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特表2023-517051細胞内細菌を治療するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】細胞内細菌を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/43 20060101AFI20230414BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 9/133 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230414BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230414BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/685 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/545 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/4409 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/7052 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A61K38/43
A61P31/04
A61P31/06
A61K9/127
A61K9/133
A61K9/107
A61K47/44
A61K38/47
A61K38/46
A61K35/76
A61K9/16
A61K45/00
A61K31/685
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/519
A61K31/7004
A61K31/545
A61K31/43
A61K31/496
A61K31/4409
A61K31/133
A61K31/407
A61K31/7048
A61K31/7052
A61K31/7036
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553621
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 US2021021399
(87)【国際公開番号】W WO2021178969
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/986,592
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522352236
【氏名又は名称】エンドリティクス テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENDOLYTIX TECHNOLOGY,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ホルダー、ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】マグナント、ゲイリー ピー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA20
4C076AA21
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076CC32
4C076EE51A
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA18
4C084BA44
4C084CA01
4C084DC01
4C084DC22
4C084MA38
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC752
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086CB09
4C086CB22
4C086CC05
4C086CC08
4C086CC10
4C086CC15
4C086DA40
4C086EA01
4C086EA09
4C086EA12
4C086EA13
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB35
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA11
4C087NA13
4C087ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA03
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA42
4C206MA44
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA85
4C206NA05
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、例えば免疫細胞、例えば、マクロファージまたは樹状細胞)内に生息する細菌細胞により引き起こされる細菌感染症などの、細菌感染症の治療のための組成物及び方法を特徴とする。組成物及び方法は、抗菌剤を送達して、細菌細胞が生息する細胞内区画(エンドソーム、ファゴソーム、リソソーム、またはサイトゾル)を特異的に標的することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のプロフェッショナル抗原提示細胞内に細菌細胞を含む標的細胞内区画に、抗菌溶解タンパク質を送達する方法であって、前記方法が、前記対象に、前記抗菌溶解タンパク質を含む超分子構造体を含む組成物を投与することを含み、前記超分子構造体が、約75nm~約750nmのZアベレージ平均粒径を含み、前記投与ステップの後、前記抗菌溶解タンパク質が前記標的細胞内区画に送達される、前記方法。
【請求項2】
前記プロフェッショナル抗原提示細胞がマクロファージまたは樹状細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細菌細胞により引き起こされる細胞内細菌感染症の治療方法であって、前記方法が、対象に、前記細菌感染症を治療するのに十分な量及び期間、抗菌溶解タンパク質を含む超分子構造体を含む組成物を投与することを含み、前記超分子構造体が約75nm~約750nmのZアベレージ平均粒径を含む、前記方法。
【請求項4】
前記超分子構造体が、約250nm~約750nmのZアベレージ平均粒径を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記超分子構造体が、約75nm~約250nmのZアベレージ平均粒径を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記超分子構造体が、標的部分をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対象のプロフェッショナル抗原提示細胞内に細菌細胞を含む標的細胞内区画に、抗菌溶解タンパク質を送達する方法であって、前記方法が、標的部分と、前記抗菌溶解タンパク質を含むカーゴと、を含む超分子構造体を含む組成物を、前記対象に投与することを含み、前記投与ステップの後、前記抗菌溶解タンパク質が前記標的細胞内区画に送達される、前記方法。
【請求項8】
前記プロフェッショナル抗原提示細胞がマクロファージまたは樹状細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
細菌細胞により引き起こされる細胞内細菌感染症の治療方法であって、前記方法が、標的部分と、抗菌溶解タンパク質を含むカーゴと、を含む超分子構造体を含む組成物を、前記細菌感染症を治療するのに十分な量及び期間で、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記超分子構造体が、約約250nm~約750nmのZアベレージ平均粒径を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記超分子構造体が、約75nm~約250nmのZアベレージ平均粒径を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記細菌細胞が、マイコバクテリウム、サルモネラ、ナイセリア、ブルセラ、エシェリキア、リステリア、フランキセラ、レジオネラ、エルシニア、ブドウ球菌、クロストリジウム、赤痢菌、または連鎖球菌種である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(a)前記マイコバクテリウム種が、M.tuberculosis,M.leprae,M.lepromatosis,M.avium,M.kansasii,M.fortuitum,M.chelonae,M.marinum、またはM.abscessusであり、
(b)前記サルモネラ種が、S.enterica,S.typhimurium、またはS.bongoriであり、
(c)前記ナイセリア種が、N.gonorrhoeaeまたはN.meningitidisであり、
(d)前記ブルセラ種が、B.melitensis、B.abortus、B.suis、またはB.canisであり、
(e)前記エシェリキア種が、E.coliであり、
(f)前記リステリア種が、L.monocytogenesであり、
(g)前記フランキセラ種が、F.tularensis、F.novicida、またはF.philomiragiaであり、
(h)前記レジオネラ種が、L.pneumophilaであり、
(i)前記エルシニア種が、Y.pestisまたはY.enterocoliticaであり、
(j)前記ブドウ球菌種が、S.aureusであり、
(k)前記クロストリジウム種が、C.botulinum、C.perfringens、C.tetani、またはC.sordelliiであり、
(l)前記赤痢菌種が、S.dysenteriae、S.flexneri、S.boydii、またはS.sonneiであり、あるいは
(m)前記連鎖球菌種が、S.pyogenes、S.agalactiae、S.dysgalactiae、S.bovis、S.anginosus、S.sanguinis、S.mitis、S.mutans、またはS.pneumoniaeである、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗菌溶解タンパク質が、カプセルデポリメラーゼ、アミラーゼ、または溶解素である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記カプセルデポリメラーゼが、ヒドロラーゼ、メタロヒドロラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、ペプチドグリカンヒドロラーゼ、ポリサッカラーゼ、多糖類リアーゼ、エンドシアリダーゼ、ヒアルロナンリアーゼ、またはアルギネートリアーゼである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)前記溶解素が溶解素Aもしくは溶解素Bであり、及び/または
(b)前記アミラーゼがαアミラーゼまたはイソアミラーゼである、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記抗菌溶解タンパク質が、抗菌マイコバクテリオファージタンパク質である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗菌溶解タンパク質が、前記細菌細胞を殺傷可能である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記標的部分が、プロフェッショナル抗原提示細胞を標的にする細胞外標的部分である、請求項6~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記プロフェッショナル抗原提示細胞がマクロファージまたは樹状細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記標的部分がホスファチジルセリンを含む、請求項6~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記標的部分が抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、請求項6~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、抗CD163、抗CD40、抗CD74、抗CD206、抗CD123抗体、及びその抗原結合フラグメントからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、抗DEC205、抗CD304、抗CD303、抗CD40、抗CD74、抗BDCA2、及び抗CD123抗体、ならびにその抗原結合フラグメントからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記標的部分が病原体関連分子パターン(PAMP)である、請求項6~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記標的部分がマンノースクラスターまたは葉酸塩である、請求項6~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記標的部分がTLR2アゴニストである、請求項6~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記TLR2アゴニストが、MALP-2リポタンパク質、MALP-404リポタンパク質、外側表面リポタンパク質A(OspA)、ポリン、LcrV、Hsp60、糖タンパク質gH/gL、または糖タンパク質gBからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記超分子構造体が脂質ナノ粒子である、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記超分子構造体がミセルである、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記超分子構造体がリポソームである、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記リポソームがユニラメラである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記リポソームがマルチラメラである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記超分子構造体が、約0.05~約0.3の多分散指数を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記超分子構造体が1種以上の脂質を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記1種以上の脂質のうちの少なくとも1つがイオン化可能な脂質である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗生物質を投与することをさらに含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗生物質が、セファロスポリン、カルバペネム、ペニシリン、及びフルオロキノロンからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗生物質が、チアセタゾン、sq-109、ベダキリン、デラマニド、ピラジナミド、及びイソニアジドからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記抗生物質が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エタンブトール、リファンピン、及びアミカシンからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、静脈内投与、経口投与される、または、吸入により投与される、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
抗菌溶解タンパク質を含む超分子構造体を含む組成物であって、前記超分子構造体が、約75nm~約750nmのZアベレージ平均粒径を含む、前記組成物。
【請求項43】
標的部分をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
標的部分と、抗菌溶解タンパク質を含むカーゴと、を含む超分子構造体を含む組成物。
【請求項45】
前記超分子構造体が、約250nm~約750nmのZアベレージ平均粒径を含む、請求項42~44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
前記超分子構造体が、約75nm~約250nmのZアベレージ平均粒径を含む、請求項42~44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記バクテリオファージタンパク質が、カプセルデポリメラーゼ、アミラーゼ、または溶解素である、請求項42~46のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
前記カプセルデポリメラーゼが、ヒドロラーゼ、メタロヒドロラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、ペプチドグリカンヒドロラーゼ、ポリサッカラーゼ、多糖類リアーゼ、エンドシアリダーゼ、ヒアルロナンリアーゼ、またはアルギネートリアーゼである、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
(a)前記溶解素が溶解素Aもしくは溶解素Bであり、及び/または
(b)前記アミラーゼがαアミラーゼまたはイソアミラーゼである、
請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
前記抗菌溶解タンパク質が、抗菌マイコバクテリオファージタンパク質である、請求項42~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
前記標的部分が、プロフェッショナル抗原提示細胞を標的にする細胞外標的部分である、請求項43~50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記プロフェッショナル抗原提示細胞がマクロファージまたは樹状細胞である、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記標的部分がホスファチジルセリンを含む、請求項43~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項54】
前記標的部分が抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、請求項43~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項55】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、抗CD163、抗CD40、抗CD74、抗CD206、抗CD123抗体、及びその抗原結合フラグメントからなる群から選択される、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、抗DEC205、抗CD304、抗CD303、抗CD40、抗CD74、抗BDCA2、及び抗CD123抗体、ならびにその抗原結合フラグメントからなる群から選択される、請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
前記標的部分がPAMPを含む、請求項43~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項58】
前記標的部分がマンノースクラスターまたは葉酸塩である、請求項43~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
前記標的部分がTLR2アゴニストである、請求項43~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
前記TLR2アゴニストが、MALP-2リポタンパク質、MALP-404リポタンパク質、OspA、ポリン、LcrV、Hsp60、糖タンパク質gH/gL、または糖タンパク質gBからなる群から選択される、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記超分子構造体が脂質ナノ粒子である、請求項42~60のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項62】
前記超分子構造体がミセルである、請求項42~60のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項63】
前記超分子構造体がリポソームである、請求項42~60のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項64】
前記リポソームがユニラメラである、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記リポソームがマルチラメラである、請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
前記超分子構造体が、約0.05~約0.3の多分散指数を含む、請求項42~65のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項67】
前記超分子構造体が1種以上の脂質を含む、請求項42~65のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項68】
前記1種以上の脂質のうちの少なくとも1つがイオン化可能な脂質である、請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
抗生物質をさらに含む、請求項42~68のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
前記抗生物質が、セファロスポリン、カルバペネム、ペニシリン、及びフルオロキノロンからなる群から選択される、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
前記抗生物質が、チアセタゾン、sq-109、ベダキリン、デラマニド、ピラジナミド、及びイソニアジドからなる群から選択される、請求項69に記載の組成物。
【請求項72】
前記抗生物質が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エタンブトール、リファンピン、及びアミカシンからなる群から選択される、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記抗菌溶解タンパク質が、マイコバクテリウム、サルモネラ、ナイセリア、ブルセラ、エシェリキア、リステリア、フランキセラ、レジオネラ、エルシニア、ブドウ球菌、クロストリジウム、赤痢菌、または連鎖球菌種を殺傷可能である、請求項42~72のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項74】
(a)前記マイコバクテリウム種が、M.tuberculosis,M.leprae,M.lepromatosis,M.avium,M.kansasii,M.fortuitum,M.chelonae,M.marinum、またはM.abscessusであり、
(b)前記サルモネラ種が、S.enterica,S.typhimurium、またはS.bongoriであり、
(c)前記ナイセリア種が、N.gonorrhoeaeまたはN.meningitidisであり、
(d)前記ブルセラ種が、B.melitensis、B.abortus、B.suis、またはB.canisであり、
(e)前記エシェリキア種が、E.coliであり、
(f)前記リステリア種が、L.monocytogenesであり、
(g)前記フランキセラ種が、F.tularensis、F.novicida、またはF.philomiragiaであり、
(h)前記レジオネラ種が、L.pneumophilaであり、
(i)前記エルシニア種が、Y.pestisまたはY.enterocoliticaであり、
(j)前記ブドウ球菌種が、S.aureusであり、
(k)前記クロストリジウム種が、C.botulinum、C.perfringens、C.tetani、またはC.sordelliiであり、
(l)前記赤痢菌種が、S.dysenteriae、S.flexneri、S.boydii、またはS.sonneiであり、あるいは
(m)前記連鎖球菌種が、S.pyogenes、S.agalactiae、S.dysgalactiae、S.bovis、S.anginosus、S.sanguinis、S.mitis、S.mutans、またはS.pneumoniaeである、
請求項69に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細菌性病原体は、感染症の主たる原因である。多くの細菌はヒトの免疫系により上手く検出され、感染症が始まる前に、速やかに取り除かれる。しかし、多数の病原菌は、宿主細胞内に生息することにより、宿主の免疫系を回避する。これらの細胞内細菌は、宿主細胞、例えば、免疫細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞)などの宿主細胞内で、ならびに、宿主細胞内の正しい細胞内区画(例えば、エンドソーム、ファゴソーム、リソソーム、またはサイトゾル)内に生息して繁殖することにより多様な免疫回避技術を発展させてきた。宿主細胞内で拡大する細菌感染症は多くの場合、細胞内の感染場所への接近容易性が欠落しているために、困難な治療障壁を呈する。特定の抗細菌組成物は感染症を(例えば、インビトロで)治療することができるが、治療を、細菌が生息する正しい細胞内位置に送達することは、困難を伴う努力であることが証明されている。
【0002】
困難な細胞内細菌感染症のある群は、マイコバクテリアにより引き起こされる。マイコバクテリアは、ミコール酸にて豊富である太い細胞壁で示される、放線菌である。マイコバクテリアは、脂質二分子膜で構成される細胞膜と、ペプチドグリカン層及びアラビノガラクタン層を含む細胞壁と、疎水性ミコール酸層を含有する外膜と、を含有するエンベロープを含有する。多くのマイコバクテリアは、D-グルカン、D-アラビノ-D-マンナン、及びD-マンナンなどの多糖類で構成される外側カプセルもまた含有する。この複雑な細胞エンベローブはマイコバクテリアの耐久力に寄与し、特に、貫通して破壊するのが難しい。病原性マイコバクテリアは多くの場合、2つの群:M.tuberculosis、及び、非結核マイコバクテリア(NTM)に分けられる。結核とは対照的に、NTMの、人から人への伝染は稀である。それにもかかわらず、NTM感染症の数は、特に、肺疾患を有する人の間で増加している健康上の懸念である。
【0003】
マイコバクテリアにより引き起こされるものなどの、細胞内細菌感染症を標的にして治療する、改善された組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明は、対象のプロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞)内の、標的細胞内区画への、抗菌溶解タンパク質の送達方法を特徴とする。標的細胞内区画は、その中に細菌細胞(例えば、マイコバクテリア細胞)を含むことができる。方法は、対象に、抗菌溶解タンパク質を含有する超分子構造体を含む組成物を投与することを含む。投与ステップの後、抗菌溶解タンパク質は標的細胞内区画に送達される。超分子構造体は、標的部分をさらに含むことができる。抗菌溶解タンパク質は、抗菌バクテリオファージタンパク質であるのが好ましい。
【0005】
別の態様では、本発明は、対象のプロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞)内の、標的細胞内区画への、抗菌溶解タンパク質の送達方法を特徴とする。標的細胞内区画は、その中に細菌細胞(例えば、マイコバクテリア細胞)を含むことができる。方法は、対象に、標的部分と、抗菌溶解タンパク質を含むカーゴと、を含む超分子構造体を含む組成物を投与することを含む。投与ステップの後、抗菌溶解タンパク質は標的細胞内区画に送達される。
【0006】
別の態様では、本発明は、細菌細胞により引き起こされる、対象における細胞内細菌感染症の治療方法を特徴とする。方法は、超分子構造体と、抗菌溶解タンパク質を含むカーゴと、を含む組成物を投与することを含む。組成物は、細菌感染症を治療するのに十分な量及び期間で、対象に投与することができる。超分子構造体は、標的部分をさらに含むことができる。
【0007】
別の態様では、本発明は、細菌細胞により引き起こされる、対象における細胞内細菌感染症の治療方法を特徴とする。方法は、標的部分と、抗菌溶解タンパク質を含むカーゴと、を含む超分子構造体を含む組成物を投与することを含む。組成物は、細菌感染症を治療するのに十分な量及び期間で、対象に投与することができる。
【0008】
別の態様では、本発明は、超分子構造体と、抗菌溶解タンパク質を含むカーゴと、を含む組成物を特徴とする。超分子構造体は、標的部分をさらに含むことができる。
別の態様では、本発明は、標的部分と、抗菌溶解タンパク質を含むカーゴと、を有する超分子構造体を含む組成物を特徴とする。
【0009】
上記態様のいずれかに記載のいくつかの実施形態では、超分子構造体のZアベレージ平均粒径は、約75nm~約750nm(例えば、約250nm~約750nm、または、約75nm~約250nm)である。好ましくは、超分子構造体がLNPまたはミセルである場合、Zアベレージ平均粒径は約75nm~約250nmである。好ましくは、超分子構造体が小胞(例えば、リポソーム)である場合、Zアベレージ平均粒径は約250nm~約750nmである。Zアベレージ平均粒径の非限定例としては、例えば、約75nm~約100nm、例えば、75nm~約85nm、例えば、約80nm、例えば、約80nm~約140nm、約90nm~約130nm、または、約110nm~約130nm、例えば、約120nm、例えば、約200nm~約300nm、例えば、約250nm~約300nm、約260nm~約290nm、約260nm~約280nm、約265nm~約275nm、例えば、約270nm、例えば、約300nm~約400nm、約400nm~約600nm、例えば、約450nm~約550nm、約475nm~約525nm、約480nm~約520nm、約490nm~約510nm、約495nm~約505nm、例えば、約500nm、例えば、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nm、約150nm、約155nm、約160nm、約165nm、約170nm、約175nm、約180nm、約185nm、約190nm、約195nm、約200nm、約205nm、約210nm、約215nm、約220nm、約225nm、約230nm、約235nm、約240nm、約245nm、約250nm、約255nm、約260nm、約265nm、約270nm、約275nm、約280nm、約285nm、約290nm、約295nm、約300nm、約305nm、約310nm、約315nm、約320nm、約325nm、約330nm、約335nm、約340nm、約345nm、約350nm、約355nm、約360nm、約365nm、約370nm、約375nm、約380nm、約385nm、約390nm、約395nm、約400nm、約405nm、約410nm、約415nm、約420nm、約425nm、約430nm、約435nm、約440nm、約445nm、約450nm、約455nm、約460nm、約465nm、約470nm、約475nm、約480nm、約485nm、約490nm、約495nm、約500nm、約505nm、約510nm、約515nm、約520nm、約525nm、約530nm、約535nm、約540nm、約545nm、約550nm、約555nm、約560nm、約565nm、約570nm、約575nm、約580nm、約585nm、約590nm、約595nm、約600nm、約605nm、約610nm、約615nm、約620nm、約625nm、約630nm、約635nm、約640nm、約645nm、約650nm、約655nm、約660nm、約665nm、約670nm、約675nm、約680nm、約685nm、約690nm、約695nm、約700nm、約705nm、約710nm、約715nm、約720nm、約725nm、約730nm、約735nm、約740nm、約745nm、または約750nmが挙げられる。いくつかの実施形態では、超分子構造体のZアベレージ平均粒径は、約80nm、約270nm、または約500nmである。
【0010】
上記態様のいずれかに記載のいくつかの実施形態では、細菌細胞は、マイコバクテリウム、サルモネラ、ナイセリア、ブルセラ、エシェリキア、リステリア、フランキセラ、レジオネラ、エルシニア、ブドウ球菌、クロストリジウム、赤痢菌、または連鎖球菌種であるか、あるいは、抗菌溶解タンパク質は、これらを殺傷することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、マイコバクテリウム種は、M.tuberculosis,M.leprae,M.lepromatosis,M.avium,M.kansasii,M.fortuitum,M.chelonae,M.marinum、またはM.abscessusであり、サルモネラ種は、S.enterica,S.typhimurium、またはS.bongoriであり、ナイセリア種は、N.gonorrhoeaeまたはN.meningitidisであり、ブルセラ種は、B.melitensis、B.abortus、B.suis、またはB.canisであり、エシェリキア種は、E.coliであり、リステリア種は、L.monocytogenesであり、フランキセラ種は、F.tularensis、F.novicida、またはF.philomiragiaであり、レジオネラ種は、L.pneumophilaであり、エルシニア種は、Y.pestisまたはY.enterocoliticaであり、ブドウ球菌種は、S.aureusであり、クロストリジウム種は、C.botulinum、C.perfringens、C.tetani、またはC.sordelliiであり、赤痢菌種は、S.dysenteriae、S.flexneri、S.boydii、またはS.sonneiであり、あるいは、連鎖球菌種は、S.pyogenes、S.agalactiae、S.dysgalactiae、S.bovis、S.anginosus、S.sanguinis、S.mitis、S.mutans、またはS.pneumoniaeである。
【0012】
いくつかの実施形態では、超分子構造体は、約0.05~約0.3の多分散指数(PDI)を有することができる。いくつかの実施形態では、超分子構造体は、1種以上の脂質、例えば、イオン化可能な脂質をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、超分子構造体は、少なくとも1つの標的部分をさらに含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、標的部分は、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞)を標的にする細胞外標的部分である。
いくつかの実施形態では、標的部分は、ホスファチジルセリンを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、標的部分は、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。それ故、抗体または抗原結合フラグメントは、抗CD163、抗CD40、抗CD74、抗CD206、抗CD123抗体、ならびにその抗原結合フラグメントからなる群から選択されることができる。抗体または抗原結合フラグメントは、抗DEC205、抗CD304、抗CD303、抗CD40、抗CD74、抗BDCA2、及び抗CD123抗体、ならびにその抗原結合フラグメントからなる群から選択されることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、標的部分は、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む。
いくつかの実施形態では、標的部分は、マンノースクラスターまたは葉酸塩である。
いくつかの実施形態では、標的部分はTLR2アゴニストである。例えば、TLR2アゴニストは、MALP-2リポタンパク質、MALP-404リポタンパク質、外側表面リポタンパク質A(OspA)、ポリン、LcrV、Hsp60、糖タンパク質gH/gL、または糖タンパク質gBからなる群から選択されることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、超分子構造体は脂質ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、超分子構造体はミセルである。いくつかの実施形態では、超分子構造体はリポソームである。リポソームは、ユニラメラまたはマルチラメラ(例えば、2、3、4、5個、またはそれ以上のラメラ)であることができる。超分子構造体は、約0.05~約0.3の多分散指数を有することができる。
【0017】
超分子構造体は、1種以上の脂質(例えば、イオン化可能な脂質)をさらに含むことができる。
いくつかの実施形態では、方法は、抗生物質を投与することさらに含む。いくつかの実施形態では、抗生物質は、セファロスポリン、カルバペネム、ペニシリン、及びフルオロキノロンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗生物質は、チアセタゾン、sq-109、ベダキリン、デラマニド、ピラジナミド、及びイソニアジドからなる群から選択される。例えば、抗生物質は、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エタンブトール、リファンピン、またはアミカシン、例えば、アミカシンであることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗菌溶解タンパク質は、細菌細胞(例えば、マイコバクテリア細胞、例えば、NTM細胞)を殺傷することができる。
いくつかの実施形態では、抗菌溶解タンパク質は、カプセルデポリメラーゼ、アミラーゼ、または溶解素である。例えば、カプセルデポリメラーゼは、例えば、ヒドロラーゼ、メタロヒドロラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、ペプチドグリカンヒドロラーゼ、ポリサッカラーゼ、多糖類リアーゼ、エンドシアリダーゼ、ヒアルロナンリアーゼ、またはアルギネートリアーゼであることができる。溶解素は、例えば、溶解素Aまたは溶解素Bであることができる。アミラーゼは、例えば、イソアミラーゼまたはα-アミラーゼであることができる。抗菌溶解タンパク質は、抗菌マイコバクテリオファージタンパク質であることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内投与、経口投与、局所投与される、または、吸入により投与される。
定義
本明細書で使用する場合、用語「約」とは、列挙した値の±10%を意味する。
【0020】
本明細書で使用する場合、「組み合わせ療法」または「組み合わせて投与される」とは、2つ(またはそれ以上)の剤または治療が、特定の疾患または状態に対して、定義された治療レジメンの一部として対象に投与されることを意味する。治療レジメンでは、対象に対する別個の剤の効果が重なるように、及び/または、相乗作用をもたらすように、各剤の投与の用量及び周期性を定義する。いくつかの実施形態では、2つ以上の剤の送達は同時または並行であり、本剤は同時製剤化され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の剤は同時製剤化されず、処方されたレジメンの一部として連続的に投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上の剤または治療を組み合わせて投与することは、症状、または疾患に関連する他のパラメータの減少が、単独でまたは他の非存在下で送達される1つの剤または治療で観察されるものよりも大きくなるようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的、完全に相加的、または相加的よりも大きくなり得る、例えば、相乗的であり得る。各治療剤の連続または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、局所経路、及び粘膜組織を介した直接吸収を含む、任意の適切な経路によるものであることができるが、これらに限定されない。治療剤は、同じ経路によって、または異なる経路によって投与することができる。例えば、組み合わせの第1の治療剤を静脈内注射によって投与してもよい一方で、その組み合わせの第2の治療剤を経口投与してもよい。
【0021】
本明細書で使用する場合、例えば、細胞、試料、または対象における、本明細書に記載する治療効果をもたらす、「有効量」、「治療に有効な量」、及び「十分な量」の剤、という用語は、細胞、試料、または、ヒトを含む対象に投与されたときに、前臨床または臨床的結果を含む、有益な、または所望の結果をもたらすのに十分な量を意味し、そのため、そのような「有効量」、またはその同義語は、この用語が使われる文脈において左右される。例えば、障害の治療の文脈において、この用語は、剤の投与を伴わずに得られる応答と比較して、治療応答を実現するのに十分な剤の量である。所与の剤の量は、所与の剤、薬学製剤、投与経路、細菌感染症の重症度、バイオマーカー、例えば、対象、試料、または宿主細胞、例えば、治療されている哺乳類免疫細胞の年齢、性別、及び/または体重などといった様々な因子に応じて変化するであろうが、それにもかかわらず、当業者によって日常的に決定することができる。また、本明細書で使用する場合、剤の「治療に有効な量」、という用語は、対照と比較して、細胞または対象において有益な、または所望の結果をもたらす量である。本明細書で定義する場合、治療に有効な量の剤は、当該技術分野において既知の日常的な方法により、当業者により速やかに決定することができる。投薬レジメンを調整して、最適な治療応答を提供してもよい。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「抗菌溶解タンパク質」とは、細菌に対して、殺菌及び/または溶菌活性を有するバクテリオファージと関連する、または、これから分泌されるタンパク質を意味する。抗菌溶解タンパク質の非限定例としては、ホーリン、溶解素(例えば、溶解素A及び/または溶解素B)、アミラーゼ(例えば、イソアミラーゼまたはαアミラーゼ)、ならびに、カプセルデポリメラーゼ(例えば、ヒドロラーゼ、メタロヒドロラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、ペプチドグリカンヒドロラーゼ、ポリサッカラーゼ、多糖類リアーゼ、エンドシアリダーゼ、ヒアルロナンリアーゼ、またはアルギネートリアーゼ)が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「エンドソームエスケープ部分」とは、エンドソームエスケープ部分を欠くことのみにおいて異なる参照分子と比較して、エンドソーム内容物の放出を向上させる、または、内部細胞区画(例えば、エンドソーム、ファゴソーム、もしくはリソソーム)からの分子の脱出を促進する部分を表す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「脂質ナノ粒子」または「LNP」とは、実質的に固体の脂質コアを封入する脂質層を含む小胞であり、脂質コアは、薬学的に活性な分子を含有することができる。LNPは通常、粒子(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)の凝集を防止する、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び脂質を含有する。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「リポソーム」とは、少なくとも1つの二分子膜、例えば、1つの二分子膜、または複数の二分子膜の中に配置される両親媒性脂質で構成される小胞を意味する。リポソームは、親油性材料及び水性インテリアから形成される膜を有する、ユニラメラ及びマルチラメラ(例えば、2、3、4、5個、またはそれ以上のラメラ)を含む。水性部分は、抗菌溶解タンパク質、または、抗菌溶解タンパク質と他の構成成分との混合物を含有する。親油性材料は、水性エクステリアを水性インテリアと分離し、通常、ファージタンパク質を含まないが、場合によっては、含有する場合がある。リポソームは、「立体的に安定した」リポソームもまた含み、この用語は、本明細書で使用する場合、リポソームに組み込まれる場合に、そのような専用脂質を欠くリポソームと比較して、向上した循環寿命をもたらす、1種以上の専用脂質を含むリポソームを意味する。
【0026】
「ミセル」は、本明細書では、両親媒性分子、例えば、脂質が、分子の疎水性部分がコアに対して内側を向いており、親水性部分を、周囲の水相と接触させたままにするように配置される、特定の種類の、実質的に球状の超分子構造体として定義される。逆の配置は、周囲環境が疎水性である場合に存在する。ミセルコアは、抗菌溶解タンパク質、または、複数のタンパク質の混合物を含有することができる。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「標的部分」とは、所与の標的細胞集団(例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞))と会合する受容体または他の受容性部分に特異的に結合する、または、これと反応的に会合する、もしくはこれと複合体を形成する部分(例えば、低分子、例えば、炭水化物)を表す。したがって、標的部分を使用して、本明細書に記載する超分子構造体を、例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞)に標的させることができる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、例えば、実験、診断、予防、及び/または治療の目的で、本発明による組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象としては、任意の動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物が含まれる。対象は、治療を求めるか必要としている、治療が必要である、治療を受けている、今後治療を受けるか、または特定の疾患または状態について熟練の専門家による治療を受けているヒトまたは動物であり得る。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「超分子構造体」とは、非共有結合、例えば、水素結合、ファンデルワールス力、静電相互作用、疎水性効果、及びπ-π相互作用により互いに結合している、分子の複合体を意味する。超分子構造体は、例えば、球状様構造を形成する、分子の大型複合体を含むことができる。超分子構造体としては、例えば、脂質ベースの超分子構造体、例えば、リポソーム及び脂質ナノ粒子(例えば、ミセル)が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「標的細胞内区画」とは、エンドソーム、ファゴソーム、リソソーム、またはサイトゾルを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「標的部分」とは、所与の標的細胞集団(例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞))と会合する受容体または他の受容性部分に特異的に結合する、または、これと反応的に会合する、もしくはこれと複合体を形成する部分(例えば、低分子、例えば、炭水化物)を表す。したがって、標的部分を使用して、本明細書に記載する超分子構造体を、例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞)に標的させることができる。
【0031】
「小胞」は、本明細書では、両親媒性分子(例えば、脂質)が集まって体積、例えば、実質的に球状の体積を確定する、超分子構造体の一種として定義される。両親媒性分子(例えば、脂質)は通常、小胞の少なくとも1つのシェルを構成する。このシェルの中では、両親媒性分子が二分子膜内に配置され、両親媒性分子の親水性部分が、二分子膜の平面に対して外側に向いており、両親媒性分子の疎水性部分が、二分子膜内で主に配置されている。逆の配置は、周囲の媒体が疎水性である場合に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】マイコバクテリウム細胞、または、それぞれ、マイコバクテリウムに感染し抗菌溶解タンパク質で治療したマクロファージ、または、治療用ペイロードを含むバクテリオファージを含む、細胞のグローアウト連続希釈(GOSD)における酵素生物(enzybiotic)反応のレベルをスクリーニングし、定量する実験設計の概略図である。例えば、挿入図は、マイコバクテリウムに感染し、抗菌溶解タンパク質(ABIα)または希釈緩衝液(DB)で治療した、ECL55細胞のGOSDプレートを示す。
図2】Aは、溶解素A(A)、溶解素B(B)、イソアミラーゼ(I)、及びαアミラーゼ(α)(ABIα)の酵素カクテルの、1回(10μL)、2回(20μL)、または3回(30μL)用量での治療に対する、M.abscessus細胞の、GOSD-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、及び、-8の用量依存性応答を示す一連のグラフである。培養光学密度(OD590)/検出下限における、ABIα治療の用量依存性効果の定量化である。Bは、溶解素A(A)、溶解素B(B)、イソアミラーゼ(I)、及びαアミラーゼ(α)(ABIα)の酵素カクテルの、1回(10μL)、2回(20μL)、または3回(30μL)用量での治療に対する、M.abscessus細胞の、GOSD-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、及び、-8の用量依存性応答を示す一連のグラフである。M.abscessus細胞の数における、治療効果の定量化である。
図3】それぞれ、3.2μg、1.6μg、0.8μg、0.4μg、0.2μg、及び0.1μgのABIα/ウェル、またはABIαなしで治療した後の、M.abscessus細胞の数を示すグラフである。
図4】Aは、1回用量のABIαにより、または、これなしで治療し、3または6日間培養した、M.intracellulare細胞のGOSD(-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、及び-8)の、OD590/LLoDを示すグラフである。Bは、1回用量のABIαにより、または、これなしで治療し、3または6日間培養した、M.intracellulare細胞のGOSD(-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、及び-8)の、OD590/LLoDを示すグラフに対応する画像である。
図5】それぞれ、ABIα及び抗生物質のアミカシン、ビアペネム、セフォキシチン、エタンブトール、モキシフロキサシン、リファンピシン、またはクラリスロマイシンで処理した、M.abscessus細胞の増殖の、画分阻害濃度指数(FICI)を示す、データの表での集合である。
図6】封入されていない(遊離酵素)、または、封入された抗菌溶解タンパク質(封入酵素)での処理による、感染マクロファージにおけるマイコバクテリア増殖の減衰での異なる影響を評価するための実験設計の概略図である。
図7】それぞれ、封入されていない(遊離)、または、封入された(封入)A、B、I、及び(ABIα、AB、Iα、Biα、encABIα、encAB、encIα、及びencBiα)の組み合わせで処理した、感染マクロファージからの抽出後の、M.abscessusのGOSD(-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、及び-8)のOD590/LLoDを示すグラフである。
図8図7に記載する実験における、M.abscessus細胞の数の定量化を示す表である。
図9】封入されていない(遊離バクテリオファージ)または封入されたバクテリオファージで処理した、感染マクロファージにおけるマイコバクテリア増殖の弱毒化の異なる効果を評価するための実験設計の概略図である。
図10】それぞれ、封入されていない(ファージ)、または封入された(封入ファージ)赤痢菌ファージEPH34で処理した、感染マクロファージからの抽出後の、S.flexneriのGOSD(-1、-2、-3、-4、-5、及び-6)のOD590/LLoDを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
バクテリオファージは、細菌内で感染し複製するウイルスである。溶解ファージは宿主細菌に感染し、宿主の機構を利用して、ヴィリオンを複製する。複製後、ファージは宿主細胞を溶解して、ファージ後代を放出して、感染するための新しい細菌宿主を見つける。バクテリオファージは、標的にされた細胞を殺傷する不可欠な機構全てでプログラムされている。したがって、バクテリオファージのタンパク質成分は、細菌宿主細胞を特異的に標的して、これを破壊する能力によって、魅力的な抗細菌療法を呈する。
【0034】
宿主細胞内にあるいくつかの病原菌は、標的にするのが困難である。これらの細胞内細菌は、免疫系による検出から逃れるために、宿主細胞内に生息して増殖する。細胞内細菌を効率的に標的にするために、治療用ペイロードは、細菌を標的にするだけでなく、細菌が生息する正しい細胞内位置を標的にしなければならない。本発明は、細胞内細菌感染症を治療するための抗細菌療法を標的にするための組成物、及びその使用方法を提供することにより、これらの問題を解決する。一般に、組成物は、宿主細胞、例えば、マクロファージまたは樹状細胞、及び、正しい標的細胞内区画(エンドソーム、ファゴソーム、リソソーム、またはサイトゾル)を標的にする超分子構造体、例えば、脂質ベースの超分子構造体、例えば、リポソーム、ミセル、脂質ナノ粒子(LNP)を特徴とする。一方で、超分子構造体は、細菌細胞を殺傷するようにプライミングされた、少なくとも1つの抗菌溶解タンパク質、例えば、抗菌マイコバクテリオファージタンパク質でプレロードされる。超分子構造はペイロードを、正しい細胞型及び細胞内区画に向かわせる一方で、抗菌溶解タンパク質は、その固有の表面認識特性により、細菌に直接結合することができる。
【0035】
抗菌溶解タンパク質
溶菌バクテリオファージは、ファージ感染サイクルの結果、標的細菌を認識して、これを溶解するのに必要な機構を含有する。いくつかの推定では、1030個を超えるバクテリオファージが存在することが示唆され、このことは、治療剤の開発のための抗菌剤の発見をもたらす、幅広い多様性を示している。
【0036】
マイコバクテリオファージは、マイコバクテリアに特異的に感染する二本鎖DNAウイルスであり、溶解感染サイクルの終了時に、最終的に、マイコバクテリア細胞の死に至る。マイコバクテリオファージは、非常に疎水性であり複雑な、マイコバクテリア細胞エンベロープの特定の層内における、特定の種類の結合を標的して、これを切断することに向けられる、抗菌タンパク質、例えば、溶菌酵素、例えば、脂肪分解酵素を含む、特定の細胞溶解系を有するように進化してきており、これは、そのコアとしての、共有結合したmAGP複合体を含む細胞壁と、外層、例えば、非共有結合した多糖類及びタンパク質を含む、細胞カプセルまたはムコイドカプセルと、を含む。
【0037】
抗菌溶解タンパク質、例えば、溶解バクテリオファージタンパク質を超分子構造体にロードして、超分子複合体を形成することができ、これを細胞、試料、または対象に投与することができる。超分子複合体は哺乳類免疫細胞、例えばマクロファージまたは樹状細胞によりエンドサイトーシスを受け、抗菌溶解タンパク質は、1つ以上の標的細胞内区画(エンドソーム、ファゴソーム、リソソーム、またはサイトゾル)に送達され、ここで細菌が生息する。いくつかの実施形態では、抗菌溶解タンパク質は、細菌表面に付着する。抗菌溶解タンパク質は、特定の結合を切断することで、細菌の細胞エンベロープの構成成分を孔粒(porate)及び/または破壊し、浸透破壊及び細菌の死をもたらす。マイコバクテリオファージタンパク質は、溶解素、例えば溶解素A及び溶解素B、アミラーゼ、例えばイソアミラーゼ及びαアミラーゼ、ならびに、カプセルデポリメラーゼを含む。溶解素及びカプセルデポリメラーゼは、それぞれ、細胞エンベロープのマイコバクテリアmAGP複合体含有細胞壁及び外側細胞カプセルにおける、異なる結合の切断を担う。マイコバクテリオファージタンパク質は、ホーリンもまた含み、これは、マイコバクテリア細胞膜をオリゴマー化及び孔粒して、非孔形成溶解素がその基質に接近し、細胞壁を溶解することができるようにする、膜結合タンパク質である。
【0038】
いくつかの実施形態では、抗菌溶解タンパク質は例えば、溶解バクテリオファージタンパク質、例えば、マイコバクテリオファージタンパク質である。いくつかの実施形態では、バクテリオファージタンパク質は、細胞を殺傷することができるか、または、マイコバクテリウム、サルモネラ、ナイセリア、ブルセラ、エシェリキア、リステリア、フランキセラ、レジオネラ、エルシニア、ブドウ球菌、クロストリジウム、赤痢菌、もしくは連鎖球菌からなる群から選択される細胞に感染するファージに由来する。いくつかの実施形態では、マイコバクテリウム種は、M.tuberculosis,M.leprae,M.lepromatosis,M.avium,M.kansasii,M.fortuitum,M.chelonae,M.marinum、及びM.abscessusからなる群から選択される種であり、サルモネラ種は、S.enterica,S.typhimurium、またはS.bongoriであり、ナイセリア種は、N.gonorrhoeaeまたはN.meningitidisであり、ブルセラ種は、B.melitensis、B.abortus、B.suis、またはB.canisであり、エシェリキア種は、E.coliであり、リステリア種は、L.monocytogenesであり、フランキセラ種は、F.tularensis、F.novicida、またはF.philomiragiaであり、レジオネラ種は、L.pneumophilaであり、エルシニア種は、Y.pestisまたはY.enterocoliticaであり、ブドウ球菌種は、S.aureusであり、クロストリジウム種は、C.botulinum、C.perfringens、C.tetani、またはC.sordelliiであり、赤痢菌種は、S.dysenteriae、S.flexneri、S.boydii、またはS.sonneiであり、あるいは、連鎖球菌種は、S.pyogenes、S.agalactiae、S.dysgalactiae、S.bovis、S.anginosus、S.sanguinis、S.mitis、S.mutans、またはS.pneumoniaeである。いくつかの実施形態では、マイコバクテリオファージタンパク質は、溶解素、またはカプセルデポリメラーゼ、例えばカプスラーゼ(capsulase)である。いくつかの実施形態では、溶解素は溶解素Aまたは溶解素Bである。カプセルデポリメラーゼは、マイコバクテリア細胞の外側細胞カプセル、例えば、ムコイドカプセルを破壊する酵素である。外側カプセルは通常、多糖類及びタンパク質、加えて、少量の脂質で構成される。いくつかの実施形態では、カプセルデポリメラーゼは、ヒドロラーゼ、メタロヒドロラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、ペプチドグリカンヒドロラーゼ、ポリサッカラーゼ、多糖類リアーゼ、エンドシアリダーゼ、ヒアルロナンリアーゼ、またはアルギネートリアーゼである。外側カプセル内のカプセル多糖類としては、例えば、D-グルカン、D-アラビノ-D-マンナン、及びD-マンナンが挙げられる。さらに、カプセルデポリメラーゼは、これらの、及び他のカプセル多糖類を破壊する酵素である。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗菌溶解タンパク質は自然に存在するタンパク質である。他の実施形態では、抗菌溶解タンパク質は組み換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物は、例えば、2種以上の細菌の種または株を殺傷する、2種以上の(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10種、またはそれ以上の)異なるタンパク質を含む。
【0040】
抗菌溶解タンパク質の非限定例は表1に示される。
【0041】
【表1】
【0042】
細胞内細菌
細胞内細菌は宿主細胞内に生息し、ここで繁殖して、感染を引き起こす。細胞内細菌は、プロフェッショナル抗原細胞などの免疫細胞の中に生息することができる。プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)としては、マクロファージ、B細胞、及び樹状細胞が挙げられる。APCは、その表面上で、主要組織適合性複合体(MHC)と複合体化した抗原を処理し、その表面上にこれを提示する。T細胞は、T細胞受容体を使用してこれらの抗原提示複合体を認識し、これは、効果的な適応免疫応答に重要なプロセスである。特定の細菌は、免疫細胞内に隠れることで、この免疫応答を回避する。
【0043】
本明細書に記載する組成物及び方法を使用して、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞)に生息する細胞内細菌などの、あらゆる細胞内細菌を治療することができる。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、マイコバクテリウム、サルモネラ、ナイセリア、ブルセラ、エシェリキア、リステリア、フランキセラ、レジオネラ、エルシニア、ブドウ球菌、クロストリジウム、赤痢菌、または連鎖球菌種である。マイコバクテリウム種の例としては、M.tuberculosis,M.leprae,M.lepromatosis,M.avium,M.kansasii,M.fortuitum,M.chelonae,M.marinum、またはM.abscessusが挙げられる。特定の実施形態では、マイコバクテリウムはNTMである。いくつかの実施形態では、NTMはM.aviumまたはM.abscessusである。いくつかの実施形態では、感染症は、M.aviumまたはM.abscessusなどの、NTMの組み合わせにより引き起こされる。
【0044】
他の細胞内細菌は、当該技術分野において既知である。サルモネラ種は、例えば、S.enterica、S.typhimurium、またはS.bongoriであることができる。ナイセリア種は、例えば、N.gonorrhoeaeまたはN.meningitidisE.coliであることができる。ブルセラ種は、例えば、B.melitensis、B.abortus、B.suis、またはB.canisであることができる。エシェリキア種は、例えば、E.coliであることができる。リステリア属種は、例えば、L.monocytogenesであることができる。フランキセラ属種は、例えば、F.tularensis、F.novicida、またはF.philomiragiaであることができる。レジオネラ属種は、例えば、L.pneumophilaであることができる。エルシニア種は、例えば、Y.pestisまたはY.enterocoliticaであることができる。ブドウ球菌種は、例えば、S.aureusであることができる。クロストリジウム種は、例えば、C.botulinum、C.perfringens、C.tetani、またはC.sordelliiであることができる。赤痢菌種は、例えば、S.dysenteriae、S.flexneri、S.boydii、またはS.sonneiであることができる。連鎖球菌種は、例えば、S.pyogenes、S.agalactiae、S.dysgalactiae、S.bovis、S.anginosus、S.sanguinis、S.mitis、S.mutans、またはS.pneumoniaeであることができる。
【0045】
超分子構造体
超分子構造体を使用して、送達のための抗菌剤、例えば、抗菌溶解タンパク質、例えば、マイコバクテリオファージタンパク質を製剤化することができる。超分子構造は、非共有結合、例えば、水素結合、ファンデルワールス力、静電相互作用、イオン-双極子力、疎水性効果、及び、π-π相互作用により互いに結合している、複合体、例えば、脂質の画定された複合体を含む。超分子構造体は、球体、ヘリックス、またはシート様構造を形成する、分子の大型複合体を含むことができる。超分子構造体としては、例えば、ミセル、リポソーム、及びLNPなどの、脂質ベースの超分子構造体が挙げられる。超分子構造体は、所定のサイズを有することができる。構造体のサイズは、構造内に詰め込まれた構成成分、例えば、タンパク質のサイズに応じて変化することができる。超分子複合体は、細胞、例えば、マクロファージまたは樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞によりエンドサイトーシスを受け、抗菌溶解タンパク質は、標的細胞内区画(エンドソーム、ファゴソーム、リソソーム、またはサイトゾル)に送達され、ここに細菌が生息する。
【0046】
いくつかの実施形態では、特定の粒径を使用して、構造体を、適切な標的細胞内区画に向ける特定のエンドサイトーシス経路に誘導する。超分子構造体はエンドサイトーシスを受け、例えば、クラスリン依存性エンドサイトーシスを介して、または、カベオリン依存性エンドサイトーシスを介して、標的細胞内区画に送達されることができる。超分子構造体の粒径、例えば、Zアベレージ平均粒径は、約75nm~約750nm(例えば、約250nm~約750nm、または、約75nm~約250nm)で変化することができる。好ましくは、超分子構造体がLNPまたはミセルである場合、Zアベレージ平均粒径は約75nm~約250nmである。好ましくは、超分子構造体が小胞(例えば、リポソーム)である場合、Zアベレージ平均粒径は約250nm~約750nmである。Zアベレージ平均粒径の非限定例としては、例えば、約75nm~約100nm、例えば、75nm~約85nm、例えば、約80nm、例えば、約80nm~約140nm、約90nm~約130nm、または、約110nm~約130nm、例えば、約120nm、例えば、約200nm~約300nm、例えば、約250nm~約300nm、約260nm~約290nm、約260nm~約280nm、約265nm~約275nm、例えば、約270nm、例えば、約300nm~約400nm、約400nm~約600nm、例えば、約450nm~約550nm、約475nm~約525nm、約480nm~約520nm、約490nm~約510nm、約495nm~約505nm、例えば、約500nm、例えば、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nm、約150nm、約155nm、約160nm、約165nm、約170nm、約175nm、約180nm、約185nm、約190nm、約195nm、約200nm、約205nm、約210nm、約215nm、約220nm、約225nm、約230nm、約235nm、約240nm、約245nm、約250nm、約255nm、約260nm、約265nm、約270nm、約275nm、約280nm、約285nm、約290nm、約295nm、約300nm、約305nm、約310nm、約315nm、約320nm、約325nm、約330nm、約335nm、約340nm、約345nm、約350nm、約355nm、約360nm、約365nm、約370nm、約375nm、約380nm、約385nm、約390nm、約395nm、約400nm、約405nm、約410nm、約415nm、約420nm、約425nm、約430nm、約435nm、約440nm、約445nm、約450nm、約455nm、約460nm、約465nm、約470nm、約475nm、約480nm、約485nm、約490nm、約495nm、約500nm、約505nm、約510nm、約515nm、約520nm、約525nm、約530nm、約535nm、約540nm、約545nm、約550nm、約555nm、約560nm、約565nm、約570nm、約575nm、約580nm、約585nm、約590nm、約595nm、約600nm、約605nm、約610nm、約615nm、約620nm、約625nm、約630nm、約635nm、約640nm、約645nm、約650nm、約655nm、約660nm、約665nm、約670nm、約675nm、約680nm、約685nm、約690nm、約695nm、約700nm、約705nm、約710nm、約715nm、約720nm、約725nm、約730nm、約735nm、約740nm、約745nm、または約750nmが挙げられる。特定の実施形態では、超分子構造体のZアベレージ平均粒径は、約75nm~約250nmであることができる。いくつかの実施形態では、超分子構造体のZアベレージ平均粒径は、約80nm、約270nm、または約500nmである。
【0047】
平均粒径は、ゼータ電位、動的光散乱法(DLS)、電気泳動光散乱(ELS)、静的光散乱(SLS)、分子量、電気泳動移動度、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、フィールドフローフラクショネーション、または、当該技術分野において既知の他の方法により測定することができる。特定の実施形態では、平均粒径は、により測定される。特定の実施形態では、超分子構造体は、約75nm~約250nmのZアベレージ平均粒径を含有する。特定の実施形態では、超分子構造体は、約250nm~約750nmのZアベレージ平均粒径を含有する。特定の実施形態では、超分子構造体は、約500nmのZアベレージ平均粒径を含有する。特定の実施形態では、超分子構造体は、約270nmのZアベレージ平均粒径を含有する。特定の実施形態では、超分子構造体は、約80nmのZアベレージ平均粒径を含有する。超分子構造体のまとまり(例えば、リポソーム、LNP、またはミセル)は、まとまりの中である範囲のZアベレージ平均粒径を有し得ることを、当業者は理解するであろう。したがって、まとまりは多分散系であることができる。まとまりは、0.3以下(例えば、0.05~0.3)の多分散指数を有し得る。多分散指数は、DLSを使用して測定することができる(例えば、ISO 22412:2017を参照されたい)。
【0048】
超分子構造体は、超分子構造体1個当たり、所定数の抗菌溶解タンパク質、または、平均数の抗菌溶解タンパク質でロードすることができる。例えば、超分子構造体は、約1個のタンパク質~約10個のタンパク質(例えば、約1~約10、約1~約10、約1~約10、約1~約10、約1~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10個)を含有することができる。構造体1個当たりのタンパク質の数は、タンパク質のサイズ、及び構造体のサイズに左右され得る。
【0049】
超分子構造体は、エンドソームエスケープ部分を含むことができる。エンドソームエスケープ部分を含む超分子構造体を、超分子構造体に含まれるカーゴ(例えば、治療剤)の改善されたサイトゾル送達のために提供することができる。エンドソームエスケープ部分は、当該技術分野において既知である。エンドソームエスケープ部分はイオン化可能な脂質であるのが好ましい。イオン化可能な脂質は典型的である。イオン化可能な脂質は、超分子構造体-層形成脂質としても役割を果たすことができる。イオン化可能な脂質の非限定例としては、例えば、WO2019/067875;WO2018/191750;及びUS9,999,671に記載されているものが挙げられる。他の例示的なエンドソームエスケープ部分としては、膜融合性脂質(例えば、ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミン(ドープ));ならびにポリエチレンイミン(PEI)などのポリマー;ポリ(β-アミノエステル);ポリアルギニン(例えば、オクタアルギニン)及びポリリシン(例えば、オクタリシン)などのポリペプチド;プロトンスポンジ、ウイルスキャプシド、及び、本明細書に記載するペプチド形質導入ドメインが挙げられる。例えば、膜融合性ペプチドは、インフルエンザAウイルスのM2タンパク質;インフルエンザウイルスヘマグルチニンのペプチド類似体;インフルエンザCウイルスのHEFタンパク質;フィロウイルスの膜貫通糖タンパク質;狂犬病ウイルスの膜貫通糖タンパク質;水疱性口内炎ウイルスの膜貫通糖タンパク質(G);センダイウイルスの融合タンパク質;セムリキフォレストウイルスの膜貫通糖タンパク質;ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の融合タンパク質;麻疹ウイルスの融合タンパク質;ニューカッスル病ウイルスの融合タンパク質;ビスナウイルスの融合タンパク質;マウス白血病ウイルスの融合タンパク質;HTLウイルスの融合タンパク質;及び、サル免疫不全ウイルス(SIV)の融合タンパク質に由来することができる。エンドソームエスケープを容易にするために使用可能な他の部分は、Dominska et al.,Journal of Cell Science,123(8):1183-1189,2010に記載されている。本明細書で開示する超分子構造体に含める、または、これにコンジュゲートするのに好適な部分を含む、エンドソームエスケープ部分の具体例は、例えば、WO2015/188197に示されており、これらのエンドソームエスケープ部分の開示は、本明細書で参照により組み込まれる。
【0050】
リポソーム
リポソームは、抗菌タンパク質を作用部位に移動させる、及び送達するのに有用である。リポソーム膜は構造的に、生物学的膜に類似しているため、リポソームを組織に適用する際、リポソーム二分子膜は、細胞膜の二分子膜と融合する。リポソーム及び細胞進行が合わさると、抗菌タンパク質を含む内部水性内容物は、細胞及び抗菌溶解タンパク質が細胞内に送達され、ここで、抗菌タンパク質は、哺乳類免疫細胞の中に生息する細菌細胞(例えば、マイコバクテリア細胞、例えば、NTM細胞)を標的にして溶解することができる。場合によっては、リポソームはまた、例えば、タンパク質を、特定の哺乳類免疫細胞、及び/または、感染の間に、通常細菌(例えば、マイコバクテリア)を有する特定の細胞内区画(エンドソーム、ファゴソーム、リソソーム、もしくはサイトゾル)に向けさせるために、特異的に標的にされる。リポソームの組成物は通常、普通は、コレステロールなどのステロイドと組み合わさった、リン脂質の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質もまた、使用することができる。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、及び、二価カチオンの存在に左右される。
【0051】
好ましくは、本明細書に記載するリポソームは、リン脂質を、より好ましくは、グリセロリン脂質、例えば、ホスファチジルセリンを含む。ホスファチジルセリンは、脂肪酸エステル部分で置換された2個のヒドロキシル基、及び、セリン側鎖に共有結合したホスホジエステル部分で置換された1個のヒドロキシル基を有するグリセロール分子である。ホスファチジルセリンの典型的な構造は、RO-CH-CH(OR)-CH-OP(O)(OH)-OCHCH(COOH)NH、またはその塩[式中、各Rは独立して脂肪酸アシルである。]である。加えて、または代替的に、本明細書に記載するリポソームは、例えば、リゾリン脂質、例えば、リゾホスファチジルセリンを含むことができる。リゾホスファチジルセリンは、その2つの脂肪酸エステル部分のうちの1つを欠いているホスファチジルセリンである。リゾホスファチジルセリンの典型的な構造は、RO-CH-CH(OR)-CH-OP(O)(OH)-OCHCH(COOH)NH、またはその塩[式中、片方のRは脂肪酸アシルであり、他のRはHである。]である。したがって、特定の好ましい実施形態では、本明細書に記載するリポソームは、RO-CH-CH(OR)-CH-OP(O)(OH)-OCHCH(COOH)NH、またはその塩[式中、各RはHまたは脂肪酸アシルであり、但し、少なくとも1つのRは脂肪酸アシルである。]を含む。
【0052】
主要な種類のリポソーム組成物の1つとしては、自然に由来するホスファチジルコリン以外のリン脂質が挙げられる。中性リポソーム組成物は例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成することができる。カチオン性リポソームは、細胞膜に融合することができるという利点を有する。カチオン性脂質の非限定例としては、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシプロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-s-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレイル-3-(2N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)もしくはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-di((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニエテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イエエチルアザネジエジドデカン-2-オール(Tech G1)、またはこれらの混合物が挙げられる。カチオン性脂質は例えば、粒子内に存在する全脂質の約20モル%~約50モル%、または約40モル%を占めることができる。
【0053】
非カチオン性リポソームは、原形質膜とはさほど効率的に融合することはできないが、マクロファージによりインビボで取り入れられ、抗菌タンパク質をマクロファージに送達することができる。アニオン性リポソーム組成物は通常、ジミリストイルホスファチジルグリセロ-ルから形成されるが、アニオン膜融合性リポソームは主に、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。イオン化可能な/非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans-PE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(ナトリウム塩、DOPS)、またはこれらの混合物を含むがこれらに限定されない、アニオン性脂質または中性脂質であることができる。非カチオン性脂質は、コレステロールが含まれる場合、例えば、粒子内に存在する全脂質の約5モル%~約90モル%、約10モル%~約58モル%であることができる。いくつかの実施形態では、イオン化可能な/非カチオン性脂質は、上述した脂質の組み合わせ、例えば、DOPC、DOPS、Chol、及びDOPEを含む脂質の組み合わせであることができる。
【0054】
リポソーム粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質は、例えば、限定されるものではないが、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはこれらの混合物を含む、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質であることができる。PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)であることができる。粒子の凝集を防止する複合脂質は、例えば、粒子内に存在する全脂質の、0モル%~約20モル%、または約2モル%であることができる。いくつかの実施形態では、リポソーム組成物は、コレステロールを、例えば、粒子内に存在する全脂質の約10モル%~約60モル%、または約50モル%でさらに含む。
【0055】
別の種類のリポソーム組成物は、例えば、大豆PC、及び卵PCなどの、ホスファチジルコリン(PC)から形成される。別の種類は、リン脂質及び/またはホスファチジルコリン及び/またはコレステロールの混合物から形成される。リポソームを細胞に、インビトロ及びインビボで導入する他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号;同第5,171,678号;WO94/00569;WO93/24640;WO91/16024;Feigner,(1994)J.Biol.Chem.269:2550;Nabel,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:11307;Nabel,(1992)Human Gene Ther.3:649;Gershon,(1993)Biochem.32:7143;及びStrauss,(1992)EMBO J.11:417が挙げられる。
【0056】
リポソームの標的化はまた、例えば、器官特異性、細胞特異性、及び細胞器官特異性に基づいて可能であり、当該技術分野において既知である。リポソームが標的にするデリバリーシステムの場合、リポソーム二分子膜と安定して会合しながら、リガンドの標的化を維持するために、脂質基を、リポソームの脂質二分子膜に組み込むことができる。脂質鎖を標的のリガンドに結合させるために、様々な連結基を使用することができる。さらなる方法は当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許公開第20060058255号に記載されており、その連結基は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
切断可能な連結基は、切断剤、例えば、pH、酸化還元電位、または、分解性分子の存在の影響を受けやすい。一般に、切断剤は、血清または血液中よりも細胞内で、高いレベルまたは活性にて、より効果がある、または見出される。そのような分解性剤の例としては、例えば、還元により、酸化還元性の切断可能な連結基を分解可能な、細胞に存在する、メルカプタンなどの酸化性もしくは還元性酵素、または還元性剤;エステラーゼ;酸性環境を作り出すことができるエンドソームまたは剤、例えば、5以下のpHをもたらすもの;一般酸として作用することにより、切断可能な酸連結基を加水分解または分解することができる酵素;ペプチダーゼ(基質特異性であることができる);及び、ホスファターゼを含む、特定の基質に対して選択性である、または、基質特異性を有しない、酸化還元剤が挙げられる。
【0058】
ジスルフィド結合などの切断可能な連結基は、pHの影響を受けやすい可能性がある。ヒト血清のpHは7.4であるが、細胞内の平均pHはわずかに低く、約7.1~7.3の範囲である。エンドソームは、5.5~6.0の、より酸性のpHを有し、リソソームは、約5.0で、より一層酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHにて切断される切断可能な連結基を有することにより、カチオン性脂質をリガンドから細胞内へ、または、細胞の所望の区画に放出する。
【0059】
リンカーは、特定の酵素により切断可能な、切断可能な連結基を含むことができる。リンカーに組み込まれる切断可能な連結基の種類は、標的とされる細胞により左右される可能性がある。一般に、候補となる切断可能な連結基の適合性は、分解性剤(または条件)が、候補となる連結基を切断する能力を試験することにより評価することができる。候補となる切断可能な連結基が、血液中で、または、他の非標的組織と接触したときに、切断に抵抗する能力を試験することもまた、望ましいであろう。したがって、第1の条件と第2の条件とでの、切断に対する相対的な感受性を測定することができ、ここで、第1の条件は、標的細胞中での切断を示すように選択され、第2の条件は、他の組織または生物学的流体、例えば、血液または血清での切断を示すように選択される。評価は無細胞系、細胞、細胞培養液、器官もしくは組織培養液、または動物全体で実施することができる。初期の評価は、無細胞または培養液条件で行い、動物全体でのさらなる評価により確認するのが有用であり得る。好ましい実施形態では、有用な候補となるリンカーは、血液または血清(もしくは、細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較して、細胞内で(または、細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件にて)、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または約100倍速く切断される。
【0060】
脂質ナノ粒子
本発明の抗細菌剤は、脂質製剤、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)に完全に封入することができる。LNPは、静脈内(i.v.)注射後の循環寿命の延長を示し、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に隔てられている部位)にて蓄積するため、全身投与に極めて有用である。LNPは「pSPLP」を含み、これは、PCT公開第WO2000/003683号で説明されている、封入された縮合剤-核酸複合体を含む。本発明の粒子は通常、約50nm~約150nm、より典型的には約60nm~約130nm、より典型的には約70nm~約110nm、最も典型的には約70nm~約90nmの平均直径を有し、実質的に無毒である。さらに、本発明の核酸-脂質粒子中に存在する場合、核酸は、ヌクレアーゼによる分解に対して、水溶液中では耐性を有する。核酸-脂質粒子、及び、その調製方法は、例えば、米国特許第5,976,567号;同第5,981,501号;同第6,534,484号;同第6,586,410号;同第6,815,432号;米国公開第2010/0324120号、及び、PCT公開第WO 96/40964号に開示されている。
【0061】
一実施形態では、脂質:薬剤の比(質量/質量比)(例えば、脂質:オリゴヌクレオチドの比)は、約1:1~約50:1、約1:1~約25:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、または、約6:1~約9:1の範囲である。上記列挙した範囲の中間となる範囲もまた、本発明の一部であると想到される。
【0062】
カチオン性脂質の非限定例としては、DODAC、DDAB、DOTAP、DOTMA、DODMA、DLinDMA、DLenDMA、DLin-C-DAP、DLin-DAC、DLin-MA、DLinDAP、DLin-s-DMA、DLin-2-DMAP、DLin-TMA.Cl、DLin-TAP.Cl、1DLin-MPZ、DLinAP、DOAP、DLin-EG-DMA、DLin-K-DMAもしくはその類似体、ALN100、MC3、Tech G1、またはこれらの混合物が挙げられる。カチオン性脂質は例えば、粒子内に存在する全脂質の約20モル%~約50モル%、または約40モル%を占めることができる。
【0063】
イオン化可能な/非カチオン性脂質は、DSPC、DOPC、DOPS、DPPC、DOPG、DPPG、DOPE、POPC、POPE、DOPE-mal、DPPE、DMPE、DSPE、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans PE、SOPE、コレステロール、またはこれらの混合物を含むがこれらに限定されない、アニオン性脂質または中性脂質であることができる。非カチオン性脂質は、コレステロールが含まれる場合、例えば、粒子内に存在する全脂質の約5モル%~約90モル%、約10モル%~約60モル%であることができる。
【0064】
粒子の凝集を抑制するコンジュゲート脂質は、例えば、限定されるものではないが、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはこれらの混合物を含む、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質であることができる。PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)であることができる。粒子の凝集を防止する複合脂質は、例えば、粒子内に存在する全脂質の、0モル%~約20モル%、または約2モル%であることができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、LNPは、コレステロールを、例えば、粒子内に存在する全脂質の約10モル%~約60モル%、または約50モル%でさらに含む。
ミセル
ミセルは、分子の疎水性部分が全て内側を向いており、親水性部分を、周囲の水相と接触させたままにするように、両親媒性分子が球状構造に配置されている、特定の種類の分子アセンブリである。ミセルは、脂質から作製されることができる。ミセル相は、二分子膜相の単一尾脂質の挙動を閉じ込めることにより引き起こされる。脂質先端基の水和により、分子上で作用する先端基に対して領域を収容しながら、二分子膜の内側の体積全てを満たす難しさが、ミセルの形成をもたらす。この種のミセルは、順相ミセル(水中油型ミセル)として知られている。逆ミセルは、中央に先端基が存在し、尾が外に伸びている(油中水型ミセル)。
【0066】
ミセルはほぼ球状の形状である。楕円体、円柱、及び二層などの形状を含む他の層もまた可能である。ミセルの形状及びサイズは、その界面活性剤分子の分子幾何学と、界面活性剤濃度、温度、pH、及びイオン強度などの溶液の条件との関数である。ミセルの形成プロセスはミセル化として知られており、その多形性により、多くの脂質の相挙動の一部を形成する。
【0067】
標的部分
本明細書に記載する超分子構造体は、例えば、標的部分を含むことができる。標的部分を使用して、超分子構造体を特定の細胞型(例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、マクロファージまたは樹状細胞))に向けることができる。特定の脂質(例えば、ホスファチジルセリン)を超分子構造体(例えば、小胞)内で、超分子構造体相形成脂質として、及び標的部分としての両方で使用することができる。標的部分は、例えば、抗体または抗原結合フラグメントまたは操作されたその誘導体(例えば、Fcabまたは融合タンパク質(例えば、scFv))であり得る。標的部分は例えば、ポリペプチドであることができる。あるいは、標的部分は、例えば、低分子(例えば、マンノースもしくは葉酸塩)、または、低分子のクラスター(例えば、マンノースのクラスター)であることができる。標的部分は、超分子構造体と共有的に、または非共有的に会合することができる。
【0068】
低分子
標的部分は、標的細胞の表面上で発現する受容体を複合体化可能な低分子であることができる。本明細書に記載する超分子構造体中で標的部分として使用可能な低分子の非限定例は、ホスファチジルセリン、葉酸リゾホスファチジルセリン、マンノース、及びマンノースクラスターである。
【0069】
標的部分はホスファチジルセリンまたはリゾホスファチジルセリンであるのが好ましい。より好ましくは、標的部分はホスファチジルセリンである。ホスファチジルセリン及び/またはリゾホスファチジルセリンは、超分子構造体の残りに非共有的に結合した、超分子構造体相形成脂質として存在することができる。
【0070】
葉酸塩は、標的部分として使用することができる。本明細書に記載する超分子構造体では、葉酸塩は以下の構造を取ることができる:
【0071】
【化1】
【0072】
マンノースまたはマンノースクラスターを使用して、本明細書に記載するの超分子構造体を、樹状細胞及びマクロファージに向けることができる。マンノースクラスターは、当該技術分野において既知である。
【0073】
葉酸塩、マンノース、及びマンノースクラスターは、超分子構造体に共有結合することができる。葉酸塩、マンノース、及びマンノースクラスターを結合させるコンジュゲーション技術は、例えば、US2014/0045919、US9,725,479、US8,758,810、US8,450,467、US6,525,031、US6,335,434、及びUS5,759,572に記載されているように、当該技術分野において既知である。
【0074】
抗原結合部分
本明細書に記載する超分子構造体中の抗原結合部分は、抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば、F(ab)もしくはFab、または、その組み換え誘導体(例えば、Fcabもしくは融合タンパク質、例えば、scFv)であることができる。ヒトまたはキメラ、例えば、ヒト化抗体は、本明細書に記載する超分子構造体内で抗体として使用することができる。
【0075】
抗原結合部分は、抗原結合部分により認識される表面抗原を有するAPCを標的にする。樹状細胞は、抗DEC205、抗CD304、抗CD303、抗CD40、抗CD74、抗BDCA2、もしくは抗CD123抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはその組み換え誘導体により標的にされることができる。マクロファージは、抗CD163、抗CD40、抗CD74、抗CD206、もしくは抗CD123、または、その抗原結合フラグメントもしくは組み換え誘導体により標的にされることができる。
【0076】
抗CD38抗体の非限定例は、ダラツムマブ、SAR650984、MOR202、または、WO2012/092616に開示されている、抗体Ab79、Ab19、Ab43、Ab72、及びAb110のいずれか1つであり、これらの抗体の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。抗CD79b抗体の非限定例は、WO2014/011521に開示されているhuMA79b v28である。抗CD22抗体の非限定例は、US2014/0127197に開示されている10F4である。抗CD20抗体の非限定例は、リツキシマブである。抗DEC205抗体の非限定例は、US2010/0098704に示され、その抗体は、参照により本明細書に組み込まれている。抗CD40抗体の非限定例は、ルカツムマブ及びダセツズマブである。抗CD304抗体の非限定例は、ベセンクマブである。
【0077】
抗原結合部分を結合するためのコンジュゲーション技術は、例えば、Ansell et al.,Methods Mol.Med.,25:51-68,2000;US2002/0025313;US6,379,699;及びUS5,059,421に記載されているように、当該技術分野において既知である。
【0078】
ポリペプチド
標的部分は、細胞に対する親和性を有する(例えば、細胞型、例えば、樹状細胞に対する親和性を有する)ポリペプチドであることができる。ポリペプチドの非限定例は、RGDペプチド、狂犬病ウイルス、糖タンパク質(RVG)、及びDC3ペプチドである。あるいは、ポリペプチドは、TLR2アゴニスト、例えば、MALP-2リポタンパク質、MALP-404リポタンパク質、OspA、ポリン、LcrV、Hsp60、糖タンパク質gH/gL、または糖タンパク質gBであってよい。
【0079】
ペプチドを結合するためのコンジュゲーション技術は、例えば、Ansell et al.,Methods Mol.Med.,25:51-68,2000;US2002/0025313;US6,379,699;及びUS5,059,421に記載されているように、当該技術分野において既知である。
【0080】
PAMP
標的部分はPAMPであることができる。PAMPは、当該技術分野において既知であり、例えば、CpG ODNである。CpG ODNは一般に、3つのクラス:クラスA、クラスB、及びクラスCに分けられる。クラスAのCpG ODNは通常、3’及び5’末端に、チオリン酸骨格を有するポリGテール、及び、リン酸骨格を含む中心回文配列を含有する。クラスAのCpG ODNは通常、中心回文配列の中にCpGを含有する。クラスBのCpG ODNは通常、完全にチオリン酸化した骨格を含み、クラスBのCpG ODNの5’末端における配列は多くの場合、TLR9活性化に対して重要である。クラスCのCpG ODNは、完全にチオリン酸化した骨格を含み、3’末端配列はデュプレックスの形成が可能である。PAMPは、当該技術分野において既知の技術及び方法を使用して、超分子構造体に共有結合させることができる。
【0081】
治療方法
本明細書に記載する抗菌溶解タンパク質は、疾患または状態、例えば細菌感染症(例えば、細胞内細菌感染症、例えば、マイコバクテリア感染症、例えば、NTM感染症)を治療するためにヒト対象に投与するための医薬組成物に製剤化するのが好ましい。細菌感染症は、別の場合においては健常な対象で生じ得る。あるいは、細菌感染症は、別の併存疾患または疾患を有する対象において生じ得る。例えば、免疫系が弱った対象は、細菌感染症により罹りやすい可能性がある。
【0082】
NTMにより引き起こされるマイコバクテリア感染症は、通常は環境に存在する細菌である。これらの細菌を吸引することにより、健常な患者、及び、免疫系が損なわれた患者の両方において疾患が引き起こされ得る。NTM疾患は最も多くの場合、成人において肺に影響を及ぼすが、任意の体の部位にも影響を与え得る。何名かの対象では、NTM感染症に罹り、疾患が進行するリスクが高い。気管支拡張症(気道の拡大)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症などの、既存の肺疾患を有する人、または、結核などの以前に感染症に罹った人は、肺NTM疾患のリスクが増加している。HIV感染症(CD4<50)、または、免疫関連遺伝病(例えば、インターフェロン-γ欠損症もしくは受容体欠損症、インターロイキン-12欠損症)が進行した対象では、播種性(例えば、体内の広範囲にわたる)NTM感染症の一部として、肺疾患が進行し得る。治療される対象は、例えば、細菌感染症に加えて、前述の適応症のいずれかを有し得る。
【0083】
本明細書に記載する方法組成物及び方法を使用して、感染症のレベルを低下させることができる。例えば、方法は、参照と比較して、感染症のレベル(例えば、細菌の数、または感染のサイズ)を低下させることができる。例えば、感染症は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下することができる。
【0084】
医薬組成物
本明細書に記載する抗菌剤は、インビボでの投与に好適な生物学的に適合性のある形態にて、ヒト対象に投与するための医薬組成物に製剤化されるのが好ましい。
【0085】
当業者により理解されるように、本明細書に記載する組成物は、選択された投与経路に応じて、様々な形態で対象に投与することができる。本明細書に記載する組成物は、例えば、組成物(例えば、超分子構造体、例えば、リポソーム、ミセル、またはLNP)を標的細胞に到達させる任意の経路により、投与されることができる。組成物は、例えば、経口、非経口、髄腔内、脳室内、実質内、頬、舌下、経鼻、直腸、貼付、ポンプ、または経皮投与により投与されることができ、医薬組成物は適宜製剤化される。非経口投与としては、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、経鼻、肺内、髄腔内、脳室内、実質内、直腸及び局所の投与方法が挙げられる。一実施形態では、空気非経口投与により投与される組成物は、選択された期間にわたる連続点滴によるものであってよい。いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載する組成物は吸入により投与される。
【0086】
2種以上の抗菌剤の投与は、同一経路による、または異なる経路によるものであってよく、連続して、またはほぼ同時に生じてよい。例えば、組み合わせの第1の抗菌剤を静脈内注射によって投与してもよい一方で、その組み合わせの第2の治療剤を経口投与してもよい。
【0087】
本明細書に記載する特定の組成物を、例えば、吸入により投与することができる。吸入は経口吸入、または経鼻吸入であってよい。本明細書に記載する吸入可能な組成物は、液体剤形、または乾燥粉末剤形として提供することができる。乾燥粉末組成物は、例えば、そのままで、または、ビヒクル(例えば、生理食塩水(例えば、等張食塩水)、リン酸塩緩衝生理食塩水、または水)で再構成した後で、吸入により投与することができる。
【0088】
吸入可能な乾燥粉末剤形は、乾燥により(例えば、凍結乾燥、スプレードライ、スプレー凍結乾燥、または超臨界流体技術により)、本明細書に記載する液体組成物から調製することができる。本明細書に記載する、吸入可能な乾燥粉末剤形は、担体(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールなど)、凍結保護剤(例えば、トレハロース、マンニトールなど)、及び/または、接着防止剤(例えば、グリシン、L-ロイシン、セリンなど)を含むことができる。本明細書に記載する、吸入可能な乾燥粉末剤形は、乾燥粉末吸入器を使用して投与することができる。乾燥粉末吸入器は当該技術分野において既知であり、噴射剤を含んでも、含まなくてもよい。乾燥粉末吸入器の非限定例は、Newman,Expert Opin.Biol.Ther.,4:23-33,2004に見出すことができ、その開示全体が本発明において参照により組み込まれている。
【0089】
本明細書に記載する、吸入可能な液体剤形(例えば、エアゾール製剤)は、超分子構造体を含有する液体組成物の調製で有用な技術及び方法を使用して調製することができる。吸入可能な液体剤形は通常、生理学的に許容できる水性または非水溶媒中に、本明細書に記載する超分子構造体の懸濁液を含み、通常、封止した容器内に滅菌形態で、単回または複数回用量で存在し、これは、噴霧装置により使用するためのカートリッジまたはレフィルの形態を取ることができる。あるいは、封止した容器は、一体型分配装置、例えば、単回投与経鼻吸入器、または、使用後に廃棄される目的の、絞り弁で適合したエアロゾル分配器であることができる。剤形がエアロゾル分配器を含有する場合、剤形は噴射剤を含有し、これは、圧縮ガス、例えば、圧縮空気、または、有機噴射剤、例えばヒドロフルオロアルカンであることができる。吸入可能な液体剤形は、ネブライザーを使用して投与することができる。バルクの液体を小滴に、圧搾空気により変換するプロセスは、霧化と呼ばれる。気体ネブライザーの操作には、液体霧化のための駆動力として、噴射剤が必要である。様々な種類のネブライザーRespiratory Care,45:609-622,2000に記載されており、その開示全体が本発明において参照により組み込まれている。あるいは、本明細書に記載する、吸入可能な液体剤形は、定量吸入器を使用して投与することができる。定量吸入器は当該技術分野において既知であり、通常、キャニスター、アクチュエーター、及び絞り弁を含む。
【0090】
本発明に記載する組成物は、例えば、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に経口投与され得るか、またはハードシェルもしくはソフトシェルのゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤に圧縮され得るか、または食事の食品に直接組み込まれ得る。経口治療投与の場合、本明細書に記載する組成物は、賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、及びウエハーの形態で使用され得る。本明細書に記載する組成物もまた、非経口投与することができる。本明細書に記載する組成物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSO、及びアルコールを含むまたは含まないそれらの混合物、及び油中で調製され得る。これらの製剤は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の増殖を防止するための保存剤を含有してもよい。好適な製剤を選択及び調製するための従来の手順及び成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(2012,22nd ed.)、及び、2018年に発行されたThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP 41 NF 36)に記載されている。注射用途に適切な医薬形態には、滅菌水溶液または滅菌分散液、及び注入可能な滅菌溶液または滅菌分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、この形態は滅菌されていなければならず、これがシリンジにより容易に投与され得る程度に流体でなければならない。頬または舌下投与に好適な組成物としては、錠剤、ロゼンジ、及びトローチが挙げられ、ここで、活性成分は、糖、アカシア、トラガカント、ゼラチン、及びグリセリンなどの担体と共に製剤化される。直腸投与のための組成物は便利なことに、カカオバターなどの従来の座薬基剤を含有する座薬の形態で存在する。
【0091】
本明細書に記載する組成物は、本明細書に記載するように、動物、例えば、ヒトに、単独で、または薬学的に許容される担体と組み合わせて投与され得、その割合は、組成物の溶解性及び化学的性質、選択された投与経路、及び標準的な医薬慣行によって決定される。
【0092】
組成物、例えば、本明細書に記載する抗菌性バクテリオファージタンパク質を含む組成物の用量は、抗菌溶解タンパク質の薬力学的特性、投与様式、治療対象の年齢、健康状態、及び体重、症状の性質及び程度、治療頻度、及び同時治療の種類(存在する場合)、ならびに、治療される動物における組成物のクリアランス率などの多くの因子に応じて左右される可能性がある。本明細書に記載する組成物は、臨床応答に応じて、必要に応じて調節され得る好適な投薬量で最初に投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物、例えば、バクテリオファージを含む組成物の用量は、予防に、または治療に有効な量である。さらに、用量は全て、連続して与えることができる、または、所与の時間枠当たりで、与えられる用量に分けることができると理解されている。組成物は、例えば、毎時間、毎日、毎週、毎月、または毎年投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、連続して、または全身投与される。
【0093】
組み合わせ療法
本明細書に記載する医薬組成物は、組み合わせ療法の一部として投与することができる。組み合わせ療法とは、2つ(またはそれ以上)の異なる剤または治療が、特定の疾患または状態に対して、定義された治療レジメンの一部として対象に投与されることを意味する。治療レジメンでは、対象に対する別個の剤の効果が重なるように、各剤の投与の用量及び周期性を定義する。いくつかの実施形態では、2つ以上の剤の送達は同時または並行であり、本剤は同時製剤化され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の剤は同時製剤化されず、処方されたレジメンの一部として連続的に投与される。各治療剤の連続または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介した直接吸収を含む、任意の適切な経路によるものであることができるが、これらに限定されない。治療剤は、同じ経路によって、または異なる経路によって投与することができる。例えば、組み合わせの第1の治療剤を静脈内注射によって、または、エアゾール化により投与してもよい一方で、その組み合わせの第2の治療剤を経口投与してもよい。
【0094】
本明細書に記載する組み合わせの実施形態のいずれかにおいて、第1の治療剤及び第2の治療剤は、同時にまたはいずれかの順序で順次投与することができる。第2の治療剤の前後の、最大15分、最大30分、最大1時間、最大2時間、最大3時間、最大4時間、最大5時間、最大6時間、最大7時間、最大8時間、最大9時間、最大10時間、最大11時間、最大12時間、最大13時間、最大14時間、最大16時間、最大17時間、最大18時間、最大19時間、最大20時間、最大21時間、最大22時間、最大23時間、最大24時間、または1~7、1~14,1~21、もしくは1~30日間で、第1の治療剤は直ちに投与することができる。
【0095】
本明細書に記載する医薬組成物は、抗菌溶解タンパク質を含む超分子構造体と共に投与される、追加の抗細菌剤をさらに含むことができる。
本明細書に記載する組成物及び方法は、例えば、細菌感染症、例えば、NTM感染症により悪化し得る、根底にある肺状態の治療をさらに含むことができる。好適な肺療法としては、気道クリアランス、ネブライザー、呼吸用マスク、及び吸入器、例えば、ステロイド吸入器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
抗生物質
追加の抗菌剤は、抗生物質であることができる。好適な抗生物質としては、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン、アズロシリン、テモシリン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファロリジン、セファゾリン、セファマンドール、セフロキシム、セファレキシン、セフプロジル、セファクロル、ロラカルベフ、セフォキシチン、セフメタゾール、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフジニル、セフピロム、セフェピム、クロルヘキシジン、BAL5788、BAL9141、イミペネム、エルタペネム、メロペネム、アズトレオナム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、ピューロマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、シソマイシン、イセパマイシン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、ABT-773、リンコマイシン、クリンダマイシン、バンコマイシン、オリタバンシン、ダルババンシン、テイコプラニン、キヌプリスチン及びダルホプリスチン、スルファニルアミド、p-アミノ安息香酸、スルファジアジン、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾール、スルファタリジン、リネゾリド、ナリジクス酸、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ペフロキサシン、エノキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、テマフロキサチン、ロメフロキサシン、フレロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、ゲミフロキサシン、シタフロキサシン、メトロニダゾール、ダプトマイシン、ガレノキサシン、ラモプラニン、ファロペネム、ポリミキシン、チゲサイクリン、AZD2563、トリメトプリム、エタンブトール、及びリファンピンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、複数の抗生物質は、本明細書に記載する組成物と共に投与される。いくつかの実施形態では、抗生物質は、セファロスポリン、カルバペネム、ペニシリン、及びフルオロキノロンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗生物質は、チアセタゾン、sq-109、ベダキリン、デラマニド、ピラジナミド、及びイソニアジドからなる群から選択される。
【0097】
有利なことに、いくつかの実施形態では、同時投与される治療剤との相乗作用により、他の治療剤を伴わずに投与した場合、抗生物質の、治療量以下の用量での投与が可能となり得る。
【0098】
抗生物質は、抗菌溶解タンパク質を含有する超分子構造体により製剤化することができる。抗生物質は、個別の医薬組成物として投与することができる。抗生物質は、ファージを有する超分子構造体を含有する医薬組成物とは異なる時間で投与することができる。いくつかの好ましい実施形態では、追加の抗生物質はアミカシンである。アミカシンは、例えば、吸入のために製剤化されるリポソームアミカシンであってよい。
【0099】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図する。実施例は、本発明を如何様にも限定することを意図しない。
実施例
以下の実施例は、本明細書に記載する組成物及び方法をどのように使用し、製造し、評価し得るかについての説明を当業者に提供するために提示し、純粋に本開示を例示することを意図するものであり、発明者らが自身の開示と見なすものの範囲を限定することを意図しない。
【0100】
実施例1:材料及び方法
クローニング
I.溶解素Aのクローニング
バクテリオファージHalo LysA(gp 10(寄託番号NC_001900))のオープンリーディングフレームを、終止コドンを用いずに、Genscriptにより合成紙、pet21aプラスミドのNdeI~XhoI部位に入れた。
【0101】
II.溶解素Bのクローニング
bD29 LysB(gp12寄託番号NC_001900)のオープンリーディングフレームを、アダプターを備えたGenscriptにより合成して、T7タグの下流のpet21プラスミドの位置5237にて、Gibsonベースの相同性クローニングによりクローンした。
【0102】
タンパク質の調製
I.発現
E.coli Bl21(de3)細胞に、治療用ペイロードを含むpET21aプラスミドを形質導入し、トリプチックソイブロス(TSB)培地で培養した。培養物は全て、37℃でおよそ3.5時間、または、0.4の光学密度(OD)600に達するまで、増殖させた。増殖した培養物を氷上で30分間インキュベートした後、40mMのIPTGで誘導した。培養物を発現のために低温で一晩インキュベートした。インキュベーターから取り出した後、培養物を、スイングバケットローターの中で、20分間、4000毎分回転数(RPM)で遠心分離にかけて、上清から細胞を分離した。
【0103】
治療用タンパク質を精製するために、細菌タンパク質抽出試薬(B-PER)、ベンゾナセム、及びリゾチームを含有する溶液で、溶解を行った。高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)ランニング緩衝液は、50mMのトリス(pH8)、250mMのNaCl、50mMのイミダゾール(pH8)、0.5mMのMgCl、及び10%グリシン(glyc)で構成された。溶出緩衝液は、50mMのトリス(pH8)、250mMのNaCl、700mMのイミダゾール(pH8)、0.5mMのMgCl、及び10%グリセロールで構成された。5mLのCytiva HisTrap FF 5を、AktaPurifiertと共に使用し、溶出画分の透析を、10kDaの透析バッグを用いて、一晩4℃で行った。透析緩衝液は、50mMのトリス(pH8)、250mMのNaCl、0.5mMのMgCl、及び20%グリセロールで構成された。
【0104】
II.ペイロードのリポソーム封入
Nanoassemblr Ignite(Precision Nanosystems)を用いてリポソームをアセンブルするために、1mg/mLの全脂質濃度の、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC):1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(ナトリウム塩;DOPS):コレステロール(Chol):1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を、1:0.3:0.4:1の比率で、有機溶媒及び水性緩衝液(1Mのトリス、pH7.4)と組み合わせた。
【0105】
ペイロードのリポソームへの付加を媒介するために、2~4mg/mLのタンパク質ペイロードを水性緩衝液に添加し、続いて、1×10~1×1010pfu/mLのファージを水性緩衝液に添加した。これは、15mL/分の全流速、及び1:1の流速比、かつ、1mLの全体積で生じた。2工程透析によりリポソームを精製するために、10kDaのslide-a-lyzerによる30分間の透析を、100mMまたは10mMのトリス(pH7.4)、5%グリセロールの中で、室温で行った。試料のサイズを、動的光散乱(DLS)装置で分析し、封入された試料のサイズ及び多分散度を測定した。0.5~1.5マイクロメートルのサイズを作り出す試料を、細胞でのアッセイのために選択した。
【0106】
したがって、ABIα(溶解素A、溶解素B、イソアミラーゼ、及びαアミラーゼ)、ならびにBIα(溶解素B、イソアミラーゼ、及びαアミラーゼ)を調製した。
ABIαの投与による、非結核マイコバクテリアの殺傷
0日目に、Middlebrook 7H9ブロス+TWEEN(約1×10cfu/mL)にて、McFarlandスタンダードにより、細胞の対数増殖を0.5に調整し、調整した懸濁液を、7H9ブロス+TWEENで1:5の比率で希釈することにより、M.abscessus細菌細胞の懸濁液を調製した。アッセイ用の培地溶液は、30mLのMiddlebrook 7H9、ADC、及びTWEEN;3.3mLの12X PM添加剤(Biolog,Inc)、3.3mLのIF-01a流体(Biolog,Inc)、及び400μLの100X 色素G(Biolog,Inc)を含んだ。90μLの調製した培地溶液を、96ウェルプレートのウェルにピペット処理し、5μLの調製した細胞懸濁液を添加し、10μLの酵素を添加して、それぞれ、3.2μgの終濃度にすることにより、アッセイプレートを調製した。対照は、透析緩衝液と共に、またはこれなしで、細胞のみを含んだ。予備ステップの後、プレートを蓋で締め、パラフィルムを巻き付けることで、アッセイプレートをインキュベートした。次に、プレートを37℃の静止インキュベーターに配置した。
【0107】
1日目に、10μLの酵素カクテルを、用量2x及び3xとして示されるウェルに添加することにより、投与アッセイプレートを調製した。2日目に、10μLのABIα(溶解素A、溶解素B、イソアミラーゼ、及びαアミラーゼ)、またはBIα(溶解素B、イソアミラーゼ、及びαアミラーゼ)カクテルを、用量3xとして示されるウェルに添加した。3日目に、50mLのMiddlebrook 7H9、ADC、及びTWEEN、ならびに、100Xの色素Gで、連続希釈用の色素培地を調製した。90μLの培地を、96ウェルプレートのウェルにアリコートし、アッセイプレートをインキュベーターから取り除き、10μLの反応物を、96ウェルプレートの上列にピペット処理し、10μLをピペット処理する(例えば、ウェルをピペット処理し、次の列に希釈する前に混合する)ことにより、列A~Hで、10倍連続希釈を行うことにより、増殖した連続希釈物(GOSD、例えば、-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、及び-8)を調製した。次に、プレートを蓋で覆い、パラフィルムを巻き付けて、37℃、COインキュベーターに配置して、72時間静置した。インキュベーション後、培養液の光学密度(OD590)を読み取った。実験のデータはヒストグラムとして表され、Y軸は、検出下限(LLoD)で除した、培養物の光学密度(OD590)590(OD590/LLoD)を示す。LLoDを、バックグラウンド測定用の細胞対照なしで計算し、1を上回る値は全て、当該希釈において、増殖に対して有意とする。
【0108】
低増殖マイコバクテリアM.Intracellulareの殺傷
5mLの12X PM添加剤溶液(Biolog,Inc)、45mLのMiddlebrook 7H9(ADCサプリメントを含む)、及び、500uLの100X色素G(Biolog,Inc)を用いて、培地溶液を調製した。M.intracellulareの処理を、以下のとおりに行った:90μLの調製培地溶液を、96ウェルプレートの列Aに添加した。M.intracellulareの増殖株の細胞密度を、0.5McFarlandスタンダード(約1×10cfu/mL)に調整して、10μLの細胞を96ウェルプレートに添加し、1×10cfu/ウェルの入力細胞濃度を目標にした。対照として、いくつかのウェルはそのままとし、及び/または、10uLの透析緩衝液(DB)を添加した。10μLのABIαカクテルを、3.3μg/ウェルの終濃度にし、プレートを37℃で3日間インキュベートした。前述のように、OD590を読み取り、プレートをインキュベーターに戻して配置した。6日目に、プレートを37℃でインキュベートし、OD590を定量した。最終ステップにおいて、GOSD反応を細胞のみ、細胞+DB、及び細胞+ABIαで実施した。そうするために、90μLの培地溶液を、新しい96ウェルプレートに添加し、続いて、10μLの反応液を上列に添加して、列Aから列Hまで、10倍連続希釈を行った。プレートを37℃で6日間インキュベートし、OD590を読み取った。
【0109】
M.AbscessusでのABIαカクテルのMIC測定
M.abscessusの管を、Mcfarlandスタンダード0.5まで希釈し、1×10cellまで希釈して、プレートマップに従いウェルに添加した。次に、10μLのABIαカクテル(3.2μg)を各ウェルに添加した。未処理の対照では、等体積のDBを添加した。次に、ビアペネムをウェルに、2倍希釈系列で添加した。ウェルは全て、1x色素培地により、適切な体積及び緩衝液条件にした。具体的には、50mLのファルコンチューブで、30mLのMiddlebrook 7H9、ADC、及びTWEEN;3.3mLの12X PM添加剤、3.3mLのIF-01a流体、及び400uLの100X色素G、を添加した。
【0110】
プレートを、蓋を閉め、パラフィルムを側面に巻き付けて、24時間、37℃でインキュベートした。全連続希釈の前に、静置プレートを少なくとも10分間振盪させ、ピペットを上下に動かしてアグリゲートを分解した。複製GOSD実験を96時間、37℃で、Omnilog Biolog,inc.にて実施した。これらの実験では、希釈は1×10-6で実施した。
【0111】
マイコバクテリアのマクロファージへの取り込み
1日目には、マクロファージを以下のとおりに調製した:T-75フラスコ内の、マクロファージのコンフルエント培養液を、培地からデカントし、新鮮なC-DMEM(10mL)を補充した。細胞を、およそ8×10cellのコンフルエンシーで、細胞スクレーパーを用いてフラスコの底からこすり、C-DMEMの中で、1×10cell/mLの濃度まで希釈した。100μLの希釈細胞を、(1×10cell/ウェルの播種密度のための)96ウェル組織培養プレートのウェルに添加し、プレートを、5% COの中で、37℃で一晩インキュベートした。
【0112】
2日目に、M.abscessusのマクロファージへの取り込みを、以下のとおりに行った:M.abscessus株の増殖培養液を、0.5McFarlandスタンダードに調整して、Middlebrook 7H9にて1:5に希釈し、96ウェルの組織培養プレートを取り出し、100μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回、ウェルを希釈した。100μLの新鮮な、予熱したC-DMEM、5μLの1×10個のM.abscessus細胞を、ウェルに添加した。次に、プレートを5% CO2の中、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を100μLのPBSで3回洗浄した。次に、250μg/mLのアミカシンを含む100μLのC-DMEMを添加し、プレートを1時間インキュベートした。細胞を100μLのPBSで3回洗浄し、50μg/mLのアミカシンを含む85μLのC-DMEMを補充した。酵素で処理するために、15μLの調製酵素カクテルを、組織培養プレートの指定のウェルに添加した。3.2μgの、ABIαカクテルの各構成成分(例えば、溶解素Aのみ、溶解素Bのみ、イソアミラーゼのみ、及びαアミラーゼのみ)で、遊離酵素処理を行った。同様の量の封入ABIαを、平均50%のペイロード封入にて添加した。プレートを、5% COの中で37℃で、72時間インキュベートした。
【0113】
5日目に、以下のとおりのマクロファージ抽出を行った:インキュベーション後、培地を取り除いて細胞をPBSで3回洗浄した。100μLの0.5%SDSを添加し、ピペットを上下に動かして混合した。プレートを37℃で10分間インキュベートし、インキュベーターから取り出した。ウェルを上下にピペット処理して混合し、培地を新しい96ウェルプレートに移した。プレートを、Biotek振盪インキュベーターに添加して、細胞の凝集を解き、CFU定量のために、全ての反応ウェルに対してGOSDを行った。
【0114】
赤痢菌ファージハントプロトコル及びファージ調製
赤痢菌ファージハントプロトコル及びファージ調製を、以下のとおりに行った。Deer lsland排水処理施設から、500mLの活性汚泥試料を収集した。受領の際に、試料をTRITON X-100で処理し、0.1%の終濃度にした。ボトルを5回反転して、5分間静置した。サンプルを、50mLのファルコンチューブにアリコートして、10分間4000xgで遠心分離にかけた。上清をきれいなボトルに収集して、もう一度TRITON X 100で処理し、0.1%の終濃度にした。貯蔵のために、40%のグリセロールを上清に添加し、20%の終濃度にした。上清を、50mLのファルコンチューブにて、40mLの体積にアリコートし、使用するまで-80℃の冷凍庫で保存した。
【0115】
20%グリセロール中で、-80で保管した、40mLのTRITON処理した、汚れた上清を解凍した。250mLのフラスコに、50mLのTSB、及び、1mMの塩化マグネシウム、及び、500μLの、一晩のフレクスナー赤痢菌株(ATCC29903)を添加した。汚れた上清をInnovaprep中空繊維ピペットで濃縮した。次に、TSB及び細胞を含有するフラスコを、1ポンプの溶出流体(0.075%のTWEEN 20+25mMのトリス(pH8.0))で溶出した。37℃で一晩振盪しながら、フラスコをインキュベートした。インキュベーション後、細胞を10分間4000xgで遠心分離にかけた。上清を0.2μmのフィルターで濾過した。プラークアッセイを行うために、100μLの細胞を、100μLの濃縮液、及び濃縮液の連続希釈液に添加し、3mLの0.5% TSBトップアガーと混合して、TSAプレートに配置した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。その後、プラークを、1mMのCaClを含む5mLのTSBで24時間増殖させた。細胞及びデブリを10分間、4000Xgでピペット処理し、上清を以前と同じように、Innovaprepで精製し、50mMのトリス(pH8.0)、150mMのNaCl、10mMのMgCl、2mMのCaCl、及び0.1%ゼラチンを含有する、1.5mLのファージ緩衝液に入れた。
【0116】
赤痢菌ファージによる細胞内赤痢菌の殺傷
赤痢菌ファージによる細胞内赤痢菌の殺傷を、以下のとおりに行った。1日目に、マクロファージの調製を、T-75フラスコ内でのマクロファージのコンフルエント培養により始め、これを培地からデカントし、新鮮なC-DMEM(10mL)を補充した。細胞を、細胞スクレーパーを用いてフラスコの底からこすり(約8×10cellのコンフルエンシー)、C-DMEMの中で、1×10cell/mLの濃度まで希釈した。100μLの希釈細胞を、(1×10cell/ウェルの播種密度のための)96ウェル組織培養プレートのウェルに添加し、プレートを、5% CO2の中で、37℃で一晩インキュベートした。ABIα及び赤痢菌実験用のリポソームを作製するために、DOPC、DOPS、DOPE、及びCholを含む全てのリポソームに、標準的な脂質の作製物を使用した。この作製物は、1:1の流速比、及び15mL/分の流速で生じた。使用した脂質溶媒は、EtOH、及び、水性緩衝液(1Mのトリス、pH8)を含んだ。リポソームは全て、10kDaのメンブレンにて、1時間透析した。具体的には、30分の透析は、100mMのトリス(pH8、5%グリセロール)で生じ、30分の透析は、10mMのトリス(pH8、5%グリセロール)で生じた。タンパク質の濃度の測定を行った後で、試料を採取して細胞を添加し、これを50% IPA・50% PBSに1:1で希釈し、Nanodropで280nmにて吸光度を読み取った。
【0117】
2日目に、フレクスナー赤痢菌の増殖培養物を使用し、0.5McFarlandスタンダードに培養物を調整して濁度計で確認し、Middlebrook 7H9に1:5で希釈して96ウェル組織培養プレートに取り出し、ウェルを100μLのPBSで洗浄することにより、細菌のマクロファージへの取り込みを行った。100μLの新鮮な、予熱したC-DMEM、及び5μの調製培養物をウェルに添加した。プレートを、5% COの中で3時間、37℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞を100μLのPBSで3回洗浄した。250μg/mLのアミカシンを含む100μLのC-DMEMを添加し、1時間インキュベートした。その後、細胞を100μLのPBSで洗浄し、50ug/mLのアミカシンを含む85μLのC-DMEMを補充した。対照にはアミカシンを添加せずにそのままとした。未封入(例えば、遊離)または封入ペイロードで後処理をするために、10μLの調製ペイロードを、組織培養プレートの指定のウェルに添加した。
【0118】
実施例2:抗菌溶解タンパク質の送達は、マイコバクテリウム細胞の有効な殺傷を媒介する
本実施例は、マイコバクテリウム細胞の複製の減衰を可能な、用量依存性酵素カクテルの立証について記載する。
【0119】
材料及び方法
材料及び方法及び細胞株は、実施例1に記載している。
結果
未処理対照と比較して、ならびに、光学密度(OD;図2A)及び細胞計数(図2B)により評価されるように、単回または複数回投与の、溶解素A(A)、溶解素B(B)、イソアミラーゼ(I)、及びαアミラーゼ(α)(ABIα)の酵素カクテルで処理したときに、マイコバクテリウムアブセサス(M.abscessus)は、用量に依存して殺傷されたことが、一連の増殖連続希釈(GOSD)(図1)における、細菌細胞の増殖のスクリーニングにより明らかとなった。異なる用量のABIα処理が、M.abscessusの繁殖不能を引き起こすかいなかを同定するために、用量依存性実験を行った。図3は、用量依存性実験を示し、ここで、3.2μgのABIαでの処理が、M.abscessusを消滅させたことが観察された。同様の実験を、低増殖性のマイコバクテリウム種であるM.intracellulareで行い、細胞増殖を数日にわたり監視した(図4B)とき、ABIα処理が、細胞増殖の減衰の持続をもたらしたことが明らかとなった(図4A)。同様の研究において、ABIαカクテルは効果的に、M.avium、M.fortuitum、M.goodii、M.masiliense、M.boletti、M.chimera、及びM.smegmatisの細胞増殖を減衰したことが明らかとなった(データは図示せず)。合わせると、これらの結果は、インビトロでの死/増殖アッセイにおいて、ABIαによるマイコバクテリアの用量依存性の滅菌を実証している。
【0120】
実施例3:抗菌溶解タンパク質及び抗生物質の送達は、マイコバクテリウム細胞の相乗的殺傷を媒介する
本実施例は、マイコバクテリウム産生の減衰における、ABIα酵素カクテルと抗生物質の組み合わせの相乗効果について記載する。
【0121】
材料及び方法
材料及び方法及び細胞株は、実施例1に記載している。
結果
図5は、それぞれ、ABIα、及び、抗生物質のアミカシン、ビアペネム、セフォキシチン、エタンブトール、モキシフロキサシン、リファンピシン、またはクラリスロマイシンでの処理後の、M.abscessusの細胞増殖アッセイの表での定量である。定量のための画分阻害濃度(FIC)指数を使用することで、アミカシン、ビアペネム、セフォキシチン、またはモキシフロキサシンと組み合わせたABIαが、M.abscessus増殖の減衰において相乗効果を引き起こしたことが明らかとなった。合わせると、これらの結果は、様々な化学抗生物質と組み合わせたABIαの酵素カクテルは、マイコバクテリウム細胞の死において相乗効果を引き起こすことを実証している。
【0122】
実施例4:封入抗菌溶解タンパク質の送達は、感染したマクロファージにおける、マイコバクテリウムの非常に有効な殺傷を媒介する
本実施例は、感染したマクロファージ内での、細胞内局在化マイコバクテリウムの複製の減衰における、封入酵素カクテルの有効性の向上について記載する。
【0123】
材料及び方法
材料及び方法及び細胞株は、実施例1に記載している。
結果
酵素(溶解素A(A)、溶解素B(B)、イソアミラーゼ(I)、またはαアミラーゼ(α))の最も有効な組み合わせを同定し、それらの封入により、マイコバクテリウム複製の減衰の有効性が向上するか否かを同定するために(図6)、未封入ABIα、AB、Iα、もしくはBIα、または、封入ABIα、ABIα、Iα、もしくはBIα(それぞれ、encABIα、encAB、encIα、及びencBIα;図7)で処理した感染マクロファージから抽出した後の、M.abscessusの光学密度を測定した。未封入ABIα、及び、他の全ての部分的カクテルと比較して、封入ABIαカクテルは、M.abscessusの殺傷の向上を示したことが観察された(図8)。合わせると、これらの結果は、単回投与の封入ABIαカクテルは、未封入ABIαの90%殺傷と比較して、細胞内M.abscessusの99%を殺傷したことを実証している。
【0124】
実施例5:封入バクテリオファージの送達は、感染したマクロファージにおける、マイコバクテリウムの非常に有効な殺傷を媒介する
本実施例は、感染マクロファージ内での、細胞内局在化フレクスナー赤痢菌(S.flexneri)の複製の減衰における、封入赤痢菌バクテリオファージの有効性について記載する。
【0125】
材料及び方法
材料及び方法及び細胞株は、実施例1に記載している。
結果
赤痢菌バクテリオファージを使用して、感染マクロファージにおけるフレクスナー赤痢菌の複製を減衰することができるか否かを同定するために、マクロファージをフレクスナー赤痢菌、及び、治療用ペイロード(EPH34)をコードする未封入または封入赤痢菌ファージで処理する実験を行った(図9)。48時間のインキュベーション期間後に、細胞を抽出し、GOSDを一晩定量した。封入赤痢菌ファージEPH34(encPhage)は、マクロファージからの抽出後に増殖を示さなかったが、未封入ファージEPH34は、-1希釈にて増殖を示したことが観察された(図10)。合わせると、これらの結果は、光学密度の10倍低下により示されるように、encPhageは、感染マクロファージにおいて、最も有効なフレクスナー赤痢菌の減少をもたらしたことを実証した。
【0126】
他の実施形態
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれが具体的に個別に参照により組み込まれることが示されていると同程度に、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本出願の用語が、参照により本明細書に組み込まれている文書とは異なって定義されていることが見つかった場合、本明細書で提供する定義が、その用語の定義としての役割を果たす。
【0127】
本発明はその特定の実施形態と共に記載されているが、本発明は、さらなる修正が可能であり、かつ、本出願が、一般に、本発明の原理に従った、本発明のあらゆる変化、使用、または適応をカバーし、本発明が関係する当該技術で知られるようになる、または、習慣的に実践される、本開示からの逸脱を含むことが意図され、上記で説明した本質的な特徴に適用可能であり、特許請求の範囲に従うことが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】