(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】複合不織布及び複合不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 5/00 20120101AFI20230414BHJP
D04H 5/03 20120101ALI20230414BHJP
【FI】
D04H5/00
D04H5/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550736
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021054498
(87)【国際公開番号】W WO2021170610
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】ザゲレル-フォリク,イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】アインツマン,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリッチ,カタリナ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルトハルム,ギーゼラ
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA11
4L047AA12
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047AB06
4L047BA08
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB07
(57)【要約】
ランダムに置かれたほぼ連続の再生セルロース系フィラメント(4、55、65)の少なくとも1つのスパンボンド不織布(8、54、64)と、バイオ系生分解性短繊維(14、53、63)の少なくとも1つの層(52、62)とを含む複合不織布(1、51、61)、及び複合不織布(1、51、61)を製造するための方法(100、101、102)が開示される。すぐれた安定性及び高い引張強度、並びに良好な吸収特性及び触覚特性を有し、さらに低コストで製造することができる、最初に挙げたタイプの完全に生分解性の複合不織布を提供するために、スパンボンド不織布(8、54、64)のフィラメント(4、55、65)及び短繊維(14、53、63)が物理的な相互連結の状態にある、少なくとも1つの混合領域(56、66)を複合不織布(1、51、61)が有することが提案される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダム配向で堆積させた本質的に連続的な再生セルロース系フィラメント(4、55、65)を呈する少なくとも1つのスパンボンド不織布(8、54、64)と、バイオ系生分解性短繊維(14、53、63)の少なくとも1つの層(52、62)とを含む、複合不織布であって、スパンボンド不織布(8、54、64)のフィラメント(4、55、65)及び短繊維(14、53、63)が物理的な相互連結の状態で存在する、少なくとも1つの混合領域(56、66)を複合不織布(1、51、61)が有することを特徴とする、複合不織布。
【請求項2】
短繊維(14、53、63)がセルロース系短繊維(14、53、63)であり、絶乾状態の複合不織布(1、51、61)が少なくとも93wt.%、特に少なくとも95wt.%、好ましくは少なくとも97wt.%のセルロース含量を有することを特徴とする、請求項1に記載の複合不織布。
【請求項3】
複合不織布(1、51、61)が、10wt.%~99wt.%、特に15wt.%~95wt.%、好ましくは20wt.%~90wt.%の、スパンボンド不織布(8、54、64)のセルロース系フィラメント(4、55、65)と、1wt.%~90wt.%、特に5wt.%~85wt.%、好ましくは10wt.%~80wt.%の短繊維(14、53、63)とを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合不織布。
【請求項4】
複合不織布(1、51、61)が、木材中に天然に存在しないバインダーを本質的に含まないことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合不織布。
【請求項5】
短繊維(14、53、63)が、天然セルロース繊維、パルプ繊維、ビスコース、モダール、キュプロ、及びリヨセル繊維、化学的修飾セルロース繊維、再生セルロース系繊維、デンプン繊維を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合不織布。
【請求項6】
短繊維(14、53、63)が、0.5mm~15mm、特に1~12mmの長さを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合不織布。
【請求項7】
複合不織布(1、51、61)が、請求項8から17に記載の方法(100、101、102)により得られることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合不織布。
【請求項8】
セルロースを含有する紡糸塊(2)が少なくとも1つの紡糸口金(3)の複数のノズル孔を通して押出されてフィラメント(4)が形成され、フィラメント(4)が各々の場合において押出方向に延伸され、フィラメント(4)が有孔搬送装置(7)上にランダム配向で堆積されてスパンボンド不織布(8)が形成され、短繊維(14)がスパンボンド不織布(8)に加えられて複合不織布(1)が形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合不織布(1)の製造方法であって、未乾燥の状態でスパンボンド不織布(8)のフィラメント(4)に短繊維(14)を添加することを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
未乾燥の状態でスパンボンド不織布(8)のフィラメント(4)に短繊維(14)の懸濁液(15)を添加することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
懸濁液(15)が0.01wt.%~2.00wt.%の短繊維(14)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
洗浄(10)の間にスパンボンド不織布(8)のフィラメント(4)に懸濁液(15)を添加することを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
スパンボンド不織布(8)の形成の間にスパンボンド不織布(8)のフィラメント(4)に懸濁液(15)を添加することを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
未乾燥の状態でスパンボンド不織布(8)のフィラメント(4)に短繊維(14)を含む気流(26)を加えることを特徴とする、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
未乾燥の状態でスパンボンド不織布(8)のフィラメント(4)に短繊維(14)を添加するために、フィラメント(4)に延伸のための延伸気流を加え短繊維(14)を延伸気流に加えることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
フィラメント(4)に短繊維(14)を添加した後、複合不織布(1)に少なくとも1つの処理工程が施され、処理工程が、水流交絡(16)、ウォータージェットエンボス加工、ウォータージェット穿孔、洗浄(10)、乾燥(17)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
紡糸塊(2)が、直接溶媒中、特に第3級アミンオキシド中のセルロースの溶液であることを特徴とする、請求項8から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの紡糸口金(3)からの押出の後、フィラメント(4)を少なくとも部分的に凝固させることを特徴とする、請求項8から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダム配向で堆積された本質的に連続的な再生セルロース系フィラメントを呈する少なくとも1つのスパンボンド不織布と、バイオ系生分解性短繊維の層とを含む、複合不織布に関する。
【0002】
さらに、本発明は、複合不織布の製造方法であって、セルロース系紡糸塊が少なくとも1つの紡糸口金の複数のノズル孔を通して押出されてフィラメントが形成され、フィラメントが各々の場合において押出方向に延伸され、フィラメントが有孔搬送装置上にランダム配向で堆積されてスパンボンド不織布が形成され、短繊維がスパンボンド不織布に加えられて複合不織布が形成される、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一方ではスパンボンド法による、及び他方ではメルトブロー法による、スパンボンド不織布及び不織布それぞれの製造が先行技術で知られている。スパンボンド法(例えば、英国特許出願公開第2114052(A)号又は欧州特許出願公開第3088585(A1)号)では、フィラメントはノズルを通して押出され、下に配置された延伸ユニットにより引き抜かれ延伸される。一方、メルトブロー法(例えば、米国特許第5080569号、米国特許第4380570号、又は米国特許第5695377号)では、押出フィラメントはノズルから出るとすぐに高温、高速のプロセス空気により引き込まれ延伸される。どちらの技術においても、フィラメントは堆積表面、例えば有孔コンベアベルト上にランダム配向で堆積されて不織布が形成され、後処理工程へ運ばれ、最終的に不織布ロールとして巻き取られる。
【0004】
上記の方法にしたがいプラスチック溶融物から製造されるスパンボンド不織布は、10g/m2以下の範囲内の非常に低い坪量及び高い引張強度で製造することができる。しかし、そのような不織布は一般に、吸収力が役割を果たす用途において吸収特性が不十分である。さらに、そのような不織布はわずかに生分解性であるか、又は全く生分解性ではない。
【0005】
一方、高吸収力を有する不織布を製造するためのウェットレイド法が先行技術で知られており(米国特許第4755421号、国際公開第2015/000687号、米国特許第4166001号)、ここでは低濃度パルプ懸濁液を製造しコンベアベルトに塗布する。しかし、そのような不織布は引張強度及び耐摩耗性が不十分であるという問題を抱えている。しかし、これらの製品の機械的特性は、合成バインダー及び接着剤の使用により部分的に改善することができ、これはひいては生分解性に負の影響を与える。
【0006】
不織布の大きな市場は、医療、衛生、化粧品、工業、又は家庭の領域における拭き取り繊維の分野の用途にある。しかし、拭き取り繊維において、特にウェットタイプの拭き取り繊維については、信頼性のある製品が得られるように、引張強度及び吸収性に関して高い要求を満たさなければならない。湿式不織布を機械的に補強するために、米国特許出願公開第2004/0013859号に記載されるように、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエステルに基づく合成バインダー及びショートカット繊維を、加工しようとする懸濁液へ混合する。そのような方法により製造される不織布は、合成繊維の含量に起因して、それぞれ不十分な又は不完全な生分解性を示す。
【0007】
合成スパンボンド不織布の機械的安定性とパルプの吸収特性を組み合わせるために、特にポリエステル又はポリオレフィンに基づく合成メルトブロー不織布製品をセルロース系ステープル繊維又は湿式パルプの層と例えば流体力学的に結合させる方法が、欧州特許第0333211号に記載されている。この方法のさらなる開発(米国特許第5284703号、米国特許第5587225号、米国特許出願公開第2009/0233049号)は、より広い範囲の製品の製造、特に拭き取り繊維市場における安価な大量生産品の製造を可能にする。そのため、この方法では、改良されたエアレイド法をメルトブロー技術と組み合わせることにより、例えば、合成ポリオレフィン繊維マトリックス全体にわたってパルプ繊維が均質に分布した状態で存在する、吸収性不織布製品を製造することができる。そのような製品もまた不完全な生分解性の問題がある。
【0008】
現在の生態学的観点から、例えばポリエステル又はポリプロピレンでできている石油系ステープル繊維並びに石油系スパンボンド不織布とパルプとの組み合わせは疑問がある。石油系繊維又はフィラメントを含有する、特に大量市場向けに製造される製品は、完全には生分解性ではなく、それらの適切なリサイクル方法もない。プラスチック及びパルプでできている複合不織布は世界的に販売されており、1回使用された後に埋立て地、川、又は海洋に行き着く。それによりマイクロプラスチックが生じ、これは食物連鎖の中に吸収され生態へのその影響はまだ完全に予測することができない。しかし、材料が切除され繊維が破壊される明らかな兆候がある、摩耗試験及びその後の顕微試験において示されるように、そのような製品を使用する前、使用中であっても、かなりの量のマイクロプラスチックが生じる。
【0009】
そのため、プラスチック含有物を含まず化学バインダーを含まない不織布を製造するための方法も先行技術で知られている(国際公開第2012/090130号)。それにより湿式パルプの層は再生セルロース繊維又はセルロースフィラメントの第2の不織布層と水流交絡によって結合される。しかし、スパンボンド不織布のロールを巻き出し、既に製造された湿式パルプ層への偏向板上で誘導しなければならないので、記載される方法は工程管理に起因して非常に複雑である。セルロース系スパンボンド不織布も従来のスパンボンド法のように連続的に製造することができ、滑車により湿式パルプ層と結合させ油圧によって固めることができることが示されているが、しかし、セルロース系スパンボンド不織布層の製造をどのようにして行うべきか、またこの目的のための装置がどのような外観であるべきかは記載されていない。やはり対処されていないのは、上記で引用された先行技術(欧州特許第0333211号、米国特許第5284703号、米国特許第5587225号)において明記されており実現に不可欠なものとして表されている、スパンボンド不織布部材の材料及び結合密度であり、その調製が不正確であると、製造されたスパンボンド不織布におけるパルプ繊維の不十分な侵入又は固定の弱さにそれぞれつながり、そのため層どうしの結合が不十分であることにつながる。
【0010】
プラスチックに基づくスパンボンド法をウェットレイド法と直接組み合わせる別の製造方法が米国特許第7432219号で知られている。しかし、これも非生分解性であり、したがって持続不可能な解決法である。
【0011】
さらに、セルロース系ステープル繊維を梳綿機により繊維ウェブへ、固化装置により不織布へと加工することができることが米国特許第4523350号で知られている。しかしながら、製造スピードが遅いため、そのような方法及びシステムはそれぞれ、生産能力に関して明らかにスパンボンド及びウェットレイドシステムよりも劣っている。セルロース系ステープル繊維を製造の途中で既に乾燥させプレスしてベールとし、その後の不織布の製造において機械により開き、水流交絡により再度濡らし、その後不織布として再度乾燥させる。そのような方法は地球規模の省エネルギーの視点から精査しなければならない。原料コスト及び乾燥コストを削減し、それにより、おしり拭き又は衛生用拭き取り繊維などの大量市場向けの競争力の高い不織布製品を製造できるようにするために、梳毛不織布は通常はポリエステル及びビスコース繊維の混合物から作られ、ひいては、石油系繊維の割合のためにそれらが生分解性に欠けることに起因して、マイクロプラスチックの地球規模の問題の一因となる。
【0012】
スパンボンド技術(例えば、米国特許第8366988号)による及びメルトブロー技術(例えば、米国特許第6358461号及び米国特許第6306334号)によるセルロース系スパンボンド不織布の製造も、先行技術で知られている。それによりリヨセル紡糸塊を既知のスパンボンド法又はメルトブロー法にしたがって押出及び延伸する。しかし、堆積させて不織布とする前に、セルロースを再生させ寸法安定性フィラメントを製造するためにフィラメントをさらに凝固剤と接触させる。ウェットフィラメントを最後にランダム配向で不織布として堆積させる。しかし、最初に説明したように、それらの方法は古典的なスパンボンド法又はメルトブロー法による熱可塑性スパンボンド製造とわずかしか共通点がない。リヨセル紡糸塊は7~14%のセルロース含量を有する溶液であるので、繊維形成性セルロースの他に、スパンボンド製造の際にはるかに多くの溶媒も押出され、これはその後の洗浄において不織布から抽出され回収される。固体含量が大幅に低くなっているために、あらゆるリヨセルに基づくスパンボンド法の圧縮空気の比消費量は熱可塑性溶融物に基づくスパンボンド法よりも著しく高い。熱可塑性スパンボンド法の生産性に匹敵する生産性を実現するために、リヨセルスパンボンド不織布の場合、より多くの空気及びエネルギーにより、著しく大きい質量流量を動かしスパンボンド不織布へと加工しなければならない。エネルギー消費が増加するので、そのような製品の使用は、ろ過、衛生の分野における特別な用途、又は高価な拭き取り繊維においては、非常に微細な繊維直径であることによって実際に適切であるが、例えば、おしり拭き、家庭用拭き取り繊維、衛生用途及び工業用途などの大量市場向けの、安価な、純粋にセルロース系の生分解性不織布の必要性はほとんど満たすことができない。
【0013】
そのため先行技術は、良好な引張強度、吸収性、及び清掃特性、並びに意図した使用に適合された感触を有する、生分解性の、安価な不織布を製造できるようにするための、満足な解決法を提供することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、高い安定性及び引張強度、並びに良好な吸収特性及び触覚特性を示し、加えて、コスト効率の高い方法で製造することができる、最初に挙げたタイプの完全に生分解性の複合不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、スパンボンド不織布のフィラメント及び短繊維が物理的な相互連結の状態で存在する、少なくとも1つの混合領域を複合不織布が有するという点において、提起される目的を実現する。
【0016】
驚くことに、複合不織布の混合領域を提供することにより、スパンボンド不織布と短繊維との間の特に確実で永久的な連結を作り出せることが明らかとなった。特に、スパンボンド不織布のフィラメントと短繊維との間の連結にさらなるバインダーが使用されないとしてもこれは当てはまる。混合領域において、スパンボンド不織布のフィラメント及び短繊維は物理的な混合の状態で存在しており、そのため特にバインダーが存在することなく互いに物理的に連結することができる。スパンボンド不織布のフィラメントと短繊維との物理的な連結は、少なくとも部分的には水素結合、機械的なかみ合い又は巻き付き、摩擦力などにより形成させることができる。したがって、スパンボンド不織布と短繊維との間で結合した連結が形成され、これは特に、非破壊的な方法で解放させることができない。
【0017】
スパンボンド不織布と短繊維との物理的な混合は、例えば未乾燥の状態でスパンボンド不織布に短繊維の懸濁液を添加することにより生じ、それによりスパンボンド不織布のフィラメント及び短繊維の相互の侵入が可能になり、したがって混合領域が作り出される。
【0018】
したがって本発明による複合不織布は、純粋に生物由来で完全に生分解性の不織布である。そのため本発明は環境汚染の防止に貢献することができる。さらに、複合不織布はスパンボンド不織布と短繊維との物理的混合又は連結にそれぞれ起因する高い強度値を有するが、なぜなら通常は非常に高い強度値を有するスパンボンド不織布が短繊維の層を安定化させるためである。さらに、そのような安定化は驚くことに複合不織布の感触に悪影響を与えることなく生じ得る。バインダーを含む複合不織布は通常は高い剛性を示すが、本発明による複合不織布では先行技術と比較してより柔軟でより可撓性である複合不織布を得ることができる。さらに、純粋に生物由来で完全に生分解性の複合不織布は高い吸収力を示し、省資源的な方法で製造することができる。
【0019】
本発明の意味の範囲内で、再生可能原料に基づいて製造される天然繊維及びバイオ系合成繊維はバイオ系繊維と呼ばれる。生物を起源とせず石油系原料から製造できる生分解性合成繊維のみがそれらと区別されなければならない。本発明の文脈において、「バイオ系繊維」という用語は、特にそれらの繊維内における石油系成分の存在を排除しない。
【0020】
合成繊維の場合、本発明の文脈における生分解性繊維は、欧州規格EN 13432の生分解性プラスチックに関するガイドラインにしたがって完全に堆肥化可能とみなされる繊維であると理解される。
【0021】
短繊維がセルロース系短繊維である場合、本発明による複合不織布は、使用されているセルロース系短繊維に応じて、絶乾(「atro」)状態、すなわち水を含まない状態で少なくとも93wt.%のセルロース含量を有していてもよい。パルプ中に天然に存在する物質、例えばリグニンなど、並びに不可避不純物はこの場合、残りの含量を構成し得る。そのような複合不織布は非常に良好で完全な生分解性を示す。絶乾の複合不織布は、好ましくは少なくとも95wt.%、特に好ましくは少なくとも97wt.%のセルロース含量を有していてもよい。
【0022】
有利には、複合不織布は10wt.%~99wt.%のスパンボンド不織布のセルロース系フィラメント、及び1wt.%~90wt.%の短繊維を含んでいてもよい。本発明による組成によって、フィラメントと短繊維との間の適度な接着又は高い強度をそれぞれ有する複合不織布を特に保証することができる。この場合、複合不織布は好ましくは、15wt.%~95wt.%、特に好ましくは20wt.%~90wt.%のセルロース系フィラメント、及び5wt.%~85wt.%、特に好ましくは10wt.%~80wt.%の短繊維を有する。
【0023】
複合不織布が、木材中に天然に存在せず特に合成によるものであるバインダーを本質的に含まない場合、特に有利な感触、高い柔軟性及び可撓性を有する複合不織布を提供することができる。そのようなバインダーを含まない本発明による複合不織布は、様々な用途、例えば肌に優しい生理用品などに特に適している場合がある。一方、バインダーを含む複合不織布は非常に剛性が高く柔軟性が低い場合があり、それによりそのような製品向けの用途の範囲が限られる。
【0024】
本発明による複合不織布において、あらゆる種類のセルロース系ショートカット繊維、例えば天然セルロース繊維、ビスコース、モダール、リヨセル、又はキュプロ繊維など、並びに化学修飾セルロース繊維をバイオ系生分解性短繊維として使用してもよい。さらに、木材含有パルプでできたあらゆる種類の繊維、例えばそれぞれ機械的に蒸解させたパルプ又は木材パルプなど、例えばMP(機械パルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケモサーモメカニカルパルプ)などが短繊維として適している。さらに、短繊維は、亜硫酸法、硫酸塩法、又は別の方法による、化学蒸解パルプCP(化学パルプ)などのあらゆる種類のウッドフリーパルプの繊維から成っていてもよい。さらに、木材又は他の植物、例えば、草、竹、藻類、綿又はコットンリンターそれぞれ、麻、亜麻、デンプン系繊維などから得られる、あらゆる種類のパルプも短繊維として可能である。さらに、再生織物若しくは不織布、又は再生セルロース系繊維それぞれから製造される、あらゆる種類のパルプも短繊維として使用してもよい。
【0025】
あるいは、デンプン繊維は同様に、本発明による複合不織布におけるバイオ系生分解性短繊維として適している。
【0026】
短繊維の長さが0.5mm~15mmである場合、特に均質の複合不織布を作り出すことができる。より短い繊維はもはや複合不織布中に確実に維持することができず、一方より長い繊維は不均質な製品につながることがある。短繊維の長さは特に好ましくは1~12mmである。
【0027】
さらに、複合不織布は、非繊維性機能性添加剤、例えば、活性炭、超吸収性ポリマー、粒子状染料、及びフィラー(粘土、粉砕不織布、又は木材廃棄物)などを含んでいてもよい。その結果として、複合不織布には特定のさらなる特性、例えば高い水吸収力などを付与えることができる。
【0028】
さらに、乾燥前又は乾燥後、製品の特性を変化させる又は加工を容易にする補助剤、例えば仕上げ剤又は静電防止剤などを不織布に加えてもよい。
【0029】
本発明による不織布は、特に請求項8~17のいずれか一項に記載の方法により得られる。不織布が請求項8~17のいずれか一項に記載の本発明の方法により製造される場合、不織布の特別な特性が、以下に示すプロセスステップから得られる。
【0030】
本発明の目的はさらに、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合不織布を製造するための、最初に挙げたタイプの簡便で確実な方法を提供することである。
【0031】
この方法に関して、未乾燥の状態でスパンボンド不織布のフィラメントに短繊維を添加するという点において目的が実現される。
【0032】
この方法では、セルロース系紡糸塊が少なくとも1つの紡糸口金の複数のノズル孔を通して押出されてフィラメントが得られ、フィラメントが各々の場合において押出方向に延伸され、フィラメントが有孔搬送装置上にランダム配向で堆積されてスパンボンド不織布が得られる。複合不織布を得るために、短繊維がさらなる工程においてスパンボンド不織布に加えられる。
【0033】
驚くことに、未乾燥の状態で、すなわちスパンボンド不織布のフィラメントがまだ強く膨潤している間にスパンボンド不織布に短繊維を添加する場合、本発明による複合不織布をパンボンド不織布のフィラメントと短繊維との混合領域により作り出すことができることが示された。未乾燥のスパンボンド不織布の柔軟性及び変形性能に起因して、またその中のフィラメントどうしの結合が弱いため、スパンボンド不織布のフィラメントと短繊維との相互の侵入が生じ、その結果複合不織布において混合領域が作り出される。その後の乾燥プロセスにおいて、スパンボンド不織布のフィラメントと短繊維との間で水素結合が生じ、これは複合不織布の強い接着及び高い強度を保証し、これは反対に、熱可塑性不織布及びパルプ繊維でできた複合不織布(例えば国際公開第2012/090130号に記載される)であれば不可能となる。
【0034】
この方法にしたがって、10g/m2を超える坪量を有する完全に生分解性の複合不織布をこのようにして得ることができる。短繊維の供給の位置決めに応じて、並びに場合によりさらに設けられている水流交絡のパラメーターに応じて、プロセスに関連する層構造が依然として識別可能であるか又は添加された短繊維が複合不織布の厚さ全体にわたって均質に分布した状態で存在する、複合不織布を得ることができる。
【0035】
未乾燥の状態でスパンボンド不織布のフィラメントに短繊維の懸濁液を添加する場合、複合不織布を製造するための特に簡便で確実な方法を提供することができる。この場合、短繊維は水性輸送媒体中、特に水溶液中又は水中にそれぞれ簡単に懸濁させることができ、そのため形成されたスパンボンド不織布に技術的に簡便な方法で塗布することができる。
【0036】
その際、懸濁液は好ましくは0.01wt.%~2.00wt.%の短繊維を含む。このようにして、特に詰まったライン又はノズルに起因する、懸濁液に関連する輸送の問題の発生を防ぐことができる。さらに、スパンボンド不織布にそのような少量の短繊維を添加することが、スパンボンド不織布へ規定の量の短繊維を望ましく添加することを保証するのに十分であることが明らかとなった。したがってこの方法の信頼性をさらに高めることができる。
【0037】
有利には、洗浄の間にスパンボンド不織布のフィラメントに短繊維の懸濁液を添加してもよい。例えば、短繊維は洗浄溶液若しくは洗浄水にそれぞれ、直接懸濁させてもよく、又は懸濁液を洗浄のための洗浄溶液として使用してもよく、それによりスパンボンド不織布への短繊維の添加を従来のスパンボンド洗浄システムに統合することができる。そのため特に経済的な方法を提供することができる。
【0038】
上記の洗浄の代替として又はそれに加えて、スパンボンド不織布を形成させる間にもスパンボンド不織布のフィラメントに懸濁液を添加することができる。例えば、新しく形成されたスパンボンド不織布又は新しく押出されたフィラメントにそれぞれ直接、懸濁液を塗布することができる。
【0039】
未乾燥の状態でスパンボンド不織布のフィラメントに短繊維を含む気流を加える場合、複合不織布を製造するための特に簡便で用途の広い方法を提供できる。一方では、気流を供給することにより、短繊維の単純な均質の分布が生じ得る。他方では、プロセスの多くのポイントで短繊維を含有する気流を確実に導入することができ、特に簡便な取り扱いを可能にする。
【0040】
紡糸口金から押出された後、フィラメントに延伸のための延伸気流を加えることができる。その際、未乾燥のスパンボンド不織布のフィラメントに短繊維を添加するために、短繊維を単に延伸気流に加えてもよい。この方法はこのように、セルロース系スパンボンド不織布を製造するための既存の設備に高価な改造を加えることなく、技術的に簡便な方法で実施することができる。
【0041】
フィラメントに短繊維を添加した後、複合不織布に少なくとも1つのさらなる処理工程を施してもよい。その際、セルロース系スパンボンド不織布から溶媒を洗い落とすために、複合不織布に例えば洗浄を施してもよい。
【0042】
さらに、1つの処理工程において複合不織布に水流交絡を施すことができ、ここで(高圧)ウォータージェットによりさらに固化される。さらに、水流交絡は混合領域において複合不織布のフィラメントと短繊維との物理的混合を向上させるのを助け、それにより複合不織布の一体性を改善する。
【0043】
1つの処理工程において、複合不織布にさらにウォータージェットエンボス加工(ハイドロエンボス加工)又はウォータージェット穿孔を施してもよい。それによりパターン、3次元構造、及び穿孔を複合不織布に導入することができる。
【0044】
さらなる処理工程において、複合不織布から残留水分を除去するために、洗浄又は水流交絡に続いて複合不織布を乾燥することもできる。
【0045】
任意選択の処理工程において、複合不織布にクレープ法を施すこともでき、それにより複合不織布にクレープ構造を付与する。
【0046】
少なくとも1つの第2の紡糸口金の複数のノズル孔を通してセルロース系紡糸塊を押出してフィラメントを形成させ、フィラメントが各々の場合に押出方向に延伸され、第2の紡糸口金のフィラメントが、短繊維を添加したスパンボンド不織布に搬送装置上でランダム配向で堆積されて、複合不織布において第2のスパンボンド不織布が形成されるならば、多層複合不織布を製造するための確実な方法を構築することができる。したがって、既に形成されており既に短繊維が付与されている第1のスパンボンド不織布に、第2のセルロース系スパンボンド不織布を堆積させることができ、共に混合領域を形成する。
【0047】
その際、第2のセルロース系スパンボンド不織布は好ましくは短繊維の層に直接塗布させてもよく、同様に、純粋に物理的な連結を共に形成することができる。第2のセルロース系スパンボンド不織布は、好ましくは第1のスパンボンド不織布とは異なる内部の特性及び構造特性、すなわち特に、異なる坪量、異なる空気透過性、異なるフィラメント直径などを有していてもよい。
【0048】
短繊維の第2の層は、同様に、未乾燥の状態で第2のセルロース系スパンボンド不織布に塗布してもよく、この層は第2のスパンボンド不織布と共に第2の混合領域を形成し、ここで第2のスパンボンド不織布のフィラメントは第2の層の短繊維と物理的に混合される。この目的のために、上記の説明を参照する。特に使用の範囲が幅広い複合不織布を製造できるようにするために、第2の層の短繊維も第1の層の短繊維とは異なっていてもよい。
【0049】
第2のスパンボンド不織布及び短繊維の第2の層に関して上記で説明されるのと同様に、第3の及びさらなるセルロース系スパンボンド不織布又は短繊維の層もそれぞれ、既に形成されている複合不織布に塗布させてもよい。
【0050】
本発明による方法は、リヨセル紡糸塊で作られるセルロース系スパンボンド不織布を含む複合不織布の製造に特に有利に使用できる。この場合、リヨセル紡糸塊は直接溶媒中のセルロースの溶液である。
【0051】
直接溶媒は好ましくは、化学的な誘導体化を行わずにセルロースを溶解させることができる水溶液又はイオン性液体中の第3級アミンオキシド、好ましくはN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)であってもよい。
【0052】
この場合、紡糸塊中のセルロースの含量は4%~17%、好ましくは5%~15%、特に好ましくは6%~14%の範囲であってもよい。
【0053】
さらに、紡糸口金から押出されるフィラメントが少なくとも部分的に凝固する場合、スパンボンド不織布の内部構造は確実に制御できる。この目的のために、フィラメントに好ましくは水性凝固液を添加してもよく、これは好ましくは液体、ガス、ミスト、蒸気などの形態でフィラメントに塗布される。
【0054】
NMMOをリヨセル紡糸塊の直接溶媒として使用する場合、凝固液は脱塩水及び0wt.%~40wt.%のNMMO、好ましくは10wt.%~30wt.%のNMMO、特に好ましくは15wt.%~25wt.%のNMMOの混合物であってもよい。それにより押出フィラメントの特に確実な凝固を実現することができる。
【0055】
本発明による方法は、複合不織布を製造するための装置により実施することができ、装置は、セルロース系紡糸塊を製造するための紡糸塊製造と、紡糸塊からセルロース系スパンボンド不織布を製造するための少なくとも1つのスパンボンド設備であって、紡糸塊を押出してフィラメントとするための少なくとも1つの紡糸口金、フィラメントの少なくとも部分的な凝固のための少なくとも1つの凝固システム、及びフィラメントを堆積させスパンボンド不織布を形成させるための搬送装置を含むスパンボンド設備と、洗浄と、任意選択により水流交絡と、乾燥機と、任意選択によりクレープ装置と、巻取り機とを含む。さらに、装置は、本発明によれば、セルロース系スパンボンド不織布に短繊維を添加するためのウェットレイド装置又はドライレイド装置を含み、短繊維のためのウェットレイド装置又はドライレイド装置はそれぞれ、2つのスパンボンド設備の間、並びに/又は洗浄前、洗浄の間、及び/又は洗浄の最後に設けられている。
【0056】
下記において、図面を参照して本発明の好ましい実施形態をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】第1の実施形態の変形(variant)による複合不織布を製造するための本発明による方法の概略図である。
【
図2】第2の実施形態の変形による複合不織布を製造するための本発明による方法の概略図である。
【
図3】第3の実施形態の変形による複合不織布を製造するための本発明による方法の概略図である。
【
図4】本発明による第1の複合不織布の電子顕微鏡像である。
【
図5】本発明による第2の複合不織布の電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、複合不織布1を製造するための本発明による方法100、及び本発明の第1の実施形態の変形による方法100を実施するための装置200を示す。第1のプロセスステップにおいて、紡糸塊2がセルロース系原料から製造され、装置200の紡糸口金3へ供給される。この場合、紡糸塊2を製造するためのセルロース系原料は、図にさらに詳細に示されていないが、木材又は他の植物系の出発物質でできたパルプであってもよく、これはリヨセル繊維の製造に適している。しかし、セルロース系原料がスパンボンド不織布又は再生織物の製造から生じる生産廃棄物から少なくとも部分的になることも考えられる。この場合、紡糸塊2はNMMO及び水中のセルロースの溶液であり、紡糸塊2のセルロース含量が3wt.%~17wt.%の範囲である。
【0059】
次の工程において、紡糸塊2は紡糸口金3の複数のノズル孔を通して押出されてフィラメント4が形成される。次いで押出フィラメント4は延伸気流で押出方向に加速及び延伸されるが、これは図にさらに詳細に示されていない。
【0060】
一つの実施形態の変形において、延伸気流は紡糸口金3のノズル孔とノズル孔の間で生じてもよい。さらなる実施形態の変形において、代わりに延伸気流はノズル孔の周辺で生じてもよい。しかし、これは図にさらに詳細に示されていない。延伸気流を生じさせるための延伸装置を含むそのような紡糸口金3は先行技術で知られている(米国特許第3825380号、米国特許第4380570号、国際公開第2019/068764(A1)号)。
【0061】
示されている好ましい実施形態において、押出及び延伸されたフィラメント4に凝固装置5からの凝固剤をさらに添加する。前記凝固剤は通常は、液体、ミスト、又は蒸気の形態の水又は水溶液である。フィラメント4と凝固剤が接触することにより、フィラメント4は少なくとも部分的にそれぞれ凝固又は再生し、これは特に、個々の押出フィラメント4どうしの接着を低減させる。
【0062】
セルロース系スパンボンド不織布8を形成させるために、延伸され少なくとも部分的に凝固したフィラメント4を次いでランダム配向で搬送装置7のトレー6上に堆積させる。
【0063】
形成後、スパンボンド不織布8は洗浄10を通ってコンベアベルト9を通過し、ここで溶媒の残渣、すなわち紡糸塊2に含有されるNMMOを除去するためにスパンボンド不織布8が洗浄される。好ましい実施形態の変形において、洗浄10はいくつかの洗浄段階11を有する多段向流洗浄であり、新たな洗浄溶液12が最後の段階に供給され、洗浄段階11の使用済みの度合いが高まった洗浄溶液はそれぞれの前の洗浄段階11へ移される。
【0064】
洗浄10において、スパンボンド不織布8をウェットレイド装置13に通して誘導し、ここでは未乾燥のスパンボンド不織布8はセルロース系短繊維14を添加され、短繊維14は懸濁液15に存在し、懸濁液15はスパンボンド不織布8にそれぞれ塗布又はスプレーされる。この場合、懸濁液15は短繊維14の含量が0.01~2.00wt.%である。それぞれ方法100又は装置200において別個のウェットレイド装置13を提供することにより、周囲のスパンボンド不織布の製造から独立している、短繊維の供給の操作を確実にすることができる。
【0065】
短繊維14を含有する懸濁液15を未乾燥のスパンボンド不織布8へ塗布する際、短繊維14の層がスパンボンド不織布8の上に形成され、それにより複合不織布1が形成される。さらに、複合不織布に混合領域が形成され、ここではスパンボンド不織布8のフィラメント及び短繊維14が単なる物理的な混合の状態で存在し、したがって化学結合することなく互いに接着する。
【0066】
ウェットレイド装置13の後、次の工程で複合不織布1に水流交絡16を施す。この水流交絡16の過程で、スパンボンド不織布8と短繊維14の層とのさらなる結合が生じ、ここでは混合により、特にかみ合い、巻き付き、静的摩擦などにより、スパンボンド不織布8のフィラメントと短繊維14との物理的な連結がさらに強化される。
【0067】
最終的に複合不織布1から残留水分を除去し包装できる状態の複合不織布1を得るために、水流交絡16に続いて複合不織布1に乾燥17を施す。
【0068】
最後に、完成した複合不織布1の任意選択の巻取り18及び/又は包装により、方法200を完了させる。
【0069】
図2において、それぞれ本発明による方法101及び装置201の第2の代替的実施形態の変形を示す。この場合、
図1に示す実施形態の変形とは対照的に、短繊維14を含む懸濁液15は独立したウェットレイド装置13には供給されない。むしろ、短繊維14は洗浄10の少なくとも1つの洗浄段階11、洗浄10の間にスパンボンド不織布8に洗浄及び短繊維14の添加を同時に行うように、好ましくは最後の洗浄段階11の洗浄溶液12に供給される。さらなる構成に関しては、
図1に関する説明を参照する。
【0070】
これは本発明の技術的に最も簡便で、さらに最も経済的でもある実施形態の変形を表すが、なぜなら、既存の洗浄段階11の1つ又はいくつかが、洗浄溶液12を均質に散布及び塗布する元々の機能に加えて、スパンボンド不織布8に短繊維14の懸濁液15を添加する機能も満たすように、既存のスパンボンド設備の洗浄10のみが改造される必要があるためである。
【0071】
この場合、懸濁液15は、0.01wt.%~2.00wt.%の濃度範囲及び0.5mm~20mmの範囲の繊維長の短繊維14を含有する。図には示されていない、さらなる実施形態の変形において、短繊維14はそれぞれ機械でフィブリル化された繊維又はパルプ繊維であってもよく、短繊維のフィブリル化のために精製機がさらに必要とされる。
【0072】
懸濁液15は好ましくは短繊維14を新しい水に懸濁させることにより形成される。洗浄10の全体にわたって洗浄溶液の溶媒の濃度分布のシフトを最小限のみに抑え、それにより溶媒含有洗浄水の処理又は濃度それぞれに関連するさらなる技術的な要求及び運転コストの上昇を最善の方法で避けるために、懸濁液15は好ましくは最後の2つの洗浄段階11のエリアのみにおいてスパンボンド不織布8に塗布される。さらに、懸濁液15を洗浄10へ供給することにより、洗浄10における洗浄溶液12の必要性を対応する度合いまで低減させることができる。
【0073】
図2において破線で示されるさらなる実施形態の変形において、第1の紡糸口金3の下流に、第2の紡糸口金23を設けることができ、それを通して紡糸塊2はやはり押出されてフィラメント24となる。その際、フィラメント24は搬送装置7において第1のスパンボンド不織布8の上に堆積されて第2のスパンボンド不織布が形成される。
【0074】
この場合、短繊維14の層を作るために、短繊維14を含有する懸濁液15が第1の紡糸口金3と第2の紡糸口金23との間で第1のスパンボンド不織布8に塗布される。いくつかのセルロース系スパンボンド不織布8及び短繊維14を有する多層複合不織布1が形成されるように、次いで第2のスパンボンド不織布が短繊維14の層に直接堆積される。任意選択により、上記のように、洗浄10の間に複合不織布1にはこの場合短繊維14をさらに添加してもよい。
【0075】
さらなる実施形態の変形において、交互のスパンボンド不織布8と短繊維14の層構造をほとんど認識できないものとし、それによりさらにより広範囲の混合領域を複合不織布1において形成することができるように、多層複合不織布1をその後の水流交絡16において処理する。
【0076】
したがって、
a)既に乾燥されており懸濁液15の形態で短繊維14を加えることにより再度濡らされる基材ではなく、既に湿っており乾燥させたことがないスパンボンド不織布8が使用されること、
b)加えられている濡れた短繊維14は、同等の量の未乾燥のセルロース系スパンボンド不織布よりも、セルロースの単位質量当たりのより少量の水をまだ湿っている不織布製品へ導入すること、
c)懸濁液15として供給される水の量によって、洗浄10における洗浄溶液12の必要性を低減することができること、並びに
d)水流交絡16からの廃水を、洗浄10及び懸濁液15の製造のそれぞれにおける新たな水として使用できること
から、本発明による方法100、101の上記の実施形態のすべてにおいて、先行技術と比較してエネルギー及び新しい水に対する需要に関して著しい節約が生じることになる。
【0077】
さらに、さらなる実施形態の変形では、水流交絡16が既にコンベアベルト9で洗浄10と共に行われるという点において、方法101の装置に対する経費をさらに単純化することができる。その際、後者は3次元エンボス加工構造をさらに示してもよく、これはウォータージェット処理によりスパンボンド不織布へ転移させることができる。
【0078】
図3において、本発明による方法102及び装置202の第3の実施形態の変形を示す。
図1及び2に示す実施形態の変形とは対照的に、この場合短繊維14は懸濁液15の形態でスパンボンド不織布8に塗布されるのではなく、エアレイド技術を使用して気流26の形態でスパンボンド不織布8に塗布される。方法102のさらなる構成に関しては、
図1及び2に関する説明を参照する。
【0079】
スパンボンド不織布8への短繊維14を含有する気流26の供給は、2つの紡糸口金3と23との間で、並びに洗浄10の前、洗浄10の間、及び/又はその後で行われてもよい。
【0080】
気流26内の短繊維14の均質な分布を可能にし短繊維14を塗布の場所に運ぶことを可能にするために、繊維を開くため並びに短繊維14を輸送するための特殊なユニットが設けられるが、これは図においてさらに詳細に示されていない。
【0081】
図においてさらに詳細に示されていない、さらなる実施形態の変形において、短繊維14も紡糸口金3、23において延伸装置に直接供給することができ、そのため延伸気流によりスパンボンド不織布8のフィラメント4の上に直接投入することができる。その際、短繊維14はスパンボンド不織布においてフィラメント4と直接混合され、それにより複合不織布1の厚さ全体にわたって広がる混合領域が作り出される。この目的のために、一つの実施形態の変形において、短繊維14を含む第2の気流は、例えば紡糸口金3、23の下で導入されてもよく、それによりフィラメント4に短繊維14を添加するための延伸気流と統合される。
【0082】
図に示されていないさらなる実施形態において、前後に並んで配置された2つの紡糸口金3、23により多層スパンボンド不織布8が製造されるが、短繊維14の塗布の前に2つのスパンボンド不織布層にほぐされ、短繊維14はその後懸濁液15として又は気流26内の乾燥状態で2つのスパンボンド不織布層の間に導入される。そこで直ちに、2つのスパンボンド不織布層が再び結合され、得られる複合不織布1は水流交絡16で固化される。
【0083】
本発明による複合不織布1の完全な生分解性を保証できるようにするために、上記の実施形態の変形により導入されるセルロース系短繊維は、工業的に製造されるパルプ、リサイクルプロセスから回収されたパルプ、セルロース系ショートカット繊維、セルロース系天然繊維の物質のタイプ、又はそれらの物質の群のあらゆる考えられる組み合わせのみからなる。
【0084】
本発明にしたがって製造される複合不織布51、61の電子顕微鏡像を
図4及び5に示す。
【0085】
図4は、短繊維53の層52(この場合はパルプ繊維)とセルロース系スパンボンド不織布54(リヨセルスパンボンド不織布)との間に限られた混合領域56が形成されている複合不織布51を示す。混合領域56において、スパンボンド不織布54のフィラメント55は短繊維53と物理的に混合されている。
【0086】
図5はもはや識別可能な層構造有していない複合不織布61を示す。ここでは、セルロース系スパンボンド不織布64(リヨセルスパンボンド不織布)は短繊維63(パルプ繊維)の層62に本質的に完全に侵入している。したがって混合領域66は複合不織布61の厚さ全体にわたって広がっている。したがって、短繊維63は複合不織布61の全体にわたって均質に分布している。
【実施例】
【0087】
以下において、いくつかの実施例を使用して本発明の利点を実証する。
【0088】
以下の測定方法を使用して製造された複合不織布の様々なパラメーターを測定した。
【0089】
坪量
坪量は、複合不織布が単位面積当たりに示す質量を示す。坪量の測定はNWSP 130.1.R0規格(15)にしたがって行われる。
【0090】
引張強度/伸び
引張強度値は、それぞれ拭き取り操作における又はパッケージから取り出す際の拭き取り繊維の強靭性についての情報を提供する。したがって引張強度の増加は引張り応力下での損傷に対するより高い耐性をもたらす。小さい伸びは拭き取り繊維がパッケージから取り出される時に有用であり、拭き取り繊維をしっかりと拭き取る手において維持するのに役立つ。引張強度及び伸びはそれぞれDIN EN 29073第3部/ISO 9073-3(1992年版)にしたがって測定される。
【0091】
ウィッキング性
上昇高さ試験(ウィッキング性)は、流れ方向及び横方向の不織布表面全体にわたる液体又は洗浄液それぞれの分布速度についての情報を提供する。下記に示す値は300秒の間の不織布における水の上昇高さを指す。上昇高さはNWSP 010.1.R0(15)にしたがって測定される。
【0092】
不織布コンディショニング
各々の測定の前に、試料を23℃(±2℃)及び相対湿度50%(±5%)において24時間にわたってコンディショニングした。
【0093】
電子顕微鏡法
ThermoFisher Quanta450(5kV、Spot 3、WD10、EDT)又はThermo Fisher Scientific、Phenom ProXのタイプの測定装置を使用して電子顕微鏡像を得た。部位の選択はランダムに行った。
【0094】
20~45g/m2の坪量を有する単層リヨセルスパンボンド不織布が製造され、追加で設置されたウェットレイド装置による洗浄において0.8~1.5%のパルプ懸濁液を充填されるようにして、下記に記載される複合不織布を本発明による方法で製造した。3つの圧力段階(40bar~100barの圧力)を使用して複合不織布を最後に水流交絡により処理し、10未満%の最終水分含量まで乾燥させ、30-80g/m2の坪量を有するロール状物品の形態で得た。水流交絡で使用されるノズルストリップは0.12mmの孔径及び13孔/cmの孔間隔を有する1列の孔のパターンを示すものであった。
【0095】
実施された試験の詳細なパラメーター並びに関連した複合不織布の測定された特性を下記で表1に示す。
【0096】
【0097】
本発明にしたがって製造された記載された複合不織布と同時に、45g/m2の総坪量を有する取り込まれたパルプを含むポリプロピレン不織布基材に基づく市販の複合不織布をその機械的特性に関して試験した。流れ方向(MD)で33 N/5 cm、横方向(CD)で13 N/5 cmの乾燥引張強度により、市販の製品は表1に記載の典型的な製品4の乾燥強度に匹敵する乾燥強度を有する。強度値は、それぞれ拭き取り操作における又はパッケージから取り出す際の拭き取り繊維の強靭性についての情報を提供し、記載される本発明による複合不織布は合成キャリアウェブの使用なしで機能する。一方、同等の坪量の湿式紙製品だけがより低い4~8 N/5 cmの湿潤引張強度を示すが、これはウェットティッシュとしての通常の使用においてもはやほとんど十分ではない。
【0098】
取り込まれたパルプを含み45g/m2の総坪量を有するポリプロピレン不織布基材に基づく上記の市販の複合不織布を、その液体吸収力に関しても試験した。ウィッキング性試験によれば、MDで94mm、CDで73mmの著しく低い上昇高さが測定され、それにより本発明による製品は市販のウェットティッシュを製造する転換プロセスにおける洗浄液の充填速度に関して明らかな利点が与えられており、すなわち、乾燥したロール状物品は充填プロセスの間に著しく速く洗浄液を吸収し、密閉した拭き取り繊維のパッケージ内の均質に分布した液体は重量に関連する液体の低下に起因した充填勾配の形成をはるかにゆっくりと示す。
【国際調査報告】