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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】CDI増強COVID-19検査
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20230414BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230414BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553632
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 US2021020664
(87)【国際公開番号】W WO2021178534
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/985,602
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/100,289
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/989,967
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522352823
【氏名又は名称】ハッケンサック・メリディアン・ヘルス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HACKENSACK MERIDIAN HEALTH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ヂァオ,イェンアン
(72)【発明者】
【氏名】パーリン,デイヴィッド・エス.
(72)【発明者】
【氏名】パーク,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ10
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
(57)【要約】
SARS様コロナウイルスおよびSARS-CoV-2ウイルスの汎用的検出のための検出パネルならびに検出パネルを使用するための方法を提供する。検出パネルは、Center for Discovery and Innovation(「CDI」)検出パネル(CDI増強COVID-19検査)としても知られることがあり、対照試料および臨床検体中のヒトRNaseP遺伝子(RP)を検出するために、検出パネルにさらなるプライマー/プローブセットをも含み得る。検出パネルは、E遺伝子(エンベロープ)検出アッセイを使用するSARS様コロナウイルスの汎用的検出、およびN2(ヌクレオカプシド)検出アッセイを使用するSARS-CoV-2の特異的検出の両方のために設計する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)新規コロナウイルスを含むことが疑われる試料を採取するステップと、
b)N2アッセイを使用してSARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)遺伝子における一領域について前記試料の少なくとも第1の部分を分析するステップと、
c)(E)アッセイを使用してSARSコロナウイルスエンベロープ(E)遺伝子の汎用的検出について前記試料の少なくとも第2の部分を分析するステップと、
d)ヒトRPP30アデノウイルス(H-RPP30またはRP)アッセイを使用してヒトRNaseP(RP)を検出するために、前記試料の少なくとも第3の部分を分析するステップと、
e)前記N2、EおよびRPアッセイの結果を複合および評価し、前記新規コロナウイルスの存在または非存在を判定するステップと
を含む、前記試料中の新規コロナウイルスである重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2またはCOVID-19)を検出するための方法。
【請求項2】
前記N2アッセイが、新規コロナウイルス(「nCoV」)特異的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Eアッセイが、すべての重度急性呼吸器症候群(「SARS」)関連コロナウイルスに対して汎用化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記RPアッセイが内部対照である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料を、鼻咽頭もしくは中咽頭もしくは前鼻もしくは中鼻甲介もしくは上気道の検体、または血液、尿もしくは便、の少なくとも1つから採取する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数のアッセイのそれぞれのためのマスターミックスを調製するステップと、ここで、前記複数のアッセイが、新規コロナウイルス(「nCoV」)特異的である第1のアッセイ、重度急性呼吸器症候群(「SARS」)関連コロナウイルスに対して汎用化されている第2のアッセイ、および内部対照である第3のアッセイを含み、
前記マスターミックス15μLを複数のウェルのそれぞれに添加するステップと、ここで、前記ウェルがプレートマップにより定義され、
前記プレートマップに定義されるようにリボ核酸(「RNA」)5μLを各ウェルに加えるステップと、
前記試料をmic qPCRサイクラーに移すステップと、
前記micサイクラーを実行するステップと
を含む、前記試料中の新規コロナウイルス、重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2またはCOVID-19)を検出するための方法。
【請求項7】
前記第1、第2および第3のアッセイが、それぞれN2アッセイおよびEアッセイおよびRPアッセイである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記RPアッセイおよびN2アッセイのためのマスターミックスが、(1)2×ワンステップRT-PCRバッファーIII、(2)TaKaRa ExTaq HS(5U/μl)、(3)PrimeScript RT酵素ミックスII、(4)RNaseフリーdH2O、および(5)混合したプライマー/プローブミックスを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記RPアッセイおよび前記N2アッセイのためのマスターミックスが、2×ワンステップRT-PCRバッファーIIIを10μL/反応、TaKaRa ExTaq HS(5U/μl)を0.4μL/反応、PrimeScript RT酵素ミックスIIを0.4μL/反応、RNaseフリーdH2Oを3μL/反応、および混合したプライマー/プローブミックスを1.2μL/反応を少なくとも含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Eアッセイのためのマスターミックスが、(1)2×ワンステップRT-PCRバッファーIII、(2)TaKaRa ExTaq HS(5U/μl)、(3)PrimeScript RT酵素ミックスII、(4)RNaseフリーdH2O、および(5)Eプローブミックスを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記Eアッセイのためのマスターミックスが、2×ワンステップRT-PCRバッファーIIIを10μL/反応、TaKaRa ExTaq HS(5U/μl)を0.4μL/反応、PrimeScript RT酵素ミックスIIを0.4μL/反応、RNaseフリーdH2Oを1.8μL/反応、およびEプローブミックスを2.4μL/反応を少なくとも含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プレートマップが、以下の表
【表1】
に従い、表中、N2、EおよびRPが、前記複数のアッセイであり、
A~Hが、ウェルの垂直方向の位置設定であり、
1~6が、ウェルの水平方向の位置設定であり、
P1~P12が、混合したプライマー/プローブミックスであり、
HSCが、ヒトRNA抽出物であり、
NECが、陰性抽出対照であり、
PCが、陽性対照であり、
NTCが、鋳型なし対照である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
CDI-COVID19アッセイを使用して新たな実行を創出するステップと、
試料の種類を選択するステップと、ここで、前記試料の種類が(1)不明、(2)NTCまたは(3)陽性対照であり、
群を前記試料に割り当てるステップと、ここで、前記群が(1)N2、(2)Eまたは(3)RPであり、
micサイクルを実行するステップと
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記CDI-COVID-19アッセイが熱サイクル条件を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱サイクル条件が第1の段階および第2の段階を含み、前記第1の段階が、42℃で5分間を1サイクルの実行であり、前記第2の段階が、95℃で5秒間および58℃で20秒間を45サイクルの実行である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査を使用するステップと、
SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子(N2)における1つの領域を検出するためのプライマーおよびプローブの1つのセットを使用するステップと、
SARS様コロナウイルス(E)の汎用的検出のためのプライマーおよびプローブの1つのセットを使用するステップと、
臨床試料中のヒトRNaseP(RP)を検出するためのプライマーおよびプローブの1つのセットを使用するステップと
を含む、CDI増強COVID-19検査を提供するステップを含む、新規コロナウイルス、重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2またはCOVID-19)を検出するための方法。
【請求項17】
前記CDI増強COVID-19検査が、抽出物およびアッセイ試薬の夾雑を確認する鋳型なし陰性対照(NTC)をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CDI増強COVID-19検査が、適切なアッセイ設定およびSARS-CoV-2試薬完全性を検証する2つの陽性対照をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記2つの陽性対照が、rRT-PCR N2アッセイおよびEアッセイの陽性対照のためのウイルスゲノムRNA、ならびにRPアッセイの陽性対照(RPPC)のためのDNA陽性対照である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記CDI増強COVID-19検査が、1プレートあたり陽性1つ、陰性1つおよび抽出対照1つを含む単一リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査において実行され、前記臨床試料のそれぞれが内部抽出対照を含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年3月5日出願の米国特許仮出願第62/985,602号および2020年3月16日出願の第62/989,967号の優先権を主張する、2020年11月20日出願の米国特許出願第17/100,289号に関し、その優先権を主張し、これらの開示は、参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
本出願は、SARS様コロナウイルスおよびSARS-CoV-2ウイルスの汎用的検出のための検出パネルならびに検出パネルを使用するための方法に関する。本出願の検出パネルは、Center for Discovery and Innovation(「CDI」)検出パネル(CDI増強COVID-19検査)としても知られることがあり、対照試料および臨床検体中のヒトRNaseP遺伝子(RP)を検出するために、検出パネルにさらなるプライマー/プローブセットをも含み得る。検出パネルは、E遺伝子(エンベロープ)検出アッセイを使用するSARS様コロナウイルスの汎用的検出、およびN2(ヌクレオカプシド)検出アッセイを使用するSARS-CoV-2の特異的検出の両方のために設計される。
【背景技術】
【0003】
中国湖北省武漢市において新規のコロナウイルス(SARS-CoV-2)により引き起こされた肺炎のアウトブレイクは、2019年12月31日に世界保健機構(WHO)に最初に報告された。SARS-CoV-2の発生および世界中の多数の地域への急速な伝播は、研究室だけでなく医療および一般社会の他の分野における準備および対応を必要とした。ウイルスの検出に特異的かつ高感度なアッセイが利用可能であることは、症例の的確な診断、アウトブレイクの程度の評価、介入戦略の監視および調査研究に必要不可欠である。ウイルスの検出に使用されるアッセイは、ヒト核酸と交差反応するN3(ヌクレオカプシド)検出アッセイ、およびSARS-CoV-2に特異的であると考えられるN1(ヌクレオカプシド)検出アッセイを含む。しかし、N1アッセイは、SARS-CoVとわずかに交差反応し、不的確な結果を生じることが判明した。
【発明の概要】
【0004】
試料中の新規コロナウイルス、重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2またはCOVID-19)を検出するための方法を提供する。方法は、新規コロナウイルスを含むことが疑われる試料を採取するステップと、N2アッセイを使用してSARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)遺伝子における一領域について試料の少なくとも第1の部分を分析するステップと、Eアッセイを使用してSARSコロナウイルス(E)の汎用的検出について試料の少なくとも第2の部分を分析するステップと、ヒトRPP30(H-RPP30またはRP)アッセイを使用してヒトRNaseP(RP)を検出するために、試料の少なくとも第3の部分を分析するステップとを含む。また、方法は、N2、EおよびRPアッセイの結果を複合および評価し、新規コロナウイルスの存在または非存在を判定するステップを含む。N2アッセイは、新規コロナウイルス(「nCoV」)特異的であり、Eアッセイは、すべての重度急性呼吸器症候群(「SARS」)関連コロナウイルスに対して汎用化されており、RPアッセイは、内部対照である。試料は、鼻咽頭、中咽頭、前鼻、中鼻甲介、上気道検体または血液、尿もしくは便の少なくとも1つから採取する。
【0005】
本出願の別の実施形態では、試料中の新規コロナウイルス、重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2またはCOVID-19)を検出するための方法は、新規コロナウイルス(「nCoV」)特異的である第1のアッセイ、重度急性呼吸器症候群(「SARS」)関連コロナウイルスに対して汎用化されている第2のアッセイ、および内部対照である第3のアッセイを含む複数のアッセイのそれぞれのためのマスターミックスを調製するステップを含む。好ましい実施形態では、上記方法はまた、一定量のマスターミックス(例えば、15μL)を複数のウェルのそれぞれに添加するステップと、ここで、ウェルがプレートマップにより定義され;プレートマップに定義するように一定量のリボ核酸(「RNA」)(例えば、5μL)を各ウェルに加えるステップとを含む。また、上記方法は、磁気誘導サイクラー(「mic」)、例えば、Mic qPCRサイクラー(BioMolecularSystems社により販売)に試料を移すステップと、micサイクラーを実行するステップとを含む。第1、第2および第3のアッセイは、それぞれN2アッセイおよびEアッセイおよびRPアッセイである。RPアッセイおよびN2アッセイのためのマスターミックスは、(1)2×ワンステップRT-PCRバッファーIII、(2)TakaRa ExTaq HS(5U/μl)、(3)PrimeScript RT酵素ミックスII、(4)RNaseフリーdH2Oおよび(5)混合したプライマー/プローブミックスを含み得る。また、RPアッセイおよびN2アッセイのためのマスターミックスは、2×ワンステップRT-PCRバッファーIIIを10μL/反応、TaKaRa ExTaq HS(5U/μl)を0.4μL/反応、PrimeScript RT酵素ミックスIIを0.4μL/反応、RNaseフリーdH2Oを3μL/反応および混合したプライマー/プローブミックスを1.2μL/反応を少なくとも含み得る。Eアッセイのためのマスターミックスは、(1)2×ワンステップRT-PCRバッファーIII、(2)TakaRa ExTaq HS(5U/μl)、(3)PrimeScript RT酵素ミックスII、(4)RNaseフリーdH2Oおよび(5)Eプローブミックスを含み得る。また、Eアッセイのためのマスターミックスは、少なくとも2×ワンステップRT-PCRバッファーIIIを10μL/反応、TaKaRa ExTaq HS(5U/μl)を0.4μL/反応、PrimeScript RT酵素ミックスIIを0.4μL/反応、RNaseフリーdH2Oを1.8μL/反応およびEプローブミックスを2.4μL/反応を含み得る。
【0006】
また、方法は、CDI-COVID19アッセイを使用して新たなランを創出するステップと、試料の種類を選択するステップであって、試料の種類が(1)不明、(2)NTCまたは(3)陽性対照である、ステップと、群を試料に割り当てるステップであって、群が(1)N2、(2)Eまたは(3)RPである、ステップ、およびmicサイクルを実行するステップとを含み得る。CDI-COVID19アッセイは、熱サイクル条件を含み得る。熱サイクル条件は、第1段階および第2段階を含んでもよく、第1の段階は、42℃で5分間を1サイクル実行し、第2の段階は、95℃で5秒間および58℃で20秒間を45サイクル実行する。
【0007】
本出願の別の実施形態では、新規コロナウイルスである重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2またはCOVID-19)を検出するための方法は、CDI増強COVID-19検査を提供するステップを含む。CDI増強COVID-19検査は、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査を使用するステップと、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)遺伝子における1つの領域を検出するためのプライマーおよびプローブの第1のセット、SARS様コロナウイルス(E)の汎用的検出のためのプライマーおよびプローブの第2のセット、ならびに臨床試料中のヒトRNaseP(RP)を検出するためのプライマーおよびプローブの第3のセットを使用するステップとを含み得る。検査は、シングルプレックス形式で実行するか、または単一反応および増幅設定に多重化し得る。また、CDI増強COVID-19検査は、抽出物およびアッセイ試薬の夾雑を確認する鋳型なし陰性対照(NTC)を含み得る。CDI増強COVID-19検査は、適切なアッセイ設定およびSARS-CoV-2試薬完全性を検証する2つの陽性対照を含み得る。2つの陽性対照は、例えば、rRT-PCR N2アッセイおよびEアッセイの陽性対照のためのウイルスゲノムRNA、ならびにRPアッセイの陽性対照(RPPC)のためのDNA陽性対照であり得る。CDI増強COVID-19検査は、1プレートあたり陽性1つ、陰性1つおよび抽出対照1つを含む単一リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査において実行してもよく、臨床試料のそれぞれは、内部対照を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「試料」の用語は、本明細書において使用する場合、対象(例えば、ヒト、例えば、感染が疑われる人)から採取する任意の試料を指し、目的の1つまたは複数の核酸を含む。「核酸」の用語は、本明細書において使用する場合、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)の両方を含む全核酸を指す。「反応」の用語は、本明細書において使用する場合、目的の核酸の存在または非存在を示す化学的、酵素的または物理的作用を含む任意のプロセスを指す。「反応」の例は、増幅反応、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。「ウェル」の用語は、本明細書において使用する場合、限局した構造内の所定の位置、例えば、ウェル形のバイアル、セルまたはPCRアレイ内のチャンバーにおける反応を指す。
【0009】
本明細書において使用する場合、「検出パネル」の用語は、目的の特定の核酸の存在または非存在を検出するための少なくとも2つのアッセイを含むパネルを指す。「検体」の用語は、本明細書において使用する場合、試料に使用する対象の鼻洗浄液、吸引物または汎用培地もしくはウイルス輸送培地のスワブから得られる。「micサイクラー」の用語は、本明細書において使用する場合、当業者が理解しているようなmic qPCRサイクラーを指す。
【0010】
SARS-CoV-2アッセイまたはCDI増強COVID-19検査としても知られる本出願の検出パネルは、リアルタイム転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査である。検出パネルは、COVID-19が疑われる個人の上気道検体(例えば、鼻咽頭もしくは中咽頭スワブ、痰、下気道吸引物、気管支肺胞洗浄液および鼻咽頭洗浄液/吸引物または鼻吸引物)、唾液、血清、尿および便試料中のSARS-CoV-2由来の核酸の推定的な定量的検出のために使用し得る。検出パネルは、SARS-CoV-2ウイルスの検出のためのオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブを含み得る。特には、SARS-CoV-2プライマーおよびプローブのセットは、公共保健機関のガイドラインによる検査の推奨を受けて、患者の上気道検体中のSARS-CoV-2由来のRNAを検出するように設計し得る。一実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、ウイルスヌクレオカプシド(N)遺伝子およびエンベロープタンパク質(E)遺伝子の領域から選択され得る。したがって、パネルは、N2アッセイおよびEアッセイを含み得る。検出パネルでは、EアッセイによりSARS様コロナウイルスを検出してもよく、一方、N2アッセイによりSARS-CoV-2を特異的に検出し得る。また、検出パネルは、ヒトRNaseP遺伝子を標的とする内部対照RNaseP遺伝子(RP)アッセイを含み得る。
【0011】
本出願のパネルのための試料において使用する上気道検体は、鼻洗浄液、吸引物または汎用培地もしくはウイルス輸送培地のスワブから得られ得る。特には、上気道検体は、鼻咽頭洗浄液/吸引物、鼻吸引物、鼻咽頭スワブ、中咽頭スワブ、前鼻スワブ、中鼻甲介鼻スワブまたは気管吸引物から得られ得るが、これらに限定されない。また、他の検体、例えば、便、唾液または尿は、ウイルスの検出に適する供給源として考えられ得る。
【0012】
検出パネルの結果は、試料中のSARS-CoV-2RNAの推定的検出および同定のためのものである。SARS-CoV-2RNAは、感染の初期および急性期の呼吸器検体において一般に検出可能であるが、疾患増悪のすべての段階で検出することができる。陽性結果は、SARS-CoV-2による活動性感染を示すが、細菌感染または他のウイルスとの同時感染を除外しない可能性を有する。検出された病原体は、呼吸器疾患の唯一の原因ではない可能性を有する。
【0013】
パネルの陰性結果は、SARS-CoV-2感染が排除されない可能性を有し、患者管理における判断の唯一の根拠として使用するべきではない。陰性結果は、臨床所見、患者病歴および疫学情報と複合して患者管理を決定するべきである。
【0014】
パネルは、分子診断学の開発における経験を有するCLIA認定高複雑度研究室による使用のためのものであってもよく、食品医薬品局の緊急使用許可下における使用に限定されるものである。
【0015】
CDI増強COVID-19検査は、micPCRソフトウェアv2.8.0または最新バージョンとともにBioMolecularSystems社Mic qPCRサイクラーを用いて使用し得るが、他の検査装置もCDI増強COVID-19検査の利用に適し得る。
【0016】
表1では、検出パネルにおけるアッセイおよびそれぞれが有する目的を記載する。また、表1は、各アッセイに含まれるプライマーおよびプローブならびにこれらのそれぞれの機能を含む。各プライマーおよびプローブの配列は、配列番号1~9で表す。
【0017】
【表1】
【0018】
また、検出パネルを使用するための方法を提供する。本発明の検出パネルによる検査を実行するために、試料の核酸抽出を実施し得る。一実施形態では、核酸抽出は、RNA抽出機器、例えば、MagNA Pure24システム(Roche社)により達成してもよく、ここで、DNAおよびRNAの両方を含む全核酸を試料、例えば、上気道検体から単離および精製し得る。RNA試料を上気道検体から抽出した後、これらは使用まで-80℃で保存すべきである。
【0019】
検出パネルにおいて使用するアッセイは、次の説明に従って準備し得る。検出パネルでは、RNA試料は、3つのワンステップRT-PCRアッセイにおいて検査し得る。3つのワンステップRT-PCRアッセイは、1)SARS-CoV-2特異的N2アッセイと、2)総SARS関連コロナウイルス保存的Eアッセイと、3)ヒトRNaseP遺伝子を標的とする内部対照RPアッセイとを含み得る。本出願の発明者らは、3つすべてのアッセイを含むことにより、試料中のウイルスの存在の検出が向上することを見出した。アッセイおよびプレート設定は、さらに詳細に以下に記載する。
【0020】
RT-PCRは、ソフトウェアmicPCRv2.8.0とともにmicqPCRサイクラー(bioMolecularSystems社)上で実行する。ソフトウェアの新たなバージョンは、下位互換性を有する。他のリアルタイムプラットフォームも検出に使用することができる。RT-PCRを実行する場合、プローブを、フォワードおよびリバースプライマー間に位置する特異的標的配列にアニーリングし得る。PCRサイクルの伸長段階において、Taqポリメラーゼの5‘ヌクレアーゼ活性によりプローブが分解されて、レポーター色素が消光色素から分離することにより、蛍光シグナルが生成される。各サイクルにより、さらなるレポーター色素分子がそれぞれのプローブから切断されて、蛍光強度が上昇する。micqPCRサイクラーにおいて使用するソフトウェアにより、各PCRサイクルにおける蛍光強度を監視し得る。
【0021】
陽性対照(nCoVPC)は、診断パネルに含まれ得る。陽性対照(nCoVPC)は、ウイルスゲノムRNAであってもよく、例えば、BEIリソースから入手してもよく(Cat#NR-52285)、rRT-PCR N2およびEアッセイに使用し得る。また、ウイルスゲノムRNAは、検出限界(LoD)評価において使用し得る。ウイルスゲノムRNA対照は、1反応あたり100コピーで使用し得る。また、パネルの陽性対照は、RPアッセイのためのDNA陽性対照、例えば、Sciencell社から購入するCDC SARS-CoV-2診断パネル(Cat#7038-Pos)を含み得る。鋳型なし対照(NTC)もパネルに含まれ得る。NTCは、滅菌ヌクレアーゼフリー水を含み得るが、これに限定されない。NTCは、少量のアリコートとして調製してもよく、例えば、各アリコートは、約1mlであってもよく、少なくとも50のアリコートを調製することができる。また、NTCは、検体抽出またはプレート設定中に生じ得る夾雑を調べるために含まれ得る。陽性対照およびNTCの両方は、各実行(ラン(run))において含まなければならない。
【0022】
ヒト検体抽出対照(HSC)も、パネルに含まれ得る。HSCは、例えば、Sciencell社から購入可能な非感染試料のヒトRNA抽出物(Cat#7038-Hsc)であり得る。HSCは、各抽出バッチにおいて抽出対照として使用し得る。
【0023】
核酸は、標的試料、ヒト検体対照および陰性抽出対照についての各実行(ラン)において、RNA抽出機器を使用して抽出すべきである。RNA抽出機器は、例えば、Roche社により販売されているMagNA Pure24であり得る。QIAGEN社により販売されているQIAampViralRNA MiniKit、EZ1VirusMiniKitおよびQIAcubeまたはNucliSENS社により販売されているeasyMAGを含む、さらなるRNA抽出機器を使用し得る。次いで、試料、ヒト検体対照および陰性抽出対照から抽出したRNAは、リアルタイムPCR(RT-PCR)キットにおいて使用する。任意のRT-PCRキットを使用して抽出を実行することができる。
【0024】
診断パネルにおける使用に好ましい材料は、以下の表2~5に記載する。表2では、パネルにおけるプライマーおよびプローブとしての使用のための材料を提供する。表3では、パネルにおける対照としての使用のための材料を提供する。表4では、パネルのためのリアルタイムPCRマスターミックスを提供する。表5では、RNA抽出のための材料を提供する。診断パネルに含まれる各対照の予想性能は、表6に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
また、内部対照であるRNasePを検査において検出し得る。すべての臨床試料は、RNaseP反応において蛍光増加曲線を示すはずであり、これは、40.00サイクル以内(<40.00Ct)で閾値線と交差し、これにより、ヒトRNaseP遺伝子の存在を示す。任意の臨床検体中のRNaseP検出の失敗は、
- RNAおよび/またはRNA分解の減少を生じる、臨床材料からの核酸の不適切な抽出
- 不十分な採取または検体完全性の欠損により、ヒト細胞材料の存在が不十分であること
- 不適切なアッセイ設定および実行(ラン)
- 試薬または装置の機能不良
を示し得る。
【0031】
RPアッセイがヒト臨床検体に対して陽性結果をもたらさない場合、結果は、次のように解釈するべきである。
- 陽性RPの非存在下であってもSARS-CoV-2EおよびN2が陽性である場合、結果は、有効であると考えるべきである。一部の試料では、元々の臨床試料における細胞数が少ないため、RNaseP増加曲線の提示に失敗し得る可能性を有する。陰性RPシグナルは、臨床検体中のCDI SARS-CoV-2ウイルスRNAの存在を排除しない。
- すべてのSARS-CoV-2マーカーおよびRNasePが検体に対して陰性である場合、結果は、検体に対して無効であると考えるべきである。残余検体が利用可能である場合、抽出手順を反復し、検査を反復する。再検査後にすべてのマーカーが陰性のままであった場合、結果を無効として報告し、可能であれば、新たな検体を採取すべきである。
【0032】
また、SARS-CoV-2マーカーであるEおよびN2を本出願のパネルにおいて検出する。すべての対照が予想性能を示す場合、2019-nCovマーカーであるEおよびN2の両方のサイクル閾値増加曲線が40.00サイクル以内(<40.00Ct)で閾値線と交差せず、RNaseP増加曲線が40.00サイクル以内(<40.00Ct)で閾値線と交差すれば、検体は、陰性であると考えられる。すべての対照が予想性能を示す場合、EおよびN2の両マーカーのサイクル閾値増加曲線が40.00サイクル以内(<40.00Ct)で閾値線と交差すれば、検体は、CDI SARS-CoV-2に対して推定的に陽性であると考えられる。この実施形態では、RNasePマーカーは、上記のように、陽性であり得るか、または陽性でない場合があるが、SARS-CoV-2の結果は、なお有効である。
【0033】
対照が予想性能を示し、SARS-CoV-2マーカーEおよびN2ならびにRNasePマーカーの増加曲線が40.00サイクル以内(<40.00Ct)でサイクル閾値増加曲線と交差しない場合、結果は無効である。検体から抽出したRNAを再検査すべきである。残余RNAが利用可能でない場合、残余検体からRNAを再抽出し、再検査する。再検査した試料がすべてのマーカーおよびRNasePに対して陰性である場合、結果は無効であり、検体の患者からの新たな採取を検討するべきである。
【0034】
すべての対照が予想性能を示し、EではなくN2のみのサイクル閾値増加曲線が40.00サイクル以内(<40.00Ct)で閾値線と交差する場合、結果は陽性である。
【0035】
すべての対照が予想性能を示し、N2ではなくEのみのサイクル閾値増加曲線が40.00サイクル以内(<40.00Ct)で閾値線と交差する場合、結果は不確定となる。抽出およびrRT-PCRを反復する。
【0036】
HSCがEまたはN2に対して陽性である場合、抽出または試料処理中に夾雑が生じている可能性を有する。検体およびHSCを再抽出し、再検査する。
【0037】
表7では、本出願のSARS-CoV-2 rRT-PCR診断パネル(CDI増強COVID-19検査)の予想結果を列挙する。
【0038】
【表7】
【0039】
特定の実施形態では、上記のように、すべての対照が予想性能を示す場合、SARS-nCoV-2の両マーカーEおよびN2がサイクル閾値増加曲線と交差せず、すなわち、増加曲線が約40.0サイクル後に閾値曲線未満であれば、検体は、SARS-nCoV-2ウイルスに対して陰性であると考えられ、約40.0未満サイクル後にRNaseP増加曲線がサイクル閾値と交差すれば、検体は、陰性であると考えられる。別の実施形態では、上記のように、すべての対照が予想性能を示す場合、SARS-nCoV-2の両マーカーEおよびN2が、40.0サイクル以内で閾値線と交差するサイクル閾値増加曲線を有すれば、検体は、SARS-nCoV-2に対して陽性であると考えられる。RNasePは、上記のように、陽性であり得るか、または陽性でない場合があるが、パネルの結果は、なお有効であり得る。
【0040】
検出パネルにより陰性結果がもたらされる場合、SARS-CoV-2(2019-nCoV)RNAは、アッセイにおいて検出されない。陰性結果は、SARS-CoV-2感染を除外しない場合があり、治療または他の患者管理活動の唯一の根拠として使用するべきではない。最適な試料の種類およびSARS-CoV-2により生じた感染中のピークウイルスレベルのタイミングは、未だ決定されていない。他の試料の種類としては、胃腸、組織生検、CNSおよび尿が挙げられ、患者集団によって異なる。患者の最近の暴露または臨床症状によりSARS-CoV-2感染の可能性を有することが示唆され、他の病因(すなわち、他の呼吸器疾患)に対する診断検査が陰性である場合、偽陰性結果の可能性が考えられ得る。したがって、陰性結果は、臨床所見、患者病歴および疫学情報と複合しなければならない。さらなる情報の再調査後にSARS-CoV-2感染がなお疑われる場合、感染対策または他の感染症専門家と相談して、再検査を検討するべきである。
【0041】
検出パネルにより推定陽性結果がもたらされる場合、これは、SARS-CoV-2による活動性感染を示し得るが、細菌感染および/または他のウイルスとの同時感染を除外しない。検出された病原体は、疾患の明確な原因ではない可能性を有する。推定陽性結果は、臨床所見、患者病歴および疫学情報と複合して患者管理を判断するべきである。検体は、州および/または連邦機関の要求に応じて確認検査に送られる。
【0042】
また、検出パネルにより、不確定な結果がもたらされ得る。不確定な結果では、提出された検体からの必要とされる成分すべての増幅が不整合であるため、検体に対する結果を確実に判定することができない。臨床所見が、検体が感染している可能性を有することを示す場合、検体のさらなる試料を提出して検査するべきである。
【0043】
また、検証試験をアッセイ展開中に実施し得る。検証試験は、検出限界および交差反応性を含み得るが、これらに限定されない。
【0044】
<検出限界試験>
検出限界試験を実施するために、RNAまたは不活化ウイルスを、人工または実際の臨床マトリックス(例えば、BAL液、痰、鼻咽頭スワブまたは中咽頭スワブ等)中に添加し得る。2~3倍希釈の一連の抽出複製物を1濃度あたり3つ検査してもよく、最終濃度は、複製物20種により確認し得る。食品医薬品局(FDA)は、検出限界を、複製物の19/20種が陽性である場合の最も低い濃度として定義している。
【0045】
検出限界(LoD)試験により、全体(真陽性)のおよそ95%が検査陽性を複製する場合のSARS-CoV-2の検出可能な最も低い濃度を決定する。LoDは、特性決定されている試料を使用する限界希釈試験により決定した。既知濃度のウイルスRNAを有する特性決定されている試料を調製した。本出願の診断パネルに含まれるrRT-PCRアッセイの分析感度は、検出限界試験において決定した。既知力価(RNAコピー/μL)のウイルスゲノムRNA(SARS関連コロナウイルス2、単離物USA-WA1/2020)をBEIリソースから入手し(Cat#NR-52285)、汎用輸送培地に懸濁した鼻スワブからなる希釈物中に添加した。試料は、MagNA Pure24機器を使用して抽出した。リアルタイムRT-PCRアッセイは、ワンステップPrimeScript(商標)RT-PCRキット(PerfectRealTime)(Takara社)(cat#RR064B)、およびBiolineSensiFASTプローブNo-ROXワンステップキットをBioMolecularSystems mic qPCRサイクラー上でCDI SARS-CoV-2リアルタイムRT-PCR診断パネルの使用説明書に従って使用して実施した。
【0046】
EおよびN2アッセイに対する予備検出限界は、3倍段階希釈のウイルスゲノムRNA(Cat#NR-52285)の三つ組の試料を検査して決定した。LoDの確認は、複製物20種においてウイルスRNAを1反応あたり10および20コピー使用して判定した。LoDは、95%以上の複製物(19/20)が陽性である場合の最も低い濃度として決定した。検出限界検査の結果は、表8~12に示す。
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
【表10】
【0050】
【表11】
【0051】
【表12】
【0052】
<包括性試験>
包括性試験を実施して、提唱する分子アッセイにより検出可能なSARS-CoV-2の株を実証し得る。アッセイプライマーおよびプローブを使用する公開されているSARS-CoV-2配列のインシリコでの分析を使用し得る。FDAは、公開されているSARS-CoV-2配列の100%が、選択されたプライマーおよびプローブにより検出可能であることを予測している。
【0053】
SARS-CoV-2N2アッセイのインシリコでの検査は、疾病管理予防センター(CDC)によってこれまでに実施されている。本出願のインシリコでの検査は、類似の方法で実施した。SARS-CoV-2 rRT-PCR N2アッセイのフォワードプライマー配列は、コウモリSARS様コロナウイルスに対する高い配列相同性を示した。リバースプライマーおよびプローブ配列は、ヒトゲノム、他のコロナウイルスまたはヒト微生物叢との顕著な相同性は示さなかった。したがって、プライマーおよびプローブを混合する場合、潜在的な擬陽性rRT-PCR結果の予測は存在しない。
【0054】
また、SARS-CoV-2Eアッセイのインシリコでの検査を実施した。SARS-CoV-2 rRT-PCR Eアッセイのフォワードおよびリバースプライマーならびにプローブ配列の分析では、ヒトSARSコロナウイルスおよびコウモリSARSコロナウイルスのみに対して顕著な相同性を示した。潜在的擬陽性rRT-PCR結果を予測する、ヒトゲノム、他のコロナウイルスまたはヒト微生物叢との顕著な相同性は観察されなかった。
【0055】
まとめると、SARS-CoV-2の特異的検出のために設計したCDI SARS-CoV-2 rRT-PCR N2アッセイでは、潜在的擬陽性rRT-PCR結果を予測する、ヒトゲノム、他のコロナウイルスまたはヒト微生物叢との顕著な複合的相同性は示さなかった。SARS-CoV-2 rRT-PCR Eアッセイは、SARS-CoV-2、ヒトSARSコロナウイルスまたはコウモリSARSコロナウイルスの汎用的検出のために設計した。CDI増強COVID-19検査の一部としてのSARS-CoV-2 rRT-PCR Eアッセイでは、潜在的擬陽性rRT-PCR結果を予測する、ヒトゲノム、ヒトSARSコロナウイルス以外の他のヒトコロナウイルスまたはヒト微生物叢との顕著な複合的相同性は示さなかった。
【0056】
<交差反応性>
表13に列挙する一般的気道細菌叢および他のウイルス病原体と比較したアッセイプライマーおよびプローブのインシリコでの分析を実施し得る。FDAは、インシリコでの交差反応性を、プライマー/プローブのうちの1つおよび標的微生物に存在する任意の配列の間の相同性が80%を超えるものとして定義する。
【0057】
SARS-CoV-2 rRT-PCRアッセイプライマーおよびプローブのBLASTn分析クエリをパブリックドメインのヌクレオチド配列に対して実施した。データベース検索パラメータは、次のとおりであった。1)ヌクレオチドコレクションは、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+RefSeq配列からなるが、EST、STS、GSS、WGS、TSAは除外する。2)データベースは、非冗長である。同一配列は、1つのエントリに統合しているが、各エントリのaccession、GI、表題および分類情報は保存する。3)分析は、03/10/2020付で実施した。4)検索パラメータは、短入力配列で自動的に調整され、予想閾値は、1000である。5)適合および不適合スコアは、それぞれ1および-3である。6)アラインメントにおいてギャップを生成および伸長するペナルティは、それぞれ5および2である。
【0058】
N2アッセイプローブ配列は、SARSコロナウイルスに対する78.3%未満の相同性を有し、以下の表14に列挙する他の生物との顕著な類似性は、見出されなかった。Eアッセイプローブは、ヒトSARS-CoVとの88~100%の相同性およびコウモリSARSコロナウイルスとの84~100%の相同性を有するが、表14に列挙する他のすべての生物との顕著な類似性は、有しなかった。
【0059】
【表13】
【0060】
【表14】
【0061】
<臨床評価>
検査に利用可能な既知の陽性試料の非存在下では、一連の作為的臨床検体を用いて、最低限の作為的反応性検体30種および非反応性検体30種をランダム化した盲検による方法で検査することにより、アッセイの性能を確認し得る。作為的反応性検体は、RNAまたは不活化ウイルスを、ユニークな患者を代表する個々の残余臨床検体中に添加することにより生成してもよく、このような検体の大多数は、残余呼吸器検体、例えば、NPスワブ、痰等であり得る。作為的臨床検体の20種は、1×~2×LoDの濃度で添加し、残りの検体は、アッセイ検査範囲に及ぶべきである。FDAは、性能に対する許容基準を、1×~2×LoDで95%の一致、ならびに他のすべての濃度および陰性検体に対して100%の一致として定義している。
【0062】
臨床評価では、非反応性鼻咽頭スワブ検体30種を使用した。別の作為的検体30種にウイルスゲノムRNA(Cat#NR-52285)を添加して、2×LoDで20(または21)、3×LoDで5および4×LoDで5(または4)のウイルス量を生成した。このような試料60種を盲検化し、MagNA Pure24システム上で抽出した。結果は、表15および16に列挙する。
【0063】
【表15】
【0064】
【表16】
【0065】
また、検出パネルにおけるアッセイを準備するための方法を提供する。検出パネルにおける使用のためのアッセイを、マスターミックス中に準備する。マスターミックスは、各アッセイについて、表17~20に従って調製し得る。マスターミックス調製は、検査に使用するRT-PCRキットに依存する。特には、発明者らは、Takara社により販売されているワンステップPrimeScript(商標)RT-PCRキットおよびBioline社により販売されているSensiFAST(商標)プローブNo-ROXワンステップキットが、本出願のマスターミックスとともに使用する場合、最も有効であることを見出した。
【0066】
マスターミックスを調製したら、RT-PCRキットを調製し得る。ワンステップPrimeScript(商標)RT-PCRキットを使用する場合、キットは、記載のように、表17および18のアッセイを使用して調製するべきである。SensiFAST(商標)プローブNo-ROXワンステップキットを使用する場合、キットは、記載のように、表19および20のアッセイを使用して調製するべきである。
a.ワンステップPrimeScript(商標)RT-PCRキット(PerfectRealTime)では、各成分および割り当てられたチューブ番号を1、2、3、4、5、6として標識した。チューブ5および6は、アッセイ設定には使用しない。
b.各反応の総量は、20μL(マスターミックス15μl+RNA5μl)である。
c.16反応(「rxn」)に十分なマスターミックスを調製するために、以下の表に示すマスターミックス中の各成分を17倍する。
【0067】
【表17】
【0068】
【表18】
【0069】
【表19】
【0070】
【表20】
【0071】
使用するそれぞれのRT-PCRキットのためにマスターミックスを調製したら、診断プレートを次のように設定し得る。プレート設定は、RT-PCRキットに非依存的であり、これは、プレート設定が、ワンステップPrimeScript(商標)RT-PCRキットおよびSensiFAST(商標)プローブNo-ROXワンステップキットの両方に適合することを意味する。
d.マスターミックス15μlをプレートマップに定義するようにウェルに添加する。
e.リボ核酸(「RNA」)5μlをプレートマップに定義するように各ウェルに加える。
f.キャップで蓋をして試料をmicサイクラー上に移す。
【0072】
【表21】
【0073】
次いで、プレートをmic qPCRサイクラーに移して分析し、rRT-PCRを実行する。熱サイクル条件は、使用するRT-PCRキットに基づいて設定し得る。ワンステップPrimeScript(商標)RT-PCRキットを使用する場合、表21の熱サイクル条件をアッセイに使用し得る。SensiFAST(商標)プローブNo-ROXワンステップキットを使用する場合、表22の熱サイクル条件をアッセイに使用し得る。
g.micサイクラーおよびコンピュータをオンにする。
h.micPCRソフトウェアを開いて、コンピュータに機器が認識されていることを確かめる。
i.「CDI-COVID19」(Takara社のキットに基づく)または「Bioline-SARS-CoV2」(Bioline社のキットに基づく)のアッセイを使用して新たなランを創出する。
j.試料の名称を入力し、試料の種類を「不明」、「NTC」または「陽性対照」として適宜選択する。
k.群(N2、E、RP)を各試料に割り当てる。
l.実行(ラン)を開始する。
【0074】
【表22】
【0075】
【表23】
【0076】
前述の例および説明は、例示目的のみのためのものであること、ならびに本開示を考慮すれば、本発明の種々の変更形態は当業者に自明であり、本出願の趣旨および範囲ならびに特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【配列表】
2023517053000001.app
【国際調査報告】