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特表2023-516831ディリクレ過程を使用して通信チャネルの容量を最適化する方法、システム、及びコンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ディリクレ過程を使用して通信チャネルの容量を最適化する方法、システム、及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/005 20060101AFI20230413BHJP
   G06F 17/18 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H04B7/005
G06F17/18 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579322
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021016387
(87)【国際公開番号】W WO2021256085
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】20305674.2
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】シャーマンスーリ、アラシュ
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
【テーマコード(参考)】
5B056
5K046
【Fターム(参考)】
5B056BB62
5B056BB64
5K046AA05
5K046EF05
5K046EF15
(57)【要約】
本発明は、少なくとも送信機10と、受信機11と、送信機と受信機との間の通信チャネル12と、チャネル条件付き確率分布推定器13とを備える通信システムにおける上記通信チャネルの容量を最適化する方法に関する。送信機10は、上記推定器13によって推定された入力信号確率分布に従った送信確率に関連付けられた信号によって搬送されるメッセージを送信する。送信機10は、少なくともメッセージを入力として取り、チャネル12上で送信される信号を出力する。チャネルは、送信信号を入力として取り、送信メッセージを復号化するために受信機11において処理される受信信号を出力する。pY|X(y|x)で表される確率分布は、送信信号Xに対応する入力Xが与えられた場合の受信信号に対応する出力Yに関するものであり、したがって、送信信号Xが与えられたときに、受信信号Yを出力する確率のチャネル条件付き確率分布を表す。この確率分布は、確率分布の関数基底を使用することによって、チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)の近似として推定され、チャネル条件付き確率分布は、したがって、送信機によって送信される各可能な信号について、上記関数基底からの混合確率分布との混合モデルによって近似される。各可能な送信信号の確率分布は、受信機において受信された少なくとも出力信号から、ディリクレ過程に依拠する崩壊型ギブスサンプリングを使用することによって推定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも送信機(10)と、受信機(11)と、前記送信機と前記受信機との間の通信チャネル(12)と、チャネル条件付き確率分布推定器(13)とを備える通信システムにおける前記通信チャネルの容量を最適化する方法であって、
前記送信機(10)は、前記推定器(13)によって推定された入力信号確率分布に従った送信確率に関連付けられた信号によって搬送されるメッセージを送信し、
前記送信機(10)は、少なくとも前記メッセージを入力として取り、前記チャネル(12)上で送信される前記信号を出力し、前記チャネルは、前記送信信号を入力として取り、前記送信メッセージを復号化するために前記受信機(11)において処理される受信信号を出力し、
前記確率分布は、前記送信信号Xに対応する入力Xが与えられた場合に、前記受信信号に対応する出力Yに関してpY|X(y|x)で表され、したがって、前記送信信号Xが与えられたときに、受信信号Yを出力する確率のチャネル条件付き確率分布を表し、
前記確率分布は、確率分布の関数基底を使用することによって、前記チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)の近似として推定され、前記チャネル条件付き確率分布は、したがって、前記送信機によって送信される各可能な信号について、前記関数基底からの混合確率分布との混合モデルによって近似され、各可能な送信信号の前記確率分布は、前記受信機において受信された少なくとも出力信号から、ディリクレ過程に依拠する崩壊型ギブスサンプリングを使用して推定される、方法。
【請求項2】
前記関数基底は指数関数の族である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記確率分布推定は、確率分布関数g(y|x;θ)の基底への分解に依拠する前記チャネル条件付き確率分布の近似に基づいており、ここで、θはパラメーターθの集合であり、前記分布関数は前記指数型分布族であり、前記パラメーターは平均及び分散であり、それにより、確率分布関数p(y|x;θ)の前記基底によるpY|X(y|x)の前記近似は、
【数1】
によって与えられ、ここで、N、及び前記集合{θ}、{w}は、推定されるパラメーターである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記確率分布関数g(y|x;θ)は、前記指数型分布族からのものであり、θの前記事前分布は、パラメーターλを有する対応する指数分布と共役であり、λ={λ,λ}は、前記パラメーターλの前記共役事前分布のハイパーパラメーターを表し、
N個のクラスターがパラメーター集合{θ}、{w}について作成され、各クラスターは、シンボルをまとめてグループ化するために使用され、前記クラスターは、シンボルの各グループについて1~Nの整数インデックスを関連付けることによって実施され、
で示される前記第iのサンプルのクラスターインデックスが割り当てられ、c-iが前記第iのクラスターを除く全てのクラスターのクラスター割り当てインデックスであるようになっており、事後分布p(c=k|x1:n,y1:n,c-i,λ)が計算され、ここで、x1:nは、前記送信信号の前記シンボルを表し、y1:nは、前記受信信号の前記入力シンボルを表し、
前記事後分布からのサンプリングは、パラメーター{θ}、{w}を更新するために行われ、前記パラメーターN、{θ}、{w}は、したがって、前記チャネル条件付き確率分布の前記近似
【数2】
を提供するように推定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記更新されたパラメーター{θ}、{w}は、前記条件付き確率分布推定値を計算するために前記送信機及び/又は前記受信機に送信される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記事後分布p(c=k|x1:n,y1:n,c-i,λ)は、p(c=k|x1:n,y1:n,c-i,λ)=p(c=k|c-i)p(y|x1:i-1,xi+1:n,y1:i-1,yi+1:n,c-i,c=k,λ)によって与えられ、ここで、
p(c=k|c-i)は、ポリアの壺方式に従って計算され、
【数3】
である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
新たなクラスターが、前記チャネル条件付き確率分布の最適な近似を提供するパラメーターNの最良の値を求めるために作成されるべきか否かが更に検査される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の式
【数4】
を検証する確率から新たなクラスターを作成することがランダムに選ばれ、ここで、Pはp(y|x;θ)と共役である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記入力Xの1つの既定値についてのみ適用され、前記入力Xは既知であり、前記関連付けられた出力Yは、トレーニングモードにおいて、前記入力Xが前記既定値と等しいときにのみ考慮される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
追跡モードにおいて、入力信号確率分布p(x)が、前記チャネル条件付き確率分布推定について考慮され、各観測値yが、前記条件確率分布に関する現在の推定から、yがxに関連付けられる前記確率に対応する重みを用いたpY|X(y|x)の更新に寄与するように、送信シンボルxの値がベイズ手法を用いて推論される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ノンパラメトリック結合密度のモデルが、以下の式として定義され、
【数5】
ここで、パラメーター{θ}、{w}、及び{ψ}は条件付き密度パラメーターを表し、jはクラスターインデックスであり、前記パラメーター(θ,ψ)は、(θ,ψ)~DP(αP0θ×P0ψ)を満たすディリクレ過程「DP」の基底測度から同時に取得され、ここで、αはスケーリングパラメーターである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記信号の集合は、それぞれのシンボルの集合によって表され、前記送信機において使用される最適化されたシンボルの位置及び確率を定義する前記混合モデルのパラメーターは、前記近似されたチャネルの前記容量を最適化するために最適化され、前記最適化されたシンボルの位置及び確率は、その後、前記送信機及び/又は前記受信機に提供される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実施する、少なくとも送信機(10)と、受信機(11)と、前記送信機と前記受信機との間の通信チャネル(12)と、チャネル条件付き確率分布推定器(13)とを備えるシステムであって、
前記推定器は、
前記送信機において使用される前記送信信号(x;p(x))に関する情報を取得し、
前記チャネルを通じて送信され、チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)によって特徴付けられた信号yを受信し、
関数の基底に依拠する分布のモデルによって近似されるチャネル条件付き確率分布を前記受信信号から推定し、
前記推定されたチャネル条件付き確率分布を前記受信機及び/又は前記送信機に送信する、システム。
【請求項14】
請求項12に記載の方法を実行する入力信号確率分布オプティマイザー(14)を更に備え、
前記入力信号分布オプティマイザー(14)は、
前記推定されたチャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)を取得し、
前記入力分布p(x)を最適化し、
前記最適化された入力信号分布を前記送信機(10)及び/又は前記受信機(11)と、前記チャネル条件付き確率分布推定器(13)とに送信する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
命令を含むコンピュータープログラムであって、該命令は、プロセッサによって実行されると、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実施する、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信チャネルの容量の最適化に関し、特に、最適な入力分布を理論的に得ることができない非自明なチャネルの場合を対象にし、これに対処する。
【背景技術】
【0002】
メモリレス通信チャネルの本質的特性は、入力Xが与えられた場合の出力YのpY|X(y|x)で表されるいわゆる「条件付き確率分布」によって表すことができる。既知の通信チャネルのいくつかの例を以下のリストに示す。
・加法性白色ガウス雑音チャネルY=X+N(ここで、Nは、ガウス分布モデルである。)は、受信機における熱雑音によって引き起こされる摂動を受ける有線通信に対応する。
・フェージングチャネルY=a・X+N(ここで、aは、フェージング分布(レイリー分布等)に従う)は、豊富な散乱を伴う無線伝播環境における狭帯域無線チャネルにわたる送信をモデル化する。
・より複雑なチャネルは、非線形効果を伴う可能性がある。これは、例えば、波長分割多重化(いわゆる「WDM伝送」)において送信電力を過剰に増加させたときに、カー効果を無視することができず、カー効果がチャネル容量を低下させる光チャネルの場合であり、これは、非線形シュレディンガー方程式によってもたらされる。
【0003】
条件付き確率分布pY|X(y|x)が正確に分かると、以下のものに依拠して、通信システムを最適化することが可能である。
・チャネルの入力と出力との間の相互情報量を最大にする等の入力信号の設計、
・一般に尤度確率pY|X(y|x)の処理に依拠する最適な受信機の設計。
【0004】
チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)は、学習及び追跡が可能なように、以下では低い変動を有するものと仮定する。
【0005】
一般に、無線通信システムは、線形システムによってモデル化することができる。この線形システムのパラメーターは、トレーニング信号を送信することによって推定される。しかしながら、追跡されるパラメーターの数が多いとき、パイロットの大きなオーバーヘッドが必要とされ、システムスループットを低下させる。さらに、チャネルがより精巧であるとき、追跡されるモデルを定義することが困難又は不可能である。無線通信システムは、今後、利用可能な周波数帯域を利用することを目標として、キャリア周波数が上昇し続ける。テラヘルツ通信(300GHzを越える)が、新世代電気通信(6G)について想定される1つのキーワードである。しかしながら、今日知られているところによれば、テラヘルツ通信は、電子工学とフォトニクスとの間の未開拓分野に新たな素材、新たな無線機器を必要とする。これらの新たなチャネルの強い非線形のランダムな特性は、これらの新たな周波数帯域の最良の利益を得るために無視することができない。不正確なモデルに依拠するのではなく、そのような通信チャネルを学習することが利益となる。
【0006】
送信ストラテジーを最適化するには、最適化された入力分布を送信機において事前に知っていなければならない。受信信号は、チャネル条件付き確率分布を推定するために使用され、次に、チャネル条件付き確率分布は、最適な入力分布を最適化することに使用され、最後に、最適な入力分布は送信機に提供される。チャネル条件付き確率分布のコンパクトで正確な表現は、
○チャネル条件付き確率分布が受信機から送信機にフィードバックされるときのフィードバックリンク上のオーバーヘッドを制限し、
○最適な入力分布を計算する計算複雑度を制限する、
ために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、チャネル条件付き確率分布を学習することと、それに応じて送信方法を最適化することとを併せて行うことには問題がある。主な課題の1つは、チャネルモデルが未知であるときにチャネル条件付き確率分布を学習することである。最も多様なチャネルに対処するためには、チャネルの正確な記述が必要とされるが、その記述は、多くの場合に受信機に高い複雑度をもたらす。したがって、チャネル条件付き確率分布のコンパクトで正確な表現を見つけることがより良い。
【0008】
本開示は、この状況を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、少なくとも送信機(図1の参照符号10)と、受信機(11)と、送信機と受信機との間の通信チャネル(12)と、チャネル条件付き確率分布推定器(13)とを備える通信システムにおける上記通信チャネルの容量を最適化する方法が提案される。
【0010】
送信機(10)は、上記推定器(13)によって推定された入力信号確率分布に従った送信確率に関連付けられた信号によって搬送されるメッセージを送信する。
【0011】
送信機(10)は、少なくともメッセージを入力として取得し、チャネル(12)上で送信される信号を出力し、チャネルは、送信信号を入力として取得し、送信メッセージを復号化するために受信機(11)において処理される受信信号を出力する。
【0012】
Y|X(y|x)で表される確率分布は、送信信号Xに対応する入力Xが与えられた場合の受信信号に対応する出力Yに関するものであり、送信信号Xが与えられたときに、受信信号Yを出力する確率のチャネル条件付き確率分布を表す。
【0013】
より詳細には、確率分布は、確率分布の関数基底を使用することによって、チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)の近似として推定される。チャネル条件付き確率分布は、したがって、送信機によって送信されるのが可能な信号ごとに、上記関数基底からの混合確率分布との混合モデルによって近似される。各可能な送信信号の確率分布は、受信機において受信された少なくとも出力信号から、以下の実施の形態の説明において詳述されるようなディリクレ過程に依拠する崩壊型ギブスサンプリングを使用することによって推定される。
【0014】
本開示を実施することによって、チャネル条件付き確率分布の正確な表現に達することが可能になり、それによって、復号化のロバスト性が高められる。
【0015】
送信機(10)が「少なくとも」メッセージを入力として取得するという表現は、送信機が、推定された入力信号確率分布、より詳細には、オプティマイザー(14)を実装する任意選択の実施の形態においては最適化された入力信号確率分布も取得することができることを指す。同様に、可能な送信信号ごとの確率分布は、受信機において受信された出力信号から、また、最適化された入力信号確率分布によっても推定することができる。
【0016】
計算の実行に比較的有利に思われる一実施の形態においては、上記の関数基底は、指数関数の族において選ばれる。或いは、他の可能な実施の形態は、デジタル積分の既知の方法を使用することができる。
【0017】
一実施の形態においては、確率分布推定は、確率分布関数p(y|x;θ)の基底への分解に依拠するチャネル条件付き確率分布の近似に基づいており、ここで、θはパラメーターθの集合であり、上記分布関数は指数型分布族であり、パラメーターは平均及び分散であり、それにより、確率分布関数p(y|x;θ)の上記基底によるpY|X(y|x)の近似は、
【数1】
によって与えられ、ここで、N、及び集合{θ}、{w}は、推定されるパラメーターである。
【0018】
本実施の形態においては、確率分布関数g(y|x;θ)は、指数型分布族からのものであり、θの事前分布は、パラメーターλを有する対応する指数分布と共役とすることができ、λ={λ,λ}は、パラメーターλの共役事前分布のハイパーパラメーターを表す。
【0019】
その後、以下のステップを行うことができる。
N個のクラスターがパラメーター集合{θ}、{w}について作成され、各クラスターは、シンボルをまとめてグループ化するために使用され、クラスターは、シンボルのグループごとに、1~Nの整数インデックスを関連付けることによって実施され、
で示される第iのサンプルのクラスターインデックスが割り当てられ、c-iが第iのクラスターを除く全てのクラスターのクラスター割り当てインデックスであるようになっており、事後分布p(c=k|x1:n,y1:n,c-i,λ)が計算され、ここで、x1:nは、送信信号のシンボルを表し、y1:nは、受信信号の入力シンボルを表し、
事後分布からのサンプリングは、パラメーター{θ}、{w}を更新するために行われ、パラメーターN、{θ}、{w}は、したがって、チャネル条件付き確率分布の近似
【数2】
を提供するように推定される。
【0020】
本実施の形態においては、更新されたパラメーター{θ}、{w}は、上記条件付き確率分布推定値を計算するために送信機及び/又は受信機に送信され得る。受信機及び/又は送信機において得られる信号伝達は、その後、そのような更新されたパラメーターを用いて強化され得る。本実施の形態においては、その場合に、送信機は、条件付き確率分布のその知識の正確度を改善することができ、それによって、その送信ストラテジーをより効率的に最適化することができる。受信機側では、条件付き確率分布の知識の改善された正確度を使用して、その復号化性能を改善することができる。
【0021】
一実施の形態においては、事後分布p(c=k|x1:n,y1:n,c-i,λ)は、p(c=k|x1:n,y1:n,c-i,λ)=p(c=k|c-i)p(y|x1:i-1,xi+1:n,y1:i-1,yi+1:n,c-i,c=k,λ)によって与えられることができ、ここで、
p(c=k|c-i)は、ポリアの壺方式に従って計算され、
【数3】
である。
【0022】
本実施の形態においては、新たなクラスターが、チャネル条件付き確率分布の最適な近似を提供するパラメーターNの最良の値を求めるために作成されるべきか否かを更に検査され得る。
【0023】
本実施の形態においては、以下の式
【数4】
を検証する確率から新たなクラスターを作成することがランダムに選ばれ得る。ここで、Pはp(y|x;θ)と共役である。
【0024】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、送信メッセージは、信号の有限集合に属する信号によって搬送され、信号のこの集合は、それぞれの可能なシンボルxの集合によって表される。第1の実施の形態においては、送信シンボルxは、「トレーニングモード」では受信機において知られている一方、第2の実施の形態においては、送信シンボルxは知られていない。
【0025】
したがって、第1の実施の形態においては、方法は、入力Xの1つの所定値についてのみ適用することができ、この入力Xは既知であり、関連付けられた出力Yは、入力Xが上記所定値と等しいときにのみ考慮される。
【0026】
第3の実施の形態及び第4の実施の形態において、送信メッセージは、信号の有限集合に必ずしも属しない信号によって搬送される。ただし、第3の実施の形態は、入力Xが既知である状況に対応する一方、第4の実施の形態は、入力Xが既知でない状況に対応し、送信信号は、信号の既知の有限集合に属しない。
【0027】
したがって、入力Xが知られていない第2の実施の形態及び第4の実施の形態は、追跡モードに関連している。この追跡モードにおいて、入力信号確率分布p(x)が、チャネル条件付き確率分布推定について考慮される。各観測値yが、条件確率分布に関する現在の推定から、yがxに関連付けられる確率に対応する重みを用いたpY|X(y|x)の更新に寄与するように、送信シンボルxの値は、ベイズ手法を用いて推論され得る。
【0028】
上記の第2の実施の形態においては、入力信号確率分布p(x)は単にスカラー(確率値)になり、pY|X(y|x)は、yがx=ωに関連付けられる確率に対応する重みを有するpY|X(y|x=ω)になることに留意すべきである。
【0029】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、出力Yは、パラメーター集合{θ}、{w}のN個のクラスターを作成する前に、可能な入力Xの集合に基づいて選択され得ることにも留意すべきである。さらに、入力Xは、通常、第1の実施の形態においては知られ得るので、第1の実施の形態が実施されるとき、複雑度が大きく削減される。
【0030】
別な方法では、通常、第4の実施の形態において、入力Xが既知ではなく、入力Xがシンボル(又は信号)の有限の既知の集合に属しもしないとき、ノンパラメトリック結合密度のモデルを、以下の式として定義することができる。
【数5】
【0031】
ここで、パラメーター{θ}、{w}、及び{ψ}は、条件付き密度パラメーターを表し、jはクラスターインデックスであり、パラメーター(θ,ψ)は、(θ,ψ)~DP(αP0θ×P0ψ)を満たすディリクレ過程「DP」の基底測度から同時に取得され、ここで、αはスケーリングパラメーターである。
【0032】
上記で提示された最適化計算に関する選択肢によれば、信号の集合は、それぞれのシンボルの集合によって表され、送信機において使用される最適化されたシンボルの位置及び確率を定義する上記混合モデルのパラメーターは、近似されたチャネルの容量を最適化するために最適化され、最適化されたシンボルの位置及び確率は、その後、受信機及び/又は送信機に提供される。
【0033】
入力信号分布オプティマイザー(図1の参照符号14)は、その場合に、上記で説明したように行われるチャネル確率分布の推定に依拠する。チャネルの推定用に選ばれた関数基底が指数型分布族であるとき、閉形式表現の導出が可能であり、アルゴリズムは最適解に収束する。オプティマイザー14によって配信される最適化されたp(x)は、その後、推定器13(並びに送信機10及び/又は受信機11)に分配され得る。
【0034】
本開示はまた、上記の方法を実施する、少なくとも送信機(10)と、受信機(11)と、送信機と受信機との間の通信チャネル(12)と、チャネル条件付き確率分布推定器(13)とを備えるシステムを対象とする。このシステムにおいて、推定器は、
送信機において使用される送信信号(x;p(x))に関する情報を取得し、
チャネルを通じて送信され、チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)によって特徴付けられた信号yを受信し、
関数の基底に依拠する分布のモデルによって近似されるチャネル条件付き確率分布を受信信号から推定し、
推定されたチャネル条件付き確率分布を受信機及び/又は送信機に送信する。
【0035】
このシステムは、最適化を実施する方法を実行する入力信号確率分布オプティマイザー(14)を更に備えることができる。ここで、入力信号分布オプティマイザー(14)は、
推定されたチャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)を取得し、
入力分布p(x)を最適化し、
最適化された入力信号分布を送信機(10)、受信機(11)、及び/又はチャネル条件付き確率分布推定器(13)に送信する。
【0036】
本開示はまた、命令を含むコンピュータープログラムであって、該命令は、プロセッサによって実行されると、上記で提示された方法を実施する、コンピュータープログラムを対象とする。プログラムの命令は、受信機、送信機、推定器及び任意選択でオプティマイザーにわたって分散させることができる。
【0037】
本発明のより詳細な内容及び利点は、例として以下に与えられた実施形態の以下の説明を読むことで理解され、関連する図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施態様の一例による全体的なシステムの概観を示す図である。
図2】実施形態の一例としての、図1に示す条件付き確率分布推定器13によって実施されるステップを示す図である。
図3】任意選択の実施形態の一例として、図1に示す入力信号分布オプティマイザー14によって実施されるステップを示す図である。
図4】実施形態の一例としての、図1に示す送信機10によって実施されるステップを示す図である。
図5】実施形態の一例としての、図1に示す受信機11によって実施されるステップを示す図である。
図6】y及びxからの(オプティマイザー14を有しない)受信機におけるチャネル確率分布の推定を示す図である。
図7】{+1、-1,...,-3}に属するxのディリクレ過程及びギブスサンプリングの実施態様の一例を示す図である。
図8】入力オプティマイザー14を伴う本発明の任意選択の実施形態によるシステムを示す図である。
図9】y及び入力信号分布p(x)の最適化から受信機においてチャネル確率分布を推定する一実施態様を示す図である。
図10図9の実施形態による、{+1、-1,...,-3}に属するxの修正されたディリクレ過程及びギブスサンプリングの実施態様の一例を示す図である。
図11】チャネル確率分布を推定するために実施することができ、したがって、本開示による可能なコンピュータープログラムのアルゴリズムの一例を表すことができるステップの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、チャネル条件付き確率分布の推定に加えて、チャネル条件付き確率分布の最適化が任意選択の実施形態に従って更に行われる本開示の状況が説明される。これらの2つのステップ(推定及び最適化)は、その場合に、入力信号の知識、又はその確率分布の知識に依拠することもできるし、単純に入力信号に関する知識なしで行うこともできる(その場合に、いわゆるブラインド「追跡」フェーズが実行される)。
【0040】
したがって、入力信号確率分布は、チャネル容量を最適化するために送信機と共有される。入力信号確率分布は、受信機の性能を最適化するために受信機と共有される。入力信号確率分布は、チャネル条件付き確率分布推定性能を改善するためにチャネル条件付き確率分布推定器と共有される。
【0041】
チャネル知識に従って入力信号確率分布を改善することによって、チャネル容量は改善され、これによって、チャネル条件付き確率分布推定を改善することが更に可能になり、以下同様である。したがって、チャネル条件付き確率分布推定及び入力信号確率分布を併せて最適化する反復的手法が好ましい。この手法のもう1つの利点は、入力信号確率分布の変動速度があまり高くないときに、その入力信号確率分布の変化の追跡が可能になることである。
【0042】
チャネル条件付き確率分布推定器は、好ましくは指数関数族の確率分布の関数基底を使用することによって、チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)の近似を実施することができる。実際、特定の計算は、そのような指数関数を用いると操作がより簡単であることを以下で示す。
【0043】
一般的な手法として、送信機は、条件付き確率分布によって特徴付けられた通信チャネル上でシンボルの有限集合を使用する。この条件付き確率分布は、送信機によって送信される可能なシンボルごとに、指数型分布族からの混合確率分布との混合モデルによって近似され得る。シンボルの有限集合の可能な送信シンボルごとの条件付き確率分布は、少なくとも出力シンボルから、ディリクレ過程に依拠した崩壊型ギブスサンプリングを使用して推定される。その結果は、混合モデルの形態のものであり、構成要素の数は、観測から直接学習される。指数型分布族は、ギブスサンプリングのより簡単な実施態様を得ることを可能にする。
【0044】
条件付き確率分布推定値は、好ましくは受信機において計算される。
【0045】
「トレーニングモード」と呼ばれる第1の実施形態においては、シンボルxが受信機において知られていると考えられる。
【0046】
「追跡モード」と呼ばれる第2の実施形態においては、シンボルxは、受信機において知られていない。一方、入力信号確率分布p(x)は知られており、条件付き確率分布推定ステップ中に考慮されると考えられる。
【0047】
これらの2つの実施形態は、パイロットシンボルが送信される場合、又はデータが正しく復号化されて、チャネルの推定及び近似にパイロット信号として使用することができるとき、若しくはデータが正しく復号化されなかったときに応じて、時間においてインターリーブすることができる。
【0048】
加えて、条件付き確率分布推定器によって推定されるような混合モデルのパラメーターは、(上記の任意選択の実施形態による)入力分布オプティマイザーに提供することができ、入力分布オプティマイザーは、近似されたチャネルの容量を最適化するために送信機において使用される最適化されたシンボルの位置及び確率を定義する。これらの最適化されたシンボルの位置及び確率は、その後、送信機及び受信機に提供される。
【0049】
図1を参照すると、可能な実施形態によるシステムが、送信機10、受信機11、送信チャネル12、チャネル条件付き確率分布推定器13及び任意選択で入力信号確率分布オプティマイザー14を備える。送信機10は、信号の有限集合に属する信号によって搬送されるメッセージを送信し、各信号は、(推定された又は任意選択で最適化された)入力信号確率分布に従った送信確率に関連付けられている。送信機10は、メッセージと、任意選択で、推定された(又は任意選択で最適化された)入力信号確率分布とを入力として取得し、チャネル12上で送信される信号を出力する。チャネル12は、送信信号を入力として取得し、受信信号を出力し、この受信信号は、送信メッセージを復号化するために受信機11において処理される。
【0050】
入力が固定されているときに所与の信号を出力する確率のチャネル条件付き確率分布が計算される。この確率分布は、一般に、離散的な又は連続した入力記号及び/又は出力記号に対して定義することができる。好ましくは、連続した出力記号が考察される。確率分布は、この場合に「確率密度関数」と呼ばれる。
【0051】
チャネル条件付き確率分布推定器13は、受信信号と、入力信号又はその推定された(又は任意選択で最適化された)確率分布とを入力として取得し、チャネル条件付き確率分布を出力する。チャネル条件付き確率分布推定器13は、好ましくは、受信機11、送信機10、又は外部計算デバイスに配置される。
【0052】
次に、入力信号確率分布オプティマイザー14は、条件付き確率分布推定値を入力として取得することができ、最適化された入力信号確率分布を、ここでは、送信機10及び受信機11に出力する。条件付き確率分布推定値は、その後、この実施形態においては、入力信号確率分布オプティマイザー14における最適化された入力信号確率分布の計算に使用することができる。さらに、条件付き確率分布推定値が指数分布の混合によって近似されるときに、最適化をより効率的にすることができることを以下で示す。
【0053】
受信機11は、受信信号と、最適化された入力信号確率分布と、推定されたチャネル条件付き確率分布とを入力として取り、受信信号で搬送されたメッセージの推定を行う。
【0054】
実施形態のこの例では、条件付き確率分布推定器13は、好ましくは図2に示すような以下のステップを実施する。
・S21:シンボルx自体等の送信シンボルxに関する情報、又は送信機10において使用される入力信号分布p(x)を取得するステップ。
○入力信号分布p(x)は、入力信号分布オプティマイザーによって提供することができる、又は
○入力信号分布p(x)は、(以下の実施形態において示すように)送信機によって任意に固定することができる;
・S22:チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)によって特徴付けられたチャネルを通じて送信された信号yを受信するステップ。
○チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)は知ることができる、又は
○チャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)は未知である;
・S23:チャネル条件付き確率分布が未知であるとき、これを受信信号から推定するステップ。チャネル条件付き確率分布は、以下で詳細に示す指数分布のモデルによって近似される;
・S24:推定されたチャネル条件付き確率分布を入力信号分布オプティマイザー14(好ましい実施形態として)及び受信機11に送信するステップ。
【0055】
入力信号分布オプティマイザー14は、一例示的な実施形態においては、図3に示す以下のステップを実施することができる。
・S31:推定されたチャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)を取得するステップ。
・S32:入力分布p(x)を最適化するステップ。
・S33:最適化された入力信号分布を送信機10、受信機11及びチャネル条件付き確率分布推定器13に送信するステップ。
【0056】
送信機10は、好ましくは、図4に示す以下のステップを実施する。
・S41:送信されるメッセージを取得するステップ。
・S42:最適化された入力信号分布p(x)を取得するステップ。
・S43:最適化された入力信号分布p(x)に従って送信される信号を生成するステップ。この信号はメッセージを搬送する。これは、通常、分布整合器と、以下のような符号化変調とを伴う従来技術の技法を使用することによって行うことができる。
-例えば、G. Bocherer、F. Steiner、及びP. Schulte著の「Bandwidth efficient and rate-matched low-density parity-check coded modulation」(IEEE Trans. Commun., vol. 63, no. 12, pp. 4651-4665, Dec. 2015)に開示されているようなLDPC(「低密度パリティ検査(Low Density Parity Check)」を表す)、又は
―例えば、T. Prinz、P. Yuan、G. Bocherer, F、Steiner, O. iscan、R. Bohnke、W. Xu著の「Polar coded probabilistic amplitude shaping for short packets」(Int. workshop. On Signal Processing Advances in Wireless Communications (SPAWC), pp.1-5, Jul. 2017)に開示されているようなポーラー符号。
・S44:チャネル12上で信号を送信するステップ。
【0057】
受信機11は、図5に示す以下のステップを実施することができる。
・S51:受信信号yを取得するステップ。
・S52:最適化された入力信号分布p(x)を取得するステップ。
・S53:推定されたチャネル条件付き確率分布pY|X(y|x)を取得するステップ。
・S54:送信メッセージを推定するステップ。
【0058】
条件付き確率分布推定器13の目的は、確率分布関数g(y|x;θ)の基底への分解に依拠したチャネル確率分布の近似に基づいて、分布pY|X(y|x)を推定することである。ここで、θはパラメーター集合である。分布関数は、指数型分布族であり、パラメーターは、本質的に、スカラーの場合には平均及び分散であり、より一般的に、多変量の場合には平均ベクトル及び共分散行列である。一例として、パラメーター集合θは、いわゆる「多変量正規分布」の平均ベクトル及び共分散行列を含むことができる。別の例として、パラメーター集合θは、仲上分布の形状パラメーター及び広がりパラメーターを含むことができる。
【0059】
一般に、この考慮対象の関数g(y|x;θ)は、以下の形態で記述される。
【数6】
【0060】
ここで、x、h(y,θ)はy及びθの関数であり、a(x,θ)は積率母関数である(x及びyは、この一般的な場合にはベクトルである)。
【0061】
上記指数モデルの共役事前分布は、以下の形態を有する。
【数7】
【0062】
ここで、λ={λ,λ}であり、g’(θ)はθのスカラー関数であり、パラメーターλはθと同じ次元を有し、λはスカラーであり、b(λ,λ)は、事前分布が1つに統合されるように選ばれた事前分布の積率母関数である。
【0063】
したがって、条件付き確率分布推定器13の目的は、前述の基底を使ったpY|X(y|x)の以下の式の最良の近似を見つけることである。
【数8】
【0064】
ここで、N、及び集合{θ}、{w}は、推定されるパラメーターである。重みwは、スカラーパラメーターである。
【0065】
関数pY|X(y|x)は、一般に連続した領域にわたる変数x及びyを有する二変数関数である。
【0066】
第1の場合において、シンボルxは、濃度Mの有限記号Ω={ω,...,ω}に属するものと仮定する。この有限記号は、特に固定されており、既知である。「トレーニングモード」に従った第1の実施形態においては、シンボルxは受信機において既知である。「追跡モード」に従った第2の実施形態においては、シンボルxは受信機において既知でないが、入力信号確率分布p(x)は既知である。
【0067】
第2の場合において、シンボルxは、信号の有限集合に属することができるが、この集合は、特に固定されておらず、既知でない。「トレーニングモード」に従った第3の実施形態においては、シンボルxは受信機において既知である。「追跡モード」に従った第4の実施形態においては、シンボルxは既知でない。
【0068】
第1の場合(上記第1の実施形態及び第2の実施形態に共通である)において、条件付き確率分布は、以下の式によって完全に特徴付けられる。
【数9】
【0069】
ここで、p(x=ω)は、ωを除く全てのxにおいてヌル(null)であり、ωにおける値は、シンボルωが送信される確率に等しい。したがって、xのM個の可能な値に対するyのみのM個の関数pY|X(y|x=ω)を近似することが探求される。
【0070】
これは、以下で述べるように、M個の推定器を使用することによって並列に行うことができる。
【0071】
したがって、この時、以下の近似が考えられる。
【数10】
【0072】
ここで、各遷移は、送信シンボル(第1の実施形態及び第2の実施形態によって共有される第1の場合におけるシンボルの既知の集合のMの濃度を有するM個の可能性)に依存する。
【0073】
式(1)のこの推定問題を解くことは一般に困難である。実際、最良の近似を提供する数Nは知られておらず、このことは、期待値最大化アルゴリズム等の決定論的方法の使用を困難にする。
【0074】
いくつかの実施形態が、条件付き確率分布推定に可能であり、x又はその統計の知識に関する仮定に応じて異なる。
【0075】
特に推定器13によって行われる条件付き確率分布推定の実施形態を以下で説明する。以下で明らかになるように、これらの実施形態は、必ずしもオプティマイザー14を必要としない(オプティマイザー14は上記で示したように任意選択である)。
【0076】
「トレーニングモード」に関連した第1の実施形態においては、送信機によって送信されるシンボルxが条件付き確率分布推定器13において知られていると仮定される。これらのシンボルは、図6に示すように最良の近似を学習するためにパイロットシンボルとして使用される。
【0077】
トレーニングモードに関連したこの第1の実施形態だけでなく、以下で詳述する追跡モードに関連した第2の実施形態においても、オプティマイザー14は必要ではなく、pY|X(y|x)の推定は、最終的には、受信機11においてのみ必要とされる。
【0078】
トレーニングモードは、受信機11において知られている所与の時間/周波数リソース上で送信機10において起動される。受信機11は、送信メッセージ、すなわちxも知っている。したがって、図6を参照すると、シンボルxは、特に推定器13に提供される。通常、xの知識は、受信機において正しい復号化の後も得ることができる(データ支援トレーニング)。これは、復号化されたメッセージの正しさを、例えば巡回冗長検査を通じて検査することによって可能になる。
【0079】
xが受信機において完全に知られているとき、式(1)を解くことは、例えば、
NEAL00:Neal, Radford M.著の「Markov chain sampling methods for Dirichlet process mixture models」(Journal of computational and graphical statistics 9.2 (2000): 249-265)に開示されているようなギブスサンプリングに基づいて説明されている方法を使用することによって達成することができる。
【0080】
それは、特に確率分布関数g(y|x=ω;θ)が指数型分布族に属するときに、計算効率が良く高性能な解法を提供する。ギブスサンプリングは乱択アルゴリズムである。すなわち、ギブスサンプリングは、決定論的手法に依拠するのではなく、生成されたランダム値を使用して統計的推論の近似を行う。一般に、これは反復的手法を伴う。サンプリングを使用することによって、連続した関数の代わりに有限個の要素を操作することによる複雑度の低減が可能になる。特にギブスサンプリングを使用することによって、統計的推論方法において使用される多変量確率分布を表す複雑な多変量関数を効率的に操作することが可能になる。したがって、(1)において推定を行う主要な原理は、パラメーター{θm,j}、{wm,j}に関する事後分布からサンプリングを行い(すなわち、代表的なサンプルを得る)、観測サンプルyを知ることである。特に、ディリクレ過程を無限混合モデルにおいて事前確率分布として使用することができる。ディリクレ過程は、多項分布の可能なパラメーターにわたる分布であり、多項分布の共役事前分布であるという有利な性質を有する。この性質は、ギブスサンプリングのいくつかのステップを単純化するのに役立つ。さらに、ディリクレ過程は、僅かな支配的成分をもたらすことが知られている。したがって、これらのN個の支配的成分を見つけることによって、近似はコンパクト且つ正確になる。
【0081】
NEAL00の教示を本状況に使用するには、或る適応が必要とされる。xは、受信機において知られている有限記号に属すると仮定される。各観測値yは、xのM個の可能な値の中の所与のシンボルxに関連付けられ、xの値に従ってM個の並列推定器の中の1つに供給される(推定器は、その場合に、[NEAL00]に記載されている3つの推定器の中の1つである)。最後に、M個の関数pY|X(y|x=ω)が、M個の推定器から得られる。特に、パラメーターN、{θm,j}、{wm,j}は、各推定器の出力であり、M個の関数pY|X(y|x=ω)を特徴付けることを可能にする。
【0082】
図7は、xがここでは{+1、-1,...,-3}に属する実施態様の視覚的な例である。
【0083】
図11に示すように、トレーニングモードに関して実施形態の一例の詳細を以下に示す。第1の実施形態においては、受信信号yがx=ω等の送信シンボルxに関連付けられているときにのみ受信信号yを選択することが可能である。
【0084】
条件付き確率分布推定は、ステップS10における確率分布関数g(y│θm,j)の基底への分解に依拠するチャネル確率分布の近似に基づいている。ここで、θm,jはパラメーター集合である。分布関数は指数型分布族であり、パラメーターは、本質的に、スカラーの場合には平均及び分散であり、より一般的に、多変量の場合には平均ベクトル及び共分散行列である。
【0085】
ステップS11において、条件付き確率分布推定器は、前述の基底において、以下のpY|X(y|x=ω)の最良の近似を見つけることができる。
【数11】
【0086】
ここで、N、及び集合{θm,j}、{wm,j}は、ステップS12において推定されるパラメーターである。
【0087】
この推定問題を解くことは一般に困難である。実際、最良の近似を提供する数Nは知られておらず、このことは、期待値最大化アルゴリズム等の決定論的方法の使用を困難にする。
【0088】
一方、図11のステップS121~S124に関して以下で説明するクラスターの使用、及び、より一般的にはギブスサンプリングに基づくNEAL00に記載されている方法の使用は、特に確率分布関数g(y|x=ω;θm,j)が指数型分布族に属するときに、計算効率が良く高性能な解法を提供する。ギブスサンプリングは乱択アルゴリズムである。すなわち、ギブスサンプリングは、決定論的手法に依拠するのではなく、生成されたランダム値を使用して統計的推論の近似を行う。一般に、これは反復的手法を伴う。
【0089】
サンプリングを使用することによって、連続した関数の代わりに有限個の要素を操作することによる複雑度の低減が可能になる。特にギブスサンプリングを使用することによって、統計的推論方法において使用される多変量確率分布を表す複雑な多変量関数を効率的に管理することが可能になる。したがって、(1)における推定を行う主要な原理は、パラメーター{θm,j}、{wm,j}に関する事後分布からサンプリングを行い(すなわち、代表的なサンプルを得る)、第mの推定器の入力における観測サンプルyを知ることである。すなわち、受信機によって知られているような送信シンボルx=ωに関連付けられた観測シンボルyの選択後に、すなわち、送信シンボルx=ωであることが知られているタイムスロットについて、観測シンボルは第mの推定器に供給される。
【0090】
特に、ディリクレ過程を無限混合モデルにおいて事前確率分布として使用することができる。ディリクレ過程は、多項分布の可能なパラメーターにわたる分布であり、多項分布の共役事前分布であるという性質を有する(これは、[NEAL00]に記載されているように、ギブスサンプリングのいくつかのステップを単純化するのに役立つ)。さらに、ディリクレ過程は、僅かな支配的成分をもたらすことが知られている。したがって、これらのN個の支配的成分を見つけることによって、近似はコンパクト且つ正確になる。
【0091】
これらの成分を扱いやすい方法で求めるために、確率分布からサンプルを引き出すことを可能にするモンテカルロ法(より具体的にはマルコフ連鎖モンテカルロ)を適用することができる。より具体的には、ギブスサンプリングが、本開示を実施するアルゴリズムの関連したクラスを提供する。ギブスサンプリング法は、一般に、計算量が多い数値積分ステップを伴う。好都合なことに、確率分布関数g(y|x;θ)が共役事前分布(これは指数型分布族の場合である)であるとき、積分は、計算複雑度を大幅に削減する閉形式表現で行うことができる。pY|X(y|x=ω)は、g(y|x;θ)関数の加重和であるので、その共役事前分布も知られており、効率的に計算される。ギブスサンプリングの出力において、値N、及び集合{θm,j}、{wm,j}は、図11の全体的なステップS12として示すように推定される。
【0092】
本場合には、[NEAL00]の崩壊型ギブスサンプリングが、図11に示す特定の実施形態において使用され、以下のステップによって第mの推定器の特定の場合において適用される。
・ステップS10において、基底g(y|θ)を指数型分布族からのものとみなす。
○これによって、θの事前分布を、パラメーターλを有する指数分布と共役であるとみなすことが可能になる。これは、後続のステップに対して閉形式表現を有することを可能にする数学的トリックである。
○λ={λ,λ}は、パラメーターの共役事前分布のハイパーパラメーターを表す。
・ステップS11において、送信シンボルx=ωに関連付けられた観測シンボル{y}の選択が行われる。ここで、yは、選択された観測シンボルの中の第nのシンボルである。式x1:n=ωは、ここで考慮されている全ての送信シンボルが同じであり、ωに等しいことを表す。
【0093】
次に、全体的なステップS12を、以下のようにサブステップS121~S124に分解することができる。
・ステップS121において、パラメーター集合{θm,j}、{wm,j}のN個のクラスターを考える。
○受信シンボルをまとめてグループ化するためにクラスターが使用される。クラスターは、以下で説明するように、シンボルグループごとに1~Nの整数インデックスを関連付けることによって実施される。このクラスター割り当て手法は、各受信シンボルが、(1)におけるpY|X(y|x=ω)を構成するN個のモードの中の1つに関連付けられる可能性がより高いことによって理にかなったものとすることができる。
○第iの観測シンボルのクラスター割り当てインデックスはcである。
○第iのクラスターを除く全てのクラスターのクラスター割り当てインデックスをc-iとする。
・ステップS122において、事後分布p(c=k|y1:n,c-i,λ,x1:n=ω)を計算する。ここで、y1:nは、送信シンボルがωであるとの仮定の下で、受信信号yの入力シンボルを表す。以下のことを示すことができる。
○p(c=k|y1:n,c-i,λ,x1:n=ω)=p(c=k|c-i)p(y|y1:i-1,yi+1:n,c-i,c=k,λ,x1:n=ω
○p(c=k|c-i)は、例えばポリアの壺方式によって計算される。
○p(y|x=ω,θ)が近似
【数12】
に従っていることから計算可能である
【数13】
。ここで、g(y|θ)は、共役事前分布が既知であることを伴う指数型分布族からのものである。
・ステップS123において、パラメーター{θm,j}、{wm,j}を更新するために、事後分布からのサンプリングが行われる。
・新たなクラスターを作成しなければならないか否かを確認することも好ましい。これは、チャネル条件付き確率分布の最良の近似を提供するNの最良の値を求めるのに役立つ。これは、以下の式として定義される新たなクラスターを最初に開始することによって、ステップS124において行われる。
【数14】
ここで、Pは、p(y|x=ω;θm,j)(パラメーターλを有する)と共役である。次に、この確率から新たなクラスターを作成することがランダムに選ばれる。したがって、その確率を検証する確率から新たなクラスターを作成することがランダムに選ばれる。
【0094】
この手順の出力において、パラメーターN、{θm,j}、{wm,j}は推定され、(1)からチャネル条件付き確率分布pY|X(y|x=ω)の近似を提供する。この手順は繰り返されるか、又は、M個の推定器用に並列に実行される。
【0095】
統計的知識を用いて「追跡モード」を実施する第2の実施形態を以下に示す。このモードは、第1の実施形態の後に効率的に使用される。送信シンボルxは、この実施形態においては知ることができないが、以下の図9に示すように、p(x)の知識は、(1)の値を求めるために引き続き使用することができ、その後、推定器13(並びに受信機11及び送信機10)に提供される。実際に、観測シンボルから行われる選択ステップはない。一方、M個の推定器は、引き続き計算され、全てがいずれの観測シンボルも入力とみなす。ベイズ推論の目的は、それらが第mの推定器に関連付けられたシンボルx=ωの送信に対応するとの信念に従って観測シンボルを重み付けすることである。
【0096】
トレーニングモードとの主な相違は、送信シンボルxが知られていないことである。一方、xの値は、ベイズ手法を用いて推論することができ、すなわち、各観測値yは、条件確率分布に関する現在の推定から、yがωに関連付けられる確率に対応する重みを用いたpY|X(y|x=ω)の更新に寄与する。
【0097】
上記の追跡モードを実施する第2の実施形態に関する詳細を以下に示す。
【0098】
クラスタリング技法が使用される。(θ)が第jのクラスターに属する場合に、クラスター割り当てラベルをs=jとする。ρ=[s,...,sがクラスター割り当てラベルのベクトルを表すものとする。共変量依存の壺(covariate-dependent urn)方式によるディリクレ過程(DP:Dirichlet Process)における予測を使用すると、以下の式が得られる。
【数15】
【0099】
各推定器について、観測シンボルから条件付き確率分布pY|X(y|x=ω)を更新するために、以下の式を計算することができる。
【数16】
ここで、
【数17】
である。
【0100】
クラスターは、その後、第1の実施形態と同様に更新することができる。共変量依存の壺方式によるディリクレ過程(DP)における予測の原理の詳細は、例えば、文献「Improving prediction from Dirichlet process mixtures via enrichment」(Sara K. Wade, David B. Dunson, Sonia Petrone, Lorenzo Trippa, Journal of Machine Learning Research (November 15, 2013))に示されている。
【0101】
第3の実施形態においては、シンボルxは、有限記号に属すると仮定されない。したがって、全ての可能なx値について、二変数条件付き確率pY|X(y|x)を学習しなければならない。
【0102】
条件付き確率分布推定は、ステップS10における確率分布関数g(y|x,θ)の基底への分解に依拠するチャネル確率分布の近似に基づいている。ここで、θはパラメーター集合である。分布関数は指数型分布族であり、パラメーターは、本質的に、スカラーの場合には平均及び分散であり、より一般的に、多変量の場合には平均ベクトル及び共分散行列である。条件付き確率分布推定器は、前述の基底を使ったpY|X(y|x)の以下の式の最良の近似を見つけることができる。
【数18】
ここで、N、及び集合{θ}、{w}は、推定されるパラメーターである。
【0103】
解法は、第1の実施形態と同じアルゴリズムに依拠しており、主な相違は、M個ではなく1つの推定器しか存在しないことである。送信機は、受信機において知られているシンボルxを送信する。性能は、例えばガウス分布に従って関心領域においてx個の値を生成する擬似乱数発生器からのこれらの送信シンボルを使用することによって改善される。擬似乱数発生器の初期パラメーターを知ることによって、送信機及び受信機の双方が、x個のシンボルを知ることができる。
【0104】
推定器は、第1の実施形態と同様に崩壊型ギブスサンプリング手法を使用している。本場合には、NEAL00の崩壊型ギブスサンプリングは、同じ図11に再度示す特定の実施形態において使用され、以下によって推定器の特定の場合に適用される。
・ステップS10において、基底g(y|x,θ)を指数型分布族からのものとみなす。
○これによって、θの事前分布を、パラメーターλを有する指数分布と共役であるとみなすことが可能になる。これは、後続のステップに対して閉形式表現を有することを可能にする数学的トリックである。
○λ={λ,λ}は、パラメーターの共役事前分布のハイパーパラメーターを表す。
・ここで、ステップS11は、この時、送信シンボル{x}に関連付けられた観測シンボル{y}の選択に対応する。
【0105】
全体的なステップS12は、ここでも、以下のステップに分解することができる。
・ステップS121において、パラメーター集合{θ}、{w}のN個のクラスターを考える。
○受信シンボルをまとめてグループ化するためにクラスターが使用される。クラスターは、以下で説明するように、シンボルグループごとに1~Nの整数インデックスを関連付けることによって実施される。このクラスター割り当て手法は、各受信シンボルが、(1)におけるpY|X(y|x)を構成するN個のモードの中の1つに関連付けられる可能性がより高いことによって理にかなったものとすることができる。
○第iの観測シンボルのクラスター割り当てインデックスはcである。
○第iのクラスターを除く全てのクラスターのクラスター割り当てインデックスをc-iとする。
・ステップS122において、事後分布p(c=k|y1:n,x1:n,c-i,λ)を計算する。ここで、y1:nは、受信信号yの入力シンボルを表す。以下のことを示すことができる。
○p(c=k|y1:n,x1:n,c-i,λ)=p(c=k|c-i)p(y|y1:i-1,yi+1:n,x1:n,c-i,c=k,λ)
○p(c=k|c-i)は、例えばポリアの壺方式によって計算される。
○p(y|x,θ)が近似
【数19】
に従っており、g(y|x,θ)が、共役事前分布が既知であることを伴う指数型分布族からのものであるので計算可能である。
【数20】
・ステップS123において、パラメーター{θ}、{w}を更新するために、事後分布からのサンプリングが行われる。
・新たなクラスターを作成しなければならないか否かを確認することも好ましい。これは、チャネル条件付き確率分布の最良の近似を提供するNの最良の値を求めるのに役立つ。これは、以下の式として定義される新たなクラスターを最初に開始することによって、ステップS124において行われる。
【数21】
ここで、Pは、p(y|x;θ)が、指数型分布族に属するg(y|x,θ)関数の加重和であるので計算可能であるp(y|x;θ)(パラメーターλを有する)と共役である。次に、この確率から新たなクラスターを作成することがランダムに選ばれる。したがって、その確率を検証する確率から新たなクラスターを作成することがランダムに選ばれる。
【0106】
ポリアの壺方式の使用の詳細は、文献「Ferguson distributions via Polya urn schemes」(D. Blackwell and J. B. MacQueen, The Annals of Statistics, vol. 1, no. 2, pp. 353-355, 1973)から得ることができる。
【0107】
上記の第2の場合に関連した追跡モードに関連する第4の実施形態においては、入力が有限記号に属しないことと、送信シンボルが未知であることとを考慮することが対象となる。このモードは、第3の実施形態の後に効率的に使用される。ノンパラメトリック結合密度のモデルは、以下の式として定義される。
【数22】
【0108】
パラメーター{θ}、{w}、及び{ψ}は、それぞれ、ガウス密度の場合の平均及び共分散、大きさ、並びに入力分布の対応するパラメーターとすることができる条件付き密度パラメーターを表す。一般的に言えば、パラメーター(θ,ψ)は、ディリクレ過程「DP」の基底測度、すなわち、(θ,ψ)~DP(αP0θ×P0ψ)から同時に得られる。ここで、αはスケーリングパラメーターである。対応する条件付き確率密度は、以下のノンパラメトリック形式で記述することができる。
【数23】
【0109】
粒子の配置が固定され、トレーニングから最適化されることを考慮する予測フェーズにおいて、(22)の分母及びp(x|ψ)がスケーリング係数としての役割を果たすことは注目に値する。
【0110】
クラスタリング技法が使用される。(θ,ψ)が第jのクラスターに属する場合に、クラスター割り当てラベルをs=jとする。ρ=[s,...,sがクラスター割り当てラベルのベクトルを表すものとする。共変量依存の壺方式によるディリクレ過程(DP)における予測を使用すると、以下の式が得られる。
【数24】
ここで、
【数25】
であり、nは、第jのクラスターにおけるサブジェクトインデックスの数である。
【0111】
チャネル確率密度推定の追跡フェーズにおいて、粒子の集合は固定されていると更に仮定する。これは、コンステレーション内の粒子のロケーションが実際的な用途のほとんどで固定されているので、実際的な仮定である。表記xn+1∈x1:nは、新たな信号が、トレーニング中に使用された固定コンステレーション点の集合から送信されることを強調するためにここで使用される。新たな受信信号yの推定された密度p(y|y1:n,x1:n,xn+1∈x1:n)は、以下の式として得られる。
【数26】
【0112】
ここで、ρ=[s,...,sは、(θ,ψ)が第jのクラスターに属する場合にs=jを有するクラスター割り当てラベルのベクトルを表す。(24)を使用すると、(27)は、以下のように簡略化することができる。
【0113】
【数27】
ここで、kは、区画ρ内のグループの数であり、
【数28】
である。ここで、x 、y は、第jのクラスターの入力及び出力の集合を表す。その結果、推定された条件付き確率密度は、式(28)に従って得られる。
【0114】
上記実施形態のうちの任意のものの後に、条件付き密度確率関数pY|X(y|x)の推定値が得られる。2つの第1の実施形態においては、この推定値は、送信シンボルxの固定コンステレーションについて得られる一方、第3の実施形態及び第4の実施形態については、この推定値は、y及びxの二変数関数として、及び特にxの任意の値について既知である。
【0115】
Y|X(y|x)のこの知識は、送信シンボルxを前提とした各受信シンボルyの尤度を計算するために受信機において使用される。この尤度は、任意の受信シンボルxについてこの尤度を最大にするシンボルxを選択することによる送信シンボルの最尤復号化において必要とされる。この尤度は、J. Boutros、N. Gresset、L. Brunel及びM. Fossorier著の「Soft-input soft-output lattice sphere decoder for linear channels」(GLOBECOM '03. IEEE Global Telecommunications Conference (IEEE Cat. No.03CH37489), San Francisco, CA, 2003, pp. 1583-1587 vol.3)に記載されているようなソフト入力デコーダーの入力において提供される対数尤度比を計算する構成要素でもある。
【0116】
したがって、受信機がpY|X(y|x)の推定値を知ることが対象となる。
【0117】
本発明は、チャネル条件付き確率分布推定器によって受信機に提供されるようなパラメーター{w}及び{θ}を介したpY|X(y|x)のコンパクトな表現を提供するのに有利に使用することができる。
【0118】
別の選択肢では、pY|X(y|x)の知識は、入力分布を最適化するために送信機において有利に使用することができる。実際、xの固定位置及び変動する確率を有し、ほとんどの用途では離散的である所与の分布p(x)の知識から、入力p(x)とともにpY|X(y|x)によって特徴付けられたチャネルの容量の値を求めることができる。したがって、入力分布を最適化することができる。
【0119】
そのような最適化の第1のケースでは、入力分布の既定集合の中で最大容量を提供する入力分布が選択される。そのような集合は、例えば、異なる分散値を有するガウス入力分布をサンプリングすることによって得られる。サンプリングは、例えば、QAM(例えば256QAM)コンステレーションに従うxの位置について実行される。そのような最適化の第2のケースでは、集合は、QPSK、16QAM、64QAM、256QAM、8PSK、32PSK等のいくつかの既知のコンステレーションによって提供される。そのような最適化の第3のケースでは、シンボルxの位置及びシンボルxに関連付けられた確率がランダムに選ばれ、見つけられた最良のランダムなコンステレーションが各容量計算後に選択される。
【0120】
そのような最適化の最後のケースでは、指数型分布族から関数g(y|x,θ)を選択することが有利である。実際、pY|X(y|x)はそのような関数の線形結合であるので、xの固定値についてpY|X(y|x)の導関数を閉形式で計算することが可能である。したがって、入力分布p(x)に関して容量を最適化するために勾配降下手法を使用することができる。
【0121】
本発明は、チャネル条件付き確率分布推定器によって送信機に提供されるようなパラメーター{w}及び{θ}を介したpY|X(y|x)のコンパクトな表現を提供するのに有利に使用することができる。
図1
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【国際調査報告】