(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】イヤホン及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20230414BHJP
G01C 19/00 20130101ALI20230414BHJP
G01C 19/5769 20120101ALI20230414BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20230414BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
H04R1/00 327A
G01C19/00 Z
G01C19/5769
H04R1/10 104Z
G01H17/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552213
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2021077918
(87)【国際公開番号】W WO2021170041
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202010122942.2
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522341148
【氏名又は名称】セノディア テクノロジーズ (シャオシン) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SENODIA TECHNOLOGIES (SHAOXING) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 5, Intelligent Innovation Center, No.487 Kebei Road, Keqiao Economic And Technological Development Zone, Keqiao District Shaoxing, Zhejiang 312030 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ブォ
(72)【発明者】
【氏名】フゥァン イェン
(72)【発明者】
【氏名】リィゥ シュゥァン
【テーマコード(参考)】
2F105
2G064
5D005
5D017
【Fターム(参考)】
2F105AA10
2F105BB03
2F105CD13
2G064AA12
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB14
2G064BA02
2G064BD02
5D005BA13
5D017BA02
(57)【要約】
本発明は、イヤホン及び電子機器を提供する。上記イヤホンはジャイロスコープを含み、上記ジャイロスコープによって骨伝導振動を感知し、上記ジャイロスコープの直交誤差信号は上記骨伝導振動を反映するために用いられる。具体的には、伝動部材を介して上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに直接又は間接的に作用し、上記伝動部材を介して上記骨伝導振動を上記ジャイロスコープに伝達し、上記ジャイロスコープに歪みを発生させ、上記ジャイロスコープの直交誤差信号の変化を引き起こし、それにより上記骨伝導振動を敏感に検出することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャイロスコープを含み、前記ジャイロスコープによって骨伝導振動を感知し、前記ジャイロスコープの直交誤差信号は前記骨伝導振動を反映するために用いられることを特徴とするイヤホン。
【請求項2】
伝動部材を含み、前記伝動部材は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに直接又は間接的に作用し、前記伝達部材を介して前記骨伝導振動を前記ジャイロスコープに伝達し、前記ジャイロスコープに歪みを発生させ、それにより前記ジャイロスコープの直交誤差信号の変化を引き起こすことを特徴とする請求項1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記伝動部材は少なくとも一端が前記イヤホンのハウジングに固定され、且つ少なくとも一端が前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持することを特徴とする請求項2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記伝動部材は対称構造であることを特徴とする請求項2に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記伝動部材は第一伝動モジュールと第二伝動モジュールを含み、前記第一伝動モジュールと前記第二伝動モジュールは前記ジャイロスコープの両側に配置されており、前記第一伝動モジュールの一端は前記イヤホンのハウジングに固定され、他端は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持しており、前記第二伝動モジュールの一端は前記イヤホンのハウジングに固定され、他端は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持することを特徴とする請求項2に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記伝動部材は第一端部、第二端部及び第三端部を含み、前記第一端部及び前記第二端部は前記イヤホンのハウジングにそれぞれ固定されており、前記第三端部は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持することを特徴とする請求項2に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記伝動部材は、剛性材料、又は前記骨伝導振動を前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに伝達するように適合され、且つ前記ジャイロスコープに歪みを生じさせることができる、一定の弾性を有する材料であることを特徴とする請求項2に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットは基板に固定され、前記伝動部材は前記基板に直接作用し、そして前記基板を介して前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに間接的に作用することを特徴とする請求項2に記載のイヤホン。
【請求項9】
前記伝動部材と前記イヤホンのハウジングとの接続位置は感知領域を限定し、前記感知領域は、前記イヤホンが装着された時に前記骨伝導振動を感知するのに適した位置に配置されることを特徴とする請求項3に記載のイヤホン。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のイヤホンを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
前記ジャイロスコープの直交誤差信号はユーザインタフェースのジェスチャー検出、音声活動検出、音声認識、アクティブノイズ制御、ノイズ抑制、音声明瞭度向上に応用されることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMS分野に関し、特にイヤホン及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
音声通信システム及び音声認識システムは、一般的に、音響マイクを使用して、ユーザの発話によって発生した音波を感知し、ユーザの音声を取得する目的を達成する。インターネット技術の成熟と広範囲な応用、及びモノのインターネット製品の普及に伴い、音声処理に対する要求もますます高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
音声認識と音声通信の過程において、ユーザ周辺やユーザ自身が引き起こす雑音は、音声処理において常に直面しなければならない重要な問題である。
【0004】
現在既存の幾つかのイヤホン製品において、特に耳栓型イヤホンは、装着者の骨伝導振動を感知することにより、装着者の使用状態を判断し、更に当該情報を利用して、音声の明瞭度を提供したり、音声認識の誤り率を低減したりする等、音声処理の効果を改善している。
【0005】
当業者は、骨伝導振動の収集方法の探索及び収集信号の応用にも取り組んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的に鑑み、本発明は、ジャイロスコープを含むイヤホンを提供し、上記ジャイロスコープによって骨伝導振動を感知し、上記ジャイロスコープの直交誤差信号は上記骨伝導振動を反映するために用いられる。
【0007】
更に、上記イヤホンは伝動部材を含み、上記伝動部材は上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに直接又は間接的に作用し、上記伝達部材を介して上記骨伝導振動を上記ジャイロスコープに伝達し、上記ジャイロスコープに歪みを発生させ、それにより上記ジャイロスコープの直交誤差信号の変化を引き起こす。
【0008】
更に、上記伝動部材は少なくとも一端が上記イヤホンのハウジングに固定され、且つ少なくとも一端が上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持する。
【0009】
更に、上記伝動部材は対称構造である。
【0010】
更に、上記伝動部材は第一伝動モジュールと第二伝動モジュールを含み、上記第一伝動モジュールと上記第二伝動モジュールは上記ジャイロスコープの両側に配置されている。上記第一伝動モジュールの一端は上記イヤホンのハウジングに固定され、他端は上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持する。上記第二伝動モジュールの一端は上記イヤホンのハウジングに固定され、他端は上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持する。
【0011】
更に、上記伝動部材は第一端部、第二端部及び第三端部を含み、上記第一端部及び上記第二端部は上記イヤホンのハウジングにそれぞれ固定される。上記第三端部は上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持する。
【0012】
更に、上記伝動部材は、剛性材料、又は上記骨伝導振動を上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに伝達するように適合され、且つ上記ジャイロスコープに歪みを生じさせることができる、一定の弾性を有する材料である。
【0013】
更に、上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットは基板に固定され、上記伝動部材は上記基板に直接作用し、そして上記基板を介して上記ジャイロスコープ又は上記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに間接的に作用する。
【0014】
更に、上記伝動部材と上記イヤホンのハウジングとの接続位置は感知領域を限定し、上記感知領域は、上記イヤホンが装着された時に上記骨伝導振動を感知するのに適した位置に配置される。
【0015】
本発明は、上記イヤホンを含む電子機器を更に提供する。
【0016】
更に、上記ジャイロスコープの直交誤差信号はユーザインタフェースのジェスチャー検出、音声活動検出、音声認識、アクティブノイズ制御、ノイズ抑制、音声明瞭度向上に応用される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のイヤホンは以下の技術的効果を有する。
1、イヤホン内の既存の感知素子により、簡単で実施しやすい機械的構造と結合し、骨伝導振動への感知を実現することができる。
2、ジャイロスコープの直交誤差信号は、ジャイロスコープが歪むと大きく変化することから、骨伝導振動検出の感度が向上する。
3、従来製品に伝動部材を添加するだけで骨伝導振動の感知を実現するため、従来技術に比べ、同じ機能を実現する前提で、電子部品の使用数を減少し、解決手段全体の実現コストを大幅に低下させ、普及しやすい。
【0018】
以下では、本発明の目的、特徴及び効果を十分に理解するために、本発明の構想、具体的な構造及び得られる技術的効果について、添付図面と関連して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の一つの実施例の内部構造概略図である。
【
図3】
図3は従来のジャイロスコープの直交結合の概略図である。
【
図4】
図4は本発明の一つの実施例におけるジャイロスコープの出力信号の処理フローチャートである。
【
図5】
図5は本発明の一つの実施例における選択可能な伝動バーの構造概略図である。
【
図6】
図6は本発明の他の実施例の内部構造概略図である。
【
図8】
図8は本発明の他の実施例の内部構造概略図である。
【
図9】
図9は本発明の他の実施例の内部構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態の説明において、理解すべきものとして、用語「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」等の指示する方位又は位置関係は図面に示す方位又は位置関係に基づき、本発明を説明し及び説明を簡略化するためだけであり、装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成され、動作されなければならないことを指示又は示唆するのではなく、従って発明を限定するものと理解できない。なお、図面は原理図又は概念図であり、各部分の厚みと幅との関係、各部分の間の比例関係等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。
【0021】
図1及び
図2は本発明の一つの実施例の構造概略図であり、イヤホン100は、ハウジング110、プリント基板(printed circuit board)120、伝動部材130、及びジャイロスコープ140を含む。
【0022】
プリント基板120はハウジング110内に固設され、ジャイロスコープ140はプリント基板120に固定される。伝動部材130は伝動バー131と伝動バー132を含み、伝動バー131と伝動バー132の材質と構造は同じである。
【0023】
本実施例において、ジャイロスコープ140はハウジング110内のイヤホン100上部に近い位置に配置され、伝動バー131と伝動バー132はジャイロスコープ140の両側に対称的に配置される。伝動バー131の一端はハウジング110の内側に固定され、他端はジャイロスコープ140に接続される。伝動バー132の一端は伝動バー131と対称的にハウジング110の内側の他の辺に固定され、他端は同様にジャイロスコープ140に接続される。
【0024】
本実施例において、伝動バー131及び伝動バー132と、ジャイロスコープ140とは溶接によって固定接続され、同様に、他の固定接続方法を採用してもよく、例えば接着等であり、ここでは限定しない。
【0025】
伝動バー131及び伝動バー132と、ハウジング110との接続は、感知位置111及び感知位置112を限定する。感知位置111及び感知位置112は、イヤピース110が装着された時に、感知位置111及び感知位置112が装着者の外耳道内に位置し、外耳道の壁と接触し、且つ接触位置は、会話中に装着者によって生成される骨伝導振動を受信するように適合される。具体的には、装着者が発話する際に、顔面骨、軟組織等の動きに伴って発生する振動であり、同様に、これらの振動も耳道壁に伝わる、即ち耳道壁に骨伝導振動が形成される。感知位置111及び感知位置112は、上述の骨伝導振動を感知するのに適した位置に配置されるべきである。
【0026】
装着者が話す時に、耳道壁における骨伝導振動は感知位置111と感知位置112に作用し、感知位置111と感知位置112との力受け状態が振動に伴って絶えず変化することに相当する。感知位置111及び感知位置112に感知された骨伝導振動は、それぞれ伝動バー131及び伝動バー132を介してジャイロスコープ140に伝達され、それによりジャイロスコープ140の力受け状態も振動に伴って絶えず変化する。ジャイロスコープ140は力を受ける場合に歪みが発生し、歪みの状態も振動に伴って絶えず変化する。この歪みは、ジャイロスコープ140によって敏感に検出されることができる。
【0027】
図3は、角速度信号を検出するために主にコリオリ力に依存するマイクロ機械加工に基づいたデバイスである静電容量型MEMSジャイロスコープの直交結合の概略図であり、駆動モードと検出モードの2つの動作モードを有する。理想的な状況では、ジャイロスコープの駆動端に駆動モードの固有周波数電気信号を印加すると、ジャイロスコープの質量塊は駆動軸(
図3ではX軸)において固有周波数で往復振動する。外部からZ軸方向の角速度入力がある場合、コリオリ力の作用下で、質量塊は同時に検出軸(
図3ではY軸)で振動し、振動幅と角速度の大きさは線形関係を呈し、質量塊の検出軸での振動幅を検出することによって現在の角速度の大きさを求めることができる。
【0028】
マイクロ機械加工の製造プロセスの欠陥によりジャイロスコープに非理想的な構造が現れる可能性があるため、実際に動作する時、駆動モードでは質量塊は厳密に駆動軸で振動せず、実際の振動方向は駆動軸と小さな角度偏差を有する可能性があり、この偏差は駆動軸の振動を検出軸に直接結合させ、ジャイロスコープは角速度入力がゼロである場合でも検出信号を出力し、このような現象は直交誤差と呼ばれる。
【0029】
ジャイロスコープの直交誤差信号は応力及び変形の影響を受けやすいが、直交誤差信号と検出信号は90°の位相差を有するため、復調の過程においてそれが復調されないようにすることができ、その変化はジャイロスコープの正常な出力結果に影響を与えない。このため、直交誤差信号の復調により、ジャイロスコープが受ける外力の影響を反映した定量化が可能となる。
【0030】
図4は本実施例のジャイロスコープの出力信号の処理フローチャートを示し、そのうち検出コンデンサから出力された信号はC/V変換を経た後、角速度を特徴づける角速度検出信号、及び直交誤差信号をそれぞれ復調する。
【0031】
前述したように、直交誤差はマイクロ機械加工の製造プロセスによる非理想型構造に起因するものであり、それはマイクロ機械の構造自体によって決定され、ジャイロスコープが正常状態にある場合、角速度が入力されるか否かに関わらず、直交誤差信号自体は変化しない。
【0032】
しかしながら、ジャイロスコープが外力作用を受けて応力及び変形を引き起こす場合、直交誤差信号はそれに伴って大きく変化する。上記応力及び変形は同時にジャイロスコープの角速度検出信号と直交誤差信号に作用するが、直交誤差信号に対する影響は角速度検出信号に対する影響よりはるかに大きい。実際の実験では、異なる構造設計のジャイロスコープに対してそれぞれ歪み状態で、直交誤差信号変化と角速度検出信号変化との比較を行い、直交誤差信号変化が角速度検出信号変化の約10~20倍であることを発見し、同一の構造設計に対して、直交誤差信号変化と角速度検出信号変化との比はほぼ一定である。ここから分かるように、直交誤差信号は外力作用に対し、角速度検出信号に比べ、より高い感度を有し、このように外力作用を適切な範囲内に制御すれば、ジャイロスコープが外力作用の検出に用いられるだけでなく、その正常な機能(角速度検出)に影響を与えないことを実現することができる。
【0033】
本実施例では、装着者が発話しない場合、感知位置111と感知位置112における力受け状態は基本的に変化せず、従ってこの場合ジャイロスコープ140の直交誤差信号は基本的に変化せず、同様にジャイロスコープ140の直交誤差信号も角速度入力の有無に影響されない。装着者が話す時に、耳道壁に骨伝導振動が形成され、感知位置111と感知位置112で骨伝導振動が感知され、且つ伝動バー131及び伝動バー132を介してジャイロスコープ140に伝達される。ジャイロスコープ140は骨伝導振動の作用下でその力受け状態が絶えず変化し、外力作用による歪み状態も絶えず変化する。歪み状態が変化する時にジャイロスコープ140の直交誤差信号もそれに伴って対応する変動が発生する。上述したように、直交誤差信号は、角速度検出信号に対して、前者の歪みの変化による影響は、後者の歪みの変化による影響の約10~20倍であるため、骨伝導振動によるジャイロスコープ140の歪みをその直交誤差信号に非常に敏感に反映させることができ、角速度検出信号への影響は、ごく小さな範囲または許容範囲内に制御することが容易である。
【0034】
骨伝導振動がジャイロスコープ140に伝達することを可能にするために、伝動バー131及び伝動バー132は、好ましくは剛性材料であるが、骨伝導振動をジャイロスコープ140に伝達するように適合され、且つジャイロスコープ140に歪みを生じさせることができる、一定の弾性を有する材料であってもよい。
【0035】
ジャイロスコープ140が骨伝導振動を感知する原理に基づいて、本実施例において、伝動バー131及び伝動バー132がジャイロスコープ140に作用する一端はジャイロスコープ140に固定接続されるが、固定接続されない方法を採用してもよく、振動の伝達は、同様に、例えば、ジャイロスコープ140に作用する伝動バー131及び伝動バー132の一端をジャイロスコープ140に当接させることによっても行うことができる。幾つかの実際の組み立てにおいて、伝動バー131と伝動バー132が完全に密着してジャイロスコープ140に当接することができない可能性があり、微小な隙間があっても振動に対する伝達が可能であれば(振動の伝達中に、ジャイロスコープ140に作用してもよいし、間欠的に作用してもよい)、そのような隙間も許容できる。
【0036】
図5は任意選択の伝動バー構造を示し、伝動バー133及び伝動バー134がジャイロスコープ140に作用する端部はジャイロスコープ140の外形に合わせた凹状構造に設けられ、凹状構造はジャイロスコープ140と固定接続する必要がなく、安定的な位置限定を実現することができる。
【0037】
図6及び
図7は本発明の他の実施例の構造概略図であり、イヤホン200はハウジング210、プリント基板220、伝動部材230、及びジャイロスコープ240を含み、ジャイロスコープ240にはジャイロスコープが含まれる。
【0038】
プリント基板220はハウジング210内に固設され、ジャイロスコープ240はプリント基板220に固定される。伝動部材230は伝動バー231と伝動バー232を含み、伝動バー231と伝動バー232の材質と構造は同じである。
【0039】
本実施例と
図1における構造との違いは下記の通りである。伝動バー231と伝動バー232がプリント基板220の両側に対称的に配置され、且つ
図6における視角で、伝動バー231と伝動バー232との延伸線がジャイロスコープ240を通過することである。伝動バー231の一端はハウジング210の内側に固定され、他端はプリント基板220に接続される。伝動バー232の一端は伝動バー231と対称的にハウジング210の内側の他の辺に固定され、他端は同様にプリント基板220に接続される。伝動バー231及び伝動バー232と、プリント基板220との接続は、溶接、接着等の固定接続を含むがこれらに限定されず、又はプリント基板220、伝動バー231及び伝動バー232に互いに係合する溝が設けられ、溝を介して挿着される。勿論、前述したように、伝動バー231と伝動バー232がプリント基板220に当接するか又は許容可能な隙間を残すこともでき、ここでは限定しない。
【0040】
本実施例において、伝動バー231及び伝動バー232は骨伝導振動をプリント基板220に伝達し、プリント基板220の歪みによりジャイロスコープ240を駆動して歪みを発生させ、そしてジャイロスコープ240により骨伝導振動に対する感知を実現し、具体的にはジャイロスコープ240の直交誤差信号により骨伝導振動を反映する。
【0041】
伝動部材230とジャイロスコープ240との接続又は係合(非固定接続)の方法、伝動部材230の材料選択、及び伝動部材230とハウジング210との接続位置及びその限定された感知位置の選択については、何れも前述の実施例に記載されたように選択及び設定することができ、ここでは説明を省略する。
【0042】
図8は本発明の別の好ましい実施例の構造概略図であり、イヤホン300はハウジング310、プリント基板320、伝動部材330及びジャイロスコープ340を含む。
【0043】
プリント基板320はハウジング310内に固設され、ジャイロスコープ340はプリント基板320に固定される。伝動部材330は伝動バー331と伝動バー332を含み、伝動バー331と伝動バー332の材質と構造は同じである。
【0044】
本実施例において、ジャイロスコープ340はハウジング310内のイヤホン300中央部に位置する位置に配置され、伝動バー331と伝動バー332はジャイロスコープ340の両側に対称的に配置される。伝動バー331の一端はハウジング310の内側に固定され、他端はジャイロスコープ340に接続される。伝動バー332の一端は伝動バー331と対称的にハウジング310の内側の他の辺に固定され、他端は同様にジャイロスコープ340に接続される。
【0045】
本実施例と
図1における構造との違いは下記の通りである。ジャイロスコープ340の位置が下へ移動するため、伝動バー331と伝動バー332は同一の延伸方向になく、両者はジャイロスコープ340の下への移動につれて角度を形成し、同様に、伝動バー331及び伝動バー332を介して骨伝導振動をジャイロスコープ340に伝達して歪みを生じさせ、そしてジャイロスコープ340により骨伝導振動に対する感知を実現し、具体的にはジャイロスコープ340の直交誤差信号により骨伝導振動を反映する。
【0046】
伝動部材330とジャイロスコープ340との接続又は係合(非固定接続)の方法、伝動部材330の材料選択、及び伝動部材330とハウジング310との接続位置及びその限定された感知位置の選択については、何れも前述の実施例に記載されたように選択及び設定することができ、ここでは説明を省略する。
【0047】
図9は本発明の他の実施例の構造概略図であり、イヤホン400はハウジング410、プリント基板420、伝動部材430、及びジャイロスコープ440を含む。
【0048】
プリント基板420はハウジング410内に固設され、ジャイロスコープ440はプリント基板420に固定される。伝動部材430は伝動セグメント431、伝動セグメント432及び伝動セグメント433を含み、伝動セグメント431、伝動セグメント432及び伝動セグメント433は一体成形される。
【0049】
本実施例において、ジャイロスコープ440はハウジング410内のイヤホン400下部に位置する位置に配置され、伝動セグメント431と伝動セグメント432は対称的に設けられ、伝動セグメント433は伝動セグメント431と伝動セグメント432との対称軸に沿って延伸し、三つのセグメントの一端は一箇所に接続され、Y型構造を形成する。伝動セグメント431の他端はハウジング410の内側に固定され、伝動セグメント432の他端は伝動セグメント431と対称的にハウジング410の内側の他の辺にも固定され、伝動セグメント433の他端はジャイロスコープ440に接続される。
【0050】
伝動セグメント433とジャイロスコープ440との接続又は係合(非固定接続)の方法、伝動部材430の材料選択、及び伝動部材430とハウジング410との接続位置及びその限定された感知位置の選択については、何れも前述の実施例と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0051】
本実施例において、装着者が話す時に、耳道壁における骨伝導振動は感知位置(本実施例の感知位置は
図1における感知位置111、感知位置112と同じである)に作用し、且つ伝動セグメント431及び伝動セグメント432を介して骨伝導振動を伝動セグメント433に伝達し、伝動セグメント433は更に振動をジャイロスコープ440に伝達し、そしてジャイロスコープ440により骨伝導振動に対する感知を実現し、具体的にはジャイロスコープ440の直交誤差信号により骨伝導振動を反映する。
【0052】
上記全ての実施例は何れもジャイロスコープをイヤホン内に配置することを例としており、他の実施例において、イヤホン内には慣性測定ユニット(IMU)を配置し、ジャイロスコープは慣性測定ユニットに含まれ、それに応じて、上記全ての実施例におけるジャイロスコープを慣性測定ユニットに置き換えても同様の技術的効果を実現することができる。
【0053】
上記全ての実施例における伝動部材は何れも対称構造であり、これは一方でジャイロスコープ又は慣性測定ユニットが中心軸線に位置する位置に配置されるためであり、他方で対称構造の伝動部材はその中の各モジュールの製造を容易にする(モジュール製造の種類を減少する)。しかしジャイロスコープ又は慣性測定ユニットが中心軸線の位置に配置されても中心軸線からずれた位置に配置されても、非対称構造の伝動部材を採用してもジャイロスコープの骨伝導振動への感知の実現に影響せず、伝動部材は振動を伝達する役割を果たすことができればよい。
【0054】
ジャイロスコープの直交誤差信号に対する処理及び利用について、回路方式により実現し及び/又はプロセッサにより実現することができ、例えばイヤホンがオーディオ再生装置、携帯電話、AR及びVR装置等の電子装置に接続され又は電子装置の構成部分とする場合、上記電子装置内のプロセッサにより上記直交誤差信号の処理及び利用を完了することができ、具体的にどのような方法を採用するかについて、ここでは限定しない。
【0055】
上記解決手段におけるジャイロスコープは外部作用力、例えば骨伝導振動を感知するために用いられ、且つ直交誤差信号を介して受けた外部作用力を反映し、これに基づき、上記解決手段におけるジャイロスコープから提供された直交誤差信号は多くのデータ、音声方面に関する処理に適用され又は特定の機能実現の必要な手段として用いられ、ユーザインタフェースのジェスチャー検出、音声活動検出、音声認識、アクティブノイズ制御、ノイズ抑制、音声明瞭度向上等を含むがこれらに限定されない。
【0056】
例えば、上記実施例のイヤホンは、装着者から発せられた骨伝導振動を検出することで、装着者が発話していると判断することができ、装着者の発話状態を判定することで、機能の向上を図ることができる。イヤホン装着者は音声を用いて携帯電話をウェイクアップし、例えば「Hi、Siri」と言う時、ジャイロスコープは骨伝導振動を感知し、それが生成した直交誤差信号はそれに応じて大きく変化する。これらの信号はイヤホンに接続された携帯電話に受信され、携帯電話は当該信号に基づいてイヤホン装着者が話していると判断すれば、携帯電話をウェイクアップする音声はイヤホン装着者が発したものと考えられ、骨伝導振動が検出されなければ、具体的には直交誤差信号に基本的に変化はなく又は変化が小さく、そうすると携帯電話をウェイクアップする音声はイヤホン装着者が発したものではないと考えられ、それにより携帯電話をウェイクアップすることができない。
【0057】
また、電話に出る際に、イヤホン装着者からの骨伝導振動を検出すると、イヤホン装着者が話していると判断し、この時にマイクが検出した音声信号を通話側に伝達する。骨伝導振動が検出されない場合、イヤホン装着者が発話していないと判断し、この時にマイクが検出した音声信号は環境騒音と考えられ、マイク信号を通話側に伝達する必要がなく、それにより音声認識及び通話品質を改善する。
【0058】
以上の内容は、上記解決手段におけるジャイロスコープの直交誤差信号は多くの機能に利用され、それにより従来機能の効果を補強し又は新たな機能を生成できると説明することを意図しており、応用の範囲を限定するものではない。
【0059】
以上、本発明の好ましい具体的な実施例について詳細に説明した。当業者であれば、創造的な労力を要することなく、本発明の構想に基づいて多くの修正及び変更を行うことができることが理解されるべきである。従って、当技術分野において、技術者が本発明の着想に基づき従来技術に基づいて、論理的分析、推論又は限定的な実験によって得ることができる技術的解決手段は、全て請求項により確定される保護範囲内に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャイロスコープ
と伝動部材とを含み、前記ジャイロスコープによって骨伝導振動を感知し、前記ジャイロスコープの直交誤差信号は前記骨伝導振動を反映するために用いられ
ており、前記伝動部材は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに直接又は間接的に作用し、前記伝動部材は少なくとも一端が前記イヤホンのハウジングに固定され、且つ少なくとも一端が前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持しており、前記伝達部材を介して前記骨伝導振動を前記ジャイロスコープに伝達し、前記ジャイロスコープに歪みを発生させ、それにより前記ジャイロスコープの直交誤差信号の変化を引き起こすことを特徴とするイヤホン。
【請求項2】
前記伝動部材は対称構造であることを特徴とする請求項
1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記伝動部材は第一伝動モジュールと第二伝動モジュールを含み、前記第一伝動モジュールと前記第二伝動モジュールは前記ジャイロスコープの両側に配置されており、前記第一伝動モジュールの一端は前記イヤホンのハウジングに固定され、他端は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持しており、前記第二伝動モジュールの一端は前記イヤホンのハウジングに固定され、他端は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持することを特徴とする請求項
1に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記伝動部材は第一端部、第二端部及び第三端部を含み、前記第一端部及び前記第二端部は前記イヤホンのハウジングにそれぞれ固定されており、前記第三端部は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持することを特徴とする請求項
1に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記伝動部材は、剛性材料、又は前記骨伝導振動を前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに伝達するように適合され、且つ前記ジャイロスコープに歪みを生じさせることができる、一定の弾性を有する材料であることを特徴とする請求項
1に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットは基板に固定され、前記伝動部材は前記基板に直接作用し、そして前記基板を介して前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに間接的に作用することを特徴とする請求項
1に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記伝動部材と前記イヤホンのハウジングとの接続位置は感知領域を限定し、前記感知領域は、前記イヤホンが装着された時に前記骨伝導振動を感知するのに適した位置に配置されることを特徴とする請求項
1に記載のイヤホン。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか1項に記載のイヤホンを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
前記ジャイロスコープの直交誤差信号はユーザインタフェースのジェスチャー検出、音声活動検出、音声認識、アクティブノイズ制御、ノイズ抑制、音声明瞭度向上に応用されることを特徴とする請求項
8に記載の電子機器。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
ジャイロスコープと伝動部材とを含み、前記ジャイロスコープによって骨伝導振動を感知し、前記ジャイロスコープの直交誤差信号は前記骨伝導振動を反映するために用いられており、前記伝動部材は前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに直接又は間接的に作用し、前記伝動部材は少なくとも一端が
イヤホンのハウジングに固定され、且つ少なくとも一端が前記ジャイロスコープ又は前記ジャイロスコープを含む慣性測定ユニットに接続され又は当接し又は特定の間隔を保持しており、前記
伝動部材を介して前記骨伝導振動を前記ジャイロスコープに伝達し、前記ジャイロスコープに歪みを発生させ、それにより前記ジャイロスコープの直交誤差信号の変化を引き起こすことを特徴とするイヤホン。
【国際調査報告】