分を超音速ジェットミルで粉砕して第2の粉体粒子を得、
前記第1の粉体粒子と第2の粉体粒子とを混合してから、粉体コーティングに対してジェットミル粉砕を行って、粉体コーティング組成物の完成品を得ることを特徴とする請求項26に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体コーティングの技術分野に関し、特に、熱硬化性粉体コーティング組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体コーティングは、従来の溶剤型コーティングにおける有機溶剤を使用しないため、大気環境に対するVOCsの排出がほとんどなく、環境にやさしいコーティングである。同時にオーバースプレーされた粉体コーティングは、リサイクル使用が可能であり、使用効率がほぼ100%であり、液体コーティングのオーバースプレーによる固体危険廃棄物のリサイクル処理が困難であるという難題が解消され、従って、粉体コーティングは、源から大気汚染や固体危険廃棄物を治理する環境にやさしいグリーンコーティングとして、大いに発展していた。
【0003】
粉体コーティング組成物の塗布方式は、粉体コーティングを空気流中に分散させ、電界により粉体コーティング粒子を静電荷帯電させ、帯電させた粉体コーティング粒子が塗布されるワークに塗布され、ワークの表面コーティングが加熱・溶融・レベリングされて粉体コーティングになる静電スプレー塗装方式である。
【0004】
粉体コーティングは、熱硬化性または熱可塑性であり得、本発明は、熱硬化性粉体コーティング組成物の分野に関する。熱硬化型粉体コーティング組成物とは、熱ラジカル開始剤によるラジカルの熱硬化後に不可逆的な架橋ネットワークを形成する能力を必要としない複数成分の混合物を意味する。
【0005】
1990年代から、木材、プラスチック等の感熱性基材への粉体コーティングの適用が持続的に研究されており、最も早く実現されていたのは、木材の表面に紫外線を照射して粉体コーティングを硬化させ、100~130℃で3~5分間加熱レベリングした後、紫外線を照射してコーティングに硬化させた。しかし、着色に対する要求が高い粉体コーティングは、紫外線照射が非常に透過しにくく、粉体コーティングの硬化が不均一となり、一方、紫外線照射によりコーティングの色が黄変しやすくなる。放射線硬化は、複雑な3Dワーク上では実現できず、したがって、30年以来、紫外線による粉体コーティングの硬化は、大規模な商業的用途になっていない。
【0006】
低温130℃以下での熱硬化性粉体コーティングは、紫外線による粉体コーティングの硬化の欠点を克服する代替案となる。オランダDSM社による特許には、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性ポリエステル樹脂と、架橋剤と、熱ラジカル開始剤とを含有する80~130℃で硬化可能な粉体コーティング組成物が開示されているが、混合溶融押出製造工程における粉体コーティング組成物の吐出温度は60~100℃であり、このような低温粉体コーティング組成物の熱硬化温度70~130℃と非常に近く、溶融押出混合製造時において、粉体コーティング組成物の熱ラジカル開始剤が分解してラジカルを発生しやすくなり、粉体コーティング組成物の架橋硬化を開始しやすくなり、かつ、粉体コーティング組成物中の結晶性樹脂が粉体コーティング溶融押出混合後に再結晶化しにくく、結晶化時間が長く、粉体コーティングの粉砕が困難となり、したがって、規模的な商業用途にはなっていない。
【0007】
従来の熱硬化性ポリエステルエポキシ混合系や熱ラジカル開始剤は、触媒による促進条件下で、120~150℃での熱硬化が可能となる。粉体コーティングの塗装使用及び輸送の温度が最高40℃に達するため、粉体コーティング組成物のガラス転移温度Tgが少なくとも50℃より高いか、さもなければ炎天下の夏に30~40℃になると、粉体コーティングが凝集しやすく塗装できず貯蔵安定性が悪く、粉体コーティングの塗装使用、貯蔵、輸送の要求を満たすために、粉体コーティング組成物のガラス転移温度が50℃を超える必要があり、粉体業界に属する当業者にとってよく分かるように、低温120~150℃で熱硬化可能な従来のポリエステル/エポキシ粉体コーティング組成物は、硬化温度を低下させるためにアミン系又はオニウム塩系の触媒を多く添加する必要があるが、触媒の使用が多いと、粉体コーティング組成物のガラス転移温度を低下させ、そのため低温粉体コーティング組成物の主体樹脂のガラス転移温度が50~65℃になってはじめて上記要求を満たすことができ、その結果、粉体コーティング組成物の溶融押出混合による生産温度が80~110℃であり、本発明の低温粉体コーティング組成物の熱硬化温度90~110℃とほとんど重なり、したがって、従来開示されている低温粉体コーティング組成物の化学原理、及び従来の混合、溶融押出、粉砕による粉体コーティング生産プロセスを用いて本発明の低温粉体コーティング組成物を生産することができない。
【0008】
粉体業界に属する当業者にとってよく分かるように、従来の低温120℃以下で熱硬化可能なエポキシ/ポリエステル混合型粉体コーティング組成物は、アミン系又はオニウム塩系触媒を多く添加する必要があるため、イオン型エポキシ基開環重合機構に属し、粉体コーティング組成物は室温23℃で貯蔵されると、その一部にエポキシ基開環反応が起こり、粉体コーティング組成物のコーティングに光沢を喪失し、ひいては砂つき、未硬化等の予備反応現象が起こることもある。従来の低温熱硬化可能なエポキシ/ポリエステル混合型粉体コーティングは、冷凍4~20℃の条件下で貯蔵する必要があり、ポットライフが30日以下であり、室温で光沢喪失や効果喪失がやすく、23~40℃の室温条件下で粉体コーティングを通常の塗装プロセスでリサイクルすることが困難である。
【0009】
マイケル付加反応機構はコーティング化学技術者に周知であり、液体コーティング業界における用途に多くの研究成果及び特許が出ており、特許番号CN105324426Aには、少なくとも2個の活性不飽和基成分(マイケル付加反応受容体基)と、少なくとも2個の活性メチレン又はメチン基の酸性プロトンC-H(マイケル付加反応供与基)と、X-H酸性基を有する化合物に由来する塩基性アニオンX-の塩である(XはN、P、O、Sなどである)塩基性成分Cとを含む、マイケル付加反応を応用する架橋性液体コーティング組成物が開示されている。米国のアシュランド・インコーポレーテッドによる特許CN1708401Aには、エポキシ樹脂と第4級アンモニウム、ホスホニウム、チオ塩などとからなる触媒系を用いて、アセトアセテート官能基を有するアクセプター化合物と多官能アクリレート官能基を有するアクセプター化合物とのマイケル付加反応を促進する液状コーティング組成物が開示されている。
【0010】
また、Allnex社による特許番号WO2019/145472A1には、少なくとも2個の活性不飽和基成分(マイケル付加反応受容体基)と、少なくとも2個の活性メチレン基又はメチン基の酸性プロトンC-H(マイケル付加反応供与体基)を用い、第4級アンモニウム、ホスホニウム、硫黄とカルボン酸との反応により形成されるカルボン酸塩(塩基性成分)、エポキシ基樹脂とカルボン酸とからなる潜在性触媒系を用い、なかでは、カルボン酸塩(塩基性成分)がX-H酸性基を有する化合物に由来する塩基性アニオンX-の塩であり(XはN、P、O、Sなどである)、塩基性成分がエポキシ基を有するエポキシ樹脂と相乗的にマイケル付加反応を促進するマイケル付加反応機構に基づく低温粉体コーティング組成物が開示されている。また、粉体コーティング組成物の生産にあたって溶融押出混合する際に発生可能な架橋予備反応を抑制し、塗装硬化時に反応硬化時間ウィンドウを長くして、レベリング性の良いコーティングを提供するように、過量なカルボン酸を添加してアルカリ成分を中和することでコーティング組成物の反応性を制御する必要がある。特許番号WO2019/145472A1(すなわち、CN111630081A)の組成物は、液体コーティングに関する特許CN105324426Aおよび特許CN1708401Aに開示されるのと同じマイケル付加反応機構を利用する。
【0011】
液体コーティングにマイケル付加反応を利用する場合の解決必要のある課題としては、マイケル付加反応は、常温での反応速度が速すぎ、コーティングをレベリングするウィンドウがなく、反応の抑制助剤を添加して反応速度を制御する必要があることである。一方、粉体コーティングは常温で固体であり、粉体コーティングを適当な粘度の流体に加熱溶融して、各反応成分の分子が液体コーティングの混合接触レベルに達するまで混合接触させてはじめて、マイケル付加反応を開始させることができるので、粉体コーティングにマイケル付加反応を応用することが面する課題は、液体コーティングの課題と大きく異なり、液体コーティングの反応機構を完全に採用するのでは、90~110℃で熱硬化可能な粉体コーティング組成物を製造することができない。
【0012】
特許番号WO2019/145472A1に開示された低温粉体コーティングの製造プロセスは、従来の溶融押出の方式を採用し、二軸押出機のスクリューの加温は、第1ゾーン15℃、第2ゾーン25℃、第3ゾーン80℃、第4ゾーン100℃の4つのゾーンに分けられ、吐口温度が100℃である。上記特許に開示された粉体コーティング組成物は、ガラス転移温度が36~55℃であり、溶融押出された粉体コーティング組成物を粉砕してコーティングの厚さが60~80μmとなるように静電塗装し、硬化温度が120~160℃であり、硬化架橋に20分を要する。上記特許は、粉体コーティング組成物を製造する際に、第3ゾーン及び第4ゾーンの温度を80~100℃に昇温して溶融押出しする必要がある。本発明の低温粉体コーティングの硬化に必要な温度である90~110℃とちょうど重なるが、粉体コーティング業界の当業者に周知のように、粉体コーティング組成物の溶融温度と硬化温度が重なる場合、溶融押出による製造プロセスは、90~110℃で3~10分間の条件下で熱硬化可能な低温粉体コーティング組成物を製造することができない。
【0013】
特許番号WO2019/145472A1の明細書の段落00252には、その成分を溶剤中にさせてはじめて95~102℃で反応し、その溶剤が酢酸ブチルであることが記載されているが、溶剤が存在しない粉体コーティングは、何れも、120℃前後で反応する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする技術課題は、超低温で硬化可能であり、硬化温度が90~110℃と低く、硬化時間が短い熱硬化性粉体コーティング組成物を提供することにある。
【0015】
本発明が解決しようとする技術課題は、硬化後にレベリング性、密着性、柔軟性、及び硬度等の性能がバランスよく取れた粉体コーティングが得られ、高度な着色性を有し、貯蔵安定性に優れ、非感熱性材料、感熱性材料及び3Dワークに使用できる熱硬化性粉体コーティング組成物を提供することに更にある。
【0016】
本発明が解決しようとする技術課題は、簡便で、工業的規模での適用が可能であり、かつ、低コストである熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法を提供することに更にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記技術効果を達成するために、本発明は、
i)マイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分と、
ii)マイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分と、
iii)少なくとも1種の(半)結晶性固体反応希釈剤を含むC成分と、
iv)少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分と、
v)少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分と、
を備える熱硬化性粉体コーティング組成物を提供する。
【0018】
上記の解決策の改良として、前記C成分が、少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を含む。
【0019】
上記の解決策の改良として、前記C成分が、ビニルエーテル官能基を有する少なくとも1種の(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂を含む。
【0020】
上記の解決策の改良として、前記C成分が、ビニルエーテル基又はビニルエステル基又はビニルエーテル-エステル基を有する化合物及び/又はその誘導体と、イソシアネート基を有する化合物及び/又はその誘導体との反応生成物である。
【0021】
前記イソシアネート基を有する化合物は、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種以上である。好ましくは、前記トルエンジイソシアネートが、トルエン2,6-ジイソシアネートとトルエン2,4-ジイソシアネートとの混合物である。
【0022】
前記ビニルエーテル基を有する化合物が、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルからなる群より選択される1種以上である。
【0023】
上記の解決策の改良として、前記C成分は、
ビニルエーテル基を有する化合物、助剤、水を反応装置に添加し、窒素雰囲気で撹拌し、35~50℃まで加熱昇温するステップと、
イソシアネート基を有する化合物を、35~50℃の保温条件下で、反応装置にゆっくりと滴下するステップと、
イソシアネート基を有する化合物を添加した後、反応装置の温度を110℃未満に制御し、30分間保持した後、真空引きして低分子揮発物を除去して最終生成物を得るステップと、
を含む方法により製造される。
【0024】
上記の解決策の改良として、前記C成分は、下記条件のうち少なくとも一つを満たす。
a、前記C成分は、数平均分子量Mnが100~8000Daである;
b、前記C成分は、当量重量が100~4000g/molであるビニルエーテル官能基を有する;
c、前記C成分は、融点が30~110℃であり、結晶点が20~80℃である;
d、前記C成分は、100℃の温度での粘度が0.01~20Pa.sである。
【0025】
上記の解決策の改良として、前記A成分が、下記の分子構造を有するC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を2個以上有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含む。
(式中、RはH、アルキル基又は芳香族基であり、XとYは同じ基でもよいし、異なる基でもよく、XとYはアルコキシ基、アルキル基、芳香族基又はアラルキル基である。)。
【0026】
上記の解決策の改良として、前記A成分が、マロン酸、アセト酢酸、マロンアミド、アセトアミド又はシアノ酢酸エステルによって提供される、2個以上のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含む。
【0027】
上記の解決策の改良として、前記A成分は、下記条件のうち少なくとも一つを満たす。
a、前記A成分は、数平均分子量Mnが500~20000Daである;
b、前記A成分のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基の当量重量が150~15000g/molである;
c、前記A成分のガラス転移温度Tgが、30~110℃である;
d、前記A成分は、160℃の温度での粘度が400Pa.s未満である。
【0028】
上記の解決策の改良として、前記B成分が、2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含む。
【0029】
上記の解決策の改良として、前記B成分が、アクリル酸とフマル酸及びマレイン酸からなるブテンジオン酸単量体とを共重合してなる非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂である。
【0030】
上記の解決策の改良として、前記B成分は、下記条件のうち少なくとも一つを満たす。
a、前記B成分は、数平均分子量Mnが500~20000Daである;
b、前記B成分の不飽和C=C官能基の当量重量が150~15000g/molである;
c、前記B成分のガラス転移温度Tgが30~110℃である;
d、前記B成分は、160℃の温度での粘度が400Pa.s未満である。
【0031】
上記の解決策の改良として、前記D成分が、エポキシ基含有エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリルポリエステル、またはエポキシ系硬化剤である。
【0032】
上記の解決策の改良として、前記D成分は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック変性エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ基含有エポキシ樹脂であり、
前記エポキシ基含有エポキシ樹脂およびエポキシ基含有アクリルポリエステルの数平均分子量が200~2000Daであり、エポキシ当量が100~1000g/当量である。
【0033】
上記の解決策の改良として、前記D成分が、トリグリシジルイソシアヌレート、多価安息香酸グリシジルエステルからなる群より選択される1種以上のエポキシ系硬化剤である。
【0034】
上記の解決策の改良として、前記E成分が、70~100℃でエポキシ樹脂の開環反応を促進する少なくとも1種の塩基性触媒を含有する。
【0035】
上記の解決策の改良として、前記E成分は、一般構造式X(R)3(式中、XはNまたはP元素であり、Rは1~8個の炭素原子を有する同一または異なるアルキル、アリールまたはアラルキル基である)で示される第三級アミン系触媒、第三級ホスフィン系触媒である。
【0036】
また、前記E成分は、イミダゾール系触媒である。
【0037】
上記の解決策の改良として、前記A成分、B成分およびC成分の添加量の合計を100wt%とし、
前記D成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.1~50wt%であり、
前記E成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.05~30wt%である。
【0038】
上記の解決策の改良として、前記A成分の添加量が1~90wt%であり、前記B成分の添加量が0.5~90wt%であり、前記C成分の添加量が0.1~60wt%であり、前記A成分、B成分およびC成分の添加量の合計を100wt%とし、
前記D成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の3~40wt%であり、
前記E成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.3~15wt%である。
【0039】
上記の解決策の改良として、前記A成分の添加量が10~65wt%であり、
前記B成分の添加量が5~60wt%であり、
前記C成分の添加量が2~30wt%である。
【0040】
上記の解決策の改良として、前記D成分の添加量が、前記A成分、B成分、およびC成分の合計量の3~40wt%であり、
前記E成分が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.3~15wt%である。
【0041】
上記の解決策の改良として、充填剤、顔料、助剤からなる群より選択される1種以上を含むH成分を更に含む。
【0042】
対応して、本発明は、熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法であって、
D成分を、同じ重量または異なる重量の2つのF成分およびG成分に分けるステップ1)と、
A成分、B成分、C成分、E成分およびF成分を一緒に混合して、第1の予備混合物を得るステップ2)と、
第1の予備混合物を押出混合し、常温まで冷却して押出物を得るステップ3)と、
冷却された押出物を粉砕して、第1の粉体粒子を得るステップ4)と、
G成分を粉砕して、第2の粉体粒子を得るステップ5)と、
前記第1の粉体粒子及び第2の粉体粒子を混合し、粉砕して、粉体コーティング組成物の完成品を得るステップ6)と、
を含む製造方法を提供する。
【0043】
上記の解決策の改良として、前記F成分の使用量が、前記A成分、B成分及びC成分の合計量の1~35wt%であり、前記G成分の使用量が、前記A成分、B成分及びC成分の合計量の1~35wt%である。
【0044】
上記の解決策の改良として、前記第1の粉体粒子は、粒径が(D50)15~130μmであり、
前記第2の粉体粒子は、粒径が(D50)1~130μmである。
【0045】
上記の解決策の改良として、G成分を超音速ジェットミルで粉砕して第2の粉体粒子を得、
前記第1の粉体粒子と第2の粉体粒子とを混合してから、粉体コーティングに対してジェットミル粉砕を行って、粉体コーティング組成物の完成品を得る。
【0046】
本発明の実施は、以下の有利な効果を有する。
一、本発明は、A成分、B成分、C成分、D成分およびE成分を含み、A成分である非晶性固体ポリエステル樹脂がマイケル付加反応供与体反応性基を提供し、B成分である非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂がマイケル付加反応受容体反応性基を提供し、C成分が、少なくとも1種の(半)結晶性固体反応性希釈剤を含み、D成分が、エポキシ基含有固形物であり、E成分が、塩基性触媒であり、ここで、本発明のC成分は、従来の遅延触媒系を用いるのではなく、(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を用いることにより、90~110℃での粉体コーティング組成物の溶融粘度を低下させ、各反応成分の分子混合接触を液体コーティングの混合接触レベルに達することができ、マイケル付加反応を迅速に完了させることができ、さらには、低温粉体コーティング組成物が90~110℃で3~10分間、許容できる程度に熱硬化できることを保証する。
二、従来のポリエステルエポキシ混合反応系の粉体コーティングは、室温乾燥保存条件下で、硬化温度が低いほど、光沢を喪失しやすく、120℃以下で硬化する粉体コーティングは、7日以内に光沢を喪失するという難題があった。本発明は、低温粉体コーティング組成物の硬化架橋反応に影響を与える肝心な成分であるエポキシ基を有するD成分を選択し、80~100℃で溶融押出時の低温粉体コーティング組成物にD成分の一部のみを添加し、その後、残りのD成分を一緒に乾式混合して気流粉砕し、溶融押出混合と乾式気流粉砕混合とによる分散の大きな差を利用して、低温粉体コーティング組成物間の分子接触と熱運動の大きな差を作り出し、低温粉体コーティング系の常温での反応重合速度が抑制され、低温粉体コーティングの貯蔵光沢安定性が向上し、低温粉体コーティングの貯蔵時間が延長した。
三、本発明の粉体コーティング組成物は、熱硬化後に、レベリング性、密着性、柔軟性及び硬度等の性能がバランスよく取れた粉体コーティングが得られ、高度な着色性を有し、金属、木材、プラスチック、ケイ酸カルシウム等の非感熱性又は感熱性材料、さらには複雑な3Dワークにも適用することができ、応用範囲が広く、装飾効果が良い。
四、本発明の粉体コーティング組成物の製造方法は、D成分を、同じ重量または異なる重量の2つのF成分およびG成分に分けるステップと、A成分、B成分、C成分、E成分およびF成分を一緒に混合して、第1の予備混合物を得るステップと、第1の予備混合物を押出混合し、常温まで冷却して押出物を得るステップと、冷却された押出物を粉砕して、第1の粉体粒子を得るステップと、また、G成分を粉砕して、第2の粉体粒子を得るステップと、最後に、第1の粉体粒子及び第2の粉体粒子を混合し、粉砕して、完成品を得るステップと、を含む。上記製造方法は、簡便で、工業的規模での適用が可能であり、低コストである。得られたコーティング組成物は、90~110℃で3~10分間、許容できる程度に熱硬化でき、レベリング性、密着性、柔軟性及び硬度等の性能がバランスよく取れた粉体コーティングが得られ、高度な着色性を有し、金属、木材、プラスチック、ケイ酸カルシウム等の非感熱性又は感熱性材料、さらには複雑な3Dワーウにも適用することができ、応用範囲が広く、装飾効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による熱硬化性粉体コーティング組成物の示差熱走査(DSC)チャートである。
【
図2】本発明による熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の目的、解決策及び利点をより明確にするために、以下、本発明をより詳細に説明する。
【0049】
本発明は、90~110℃で3~10分間熱硬化を行うことができる熱硬化性粉体コーティング組成物であって、具体的には、
i)マイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分と、
ii)マイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分と、
iii)少なくとも1種の(半)結晶性固体反応希釈剤を含むC成分と、
iv)少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分と、
v)少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分と、
を備える熱硬化性粉体コーティング組成物を提供する。
ここで、i)+ii)+iii)の合計量(wt%)は100%に等しく、前記D成分、E成分のwt%はi)+ii)+iii)の合計量に基づくものである。
【0050】
この解決策をより良く説明ために、本明細書において、技術用語の一部を定義する。
「室温」とは、本明細書において23℃を意味する。
「常温」とは、本明細書において23℃~35℃を意味する。
「低温で許容できる程度に硬化する」とは、最大110℃で最大10分間硬化された場合に、粉体コーティングは、アセトンの少なくとも100回の双方向摩擦に耐えることができることを意味する。
「良好な密着性」とは、本明細書においてISO2409のクロスカット試験に従い、0(最良)~5(最悪)の等級において、粉体コーティングの密着力が0~2レベルの範囲内であり、より好ましくは0~1レベルの範囲内であることを意味する。
「硬化」とは、本明細書において、化学反応が生じた後に、コーティングが不可逆的な架橋ネットワークを形成するプロセスを指し、ここで、材料がもはや流動、溶融、または溶解せず、「硬化」と「架橋」は本明細書において交換可能である。本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物は、加熱により硬化するものであり、「熱硬化」と呼ばれ、紫外線(UV)、電子線、熱ラジカル開始剤による硬化を除く。
「良好なレベリング性」とは、本明細書において、従来の粉体コーティングのレベリング性に従い、1(最悪)~10(最良)のレベル範囲に分類し、良好な粉体コーティングのレベリング性としては、3以上であることが必要であり、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、最も好ましくは6以上であることを意味する。
「樹脂」とは、本明細書において、熱硬化性ポリマー化学の当業者に理解されるものと同じ意味を有する、熱硬化性架橋が可能で反応性基を有するポリマーとして理解され得る。樹脂の分子量は、熱硬化性ポリマー化学の当業者に周知の数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)のいずれかで特徴づけられることができる。
「組成物」とは、本明細書において、異なる化学物質及び/又は構成成分の組み合わせ及び/又は混合物、それで形成される一体ものを指す。
「粉体」とは、本明細書において、微細で、ゆるい粒子の状態で、23℃~40℃の室温で凝集体を形成しない良好な流動性を有することを意味し、従来の静電粉体塗装プロセスを用いて塗装することができ、ここで、個々の粒子の寸法は、室温及び大気圧条件下で130μm以下であり、本発明による粒状材料の粒径を測定するための方法は、篩い分け法である。
「熱硬化可能な粉体コーティング組成物」とは、本明細書において、加熱硬化能を有する粉体形態の組成物を指す。本発明の組成物は、熱硬化可能な組成物である。
「非晶性、(半)結晶」は、本明細書において、熱硬化性ポリマー化学に従事する当業者に周知の、結晶化度の観点からポリマーの主要な特徴を特徴付ける用語であり、「非晶性」は、融点を有さず、ガラス転移温度で特徴付けられ、「半)結晶」は、融点および結晶化点を有し、DSCを用いて測定することができる。
「エチレン性不飽和基」とは、シス又はトランス型の反応性C=C炭素-炭素二重結合不飽和基を意味し、芳香族不飽和基を含まない。
「反応性基」とは、本明細書において、エポキシ開環及びマイケル付加反応に関与する基を指す。本発明のA成分の反応性基とは、マロン酸、アセト酢酸、マロンアミド、アセトアミド、シアノ酢酸エステル等で提供されるC-H酸性プロトン供与基を指す。本発明のB成分の反応性基とは、不飽和C=Cエチレン性受容体基を指す。本発明のC成分の反応性基とは、ビニルエーテル又はエステル基を指す。本発明のD成分の反応性基とは、エポキシ基を指す。
「反応性基の単位あたりの当量重量」とは、本明細書において、ポリマーの数平均分子量Mnを、前記ポリマーの合成中に添加される反応性基の量で割ることによって計算されることを意味する。
「不飽和樹脂」とは、本明細書において、エチレン性不飽和基を有する樹脂を意味する。
「主樹脂組成物」とは、本明細書において、活性メチレン基又はメチン基中の酸性プロトン性C-H基を2個以上有する固状非晶性ポリエステル樹脂と、活性不飽和C=C基を2個以上有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固状ポリエステル樹脂との組成物を意味する。
「固体反応性希釈剤」とは、本明細書において、主樹脂組成物の硬化架橋反応に関与し、粉体コーティング反応系の溶融粘度を低下させ、コーティング系の反応速度を高めることができる樹脂成分を意味する。低温粉体コーティング組成物の硬化温度より低いか、それと等しい融点を有する必要があり、100℃での溶融粘度が200mPa.s以下であり、低温粉体コーティング組成物系の溶融粘度を低下させる機能を有する。「固体反応性希釈剤」は、室温条件下で固体である。
「粉体コーティング」は、本明細書において、本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物の部分的又は完全に硬化した形態を意味する。
なお、本明細書に記載のガラス転移温度Tg、融点(Tm)、結晶化温度(Tc)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
「粘度」は、特に明記しない限り、本明細書において、160℃での溶融粘度(Pa.s)を意味する。粘度は、回転式レオメーター(Brookfield CAP2000+、回転速度200rpm、5#回転子19.07mm)を用いた。
【0051】
以下、本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物の各成分をさらに説明する。
【0052】
A成分は、マイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含み、マイケル付加反応供与体反応性基を提供する機能を有する。B成分は、マイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含み、マイケル付加反応受容体反応性基を提供する機能を有する。なお、A成分及びB成分は、マイケル付加反応を起こし得る供与体反応性基と受容体反応性基を提供できていれば、その態様は多様である。
【0053】
前記C成分は、少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を含む。好ましくは、(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂は、ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂、ビニルエステル官能性ポリウレタン樹脂、ビニルエーテル-エステル官能性ポリウレタン樹脂からなる群を含むが、これらに限定されない。ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂、ビニルエーテル-エステル官能性ポリウレタン樹脂からなる群がより好ましく、ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂がさらに好ましい。
【0054】
前記C成分は、少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を含む。好ましくは、(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂は、ビニルエーテル官能基、ビニルエステル官能基、又はビニルエーテル-エステル官能基を末端に有する(半)結晶性ポリウレタン樹脂であり、ビニルエーテル官能基、又はビニルエーテル-エステル官能基を末端に有する(半)結晶性ポリウレタン樹脂がより好ましく、ビニルエーテル官能基を末端に有する(半)結晶性ポリウレタン樹脂がさらに好ましい。すなわち、本発明のC成分は、ビニルエーテル官能基を有する少なくとも1種の(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0055】
前記C成分は、好ましくは、少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を含み、イソシアネート基を有する化合物及び/又はその誘導体と、ビニルエーテル基又はビニルエステル基又はビニルエーテルエステル基を有する化合物及び/又はその誘導体と、ヒドロキシル基含有モノアルコール又は多価アルコールとの反応生成物である。より好ましくは、前記C成分は、イソシアネート基を有する化合物及び/又はその誘導体と、ビニルエーテル基又はビニルエステル基又はビニルエーテルエステル基を有する化合物及び/又はその誘導体との反応生成物である。さらに好ましくは、前記C成分は、ビニルエーテル基を有する化合物及び/又はその誘導体と、イソシアネート基を有する化合物及び/又はその誘導体との反応物である。
【0056】
これらの中でも、(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を製造するための前記イソシアネート基を有する化合物は、単量体型又は重合型イソシアネートを含むが、これらに限定されず、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。中でも、前記トルエンジイソシアネートは、トルエン2,6-ジイソシアネートとトルエン2,4-ジイソシアネートとの混合物(TDI)であることが好ましく、その添加割合は、それぞれ、0.01~99.99%および0.01~99.99%であることが好ましいが、これらに限定されない。前記ヘキサメチレンジイソシアネートが、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI)であり、前記イソホロンジイソシアネートが3-イソシアネートメチレン-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートである。より好ましくは、前記イソシアネート基を有する化合物は、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI)である。
【0057】
(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を製造するための前記ビニルエーテル基を有する化合物は、好ましくは、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。より好ましくは、前記ビニルエーテル基を有する化合物は、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルである。
【0058】
さらに、C成分に関して、少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を含むC成分は、数平均分子量Mnが100Da以上、好ましくは200Da以上、より好ましくは300Da以上である。少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を含むC成分は、数平均分子量Mnが8000Da以下、好ましくは6000Da以下、より好ましくは4000Da以下、さらに好ましくは2000Da以下である。
【0059】
すなわち、前記C成分の数平均分子量Mnは、好ましくは100~8000Da、より好ましくは300~2000Daである。分子量の大きさは溶融粘度と相関があり、前記C成分の数平均分子量Mnが上記範囲内にあると、分子量が小さく溶融粘度が低い。
【0060】
少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を含むC成分は、融点が30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは55℃以上である。少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を含むC成分は、融点が120℃以下、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。前記C成分の融点は、上記範囲内にあると、粉体コーティングの硬化反応温度よりも低いことを確保する必要がある。
【0061】
すなわち、前記C成分の融点は、好ましくは30~110℃、より好ましくは55~100℃である。前記C成分の融点は、上記範囲内にあると、粉体コーティングの硬化反応温度よりも低いことを確保する必要がある。
【0062】
少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を含むC成分は、そのビニルエーテル官能基当量が100g/mol以上、好ましくは300g/mol以上である。少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を含むC成分は、そのビニルエーテル官能基当量が4000g/mol以下、好ましくは2500g/mol以下、より好ましくは1500g/mol以下、さらに好ましくは1000g/mol以下である。
【0063】
すなわち、前記C成分のビニルエーテル官能基当量重量は、好ましくは100~4000g/mol、より好ましくは100~1000g/mol、さらに好ましくは300~1000g/molである。
【0064】
少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を含むC成分は、100℃での粘度が、0.01Pa.s以上、好ましくは0.05Pa.s以上、より好ましくは0.1Pa.s以上、さらに好ましくは0.5Pa.s以上である。少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を含むC成分は、100℃での粘度が、20Pa・s以下、好ましくは15Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、さらに好ましくは5Pa・s以下、特に好ましくは1Pa・sである。
【0065】
すなわち、前記C成分の100℃での粘度は、好ましくは0.01~20Pa.s、より好ましくは0.01~1Pa.s、さらに好ましくは0.5~1Pa.sである。C成分は、溶融粘度が低く、反応系の粘度を低下させることができ、反応系にいて希釈剤として作用する。
【0066】
まとめると、前記C成分は、以下の条件を満たす。
a、前記C成分は、数平均分子量Mnが100~8000Daである;
b、前記C成分は、当量重量が100~4000g/molであるビニルエーテル官能基を有する;
c、前記C成分は、融点が30~110℃であり、結晶点が20~80℃である;
d、前記C成分は、100℃の温度での粘度が0.01~20Pa.sである。
【0067】
この際、C成分として、(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を用いることにより、90~110℃での粉体コーティング組成物の溶融粘度を低下させ、各反応成分の分子混合接触を液体コーティングの混合接触レベルに達することができ、マイケル付加反応を迅速に完了させることができ、さらには、低温粉体コーティング組成物が90~110℃で3~10分間、許容できる程度に熱硬化できることを保証する。
【0068】
さらに、前記C成分は、以下の方法によって製造される。
ビニルエーテル基を有する化合物、助剤、水を反応装置に添加し、窒素雰囲気で撹拌し、35~50℃まで加熱昇温するステップ(1);
好ましくは、ビニルエーテル基を有する化合物、助剤、水を反応装置に添加し、窒素雰囲気で撹拌し、40~45℃に加熱昇温する。ここで、該助剤は、触媒、酸化防止剤などを含むが、これらに限定されない。該反応装置は、温度計、攪拌機、蒸留装置を備えた四つ口フラスコである。
イソシアネート基を有する化合物を、35~50℃の保温条件下で、反応装置にゆっくりと滴下するステップ(2);
好ましくは、イソシアネート基を有する化合物を40℃の保温条件下で、反応装置にゆっくりと滴下する。より好ましくは、このステップは、ラジカル重合禁止剤も添加され、すなわち、このステップは、イソシアネート基を有する化合物、ラジカル重合禁止剤を、40℃の温度条件下で、反応装置にゆっくりと滴下するものである。
イソシアネート基を有する化合物を添加した後、反応装置の温度を110℃未満に制御し、30分間保持した後、真空引きして低分子揮発物を除去して最終生成物を得るステップ(3)。
好ましくは、イソシアネート基を有する化合物を添加した後、反応装置の温度を110℃未満に制御し、30分間保持した後、110℃で真空引きして低分子揮発物を除去して最終生成物を得る。最後生成物は、数平均分子量Mnが100~8000Daで、融点Tmが30~110℃で、ビニルエーテル官能基の当量重量が100~4000g/molである。
【0069】
D成分は、少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含む。前記D成分は、エポキシ基含有エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリルポリエステル、またはエポキシ型硬化剤である。好ましくは、エポキシ基の固形物は、固形エポキシ樹脂またはエポキシ硬化剤D成分である。具体的に、固形エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック変性エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、前記固形エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック変性エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である。より好ましくは、前記固形エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0070】
エポキシ硬化剤D成分がエポキシ型硬化剤である場合、トリグリシジルイソシアヌレート、多価安息香酸グリシジルエステルからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0071】
好ましくは、前記エポキシ基含有エポキシ樹脂およびエポキシ基含有アクリルポリエステルの数平均分子量が200~2000Daであり、エポキシ当量が100~1000g/当量である。
【0072】
本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物を製造するに際しては、D成分を、同じ重量または異なる重量の2つのF成分およびG成分に分ける。前記F成分の含有量が、D成分の総添加量に対して、1~35wt%の範囲内であり、前記G成分の含有量が、1~35wt%の範囲内である。好ましくは、D成分の総添加量に対して、前記F成分の使用量は、前記A成分、B成分、C成分の合計量の5~30wt%であり、前記G成分の使用量は、前記A成分、B成分、C成分の合計量の5~30wt%である。より好ましくは、D成分の総添加量に対して、前記F成分の使用量は、前記A成分、B成分、C成分の合計量の10~25wt%であり、前記G成分の使用量は、前記A成分、B成分、C成分の合計量の10~25wt%である。
【0073】
E成分は、70~100℃の温度でエポキシ樹脂の開環反応を促進することができる少なくとも1種の塩基性触媒を含有する。好ましくは、前記E成分は、通常のイミダゾール系、第三級アミン系、またはホスフィン系の塩基性触媒、第4級アンモニウム系、またはホスフィン系の塩基性触媒であってもよい。
【0074】
なお、前記E成分は、70~100℃の温度でエポキシ樹脂の開環反応を促進するものであれば、その実施形態は多様である。
【0075】
さらに、各成分の含有量に関して、前記少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、1wt%以上、好ましくは2wt%以上、より好ましくは6wt%以上、更に好ましくは10wt%以上である。前記少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、90wt%以下、好ましくは80wt%以下、より好ましくは70wt%以下、更に好ましくは65wt%以下である。
【0076】
すなわち、前記少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、好ましくは1~90wt%が、より好ましくは10~65wt%である。
【0077】
本発明の粉体コーティング組成物において、前記少なくとも一種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、0.5wt%以上、好ましくは2wt%以上、より好ましくは3wt%以上、さらに好ましくは5wt%以上である。前記少なくとも一種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、90wt%以下、好ましくは80wt%以下、より好ましくは70wt%以下、更に好ましくは60wt%以下である。
【0078】
すなわち、前記少なくとも一種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、好ましくは0.5~90wt%、より好ましくは5~60wt%である。
【0079】
本発明の粉体コーティング組成物において、前記少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂固体反応性希釈剤を含むC成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、0.1wt%以上、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは1wt%以上、さらに好ましくは2wt%以上である。前記少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂固体反応性希釈剤を含むC成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、60wt%以下、好ましくは50wt%以下、より好ましくは40wt%以下、さらに好ましくは30wt%以下である。
【0080】
すなわち、前記少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂固体反応性希釈剤を含むC成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、好ましくは0.1~60wt%、より好ましくは2~30wt%である。
【0081】
前記A成分、B成分およびC成分の添加量の合計を100wt%とする。
【0082】
本発明の粉体コーティング組成物において、前記少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、0.1wt%以上、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは1wt%以上、さらに好ましくは3wt%以上である。前記少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、50wt%以下、好ましくは45wt%以下、さらに好ましくは40wt%以下である。
【0083】
すなわち、前記少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、好ましくは0.1~50wt%、より好ましくは3~40wt%である。
【0084】
本発明の粉体コーティング組成物において、前記少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、0.05wt%以上、好ましくは0.08wt%以上、より好ましくは0.15wt%以上、さらに好ましくは0.3wt%以上である。前記少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、30wt%以下、好ましくは25wt%以下、より好ましくは20wt%以下、さらに好ましくは15wt%以下である。
【0085】
すなわち、前記少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分の含有量は、i)+ii)+iii)の合計量に対して、好ましくは0.05~30wt%、より好ましくは0.3~15wt%である。
【0086】
本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物の化学反応機構は、以下の通りである。
【0087】
紫外線及び光又は熱開始剤の非存在下で、電子不足の不飽和C=C基と電子リッチなビニルエーテルC=Cとのエポキシ基開環した中間体の重合が開始され、その反応機構の、粉体コーティング組成物における使用は初回の開示であり、本発明の重要な革新的技術である。
【0088】
上記ステップ(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)の化学反応におけるR及びR'は、同じ基でもよいし、異なる基でもよく、アルキル基、芳香族基、アラルキル基等の置換基であってもよい。ステップ(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)の化学反応におけるXとYは、同じ基でもよいし、異なる基でもよく、アルコキシ基、アルキル基、芳香族基、アラルキル基等の置換基であってもよい。
【0089】
本発明は、(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤を用いることにより、90~110℃での粉体コーティング組成物の溶融粘度を低下させ、各反応成分の分子混合接触を液体コーティングの混合接触レベルに達することができ、マイケル付加反応を迅速に完了させることができ、さらには、低温粉体コーティング組成物が90~110℃で3~10分間、許容できる程度に熱硬化できることを保証する。
【0090】
図1を参照すると、
図1は、本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物の示差熱走査(DSC)チャートであり、DSCグラフから、本発明の反応開始温度は85.74℃であり、反応のピーク値は100.64℃であることがわかる。このため、製造した粉体コーティングは、100℃以下の温度で短時間で硬化することができる。
【0091】
本発明は、塩基性触媒である第三級アミンを用いて70~100℃でエポキシ基の開環を引き起こしてアルコキシアニオンを形成し、電子リッチな非晶性固体ポリエステル樹脂A成分に含まれるC-H酸性プロトンから水素プロトンを奪い、非晶性エチレン性不飽和ポリエステル樹脂B成分と非晶性固体ポリエステル樹脂A成分との間で硬化反応を引き起こしてカルボアニオンやエノールオキシアニオン等の中間体を形成し、電子不足のC=C不飽和基を含むカルボアニオンやエノールオキシアニオン等の中間体と電子リッチなビニルエーテルC=C不飽和基との重合反応を励起することができる。(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂の固体反応性希釈剤は、低温粉体コーティング組成物系の重合硬化反応に関与するには、非晶性エチレン性不飽和ポリエステル樹脂B成分と非晶性固体ポリエステル樹脂A成分との間の硬化反応の中間生成物であるカルボアニオン又はエノールオキシドアニオンによって開始される必要がある一方、硬化温度90~110℃での溶融粘度が非常に低いため、低温粉体コーティング組成物の硬化反応中に十分な溶融時間ウインドーがあることを保証してレベリングが行われ、コーティングのレベリング性を良好にするようになる。
【0092】
また、本発明は、低温粉体コーティングの製造過程において、低温粉体コーティングの溶融押出温度の80~100℃と低温粉体コーティングの硬化に必要な温度の90~110℃とが重なる難題を解決するために、このような低温粉体コーティング組成物の反応原理について、低温粉体コーティング組成物の硬化架橋反応に影響する肝心な成分であるエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤D成分を選定し、低温粉体コーティング組成物の80~100℃での溶融押出時に、硬化架橋反応が起こりにくいことを保証するように、上記成分のみを低温粉体コーティング組成物の配合に必要な添加量0~70%で添加し、次いでエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤の一部を乾燥混合して気流粉砕する。
【0093】
従来のポリエステル/エポキシ混合型低温粉体コーティングに対してエポキシ樹脂の乾燥混合プロセスを用いることは、コーティングの硬化を達成することができず、反応に関与する粉体コーティングの主体樹脂及び関連する助剤は、完全な硬化架橋コーティングを形成するために溶融押出しされなければならず、これは粉体業界の当業者に周知である。また、本発明の低温粉体コーティング組成物において、エポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤は、硬化反応を起こす肝心な成分であるが、コーティング形成のための肝心な被膜形成物質ではないので、第三級アミン又は第三級ホスフィンは、70~100℃の条件下でエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ系硬化剤と開環重合を行うことができ、反応活性が非常に速いので、本発明に記載の低温粉体コーティング組成物の他の成分を選択する代わりに、エポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤を用いて乾燥粉体を気流粉砕してから混合し、かつ、乾燥粉体を気流粉砕してから混合するためのエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤の添加量を調整することにより、低温粉体コーティング組成物の硬化反応温度を90℃以上の範囲内で調節することができる。
【0094】
従来のポリエステルエポキシ混合反応系の粉体コーティングは、室温乾燥保存条件下で、硬化温度が低いほど、光沢を喪失しやすく、120℃以下で硬化する粉体コーティングは、7日以内に光沢を喪失する。これは、従来のポリエステルエポキシ混合反応系が、室温下でエポキシ開環重合反応を部分的に起こすことが主な原因であり、これらは、粉体業界の当業者に周知である。本発明は、低温粉体コーティング組成物の硬化架橋反応に影響を与える肝心な成分であるエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤D成分を選定し、低温粉体コーティング組成物の80~100℃での溶融押出時に、上記成分のみを低温粉体コーティング組成物の配合に必要な添加量0~70%で添加し、次いでエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤の一部を乾燥混合して気流粉砕し、溶融押出混合と乾式気流粉砕混合とによる分散の大きな差を利用して、低温粉体コーティング組成物間の分子接触と熱運動の大きな差を作り出し、低温粉体コーティング系の常温での反応重合速度が抑制され、低温粉体コーティングの貯蔵光沢安定性が向上し、低温粉体コーティングの貯蔵時間が延長した。
【0095】
さらに好ましくは、本発明は、各成分をさらに説明する。
【0096】
前記A成分は、下記の分子構造を有するC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を2個以上有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含む。
(式中、RはH、アルキル基又は芳香族基であり、XとYは同じ基でもよいし、異なる基でもよく、XとYはアルコキシ基、アルキル基、芳香族基又はアラルキル基である。)。
【0097】
好ましくは、前記A成分は、マロン酸、アセト酢酸、マロンアミド、アセトアミド又はシアノ酢酸エステル及びその誘導体などの単量体によって提供される、2個以上のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含む。より好ましくは、マロン酸、アセト酢酸、マロンアミド、アセトアミド及びその誘導体などの単量体によって提供される、C-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を有する非晶性固体ポリエステル樹脂を含む。さらに好ましくは、前記A成分は、マロン酸、アセト酢酸、マロンアミド及びその誘導体などの単量体によって提供される、C-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を有する非晶性固体ポリエステル樹脂を含む。最も好ましくは、前記A成分は、マロン酸、アセト酢酸及びその誘導体などの単量体によって提供される、C-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を有する非晶性固体ポリエステル樹脂を含む。
【0098】
本発明においては、少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、前記非晶性ポリエステル樹脂とマロン酸、アセト酢酸、マロンアミド、アセトアミド、シアノ酢酸エステル及びその誘導体等の単量体とのエステル交換反応により得られる生成物であるのが好ましく、非晶性ポリエステル樹脂とマロン酸、アセト酢酸、マロンアミド、アセトアミド及びその誘導体等の単量体とのエステル交換反応により得られる生成物であるのがより好ましく、非晶性ポリエステル樹脂とマロン酸、アセト酢酸、マロンアミド及びその誘導体等の単量体とのエステル交換反応により得られる生成物であるのがさらに好ましく、非晶性ポリエステル樹脂とマロン酸、アセト酢酸及びその誘導体等の単量体とのエステル交換反応により得られる生成物であるのが最も好ましい。
【0099】
少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、2個以上のC-H酸性プロトンのマイケル付加供与体反応性基、好ましくは3個以上のC-H酸性プロトンのマイケル付加供与体反応性基、より好ましくは4個以上のC-H酸性プロトンのマイケル付加供与体反応性基、さらに好ましくは6個以上のC-H酸性プロトンのマイケル付加供与体反応性基を含む。少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、25個以下のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基、好ましくは20個以下のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基、より好ましくは15個以下のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基、さらに好ましくは10個以下のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を含む。
【0100】
すなわち、少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、C-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を2~20個含有することが好ましく、6~10個含有することがより好ましい。
【0101】
少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、数平均分子量Mnが500Da以上、好ましくは1000Da以上、より好ましくは1500Da以上、さらに好ましくは2000Da以上である。少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、数平均分子量Mnが20000Da以下、好ましくは15000Da以下、より好ましくは10000Da以下、さらに好ましくは8000Da以下である。
【0102】
すなわち、少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、数平均分子量Mnが500~20000Daの範囲内であることが好ましく、2000~8000Daの範囲内であることがより好ましい。
【0103】
少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、ガラス転移温度Tgが30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは55℃以上である。少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、ガラス転移温度Tgが110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。
【0104】
すなわち、少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、ガラス転移温度Tgが30~110℃の範囲内であることが好ましく、55~85℃の範囲内であることがより好ましい。
【0105】
少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、C-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基の当量重量が、150g/mol以上、好ましくは300g/mol以上、より好ましくは500g/mol以上、さらに好ましくは800g/mol以上である。少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、C-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基の当量重量が、15000g/モル以下、好ましくは10000g/モル以下、より好ましくは8000g/モル以下、さらに好ましくは5000g/モル以下である。
【0106】
すなわち、少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、C-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基の当量重量が150~15000g/molの範囲内であることが好ましく、800~5000g/molの範囲内であることがより好ましい。
【0107】
少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、160℃の温度での粘度が1Pa・s以上、好ましくは5Pa・s以上、より好ましくは10Pa・s以上、さらに好ましくは20Pa・s以上である。少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、160℃の温度での粘度が400Pa.s以下、好ましくは300Pa.s以下、より好ましくは200Pa.s以下、さらに好ましくは100Pa.s以下、特に好ましくは50Pa.s以下である。
【0108】
すなわち、少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、160℃での粘度が1~400Pa・sの範囲内であることが好ましく、1~50Pa・sの範囲内であることがより好ましい。
【0109】
少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、その酸価(AV)が、0.5mgKOH/g以上、好ましくは1mgKOH/g以上である。少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、その酸価(AV)が、20mgKOH/g以下、好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは8mgKOH/g以下、特に好ましくは5mgKOH/g以下である。
【0110】
すなわち、少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分は、その酸価(AV)が0.5~5mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、1~5mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。
【0111】
まとめると、前記A成分は、下記の条件を満たす。
a、前記A成分は、数平均分子量Mnが500~20000Daである;
b、前記A成分のC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基の当量重量が150~15000g/molである;
c、前記A成分のガラス転移温度Tgが、30~110℃である;
d、前記A成分は、160℃の温度での粘度が400Pa.s未満である。
【0112】
A成分の非晶性固体ポリエステル樹脂において、一般的には多価アルコールと多塩基酸との重縮合物を意味し、好ましくは二塩基酸、二価アルコール及び/又は三官能性アルコール、三官能性カルボン酸の重縮合物を意味する。
【0113】
なかでも、ポリエステル樹脂の製造に使用できる多価カルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、トリメリット酸等を含むが、これらに限定されない。これらの例示的な多塩基酸は、酸の形で用いてもよく、酸無水物、酸クロライドまたは低級アルキルエステルの形で用いてもよい。多塩基酸の混合物であってもよく、ヒドロキシカルボン酸やラクトンを用いてもよい。
【0114】
多価アルコールは、上記カルボン酸及びその誘導体と重縮合反応を起こしてポリエステル樹脂を製造することができる。多価アルコールの例としては、脂肪族ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール(ネオペンチルグリコール)、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、及び2,3-ブタンジオールを含むが、これらに限定されない。
【0115】
多官能性アルコール又はカルボン酸は、分岐状ポリエステル樹脂を得るために使用することができ、多官能性アルコール又はカルボン酸の例としては、グリセリン、ヘキサントリオール、トリスヒドロキシメチルエタン、トリスヒドロキシプロパン、イソソルビド、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸、ジメチロールプロピオン酸を含むが、これらに限定されない。
【0116】
ポリエステル樹脂は、周知のエステル化反応および/またはエステル交換反応により調製することができ、エステル化反応に通常用いられる有機スズ系触媒を用いて、COOHとOHとの割合を調節することにより、所望の生成物であるポリエステル樹脂を得ることができる。
【0117】
本発明において、前記B成分は、2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含む。該非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレアからなる群から選択され、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリウレタン樹脂、不飽和エポキシ樹脂、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレア、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることがより好ましく、アクリル化ポリエステル樹脂、エチレン性不飽和二塩基酸官能基を含む不飽和ポリエステル樹脂、2-ブテンジオン酸を含むエチレン性不飽和ポリエステル樹脂から選択されることがさらに好ましい。
【0118】
B成分に含まれる非晶性ポリエステル樹脂は、一般に多価アルコールと多塩基酸との重縮合物を意味し、二塩基酸、二価アルコール(ジオール)及び/又は三官能性アルコール、三官能性カルボン酸の重縮合物が好ましい。
【0119】
本発明においてポリエステル樹脂の製造に使用可能な多価カルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、トリメリット酸、2-メチル-2-ブテンジオン酸、2-ブテンジオン酸、イタコン酸及びその誘導体などを含むが、これらに限定されない。これらの例示的な多塩基酸は、酸の形で用いてもよく、酸無水物、酸クロライドまたは低級アルキルエステルの形で用いてもよい。多塩基酸の混合物であってもよく、ヒドロキシカルボン酸やラクトンを用いてもよい。
【0120】
多価アルコールは、上記カルボン酸及びその誘導体と重縮合反応を起こしてポリエステル樹脂を製造することができる。多価アルコールの例としては、脂肪族ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール(ネオペンチルグリコール)、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、及び2,3-ブタンジオールを含むが、これらに限定されない。
【0121】
多官能性アルコール又はカルボン酸は、分岐状ポリエステル樹脂を得るために使用することができ、多官能性アルコール又はカルボン酸の例としては、グリセリン、ヘキサントリオール、トリスヒドロキシメチルエタン、トリスヒドロキシプロパン、イソソルビド、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸、ジメチロールプロピオン酸を含むが、これらに限定されない。
【0122】
ポリエステル樹脂は、周知のエステル化反応および/またはエステル交換反応により調製することができ、エステル化反応に通常用いられる有機スズ系触媒を用いて、COOHとOHとの割合を調節することにより、所望の生成物であるポリエステル樹脂を得ることができる。
【0123】
本発明において、B成分に含まれるエチレン性不飽和官能基は、ポリエステル樹脂の主鎖の途中に存在することが好ましく、ポリエステル樹脂の分岐鎖上に存在することがより好ましく、ポリエステル樹脂の分岐鎖末端または複数の末端に存在することが最も好ましい。
【0124】
本発明において、非晶性アクリル化不飽和ポリエステル樹脂は、アクリル系単量体およびその誘導体に由来するエチレン性不飽和官能基を有する不飽和ポリエステルであり、アクリル化ポリエステル樹脂において、そのエチレン性不飽和官能基は、通常、不飽和ポリエステル樹脂の末端に存在する。アクリル化ポリエステル樹脂は、まず、通常のポリエステルの製造方法によりポリエステル中間体を製造し、次いで、アクリル系単量体およびその誘導体を用いてポリエステル中間体と反応させて、末端にエチレン性不飽和官能基を有する不飽和ポリエステル樹脂を形成する方法により製造され得る。好ましくは、前記B成分は、アクリル酸とフマル酸及びマレイン酸からなるブテンジオン酸単量体とを共重合してなる非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂である。
【0125】
二酸エチレン性不飽和官能基を含む非晶性不飽和ポリエステル樹脂は、2-メチル-2-ブテンジオン酸、2-ブテンジオン酸、イタコン酸及びその誘導体/異性体からなる群から選択される1種以上である。
【0126】
2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、1分子中に2個以上のC=Cエチレン性不飽和マイケル付加反応受容体反応性基を有し、好ましくは3個以上のC=Cエチレン性不飽和マイケル付加反応受容体反応性基を有し、より好ましくは4個以上のC=Cエチレン性不飽和マイケル付加反応受容体反応性基を有し、さらに好ましくは6個以上のC=Cエチレン性不飽和マイケル付加反応受容体反応性基を有する。2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、1分子中に25個以下のC=Cエチレン性不飽和マイケル付加反応受容体反応性基を有し、好ましくは15個以下のC=Cエチレン性不飽和マイケル付加反応受容体反応性基を有し、より好ましくは10個以下のC=Cエチレン性不飽和マイケル付加反応受容体反応性基を有する。
【0127】
すなわち、B成分の1分子中に含まれるC=Cエチレン性不飽和マイケル付加反応受容体反応性基の数は、2~25個の範囲内であることが好ましく、6~10個の範囲内であることがより好ましい。
【0128】
2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、数平均分子量Mnが500Da以上、好ましくは800Da以上、より好ましくは1000Da以上、さらに好ましくは1500Da以上である。2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、数平均分子量Mnが20000Da以下、好ましくは15000Da以下、より好ましくは10000Da以下、さらに好ましくは8000Da以下である。
【0129】
すなわち、B成分の数平均分子量Mnは、500~20000Daの範囲内であることが好ましく、1500~8000Daの範囲内であることがより好ましい。
【0130】
2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、ガラス転移温度Tgが30℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは45℃以上、最も好ましくは55℃以上である。2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、ガラス転移温度Tgが110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
【0131】
すなわち、B成分のガラス転移温度Tgは、30~110℃の範囲内であることが好ましく、55~85℃の範囲内であることがより好ましい。
【0132】
2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、C=Cエチレン性不飽和反応性基の当量重量が、150g/mol以上、好ましくは200g/mol以上、より好ましくは300g/mol以上、さらに好ましくは400g/mol以上である。2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、C=Cエチレン性不飽和反応性基の当量重量が、15000g/モル以下、好ましくは10000g/モル以下、より好ましくは8000g/モル以下、さらに好ましくは5000g/モル以下である。
【0133】
すなわち、B成分のC=Cエチレン性不飽和反応性基の当量重量は、150~15000g/molの範囲内であることが好ましく、400~5000g/molの範囲内であることがより好ましい。
【0134】
2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、160℃の温度での粘度が1Pa・s以上、好ましくは5Pa・s以上、より好ましくは10Pa・s以上、さらに好ましくは20Pa・s以上である。2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分は、160℃の温度での粘度が400Pa・s以下、好ましくは300Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下、更に好ましくは100Pa・s以下、特に好ましくは40Pa・s以下である。
【0135】
すなわち、B成分の160℃の温度での粘度は、好ましくは400Pa.s未満、より好ましくは40Pa.s未満、さらに好ましくは1~40Pa.sである。
【0136】
まとめると、前記B成分は、下記の条件を満たす。
a、前記B成分は、数平均分子量Mnが500~20000Daである;
b、前記B成分の不飽和C=C官能基の当量重量が150~15000g/molである;
c、前記B成分のガラス転移温度Tgが30~110℃である;
d、前記B成分は、160℃の温度での粘度が400Pa.s未満である。
【0137】
本発明において、E成分は、70~100℃の温度でエポキシ樹脂の開環反応を促進することができるいずれかの塩基性触媒であってもよい。
【0138】
E成分の好ましい実施形態としては、前記E成分は、一般構造式X(R)3で示される、通常のイミダゾール系、第三級アミン系またはホスフィン系の塩基性触媒であってもよく、一般構造式X(R)4で示される第4級アンモニウム系またはホスフィン系の塩基性触媒であってもよい。より好ましくは、前記E成分は、一般構造式X(R)3(式中、XはNまたはP元素であり得、Rは1~8個の炭素原子を有する同一または異なるアルキル、アリール、アラルキル基である)で示される第三級アミンまたはホスフィン塩基性触媒である。
【0139】
さらに、熱硬化性粉体コーティング組成物のベースは、A成分、B成分、C成分、D成分及びE成分によって構成され、これに加えて、本発明は、充填剤、顔料、助剤からなる群より選択される1種以上を含むH成分を更に含んでもよい。
【0140】
なお、H成分には、粉体コーティングに通常使用される添加剤を含んでいてもよく、ワックス、顔料、充填剤、レベリング剤、酸化防止剤等を含むが、これに限定されない。なかでも、顔料としては、無機顔料、有機顔料、マイカ、メタリック顔料等であってもよいが、これらに限定されない。充填剤としては、シリケート、カーボネート、サルフェートなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0141】
対応して、
図2を参照すると、本発明は、下記のステップを含む熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法をさらに開示している。
D成分を、同じ重量または異なる重量の2つのF成分およびG成分に分けるS101;
D成分は、粉体コーティング組成物の配合に従い、所定量を選択し、同じ重量または異なる重量の2つのF成分およびG成分に分けられる。D成分の総添加量に対して、前記F成分の含有量が、1~35wt%の範囲内であり、前記G成分の含有量が、1~35wt%の範囲内である。好ましくは、D成分の総添加量に対して、前記F成分の使用量は、前記A成分、B成分、C成分の合計量の5~30wt%であり、前記G成分の使用量は、前記A成分、B成分、C成分の合計量の5~30wt%である。より好ましくは、D成分の総添加量に対して、前記F成分の使用量は、前記A成分、B成分、C成分の合計量の10~25wt%であり、前記G成分の使用量は、前記A成分、B成分、C成分の合計量の10~25wt%である。
A成分、B成分、C成分、E成分およびF成分を一緒に混合して、第1の予備混合物を得るS102;
第1の予備混合物を押出混合し、常温まで冷却して押出物を得るS103;
好ましくは、第1の予備混合物を、二軸押出機で溶融混合し、二軸押出機の吐出口温度は、110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。
冷却された押出物を粉砕して、第1の粉体粒子を得るS104;
好ましくは、前記第1の粉体粒子は、粒径が(D50)15~130μmである。
G成分を粉砕して、第2の粉体粒子を得るS105;
好ましくは、G成分を超音速ジェットミルを用いて粉砕して、第2の粉体粒子を得る。前記第2の粉体粒子は、粒径が(D50)1~130μmである。
前記第1の粉体粒子及び第2の粉体粒子を混合し、粉砕して、粉体コーティング組成物の完成品を得るS106。
好ましくは、前記第1の粉体粒子及び第2の粉体粒子を混合し、粉体コーティングに対してジェットミル粉砕を行って、粉体コーティング組成物の完成品を得る。
【0142】
上記製造方法において、まずA成分、B成分、C成分、E成分及び一部のD成分(即ち、F成分)を混合して押出し、冷却粉砕して第1の粉体粒子を得、次に、粉砕した残りの一部のD成分(即ち、G成分)と第1の粉体粒子とを混合することにより、完成品を得ることができる。
【0143】
D成分は、F成分とG成分に分けられ、F成分は、ステップS102で添加され、A成分、B成分、C成分、E成分と共に混合され、G成分は、ステップS105で添加される。本発明は、低温粉体コーティング組成物の硬化架橋反応に影響する肝心な成分であるエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤D成分を選定し、上記低温粉体コーティング組成物の80~100℃での溶融押出時に、硬化架橋反応が起こりにくいことを保証するように、上記成分のみを低温粉体コーティング組成物の配合に必要な添加量0~70%で添加し、次いでエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤の一部を乾燥混合して気流粉砕する。
【0144】
また、本発明でエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤を用いて乾燥粉体を気流粉砕してから混合するプロセスは、乾燥粉体を気流粉砕してから混合するためのエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤の添加量を調整することにより、低温粉体コーティング組成物の硬化反応温度を90℃以上の範囲内で調節することができる。
【0145】
また、従来のポリエステルエポキシ混合反応系の粉体コーティングは、室温乾燥保存条件下で、硬化温度が低いほど、光沢を喪失しやすく、120℃以下で硬化する粉体コーティングは、7日以内に光沢を喪失する。これは、従来のポリエステルエポキシ混合反応系が、室温下でエポキシ開環重合反応を部分的に起こすことが主な原因であり、これらは、粉体業界の当業者に周知である。本発明は、低温粉体コーティング組成物の硬化架橋反応に影響を与える肝心な成分(エポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤D成分)を選定し、低温粉体コーティング組成物の80~100℃での溶融押出時に、上記成分のみを低温粉体コーティング組成物の配合に必要な添加量0~70%で添加し、次いでエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ硬化剤の一部を乾燥混合して気流粉砕し、溶融押出混合と乾式気流粉砕混合とによる分散の大きな差を利用して、低温粉体コーティング組成物間の分子接触と熱運動の大きな差を作り出し、低温粉体コーティング系の常温での反応重合速度が抑制され、低温粉体コーティングの貯蔵光沢安定性が向上し、低温粉体コーティングの貯蔵時間が延長した。
【0146】
以下、本発明を具体的な実施例を用いてさらに説明する。
【0147】
一、準備段階
【0148】
(一)、A成分の調製
(1)A成分であるM-BESの調製:ネオペンチルグリコール0.74当量、イソソルビド0.64当量、テレフタル酸1.05当量、4100触媒0.5mmol、酸化防止剤0.8g、水8gを四つ口フラスコに仕込み、水が出るまで窒素雰囲気に保持される。280℃まで加熱昇温して酸価を13mg KOH/g以下に低下させた後、220℃まで降温し、アジピン酸0.04当量を加えてさらに280℃まで昇温して酸価を12mg KOH/g以下に達させ、さらに220℃まで降温し、酸価が5mg KOH/g未満となるようにネオペンチルグリコールを追加し、180℃まで降温し、マロン酸ジエチル0.3当量を加えて、220℃まで徐々昇温し、エタノールが出なくなるまで保温し、220℃で1時間真空引きして最終サンプルを得、数平均分子量Mnが3790、重量平均分子量Mwが8066、酸価が4.2mg KOH/g、ガラス転移温度Tgが58℃、水酸基価が47mg KOH/g、マロン酸官能基の当量重量が1000g/molである。
【0149】
(二)、B成分の調製:
(1)B成分であるM-XS-1の調製:ネオペンチルグリコール0.52当量、テレフタル酸0.33当量、4100触媒0.3mmol、酸化防止剤0.8g、水6gを、温度計、撹拌器、蒸留装置を備えた四つ口フラスコに仕込み、水が出るまで窒素雰囲気に保持される。240℃まで加熱昇温し、次いで180℃まで降温し、フマル酸0.16当量、ラジカル重合禁止剤0.7gを添加し、さらに210℃まで昇温してエステル化し、酸価が15mg KOH/g未満で水が出なくなる場合、酸価が5mg KOH/g未満となるように210℃を保持して真空引き重合して最終サンプルを得、数平均分子量Mnが2700、酸価が1.2mg KOH/g、ガラス転移温度Tgが48℃、水酸基価が38mg KOH/g、エチレン性官能基の当量重量が700g/molである。
(2)B成分であるM-XS-2の調製:イソホロンジイソシアネートIPDI0.47mol、ジブチルスズジラウレートDBTL0.2mmol、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ヒドロキノン0.6gを、温度計、撹拌機、蒸留装置を備えた500mL四つ口フラスコに仕込み、ヒドロキシプロピルアクリレート0.497molを定圧滴下漏斗に入れ、40℃に保ちながら四つ口フラスコにゆっくりと滴下し、ステップ(1)で得られた生成物を取り出して滴下漏斗に移し、加熱ベルトで包み込み55℃前後に保持し、反応系にグリセリン0.209molを滴下して最終生成物を得、数平均分子量Mnが703、ガラス転移点Tgが57℃、エチレン性官能基の当量重量が350g/molである。
【0150】
(三)、C成分の調製:
C成分であるM-C30-1の調製:4-ヒドロキシブチルビニルエーテル0.5mol、ジブチル錫ジラウレート0.2mmol、酸化防止剤0.6gを、温度計、撹拌機、蒸留装置を備えた四つ口フラスコに仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌し、40℃まで加熱昇温し、ヘキサメチレンジイソシアネート0.25mol、ラジカル重合禁止剤0.8gを定圧滴下漏斗に入れ、40℃に保温しながら四つ口フラスコにゆっくりと滴下し、ヘキサメチレンジイソシアネート0.25molを仕込んだ後、四つ口フラスコ中の温度を110℃未満に保って30分間保持し、その後110℃で真空引きして低分子揮発物を除去して最終生成物を得、数平均分子量Mnが400Da、融点Tmが100℃、ビニルエーテル官能基の当量重量が200g/molである。
C成分であるM-C30-2の調製:4-ヒドロキシブチルビニルエーテル0.385mol、ジエチレングリコール0.082mol、ジブチル錫ジラウレート0.2mmol、酸化防止剤0.6gを、温度計、撹拌器、蒸留装置を備えた四つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で撹拌し、40℃まで加熱昇温し、ヘキサメチレンジイソシアネート0.275mol、ラジカル重合禁止剤0.8gを定圧滴下漏斗に入れ、40℃に保温しながら四つ口フラスコにゆっくりと滴下し、ヘキサメチレンジイソシアネート0.275molを仕込んだ後、四つ口フラスコ中の温度を110℃未満に保って30分間保持し、その後110℃で真空引きして低分子揮発物を除去して最終生成物を得、数平均分子量Mnが516Da、融点Tmが91℃、ビニルエーテル官能基の当量重量が260g/molである。
【0151】
(四)、E成分の調製:
触媒EA-1の調製:トリエチルアミン20g、アルミナC20gを取り、両者を均一に混合し固体とした。次に酸価70mg KOH/gの低温硬化用ポリエステル樹脂360gと均一に混合し、二軸押出機内に入れて押出した。押出温度は90℃に制御し、トリエチルアミンの含有量が5%のマスターバッチとした。
なお、樹脂の酸価(AV)及び水酸基価(OHV)は、それぞれISO2114-2000及びISO4629-2016に準拠して滴定法により測定又は理論により決定される。
樹脂の数平均分子量(Mn)は、目的樹脂の官能度(G)に56110を乗じたものを、目的樹脂の酸価(AV)(mg KOH/G)と樹脂の水酸基価(OHV)(mg KOH/G)の和で除した値、Mn=(Gx56110)/(AV+OHV)から算出される。
【0152】
二、実施例及び試験結果
実施例1
マイケル付加反応活性水素供与体であるA成分M-BES204gを取った。さらに、マイケル付加反応受容体であるB成分M-XS-2 181gを取った。上記で調製した触媒EA-1 50.35g、トリグリシジルイソシアヌレートTGIC6gを取った。反応希釈剤であるC成分M-C30-1 51gを取った。これらの材料を均一に混合した。押出機の温度を100℃に設定し、回転数を300rpmとした。材料を押出機により押し出し、その後、押出物を冷却し、コーヒーミルで冷却した材料を粉砕し、篩を通して平均粒径30μmの粉体コーティング、すなわち、第1の粉体粒子を得た。
トリグリシジルイソシアヌレートTGICをジェットミルで平均粒径15μmの粉体、すなわち第2粉体粒子P2に粉砕した。P1とP2を94:6の割合で均一に混合し、ジェットミルに入れて粉砕した。平均粒径を20~25μmに制御した。最終の粉体コーティングとした。
実施例1で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ15mmの中質繊維板(MDF)に、電圧60kvでスプレー塗装した。スプレー塗装済みMDF板を、赤外線オーブンに入れ、温度を100℃に設定し、入出時間を3.5分とした。テンプレート1と表記する。
実施例1で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ15mmの竹炭板にスプレー塗装し、電圧を50kvに設定した。スプレー塗装済み竹炭板を赤外オーブンに入れ、温度を90℃に設定し、時間を5分間とした。テンプレート2と表記する。
実施例1で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ3mmのガラス鋼テンプレートに50kvの電圧でスプレー塗装した。スプレー塗装済みガラス鋼板を、赤外線オーブンに入れ、温度を100℃に設定し、入出時間を4.5分とした。テンプレート3と表記する。
【0153】
上記の3つのテンプレートを試験し、試験結果は表1に示される。
表1 実施例1の粉体コーティングの試験結果表
【0154】
表1から明らかなように、実施例1の粉体コーティングは、100℃で試験したゲル化時間が76秒、95℃で試験したゲル化時間が100秒、90℃で試験したゲル化時間が135秒であった。耐溶剤性の結果からも、粉体コーティングは100℃で完全に硬化できることがわかる。他の性能指標としては、光沢、硬度、密着性、成膜性(気泡、寸法変形)等があり、いずれもコーティングに要求される性能を満足することができる。
【0155】
なお、竹炭板はPVCと竹炭繊維とを複合した材料である。PVCはプラスチックであるため、その軟化点が85℃である。竹炭繊維を添加することによりその軟化変形温度を高めることができるが、竹炭板を100℃以上で硬化しても寸法変形を起こす。しかし、本発明で得られた粉体コーティングは85℃で反応の開始が可能であるので、本発明の粉体コーティングは竹炭板の粉体塗装が可能となり、装飾性が向上する。
【0156】
ガラス鋼は、ビニル樹脂とガラス繊維との複合材料であり、軽量で硬く、導電性がなく、安定した性能を有し、機械的強度が高く、耐腐食で、鋼材の代わりに機械部品や自動車、船舶の外板などを製造することができる。しかし、ガラス鋼製品は、耐温度性に劣ると共に表面に多数の気孔が存在するため、ガラス鋼に対して粉体を吹き付け時に温度が高すぎると気泡が多く発生する。しかし、本発明で得られた粉体コーティングは85℃で反応の開始が可能であるので、本発明の粉体コーティングはガラス鋼上の粉体塗装を実現することができ、装飾性が向上する。
【0157】
実施例2
マイケル付加反応活性水素供与体であるA成分M-BES204gを取った。さらに、マイケル付加反応受容体であるB成分M-XS-2 181gを取った。上記で調製した触媒EA-1 50.35g、エポキシ当量が200の固形エポキシ樹脂12gを取った。反応希釈剤であるC成分M-C30-1 51gを取った。これらの材料を均一に混合した。押出機の温度を100℃に設定し、回転数を300rpmとした。材料を押出機により押し出し、その後、押出物を冷却し、コーヒーミルで冷却した材料を粉砕し、篩を通して平均粒径30μmの粉体コーティング、すなわち、第1の粉体粒子P1を得た。
エポキシ当量が200のエポキシ樹脂をジェットミルで平均粒径15μmの粉体、すなわち第2粉体粒子P2とした。P1とP2を92:8の割合で均一に混合し、ジェットミルに入れて粉砕した。平均粒径を15~20μmに制御した。最終の粉体コーティングとした。
実施例2で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ15mmの中質繊維板(MDF)に、電圧60kvでスプレー塗装した。スプレー塗装済みMDF板を、赤外線オーブンに入れ、温度を100℃に設定し、入出時間を3.5分とした。テンプレート1と表記する。
実施例2で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ15mmの竹炭板にスプレー塗装し、電圧を50kvに設定した。スプレー塗装済み竹炭板を赤外オーブンに入れ、温度を90℃に設定し、時間を5分間とした。テンプレート2と表記する。
実施例2で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ3mmのガラス鋼テンプレートに60kvの電圧でスプレー塗装した。スプレー塗装済みガラス鋼板を、赤外線オーブンに入れ、温度を100℃に設定し、入出時間を4.5分とした。テンプレート3と表記する。
【0158】
上記の3つのテンプレートを試験し、試験結果は表2に示される。
表2 実施例2の粉体コーティングの試験結果表
【0159】
表2から明らかなように、実施例2の粉体コーティングは、100℃で試験したゲル化時間が90秒、95℃で試験したゲル化時間が125秒、90℃で試験したゲル化時間が145秒であった。耐溶剤性の結果からも、粉体コーティングは100℃で完全に硬化できることがわかる。他の性能指標としては、光沢、硬度、密着性、成膜性(気泡、寸法変形)等があり、いずれもコーティングに要求される性能を満足することができる。
【0160】
実施例3
マイケル付加反応活性水素供与体であるA成分M-BES285gを取った。さらに、マイケル付加反応受容体であるB成分M-XS-2 253gを取った。上記で調製した触媒EA-1 70.49g、トリグリシジルイソシアヌレートTGIC8gを取った。反応希釈剤であるC成分M-C30-1 71.4gを取った。更に、市販用Sanding agent4g、チタン粉末58g、フタロシアニングリーン23g、ferric hydroxide10g、カーボンブラック2.8g、硫酸バリウム227gを取り、これらの材料を均一に混合した。押出機の温度を100℃に設定し、回転数を300rpmとした。材料を押出機により押し出し、その後、押出物を冷却し、コーヒーミルで冷却した材料を粉砕し、篩を通して平均粒径30μmの粉体コーティング、すなわち、第1の粉体粒子P1を得た。
トリグリシジルイソシアヌレートTGICをジェットミルで平均粒径15μmの粉体、すなわち第2粉体粒子P2に粉砕した。P1とP2を93:7の割合で均一に混合し、ジェットミルに入れて粉砕した。平均粒径を15~20μmに制御した。最終の粉体コーティングとした。
実施例3で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ15mmの中質繊維板(MDF)に、電圧60kvでスプレー塗装した。スプレー塗装済みMDF板を、赤外線オーブンに入れ、温度を100℃に設定し、入出時間を3.5分とした。テンプレート1と表記する。
実施例3で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ15mmの竹炭板にスプレー塗装し、電圧を50kvに設定した。スプレー塗装済み竹炭板を赤外オーブンに入れ、温度を90℃に設定し、時間を5分間とした。テンプレート2と表記する。
実施例3で得られた粉体コーティングを、静電噴霧ガンを用いて、厚さ3mmのガラス鋼テンプレートに60kvの電圧でスプレー塗装した。スプレー塗装済みガラス鋼板を、赤外線オーブンに入れ、温度を100℃に設定し、入出時間を4.5分とした。テンプレート3と表記する。
【0161】
上記の3つのテンプレートを試験し、試験結果は表3に示される。
表3 実施例3の粉体コーティングの試験結果表
【0162】
表3から明らかなように、実施例3の粉体コーティングは、100℃で試験したゲル化時間が68秒、95℃で試験したゲル化時間が76秒、90℃で試験したゲル化時間が120秒であった。耐溶剤性の結果からも、粉体コーティングは100℃で完全に硬化できることがわかる。他の性能指標としては、光沢、硬度、密着性、成膜性(気泡、寸法変形)等があり、いずれもコーティングに要求される性能を満足することができる。
【0163】
本発明の粉体コーティングは、中質繊維板(MDF)、竹炭板、ガラス鋼板に粉体塗装を実現することができ、装飾性が向上する。
【0164】
なお、前記光沢は、60°入射角でコーティング表面を測定した光沢度である。
接着力の測定はGB9286に準拠して、0~5は密着力が良好から不良までを表し、具体的にランク分けした基準は、0-カットのエッジが完全に滑らかで、無し―欠落が全くないこととした。
鉛筆硬度はASTM3363に準拠した。
【0165】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明の原理から逸脱しない前提で様々な修正及び変更を行うことができ、これらも本発明の保護範囲に属することは当業者に理解されるである。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)マイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分と、
ii)マイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分と、
iii)少なくとも1種の(半)結晶性固体反応希釈剤を含むC成分と、
iv)少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分と、
v)少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分と、
を備えることを特徴とする熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項2】
前記C成分が、少なくとも1種の(半)結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項3】
前記C成分が、ビニルエーテル官能基を有する少なくとも1種の(半)結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項4】
前記C成分が、ビニルエーテル基又はビニルエステル基又はビニルエーテル-エステル基を有する化合物及び/又はその誘導体と、イソシアネート基を有する化合物及び/又はその誘導体との反応生成物であることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート基を有する化合物は、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種以上
、
前記トルエンジイソシアネートが、トルエン2,6-ジイソシアネートとトルエン2,4-ジイソシアネートとの混合物、
前記ビニルエーテル基を有する化合物が、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルからなる群より選択される1種以上、
であることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項6】
前記C成分は、
ビニルエーテル基を有する化合物、助剤、水を反応装置に添加し、窒素雰囲気で撹拌し、35~50℃まで加熱昇温するステップと、
イソシアネート基を有する化合物を、35~50℃の保温条件下で、反応装置にゆっくりと滴下するステップと、
イソシアネート基を有する化合物を添加した後、反応装置の温度を110℃未満に制御し、30分間保持した後、真空引きして低分子揮発物を除去して最終生成物を得るステップと、
を含む方法により製造されることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項7】
前記C成分は、下記条件のうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
a、前記C成分は、数平均分子量Mnが100~8000Daである;
b、前記C成分は、当量重量が100~4000g/molであるビニルエーテル官能基を有する;
c、前記C成分は、融点が30~110℃であり、結晶点が20~80℃である;
d、前記C成分は、100℃の温度での粘度が0.01~20Pa.sである。
【請求項8】
前記A成分が、下記の分子構造を有するC-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を2個以上有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
(式中、RはH、アルキル基又は芳香族基であり、XとYは同じ基でもよいし、異なる基でもよく、XとYはアルコキシ基、アルキル基、芳香族基又はアラルキル基である。)。
【請求項9】
前記B成分が、2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項10】
前記D成分が、エポキシ基含有エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリルポリエステル、またはエポキシ系硬化剤であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項11】
前記E成分が、70~100℃でエポキシ樹脂の開環反応を促進する少なくとも1種の塩基性触媒を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項12】
前記A成分、B成分およびC成分の添加量の合計を100wt%とし、
前記D成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.1~50wt%であり、
前記E成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.05~30wt%であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法であって、
D成分を、同じ重量または異なる重量の2つのF成分およびG成分に分けるステップ1)と、
A成分、B成分、C成分、E成分およびF成分を一緒に混合して、第1の予備混合物を得るステップ2)と、
第1の予備混合物を押出混合し、常温まで冷却して押出物を得るステップ3)と、
冷却された押出物を粉砕して、第1の粉体粒子を得るステップ4)と、
G成分を粉砕して、第2の粉体粒子を得るステップ5)と、
前記第1の粉体粒子及び第2の粉体粒子を混合し、粉砕して、粉体コーティング組成物の完成品を得るステップ6)と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
前記F成分の使用量が、前記A成分、B成分及びC成分の合計量の1~35wt%であり、前記G成分の使用量が、前記A成分、B成分及びC成分の合計量の1~35wt%であることを特徴とする請求項
13に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)マイケル付加反応供与体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含むA成分と、
ii)マイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むB成分と、
iii)少なくとも1種の結晶性固体反応希釈剤
または半結晶性固体反応希釈剤を含むC成分と、
iv)少なくとも1種のエポキシ基含有固形物を含むD成分と、
v)少なくとも1種の塩基性触媒を含むE成分と、
を備え
、
前記結晶性固体反応希釈剤または半結晶性固体反応希釈剤は、100℃での溶融粘度が200mPa.s以下であることで、粉体コーティング反応系の溶融粘度を低下させ、コーティング系の反応速度を高めることを特徴とする熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項2】
前記C成分が、少なくとも1種の結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂
または半結晶性ビニル官能性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項3】
前記C成分が、ビニルエーテル官能基を有する少なくとも1種の結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂
または半結晶性ビニルエーテル官能性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項4】
前記C成分が、ビニルエーテル基又はビニルエステル基又はビニルエーテル-エステル基を有する化合物及び/又はその誘導体と、イソシアネート基を有する化合物及び/又はその誘導体との反応生成物であることを特徴とする請求項
2に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート基を有する化合物は、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種以上、
前記トルエンジイソシアネートが、トルエン2,6-ジイソシアネートとトルエン2,4-ジイソシアネートとの混合物、
前記ビニルエーテル基を有する化合物が、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルからなる群より選択される1種以上、
であることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項6】
前記C成分は、
ビニルエーテル基を有する化合物、助剤、水を反応装置に添加し、窒素雰囲気で撹拌し、35~50℃まで加熱昇温するステップと、
イソシアネート基を有する化合物を、35~50℃の保温条件下で、反応装置にゆっくりと滴下するステップと、
イソシアネート基を有する化合物を添加した後、反応装置の温度を110℃未満に制御し、30分間保持した後、真空引きして低分子揮発物を除去して最終生成物を得るステップと、
を含む方法により製造されることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項7】
前記C成分は、下記条件のうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
a、前記C成分は、数平均分子量Mnが100~8000Daである;
b、前記C成分は、当量重量が100~4000g/molであるビニルエーテル官能基を有する;
c、前記C成分は、融点が30~110℃であり、結晶点が20~80℃である;
d、前記C成分は、100℃の温度での粘度が0.01~
0.2Pa.sである。
【請求項8】
前記A成分が、C-H酸性プロトンのマイケル付加反応供与体反応性基を2個以上有する少なくとも1種の非晶性固体ポリエステル樹脂を含
み、前記マイケル付加反応供与体反応性基が下記の分子構造を有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
(式中、RはH、アルキル基又は芳香族基であり、XとYは同じ基でもよいし、異なる基でもよく、XとYはアルコキシ基、アルキル基、芳香族基又はアラルキル基である。)。
【請求項9】
前記B成分が、2個以上の不飽和C=Cマイケル付加反応受容体反応性基を有する少なくとも1種の非晶性エチレン性不飽和固体ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項10】
前記D成分が、エポキシ基含有エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリルポリエステル、またはエポキシ系硬化剤であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項11】
前記E成分が、70~100℃でエポキシ樹脂の開環反応を促進する少なくとも1種の塩基性触媒を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項12】
前記A成分、B成分およびC成分の添加量の合計を100wt%とし、
前記D成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.1~50wt%であり、
前記E成分の添加量が、前記A成分、B成分およびC成分の合計量の0.05~30wt%であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法であって、
D成分を、同じ重量または異なる重量の2つのF成分およびG成分に分けるステップ1)と、
A成分、B成分、C成分、E成分およびF成分を一緒に混合して、第1の予備混合物を得るステップ2)と、
第1の予備混合物を押出混合し、常温まで冷却して押出物を得るステップ3)と、
冷却された押出物を粉砕して、第1の粉体粒子を得るステップ4)と、
G成分を粉砕して、第2の粉体粒子を得るステップ5)と、
前記第1の粉体粒子及び第2の粉体粒子を混合し、粉砕して、粉体コーティング組成物の完成品を得るステップ6)と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
前記F成分の使用量が、前記A成分、B成分及びC成分の合計量の1~35wt%であり、前記G成分の使用量が、前記A成分、B成分及びC成分の合計量の1~35wt%であることを特徴とする請求項13に記載の熱硬化性粉体コーティング組成物の製造方法。
【国際調査報告】