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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】屋内-屋外兼用高精度測位システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/14 20060101AFI20230414BHJP
   G01S 19/48 20100101ALI20230414BHJP
【FI】
G01S5/14
G01S19/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552909
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 IB2021051586
(87)【国際公開番号】W WO2021176308
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/985,214
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】501141253
【氏名又は名称】マゼランシステムズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】岸本 信弘
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC07
5J062CC15
5J062FF01
(57)【要約】
複数の基地局を含む屋内用測位システムを用いて複数の移動端末のための屋外測位が以下のように行われる。(a)屋内設置場所において所定の通信リンクを用いて屋内測位を行うように構成された複数の基地局を屋外領域内の各々の屋外設置場所に設置し、(b)各基地局の屋外設置場所を測量又は測定することなく、複数の基地局の各々において複数のGNSS信号を用いて独立した高精度測位を実行することにより、複数の基地局の正確な位置を決定し、そして(c)複数の基地局において、各移動端末からの信号を所定の通信リンクを介して受信し、決定された基地局の正確な位置を用いることにより、屋外領域における複数の移動端末の屋外測位を屋内測位と同様の方法で実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局を含む屋内測位システムを用いて、複数の移動端末のための屋外測位を提供する方法であって、前記方法は、
屋内設置場所において屋内測位を行うために所定の通信リンクを使用するように構成された複数の基地局を、屋外領域内の各々の屋外設置場所に設置することと、
前記複数の基地局の各々において、基地局の屋外設置場所を測量又は測定することなく、複数のGNSS信号を用いて独立した高精度測位を実行することにより、各基地局の屋外設置場所の正確な位置を決定することと、
前記複数の基地局において前記所定の通信リンクを介して複数の移動端末の各々からの信号を受信し、前記複数の基地局の各々について決定された正確な位置を用いることにより、前記屋外領域において前記複数の移動端末の屋外測位を屋内測位と同じ方法によって実行することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記複数の基地局を各々の屋外設置場所に設置することは、
前記複数の基地局の各々に、独立した高精度測位を行うように構成されたGNSS受信機を提供すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の基地局の各々において独立した高精度測位を行うことは、
前記GNSS受信機においてGNSSアンテナを介して複数のGNSS衛星から前記複数のGNSS信号を受信し、GNSSデータを生成することと、
前記GNSSデータに基づいて測位を実行することにより、基準局の位置情報又は基準局から受信された外部補正情報を使用せずに、前記基地局の現在位置を計算することと、
を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のGNSS信号はセンチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含み、前記GNSSデータは、GNSS観測データ、及び前記測位補強情報から得られる測位補強データを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記独立した高精度測位は、高精度単独測位(PPP)又は高精度単独測位-リアルタイムキネティック(PPP-RTK)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各基地局に、屋内測位モードと屋外測位モードとを提供することと、
各基地局について、前記基地局の屋内設置場所の位置情報であって、前記屋内設置場所は既知であるか又は屋内測位モードのために既に測定されている、屋内設置場所の位置情報と、前記基地局の屋外設置場所の正確な位置情報であって、前記屋外設置場所は、屋外測位モードにおいて前記基地局を設置した後に決定される、屋外設置場所の正確な位置情報と、を格納すること、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記屋外設置場所の正確な位置の第2の位置情報は、前記基地局の絶対位置を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の通信リンクは、
2.4GHz帯域の無線周波数を用いたBlue Tooth Low Energy、及び
8.5~9.5GHzの無線周波数を用いたUltra Wide Band通信
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の基地局を各々の屋外設置場所に設置することは、
前記複数の基地局の各々に、リアルタイムキネマティック(RTK)測位を行うように構成された第1のGNSS受信機を提供することと、
前記複数の基地局の周辺に、第2のGNSS受信機を含む少なくとも一つの基準局を設置することと、
前記第2のGNSS受信機を用いて独立した高精度測位を実行することであって、
センチメータ級の測位補強情報を含む複数のGNSS信号を受信すること、
受信されたGNSS信号から、GNSS観測データと、前記測位補強情報から得られる測位補強データとを含む、GNSSデータを生成すること、
前記GNSSデータに基づいて測位を行い、他の基準局の位置情報や他の基準局からの外部誤差補正情報を用いることなく基準局の現在位置を算出すること、
前記測位の結果に基づいて、前記基準局の現在位置を含む誤差補正情報を所定のデータ形式で生成すること、及び
前記誤差補正情報を各々の基地局に送信すること、
を含むことと、
各基地局において、前記第1のGNSS受信機によって前記誤差補正情報を用いたRTK測位を行うことにより、各基地局の位置を、その屋外設置場所の正確な位置として算出することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記所定のデータ形式は、RTCM又はCMRの標準補正データ形式に準拠する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
屋内測位用のシステムを用いて、複数の移動端末に対して屋外測位を提供するシステムであって、前記システムは、
屋外領域内の各々の屋外設置場所に設置される複数の基地局であって、前記複数の基地局は、屋内設置場所における屋内測位のために所定の通信リンクを使用するように構成され、各基地局は、
基準局の位置情報又は基準局からの外部補正情報を使用することなく、複数のGNSS信号を使用して独立した高精度測位を行うことにより、前記基地局の屋外設置場所の正確な位置を決定するように構成されたGNSS受信機と、
前記所定の通信リンクを介して前記領域内の複数の移動端末からの信号を受信し、前記基地局について決定された正確な位置を用いて、前記屋外領域において前記複数の移動端末の屋外測位を、前記室内測位置と同じ方法によって実行することにより、各移動端末の現在位置を決定するように構成された測位受信機と、
を含む、複数の基地局
を備える、システム。
【請求項12】
前記移動端末の決定された現在位置を、前記複数の基地局から受信するように構成されたコントローラ
を更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
各GNSS受信機は、複数のGNSS衛星から、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含む複数のGNSS信号を受信することにより、GNSS観測データ及び測位補強データを含むGNSSデータを生成し、前記GNSSデータに基づいて測位を実行するよう構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記独立した高精度測位は、高精度単独測位(PPP)又は高精度単独測位-リアルタイムキネティック(PPP-RTK)を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の基地局の各々は屋内測位モード及び屋外測位モードを備え、各基地局は、
既知の、或いは前記屋内測位モードのために既に測定された屋内設置場所の位置情報と、
前記屋外測位モードにおいて前記基地局を屋外に設置した後に決定された屋外設置場所の正確な位置情報と、
を格納するメモリを更に含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記屋外設置場所の正確な位置の位置情報は、前記基地局の絶対位置を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記所定の通信リンクは、
2.4GHz帯域の無線周波数を用いたBlue Tooth Low Energy、及び
8.5~9.5GHzの無線周波数を用いたUltra WideBand通信
の少なくとも1つを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
屋内測位システムを用いて、複数の移動端末に対して屋外測位を提供するシステムであって、前記システムは、
屋外領域内の各々の屋外設置場所に設置される複数の基地局であって、前記複数の基地局の各々は、
屋内測位用の所定の通信リンクを介して複数の移動端末からの信号を受信することにより、その屋内設置場所において屋内測位を行うように構成された測位受信機と、
リアルタイムキネマティック(RTK)測位を行うように構成された第1のGNSS受信機と、
を含む、複数の基地局と、
前記複数の基地局の近傍に設置される少なくとも1つの基準局であって、前記少なくとも1つの基準局が、
複数のGNSS衛星から、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含む複数のGNSS信号を受信して独立高精度測位を行うことにより、他の基準局の位置情報又は他の基準局から受信された外部補正情報を使用せずに、前記基準局の正確な位置を決定するように構成された第2のGNSS受信機と、
前記基準局の正確な位置を含む誤差補正情報を所定のデータ形式で生成し、前記誤差補正情報を各基地局に送信するように構成された補正信号処理装置と、
を含む、少なくとも1つの基準局と、
を備え、
前記複数の基地局の各々において、前記第1のGNSS受信機は、前記基準局から受信された誤差補正情報を用いてRTK測位を行うことにより、前記屋外設置場所における基地局の位置を計算し、前記測位受信機は、前記屋外設置場所における基地局の計算された位置を用い、各移動端末から受信された信号に基づいて、前記室内測位と同様の方法で各移動端末の屋外測位を実行することにより、各移動端末の現在位置を決定する、システム。
【請求項19】
前記複数の基地局から、各移動端末の決定された現在位置の情報を受信するように構成されたコントローラ
を更に備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記所定のデータ形式はRTCM又はCMRの標準補正データ形式に準拠する、請求項18に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年3月4日に出願された米国仮特許出願番号62/985,214号の優先権を主張するものであり、その全開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.本発明の分野
本発明は、複数の基地局(ロケータ)を含む屋内用の測位システムを用いて、屋外の測位を提供する高精度測位システムに関する。より具体的には、本発明は、高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)あるいは高精度単独測位(PPP)などの自律測位機能を実装することにより、局所的な屋内-屋外兼用高精度測位インフラストラクチャを提供するものである。
【0003】
2.関連技術の説明
屋外測位は、全地球航法衛星システム(GNSS)を利用して高度に発達してきた。現在利用可能なGNSSとして、米国の全地球測位システム(GPS)、ロシアの全地球軌道航法衛星システム(GLONASS)、欧州連合のガリレオ(Galileo)、中国の地域ベイドゥー(BeiDou)衛星航法システム(BDS、旧称コンパス)、及び日本の準天頂衛星システム(QZSS)等がある。
【0004】
リアルタイムキネマティック(RTK)測位やディファレンシャル測位(DGNSS)技術などの従来の相対測位技術では、測位精度を向上させるための疑似距離補正(PRC)情報などの誤差補正情報を生成するために、基準局の正確な位置(座標)を把握する必要がある。基準局で作成されたPRC情報は、無線ビーコン、インターネットプロトコルを介したRTCMネットワークトランスポート(NTRIP)、デジタルマルチメディア放送(DMB)、無線データシステム(RDS)、FMデータラジオチャネル(DARC)などの通信リンクを介して提供される。例えば、アメリカ船舶電波技術委員会(RTCM)では、様々な差分補正を応用するための差分補正情報のデータ構造を定義した伝送規格を提供している。
【0005】
一方、屋内測位ではGNSS信号が利用しにくいため、屋内領域をカバーする複数の基地局(ロケータ又はビーコン)を含む屋内測位インフラストラクチャを設置する必要がある。屋内におけるローバー(移動端末装置)の位置は、屋内通信リンクを介して基地局と通信することによりを測定又は検出される。このような屋内通信リンクとしては、例えば、BlueTooth Low Energy(BLE)、Ultra WideBand(UWB)、Wi-Fi、超音波通信、GPS互換信号を用いたIndoor Messaging System (IMES)などの電波系通信が使用され得る。屋内測位システムの実現に必要な精度やコストに応じて、適切な通信リンクが採用されることになる。また、屋内測位インフラストラクチャを構築するためには、各基地局の正確な位置及び/又は基地局間の相対的な位置が既知である必要がある。そのような位置は、典型的には、基地局の設置場所を計測することによって得られる。
【0006】
例えば、リアルタイム屋内測位システムでは、無線信号を発信するタグ(移動端末)を、人、製品、工具、装具などの測位対象に取り付ける。タグから送信された無線信号は、屋内の予め定められた位置又は測定された位置に設置された複数のセンサ・受信機によって受信され、タグの正確な位置、ひいては測位対象の正確な位置が決定されるようになっている。このセンサ・受信機は、電波の強さや測位に必要な精度に応じて、一定の間隔をおいて配置される。このようなリアルタイムの測位には、30~40m間隔で配置されたUWB測位(8.5~9.5GHz)を用いることができる。
【0007】
従来の屋外-屋内シームレス測位方式では、屋外測位用のGNSS信号と屋内測位用の基地局からの信号との両方を処理できるような移動端末(ローバー)を用いることにより、屋内・屋外を問わず移動端末が自らの位置を計算・決定することを可能にしている。移動端末は、測位環境に応じて一方の測位から他方の測位に自動的に切り替えることもでき、そのような測位環境の変化を移動端末に通知するための追加の機構が有る場合も、無い場合もあり得る。このような移動端末は、測位対象であるオフィスワーカー、ビルに出入りする警備員、工場や建設現場の作業員などが携帯するスマートフォンやタブレットなどに実装することができる。
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、多くのリアルタイム屋内測位の応用においては、上述のように移動端末は信号を送信するためのタグであり、その計算能力は非常に限られている。そのようなタグはGNSS信号又は屋内測位信号いずれの測位信号の計算処理にも適さないため、測位信号処理はセンサ受信機(屋内基地局又はロケータ)によって行われることになる。従って、タグを付けた測位対象が屋内測位領域を離れてしまうと、その同じタグを用いてシームレスな屋外測位を提供することは不可能である。そこで、シームレスな屋内-屋外測位システムを実現するため、適切な信号処理及び測位能力を備えたマートフォンレベルの機能を移動端末に持たせることが行われている。しかし、マートフォンレベルの機能やそれに必要なハードウェアを測位対象ごとに準備するには、測位対象が増加した場合コストがかかりすぎるであろう。また、移動端末は、例えばアスリートやスポーツ選手などが容易に装着できるように、小型軽量であることが望ましい場合もある。
【0009】
従って、本発明の一態様によれば、複数の基地局(ロケータ)を含む屋内測位システムを用いて、複数の移動端末(タグ)のための屋外測位を行う方法が提供される。この方法は、(a)屋内設置場所において屋内測位を行うために所定の通信リンクを使用するように構成された複数の基地局を、屋外領域内の各々の屋外設置場所に設置すること、(b)複数の基地局の各々において、屋外設置場所を測量又は測定することなく、複数のGNSS信号を用いて独立した高精度測位を実行することにより、各基地局の屋外設置場所の正確な位置を決定すること、及び(c)複数の基地局において所定の通信リンクを介して各々の移動端末からの信号を受信し、複数の基地局の各々について決定された正確な位置を用いることにより、屋外領域における複数の移動端末の屋外測位を屋内測位と同じ方法によって実行すること、を含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、複数の基地局を各々の屋外設置場所に設置することは、複数の基地局の各々に、独立した高精度測位を行うように構成されたGNSS受信機を提供することを含む。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、各基地局で独立した高精度測位を行うことは、(b1)GNSS受信機においてGNSSアンテナを介して複数のGNSS衛星から複数のGNSS信号を受信し、GNSSデータを生成すること、及び(b2)GNSSデータに基づいて測位を実行することにより、基準局の位置情報又は基準局から受信された外部補正情報を使用せずに、基地局の現在位置を計算することを含む。
【0012】
複数のGNSS信号はセンチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含んでもよく、GNSSデータは、GNSS観測データ、及び測位補強情報から得られる測位補強データを含む。
【0013】
独立した高精度測位は、高精度単独測位(PPP)又は高精度単独測位-リアルタイムキネティック(PPP-RTK)であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態による方法は、更に、(d)屋内測位モードと屋外測位モードとを各基地局に提供すること、及び(e)各基地局について、既知である又は屋内測位モードのために既に測定された屋内設置場所の位置情報と、屋外測位モードにおいて基地局を設置した後に決定された屋外設置場所の正確な位置情報と、を格納すること、を含む。尚、屋外設置場所の正確な位置の位置情報は、基地局の絶対位置を含んでもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、所定の通信リンクは、2.4GHz帯域の無線周波数を用いたBlue Tooth Low Energy、及び8.5~9.5GHzの無線周波数を用いたUltra Wide Band通信の少なくとも1つを含む。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、複数の基地局を各々の屋外設置場所に設置することは、(a1)複数の基地局の各々に、リアルタイムキネマティック(RTK)測位を行うように構成された第1のGNSS受信機を提供すること、(a2)複数の基地局の周辺に第2のGNSS受信機を含む少なくとも一つの基準局を設置すること、及び(a3)第2のGNSS受信機を用いて、独立した高精度測位を実行すること、を含んでいる。この場合、第2のGNSS受信機によって行われる独立した高精度測位は、(b3)センチメータ級の測位補強情報を含む複数のGNSS信号を受信すること、(b4)受信されたGNSS信号から、GNSS観測データと測位補強情報から得られる測位補強データとを含むGNSSデータを生成すること、(b5)GNSSデータに基づいて測位を行い、他の基準局の位置情報や他の基準局からの外部誤差補正情報を用いることなく基準局の現在位置を算出すること、(b6)測位の結果に基づいて、基準局の現在位置を含む誤差補正情報を所定のデータ形式で生成すること、及び(b7)誤差補正情報を各々の基地局に送信すること、を含む。そして、各基地局の第1のGNSS受信機によって誤差補正情報を用いたRTK測位を行うことにより、各基地局の位置が、その屋外設置場所の正確な位置として算出される。なお、所定のデータ形式は、RTCM又はCMRの標準補正データ形式に準拠してもよい。
【0017】
本発明の別の態様によれば、屋内測位用のシステムを用いて、複数の移動端末(タグ)に対して屋外測位を行うシステムが提供される。このシステムは、屋外領域内の各々の屋外設置場所に設置される複数の基地局を含む。この複数の基地局の各々は、屋内設置場所において屋内測位を行うために所定の通信リンクを使用するように構成されている。各基地局は、(i)基準局の位置情報又は基準局からの外部補正情報を使用することなく、複数のGNSS信号を使用して独立した高精度測位を行うことにより、基地局の屋外設置場所の正確な位置を決定するように構成されたGNSS受信機と、(ii)所定の通信リンクを介して領域内の複数の移動端末からの信号を受信し、基地局について決定された正確な位置を用いることにより、屋外領域における複数の移動端末の屋外測位を、室内位置と同じ方法によって実行し、そのことにより各移動端末の現在位置を決定するように構成された測位受信機と、を含んでいる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、システムは、各移動端末について決定された現在位置を、複数の基地局から受信するように構成されたコントローラを更に含む。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、各GNSS受信機は、複数のGNSS衛星から、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含む複数のGNSS信号を受信することにより、GNSS観測データ及び測位補強データを含むGNSSデータを生成し、GNSSデータに基づいて測位を実行するよう構成される。独立した高精度測位は、高精度単独測位(PPP)又は高精度単独測位-リアルタイムキネティック(PPP-RTK)であってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、複数の基地局の各々は、屋内測位モード及び屋外測位モードを備えている。各基地局は、既知の、或いは屋内測位モードのために既に測定された屋内設置場所の位置情報と、屋外測位モードにおいて基地局を屋外に設置した後に決定された屋外設置場所の正確な位置情報と、を格納するためのメモリを更に含んでもよい。屋外設置場所の正確な位置の位置情報は、基地局の絶対位置を含んでもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、所定の通信リンクは、2.4GHz帯域の無線周波数を用いたBlue Tooth Low Energy、及び8.5~9.5GHzの無線周波数を用いたUltra WideBand通信の少なくとも1つを含む。
【0022】
本発明の別の態様によれば、屋内測位システムを用いて、複数の移動端末(タグ)に対して屋外測位を行うシステムが提供される。このシステムは、複数の基地局(ロケータ)と、少なくとも1つの基準局とを含む。複数の基地局は屋外領域内の各々の屋外設置場所に設置される。各基地局は、屋内測位用の所定の通信リンクを介して複数の移動端末からの信号を受信することにより、その屋内設置場所において屋内測位を行うように構成された測位受信機と、リアルタイムキネマティック(RTK)測位を行うように構成された第1のGNSS受信機と、を備えている。少なくとも1つの基準局は、複数の基地局の近傍に設置される。基準局は第2のGNSS受信機と、補正信号処理装置とを含む。第2のGNSS受信機は、複数のGNSS衛星から、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含む複数のGNSS信号を受信することによって独立高精度測位を行うことにより、他の基準局の位置情報又は他の基準局から受信された外部補正情報を使用せずに、基準局の正確な位置を決定するように構成されている。補正信号処理装置は、基準局の正確な位置を含む誤差補正情報を所定のデータ形式で生成し、その誤差補正情報を各基地局に送信するように構成される。従って、複数の基地局の各々において、第1のGNSS受信機は、基準局から受信された誤差補正情報を用いてRTK測位を行うことにより、屋外設置場所における基地局の位置を計算する。一方、測位受信機は、屋外設置場所における基地局の計算された位置を用いることにより、各移動端末から受信された信号に基づいて、室内測位と同様の方法で各移動端末の屋外測位を実行して各移動端末の現在位置を決定する。
【0023】
このシステムは、決定された各移動端末の現在位置の情報を複数の基地局から受信するように構成されたコントローラを更に含んでもよい。所定のデータ形式はRTCM又はCMRの標準補正データ形式に準拠してもよい。
【0024】
本発明の方法及びシステムによれば、各基地局が複数のGNSS信号を用いて独立した高精度測位を行うことにより自身の位置を決定することができるので、複数の基地局を含む屋内測位システムを屋外領域に持ち込み、各々の屋外設置場所に基地局を設置するだけで、各基地局の屋外設置場所の位置測定や測量をせずに、屋外測位インフラストラクチャを提供することができる。従って、屋外測位と屋内測位とで同じ移動端末(タグ)を使用することができ、屋内と屋外のシームレスな測位インフラストラクチャを実現することができる。
【0025】
屋外スポーツ場、工事現場、農場、農耕地など、所定の閉じた領域に対して屋外測位を行う場合、そのような限られた領域内の全ての測位対象についてGNSSによる測位を行う必要がない場合がある。本発明の実施形態によれば、煩雑な測定や調査を行うことなく、容易に基地局を設置し、適切な屋外インフラストラクチャを提供することができる。
【0026】
各基地局の位置は、基地局間の相対位置として決定されてもよい。しかし、各基地局の絶対位置(座標)(その屋外設置場所)を決定することにより、基地局の位置と屋外測位のための特定領域(又は用地)の位置とを関連付けて、特定領域に対する移動端末(すなわち測位対象)の移動を観測又は管理することができる。例えば、サッカー選手などのアスリートに移動端末(タグ)を持たせ、複数の基地局をサッカー場周辺に設置することで、サッカー場に対する選手の動きを追跡、監視、及び/又は記録することができる。
【0027】
本発明を採用することにより、屋内スポーツフィールド用の屋内測位システムを、対応する屋外スポーツフィールドに運搬し、同一の基地局と移動端末とを用いて屋外測位システムを容易に再構築することができるため、屋内用測位システムと屋外用測位システムとを別々に実施するための費用を節約することができる。
【0028】
本発明は、また、農業用途にも利用することができ、例えば、トラクタに移動端末(タグ)を設け、基地局を、車庫内(屋内測位)と、トラクタが運転される道路や畑の周辺及び/又は沿道(屋外測位)に設置することができる。トラクタは、車庫から畑までシームレスに位置決めされることになる。自動搬送車にもタグを設け、ロケータ(基地局)を屋内工場と屋外現場とに設置することで、自動搬送車に対して屋内-屋外測位のインフラストラクチャをシームレス且つ容易に提供することができる。
【0029】
本発明は、添付の図面において、限定としてではなく例として例解されており、同様の参照番号は同様の構成要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態による屋内測位に使用されるシステム100を例解する概略的図表である。
図2】本発明の一実施形態による基地局(ロケータ)を例解する機能ブロック図表である。
図3】本発明の一実施形態による屋外測位に使用されるシステム100を例解する概略的図表である。
図4】本発明の他の実施形態による屋外測位に使用されるシステム200を例解する概略的図表である。
図5】本発明の他の実施形態による基地局(ロケータ)を模式的に例解する機能ブロック図表である。
図6】本発明の別の実施形態に係る基準局を模式的に例解する機能ブロック図表である。
図7】本発明の一実施形態による屋外測位を提供するための方法を例解する図表である。
図8】本発明の一実施形態による基地局の独立した高精度測位の例を例解する図表である。
図9】本発明の別の実施形態による屋外測位を提供するための方法を例解する図表である。
図10】本発明の一実施形態による基準局の独立した高精度測位の例を例解する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、複数の基地局(ロケータ)を含む屋内測位システムを用いて、複数の移動端末(タグ)の屋外測位を提供する方法及びシステムを提供するものである。図1は、ロケータとも称される複数の基地局10を含む屋内測位システム100の一例を示す。基地局10は、例えば、屋内構造物の天井や壁などに取り付けられ、各々の屋内設置場所に設置される。なお、基地局10は、取付台や固定機構等を設けることにより、屋内構造物に着脱可能に固定されてもよい。「屋内」とは、ある構造物の内部の領域、又は、GNSS衛星からのGNSS信号が受信されない領域を意味する。
【0032】
基地局10の固定位置は設置時に精密に測定され、少なくとも基地局10間の相対的な空間的/位置的関係が決定される。測定された基地局10の相対位置は、対応する実際の物理的な場所と関連付けるように、屋内構造の図表又は平面図にマッピングされてもよい。屋内測位システム100は、基地局10と通信するコントローラ30又は専用サーバを備え、基地局10を介して得られたデータを処理するようにしてもよい。
【0033】
人や物の測位対象(あるいはローバー)、例えば、作業員、アスリート、選手、警備員、車両、製品、工具、装備などには、タグとも呼ばれる移動端末20が設けられる。移動端末20は、2.4GHz帯域を用いたBlueTooth Low Energyや、8.5~9.5GHzを用いたUltra WideBand通信など、所定の通信リンクを介してRF信号を送信する。また、特定のアプリケーションでは、Wi-Fi通信リンクを使用してもよい。
【0034】
図2に示されるように、各基地局10は、測位センサ12aを有する測位受信機12を備えており、移動端末20からの信号を受信する。測位受信機12は、信号が受信される方向を決定し、信号方向の2つの角度(水平及び垂直)決定することによって、特定の移動端末20の2次元位置を計算するようにしてもよい。信号に含まれる送信元の端末20を示す固有のIDによって送信元である移動端末20が特定できる。また、2つ以上の基地局10が同一の移動端末20からの信号を同時に受信する場合、その移動端末の3次元的な位置が制御装置30によって決定されてもよい。また、基地局10は、コントローラ30及び/又は移動端末20と通信するための信号送信機15を更に含んでもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、複数の基地局10は、屋外領域内の各々の屋外設置場所に設置することによって屋外測位にも用いることができるため、同じ複数の移動端末20に対し、屋内測位と同じ所定の通信リンクを用いて、屋内から屋外へのシームレスな測位を行うことができる。基地局10は、壁、フェンス、ポール、屋根などの適当な屋外構造物に設置或いは固定してもよい。あるいは、基地局10に三脚などの取付構造又は設置構造を備えることもできる。また、基地局10は可搬型であってもよい。基地局10は、屋外測位を行う屋外領域に沿って、或いは屋外領域内において、使用する通信リンクに応じて適当な間隔を空けて設置されてもよい。
【0036】
図2及び図3に示されているように、各基地局10は、測位受信機12に加えて、GNSS受信機14を含む。図3は、屋外測位インフラストラクチャとして展開される場合の測位システム100の具体例を例解している。GNSS受信機14は、複数のGNSS衛星60から受信された複数のGNSS信号を用い、独立した高精度測位を実行することによって基地局10の屋外設置場所の正確な位置を決定する。独立した高精度測位とは、(単数又は複数の)他の基準局の位置情報或いはそのような基準局から受信された外部補正情報を使用せずに、高精度測位が行われることを意味する。尚、図1には明示的に例解されていないが、図1に示される基地局10もGNSS受信機14を含んでいることに留意されたい。
【0037】
より具体的には、GNSS受信機14は自己完結型の高精度測位機能を有しており、電源がオンされるとGNSS受信機14は自己初期化を行い自身の位置を高精度で計算する。「自己完結型」とは、(単数又は複数の)他の基準局の位置情報(既知の正確な位置)を必要とする相対測位技術(RTKやDGNSSなど)を採用しないことを意味する。すなわち、従来のGNSS受信機とは異なり、本発明に係るGNSS受信機14(及びGNSS受信機14を含む基地局10)は、インターネットなどの非衛星通信リンクを介して受信された他の誤り訂正情報や位置情報に依存することなく、QZSSなどのGNSSを用いたPPP又はPPP-RTKなどの衛星ベースの高精度な測位を行う技術を採用している。本発明の実施の形態は、例解されている機能ブロックを有するような、CPU、メモリ(RAM、ROM)等を含むコンピュータとして構成することができる。これらの機能ブロックは、各々の機能を実現するソフトウェア/コンピュータプログラムによって実現されてもよいが、その一部又は全部がハードウェアによって実現されてもよい。
【0038】
GNSS受信機14がGNSS信号を受信する複数のGNSS衛星60は、少なくとも5つのGNSS衛星を含み、その中にセンチメータ級の測位補強(CLA)情報を有するGNSS信号を送信するGNSS衛星を含んでいてもよい。例えば、QZSS衛星は、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)やMulti-GNSS Advanced Demonstration Tool for Orbit and Clock Analysis(MADOCA)を用い、このようなセンチメータ級の測位補強情報を有するL6信号を送信する。CLA情報を送信することができるGNSS衛星は、CLAS衛星と呼ばれることがある。
【0039】
このようなCLAS衛星を利用して、GNSS受信機14はセンチメータ級の測位補強情報を有する複数のGNSS信号を受信し、それによってGNSS観測データ及び測位補強データを含むGNSSデータを生成し、そのGNSSデータに基づいて測位を実行する。独立した高精度測位は、高精度単独測位(PPP)又は高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)であってもよい。
【0040】
GNSS受信機14は、受信されたGNSS信号に基づいてGNSSデータを生成するためのGNSSデータ処理装置(図示せず)を含んでもよい。GNSSデータは、GNSS信号から生成されたデータであり、GNSS観測データを含む。GNSSデータプロセッサは、受信されたGNSS信号を処理してGNSSデータを生成するためのフロントエンド及び他の構成要素(図示せず)を含むことに留意されたい。GNSSデータプロセッサは、当業者にはよく理解されるように、受信されたGNSS信号の捕捉及び追跡を実行してGNSSデータを生成する。GNSS観測データは、例えば、(発信時刻に)衛星アンテナから受信機(受信アンテナ)へ伝播するGNSS信号の移動時間ΔTを含んでもよい。複数のGNSS信号は、センチメータ級の測位補強情報(CLA)を有するGNSS信号を含んでもよく、従って、GNSSデータ処理装置から生成されるGNSSデータは、GNSS信号の測位補強情報から得られる測位補強データを更に含んでもよい。
【0041】
例えば、GNSS観測データは、周波数範囲L1及び/又はL2及び/又はL5のGNSS信号から生成されてもよく、センチメータ級の測位補強データは、周波数範囲L6のGNSS信号から生成されてもよい。GNSSデータプロセッサは、受信されたGNSS信号を共に処理してGNSS観測データ及び測位補強データを含むGNSSデータを生成してもよい。あるいは、受信されたGNSS信号を周波数範囲に従って分割し、GNSSデータプロセッサが各々の処理チャネルを介して処理することにより、又は専用のデータプロセッサを用いることにより、L1/L2/L5信号及びL6信号を別々に処理してGNSS観測データ及び測位補強データが生成されるようにGNSS受信機14が構成されていてもよい。
【0042】
基地局10は独立的に自己測位を実行し、測量や計測を行うことなくその正確な位置を得ることができるので、基地局10を屋外の適切な場所に設置するだけでよく、屋外測位インフラストラクチャの設定が大幅に容易となる。図2に示すように、GNSS受信機14によって決定された基地局10の正確な位置は、位置情報として、測位受信機12からもアクセス可能なメモリ16に格納されてもよい。正確な位置の位置情報は基地局10の絶対位置を含んでいてもよい。メモリ16がGNSS受信機14と測位受信機12との両方からアクセス可能である限り、メモリ16は、GNSS受信機14内、測位受信機12内、或いは両受信機に対する外付けメモリとして実装されてもよい。
【0043】
測位受信機12は、屋外領域内の複数の移動端末20から、屋内測位でも使用される所定の通信リンクを介して信号を受信する。測位受信装置12は、決定された基地局10の正確な位置を用いて、各移動端末20の屋外測位を屋内測位と同様の方法で実行する。各々の移動端末20の現在位置は、上述したように、単一の基地局10を用いて2次元位置として決定してもよいし、2つ以上の基地局10が同一の移動端末20に対して同時に測位を行う場合には、3次元位置として決定してもよい。コントローラ30を用いて複数の基地局10からのデータを処理し、複数の移動端末20の現在の位置をリアルタイムで決定・監視してもよい。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、基地局10は、屋内-屋外兼用基地局として構成され、屋内測位モードと屋外測位モードとを備えている。基地局10のメモリ12に、基地局10の屋内設置時に既知である、又は屋内設置時に計測された基地局10の屋内設置場所(固定位置)の位置情報と、基地局10が屋外設置された後に決定された屋外設置場所の正確な位置の位置情報とを更に格納してもよい。屋内設置位置情報は屋内測位モードで使用され、屋外設置位置情報は屋外測位モードで使用される。
【0045】
このような兼用基地局10は、屋内用と屋外用とで互換性がある。例えば、基地局10は、屋内測位のために屋内場所に着脱可能に設置され、その後、取り外して屋外領域に運搬し、屋外領域の周囲及び/又は内部の適切な場所に設置することによって、屋外測位インフラストラクチャを提供することができる。基地局10及び移動端末20の両方が屋内測位と屋外測位とに共通して使用されるため、ハードウェアにかかるコストを節約することが可能である。更に、基地局10は、屋外での使用後、元の屋内設置場所に戻すことができる。
【0046】
図4は、本発明の別の実施形態によるシステム200を概略的に例解している。システム200は、複数の移動端末(タグ)20のための屋外測位を提供する。システム200は、複数の基地局(ロケータ)40と、少なくとも1つの基準局50とを含み、基地局20と少なくとも1つの基準局50との組み合わせによって、システム200の独立した高精度測位が行われる。本実施形態では、図5に示すように、基地局40は、基地局10の測位受信機12と同じであってもよい測位受信機42を含み、更に測位センサ42aを含んでもよい。
【0047】
測位受信機42は、測位受信機12と同様に、複数の移動端末20から屋内測位用の所定の通信リンクを介して信号を受信することにより、各屋内設置場所で、屋外設置場所の場合も同様であるが、屋内測位を行うことが可能である。基地局40は、更に、Real Time Kinematic(RTK)測位を行うように構成された第1のGNSS受信機44を含む。図4に示すように、システム200は、システム100の場合と同様に、複数の基地局40から、各移動端末20の決定された現在位置の情報を受信するコントローラ30を更に含んでもよい。図5に示すように、基地局40は、コントローラ30及び/又は移動端末20と通信するための信号送信機45も含んでもよい。
【0048】
少なくとも1つの基準局50は、複数の基地局40の近傍に設置される。図6に示すように、基準局50は、第2のGNSS受信機52と、補正信号処理装置54とを含む。GNSS受信機14と同様に、第2のGNSS受信機52は、複数のGNSS衛星60から、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含む複数のGNSS信号を受信することによって、独立した高精度測位を行うように構成される。GNSS受信機52は、GNSS受信機14が基地局10の正確な位置を決定するのと同様に、他の基準局の位置情報又は他の基準局から受信された外部補正情報を用いることなく、基準局50の正確な位置を決定する。
【0049】
補正信号処理装置54は、所定のデータ形式で誤差補正情報を生成する。誤差補正情報は基準局50の正確な位置を含む。基準局50は、信号送信機58を介し、誤差補正情報を各々の基地局40に送信する。従って、複数の基地局40の各々において、第1のGNSS受信機44は、誤差補正情報を受信し、その誤差補正情報を用いてRTK測位を行うことにより、屋外における基地局40の位置を算出する。基地局40の測位受信機42は、基地局10の測位受信機12と同様に、各移動端末20から受信された信号に基づいて、算出された基地局40の屋外設置場所の正確な位置を用いて、各移動端末20のための屋外測位を実行する。なお、所定のデータ形式は、RTCMの標準補正データ形式やCompact Measurement Record(CMR)形式に従ってもよい。また、基準局50はGNSS観測データを生成して送信してもよい。
【0050】
誤差補正情報には基準局50の正確な位置(座標)が含まれているので、以下に説明するように、基地局40(第1のGNSS受信機44)は、受信されたGNSS信号と、誤差補正情報とそれに含まれる基準局50の正確な位置とを用いて、自己の位置を計算し決定することが可能である。すなわち、第1のGNSS受信機44は、基準局50について相対GNSS測位を行い、基準局50の正確な位置を基準とした相対位置を算出することにより、自己の正確な位置を得る。各基地局40が自身の正確な位置を決定し終えた後、基準局50は、移動端末(すなわち測位対象)の動きを妨げないように、別の場所に移動させるか、その領域から除去されてもよい。
【0051】
なお、基準局50と各基地局40との間の距離(基線)は、GNSS衛星からの距離と比較して無視できるので、基地局40は、基準局50の位置に対する誤差補正情報と同じ誤差補正情報を使用できると仮定してよい。従って、基準局50と各基地局40との間の距離が大きくなればなるほど、基地局40で行われる相対GNSS測位の精度が低下するといえる。しかしながら、閉じた又は限定的な領域に対する屋外測位の場合、基準局50と各基地局40との間の距離は無視できる程度であるといえる。従って、基地局40の第1のGNSS受信機44は、1つの信号周波数(例えば、L1)、又は2つの信号周波数(例えば、L1及びL2)だけを使用してもよく、基地局40は基地局10よりも安価に実現できる。
【0052】
従って、基準局50を用いることにより、基地局40は、インターネット、携帯電話通信システム、又は他の公衆通信システムを用いることなく、簡単なラジオ又は無線受信機を使用して基準局50から誤り訂正情報を受信できるため、屋外測位システム200の中で、全体として、複数の基地局40のための独立した高精度測位を実現することが可能である。屋外測位システム100はよりシンプルで容易なセットアップを提供するが、本実施形態の屋外測位システム200によれば実施コストを更に削減することができる。
【0053】
図1に示すシステム100においては、基地局10は、GNSS衛星60から受信するGNSS信号のみに基づいて自身の現在の正確な位置(設置場所)を求めることができるので、屋外測位インフラストラクチャを構築するために設置場所の測量作業や計測を行う必要がない。また、図4に示される基地局40の場合、誤差補正情報の受信にインターネット接続等を行う必要が無く、屋外測位領域内で基準局50から取得した補正情報を用いて初期RTK測位を行うことが可能である。
【0054】
図7は、本発明の一実施形態による方法110を例解している。図7に示すように、方法110により、複数の移動端末のための屋外測位が、屋内用の測位システムを用いて提供される。この方法は、上述したシステム100を使用して実行されてもよい。図7に示すように、屋内設置場所での屋内測位のために所定の通信リンクを使用するように構成された複数の基地局が、屋外領域内の各々の屋外設置場所に、その設置場所を測量又は測定することなく設置される(112)。複数の基地局の各々において、複数のGNSS信号を用いた独立した高精度測位が行われ、それによって、各基地局の屋外設置場所の正確な位置が、その設置場所を測量又は測定することなく決定される(114)。決定された複数の基地局の各々の正確な位置を用いて、屋内測位と同様に、屋外領域における複数の移動端末の屋外測位が行われる(116)。これは、複数の基地局において、各々の移動端末からの信号を所定の通信リンクを介して受信することによって行われる。
【0055】
方法110において、複数の基地局の各々の屋外設置場所への設置(112)は、複数の基地局の各々に、独立した高精度測位を実行するように構成されたGNSS受信機を提供することによって行われてもよい。図8に示すように、この独立した高精度測位の実行(114)は、GNSS受信機により、GNSSアンテナを介して複数のGNSS衛星から複数のGNSS信号を受信し(118)、GNSSデータを生成し(120)、GNSSデータに基づいて、基準局の位置情報又は基準局から受信された外部補正情報を使用せずに、測位を実行することにより基地局の位置を計算する(112)ことにより行われてもよい。決定された基地局の正確な位置は、メモリに格納されてもよい(124)。
【0056】
複数のGNSS信号は、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含んでもよく、GNSSデータは、GNSS観測データ及び測位補強情報から得られる測位補強データを含む。独立した高精度測位は、高精度単独測位(PPP)又は高精度単独測位-リアルタイムキネティック(PPP-RTK)であってもよい。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、方法110は、各基地局に屋内測位モードと屋外測位モードとを提供し、各基地局について、屋内測位モードにおいて既知又は屋内測位モードにおいて計測された基地局の屋内設置場所の位置情報と、屋外測位モードにおいて基地局を設置した後に決定された屋外設置場所の正確な位置情報とを格納すること、を更に含む。なお、屋外設置場所の正確な位置の位置情報には、基地局の絶対位置が含まれていてもよい。
【0058】
所定の通信リンクは、2.4GHz帯域の無線周波数を用いたBluw Tooth Low Energy、又は8.5~9.5GHz帯域の無線周波数を用いたUltra WideBand通信でもよいが、Wi-Fi等の他の通信リンクを用いてもよい。
【0059】
図9は、本発明の別の実施形態による方法220を例解している。方法220は、方法110とは異なる方法により複数の基地局を各々の屋外設置場所に設置する。この方法220は、屋外測位システム200を使用して実行されてもよい。方法220では、図9に示すように、各々がリアルタイムキネマティック(RTK)測位を行うように構成された第1のGNSS受信機を備えた複数の基地局を、各々の屋外設置場所に設置し(222)、第2のGNSS受信機を備えた少なくとも一つの基準局を、複数の基地局の近傍に設置する(224)。そして、第2のGNSS受信機を用いて、独立した高精度測位を実行する(226)。
【0060】
この場合、図10に示すように、第2のGNSS受信機によって行われる独立高精度測位(226)は、以下のように行われる。センチメータ級の測位補強情報を含む複数のGNSS信号を受信し(228)、受信されたGNSS信号からGNSSデータを生成する(230)。ここで、GNSSデータはGNSS観測データ及び測位補強情報から得られる測位補強データを含んでいる。このGNSSデータに基づいて測位を行うことにより、他の基準局の位置情報又は他の基準局からの外部誤差補正情報を用いずに、基準局の正確な位置を計算する(232)。この測位結果に基づいて、基準局の正確な位置を含む誤差補正情報を所定のデータ形式で生成し(234)、適切な通信リンクを介して誤差補正情報を各々の基地局に送信する(236)。図9に戻り、次に、各基地局において、第1のGNSS受信機により、基準局から受信された誤差補正情報を用いてRTK測位を行い、基地局の位置を屋外設置場所の正確な位置として計算する(238)。なお、所定のデータ形式は、RTCMやCMRの標準補正データ形式に従ってもよい。そして、移動端末のための屋外測位が、屋内測位の場合と同様に、基地局を使用して行われる(240)。
【0061】
本発明のシステム100及び方法110によれば、基地局10の各々が複数のGNSS信号を用いて自身の位置を決定する独立した高精度測位を行うことができるため、複数の基地局10を含む屋内測位用のシステムを屋外領域に運搬して、基地局10を各々の屋外設置場所に設置するだけで、屋外設置場所の位置を測定又は測量することなく屋外測位インフラストラクチャを提供することが可能である。従って、屋外の測位にも屋内の測位にも同じ移動端末(タグ)20を使用することができ、屋内と屋外のシームレスな測位を実現することができる。また、各基地局10の絶対位置(座標)を取得することにより、屋外領域やフィールドの物理的な位置との関連付けが容易にできる。
【0062】
屋外スポーツフィールド、建設現場、農場、農耕地など、所定の閉じた領域に対して屋外測位を行う場合、その限られた領域内の測位対象全てに対しGNSSに基づく測位を行う必要がない場合がある。本発明の実施形態によれば、煩雑な測量や測定を行うことなく容易に基地局を設置し、適切な屋外インフラストラクチャを提供することができる。
【0063】
あるいは、各基地局の位置は複数の基地局のなかで相対位置として決定されてもよい。例えば、システム200及び方法210を採用する場合、各基地局の位置は、基準局50の正確な位置に対する相対位置として表される。しかし、各基地局の絶対位置(座標)(その屋外設置場所)を決定し、各基地局の位置を屋外測位のための特定領域(又は用地)の位置に関連付けることにより、特定領域に対する移動端末(すなわち測位対象)の移動を観測又は管理することができる。例えば、サッカー選手などのアスリートに移動端末(タグ)を提供し、基地局をサッカー場の周辺に設置することで、サッカー場に対するアスリートの動きを追跡、監視、及び/又は記録することができる。タグは、例えば、ユニフォーム、ヘッドギア、靴などに取り付けることができる。
【0064】
本発明を採用することにより、屋内スポーツフィールド用の屋内測位システムを屋外スポーツフィールドに移送して運用し、同じ基地局と移動端末とを用いて屋外測位システムを容易に構築することができるので、屋内用と屋外用の測位システムを別々に実施するための費用を節約することができる。
【0065】
また、本発明は農業用途にも利用でき、例えば、トラクタに移動端末(タグ)を設け、基地局を、車庫(屋内測位)と、トラクタが走行し操作される道路や畑の周辺及び/又は沿道に設置する(屋外測位)ことができる。トラクタは、車庫から耕地へ、そしてまた車庫に戻るまで、シームレスに測位・位置決めされることになる。また、自動搬送車にタグを設け、ロケータ(基地局)を屋内工場と屋外現場に設置することで、自動搬送車に対して屋内-屋外測位インフラストラクチャをシームレス且つ容易に提供することができる。
【0066】
本発明をいくつかの好ましい実施形態によって説明してきたが、代替物、置換物、修正物、及び様々な代用物があり、それらは本発明の範囲内である。また、本発明の方法及び装置を実施する多くの代替な方法があることにも留意すべきである。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の主旨及び範囲内に含まれるものとして、そのようなすべての代替形態、置換形態、及び様々な代替均等物を含むと解釈されることが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】