(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】ウイルス感染の処置
(51)【国際特許分類】
C07K 14/33 20060101AFI20230414BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230414BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20230414BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
C07K14/33
A61K38/16 ZNA
A61K35/74 D
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552577
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2021055515
(87)【国際公開番号】W WO2021176017
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522345412
【氏名又は名称】ニューマゲン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】テイラー ゲーリー
(72)【発明者】
【氏名】コナリス ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ポッター ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ グレイム
(72)【発明者】
【氏名】エイトケン アンガス
(72)【発明者】
【氏名】トルタハーダ アントニ
(72)【発明者】
【氏名】トムソン ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン レイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084CA04
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC31
4C087BC61
4C087BC68
4C087CA16
4C087NA14
4C087ZB33
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
ヒトおよび動物におけるウイルス性感染の処置もしくは予防、ならびに/または、関連する症状、疾患および/または状態の処置もしくは予防において有用な分子が開示されている。本開示は、コロナウイルス感染ならびに/またはそれが引き起こすまたは原因となる疾患、症状および/もしくは状態の処置または予防において有用である、糖(炭水化物/多糖/シアル酸/グリカン)結合タンパク質を含む分子を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防において使用するためのグリカン結合分子。
【請求項2】
コロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態は、COVID-19またはSARSまたはMERSである、
請求項1の使用のための請求項1に記載のグリカン結合分子。
【請求項3】
コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置は、コロナウイルス感染、疾患または状態に伴う症状のうちの1つ以上の処置を含む、請求項1または2の使用のための、請求項1または2に記載のグリカン結合分子。
【請求項4】
症状は、持続性の咳および/または発熱および/または味覚/嗅覚における/の変化/喪失である、請求項3の使用のための、請求項3に記載のグリカン結合分子。
【請求項5】
炭水化物結合モジュール(CBM)を含む、請求項1~4の使用のための、請求項1~4に記載のグリカン結合分子。
【請求項6】
CBMは:
(i)ファミリー40 CBM;
(ii)ファミリー32 CBM;
からなる群から選択される、請求項5の使用のための、請求項5に記載のグリカン結合分子。
【請求項7】
CBMは:
(i)ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)CBM32(CpCBM32);
(ii)肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)CBM40(SpCBM40);
(iii)コレラ菌(Vibrio cholerae)CBM40(VcCBM40);
(iv)コレラ菌NanHシアリダーゼCBM;
(v)コレラ菌NanHシアリダーゼCBMのシアル酸結合断片;
(vi)肺炎レンサ球菌nanAシアリダーゼCBM;および
(vii)肺炎レンサ球菌nanAシアリダーゼCBMのシアル酸結合断片、
からなる群から選択される、請求項5または6の使用のための、請求項5または6に記載のグリカン結合分子。
【請求項8】
コロナウイルスはSARS-CoV-2である、請求項1~7のいずれかの使用のための、請求項1~7のいずれかに記載のグリカン酸結合分子。
【請求項9】
コロナウイルスはSARS-CoV-2バリアントである、請求項1~8のいずれかの使用のための、請求項1~8のいずれかに記載のグリカン酸結合分子。
【請求項10】
SARS-CoV-2バリアントはスパイクタンパク質内の突然変異を含み、突然変異は、アクセッションコード:QHD43416.1/YP_009724390.1を有するWuhan-Hu-1分離株のスパイクタンパク質のアミノ酸配列に対するアミノ酸変化である、請求項9の使用のための、請求項9に記載のグリカン酸結合分子。
【請求項11】
バリアントは、以下のスパイクタンパク質突然変異:
(i)HV69-70欠失;および/または
(ii)N501Y;および/または
(iii)E484K、
のうちの1つ以上を含む、請求項9または10の使用のための、請求項9または10に記載のグリカン酸結合分子。
【請求項12】
SARS-CoV-2バリアントは、B.1.1.7バリアントおよび/またはB.1525バリアントおよび/またはB.1.351バリアントである、請求項9、10または11の使用のための、請求項9、10または11に記載のグリカン酸結合分子。
【請求項13】
コロナウイルス感染、コロナが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、および/またはコロナウイルス感染/疾患の症状の処置または予防において使用するためのCBM。
【請求項14】
以下:
(i)コロナウイルス感染、コロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、および/またはコロナウイルス感染/疾患の症状;または
(ii)COVID-19、SARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、および/またはCOVID-19の症状
の処置または予防において使用するためのCBM32。
【請求項15】
配列番号1のアミノ酸配列:
AIIETAIPQSEMTASATSEEGQDPASSAIDGNTNTMWHTKWNGSDALPQSLSVNLGSSRKVSSIAITP
RTSGNNGFITKYEIHAINNGVETLVAEGTWEENNLVKTVTFDSPIDAEEIKITAIQGVGGFASIAELNVYE
またはそれのグリカン/炭水化物の結合断片
を含む、請求項14の使用のための、請求項14に記載のCBM32。
【請求項16】
以下:
(i)コロナウイルス感染、コロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19、SARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、および/またはCOVID-19の症状
の処置または予防において使用するためのCBM40。
【請求項17】
配列番号4のアミノ酸配列:
ALFDYNATGDTEFDSPAKQGWMQDNTNNGSGVLTNADGMPAWLVQGIGGRAQWTYSLSTNQHAQASSFGWRMTTEMKVLSGGMITNYYANGTQRVLPIISLDSSGNLVVEFEGQTGRTVLATGTAATEYHKFELVFLPGSNPSASFYFDGKLIRDNIQPTASKQNMIVWGNGSSNTDGVAAYRDIKFEIQGD
または配列番号6のアミノ酸配列:
VIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRS
またはいずれかのグリカン/シアル酸の結合断片
を含む、請求項16の使用のための、請求項16に記載のCBM40。
【請求項18】
以下:
(i)コロナウイルス感染、コロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、および/またはコロナウイルス感染/疾患の症状;または
(ii)COVID-19、SARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、および/またはCOVID-19の症状
の処置または予防において使用するための改変CBM。
【請求項19】
1つ以上の突然変異を含むように改変された野生型CBM配列を含む、請求項18の使用のための、請求項18に記載の改変CBM。
【請求項20】
配列番号16の配列:
GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARSSSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFATGYYRVRAWI
またはそれのグリカン酸結合断片
を含む、請求項18または19に記載の改変CBM。
【請求項21】
以下の処置または予防において使用するためのグリカン酸結合分子であって:
(i)コロナウイルス感染、コロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、および/またはコロナウイルス感染/疾患の症状;または
(ii)COVID-19、SARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、および/またはCOVID-19の症状;
以下からなる群から選択される:
(i)Cp2CBM32TD(三量化ドメインに融合された、ウエルシュ菌由来の2つのCBM(CBM32)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる);
(ii)Sp2CBM40TD(三量化ドメインに融合された、肺炎レンサ球菌由来の2つのCBM(CBM40)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる);
(iii)Vc2CBM40TD(三量化ドメインに融合された、コレラ菌由来の2つのCBM(CBM40)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる);ならびに
(iv)Vc4CBM(コレラ菌由来の4つのCBM(CBM40)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる)、
グリカン酸結合分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウイルス性疾患および/または状態の処置または予防のための組成物、医薬および方法において使用するための分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス性病原体は、ヒトにおいて一連の疾患および/または状態を引き起こすおそれがあり、一部の病原体に対してはワクチンおよび抗ウイルス療法が使用できるが、一方、有用な治療オプションがないものもある。場合によっては、ウイルス性感染の処置は、患者の隔離(さらなる感染拡散のリスクを最小限に抑えるため)および症状の処置に限られる。場合によっては、ウイルス性病原体は、特に呼吸器ウイルス性病原体は、呼吸困難、肺炎、気管支炎および/または細気管支炎などの二次合併症を招くおそれがある。若年層、老人、免疫不全患者、妊婦、および基礎疾患を有する個体が、多くの場合、ウイルス性病原体によるリスクに最も晒されている。
所与の任意のウイルス性病原体の病理は様々であるが、呼吸器病を引き起こす病原体は、ほとんどの場合、例えば、咳およびくしゃみおよび粘膜(呼吸気道、肺、、鼻、口および目を含めて)からの/への体液/分泌物によって生成されるエアロゾル化液滴によって伝染することになる。
ときおり、あるウイルスのアウトブレイクは、科学にとって新規である病原体の種および/または株に関係している。多くの場合こういった感染には効果的な処置法がなく、アウトブレイクをくい止め制御して、制御不能な拡散を回避する必要がある。
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、人畜共通感染症起源のウイルス性呼吸器疾患である。本疾患はSARSコロナウイルスによって引き起こされ、症状には筋肉痛、咳、咽頭痛、およびその他の非特異的な症状(例えば、無気力/倦怠感を含めて)を伴う発熱および/または「インフルエンザ」似た病気が含まれ得る。SARSコロナウイルスによる感染はまた、呼吸困難、ウイルス性肺炎および/または二次性細菌性肺炎をもたらすおそれもある。
多くの場合、ワクチンは開発するのが困難であり、製造かつ試験するのに相当の時間がかかる。また、抗ウイルス薬は効果が不定あり、多くのケースでは、薬物が効力を発する前にウイルス感染が消散する場合がある。
したがって、ウイルス性感染と、特にウイルス性呼吸器感染症と、闘うための新規で効果的な処置に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0003】
ヒトおよび動物におけるウイルス性感染の処置もしくは予防、ならびに/または、関連する疾患および/もしくは状態の処置もしくは予防、において使用することができる分子が、本明細書に開示されている。
記載の分子については、例えばコロナウイルス科(Coronaviridae)に属する病原体を含めて、ウイルス性呼吸器病原体の処置または予防において特定の用途を見いだすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
「含む(comprise)」、「含む(comprising)」および/または「含む(comprises)」という用語は、本開示の種々の態様および実施形態が特定のある特性または複数の特性を「含む」ことを表して使用されることに留意されたい。この/これらの用語はまた、関連する特性または複数の特性「から本質的になる(consist essentially of)」または「からなる(consist of)」態様および/または実施形態を包含し得ることを理解されたい。
【0005】
コロナウイルス科は、エンベロープを持つ一本鎖プラス鎖RNAウイルスのグループである。コロナウイルス科は、コロナウイルス属(Coronavirus)を含有する。「コロナウイルス科」または「コロナウイルス」という名称は、いくつかの王冠状の突起(「ペプロマー」または「スパイク」)を含有するウイルスの特徴的な形状に由来している。コロナウイルスは、世界中で、ヒトにおいて気道感染および致死性肺炎のアウトブレイクを引き起こす。
コロナウイルスは、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス、およびデルタコロナウイルスの4属に分類された、エンベロープを持つ大型のプラス鎖RNAウイルスである。それらは、全てのRNAウイルス全体にわたって最大のゲノム(27~32kb)を有し、エンベロープに取り囲まれたらせんカプシド内部にパッケージされている。ウイルスエンベロープと会合した少なくとも3種の構造タンパク質がある;膜タンパク質(M)、エンベロープタンパク質(E)、およびスパイク(糖)タンパク質(S)。一部のコロナウイルスは、ヘマグルチニン-エステラーゼタンパク質(HE)をコードする。
【0006】
S糖タンパク質は、ウイルス表面で大きな突出を形成し(「コロナ」または「王冠」を形成する)、宿主細胞へのウイルス侵入に関与する。Sタンパク質は、以下のドメイン/領域に分けられる大きな外部ドメインを有する:S1(受容体結合ドメイン);S2(膜融合ドメイン);膜貫通アンカー;および短い細胞内尾部。S1ドメインは2つの主要ドメインに分けられる:(i)N末端ドメイン(S1-NTD) - 糖を結合することに関与する;および(ii)C末端ドメイン(S1-CTD) - タンパク質受容体ACE2、APN、およびDPP4を認識することに関与する。
【0007】
本明細書で使用される場合、「コロナウイルス」という用語は、コロナウイルス科に属すると分類される任意のウイルスを包含し、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、およびSARS-CoV-2コロナウイルスを包含する。
「コロナウイルス」という用語はまた、全てのSARS-CoV-2バリアントも包含する。例えば、「コロナウイルス」という用語は、バリアントB.1.1.7、B.1525、B.1.351、およびP1と呼ばれるバリアントを包含する。これらのバリアントは、スパイクタンパク質内の突然変異(例えば、アミノ酸の付加、置換および/または欠失)によって特徴付けることができる。例えば、「コロナウイルス」という用語は、スパイクタンパク質内に以下の突然変異のうちの1つ以上を有する任意のバリアントを包含することができる:
(i)HV69-70欠失;および/または
(ii)N501Y;および/または
(iii)E484K。
いかなる場合でも、バリアントスパイクタンパク質配列は、参照配列と比べて1つ以上の突然変異を含有することができる。適切な参照配列は、Wuhan-Hu-1株、Sタンパク質配列とすることができ、これは、アクセッションコードQHD43416.1/YP_009724390.1で入手可能である。
【0008】
SARS-CoV-2は、SARSとMERSの両方と同じ属に属すると分類されている(ベータコロナウイルス属(Betacoronavirus));これは、SARSと同じ亜属分類にあって、全ゲノムにわたっておよそ80%のヌクレオチド同一性を共有する。SARSとSARS-CoV-2は両方とも、細胞侵入のために宿主細胞表面で発現するグリコシル化ACE2タンパク質を使用する。ACE2残基90のグリコシル化は、SARSウイルスを有意に阻害することが示されてきた。SARS Sタンパク質には、予測される21個のグリコシル化部位があり、これらの残基のうち少なくとも18個がSARS-CoV-2配列に保存されている。
【0009】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むわけではないが、コロナウイルス(例えば、MERSコロナウイルス)を中和する抗体は、スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を標的とし、細胞受容体ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)への結合を遮断することができる。他の(抗Sタンパク質N末端ドメイン(NTD))抗体は、スパイク糖タンパク質のN末端ドメイン(NTD)に結合し、高力価で宿主細胞の侵入を阻害することが示されてきた。したがって、Sタンパク質のNTD部分を標的とすることによって、RBD(S1-CTD)部位に依存しない方法で宿主細胞の侵入を阻害することができる可能性がある;こういった阻害は、S糖タンパク質のコンフォメーション状態に影響を与える可能性がある。また、ある特定のタイプのインフルエンザ(例えば、C型インフルエンザ)の様に、コロナウイルスは、宿主細胞のシアル酸含有受容体を - 特に、例えば9-O-アセチル化シアル酸(acetylated sialic)を含有する細胞表面成分を含めてシアログリカンを、結合することができることも、示唆されている。さらに(ここでも、理論に拘束されることを望むわけではないが)、コロナウイルスは、CBMファミリー32、40、47、67、および70に属するとして分類されるものを含めて、様々なCBMによって認識される可能性のある糖タンパク質プロファイルを保有する。
【0010】
したがって、例えばシアル酸(例えば、本明細書に記載のCBMのいずれか)を含めて、ある特定の炭水化物(多糖またはグリカン)に対する親和性を備えるタンパク質は、宿主上およびウイルス上のグリカンを標的とすることによって、SARS-CoV-2を含めてコロナウイルスの感染性を攪乱する可能性がある。
糖(炭水化物/多糖/グリカン)結合タンパク質を含む(それからなる、またはそれから本質的になる)いくつかの分子が開示されている。本タイプのタンパク質は、グリカンおよび/またはシアル酸に対して特定の親和性を呈し、コロナウイルス感染ならびに/またはそれが引き起こすまたは原因となる疾患および/もしくは状態の処置または予防において有用である。
【0011】
「コロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態」という語句には、SARSおよびMERSと呼ばれるそういった疾患もしくは状態、ならびに/またはコロナウイルス感染に伴うその他の呼吸器疾患および/もしくは状態が含まれ得る。加えて、「コロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態」という語句には、COVID-19と呼ばれる急性呼吸器疾患ならびにSARS-CoV-2感染によって引き起こされる、またはそれに伴う急性呼吸器疾患が含まれる。
本明細書で使用される場合、処置という用語は、コロナウイルス感染が引き起こすまたは原因となる疾患/状態に伴う症状のうちの1つ以上の減少を包含することができる。かかる症状には、例えば、(持続性の)咳、発熱、味覚/嗅覚における/の変化/喪失が含まれ得る。したがって、本明細書に記載のグリカン結合分子のいずれもが、コロナウイルス感染の症状のうちの1つ以上を処置するための組成物および/または方法において使用することができる。例として、本発明のグリカン結合分子のいずれか1つが、コロナウイルス感染の結果として発生するおそれのある持続性の咳を減少させるために、使用することができる。
【0012】
上記に鑑みて、本開示は、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防において使用するためのグリカン結合分子を提供する。
また、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態を処置または予防する方法も開示され、前記方法は、それを必要とする対象にグリカン結合分子を投与することを含む。
本明細書では、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬の製造におけるグリカン結合分子の使用が提供される。
本開示はまた、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防において使用するためのシアル酸結合分子も提供する。
また、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態を処置または予防する方法も開示され、前記方法は、それを必要とする対象にシアル酸結合分子を投与することを含む。
本明細書では、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬の製造におけるシアル酸結合分子の使用が提供される。
【0013】
特に有用な分子は炭水化物結合モジュール(CBM)である。したがって、本明細書に記載の、使用、方法および医薬のための炭水化物、グリカンおよび/またはシアル酸の各結合分子は、CBMであってもよく、CBMを含んでもよい。
したがって、本開示はさらに以下を提供する:
(i)コロナウイルス感染、コロナが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防において使用するためのCBM;
(ii)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象にCBMを投与することを含む、前記方法;
(iii)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬の製造におけるCBMの使用。
【0014】
上記を踏まえて、本開示は、COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防において使用するためのCBMを提供する。
本開示はまた、COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態を処置または予防する方法も提供し、前記方法は、それを必要とする対象にCBMを投与することを含む。
本明細書では、COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬の製造における、CBMの使用が記載されている。
【0015】
有用なCBMの例を下に提供するが、完全を期すために、「CBM」という用語には、例えば、CBMファミリー32、40、47、67、および70に属するとして分類されるCBMが含まれることを、理解されたい。当業者であれば、莫大な様々なCBMがあり、上記のファミリーのメンバは様々な多数の細菌種に由来することができることを、理解するであろう。CBMに関する、特にファミリー32、40、47、67、および70の各CBMに関する詳細情報については、パブリックCAZYデータベース(http://www.cazy.orgで入手可能)で見いだすことができる。一部の特に有用なCBMは、レンサ球菌属(Streptococcus)、ビブリオ属(Vibrio)、およびクロストリジウム属(Clostridium)内の細菌種に由来することができる。また、本開示は、1つ以上のCBMおよび本明細書に記載のCBMのいずれかの改変形態を含む分子の使用を包含することも理解されたい(下により詳細に記載されるように)。改変CBMは、野生型CBM配列に対して1つ以上の突然変異残基を含むCBMである。
【0016】
本明細書に記載の種々の使用、医薬および方法のためのCBMは、炭水化物、グリカンおよび/またはシアル酸の各結合分子の全てのタイプである。
「シアル酸」という用語は、N-またはO-置換ノイラミン酸の全ての形態を包含し、これには、それらの全ての合成の、天然に存在するおよび/または改変の各形態が含まれる。シアル酸は、細胞表面分子、糖タンパク質および糖脂質の成分として見いだすことができる。ほとんどの場合、シアル酸は、細胞膜および/またはタンパク質に接続した糖鎖の終端(末端領域)に存在する。例えば、ヒト上気道の一部の細胞は、α-2,6-連結シアル酸受容体を含み、上気道および下気道のその他の細胞は、α-2,3-連結シアル酸受容体を含む。シアル酸ファミリーは、C4、C5、C7、C8およびC9にてのアセチル化、グリコシル化(glycolylation)、ラクトン化およびメチル化の結果として生じることができるいくつか(概50種)の誘導体を包含する。かかる誘導体は全て「シアル酸」という用語に包含されることになる。シアル酸は、α(2,3)もしくはα(2,6)がGalおよびGalNAcに連結して、またはα(2,8)もしくはα(2,9)が別のシアル酸に連結して、見いだされる場合がある。したがって、「シアル酸」という用語は、本明細書全体を通して使用されるが、シアル酸の全てのアノマー、誘導体、アナログまたはバリアント(天然に存在するもの合成的に生成されたものを問わず)ならびにそれを含む全ての単量体、二量体、三量体、オリゴマー、ポリマーまたはコンカテマーを包含すること、を理解することが肝要である。
【0017】
したがって、本開示の種々の方法、使用および医薬のためのシアル酸結合分子は、上記のその種々の形態のいずれかにあるシアル酸に対する親和性を備える部分を含むことができる。実際、使用のためのCBM、すなわち本明細書に記載の医薬または方法において使用するためのCBMは、上記のその種々の形態のいずれかにあるシアル酸に対する親和性を呈することができ、および/または、シアル酸分子であって、コロナウイルス、(哺乳動物)細胞表面および/または(哺乳動物)細胞表面受容体の中または上に存在することができるような、シアル酸分子に結合/カップリングするおよび/またはそれと会合することができる。
【0018】
有用なCBMは、任意の形態を取り、および/またはCBMの任意のクラスまたはタイプに属する。以下のCBMファミリーのうちのいずれか1つ以上からのCBMが役立つとすることができる。
(i)ファミリー32 CBM(CBM32);
(ii)ファミリー40 CBM(CBM40);
(iii)ファミリー47 CBM(CBM47);
(iv)ファミリー67 CBM(CBM67);および
(v)ファミリー70 CBM(CBM70)。
【0019】
例えば、本開示は:
(i)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;
の処置または予防において使用するためのCBM32を提供する。
また:
(i)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;
を処置または予防する方法も開示され、前記方法は、それを必要とする対象に1つ以上のファミリー32 CBM32を投与することを含む。
加えて、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬の製造におけるCBM32の使用も開示される。
【0020】
本開示はまた:
(i)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態、
の処置または予防において使用するためのCBM40、またはCBM47、またはCBM67またはCBM70も提供する。
【0021】
本開示はさらに、
(i)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;
を処置または予防する方法であって、
それを必要とする対象に1つ以上のファミリー40 CBM、ファミリー47 CBM、ファミリー67 CBMまたはファミリー70 CBMを投与することを含む、
前記方法にもさらに関する。
加えて、本開示は、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬の製造における、CBM40、またはCBM47、またはCBM67またはCBM70の使用を提供する。
【0022】
開示のCBM32、CBM40、CBM47、CBM67またはCBM70のいずれか1つの使用は、任意の他の炭水化物結合タンパク質、グリカン結合タンパク質、シアル酸結合分子および/またはCBMと組み合わせることができることに留意されたい。実際、CBM32、CBM40、CBM47、CBM67またはCBM70の使用は、CBM32、CBM40、CBM47、CBM67またはCBM70のいずれか他の1つの使用と組み合わせることができる。
各CBMファミリーに関するさらなる詳細を下に提供する - これらのCBM(それらのサブタイプ、バリアント、オルソログ等)は全て、コロナウイルス感染、ならびに/または本明細書に記載のコロナウイルス関連疾患および/もしくは状態の処置および/または予防における使用のためのものである。
【0023】
CBM32
有用なCBM32(すなわち、本明細書に記載の種々の方法、医薬および使用のためのCBM32)は、適切な任意の給源に由来することができる。例えば、使用のためのCBM32は、例えばセルビブリオ属(Cellvibrio)、エルシニア属(Yersinia)、ミクロモノスポラ属(Micromonospora)、レンサ球菌属、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacteria)およびクロストリジウム属の細菌を含めて、微生物から得ることができる。例えば、有用なCBM32は、例えば、セルビブリオ・ミクスツス(Cellvibrio mixtus)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterolitica)、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)およびミクロモノスポラ・ビリジファシエンス(Micromonospora viridifaciens)から得ることができるかまたは由来することができる。CBM32ファミリーの給源、構造、および機能に関するさらなる詳細については、糖質関連酵素(Carbohydrate Active Enzymes)のデータベース内で見いだすことができる(http://www.cazy.org/CBM32.htmlでインターネット上自由に利用可能)。
【0024】
例示的なCBM32配列は、下の配列番号1によって提供される:
配列番号1
AIIETAIPQSEMTASATSEEGQDPASSAIDGNTNTMWHTKWNGSDALPQSLSVNLGSSRKVSSIAITP
RTSGNNGFITKYEIHAINNGVETLVAEGTWEENNLVKTVTFDSPIDAEEIKITAIQGVGGFASIAELNVYE
【0025】
したがって、使用のためのCBMは、配列番号1の配列を有するCBMまたはそれの炭水化物結合部分を含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。配列番号1の炭水化物結合断片は、配列番号1からのアミノ酸約5、6、7、8、9または10個(連続したまたは隣接した)~アミノ酸約138個(連続したまたは隣接した)の間のどこかを含むことができる。適切な断片は、配列番号1からの、約11個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約105個、約110個、約115個、約120個、約125個、約130個または約135個の(連続したまたは隣接した)アミノ酸を含むことができる。
【0026】
CBM32または配列番号1を含む、それから本質的になる、またはそれからなるタンパク質は、例えば、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)および/またはラクトースを結合することができる。したがって、使用のためのいずれもの断片も、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)および/またはラクトースを結合することができる。当業者であれば、所与の任意のCBM32分子の結合親和性は正確なCBM32サブタイプに依存することができることを理解するであろう;さらなる例として、一部のCBM32は様々なリガンドに対する親和性を示した。(例には、II型血液型H-三糖(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAc)、N-アセチル-D-ラクトサミン(LacNAc)、ガラクトース、ラクト-N-ビオース、二糖GlcNAc-α-1,4-Gal(アルファ1,4でガラクトースに連結したN-アセチルグルコサミンと呼ばれる場合がある)、および/またはGlcNAcが含まれる)。多重のCBM32サブタイプが単一の生物体に由来することができること;これら様々なCBMサブタイプは、同じ、類似のまたは異なる結合特異性を呈することができること、にも留意されたい。例えば、ウエルシュ菌は2種のシアリダーゼNanJおよびNanHを含有する;NanJは1つのガラクトース特異的CBM32を含有する;NanHは、異なる結合選択性を備える4つの推定CBM32を含有する - 例えば、NanHによってコードされるCBM32はGlcNAcを結合する。本明細書で使用される場合、CBM32という用語は、CBM32のバリアント、誘導体、およびサブタイプ全てを包含する。
【0027】
配列番号1は、ID番号A0A2X2YJF2でUniProtデータベースに寄託された配列に由来する。この配列は、下の配列番号2として再現されている(配列番号1は、残基42~180として現れる - 下の配列において太字体で示される)。
配列番号2
MKSKKIIATL VASLVISNMG GYLVKANPNV NHKAVIIEDR QAIIETAIPQ SEMTASATSE
EGQDPASSAI DGNTNTMWHT KWNGSDALPQ SLSVNLGSSR KVSSIAITPR TSGNNGFITK
YEIHAINNGV ETLVAEGTWE ENNLVKTVTF DSPIDAEEIK ITAIQGVGGF ASIAELNVYE
IKGEVDEIAN YGNLKITKEE ERLNITRDLE KFSSLDEGTI VTRFNMNDTS IQSLIGLSDG
NKANNYFSLY VSGGKVGYEL RRQEGNGDFN VHHSADVTFN KGINTLALKI EKGVGAKIFL
NGSLVKTVSD PNIKFLNAIN LNSGFIGKTD RANGYNEYLF RGNIDFMNIY DKPVSDNYLL
RKTGETKAPS EDSLLPDDVY KTQPVELFYP GYLESRGYRI PALETTKKGT VLASIDVRNN
GDHDAPNNNI DVGIRRKEVN GEWEEGKVIL DYPGKSAAID TSLMSATIEE NGIEKERIFL
IVTHFPEGYG FPNTEGGSGY KEIDGKYYFI LKDAQNNEYT VREDGIVYNS EGNETDYVMK
NDKTLIQNGE EVGNALLSNS PLKAVGTAHI EMIYSDDDGN TWSEPEDLNP GLKKEWMKFF
GTAPGKGIQI KNGEHKGRLV FPIYYTNQNN FQSSAVIYSD DFGETWKLGE SPIDTASVSS
ETVSSGTQLT ECQVVEMPNG QLKLFMRNTG SYTRIATSFD GGATWHDEVP EDTSLREPYC
QLSVINYSGK INGKDAIIFS NPDASSRVNG SVKVGLINEN GTYENGQPRY EFDWIYNKTV
KPGSFAYSCL TELPDGNLGL FYEGEGAGRM AYTEFDLNYL KFNASEDSPA ATVQSIESLD
EDLIYNAGDE VSIKVNFNQL VSLIGDRKIT LDIGGVDVPL NMVNYEGKSS AIFKGTIPEG
INPGNYEIK LKENNALELNT VYNKVSTLNG LDNTGINVQI GELKTTVGNS TIKVNEEVQV
GSAFEAILGI KGLNGDTEVY SAEYLFEYNA EAFKLNEITS FSDSLFVKSK EVEPGKVRIL
VASLGNEIEK DSELVKVNLT PKISSELEVL GLTTALVGAG DGNTHDLELS SKEVKINEEA
SGEIVVNPVQ NFEIPEINKK NVKLTWNAPI TTEGLEGYVI YKDGKKLSEV PAESTEFVVS
KLNRHTIYNF KVAAKYSNGE LSAKESKTIR TAR
【0028】
配列番号1および2はウエルシュ菌に由来する。本開示の種々の態様において使用するためのCBMは、1、2、3、4つまたはそれ超のCBM32を含むことができる。使用のためのCBMは、配列番号1を含む1、2、3、4つもしくはそれ超のタンパク質またはそれらの炭水化物結合断片を含むことができる。当業者であれば、有用なCBM32が、配列番号1および2のCBM32配列と、ある程度(例えば、99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%または60%)の配列同一性または相同性を呈する、配列を含むことができることを、理解するであろう。かかるバリアント配列または発散配列は全て、本開示の範囲内に、「CBM32」という用語によって包含されることになることになる。同一のおよび/または相同なCBM32配列は、炭水化物結合機能を有することができる。
【0029】
CBM40
有用なCBM40(すなわち、本明細書に記載の種々の方法、医薬および使用のためのCBM40)は、適切な任意の給源に由来することができる。例えば、使用のためのCBM40は、例えば、クロストリジウム属、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、レンサ球菌属およびビブリオ属の細菌を含めて、微生物から得ることができる。例えば、有用なCBM40は、例えば、ウエルシュ菌、肺炎レンサ球菌およびコレラ菌(Vibrio cholerae)から得ることができるかまたは由来することができる。CBM40ファミリーの給源、構造、および機能に関するさらなる詳細については、糖質関連酵素のデータベース内で見いだすことができる(http://www.cazy.org/CBM40.htmlでインターネット上自由に利用可能)。
【0030】
ファミリー40 CBMは、概200個の残基の分子を包含し、GH33シアリダーゼのN末端に見いだされることが多い。それらは、GH33シアリダーゼのβ-プロペラに挿入されて見いだされる場合もある。少なくともコレラ菌のCBM40は、シアル酸のアルファアノマーを、および、例えばα(2,3)-、α(2,6)-、およびα(2,8)-連結シアロシドを結合する。
【0031】
使用のための例示的なCBM40は、コレラ菌NanHシアリダーゼのシアル酸結合ドメイン(VcCBM:CBM40)および/または肺炎レンサ球菌NanAシアリダーゼ由来の等価の(または相同な)ドメイン(SpCBM:またCBM40)を含むことができる。当然、他の生物体に存在する類似のまたは相同なシアル酸結合モジュールが、「CBM」および「CBM40」という用語の範囲内に包含されることになる。
【0032】
例示的なコレラ菌のNanHシアリダーゼアミノ酸配列は、アクセッション番号A5F7A4で寄託されており、配列番号3(781個のアミノ酸)として下に再現されている。
配列番号3
MRFKNVKKTA LMLAMFGMAT SSNAALFDYN ATGDTEFDSP AKQGWMQDNT NNGSGVLTNA
DGMPAWLVQG IGGRAQWTYS LSTNQHAQAS SFGWRMTTEM KVLSGGMITN YYANGTQRVL
PIISLDSSGN LVVEFEGQTG RTVLATGTAA TEYHKFELVF LPGSNPSASF YFDGKLIRDN
IQPTASKQNM IVWGNGSSNT DGVAAYRDIK FEIQGDVIFR GPDRIPSIVA SSVTPGVVTA
FAEKRVGGGD PGALSNTNDI ITRTSRDGGI TWDTELNLTE QINVSDEFDF SDPRPIYDPS
SNTVLVSYAR WPTDAAQNGD RIKPWMPNGI FYSVYDVASG NWQAPIDVTD QVKERSFQIA
GWGGSELYRR NTSLNSQQDW QSNAKIRIVD GAANQIQVAD GSRKYVVTLS IDESGGLVAN
LNGVSAPIIL QSEHAKVHSF HDYELQYSAL NHTTTLFVDG QQITTWAGEV SQENNIQFGN
ADAQIDGRLH VQKIVLTQQG HNLVEFDAFY LAQQTPEVEK DLEKLGWTKI KTGNTMSLYG
NASVNPGPGH GITLTRQQNI SGSQNGRLIY PAIVLDRFFL NVMSIYSDDG GSNWQTGSTL
PIPFRWKSSS ILETLEPSEA DMVELQNGDL LLTARLDFNQ IVNGVNYSPR QQFLSKDGGI
TWSLLEANNA NVFSNISTGT VDASITRFEQ SDGSHFLLFT NPQGNPAGTN GRQNLGLWFS
FDEGVTWKGP IQLVNGASAY SDIYQLDSEN AIVIVETDNS NMRILRMPIT LLKQKLTLSQ N
【0033】
配列番号3のCBM領域は、アミノ酸残基25~216である(太字体で示される配列) - この配列は、配列番号4とすることができる。
例示的な肺炎レンサ球菌NanAシアリダーゼアミノ酸配列は、アクセッション番号P62575で寄託されており、配列番号5(1035個のアミノ酸)として下に再現されている。
配列番号5
MSYFRNRDID IERNSMNRSV QERKCRYSIR KLSVGAVSMI VGAVVFGTSP VLAQEGASEQ
PLANETQLSG ESSTLTDTEK SQPSSETELS GNKQEQERKD KQEEKIPRDY YARDLENVET
VIEKEDVETN ASNGQRVDLS SELDKLKKLE NATVHMEFKP DAKAPAFYNL FSVSSATKKD
EYFTMAVYNN TATLEGRGSD GKQFYNNYND APLKVKPGQW NSVTFTVEKP TAELPKGRVR
LYVNGVLSRT SLRSGNFIKD MPDVTHVQIG ATKRANNTVW GSNLQIRNLT VYNRALTPEE
VQKRSQLFKR SDLEKKLPEG AALTEKTDIF ESGRNGKPNK DGIKSYRIPA LLKTDKGTLI
AGADERRLHS SDWGDIGMVI RRSEDNGKTW GDRVTITNLR DNPKASDPSI GSPVNIDMVL
VQDPETKRIF SIYDMFPEGK GIFGMSSQKE EAYKKIDGKT YQILYREGEK GAYTIRENGT
VYTPDGKATD YRVVVDPVKP AYSDKGDLYK GNQLLGNIYF TTNKTSPFRI AKDSYLWMSY
SDDDGKTWSA PQDITPMVKA DWMKFLGVGP GTGIVLRNGP HKGRILIPVY TTNNVSHLNG
SQSSRIIYSD DHGKTWHAGE AVNDNRQVDG QKIHSSTMNN RRAQNTESTV VQLNNGDVKL
FMRGLTGDLQ VATSKDGGVT WEKDIKRYPQ VKDVYVQMSA IHTMHEGKEY IILSNAGGPK
RENGMVHLAR VEENGELTWL KHNPIQKGEF AYNSLQELGN GEYGILYEHT EKGQNAYTLS
FRKFNWDFLS KDLISPTEAK VKRTREMGKG VIGLEFDSEV LVNKAPTLQL ANGKTARFMT
QYDTKTLLFT VDSEDMGQKV TGLAEGAIES MHNLPVSVAG TKLSNGMNGS EAAVHEVPEY
TGPLGTSGEE PAPTVEKPEY TGPLGTSGEE PAPTVEKPEY TGPLGTAGEE AAPTVEKPEF
TGGVNGTEPA VHEIAEYKGS DSLVTLTTKE DYTYKAPLAQ QALPETGNKE SDLLASLGLT
AFFLGLFTLG KKREQ
【0034】
配列番号5のCBM領域は、アミノ酸残基121~305である(太字体で示される配列) - この配列は、配列番号6とすることができる。
本開示の種々の態様および実施形態において使用するためのCBMは、配列番号3、4、5または6の配列を有するタンパク質もしくはペプチド、またはこれらのいずれかの炭水化物結合断片を含むことができる。例えば、有用な分子(すなわち、本明細書に記載の使用、方法および医薬のための分子)は、コレラ菌のnanH遺伝子(シアリダーゼをコードする)のシアル酸結合ドメイン(配列番号3によって提供)または別の生物体に存在する等価のまたは相同な遺伝子(例えば、肺炎レンサ球菌の等価の/相同なnanAシアリダーゼ遺伝子;配列番号5を参照されたい)よってコードされる、タンパク質部分を含むことができる。
【0035】
本開示の使用、方法および医薬のための分子は、配列番号3および4のコレラ菌シアリダーゼ分子の、およそ1、5、10、15、25または30の各残基(すなわち、1~30残基またはそれらの間の任意のアミノ酸残基)~およそ150、175、200、210、216、220~781の各残基(~任意の残基150~781、それらの間の任意の残基を含めて)を含むことができる。
例えば、本開示の使用、方法または医薬は、上の配列番号3の残基25~およそ残基216に相当する配列を有するペプチドを含むことができる。
配列番号3の炭水化物結合断片は、配列番号3からのアミノ酸約5、6、7、8、9または10個(連続したまたは隣接した)~アミノ酸約191個(連続したまたは隣接した)の間のどこかを含むことができる。適切な断片は、配列番号3からの、約11個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約105個、約110個、約115個、約120個、約125個、約130個、約135個、約140個、約150個、約155個、約160個、約165個、約170個、約180個、約185個、約186個、約187個、約188、約189個または約190個の(連続したまたは隣接した)アミノ酸を含むことができる。
【0036】
本開示の使用、方法または医薬のための分子は、配列番号3および4のコレラ菌シアリダーゼ分子の、およそ1、5、10、15、25または30の各残基(すなわち、1~30残基またはそれらの間の任意のアミノ酸残基)~およそ150、175、200、210、216、220~781の各残基(~任意の残基150~781、それらの間の任意の残基を含めて)を含むことができる。例えば、使用のためのシアル酸結合分子は、上の配列番号3の残基25~およそ残基216に相当する配列を有するペプチドを含むことができる。
さらなる適切な分子は、配列番号5または6の配列を有するタンパク質もしくはペプチド、またはそれらの炭水化物結合断片を含むことができる。例えば、有用なシアル酸結合分子は、肺炎レンサ球菌のnanA遺伝子(シアリダーゼをコードする)のシアル酸結合ドメインよってコードされる、タンパク質部分を含むことができる。
【0037】
使用のためのシアル酸結合分子は、配列番号5および6の肺炎レンサ球菌シアリダーゼ分子の、およそ80、90、100、110、120、121~130の各残基(すなわち、およそ80~130の各残基いずれか、それらの間の任意の残基を含めて)~およそ250、275、300、305、310、320~1035の各残基(すなわち、~任意の残基およそ250~1035、~それらの間のおよそ任意の残基を含めて)を含むことができる。
例えば、使用のためのシアル酸結合分子は、上の配列番号5の残基121~およそ残基305に相当する配列を有するペプチドを含むことができる。
【0038】
炭水化物結合断片は、配列番号5からのアミノ酸約5、6、7、8、9または10個(連続したまたは隣接した)~アミノ酸約185個(連続したまたは隣接した)の間のどこかを含むことができる。適切な断片は、配列番号5からの、約11個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約105個、約110個、約115個、約120個、約125個、約130個、約135個、約140個、約145個、約150個、約155個、約160個、約165個、約170個、約175個、180個、181個、182個、183個または184個の(連続したまたは隣接した)アミノ酸を含むことができる。
【0039】
配列番号3および4はコレラ菌に由来し、配列番号5および6は肺炎レンサ球菌に由来する。本開示の種々の態様において使用するためのCBMは、1、2、3、4つまたはそれ超のCBM40を含むことができる。使用のためのCBMは、配列番号3、4、5または6を含む1、2、3、4つもしくはそれ超のタンパク質またはこれらのいずれかの炭水化物結合断片を含むことができる。当業者であれば、有用なCBM40が、配列番号3、4、5または6のCBM40配列と、ある程度(例えば、99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%または60%)の配列同一性または相同性を呈する、配列を含むことができることを、理解するであろう。かかるバリアント配列または発散配列は全て、本開示の範囲内に、「CBM40」という用語によって包含されることになる。同一のおよび/または相同なCBM40配列は、炭水化物/シアル酸結合機能を有することができる。
【0040】
CBM47
有用なCBM47(すなわち、本明細書に記載の種々の方法、医薬および使用のためのCBM47)は、例えば、アシネトバクター属(Acinetobacter)、バチモディオルス属(Bathymodiolus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、プランクトミケス門(Planctomycetes)、レンサ球菌属およびストレプトマイセス属(Streptomyces)の細菌を含めて、微生物から得ることができる。例えば、有用なCBM47は、例えば、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)または肺炎レンサ球菌から得ることができるかまたは由来することができる。CBM47ファミリーの可能性のある給源および構造および機能に関するさらなる詳細については、糖質関連酵素のデータベース内で見いだすことができる(http://www.cazy.org/CBM47.html)でインターネット上自由に利用可能)。
【0041】
例示的なCBM47配列は、下の配列番号7によって提供される:
配列番号7
TPDKFNDGNLNIAYAKPTTQSSVDYNGDPNRAVDGNRNGNFNSGSVTHTRADNPSWWEVDLKKMDKVGLVKIYNRTDAETQRLSNFDVILYDNNRNEVAKKHVNNLSGESVSLDFKEKGARYIKVKLLTSGVPLSLAEVEVFRES
したがって、使用のためのCBMは、配列番号7の配列を有するCBMまたはそれの炭水化物結合部分を含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。
配列番号7の炭水化物結合断片は、配列番号7からのアミノ酸約5、6、7、8、9または10個(連続したまたは隣接した)~アミノ酸約144個(連続したまたは隣接した)の間のどこかを含むことができる。適切な断片は、配列番号7からの、約11個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約105個、約110個、約115個、約120個、約125個、約130個または約135個、約140個または約143個の(連続したまたは隣接した)アミノ酸を含むことができる。
CBM47または配列番号7を含む、それから本質的になる、またはそれからなるタンパク質は、L-フコース、フコシルラクトース、H-三糖および/またはルイスy抗原を結合することができる。したがって、使用のためのいずれの断片も、L-フコース、フコシルラクトース、H-三糖および/またはルイスy抗原を結合することができる。
【0042】
配列番号7は、ID番号A0A1Q2T229でUniProtデータベースに寄託された配列に由来する。この配列は、下の配列番号8として再現されている(配列番号7は、残基601~745として現れる - 下の配列において太字体で示される)。
配列番号8
MNKEKIKRKL ITILFVCIGM LCFGLLAGVK ADNRVQMRTT INNESPLLLS PLYGNDNGNG
LWWGNTLKGA WEAIPEDVKP YAAIELHPAK VCKPTSCIPR DTKELREWYV KMLEEAQSLN
IPVFLVIMSA GERNTVPPEW LDEQFQKYSV LKGVLNIENY WIYNNQLAPH SAKYLEVCAK
YGAHFIWHDH EKWFWETIMN DPTFFEASQK YHKNLVLATK NTPIRDDAGT DSIVSGFWLS
GLCDNWGSST DTWKWWEKHY TNTFETGRAR DMRSYASEPE SMIAMEMMNV YTGGGTVYNF
ECAAYTFMTN DVPTPAFTKG IIPFFRHAIQ NPAPSKEEVV NRTKAVFWNG EGRISSLNGF
YQGLYSNDET MPLYNNGRYH ILPVIHEKID KEKISSIFPN AKILTKNSEE LSSKVNYLNS
LYPKLYEGDG YAQRVGNSWY IYNSNANINK NQQVMLPMYT NNTKSLSLDL TPHTYAVVKE
NPNNLHILLN NYRTDKTAMW ALSGNFDASK SWKKEELELA NWISKNYSIN PVDNDFRTTT
LTLKGHTGHK PQINISGDKN HYTYTENWDE NTHVYTITVN HNGMVEMSIN TEGTGPVSFP
TPDKFNDGNL NIAYAKPTTQ SSVDYNGDPN RAVDGNRNGN FNSGSVTHTR ADNPSWWEVD
LKKMDKVGLV KIYNRTDAET QRLSNFDVIL YDNNRNEVAK KHVNNLSGES VSLDFKEKGA
RYIKVKLLTS GVPLSLAEVE VFRESDGKQS EEDIDKITED KVVSTNKVAT QSSTNYEGVA
ALAVDGNKDG DYGHHSVTHT KEDSPSWWEI DLAQTEELEK LIIYNRTDAE IQRLSNFDII
IYDSNDYEVF TQHIDSLESN NLSIDLKGLK GKKVRISLRN AGIPLSLAEV EVYTYK
【0043】
配列番号7および8は肺炎レンサ球菌に由来する。
本開示の種々の態様において使用するためのCBMは、1、2、3、4つまたはそれ超のCBM47を含むことができる。使用のためのCBMは、配列番号8含む1、2、3、4つもしくはそれ超のタンパク質またはそれらの炭水化物結合断片を含むことができる。
当業者であれば、有用なCBM47が、配列番号7および8のCBM47配列と、ある程度(例えば、99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%または60%)の配列同一性または相同性を呈する、配列を含むことができることを、理解するであろう。かかるバリアント配列または発散配列は全て、本開示の範囲内に、「CBM47」という用語によって包含されることになる。同一のおよび/または相同なCBM47配列は、炭水化物結合機能を有することができる。
【0044】
CBM67
有用なCBM67(すなわち、本明細書に記載の種々の方法、医薬および使用のためのCBM67)は、適切な任意の給源に由来することができる。例えば、使用のためのCBM67は、例えば、バシラス属(Bacillus)、パエニバシラス属(Paenibacillus)、プランクトミケス門およびストレプトマイセス属の細菌を含めて、微生物から得ることができる。例えば、有用なCBM67は、例えば、ストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)から得ることができるかまたは由来することができる。CBM67ファミリーの可能性のある給源および構造および機能に関するさらなる詳細については、糖質関連酵素のデータベース内で見いだすことができる(http://www.cazy.org/CBM67.htmlでインターネット上自由に利用可能)。
【0045】
例示的なCBM67配列は、下の配列番号9によって提供される:
配列番号9
APSLEGSSWIWFPEGEPANSAPAATRWFRRTVDLPDDITGATLAISADNVYAVSVDGAEVARTDLEADNEGWRRPAVIDVLDHVHSGNNTLAVSASNASVGPAGWICVLVLTTASGEKKIFSDASWKSTDHEPADGWREPDFDDSGWPAAKVAAAWGAGPWGRVA
したがって、使用のためのCBMは、配列番号9の配列を有するCBMまたはそれの炭水化物結合部分を含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。
【0046】
配列番号9の炭水化物結合断片は、配列番号9からのアミノ酸約5、6、7、8、9または10個(連続したまたは隣接した)~アミノ酸約164個(連続したまたは隣接した)の間のどこかを含むことができる。適切な断片は、配列番号9からの、約11個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約105個、約110個、約115個、約120個、約125個、約130個、約135個、約140個、約145個、約150個、約155個、約160個または約163個の(連続したまたは隣接した)アミノ酸を含むことができる。
【0047】
CBM67または配列番号9を含む、それから本質的になる、またはそれからなるタンパク質は、L-ラムノースを結合することができる。したがって、使用のためのいずれもの断片も、L-ラムノースを結合することができる。配列番号9は、ID番号Q82PP4でUniProtデータベースに寄託された配列に由来する。この配列は、下の配列番号10として再現されている(配列番号9は、残基132~296として現れる - 下の配列において太字体で示される)。
配列番号10
MSALRVTSPS VEYVQRPLGL DAAHPRLSWP MASAAPGRRQ SAYQVRVASS AAGLSHPDVW
DSGKVVSDDS VLVPYAGPPL KPRTRYFWSV RVWDADGGAS EWSAPSWWET GLMGASQWSA
KWISAPAPLT EAPSLEGSSW IWFPEGEPAN SAPAATRWFR RTVDLPDDIT GATLAISADN
VYAVSVDGAE VARTDLEADN EGWRRPAVID VLDHVHSGNN TLAVSASNAS VGPAGWICVL
VLTTASGEKK IFSDASWKST DHEPADGWRE PDFDDSGWPA AKVAAAWGAG PWGRVAPVAS
AANQLRHEFR LPHKKVSRAR LYATALGLYE AHLNGRRVGR DQLAPGWTDY RKRVQYQTYD
VTSSVRPGAN ALAAYVAPGW YAGNVGMFGP HQYGERPALL AQLEVEYADG TSERITSGPD
WRAASGPIVS ADLLSGETYD ARKETAGWTS PGFDDRAWLA VRGADNDVPE QIVAQVDGPV
RIAKELPARK VTEPKPGVFV LDLGQNMVGS VRLRVSGDAG TTVRLRHAEV LNPDGTIYTA
NLRSAAATDT YTLKGQGEET YEPRFTFHGF RYVEVTGFPG KPSTTSVTGR VMHTSAPFTF
EFETNVPMLN KLHSNITWGQ RGNFLSVPTD TPARDERLGW TGDINVFAPT AAYTMESARF
LTKWLVDLRD AQTSDGAFTD VAPAVGNLGN GVAGWGDAGV TVPWALYQAY GDRQVLADAL
PSVHAWLRYL EKHSDGLLRP ADGYGDWLNV SDETPKDVIA TAYFAHSADL AARMATELGK
DAAPYTDLFT RIRKAFQTAY VASDGKVKGD TQSAYVLTLS MNLVPDALRK AAADRLVALI
EAKDWHLSTG FLGTPRLLPV LTDTGHTDVA YRLLHQRTFP SWGYPIDKGS TTMWERWDSI
QPDGGFQTPE MNSFNHYAYG SVGEWMYANI AGIAPGRAGY RQVVIRPRPG GEVTSARATF
ASLHGPVSTR WQQRSGGFVL TCSVPPNTTA EVWIPADHPD RVQHTHGTFV RAEDGCAVFE
VGSGSHRFTV
【0048】
配列番号9および10は、ストレプトミセス・アベルミチリスに由来する。
本開示の種々の態様において使用するためのCBMは、1、2、3、4つまたはそれ超のCBM67を含むことができる。
使用のためのCBMは、配列番号9を含む1、2、3、4つもしくはそれ超のタンパク質またはそれらの炭水化物結合断片を含むことができる。
当業者であれば、有用なCBM67が、配列番号9および10のCBM67配列と、ある程度(例えば、99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%または60%)の配列同一性または相同性を呈する、配列を含むことができることを、理解するであろう。かかるバリアント配列または発散配列は全て、本開示の範囲内に、「CBM67」という用語によって包含されることになる。同一のおよび/または相同なCBM67配列は、炭水化物結合機能を有することができる。
【0049】
CBM70
有用なCBM70(すなわち、本明細書に記載の種々の方法、医薬および使用のためのCBM70)は、適切な任意の給源に由来することができる。例えば、使用のためのCBM70は、例えば、バシラス属、パエニバシラス属、プランクトミケス門およびレンサ球菌属の細菌を含めて、微生物から得ることができる。例えば、有用なCBM70は、例えば、肺炎レンサ球菌から得ることができるかまたは由来することができる。CBM70ファミリーの可能性のある給源および構造および機能に関するさらなる詳細については、糖質関連酵素のデータベース内で見いだすことができる(http://www.cazy.org/CBM70.htmlでインターネット上自由に利用可能)。
【0050】
例示的なCBM70配列は、下の配列番号11によって提供される:
配列番号11
NLVENGDFGQTEDGSSPWTGSKAQGWSAWVDQKNSADASTRVIEAKDGAITISSHEKLRAALHRMVPIEAKKKYKLRFKIKTDNKIGIAKVRIIEESGKDKRLWNSATTSGTKDWQTIEADYSPTLDVDKIKLELFYETGTGTVSFKDIELVEVADQLS
配列番号11の炭水化物結合断片は、配列番号11からのアミノ酸約5、6、7、8、9または10個(連続したまたは隣接した)~アミノ酸約158個(連続したまたは隣接した)の間のどこかを含むことができる。適切な断片は、配列番号11からの、約11個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約75個、約80個、約85個、約90個、約95個、約100個、約105個、約110個、約115個、約120個、約125個、約130個、約135個、約140個、約145個、約150個、約155個または約157個の(連続したまたは隣接した)アミノ酸を含むことができる。
【0051】
CBM70または配列番号11を含む、それから本質的になる、またはそれからなるタンパク質は、ヒアルロナンを結合することができる。したがって、使用のためのいずれもの断片も、ヒアルロナンを結合することができる。
配列番号11は、ID番号Q54873でUniProtデータベースに寄託された配列に由来する。この配列は、下の配列番号12として再現されている(配列番号11は、残基54~212として現れる - 下の配列において太字体で示される)。
配列番号12
MQTKTKKLIV SLSSLVLSGF LLNHYMTIGA EETTTNTIQQ SQKEVQYQQR DTKNLVENGD
FGQTEDGSSP WTGSKAQGWS AWVDQKNSAD ASTRVIEAKD GAITISSHEK LRAALHRMVP
IEAKKKYKLR FKIKTDNKIG IAKVRIIEES GKDKRLWNSA TTSGTKDWQT IEADYSPTLD
VDKIKLELFY ETGTGTVSFK DIELVEVADQ LSEDSQTDKQ LEEKIDLPIG KKHVFSLADY
TYKVENPDVA SVKNGILEPL KEGTTNVIVS KDGKEVKKIP LKILASVKDA YTDRLDDWNG
IIAGNQYYDS KNEQMAKLNQ ELEGKVADSL SSISSQADRT YLWEKFSNYK TSANLTATYR
KLEEMAKQVT NPSSRYYQDE TVVRTVRDSM EWMHKHVYNS EKSIVGNWWD YEIGTPRAIN
NTLSLMKEYF SDEEIKKYTD VIEKFVPDPE HFRKTTDNPF KALGGNLVDM GRVKVIAGLL
RKDDQEISST IRSIEQVFKL VDQGEGFYQD GSYIDHTNVA YTGAYGNVLI DGLSQLLPVI
QKTKNPIDKD KMQTMYHWID KSFAPLLVNG ELMDMSRGRS ISRANSEGHV AAVEVLRGIH
RIADMSEGET KQCLQSLVKT IVQSDSYYDV FKNLKTYKDI SLMQSLLSDA GVASVPRPSY
LSAFNKMDKT AMYNAEKGFG FGLSLFSSRT LNYEHMNKEN KRGWYTSDGM FYLYNGDLSH
YSDGYWPTVN PYKMPGTTET DAKRADSDTG KVLPSAFVGT SKLDDANATA TMDFTNWNQT
LTAHKSWFML KDKIAFLGSN IQNTSTDTAA TTIDQRKLES GNPYKVYVND KEASLTEQEK
DYPETQSVFL ESFDSKKNIG YFFFKKSSIS MSKALQKGAW KDINEGQSDK EVENEFLTIS
QAHKQNRDSY GYMLIPNVDR ATFNQMIKEL ESSLIENNET LQSVYDAKQG VWGIVKYDDS
VSTISNQFQV LKRGVYTIRK EGDEYKIAYY NPETQESAPD QEVFKKLEQA AQPQVQNSKE
KEKSEEEKNH SDQKNLPQTG EGQSILASLG FLLLGAFYLF RRGKNN
【0052】
配列番号11および12は肺炎レンサ球菌に由来する。
本開示の種々の態様において使用するためのCBMは、1、2、3、4つまたはそれ超のCBM70を含むことができる。
使用のためのCBMは、配列番号11を含む1、2、3、4つもしくはそれ超のタンパク質またはそれらの炭水化物結合断片を含むことができる。
当業者であれば、有用なCBM70が、配列番号11および12のCBM70配列と、ある程度(例えば、99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%または60%)の配列同一性または相同性を呈する、配列を含むことができることを、理解するであろう。かかるバリアント配列または発散配列は全て、本開示の範囲内に、「CBM70」という用語によって包含されることになる。同一のおよび/または相同なCBM70配列は、炭水化物結合機能を有することができる。
【0053】
本明細書に記載の種々の使用、医薬および方法の全てのためである本明細書に記載の種々の分子(種々の炭水化物、シアル酸および/またはグリカンの各結合タンパク質/分子を含めて)は、オリゴマー化ドメインをさらに含むことができる。
適切なオリゴマー化ドメインは、自己会合して多量体構築物を、例えば三量体を形成する能力を呈することができる。使用のためのオリゴマー化ドメインは、オリゴマー化特性を備える任意の分子またはその任意の機能性断片を含むことができる。例えば、1個または複数(例えば、2個)のシアル酸/グリカンの結合分子(例えば、CBM)は、オリゴマー化ドメインに結合、カップリング、または融合することができる - 得られるシアル酸/グリカンの結合分子::オリゴマー化ドメイン「融合体」は、コロナウイルス感染、および/またはそれに伴う疾患もしくは状態を処置または予防するための分子として(1つ以上の他のかかる「融合体」と共に)次いで使用することができる。
【0054】
適切なオリゴマー化ドメインは、例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)シュードアミニダーゼ(pseudaminidase)に由来することができる。例示的な緑膿菌シュードアミニダーゼ配列のアミノ酸配列は、アクセッション番号PA0579で寄託されており、配列番号13(438個のアミノ酸)として下に再現されている。
配列番号13
MNTYFDIPHR LVGKALYESY YDHFGQMDIL SDGSLYLIYR RATEHVGGSD GRVVFSKLEG
GIWSAPTIVA QAGGQDFRDV AGGTMPSGRI VAASTVYETG EVKVYVSDDS GVTWVHKFTL
ARGGADYNFA HGKSFQVGAR YVIPLYAATG VNYELKWLES SDGGETWGEG STIYSGNTPY
NETSYLPVGD GVILAVARVG SGAGGALRQF ISLDDGGTWT DQGNVTAQNG DSTDILVAPS
LSYIYSEGGT PHVVLLYTNR TTHFCYYRTI LLAKAVAGSS GWTERVPVYS APAASGYTSQ
VVLGGRRILG NLFRETSSTT SGAYQFEVYL GGVPDFESDW FSVSSNSLYT LSHGLQRSPR
RVVVEFARSS SPSTWNIVMP SYFNDGGHKG SGAQVEVGSL NIRLGTGAAV WGTGYFGGID
NSATTRFATG YYRVRAWI
【0055】
配列番号13のオリゴマー化ドメインは、アミノ酸残基333~438である - この配列は配列番号14(太字体で示される配列)とすることができる。
したがって、使用のためのオリゴマー化ドメインは、配列番号5によって提供される緑膿菌シュードアミニダーゼの三量化ドメイン(PaTD)の、およそ250、275、300、310、320、333、340~350の各残基(すなわち、およそ残基250~およそ残基350、それらの間のおよそ任意の残基を含めて)~およそ400、410、420、430または438の各残基(すなわち、~およそ残基400~残基438のおよそ任意の残基、~それらの間のおよそ任意の残基を含めて)を含むことができる。例えば、有用なシアル酸/グリカンの結合分子は、配列番号13の残基333~438を含むオリゴマー化ドメインを活用することができる。
【0056】
本明細書に記載の方法、使用および/または医薬のいずれかのためのシアル酸/グリカンの結合分子には、本明細書に記載のCBMのいずれもの改変形態が含まれ得る。
「改変された」という用語は、参照配列と比べて1つ以上の突然変異を含有する分子を包含する。
「参照配列」は、任意の野生型CBM配列とすることができる。例えば、参照配列は、野生型ファミリー40 CBM配列を、例えば、コレラ菌NanHシアリダーゼまたは肺炎レンサ球菌NanAシアリダーゼ由来の野生型CBM配列を、含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる(他の生物体に存在する類似のまたは相同なCBM(CBM40を含めて)が、「CBM」という用語の範囲内に、および/またはCBM参照配列として包含されることになることに、留意されたい)。参照配列は、上の配列番号1~12のいずれをも含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)ことができる。
したがって、改変CBM配列は、特異的なまたは特定の野生型CBM配列に由来することができる。
【0057】
改変CBM配列は、1つ以上の突然変異を含むように改変された野生型CBM配列を含むことができる。
1つ以上の突然変異は機能性とすることができる - すなわち突然変異は、野生型CBM(例えば、改変CBMが由来する野生型CBM)にとって特徴的な、生理学的、生物学的、免疫学的および/または薬理学的特性のうちの1つ以上を、個別的に(および/もしくは独立して)または集合的に(例えば、相乗的に)、モジュレート(変更、改善または抑制/阻害)することができる。
特に、1つ以上の突然変異は:
(i)CBMの免疫原性(または抗原性)を変更することができる;および/または
(ii)(CBMのまたは改変CBMを含む任意の多量体分子の)有効性を変更することができる(例えば改善することができる);および/または
(iii)突然変異は、CBMの熱安定性をモジュレートすることができる(例えば改善することができる);および/または
(iv)突然変異は、CBMの溶解性をモジュレートすることができる(例えば改善することができる);および/または
(v)突然変異は、その標的(例えば、グリカン、シアル酸、ガラクトース、ラクトース、ポリガラクツロン酸、LacNAc、フコース、L-ラムノース;ヒアルロナン)に対するCBMの結合親和性をモジュレートすることができる;および/または
(vi)突然変異は、分子のin vivo半減期をモジュレートすることができる(例えば改善することができる)。
【0058】
「突然変異」には、野生型CBM分子に対する任意の変更が含まれ得る。例えば、「突然変異」という用語は、例えば、以下を包含することができる:
(i)1個または複数のアミノ酸置換(この場合、野生型アミノ酸の1個または複数が別の(異なる)アミノ酸に交換または変更されている - 「置換」という用語には保存的アミノ酸置換が含まれることになる);および/または
(ii)1個または複数のアミノ酸欠失(この場合、野生型アミノ酸残基の1個または複数が除去されている);および/または
(iii)1個または複数のアミノ酸の付加/挿入(この場合、さらなるアミノ酸残基が野生型(または参照)一次配列に付加されている);および/または
(iv)1個または複数のアミノ酸/配列の逆位(通常この場合、一次配列内の2個以上の連続するアミノ酸が逆位している);および/または
(v)1個または複数のアミノ酸/配列の重複(この場合、アミノ酸または一次アミノ酸配列の一部(例えば、5~10個のアミノ酸のストレッチ)が繰り返されている)。
したがって、本開示による改変CBMは、本明細書に記載の突然変異のうちの1つ以上を含むことができる。
【0059】
例示的な野生型CBM(換言すれば、有用な改変CBMが由来することができる参照配列)は、肺炎レンサ球菌NanAシアリダーゼであり、そのアミノ酸配列はアクセッション番号P62575で寄託されており、配列番号5として上に再現されている(1035個のアミノ酸)。また上述のように、配列番号5のCBM領域はアミノ酸残基121~305である - この配列は配列番号6と指定される。
したがって、本開示は、シアル酸に対する親和性を備える炭水化物結合分子を提供するが、本分子は、配列番号6(および/または配列番号5)の改変形態を含む。配列番号6の改変形態は、1つ以上の突然変異残基を含むことができる - 突然変異は、例えば、配列番号6の配列に対してなされた、アミノ酸の置換、付加/挿入、重複、欠失および/または逆位である。
【0060】
例示的なコレラ菌NanHシアリダーゼアミノ酸配列は、アクセッション番号A5F7A4で寄託されており、配列番号7として上に再現されている(781個のアミノ酸)。配列番号7のCBM領域はアミノ酸残基25~216である - これは配列番号8である。
したがって、本開示は、配列番号8(および/または配列番号7)の改変形態を含むシアル酸/グリカンの結合分子を提供する。配列番号8の改変形態は、1つ以上の突然変異残基を含むことができる - 突然変異は、例えば、配列番号8の配列に対してなされた、アミノ酸の置換、付加/挿入、重複、欠失および/または逆位である。
したがって、有用な改変CBM(すなわち、本明細書に記載の医療用途および方法において使用するためのCBM)は、本明細書に記載の突然変異のうちの1つ以上を含むことができる。
【0061】
非限定的な例として、以下は、本明細書に記載の種々の使用、方法および医薬のための(例えば、コロナウイルス感染を処置または予防する方法において使用するための)、改変シアル酸/グリカンの結合分子を作製するのに使用することができる、個々のユニット(「HEX」ユニットと呼ばれる)を表す。
(i)HEX1
CBMX1 (L170T V239A V246G I286A Y292E)-----CBMX2 (L170T V239A V246G I286A Y292E)-----TD (S342D L348D R403K)
(ii)HEX2
CBMX1 (V239A V246G I286A Y292E)----CBMX2 (V239A V246G I286A Y292E)----TD (S342D R403K)
(iii)HEX3
CBMX1 (V239A V246G I286A)-----CBMX2 (V239A V246G I286A)-----TD (S342D R403K)
(iv)HEX4
CBMX1 (V239A V246G)-----CBMX2 (V239A V246G)-----TD (S342D)
(v)HEX5
CBMX1 (V239A V246G)-----CBMX2 (V239A V246G)-----TD (R403K)
(vi)HEX6
CBMX1 (V239A V246G)-----CBMX2 (V239A V246G)-----TD (S342D R403K)
(vii)HEX17
CBMX1 (V239A V246G A162P)-----CBMX2 (V239A V246G A162P)-----TD (S342D R403K)
【0062】
適切なHEXユニットは、2つの改変CBM(上でCBMX1およびCBMX2と表示)を含むことができ、各CBMに導入された特定の突然変異が括弧内に特定されている。一教示では、ユニットCBMX1およびCBMX2は、任意のタイプのCBM(例えば、CBM40、任意のCBM32、任意のCBM47、任意のCBM67および/または任意のCBM70の群/クラスの任意のメンバ)を含む(それからなる、またはそれから本質的になる)ことができる。「----」記号はアミノ酸リンカー(ある改変CBMを別の改変CBMに連結する、またはある改変CBMをあるオリゴマー化ドメインに連結する)を指示することに留意されたい。
【0063】
それぞれの場合で、各HEXユニットに存在するオリゴマー化ドメイン(「TD」と表示)は、ユニットを三量体として一緒にコンジュゲートする。所与の任意の六量体は、上記のユニットのうちの1ユニットの同一の3コピーを含むことができるが、当業者であれば、さらなる選択肢が利用可能であることを理解するであろう。例えば、HEXユニットは、それぞれが異なる突然変異(本明細書において詳述されている選択肢から選択される1つ以上である突然変異)を有する2つのCBMから構成されてもよい。
【0064】
HEX6およびHEX17は、さらなるA162P突然変異を除いては同一であることに留意されたい。このプロリン突然変異(残基162で野生型アラニンを置換)は、熱安定性を改善することが示された(単一のCBM Tmが3~4℃で)。プロリン突然変異の使用に関するさらなる情報は、一般的なアプローチについて記載している、Fu 2009, 'Increasing protein stability by improving beta-turns' (DOI 10.1002/prot.22509)から得ることができる。プロリン突然変異は、CBM分子の予測される免疫原性に影響を及ぼすことはなく(高めずまたは低下させず)、その他の突然変異、N末端もしくはC末端またはリガンド結合部位の近傍に位置しない。むしろ予想外にも、熱安定性の中程度の改善を超えて、A162P突然変異によって、in vivo実験において - 特に、他の(例えば、HEX6)HEXユニットを含む六量体分子を使用して行われたそうした同じ実験と比較して、著しい改善を呈する分子がもたらされる、ことが注目された。例えば、改変分子(特に、HEX17ユニットを含む分子)は、例えば、IL-8を含めて、炎症誘発性サイトカインに対するモジュレーションを呈する。実際に、HEX17ユニットを含む分子によるIL-8の産生に及ぼすモジュレーション効果(特に阻害効果)は、他の試験された改変分子に勝って改善された。
【0065】
Sp2CBMTD(別名「SpOrig」)のアミノ酸配列と比べた、HEX6およびHEX17分子のアミノ酸配列は以下である:
SpOrig GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSAT
HEX6 GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSAT
HEX17 GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSAT
SpOrig KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
HEX6 KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
HEX17 KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
SpOrig RVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
HEX6 RARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
HEX17 RARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
SpOrig PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAF
HEX6 PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAF
HEX17 PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAF
SpOrig YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
HEX6 YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
HEX17 YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
SpOrig EKPTAELPKGRVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
HEX6 EKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
HEX17 EKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
SpOrig NLTVYNRALTPEEVQKRSGGALGVPDFESDWFSVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
HEX6 NLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
HEX17 NLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
SpOrig SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIRLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
HEX6 SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
HEX17 SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
SpOrig GYYRVRAWI
HEX6 GYYRVRAWI
HEX17 GYYRVRAWI
【0066】
[SpOrig(配列番号15);HEX6(配列番号16)およびHEX17(配列番号17)]
SpOrigは、以下の突然変異(R274Q)を含むように改変することができる。本突然変異は、シアル酸に対するCBMの結合親和性をモジュレートする。
【0067】
上記に鑑みて、本開示は:
(i)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;
の処置または予防において使用するための改変CBMを提供する。
また:
(i)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;
を処置または予防する方法も開示され、前記方法は、それを必要とする対象に改変CBMを投与することを含む。
【0068】
加えて、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬の製造における改変CBMの使用も開示される。
加えて、本開示は:
(i)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;
の処置または予防において使用するための、HEX17を提供する。
【0069】
また:
(i)コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;または
(ii)COVID-19感染および/またはSARS-CoV-2が引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態;
を処置または予防する方法も開示され、前記方法は、それを必要とする対象にHEX17を投与することを含む。
加えて、コロナウイルス感染、および/またはコロナウイルスが引き起こすまたは原因となる疾患もしくは状態の処置または予防のための医薬の製造におけるHEX17の使用も開示される。
【0070】
本明細書に記載の、使用、方法および医薬のための分子は、本明細書に記載のCBM分子のいずれか1つ以上を含むことができる。本タイプの分子は、多価CBMであるシアル酸/グリカンの結合分子の形成を可能にする上述の三量化ドメインをさらに含むことができる。
例えば、使用のための分子は、複数のまたは多重(すなわち、2、3、4つまたはそれ超)のCBMを含むことができる。複数のCBMを含む分子は、「多価のグリカンまたはシアル酸の結合分子」または「多価CBM」と呼ぶことができる。
【0071】
多価CBM分子は、アミノ酸/ペプチドリンカーによって連結された多重の(同一または異なる)CBMを含む構築物として調製することができる。各CBM(例えば、VcCBM、SpCBMまたは改変CBM)は、例えば、5個、10個または15個のアミノ酸を含むペプチドによって、別のもの(例えば、VcCBM、SpCBMまたは改変CBM)にまたは三量化ドメイン(TD)に連結することができる。
例として、以下のペプチドのうちのいずれかの1つ以上を使用して、2つ以上のCBMまたは1つのCBMを三量化ドメインに連結し、その結果、多価CBMを生成することができる:
(i)アミノ酸5個のリンカー: ALNGS
LQALG
GGNSG
GGGSG
GGALG
(ii)アミノ酸10個のリンカー: ALNGSGGGSG
LQALGGGGSL
(iii)アミノ酸15個のリンカー: ALNGSGGGSGGGGSG
【0072】
本明細書に記載の方法、使用および医薬のための多価CBMは、例えば、2つ以上のファミリー32 CBM、2つ以上のファミリー40 CBM、2つ以上のファミリー47 CBM、2つ以上のファミリー67 CBM、2つ以上のファミリー70 CBMを含むことができる。多価CBMは、異なるCBMタイプの混合物を、例えば異なるCBMファミリーからのCBMを、または同じCBMの反復を、含むことができる。
有用な一価および多価のグリカン/シアル酸の結合分子の種々の例が本明細書に記載されている。
例えば、
図1に提示される分子は、本開示の方法、使用、および医薬において使用するためのものとすることができる。適切な分子は、1つ以上(例えば、2、3、4つまたはそれ超)のVcCBM(コレラ菌に由来するCBM40である)を含む(から本質的になる、またはからなる)ことができる。CBM(例えば、VcCBM)は、オリゴマー化ドメイン(例えばPaTDまたはそのオリゴマー化断片)に融合、結合、またはコンジュゲートすることができる。グリカン/シアル酸の結合分子は、オリゴマー化ドメインに融合された2つの融合(または結合)CBMを含む、それからなる、または本質的にそれらからなることができる(例えば、
図1に示す分子Vc2CBMTDを参照されたい)。
【0073】
開示の分子のどれもが、単独でまたは別の開示の分子と組み合わせて、コロナウイルス感染またはそれに伴う疾患もしくは状態を処置または予防するのに使用するためのもの、コロナウイルス感染またはそれに伴う疾患もしくは状態を処置する方法において使用するためのもの、あるいは、コロナウイルス感染またはそれに伴う疾患もしくは状態を処置または予防するための医薬の製造において使用するためのもの、とすることができる。
【0074】
開示の分子のいずれもが(本明細書の記載の使用、医薬および方法のための)、特に改変CBM分子は、PCRベースのクローニング技法を使用して生成することができ、本タイプの多価分子の生成に適した方法は、例えば、Connaris et al, 2009 (Enhancing the Receptor Affinity of the Sialic Acid-Binding Domain of Vibrio cholerae Sialidase through Multivalency; J. Biol. Chem; Vol. 284(11); pp 7339-7351)、に記載されている。例えば、HEX17、Vc2CBM、Vc4CBMおよびSp2CBMのようなものを含めて、多価CBM分子は、上記のものなどの、アミノ酸/ペプチドリンカーによって、連結された多重のCBMを含む構築物として調製することができる。
【0075】
本開示の文脈において、コロナウイルス感染の処置または予防において使用するための分子(炭水化物結合分子、シアル酸結合分子、グリカン結合タンパク質/分子および/またはCBM)は、以下からなる群から選択される1つ以上のCBMを含むことができる:
(i)1つ以上(例えば、2、3、4つまたはそれ超)のファミリー32 CBM;
(ii)1つ以上(例えば、2、3、4つまたはそれ超)のファミリー40 CBM;
(iii)1つ以上(例えば、2、3、4つまたはそれ超)のファミリー47 CBM;
(iv)1つ以上(例えば、2、3、4つまたはそれ超)のファミリー67 CBM;
(v)1つ以上(例えば、2、3、4つまたはそれ超)のファミリー70 CBM;および
(vi)改変CBM(本明細書に記載の)。
【0076】
加えて、コロナウイルス感染の処置または予防において使用するための分子(炭水化物結合分子、シアル酸結合分子、グリカン結合分子/タンパク質および/またはCBM)は、以下からなる群から選択されるCBMを含むことができる:
(i)ウエルシュ菌CBM32(CpCBM32);
(ii)肺炎レンサ球菌CBM40(SpCBM40);
(iii)コレラ菌CBM40(VcCBM40);
(iv)肺炎レンサ球菌CBM47(SpCBM47);
(v)ストレプトマイセス・アベルミチリスCBM67(SaCBM67);
(vi)肺炎レンサ球菌CBM70(SpCBM70);
(vii)コレラ菌NanHシアリダーゼCBM;
(vii)コレラ菌NanHシアリダーゼCBMのシアル酸結合断片:
(xi)肺炎レンサ球菌nanAシアリダーゼCBM;および
(x)肺炎レンサ球菌nanAシアリダーゼCBMのシアル酸結合断片。
【0077】
本明細書に記載の種々の使用、方法および医薬のための多価CBMは、以下を含むことができる:
(i)VcCBM;または
(ii)2つ(またはそれ超)のVcCBM;または
(iii)3または4つ(またはそれ超)のVcCBM;または
(iv)SpCBM;または
(v)2つ(またはそれ超)のSpCBM;または
(vi)3または4つ(またはそれ超)のSpCBM;または
(vii)CpCBM;または
(viii)2つ(またはそれ超)のCpCBM;または
(viii)3または4つ(またはそれ超)のCpCBM;または
(ix)SaCBM;または
(x)2つ(またはそれ超)のSaCBM;または
(xi)3または4つ(またはそれ超)のSaCBM。
【0078】
本開示の使用、方法または医薬のための多価CBMは、異なるCBMの混合物を、例えば、以下からなる群から選択される1つ以上の他のCBMと共に、1つ以上のCBM32を、含むことができる:
(i)ファミリー40 CBM
(ii)ファミリー47 CBM
(iii)ファミリー67 CBM
(iv)ファミリー70 CBM
例えば、本明細書に記載の方法、使用または医薬は、CBM32とファミリー40 CBM(CBM40)との組合わせを活用することができる。
あるいは、本明細書に記載の使用、方法および医薬のための多価CBMは、異なるCBMの混合物を、例えば、以下からなる群から選択される1つ以上の他のCBMと共に、1つ以上のCBM40を、含むことができる:
(i)ファミリー32 CBM
(ii)ファミリー47 CBM
(iii)ファミリー67 CBM
(iv)ファミリー70 CBM
【0079】
例えば、本明細書に記載の方法、使用または医薬は、CBM40とファミリー32 CBM(CBM32)との組合わせを活用することができる。
本明細書に記載の使用、方法および医薬のための多価CBMは、異なるCBMの混合物を、例えば、以下からなる群から選択される1つ以上の他のCBMと共に、1つ以上のCBM47を、含むことができる:
(i)ファミリー32 CBM
(ii)ファミリー40 CBM
(iii)ファミリー67 CBM
(iv)ファミリー70 CBM
【0080】
本明細書に記載の使用、方法および医薬のための多価CBMは、異なるCBMの混合物を、例えば、以下からなる群から選択される1つ以上の他のCBMと共に、1つ以上のCBM67を、含むことができる:
(i)ファミリー32 CBM
(ii)ファミリー40 CBM
(iii)ファミリー47 CBM
(iv)ファミリー70 CBM
本明細書に記載の使用、方法および医薬のための多価CBMは、異なるCBMの混合物を、例えば、以下からなる群から選択される1つ以上の他のCBMと共に、1つ以上のCBM70を、含むことができる:
(i)ファミリー32 CBM
(ii)ファミリー40 CBM
(iii)ファミリー47 CBM
(iv)ファミリー67 CBM
【0081】
本明細書に開示の種々の使用、方法および医薬のための多価CBMには、例えば、以下からなる群から選択される分子が含まれ得る:
(i)Cp2CBM32TD(三量化ドメインに融合された、ウエルシュ菌由来の2つのCBM(CBM32)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる);
(ii)Sp2CBM40TD(三量化ドメインに融合された、肺炎レンサ球菌由来の2つのCBM(CBM40)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる);
(iii)Vc2CBM40TD(三量化ドメインに融合された、コレラ菌由来の2つのCBM(CBM40)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる);および
(iv)Vc4CBM(コレラ菌由来の4つのCBM(CBM40)を含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる);
(v)Sp2CBM47TD(三量化ドメインに融合された、肺炎レンサ球菌由来の2つのCBM(CBM47)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる);
(vi)Sp2CBM67TD(三量化ドメインに融合された、ストレプトコッカス・アベルミチリス由来の2つのCBM(CBM67)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる);
(vii)Sp2CBM70TD(三量化ドメインに融合された、肺炎レンサ球菌由来の2つのCBM(CBM70)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。
【0082】
本開示は、使用(組成物、方法および医薬)を提供するが、この使用は以下を含む:分離された形態での、本明細書に開示のCBMのうちのいずれか1つ以上(少なくともCBM成分(治療用分子の)が本明細書に記載のCBM配列および/またはその機能性断片の1つ以上を含むか、またはそれから本質的になる場合での使用である)、これに限らず、治療用分子のCBM成分がより大きな分子内に含まれている場合の使用。例として、本明細書に記載の種々のCBMは、CBM成分を含む大分子の形態で提供および/または使用することができる。CBM成分(例えば、シアル酸結合分子)は、例えば、本明細書に記載のCBM(例えば、CBM32、CBM40、CBM47、CBM67およびCBM70を含めて)のいずれか1つを、それ自体含む(それからなるまたはそれから本質的になる)ことができる。(非限定的な)例として、本開示の分子(例えば、CBMおよび/またはグリカン/シアル酸の結合分子)は、グリカン(またはそれの成分)またはシアル酸を結合する能力を呈するだけでなく、他の1つ以上の機能も有することができる。例えば、分子は酵素活性を有することができる。例えば、有用な分子は(本明細書に記載の)CBMを含み、一部のシアリダーゼ活性を呈することができる。
【0083】
有用な分子は、酵素部分およびグリカン/シアル酸の結合部分を含む融合タンパク質とすることができる - この場合、グリカン/シアル酸の結合部分は、本明細書に記載のCBMを含む。かかる場合、酵素部分は、グリカン/シアル酸の結合部分に融合することができる。述べた通り、任意の有用な融合タンパク質の酵素部分は、シアリダーゼ活性を含む(または有する、または呈する)ことができる。
【0084】
一実施形態では、本明細書に記載の種々の使用のためのシアル酸結合分子、グリカン結合分子、またはCBMは、酵素(例えば、シアリダーゼ)活性を備える分子(例えば、融合タンパク質)の一部として提供されなくても、その分子内に含まれなくてもよい。付加的にまたは代替的に、シアル酸/グリカンの結合分子は、(i)ヘパリンまたはヘパリン硫酸を結合しなくてもよく、および/または(ii)ヘパリンまたはヘパリン硫酸部分を結合するタンパク質のGAG結合ドメインを含まなくてもよい。シアル酸/グリカンの結合分子、グリカン結合分子、またはCBMを含む構築物は、酵素(例えば、シアリダーゼ)活性を示さなくても呈さなくてもよい。
【0085】
本開示はまた、組成物を、特に、記載の使用、方法および医薬において活用することができる医薬組成物を提供する。
したがって、本明細書に記載の有用な分子(例えば、CBM(改変の、多価の、またはその他の)またはグリカン結合分子)のいずれもが、その後の使用向けに製剤化することができる。便宜上、「CBM」という用語は、本明細書に記載の全ての一価、多価および改変CBM分子を包含することに留意されたい。
例えば、シアル酸結合分子、グリカン結合分子またはCBMは、治療用または医薬組成物として製剤化することができる。種々の組成物は、本明細書に記載のシアル酸結合分子/グリカン結合分子/CBMのうちの1つ以上と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含むことができる。例えば、本明細書に記載の分子を含む医薬製剤は、安定剤、湿潤剤、乳化剤、塩(浸透圧に影響を与えるのに使用するため)、緩衝剤、および/または活性化合物と有害に反応しないその他の物質と混合することができる。
所与の任意の治療用途または処置方法には、これらの組成物の1つ以上の投与(一緒に、同時にまたは別々に)が必要である場合があり、その組成物は、1つ以上の様々なCBMを含むことができる。
【0086】
本開示による医薬組成物は、経口、粘膜、鼻腔内または非経口(静脈内)の各投与向けに調製することができる。粘膜または鼻腔内投与用のそういった製剤は、医薬品で慣習的に使用されている物質を含んで、例えば、Remington's The Sciences and Practice of Pharmacy, 22nd Edition (Pharmaceutical Press 2012) および/またはHandbook of Pharmaceutical Excipients, 7th edition (compiled by Rowe et al, Pharmaceutical Press, 2012)に記載のように、従来どおりに調製することができる - それらの全ての文書および参考文献の全内容が参照により組み込まれる。
経口および/または鼻腔内投与用の液体剤形には、エマルジョン、液剤、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれ得る。化合物または組成物に加えて、液体剤形は、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤などの、当技術分野でよく使用される不活性希釈剤を含有することができる。
【0087】
シアル酸結合分子、グリカン結合分子またはCBMの適切な任意の量を使用することができる。例えば、シアル酸結合分子、グリカン結合分子またはCBMを含む組成物を静脈内に投与するにしろ粘膜(例えば、鼻腔内)に投与するにしろ、シアル酸結合分子/グリカン結合分子/CBMの用量は、約0.1μg~約6000μgの間のどこかを含むことができる。例えば、用量、約(例えば+/-0.5μg)0.1μg、0.5μg、1μg、5μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、20μg、30μg、40μg、50μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、950μg1000μg、1500μg、2000μg、2500μg、3000μg、3500μg、4000μg、4500μg、5000μg、5500μg、または6000μgのシアル酸結合分子/グリカン結合分子/CBMを使用することができる。これらの量は、賦形剤、希釈剤または緩衝剤の適切な任意の体積で提供することができる。例えば、シアル酸結合分子/グリカン結合分子/CBMの量は、賦形剤、希釈剤または緩衝剤約1μl~約0.5mlの間のどこかで提供することができる。例えば、シアル酸結合分子/グリカン結合分子またはCBMの必要量は、約5μl、10μl、15μl、20μl、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、140μl 200μl、280μl、300μl、400μl、500μl、560μl、600μl、700μl、800μl、900μl、または1mlと、組み合わせる(または製剤化する)ことができる。0.1~15mg(例えば、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mgまたは14mg)(シアル酸/グリカンの結合タンパク質)毎1ml(賦形剤、希釈剤または緩衝剤)の濃度が最も有用とすることができる。10mg/ml(賦形剤、希釈剤または緩衝剤)の濃度が極めて有用とすることができる。
【0088】
本開示の組成物(例えば、本明細書に開示のシアル酸結合分子、グリカン結合分子、またはCBMのいずれかを含む組成物)は、決まったおよび/または所定の時間に対象に(予防的に)投与することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、対象がコロナウイルス感染に脆弱性および/または感受性である可能性があるシナリオに入るまたは遭遇する前でも、その間でも、その後でも、決まったおよび/または所定の時間に投与することができる。
【0089】
本開示の組成物は、毎日および/または数日毎に投与することができる。
本開示の組成物は、所与の任意の日を通して複数回投与することができる。
本明細書に記載の組成物は、数週間、数カ月、または数年の期間にわたって投与することができる。厳密な投与レジメンは、対象、その対象の健康状態、および対象がコロナウイルス感染のリスクがある、または脆弱性であるとされる時間期間によって異なることになる。
ここで、次に示す以下の図を参照して、本開示について説明する:
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】多価CBM形態のビルディングブロックおよびそれのシアル酸への親和性の図である。a、VcCBM、球体として描かれたα-2,3-シアリルラクトースを伴うコレラ菌シアリダーゼの残基25~216(PDB:1w0p)。b、SpCBM、α-2,3-シアリルラクトースを伴う肺炎レンサ球菌NanAシアリダーゼの残基121~305(PDB:4c1w)。c、TD、三量化ドメイン、虹色の緑膿菌シュードアミニダーゼの、残基333~438(PDB:2w38);それぞれの色で他の2個のモノマー。d、多価形態:分子量、結合価および25℃での表面プラズモン共鳴法(SPR)によって決定された、α2,3-シアリルラクトースに対するそれらの結合親和性(VcCBM、Vc2CBMおよびVc3CBMのKD値は以前に報告されている(Connaris et al, 2009))。タンデム反復CBM、およびTDに融合されたオリゴマーCBMは、5-アミノリンカーによって連結されている(詳細はConnaris, H. et al., (2014). PNAS 111:6401-6406)。
【
図2】条件1アッセイの結果を示すグラフの図である。特に3mg/mLで試験した場合、全てのCBM化合物によって観察可能な抗ウイルス効果がある。
【
図3】条件1アッセイの結果を示すプラークアッセイの図である;ここでも、特により高濃度で使用した場合、3種のCBM全てについて示された抗ウイルス効果がある。
【
図4】条件2アッセイの結果を示すグラフの図である。この場合、細胞をSARS-CoV-2感染の前にCBMに曝露した;したがって、条件2アッセイは予防モデルを表す。少なくともCBM2およびCBM3について抗ウイルス効果が示されている。
【
図5】条件3アッセイの結果を示すグラフの図である。この場合、感染細胞(SARS-CoV-2で)を種々のCBMで処理した。3種のCBM全て - 特にCBM3について抗ウイルス効果が示されている。
【
図6】条件3アッセイの結果を示すプラークアッセイの図である。ここでも、これは3種のCBM全て - 特にCBM3の抗ウイルス効果を示している。
【
図7】0DPCから殺処分の日(7DPC)までの、群2(対照)および3(Neumifil)の総臨床所見の平均値とSEMの図である。
図7はまた、同じ期間の平均(SEMと共に)体重変化のパーセンテージも示す(右側のy軸)。
【
図8】SARS-CoV-2スパイクS1バリアントへのNeumifil(HEX17)結合の検出の図である。点線は、データの4PLカーブフィットを表す。挿入図:各バリアントのEC50値。
【
図9】組換えヒトACE2へのNeumifil(HEX17)結合の検出の図である。点線は、データの4PLカーブフィッティングを表す。挿入図:EC50値。
【0091】
方法
プラーク減少アッセイ
滴定SARSCoV-2のバイアルを氷上で解凍する。
SARS-CoV-2の2種のワーキングストックを調製し、ウイルスを無血清(SF)DMEMで500pfu/mL(条件1用ワーキングストック)および250pfu/mL(条件2および3用ワーキングストック)に希釈する。
調製ストックを氷上で保存する。
検査薬の調製の場合、各CBMの一定分量(10mg/mLで1バイアル当たり100μL)を氷上で解凍し、内容物を新しい無菌1.5mLエッペンドルフチューブに移し、13,000rpmで5分間遠心分離して、形成したあらゆる沈殿物をペレット状にする。上清を新しい滅菌済み1.5mlエッペンドルフチューブに移す。
CBM上清から、無血清DMEM:PBSの50:50混合物でCBMを希釈して、試験する3種のCBMの2種のワーキングストック濃度(10mg/mLのマスターストックから3mg/mLおよび1mg/mL)を調製する(表1を参照されたい)。
CBMの最終濃度は、条件によって異なる。条件1:最終CBM濃度 1.5mg/mLと0.5mg/mL、ならびに条件2および3の場合、最終CBM濃度3mg/mLと1mg/mL。
【0092】
【0093】
条件1:細胞に添加する前に混合されるウイルスとCBM
・ 等量のSARSCoV-2とCBMを混合し、氷上で1時間インキュベートする。陽性対照の場合、SARS-CoV-2を、CBMの代わりにSF希釈剤(SF DMEMとPBSの50-50混合物)と混合する。陰性対照の場合、3mg/mLにてのCBM 1を、SARS-CoV-2の代わりにSF DMEMと混合する。
○ チューブ1:500pfu/mLにての300μl SARS-CoV-2と共に3mg/mLにての300μl CBM1
○ チューブ2:500pfu/mLにての300μl SARS-CoV-2と共に3mg/mLにての300μl CBM2
○ チューブ3:500pfu/mLにての300μl SARS-CoV-2と共に3mg/mLにての300μl CBM3
○ チューブ4:500pfu/mLにての300μl SARS-CoV-2と共に1mg/mLにての300μl CBM1
○ チューブ5:500pfu/mLにての300μl SARS-CoV-2と共に1mg/mLにての300μl CBM1
○ チューブ6:500pfu/mLにての300μl SARS-CoV-2と共に1mg/mLにての300μl CBM1
○ チューブNC:陰性対照:300μl SF DMEMと共に300μl CBM希釈剤
○ チューブPC:陽性対照、500pfu/mLにての300μl SARS-CoV-2と共に300μl CBM希釈剤
・ 1時間後、細胞から無血清培地を除去し、滅菌PBS(<0.5mL/ウェル)で洗浄する。
・ PBS洗浄後、調製した接種材料200μLを適当なウェルに添加するが、チューブ1~3(および対照)はプレート1に、チューブ4~6(および対照)はプレート2である。
・ プレートを平底の密封可能な容器に入れ、インキュベーターに移す。37℃ 5%CO2で1時間インキュベートする。
・ 1時間後、接種材料を除去し、各ウェルにオーバーレイ1mLを添加する。
・ プレートを平底の密閉可能な容器に移す
・ 37℃ 5%CO2で5日間インキュベートする。
【0094】
条件2:ウイルス感染前にCBMに曝露された細胞
・ 無血清DMEMを除去し、滅菌PBS(<0.5mL/ウェル)で洗浄する。
・ PBS洗浄後、プレート3では3mg/mLにてのCBMで、プレート4では1mg/mLにてのCBMで、CBM 200μLを添加する。37℃ 5%CO2で1時間インキュベートする。
・ 1時間後、CBMを除去し、滅菌PBS(<0.5mL/ウェル)で洗浄する。
・ PBS洗浄後、250pfu/mLに希釈したSARS-CoV-2 200μLを、陰性対照ウェルを除く各ウェルに添加する。陰性対照ウェルに、SF DMEM 200μLを添加する。
・ プレートを平底の密封可能な容器に入れ、インキュベーターに移す。37℃ 5%CO2で1時間インキュベートする。
・ 1時間後、接種材料を除去し、各ウェルにオーバーレイ1mLを添加する。
・ プレートを平底の密閉可能な容器に移す。
・ 37℃ 5%CO2で5日間インキュベートする。
【0095】
条件3:SARS-CoV-2を感染させ、次いで、CBMで処理した細胞。
・ 無血清DMEMを除去し、滅菌PBS(0.5mL/ウェル)で洗浄する。
・ PBS洗浄後、250pfu/mLに希釈したSARS-CoV-2 200μLを、陰性対照を除く各ウェルに添加する。陰性対照ウェルに、SF DMEM 200μLを添加する。
・ プレートを平底の密封可能な容器に入れ、インキュベーターに移す。37℃ 5%CO2で1時間インキュベートする。
・ 1時間後、接種材料を除去し、CBM 200μLを、陰性対照を除く各ウェルに添加する(プレート5では3mg/mLにてのCBMで、およびプレート6では1mg/mLにてのCBMで)。陰性対照ウェルに、CBM希釈剤(SF DMEM-PBS)200μLを添加する。
・ プレートを平底の密封可能な容器に入れ、インキュベーターに移す。37℃ 5%CO2で1時間インキュベートする。
・ 1時間後、CBMを除去し、各ウェルにオーバーレイ1mLを添加する。
・ プレートを平底の密閉可能な容器に移す。
・ 37℃ 5%CO2で4日間インキュベートする。
【0096】
具体的詳細:
CBM:
・ CBM1:Vc2CBM40TD(コレラ菌CBM40に基づく三量体(6価)形態)
・ CBM2:Neumifil(HEX17:肺炎レンサ球菌CBM40に基づく三量体(6価)形態)
・ CBM3:Cp2CBM32TD(ウエルシュ菌CBM32に基づく三量体(6価)形態)
CBMを2種の濃度(1mg/mLと3mg/mL)で添加し、(述べた通りに)3種の条件で試験した:
・ 条件1:細胞に添加する前にSARS-CoV-2とCBMを混合
・ 条件2:SARS-CoV-2感染前に細胞をCBMに曝露(予防モデル)
・ 条件3:細胞にSARS-CoV-2を感染させ、次いで、CBMを添加(処置モデル)
CBMの構成について:
3mg/mL:450μL ストック+1050μL DMEM:PBS
1mg/mL:150μL ストック+1350μL DMEM:PBS
SARS-CoV-2
バイアルラベル:SARS CoV2、England 2、P2 HCM/V/52、05.03.20
2.4×105pfu/mLでストック
→100μL ストック+900μL 培地=2.4×104pfu/mL
→200μL 上記+1800μL 培地=2.4×103pfu/mL
→1.5mL 上記+6mL 培地=480pfu/mL ←研究に使用した
VeroE6細胞
P15、スプリット1:2 25/3/20(PHE HCMグループから入手)
試薬の詳細
→ DMEM Sigma D5796、Lot RNBH6732、Exp 06/2020
→ PBS Gibco 10010-023、Lot 2098597、Exp 30/6/2021
→ オーバーレイ(作製された一定分量、それぞれ2個のプレートに十分):
・ 7.5mL 4%CMC PHE 培地、MR/19/1044、製造日 04/DEC/19
・ 7.5mL 2%CMC PHE 培地、MR/19/1043、製造日 04/DEC/19
・15mL 2×MEM Gibco 21935-028、Lot 2150451、Exp 31/12/2020
・ 800μL FCS Gibco 10100-139、Lot 216386RP、Exp 05/2024
・ 400μL anti-anti Sigma A5955、Lot 035M4800V
【0097】
結果
条件1:細胞に添加する前にウイルスとCBMを混合
試験の本フェーズでは、SARS-CoV-2ウイルスとCBM化合物を細胞に添加する前に1時間インキュベートした。プレート1は3mg/mLの作業濃度で試験した化合物であり、プレート2は1mg/mLで試験した化合物であった。
陰性対照ウェルは全てインタクトであり、陽性対照は1ウェルあたり119~164の間のプラークのカウントを与えた。結果を
図2(グラフ)および3(プラークアッセイ)に示す。結果が示すところは、全てのCBM化合物で観察可能な抗ウイルス効果があることである。
3.2.条件2:ウイルス感染前に細胞をCBMに曝露
試験の本フェーズでは、SARS-CoV-2ウイルスを添加する前に、VeroE6細胞をCBM化合物に曝露した。プレート3は3mg/mLの作業濃度で試験した化合物であり、プレート4は1mg/mLで試験した化合物であった。染色後にプラークを計数した。
図4に示すように、1mg/mLの作業濃度で試験した場合、CBM2およびCBM3の化合物で観察可能な抗ウイルス効果があった。
3.3.条件3:細胞にSARS-CoV-2を感染させ、次いで、CBMで処理した
試験の本フェーズでは、CBM化合物を添加する前に、VeroE6細胞にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた。
プレート5は3mg/mLの作業濃度で試験した化合物であり、プレート6は1mg/mLで試験した化合物であった。染色後にプラークを計数した。陰性対照のウェルは全てインタクトであり、陽性対照はウェルあたり117~132の間のプラークのカウントを与えた。
グラフにプロットすると(
図5を参照されたい)、3種のCBM化合物全てが抗ウイルス効果を有することが示されており、特に最大の減少を示したのはCBM3である。CBM1とCBM2の両作用濃度からの結果は類似していた。プラークアッセイの結果も
図6に示す。
【0098】
結論
全てのCBMが、in vitroでSARS-CoV-2ウイルスに対してなんらかの抗ウイルス活性を示した。
CBM2(Neumifil:Hex17)およびCBM3(CBM32ベース)が極めて有望である。ここで実証された結果によって、適切な動物モデルでの喫緊であるin vivo研究ための根拠がもたらされている。
【0099】
(実施例2):CBM vs OC43の試験
OC43はヒトコロナウイルスOC43-(HCoV-OC43)である;これはベータコロナウイルスであり、「感冒」タイプの病気の発生に関連している。そのSタンパク質は、糖ベースの受容体決定基に、特に、糖タンパク質および脂質上のグリカン鎖に末端残基として付着している9-O-アセチル化シアル酸(9-O-Ac-Sias)に、結合する。
CBMがOC43感染を処置または予防するのに使用することができるか否かを判定するために、一連の実験を完了した。
【0100】
各実験では、以下のCBMを使用した:
1)Vc2CBM40TD(VC2)
2)Cp2CBM32TD(CBM32)
3)HEX17
各CBMを、1mg/mlでおよび3mg/mlで使用した。
条件1:予防的CBM処理
細胞をCBMで1時間処理した後、hCoV-OC43と共に1時間インキュベートした。アッセイが示したところは、試験されたCBMのいずれかで処理することによって、感染させたがいずれものCBMで前処理されていない細胞と比較して、その後のhCoV-OC43感染を予防することができたことである。
本効果は、VC2(3mg/mlにてのおよび1mg/mlにての)、HEX17(1mg/mlにての)およびCBM32(3mg/mlおよび1mg/mlにての)で最も顕著であった。
条件2:同時のCBM処理
細胞をCBMとhCoV-OC43で同時に1時間処理した。アッセイが示したところは、CBMのいずれかによるそしていずれかの濃度(1mg/mlまたは3mg/ml)での同時処理によって、感染させたがいずれものCBMで処理されていない細胞と比較して、hCoV-OC43感染を減少させることができたことである。
【0101】
(実施例3)
SARS-CoV-2に対するNeumifilを試験する動物(ハムスター)研究
プロトコル/研究デザイン
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
(実施例4)
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、SARS-CoV-2の認識、結合、融合、および宿主細胞への侵入において主たる役割を果たしている[1]。シアル酸を含めて、グリカンもこの相互作用において重要とすることができる。ACE2受容体内には8個のグリコシル化部位があり、そのうち3個(N90、N322およびN546)がSARS-CoV-2スパイクとの相互作用において極めて重要な役割を果たしている可能性がある。SARS-CoV-2スパイク上のグリカンはまた、スパイクの受容体結合ドメイン(RBD)のコンフォメーションをモジュレートすることができるが、このコンフォメーションは、ACE2の認識および結合に関与している。そういったグリカンが欠失すると、ACE2結合は大幅に減少する。
【0106】
SARS-CoV-2の新規な多重のバリアントが出現し、世界的に循環している[1、2]。特に懸念されるのは、英国で特定されたB.1.1.7およびB.1525のバリアント、B.1.351 South AfricanバリアントならびにP.1 Brazilバリアントである。B.1.1.7UK(「Kent」)ウイルスは、感染力を高めるとともに死亡のリスク増加と関連している可能性があるスパイクタンパク質の、HV69-70欠失およびN501Yによって特徴付けられる。B.1.351 S.Africanバリアントは、潜在的ワクチンエスケープの突然変異E484Kを含めて、さらなる差異と並行して、一部の突然変異をB.1.1.7と共有している。Brazilバリアント、P.1は多くの国に拡散しつつあり、再感染に関連している。P.1はまた、UKバリアントの感染性の上昇に関係するN501Y突然変異に加えて、E484Kを含む。さらなるバリアント、B1525が英国で特定されており、これは、Kent B.1.1.7突然変異と並行して、重要なE484K突然変異を含有する。
【0107】
目的:
1)NeumifilがSARS-CoV-2スパイクS1タンパク質と相互作用するか否か、および親和性が新規バリアント突然変異によって影響を受けるか否かを判定すること。2)NeumifilがヒトACE2と相互作用するか否かを判定すること。
方法:
表1に、製造元から提供されたバリアントS1スパイク配列情報をまとめる。スパイクタンパク質およびACE2タンパク質のそれぞれを、HEK293細胞で組換え発現させた。
【0108】
【0109】
EC50(50%効果濃度)値を、ELISAによって決定した。スパイクタンパク質またはACE2タンパク質を高結合 ELISAプレートに1μg/mLの濃度で4℃で一晩固定化した。次いで、ウェルをNeumifil(3倍希釈系列:29160、9720、3240、1080、360、120、40、0ng/mL)と共に3回重複で1.5時間インキュベートした。Neumifil結合の免疫検出を、ウサギ抗Neumifilとのインキュベーション(1時間)、これに続いてHRP標識抗ウサギIgG(1時間)とのインキュベーションおよびTMB基質の顕色によって行った。4パラメータロジスティック(4PL)曲線フィッティングを使用して、結合曲線を解析して、変曲点(EC50)を決定した。
【0110】
結果:
図8に示すように、Neumifilは、本来のスパイクタンパク質(Wuhan-Hu-1 December 2019分離株配列からなる)に174ng/mLのEC50を持って結合する。バリアントの結合プロファイルおよびEC50が指摘するところは、本親和性は、South African配列およびUK(Kent)配列に存在する突然変異によって有意に影響されないことである。
図9に、NeumifilはACE2に235ng/mlのEC50を持って結合することを示す。
【0111】
文献
1. Understanding variants of SARS-CoV-2 (2021) The Lancet World Report 397(102), P462
2. McNally, A. (2021) BMJ 372, 504
【配列表】
【国際調査報告】