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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】放射線検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20230414BHJP
   G01T 1/16 20060101ALI20230414BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01T1/161 C
G01T1/16 A
G01T1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552497
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 GB2021050557
(87)【国際公開番号】W WO2021176232
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】2003333.8
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513066122
【氏名又は名称】クロメック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KROMEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー チャーリン
(72)【発明者】
【氏名】イアン ラドレイ
【テーマコード(参考)】
2G188
4C188
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB18
2G188CC29
2G188DD05
2G188DD09
2G188DD17
2G188EE37
2G188EE39
4C188EE02
4C188GG21
4C188JJ05
4C188JJ06
4C188JJ08
4C188JJ16
4C188JJ22
4C188KK33
(57)【要約】
線源からの放射線を検出する方法及び該方法の原理を具現化する放射線検出システムが記載される。前記方法は、前記線源からの放射線を受ける放射線検出器を位置決めするステップと、前記線源からの放射線に多重化変換を適用して、前記線源からの放射線のパターンに3次元の複雑さを作り出すステップと、各々が前記検出器内で発生する入射放射線との相互作用に対する応答である複数の応答を受けるステップと、前記複数の応答のそれぞれについて、前記相互作用の特性を決定するステップであって、前記特性は、前記検出器内の前記相互作用の3次元における少なくとも位置を含む、ステップと、前記複数の応答を、前記検出器内の各相互作用の3次元における決定された位置に従って処理し、そこから、前記線源からの放射線の前記パターンに関する推測を引き出すステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線源からの放射線を受ける検出器を位置決めするステップと、
前記線源からの放射線に多重化変換を適用して、前記線源からの放射線のパターンに3次元の複雑さを作り出すステップと、
各々が前記検出器内で発生する入射放射線との相互作用に対する応答である複数の応答を受けるステップと、
前記複数の応答のそれぞれについて、前記相互作用の特性を決定するステップであって、前記特性は、前記検出器内の前記相互作用の3次元における少なくとも位置を含む、ステップと、
前記複数の応答を、前記検出器内の各相互作用の3次元における決定された位置に従って処理し、そこから、前記線源からの放射線の前記パターンに関する推測を引き出すステップと、を有する、線源からの放射線を検出する方法。
【請求項2】
検出器は、検出器のx、y平面および検出器のそれに直交するz方向を有し、
前記多重化変換を適用するステップは、検出器のx、y平面だけでなく検出器のz方向にも3次元の複雑さを導入するステップを有し、
前記方法は、検出器のx、y平面だけでなく検出器のz方向にも各相互作用を局所化するステップを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記多重化変換は、前記線源からの放射線に対して作用し、前記線源からの放射線の前記パターンに、距離に応じて何らかの機能的変動を有する複雑さを追加する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多重化変換は、前記線源からの放射線のオーダーと前記検出器の位置での放射線のオーダーとの間のx、y平面における単調関係を生成するために、前記線源からの放射線に対して作用しない、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記多重化変換は、前記線源からの放射線が、多重化フィルタを通過するときに、前記線源からの放射線のパターンに3次元において解像可能な複雑さを生成するように構成された前記多重化フィルタを通過させられる点で行われる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記多重化フィルタは、離散構造を備え、かつ線源と前記検出器との間に配置され、前記検出器に入射する前に、前記線源からの放射線の前記パターンに対して3次元おいて解像可能な複雑さを生成するように構成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記多重化フィルタは、前記検出器と組み合わされる、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記多重化変換は、前記検出器が前記多重化変換を実行するように適合されるという点で、前記検出器によって実行される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記検出器内で発生する入射放射線との相互作用が、前記検出器内の相互作用位置に3次元で位置決めされることを可能にするように適合または構成された検出器の使用を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
3次元ボクセルアレイを備える検出器の使用を含み、前記複数の応答のそれぞれについての決定が、相互作用の3次元における少なくとも位置を含む前記相互作用の特性が、特定のボクセルに対する前記相互作用を局所化することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
放線源からの放射線を検出するための放射線検出システムであって、該放射線検出システムは、
検出器と、
前記線源からの放射線のパターンに3次元の複雑さを作り出すために、前記線源からの放射線に基づいて作動する多重化変換器と、
処理モジュールであって、該処理モジュールは、
各々が前記検出器内で発生する入射放射線との相互作用に対する応答である複数の応答を受け取り、
前記複数の応答のそれぞれについて、前記相互作用の特性を決定し、前記特性は、前記検出器内の前記相互作用の3次元における少なくとも位置を含み、
前記複数の応答を、前記検出器内の各相互作用の3次元における決定された位置に従って処理し、そこから、前記線源からの前記放射線のパターンに関する推測を引き出すように、動作可能である、処理モジュールと、を備える、放射線検出システム。
【請求項12】
前記検出器は、検出器のx、y平面およびそれに直交する検出器のz方向を有し、
前記多重化変換器は、前記線源からの放射線に対して動作可能であるように構成され、例えば、検出器のx、y平面内だけでなく検出器のz方向にも3次元の複雑さを導入するように動作可能であるように位置決め可能である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記多重化変換器は、前記線源からの放射線に対して作動し、前記線源からの放射線の前記パターンに、距離に応じてある程度の機能的変動を有する複雑さを追加する、請求項11又は請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記多重化変換器は、前記線源からの放射線のオーダーと前記検出器の位置での放射線のオーダーとの間のx、y平面における単調関係を生成するために、前記線源からの放射線に対して動作しない、請求項11から請求項13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記多重化変換器は、ピンホールのアレイを備える、請求項11から請求項14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記検出器は、前記検出器内で発生する入射放射線との相互作用を、前記検出器内の相互作用位置に3次元で局所化させることを可能にするように適合され又は構成される、請求項11から請求項15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記検出器は、3次元ボクセルアレイを備えるボクセル検出器である、請求項11から請求項16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記検出器は、半導体検出器である、請求項11から請求項17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記半導体検出器は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)およびそれらの合金から選択される半導体検出器材料を含み、例えば、a+b <1並びにaおよび/またはbが0であってもよい結晶Cd1-(a+b)Mna Znb Teを含む、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線源、例えば放射性同位体源からの放射線を検出するための放射線検出システムに関し、特に、線源が検出器において低信号を生成する線源からの放射線の検出に適合したシステムに関する。本発明は、さらに、そのような線源からの放射線を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線源から放射され、検出システムで受信される放射線に関するより正確な情報を得ることが望ましい場合がある広範囲のシナリオが存在する。特に、線源および/または放射線が線源と検出器との間を通過した材料に関する付加的な情報を提供するために、例えば空間的および/または分光的に情報を解決することが望ましい場合がある広範囲のシナリオが存在する。
【0003】
このようなシナリオには、線源と検出器とが意図的に離間して配置され、被検体内の高活性領域から放射される放射線が検出器で測定されて、検査対象物に関する情報を決定するシナリオが含まれるが、これらに限定されない。
【0004】
このような後者のシナリオの実施例としては、核医学画像法が挙げられ、ここでは、放射性同位体源からの放射線が、被検体の身体の一部に通過させられ、遠隔検出器で受け取った放射線に関する空間的に登録された情報が、患者の解剖学のその部分の構造及び/又はリアルタイムの生理学的機能に関する情報を得るために、また、例えば、その構造及び/又は生理学的機能の画像を構築するために使用される。しかしながら、そのような用途の議論は単なる例としてであり、本発明は医療又は画像用途に限定されるものではない。
【0005】
本発明の原理は、線源からの信号が比較的低い特定の用途を見出し、検出器に入射する線源から放射される放射線の比較的少ない数の粒子からの分解可能なデータの信号は、結果的に低減され、バックグラウンドからの意味のある情報を解決することがより困難になる。このような考慮は、被検者が受ける放射線量を最小限に抑えるために明確な必須条件がある医療用途においては、特に当てはまる可能性が高い。したがって、ここでも、核医学画像は、本発明の原理が有利に適用できる技術の良い例を提供する。
【0006】
かしながら、低レベル信号からのより高いレベルの情報の解像度に関する本発明の利点は、一般に、線源からの低信号を解像する必要がある全ての場合に適用される。低信号が期待される非医療用途の実施例は、携帯型ガンマカメラを用いた原子力施設の検査であろう。
【0007】
本発明の利点は、画像の再構成が必要となり得る状況、および画像の再構成が不必要または望ましくない状況において、類似および異なる方法の両方において発生し得る。
【0008】
確立された核医学画像技術の一例は、ガンマ線を用いた核医学断層撮影技術であるSPECT(single-photon emission computed tomography)(単光子放出コンピューター断層撮影)である。この技術は、例えば、ガンマ線を放射する放射性同位体の血流を介して患者に送達することを必要とする。典型的な応用例では、放射性同位体は特定の配位子に結合されており、検査対象の体内の関心のある場所に運ばれて結合されることを可能にする。
【0009】
放射性同位体は、被検体の組織を通過し、適切な検出器、例えばガンマカメラで検出できるガンマ線を放射する。ガンマカメラによるSPECTイメージングは、複数の二次元画像を取得し、その後、標準的な断層撮影再構成技術を用いて3次元データセットに構築される。
【0010】
陽電子放出断層撮影(PET)においても同様の原理が採用されている。この場合、陽電子を放射する放射性同位元素は、通常、放射性配位子の一部として体内に導入される。この場合、放出された陽電子は局所的に消滅し、この消滅事象によって間接的に放出されるガンマ線の一対をシステムが検出する。
【0011】
両方の技術は特に強力であり、身体の関連する部分の画像化だけでなく、生物学的プロセスの能動的機能画像化を可能にする。
【0012】
乳房組織の画像化のための周知技術、例えば、乳癌の早期発見につながる可能性のある異常を検出するための技術は、マンモグラフィーである。標準的なマンモグラフィーでは、X線を使って画像を作成する。次いで、これらの画像を異常な知見、例えば潜在的な腫瘍を示す可能性のある特性密集塊について解析する。その後、これらの患者はさらに、通常はより侵襲性の高い検査を受けるように紹介される。このように、標準的なマンモグラフィーは、広く採用されている第1段階のスクリーニング技術である。
【0013】
しかしながら、低エネルギーX線に対する正常であるが比較的高密度の乳房組織の反応は、多くの一般的な腫瘍の潜在的な発生を示す可能性のある一種の塊の反応と類似する可能性があり、高密度の乳房組織の割合が高い患者におけるこの技術の識別能力は、結果的に低下する。
【0014】
分子乳房イメージング(MBI)は、SPECT型技術の上記原理の多くを利用する開発された核医学画像技術である。再び適切な配位子に結合して乳房組織内に位置させる放射性同位体源が、検査中の対象に導入される。乳房組織を通過した後の線源からの放射線を検出するために、一般に、より従来のマンモグラム用のものに対応する構成の小型半導体ベースのガンマカメラの適切なシステムが使用される。この技術は、構造と生理的活動を区別することができるので、初期の腫瘍を検出するのに特に効果的である。しかしながら、一般的に、これは検査中の患者をより高い全放射線量にさらすが、これは第一段階スクリーニング技術としての適用を制限する傾向がある。
【0015】
全ての核医学画像技術において、線源の放射能、及びその結果として検査中の被検体が受ける放射線の線量を可能な限り低く保つための明確な必須条件が存在する。結果として検出器で収集される低信号は、データの検出と解像度の両方に関連して、特に問題を提起する。
【0016】
必要な線源信号に影響する要因は、検出の効率である。特に、イメージング技術に関連して、要求されるx、yの解像度を得るために、xおよびy方向の、複数の別個にアドレス指定可能な検出点または領域を区別する検出システムが必要とされる。イメージングステムにおいて、各点または領域は、再構成画像内の画素に対応してもよく、一般に、検出器上の画素と称されてもよい。得られた画像において有効なx、y解像度を達成するためには、xおよびy方向の「画素」を、xおよびy方向における別個にアドレス指定可能な「画素」のそれぞれについて、有効な信号を個々に得ることを可能にする方法で区別する検出システムが必要である。
【0017】
任意の種類の放射線検出器、特に従来の医用画像用途で広く使用されている固体検出器は、通常、その効率が厚さに依存するという特徴によって特徴付けられる。それは自明な関係である必要はないが、ほとんどの場合、検出器が厚くなればなるほど効率が上がる。通常、従来の医用画像用途で広く使用されている固体検出器の効率は、検出面のx、yに直交する、すなわち、z方向に、適切な深さを設けることによって高められる。
【0018】
しかしながら、z方向にも実質的な深さを有する検出器においてx、yにおける位置登録を維持するためには、検出器に入射する線源から放出される信号をコリメートする必要がある。核医学画像技術における任意の画像の品質と有用性は、コリメータ構造によって深刻な影響を受ける。線源とガンマカメラまたは他の検出器との間の広がり角が非常に小さい平行ホールコリメータのようなコリメータを使用するのが普通である。このコリメータは、線源と検出器との間の信号に登録を作り出し、x、y平面において1対1の登録に近づく。
【0019】
従って、SPECT、PET又はMBIのような核医学画像を具現化する技術のための装置の効果的な開発は、x、y方向に実質的に1つから1つの登録を完成させた効果的なコリメーションに対する要件、例えば、非常に小さい広がり角を有する平行ホールコリメータを使用すること、その結果としてのコリメータによる信号の減少、及び可能な限り低い放射線線量源に対する要件との間の妥協である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
低信号源からの放射線に関する情報の解像度を可能にする代替的な検出システム及び方法を提供する一般的な希望がある。
【0021】
核医学において適用可能であり、より効果的かつ効率的な方法でこれらの相反する考慮に対処し、患者および/または低減された放射線量レベルからの生理学的に関連するデータの改善された解像度を提供し得るこのような代替案を提供することが特に望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様における本発明によれば、線源からの放射線を検出する方法は、
前記線源からの放射線を受ける放射線検出器を位置決めするステップと、
前記線源からの放射線に多重化変換を適用して、前記線源からの放射線のパターンに3次元の複雑さを作り出すステップと、
各々が前記検出器内で発生する入射放射線との相互作用に対する応答である複数の応答を受けるステップと、
前記複数の応答のそれぞれについて、前記相互作用の特性を決定するステップであって、前記特性は、前記検出器内の前記相互作用の3次元における少なくとも位置を含む、ステップと、
前記複数の応答を、前記検出器内の各相互作用の3次元における決定された位置に従って処理し、そこから、前記線源からの放射線の前記パターンに関する推測を引き出すステップと、を有する。
【0023】
本発明は、3つのステップによって区別される。
前記入射放射線を変換して3次元の複雑さを加えるステップと、
前記検出器における放射線相互作用ごとに、検出器内の前記相互作用の3次元における位置を決定することによって検出器における複雑さを測定するステップと、
結果として生じる前記検出器内の相互作用のパターンをデコンボリューションして、線源からの放射線のパターンの描像を再構成し、それによって、その再構成から前記線源について推測をすることを可能にするステップと、である。
【0024】
本発明は、線源からの放射線のパターンへの3次元における複雑さの意図的な導入、この3次元的複雑さの検出、及び処理段階でのこの検出された複雑さの使用によって、先行技術に対して明らかに特徴付けられる。
【0025】
すなわち、放射線の多重化されたパターンは、検出器のx、y平面のみならず検出器のz方向にも導入された3次元の複雑さを有し、検出器は、検出器のx、y平面のみならず検出器のz方向にもそれぞれの相互作用を局所化し、次いで、この3次元のデータセットをデコンボリューションして、線源からの放射線のパターンの写真を再構成することが本発明に固有である。
【0026】
ここで、多重化変換への言及は、示された一般的な意味を有するものとみなされるべきであることを理解されたい。それは、線源からの放射線に適用される場合には、線源からの放射線のパターンにおいて複雑さを3次元で作り出すことが有効であり、この3次元複雑さは、検出器でのその意図的な検出によって、また、処理段階でこの検出された複雑さの使用によって、本発明の後の段階で利用される。電気通信やコンピュータ・ネットワークのデータ伝送、エレクトロニクス及び信号処理、又は他の技術のような特定の分野において技術的に適用され得る多重化/多重化装置のより精密で限定された意味は、どれも推測されるべきではない。
【0027】
データのより複雑さを保持するためのこの多重化変換の機能、その意図的な検出、およびそれに続くより複雑なデータの分析は、例えば核医学断層撮影イメージングのための従来のイメージング装置における平行ホールコリメータまたは類似のフィルタのそれと対比することができる。
【0028】
このような従来技術では、従来採用されているアプローチは、単調コリメーションによって、線源からの放射線の複雑さを検出器のx、y平面に対応する2次元に制限し、検出器内のx、y平面に、例えば、画素毎に、局所化された相互作用を検出することである。従来技術のアプローチでは、x、y位置のzに対する変動は、利用される特徴としてではなく、排除されるべき問題として見なされる。
【0029】
従来の核医学画像では、被検体に投与される放射性同位体を被検体の体の一部に局在させ、例えば乳房組織内のMBIの場合に、線源からの放射線を検出器で検出し、x、y方向に直接空間的に登録された放射線が通過した組織に関する情報を再構成するために用い、例えば、画像を構築するために用いられ、断層撮影法の場合に、連続層の画像を構築するために用いられる。
【0030】
これには、ピクセル化された検出器の使用および線源放射線と検出器表面上の別個にアドレス可能なピクセルとの間のx、y方向における実質的に1対1の登録の維持が必要である。
【0031】
検出器が検出器x、y方向に配列された複数の検出部分に効果的に細分化されるこのようなピクセル化された検出器は、もちろんなじみである。検出器は、例えば、離散サブユニット、適切な処理電子機器、またはこれら2つの組み合わせを設けることによって、容易にピクセル化することができる。
【0032】
本発明のために想定されるタイプの放射線検出器は、通常、その効率がその厚さに依存するという特徴によって特徴付けられる。検出器の効率は、通常、適切な深さを設けることによって高められる。このような検出器の各検出部分または「ピクセル」も、第3の直交またはz方向において実質的な深さを有することに従う。深さは、所定の検出部についてはz方向の深さがx、yにおける検出部の横方向の広がり(すなわち、x、yにおける「画素」サイズ)の数倍大きいようなものである可能性が高い。
【0033】
線源と検出器との間のx、yにおける近接した1対1の位置登録を維持しようとする上述のような従来のシステムでは、これは、より深いレベルの粒子相互作用が、「間違った」検出部分またはピクセルに登録し、結果として生じる画像を歪ませる可能性があるので、問題を生じさせる可能性がある。
【0034】
従って、従来のシステムは、検出器のピクセル化された領域とのx、yにおけるこのほぼ1対1の登録を作成するために、線源放射線と検出器との間にコリメータ等のフィルタを含む。例えば、非常に狭い角度開口部を有する平行ホールコリメータが使用される。これは、線源から検出器へと通過する際に、放射線パターンにおけるx、yにおける実質的に単調な1対1の位置登録を維持することを意図している。
【0035】
平行な穴には、十分に狭い角度の開口部が与えられ、実質的に1対1の登録を検出器の線源と個々のピクセルとの間に直接作り出す。これにより、検出器内の任意の深さで検出される任意の光子が、相互作用が生じる表面上のピクセルに正しく登録され、関連付けられることが保証される。この狭いコリメーション角度がなければ、各ピクセルに関連する表面相互作用と深さ相互作用との間に、そのような一貫した登録は存在せず、画像の解像度の損失が引き起こされるであろう。
【0036】
この欠点は、かなりの数の光子が検出器に到達しないことである。一般的なMBIシステムでは、おそらく10個の光子のうち1個しか登録されていない。同様のレベルは、他のSPECTタイプの技術にも典型的である。
【0037】
その結果、放射線のはるかに高い信号源が、および、医学画像の場合において、その結果として、患者の組織内に、より高い放射線量が、検出器において満足できる数の光子相互作用を得て画像を生成するために、要求される。これに代わるものとして、コリメータが通過する角度を緩和するために、例えば、より大きな寸法の穴を使用することによって、画像の解像度が失われる。
【0038】
したがって、本発明の言語では、コリメータは、線源からの放射線に変換を作用させて、線源からの放射線のパターンから第3次元の複雑さを除去し、検出器においてx、yに本質的に単調に完全に位置登録されたデータを作成する。対応して、検出器におけるイメージングシステムの場合には、検出器における各画素は、画像データセット内の対応する画素を直接再構成するために、後続の処理電子機器に対応し、後続の処理電子機器によって使用される。
【0039】
対照的に、本発明は、検出器においてこの複雑さを3次元で意図的に検出することによって、3次元にある程度の複雑さを放射パターンに意図的に加える多重化変換を使用することによって、また、このより複雑なデータを再構成し、線源からの放射線に関しては追加的または代替的推論を引き出すために処理モジュールを設けることによって、および、線源放射線が、患者の身体の一部などの被検体を通過した場合、または被検物体から出た場合に、このより複雑なデータから被検体/身体に関する情報を再構成することによって、明確に特徴付けられる。
【0040】
その結果、本発明は、適切な信号を維持すること/放射線量を低減することと、画像コントラストを失うことと、の間の従来技術に存在する明らかな矛盾に対して、大きく異なるアプローチをとる。それは、以下の実現に依存している。各光子相互作用の深さ、すなわち、深い検出器内のz方向の位置もまたある程度分解できれば、各光子相互作用がx、y、z座標のすべてにおいてある程度の位置に局所化され得るデーセットが生成され、これにより推測を描くことができ、データセットは、適切な処理および再構成モジュールにおいて、適切な再構成方法によってデコンボリューションされることができ、これにより、ほぼ1対1のx、yの登録の目的でコリメートする必要性がなくなり、その結果、フィルタを通過することが妨げられる光子の数を大幅に低減することができ、したがって、検出モジュールにおいて有用に収集され、意味のある処理が行われるフィルタを通過する光子の割合が大幅に増加する可能性がある。有効な一組のデータは、非常に低い固有放射能源レベルを有する検出モジュールで収集され得、例えば、医学画像の場合には、患者の組織内への結果としてのより低い放射線量が得られる。
【0041】
それにもかかわらず、距離と共に何らかの機能的変動を有する線源からの放射線のパターンに複雑さを追加する何らかの形態の多重化変換が必要であることが理解されるであろう。この付加的な複雑さがなければ、本発明が想像するように3次元で位置的に分解されたとしても、検出器で検出された相互作用についてのデータにパターンはまったく存在しないであろう。従って、何らかの形態の多重化変換器またはフィルタを用いて、線源からの放射線のパターンにこの複雑さを導入する。
【0042】
多重化変換器またはフィルタは、従来の平行ホールコリメータがそうであるように、線源からの放射線のオーダーと検出器での放射線のオーダーとの間の単調な関係を導入しようとせず、例えば、検出器上の個々のピクセルに配置される。それは、パターンの複雑さを二次元のみに減らそうとはしない。むしろ、それは、検出器で検出される放射線に解像可能な3次元の複雑さを導入し、その3次元の複雑さは、相互作用の深さを検出し、単なるx、y位置に注目する検出器を使用することによって検出され得、次いで、原理的には、処理段階で解像され得る。
【0043】
線源からの放射線のパターンに3次元の複雑さを作り出すために線源からの放射線に対して多重化変換を行う方法が必要である。
【0044】
可能な実施形態では、多重化変換は、線源からの放射線が、フィルタを通過するときに、線源からの放射線のパターンに対して3次元で分解可能な複雑さを生成するように構成された多重化変換器またはフィルタを通過させられるという点で行われる。
【0045】
適切な多重化フィルタは、線源と検出器との間に使用時に位置決め可能であり、放射線が検出器に入射する前に、線源からの放射線のパターンに対して3次元に分解可能な複雑さを生成するように配置される場合に構成される離散構造を含んでもよい。
【0046】
加えて、または代替的に、多重化フィルタを検出器と組み合わせてもよく、および/または、多重化変換を実行するように適合された検出器を備えてもよい。
【0047】
このような多重化フィルタは、従来技術のような単調コリメータではない。それは、線源からの放射線のパターンから3次元の複雑さを除去し、検出器でx、yに本質的に単調に完全に位置登録されたデータを作成するために、線源からの放射線に対する変換を行わない。多重化変換を経た放射線にはある程度の分解可能な複雑さが存在することが必要であるが、この分解可能な複雑さは線源放射線に3次元で関数関係を持つことを示した。
【0048】
ピンホールの単なる一対を含むフィルタは、必要な複雑さを提供する放射線の合成重複円すい形で十分であろう。フィルタに入射する信号と、理論的に完全な平行ホールコリメータの場合と同様にフィルタによって通過される信号との間に、x、yにおける実質的な単調対応が存在しないことで、単に、十分である。
【0049】
それに反して、本発明は、検出器における各光子相互作用が、単にx、y座標に位置決めされるだけでなく、相互作用が生じる検出器内の深さを決定することによってz座標において十分な程度に位置決めされる場合、単調コリメーションはもはや必要ではなく、望ましくさえなく、その代わりに、3次元データをデコンボリューションし、それに従って情報を抽出するために、適切な処理および再構成モジュールと組み合わせて、線源からの入射光子のかなり大きな割合を通過させる多重化フィルタが使用されてもよいという実現に依存する。
【0050】
本発明によれば、本方法は、検出器内で発生する入射放射線との対応する複数の相互作用に対する複数の応答を受け取り、そのような応答のそれぞれに対して、前記相互作用の検出器内の少なくとも3次元の位置を決定するステップを含む。
【0051】
例えば、本発明の方法は、検出器内で発生する入射放射線との相互作用が、3次元で検出器内の相互作用位置に局所化されることを可能にするように適合または構成された検出器の使用を含む。このような場合の方法は、線源からの放射線をそのような検出器に入射させ、それに応じて受信ステップおよび決定ステップを実行するステップを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、例えば、本発明は、3次元ボクセルアレイを含む検出器の使用を含み、複数の応答のそれぞれについての決定は、少なくとも相互作用の3次元における位置を含む相互作用の特性は、特定のボクセルに対する前記相互作用を局所的に含む。
【0053】
好ましくは、検出器は、入射放射線の方向に略垂直な平面内で、xおよびy方向のそれぞれに、x、y平面に略直交する方向で、検出器内の深さを含むz方向に、検出器内の相互作用を局所化する手段を備える。
【0054】
例えば、放射線検出器は、2つの直交する方向、以下ではx方向及びy方向のそれぞれにおいて、検出表面を横切って位置決めされた複数の別個にアドレス指定検出部分に分割された検出表面を含み、それによって、線源から入射する放射線の粒子の検出モジュールにおける相互作用が、検出部分に位置決めされてもよく、放射線検出器は、第3の直交する方向、以下ではz方向の深さであって、線源から入射する放射線の粒子の検出モジュールにおける相互作用が、さらにz方向の深さに位置決めされてもよいように構成される。
【0055】
この方法は、さらに、例えば、放射線検出器とデータ通信する適切な処理モジュールにおいて、検出器における連続する複数の粒子相互作用からの放射線データを受け取り、処理するステップを含み、各々は、それによって、特定のボクセル及び/又はx、y及びz座標に位置決めされる。
【0056】
本発明の原理は、適切に整合された検出器に入射する様々なソースからの様々なタイプの放射線に適用することができる。放射線は、好ましくは、電離放射線のような高エネルギー放射線、例えば、X線および/またはガンマ線またはサブ原子粒子放射線などの高エネルギー電磁放射線を含み、検出器システムは、対応して、このタイプの放射線を検出し、適切なスペクトルで検出するようになっている。
【0057】
さらなる態様による本発明によれば、線源からの放射線を検出するための放射線検出システムが提供される。放射線検出システムは、
検出器と、
線源からの放射線のパターンに3次元の複雑さを作り出すために、線源からの放射線に基づいて作動する多重化変換器と、
処理モジュールであって、該処理モジュールは、
各々が検出器内で発生する入射放射線との相互作用に対する応答である複数の応答を受け取り、
前記複数の応答のそれぞれについて、前記相互作用の特性を決定し、前記特性は、前記検出器内の前記相互作用の3次元における少なくとも位置を含み、
前記複数の応答を、検出器内の各相互作用の3次元における決定された位置に従って処理し、そこから、線源からの放射線のパターンに関する推測を引き出すように、動作可能である、処理モジュールと、を備える。
【0058】
システムは、特に、第1の態様の方法の性能に適合したシステムであり、各態様の好ましい特徴は、他方にも適用可能であると理解されるであろう。
【0059】
特に、多重化変換器は、線源からの放射線に対して動作可能であるように構成され、例えば、検出器のx、y平面内だけでなく検出器のz方向にも3次元の複雑さを導入するように動作可能であるように位置決め可能である。特に、検出器は、検出器のx、y平面内だけでなく、検出器のz方向にも各相互作用を局所化するように構成される。特に、処理モジュールは、得られた3次元データセットを収集し、次いで同じものをデコンボリューションして、線源からの放射線のパターンの図面を再構成するように動作可能である。
【0060】
データのより複雑さを保持するためのこの多重化変換器の機能、その意図的な検出、およびそれに続くより複雑なデータのデコンストラクションは、例えば、核医学断層撮影イメージングのための従来のイメージング装置におけるコリメータまたは類似のフィルタの機能と上記のように対比され得る。
【0061】
放射線パターンに意図的に3次元である程度の複雑さを付加する多重化変換器を使用することによって、検出器においてこの複雑さを3次元で意図的に検出することによって、さらに複雑なデータを再構成し、線源からの放射に関して追加的または代替的推論を引き出す処理モジュールを設けることによって、線源放射線が患者の身体の一部などの被検物体を通過した場合、または被検物体から出現した場合には、被検物体/身体に関する情報を、このはるかに低い固有の放射線源レベルのこのより複雑なデータから再構成することができ、例えば、医学画像の場合には、その結果、より低い放射線量が患者の組織内にもたらされる。
【0062】
それにもかかわらず、距離と共に何らかの機能的変動を有する線源からの放射線のパターンに複雑さを追加する何らかの形態の多重化変換が必要であることが理解されるであろう。この付加的な複雑さがなければ、本発明が想像するように3次元で位置的に分解されたとしても、検出器で検出された相互作用についてのデータにパターンはまったく存在しないであろう。
【0063】
いくつかの実施形態では、適切な多重化フィルタは、線源と検出器との間に使用時に位置決め可能であり、放射線が検出器に入射する前に、線源からの放射線のパターンに対して3次元で分解可能な複雑さを生成するように配置された場合に構成される離散構造を含んでもよい。
【0064】
加えて、または代替的に、多重化フィルタを検出器と組み合わせてもよく、および/または、多重化変換を実行するように適合された検出器を備えてもよい。
【0065】
ピンホールの単なる一対を含むフィルタは、必要な複雑さを提供する放射線の合成重複円すい形で十分であろう。フィルタに入射する信号と、理論的に完全な平行ホールコリメータの場合と同様にフィルタによって通過される信号との間に、x、yにおける実質的な単調対応が存在しないことで、単に、十分である。
【0066】
好ましくは、検出器は、検出器内で発生する入射放射線との相互作用が、3次元で検出器内の相互作用位置に局所化されることを可能にするように適合または構成される。
【0067】
例えば、いくつかの実施形態では、検出器は、3次元ボクセルアレイを含むボクセル検出器である。このような場合、複数の応答のそれぞれについて、相互作用の3次元における少なくとも位置を含む相互作用の特性を決定することは、特定のボクセルに前記相互作用を局所化することを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、検出器は、入射放射線の方向に略垂直な平面内で、xおよびy方向のそれぞれに、x、y平面に略直交する方向で、検出器内の深さを含むz方向に、検出器内の相互作用を局所化する手段を備える。
【0069】
例えば、放射線検出器は、2つの直交する方向、以下ではx方向及びy方向のそれぞれにおいて、検出表面を横切って位置決めされた複数の別個にアドレス指定検出部分に分割された検出表面を含み、それによって、線源から入射する放射線の粒子の検出モジュールにおける相互作用が、検出部分に位置決めされてもよく、放射線検出器は、第3の直交する方向、以下ではz方向の深さであって、線源から入射する放射線の粒子の検出モジュールにおける相互作用が、さらにz方向の深さに位置決めされてもよいように構成される。
【0070】
結局、検出器が、各光子相互作用が生じる相互作用の深さ(すなわち、z方向の寸法)の判定を可能にするように構成されることは、本発明の基本的かつ必要な特徴である。これは、材料、構造的特徴および処理エレクトロニクスの組み合わせによって、任意の適切な方法で達成されてもよい。
【0071】
例えば、バルク結晶テルル化カドミウム型固体半導体検出器のような、相互作用情報の深さを抽出することを本質的に可能にする材料から検出器を製造することができる。半導体検出器を構成する材料は、例えば、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、およびそれらの合金から選択され、例えば、a+b<1並びにaおよび/またはbが0であってもよい結晶Cd1-(a+b)MnaZnbTeを含む。バルク単結晶検出器が特に好ましい場合がある。有利には、このタイプの検出器は、入射放射線事象に対する相互作用の深さの判定に本質的に適応される点で有効である。有利には、このタイプの検出器は、広いスペクトル範囲にわたってX線およびガンマ線に対して高感度を示し、シンチレーション検出器よりもエネルギー分解能が優れており、したがって、広範囲のシナリオおよび広範囲の放射線源で本発明の原理を利用する可能性を提供する。
【0072】
加えて、または代替的に、検出器は、適切な検出器材料のz方向における複数の離散層を含んでもよい。例えば、多層シンチレータ検出器は、本発明の実施に好適であってもよい。
【0073】
本発明の主要な利点は、適当な再構成技術に従うことを前提として、画像化のために必要であれば、3次元でx、y、z座標に分解された光子相互作用のセットから付加的な情報を導出する機能にあり、その結果、単調コリメーションと比較してフィルタを通過するときに信号の損失がかなり低減される。その結果、本発明は、ソースが低信号源である任意のシナリオにおける情報の抽出に特に適している。この場合、これがソースの固有の特徴であるかどうか、または、例えば、医療用途におけるソースの望ましい特徴であるかどうかである。
【0074】
本発明の性能に適した多重化フィルタは、X、Y座標における位置の関数の少なくとも一部であるパターンを作成するために、方向登録されたベースに入射する放射線の一部のみを差動的に通過させて、線源から放射される放射線中のx、yと検出器でのx、yとの間の何らかの登録を作成するが、x、yにおいて実質的に1対1の登録を生成するようには設計されていない任意の装置を含む。
【0075】
例えば、多重化フィルタは、コリメータであってもよいが、線源から発生する照射中のx、yと検出器でのx、yとの間の単調に近似する設計登録を有するコリメータではない。適切なコリメータは、例えば、ピンホールアレイのような開口部の一次元または二次元アレイ、および比較的広い角度許容度を有する平行な穴およびスリットのアレイを含むことができる。
【0076】
他の多重化フィルタは、適切に被覆された光学系を含んでもよい。
【0077】
最も簡単には、一対のピンホールでさえ有用な複雑さを導入することができ、そのような単純な原理に基づく多重化フィルタの実施例は、例示として本明細書で以下に論じられるが、フィルタを通過するときに線源からの放射パターンに3次元にある程度の複雑さを導入し、フィルタに入射する線源からの信号とフィルタによって通過される信号との間にx、yにおいて実質的な単調対応を生じない任意の適切な設計は、検出モジュールで受信され収集されたより複雑なデータから有用な情報を導出するために、処理モジュール内の適切なデコンボリューション技術と適切に組み合わせることができる。多重化フィルタの適切な設計は、特定の問題を解決するために、適切なデコンボリューション技術と容易に組み合わせられるであろう。いずれの場合も、画像の再構成のためにデコンボリューションされたデータの使用が必要とされる場合があり、画像の再構成が不必要または望ましくない場合がある。
【0078】
可能な実施形態では、この方法は、被検体を透過した後に放射データを収集する方法として、例えば被検体を撮像する方法として適用され、このシステムは、被検体を透過した後に放射データを収集するシステムとして利用されるように適合されている。
【0079】
このような場合、本方法は、
線源と多重化フィルタとの間に被検体を配置するステップと、
前記線源からの放射線を前記被検体に入射させ、そこから発生する前記放射線の少なくとも一部をフィルタに通過させ、検出モジュールに入射させるステップと、を追加的に有する。
【0080】
被検体を透過した後に検出モジュールで収集される連続する複数の粒子相互作用の各々は、x、y、およびz座標に位置決めされる。
【0081】
可能な実施形態では、そのように位置決めされた連続する複数の粒子相互作用のためのデータは、画像データセットを生成するために処理される。本方法は、画像を生成するステップと、任意に、画像をさらに表示するステップとをさらに有することができる。システムは、画像を生成するための画像生成モジュールと、画像表示装置とをさらに備えることができる。本方法は、断層再構成として連続画像を生成するステップをさらに有し得る。システムは、同様の効果をもたらすために、断層再構成モジュールをさらに備えてもよい。
【0082】
好ましい実施形態では、本方法は、医学的検査の方法として、例えば医学画像として適用され、被検体は、被検体の身体の一部である。
【0083】
さらに、または代替的に、位置決めされるように連続する複数の粒子相互作用のためのデータは、被検体内の下部組織の位置を三角法で測るために処理されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
次に、添付図面の図1図7を参照して、本発明を例として説明する。
【0085】
図1】本発明のシステムおよび方法における適用のための多重化フィルタの一例であるピンホールコリメータを示す、複数ピンホール多重化の原理を示す図である。
図2】垂直方向から測定した光子角度の機能として、厚さ7mmのCZT検出器に向けられた光子の吸収確率のプロットである。
図3】角度=0°に対して異なる角度で検出器に入射する光子の吸収確率の比率のプロットであり、その比率は、図2からのデータに基づく。
図4】複数ピンホールコリメータによる多重化の量を制御するための追加アイデアである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1は、しばしば複数ピンホール画像多重化と呼ばれる原理を示しており、線源から検出面に画像を投影するために使用されるピンホールコリメータを示している。最も単純な場合には、一対のピンホールであっても、有用な複雑さを導入する可能性があり、本明細書では、例示により、その原理について説明する。
【0087】
各ピンホールは、ピンホールとそれらの幾何学的形状との間の距離に応じて、それらの画像の可能な重複を有する検出器平面上の被検体の部分画像を作成するであろう。検出器データからの完全な被検体画像の再構成は、各ピンホールにより作成された全ての個々の画像を、シフト及び投影角度の適切な調整により一緒にすることから成るであろう。
【0088】
部分画像上の重複は、通常、多重化と呼ばれる。それは、典型的には、画像欠陥として、又は少なくとも、調整すべき画像アーチファクトとして見られる。当然、多重化領域が大きいほど、結果として生じる再構成被検体画像アーチファクトは大きくなる。コリメータの効率を上げようとすると(つまり、検出器に到達する光子の数を増やそうとすると)、最大効率には困難な限界がある。
【0089】
しかしながら、ピンホールコリメータを本発明のシステム及び方法において適用するために多重化フィルタを使用する場合、ある量の多重化を可能にすることは、検出器のz方向の相互作用の深さについてデータを得ることを可能にする検出器が使用されても、検出面の平面上のx、y位置についてのデータだけではなく、さらなる効率を増加させることを可能にするであろう。
【0090】
多重化フィルタは、従来の平行ホールコリメータがそうであるように、線源からの放射線のオーダーと検出器上の個々のピクセルに位置づけられた光線の放射線のオーダーとの間の単調な関係を導入しようとしない。多重化フィルタを通過した放射線には、ある程度解像可能な複雑さがあることが必要である。実施形態では、放射線の重複円すい形は必要な複雑さを提供する。
【0091】
次いで、本発明は、検出面のx、y平面における相互作用に関するデータに加えて、検出器のz方向における相互作用の深さについて得られたデータを利用する。本質的にこれを行うことができる検出器が好ましい。
【0092】
一実施形態では、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)の厚いバルク半導体検出器が使用される。このような検出器は、x、yにおける特定のピクセル内の位置と同様に、z方向における光子相互作用の深さを決定することを本質的に可能にする。しかしながら、本発明は、このような検出器に限定されるものではない。そのような半導体検出器は、任意の「深さ感知」または「3D位置感知」の検出器構造に置き換えることができ、例えば、ある程度の深さ感知を提供するために、数層からなるシンチレータ検出器モジュールを含む。
【0093】
実施形態は、隣接するピンホールからの画像間のある分離を得るために、半導体検出器の厚さを利用する。
【0094】
図2は、厚さ7mmのCZT検出器でさまざまな角度で入射する光子の吸収確率を示している。一方、角度は垂直方向に対して計算されている。図3は、角度=0°で入射する光子の吸収確率に対して正規化されたそれらの確率の比率を示す。例えば、角度=45°で入射する光子については、検出器の最初の0.5mm以内に吸収される確率が、検出器に垂直に入射する光子と比較して35%高いことがわかる。同じ光子であれば、検出器の後半に吸収される垂直に入射する光子のおよそ2倍も多くなるだろう。
【0095】
3次元相互作用データをデコンボリューションし、それに応じて情報を抽出し、例えば画像を再構成するために、適切な処理・再構成モジュールを使用する。検出器における相互作用のxおよびyの位置(zは検出器の厚さに沿った寸法である)も画像再構成において使用されるので、この方法は、画像上の多重化による画像アーチファクトを低減するために、マルチピンホールコリメータ画像再構成における相互作用の3D位置を使用することができる。これにより、コリメータの効率を向上させることができ、低信号源に対する画像再構成の効率を潜在的に向上させ、及び/又は、低減された信号源からの満足な画像化を可能にし、好ましい場合には、この原理が医学画像及び例えば分子乳房画像に適用され、最終的に患者の線量を減少させる。
【0096】
これは、本発明の主要な利点である。各光子相互作用の深さ、すなわち深い検出器内のz方向の位置もある程度分解できれば、各光子相互作用がx、y、z座標のすべてにおいてある程度まで位置決めできるデータセットが生成され、これにより推測が導かれ、データセットが適切な再構成法によってデコンボリューションされることが可能になる。平行ホールコリメータの代わりに、実施形態におけるようなフィルタは、フィルタを通過することが妨げられる光子の数を著しく減少させることができ、したがって、検出モジュールにおいて有用に収集され、意味のある処理が行われるようにフィルタを通過する光子の割合を著しく増加させることができる。有効な一組のデータは、非常に低い固有放射能源レベルを有する検出モジュールで収集され得、例えば、医学画像の場合には、患者の組織内への結果としてのより低い放射線量が得られる。
【0097】
上記は一例にすぎない。本発明の原理は、特定の問題を解決するために適切なデコンボリューション技術と組み合わせたコリメータまたは他の多重化フィルタの適切な設計を開発するために適用することができ、いずれも、画像の再構成のためにデコンボリューションされたデータの使用が必要となり得る場合および画像の再構成が不必要または望ましくない場合である。
【0098】
特に、ピンホールは同一である必要はなく、ピンホール以外の構造を持つ多重化コリメータが考えられる。類似の原理に基づく他の多重化フィルタは、単純なピンホールアレイ並びに他の平行ホールおよびスリットのアレイを含み、比較的広い角度の受け入れを有する、開口部の1次元または2次元アレイを、使用することができる。
【0099】
コリメータは、測定中にホールプロファイルのように、その特性を動的に変化させるものと考えられる。このことは、例えば、コリメータがそれを通過する光子の角度の受け入れを動的に変化させ、次いで、最終的な画像が、全体のデータセットを、または異なる構成で収集された複数のデータセットさえも、使用して再構成される場合、検出器内のデータが同時に収集されない可能性のある場合につながる可能性がある。
【0100】
複数ピンホールコリメーションにおける多重化を制御するための別の構成は、図4に示されるようなものとみなされ得る。一般的な原理は、各(又は数個の)コリメータピンホールが検出部分のサブアレイのみを照射するように、検出器アレイを含む検出器を互い違いにすることである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】