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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】環状ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20230413BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230413BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230413BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C07K7/08
A61K38/12 ZNA
A61P25/28
A61K39/00 H
A61K39/39
A61K47/02
C12P21/08
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554598
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2021056039
(87)【国際公開番号】W WO2021180782
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】2003462.5
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2016449.7
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】510157351
【氏名又は名称】ライフアーク
(71)【出願人】
【識別番号】522357312
【氏名又は名称】ゲオルク-オーグスト-ウニベルジテート ゲッティンゲン シュティフトゥンク エッフェントリッヒェン レヒツ ウニヴェルジテーツメディツィン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バクラニア プリーティ
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ラブ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ムパムハンガ チドー
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ホール ガレス
(72)【発明者】
【氏名】コーワン リチャード
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA10
4B064DA01
4C076CC01
4C076DD26
4C076DD30
4C076FF34
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA18
4C084BA26
4C084CA59
4C084MA01
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA16
4C085AA03
4C085AA38
4C085CC21
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA16
4H045BA32
4H045CA45
4H045DA75
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA10
4H045FA71
(57)【要約】
本発明は、アミロイドβのアミノ酸1~14に基づく環状化ペプチドに関する。前記環状ペプチドは、アルツハイマー病等の神経変性疾患の治療のための免疫反応を誘導するために、かつワクチンとして有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
FXHDSGXH (I)
の構造を有するアミノ酸配列及びその変異体を含む環状ペプチドであって、
式中、
は存在しないか又は任意のアミノ酸であり、
はアラニン又はシステインであり、
はグルタミン酸又はシステインであり、
はアルギニン又はシステインであり、
はチロシン又はシステインであり、
はグルタミン酸又はシステインであり、
はバリン又はシステインであり、
はヒスチジン又はシステインであり、
、X、X及びXのうちの1つのみがシステインであり、X、X、X及びXのうちの1つのみがシステインであり、前記ペプチドが1位、2位、3位、又は5位のシステイン残基及び10位、11位、12位又は13位のシステイン残基を通じて環状化されている、環状ペプチド。
【請求項2】
は存在しないか又は任意のアミノ酸であり、
a)Xはシステインであり、Xはアラニンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはヒスチジンであり、Xはシステインであるか、
b)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
c)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
d)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
e)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはシステインであるか、
f)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはシステインであり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
g)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはシステインであり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
h)Xはアラニンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
i)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはヒスチジンであり、Xはヒスチジンであるか、又は、
j)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはヒスチジンであり、Xはシステインであり、
前記ペプチドが、前記2つのシステイン残基を介して環状化されている、請求項1に記載の環状ペプチド及びその変異体。
【請求項3】
a)前記ペプチドが3位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYECHH、
b)前記ペプチドが3位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYEVCH、
c)前記ペプチドが1位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、CAECFRHDSGYEVCH、
d)前記ペプチドが2位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYECHH、
e)前記ペプチドが2位及び10位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGCEVHH、
f)前記ペプチドが2位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYEVCH、
g)前記ペプチドが2位及び11位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYCVHH、
h)前記ペプチドが3位及び11位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYCVHH、
i)前記ペプチドが5位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DAEFCHDSGYECHH、並びに、
j)前記ペプチドが3位及び10位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGCEVHH、
より選択されるアミノ酸配列又はその変異体を含む、請求項1又は2に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
がプロリン又はアスパラギン酸である、請求項1又は2に記載の環状ペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが、前記2つのシステイン残基を連結する架橋を通じて環状化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドが、前記2つのシステイン残基間で、式-S-S-又は-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項7】
a)前記ペプチドが3位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、前記アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH若しくはその変異体、又は、
b)前記ペプチドが3位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、前記アミノ酸配列DACFRHDSGYEVCH若しくはその変異体、又は、
c)前記ペプチドが1位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、前記アミノ酸配列CAECFRHDSGYEVCH若しくはその変異体、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項8】
a)前記ペプチドが、3位及び12位の前記2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する前記架橋によって形成される環状ペプチドである、前記アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH若しくはその変異体、又は、
b)前記ペプチドが、3位及び13位の前記2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する前記架橋によって形成される環状ペプチドである、前記アミノ酸配列DACFRHDSGYEVCH若しくはその変異体、又は、
c)前記ペプチドが、1位及び13位の前記2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する前記架橋によって形成される環状ペプチドである、前記アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH若しくはその変異体、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項9】
a)前記ペプチドが、3位及び12位の前記2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する前記架橋によって形成される環状ペプチドである、前記アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH若しくはその変異体、又は、
b)前記ペプチドが、3位及び13位の前記2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する前記架橋によって形成される環状ペプチドである、前記アミノ酸配列DACFRHDSGYEVCH若しくはその変異体、又は、
c)前記ペプチドが、1位及び13位の前記2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する前記架橋によって形成される環状ペプチドである、前記アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH若しくはその変異体、
からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項10】
環状ペプチドであって、
a)前記ペプチドが、これを介して前記ペプチドが環状化される3位及び12位のシステイン残基、並びに4位のフェニルアラニン残基を含む、前記アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH若しくはその変異体、又は、
b)前記ペプチドが、これを介して前記ペプチドが環状化される3位及び13位のシステイン残基、並びに4位のフェニルアラニン残基を含む、前記アミノ酸配列DACFRHDSGYEVCH若しくはその変異体、又は、
c)前記ペプチドが、これを介して前記ペプチドが環状化される1位及び13位のシステイン残基、並びに4位のフェニルアラニン残基を含む、前記アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH若しくはその変異体、
と、少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、環状ペプチド。
【請求項11】
前記アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH又はその変異体を含み、前記ペプチドが3位及び12位のシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する前記架橋によって形成される環状ペプチドである、請求項1~10のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の環状ペプチドと医薬的に許容され得るキャリアーとを含む医薬組成物。
【請求項13】
アジュバントを更に含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
神経変性疾患を治療する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の環状ペプチド、又は請求項12若しくは13に記載の組成物を、その必要がある個体に投与することを含む、方法。
【請求項15】
前記神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
被験体において免疫反応を誘導する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の環状ペプチド、又は請求項12若しくは13に記載の組成物を、前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記免疫反応が、低分子量アミロイドβオリゴマーの形のアミロイドβに対する抗体を産生する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
神経変性疾患を治療する際に使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド。
【請求項19】
前記神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項18に記載の使用のための環状ペプチド。
【請求項20】
請求項1~11のいずれか一項に記載の環状ペプチドを産生する方法であって、
(a)請求項1~11のいずれか一項に定義されるような前記ペプチドの配列を含む直鎖ペプチドを合成する工程と、
(b)システイン残基を通じて前記直鎖ペプチドを環状化して、請求項1~11のいずれか一項に記載の環状ペプチドを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項21】
アミロイドβの低分子量オリゴマーを特異的に認識する抗体を生成する方法であって、
(a)請求項1~11のいずれかに記載の環状ペプチド又はその変異体で、動物を免疫することと、
(b)工程(a)における前記免疫によって生成された前記抗体を得ることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状化ペプチド、並びに神経変性性疾患、例えばアルツハイマー病の防止及び治療のためのワクチンとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、アミロイドβ(Aβ)タンパク質で構成される細胞外沈着物の存在によって特徴づけられる、進行性肺変性疾患である。全長Aβ1-42(配列番号18)及びAβ1-40(配列番号19)、N切除ピログルタメートAβpE3-42(配列番号20)及びAβ4-42(配列番号21)が、アミロイドβタンパク質の主な変異体である。
【0003】
アミロイドβタンパク質は、凝集し、アミロイド原線維を形成する傾向がある。アミロイド原線維は、老人斑に見られるAβの巨大な不溶性ポリマーであり、アルツハイマー病に典型的なニューロン損失及び認知症の主要な誘発要因である。しかし、アルツハイマー病の進行において、斑中に沈降しているAβではなく可溶性Aβオリゴマーの役割に関する証拠もまた増えつつある。可溶性オリゴマーは、非原線維構造を持ち、水溶液中で安定であり、高速遠心分離後であってさえ可溶性のままである。Aβ斑は、AD患者における臨床的症状に関しては相関が乏しいことが示されてきている一方、可溶性オリゴマーは、シナプス損失(非特許文献1)、神経原線維タングル(非特許文献2)及び臨床表現型(非特許文献3)に関する優れた予測因子であることが示唆されている。さらに、多くのADマウスモデルにおける記憶障害及び病的変化は、斑沈着開始のかなり前に生じる(非特許文献4)。特に、Aβ三量体又は四量体は、AD病理開始時に最も有害なAβペプチドであることが知られている。こうしたものとして、Aβの低分子量(LMW)オリゴマーは、AD等のアミロイドβ関連疾患の治療のターゲットと見られてきている。
【0004】
低分子量オリゴマーを中和することを目的としてこれらのオリゴマーをターゲットとする抗体が開発されてきている。低分子量(LMW)AβpE3-42を検出する抗体9D5に関して受動免疫が立証されている(非特許文献5、及び特許文献1)。ネズミ抗アミロイドβ(Aβ)抗体NT4X-167が、Aβ4-40アミロイドペプチドに対して最初に作製され、N切除アミロイドペプチドAβpE3-42及びAβ4-42に特異的に結合するが、アミロイドペプチドAβ1-42には結合しないことが報告されている(非特許文献6)。NT4X-167を使用した受動免疫は、アルツハイマーマウスモデルにおいて療法的に有益であることが示されている(非特許文献7、特許文献2)。臨床適用に関して、例えばアルツハイマー病(AD)の治療において有用であるNT4Xのヒト化型もまた、開発されてきている(特許文献3)。
【0005】
アルツハイマー病に関する能動免疫アプローチもまた提唱されてきている。例えば、頭尾(head-to-tail)環状化を通じて形成された環状ペプチドを含むAβ由来ペプチドを開示する特許文献4に記載される通りである。Aβの異なる領域に基づく直鎖ペプチドの使用もまた提唱されてきており、例えば特許文献5に記載されるものがある。特許文献5は、免疫原性構築物の一部として、Aβに基づく直鎖ペプチドを使用する、AβのN末端エピトープをターゲットとする能動免疫アプローチを記載している。しかし、こうしたアプローチは、低分子量オリゴマーに対する抗体を特異的に生成することはない。
【0006】
したがって、能動免疫のために使用され得る化合物は、アルツハイマー病の治療において、特にAD進行の初期段階をターゲットとする治療において、有用であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/151076号
【特許文献2】国際公開第2013/167681号
【特許文献3】国際公開第2020/070225号
【特許文献4】国際公開第2006/0609718号
【特許文献5】国際公開第2014/143087号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lue LF et al, Am J Pathol 1999, 155:853-862
【非特許文献2】McLean CA, et al, Ann Neurol 1999, 46:860-866
【非特許文献3】Snowdon DA: Aging and Alzheimer's disease: lessons from the Nun Study. Gerontologist 1997, 37:150-156
【非特許文献4】Bayer TA and, Wirths O. Front Aging Neurosci 2010, 2:1-10
【非特許文献5】Wirths et al. (2010) J. Biol. Chem. 285, 41517-41524
【非特許文献6】Antonios et al Acta Neuropathol. Commun. (2013) 6 1 56
【非特許文献7】Antonios et al Scientific Reports 5 17338; 2015
【発明の概要】
【0009】
本発明は、一般的に、アミロイドβ(Aβ)タンパク質のアミノ酸残基1~14に基づく特定の環状ペプチドであって、Aβタンパク質の低分子量オリゴマーに特異的に結合する抗体に、好ましくは特異的に結合する、環状ペプチドに関する。
【0010】
したがって、第1の態様において、本発明は、式(I)(配列番号1):
FXHDSGXH (I)
の配列を有するアミノ酸配列又はその変異体を含む環状ペプチドであって、
式中、
は存在しないか又は任意のアミノ酸であり、
はアラニン又はシステインであり、
はグルタミン酸又はシステインであり、
はアルギニン又はシステインであり、
はチロシン又はシステインであり、
はグルタミン酸又はシステインであり、
はバリン又はシステインであり、
はヒスチジン又はシステインであり、
、X、X及びXのうちの1つのみがシステインであり、X、X、X及びXのうちの1つのみがシステインであり、ペプチドが1位、2位、3位、又は5位のシステイン残基及び10位、11位、12位又は13位のシステイン残基を通じて環状化されている、環状ペプチドに関する。好ましくは、Xは存在し、より好ましくは、Xはプロリン、アスパラギン酸、又はシステインであり、より好ましくはシステイン又はアスパラギン酸である。好ましくは、配列中に存在する2つのシステイン残基間には少なくとも7つのアミノ酸があり、より好ましくは、配列中に存在する2つのシステイン残基間には、7~11、更により好ましくは8又は11のアミノ酸残基がある。
【0011】
1つの実施の形態において、本発明は、上述のような式(I)の配列を含む環状ペプチドであって、このペプチドが、5位及び12位の両方又は3位及び10位の両方にはシステイン残基を含まない、環状ペプチドに関する。
【0012】
1つの実施の形態において、Xは存在しないか又は任意のアミノ酸であり、
a)Xはシステインであり、Xはアラニンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはシステインであるか、
b)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
c)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
d)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
e)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはシステインであるか、
f)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはシステインであり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
g)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはシステインであり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
h)Xはアラニンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
i)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはヒバリンであり、Xはヒスチジンであるか、又は、
j)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはシステインであり、
ペプチドが、2つのシステイン残基を介して環状化されている。
【0013】
1つの実施の形態において、環状ペプチドは、式(II)(配列番号2):
ACFRHDSGYECHH (II)
の配列を有するアミノ酸配列又はその変異体を含み、
式中、ペプチドは3位及び12位に位置するシステイン残基を介して環状化され、Xは上に定義される通りである。好ましくは、Xはアスパラギン酸である。
【0014】
更なる実施の形態において、環状ペプチドは、
a)ペプチドが1位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、CAEFRHDSGYEVCH(配列番号14)、
b)ペプチドが3位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYECHH(配列番号4)、
c)ペプチドが2位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYECHH(配列番号5)、
d)ペプチドが2位及び10位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGCEVHH(配列番号10)、
e)ペプチドが2位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYEVCH(配列番号12)、
f)ペプチドが2位及び11位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYCVHH(配列番号9)、
g)ペプチドが3位及び11位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYCVHH(配列番号8)、
h)ペプチドが5位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DAEFCHDSGYECHH(配列番号7)、
i)ペプチドが3位及び10位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGCEVHH(配列番号11)、並びに、
j)ペプチドが3位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYEVCH(配列番号13)、
より選択されるアミノ酸配列又はその変異体を含む。
【0015】
好ましくは、環状ペプチドは、
a)ペプチドが3位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYECHH(配列番号4)、
b)ペプチドが2位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYECHH(配列番号5)、
c)ペプチドが2位及び10位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGCEVHH(配列番号10)、
d)ペプチドが2位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYEVCH(配列番号12)、
e)ペプチドが2位及び11位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DCEFRHDSGYCVHH(配列番号9)、
f)ペプチドが3位及び11位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYCVHH(配列番号8)、並びに、
g)ペプチドが3位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている、DACFRHDSGYEVCH(配列番号13)、
より選択されるアミノ酸配列又はその変異体を含む。
【0016】
1つの実施の形態において、環状ペプチドは、アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH(配列番号14)又はその変異体を含み、ペプチドは1位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている。
【0017】
1つの実施の形態において、環状ペプチドは、2つのシステイン残基を通じて環状化されている。好ましくは、ペプチドは、2つのシステイン残基間で、式-S-S-又は-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている。より好ましくは、ペプチドは、2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている。
【0018】
好ましくは、環状ペプチドは、アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH(配列番号14)又はその変異体を含み、ペプチドは1位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている。より好ましくは、環状ペプチドは、アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH又はその変異体を含み、ペプチドは1位及び13位の2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている。
【0019】
好ましくは、環状ペプチドは、アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH(配列番号4)又はその変異体を含み、ペプチドは3位及び12位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている。より好ましくは、環状ペプチドは、アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH又はその変異体を含み、ペプチドは3位及び12位の2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている。
【0020】
好ましくは、環状ペプチドは、アミノ酸配列DACFRHDSGYEVCH(配列番号13)又はその変異体を含み、ペプチドは3位及び13位に位置するシステイン残基を通じて環状化されている。より好ましくは、環状ペプチドは、アミノ酸配列DACFRHDSGYEVCH又はその変異体を含み、ペプチドは3位及び13位の2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている。
【0021】
更なる実施の形態において、環状ペプチドは、アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH(配列番号14)又はその変異体からなり、ペプチドは1位及び13位の2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている。
【0022】
更なる実施の形態において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH(配列番号4)又はその変異体からなり、ペプチドは3位及び12位の2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている。
【0023】
1つの実施の形態において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DACFRHDSGYEVCH(配列番号13)又はその変異体からなり、ペプチドは3位及び13位の2つのシステイン残基間で、式-S-CH-S-を有する架橋を通じて環状化されている。
【0024】
本発明の更なる態様は、アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH(配列番号14)又はその変異体と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む環状ペプチドであって、ペプチドが1位及び13位のシステイン残基並びに4位のフェニルアラニン残基を含み、ペプチドが1位及び13位のシステイン残基を通じて環状化されている、環状ペプチドに関する。
【0025】
本発明の更なる態様において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DACFRHDSGYECHH(配列番号4)又はその変異体と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ペプチドは3位及び12位のシステイン残基並びに4位のフェニルアラニン残基を含み、ペプチドは3位及び12位のシステイン残基を通じて環状化されている。
【0026】
本発明の更なる態様において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DACFRHDSGYEVCH(配列番号13)又はその変異体と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ペプチドは3位及び13位のシステイン残基並びに4位のフェニルアラニン残基を含み、ペプチドは3位及び13位のシステイン残基を通じて環状化されている。
【0027】
本発明の更なる態様において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DAEFRHDSGYEVHH(配列番号3)又はその変異体を含み、ペプチドが2つのシステイン残基を含み、この2つのシステイン残基間でペプチドが環状化されるように、1位、2位、3位又は5位のアミノ酸残基の1つがシステイン残基で置換され、10位、11位、12位又は13位のアミノ酸残基の1つがシステイン残基で置換されている。
【0028】
好ましくは、1つの実施の形態において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DAEFRHDSGYEVHH(配列番号3)又はその変異体を含み、1位のアミノ酸残基がシステイン残基で置換され、10位、11位、12位又は13位のアミノ酸残基の1つがシステインで置換されている。好ましくは、13位のアミノ酸残基がシステイン残基で置換されている。
【0029】
或いは、1つの実施の形態において、環状ペプチドは、アミノ酸配列DAEFRHDSGYEVHH(配列番号3)又はその変異体を含み、2位、3位又は5位のアミノ酸残基の1つがシステイン残基で置換され、10位、11位、12位又は13位のアミノ酸残基の1つがシステインで置換されている。好ましくは、配列中に存在する2つのシステイン残基間には少なくとも7つのアミノ酸があり、より好ましくは、配列中に存在する2つのシステイン残基間には7~10の間のアミノ酸残基があり、更により好ましくは、8つ又は9つのアミノ酸残基がある。1つの実施の形態において、ペプチドは、5位及び12位又は3位及び10位の両方にはシステイン残基を含まない。
【0030】
本発明の更なる態様は、上記の環状ペプチドと薬学的に許容され得るキャリアーとを含む医薬組成物に関する。好ましくは、組成物は更にアジュバントを含む。組成物は免疫原性組成物であり得る。1つの実施の形態において、これらの組成物はワクチン組成物であり得る。
【0031】
本発明の態様はまた、薬剤として使用される環状ペプチドにも関する。1つの実施の形態は、神経変性疾患を治療する方法であって、その必要がある個体に上述のような環状ペプチド又は組成物を投与することを含む、方法に関する。好ましくは、神経変性疾患はアルツハイマー病である。
【0032】
本発明の更なる実施の形態は、被験体において免疫反応を誘導する方法であって、上述のような環状ペプチド又は組成物、すなわちアミロイドβのヘアピン構造を採用する環状ペプチド又はこのペプチドを含む組成物を、被験体に投与することを含む、方法に関する。好ましくは、免疫反応はアミロイドβに対する抗体を生成し、より好ましくは、アミロイドβは低分子量アミロイドβオリゴマーの形であり、方法は、低分子量アミロイドβオリゴマーに対する免疫反応を誘導するものである。
【0033】
本発明の1つの実施の形態は、神経変性疾患を治療する際に使用される上述のような環状ペプチドに関する。好ましくは、神経変性疾患はアルツハイマー病である。
【0034】
本発明の更なる実施の形態は、被験体において免疫反応を誘導する際に使用される上述のような環状ペプチドに関する。好ましくは、免疫反応はアミロイドβに対する抗体を生成し、より好ましくは、アミロイドβは低分子量アミロイドβオリゴマーの形であり、使用は、低分子量アミロイドβオリゴマーに対する免疫反応を誘導するものである。
【0035】
本発明の更なる実施の形態は、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病を治療するための、及び/又は、好ましくはアミロイドβオリゴマー、好ましくは低分子量アミロイドβオリゴマーに対する抗体を産生する免疫反応を誘導するための、薬剤製造のための環状ペプチド、すなわちアミロイドβのヘアピン構造を採用する環状ペプチドに関する。
【0036】
本発明の更なる態様は、上述のような環状ペプチドを産生する方法であって、
(a)こうしたペプチドの配列を含む直鎖ペプチドを合成する工程と、
(b)システイン残基を通じて直鎖ペプチドを環状化して、式(I)による環状ペプチドを得る工程と、
を含む、方法に関する。
【0037】
本発明の更なる態様は、アミロイドβの低分子量オリゴマーを認識する抗体を生成する方法であって、
(a)上述のような環状ペプチド又はその変異体で動物を免疫することと、
(b)工程(a)における免疫によって生成された抗体を得ることと、
を含む、方法に関する。この方法は更に、アミロイドβの低分子量オリゴマーの認識に関して、工程(b)において得られた抗体をスクリーニングすることを含む工程(c)を含み得る。好ましくは、抗体はまた、Aβ1-42、Aβ1-40及び/又はAβ1-38と結合しない能力、又はこれらと有意には結合しない能力に関してスクリーニングされる。好ましくは、抗体は、アミロイドβの低分子量オリゴマー、好ましくは低分子量AβpE3-x及びAβ4-x、より好ましくはAβpE3-42及びAβ4-42を特異的に認識する能力に関してスクリーニングされる。好ましくは、方法は、配列番号4、13又は14の配列を有する環状ペプチドで動物を免疫することを含む。
【0038】
本発明の更なる態様は、上記方法によって得られ得る抗体を含む。得られる抗体は、組成物、例えばワクチン組成物中で使用され得る。抗体は、アルツハイマー病の治療に使用され得る。
【0039】
本発明の他の態様及び実施形態は、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】TAP01 Fabの構造を示す図である。
図2】TAP01-pE3-14 Fabの構造を示す図である。
図3】(a)pGlu3-14の構造及び(b)TAP01-pGlu3-14アミロイドペプチド構造を示す図である。
図4】TAP01-pE3-14及びTAP01_01-pE3-14の構造の比較を示す図である。
図5】TAP01-1-14環状化ペプチドの構造を示す図である。
図6】(A)1-14(システイン3,12)及び(B)pGlu3-14環状アミロイドペプチドの構造の比較を示す図である。
図7】ジスルフィド架橋1-14環状ペプチド3,12への、比較基準抗体(バピネウズマブ、ソラネズマブ、BAN2401、ProBioDrug 6_1_6、ProBioDrug 24_2_3)及びTap01の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図8】ジスルフィド架橋1-14環状ペプチド3,12への動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図9】Aβ1-42ペプチドへの動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図10】AβpE3-42ペプチドへの動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図11】Aβ4-42ペプチドへの動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図12】KLH抗原への動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図13】チオアセタール架橋1-14環状ペプチド3,12への動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図14】Aβ1-42ペプチドへの動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図15】AβpE3-42ペプチドへの動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図16】Aβ4-42ペプチドへの動物血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図17】M2抗血清でのADマウスモデル脳切片の免疫染色を示す図である。SXFADは大部分、Aβ1-42及び斑であり、Tg4-42はAβ4-42のみであり、TBA42はピログルタメートAβ3-42のみである。
図18】M4抗血清でのADマウスモデル脳切片の免疫染色を示す図である。SXFADは大部分、Aβ1-42及び斑であり、Tg4-42はAβ4-42のみであり、TBA42はピログルタメートAβ3-42のみである。
図19】若年及び加齢Tg4-42マウスにおける18F-FDG取り込みに対するTAP01_04(MoG1Kとしてクローニング)の効果を示す図である。
図20】チオアセタール架橋環状ペプチド変異体への(a)TAP01(MoG1K)抗体及び(b)MRCT対照IgG1抗体(MoG1Kとしてクローニング)の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図21】チオアセタール架橋環状ペプチド変異体への(a)TAP01(MoG1K)抗体及び(b)MRCT対照IgG1抗体(MoG1Kとしてクローニング)の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図22】チオアセタール架橋環状ペプチド変異体への比較基準抗体(バピネウズマブ、ソラネズマブ、BAN2401、ProBioDrug 6_1_6、ProBioDrug 24_2_3)及びTAP01 HuG4Kの結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図23】Biacore T200を使用した、TAP01抗体へのプロリン突然変異ペプチド結合を示す図である。
図24】TAP01抗体での受動免疫後、免疫された5XFADマウスにおける皮質斑負荷減少を示す図である。IgG1を注射された5XFADマウスと比較したTAP01_4(MoG1K)免疫5XFADマウスの斑負荷分析。(a)IgG対照、TAP01_01及びTAP01_02処置マウスと比較した際のTAP01_04免疫マウスにおける有意な斑負荷減少を示す、全Aβに対する抗体での免疫染色。(b)IgG対照と比較した際のTAP01_04免疫マウスにおける有意な斑負荷減少を示す、ピログルタメートAβ3-xに対する抗体での免疫染色。TAP01_01及びTAP01_02で免疫したマウスに対して、有意な相違は観察されなかった。(c)チオフラビンSでの染色。(d)TAP01(NT4X)での免疫染色を示し、IgG対照と比較した際のTAP01_04免疫マウスにおける有意な斑負荷減少を示す。TAP01_01及びTAP01_02で免疫したマウスに対して、有意な相違は観察されなかった。
図25】チオアセタール架橋環状ペプチド変異体への、(a)TAP01(MoG1K)抗体、(b)MRCT対照IgG1抗体(MoG1Kとしてクローニング)の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図26】(b)MRCT対照IgG1抗体(HuG1Kとしてクローニング)と比較した、(a)チオアセタール架橋環状ペプチド変異体へのバピネウズマブの結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図27】マウス脳の横断面の、トレーサーであるフロルベタベン(fluorbetaben)でのin vivoアミロイド斑イメージングを示す図である。(A)フロルベタベン保持シグナルを伴わない、未処置野生型対照マウス脳。(B)脳における高いアミロイド斑負荷を示す、強いフロルベタベン保持シグナルを伴う未処置5XFAD。(C)能動免疫後の5XFADマウスは、フロルベタベン保持シグナルを示さず、脳における有意なアミロイド斑負荷減少を示す。
図28】マウス脳におけるアミロイド斑負荷に関するマーカーとしてのフロルベタベン保持シグナルの統計分析を示す図である。群間のANOVA(p<0.0001、F=21.39)及びボンフェローニ補正比較での統計評価。野生型(WT)皮質対5XFAD皮質(p<0.001)、WT海馬対5XFAD海馬(p<0.001)、WT扁桃体対5XFAD扁桃体(p<0.001)。WT皮質対処置した5XFAD皮質(有意でない)、WT海馬対処置した5XFAD海馬(有意でない)、WT扁桃体対処置した5XFAD扁桃体(有意でない)。5XFAD皮質対処置した5XFAD皮質(p<0.01)、5XFAD海馬対処置した5XFAD海馬(p<0.001)、5XFAD扁桃体対処置した5XFAD扁桃体(p<0.001)。処置した5XFAD=環状ペプチドで免疫した5XFAD。
図29】TAP01_04(MoG1K)での受動免疫と環状ペプチドでの能動免疫とを比較する、5XFADマウス大脳皮質における斑負荷の免疫染色及び定量的評価を示す図である。IgG1での処置、TAP01_04での受動免疫、及び環状化Aβペプチドでの能動免疫後の5XFADマウスに関して、全Aβ抗体での例示的染色(A)を示す。全Aβ、ピログルタメートAβ3-X、チオフラビンS及びN切除Aβに対する抗体を使用して、斑負荷の定量化(B)を評価し、能動免疫によって処置された5XFADマウスにおける斑の強い減少が立証された。TAP01_04及び能動免疫によって処置されたマウスは、全てのAβ抗体及びチオフラビンSで染色された斑に対して、類似の減少効果を示した。全Aβ(F=65.20、p<0.0001、R二乗0.6287)、ピログルタメートAβ3-X(F=23.32、p<0.0001、R二乗0.3570)、チオフラビンS(F=17.17、p<0.0001、R二乗0.3291)及びN切除Aβ(F=89.17、p<0.0001、R二乗0.6316)に対する斑染色に関する、ボンフェローニの多重比較検定を伴うANOVAを示す(平均+SEM)。
図30】環状化Aβペプチドでの能動免疫の、5XFADマウスにおけるin vivo脳グルコース代謝に対する影響を示す図である。(A)18F-FDG-PET/MRIイメージングによるグルコース取り込みの例示的冠状図、横断図、矢状図。(B)定量的分析。能動免疫された5XFAD(n=5)、2匹の5XFADマウス対照及び2匹の野生型マウス(全て雌、年齢4.5ヶ月齢~5.5ヶ月齢)における18F-FDG-PET/MRIイメージングによってグルコース取り込みを評価した。シグナル強度の定量的分析によって、免疫された5XFADマウスが、分析した大部分の脳領域において、脳グルコース代謝の有意なレスキューを示し、シナプス及びニューロン活性において療法的効果が立証された。ANOVA比較試験(F=10.37、p<0.0001、R二乗=0.7352)。t検定を使用した有意差を示す(平均+SEM)。A、扁桃体;Bs、脳幹;C、皮質;Cb、小脳;H、視床下部;Hc、海馬;Hg、ハーダー腺;M、中脳;O、嗅球;S、中隔/前脳基底部;St、線条体;T、視床。
図31】Tg4-42マウスにおける、TAP01_04(MoG1K)での受動免疫と比較した、環状化Aβペプチドでの能動免疫の効果を示す図である。(A)加齢Tg4-42における海馬依存性学習及び記憶喪失を、モリス水迷路試験のプローブ試験によって示す。TAP01_04での受動免疫及び環状化Aβペプチドでの能動免疫はどちらも、Tg4-42マウスにおける記憶欠損をレスキューした。ボンフェローニの多重比較検定を伴うANOVA(F=13.27、p<0.0001、R二乗=0.646)。平均+SEMでT検定を示す。(B)加齢Tg4-42マウスは、海馬のCA1層において有意なニューロン損失を生じさせる。IgG1処置マウス上のニューロンの平均数(+SEM)は128687+13035である一方、TAP01_04処置マウスにおけるニューロンの平均数(+SEM)は194310+22572で有意により高く、能動免疫マウスにおけるニューロンの平均数(+SEM)は、185858+39180で、やはり有意により高い。示すボンフェローニの多重比較検定を伴うANOVA(F=8.125、p<0.001、R二乗=0.5556)。=p<0.05、**p<0.01、***=p<0.001。
図32】環状化Aβペプチドへの5XFADマウス血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図33】環状化AβペプチドへのTg4-42マウス血清の結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
図34】環状ペプチド3,13への、対照抗体HuMRCT MoG1K及びMoMRCT HUG1K、比較基準抗体バピネウズマブ並びにTap01 MoG1Kの結合に関する結合ELISAデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、pE3-Xアミロイドペプチド中に天然に見られるコンホメーションエピトープを模倣し、pE3-Xアミロイドペプチドのエピトープに結合する抗体に特異的に結合する非天然存在ペプチド、すなわち合成ペプチドに関する。この環状ペプチドは、アミロイドβ、特にアミロイドβの低分子量オリゴマーに特異的な抗体の生成のため、被験体の能動免疫に使用され得る。ヘアピン構造は、pE3-XアミロイドペプチドのN末端領域に見られる。この領域は、アミロイドβの低分子量オリゴマーに結合する抗体のエピトープであることが見出されてきている。
【0042】
本発明による環状ペプチドは、アミロイドβタンパク質のアミノ酸残基1~14であって、この配列中に見られる残基の2つがシステイン残基で置換されており、このシステイン残基を通じてペプチドが環状化される、アミノ酸残基に基づく。本発明の環状ペプチドは、アミロイドβに見られるヘアピン構造を模倣する。
【0043】
環状ペプチドは、pE3-Xアミロイドβ中に同定され、マウスTAP01抗体(NT4Xとしても知られる)、並びにヒト化TAP01_01、TAP01_02、TAP01_03、及びTAP01_04抗体(それぞれNT4X_SA、NT4X_S7A、NT4X_S71A及びNT4X_S71Hとしても知られ、特許文献1及び特許文献3に記載されるようなもの)等の抗体の結合部位として同定されてきている、ヘアピン構造を模倣する。これらの抗アミロイドβ抗体は、N末端切除アミロイドペプチド(AβpE3-x又はAβ4-x)に特異的に結合することが示されてきている。これらの抗体は、全長アミロイドペプチド又はアミロイドAβ1-42に有意な結合を示さない。
【0044】
本明細書に記載されるような環状ペプチドは、アミロイドβのアミノ酸1~14、DAEFRHDSGYEVHH(配列番号3)に基づく変異体ペプチドであって、天然存在配列の2つのアミノ酸がシステイン残基で置換され、このシステイン残基を通じてペプチドが環状化されている、変異体ペプチドである。好ましくは、システイン残基の一方は、1位、2位、3位、又は5位のアミノ酸を置換し、他方のシステイン残基は、10位、11位、12位又は13位の残基でアミノ酸を置換する。
【0045】
1つの実施形態において、本明細書に記載される環状ペプチドは、式(I)(配列番号1):
FXHDSGXH (I)
の配列を有するアミノ酸配列又はその変異体を含み、
式中、
は存在しないか又は任意のアミノ酸であり、
はアラニン又はシステインであり、
はグルタミン酸又はシステインであり、
はアルギニン又はシステインであり、
はチロシン又はシステインであり、
はグルタミン酸又はシステインであり、
はバリン又はシステインであり、
はヒスチジン又はシステインであり、
、X、X及びXのうちの1つのみがシステインであり、X、X、X及びXのうちの1つのみがシステインであり、ペプチドが1位、2位、3位、又は5位のシステイン残基及び10位、11位、12位又は13位のシステイン残基を通じて環状化されている。環状ペプチドは、2つのみのシステイン残基を含むことができ、このシステイン残基を通じてペプチドが環状化される。
【0046】
好ましくは、配列中に存在する2つのシステイン残基間には少なくとも7つのアミノ酸があり、より好ましくは、環状ペプチド中に存在する2つのシステイン残基間には、7~11のアミノ酸残基、更により好ましくは8~11のアミノ酸残基がある。
【0047】
環状ペプチドは、好ましくは、ペプチド配列の末端アミノ酸両方を通じては環状化されない。好ましくは、Xは存在する。好ましくは、環状ペプチドは、C末端アミノ酸を通じては環状化されない。1つの実施形態において、Xはシステインであり、好ましくは、ペプチドは、1位のシステイン及び13位のシステインを通じて環状化される。更なる実施形態において、好ましくは、Xはプロリン又はアスパラギン酸であり、好ましくはアスパラギン酸であり、ペプチドは、ペプチド残基の末端アミノ酸のいずれを通じても環状化されない。少なくとも1つの内部システイン残基を通じたペプチドの環状化、特に1位、2位、3位、又は5位及び10位、11位、12位又は13位での環状化は、pE3-Xアミロイドβに見られるヘアピン構造を模倣し得る安定なペプチドの提供を補助する。
【0048】
1つの実施形態において、ペプチドは、1位のシステイン残基(すなわちXはシステインであり、Xはアラニンである)及び10位、11位、12位又は13位、好ましくは13位のシステイン残基を通じて環状化される。
【0049】
好ましくは、環状アミノ酸は、Xがシステインであり、Xがアラニンであり、Xがグルタミン酸であり、Xがアルギニンであり、Xがチロシンであり、Xがグルタミン酸であり、Xがバリンであり、Xがシステインであり、ペプチドが2つのシステイン残基を通じて環状化されている配列を含む。例えば、ペプチドはX及びXのシステインを通じて環状化されている。例えば、環状ペプチドは、アミノ酸配列CAEFRHDSGYEVCH(配列番号14)を含むか又はこうした配列からなることができ、ペプチドは、1位及び13位のシステイン残基を通じて環状化されている。
【0050】
或いは、1つの実施形態において、好ましくは、環状アミノ酸は、Xが存在しないか又は任意のアミノ酸である配列を含み、
a)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
b)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
c)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
d)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはシステインであるか、
e)Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはシステインであり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
f)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはシステインであり、Xはバリンであり、Xはヒスチジンであるか、
g)Xはアラニンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはシステインであり、Xはヒスチジンであるか、
h)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはシステインであり、Xはグルタミン酸であり、Xはヒバリンであり、Xはヒスチジンであるか、又は、
i)Xはアラニンであり、Xはシステインであり、Xはアルギニンであり、Xはチロシンであり、Xはグルタミン酸であり、Xはバリンであり、Xはシステインであり、
ペプチドが、2つのシステイン残基を介して環状化されている。例えば、ペプチド(a)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されており、ペプチド(b)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されており、ペプチド(c)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されており、ペプチド(d)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されており、ペプチド(e)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されており、ペプチド(f)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されており、ペプチド(g)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されており、ペプチドh)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されており、ペプチドi)に関して、配列は、X及びXのシステインを通じて環状化されている。好ましくは、1つの実施形態において、Xは存在し、プロリン又はアスパラギン酸より選択される。より好ましくは、Xはアスパラギン酸である。
【0051】
例えば環状ペプチドは、アミノ酸配列:
a)DACFRHDSGYECHH(配列番号4)、
b)DCEFRHDSGYECHH(配列番号5)、
c)DCEFRHDSGCEVHH(配列番号10)、
d)DCEFRHDSGYEVCH(配列番号12)、
e)DCEFRHDSGYCVHH(配列番号9)、
f)DACFRHDSGYCVHH(配列番号8)、
g)DAEFCHDSGYECHH(配列番号7)、
h)DACFRHDSGCEVHH(配列番号11)、又は、
i)DACFRHDSGYEVCH(配列番号13)、
を含み得るか又はこれらからなり得る。ペプチドは、2位、3位又は5位、及び10位、11位、12位、又は13位に位置する2つのシステイン残基を通じて環状化される。好ましくは、環状ペプチドは、配列DACFRHDSGYECHH(配列番号4)であって、ペプチドが3位及び12位のシステイン残基を通じて環状化されている配列、又はDACFRHDSGYEVCH(配列番号13)であって、ペプチドが3位及び13位のシステイン残基を通じて環状化されている配列を含む。
【0052】
本発明はまた、上述のような式(I)の配列を含む環状ペプチドであって、環状ペプチドが5位及び12位の両方又は3位及び10位の両方にはシステイン残基を含まない、環状ペプチドに関する。特に、環状ペプチドは、配列番号7又は配列番号11の配列を有するペプチドを含まず、又はこうしたペプチドからならない。
【0053】
変異体環状ペプチドもまた提供される。変異体環状ペプチドは、その参照ペプチドと同じか又は類似の機能を有し、すなわち機能的に同等の環状ペプチドであり、アミロイドβのヘアピン構造を採用する。参照配列、例えば上述の参照配列の変異体である、本明細書に記載するような環状ペプチドは、参照配列に対して改変されている1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。例えば、3つ以下のアミノ酸残基が参照配列に対して改変されていてもよく、好ましくは2つ以下、又は1つのアミノ酸残基が参照配列に対して改変されていてもよい。参照配列中のアミノ酸残基は、挿入、欠失又は置換、好ましくは異なるアミノ酸残基に関する置換によって改変又は突然変異され得る。好ましくは、置換は保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸配列修飾は、環状ペプチドの特性に影響を及ぼさないか又はこれを改変しない、例えば環状ペプチドのコンホメーションを維持し、好ましくはペプチドの免疫原性を維持し、好ましくは抗アミロイドβ抗体、好ましくは低分子量ABオリゴマーに特異的に結合するものを生成し得る免疫反応を誘導する能力を維持する修飾である。
【0054】
保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものが含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されてきている。置換には、20の天然存在(又は「標準」)アミノ酸又はその変異体のいずれか、例えばD-アミノ酸等、又はタンパク質中に天然には見られない任意の変異体での置換が含まれる。非天然アミノ酸が当該技術分野において定義されてきている。
【0055】
参照配列の変異体である、本明細書に記載されるような環状ペプチドは、参照配列、例えば配列番号4、5、7、9、10、11、12、13又は14と、少なくとも85%の配列同一性、参照配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を共有し得る。参照配列の変異体である、本明細書に記載されるような環状ペプチドは、少なくとも1つの内部システイン残基を維持し、すなわちそれを通じてペプチドが環状化される少なくとも1つの非末端システイン残基を含む。システイン残基の一方はペプチドのN末端領域に、もう一方はペプチドのC末端領域に配置されてもよく、システイン残基の両方が配列の末端に配置されることはなく、すなわち環状ペプチドは、ペプチドが頭尾型で環状化されないように、少なくとも1つの未結合(free)N及びC末端残基を含む。1つの実施形態において、システイン残基は配列のC末端残基として存在しない。参照配列、すなわち配列番号4、5、7、9、10、11、12、13又は14の変異体である、本明細書に記載されるような環状ペプチドは、2つのシステイン残基を維持し、システイン残基のうち1つは配列の末端に存在せず、すなわちそれを通じてペプチドが環状化される少なくとも1つの非末端システイン残基を含む。1つの実施形態において、どちらのシステイン残基も配列の末端に配置されない。参照配列、すなわち配列番号4、5、7、9、10、11、12、又は13の変異体である、本明細書に記載されるような環状ペプチドは、2つの内部システイン残基を維持し、すなわちそれを通じてペプチドが環状化される2つの非末端システイン残基を含む。
【0056】
好ましくは、システイン残基は、1位、2位、3位又は5位及び10位、11位、12位又は13位、好ましくは1位及び13位、3位及び12位、又は3位及び13位で維持される。好ましくは、参照配列の4位のフェニルアラニン残基もまた維持される。例えば、本明細書に記載される環状ペプチドは、配列CAEFRHDSGYEVCH(配列番号14)、配列DACFRHDSGYECHH(配列番号4)、又は配列DACFRHDSGYEVCH(配列番号13)と少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができ、ペプチドは、1位及び13位、3位及び12位、又は3位及び13位のシステイン残基、並びに4位のフェニルアラニン残基を含み、ペプチドは1位及び13位、3位及び12位、又は3位及び13位のシステイン残基を通じて環状化されている。こうした変異体環状ペプチドにおいて、1位及び13位、3位及び12位、又は3位及び13位のシステイン残基、並びに4位のフェニルアラニン残基は維持される一方、他の位置では、配列内に保存的アミノ酸置換が導入される。1つの実施形態において、1位及び13位のシステイン残基が変異体配列中で維持される。別の実施形態において、3位のシステイン残基及び12位又は13位のシステイン残基が変異体配列中で維持される。
【0057】
配列同一性は、一般的に、アルゴリズムGAP(ウィスコンシンGCGパッケージ、Accelerys Inc、米国サンディエゴ)を参照して定義される。GAPは、Needleman及びWunschのアルゴリズムを使用して、マッチ数を最大にし、ギャップ数を最小限にするように、2つの完全配列を整列させる。一般的に、デフォルトパラメータを使用し、ギャップ生成ペナルティ=12、ギャップ伸長ペナルティ=4である。GAPの使用が好ましい可能性もあるが、一般的にデフォルトパラメータを使用して、他のアルゴリズム、例えばBLAST(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 405-410の方法を使用する)、FASTA(Pearson and Lipman (1988) PNAS USA 85: 2444-2448の方法を使用する)、又はSmith-Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman (1981) J. Mol Biol. 147: 195-197)又はAltschul et al. (1990)上記のTBLASTNプログラムを使用してもよい。特に、psi-Blastアルゴリズム(Nucl. Acids Res. (1997) 25 3389-3402)を使用してもよい。配列同一性及び類似性はまた、Genomequest(商標)ソフトウェア(Gene-IT、米国マサチューセッツ州ウースター)を使用して決定され得る。配列比較は、好ましくは、本明細書に記載の関連配列の全長に渡って行われる。
【0058】
本出願全体で使用される際、環状ペプチドに関するアミノ酸位置は、DAEFRHDSGYEVHH(配列番号3)の配列を有するペプチドの配列に関して提供される。したがって、環状ペプチドの「「x」位のアミノ酸」という表現又は類似の表現は、配列番号3を有する好ましい環状ペプチドにおける「x」位のアミノ酸に対応するアミノ酸を意味する。全長アミロイドβペプチド、並びにN切除変異体を含む変異体、例えば1-40、p3-42、及び4-42に関するアミノ酸位置はAβ1-42(配列番号18)の配列を有する全長ペプチドの配列に関連して提供される。したがって、N末端切除p3-42ペプチドの「「x」位のアミノ酸」という表現又は類似の表現は、配列番号18を有する好ましい全長ペプチドにおける「x」位のアミノ酸に対応するアミノ酸を意味する。本出願全体で使用される番号づけ系は、N末端アミノ酸から出発することに注目されたい。
【0059】
本明細書に記載の環状ペプチドは、本明細書に記載のペプチド又はその変異体の変異体アミノ酸配列を含み得るか、こうした配列から本質的になり得るか、又はこうした配列からなり得る。好ましい実施形態において、環状ペプチドは、16以下のアミノ酸、好ましくは15以下のアミノ酸を含む。より好ましくは、ペプチドは14以下のアミノ酸を含む。好ましい実施形態において、環状ペプチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列からなるか又はこうした配列から本質的になり、すなわち環状ペプチドは、式(I)、式(II)、若しくは配列番号4、5、7、8、9、10、11、12、13若しくは14に示される配列、又はその変異体からなるか又はこうした配列から本質的になる。
【0060】
環状化又は「環状化される」又は類似の表現は、ペプチドが環状型であるか又は環状型に作製されることを意味する。用語「環状」は、ペプチドの構成要素残基の少なくともいくつかが環を形成することを意味する。本発明の環状ペプチドは、少なくとも1つの内部アミノ酸を通じて環状化され、すなわち頭尾型では環状化されない。好ましくは、本発明のペプチドは、内部アミノ酸を通じて環状化される。システイン残基を通じたペプチドの環状化は、ペプチドを、pE3-Xアミロイドβで同定されるヘアピン構造を模倣する構造に拘束する。
【0061】
ペプチドの環状化は、配列内に2つのシステイン残基を取り込むことを通じた架橋の形成を通じて得られる。システイン残基は、天然存在配列中の対応するアミノ酸を置換する。好ましくは、環状化は、側鎖から側鎖への環状化によって形成され得る。本発明のペプチドは、直接、又はシステイン残基のチオール側鎖を通じて間接的に、環状化され得る。例えば、側鎖から側鎖への環状化は、式-S-(-CH-)n-S-(式中、n=0、1又は2)の架橋の形成を通じて得られ得る。好ましくは、架橋は、式-S-S-又は-S-CH-S-(式中、Sは連結されたシステイン残基のチオール残基である)を有する。より好ましくは、架橋は式-S-CH-S-を有し、好ましくはペプチドの1位及び13位に位置するシステイン残基間、ペプチドの3位及び12位に位置するシステイン残基間、又はペプチドの3位及び13位に位置するシステイン残基間である。システイン残基を通じてペプチドを環状化するために適した方法は、当該技術分野において知られており、例えばチオール酸化を使用し、任意選択でメチレン架橋を含む導入を伴う。例えば、Kourra C and Cramer N, Chem. Sci., 2016,7, 7007-7012もまた参照されたい。他の架橋、例えばチオエーテル架橋(-CH-S-)もまた本発明に含まれる。
【0062】
環状ペプチドは、TAP01及びTAP01_01抗体(特許文献2及び特許文献3に記載される通り)への結合特異性を示す。環状ペプチドは、これらの抗体が結合するヘアピン構造を有する、p3-42アミロイドβ上に見られるN末端エピトープを模倣する。
【0063】
好ましい実施形態において、環状ペプチドは、可溶性低分子量AβρE3-Xオリゴマーを特異的に認識する抗体分子に特異的に結合し、すなわちAβρE3ペプチドの高分子量オリゴマーに特異的に結合する抗体に結合しない。本明細書で使用される際、用語「低分子量オリゴマー」は、3つ~6つのAβρE3-Xで構成される可溶性オリゴマー、好ましくは三量体及び四量体Aβρ3-x又はAβ4-xオリゴマーを指し、式中、Xは38、40、42である。好ましくは、Aβρ3-x又はAβ4-xの低分子量オリゴマーは、少なくとも三量体オリゴマーであり、15kDA未満のサイズを有する。
【0064】
抗体は、N末端切除アミロイドペプチド、例えばピログルタメート(pE)修飾アミロイドペプチド(AβpE3-x、AβpGlu3-x、25 Aβ(Glp3)3-x、及びp3-xとも称される)、例えばAβpE3-38、AβpE3-40、AβpE3-14及びAβpE3-42、並びに非ピログルタメート修飾アミロイドペプチド、例えばAβ4-38、Aβ4-40、Aβ4-14及びAβ4-40に特異的に結合し得る。抗体、例えばTAP01及びTAP01_01は、全長アミロイドペプチド又はN末端切除を伴わないアミロイドペプチド(Aβ1-x)、例えばAβ1-42、Aβ1-38、Aβ1-40又はAβ1-14に特異的結合を示さないことも可能である。
【0065】
好ましい実施形態において、本明細書に記載の環状ペプチドが結合する抗体は、アミロイドペプチドAβpE3-42及びAβ4-42に特異的に結合し得る。この抗体は、Aβ1-42の単量体及び二量体に特異的結合を示さないか又は特異的結合を実質的に示さないことも可能である。
【0066】
特異的結合又は「特異的認識」は、抗体が、抗原上の特定のエピトープ以外の分子にいかなる有意な結合も示さない状況を指す。
【0067】
例えば、用語「特異的認識」又は同様の用語は、本明細書で使用される際、結合分子、すなわち抗体が、N末端切除アミロイドペプチド、すなわちAβρ3-x又はAβ4-x(式中、Xは42、40又は38である)、例えばAβρ3-42又はAβ4-42の可溶性低分子量オリゴマーに特異的に結合する及び/又はこれらを検出する(すなわち認識する)ことを意味するよう意図される。抗体は、Aβ1-40の単量体若しくは二量体、又は高分子量オリゴマーを認識せず、又はこれらに結合しない。したがって、抗体は、好ましくは、三量体又は四量体Aβρ3-42オリゴマーにおいて形成されるコンホメーションエピトープを認識する。アミロイドβの低分子量オリゴマーを特異的に認識し、全長アミロイドペプチドに全く又はほとんど結合を示さない抗体には、限定されるわけではないが、TAP01及びTAP01_01が含まれる。
【0068】
本明細書に記載の抗体のアフィニティは、本明細書に定義される環状ペプチドへの抗体結合を含む、エピトープ又は抗原への抗体結合の度合い又は強度である。解離定数Kd及びアフィニティ定数Kaは、アフィニティの定量的測定値である。Kdは、抗体がどれだけ迅速にその抗原に結合するかを示す抗体の抗体会合速度(kon)に対する、抗体がどれだけ迅速にその抗原から解離するかを示す抗体解離速度(koff)の比である。抗体のその抗原への結合は可逆的プロセスであり、結合反応の速度は、反応物の濃度に比例する。平衡状態では、[抗体][抗原]複合体形成の比は、その構成要素[抗体]+[抗原]への解離速度に等しい。反応速度定数の測定値を使用して、平衡又はアフィニティ定数Ka(Ka=1/Kd)を定義し得る。Kd値が小さければ小さいほど、そのターゲットに関する抗体のアフィニティは大きい。大部分の抗体は、低マイクロモル(10-6)からナノモル(10-7~10-9)範囲のKd値を有する。高アフィニティ抗体は、一般的に、低ナノモル範囲(10-9)にあると考えられ、非常に高アフィニティの抗体は、ピコモル(10-12)範囲にある。
【0069】
いくつかの実施形態において、抗Aβ抗体(環状ペプチドが結合するもの)は、少なくとも2×10-1、少なくとも5×10-1、少なくとも10-1、少なくとも5×10-1、少なくとも10-1、少なくとも5×10-1、少なくとも10-1、少なくとも5×10-1、少なくとも10-1、少なくとも5×10-1、又は少なくとも10-1のアフィニティ定数、すなわちKaでアミロイドペプチドAβpE3-42及びAβ4-42に結合する(例えば特異的に結合する)。
【0070】
いくつかの実施形態において、抗Aβ抗体(環状ペプチドが結合するもの)は、5×10M未満、10-2M未満、5×10-3M未満、10-3M未満、5×10-4M未満、10-4M未満、5×10-5-1未満、5×10-5M未満、5×10-6M未満、10-6M未満、又は5×10-7M未満の、アミロイドペプチドAβpE3-42及びAβ4-42からの解離定数、すなわちKdを有し得る。
【0071】
抗体の特異的結合は、抗体が特定の抗原又はエピトープに関する認識可能なアフィニティを示し、一般的に、有意な交差反応性を示さないことを意味する。「有意な交差反応性を示さない」抗体は、望ましくない実体(例えば望ましくないタンパク質性実体)に認識可能に結合しないであろうものである。特定のエピトープに特異的な抗体は、例えば、同じタンパク質又はペプチド上の遠隔エピトープに有意に交差反応しないであろう。本明細書に記載の抗体の特異的結合、すなわちkoff、kon、Ka及びKdは、こうした結合を決定するための、当該技術分野に認識される任意の手段に従って決定され得る。
【0072】
抗Aβ抗体の結合は、標準技術、例えばELISA又は表面プラズモン共鳴を使用して決定され得る。適切なELISA技術は当該技術分野に既知である。例えば、固定されたアミロイドペプチドを、IgG1形式の抗体と接触させ、0.1%非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート20(Tween20)で1回以上洗浄して、未結合抗体を除去してもよい。次いで、任意の慣用的技術を使用して、例えば検出可能標識、例えばHRPに結合した二次抗体を使用して、固定されたペプチドに結合した抗体を検出してもよい。
【0073】
本発明は、キャリアー、好ましくはキャリアータンパク質に連結された、本明細書に記載の環状ペプチドを更に提供する。好ましくは、ペプチドは、化学的架橋によってキャリアーに連結される。環状ペプチドは、限定されるわけではないが、キーホールリンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン(例えばウシ血清アルブミン、BSA)又はオボアルブミン、免疫グロブリンFCドメイン、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド又はその組み合わせを含む、キャリアータンパク質にコンジュゲート化され得る。キャリアーペプチドは、環状ペプチドに直接又はリンカーを通じて連結され得る。ペプチドは、当該技術分野において標準的な技術を通じて、キャリアータンパク質に連結され得る。
【0074】
本明細書に記載されるような環状ペプチドは、療法において有用であり得る。例えば、環状ペプチドタンパク質は、神経学的疾患の治療のために、個体に投与され得る。環状ペプチドは、通常、環状ペプチドに加えて少なくとも1つの更なる構成要素を含み得る、医薬組成物の形で投与されるであろう。
【0075】
本明細書に記載の環状ペプチド及び組成物は、本明細書に記載されるように、非経口、局所、静脈内、経口、胃、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻内又は筋内法によって、療法的及び/又は予防的治療のために投与され得る。環状ペプチドの投与には、筋内注射又は静脈内注入が好ましい。
【0076】
医薬組成物は、本明細書に記載の環状ペプチドに加えて、医薬的に許容され得る賦形剤、キャリアー、緩衝剤、安定化剤、及び/又は当業者に既知の他の物質を含み得る。用語「医薬的に許容され得る」は、本明細書において使用される場合、正当な医学的判断の範囲内で、被験体(例えばヒト)への投与に適切であり、被験体にいかなる望ましくない又は有害な影響も引き起こさないであろう、化合物、物質、組成物、及び/又は剤形に関する。各キャリアー、賦形剤等はまた、配合物の他の成分と適合するという意味でも「許容され得る」ものでなければならない。キャリアー又は他の物質の正確な性質は、投与経路に応じ、これは、ボーラス、注入、注射、又は以下に論じられ、当該技術分野に既知である、任意の他の適切な経路によってもよい。
【0077】
環状ペプチドを適切な送達ビヒクル内に配合してもよい。例えば注射による、非経口投与のため、本明細書に記載の環状ペプチドを含む医薬組成物は、適切な医薬キャリアーと共に、生理学的に許容され得る希釈剤中、非経口的に許容され得る水性溶液又は懸濁物の形であり得る。当業者は、適切なキャリアー、保存剤、安定化剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又は他の添加剤を使用して適切な溶液を十分に調製可能であり、これらは、必要に応じて使用され得る。適切なキャリアー、賦形剤等は、標準的な医薬教科書、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990に見出され得る。
【0078】
非経口という用語には、本明細書において使用される場合、本明細書に記載の環状ペプチド又は組成物の皮下、静脈内、皮内、筋内、腹腔内、及びクモ膜下腔内投与が含まれる。本明細書に記載の環状ペプチド又は組成物はまた、鼻又は胃への方法によって投与され得る。
【0079】
本明細書に記載の環状ペプチドは、好ましくは、無菌溶液として配合され、投与されるが、場合によっては、凍結乾燥調製物を使用することもまた可能であり得る。無菌溶液は、無菌濾過によって、又は当該技術分野に知られる他の方法によって調製される。溶液を次いで、凍結乾燥するか、又は医薬投薬容器内に充填する。
【0080】
医薬組成物は、ワクチンとして使用するためのものであり得る。ワクチン組成物は、アジュバントを更に含み得る。アジュバントは適用される抗原決定基に対する免疫反応を更に増加させることが当該技術分野に知られる。アジュバントは、免疫系の刺激を引き起こす1つ以上の物質として定義される。この背景において、アジュバントは本発明の環状ペプチドに対する免疫反応を増進させるために使用される。適切なアジュバントの例には、限定されるわけではないが、水酸化アルミニウム及び/又はリン酸アルミニウム等のアルミニウム塩、スクワラン-水エマルジョン、例えばMF59を含む油エマルジョン組成物(又は水中油(oil-in-water)組成物)、サポニン配合物、例えばQS21及び免疫刺激複合体(ISCOMS)、細菌又は微生物派生物、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、3-0-脱アシル化MPL(3dMPL)、CpGモチーフ含有オリゴヌクレオチド、ADPリボシル化細菌毒素又はその突然変異体、例えば大腸菌(E. coli)熱不安定性エンテロトキシンLT、コレラ毒素CT等、レシピエント細胞と相互作用した際に免疫反応を刺激する真核タンパク質(例えば抗体又はその断片)が含まれる。或る特定の実施形態において、本発明の組成物は、アジュバントとして、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カリウムアルミニウム(aluminium potassium phosphate)、又はその組み合わせを含む。
【0081】
本発明は、アミロイド関連疾患に対するワクチン接種に適したものにする、AβρE3-x又はAβ4-x上のエピトープを模倣する環状ペプチドを提供する。本明細書に記載されるような環状ペプチドは免疫原性である。免疫原性は、環状ペプチドが免疫反応を誘発する能力を有することを意味する。本明細書に記載されるような環状ペプチドを含む免疫原性組成物は、環状ペプチドに対する免疫反応を誘導することができ、抗アミロイド抗体、特にAβρE3-x又はAβ4-xの低分子量オリゴマーに特異的に結合する抗アミロイド抗体の生成を促進し得る。
【0082】
理論によって束縛されることなく、ワクチンとしての本明細書に記載されるような環状ペプチドの投与は、低分子量AβρE3-x又はAβ4-xオリゴマーに特異的に結合する抗Aβ抗体の生成を導く免疫反応を誘導するであろうと考えられる。これらの抗Aβ抗体は、アルツハイマー病の病理において初期に生成される毒性Aβオリゴマーを中和し、続く斑形成を防止し得る。
【0083】
したがって、本発明は、被験体においてアミロイドβに対する免疫反応を誘導する方法であって、療法的有効量の本発明による環状ペプチドを被験体に投与することを含む、方法を提供する。被験体において免疫反応を誘導する際に使用される、特にワクチンとして使用される、本発明による組成物もまた提供する。被験体において免疫反応タンパク質を誘導する際に使用するための薬剤製造用の本発明による本明細書に記載の環状ペプチドの使用を更に提供する。好ましくは、誘導される免疫反応は、アミロイドβの低分子量オリゴマーに特異的に結合可能な抗体の産生によって特徴づけられる。
【0084】
本発明はまた、アルツハイマー病の治療の方法を提供し、特に、アルツハイマー病は、孤発性アルツハイマー病又は家族性アルツハイマー病、並びに他のAβ関連疾患及び障害及び可溶性アミロイドによって特徴づけられる他の神経学的疾患である。したがって、本発明はまた、アルツハイマー病を治療する方法であって、療法的有効量の本明細書に記載されるような環状ペプチドを被験体に投与することを含む、方法に関する。
【0085】
治療には、予防的治療及び療法的治療の両方が含まれる。用語「治療する(treat)」、「治療している(treating)」又は「治療(treatment)」(又は同等の用語)は、個体の病態の重症度が減少するか、又は少なくとも部分的に改善されるか若しくは寛解すること、及び/又は少なくとも1つの臨床症状において、或る程度の寛解、軽減若しくは減少が達成されること、及び/又は病態の進行の阻害若しくは遅延及び/又は疾患若しくは疾病の開始の防止若しくは遅延があることを意味する。
【0086】
特に、アルツハイマー病の治療には、被験体におけるアルツハイマー病及び/又はアルツハイマー病と関連する1つ以上の症状の開始の防止又は遅延が含まれる。治療は、被験体におけるアミロイドβオリゴマーの集積の阻害又は減少を含む。
【0087】
上述の治療法は、例えばアルツハイマー病の防止又は治療のため、個体において有益な療法反応を生じる条件下で、個体に、本明細書に記載の抗体又は組成物(例えば本明細書に記載の環状ペプチド、医薬的に許容され得る賦形剤及び任意選択で更なる療法剤を含む組成物)を投与することを含み得る。こうした個体は、アルツハイマー病を患っている場合がある。本明細書に記載の治療法は、無症候性患者、及びアルツハイマー病の症状を現在示している患者の両方に対して使用され得る。本明細書に記載の環状ペプチドは、アルツハイマー病に罹患していない個体に、予防的に投与され得る。本明細書に記載の環状ペプチドは、アルツハイマー病に罹患していない又はアルツハイマー病の症状を示していない個体に投与され得る。本明細書に記載の環状ペプチドは、アルツハイマー病に罹患している、又は罹患しているようである個体に投与され得る。治療に適した個体には、アルツハイマー病のリスクがあるか又はアルツハイマー病に感受性であるが、症状を示していない個体、及びアルツハイマー病を有すると推測される個体、並びに現在症状を示している個体が含まれる。本明細書に記載の環状ペプチドは、一般集団に、予防的に投与され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような治療に適している個体には、早発型アルツハイマー病又はその1つ以上の症状を伴う個体、及びそのアミロイドペプチドが、体液、例えばCSF試料中で検出されている個体が含まれ得る。
【0088】
用語「患者」、「個体」又は「被験体」には、本明細書に記載の1つ以上の環状ペプチドでの予防的治療又は療法的治療のいずれかを受けているヒト及び他の哺乳動物被験体が含まれる。哺乳動物被験体には、霊長類、例えば非ヒト霊長類が含まれる。哺乳動物被験体にはまた、研究に一般的に使用される実験動物、例えば限定されるわけではないが、ウサギ並びに齧歯類、例えばラット及びマウスが含まれる。
【0089】
本明細書に記載の環状ペプチドは、有効投薬量の本明細書に記載するような環状ペプチドを患者に投与することを含む、アルツハイマー病を防止するか又は治療する方法において使用され得る。本明細書で使用される際、本明細書に記載の環状ペプチドの「有効量」又は「有効投薬量」又は「十分な量」(又は文法的に同等の用語)は、望ましい効果、任意選択で療法的効果を生じる(すなわち療法的又は予防的有効量の投与により)ために有効である、本明細書に記載の環状ペプチド又は組成物の量を指す。例えば、「有効量」又は「有効投薬量」又は「十分な量」は、個体の病態、例えばアルツハイマー病の重症度が減少しているか又は少なくとも部分的に改善されているか若しくは寛解している、及び/又は少なくとも1つの臨床症状において、或る程度の寛解、軽減又は減少が達成されている、及び/又はアルツハイマー病の進行の阻害又は遅延及び/又はアルツハイマー病の開始の防止又は遅延があるような量であり得る。
【0090】
予防的及び療法的治療措置の両方において、十分な免疫反応が達成されるまで、何回かの投薬量で、試薬を投与してもよい。用語「免疫反応」又は「免疫学的反応」には、レシピエント被験体において、抗原に対して向けられる体液性(抗体仲介性)及び/又は細胞性(抗原特異的T細胞又はその分泌産物によって仲介される)反応の発展が含まれる。典型的には、免疫反応を監視し、免疫反応が減弱し始めたら反復投薬量を投与する。
【0091】
上述の病態の治療のための本明細書に記載の組成物の有効用量は、投与手段、ターゲット部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、投与されている他の薬剤、及び治療が予防的であるか又は療法的であるかを含む多くの異なる要因に応じて多様である。
【0092】
本明細書に記載の環状ペプチドでの能動免疫のため、投薬量は、約0.1mg/宿主体重kg~100mg/宿主体重kg、より一般的には0.1mg/宿主体重kg~50mg/宿主体重kgの範囲である。例えば、投薬量は、少なくとも1mg/体重kg又は少なくとも10mg/体重kg、又は1mg/kg~100mg/kgの範囲内であり得る。別の例において、投薬量は、少なくとも0.5mg/体重kg又は少なくとも50mg/体重kg、又は0.5mg/体重~50mg/体重の範囲内、好ましくは少なくとも5mg/kgである。好ましい例において、投薬量は約50mg/kgであり得る。
【0093】
本明細書に記載の治療は、単回用量、2回用量、又は多数回用量として、被験体への環状ペプチドの投与を含み得る。本明細書に記載の環状ペプチドは、多数の機会に投与され得る。単一の投薬量間の間隔は、毎日、毎週、毎月又は毎年であり得る。間隔はまた、患者において誘導される抗Aβ抗体の血液レベルを測定することによって示されるように、不定期であってもよい。いくつかの方法において、投薬量は、望ましい血漿抗体濃度を達成するように調節される。投薬量及び頻度は、患者に応じて多様である。
【0094】
投薬量及び投与頻度は、治療が予防的であるか又は療法的であるかに応じて多様であり得る。予防的適用では、本明細書に記載の環状ペプチドを含有する組成物を、既に疾患状態にあるわけではない患者に投与して、患者の耐性を増進させる。こうした量は、「予防的有効用量」と定義される。この使用においても、正確な量は、患者の健康状態及び全身免疫状態に応じるが、一般的に、用量あたり0.1mg~25mg、特に用量あたり0.5mg~2.5mgの範囲である。長い期間に渡っては、相対的により頻繁でない間隔で、相対的に低い投薬量が投与される。
【0095】
本発明による組成物は、アミロイドβタンパク質によって引き起こされる疾患又は病態、すなわち神経変性疾患、例えばアルツハイマー病の独立した治療及び/又は予防において、又は他の予防的及び/又は療法的治療、例えば他のワクチン、及び/又は抗体、及び/又は他の活性剤と組み合わせて、使用され得る。或る特定の実施形態において、ワクチンは、例えばアルツハイマー病と関連する他のタンパク質に対する免疫反応を誘導する、及び/又はアミロイドβの他の型に向けられる抗体を誘導する、他の構成要素を更に含む、混合ワクチンであり得る。更なる活性構成要素の投与は、例えば、別個の投与によって、又は本発明のワクチン及び更なる活性構成要素の組み合わせ産物を投与することによって、行われ得る。
【0096】
本明細書に記載の環状ペプチドは、キットの形で提供され得る。キットは、少なくとも1つの本明細書に記載の環状ペプチドを含有し得る。キットは、任意選択で、アルツハイマー病(AD)の防止、管理又は治療に有用な1つ以上の他の予防剤又は療法剤と共に、1つ以上の容器中に、本明細書に記載の組成物を含み得る。投与のための構成要素を含有する組成物が、消化管を通じた送達、例えば経口送達用に配合されていない場合、何らかの他の経路を通じてキット構成要素を送達可能なデバイス、例えばシリンジが含まれ得る。キットは、他の疾患又は病態のための他の療法剤を含む組成物を更に含み得る。キットは、ADを防止するか、治療するか、管理するか、又は寛解させるための指示、並びに副作用及び投与法のための投薬情報を更に含み得る。
【0097】
本発明はまた、本明細書に記載されるような環状ペプチドを産生する方法にも関する。本明細書に記載されるような環状ペプチドは、当該技術分野に知られる方法によって調製され得る。1つの実施形態において、方法は、望ましいペプチドの配列を含む直鎖ペプチドを生成することと、システイン残基を通じて直鎖ペプチドを環状化して、環状ペプチドを得ることとを含む。生成される直鎖ペプチドは、当該技術分野に知られる方法、例えばチオール酸化によって、任意選択でメチレン架橋を含む導入を伴い、環状化され得る。Kourra C and Cramer N, Chem. Sci., 2016,7, 7007-7012もまた参照されたい。
【0098】
本発明はまた、アミロイドβの低分子量オリゴマーを認識する抗体を産生する方法であって、
(a)動物を、上述のような環状ペプチド又は変異体、式(I)の配列、好ましくは配列番号14、配列番号4又は配列番号13の配列を含む環状ペプチドで免疫することと、
(b)工程(a)における免疫によって生成された抗体を得ることと、
を含む、方法にも関する。方法は更に、工程(b)で得られた抗体をスクリーニングすることを含む、工程(c)を更に含み得る。好ましくは、抗体は、アミロイドβの低分子量オリゴマーの特異的認識に関してスクリーニングされる。好ましい抗体を、N末端切除アミロイドペプチド、すなわちAβpE3-42及びAβ4-42を特異的に認識し、Aβ1-42に有意には結合せず、好ましくはAβpE3-42及びAβ4-42を特異的に認識する能力に関してスクリーニングする。
【0099】
抗体は、アミロイドβの低分子量オリゴマー、好ましくはAβpE3-x及びAβ4-xの低分子量オリゴマーに対するその結合及び/又は特異性に関して、当該技術分野に知られる標準法、例えばELISAを使用してスクリーニングされ得る。例えば、特許文献1及び特許文献3に記載されるようなアッセイを使用する。低分子量オリゴマーに特異的に結合するが、アミロイドβタンパク質の他の型、例えば、アミロイドβの高分子量オリゴマー及び/又は単量体型及び二量体型に特異的には結合しない抗体の選択は、アミロイドβの低分子量オリゴマーへの陽性結合、及びアミロイドβの高分子量オリゴマー及び/又は単量体及び二量体型への結合の欠如に基づいて行われ得る。AβpE3-42及びAβ4-42に特異的に結合するが、Aβ1-42に特異的には結合しない抗体の選択は、AβpE3-42及びAβ4-42への陽性結合、並びにAβ1-42への結合の欠如に基づいて行われ得る。
【0100】
本明細書に記載の他の態様及び実施形態は、用語「を含む」が用語「からなる」によって置き換えられた上記態様及び実施形態、並びに用語「を含む」が用語「から本質的になる」によって置き換えられた上記態様及び実施形態を提供する。
【0101】
本出願は、文脈が別に要求しない限り、上述の上記態様及び実施形態のいずれかの互いとの全ての組み合わせを開示することが理解されるものとする。同様に、本出願は、文脈が別に要求しない限り、単一の又は他の態様いずれかと一緒のいずれかで、好ましい及び/又は任意選択の特徴の全ての組み合わせを開示する。
【0102】
上記実施形態の変更形態、更なる実施形態及びその変更形態は、本開示を読めば当業者には明らかであり、したがって、これらは本明細書に記載の範囲内である。
【0103】
本明細書に言及される全ての文書及び配列データベースエントリーは、全ての目的のため、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【実施例
【0104】
実験法
1. 環状化ペプチドの産生
要約すると、当該技術分野の標準的技術を使用して、望ましい配列を含み、2つのシステイン残基を含む直鎖ペプチドを生成する。ペプチド中に存在するシステイン残基を通じて、ペプチドを環状化する。
【0105】
当該技術分野で標準的な方法、例えばチオール酸化によって、任意選択でメチレン架橋を含む導入を伴い、ペプチドを環状化した。例えば、Kourra C and Cramer N, Chem. Sci., 2016,7, 7007-7012もまた参照されたい。
【0106】
以下の配列を有するペプチドが生成された。
【0107】
【0108】
ペプチドは、式-S-Sを有するジスルフィド架橋又は式-S-CH-S-を有するチオアセタール架橋のいずれかで、システイン残基を通じて環状化された。
【0109】
2. 1-14ジスルフィド架橋環状ペプチド結合ELISA
1. PBS(Thermo Fisher 10010-015)中で希釈された2.5μg/mlのストレプトアビジン(Thermo Scientific 21122)30μL/ウェルで384ウェルプレートをコーティングする
2. 4℃で一晩インキュベーションする
3. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
4. PBS中で希釈された2μg/mlのジスルフィド架橋された環状ペプチド30μL/ウェルで384ウェルプレートをコーティングする
5. 室温で1時間インキュベーションする
6. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
7. アッセイ緩衝液80μL/ウェルでプレートをブロッキングする
8. 4℃で一晩インキュベーションする
9. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
10. 血清に関して、血清試料(アッセイ緩衝液中1/100で希釈)70μL/ウェルを非粘着性(non-sticky)プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、2倍シリーズで(35μLを35μLアッセイ緩衝液に)希釈する
競合剤抗体に関して、対照抗体(アッセイ緩衝液中、100.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、3倍シリーズで(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
11. 対照抗体(アッセイ緩衝液中、360.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、3倍シリーズで(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
12. 30μL/ウェルをアッセイプレート上に移す
13. 37℃で1時間インキュベーションする
14. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
15. アッセイ緩衝液中、二次抗体を適切に希釈し、30μL/ウェルを添加する
16. 37℃で1時間インキュベーションする
17. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
18. 20μL/ウェルのK-BLUE基質(Neogen 308176)を添加する
19. 暗所中、室温で10分間インキュベーションする
20. 10μL/ウェルのRED STOP溶液(Neogen 308176)を添加することによって反応を停止する
21. PheraStar Plus(BMG LabTech)を使用して、650nmで光学密度を読み取る
【0110】
3. 1-42ペプチド結合ELISA
1. 炭酸/重炭酸緩衝液中で希釈された100ng/mlのPSLアミロイド1-42ペプチド(ヒト-Peptide Speciality Laboratories-CEM1904161)30μL/ウェルで384ウェルプレートをコーティングする
2. 37℃で1時間インキュベーションする
3. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
4. アッセイ緩衝液80μL/ウェルでプレートをブロッキングする
5. 4℃で一晩インキュベーションする
6. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
7. ジスルフィド架橋免疫血清に関して、
試料(アッセイ緩衝液中1/100で希釈)70μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、2倍シリーズで(35μLを35μLアッセイ緩衝液に)希釈する
チオアセタール架橋免疫血清に関して、
血清試料(アッセイ緩衝液中1/100で希釈)及び対照抗体(アッセイ緩衝液中、360.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、3倍シリーズで(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
8. 対照抗体に関して、対照抗体(アッセイ緩衝液中、360.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、2倍又は3倍シリーズで(免疫血清の希釈に応じて)(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
9. 30μL/ウェルをアッセイプレート上に移す
10. 37℃で1時間インキュベーションする
11. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
12. アッセイ緩衝液中、二次抗体を適切に希釈し、30μL/ウェルを添加する
13. 37℃で1時間インキュベーションする
14. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
15. 20μL/ウェルのK-BLUE基質(Neogen 308176)を添加する
16. 暗所中、室温で10分間インキュベーションする
17. 10μL/ウェルのRED STOP溶液(Neogen 308176)を添加することによって反応を停止する
18. PheraStar Plus(BMG LabTech)を使用して、650nmで光学密度を読み取る
【0111】
4. pE3-42ペプチド結合ELISA
1. 炭酸/重炭酸緩衝液中で希釈された100ng/ml PSLアミロイドpE3-42ペプチド(ヒト-Peptide Speciality Laboratories-CEM062210Pyr)30μL/ウェルで、384ウェルプレートをコーティングする
2. 37℃で1時間インキュベーションする
3. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
4. アッセイ緩衝液80μL/ウェルでプレートをブロッキングする
5. 4℃で一晩インキュベーションする
6. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
7. ジスルフィド架橋免疫血清に関して、
血清試料(アッセイ緩衝液中1/100で希釈)70μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、2倍シリーズで(35μLを35μLアッセイ緩衝液に)希釈する
チオアセタール架橋免疫血清に関して、
血清試料(アッセイ緩衝液中1/100で希釈)及び対照抗体(アッセイ緩衝液中、360.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、3倍シリーズで(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
8. 対照抗体に関して、対照抗体(アッセイ緩衝液中、360.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、2倍又は3倍シリーズで(免疫血清の希釈に応じて)(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
9. 30μL/ウェルをアッセイプレート上に移す
10. 37℃で1時間インキュベーションする
11. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
12. アッセイ緩衝液中、二次抗体を適切に希釈し、30μL/ウェルを添加する
13. 37℃で1時間インキュベーションする
14. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
15. 20μL/ウェルのK-BLUE基質(Neogen 308176)を添加する
16. 暗所中、室温で10分間インキュベーションする
17. 10μL/ウェルのRED STOP溶液(Neogen 308176)を添加することによって反応を停止する
18. PheraStar Plus(BMG LabTech)を使用して、650nmで光学密度を読み取る
【0112】
5. 4-42ペプチド結合ELISA
1. 炭酸/重炭酸緩衝液中で希釈された200ng/ml Anaspec 4-42ペプチド(Eurogentec AS-29908-1)30μL/ウェルで、384ウェルプレートをコーティングする
2. 37℃で1時間インキュベーションする
3. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
4. アッセイ緩衝液80μL/ウェルでプレートをブロッキングする
5. 4℃で一晩インキュベーションする
6. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
7. ジスルフィド架橋免疫血清に関して、
血清試料(アッセイ緩衝液中1/100で希釈)70μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、2倍シリーズで(35μLを35μLアッセイ緩衝液に)希釈する
チオアセタール架橋免疫血清に関して、
対照抗体(アッセイ緩衝液中、360.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、3倍シリーズで(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
8. 30μL/ウェルをアッセイプレート上に移す
9. 37℃で1時間インキュベーションする
10. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
11. アッセイ緩衝液中、二次抗体を適切に希釈し、30μL/ウェルを添加する
12. 37℃で1時間インキュベーションする
13. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
14. 20μL/ウェルのK-BLUE基質(Neogen 308176)を添加する
15. 暗所中、室温で10分間インキュベーションする
16. 10μL/ウェルのRED STOP溶液(Neogen 308176)を添加することによって反応を停止する
17. PheraStar Plus(BMG LabTech)を使用して、650nmで光学密度を読み取る
【0113】
6. 8.5.KLH抗原結合ELISA
1. PBS(Thermo Fisher 10010-015)中で希釈された2μg/ml KLH(Sigma H8283)30μL/ウェルで、384ウェルプレートをコーティングする
2. 4℃で一晩インキュベーションする
3. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
4. アッセイ緩衝液80μL/ウェルでプレートをブロッキングする
5. 室温で1時間インキュベーションする
6. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
7. 血清試料(アッセイ緩衝液中1/1000で希釈)及び対照抗体(アッセイ緩衝液中、20.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、3倍シリーズで(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
8. 30μL/ウェルをアッセイプレート上に移す
9. 37℃で1時間インキュベーションする
10. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
11. アッセイ緩衝液中、二次抗体を適切に希釈し、30μL/ウェルを添加する
12. 37℃で1時間インキュベーションする
13. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
14. 20μL/ウェルのK-BLUE基質(Neogen 308176)を添加する
15. 暗所中、室温で5分間インキュベーションする
16. 10μL/ウェルのRED STOP溶液(Neogen 308176)を添加することによって反応を停止する
17. PheraStar Plus(BMG LabTech)を使用して、650nmで光学密度を読み取る
【0114】
7. チオアセタール架橋環状ペプチド結合ELISA
1. PBS(Thermo Fisher 10010-015)中で希釈された2.5μg/mlのストレプトアビジン(Thermo Scientific 21122)30μL/ウェルで384ウェルプレートをコーティングする
2. 4℃で一晩インキュベーションする
3. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
4. PBS中で希釈された2μg/mlのチオアセタール架橋環状ペプチド30μL/ウェルで384ウェルプレートをコーティングする
5. 室温で1時間インキュベーションする
6. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
7. アッセイ緩衝液80μL/ウェルでプレートをブロッキングする
8. 4℃で一晩インキュベーションする
9. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
10. 血清試料(アッセイ緩衝液中1/100で希釈)及び対照抗体(アッセイ緩衝液中、360.0μg/mlに希釈)60μL/ウェルを非粘着性プレート上に分配し、アッセイ緩衝液中、3倍シリーズで(20μLを40μLアッセイ緩衝液に)希釈する
11. 30μL/ウェルをアッセイプレート上に移す
12. 37℃で1時間インキュベーションする
13. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
14. アッセイ緩衝液中、二次抗体を適切に希釈し、30μL/ウェルを添加する
15. 37℃で1時間インキュベーションする
16. プレートを洗浄する(NUNC 384プログラム)
17. 20μL/ウェルのK-BLUE基質(Neogen 308176)を添加する
18. 暗所中、室温で10分間インキュベーションする
19. 10μL/ウェルのRED STOP溶液(Neogen 308176)を添加することによって反応を停止する
20. PheraStar Plus(BMG LabTech)を使用して、650nmで光学密度を読み取る
【0115】
8. 結晶学研究のためのタンパク質発現及び精製
抗βアミロイドFab TAP01及びTAP01_01のFab断片をExpi293細胞において発現した。pE3-14及び環状化3-14ペプチドを25mM Tris-HCl(pH7.5)及び50mM NaCl中、1mMで可溶化した。Fab/ペプチド複合体を、典型的には、25mM Tris-HCl(pH7.5)及び50mM NaCl中、1:1.5のモル比で混合した。結晶化のため、全てのFab/ペプチド複合体試料を約14mg/mlに濃縮した。
【0116】
9. 結晶化、構造決定、及び精密化(Refinement)
等体積のタンパク質に加えてウェル溶液を混合することによって、19℃で蒸気拡散法によって、全ての結晶を得た。
【0117】
TAP01-pE3-14結晶は、20% PEG3350及び0.2Mクエン酸アンモニウム中で成長した。TAP01_01-pE3-14結晶は、10%PEG 20K、20%PEG550MME、0.1M MOPS/HEPES、pH7.5、並びに各0.03Mの硝酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び硫酸アンモニウム中で成長した。
【0118】
TAP01環状化3-14共結晶は、20% PEG 6K、0.1M HEPES、pH7.0、及び0.01M塩化亜鉛中で成長した。凍結保護のため、結晶は一般的に、22%エチレングリコールを加えた母液溶液に移した。
【0119】
European Synchrotron Radiation Facility(ビームラインID30B(TAP01+pE3-14))又はDiamond Light Source(ビームラインI04(TAP01_01+pE3-14及びTAP01+環状化3-14))でデータセットを収集した。TAP01及びTAP01_01とpE3-14ペプチドとの共結晶を、それぞれ、1.4Å解像度及び2.5Å解像度に精密化する一方、TAP01と環状化3-14ペプチドは、2.1Åで回折した。XDS(Kabsch, W. (2010a/b) Acta Cryst D66, 125-132)及びCCP4 SuiteのAIMLESS(Winn, M., et al. (2011) Acta Cryst D67, 235-242)を使用して、データをプロセシングした。
【0120】
全ての結晶構造を、Phaser(McCoy et al., (2005) Acta Cryst D 61, 458-64)を使用した分子置換によって解析した。それぞれ重鎖及び軽鎖をモデリングするために使用される、寄託された抗体構造4F33(Ma, J., et al. (2012) JBC, 287: 33123-33131)及び1I7Z(Larsen N.A., et al. (2001) JMB, 311: 9-15)で、SWISSMODEL(Waterhouse, A., et al. (2018) Nucleic Acids res. 46 W296-W303)を使用して生成される相同性モデルを使用し、TAP01構造を解析した。TAP01構造の精密化座標は、続くTAP01_01構造の検索モデルとして働いた。Coot(Emsley, P. & Cowtan, K. Coot, (2004) Acta Cryst D60, 2126-32)を使用して原子モデルを構築し、Refmac(Murshudov, et al., (1997) Acta Cryst D53, 240-255)で精密化した。全ての構造を分子置換によって解析し、優れた立体化学を伴い、20/25%未満の最終Rワーク/Rフリー値と共に報告する(表1)。
【0121】
【0122】
結果及び考察
1. 新規エピトープの同定及び「拘束」環状ペプチドの生成
TAP01抗体、TAP01及びTAP01_01(NT4X及びNT4X_SAとしても知られる)に関するアミロイドペプチドの新規エピトープが同定されてきている。pE3-14ペプチドの存在下又は非存在下で、マウスTAP01抗体及びヒト化TAP01_01抗体を使用して、X線結晶研究を行った(表1)。
【0123】
TAP01 Fab単独(図1)及びpE3-14ペプチドの存在下(図2)の構造を決定した。これらの研究は、TAP01抗体がアミロイドペプチドのヘアピン構造(図3)に結合することを示した。抗体に対するこの結合部位は以前同定されていなかった。
【0124】
結果はまた、アポ構造が、抗体-ペプチド構造と同じであることも示し、それによって、アミロイドペプチドが結合している際、コンホメーション変化が起こらないことを立証する。さらに、TAP01抗体及びエピトープの構造は、TAP01抗体のヒト化プロセス中に維持される(図4)。
【0125】
環状ペプチドの「拘束された」型を形成する3位及び12位のシステイン残基を含む1-14アミロイドペプチド(表2)を生成した。
【0126】
環状ペプチドを拘束するための2つの異なる構造、すなわちジスルフィド架橋ペプチド及びチオアセタール架橋ペプチドを生成した。ペプチドの配列及び構造を、以下の表2に示す。チオアセタール架橋ペプチドは、ジスルフィド架橋環状ペプチドのより化学的に安定な類似体を提供する。配列DACFRHDSGYECHHを有する環状ペプチドの分析は、環状ペプチドが、構造研究で同定されたヘアピン構造を模倣することを示した。
【0127】
【0128】
X線結晶研究は、この「環状」コンホメーションを生成することができ、TAP01抗体がpE3-42ペプチドと類似の方式で、環状ペプチドに結合することを確認した。
【0129】
両方の環状ペプチド構造は、元来の構造と類似の結合モード及びコンホメーションを明らかにした(図4)。環状ペプチドが、天然pE3-14ペプチドのエピトープと同じヘアピンコンホメーションを採用することもまた示された(図5及び図6)。
【0130】
いくつかの比較基準抗体は、pE3-42アミロイドペプチドに結合可能であるが、結果は、TAP01がこの新規ヘアピンエピトープに結合可能な唯一の抗体であることを示す(図7)。同定されるエピトープへの比較基準抗体(バピネウズマブ、ソラネズマブ、BAN2401、ProBioDrug 6_1_6、ProBioDrug 24_2_3)の結合を、エピトープコンホメーションに拘束された1-14チオアセタール架橋環状ペプチドを使用したELISAによって調べた。ProBioDrug 6_1_6(寄託番号DSM ACC 2924)及びProBioDrug 24_2_3(寄託番号DSM ACC 2926)は、国際公開第2010/009987号に記載される。試験した比較基準抗体はいずれも、この「環状」ペプチドコンホメーションに結合不能であった。
【0131】
2. 環状ペプチドでのマウス及びウサギの免疫
2.1. ジスルフィド架橋ペプチドでの免疫及びアミロイドペプチドへの結合
3位及び12位のシステイン残基を含み、ジスルフィド架橋を有する1-14アミロイドペプチド配列を使用して、ウサギ及びマウスにおいて免疫研究を行い、ADの治療のためのワクチンアプローチの潜在能力を調べた。動物(5匹のマウス、2匹のウサギ)をジスルフィド架橋環状ペプチドで免疫し、表3に示すように、免疫前(第1日)、中間時点(第35日)及び最終時点(第63日)で血清を収集した。
【0132】
【0133】
ビオチン化環状、1-42、pE3-42及び4-42アミロイドペプチドへの結合に関して血清をスクリーニングした。結果を図8図12に示す。
【0134】
結果は、マウス5が最適な免疫反応を生じ、ジスルフィド架橋環状ペプチドに対して1/3200の力価を生じることを示した(図8)。ジスルフィド架橋環状ペプチドに対して、ウサギによって、より高いレベルのバックグラウンド結合(免疫前)が生じた(図8)。「環状」ペプチド、並びに1-42、4-42及びpE3-42アミロイドペプチドへの、生じた血清の結合を調べた。4-42及びpE3-42アミロイドペプチドへの結合が最小であることが、ELISAによって観察された(図9図11)。
【0135】
2.2. チオアセタール架橋ペプチドでの免疫及びアミロイドペプチドへの結合
3位及び12位のシステイン残基を含み、チオアセタール架橋を有する1-14アミロイドペプチド配列を使用して、ウサギ及びマウスにおいて免疫研究を行い、ADの治療のためのワクチンアプローチの潜在能力を調べた。動物をチオアセタール架橋環状ペプチドで免疫し、表3に示すように、免疫前(第1日)、中間時点(第35日)及び最終時点(第63日)で血清を収集した。
【0136】
チオアセタール架橋環状ペプチドでの免疫後(表3)、ウサギ及びマウスの両方で免疫反応が生じ、マウスにおいてより高い力価が得られた(図13)。
【0137】
「環状」ペプチドへの、並びに1-42、4-42及びpE3-42アミロイドペプチドへの、生じた血清の結合を調べた(図13図16)。結果は、マウス2、3及び4が最適な免疫反応を生じることを示し、チオアセタール架橋環状ペプチドに対して、それぞれ1/72900(マウス2)及び1/24300(マウス3及び4)の力価であった(図13)。ジスルフィド架橋環状ペプチドでの免疫後に生じた結果と一致して、ウサギにおいて、より高いレベルのバックグラウンド結合が観察された。
【0138】
「拘束」された環状ペプチドの両方の型を試験した結果、チオアセタール架橋ペプチドは、より安定であり、かつマウスにおいてより高い力価で反応を生じることが示された。したがって、チオアセタール架橋ペプチドを下流実験に使用した。
【0139】
3. ヒトAD脳、並びに5X FAD及びTg4-42脳切片における、血清のスクリーニング
マウス免疫由来の血清(M2及びM4血清)を、ヒトAD脳切片、並びに5X FAD及びTg4-42マウスモデル由来の脳切片を染色するために使用した(図17及び図18)。
【0140】
4. バイオマーカー同定、及びグルコース代謝に対するTAP01抗体の影響
若年及び加齢Tg4-42マウスにおける18F-FDG取り込みのイメージングは、Tg4-42加齢マウスにおける大脳グルコース代謝の減少を示した(図19)。結果は、大脳グルコース代謝におけるこの減少が、TAP01ヒト化抗体でレスキューされ得ることを示す。
【0141】
5. 1-14環状ペプチド(チオアセタール架橋)変異体へのTAP01_04抗体の結合の生成及び評価
上記実験で評価された1-14チオアセタール架橋環状ペプチドは、チオアセタール架橋のため3位及び12位にシステイン残基を有し、ペプチドを拘束する。TAP01抗体の結合に関して、3位及び12位へのシステイン残基の配置が有する役割を評価するため、ペプチド配列内の異なる位置にシステイン残基を持つ更なるペプチドを生成した(表4)。
【0142】
【0143】
TAP01抗体のこれらのチオアセタール架橋環状ペプチド変異体への結合は、ELISAによって評価されてきている(図20図22及び表5)。比較基準抗体への結合もまた評価した。
【0144】
【0145】
結果は、TAP01(MoG1K)抗体のアフィニティが、環状ペプチド3,12と比較して、環状ペプチド2,10、2,12及び2,13に関してより高いことを示し(図22及び図23)、計算されるEC50値は、3,12に関する13.33nMと比較して、それぞれ、1.33nM、0.24nM及び1.56nMであった。しかし、比較基準抗体であるバピネウズマブもまた、2,10、2,12及び2,13環状ペプチド変異体に結合可能である(図22)。さらに、BAN2401及びソラネズマブもまた、低アフィニティで、2,10ペプチド変異体に結合可能である(図22)。したがって、これは、TAP01抗体によって認識される新規ヘアピンエピトープが、主に、3,12コンホメーションであることを示唆する。
【0146】
TAP01抗体の結合に関して、位置の異なる組み合わせでのシステイン残基の配置が有する、特にシステインを1位で提供した際の役割を評価するため、ペプチド配列内の異なる位置にシステイン残基を持つ更なるペプチドを生成した(表6)。
【0147】
【0148】
TAP01抗体のこれらのチオアセタール架橋環状ペプチド変異体への結合、並びに環状ペプチド3,12、環状ペプチド2,10、環状ペプチド2,12、及び環状ペプチド2,13への結合は、ELISAによって評価されてきている(図25、表7)。比較基準抗体への結合もまた評価した(図26)。
【0149】
【0150】
結果は、TAP01(MoG1K)抗体のアフィニティが、環状ペプチド1,10、環状ペプチド1,11、及び環状ペプチド1,12と比較して、環状ペプチド1,13に関して最も高いことを示し(図25)、計算されるEC50値は、それぞれ12、111、及び9.5と比較して、3.5であった。
【0151】
比較基準抗体バピネウズマブへの環状ペプチド3,12の結合は全く見られなかった(図26)。さらに、比較基準抗体バピネウズマブへの環状ペプチド3,13の結合は全く見られなかった(図34)。比較基準抗体バピネウズマブへの結合は、環状ペプチド2,10、環状ペプチド2,12、環状ペプチド2,13、環状ペプチド1,10、環状ペプチド1,11、環状ペプチド1,12及び環状ペプチド1,13に関して見られた(図26A)。しかし、このデータは更に、TAP01抗体によって認識される新規ヘアピンエピトープが主に、3,12コンホメーションであることを示唆し、また、3,13コンホメーションにある環状ペプチドがこのヘアピンエピトープを模倣することを示唆する。
【0152】
6. 1-14突然変異体ペプチド変異体の生成及びこの変異体へのTAP01抗体の結合の評価
TAP01抗体へのアミロイドペプチドの作用機構を決定するため、プロリン残基がペプチド中に見られる実際のアミノ酸を置換する5つのペプチド(表8)を生成し、TAP01抗体へのこれらのペプチドの結合を調べた(図23)。
【0153】
DPEFRHDSGYEVHH及びDAPFRHDSGYEVHHペプチドとの結合は全く観察されず、残基2(A)及び3(E)が結合に重要であることが示唆された。ペプチドPAEFRHDSGYEVHH、PPPFRHDSGYEVHH及びPPEFRHDSGYEVHHは、用量依存方式で結合し、残基1(D)、残基1、2及び3の組み合わせ(DAE)、並びに残基1及び2の組み合わせ(DA)は、結合に必須ではないことが示唆された。
【0154】
【0155】
7. TAP01_01、TAP01_02及びTAP01_4でのマウスの免疫、並びに5XFADマウスにおける斑負荷に対する影響
5XFADマウスを、6週齢~18週齢の間に、10mg/kgの抗体(TAP01_01、TAP01_02及びTAP01_4)でi.p.処置した。TAP01_4(MoG1Kとしてクローニング)(NT4X_S71Hとしても知られる)抗体での受動免疫は、アイソタイプ対照IgG1抗体と比較して、明確なAβ種に関する斑負荷を低下させた。TAP01_4(MoG1K)は、全Aβ、ピログルタメートAβ3-x、チオフラビン及びTAP01に対して染色される斑を有意に減少させた。
【0156】
全Aβ陽性斑において、TAP01_01(MoG1K)の効果は全く検出されず、TAP01_02(MoG1K)ではIgG対照と比較して弱い効果が検出された。TAP01_02(MoG1K)は、ピログルタメートAβ3-xに対して染色された斑を有意に減少させた。TAP01_01(MoG1K)及びTAP01_02(MoG1K)処置群は、チオフラビン染色によって示される原線維Aβ沈着を有意に減少させることが示された(図24)。
【0157】
8. 拘束された環状ペプチドでのマウスの能動免疫
6週齢の5XFADマウスを、完全フロイントアジュバント(CFA)中で乳化された抗原[チオアセタール架橋アミロイドβペプチド1-14-KLHコンジュゲート、DACFRHDSGYECHH[Cys]-アミド(S-CH-S架橋、3位及び12位を通じて環状化)]で12週間免疫した後、不完全フロイントアジュバント(IFA)中で乳化されたタンパク質をブースター用量で免疫した。免疫前に、本発明者らの施設でマウスを少なくとも7日間順化させた。マウスの背中2部位で、CFA中で乳化された抗原を皮下注射し、各部位に0.05mL~0.1mL注射した(マウスあたり、総量0.1mL~0.2mL)。
【0158】
抗原/CFAエマルジョンでの免疫の14日後、28日後、42日後、及び10週間後に、IFA中で乳化された抗原のブースター注射を投与した。背中の1部位で、IFAエマルジョン0.1mLの単回皮下注射としてブースターを投与する。マウスを屠殺(18週齢)した後、マウスから血清試料を単離し、抗体濃度を試験した。
【0159】
18F-FDG-PET/MRIイメージング
5xFADマウス及び年齢をマッチさせたC57Bl/6J野生型マウスに対して、18F-FDG-PET/MRIを行った。マウスを一晩絶食させ、トレーサー注射の前に血中グルコースレベルを測定した。11.46MBq~20.53MBq(平均16.81MBq)の18F-FDGを、最大体積200μlで尾静脈内に静脈内注射した後、45分間の取り込み期間を置いた。取り込みプロセス中、マウスは覚醒していた。小動物1 Tesla nanoScan PET/MRI(Mediso、ハンガリー)を使用して、20分間、PETスキャンを行った。スキャン中、酸素を補充したイソフルランでマウスを麻酔し、加熱ベッド(37℃)上に維持した。イメージングプロセス全体で呼吸速度を測定した。マテリアルマップ(material map)(マトリックス144×144×163、ボクセルサイズ0.5×0.5×0.6mm、TR:15ms、TE 2.032ms及びフリップ角25度)で、MRIに基づく減衰補正を行い、以下のパラメータ:マトリックス136×131×315、ボクセルサイズ0.23×0.3×0.3mmを使用して、PET画像を再構築した。
【0160】
アミロイド斑負荷に関する18F-フロルベタベン-PET/MRI
7.5MBq~24MBq(平均14MBq)の18F-フロルベタベンを、最大体積200μlで尾静脈内に静脈内投与した。40分間の取り込み期間後、上述のようにマウスを麻酔し、スキャンした。PET獲得時間は30分間であった。マテリアルマップ(マトリックス144×144×163、ボクセルサイズ0.5×0.5×0.6mm、TR:15ms、TE 2.032ms及びフリップ角25度)で、MRIに基づく減衰補正を行い、以下のパラメータ:マトリックス136×131×315、ボクセルサイズ0.23×0.3×0.3mmを使用して、PET画像を再構築した(Bouter et al, (2019), Frontiers in Aging Neuroscience vol. 10:425)。
【0161】
画像分析
PMOD v3.9(PMOD Technologies、スイス)を使用して、以前記載されるように(Bouter et al)全ての画像を分析した。簡潔には、あらかじめ定義されたMRIに基づくマウス脳アトラステンプレートを使用して、全脳体積、並びに扁桃体、脳幹、小脳、皮質、海馬、視床下部、中脳、嗅球、中隔/前脳基底部、線条体及び視床を含む、異なる関心体積(VOI)を定義した。全ての脳領域に関して、PET VOI統計(kBq/cc)を生成し、半定量的分析のため標準化取り込み値(SUV)を計算した[SUV=組織活性濃度平均(kBq/cc)×体重(g)/注入用量(kBq)]。18F-FDG-PETスキャンのSUVを、測定血中グルコースレベルに関して補正した[SUVGlc=SUV×血中グルコースレベル(mg/dl)]。18F-フロルベタベンスキャンのSUVを、小脳VOI内のSUVによって更に正規化し、得られた比(SUVr)を更なる分析に使用した。
【0162】
結果
免疫された5XFAD(n=5)、2匹の5XFADマウス対照及び2匹の野生型マウス(全て雌、年齢4.5ヶ月齢~5.5ヶ月齢)において、アミロイド斑トレーサーであるフロルベタベンを用いたアミロイド斑イメージングを行った。結果を図27及び図28に示す。免疫された5XFADマウスは、皮質、海馬及び扁桃体におけるフロルベタベン保持を示さず、これは明らかにアミロイド斑シグナルが劇的に減少したことを立証する。免疫に使用される環状ペプチドは、N切除アミロイドβオリゴマーに特異的であり、この環状ペプチドによって誘導される抗体は、全長アミロイドβ1-42と反応しない。免疫に使用された環状ペプチド(抗体が作製される切除ペプチドのヘアピン構造の模倣体)は、5XFAD脳において、大部分、全長アミロイドβ1-42で構成され、わずかな割合のみがN切除アミロイドβである、アミロイド斑のクリアランスを生じた。したがって、これは、環状ペプチドが、切除アミロイドβに結合する抗体を作製し、これらが斑を溶解することを示す。ヘアピン構造は、アルツハイマー斑のシーディング因子であり、これらは、環状ペプチド能動免疫によって除去され得る。
【0163】
要約
TAP01及びTAP01_01抗体が結合する新規ペプチドが同定されている。これらの抗体は、やはり斑に結合するいくつかの比較基準抗体と比較して、低分子量オリゴマーのみに結合し、斑には結合しない。いくつかの抗体は、アミロイドペプチド配列の異なる領域に結合可能であるが、TAP01のみがアミロイドペプチドの環状/ヘアピンコンホメーションに結合可能である。したがって、Aβp3-42のヘアピンエピトープを模倣する、生成された環状ペプチドを能動免疫に使用して、被験体において、低分子量オリゴマーに特異的な抗体の生成を誘導し得る。
【0164】
9. 5XFADマウスにおける環状化Aβペプチドの能動免疫:脳切片における免疫組織化学によるアミロイド負荷、及び18F-FDG-PET/MRIイメージングによるin vivoグルコース代謝
以前記載されるように、5XFADマウスを抗原[チオアセタール架橋アミロイドβペプチド1-14-KLHコンジュゲート、DACFRHDSGYECHH[Cys]-アミド(S-CH-S架橋、3位及び12位を通じて環状化)]で免疫した。
【0165】
in vivoイメージング
上述のように、アルツハイマーマウス(5XFAD)及び年齢をマッチさせたC57Bl/6J野生型マウス上のin vivoグルコース代謝を18F-FDG-PET/MRIイメージングによって分析した。
【0166】
パラフィン切片の免疫組織化学染色
CO麻酔後、頚椎脱臼によってマウスを屠殺した。脳試料を注意深く切除し、4%リン酸緩衝ホルマリン中、4℃で後固定した。ヒト及びマウス組織試料を以前記載されるようにプロセシングした。簡潔には、4μmパラフィン切片をキシレン中で脱パラフィン処理した後、一連のエタノール中で再水和した。内因性ペルオキシダーゼをブロッキングするため、H処理した後、抗原賦活化のため、0.01Mクエン酸緩衝液中で切片を煮沸し、その後、88%ギ酸中で3分間インキュベーションした。PBS中のスキムミルク及びウシ胎児血清での処理によって非特異的結合部位をブロッキングした後、一次抗体を添加した。以下の抗体を用いた:全Aβ5に対するポリクローナル抗体24311、ピログルタメートAβ3-Xに対するモノクローナル抗体1-57(Synaptic Sytems、ドイツ、ゲッチンゲン、1mg/ml、1:500)、及びTAP01_4(1:200、2mg/ml)。対応するビオチン化二次抗ヒト及び抗マウス抗体(1:200)をDAKO(デンマーク、グロストルプ)より購入した。Vectastainキット(Vector Laboratories、米国バーリンゲーム)及び色素原としてのジアミノベンジジン(DAB)で、ABC法を使用して染色を視覚化した。ヘマトキシリンで対比染色を行った。
【0167】
Aβ負荷の定量化
以前記載されるように(G. Antonios et al., Alzheimer therapy with an antibody against N-terminal Abeta 4-X and pyroglutamate Abeta 3-X. Scientific reports 5, 17338 (2015))、斑負荷を定量化した。互いに少なくとも80μm離れている5つ~6つのパラフィン包埋切片を、色素原としてのDABで同時に染色した。チオフラビンS蛍光染色のため、組織切片を脱パラフィン処理し、再水和し、脱イオン水で2回洗浄し、次いで水溶液中の1%(w/v)チオフラビンSで処理し、4’6-ジアミジン-2-フェニルインドールの1%(w/v)水溶液中で対比染色した。OlympusのDP-50カメラ及びImageJソフトウェア(NIH、米国)を備えたOlympusのBX-51顕微鏡を使用して、相対Aβ負荷を評価した。100×倍率の代表的な写真を体系的に捕捉した。ImageJを使用して、写真を8ビット白黒写真にバイナリ化し、固定された強度閾値を適用して、DAB染色を定義した。
【0168】
DAB染色によって含まれるパーセント領域、並びにmmあたりの粒子数及び粒子の平均サイズに関して測定を行った。
【0169】
結果
本発明者らは、脳切片中の斑負荷(図29)及びPET/MRIイメージングを使用したin vivoグルコース代謝(図30)に対する、能動免疫の影響を評価した。
【0170】
3-12連結Aβ1-14環状ペプチドでのADマウスモデル5XFADの能動免疫は、脳組織におけるアミロイド斑負荷の減少を生じた。
【0171】
TAP01_04抗体又は環状化Aβペプチドでの能動免疫で処置した5XFADマウスの皮質における斑負荷の免疫染色(図29)は、図28に示される皮質、海馬及び扁桃体に関して見られるフロルベタベン保持シグナルとよく一致した。5XFADマウス皮質切片を、全Aβ、ピログルタメートAβ3-X、チオフラビンS及びAβ4-Xに対する抗体で染色した。能動免疫された5XFADマウスは、抗体染色及びチオフラビンS染色を伴う斑負荷の有意な減少を示した(図29)。
【0172】
WT及び5XFADマウスにおいて、18F-FDGイメージングによって、グルコース取り込みを評価した。能動免疫を行った5XFADマウスの皮質、海馬、視床、前脳及び中脳において、グルコース取り込みシグナルのレスキューが見られた(図30B)。
【0173】
10. Tg4-42マウスにおける環状化Aβペプチドの能動免疫及び海馬機能に対する治療効果
6週齢のTg4-42マウスを、完全フロイントアジュバント(CFA)中で乳化された抗原[チオアセタール架橋Aβペプチド1-14-KLHコンジュゲート、DACFRHDSGYECHH[Cys]-アミド(S-CH-S架橋)]で12週間免疫した後、不完全フロイントアジュバント(IFA)中で乳化されたタンパク質をブースター用量で免疫した。IFA中で乳化された抗原のブースター注射を抗原/CFAエマルジョンでの免疫の14日後、28日後、42日後に、その後は毎月(4ヶ月後、5ヶ月後、及び6ヶ月後の3回)投与した。免疫前に、本発明者らの施設でマウスを少なくとも7日間順化させた。マウスの背中2部位で、CFA又はIFA中で乳化された抗原を皮下注射し、各部位に0.05mL~0.1mL注射した(マウスあたり、総量0.1mL~0.2mL)。背中の1部位で、IFAエマルジョン0.1mLの単回皮下注射としてブースターを投与した。力価決定のため、マウスを屠殺した後、マウスから血清試料を単離した。
【0174】
モリス水迷路による空間参照記憶
以前記載されるように(Y. Bouter et al., N-truncated amyloid beta (Abeta) 4-42 forms stable aggregates and induces acute and long-lasting behavioral deficits. Acta Neuropathol 126, 189-205 (2013))、モリス水迷路(R. Morris, Developments of a water-maze procedure for studying spatial learning in the rat. J. Neurosci. Methods 11, 47-60 (1984))を使用して、マウスにおける空間参照記憶を評価した。
【0175】
不偏立体学を使用したニューロン数の定量化
以前記載されるように(G. Antonios et al., Alzheimer therapy with an antibody against N-terminal Abeta 4-X and pyroglutamate Abeta 3-X. Scientific reports 5, 17338 (2015))、立体学的分析を行った。クレシルバイオレット染色切片上で、海馬細胞層CA1(ブレグマ -1.22mm~-3.52mm)を描出し(delineated)、立体学ワークステーション(自動サンプリング用の電動式標本ステージを備えたOlympusのBX51)、StereoInvestigator7(MicroBrightField、米国ウィリストン)及び100×油浸レンズ(oil lens)(NA=1.35)で分析した。
【0176】
結果
3-12連結Aβ1-14環状ペプチドでのADマウスモデルTg4-42の能動免疫は、有意に減少したニューロン損失を伴う、学習及び記憶欠損の実質的なレスキューを明らかにした。
【0177】
モリス水迷路試験(図31A)により、かつ海馬におけるCA1ニューロン総数の計数(図31B)により、海馬依存性学習及び記憶に関して、6.5ヶ月齢のTg4-42マウスにおいて、能動免疫の治療効果を評価した。これをTAP01_04及びIgG1対照抗体での受動免疫の効果と比較した。能動免疫及びTAP01_04抗体での受動免疫は、能動免疫又はTAP01_04免疫を受けた加齢Tg4-42において、空間参照記憶欠損及びCA1ニューロン数を有意に改善した。
【0178】
11. ADの治療のための潜在的ワクチンアプローチとしての環状化Aβペプチドの能動免疫
動物(5XFAD及びTg4-42マウス)をチオアセタール架橋環状ペプチド1-14で免疫し、先に上述するように、ビオチン化環状化ペプチドへの結合に関して血清をスクリーニングした。全てのマウスは、優れた免疫反応を生じた(図32及び図33)。
【0179】
要約
Aβp3-42のヘアピンエピトープを模倣する環状ペプチドを用いたアルツハイマー病の治療及び防止のための能動免疫の療法的潜在能力が、上記結果によって示されてきている。
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【配列表】
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【国際調査報告】