(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】噴射装置用の構成部材および混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関のための噴射装置ならびにこのような構成部材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
F02M55/02 360C
F02M55/02 360B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554738
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2021051310
(87)【国際公開番号】W WO2021180390
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】102020203174.6
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン グレンツ
(72)【発明者】
【氏名】フランク シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ゲカーン ギュンゲア
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ヴェーバー
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AC09
3G066BA55
(57)【要約】
高圧下にある流体を調量するために役立つ、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関のための噴射装置(1)用の構成部材(3;3’)、特に高圧管路(5)または流体分配器(2)であって、少なくとも1つの液圧接続部(15~20)が設けられた基体(14;13)を備え、少なくとも、接続部(15~20)を備えた基体(14;13)が、一段鍛造または多段鍛造により形成されており、基体(14;13)に、鍛造後に切削加工によって内部空間(11)が形成されており、接続部(15~20)に、鍛造後の切削加工によって、交差領域(40~45)において内部空間(11)と交差する接続通路(26~31)が形成されている。交差領域(40~45)が、機械的なバリ取りによりバリ取りされることが提案される。さらに、噴射装置(1)およびこのような構成部材(3;3’)を製造する方法が規定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧下にある流体を調量するために用いられる、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関用の噴射装置(1)用の構成部材(3;3’)、特に高圧管路(5)または流体分配器(2)であって、
少なくとも1つの液圧接続部(15~20)が設けられた基体(14)を備え、少なくとも、前記接続部(15~20)を備えた前記基体(14)は、一段鍛造または多段鍛造により形成されており、前記基体(14)に、前記鍛造後の切削加工によって内部空間(11)が形成されており、前記接続部(15~20)に、前記鍛造後の切削加工によって、交差領域(40~45)において前記内部空間(11)と交差する接続通路(26~31)が形成されている、構成部材(3;3’)において、
前記交差領域(40~45)は、機械的なバリ取りによりバリ取りされていることを特徴とする、構成部材(3;3’)。
【請求項2】
前記交差領域(40~45)は、機械的な引込み式バリ取りによってバリ取りされている、請求項1記載の構成部材。
【請求項3】
前記基体(13)の鍛造された材料は、前記基体(13)の、運転中に前記流体の高圧(p)が加えられている内壁(60)において、圧縮残留応力を有する材料状態で構成されている、請求項2記載の構成部材。
【請求項4】
前記基体(13)の、前記圧縮残留応力を有する材料状態で構成された前記内壁(60)は、前記内部空間(11)を画定し、かつ/または前記基体(13)の、前記圧縮残留応力を有する材料状態で構成された前記内壁(60)は、前記交差領域(40~45)にわたって延びており、かつ/または前記基体(13)の、前記圧縮残留応力を有する材料状態で構成された前記内壁(60)は、少なくとも前記液圧接続部(15~20)の前記接続通路(26~31)にわたって延びている、請求項1から3までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項5】
前記液圧接続部(15~20)は、接続室(32~37)を有し、該接続室(32~37)は、前記接続通路(26~31)を介して前記内部空間(11)に接続されており、前記圧縮残留応力を有する材料状態で構成された前記内壁(60)は、前記接続通路(26~31)から少なくとも部分的に前記接続部(15~20)の前記接続室(32~37)にわたって延びている、請求項4記載の構成部材。
【請求項6】
前記基体(13)の前記内部空間(11)は、少なくとも1つの孔(25)により形成されており、かつ/または前記接続通路(26~31)は、少なくとも1つの孔(26~31)により形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項7】
前記基体(13)および前記少なくとも1つの液圧接続部(15~20)は、鍛造された個別部材(14’)から成形されており、かつ/または前記基体(13)は、オーステナイト特殊鋼、特に1.4301または1.4307の材料番号を有するオーステナイト特殊鋼またはこれに類する特殊鋼をベースとする材料から形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項8】
燃料、特にガソリンおよび/またはエタノールならびに/または燃料との混合物である流体を噴射するために用いられる、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関用の噴射装置(1)であって、請求項1から7のいずれか1項記載の少なくとも1つの構成部材(3,3’)を備えている、噴射装置(1)。
【請求項9】
燃料、特にガソリンおよび/またはエタノールならびに/または燃料との混合物である、高圧下にある流体を調量するために用いられる、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関用の噴射装置のための構成部材(3;3’)を製造する方法、特に高圧管路(5)または流体分配器(2)を製造する方法であって、
基体(14;13)と、前記基体(14;13)に設けられた少なくとも1つの液圧接続部(15~20)を、一段鍛造または多段鍛造により形成し、前記基体(14;13)に、前記鍛造後の切削加工によって内部空間(11)を形成し、前記接続部(15~20)に、前記鍛造後の切削加工によって、交差領域(40~45)において前記内部空間(11)と交差する接続通路(26~31)を形成する方法において、
前記交差領域(40~45)を、機械的なバリ取りによりバリ取りすることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記機械的なバリ取りのために用いられる、引込み式バリ取りツール(50)の切刃(52)に、バリ取りのために、機械的なバリ取り時に冷却のために供給される液状の冷却潤滑剤によって前記交差領域(40~45)に向かって負荷を加える、かつ/または
前記機械的なバリ取りのために用いられる、引込み式バリ取りツール(50)の切刃(52)に、バリ取りのために、前記引込み式バリ取りツール(50)の回転によって、前記交差領域(40~45)に向かって負荷を加える、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記機械的なバリ取り時に前記冷却のために供給される液状の冷却潤滑剤を、少なくとも一時的に高圧を加え、前記基体(13)の鍛造された材料が、前記基体(13)の、運転中に前記流体の高圧が加えられている内壁(60)において、圧縮残留応力を有する材料状態で構成される、請求項9または10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行技術
本発明は、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関に用いられる噴射装置用の構成部材、特に燃料管路または燃料分配器に関する。特に本発明は、内燃機関の燃焼室内への燃料の直噴が行われる、自動車の噴射装置の分野に関する。
【0002】
独国特許出願公開第102016115550号明細書からは、燃料分配器の製造法が知られている。この製造法では、分配器管が、鍛造中間製品から製造される。この場合、1.4301,1.4306,1.4307および1.4404の材料番号を有するオーステナイト鋼を使用することができる。この場合、鍛造中間製品が鍛造工程に基づいて製造により生じた残留応力を有し、発生したクロム炭化物により腐食耐性が減じられることが確認された。公知の方法では、60秒よりも長い、850℃~1100℃の制御された熱処理によって、緩慢な冷却により生じるクロム炭化物は再び消失させられる。機械的特性および腐食耐性は、これにより改善される。熱処理が、穿孔、フライス加工およびねじ切りのための加工特性も改善するので、熱処理は好適には非加工の鍛造中間製品において行われる。
【0003】
発明の開示
請求項1に記載の特徴を有する本発明に係る構成部材および請求項8に記載の特徴を有する本発明に係る噴射装置ならびに請求項9に記載の本発明に係る方法は、改善された構成および機能形式が可能にされているという利点を有している。
【0004】
従属請求項に記載された特徴により、請求項1に記載された構成部材、請求項8に記載された噴射装置および請求項9に記載された方法の有利な改良が可能である。
【0005】
本発明に係る噴射装置は、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関に用いられる。本発明に係る噴射装置は、ガソリンおよび/またはエタノールおよび/または同等の燃料を噴射し、かつ/またはガソリンおよび/またはエタノールおよび/または同等の燃料を有する混合物を噴射するために用いられる。混合物は、たとえば水との混合物であってもよい。本発明に係る構成部材は、このような噴射装置に用いられる。
【0006】
少なくとも構成部材の基体は、好適には特殊鋼、特にオーステナイト特殊鋼である材料から形成されている。特に、材料は、1.4301または1.4307の材料番号を有するオーステナイト特殊鋼またはこのオーステナイト特殊鋼に類する特殊鋼をベースとすることができる。基体に設けられた液圧接続部は、高圧入口、高圧出口または別の高圧接続部として形成されていてもよい。したがって好適には、基体は、高圧入口および少なくとも1つの高圧出口および場合によっては1つ以上の別の高圧接続部と一緒に、鍛造中間製品としての製造時に成形されて、引き続き加工される。
【0007】
したがって、燃料分配器の提案された構成では、はんだ付けレールに対する大きな差異が生じる。はんだ付けレールでは、付加構成部材がはんだ付けされる前に、はんだ付けレールのための管が切削加工されてバリ取りされる。鍛造された構成により、特により高い圧力のための設計を可能にすることができる。自己点火式の内燃機関用の高圧レールとの大きな差異は、材料の選択および加工、特に特殊鋼の鍛造において生じる。電解バリ取り(ECMバリ取り)に対する大きな差異が生じる。ECMのバリ取りのためには、別個の設備と、続く洗浄プロセスとが必要であり、これらは製造コストにおいて大きな割合を占める。これに対して、提案された機械的なバリ取りは、簡単な形式で切削プロセスに続くことができ、特に同一のマシニングセンタで実施することが可能である。このことは、特に、請求項2に記載された有利な改良形に従って提案された引込み式バリ取り(Rueckzugentgraten)に当てはまる。なぜならば、1つ以上の引込み式バリ取り器を有利な方法で切削プロセスに組み込むことができるからである。したがって、製造が簡略化され、部品コストを下げることができる。
【0008】
ECMバリ取りに対する提案された機械的なバリ取りの別の利点は、材料状態に関して生じる。ECMバリ取りでは、孔の交差部分において余剰な材料もしくは少なくとも1つのバリが電気化学的に溶解され、実際に圧縮残留応力のない材料状態が生じる。これとは異なり、提案する構成では、圧縮残留応力を有する材料状態を実現することができ、この材料状態は、特に脈動する内側圧力が加えられた場合に、より高い疲労強度を有している。このことは、特に請求項3に記載の有利な改良形において生じる。したがって、有利な形式で、たとえば自緊処理のような付加的な強度を向上させるプロセスを回避することができる。請求項4および/または請求項5に記載された有利な改良形が特に有利である。
【0009】
有利な幾何学的な構成は、請求項6に記載された有利な改良形により可能である。特にこれにより、回転式バリ取りツール、特に引込み式バリ取りツールによる有利なバリ取りが可能である。
【0010】
液圧接続部を備えた基体の有利な構成は請求項7により可能である。機械的なバリ取りによって、信頼性の高いプロセス制御が可能である。たとえばECMバリ取りでは、除去すべきバリが過度に大きな場合、たとえば電極への通電時に、電極と除去すべきバリとの接触により短絡が発生し、これにより、プロセスは、材料除去なしに停止してしまうだろう。この問題は特に、提案されているオーステナイト特殊鋼において生じる。なぜならば、オーステナイト特殊鋼は、比較的切削が困難であるからである。
【0011】
特に鍛造により、デルタフェライトまたはマルテンサイト変態のような実際には望ましくない組織成分が生じてしまうことがある。提案する機械的なバリ取りにより、このような場合も信頼性の高いプロセス制御を達成することができる。これに対して、ECMバリ取りでは、除去ムラが生じてしまうことがある。なぜならば、溶解挙動が組織構造に依存するからである。提案された機械的なバリ取りにより、請求項7に記載された有利な構成においても、このような欠点を回避することができる。対応する利点は、請求項10および/または請求項11に記載された方法の有利な改良形においても生じる。
【0012】
本発明の好適な実施例を以下の説明において、対応するエレメントに一致する参照符号が備えられた添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の1つの実施例に対応する、燃料分配器として形成された構成部材を備えた、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関用の噴射装置を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示した実施例に対応する構成部材の、
図1に符号IIで示した部分を概略的に示す詳細図である。
【
図3】
図1に示した実施例に対応する構成部材の、
図1に符号IIIで示した部分を、構成部材の長手方向に対して垂直な断面で概略的に示す詳細図である。
【
図4】本発明の1つの可能な構成を説明するための、交差領域の機械的なバリ取りを示す概略図である。
【0014】
発明の実施形態
図1は、1つの実施例に対応する燃料分配器(流体分配器)2を備えた噴射装置1を概略的な断面図で示している。本実施例では、燃料噴射装置1の燃料分配器2は、本発明に対応して形成された構成部材3である。さらに、高圧ポンプ4が設けられている。高圧ポンプ4は、高圧管路5として形成された燃料管路5を介して燃料分配器2に接続されている。高圧ポンプ4の入口6には、運転中に流体として、燃料または燃料との混合物が供給される。対応する形式で、高圧管路5も、本発明による構成部材3’として形成されていてもよい。
【0015】
燃料分配器2は、流体を蓄え、かつ燃料噴射弁7~10として形成された噴射弁7~10に分配するために働き、圧力変動および脈動を減じる。燃料分配器2は、燃料噴射弁7~10の切替え時に発生することがある圧力脈動を減衰するために用いられることもできる。運転中に、構成部材3の内部空間11内には、少なくとも一時的に高圧pが発生することがある。高圧管路5は、場合によっては交換することができる、高圧入口12および高圧出口12’として形成された液圧接続部12,12’と、基体13とを有している。
【0016】
燃料分配器2は、一段鍛造または多段鍛造により形成される管状の基体14を有している。管状の基体14には、高圧入口15として形成された液圧接続部15と、高圧出口16~19もしくはカップ16~19として形成された複数の液圧接続部16~19とが設けられている。さらに、管状の基体14には、圧力センサ接続部20として形成された液圧接続部20が設けられている。本実施例では、管状の基体14、高圧入口15、高圧出口16~19および圧力センサ接続部20が、鍛造された個別部材14’から形成されている。したがって、高圧入口15、高圧出口16~19および圧力センサ接続部20は、基体14に鍛造されている。
【0017】
燃料管路5は、その高圧入口12において高圧ポンプ4に接続され、その高圧出口12’において燃料分配器2の高圧入口15に接続されている。燃料噴射弁7~10は、それぞれ燃料分配器2の高圧出口16~19に接続されている。さらに、圧力センサ接続部20に接続されている圧力センサ21が設けられている。管状の基体14は一方の端部22において、止めねじ23によって閉じられている。変更された構成では、側方および/または半径方向の高圧入口15の代わりに、軸線方向の高圧入口が一方の端部24に設けられていてもよい。
【0018】
鍛造後に、管状の基体14または鍛造された個別部材14’は、少なくとも1回の切削加工により加工される。本実施例では、内部空間11を形成するために、管状の基体14内に鍛造後にさらに孔25が形成される。運転中に、高圧入口15に供給された流体は、この内部空間11を介して、高圧出口16~19に接続された燃料噴射弁7~10へと分配することができる。
【0019】
さらに、切削加工により、鍛造された個別部材14’に孔26~31が加工される。孔27~30は、高圧出口16~19のために用いられる。孔26は、高圧入口15のために用いられる。孔31は、圧力センサ接続部20のために用いられる。さらに、基体13の端部22においてねじ山22’を孔25内に切ることができる。
【0020】
さらに、高圧入口15、高圧出口16~19および圧力センサ接続部20に孔32~37が設けられていてもよく、これらの孔は接続空間32~37を形成する。この実施例では、孔25は、長手方向軸線38に対して軸線方向に配向されている。孔26~37は、長手方向軸線38に関して半径方向または半径方向で偏心して配向されている。長手方向軸線38に関して半径方向または半径方向で偏心した配向では、たとえばエンジンルーム内における取付け時に、好適には接続部15,20の孔26,31,32,37の配向もしくは接続部16~19の孔27~30,33~36の配向は、長手方向軸線の上側または下側で、かつ/または長手方向軸線38を起点としてエンジンから離れる配向またはエンジンに向かう配向で実現することができる。
【0021】
孔26~31により内部空間11と交差する接続通路26~31が形成される。これらの接続通路26~31は、孔32~37を内部空間11に接続する。孔26~31は、内部空間11を形成する孔25と交差している。この場合、切削加工後にバリが残る交差領域40~45が生じる。交差領域40~45は、機械的なバリ取りによってバリ取りが行われる。
【0022】
接続部15,20の可能な構成を、例示的に
図2に示した接続部15につき説明する。接続部16~19の可能な構成を、例示的に
図3に示した接続部16に関連して説明する。機械的なバリ取りのための可能な構成を、
図4につき説明する。これにより、本発明の1つの実施例に従って構成されている構成部材3の可能な構成が生じる。噴射装置1の別の構成部材3’、たとえば高圧管路5も、対応する形式で構成することができ、接続部12、12’は対応する方法で構成され、機械的にバリ取りされていてもよい。
【0023】
図2は、本実施例に対応する構成部材3の、
図1において符号IIで示された部分を、詳細図において概略的に示している。この実施例では、孔26と孔32との間に、円錐形および/または段状の移行部46が設けられている。特に、孔26,32は同軸的に配置されていてもよい。用途に応じて、接続部15に適切なねじ山が設けられていてもよく、これにより、たとえば高圧管路5を接続することができる。
【0024】
交差領域40のバリ取りは、
図4につき説明されているように、孔32から実施することができる。これにより交差領域40に、面取り部40’を形成することができる。
【0025】
図3は、本実施例に対応する構成部材3の、
図1において符号IIIで示された部分を、長手方向軸線38に対して垂直な断面の詳細図において概略的に示している。この実施例では、孔33は、平坦な孔底部47を有し、孔33は孔27に対して偏心して配置されている。この場合、孔27は、長手方向軸線38に対して半径方向に配向されていてもよい。したがって孔33は、長手方向軸線38に関して半径方向で偏心して配向されている。交差領域41のバリ取りは、
図4につき明らかであるように、孔33から実施することができる。これにより、交差領域41に、面取り部41’を形成することができる。
【0026】
したがって、接続部15を、本実施例では、弁カップ15の形態で構成することができる。
【0027】
図2および
図3につき、機械的なバリ取りを行うことができる偏心していない接続部幾何学形状および偏心した接続部幾何学形状を実現するための可能性が図示されている。
【0028】
図4は、本発明の可能な構成を説明するために、引込み式バリ取りツール50による交差領域40の機械的バリ取りを概略的に示す図である。孔25と孔26とは、交差領域40において互いに交差している。引込み式バリ取りツール50は、孔32(
図2)を介して軸線51に沿って送ることができる。引込み式バリ取りツール50は、少なくとも1つの切刃52を有している。送る際に、切刃52は、引込み式バリ取りツール50の外周面53内へと完全にまたは部分的に折り畳まれている。切刃52の繰り出しは、回転54を介して、かつ/または引込み式バリ取りツール50を介して供給することができる冷却潤滑剤の供給によって行うことができる。引込み方向55に引込み式バリ取りツール50を戻すことにより、回転54に基づいて、切刃52による交差領域40の機械的なバリ取りが行われる。回転54および/または供給される液状の冷却潤滑剤により、切刃52には交差領域40に向かって負荷が加えられる。この場合に、面取り部40’を形成することができる。次いで、引込み式バリ取りツール50を取り除くことができ、この場合に切刃52は、外周面53内に再び完全にまたは部分的に折り畳まれる。
【0029】
したがって、交差領域40におけるバリの機械的な除去および切削式のエッジ除去を達成することができる。また、引込み式バリ取りツール50の構成に応じて、引込み式バリ取りツール50の導入および除去を容易にするために、切刃52をたとえばばねにより保持することもできる。
【0030】
孔25~37を形成するための切削加工の時間的な経過は、適切な形式で実現することができる。交差領域40~45の機械的なバリ取りは、適切な形式でこの切削加工に組み込まれるか、またはこの切削加工に続くことができる。
【0031】
可能な方法の実施では、まず内部空間11を形成するための孔25を穿孔することができる。次いで、接続部15~20の接続部幾何学形状のための孔32~37を穿孔し、内部空間11への接続通路26~31として用いられる孔26~31を穿孔することができる。次いで、交差領域40~45の機械的なバリ取りを行うことができる。したがって機械的なバリ取りは、切削加工に続いて行うことができる。
【0032】
方法の1つの可能な構成では、内部空間11のための孔25を穿孔した後に、すべての接続部幾何学形状を加工し、特にすべての孔32~37を穿孔し、次いで接続通路26~31として、または接続孔26~31として用いられるすべての孔26~31を穿孔し、最後にすべての交差領域40~45を機械的にバリ取りする。
【0033】
この方法の可能な変化形は、穿孔およびバリ取りの別の順序を実現することにあり、この順序では、バリ取りが切削加工に統合される。複数の交差領域40~45が機械的にバリ取りされる場合、加工順序は、接続部15~20のうちのそれぞれ1つの接続部に関する。このことは、たとえば、接続部15において、孔32が穿孔され、次いで孔26が穿孔され、次いで交差領域40の機械的なバリ取りが行われることを意味する。これらのステップは、接続部15~20のそれぞれのために、対応する形式で相前後して実施することができる。
【0034】
したがって機械的なバリ取りは、必ずしも切削加工の完了後に行われるわけではない。したがって特に、機械的なバリ取りは、切削加工に統合することもできる。適切なプロセスパラメータおよび適切な冷却潤滑剤の選択を通じて、特に、孔25から交差領域40を介して、かつ孔26を通って延びる内壁60を、圧縮残留応力を有する材料状態で構成することもできる。この内壁60は、移行部46(
図2)もしくは孔底部47(
図3)および少なくとも部分的に孔32~37にわたって延びていてもよい。圧縮残留応力を有する材料状態での内壁60の構成は、改善された疲労強度をもたらす。
【0035】
なお、本発明は、説明した実施例に限定されるものではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧下にある流体を調量するために用いられる、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関用の噴射装置(1)用の構成部材(3;3’)、特
に流体分配器(2)であって、
少なくとも1つの液圧接続部(15~20)が設けられた基体(14)を備え、
前記基体(14)は、一段鍛造または多段鍛造により形成されており、前記基体(14)に、前記鍛造後の切削加工によって内部空間(11)が形成されており、前記
液圧接続部(15~20)に、前記鍛造後の切削加工によって、交差領域(40~45)において前記内部空間(11)と交差する接続通路(26~31)が形成されている、構成部材(3;3’)において、
前記交差領域(40~45)は、機械的なバリ取りによりバリ取りされていることを特徴とする、構成部材(3;3’)。
【請求項2】
前記交差領域(40~45)は、機械的な引込み式バリ取りによってバリ取りされている、請求項1記載の構成部材。
【請求項3】
前記基体(
14)の鍛造された材料は、前記基体(
14)の、運転中に前記流体の高圧(p)が加えられている内壁(60)において、圧縮残留応力を有する材料状態で構成されている、請求項2記載の構成部材。
【請求項4】
前記内壁(60)は、前記内部空間(11)を画定し、かつ/または
前記内壁(60)は、前記交差領域(40~45)にわたって延びており、かつ/または
前記内壁(60)は、少なくとも前記液圧接続部(15~20)の前記接続通路(26~31)にわたって延びている、請求項
3記載の構成部材。
【請求項5】
前記液圧接続部(15~20)は、接続室(32~37)を有し、該接続室(32~37)は、前記接続通路(26~31)を介して前記内部空間(11)に接続されており、
前記内壁(60)は、前記接続通路(26~31)から少なくとも部分的に前記
液圧接続部(15~20)の前記接続室(32~37)にわたって延びている、請求項4記載の構成部材。
【請求項6】
前記基体(
14)の前記内部空間(11)は、少なくとも1つの孔(25)により形成されており、かつ/または前記接続通路(26~31)は、少なくとも1つの孔(26~31)により形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項7】
前記基体(
14)は、鍛造された個別部材(14’)から成形されており、かつ/または前記基体(
14)は、オーステナイト特殊鋼、特に1.4301または1.4307の材料番号を有するオーステナイト特殊鋼またはこれに類する特殊鋼をベースとする材料から形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の構成部材。
【請求項8】
燃料、特にガソリンおよび/またはエタノールならびに/または燃料との混合物である流体を噴射するために用いられる、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関用の噴射装置(1)であって、請求項1から7のいずれか1項記載の少なくとも1つの構成部材(3,3’)を備えている、噴射装置(1)。
【請求項9】
燃料、特にガソリンおよび/またはエタノールならびに/または燃料との混合物である、高圧下にある流体を調量するために用いられる、混合物圧縮型の火花点火式の内燃機関用の噴射装置のための構成部材(3;3’)を製造する方法、特に高圧管路(5)または流体分配器(2)を製造する方法であって、
基体(1
4)と、前記基体(1
4)に設けられた少なくとも1つの液圧接続部(15~20)を、一段鍛造または多段鍛造により形成し、前記基体(1
4)に、前記鍛造後の切削加工によって内部空間(11)を形成し、前記
液圧接続部(15~20)に、前記鍛造後の切削加工によって、交差領域(40~45)において前記内部空間(11)と交差する接続通路(26~31)を形成する方法において、
前記交差領域(40~45)を、機械的なバリ取りによりバリ取りすることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記機械的なバリ取りのために用いられる、引込み式バリ取りツール(50)の切刃(52)に、バリ取りのために、機械的なバリ取り時に冷却のために供給される液状の冷却潤滑剤によって前記交差領域(40~45)に向かって負荷を加える、かつ/または
前記機械的なバリ取りのために用いられる、引込み式バリ取りツール(50)の切刃(52)に、バリ取りのために、前記引込み式バリ取りツール(50)の回転によって、前記交差領域(40~45)に向かって負荷を加える、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記機械的なバリ取り時に前記冷却のために供給される液状の冷却潤滑剤を、少なくとも一時的に高圧を加え、前記基体(
14)の鍛造された材料が、前記基体(
14)の、運転中に前記流体の高圧が加えられている内壁(60)において、圧縮残留応力を有する材料状態で構成される、請求項
10記載の方法。
【国際調査報告】