(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】液体サンプルの成分を除去するために使用されるマトリックスならびに関連のサンプルカップまたは混合カップ
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230413BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20230413BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20230413BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20230413BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
G01N35/10 K
G01N1/04 H
B01J20/281 R
G01N1/10 C
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554623
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 US2021021359
(87)【国際公開番号】W WO2021183434
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファラー ジェッセ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ラシャペル ロバート ダブル.
(72)【発明者】
【氏名】ペレティア ドミニック
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AD29
2G052DA15
2G052EA08
2G052ED06
2G058BA07
2G058CA05
2G058CC18
(57)【要約】
混合カップに取り付けられ、液体サンプルの標的成分を除去するために自動化学分析装置によって使用されるインサートが、官能化粒子で形成され、あるいは官能化粒子を固定化された状態で担持する多孔質マトリックスを含み、官能化粒子は、液体サンプルの標的成分が官能化粒子に付着するような特性を有する。液体サンプルが、自動化学分析装置の一部を形成するピペットの端部に取り付けられた使い捨ての先端部から混合カップ内に吐出されるとき、液体サンプルは、毛細管作用によってインサートのマトリックス内に引き込まれ、液体サンプルの標的成分がマトリックスの固定化された官能化粒子に付着する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合カップ内に取り付けられ、あるいは挿入可能であり、液体サンプルの標的成分を除去するための自動化学分析装置によって使用されるインサートであって、前記自動化学分析装置は、使い捨てのピペット先端部が取り付けられたピペットと、前記ピペットに動作可能に接続されて、前記液体サンプルを前記ピペット先端部に吸引し、前記液体サンプルを前記ピペット先端部から吐出させるポンプとを有するサンプル計量装置を含み、前記インサートは、
前記液体サンプルの前記標的成分が前記官能化粒子に付着するような特性を有する官能化粒子で形成され、あるいは前記官能化粒子を固定化された状態で担持する多孔質マトリックスであって、前記液体サンプルが内部を通過して流れることを可能にする所定の多孔度を有する多孔質マトリックス
を備え、
前記液体サンプルが前記ピペット先端部から吐出されるとき、前記液体サンプルは、毛細管作用によって前記インサートの前記マトリックスへと引き込まれ、あるいは前記サンプル計量装置の前記ポンプが作用させる正の液体または空気の圧力によって前記マトリックスへと押し込まれ、そのすぐ後に、前記液体サンプルの前記標的成分が前記マトリックスの前記固定化された官能化粒子に付着し、
前記サンプル計量装置の前記ポンプが前記マトリックス内の前記液体サンプルに作用させる負の液体または空気の圧力の下で、前記標的成分を含まない、または前記標的成分の濃度が下げられた液体サンプルが、前記自動化学分析装置による後続の検査のために、前記インサートの前記マトリックスから引き出され、前記ピペット先端部に吸引される、インサート。
【請求項2】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートの前記1つ以上の側壁に、1つ以上の液体流チャネルが形成され、前記1つ以上の液体流チャネルは、前記1つ以上の側壁の少なくとも一部分に沿って長手方向に延びており、前記1つ以上のチャネルは、前記インサートの前記マトリックスに流体接続している、請求項1に記載のインサート。
【請求項3】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートに、中心孔が軸方向に形成され、前記中心孔は、前記上壁から前記底壁まで前記インサートを通過し、前記孔は、前記サンプル計量装置の前記ピペット先端部を少なくとも部分的に受け入れるような寸法である、請求項1に記載のインサート。
【請求項4】
前記インサートの前記上壁に、漏斗状の入口ポートが形成され、前記漏斗状の入口ポートは、前記中心孔に整列し、前記中心孔に流体接続している、請求項3に記載のインサート。
【請求項5】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートは、少なくとも1つのスタンドオフを含み、前記少なくとも1つのスタンドオフは、前記インサートの前記底壁から外へと所定の距離だけ延び、前記少なくとも1つのスタンドオフは、前記インサートが前記混合カップに受け入れられたときに、前記液体サンプルを受け入れるためのチャンバを前記インサートの前記底壁と前記混合カップとの間に画定する役に立つ、請求項1に記載のインサート。
【請求項6】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートは、おおむね円錐台の形状を備えて形成され、前記インサートは、第1の直径を有するとともに前記上壁または上壁付近に位置するおおむね円形の上部と、前記上部から延びて直径が減少していくテーパ状の中間部と、前記中間部から延びて前記底壁または底壁付近に位置するおおむね円柱形の下部とを含み、前記下部は、前記上部の前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する、請求項1に記載のインサート。
【請求項7】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートは、おおむね円柱の形状を備えて形成されている、請求項1に記載のインサート。
【請求項8】
前記混合カップは、前記液体サンプルを受け入れるための内部空洞を画定し、内部底面を含んでおり、
前記インサートは、前記混合カップに受け入れられ、前記インサートの前記底壁が前記混合カップの前記内部底面から離れて位置して、前記混合カップの前記内部底面と協働して前記液体サンプルを受け入れるためのチャンバを画定するように、前記混合カップの前記内部空洞内に配置される、請求項1に記載のインサート。
【請求項9】
前記インサートの前記マトリックスは、官能化粒子を固定化された状態で保持する媒体で形成される、請求項1に記載のインサート。
【請求項10】
前記官能化粒子は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)ビーズである、請求項9に記載のインサート。
【請求項11】
前記IMACビーズは、アガロース系ビーズとシリカ系ビーズとのうちの少なくとも一方である、請求項10に記載のインサート。
【請求項12】
前記官能化粒子は、ナノビーズである、請求項9に記載のインサート。
【請求項13】
前記インサートの前記マトリックスは、官能化粒子で形成される、請求項1に記載のインサート。
【請求項14】
前記官能化粒子は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)ビーズである、請求項13に記載のインサート。
【請求項15】
前記IMACビーズは、アガロース系ビーズとシリカ系ビーズとのうちの少なくとも一方である、請求項14に記載のインサート。
【請求項16】
前記官能化粒子は、ナノビーズである、請求項15に記載のインサート。
【請求項17】
前記マトリックスは、プラスチック結合剤を含むガラス繊維系材料から形成される、請求項1に記載のインサート。
【請求項18】
前記マトリックスは、天然の、合成の、あるいは天然に存在し、もしくは合成的に改質された材料、線維性材料、紙、セルロース、ならびに酢酸セルロースおよびニトロセルロースなどのセルロース誘導体、ガラス繊維、グラスファイバ、綿などの天然素材の布およびナイロンなどの合成による布を含むセルロース材料の膜、シリカゲル、アガロース、デキストラン、およびゼラチンなどの多孔質ゲル、多孔質繊維マトリックス、でんぷん系材料、架橋デキストラン鎖、セラミック材料、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、酢酸ビニルと塩化ビニルとのコポリマー、およびポリ塩化ビニル-シリカの組み合わせからなるフィルムを含むオレフィンおよび熱可塑性材料、からなる群から選択される多孔質材料から形成される、請求項1に記載のインサート。
【請求項19】
前記マトリックスは、焼結ポリエチレンビーズ、ニトロセルロース、グラスファイバ、および紙、からなる材料群から選択される、請求項1に記載のインサート。
【請求項20】
液体サンプルを受け入れるための内部空洞を画定している混合カップと、
前記混合カップの前記内部空洞内に取り付けられたインサートと
の組み合わせであって、
前記混合カップおよび前記インサートは、前記混合カップに受け入れた前記液体サンプルの標的成分を除去するために自動化学分析装置によって使用され、前記自動化学分析装置は、使い捨てのピペット先端部が取り付けられて、前記液体サンプルを前記ピペット先端部に吸引し、前記液体サンプルを前記ピペット先端部から吐出させるピペットを有する、サンプル計量装置を含んでおり、
前記インサートは、前記液体サンプルの前記標的成分が前記官能化粒子に付着するような特性を有する官能化粒子で形成され、あるいは前記官能化粒子を固定化された状態で担持する多孔質マトリックスを含み、前記多孔質マトリックスは、前記液体サンプルが内部を通過して流れることを可能にする所定の多孔度を有し、
前記液体サンプルが前記ピペット先端部から吐出されるとき、前記液体サンプルは、毛細管作用によって前記インサートの前記マトリックスへと引き込まれ、あるいは前記サンプル計量装置の前記ポンプが作用させる正の液体または空気の圧力によって前記マトリックスへと押し込まれ、そのすぐ後に、前記液体サンプルの前記標的成分が前記マトリックスの前記固定化された官能化粒子に付着し、
前記サンプル計量装置の前記ポンプが前記マトリックス内の前記液体サンプルに作用させる負の液体または空気の圧力の下で、前記標的成分を含まない、または前記標的成分の濃度が下げられた液体サンプルが、前記自動化学分析装置による後続の検査のために、前記インサートの前記マトリックスから引き出され、前記ピペット先端部に吸引される、組み合わせ。
【請求項21】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートの前記1つ以上の側壁に、1つ以上の液体流チャネルが形成され、前記1つ以上の液体流チャネルは、前記1つ以上の側壁の少なくとも一部分に沿って長手方向に延びており、前記1つ以上のチャネルは、前記インサートの前記マトリックスに流体接続している、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項22】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートに、中心孔が軸方向に形成され、前記中心孔は、前記上壁から前記底壁まで前記インサートを通過し、前記孔は、前記サンプル計量装置の前記ピペット先端部を少なくとも部分的に受け入れるような寸法である、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項23】
前記インサートの前記上壁に、漏斗状の入口ポートが形成され、前記漏斗状の入口ポートは、前記中心孔に整列し、前記中心孔に連通している、請求項22に記載の組み合わせ。
【請求項24】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記混合カップは、内部底面を含んでおり、
前記インサートは、少なくとも1つのスタンドオフを含み、前記少なくとも1つのスタンドオフは、前記インサートの前記底壁から外へと所定の距離だけ延びて、前記混合カップの前記内部底面に係合し、前記少なくとも1つのスタンドオフは、前記液体サンプルを受け入れるためのチャンバを前記インサートの前記底壁と前記混合カップの前記内部底面との間に画定する役に立つ、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項25】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートは、おおむね円錐台の形状を備えて形成され、前記インサートは、第1の直径を有するとともに前記上壁または上壁付近に位置するおおむね円形の上部と、前記上部から延びて直径が減少していくテーパ状の中間部と、前記中間部から延びて前記底壁または底壁付近に位置するおおむね円柱形の下部とを含み、前記下部は、前記上部の前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項26】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記インサートは、おおむね円柱の形状を備えて形成されている、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項27】
前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とを有し、前記1つ以上の側壁は、前記上壁と前記底壁との間に延在し、
前記混合カップは、内部底面を含んでおり、
前記インサートは、前記インサートの前記底壁が前記混合カップの前記内部底面から離れて位置して、前記混合カップの前記内部底面と協働して前記液体サンプルを受け入れるためのチャンバを画定するように、前記混合カップの前記内部空洞内に配置される、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項28】
前記インサートの前記マトリックスは、官能化粒子を固定化された状態で保持する媒体で形成される、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項29】
前記官能化粒子は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)ビーズである、請求項28に記載の組み合わせ。
【請求項30】
前記IMACビーズは、アガロース系ビーズとシリカ系ビーズとのうちの少なくとも一方である、請求項29に記載の組み合わせ。
【請求項31】
前記官能化粒子は、ナノビーズである、請求項28に記載の組み合わせ。
【請求項32】
前記インサートの前記マトリックスは、官能化粒子で形成される、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項33】
前記官能化粒子は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)ビーズである、請求項32に記載の組み合わせ。
【請求項34】
前記IMACビーズは、アガロース系ビーズとシリカ系ビーズとのうちの少なくとも一方である、請求項33に記載の組み合わせ。
【請求項35】
前記官能化粒子は、ナノビーズである、請求項34に記載の組み合わせ。
【請求項36】
前記マトリックスは、プラスチック結合剤を含むガラス繊維系材料から形成される、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項37】
前記マトリックスは、天然の、合成の、あるいは天然に存在し、もしくは合成的に改質された材料、線維性材料、紙、セルロース、ならびに酢酸セルロースおよびニトロセルロースなどのセルロース誘導体、ガラス繊維、グラスファイバ、綿などの天然素材の布およびナイロンなどの合成による布を含むセルロース材料の膜、シリカゲル、アガロース、デキストラン、およびゼラチンなどの多孔質ゲル、多孔質繊維マトリックス、でんぷん系材料、架橋デキストラン鎖、セラミック材料、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、酢酸ビニルと塩化ビニルとのコポリマー、およびポリ塩化ビニル-シリカの組み合わせからなるフィルムを含むオレフィンおよび熱可塑性材料、からなる群から選択される多孔質材料から形成される、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項38】
前記マトリックスは、焼結ポリエチレンビーズ、ニトロセルロース、グラスファイバ、および紙、からなる材料群から選択される、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項39】
自動化学分析装置を使用して、液体サンプルの標的成分を除去する方法であって、前記自動化学分析装置はサンプルカップとサンプル計量装置とを含んでおり、前記サンプル計量装置は、使い捨てのピペット先端部が取り付けられたピペットと、前記ピペットに動作可能に接続されて、前記液体サンプルを前記ピペット先端部に吸引し、前記液体サンプルを前記ピペット先端部から吐出させるポンプとを有し、前記方法は、
前記サンプルカップに収容された前記液体サンプルを前記ピペット先端部に吸引するステップと、
前記液体サンプルを含む前記ピペット先端部を混合カップの上方に位置させるステップであって、前記混合カップは、前記液体サンプルを受け入れるための内部空洞を画定するとともに内部底面を有し、前記混合カップは、前記内部空洞内に取り付けられたインサートをさらに有し、前記インサートは、前記液体サンプルの前記標的成分が前記官能化粒子に付着するような特性を有する官能化粒子で形成され、あるいは前記官能化粒子を固定化された状態で担持する多孔質マトリックスを含み、前記多孔質マトリックスは、前記液体サンプルが前記多孔質マトリックス内を通過して流れることを可能にする所定の多孔度を有し、前記インサートは、1つ以上の側壁と、上壁と、前記上壁の反対側に位置する底壁とをさらに有し、前記1つ以上の側壁は前記上壁と前記底壁との間に延在し、前記インサートに中心孔が軸方向に形成されており、前記中心孔は、前記インサートの前記上壁から前記底壁まで前記インサートを通過し、前記孔は、前記サンプル計量装置の前記ピペット先端部を少なくとも部分的に受け入れるような寸法である、ステップと、
前記ピペット先端部が前記混合カップ内に配置された前記インサートの前記中心孔に少なくとも部分的に受け入れられるように、前記ピペット先端部を前記混合カップ内に下降させるステップと、
前記ピペット先端部から前記インサート内へと前記液体サンプルを吐出させるステップであって、前記ピペット先端部から吐出される前記液体サンプルを毛細管作用によって前記インサートの前記マトリックスへと引き込み、あるいは前記サンプル計量装置の前記ポンプが作用させる正の液体または空気の圧力によって前記マトリックスへと押し込んで、そのすぐ後に、前記液体サンプルの前記標的成分が前記マトリックスの前記固定化された官能化粒子に付着する、ステップと、
前記インサートの前記中心孔内の前記少なくとも部分的に受け入れられた位置にある前記ピペット先端部を使用して、前記サンプル計量装置の前記ポンプによって前記マトリックス内の前記液体サンプルに負の液体または空気の圧力を加えることにより、前記標的成分を含まない、または前記標的成分の濃度が下げられた液体サンプルを、前記自動化学分析装置による後続の検査のために、前記インサートの前記マトリックスから引き出し、前記ピペット先端部に吸引するステップと
を含む方法。
【請求項40】
前記インサートの前記マトリックスから引き出された前記液体サンプルを、少なくとも2回目として、前記ピペット先端部から前記インサートへと吐出させて、前記ピペット先端部に吸引することで、前記吐出された液体サンプルを前記インサートの前記マトリックスへと少なくとも2回目として流すステップと、
前記インサートの前記中心孔内の前記少なくとも部分的に受け入れられた位置にある前記ピペット先端部を使用して、少なくとも2回目として、前記サンプル計量装置の前記ポンプによって前記マトリックス内の前記液体サンプルに負の液体または空気の圧力を加えることにより、前記標的成分を含まず、あるいは前記標的成分の濃度が下げられた液体サンプルを、少なくとも2回目として、前記インサートの前記マトリックスから引き出し、前記ピペット先端部に再吸引するステップと
をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記インサートの前記1つ以上の側壁に、1つ以上の液体流チャネルが形成され、前記1つ以上の液体流チャネルは、前記1つ以上の側壁の少なくとも一部分に沿って長手方向に延びており、前記1つ以上のチャネルは、前記インサートの前記マトリックスに流体接続し、
前記ピペット先端部から前記インサート内へと前記液体サンプルを吐出させるステップは、前記ピペット先端部から吐出される前記液体サンプルを前記1つ以上の液体流チャネルへと押し込むサブステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記インサートは、前記インサートの前記底壁が前記混合カップの前記内部底面から離れて位置して、前記混合カップの前記内部底面と協働して前記液体サンプルを受け入れるためのチャンバを画定するように、前記混合カップの前記内部空洞内に配置され、
前記ピペット先端部から前記インサート内へと前記液体サンプルを吐出させるステップは、前記ピペット先端部から吐出される前記液体サンプルを前記液体サンプルを受け入れるチャンバへと押し込むサブステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ピペット先端部が前記インサートの前記中心孔に少なくとも部分的に受け入れられるように、前記ピペット先端部を前記混合カップ内に下降させるステップは、前記ピペット先端部と前記中心孔を画定する前記インサートの前記内壁との間に実質的に液体を漏らさないシールを形成するサブステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記インサートの前記中心孔は、前記ピペット先端部が前記インサートの前記中心孔に少なくとも部分的に受け入れられたときに、前記中心孔を画定する前記インサートの内壁の少なくとも一部分と前記ピペット先端部の少なくとも一部分との間に環状の空間をもたらすように寸法付けられ、前記環状の空間は、前記インサートの前記マトリックスに流体接続し、
前記ピペットから前記インサート内へと前記液体サンプルを吐出させるステップは、前記ピペット先端部から吐出される前記液体サンプルを前記環状の空間へと押し込むサブステップを含む、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月9日に出願された「Matrix And Associated Sample Or Mixing Cup Used For Removing Components Of A Liquid Sample」という名称の米国特許仮出願第62/987,077号に関連し、この米国特許仮出願の開示は、ここに参照によって援用され、この米国特許仮出願に基づく優先権が、ここに主張される。
【0002】
さらに、本出願は、IDEXX Laboratories,Inc.を出願人とする2020年3月9日に出願された「Method for Removing Interfering Components of a Liquid Sample Prior to Dispensing Same on a Chemical Reagent Test Slide」という名称の米国特許仮出願第62/986,988号に関連し、この米国特許仮出願の開示は、参照によって本明細書に援用される。
【0003】
(技術分野)
本発明は、広くには、液体サンプルから成分を除去するための技術に関し、より詳細には、血液サンプルからタンパク質、ヘモグロビン、被分析物、および他の構成要素などの成分を除去するために使用される方法、装置、および他の補助物に関する。
【背景技術】
【0004】
上述の米国特許出願第62/986,988号(以下では、「IDEXX特許出願」という)は、IDEXX Laboratories,Inc.によってVetTest(登録商標)、Catalyst Dx(登録商標)、およびCatalyst One(登録商標)という商標のもとで製造および販売されている自動化学分析装置などの自動化学分析装置によって実行される検査または取得される測定値に干渉しかねない全血、希釈血液、血漿、血清(本明細書において、一般に「血液サンプル」と呼ばれる)などの液体サンプルの成分を除去するために使用することができる新規な方法および装置を開示している。
【0005】
例えば、血液サンプル中のヘモグロビンが、胆汁酸アッセイについて行われる測定の精度に影響を及ぼす可能性がある。上述のIDEXX特許出願は、血液サンプルが加えられる混合カップ内に保持されるアガロース系およびシリカ系ビーズなどの多孔質および非多孔質ビーズを使用する方法を記載している。血液サンプル中のヘモグロビンがビーズに付着し、ヘモグロビンが付着したビーズが、重力によって時間とつれてカップの下部に沈降する。カップの上部を占めるヘモグロビンを含まない血液サンプルを、今や化学分析装置の一部を形成するサンプル計量装置のピペットによって吸引し、検査スライド上に配置することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、自身に液体サンプルの標的成分を付着させることで、アッセイに使用される検査スライドまたはキュベットに後に加えることができる標的成分を含まず、あるいは標的成分を減少させたサンプルをもたらす構造的特徴を有するマトリックスを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、サンプルカップ、混合カップ、試薬カップ、または遠心分離カップの一部を形成することができ、液体サンプルの成分の除去または濃度の低減に使用することができるマトリックスを提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、本明細書において広く定義されるとおりの「血液サンプル」などの液体サンプルの不純物または他の望ましくない成分を、サンプルをドライケミストリー試薬検査スライド上に適用する前に除去するために、自動化学分析装置と共に使用されるマトリックス/カップの組み合わせを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、液体サンプルについて行われる診断測定に干渉する可能性がある液体サンプルの成分を除去するための方法を提供することである。
【0010】
本発明のまたさらなる目的は、自動化学分析装置によって使用されるサンプルカップまたは混合カップに受け入れ可能であり、あるいはそのようなカップの一部を形成し、カップへと加えられる液体サンプルの成分を付着させ、サンプルの検査に先立ってサンプルから除去する官能化粒子を保持するマトリックスを提供することである。
【0011】
本発明のまたさらなる目的は、自動化学分析装置と共に使用され、血液サンプルについて行われる検査の精度に影響を及ぼしかねない本明細書において広く定義されるとおりの「血液サンプル」のヘモグロビンまたは他の構成要素を除去するマトリックスを含んでいるサンプルカップ、混合カップ、試薬カップ、または遠心分離カップを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、液体サンプルについて行われる検査、およびそこから導き出される測定値に影響を及ぼしかねない液体サンプルの望ましくない成分を除去する液体サンプル混合/適用技術を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、胆汁酸アッセイ検査スライドなどのドライケミストリー試薬検査スライドへの適用に先立って血液サンプル中のヘモグロビンなどの液体サンプルの成分の濃度が最小化され、あるいは無視できる濃度とされた前処理済み、またはろ過された液体サンプルを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、試薬検査スライドを分析するための現時点において入手可能な自動化学分析装置と、分析装置によって使用され、液体サンプルを受け入れる本発明に従って形成された特別な設計の混合カップとを一緒に使用して、液体サンプルを、液体サンプルについて行われる検査から導出される蛍光または吸光度/反射率の測定の精度に影響を及ぼしかねない干渉成分の濃度を下げるべく調整することである。
【0015】
本発明のまたさらなる目的は、従来からの化学分析装置を使用して液体サンプルの成分を除去し、液体サンプルを従来からの不変のドライケミストリー試薬検査スライドへと適用するための方法および装置を提供することである。
【0016】
本発明のまた別の目的は、液体サンプルを従来からの試薬検査スライド上に適用する前に、液体サンプルの干渉成分または望ましくない成分を除去し、あるいはその存在を最小化することにより、液体サンプルを事前に調整するために使用される官能化粒子を担持する特別なマトリックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一形態によれば、マトリックスが、流体が流れて通過することができる多孔質媒体から形成される。一形態において、マトリックスは、マトリックスを通って流れる流体の成分を除去する官能化粒子を固定化された状態で保持する。例えば、多孔質マトリックスは、マトリックスを通過する液体サンプルの1つ以上の成分が付着する多孔質または非多孔質のアガロース系IMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)ビーズまたはシリカ系IMACビーズあるいは他の官能化粒子を固定化する。したがって、そのような成分が液体サンプルから除去され、あるいはそのような成分の液体サンプルにおける濃度が低下して、自動化学分析装置の化学試薬検査スライドまたはサンプル保持キュベットへと適用できるろ過された液体サンプルがもたらされる。
【0018】
マトリックスは、自動化学分析装置によって使用されるサンプルカップまたは混合カップ、試薬カップ、あるいは遠心分離カップの一部を形成するインサートまたはプラグの形態であってよい。例えば、血液サンプルが、サンプルカップから自動化学分析装置の一部を形成するサンプル計量装置のポンプに接続されたピペットの端部に取り付けられた使い捨ての先端部に吸引され、マトリックスを収容した混合カップへと、ピペットが先端部からカップ内に血液サンプルを吐出することによって移される。毛細管作用によってマトリックスに引き込まれ、あるいはピペットおよびピペットに接続されたポンプからの液体または空気の圧力の影響下でマトリックスに押し込まれる血液サンプルは、混合カップ内に位置するマトリックスを必要に応じて1回または複数回通って流れる。
【0019】
例えばヘモグロビンなどの血液サンプルの標的成分は、マトリックスによって固定化された前述のIMACビーズなどの官能化粒子に対して親和性を有し、そのような官能化粒子に付着し、血液サンプルから除去され、あるいは少なくとも血液サンプル中の濃度が低下する。マトリックスを満たすろ過された血液サンプルは、ピペットの逆向きのポンプ作用によって引き起こされる負の流体の圧力の下でマトリックスから引き出され、混合カップの下部においてマトリックスを通って流出して、ピペットによって再吸引され、必要であれば、ろ過された血液サンプルの標的成分が完全に除去され、あるいはろ過された血液サンプル中の成分の所望の濃度が達成されるまで、混合カップ内のマトリックスに複数回再導入される。
【0020】
本発明のこれらの目的、特徴、および利点、ならびに他の目的、特徴、および利点は、添付の図面に関連して検討されるべき本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】サンプルカップ、試薬カップ、または混合カップに受け入れ可能なインサートまたはプラグとして成形され、カップに加えられた液体サンプルの標的成分を付着させる官能化粒子で形成され、あるいはそのような粒子を固定化された状態で担持する本発明のマトリックスの一形態の下方からの斜視図である。
【
図2】
図1に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの上方からの斜視図である。
【
図3】
図1および
図2に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの上面図である。
【
図4】
図1~
図3に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの底面図である。
【
図5】
図1~
図4に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの側面図である。
【
図6】
図5の線6-6に沿って得た
図1~
図5に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの断面図、およびマトリックスインサートまたはプラグを受け入れた混合カップの断面図である。
【
図7】サンプルカップ、試薬カップ、または混合カップに受け入れ可能なインサートまたはプラグとして成形され、カップに加えられた液体サンプルの標的成分を付着させる官能化粒子で形成され、あるいはそのような粒子を固定化された状態で担持する本発明のマトリックスの別の形態の下方からの斜視図である。
【
図8】
図7に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの上方からの斜視図である。
【
図9】
図7および
図8に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの上面図である。
【
図10】
図7~
図9に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの底面図である。
【
図11】
図7~
図10に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの側面図である。
【
図12】
図11の線12-12に沿って得た
図7~
図11に示した本発明のマトリックスインサートまたはプラグの断面図、およびマトリックスインサートまたはプラグを受け入れた混合カップの断面図である。
【
図13】
図6に示したマトリックスインサートまたはプラグならびに混合カップの断面図であり、液体サンプルをもたらすために混合カップへと挿入中の自動化学分析装置の一部を形成するサンプル計量装置のピペットの先端部を示している。
【
図14】
図13に示したマトリックスインサートまたはプラグ、混合カップ、ならびにピペット先端部の断面図であって、マトリックスインサートまたはプラグを軸方向に貫いて形成された中心孔に完全に受け入れられたピペット先端部を示しており、ピペット先端部の液体サンプルをピペット先端部から吐出する前である。
【
図15】
図14に示した相対位置にあるマトリックスインサートまたはプラグ、混合カップ、およびピペット先端部の断面図であり、ピペット先端部からの吐出後のマトリックスインサートまたはプラグへの液体サンプルの流れの経路を示している。
【
図16】
図15に示した相対位置にあるマトリックスインサートまたはプラグ、混合カップ、およびピペット先端部の断面図であり、液体サンプルがピペット先端部へと再び吸引されるときのマトリックスインサートまたはプラグからの「清浄な」液体サンプルの流れの経路を示している。
【発明の詳細な説明】
【0022】
図1~
図12は、液体サンプル6を検査する前に液体サンプル6の標的成分を除去し、あるいは標的成分の濃度を下げるために自動化学分析装置によって一緒に使用される本発明に従って形成された混合カップまたは試薬カップ4内のマトリックス2の種々の構成を示している。前述したように、液体サンプル6は、限定されるものではないが、全血、希釈血液、血漿、血清、などとして本明細書において広く定義される「血液サンプル」であってよく、標的成分は、限定されるものではないが、上述のIDEXX特許出願に記載されているような血液サンプルについて自動化化学分析装置によって行われる胆汁酸アッセイ検査における成分ヘモグロビン、あるいは抗原、抗体、タンパク質、被分析物、または血液サンプルの何らかの他の構成要素など、化学分析装置において液体サンプル6について行われる検査および取得される測定値に干渉しかねない成分であってよい。背景として、自動化学分析装置は、使い捨てのピペット先端部10が取り付けられるピペット8を有するサンプル計量装置またはサブアセンブリを含み、ピペット8は、液体サンプル6のピペット先端部10への吸引またはピペット先端部10への吐出が可能であるようにポンプ(図示せず)に接続される。
【0023】
上述のIDEXX特許出願において、液体サンプルの標的成分は、混合カップ内の液体サンプルに懸濁したIMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)多孔質ビーズに付着し、ビーズが、付着した成分と共に、重力によってカップの底部に沈降する。カップの上部を占める成分を含まない液体サンプルが、検査スライドへとサンプルを適用するために、ピペットによってピペットの先端部に吸引される。本出願に開示される方法および装置は、以下の段落においてさらに詳しく説明されるように、IMACビーズまたは他の官能化粒子がマトリックス2に固定化され、液体との懸濁液に進入しないという点で、上述の出願に記載された方法および装置から相違する。
【0024】
図1~
図6に示されるように、マトリックス2は、好ましくは、マトリックス2を受け入れる混合カップ、サンプルカップ、試薬カップ、または遠心分離カップ4の内部形状にぴったりと一致するように形作られたインサートまたはプラグ12として形成される。例えば、IDEXX Laboratories,Inc.が販売する上述のCatalyst Dx(登録商標)およびCatalyst One(登録商標)という計器と共に使用されるサンプルカップ、試薬カップ、および混合カップ4は、おおむね円筒形の上部14と、テーパ状の中間部16と、上部14の直径よりも小さい直径を有するおおむね円筒形の下部18とで形成されたおおむね円錐台の形状を有する。したがって、
図1~
図6に示される実施形態において、マトリックスインサートまたはプラグ12(以下では、「マトリックスインサート」)は、同様のおおむね円錐台の形状を有し、おおむね円筒形または円形の上部20が、直径が減少するテーパ状の中間部22に続き、次いで上部20の直径よりも小さい直径を有するおおむね円筒形の下部24に続く。マトリックスインサート12の全体的な外形寸法は、マトリックスインサート12がカップ4によってぴったりと受け入れられ、カップ4の内部形状に一致して、マトリックスインサート12の側壁26がカップ4の側壁28の少なくとも一部分にぴったりと係合するように、マトリックスインサート12を受け入れるカップ4の内部寸法に基づいて選択される。そのような構造は、カップ4に加えられた液体サンプル6がカップ4内に位置するマトリックスインサート12に接触し、さらに詳しく説明されるように、マトリックスインサート12の外側を通るのではなく、毛細管作用あるいはピペット8のポンプ作用によって引き起こされる液体または空気の圧力によってマトリックス2内に引き込まれることを確実にする。
【0025】
あるいは、
図7~
図12に示されるように、マトリックスインサート12は、おおむね円筒形の内部形状を有するサンプルカップ、試薬カップ、または混合カップ4のための円筒形の形状をとることができる。やはり、
図1~
図6に示した実施形態と同様に、円筒形の形状のマトリックスインサート12の寸法は、その外側側壁26が、マトリックスインサート12を受け入れるカップ4の内側側壁28にぴったりと係合するように選択される。
【0026】
上記で説明し、
図1~
図12に示されるマトリックスインサート12のいずれかの実施形態において、マトリックスインサート12は、マトリックスインサート12を受け入れるカップ4の内部底面30からわずかに上方にあって、重力の作用によってマトリックスインサート12を通過し、あるいは化学分析装置のサンプル計量サブアセンブリの一部を形成するピペット8によってマトリックスインサート12から吸引によって引き込まれる液体サンプル6を受け入れるための選択された体積のウェルまたはチャンバ32を底面30と協働して画定することができる。さらに、ウェルまたはチャンバ32は、ピペット8がピペット先端部10から吐出する液体サンプル6を受け入れるための空間ももたらす。これについても、以下の段落で説明する。
【0027】
図1~
図6に示されるマトリックスインサート12の一形態において、ウェルまたはチャンバ32を、マトリックスインサート12の下部24から外側および下方に延在するマトリックスインサート12の一部分である1つ以上のスタンドオフ34によって形成することができる。スタンドオフ34は、マトリックスインサート12の下部24をカップ4の内部底面30の上方に所定の距離だけ持ち上げ、所与の体積を有するチャンバまたはウェル32を画定する。
【0028】
図7~
図12に示される円筒形のマトリックスインサート12も、チャンバまたはウェル32を画定するために、
図1~
図6に示されるような1つ以上のスタンドオフ34を含むことができる。しかしながら、円筒形のマトリックスインサート12が、平坦な底部を有するのではなく、従来からの試験管と同様の湾曲した底部を有する円筒形カップ4において使用される場合、カップ4の底部の曲率が、マトリックスインサート12を底部よりも上方に維持し、液体サンプルを受け入れるウェルまたはチャンバ32をマトリックスインサート12と共に画定するがゆえに、スタンドオフ34は不要であってよいことに留意されたい。
【0029】
あるいは、マトリックスインサート12がカップ4の内部底面30から所与の距離だけ離してカップ4内の所定の位置に固定され、カップ4と協働して液体サンプルを受け入れるウェルまたはチャンバ32を画定する場合、マトリックスインサート12のいずれの実施形態においてもスタンドオフ34は必要とされない。
【0030】
好ましくは、
図1~
図12に示されるように、マトリックスインサート12に、マトリックスインサート12の上面38から底面40まで、マトリックスインサート12の厚さを貫いて軸方向に延びる中心孔36が形成される。この孔36は、好ましくは、形状、長さ、および直径において、ピペット8の端部から延びる使い捨ての先端部10の外形に一致し、この使い捨ての先端部10をぴったりと受け入れるように寸法づけられる。したがって、ピペット先端部10がマトリックスインサート12に形成された中心孔36に受け入れられるとき、ピペット先端部10は、ピペット先端部10によって運ばれた液体サンプル6がピペット先端部10からカップ4の底部に位置する液体サンプルを受け入れるウェルまたはチャンバ32へと吐出されるように、中心孔36とシールを形成する。さらに、先端部10がマトリックスの孔36に受け入れられたときにピペット先端部10とマトリックスインサート12との間に形成されるシールは、インサート12のマトリックス材料を満たす成分を含まない液体サンプル6をインサート12から引き出すためのピペット8による吸引によって引き起こされる充分な逆方向の液体または空気の圧力が存在することを保証することが望ましい。あるいは、マトリックスインサート12の中心孔36は、ピペット先端部10が孔32に受け入れられたときにピペット先端部10と孔36を画定するマトリックスインサート12の内壁44との間に空間42が画定されるように、大きめの内径で形成されてもよい。この環状空間42は、液体サンプル6がピペット先端部10からマトリックスインサート12が位置するカップ4の底部へと吐出されるときに、液体サンプル6の一部がこの空間42内をピペット先端部10の外側側壁に沿って上方に流れ、孔36を画定するマトリックスインサート12の内壁44と接触し、そこで毛細管作用によってマトリックス2内に引き込まれるように設けられる。
【0031】
マトリックスインサート12の孔36を、
図1~
図12に示されるように、マトリックスインサート12の上面38に漏斗状の形状を有する入口開口部46を備えて形成することができる。
【0032】
漏斗状の形状の入口開口部46は、ピペット先端部10の自由端をマトリックスインサート12の孔36内に適切に導く上で役に立つ。
【0033】
やはり
図1~
図12に示されているように、マトリックスインサート12は、マトリックスインサート12の側壁26の長手方向に延びる凹部として形成された1つのチャネル、またはマトリックスインサート12の周囲に互いに周期的な間隔で配置された複数のチャネル48を備えて形成されてよい。チャネル48は、マトリックスインサート12とカップ4の内部底面30との間に位置する液体サンプルを受け入れるウェルまたはチャンバ32に流体接続する。液体サンプル6がピペット先端部10からウェルまたはチャンバ32へと吐出されるとき、液体サンプル6の一部は、チャネル48へと流入し、カップ4の内部側壁28によってチャネル48内に閉じ込められ、マトリックスインサート12の上部20またはマトリックスインサート12の上面38に導かれ、そこで毛細管作用によってマトリックス2内に引き込まれる。チャネル48は、マトリックスインサート12の上部20、およびそこに存在するマトリックス2への液体サンプル6の分配を助けるために設けられる。チャネル48は、サンプル6がインサート12の上面38からマトリックス2へと引き込まれるように、液体サンプル6をマトリックスインサート12の上面38へともたらすためにマトリックスインサート12の長手方向の長さに沿って最後まで延びてよく、あるいはチャネル48は、チャネル48を流れる液体サンプル6がインサート12の側壁26においてマトリックス2内に引き込まれるように、上面38の手前で終わってもよい。
【0034】
マトリックス2は、全血、希釈血液、血漿、血清、または他の形態の血液サンプル、あるいは別の種類の流体である液体サンプル6の流れが、毛細管作用、遠心分離、あるいは空気または液体の圧力の影響によって通過することを許す多孔質材料から形成される。マトリックス2を形成する多孔質材料は、好ましくは、広い粘度または有限の粘度であり、赤血球または白血球、タンパク質(例えば、ヘモグロビン)、白血球、顆粒球、および液体に懸濁した他の種類の粒子などのさまざまなサイズの粒子または微粒子を担持する液体サンプル6を毛細管作用によって容易に吸収し、あるいは「吸い上げる」能力を有し、液体が「目詰まり」をほとんどまたは全く伴わずにマトリックスインサート12の幅および長さを横断することを可能にする多孔性を有する。さらに、マトリックス材料は、例えば前述のIDEXX特許出願に記載されているようなIMACアガロース系ビーズおよびシリカ系ビーズを含む多孔質または非多孔質ビーズおよびナノ粒子などの官能化粒子50などの試薬の担体として作用し、液体サンプル6によって湿潤されたときに粒子50が放出されることがないように、そのような官能化粒子50を固定化された状態に保持する能力を有するべきである。
【0035】
そのようなマトリックス材料は、限定はしないが、合成または天然繊維(例えば、ガラスまたはセルロース系材料、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエステルなどの熱可塑性ポリマー)で構成された繊維質材料、微粒子材料(例えば、ガラスまたは種々の熱可塑性ポリマー)で構成された焼結構造体、あるいはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなど(一般に、本質的に合成)で構成されたキャスト膜フィルムを含むことができる。多孔質マトリックス材料は、焼結ポリエチレンビーズなど、一般に多孔質ポリエチレンとして知られるポリエチレンの焼結された微細な粒子で構成されてよく、好ましくは、そのような材料は、0.35~0.55グラム/立方センチメートルの密度、5~40ミクロンの孔径、および40~60%の空隙体積を有する。架橋または超高分子量ポリエチレンで構成された粒子状ポリエチレンが好ましい。多孔質ポリエチレンで構成された流れ流れマトリックスは、上記の望ましい特徴のすべてを有し、さらに、さまざまなサイズおよび形状に容易に製造される。とくに好ましい材料は、Chromex Corporation FN#38-244-1(ニューヨーク州ブルックリン)からの10~15ミクロン多孔質ポリエチレンである。別の好ましい材料は、今やペンシルベニア州ピッツバーグのGlobal Life Sciences Solutions USA LLCである米国Whatman,Inc.から入手可能なFusion 5(商標)液体フローマトリックス材料である。
【0036】
一形態において、多孔質マトリックス2は、1~250マイクロメートル、さらなる態様においては約3~100マイクロメートル、あるいは約10~約50マイクロメートルの平均孔径を有する開放孔構造を有することができる。
【0037】
本明細書において本発明の発明者が検討しており、マトリックスインサート12を形成することができ、全方向性の流れを生じさせることができる可能な適切な多孔質材料の例は、ジョージア州FairburnのPorex Corporationによって製造された高密度または超高分子量ポリエチレン材料である。この材料は、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の球状粒子を焼結によって融着させることによって製作される。これにより、平均孔径が8~20ミクロンの多孔質構造が粒子のサイズ(それぞれ、20~60ミクロン)に応じて生み出される。
【0038】
ポリエチレン製のマトリックス2を好適に使用することができるが、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニルとのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、などの他のオレフィンまたは他の熱可塑性材料で形成された全方向の流れの材料を、おそらくは使用することができる。そのような材料の例として、GE Osmonics,Inc.(ミネソタ州Minnetonka)からのMagna Nylon Supported Membrane、現在は3M Purification Inc.(コネチカット州Meriden)であるCUNO Inc.からのNovylon Nylon Membrane、および現在は独国DarmstadtのMerck KGaAであるMillipore Corporation(マサチューセッツ州Billerica)からのDurapore(登録商標)Membrane が挙げられる。
【0039】
マトリックスインサート12の形成に好適に使用することができる他の多孔質材料として、天然の、合成の、あるいは天然に存在し、もしくは合成的に改質された材料、すなわち、紙、セルロース、ならびに酢酸セルロースおよびニトロセルロースなどのセルロース誘導体などのセルロース材料の紙(繊維質)または膜(微小孔性)、ガラス繊維、グラスファイバ、天然に存在するもの(例えば、綿)および合成によるもの(例えば、ナイロン)の両方の布、多孔質繊維状マトリックス、でんぷん系材料、架橋デキストラン鎖、セラミック材料、オレフィンまたは熱可塑性材料、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、酢酸ビニルと塩化ビニルとのコポリマー、およびポリ塩化ビニル-シリカの組み合わせ、などが挙げられる。このリストは代表的なものであり、限定を意図するものではない。
【0040】
例えば、米国特許第5,726,010号に記載の流体を流すマトリックスのための多孔質材料の少なくともいくつかが、本発明のマトリックスインサート12の形成に使用可能であり、そのような開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
あるいは、多孔質マトリックス2自体が、固定化された状態に互いに結合した前述のIMACビーズなどの官能化粒子50で形成されてもよい。
【0042】
多孔質マトリックスインサート12を形成する粒子50を、球形であるか、あるいは別の形状であるかにかかわらず、焼結および/またはプレス、あるいは熱の印加によって互いに結合させることができる。例えば、マトリックスインサート12を焼結金型内で形成することができ、より具体的には、マトリックス2は、オフラインの形態または型で焼結および/またはプレスされ、次いでカップ4の下部18に挿入され、あるいは押し込まれる。
【0043】
あるいは、マトリックスインサート12を、粒子媒体をカップ4に部分的に充てんすることによってその場で、すなわちカップ4内で形成することができ、次いで、マトリックスインサート12の上部輪郭を形成するダイが粒子媒体の上部へと下げられ、粒子をインサート12の形状にプレスする。次いで、カップ4、粒子媒体、およびダイを加熱して、粒子を互いに結合およびカップ4の内部側壁28に結合させて、マトリックスインサート12を形成し、インサート12をカップ4内の所望の位置でカップ4に固定することができる。前述のように、多孔質マトリックスインサートを画定する媒体粒子は、球形であっても、あるいは何らかの他の形状であっても、固定化された状態で媒体粒子に付着した官能化ナノ粒子、IMACビーズ、などを有することができ、あるいは媒体粒子自体を官能化させ、マトリックスインサート12に接触する液体サンプル6の標的成分を、これらの官能化媒体粒子に直接付着させるようにしてもよい。
【0044】
マトリックス2の形成における使用が想定される別の方法は、圧力および熱の代わりに粒子のポリマーまたはコポリマー結合などを形成するために結合剤または接着剤を使用することである。そのような結合を形成するプロセスを、試薬または他の官能化粒子50を添加して粒子50を形成して結合させ、官能化された試薬を固定化して多孔質マトリックス2を活性化させるために、マトリックス2の試薬コーティングプロセスと組み合わせることができる。
【0045】
マトリックスインサート12を形成するさらに別の方法においては、官能化粒子50で形成され、あるいは固定化された官能化粒子50を担持する熱可塑性樹脂などの生の液体粒子媒体を金型に注入し、金型内または金型外で硬化させて、所望の形状を有し、流体の流れを通過させることができる多孔質マトリックスインサート12をもたらすことができる。
【0046】
マトリックスインサート12を形成するまたさらなる方法においては、インサート12を、多孔質であり、流体の流れを通過させることができる生の原料媒体をセクションへと切断することによって形成することができ、セクションは、
図1~
図6に示したとおりのスタンドオフ34、チャネル48、中心孔36、および孔36に通じる漏斗状の入口ポート46などの特定の形状および特定の特徴を有し、サンプルカップ、試薬カップ、混合カップ、または遠心分離カップ4に収まり、カップの内部形状に一致できるように機械加工される。
図7~
図12に示した円筒形のマトリックスインサート12の場合、所与の直径の中空管の形態の生の媒体原料を所定の長さのセクションに切断し、やはり例えばピペット先端部10をインサート12の中心孔36へと中心孔36を通って案内する沈められた漏斗状の入口開口部46などの任意の所望の特徴をもたらすように機械加工することができる。
【0047】
マトリックスインサート12がカップ4の外部で形成される場合、マトリックス媒体にコーティングを噴霧し、あるいはスポイトを使用することによって、完成したインサート12をカップ4へと挿入する前にマトリックス媒体を所望の試薬または他の官能化粒子50でコーティングすることができ、官能化試薬または粒子50のコーティングは、毛細管作用によってマトリックス媒体に引き込まれ、あるいは空気または液体の圧力、液体試薬へのマトリックス媒体の浸漬によって媒体に押し込まれ、次いで、マトリックス媒体上の官能化試薬または粒子50は、真空乾燥させられ、あるいは周囲温度または高温の乾燥プロセスの使用、または凍結乾燥によって乾燥させられる。すべてではないにしても、これらのプロセスの多くは、マトリックス媒体をその場で、すなわちマトリックス媒体がすでにカップ4内に存在するときに、試薬または官能化粒子50でコーティングするために使用することができる。
【0048】
官能化粒子50から本発明に従って形成され、あるいは固定化された状態で官能化粒子50を担持するマトリックスインサート12は、液体サンプル6の成分を処理し、除去し、あるいは少なくとも濃度を低下させるために、後述されるやり方で使用され、ここで図面の
図13~
図16を参照すべきである。
【0049】
本発明のマトリックス2を使用して血液成分を除去する一例において、所定の量(例えば、20マイクロリットル)の全血または血液成分(例えば、血漿または血清)が、サンプルカップ(図示せず)から、自動化学分析装置のサンプル計量装置の一部を形成するピペット8の端部に取り付けられた使い捨ての先端部10へと吸引される。次いで、所定の量(例えば、20マイクロリットル)の希釈剤または緩衝液が、別のカップ(図示せず))からピペット先端部10へと吸引される(あるいは、血液サンプルと希釈剤または緩衝液とを事前に混合し、サンプルカップからピペット先端部10へと吸引してもよい)。
【0050】
図13に示されるように、血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液を含むピペット先端部10は、
図14に示されるように、先端部10がマトリックスインサート12に形成された中心孔36によって完全に、または少なくとも部分的に受け入れられるまで、本発明に従って形成された官能化マトリックスインサート12を含む混合カップまたは試薬カップ4へと下降させられる。本発明の一形態において、ピペット先端部10は、上面38および孔36を画定する内側側壁44においてインサート12とシールを形成する。本発明の別の形態においては、ピペット先端部10とマトリックスインサート12との間に完全なシールは形成されず、したがって流体(例えば、血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液)がピペット先端部10とマトリックスインサート12との間の環状の空間42をインサート12の上面38へと流れることができる。
【0051】
ここで、
図15に示されるように、ピペット8のポンプ作用が逆にされ、40マイクロリットルの血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液がピペット先端部10からカップ4の底部(すなわち、液体サンプルを受け入れるウェルまたはチャンバ32が設けられている場合には、そのようなウェルまたはチャンバ)へと吐出され、血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液がマトリックスインサート12に接触する。血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液は、毛細管作用あるいはピペット8のポンプ作用によって引き起こされる液体または空気の圧力の力によってインサート12のマトリックス2に引き込まれ、血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液は、インサート12のマトリックス2によって担持され、あるいはインサート12のマトリックス2を形成する官能化粒子50に曝露される。
【0052】
血液および希釈剤/緩衝液が、インサート12の底面40においてマトリックス2と接触するだけでなく、インサート12の側面のチャネル48および孔空間42を逆流して上昇する際に、その側面26、内側孔壁44、および上面38においてもマトリックス2と接触することに、留意されたい。血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液は、多孔質マトリックスインサート12へと流入し、多孔質マトリックスインサート12を通って流れ、サンプルの標的成分は、ヘモグロビンであっても、何らかの他のタンパク質または細胞型であっても、マトリックス2の固定化された官能化粒子50に付着し、マトリックスインサート12の範囲内にやはり固定化される。血液サンプルがマトリックスインサート12へと加えられる前に希釈剤/緩衝液と事前に混合されない場合、血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液がマトリックス2へと流入し、マトリックス2を通って流れることで、血液サンプルおよび希釈剤/緩衝液の混合が生じることにさらに留意されたい。より具体的には、マトリックス2は、その多孔性に起因して、血液サンプルと希釈剤/緩衝液との乱流混合を引き起こすと同時に、血液サンプルの官能化粒子50との反応も引き起こす。
【0053】
ここで、
図16に示されるように、ピペット先端部10が依然としてインサート12の孔36内の所定の位置にある状態で、ピペット8のポンプ作用が逆にされ、その結果、標的成分を含まず、あるいは標的成分の濃度が低下した血液と希釈剤/緩衝液との混合溶液が、インサート12のマトリックス2から引き出され、おそらくはいくらかの空気を伴い、場合によっては気泡と共に先端部10に再び吸引される。好ましい希釈剤/緩衝液は、泡を消散させる消泡成分を含有しているため、気泡の吸引は問題とならず、さらに、空気は、血液サンプルと希釈剤/緩衝液との互いの混合を助ける。
【0054】
とりわけ液体サンプルの干渉成分を除去する方法を教示している前述のIDEXX特許出願に開示されているように溶液にて官能化粒子を使用する場合に、インサート12のマトリックス2が、高濃度の固定化された官能化粒子50を担持でき、あるいは高濃度の固定化された官能化粒子50で形成可能であることを、理解すべきである。したがって、固定化された官能化粒子50を有する本発明のマトリックス2を使用することにより、液体サンプル6をマトリックス2に1回だけ通すだけで、液体サンプル6の標的成分の大部分またはすべてを除去することが可能である。本発明の官能化マトリックス2の使用のもう1つの利点は、前述のIDEXX特許出願に開示されている方法において実行されるステップである成分が付着した粒子を液体サンプル6内で重力によって沈降させるための時間が、不要であることである。
【0055】
いかなる場合も、標的成分の実質的にすべてがマトリックス2の官能化粒子50に付着することによって液体サンプル6から除去されるまで、液体サンプル6および吸引した空気のピペット先端部10からカップ4の底部への吐出ならびにマトリックスインサート12から引き出される液体サンプル6の先端部10への再吸引の連続により、血液または液体サンプル6を、必要に応じて、インサート12のマトリックス2に何度も通すことができる。このプロセスにおける最後の吸引ステップは、可能な限り多くの液体サンプル6をマトリックス2から引き出すが、マトリックス2の間隙からの標的成分を含まない液体サンプル6の引き出しを助けるために、インサート12を有するカップ4に求心力(すなわち、遠心分離)を加えることが、本発明の範囲に包含されると考えられる。今や「清浄な」液体サンプル6を自動化学分析装置による検査のために化学試薬検査スライドまたはサンプル保持キュベット上にもたらすことができる。
【0056】
このように、本発明のマトリックス2は、インサート12の形態で、本質的にフィルタまたは双方向フローカラムとして作用して、液体サンプル6の標的成分を除去する。
【0057】
マトリックス2自体が、官能化ビーズまたは粒子50で形成されてよく、あるいは別の形態においては、官能化ナノビーズを固定化するために使用されるマイクロビーズから形成されてよい。マトリックス2は、多孔質であり、液体サンプル6がマトリックス2を通って流れることを可能にする。
【0058】
本発明の別の形態において、インサート12は、官能化粒子50を含浸させたマトリックスのドーナツ形状の層の積層から形成されてよく、ドーナツの孔は、インサート12を貫く中心孔36を画定するように位置合わせされる。
【0059】
本発明のさらに別の形態において、インサート12のマトリックス2を、中央孔36の底部とスタンドオフ34によって画定された液体サンプルを受け入れるチャンバ32の上方のインサート12の底面40との間の一般的な領域において、より厚くすることができる。上述の構造により、インサート12は、マトリックス2を通るより良好な流体の流れを生成することができると考えられる。
【0060】
本明細書において、インサート12が自動化学分析装置によって使用される混合カップ4に配置されると主に説明したが、インサート12をサンプルカップ、試薬カップ、遠心分離カップ、あるいは液体サンプル6の標的成分の除去または液体サンプル6における標的成分の濃度の低減に使用することができる任意の他の種類のカップまたは液体保持容器に配置することも考えられ、本明細書および特許請求の範囲において使用される用語「混合カップ」4が、上述のあらゆるカップおよび容器を含むように解釈されるべきであることを、理解すべきである。
【0061】
本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して本明細書において説明したが、本発明はそれらの正確な実施形態に限定されず、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、当業者であれば種々の他の変更および修正を行うことができることを、理解すべきである。
【国際調査報告】