(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用のインク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/36 20140101AFI20230413BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C09D11/36
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553616
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2021055655
(87)【国際公開番号】W WO2021176086
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522352498
【氏名又は名称】ドミノ・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リサ・ヴェレーナ・シンドラー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー・ソロモン・ムブティア・キマニ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ジャン-ルイ・グザヴィエ・モレル
【テーマコード(参考)】
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2H186BA08
2H186DA09
2H186DA10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB57
2H186FB58
4J039AB08
4J039AE02
4J039BA04
4J039BC07
4J039BC13
4J039BC20
4J039BC57
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE25
4J039BE28
4J039CA07
4J039EA46
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
インク組成物、特に、ドロップオンデマンドインクジェット印刷又は連続インクジェット印刷等のインクジェット印刷で使用するためのインクジェットインク組成物であって、非孔質基材上にコードを生成するのに適しているインク組成物が提供される。このインク組成物は、C1~6アルコール溶媒、C3~12エステル溶媒、シロキサン界面活性剤、並びにロジン樹脂及びテルペンフェノール樹脂から選択されるキャッピング樹脂を有する。このインク組成物は、長いデキャップ時間及び/又は良好なレイテンシーと組み合わせて、短い乾燥時間を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C
1~6アルコール溶媒、C
3~12エステル溶媒、シロキサン界面活性剤、並びにロジン樹脂及びテルペンフェノール樹脂から選択されるキャッピング樹脂を含む、インク組成物。
【請求項2】
シロキサン界面活性剤が、ランダム構造、ブロック構造、くし形構造又は星型構造を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
シロキサン界面活性剤が、ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤である、請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
シロキサン界面活性剤が0.1~1.5質量%で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】
キャッピング樹脂が疎水性である、請求項1から4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
キャッピング樹脂が、ペンタエリスリトールロジン樹脂、グリセロールエステル水素化ロジン樹脂等の水素化ロジンのエステル、水素化テルペンフェノール樹脂、又は、α-ピネン、β-ピネン、d-リモネン等のテルペンとフェノール若しくはビスフェノールとの共重合によって生成されるテルペンフェノール樹脂から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項7】
C
1~6アルコールが、インク組成物の総質量に対して70~90質量%で組成物中に存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
C
1~6アルコール溶媒が、1.0バールの圧力で60~120℃の沸点を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項9】
C
1~6アルコール溶媒が、2種以上のC
1~6アルコールの混合物である、請求項1から8のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項10】
C
3~12エステル溶媒が、インク組成物の総質量に対して0.5~8質量%で組成物中に存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項11】
C
3~12エステル溶媒が、1.0バールの圧力で100~200℃の沸点を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項12】
ポリソルベート界面活性剤を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項13】
ポリソルベート界面活性剤が、インク組成物の総質量に対して0.5~1.5質量%で存在する、請求項12に記載のインク組成物。
【請求項14】
ポリソルベート界面活性剤が、1,200~2,000の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する、請求項12又は13に記載のインク組成物。
【請求項15】
セルロース樹脂等のバインダーを更に含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項16】
バインダーが、ヒドロキシル、カルボキシル及びアミノから選択される1つ又は複数の配位基を有する1種又は複数のポリマーを含む、請求項15に記載のインク組成物。
【請求項17】
金属架橋剤を更に含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のインク組成物を提供する工程と、そのインク組成物を基材上に堆積させる工程とを含み、任意選択で、堆積した組成物を乾燥させる工程を含んでいてもよい、印刷方法。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を含むインクカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本案件は、2020年3月6日(06/03/2020)に出願されたGB 2003258.7に対する優先権及びその利益を主張し、その内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、インク組成物、特に、ドロップオンデマンドインクジェット印刷等のインクジェット印刷で使用するためのインク組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
工業用コード及びマーキングコードの分野では、日付及びトレーサビリティ情報が、製品及び/又は包装に直接適用される。このようなマーキングは、多くの場合、インクジェットプリンタ等のプリンタを用いて行われる。
【0004】
食品包装で一般的に使用されているもの等の非孔質基材にコード、画像、又は文字をインクジェット印刷で形成するには、プリンタから噴射されたインク滴を、着弾直後に基材上で「凝固(freeze)」させる必要がある。液滴を急速に凝固することにより、制御された一連の合体又は非合体の明確に定義された液滴からコード、画像、又は文字を形成することができる。したがって、正確な画像を提供するためには、凝固が必要である。
【0005】
したがって、基材上に画像を凝固させるために、印刷されたときに急速な乾燥を示すインク組成物を提供することが望ましい。
【0006】
非孔質基材上のドットを凝固するためのいくつかの公知の方法があり、インク滴又はドットの内部で重合を誘発するUV硬化、特定のインクジェット基材の提供、又は基材の加熱が挙げられる。
【0007】
「UV硬化」法では、硬化性モノマーの存在と特定の条件を採用する必要がある。この方法は、追加の装置と特定の部品を必要とする。
【0008】
「インクジェット基材」法は、特定の基材、典型的には、インク滴を物理的に吸収する高吸収層を有する基材、又はインク中に存在する成分と反応するように特別に選択された化学反応性層を有する基材を必要とする(例えば、US 6,652,085 & US 7,066,590参照)。これらの方法は、基材に適用されることとなる (多孔質又は反応性のいずれかの) 特定の追加層、及び特定のインク成分を必要とする。
【0009】
「加熱基材」方式では、印刷する基材を印刷プロセスの間中、通常40~70℃の範囲の温度に加熱する必要がある。液滴が基材に当たると粘度が下がり、揮発性成分が蒸発するため、インク中の固体濃度が高くなり、インク粘度が急激に上昇する。この方法では、基材を加熱するための追加の装置が必要になり、特に印刷速度が速い場合、この加熱がプリントヘッドに悪影響を与える可能性がある。
【0010】
速乾性インクは通常、高品質の印刷、特に非孔性包装への高品質の印刷を提供するために、追加の装置や工程を実施する必要はない。しかし、速乾性のインクによって生じる多くの問題がある。例えば、基材上のインクの乾燥速度を上げると、カートリッジの開口部やプリンタのノズルにおけるインクの蒸発速度が上昇する。
【0011】
デキャップとは、ノズルのカバーを外してアイドル状態にしておける時間であって、ノズルが印刷されなくなるまでの時間を指す。デキャップ時間は、印刷品質を回復させるためにメンテナンスが必要になるまでのプリンタのアイドル時間である。デキャップ時間は、「オープン時間」とも呼ばれることがある。
【0012】
レイテンシーとは、印刷セッション中にノズルを非アクティブのままにしておくことができる時間であって、印刷がアクティブな時に初期性能が大幅に低下するまでの時間 を指す。例えば、レイテンシーとは、印刷セッション中に、最初の数滴が不規則になるか、印刷されなくなるまでの印刷時間を指す。レイテンシーの問題は、しばしば画像のエッジがギザギザになり、ファーストドロップの問題と呼ばれることがある。レイテンシーは、「ドウェルタイム」とも呼ばれることがある。
【0013】
コーディング及びマーキング用のインクは、長いデキャップ時間及び良好なレイテンシーと組み合わせて、短い乾燥時間を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】US 6,652,085
【特許文献2】US 7,066,590
【特許文献3】US 9957401 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上記の望ましい特性の少なくともいくつかを有するインク組成物を提供することである。特に、本発明の目的は、長いデキャップ時間及び良好なレイテンシーと組み合わせて速乾性を示すインクを提供することである。
【0016】
本発明の代替及び/又は追加の目的は、先行技術のインクジェットインク組成物の問題を克服若しくは対処すること、又は商業的に有用な代替物を少なくとも提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、インク組成物、特にドロップオンデマンドインクジェット印刷等のインクジェット印刷で使用するためのインク組成物であって、非孔質基材上にコードを生成するのに適しており、長いデキャップ時間及び/又は良好なレイテンシーと組み合わせて、短い乾燥時間を有するものを提供しようとするものである。また、本発明のインクは、接着性及び/又は良好な印刷品質等の良好なエンドユーザー特性を提供することができる。
【0018】
したがって、一態様において、本発明は、C1~6アルコール溶媒、C3~12エステル溶媒、シロキサン界面活性剤、並びにロジン樹脂及びテルペンフェノール樹脂から選択されるキャッピング樹脂を含むインク組成物を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、本発明のインク組成物から形成された印刷堆積物を提供する。印刷堆積物は、キャッピング樹脂及びシロキサン界面活性剤を含む。印刷堆積物は、微量の溶媒を含みうる。
【0020】
このようにして、本発明のインク配合物は、接着性又は画像精度(例えば、高品位バーコード画像)等の良好なエンドユーザー特性及び/又は高い画像精度等の良好な印刷品質と共に、良好なデキャップ及び/又はレイテンシー特性を有する速乾性溶剤ベースインク配合物を提供する。
【0021】
理論に拘泥するものではないが、インク中のキャッピング樹脂、シロキサン界面活性剤及びエステル溶媒の組合せが、ノズル又はカートリッジ開口部に一時的なキャップを形成することによって機能することが提案される。一時的なキャップは、インクがプリンタに装填されたときに、アルコール溶媒の蒸発を防止するか、又は著しく減少させる。一時的なキャップはまた、インク滴が空気中を移動しているとき、又はガターによって回収されているときに、連続的なインクジェット印刷の間等、印刷中の溶媒の不要な蒸発を防止することができる。印刷時には、インクはまだ十分なアルコール溶媒を有しており、基材上の画像を凝固させるための速乾性を提供する。したがって、インクの成分によって提供される一時的なキャップにより、基材上の速い乾燥時間を維持しながら、延長されたレイテンシー時間及び/又は良好なデキャップ特性を提供することができる。
【0022】
インク組成物は、ドロップオンデマンドインクジェットプリンタ又は連続インクジェット(CIJ)プリンタ等のインクジェットプリンタの成分に適合する。好ましくは、インクは、サーマルインクジェット(TIJ)プリンタ等のドロップオンデマンド(DOD)インクジェットプリンタにおける使用に適している。インク組成物は、高品質の画像を実現するために、製品及び/又は製品包装に直接塗布するのに適している。
【0023】
本発明のこれら及び他の態様及び実施形態は、以下に更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例2の配合物番号11でコーティングした、TQC sheenにより供給される、光沢カード基材、Hiding Power Chart、301-A上の150x600dpi(上)及び200x300dpi(下)での乾燥時間試験の一例を示す図である。
【
図2】実施例2の配合物番号11を用いたレイテンシー試験の一例を示す図である。
【
図3】接着試験のため、実施例2の配合物番号11を用いて200x300dpiで印刷したテストメッセージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、C1~6アルコール溶媒、C3~12エステル溶媒、シロキサン界面活性剤、並びにロジン樹脂及びテルペンフェノール樹脂から選択されるキャッピング樹脂を有するインク組成物を提供する。
【0026】
インク中のキャッピング樹脂、シロキサン界面活性剤、及びエステル溶媒の組合せは、ノズル又はカートリッジ開口部に一時的なキャップを形成することによって機能することが提案されている。更に、理論に拘泥するものではないが、キャッピング樹脂がシロキサン界面活性剤によってノズル又はカートリッジ開口部の空気-インク界面に輸送されることが提案されている。シロキサン界面活性剤の疎水性基は、キャッピング樹脂の疎水性官能基と相互作用し、インク-空気界面上に蓄積することが提案されている。シロキサン界面活性剤の親水性基は、C1~6アルコールであるバルク溶媒と相互作用する。また、樹脂は空気-インク界面への輸送中にエステル溶媒によって可溶化されることが提案されている。キャッピング樹脂、シロキサン界面活性剤、及びエステル溶媒は、空気-インク界面でバリアを形成する。
【0027】
理論に拘泥するものではないが、シロキサン界面活性剤は、樹脂中の酸素基との相互作用により、キャッピング樹脂を固定することができる。場合によっては、シロキサン界面活性剤は、キャッピング樹脂との複数の相互作用を提供する分岐構造を有しうる。エステル溶媒は、キャッピング樹脂を可溶化する。キャッピング樹脂がインク-空気界面に移動すると、エステル溶媒は界面活性剤によって輸送される。エステル溶媒は、通常、アルコール溶媒よりも低い蒸発速度を有しうるので、界面において蒸発がないか又は制限され、アルコール溶媒の蒸発を減少又は防止する一時的なキャップを提供するのに役立つ。このようにして、特許請求されているキャッピング樹脂及びシロキサン系界面活性剤は、拡張されたレイテンシーを提供することが提案されている。
【0028】
US9957401 B2は、有機溶媒、樹脂、界面活性剤、及び着色剤を有するインクを開示している。この特許の目的はデキャップ時間を改善することであり、界面活性剤を使用して空気とインクの界面を組織化して溶媒の蒸発を防ぐことが提案されている。樹脂は、インクに必要な粘度と接着性を与えると説明されている。US9957401 B2は、本発明で必要とされる溶媒、界面活性剤、樹脂の具体的な組合せを開示していない。また、後述する、本発明のインクを試験するのに用いた乾燥試験方法、すなわち150x600dpiのインクレイダウンでは、US9957401 B2の配合物の乾燥時間は2秒超である。
【0029】
好ましくは、本明細書に記載のインク組成物は、25℃において約0.5~25mPa・s、より好ましくは1~22mPa・sの粘度を有する。好ましくは、本明細書に記載のインク組成物は、25℃において25mPa.s未満、より好ましくは22mPa.s未満の粘度を有する。好ましくは、本明細書に記載のインク組成物は、25℃において0.5mPa.s超、より好ましくは1mPa.s超、更により好ましくは2mPa.s超の粘度を有する。インク組成物の粘度は、上述した範囲から選択した上限と下限の範囲であってもよい。組成物の粘度は、ブルックフィールドDV-II+型粘度計等の粘度計を用いて測定することができる。
【0030】
好ましくは、本明細書に記載のインク組成物は、24℃において、20~50mN/m、より好ましくは21~25mN/mの表面張力を有する。組成物の表面張力は、SITAバブルプレッシャーテンシオメーター等の装置を用いて測定することができる。気泡寿命は、20秒程度であってもよい。
【0031】
また、インク組成物は、水を含みうる。例えば、存在する場合、水は、インク組成物の総質量に対して10質量%未満で存在し得、好ましくは、水は5質量%未満又は1質量%未満で存在する。
【0032】
インク組成物は、非水性組成物であってもよい。
【0033】
C1~6アルコール溶媒
本発明のインク組成物は、C1~6アルコール溶媒を含む。C1~6アルコール溶媒は、単一のC1~6アルコール溶媒であってもよく、2種以上のC1~6アルコール溶媒の混合物であってもよい。好ましくは、C1~6アルコール溶媒は、2種以上のC1~6アルコールの混合物であり、より好ましくは、C1~6アルコール溶媒は、ちょうど2種のC1~6アルコールの混合物である。
【0034】
C1~6アルコール溶媒は、迅速な蒸発により短い乾燥時間を提供することが提案される。
【0035】
インクの乾燥時間は、室温、圧力、湿度、並びに配置されたインクの量、すなわち解像度に依存して変化する。好ましくは、200x300dpiで印刷した場合、22℃、1.013kPa、湿度40%でインクが0.1~3秒で乾燥する。
【0036】
乾燥時間は、光沢カード又はMelinex基材に多数の別々の文字を同時に印刷し、印刷直後から1秒間隔等一定の間隔で1文字をこすることで測定することができる。乾燥時間は、擦ったときにインクのにじみがなくなるまでの時間である。
【0037】
C1~6アルコール溶媒は、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール又はこれらの混合物から選択することができる。
【0038】
好ましくは、C1~6アルコール溶媒は、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、又はそれらの混合物から選択される。より好ましくは、C1~6アルコール溶媒は、エタノールと1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物である。
【0039】
C1~6アルコール溶媒は、インク組成物の総質量に対して95質量%未満、好ましくは90質量%未満、より好ましくは87質量%未満で存在しうる。
【0040】
C1~6アルコール溶媒は、インク組成物の総質量に対して10質量%超、好ましくは40質量%超、より好ましくは70質量%超で存在しうる。例えば、C1~6アルコール溶媒は、45質量%超、50質量%超、55質量%超、60質量%超、又は65質量%超のC1~6アルコール溶媒で存在しうる。
【0041】
C1~6アルコール溶媒は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲である量で存在しうる。例えば、C1~6アルコール溶媒は、インク組成物の総質量に対して、10~95質量%、好ましくは40~90質量%、最も好ましくは70~90質量%で組成物中に存在しうる。
【0042】
印刷された堆積物において、C1~6アルコール溶媒は、少なくとも部分的に蒸発している。この場合、印刷された堆積物中にC1~6アルコール溶媒が存在しないか、又は微量のC1~6アルコール溶媒のみが存在することがある。
【0043】
C1~6アルコール溶媒は、C3~12エステル溶媒よりも高い蒸発速度を有しうる。
【0044】
C1~6アルコール溶媒は、4未満、好ましくは2未満の蒸発速度を有する。蒸発速度は、N-ブチルアセテートに対して測定される。蒸発法は、ASTM法D3539-87(2004)、Standard Test Methods for Evaporation Rates of Volatile Liquids by Shell Thin-Film Evaporometer, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2004により測定することができる。
【0045】
C1~6アルコール溶媒は、C3~12エステル溶媒よりも低い沸点を有しうる。
【0046】
C1~6アルコール溶媒は、1.0バールの圧力で200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更により好ましくは100℃以下の沸点を有しうる。
【0047】
C1~6アルコール溶媒は、1.0バールの圧力で45℃以上の沸点、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上の沸点を有しうる。
【0048】
C1~6アルコール溶媒は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲の沸点を有しうる。例えば、C1~6アルコール溶媒は、1.0バールの圧力で60℃~120℃の沸点を有しうる。
【0049】
C1~6アルコール溶媒が混合物である場合、沸点は、混合物中の少なくとも1種のC1~6アルコールの個々の沸点を指し、好ましくは、沸点は、混合物中のすべてのC1~6アルコールの個々の沸点を指す。ここで使用される個々の沸点という用語は、溶媒が混合物でない場合に測定される溶媒の沸点を指す。
【0050】
C1~6アルコール溶媒が2種の溶媒の混合物である場合、一方のC1~6アルコール溶媒は、混合物中の他方のC1~6アルコール溶媒よりも低い沸点を有することになる。高沸点のC1~6アルコール溶媒の低沸点のC1~6アルコール溶媒に対する質量比は、1:1.1~1:2.5、好ましくは1:1.2~1:2.1であってよい。
【0051】
C1~6アルコール溶媒のC3~12エステル溶媒に対する比は、90:1~70:10、好ましくは90:1~70:5であってもよい。
【0052】
C3~12エステル溶媒
本発明のインク組成物は、C3~12エステル溶媒を含む。C3~12エステル溶媒は、単一のC3~12エステル溶媒であってもよく、2種以上のC3~12エステル溶媒の混合物であってもよい。
【0053】
C3~12エステル溶媒は、樹脂を空気-インク界面に輸送する間に樹脂を可溶化することが提案される。
【0054】
C3~12エステル溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸エチル、ブタン酸プロピル、ブタン酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ-ラクトン若しくはδ-ラクトン又はこれらの混合物から選択することができる。好ましいC3~12エステル溶媒は、プロピオン酸ブチルである。
【0055】
C3~12エステル溶媒は、インク組成物の総質量に対して20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更により好ましくは6質量%以下で存在しうる。
【0056】
C3~12エステル溶媒は、インク組成物の総質量に対して0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、又は3質量%以上で存在しうる。
【0057】
C3~12エステル溶媒は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にある量で存在しうる。例えば、C3~12エステル溶媒は、インク組成物の総質量に対して、0.5~8質量%、好ましくは1~8質量%、最も好ましくは3~6質量%で組成物中に存在しうる。
【0058】
キャッピング樹脂がテルペンフェノール樹脂である場合、好ましくは、C3~12エステル溶媒は、インク組成物の総質量に対して、0.5~6質量%、好ましくは0.5~2.5質量%で組成物中に存在する。
【0059】
キャッピング樹脂がロジン樹脂である場合、好ましくはC3~12エステル溶媒は、インク組成物の総質量に対して、1~8質量%、好ましくは3~6質量%で組成物中に存在する。
【0060】
印刷された堆積物では、C3~12エステル溶媒は、少なくとも部分的に蒸発している。この場合、C3~12エステル溶媒は、印刷された堆積物中に存在しないか、又は微量のC3~12エステル溶媒のみが存在することがある。
【0061】
C3~12エステル溶媒は、C1~6アルコール溶媒よりも低い蒸発速度を有しうる。
【0062】
C3~12エステル溶媒は、1未満、好ましくは0.7未満の蒸発速度を有する。蒸発率は、N-ブチルアセテートに対して測定される。この蒸発法は、ASTM法D3539-87(2004)、Standard Test Methods for Evaporation Rates of Volatile Liquids by Shell Thin-Film Evaporometer, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2004に従って測定することができる。
【0063】
C3~12エステル溶媒は、C1~6アルコール溶媒よりも高い沸点を有しうる。
【0064】
C3~12エステル溶媒は、1.0バールの圧力で500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、更により好ましくは200℃以下の沸点を有しうる。
【0065】
C3~12エステル溶媒は、1.0バールの圧力で50℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは140℃以上の沸点を有しうる。
【0066】
C3~12エステル溶媒は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲の沸点を有しうる。例えば、C3~12エステル溶媒は、1.0バールの圧力で100℃~200℃の沸点を有しうる。
【0067】
C3~12エステル溶媒が混合物である場合、沸点は、混合物中の少なくとも1種のC3~12エステルの個々の沸点を指し、好ましくは、沸点は、混合物中のすべてのC3~12エステルの個々の沸点を指す。ここで使用される個々の沸点という用語は、溶媒が混合物でない場合に測定した溶媒の沸点を指す。
【0068】
キャッピング樹脂
本発明のインク組成物は、ロジン樹脂及びテルペンフェノール樹脂から選択されるキャッピング樹脂を含む。好ましくは、キャッピング樹脂は疎水性である。
【0069】
本出願で用いられる疎水性という用語は、油又は他の疎水性溶媒との相互作用が、水及び他の極性物質との相互作用よりも熱力学的に有利な樹脂を指す。例えば、疎水性樹脂は、電荷中性又は非極性であってよい。
【0070】
適切なロジン樹脂としては、水素化ロジンのエステル、例えば、ペンタエリスリトールロジン樹脂 (例えば、Foralyn 110、Pentalyn H-E、Foral 105-E、Permalyn 6110、Permalyn 5110、Pinecrystal KE-359(荒川化学工業株式会社)、Hydrogral P(DRT社)、Sylvalite RE 100L(Kraton社)、Sylvalite RE 110L(Kraton社)、Sylvatac RE 100(Kraton社))及びグリセロールエステル水素化ロジン樹脂(例えば、Staybelite Ester 10-E、Foralyn 90又はForalyn 85-E)等が挙げられる。好ましくは、ロジン樹脂は、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル等の水素化ロジンのエステルである。
【0071】
適切なテルペンフェノール樹脂としては、水素化テルペンフェノール樹脂、及びテルペン類(例えば、α-ピネン、β-ピネン、d-リモネン)とフェノール又はビスフェノールとの共重合反応により製造されるテルペンフェノール樹脂等が挙げられる。テルペン類とフェノールとの化学量論を制御することにより、多種多様な樹脂を設計することが可能である。適切なテルペンフェノール樹脂の例は、Dertophene T、Polyster U115及びPolyster UH115である。好ましくは、テルペンフェノール樹脂中の脂肪族水素と芳香族水素の比は、14:1以上である。脂肪族水素の芳香族水素に対する比は、1H-NMRにより測定することができる。
【0072】
好ましくは、キャッピング樹脂は、25℃、1.0バールの圧力で固体である。場合によっては、キャッピング樹脂は、1.0バールの圧力で200℃以下、より好ましくは175℃以下、更により好ましくは150℃以下の軟化点を有する。
【0073】
キャッピング樹脂は、1.0バールの圧力で50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上の軟化点を有しうる。
【0074】
キャッピング樹脂は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲の軟化点を有しうる。例えば、キャッピング樹脂は、1.0バールの圧力で100℃~150℃の軟化点を有しうる。軟化点は、ASTM E28-18, Standard Test Methods for Softening Point of Resins Derived from Pine Chemicals and Hydrocarbons, by Ring-and-Ball Apparatus, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2018等の標準方法を用いて決定することができる。
【0075】
好ましくは、キャッピング樹脂は、400~10,000、より好ましくは500~5,000、更により好ましくは600~2,000の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。好ましくは、キャッピング樹脂は、少なくとも400、より好ましくは少なくとも500、更により好ましくは少なくとも600の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。好ましくは、キャッピング樹脂は、2,000未満の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。キャッピング樹脂は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲にある質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。
【0076】
好ましくは、キャッピング樹脂は、C3~12エステル溶媒に対して良好な溶解度を有する。例えば、キャッピング樹脂のC3~12エステル溶媒に対する溶解度は、25℃で20~100グラム/100グラム、好ましくは25℃で20~80グラム/100グラムである。
【0077】
好ましくは、キャッピング樹脂は、C1~6アルコール溶媒への溶解度が低い。例えば、キャッピング樹脂のC1~6アルコール溶媒への溶解度は、25℃で10グラム/100グラム未満、好ましくは25℃で5グラム/100グラム未満、更により好ましくは25℃で1グラム/100グラム未満である。
【0078】
このようにして、カートリッジの開口部やプリンタのノズルに樹脂が集合する際に、低沸点アルコール溶媒が樹脂によって空気インク界面に運ばれず、蒸発しない。
【0079】
好ましくは、キャッピング樹脂は、インク組成物の総質量に対して0.5~10質量%、より好ましくは1.0~5.0質量%、更により好ましくは1.5~3質量%で存在する。
【0080】
好ましくは、キャッピング樹脂は、インク組成物の総質量に対して10質量%未満、より好ましくは5.0質量%未満、更により好ましくは3質量%未満で存在する。好ましくは、キャッピング樹脂は、インク組成物の総質量に対して0.5質量%超、好ましくは1質量%超、更により好ましくは1.5質量%超で存在する。キャッピング樹脂は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にある量で存在しうる。
【0081】
シロキサン界面活性剤
本発明のインク組成物は、シロキサン界面活性剤を含む。シロキサン界面活性剤は、シロキサン官能基(すなわち、Si-O-Si結合)を有する界面活性剤である。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤である。
【0082】
シロキサン界面活性剤は、ランダム構造、ブロック構造、くし形構造又は星状構造を有しうる。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、くし形構造を有する。くし形構造という用語は、2つ以上の三方分岐点及び直鎖側鎖を有する主鎖を有するポリマーを指す。
【0083】
適切なシロキサン界面活性剤の例は、シロキサン界面活性剤の市販製品、Dow Corning Toray Co. Ltd.社製のBY16-201及びSF8427、BYK-Chemie GmbH社製のBYK-331及びBYK-333、並びにEvonik Industries AG社製のTEGO Glide 410、TEGO Glide 432、TEGO Glide 435、TEGO Glide 440及びTEGO Glide 450である。
【0084】
このようにして、くし形構造の枝は、キャッピング樹脂のためのキャリアとして機能しうる。
【0085】
好ましくは、シロキサン界面活性剤は、400~20,000、より好ましくは1,000~15,000の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、少なくとも400、より好ましくは少なくとも1,000の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、20,000未満、より好ましくは15,000未満の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。シロキサン界面活性剤は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲にある質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。
【0086】
好ましくは、シロキサン界面活性剤は、インク組成物の総質量に対して4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更により好ましくは1.5質量%以下で存在する。シロキサン界面活性剤は、インク組成物の総質量に対して0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、好ましくは0.7質量%以上、更により好ましくは0.9質量%以上で存在する。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、インク組成物の総質量に対して約1.0質量%で存在する。シロキサン界面活性剤は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にある量で存在しうる。例えば、シロキサン界面活性剤は、0.1~1.5質量%で存在しうる。
【0087】
好ましくは、シロキサン界面活性剤は、25℃において、約100~3000mPa・s、より好ましくは200~2000mPa・s、更により好ましくは300~1000mPa・sの粘度を有する。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、25℃において、3000mPa・s未満、より好ましくは2000mPa・s未満、更により好ましくは1000mPa・s未満の粘度を有する。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、25℃において、100mPa・s超、より好ましくは200mPa・s超、更により好ましくは300mPa・s超の粘度を有する。シロキサン界面活性剤の粘度は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲にありうる。シロキサン界面活性剤の粘度は、ブルックフィールドDV-II+型粘度計等の粘度計を用いて測定することができる。
【0088】
場合によっては、シロキサン界面活性剤は、溶媒に予め希釈されて得られる。シロキサン界面活性剤の粘度は、予め希釈された溶液の粘度を指してもよいし、希釈前のシロキサン界面活性剤の粘度を指してもよい。好ましくは、粘度は、希釈前のシロキサン界面活性剤を指し、すなわち、粘度は、シロキサン界面活性剤それ自体の粘度である。
【0089】
着色剤
インク組成物は、着色剤、例えば染料又は顔料を更に含みうる。着色剤は、蛍光性、燐光性、又は真珠光沢性であってもよい。
【0090】
染料は、任意の適切な染料であってよい。例えば、染料は、ソルベントブラック27(Valifast 3830、Orasol X45)、ソルベントブラック29(HBDL N36B)、ソルベントブラック48(Morfast Black 101)、ソルベントイエロー82(Orasol Yellow 157、Keyfast Spirit Yellow 2GN)、ソルベントレッド160(Orasol Red 365)、ソルベントレッド125(Orasol Red 363)、ソルベントオレンジ11(Orasol Orange 247)、ソルベントブルー136(Neptun Blue 755)、ソルベントレッド122(Keyfast Spirit Red KL、Keyfast Spirit Red BL)、ソルベントレッド8(Keyfast Sprit Red 2BK)、ソルベントイエロー62(Keyfast Spirit Yellow 2RLS)、ソルベントイエロー83: 1(Savinyl Yellow RLS)、ソルベントブルー44(Savinyl Blue GLS)、ソルベントイエロー79(Savinyl Yellow 2GLS)、ソルベントオレンジ62(Valifast Orange 3209)、ソルベントオレンジ62とソルベントイエロー21の混合物(Valifast 3210)、ソルベントレッド8とソルベントオレンジ92の混合物(Valifast Red 3306)、ソルベントブルー44(Valifast Blue 2620)から選択することができる。
【0091】
顔料は、組成物中に分散された形態であってもよい。顔料は、無機顔料、金属顔料又は有機顔料であってもよい。
【0092】
好ましくは、顔料は、1μm未満の平均粒径を有する。ここでいう平均粒径は、動的光散乱法を用いて算出されるZ平均粒径である。これは、粒子の集合体の強度加重平均流体力学的サイズである。
【0093】
例えば、無機顔料は、接触法、炉法、熱法等の公知のプロセスにより製造した二酸化チタン等の酸化チタン、及び酸化鉄から選択することができる。
【0094】
例えば、有機顔料は、カーボンブラック、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料を含む)、多環顔料(例えば、フタロシアニン、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、キナクリドン、ジオキサジン、チオインジゴ、イソインドリノン、及びキノフタロン顔料)、染料系キレート顔料(例えば、塩基染料系キレート顔料及び酸性染料系キレート顔料)、及びアニリンブラックから選択することができる。カーボンブラックは、接触法、炉法、熱法等の公知のプロセスによって製造することができる。
【0095】
好ましくは、有機顔料はカーボンブラックである。ブラックインクに使用可能なカーボンブラックとしては、三菱化学株式会社製のカーボンブラック、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、及びNo.2200B;Columbian Carbon Co., Ltd.社製のカーボンブラック、例えば、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700;Cabot Corporation社製のカーボンブラック、例えば、Regal 400 R、Regal 330 R、Regal 660 R、Mogul E、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400;及びDegussa社製のカーボンブラック、例えば、Color Black FW 1、Color Black FW 2、Color Black FW 2 V、Color Black FW 18、Color Black FW 200、Color Black S 150、Color Black S 160、Color Black S 170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140 U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等が挙げられる。
【0096】
イエローインク用の顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー139等が挙げられる。
【0097】
マゼンタインク用顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48 8(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントオレンジ64、及びC.I.ピグメントオレンジ73等が挙げられる。
【0098】
シアンインク用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:34、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.バットブルー4、C.I.バットブルー60、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントグリーン3、C.I.ピグメントバイオレット23及びC.I.ピグメントバイオレット37等が挙げられる。
【0099】
好ましくは、有機顔料は、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントグリーン3、C.I.ピグメントバイオレット23、及びC.I.ピグメントバイオレット37から選択される。
【0100】
好ましくは、着色剤は、インク組成物の総質量に対して1~25質量%、より好ましくは1.5~15質量%、最も好ましくはインク組成物の総質量に対して2~6質量%で存在する。
【0101】
好ましくは、着色剤は、インク組成物の総質量に対して25質量%未満、より好ましくは15質量%未満、更により好ましくは4質量%未満で存在する。好ましくは、着色剤は、インク組成物の総質量に対して1質量%超、好ましくは1.5質量%超、更により好ましくは2質量%超で存在する。着色剤は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にある量で存在しうる。
【0102】
ポリソルベート界面活性剤
インク組成物は、ポリソルベート界面活性剤を更に含みうる。ポリソルベート界面活性剤は、エトキシル化ソルビタンを脂肪酸でエステル化したものから得られる界面活性剤である。好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート又はポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである。
【0103】
理論に拘泥するものではないが、ポリソルベート界面活性剤がインク空気界面で迅速に集合することができ、シロキサン界面活性剤、キャッピング樹脂及びエステル溶媒が集合して一時的なキャップを形成する一方で、最初のバリアを形成しうることが提案される。
【0104】
好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、インク組成物の総質量に対して4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更により好ましくは1.5質量%以下で存在する。ポリソルベート界面活性剤は、インク組成物の総質量に対して0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、好ましくは0.7質量%以上、更により好ましくは0.9質量%以上で存在する。好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、インク組成物の総質量に対して約1.0質量%で存在する。ポリソルベート界面活性剤は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にある量で存在しうる。例えば、ポリソルベート界面活性剤は、0.5~1.5質量%で存在しうる。
【0105】
好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、500~5,000、より好ましくは1,000~3,000、更により好ましくは1,200~2,000の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、少なくとも500、より好ましくは少なくとも1,000、更により好ましくは少なくとも1,200の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、2,000未満の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。ポリソルベート界面活性剤は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲にある質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。
【0106】
好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、25℃において、約100~3000mPa・s、より好ましくは200~2000mPa・s、更により好ましくは300~1000mPa・sの粘度を有する。好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、25℃において、3000mPa・s未満、より好ましくは2000mPa・s未満、更により好ましくは1000mPa・s未満の粘度を有する。好ましくは、ポリソルベート界面活性剤は、25℃において、100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上、更により好ましくは300mPa・s以上の粘度を有する。ポリソルベート界面活性剤の粘度は、上述した量から選択される上限と下限の範囲にありうる。ポリソルベート界面活性剤の粘度は、ブルックフィールドDV-II+型粘度計等の粘度計を用いて測定することができる。
【0107】
場合によっては、ポリソルベート界面活性剤は、溶媒に予め希釈されて得られる。ポリソルベート界面活性剤の粘度は、予め希釈された溶液の粘度を指してもよいし、希釈前のポリソルベート界面活性剤の粘度を指してもよい。好ましくは、粘度は、希釈前のポリソルベート界面活性剤を指し、すなわち、粘度は、ポリソルベート界面活性剤それ自体の粘度である。
【0108】
バインダー
インクジェットインク組成物及び/又は印刷された堆積物は、バインダーを更に含みうる。バインダーは、バインダー樹脂と称されることがある。この場合、バインダーは、キャッピング樹脂とは異なる。
【0109】
バインダーは、任意の適切なバインダーから選択することができ、例えば、適切なバインダーには、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂、ビニル樹脂、ポリスチレン/ポリアクリレートコポリマー、セルロースエーテル、硝酸セルロース樹脂、ポリマレイン酸無水物、アセタールポリマー、ポリスチレン/ポリブタジエンコポリマー、ポリスチレン/ポリメタクリレートコポリマー、スルホン化ポリエステル、アルデヒド樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、及びポリケトン樹脂、並びにこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0110】
好ましくは、主バインダー樹脂は、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンから選択される。より好ましくは、主バインダー樹脂は、セルロース樹脂である。更により好ましくは、セルロース樹脂は、セルロースアセテートブチレートである。
【0111】
好ましくは、バインダーは、1,500~50,000、より好ましくは10,000~50,000、更により好ましくは15,000~50,000の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。好ましくは、バインダーは、少なくとも1,500、より好ましくは少なくとも10,000、更により好ましくは少なくとも15,000の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。好ましくは、バインダーは、50,000未満の質量平均分子量(Mw)等の分子量を有する。バインダーは、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にある質量平均分子量(Mw)等の分子量を有しうる。
【0112】
好ましくは、バインダーは、溶剤系インクで一般的に使用される有機溶媒に対して良好な溶解性を有する。例えば、溶媒中のバインダーの溶解度は、25℃において20~100g/100gである。
【0113】
好ましくは、バインダーは、インク組成物の総質量に対して1.0~25質量%、より好ましくは1.5~10質量%、更により好ましくは4~6質量%で存在する。
【0114】
好ましくは、バインダーは、インク組成物の総質量に対して25質量%未満、より好ましくは10質量%未満、より好ましくは8質量%未満、更により好ましくは6質量%未満で存在する。好ましくは、バインダーは、インク組成物の総質量に対して1.0質量%超、好ましくは1.5質量%超、更により好ましくは4質量%超で存在する。バインダーは、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にある量で存在しうる。
【0115】
好ましくは、バインダーは、溶剤系インクで一般的に使用される有機溶媒に対して良好な溶解性を有する。
【0116】
例えば、溶媒中のバインダーの溶解度は、25℃において20~100g/100gである。
【0117】
バインダーは、1種又は複数のポリマーを含む。主バインダー樹脂の1種又は複数のポリマーは、存在する場合、金属架橋剤によって架橋可能であってよい。架橋は、主バインダー樹脂のポリマー上の1つ又は複数の適切な配位基を介して起こる。例えば、主バインダー樹脂のポリマーは、金属架橋剤を結合することができる以下の配位基;ヒドロキシル、カルボキシル及びアミノのうちの1つ又は複数を有しうる。
【0118】
配位基含有量は、主バインダー樹脂の総質量に対して1.0~28質量%であり、より好ましくは、配位基含有量は2~22質量%、更により好ましくは3~17質量%である。好ましくは、配位基含有量は、主バインダー樹脂の総質量に対して28質量%未満、より好ましくは22質量%未満、更により好ましくは17質量%未満である。好ましくは、配位基含有量は、主バインダー樹脂の総質量に対して1.7質量%超、好ましくは2質量%超、更により好ましくは3質量%超である。主バインダー樹脂の配位基含有量は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にありうる。
【0119】
更に、主バインダー樹脂は、インクに望ましい粘度特性及び接着特性を付与しうる。
【0120】
一実施形態では、主バインダー樹脂のポリマーは、金属架橋剤と配位するためのヒドロキシル基を有する。
【0121】
好ましくは、ヒドロキシル価は40~330mgKOH/g、より好ましくは50~265mgKOH/g、最も好ましくは100~200mgKOH/gである。好ましくは、ヒドロキシル価は330mgKOH/g未満、より好ましくは265mgKOH/g未満、最も好ましくは200mgKOH/g未満である。好ましくは、ヒドロキシル価は40mgKOH/g超、より好ましくは50mgKOH/g超、好ましくは100mgKOH/g超である。主バインダー樹脂のヒドロキシル価は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲にありうる。
【0122】
ヒドロキシル価は、遊離のヒドロキシル基を含む化学物質1gをアセチル化する際に取り込まれる酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。
【0123】
好ましくは、ヒドロキシル含有量は、主バインダー樹脂の総質量に対して1.0~10質量%であり、より好ましくは、ヒドロキシル含有量は1.3~8質量%、更により好ましくは2~6質量%である。好ましくは、ヒドロキシル含有量は、主バインダー樹脂の総質量に対して10質量%未満、より好ましくは8質量%未満、更により好ましくは6質量%未満である。好ましくは、ヒドロキシル含有量は、主バインダー樹脂の総質量に対して1.0質量%超、好ましくは1.3質量%超、更により好ましくは2質量%超である。主バインダー樹脂のヒドロキシル価は、上述した範囲から選択される上限及び下限の範囲にありうる。バインダー樹脂のヒドロキシル含有量は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲の量でありうる。
【0124】
質量で表されるヒドロキシル含有量は、物質100グラム当たりのグラムでのヒドロキシド官能基の質量の単位でのヒドロキシル基の質量パーセント(質量%)を指す。
【0125】
金属架橋剤
インクジェットインク組成物及び/又は印刷された堆積物は、金属架橋剤を更に含みうる。
【0126】
金属架橋剤は、バインダーのポリマー間に架橋を形成することができる金属種を含む。金属架橋剤の金属種は、バインダー樹脂のポリマーが存在する場合、そのポリマー間に架橋を形成することができる。任意の適切な金属種は、この目的のために使用することができる。
【0127】
好ましくは、金属架橋剤は、チタン又はジルコニウム含有種、好ましくは、Ti(IV)又はZr(IV)含有種である。溶液中で反応して、金属架橋剤中の金属を使用して2つ以上のポリマー間に架橋を形成する金属架橋剤を使用することができる。
【0128】
金属架橋剤は、金属配位子錯体、例えば有機配位子を有する金属カチオンであってもよい。好ましくは、金属配位子錯体の配位子は、アルキルホスフェート等の有機配位子である。好ましくは、金属配位子錯体の金属は、Ti(IV)やZr(IV)等の金属カチオンである。例えば、金属架橋剤は、チタンアセチルアセトネート、チタンブチルホスフェート、チタントリエタノールアミン、乳酸チタン、ジルコニウムジエチルシトレート、ジルコニウムアセテート、及びジルコニウムプロピオネートから選択することができる。好ましくは、金属架橋剤は、Tytan AP100等のブチルホスフェートチタンである。
【0129】
好ましくは、金属架橋剤は、インク組成物の総質量に対して、0.1~5質量%、より好ましくは0.5~4質量%、最も好ましくは1.0~3.5質量%添加される。
【0130】
好ましくは、金属架橋剤は、インク組成物の総質量に対して5質量%未満、より好ましくは4質量%未満、更により好ましくは3.5質量%未満で添加される。好ましくは、金属架橋剤は、インク組成物の総質量に対して0.1質量%超、好ましくは0.5質量%超、更により好ましくは1.0質量%超添加される。金属架橋剤は、上述した量から選択される上限及び下限の範囲にある量で存在しうる。
【0131】
理論に拘泥するものではないが、金属種は、ポリマー上の配位基を介してポリマーと相互作用することにより、バインダーのポリマーのいくつかを架橋すると考えられる。配位基の例は、ヒドロキシル、カルボキシル及びアミノである。
【0132】
少なくとも一部の架橋は液体インク中で発生しうるが、溶媒が蒸発するときにのみ完全な架橋が発生することが好ましい。溶媒が蒸発することにより、成分の濃度が上昇し、架橋の速度が増加することになる。本発明で提案する一時的なキャップは、溶媒の蒸発を防ぎ、そのため印刷前のインク成分の濃度上昇を防ぎ、液体インクに発生しうる架橋を低減させることができる。
【0133】
添加剤
インク組成物及び印刷された堆積物は、当該技術分野において一般的であるような追加の成分を含みうる。
【0134】
好ましくは、インク組成物及び印刷された堆積物は、1種又は複数の防腐剤、保湿剤、界面活性剤、可塑剤、導電性塩、湿潤剤、接着促進添加剤、殺生物剤及びそれらの2種以上の混合物を更に含みうる。
【0135】
導電性添加剤
インク組成物及び印刷された堆積物は、導電性添加剤を更に含みうる。導電性添加剤は、当該技術分野で公知の任意の有機塩であってもよい。
【0136】
インク組成物のための導電性添加剤は当技術分野で周知であり、特にインクジェットインク用のインク組成物のための導電性添加剤は周知である。
【0137】
好ましくは、有機塩は、第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩から選択される。例えば、有機塩は、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムナイトレート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルホスホニウムクロリド、及びテトラブチルホスホニウムブロミドから選択することができる。好ましい塩は、テトラブチルアンモニウムブロミドである。
【0138】
好ましくは、導電性添加剤は、インク組成物の総質量に対して0.1~5質量%で存在する。
【0139】
保湿剤
インク組成物及び印刷された堆積物は、保湿剤を更に含みうる。
【0140】
適切な保湿剤としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、ソルビトール、2-ピロリドン、2-プロパンジオール、ブチロールアセトン、テトラヒドロフルフリルアルコール、及び1,2,4-ブタントリオール並びにこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。好ましくは、保湿剤は、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリプロピレングリコール、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0141】
インク組成物は、組成物の総質量に対して最大で30質量%の保湿剤を含みうる。より好ましくは、インク組成物は、組成物の総質量に対して最大で20質量%の保湿剤を含む。
【0142】
防腐剤
インク組成物及び/又は印刷された堆積物は、防腐剤を更に含みうる。
【0143】
適切な防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、メチルパラベン及びそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。好ましい防腐剤は、安息香酸ナトリウムである。
【0144】
インク組成物は、組成物の総質量に対して、最大で2質量%の防腐剤を含みうる。より好ましくは、インク組成物は、組成物の総質量に対して最大で1質量%の防腐剤を含む。
【0145】
包装の種類
本開示は更に、本発明のインク組成物の実施形態のいずれかの液滴の流れを基材上に向け、インク液滴を乾燥させ、それによって基材上に画像を印刷することを含む、基材上に画像を印刷する方法を提供する。ドロップオンデマンドインクジェットプリンタ又は連続インクジェットプリンタ等のインクジェットプリンタを本方法に使用することができる。好ましくは、サーマルインクジェットプリンタ等のドロップオンデマンドインクジェットプリンタを使用することができる。
【0146】
任意の適切な基材を本発明に従って印刷することができる。
【0147】
本発明のインク組成物は、非孔質材料、例えば、食品包装に使用される非孔質材料への印刷に特に適する。
【0148】
適切な基材の例としては、ブリスターパック(例えば、錠剤等の医療品用)、電子部品(例えば、電池)、金属化缶、プラスチックポット、レトルトパウチ、及び可撓性プラスチックフィルムが挙げられる。これらの基材は、例えば、アルミニウム、スチール、ガラス、ポリスチレン、PVC、LDPE、HDPE、ポリプロピレン、PET、ナイロン又はPVdCから製造することができる。
【0149】
方法及び用途
インク組成物は、当技術分野で公知の方法を用いて成分を組み合わせることにより配合される。
【0150】
インク組成物の成分は、成分を一緒に添加し、機械的攪拌を使用して攪拌することによって組み合わせることができる。場合によっては、成分を次の順序で添加してもよい:エステル溶媒、キャッピング樹脂、シロキサン界面活性剤、追加の添加剤、及び着色剤(例えば、顔料分散液)、続いてアルコール溶媒。
【0151】
本開示は更に、実施形態のいずれかのインク組成物の液滴の流れを基材に向け、インク液滴を乾燥させ、それによって基材上に画像を印刷することを含む、基材上に画像を印刷する方法を提供する。ドロップオンデマンドインクジェットプリンタ又は連続インクジェットプリンタ等のインクジェットプリンタを本方法で使用することができる。好ましくは、サーマルインクジェットプリンタ等のドロップオンデマンドインクジェットプリンタを使用することができる。
【0152】
本発明のインク組成物は、非孔質基材への印刷に適している。
【0153】
任意の適切な基材を、本発明に従って印刷することができる。本発明のインク組成物を使用して印刷することができる基材の例としては、非コート紙等の多孔質基材、水性コート紙、クレイコート紙、シリカコート紙、UVオーバーコート紙、ポリマーオーバーコート紙、ワニスオーバーコート紙等の半多孔質基材、及び硬質プラスチック、ポリマーフィルム、ポリマーラミネート、金属、金属箔ラミネート、ガラス、セラミック等の非孔質基材が挙げられる。紙基材は、薄い紙、ロール紙、又はボール紙であってもよい。プラスチック、ラミネート、金属、ガラス、及びセラミック基材は、ボトル又は容器、プレート、ロッド、シリンダー等の形態等、任意の適切な形態であってよい。
【0154】
有利には、本明細書に記載の組成物及び方法を使用することにより、上述の問題の少なくともいくつかが克服及び/又は軽減され、改善された品質の印刷物が提供される。
【0155】
定義
本明細書で使用する場合、印刷堆積物という用語は、適切な基材に印刷された後のインク組成物を指す。すなわち、溶媒の少なくとも一部が蒸発した本発明のインク組成物である。
【0156】
本明細書で使用する場合、インク組成物という用語は、インクジェット印刷での使用に適したインクジェットインク組成物を含む。インク組成物は、典型的には、液体の形態であり、典型的には、溶液である。
【0157】
本明細書で使用する場合、C1~6アルコール溶媒という用語は、少なくとも1つのヒドロキシル官能基(-OH)を有し、1~6個の炭素原子を有する任意の溶媒を指す。溶媒は、直鎖状、分岐状、又は環状の構造を有しうる。溶媒は飽和でも不飽和でもよく、好ましくは、アルコール溶媒は少なくとも部分的に飽和している。
【0158】
本明細書で使用する場合、C3~12エステル溶媒という用語は、少なくとも1つのエステル官能基(-OC(=O)-)を有し、3~12個の炭素原子を有する任意の溶媒を意味する。エステル溶媒は、直鎖状、分岐状又は環状構造(例えば、ラクトン)を有しうる。エステル溶媒は、飽和でも不飽和でもよく、好ましくは、アルコール溶媒は少なくとも部分的に飽和している。
【0159】
本明細書で使用する場合、ポリマーという用語は、繰り返し単位を有する任意の物質を指し、以下のものを含む。糖類及びその誘導体、例えばセルロース及びその誘導体;付加ポリマー、例えばアクリル樹脂又はポリビニール樹脂;縮合ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアミド及びポリエステル;並びに繰り返し単位が2種以上の異なる化合物、例えばスチレンと無水マレインから形成されるコポリマー。
【0160】
デキャップとは、ノズルのカバーを外してアイドル状態にしておくことができる時間であって、ノズルが印刷されなくなるまでの時間を指す。デキャップ時間とは、印刷品質を回復させるためにメンテナンスが必要となるまでのプリンタのアイドル時間のことである。デキャップ時間は、「オープン時間」とも呼ばれることがある。
【0161】
レイテンシーとは、印刷セッション中にノズルを非アクティブのままにしておくことができる時間であって、印刷がアクティブな時に初期性能が大幅に低下するまでの時間を指す。例えば、レイテンシーとは、印刷セッション中に、最初の数滴が不規則になるか、印刷されなくなるまでの印刷間の時間を指す。レイテンシーの問題は、しばしば画像のエッジがギザギザになり、ファーストドロップの問題と呼ばれることがある。また、レイテンシーは「ドウェルタイム」とも呼ばれることがある。
【0162】
その他の設定
上述した実施形態のあらゆる互換性のある組合せは、あたかもあらゆる組合せが個々に明示的に列挙されているかのように、本明細書に明示的に開示されている。
【0163】
本発明の様々なさらなる態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば、当業者には明らかであろう。
【0164】
本明細書で使用される「及び/又は」は、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれの、場合によっては他方を伴う、特定の開示とみなされるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、それぞれが本明細書に個別に記載されているのと同様に、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びBのそれぞれの具体的な開示として受け取られるものとする。
【0165】
文脈上別段の指示がない限り、上に記載された特徴の説明及び定義は、本発明の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載されるすべての態様及び実施形態に等しく適用される。
【0166】
本発明の特定の態様及び実施形態は、次に、例として、上述の図を参照して説明される。
【実施例】
【0167】
以下の非限定的な実施例は、本発明を更に説明する。すべての試験は、1.013kPa、相対湿度20%~50%の20℃のラボ環境で実施した。
【0168】
一般的な方法
乾燥時間
乾燥時間を測定するために、Domino Gシリーズプリンタ、HP 45Siカートリッジ、及び試験対象のインク配合物の光沢カード基材上のサンプルスライドを用いて、メッセージを印刷した。光沢カード基材は、TQC sheen又はMelinexから供給されるコーティングされたHiding Power Chart、301-Aであった。メッセージの例を
図1に示す。
【0169】
Melinexは、CADILLAC PLASTIC LIMITED社によって提供される無孔の白色ポリエステル基材であるMelinex 339シート(175ミクロン)を指す。
【0170】
乾燥時間は、200x300dpi又は150x600dpiで試験することができる。
【0171】
清潔な手袋をはめた手で、メッセージを印刷した直後から1秒間隔で連続する十字を指で軽くこする。印刷がにじまなくなった時点で試験を停止する。印刷がにじまなくなるまでの時間が乾燥時間である。この試験を3回繰り返し、平均乾燥時間を求め、それが各配合物の乾燥時間となる。
【0172】
レイテンシー
レイテンシーは、印刷を停止し、キャップを外した状態でカートリッジを放置し、印刷を再開したときに印刷品質が低下しない時間と定義される。
【0173】
レイテンシーは、Domino Gシリーズプリンタ、HP 45Siカートリッジ、及び試験対象のインク配合物の片面120mg光沢紙(Splendorlux lightweight)上のサンプルスライドを使用して印刷された
図3に示すような2Dデータマトリックスコードを使用して試験する。
【0174】
カートリッジをきれいに拭き、3つの印刷サンプルを採取する。これが出発点の0時間である。
【0175】
10分、30分、60分、90分、2時間、4時間と、予め決められた間隔をおいて、更に印刷サンプルを採取する。印刷の間、カートリッジはキャップを外したままにしておく。2Dコードの品質は、標準PD ISO/IEC TR 29158:2011に準拠したAxicon 2Dバーコードグレーダーで評価される。指定された特性の例としては、セルコントラスト、変調度、反射率マージン、軸方向及びグリッド方向の不均一性、クワイエットゾーン(quiet zone)、遷移比率(transition ratio)、デコーダビリティ(decodability)が挙げられる。
【0176】
レイテンシーの良い結果は、レイテンシー時間が長いことである(すなわち、カートリッジが長時間キャップをしないで放置できることを示す)。
【0177】
(実施例1)
顔料を含む樹脂のスクリーニング
【0178】
【0179】
樹脂YS Polyster U115及びForalyn 110を用いたすべての実験は、Table 2(表2)に示すワニスをベースとするものであった。樹脂を、高剪断ローターステーターミキサーで、1-メトキシ-2-プロパノールとプロピオン酸ブチルのブレンドに溶解した。エタノール及びCABバインダーを添加し、その後残りの成分を添加した。
【0180】
実験では、樹脂及びそれらの量、並びにプロピオン酸ブチルの量を変化させた。
【0181】
【0182】
プロピオン酸ブチル及び樹脂の量は、以下の各配合物例について説明する。各配合物におけるエタノールの量は、合計が100質量%になるように調整される。
【0183】
エタノールは、Tennants Distribution Limited社からTrade Specified Denatured Alcoholとして入手した。
【0184】
1-メトキシ-2-プロパノールは、Sigma-Aldrich社から入手し、純度仕様は≧99.5%であった。
【0185】
プロピオン酸ブチルは、Sigma-Aldrich社から入手し、純度仕様は≧98%であった。
【0186】
樹脂YS Polyster U115は、ヤスハラケミカルズ社からペレットとして入手した。
【0187】
樹脂Foralyn 110は、Eastman社からペレットとして入手した。
【0188】
CAB 551-0.01は、Eastman社から粉末として入手した。
【0189】
Tytan AP 100は、Borica社から液体として入手した。
【0190】
Tego Glide 440はEvonik社から入手した。
【0191】
顔料分散液は、成分エタノール(上記の通り)、BASF社から入手した2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート中に50%の有効成分を有するアクリルブロックコポリマーベースの分散剤EFKA PX 4320、及びCabot社から粉末として入手した顔料Mogul Eを含んでいた。量を表中に示す。
【0192】
【0193】
YS Polyster U115
YS Polyster U115では、樹脂自体の含有量並びにプロピオン酸ブチルの含有量を変化させて、様々な実験を行った。
【0194】
【0195】
実験は、樹脂がプロピオン酸ブチルの存在下でレイテンシーを改善することを示す。YS Polyster U115の量を1.8%から1%に減らし、プロピオン酸ブチルの量を同じ2.5%に維持すると、レイテンシーは1時間から1時間未満に低下する。YS Polyster U115の量を1.8%から2%に増やし、プロピオン酸ブチルの量を1.5%に一定に保つと、レイテンシーが1時間から2時間超に増加する。
【0196】
Foralyn 110
Foralyn 110を樹脂として使用し、様々な実験を行った。
【0197】
【0198】
配合物番号8、9及び10は、Foralyn 110の減少とプロピオン酸ブチルの減少の両方がレイテンシーを短縮することを示す。配合物番号8の乾燥時間を測定したところ、200x300dpiで速い乾燥時間と長いレイテンシー時間を示した。
【0199】
(実施例2)
染料を含む樹脂のスクリーニング
【0200】
【0201】
Table 6(表6)に本項で使用するキャッピング樹脂の概要を示す。また、各実験の配合物を以下に開示する。樹脂を、高剪断ローターステーターミキサーで、1-メトキシ-2-プロパノールとプロピオン酸ブチルのブレンドに溶解した。エタノール及びCABバインダーを添加し、その後、残りの成分を添加した。
【0202】
【0203】
これらの配合物の成分は、以下の添加を行い、実施例1と同様にして得た。
【0204】
アセトンは、Tennants Distribution Limited社からアセトンNグレードとして入手した。
【0205】
Permalyn(商標)6110は、Eastman社からペレットとして入手した。
【0206】
Valifast Black 3830は、Orient社から粉末として入手した。
【0207】
【0208】
Table 8(表8)は、配合物の様々な成分の機能性を評価するために行った一連の実験の配合物を示している。「RH」は相対湿度を意味する。すべての配合物は、比較のためにPermalyn(商標)6110を取り除いた配合物番号14を除き、キャッピング樹脂としてPermalyn(商標)6110を含む。Table 8(表8)は、様々な解像度、及び異なる基材上での乾燥時間(秒)、並びにレイテンシー試験の結果をまとめたものである。
【0209】
配合物番号11は、キャッピング樹脂、主溶媒としてのエタノール及び1-メトキシ-2-プロパノール、プロピオン酸ブチル及びTego Glide 440を含む。この配合物では,すべての基材,すべての解像度で3秒以下の乾燥時間と、最大16時間の優れたレイテンシーが得られる。
【0210】
主溶媒をエタノールからアセトンに変更すると(配合物番号12)、乾燥時間は改善されるが、約10秒のレイテンシーしか得られない。
【0211】
Tego Glide 440を除去すると(配合物番号13)、高品質の初期印刷が得られないため、レイテンシーを試験することができない。キャッピング樹脂を除去した場合も同様である(配合物番号14)。架橋剤Tytan AP 100を除去しても、乾燥時間やレイテンシーに大きな影響はない(配合物番号15)。
【0212】
【0213】
【0214】
Table 9(表9)は、様々なキャッピング樹脂、並びに様々なバインダー、及び様々なポリソルベート界面活性剤を使用した2種の配合物を示す。Table 10(表10)は、様々な解像度、及び様々な基材上での乾燥時間(秒)、並びにレイテンシー試験の結果をまとめたものである。
【0215】
どちらの配合物も、良好な乾燥時間で改善されたレイテンシーを示す。
【0216】
(実施例3)
追加の界面活性剤のスクリーニング
追加の界面活性剤のスクリーニングのために、異なる化学的性質の様々な界面活性剤(Table 11(表11)に要約)を、Table 12(表12)に示す配合物で研究した。
【0217】
【0218】
【0219】
界面活性剤Span 20,Tween 60,Tween 65及びポリソルベート80が乾燥時間に与える影響を評価した。共溶媒である酢酸プロピルを5%含むTable 12(表12)の配合物に対して、追加の界面活性剤を1%添加した。配合物と乾燥時間(秒)の結果をTable 13(表13)にまとめた。
【0220】
【0221】
(実施例4)
接着特性
実施例2からの配合物番号11は、2種類のテープ(3M Scotch Grade 810及びElocometer ISO 2409)を用いて、様々な基材(LDPE、HDPE、PP及びPET)上でテープ試験を行い、その接着特性を試験した。
【0222】
PP基材は、Engineering and design plastics社から1.5mmシート、ナチュラルとして入手した。
【0223】
LDPE基材は、Engineering and design plastics社から1.5mmシート、ナチュラルとして入手した。
【0224】
HDPE基材は、Engineering and design plastics社から1.5mmシート、ナチュラルとして入手した。
【0225】
PET基材は、Engineering and design plastics社から1.5mmシート、Veralite 100、A-PETとして入手した。
【0226】
3M Scotch Grade 810粘着テープは、Lyreco社から入手した。
【0227】
Elcometer ISO 2409粘着テープは、Elcometer社の粘着テープから入手した。
【0228】
図3は、左から右に向かってPP、LDPE、HDPE、PETに200x300dpiで印刷したテストメッセージを示す。
【0229】
試験は、Domino Gシリーズプリンタ、HP 45Siカートリッジ、試験対象の基材のサンプルスライドを使用して、基材に配合物を印刷してから24時間後に実施する。
【0230】
3M Scotch Grade 810又はElcometer ISO 2409という試験対象のテープの5cmのセグメントを、印刷した別々の正方形に貼り付け、素早く剥がした。
【0231】
この試験を、テープの種類と基材ごとに3つの正方形で繰り返す。テープの接着特性は、Table 14(表14)の評価方法を使用して視覚的に評価する。
【0232】
【0233】
Table 15(表15)は、特定の基材に対する配合物番号11の優れた試験結果を示す。
【0234】
【国際調査報告】