(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】作物の管理と保護のための駆除剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/06 20060101AFI20230413BHJP
A01N 65/00 20090101ALI20230413BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20230413BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230413BHJP
A01N 31/14 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A01N37/06
A01N65/00 F
A01P7/04
A01P3/00
A01N31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553677
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2021055381
(87)【国際公開番号】W WO2021175947
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】102020000004816
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518192312
【氏名又は名称】アルファ バイオペスティサイズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッキー,アルフェオ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011AC01
4H011BA05
4H011BB06
4H011BC19
4H011BC22
4H011DH03
(57)【要約】
エマルション中にC12-C24脂肪酸を含む駆除剤組成物、及びその調製方法、並びに昆虫、線虫、真菌、卵菌、及び細菌などの有害生物に対して作物を保護するための使用が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む駆除剤組成物:
1)少なくとも1つのC
12-C
24脂肪酸;
2)少なくとも1つの植物性油;及び、
3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物。
【請求項2】
前記1)少なくとも1つのC
12-C
24脂肪酸が、少なくとも1つのC
16-C
20脂肪酸であり、好ましくはオレイン酸である、請求項1に記載の駆除剤組成物。
【請求項3】
前記2)少なくとも1つの植物性油が、菜種油、コルザ油、大豆油、種子油、オリーブ油、小麦胚芽油、パーム油、ヤシ油、ゴマ油、ババス油、ヒマシ油、ピーナッツ油、綿実油、大麻油、ブドウ種子油、ティーツリー油(メラレウカ油)、亜麻仁油、クルミ油、ケシ油、トウモロコシ油、ボリジ油、ククイ油、ひまわり油、落花生油、キャノーラ油、アルカネット油、又はそれらの混合物であり、好ましくはコルザ油、ゴマ油、又はそれらの混合物である、請求項1又は2に記載の駆除剤組成物。
【請求項4】
前記3)少なくとも1つのエトキシル化界面活性剤が、エトキシル酸種子油のC
12-C
24脂肪酸塩、エトキシル酸脂肪アルコール、又はそれらの混合物であり、好ましくは、オレイン酸エトキシル酸ヒマシ油、エトキシル酸トリデシルアルコール、又はそれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の駆除剤組成物。
【請求項5】
1)少なくとも1つのC
12-C
24脂肪酸と、2)少なくとも1つの植物性油の間の重量比が、1:2~5:1、好ましくは1:1.1~3:1、より好ましくは1:1~2:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆除剤組成物。
【請求項6】
2)少なくとも1つの植物性油と、3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物の間の重量比が、1:2~5:1、好ましくは1:1~3:1、より好ましくは1:1~2:1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の駆除剤組成物。
【請求項7】
1)少なくとも1つのC
12-C
24脂肪酸と、3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物の間の重量比が、1:1~10:1、好ましくは2:1~5:1、より好ましくは2:1~3:1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の駆除剤組成物。
【請求項8】
1)少なくとも1つのC
12-C
24脂肪酸が、組成物の重量を基準に最大70wt%、好ましくは30~60wt%の含量である、請求項1~7のいずれか一項に記載の駆除剤組成物。
【請求項9】
2)少なくとも1つの植物性油が、組成物の重量を基準に最大50wt%、好ましくは20~40wt%の含量である、請求項1~8のいずれか一項に記載の駆除剤組成物。
【請求項10】
3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物が、組成物の重量を基準に最大30wt%、好ましくは10~25wt%の含量である、請求項1~9のいずれか一項に記載の駆除剤組成物。
【請求項11】
以下を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の駆除剤組成物:
1)40~60wt%の少なくとも1つのC
16-C
20脂肪酸;
2)25~35wt%のコルザ油、ゴマ油、又はそれらの混合物;及び、
3)15~25wt%の少なくとも1つのエトキシル化界面活性剤。
【請求項12】
以下を含む、請求項11に記載の駆除剤組成物:
1)48~53wt%のオレイン酸;
2)28~33wt%のコルザ油、ゴマ油、又はそれらの混合物;及び、
3)17~22wt%のオレイン酸エトキシル酸ヒマシ油、エトキシル酸トリデシルアルコール、又はそれらの混合物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の駆除剤組成物、及び農薬添加剤を含む植物保護製品。
【請求項14】
以下の工程を含む、有害生物に対して作物を保護する方法:
i)請求項1~12のいずれか一項に記載の駆除剤組成物を提供する工程;
ii)組成物を水で希釈して希釈溶液を得る工程;
iii)希釈溶液を作物に適用する工程。
【請求項15】
以下の工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の駆除剤組成物の調製方法:
a)成分1)~3)を提供する工程;及び、
b)均一なエマルションの形態の駆除剤組成物が得られるまで混合する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション中にC12-C24脂肪酸を含む駆除剤組成物、及びその調製方法、並びに昆虫、線虫、真菌、卵菌、及び細菌などの有害生物に対して作物を保護するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫、真菌、及び細菌は作物に重大な損害を与え、品質と量を大幅に低下させる可能性がある。
【0003】
殺虫剤は農業において非常に重要であるが、植物保護製品の使用には、特に前記植物保護製品が合成化学品由来である場合、ヒトの健康及び環境影響上の強い懸念がある。したがって、ヒトの健康及び環境上のリスクを低減した新規の農薬製剤の研究に多大な労力がかけられている。
【0004】
したがって、本発明の目的は、殺虫剤、殺線虫剤、殺真菌剤、殺卵菌剤(oomycocide)及び殺菌剤の効果を低下させることなく、結果的に環境により優しい製品となる、植物の管理と保護のための製品を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
上記目的は、請求項1に記載の、エマルション中にC12-C24脂肪酸を含む駆除剤組成物によって達成された。
【0006】
「駆除剤」又は「駆除剤組成物」なる用語は、有害生物を抑制することを目的とする物質を示す。用語「有害生物」には、昆虫、植物病原菌、雑草、軟体動物、鳥、哺乳類、魚、線虫(回虫)及び微生物が含まれ、これらは財産を破壊し、公害を起こし、又は病害を蔓延させ、又は病気の媒介者である。本発明の対象の有害生物は、好適には、昆虫、線虫、真菌、卵菌、及び細菌である。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、昆虫、線虫、真菌、卵菌、及び細菌に対して作物を保護するための駆除剤組成物の使用に関する。
【0008】
この点に関して、また本発明は、昆虫、線虫、真菌、卵菌、及び細菌に対して作物を保護する方法に関し、前記方法は以下の工程を含む:
i)駆除剤組成物を提供する工程;
ii)前記組成物を水で希釈して希釈溶液を得る工程;
iii)希釈溶液を作物に適用する工程。
【0009】
「作物」とは、収益又は生活のために広範囲にわたって栽培及び収穫できる植物又は植物生産物を指し、したがって穀物、野菜、果物、及び花が含まれる。
【0010】
さらなる態様において、本発明は駆除剤組成物、及び農薬添加剤を含む植物保護製品に関する。
別の態様において、本発明は駆除剤組成物の調製方法に関する。
【0011】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、例示目的で提供された実施例、及び添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、比較製品及び未処理の対照に関して、実施例2で行った試験の後の本発明による3つの異なる製剤によって得られた害虫死亡率の結果を示す。
【
図2】
図2は、比較製品及び未処理の対照に関して、実施例2で行った試験の後の本発明による3つの異なる製剤によって得られた害虫死亡率の結果を示す。
【
図3】
図3は、比較製品及び未処理の対照に関して、実施例2で行った試験の後の本発明による3つの異なる製剤によって得られた害虫死亡率の結果を示す。
【
図4】
図4は、比較製品及び未処理の対照に関して、実施例2による種々の濃度の試験された製剤によって葉上で生じたアブラムシの死亡を示す。
【
図5A】
図5Aは、実施例2による試験された製剤に対するアブラムシの感受性を示す。
【
図5B】
図5Bは、実施例2による試験された製剤に対するアブラムシの感受性を示す。
【
図6】
図6は、実施例2による種々の製剤について、3つのエンドポイント(24、48、72HAA)で、4連で測定した平均の有効性を示す。
【
図7】
図7は、実施例2による試験された製剤の2つの製剤について観察されたモモアカアブラムシ(Green Peach-Potato Aphid)に対する有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって、本発明の対象は、以下を含む駆除剤組成物である:
1)少なくとも1つのC12-C24脂肪酸;
2)少なくとも1つの植物性油;及び、
3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物。
【0014】
本発明の組成物は、主成分の疎水性にもかかわらず水に容易に希釈できる均一なエマルションとなるため、上記組成物は、脂肪酸を塩化する必要なしに目的の用途に利用できることが見出された。
【0015】
さらに、植物性油は脂肪酸の安定性を高め、経時的に脂肪酸が酸敗するのを防ぐことができる。
【0016】
この結果、非常に安定した駆除剤組成物となり、より環境的に持続可能で、費用対効果も高くなる。
【0017】
「C12-C24脂肪酸」なる用語は、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マーガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、α-リノレン酸(C18:3)、γ-リノレン酸(C18:3)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、α-リノレン酸(C18:3)、γ-リノレン酸(C18:3)、ステアリドン酸(C18:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、アドレン酸(C22:4)、パルミトレイン酸(C16:1)、バクセン酸(C18:1)、パウリン酸(C20:1)、エライジン酸(トランス-C18:1)、ゴンドイン酸(C20:1)、エルカ酸(C22:1)、ネルボン酸(C24:1)、ミード酸(20:3)又はそれらの混合物を意味する。
【0018】
前記脂肪酸は、植物及び野菜由来のものなど、天然由来の脂肪酸であることが好ましい。
【0019】
好ましくは、前記少なくとも1つの脂肪酸は、C16-C20脂肪酸である。
【0020】
より好ましくは、前記少なくとも1つのC16-C20脂肪酸は、リノール酸(C18:2)、γ-リノレン酸(C18:3)、パルミトレイン酸(C16:1)、バクセン酸(C18:1)、パウリン酸(C20:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(トランス-C18:1)又はそれらの混合物である。
好ましい実施形態では、前記C16-C20脂肪酸は、オレイン酸である。
【0021】
植物性油又は植物油は、種子から抽出された油であり、頻度は低いものの果実の他の部分からも抽出される。植物油は、トリグリセリドの混合物である(https://en.wikipedia.org/wiki/Vegetable_oil)。トリグリセリド(TG、トリアシルグリセロール、TAG、又はトリアシルグリセリド)は、グリセロールと3つの脂肪酸(トリ-とグリセリド)から生じるエステルである(https://en.wikipedia.org/wiki/Triglyceride)。したがって、本発明の目的のために、用語「植物性油」又は「植物油」はそのトリグリセリド成分を意味する。これは典型的には油の最大99%であり、残りの成分は無視できる濃度である。
【0022】
好ましくは、前記植物性油は、菜種油、コルザ油、大豆油、種子油、オリーブ油、小麦胚芽油、パーム油、ヤシ油、ゴマ油、ババス油、ヒマシ油、ピーナッツ油、綿実油、大麻油、ブドウ種子油、ティーツリー油(メラレウカ油)、亜麻仁油、クルミ油、ケシ油、トウモロコシ油、ボリジ油、ククイ油、ひまわり油、落花生油、キャノーラ油、アルカネット油、又はそれらの混合物である。
【0023】
好ましくは、前記植物性油は、コルザ油、オリーブ油、又はそれらの混合物を含む。
より好ましくは、前記植物性油は、コルザ油、ゴマ油、オリーブ油、又はそれらの混合物である。
【0024】
好ましい実施形態において、前記植物性油は、コルザ油、又はコルザ油と、菜種油、大豆油、種子油、オリーブ油、小麦胚芽油、パーム油、ヤシ油、ゴマ油、ババス油、ヒマシ油、ピーナッツ油、綿実油、大麻油、ブドウ種子油、ティーツリー油(メラレウカ油)、亜麻仁油、クルミ油、ケシ油、トウモロコシ油、ボリジ油、ククイ油、ひまわり油、落花生油、キャノーラ油、及びアルカネット油から選択される1つ以上の油との混合物である。
【0025】
別の好ましい実施形態において、前記植物性油は、オリーブ油、又はオリーブ油と、菜種油、大豆油、種子油、コルザ油、小麦胚芽油、パーム油、ヤシ油、ゴマ油、ババス油、ヒマシ油、ピーナッツ油、綿実油、大麻油、ブドウ種子油、ティーツリー油(メラレウカ油)、亜麻仁油、クルミ油、ケシ油、トウモロコシ油、ボリジ油、ククイ油、ひまわり油、落花生油、キャノーラ油、及びアルカネット油から選択される1つ以上の油との混合物である。
【0026】
「エトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤」とは、エトキシル化、プロポキシル化、又はエトキシル化とプロポキシル化の両方が行われた界面活性剤を意味する。
【0027】
好ましくは、適切なエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤は、ポリエトキシル化脂肪アルコール、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化ジスチリルフェノール、ポリエトキシル化トリスチリルフェノール、ポリエトキシル化リン酸化トリスチリルフェノール、ポリエトキシル化硫酸化トリスチリルフェノール、ポリエトキシル化ソルビタンエステル、アルキルポリグリコシド、ポリエトキシル化ポリプロポキシル化脂肪族アルコール及びそれらの混合物である。
【0028】
エトキシル化数15~40、好ましくは25~35のポリエトキシル化ヒマシ油;エトキシル化数12~25、好ましくは15~20のポリエトキシル化ジスチリルフェノール;エトキシル化数15~40、好ましくは16~25のポリエトキシル化トリスチリルフェノールが好ましい。
【0029】
好ましくは、前記少なくとも1つのエトキシル化界面活性剤は、エトキシル酸種子油のC12-C24脂肪酸塩、エトキシル酸脂肪アルコール、又はそれらの混合物である。
【0030】
好ましい実施形態において、前記少なくとも1つのエトキシル化界面活性剤は、オレイン酸エトキシル酸ヒマシ油、エトキシル酸トリデシルアルコール、又はそれらの混合物である。
【0031】
用語「ポリオキシエチレン乳化剤」は、少なくとも1つのポリオキシエチレン部分を含む乳化剤を意味する。
【0032】
好ましくは、適切なポリオキシエチレン乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンフェニルフェノールアルキルエーテルリン酸塩、スチレンポリオキシエチレンエーテル硫酸アンモニウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、ベンジルジメチルフェノールポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンフェニルフェノールエステル、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂ポリオキシエチレンエーテル、フェネチルフェノールホルムアルデヒド樹脂ポリオキシエチレンエーテル、フェネチルポリオキシエチル化ポリプロピレンエーテル、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドブロックコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルアリールポリオキシエチレンエーテル、アルキルアリールポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
より好ましい実施形態では、駆除剤組成物は以下を含む:
1)少なくとも1つのC16-C20脂肪酸;
2)コルザ油、ゴマ油、又はそれらの混合物;及び、
3)オレイン酸エトキシル酸ヒマシ油、エトキシル酸トリデシルアルコール、又はそれらの混合物。
【0034】
好ましい実施形態では、1)少なくとも1つのC12-C24脂肪酸と、2)少なくとも1つの植物性油の間の重量比は、1:2~5:1、好ましくは1:1.1~3:1、より好ましくは1:1~2:1である。
【0035】
別の実施形態では、2)少なくとも1つの植物性油と、3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物の間の重量比は、1:2~5:1、好ましくは1:1~3:1、より好ましくは1:1~2:1である。
【0036】
別の実施形態では、1)少なくとも1つのC12-C24脂肪酸と、3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物の間の重量比は、1:1~10:1、好ましくは2:1~5:1、より好ましくは2:1~3:1である。
【0037】
特に好ましいものは、以下の駆除剤組成物である:
- 1)少なくとも1つのC12-C24脂肪酸と、2)少なくとも1つの植物性油の間の重量比が、1:2~5:1、好ましくは1:1.1~3:1、より好ましくは1:1~2:1であり;
- 2)少なくとも1つの植物性油と、3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物の間の重量比が、1:2~5:1、好ましくは1:1~3:1、より好ましくは1:1~2:1であり;及び、
- 1)少なくとも1つのC12-C24脂肪酸と、3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物の間の重量比が、1:1~10:1、好ましくは2:1~5:1、より好ましくは2:1~3:1である。
【0038】
さらなる実施形態において、1)少なくとも1つのC12-C24脂肪酸は、組成物の重量を基準に最大70wt%、好ましくは30~60wt%の含量である。
【0039】
別の好ましい実施形態では、2)少なくとも1つの植物性油は、組成物の重量を基準に最大50wt%、好ましくは20~40wt%の含量である。
【0040】
別の実施形態では、3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物は、組成物の重量を基準に最大30wt%、好ましくは10~25wt%の含量である。
【0041】
特に好ましいものは、組成物の重量を基準に、以下を含む駆除剤組成物である:
1)40~60wt%の少なくとも1つのC12-C24脂肪酸;
2)25~35wt%の少なくとも1つの植物性油;及び、
3)15~25wt%の少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物。
【0042】
より好ましい実施形態では、駆除剤組成物は以下を含む:
1)40~60wt%の少なくとも1つのC16-C20脂肪酸;
2)25~35wt%のコルザ油、ゴマ油、又はそれらの混合物;及び、
3)15~25wt%の少なくとも1つのエトキシル化界面活性剤。
【0043】
最も好ましい実施形態では、駆除剤組成物は以下を含む:
1)48~53wt%のオレイン酸;
2)28~33wt%のコルザ油、ゴマ油、又はそれらの混合物;及び、
3)17~22wt%のオレイン酸エトキシル酸ヒマシ油、エトキシル酸トリデシルアルコール、又はそれらの混合物。
【0044】
追加の実施形態において駆除剤組成物は、上述の通り、1)少なくとも1つのC12-C24脂肪酸、2)少なくとも1つの植物性油、及び3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物から本質的になる。本発明の目的のために、「から本質的になる」という表現は、成分1)~3)のみが、駆除剤組成物中に存在する有害生物に対する有効成分であることを意味する。
【0045】
さらなる実施形態では、駆除剤組成物は、1)少なくとも1つのC12-C24脂肪酸、2)少なくとも1つの植物性油、及び3)少なくとも1つのエトキシル化もしくはプロポキシル化界面活性剤、又は少なくとも1つのポリオキシエチレン乳化剤、又はそれらの混合物からなる、上述の組成物である。
【0046】
成分1)~3)を含む駆除剤組成物について、好ましくかつ有利であると確認された全ての態様は、本質的に成分1)~3)からなる駆除剤組成物、及び成分1)~3)からなる駆除剤組成物についても、同様に好ましくかつ有利であるとみなされると理解されるべきである。
【0047】
さらなる態様において、本発明は、昆虫、線虫、真菌、卵菌、及び細菌に対して作物を保護するための、上記の駆除剤組成物の使用に関する。
【0048】
特に、この組成物は、昆虫に対して有効であることが証明されている。
したがって、好ましくは、本発明は、昆虫から作物を保護するための上記組成物の使用に関する。
【0049】
用語「昆虫」は、節足動物門の蛛形綱又は昆虫綱の任意の胚、幼虫、亜成虫又は成虫の形態を指す。昆虫綱には、鞘翅目(例えば、コロラドハムシ;ジアブロティカ種);双翅目(例えば、タネバエ);半翅目(例えば、マキバカスミカメ種;ワタアブラムシ;コナジラミ(Trialeurodes abutilonea)、タバココナジラミ等の同翅亜目;ミナミアオカメムシ等のカメムシ亜目);膜翅目及び鱗翅目(例えば、オオタバコガ、アワノメイガ)が含まれる。
【0050】
上記の通り、本組成物は、非常に削減した量でも有効である。換言すると、駆除剤組成物は、非常に低い濃度(すなわち、10g未満/100Lの水、好ましくは0.1~5g/100Lの水)で有効である。
【0051】
この点に関して、本発明はまた、昆虫、線虫、真菌、卵菌、及び細菌に対して作物を保護する方法に関し、前記方法は以下の工程を含む:
i)駆除剤組成物を提供する工程;
ii)前記組成物を水で希釈して、希釈溶液を得る工程;
iii)希釈溶液を作物に適用する工程。
【0052】
好ましくは、この方法は、昆虫から作物を保護する方法である。
好ましくは、工程iii)における作物への希釈溶液の適用は、作物の発育中の様々な時期に、害虫の成長のパラメータに従って、作物に溶液を散布することによって行われる。
【0053】
好ましくは、溶液は、少なくとも1年に1回、より好ましくは1年に2~6回、さらに好ましくは1年に3回適用される。
【0054】
さらなる態様において、本発明はまた、駆除剤組成物と農薬添加剤を含む植物保護製品に関する。
【0055】
好適な添加剤は、pH調整剤、酸度調整剤、水硬度調整剤、鉱物油、植物性油、肥料、葉の肥料、及びそれらの組み合わせである。
【0056】
別の態様において、本発明は、上記の駆除剤組成物の調製方法に関し、前記方法は、以下の工程を含む:
a)成分1)~3)を提供する工程;及び、
b)均一なエマルションの形態の駆除剤組成物が得られるまで混合する工程。
【0057】
本発明の駆除剤組成物を調製するために、溶媒を必要としないことが理解されるべきである。
【0058】
駆除剤組成物について、好ましくかつ有利であると確認された全ての態様は、調製方法、植物保護製品、その使用、及び作物を保護する方法についても同様に好ましくかつ有利であるとみなされると理解されるべきである。
【0059】
また、本発明の駆除剤組成物の好ましい態様の全ての組み合わせ、並びに上記に説明した調製方法、植物保護製品、使用及び方法が、本明細書により開示されたとみなされると理解されるべきである。
【0060】
以下は、説明の目的で提供される本発明の実施例である。
【実施例】
【0061】
実施例1:
以下の表で報告される成分を有する、以下の組成物を調製した。
【0062】
【0063】
実施例2:ワタアブラムシ又はメロンアブラムシとして一般に知られているワタアブラムシ(Aphis gossypii)(同翅亜目:アブラムシ科)に対する有効性試験
薬剤
以下の化学製剤を試験した:
1.ABP 111 SS(実施例1A)
2.ABP 111 SV(実施例1B)
3.ABP 111 CV(実施例1C)
【0064】
各製剤は以下の濃度:0.5%、1%、及び2%、で試験した。
比較製品ABP617(すなわち、オレイン酸カリウム)(1%)を、処理した対照に使用した。
【0065】
実験手順
製剤を、磁気撹拌機を用いて300rpmで3分間撹拌し、殺虫剤の溶液を調製した。溶液は、水道水を用いて調製した。
【0066】
このバイオアッセイでは、1つの単位は、(実際の曝露条件を模倣するために)2Lのハンドスプレーで直接薬剤を噴霧し、実験室で乾燥させた新鮮なズッキーニの若株(栽培品種「Bianca di Trieste」;1週齢)を摂食する12頭の同世代の若虫(<48時間齢)で構成された。アブラムシの死亡率は曝露後24時間後に実体顕微鏡で評価した。
【0067】
選択した製剤のそれぞれの濃度ごとに、5連で実施した。処理されたものの中には未処理の対照も含まれていた。また、試験した製剤の植物毒性の可能性は、1週間後に噴霧した植物の写真を撮って評価した。
【0068】
毒性バイオアッセイは,25±1℃、60±5%R.H.、及び14L:10D時間の光周期に保たれた気候キャビネット内の標準化された環境条件下で実施した。
【0069】
結果
主題の曝露では、全ての試験した製剤は全ての試験濃度において、未処理の対照と比較して、対象の害虫に著しい死亡率をもたらした(
図1~3)。種々の濃度の試験された製剤によりもたらされた死亡率は、処理した対照(1%のABP617)と同等であった。死亡したアブラムシには壊死組織が見られた(
図4A~D)。
【0070】
実施例3:モモアカアブラムシの殺虫剤抵抗性系統に対する本発明の種々の組成物の有効性比較
1.研究の概要
モモアカアブラムシ(GPA)(Myzus persicae)は、世界中の様々な作物の深刻な害虫である。殺虫剤の適用によって生じる極めて高い淘汰圧のために、いくつかの抵抗性機構を持つ多くの個体群が選択されてきた。
【0071】
通常、抵抗性機構は同一の試験対象内に共存しており、「代謝」抵抗性と「標的部位」抵抗性の重要性を報告する文献データが増加している。
【0072】
いくつかの殺虫剤の有効性は,標的部位抵抗性と代謝抵抗性によって現場で影響を受ける。それにもかかわらず、製剤中の種々の分子の中毒は有効性を高めることができ、殺虫剤の適用量を低減することができる。
【0073】
この研究の目的は,前述の実施例で有効性を評価したABP 111の2つの新規の製剤の抵抗性モモアカアブラムシ(Myzus persicae)クローンに対する有効性を、局所適用による単回用量の反応バイオアッセイを用いて比較することである。
【0074】
2.材料と方法
2.1 アブラムシ
M.persicaeの1つクローン(Mp_92H6)を、持続可能な作物生産部門(DI.PRO.VE.S.);Universita Cattolica del Sacro Cuore(ピアチェンツァ)の飼育施設で利用可能なものから選択した。アブラムシは、制御された環境条件(21±0.5℃、16:8時間の明暗光周期)でエンドウの苗(栽培品種「Meraviglia d’Italia」)上に維持し、単為生殖系統として飼育した。
【0075】
クローンMp_92H6は、最初に、2010年にチェゼーナ(エミリア・ロマーニャ州、イタリア)の桃園で採集された抵抗性個体群の単為生殖雌1頭から樹立された。これは、殺虫剤抵抗性機構の様々な組み合わせを示す:kdr(L1014F)変異とs-kdr(M918T)変異(両者ともホモ接合型)の存在による、ピレスロイドに対する標的部位抵抗性;相乗効果のあるピペロニルブトキシド(PBO)の存在下で行った以前のバイオアッセイ1から推測され、かつ、ラボ試験によって確認されたピレスロイドとネオニコチノイドに対する代謝抵抗性。全エステラーゼ活性を比色分析法で評価し、0.376±0.032nmol/min/μgと算出し、有機リン酸エステルに対して「高抵抗性」(R2)と分類した。さらにqPCR分析により、ネオニコチノイドを代謝することが知られているP450モノオキシゲナーゼCYP6CY3をコードするCYP6CY3遺伝子のコピー数が50倍変化していることが確認された。
【0076】
[1 Panini M,Dradi D,Marani G,Butturini A & Mazzoni E(2014)Detecting the presence of target-site resistance to neonicotinoids and pyrethroids in Italian populations of Myzus persicae;Pest Manag Sci,70:931-938
Panini M,Anaclerio M,Puggioni V,Stagnati L,Nauen R & Mazzoni E(2015)Presence and impact of allelic variations of two alternative s-kdr mutations,M918T and M918L,in the voltage-gated sodium channel of the green peach aphid Myzus persicae;Pest Manag Sci,71:878-884]
【0077】
2.2 化合物
以下の製剤(脂肪酸:451g/L)を調査した:
・(ABP 111 SS)又は(ABP 111 ST)-実施例1A
・(ABP 111 CV)-実施例1C
・(ABP 111 SV)-実施例1B
【0078】
上記の製品は全てAlpha BioPesticides Limitedから供給された。
製剤は、二重蒸留水を用いて調製した(11mL/L;有効成分含有量4.961g/Lに相当)。
【0079】
2.3 バイオアッセイ
上記製剤に対する感受性を局所的なバイオアッセイにより調査した。約10匹の羽のないアブラムシの成虫の集団を飼育箱から細い絵筆で収集し、中央に5日齢のエンドウの苗を有するバイオアッセイ容器(通気性のあるプラスチック容器;総容量200mL)内に移した(
図5a)。
【0080】
アブラムシは数時間放置して植物上に定着させた。この期間の後、植物上を歩行しないものを除去し、同時に、その他のものは、Hamilton 1701シリーズ ガスタイトシリンジを搭載したマイクロアプリケータ(Hamilton PB600-1 リピートディスペンサー)を用いて、製剤又は水を0.2μL滴下して個別に処理した(
図5b)。
【0081】
アブラムシは、21℃±0.5℃で、16:8(明:暗)の光周期で維持し、そして殺虫剤適用の24、48、及び72時間後(略して「HAA」)に死亡率評価を行った。
適用する用量は、以前の研究に基づいて選択した。
【0082】
2.4 統計解析
各バイオアッセイで記録した死亡率データを合わせてプールし、アボットの式に従って有効性(%)を算出した。
逆正弦変換後のパーセンテージは、一元配置分散分析で統計的に分析した(SPSSリリース25.0/一元配置法)。
【0083】
3.結果
用量は以前の試験結果に従って、24HAAで約20%、48HAAで約30%、及び72HAAで約50%の有効性が得られるように選択した。
【0084】
3つの異なる製剤について、3つのエンドポイント(24、48、及び72HAA)で、4連で測定した有効性の平均を以下の表に報告し、
図6のグラフに表示する。
【0085】
製剤(ABP 111 SS)の適用用量の有効性の平均は、以前のベースラインの推定値よりもわずかに低かった。しかし、2つの製剤(ABP 111 SV及びABP 111 CV)は、モモアカアブラムシに対する有効性を増加させた。観察された増加の平均値を
図7に示す。適用後48時間で最も高い有効性が観察された(CV=85%、及びSV=101%)。一方、24HAAと72HAAの有効性の変動は非常に類似していた(CV製剤では24HAAと72HAAは、それぞれ31%と37%、SV製剤では62%と55%)。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
F統計量のp値が常に0.05より大きい以下の表で報告されるように、分散分析(ANOVA)では、3つの製剤の間の有意差を指摘していない。
【0090】
【0091】
4.結論
概して、有効性は31%から最大101%に増加した。
ABP 111 SVとABP 111 CVの両製剤は、製剤ABP 111 SSよりも優れた性能を示した。
【0092】
実施例4:
以下の表で報告される成分を有する、以下の組成物を調製した。
【0093】
【0094】
実施例5:
以下の表で報告される成分を有する、以下の組成物を調製した。
【0095】
【0096】
実施例6:
以下の表で報告される成分を有する、以下の組成物を調製した。
【0097】
【0098】
実施例7:
以下の表で報告される成分を有する、以下の組成物を調製した。
【0099】
【0100】
実施例4~7の組成物を、実施例2に記載したものと同じ手順に従って試験した。
【0101】
主題の曝露では、全ての試験した製剤は全ての試験濃度において、未処理の対照と比較して、対象の害虫に著しい死亡率をもたらした。種々の濃度の試験された製剤によりもたらされた死亡率は、処理した対照(1%のABP617)と同等であった。死亡したアブラムシには壊死組織が見られた。
【国際調査報告】