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特表2023-517010タンパク質分解を標的とする膜ユビキチンリガーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】タンパク質分解を標的とする膜ユビキチンリガーゼ
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/40 20060101AFI20230414BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230414BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230414BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230414BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230414BHJP
   C40B 40/10 20060101ALN20230414BHJP
【FI】
C07K16/40
C12Q1/02
C07K16/28
A61K39/395 C
A61K39/395 D
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K47/68
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C40B40/10 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552730
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2021055551
(87)【国際公開番号】W WO2021176034
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】20161084.7
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20180740.1
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514116305
【氏名又は名称】ユーエムセー・ユトレヒト・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】モーリス,マデロン マリア
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045CB02
2G045FB03
2G045GC15
4B063QA20
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR77
4B063QS33
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、第1および第2の結合ドメインを含むヘテロ二官能性分子に関し、i)第1の結合ドメインは膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができ;ii)第2の結合ドメインは膜貫通タンパク質に特異的に結合することができ、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜貫通タンパク質のユビキチン化および内在化をもたらす。本発明は、さらに、疾患の処置に使用するためのヘテロ二官能性分子に関し、好ましくは、疾患は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染性疾患および遺伝性疾患のうちの少なくとも1つである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の結合ドメインを含むヘテロ二官能性分子であって、
i)前記第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができ;
ii)前記第2の結合ドメインは、膜貫通タンパク質に特異的に結合することができ、前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび前記膜貫通タンパク質への前記ヘテロ二官能性分子の同時結合は、好ましくは、前記膜貫通タンパク質のユビキチン化と内在化をもたらす、ヘテロ二官能性分子。
【請求項2】
前記分子が、前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分および前記膜貫通タンパク質の細胞外部分に結合する、請求項1に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項3】
前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび前記膜貫通タンパク質への前記分子の同時結合が、前記膜貫通タンパク質の分解、好ましくは、リソソーム分解をもたらす、請求項1または2に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項4】
前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼが、モノユビキチン、マルチユビキチン、Lys48連結またはLys63連結ポリユビキチン鎖により前記膜貫通タンパク質をユビキチン化する、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項5】
前記膜貫通タンパク質が、受容体、好ましくは、がんに関与する受容体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項6】
前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼが、RNF43、RNF167、ZNRF3、RNF13、AMFR、MARCH1、MARCH2、MARCH4、MARCH8、MARCH9、RNF149、RNF145、RNFT1、RNF130およびRNF128からなる群から選択され、ならびに/または前記膜貫通タンパク質が、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項7】
前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼがRNF43であり、前記膜貫通タンパク質がPD-L1、FZD7、FLT3、TGFβR2およびEGFRからなる群から選択される、請求項6に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項8】
前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼがRNF167であり、前記膜貫通タンパク質がPD-1、CTLA4、FLT3、TGFβR2およびEGFRからなる群から選択される、請求項6に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項9】
前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼがRNF128であり、前記膜貫通タンパク質がPD-1、PD-L1およびFLT3のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項10】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼがRNF130であり、前記膜貫通タンパク質がPD-1およびPD-L1のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項11】
前記分子が、前記第1の結合ドメインと前記第2の結合ドメインの間にリンカーを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項12】
前記第1のドメインおよび前記第2のドメインのうちの少なくとも1つが、有機小分子またはタンパク性分子であり、好ましくは、前記ヘテロ二官能性分子が二環性ペプチドである、請求項1~11のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項13】
前記第1のドメインおよび前記第2のドメインのうちの少なくとも1つが抗体またはその機能性断片であり、好ましくは、前記機能性断片がナノボディである、請求項1~12のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項14】
前記ヘテロ二官能性分子が、二重特異性抗体、好ましくは、二重特異性ナノボディである、請求項13に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項15】
前記第1のドメインおよび前記第2のドメインのうちの少なくとも1つがアプタマーである、請求項1~14のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項16】
医薬として使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項17】
がんの処置に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子であって、前記がんは、好ましくは、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、食道がん、胃がん、前立腺がん、肺がん、黒色腫、白血病、膵臓がんおよび膀胱がんからなる群から選択される、ヘテロ二官能性分子。
【請求項18】
前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質が、
a)膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を、その細胞表面に発現する細胞を用意するステップであって、
- 前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、前記細胞外部分に第1の非天然エピトープタグを含み;
- 前記膜結合タンパク質は、前記細胞外部分に第2の非天然エピトープタグを含む、ステップと;
b)前記細胞をヘテロ二官能性分子に曝露するステップであって、前記ヘテロ二官能性分子は、
- 前記第1の非天然エピトープタグに特異的に結合することができる第1の結合ドメイン;および
- 前記第2の非天然エピトープタグに結合することができる第2の結合ドメイン
を含む、ステップと;
c)前記細胞の前記膜結合タンパク質の表面レベルを決定するステップと;
d)前記膜結合タンパク質の表面レベルが、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または約100%減少した場合に、前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび前記膜結合タンパク質を選択するステップであって、前記減少は、ステップb)の前の、前記細胞の前記膜結合タンパク質の表面レベルと比較した減少である、ステップと
を含む選択方法を用いて選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載のヘテロ二官能性分子。
【請求項19】
がん治療用の標的として膜貫通タンパク質を同定するための方法であって、前記方法は、
i)細胞をヘテロ二官能性分子のライブラリーのうちの1つ以上のメンバーに曝露するステップであって、前記ヘテロ二官能性分子は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含み、前記第1の結合ドメインは膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合することができ、前記第2のドメインはスクランブル配列を含む、ステップと;
ii)前記曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力のうちの少なくとも1つを決定するステップと;
iii)前記曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力のうちの少なくとも1つを、対照細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力のうちの少なくとも1つと比較するステップと;
iv)前記対照細胞と比較して、前記曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力のうちの少なくとも1つを低減または増加させる前記ヘテロ二官能性分子を同定するステップと;
v)ステップiv)において同定された前記ヘテロ二官能性分子が結合することができる前記膜貫通タンパク質を同定するステップと
を含み、
好ましくは、前記ヘテロ二官能性分子は二重特異性抗体であり、好ましくは、二重特異性ナノボディである、方法。
【請求項20】
前記細胞が、患者由来の組織、好ましくは、培養した患者由来の組織の一部であるかまたはそれに由来し、好ましくは、前記細胞は、生検もしくはオルガノイド、好ましくは、腫瘍オルガノイドの一部であるかまたはそれに由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを減少させるための方法であって、前記方法は、
a)膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび前記膜結合タンパク質を、その細胞表面に発現する細胞を用意するステップと;
b)前記細胞をヘテロ二官能性分子に曝露するステップであって、前記ヘテロ二官能性分子は、
i)前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン;および
ii)前記膜結合タンパク質の細胞外部分に特異的に結合することができる第2の結合ドメイン
を含む、ステップと;
c)必要に応じて、前記細胞の前記膜結合タンパク質の表面レベルを決定するステップと
を含み、
前記減少は、ステップb)の前の、前記細胞の前記膜結合タンパク質の表面レベルと比較した減少である、方法。
【請求項22】
- 前記膜貫通E3ユビキチンリガーゼが、前記細胞外部分に第1の非天然エピトープタグを含み、前記ヘテロ二官能性分子の前記第1の結合ドメインが、前記第1の非天然エピトープタグに結合する;ならびに
- 前記膜結合タンパク質が、前記細胞外部分に第2の非天然エピトープタグを含み、前記ヘテロ二官能性分子の前記第2の結合ドメインが、前記第2の非天然エピトープタグに結合する
のうちの少なくとも1つである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、分子細胞生物学の分野、特にがん細胞生物学の分野に関する。本発明は、膜貫通ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質に同時に結合して、膜貫通タンパク質の内在化を媒介することができるヘテロ二官能性分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞は、外部化学シグナルを捕捉し、細胞内シグナル伝達カスケードを開始して細胞応答を駆動する、細胞膜に埋め込まれた受容体の活性により、細胞の周囲とコミュニケーションをとる。細胞表面での受容体の利用可能性は、シグナル特異性および感度の重要な決定因子であり、これらの事象の誤った調節は、しばしば、がんの発生と治療耐性に連結している。
【0003】
実際、受容体の変異活性化または過剰発現は、多数の組織における主要なものであり、広く認識されているがん促進メカニズムである(例えば、EGFR、ERBB2、PDGFR、TGFβR、IGFR1、GHR、FZD、LRP6)。がん細胞の異常受容体活性への依存性は、種々の中和抗体および低分子阻害剤の開発を誘発した。しかしながら、受容体活性の中和に成功するためには、毒性を誘発することなく、高い有効性を示すのに十分な血漿濃度に達する強力な結合剤の生成が必要であり、非共有結合性相互作用物質の場合には困難であると判明することがある。さらに、代償性受容体の安定化または上方制御は、耐性の主要な経路である。
【0004】
膜結合受容体のサイトゾル領域がユビキチンで翻訳後修飾されると、誘導されたエンドサイトーシスを介して細胞表面から受容体の急速な除去が誘導される。内在化受容体は、その後、リソソーム分解に供されることがある。健常な幹細胞では、高レベルのWntシグナル伝達は、細胞表面からの、Wntの受容体であるFrizzled(FZD)のユビキチン化および除去を媒介することが公知である、2つの相同な膜結合ユビキチンリガーゼであるRNF43およびZNRF3の発現を誘導する(Koo et al, Nature 2012, 488(7413):665-9)。したがって、この負のフィードバックループは、細胞表面上のFrizzled(FZD)受容体の実効数を制御することにより、Wntに対する幹細胞の感度を調節するのに役立つ。FZDに対するRNF43/ZNRF3の活性は、LGR4/5受容体およびRNF43/ZNRF3と複合体を形成する分泌型タンパク質R-スポンジン(RSPO)によって幹細胞ニッチにおいて中和される(Hao et al, Nature 2012, 485(7397):195-200)。次に、この三量体RSPO-LGR4/5-RNF43/ZNRF3複合体は、細胞表面から除去され、FZD受容体発現の安定化およびWntシグナル伝達のレベルの増加をもたらす。Wntシグナル伝達は、しばしば、がんにおいて誤って調節される。このようながんは、RNF43およびZNRF3を含むWnt標的遺伝子の発現増加を示す。
【0005】
E3ユビキチンリガーゼは、ユビキチンをタンパク質基質にロードしており、ユビキチンのタンパク質基質への転移を助ける、または直接触媒する、E2ユビキチンをコンジュゲートする酵素を動員する。
【0006】
膜貫通ユビキチンE3リガーゼによって媒介される受容体のユビキチン化は、エンドサイトーシスおよびそれに続くユビキチン化基質の分解をもたらすことが公知である。このような分解が、好ましくは、リソソーム内で行われることは、当該技術分野において公知である。リソソーム分解には、モノユビキチン、マルチユビキチン、Lys48またはLys63連結ポリユビキチン鎖の、膜結合受容体へのライゲーションが必要である。これは、主にプロテアソーム分解経路を利用する、すなわち、Lys48連結ポリユビキチン鎖の、サイトゾル標的タンパク質へのカップリングによって、主にプロテアソーム分解経路を利用するサイトゾルユビキチンリガーゼの活性とは対照的である。
【0007】
したがって、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、E2酵素ファミリーの異なるメンバーと相互作用して、膜結合基質を選択的に標的とする可能性がある。ユビキチン化された基質は内在化され、その後、リソソーム分解を介して分解され得る。
【0008】
膜貫通受容体、特に、疾患の発生または進行に関与する膜貫通受容体を効果的に標的とし、その活性を阻害することは、当該技術分野において依然として強く必要とされる。がんの発生に関与する膜貫通受容体を効果的に標的とし、その活性を阻害することは、当該技術分野において特に強く必要とされる。
【発明の概要】
【0009】
発明の要旨
本発明は、以下の実施形態に要約される。
実施形態1.第1および第2の結合ドメインを含むヘテロ二官能性分子であって、
i)第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができ;
ii)第2の結合ドメインは、膜貫通タンパク質に特異的に結合することができ、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、好ましくは、膜貫通タンパク質のユビキチン化と内在化(internalisation)をもたらす、ヘテロ二官能性分子。
【0010】
実施形態2.分子が、膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分および膜貫通タンパク質の細胞外部分に結合する、実施形態1に記載のヘテロ二官能性分子。
【0011】
実施形態3.膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質への分子の同時結合が、膜貫通タンパク質の分解、好ましくは、リソソーム分解をもたらす、実施形態1または2に記載のヘテロ二官能性分子。
【0012】
実施形態4.膜貫通E3ユビキチンリガーゼが、モノユビキチン、マルチユビキチン、Lys48連結またはLys63連結ポリユビキチン鎖により膜貫通タンパク質をユビキチン化する、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0013】
実施形態5.膜貫通タンパク質が、受容体、好ましくは、がんに関与する受容体である、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0014】
実施形態6.膜貫通E3ユビキチンリガーゼが、RNF43、RNF167、ZNRF3、RNF13、AMFR、MARCH1、MARCH2、MARCH4、MARCH8、MARCH9、RNF149、RNF145、RNFT1、RNF130およびRNF128からなる群から選択される、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0015】
実施形態7.膜貫通タンパク質が、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0016】
実施形態8.分子が、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインの間にリンカーを含む、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0017】
実施形態9.第1のドメインおよび第2のドメインのうちの少なくとも1つ(at leastone the first domain and the second domain)が、有機小分子またはタンパク性分子である、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0018】
実施形態10.ヘテロ二官能性分子が二環性ペプチドである、実施形態9に記載のヘテロ二官能性分子。
【0019】
実施形態11.第1のドメインおよび第2のドメインのうちの少なくとも1つが抗体またはその機能性断片であり、好ましくは、機能性断片がナノボディである、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0020】
実施形態12.ヘテロ二官能性分子が、二重特異性抗体、好ましくは、二重特異性ナノボディである、実施形態11に記載のヘテロ二官能性分子。
【0021】
実施形態13.第1のドメインおよび第2のドメインのうちの少なくとも1つがアプタマーである、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0022】
実施形態14.医薬として使用するための、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0023】
実施形態15.がんの処置に使用するための、前述の実施形態のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子であって、がんは、好ましくは、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、食道がん、胃がん、前立腺がん、肺がん、黒色腫、白血病、膵臓がんおよび膀胱がんからなる群から選択される、ヘテロ二官能性分子。
【0024】
実施形態16.がん治療用の標的として膜貫通タンパク質を同定するための方法であって、該方法は、
i)細胞をヘテロ二官能性分子のライブラリーのうちの1つ以上のメンバーに曝露するステップであって、ヘテロ二官能性分子は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含み、
第1の結合ドメインは膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合することができ、第2のドメインはスクランブル配列(scrambled sequence)を含む、ステップと;
ii)曝露された細胞の生存率(viability)、分化能力(differentiation capacity)、幹細胞性(stemness)および増殖能力(proliferation capacity)のうちの少なくとも1つを決定するステップと;
iii)曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力のうちの少なくとも1つを、対照細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力のうちの少なくとも1つと比較するステップと;
iv)対照細胞と比較して、曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力のうちの少なくとも1つを低減または増加させるヘテロ二官能性分子を同定するステップと;
v)ステップiv)において同定されたヘテロ二官能性分子が結合することができる膜貫通タンパク質を同定するステップ
とを含む、方法。
【0025】
実施形態17.ヘテロ二官能性分子が、二重特異性抗体、好ましくは、二重特異性ナノボディである、実施形態16に記載の方法。
【0026】
実施例18.細胞が、患者由来の組織、好ましくは、培養した患者由来の組織の一部であるかまたはそれに由来し、好ましくは、細胞は、生検もしくはオルガノイド、好ましくは、腫瘍オルガノイドの一部であるかまたはそれに由来する、実施形態16または17に記載の方法。
【0027】
実施形態19.細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを減少させるための方法であって、該方法は、
a)膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を、その細胞表面に発現する細胞を用意するステップと;
b)細胞をヘテロ二官能性分子に曝露するステップであって、ヘテロ二官能性分子は、
i)膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン;および
ii)膜結合タンパク質の細胞外部分に特異的に結合することができる第2の結合ドメイン
を含む、ステップと;
c)必要に応じて、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを決定するステップ
とを含み、
表面レベルにおける減少は、ステップb)の前の、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルと比較した減少である、方法。
【0028】
実施形態20.膜結合タンパク質が膜貫通タンパク質である、実施形態19に記載の方法。
【0029】
実施形態21.
- 膜貫通E3ユビキチンリガーゼが、細胞外部分に第1の非天然エピトープタグを含み、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインが、第1の非天然エピトープタグに結合する;ならびに
- 膜結合タンパク質が、細胞外部分に第2の非天然エピトープタグを含み、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインが、第2の非天然エピトープタグに結合する
のうちの少なくとも1つである、実施形態19または20に記載の方法。
【0030】
実施形態22.第1および第2の非天然エピトープタグが異なるタグである、実施形態21に記載の方法。
【0031】
実施形態23.第1の非天然エピトープタグが、アルファタグおよびE6タグのうちの少なくとも1つであり、ならびに/または第2の非天然エピトープタグが、アルファタグおよびE6タグのうちの少なくとも1つである、実施形態21または22に記載の方法。
【0032】
実施形態24.第1および第2の非天然エピトープタグが、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質のそれぞれのN末端に位置する、実施形態19~23のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
実施形態25.ヘテロ二官能性分子が、二重特異性抗体、好ましくは、二重特異性ナノボディである、実施形態19~24のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
実施形態26.ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインが抗アルファVHHであり、第2の結合ドメインが抗E6 VHHであり、またはヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインが抗E6 VHHであり、第2の結合ドメインが抗アルファVHHである、実施形態25に記載の方法。
【0035】
実施形態27.膜結合タンパク質が第3の非天然エピトープタグを含む、および/または膜貫通ユビキチンE3リガーゼが第4の非天然エピトープタグを含み、好ましくは第3および/または第4のエピトープタグがHis-タグ、FLAG-タグおよびmyc-タグのうちの少なくとも1つである、実施形態19~26のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施形態28.ステップc)における膜結合タンパク質の細胞表面レベルが、細胞表面上のタンパク質を検出することによって、好ましくは免疫蛍光によって決定される、実施形態19~27のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施形態29.膜結合タンパク質の細胞表面レベルが、ステップb)の前の、膜結合タンパク質の細胞表面レベルと比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%または少なくとも約60%減少する、実施形態19~28のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施形態30.膜結合タンパク質の表面レベルの減少が、細胞内の膜結合タンパク質の総量の減少により、好ましくは生化学的分析により決定される、実施形態19~29のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
実施形態31.ステップa)において用意される細胞が、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を過剰発現し、必要に応じて永久的に(permanently)過剰発現する、実施形態19~30のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
実施形態32.ステップa)において用意される細胞が、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を内因性レベルで発現する、実施形態19~30のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
実施形態33.ステップa)において用意される細胞において、膜貫通E3ユビキチンリガーゼをコードするゲノム配列が、第1の、および必要に応じた第4の非天然エピトープタグをコードする配列を組み込むように改変されている、実施形態32に記載の方法。
【0042】
実施形態34.ステップa)において用意される細胞において、膜結合タンパク質をコードするゲノム配列が、第2の、および必要に応じた第3の非天然エピトープタグをコードする配列を組み込むように改変されている、実施形態32および33に記載の方法。
【0043】
実施形態35.ヘテロ二官能性分子が、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインの間にペプチドリンカーを含み、好ましくはペプチドリンカーが(GGGGS)nであり、nは好ましくは1、2、3、4、5、6または7であり、好ましくはnは3または5である、実施形態19~34のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
実施形態36.膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質が、
a)膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を、その細胞表面に発現する細胞を用意するステップであって、
- 膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、細胞外部分に第1の非天然エピトープタグを含み;
- 膜結合タンパク質は、細胞外部分に第2の非天然エピトープタグを含む、ステップと;
b)細胞をヘテロ二官能性分子に曝露するステップであって、ヘテロ二官能性分子は、
- 第1の非天然エピトープタグに特異的に結合することができる第1の結合ドメイン;および
- 第2の非天然エピトープタグに結合することができる第2の結合ドメイン
を含む、ステップと;
c)細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを決定するステップと;
d)膜結合タンパク質の表面レベルが、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または約100%減少した場合に、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を選択するステップであって、該減少は、ステップb)の前の、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルと比較した減少である、ステップ
とを含む選択方法を用いて選択される、実施形態1~15のいずれか1つに記載のヘテロ二官能性分子。
【0045】
定義
本発明の方法、組成物、製剤、使用および他の態様に関する種々の用語が、本明細書および特許請求の範囲を通して使用される。このような用語は、別段の指示がない限り、発明が属する当該技術分野における通常の意味を与えられるものとする。他の具体的に定義された用語は、本明細書において提供される定義と一致する方法で解釈されるべきである。本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の試験のための実施において使用することができるが、好ましい材料および方法を本明細書に記載する。
【0046】
本発明の方法において使用される従来技術を実施する方法は、当業者には明らかである。分子生物学、生化学、計算化学、細胞培養、組換えDNA、バイオインフォマティクス、ゲノミクス、配列決定および関連分野における従来技術の実践は、当業者に周知であり、例えば、以下の参考文献:Sambrook et al., Molecular Cloning. A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989; Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987、および定期的な更新;ならびにそのシリーズであるMethods in Enzymology, Academic Press, San Diegoにおいて検討される。
【0047】
「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」:これらの単数形の用語は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示参照を含む。したがって、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。したがって、例えば、「細胞」への言及は、2つ以上の細胞の組合せなどを含む。
【0048】
「約」および「およそ」:これらの用語は、量、持続時間などの測定可能な値に言及する場合、このような変動が開示された方法を行うのに適しているように、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。加えて、量、比、および他の数値は、本明細書において、範囲形式で提示されることがある。このような範囲フォーマットは、便宜上簡潔に使用され、範囲の限界として明示的に指定された数値を含むように柔軟に理解されるべきであるが、また、個々の数値およびサブ範囲が明示的に指定されるように、その範囲内に包含されるすべての個々の数値またはサブ範囲を含むように理解されるべきである。例えば、約1~約200の範囲の比は、約1および約200の明示的に記載された限界を含むと理解されるべきであるが、また、約2、約3および約4などの個々の比、ならびに約10~約50、約20~約100などのサブ範囲を含むと理解されるべきである。
【0049】
「および/または」:用語「および/または」は、記載されたケースの1つ以上が、単独で、または記載されたケースの少なくとも1つと組み合わせて、記載されたケースの最大すべてとともに発生し得る状況を指す。
【0050】
「含んでいる」:この用語は、包括的およびオープンエンドであり、排他的ではないと解釈される。具体的には、この用語およびその変形は、特定された特徴、ステップまたは構成要素を含むことを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップまたは構成要素の存在を除外すると解釈されるべきではない。
【0051】
「例示的」:この用語は、「例、場合または例示として機能すること」を意味し、本明細書に開示される他の構成を除外すると解釈されるべきではない。
【0052】
用語「ヘテロ二官能性分子」は、本明細書において、2つの異なる機能性結合ドメインを含む分子として定義される。特に、本発明のヘテロ二官能性分子は、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合するための第1の機能性結合ドメインと、第2の分子に結合するための別の第2の機能性結合ドメインとを有する。「ヘテロ二官能性」という名称がすでに示すように、第2の機能性結合ドメインは、第2の分子に結合し、第2の分子は、第1の機能性結合ドメインに結合することができる同一の分子ではない、すなわち、同一の膜貫通E3ユビキチンリガーゼではない。好ましくは、第2の機能性結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合しない。
【0053】
用語「タンパク質」または「ポリペプチド」とは、特定の作用様式、大きさ、3次元構造または起源を参照することなく、アミノ酸の鎖からなる分子を指す。したがって、タンパク質の「断片」または「部分」は、なおも「タンパク質」と称され得る。本明細書において定義され、本明細書において定義される任意の方法で使用されるタンパク質は、単離されたタンパク質であり得る。「単離されたタンパク質」は、もはや天然界にはない、例えば、インビトロまたは組換え細菌もしくは植物宿主細胞にはない、タンパク質を言及するために使用される。好ましくは、タンパク質は50を超えるアミノ酸残基を含む。
【0054】
用語「タンパク性分子」は、本明細書では、ペプチド(アミド)結合によって連結されたアミノ酸単量体の短鎖を含む分子として理解される。アミノ酸単量体の短鎖は、2つ以上のアミノ酸残基を含む。好ましくは、アミノ酸の鎖は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個のアミノ酸残基を有する。好ましくは、100個以下のアミノ酸残基が存在する。好ましくは、タンパク性分子中に50個以下のアミノ酸残基が存在する。好ましくは、タンパク性分子は、約2~100、3~50、4~40、または5~30個、または6~20個のアミノ酸残基を有する。好ましくは、タンパク性分子は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸残基を有する。必要に応じて、タンパク性分子は、環状タンパク性分子を生成するために、限定されないが、連結部分などの1つ以上のさらなる有機部分を含む。
【0055】
「アプタマー」は、好ましくは、特定のヌクレオチド配列を有する核酸分子である。アプタマーは、任意の適切な数のヌクレオチドを含むことができる。アプタマーは、RNAまたはDNAを含むか、またはリボヌクレオチド残基とデオキシリボヌクレオチド残基の両方を含むことができる。アプタマーは、一本鎖、二本鎖であるか、または二本鎖もしくは三本鎖領域を含有することができる。さらに、アプタマーは、例えば、その安定性を向上させるために、化学修飾された残基を含むことができる。
【0056】
アプタマーは、典型的には、約10~約300ヌクレオチドの長さである。より一般的には、アプタマーは、長さが約30~約100ヌクレオチドである。
【0057】
所定の標的(すなわち、膜貫通E3ユビキチンリガーゼまたはさらなる膜貫通タンパク質)に対するアプタマーは、(a)候補混合物を標的と接触させるステップであって、候補混合物中の他の核酸と比較して、標的に対する増大した親和性を有する核酸が、候補混合物の残りから分離され得るステップ;(b)増大した親和性核酸を候補混合物の残りから分離するステップ;および(c)増大した親和性核酸を増幅して核酸の濃縮された混合物を生じさせ、それによって標的分子のアプタマーが同定されるステップを含む方法を使用して、核酸の候補混合物から同定され得る核酸を含む。
【0058】
親和性相互作用は程度の問題であることが認識されているが、この文脈では、その標的に対するアプタマーの「特異的結合親和性」は、アプタマーが、一般的には、混合物または試料中の他の非標的成分に結合するよりもはるかに高い程度の親和性でその標的に結合することを意味する。
【0059】
アプタマーは、同じ環境中の他の物質が核酸に複合体化されない環境下で意図された標的分子と複合体を形成することができる特異的結合領域を有する。結合の特異性は、そのリガンドに対するアプタマーの比較解離定数(Kd)を、環境中の他の材料または全般的に無関係な分子に対するアプタマーの解離定数と比較する点から定義することができる。典型的には、そのリガンドに関するアプタマーのKdは、環境中の無関係な材料または付随する材料を有するアプタマーのKdよりも少なくとも約10倍小さい。さらにより好ましくは、Kdは、少なくとも約50倍小さく、より好ましくは少なくとも約100倍小さく、最も好ましくは少なくとも約200倍小さい。
【0060】
ある実施形態では、膜貫通タンパク質に結合するアプタマーは、1mM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(K)を有する。ある実施形態では、抗膜貫通タンパク質抗体は、異なる種間で保存されるエピトープに結合する。
【0061】
ある実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合するアプタマーは、1mM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(K)を有する。ある実施形態では、抗膜貫通タンパク質抗体は、異なる種間で保存されたエピトープに結合する。
【0062】
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、具体的には、所望の生物学的および/または免疫学的活性を示す限り、例えば、モノクローナル抗体、例えばアゴニストおよびアンタゴニスト、中和抗体、完全長または無傷モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、一本鎖抗体および抗体の機能性断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片、ダイアボディ、トリアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)、重鎖抗体、ナノボディをカバーする。
【0063】
用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書においては抗体と交換可能に使用される。抗体は、ヒトおよび/またはヒト化され得る。
【0064】
用語「抗膜貫通E3ユビキチンリガーゼ抗体」は、具体的には、所望の生物学的および/または免疫学的活性を示す限り、例えば、単一抗膜貫通E3ユビキチンリガーゼモノクローナル抗体、例えばアゴニストおよびアンタゴニスト、好ましくはアゴニスト、中和抗体、完全長または無傷モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、裸の抗体、多価抗体、一本鎖抗膜貫通E3ユビキチンリガーゼ抗体および抗膜貫通E3ユビキチンリガーゼ抗体の断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片、ダイアボディ、トリアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)、重鎖抗体およびナノボディをカバーする。好ましい抗体はナノボディであり得る。好ましくは、抗膜貫通E3ユビキチンリガーゼ抗体は、本明細書において下記に定義されるE3ユビキチンリガーゼに特異的に結合する。
【0065】
用語「抗膜貫通タンパク質抗体」は、具体的には、所望の生物学的および/または免疫学的活性を示す限り、例えば、単一抗膜貫通タンパク質モノクローナル抗体、例えばアゴニストおよびアンタゴニスト、好ましくはアンタゴニスト、中和抗体、完全長または無傷モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、裸の抗体、多価抗体、一本鎖抗膜貫通タンパク質抗体および抗膜貫通タンパク質抗体の断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片、ダイアボディ、トリアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)、重鎖抗体およびナノボディをカバーする。好ましい抗体はナノボディであり得る。好ましくは、抗膜貫通タンパク質抗体は、本明細書において下記に定義される膜貫通タンパク質に特異的に結合する。
【0066】
用語「抗膜貫通E3ユビキチンリガーゼ抗体」または「膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合する抗体」とは、抗体が本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインとして有用であるように、十分な親和性で膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合することができる抗体を指す。好ましくは、非関連タンパク質に対する抗膜貫通E3ユビキチンリガーゼ抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはELISAによって測定した場合、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに対する抗体の結合の約10%未満である。ある実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合する抗体は、1mM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(K)を有する。ある実施形態では、抗膜貫通E3ユビキチンリガーゼ抗体は、異なる種間で保存されたエピトープに結合する。
【0067】
用語「抗膜貫通タンパク質抗体」または「膜貫通タンパク質に結合する抗体」とは、抗体が本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインとして有用であるように、十分な親和性で特異的または選択された膜貫通タンパク質に結合することができる抗体を指す。好ましくは、無関係なタンパク質に対する抗膜貫通タンパク質抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはELISAによって測定した場合、膜貫通タンパク質に対する抗体の結合の約10%未満である。ある実施形態では、膜貫通タンパク質に結合する抗体は、1mM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(K)を有する。ある実施形態では、抗膜貫通タンパク質抗体は、異なる種間で保存されたエピトープに結合する。
【0068】
目的の抗原、すなわち、膜貫通E3ユビキチンリガーゼまたは目的のさらなる膜貫通タンパク質に「結合する」抗体は、抗体が本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインまたは第2の結合ドメインとしてそれぞれ有用であるように、十分な親和性で前記抗原に結合する抗体である。
【0069】
ヘテロ二官能性分子中の第1の結合ドメインとしてまたは第2の結合ドメインとして作用する抗体は、基本的4鎖抗体であり得る。このような基本的4鎖抗体単位は、好ましくは、2つの同一の軽鎖(L)および2つの同一の重鎖(H)で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドとともに5つの基本的なヘテロ四量体単位からなり、したがって、10個の抗原結合部位を含有し、一方、分泌型IgA抗体は、重合して、J鎖とともに2~5個の基本的4鎖単位を含む多価集合体を形成することができる)。
【0070】
IgGの場合、4鎖単位は、一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は1つの共有結合ジスルフィド結合によってH鎖に連結されるが、一方、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプによって1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結される。各H鎖とL鎖はまた、規則的に離れた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖はN末端に可変ドメイン(V)を有し、続いて、αおよびγ鎖の各々に対して3つの定常ドメイン(C)、μおよびεアイソタイプに対して4つのCドメインを有する。各L鎖はN末端に可変ドメイン(V)を有し、続いて、他の末端に定常ドメイン(C)を有する。VはVと整列し、Cは重鎖(C1)の第1の定常ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖可変ドメインの間に界面を形成すると考えられる。VとVの対合はともに、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造および性質については、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0071】
任意の脊椎動物種由来のL鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパとラムダと呼ばれる2つの明確に区別されるタイプのうちの1つに割り当てることができる。重鎖(C)の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つのクラスの免疫グロブリンが存在し、それぞれα、δ、ε、γおよびμと称される重鎖を有する。γおよびαクラスは、C配列および機能における比較的小さな差異に基づいてサブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2を発現する。
【0072】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「V」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは「V」と称され得る。これらのドメインは、一般的に、抗体の最も可変的な部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0073】
用語「可変」とは、可変ドメインのあるセグメントが抗体間で配列が大きく異なることを指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する。しかしながら、可変ドメインの110アミノ酸スパンにわたって、可変性は均一に分布していない。代わりに、V領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる15~30アミノ酸の比較的不変なストレッチからなり、各9~12アミノ酸長の「超可変領域」(HVR)と呼ばれる極端に可変性であるより短い領域で区切られている。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々4つのFRを含み、主にβシート構造を採用し、3つの超可変領域によって接続され、これらは、βシート構造を接続し、場合によってはその一部を形成するループを形成する。各鎖中の超可変領域は、FRによって近接して一緒に保持され、他の鎖からの超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照されたい)。定常ドメインは抗原に対する抗体の結合に直接的には関与しないが、抗体依存性細胞毒性(ADCC)における抗体の関与などの種々のエフェクター機能を示す。
【0074】
「無傷(インタクト(intact))」抗体は、抗原結合部位ならびにCおよび少なくとも重鎖定常ドメイン、C1、C2およびC3を含む抗体である。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそれらのアミノ酸配列バリアントであり得る。
【0075】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部、好ましくは、少なくとも無傷抗体の抗原結合および/または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;トリアボディ;線形抗体(米国特許第5,641,870号明細書、Example2; Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照されたい);一本鎖抗体分子;および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。一実施形態では、抗体断片は、無傷抗体の抗原結合部位を含み、したがって、抗原に結合する能力を保持する。
【0076】
用語「ナノボディ」は、当該技術分野において周知である。ナノボディは、重鎖のみの抗体のVHドメインを含むかまたはそれからなる抗体断片である。好ましいナノボディは、ラクダ科から誘導可能であり、好ましくはラマから誘導可能である。
【0077】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合性断片、および容易に結晶化する能力を反映する名称である、残りの「Fc」断片を生成する。Fab断片は、H鎖(VH)の可変領域ドメインとともにL鎖全体、および1つの重鎖(CH1)の第1の定常ドメインからなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。
【0078】
抗体のペプシン処置は単一の大きなF(ab’)2断片を生じ、これは二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片にほぼ対応し、なおも抗原を架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含むC1ドメインのカルボキシ末端にさらなる少数の残基を有することによって、Fab断片と異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた公知である。
【0079】
Fc断片は、ジスルフィドによってともに保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列によって決定され、この領域はまた、あるタイプの細胞に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される部分である。
【0080】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、しっかりとして非共有結合的に会合した、1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が、2本鎖Fv種におけるものと類似した「二量体」構造で会合することができるように、可撓性ペプチドリンカーによって共有結合的に連結され得る。これら2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖からの各々3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識および結合する能力を有するが、結合部位全体よりも低い親和性である。
【0081】
「一本鎖Fv」はまた、「sFv」または「scFv」とも略されるが、単一のポリペプチド鎖に接続されたVおよびV抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするVHとVLドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0082】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る、可能な天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、異なる決定基(エピトープ)へと方向づけられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、単一の抗原部位へと方向づけられる。モノクローナル抗体は、他の抗体によって汚染されずに合成され得るという点で有利である。修飾語句「モノクローナル」は、いかなる特定の方法によっても抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明のヘテロ二官能性分子中の第1または第2の結合ドメインとして有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製することができるか、または細菌、真核生物動物もしくは植物の細胞において組換えDNA法を用いて作製することができる(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0083】
本明細書にけるモノクローナル抗体は、所望の生物活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖(複数可)の残りは、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を参照されたい)。本明細書における目的のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、旧世界猿、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列、およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む。
【0084】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の抗体特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基で置換される。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンの少数のフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中に見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能をさらに改良するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、典型的には、2つの可変ドメインを含み、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含む。詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。また、以下の概説記事およびそこに引用されている参考文献を参照されたい:Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma and Immunol., 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions, 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech., 5:428-433 (1994)。
【0085】
用語「超可変領域」、「HVR」は、本明細書で使用される場合、配列において超可変である、および/または抗原結合に関与する構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6つの超可変領域;VH中に3つ(H1、H2、H3)、およびVL中に3つ(L1、L2、L3)を含む。多数の超可変領域の輪郭が使用されており、本明細書に包含される。超可変領域は、一般的に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、Kabat番号付けシステムに従って番号付けした場合、VL中のほぼ約残基24-34(L1)、50-56(L2)および89-97(L3)、ならびにVH中のほぼ約31-35(H1)、50-65(H2)および95-102(H3);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))および/または「超可変ループ」由来のそれらの残基(例えば、Chothia番号付けシステムに従って番号付けした場合、VL中の残基24-34(L1)、50-56(L2)および89-97(L3)、ならびにVH中の26-32(H1)、52-56(H2)および95-101(H3);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));および/または「超可変ループ」/CDRからのそれらの残基(例えば、IMGT番号付けシステムに従って番号付けした場合、VL中の残基27-38(L1)、56-65(L2)および105-120(L3)、ならびにVH中の27-38(H1)、56-65(H2)および105-120(H3);Lefranc, M. P. et al. Nucl. Acids Res. 27:209-212 (1999), Ruiz, M. et al. Nucl. Acids Res. 28:219-221 (2000))を含む。必要に応じて、抗体は、Honneger, A. and Plunkthun, A. J. (Mol. Biol. 309:657-670 (2001))に従って番号付けした場合、以下の点:VL中の28、36(L1)、63、74-75(L2)および123(L3)、ならびにVH中の28、36(H1)、63、74-75(H2)および123(H3)のうちの1つ以上で対称的挿入を有する。本発明の抗体の超可変領域/CDRは、IMGT番号付けシステムに従って定義され、番号付けされることが好ましい。
【0086】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書において定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0087】
「ブロッキング」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を阻害または低減させるものである。好ましいブロッキング抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0088】
「アゴニスト抗体」は、本明細書で使用される場合、目的のポリペプチドの機能性活性のうちの少なくとも1つを模倣する抗体である。
【0089】
「結合親和性」とは、一般的に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)の間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。別段の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1の相互作用を反映する内因性結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(K)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含め、当該技術分野において公知である一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は、一般的にゆっくりと抗原に結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は、一般的により速く抗原に結合し、より長く結合し続ける傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法が当該技術分野において公知であり、そのいずれも本発明の目的のために使用することができる。具体的な例示的実施形態を以下に記載する。
【0090】
「K」または「K値」は、約10~50応答単位(RU)の固定化抗原CM5チップを用いて25℃でBIAcore(商標)-2000またはBIAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって測定することができる。簡単に説明すると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)は、供給者の使用説明書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。抗原をpH4.8の10mM酢酸ナトリウムで5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流速で注射し、カップリングしたタンパク質の約10応答単位(RU)を達成する。抗原の注射後、1Mエタノールアミンを注射して、未反応基をブロックする。動力学測定のために、抗体またはFab(0.78nM~500nM)の2倍系列希釈物を、25℃にて約25μl/分の流速で0.05%Tween 20を含むPBS(PBST)に注射する。会合速度(kon)と解離速度(koff)を、会合と解離センサグラムを同時に適合させることにより、簡単な1対1 Langmuir結合モデル(BIAcore評価ソフトウエア バージョン3.2)を用いて計算した。平衡解離定数(K)をkoff/kon比として計算した。例えば、Chen, Y., et al., (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによりオンレートが10-1-1を超える場合、オンレートは、ストップフロー付き分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌レッドキュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定した場合、増加した濃度の抗原の存在下、PBS、pH7.2中の20nM抗抗原抗体(Fab形態)の25℃で蛍光発光強度の増減(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定することができる。
【0091】
また、本発明による「オンレート」または「会合の速度」または「会合速度」または「kon」は、上述のように、BIAcore(商標)-2000またはBIAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いて上述の同じ表面プラズモン共鳴技術で決定することができる。
【0092】
好ましくは、第1または第2の結合ドメインとしてヘテロ二官能性分子に使用するための抗体は、他のタンパク質と有意に交差反応しない。
【0093】
本発明のヘテロ二官能性分子の用語「抗原結合タンパク質」および「結合ドメイン」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0094】
用語「エピトープ」は、本発明のヘテロ二官能性分子の第1または第2の結合ドメインによってそれぞれ結合される分子の一部である。この用語は、抗原結合タンパク質に特異的に結合することができ、例えば、本明細書において以下に定義されるヘテロ二官能性分子の第1または第2のドメインに特異的に結合することができる任意の決定基を含む。エピトープは、連続的または非連続的であり得る(例えば、ポリペプチドにおいて、ポリペプチド配列において互いに連続していないが、分子の文脈内にあるアミノ酸残基は、抗原結合タンパク質によって結合される)。エピトープは、好ましくは、本明細書において定義される膜貫通E3ユビキチンリガーゼ上に、または本明細書において定義される目的のさらなる膜貫通タンパク質上に存在する。
【0095】
エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、スルホニルまたは硫酸基などの分子の化学的に活性な表面基群(surface groupings)を含み得、特異的な三次元構造特性、および/または特異的な電荷特性を有し得る。一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または高分子の複合体混合物中の標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0096】
本明細書中の用語「Fc領域」は、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なることがあるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基、またはPro230からそのカルボキシル末端まで伸長するものと定義される。Fc領域のC末端リシン(EU番号付けシステムによる残基447)は、例えば、抗体の製造もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え的に操作することによって除去することができる。
【0097】
用語「Fc領域を含む抗体」とは、Fc領域を含む抗体を指す。Fc領域のC末端リシン(EU番号付けシステムによる残基447)は、例えば、抗体の精製中に、または抗体をコードする核酸を組換え的に操作することによって除去することができる。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体を含むヘテロ二官能性分子は、K447を有するかまたはK447が除去された抗体を含むことができる。
【0098】
「アミノ酸配列」:これは、タンパク質の、またはタンパク質内のアミノ酸残基の順序を指す。換言すると、タンパク質中のアミノ酸の任意の順序はアミノ酸配列と称され得る。
【0099】
「ヌクレオチド配列」:これは、核酸の、または核酸内のヌクレオチドの順序を指す。換言すれば、核酸中のヌクレオチドの任意の順序はヌクレオチド配列と称され得る。
【0100】
用語「相同性」、「配列同一性」などは、本明細書において互換的に使用される。配列同一性は、本明細書において、配列を比較することによって決定した場合、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチドまたはタンパク質)配列間または2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関連として定義される。当該技術分野において、「同一性」はまた、場合に応じて、このような配列のストリング間の一致によって決定した場合、アミノ酸配列間または核酸配列間の配列関連性の程度を意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存されたアミノ酸置換を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。
【0101】
用語「相補性」は、本明細書では、完全に相補的な鎖(例えば、第2の鎖または逆鎖)に対するヌクレオチド配列の配列同一性として定義される。例えば、100%相補的(または完全に相補的)である配列は、本明細書では、相補的な鎖と100%の配列同一性を有すると理解され、例えば、本明細書では、80%相補的な配列は、(完全に)相補的な鎖と80%の配列同一性を有すると理解される。
【0102】
「同一性」および「類似性」は、公知の方法によって容易に計算することができる。「配列同一性」および「配列類似性」は、2つの配列の長さに依存して、全体的または局所的アラインメントアルゴリズムを用いて、2つのペプチド配列または2つのヌクレオチド配列を整列させることによって決定することができる。同様の長さの配列は、好ましくは、全長にわたって配列を最適に整列させるグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を使用して整列され、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を使用して整列される。次に、配列は、(例えば、既定のパラメーターを使用してプログラムGAPまたはBESTFITによって最適に整列された場合に)配列同一性(以下に定義される)の少なくともある最小パーセンテージを共有する場合、「実質的に同一」または「本質的に類似」と称され得る。GAPは、NeedlemanおよびWunschグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して、全長(完全長)にわたって2つの配列を整列し、マッチの数を最大化し、ギャップ数を最小化する。グローバルアラインメントは、2つの配列が類似した長さを有する場合、配列同一性を決定するために適切に使用される。一般的に、GAPデフォルトパラメーターを使用し、ギャップ生成ペナルティ=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)およびギャップ伸長ペナルティ=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)である。ヌクレオチドについては、使用されるデフォルトスコアリングマトリックスはnwsgapdnaであり、タンパク質については、デフォルトスコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89, 915-919)。配列アラインメントおよび配列同一性パーセンテージのスコアは、Accelrys Inc.,9685 Scranton Road,San Diego,CA 92121-3752 USAから入手可能なGCG Wisconsin Package、バージョン10.3などのコンピュータプログラムを用いて、または上記のGAPと同じパラメーターを使用して、EmbossWIN バージョン2.10.0のプログラム「needle」(グローバルNeedleman Wunsch アルゴリズムを使用する)もしくは「water」(ローカルSmith Waterman アルゴリズムを使用する)などのオープンソースソフトウェアを使用して、またはデフォルト設定(「needle」と「water」の両方、およびタンパク質とDNAアラインメントの両方について、デフォルトギャップオープンペナルティは 10.0であり、デフォルトギャップ拡張ペナルティは0.5であり;デフォルトスコアリングマトリックスは、タンパク質の場合はBlosum62、DNAの場合はDNAFullである)を使用して決定され得る。配列が実質的に異なる全長を有する場合、Smith Watermanアルゴリズムを使用するものなどのローカルアラインメントが好ましい。
【0103】
代わりに、パーセンテージ類似性または同一性は、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用して、公開データベースに対して検索することによって決定することができる。したがって、本発明の核酸およびタンパク質配列は、さらに、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、公開データベースに対して検索を行うための「クエリー配列」として用いることができる。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTnおよびBLASTxプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行うことができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3で行うことができる。比較目的でギャップのあるアラインメントを得るために、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402に記載されるGapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTxおよびBLASTn)のデフォルトパラメーターを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/で国立バイオテクノロジー情報センターのホームページを参照されたい。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「予防する」、「予防すること」、および「予防」とは、疾患、好ましくは本明細書において以下に定義される疾患の再発、開始、発症もしくは進行の予防または低減、または疾患もしくはその1つ以上の症状の重症度および/もしくは期間の予防または低減を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、用語「治療」および「治療」とは、疾患、好ましくは本明細書において以下に定義される疾患、またはその1つ以上の症状の予防、処置、管理または改善において使用することができる任意のプロトコール(複数可)、方法(複数可)および/または薬剤(複数可)を指すことができる。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置すること」および「処置」とは、疾患、好ましくは本明細書において以下に定義される疾患の進行、重症度、および/もしくは期間の低減または改善を指し、ならびに/あるいは疾患の1つ以上の症状を低減または改善する。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」とは、疾患の重症度および/もしくは期間を低減し、その1つ以上の症状を改善し、疾患の進展を予防し、または疾患の退行を引き起こすのに十分であるか、あるいは疾患またはその1つ以上の症状の発症、再発、開始もしくは進行の予防をもたらし、または別の治療(例えば、別の治療剤)の予防効果および/または治療効果を増強もしくは向上させるのに十分である治療、例えば、予防剤または治療剤、好ましくは本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子の量を指す。好ましくは、疾患は、本明細書において以下に定義される疾患である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
詳細な説明
本発明は、膜結合タンパク質の標的化された内在化およびその後の分解のために、ヘテロ二官能性分子を採用する本発明の概念に関する。本発明のヘテロ二官能性分子は、膜貫通ユビキチンリガーゼと、がん促進受容体などの膜結合タンパク質に同時に結合することができる。所望の標的膜貫通タンパク質とのユビキチンリガーゼの誘導された近接は、標的のユビキチン化をもたらし、続いて細胞表面からの除去とその後の分解をもたらす。例えば、結果として、がん細胞の増殖が損なわれる。本発明の例示的実施形態の概略図は、図1に提供される。
【0109】
このアプローチの利点は、少なくとも以下を含む:
i)本発明のヘテロ二官能性分子は、従来の「占有ベースの(occupancy-based)」治療法と比較した場合、標的分子と比較して化学量論量以下の量の分子のみを必要とする、強力な効力の増加を可能にする。
ii)2種のタンパク質、すなわち,膜貫通E3ユビキチンリガーゼならびに膜貫通タンパク質の特異的結合が必要とされることもまた、潜在的なオフ標的毒性を低減させる。好ましくは、細胞膜に局在化し、がん細胞において増加した発現を示すユビキチンリガーゼが採用される。
iii)標的タンパク質分解は、十分な量の新しい膜貫通タンパク質を合成するのに時間が必要とされるため、長期の薬力学的作用をもたらす。
iv)ヘテロ二官能性分子は細胞外タンパク質部分に結合し、したがって、細胞膜を通過する必要はない。
v)がん細胞は、自己再生特性を有するがん細胞におけるRNF43およびZNRF3などのいくつかのタイプの膜貫通E3ユビキチンリガーゼを豊富に発現することが公知である。この例では、4つの対立遺伝子が、ユビキチン化活性を示すタンパク質を産生し、変異による不活性化および耐性の可能性を低下させる。
【0110】
さらに、本発明者らは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質の効果的な組合せ、例えば、膜貫通ユビキチンE3リガーゼと膜結合タンパク質の誘導された近接が膜結合タンパク質の細胞表面除去をもたらす組合せについてスクリーニングするための効率的な方法を発見した。この簡単な方法を用いて、効果的なヘテロ二官能性分子が構築され、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質の効果的な組合せを標的とすることができる。
【0111】
したがって、第1の態様では、本発明は、第1および第2の結合ドメインを含むヘテロ二官能性分子に関する。第1の結合ドメインは膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができ、第2の結合ドメインは特異的な膜結合タンパク質に結合することができる。
【0112】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質の同時結合は、これら2つの分子を互いに近接するようにする。結果として、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、その後、膜結合タンパク質をユビキチン化することができる。
【0113】
したがって、好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜結合タンパク質のユビキチン化をもたらす。
【0114】
ユビキチン化は、ユビキチン化タンパク質の分解をもたらすことが公知である。したがって、さらに、好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜結合タンパク質の分解をもたらす。
【0115】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質の同時結合は、これら2つの分子を互いに近接するようにする。結果として、膜結合タンパク質は内在化され、好ましくはその後分解され得る。
【0116】
第1の結合ドメインに結合した膜貫通E3ユビキチンリガーゼ
ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼへの特異的結合を可能にする。膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、膜結合タンパク質のユビキチン化およびエンドサイトーシスを媒介し得る、すなわち、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインによって結合されたタンパク質のユビキチン化およびエンドサイトーシスを媒介し得る。
【0117】
基質のユビキチン化およびエンドサイトーシスは、好ましくは、細胞表面から基質を除去する。内在化された基質はその後分解され得る。したがって、好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、ユビキチン化、細胞表面除去および膜結合タンパク質の分解を媒介し得る、すなわち、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインによって結合されたタンパク質のユビキチン化、細胞表面除去および分解を媒介し得る。
【0118】
したがって、好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜結合タンパク質の内在化をもたらし、それによって、膜結合タンパク質を細胞表面から除去する。
【0119】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜結合タンパク質の内在化と分解をもたらす。したがって、好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質は、同じ細胞において発現される。必要に応じて、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質のうちの少なくとも1つが、細胞において過剰発現され得る。
【0120】
ユビキチン化および分解は、当該技術分野において公知である任意の適切な方法を用いて評価することができる。非限定的な例として、ユビキチン化および分解は、参照により本明細書に組み込まれるKoo et al, Nature (2012)(前掲)に記載されるように評価することができる。
【0121】
基質タンパク質は、ユビキチンで荷電したE2酵素を動員するE3リガーゼタンパク質との相互作用を介してユビキチンによるリシン残基の修飾のために選択される(Clague MJ and Urbe S (2010), Cell; 43(5):682-5)。これは、基質への単一のユビキチン分子の移動(モノユビキチン化)、または、例えば、前のユビキチン分子に存在するリシン残基を介して、さらなるユビキチン分子の前のユビキチン分子へのカップリングをもたらし、鎖を形成することができる。ユビキチンの7つのリシンは、異なる三次元構造をとる異なるイソペプチド鎖連結の形成を提供し、これらはすべて真核細胞に存在する(Xu et al. (2009), Cell 137, 133-145)。基質に動員されたE2とE3酵素の特異的な組合せが、鎖連結タイプを決定する。
【0122】
特に、リソソーム分解は、プロテアソーム分解とは異なったユビキチン化パターンの基質タンパク質を必要とすることがある。例えば、リシン48(Lys48)連結ポリユビキチン鎖で標識された基質は、しばしばプロテアソーム標的をもたらす。代わりに、モノユビキチン、マルチユビキチン、Lys48連結またはLys63連結ポリユビキチンのいずれかで標識された基質がリソソームへと方向づけられる。
【0123】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼによって媒介される分解は、リソソーム分解およびプロテアソーム分解のうちの少なくとも1つであり得る。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼによって媒介される分解は、少なくともリソソーム分解である。
【0124】
したがって、好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜結合タンパク質の内在化をもたらす。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜結合タンパク質の内在化、ならびにプロテアソームおよびリソソーム分解のうちの少なくとも1つをもたらす。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜結合タンパク質の内在化およびリソソーム分解をもたらす。
【0125】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、膜貫通タンパク質をモノユビキチン、マルチユビキチン、Lys63連結ポリユビキチン、またはLys48連結ポリユビキチン鎖でユビキチン化する。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、膜貫通タンパク質をモノユビキチン、マルチユビキチン、またはLys63連結ポリユビキチン鎖でポリユビキチン化する。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、膜貫通タンパク質をLys63連結およびLys48連結ポリユビキチン鎖のうちの少なくとも1つでポリユビキチン化する。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、膜貫通タンパク質をLys63連結ポリユビキチン鎖でポリユビキチン化する。
【0126】
多くの膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、組織特異的発現を示すか、または1つ以上のがんタイプにおいて過剰発現を示す。したがって、好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子に結合することができる膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、選択的組織において発現される膜貫通E3ユビキチンリガーゼである。非限定的な例として、膜貫通E3ユビキチンリガーゼRNF43およびZNRF3は、限定されないが、腸などの複数の組織の成体幹細胞集団において選択的に発現される。さらに限定されない例として、膜貫通E3ユビキチンリガーゼMARCH1およびMARCH9は、免疫細胞において増加した発現を示す。
【0127】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、限定されないが、がん組織などの選択的組織においてのみ発現される。
【0128】
代わりに、またはさらに、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子に結合することができる膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、がんの1つ以上のタイプにおいて、発現、好ましくは過剰発現を示す膜貫通E3ユビキチンリガーゼである。
【0129】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、RNF43、RNF167、ZNRF3、RNF13、AMFR、MARCH1、MARCH2、MARCH4、MARCH8、MARCH9、RNF149、RNF145、RNFT1、RNF130およびRNF128からなる群から選択される。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、RNF43、RNF167、ZNRF3、RNF13、AMFR、MARCH1、MARCH2、MARCH4、MARCH8、MARCH9、RNF145、RNFT1、RNF130およびRNF128からなる群から選択される。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、RNF43、RNF167、RNF128およびRNF130のうちの少なくとも1つである。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、RNF43およびRNF167のうちの少なくとも1つである。
【0130】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼは過剰発現され得る。非限定的な例として、RNF43、ZNRF3、RNF13、AMFR、MARCH1、MARCH2、MARCH4、MARCH8、MARCH9、RNF149、RNF145、RNFT1、RNF167、RNF130およびRNF128は、がんにおいて増加した発現を示すことが、当該技術分野において公知である。
【0131】
非限定的な例:
- RNF43は、肺がんおよび結腸直腸がん(EMBL-EBI遺伝子発現アトラス)において過剰発現される;
- ZNRF3は肝細胞癌腫および(転移性)結腸直腸がん(遺伝子発現アトラス)において過剰発現される;
- RNF13は、骨肉腫(遺伝子発現アトラス)および膵臓がん(Zhang Q, et al, Cell Res. 2009;19(3):348-57)において過剰発現される;
- AMFRは、限定されないが、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、皮膚がん、乳がんおよび膀胱がんを含む多くのがんにおいて過剰発現され、その上昇した発現は、これらのがんにおいて不良な予後および転移と相関することが見出された(Chiu CG et al, Expert Rev Anticancer Ther. 2008;8(2):207-17; B. Huang and A. Raz, Cell Res. 1995; 5(2):221-234;遺伝子発現アトラス);
- MARCH1は、乳がんおよび卵巣がんにおいて過剰発現される(Meng Y et al, Oncol Rep. 2016; 36(5): 2463-2470;遺伝子発現アトラス);
- MARCH2は多くの異なった腫瘍タイプにおいて高度に発現される(ヒトタンパク質アトラス);
- MARCH4は食道がんおよび甲状腺がんにおいて過剰発現される(遺伝子発現アトラス);
- MARCH8は食道がんおよび肺がんにおいて過剰発現される(Singh S et al, Cancer Cell Int. 2017;17:116; Fan J et al, Oncotarget. 2017; 8(64): 108238-108248);
- MARCH9は肺がんにおいて過剰発現される(Fan J、前掲);
- RNF149は骨肉腫(遺伝子発現アトラス)において過剰発現される;
- RNF145は骨肉腫(遺伝子発現アトラス)において過剰発現される;
- RNFT1は神経膠芽腫(遺伝子発現アトラス)において過剰発現される;
- RNF167は扁平上皮がん(遺伝子発現アトラス)において過剰発現される;
- RNF130は食道がんおよび前立腺がん(遺伝子発現アトラス)において過剰発現される;ならびに
- RNF128は腸がん(遺伝子発現アトラス)において過剰発現される。
【0132】
さらに、遺伝子増幅は、多くのがん(cBioPortal)において、乳がんにおけるRNFT1に対して、およびRNF13に対して一般的に見出される。遺伝子増幅は一般的にタンパク質発現の増加をもたらす。
【0133】
さらに、MARCHファミリーのいくつかのメンバーは、MARCH1およびMARCH9(Wang X et al, Semin Cancer Biol. 2008; 18(6): 441-450)を含む免疫細胞において高度に発現される。
【0134】
一実施形態では、ヘテロ二官能性分子は、第1および第2の結合ドメインを含み、
i)第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができ、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、がん組織において発現され、好ましくは選択的に発現され、または過剰発現され;
ii)第2の結合ドメインは、膜貫通タンパク質に特異的に結合することができ、膜貫通タンパク質は、前記がん組織に関与することが公知であるか、または関与することが予想され、
膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、好ましくは、膜貫通タンパク質のユビキチン化および内在化をもたらす。
【0135】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質は、同じ細胞内で発現され、好ましくは、同じがん性細胞内で発現される。
【0136】
好ましくは、E3ユビキチンリガーゼと膜貫通タンパク質はともに、肺がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、骨肉腫、膵臓がん、胃がん、肝臓がん、皮膚がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、食道がん、甲状腺がん、子宮頸がん、神経膠芽腫、扁平上皮がん、前立腺がん(遺伝子発現アトラス)および腸がんおよび/またはそれらの転移からなる群から選択されるがん性細胞において発現される。
【0137】
一実施形態では、ヘテロ二官能性分子は、第1および第2の結合ドメインを含み、
i)第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができ、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、免疫細胞において発現され、好ましくは選択的に発現され、または過剰発現され;
ii)第2の結合ドメインは、膜貫通タンパク質に特異的に結合することができ、膜貫通タンパク質は、同じ免疫細胞において発現され;
膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、好ましくは膜貫通タンパク質のユビキチン化および内在化をもたらす。
【0138】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17および19からなる群から選択される配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0139】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、および20からなる群から選択される配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0140】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、RNF43およびZNRF3のうちの少なくとも1つである。タンパク質RNF43およびZNRF3は、好ましくは、それぞれ配列番号1および3と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNF43およびZNRF3タンパク質は、それぞれ配列番号2および4と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0141】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはRNF43である。好ましくは、RNF43タンパク質は、配列番号1と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNF43タンパク質は、配列番号2と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはRNF43に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6およびCMTM4、ならびにWLSからなる群から選択される。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR2、EGFR、FLT3およびFZD7、ならびにPD-L1からなる群から選択される。
【0142】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF43に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびTGFβR2に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0143】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF43に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびEGFRに特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0144】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF43に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびFLT3に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0145】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF43に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびFZD7に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0146】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF43に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびPD-L1に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0147】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはZNRF3である。好ましくは、ZNRF3タンパク質は、配列番号3と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、ZNRF3タンパク質は、配列番号4と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはZNRF3に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0148】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはRNF13である。好ましくは、RNF13タンパク質は、配列番号5と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNF13タンパク質は、配列番号6と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはRNF13に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0149】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはAMFRである。好ましくは、AMFRタンパク質は、配列番号7または配列番号51と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、AMFRタンパク質は、配列番号8または配列番号52と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはAMFRに結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0150】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはMARCH1である。好ましくは、MARCH1タンパク質は、配列番号9と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、MARCH1タンパク質は、配列番号10と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはMARCH1に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0151】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはMARCH4である。好ましくは、MARCH4タンパク質は、配列番号11と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、MARCH4タンパク質は、配列番号12と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはMARCH4に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0152】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはMARCH2である。好ましくは、MARCH2タンパク質は、配列番号13と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、MARCH2タンパク質は、配列番号14と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはMARCH2に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0153】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはMARCH8である。好ましくは、MARCH8タンパク質は、配列番号15と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、MARCH8タンパク質は、配列番号16と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはMARCH8に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0154】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはMARCH9である。好ましくは、MARCH9タンパク質は、配列番号17と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、MARCH9タンパク質は、配列番号18と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはMARCH9に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0155】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはRNF149である。好ましくは、RNF149タンパク質は、配列番号19と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNF149タンパク質は、配列番号20と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはRNF149に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0156】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはRNF145である。好ましくは、RNF145タンパク質は、配列番号21と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNF145タンパク質は、配列番号22と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはRNF145に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0157】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはRNFT1である。好ましくは、RNFT1タンパク質は、配列番号23と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNFT1タンパク質は、配列番号24と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはRNFT1に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0158】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはRNF167である。好ましくは、RNF167タンパク質は、配列番号25と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNF167タンパク質は、配列番号26と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはRNF167に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR2、EGFR、FLT3、PD-1およびCTLA4からなる群から選択される。
【0159】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF167に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびTGFβR2に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0160】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF167に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびEGFRに特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0161】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF167に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびFLT3に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0162】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF167に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびPD-1に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0163】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF167に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびCTLA4に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0164】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはRNF130である。好ましくは、RNF130タンパク質は、配列番号27と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNF130タンパク質は、配列番号28と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはRNF130に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、PD-1およびPD-L1のうちの少なくとも1つである。好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF130に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびPD-1に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF130に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびPD-L1に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0165】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはRNF128である。好ましくは、RNF128タンパク質は、配列番号29と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、RNF128タンパク質は、配列番号30と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインはRNF128に結合し、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメインに結合したタンパク質」のセクションにおいて本明細書の以下に定義される膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FLT3、PD-1およびPD-L1からなる群から選択される。
【0166】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF128に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびFLT3に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0167】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF128に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびPD-1に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0168】
好ましくは、本明細書において定義されるヘテロ二官能性分子は、RNF128に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン、およびPD-L1に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0169】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に結合する。したがって、好ましくは、ヘテロ二官能性分子は、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合するために細胞膜を通過する必要はない。
【0170】
第2の結合ドメインに結合したタンパク質
本明細書において詳述するように、本発明のヘテロ二官能性分子は、膜貫通E3ユビキチンリガーゼ、好ましくは、本明細書において上記で定義される膜貫通E3ユビキチンリガーゼと結合することができる第1の結合ドメインを有する。
【0171】
本発明のヘテロ二官能性分子は、第2の結合ドメインをさらに含み、第2の結合ドメインは、膜結合タンパク質と結合することができる。
【0172】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができるタンパク質は、少なくとも部分的に細胞の外部に曝露されるタンパク質である。タンパク質は、一方の側から細胞膜に付着することができるか、または膜の全体にわたっていることができ、すなわち、膜貫通タンパク質である。好ましくは、第2の結合ドメインは、膜貫通タンパク質に特異的に結合することができる。
【0173】
用語「ヘテロ二官能性」がすでに示唆しているように、第2の結合ドメインに結合し得る膜貫通タンパク質は、第1の結合ドメインに結合し得る膜貫通E3ユビキチンリガーゼとは異なる。好ましくは、第2の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的におよび/または効果的に結合しない。
【0174】
好ましくは、膜結合タンパク質は膜貫通タンパク質、好ましくは細胞表面受容体である。したがって、好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、膜貫通受容体に特異的に結合することができる。好ましくは、受容体は、イオンチャネル連結受容体、酵素連結受容体、Gタンパク質結合受容体およびFc受容体のうちの少なくとも1つである。
【0175】
ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、受容体の単量体形態および/または二量体化形態に結合し得る。さらに、または代わりに、第2の結合ドメインは、受容体の不活性および/または活性コンホメーションに結合し得る。
【0176】
膜結合タンパク質は、疾患の発症、進行または重症度に関連または関与していてもよい。膜結合タンパク質は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染性疾患、および/または遺伝性疾患に関与することが公知であるかまたは予想されていてもよい。
【0177】
好ましくは、膜結合タンパク質は、LGR4、LGR5およびLGR6のうちの少なくとも1つではない。
【0178】
好ましい実施形態では、膜貫通受容体は、がんに関与することが公知であるかまたは予想されていてもよい。「がんに関与する受容体」は、本明細書では、がんの悪性腫瘍に直接的または間接的に影響し得る膜貫通受容体として理解される。
【0179】
一実施形態では、がんに関与する膜貫通受容体は、活性化または増加した活性により、細胞に悪性特性を誘導または増大させる受容体であり得る。例えば、限定されないが、膜貫通受容体の活性化は、細胞の幹細胞性、分化能力、生存率および増殖能力のうちの少なくとも1つに影響を与え得る。本明細書で使用される場合、受容体の活性は、限定されないが、1つ以上の活性化変異を有する受容体、ならびに/または受容体リガンドの増加した発現および/もしくは増加した利用可能性を有する受容体、ならびに/または減少した代謝回転を有する受容体を含み、例えば、細胞膜上で安定化される。
【0180】
さらに、または代わりに、がんに関与することが公知であるかまたは予想される膜貫通受容体は、例えば、免疫細胞および/または間質細胞上に存在する受容体であり得る。非限定的な例として、免疫細胞上に存在する受容体を阻害することは、腫瘍細胞を標的とするための免疫細胞の活性化をもたらすことができ、間質細胞上に存在する受容体の阻害は、腫瘍血管新生の低減をもたらすことができる。
【0181】
したがって、がんに関与する受容体は、腫瘍細胞上に存在する膜貫通受容体、および/または腫瘍細胞に直接的もしくは間接的な影響を有する細胞上に存在する膜貫通受容体であり得ることが本明細書において理解される。
【0182】
「がんに関連するかまたは関与する受容体」という語句は、限定されないが、がんもしくは悪性腫瘍などの増殖性疾患、または骨髄異形成、骨髄異形成症候群もしくは前白血病などの前がん性状態を含む。
【0183】
一実施形態では、本明細書に記載される膜貫通受容体の活性化または増加した活性に関連するがんは、血液学的がんである。一実施形態では、本明細書に記載される膜貫通受容体の活性化または増加した活性に関連するがんは、固形がんである。本明細書に記載される膜貫通受容体の活性化または増加した活性に関連するさらなる疾患には、限定されないが、本明細書に記載される、例えば、非定型および/または非古典的がん、悪性腫瘍、前がん性状態、または膜貫通受容体の活性化に関連する増殖性疾患が含まれる。本明細書に記載される膜貫通受容体の活性化または増加した活性に関連する非がん関連の適応症には、限定されないが、例えば、自己免疫疾患(例えば、ループス)、炎症性障害(アレルギーおよび喘息)ならびに移植が含まれる。
【0184】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2のドメインが結合し得る受容体は、がんに関与する受容体であり、好ましくは、受容体は、増加した活性、例えば、増加した下流シグナル伝達を有する。下流のシグナル伝達は、好ましくは、膜貫通受容体の活性化または増加した活性を有さない他の点で同一の細胞と比較して増加する。増加した活性は、限定されないが、受容体の変異活性化、受容体の上方制御、受容体の増大した安定化、および/または受容体リガンドの増大した利用可能性に起因し得る。
【0185】
受容体は、ある特定の種のがんに関与していてもよい。代わりに、受容体は多くの異なったがんタイプに関与していてもよい(the receptor may play be involved in many different cancer types)。例えば、受容体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または以上のがんのタイプに関与していてもよい。代わりに、またはさらに、受容体は、がん血管新生を関与していてもよい。
【0186】
受容体は、固形がんまたは血液がんに関与していてもよい。受容体は固形がんに関与していてもよい。好ましくは、固形がんは、結腸がん、直腸がん、腎細胞癌腫、肝臓がん、肺の非小細胞がん、小腸のがん、食道のがん、黒色腫、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頸の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児期の固形腫瘍、膀胱のがん、腎臓または尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、環境誘発性がん、前記がんの組合せ、および前記がんの転移病変からなる群から選択される。
【0187】
受容体は、固形がんまたは血液がんに関与していてもよい。好ましくは、血液がんは、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞性前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞または大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、Waldenstromマクログロブリン血症、または前白血病のうちの1つ以上から選択される。
【0188】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインが結合することができる膜貫通タンパク質は、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、食道がん、胃がん、前立腺がん、肺がん、黒色腫、白血病、膵臓がんおよび膀胱がんからなる群から選択されるがんに関連する。
【0189】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、結腸直腸がんにおいて活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、EGFR、IGF1R、METおよびERBB2のうちの少なくとも1つである。
【0190】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、乳がんにおいて活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、EGFRまたはERBB2である。
【0191】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、食道がんにおいて活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、ERBB2またはVEGFR2である。
【0192】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、胃がんにおいて活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、ERBB2またはVEGFR2である。
【0193】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、白血病において活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、FLT3である。
【0194】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、黒色腫において活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、KITである。
【0195】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、非小細胞肺がんにおいて活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、EGFRまたはMETである。
【0196】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、卵巣がんにおいて活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、EGFRである。
【0197】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、膵臓がんにおいて活性化される、または増加した活性を有する。好ましくは、膜貫通タンパク質は、EGFRである。
【0198】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1、TGFβR2、EGFR、ERBB2、ERBB3、IGF1R、MET、VEGFR2、KIT、FLT3、PDGFRA、PDGFRB、GHR、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0199】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、配列番号31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、84、86、88、90、92および94からなる群から選択される配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0200】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、配列番号32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、85、87、89、91、93および95からなる群から選択される配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0201】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1またはTGFβR2である。
【0202】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR1である。好ましくは、TGFβR1タンパク質は、配列番号31と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、TGFβR1タンパク質は、配列番号32と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0203】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、TGFβR2である。好ましくは、TGFβR2タンパク質は、配列番号33と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、TGFβR2タンパク質は、配列番号34と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、TGFβR2に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF43およびRNF167のうちの少なくとも1つに特異的に結合することができる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、TGFβR2に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF43に特異的に結合することができる。
【0204】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、TGFβR2に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF167に特異的に結合することができる。
【0205】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、EGFRである。好ましくは、EGFRタンパク質は、配列番号35と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、EGFRタンパク質は、配列番号36と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、EGFRに特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF43およびRNF167のうちの少なくとも1つに特異的に結合することができる。
【0206】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、EGFRに特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF167に特異的に結合することができる。
【0207】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、ERBB2またはERBB3である。
【0208】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、ERBB2である。好ましくは、ERBB2タンパク質は、配列番号37と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、ERBB2タンパク質は、配列番号38と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0209】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、ERBB3である。好ましくは、ERBB3タンパク質は、配列番号39と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、ERBB3タンパク質は、配列番号40と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0210】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、IGF1Rである。好ましくは、IGF1Rタンパク質は、配列番号41と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、IGF1Rタンパク質は、配列番号42と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0211】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、METである。好ましくは、METタンパク質は、配列番号43と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、METタンパク質は、配列番号44と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0212】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、VEGFR2である。好ましくは、VEGFR2タンパク質は、配列番号45と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、VEGFR2タンパク質は、配列番号46と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0213】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、KITである。好ましくは、KITタンパク質は、配列番号47と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、KITタンパク質は、配列番号48と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0214】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FLT3である。好ましくは、FLT3タンパク質は、配列番号49と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FLT3タンパク質は、配列番号50と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、FLT3に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF43、RNF167およびRNF128のうちの少なくとも1つに特異的に結合することができる。
【0215】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、FLT3に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF43に特異的に結合することができる。
【0216】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、FLT3に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF167に特異的に結合することができる。
【0217】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、FLT3に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF128に特異的に結合することができる。
【0218】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、PDGFRAである。好ましくは、PDGFRAタンパク質は、配列番号53と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、PDGFRAタンパク質は、配列番号54と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0219】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、PDGFRBである。好ましくは、PDGFRBタンパク質は、配列番号55と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、PDGFRBタンパク質は、配列番号56と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0220】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9およびFZD10からなる群から選択される。
【0221】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD1である。好ましくは、FZD1タンパク質は、配列番号57と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD1タンパク質は、配列番号58と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0222】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD2である。好ましくは、FZD2タンパク質は、配列番号59と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD2タンパク質は、配列番号60と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0223】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD3である。好ましくは、FZD3タンパク質は、配列番号61と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD3タンパク質は、配列番号62と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0224】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD4である。好ましくは、FZD4タンパク質は、配列番号63と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD4タンパク質は、配列番号64と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0225】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD5である。好ましくは、FZD5タンパク質は、配列番号65と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD5タンパク質は、配列番号66と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0226】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD6である。好ましくは、FZD6タンパク質は、配列番号67と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD6タンパク質は、配列番号68と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0227】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD7である。好ましくは、FZD7タンパク質は、配列番号69と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD7タンパク質は、配列番号70と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、FZD7に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF43に特異的に結合することができる。
【0228】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD8である。好ましくは、FZD8タンパク質は、配列番号71と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD8タンパク質は、配列番号72と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0229】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD9である。好ましくは、FZD9タンパク質は、配列番号73と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD9タンパク質は、配列番号74と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0230】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、FZD10である。好ましくは、FZD10タンパク質は、配列番号75と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、FZD10タンパク質は、配列番号76と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0231】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、LRP5またはLRP6である。
【0232】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、LRP5である。好ましくは、LRP5タンパク質は、配列番号77と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、LRP5タンパク質は、配列番号78と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0233】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、LRP6である。好ましくは、LRP6タンパク質は、配列番号79と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、LRP6タンパク質は、配列番号80と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0234】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、増殖ホルモン受容体(GHR)である。好ましくは、GHRタンパク質は、配列番号84と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、GHRタンパク質は、配列番号85と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0235】
好ましい実施形態では、膜貫通タンパク質は、免疫チェックポイント阻害剤として機能する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、PD-1、PD-L1、CTLA4、CMTM6、CMTM4およびWLSからなる群から選択される。
【0236】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質はPD-1である。好ましくは、PD-1タンパク質は、配列番号86と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、PD-1タンパク質は、配列番号87と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインはPD-1に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインはRNF167、RNF128およびRNF130からなる群から選択される膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができる。
【0237】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインはPD-1に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインはRNF167に特異的に結合することができる。
【0238】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインはPD-1に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインはRNF128に特異的に結合することができる。
【0239】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインはPD-1に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF130に特異的に結合することができる。
【0240】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、PD-L1である。好ましくは、PD-L1タンパク質は、配列番号88と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、PD1L1タンパク質は、配列番号89と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0241】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF43、RNF128およびRNF130からなる群から選択される膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができる。
【0242】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF43に特異的に結合することができる。
【0243】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF128に特異的に結合することができる。
【0244】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF130に特異的に結合することができる。
【0245】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、CTLA4である。好ましくは、CTLA4タンパク質は、配列番号90と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、CTLA4タンパク質は、配列番号91と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、CTLA4に特異的に結合することができ、第1の結合ドメインは、RNF167に特異的に結合することができる。
【0246】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、CMTM6である。好ましくは、CMTM6タンパク質は、配列番号92と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、CMTM6タンパク質は、配列番号93と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0247】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、CMTM4である。好ましくは、CMTM4タンパク質は、配列番号94と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、CMTM4タンパク質は、配列番号95と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0248】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインに結合することができる膜貫通タンパク質は、WLS/GPR177である。好ましくは、WLSタンパク質は、配列番号100と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。好ましくは、WLSタンパク質は、配列番号101と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。
【0249】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、膜結合タンパク質の細胞外部分に結合する。したがって、好ましくは、ヘテロ二官能性分子は、膜結合タンパク質と結合するために細胞膜を通過する必要がない。
【0250】
好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1および第2の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質のそれぞれの細胞外部分に結合する。好ましくは、ヘテロ二官能性分子は細胞外で結合する。
【0251】
第1の結合ドメイン
本発明のヘテロ二官能性分子は、少なくとも第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含む。第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができる。好ましくは、第1の結合ドメインは、上記「第1の結合ドメインが結合するタンパク質」の項で規定した膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができる。
【0252】
ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができる任意のドメインであり得る。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に結合する。
【0253】
当業者は、例えば、化合物ライブラリーのスクリーニング、免疫化研究、および/または抗体もしくはその機能性断片を生成するハイブリドーマ技術によって、本発明のヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインを生成する方法を理解する。好ましい機能性抗体断片は、ナノボディである。これらの技術の詳細は、例えば(Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow et al., Cold Spring Harbor Publications, p. 726,1988)に記載され、または(Campbell, A.M. "Monoclonal Antibody Technology Techniques in Biochemistry and Molecular Biology," Elsevier Science Publishers, Amsterdam, The Netherlands, 1984)によって、または(St. Groth et al., J. Immunol. Methods 35:1-21, 1980)によって記載される。天然エピトープに対するVHH/ナノボディの生成の詳細は、例えば、Pardon et al, Nature Protocols 2014に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0254】
好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合することができる分子は、抗体である。したがって、好ましくは、抗体は、本発明のヘテロ二官能性分子における第1の結合ドメインとして機能する場合がある。
【0255】
好ましくは、抗体は、抗体断片である。好ましくは、抗体断片は、ナノボディである。したがって、好ましい実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合することができる分子は、ナノボディである。したがって、好ましくは、ナノボディは、本発明のヘテロ二官能性分子における第1の結合ドメインとして機能する場合がある。
【0256】
好ましい実施形態では、第1の結合ドメインは、有機小分子である。
【0257】
好ましい実施形態では、第1の結合ドメインは、アプタマーである。
【0258】
好ましい実施形態では、第1の結合ドメインは、タンパク性分子である。タンパク性分子は環状化されていてもよく、したがって、好ましくは、タンパク性分子は環状ペプチドである。ペプチドは、2つのアミノ酸残基の間の直接的な共有結合によって、または架橋部分を使用することによって環状化されてもよい。そのような架橋部分は、当技術分野でよく知られており、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/057624号に記載される架橋部分が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク性分子は、当技術分野で従来から知られているタンパク性分子であり得る。
【0259】
したがって、本発明は、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合するために当技術分野で既知の分子にまでおよび、この分子は、本発明のヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインとして機能することができる。このような既知の分子としては、既知の抗体、タンパク性分子、アプタマーまたは既知の有機小分子の少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体、タンパク性分子、アプタマーまた有機小分子は、膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に結合するために当技術分野で知られている。
【0260】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合する抗体は当技術分野で知られており、当業者であれば、そのような抗体を取得することは困難ではないだろう。膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合できる、好ましくは膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に特異的に結合できる、任意の既知の抗体は、本発明のヘテロ二官能性分子における第1の結合ドメインとして使用するのに適しているであろう。
【0261】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合することができる好ましい既知の分子は、ナノボディである。したがって、好ましくは、ナノボディは、本発明のヘテロ二官能性分子における第1の結合ドメインとして機能する場合がある。
【0262】
好ましい実施形態では、第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼの天然リガンド、またはその機能性断片、すなわち膜貫通E3ユビキチンリガーゼと結合できる状態である天然リガンドの断片である。
【0263】
非限定的な例として、RNF43およびZNRF3のための天然リガンドは、Rspondin(RSPO)-1、-2、-3および-4である。したがって一実施形態では、ヘテロ二官能性分子は、RNF43に結合することができる第1の結合ドメインを含み、第1の結合ドメインはRspondin 1、Rspondin 2、Rspondin 3およびRspondin 4またはその機能性断片からなる群から選択される。代わりに、ヘテロ二官能性分子は、ZNRF3に結合することができる第1の結合ドメインを含み、第1の結合ドメインはRspondin 1、Rspondin 2、Rspondin 3およびRspondin 4またはその機能性断片からなる群から選択される。
【0264】
第2の結合ドメイン
本発明のヘテロ二官能性分子は、少なくとも第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含む。第2のドメインは、膜結合タンパク質、好ましくは膜貫通タンパク質に特異的に結合することができる。好ましくは、第2の結合ドメインは、上記「第2の結合ドメインが結合するタンパク質」の項で規定した膜貫通タンパク質に特異的に結合することができる。
【0265】
ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、膜結合タンパク質、好ましくは膜貫通膜タンパク質に特異的に結合することができる任意のドメインであり得る。好ましくは、ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、膜結合タンパク質の細胞外部分に結合する。
【0266】
第2の結合ドメインは、抗体、ペプチド、アプタマー、有機小分子であり得る。
【0267】
当業者は、例えば、化合物ライブラリーのスクリーニング、免疫化研究、および/または抗体もしくはその機能性断片を生成するハイブリドーマ技術によって、本発明のヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインを生成する方法を理解する。好ましい機能性抗体断片は、ナノボディである。これらの技術の詳細は、例えば(Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow et al., Cold Spring Harbor Publications, p. 726,1988)に記載され、または(Campbell, A.M. "Monoclonal Antibody Technology Techniques in Biochemistry and Molecular Biology," Elsevier Science Publishers, Amsterdam, The Netherlands, 1984)によって、または(St. Groth et al., J. Immunol. Methods 35:1-21, 1980)によって記載される。
【0268】
好ましい実施形態では、膜結合タンパク質に結合することができる分子は抗体である。したがって、好ましくは、抗体は、本発明のヘテロ二官能性分子における第2の結合ドメインとして機能する場合がある。
【0269】
好ましくは、抗体は、抗体断片である。好ましくは、抗体断片は、ナノボディである。したがって、好ましい実施形態では、膜結合タンパク質に結合することができる分子は、ナノボディである。したがって、好ましくは、ナノボディは、本発明のヘテロ二官能性分子における第2の結合ドメインとして機能する場合がある。
【0270】
好ましい実施形態では、第1の結合ドメインは、有機小分子である。
【0271】
好ましい実施形態では、第1の結合ドメインは、アプタマーである。
【0272】
好ましい実施形態では、第2の結合ドメインは、タンパク性分子である。タンパク性分子は環状化されていてもよく、したがって、好ましくは、タンパク性分子は環状ペプチドである。ペプチドは、2つのアミノ酸残基の間の直接的な共有結合によって、または架橋部分を使用することによって環状化されてもよい。そのような架橋部分は、当技術分野でよく知られており、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/057624号に記載される架橋部分が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク性分子は、当技術分野で従来から知られているタンパク性分子であり得る。
【0273】
したがって、本発明は、膜結合タンパク質、好ましくは本明細書で上に定義される膜結合タンパク質に特異的に結合するために当技術分野で既知の分子にまでおよぶ。そのような分子は、本発明のヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインとして機能することができる。
【0274】
このような既知の分子としては、既知の抗体、タンパク性分子、アプタマーまたは既知の有機小分子の少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体、タンパク性分子、アプタマーまた有機小分子は、本明細書で定義される膜結合タンパク質の細胞外部分に結合するために当技術分野で知られている。
【0275】
膜結合タンパク質、好ましくは本明細書で上に定義される膜貫通タンパク質に結合する抗体は当技術分野で知られており、当業者であれば、そのような抗体を取得することは困難ではないであろう。本明細書で定義される膜貫通タンパク質に特異的に結合することができる、好ましくは本明細書で定義される膜貫通タンパク質の細胞外部分に特異的に結合することができる任意の既知の抗体は、本発明のヘテロ二官能性分子における第2の結合ドメインとして使用するのに適しているであろう。
【0276】
膜貫通タンパク質に結合することができる好ましい既知の分子は、ナノボディである。したがって、好ましくは、ナノボディは、本発明のヘテロ二官能性分子における第2の結合ドメインとして機能する場合がある。
【0277】
好ましい実施形態では、第2の結合ドメインは、膜貫通タンパク質の天然リガンド、好ましくは、本明細書で定義される膜貫通タンパク質である。好ましくは、天然リガンドは、膜貫通タンパク質のアンタゴニストである。
【0278】
ヘテロ二官能性分子
第1の結合ドメインと第2の結合ドメインは、それぞれ膜貫通タンパク質または膜結合タンパク質、すなわち標的タンパク質と特異的に結合することができる。
【0279】
特異的結合は、本明細書では、「非標的」タンパク質のドメインの結合の程度が、蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析または放射性免疫沈降法(RIA)によって決定されるその特定の標的タンパク質へのドメインの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%より小さくなるだろうとして理解されている。ドメインの標的タンパク質への結合に関して、「特異的結合」または「特異的に結合する」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープに「特異的」であるという用語は、非特異的相互作用と測定可能に異なっている結合を意味する。特異的結合は、例えば、標的タンパク質の結合を、一般に結合活性を有しない類似構造のタンパク質である対照タンパク質の結合と比較して決定することにより測定することができる。例えば、特異的結合は、過剰な非標識標的など、標的に類似した対照タンパク質との競合によって決定することができる。この場合、標識標的のプローブとの結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合、特異的結合が示唆される。
【0280】
本明細書で使用される「特異的結合」または「特異的に結合する」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープに「特異的」であるという用語は、例えば、少なくとも約10-4M、あるいは少なくとも約10-5M、あるいは少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、あるいは少なくとも約10-11M、あるいは少なくとも約10-12M、またはそれ以上の標的に対するKd(これは上記のように決定されてよい)を有する結合ドメインによって示され得る。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、結合ドメインが、他の任意のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合せずに、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0281】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜貫通タンパク質のユビキチン化および分解をもたらす。好ましくは、膜結合タンパク質は膜貫通タンパク質である。したがって好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質へのヘテロ二官能性分子の同時結合は、膜貫通タンパク質のユビキチン化および分解をもたらす。好ましくは、分解は、プロテアソーム分解およびリソソーム分解の少なくとも1つである。好ましくは、分解はリソソーム分解である。
【0282】
本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子は、したがって、膜貫通E3ユビキチンリガーゼを標的、すなわち膜結合タンパク質に近づけることによって、細胞膜上の膜結合タンパク質の存在をノックダウンまたはノックアウトする場合がある。言い換えれば、膜結合タンパク質の定常状態レベルが減少することになる。
【0283】
定常状態レベルは、本明細書では、細胞あたりのタンパク質の存在量として定義される場合がある。基準細胞と比較して、膜結合タンパク質の定常状態レベルは、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%減少する場合があり、または約100%減少する場合があり、すなわち、ヘテロ二官能性分子の結合により膜結合タンパク質が完全に存在しないことになる。
【0284】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、例えば、Wu X and Demarest SJ, Methods. (2019)154:3-9、に記載されている。したがって、好ましくは、第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼ、好ましくは、上記「第1の結合ドメインが結合する膜貫通E3ユビキチンリガーゼ」の項で規定した膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができる抗体である。好ましくは、第2の結合ドメインもまた抗体であり、この抗体は、膜結合タンパク質、好ましくは膜貫通タンパク質、好ましくは上記「第2の結合ドメインが結合するタンパク質」の項で規定した膜貫通タンパク質に特異的に結合することができる。2つの抗体(すなわち、第1および第2の結合ドメイン)は、互いに直接結合することができ、または2つの抗体の間にリンカーが存在することができ、好ましくは本明細書に規定するようなリンカーが存在することができる。
【0285】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子は、二重特異性ナノボディである。二重特異性ナノボディは、例えば、国際公開第2015/044386号およびConrath et al (Camel Single-domain Antibodies as Modular Building Units in Bispecific and Bivalent Antibody Constructs, JBC, 2001)に開示されている。好ましくは、第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼ、好ましくは、上記「第1の結合ドメインが結合する膜貫通E3ユビキチンリガーゼ」の項で規定した膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合できるナノボディである。好ましくは、第2の結合ドメインもまたナノボディあり、このナノボディは、膜結合タンパク質、好ましくは膜貫通タンパク質、好ましくは上記「第2の結合ドメインが結合するタンパク質」の項で規定した膜貫通タンパク質に特異的に結合することができる。2つのナノボディ(すなわち、第1および第2の結合ドメイン)は、互いに直接結合することができ、または2つのナノボディの間にリンカーが存在することができ、好ましくは本明細書に規定するようなリンカーが存在することができる。
【0286】
好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子は、二環性ペプチドである。好ましくは、第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼ、好ましくは、上記「第1の結合ドメインが結合する膜貫通E3ユビキチンリガーゼ」の項で規定した膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができる環状ペプチドである。好ましくは、第2の結合ドメインもまた環状ペプチドであり、この環状ペプチドは、膜結合タンパク質、好ましくは膜貫通タンパク質、好ましくは上記「第2の結合ドメインが結合するタンパク質」の項で規定した膜貫通タンパク質に特異的に結合することができる。2つの環状ペプチド(すなわち、第1および第2の結合ドメイン)は、例えば、同じ架橋部分を使用することによって、互いに直接結合することができ、または2つの環状ペプチドの間にリンカーが存在することができ、好ましくは本明細書に規定するようなリンカーが存在することができる。
【0287】
本発明のヘテロ二官能性分子は、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの間にリンカーを含んでいてもよい。リンカーは、当技術分野で知られている任意の適切なリンカーであってもよい。好ましくは、リンカーは、Gly-Ser配列である。当業者は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインに依存して、リンカーを選択する方法を知っている。リンカーは、例えば、(GGGGS)n、(GGS)n、および(G)nの形の非常に柔軟なリンカーから、(EAAAK)n、(SPKKKRKVEAS)n(配列番号81)、または(SGSETPGTSESATPES)n(配列番号82)、または(KSGSETPGTSESATPES)n(配列番号83)、またはそれらの任意のバリアントの形のより硬直なリンカーであってもよく、ここでnは好ましくは1から7の間、すなわち1、2、3、4、5、6、または7である。
【0288】
リンカーは、好ましくは、2~30アミノ酸の間、または3~23アミノ酸の間、または3~18アミノ酸の間の長さを有する。
【0289】
治療的使用
本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子は、膜貫通ユビキチンE3リガーゼと選択された膜結合タンパク質の同時結合によって、任意の選択された膜結合タンパク質のレベルを減少させるために使用することができる。
【0290】
一態様では、本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子は、医薬として使用するためのものである。本明細書に記載される医学的使用は、有効量のヘテロ二官能性分子の投与による明記された疾患(複数可)の処置のための医薬として使用するために、本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子として製剤化されるが、本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子を使用する、明記された疾患(複数可)の処置の方法であって、対象に有効量のヘテロ二官能性分子、明記された疾患(複数可)を処置するための医薬の調製に使用するための本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子を投与するステップ、ここでヘテロ二官能性分子は有効量で投与され、および有効量を投与することによる明記された疾患(複数可)の処置のための本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子の使用を含む方法として同様に製剤化することが可能である。このような医学的使用は、すべて本発明によって想定される。
【0291】
当業者は、疾患の開始、重症度、または持続期間に関与する任意の膜結合タンパク質の活性の増加が、本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子の好適な標的であり得ることを理解する。したがって、ヘテロ二官能性分子は、いかなる特定の膜結合タンパク質またはいかなる特定の疾患にも限定されない。好ましくは、疾患は、膜結合タンパク質、好ましくは受容体の活性が増加することを特徴とし、膜結合受容体の活性の増加は、好ましくは疾患の開始、重症度または持続期間に影響を与えるか、またはそれを規定するものである。
【0292】
非限定的な例として、ヘテロ二官能性分子は、がん、認知症、心臓病および感染症の少なくとも1つの処置に使用される場合がある。
【0293】
膜結合受容体の活性の増加は、例えば、がんの開始、重症度または持続期間において重要な役割を果たすことが当技術分野でよく知られている。したがって、一実施形態では、ヘテロ二官能性分子は、がんに関連する症状の処置、予防、軽減、または抑制のために使用される。
【0294】
好ましくは、がんは、本明細書の上記「第2の結合ドメインが結合するタンパク質」の項で定義されるがんである。
【0295】
好ましくは、がんは、固形がんまたは血液がんである。代わりに、またはさらに、受容体は、がんの血管新生に関与していてもよい。
【0296】
好ましくは、固形がんは、本明細書の上記「第2の結合ドメインが結合するタンパク質」の項で定義される固形がんである。
【0297】
好ましくは、血液がんは、本明細書の上記「第2の結合ドメインが結合するタンパク質」の項で定義される血液がんである。
【0298】
一態様において、本発明は、本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子を含む組成物に関係する。組成物は、細胞培養、好ましくは動物細胞培養、より好ましくは哺乳動物細胞培養における使用に適している場合がある。さらに、または代わりに、組成物は、好ましくは、医薬組成物または化粧品組成物である。
【0299】
組成物は、1種類のヘテロ二官能性分子を含んでいてもよく、例えば、2つまたはそれ以上の異なる膜結合タンパク質の存在をノックダウンまたはノックアウトするために、少なくとも2種類の異なるヘテロ二官能性分子を含んでいてもよい。組成物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なるタイプのヘテロ二官能性分子を含んでいてもよい。
【0300】
上記のようなヘテロ二官能性分子を含む組成物は、医薬組成物もしくは化粧品組成物として、または医療用食品および栄養補助食品を含むヒトもしくは動物用の食品など、他の様々な媒体で調製され得る。
【0301】
「医療用食品(medical food)」とは、特有の栄養要求が存在する疾患や状態の特定の食事管理を目的とした製品である。例えば、医療用食品には、栄養チューブを通して供給されるビタミンおよびミネラル製剤(経腸投与と呼ばれる)が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0302】
「栄養補助食品(dietary supplement)」とは、ヒトの食事を補うことを意図した製品であり、通常、丸剤、カプセル剤、および錠剤等の製剤の形態で提供されるものを意味するものとする。例えば、これに限定されないが、栄養補助食品は、以下の成分の1つ以上を含むことができる:ビタミン、ミネラル、ハーブ、植物性薬品;アミノ酸、総食事摂取量を増やすことによって食事を補うことを意図した食事物質、および前述のいずれかの濃縮物、代謝物、成分、抽出物またはその組合せ。栄養補助食品は、食品バー、飲料、粉末、シリアル、調理済み食品、食品添加物、キャンディを含むがこれらに限定されない食品に組み込まれてもよい。
【0303】
したがって、対象組成物は、食品を含むがこれに限定されない摂取可能な他の生理学的に許容される材料と複合化されてもよい。さらに、または代わりに、本明細書に記載される使用のための組成物は、食品の(個別の)投与と組み合わせて経口投与されてもよい。
【0304】
組成物は、単独でまたは他の医薬品または化粧品剤と組み合わせて投与してもよく、その生理的に許容される担体と組み合わせることができる。特に、本明細書に記載のヘテロ二官能性分子は、薬学的または生理学的に許容される賦形剤、担体、およびビヒクル等の添加物を用いて製剤化することにより、医薬組成物または化粧品組成物として製剤化することができる。
【0305】
適切な薬学的または生理学的に許容される賦形剤、担体およびビヒクルには、加工剤および薬物送達修飾剤および増強剤、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、単糖類、二糖類、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース、ヒドロキシプロピル-P-シクロデキストリン、ポリビニルピロリジノン、低融点ワックス、イオン交換樹脂など、ならびにそれらの任意の2つ以上の組合せが挙げられる。その他の薬学的に許容される賦形剤については、"Remington's Pharmaceutical Sciences, " Mack Pub. Co., New Jersey (1991)、および"Remington: The Science and Practice of Pharmacy, " Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 20th edition (2003), 21st edition (2005) and 22nd edition (2012)、に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0306】
本発明に記載の使用のためのヘテロ二官能性分子を含む医薬組成物または化粧品組成物は、例えば、溶液、懸濁液、またはエマルジョンを含む、意図された投与方法に適した任意の形態であってもよい。好ましい実施形態では、ヘテロ二官能性分子は、固体形態または液体形態で投与される。
【0307】
経口投与のための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒を含む場合がある。そのような固体剤形では、ヘテロ二官能性分子は、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混和されてもよい。そのような剤形は、不活性希釈剤以外の追加物質、例えばステアリン酸マグネシウムのような平滑剤も含んでいてもよい。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでいてもよい。錠剤および丸剤は、腸溶性コーティングを使用してさらに調製することができる。
【0308】
経口投与のための液体剤形は、水または生理食塩水などの当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含む薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む場合がある。このような組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、シクロデキストリンなどのアジュバント、ならびに甘味料、香味料、および香料を含んでいてもよい。
【0309】
液体担体は、通常、溶液、懸濁液、およびエマルジョンの調製に使用される。好ましい実施形態では、本発明の実施における使用が企図される液体担体/液体剤形は、例えば、水、生理食塩水、薬学的に許容される有機溶媒(複数可)、薬学的に許容される油または脂肪等、およびそれらの2つ以上の混合物等を含む。好ましい実施形態では、本明細書で定義される本発明のヘテロ二官能性分子は、投与前に水溶液と混和される。水溶液は、投与に適していることが好ましく、そのような水溶液は当技術分野でよく知られている。水溶液の投与の適性は、投与経路に依存する場合があることが当技術分野でさらに知られている。
【0310】
好ましい実施形態では、水溶液は、等張性水溶液である。等張性水溶液は、好ましくは、血漿に対してほぼ(または完全に)等張である。さらに好ましい実施形態では、等張性水溶液は、生理食塩水である。
【0311】
液体担体は、可溶化剤、乳化剤、栄養剤、緩衝剤、保存剤、懸濁剤、増粘剤、粘度調整剤、安定剤、香味剤等の他の適切な薬学的に許容される添加物を含んでもよい。好ましい香味剤は、単糖類および/または二糖類のような甘味料である。好適な有機溶媒としては、例えば、エタノールなどの一価アルコール、およびグリコールなどの多価アルコールが挙げられる。好適な油としては、例えば、大豆油、ヤシ油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油等が挙げられる。
【0312】
非経口投与の場合、担体は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等の油性エステルでもあり得る。本発明で使用するための組成物は、微粒子、マイクロカプセル、リポソームカプセル等、ならびにそれらの任意の2つ以上の組合せの形態であってもよい。
【0313】
時間放出、持続放出または制御放出送達システムは、例えば、Lee, "Diffusion-Controlled Matrix Systems", pp. 155-198およびRon and Langer, "Erodible Systems", pp. 199-224, in "Treatise on Controlled Drug Delivery", A. Kydonieus Ed. , Marcel Dekker, Inc. , New York 1992に記載されているように、拡散制御マトリックスシステムまたは侵食性システムを使用してもよい。マトリックスは、例えば、加水分解または酵素切断、例えば、プロテアーゼによって、in situおよびin vivoで自然に分解することができる生分解性材料であってもよい。送達システムは、例えば、天然に存在するまたは合成のポリマーまたはコポリマーであってもよく、例えばヒドロゲルの形態である。開裂可能な結合を有する例示的なポリマーには、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物、多糖類、ポリ(ホスホエステル)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(イミドカーボネート)およびポリ(ホスファゼン)等が挙げられる。
【0314】
本発明のヘテロ二官能性分子はまた、リポソームの形態で投与することができる。当技術分野において知られているように、リポソームは一般にリン脂質または他の脂質物質から得られる。リポソームは、水性媒体中に分散された単層または多層水和液体結晶によって形成される。リポソームを形成することができる、非毒性で、生理学的に許容され、代謝可能な任意の脂質を使用することができる。リポソーム形態の本発明の組成物は、本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤等を含むことができる。好ましい脂質は、天然および合成のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当技術分野で知られている。例えば、Prescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N. Y., p. 33 et seq (1976)を参照されたい。
【0315】
医薬組成物または化粧品組成物は、単位用量製剤を含むことができ、単位用量は、本明細書で定義される障害または状態の治療効果または抑制効果を有するのに十分な用量、および/または膜結合タンパク質の発現を低減する、またはノックアウトするために有効な量である。単位用量は、本明細書で定義される障害または状態の治療効果または抑制効果および/または標的膜結合タンパク質の発現を低減するのに有効な量を有する単回投与で十分である場合がある。代わりに、単位用量は、本明細書で定義される障害または状態の処置または抑制の経過において定期的に投与される用量であってもよい。処置の経過の間、対象組成物の濃度は、所望のレベルが維持されることを保証するために監視されてもよい。
【0316】
本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子またはヘテロ二官能性分子を含む組成物は、経腸、経口、非経口、舌下、吸入(例えば、ミストまたはスプレーとして)、直腸、または局所的に投与されてもよく、所望に応じて従来の非毒性薬学的または生理的に許容できる担体、アジュバント、およびビヒクルを含む投与単位製剤で好ましくは投与されてもよい。例えば、好適な投与様式としては、経口、皮下、経皮、経粘膜、イオントフォレーシス、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、鼻内(例えば、鼻粘膜経由)、硬膜下、直腸、胃腸等、および特定のまたは影響を受ける臓器または組織、例えばがん組織への直接の投与が挙げられる。中枢神経系への投与には、脊髄投与、硬膜外投与、脳室への投与等を使用することができる。局所投与には、経皮パッチやイオントフォレーシス装置等の経皮投与の使用を伴う場合もある。本明細書で使用される非経口的という用語は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、または点滴技術を含む。
【0317】
ヘテロ二官能性分子は、所望の投与経路に適した薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルと混合することができる。本発明のヘテロ二官能性分子は、胃管または経皮管を介した補充によって投与される場合がある。
【0318】
好ましい実施形態では、本発明は、有効な総1日用量の投与による、がんに関連する症状の処置、予防、または抑制における使用のための、本明細書で上に定義されるヘテロ二官能性分子に関係する。
【0319】
経口投与のための剤形は、固形経口剤形であり得る。固体経口剤形のクラスは、主に錠剤およびカプセル剤からなるが、他の形態も当技術分野で知られており、同様に好適であり得る。固体経口剤形として使用する場合、本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子は、例えば、即時放出錠剤(またはカプセル剤等)または徐放性錠剤(またはカプセル剤等)の形態で投与してもよい。当業者にとって明らかであろうように、任意の適切な即時放出または徐放性固体剤形を本発明の文脈で使用することができる。
【0320】
本明細書に記載の使用のための記載されたヘテロ二官能性分子は、固体形態、液体形態、エアロゾル形態、または錠剤、丸剤、粉末混合物、カプセル剤、顆粒、注射剤、クリーム、溶液、座薬、浣腸、結腸洗浄、エマルジョン、分散液、食品プレミックス、および他の適切な形態で投与することができる。cのヘテロ二官能性分子はまた、リポソーム製剤で投与することができる。化合物はまた、プロドラッグとして投与することができ、ここで、プロドラッグは、治療的に有効である形態に、処置された対象において変換を受ける。追加の投与方法は、当技術分野で知られている。
【0321】
注射可能調製物、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して既知の技術に従って製剤化することができる。無菌注射可能調製物はまた、例えばプロピレングリコール中の溶液のように、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射可能溶液または懸濁液であってもよい。採用されてもよい許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、溶媒または懸濁媒体として、無菌の固定油が従来から採用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意のブランドの固定油を採用してもよい。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射剤の調製に使用される。
【0322】
ヘテロ二官能性分子の直腸投与用の坐薬は、ヘテロ二官能性分子をココアバターやポリエチレングリコールなどの室温では固体だが直腸温度では液体で、したがって直腸で溶けてヘテロ二官能性分子を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製され得る。
【0323】
本明細書に記載の使用のためのヘテロ二官能性分子は、単独の活性医薬品(または化粧品)剤として投与することができるが、それらはまた、疾患または障害の処置または抑制に使用される1つ以上の他の薬剤と組み合わせて使用することができる。疾患または障害に関連する症状の処置、予防または抑制のために本発明のヘテロ二官能性分子と組み合わせて有用な代表的薬剤としては、コエンザイムQ、ビタミンE、イデベノン、MitoQ、EPI-743、ビタミンKおよびその類似体、ナフトキノンおよびその誘導体、他のビタミン、抗酸化化合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0324】
本発明のヘテロ二官能性分子と組み合わせて追加の活性剤を使用する場合、追加の活性剤は、一般に、参照により本明細書に組み込まれるPhysicians' Desk Reference (PDR) 53rd Edition (1999)に示される治療量、または当業者に知られるような治療上有用な量を採用してもよい。本発明のヘテロ二官能性分子および他の治療上活性な薬剤または薬剤(複数)は、推奨される最大臨床用量で、またはより低い用量で投与され得る。本発明の組成物中の活性化合物の用量レベルは、投与経路、疾患の重症度、および患者の応答に依存して、所望の治療応答を得るように変化させてもよい。他の治療剤と組み合わせて投与する場合、治療剤は、同時または異なる時間に投与される別々の組成物として製剤化することができ、または治療剤は、単一の組成物として投与することができる。
【0325】
さらなる態様
さらに、または代わりに、本発明に記載のヘテロ二官能性分子は、研究目的に使用される場合がある。
【0326】
したがって、一態様では、本発明は、膜結合タンパク質、好ましくは膜貫通タンパク質を、治療、好ましくはがん治療の標的として同定するための方法に関する。好ましくは、がんは、上記で規定されるようながんのタイプである。
【0327】
好ましくは、方法は、ヘテロ二官能性分子のライブラリーの1つ以上のメンバーに細胞を曝露するステップを含む。ヘテロ二官能性分子は、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとを含む。
【0328】
第1の結合ドメインは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼ、好ましくは、「第1の結合ドメインが結合する膜貫通E3ユビキチンリガーゼ」の項で規定した膜貫通E3ユビキチンリガーゼに結合することができる。好ましくは、第1の結合ドメインは、「第1の結合ドメイン」の項で規定した結合ドメインである。好ましくは、第1の結合ドメインは、抗体、好ましくはナノボディである。好ましくは、ライブラリー中のヘテロ二官能性分子は、同一またはほぼ同一の第1の結合ドメインを含む。
【0329】
好ましくは、第2の結合ドメインは、「第2の結合ドメイン」の項で規定した結合ドメインである。好ましくは、第2の結合ドメインは、抗体、好ましくはナノボディである。ヘテロ二官能性分子の第2の結合ドメインは、好ましくは、スクランブル配列を含み、例えば、少なくとも未知のアミノ酸残基(X)を含む。好ましくは、第2の結合ドメインは、例えば、(X)として注釈され、nが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上の数である、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上の未知のアミノ酸残基を有するスクランブル配列を含んでもよい。第2の結合ドメインは、1つ以上のスクランブル配列、例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上のスクランブル配列を含んでもよい。
【0330】
第2の結合ドメイン中のスクランブル配列は、好ましくは、第2の結合ドメインの膜結合タンパク質への結合親和性に影響を与える。第2の結合ドメインにおけるスクランブル配列の配列を変更することにより、第2の結合ドメインは、好ましくは、異なる膜結合タンパク質に結合する。好ましくは、ライブラリー中のヘテロ二官能性分子は固有またはほぼ固有の第2の結合ドメインを含む。
【0331】
好ましくは、ライブラリー中のヘテロ二官能性分子は二重特異性抗体であり、好ましくは、二重特異性ナノボディである。
【0332】
好ましくは、細胞を適切な条件下でヘテロ二官能性分子のライブラリーに曝露して、細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力の少なくとも1つを決定することができる。当業者は、細胞の生存率、分化能力、幹細胞性、および増殖能力を評価する方法を知っている。
【0333】
本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子のライブラリーのうちの1つ以上のメンバーに曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力は、好ましくは対照細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力とそれぞれ比較される。好ましくは、対照細胞、または基準細胞は、ヘテロ二官能性分子のライブラリーのうちの1つ以上のメンバーに曝露された細胞と同一または実質的に同一の遺伝的背景を有する細胞である。対照細胞は、好ましくは、曝露された細胞と同じ、または本質的に同じ条件下で培養される。方法は、培養プレートのそれぞれのウェルがヘテロ二官能性分子のライブラリーのうちの1つ以上のメンバーに曝露された細胞を含むハイスループットアッセイで実施されてもよい。
【0334】
好ましくは、この方法は、対照細胞と比較して、曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力の少なくとも1つを低減または増加させるヘテロ二官能性分子を同定するステップをさらに含む。
【0335】
低減は、対照細胞と比較されてもよく、例えば、曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力の少なくとも1つの低減は、対照細胞と比較して、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%低減してもよく、または約100%低減してもよい。
【0336】
さらに、または代わりに、生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力の少なくとも1つの増加は、対照細胞と比較されてもよく、例えば曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力の少なくとも1つの増加は、対照細胞と比較して、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、150%、200%または500%増加してもよい。
【0337】
方法は、好ましくは、対照細胞と比較して、曝露された細胞の生存率、分化能力、幹細胞性および増殖能力の少なくとも1つを低減または増加させるヘテロ二官能性分子を同定するステップを含む。当業者は、ヘテロ二官能性分子を同定するために、任意の従来の手段を使用してもよい。非限定的な例として、ヘテロ二官能性分子は、DNAバーコードによってコンジュゲートされてもよく、DNA配列決定によって機能的に関連するヘテロ二官能性分子を迅速に同定および検証できる(例えば、Franzini et al, Angewandte Chemie, 2015; Zimmerman and Neri, Drug Discovery Today, 2016)。別の非限定的な例では、ヘテロ二官能性分子は、検出および単離に使用されるタンパク質タグを含んでいてもよい。精製された分子は、その後、質量分析を使用して分析されてもよい。
【0338】
ヘテロ二官能性分子の同定に続いて、標的とする膜結合タンパク質は、当技術分野における任意の従来の手段を使用して同定され得る。非限定的な例として、膜結合タンパク質は、細胞表面のビオチン化、および質量分析に基づく同定を使用して同定され得る。未処置細胞と処置細胞の細胞表面プロテオームを比較することで、どの標的が細胞表面から除去されたかが明らかになる。このような方法は十分に確立されており、例えば、RNF43の内因性基質を同定するために当技術分野で以前に使用されている(Koo et al, Nature 2012)。別の非限定的な例では、ヘテロ二官能性分子は、相互作用する細胞表面タンパク質の免疫沈降法を行うために採用される。沈殿した分子は、その後、質量分析を使用して分析されてもよい。
【0339】
本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子のライブラリーのうちの1つ以上のメンバーに曝露される細胞は、細胞培養、細胞系、生検、およびオルガノイドであり得るか、またはその一部であり得る。
【0340】
好ましくは、細胞は患者由来の組織、好ましくは培養した患者由来の組織の一部であるか、またはそれに由来する。好ましくは、細胞は生検またはオルガノイド、好ましくは腫瘍オルガノイドの一部であるか、またはそれに由来する。
【0341】
生検は、切除生検、切開生検、またはコア生検であり得る。オルガノイドは、好ましくは、がんオルガノイドである。オルガノイドは、好ましくは患者由来のオルガノイドであり、好ましくは腫瘍オルガノイドである。
【0342】
ヘテロ二官能性分子の製造
一態様では、本発明は、本発明のヘテロ二官能性分子を製造するための方法であって、
- 膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質を選択するステップと;
- 膜貫通E3ユビキチンリガーゼに特異的に結合することができる第1の結合ドメインを構築するステップと;
- 膜結合タンパク質に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを構築するステップと;および
- 第1の結合ドメインを第2の結合ドメインに結合するステップであって、好ましくは、結合は、直接結合またはリンカー、好ましくは本明細書で定義されるリンカーを介する、ステップ
を含む方法に関係する。
【0343】
本明細書では、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを構築するステップは、当技術分野における任意の従来の手段を使用して実施され得ることが理解される。非限定的な例として、第1および第2の結合ドメインのうちの少なくとも1つは、当技術分野において従来から知られている結合ドメイン、例えば、膜貫通E3ユビキチンリガーゼへの特異的結合について当技術分野において知られている抗体、または膜結合タンパク質への特異的結合について当技術分野において知られている抗体である。
【0344】
代わりに、第1および第2の結合ドメインのうちの少なくとも一方は、デノボ結合ドメインであり、例えば、免疫研究によって発見された抗体またはナノボディ結合ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0345】
ヘテロ二官能性分子を構築する前に、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質の組合せを選択することができる。膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質を選択するステップは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼを膜結合タンパク質へと標的化する能力を評価するために、まず当技術分野で知られている任意のヘテロ二量体化システム、例えばTakara Bio USAのA/C二量体化システムなど使用して実施されてもよいが、これに限定されない。能力は、E3ユビキチンリガーゼがどの程度膜結合タンパク質をユビキチン化および内在化することができるかを決定することによって評価されてもよい。さらに、または代わりに、ヘテロ二量体化システムを使用してE3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質とを強制的に相互作用させた後、膜結合タンパク質の細胞表面レベルおよび/または総タンパク質レベルがどの程度減少するかを決定することによって能力は評価されてもよい。この目的のために、膜貫通E3ユビキチンリガーゼはFKBPまたはFRBドメインと融合されていてもよい。同様に、膜結合タンパク質はFRBドメインまたはFKBPドメインとそれぞれ融合されてもよい。このシステムでは、好ましい二量体化化合物は、A/C heterodimerizerである。このシステムは、特定の膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質に結合するヘテロ二量体分子の効果を評価するための簡単なアプローチを提供する。
【0346】
代わりに、またはさらに、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質を選択するステップは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼに第1の非天然エピトープタグを組み込み、膜結合タンパク質に第2の非天然エピトープタグを組み込むことによって達成されてもよい。細胞内で発現すると、第1および第2のエピトープタグは、好ましくは、それぞれの細胞外ドメインに提示される、すなわち細胞外に提示される。第1のエピトープタグに結合することができる第1の結合ドメインおよび第2のエピトープタグに結合することができる第2の結合ドメインを有するヘテロ二官能性分子は、その後、膜結合タンパク質へと膜貫通E3ユビキチンリガーゼを標的化する能力を評価するために使用されてもよい。ヘテロ二官能性分子を使用してE3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質とを強制的に相互作用させた後、膜結合タンパク質のユビキチン化および内在化を膜貫通E3ユビキチンリガーゼがどの程度できるかを決定することによって効力は評価されてもよい。さらに、または代わりに、この選択システムを使用してE3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質を強制的に相互作用させた後、膜結合タンパク質の細胞表面レベルおよび/または総タンパク質レベルがどの程度減少するかを決定することによって能力は評価されてもよい。また、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質を選択するステップは、以下に本明細書で詳述するように、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを減少させる方法と考えられてもよい。
【0347】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質の有効な組合せを選択した後、(天然)膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に特異的に結合することができる第1の結合ドメインと(天然)膜結合タンパク質の細胞外部分に特異的に結合することができる第2の結合ドメインを含むヘテロ二官能性分子を構築してもよい。
【0348】
ユビキチン化/スクリーニング法
本発明者らは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質との適切な組合せ、例えば、本明細書で定義するヘテロ二官能性分子によって効果的に標的化できる組合せを効果的にスクリーニングする方法を開発した。
【0349】
一態様では、したがって、本発明は、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを減少させる方法に関係する。方法は、好ましくは、
a)膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を、その細胞表面に発現する細胞を用意するステップと;ならびに
b)細胞を本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子に曝露するステップであって、ヘテロ二官能性分子は、
i)膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に特異的に結合することができる第1の結合ドメイン;および
ii)膜結合タンパク質の細胞外部分に特異的に結合することができる第2の結合ドメイン
を含む、ステップと
を含む。
【0350】
方法は、好ましくは、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを決定するステップc)をさらに含む。減少は、好ましくは、ステップb)の前の、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルと比較した減少である。好ましくは、タンパク質レベルの減少は、ヘテロ二官能性分子に曝露されていない同一または類似の細胞の膜結合タンパク質のタンパク質レベルと比較した場合の減少、例えば、本発明の方法のステップa)において提供される細胞の膜結合タンパク質のタンパク質レベルと比較した場合の減少である。
【0351】
細胞をヘテロ二官能性分子に曝露するステップb)は、ヘテロ二官能性分子が膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜貫通タンパク質に同時に結合できる条件下であることが好ましい。
【0352】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、好ましくは、本明細書に記載の膜貫通E3ユビキチンリガーゼである。
【0353】
膜結合タンパク質は、好ましくは、膜貫通タンパク質である。膜貫通タンパク質は、本明細書に記載の膜貫通タンパク質であってもよい。
【0354】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質の少なくとも一方は、野生型タンパク質、例えば、提供された細胞内に天然に存在するタンパク質であってもよい。膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質は、好ましくは、同じ細胞内で発現される。必要に応じて、野生型タンパク質の少なくとも1つが、提供される細胞において過剰に発現される。本発明の方法において使用するためのヘテロ二官能性分子は、好ましくは、野生型膜貫通E3ユビキチンリガーゼに存在するエピトープに結合することができる第1の結合ドメインを含み、および/または野生型膜貫通タンパク質に天然に存在するエピトープに結合することができる第2の結合ドメインを含む。
【0355】
好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、第1の非天然エピトープタグを含む。好ましくは、第1の非天然エピトープタグは、ユビキチンリガーゼの細胞外部分に位置する。したがって好ましくは、第1の非天然エピトープタグは、提供された細胞の細胞表面上に露出する。好ましくは、第1の非天然エピトープタグは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼのN末端に位置する。膜貫通E3ユビキチンリガーゼが第1の非天然エピトープタグを含む場合、ヘテロ二官能性分子は、好ましくは、第1の非天然エピトープタグに選択的に結合する第1の結合ドメインを含む。
【0356】
好ましくは、膜結合タンパク質は、第2の非天然エピトープタグを含む。好ましくは、第2の非天然エピトープタグは、膜結合タンパク質の細胞外部分に位置する。したがって好ましくは、第2の非天然エピトープタグは、提供された細胞の細胞表面上に露出する。好ましくは、第2の非天然エピトープタグは、膜結合タンパク質のN末端に位置する。膜結合タンパク質が第2の非天然エピトープタグを含む場合、ヘテロ二官能性分子は、好ましくは、第2の非天然エピトープタグに選択的に結合する第2の結合ドメインを含む。
【0357】
「非天然エピトープタグ」は、本明細書では、野生型タンパク質、天然に存在するタンパク質、に通常存在しないエピトープとして理解される。「エピトープ」および「エピトープタグ」という用語は、本明細書では互換的に使用されてもよい。
【0358】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質それぞれへの非天然エピトープタグの組み込みは、当技術分野で知られている任意の従来の分子生物学的手法を使用して行うことができる。第1および第2のエピトープタグは、任意の適切なタグであり得る。好ましくは、タグは短いアミノ酸配列である。好ましくは、タグは、抗体、または抗体断片、好ましくはVHHに対して、当業者に知られている任意の従来の手段を使用して産生させることができるアミノ酸配列である。非天然エピトープタグは、公的に利用可能なタグまたは新たに発見された配列であり得る。第1および第2のエピトープタグは、同じタグであってもよいし、異なるタグであってもよい。好ましくは、第1および第2のエピトープタグは、異なるタグである。非天然エピトープタグは、Alphaタグ、E6タグ、mycタグ、FLAGタグ、Hisタグ、V5タグ、VSVタグ、GFPタンパク質およびRFPタンパク質からなる群から選択されてもよい。
【0359】
第1のエピトープタグは、好ましくは、Goetzke et al (2019, Nature Communications, 10(1), 1-12)に記載のAlphaタグであってもよい。代わりに、第1のエピトープタグは、Ling et al.(2019, Molecular Immunology, 114(July), 513-523)に記載のUBC6eタグ(E6タグ)であってもよい。第2のエピトープタグは、好ましくは、Goetzke et al(前掲)に記載のAlphaタグであってもよい。代わりに、第2のエピトープタグは、Ling et al.(前掲)に記載のUBC6eタグ(E6タグ)であってもよい。好ましくは、第1のタグはAlphaタグであってもよく、第2のタグはE6タグであってもよい。代わりに、第1のタグはE6タグであってもよく、第2のタグはAlphaタグであってもよい。
【0360】
エピトープタグと、前記エピトープを認識する対応する抗体または抗体断片の任意の適切な組合せが、本明細書で定義される方法で使用されてもよい。好ましい抗体断片は、ナノボディ(VHH)である。したがって、エピトープと、前記エピトープを認識する対応するナノボディ(VHH)の任意の適切な組合せが、本明細書で定義される方法で使用されてもよい。
【0361】
当業者は、任意の適切なエピトープ-抗体または抗体断片の組合せを選択することができる。例えば、当業者は、当技術分野で知られている適切なエピトープ-抗体または抗体断片の組合せを選択してもよい。代わりに、またはさらに、エピトープ-抗体または抗体断片は、新たに発見された組合せであってもよく、本明細書で定義される方法において使用されてもよい。
【0362】
抗体または抗体断片は、第1または第2のエピトープタグに特異的に結合する任意の適切な抗体または抗体断片であってもよい。好ましい抗体断片は、ナノボディである。好ましくは、本発明の方法において使用するためのヘテロ二官能性分子は、二重特異性抗体、好ましくは二重特異性ナノボディである。
【0363】
好ましくは、第1のエピトープタグがAlphaタグであり、第2のエピトープタグがE6タグである場合、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインは抗Alpha VHHであってもよく、第2の結合ドメインは抗E6 VHHであってもよい。好ましくは、第1のエピトープタグがE6タグであり、第2のエピトープタグがAlphaタグである場合、ヘテロ二官能性分子の第1の結合ドメインは抗E6 VHHであってもよく(Ling et al、前掲)、第2の結合ドメインは抗Alpha VHHであってもよい(Goetzke et al、前掲)。したがって、好ましいエピトープタグ-結合ドメインの組合せは、
i)Alphaタグ-抗Alpha VHH(Goetzke et al、(前掲));および
ii)E6タグ-抗E6 VHH(Ling et al、前掲)
のうちの少なくとも1つである。
【0364】
好ましいAlphaタグは、配列番号96と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。好ましいE6タグは、配列番号97と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。好ましい抗Alpha VHHは、配列番号98と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。好ましい抗E6 VHHのCDR3配列は、配列番号99と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0365】
好ましくは、膜結合タンパク質の細胞表面レベルは、ヘテロ二官能性分子に曝露されていない同じ細胞、例えば、本発明の方法のステップa)で提供された細胞、の膜結合タンパク質の細胞表面レベルと比較して減少している。
【0366】
「(タンパク質)レベル」および「(タンパク質)量」という用語は、本明細書では互換的に使用されてもよい。好ましくは、細胞表面レベルは、本発明の方法のステップb)の前の膜結合タンパク質の細胞表面レベルと比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%減少され、または約100%減少される。本明細書では、100%の減少は、膜貫通タンパク質が細胞表面でもはや検出されないことを示すと理解される。細胞表面タンパク質レベルの減少は、ヘテロ二官能性分子に曝露した後に細胞表面上に残っているタンパク質のレベル、または量を直接決定することによって決定されてもよい。
【0367】
ユビキチン化は、好ましくは、ユビキチン化された膜結合タンパク質の内在化および分解をもたらす。したがって、代わりに、またはさらに、膜結合タンパク質の表面レベルの減少は、ヘテロ二官能性分子に曝露した後、例えばステップb)の後に、膜結合タンパク質の細胞の総タンパク質レベル、または量を決定することによって決定されてもよい。細胞の総タンパク質レベルは、好ましくは、本発明の方法のステップb)の前の膜結合タンパク質の細胞の総タンパク質レベルと比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%減少され、または約100%減少される。本明細書では、100%の減少は、膜貫通タンパク質が細胞内でもはや検出されないことを示すと理解される。
【0368】
代わりに、またはさらに、膜結合タンパク質の細胞表面レベルの減少は、膜結合タンパク質の細胞内局在の増加、好ましくは膜結合タンパク質のエンドソーム局在の増加を決定することによって決定されてもよい。膜結合タンパク質のユビキチン化は、好ましくは、膜結合タンパク質の内在化をもたらす。内在化されたタンパク質は、その後、分解されてもよく、好ましくはリソソームで分解される。タンパク質の細胞内タンパク質局在の増加を決定するために、方法は、膜結合タンパク質の細胞内局在の増加を決定するステップの前に、例えば、これに限定されないが、細胞をバフィロマイシンで処理することによって、リソソームのターンオーバーを阻害するステップを含んでいてもよい。好ましくは、膜結合タンパク質の細胞内局在は、本発明の方法のステップb)の前の膜結合タンパク質の細胞内局在と比較して、少なくとも約1.5、2、3、4、5、6倍またはそれ以上に増加する。
【0369】
膜結合タンパク質は、第3の非天然エピトープタグを含んでいてもよい。第3の非天然エピトープタグは、膜結合タンパク質のタンパク質レベルを決定するため、好ましくは膜結合タンパク質のタンパク質細胞表面レベル、総タンパク質レベルおよび細胞内レベルのうちの少なくとも1つを決定するために使用されてもよい。第3の非天然エピトープタグは、好ましくは、膜結合タンパク質の細胞外部分に位置する。したがって好ましくは、第3の非天然エピトープタグは、提供された細胞の細胞表面上に露出する。好ましくは、第3の非天然エピトープタグは、膜結合タンパク質のN末端と第2の非天然エピトープタグとの間に位置する。
【0370】
膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、第4の非天然エピトープタグを含んでいてもよい。第4の非天然エピトープタグは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼのタンパク質レベルを決定するために使用されてもよい。第4の非天然エピトープタグは、好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼの細胞外部分に位置する。したがって好ましくは、第4の非天然エピトープタグは、提供された細胞の細胞表面上に露出する。好ましくは、第4の非天然エピトープタグは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼのN末端と第1の非天然エピトープタグとの間に位置する。
【0371】
したがって、一実施形態では、膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、第1および第4の非天然エピトープタグを含んでいてもよく、膜結合タンパク質は、第2および第3の非天然エピトープタグを含んでいてもよい。第3および/または第4の非天然エピトープタグは、タンパク質検出のために当業者に知られている任意の従来のタグ、例えば、myc、his、FLAGタグ、V5タグ、VSVタグ、HAタグ、GFPまたはRFPであってもよいが、これらに限定されない。
【0372】
第1および第4のタグの好ましい組合せは、mycタグとAlphaタグ、またはFLAGタグとE6タグである。第2および第3のタグの好ましい組合せはFlagタグとE6タグ、または、mycタグとAlphaタグである。
【0373】
膜結合タンパク質のレベル、または量は、当業者に知られている任意の従来の手段を使用して決定されてもよい。そのような手段には、免疫蛍光法、ウエスタンブロッティング、必要に応じて定量的免疫蛍光法および/または定量的ウエスタンブロッティング、細胞表面ビオチン化、FACS解析および定量的質量分析が含まれるが、これらに限定されない。
【0374】
膜結合タンパク質の絶対量またはレベルは、例えば、ヘテロ二官能性分子に曝露する前または後の膜結合タンパク質レベルとの直接比較、例えば、曝露前後の細胞表面における蛍光強度の決定によって決定されてもよい。代わりに、またはさらに、膜結合タンパク質の相対的なレベルまたは量は、例えば、曝露前後のハウスホールド(household)タンパク質または総細胞タンパク質レベルとの比較によって決定されてもよい。
【0375】
非天然エピトープを含む膜貫通E3ユビキチンリガーゼと非天然エピトープを含む膜結合タンパク質は、好ましくは同じ細胞で発現される。膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質の発現に適した任意の細胞は、本発明の方法に使用されてもよい。好ましい細胞は、不死化細胞、好ましくは細胞系、好ましくはヒト細胞系、好ましくはヒトがん細胞系であり、好ましくは、細胞はHEK239T細胞である。
【0376】
細胞系は、野生型または「天然」膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび野生型膜結合タンパク質の少なくとも1つを発現していてもよい。野生型膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび野生型膜結合タンパク質の少なくとも1つは、細胞内で過剰発現していてもよい。必要に応じて、野生型膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび野生型膜結合タンパク質の少なくとも1つは、細胞内で恒常的に過剰発現していてもよい。
【0377】
代わりに、細胞は、操作された膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび操作された膜結合タンパク質の少なくとも1つを発現してもよい。膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、第1の、および必要に応じて第4の非天然エピトープタグを含むように操作される。同様に、膜結合タンパク質は、第2の、および必要に応じて第3の非天然エピトープタグを含むように操作される。細胞は、操作された膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび操作された膜結合タンパク質の少なくとも1つを一過性に過剰発現してもよい。必要に応じて、細胞は、操作された膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび操作された膜結合タンパク質の少なくとも1つを恒常的に過剰発現してもよい。恒常的発現は、例えば、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質の少なくとも1つを発現する発現カセットを細胞のゲノムに組み込むことによって達成される場合がある。
【0378】
操作された膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび操作された膜結合タンパク質の少なくとも1つの発現、必要に応じて恒常的発現は、当業者によって当技術分野で知られている任意の従来の手段を使用して達成することができる。
【0379】
(必要に応じて非天然エピトープを含む)膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび(必要に応じて非天然エピトープ(複数可)を含む)膜結合タンパク質の少なくとも1つをコードする配列は、一過性または恒常的発現のために細胞内に導入され得る。必要に応じて、コード配列(複数可)は、細胞に導入される発現カセットの一部である。発現カセットは、発現ベクターの一部であってもよい。好ましい発現ベクターは、裸のDNA、DNA複合体またはウイルスベクターである。好ましい裸のDNAは、直鎖状または環状の核酸分子であり、例えば、プラスミドである。プラスミドは、標準的な分子クローニング手法などによって、追加のDNAセグメントを挿入することができる環状の二本鎖DNAループを指す。DNA複合体は、DNAを細胞内に送達するのに適した任意の担体に結合したDNA分子であり得る。好ましい担体は、リポプレックス、リポソーム、ポリマソーム、ポリプレックス、ウイルスベクター、デンドリマー、無機ナノ粒子、ビロソームおよび細胞貫通ペプチドからなる群から選択される。
【0380】
細胞は、非天然エピトープタグ(複数可)を含む膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび非天然エピトープタグ(複数可)を含む膜結合タンパク質を内因性レベルで発現するように改変されてもよい。非限定的な例として、第1の、および必要に応じて第2の非天然エピトープタグをコードする配列は、提供された細胞のゲノム配列に組み込まれてもよい。さらに同じ細胞において、第2の、および必要に応じて第3の非天然エピトープタグをコードする配列は、提供された細胞のゲノム配列に組み込まれてもよい。
【0381】
したがって、膜貫通E3ユビキチンリガーゼをコードする提供された細胞のゲノム配列は、第1の、および必要に応じて第4の非天然エピトープタグをコードする配列を組み込むように改変され得る。改変されたゲノム配列は、好ましくは、本明細書で定義される第1の、および必要に応じて第4の非天然エピトープタグを含む膜貫通E3ユビキチンリガーゼをコードし発現する。好ましくは、同じ細胞において、膜結合タンパク質をコードする提供された細胞のゲノム配列は、第2の、および必要に応じて第3の非天然エピトープタグをコードする配列を組み込むように改変され得る。改変されたゲノム配列は、好ましくは、本明細書で定義される第2の、および必要に応じて第3の非天然エピトープタグを含む膜結合タンパク質をコードし発現する。
【0382】
第1、第2、ならびに必要に応じて第3および第4の非天然エピトープタグをコードする配列を組み込むための標的ゲノム改変の方法は当業者によく知られており、第1、および必要に応じて第4の非天然エピトープタグをコードする配列を組み込むために、または第2、および必要に応じて第3の非天然エピトープタグをコードする配列を組み込むために、ゲノムの位置に二本鎖切断を生成する部位特異的エンドヌクレアーゼを含むがこれに限定されない。好ましい部位特異的ヌクレアーゼは、CRISPR-Casシステムである。
【0383】
したがって、第1、および必要に応じて第4の非天然エピトープタグは、i)膜貫通E3ユビキチンリガーゼをコードする配列中の二本鎖切断を生成する部位特異的ヌクレアーゼ、およびii)第1、および必要に応じて第4のタグをコードする配列を含むオリゴヌクレオチドまたはドナープラスミドを細胞に導入するステップによって細胞のゲノムに導入されてもよい。二本鎖切断は、好ましくは、成熟膜貫通タンパク質がN末端に第1および必要に応じて第4のタグを含むような位置にあり、好ましくは、二本鎖切断は、第1および必要に応じて第4のタグが、成熟膜貫通ユビキチンE3リガーゼのシグナルペプチドとN末端との間に配置されるような位置にある。好ましくは、同じ細胞内で、第2および必要に応じて第3の非天然エピトープタグは、i)膜結合タンパク質をコードする配列中の二本鎖切断を生成する部位特異的ヌクレアーゼ、およびii)第2および必要に応じて第3のタグをコードする配列を含むオリゴヌクレオチドまたはドナープラスミドを細胞に導入するステップによって、細胞のゲノムに導入されてもよい。二本鎖切断は、好ましくは成熟膜結合タンパク質がN末端に第2および必要に応じて第3のタグを含むような位置に位置する。
【0384】
オリゴヌクレオチドまたはドナープラスミドは、好ましくは、相同配列依存的修復(homology-directed repair)を促進するための配列を含む。
【0385】
代わりに、またはさらに、第1、第2、ならびに必要に応じて第3および第4の非天然エピトープタグは、CRISPR-Casプライム編集技術を使用して導入されてもよい。
【0386】
本明細書で上に定義される方法はまた、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質との組合せを選択するための方法と考えられてもよい。好ましくは、本明細書で定義される方法は、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質との有効な組合せを選択するための方法である。好ましくは、組合せは、両者が近接したときに、膜貫通E3ユビキチンリガーゼが、膜結合タンパク質をユビキチン化することができる場合に有効な組合せである。膜結合タンパク質のユビキチン化は、好ましくは、前記タンパク質の内在化をもたらす。好ましくは、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質は、本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子への同時結合によって近接する。
【0387】
本明細書で上に定義される本発明の方法はまた、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを減少させるためのヘテロ二官能性分子、好ましくは本明細書で定義したヘテロ二官能性分子の効率を決定する方法と考えられてもよい。好ましくは、方法は、上記で概説したようなステップを含む。好ましくは、方法は、
a)膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を、その細胞表面に発現する細胞を用意するステップと;ならびに
b)細胞をヘテロ二官能性分子、好ましくは本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子に曝露するステップ
を含む。
【0388】
方法は、好ましくは、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを決定するステップc)をさらに含む。減少は、好ましくは、ステップb)の前の、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルと比較した減少である。
【0389】
本明細書で定義される方法は、また、
- 膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜貫通タンパク質の有効な組合せを選択する方法であって、ステップc)の後に膜貫通タンパク質のタンパク質レベルが減少している場合に、その組合せを選択する方法、
- 膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜貫通タンパク質の有効な組合せをスクリーニングする方法;
- 定義されたヘテロ二官能性分子を製造するための方法であって、ヘテロ二官能性分子が膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜貫通タンパク質の選択された組合せに選択的に結合する方法;
- 膜貫通E3ユビキチンリガーゼが膜結合タンパク質をユビキチン化する能力を決定する方法であって、ステップc)の後に膜貫通タンパク質のタンパク質レベルが減少している場合、膜貫通E3リガーゼが膜結合タンパク質をユビキチン化することができる方法;
- ヘテロ二官能性分子による分解のために膜結合タンパク質を標的とするための方法;および
- 膜結合タンパク質のユビキチン化を決定する方法であって、膜結合タンパク質の表面レベルの減少が膜結合タンパク質のユビキチン化を示し、その減少が好ましくは、ステップb)の前の細胞の膜結合タンパク質の表面レベルと比較した減少である、方法
の少なくとも1つと考えられてもよい。
【0390】
本明細書で上に示したように、本明細書で定義される方法は、有効なヘテロ二官能性分子、例えば膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜結合タンパク質との有効な組合せを標的とするヘテロ二官能性分子を構築するために使用される場合がある。したがって、本発明はまた、ヘテロ二官能性分子、好ましくは本明細書で定義されるヘテロ二官能性分子に関係し、前記ヘテロ二官能性分子が選択的に結合する膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質は、本明細書で上に定義する選択方法を使用して選択される。したがって、選択方法は、好ましくは、以下のステップ、
a)膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜結合タンパク質を、その細胞表面に発現する細胞を用意するステップであって、
- 膜貫通E3ユビキチンリガーゼは、細胞外部分に第1の非天然エピトープタグを含み;
- 膜結合タンパク質は、細胞外部分に第2の非天然エピトープタグを含む、ステップと;
b)細胞をヘテロ二官能性分子に曝露するステップであって、ヘテロ二官能性分子は、
- 第1の非天然エピトープタグに特異的に結合することができる第1の結合ドメイン;および
- 第2の非天然エピトープタグに結合することができる第2の結合ドメイン
を含む、ステップと;
c)細胞の膜結合タンパク質の表面レベルを決定するステップと;
d)膜結合タンパク質の表面レベルが、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または約100%減少した場合に、膜貫通E3ユビキチンリガーゼおよび膜貫通タンパク質を選択するステップであって、減少は、ステップb)の前の、細胞の膜結合タンパク質の表面レベルと比較した減少である、ステップと
を含む。
【0391】
一態様では、本発明は、本明細書で定義される、第1の、および必要に応じて第4の非天然エピトープタグを含む膜貫通E3ユビキチンリガーゼに関係する。
【0392】
別の態様では、本発明は、本明細書で定義される、第2の、および必要に応じて第3の非天然エピトープタグを含む膜結合タンパク質に関係する。
【0393】
一態様では、本発明は、
- 本明細書で定義される、第1の、および必要に応じて第4の非天然エピトープタグを含む膜貫通E3ユビキチンリガーゼ;ならびに
- 本明細書で定義される、第2の、および必要に応じて第3の非天然エピトープタグを含む膜結合タンパク質、
の組合せに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0394】
図1】本発明の例示的な実施形態の概略図である。本発明のヘテロ二官能性分子は、膜貫通E3ユビキチンリガーゼと膜貫通タンパク質に同時に結合する。その結果、膜貫通タンパク質はユビキチン化され、内在化され、分解されることになる。
図2】A/C二量体化剤(dimerizer)の機能評価の図である。HEK293T細胞にRNF43-FKBPおよびTβRII-Flag-FRBをトランスフェクトし、A/C二量体化剤または同体積の100%エタノールで一晩処置した。Flag-M2ビーズを使用して、細胞溶解物からTβRII構築物を免疫沈降させた。IP試料と全細胞溶解物をSDS-pageで分離し、ブロットしてFlagとRNF43を染色し、2つの構築物の間の結合を検出した。
図3】RNF43とTβRIIの強制的な二量体化により、両タンパク質の核周辺リソソームへの再局在が誘導される図である。(a)TβRII-Flag-FRBをトランスフェクトしたHEK293T細胞の共焦点画像。(B)RNF43-FKBPおよびTβRII-Flag-FRBをトランスフェクトしたHEK293T細胞の共焦点画像。細胞をA/C二量体化剤または同体積の100%エタノールで一晩処置した。TβRIIおよびRNF43を、それぞれFlagおよびRNF43染色によって可視化した。(C)CD63-GFP、RNF43-FKBPおよびTβRII-Flag-FRBをトランスフェクトしたHEK293T細胞の共焦点画像。細胞をA/C二量体化剤で一晩処置し、TβRII-Flag-FRBをFlag染色により可視化した。矢印は核周辺リソソームを示す。
図4】RNF43とTβRIIの強制的な二量体化によりTβRIIが分解される図である。HEK293T細胞にRNF43-FKBPおよびTβRII-Flag-FRBをトランスフェクトし、A/C二量体化剤または同体積の100%エタノールで一晩処置した。細胞溶解物をSDS-pageで分離し、ブロットしてFlagとRNF43を染色し、タンパク質レベルを可視化した。
図5】RNF43またはRNF167と受容体TβRIIまたはEGFRのVHHが媒介する二量体化は、受容体の内在化と核周辺部での共クラスター化を誘導する図である。細胞を固定する前に100nMのbi-VHHで5時間処置した。E3リガーゼはMyc染色で、受容体はFlag染色で可視化した。(A)E6-Flag-TβRIIとAlpha-Myc-RNF43、(B)E6-Flag-TβRIIとAlpha-Myc-RNF167、(C)E6-Flag-EGFRとAlpha-Myc-RNF43および(D)E6-Flag-EGFRとAlpha-Myc-RNF167をトランスフェクトしたHEK293T細胞の共焦点画像。矢印は、核周辺領域におけるE3リガーゼと受容体の共クラスター化を示す。
図6】二官能性VHH処置は、膜結合E3リガーゼが媒介する細胞表面からの膜貫通受容体の内在化を促進する図である。HEK293T細胞にE3リガーゼRNF43、RNF128、RNF130、RNF167のいずれか1つと受容体CTLA-4、FLT-3、PD-1、PD-L1をトランスフェクトした。細胞は未処置のままか、固定前に50nMのbi-VHHで一晩処置した。細胞表面に存在するレセプターは、未透過性細胞のFlag染色により可視化した。(A)E6-Flag-CTLA-4とAlpha-Myc-RNF43またはAlpha-Myc-RNF167、(B)E6-Flag-FLT-3とMyc-RNF43、Alpha-Myc-RNF128またはAlpha-Myc-RNF167、(C)E6-Flag-PD-1とAlpha-Myc-RNF43、Alpha-Myc-RNF128、Alpha-Myc-RNF130またはAlpha-Myc-RNF167、および(D)E6-Flag-PD-L1とAlpha-Myc-RNF43、Alpha-Myc-RNF128、Alpha-Myc-RNF130またはAlpha-Myc-RNF167をトランスフェクトしたHEK293T細胞の共焦点画像を示す。
図7-1】E3リガーゼと標的の組合せに対するbi-VHHの効果を内因性レベルで検証する図である。(A)内因性タグ付きタンパク質を生成するための戦略。(B)E3リガーゼと標的の組合せの内因性タグ付きバージョンを使用したbi-VHHによる標的の細胞表面除去のアプローチの概略図。
図7-2】E3リガーゼと標的の組合せに対するbi-VHHの効果を内因性レベルで検証する図である。(A)内因性タグ付きタンパク質を生成するための戦略。(B)E3リガーゼと標的の組合せの内因性タグ付きバージョンを使用したbi-VHHによる標的の細胞表面除去のアプローチの概略図。
【実施例
【0395】
[実施例1]
材料および方法
細胞培養およびトランスフェクション
ヒト胎児由来腎臓(HEK)293T細胞を、10%ウシ胎仔血清(GE Healthcare)、2mM UltraGlutamine(Lonza)、100単位/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したRPMI(Invitrogen)において培養した。細胞は37℃、5%COで培養した。トランスフェクションは、顕微鏡観察の場合は製造業者のプロトコールにしたがってFuGENE 6(Promega)を使用して、生化学の場合はPEIを使用して、実施した。A/C Heterodimerizer(Takara Bio、# 635056)は1μMで、37℃で一晩使用し、対照条件は等量の100%エタノールで処置した。TGFβは1,5ng/mLで45分間使用した。
【0396】
構築物および抗体
TGF-βII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体(TβRII)-Flag-FKBPおよび-Flag-FRBはPeter ten Dijke(LUMC、Leiden)から提供された。RNF43-FKBPおよび-FRBは、Q5 High-Fidelity 2× Master Mix(NEB)を使用して、ヒトRNF43のC末尾にそれぞれFKBP36VまたはFRBのコード配列を挿入することによって得られた。すべての構築物は配列が確認された。CD63-GFPはJ.Klumperman(UMCU、Utrecht)から贈呈された。免疫ブロット法(IB)、免疫蛍光法(IF)、免疫沈降法(IP)には以下の一次抗体を使用した:ウサギ抗FLAG(Sigma-Aldrich)、ラット抗HA(Roche)、マウス抗FLAG(M2;Sigma-Aldrich)、マウス抗Actin(MP Biomedicals)およびウサギ抗RNF43(Sigma-Aldrich)。一次抗体は製造業者の使用説明書に従い希釈した。IBまたはIFに使用した二次抗体は、それぞれ1:8000または1:300で、RocklandまたはInvitrogenのいずれかから入手したものを使用した。
【0397】
免疫蛍光法および共焦点顕微鏡
HEK293T細胞は、24ウェルプレートでラミニン(Sigma)をコートしたガラスカバースリップ上で増殖させた。一晩のトランスフェクションの後、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)中の4%ホルムアルデヒドで固定した。細胞をPBS中に2%BSAと0.1%サポニンを含む緩衝剤で、室温(RT)で30分間ブロックした。その後、細胞を一次抗体および二次抗体とともにブロッキング緩衝剤中、室温で1時間インキュベートした。細胞をProlong Diamond(Life technologies)にマウントし、LSM700共焦点顕微鏡で画像を取得した。画像はImageJで解析および処理した。
【0398】
免疫沈降法およびウエスタンブロッティング
トランスフェクション後、細胞を10cmディッシュで80%コンフルエントになるまで増殖させた。PBSで細胞を洗浄後、細胞を掻き取り、100mM NaCL、50mM Tris pH7.5、0.25%Triton X-100、10%グリセロール、50mM NaF、10mM NaVO、10μMロイペプチン、10μMアプロチニンおよび1mM PMSFを含む細胞溶解緩衝剤で溶解した。溶解物は、16.000×g、4℃で15分間遠心分離することにより清澄化した。溶解物をSDS試料緩衝剤に取り、37℃で1時間加熱した。免疫沈降法のために、溶解物を25μlの予め結合したFlag-M2ビーズ(Sigma)とともにインキュベートし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、ビーズを試料緩衝剤で溶出し、37℃で1時間加熱した。SDS-PAGE後、タンパク質をウエスタンブロッティングによりImmobilon-FL PVDF膜(Milipore)に転写した。Odysseyブロッキング緩衝剤(LI-COR)でブロッキングした後、タンパク質を、Amersham Typhoon Biomolecular Imager(GE Health Care)を使用してヤギ抗マウス/ウサギAlexa 680(Invitrogen)、ロバ抗ラットAlexa 680(Invitrogen)またはヤギ抗マウス/ウサギIRDye 800(Rockland)で検出される指定された一次抗体で標識した。
【0399】
結果および考察
RNF43とTGF-βII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体(TβRII)の強制的な二量体化により、TβRIIのリソソーム局在と分解が誘導される
選択された細胞表面タンパク質を内在化およびリソソーム分解へと標的化するように膜貫通E3リガーゼを再方向づけするという概念の証明を示すために、FKBP/FRB二量体化システムを使用した。TβRIIとRNF43の両方のC末端にFKBPドメインとFRBドメインのいずれかを融合させた。HEK293T細胞で共発現させると、これらのタンパク質は相互作用しない(図2)。しかし、A/C二量体化剤を添加すると、RNF43とTβRIIの共免疫沈降が誘導される(図2)。二量体化剤自体はTβRIIやRNF43の安定性を阻害しない(図2、全細胞溶解物)。次に、RNF43とTβRIIとの強制的な相互作用が、TβRIIの細胞内局在を変化させるかどうかを検討した。二量体化剤がない場合、TβRIIはRNF43の非存在時(図3A)およびRNF43の共発現時(図3B)のいずれにおいても、主に細胞膜に局在した。しかし、二量体化剤を添加すると、TβRIIとRNF43の両方の、リソソームマーカーCD63について陽性の核周辺の小胞群への再局在が強く誘導された(図3C)。これらの知見は、RNF43とTβRIIの強制的な二量体化が、増加したレベルのTβRIIをリソソームへ誘導することを示す。
【0400】
TβRIIのリソソーム局在が促進された結果、機能的なTβRIIの量が減少したかどうかを決定するために、ウエスタンブロットを使用してタンパク質レベルを分析した。RNF43の発現自体はTβRIIの安定性に影響を与えないが、RNF43とTβRIIの二量体化が誘導されると、明らかにTβRIIのタンパク質量が低下した(図4)。これらの結果はともに、膜貫通E3リガーゼRNF43と通常は無関係な膜貫通受容体TβRIIの強制的な二量体化が、TβRIIをリソソーム分解へと標的化することを示している。
【0401】
[実施例2]
材料および方法
細胞培養およびトランスフェクション
ヒト胎児由来腎臓(HEK)293T細胞を、10%ウシ胎仔血清(GE Healthcare)、2mM UltraGlutamine(Lonza)、100単位/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したRPMI(Invitrogen)において培養した。細胞は37℃、5%COで培養した。トランスフェクションは、製造業者のプロトコールにしたがってFuGENE 6(Promega)を使用して実施した。
【0402】
構築物および抗体
E6-Flag-TGF-βII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体(TβRII)および-Epidermal Growth Factor Receptor(EGFR)ならびにAlpha-myc-RNF43およびRNF167はQ5 High-Fidelity 2× Master Mix(NEB)を使用したサブクローニングにより得た。すべての構築物は配列が確認された。免疫蛍光法(IF)には、以下の一次抗体を使用した:ウサギ抗Flag(Sigma-Aldrich)およびマウス抗Myc(hybridoma 9E10)。一次抗体は製造業者の使用説明書に従い希釈した。IFに使用した二次抗体は1:300で使用した(Life technologies)。
【0403】
免疫蛍光法および共焦点顕微鏡
HEK293T細胞は、24ウェルプレートでラミニン(Sigma-Aldrich)をコートしたガラスカバースリップ上で増殖させた。一晩のトランスフェクション後、細胞を、100nMのbi-VHH(VHH Alpha-(G4S)3-VHH E6)での5時間の処置の前、およびその間(before and during a 5h treatment)、20nM Bafilomycin A1(Sigma-Aldrich)で1時間インキュベートした。処置後、細胞を加温した培地で2回洗浄し、0.05Mリン酸緩衝剤pH7.4中の4%ホルムアルデヒドで固定した。細胞をPBS中に2%BSAと0.1%サポニンを含む緩衝剤で、室温(RT)で30分間ブロックした。その後、細胞をブロッキング緩衝剤中で、FlagまたはMycのいずれかに対する一次抗体とともに室温で1時間インキュベートし、続いて二次抗体とともに、室温で1時間インキュベートした。細胞をProlong Diamond(Life technologies)にマウントし、LSM700共焦点顕微鏡で画像を取得した。画像はImageJで解析および処理した。
【0404】
結果および考察
RNF43とRNF167は、二重特異性VHHを使用した強制的な二量体化により、TβRIIとEGFRの細胞表面での除去を誘導する。
本発明のヘテロ二官能性分子の機能性をさらに確認するために、細胞外領域のVHHが媒介する二量体化により、選択した受容体をE3リガーゼで標的化した。この目的のために、エピトープタグを標的(E6タグ)とE3リガーゼ(Alphaタグ)の両方の細胞外ドメインに融合させた。これらのエピトープタグをVHHが認識するように選択し(Goetzke et al., 2019, Nature Communications, 10(1), 1-12; Ling et al., 2019, Molecular Immunology, 114(July), 513-523)、この2つのエピトープに対する二重特異性VHH(bi-VHH)を作製し、VHHが媒介する二量体化を可能にした。また、タンパク質の局在の変化を決定するために、E3リガーゼにはMycエピトープタグを、受容体にはFlagエピトープタグを組み込んだ。HEK293T細胞で共発現させたところ、どの受容体もE3リガーゼのいずれとも共局在しなかった。E3リガーゼは主に細胞内コンパートメントに、受容体は主に細胞膜に局在した(データは示していない)。しかし、bi-VHHで5時間処置すると、RNF43とRNF167は、いずれも、TβRIIおよびEGFRの細胞膜からの除去を誘導した。さらに、リソソームのターンオーバーを阻害するバフィロマイシン処置細胞では、内在化したタンパク質が核周辺領域に共クラスター化しており、E3リガーゼとその標的が後期エンドソーム/リソソーム構造に蓄積していることが示された(図5A~D)。これらの知見は、bi-VHHのようなヘテロ二官能性分子を使用して、膜貫通E3リガーゼを、選択した膜貫通受容体と意図的に二量体化させ、それによって細胞表面からの受容体除去を誘導することができることを示している。
【0405】
[実施例3]
材料および方法
細胞培養およびトランスフェクション
ヒト胎児由来腎臓(HEK)293T細胞を、10%ウシ胎仔血清(GE Healthcare)、2mM UltraGlutamine(Lonza)、100単位/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したRPMI(Invitrogen)において培養した。細胞は37℃、5%COで培養した。トランスフェクションは、製造業者のプロトコールにしたがってFuGENE 6(Promega)またはEffectene(Qiagen)を使用して実施した。
【0406】
構築物および抗体
E6-Flag-細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、受容体型チロシン-タンパク質キナーゼFLT3(FLT-3)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)およびプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)ならびにAlpha-myc-RNF43、RNF128、RNF130およびRNF167はQ5 High-Fidelity 2× Master Mix(NEB)を使用したサブクローニングにより得た。すべての構築物は配列が確認された。免疫蛍光法(IF)には、以下の一次抗体を使用した:ウサギ抗Flagまたはマウス抗Flag(Sigma-Aldrich)。一次抗体は製造業者の使用説明書に従い希釈した。IFに使用した二次抗体は1:300で使用した(Life technologies)。
【0407】
免疫蛍光法および共焦点顕微鏡
HEK293T細胞は、24ウェルプレートでラミニン(Sigma-Aldrich)をコートしたガラスカバースリップ上で増殖させた。トランスフェクションの6時間後、細胞を50nMのbi-VHH(VHH Alpha-(G4S)3-VHH E6)とともに一晩インキュベートした。処置後、細胞を加温した培地で2回洗浄し、0.05Mリン酸緩衝剤pH7.4中の4%ホルムアルデヒドで固定した。細胞をPBS中に2%BSAを含む緩衝剤で、室温(RT)で30分間ブロックした。その後、細胞をブロッキング緩衝剤中で、Flagに対する一次抗体とともに室温で1時間、次いで二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。細胞はProlong Diamond(Life technologies)にマウントし、5倍対物レンズを使用したLSM700共焦点顕微鏡、または20倍対物レンズを使用したEVOS-M5000顕微鏡で画像を取得した。画像はImageJで解析および処理した。
【0408】
結果および考察
E3リガーゼと標的の特異的な組合せにより、二重特異性VHHを使用した強制的な二量体化により、標的の表面除去が可能となる。
E3リガーゼと受容体の組合せのさらなる候補をスクリーニングするために、以前に作製した構築物に加えて、Alpha-Myc-RNF128、Alpha-Myc-RNF130、E6-Flag-CTLA-4、E6-Flag-FLT-3、E6-Flag-PD-1およびE6-Flag-PD-L1を作製した。HEK293T細胞で共発現させると、CTLA-4、FLT-3、PD-1、PD-L1のすべてが細胞表面に局在した。bi-VHHで一晩処置すると、以下のE3-標的の組合せで表面の標的が除去されるようになる:CTLA-4とRNF167;FLT-3とRNF43、RNF128またはRNF167、PD-1とRNF128、RNF130またはRNF167、およびPD-L1とRNF43、RNF128またはRNF130(図6A~D)。これらの知見は、様々な膜貫通E3リガーゼを、選択した膜貫通受容体と意図的に二量体化させ、それによって細胞表面からこれらの受容体の除去を誘導するための、bi-VHHのようなヘテロ二官能性分子の使用の範囲を拡大するものである。また、これらの知見は、すべての組合せが有効であるとは限らないことを強調している。
【0409】
[実施例4]
上記のスクリーニングから得られた有望な組合せを生理的な状況で検証するために、CRISPR/Cas9技術を使用して、内因性タグ付きE3リガーゼおよび標的を発現するがん細胞系を作製する。本発明者らはガイドRNAとAlpha-MycまたはE6-FlagタグのドナーDNAとを組み合わせて使用し、E3リガーゼまたは標的の内因性遺伝子座のシグナルペプチド(SP)と最初の成熟アミノ酸のコード配列との間にこれらのタグを挿入することを促進する(図7A)。これらの細胞系を使用して、bi-VHHとの強制的な二量体化による細胞表面からの内因性標的の除去を顕微鏡法またはウエスタンブロッティングのいずれかで評価する(図7B)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
【配列表】
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【国際調査報告】