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特表2023-516950薬物製剤中のポリソルベート分解を低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】薬物製剤中のポリソルベート分解を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230414BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230414BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230414BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/02
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/22
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551613
(86)(22)【出願日】2021-02-27
(85)【翻訳文提出日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 US2021020133
(87)【国際公開番号】W WO2021174151
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/982,346
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/021,181
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/073,125
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シャオ フィ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン スースー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076CC29
4C076DD08Q
4C076DD46Q
4C076EE23Q
4C076FF63
4C076FF65
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA03
4C084NA03
4C084ZC41
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD11
4C085EE03
4C085EE07
(57)【要約】
本開示は、リパーゼの残留量が低減した組成物およびそのような組成物を作製する方法に関する。特に、肝カルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質などのある特定のリパーゼを組成物から枯渇させることによる組成物、およびそのような組成物を作製する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料からリパーゼを枯渇させる方法であって、
リパーゼを含む前記試料をプローブと接触させることであって、前記プローブが、前記リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、前記接触させることと、
前記複合体を前記試料から分離して、それによって前記試料から前記リパーゼを枯渇させることと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記試料が目的のタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料がポリソルベート賦形剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリソルベート賦形剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブが、固体支持体に連結することが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固体支持体がアガロースビーズである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記固体支持体が磁性ビーズである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブが、リガンドを使用して固体支持体に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記リガンドが、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複合体から前記リパーゼを回収することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
目的のタンパク質とリパーゼとを有する試料を精製する方法の方法であって、
前記試料をプローブと接触させることであって、前記プローブが、前記リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、前記接触させることと、
前記複合体を前記試料から分離して、それによって前記試料中の前記目的のタンパク質を精製することと
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記試料がポリソルベート賦形剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリソルベート賦形剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記プローブが、固体支持体に連結することが可能である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記固体支持体がアガロースビーズである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記固体支持体が磁性ビーズである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記プローブが、リガンドを使用して固体支持体に結合している、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記リガンドが、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複合体から前記リパーゼを回収することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
試料中のポリソルベートの分解を減少させる方法であって、
リパーゼとポリソルベートとを含む前記試料をプローブと接触させることであって、前記プローブが、前記リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、前記接触させることと、
前記複合体を前記試料から分離して、それによって前記試料中のポリソルベートの分解を減少させることと
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記試料が目的のタンパク質をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記プローブが、固体支持体に連結することが可能である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記固体支持体がアガロースビーズである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記固体支持体が磁性ビーズである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記プローブが、リガンドを使用して固体支持体に結合している、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記リガンドが、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記複合体から前記リパーゼを回収することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
哺乳類細胞から精製された目的のタンパク質と、界面活性剤と、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質の残留量とを有する組成物であって、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質の前記残留量が約5ppm未満である、前記組成物。
【請求項36】
前記界面活性剤がポリソルベート80である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質が前記ポリソルベート80の分解を引き起こす、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
非経口製剤である、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物中の前記ポリソルベートの濃度が約0.01%w/v~約0.2%w/vである、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
前記目的のタンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体断片、および抗体-薬物複合体からなる群から選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項41】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項42】
ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、アルギン酸緩衝液、およびアルギニン緩衝液からなる群から選択される緩衝液をさらに含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項43】
張性改変剤をさらに含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項44】
前記目的のタンパク質の濃度が約20mg/mL~約400mg/mLである、請求項35に記載の組成物。
【請求項45】
哺乳類細胞から精製された目的のタンパク質と、界面活性剤と、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質の残留量とを有する組成物であって、リソソーム酸性リパーゼの前記残留量が約5ppm未満である、前記組成物。
【請求項46】
前記界面活性剤がポリソルベートである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記界面活性剤がポリソルベート80である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質が前記ポリソルベート80の分解を引き起こす、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
非経口製剤である、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
前記組成物中の前記ポリソルベートの濃度が約0.01%w/v~約0.2%w/vである、請求項46に記載の組成物。
【請求項51】
前記目的のタンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体断片、および抗体-薬物複合体からなる群から選択される、請求項45に記載の組成物。
【請求項52】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項53】
ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、アルギン酸緩衝液、およびアルギニン緩衝液からなる群から選択される緩衝液をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項54】
張性改変剤をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項55】
前記目的のタンパク質の濃度が約20mg/mL~約400mg/mLである、請求項45に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月27日に出願された米国仮特許出願第62/982,346号、2020年5月7日に出願された米国仮特許出願第63/021,181号、および2020年9月1日に出願された米国仮特許出願第63/073,125号の優先権を主張し、それらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、全体として、ある特定のリパーゼの量が低減した組成物、そのような組成物を作製する方法、およびそのようなリパーゼの存在によるポリソルベート分解を低減する方法に関する。具体的には、本発明は、全体として、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質および肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質の存在が低減した組成物、ならびに組成物を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
医薬品の中で、タンパク質ベースの生物治療薬は、過去数年間にわたるモノクローナル抗体(mAb)による臨床試験の大幅な増加によって証明されるように、高いレベルの選択性、効力、および有効性を提供する薬物の重要な部類である。タンパク質ベースの生物治療薬を臨床にもたらすことは、発見、プロセスおよび製剤開発、分析的特徴決定、ならびに前臨床毒性学および薬理学を含む、様々な研究開発分野にわたって協調的な努力を必要とする複数年にわたる事業である場合がある。
【0004】
臨床的および商業的に実行可能な生物治療薬についての重要な1つの側面は、製造プロセスおよび貯蔵寿命の点での医薬品の安定性である。これはしばしば、より高い固有の安定性を有する分子の同定、タンパク質工学、および製剤開発を含む、産物品質への影響を最小限に抑えた製造および保存に必要な異なる溶液条件および環境を通じて、タンパク質ベースの生物治療薬の物理的および化学的安定性を増加させるのに役立つ適切なステップを必要とする。タンパク質ベースの生物治療薬産物の物理的安定性を増強するために、ポリソルベートなどの界面活性剤がよく使用される。市販されているモノクローナル抗体治療薬の70%超が、タンパク質ベースの生物治療薬に物理的安定性を付与するために、界面活性剤の一種である0.001%~0.1%のポリソルベートを含む。ポリソルベートは、自動酸化および加水分解の影響を受けやすく、それは遊離脂肪酸およびその後の脂肪酸粒子の形成をもたらす。ポリソルベートは、凝集および吸着などの界面応力から保護することができるため、ポリソルベートの分解は、医薬品品質に悪影響を及ぼす可能性がある。いくらかのリパーゼの存在が製剤中のポリソルベートの分解の原因である可能性が高い場合がある。したがって、医薬品中のそのようなリパーゼを検出し、監視し、低減する必要がある。
【0005】
リパーゼの直接的な分析は、産物をアッセイに十分なだけの多い量で単離することを必要とすることがあり、これは、望ましくなく、選択された場合においてのみ可能であった。したがって、試料中のポリソルベート分解を担うリパーゼを特徴決定するために必要なワークフローおよび分析試験を決定するのは困難な作業である。ポリソルベート分解を担うリパーゼの検出に加えて、医薬品は、そのようなリパーゼを除去または低減する精製方法によって得られなければならない。
【0006】
製剤化された医薬品からリパーゼを枯渇させるための方法に対する必要性が存在することが認識されるであろう。
【発明の概要】
【0007】
概要
保存中だけでなく、製造、輸送、取り扱い、および投与中にも、薬物製剤の安定性を維持することは、重要な課題である。医薬品の中でも、タンパク質生物治療薬はその成功および汎用性により人気を博している。タンパク質生物治療薬開発の主要な課題のうちの1つは、リパーゼの存在(宿主細胞タンパク質として存在)によって影響され得る産物中のタンパク質および賦形剤の限られた安定性を克服することである。薬物製剤へのその影響およびそのようなリパーゼの低減の評価は、薬物製剤の開発における重要なステップであり得、続いて、リパーゼの低減およびリパーゼの低減に起因する安定性の増加を有するように薬物製剤を調製する方法であり得る。
【0008】
1つの例示的な実施形態において、本開示は、試料からリパーゼを枯渇させる方法を提供し、本方法は、リパーゼを含む試料をプローブと接触させることであって、該プローブが、リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、接触させることと、複合体を試料から分離して、それによって試料からリパーゼを枯渇させることと、を含む。一態様において、試料は、目的のタンパク質を含み得る。一態様において、試料は、ポリソルベート賦形剤を含み得る。特定の態様において、ポリソルベート賦形剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択され得る。さらに別の特定の態様において、ポリソルベート賦形剤は、ポリソルベート80である。
【0009】
一態様において、リパーゼは、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である。別の態様において、リパーゼは、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である。
【0010】
一態様において、リパーゼは、試料中のポリソルベートを分解することが可能である。したがって、本実施形態の方法は、試料のリパーゼを枯渇させることによって、ポリソルベートの分解を低減する。
【0011】
一態様において、プローブは、固体支持体に連結することが可能であり得る。特定の態様において、固体支持体は、アガロースビーズまたは磁性ビーズであり得る。
【0012】
一態様において、プローブは、リガンドを使用して固体支持体に結合させることができる。特定の態様において、リガンドは、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る。
【0013】
一態様において、方法は、複合体からリパーゼを回収することをさらに含み得る。
【0014】
1つの例示的な実施形態において、本開示は、目的のタンパク質とリパーゼとを有する試料を精製する方法を提供し、本方法は、試料をプローブと接触させることであって、該プローブが、リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、接触させることと、複合体を試料から分離することと、を含む。一態様において、リパーゼは、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である。別の態様において、リパーゼは、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である。
【0015】
一態様において、試料は、ポリソルベート賦形剤を含む。特定の態様において、ポリソルベート賦形剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択され得る。さらに別の特定の態様において、ポリソルベート賦形剤は、ポリソルベート80であり得る。
【0016】
一態様において、プローブは、固体支持体に連結することが可能であり得る。特定の態様において、固体支持体は、アガロースビーズまたは磁性ビーズであり得る。
【0017】
一態様において、プローブは、リガンドを使用して固体支持体に結合させることができる。特定の態様において、リガンドは、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る。
【0018】
1つの例示的な実施形態において、本開示は、試料中のポリソルベートの分解を減少させる方法を提供し、本方法は、リパーゼとポリソルベートとを含む試料をプローブと接触させることであって、該プローブが、リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、接触させることと、複合体を試料から分離して、それによって試料中のポリソルベートの分解を減少させることと、を含む。
【0019】
一態様において、リパーゼは、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である。別の態様において、リパーゼは、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である。
【0020】
一態様において、試料は、目的のタンパク質を含み得る。一態様において、試料は、ポリソルベート賦形剤を含み得る。特定の態様において、ポリソルベート賦形剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択される。さらに別の特定の態様において、ポリソルベート賦形剤は、ポリソルベート80である。
【0021】
一態様において、プローブは、固体支持体に連結することが可能であり得る。特定の態様において、固体支持体は、アガロースビーズまたは磁性ビーズであり得る。
【0022】
一態様において、プローブは、リガンドを使用して固体支持体に結合させることができる。特定の態様において、リガンドは、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る。
【0023】
1つの例示的な実施形態において、本開示は、哺乳類細胞から精製された目的のタンパク質と、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質の残留量とを含む組成物を提供する。一態様において、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質の残留量は、約5ppm未満である。別の態様において、組成物は、界面活性剤をさらに含み得る。さらに別の態様において、界面活性剤は、親水性非イオン性界面活性剤であり得る。別の態様において、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルであり得る。特定の態様において、界面活性剤は、ポリソルベートであり得る。別の特定の態様において、組成物中のポリソルベートの濃度は、約0.01%w/v~約0.2%w/vであり得る。さらなる特定の態様において、界面活性剤は、ポリソルベート80であり得る。一態様において、哺乳類細胞は、CHO細胞を含み得る。
【0024】
一態様において、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質は、ポリソルベート80の分解を引き起こし得る。
【0025】
一態様において、組成物は、非経口製剤であり得る。
【0026】
一態様において、目的のタンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体断片、融合タンパク質、または抗体-薬物複合体であり得る。一態様において、目的のタンパク質の濃度は、約20mg/mL~約400mg/mLであり得る。
【0027】
一態様において、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。別の態様において、組成物は、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、アルギン酸緩衝液、およびアルギニン緩衝液からなる群から選択される緩衝液をさらに含み得る。一態様において、組成物は、張性改変剤をさらに含み得る。さらに別の態様において、組成物は、リン酸ナトリウムをさらに含み得る。
【0028】
1つの例示的な実施形態において、本開示は、哺乳類細胞から精製された目的のタンパク質と、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質の残留量とを含む組成物を提供する。一態様において、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質の残留量は、約5ppm未満である。別の態様において、組成物は、界面活性剤をさらに含み得る。さらに別の態様において、界面活性剤は、親水性非イオン性界面活性剤であり得る。別の態様において、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルであり得る。特定の態様において、界面活性剤は、ポリソルベートであり得る。別の特定の態様において、組成物中のポリソルベートの濃度は、約0.01%w/v~約0.2%w/vであり得る。さらなる特定の態様において、界面活性剤は、ポリソルベート80であり得る。一態様において、哺乳類細胞は、CHO細胞を含み得る。
【0029】
一態様において、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質は、ポリソルベート80の分解を引き起こし得る。
【0030】
一態様において、組成物は、非経口製剤であり得る。
【0031】
一態様において、目的のタンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体断片、融合タンパク質、または抗体-薬物複合体であり得る。一態様において、目的のタンパク質の濃度は、約20mg/mL~約400mg/mLであり得る。
【0032】
一態様において、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。別の態様において、組成物は、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、アルギン酸緩衝液、およびアルギニン緩衝液からなる群から選択される緩衝液をさらに含み得る。一態様において、組成物は、張性改変剤をさらに含み得る。さらに別の態様において、組成物は、リン酸ナトリウムをさらに含み得る。
【0033】
1つの例示的な実施形態において、本開示は、試料中のリパーゼを検出する方法を提供する。一態様において、リパーゼは、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質または肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質であり得る。一態様において、試料中のリパーゼを検出する方法は、試料をセリンヒドロラーゼプローブと接触させることを含み得る。一態様において、試料中のリパーゼを検出する方法は、試料をセリンヒドロラーゼプローブと接触させ、インキュベートして、リパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体を形成することを含み得る。さらなる態様において、試料中のリパーゼを検出する方法は、リパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体を形成していないセリンヒドロラーゼプローブを濾過することを含み得る。
【0034】
一態様において、試料中のリパーゼを検出する方法は、磁性ビーズがリパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体に結合するように、試料を、セリンヒドロラーゼプローブに結合する能力を有する磁性ビーズと接触させる接触させることをさらに含み得る。リパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体に結合した磁性ビーズを試料からさらに除去し、緩衝液で洗浄してもよい。
【0035】
別の態様において、方法は、リパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体に結合している磁性ビーズを除去して、リパーゼが濃縮された溶液を形成することをさらに含み得る。
【0036】
一態様において、方法は、加水分解剤を溶液に添加して、消化物を得ることをさらに含み得る。特定の態様において、加水分解剤は、トリプシンであり得る。一態様において、方法は、消化物を分析して、リパーゼを検出することをさらに含み得る。一態様において、消化物は、質量分析計を使用して分析され得る。特定の態様において、質量分析計は、タンデム質量分析計であり得る。別の特定の態様において、質量分析計は、液体クロマトグラフィーシステムに連結され得る。さらに別の特定の態様において、質量分析計は、液体クロマトグラフィー-多重反応監視システムに連結され得る。
【0037】
一態様において、方法は、タンパク質変性剤を溶液に添加することをさらに含み得る。特定の態様において、タンパク質変性剤は、尿素であり得る。一態様において、方法は、タンパク質還元剤を溶液に添加することをさらに含み得る。特定の態様において、タンパク質還元剤は、DTT(ジチオスレイトール)であり得る。一態様において、方法は、タンパク質アルキル化剤を溶液に添加することをさらに含み得る。特定の態様において、タンパク質アルキル化剤は、ヨードアセトアミドであり得る。
【0038】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面と併せて考慮される場合、より良好に認識され、理解されるであろう。以下の説明は、その様々な実施形態および多数の特定の詳細を示しているが、例示のために与えられており、限定のためではない。多くの置換、修正、追加、または再配置は、本発明の範囲内で行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ポリソルベート中の主要種の化学構造を示す。ポリソルベートは、主に、一般的なソルビタンPOE、イソソルビドPOEまたはPOE頭基を共有する脂肪酸エステルで構成され、オレイン酸がPS80の主な脂肪酸である。右パネルAは、オンライン2D-LC/MS分析による、mAb製剤中のPS80のトータルイオンカレント(TIC)クロマトグラムを示す。標識されたピークの同定は、(1)POE-POEイソソルビド-POEソルビタン、(2)POEソルビタンモノリノレアート、(3)POEソルビタンモノオレアート、(4)POEイソソルビドモノオレアートおよびPOEモノオレアート、(5)POEソルビタンリノレアート/オレアートジエステル、(6)POEソルビタンジ-オレアート、(7)POEイソソルビドジ-オレアートおよびPOEジ-オレアート、(8)解釈するには質量スペクトルが複雑すぎるため、可能性として、POEイソソルビド/POEリノレアート/オレアートジエステル、(9)トリオレアートとテトラオレアートとを混合したPOEソルビタン、である。右パネルBは、オンライン2D-LC/CAD分析による、mAb製剤中のPS80の分離および検出を示すCADクロマトグラムを示す。
図2】例示的な実施形態による、pH6の10mMのヒスチジン中、5℃で0時間および36時間インキュベートした50mg/mLのmAb-1中0.1%のPS80のクロマトグラムを示す。11~17.5分に溶出したピークは、POE、POEイソソルビド、およびPOEソルビタンであった。
図3】インキュベーション時間に対してプロットした残存するPS80の割合のチャートを示し、元のmAb-1、0.125μM、0.5μM、および2μMのFPプローブと混合したmAb-1を黒い実線と塗りつぶした円、赤い点線と塗りつぶした菱形、橙色の点線と塗りつぶし正方形、および青い点線と塗りつぶした三角形によって示す。
図4】例示的な実施形態による、リパーゼ枯渇実験の概略図を示す。ストレプトアビジンダイナビーズ磁性ビーズをデスチオビオチン-FPプローブと連結させ、リパーゼ枯渇に使用した。元のmAb-1、および素通り画分mAb-1、ならびにプロセス対照mAb-1を5℃で36時間0.1%のPS80とともにインキュベートし、PS分解測定を施した。濃縮されたリパーゼに、消化、および質量分析を使用するHCP分析を施す。
図5】元のmAb-1、プロセス対照mAb-1、およびリパーゼを枯渇させたmAb-1中に残存するPS80の割合のチャートを示し、元のmAb-1、プロセス対照mAb-1、およびリパーゼを枯渇させたmAb-1は、黒い実線と塗りつぶした菱形、青い点線と塗りつぶした正方形、および橙色の破線と塗りつぶした円によって示す。
図6-1】図6Aは、例示的な実施形態による、pH6の10mMのヒスチジン中、5℃で0時間、1.5時間、および8時間インキュベートした20μg/mLの市販ウサギ肝エステラーゼ中0.1%のPS80のクロマトグラムを示す。図6Bは、例示的な実施形態による、pH6の10mMのヒスチジン中、5℃で0時間、5時間、および18時間インキュベートした100μg/mLの市販ヒト肝カルボキシルエステラーゼ1中0.1%のPS80のクロマトグラムを示す。図6Cは、例示的な実施形態による、pH6の10mMのヒスチジン中、5℃で0時間、18時間、および36時間インキュベートした50mg/mLのmAb-1中0.1%のPS80のクロマトグラムを示す。
図6-2】図6Dは、肝カルボキシルエステラーゼB-1様(A0A061I7X9)、肝カルボキシルエステラーゼ1様(A0A061FE2)、およびヒト肝カルボキシルエステラーゼ(hCES-1)の配列アラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
宿主細胞タンパク質(HCP)は、すべての細胞由来タンパク質治療薬から除去されなければならない不純物の部類である。FDAは、HCPの最大許容レベルを指定していないが、最終医薬品中のHCP濃度は、バッチごとに制御され、再現可能でなければならない(FDA,1999)。主要な安全性の懸念は、HCPがヒト患者に抗原性効果を引き起こし得る可能性に関する(Satish Kumar Singh,Impact of Product-Related Factors on Immunogenicity of Biotherapeutics,and 100 JOURNALS OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 354-387(2011))。患者についての健康上の悪影響に加えて、酵素的に活性なHCPは、処理中または長期保存中に産物品質に影響を与える可能性がある(Sharon X.Gao et al.,Fragmentation of a highly purified monoclonal antibody attributed to residual CHO cell protease activity,108 BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING977-982(2010)、Flavie Robert et al.,Degradation of an Fc-fusion recombinant protein by host cell proteases:Identification of a CHO cathepsin D protease,104 BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING 1132-1141(2009))。HCPは、最終的な医薬品への精製操作を介して持続するための最大のリスクを提示する可能性がある。長期保存中、産物分子の重要な品質属性を維持し、最終製品製剤中の賦形剤の分解を最小限に抑えなければならない。
【0041】
市場にでているいくつかの薬物製剤は、タンパク質の安定性を改善し、医薬品を凝集および変性から保護することができる、生物医薬品タンパク質製剤において最も一般的に使用される非イオン性界面活性剤のうちの1つとしてポリソルベートを含む(Sylvia Kiese et al.,Shaken,Not Stirred:Mechanical Stress Testing of an IgG1 Antibody,97 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 4347-4366(2008)、Ariadna Martos et al.,Trends on Analytical Characterization of Polysorbates and Their Degradation Products in Biopharmaceutical Formulations,106 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 1722-1735(2017))。ポリソルベート20(PS20)およびポリソルベート80(PS80)は、タンパク質の安定性を改善し、医薬品を凝集および変性から保護することができる、生物医薬品タンパク質製剤で最も一般的に使用される非イオン性界面活性剤である。医薬品中の典型的なポリソルベート濃度は、タンパク質の安定性に関する十分な成果を提供するために、約0.001%~約0.1%(w/v)の範囲であり得る。
【0042】
しかしながら、ポリソルベートは、分解を受けやすく、この分解は、製剤化された原薬における望ましくない微粒子形成を促進し得る。ポリソルベートは、自動酸化および加水分解の2つの主な経路で分解することが知られている。酸化は、不飽和脂肪酸エステル置換基の含有量が高いため、PS80において起こる可能性が高いことが見出されたが、PS20においては、酸化は、頻繁には観察されないポリオキシエチレン鎖中のエーテル結合上で起こると考えられた(Oleg V.Borisov,Junyan A.Ji&Y.John Wang,Oxidative Degradation of Polysorbate Surfactants Studied by Liquid Chromatography-Mass Spectrometry,104 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES1005-1018(2015)、Anthony Tomlinson et al.,Polysorbate 20 Degradation in Biopharmaceutical Formulations:Quantification of Free Fatty Acids,Characterization of Particulates,and Insights into the Degradation Mechanism,12 MOLECULAR PHARMACEUTICS 3805-3815(2015)、Jia Yao et al.,A Quantitative Kinetic Study of Polysorbate Autoxidation:The Role of Unsaturated Fatty Acid Ester Substituents,26 PHARMACEUTICAL RESEARCH 2303-2313(2009))。さらに、ポリソルベートはまた、脂肪酸エステル結合を破断することによって加水分解を受ける可能性がある。ポリソルベートの分解を起源とする微粒子は、可視のまたは肉眼で見えないものさえも形成する可能性があり、それは患者における免疫原性の可能性を高める可能性があり、医薬品の品質に様々な影響を及ぼし得る。そのような可能性のある不純物の1つは、ポリソルベートを含む薬物製剤の製造、輸送、保存、取り扱い、または投与中に形成される脂肪酸粒子であり得る。脂肪酸粒子は、潜在的に有害な免疫原性の影響を引き起こし、貯蔵寿命に影響を及ぼす可能性がある。さらに、ポリソルベートの分解はまた、製剤中の界面活性剤の総量の低減も引き起こし、その製造、保存、取り扱い、および投与中の産物の安定性に影響を及ぼす可能性がある。
【0043】
典型的には、ポリソルベート分解は、かなり長期間の保存後にのみ医薬品中で観察され得る。しかしながら、PS80分解は、4℃で24時間以内に1つのモノクローナル抗体(mAb)の場合に観察されたが、明らかに高い濃度のリパーゼは検出されず、この原薬中にはあまり見られないリパーゼが存在することが示唆された。薬物製剤の安定性を維持するためには、そのようなリパーゼの濃度を検出および低減することが不可欠である。
【0044】
推定ホスホリパーゼB様2(PLBD2)は、PS20の酵素加水分解を引き起こすことが提唱された最初の宿主細胞タンパク質であった(Nitin Dixit et al.,Residua l Host Cell Protein Promotes Polysorbate 20 Degradation in a Sulfatase Drug Product Leading to Free Fatty Acid Particles,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES1657-1666(2016))。ブタ肝エステラーゼは、(PS20ではなく)ポリソルベート80の特異的加水分解を行うことができ、mAb医薬品中で経時的にPS85の形成をもたらすことが報告された(Steven R.Labrenz,Ester Hydrolysis of Polysorbate 80 in mAb Drug Product:Evidence in Support of the Hypothesized Risk After the Observation of Visible Particulate in mAb Formulations,103 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2268-2277(2014))。XV群リソソームホスホリパーゼA異性体X1(LPLA)は、1ppm未満でPS20およびPS80を分解する能力を示した(Troii Hall et al.,Polysorbates 20 and 80 Degradation by Group XV Lysosomal Phospholipase A 2 Isomer X1 in Monoclonal Antibody Formulations,105JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 1633-1642(2016)およびYing Cheng et al.,Rapid High-Sensitivity Reversed-Phase Ultra High Performance Liquid Chromatography Mass Spectrometry Method for Assessing Polysorbate 20 Degradation in Protein Therapeutics,108JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2880-2886(2019))。
【0045】
最近、イモビード150上のpseudomonas cepaciaリパーゼ(PCL)、イモビード150上のcandida antarcticaリパーゼB(CALB)、イモビード150上のthermomyces lanuginosusリパーゼ(TLL)、ウサギ肝エステラーゼ(RLE)、Candida antarcticaリパーゼB(CALB)、およびブタ膵臓リパーゼII型(PPL)を含む、ある範囲のカルボキシエステルを選択して、それぞれ、99%のラウリュートおよび98%のオレイン酸エステルを含む2つの特有のPS20およびPS80の加水分解を研究した。種々のカルボキシエステルは、特有の分解パターンを示し、分解パターンを使用して、ポリソルベートを加水分解する酵素を区別することができることを示した(A.C.Mcshan et al.,Hydrolysis of Polysorbate 20 and 80 by a Range of Carboxylester Hydrolases,70 PDA JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCE AND TECHNOLOGY 332-345(2016))。医薬品と共精製された宿主細胞タンパク質がポリソルベートに及ぼす影響を評価して、薬物製剤の安定性を確保することが不可欠であり得る。これには、宿主細胞タンパク質の同定およびポリソルベートを分解するその能力が必要となる可能性がある。HCPの存在は、概して、HCPの単離および同定を困難にするppmの範囲にあるため、宿主細胞タンパク質の同定は特に困難となる可能性がある。
【0046】
本発明は、ポリソルベートを分解し得る宿主細胞タンパク質のレベルが低減した、ポリソルベートを含む改善された組成物、そのような宿主細胞タンパク質を検出するための方法、およびそのような宿主細胞タンパク質を枯渇させるための方法を開示する。
【0047】
別段記載されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されるものと類似のまたは同等の任意の方法および材料を実施または試験において使用することができるが、特定の方法および材料をこれから説明する。言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
「1つの(a)」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきであり、「約」および「およそ」という用語は、当業者によって理解されるように標準的な変動を可能にすると理解されるべきであり、範囲が提供される場合、エンドポイントが含まれる。
【0049】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、目的のタンパク質と、ポリソルベートと、リパーゼの残留量とを含む組成物を提供する。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、1つ以上の薬学的に許容されるビヒクルとともに製剤化される活性薬剤を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「活性薬剤」という用語は、医薬品の生物学的に活性な成分を含み得る。活性薬剤は、薬理学的活性を提供すること、またはそうでなければ疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防に直接的な効果を有すること、または動物における生理学的機能の回復、矯正、または修正に直接的な効果を有することを目的とした、医薬品に使用される任意の物質または物質の組み合わせを指し得る。活性薬剤を調製するための非限定的な方法には、発酵プロセス、組換えDNA、天然資源からの単離および回収、化学合成、またはそれらの組み合わせを使用することを含み得る。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態において、製剤中の活性薬剤の量は、約0.01mg/mL~約600mg/mLの範囲であり得る。いくつかの特定の実施形態において、製剤中の活性薬剤の量は、約0.01mg/mL、約0.02mg/mL、約0.03mg/mL、約0.04mg/mL、約0.05mg/mL、約0.06mg/mL、約0.07mg/mL、約0.08mg/mL、約0.09mg/mL、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、約0.8mg/mL、約0.9mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約5mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、約200mg/mL、約225mg/mL、約250mg/mL、約275mg/mL、約300mg/mL、約325mg/mL、約350mg/mL、約375mg/mL、約400mg/mL、約425mg/mL、約450mg/mL、約475mg/mL、約500mg/mL、約525mg/mL、約550mg/mL、約575mg/mL、または約600mg/mLであり得る。
【0053】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物のpHは、約5.0超であり得る。1つの例示的な実施形態において、pHは、約5.0超、約5.5超、約6超、約6.5超、約7超、約7.5超、約8超、または約8.5超であり得る。
【0054】
いくつかの例示的な実施形態において、活性薬剤は、目的のタンパク質であり得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」または「目的のタンパク質」という用語は、共有結合で連結されたアミド結合を有する任意のアミノ酸ポリマーを含み得る。タンパク質は、概して「ポリペプチド」として当技術分野において既知である、1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。「ポリペプチド」は、アミノ酸残基、関連する天然に存在する構造変異体、およびペプチド結合を介して連結されたその合成の非天然に存在する類似体、関連する天然に存在する構造変異体、ならびにそれらの合成の非天然に存在する類似体からなるポリマーを指す。「合成のペプチドまたはポリペプチド」は、天然に存在しないペプチドまたはポリペプチドを指す。合成のペプチドまたはポリペプチドは、例えば、自動化ポリペプチド合成機を使用して合成され得る。様々な固相ペプチド合成方法が、当業者に既知である。タンパク質は、単一の機能的な生体分子を形成するために、1つまたは複数のポリペプチドを含み得る。タンパク質は、生物治療薬タンパク質、研究または治療において使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質および他のキメラ受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ならびに二重特異性抗体のうちのいずれかを含み得る。別の例示的な態様において、タンパク質は、抗体断片、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含み得る。タンパク質は、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、Pichia種)、哺乳類系(例えば、CHO細胞、およびCHO-K1細胞のようなCHO誘導体)などの組換え細胞ベースの産生系を使用して産生され得る。生物治療薬タンパク質およびそれらの産生を考察する最近のレビューについては、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,”(Darius Ghaderi et al.,Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,28 BIOTECHNOLOGY AND GENETIC ENGINEERING REVIEWS147-176(2012))を参照されたい。いくつかの実施形態において、タンパク質は、修飾、付加物、および他の共有結合で連結された部分を含む。これらの修飾、付加物、および部分は、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、グリカン(例えば、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、ノイラミン酸、N-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、および他の単糖類)、PEG、ポリヒスチジン、FLAGタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合タンパク質(CBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)myc-エピトープ、蛍光標識、および他の色素などを含む。タンパク質は、組成および溶解性に基づいて分類され得、したがって、球状タンパク質および線維状タンパク質などの単純タンパク質;ヌクレオタンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、色素タンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質、およびリポタンパク質などのコンジュゲートタンパク質;ならびに一次由来タンパク質および二次由来タンパク質などの誘導タンパク質を含み得る。
【0056】
いくつかの例示的な実施形態において、目的のタンパク質は、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、融合タンパク質、およびそれらの組み合わせであり得る。
【0057】
特定の態様において、目的のタンパク質は、アフリベルセプトであり得る(参照によりその教示全体が本明細書に組み込まれる、US7,279,159を参照されたい)。
【0058】
「抗体」という用語は、本発明で使用される場合、ジスルフィド結合によって相互接続された2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2、およびC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分化され得、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が点在する。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4。本発明の異なる実施形態において、抗big-ET-1抗体(もしくはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であり得るか、または天然にもしくは人工的に修飾され得る。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0059】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、完全な抗体分子の抗原結合断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」および同様の用語は、本明細書で使用される場合、天然に存在する、酵素的に手得可能な、合成の、または遺伝子操作された、抗原に特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗体結合断片は、例えば、完全な抗体分子から、抗体可変ドメインおよび任意選択で定常ドメインをコードするDNAの操作および発現に関連するタンパク質消化、または組換え遺伝子操作技術などの任意の好適切標準的技術を使用して、得ることができる。そのようなDNAは既知であり、および/または例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えばファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成され得る。DNAは、例えば、1つ以上の可変および/もしくは定常ドメインを好適な構成へと配置するか、またはコドンを導入し、システイン残基を作成し、アミノ酸を修飾、付加、もしくは欠失などするために、化学的に、または分子生物学技術を使用することによって配列決定および操作され得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域などの完全なままの抗体の一部分を含む。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、dsFvダイアボディ、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、および単離された相補性決定領域(CDR)領域、ならびにトリアボディ、テトラボディ、線形抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。Fv断片は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域の組み合わせであり、ScFvタンパク質は、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続された組換え単鎖ポリペプチド分子である。いくつかの例示的な実施形態において、抗体断片は、親抗体と同じ抗原に結合する断片である親抗体の十分なアミノ酸配列を含み、いくつかの例示的な実施形態において、断片は、親抗体と同等の親和性で抗原に結合し、および/または抗原への結合について親抗体と競合する。抗体断片は、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、完全なままの抗体の断片化によって酵素的または化学的に産生され得、かつ/またはそれは、部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に産生され得る。代替的または追加的に、抗体断片は、完全にまたは部分的に合成的に産生され得る。抗体断片は、任意選択で単鎖抗体断片を含み得る。代替的または追加的に、抗体断片は、例えば、ジスルフィド連結によって一緒に連結される複数の鎖を含み得る。抗体断片は、任意選択で多分子複合体を含み得る。機能的抗体断片は、典型的には、少なくとも約50アミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200アミノ酸を含む。
【0061】
「二重特異性抗体」という語句は、2つ以上のエピトープに選択的に結合することが可能な抗体を含む。二重特異性抗体は、概して、2つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、2つの異なる分子(例えば、抗原)上または同じ分子上(例えば、同じ抗原上)のいずれかで異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープおよび第2のエピトープ)に選択的に結合することが可能である場合、第1の重鎖の第1のエピトープに対する親和性は、概して、第1の重鎖の第2のエピトープに対する親和性より少なくとも1~2、または3、または4桁低く、逆も同様である。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じまたは異なる標的上(例えば、同じまたは異なるタンパク質上)にあり得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製され得る。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列は、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合され得、そのような配列は、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞で発現し得る。
【0062】
典型的な二重特異性抗体は、各々が3つの重鎖CDRを有する2つの重鎖、続いて、C1ドメイン、ヒンジ、C2ドメイン、およびC3ドメイン、ならびに免疫グロブリン軽鎖を有し、その免疫グロブリン軽鎖は抗原結合特異性を付与しないが、各重鎖と会合可能であるか、または各重鎖と会合可能であり、かつ重鎖抗原結合領域によって結合されたエピトープのうちの1つ以上と会合可能であるか、または各重鎖と会合可能であり、かつ重鎖のうちの1つもしくは両方が1つもしくは両方のエピトープと結合可能である。BsAbは、Fc領域を保有するもの(IgG様)と、Fc領域を欠くものの2つの主要なクラスに分けることができ、後者は、通常、Fcを含むIgGおよびIgG様二重特異性分子よりも小さい。IgG様bsAbは、これらに限定されないが、トリオマブ、ノブイントゥホールIgG(kih IgG)、クロスMab、orth-Fab IgG、二重可変ドメインIg(DVD-Ig)、ツーインワンもしくは二重作用Fab(DAF)、IgG-単鎖Fv(IgG-scFv)、またはκλ-体などの異なる形式を有し得る。非IgG様の異なる形式としては、タンデムscFv、ダイアボディ形式、単鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、二重親和性再標的化分子(DART)、DART-Fc、ナノボディ、またはドックアンドロック(DNL)法によって産生される抗体(Gaowei Fan,Zujian Wang & minutes gju Hao,Bispecific antibodies and their applications,8 JOURNAL OF HEMATOLOGY & ONCOLOGY130、Dafne Muller & Roland E.Kontermann,Bispecific Antibodies,HANDBOOK OF THERAPEUTIC ANTIBODIES265-310(2014))が挙げられる。
【0063】
BsAbを産生する方法は、2つの異なるハイブリドーマ細胞株の体細胞融合に基づくクアドローマ技術、化学的架橋剤を含む化学的コンジュゲーション、および組換えDNA技術を利用する遺伝子アプローチであるが、これらに限定されない。BsAbの例としては、以下の特許出願に開示されているものが挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。2010年6月25日に出願された米国特許出願第12/823838号、2012年6月5日に出願された米国特許出願第13/488628号、2013年9月19日に出願された米国特許出願第14/031075号、2015年7月24日に出願された米国特許出願第14/808171号、2017年9月22日に出願された米国特許出願第15/713574号、2017年9月22日に出願された米国特許出願第15/713569号、2016年12月21日に出願された米国特許出願第15/386453号、2016年12月21日に出願された米国特許出願第15/386443号、2016年7月29日に出願された米国特許出願第15/22343号、および2017年11月15日に出願された米国特許出願第15814095号。低レベルのホモ二量体不純物は、二重特異性抗体の製造中のいくつかのステップで存在し得る。そのようなホモ二量体不純物の検出は、通常の液体クロマトグラフィー法を使用して実施する場合、ホモ二量体不純物の存在量が少なく、これらの不純物が主な種と共溶出するため、インタクト質量分析を使用して実施する場合、困難である可能性がある。
【0064】
本明細書で使用される場合、「多重特異性抗体」または「Mab」とは、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体を指す。そのような分子は通常、2つの抗原のみに結合するが(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)、三重特異性抗体およびKIH三重特異性などの追加の特異性を有する抗体は、本明細書に開示される系および方法によって対処することができる。
【0065】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ハイブリドーマ技術を介して産生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、当技術分野において利用可能または既知の任意の手段によって、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一のクローンに由来し得る。本開示で有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組み合わせの使用を含む、当技術分野において既知の多種多様な技術を使用して調製され得る。
【0066】
いくつかの例示的な実施形態において、目的のタンパク質は、約4.5~約9.0の範囲のpIを有し得る。1つの例示的な特定の実施形態において、pIは、約4.5、約5.0、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、または約9.0であり得る。
【0067】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物中の目的のタンパク質のタイプは、少なくとも2つであり得る。いくつかの特定の実施形態において、少なくとも2つの目的のタンパク質のうちの1つは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体断片、融合タンパク質、または抗体-薬物複合体であり得る。いくつかの他の特定の実施形態において、少なくとも2つの目的のタンパク質のうちの1つの濃度は、約20mg/mL~約400mg/mLであり得る。いくつかの例示的な実施形態において、組成物中の目的のタンパク質のタイプは、2つである。いくつかの例示的な実施形態において、組成物中の目的のタンパク質のタイプは、3つである。いくつかの例示的な実施形態において、組成物中の目的のタンパク質のタイプは、5つである。
【0068】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物中の2つ以上の目的のタンパク質は、トラップタンパク質、キメラ受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体断片、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、またはペプチドホルモンから選択され得る。
【0069】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物は、併用製剤であり得る。
【0070】
いくつかの例示的な実施形態において、目的のタンパク質は、哺乳類細胞から精製され得る。哺乳類細胞は、ヒト起源または非ヒト起源のものであり得、初代上皮細胞(例えば、角化細胞、子宮頸部上皮細胞、気管支上皮細胞、気管上皮細胞、腎臓上皮細胞および網膜上皮細胞)、確立された細胞株およびそれらの株(例えば、293胎児腎臓細胞、BHK細胞、HeLa子宮頸部上皮細胞およびPER-C6網膜細胞、MDBK(NBL-1)細胞、911細胞、CRFK細胞、MDCK細胞、CHO細胞、BeWo細胞、Chang細胞、Detroit562細胞、HeLa229細胞、HeLaS3細胞、Hep-2細胞、KB細胞、LSI80細胞、LS174T細胞、NCI-H-548細胞、RPMI2650細胞、SW-13細胞、T24細胞、WI-28 VA13、2RA細胞、WISH細胞、BS-C-I細胞、LLC-MK2細胞、クローンM-3細胞、1-10細胞、RAG細胞、TCMK-1細胞、Y-l細胞、LLC-PKi細胞、PK(15)細胞、GHi細胞、GH3細胞、L2細胞、LLC-RC256細胞、MHiCi細胞、XC細胞、MDOK細胞、VSW細胞、およびTH-I、B1細胞、BSC-1細胞、RAf細胞、RK細胞、PK-15細胞、またはそれらの誘導体)、任意の組織または器官由来の線維芽細胞(以下を含むがこれらに限定されない。心臓、肝臓、腎臓、結腸、腸、食道、胃、神経組織(脳、脊髄)、肺、血管組織(動脈、静脈、毛細血管)、リンパ組織(リンパ腺、咽頭扁桃腺、扁桃腺、骨髄、および血液)、脾臓、ならびに線維芽細胞および線維芽細胞様細胞株(例えば、CHO細胞、TRG-2細胞、IMR-33細胞、Don細胞、GHK-21細胞、シトルリン血症細胞、Dempsey細胞、Detroit551細胞、Detroit510細胞、Detroit525細胞、Detroit529細胞、Detroit532細胞、Detroit539細胞、Detroit548細胞、Detroit573細胞、HEL299細胞、IMR-90細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WI-26細胞、Midi細胞、CHO細胞、CV-1細胞、COS-1細胞、COS-3細胞、COS-7細胞、Vero細胞、DBS-FrhL-2細胞、BALB/3T3細胞、F9細胞、SV-T2細胞、M-MSV-BALB/3T3細胞、K-BALB細胞、BLO-11細胞、NOR-10細胞、C3H/IOTI/2細胞、HSDMiC3細胞、KLN205細胞、McCoy細胞、マウスL細胞、2071株(マウスL)細胞、L-M株(マウスL)細胞、L-MTK’(マウスL)細胞、NCTCクローン2472および2555、SCC-PSA1細胞、Swiss/3T3細胞、Indian muntjac細胞、SIRC細胞、Cn細胞、およびJensen細胞、Sp2/0、NS0、NS1細胞、またはそれらの派生物)を含み得る。
【0071】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物は安定であり得る。組成物の安定性は、活性薬剤の化学的安定性、物理的安定性、または機能的安定性を評価することを含み得る。本発明の製剤は、典型的には、活性薬剤の高いレベルの安定性を示す。
【0072】
タンパク質製剤に関して、「安定である」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される例示的な条件下での保存後に許容可能な程度の化学構造または生物学的機能を保持することができる製剤内の目的のタンパク質を指す。製剤は、その中に含まれる目的のタンパク質が、規定された時間保存した後、その化学構造または生物学的機能の100%を維持しない場合であっても、安定であり得る。ある特定の状況下では、規定された時間保存した後のタンパク質の構造または機能の約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の維持は、「安定である」とみなされ得る。
【0073】
安定性は、とりわけ、規定された温度で規定された時間保存した後、製剤中に残存する天然タンパク質の割合を決定することによって測定され得る。天然タンパク質の割合は、とりわけ、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー[SE-HPLC])によって決定され得、天然タンパク質は、非凝集および非分解を意味する。その語句が本明細書で使用される場合、「許容される程度の安定性」は、所与の温度で規定された時間保存した後、少なくとも90%の天然形態のタンパク質が製剤中で検出され得ることを意味する。ある特定の実施形態において、規定された温度で規定された時間保存した後、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の天然形態のタンパク質が製剤中で検出され得る。安定性が測定されるまでの規定された時間は、少なくとも14日間、少なくとも28日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも10ヶ月間、少なくとも11ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、またはそれ以上であり得る。
【0074】
安定性は、とりわけ、規定された温度で規定された時間保存した後の製剤内の凝集体に形成されるタンパク質の割合を決定することによって測定され得、安定性は、形成される凝集体の割合に反比例する。この形態の安定性は、本明細書で「コロイド安定性」とも称される。凝集したタンパク質の割合は、とりわけ、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー[SE-HPLC])によって決定され得る。その語句が本明細書で使用される場合、「許容できる程度の安定性」は、所与の温度で規定された時間保存した後、最大6%のタンパク質が、製剤中で検出される凝集形態にあることを意味する。ある特定の実施形態において、許容される程度の安定性は、所与の温度で規定された時間保存した後、最大約6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が製剤中で凝集体で検出され得ることを意味する。安定性が測定されるまでの規定された時間量は、少なくとも約2週間、少なくとも28日、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月、またはそれ以上であり得る。安定性を評価する場合、医薬製剤が保存され得る温度は、約-80℃~約45℃の任意の温度、例えば、約-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約4℃、約5℃、約25℃、約35℃、約37℃、または約45℃での保存であり得る。例えば、医薬製剤は、5℃で6ヶ月間の保存後、約3%未満、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が凝集形態で検出される場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、約25℃で6ヶ月間の保存後、約4%未満、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が凝集形態で検出される場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、45℃で28日間の保存後、約6%未満、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が凝集形態で検出される場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、-20℃、-30℃、または-80℃で3ヶ月間の保存後、約3%未満、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が凝集形態で検出される場合、安定であるとみなされ得る。
【0075】
安定性はまた、とりわけ、規定された温度で規定された時間保存した後の製剤内の凝集体に形成されるタンパク質の割合を決定することによって測定され得、安定性は、形成される凝集体の割合に反比例する。この形態の安定性は、本明細書で「コロイド安定性」とも称される。凝集したタンパク質の割合は、とりわけ、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー[SE-HPLC])によって決定され得る。その語句が本明細書で使用される場合、「許容できる程度の安定性」は、所与の温度で規定された時間保存した後、最大約6%のタンパク質が、製剤中で検出される凝集形態にあることを意味する。ある特定の実施形態において、許容される程度の安定性は、所与の温度で規定された時間保存した後、最大約6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が製剤中で凝集体で検出され得ることを意味する。安定性が測定されるまでの規定された時間量は、少なくとも約2週間、少なくとも28日、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月、またはそれ以上であり得る。安定性を評価する場合、医薬製剤が保存され得る温度は、約-80℃~約45℃の任意の温度、例えば、約-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約4°~8℃、約5℃、約25℃、約35℃、約37℃、または約45℃での保存であり得る。例えば、医薬製剤は、約5℃で6ヶ月間の保存後、約3%未満、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が凝集形態で検出される場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、約25℃で6ヶ月間の保存後、約4%未満、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が凝集形態で検出される場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、45℃で約28日間の保存後、約6%未満、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が凝集形態で検出される場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、約-20℃、-30℃、または-80℃で3ヶ月間の保存後、約3%未満、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が凝集形態で検出される場合、安定であるとみなされ得る。
【0076】
安定性はまた、とりわけ、タンパク質の主な画分(「主な電荷形態」)中よりもイオン交換(「酸性形態」)中のより酸性の画分中で移行するタンパク質の割合を決定することによって測定され得、安定性は、酸性形態のタンパク質の画分に反比例する。理論に束縛されることを望まないが、タンパク質の脱アミド化は、タンパク質を、非アミド化タンパク質に対して、より負に荷電させ、したがってより酸性にする可能性がある(例えば、Robinson,N.(2002)“Protein Deamidation”PNAS,99(8):5283-5288を参照されたい)。「酸性化」タンパク質の割合は、とりわけ、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー[CEX-HPLC])によって決定され得る。その語句が本明細書で使用される場合、「許容できる程度の安定性」は、定義された温度で定義された時間保存した後、最大で49%のタンパク質が、製剤中で検出されるより酸性形態にあることを意味する。特定の例示的な実施形態において、許容できる程度の安定性は、所与の温度で規定された時間保存した後、最大約49%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%のタンパク質が製剤中で酸性形態で検出され得ることを意味する。安定性が測定されるまでの規定された時間量は、少なくとも約2週間、少なくとも28日、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月、またはそれ以上であり得る。
【0077】
安定性を評価する場合、医薬製剤が保存され得る温度は、約-80℃~約45℃の任意の温度、例えば、約-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約4°~8℃、約5℃、約25℃、または約45℃での保存であり得る。例えば、医薬製剤は、-80℃、-30℃、または-20℃で3ヶ月間の保存後、約30%未満、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%のタンパク質がより酸性の形態である場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、5℃で6ヶ月間の保存後、約32%未満、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%のタンパク質がより酸性形態である場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、25℃で6ヶ月間の保存後、約43%未満、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%のタンパク質がより酸性形態である場合、安定であるとみなされ得る。医薬製剤はまた、45℃で28日間の保存後、約49%未満、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%のタンパク質がより酸性形態である場合、安定であるとみなされ得る。
【0078】
他の方法、例えば、熱安定性を決定するための示差走査熱量測定法(DSC)、機械的安定性を決定するための制御された撹拌、溶液濁度を決定するための約350nmまたは約405nmでの吸光度などを使用して、本発明の製剤の安定性を評価し得る。例えば、本発明の製剤は、約5℃~約25℃で6ヶ月以上の保存後、製剤のOD405の変化が、ゼロ時点での製剤のOD405から約0.05未満(例えば、0.04、0.03、0.02、0.01、またはそれ未満)である場合、安定であるとみなされ得る。タンパク質の標的に対する生理学的活性または結合親和性を測定することも、安定性を評価するために使用され得る。例えば、本発明の製剤は、例えば、5℃、25℃、45℃などで規定された時間(例えば、1~12ヶ月)保存した後、製剤中に含まれるタンパク質が、該保存前のタンパク質の結合親和性の少なくとも90%、95%、またはそれ以上の親和性でその標的に結合する場合、安定であるとみなされ得る。結合親和性は、例えば、ELISAまたはプラズモン共鳴により決定され得る。生物学的活性は、例えば、タンパク質を発現する細胞を、タンパク質を含む製剤と接触させるなど、タンパク質活性アッセイによって決定され得る。タンパク質のそのような細胞への結合は、例えば、FACS分析などを介して直接測定され得る。代替的に、タンパク質の下流活性系は、タンパク質の存在下で測定され得、タンパク質の欠如下でのタンパク質の活性系と比較され得る。
【0079】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物は、疾患または障害の治療、予防、および/または改善のために使用され得る。本発明の医薬製剤の投与によって治療および/または予防され得る例示的な非限定的な疾患および障害は、感染症;呼吸器疾患;神経原性、神経障害性または侵害受容性の痛みに関連する任意の状態から生じる痛み;遺伝性障害;先天性障害;がん;疱疹;慢性特発性じん麻疹;強皮症;肥厚性瘢痕;ウィップル病;良性前立腺肥大症;軽度、中等度または重度の喘息などの肺障害;アレルギー反応;川崎病;鎌状赤血球症;チャーグ・ストラウス症候群;グレーブス病;子癇前症;シェーグレン症候群;自己免疫性リンパ増殖性症候群;自己免疫性溶血性貧血;バレット食道;自己免疫性ブドウ膜炎;結核;ネフローゼ;慢性関節リウマチを含む節炎;クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患;全身性エリテマトーデス;炎症性疾患;HIV感染;AIDS;LDLアフェレーシス;PCSK9活性化変異による障害(機能変異の獲得、「GOF」);ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)による障害;原発性高コレステロール血症;脂質異常症;胆汁うっ滞性肝疾患;ネフローゼ症候群;甲状腺機能低下症;肥満;アテローム性動脈硬化症;心血管疾患;神経変性疾患;新生児発症多系炎症性障害(NOM ID/CINCA);ムックル・ウェルズ症候群(MWS);家族性寒冷自己炎症症候群(FCAS);家族性地中海熱(FMF);腫瘍壊死因子受容体関連の周期的発熱症候群(TRAPS);全身型若年性特発性関節炎(スティル病);1型および2型糖尿病;自己免疫疾患;運動ニューロン疾患;眼疾患;性感染症;結核;VEGFアンタゴニストによって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;PD-1阻害物質によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;インターロイキン抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;NGF抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;PCSK9抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;ANGPTL抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;アクチビン抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;GDF抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;Fel d 1抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;CD抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態;C5抗体によって改善、阻害、もしくは軽減される疾患もしくは状態またはそれらの組み合わせを含む。
【0080】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物を、患者に投与し得る。投与は、当業者に許容される任意の経路を介し得る。非限定的な投与経路には、経口、局所、または非経口が含まれる。特定の非経口経路を介した投与は、針またはカテーテルを介して、滅菌シリンジまたは連続注入システムなどのいくつかの他の機械的デバイスによって推進されて、患者の体内に本発明の製剤を導入することを含み得る。本発明によって提供される組成物は、シリンジ、注射器、ポンプ、または非経口投与のための当技術分野において認識される任意の他のデバイスを使用して投与され得る。本発明の組成物はまた、肺または鼻腔内で吸収するためのエアロゾルとして投与され得る。組成物はまた、口腔内投与など、粘膜を介した吸収のために投与されてもよい。
【0081】
本明細書で使用される場合、「ポリソルベート」は、撹拌、凍結融解プロセス、および空気/水界面などの様々な物理的ストレスから抗体を保護するために製剤開発において使用される一般的な賦形剤を指し(Emily Ha,Wei Wang & Y.John Wang,Peroxide formation in polysorbate 80 and protein stability,91 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2252-2264(2002)、Bruce A.Kerwin,Polysorbates 20 and 80 Used in the Formulation of Protein Biotherapeutics:Structure and Degradation Pathways,97 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 2924-2935(2008)、Hanns-Christian Mahler et al.,Adsorption Behavior of a Surfactant and a Monoclonal Antibody to Sterilizing-Grade Filters,99 Journal of Pharmaceutical Sciences 2620-2627(2010))、ポリオキシエチレン-ソルビタンの脂肪酸エステルからなる非イオン性両親媒性界面活性剤を含み得る。エステルは、ポリオキシエチレンソルビタン頭基と、飽和モノラウラート側鎖(ポリソルベート20、PS20)または不飽和モノオレアート側鎖(ポリソルベート80、PS80)のいずれかとを含み得る。いくつかの例示的な実施形態において、ポリソルベートは、製剤中に0.001%~2%(重量/容量)の範囲で存在し得る。ポリソルベートはまた、様々な脂肪酸鎖の混合物を含み得、例えば、ポリソルベート80は、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびステアリン酸の脂肪酸を含み、モノオレアート画分は、多分散系混合物の約58%を占める(Nitin Dixit et al.,Residual Host Cell Protein Promotes Polysorbate 20 Degradation in a Sulfatase Drug Product Leading to Free Fatty Acid Particles,105 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 1657-1666(2016))。ポリソルベートの非限定的な例には、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、およびポリソルベート80が含まれる。
【0082】
ポリソルベートは、pHおよび温度に依存して自動酸化を受けやすい可能性があり、さらに、UV光への曝露は、不安定性を産生する可能性もあり(Ravuri S.k.Kishore et al.,Degradation of Polysorbates 20 and 80:Studies on Thermal Autoxidation and Hydrolysis,100 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 721-731(2011))、結果としてソルビタン頭基とともに溶液中の遊離脂肪酸をもたらす。ポリソルベートから生じる遊離脂肪酸は、6~20個の炭素を有する任意の脂肪族脂肪酸を含み得る。遊離脂肪酸の非限定的な例としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
いくつかの例示的な実施形態において、ポリソルベートは、遊離脂肪酸粒子を形成し得る。遊離脂肪酸粒子は、サイズが少なくとも5μmであり得る。さらに、これらの脂肪酸粒子は、それらのサイズに従って、可視(>100μm)、肉眼で見えない(<100μm、これは、ミクロン(1~100μm)およびサブミクロン(100nm~1000nm)に細分され得る)およびナノメートル粒子(<100nm)として分類され得る(Linda Narhi,Jeremy Schmit & Deepak Sharma,Classification of protein aggregates,101 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 493-498)。いくつかの例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、可視粒子であり得る。可視粒子は、目視検査によって決定され得る。いくつかの例示的な実施形態において、脂肪酸粒子は、肉眼で見えない粒子であり得る。肉眼で見えない粒子は、United States Pharmacopeia(USP)に従って、光遮断法によって監視され得る。
【0084】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物中のポリソルベートの濃度は、約0.001%w/v、約0.002%w/v、約0.003%w/v、約0.004%w/v、約0.005%w/v、約0.006%w/v、約0.007%w/v、約0.008%w/v、約0.009%w/v、約0.01%w/v、約0.011%w/v、約0.015%w/v、約0.02%w/v、0.025%w/v、約0.03%w/v、約0.035%w/v、約0.04%w/v、約0.045%w/v、約0.05%w/v、約0.055%w/v、約0.06%w/v、約0.065%w/v、約0.07%w/v、約0.075%w/v、約0.08%w/v、約0.085%w/v、約0.09%w/v、約0.095%w/v、約0.1%w/v、約0.11%w/v、約0.115%w/v、約0.12%w/v、約0.125%w/v、約0.13%w/v、約0.135%w/v、約0.14%w/v、約0.145%w/v、約0.15%w/v、約0.155%w/v、約0.16%w/v、約0.165%w/v、約0.17%w/v、約0.175%w/v、約0.18%w/v、約0.185%w/v、約0.19%w/v、約0.195%w/v、または約0.2%w/vであり得る。
【0085】
いくつかの例示的な実施形態において、ポリソルベートは、組成物中に存在するリパーゼによって分解され得る。これらのリパーゼは、製造プロセスに由来し得るプロセス関連不純物であり得、細胞基質由来、細胞培養物由来、および下流由来の3つの主要なカテゴリーを含み得る。細胞基質由来不純物としては、宿主生物に由来するタンパク質および核酸(宿主細胞ゲノム、ベクター、または総DNA)が挙げられるが、これらに限定されない。細胞培養物由来の不純物は、誘導剤、抗生物質、血清、および他の培地成分を含むが、これらに限定されない。下流由来の不純物は、酵素、化学的および生化学的処理試薬(例えば、シアノゲン臭化物、グアニジン、酸化剤および還元剤)、無機塩(例えば、重金属、ヒ素、非金属イオン)、溶媒、担体、リガンド(例えば、モノクローナル抗体)、および他の浸出可能物を含むが、これらに限定されない。
【0086】
一態様において、リパーゼは、セリンヒドロラーゼであり得る。特定の態様において、次いで、リパーゼは、カルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質(A0A061I7X9)であり得る。別の特定の態様において、リパーゼは、肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質(A0A061IFE2)であり得る。さらに別の特定の態様において、リパーゼは、カルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質の両方であり得る。
【0087】
いくつかの例示的な実施形態による検出する方法を使用することによって、分解に対するリパーゼの効果を同定した。
【0088】
ある特定のタンパク質調製物中のポリソルベートを分解することができるリパーゼを同定したため、そのようなリパーゼレベルの特異的な、感受性の高い、定量的な決定および/または枯渇のための試薬、方法、およびキットを有すること、ならびに低レベルのリパーゼを含む組成物を調製する方法を開発することが非常に有利であり、望ましいであろう。
【0089】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、約5ppm未満のカルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および/または肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質を含む組成物を提供する。
【0090】
いくつかの例示的な実施形態において、組成物中のカルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および/または肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質の残留量は、約5ppm未満であり得る。いくつかの特定の例示的な実施形態において、カルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および/または肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質の残留量は、約0.01ppm未満、約0.02ppm、約0.03ppm、約0.04ppm、約0.05ppm、約0.06ppm、0.07ppm、0.08ppm、0.09ppm、約0.1ppm、約0.2ppm、約0.3ppm、約0.4ppm、約0.5ppm、約0.6ppm、0.7ppm、0.8ppm、0.9ppm、約1ppm、約2ppm、約3ppm、約4ppm、または約5ppmである。
【0091】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、約5ppm未満のカルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および/または肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質を含む目的のタンパク質を有する組成物を調製する様々な方法を提供する。
【0092】
本開示はまた、約5ppm未満のカルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および/または肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質を含む目的のタンパク質を有する組成物を調製する方法を提供し、本方法は、目的のタンパク質とリパーゼとを含む試料を形成することと、試料をプローブと接触させることであって、該プローブが、リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、接触させることと、複合体を試料から分離することと、を含む。
【0093】
いくつかの例示的な実施形態において、試料は、培養された細胞培養液(CCF)、採取された細胞培養液(HCCF)、プロセス性能認定(PPQ)、下流処理における任意のステップ、薬物溶液(DS)、または最終的に製剤化された産物を含む医薬品(DP)などのバイオプロセスの任意のステップから得ることができる。いくつかの他の特定の例示的な実施形態において、試料は、浄化、クロマトグラフィー精製、ウイルス不活性化、または濾過の下流プロセスの任意のステップから選択され得る。いくつかの特定の例示的な実施形態において、医薬品は、診療所、輸送、保存、または取り扱いにおける製造された医薬品から選択され得る。いくつかの他の特定の例示的な実施形態において、医薬品は、ポリソルベートを含み得る。
【0094】
いくつかの例示的な実施形態において、約5ppm未満のカルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および/または肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質を含む目的のタンパク質を有する組成物を調製する方法はまた、さらなるクロマトグラフィーステップを含み得る。
【0095】
いくつかの例示的な実施形態において、約5ppm未満のカルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および/または肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質を含む目的のタンパク質を有する組成物を調製する方法は、試料、クロマトグラフィーステップのうちの1つ以上からの溶出液、および/またはクロマトグラフィーステップのうちの1つ以上からの素通り画分のうちの1つまたはすべてを濾過することをさらに含み得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「ウイルス濾過」には、Asahi Kasei PharmaからのPlanova 20N(商標)、50NまたはBioEx、EMD MilliporeからのViresolve(商標)フィルター、SartoriusからのViroSart CPV、またはPall CorporationからのUltipor DV20またはDV50(商標)フィルターを含むが、これらに限定されない好適なフィルターを使用した濾過を含み得る。当業者には、所望の濾過性能を得るために好適なフィルターを選択することが明らかであろう。
【0097】
いくつかの例示的な実施形態において、約5ppm未満のカルボキシルエステラーゼB-1様タンパク質および/または肝カルボキシルエステラーゼ1様タンパク質を含む目的のタンパク質を有する組成物を調製する方法は、試料、クロマトグラフィーステップのうちの1つ以上からの溶出液、および/またはクロマトグラフィーステップのうちの1つ以上からの素通り画分のうちの1つまたはすべてに、UF/DFを実施することをさらに含み得る。
【0098】
本明細書で使用される場合、「限外濾過」または「UF」という用語は、静水圧を使用して水を半透過性膜に通過させる逆浸透と同様の膜濾過プロセスを含み得る。限外濾過は、LEOS J.ZEMAN & ANDREW L.ZYDNEY,MICROFILTRATION AND ULTRAFILTRATION:PRINCIPLES AND APPLICATIONS(1996)に詳細に説明されている。0.1μmより小さい孔径のフィルターを、限外濾過に使用し得る。このような小さい孔径を有するフィルターを採用することによって、抗体がフィルターの後ろに保持されながら、フィルターを通過する試料緩衝液の透過を介して試料の容積を低減させ得る。
【0099】
本明細書で使用される場合、「透析濾過」または「DF」は、塩、糖、および非水溶媒を除去および交換するため、結合種から遊離を分離するため、低分子量材料を除去するため、ならびに/またはイオンおよび/もしくはpH環境の急速な変化を引き起こすために限外濾過装置を使用する方法を含み得る。微細溶質は、限外濾過されている溶液に、限外濾過速度とほぼ等しい速度で溶媒を添加することによって最も効率的に除去される。これは、溶液から一定体積で微細種を洗浄し、保持された抗体を効果的に製造する。本発明のある特定の実施形態において、任意選択でさらなるクロマトグラフィーまたは他の精製ステップの前に、本発明に関連して使用される様々な緩衝液を交換するために、ならびに抗体調製物から不純物を除去するために、透析濾過ステップが採用され得る。
【0100】
いくつかの例示的な実施形態において、プローブは、固体支持体上に連結することが可能であり得る。固体支持体は、周知の支持体、または現在広く使用されているかもしくは固定化、分離などのために提案されているマトリックスのうちのいずれかであり得る。これらは、粒子、シート、ゲル、フィルター、膜、繊維、キャピラリー、または微量滴定ストリップ、チューブ、プレート、もしくはウェルなどの形態を取り得る。好都合に、支持体は、ガラス、シリカ、ラテックス、またはポリマー材料から作製され得る。微粒子物質、例えばビーズは、それらのより高い結合能力によって、特にポリマービーズが概して好ましい。本発明に従って使用される微粒子固体支持体は、球状ビーズを含むであろう。本発明の方法での使用に好適な非磁性ポリマービーズは、Dyno Particles AS(Lillestrom,Norway)から、ならびにQiagen,Pharmacia and Serotecから入手可能である。
【0101】
しかしながら、操作および分離を補助するために、磁性ビーズが好ましい。本明細書で使用される場合、「磁性」という用語は、支持体が磁場に配置されると、磁気モーメントを得ることが可能であり、したがって、その磁場の作用下で置き換え可能であることを意味する。換言すれば、核酸結合ステップに続いて迅速、単純、かつ効率的に粒子を分離する方式を提供する、核酸を分解し得る剪断力を生成する遠心分離などの従来の技術よりもはるかに過酷ではない方法である磁性凝集によって、磁性粒子を含む支持体は容易に除去することができる。したがって、本発明の方法を使用して、プローブとリパーゼとの間で形成された複合体は、例えば、永久磁石を使用して、磁場を印加することによって除去することができる。通常、試料混合物を含む容器の側面に磁石を適用して、粒子を容器の壁に凝集させ、試料の残留物を注ぎ出すのに、磁場の印加は十分である。いくつかの特定の態様において、反応中の粒子の磁気凝集および塊化を回避し、したがって均一性および核酸抽出を確実にすることができるため、超常磁性粒子、例えば、SintefによってEP-A-106873に記載されているものが使用され得る。Dynal AS(Oslo,Norway)によってDYNABEADSとして販売されている周知の磁性粒子は、本発明での使用に特に適している。さらに、ビーズまたは他の支持体は、異なるタイプの官能化表面、例えば、正に帯電しているか、または疎水性を有するように調製されていてもよい。弱く正に帯電した表面、および強く正に帯電した表面、弱く負に帯電した中性表面、ならびに例えばポリウレタンコーティングされた疎水性表面が良好に機能することが示されている。
【0102】
いくつかの例示的な実施形態において、プローブは、リガンドを使用して固体支持体上に連結することが可能であり得る。非限定的な例としては、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、修飾ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、タンパク質配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子が挙げられ得る。リガンドの特定の例としては、ビオチン分子、またはデイミノビオチン分子、デスチオビオチン分子などの修飾されたビオチン分子、1,2-ジヒドロキシエタン、1,2-ジヒドロキシシクロヘキサンなどの隣接ジオール、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、グルタチオン、2,4-ジントロベンゼン(dintrobenzene)、フェニルアルソン酸(phenylarsenate)、ssDNA、dsDNA、ポリペプチドノペプチド、金属キレート、糖類、ローダミンもしくはフルオレセイン、または抗体を生成することができる任意のハプテンが挙げられ得るが、これらに限定されない。リガンドおよびそれらの捕捉試薬の例としては、例えば、ストレパビジン(strepavidin)-アガロース、オリゴマー-アビジン-アガロース、またはモノマー-アビジン-アガロースの形態で使用され得る、アビジン/ストレプトアビジンファミリーのタンパク質に結合するデイミノビオチン分子、修飾ビオチン分子を含むデチオビオチンまたは構造修飾ビオチン系試薬;任意の1,2-ジオール、例えば、1,2-ジヒドロキシエタン(HO-CH-CH-OH)、および環式アルカンのもの、例えば、アルキルまたはアリール基を介してアガロースなどの固体支持材料に結合し得るフェニル-B(OH)またはヘキシル-B(Oエチル)などの、アルキルまたはアリールボロン酸またはボロン酸エステルに結合する1,2-ジヒドロキシシクロヘキサンを含む、他の1,2-ジヒドロキシアルカン;マルトース結合タンパク質に結合するマルトース(ならびに上で考察された特性を有する任意の他の糖/糖結合タンパク質対、またはより一般には任意のリガンド/リガンド結合タンパク質対);例えばジニトロフェニル基が抗ジニトロフェニル-lgGに結合するであろう、ハプテンを認識する抗ハプテン抗体にハプテンが結合する任意の抗体では、ジニトロフェニル基などのハプテン;遷移金属捕捉試薬が、ニトリロ三酢酸キレート化Ni(II)またはイミノ二酢酸キレート化Ni(II)などの樹脂結合キレート化遷移金属の形態で使用され得る、例えばオリゴマーヒスチジンがNi(II)に結合するであろう、遷移金属に結合するリガンド;グルタチオン-S-トランスフェラーゼに結合するグルタチオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本開示はまた、試料をセリンヒドロラーゼプローブと接触させることによって、試料中の肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質または肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質を検出する方法を提供する。一態様において、試料中のリパーゼを検出する方法は、試料をセリンヒドロラーゼプローブと接触させ、インキュベートして、リパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体を形成することを含み得る。さらなる態様において、試料中のリパーゼを検出する方法は、リパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体を形成していないセリンヒドロラーゼプローブを濾過することを含み得る。
【0104】
いくつかの例示的な実施形態において、試料中のリパーゼを検出する方法は、磁性ビーズがリパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体に結合するように、試料を、セリンヒドロラーゼプローブに結合する能力を有する磁性ビーズと接触させる接触させることをさらに含み得る。
【0105】
いくつかの特定の例示的な実施形態において、リパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体に結合した磁性ビーズは、試料からさらに除去され、緩衝液で洗浄され得る。
【0106】
いくつかの例示的な実施形態において、試料中のリパーゼを検出する方法は、リパーゼとセリンヒドロラーゼプローブとの複合体に結合している磁性ビーズを除去して、リパーゼが濃縮された溶液を形成することをさらに含み得る。
【0107】
いくつかの例示的な実施形態において、試料中のリパーゼを検出する方法は、加水分解剤を溶液に添加して、消化物を得ることをさらに含み得る。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「加水分解剤」は、タンパク質の消化を実施し得る多数の種々の薬剤のうちの任意の1つまたは組み合わせを指す。酵素消化を実施し得る加水分解剤の非限定的な例としては、Aspergillus Saitoi由来のプロテアーゼ、エラスターゼ、サブチリシン、プロテアーゼXIII、ペプシン、トリプシン、Tryp-N、キモトリプシン、アスペルギロペプシンI、LysNプロテアーゼ(Lys-N)、LysCエンドプロテアーゼ(Lys-C)、エンドプロテアーゼAsp-N(Asp-N)、エンドプロテアーゼArg-C(Arg-C)、エンドプロテアーゼGlu-C(Glu-C)または外膜タンパク質T(OmpT)、Streptococcus pyogenesの免疫グロブリン分解酵素(IdeS)、サーモリシン、パパイン、プロナーゼ、V8プロテアーゼ、またはそれらの生物学的に活性な断片、もしくはそれらのホモログ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。非酵素消化を実施し得る加水分解剤の非限定的な例としては、高温、マイクロ波、超音波、高圧、赤外線、溶媒(非限定的な例は、エタノールおよびアセトニトリル)、固定化酵素消化(IMER)、磁性粒子固定化酵素、およびオンチップ固定化酵素の使用が挙げられる。タンパク質消化のための利用可能な技術を考察する最近のレビューについては、Switazar et al.,“Protein Digestion:An Overview of the Available Techniques and Recent Developments”(Linda Switzar,Martin Giera & Wilfried M.A.Niessen,Protein Digestion:An Overview of the Available Techniques and Recent Developments,12 JOURNAL OF PROTEOME RESEARCH 1067-1077(2013))を参照されたい。加水分解剤の1つまたは組み合わせは、タンパク質またはポリペプチドにおいて、配列特異的な様式でペプチド結合を切断し、より短いペプチドの予測可能な収集物を生成し得る。
【0109】
加水分解剤対リパーゼの比および消化に必要な時間は、リパーゼの消化を得るために適切に選択され得る。酵素対基質比が不適切に高い場合、対応して消化速度が高いことで、ペプチドが質量分析計によって分析されるのに十分な時間が得られず、配列カバレッジが損なわれる。一方、低いE/S比は、長い消化を必要とし、したがって、データ取得時間が長くなる。酵素対基質比は、約1:0.5~約1:200の範囲であり得る。本明細書で使用される場合、用語「消化」は、タンパク質の1つ以上のペプチド結合の加水分解を指す。適切な加水分解剤、例えば、酵素消化または非酵素消化を使用して、試料中のタンパク質の消化を実施するためのいくつかのアプローチがある。
【0110】
いくつかの例示的な実施形態において、試料中のリパーゼを検出する方法は、タンパク質変性剤を溶液に添加することをさらに含み得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、「タンパク質変性」は、ペプチド結合の破裂がなく、分子の三次元形状をその天然の状態から変化させるプロセスを指し得る。タンパク質変性は、タンパク質変性剤を使用して実施し得る。タンパク質変性剤の非限定的な例としては、熱、高または低pH、またはカオトロピック剤への曝露が挙げられる。いくつかのカオトロピック剤をタンパク質変性剤として使用し得る。カオトロピック溶質は、水素結合、ファンデルワールス力、および疎水性効果などの非共有結合力によって媒介される分子内相互作用を妨げることによって、系のエントロピーを増加させる。カオトロピック剤の非限定的な例には、ブタノール、エタノール、塩化グアニジニウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、N-ラウロイルサルコシン、尿素、およびそれらの塩が挙げられる。特定の態様において、タンパク質変性剤は、尿素であり得る。
【0112】
いくつかの例示的な実施形態において、試料中のリパーゼを検出する方法は、タンパク質変性剤または還元剤を溶液に添加することをさらに含み得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、「タンパク質還元剤」という用語は、タンパク質中のジスルフィド架橋の還元のために使用される薬剤を指す。タンパク質を還元するために使用されるタンパク質還元剤の非限定的な例は、ジチオスレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール、エルマン試薬、ヒドロキシルアミン塩酸塩、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP-HCl)、またはそれらの組み合わせである。一態様において、タンパク質還元剤は、DTT(ジチオスレイトール)であり得る。
【0114】
いくつかの例示的な実施形態において、試料中のリパーゼを検出する方法は、タンパク質アルキル化剤を溶液に添加することをさらに含み得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「タンパク質アルキル化剤」という用語は、タンパク質中の特定の遊離アミノ酸残基のアルキル化のために使用される薬剤を指す。タンパク質アルキル化剤の非限定的な例は、ヨードアセトアミド(IOA)、クロロアセトアミド(CAA)、アクリルアミド(AA)、N-エチルマレイミド(NEM)、メタンチオスルホン酸メチル(MMTS)、および4-ビニルピリジン、またはこれらの組み合わせである。
【0116】
いくつかの例示的な実施形態において、試料中のリパーゼを検出する方法は、消化物を分析して、リパーゼを検出することをさらに含み得る。一態様において、消化物は、質量分析計を使用して分析され得る。特定の態様において、質量分析計は、タンデム質量分析計であり得る。別の特定の態様において、質量分析計は、液体クロマトグラフィーシステムに連結され得る。さらに別の特定の態様において、質量分析計は、液体クロマトグラフィー-多重反応監視システムに連結され得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、「質量分析計」という用語は、特定の分子種を同定し、それらの正確な質量を測定することが可能なデバイスを含む。この用語は、検出および/または特徴決定のためにポリペプチドまたはペプチドが溶出され得る任意の分子検出器を含むことを意味する。質量分析計は、イオン源、質量分析器、および検出器の3つの主要な部分を含み得る。イオン源の役割は、気相イオンを作成することである。分析物の原子、分子、またはクラスターを気相に移動させ、同時に(エレクトロスプレーイオン化のように)または別々のプロセスを介してイオン化し得る。イオン源の選択は、用途に大きく依存する。
【0118】
本明細書で使用される場合、用語「タンデム質量分析」は、質量選択および質量分離の複数の段階を使用することによって、試料分子の構造情報が得られる技術を含む。前提条件は、試料分子を気相に移動させ、完全なままイオン化し得ること、ならびにそれらを、第1の質量選択ステップの後、何らかの予測可能で制御可能な方式で崩壊するように誘導し得ることである。多段階MS/MS、またはMSは、まず、前駆体イオン(MS)を選択して単離し、断片化し、一次断片イオン(MS)を単離し、断片化し、二次断片(MS)を単離し、意味のある情報を得ることができるか、または断片化イオン信号が検出可能である限り、実施することができる。タンデムMSは多種多様な分析器の組み合わせで成功裏に実施されている。特定の用途のためにどの分析器を組み合わせるかは、感度、選択性、および速度だけでなく、サイズ、コスト、および可用性などの多くの異なる要因によって決定され得る。タンデムMS方法の2つの主要なカテゴリーは、タンデムインスペースおよびタンデムインタイムであるが、タンデムインタイム分析器が空間内で、またはタンデムインスペース分析器と連結されるハイブリッドも存在する。タンデムインスペース質量分析計は、イオン源、前駆体イオン活性化デバイス、および少なくとも2つの非捕獲質量分析器を含む。特定のm/z分離機能は、機器の1つのセクションにおいてイオンが選択され、中間領域において解離され、次いで産物イオンがm/z分離およびデータ取得のために別の分析器に伝達されるように設計され得る。タンデムインタイムにおいては、イオン源において産生された質量分析イオンは、同じ物理デバイスにおいて捕獲、単離、断片化、およびm/z分離され得る。
【0119】
質量分析計によって同定されたペプチドは、完全なままのタンパク質およびそれらの翻訳後修飾の代理の代表物として使用され得る。実験および理論的なMS/MSデータを相関させることによってそれらをタンパク質の特徴決定に使用し得、後者は、タンパク質配列データベースにおける可能性のあるペプチドから生成される。特徴決定には、タンパク質断片のアミノ酸の配列決定、タンパク質配列決定、タンパク質デノボ配列決定、翻訳後修飾の位置特定、または翻訳後修飾の同定、または比較可能性分析、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0120】
本明細書で使用される場合、「データベース」という用語は、データベースにおけるすべての可能性のある配列に対して解釈されていないMS-MSスペクトルを検索する可能性を提供するバイオインフォマティクスツールを指す。そのようなツールの非限定的な例は、Mascot(http://www.matrixscience.com)、Spectrum Mill(http://www.chem.agilent.com)、PLGS(http://www.waters.com)、PEAKS(http://www.bioinformaticssolutions.com)、Proteinpilot(http://download.appliedbiosystems.com//proteinpilot)、Phenyx(http://www.phenyx-ms.com)、Sorcerer(http://www.sagenresearch.com)、OMSSA(http://www.pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/omssa/)、X!Tandem(http://www.thegpm.org/TANDEM/)、Protein Prospector(http://www.http://prospector.ucsf.edu/prospector/mshome.htm)、Byonic(https://www.proteinmetrics.com/products/byonic)またはSequest(http://fields.scripps.edu/sequest)である。
【0121】
いくつかの例示的な実施形態において、質量分析計は、液体クロマトグラフィーシステムに連結され得る。
【0122】
本明細書で使用される場合、「クロマトグラフィー」という用語は、液体または気体によって担持される化学混合物が、固定した液体または固相の周囲または上を流れるとき化学的存在物の差分分布の結果として成分に分離され得るプロセスを指す。クロマトグラフィーの非限定的な例としては、従来の逆相(RP)、イオン交換(IEX)および順相クロマトグラフィー(NP)が挙げられる。疎水性相互作用、親水性相互作用、およびイオン性相互作用がそれぞれ優勢な相互作用モードであるRP、NP、およびIEXクロマトグラフィーとは異なり、混合モードクロマトグラフィーは、これらの相互作用モードのうちの2つ以上の組み合わせを採用し得る。迅速分離液体クロマトグラフィー(rapid resolution liquid chromatography)(RRLC)、超高性能液体クロマトグラフィー(ultra-performance liquid chromatography)(UPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(ultra-fast liquid chromatography)(UFLC)およびナノ液体クロマトグラフィー(nLC)などのいくつかのタイプの液体クロマトグラフィーを、質量分析計とともに使用することができる。クロマトグラフィーの方法および原理のさらなる詳細については、Colin et al.(COLIN F.POOLE ET AL.,LIQUID CHROMATOGRAPHY FUNDAMENTALS AND INSTRUMENTATION(2017))を参照されたい。
【0123】
いくつかの例示的な実施形態において、質量分析計は、ナノ液体クロマトグラフィーに連結し得る。いくつかの例示的な実施形態において、液体クロマトグラフィーにおいてタンパク質を溶出するために使用される移動相は、質量分析計と適合性であり得る移動相であり得る。いくつかの特定の例示的な実施形態において、移動相は、酢酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0124】
いくつかの例示的な実施形態において、質量分析計は、液体クロマトグラフィー-多重反応監視システムに連結され得る。
【0125】
本明細書で使用される場合、「複数反応監視」または「MRM」は、高感度、特異度および幅広いダイナミックレンジを有する複合マトリックス内の低分子、ペプチド、およびタンパク質を正確に定量化することができる質量分析ベースの技術を指す(Paola Picotti & Ruedi Aebersold,Selected reaction monitoring-based proteomics:workflows,potential,pitfalls and future directions,9 NATURE METHODS 555-566(2012))。MRMは、典型的には、選択された低分子/ペプチドに対応する前駆体イオンが第1の四重極で選択され、前駆体イオンの断片イオンが第3の四重極で監視するために選択される、三重四重極質量分析計で実施され得る(Yong Seok Choi et al.,Targeted human cerebrospinal fluid proteomics for the validation of multiple Alzheimers disease biomarker candidates,930 JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY B 129-135(2013))。
【0126】
いくつかの例示的な実施形態において、質量分析計は、液体クロマトグラフィー-選択された反応監視システムに連結され得る。
【0127】
本発明は、任意の好適な手段によって選択され得る、前述のクロマトグラフィー樹脂、賦形剤、濾過方法、加水分解剤、タンパク質変性剤、タンパク質アルキル化剤、同定に使用される機器、および任意のクロマトグラフィー樹脂、賦形剤、濾過方法、加水分解剤、タンパク質変性剤、タンパク質アルキル化剤、同定に使用される機器のうちのいずれかに限定されないことを理解される。
【0128】
特許、特許出願、公開特許出願、受託番号、技術論文、および学術論文を含む、様々な刊行物が、本明細書全体を通して引用される。これらの引用された文献の各々は、参照によりその全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0129】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0130】
材料
Dynabeads MyOne Streptavidin T1は、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)のInvitrogenから購入した。ActivXデスチオビオチン-FPセリンヒドロラーゼプローブ、ギ酸、アセトニトリル、ジオチオスレイトール(DTT)、および1ステップウルトラTMDブロッティング溶液は、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から購入した。酢酸、10倍Tris緩衝生理食塩水(TBS)、ヨードアセトアミド(IAM)、ウシ血清アルブミン(BSA)、および尿素は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。EDTAおよび0.005%v/vの界面活性剤P-20を含むHEPES緩衝生理食塩水(HBS-EP)は、GE(Boston,MA)から購入した。モノクローナル抗体原薬は、Regeneron Pharmaceutical Inc.で作製された。ポリソルベート80は、Croda(East Yorkshire,UK)から購入した。ウサギrLEは、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。ヒトCES-1は、Abcam(Cambridge UK)から購入した。配列決定グレードの改変トリプシンは、Promega(Madison,WI)から購入した。Oasis Maxカラム(2.1×20mm、30μm)およびAcquity UPLC BEH C4カラム(2.1×50mm、1.7μm)は、Waters(Milford,MA)から購入した。Acclaim PepMap100 C18分析カラム(0.075×250mm、3μm)およびAcclaim PepMap100 C18トラップカラム(0.075×20mm、3μm)は、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から購入した。DPBS(10倍)は、Gibco(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)から購入し、Tween20はJ.T.Baker(Phillipsburg,NJ)から購入した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)源を有するQ-Exactive Plusは、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から購入した。
【0131】
ポリソルベート分解を分析するための二次元液体クロマトグラフィー-荷電化粒子検出器(CAD)/質量分析(MS)方法
CHO細胞を含まない培地または製剤化された抗体中のPS20およびPS80の分解は、Genentech(Yi Li et al.,Characterization and Stability Study of Polysorbate20 in Therapeutic Monoclonal Antibody Formulation by Multidimensional Ultrahigh-Performance Liquid Chromatography-Charged Aerosol Detection-Mass Spectrometry,86 ANALYTICAL CHEMISTRY5150-5157(2014))によって以前に説明されている二次元HPLC-CAD/MS方法によって分析した。まず、99%の溶媒A(水中0.1%のギ酸)および1%の溶媒B(アセトニトリル中0.1%のギ酸)で予め平衡化したOasis MAXカラム(2.1×20mm、30μm)を使用して、ポリソルベートを製剤化されたmAbから分離した。試料注入後、平衡化勾配を1分間保持し、続いて溶媒Bを4分で15%に直線的に増加させて、ポリソルベートをmAbから分離した。次いで、溶出したポリソルベートを、逆相クロマトグラフィーに基づく分離のために、スイッチバルブを使用してAcquity BEH C4カラム(2.1×50mm、1.7μm)に迂回させた。分離開始時に、溶媒Bを1.5分で20%に急速に増加させ、次いで45分で99%に徐々に増加させ、5分間保持し、続いて5分間1%のBの平衡化ステップを行った。流量を0.1mL/分、カラム温度を40℃に維持した。
【0132】
2D-LCシステムは、Thermo UltiMate 3000を用いて設定し、Corona Ultra CAD検出器と連結させ、定量化のために75psiの窒素圧力で操作した。Chromeleon7は、システム制御およびデータ分析に使用された。ESI源を備えたQ-Exactive Plusを、特徴決定のみのために2D-LCシステムと連結させた。機器を、3.8kVのキャピラリー電圧、350℃のキャピラリー温度、40℃のシース流量、および10の補助流量で、正のモードで操作した。フルスキャンスペクトルを、150~2000のm/z範囲にわたって収集した。Thermo Xcaliburソフトウェアを使用して、MSデータを収集および分析した。
【0133】
各エステルのピーク面積をCADクロマトグラムから得、分解されていないPS80を考慮して加算した。分解後のPS80の残存割合は、25分~30分の各時点での溶出モノエステルのピーク面積の合計を、ゼロ時点でのピーク面積の合計と比較することによって算出した。異なる水準のエステルまたは総エステルの相対割合も同様に算出され得る。
【0134】
ヒトCES-1、ウサギLES、および製剤化された抗体を用いたPS80分解アッセイ
PS80に対するヒトCES-1およびウサギLESの影響を、2μLの0.1mg/mLのヒトCES-1または0.02mg/mLのウサギLESを、16μLの10mMのpH6.0のヒスチジン緩衝液中1%の2μLのPS80と混合し、続いて4℃でそれぞれ、1.5、8、および18時間インキュベーションすることによって調べた。各溶液の1つのアリコート(3μL)を、pH6.0の72μLの10mMのヒスチジンを添加することによって25倍希釈し、その後LC-CAD分析を行った。
【0135】
製剤化されたmAb中のPS80の加水分解を、18μLの50mg/mLのmAb(pH6.0の10mMのヒスチジンへ緩衝液交換)を2μLの1%のPS80と混合し、次いで5℃で18、24、および36時間インキュベートすることによって調べた。各溶液の1つのアリコート(3μL)を、pH6の10mMのヒスチジンによって25倍希釈し、その後LC-CAD分析を行った。
【0136】
CHO由来抗体からのリパーゼの阻害
ActivXデスチオビオチン-FPセリンヒドロラーゼプローブを、ストック溶液としてDMSO中で0.1mMまで希釈した。等分した1.25μL、5μL、および20μLのプローブストック溶液を各々、1mLの最終体積で1倍のPBS中5mgのmAbと混合し、続いて室温で1時間穏やかに回転させた。次いで、各混合物をpH6.0の10mMのヒスチジン中で緩衝液交換して遊離プローブを除去し、mAb濃度を50mg/mLに調整した。緩衝液交換した各試料を0.1%のPS80とともに5℃でインキュベートし、続いてLC-CAD PS80分解アッセイを行った。
【0137】
CHO由来抗体からのリパーゼの枯渇
固定したActivXデスチオビオチン-FPセリンヒドロラーゼプローブを使用することによって、リパーゼ枯渇実験を実施した。プローブを固定するために、まず、室温で2時間穏やかに回転させることによって、35μLのActivX デスチオビオチン-FPセリンヒドロラーゼプローブ(DMSO中0.1mMのストック溶液)を1倍のPBS中1mLの最終体積まで2mgのストレプトアビジンダイナビーズと連結させた。プロセス対照試料を、35μLのDMSOを1倍で1mLの最終体積まで2mgのストレプトアビジンダイナビーズと混合し、室温で2時間穏やかに回転させることによって調製した。ビーズを、1倍のPBSによって3回洗浄し、次いで、800μLの1倍のPBS中に再懸濁させた。次いで、5mgのmAb試料をFPプローブに連結させたストレプトアビジンダイナビーズに添加し、穏やかに回転させながら室温で1時間インキュベートした。上清をpH6.0の10mMのヒスチジン中で緩衝液交換し、mAb濃度を50mg/mLに調整した。次いで、緩衝液交換した上清試料を0.1%のPS80とともに5℃でインキュベートし、続いてLC-CAD PS80分解アッセイを行った。
【0138】
ABPPを用いるCHO由来抗体中の宿主細胞タンパク質(HCP)の検出
ActivXデスチオビオチン-FPセリンヒドロラーゼプローブを、ストック溶液としてDMSO中で0.1mMまで希釈した。まず、等分した20μLのプローブストック溶液を、1mLの最終体積まで1倍のPBS中5mgのmAbと混合し、続いて室温で1時間穏やかに回転させた。濾過によって遊離プローブを除去し、タンパク質をPBS中5Mの尿素によって回収した。2mgのストレプトアビジンダイナビーズを溶液に添加し、室温で穏やかに回転させることによって2時間インキュベートした。上清を除去した後、ダイナビーズを磁石によって収集し、PBS中5Mの尿素によって洗浄し、次いで、5mMのTCEPを含む5Mの尿素/50mMのトリス溶液中に再懸濁させた。タンパク質を、55℃で30分間変性および還元し、次いで、暗所で30分間、10mMのヨードアセトアミドとともにインキュベーションした。アルキル化タンパク質を5倍希釈し、1μgのトリプシンを用いて37℃で一晩消化した。ダイナビーズを磁石によって除去し、ペプチド混合物を含む上清を、5μLの10%のFAによって酸性にし、GL-Tip(商標)SDB脱塩チップ(GL science、日本)を使用して脱塩し、40μLの0.1%のFA中に再懸濁させた。Nano LC-MS/MS分析のために15μLをEppendorfチューブに移し、残りを-80℃で保存した。まず、mAb試料を80℃で5分間加熱して、すべてのタンパク質を変性させて、宿主細胞タンパク質がActivXデスチオビオチン-FPセリンヒドロラーゼプローブに結合するのを防止することによって、陰性対照を実施した。
【0139】
LC-MS/MS分析
ペプチド混合物を、40μLの0.1%のギ酸(FA)中に溶解させ、まず、脱塩のために20cm×0.075mmのAcclaim PepMap100 C18トラップカラム(Thermo Fisher Scientific)上に10μLを充填し、その後、UltiMate3000 nanoLC(Thermo Fisher Scientific)内の250mm×0.075mmのAcclaim PepMap100 C18分析カラム上で分離した。移動相Aは、超純水中0.1%のFAで作製し、移動相Bは、80%のACN中0.1%のFAで作製した。ペプチドを、300nL/分の流量の、緩衝液Bの2%~32%の150分直線勾配で分離した。UltiMate3000 nanoLCは、Q-Exactive HFX質量分析計(Thermo Fisher Scientific)と連結させた。各フルMSスキャン(分解能120,000でm/z375-1500)では正規化衝突エネルギー(NCE)27%、AGC3e6、最大注入時間60ms、およびMS/MSイベント(分解能30,000でm/z200-2000)ではAGC1e5、最大注入時間60msの高エネルギー衝突解離(HCD)断片化を10個の最も強いイオンに施したデータ依存モードで、質量分析計を操作した。
【0140】
mAb-1直接消化
100μgのmAb-1を高速真空で乾燥させ、次いで、10mMのDTTを含む20μLの8Mの尿素で再構成した。55℃で30分間タンパク質を変性および還元し、次いで、暗所で30分間、6μlの50mg/mLのヨードアセトアミドとともにインキュベートした。100μLの0.1μg/μLのトリプシンを用いて、アルキル化タンパク質を37℃で一晩消化した。ペプチド混合物を、5μLの10%のTFAによって酸性にした。試料を0.4μg/μLまで希釈し、2μLをLC-MS/MS分析のためにカラムに注入した。
【0141】
mAb-1中のCES-B1LおよびCES-1LのPRM分析
試料の直接消化物(0.8μg)を、脱塩のために20cm×0.075mmのAcclaim PepMap100 C18トラップカラム(Thermo Fisher Scientific)上に充填し、その後、UltiMate3000 nanoLC(Thermo Fisher Scientific)内の250mm×0.075mmのAcclaim PepMap100 C18分析カラム上で分離した。カラムを、300nL/分の流量で、98%の移動相A(水中0.1%のギ酸で作製)および2%の移動相B(80%のACN中0.1%のギ酸で作製)で予め平衡化した。試料注入後、2%~37%の移動相Bの直線勾配を100分かけて適用して、ペプチドを分離した。CES-1Lからの3つのペプチドLNVQGDTK[m/z437.73512+]、AISESGVILVPGLFTK[m/z815.97442+]、およびENHAFVPTVLDGVLLPK[m/z925.01452+]、CES-B1Lからの3つのペプチドAPEEILAEK[m/z500.27152+]、DGASEEETNLSK[m/z640.28612+]、およびIRDGVLDILGDLTFGIPSVIVSR[m/z819.13553+]、ならびにmAb-1からの3つのペプチドGPSVFPLAPCSR[644.32932+]、LLIYDASNRPTGIPAR[586.32833+]、およびSTSESTAALGCLVK[712.35852+]を標的とする並列反応モニタリング(PRM)によって、質量分析データを取得した。すべての実験において、m/z200に対する120,000分解能(AGC標的1e6、最大注入時間60ms、m/z350-2000)での質量フルスペクトルに続いて、30,000分解能(AGC標的1e5、最大注入時間100ms)での時間を調節したPRMスキャンを行った。MS/MS分析では、27eVの正規化衝突エネルギーおよび2m/zの単離枠でのより高いエネルギー衝突解離(HCD)を使用した。
【0142】
実施例1.2D-LC-CAD/MSによって検出されたmAb製剤中のポリソルベート
製剤化されたmAb中のポリソルベートを、Yi Li et al、上記、およびOleg V.Borisov et al.によってわずかに修正された方法Toward Understanding Molecular Heterogeneity of Polysorbates by Application of Liquid Chromatography-Mass Spectrometry with Computer-Aided Data Analysis,83 ANALYTICAL CHEMISTRY 3934-3942(2011)に従って、2D-LC-CAD/MSによって分離、同定、および定量化した。mAbを除去するようにOasis Maxカラムによる一次元LCを設計し、二次元逆相クロマトグラフィーを実施して、残存するPOEおよびPOEエステルを、それらの脂肪酸含有量およびタイプに基づいて分離した。PS80種は、POE、POEイソソルビド、POEソルビタン、モノエステル、ジエステル、トリエステル、およびテトラエステルの順に溶出した(図1、右パネル)。ポリマーの化学式およびインソース断片化によって生成されたジオキソラニリウムイオンに基づく質量分析によって、各エステルの構造を解明した。図1右パネルAは、POE-POEイソソルビド-POEソルビタン、POEソルビタンモノリノレアート、POEソルビタンモノオレアート、POEイソソルビドモノオレアートおよびPOEモノオレアート、POEソルビタンリノレアート/オレアートジエステル、POEソルビタンジ-オレアート、POEイソソルビド-ジオレアートおよびPOEジ-オレアート、おそらくPOEイソソルビド/POEリノレアート/オレアートジエステル、ならびにPOEソルビタン混合トリオレアートおよびテトラオレアートの溶出順で標識した主要なピークを有するPS80の代表的なトータルイオンカレント(TIC)クロマトグラムである。図1のピーク8は、質量スペクトルによって解釈するには複雑すぎるため、可能性のあるPOEイソソルビド/POEリノレアート/オレアートジエステル混合機として標識したことに留意されるべきである。荷電化粒子検出器(CAD)クロマトグラフィー分析によって、ポリソルベートの定量化を決定した(図1、右パネルB)。
【0143】
実施例2.mAb-1製剤中の急速なPS80分解
5℃で36時間の保存中に、mAb-1中の急速なPS80分解が観察された。POEモノエステル、すなわち、POEソルビタンモノリノレアート、POEソルビタンモノオレアート、POEイソソルビドモノオレアート、およびPOEモノオレアートを表す25~30分に溶出するピークで、有意な減少が生じ、10~18分に溶出するPOEは、有意な増加を示した(図2)。32~45分に溶出するPOEジ-、トリ-、およびテトラ-エステルには、変化はなかった。この特有の分解パターンは、PS80分解を担うリパーゼ/エステラーゼの1つのファミリーである可能性が高いことを示唆している。このヒドロラーゼファミリーは、高水準のエステルをそのままにしておきながら、PS80のモノエステル部分のみを分解することができる。2つ以上のタイプのヒドロラーゼが分解に関与している場合、分解パターンはより複雑であろう。
【0144】
実施例3.デスチオビオチン-フルオロホスホネート(FP)プローブによるリパーゼの阻害はPS80分解の消失を生じる
ポリソルベートを分解することが報告されているリパーゼのうちのほとんどがセリンヒドロラーゼのファミリーに属するため、FPプローブを使用して阻害実験を実行した。この実験は、酵素活性加水分解物を、それらの酵素原形態または内因性阻害物質のいずれかの他の不活性加水分解物から同定および区別することを可能にする。この実験の理論的根拠は、活性セリンヒドロラーゼが存在する場合、その阻害物質を添加することによって、酵素の機能、この場合PS80の分解を停止させるであろうことである。デスチオビオチン-FPプローブは、市販のセリンヒドロラーゼプローブのうちの1つであり、セリンタイプのヒドロラーゼの触媒中心でSerと共有結合を形成し、その酵素活性を遮断する反応性フルオロホスホネート基を含む。阻害実験は、わずか0.125μMのFPプローブを添加することによって、酵素活性が完全に停止したことを明らかに示した(図3)。この実験はまた、デスチオビオチン-FPプローブがセリンヒドロラーゼに特異的であるため、セリンタイプのリパーゼのみが製剤化された原薬中に存在することを示した。
【0145】
実施例4.デスチオビオチン-フルオロホスホネート(FP)プローブによるリパーゼの枯渇は製剤化されたmAb中のPS80分解の減少を生じる
次いで、固定したActivX FPセリンヒドロラーゼプローブを使用して、リパーゼの枯渇を実施した。プローブのビオチン部分は、ストレプトアビジン表面に捕捉および固定することができ、捕捉したセリンヒドロラーゼの濃縮および精製が可能になる。枯渇実験の設計は、以下の2つの目標に役立つ:1)PS80の分解がセリンヒドロラーゼファミリーに属するリパーゼによって引き起こされる場合、枯渇はPS80分解の減少を生じるであろうこと;2)デスチオビオチン-FPプローブ上で捕捉されたリパーゼは、質量分析によってさらに同定することができること。
【0146】
図4に示されているmAbの枯渇スキームを用いて、材料および方法セクションに概説されているように枯渇実験を実施した。デスチオビオチン-FPプローブを、リパーゼの枯渇のためにストレプトアビジンダイナビーズに連結させた。図5に示されるように、リパーゼ枯渇の前に、mAb-1中のおよそ44.7%のPS80モノエステル分解が、5℃での18時間のインキュベーション後に観察された。追加の18時間のインキュベーションによって、PS80モノエステルの完全な損失がもたらされた。リパーゼ枯渇後、18時間または36時間のインキュベーションのいずれかの後に、8%未満のPS80分解が観察された。枯渇結果は、mAb-1中のPS80を分解したリパーゼが、デスチオビチン-FPプローブによって除去されたことを示した。リパーゼと相互作用したのがストレプトアビジン磁性ビーズではなくプローブであることを確実にするために、プロセス対照試料を導入することによって実験を実施した。プロセス対照試料は、デスチオビオチン-FPプローブを添加せずに、mAb-1をストレプトアビジン磁性ビーズのみと混合することによって生成した。mAb1中のおよそ29%および86%のPS80分解は、それぞれ、5℃での18時間および36時間のインキュベーション後に観察され、これは、リパーゼと磁性ビーズとの間のある特定の非特異的相互作用が存在したことを示している。FPプローブと比較して、非特異的相互作用によって除去されたリパーゼは有意に少なく、したがって、リパーゼの大部分は、固定したFPプローブとリパーゼとの間の特異的結合によって除去された。
【0147】
実施例5.FPプローブが濃縮されたmAb-1からの画分中で肝カルボキシルエステラーゼを同定した
デスチオビオチン-FPプローブによって捕捉された宿主細胞タンパク質に、材料および方法セクションに記載のトリプシン消化および質量分析を施した。同定された15個の宿主細胞タンパク質(表1)のうち、CES-B1LおよびCES-1Lが初めて同定された。変性した対照試料(表2)と比較することによって、両方のタンパク質がFPプローブへの特異的結合によって捕捉されたと結論付けた。CES-1Lは活性形態でのみ同定されたが、変性形態では同定されず、mAb-1中で生物学的に活性であったことを示唆している。CES-B1Lは、13個の特有のペプチド、変性形態では2個の特有のペプチドのみを有する活性形態で同定され、少量のCES-B1Lタンパク質が、磁性ビーズに非特異的に結合することが可能であることが示唆され、その結果は、枯渇実験におけるプロセス対照結果と一致した(図5)。にもかかわらず、活性形態で同定された特有のペプチドの数がはるかに多いことは、CES-B1LもまたPS80分解を担っていることを示唆している。他の同定された宿主細胞タンパク質については、ほとんどは、同様の数の特有のペプチドを有して両方の条件で見出されたため、非活性酵素、例えば、キュリン-9様タンパク質およびセルロプラスミンとして容易に決定することができる。アニオン性トリプシン-2は、セリンプロテアーゼでもあるため、mAb-1の活性形態で同定されたが、しかしながら、PS80分解とは無関係なプロテアーゼとしての機能に起因するので除外することができる。他の2つの同時に捕捉されたタンパク質、アクチンおよびアネキシンもまた、それらの酵素機能の欠如のためにPS80分解から除外することができる。
【0148】
新たに同定されたリパーゼ、CES-B1LおよびCES-1Lの存在量を決定するために、PRM分析を実施した。CES-B1LおよびCES-1Lの濃度は、それぞれ、9.6および9.0ppmであることが決定された。これら2つのリパーゼの存在量が比較的少ないことは、PS80を分解するための酵素活性が強いことを示唆している。
【0149】
(表1)天然mAb-1において同定されたFPプローブによって濃縮された宿主細胞タンパク質
【0150】
(表2)変性mAb-1において同定されたFPプローブによって濃縮された宿主細胞タンパク質
【0151】
実施例6.ヒト肝カルボキシルエステラーゼ-1およびウサギ肝エステラーゼによるPS80分解パターン
HCP分析における一般的かつ重要な1つの実施は、リパーゼ活性の機能を検証することである。阻害および枯渇実験は、CES-B1LおよびCES-1Lが、PS80分解を担うリパーゼである可能性が最も高いという強力な証拠を提供している。しかしながら、使用されたFPプローブが、単一のタンパク質に特異的ではなく、タンパク質ファミリーに特異的であることを考慮すると、分解経路にも役割を果たし得る他のリパーゼが医薬品中に存在する可能性がある。スパイクイン実験は、疑われるリパーゼがPS80分解の根本原因であるかどうかの本質的な検証を提供することができる。スパイクインしたリパーゼが、内因性リパーゼと全く同じ分解パターンを生成することができる場合、同定されたリパーゼがPS分解のための重要な要素であることを確認することができる。この確認は、通常、利用可能な活性リパーゼの欠如によって困難である。これらの2つの新たに同定されたリパーゼの役割をさらに確認するために、BLAST検索を実施した。検索結果は、市販のウサギ肝エステラーゼおよびヒト肝カルボキシルエステラーゼ1が機能的に同様であり、それぞれ、CES-B1LおよびCES-1Lの第1のセグメントに対して56.0%および69.7%の配列相同性を各々有することを示唆した(図6D)。ヒト肝カルボキシルエステラーゼ1およびウサギ肝エステラーゼの両方を選択して、mAb-1としてのPS80分解パターンを比較した。図6は、ヒトおよびウサギの両方の肝エステラーゼが、mAb-1中で示されるものと同等の分解パターンを示したことを示した(図6、A~C)。3つすべての試料において、PS80の急速に分解された成分は、25~30分に溶出したモノエステルであったが、32分後に溶出したジ-、トリ-、およびテトラ-エステルは、変化しないままであった。既知のリパーゼによる特徴的分解パターン実験により、CES-B1LおよびCES-1LがmAb-1中のPS80分解を担っていることが検証された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
[本発明1001]
試料からリパーゼを枯渇させる方法であって、
リパーゼを含む前記試料をプローブと接触させることであって、前記プローブが、前記リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、前記接触させることと、
前記複合体を前記試料から分離して、それによって前記試料から前記リパーゼを枯渇させることと
を含む、前記方法。
[本発明1002]
前記試料が目的のタンパク質を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記試料がポリソルベート賦形剤を含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記ポリソルベート賦形剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択される、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記プローブが、固体支持体に連結することが可能である、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記固体支持体がアガロースビーズである、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記固体支持体が磁性ビーズである、本発明1007の方法。
[本発明1010]
前記プローブが、リガンドを使用して固体支持体に結合している、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記リガンドが、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る、本発明1010の方法。
[本発明1012]
前記複合体から前記リパーゼを回収することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1013]
目的のタンパク質とリパーゼとを有する試料を精製する方法の方法であって、
前記試料をプローブと接触させることであって、前記プローブが、前記リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、前記接触させることと、
前記複合体を前記試料から分離して、それによって前記試料中の前記目的のタンパク質を精製することと
を含む、前記方法。
[本発明1014]
前記試料がポリソルベート賦形剤を含む、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記ポリソルベート賦形剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択される、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である、本発明1013の方法。
[本発明1017]
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である、本発明1013の方法。
[本発明1018]
前記プローブが、固体支持体に連結することが可能である、本発明1013の方法。
[本発明1019]
前記固体支持体がアガロースビーズである、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記固体支持体が磁性ビーズである、本発明1018の方法。
[本発明1021]
前記プローブが、リガンドを使用して固体支持体に結合している、本発明1013の方法。
[本発明1022]
前記リガンドが、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記複合体から前記リパーゼを回収することをさらに含む、本発明1013の方法。
[本発明1024]
試料中のポリソルベートの分解を減少させる方法であって、
リパーゼとポリソルベートとを含む前記試料をプローブと接触させることであって、前記プローブが、前記リパーゼに結合して複合体を形成することが可能である、前記接触させることと、
前記複合体を前記試料から分離して、それによって前記試料中のポリソルベートの分解を減少させることと
を含む、前記方法。
[本発明1025]
前記試料が目的のタンパク質をさらに含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせから選択される、本発明1024の方法。
[本発明1027]
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質である、本発明1024の方法。
[本発明1028]
前記リパーゼが肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質である、本発明1024の方法。
[本発明1029]
前記プローブが、固体支持体に連結することが可能である、本発明1024の方法。
[本発明1030]
前記固体支持体がアガロースビーズである、本発明1029の方法。
[本発明1031]
前記固体支持体が磁性ビーズである、本発明1029の方法。
[本発明1032]
前記プローブが、リガンドを使用して固体支持体に結合している、本発明1024の方法。
[本発明1033]
前記リガンドが、インジケーター、ビオチン分子、修飾ビオチン分子、核、配列、エピトープタグ、電子不足分子、または電子豊富分子であり得る、本発明1032の方法。
[本発明1034]
前記複合体から前記リパーゼを回収することをさらに含む、本発明1024の方法。
[本発明1035]
哺乳類細胞から精製された目的のタンパク質と、界面活性剤と、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質の残留量とを有する組成物であって、肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質の前記残留量が約5ppm未満である、前記組成物。
[本発明1036]
前記界面活性剤がポリソルベート80である、本発明1035の組成物。
[本発明1037]
前記肝カルボキシルエステラーゼ-B1様タンパク質が前記ポリソルベート80の分解を引き起こす、本発明1036の組成物。
[本発明1038]
非経口製剤である、本発明1035の組成物。
[本発明1039]
前記組成物中の前記ポリソルベートの濃度が約0.01%w/v~約0.2%w/vである、本発明1036の組成物。
[本発明1040]
前記目的のタンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体断片、および抗体-薬物複合体からなる群から選択される、本発明1035の組成物。
[本発明1041]
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、本発明1035の組成物。
[本発明1042]
ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、アルギン酸緩衝液、およびアルギニン緩衝液からなる群から選択される緩衝液をさらに含む、本発明1035の組成物。
[本発明1043]
張性改変剤をさらに含む、本発明1035の組成物。
[本発明1044]
前記目的のタンパク質の濃度が約20mg/mL~約400mg/mLである、本発明1035の組成物。
[本発明1045]
哺乳類細胞から精製された目的のタンパク質と、界面活性剤と、肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質の残留量とを有する組成物であって、リソソーム酸性リパーゼの前記残留量が約5ppm未満である、前記組成物。
[本発明1046]
前記界面活性剤がポリソルベートである、本発明1045の組成物。
[本発明1047]
前記界面活性剤がポリソルベート80である、本発明1046の組成物。
[本発明1048]
前記肝カルボキシルエステラーゼ-1様タンパク質が前記ポリソルベート80の分解を引き起こす、本発明1047の組成物。
[本発明1049]
非経口製剤である、本発明1046の組成物。
[本発明1050]
前記組成物中の前記ポリソルベートの濃度が約0.01%w/v~約0.2%w/vである、本発明1046の組成物。
[本発明1051]
前記目的のタンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体断片、および抗体-薬物複合体からなる群から選択される、本発明1045の組成物。
[本発明1052]
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、本発明1045の組成物。
[本発明1053]
ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、アルギン酸緩衝液、およびアルギニン緩衝液からなる群から選択される緩衝液をさらに含む、本発明1045の組成物。
[本発明1054]
張性改変剤をさらに含む、本発明1045の組成物。
[本発明1055]
前記目的のタンパク質の濃度が約20mg/mL~約400mg/mLである、本発明1045の組成物。
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面と併せて考慮される場合、より良好に認識され、理解されるであろう。以下の説明は、その様々な実施形態および多数の特定の詳細を示しているが、例示のために与えられており、限定のためではない。多くの置換、修正、追加、または再配置は、本発明の範囲内で行われ得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
図1】ポリソルベート中の主要種の化学構造を示す。ポリソルベートは、主に、一般的なソルビタンPOE、イソソルビドPOEまたはPOE頭基を共有する脂肪酸エステルで構成され、オレイン酸がPS80の主な脂肪酸である。右パネルAは、オンライン2D-LC/MS分析による、mAb製剤中のPS80のトータルイオンカレント(TIC)クロマトグラムを示す。標識されたピークの同定は、(1)POE-POEイソソルビド-POEソルビタン、(2)POEソルビタンモノリノレアート、(3)POEソルビタンモノオレアート、(4)POEイソソルビドモノオレアートおよびPOEモノオレアート、(5)POEソルビタンリノレアート/オレアートジエステル、(6)POEソルビタンジ-オレアート、(7)POEイソソルビドジ-オレアートおよびPOEジ-オレアート、(8)解釈するには質量スペクトルが複雑すぎるため、可能性として、POEイソソルビド/POEリノレアート/オレアートジエステル、(9)トリオレアートとテトラオレアートとを混合したPOEソルビタン、である。右パネルBは、オンライン2D-LC/CAD分析による、mAb製剤中のPS80の分離および検出を示すCADクロマトグラムを示す。
図2】例示的な実施形態による、pH6の10mMのヒスチジン中、5℃で0時間および36時間インキュベートした50mg/mLのmAb-1中0.1%のPS80のクロマトグラムを示す。11~17.5分に溶出したピークは、POE、POEイソソルビド、およびPOEソルビタンであった。
図3】インキュベーション時間に対してプロットした残存するPS80の割合のチャートを示し、元のmAb-1、0.125μM、0.5μM、および2μMのFPプローブと混合したmAb-1を黒い実線と塗りつぶした円、赤い点線と塗りつぶした菱形、橙色の点線と塗りつぶし正方形、および青い点線と塗りつぶした三角形によって示す。
図4】例示的な実施形態による、リパーゼ枯渇実験の概略図を示す。ストレプトアビジンダイナビーズ磁性ビーズをデスチオビオチン-FPプローブと連結させ、リパーゼ枯渇に使用した。元のmAb-1、および素通り画分mAb-1、ならびにプロセス対照mAb-1を5℃で36時間0.1%のPS80とともにインキュベートし、PS分解測定を施した。濃縮されたリパーゼに、消化、および質量分析を使用するHCP分析を施す。
図5】元のmAb-1、プロセス対照mAb-1、およびリパーゼを枯渇させたmAb-1中に残存するPS80の割合のチャートを示し、元のmAb-1、プロセス対照mAb-1、およびリパーゼを枯渇させたmAb-1は、黒い実線と塗りつぶした菱形、青い点線と塗りつぶした正方形、および橙色の破線と塗りつぶした円によって示す。
図6-1】図6Aは、例示的な実施形態による、pH6の10mMのヒスチジン中、5℃で0時間、1.5時間、および8時間インキュベートした20μg/mLの市販ウサギ肝エステラーゼ中0.1%のPS80のクロマトグラムを示す。図6Bは、例示的な実施形態による、pH6の10mMのヒスチジン中、5℃で0時間、5時間、および18時間インキュベートした100μg/mLの市販ヒト肝カルボキシルエステラーゼ1中0.1%のPS80のクロマトグラムを示す。図6Cは、例示的な実施形態による、pH6の10mMのヒスチジン中、5℃で0時間、18時間、および36時間インキュベートした50mg/mLのmAb-1中0.1%のPS80のクロマトグラムを示す。
図6-2】図6Dは、肝カルボキシルエステラーゼB-1様(A0A061I7X9)、肝カルボキシルエステラーゼ1様(A0A061FE2)、およびヒト肝カルボキシルエステラーゼ(hCES-1)の配列アラインメントを示す。図は、配列番号:10~12をそれぞれ記載順に開示している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
mAb-1中のCES-B1LおよびCES-1LのPRM分析
試料の直接消化物(0.8μg)を、脱塩のために20cm×0.075mmのAcclaim PepMap100 C18トラップカラム(Thermo Fisher Scientific)上に充填し、その後、UltiMate3000 nanoLC(Thermo Fisher Scientific)内の250mm×0.075mmのAcclaim PepMap100 C18分析カラム上で分離した。カラムを、300nL/分の流量で、98%の移動相A(水中0.1%のギ酸で作製)および2%の移動相B(80%のACN中0.1%のギ酸で作製)で予め平衡化した。試料注入後、2%~37%の移動相Bの直線勾配を100分かけて適用して、ペプチドを分離した。CES-1Lからの3つのペプチドLNVQGDTK(配列番号:1)[m/z437.73512+]、AISESGVILVPGLFTK(配列番号:2)[m/z815.97442+]、およびENHAFVPTVLDGVLLPK(配列番号:3)[m/z925.01452+]、CES-B1Lからの3つのペプチドAPEEILAEK(配列番号:4)[m/z500.27152+]、DGASEEETNLSK(配列番号:5)[m/z640.28612+]、およびIRDGVLDILGDLTFGIPSVIVSR(配列番号:6)[m/z819.13553+]、ならびにmAb-1からの3つのペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号:7)[644.32932+]、LLIYDASNRPTGIPAR(配列番号:8)[586.32833+]、およびSTSESTAALGCLVK(配列番号:9)[712.35852+]を標的とする並列反応モニタリング(PRM)によって、質量分析データを取得した。すべての実験において、m/z200に対する120,000分解能(AGC標的1e6、最大注入時間60ms、m/z350-2000)での質量フルスペクトルに続いて、30,000分解能(AGC標的1e5、最大注入時間100ms)での時間を調節したPRMスキャンを行った。MS/MS分析では、27eVの正規化衝突エネルギーおよび2m/zの単離枠でのより高いエネルギー衝突解離(HCD)を使用した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023516950000001.app
【国際調査報告】