(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】積層グレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20230413BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B60J1/00 A
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554617
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2021056400
(87)【国際公開番号】W WO2021180956
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】トーマス テレガ
【テーマコード(参考)】
3D127
4G061
【Fターム(参考)】
3D127AA04
3D127BB01
3D127CB10
3D127CC02
3D127DD25
3D127EE12
4G061AA04
4G061BA02
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA15
4G061DA21
(57)【要約】
接着性中間層材料の少なくとも1つのシートによってグレージング材料の第2のシートに接合されたグレージング材料の第1のシートを備える車両フロントガラス用積層グレージングを記載する。グレージング材料の第1および第2のシートの各々は、それぞれ第1の主表面および第2の主表面を有し、グレージング材料の第1のシートの第2の主表面は、グレージング材料の第2のシートの第1の主表面に面する。グレージング材料の第2のシートは、その中に少なくとも第1の穴を備え、第1の穴は、積層グレージングの周縁に隣接する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着性中間層材料の少なくとも1つのシートによってグレージング材料の第2のシートに接合されたグレージング材料の第1のシートを備える、車両フロントガラス用の積層グレージングであって、前記グレージング材料の第1および第2のシートの各々は、それぞれ第1の主表面および第2の主表面を有し、前記グレージング材料の第1のシートの前記第2の主表面は、前記グレージング材料の第2のシートの前記第1の主表面に面し、さらに、前記グレージング材料の第2のシートは、その中に少なくとも第1の穴を備え、前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、積層グレージングの周縁に隣接する、車両フロントガラス用の積層グレージング。
【請求項2】
前記積層グレージングが車両内のフロントガラスとして設置されるとき、前記周縁は、下側周縁である、請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項3】
前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、前記グレージング材料の第2のシートの前記第2の主表面と前記グレージング材料の第2のシートの前記第1の主表面との間に延在する、請求項1または請求項2に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、前記グレージング材料の第2のシートの厚さの5%~100%の深さを有する、請求項1または請求項2に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、前記グレージング材料の第2のシートの複数の穴のうちの1つであり、前記グレージング材料の第2のシートの前記第2の主表面内の前記第1の穴の面積は、0.01cm
2~200cm
2、好ましくは0.01cm
2~100cm
2、より好ましくは0.01cm
2~10cm
2、さらにより好ましくは0.01cm
2~5cm
2、さらにより好ましくは0.01cm
2~0.5cm
2である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記グレージング材料の第2のシートの前記複数の穴における1つ以上の他の穴は、0.01cm
2~200cm
2の面積を有し、好ましくは0.01cm
2~100cm
2、より好ましくは0.01cm
2~10cm
2、さらにより好ましくは0.01cm
2~5cm
2、さらにより好ましくは0.01cm
2~0.5cm
2の面積を有する、請求項5に記載の積層グレージング。
【請求項7】
前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、別の穴から第1の間隔で離隔し、前記第1の間隔は、0.5cm~50cm、より好ましくは0.5cm~40cm、より好ましくは0.5cm~30cm、より好ましくは0.5cm~20cm、より好ましくは0.5cm~10cmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、前記積層グレージングの周縁から離隔する、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項9】
前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、前記積層グレージングの前記周縁から1cm~20cm、より好ましくは1cm~15cm、より好ましくは1cm~10cm、より好ましくは、1cm~9cm、または1cm~8cm、または1cm~7cm、または1cm~6cm、または1cm~5cm離隔する、請求項8に記載の積層グレージング。
【請求項10】
前記グレージング材料の第1のシートは、1mm~5mmの厚さを有し、好ましくは、1.3mm~3mmの厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項11】
前記グレージング材料の第2のシートは、1mm~5mmの厚さを有し、好ましくは1.3mm~3mmの厚さを有し、または前記グレージング材料の第2のシートは、化学強化され、1.2mm未満の厚さを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項12】
前記グレージング材料の第2のシートは、前記グレージング材料の第1のシートよりも薄い、請求項1から11のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項13】
3mm~10mmの間の厚さを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項14】
前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、前記グレージング材料の第2のシートの前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に延在し、その結果、前記第1の穴は、第1の貫通穴となり、前記第1の貫通穴は、前記グレージング材料の第2のシートの前記第1の主表面内に第1の開口を有し、前記グレージング材料の第2のシートの前記第2の主表面内に第2の開口を有し、前記第1の開口は、前記接着性中間層材料の少なくとも1つのシートの部分の反対側にある、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項15】
前記グレージング材料の第1のシートの前記第2の主表面は、前記第1の貫通穴を介して直接接触可能ではなく、好ましくは、前記接着性中間層材料の少なくとも1つのシートが、前記第1の貫通穴の前記第1の開口を覆い、より好ましくは、前記接着性中間層材料の少なくとも1つのシートが、前記第1の貫通穴の前記第1の開口全体を覆う、請求項14に記載の積層グレージング。
【請求項16】
前記グレージング材料の第2のシート内の前記第1の穴は、前記グレージング材料の第1のシートの穴および/または前記接着性中間層材料の少なくとも1つのシートの穴と整列しない、請求項1から15のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項17】
前記グレージング材料の第1のシートは、その中に穴を有しない、請求項1から16のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項18】
前記接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、その中に穴を有しない、請求項1から17のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の積層グレージングを備える車両フロントガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に使用するための、特に自動車のフロントガラスとして使用するための、積層グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラス用の従来の積層グレージングは、ポリビニルブチラール(PVB)のシートで接合されたソーダ石灰ケイ酸ガラスの2つのプライを備える。通常、各ガラスシートは、厚さ2.1mmであり、PVBシートは、通常、厚さ0.76mmである。
【0003】
当技術分野で知られているように、自動車用積層フロントガラスは、改善された安全上の利点を車両の運転者に提供する。しかしながら、自動車メーカーは、歩行者との前方衝突が発生した場合の自動車の安全性にも取り組んでいる。
【0004】
歩行者と衝突した場合、歩行者が車両のフロントガラスに衝突し、それによって歩行者のさらなる負傷が生じ得る。
【0005】
米国特許出願公開第2019/322161号明細書は、熱可塑性中間層を介して互いに接合された第1のガラス板および第2のガラス板を少なくとも含む車両用の積層サイドウィンドウを記載しており、第1のガラス板、第2のガラス板および熱可塑性中間層は、各々穴を有し、第1のガラス板、第2のガラス板および熱可塑性中間層の穴は、クランプ要素を固定するためのリードスルーがサイドウィンドウ全体を通して延在するように重ね合わされる。
【0006】
米国特許出願公開第2018/178482号明細書は、貫通取り付け穴を備えた複合ガラス板について記載する。複合ガラス板は、熱可塑性中間層を介して互いに結合された第1のガラス板と第2のガラス板、および複合ガラス板全体を通して延びる少なくとも1つの通路を有し、通路の縁には、通路を貫通する貫通穴を有して一体型で形成されたポリマー要素が設けられる。
【0007】
欧州特許出願公開第0555991号明細書は、キャストインプレースプロセスによって形成された硬化樹脂の中間層を有する2つのガラスシートを備えるガラス積層アセンブリを記載する。ガラスシートのうちの少なくとも1つに取り付け装置用の開口が形成され、ガラスシートの面の間に弾性接着シールが形成され、穴を取り囲む。
【0008】
欧州特許出願公開第0825076号明細書は、ポリビニルブチラールの層によって分離された外側側ガラスシートと内側ガラスシートとを含むフロントガラスを記載する。内側ガラスシートおよび中間層には、外側ガラスシートの内面に置かれた超音波トランスデューサを受け入れる貫通穴が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、車両が歩行者と衝突した場合に歩行者が重傷を負うリスクを低減するように配置された車両フロントガラスを提供することを目的とする。
【0010】
したがって、第1の態様では、本発明は、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートによってグレージング材料の第2のシートに接合されたグレージング材料の第1のシートを備える、車両フロントガラス用の積層グレージングであって、グレージング材料の第1のシートおよび第2のシートの各々は、それぞれ第1の主表面および第2の主表面を有し、グレージング材料の第1のシートの第2の主表面は、グレージング材料の第2のシートの第1の主表面に面し、さらに、グレージング材料の第2のシートは、その中に少なくとも第1の穴を備え、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、積層グレージングの周縁に隣接する、車両フロントガラス用の積層グレージングを提供する。
【0011】
好ましくは、積層グレージングは、車両フロントガラスである。
【0012】
好ましくは、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、グレージング材料の第1のシート内の穴と整列しない。
【0013】
好ましくは、グレージング材料の第1のシートは、その中に穴を有しない。
【0014】
好ましくは、積層グレージングが車両内のフロントガラスとして設置されるとき、周縁は、下側周縁である。
【0015】
好ましくは、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面とグレージング材料の第2のシートの第1の主表面との間に延在する。
【0016】
好ましくは、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、グレージング材料の第2のシートの厚さの5%~100%、より好ましくは、グレージング材料の第2のシートの厚さのA%~B%の深さを有し、Aは、10または15または20または25または30であり、Bは95または90または80、05 75または70または65または60または55または50または49である。
【0017】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、グレージング材料の第2のシートの第1の主表面と第2の主表面との間に延在し、その結果、第1の穴は、第1の貫通穴となり、第1の貫通穴は、グレージング材料の第2のシートの第1の主表面内に第1の開口を有し、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面内に第2の開口を有し、第1の開口は、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートの部分の反対側にある。
【0018】
そのような実施形態では、グレージング材料の第1のシートの第2の主表面は、第1の貫通穴を介して直接接触可能でないことが好ましい。好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、第1の貫通穴の第1の開口を覆い、より好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、第1の貫通穴の第1の開口全体を覆う。
【0019】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、グレージング材料の第2のシートの複数の穴のうちの1つであり、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面内の第1の穴の面積は、0.01cm2~200cm2、好ましくは0.01cm2~100cm2、より好ましくは0.01cm2~10cm2、さらにより好ましくは0.01cm2~5cm2、さらにより好ましくは0.01cm2~0.5cm2である。
【0020】
好ましくは、グレージング材料の第2のシートの複数の穴における1つ以上の他の穴は、0.01cm2~200cm2の面積を有し、好ましくは0.01cm2~100cm2、より好ましくは0.01cm2~10cm2、さらにより好ましくは0.01cm2~5cm2、さらにより好ましくは0.01cm2~0.5cm2の面積を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面の複数の穴のうちの1つであり、穴のうちの2つ以上は、同じ面積を有する。
【0022】
好ましくは、グレージング材料の第2のシート内の複数の穴におけるすべての穴は、同じ面積を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、ある穴から第1の間隔で離隔し、第1の間隔は、0.5cm~50cm、より好ましくは0.5cm~40cm、より好ましくは0.5cm~30cm、より好ましくは0.5cm~20cm、より好ましくは0.5cm~10cmである。
【0024】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、積層グレージングの周縁から離隔する。
【0025】
好ましくは、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、積層グレージングの周縁から1cm~20cm、より好ましくは1cm~15cm、より好ましくは1cm~10cm、より好ましくは、1cm~9cm、または1cm~8cm、または1cm~7cm、または1cm~6cm、または1cm~5cm離隔する。
【0026】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、車両に設置されたときに積層グレージングの下縁となるように構成された積層グレージングの周縁から離隔する。
【0027】
好ましくは、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴は、車両に設置されたときに積層グレージングの下縁となるように構成された積層グレージングの周縁から離隔したグレージング材料の第2のシートの複数の穴のうちの1つである。
【0028】
好ましくは、車両に設置されたときに積層グレージングの下縁となるように構成された積層グレージングの周縁から離隔したグレージング材料の第2のシート内の複数の穴における穴は、一列に配置され、好ましくは、列は、車両に設置されたときに積層グレージングの下縁になるように構成された積層グレージングの周縁に平行である。
【0029】
グレージング材料の第2のシート内の第1の穴がグレージング材料の第2のシート内の複数の穴のうちの1つの穴であるとき、各穴は、同じ面積から±20%以内の面積を有することが好ましい。
【0030】
グレージング材料の第2のシート内の第1の穴がグレージング材料の第2のシート内の複数の穴のうちの1つの領域であるとき、各穴は、同じ面積を有することが好ましい。
【0031】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第1のシートは、1mm~5mmの厚さを有し、好ましくは1.3mm~3mmの厚さを有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシートは、1mm~5mmの厚さを有し、好ましくは1.3mm~3mmの厚さを有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシートは、グレージング材料の第1のシートよりも薄い。
【0034】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第1のシートの第1の主表面は、凸面であり、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面は、凸面である。
【0035】
積層グレージングは、他にも好ましい特徴を有する。
【0036】
好ましくは、積層グレージングは、少なくとも一方向に湾曲する。好ましくは、少なくとも一方向の曲率半径は、500mm~20000mmであり、より好ましくは1000mm~8000mmである。
【0037】
好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質(acoustic modified)PVB、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのエチレンのコポリマー、エチレンおよびメタクリル酸(EMA)のコポリマーまたはUvekol(液体硬化性樹脂)を備える。
【0038】
好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、ポリビニルブチラール(PVB)、EVA、PVC、EMA、ポリウレタン、吸音性改質PVBまたはUvekol(液体硬化性樹脂)のシートである。
【0039】
好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、グレージング材料の第2のシート内の第1の穴と整列された穴を有せず、より好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、その中に穴を有しない。
【0040】
好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、0.3mm~2.3mmの厚さを有し、より好ましくは0.3mm~1.6mm、最も好ましくは0.3mm~0.8mmの厚さを有する。
【0041】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のシートは、1mm~3mmの間の厚さを有する。
【0042】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のシートは、1.4mm~2.8mmの厚さを有し、より好ましくは1.6mm~2.3mmの厚さを有する。
【0043】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のシートは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシートである。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、しばしばソーダ石灰シリカガラス、または単にシート状の「ソーダ石灰」ガラスと呼ばれる。
【0044】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のシートは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシート、特にフロートガラスのシートである。
【0045】
好ましくは、グレージング材料の第2のシートは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスのシートである。
【0046】
好ましくは、グレージング材料の第2のシートは、少なくとも約6wt%(重量パーセント)の酸化アルミニウム(Al2O3)を備える。
【0047】
好ましくは、グレージング材料の第2のシートは、化学強化(chemically strengthened)されたもの、すなわち化学強化ガラスである。グレージング材料の第2のシートが化学強化されるとき、好ましくは、グレージング材料の第2のシートは、1.2mm未満、より好ましくは0.3mm~1mm、さらにより好ましくは0.4mm~0.9mmの厚さを有する。
【0048】
下記の図を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明による積層グレージングの断面図である。
【
図2】本発明による積層グレージングの平面図である。
【
図3】本発明によるフロントガラスを有する車両の内側からの視野の図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、本発明による湾曲積層グレージングの断面を示す。
【0051】
積層グレージング1は、透明フロートガラスなどの組成を有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第1のシート3を有し、通常、積層グレージングに何らかの形で太陽光制御を提供するために着色剤として酸化鉄が添加される。第1のシート3は、2.3mmの厚さを有するが、厚さは、1.4mmから2.5mmの範囲または1.6mmから2.3mmの範囲であり得る。
【0052】
通常のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの組成(重量)は、SiO2 69~74%、Al2O3 0~3%、Na2O 10~16%、K2O 0~5%、MgO 0~6%、CaO 5~14%、SO3 0~2 %、Fe2O3 0.005~2%である。ガラス組成物はまた、他の添加剤、例えば、通常最大2%の量で存在し得る精製助剤を含有し得る。ソーダ石灰シリカガラス組成物は、Co3O4、NiOおよびSeなどの他の着色剤を含有して、透過光を通して見たときに所望の色をガラスに与え得る。ガラスの透過色は、BS EN410などの認識されている規格に基づいて測定され得る。
【0053】
積層グレージング1はまた、1.6mmの厚さを有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシート7を有するが、第2のシートは、1.4mm~2.5mmの範囲内の厚さを有し得、好ましくは、第1のシート3ほど厚くない場合があり得る。
【0054】
第1のシート3は、接着性中間層5によって第2のシート7に接合される。接着性中間層5は、厚さ0.76mmのPVBのシートである。接着性中間層5は、0.3mm~1.8mmの厚さを有し得る。
【0055】
他の適切な接着性中間層は、PVC、EVA、EMAおよびポリウレタンを含む。
【0056】
積層グレージング1は、1つ以上の方向に湾曲する。1つ以上の方向のうちの1つの曲率半径は、1000mm~8000mmである。
【0057】
積層グレージングが2つの方向に湾曲するとき、適切には、各湾曲方向は、互いに直交する。適切には、湾曲の一方または両方の方向の曲率半径は、1000mm~8000mmである。
【0058】
第1のシート3は、第1の凸面9と反対側の第2の凹面11とを有する。第2のシート7は、第1の凸面13と反対側の第2の凹面15とを有する。第1のシート3の凹面11は、接着性中間層5と接触し、第2のシート7の凸面13は、接着性中間層5と接触する。従来の命名法を使用すると、第1のシート3の凸面9は、積層グレージング1の「表面1」(またはS1)であり、第1のシート3の凹面11は、積層グレージング1の「表面2」(またはS2)であり、第2のシート7の凸面13は、積層グレージング1の「表面3」(またはS3)であり、第2のシート7の凹面15は、積層グレージング1の「表面4」(またはS4)である。
【0059】
第2のシート7には、穴のアレイ17がある。
図1から分かるように、この例では、穴のアレイ17内の穴は各々、第2のシート7の厚さを貫通して延在し、各穴は、それぞれ、第1の表面13内の開口および第2の表面15内の開口を有する。PVBのシート5は、第1の表面13の穴の開口の反対側に穴を有せず、その結果、PVBのシート5が第1の表面13内の穴の開口を覆う。
【0060】
この例では、第1のシート3およびPVBのシート5はどちらも、その中に穴を有せず、その結果、第1のシート3またはPVBのシート5内には、穴のアレイ17内のそれぞれの穴と整列された穴は存在しない。
【0061】
図2は、
図1の矢印10の方向における積層グレージング1の平面図である。
【0062】
図2では、積層グレージングの周辺は、車両フロントガラスに典型的なものである。積層グレージングは、下側周縁19を有し、下側周縁19の内側には、穴のアレイ17を形成する、6つの穴17a、17b、17c、17c、17e、17fがある。
【0063】
各穴17a、17b、17c、17c、17e、17fは、直径約0.5cmの円形である。
【0064】
穴17a、17b、17c、17c、17e、17fは、等間隔に配され、その結果、穴17aと17bとの間の間隔が穴17bと17cとの間の間隔と同じになり、他もまた同様である。
【0065】
穴17a、17b、17c、17c、17e、17fは、下側周縁19に平行な一列に並ぶ。
【0066】
穴は、第2のシート7の凹面15上に不明瞭化バンドが存在する、積層グレージングの領域に存在し得る。
【0067】
穴17a、17b、17c、17c、17e、17fを設けることによって、第1のシート3の第1の凸面9に衝撃が加わった場合、第2のシート7は、より破損しやすくなり得、積層グレージング1の剛性が低下する。積層グレージング1がフロントガラスとして車両に設置されるとき、歩行者が車両との衝突に巻き込まれた場合、第1の凸面9との衝突時のフロントガラスの剛性の低下によって、歩行者の負傷の重傷度が軽減される。
【0068】
この例では、下側周縁19は、直線であるが、下側周縁は湾曲し得、穴のアレイは直線状に配置され得、湾曲した下側周縁の曲率に従うように配置され得る。
【0069】
【0070】
図3は、本発明によるフロントガラス100を有する車両の内側からの図を示す。
【0071】
フロントガラス100は、前述の積層グレージング1と実質的に同じである。車両フロントガラスは、点Eと点Fとの間に延在する下側周縁を有する。車両フロントガラスは、点Dと点Gとの間に延在する上側周縁を有する。
【0072】
フロントガラス100の表面4(内側に面する表面)には、複数の穴がある。20個の円形を有する第1の穴のアレイ174が存在する(そのうちの1つのみが175と表示される)。各穴175は、1cm×1cmから3×3cmの間の寸法を有する。すべての穴175は、同じサイズおよび/または面積を有することが好ましい。穴175は、下側周縁E?Fに平行に延びる列に配置される、すなわち、穴175の直径は、下側周縁E?Fに整列され、これに平行である。
【0073】
この実施形態では、フロントガラス100の表面4にも、フロントガラス100の左側の周縁D?Eに沿って延びる第2の穴のアレイ172および右側の周縁F?Gに沿って延びる第3の穴のアレイ176が存在する。第2の穴のアレイ172は、左側の周縁D?Eに平行に一列に配置された7つの円形(そのうちの1つのみが173と表示される)を有する。第3の穴のアレイ176もまた、右側の周縁F?Gに平行に一列に配置された7つの円形の穴(そのうちの1つのみが177と表示される)を有する。
【0074】
第2および第3のアレイにおける穴の各々は、同じサイズおよび/または同じ面積を有する。
【0075】
円形の穴の代わりに、例えば実質的に正方形などの、別の形状の穴が使用され得る。
【0076】
図2を参照すると、穴17a、17b、17c、17c、17e、17fは、積層グレージングを組み立てる前に、従来のダイヤモンド先端ドリルを使用して作製される。穴は、従来のダイヤモンドチップドリルなどで穴を開けるときにガラスシートに破損が生じ得る、ガラスシートの強化の前に、ドリルで開けられる。この例では、各穴17a、17b、17c、17c、17e、17fは、第2のシート7の厚さの5%~100%であり得る同じ深さまで穿孔される。穴は、異なる深さを有し得る。
【0077】
グレージング材料の第2のシートの全厚を通して穴が開けられる実施形態では、穴は、貫通穴と呼ばれ、PVBのシート5は、その中に穴を有せず、特にPVBのシート5は、貫通穴と少なくとも部分的に整列する穴を有さないため、PVBのシート5は、貫通穴を通して第2の表面11と直接接触するのを防止する。
【0078】
積層グレージングの内側に面する表面に穴、好ましくは内側に面するガラスシートの全厚を貫通する穴を有することによって、歩行者が積層フロントガラスの外側に面する表面と衝突した場合に内側のガラスシートをより容易に破損することが見出された。穴は、車両ドライバーの視界を妨げないように位置し、飛石衝突試験において、フロントガラスの性能を低下させない。
【国際調査報告】