(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】前立腺がんを診断するための新規な方法と化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20230413BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230413BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230413BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
G01N33/574 A
C12Q1/02
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552853
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2021055061
(87)【国際公開番号】W WO2021175788
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522348882
【氏名又は名称】プロスメディック スウェーデン アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ バルデンストレーム
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ ラーション
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、プロスタソームに結合できるヒト抗体またはその抗原結合断片と、前立腺がんの診断および予後に関する。より具体的には、提案されている技術は、体液中のプロスタソームを検出するためのヒト抗体またはその抗原結合断片を用いて前立腺がんを診断する方法に関する。本開示は、体液中のプロスタソームを特異的かつ選択的に検出できるヒト抗体と、そのヒト抗体を用いて前立腺がんを診断する方法を含む。本開示はさらに、前立腺がんの予後を提供すること、重症度を評価すること、および前立腺がんの医学的治療の有効性を判断することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、完全長抗体、抗原結合(Fab)断片、または抗原結合一本鎖Fv(scFv)断片(ヒト合成scFv断片など)である、請求項1に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、1つ以上のプロスタソーム表面抗原に結合することによってプロスタソームに選択的に結合し、前記プロスタソーム表面抗原が配列番号60~104からなる群から選択される、請求項1~2のいずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、複数のプロスタソーム表面抗原に結合することによってプロスタソームに選択的に結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、複数のプロスタソーム表面抗原に結合することによってプロスタソームに選択的に結合し、ここで前記プロスタソーム表面抗原がプロスタソーム膜の表面に塊を形成し、その塊が前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片によって特定されてその塊に前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合する、請求項1~4のいずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記塊が表11から選択される少なくとも5つの抗原を含む、請求項5に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体またその抗体結合断片が、イムノアッセイにおいて、そのイムノアッセイの補足抗体として前記ヒト抗体またはその抗原結合断片を用いて、少なくとも10 ng/mLの感度を可能にする、請求項1~6のいずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、配列番号1~12から選択される重鎖相補性決定領域(CDR)、及び配列番号13~24から選択される軽鎖CDRを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合断片が少なくとも6つの相補性決定領域(CDR)をCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3の任意の組み合わせで含み、前記CDRの選択が、
配列番号25、27、および28から選択されるCDR-H1;
配列番号26、29、および30から選択されるCDR-H2;
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択されるCDR-H3;
配列番号56と57から選択されるCDR-L1;
配列番号58と59から選択されるCDR-L2;
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24から選択されるCDR-L3を含む群からなされる、請求項1~8のいずれか1項に記載のヒト抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体またはその抗体結合断片が、抗原結合一本鎖Fv(scFv)断片、例えばヒト合成scFv断片であり、前記scFv断片が、少なくとも4つの相補性決定領域(CDR)をCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3の任意の組み合わせで含み、前記CDRの選択が、
配列番号25、27、および28から選択されるCDR-H1;
配列番号26、29、および30から選択されるCDR-H2;
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択されるCDR-H3;
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23から選択されるCDR-L3を含む群からなされる、請求項1~9のいずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
配列番号32~43と、それと70%以上、例えば75%、80%、85%、90%、95%、またはそれよりも多く一致する配列からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列、および配列番号44~55と、それと70%以上、例えば75%、80%、85%、90%、95%、またはそれよりも多く一致する配列からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列を含む、請求項9または10に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合断片が、
i)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号4によって規定されるCDR-H3、および
配列番号16によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
ii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号7によって規定されるCDR-H3、および
配列番号19によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
iii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号1によって規定されるCDR-H3、および
配列番号13によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
iv)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号2によって規定されるCDR-H3、および
配列番号14によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
v)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号3によって規定されるCDR-H3、および
配列番号15によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
vi)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号5によって規定されるCDR-H3、および
配列番号17によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
vii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号6によって規定されるCDR-H3、および
配列番号18によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
viii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号8によって規定されるCDR-H3、および
配列番号20によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
ix)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号9によって規定されるCDR-H3、および
配列番号21によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
x)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号10によって規定されるCDR-H3、および
配列番号22によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
xi)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号11によって規定されるCDR-H3、および
配列番号23によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
xii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号12によって規定されるCDR-H3、および
配列番号24によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片を含む群から選択される合成scFv断片である、請求項1~11のいずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合断片が、リンカーを介して接続された可変重鎖VHと可変軽鎖VLを持つ合成scFv断片であり、前記断片の選択が、
i)配列番号35によって規定されるVH、および
配列番号47によって規定されるVL
を持つscFv断片、
ii)配列番号38によって規定されるVH、および
配列番号50によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
iii)配列番号32によって規定されるVH、および
配列番号44によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
iv)配列番号33によって規定されるVH、および
配列番号45によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
v)配列番号34によって規定されるVH、および
配列番号46によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
vi)配列番号36によって規定されるVH、および
配列番号48によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
vii)配列番号37によって規定されるVH、および
配列番号49によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
viii)配列番号39によって規定されるVH、および
配列番号51によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
ix) 配列番号40によって規定されるVH、および
配列番号52によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
x)配列番号41によって規定されるVH、および
配列番号53によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
xi)配列番号42によって規定されるVH、および
配列番号54によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
xii)配列番号43によって規定されるVH、および
配列番号55によって規定されるVL、
を持つscFv断片を含む群からなされる、請求項12に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合断片が、
配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号4によって規定されるCDR-H3、および
配列番号16によって規定されるCDR-L3を持つ合成scFv断片であり、前記scFv断片が、タイチンのアイソフォーム12、ミオシン-1、ミオシン-2、ミオシン-4、およびミオシン-8を含む塊に結合する、請求項5~13のいずれか1項に記載のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
対象に前立腺がんが存在するかどうかを判断するためのインビトロの方法であって、
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること(S1);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること(S2);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合した任意のプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること(S3);
プロスタソームの前記検出されたレベルをあらかじめ決められた閾値と比較すること(S4);および
プロスタソームの前記検出されたレベルが前記あらかじめ決められた閾値よりも高い場合に前記対象に前立腺がんが存在すると判断すること(S5)を含む方法。
【請求項16】
プロスタソームの前記検出されたレベルが前記あらかじめ決められた閾値よりも低い場合に前記対象では前立腺がんが臨床的に検出可能でないと判断すること(S5)をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合した任意のプロスタソームを検出すること(S3)が、抗プロスタソーム検出抗体またはその抗原結合断片を用いて前記プロスタソームを検出することを含む、請求項15~16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、サンドイッチイムノアッセイであり、そして前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)が結合したプロスタソーム(200)を検出すること(S3)が、さらなる検出抗体(103)を用いて前記抗プロスタソーム検出抗体(102)を検出することを含み、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)が捕捉抗体であり、前記抗プロスタソーム検出抗体(102)が一次検出抗体であり、かつ前記さらなる検出抗体(103)が二次検出抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記一次検出抗体(102)がニワトリ抗体であり、かつ前記二次検出抗体(103)が抗ニワトリ抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象からの前記サンプルが体液サンプルである、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象からの前記体液サンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記あらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームである、請求項20~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
それを必要とする対象におけるインビトロの前立腺がんの予後の提供するための方法であって、
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること(S11)、
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること(S12)、
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること(S13)、
プロスタソームの前記レベルを第1および第2のあらかじめ決められた閾値と比較すること(S14)、そして
前記前立腺がんの予後を提供すること(S15)を含み、ここでプロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には前立腺がんの予後が悪いと規定され(S15a)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第2のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には予後が良いと規定される(S15b)方法。
【請求項24】
前記対象からの前記サンプルが体液サンプルであり、前記第1のあらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームであり、前記第2のあらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき1 ngのプロスタソームである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
それを必要とする対象における、前立腺がんの重症度を評価するためのインビトロの方法であって、
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること(S21);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること(S22);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること(S23);
プロスタソームの前記レベルを第1および第2のあらかじめ決められた閾値と比較すること(S24);そして
前記前立腺がんの重症度を評価すること(S25)を含み、そのとき前記前立腺がんを、プロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には重度であると評価し(S25a)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも低いが第2のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には中程度であると評価し(S25b)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第2のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には軽度であると評価する(S25c)方法。
【請求項26】
前記対象からの前記サンプルが体液サンプルであり、前記第1のあらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームであり、前記第2のあらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき1 ngのプロスタソームである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
それを必要とする対象における、前立腺がん治療の有効性を評価するインビトロの方法であって、
前立腺がん治療の前に、対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出すること(S31)、
前記対象に抗前立腺がん治療を提供すること(S32)、
前記前立腺がん治療の後に前記対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出すること(S33)、
前記治療前のプロスタソームのレベルを前記治療後のレベルと比較すること(S34)、そして
前記治療の有効性を判断すること(S35)を含み、ここで前記治療後のプロスタソームの前記レベルが前記治療前のレベルと比べて低下している場合には前記治療が効果的であると判断し(S35a)、プロスタソームの前記レベルが同じであるか上昇した場合には前記治療が効果的でないと判断し(S35b)、対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出すること(S31、S33)が、
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること(S31a、S33a);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること(S31b、S33b);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること(S31c、S33c)を含む、方法。
【請求項28】
前記対象からの前記サンプルが体液サンプルであり、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される、請求項15~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片である、請求項15~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
請求項15~28のいずれか1項に記載の方法で使用するための、請求項1~14のいずれか1項による抗体またはその抗原結合断片の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロスタソームに結合できるヒト抗体またはその抗原結合断片と、前立腺がんの診断および予後に関する。より具体的には、提案されている技術は、体液中のプロスタソームを検出するためのヒト抗体またはその抗原結合断片を用いて前立腺がんを診断する方法に関する。本開示は、体液中のプロスタソームを特異的かつ選択的に検出できるヒト抗体と、そのヒト抗体を用いて前立腺がんを診断する方法を含む。本開示はさらに、前立腺がんの予後を提供すること、重症度を評価すること、および前立腺がんの医学的治療の有効性を判断することを含む。
【背景技術】
【0002】
がんは最も一般的な致死性疾患の1つであり、診断と治療における最近の進歩にもかかわらず、まだ毎年かなり多数の死の原因となっている。一例として、前立腺がんは男性における最も一般的ながん疾患であり、局所的腫瘍または腫瘍の転移性広がりに起因する症状(排尿障害または骨痛など)を示す。しかもこの疾患は、診断時に進行した段階であることがしばしばある。
【0003】
前立腺特異的抗原(PSA)の測定が前立腺がん診断のパターンを変化させ、初期段階で検出されるケースがより多くなったため、進行した段階のケースはより少なくなった。しかし血清PSAは血清中の前立腺がん特異的マーカーでないために理想的な診断マーカーではなく、従って前立腺がんのスクリーニングに適していない。PSA試験は良性の前立腺過形成と初期段階の前立腺がんを識別することができず、それ以上に、高転移能力を持つ前立腺がん(侵襲性前立腺がん)と、侵襲性がないか弱い前立腺がん(緩徐進行性前立腺がん)を識別することができない。
【0004】
細胞は、エキソソームと呼ばれていて多胞体が形質膜と融合するときに放出される小胞を分泌することが以前に示されている。このような小胞は出所となる細胞の膜のラフト部に主に由来し、その出所となる細胞に特異的なタンパク質立体配置を持つ。エキソソームは多くの真核生物の体液(血液、尿、および細胞培養物の培地などが含まれる)中に存在する。エキソソームは、その出所となる細胞のさまざまな分子成分(タンパク質とRNAが含まれる)を含有する。エキソソームのタンパク質組成は出所となる細胞と組織によって異なるが、大半のエキソソームは、タンパク質分子の進化的に保存された共通のセットを含有する。単一のエキソソームのタンパク質含量は約20,000分子であり、その出所となる細胞を表わしている可能性がある。すなわちタンパク質含量を見ることによってどのタイプの細胞がエキソソームを分泌したかを結論できる可能性がある。エキソソームが二本鎖DNAを含むことも示されている。証拠はさらに、エキソソームが特殊化された機能を持ち、凝固、細胞間シグナル伝達、および廃棄物管理などのプロセスで重要な役割を果たしていることを示唆する。その帰結として、エキソソームの臨床応用への興味が増大している。エキソソームは、療法のための予後予測と、健康と疾患のためのバイオマーカーとして使用できる可能性がある。
【0005】
サブミクロンの膜小胞は前立腺腺房細胞によって分泌されて精液の中に入ることが以前に発見されている。これらサブミクロンの膜小胞は一種のエキソソームであり、プロスタソームと呼ばれる。悪性腫瘍における変化した組織アーキテクチャは、プロスタソームを前立腺の腺房腔よりも間質腔へと放出するのが容易である。したがってプロスタソームは外部血流へも漏出する。悪性前立腺細胞はプロスタソームを分泌することと、悪性前立腺腫瘍の存在が末梢血に存在するプロスタソームの数を増加させることが、実証されている(Tavoosidana et al. PNAS, May 24, 2011, vol. 108, no. 21, 8809-8814)。したがってプロスタソームは前立腺がんの潜在的なバイオマーカーである可能性があると推測される。
【発明の概要】
【0006】
本開示の1つの目的は、先行技術における上記の欠陥と不都合を単独で、または任意の組み合わせで軽減、緩和、または除去しようとする方法と、抗体またはその断片を提供することである。この目的は、対象の体液サンプルにおけるプロスタソームのレベルを、それを必要とする対象で求めるのに使用するための新規な抗体またはその抗原結合断片(合成断片が含まれる)によって達成される。
【0007】
1つの側面では、プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(合成断片が含まれる)が提供される。いくつかの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、抗原結合(Fab)断片、または抗原結合一本鎖Fv(scFv)断片(ヒト合成scFv断片など)である。
【0008】
さらなる1つの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、表3に規定されている配列番号60~104からなる群から選択される1つ以上のプロスタソーム表面抗原に結合することによってプロスタソームに選択的に結合する。
【0009】
いくつかの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、複数のプロスタソーム表面抗原に結合することによってプロスタソームに選択的に結合する。いくつかの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、複数のプロスタソーム表面抗原に結合することによってプロスタソームに選択的に結合し、そのとき前記プロスタソーム表面抗原がプロスタソーム膜の表面に塊を形成し、その塊が前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片によって特定されてその塊に前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合する。
【0010】
一実施形態では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、表11から選択される少なくとも5つの抗原を含むタンパク質/抗原の塊に結合する。表11の中のそれぞれの断片について規定されているように、scFv断片1~12のそれぞれについて、少なくとも5つのタンパク質/抗原が結合した塊の中に存在する。
【0011】
いくつかの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を捕捉抗体として用いるイムノアッセイにおいて前記抗体またはその抗原結合断片が少なくとも10 ナノグラム/ミリリットル(ng/mL)の感度を可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも6つの相補性決定領域(CDR)をCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3の任意の組み合わせで含み、前記CDRの選択は、
配列番号25、27、および28から選択されるCDR-H1;
配列番号26、29、および30から選択されるCDR-H2;
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択されるCDR-H3;
配列番号56と57から選択されるCDR-L1;
配列番号58と59から選択されるCDR-L2;
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24から選択されるCDR-L3を含む群からなされる。
【0013】
関連する一実施形態では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、上記のように少なくとも6つのCDRを含むことができ、その中のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3は、配列番号32~43と、それと70%以上(例えば75%、80%、85%、90%、95%、またはそれよりも多く)一致する配列からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列の中に含まれ、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3は、配列番号44~55および56~59と、それと70%以上(例えば75%、80%、85%、90%、95%、またはそれよりも多く)一致する配列からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列の中に含まれる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも4つの相補性決定領域(CDR)をCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3の任意の組み合わせで含み、前記CDRの選択は、
配列番号25、27、および28から選択されるCDR-H1;
配列番号26、29、および30から選択されるCDR-H2;
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択されるCDR-H3;
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23から選択されるCDR-L3、およびこれらと95%以上(例えば96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)一致するCDR配列を含む群からなされる。
【0015】
関連する一実施形態では、前記ヒト抗体またはその抗原結合断片は、上記のように少なくとも4つのCDRを含むことができ、その中のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3は、配列番号32~43と、それと70%以上(例えば75%、80%、85%、90%、95%、またはそれよりも多く)一致する配列からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列の中に含まれ、CDR-L3は、配列番号44~55と、それと70%以上(例えば75%、80%、85%、90%、95%、またはそれよりも多く)一致する配列からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列の中に含まれる。
【0016】
一実施形態では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、
i)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号4によって規定されるCDR-H3、および
配列番号16によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
ii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号7によって規定されるCDR-H3、および
配列番号19によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
iii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号1によって規定されるCDR-H3、および
配列番号13によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
iv)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号2によって規定されるCDR-H3、および
配列番号14によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
v)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号3によって規定されるCDR-H3、および
配列番号15によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
vi)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号5によって規定されるCDR-H3、および
配列番号17によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
vii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号6によって規定されるCDR-H3、および
配列番号18によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
viii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号8によって規定されるCDR-H3、および
配列番号20によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
ix)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号9によって規定されるCDR-H3、および
配列番号21によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
x)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号10によって規定されるCDR-H3、および
配列番号22によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
xi)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号11によって規定されるCDR-H3、および
配列番号23によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片、
xii)配列番号25によって規定されるCDR-H1
配列番号26によって規定されるCDR-H2
配列番号12によって規定されるCDR-H3、および
配列番号24によって規定されるCDR-L3
を持つscFv断片を含む群から選択される合成scFv断片である。
【0017】
一実施形態では、前記ヒト抗体またはその抗原結合断片は、上記のCDRを含む合成scFv断片であり、この断片は、リンカーを介して接続された可変重鎖VHと可変軽鎖VLを持ち、前記断片は、
i)配列番号35によって規定されるVHと
配列番号47によって規定されるVL
を持つscFv断片、
ii)配列番号38によって規定されるVHと
配列番号50によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
iii)配列番号32によって規定されるVHと
配列番号44によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
iv)配列番号33によって規定されるVHと
配列番号45によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
v)配列番号34によって規定されるVHと
配列番号46によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
vi)配列番号36によって規定されるVHと
配列番号48によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
vii)配列番号37によって規定されるVHと
配列番号49によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
viii)配列番号39によって規定されるVHと
配列番号51によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
ix) 配列番号40によって規定されるVHと
配列番号52によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
x)配列番号41によって規定されるVHと
配列番号53によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
xi)配列番号42によって規定されるVHと
配列番号54によって規定されるVL、
を持つscFv断片、
xii)配列番号43によって規定されるVHと
配列番号55によって規定されるVL、
を持つscFv断片を含む群からとさらに選択されるを含む群から選択される。
【0018】
1つの側面では、対象に前立腺がんが存在するかどうかを判断するためのインビトロの方法が提供され、この方法は、プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること;前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること;前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したあらゆるプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること;プロスタソームの前記レベルをあらかじめ決められた閾値と比較すること;およびプロスタソームの前記検出されたレベルが前記あらかじめ決められた閾値よりも高い場合に前記対象に前立腺がんが存在すると判断することを含む。
【0019】
さらなる1つの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したあらゆるプロスタソームを検出することは、抗プロスタソーム検出抗体またはその抗原結合断片を用いて前記プロスタソームを検出することを含む。
【0020】
さらなるもう1つの側面では、前記方法はサンドイッチイムノアッセイであり、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出することは、さらなる検出抗体を用いて前記抗プロスタソーム検出抗体を検出することを含み、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は捕捉抗体であり、前記抗プロスタソーム検出抗体は一次検出抗体であり、前記さらなる検出抗体は二次検出抗体である。
【0021】
1つの側面では、前立腺がんの予後の提供を、それを必要とする対象で実施するインビトロの方法が提供され、この方法は、プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること、プロスタソームの前記レベルを第1および第2のあらかじめ決められた閾値と比較すること、および前記前立腺がんの予後を提供することを含み、そのときプロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には前立腺がんの予後が悪いと規定され、プロスタソームの前記検出されたレベルが第2のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には予後が良いと規定される。
【0022】
1つの側面では、前立腺がんの重症度の評価を、それを必要とする対象で実施するインビトロの方法が提供され、この方法は、プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること;前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること;前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること;プロスタソームの前記レベルを第1および第2のあらかじめ決められた閾値と比較すること;および前記前立腺がんの重症度を評価することを含み、そのとき前記前立腺がんを、プロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には重度であると評価し、プロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも低いが第2のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には中程度であると評価し、プロスタソームの前記検出されたレベルが第2のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には軽度であると評価する。
【0023】
1つの側面では、前立腺がん治療の有効性の評価を、それを必要とする対象で実施するインビトロの方法が提供され、この方法は、前立腺がん治療の前に、対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出すること;前記対象に抗前立腺がん治療を提供すること;前記前立腺がん治療の後に前記対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出すること;前記治療前のプロスタソームのレベルを前記治療後のレベルと比較すること;および前記治療の有効性を判断することを含み、そのとき前記治療後のプロスタソームの前記レベルが前記治療前のレベルと比べて低下している場合には前記治療が効果的であると判断し、プロスタソームの前記レベルが同じであるか上昇した場合には前記治療が効果的でないと判断する。いくつかの側面では、対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出することは、プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること;前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること;前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、対象からのサンプルは体液サンプルであり、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、診断方法で使用される前記あらかじめ決められた閾値は、体液サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームであり、第1のあらかじめ決められた閾値は、体液サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームであり、第2のあらかじめ決められた閾値は、体液サンプル1 mLにつき1 ngのプロスタソームであり、前立腺がん疾患の予後または重症度を提供するための方法で使用される。
【0026】
いくつかの側面では、上記の方法で使用されるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、上記の抗体またはその抗原結合断片である。
【0027】
別の1つの側面では、上記の方法で使用するための上記のような抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0028】
本発明は、請求項に記載されている特徴の可能なあらゆる組み合わせに関係することに注意されたい。ある複数の手段が互いに異なる従属請求項の中で言及されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせをうまく利用できないことを示してはいない。
【0029】
他の目的と利点は、以下の説明的な図面と添付の請求項を参照してなされる以下の詳細な記述の復習から当業者に明らかになろう。
【0030】
1つの側面に関して記載されている1つの特徴は他の側面に組み込むこともでき、その特徴の利点は、それが組み込まれているあらゆる側面に適用できる。
【0031】
本発明の考え方の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な開示、添付の請求項のほか、図面から明らかになろう。
【0032】
一般に、請求項で用いられているあらゆる用語は、本技術分野におけるその通常の意味に従って解釈されるべきだが、本明細書にそうでないことが明示的に規定されている場合は別である。さらに、「第1の」、「第2の」などの用語の使用は、本明細書では、いかなる順番、量、または重要性を表わすこともなく、むしろ1つの要素を別の要素から識別するのに用いられる。「1つの/1つの/その[要素、装置、成分、手段、工程など]」へのあらゆる言及は、その要素、装置、成分、手段、工程などの少なくとも1つのケースへの言及であると広く解釈されるべきだが、そうでないことが明示的に述べられている場合は別である。本明細書に開示されているどの方法の工程も開示されている正確な順番で実施される必要はないが、明示的に述べられている場合は別である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の上記の目的、特徴、および利点のほか、本発明の追加の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照した本発明の考え方のさまざまな実施形態の説明的かつ非限定的な記述を通じてよりよく理解されよう。
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の抗体を用いた1つの代表的なアッセイを示す。
【
図3a】
図3は、HeIL-11合成scFvライブラリとHeIL-13合成scFvライブラリの設計の一例を示しており、
図3aは実施例1からのCDRを示し、
図3bはそれらCDRのアミノ酸含有率を示す。
【
図3b】
図3は、HeIL-11合成scFvライブラリとHeIL-13合成scFvライブラリの設計の一例を示しており、
図3aは実施例1からのCDRを示し、
図3bはそれらCDRのアミノ酸含有率を示す。
【
図4a】
図4は、HeIL-11ライブラリとHeIL-13ライブラリの構成を示しており、
図4aはHeILライブラリ足場のアミノ酸配列を示し、
図4bは、HeIL-11抗体ライブラリとHeIL-13抗体ライブラリのVHとVLの設計において多様性(X)をもたらす特定の位置を示す。
【
図4b】
図4は、HeIL-11ライブラリとHeIL-13ライブラリの構成を示しており、
図4aはHeILライブラリ足場のアミノ酸配列を示し、
図4bは、HeIL-11抗体ライブラリとHeIL-13抗体ライブラリのVHとVLの設計において多様性(X)をもたらす特定の位置を示す。
【
図5】
図5は、対象における前立腺がんを診断するための本開示の方法のフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、対象における前立腺がんの予後を予測するための本開示の方法のフローチャートを示す。
【
図7】
図7は、対象における前立腺がんの重症度を評価するための本開示の方法のフローチャートを示す。
【
図8】
図8は、対象の前立腺がん治療の有効性を判断するための本開示の方法のフローチャートを示す。
【0035】
図面は必ずしも正しい縮尺ではなく、一般に、本発明の考え方を明らかにするために必要な部分を示しているだけであり、他の部分は省略されるか、示唆されているだけである可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、プロスタソームに選択的に結合する新規なモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、プロスタソームに特異的なそれらモノクローナル抗体または断片を用いた前立腺がんの診断および予後予測に関する。本開示の諸側面は、添付の図面を参照して以下により十分に記述されよう。しかし本明細書に開示されている抗体と方法は多くの異なる形態で実現できるため、本明細書に示されている側面に限定されると解釈されてはならない。図面中の似た番号は全体を通じて似た要素を示す。
【0037】
本明細書で用いられている用語は、本開示の特定の側面を記述することだけを目的としており、本開示を限定する意図はない。本明細書では、単数形「1つの」、「1つの」および「その」は、複数形も含むことが想定されているが、文脈がそうでないことを明らかに示している場合は別である。最初に、以下の開示を明確にするためいくつかの用語を定義することができよう。
【0038】
いくつかの実施形態では、非限定的な用語「抗体」または「その抗原結合断片」を用いる。「抗体」という用語は、本明細書ではその最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方を含む。周知のように、抗体は、標的(抗原)(タンパク質、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に特異的に結合できる免疫グロブリン分子であり、その免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通じて結合する。本明細書のヒトモノクローナル抗体、典型的にはファージ提示抗体として、プロスタソームに選択的に結合できる任意のタイプのヒト抗体または抗体のヒト抗原結合断片が可能である。
【0039】
本明細書では、「抗体」または「その抗原結合断片」という用語は、完全長の、または完全なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab3、Fv、およびこれらのバリアントなど)、1つ以上の抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ミニボディ、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、線形抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および任意の他の改変された立体配置の免疫グロブリン分子で必要な特異度を持つ抗原認識部位を含むもの(抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有結合が改変された抗体が含まれる)も包含する。完全長抗体は2つの重鎖と2つの軽鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と、第1、第2、および第3の定常領域(CH1、CH2、およびCH3)を含有する。各軽鎖は軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)を含有する。抗体は、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて異なるクラスに割り当てられる。6つの主要なクラスの抗体、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、IgM、およびIgYが存在しており、これらのいくつかはさらにサブクラスに分類することができ、それは例えばlgG1、lgG2、lgG3、lgG4、lgA1、およびlgA2である。「完全長抗体」という用語は、本明細書では、任意のクラスの抗体(IgD、IgE、IgG、IgA、IgM、またはIgY(またはその任意のサブクラス)など)を意味する。異なるクラスの抗体のサブユニット構造と三次元配置は周知である。「抗原結合断片」という用語は、抗体分子またはその誘導体の1つの部分または領域で、対応する完全長抗体の抗原結合の全部または重要部分を保持しているものを意味する。抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、またはその両方を含むことができる。VHとVLのそれぞれは、典型的には3つの相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含有しており、VHドメインからのCDRについてはCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と表わされ、VLドメインからのCDRについてはCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と表わされる。VHまたはVLの中の3つのCDRにはフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)が隣接する。上に簡潔に列挙したように、抗原結合断片の非限定的な例に含まれるのは、(1)Fab断片(VL-CL鎖とVH-CH鎖を持つ1価断片);(2)Fab’断片(重鎖ヒンジ領域を持つFab断片)、(3)F(ab’)2断片(例えばヒンジ領域の位置でジスルフィド架橋によって連結された重鎖ヒンジ領域が接合したFab’断片の二量体);(4)Fc断片;(5)Fv断片(抗体の単一のアームのVLドメインとVHドメインを持つ最小抗体断片);(6)一本鎖Fv(scFv)断片(scFv のVHドメインとVLドメインがペプチドリンカーによって連結されている単一ポリペプチド鎖);(7)(scFv)2(ジスルフィド架橋を介して2つのVHドメインが会合した2つのVHドメインと2つのVLドメインを含む)、および(8)ドメイン抗体(抗原に特異的に結合する抗体の単一の可変ドメイン(VHまたはVL)ポリペプチドが可能である)である。抗原結合断片は定型的な方法を通じて調製することができる。例えばF(ab’)2断片は完全長抗体分子のペプシン消化によって生成させることができ、Fab断片はF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成させることができる。あるいは断片は、組み換え技術を通じて重鎖断片と軽鎖断片を適切な宿主細胞(例えば大腸菌、酵母、哺乳類、植物、または昆虫の細胞)の中で発現させ、それらを生体内またはインビトロのいずれかで組み立てて望む抗原結合断片を形成することにより調製することができる。一本鎖抗体は、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列と軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を組み換え技術を通じて連結させることによって調製することができる。例えば可撓性リンカーを2つの可変領域の間に組み込むことができる。一実施形態では、ライブラリ足場に存在するCDRはリンカーを介して連結させて合成scFv断片を形成する。したがって「抗体またはその抗原結合断片」という用語は、本明細書では合成結合断片(ヒト合成scFv断片など)も包含する。したがって本明細書の記述全体を通じて一般的な用語「抗体」または「ヒト抗体」を使用する。これらの用語はその最も広い意味で用いられるため、上記と下記のあらゆるバリアントと断片も包含する。したがって「ヒト抗体」という用語は、抗体のヒト結合断片も包含する。
【0040】
「ヒトモノクローナル抗体」または「ヒト抗体」という用語は、完全にヒト配列由来でマウス配列を持たない抗体または関連する断片を意味し、抗体の断片と合成scFv断片も包含する。ヒト抗体はたいてい2つの提供源、すなわちファージ提示技術とトランスジェニックマウスを通じて生成させた。本発明のヒト抗体に、例えばマウスモノクローナル抗体が処理されてよりヒトに近づいたヒト化抗体は包含されない。ヒト化はマウス定常領域と可変(V)フレームワーク領域のヒト配列による置換であり、その結果として可変(V)領域の相補性決定領域(CDR)だけがマウス配列起源の抗体になる。逆に、ヒトモノクローナル抗体は完全にヒトであり、非ヒトである結合エピトープを相変わらず含むヒト化抗体と対比される。
【0041】
本明細書では、「Xに結合できる」(ただしXは抗原である)という表現は、抗体またはその抗原結合断片の1つの特性を意味し、例えばELISAによって、表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって、速度論的排除アッセイ (KinExA(登録商標))によって、またはバイオレイヤー干渉法(BLI)によって試験することができる。当業者はこれらの方法とそれ以外の方法を知っている。
【0042】
またいくつかの実施形態では、一般的な用語「イムノアッセイ」を使用する。イムノアッセイとして、任意の種類のイムノアッセイ(ラテラルフロー免疫クロマトグラフィアッセイ、免疫磁気分離と電気化学発光(IMS-ECL)アッセイ、蛍光イムノアッセイ、時間分解蛍光(TRF)アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または酵素結合免疫吸着(ELISA)など)が可能であり、これらは、対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルまたは量を検出するのに本発明のモノクローナル抗体を使用する。ただし「サンプル」として、対象からの体液サンプル(血液サンプル、血漿、血清、尿、脳脊髄液、または細胞懸濁液など)が可能であり、細胞懸濁液は例えば生検に由来するものが可能である。
【0043】
「塊」という用語は、本明細書では、前立腺膜または前立腺膜断片に結合する抗原の三次元配置を形成する複数のプロスタソーム抗原を含む物質を意味するのに使用できる。タンパク質抗原の塊は前立腺膜の表面に存在する。一実施形態では、本発明の抗体またはその断片は複数のプロスタソーム表面抗原に結合し、それらプロスタソーム表面抗原がプロスタソーム膜の表面に塊を形成して、その塊がモノクローナル抗体またはその抗原結合断片によって特定される。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、表11から選択される複数の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、「クラスター」、「構造」、または「凝集体」という用語は、抗原の三次元配置を形成する複数のプロスタソーム抗原を含む物質を指すときには同義語として使用できる。
【0044】
「感度」という用語は、例えば診断アッセイの文脈では、興味ある状態が真に陽性である割合(検出の確率)を意味し、実際に陽性であることがそうであると正しく同定される割合(例えばその状態を持つと正しく同定される病人の割合)を測定する。高感度だと偽陽性の数、すなわち対象が現実にはその状態であるのにその状態を持たないと同定されることが少なくなる。抗体、例えば「感受性抗体」の文脈における「感度」は、意図する抗原を少量でも検出することができる抗体である。したがって感度は、その抗体を用いたアッセイで検出できる抗原の最小濃度に関係して規定することができる。
【0045】
「特異度」という用語は、「選択度」と呼ばれることがときどきあり、興味ある状態が真に陰性である割合を意味し、実際に陰性であることがそうであると正しく同定される割合(例えばその状態を持たないと正しく同定される健康な人の割合)を測定する。アッセイにおいて高特異度だと、偽陽性の数、すなわち対象が現実にはその状態でないのにその状態を持つと同定されることが少なくなる。選択的または特異的な抗体は、意図する抗原以外の標的と交差反応しないか、その程度が少ない。したがって本発明のプロスタソーム特異的抗体またはその抗原結合断片は、プロスタソームまたはプロスタソーム抗原に特異的または選択的に結合するが、他の抗原(他のタイプのエキソソームまたは細胞の表面に存在する抗原など)には結合しない。
【0046】
「診断」または「診断する」という用語は、本明細書では、疾患または状態(本件では前立腺がん)が調べる対象に存在するかどうかを判断するプロセスを意味する。診断は、診断手続きの意味では、個人の状態を、なされるべき治療と予後予測に関する医学的判断を可能にする別々の明確に異なるカテゴリーに分類する試みと見なすことができる。その後、診断の1つの選択肢が、1つの疾患または他の状態に関して記述されることがしばしばある。最初の仕事は、診断手続きを実施するため医学的徴候を検出することであり、それは例えば、正常であるとして知られているところからのあらゆる逸脱(本件では末梢血の中のプロスタソームのレベル)の検出である。典型的には、侵襲性前立腺がんが、緩徐進行性前立腺がんと比べ、本発明のアッセイにおいて検出され、診断される。
【0047】
「予後」または「予後予測する」という用語は、本明細書では、疾患から回復するか生き延びる可能性の予測または推測を意味する。がんでの予後はいくつかの因子(診断時の疾患のステージ、がんのタイプとサブタイプ、腫瘍の分子プロファイルなどであり、性別にさえ依存する可能性がある)に依存する可能性がある。本発明の前立腺がんの予後は、調べる対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルと相関する可能性があり、高レベルは悪い予後(すなわちその疾患が悪い転帰である大きな可能性)を示し、低レベルは、良い予後(すなわちその疾患が良い転帰である大きな可能性)を示す。
【0048】
「プロスタソーム」は、エキソソームとも呼ばれるサブミクロンの膜性小胞を意味し、前立腺上皮細胞によって分泌されて精液の中に入る。したがってプロスタソームは一種のエキソソームである。プロスタソームは50~500 nmのサイズを特徴とし、コレステロール/リン脂質比が例外的に大きい脂質形質膜二層と、その表面膜上の特徴的なタンパク質(カベオリン-1、前立腺幹細胞抗原、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD10、CD13、およびCD26など)に取り囲まれている一方で、内部にRNAとDNAを含んでいる(精子機能的パラメータに対する精液プロスタソームの有益な効果、Amit Kumar, Sujata Pandita, Subha Ganguly, Simson Soren and Nileshkumar Pagrut J Entomology and Zoology Studies 2008;6(5):2464-2471)。当業者であれば、この情報と引用されている論文の情報に基づき、単離体または末梢血の中で遭遇した場合にプロスタソームをマイクロ小胞から、または他のあらゆるタイプのエキソソームから識別することができると考えられる。プロスタソームの特別な特徴が理由で、他のエキソームと交差反応しないプロスタソーム特異的抗体を取得することが可能である。プロスタソームは、典型的には、本明細書の下記の表2に掲載されている1つ以上のタンパク質抗原を提示する。
【0049】
「前立腺がん」という用語は、前立腺がんに罹患している対象の文脈では、最も広い意味だと1個の前立腺がん細胞の存在を意味する。1個の細胞は、精液の外部で閾値を超えて体液中の検出可能なプロスタソームのレベルになるのに十分でないとしても、前立腺がんの初期診断は可能である。検出または診断された本発明の前立腺がんは、典型的には、がん細胞を回収するための生検を実施できるステージである可能性があり、好ましくは転移しておらず前立腺の中だけに存在するため、外科的に除去可能である。したがって本発明の方法を利用した前立腺がんの初期検出は、手術で治療できるがんの数を増やすという技術的効果を与え、どのがんで手術を実施できるかを判断する決定支援手段として利用することもできよう。典型的には、対象のサンプル中でプロスタソームが検出されたレベルが10 ng/mL以下だと、手術による治療が可能であると見なされ、100 ng/mL超のレベルは手術による治療ができないと見なされよう。プロスタソームの検出されたレベルが10 ng/mL~100 ng/mLであることは、実施する治療法を決定する前に前立腺がんのさらなる特徴づけを必要とする印として利用することができよう。手術を実施できるためには、前立腺がんが前立腺の中に留まっている必要があり、転移していてはならないため、本発明のアッセイで検出される高レベルは、手術をもはや実施できないことを予測できる。
【0050】
PSAは現在、前立腺がんを検出するために最もよく利用されているマーカーだが、残念なことにこのバイオマーカーは十分に特異的ではない。したがって前立腺がんをスクリーニングするためのより優れたマーカーが必要とされている。好ましいマーカーは、臓器前立腺とがん疾患の両方に対して特異的でなければならない。1つの有望なマーカーは、前立腺内の腺房細胞から小胞を放出するプロスタソームである。
【0051】
発明者らは、悪性前立腺細胞がプロスタソームを分泌することと、悪性前立腺腫瘍の存在が末梢血の中に存在するプロスタソームの数を増加させるため、これはプロスタソームが前立腺がんの潜在的なバイオマーカーになりうることを示していることを以前に実証している。しかしプロスタソームを用いて前立腺がんを診断するための簡単で、ロバストで、信頼性があり、選択的で、感受性の十分な方法を開発することは困難であった。
【0052】
前立腺がんを診断するのにプロスタソームに対するモノクローナル抗体を用いる複数の方法が以前に記載されているが、どの方法も、単一の捕捉抗体を用いて血液、血清、または血漿の中の少量のプロスタソームを検出する感度を持たない。また、エキソームではなくプロスタソームを検出するための特異性が一般に欠けているように見える。したがって、前立腺がんの診断に使用できて、診断を実施するとき偽陰性と偽陽性を回避するのに十分な感度と特異度の両方を持つ新しいロバストな方法が必要とされている。
【0053】
本開示に示されているように、先行技術の上記の問題と欠点は、完全なヒトモノクローナル抗体またはその結合断片を前立腺がんの診断に用いることによって克服された。本発明の完全なヒトモノクローナル抗体または結合断片は、単一の捕捉抗体を用いて患者からの血清と血漿のサンプルで前立腺がんの診断を実際に実施することのできる望む感度と特異度/選択度を実現する。したがって本開示は、前立腺がんに罹患していることが疑われる対象の診断、または予後予測を提供する方法に関するものであり、この方法は対象からの末梢血サンプルでプロスタソームをインビトロで検出することを含み、プロスタソームの検出されたレベルを、健康な対象に由来する閾値または参照値を比較することができる。閾値と参照値はあらかじめ決めること、または特定の試験のために較正することができる。
【0054】
前立腺がん診断のためにプロスタソームを検出する以前の複数の方法は、典型的にはマウスのモノクローナル抗体、または最良の場合にはヒト化されたモノクローナル抗体を使用していた。これらの方法は、前立腺がんを効果的に診断または予後予測することを可能にするのに必要な特異度と感度を提供できなかった。最大の問題はおそらく感度であり、抗体がサンプル中の少量のプロスタソームを検出できないため、偽陰性を生じさせる。例えば以前の1つの研究において、プロスタソームの適切な捕捉抗体または検出抗体として機能する能力を持つ抗体の数を調べるため酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が設定された(E. Thermaenius et al, DiVA, id: diva2:544923)。プロスタソームに特異的な2つの表面タンパク質がこの研究では捕獲抗原として使用され、プロスタソームの表面に結合するタンパク質がこのアッセイで二次抗体として使用された。この実験設定では、検出限界は2500 ng/mLであり、がんの中のプロスタソームを検出するには十分でないと見なされた。以前の別の1つの研究(Tavoosidana et al. PNAS, May 24, 2011, vol. 108, no. 21, 8809-8814)では、プロスタソームのレベルが血清中で検出された。そのためには、診断に用いるのに十分なレベルの感度と特異度に到達するのに組み合わせた5つの抗体が必要とされた。逆に本発明では、診断のためプロスタソームを特異的かつ選択的に検出するのに検出アッセイで1つのモノクローナル抗体を用いることだけを必要とする方法が提供される。したがって本発明の抗体を使用することではるかに簡単なアッセイが提供され、それは容易にスケールアップすることができて、製造するのにより安価である。
【0055】
使用する抗体が十分に特異的でない場合にはアッセイで偽陽性の問題が起こる可能性もある。アッセイで使用する抗体は例えば他のエキソームと反応する可能性がある。なぜならすべてのエキソームは共通のエピトープを共有しているからである。細胞、組織、および臓器の中の全ヒトタンパク質をマッピングすることを目的としたプログラムであるヒトタンパク質アトラスによって示されているように、ランダムな抗体は異なる組織と大きな交差反応性を示す。プロスタソーム表面抗原は免疫性不妊症と抗精子抗体を引き起こす主要な自己抗原であることが以前に示されている(例えばL. Carlsson et al. Journal of Andrology, Vol. 25, No. 5, September/October 2004と、A. Minelli et al. ANTICANCER RESEARCH 25: 4399-4402 (2005)を参照されたい)。すなわちプロスタソームに対する自己抗体は臨床性不妊症を持つ男性で一般的である。免疫性不妊症を特徴づける1つの事柄は、影響を受けた男性は不妊だが、一般にそれ以外のどのような疾患もないことである。これは、発明者らにより、ヒト対象自身が産生する抗体であるこれら自己抗体がプロスタソームに特異的であり、他のタイプの細胞または組織と反応しないためと解釈された。したがってヒトDNAライブラリからのヒト抗体を用いると、マウスモノクローナル抗体またはヒト化抗体を用いるよりも優れていてより特異的/選択的なプロスタソームが得られることになる。したがってプロスタソームを検出するのにがんのためのバイオマーカーとしてヒト抗原結合エピトープに基づくヒト抗体または抗体断片を用いると、先行技術で示唆されている抗体と比べてより高い特異度と選択度が実現されることになる。
【0056】
先行技術とは異なり、本開示により、完全にヒトであり、偽陽性を回避するのに十分な特異性があり、体液中の少量のプロスタソームを検出するのに十分な感度がある新規なモノクローナル抗体または結合断片が提供される。これらプロスタソーム特異的抗体は、体液(血液、血清、または血漿など)の中のプロスタソームのレベルを検出する異なる検出アッセイで使用することができる。生検または前立腺マッサージを実施するとき、生検からの細胞懸濁液、またはマッサージに起因するプロスタソームを含む尿もサンプル体液として用いることができる。プロスタソームは前立腺細胞から分泌されて精液の中に入るため、健康な対象ではプロスタソームは一般に精液の中に存在し、ほんのわずかな割合が外部血流へと漏出する。しかしプロスタソームは悪性前立腺細胞によっても分泌されて、末梢血の中に存在するプロスタソームの数が増加する。がん細胞がプロスタソームを分泌するとき末梢血の中のプロスタソームのレベルが急速に上昇する理由は、数、したがって漏出が増加するからだけでなく、実際に前立腺細胞ががん細胞になるときその極性を失い、したがってプロスタソームを血中に分泌するからでもあることが見いだされている。したがって末梢血の中のプロスタソームのわずかなレベル上昇も前立腺がんを示す。前立腺がんを、末梢血の中にプロスタソームのほんのわずかなレベル上昇がある可能性のある初期ステージの前立腺がんも含めて効果的に検出し、診断し、予後予測することができるためには、非常に感度のよいアッセイが必要である。
【0057】
本発明のアッセイは、血中のプロスタソームの上昇したレベルの存在、したがって悪性前立腺がん細胞の存在を検出するのに完全なヒトモノクローナル抗体またはその結合断片を使用する。体液サンプル(血液サンプルなど)は診断を潜在的に必要とする対象(病院またはクリニックの患者など)から採取され、そのサンプルはプロスタソームの増加した量が直接スクリーニングされるか、最初に処理されて血清または血漿のサンプルが得られ、それがその後アッセイにおいてスクリーニングされる。体液中で検出されたプロスタソームの量はあらかじめ決められた閾値または参照値と比較され、検出値が閾値の上まで増加しているか参照値と比べて増加していることが、調べた対象に前立腺がんが存在することを示す。典型的には、体液サンプル1ミリリットル(mLまたはml)につき約1~2ナノグラム(ng)というプロスタソームのレベル(濃度)ががんであることを示し、10 ng/mLを超えるレベルは決定的な診断に使用することができる。1つ以上の閾値または1つ以上の参照値と比べた検出されたプロスタソームのレベルは前立腺がんの予後予測にも用いることができ、例えば参照値よりも高い検出値は、より後期のステージの前立腺がんであり、したがってより悪い予後を示すのに対し、参照値よりも低い検出値は、より初期の前立腺がんであること、したがってより良い予後を示す。予後はいくつかの閾値によって規定することもできよう。その場合にそれらいくつかの閾値よりも上であるか下であるかが、異なる予後を示す。例えばプロスタソームのレベルがある閾値(第1のあらかじめ決められた閾値)よりも上である場合、前立腺がんの予後は悪いと予測されるのに対し、レベルがある閾値(第2のあらかじめ決められた閾値など)よりも下である場合には、前立腺がんの予後が良いと予測される。第1の閾値として、1 mLのサンプルにつき10 ngのプロスタソームが可能であり、第2の閾値として、1 mLのサンプルにつき1 ngのプロスタソームが可能である。プロスタソームのレベルは前立腺がんの重症度も示すことができ、それを可能な治療(手術、または手術なしなど)と結びつけることができる。がんの進行と治療の有効性も、同じ対象での異なる時点におけるプロスタソームのレベルの測定によって判断することができる。この場合にプロスタソームの量の減少は腫瘍が退縮していることと治療の有効性が高いことを示しているのに対し、量の増加は腫瘍が進行していることと治療の有効性が低いことを示す。したがって治療の有効性は治療計画の前と後のプロスタソームのレベルを測定することによって判断でき、プロスタソームのレベルの低下は有効な治療を示す。治療として、例えば手術、対象への医用物質の投与、または放射線療法が可能である。医用物質として、例えば経口薬または注射または輸液を通じて投与される物質が可能である。
【0058】
本発明のアッセイとして、モノクローナル抗体を用いて体液サンプル中の分析物を検出するのに適した任意のアッセイが可能である。アッセイとして、抗体が、巨大分子の複雑な混合物を含むサンプル中の特定の巨大分子を認識してそれに結合する能力に依存するイムノアッセイが可能である。免疫学では、抗体が結合した特定の巨大分子は抗原と呼ばれ、抗原上で抗体が結合する領域はエピトープと呼ばれる。抗体が対応する抗原に結合すること以外に、あらゆるイムノアッセイの他の鍵となる特徴は、結合に応答して測定可能なシグナルを発生させる手段である。すべてではなくとも大半のイムノアッセイは、抗体または抗原をある種の検出可能な標識と化学的に結合させることを含む。多数の標識が現代のイムノアッセイに存在しており、それらは異なる手段を通じた検出を可能にする。多くの標識が検出可能である。なぜならそれら標識は、放射線の放射、溶液中での色彩変化発生、光のもとでの蛍光発生のいずれか、または光の放出を誘導することができるからである。本発明のアッセイとして、例えばラテラルフロー免疫クロマトグラフィアッセイ、免疫磁気分離と電気化学発光(IMS-ECL)アッセイ、時間分解蛍光(TRF)アッセイ、または酵素結合免疫吸着(ELISA)アッセイが可能である。一実施形態ではアッセイはイムノアッセイまたは免疫捕獲アッセイ(サンドイッチイムノアッセイなど)であり、本発明のモノクローナル抗体は、体液サンプル(診断または予後予測を潜在的に必要とする対象から抽出された体液)中のプロスタソームを捕獲し、次いで検出するのに使用される。例えばアッセイとしてサンドイッチELISAが可能であり、その場合には表面が準備され、そこに既知量の捕捉抗体(すなわち本発明のモノクローナル抗体の1つ)が結合し、それにプロスタソームを含む体液サンプルが適用される。プロスタソームが捕捉抗体によって捕獲され、表面が洗浄され、一次検出抗体が適用されてそれがプロスタソームに結合する。酵素に結合した二次抗体が検出抗体として適用され、それが抗体のFc領域にも特異的に結合し、そのことによって一次検出抗体の存在、したがって結合したプロスタソームが検出される。表面を洗浄して結合していない抗体-酵素複合体を除去し、化学薬品を添加して酵素により色または蛍光または電気化学シグナルへと変換する。プレートのウエルの吸光度または蛍光または電気化学シグナル(例えば電流)が測定されて分析物(すなわちプロスタソーム)の存在と量が求められる。次いでプロスタソームの量を参照値と比較することができ、上昇したレベルは診断される対象に悪性前立腺がん細胞が存在することと結びつけられる。一次検出抗体として例えばニワトリ抗PSAまたは抗プロスタソーム抗体が可能であり、二次検出抗体として抗ニワトリ抗体が可能であり、それをHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)で標識することができる。ELISAアッセイで一般に用いられる酵素マーカーは例えばOPD(o-フェニレンジアミンジヒドロクロリド)であり、それが琥珀色になってHRPが検出される。HRPは複合タンパク質として用いられることがしばしばある。また、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)を用いることができ、それがHRPを検出するときには青色になり、硫酸またはリン酸の添加後には黄色になる。あるいはABTS(2,2'-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩)を用いることができ、それがHRPを検出するときには緑色になる。
図1は、本開示のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)をプロスタソーム(200)捕獲用の捕獲物(捕捉抗体)として用いる一例を示しており、捕獲後、結合したプロスタソーム(200)は、そのプロスタソームが結合した一次検出抗体(102)を用いて検出し、二次検出抗体(103)によって検出することができる。一次検出抗体(102)は抗プロスタソームまたは抗PSA抗体であること、そしてニワトリ起源(ニワトリ抗プロスタソームまたはニワトリ抗PSA)であることが可能であり、二次検出抗体(103)はセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗体が可能であり、一次検出抗体の種に対してアンチになる、すなわち一次検出抗体がニワトリ(HRPで標識した抗ニワトリ抗体)である場合には抗ニワトリになる。したがって本発明により、プロスタソームのレベルを検出して前立腺がんを診断するためのアッセイとして、単一の捕捉抗体と単一の一次検出抗体を二次検出抗体とともに用いるのに十分な感度があるアッセイが提供されるが、これは先行技術では可能でなかった。したがって一実施形態では、単一の捕捉抗体がサンプル中のプロスタソームを検出するためのイムノアッセイで使用される。別の一実施形態では、複数の捕捉抗体を使用する(例えば本発明の2つ、3つ、または4つの捕捉抗体だが、5つ未満の捕捉抗体)。
【0059】
本発明の抗体または断片は、プロスタソーム特異的で(他の細胞またはエキソームと比べてプロスタソームに対して選択的で)サンプル中の低レベルのプロスタソームの検出を可能にするのに十分な感度がある断片の完全ヒトモノクローナル抗体である。抗体が単一の捕捉抗体として機能するためのアッセイ(ELISAなど)に必要な感度は、典型的には1ミリリットル(mL)につき少なくとも10ナノグラム(ng)のプロスタソームである。したがって本発明のアッセイにより、10 ng/mL以下のレベルのプロスタソームを検出することが可能になる。この感度は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を用いて得ることができる。感度は10 ng/mLよりも高くすることさえ可能であり、その場合には1~2 ng/mLの感度範囲を達成できる。先行技術に抗体が存在しないことが、同様のアッセイにおいてこの感度を可能にしていることが示されているため、先行技術には、十分な前立腺がん診断のためにプロスタソームを検出する検出アッセイにおいて単一の捕捉抗体として使用できる抗体は存在しない。
【0060】
本発明の抗体または断片は、前立腺膜の表面に存在するタンパク質抗原のクラスターに結合する。凝集した抗原は、抗原と前立腺膜の塊である三次元構造を形成し、それが本発明の抗体またはその断片によって特定される。したがって本発明の抗体またはその断片は、先行技術の抗体と比べてサンプル中の全プロスタソームの存在を測定するのに理想的である。したがって本発明の抗体またはその断片は両方とも、他の抗体または結合断片と比べて特異度と感度が大きい。したがって、これら抗体と断片の1つだけを用いてサンプル(血液または血清のサンプルなど)中のプロスタソームを検出するのに1 mLにつき10 ngのプロスタソーム、またはそれよりも大きい例えば1~2 ng/mLという感度を達成することができる。これは、先行技術のいかなる抗体を用いても可能にならない。
【0061】
したがって前立腺がんの診断に用いられる先行技術の抗体とは異なり、本発明の抗体は完全にヒトであり、いくつかのプロスタソーム抗原(抗原のクラスターなど)に結合する。さらに、特異度と感度は先行技術よりも高い。Tavoosidanaらでは、例えば
図1に示されているように、アッセイにおいて本発明の単一の抗体または断片を用いて達成される範囲の感度を達成するのにいくつか(特に5つ以上)の抗体を組み合わせて用いる必要がある。抗CD13抗体が0,5 mg/mLの検出感度を達成すると述べることは単純に正しくない。5つの抗体とDNA断片がTavoosidanaらでは用いられている(
図1参照)ため、この方法ではさらなるPCR工程も必要とされる。その感度を達成するのにいくつかの抗体と1つのDNA断片が必要とされるため、Tavoosidanaらにおける抗体により、イムノアッセイにおいて少なくとも10 ng/mLという感度が、そのイムノアッセイでその抗体を単一の捕捉抗体として用いることにより可能になると言うことはできない。したがってTavoosidanaらの個々の抗体は完全にヒトではなく、プロスタソーム膜の表面のいくつかのプロスタソーム抗原または抗原のクラスターに結合することはなく、本発明の抗体/断片の特異度を個別に達成することもない。本発明の方法は、Tavoosidanaらの方法と比べてより簡単で、より安価で、より効率的であると言う理由でさらなる利点も持つ。
【0062】
Yuらの論文(「還元されたグラフェン酸化物電界効果トランジスタバイオセンサーを用いたエキソソームの電気的で無標識の1-18定量」、ANALYTICAL CHEMISTRY, vol. 91, no. 16, 23 July 2019 (2019-07-23), pages 10679-10686)の中の方法を見ると、Tavoosidanaらと同様、この方法も単純な免疫アッセイより概要がはるかに複雑でさらなるDNA分析と免疫学的分析が根本的に互いに異なるDNA(PNA)の分析に基づいて構成されている。通常、DNA試験は高感度を達成できるが、免疫学的(例えば抗体に基づく)試験はより簡単でより安価である。さらに、Yuらを見ると、使用される抗CD63抗体は非常に低い組織特異性を持つ(例えばタンパク質地図、URL https://www.proteinatlas.org/ENSG00000135404-CD63を参照されたい)。これは、それがプロスタソームを他のタイプのエキソームから識別することも、プロスタソームを全細胞から識別することもできないことを意味する(抗CD63抗体は全細胞と反応するであろう)。Yuらの抗体は、単にがんがより多くのエキソームを産生するという事実に基づき、純粋なサンプル中のエキソームを検出することと、がんの非特異的発生を検出することに用いられる。単に血中の不特定なエキソームの数に基づく診断に特異性はない。さらに、サンプル(本発明の血液サンプルなど)中で抗体は、存在する全エキソームを検出する(これは、広範囲のがんまたは他の障害の存在を意味する可能性がある)だけでなく、全細胞も検出すると考えられる。したがって抗体は、プロスタソームまたは前立腺がんを識別することも、血液サンプル中のエキソームを識別することもできないと考えられる。したがってYuらの抗体を患者サンプルの中の前立腺がんを検出する方法で使用することはできないと考えられる。例えばYuらの抗体は完全にヒトではなく、選択的にプロスタソームに結合することも、プロスタソーム膜の表面のいくつかのプロスタソーム抗原または抗原のクラスターに結合することも、簡単なイムノアッセイにおいて本発明の抗体/断片の感度を達成することもない。
【0063】
本発明のヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、完全長抗体、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、Fc断片、Fv断片、一本鎖Fv断片、(scFv)2、およびドメイン抗体からなる群から選択される。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片は、完全長抗体、Fab断片、およびscFv断片から選択される。一実施形態では、抗体は、12の相補性決定領域(CDR)を含む。別の一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、6つのCDR、すなわちCDR-H1/CDR-H2/CDR-H3/CDRL1/CDR-L2/CDR-L3を含む。より特別なそのような一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも3つの相補性決定領域(CDR)を含み、そのCDRは、例えば重鎖に由来すること、すなわちCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3であること、または軽鎖に由来すること、すなわちCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3であることが可能である。
【0064】
一実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、抗体の抗原結合断片(Fab)である。抗原結合断片(Fab)は、抗原に結合する抗体上の1つの領域である。それは、重鎖と軽鎖のそれぞれの1つの定常ドメインと1つの可変ドメインからなる。可変ドメインは、相補性決定領域のセットを含むパラトープ(抗原結合部位)を単量体のアミノ末端に含有する。
【0065】
一実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は抗体の一本鎖可変断片(scFv)である。一本鎖可変断片は完全な抗体分子に見られる定常Fc領域を欠いており、実際には抗体の断片ではないが、その代わりに長さが10~約25個のアミノ酸の短いペプチドリンカーで接続された免疫グロブリンの重鎖(VH)と軽鎖(VL)の可変領域からなる融合タンパク質である。これら分子は完全長抗体と同じ結合機能を維持しているが、いくつかの有利な特徴(組織への侵入が早い、操作が容易、その免疫複合体の排泄が速い、および簡単な発現系(細菌や酵母など)での産生の可能性など)を持つ。
図2は、本発明のscFv断片の模式図を示しており、リンカーを用いて互いに接合された重鎖CDR(CDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3)を含むVH部と軽鎖CDR(CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3)を含むVL部を持つ。
【0066】
一実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は抗体のヒト合成一本鎖可変断片(scFv)である。このscFv断片は約30 kDaの分子量を持ち、リンカーを介して連結された重鎖と軽鎖を含むことができる。重鎖と軽鎖は定常部と可変部を持つことができ、その中のループをCDRと呼ぶことができ、それは可変が可能である。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの可変CDRが存在し、その中の典型的にはCDR-H3とCDR-L3が、結合する分子または断片の最も露出した部分を形成するという理由で最も可変である。CDR-L1とCDR-L2は欠落していてもよい(定常が可能)のに対し、CDR-H1とCDR-H2はわずかなバリエーションを持つことができる。いくつかの実施形態では、合成scFv断片は、VH足場上にCDR-H1、CDR-H2、および/またはCDR-H3の短い重鎖配列を、VL足場上のCDR-L3からの短い軽鎖配列と組み合わせて含んでおり、それらがリンカーを用いて連結されてscFv断片を形成する。合成scFv断片は、CDRがライブラリ足場上に存在するヒト合成scFvライブラリ(例えばHelL-11またはHelL-13足場ライブラリ(Sall et al.、ヒト合成抗体ライブラリの生成および合成と、タンパク質マイクロアレイへのその応用。Protein Eng Des Sel. 2016 Oct;29(10):427-437))または同様のMAW-16ライブラリに由来することが可能である。CDR-H3の長さは典型的には8~22個のアミノ酸であり、CDR-L3の長さは8~12個のアミノ酸である。ライブラリ足場、重鎖および軽鎖のCDR部、およびリンカーの両方を含む全scFv断片は、典型的には約250~300個のアミノ酸(273個のアミノ酸など)である。scFv断片は、この断片を別の構造に付着させることによって改変することができる。そのような別の構造として、例えば抗体または抗体の一部、HIS-タグ、FLAG、またはビオチンなどが可能である。CDRは、対応する抗体CDRとしてCDR-L1とCDR-L2の定常領域を用いて完全長抗体の表面に取り付けることもできる。
【0067】
本発明のヒト抗体または結合断片は、さまざまな方法を用いて(ファージ提示とライブラリなどを用いて)生成させることができる。ファージ提示技術に基づくモノクローナル抗体は、伝統的なハイブリドーマ技術に対する1つの魅力的な代替案である。特定の抗体をコードする遺伝子配列がフィラメント状のバクテリオファージのDNA配列に組み込まれ、このバクテリオファージがバクテリオファージのカプシドの表面でその発現を可能にする。この特殊性が、遺伝子型と表現型の間の結び付きを確立する。ファージは大腸菌に感染し、宿主細胞を殺すことなくその内部複製系を利用して新たなファージを連続的に提示する。こうすることで、多数の抗体の迅速な産生が可能になる。したがってナイーブなファージまたは免疫ファージのライブラリが構成され、それを用いてスクリーニング法のおかげで興味ある抗原-抗体相互作用を検出することができる。ライブラリをヒトから生成させてヒト抗体レパートリーにアクセスすることができる。
【0068】
プロスタソームに対する特異的抗体に対してヒトゲノムは明確な利点を提供する。プロスタソームに対する自己抗体は頻繁に発生しており、存在するときには免疫性不妊症を引き起こす。その抗体は、不妊症以外には体内の他の臓器に損傷を引き起こさない。これは、プロスタソームに対するヒト抗体が非常に特異的であることの強力な印である。高度の選択性は、例えば他のタイプの細胞が存在する血液内のプロスタソームを検出するとき明らかに有利である。したがって本発明の抗体または断片を生成させる1つの方法は、ファージ提示技術を利用してヒトプロスタソームに対するscFv抗体を開発するというものである。同じ種からの抗体を用いることの別の利点は免疫寛容であり、それが、体内で一般に提示される抗原に対する抗体の数を減らすはずである。免疫寛容は、免疫系が自己抗原に対する応答を起こすのを損なう複雑な一連の機構である。scFv抗体の研究は、これら抗体が、プロスタソームの検出に使用するときにバインダとしてマウス抗体よりも優れていることも示しているため、はるかに少量のプロスタソームの検出が可能になる。これは驚くべきことである。なぜならファージ提示抗体の親和性はハイブリドーマ抗体よりも低い親和性を持つことがしばしばあるという一般に信じられていることとは逆だからである。この知見に関する1つの仮説は、抗体がプロスタソームに向けられるという事実に関係している可能性があるというものである。
【0069】
一実施形態では、抗体またはその結合断片は、プロスタソーム(完全サイズの全プロスタソーム)への結合能力に関してスクリーニングされたライブラリから生じる。バインダの選択が可能な抗体ライブラリを生成させる多数のアプローチが存在しており、これらは遺伝的多様性の出所に応じて天然または合成に分けることができる。天然抗体レパートリーは、免疫系が多様性を生成させる能力を利用するのに対し、合成レパートリーにおける多様性は、抗体配列の規定された領域に人工的に導入される。合成ライブラリは大きな遺伝的多様性を生じさせるが、機能に関しては選択されていない。したがって合成ライブラリ設計における趨勢は、機能を最大にするため、天然抗体に見られる多様性を模倣しつつ、相変わらず遺伝的多様性を促進しようと試みることであった。
【0070】
下記の実施例では、本明細書に記載されている合成scFv断片のスクリーニングに使用できる合成scFvライブラリの生成を記述する。2つのヒト合成抗体断片ライブラリが、第1世代のライブラリ(HelL-11)を用いた最初の実験を利用して第2世代のライブラリ(HelL-13)を設計する2工程プロセス(Sall et al. ヒト合成抗体ライブラリの生成および合成と、タンパク質マイクロアレイへのその応用。Protein Eng Des Sel. 2016 Oct; 29(10): 427-437参照)の一部として以前に開発され、作製された。CDR-H3とCDR-L3の設計(
図3)はわずかに異なるが、HelL-11とHelL-13のライブラリのための足場として用いられる両方の鋳型scFv遺伝子はヒトIGHV3-23とIGKV1-39の遺伝子に基づいて構築され、その中のカッパ軽鎖IGKV1-39と重鎖IGHV3-23がライブラリを構成するための足場として用いられる。これら遺伝子を構成する抗体は天然の抗体レパートリーに最も頻繁に見られ、この特別なVH/VLの組み合わせは好ましいことが示されている。HelL-11とHelL-13の代わりにMAW-16ライブラリを使用してもよく、その中の可変重鎖もIGHV3-23に基づいており、可変軽鎖もIGKV1-39に基づいている。
【0071】
多様性は、6つのCDRループのうちの4つ、すなわちCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3の中の規定された位置に導入され、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3ループの中に分布している残基が、多様化のために選択された。上記の異なるライブラリのscFv断片が
図4aに示され、VH部とVL部が
図4bに示されている。1つのプライマーをそれぞれCDR-H1とCDR-H2のために使用した一方で、3または5個と、10または15個のプライマー(許された長さのこれらループのそれぞれに1つのプライマー)を使用してそれぞれHelL-13とHelL-11のCDR-L3とCDR-H3を多様化した。導入された多様性は、チロシン、セリン、およびグリシンに偏っていた。なぜならこれらアミノ酸は抗原結合部位に非常に豊富であり、抗原認識におけるその好ましい役割がいくつかの研究において実証されているからである。CDR-H1とCDRH2が標的とする残基はこの三量体コードに限定されていた。チロシン、セリン、およびグリシンに偏っているが、CDR-H3とCDR-L3は、CDR-H3の天然の抗体で一般に見いだされている知見に基づき、はるかにより複雑な化学的多様性が可能になった。CDR-H1とCDR-H2の残基で溶媒がアクセス可能なものは、チロシン、セリン、およびグリシンに限定されていたのに対し、より複雑な多様性スキームがCDR-H3とCDR-L3において可能であった。HelL-11のCDR-H3とCDR-L3の許容される長さは、それぞれ8~22個の残基と8~12個の残基であった。HelL-13では、対応する長さは8~17個の残基と8~10個の残基であった。ここで導入される変動性は、主に天然の抗体でこれらの位置に一般に見られるアミノ酸に限定されていた。HeIL-11では、CDR-H3とCDR-L3の長さはそれぞれ8~22個と8~12個で変化することが可能であり、そのことによって天然の抗体で最も頻繁に生じる長さの90%超がカバーされた。HelL-13ライブラリは、CDR-H3ループの長さ8~17個と、CDR-L3ループの長さ8~10個を含有するように設計され、そのことによってHelL-11に由来する機能的に選択されたバインダの約90%がカバーされた。HelL-13の天然のレパートリーの中の機能的バインダの割合をさらに増やすため、終止コドンなしのCDR-L3ループを含めた。IGKV1-39 生殖系列配列をCDR-L3の鋳型として選択した(105位~115位)。天然状態でJ-セグメントに由来する116位では、チロシンを、その一般に好ましい結合特性を理由として含めた。
【0072】
一実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は抗体のヒト合成一本鎖可変断片(scFv)である。ライブラリを開発して抗体断片をスクリーニングするための技術は、重点的(focused)一本鎖抗体断片(scFv)レパートリーを利用する(Persson et al., (2006) 改善されたハプテン認識のための重点的抗体ライブラリの生成。J Mol Biol 357, 607-620. (Abstract) (GenBank))。HeIL-11とHeIL-13のライブラリのための鋳型として用いられるscFv遺伝子は、ヒト免疫グロブリン重鎖可変3-23前駆体(IGHV3-23)と免疫グロブリンカッパ可変1-39前駆体(IGKV1-39)遺伝子に基づいて構築された。ファージミドベクター骨格はpFab5cであった。
図3aに示されているように、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3の中に分布している残基をクローニングし、その配列をライブラリ足場遺伝子に導入した。CDR-H1とCDR-H2の長さは、HelL-11とHelL-13の両方について8個のアミノ酸残基である。HelL-11のCDR-H3とCDR-L3の長さはそれぞれ8~22個と8~12個のアミノ酸残基であった。HelL-13では、対応する長さは8~17個と8~10個の残基であった。(Sall et al.、ヒト合成抗体ライブラリの生成および合成と、タンパク質マイクロアレイへのその応用。Protein Eng Des Sel. 2016 Oct;29(10):427-437)。
【0073】
ファージ提示を利用してライブラリを一群の異なるプロスタソームに対してスクリーニングすると、プロスタソームに対する多様で非常に特異的なバインダが得られた。このような集団から選択されたメンバーは、ランダムな突然変異誘発による親和性成熟と厳しいファージ提示選択の後の高親和性バインダを開発するための優れた供給源であることが分析によって示された。高親和性バリアントにおける変異は足場全体に分散されているため、容易には予測できなかったであろう。
【0074】
本発明の合成scFv断片は、CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含む1つのVH部と、CDR L3を含むか、CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含む1つのVL部を含むことができる。CDR-L1とCDR-L2は合成scFv断片の中に存在するCDRと見なすことができ、CDR-L1とCDR-L2の位置は
図4bに示されている。しかしこれらは本発明の異なる断片の間で異なっていないため、足場の一部と見ることもできよう。したがって一実施形態では、CDR H1、CDR H2、CDR H3、およびCDR L3だけが各断片に関して規定される。抗体内のCDRを用いるときなどの他の実施形態では、全部で6つのCDRを規定することができ、その中にCDR L1とCDR L2が含まれる。
【0075】
本発明の合成scFv断片は、CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含む1つのVH部と、CDR L3を含む1つのVL部を含むことができ、そのVH部とVL部はリンカーを用いて組み合わされる。これは、約15個のアミノ酸からなるgly-ser配列(配列番号31に示されているGGGGSGGGGSGGGGSなど)が可能である。いくつかの実施形態では、VH断片は128個のアミノ酸であり、VL断片は128個のアミノ酸であり、全scFv断片は273個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、
図4bに点線の円で示されているようにいくつかのアミノ酸が脱落することで、断片がより短くなってもよい。
【0076】
一実施形態では、抗体または抗原結合断片は、VH部のCDR(CDR-H3と呼ぶことのできる重鎖CDRなど)と、VL部のCDR(CDR-L3と呼ぶことのできる軽鎖CDRなど)を含むことができ、その中のCDR-H3は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択され;CDR-L3は、配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24から選択され、CDR配列はそれと95%以上(96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)一致する。
【0077】
最も重要な可変部はCDR-H3部とCDR-L3部を構成する。CDR-H1部、CDR- H2部、CDR-L1部、およびCDR-L2部として、下記の表1に示されているように、定常または可変が可能である。
【0078】
【0079】
Xとして示されているアミノ酸として、天然の任意のアミノ酸が可能である。しかし好ましい一実施形態では、アミノ酸XはT、S、またはGから選択される。
【0080】
一実施形態では、抗体または抗原結合断片は、少なくとも3つの重鎖CDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)と1つの軽鎖CDR(CDR-L3)をその任意の組み合わせで含み、その中の
CDR-H1は、配列番号25と27~28の任意のバリアントから選択され;
CDR-H2は、配列番号26と28の任意のバリアントから選択され;
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択されるCDR-H3;
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24から選択されるCDR-L3、CDR配列は、それと95%以上(96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)一致する。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、少なくとも2つのCDR、すなわちCDR-H3とCDR-L3、または少なくとも4つのCDR、すなわちCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3、または少なくとも6つのCDR、すなわちCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み、その中の
CDR-H1は、配列番号25、27、および28の任意のバリアントから選択され;
CDR-H2は、配列番号26、29、および30の任意のバリアントから選択され;
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択されるCDR-H3;
CDR-L1は、配列番号56と57の任意のバリアントから選択され;
CDR-L2は、配列番号58と59の任意のバリアントから選択され;
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24から選択されるCDR-L3、CDR配列は、それと95%以上(96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)一致する。CDRは、適切な任意のヒト抗体または抗体足場(例えばヒトIGHV3-23とIGKV1-39遺伝子上に構築し、その中のカッパ軽鎖IGKV1-39と重鎖IGHV3-23を相場として使用する)にグラフトすることができる。
【0082】
別の一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号32~43と、それと80%以上(85%、90%、95%、またはそれよりも多く)一致する配列からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列を含む。別の一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号44~55と、それと80%以上(85%、90%、95%、またはそれよりも多く)一致する配列からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、リンカー(配列番号31のリンカーなど)によって接合された配列番号32~43から選択されるVH部と、配列番号44~55から選択されるVL部を含むscFv断片である。
【0084】
一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体またはその結合断片は、例えばHeIL-11足場またはHeIL.13足場上に構築された合成scFv断片であり、表2の12個のscFv断片から選択されるCDRを含み、その中の断片scFv 1~scFv 12に関するVH CDR-H1は配列番号25に対応し、断片scFv 1~scFv 12に関するVH CDR-H2は配列番号26に対応し、断片scFv 1~scFv 12に関するVH CDR-H3は配列番号1~12に対応し、断片scFv 1~scFv 12に関するVL CDR-L3は配列番号13~24に対応し、断片間のリンカーは配列番号31に対応する。
【0085】
【0086】
本発明のヒト抗体と結合断片はプロスタソームに結合できるため、前立腺がんを診断するアッセイにおいて捕捉抗体として使用される。これら抗体またはその結合断片はプロスタソームの可能な任意のエピトープを認識してそれに結合することができる。そのエピトープは先行技術で知られている。関連するエピトープのいくつかが下記の表3にまとめられている。
【0087】
【0088】
前立腺がんの診断、予後予測、重症度または治療の有効性の評価のための本発明の考え方による方法を、
図5~8を参照してこれから記述する。明確かつ簡潔にするため、この方法は「工程」で記述する。工程は、必ずしも時間で区切られていたり互いに分離されていたりするプロセスではなく、2つ以上の「工程」を並列なやり方で同時に実施してもよい。
【0089】
本発明の考え方は、いくつかの実施形態を参照して上に主に記載してきた。しかし当業者であれば容易にわかるように、上に開示した以外の実施形態が本発明の考え方の範囲内で同様に可能であり、それが添付の特許請求項によって規定されている。
【0090】
実施例の操作
【0091】
提案されている方法を、
図5~8を参照してこれからより詳細に記述する。操作は順番通り実施する必要がないことを認識すべきである。さらに、必ずしもすべての操作を実施する必要がないことを認識すべきである。
【0092】
図5は、対象に前立腺がんが存在するかどうかを判断するためのインビトロの方法を示しており、この方法は、プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する工程(S1)、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させる工程(S2)、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したあらゆるプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得する工程(S3)、プロスタソームの前記レベルをあらかじめ決められた閾値と比較する工程(S4)、およびプロスタソームの検出されたレベルが前記あらかじめ決められた閾値よりも高い場合に前記対象に前立腺がんが存在すると判断する工程(S5)を含む。この点に関して前立腺がんが存在しないという判断は、臨床的に検出可能な前立腺がんが存在しない、すなわち存在する可能性のあるあらゆるがん細胞が、存在している前立腺がんとして検出または標識するには少なすぎると判断することを含む。しかし数個のがん細胞がもちろん存在している可能性があり、それらが発達して最終的に検出可能な前立腺がんになるであろう。しかしこの少ない量は、診断時には存在していない前立腺がんと見なされよう。あらかじめ決められた閾値は、サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームのレベルに対応する。別の一実施形態では、あらかじめ決められた閾値は、サンプル1 mLにつき1~2 ngのプロスタソームと低い。閾値として、3、4、5、6、7、8、または9 ng/mLも可能である。
【0093】
1つの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したあらゆるプロスタソームを検出すること(S3)は、抗プロスタソーム検出抗体またはその抗原結合断片を用いてプロスタソームを検出することを含む。典型的には、対象が男性である場合には、少量のプロスタソームがサンプル中に常に存在する。さらなる1つの側面では、方法はサンドイッチイムノアッセイであり、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)が結合したプロスタソーム(200)を検出すること(S3)は、さらなる検出抗体(103)を用いて前記抗プロスタソーム検出抗体(102)を検出することを含み、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)は捕捉抗体であり、前記抗プロスタソーム検出抗体(102)は一次検出抗体であり、前記さらなる検出抗体(103)は二次検出抗体である。さらなる1つの側面では、一次検出抗体(102)はニワトリ抗体であり、二次検出抗体(103)は抗ニワトリ抗体である。1つの側面では、対象からのサンプルは体液サンプルである。さらなる1つの側面では、対象からの体液サンプルは、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される。血液、血清、および血漿は、患者から採取された末梢血の血液サンプルから生じるのに対し、細胞懸濁液は典型的には生検から生じる。尿は、例えば前立腺マッサージが実施された後に利用することができる。その場合、前立腺マッサージの後にプロスタソームが尿中に漏出する。1つの側面では、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は本開示の抗体またはその抗原結合断片である。
【0094】
図6は、対象における前立腺がんの予後を、それを必要とする対象に提供するインビトロの方法を示しており、この方法は、プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する工程(S11)、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させる工程(S12)、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得する工程(S13)、プロスタソームの前記レベルを第1および第2のあらかじめ決められた閾値と比較する工程(S14)、および前記前立腺がんの予後を提供すること(S15)を含み、そのときプロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には前立腺がんの予後が悪いと規定され(S15a)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第2のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には予後が良いと規定される(S15b)。一実施形態では、第1の閾値はサンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームであり、第2の閾値はサンプル1 mLにつき1 ngのプロスタソームである。
【0095】
1つの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出すること(S13)は、抗プロスタソーム検出抗体またはその抗原結合断片を用いてプロスタソームを検出することを含む。さらなる1つの側面では、この方法はサンドイッチイムノアッセイであり、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)が結合したプロスタソーム(200)を検出すること(S13)は、さらなる検出抗体(103)を用いて前記抗プロスタソーム検出抗体(102)を検出することを含み、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)は捕捉抗体であり、前記抗プロスタソーム検出抗体(102)は一次検出抗体であり、前記さらなる検出抗体(103)は二次検出抗体である。さらなる1つの側面では、一次検出抗体(102)はニワトリ抗体であり、二次検出抗体(103)は抗ニワトリ抗体である。1つの側面では、対象からのサンプルは体液サンプルである。さらなる1つの側面では、対象からの体液サンプルは、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される。1つの側面では、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本開示の抗体または抗原結合断片である。
【0096】
図7は、対象における前立腺がんの重症度の評価を、それを必要とする対象で実施するインビトロの方法を示しており、この方法は、プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する工程(S21)、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させる工程(S22)、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得する工程(S23)、プロスタソームの前記レベルを第1および第2のあらかじめ決められた閾値と比較する工程(S24)、および前記前立腺がんの重症度を評価する工程(S25)を含み、プロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には前記前立腺がんが重症であると評価し(S25a)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には前記前立腺がんが中程度であると評価し(S25b)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第2のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には前記前立腺がんが軽症であると評価する(S25c)。一実施形態では、第1の閾値はサンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームであり、第2の閾値はサンプル1 mLにつき1 ngのプロスタソームである。
【0097】
1つの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出すること(S23)は、抗プロスタソーム検出抗体またはその抗原結合断片を用いてプロスタソームを検出することを含む。さらなる1つの側面では、この方法はサンドイッチイムノアッセイであり、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)が結合したプロスタソーム(200)を検出すること(S23)は、さらなる検出抗体(103)を用いて前記抗プロスタソーム検出抗体(102)を検出することを含み、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)は捕捉抗体であり、前記抗プロスタソーム検出抗体(102)は一次検出抗体であり、前記さらなる検出抗体(103)は二次検出抗体である。さらなる1つの側面では、一次検出抗体(102)はニワトリ抗体であり、二次検出抗体(103)は抗ニワトリ抗体である。1つの側面では、対象からのサンプルは体液サンプルである。さらなる1つの側面では、対象からの体液サンプルは、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される。1つの側面では、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本開示の抗体または抗原結合断片である。前立腺がんの重症度は、先行技術では通常は、侵襲性と重症度の両方のほか予後と結びついている可能性のあるグリソンスコアと関連して記述される。生化学的再発があり、PSA倍化時間が12ヶ月未満および/または生検グリソンスコアが8~10である男性は、European Association of Urology(EAU)のガイドラインによればアンドロゲン遮断療法(ADT)の適応を持つと見なされる。本発明のプロスタソームアッセイはグリソンスコアが高と中(それぞれ8/9と7)の患者を低スコア(6以下)の患者から識別したため、疾患の侵襲性を反映している。したがって1 ng/mLを超えるプロスタソームの測定レベルは、6よりも大きいグリソンスコアに対応すると言うことができよう。
【0098】
図8は、対象における前立腺がん治療の有効性の評価を、それを必要とする対象で実施するインビトロの方法を示しており、この方法は、前立腺がん治療の前に、対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出する工程(S31)、前記対象に抗前立腺がん治療を提供する工程(S32)、前記前立腺がん治療の後に前記対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出する工程(S33)、前記治療前のプロスタソームのレベルを前記治療後のレベルと比較する工程(S34)、および前記治療の有効性を判断する工程(S35)を含み、前記治療後のプロスタソームの前記レベルが前記治療前のレベルと比べて低下している場合には前記治療が効果的であると判断し(S35a)、プロスタソームの前記レベルが同じであるか上昇した場合には前記治療が効果的でないと判断する(S35b)。
【0099】
1つの側面では、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出すること(S33)は、抗プロスタソーム検出抗体またはその抗原結合断片を用いてプロスタソームを検出することを含む。さらなる1つの側面では、この方法はサンドイッチイムノアッセイであり、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)が結合したプロスタソーム(200)を検出すること(S33)は、さらなる検出抗体(103)を用いて前記抗プロスタソーム検出抗体(102)を検出することを含み、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)は捕捉抗体であり、前記抗プロスタソーム検出抗体(102)は一次検出抗体であり、前記さらなる検出抗体(103)は二次検出抗体である。さらなる1つの側面では、一次検出抗体(102)はニワトリ抗体であり、二次検出抗体(103)は抗ニワトリ抗体である。1つの側面では、対象からのサンプルは体液サンプルである。さらなる1つの側面では、対象からの体液サンプルは、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される。1つの側面では、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本開示の抗体または抗原結合断片である。
【0100】
したがって本開示の内容により、前立腺がんを診断すること、前立腺がんの予後(このがんのステージおよび侵襲性と結びついている)を判断すること、このがんの重症度を評価すること(治療を選択するための判断サポート(手術をするかしないかなど)として利用できる)、および対象における前立腺がんの治療計画を評価することが可能である。対象は典型的にはヒト男性である。治療計画ではその治療の前と後のサンプル中のプロスタソームのレベルを測定することによって治療の有効性を評価することが可能であり、治療には、手術、放射線療法の両方、および医用物質の投与が含まれる。したがってこの方法は、本発明に従ってプロスタソームのレベルを測定すること、治療薬を投与すること、および薬が投与されてそのがんに影響を及ぼす時間が経過した後にプロスタソームのレベルを再度測定することを含むことができる。なおその時間は使用する薬に依存するが、利用する治療に応じて当業者には明らかであろう。
【0101】
図面と明細書には、本開示の代表的な側面が開示されている。しかし多くのバリエーションと改変を、本開示の原理から実質的に逸脱することなく、これらの側面に対してなすことができる。したがって本開示は限定的というよりは説明的であると見なされるべきであり、上に議論した特定の側面には限定されない。したがって特別な用語が用いられているが、それらは一般的かつ記述的な意味でだけ用いられており、制限する目的ではない。
【0102】
本明細書に提示されている例示としての実施形態の記述は、説明を目的として提示されている。記述は、網羅的であること、または例示としての実施形態を開示されている厳密な形態に限定することを意図していないため、上記の教示に照らした改変とバリエーションが可能であったり、提示されている実施形態に対するさまざまな代替例の実践から改変とバリエーションを得たりすることができる。本明細書で議論されている実施例は、さまざまな例示としての実施形態とその実際的な応用の原理と性質を説明するために選択して記述しており、それは、当業者が、例示としての実施形態をさまざまなやり方で、考慮する特定の利用に適したさまざまな改変を加えて利用できるようにするためである。本明細書に記載されている実施形態の特徴は、方法、製品、およびシステムのあらゆる可能な組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に提示されている例示としての実施形態は、互いに任意の組み合わせで実施できることを認識すべきである。
【0103】
「含む」は、掲載されている以外の要素または工程の存在を必ずしも排除せず、しかもある要素の前に置かれた用語「1つの」は、複数のそのような要素の存在を排除しないことに注意されたい。さらに、いかなる参照の印も請求項の範囲を制限しないこと、例示としての実施形態は請求項の最も広い意味で実現できることに注意されたい。
【0104】
さまざまな代表的側面と実施形態を参照して本発明を記述してきたが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな変更をなすことが可能であり、等価物でその要素を置き換えてもよいことを理解するであろう。それに加え、特定の状況を本発明の教示に、その本質的な範囲から逸脱することなく適合させるため、多くの改変が可能である。したがって、本発明がどの特定の実施形態に限定されることもなく、逆に本発明は、添付の請求項の範囲内に入るあらゆる実施形態を含むことが想定されている。本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0105】
実施例1:合成抗体断片ライブラリの構築
【0106】
本発明の合成scFv断片scFv1~12は、Sallらによって作製されたヒト合成抗体断片ライブラリHeIL-11とHeIL-13(Sall et al.、ヒト合成抗体ライブラリの生成および合成と、タンパク質マイクロアレイへのその応用。Protein Eng Des Sel. 2016 Oct; 29(10): 427-437)に由来し、この方法の諸側面は以下にまとめられている。
【0107】
CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3の中に分布している残基を多様化のために選択し、これらループを標的とするオリゴヌクレオチドを、
図3に示されているアミノ酸組成をコードする特注の三量体ホスホロアミダイト混合物(TriLink BioTechnologies、サン・ディエゴ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を用いて作製した。1つのプライマーをCDR-H1とCDR-H2のそれぞれのために使用した一方で、3または5個と、10または15個のプライマー(許された長さのこれらループのそれぞれに1つのプライマー)を使用してそれぞれHelL-13とHelL-11のCDR-L3とCDR-H3を多様化した。プライマーがコードする配列は、最適化されたKunkel突然変異誘発法を利用してライブラリ足場遺伝子に導入し、Kunkel DNAをその後大腸菌細胞の中に電気穿孔した。最終的にscFvを提示するファージが回収された。その後、特異的抗原に基づくファージ選択を実施して特異的な抗原結合断片を得ることができた。
【0108】
例えば
図3は、HelL-11とHelL-13のライブラリの設計を示す。これら2つのライブラリは同様の設計を持ち、
図3aに示されているように、両方とも、重鎖可変遺伝子IGHV3-23とカッパ軽鎖可変遺伝子IGKV1-39(これらの全配列については、Sall et al.、ヒト合成抗体ライブラリの生成および合成と、タンパク質マイクロアレイへのその応用。Protein Eng Des Sel. 2016 Oct; 29(10): 427-437を参照されたい)に基づくヒトscFv足場の上に構築されている。これらライブラリは、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3の中と直近の選択された位置に、標準的な一文字コードで表わされる多様性を含有するように構成されている。CDR-H1とCDR-H2の残基で溶媒がアクセス可能なものは、チロシン、セリン、およびグリシンに限定されていたのに対し、より複雑な多様性スキームがCDR-H3とCDR-L3において可能であった。XとJはそれぞれ、
図3bに記載されている割合で導入された13個のアミノ酸の混合物を表わす。HelL-11のCDR-H3とCDR-L3に許容される長さは、それぞれ8~22個の残基と8~12個の残基であった。HelL-13では、対応する長さは8~17個の残基と8~10個の残基であった。(CDRの境界と残基の番号はIMGT命名法によって規定されている通りである)。
【0109】
ライブラリの設計と構成が
図4にさらに示されている。
図4aはHelLライブラリ足場のアミノ酸配列を示す。HelL-11とHelL-13は、長さ15個のアミノ酸からなるGly-Serリンカー(下線部)によって接続された重鎖可変遺伝子IGHV3-23とカッパ軽鎖可変遺伝子IGKV1-39に基づくヒト足場に基づく合成scFvライブラリである。 CDR-H1、H2、H3、およびL3は箱で示されており、ランダム化された位置は灰色で強調されている。Kunkelクローニング手続きは100%の効率ではないため、終止コドンをHelL-11鋳型のCDR-H3とCDR-L3の中と、HelL-13鋳型遺伝子のCDR-H3(*で示されている)の中に導入した。こうすることで、これら領域の中で変異したクローンだけがファージの表面に提示されることが保証される。終止コドンは他のどのCDRループにも導入しなかったため、これらループの非変異バージョンが、提示されたライブラリの中に見いだされるであろう。重鎖と軽鎖両方の第1と第2のCDRの鋳型配列は、生殖系列遺伝子に見られる配列を模倣するように選択した。同様に、IGKV1-39の配列は、 HelL-13足場遺伝子のCDR-L3(105~115位)のために選択した。天然状態でJ-セグメントに由来するVLの116位では、チロシンを、その一般に好ましい結合特性を理由として含めた。
【0110】
図4bには、HelL-11とHelL-13の抗体ライブラリのVHとVLの設計における多様性(X)の担体である位置を規定する「真珠のネックレス」が示されている。本開示の図解は配列が13(VH)残基と8(VL)残基の長さのCDR3を持つことを実証しているが、ライブラリの設計によりこれら超可変ループの長さを変えることができる。IMGT番号付けスキームによって規定されるがこれらVHとVLの配列には存在しない残基が、点線の円で表わされている。
【0111】
下記の実施例2~5は、異なるプロスタソーム検出試験を示す。ヒトモノクローナル合成scFv断片を作製し(上記の実施例1参照)、プロスタソームで被覆した微量滴定プレートに対してスクリーニングした。64個の陽性クローンをシークエンシングした。DNA配列によると、これら陽性選択されたクローンは60個の異なるヒトモノクローナル抗体を表わしていた。
【0112】
実施例2:検出体scFv断片1~12としてのヒトモノクローナルの試験
【0113】
精製したプロスタソーム(1 mg/mL)をPBS(リン酸塩緩衝化生理食塩水)の中で1:250に希釈し、微量滴定プレート内のウエル1つにつき100 μLを添加した。このプレートを室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。120 μLの1%ウシ血清アルブミン(BSA)をウエルに添加し、それを室温で一晩インキュベートした。ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。ビオチニル化したヒト合成scFv断片1:250を行Aに添加した後、下方に向かって1:5希釈液を添加した。次いでプレートを室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。100 μLのストレプトアビジン-HRPをウエルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。100 μLのTMB(テトラメチルベンジジン)基質をウエルに添加して20分間インキュベートした後、25 μLの1 M H2SO4をプレートに添加した。プレートを450 nmで読んだ。
【0114】
精液血漿を、Akademiska HospitalのReproduction Centre(ウプサラ、スウェーデン国)から、以前に記載されている定法(Ronquist, G.K., et al.、プロスタソームDNAの特徴づけとヒト精子への導入。Mol Reprod Dev, 2011. 78(7): p. 467-76.)に従って回収した。精液血漿を解凍し、3,000 gで12分間遠心分離した。上清を回収し、10,000 gで30分間遠心分離した。次いで上清を新たなチューブに移し、90Tiローター(Beckman Coulter、ブレア、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を100,000 gで2時間用いて超遠心分離した。ペレットを、0.02 MのNaH2PO4、0.15 MのNaCl、pH 7.2(PBS)の中に4℃で一晩再懸濁させた。次いで再懸濁させたペレットを、Superdex 200ゲルを装填したクロマトグラフィカラム(XK 60/70、GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン国)にロードした。画分を5 mL/時の流速で回収した。次いで画分を分光光度計で測定した。そのとき260 nm(核酸)と280 nm(タンパク質)両方のピークがプロスタソームに対応する。これら画分を回収し、プールし、100,000 gで超遠心分離した。得られたペレットをPBSの中に再懸濁させた。精製したプロスタソーム(1 mg/mlをPBSの中で1:250に希釈し、F96 Polysorb NUNC Immunoplate(Thermo Fisher Scientific、ウプサラ、スウェーデン国)のウエル1つにつき100 μLを添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20(P1379、Sigma-Aldrich)を含有するPBSで3回洗浄した。120 μLの1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich)を含むPBSをウエルに添加し、プレートを周囲温度で一晩インキュベートした。プレートを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。PBSの中で4 μg/mLに希釈したビオチニル化モノクローナル抗体を100 μL、ウエルに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。PBS の中で1:2000に希釈したストレプトアビジン-HRP(43-8322、Thermo Fisher Scientific)を100 μL、プレートに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。100 μLのTMB基質(EC-Blue Enhanced TMB基質、Medicago、ウプサラ、スウェーデン国)をプレートに添加し、プレートを暗所にて周囲温度で20分間インキュベートした。25 μLの1 M H2SO4を各ウエルに添加し、SpectraMax 250 ELISAリーダーの中でプレートを450 nmで読んだ。
【0115】
個々のヒトモノクローナルscFv断片1~12に関する結果は下記の表4に示されている。
【0116】
【0117】
この実験からの1つの結論は、すべての合成scFv断片が、精製したプロスタソームに対して調べたとき検出抗体としてプラスの応答を与えるというものである。
【0118】
実施例3:検出体としてのニワトリポリクローナルの試験
【0119】
精製したプロスタソーム(1 mg/mL)をPBSの中で1:250に希釈し、微量滴定プレートのウエル1つにつき100 μLを添加した。プレートを室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。120 μLの1%ウシ血清アルブミン(BSA)をウエルに添加し、それを室温で一晩インキュベートした。ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。ニワトリ抗プロスタソーム抗体を行1と2 に添加し、ニワトリ抗PSA抗体を行3と4に添加した。1:125初期希釈液を行Aで、次いで下方に向かって 1:5希釈液を使用した(ただし希釈はPBS-tween(登録商標)の中で実施した)。次いでプレートを室温で1時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。PBS-tween(登録商標)の中で希釈した抗ニワトリIgY-HRPを100 μL、ウエルに添加し、室温で1時間インキュベートした。ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。100 μLのTMB基質をウエルに添加し、10分間インキュベートした後、25 μLの1 M H2SO4 をプレートに添加した。プレートを450 nmで読んだ。
【0120】
精製したプロスタソーム(1 mg/mL)をPBSの中で1:250に希釈し、F96 Polysorb NUNC Immunoplate(Thermo Fisher Scientific、ウプサラ、スウェーデン国)のウエル1つにつき100 μLを添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20(P1379、Sigma-Aldrich)を含有するPBSで3回洗浄した。1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich)を含むPBSを120 μL、ウエルに添加し、プレートを周囲温度で一晩インキュベートした。プレートを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。0.05%のtween(登録商標) 20を含有するPBSの中で1:125に希釈したニワトリ抗プロスタソームとニワトリ抗PSA抗体(Immunsystem AB、ウプサラ、スウェーデン国)を100 μL、ウエルに添加した。プレートを周囲温度で1時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。PBS-tween(登録商標) の中で1:2000に希釈したニワトリ抗IgY-HRP(A16130、Novex、フレデリック、メリーランド州、アメリカ合衆国)を100 μL、プレートに添加した。プレートを周囲温度で1時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。100 μLのTMB基質(EC-Blue Enhanced TMB基質、Medicago、ウプサラ、スウェーデン国)をプレートに添加し、プレートを暗所にて周囲温度で20分間インキュベートした。25 μLの1 M H2SO4を各ウエルに添加し、SpectraMax 250 ELISAリーダーの中でプレートを450 nmで読んだ。これらの抗体に関する結果は下記の表5に示されている。
【0121】
【0122】
この実験からの1つの結論は、両方のニワトリ抗体が、精製したプロスタソームに対して試験したときに検出抗体としてプラスの応答を与えるというものである。調べた抗体は、多くのエピトープを持つポリクローナル抗体が原因で強く反応し、強いシグナルを出す。したがってポリクローナルニワトリ抗体は、本発明の捕捉抗体に結合したプロスタソームを検出するための一次検出抗体として使用するのによく適している。
【0123】
実施例4:正常な血漿に添加された精製したプロスタソームの試験
【0124】
ヒト合成scFv断片4(2 μg/mL)とヒト合成scFv断片7(2 μg/mL)をPBSの中で被覆した。ウエル1つにつき100 μLを添加し、室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。120 μLの1%ウシ血清アルブミン(BSA)をウエルに添加し、それを室温で一晩インキュベートした。インキュベーションの後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。女性血液ドナーからの血漿の中で1 ng/mLに希釈したプロスタソームを100 μL 添加した。100 μLを行1に添加し、室温で2時間インキュベートした。PBS-tween(登録商標)の中で1:1000に希釈したニワトリ抗プロスタソーム抗体とニワトリ抗PSA抗体の両方を添加した。プレートを室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。PBS-tween(登録商標) の中で希釈した抗ニワトリIgY-HRPを100 μL、ウエルに添加して室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。100 μLのTMB基質をウエルに添加し、10分間インキュベートした後、20 μLの1 M H2SO4をプレートに添加した。プレートを450 nmで読んだ。
【0125】
F96 Polysorb NUNC Immunoplate(Thermo Fisher Scientific、ウプサラ、スウェーデン国)のウエル1つにつき100 μLのヒト合成scFv断片4(最終濃度はPBSの中で2 μg/mL)とscFv断片7(最終濃度はPBSの中で2 μg/mL)を別々に添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS(P1379、Sigma-Aldrich)で3回洗浄した。1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich)を含むPBSを120 μL、ウエルに添加し、プレートを周囲温度で一晩インキュベートした。プレートを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSで3回洗浄した。1 ng/mLの精製したプロスタソーム(最終濃度)を女性ヒト血液ドナーの血漿の中で希釈し、100 μLをウエルに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。0.05%のtween(登録商標) 20を含有するPBSの中で1:1000に希釈したニワトリ抗プロスタソームとニワトリ抗PSA抗体(Immunsystem AB、ウプサラ、スウェーデン国)を100 μL、別々にウエルに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。PBS-tween(登録商標)の中で1:2000に希釈した抗IgY-HRP(A16130、Novex、フレデリック、メリーランド州、アメリカ合衆国)を100 μL、プレートに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。100 μLのTMB基質(EC-Blue Enhanced TMB基質、Medicago、ウプサラ、スウェーデン国)をプレートに添加し、プレートを暗所にて周囲温度で20分間インキュベートした。25 μLの1 M H2SO4を各ウエルに添加し、SpectraMax 250 ELISAリーダーの中でプレートを450 nmで読んだ。scFv断片に関する結果は下記の表6に示されている。
【0126】
【0127】
前の実験では、精製したプロスタソームを用いてニワトリ検出抗体の使用を調べた。本実施例では、プロスタソームをサンプル(血清または血漿など)の中で希釈するとき抗体がいかにうまく機能するかを調べた。この実験からの1つの結論は、調べた両方のニワトリ抗体がヒト血漿の存在下でもプラスの応答を与えるというものであり、これは、血漿中でもそれらを用いてプロスタソームを検出できることを示す。
【0128】
実施例5:患者サンプル、PSAが上昇した(50超)患者、女性血液ドナー、および男性血液ドナー(35歳未満)の試験
【0129】
ヒト合成scFv断片4(2 μg/mL)とヒト合成scFv断片7(2 μg/mL)、ヒト合成scFv断片10(2 μg/mL)をPBSの中で被覆した。ウエル1つにつき100 μLを添加し、室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。120 μLの1%ウシ血清アルブミン(BSA)をウエルに添加し、室温で一晩インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。100 μLの患者サンプルを添加した後、プレートを室温で2時間インキュベートした。PBS-tween(登録商標)の中で1:1000に希釈したニワトリ抗PSA両方を添加し、室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。PBS-tween(登録商標)の中で1:2000に希釈した抗ニワトリIgY-HRPを100 μL、ウエルに添加し、次いで室温で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。100 μLのTMB基質をウエルに添加し、10分間インキュベートした後、20 μLの1 M H2SO4をプレートに添加した。プレートを450 nmで読んだ。
【0130】
F96 Polysorb NUNC Immunoplate(Thermo Fisher Scientific、ウプサラ、スウェーデン国)のウエル1つにつき100 μLのヒト合成scFv断片4(最終濃度はPBSの中で2 μg/mL)、ヒト合成scFv断片7(最終濃度はPBSの中で2 μg/mL)、およびヒト合成scFv断片10(最終濃度はPBSの中で2 μg/mL)を添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20(P1379、Sigma-Aldrich)を含有するPBS で3回洗浄した。1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich)を含むPBSを120 μL、ウエルに添加し、プレートを周囲温度で一晩インキュベートした。プレートを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。上昇したPSA(50 μg/L超、表の中の標識したPSA)を持つ患者、女性血液ドナー(対照)、および35歳未満の男性血液ドナー(若い男性血液ドナーは前立腺がんを持つことが非常に稀であるため、陰性対照として機能した)からのサンプルを100 μL、ウエルに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSの中で1:1000に希釈したニワトリ抗プロスタソームとニワトリ抗PSA抗体(Immunsystem AB、ウプサラ、スウェーデン国)を100 μL、ウエルに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。PBS-tween(登録商標) の中で1:2000に希釈したニワトリ抗IgY-HRP(A16130、Novex、フレデリック、メリーランド州、アメリカ合衆国)を100 μL、プレートに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。100 μLのTMB基質(EC-Blue Enhanced TMB基質、Medicago、ウプサラ、スウェーデン国)をプレートに添加し、プレートを暗所にて周囲温度で20分間インキュベートした。25 μLの1 M H2SO4を各ウエルに添加し、SpectraMax 250 ELISAリーダーの中でプレートを450 nmで読んだ。scFv断片に関する結果は下記の表7~9に示されている。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
この実験からの1つの結論は、PSA陽性血漿サンプルでは女性およびより若い男性の血液ドナーと比べてより大きな値が得られるというものであり、これはそれが前立腺がんのためのマーカーであることを示す。
【0135】
実施例6:プロスタソームELISAにおける検出体としてのマウスモノクローナル抗体の試験
【0136】
精液血漿を、Akademiska HospitalのReproduction Centre(ウプサラ、スウェーデン国)から、以前に記載されている定法(Ronquist, G.K., et al.、プロスタソームDNAの特徴づけとヒト精子への導入。Mol Reprod Dev, 2011. 78(7): p. 467-76.)に従って回収した。精液血漿を解凍し、3,000 gで12分間遠心分離した。上清を回収し、10,000 gで30分間遠心分離した。次いで上清を新たなチューブに移し、90Tiローター(Beckman Coulter、ブレア、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を100,000 gで2時間用いて超遠心分離した。ペレットを、0.02 MのNaH2PO4、0.15 MのNaCl、pH 7.2(PBS)の中に4℃で一晩再懸濁させた。
【0137】
次いで再懸濁させたペレットを、Superdex 200ゲルを装填したクロマトグラフィカラム(XK 60/70、GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン国)にロードした。画分を5 mL/時の流速で回収した。次いで画分を分光光度計で測定した。そのとき260 nm(核酸)と280 nm(タンパク質)両方のピークがプロスタソームに対応する。これら画分を回収し、プールし、100,000 gで超遠心分離した。得られたペレットをPBSの中に再懸濁させた。
【0138】
F96 Polysorb NUNC Immunoplate(Thermo Fisher Scientific、ウプサラ、スウェーデン国)のウエル1つにつき、PBSの中で1 μg/mLの最終濃度にしたモノクローナル抗体を100 μL、二連で添加した。被覆に使用したマウスモノクローナル抗体は、抗CD10、(0112、Immunotech、マルセイユ、フランス国)、抗CD46(0846、Immunotech)、抗CD38(Sanquin、アムステルダム、オランダ国)、抗CD59(Sanquin)、抗CD13、(C8589、Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、アメリカ合衆国)、および抗PSMA(Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア州)であった。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、0.05%のTween(登録商標) 20(P1379、Sigma-Aldrich)を含有するPBS で3回洗浄した。1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich)を含むPBSを120 μL、ウエルに添加し、プレートを周囲温度で一晩インキュベートした。プレートを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。PBSの中で100 ng/mLに希釈した精製したプロスタソームを100 μL、ウエルに添加した。以前の研究(Tavoosidana et al. PNAS, May 24, 2011, vol. 108, no. 21, 8809-8814)によると、前立腺がん患者からの血液中でプロスタソームを検出する感度は約1 ng/mLである。したがって調べた濃度はこのレベルよりもはるかに上である。
【0139】
プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBSの中で1:1000に希釈したニワトリ抗PSA抗体(Immunsystem AB、ウプサラ、スウェーデン国)を100 μL、ウエルに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートし、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。PBS-Tween(登録商標)の中で1:2000に希釈した抗IgY-HRP(A16130、Novex、フレデリック、メリーランド州、アメリカ合衆国)を100 μL、プレートに添加した。プレートを周囲温度で2時間インキュベートした後、ウエルを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS で3回洗浄した。100 μLのTMB基質(EC-Blue Enhanced TMB基質、Medicago、ウプサラ、スウェーデン国)をプレートに添加し、プレートを暗所にて周囲温度で20分間インキュベートした。25 μLの1 M H2SO4を各ウエルに添加し、SpectraMax 250 ELISAリーダーの中でプレートを450 nmで読んだ。調べたどの抗体もプラスの応答を与えなかった。
【0140】
したがって本明細書に含まれている実施例は、提案されているヒトモノクローナル抗体またはその結合断片がサンプル中の低濃度のプロスタソームを選択的に検出するのに有効であることを証明しているのに対し、マウスの対応物は、低レベルのプロスタソームを検出することができず、したがって前立腺がんの診断に使用するのに適していないことが示される。
【0141】
実施例7:断片4と7の予後予測有効性の試験
【0142】
本開示の一実施形態に従って実施されて測定されたプロスタソームのレベルに基づき患者/対象の重症度と転帰を予測する能力を評価する研究を実施した。断片4と7の有効性を評価した。
【0143】
前立腺がんを持つ患者から手術前に血液サンプルを回収した。サンプルは1991~2001年に回収した。遠心分離の後、得られた血清サンプルを-70Cで保管した。死亡と死因に関する追跡データを2021年2月に患者ファイルから抽出した。使用したエンドポイントは、腫瘍再発の記録欠如を除外した後の追跡時の死亡であった。81個のサンプルを解凍し、ScFv断片4(AK4)とScFv断片7(AK7)を捕捉抗体(捕獲ScFv断片)として使用し、ニワトリ抗プロスタソーム抗体を検出体として使用して分析した。これらサンプルのうちの51個も、AK4とAK7を捕捉抗体(捕獲ScFv断片)として使用し、ニワトリ抗PSA抗体を検出体として使用して分析した。
【0144】
AK4とAK7を検出体としての抗プロスタソーム抗体(Pros)と組み合わせて使用する両方の実験に関し、プロスタソームの測定された比較的高いレベルは死と相関していたのに対し、比較的低いレベルは20年以上後の生存と相関していた。検出体としての抗PSA抗体(PSA)と組み合わせたAK7は、予想される死または20年以上後の生存と有意に関連していた。これらの結果は下記の表10に示されている。
【0145】
【0146】
実施例8:免疫沈降質量分析を利用した断片結合標的の評価
【0147】
免疫沈降を質量分析と組み合わせて用いること(IP-MS)により、抗体が想定される標的と特異的に相互作用することの検証が可能である。それぞれの断片1~12が結合するプロスタソーム上の標的を明確にするため、溶解したプロスタソームへのこれらの断片の結合を、液体クロマトグラフィ(LC)- IP-MS分析を利用して調べた。
【0148】
精製したプロスタソームを凍結-解凍と超音波手続きによって高塩バッファの中に溶解させた。残屑を遠心分離によって除去し、プロスタソーム溶液を、それぞれが抗体断片1~12の1つで被覆された磁性ビーズと混合した。4℃で2時間インキュベートした後、10 mMのTris-HCl, pH 7.9、100 mMのNaCl、0.1% (v/v)のNonidet P-40を含有するバッファでビーズを3回洗浄し、洗浄剤なしの同じバッファで2回洗浄した。0.5 MのNH4OHを含む水を用いてサンプルをビーズから溶離させた。溶離液をSpeed-Vacの中で乾燥させた後、50 μLの50 mM炭酸水素アンモニウムの中で再構成した。その後サンプルを100 mMのTCEP-HClで還元し、500 mMのヨードアセトアミドでアルキル化した後、トリプシンで消化させた。
【0149】
その後、サンプルに対して液体クロマトグラフィ(LC)-MS分析を実施した。酵素特異性をトリプシンに設定し、検索をヒトタンパク質に対して実施した。それぞれの抗体断片(1~12)が結合した複合体の中に存在していて同定された上位5つのタンパク質(ホモ・サピエンス)が下記の表11に掲載されている。
【0150】
【0151】
この結果は、本発明の個々の断片1~12のそれぞれが単一の標的タンパク質/脂質/炭水化物に結合するのではなく、いくつかの標的に結合することを示した。IP-MS分析で同定された上位の標的から、これら断片が結合した標的は個々の標的ではなく、いくつかの個々のタンパク質/脂質/炭水化物によって形成される複合体であることが明らかになった。溶解したプロスタソームサンプルの中のそれぞれの個別の標的である純粋な抗原への結合強度は、複合体(この複合体は、凝集するかプロスタソーム膜断片に結合したいくつかの個別の標的で構成されていた)への結合よりもはるかに弱かったため、scFv断片が実際にはプロスタソームの表面上の標的タンパク質の三次元構造または三次元配置に結合することを示している。したがって本発明のscFv断片が結合した抗原は、個別の分離された抗原ではなくプロスタソーム膜の表面上、またはプロスタソーム膜断片に結合した抗原の塊または複合体の表面上の構造であり、そのことによってサンプル中の全プロスタソームを測定するのに理想的になっている。したがって表11のタンパク質は、それぞれの断片が結合する個別の標的/抗原と見てはならず、それぞれの断片が結合する複合体の一部であると見なければならない。
【0152】
実施形態の項目化されたリスト
【0153】
1.プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0154】
2.完全長抗体、抗原結合(Fab)断片、または抗原結合一本鎖Fv(scFv)断片である、項1によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0155】
3.ヒト合成scFv断片である、項1または2によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0156】
4.前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を捕捉抗体として用いるイムノアッセイにおいて前記抗体またはその抗原結合断片が少なくとも10 ng/mLの感度を可能にする、項1~3のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0157】
5.配列番号60~104からなる群から選択される1つ以上のプロスタソーム表面抗原に結合することによってプロスタソームに選択的に結合する、項1~4のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0158】
6.配列番号1~12から選択される重鎖相補性決定領域(CDR)と、配列番号13~24から選択される軽鎖CDRと、これらと95%以上(例えば96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)一致するCDR配列を含む、項1~5のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0159】
7.少なくとも4つの相補性決定領域(CDR)をCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、およびCDR-L3の任意の組み合わせで含み、前記CDRの選択が、
配列番号25、27、および28から選択されるCDR-H1;
配列番号26、29、および30から選択されるCDR-H2;
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択されるCDR-H3;
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24から選択されるCDR-L3、およびこれらと95%以上(例えば96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)一致するCDR配列を含む群からなされる、項1~6のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0160】
8.少なくとも6つの相補性決定領域(CDR)をCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3の任意の組み合わせで含み、前記CDRの選択が、
配列番号25、27、および28から選択されるCDR-H1;
配列番号26、29、および30から選択されるCDR-H2;
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12から選択されるCDR-H3;
配列番号56と57から選択されるCDR-L1;
配列番号58と59から選択されるCDR-L2;
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、および24から選択されるCDR-L3、およびこれらと95%以上(例えば96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く)一致するCDR配列を含む群からなされる、項1~7のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0161】
9.配列番号32~43と、それと80%以上(例えば85%、90%、95%、またはそれよりも多く)一致する配列からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列を含む、項1~8のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0162】
10.配列番号44~55と、それと80%以上(例えば85%、90%、95%、またはそれよりも多く)一致する配列からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列を含む、項1~8のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0163】
11.項9によるVH断片、項10によるVL断片、およびリンカーを含む合成scFv断片である、項9と10によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0164】
12.scFv断片4、scFv断片1、scFv断片2、scFv断片3、scFv断片5、scFv断片6、scFv断片7、scFv断片8、scFv断片9、scFv断片10、scFv断片11、およびscFv断片12の群から選択される合成scFv断片である、項1~11のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0165】
13.scFv断片4である、項1~12のいずれか1項によるヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【0166】
14.対象に前立腺がんが存在するかどうかを判断するためのインビトロの方法であって、
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること(S1);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること(S2);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したあらゆるプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること(S3);
プロスタソームの前記レベルをあらかじめ決められた閾値と比較すること(S4);および
プロスタソームの前記検出されたレベルが前記あらかじめ決められた閾値よりも高い場合に前記対象に前立腺がんが存在すると判断すること(S5)を含む方法。
【0167】
15.プロスタソームの前記検出されたレベルが前記あらかじめ決められた閾値よりも低い場合に前記対象に前立腺がんが存在しないと判断すること(S5)をさらに含む、項14による方法。
【0168】
16.前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したあらゆるプロスタソームを検出すること(S3)が、抗プロスタソーム検出抗体またはその抗原結合断片を用いて前記プロスタソームを検出することを含む、項14または15による方法。
【0169】
17.サンドイッチイムノアッセイであり、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)が結合したプロスタソーム(200)を検出すること(S3)が、さらなる検出抗体(103)を用いて前記抗プロスタソーム検出抗体(102)を検出することを含み、前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(101)が捕捉抗体であり、前記抗プロスタソーム検出抗体(102)が一次検出抗体であり、前記さらなる検出抗体(103)が二次検出抗体である、項16による方法。
【0170】
18.前記一次検出抗体(102)がニワトリ抗体であり、前記二次検出抗体(103)が抗ニワトリ抗体である、項17による方法。
【0171】
19.前記対象からの前記サンプルが体液サンプルである、項14~18のいずれか1項による方法。
【0172】
20.前記対象からの前記体液サンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される、項19による方法。
【0173】
21.前記あらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームである、項19または20のいずれか1項による方法。
【0174】
22.前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、項1~13のいずれか1項による抗体またはその抗原結合断片である、項14~21のいずれか1項による方法。
【0175】
23.前立腺がんの予後の提供を、それを必要とする対象で実施するインビトロの方法であって、
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること(S11)、
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること(S12)、
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること(S13)、
プロスタソームの前記レベルを第1および第2のあらかじめ決められた閾値と比較すること(S14)、および
前記前立腺がんの予後を提供すること(S15)を含み、そのときプロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には前立腺がんの予後が悪いと規定され(S15a)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第2のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には予後が良いと規定される(S15b)方法。
【0176】
24.前記対象からの前記サンプルが体液サンプルである、項23による方法。
【0177】
25.前記対象からの前記体液サンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される、項24による方法。
【0178】
26.前記第1のあらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームであり、前記第2のあらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき1 ngのプロスタソームである、項24~25のいずれか1項による方法。
【0179】
27.前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、項1~13のいずれか1項による抗体またはその抗原結合断片である、項23~26のいずれか1項による方法。
【0180】
28.前立腺がんの重症度の評価を、それを必要とする対象で実施するインビトロの方法であって、
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること(S21);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること(S22);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること(S23);
プロスタソームの前記レベルを第1および第2のあらかじめ決められた閾値と比較すること(S24);および
前記前立腺がんの重症度を評価すること(S25)を含み、そのとき前記前立腺がんを、プロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には重度であると評価し(S25a)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第1のあらかじめ決められた閾値よりも低いが第2のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には中程度であると評価し(S25b)、プロスタソームの前記検出されたレベルが第2のあらかじめ決められた閾値よりも低い場合には軽度であると評価する(S25c)方法。
【0181】
29.前記対象からの前記サンプルが体液サンプルである、項28による方法。
【0182】
30.前記対象からの前記体液サンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される、項29による方法。
【0183】
31.前記第1のあらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき10 ngのプロスタソームであり、前記第2のあらかじめ決められた閾値が、体液サンプル1 mLにつき1 ngのプロスタソームである、項29~30のいずれか1項による方法。
【0184】
32.前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、項1~14のいずれか1項による抗体またはその抗原結合断片である、項28~31のいずれか1項による方法。
【0185】
33.前立腺がん治療の有効性の評価を、それを必要とする対象で実施するインビトロの方法であって、
前立腺がん治療の前に、対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出すること(S31)、
前記対象に抗前立腺がん治療を提供すること(S32)、
前記前立腺がん治療の後に前記対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出すること(S33)、
前記治療前のプロスタソームのレベルを前記治療後のレベルと比較すること(S34)、および
前記治療の有効性を判断すること(S35)を含み、そのとき前記治療後のプロスタソームの前記レベルが前記治療前のレベルと比べて低下している場合には前記治療が効果的であると判断し(S35a)、プロスタソームの前記レベルが同じであるか上昇した場合には前記治療が効果的でないと判断する(S35b)方法。
【0186】
34.対象からのサンプル中のプロスタソームのレベルを検出すること(S31、S33)が、
プロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意すること(S31a、S33a);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させること(S31b、S33b);
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得すること(S31c、S33c)を含む、項33による方法。
【0187】
35.前記対象からの前記サンプルが体液サンプルである、項33または34のいずれか1項による方法。
【0188】
36.前記対象からの前記体液サンプルが、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、および細胞懸濁液からなる群から選択される、項35による方法。
【0189】
37.前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、項1~13のいずれか1項による抗体またはその抗原結合断片である、項34~36のいずれか1項による方法。
【0190】
38.項14~37のいずれか1項による方法における利用のための、項1~13のいずれか1項による抗体またはその抗原結合断片。
【0191】
39.前立腺がんを持つ対象を治療する方法であって、
ヒトプロスタソームに選択的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意したこと;
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を、対象からのプロスタソームを含むサンプルと反応させたこと;
前記ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が結合したプロスタソームを検出してプロスタソームのレベルを取得したこと;
プロスタソームの前記レベルをあらかじめ決められた第1の閾値と比較したこと;
プロスタソームの前記検出されたレベルが前記第1のあらかじめ決められた閾値よりも高い場合には前記対象に前立腺がんが存在すると判断したこと;
プロスタソームの前記検出されたレベルが前記第2のあらかじめ決められた閾値よりも低いと判断したこと;
治療を必要とする前記対象を、前記前立腺がんに対して手術を実施して治療することを含む方法。
【0192】
本明細書で引用されているあらゆる参考文献は、許容される範囲で参照によって組み込まれている。
【配列表】
【国際調査報告】