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特表2023-516891緑内障及び高眼圧症の処置のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】緑内障及び高眼圧症の処置のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230414BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P27/06
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/5575
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022547224
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021052480
(87)【国際公開番号】W WO2021156275
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】20155635.4
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20155638.8
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20155640.4
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516217239
【氏名又は名称】ニコックス エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アルミランテ,ニコレッタ
(72)【発明者】
【氏名】ブランビッラ,ステファーニア
(72)【発明者】
【氏名】インパグナッティエッロ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】バスティア,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ガリ,コリンナ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086DA02
4C086GA07
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬(NO-PDE5阻害薬)及びプロスタグランジン類似体を含む眼科用組成物、ならびに、あらゆる形態の緑内障又は高眼圧症に加えて、上昇した眼圧に関連する眼疾患又は眼病態の処置のための、これらの眼科用組成物の使用に関する。前記NO-PDE5阻害薬は、次の化合物:[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(1))、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(1A))又は2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(2))から選択される。前記プロスタグランジン類似体は、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)以下:
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、又は
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩
から選択される、一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬、及び
ii)ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体
を含む眼科用組成物。
【請求項2】
前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬が、以下:
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)、又は
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1)、又は
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1)
から選択される薬学的に許容され得る塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬が、
(2E)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)、又は
(2Z)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)
から選択される薬学的に許容され得る塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬が、以下
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート 塩化水素(1/2)
の薬学的に許容され得る塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記プロスタグランジン類似体が、ラタノプロストである、請求項1~4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記プロスタグランジン類似体が、ビマトプロストである、請求項1~4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記プロスタグランジン類似体が、トラボプロストである、請求項1~4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記プロスタグランジン類似体が、タフルプロストである、請求項1~4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
医薬としての使用のための、請求項1~8のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項10】
緑内障、高眼圧症、又は上昇した眼圧に関連する疾患もしくは病態を処置する方法における使用のための、請求項1~8のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項11】
前記上昇した眼圧に関連する病態が、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症又は糖尿病性黄斑浮腫又は加齢性黄斑変性症を含む網膜症の処置の間に生じる、薬物誘発性の上昇した眼圧である、請求項10記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項12】
正常眼圧緑内障の処置における使用のための、請求項1~8のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項13】
前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬又はその薬学的に許容され得る塩が、前記プロスタグランジン類似体の眼への適用と同時に、別々に又は順次に、眼に適用される、請求項10~12のいずれか1項記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項記載の組成物、及び少なくとも薬学的に許容され得る賦形剤及び/又はビヒクルを含む眼科用医薬製剤。
【請求項15】
i)以下:
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、又は
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩
から選択される、一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬;及び
ii)ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択される、プロスタグランジン類似体
を含む、前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬及び前記プロスタグランジン類似体の同時又は別々の投与のための、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬(NO-PDE5阻害薬)とプロスタグランジン類似体の組み合わせを含む眼科用組成物、及びそのような組成物を用いて、あらゆる形態の緑内障又は高眼圧症、ならびに上昇した眼圧に関連する眼疾患又は眼病態を処置する方法に関する。前記NO-PDE5阻害薬は、以下の化合物:
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(1));
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(1A));
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(2))
から選択され、
プロスタグランジン類似体は、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択される。
【0002】
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(1))は次の式
【化1】

を有する。
【0003】
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(1A))は、次の式
【化2】

を有する。
【0004】
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(2))は、次の式
【化3】

を有する。
【0005】
緑内障は、進行性の視神経損傷、及び最終的には視力の完全な喪失を特徴とする疾患である。原発性開放隅角緑内障(POAG)の患者における眼圧制御と緑内障性損傷の予防/軽減との間には良好な相関関係があるため、眼圧を低下させるためにいくつかの治療薬が開発されてきた(Weinreb Robert N. et al. JAMA. 2014 May 14; 311(18): 1901-1911)。
【0006】
プロスタグランジン類似体(すなわち、ラタノプロスト又はビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロスト)などの、眼からの房水の流出を増加させる薬物か、又はベータ遮断薬(すなわち、チモロール、ベタキソロール、レボブノロール)及び炭酸脱水酵素阻害薬(すなわち、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド)を含む、房水の生成を減少させる薬物を投与することによって、上昇した眼圧を少なくとも部分的に制御できることは公知である。
【0007】
現在、プロスタグランジン類似体は、ほとんどの緑内障患者にとって第一選択の処置である。これらの薬物は非常に効果的であり、1日1回の投与のみが必要であり、単一の薬物の処置レジメンとして理想的な選択となる。しかしながら、多くの場合、開始時の基準値と比較して十分なIOPの低下を達成するには、プロスタグランジン類似体では不十分である。
【0008】
さらに、いくつかの臨床試験は、低下したIOPが、1mmHg当たり、視力喪失の進行リスクを約10%から20%低下させることに関連していることを示した(Heijl et al. Arch Ophthalmol. (2002) 120: 1268-1279; Heijl The Lancet (2015) 385: 1264-1266)。
【0009】
最近、様々なプロスタグランジン類似体のチモロールとの固定用量配合剤(fixed-dose combinations)が市場に導入されてきた;これらには、ラタノプロストとチモロールの固定用量配合剤であるXalacom;トラボプロストとチモロールの配合剤であるDuoTrav;ビマトプロストをチモロールと併用したGanfortが含まれる。
【0010】
これらの固定用量配合剤は、補完的な作用モードにより、より良好な眼圧制御を提供する;実際、プロスタグランジン類似体は流出促進薬であるが、チモロールは眼内の房水の生成を減少させる。
【0011】
しかしながら、有効成分の1つとしてチモロールを含む固定配合剤は、この特定のクラスの薬物の使用に関連する内在的な制限をもたらす;例えば、ベータ遮断薬であるチモロールは、喘息、重度の慢性閉塞性肺疾患、洞性徐脈、インポテンス、うつ病、錯乱、記憶喪失に罹患している患者には禁忌である。
【0012】
ごく最近、ラタノプロスト及びRhoキナーゼ阻害薬のネタルスジルを含む、別の固定配合剤がFDAによって承認された(Rocklatan)。欧州特許第1459743号は、新たな作用の機序に基づく、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者におけるIOPの低下のための治療薬として、Rhoキナーゼ阻害薬を開示している。具体的には、Rhoキナーゼ阻害薬は、線維柱帯流出路からの房水の流出を増加させるようにみえる。Clin. Invest. (2014) 4(5), 391-393。しかしながら、そのIOPを低下させるプロファイルにも関わらず、Rhoキナーゼ阻害薬は、結膜充血を含むいくつかの安全性の懸念をもたらした。したがって、ラタノプロスト-ネタルスジル配合剤の忍容性は、その商業的成功にとって重要である。
【0013】
結膜充血、眼不快感及びかゆみなどの、緑内障に対する局所降圧治療の副作用が、緑内障患者にとってのノンアドヒアランスの主な原因となることは公知である。
【0014】
米国公開公報第2014/0018350号は、タフルプロストと選択的EP2受容体作動薬であるイソプロピル(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)アセタートの併用を開示している。実験結果は、2つの化合物を組み合わせて投与してから6時間後、単独に投与した各化合物と比較して、眼圧をより一層低下させることを示した。しかしながら、米国公開公報第2014/0018350号には、この配合剤の忍容性は記載されていない。
【0015】
米国特許第7,816,399号明細書は、ニプラジロールと併用したラタノプロストの投与が、単一の薬物の投与よりもより大きな眼圧低下効果を有することを開示している。
【0016】
ニプラジロールはアルファ-ベータ遮断薬であり、一酸化窒素を供与する作用を有し、それゆえに、ラタノプロストにニプラジロールを加えると、複数の機序を介したさらなるIOP低下効果、すなわち:ベータ遮断活性を介した房水形成の低下、及びαアドレナリン受容体の遮断及び/又は一酸化窒素シグナル伝達の増加を介した房水排出の増加をもたらし得る。
【0017】
国際公開公報第2015/007552号は、一酸化窒素ドナーとしての4-ニトロオキシブタン-1-オールアルキルエステル、及びプロスタグランジン類似体を含み、緑内障、又は他の疾患又は病態に起因する高眼圧症に関連する上昇した眼圧を制御するのに有用な組成物を開示している。国際公開公報第2015/007552号は、開示された配合剤の眼圧低下活性に関連する実験結果を提供していない。
【0018】
欧州特許第3220905号は、一酸化窒素放出性イソマンニド誘導体とプロスタグランジンF2α類似体を含む組成物を開示しており;眼圧の正常なウサギと眼圧の高いウサギで得られたデータは、これらの配合剤が、単独投与の化合物と比較して、増強され且つ持続した眼圧低下効果を有することを示している。
【0019】
Vyzulta(ラタノプロステンブノド(latanoprostene bunod))は、NOを供与する分子(ブタンジオールモノニトラート)が、エステル結合を介してプロスタグランジン骨格に共有結合している、一酸化窒素を供与するラタノプロストである。Vyzultaは、ラタノプロスト酸とブタンジオールモノニトラートの2つの部分に代謝され、さらに処理されて一酸化窒素を放出する。
【0020】
公表された結果は、第2相用量範囲のVOYAGER試験において、ラタノプロステンブノド(0.024%)が、ラタノプロスト(0.005%)(平均昼間IOPの7.77mmHgの低下)と比較して、平均IOPのより大きな低下(平均昼間IOPの9.0mmHgの低下)を生み出したことを示す。Weinreb RN, et al. Br J Ophthalmol 2015;99:6:738-45。
【0021】
いくつかの研究は、細胞レベルでは、一酸化窒素が、可溶性グアニル酸シクラーゼ酵素(sGC)に結合し、線維柱帯及びシュレム管組織における環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生を増加させることを示した。その後、環状GMPは、従来の房水の排出を促進し、眼圧を低下させる1連の機序を活性化する(Cavet et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014, 5005-5015)。
【0022】
国際特許出願第PCT/EP/2019/070597号は、眼圧低下活性及び良好な忍容性プロファイルを有する、新規クラスの一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬(NO-PDE5阻害薬)を開示している。国際特許出願第PCT/EP/2019/070597号は、NO-PDE5阻害薬及び他のIOPを低下させる薬物を含む配合剤の眼圧低下活性に関連する結果を提供しない。
【0023】
国際公開公報第2017/085056号及び国際公開公報第2018/215433号は、cGMPバランスの乱れが発生している、及び/又はPDE阻害が有益であると考えられる様々な疾患の処置、特に糖尿病患者の処置に有効である、二重薬理一酸化窒素供与性PDE5阻害薬を開示しており、これには、特に緑内障が好ましい疾患として引用されている。
【0024】
国際公開公報第2017/085056号は、これらの一酸化窒素放出性PDE5阻害薬が、可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化することができ、既知のPDE5阻害薬シルデナフィルよりも大きいPDE5阻害活性を有することを示すインビトロ研究の結果を開示している。しかしながら、この両方の参考文献は、これらの一酸化窒素放出性PDE5阻害薬の眼圧低下活性に関連するいかなる実験データも提供しない。
【0025】
有効な薬物の利用可能性にもかかわらず、上昇した眼圧及び緑内障の新たな処置は、これらの疾患及び病理学的病態のより効果的な管理のために、関心が持たれ続けている。
【0026】
本発明は、緑内障又は上昇した眼圧を有する患者における上昇した眼圧を低下させることが可能な別の眼科用組成物、ならびにこれらの組成物を利用して眼圧を低下させる方法に関する。
【0027】
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアートから選択されるNO-PDE5阻害薬を、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体と共に含む、本発明の眼科用組成物は、上昇した眼圧を効果的に低下させることができる。前記2つの活性成分の補完的な作用モードは、確実且つ持続的なIOP低下をもたらすはずである。これは、良好な忍容性と合わせて、これらの組成物が緑内障及び高眼圧症の処置のための実行可能な選択肢となることを可能にする。良好な忍容性はまた、この処置戦略に対する患者のアドヒアランスの改善も想定することができる。
【0028】
したがって、本発明は、緑内障、高眼圧症及び上昇した眼圧に関連する眼疾患及び眼病態を予防又は処置するのに有用な、眼圧を低下させる別の眼科用組成物を提供する。
【0029】
本発明は、
i)以下:
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(1))又はその薬学的に許容され得る塩、
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(1A))又はその薬学的に許容され得る塩、又は
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(2))又はその薬学的に許容され得る塩
から選択される、一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬、及び
ii)ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体
を含む眼科用組成物を提供する。
【0030】
本発明において使用される一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬は、NO-PDE5阻害薬遊離塩基の、眼に許容され得る酸(クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸又はベンゼンスルホン酸を含む)との塩を含む。
【0031】
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(1))の薬学的に許容され得る塩のいくつかの例は、次の化合物:
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1);
(2E)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1);
(2Z)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)
である。
【0032】
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(1A))の薬学的に許容され得る塩の例は、
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1)
である。
【0033】
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(2))の好ましい薬学的に許容され得る塩のいくつかの例は、以下の化合物:
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1);
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート 塩化水素(1/2)
である。
【0034】
本発明における使用のための好ましいプロスタグランジン類似体は、ラタノプロストである。
【0035】
本発明の別の好ましい実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0036】
本発明の別の実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びビマトプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0037】
本発明の別の実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びトラボプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0038】
本発明の別の実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びタフルプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0039】
本発明の別の好ましい実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0040】
本発明の別の好ましい実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びビマトプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0041】
本発明の別の実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びトラボプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0042】
本発明の別の実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びタフルプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0043】
本発明の別の好ましい実施態様は、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0044】
本発明の別の好ましい実施態様は、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びビマトプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0045】
本発明の別の実施態様は、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びトラボプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0046】
本発明の別の実施態様は、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びタフルプロストを含む、眼科用組成物を提供する。
【0047】
本発明の別の実施態様は、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む、眼科用組成物を提供する。
【0048】
本発明の別の実施態様は、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1)、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む、眼科用組成物を提供する。
【0049】
本発明の別の好ましい実施態様は、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1)及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む、眼科用組成物を提供する。
【0050】
本発明の別の実施態様は、(2E)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む、眼科用組成物を提供する。
【0051】
本発明の別の実施態様は、(2Z)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む、眼科用組成物を提供する。
【0052】
本発明の別の実施態様は、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1)、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む、眼科用組成物を提供する。
【0053】
本発明の別の実施態様は、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート 塩化水素(1/2)、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む、眼科用組成物を提供する。
【0054】
上記のプロスタグランジン類似体は、市販されている:ラタノプロスト(化学名:プロパン-2-イル(Z)-7-[(1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-[(3R)-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンチル]シクロペンチル]ヘプタ-5-エノアート);ビマトプロスト(化学名:(Z)-7-[(1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-[(E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタ-1-エニル]シクロペンチル]-N-エチルヘプタ-5-エナミド);トラバプロスト(travaprost)(化学名:プロパン-2-イル(Z)-7-[(1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-[(E,3R)-3-ヒドロキシ-4-[3-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ブタ-1-エニル]シクロペンチル]ヘプタ-5-エノアート);タフルプロスト(化学名は、プロパン-2-イル(Z)-7-[(1R,2R,3R,5S)-2-[(E)-3,3-ジフルオロ-4-フェノキシブタ-1-エニル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]ヘプタ-5-エノアートである)。
【0055】
前記[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、前記[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、又は前記2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩は、一般に、1日当たり3.0μg/眼から600μg/眼の範囲内で、1日に1回から数回投与することができる。
【0056】
プロスタグランジン類似体について、ラタノプロストの場合は、1日当たり0.15μg/眼から15μg/眼の範囲の投与量が一般に用いられ、ビマトプロストの場合は、1日当たり0.30μg/眼から90μg/眼の範囲の投与量が一般に用いられ、トラボプロストの場合は、1日当たり0.12μg/眼から12μg/眼の範囲の投与量が一般に用いられ、タフルプロストの場合は、1日当たり0.045μg/眼から4.4μg/眼の範囲の投与量が一般に用いられる。
【0057】
前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬又はプロスタグランジン類似体の用量は、患者の年齢及び症状等に応じて適切に増量又は減量することができる。
【0058】
投与のモードに関しては、NO-PDE5阻害薬及びプロスタグランジン類似体は、単一の調製物に製剤化し、混合物として投与することができ、又は、NO-PDE5阻害薬及びプロスタグランジン類似体は、単独の化合物を同時又は別々に投与するためのキットとして、別々の投与剤形に製剤化することができる。
【0059】
本発明の別の実施態様は、緑内障、高眼圧症、又は上昇した眼圧に関連する疾患又は病態を処置する方法における使用のための、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む眼科用組成物を提供する。
【0060】
本発明の別の実施態様は、正常眼圧緑内障の病態における眼圧を低下させる方法における使用のための、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む眼科用組成物を提供する。
【0061】
本発明の別の実施態様は、緑内障、高眼圧症、又は上昇した眼圧に関連する疾患又は病態を処置する方法における使用のための、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む眼科用組成物を提供する。
【0062】
本発明の別の実施態様は、正常眼圧緑内障の病態において眼圧を低下させる方法における使用のための、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む眼科用組成物を提供する。
【0063】
本発明の別の実施態様は、緑内障、高眼圧症、又は上昇した眼圧に関連する疾患又は病態を処置する方法における使用のための、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む眼科用組成物を提供する。
【0064】
本発明の別の実施態様は、正常眼圧緑内障の病態において眼圧を低下させる方法における使用のための、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、及びラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体を含む眼科用組成物を提供する。
【0065】
本発明における緑内障は、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、混合型緑内障、コルチコステロイド緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障、水晶体嚢緑内障、プラトー虹彩症候群及び薬物誘発性高眼圧症を含む。
【0066】
本発明では、上昇した眼圧に関連する疾患又は病態は、例えば、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症又は糖尿病性黄斑浮腫又は加齢性黄斑変性症を含む網膜症の処置の間に生じる、薬物誘発性の上昇した眼圧(すなわち、ステロイド及び抗VEGF誘発性の上昇したIOP)を含む。
【0067】
本発明はまた、緑内障に関連する高眼圧症を処置及び制御する方法、又は、高眼圧症又は上昇した眼圧に関連する疾患又は病態を処置する方法に関する。前記方法は、治療的に有効な量の本発明による組成物を、患者の眼に局所的に適用することを含む。別の前記方法は、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体の適用と同時に、別々に又は順次に、治療的に有効な量の化合物(1)又は化合物(1A)又は化合物(2)又はその薬学的に許容され得る塩を、患者の眼に局所的に適用することを含む。
【0068】
本発明はまた、正常眼圧緑内障を有する患者における眼圧を低下させる方法に関する。この方法は、治療的に有効な量の本発明による組成物を、患者の罹患した眼に適用することを含む。あるいは、この方法は、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体の適用に対して同時に、別々に又は順次に、治療的に有効な量の化合物(1)又は化合物(1A)又は化合物(2)又はその薬学的に許容され得る塩を、患者の罹患した眼に適用することを含む。
【0069】
前記投与の頻度及び量は、様々な臨床的因子に基づいて臨床医によって決定される。
【0070】
本発明の別の実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその塩、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体、ならびに少なくとも薬学的に許容され得る賦形剤及び/又はビヒクルを含む眼科用医薬製剤を提供する。
【0071】
本発明の別の実施態様は、[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体、ならびに少なくとも薬学的に許容され得る賦形剤及び/又はビヒクルを含む眼科用医薬製剤を提供する。
【0072】
本発明の別の実施態様は、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体、ならびに少なくとも薬学的に許容され得る賦形剤及び/又は賦形剤を含む眼科用医薬製剤を提供する。
【0073】
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート若しくはその薬学的に許容され得る塩、又は[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート若しくはその薬学的に許容され得る塩、又は2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート若しくはその塩、及びプロスタグランジン類似体、ならびに少なくとも薬学的に許容され得る賦形剤及び/又はビヒクルを含有する眼科用医薬製剤は、公知の方法に従って調製することができる。
【0074】
本発明の眼科用医薬製剤において、化合物(1)又は化合物(1A)又は化合物(2)又はその薬学的に許容され得る塩及びプロスタグランジン類似体は、単一の単位剤形(unit dosage form)又は2つの別々の単位剤形において組み合わせてよい。
【0075】
本発明の別の実施態様は、
i)以下:
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩、
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩、又は
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート又はその薬学的に許容され得る塩
から選択される一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬;及び
ii)ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体
を含む、一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬及びプロスタグランジン類似体の、同時又は別々の投与のための、キットを提供する。
【0076】
実験の部
実施例1
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物1)の合成
【0077】
アバナフィル(1.00g、2.07mmol)の乾燥ジクロロメタン(15mL)溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(252mg、2.07mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(512mg、2.48mmol)及び6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(440mg、2.48mmol)を加えた。
【0078】
混合物を室温で1晩撹拌し、次いでジクロロメタン及び水で希釈した。2つの相を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を逆相クロマトグラフィー(0.1% ギ酸を含むHO/CHCN、70:30~40:60)により精製した。
【0079】
残留物をジクロロメタンに取り込み、この溶液をNaHCOの飽和水溶液で洗浄した。次いで、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮して、所望の生成物 1.23g(収率:93.0%)を与えた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.19 (s, 1H), 8.81 (m, 1H), 8.75 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 8.54 (m, 1H), 7.50 - 7.14 (m, 3H), 7.06 (s, 1H), 4.54 (m, 4H), 4.37 - 3.90 (m, 3H), 3.81 (s, 3H), 3.59 - 3.39 (m, 4H), 2.32 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 2.09 - 1.73 (m, 4H), 1.66 - 1.52 (m, 4H), 1.32 (dt, J = 5.2, 7.5 Hz, 2H)
【0080】
実施例2
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)(式1a)の合成
【化4】
【0081】
実施例1に記載したように調製した[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(100mg、0.155mmol)及びメタノール(1.5mL)を含む溶液に、クエン酸一水和物(33mg、0.155mmol)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで濃縮し、固体をメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)で洗浄した。固体を濾過し、減圧下で乾燥して、所望の生成物 125mg(粗収率:96.6%)を与えた。
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 12.39 - 12.36 (m, 3H), 9.19 (s, 1H), 8.80 (m, 1H), 8.75 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 8.53 (m, 1H), 7.42 - 7.15 (m, 3H), 7.06 (m, 1H), 4.65 - 4.38 (m, 6H), 4.37- 4.11 (m, 3H), 3.80 (s, 3H) 3.59 - 3.39 (m, 2H), 2.75 (d, J = 15.4 Hz, 2H), 2.65 (d, J = 15.4 Hz, 2H), 2.32 (m, 2H), 2.05 - 1.80 (m, 4H), 1.47 - 1.08 (m, 4H), 1.32 (q, 2H)
【0082】
実施例3
(2E)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)(式1b)の合成
【化5】
【0083】
実施例1に記載したように調製した[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(100mg、0.155mmol)及びメタノール(1.5mL)を含む溶液に、フマル酸(18mg、0.155mmol)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで濃縮し、固体をメチルtert-ブチルエーテルで洗浄した。固体を濾過し、減圧下で乾燥して、(2E)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート 103mg(収率:87%)を生成した。
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 13.13 (m, 2H), 9.17 (m, 1H), 8.76 (m, 3H), 8.54 (m, 1H), 7.38 (m, 1H), 7.24 (m, 2H), 7.04 (m, 1H), 6.63 (s, 2H), 4.52 (m, 5H), 4.20 (m, 2H), 3.81 (s, 3H), 3.52 (m, 2H), 3.32 (m, 2H), 2.31 (m, 2H), 1.92 (m, 4H), 1.64 (m, 2H), 1.50 (m, 2H), 1.32 (m, 2H)
【0084】
実施例4
(2Z)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)(式1c)の合成
【化6】
【0085】
実施例1に記載したように調製した[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(100mg、0.155mmol)及びメタノール(1.5mL)を含む溶液に、マレイン酸(18mg、0.155mmol)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで濃縮し、固体をメチルtert-ブチルエーテルで洗浄した。固体を濾過し、減圧下で乾燥して、(2Z)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート 113mg(収率:96%)を与えた。
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 12.35 (m, 2H), 9.18 (m, 1H), 8.77 (m, 3H), 8.54 (s, 1H), 7.38 (m, 2H), 7.22 (m, 1H), 7.04 (m, 1H), 6.33 (s, 2H), 4.55 (m, 6H), 4.20 (m, 2H), 3.98 (m, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.49 (m, 2H), 2.31 (m, 2H), 1.92 (m, 4H), 1.56 (m, 4H), 1.32 (m, 2H)
【0086】
実施例5
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(1A))の合成
【0087】
4-ニトロフェニル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアートの合成
ステップ1:(S)-4-(アリルオキシメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランの合成
【0088】
NaH(60%)(3.4g;85.54mmol)を、S(+)-1,2‐イソプロピリデングリセロール(5.65g;42.75mmol)及び15-クラウン-5(0.9g;4.28mmol)と共に、乾燥THF(140mL)中に懸濁した。
【0089】
混合物を0℃に冷却し、臭化アリル(7.2mL;85.54mmol)を滴下した。懸濁液を室温で6時間撹拌し、次いでNHCl飽和溶液(100mL)を0℃で滴下し、次に混合物をEtO(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで一度洗浄し、減圧下で慎重に濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(バイオテージ SP4装置、SNAP 100カラム、アイソクラティック溶出、EtO/シクロヘキサン 1:9)により精製して、表記化合物((S)-4-(アリルオキシメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン 5.8g(収率:78.5%)を与えた。
1H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ 6.00 - 5.78 (m, 1H), 5.35 - 5.13 (m, 2H), 4.35 - 4.21 (m, 1H), 4.11 - 3.98 (m, 3H), 3.73 (m, 1H), 3.57 - 3.40 (m, 2H), 1.51 - 1.32 (m, 6H)
【0090】
ステップ2:(S)-3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパン-1-オールの合成
0℃で冷却した、攪拌されている(S)-4-(アリルオキシメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン(2.0g、10.64mmol)の乾燥THF(180mL)溶液に、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9BBN)0.5M(241.8mL、121mmol)を滴下した。反応物を0℃で30分間撹拌し、室温で一晩撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、NaOH 2N(84mL)を、H 30%(58mL)と共に加えた。混合物をEtO(100mL)及びNaOH 1N(100mL)で希釈した。二相を分離し、水層をEtO(3×120mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP4装置、SNAP 100カラム、シクロヘキサン中の酢酸エチル、(30%~80%)、カラムボリューム(c.v.) 10)により精製して、表記化合物((S)-3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパン-1-オール) 6.4g(収率:100%)を与えた。
1H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ 4.35 - 4.20 (m, 1H), 4.11-4.01 (m, 1H), 3.85 - 3.63 (m, 5H), 3.58 - 3.46 (m, 2H), 1.97 - 1.80 (m, 2H), 1.45 (s, 3H), 1.38 (s, 3H)
【0091】
ステップ3:(S)-3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパン酸の合成
0℃で冷却した(S)-3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパン-1-オール(2.03g、10.51mmol)のアセトン(50mL)溶液に、NaHCO飽和溶液(56mL)、NaBr(0.45g、4.37mmol)及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)(0.34g、2.17mmol)を加えた。次にトリクロロイソシアヌル酸(4.91g、21.12mmol)を少しずつ加えた。混合物を室温に到達させ、3時間撹拌した。次いで、混合物を0℃に冷却し、イソプロパノール(20mL)をゆっくりと加えた。混合物を0℃で30分間撹拌した。白色固体の形成が観察された。沈殿物を濾別し、溶媒を濃縮した。残留物にNaOH 2Nを加え(pH=12)、水溶液を酢酸エチルで2回洗浄した。水相にHCl 1NをpH 2~3になるまで加え、酢酸エチル(5×50mL)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥し、次いで蒸発させて、表記化合物((S)-3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパン酸) 0.82g(収率:38%)を与えた。
1HNMR (300 MHz, Chloroform-d) δ 4.34 - 4.16 (m, 1H), 4.11 -3.97 (m, 1H), 3.85 - 3.68 (m, 3H), 3.63 - 3.42 (m, 2H), 2.74 - 2.55 (m, 2H), 1.41 (s, 3H), 1.35 (s, 3H)
【0092】
ステップ4:(S)-4-ニトロフェニル 3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパノアートの合成
(S)-3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパン酸(0.82g、4.02mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(0.83mg、4.02mmol)及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.1g、0.80mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液に、4-ニトロフェノール(0.56g、4.02mmol)を少しずつ加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで沈殿物を濾別して、溶媒を蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP4装置、シクロヘキサン中の酢酸エチル 5%~50%、カラムボリューム(CV) 12)により精製して、表記化合物((S)-4-ニトロフェニル 3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパノアート) 0.97g(収率:74%)を与えた。
1H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ 8.33 - 8.21 (m, 2H), 7.37 - 7.20 (m, 2H), 4.37 - 4.20 (m, 1H), 4.09 - 4.00 (m, 1H), 3.96 - 3.84 (m, 2H), 3.80 - 3.66 (m, 1H), 3.63 - 3.47 (m, 2H), 2.96 - 2.78 (m, 2H), 1.42 (s, 3H), 1.36 (s, 3H)
【0093】
ステップ5:(R)-4-ニトロフェニル 3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)プロパノアートの合成
攪拌されている(S)-4-ニトロフェニル 3-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)プロパノアート(0.97g、2.97mmol)のTHF(10mL)溶液に、HCl 3N(2mL)を加え、溶液を室温で4時間撹拌した。次に、酢酸エチル(5mL)及びHO(5mL)を加え、2つの相を分離した。水相を酢酸エチル(2×5mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下に濃縮して、表記化合物((R)-4-ニトロフェニル 3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)プロパノアート 0.89gを与え、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0094】
ステップ6:4-ニトロフェニル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアートの合成
無水酢酸(0.76mL、8.07mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液に、-40℃で、発煙硝酸(0.38mL、9.32mmol)を滴下した。次に、(R)-4-ニトロフェニル 3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)プロパノアート(0.89g、3.11mmol)のジクロロメタン(7mL)溶液を滴下した。混合物を0℃に到達させ、4時間撹拌した。次いで、混合物を氷に注ぎ、NaHCOを少しずつ加えた。2つの相を分離し、水相をジクロロメタンで2回洗浄した。合わせた有機相をNaSOで乾燥し、濃縮して、4-ニトロフェニル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート 0.56g(二つのステップの収率:38%)を与えた。
1H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ 8.35 - 8.22 (m, 2H), 7.35 - 7.22 (m, 2H), 5.48 - 5.34 (m, 1H), 4.88 - 4.73 (m, 1H), 4.73 - 4.56 (m, 1H), 3.94 - 3.85 (m, 2H), 3.85 - 3.77 (m, 2H), 2.88 (t, 2H)
【0095】
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアートの合成
【0096】
アバナフィル(160mg、0.331mmol)及び4-ニトロフェニル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(82mg、0.218mmol)の乾燥ジクロロメタン(1.5mL)溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(40mg、0.327mmol)を加えた。
【0097】
混合物を室温で週末にかけて撹拌し、次いでジクロロメタン及び水で希釈した。2つの相を分離し、水相をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を逆相クロマトグラフィー(0.1% ギ酸を含むHO/CHCN、85:15~55:45)により精製した。
【0098】
精製後、残留物にジクロロメタン及びNaHCOの飽和溶液を加えた。2つの相を分離し、水相をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮して、生成物 227mg(収率:95.0%)を与えた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.16 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 8.78 (m, 3H), 8.75 (d, J= 4.9 Hz, 1H), 8.53 (s, 1H), 7.38 (t, J = 4.9 Hz, 1H), 7.34 - 7.16 (m, 1H), 7.05 (t, J = 9.4 Hz, 1H), 5.55 (m, 1H), 4.89 (d, J = 12.9 Hz, 1H), 4.75 (m, 1H), 4.54 (m, 4H), 4.41 - 3.93 (m, 3H), 3.80 (s, 3H), 3.78 - 3.63 (m, 4H), 3.51 (m, 2H), 2.57 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 1.92 (m, 4H)
【0099】
実施例6
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1)(式(1A.a))の調製
【化7】
【0100】
実施例5に記載したように調製した[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(227mg、0.315mmol)のメタノール(2mL)溶液に、クエン酸一水和物(66mg、0.315mmol)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで濃縮して、残留物をジエチルエーテルで洗浄した。固体を濾過し、減圧下で乾燥して、表記生成物280mg(粗収率:97.4%)を与えた。
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 12.35 (s, 3H), 9.18 (s, 1H), 8.77 (m, 3H), 8.55 (m, 1H), 7.46-7.33 (m, 2H), 7.34 - 7.17 (m, 1H), 7.06 (dd, J = 16.6, 8.3 Hz, 1H), 5.55 (s, 1H), 4.81 (m, 4H), 4.63 - 4.42 (m, 4H), 4.38 - 3.96 (m, 3H), 3.81 (s, 3H), 3.71 (m, 2H), 3.57 - 3.42 (m, 2H), 2.75 (d, J = 15.4 Hz, 2H), 2.65 (d, J = 15.4 Hz, 2H), 2.57 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 1.92 (m, 4H)
【0101】
実施例7
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(化合物(2))の合成
【0102】
ミロデナフィル(500mg、0.940mmol)実施例5に記載したように調製した及び4-ニトロフェニル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(423mg、1.128mmol)の乾燥ジクロロメタン(5mL)溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(115mg、0.940mmol)を加えた。
【0103】
混合物を室温で48時間撹拌し、次いでジクロロメタン及び水で希釈した。2つの相を分離し、水相をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を逆相クロマトグラフィー(0.1%ギ酸を含むHO/CHCN、70:30~20:80)により精製した。
【0104】
精製後、残留物にジクロロメタン及びNaHCOの飽和溶液を加えた。2つの相を分離し、水相をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮して、2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート 540mg(収率:75.0%)を与えた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.67 (s, 1H), 7.88 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.80 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.31 (s, 1H), 5.50-5.56 (m, 1H), 4.88 (dd, J = 12.8, 3.0 Hz, 1H), 4.72 (dd, J = 12.8, 6.5 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.00-4.15 (m, 4H), 3.60-3.75 (m, 4H), 2.89 (br s, 4H), 2.51-2.60 (m, 10H), 1.58-1.79 (m, 4H), 1.36 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.96 (br t, J = 7.4 Hz, 3H), 0.92 ppm (t, J = 7.3 Hz, 3H)
【0105】
実施例8
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(1/1)(式(2a))の合成
【化8】
【0106】
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート(295mg、0.384mmol)をメタノール(1.5mL)に再溶解し、クエン酸一水和物(81mg、0.384mmol)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで濃縮して、固体をジエチルエーテルで洗浄した。固体を濾過し、減圧下で乾燥して、表記化合物 361mg(粗収率:98%)を与えた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.30 (bs, 3H), 11.67 (s, 1H), 7.89 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.80 (dd, J = 8.8, 2.5 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.31 (s, 1H), 5.53 (m, J = 10.3, 6.7, 3.9 Hz, 1H), 4.88 (dd, J = 12.8, 3.0 Hz, 1H), 4.72 (dd, J = 12.9, 6.5 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.10 (dt, J = 11.4, 6.0 Hz, 4H), 3.77 - 3.58 (m, 4H), 2.90 (s, 4H), 2.75 (d, J = 15.4 Hz, 2H), 2.65 (d, J = 15.4 Hz, 2H), 2.61 - 2.52 (m, 10H), 1.80 - 1.58 (m, 4H), 1.36 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.97 (t, 3H), 0.94 (t, 3H)
【0107】
実施例9
2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート 塩化水素(1/2)(式(2b))の合成
【化9】

実施例7に開示したように調製した2-{4-[3-(5-エチル-4-オキソ-7-プロピル-4,5-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)-4-プロポキシベンゼン-1-スルホニル]ピペラジン-1-イル}エチル 3-[(2S)-2,3-ビス(ニトロオキシ)プロポキシ]プロパノアート (72mg、0.094mmol)を含むメタノール(1.0mL)溶液に、HClの3Mメタノール溶液(63μL、0.188mmol)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで濃縮して、固体をEtOで洗浄した。固体を濾過し、減圧下で乾燥して、表記化合物68mg(収率:86%)を与えた。
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 11.73 (s, 1H), 11.05 (s, 1H), 8.07 - 7.76 (m, 2H), 7.42 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.32 (s, 1H), 5.59 - 5.52 (m, 1H), 4.90 (dd, J = 12.8, 2.8 Hz, 1H), 4.75 (dd, J = 12.8, 6.5 Hz, 1H), 4.38 (q, J = 7.1 Hz, 3H), 4.14 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 3.77-3.66 (m, 6H), 2.60-2.49 (m, 14H), 1.80 - 1.72 (m, 2H), 1.69 - 1.60 (m, 2H), 1.36 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.97 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 0.93 (t, J = 7.3 Hz, 3H)
【手続補正書】
【提出日】2022-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)以下:
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩
から選択される、一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬、及び
ii)ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択されるプロスタグランジン類似体
を含む眼科用組成物。
【請求項2】
前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬が、以下:
2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)、又は
(2E)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)、又は
(2Z)-ブタ-2-エン二酸 [(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(1/1)
から選択される薬学的に許容され得る塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記プロスタグランジン類似体が、ラタノプロストである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記プロスタグランジン類似体が、ビマトプロストである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
前記プロスタグランジン類似体が、トラボプロストである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
前記プロスタグランジン類似体が、タフルプロストである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項7】
医薬としての使用のための、請求項1~6のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項8】
緑内障、高眼圧症、又は上昇した眼圧に関連する疾患もしくは病態を処置する方法における使用のための、請求項1~6のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項9】
前記上昇した眼圧に関連する病態が、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症又は糖尿病性黄斑浮腫又は加齢性黄斑変性症を含む網膜症の処置の間に生じる、薬物誘発性の上昇した眼圧である、請求項記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項10】
正常眼圧緑内障の処置における使用のための、請求項1~8のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項11】
前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬又はその薬学的に許容され得る塩が、前記プロスタグランジン類似体の眼への適用と同時に、別々に又は順次に、眼に適用される、請求項8~10のいずれか1項記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項記載の組成物、及び少なくとも薬学的に許容され得る賦形剤及び/又はビヒクルを含む眼科用医薬製剤。
【請求項13】
i)以下:
[(2S)-1-(4-{[(3-クロロ-4-メトキシフェニル)メチル]アミノ}-5-{[(ピリミジン-2-イル)メチル]カルバモイル}ピリミジン-2-イル)ピロリジン-2-イル]メチル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート又はその薬学的に許容され得る塩
から選択される、一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬;及び
ii)ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト又はタフルプロストから選択される、プロスタグランジン類似体
を含む、前記一酸化窒素放出性ホスホジエステラーゼ5型阻害薬及び前記プロスタグランジン類似体の同時又は別々の投与のための、キット。
【国際調査報告】