(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】スズベースのフォトレジスト組成物およびその作成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230414BHJP
C07F 7/22 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G03F7/004 531
G03F7/004
C07F7/22 Z
C07F7/22 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551802
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021019658
(87)【国際公開番号】W WO2021173827
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506253388
【氏名又は名称】オレゴン ステイト ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス エイ ケツラー
(72)【発明者】
【氏名】ニザン ケナネ
【テーマコード(参考)】
2H225
4H049
【Fターム(参考)】
2H225AB03
2H225AN80P
2H225CB02
2H225CB17
2H225CB18
2H225CD05
4H049VN03
4H049VP01
4H049VQ02
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU24
4H049VW01
(57)【要約】
RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備える組成物を開示する。ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。基板上に[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備えるフォトレジスト膜を作製する方法をも開示する。フォトレジスト膜を照射して、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを形成し得る。
【選択図】
図43
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、
Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、
q=0.1~1、
x≦4
y≦4、
z≦2、
m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび
(q/2+x/2+y/2+z)≦2、
である、組成物。
【請求項2】
Rは、C1~C10脂肪族である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Rは、C1~C5アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Rは、n-ブチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
q=0.1~1、
x≦3.9、
y≦3.9および
z≦1.95、
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(i)0<x≦3または、
(ii)0<y≦3または、
(iii)0<z≦1.5または、
(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、
Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、
q=0.1~1、
x≦3.9、
y≦3.9、
z≦1.95、
m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび
(q/2+x/2+y/2+z)≦2
である、組成物。
【請求項8】
基板と、
前記基板の少なくとも一部の上の膜であって、前記膜は、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を備える、膜と、
を備える、構成部品。
【請求項9】
前記膜は、前記基板上にパターニングされる、請求項8に記載の構成部品。
【請求項10】
(i)前記膜は、2~1000nmの範囲内の平均厚さを有する、または
(ii)前記膜は、1.5nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有する、または
(iii)(i)および(ii)の両方である、
請求項8または請求項9に記載の構成部品。
【請求項11】
RSnX3を大気にさらし、それによって、[RSnOH(H2O)X2]2を生成することと、ここで、Xは、ハロゲンであり、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、
前記[RSnOH(H2O)X2]2および溶媒を備える溶液を調製することと、
基板上に前記溶液を堆積させることと、
堆積された前記溶液と前記基板とを加熱して、[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を基板上に生成することと、
[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える前記膜をアンモニア水溶液と接触させて、前記基板上に[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を生成することと、
を含む、方法。
【請求項12】
Rは、C1~C10脂肪族である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Rは、C1~C5アルキルである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
Rは、n-ブチルである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記堆積された溶液と前記基板とを加熱して前記基板上に[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を生成することは、60~100℃の範囲内の温度で1~5分間加熱することを含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える前記膜の少なくとも一部を、電子ビームまたは10nmから400nm未満の範囲内の波長を有する光で照射して、照射された膜を生成することをさらに含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
照射は、
10~260nmの範囲内の波長を有する光を照射すること、または、
125μC/cm2以上のドーズ量で電子ビームを照射すること、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
照射は、125~1000μC/cm2のドーズ量で電子ビームを照射することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
照射は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える前記膜の照射部分のR-Sn結合の10~100%を切断する、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(i)前記照射された膜を大気に周囲温度で少なくとも3時間さらすこと、または、
(ii)前記照射された膜を大気中において100~200℃の範囲内の温度で2~5分間加熱すること、
をさらに含み、
これによって、前記照射された膜の照射部分は、大気中のCO2を吸着してRqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを形成し、ここで、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2、である、
請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9およびz≦1.95である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(i)前記照射された膜は、大気に周囲温度で1~10日間さらされる、または、
(ii)前記照射された膜は、140~180℃の範囲内の温度で3分間加熱される、
請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える前記膜の一部は、照射されてパターニングされた膜を形成し、
前記パターニングされた膜を、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2が溶解する溶媒に接触させることをさらに含み、前記膜の照射部分は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を溶解するのに効果的な時間の間溶解性が低くなり、前記パターニングされた膜の照射された部分を溶解しない、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
基板と、
前記基板の少なくとも一部の上の膜と、を備え、前記膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備え、ここで、
(i)前記膜は、0.8nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有する、または、
(ii)前記膜は、X線光電子分光法によって検出される、検出できないレベルのCl-を有する、または、
(iii)(i)および(ii)の両方である、
請求項11に記載の方法によって製造された構成部品。
【請求項25】
前記二乗平均表面粗さは、0.5nm以下である、請求項24に記載の膜 。
【請求項26】
基板と、
前記基板の少なくとも一部の上の膜と、を備え、前記膜は、
RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2、
請求項20から23のいずれか一項に記載の方法によって製造された構成部品。
【請求項27】
q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9およびz≦1.95である、請求項26に記載の構成部品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年2月27日に出願された米国仮出願第62/982,599号の先の出願日の利益を主張し、その全体を、参照によって本明細書に援用する。
(政府支援についての声明)
【0002】
この発明は、アメリカ国立科学財団によって授与されたCHE-1606982の下で米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
(技術分野)
【0003】
本開示は、スズベースのフォトレジスト組成物に関し、ならびに組成物を作製およびパターニングする方法に関する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、スズベースのフォトレジスト組成物、ならびに組成物を作製およびパターニングする方法に関する。一実施形態では、スズベースの組成物は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。別の実施形態では、スズベースの組成物は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9、z≦1.95、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。特定の実施形態では、Rは、C1~C5アルキルなどの、C1~C10脂肪族である。いくつかの例では、Rは、n-ブチルである。前述または後述のいずれかの実施形態では、x、yおよびzは、(i)0<x≦3、(ii)0<y≦3または(iii)0<z≦1.5、または(iv)(i)、(ii)および(iii)の任意の組み合わせの、値を有し得る。
【0005】
構成部品は、基板と、基板の少なくとも一部の上の膜と、を含み得、膜は、本明細書に開示されるスズベースの組成物を備える。膜は、基板上でパターニングされ得る。いくつかの実施形態では、(i)膜は、2~1000nmの範囲内の平均厚さを有し、または、(ii)膜は、1.5nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有し、または、(iii)(i)と(ii)の両方である。
【0006】
いくつかの実施形態では、スズベースのフォトレジスト組成物の製造方法は、RSnX3を大気にさらし、それによって、[RSnOH(H2O)X2]2を生成することと、ここで、Xはハロゲンであり、Rは、前述のとおり定義され、[RSnOH(H2O)X2]2および溶媒を備える溶液を調製することと、基板上に溶液を堆積させることと、堆積溶液と基板を加熱して、[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を基板上に生成することと、[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜をアンモニア水溶液と接触させて、基板上に[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を生成することと、を含む。[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を基板上に生成するために堆積溶液および基板を加熱することは、60~100℃の範囲内の温度で1~5分間加熱することを含み得る。
【0007】
前述または後述のいずれかの実施形態では、Rは、C1~C5アルキルなどの、C1~C10脂肪族であり得る。いくつかの実施において、Rは、n-ブチルである。前述または後述のいずれかの実施形態では、堆積溶液および基板を加熱して基板上に[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を生成することは、60~100℃の範囲内の温度で1~5分間加熱することを含み得る。
【0008】
前述または後述のいずれかの実施形態では、方法は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える膜の少なくとも一部を、電子ビームまたは10nmから400nm未満までの範囲内の波長を有する光で照射し、照射された膜を生成する。いくつかの実施形態では、照射は、10~260nmの範囲内の波長を有する光で照射すること、または125μC/cm2以上のドーズ量で電子ビームを照射することを含む。いくつかの実施形態では、照射は、125~1000μC/cm2のドーズ量で電子ビームを照射することを含む。前述の実施形態のいずれにおいても、照射は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える膜の照射部分におけるR-Sn結合の10~100%を切断し得る。
【0009】
前述または後述のいずれかの実施形態では、方法は、照射後処理をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、(i)照射された膜を大気に周囲温度で少なくとも3時間さらすこと、または、(ii)照射された膜を大気中に100~200℃の範囲内の温度で2~5分間加熱すること、をさらに含み、これによって、照射された膜の照射部分は、大気中のCO2を吸着し、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを形成し、ここで、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2、である。一実施形態では、q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9、z≦1.95、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2、である。
【0010】
いくつかの実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える膜の一部は、照射されてパターニングされた膜を形成し、方法は、パターニングされた膜を、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2が溶解する溶媒に接触させることをさらに含み、膜の照射部分は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を溶解するのに効果的な時間の間溶解性が低くなり、パターニングされた膜の照射された部分を溶解しない。
【0011】
基板と、基板の少なくとも一部の上の膜と、を備える構成部品、本明細書に開示される方法によって作製される膜もまた、本開示に包含される。一実施形態では、膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える。いくつかの実施形態では、(i)膜は、0.5nm以下などの、0.8nm以下の二乗平均表面粗さを有するか、または(ii)膜は、X線光電子分光法によって検出される検出不可能なレベルのCl-を有するか、または(iii)(i)と(ii)との両方である。独立した実施形態では、膜は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。別の独立した実施形態では、膜は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9、z≦1.95、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。
【0012】
本発明の前述および他の対象、特徴および利点は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(C4H9Sn)2(OH)2Cl4(H2O)2(Sn2)の球棒表示であり、1Hおよび119SnNMRスペクトルは、構造が2-ヘプタノンを保持することを示す図である。
【
図2】
図2Aは、[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6](OH)2(Sn12OH)の球棒表示である。
図2Bは、Sn2がSn12OHに変換されたことを示す小角X線散乱データである。
【
図3】塩基浸漬前後のSn2膜のXPSスペクトルを示す図である。
【
図4A】Sn2前駆体からのSn12の堆積が、Sn12前駆体からの直接堆積よりもはるかに滑らかな膜を生成することを示す原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【
図4B】Sn2前駆体からのSn12の堆積が、Sn12前駆体からの直接堆積よりもはるかに滑らかな膜を生成することを示す原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【
図5】
図5Aは、Sn2膜の昇温脱離/質量分析(TPD-MS)スペクトルを示す図である。
図5Bは、Sn12OH膜の昇温脱離/質量分析(TPD-MS)スペクトルを示す図である。
【
図6】
図4Aおよび
図4Bの膜のESI-MSエレクトロスプレーイオン化質量分析スペクトルを示す図である。
【
図7】塩基浸漬後に選択された温度でベークされたSn2膜の表面粗さを示す図である。
【
図8】塗布後ベークおよびNH3(aq)処理直後のSn2膜のTPD-MSスペクトルを示す図である。
【
図9】
図9Aは、膜の経過時間に対して低温でのH2O(8A) の脱離を追跡するTPD-MSスペクトルである。
図9Bは、膜の経過時間に対してCO2(8B) の脱離を追跡するTPD-MSスペクトルである。
【
図10】
図10Aは、低温でのH2O(9A)の脱離ピークが140℃、3分間のベークで大部分が除去されていることを示すTPD-MSスペクトルである。
図10Bは、CO2(9B)の脱離ピークが140℃、3分間のベークで大部分が除去されていることを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図11】1-ブテンの主なフラグメントを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図12】ブタンの主なフラグメントを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図13】n-ブチル配位子の分解およびそれに続く分解生成物の電子衝撃イオン化の説明図である。
【
図14】0、300および1000μC/cm2に露光した試料からのn-ブチル脱離に関連するTPD-MSスペクトルシグナルである。
【
図15】0、300および1000μC/cm2に露光した試料からのn-ブチル脱離に関連するTPD-MSスペクトルシグナルについての損失曲線を示すグラフである。
【
図16】照射ドーズ量の関数として膜厚を示すグラフである。
【
図17】500μC/cm2の電子ビームドーズ量を使用して100nmピッチに描画された25nmラインの走査型電子顕微鏡画像である。
【
図18】露光した未現像の試料の逆コントラスト断面のクライオSTEM画像である。
【
図19】
図17の試料の10nmの解像度でのクライオEELSスペクトルである。
【
図20】0.25、3、24および144時間経過したアレイの照射ドーズ量の関数としての膜厚を示すグラフである。
【
図21】真空(左)と大気(右)において、2時間遅延させた後、アセトンで30秒間現像したドーズ量アレイの画像である。
【
図22】
図22Aは、大気中において遅延時間なしでn-ブチルの脱離を追跡する非露光および1000μC/cm2露光試料のTPD-MSスペクトルである。
図22Bは、大気中において遅延時間なしで水の脱離を追跡する非露光および1000μC/cm2露光試料のTPD-MSスペクトルである。
図22Cは、大気中において遅延時間なしで二酸化炭素の脱離を追跡する非露光および1000μC/cm2露光試料のTPD-MSスペクトルである。
【
図23】
図23Aは、大気中において10日間の遅延の前後に1000μC/cm2に露光された膜から脱離した、H2OのTPD-MSスペクトルである。
図23Bは、大気中において10日間の遅延の前後に1000μC/cm2に露光された膜から脱離した、CO2のTPD-MSスペクトルである。
図23Cは、大気中において10日間の遅延の前後に1000μC/cm2に露光された膜から脱離した、n-ブチル(23C)のTPD-MSスペクトルである。
【
図24】大気中で10日間遅延させた後に1000μC/cm2に露光した後のブチルフラグメントのTPD-MSスペクトルである。
【
図25】
図25Aは、大気中において1日間の遅延の後に300μC/cm2に露光された膜から脱離した、n-ブチルのTPD-MSスペクトルである。
図25Bは、大気中において1日間の遅延の後に300μC/cm2に露光された膜から脱離した、水のTPD-MSスペクトルである。
図25Cは、大気中において1日間の遅延の後に300μC/cm2に露光された膜から脱離した、二酸化炭素のTPD-MSスペクトルである。
【
図26】
図26Aは、大気中において6日間の遅延の後に500μC/cm2に露光された膜から脱離した、n-ブチルのTPD-MSスペクトルである。
図26Bは、大気中において6日間の遅延の後に500μC/cm2に露光された膜から脱離した、水のTPD-MSスペクトルである。
図26Cは、大気中において6日間の遅延の後に500μC/cm2に露光された膜から脱離した、二酸化炭素のTPD-MSスペクトルである。
【
図27】
図27Aは、n-ブチル基がSn12膜を大気中で加熱することにより除去され得ることを示す図である。
図27Bは、n-ブチル欠乏膜がH2Oを吸収することを示す図である。
図27Cは、n-ブチル欠乏膜がCO2を吸収することを示す図である。
【
図28】非露光膜、10分間UV光に露光した膜、および10分間UV光に露光し大気中で6日間遅延させた膜のm/z=41(n-ブチル)のTPD-MSスペクトルである。
【
図29】UV光に10分間露光された膜、およびUV光に10分間露光され大気中で6日間遅延された膜のm/z=18(H2O)のTPD-MSスペクトルである。
【
図30】UV光に10分間露光された膜およびUV光に10分間露光され大気中で6日間遅延された膜のm/z=44(CO2)のTPD-MSスペクトルである。
【
図31】CO2フラグメンテーションと未検出のブチルシグナルを示す、UV光に10分間露光され大気中で6日間遅延された膜のTPD-MSスペクトルである。
【
図32】Sn12OH膜の露光領域と非露光領域との間で溶解変化を誘発するための化学反応を示す図である。
【
図33】電子ビームに露光されたSn12膜で溶解コントラストを実現するには、H2OとCO2との両方が必要であることを示すグラフである。
【
図34】
図34Aは、1000μC/cm2での照射後、ならびに140℃および180℃で3分間の露光後ベーク(PEB)後の膜からのn-ブチルの脱離のTPD-MSスペクトルである。
図34Bは、1000μC/cm2での照射後、ならびに140℃および180℃で3分間の露光後ベーク(PEB)後の膜からの水の脱離のTPD-MSスペクトルである。
【
図35】PEBなし、100℃PEB、140℃PEBおよび180℃PEBに3分間さらされたドーズ量アレイの厚さ測定を示す図である。
【
図36】加熱が低温でのSn12膜からのn-ブチル基の脱離を誘発することを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図37】1000μC/cm2ならびに140℃および180℃での3分間のPEBに露光した後の、
図32の3つのドーズ量アレイからのCO2脱離を示すTPD-MSスペクトル。
【
図38】
図38Aは、即時または6日間の遅延の後での320℃での3分間のPEBに続くn-ブチルの脱離を示すTPD-MSスペクトルである。
図38Bは、即時または6日間の遅延の後での320℃での3分間のPEBに続くCO2の脱離を示すTPD-MSスペクトルである。
【
図39】非露光試料とベークされていない露光試料、または140℃もしくは180℃でベークした試料とのTPD-MSスペクトルの表である。
【
図40】
図40Aは、加水分解されたSnがCO2反応部位であることを示す、非露光試料のTPD-MSスペクトルである。
図40Bは、加水分解されたSnがCO2反応部位であることを示す、PEB後の露光された試料のTPD-MSスペクトルである。
【
図41】
図41Aは、180℃でのPEB後のn-ブチルの脱離のTPD-MSスペクトルである。
図41Bは、180℃でのPEB後の水の脱離のTPD-MSスペクトルである。
図41Cは、180℃でのPEB後の二酸化炭素の脱離のTPD-MSスペクトルである。
【
図42】
図42Aは、N2中のSn12OH(42A)のTGA後のTPD-MSスペクトルである。
図42Bは、大気中でベークしたSn12OH(42B)のTGA後のTPD-MSスペクトルである。
【
図43】Sn2堆積、Sn12OHへの変換、電子ビーム露光、140℃での露光後ベーク、および2-ヘプタノン中での現像によって生成される、60nmピッチで10nm(水平)および14nm(垂直)ラインのSEM画像である。
【
図44】Sn2堆積、NH3(aq)浸漬によるSn12OHへの変換、電子ビーム露光、180℃での露光後ベーク、および2-ヘプタノンでの現像によって生成されたラインアンドスペースパターンおよびドットパターンのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
スズベースのフォトレジスト組成物の実施形態を開示する。組成物を作製およびパターニングする方法をも開示する。
【0015】
(I.定義および略語)
以下の用語および略語の説明は、本開示をよりよく説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。本明細書で使用される場合、「備える」は「含む」を意味し、単数形「a」または「an」または「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の参照を含む。「または」という用語は、文脈上明確に別段の指示がない限り、記載された代替要素の単一要素または2つ以上の要素の組み合わせを指す。
【0016】
別段の説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の実施または試験において、本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を使用し得るが、適切な方法および材料を下記に記載する。材料、方法、および例は、単なる説明のためのものであり、限定することを意図したものではない。本開示の他の特徴は、下記の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0017】
数値範囲の開示は、別段の記載がない限り、端点を含む範囲内の各離散点を指すものとして理解されるべきである。別段の指示がない限り、明細書または特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量、パーセンテージ、温度、時間などを表すすべての数字は、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、他に暗示的または明示的に示されない限り、または文脈が当業者によってより決定的な構造を有すると適切に理解されない限り、示される数値パラメータは、求められる所望の特性および/または当業者に知られている標準的な試験条件/方法の下での検出限界に依存し得る近似値である。議論された先行技術から実施形態を直接かつ明示的に区別する場合、「約」という言葉が引用されない限り、実施形態の数値は近似値ではない。
【0018】
本明細書に記載された様々な成分、パラメータ、動作条件などには代替案があるが、それはそれらの代替案が必ずしも同等でありおよび/または同等に良好に機能することを意味しない。また、別段の記載がない限り、代替案が好ましい順序で並んでいることを意味するわけではない。化学における一般的な用語の定義は、John Wiley& ons,Inc.によって出版された、Richard J.Lewis,Sr.(ed.),Hawley’s Condensed Chemical Dictionary,2016(ISBN 978-1-118-13515-0)に見られ得る。現在開示されている化合物はまた、化合物中に存在する原子のすべての同位体を含み、重水素、トリチウム、14Cなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0019】
本開示の様々な実施形態の検討を容易にするために、特定の用語についての以下の説明を提供する。
【0020】
吸着:イオンおよび分子が別の分子の表面に物理的に付着または結合すること。吸着は、吸着物と表面との間の結合の性質および強度に応じて、化学吸着または物理吸着として特徴付けられ得る。
【0021】
脂肪族:アルカン、アルケン、アルキンを含み、それらの環状物を含み、さらに直鎖および分枝鎖配列、およびすべての立体配置および構造異性体を含む、実質的に炭化水素ベースの化合物、またはそのラジカル(例えば、ヘキサンラジカルの場合はC6H13)。
【0022】
アルキル:飽和炭素鎖を有する炭化水素基。鎖は、環状、分枝状または非分枝状であり得る。限定されないが、アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルが含まれる。アルケニルおよびアルキニルという用語は、それぞれ1つ以上の二重結合または三重結合を含有する炭素鎖を有する炭化水素基を指す。
【0023】
芳香族またはアリール:単結合と二重結合とを交互に有する不飽和環状炭化水素。ベンゼンは、3つの二重結合を含有する6炭素環であり、典型的な芳香族化合物である。芳香環部分にヘテロ原子を含有する場合、その基は、ヘテロアリールであり、アリールではない。アリール基は、単環式、二環式、三環式または四環式である。
【0024】
アリール脂肪族:芳香族部分および脂肪族部分を備え、分子の残りへの結合点が脂肪族部分を介する基。
【0025】
コーティング:基板の表面にある材料の層。「膜」という言葉と同義。
【0026】
膜:基板の表面にある材料の層。「コーティング」と同義。
【0027】
ハロゲンおよびハロゲン化物:本明細書で使用される用語「ハロゲン(ハロ)」および「ハロゲン化物」は、Cl、BrまたはIを指す。
【0028】
ヘテロ脂肪族:鎖内に少なくとも1つの炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子とを有する、すなわち、1つ以上の炭素原子が、少なくとも1つの孤立電子対を有する原子(通常は窒素、酸素、リン、シリコン、または硫黄)に置き換えられる、脂肪族化合物または基。ヘテロ脂肪族化合物または基は、置換または非置換、分枝または非分枝、環式または非環式であり得、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素脂環式」、または「複素環式」基を含み得る。
【0029】
ヘテロアリール:少なくとも1つのヘテロ原子を有する、すなわち、環内の1つ以上の炭素原子が、少なくとも1つの孤立電子対を有する原子(通常は窒素、酸素、リン、シリコン、または硫黄)に置き換えられる、脂肪族化合物または基。
【0030】
ヘテロアリール脂肪族:芳香族部分および脂肪族部分を備える基であり、分子の残部への結合点は、脂肪族部分を介し、この基は少なくとも1個のヘテロ原子を含む。特に明記しない限り、ヘテロ原子は、芳香族部分または脂肪族部分にあり得る。
【0031】
ヒドロカルビル:炭化水素に由来する一価のラジカル。ヒドロカルビルラジカルは、直鎖状、分枝状または環状であり得、脂肪族、アリールまたはアリール脂肪族であり得る。
【0032】
可溶性:溶媒中に分子的またはイオン的に分散して、均一な溶液を形成することが可能であること。
【0033】
溶液:2つ以上の物質からなる均一な混合物。溶質(微量成分)は、溶媒(主成分)に溶解する。
【0034】
Sn2:(C4H9Sn)2(OH)2Cl4(H2O)2
【0035】
Sn12OH(またはSn12):(n-C4H9Sn)12O14(OH)8
【0036】
(II.フォトレジスト組成物)
本開示は、フォトレジスト組成物およびフォトレジスト組成物の製造方法の実施形態に関する。一実施形態では、フォトレジスト組成物は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールまたはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。別の実施形態では、フォトレジスト組成物は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールまたはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9、z≦1.95、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。
【0037】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C10脂肪族、アリールまたはアリール-脂肪族であり、脂肪族部分は、Sn原子への結合点である。特定の実施形態では、Rは、C1~C5脂肪族などの、C1~C10脂肪族である。脂肪族鎖は、直鎖状、分枝状または環状であり得る。いくつかの例では、Rは、C1~C5アルキルである。R基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル(2-メチルプロピル)、sec-ブチル(ブタン-2-イル)、tert-ブチル、n-ペンチル、1,1-メチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチルおよび1-エチルプロピルを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Rは、ヘテロ脂肪族、ヘテロアリールまたはヘテロアリール-脂肪族(ここで、ヘテロ原子は、アリールおよび/または脂肪族部分中にあり得、脂肪族部分は、Sn原子への結合点である)であり、1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含む。適切なヘテロ原子は、N、O、Sおよびそれらの組み合わせを含み得る。ヘテロ脂肪族鎖は、直鎖状、分枝状または環状であり得る。特定の例において、Rはn-ブチルである。
【0038】
前述または後述のいずれかの実施形態では、q=0.1~1である。いくつかの実施形態では、q=0.3~1または0.5~1である。前述または後述のいずれかの実施形態では、x≦4である。一実施形態では、x≦3.9である。いくつかの実施形態では、0<x≦4、0<x≦3.9または0<x≦3である。前述または後述のいずれかの実施形態では、y≦4である。一実施形態では、y≦3.9である。いくつかの実施形態では、0<y≦4、0<y≦3.9または0<y≦3である。前述または後述のいずれかの実施形態では、z≦2である。一実施形態では、z≦1.95である。いくつかの実施形態では、0<z≦2、0<z≦1.95または0<z≦1.5である。
【0039】
前述または後述のいずれかの実施形態では、フォトレジスト組成物は、膜または層として基板上に堆積され得る。いくつかの実施形態では、膜は、2nm~1000nmの範囲内の平均厚さおよび/または1.5nm以下の二乗平均平方根(RMS)表面粗さを有する。特定の実施形態では、平均厚さは、2~750nmの範囲内、例えば、2~500nm、2~250nm、5~250nm、10~100nmまたは10~50nmなどである。RMS表面粗さは、1.5nm以下、1.5nm未満、1.2nm以下、1.2nm未満、1nm以下または1nm未満であり得、例えば、0.2~1.5nm、0.3~1.5nm、0.3~1.2nm、0.3~1nmまたは0.3~0.75nmの範囲内などである。
【0040】
(III.フォトレジスト組成物を作成およびパターニングする方法)
フォトレジスト組成物を備える滑らかで緻密な膜が望ましい。いくつかの実施形態では、基板上にOH安定化ブチルスズ12量体をその場形成し、続いて本明細書に開示されるフォトレジスト組成物を形成することによって、優れた膜が調製される。
【0041】
RzSnO(2-(x/2)-(x/2)(OH)x、ここで、0<(x+z)<4、で表される一般的組成を有する有機スズコーティングは、フォトレジストとして一般的に知られる放射パターン形成可能な材料として良好に機能することが示される。電子ビーム、紫外線(UV)放射および極端紫外線(EUV)放射に対する感度を有するフォトレジストとしての有機スズ材料の使用は、Meyersによる「Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions,」と題する米国特許第号9,310,684明細書およびMeyersによる「Organotin Oxide Hydroxide Patterning Compositions, Precursors, and Patterning,」と題する米国特許第号10,228,618明細書に記載され、それらの両方を、参照によって本明細書に援用する。
【0042】
本開示は、式[RSnOH(H2O)X2]2によって表される有機スズ前駆体の調製を記載する。これは、RSnX3と水との反応によって調製され得、ここで、Xは、ハロゲン化物であり、Rは、前述の定義のとおりである。一実施形態では、RSnX3は、周囲大気にさらされ、それによって[RSnOH(H2O)X2]2が生成される。[RSnOH(H2O)X2]2は、RSnX3が効果的な期間、例えば2~4日間、大気にさらされるとき、自然に形成される。いくつかの実施形態では、Xは、Cl-である。特定の例では、Rは、n-ブチルである。
【0043】
概して、有機スズ酸化水酸化物コーティングは、加水分解に敏感な有機スズ前駆体組成物を水と反応させることによって調製され得る。前述の参考文献には、スピンコーティングおよび蒸着技術によって調製された有機スズ酸化水酸化物コーティングが記載される。パターニング可能な有機スズ酸化水酸化物コーティングは、1つ以上のRnSnL4-n(n=1,2)組成物の加水分解物を適切な溶媒に溶解し、続いてスピンコーティングを介して堆積することによって形成され得る。さらに、RnSnL4-n組成物の蒸気圧が比較的高いため、加水分解可能な気相前駆体を周囲雰囲気から密閉した反応器に導入して蒸着プロセスの一部として加水分解する蒸着法によっても、有機スズ酸化水酸化物コーティングを調製し得る。例えば、1つ以上のRnSnL4-n組成物を、H2O、H2O2、O3、O2、CH3OHなどの1つ以上の低分子気相試薬と反応させ、所望の基板上に有機スズ酸化水酸化組成物を形成し得る。蒸着技術には、ALD(原子層堆積)、PVD(物理気相成長)、CVD(化学気相成長)等が含まれる。
【0044】
有機スズコーティングの溶液堆積が所望される場合、[RSnOH(H2O)X2]2と溶媒とを備える溶液を調製し得る。概して、[RSnOH(H2O)X2]2組成物が溶解する、任意の溶媒が使用され得る。溶媒の選択は、その毒性、可燃性、揮発性、粘度および他の材料との潜在的な化学的相互作用など、他のパラメータによってさらに影響を受け得る。適切な溶媒は、例えば、4-メチル-2-ペンタノール、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)などのアルコール類、2-ヘプタノンなどのケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル類、および/またはこれらの混合物などを含む。
【0045】
溶液中の種の濃度は、Snモル基準で評価され得、概して、溶液の所望の物理的性質および所望のコーティングに対して選択され得る。例えば、濃度の高い溶液は、概して、より厚い膜となり、濃度の低い溶液は、概して、より薄い膜となる。超高解像度パターニングなどの一部の用途では、より薄い膜が望ましい場合があり得る。いくつかの実施形態では、Sn濃度は、0.005M~1.4M、さらなる実施形態では、0.02M~1.2M、追加の実施形態では、0.1M~1.0Mであり得る。明示的な範囲内のSn濃度のさらなる範囲が検討され、当業者によって認識されるであろう。
【0046】
蒸着が必要な場合、[RSnOH(H2O)X2]2の形成は、例えば周囲環境から隔離されたチャンバー内でのRSnX3とH2Oとの気相反応によって行われ得る。有機スズ前駆体RSnX3は、気化チャンバーへの蒸気、エアロゾルおよび/または直接液体注入の流を使用するなど、当業者にとって既知である手段によってチャンバーに導入され得る。次に、有機スズ前駆体の導入と同時または導入後に、水を別の入口からチャンバーに導入して、加水分解を促進し、基板の表面に[RSnOH(H2O)X2]2コーティングを形成し得る。いくつかの実施形態では、反応は、周囲に対して上昇した温度で行われ得る。いくつかの実施形態では、気相反応は、所望の膜厚が達成されるまで複数回実施され得る。
【0047】
いずれの堆積方法においても、基板は、対象となる任意の材料であり得る。例示的な基板は、シリコン、シリカ、セラミック材料、ポリマーおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、基板は、溶液が堆積される平坦な表面または実質的に平坦な表面を備える。特定の実施形態では、基板は、SiO2である。溶液堆積は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングなどを含むがこれらに限定されない任意の適切な方法によって行われ得る。堆積溶液および基板は、基板上に[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を生成させるために加熱される。温度および時間は、溶媒を効果的に蒸発させ、[RSnOH(H2O)X2]2を12量体の[(RSn)12O14(OH)6]X2に変換するように選択される。いくつかの実施形態では、基板および堆積溶液は、60~100℃の温度で1~5分間、例えば80℃の温度で3分の時間、塗布後ベークに供される。特定の実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6]X2膜は、0.5nm未満または0.4nm未満のRMS表面粗さを有する。いくつかの例では、RMS表面粗さは、約0.3nmである。RMS表面粗さは、原子間力顕微鏡法などの当技術分野で知られている方法によって決定され得る。
【0048】
ハロゲン化物は、制御されていない加水分解および/または化学的および構造的に不均一な膜を可能にし得るため、ハロゲン化物は、スズベースのフォトレジストの望ましくない成分である。したがって、堆積膜からハロゲン化物を除去することは有益である。前述または後述のいずれかの実施形態では、ハロゲン化物は、[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を塩基性水溶液と接触させることによって、基板上に[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える膜を生成する。ハロゲン化物含有膜の非ハロゲン化物含有膜への変換は、他の方法でも達成され得るが、他の金属による材料の汚染を回避することが望ましい場合があり得るため、塩基性水溶液は、概して、金属を含有しないことが望ましい。適切な塩基性水溶液は、例えば、第四級アンモニウム化合物(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなど)、アルキルアミン化合物(例えば、ジエチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミンなど)およびアンモニアを含み得る。いくつかの実施形態では、塩基性水溶液は、アンモニア水溶液である。ハロゲン化物は、希アンモニア水溶液で短時間処理することによって、膜から実質的に除去され得る。アンモニアは、例えば5μM~50mM、5μM~10mM、5μM~1mM、5μM~100μM、5μM~50μM、5μM~10μMなど、5μMから100mMの濃度を有し得る。短時間とは、例えば30秒~15分、1分~10分または1分~5分など、30秒~30分であり得る。いくつかの例では、ハロゲン化物は、塩化物であり、膜を堆積および塗布後ベークの後に10μMのNH3 (aq)に3分間浸漬することによって除去された。あるいは、NH3(aq)は、膜上にパドリングされ得、その後、スピンコーター上で基板を回転させて乾燥させることによって水溶液を除去し得る。アルカリ処理後、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜を水ですすぎ、乾燥し得る。乾燥は、すすがれた膜全体に窒素を流すことによっておよび/または加熱することによって行われ得る。ハロゲン化物を除去すると、膜の粗さがわずかに増加し得る。したがって、いくつかの実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜は、1.5nm未満、1nm以下または0.8nm以下のRMS表面粗さを有し、例えば、RMS表面粗さは、0.3nm~1nm、0.3nm~0.8nmまたは0.3nm~0.5nmの範囲内である。
【0049】
いくつかの実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える原子的に平滑な膜(例えば、RMS表面粗さが0.5nm未満)は、基板上に形成され、ここで、Rは、上記で定義された通りである。[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜は、Xがハロゲン化物であるRSnX3を備える前駆体から形成され得る。いくつかの例では、出発物質は、n-C4H9SnCl3であり、反応は次のとおりである。
n-C4H9SnCl3(l)+大気→[n-C4H9SnOH(H2O)Cl2]2(s)
12[n-C4H9SnOH(H2O)Cl2]2(s)→[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2+22HCl(g)+H2O(s/g)
[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2(s)+2NH4OH(aq)→[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6](OH)2(s)+2NH4Cl(aq)
【0050】
前述または後述のいずれかの実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜は、電子ビームまたは10nmから400nm未満の範囲内の、例えば、10nm~350nm、10nm~300nm、50nm~300nm、100nm~300nm、150nm~300nmまたは200nm~275nmなどの、波長を有する光を照射することによってパターニングされ得、照射された膜を生成する、フォトレジスト膜である。いくつかの実施形態では、照射は、13.5nmの波長を有するEUV光などの10~260nmの範囲内の波長を有する光または125μC/cm2以上のドーズ量で電子ビームを照射することを含む。特定の実施形態では、照射は、200~260nmまたは250~260nmの範囲内の波長を有する光で照射することを含む。他の実施形態では、照射は、125μC/cm2以上、200μC/cm2以上、300μC/cm2以上または500μC/cm2以上のドーズ量で電子ビームを照射することを含む。例えば、ドーズ量は、1000μC/cm2、200~1000μC/cm2、300~1000μC/cm2または500~1000μC/cm2などの範囲内である。照射は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜中のR-Sn結合(より具体的には、C-Sn結合)の少なくとも一部を切断する。いくつかの実施形態では、例えばR-Sn結合の0~100%、1~100%、1~90%、1~70%または1~50%など、R-Sn結合の最大5%、最大10%、最大25%、最大50%、最大70%、最大90%または最大100%を切断するのに十分な照射が適用される。他の実施形態では、R-Sn結合の5~100%、5~90%、5~70%、5~50%、10~100%、10~90%、10~70%または10~50%を切断するのに十分な照射が適用される。切断は、膜からのR基の脱離をもたらす。
【0051】
前述または後述のいずれかの実施形態では、フォトレジスト膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜の選択された部分のみを照射することによってパターニングされ得る。いくつかの実施形態では、選択された部分は、電子ビームで「描画する」ことによって、または膜の特定の部分をマスキングし、マスキングされていない部分を照射することによって、照射される。
【0052】
前述の実施形態のいずれにおいても、この方法は、膜の照射後処理を含み得る。いくつかの実施形態では、照射後処理は、照射された膜を周囲温度(例えば、20~25℃)で少なくとも3時間大気に曝露すること、または照射された膜を100~200℃の範囲内の温度で大気中において2~5分間加熱することを含む。特定の実施形態では、照射後処理は、照射された膜を140~180℃の範囲内の温度で2~4分間、例えば140~180℃などで3分間加熱することを含む。他の実施形態では、照射後処理は、照射された膜を、少なくとも3時間、少なくとも5時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも7日間または少なくとも10日間などの長時間、周囲温度の大気に単にさらすことからなる。
【0053】
照射後の処理で膜を大気にさらすと、膜の照射領域が加水分解し、膜中のSn-OH結合の濃度が高くなる。時間が経つにつれて、膜は、大気中のCO2を吸着する。特定の操作理論に縛られることを望むものではないが、吸着されたCO2は、Sn-OH結合に挿入されてSn-HCO3結合を形成する。次に、隣接するHCO3-基とOH-基とは、反応してH2Oを放出し得、それによって単純な炭酸塩(例えば、隣接する2つのSn原子間で共有されるカーボネート基)が形成される。いくつかの実施形態では、得られる膜は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zからなる一般式を有し、ここでR、m、q、x、yおよびzは、先に定義した通りである。
【0054】
膜中の重炭酸基と炭酸塩基の存在によって、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜とR-Sn結合の10~100%が切断された[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜との異なる溶解コントラストがもたらされる。得られたCO32-グループは、Sn原子に隣接する橋を形成し、架橋によって溶解性を阻害する。特に、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zは、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2よりも特定の溶媒において溶解性が低い。例えば、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2は、特定のケトン(例えば、2-ヘプタノン、アセトン)に容易に溶解するが、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zは、不溶性または溶解性が低い。したがって、いくつかの実施形態では、パターニングされた膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2が溶解する溶媒に接触し、膜の照射部分は、パターニングされた膜の照射部分を溶解することなく、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を溶解するのに効果的な時間の間、溶解されにくい。いくつかの実施形態では、フォトレジスト層の非照射部分は、パターニングされたフォトレジスト層を2-ヘプタノンと数秒~数分間、例えば15秒~2分、15秒~1分間または15~45秒、接触させることによって除去される。特定の例では、パターニングされたフォトレジスト層を2-ヘプタノンと30秒間接触させた。
【0055】
(IV.構成部品)
構成部品は、開示された方法の実施形態によって作られる。いくつかの実施形態では、構成部品は、基板と、基板の少なくとも一部の上の膜とを備え、ここで、膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備え、Rは、上記のように定義される。膜は、(i)0.8nm以下の二乗平均表面粗さ、(ii)X線光電子分光法によって検出される検出不可能なレベルのCl-、または(iii)(i)および(ii)の両方を有し得る。
【0056】
前述または後述のいずれかの実施形態では、膜は、本明細書に開示されるようにパターニングされ得、基板と基板の少なくとも一部の上の膜とを備えるパターニングされた構成部品を提供し、膜は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここでq、x、y、zおよびmは、前述で定義したとおりである。
【0057】
前述の実施形態のいずれにおいても、基板は、対象となる任意の材料であり得る。例示的な基板には、シリコン、シリカ、セラミック材料、ポリマーおよびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、基板は、膜が配置される少なくとも一部の上に平坦なまたは実質的に平坦な表面を備える。特定の実施形態では、基板は、SiO2である。
【実施例】
【0058】
(V.実施例)
材料
Luijtenによって以前に説明されたように(Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas 1966,85(9):873-878)、(C4H9Sn)2(OH)2Cl4(H2O)2(Sn2)結晶を、n-C4H9SnCl3(l)(Alfa Aesar、96%)をドラフトチャンバー内の結晶皿に置き、Sn2が結晶化するまで3日間かけて調製した。(n C4H9Sn)12O14(OH)8(Sn12OH)結晶を、Eychenne-Baronらによって以前に記載された(.J Organometallic Chem 1998,567(1):137-142)ように調製した。
【0059】
薄膜コーティング
Sn2およびSn12の溶液堆積前駆体は、2-ヘプタノン(Alfa Aesar、99%)1mLあたり0.14gおよび0.12gをそれぞれ溶解し、0.45μmPTFEシリンジフィルターで濾過することによって調製した。p-Si(Silicon Valley Microelectronics,Inc)基板上に熱成長させた100nmのSiO2を、アセトン、イソプロピルアルコールおよび18.2MQ-cmのH2Oで洗浄し、800℃で15分間焼鈍した。前駆体溶液を、2.54x2.54cm2で、2000RPMで30秒間回転させた。試料を80℃に予熱したホットプレートにただちに移し、3分間塗布後ベークした。
【0060】
Sn2から調製した薄膜を、アルカリ処理に供した。これらの膜を、堆積直後および80℃のPABの直後に10μMのNH3(aq)に3分間完全に浸漬させた。アルカリ処理後、膜を18.2MΩ・cmのH2OですすぎN2ガンで乾燥させた。
【0061】
露光およびコントラスト曲線
Sn2から調製したSn12OH膜をパターニング実験に使用した。電子ビーム露光を、Quanta 3D Dual Beam SEMおよびNPGSソフトウェアで30kV電子ビームを使用して実行した。ドーズ量を直線的に増加させて正方形のアレイを描画することによって、コントラスト曲線を作成した。文中に指定されているように、大気中での露光後のエージングまたはベークステップを適用した。数滴の2-ヘプタノンで30秒間覆うことによってドーズ量アレイを現像し、N2ガンで試料を乾燥させた。焦点プローブを取り付けたWoolam MX-2000エリプソメーターを使用して、各正方形で厚さの測定値を収集した。厚さの値を、ドーズ量またはドーズ量対数の関数としてプロットした。UV光への露光を、λ=254および185nmでの2つの波長を放出するDigital UV Ozone System(Novascan)を使用して行った。
【0062】
XPS
X線光電子分光法(XPS)の収集には、Physical Electronics(PHI)5600 MultiTechnique UHVシステムを使用した。メインチャンバーのベース圧力は2x10-10torr未満であった。単色化されたAl Kα放射(hν=1486.6eV、300W、15kV)を使用して、Ag 3d、Cl 2p、Sn 3dおよびSn MNNオージェスペクトルを取得した。測定には、23.5eVの電子アナライザーパスエネルギーおよび45度の放射角度を使用した。各スペクトルのピークフィットは、ガウス・ローレンツ線形状およびシャーリー・バックグラウンドを使用して、Casa XPSを使用して決定した(Frischら、Gaussian 16,Revision A.03,2016)。原子濃度を、X線源と電子検出器との間において90度で使用されるXPSシステムに固有の公開された感度係数を使用して計算した(Perdewら、Phys.Rev.Lett.1997,78(7):1396)。
【0063】
AFM
Bruker Veeco Innova SPCをタッピングモードで使用してRMS粗さ値を測定するために、原子間力顕微鏡法を実行した。Nanoscope Analysis1.5を、バックグラウンド減算およびノイズの平準化に使用した。
【0064】
TPD
TPD-MSを、Hiden Analytical TPD Workstationを使用して実行した。膜を、1x1cm2の試料に切断し、装置のUHVチャンバー(約3x10-9orr)に挿入した。試料を、30℃/minの直線昇温速度で800℃まで焼鈍した。MSを、70eVの電子イオン化エネルギーおよび20μAの放出電流で取得した。各試料の選択された質量電荷(m/z)比を、それぞれ150ミリ秒および50ミリ秒の滞留時間および安定時間においてMIDモードで観察した。
【0065】
SEM
走査型電子顕微鏡画像を、Quanta 3D Dual Beam SEMで30kVの電子ビームを使用して収集した。
【0066】
ESI-MS
抽出した膜溶液を、Agilent6230エレクトロスプレーイオン化質量分析計で分析した。溶液を、シリンジポンプを使用して0.4mL/minの流速で分光計に導入した。溶液の気化を促進するために、325℃および241kPaにおいてN2(g)を8L/minで流した。キャピラリーの電圧を3500Vに設定し、スキマーを65Vに設定し、RFオクタポールを750Vに設定した。データを、フラグメンテーション電圧を30Vに設定して正と負との両方のイオン化モードで収集した。
【0067】
TEMおよびEELS
TEM画像を、FEI Titan 80-200 TEMで200keVビームを使用して収集した。EELS分析を、収束角と10ミリラジアンの収集角とを有するGatan Tridiemエネルギー分析器を使用して、Titanで実行した。TEMおよびEELSに使用されるシングルチルトクライオホルダーGatan 626は、実験を通して-170℃で安定したままであった。1つの傾斜軸を使用して、試料をSi<110>ゾーン軸にきわめて近づけ、試料がビームに対して垂直になるようにした。
【0068】
(結果および考察)
Sn2からの原子的に滑らかなClを含まない薄膜:
Sn2は、4つのCl配位子を有する(
図1)。2つのSn原子は、ヒドロキシル基を共有する。2つのCl配位子と1つのH2O分子とは、各Sn原子に関連付けられる。n-ブチル基もまた、各Sn原子に結合する。Sn2溶液前駆体は、スピンコーティングによる堆積と80℃での塗布後ベーク(PAB)との後、ブチルスズ12量体[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2(Sn12Cl)の塩化物塩に変換される。膜は、二乗平均平方根(RMS)粗さ=0.3nmであり、非常に滑らかである。塩化物は、スズベースのフォトレジストの望ましくない成分である。これは、パターニングプロセスのさまざまなステップでパターンの忠実度に影響を与え得る、制御されていない加水分解と化学的および構造的に不均一な膜の生成の機会を生み出すためである。塩化物塩は、OH-で置換することによって、Clを含まない膜に変換された。OH安定化ブチルスズ12量体[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6](OH)2(Sn12OH、
図2Aおよび2B)が以前に報告されているため、OH-のより強い求核特性に基づいて、OH-がCl-と交換されると仮定された。
【0069】
従って、Sn12Cl膜を蒸着直後に10MのNH3(aq)に3分間浸漬し、80℃のソフトPABを行った。
図3の上部のXPS(X線光電子分光)スペクトルは、塩基浸漬前の蒸着およびPAB後の膜において、強いCl 2p1/2および2p3/2シグナルを示す。下方のスペクトルは、NH3(aq)に浸すとClのシグナルがバックグラウンドと同化することを示す。この結果は、NH3(aq)に3分間浸すことで膜中のCl-が除去され、12量体のOH-塩が生成されたことを意味していると解釈される。
【0070】
NH3(aq)浴の後、原子間力顕微鏡(AFM)で膜の表面画像を収集した(
図4Aおよび
図4B)。得られた膜のRMS粗さは、0.32nmから0.45nmへとわずかに増加したが、原子レベルで滑らかな表面であることが示された。アルカリ処理によって、Sn2から調製された膜の平滑膜のモルフォロジーが大きく劣化することはなかった。
図4Aに見られるように、Sn2前駆体からSn12を堆積させると、Sn12前駆体から直接堆積させるよりもはるかに滑らかな膜が生成される。式1および式2は、Sn2の固体結晶から原子レベルで平滑なClを含まないパターニング可能なn-ブチルスズオキソヒドロキソ薄膜への化学反応をまとめたものである。
【0071】
堆積およびPAB:
6[(n-C4H9Sn)Cl2(OH)(H2O)]2→[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2(s)+22HCl(g)+H2O(s/g) (式1)
【0072】
塩基浸漬:
[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2(s)+2NH4OH(aq)→[(n-C4H9Sn)12O14(OH)8](s)+2NH4Cl(aq) (式2)
【0073】
Sn2からコーティングされた膜がPABおよび塩基浸漬後にウェーハ上のSn12OHスペシエーションを生成することを確認するために、Sn12OHのバルク結晶を調製し、2ヘプタノン溶液から成膜を行った。Sn2およびSn12OH溶液前駆体の蒸着およびプロセスパラメータは、Sn2膜(Sn12Cl)をNH3(aq)中で3分間イオン交換することによってのみ異なった。
【0074】
表1は、XPSデータから測定された化学組成およびSn12OHの式に基づいて計算された組成をまとめたものである。Sn2から加工した膜のSn、O、CおよびClの原子濃度は、Sn12OHから加工した膜と3%以内で一致し、分子式から予想される組成と2%以内で一致した。
【0075】
【0076】
図5Aおよび
図5Bは、両方の膜について収集した昇温脱離脱離(TPD)スペクトルを示す。脱離質量、ピークシグナル温度、相対ピーク強度は、2つの膜の間で区別がつかなかった。メタノール中に浸漬および溶解させることによって膜を抽出し、ウェーハ上のスペシエーションを評価するための溶液を作成した。抽出された膜溶液のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)は同一であり(
図6)、約1250および2500の質量電荷比(m/z)を中心とする2つの主要なピークが明らかになった。これらのピークは、親Sn12OH12量体の+2イオンと+1イオンとに対応する。観察された複合線は、12量体カチオン内の-OHおよび-OCH3配位子交換の結果である。
【0077】
2つの試料のESI-MSスペクトルは、-OHが-OCH3配位子に部分的に交換されているために発生する、さまざまな程度のピーク分割によって区別される。この交換は、メトキソ配位子の源が系に最初にかつ唯一導入されるため、メタノールへの溶解プロセス中にのみ発生し得る。このように、特徴的なピークの分割は、ウェーハ上のスペシエーションの違いを表していない。
【0078】
XPS、TPD、およびESI-Mは、溶液前駆体の同一性に関係なく、ウェーハ上のSn12OHスペシエーションの捕捉的な証拠を提供する。その結果、蒸着、PAB、塩基浸漬に基づくSn2からSn12OHへの変換を支援する。
【0079】
有機スズフォトレジストは、通常、リソグラフィ工程において塗布、放射線照射された後、加熱される。これらの材料は、高解像度のパターンを作成するために、低い表面粗さを維持しなければならない。NH3(aq)処理後にさらに3分間ベークを行い、昇温での粗さ挙動を評価した。
図7は、140~180℃でベークした膜は、初期の表面粗さにもかかわらず、約0.75nmのRMS粗さを維持することを示す。このデータから、一般的なPABおよびPEBの処理温度を適用した膜は、高解像度フォトレジスト材料の必須条件である0.75nm以下の優れた粗さを引き続き示すことが示唆された。ウェーハ上のスペシエーションは同一であるが、すべての放射実験は、Sn2から生成されたClを含まない膜で行われた。Sn2プロセスは、Sn12OHの直接蒸着(RMS=1.32nm)よりも滑らかな表面(RMS=0.45nm)を生成した。さらに、Sn12OHから直接加工した膜をベークすると、140℃までに表面モルフォロジーが4.43nmまで急速に粗化した。
【0080】
パターニング化学
ベースラインを確立する非露光膜:
TPD-MSを実行して、Sn2から調製したClを含まない薄膜からの熱誘起脱離スペクトルを分析した。
図8に示すスペクトルは、H2O、CO2、n-ブチル配位子からの3つの主要な脱離シグナルを明らかにする。
【0081】
図8は、200℃未満の温度での3つの低強度シグナルを示す。75℃の水のピークは、構造のH2Oの脱離に起因する。このピークは、11日間の大気中エージング(
図9A)でより大きくなった。これは、この期間において、膜が大気中のH2O(g)をゆっくりかつ連続的に吸着することを示唆する。75℃および200℃のCO2ピークは、金属酸化物表面とCO2(g)との相互作用が予想されるため、弱く吸着したCO2の脱離に起因する。これら2つのCO2脱離ピークの相対強度は、大気中で不規則に経時変化することがわかった(
図9B)。この挙動は、金属酸化物表面に弱く吸着したCO2の動的移動に起因し得る。140℃における3分間の大気中でのソフトベークを採用することによって、3つの低温H2OおよびCO2脱離ピークを大幅に低減した(
図10)。これらの200℃以下のピークは、分子状で弱く結合したH2OおよびCO2吸着体の脱離を表していると結論付けられた。
【0082】
図8のTPDスペクトルから最も強い脱離現象は、400℃で発生し、様々な有機フラグメントに関連するピークを明らかにした。H除去または抽出を伴う熱誘起Sn-C結合切断は、それぞれ1-ブテン(C4H8)(
図11)またはn-ブタン(C4H10)(
図12)の生成をもたらす。両方の生成物の既知のフラグメンテーションパターンから、イオン化解離の際、プロピルフラグメントが最も強いシグナルとなることが予想された。
図13は、プロピル鎖[m/z=41(C3H5)、m/z=43(C3H7)]がそれぞれ1-ブテン、n-ブタン生成物をどのように表すかを示す。
【0083】
1-ブテン(C4H8)(
図10)とn-ブタン(C4H10)(
図12)とは、イオン化装置におけるパターンが似ているため、質量分析装置の標準化なしでは相対量の確定が困難である。しかし、m/z=43の期待される強度は、n-ブタンでは100%、1-ブテンでは実質的に0%である。実験スペクトルは、実質的なm/z=43のピークを示したため、これらの膜のSn-ブチル熱分解によって、質量分析計に入るn-ブタンと1-ブテンとの両方の分解生成物の生成をもたらしたことをよく示している。ここでは、m/z=41以降は、最も強いピークであったため、様々な処理後の膜中の相対的なブチル濃度を表すために使用される。
【0084】
400℃では、m/z=18および44もピークに達した。この温度で、m/z=44は、CO2またはC3H8(ブタンの生成物フラグメント)のいずれかに起因し得る。しかし、M/z=18は、C4H8またはC4H10のフラグメンテーションによる生成物ではないため、TPD実験がSn-ブチル熱分解を誘発し副産物としてH2Oを伴ったという推論に基づいて、水に割り当てられた。最後に、600℃で検出された弱いCO2ピークを
図8にアスタリスクで示した。
【0085】
露光した膜
1x1cm2の膜に電子ビームを照射し、直ちにTPD分析を行った。この露光面積は、TPD分析に必要な試料の寸法と一致している。
図14は、0(黒)、300(青)、1000(赤)μC/cm2に露光した試料からのn-ブチル脱離(m/z=41)に関連するシグナルを示す。脱離シグナルの強度は、ドーズ量の増加とともに減少し、ドーズ量の増加とともにn-ブチルの含有量が減少することが示唆された(
図15)。
図14の曲線は、前縁が揃っている、後縁が離れている、ピーク温度がずれているという、ゼロ次脱離の動力学の3つの指標を示す。TPD測定の結果、電子ビーム照射によりSn-C結合が切断され、n-ブチル配位子の気体放出が起こり、それによって、膜中の有機配位子濃度が減少することが明らかになった。
【0086】
図14のTPDデータは、露光ドーズ量の増加に伴うC3H5シグナルの減少を要約する。挿入図は、R2=0.98で一致する指数関数的に減衰したシグナルを示す。分光エリプソメトリーからの膜厚もまた、ドーズ量の関数として指数関数的減少を示した(
図16)(R2=0.97)。その結果、これらのデータは、Sn-C結合切断の確率が膜中のSn-C結合、すなわち膜中のブチル基の濃度に単純に比例することを示す。
【0087】
ブチル配位子の脱離ならびに膜の厚さおよび付随する膜密度の変化は、膜の露光領域と非露光領域とが電子顕微鏡(EM)によって画像化され、特徴付けられ得ることを示した。500μC/cm2のドーズ量で30kVの電子ビームを使用して、2つのSn12OH膜に100nmピッチで細いライン(約25nm)を描画した。1つの膜は、走査型電子顕微鏡(SEM)を介して確認するために、140℃で3分間の露光後ベーク(PEB)の直後に2-ヘプタノンで30秒間現像され、実際に、75nm間隔の25nmラインを明らかにした(
図17)。
【0088】
第2の膜は、現像されなかった。パターニングされた膜は、熱に非常に敏感であるため、クライオ集束イオンビームミリングを使用して、EM分析用の電子透過性ラメラを抽出した。ミリングの前に、クロムの層が堆積され、続いてCとPtとの保護コーティングは、すべて蒸着法を介して行われた。超低温(77K)で走査型透過電子顕微鏡(STEM)画像と炭素電子エネルギー損失分光(EELS)データとを収集することによって、追加のビーム損傷を防いだ。
【0089】
図18は、露光された未現像の試料の逆コントラスト断面クライオSTEM画像を示す。下から上に向かって、それぞれの層は、SiO2基板(薄い灰色)、露光Sn12OH(黒)、保護クロム層(濃い灰色)に対応する。約75nm間隔の周期的な暗い領域は、レジストの露光領域を表す。これらは、完全に現像されたパターンで観察されたライン間隔と一致する(
図17)。明らかに、高い原子番号コントラストと組み合わせたクライオSTEMによって、無機フォトレジストの通常は見えない潜像の直接イメージングを可能にする独自のアプローチが可能になる。
【0090】
図19は、10nmの解像度で実行された、基板に平行な露光されたSn12OH膜を通るカーボンEELSのラインスキャンを示す。データは、ラインスキャン全体の3つの露光領域に起因するカーボンの3つの明確な低下を示した。各ラインで最も低いカーボンカウントは、カーボンの50%の損失に対応し、これはブチル配位子の50%に相当する。カーボンEELSのポイントスキャンでも同様の結果が得られた。これらのデータは、照射がSn-C結合を切断し、それが膜からの有機種の脱離につながるというさらなる証拠を提供する。
【0091】
FIB試料調製およびクライオEM測定の難しさを考慮すると、ブチル配位子の約50%の損失は、TPDで観察された約40%の損失に匹敵する。10%ポイントの差は、膜の堆積および処理における統計的変動、ならびにクライオFIBミリングおよびクライオSTEM分析中の潜在的なカーボン損失に起因し得る。
【0092】
大気中の露光後の遅延:
実験セクションで詳述した手順に従い、SEMの真空チャンバー内で電子ビーム露光を行い、5つの制御ドーズ量アレイを生成した。描画後、試料を真空環境から取り出し、2-ヘプタノンで30秒間現像する前に大気中でエージングさせた。1つのアレイは未現像のままである。
図20は、0.25、3、24および144時間経過させたアレイの膜厚を、ドーズ量の関数として示す。未現像アレイは、現像前の膜厚を100%維持するために必要な遅延時間を特定するように機能する。
【0093】
0.25時間の遅延に供した試料の露光パッドはすべて単純に2-ヘプタノンに溶解し、膜の露光領域と非露光領域との間で溶解速度に差は生じなかった。大気中で3時間経過後、高ドーズ量パッド(200μC/cm2超)で溶解速度の低下が観察された。24時間の遅延後に125μC/cm2付近で溶解が始まり、200μC/cm2付近で飽和し、ここで、パッド厚は、潜像対照のものと等しい。24時間超のエージングを継続すると、感度の変化が小さくなった。大気中で24時間エージングした場合の最高コントラストは5.1であった。露光から現像までの遅延時間が、溶解速度の差に大きく影響していることは明らかである。
【0094】
エージングのゆっくりとした変化が露光単独に基づくかまたは大気との反応に基づいて生じるのかを判断するために、各々2時間ずつ真空中でエージングしたアレイと大気中でエージングしたアレイとを直接比較した。
図21は、大気遅延試料のみが、アセトンでの現像時に露光領域と非露光領域との間に明確なコントラストを生じたことを示す。これらの観察結果から、溶解速度を変化させるには、1つ以上の大気成分[CO2(g)、H2O(g)、O2(g)]の吸収が必要であると結論付けられた。
図21のアレイは、アセトンのみで現像されたアレイであった。溶解度の変化を観察するためにより短い遅延時間(24時間超)が必要であるため、この実験ではアセトンを現像液として使用した。2-ヘプタノンは、より高いコントラストが得られるため、報告された他のすべての現像ステップに使用された。
【0095】
2つの1x1cm2の試料を1000μC/cm2の電子ビーム照射に露光した。露光後、一方の試料は、直ちにTPD装置の超高真空(UHV)チャンバーに移され、もう一方の試料は、大気中で10日間エージングされた。SEMからTPDへの移行には約15分かかった。膜上の反応生成物を最大化し、それによって、TPD-MSの脱離シグナルを最大化するために、大気中での長い遅延時間と組み合わせた任意の高い露光ドーズ量が選択された。
【0096】
図22A~22Cは、非露光膜についておよび露光され即時に移行された試料からの、それぞれn-ブチル、H2OおよびCO2脱離シグナルを示す。3つの種はすべて、1000μC/cm2での露光後に脱離が全体的に減少することを示す。
【0097】
図23A~23Cは、各々1000μC/cm2に露光された、即時試料と大気エージング試料とからのH2O(23A)、CO2(23B)およびn-ブチル(23C)の脱離曲線を示す。
図23Aは、大気中での10日間の遅延が、より高い強度のH2O脱離をもたらしたことを明らかにする。構造の水の脱離の低温シグナル(
図9A)は、膜上のH2O濃度の増加のため、75℃から90℃にシフトした。構造のH2Oの脱離についてのより高いシグナルが予想され、これらの膜は大気からH2Oを吸着することが示された(
図9A)。200~300℃のラインで表される強いH2O脱離は、エージングされた膜が非エージングの膜よりも広範囲にヒドロキシル化されたことを示した。その結果、親水性のエージング膜はより多くの水を吸収した。これは、エージング膜の75~150℃でのH2O脱離シグナルがより高いことから明らかである。
【0098】
図23Bは、同じ2つの試料についてCO2シグナルを識別する。大気中で10日間エージングされた露光試料では、エージングされていない膜と比較して、大幅に高いCO2脱離シグナルが観察された。露光曲線の下の面積は、エージングされていない曲線の約4倍である。これらのシグナルは、弱く結合したCO2吸着体(
図9B)よりもむしろ、200℃超の温度でのみ脱離した
図23Bのシグナルとして、HCO3-およびCO32-に関連する。
【0099】
最後に、
図23Cの露光曲線は、大気中での10日間の遅延により、ブチル脱離の開始が300℃から175℃にシフトし、ピークシグナルが400℃から350℃にシフトしたことを示す。同じ傾向は、m/z=43(C3H7)、56(C4H8)および58(C4H10)の他の有機フラグメントについても観察された(
図24)。
図23の曲線の下の面積は、互いに5%以内で一致しており、エージング後に残存する配位子の濃度に実質的に変化がないことを示す。これらのスペクトルは、有機物の気体放出が露光プロセスにのみ限定されていること、および残りのブチル配位子の化学環境が大気中でのエージング後に変化したことを明らかにする。n-ブチル脱離および400℃から350℃への高温H2O脱離の両方のピークシグナルのシフト(
図23A)は、高温水脱離がn-ブチル分解に関連する副産物であることを続けて立証する。
【0100】
より弱い強度が観察されたが、同じ傾向は、300μC/cm2および500μC/cm2への露光、および大気中の1日間または6日間の遅延で続いた(
図25A~25C、26A~26C)。
【0101】
図27A~27Cは、Sn12膜を大気中で加熱することによってn-ブチル基を除去し得ることを示す(27A)。次に、これらのn-ブチル欠乏膜は、電子ビーム露光膜と同様の方法でH2O(27B)およびCO2(27C)を吸収して、水酸化物、重炭酸塩および炭酸塩を生成する。
【0102】
TPD実験は、紫外線(UV)光(λ=254nm)に露光された即時および大気遅延試料で繰り返された。試料を10分間露光した。1つの試料はただちにUHVTPDチャンバーに運ばれ、もう1つの試料は、大気中で6日間エージングされた。
図28は、非露光試料からのシグナルと比較した、露光された試料からのブチル脱離を示す。データは、m/z=41ピークが完全に除去されることを示す。これは、すべてのSn-C結合を切断し、配位子生成物を進化させるのに十分な露光ドーズ量であったことを意味する。他のブチル関連の脱離質量は検出されず、膜に捕捉された分解フラグメントではなく完全な除去を保証している。
【0103】
図29は、エージングされていない試料とエージングされた試料からのH2O脱離スペクトルにおける無視できる差を示す。CO2脱離を
図30に示す。再び、大気中でエージングした後、大幅に高い脱離シグナルが観察される。m/z=44(CO2+)および28(CO+)の同一のピーク形状は、m/z=44が実際にCO2を表すというさらなる確信を提供する(
図31)。
【0104】
二酸化炭素は、スズのアルコキシドのSn-O結合および金属酸化物表面の水酸化スズのSn-O結合にスムーズに挿入されることが示される。SnxOyコアへの炭酸塩の組み込みについては数多くの報告があり、例えば、ジ-n-ブチルスズ酸化物が効率的なCO2捕捉剤であるとも述べられている。
【0105】
特定の動作理論に縛られることを望むわけではないが、
図32の化学反応は、n-ブチルスズ酸化水酸化物の異なる溶解に寄与する。電子ビームまたはUV露光によって、Sn-C結合が切断され、ブタンまたはブテンとしてのブチル配位子の脱離が促進される。試料が大気中に導入されると、露光領域のSn部位が加水分解し、Sn-OH-の濃度が増加する。時間の経過とともに、膜は、CO2を吸収し、Sn-OH結合に挿入されて重炭酸塩を形成する。次に、隣接する重炭酸塩が反応してH2Oを放出し、単純な炭酸塩を形成する。Sn炭酸塩の形成は、CO32-橋を介した縮合によって溶解を阻害し得る。Snに結合した末端炭酸塩配位子HCO3-の形成もまた、n-ブチル配位子と比較して極性が大きく異なるため、溶解度に影響を与え得る。いずれの炭酸塩種も、異なる溶解コントラストをもたらし得る。
【0106】
溶解速度の漸進的な変化(
図20)は、漸進的なCO2吸着、したがって漸進的な重炭酸塩および炭酸塩形成の直接的な結果であることが確認された。n-ブチル分解温度の低下が観察されたため、炭酸塩種の形成がSn-C結合を弱めるという仮説が立てられた(
図23C)。
【0107】
図33は、電子ビームに露光されたSn12膜において溶解コントラストを実現するためにH2OおよびCO2の両方が必要であることを実証する。3つの異なるドーズ量アレイを、大気中(ベースライン)、デシケーター(H2O欠乏環境)および湿式グローブボックス(CO2欠乏環境)で24時間遅延させて露光し、2-ヘプタノンで30秒間現像した。放射露光された膜は、CO2のない湿度の高い環境(湿式グローブボックス)でエージングした場合、溶解コントラストを示さなかった。
【0108】
O2に対応するM/z=32は、どのTPD実験でもベースラインを超えて検出されなかった。さらに、ドーズ量アレイを分離したO2(g)環境で24時間遅延させたとき、現像時にパターンは観察されなかった(n-ブチル(34A)および水(34B)の脱離を記録する、
図34A~34B)。これらのデータは、少なくとも単独では、O2(g)は放射誘発反応を完了しないことを示唆しているため、その関与は除外された。
【0109】
露光後ベーク
図35は、PEBなし、100℃PEB、140℃PEBおよび180℃PEBに3分間さらされたドーズ量アレイの厚さ測定値を示す。次に、3分間のPEBとは別に追加の遅延時間がないように、すべての試料を2-ヘプタノンで直ちに30秒間現像した。
【0110】
ベークされていないドーズ量アレイは、真空から取り出してすぐに現像すると、溶解コントラストがないことが明らかになった。100℃でベークした試料は、300μC/cm2近くのドーズ量で溶解速度が低下した。140℃および180℃の後、パッドは、それぞれ260μC/cm2および200μC/cm2の現像前厚さを示した。これらのデータは、T≧140℃でPEBを使用すると、300μC/cm2未満の露光ドーズ量で不溶性生成物を生成するのに十分なエネルギーが提供され、遅延時間が回避されることを示す。
図36は、加熱によって、より低い温度でn-ブチル基がSn12膜から脱離することを示す。
【0111】
電子ビーム露光とそれに続くTPDを繰り返し、今回は、1x1cm2の大きな露光領域にPEBステップを追加した。3つの試料を1000μC/cm2で露光し、露光直後に140℃および180℃で3分間のPEBを行ったのはそのうちの2つだけであった。次に、それらをTPDのUHVチャンバーにすばやく入れて、大気への露光を最小限に抑えた。PEB後の脱離スペクトルは、大気中で長時間遅延させた後のスペクトルとほぼ同じであることが観察された。
【0112】
図37は、3つの試料からのCO2脱離を示す。シグナルは、PEB温度の上昇とともに大幅に増加し、炭酸塩種の濃度の増加を示唆する。また、PEB温度が上昇すると、n-ブチル脱離がより低いピーク温度にシフトし、H2O脱離が増加することをも示す(
図34A、
図38A、38B)。320℃で3分間のPEBの後、ブチル配位子の80%が失われた。これらの傾向はどちらも、大気中において室温で長時間エージングさせた試料の結果と一致している。
【0113】
図35および37は、炭酸塩濃度が比較的低いため、真空中で露光した直後に現像した場合、暴露した試料は溶解差をもたらさないことを示唆する。しかしながら、より高い濃度の炭酸塩種が観察されるとき、溶解は、効率的に抑制される。PEBプロセスは、単に加水分解されたSnとのCO2(g)反応を活性化するのに十分なエネルギーを提供し、反応速度を速めると結論付けられた。
【0114】
Snに結合した-OH-が炭酸塩形成の活性部位であるかどうかを判断するために評価を行った。これを行うために、非露光試料と露光試料との両方を大気中で180℃まで加熱し、加熱の前後で脱離スペクトルを比較した。非露光の試料をベークすることは、実質的に、完全な形のSn12OH種をベークすることになる。露光した試料をベークすることは、大気への導入時に加水分解されたブチル欠乏Sn原子をベークすることを表す。
【0115】
図39および40A~40Bは、3つの種(n-ブチル、H2O、CO2)すべての脱離スペクトルが、露光した試料のみで大気中でベークすると劇的に変化したことを示す。前述のように、180℃でベークした露光膜は、CO2脱離の増加を示し、膜中のカーボネート基の増加を示唆する。非露光の試料をベークしたとき、加熱前後の脱離スペクトルはほとんど変化しなかった。そのため、Sn-OH-部位がCO2(g)を吸収して重炭酸塩および炭酸塩を形成すると結論付けられた。
【0116】
HCO3-とCO32-との両方が、大気中のエージングまたは180℃までの温度でのベーク中に膜に形成されるという仮説が立てられた(
図23B、37および41A~41C)。200~400℃の間のTPDスペクトルのCO2ピークは、その温度範囲でH2Oシグナルも観察されたため、Sn重炭酸塩の分解に起因していた。400℃を超えると、H2Oピークが検出されなかったため、CO2ピークは、おそらくSn炭酸塩の分解を表す。
【0117】
熱重量分析-質量分析を行って、バルクSn12OH粉末への部分露光を模倣した。TGA-MSをN2中においてSn12OHで実行してベースラインを確立し(
図42A)、Sn12OHを大気中でベークしてブチル配位子の一部を分解し、それによって露光を模倣した(
図42B)。バルク粉末でも同じ傾向が観察された。
【0118】
パターニング可能性-概念実証:
前述のすべての観察に基づいて、Sn12OHは、400μC/cm2、140℃でのPEBおよび2-ヘプタノンでの30秒の現像でリソグラフィパターニングされた。
図43は、横方向に60nmピッチの10nmライン、縦方向に60nmピッチの14nmラインのSEM画像である。水平ラインと垂直ラインとのライン幅の違いは、2方向のビームステップサイズの違いによるものである。
図44は、Sn2堆積、NH3(aq)浸漬によるSn12OHへの変換、電子ビーム露光、180℃での露光後ベーク、および2-ヘプタノンでの現像のプロセスによって生成されたラインアンドスペースパターンおよびドットパターンのSEM画像である。
【0119】
(結論)
Clを含まない原子的に滑らかなSn12OH膜を生成する方法が開発された。これは、その高解像度パターニング機能に寄与する化学プロセスを解明するモデルシステムを表す。TPD-MSを使用して、放射への露光、大気中でのエージング、ベーク後の膜の化学変化を分析した。クライオSTEMおよびクライオEELS測定によって、TPDの結果が確認された。スペクトルは、放射がSn-C結合を切断し、ブタンとブテンとの脱離を誘発することを示した。大気中に導入されると、露光された膜はH2O(g)とCO2(g)とを吸収して、水酸化物、重炭酸塩および炭酸塩を形成する。室温でエージングされた膜では、広範な凝縮の限定的な証拠が見つかった。ここで、OH-、HCO3-およびCO32-に対するn-ブチル配位子の交換だけで、膜の露光領域と非露光領域との間の溶解速度のコントラストを誘発するのに十分であり得る。露光後のベークは、H2O(g)とCO2(g)との吸収を加速し、エージングと同様の溶解コントラストを生成する。ベークで発生し得る追加の架橋の量については、追加の研究が必要である。
【0120】
開示された発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は本発明の好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。したがって、これらの特許請求の範囲および精神に含まれるものすべてを発明として主張する。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
R
qSnO
m(OH)
x(HCO
3)
y(CO
3)
zを備え、ここで、
Rは、(i)C
1~C
10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、
q=0.1~1、
x≦4
0<y≦4、
z≦2、
m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび
(q/2+x/2+y/2+z)≦2、
である、組成物。
【請求項2】
Rは、C
1~C
10脂肪族である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Rは、C
1~C
5アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Rは、n-ブチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
q=0.1~1、
x≦3.9、
0<y≦3.9および
z≦1.95、
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(i)0<x≦3または、
(ii)0<y≦3または、
(iii)0<z≦1.5または、
(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
R
qSnO
m(OH)
x(HCO
3)
y(CO
3)
zを備え、ここで、
Rは、(i)C
1~C
10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、
q=0.1~1、
x≦3.9、
y≦3.9、
z≦1.95、
m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび
(q/2+x/2+y/2+z)≦2
である、組成物。
【請求項8】
基板と、
前記基板の少なくとも一部の上の膜であって、前記膜は、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を備える、膜と、
を備える、構成部品。
【請求項9】
前記膜は、前記基板上にパターニングされる、請求項8に記載の構成部品。
【請求項10】
(i)前記膜は、2~1000nmの範囲内の平均厚さを有する、または
(ii)前記膜は、1.5nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有する、または
(iii)(i)および(ii)の両方である、
請求項8または請求項9に記載の構成部品。
【請求項11】
RSnX
3を大気にさらし、それによって、[RSnOH(H
2O)X
2]
2を生成することと、ここで、Xは、ハロゲンであり、Rは、(i)C
1~C
10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、
前記[RSnOH(H
2O)X
2]
2および溶媒を備える溶液を調製することと、
基板上に前記溶液を堆積させることと、
堆積された前記溶液と前記基板とを加熱して、[(RSn)
12O
14(OH)
6]X
2を備える膜を基板上に生成することと、
[(RSn)
12O
14(OH)
6]X
2を備える前記膜をアンモニア水溶液と接触させて、前記基板上に[(RSn)
12O
14(OH)
6]X
2を備える膜を生成することと、
を含む、方法。
【請求項12】
Rは、C
1~C
10脂肪族である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Rは、C
1~C
5アルキルである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
Rは、n-ブチルである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記堆積された溶液と前記基板とを加熱して前記基板上に[(RSn)
12O
14(OH)
6]X
2を備える膜を生成することは、60~100℃の範囲内の温度で1~5分間加熱することを含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
[(RSn)
12O
14(OH)
6](OH)
2を備える前記膜の少なくとも一部を、電子ビームまたは10nmから400nm未満の範囲内の波長を有する光で照射して、照射された膜を生成することをさらに含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
照射は、
10~260nmの範囲内の波長を有する光を照射すること、または、
125μC/cm
2以上のドーズ量で電子ビームを照射すること、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
照射は、125~1000μC/cm
2のドーズ量で電子ビームを照射することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
照射は、[(RSn)
12O
14(OH)
6](OH)
2を備える前記膜の照射部分のR-Sn結合の10~100%を切断する、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(i)前記照射された膜を大気に周囲温度で少なくとも3時間さらすこと、または、
(ii)前記照射された膜を大気中において100~200℃の範囲内の温度で2~5分間加熱すること、
をさらに含み、
これによって、前記照射された膜の照射部分は、大気中のCO
2を吸着してR
qSnO
m(OH)
x(HCO
3)
y(CO
3)
zを形成し、ここで、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2、である、
請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9およびz≦1.95である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(i)前記照射された膜は、大気に周囲温度で1~10日間さらされる、または、
(ii)前記照射された膜は、140~180℃の範囲内の温度で3分間加熱される、
請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
[(RSn)
12O
14(OH)
6](OH)
2を備える前記膜の一部は、照射されてパターニングされた膜を形成し、
前記パターニングされた膜を、[(RSn)
12O
14(OH)
6](OH)
2が溶解する溶媒に接触させることをさらに含み、前記膜の照射部分は、[(RSn)
12O
14(OH)
6](OH)
2を溶解するのに効果的な時間の間溶解性が低くなり、前記パターニングされた膜の照射された部分を溶解しない、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
基板と、
前記基板の少なくとも一部の上の膜と、を備え、前記膜は、[(RSn)
12O
14(OH)
6](OH)
2を備え、ここで、
(i)前記膜は、0.8nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有する、または、
(ii)前記膜は、X線光電子分光法によって検出される、検出できないレベルのCl
-を有する、または、
(iii)(i)および(ii)の両方である、
請求項11に記載の方法によって製造された構成部品。
【請求項25】
前記二乗平均表面粗さは、0.5nm以下である、請求項24に記載の膜。
【請求項26】
基板と、
前記基板の少なくとも一部の上の膜と、を備え、前記膜は、
R
qSnO
m(OH)
x(HCO
3)
y(CO
3)
zを備え、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2、
請求項20から23のいずれか一項に記載の方法によって製造された構成部品。
【請求項27】
q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9およびz≦1.95である、請求項26に記載の構成部品。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年2月27日に出願された米国仮出願第62/982,599号の先の出願日の利益を主張し、その全体を、参照によって本明細書に援用する。
(政府支援についての声明)
【0002】
この発明は、アメリカ国立科学財団によって授与されたCHE-1606982の下で米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
(技術分野)
【0003】
本開示は、スズベースのフォトレジスト組成物に関し、ならびに組成物を作製およびパターニングする方法に関する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、スズベースのフォトレジスト組成物、ならびに組成物を作製およびパターニングする方法に関する。一実施形態では、スズベースの組成物は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。別の実施形態では、スズベースの組成物は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9、z≦1.95、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。特定の実施形態では、Rは、C1~C5アルキルなどの、C1~C10脂肪族である。いくつかの例では、Rは、n-ブチルである。前述または後述のいずれかの実施形態では、x、yおよびzは、(i)0<x≦3、(ii)0<y≦3または(iii)0<z≦1.5、または(iv)(i)、(ii)および(iii)の任意の組み合わせの、値を有し得る。
【0005】
構成部品は、基板と、基板の少なくとも一部の上の膜と、を含み得、膜は、本明細書に開示されるスズベースの組成物を備える。膜は、基板上でパターニングされ得る。いくつかの実施形態では、(i)膜は、2~1000nmの範囲内の平均厚さを有し、または、(ii)膜は、1.5nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有し、または、(iii)(i)と(ii)の両方である。
【0006】
いくつかの実施形態では、スズベースのフォトレジスト組成物の製造方法は、RSnX3を大気にさらし、それによって、[RSnOH(H2O)X2]2を生成することと、ここで、Xはハロゲンであり、Rは、前述のとおり定義され、[RSnOH(H2O)X2]2および溶媒を備える溶液を調製することと、基板上に溶液を堆積させることと、堆積溶液と基板を加熱して、[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を基板上に生成することと、[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜をアンモニア水溶液と接触させて、基板上に[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を生成することと、を含む。[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を基板上に生成するために堆積溶液および基板を加熱することは、60~100℃の範囲内の温度で1~5分間加熱することを含み得る。
【0007】
前述または後述のいずれかの実施形態では、Rは、C1~C5アルキルなどの、C1~C10脂肪族であり得る。いくつかの実施において、Rは、n-ブチルである。前述または後述のいずれかの実施形態では、堆積溶液および基板を加熱して基板上に[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を生成することは、60~100℃の範囲内の温度で1~5分間加熱することを含み得る。
【0008】
前述または後述のいずれかの実施形態では、方法は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える膜の少なくとも一部を、電子ビームまたは10nmから400nm未満までの範囲内の波長を有する光で照射し、照射された膜を生成する。いくつかの実施形態では、照射は、10~260nmの範囲内の波長を有する光で照射すること、または125μC/cm2以上のドーズ量で電子ビームを照射することを含む。いくつかの実施形態では、照射は、125~1000μC/cm2のドーズ量で電子ビームを照射することを含む。前述の実施形態のいずれにおいても、照射は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える膜の照射部分におけるR-Sn結合の10~100%を切断し得る。
【0009】
前述または後述のいずれかの実施形態では、方法は、照射後処理をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、(i)照射された膜を大気に周囲温度で少なくとも3時間さらすこと、または、(ii)照射された膜を大気中に100~200℃の範囲内の温度で2~5分間加熱すること、をさらに含み、これによって、照射された膜の照射部分は、大気中のCO2を吸着し、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを形成し、ここで、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2、である。一実施形態では、q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9、z≦1.95、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2、である。
【0010】
いくつかの実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える膜の一部は、照射されてパターニングされた膜を形成し、方法は、パターニングされた膜を、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2が溶解する溶媒に接触させることをさらに含み、膜の照射部分は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を溶解するのに効果的な時間の間溶解性が低くなり、パターニングされた膜の照射された部分を溶解しない。
【0011】
基板と、基板の少なくとも一部の上の膜と、を備える構成部品、本明細書に開示される方法によって作製される膜もまた、本開示に包含される。一実施形態では、膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える。いくつかの実施形態では、(i)膜は、0.5nm以下などの、0.8nm以下の二乗平均表面粗さを有するか、または(ii)膜は、X線光電子分光法によって検出される検出不可能なレベルのCl-を有するか、または(iii)(i)と(ii)との両方である。独立した実施形態では、膜は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。別の独立した実施形態では、膜は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9、z≦1.95、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。
【0012】
本発明の前述および他の対象、特徴および利点は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(C
4H
9Sn)
2(OH)
2C
l4(H
2O)
2(Sn
2)の球棒表示であり、
1Hおよび
119SnNMRスペクトルは、構造が2-ヘプタノンを保持することを示す図である。
【
図2A】[(n-C
4H
9Sn)
12O
14(OH)
6](OH)
2(Sn
12OH)の球棒表示である。
【
図2B】Sn
2がSn
12OHに変換されたことを示す小角X線散乱データである。
【
図3】塩基浸漬前後のSn
2膜のXPSスペクトルを示す図である。
【
図4A】Sn
2前駆体からのSn
12の堆積が、Sn
12前駆体からの直接堆積よりもはるかに滑らかな膜を生成することを示す原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【
図4B】Sn
2前駆体からのSn
12の堆積が、Sn
12前駆体からの直接堆積よりもはるかに滑らかな膜を生成することを示す原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【
図5A】Sn
2膜の昇温脱離/質量分析(TPD-MS)スペクトルを示す図である。
【
図5B】Sn
12OH膜の昇温脱離/質量分析(TPD-MS)スペクトルを示す図である。
【
図6】
図4Aおよび
図4Bの膜のESI-MSエレクトロスプレーイオン化質量分析スペクトルを示す図である。
【
図7】塩基浸漬後に選択された温度でベークされたSn
2膜の表面粗さを示す図である。
【
図8】塗布後ベークおよびNH
3(aq)処理直後のSn
2膜のTPD-MSスペクトルを示す図である。
【
図9A】膜の経過時間に対して低温でのH
2O(8A)の脱離を追跡するTPD-MSスペクトルである。
【
図9B】膜の経過時間に対してCO
2(8B)の脱離を追跡するTPD-MSスペクトルである。
【
図10A】低温でのH
2O(9A)の脱離ピークが140℃、3分間のベークで大部分が除去されていることを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図10B】CO
2(9B)の脱離ピークが140℃、3分間のベークで大部分が除去されていることを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図11】1-ブテンの主なフラグメントを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図12】ブタンの主なフラグメントを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図13】n-ブチル配位子の分解およびそれに続く分解生成物の電子衝撃イオン化の説明図である。
【
図14】0、300および1000μC/cm
2に露光した試料からのn-ブチル脱離に関連するTPD-MSスペクトルシグナルである。
【
図15】0、300および1000μC/cm
2に露光した試料からのn-ブチル脱離に関連するTPD-MSスペクトルシグナルについての損失曲線を示すグラフである。
【
図16】照射ドーズ量の関数として膜厚を示すグラフである。
【
図17】500μC/cm
2の電子ビームドーズ量を使用して100nmピッチに描画された25nmラインの走査型電子顕微鏡画像である。
【
図18】露光した未現像の試料の逆コントラスト断面のクライオSTEM画像である。
【
図19】
図17の試料の10nmの解像度でのクライオEELSスペクトルである。
【
図20】0.25、3、24および144時間経過したアレイの照射ドーズ量の関数としての膜厚を示すグラフである。
【
図21】真空(左)と大気(右)において、2時間遅延させた後、アセトンで30秒間現像したドーズ量アレイの画像である。
【
図22A】大気中において遅延時間なしでn-ブチルの脱離を追跡する非露光および1000μC/cm
2露光試料のTPD-MSスペクトルである。
【
図22B】大気中において遅延時間なしで水の脱離を追跡する非露光および1000μC/cm
2露光試料のTPD-MSスペクトルである。
【
図22C】大気中において遅延時間なしで二酸化炭素の脱離を追跡する非露光および1000μC/cm
2露光試料のTPD-MSスペクトルである。
【
図23A】大気中において10日間の遅延の前後に1000μC/cm
2に露光された膜から脱離した、H
2OのTPD-MSスペクトルである。
【
図23B】大気中において10日間の遅延の前後に1000μC/cm
2に露光された膜から脱離した、CO
2のTPD-MSスペクトルである。
【
図23C】大気中において10日間の遅延の前後に1000μC/cm
2に露光された膜から脱離した、n-ブチル(23C)のTPD-MSスペクトルである。
【
図24】大気中で10日間遅延させた後に1000μC/cm
2に露光した後のブチルフラグメントのTPD-MSスペクトルである。
【
図25A】大気中において1日間の遅延の後に300μC/cm
2に露光された膜から脱離した、n-ブチルのTPD-MSスペクトルである。
【
図25B】大気中において1日間の遅延の後に300μC/cm
2に露光された膜から脱離した、水のTPD-MSスペクトルである。
【
図25C】大気中において1日間の遅延の後に300μC/cm
2に露光された膜から脱離した、二酸化炭素のTPD-MSスペクトルである。
【
図26A】大気中において6日間の遅延の後に500μC/cm
2に露光された膜から脱離した、n-ブチルのTPD-MSスペクトルである。
【
図26B】大気中において6日間の遅延の後に500μC/cm
2に露光された膜から脱離した、水のTPD-MSスペクトルである。
【
図26C】大気中において6日間の遅延の後に500μC/cm
2に露光された膜から脱離した、二酸化炭素のTPD-MSスペクトルである。
【
図27A】n-ブチル基がSn
12膜を大気中で加熱することにより除去され得ることを示す図である。
【
図27B】n-ブチル欠乏膜がH
2Oを吸収することを示す図である。
【
図27C】n-ブチル欠乏膜がCO
2を吸収することを示す図である。
【
図28】非露光膜、10分間UV光に露光した膜、および10分間UV光に露光し大気中で6日間遅延させた膜のm/z=41(n-ブチル)のTPD-MSスペクトルである。
【
図29】UV光に10分間露光された膜、およびUV光に10分間露光され大気中で6日間遅延された膜のm/z=18(H
2O)のTPD-MSスペクトルである。
【
図30】UV光に10分間露光された膜およびUV光に10分間露光され大気中で6日間遅延された膜のm/z=44(CO
2)のTPD-MSスペクトルである。
【
図31】CO
2フラグメンテーションと未検出のブチルシグナルを示す、UV光に10分間露光され大気中で6日間遅延された膜のTPD-MSスペクトルである。
【
図32】Sn
12OH膜の露光領域と非露光領域との間で溶解変化を誘発するための化学反応を示す図である。
【
図33】電子ビームに露光されたSn
12膜で溶解コントラストを実現するには、H
2OとCO
2との両方が必要であることを示すグラフである。
【
図34A】1000μC/cm
2での照射後、ならびに140℃および180℃で3分間の露光後ベーク(PEB)後の膜からのn-ブチルの脱離のTPD-MSスペクトルである。
【
図34B】1000μC/cm
2での照射後、ならびに140℃および180℃で3分間の露光後ベーク(PEB)後の膜からの水の脱離のTPD-MSスペクトルである。
【
図35】PEBなし、100℃PEB、140℃PEBおよび180℃PEBに3分間さらされたドーズ量アレイの厚さ測定を示す図である。
【
図36】加熱が低温でのSn
12膜からのn-ブチル基の脱離を誘発することを示すTPD-MSスペクトルである。
【
図37】1000μC/cm
2ならびに140℃および180℃での3分間のPEBに露光した後の、
図32の3つのドーズ量アレイからのCO
2脱離を示すTPD-MSスペクトル。
【
図38A】即時または6日間の遅延の後での320℃での3分間のPEBに続くn-ブチルの脱離を示すTPD-MSスペクトルである。
【
図38B】即時または6日間の遅延の後での320℃での3分間のPEBに続くCO
2の脱離を示すTPD-MSスペクトルである。
【
図39】非露光試料とベークされていない露光試料、または140℃もしくは180℃でベークした試料とのTPD-MSスペクトルの表である。
【
図40A】加水分解されたSnがCO
2反応部位であることを示す、非露光試料のTPD-MSスペクトルである。
【
図40B】加水分解されたSnがCO
2反応部位であることを示す、PEB後の露光された試料のTPD-MSスペクトルである。
【
図41A】180℃でのPEB後のn-ブチルの脱離のTPD-MSスペクトルである。
【
図41B】180℃でのPEB後の水の脱離のTPD-MSスペクトルである。
【
図41C】180℃でのPEB後の二酸化炭素の脱離のTPD-MSスペクトルである。
【
図42A】N
2中のSn
12OH(42A)のTGA後のTPD-MSスペクトルである。
【
図42B】大気中でベークしたSn
12OH(42B)のTGA後のTPD-MSスペクトルである。
【
図43】Sn
2堆積、Sn
12OHへの変換、電子ビーム露光、140℃での露光後ベーク、および2-ヘプタノン中での現像によって生成される、60nmピッチで10nm(水平)および14nm(垂直)ラインのSEM画像である。
【
図44】Sn
2堆積、NH
3(aq)浸漬によるSn
12OHへの変換、電子ビーム露光、180℃での露光後ベーク、および2-ヘプタノンでの現像によって生成されたラインアンドスペースパターンおよびドットパターンのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
スズベースのフォトレジスト組成物の実施形態を開示する。組成物を作製およびパターニングする方法をも開示する。
【0015】
(I.定義および略語)
以下の用語および略語の説明は、本開示をよりよく説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。本明細書で使用される場合、「備える」は「含む」を意味し、単数形「a」または「an」または「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の参照を含む。「または」という用語は、文脈上明確に別段の指示がない限り、記載された代替要素の単一要素または2つ以上の要素の組み合わせを指す。
【0016】
別段の説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の実施または試験において、本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を使用し得るが、適切な方法および材料を下記に記載する。材料、方法、および例は、単なる説明のためのものであり、限定することを意図したものではない。本開示の他の特徴は、下記の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0017】
数値範囲の開示は、別段の記載がない限り、端点を含む範囲内の各離散点を指すものとして理解されるべきである。別段の指示がない限り、明細書または特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量、パーセンテージ、温度、時間などを表すすべての数字は、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、他に暗示的または明示的に示されない限り、または文脈が当業者によってより決定的な構造を有すると適切に理解されない限り、示される数値パラメータは、求められる所望の特性および/または当業者に知られている標準的な試験条件/方法の下での検出限界に依存し得る近似値である。議論された先行技術から実施形態を直接かつ明示的に区別する場合、「約」という言葉が引用されない限り、実施形態の数値は近似値ではない。
【0018】
本明細書に記載された様々な成分、パラメータ、動作条件などには代替案があるが、それはそれらの代替案が必ずしも同等でありおよび/または同等に良好に機能することを意味しない。また、別段の記載がない限り、代替案が好ましい順序で並んでいることを意味するわけではない。化学における一般的な用語の定義は、John Wiley& ons,Inc.によって出版された、Richard J.Lewis,Sr.(ed.),Hawley’s Condensed Chemical Dictionary,2016(ISBN 978-1-118-13515-0)に見られ得る。現在開示されている化合物はまた、化合物中に存在する原子のすべての同位体を含み、重水素、トリチウム、14Cなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0019】
本開示の様々な実施形態の検討を容易にするために、特定の用語についての以下の説明を提供する。
【0020】
吸着:イオンおよび分子が別の分子の表面に物理的に付着または結合すること。吸着は、吸着物と表面との間の結合の性質および強度に応じて、化学吸着または物理吸着として特徴付けられ得る。
【0021】
脂肪族:アルカン、アルケン、アルキンを含み、それらの環状物を含み、さらに直鎖および分枝鎖配列、およびすべての立体配置および構造異性体を含む、実質的に炭化水素ベースの化合物、またはそのラジカル(例えば、ヘキサンラジカルの場合はC6H13)。
【0022】
アルキル:飽和炭素鎖を有する炭化水素基。鎖は、環状、分枝状または非分枝状であり得る。限定されないが、アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルが含まれる。アルケニルおよびアルキニルという用語は、それぞれ1つ以上の二重結合または三重結合を含有する炭素鎖を有する炭化水素基を指す。
【0023】
芳香族またはアリール:単結合と二重結合とを交互に有する不飽和環状炭化水素。ベンゼンは、3つの二重結合を含有する6炭素環であり、典型的な芳香族化合物である。芳香環部分にヘテロ原子を含有する場合、その基は、ヘテロアリールであり、アリールではない。アリール基は、単環式、二環式、三環式または四環式である。
【0024】
アリール脂肪族:芳香族部分および脂肪族部分を備え、分子の残りへの結合点が脂肪族部分を介する基。
【0025】
コーティング:基板の表面にある材料の層。「膜」という言葉と同義。
【0026】
膜:基板の表面にある材料の層。「コーティング」と同義。
【0027】
ハロゲンおよびハロゲン化物:本明細書で使用される用語「ハロゲン(ハロ)」および「ハロゲン化物」は、Cl、BrまたはIを指す。
【0028】
ヘテロ脂肪族:鎖内に少なくとも1つの炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子とを有する、すなわち、1つ以上の炭素原子が、少なくとも1つの孤立電子対を有する原子(通常は窒素、酸素、リン、シリコン、または硫黄)に置き換えられる、脂肪族化合物または基。ヘテロ脂肪族化合物または基は、置換または非置換、分枝または非分枝、環式または非環式であり得、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素脂環式」、または「複素環式」基を含み得る。
【0029】
ヘテロアリール:少なくとも1つのヘテロ原子を有する、すなわち、環内の1つ以上の炭素原子が、少なくとも1つの孤立電子対を有する原子(通常は窒素、酸素、リン、シリコン、または硫黄)に置き換えられる、脂肪族化合物または基。
【0030】
ヘテロアリール脂肪族:芳香族部分および脂肪族部分を備える基であり、分子の残部への結合点は、脂肪族部分を介し、この基は少なくとも1個のヘテロ原子を含む。特に明記しない限り、ヘテロ原子は、芳香族部分または脂肪族部分にあり得る。
【0031】
ヒドロカルビル:炭化水素に由来する一価のラジカル。ヒドロカルビルラジカルは、直鎖状、分枝状または環状であり得、脂肪族、アリールまたはアリール脂肪族であり得る。
【0032】
可溶性:溶媒中に分子的またはイオン的に分散して、均一な溶液を形成することが可能であること。
【0033】
溶液:2つ以上の物質からなる均一な混合物。溶質(微量成分)は、溶媒(主成分)に溶解する。
【0034】
Sn2:(C4H9Sn)2(OH)2Cl4(H2O)2
【0035】
Sn12OH(またはSn12):(n-C4H9Sn)12O14(OH)8
【0036】
(II.フォトレジスト組成物)
本開示は、フォトレジスト組成物およびフォトレジスト組成物の製造方法の実施形態に関する。一実施形態では、フォトレジスト組成物は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールまたはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦4、y≦4、z≦2、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。別の実施形態では、フォトレジスト組成物は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここで、Rは、(i)C1~C10ヒドロカルビルまたは(ii)1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロ脂肪族、ヘテロアリールまたはヘテロアリール-脂肪族であり、q=0.1~1、x≦3.9、y≦3.9、z≦1.95、m=2-q/2-x/2-y/2-zおよび(q/2+x/2+y/2+z)≦2である。
【0037】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C10脂肪族、アリールまたはアリール-脂肪族であり、脂肪族部分は、Sn原子への結合点である。特定の実施形態では、Rは、C1~C5脂肪族などの、C1~C10脂肪族である。脂肪族鎖は、直鎖状、分枝状または環状であり得る。いくつかの例では、Rは、C1~C5アルキルである。R基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル(2-メチルプロピル)、sec-ブチル(ブタン-2-イル)、tert-ブチル、n-ペンチル、1,1-メチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチルおよび1-エチルプロピルを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Rは、ヘテロ脂肪族、ヘテロアリールまたはヘテロアリール-脂肪族(ここで、ヘテロ原子は、アリールおよび/または脂肪族部分中にあり得、脂肪族部分は、Sn原子への結合点である)であり、1~10個の炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含む。適切なヘテロ原子は、N、O、Sおよびそれらの組み合わせを含み得る。ヘテロ脂肪族鎖は、直鎖状、分枝状または環状であり得る。特定の例において、Rはn-ブチルである。
【0038】
前述または後述のいずれかの実施形態では、q=0.1~1である。いくつかの実施形態では、q=0.3~1または0.5~1である。前述または後述のいずれかの実施形態では、x≦4である。一実施形態では、x≦3.9である。いくつかの実施形態では、0<x≦4、0<x≦3.9または0<x≦3である。前述または後述のいずれかの実施形態では、y≦4である。一実施形態では、y≦3.9である。いくつかの実施形態では、0<y≦4、0<y≦3.9または0<y≦3である。前述または後述のいずれかの実施形態では、z≦2である。一実施形態では、z≦1.95である。いくつかの実施形態では、0<z≦2、0<z≦1.95または0<z≦1.5である。
【0039】
前述または後述のいずれかの実施形態では、フォトレジスト組成物は、膜または層として基板上に堆積され得る。いくつかの実施形態では、膜は、2nm~1000nmの範囲内の平均厚さおよび/または1.5nm以下の二乗平均平方根(RMS)表面粗さを有する。特定の実施形態では、平均厚さは、2~750nmの範囲内、例えば、2~500nm、2~250nm、5~250nm、10~100nmまたは10~50nmなどである。RMS表面粗さは、1.5nm以下、1.5nm未満、1.2nm以下、1.2nm未満、1nm以下または1nm未満であり得、例えば、0.2~1.5nm、0.3~1.5nm、0.3~1.2nm、0.3~1nmまたは0.3~0.75nmの範囲内などである。
【0040】
(III.フォトレジスト組成物を作成およびパターニングする方法)
フォトレジスト組成物を備える滑らかで緻密な膜が望ましい。いくつかの実施形態では、基板上にOH安定化ブチルスズ12量体をその場形成し、続いて本明細書に開示されるフォトレジスト組成物を形成することによって、優れた膜が調製される。
【0041】
RzSnO(2-(x/2)-(x/2)(OH)x、ここで、0<(x+z)<4、で表される一般的組成を有する有機スズコーティングは、フォトレジストとして一般的に知られる放射パターン形成可能な材料として良好に機能することが示される。電子ビーム、紫外線(UV)放射および極端紫外線(EUV)放射に対する感度を有するフォトレジストとしての有機スズ材料の使用は、Meyersによる「Organometallic Solution Based High Resolution Patterning Compositions,」と題する米国特許第号9,310,684明細書およびMeyersによる「Organotin Oxide Hydroxide Patterning Compositions, Precursors, and Patterning,」と題する米国特許第号10,228,618明細書に記載され、それらの両方を、参照によって本明細書に援用する。
【0042】
本開示は、式[RSnOH(H2O)X2]2によって表される有機スズ前駆体の調製を記載する。これは、RSnX3と水との反応によって調製され得、ここで、Xは、ハロゲン化物であり、Rは、前述の定義のとおりである。一実施形態では、RSnX3は、周囲大気にさらされ、それによって[RSnOH(H2O)X2]2が生成される。[RSnOH(H2O)X2]2は、RSnX3が効果的な期間、例えば2~4日間、大気にさらされるとき、自然に形成される。いくつかの実施形態では、Xは、Cl-である。特定の例では、Rは、n-ブチルである。
【0043】
概して、有機スズ酸化水酸化物コーティングは、加水分解に敏感な有機スズ前駆体組成物を水と反応させることによって調製され得る。前述の参考文献には、スピンコーティングおよび蒸着技術によって調製された有機スズ酸化水酸化物コーティングが記載される。パターニング可能な有機スズ酸化水酸化物コーティングは、1つ以上のRnSnL4-n(n=1,2)組成物の加水分解物を適切な溶媒に溶解し、続いてスピンコーティングを介して堆積することによって形成され得る。さらに、RnSnL4-n組成物の蒸気圧が比較的高いため、加水分解可能な気相前駆体を周囲雰囲気から密閉した反応器に導入して蒸着プロセスの一部として加水分解する蒸着法によっても、有機スズ酸化水酸化物コーティングを調製し得る。例えば、1つ以上のRnSnL4-n組成物を、H2O、H2O2、O3、O2、CH3OHなどの1つ以上の低分子気相試薬と反応させ、所望の基板上に有機スズ酸化水酸化組成物を形成し得る。蒸着技術には、ALD(原子層堆積)、PVD(物理気相成長)、CVD(化学気相成長)等が含まれる。
【0044】
有機スズコーティングの溶液堆積が所望される場合、[RSnOH(H2O)X2]2と溶媒とを備える溶液を調製し得る。概して、[RSnOH(H2O)X2]2組成物が溶解する、任意の溶媒が使用され得る。溶媒の選択は、その毒性、可燃性、揮発性、粘度および他の材料との潜在的な化学的相互作用など、他のパラメータによってさらに影響を受け得る。適切な溶媒は、例えば、4-メチル-2-ペンタノール、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)などのアルコール類、2-ヘプタノンなどのケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル類、および/またはこれらの混合物などを含む。
【0045】
溶液中の種の濃度は、Snモル基準で評価され得、概して、溶液の所望の物理的性質および所望のコーティングに対して選択され得る。例えば、濃度の高い溶液は、概して、より厚い膜となり、濃度の低い溶液は、概して、より薄い膜となる。超高解像度パターニングなどの一部の用途では、より薄い膜が望ましい場合があり得る。いくつかの実施形態では、Sn濃度は、0.005M~1.4M、さらなる実施形態では、0.02M~1.2M、追加の実施形態では、0.1M~1.0Mであり得る。明示的な範囲内のSn濃度のさらなる範囲が検討され、当業者によって認識されるであろう。
【0046】
蒸着が必要な場合、[RSnOH(H2O)X2]2の形成は、例えば周囲環境から隔離されたチャンバー内でのRSnX3とH2Oとの気相反応によって行われ得る。有機スズ前駆体RSnX3は、気化チャンバーへの蒸気、エアロゾルおよび/または直接液体注入の流を使用するなど、当業者にとって既知である手段によってチャンバーに導入され得る。次に、有機スズ前駆体の導入と同時または導入後に、水を別の入口からチャンバーに導入して、加水分解を促進し、基板の表面に[RSnOH(H2O)X2]2コーティングを形成し得る。いくつかの実施形態では、反応は、周囲に対して上昇した温度で行われ得る。いくつかの実施形態では、気相反応は、所望の膜厚が達成されるまで複数回実施され得る。
【0047】
いずれの堆積方法においても、基板は、対象となる任意の材料であり得る。例示的な基板は、シリコン、シリカ、セラミック材料、ポリマーおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、基板は、溶液が堆積される平坦な表面または実質的に平坦な表面を備える。特定の実施形態では、基板は、SiO2である。溶液堆積は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングなどを含むがこれらに限定されない任意の適切な方法によって行われ得る。堆積溶液および基板は、基板上に[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を生成させるために加熱される。温度および時間は、溶媒を効果的に蒸発させ、[RSnOH(H2O)X2]2を12量体の[(RSn)12O14(OH)6]X2に変換するように選択される。いくつかの実施形態では、基板および堆積溶液は、60~100℃の温度で1~5分間、例えば80℃の温度で3分の時間、塗布後ベークに供される。特定の実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6]X2膜は、0.5nm未満または0.4nm未満のRMS表面粗さを有する。いくつかの例では、RMS表面粗さは、約0.3nmである。RMS表面粗さは、原子間力顕微鏡法などの当技術分野で知られている方法によって決定され得る。
【0048】
ハロゲン化物は、制御されていない加水分解および/または化学的および構造的に不均一な膜を可能にし得るため、ハロゲン化物は、スズベースのフォトレジストの望ましくない成分である。したがって、堆積膜からハロゲン化物を除去することは有益である。前述または後述のいずれかの実施形態では、ハロゲン化物は、[(RSn)12O14(OH)6]X2を備える膜を塩基性水溶液と接触させることによって、基板上に[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える膜を生成する。ハロゲン化物含有膜の非ハロゲン化物含有膜への変換は、他の方法でも達成され得るが、他の金属による材料の汚染を回避することが望ましい場合があり得るため、塩基性水溶液は、概して、金属を含有しないことが望ましい。適切な塩基性水溶液は、例えば、第四級アンモニウム化合物(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなど)、アルキルアミン化合物(例えば、ジエチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミンなど)およびアンモニアを含み得る。いくつかの実施形態では、塩基性水溶液は、アンモニア水溶液である。ハロゲン化物は、希アンモニア水溶液で短時間処理することによって、膜から実質的に除去され得る。アンモニアは、例えば5μM~50mM、5μM~10mM、5μM~1mM、5μM~100μM、5μM~50μM、5μM~10μMなど、5μMから100mMの濃度を有し得る。短時間とは、例えば30秒~15分、1分~10分または1分~5分など、30秒~30分であり得る。いくつかの例では、ハロゲン化物は、塩化物であり、膜を堆積および塗布後ベークの後に10μMのNH3 (aq)に3分間浸漬することによって除去された。あるいは、NH3(aq)は、膜上にパドリングされ得、その後、スピンコーター上で基板を回転させて乾燥させることによって水溶液を除去し得る。アルカリ処理後、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜を水ですすぎ、乾燥し得る。乾燥は、すすがれた膜全体に窒素を流すことによっておよび/または加熱することによって行われ得る。ハロゲン化物を除去すると、膜の粗さがわずかに増加し得る。したがって、いくつかの実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜は、1.5nm未満、1nm以下または0.8nm以下のRMS表面粗さを有し、例えば、RMS表面粗さは、0.3nm~1nm、0.3nm~0.8nmまたは0.3nm~0.5nmの範囲内である。
【0049】
いくつかの実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備える原子的に平滑な膜(例えば、RMS表面粗さが0.5nm未満)は、基板上に形成され、ここで、Rは、上記で定義された通りである。[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜は、Xがハロゲン化物であるRSnX3を備える前駆体から形成され得る。いくつかの例では、出発物質は、n-C4H9SnCl3であり、反応は次のとおりである。
n-C4H9SnCl3(l)+大気→[n-C4H9SnOH(H2O)Cl2]2(s)
12[n-C4H9SnOH(H2O)Cl2]2(s)→[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2+22HCl(g)+H2O(s/g)
[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2(s)+2NH4OH(aq)→[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6](OH)2(s)+2NH4Cl(aq)
【0050】
前述または後述のいずれかの実施形態では、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜は、電子ビームまたは10nmから400nm未満の範囲内の、例えば、10nm~350nm、10nm~300nm、50nm~300nm、100nm~300nm、150nm~300nmまたは200nm~275nmなどの、波長を有する光を照射することによってパターニングされ得、照射された膜を生成する、フォトレジスト膜である。いくつかの実施形態では、照射は、13.5nmの波長を有するEUV光などの10~260nmの範囲内の波長を有する光または125μC/cm2以上のドーズ量で電子ビームを照射することを含む。特定の実施形態では、照射は、200~260nmまたは250~260nmの範囲内の波長を有する光で照射することを含む。他の実施形態では、照射は、125μC/cm2以上、200μC/cm2以上、300μC/cm2以上または500μC/cm2以上のドーズ量で電子ビームを照射することを含む。例えば、ドーズ量は、1000μC/cm2、200~1000μC/cm2、300~1000μC/cm2または500~1000μC/cm2などの範囲内である。照射は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜中のR-Sn結合(より具体的には、C-Sn結合)の少なくとも一部を切断する。いくつかの実施形態では、例えばR-Sn結合の0~100%、1~100%、1~90%、1~70%または1~50%など、R-Sn結合の最大5%、最大10%、最大25%、最大50%、最大70%、最大90%または最大100%を切断するのに十分な照射が適用される。他の実施形態では、R-Sn結合の5~100%、5~90%、5~70%、5~50%、10~100%、10~90%、10~70%または10~50%を切断するのに十分な照射が適用される。切断は、膜からのR基の脱離をもたらす。
【0051】
前述または後述のいずれかの実施形態では、フォトレジスト膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜の選択された部分のみを照射することによってパターニングされ得る。いくつかの実施形態では、選択された部分は、電子ビームで「描画する」ことによって、または膜の特定の部分をマスキングし、マスキングされていない部分を照射することによって、照射される。
【0052】
前述の実施形態のいずれにおいても、この方法は、膜の照射後処理を含み得る。いくつかの実施形態では、照射後処理は、照射された膜を周囲温度(例えば、20~25℃)で少なくとも3時間大気に曝露すること、または照射された膜を100~200℃の範囲内の温度で大気中において2~5分間加熱することを含む。特定の実施形態では、照射後処理は、照射された膜を140~180℃の範囲内の温度で2~4分間、例えば140~180℃などで3分間加熱することを含む。他の実施形態では、照射後処理は、照射された膜を、少なくとも3時間、少なくとも5時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも7日間または少なくとも10日間などの長時間、周囲温度の大気に単にさらすことからなる。
【0053】
照射後の処理で膜を大気にさらすと、膜の照射領域が加水分解し、膜中のSn-OH結合の濃度が高くなる。時間が経つにつれて、膜は、大気中のCO2を吸着する。特定の操作理論に縛られることを望むものではないが、吸着されたCO2は、Sn-OH結合に挿入されてSn-HCO3結合を形成する。次に、隣接するHCO3
-基とOH-基とは、反応してH2Oを放出し得、それによって単純な炭酸塩(例えば、隣接する2つのSn原子間で共有されるカーボネート基)が形成される。いくつかの実施形態では、得られる膜は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zからなる一般式を有し、ここでR、m、q、x、yおよびzは、先に定義した通りである。
【0054】
膜中の重炭酸基と炭酸塩基の存在によって、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜とR-Sn結合の10~100%が切断された[(RSn)12O14(OH)6](OH)2膜との異なる溶解コントラストがもたらされる。得られたCO3
2-グループは、Sn原子に隣接する橋を形成し、架橋によって溶解性を阻害する。特に、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zは、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2よりも特定の溶媒において溶解性が低い。例えば、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2は、特定のケトン(例えば、2-ヘプタノン、アセトン)に容易に溶解するが、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zは、不溶性または溶解性が低い。したがって、いくつかの実施形態では、パターニングされた膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2が溶解する溶媒に接触し、膜の照射部分は、パターニングされた膜の照射部分を溶解することなく、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を溶解するのに効果的な時間の間、溶解されにくい。いくつかの実施形態では、フォトレジスト層の非照射部分は、パターニングされたフォトレジスト層を2-ヘプタノンと数秒~数分間、例えば15秒~2分、15秒~1分間または15~45秒、接触させることによって除去される。特定の例では、パターニングされたフォトレジスト層を2-ヘプタノンと30秒間接触させた。
【0055】
(IV.構成部品)
構成部品は、開示された方法の実施形態によって作られる。いくつかの実施形態では、構成部品は、基板と、基板の少なくとも一部の上の膜とを備え、ここで、膜は、[(RSn)12O14(OH)6](OH)2を備え、Rは、上記のように定義される。膜は、(i)0.8nm以下の二乗平均表面粗さ、(ii)X線光電子分光法によって検出される検出不可能なレベルのCl-、または(iii)(i)および(ii)の両方を有し得る。
【0056】
前述または後述のいずれかの実施形態では、膜は、本明細書に開示されるようにパターニングされ得、基板と基板の少なくとも一部の上の膜とを備えるパターニングされた構成部品を提供し、膜は、RqSnOm(OH)x(HCO3)y(CO3)zを備え、ここでq、x、y、zおよびmは、前述で定義したとおりである。
【0057】
前述の実施形態のいずれにおいても、基板は、対象となる任意の材料であり得る。例示的な基板には、シリコン、シリカ、セラミック材料、ポリマーおよびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、基板は、膜が配置される少なくとも一部の上に平坦なまたは実質的に平坦な表面を備える。特定の実施形態では、基板は、SiO2である。
【実施例】
【0058】
(V.実施例)
材料
Luijtenによって以前に説明されたように(Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas 1966,85(9):873-878)、(C4H9Sn)2(OH)2Cl4(H2O)2(Sn2)結晶を、n-C4H9SnCl3(l)(Alfa Aesar、96%)をドラフトチャンバー内の結晶皿に置き、Sn2が結晶化するまで3日間かけて調製した。(n-C4H9Sn)12O14(OH)8(Sn12OH)結晶を、Eychenne-Baronらによって以前に記載された(.J Organometallic Chem 1998,567(1):137-142)ように調製した。
【0059】
薄膜コーティング
Sn2およびSn12の溶液堆積前駆体は、2-ヘプタノン(Alfa Aesar、99%)1mLあたり0.14gおよび0.12gをそれぞれ溶解し、0.45μmPTFEシリンジフィルターで濾過することによって調製した。p-Si(Silicon Valley Microelectronics,Inc)基板上に熱成長させた100nmのSiO2を、アセトン、イソプロピルアルコールおよび18.2MQ-cmのH2Oで洗浄し、800℃で15分間焼鈍した。前駆体溶液を、2.54x2.54cm2で、2000RPMで30秒間回転させた。試料を80℃に予熱したホットプレートにただちに移し、3分間塗布後ベークした。
【0060】
Sn2から調製した薄膜を、アルカリ処理に供した。これらの膜を、堆積直後および80℃のPABの直後に10μMのNH3(aq)に3分間完全に浸漬させた。アルカリ処理後、膜を18.2MΩ・cmのH2OですすぎN2ガンで乾燥させた。
【0061】
露光およびコントラスト曲線
Sn2から調製したSn12OH膜をパターニング実験に使用した。電子ビーム露光を、Quanta 3D Dual Beam SEMおよびNPGSソフトウェアで30kV電子ビームを使用して実行した。ドーズ量を直線的に増加させて正方形のアレイを描画することによって、コントラスト曲線を作成した。文中に指定されているように、大気中での露光後のエージングまたはベークステップを適用した。数滴の2-ヘプタノンで30秒間覆うことによってドーズ量アレイを現像し、N2ガンで試料を乾燥させた。焦点プローブを取り付けたWoolam MX-2000エリプソメーターを使用して、各正方形で厚さの測定値を収集した。厚さの値を、ドーズ量またはドーズ量対数の関数としてプロットした。UV光への露光を、λ=254および185nmでの2つの波長を放出するDigital UV Ozone System(Novascan)を使用して行った。
【0062】
XPS
X線光電子分光法(XPS)の収集には、Physical Electronics(PHI)5600 MultiTechnique UHVシステムを使用した。メインチャンバーのベース圧力は2x10-10torr未満であった。単色化されたAl Kα放射(hν=1486.6eV、300W、15kV)を使用して、Ag 3d、Cl 2p、Sn 3dおよびSn MNNオージェスペクトルを取得した。測定には、23.5eVの電子アナライザーパスエネルギーおよび45度の放射角度を使用した。各スペクトルのピークフィットは、ガウス・ローレンツ線形状およびシャーリー・バックグラウンドを使用して、Casa XPSを使用して決定した(Frischら、Gaussian 16,Revision A.03,2016)。原子濃度を、X線源と電子検出器との間において90度で使用されるXPSシステムに固有の公開された感度係数を使用して計算した(Perdewら、Phys.Rev.Lett.1997,78(7):1396)。
【0063】
AFM
Bruker Veeco Innova SPCをタッピングモードで使用してRMS粗さ値を測定するために、原子間力顕微鏡法を実行した。Nanoscope Analysis1.5を、バックグラウンド減算およびノイズの平準化に使用した。
【0064】
TPD
TPD-MSを、Hiden Analytical TPD Workstationを使用して実行した。膜を、1x1cm2の試料に切断し、装置のUHVチャンバー(約3x10-9orr)に挿入した。試料を、30℃/minの直線昇温速度で800℃まで焼鈍した。MSを、70eVの電子イオン化エネルギーおよび20μAの放出電流で取得した。各試料の選択された質量電荷(m/z)比を、それぞれ150ミリ秒および50ミリ秒の滞留時間および安定時間においてMIDモードで観察した。
【0065】
SEM
走査型電子顕微鏡画像を、Quanta 3D Dual Beam SEMで30kVの電子ビームを使用して収集した。
【0066】
ESI-MS
抽出した膜溶液を、Agilent6230エレクトロスプレーイオン化質量分析計で分析した。溶液を、シリンジポンプを使用して0.4mL/minの流速で分光計に導入した。溶液の気化を促進するために、325℃および241kPaにおいてN2(g)を8L/minで流した。キャピラリーの電圧を3500Vに設定し、スキマーを65Vに設定し、RFオクタポールを750Vに設定した。データを、フラグメンテーション電圧を30Vに設定して正と負との両方のイオン化モードで収集した。
【0067】
TEMおよびEELS
TEM画像を、FEI Titan 80-200 TEMで200keVビームを使用して収集した。EELS分析を、収束角と10ミリラジアンの収集角とを有するGatan Tridiemエネルギー分析器を使用して、Titanで実行した。TEMおよびEELSに使用されるシングルチルトクライオホルダーGatan 626は、実験を通して-170℃で安定したままであった。1つの傾斜軸を使用して、試料をSi<110>ゾーン軸にきわめて近づけ、試料がビームに対して垂直になるようにした。
【0068】
(結果および考察)
Sn
2からの原子的に滑らかなClを含まない薄膜:
Sn
2は、4つのCl配位子を有する(
図1)。2つのSn原子は、ヒドロキシル基を共有する。2つのCl配位子と1つのH
2O分子とは、各Sn原子に関連付けられる。n-ブチル基もまた、各Sn原子に結合する。Sn
2溶液前駆体は、スピンコーティングによる堆積と80℃での塗布後ベーク(PAB)との後、ブチルスズ12量体[(n-C
4H
9Sn)
12O
14(OH)
6]Cl
2(Sn
12Cl)の塩化物塩に変換される。膜は、二乗平均平方根(RMS)粗さ=0.3nmであり、非常に滑らかである。塩化物は、スズベースのフォトレジストの望ましくない成分である。これは、パターニングプロセスのさまざまなステップでパターンの忠実度に影響を与え得る、制御されていない加水分解と化学的および構造的に不均一な膜の生成の機会を生み出すためである。塩化物塩は、OH
-で置換することによって、Clを含まない膜に変換された。OH安定化ブチルスズ12量体[(n-C
4H
9Sn)
12O
14(OH)
6](OH)
2(Sn
12OH、
図2Aおよび2B)が以前に報告されているため、OH
-のより強い求核特性に基づいて、OH
-がCl
-と交換されると仮定された。
【0069】
従って、Sn
12Cl膜を蒸着直後に10MのNH
3(aq)に3分間浸漬し、80℃のソフトPABを行った。
図3の上部のXPS(X線光電子分光)スペクトルは、塩基浸漬前の蒸着およびPAB後の膜において、強いCl 2p1/2および2p3/2シグナルを示す。下方のスペクトルは、NH
3(aq)に浸すとClのシグナルがバックグラウンドと同化することを示す。この結果は、NH
3(aq)に3分間浸すことで膜中のCl
-が除去され、12量体のOH
-塩が生成されたことを意味していると解釈される。
【0070】
NH
3(aq)浴の後、原子間力顕微鏡(AFM)で膜の表面画像を収集した(
図4Aおよび
図4B)。得られた膜のRMS粗さは、0.32nmから0.45nmへとわずかに増加したが、原子レベルで滑らかな表面であることが示された。アルカリ処理によって、Sn
2から調製された膜の平滑膜のモルフォロジーが大きく劣化することはなかった。
図4Aに見られるように、Sn
2前駆体からSn
12を堆積させると、Sn
12前駆体から直接堆積させるよりもはるかに滑らかな膜が生成される。式1および式2は、Sn
2の固体結晶から原子レベルで平滑なClを含まないパターニング可能なn-ブチルスズオキソヒドロキソ薄膜への化学反応をまとめたものである。
【0071】
堆積およびPAB:
6[(n-C4H9Sn)Cl2(OH)(H2O)]2→[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2(s)+22HCl(g)+H2O(s/g) (式1)
【0072】
塩基浸漬:
[(n-C4H9Sn)12O14(OH)6]Cl2(s)+2NH4OH(aq)→[(n-C4H9Sn)12O14(OH)8](s)+2NH4Cl(aq) (式2)
【0073】
Sn2からコーティングされた膜がPABおよび塩基浸漬後にウェーハ上のSn12OHスペシエーションを生成することを確認するために、Sn12OHのバルク結晶を調製し、2ヘプタノン溶液から成膜を行った。Sn2およびSn12OH溶液前駆体の蒸着およびプロセスパラメータは、Sn2膜(Sn12Cl)をNH3(aq)中で3分間イオン交換することによってのみ異なった。
【0074】
表1は、XPSデータから測定された化学組成およびSn12OHの式に基づいて計算された組成をまとめたものである。Sn2から加工した膜のSn、O、CおよびClの原子濃度は、Sn12OHから加工した膜と3%以内で一致し、分子式から予想される組成と2%以内で一致した。
【0075】
【0076】
図5Aおよび
図5Bは、両方の膜について収集した昇温脱離脱離(TPD)スペクトルを示す。脱離質量、ピークシグナル温度、相対ピーク強度は、2つの膜の間で区別がつかなかった。メタノール中に浸漬および溶解させることによって膜を抽出し、ウェーハ上のスペシエーションを評価するための溶液を作成した。抽出された膜溶液のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)は同一であり(
図6)、約1250および2500の質量電荷比(m/z)を中心とする2つの主要なピークが明らかになった。これらのピークは、親Sn
12OH12量体の+2イオンと+1イオンとに対応する。観察された複合線は、12量体カチオン内の-OHおよび-OCH
3配位子交換の結果である。
【0077】
2つの試料のESI-MSスペクトルは、-OHが-OCH3配位子に部分的に交換されているために発生する、さまざまな程度のピーク分割によって区別される。この交換は、メトキソ配位子の源が系に最初にかつ唯一導入されるため、メタノールへの溶解プロセス中にのみ発生し得る。このように、特徴的なピークの分割は、ウェーハ上のスペシエーションの違いを表していない。
【0078】
XPS、TPD、およびESI-Mは、溶液前駆体の同一性に関係なく、ウェーハ上のSn12OHスペシエーションの捕捉的な証拠を提供する。その結果、蒸着、PAB、塩基浸漬に基づくSn2からSn12OHへの変換を支援する。
【0079】
有機スズフォトレジストは、通常、リソグラフィ工程において塗布、放射線照射された後、加熱される。これらの材料は、高解像度のパターンを作成するために、低い表面粗さを維持しなければならない。NH
3(aq)処理後にさらに3分間ベークを行い、昇温での粗さ挙動を評価した。
図7は、140~180℃でベークした膜は、初期の表面粗さにもかかわらず、約0.75nmのRMS粗さを維持することを示す。このデータから、一般的なPABおよびPEBの処理温度を適用した膜は、高解像度フォトレジスト材料の必須条件である0.75nm以下の優れた粗さを引き続き示すことが示唆された。ウェーハ上のスペシエーションは同一であるが、すべての放射実験は、Sn
2から生成されたClを含まない膜で行われた。Sn
2プロセスは、Sn
12OHの直接蒸着(RMS=1.32nm)よりも滑らかな表面(RMS=0.45nm)を生成した。さらに、Sn
12OHから直接加工した膜をベークすると、140℃までに表面モルフォロジーが4.43nmまで急速に粗化した。
【0080】
パターニング化学
ベースラインを確立する非露光膜:
TPD-MSを実行して、Sn
2から調製したClを含まない薄膜からの熱誘起脱離スペクトルを分析した。
図8に示すスペクトルは、H
2O、CO
2、n-ブチル配位子からの3つの主要な脱離シグナルを明らかにする。
【0081】
図8は、200℃未満の温度での3つの低強度シグナルを示す。75℃の水のピークは、構造のH
2Oの脱離に起因する。このピークは、11日間の大気中エージング(
図9A)でより大きくなった。これは、この期間において、膜が大気中のH
2O(g)をゆっくりかつ連続的に吸着することを示唆する。75℃および200℃のCO
2ピークは、金属酸化物表面とCO
2(g)との相互作用が予想されるため、弱く吸着したCO
2の脱離に起因する。これら2つのCO
2脱離ピークの相対強度は、大気中で不規則に経時変化することがわかった(
図9B)。この挙動は、金属酸化物表面に弱く吸着したCO
2の動的移動に起因し得る。140℃における3分間の大気中でのソフトベークを採用することによって、3つの低温H
2OおよびCO
2脱離ピークを大幅に低減した(
図10)。これらの200℃以下のピークは、分子状で弱く結合したH
2OおよびCO
2吸着体の脱離を表していると結論付けられた。
【0082】
図8のTPDスペクトルから最も強い脱離現象は、400℃で発生し、様々な有機フラグメントに関連するピークを明らかにした。H除去または抽出を伴う熱誘起Sn-C結合切断は、それぞれ1-ブテン(C
4H
8)(
図11)またはn-ブタン(C
4H
10)(
図12)の生成をもたらす。両方の生成物の既知のフラグメンテーションパターンから、イオン化解離の際、プロピルフラグメントが最も強いシグナルとなることが予想された。
図13は、プロピル鎖[m/z=41(C
3H
5)、m/z=43(C
3H
7)]がそれぞれ1-ブテン、n-ブタン生成物をどのように表すかを示す。
【0083】
1-ブテン(C
4H
8)(
図10)とn-ブタン(C
4H
10)(
図12)とは、イオン化装置におけるパターンが似ているため、質量分析装置の標準化なしでは相対量の確定が困難である。しかし、m/z=43の期待される強度は、n-ブタンでは100%、1-ブテンでは実質的に0%である。実験スペクトルは、実質的なm/z=43のピークを示したため、これらの膜のSn-ブチル熱分解によって、質量分析計に入るn-ブタンと1-ブテンとの両方の分解生成物の生成をもたらしたことをよく示している。ここでは、m/z=41以降は、最も強いピークであったため、様々な処理後の膜中の相対的なブチル濃度を表すために使用される。
【0084】
400℃では、m/z=18および44もピークに達した。この温度で、m/z=44は、CO
2またはC
3H
8(ブタンの生成物フラグメント)のいずれかに起因し得る。しかし、M/z=18は、C
4H
8またはC
4H
10のフラグメンテーションによる生成物ではないため、TPD実験がSn-ブチル熱分解を誘発し副産物としてH
2Oを伴ったという推論に基づいて、水に割り当てられた。最後に、600℃で検出された弱いCO
2ピークを
図8にアスタリスクで示した。
【0085】
露光した膜
1x1cm
2の膜に電子ビームを照射し、直ちにTPD分析を行った。この露光面積は、TPD分析に必要な試料の寸法と一致している。
図14は、0(黒)、300(青)、1000(赤)μC/cm
2に露光した試料からのn-ブチル脱離(m/z=41)に関連するシグナルを示す。脱離シグナルの強度は、ドーズ量の増加とともに減少し、ドーズ量の増加とともにn-ブチルの含有量が減少することが示唆された(
図15)。
図14の曲線は、前縁が揃っている、後縁が離れている、ピーク温度がずれているという、ゼロ次脱離の動力学の3つの指標を示す。TPD測定の結果、電子ビーム照射によりSn-C結合が切断され、n-ブチル配位子の気体放出が起こり、それによって、膜中の有機配位子濃度が減少することが明らかになった。
【0086】
図14のTPDデータは、露光ドーズ量の増加に伴うC
3H
5シグナルの減少を要約する。挿入図は、R
2=0.98で一致する指数関数的に減衰したシグナルを示す。分光エリプソメトリーからの膜厚もまた、ドーズ量の関数として指数関数的減少を示した(
図16)(R
2=0.97)。その結果、これらのデータは、Sn-C結合切断の確率が膜中のSn-C結合、すなわち膜中のブチル基の濃度に単純に比例することを示す。
【0087】
ブチル配位子の脱離ならびに膜の厚さおよび付随する膜密度の変化は、膜の露光領域と非露光領域とが電子顕微鏡(EM)によって画像化され、特徴付けられ得ることを示した。500μC/cm
2のドーズ量で30kVの電子ビームを使用して、2つのSn
12OH膜に100nmピッチで細いライン(約25nm)を描画した。1つの膜は、走査型電子顕微鏡(SEM)を介して確認するために、140℃で3分間の露光後ベーク(PEB)の直後に2-ヘプタノンで30秒間現像され、実際に、75nm間隔の25nmラインを明らかにした(
図17)。
【0088】
第2の膜は、現像されなかった。パターニングされた膜は、熱に非常に敏感であるため、クライオ集束イオンビームミリングを使用して、EM分析用の電子透過性ラメラを抽出した。ミリングの前に、クロムの層が堆積され、続いてCとPtとの保護コーティングは、すべて蒸着法を介して行われた。超低温(77K)で走査型透過電子顕微鏡(STEM)画像と炭素電子エネルギー損失分光(EELS)データとを収集することによって、追加のビーム損傷を防いだ。
【0089】
図18は、露光された未現像の試料の逆コントラスト断面クライオSTEM画像を示す。下から上に向かって、それぞれの層は、SiO
2基板(薄い灰色)、露光Sn
12OH(黒)、保護クロム層(濃い灰色)に対応する。約75nm間隔の周期的な暗い領域は、レジストの露光領域を表す。これらは、完全に現像されたパターンで観察されたライン間隔と一致する(
図17)。明らかに、高い原子番号コントラストと組み合わせたクライオSTEMによって、無機フォトレジストの通常は見えない潜像の直接イメージングを可能にする独自のアプローチが可能になる。
【0090】
図19は、10nmの解像度で実行された、基板に平行な露光されたSn
12OH膜を通るカーボンEELSのラインスキャンを示す。データは、ラインスキャン全体の3つの露光領域に起因するカーボンの3つの明確な低下を示した。各ラインで最も低いカーボンカウントは、カーボンの50%の損失に対応し、これはブチル配位子の50%に相当する。カーボンEELSのポイントスキャンでも同様の結果が得られた。これらのデータは、照射がSn-C結合を切断し、それが膜からの有機種の脱離につながるというさらなる証拠を提供する。
【0091】
FIB試料調製およびクライオEM測定の難しさを考慮すると、ブチル配位子の約50%の損失は、TPDで観察された約40%の損失に匹敵する。10%ポイントの差は、膜の堆積および処理における統計的変動、ならびにクライオFIBミリングおよびクライオSTEM分析中の潜在的なカーボン損失に起因し得る。
【0092】
大気中の露光後の遅延:
実験セクションで詳述した手順に従い、SEMの真空チャンバー内で電子ビーム露光を行い、5つの制御ドーズ量アレイを生成した。描画後、試料を真空環境から取り出し、2-ヘプタノンで30秒間現像する前に大気中でエージングさせた。1つのアレイは未現像のままである。
図20は、0.25、3、24および144時間経過させたアレイの膜厚を、ドーズ量の関数として示す。未現像アレイは、現像前の膜厚を100%維持するために必要な遅延時間を特定するように機能する。
【0093】
0.25時間の遅延に供した試料の露光パッドはすべて単純に2-ヘプタノンに溶解し、膜の露光領域と非露光領域との間で溶解速度に差は生じなかった。大気中で3時間経過後、高ドーズ量パッド(200μC/cm2超)で溶解速度の低下が観察された。24時間の遅延後に125μC/cm2付近で溶解が始まり、200μC/cm2付近で飽和し、ここで、パッド厚は、潜像対照のものと等しい。24時間超のエージングを継続すると、感度の変化が小さくなった。大気中で24時間エージングした場合の最高コントラストは5.1であった。露光から現像までの遅延時間が、溶解速度の差に大きく影響していることは明らかである。
【0094】
エージングのゆっくりとした変化が露光単独に基づくかまたは大気との反応に基づいて生じるのかを判断するために、各々2時間ずつ真空中でエージングしたアレイと大気中でエージングしたアレイとを直接比較した。
図21は、大気遅延試料のみが、アセトンでの現像時に露光領域と非露光領域との間に明確なコントラストを生じたことを示す。これらの観察結果から、溶解速度を変化させるには、1つ以上の大気成分[CO
2(g)、H
2O(g)、O
2(g)]の吸収が必要であると結論付けられた。
図21のアレイは、アセトンのみで現像されたアレイであった。溶解度の変化を観察するためにより短い遅延時間(24時間超)が必要であるため、この実験ではアセトンを現像液として使用した。2-ヘプタノンは、より高いコントラストが得られるため、報告された他のすべての現像ステップに使用された。
【0095】
2つの1x1cm2の試料を1000μC/cm2の電子ビーム照射に露光した。露光後、一方の試料は、直ちにTPD装置の超高真空(UHV)チャンバーに移され、もう一方の試料は、大気中で10日間エージングされた。SEMからTPDへの移行には約15分かかった。膜上の反応生成物を最大化し、それによって、TPD-MSの脱離シグナルを最大化するために、大気中での長い遅延時間と組み合わせた任意の高い露光ドーズ量が選択された。
【0096】
図22A~22Cは、非露光膜についておよび露光され即時に移行された試料からの、それぞれn-ブチル、H
2OおよびCO
2脱離シグナルを示す。3つの種はすべて、1000μC/cm
2での露光後に脱離が全体的に減少することを示す。
【0097】
図23A~23Cは、各々1000μC/cm
2に露光された、即時試料と大気エージング試料とからのH
2O(23A)、CO
2(23B)およびn-ブチル(23C)の脱離曲線を示す。
図23Aは、大気中での10日間の遅延が、より高い強度のH
2O脱離をもたらしたことを明らかにする。構造の水の脱離の低温シグナル(
図9A)は、膜上のH
2O濃度の増加のため、75℃から90℃にシフトした。構造のH
2Oの脱離についてのより高いシグナルが予想され、これらの膜は大気からH
2Oを吸着することが示された(
図9A)。200~300℃のラインで表される強いH
2O脱離は、エージングされた膜が非エージングの膜よりも広範囲にヒドロキシル化されたことを示した。その結果、親水性のエージング膜はより多くの水を吸収した。これは、エージング膜の75~150℃でのH
2O脱離シグナルがより高いことから明らかである。
【0098】
図23Bは、同じ2つの試料についてCO
2シグナルを識別する。大気中で10日間エージングされた露光試料では、エージングされていない膜と比較して、大幅に高いCO
2脱離シグナルが観察された。露光曲線の下の面積は、エージングされていない曲線の約4倍である。これらのシグナルは、弱く結合したCO
2吸着体(
図9B)よりもむしろ、200℃超の温度でのみ脱離した
図23Bのシグナルとして、HCO
3
-およびCO
3
2-に関連する。
【0099】
最後に、
図23Cの露光曲線は、大気中での10日間の遅延により、ブチル脱離の開始が300℃から175℃にシフトし、ピークシグナルが400℃から350℃にシフトしたことを示す。同じ傾向は、m/z=43(C
3H
7)、56(C
4H
8)および58(C
4H
10)の他の有機フラグメントについても観察された(
図24)。
図23の曲線の下の面積は、互いに5%以内で一致しており、エージング後に残存する配位子の濃度に実質的に変化がないことを示す。これらのスペクトルは、有機物の気体放出が露光プロセスにのみ限定されていること、および残りのブチル配位子の化学環境が大気中でのエージング後に変化したことを明らかにする。n-ブチル脱離および400℃から350℃への高温H
2O脱離の両方のピークシグナルのシフト(
図23A)は、高温水脱離がn-ブチル分解に関連する副産物であることを続けて立証する。
【0100】
より弱い強度が観察されたが、同じ傾向は、300μC/cm
2および500μC/cm
2への露光、および大気中の1日間または6日間の遅延で続いた(
図25A~25C、26A~26C)。
【0101】
図27A~27Cは、Sn
12膜を大気中で加熱することによってn-ブチル基を除去し得ることを示す(27A)。次に、これらのn-ブチル欠乏膜は、電子ビーム露光膜と同様の方法でH
2O(27B)およびCO
2(27C)を吸収して、水酸化物、重炭酸塩および炭酸塩を生成する。
【0102】
TPD実験は、紫外線(UV)光(λ=254nm)に露光された即時および大気遅延試料で繰り返された。試料を10分間露光した。1つの試料はただちにUHVTPDチャンバーに運ばれ、もう1つの試料は、大気中で6日間エージングされた。
図28は、非露光試料からのシグナルと比較した、露光された試料からのブチル脱離を示す。データは、m/z=41ピークが完全に除去されることを示す。これは、すべてのSn-C結合を切断し、配位子生成物を進化させるのに十分な露光ドーズ量であったことを意味する。他のブチル関連の脱離質量は検出されず、膜に捕捉された分解フラグメントではなく完全な除去を保証している。
【0103】
図29は、エージングされていない試料とエージングされた試料からのH
2O脱離スペクトルにおける無視できる差を示す。CO
2脱離を
図30に示す。再び、大気中でエージングした後、大幅に高い脱離シグナルが観察される。m/z=44(CO
2
+)および28(CO
+)の同一のピーク形状は、m/z=44が実際にCO
2を表すというさらなる確信を提供する(
図31)。
【0104】
二酸化炭素は、スズのアルコキシドのSn-O結合および金属酸化物表面の水酸化スズのSn-O結合にスムーズに挿入されることが示される。SnxOyコアへの炭酸塩の組み込みについては数多くの報告があり、例えば、ジ-n-ブチルスズ酸化物が効率的なCO2捕捉剤であるとも述べられている。
【0105】
特定の動作理論に縛られることを望むわけではないが、
図32の化学反応は、n-ブチルスズ酸化水酸化物の異なる溶解に寄与する。電子ビームまたはUV露光によって、Sn-C結合が切断され、ブタンまたはブテンとしてのブチル配位子の脱離が促進される。試料が大気中に導入されると、露光領域のSn部位が加水分解し、Sn-OH
-の濃度が増加する。時間の経過とともに、膜は、CO
2を吸収し、Sn-OH結合に挿入されて重炭酸塩を形成する。次に、隣接する重炭酸塩が反応してH
2Oを放出し、単純な炭酸塩を形成する。Sn炭酸塩の形成は、CO
3
2-橋を介した縮合によって溶解を阻害し得る。Snに結合した末端炭酸塩配位子HCO
3
-の形成もまた、n-ブチル配位子と比較して極性が大きく異なるため、溶解度に影響を与え得る。いずれの炭酸塩種も、異なる溶解コントラストをもたらし得る。
【0106】
溶解速度の漸進的な変化(
図20)は、漸進的なCO
2吸着、したがって漸進的な重炭酸塩および炭酸塩形成の直接的な結果であることが確認された。n-ブチル分解温度の低下が観察されたため、炭酸塩種の形成がSn-C結合を弱めるという仮説が立てられた(
図23C)。
【0107】
図33は、電子ビームに露光されたSn
12膜において溶解コントラストを実現するためにH
2OおよびCO
2の両方が必要であることを実証する。3つの異なるドーズ量アレイを、大気中(ベースライン)、デシケーター(H
2O欠乏環境)および湿式グローブボックス(CO
2欠乏環境)で24時間遅延させて露光し、2-ヘプタノンで30秒間現像した。放射露光された膜は、CO
2のない湿度の高い環境(湿式グローブボックス)でエージングした場合、溶解コントラストを示さなかった。
【0108】
O
2に対応するM/z=32は、どのTPD実験でもベースラインを超えて検出されなかった。さらに、ドーズ量アレイを分離したO
2(g)環境で24時間遅延させたとき、現像時にパターンは観察されなかった(n-ブチル(34A)および水(34B)の脱離を記録する、
図34A~34B)。これらのデータは、少なくとも単独では、O
2(g)は放射誘発反応を完了しないことを示唆しているため、その関与は除外された。
【0109】
露光後ベーク
図35は、PEBなし、100℃PEB、140℃PEBおよび180℃PEBに3分間さらされたドーズ量アレイの厚さ測定値を示す。次に、3分間のPEBとは別に追加の遅延時間がないように、すべての試料を2-ヘプタノンで直ちに30秒間現像した。
【0110】
ベークされていないドーズ量アレイは、真空から取り出してすぐに現像すると、溶解コントラストがないことが明らかになった。100℃でベークした試料は、300μC/cm
2近くのドーズ量で溶解速度が低下した。140℃および180℃の後、パッドは、それぞれ260μC/cm
2および200μC/cm
2の現像前厚さを示した。これらのデータは、T≧140℃でPEBを使用すると、300μC/cm
2未満の露光ドーズ量で不溶性生成物を生成するのに十分なエネルギーが提供され、遅延時間が回避されることを示す。
図36は、加熱によって、より低い温度でn-ブチル基がSn
12膜から脱離することを示す。
【0111】
電子ビーム露光とそれに続くTPDを繰り返し、今回は、1x1cm2の大きな露光領域にPEBステップを追加した。3つの試料を1000μC/cm2で露光し、露光直後に140℃および180℃で3分間のPEBを行ったのはそのうちの2つだけであった。次に、それらをTPDのUHVチャンバーにすばやく入れて、大気への露光を最小限に抑えた。PEB後の脱離スペクトルは、大気中で長時間遅延させた後のスペクトルとほぼ同じであることが観察された。
【0112】
図37は、3つの試料からのCO
2脱離を示す。シグナルは、PEB温度の上昇とともに大幅に増加し、炭酸塩種の濃度の増加を示唆する。また、PEB温度が上昇すると、n-ブチル脱離がより低いピーク温度にシフトし、H
2O脱離が増加することをも示す(
図34A、
図38A、38B)。320℃で3分間のPEBの後、ブチル配位子の80%が失われた。これらの傾向はどちらも、大気中において室温で長時間エージングさせた試料の結果と一致している。
【0113】
図35および37は、炭酸塩濃度が比較的低いため、真空中で露光した直後に現像した場合、暴露した試料は溶解差をもたらさないことを示唆する。しかしながら、より高い濃度の炭酸塩種が観察されるとき、溶解は、効率的に抑制される。PEBプロセスは、単に加水分解されたSnとのCO
2(g)反応を活性化するのに十分なエネルギーを提供し、反応速度を速めると結論付けられた。
【0114】
Snに結合した-OH-が炭酸塩形成の活性部位であるかどうかを判断するために評価を行った。これを行うために、非露光試料と露光試料との両方を大気中で180℃まで加熱し、加熱の前後で脱離スペクトルを比較した。非露光の試料をベークすることは、実質的に、完全な形のSn12OH種をベークすることになる。露光した試料をベークすることは、大気への導入時に加水分解されたブチル欠乏Sn原子をベークすることを表す。
【0115】
図39および40A~40Bは、3つの種(n-ブチル、H
2O、CO
2)すべての脱離スペクトルが、露光した試料のみで大気中でベークすると劇的に変化したことを示す。前述のように、180℃でベークした露光膜は、CO
2脱離の増加を示し、膜中のカーボネート基の増加を示唆する。非露光の試料をベークしたとき、加熱前後の脱離スペクトルはほとんど変化しなかった。そのため、Sn-OH
-部位がCO
2(g)を吸収して重炭酸塩および炭酸塩を形成すると結論付けられた。
【0116】
HCO
3
-とCO
3
2-との両方が、大気中のエージングまたは180℃までの温度でのベーク中に膜に形成されるという仮説が立てられた(
図23B、37および41A~41C)。200~400℃の間のTPDスペクトルのCO
2ピークは、その温度範囲でH
2Oシグナルも観察されたため、Sn重炭酸塩の分解に起因していた。400℃を超えると、H
2Oピークが検出されなかったため、CO
2ピークは、おそらくSn炭酸塩の分解を表す。
【0117】
熱重量分析-質量分析を行って、バルクSn
12OH粉末への部分露光を模倣した。TGA-MSをN
2中においてSn
12OHで実行してベースラインを確立し(
図42A)、Sn
12OHを大気中でベークしてブチル配位子の一部を分解し、それによって露光を模倣した(
図42B)。バルク粉末でも同じ傾向が観察された。
【0118】
パターニング可能性-概念実証:
前述のすべての観察に基づいて、Sn
12OHは、400μC/cm
2、140℃でのPEBおよび2-ヘプタノンでの30秒の現像でリソグラフィパターニングされた。
図43は、横方向に60nmピッチの10nmライン、縦方向に60nmピッチの14nmラインのSEM画像である。水平ラインと垂直ラインとのライン幅の違いは、2方向のビームステップサイズの違いによるものである。
図44は、Sn
2堆積、NH
3(aq)浸漬によるSn
12OHへの変換、電子ビーム露光、180℃での露光後ベーク、および2-ヘプタノンでの現像のプロセスによって生成されたラインアンドスペースパターンおよびドットパターンのSEM画像である。
【0119】
(結論)
Clを含まない原子的に滑らかなSn12OH膜を生成する方法が開発された。これは、その高解像度パターニング機能に寄与する化学プロセスを解明するモデルシステムを表す。TPD-MSを使用して、放射への露光、大気中でのエージング、ベーク後の膜の化学変化を分析した。クライオSTEMおよびクライオEELS測定によって、TPDの結果が確認された。スペクトルは、放射がSn-C結合を切断し、ブタンとブテンとの脱離を誘発することを示した。大気中に導入されると、露光された膜はH2O(g)とCO2(g)とを吸収して、水酸化物、重炭酸塩および炭酸塩を形成する。室温でエージングされた膜では、広範な凝縮の限定的な証拠が見つかった。ここで、OH-、HCO3
-およびCO3
2-に対するn-ブチル配位子の交換だけで、膜の露光領域と非露光領域との間の溶解速度のコントラストを誘発するのに十分であり得る。露光後のベークは、H2O(g)とCO2(g)との吸収を加速し、エージングと同様の溶解コントラストを生成する。ベークで発生し得る追加の架橋の量については、追加の研究が必要である。
【0120】
開示された発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は本発明の好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。したがって、これらの特許請求の範囲および精神に含まれるものすべてを発明として主張する。
【国際調査報告】