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特表2023-517024メタボリックシンドローム及び炎症性腸疾患の処置における使用のためのコプロコッカス(COPROCOCCUS)菌
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】メタボリックシンドローム及び炎症性腸疾患の処置における使用のためのコプロコッカス(COPROCOCCUS)菌
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20230414BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230414BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P1/04 ZNA
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/06
A61P5/50
A61P9/00
A61P1/16
A61P9/10
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552931
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2021055478
(87)【国際公開番号】W WO2021175998
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】20305228.7
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522052233
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・ドゥ・ルシェルシェ・プール・ラグリクルテュール・ラリマンタシオン・エ・ランヴィロンヌマン
(71)【出願人】
【識別番号】507139834
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ドゥ パリ
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハリー・ソコル
(72)【発明者】
【氏名】アリソン・アグス
(72)【発明者】
【氏名】クロエ・ミショーデル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・プランシェ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ランジェラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087CA09
4C087CA10
4C087CA11
4C087MA52
4C087MA60
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA38
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZC21
4C087ZC33
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、コプロコッカス菌及び/又はその培養上清を使用する、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患の防止的又は治癒的処置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AhRアゴニスト活性を示すコプロコッカス菌及び/又はその培養抽出物を含む組成物であって、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患の処置における使用のための組成物。
【請求項2】
細菌がコプロコッカス・コメス菌である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
細菌が、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen (DSMZ)に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス株、又はその変異体である、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
コプロコッカス菌が生きているコプロコッカス菌である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
培養抽出物が培養上清である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
コプロコッカス培養上清、好ましくはコプロコッカス・コメス培養上清を含む、請求項5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
生きているコプロコッカス菌及びその培養上清、好ましくは生きているコプロコッカス・コメス菌及びその培養上清を含む、請求項5又は6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
AhRアゴニストを生産することができ、好ましくはアロバキュラム属、アドレクラウチア属、アナエロスティペス属、ビフィドバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属、バクテロイデス属、ユーバクテリウム属、エンテロコッカス属、ルミノコッカス属及びフィーカリバクテリウム属に属する細菌、大腸菌、並びにラクトバチルス属及びレンサ球菌属に属する細菌等の乳酸菌からなる群から選択される1種又はいくつかの追加の細菌プロバイオティクスを更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記1種又はいくつかの追加の細菌プロバイオティクスが、アロバキュラム属、アドレクラウチア属、プロピオニバクテリウム属、エンテロコッカス属、大腸菌、ラクトバチルス属及びレンサ球菌属に属する細菌からなる群から選択される、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
CNCM寄託番号CNCM I-5019、CNCM I-5020、CNCM I-5021、CNCM I-5022及びCNCM I-5023、ルミノコッカス・グナバスATCC29149、ラクトバチルス・サリバリウスDSM20555、ラクトバチルス・ロイテリDSM20016、ラクトバチルス・ガセリDSM20243、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165、大腸菌MG1665、アナエロスティペス・ハドラスDSM3319、アナエロスティペス・カカエDSM14662、アナエロスティペス・ブチラティカスDSM22094及びアロバキュラム・ステルコリカニスDSM13633で入手可能な株からなる群から選択される1種又はいくつかの追加の細菌プロバイオティクスを更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
追加の細菌を一切含まない、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
経口又は直腸経路によって投与され得る、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
疾患がメタボリックシンドローム又は関連障害から選択され、前記障害が好ましくは心血管疾患、インスリン抵抗性、耐糖能異常、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患及び脂肪異栄養症からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
疾患がメタボリックシンドローム又は関連障害から選択され、前記障害が心血管疾患、インスリン抵抗性、耐糖能異常、非アルコール性脂肪肝疾患及び脂肪異栄養症からなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
疾患がメタボリックシンドロームである、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
疾患がメタボリックシンドロームに関連する障害であり、前記障害が心血管疾患、インスリン抵抗性、耐糖能異常、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患及び脂肪異栄養症からなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
疾患がメタボリックシンドロームに関連する障害であり、前記障害が、心血管疾患、インスリン抵抗性、耐糖能異常、非アルコール性脂肪肝疾患及び脂肪異栄養症からなる群から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
心血管疾患が冠動脈心疾患、好ましくは心臓発作又は脳卒中である、請求項13から17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
疾患が炎症性腸疾患であり、好ましくはクローン病、潰瘍性大腸炎、分類不能大腸炎(IC)、他の非感染性胃腸炎、腸炎、小腸結腸炎及び大腸炎、並びに回腸嚢炎からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
疾患がクローン病及び潰瘍性大腸炎から選択される炎症性腸疾患である、請求項19に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
疾患が抗生物質関連大腸炎ではなく、好ましくはクロストリジウム・ディフィシル関連下痢症ではない、請求項1から20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス株、又はその変異体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関し、特に、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患の防止的又は治癒的処置のための細菌プロバイオティクスを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドロームは、最も危険な心臓発作及び糖尿病リスク因子のクラスターである。世界の成人の4分の1がメタボリックシンドロームを有するので、これは主要な健康問題を表す。メタボリックシンドロームを有する人は、シンドロームを有しない人と比較して、心臓発作又は脳卒中で死亡する可能性が2倍であり、それらを有する可能性が3倍である。メタボリックシンドロームを有する人は、2型糖尿病を発症する5倍のリスクを有する。
【0003】
炎症性腸疾患(IBD)は、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む、胃腸(GI)管の炎症性障害の一群を識別するために使用される総称である。IBDの正確な原因は完全には理解されていないが、遺伝的素因、腸内微生物叢の乱れ及び環境的影響が関与することが知られている。IBDは、臨床的再発及び寛解の繰り返される交互のサイクルを特徴とする。適切な処置がない場合、IBDは慢性炎症、したがって不可逆的腸損傷に至る。
【0004】
クローン病は、GI管の任意の部分に影響を及ぼし得るが、結腸の始まりにつながる小腸の末端(回腸)に影響を及ぼすことが最も多い。クローン病は「斑状」に現れることがあり、GI管の一部の領域に影響を及ぼすが、他の部分は完全に影響を受けない。クローン病において、炎症は腸壁の全層に及び得る。潰瘍性大腸炎は、大腸(結腸)及び直腸に限定される。炎症は、腸の内層の最も内側の層にのみ生じる。炎症は通常、直腸及び下部結腸において始まるが、結腸全体を含むように連続的に広がることもある。一部の個体において、その個体のIBDがクローン病であるか、又は潰瘍性大腸炎であるかを決定することは難しい。これらの稀な症例において、人は分類不能大腸炎(IC)の診断を与えられる。
【0005】
一部の最近の研究は、メタボリックシンドローム及びIBDは、アリール炭化水素受容体(AhR)アゴニスト又はそのようなアゴニストを生産する細菌プロバイオティクスを使用して、処置又は防止され得ることを明らかにした(WO2018/065132及びWO2017/032739を参照されたい)。アリール炭化水素受容体(AhR)は、毒物代謝に関与する遺伝子を調節し、環境曝露に対する主要な防御を提供する、リガンド活性化核内受容体/転写因子である。AhRは、脂肪及び脂肪誘導体等の食事成分によって活性化されることがあり、活性化されたAhRを、肥満を含む主要な疾患に関連付ける証拠がある(La Merillら、2009、Environ Health Perspect、117、1414~1419頁)。
【0006】
過去の特許出願(WO2018/065132)において発明者らは、メタボリックシンドロームの動物モデル(高脂肪食(HFD)誘発性メタボリックシンドローム又はレプチン欠損マウス(ob/obマウス))が、それらの腸内微生物叢の低下したAhRアゴニスト活性に関連すること、並びに薬理学的戦略による又はAhRアゴニストを天然で生産する腸内細菌によるAhRアゴニストの投与が、体重増加を低減し、耐糖能、インスリン感受性及び脂肪肝疾患を改善することを観察した。発明者らは、ヒトにおいて、腸内微生物叢のAhRアゴニスト活性がメタボリックシンドロームと逆相関することも観察した。更に、別の過去の特許出願(WO2017/032739)において発明者らは、トリプトファンを代謝し、AHRリガンドを生産するラクトバチルスの接種が大腸炎をAHR依存様式で低減することを実証した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2018/065132
【特許文献2】WO2017/032739
【特許文献3】WO2013/171696
【特許文献4】WO2012/015914
【特許文献5】US6,432,692
【特許文献6】US7,419,992
【特許文献7】WO2009/093207
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】La Merillら、2009、Environ Health Perspect、117、1414~1419頁
【非特許文献2】Schmidt及びBradfield、1996、Annu Rev Cell Dev Biol. 12、55~89頁
【非特許文献3】Safe Sら、2013、Toxicol Sci.、135、1~16頁
【非特許文献4】Lehmannら、1995、Journal of Biological Chem.、270、12953~12956頁
【非特許文献5】Heら、2011、Environ Toxicol Chem、30、1915~1925頁
【非特許文献6】Gaoら、2009、Anal Biochem、393、163~175頁
【非特許文献7】Jiら、2015、Dig Dis Sci、60、1958~1966頁
【非特許文献8】Furumatsuら、2011、Dig Dis Sci、56、2532~2544頁
【非特許文献9】Denisonら、2002、Chem. Biol. Interact. 141、3~24頁
【非特許文献10】Denisonら、2003、Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 43、309~334頁
【非特許文献11】Adachiら、2001、J. Biol. Chem.、276、31475~1478頁
【非特許文献12】Sinal C J及びBend J R、1997、Mol. Pharmacol.、52、590~9頁
【非特許文献13】Seidel S Dら、2001、J. Biochem. Mol. Toxicol.、15、187~196頁
【非特許文献14】McMillan B J及びBradfield C A、2007、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、104、1412~1417頁
【非特許文献15】Stevensら、2009、Immunology.、127、299~311頁
【非特許文献16】Bissonら、2009、J. Med. Chem、52、5635~5641頁
【非特許文献17】Lawrence B P、2008、Blood、112、1158~1165頁
【非特許文献18】Mezrich J Dら(2012) PLoS ONE 7(9):e44547
【非特許文献19】Hu Wら、2007、Mol Pharmacol.、71、1475~86頁
【非特許文献20】O'Donnell EFら、2010、PLoS One、5(10). pii:e13128
【非特許文献21】Wang Yら、2008、Eur J Pharmacol.、601、73~78頁
【非特許文献22】consensus worldwide definition of the metabolic syndrome(2006)
【非特許文献23】Fernandez-Salgueroら、Science. 1995、268、722~726頁
【非特許文献24】Kreymborgら、J. Immunol. 2007、179、8098~8104頁
【非特許文献25】Lamasら、2016、Nat Med. Jun;22(6):598~605頁
【非特許文献26】Sokolら、Gastroenterology. 2013 Sep;145(3):591~601.e3頁
【非特許文献27】Craneら、2015、Nat Med 21、166~172頁
【非特許文献28】Schneiderら、2012、Nat Methods 9、671~675頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、AhRとメタボリックシンドローム又はIBDとの関連が明らかになったとしても、これらの病的状態の防止又は処置において使用される、適切な特徴を示す細菌プロバイオティクスの強い必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは本明細書において、高いAhR活性と関連する細菌プロバイオティクスを同定した。実際に本発明者らは、コプロコッカス・コメス(Coprococcus comes)菌及び/又はその培養上清が、マウスをDSS誘発性大腸炎から保護することができ、食事誘発性代謝障害を緩和することができ、高脂肪食(HFD)マウスにおいてコレステロール及びHDL血清レベル等の肝脂肪症の特徴を低減することができることを実証した。全てのこれらの効果はAhR依存性であることが示された。
【0011】
したがって、本発明は、AhRアゴニスト活性を示すコプロコッカス菌及び/又はその培養抽出物を含む組成物であって、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患の処置における使用のための組成物に関する。
【0012】
好ましくは、細菌はコプロコッカス・コメス菌である。
【0013】
より好ましくは、細菌は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス株、又はその変異体である。
【0014】
好ましくは、組成物中のコプロコッカス菌は生きているコプロコッカス菌であり、及び/又は培養抽出物は培養上清である。特に、組成物は生きているコプロコッカス菌及びその培養上清、好ましくは生きているコプロコッカス・コメス菌及びその培養上清を含み得る。
【0015】
任意選択で組成物は、AhRアゴニストを生産することができ、好ましくはアロバキュラム属(Allobaculum)、アドレクラウチア属(Adlercreutzia)、アナエロスティペス属(Anaerostipes)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)及びフィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)に属する細菌、大腸菌(Escherichia coli)、並びにラクトバチルス属(Lactobacillus)及びレンサ球菌属(Streptococcus)に属する細菌等の乳酸菌からなる群から選択される、又はアロバキュラム属、アドレクラウチア属、プロピオニバクテリウム属、エンテロコッカス属、大腸菌、ラクトバチルス属及びレンサ球菌属に属する細菌からなる群から選択される、1種又はいくつかの追加の細菌プロバイオティクスを更に含み得る。特に組成物は、CNCM寄託番号CNCM I-5019、CNCM I-5020、CNCM I-5021、CNCM I-5022及びCNCM I-5023、ルミノコッカス・グナバス(Ruminococcus gnavus)ATCC29149、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)DSM20555、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM20016、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)DSM20243、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)A2-165、大腸菌MG1665、アナエロスティペス・ハドラス(Anaerostipes hadrus)DSM3319、アナエロスティペス・カカエ(Anaerostipes caccae)DSM14662、アナエロスティペス・ブチラティカス(Anaerostipes butyraticus)DSM22094及びアロバキュラム・ステルコリカニス(Allobaculum stercoricanis)DSM13633で入手可能な株からなる群から選択される1種又はいくつかの追加の細菌プロバイオティクスを更に含み得る。代替的に別の実施形態では、組成物は追加の細菌を一切含まず、特に追加の細菌プロバイオティクスを一切含まない。
【0016】
好ましくは、組成物は経口又は直腸経路によって投与され得る。
【0017】
好ましくは、疾患はメタボリックシンドローム又は関連障害から選択され、前記障害は、好ましくは心血管疾患、インスリン抵抗性、耐糖能異常、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患及び脂肪異栄養症からなる群から選択され、より好ましくはメタボリックシンドローム又は関連障害から選択され、前記障害は心血管疾患、インスリン抵抗性、耐糖能異常、非アルコール性脂肪肝疾患及び脂肪異栄養症からなる群から選択される。心血管疾患は、好ましくは冠動脈心疾患、より好ましくは心臓発作又は脳卒中である。
【0018】
複数の実施形態では、疾患は炎症性腸疾患であり、疾患は、好ましくはクローン病、潰瘍性大腸炎、分類不能大腸炎(IC)、他の非感染性胃腸炎、腸炎、小腸結腸炎及び大腸炎、並びに回腸嚢炎からなる群から選択され、より好ましくはクローン病及び潰瘍性大腸炎から選択される。好ましくは、疾患は抗生物質関連大腸炎ではなく、より好ましくはクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症ではない。
【0019】
別の態様では、本発明はまた、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス株、又はその変異体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1-1】図1。C.コメス上清が、DSS誘発性大腸炎から保護することを示す図である。C.コメス(細菌+上清、上清又は死滅した細菌)で処置したマウスにおけるDSS誘発性大腸炎中の体重減少(A)、DAI(B)。12日間のDSS誘発性大腸炎後の、結腸長(C)及びHES染色後の組織学的スコア(D~E)。12日目のMLN細胞刺激後のIL-17A、IFN-γ、IL-22及びIL-10タンパク質(F)。各グラフは、2つの別個の実験の代表であり、n=5~10。統計:二元配置分散分析、ボンフェローニ事後検定。
図1-2】図1の続き。
図1-3】図1の続き。
図2-1】図2。C.コメス保護がAhR依存性であることを示す図である。H1L1.1c2におけるAhR活性の変化倍率(A)、3週間のC.コメス上清の経管栄養後の定常状態の結腸及び肝臓におけるCyp1a及びAhRR mRNA(B)。C.コメスSN経管栄養あり又はなしのAhR-/-におけるDSS誘発性大腸炎後の体重減少(C)及びDAI(D)。結腸長(E)、組織学的スコア(F)及び9日間の大腸炎後のHES染色(G)。各グラフは2つの別個の実験の代表であり、n=5~10。統計:二元配置分散分析、ボンフェローニ事後検定。
図2-2】図2の続き。
図3-1】図3。C.コメス保護はIL-22分泌を経ていることを示す図である。3週間のC.コメス上清経管栄養後の定常状態の結腸におけるReg3γ、Reg3β及びIL-22mRNAの変化倍率(A)。IL22-/-マウスにおけるDSS誘発性大腸炎後の体重減少(B)及びDAI(C)。結腸長(D)、組織学的スコア(E)及び9日間の大腸炎後のHES染色(F)。各グラフは2つの別個の実験の代表であり、n=7~8。統計:二元配置分散分析、ボンフェローニ事後検定。
図3-2】図3の続き。
図4-1】図4。コプロコッカス・コメスによる処置が、食事誘発性代謝障害を緩和することを示す図である。C.コメス又はビヒクルを補充したConv及びHFD供給マウスの(A)体重増加、(B)食物摂取量、(C)16時間の絶食後の血中グルコースレベル。(D)OGTTのAUC(曲線下面積)、(E)ITT中の4時間の絶食後の血中グルコースレベル、(F)ITTのAUC。
図4-2】図4の続き。
図5】コプロコッカス・コメスによる処置が、HFDマウスにおいて肝脂肪症を低減することを示す図である。(A)示されたマウスからのH&E染色肝臓薄片の代表的な写真である。(B)C.コメス又はビヒクルを補充したConv及びHFD供給マウスの肝臓断面における関心領域(AOI)のパーセント面積として計算される脂質面積。
図6】コプロコッカス・コメスによる処置が、HFD誘発性メタボリックシンドロームの血清特徴を低減することを示す図である。示されたマウスの血清からの(A)コレステロール及び(B)HDLの濃度。
図7-1】図7。AhR-/-マウスにおけるコプロコッカス・コメスの補充が、食事誘発性代謝障害を緩和するのに十分でないことを示す図である。C.コメス又はビヒクルを補充したConv及びHFD供給マウスの(A)体重増加、(B)食物摂取量、(C)16時間の絶食後の血中グルコースレベル。(D)OGTTのAUC、(E)ITT中の4時間の絶食後の血中グルコースレベル、(F)ITTのAUC。
図7-2】図7の続き。
図7-3】図7の続き。
図8】AhR-/-マウスにおけるコプロコッカス・コメスの補充が、HFDマウスにおいて肝脂肪症に対する影響を有しないことを示す図である。(A)示されたマウスからのH&E染色肝臓薄片の代表的な写真。(B)C.コメス又はビヒクルを補充したConv及びHFD供給マウスの肝臓断面におけるパーセント関心領域(AOI)として計算される脂質面積。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは本明細書において、高いAhR活性と関連する細菌プロバイオティクスを同定した。実際に本発明者らは、コプロコッカス・コメス菌及び/又はそれらの培養上清が、マウスをDSS誘発性大腸炎から保護することができ、食事誘発性代謝障害を緩和することができ、高脂肪食(HFD)マウスにおいて肝脂肪症等の非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の特徴を低減することができることを実証した。全てのこれらの効果はAhR依存性であることが示された。
【0022】
したがって、第1の態様では、本発明は、AhRアゴニスト活性を示すコプロコッカス菌及び/又はその培養抽出物を含む組成物であって、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患の処置における使用のための組成物に関する。本発明はまた、AhRアゴニスト活性を示すコプロコッカス菌及び/又はその培養抽出物を含む組成物の使用であって、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患の処置のための医薬の製造のための使用に関する。本発明は更に、対象においてメタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患を処置するための方法であって、AhRアゴニスト活性を示すコプロコッカス菌及び/又はその培養抽出物を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0023】
コプロコッカス(Uniprot Taxon ID:33042)は、ヒト糞便微生物叢の一部である嫌気性球菌の属である。好ましい実施形態では、コプロコッカス菌はコプロコッカス・コメス(例えばUniprot Taxon ID:410072)である。コプロコッカス・コメス菌は、例えばATCC(登録商標) collection(ATCC(登録商標)27758(商標))から商業的に入手可能である。
【0024】
コプロコッカス菌は、嫌気条件において37℃で、適切な培地で培養され得る。適切な培地の例は、セロビオース(1mg/ml)、マルトース(1mg/ml)、システイン(0.5mg/ml)、ビタミンK1(0.0002%)及びビタミンK3(0.0002%)を補充したLYHBHI培地(0.5%酵母エキス及び1%ヘミンを補充したブレインハートインフュージョン培地)、ATCC(登録商標)培地1102(0.1%セロビオース、0.1%マルトース、0.1%デンプン、及び0.1%Tween80を含むChopped meat carbohydrate培地)又はATCC(登録商標)培地260(脱線維ヒツジ血液を含むトリプチケースソイ寒天培地/ブロス)を含むが、これらに限定されない。
【0025】
本発明において使用されるコプロコッカス菌はAhR活性化特性を示す。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「AhR」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、多様な化合物によって活性化され、生体異物代謝遺伝子の発現を調節する転写因子であるアリール炭化水素受容体を指す。アリール炭化水素受容体(AhR)は、塩基性ヘリックスループヘリックス転写因子のファミリーである、bHLH-PAS(塩基性ヘリックスループヘリックス/Per-ARNT-Sim)ファミリーのメンバーである(Schmidt及びBradfield、1996、Annu Rev Cell Dev Biol. 12、55~89頁;Safe Sら、2013、Toxicol Sci.、135、1~16頁)。それはUniprotデータベースにおいてP35869に記載されている。Genbankにおける参照配列は以下である:NM_001612.1及びNP_001621.4。
【0027】
用語「AhR活性」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、そのシグナル伝達カスケードから生じるAhRの活性化に関連し、AhRへのAhRアゴニスト、例えば天然リガンドの結合から生じる下流の生物学的効果のいずれかを含む、生物活性を指す。AhR活性化レベルの分析は、多種多様な周知の方法のいずれかによって判定され得る(Lehmannら、1995、Journal of Biological Chem.、270、12953~12956頁;Heら、2011、Environ Toxicol Chem、30、1915~1925頁;及びGaoら、2009、Anal Biochem、393、163~175頁)。
【0028】
用語「AhR活性化特性」又は「AhRアゴニスト活性」は、AhR活性を誘発することができる、すなわちAhR活性化によって開始され、任意の種類の活性化機序を含み得るシグナル伝達経路を活性化することができる効力を意味する。したがって、必ずしも微生物体そのものがAhRリガンドである必要はなく、例えば、微生物によって生産される分泌物質はAhR活性化効力を有し得る。細菌のAhR活性化特性は、実施例、Heら、2011、上記及びGaoら、2009、上記に記載されているような細胞ベースアッセイによって判定され得る。特に、AhR活性化レベルは、AhR応答性組換えモルモット(G16L1.1c8)、ラット(H4L1.1c4)、マウス(H1L1.1c2)及びヒト(HG2L6.1c3)細胞等のAhR応答性組換え細胞におけるルシフェラーゼ活性によって判定され得る。AhR活性化レベルは、安定的に組み込まれたAhR/ダイオキシン応答性エレメント(DRE)駆動ホタルルシフェラーゼプラスミド(それぞれpGudLuc1.1又はpGudLuc6.1)を含有する組換えマウス肝細胞癌(Hepa1c1c7)細胞ベースCALUX(H1L1.1c2及びH1L6.1c2)クローン細胞株及びCAFLUX(H1G1.1c3)クローン細胞株を使用して、AhR依存性遺伝子発現を刺激する能力を測定することによっても判定され得る(Heら、2011、上記)。典型的には、AhRアゴニスト活性は、実施例に記載される方法を行うことによって、すなわち、試験される細菌又はその培養抽出物、特にその培養上清の存在下で、AhR応答性組換え細胞、好ましくはH1L1.1c2細胞におけるルシフェラーゼ活性を判定することによって測定される。特に、AhRアゴニスト活性は、試験される細菌又はその培養抽出物、特にその培養上清の存在下での、安定的に組み込まれたDRE駆動ホタルルシフェラーゼレポータープラスミドpGudLuc1.1を含有する組換えH1L1.1c2細胞における、AhR依存性の化学的に活性化されたルシフェラーゼ発現(CALUX)分析によって測定されてもよく、前記細菌又は培養抽出物を含まない対照試料と比較してルシフェラーゼ(又はAhR)活性の増加、好ましくは少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%又は少なくとも100%の増加は、細菌がAhRアゴニスト活性を示すことを示す。好ましくは、AhRアゴニスト活性は、実施例に記載される方法によって、特に、AhR応答性組換え細胞、好ましくはH1L1.1c2細胞におけるルシフェラーゼ活性を判定することによって測定され、本発明において使用されるコプロコッカス菌の10%培養上清は、前記培養上清を含まない対照試料において得られるAhR活性と比較してAhR活性を少なくとも1.5の変化倍率で増加させる。
【0029】
本発明の組成物は、コプロコッカスの1種若しくはいくつかの株、特にコプロコッカス・コメスの1種若しくはいくつかの株、及び/又はコプロコッカスの1種若しくはいくつかの株の培養抽出物、特にコプロコッカス・コメスの1種若しくはいくつかの株の培養抽出物を含み得る。
【0030】
好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも1つのコプロコッカス・コメス菌及び/又はその培養抽出物を含む。
【0031】
より好ましくは、本発明の組成物は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweig、Germany)において2019年11月21日に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス菌又はその変異体及び/又はその培養抽出物を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「変異体」は、例えば、遺伝子操作、放射線及び/又は化学的処理によって、本発明の株(又は母株)から誘導される株、又は誘導され得る株と理解されるべきである。変異体は自発的に発生する変異体であってもよい。変異体は、機能的に同等の変異体、例えば母株と実質的に同じ、又は改善された特性(特にAhR活性化特性)を有する変異体であることが好ましい。そのような変異体は本発明の一部である。とりわけ用語「変異体」は、エタンメタンスルホナート(EMS)又はN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトログアニジン(NTG)、UV光等の化学的変異原による処理を含む、任意の従来使用されている変異誘発処理に本発明の株を供することによって得られる株、又は自発的に発生する変異体を指す。変異体は、いくつかの変異誘発処理(1回の処理は、スクリーニング/選択工程が続く1回の変異誘発工程と理解されるべきである)に供されてきたかもしれないが、20回以下、又は10回以下、又は5回以下の処理(又はスクリーニング/選択工程)が行われることが目下好ましい。目下好ましい変異体において、母株と比較して、細菌ゲノム内の1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満又は更には0.0001%未満のヌクレオチドが変異されている、すなわち置換、挿入、又は欠失されている。好ましくは、変異体のゲノムは、母株のゲノムと少なくとも99%の配列同一性を有し、前記変異体はAhRアゴニスト活性を示す。
【0033】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、不活性化されたコプロコッカス菌、すなわち少なくとも1種の不活性化されたコプロコッカス株を含む。好ましくは、前記株はコプロコッカス・コメス菌である。より好ましくは、前記株はDSM33359又はその変異体である。この実施形態では、組成物が生きている細菌及び/又は細胞片及び/又は培養培地等の他の細菌成分又は培養成分も含むことは除外されない。不活性化された細菌は、適切な培地で培養された場合、成長することができない。好ましくは、不活性化された細菌は死滅した細菌である。細菌は、熱処理等の当業者に公知の任意の手段によって不活性化され得る。不活性化された細菌は、凍結乾燥及びその後の好ましくは+4℃~-80℃の範囲の温度での保管等の当業者に公知の任意の方法によって投与前に保存され得る。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、生きているコプロコッカス菌、すなわち少なくとも1種の生きているコプロコッカス株を含む。好ましくは、前記株はコプロコッカス・コメス菌である。より好ましくは、前記株はDSM33359又はその変異体である。この実施形態では、組成物が死滅した細菌及び/又は細胞片及び/又は培養培地等の他の細菌成分又は培養成分も含むことは除外されない。生きている細菌は、液体窒素による凍結、段階的凍結又は凍結乾燥及びその後の好ましくは+4℃~-80℃の範囲の温度での保管によって投与前に保存され得る。
【0035】
別の実施形態では、本発明の組成物は、コプロコッカス菌の培養抽出物、好ましくはコプロコッカス・コメス菌の培養抽出物、より好ましくはDSM33359株又はその変異体の培養抽出物を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「培養抽出物」は、適切な細胞培養培地における、適切な条件下でのコプロコッカス菌、好ましくはコプロコッカス・コメス菌、より好ましくはDSM33359株又はその変異体の培養物から得られる抽出物を指し、前記抽出物はAhRアゴニスト活性を示す。抽出物のAhRアゴニスト活性は、上記の通りに判定され得る。抽出物は、培養上清、細胞片、細胞壁、DNA又はRNA抽出物、タンパク質抽出物、並びに一般的には化学的、物理的及び/又は酵素処理によって細菌細胞又は細胞培養物から誘導される任意の調製物等の培養物又は細菌細胞から得られる任意の画分であり得る。培養抽出物は、無傷な細菌細胞を含まなくてもよい、又は一部の残りの無傷な細菌細胞、好ましくはmL当たり103個未満の細胞を含有してもよい。
【0037】
好ましい実施形態では、培養抽出物は培養上清である。本明細書で使用される場合、用語「培養上清」は、コプロコッカス菌、好ましくはコプロコッカス・コメス菌、より好ましくはDSM33359株又はその変異体を適切な細胞培養培地で、適切な条件下で成長させることから得られる上清を指し、前記培養上清はAhRアゴニスト活性を示す。特にこの用語は、培地で成長させた細胞が、例えば、遠心分離、濾過、沈降又は当技術分野で周知の他の手段によって培養培地から分離されるときに残る液体ブロスを指す。任意選択で、培養上清は、更に希釈、濃縮、乾燥及び/又は凍結乾燥され得る。培養上清は、生きている細菌細胞を含まなくてもよい、又は一部の残りの生きている細菌細胞、好ましくはmL当たり103個未満の細胞を含有してもよい。培養上清は、死滅した細菌及び/又は細胞片等の細胞成分も含み得る。
【0038】
特定の実施形態では、培養上清は、コプロコッカス菌、好ましくはコプロコッカス・コメス菌、より好ましくは株DSM33359又はその変異体を適切な培地で成長させ、例えば、遠心分離、濾過又は沈降によって細菌細胞を培養培地から分離し、培養上清を回収することによって得られる。
【0039】
別の特定の実施形態では、培養上清は、コプロコッカス菌、好ましくはコプロコッカス・コメス菌、より好ましくは株DSM33359又はその変異体を適切な培地で成長させ、細菌細胞を培養培地に溶解し、培養上清(死滅した細菌及び/又は細胞片、すなわち溶解物を含む)を回収することによって得られる。
【0040】
更に特定の実施形態では、培養上清は、コプロコッカス菌、好ましくはコプロコッカス・コメス菌、より好ましくは株DSM33359又はその変異体を適切な培地で成長させ、細菌細胞を培養培地に溶解し、例えば、遠心分離、濾過又は沈降によって細菌細胞及び細胞片を培養培地から分離し、培養上清を回収することによって得られる。
【0041】
任意選択で、これらの実施形態のいずれかでは、培養上清は更に希釈又は濃縮され得る。一部の好ましい実施形態では、培養上清は乾燥又は凍結乾燥される。
【0042】
更なる実施形態では、組成物はコプロコッカス菌、好ましくはコプロコッカス・コメス菌、より好ましくは株DSM33359又はその変異体、及びその培養抽出物、好ましくはその培養上清を含む。好ましくは、組成物は生きているコプロコッカス菌を含む。前記実施形態では、組成物は、コプロコッカス菌を含む細胞培養物を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「細胞培養物」は、細菌細胞及びこれらの細胞を培養するために使用された液体ブロスのミックスを指す。特に、細胞培養物は、適切な液体ブロスに生きているコプロコッカス菌を接種し、前記ミックスを適切な条件において(特に嫌気条件において)インキュベートし、細胞培養物を回収することによって得られ得る。代替的に、組成物は、コプロコッカス菌、好ましくは生きているコプロコッカス菌、及びその培養抽出物、好ましくは、上で開示された任意の方法によって得られる、特に、コプロコッカス菌を適切な培地で成長させ、a)例えば、遠心分離、濾過又は沈降によって細菌細胞を培養培地から分離し、培養上清を回収するか、又はb)細菌細胞を培養培地に溶解し、培養上清(死滅した細菌及び/又は細胞片、すなわち溶解物を含む)を回収するか、又はc)細菌細胞を培養培地に溶解し、例えば、遠心分離、濾過又は沈降によって細菌細胞及び細胞片を培養培地から分離し、培養上清を回収することによって得られる、その培養上清を含み得る。任意選択で、培養上清は、更に希釈、濃縮、乾燥及び/又は凍結乾燥され得る。
【0043】
別の実施形態では、組成物は、コプロコッカス菌、好ましくは生きているコプロコッカス菌、及び別のコプロコッカス菌の培養抽出物、好ましくは培養上清を含む。好ましくは、コプロコッカス菌及び/又は培養抽出物を得るために使用されるコプロコッカス菌は、コプロコッカス・コメス菌であり、より好ましくはDSM33359株又はその変異体である。
【0044】
一部の特定の実施形態では、組成物は、コプロコッカス・カツス(Coprococcus catus)菌を一切含まず、その培養抽出物も一切含まず及び/又はコプロコッカス・オイタクツス(Coprococcus eutactus)菌を一切含まず、その培養抽出物も一切含まない。
【0045】
組成物は、少なくとも1種の追加の活性成分、特に1種若しくはいくつかの追加の細菌プロバイオティクス及び/又は1種若しくはいくつかのAhRアゴニストを更に含み得る。
【0046】
本発明の組成物は1種又はいくつかの追加の細菌プロバイオティクスを含み得る。用語「細菌プロバイオティクス」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、有益な作用を宿主の健康にもたらし得る、すなわち宿主、好ましくはヒトの疾患又は状態の防止、処置又は治癒に適用可能である有用な細菌を指す。この用語は死滅した又は生きている細菌を指し得る。好ましくは、この用語は生きている細菌を指す。
【0047】
好ましくは、これらの追加の細菌プロバイオティクスの1種又はいくつかはAhR活性化特性を示す。AhRは、AhRリガンドとしての細菌プロバイオティクスによって、前記細菌プロバイオティクスにより生産され、AhR活性化効力を有する分泌物質によって、又は死滅した微生物体若しくは前記細菌プロバイオティクスのホモジネートによって活性化され得る。
【0048】
好ましくは、前記1種又はいくつかの細菌プロバイオティクスは、AhRアゴニストを生産することができる。このような細菌プロバイオティクスは、例えば、アロバキュラム属(例えばアロバキュラム・ステルコリカニス)、アドレクラウチア属、アナエロスティペス属(例えばアナエロスティペス・ハドラス、アナエロスティペス・カカエ及びアナエロスティペス・ブチラティカス)、ビフィドバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属、バクテロイデス属、ユーバクテリウム属、エンテロコッカス属、ルミノコッカス属(例えばルミノコッカス・グナバス)及びフィーカリバクテリウム属(例えばフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ)に属する細菌、大腸菌、並びにラクトバチルス属(例えば、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・タイワネンシス(Lactobacillus taiwanensis)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバチルス・ムリナス(Lactobacillus murinus)、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、及びラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus))及びレンサ球菌属(例えばストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus))に属する細菌等の乳酸菌からなる群から選択され得る。特定の実施形態では、組成物はアロバキュラム属、アドレクラウチア属、プロピオニバクテリウム属、エンテロコッカス属、大腸菌、ラクトバチルス属及びレンサ球菌属に属する細菌からなる群から選択される1種又はいくつかの細菌プロバイオティクスを含み得る。
【0049】
好ましい実施形態では、前記1種又はいくつかの追加のプロバイオティクスは、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM、Institut Pasteur、25 rue du Docteur Roux、75724 Paris Cedex 15、France)において2015年9月30日に寄託された株CNCM I-5019(ラクトバチルス・タイワネンシス)、CNCM I-5020(ラクトバチルス・ムリナス)、CNCM I-5021(ラクトバチルス・アニマリス)、CNCM I-5022(ラクトバチルス・ロイテリ)及びCNCM I-5023(ラクトバチルス・ロイテリ)、ルミノコッカス・グナバスATCC29149、ラクトバチルス・サリバリウスDSM20555、ラクトバチルス・ロイテリDSM20016、ラクトバチルス・ガセリDSM20243、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165、大腸菌MG1665、アナエロスティペス・ハドラスDSM3319、アナエロスティペス・カカエDSM14662、アナエロスティペス・ブチラティカスDSM22094及びアロバキュラム・ステルコリカニスDSM13633からなる群から選択される。
【0050】
本発明の組成物は、1種又はいくつかのAhRアゴニストも含み得る。
【0051】
AhRアゴニストは、小有機分子又はペプチドであり、合成及び天然に存在する化合物を含む。用語「AhRアゴニスト」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、AhRを活性化する、好ましくはAhRを選択的に活性化する化合物を指す。AhRアゴニストは、天然のAhRリガンド又はAhRに関連するシグナル伝達カスケードを直接若しくは間接的に刺激し得る任意の化合物であり得る。本明細書で使用される場合、用語「選択的に活性化する」は、bHLH-PAS転写因子ファミリーの他のメンバーとのその相互作用よりもそれぞれ大きい親和性及び効力で、優先的にAhRに結合し、AhRを活性化する化合物を指す。AhRを選ぶが、他のサブタイプも部分的又は完全アゴニストとして活性化し得る化合物も企図される。化合物がAhRアゴニストであるかどうかを決定するための試験及びアッセイは、Jiら、2015、Dig Dis Sci、60、1958~1966頁;Furumatsuら、2011、Dig Dis Sci、56、2532~2544頁;WO2013/171696;WO2012/015914;US6,432,692に記載のように当業者に周知されている。AhR活性を誘発するための候補作用物質の効力及び選択性を判定するためにin vitro及びin vivoアッセイが使用され得る。
【0052】
AhRアゴニストの例は、ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、ポリクロロジベンゾジオキシン、ジベンゾフラン及びビフェニル)、多環式芳香族炭化水素(例えば、3-メチルコラントレン、ベンゾ-α-ピレン、ベンゾアントラセン及びベンゾフラボン)、インドール誘導体、キヌレニン、キヌレン酸、微生物叢のトリプトファン異化産物、例えば、インドール-3-アルデヒド(IAld)、インドールプロピオン酸、トリプタミン、インドール3-酢酸、3-インドキシル硫酸、6-ホルミルインドロ(3,2-b)カルバゾール(FICZ)、インドロ(3,2-b)カルバゾール(ICZ)、2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)又はその前駆体2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸(ITC)、及びUS7,419,992に開示されているそれらの類似体、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD)、多環式芳香族炭化水素(PAH)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、3-インドキシル-硫酸(I3S)、1-(4-メチルフェニル)-2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-2-イミノ-3(2H)-ベンゾチアゾリル)エタノン臭化水素酸塩(ピフィスリン-α臭化水素酸塩)、(2'Z,3'E)-6-ブロモ-1-メチルインジルビン-3'-オキシム(MeB10)、トリプトファン誘導体、例えば、インジゴ染料及びインジルビン、フラボノイド、ビフェニル、テトラピロール、例えばビリルビン、アラキドン酸代謝産物であるリポキシン-A4及びプロスタグランジンG、修飾低密度リポタンパク質並びにいくつかの食事性カロテノイド(Denisonら、2002、Chem. Biol. Interact. 141、3~24頁;Denisonら、2003、Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 43、309~334頁;Adachiら、2001、J. Biol. Chem.、276、31475~1478頁;Sinal C J及びBend J R、1997、Mol. Pharmacol.、52、590~9頁;Seidel S Dら、2001、J. Biochem. Mol. Toxicol.、15、187~196頁;McMillan B J及びBradfield C A、2007、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、104、1412~1417頁;Stevensら、2009、Immunology.、127、299~311頁)、Bissonら、2009、J. Med. Chem、52、5635~5641頁に開示されているAhRアゴニスト(例えば、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン、7-メトキシイソフラボン、6-メチルフラボン、3-ヒドロキシ-6-メチルフラボン、ピノセンブリン(5,7-ジヒドロキシフラバノン)及び7,8,2'-トリヒドロキシフラボン)、化合物VAF347[4-(3-クロロフェニル)-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ピリミジン-2-アミン]及びそのプロドラッグバージョンVAG539[4-(3-クロロ-フェニル)-ピリミジン-2-イル]-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-カルバミン酸2-[(2-ヒドロキシ-エチル)-メチル-アミノ]-エチルエステル](Lawrence B P、2008、Blood、112、1158~1165頁)、セマクサニブ(SU5416)[3-(3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イルメチレン)-1,3-ジヒドロ-インドール-2-オン](Mezrich J Dら(2012) PLoS ONE 7(9):e44547)、選択的AhRモジュレーター(SAhRM)(例えば、ジインドリルメタン(DIM)、メチル置換ジインドリルメタン、ジハロ及びジアルキルDIM類似体、β-ナフトフラボン(βNF)(5,6ベンゾフラボン(5,6BZF)並びに例えば、Safeら、2013、Toxicol Sci.、135、1~16頁;Furumatsuら、2011、Dig Dis Sci、56、2532~2544頁;及びWO2012/015914に記載されている部分)、WO2012/015914に記載されている化合物(例えばCB7950998)、1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸(DHNA)並びにWO2013/171696及びWO2009/093207に開示されている天然AhRアゴニスト(NAhRA)、メキシレチン、ニモジピン、フルタミド、アトルバスタチン、レフルノミド、並びにチョウセンニンジン(Hu Wら、2007、Mol Pharmacol.、71、1475~86頁、O'Donnell EFら、2010、PLoS One、5(10). pii:e13128;Wang Yら、2008、Eur J Pharmacol.、601、73~78頁)を含むが、これらに限定されない。
【0053】
特定の実施形態は、前記1種又はいくつかのAhRアゴニストは、AhRに対するアゴニスト効果を有する承認された薬物からなる群から選択され、好ましくはメキシレチン、ニモジピン、フルタミド、アトルバスタチン、レフルノミド及びチョウセンニンジンからなる群から選択される。
【0054】
追加の活性成分として、組成物は、メタボリックシンドローム及び関連障害の処置に有用な、又は炎症性腸疾患の処置に有用な1種又はいくつかの薬物も含み得る。炎症性腸疾患の処置に有用な薬物の例は、コルチコステロイド、5-アミノサリチル酸、免疫抑制薬、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、抗TNF剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ)、抗インテグリン剤(例えば、ナタリズマブ、ベドリズマブ)、抗IL12及び/又はIL23抗体(例えばウステキヌマブ)、JAK阻害剤(例えばトファシチニブ)、抗生物質、止瀉薬、鎮痛剤、鉄補助剤、ビタミンB-12、カルシウム及びビタミンDを含むが、これらに限定されない。
【0055】
特定の実施形態では、組成物は1種若しくはいくつかのコプロコッカス菌、好ましくは1種若しくはいくつかの生きているコプロコッカス菌、及び/又はその培養抽出物、好ましくはその培養上清から本質的になる。本明細書で使用される場合、用語「から本質的になる」は、任意の他の活性成分を含まない、特に、任意の他の細菌、とりわけ任意の他の細菌プロバイオティクスを含まない組成物を指すことが意図される。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、上で定義された通りのコプロコッカス菌、好ましくは生きているコプロコッカス菌、及び/又はその培養抽出物、好ましくはその培養上清、並びに薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、哺乳動物、とりわけヒトに適切に投与された場合に、有害な、アレルギー性の又は他の不都合な反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される賦形剤は、任意の種類の非毒性固体、半固体若しくは液体充填剤、希釈剤、カプセル化材料又は製剤助剤を指す。本発明による組成物において使用され得る薬学的に許容される賦形剤は、当業者に周知されており、処置される疾患及び投与経路に従って変わり得る。
【0058】
本発明の組成物は、処置される対象の胃腸管、好ましくは小腸及び/又は結腸に位置させるのに適した任意の方法によって投与され得る。特に、組成物は腸内又は非経口経路によって、好ましくは経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与経路によって投与され得る。好ましくは、本発明の組成物は、直腸若しくは経口経路によって投与される、又は直腸若しくは経口経路によって投与されるように適応される。
【0059】
1つの実施形態では、医薬組成物は経口経路によって投与され得る。経口投与のために、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、並びにシロップ剤、エリキシル剤、及び濃縮滴剤等の液体調製物等の従来の経口剤形に製剤化され得る。例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩等を含む非毒性固体担体又は希釈剤が使用され得る。圧縮錠剤のために、粉末化された物質に凝集性を付与する薬剤である結合剤も必要である。例えば、デンプン、ゼラチン、ラクトース又はデキストロース等の糖、及び天然又は合成ガムが結合剤として使用され得る。錠剤の破壊を容易にするために、崩壊剤も錠剤に必要であり得る。崩壊剤は、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム及び架橋重合体を含む。更に、製造プロセスにおける表面への錠剤物質の接着を防止し、製造中の粉末物質の流動特性を改善するために、滑沢剤及び滑剤も錠剤に含まれ得る。コロイド状二酸化ケイ素は滑剤として最もよく使用され、タルク又はステアリン酸等の化合物は滑沢剤として最もよく使用される。トウモロコシデンプン、寒天、天然又は合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアー、キサンタン等の周知の増粘剤も組成物に添加され得る。メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール及びエチレンジアミン四酢酸塩を含む保存剤も組成物に含まれ得る。
【0060】
一部の特定の実施形態では、組成物は、飲料若しくはドリンク組成物、食品組成物又は飼料組成物であり得る。
【0061】
好ましくは、経口投与のために組成物は、組成物に含有される活性化合物が胃を通過し、腸内に放出されることを可能にする胃耐性経口形態である。腸溶コーティングにおいて使用され得る物質は、例えば、アルギン酸、酢酸フタル酸セルロース、可塑剤、ワックス、セラック及び脂肪酸(例えば、ステアリン酸又はパルミチン酸)を含む。
【0062】
別の実施形態では、医薬組成物は直腸経路によって投与され得る。適切な直腸経路形態は坐剤及び浣腸を含むが、これらに限定されない。特に、活性化合物は、当技術分野で公知の方法によって公知の坐剤基剤のいずれかに組み込まれ得る。そのような基剤の例は、カカオ脂、ポリエチレングリコール(カーボワックス)、モノステアリン酸ポリエチレンソルビタン、及びこれらと融点又は崩壊速度を改変するための他の適合性のある物質との混合物を含む。
【0063】
本発明による組成物は、活性成分を実質的に投与直後に、又は投与後の任意の所定の時間若しくは期間に放出するように製剤化され得る。
【0064】
本発明の組成物は、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患の処置に使用される。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置する」又は「処置すること」は、疾患の治療、防止、予防及び遅延等の患者の健康状態を改善することを意図した任意の行為を指す。ある特定の実施形態では、このような用語は、疾患又はそれに関連する症状の改善又は根絶を指す。他の実施形態では、この用語は、このような疾患を有する対象への1種又は複数の治療剤、例えば本発明の組成物の投与により疾患の広がり又は悪化を最小にすることを指す。
【0066】
一部の実施形態では、疾患はメタボリックシンドローム又は任意の関連障害である。メタボリックシンドロームは、5つの以下の医学的状態のうちの少なくとも3つのクラスター化によって定義される:
- 腹部(中心性)肥満、
- 血圧上昇、
- 空腹時血漿グルコース上昇、
- 高血清トリグリセリド、及び
- 低い高密度リポタンパク質(HDL)レベル。
【0067】
肥満はメタボリックシンドロームと同じではないことに留意することは重要である。正常な体重を有する患者もメタボリックシンドロームを有する可能性があり、逆に肥満の人がメタボリックシンドロームを有しない可能性がある。実際に上記の通りメタボリックシンドロームは、肥満が腹部肥満である場合、及び少なくとも2つの他の医学的状態が観察される場合に確立される。
【0068】
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation)によると、consensus worldwide definition of the metabolic syndrome(2006)は、中心性肥満(民族特異的値を用いたウエスト周囲と定義される)及び以下のうちの任意の2つである:
- 血圧(BP)上昇:収縮期BP>130若しくは拡張期BP>85mmHg、又は以前に診断された高血圧の処置。
- 空腹時血漿グルコース(FPG)上昇:>100mg/dL(5.6mmol/L)、又は以前に診断された2型糖尿病。
- 高血清トリグリセリドは、>150mg/dL(1.7mmol/L)又はこの脂質異常のための特別な処置を指す。
- 低い高密度リポタンパク質(HDL)レベル:男性で<40mg/dL(1.03mmol/L)、女性で<50mg/dL(1.29mmol/L)、又はこの脂質異常のための特別な処置。
【0069】
BMIが>30kg/m2である場合、中心性肥満を推測することができ、ウエスト周囲は測定される必要がない。
【0070】
メタボリックシンドロームは、他の障害、すなわち関連障害を発症するリスクを伴う。好ましくは、これらの関連障害は、心血管疾患、特に冠動脈心疾患、とりわけ心臓発作及び脳卒中、インスリン抵抗性、耐糖能異常、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患、とりわけ非アルコール性脂肪性肝炎、及び脂肪異栄養症からなる群から選択される。特定の実施形態では、これらの関連障害は、心血管疾患、特に冠動脈心疾患、とりわけ心臓発作及び脳卒中、インスリン抵抗性、耐糖能異常、非アルコール性脂肪肝疾患、とりわけ非アルコール性脂肪性肝炎、及び脂肪異栄養症からなる群から選択される。
【0071】
一部の他の実施形態では、疾患は炎症性腸疾患である。本明細書で使用される場合、「炎症性腸疾患」又は「IBD」は、腸の全て又は一部の炎症を特徴とする様々な疾患のいずれかを指す。炎症性腸疾患の例は、クローン病(例えば、腸炎、回腸炎、大腸炎、回結腸炎、胃十二指腸及び肛門周囲クローン病)、潰瘍性大腸炎(例えば、潰瘍性小腸結腸炎、潰瘍性回結腸炎、潰瘍性直腸炎、潰瘍性直腸S状結腸炎、結腸の偽ポリープ症、粘膜直腸結腸炎、及び左側又は全潰瘍性大腸炎)、分類不能大腸炎(IC)、他の非感染性胃腸炎、腸炎、小腸結腸炎及び大腸炎(例えば、膠原性大腸炎及びリンパ球性大腸炎を含む非顕微鏡的大腸炎、放射線性、中毒性、アレルギー性、食事性、虚血性、好酸球性胃腸炎、腸炎、小腸結腸炎又は大腸炎、憩室関連区域性大腸炎、便流変更性大腸炎並びにベーチェット大腸炎)並びに回腸嚢炎を含むが、これらに限定されない。一部の特定の実施形態では、炎症性腸疾患は、抗生物質関連大腸炎ではない、又はより具体的にはクロストリジウム・ディフィシル関連下痢症ではない。
【0072】
好ましくは、炎症性腸疾患はクローン病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択され、より好ましく潰瘍性大腸炎である。
【0073】
本発明の組成物で処置される対象は、動物、好ましくは哺乳動物、更により好ましくは、成人、小児、新生児及び出生前段階のヒトを含むヒトである。本明細書で使用される場合、用語「対象」、「個体」及び「患者」は交換可能である。
【0074】
1つの実施形態では、対象は、とりわけ糞便試料における低下したAhR活性、より具体的には腸内微生物叢の低下したAhRアゴニスト活性を示す。特定の実施形態では、AhRの活性は対象について測定される。好ましくは、AhR活性は、微生物叢の活性であり、糞便試料において測定される。
【0075】
好ましい実施形態では、対象は、所定の参照値と比較して低下したAhR活性を示す。本明細書で使用される場合、「参照値」は閾値又はカットオフ値を指す。参照値は実験的に、経験的に、又は理論的に決定され得る。好ましくは、参照値は、とりわけメタボリックシンドローム、関連障害及び/又はIBDを患っていない1人又は複数の健康な対象に由来する1つ又はいくつかの糞便試料において決定されるAhR活性化レベルに由来する。好ましくは、低下したAhR活性を有する対象は、所定の参照値より少なくとも10%低い、より好ましくは所定の参照値より少なくとも20%、30%、又は50%低いAhR活性を示す。
【0076】
コプロコッカス菌細胞及び/又は培養抽出物の投与量は、年齢、症状、体重、及び治療的に有効な量を得ること等の意図される適用等の基準に従って適切に調整され得る。本明細書で用いられる用語「治療的に有効な量」は、処置される疾患に対する有益な影響を有するのに、すなわち疾患の少なくとも1つの有害な効果を防止、除去又は低減するのに必要な量を指す。
【0077】
処置される疾患がメタボリックシンドローム又は関連障害である実施形態では、治療的に有効な量は、好ましくは、メタボリックシンドロームを定義する5つの医学的状態のうちの1つに対する影響を有するのに(すなわち防止する、除去する又は低減するのに)必要な量と定義される:
- 腹部(中心性)肥満(TOF1)、
- 血圧上昇、
- 空腹時血漿グルコース上昇、
- 高血清トリグリセリド、及び
- 低い高密度リポタンパク質(HDL)レベル。
【0078】
加えて又は代替的に、治療的に有効な量は、インスリン感受性、耐糖能、体重増加及び/又はHFDによる腸の炎症に対する影響を有するのに必要な量と定義され得る。好ましい実施形態では、治療的に有効な量は、これらの状態のいくつかに対する影響を有する。
【0079】
複数の実施形態では、処置される疾患がIBDであり、治療的に有効な量は、好ましくは、腸の炎症又は下痢、熱若しくは疼痛等の疾患の任意の症状に対する影響を有するのに必要な量と定義される。
【0080】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、組成物のmg当たり103~1011個の生きているコプロコッカス菌細胞、好ましくはコプロコッカス・コメス菌細胞、より好ましくはDSM33359若しくはその変異体の細菌細胞及び/又は組成物のg当たり0.001mg~1000mgの乾燥若しくは凍結乾燥された培養上清を含み得る。
【0081】
特に、1日当たりに摂取されるコプロコッカス菌、好ましくはコプロコッカス・コメス菌、より好ましくはDSM33359又はその変異体の量は、0.01×1011~100×1011個の細胞/身体、好ましくは0.1×1011~10×1011個の細胞/身体、より好ましくは0.3×1011~5×1011個の細胞/身体であり得る。
【0082】
本発明の経口摂取される組成物に含有されるコプロコッカス菌、好ましくはコプロコッカス・コメス菌、より好ましくはDSM33359又はその変異体の含有量は、例えば、1%~100%(w/w、すなわち細菌乾燥質量/組成物の全乾燥質量)、好ましくは1%~75%(w/w)、より好ましくは5%~50%(w/w)であり得る。
【0083】
本発明の組成物は、単一用量又は複数用量として投与され得る。
【0084】
一部の実施形態では、組成物は定期的に、好ましくは毎日~毎月、より好ましくは毎日~2週間ごと、より好ましくは毎日~毎週投与され得る。一部の特定の実施形態では、組成物は毎日投与され得る。
【0085】
本発明の組成物による処置の期間は、1日~数年、好ましくは1日~1年、より好ましくは1日~6カ月に含まれ得る。
【0086】
本発明はまた、(i)本発明の組成物による処置のために、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患から選択される疾患を患っている対象を選択する方法、又は(ii)メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患から選択される疾患に罹っている対象が、本発明の組成物による治療から利益を得やすいかどうかを決定する方法であって、対象における、とりわけ対象からの糞便試料における低下したAhR活性が、本発明の組成物による治療が適していることを示す、方法に関する。より具体的には、方法は、i)対象から得られる糞便試料における微生物叢のAhRアゴニスト活性を決定する工程と、ii)工程i)で決定されたレベルを所定の参照値と比較する工程と、iii)工程i)で決定されたレベルが所定の参照値より低い場合、対象を処置に適しているとして選択する工程とを含む。所定の参照値は、好ましくは、とりわけメタボリックシンドローム、関連障害及び/又はIBDを患っていない1人又は複数の健康な対象に由来する1つ又はいくつかの糞便試料において決定されるAhR活性化レベルに由来する参照値である。
【0087】
対象から得られる糞便試料における微生物叢のAhR活性化レベルは、上記の任意の方法によって判定され得る。加えて又は代替的に、対象から得られる糞便試料における微生物叢のAhR活性化レベルは、トリプトファン代謝を測定することによって、すなわちトリプトファン(Trp)、キヌレニン(Kyn)及びインドール-3-酢酸(IAA)濃度(又は他のトリプトファン代謝産物)を測定し、任意選択でKyn/Trp、IAA/Trp及びKyn/IAA濃度比を計算することによって判定され得る。加えて又は代替的に、AhR活性化レベルはまた、対象から得られる結腸試料を使用して、AhR標的遺伝子(例えば、インターロイキンIL-22及びIL-17)の発現を分析する、IL-17+及びIL-22+細胞数を測定する、AhR及びシャペロンタンパク質のヘテロ二量体化を測定する、AhR核内移行を測定する、又はその二量体化パートナー(AhR核内輸送体(ARNT))に結合しているAhRを測定することによって、判定され得る。
【0088】
好ましくは、工程i)で決定されたレベルが所定の参照値より少なくとも10%低い、より好ましくは所定の参照値より少なくとも20%、30%、又は50%低い場合、対象は本発明の組成物による処置のために選択される。
【0089】
別の態様では、本発明はまた、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス株、又はその変異体に関する。本発明はまた、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患の処置における使用のためのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス株、又はその変異体に関する。本発明はまた、メタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患の処置のための医薬の製造のための、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス株、又はその変異体の使用に関する。本発明は更に、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)に受託番号DSM33359で寄託されたコプロコッカス・コメス株、又はその変異体を対象に投与する工程を含む、対象においてメタボリックシンドローム及び関連障害、並びに炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患を処置するための方法に関する。
【0090】
この明細書において引用された全ての参考文献は、参照により本出願に組み込まれる。本発明の他の特徴及び利点は、限定のためではなく例示の目的で与えられる以下の実施例において明らかになる。
【実施例
【0091】
方法
マウス
雄及び雌のC57BL/6JRjマウスをJanvier社(France)から購入した。C57BL/6JRjバックグラウンドのAhR-/-マウスをJackson laboratory社(JAXストック番号002831)から得(Fernandez-Salgueroら、Science. 1995、268、722~726頁)、Saint-Antoine Research Centerで飼育した。Il22-/-マウス(Kreymborgら、J. Immunol. 2007、179、8098~8104頁)を得、Transgenose Institute(TAMM-CNRS、Orleans、France)で飼育した。全てのマウスを、フランスの「Direction Departementale de la Protection des Populations (DDPP78)」によって認可されているIERP施設(INRA、Jouy-en-Josas、France)に収容した。全ての実験をComite d'Ethique en Experimentation Animale (COMETHEA C2EA-45、Jouy en Josas、France)に従って行った。
【0092】
細菌株及び成長条件
コプロコッカス・コメスを、嫌気性チャンバー(0ppm O2;2%H2)内で、セロビオース(1mg/ml;Sigma-Aldrich社)、マルトース(1mg/ml;Sigma-Aldrich社)、システイン(0.5mg/ml;Sigma-Aldrich社)、ビタミンK1(0.0002%;Sigma-Aldrich社)及びビタミンK3(0.0002%;Sigma-Aldrich社)を補充したLYHBHI培地(0.5%酵母エキス(Difco社)及び1%ヘミン(Sigma-Aldrich社)を補充したブレインハートインフュージョン培地)において37℃で成長させた。DSS処理及びメタボリックシンドロームの両方のモデルにおいて様々な条件の細菌を使用した:細菌のみ、上清を補充した細菌、上清又は死滅した細菌。24時間のインキュベーション後、コプロコッカス・コメス培養物を6,000gで10分間4℃で遠心分離した。上清を採取し、-80℃での良好な保存のために16%のグリセロールを補充した。16%のグリセロールを補充した、又は同様に16%のグリセロールを補充した上清を補充した完全LYHBHI培地にペレットを再懸濁した。100℃で30分間煮沸した後に死滅した細菌を得、次いで遠心分離(6,000g、10分、4℃)を行い、16%のグリセロールを補充した完全LYHBHI培地にペレットを再懸濁した。マウスに毎日109CFUのコプロコッカス・コメス又はビヒクル(16%のグリセロールを補充した完全LYHBHI培地)をプロトコール全体を通して接種した。
【0093】
AhR/ルシフェラーゼレポーターアッセイ
H1L1.1c2細胞株を上記の通りに使用した(Lamasら、2016、Nat Med. Jun;22(6):598~605頁)。対照(2、10又は20%LYHBHI)、24時間細菌培養の上清を使用し、H1L1.1c2細胞株と24時間インキュベートした。AhR活性は、試料を用いて得られた発光から対照(2、10又は20%LYHBHI)の発光を引き、細胞傷害値(LDH量)を掛けることによって計算した。
【0094】
DSSモデル
Janvier lab社からの7週齢のC57BL/6JRjを、IERP(INRA、Jouy en Josas、France)における本発明者らの特定病原体除去動物設備に収容した。群当たり5~10匹の雌マウスを全ての実験で使用し、厳密な12時間明/暗サイクルを有する温度制御された(23℃)設備において維持し、食物及び水に自由にアクセスさせた。1週間の順化後、本発明者らは水をDSS2%(MP Biomedical社)と7日間(0日目~7日目)交換し、回復期間を12日目まで(5日間)実行した。体重減少及びDAI(疾患活動性指数)を毎日行った。12日後に試料を採取した。
【0095】
【表1】
【0096】
結腸組織学検査
結腸遠位部(3つの部分に切断した)をDSSモデル後の12日目に採取し、直接PFA(Rothi(登録商標)-Histofix4%)に48時間入れ、標準の前固定自動装置までエタノール70%に移し、パラフィン包埋した。HES着色を5μm切片に実行した。スコアリングを最も悪い切片に行い、以前に記載された通りにスコア化した(Sokolら、Gastroenterology. 2013 Sep;145(3):591~601.e3頁)。
【0097】
MLN刺激
MLN(腸間膜リンパ節)細胞を採取し、40μMセルストレーナーで粉砕した。細胞を完全RPMI(10%SVF、Pen/Strep)に再懸濁し、Accuriサイトメーター(BD社)でカウントした。200万個の細胞を24ウェルプレートに入れ、PMA(50ng/ml、Sigma社)及びイオノマイシン(750ng/ml、Sigma社)で48時間、37℃で刺激した。刺激の上清を回収し、IL-17A、IL-10、IFN-γ及びIL-22に対するELISA(Mabtech社)を製造業者の指示書に従って行った。
【0098】
リアルタイムPCR
試料をRneasy Mini kit(Qiagen社)で抽出した。LunaScript(商標)Reverse Transcription SuperMix Kit(Biolabs社)を使用して、トータルRNA(1μg)を逆転写した。製造業者のプロトコールに従ってLuna(登録商標) Universal qPCR Master Mix(Biolabs社)又はUniversal Probe qPCR Master Mix(Biolabs社)を使用して、目的の遺伝子のmRNAレベルを定量的RT-PCRによって調べた。使用したプライマー及びプローブは、Qiagen社又はThermofisher社から得た:Cyp1a1(TaqMan、Thermofisher社、Mm00487218_m1)、IL-22(TaqMan、Thermofisher社、Mm01226722_g1)、Reg3γ(TTCCTGTCCTCCATGATCAAAA(配列番号1)/CATCCACCTCTGTTGGGTTCA(配列番号2))、Reg3β(ATGCTGCTCTCCTGCCTGATG(配列番号3)/CTAATGCGTGCGGAGGGTATATTC(配列番号4))、AhRR(GGAGTCTCTCAATGGCTTCG(配列番号5)/CCGAGTACTCTGAGGGCAAG(配列番号6))。比較方法(2-ΔΔCt)を使用して、mRNA発現の相対レベルをHPRT1(QT00166768)mRNAレベルに対して正規化した。非逆転写RNA試料及び水を陰性対照として含めた。
【0099】
メタボリックシンドローム
Janvier lab社からの5週齢のC57BL/6JRjを、IERP(INRA、Jouy en Josas、France)における本発明者らの特定病原体除去動物設備に収容した。群当たり6~8匹の雄マウスを全ての実験で使用し、厳密な12時間明/暗サイクルを有する温度制御された(23℃)設備において維持し、食物及び水に自由にアクセスさせた。5週齢の雄のC57BL/6JRjマウスに、精製された対照食(Conv、Envigo社MD.120508)又は高脂肪食(38%kcal脂肪、主に乳脂、Envigo社MD.97222)を12週間自由に与えた。動物の体重を毎週測り、毎週の食物消費量を各ケージにおいて測定した。全ての動物は、屠殺前に一晩絶食させ、次いで頸椎脱臼によって安楽死させ、適当な組織を採取した。
【0100】
経口グルコース負荷試験
OGTTを屠殺の3~7日前に行った。実験前の一晩、食物及び寝藁の除去によってマウスに絶食させた。15~16時間の絶食後、グルコース溶液(マウス当たり2g/kg)を経口経管栄養によって投与した。OneTouch血糖値測定器(Roche社)を使用して、時間0(空腹時グルコース、グルコース経管栄養前に測る)並びにグルコース経管栄養後15、30、60及び120分の血中グルコースレベルを分析した。グルコースレベルを時間に対してプロットし、AUCを台形公式に従って計算した。
【0101】
腹腔内インスリン耐性試験
ITTを屠殺の3~7日前に行った。実験開始の4時間前に、食物及び寝藁の除去によってマウスに絶食させた。4時間の絶食後、インスリン溶液(0.5U/kg)を腹腔内投与した。OneTouch血糖値測定器(Roche社)を使用して、時間0(空腹時グルコース、グルコース経管栄養前に測る)並びにインスリン負荷後15、30、60及び120分の血中グルコースレベルを分析した。グルコースレベルを時間に対してプロットし、AUCを台形公式に従って計算した。
【0102】
血漿パラメーターの測定
血液試料を心臓穿刺によりヘパリンコーティング管に収集し、遠心分離した。次いで血漿試料を更なる分析まで-80℃で保管した。Olympus AU400 Chemistry Analyzerを備えたBiochemistry Platform(CRI、UMR1149、Paris)を使用することによって、血漿コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL)の測定を行った。
【0103】
肝臓組織学検査及び肝トリグリセリド測定
肝臓の左葉のスライスを4%PFAで48時間固定し、次いでエタノールに移し、パラフィンに固定し、トリミングし、処理し、約5μmの厚みであるスライスに切断し、スライドグラスに載せ、HESで染色した。以前に記載された通りにImageJソフトウェアを使用することによって、肝脂質を盲検的に評価し、定量化した(Craneら、2015、Nat Med 21、166~172頁;Schneiderら、2012、Nat Methods 9、671~675頁)。
【0104】
統計分析
Prism version 7(Graphpad Software、San Diego、USA)を使用してデータを分析した。ボンフェローニの多重比較検定と共にノンパラメトリックマン・ホイットニー検定又はパラメトリック一元配置分散分析検定を行った。値を平均±SEMとして表す。統計的有意性はp値****<0.0001、***<0.001、**<0.01、*<0.05で定義した。
【0105】
結果
コプロコッカス・コメス上清は高いAhR活性と関連する
本発明者らは、いくつかの細菌株がAhRアゴニストを生産する能力をアッセイした。様々な細菌の上清をAhRレポーター細胞株であるH1L1.1c2で試験し、本発明者らはコプロコッカス・コメス上清が高いAhR活性と関連することを見出した(データは示さない)。
【0106】
C.コメス上清はDSS誘発性大腸炎から保護する
DSS誘発性大腸炎マウスをC.コメス(細菌+上清、上清又は死滅した細菌)で経口処置した。12日間のDSS誘発性大腸炎後、体重減少、疾患活動性指数(DAI)、結腸長及び組織学的スコアを判定した(図1)。C.コメス及び/又はその上清の投与がDSS誘発性大腸炎から保護することが見出された。特に、C.コメス上清は、MLN細胞刺激後に炎症性サイトカインであるIL-17の生産の著しい低減を誘発することが示された。
【0107】
DSS誘発性大腸炎に対するC.コメス保護はAhR依存性である。
本発明者らは、C.コメス上清がH1L1.1c2細胞においてin vitroでAhRを活性化できることを実証した(図2A)。この結果は、3週間のC.コメス上清経管栄養後のWTマウスを使用してin vivoで確認された。AhRの活性化は、結腸及び肝臓におけるCyp1a P450シトクロム及びAhR抑制因子(AhRR)の発現をqPCRによって測定することによって判定した。C.コメス上清で処置されたマウスの結腸におけるこれらの発現レベルの上昇は、上清がAhRをin vivoで活性化できることを示す(図2B)。
【0108】
保護がAhR活性化によることを確認するために、DSS誘発性大腸炎後の体重減少、DAI、結腸長及び組織学的スコアを、C.コメス上清経管栄養あり又はなしのAhR-/-マウスにおいて測定した(図2C図2G)。陰性対照で処置された群とC.コメス上清で処置された群の間に差異は観察されなかった。したがって、C.コメスのAhR依存性機序は、AhR-/-マウスをDSS誘発性大腸炎から保護する有効性のその欠如によって確認された。
【0109】
C.コメス保護はIL-22分泌を経ている
3週間のC.コメス上清経管栄養後、Reg3γ、Reg3β及びIL-22の発現レベルをWTマウスの結腸において測定した。IL-22並びにIL-22経路に関与する2つの遺伝子Reg3γ及びReg3βの発現がC.コメス上清の投与によって著しく増加することが観察された(図3A)。
【0110】
保護がIl-22経路を必要とすることを確認するために、体重減少、DAI、結腸長及び組織学的スコアを、9日間のDSS誘発性大腸炎後のIL-22-/-マウスにおいて判定した(図3B図3F)。陰性対照で処置された群とC.コメス上清で処置された群との間に差異は観察されなかった。IL22-/-マウスをDSS誘発性大腸炎から保護する有効性のこの欠如は、C.コメス保護がIL-22分泌を経ていることを裏付ける。
【0111】
コプロコッカス・コメスによる処置は、食事誘発性代謝障害を緩和する
メタボリックシンドロームの食事誘発性マウスモデル(HFD供給マウス)をC.コメス(細菌+上清、上清又は死滅した細菌)で12週間経口処置した。
【0112】
コプロコッカス・コメス補充は、食物摂取量と独立して体重増加を低減することが見出された(図4A図4B)。コプロコッカス・コメスを補充したHFD供給マウスは、経口グルコース負荷試験(OGTT)中の良好なグルコースクリアランス(図4C図4D)及びインスリン耐性試験(ITT)中のインスリン感受性(図4E図4F)も示した。コプロコッカス・コメス補充は、より低い肝脂質(図5)並びにコレステロール及びHDLのより低い血清濃度(図6)等、肝脂肪症の特徴も低減する。
【0113】
メタボリックシンドロームに対するC.コメス保護はAhR依存性である。
AhR-/-マウスにおけるコプロコッカス・コメスの補充は、食事誘発性代謝障害を緩和するのに十分でないことが示された。実際にAhR-/-マウスにおいて、コプロコッカス・コメス補充は、体重増加、グルコース及びインスリン耐性(図7)並びに肝脂肪症の特徴(図8)に対して一切影響を有しない。HFD供給AhR-/-マウスにおいてメタボリックシンドロームを処置する有効性のこの欠如は、C.コメスのAhR依存性機序を実証する。
【0114】
【表2】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
【配列表】
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【国際調査報告】