(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】スルホン酸塩洗浄剤による酸化性能の向上
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20230414BHJP
C10M 159/24 20060101ALN20230414BHJP
C10M 135/10 20060101ALN20230414BHJP
C10M 133/12 20060101ALN20230414BHJP
C10M 135/18 20060101ALN20230414BHJP
C10M 129/10 20060101ALN20230414BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20230414BHJP
C10M 133/56 20060101ALN20230414BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20230414BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20230414BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230414BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M159/24
C10M135/10
C10M133/12
C10M135/18
C10M129/10
C10M133/16
C10M133/56
C10N10:12
C10N30:10
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554179
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 IB2021051971
(87)【国際公開番号】W WO2021181286
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケッテラー、ニコール エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ショムルー、クレア
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB05C
4H104BB31A
4H104BE07C
4H104BE11C
4H104BF03C
4H104BG06C
4H104CA04A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB07C
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB11
4H104EB13
4H104EB14
4H104EB15
4H104FA06
4H104LA05
4H104PA41
(57)【要約】
潤滑油組成物が提供される。この組成物は、基油、プロピレン四量体から誘導されたアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンを含む一次抗酸化剤、及びスルホン酸塩洗浄剤を含むいくつかの成分を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物であって、
基油、
プロピレン四量体由来のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンを含む一次抗酸化剤、
及び
スルホン酸塩洗浄剤
を含む前記潤滑油組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、さらに
ジチオカルバメート、ヒンダードフェノール、またはモリブデンスクシンイミドを含む二次抗酸化剤、を含む、前記潤滑油組成物。
【請求項3】
前記アルキル化ジフェニルアミンの前記アルキル基の少なくとも50%が10と15との間の炭素数を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記スルホン酸塩洗浄剤が石油系洗浄剤または合成洗浄剤である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記一次抗酸化剤が、前記潤滑油組成物の0.01重量%~20重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記スルホン酸塩洗浄剤が過塩基性である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記二次抗酸化剤が、前記潤滑油組成物の0.01重量%~20重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記スルホン酸塩洗浄剤が、前記潤滑油組成物の0.01重量%~10重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、さらに:
抗酸化剤、無灰分散剤、摩耗防止剤、洗浄剤、防錆剤、曇り除去剤(dehazing agent)、解乳化剤、摩擦改質剤、金属非活性化剤、流動点降下剤、粘度改質剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食防止剤、色素、または極圧添加剤を含む、前記潤滑油組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の潤滑油組成物であって、前記スルホン酸塩洗浄剤が、内部オレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、アルコールエーテルスルホネート、直鎖アルキルアリールスルホネート、またはアルカンスルホネートを含む、前記潤滑油組成物。
【請求項11】
潤滑油の酸化安定性を向上する方法であって、
基油と、
プロピレン四量体由来のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンを含む一次抗酸化剤と、
スルホン酸塩洗浄剤と、を含む、潤滑油組成物をエンジンに提供すること、を含む、前記方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、さらに:
ジチオカルバメート、ヒンダードフェノール、またはモリブデンスクシンイミドを含む二次抗酸化剤を含む、前記方法。
【請求項13】
前記アルキル化ジフェニルアミンの少なくとも50%が10~15の炭素数を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記スルホン酸塩洗浄剤が石油系洗浄剤または合成洗浄剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記一次抗酸化剤が、前記潤滑油組成物の0.01重量%~20重量%で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記スルホン酸塩洗浄剤が過塩基性である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記二次抗酸化剤が、前記潤滑油組成物の0.01重量%~20重量%で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記スルホン酸塩洗浄剤が、前記潤滑油組成物の0.01重量%~10重量%で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、さらに、
抗酸化剤、無灰分散剤、摩耗防止剤、洗浄剤、防錆剤、曇り除去剤、解乳化剤、摩擦改質剤、金属非活性化剤、流動点降下剤、粘度改質剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食防止剤、色素、または極圧添加剤を含む、前記方法。
【請求項20】
前記スルホン酸塩洗浄剤が、内部オレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、アルコールエーテルスルホネート、直鎖アルキルアリールスルホネート、またはアルカンスルホネートを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月11日に提出された「IMPROVED OXIDATIVE PERFORMANCE WITH SULFONATE DETERGENTS(カルボン酸洗浄剤による酸化性能の向上)」(代理人整理番号:T-11173)という名称の米国仮出願に関連しており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、酸化を妨害し、潤滑油の有効寿命を延ばす潤滑油添加剤に関する。より具体的には、本開示は、アルキル化ジフェニルアミン抗酸化剤及びスルホン酸塩洗浄剤を含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
酸化とは、オイルの増粘、スラッジ、ワニス、酸価の増加、及び腐食を引き起こし得るので、使用中の潤滑油にとって懸念事項である。これらの結果は、一般に、自動車エンジンの適切な動作に有害であり、潤滑油の耐用年数を限定する。絶え間なく進化するエンジン設計、運転条件、及びオイル性能への期待により、酸化は継続的な重要な技術的課題であり続けている。
【0004】
エンジンの酸化を遅らせる1つの方法は、抗酸化剤を潤滑油に導入することである。さらに、抗酸化剤は、排出間隔を延長し、粘度を維持し、堆積物を減らし、泡の形成を減らし、腐食から保護し、潤滑油を高温から保護し得る。
【0005】
さまざまな程度の効果を有する多くの抗酸化剤がある。市販の潤滑剤は通常、さまざまな条件(例えば、温度、時間、空気混合、圧力など)で流体を保護するために、1つ以上の抗酸化剤と配合されている。
【0006】
特に、アルキル化ジフェニルアミンは抗酸化剤として使用される。広く使用されているアルキル化ジフェニルアミン抗酸化剤としては、エンジンオイル、ギアオイル、油圧油、圧縮機油、タービンオイル、及びグリースなどの有機流体に添加され得るノニル化(C9)ジフェニルアミンが挙げられる。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、酸化を妨害し、潤滑油の有効寿命を延ばす潤滑油添加剤に関する。より具体的には、本開示は、アルキル化ジフェニルアミン及びスルホン酸塩洗浄剤を含む組成物に関する。
【0008】
一態様では、以下を含む潤滑油組成物が提供される:基油、プロピレン四量体由来のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンを含む一次抗酸化剤、及びスルホン酸塩洗浄剤。
【0009】
さらなる態様では、潤滑油の酸化安定性を向上する方法が提供され、この方法は、基油と、プロピレン四量体由来のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンを含む一次抗酸化剤と、スルホン酸塩洗浄剤とを含む潤滑油組成物をエンジンに供給することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に記載の配合油試料の酸化誘導時間の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、以下の単語及び表現は、使用される場合、及び使用されるとき、以下に付与される意味を有する。
【0012】
「抗酸化剤」という用語または同等の用語(例えば、「酸化安定剤」または「酸化阻害剤」)は、酸化環境で有害な攻撃に抵抗する組成物及びその能力を指す。抗酸化剤は、多くの場合、有機流体(例えば、潤滑油、ギアオイル、圧縮機油、鉱油、油圧油)で使用され、有機流体の酸化安定性を向上する。
【0013】
「アルキル」という用語または関連する用語は、飽和炭化水素基を指し、これは直鎖状、分岐状、環状、または環状、直鎖状及び/もしくは分岐状の組み合わせであってもよい。
【0014】
「オレフィン」という用語は、芳香環または環系の一部ではない少なくとも1つの炭素間二重結合を有する炭化水素を指す。オレフィンには、脂肪族及び芳香族、環状及び非環状、及び/または直鎖状及び分岐状化合物であって、特に断りのない限り、芳香族環または環系の一部ではない少なくとも1つの炭素間二重結合を有する化合物を含み得る。1つだけ、2つだけ、3つだけなどの炭素間二重結合を有するオレフィンは、オレフィンの名前の中に「モノ」、「ジ」、「トリ」などの用語を使用することによって識別され得る。オレフィンは、炭素間二重結合(複数可)の位置によってさらに識別され得る。文脈に応じて、「オレフィン」という用語は、「オレフィンオリゴマー」を指しても、または「オレフィン単量体」を指しても、またはその両方を指してもよい。
【0015】
「オレフィンオリゴマー」とは、「オレフィン単量体」をオリゴマー化してできたオリゴマーである。例えば、「プロピレンオリゴマー」とは、プロピレン単量体のオリゴマー化から作られる。プロピレンオリゴマーの例としては、プロピレン四量体及びプロピレン五量体が挙げられる。「プロピレンテトラマー」は、名目上4つのプロピレン単量体のオリゴマー化から生じるオレフィンオリゴマー生成物である。これらの用語はまた、ホモオリゴマー、コオリゴマー、オリゴマーの塩、オリゴマーの誘導体などを表すために一般的に使用され得る。
【0016】
「少量」または関連する用語は、記載された添加剤に関して、及び組成物の総重量に関して表されており、添加剤の有効成分として計算される組成物の50重量%未満を意味する。
【0017】
「多量(major amount)」または関連の用語は、組成物の総重量に基づいて50重量%を超える量を意味する。
【0018】
抗酸化剤組成物
本発明は、酸化を妨害し、潤滑油の有効寿命を延ばす抗酸化組成物に関する。より具体的には、本発明は、複数の潤滑油添加剤を含む抗酸化剤組成物を記載する。潤滑油添加剤は、少なくとも1つの抗酸化剤と、少なくとも1つの洗浄剤とを含み、一緒に作用して酸化性能を向上させる。向上した性能とは、潤滑油組成物中の本発明の潤滑油添加剤成分から生じるこれまで知られていなかった相乗効果の結果である。本発明に適合する抗酸化剤及び洗浄剤は、本明細書に記載される。
【0019】
一次抗酸化剤
抗酸化剤組成物は、一次抗酸化剤及び1つ以上の二次抗酸化剤を含む。本発明の一次抗酸化剤は、1つ以上の比較的長いアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンである。従来のアルキル化ジフェニルアミン抗酸化剤は、通常、比較的短いアルキル基を利用する。これらとしては、例えば、名目上9個の炭素を有し、プロピレンのオリゴマー化から形成され得るノニル化ジフェニルアミン(「プロピレン三量体」)が挙げられる。
【0020】
本発明のアルキル化ジフェニルアミンは、プロピレン四量体(名目上12個の炭素を有する)によって、またはプロピレン四量体を含む混合物によってアルキル化されており、プロピレン四量体は主要なオレフィンオリゴマーアルキル化剤である。プロピレン四量体は、4つのプロピレン単量体のオリゴマー化によって得られ得る。プロピレン四量体には、プロピレン三量体よりも優れた潜在的な利点がいくつかあり、この利点としては、限定するものではないが、油溶解性の向上、コストの安さ、及び酸化に対する優れた安定性が挙げられる。
【0021】
本発明のアルキル化ジフェニルアミンは、潤滑油組成物の約0.4重量%~約20重量%、例えば約0.5重量%~約15重量%、0.1重量%~約10重量%、0.5重量%~約8重量%、または1重量%~約5重量%で存在し得る。
【0022】
プロピレンオリゴマー
本発明のプロピレンオリゴマー(すなわち、プロピレン四量体)は、当該技術分野で公知の任意の互換性のある方法によって調製され得る。一例として、プロピレンオリゴマーを調製するプロセスは、液体リン酸オリゴマー化触媒を使用する。この液体リン酸触媒プロピレンオリゴマー化プロセスの説明は、米国特許第2,592,428号、同第2,814,655号及び同第3,887,634号に見出され得、これらの関連部分が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
オリゴマー化プロセスの未精製生成物は、典型的には、炭素数の分布を有する分岐オレフィンの混合物を含む。商業環境では、オレフィンオリゴマーは、オリゴマー化プロセス中に極端な条件にさらされ、その結果、クラッキング、再結合、異性化などが生じる。精製または加工されたオリゴマー化生成物は、通常、目的の生成物の濃度が高くなる。したがって、「プロピレン四量体」という用語は、必ずしも純粋なプロピレン四量体生成物を指すわけではなく、オレフィンまたはオレフィンオリゴマー生成物の混合物を指す場合もある。したがって、ジフェニルアミン及びプロピレン四量体を含むアルキル化の生成物は、アルキル化されたアルキル基内の炭素数の分布を有し得る。
【0024】
プロピレン四量体は、4つのプロピレン単量体のオリゴマー化から得てもよい。プロピレン四量体は、オレフィンを製造するための費用対効果が高い。オリゴマー化の生成物として、10~15個の炭素からなる高度に分岐した鎖と高度なメチル分岐を特徴とし、優れた油溶性と他の油溶性潤滑油添加剤成分との適合性を付与する。いくつかの実施形態では、平均炭素数は、約10から約15までの範囲であってもよい。
【0025】
オリゴマー化の生成物は、分岐度が異なり得る。例えば、プロピレン四量体は、1から15までの範囲の総分岐(すなわち、オレフィン分岐と脂肪族分岐の合計)を示し得る。いくつかの実施形態では、平均総分岐は、約1から約15までの範囲であり得る。
【0026】
本発明のプロピレン四量体は、一般に、少なくとも50重量%のC10~C15炭素原子を含む。一実施形態では、プロピレン四量体は、少なくとも60重量%のC10~C15炭素原子を含む炭素原子の分布を含む。一実施形態では、プロピレン四量体は、少なくとも70重量%のC10~C15炭素原子を含む炭素原子の分布を含む。一実施形態では、プロピレンオリゴマーは、少なくとも80重量%のC10~C15炭素原子を含む炭素原子の分布を含む。一実施形態では、プロピレンオリゴマーは、少なくとも90重量%のC10~C15炭素原子を含む炭素原子の分布を含む。
【0027】
当業者に明らかになるように、本明細書で用いられるプロピレンオリゴマーはまた、少量のより低分子量のプロピレンオリゴマー(複数可)例えば、プロピレン三量体、及びより高分子量のプロピレンオリゴマー(複数可)、例えば、プロピレン五量体を含んでもよい。例えば、本発明のプロピレン四量体は、0~1重量%のC9H18、0~5重量%のC10H20、0~10重量%のC11H22、50~90重量%のC12H24、10~20重量%のC13H26、5~15重量%のC14H28、及び/または1~10重量%のC15H30を含むオレフィン炭化水素の混合物であってもよい。
【0028】
アルキル化
本発明のアルキル化ジフェニルアミンは、本発明に適合する任意のアルキル化プロセスによって得てもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,355,839号は、ジフェニルアミンがポリイソブチレンでアルキル化される、アルキル化ジフェニルアミンの調製を記載する。
【0029】
任意の適切な触媒を使用してもよい。例えば、ジフェニルアミンのアルキル化は、粘土触媒の存在下で進行し得る。この反応の温度は、140℃~200℃、より典型的には150℃~190℃の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、反応温度は160℃~180℃の範囲である。反応は、単一の温度で行ってもよいし、または異なる温度で連続して行ってもよい。プロピレンオリゴマーは、ジフェニルアミンチャージに関連して、2:1~8:1のチャージモル比(charge mole ratio)(CMR)で充填される。いくつかの実施形態では、CMRは、3:1~7:1または4:1~6:1である。反応生成物を濾過して触媒を除去し、次いで蒸留して、未反応のオレフィンオリゴマー及びジフェニルアミンを除去してもよい。触媒として粘土を使用することは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,452,056号に開示されている。
【0030】
当業者に期待されるとおり、反応条件は、使用される触媒に応じて著しく変動する場合がある。例えば、均質な酸触媒を伴う反応は、75℃~100℃の範囲の温度のみを必要とする場合がある。
【0031】
反応条件に応じて、アルキル化ジフェニルアミン生成物は、さまざまな相対量のモノアルキル化、ジアルキル化、及び/またはトリアルキル化ジフェニルアミン生成物を有し得る。所与のジアルキル化ジフェニルアミン分子またはトリアルキル化ジフェニルアミン分子について、2つ以上のアルキル化アルキル基は、本開示に従って、同一であっても異なってもよいことが明らかであるはずである。
【0032】
二次抗酸化剤
本発明は、一次抗酸化剤と組み合わせて1つ以上の二次抗酸化剤を使用する。二次抗酸化剤は、潤滑油組成物の約0.01重量%~約20重量%で、例えば、約0.05重量%~約15重量%、0.1重量%~約10重量%、0.5重量%~約8重量%、または1重量%~約5重量%で存在してもよい。
【0033】
多くの二次抗酸化剤が本発明に適合する。二次抗酸化剤の例としては、モリブデンスクシンイミド、ジチオカルバメート、及びヒンダードフェノールが挙げられる。これらの油溶性成分は一般的に公知である。
【0034】
例えば、本明細書に記載のモリブデン錯体を調製するために使用され得るモノ及びポリスクシンイミドは、多数の参考文献に開示されており、当該技術分野で周知である。技術用語「スクシンイミド」に含まれるスクシンイミド及び関連物質の特定の基本的なタイプは、開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,219,666号、同第3,172,892号、及び同第3,272,746号に教示される。「スクシンイミド」という用語は、当該技術分野では、形成され得るアミド、イミド、及びアミジン種の多くを含むと理解されている。しかしながら、主な生成物はスクシンイミドであり、この用語は一般に、アルケニル置換コハク酸または無水物と窒素含有化合物との反応生成物を意味するものとして受け入れられてきた。
【0035】
好ましいスクシンイミドは、商業的に入手可能であるため、ヒドロカルビル基が約24~約350個の炭素原子を含むヒドロカルビルコハク酸無水物と、エチレンアミンとから調製されるスクシンイミドであり、当該エチレンアミンは特にエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びテトラエチレンペンタミンによって特徴付けられる。特に好ましいのは、炭素原子数70~128のポリイソブテニルコハク酸無水物及びテトラエチレンペンタミンまたはトリエチレンテトラミンまたはそれらの混合物から調製されるスクシンイミドである。
【0036】
「スクシンイミド」という用語には、ヒドロカルビルコハク酸または無水物と、2つ以上の2級アミノ基に加えて少なくとも1つの3級アミノ窒素を含むポリ2級アミンとのコオリゴマーも含まれる。通常、この組成物の平均分子量は、1,500~50,000である。典型的な化合物は、ポリイソブテニルコハク酸無水物とエチレンジピペラジンとを反応させることによって調製されるものであろう。
【0037】
1000または1300または2300の平均分子量を有するスクシンイミド及びそれらの混合物が最も好ましい。このようなスクシンイミドは、当該技術分野で公知であるとおり、ホウ素または炭酸エチレンで後処理してもよい。
【0038】
適切なジチオカルバメートとしては、限定するものではないが、金属が亜鉛、銅、またはモリブデンであるジチオカルバメート、無灰チオカルバメート、またはジチオカルバメート(すなわち、本質的に金属を含まない)例えば、メチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、エチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、及びイソブチルジスルフィド-22’-ビス(ジアルキルジチオカルバメート)が挙げられ、アルキルジチオカルバメートのアルキル基は好ましくは1~6個の炭素原子を有し得る。好ましい無灰ジチオカルバメートの例は、メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)、エチレンビス(ジブチルチオカルバメート)及びイソブチルジスルフィド-2,2’-ビス(ジブチルジチオカルバメート)である。
【0039】
本発明の潤滑油に使用される二次抗酸化剤は、立体障害フェノールであってもよい。ヒンダードフェノール抗酸化剤には、多くの場合、第二級ブチル及び/または三級ブチル基が立体障害基として含まれる。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/または架橋基(第二の芳香族基に結合する)でさらに置換されている場合が多い。適切なヒンダードフェノールとしては、限定するものではないが、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールまたは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。
【0040】
洗浄剤
本発明の抗酸化組成物は、1つ以上の洗浄剤を含む。洗浄剤は、潤滑油組成物の約0.01重量%~約10重量%で、例えば、約0.05重量%~約8重量%、0.1重量%~約5重量%、0.5重量%~約4重量%、または1重量%~約3重量%で存在してもよい。
【0041】
洗浄剤は通常、塩(例えば、過塩基性塩)であり、金属の化学量論及び金属と反応した特定の酸性有機化合物に応じて存在するであろう、過剰の金属含量を特徴とする単相の均質なニュートン系である。
【0042】
本発明の洗浄剤には、スルホン酸塩洗浄剤が含まれる。スルホン酸塩洗浄剤などの金属洗浄剤は、通常、極性頭部及び炭化水素尾部または親油性基を含んでいる。一般に、炭化水素尾部は、長さが約3炭素~50炭素の範囲であり得る。
【0043】
スルホン酸塩洗浄剤は、天然または合成であり得る。洗浄剤は、中性または過塩基性であり得る。過塩基性洗浄剤は、過塩基性の程度に幅がある場合がある(ASTM D2896で測定)。適合する過塩基性スルホン酸塩には、低過塩基性、中過塩基性、高過塩基性、及び高高過塩基性のスルホン酸塩洗剤が含まれる。いくつかの実施形態では、洗浄剤はホウ酸化され得る。
【0044】
スルホン酸塩洗浄剤の例としては、アルキルアリールスルホン酸塩などが挙げられる。具体例としては、US20110136711に記載のアルキルトルエンスルホン酸マグネシウムが挙げられる。他の例としては、アルキルアリールスルホン酸カルシウム、アルキルトルエンスルホン酸カルシウム、及びアルキルベンゼンスルホン酸マグネシウムが挙げられる。
【0045】
洗浄剤の金属としては、アルカリまたはアルカリ土類金属、例えばバリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムも含まれる。最も一般的に使用される金属はカルシウム及びマグネシウムであり、どちらも潤滑剤に使用される洗浄剤、ならびにカルシウム及び/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物中に存在し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、追加の洗浄剤を使用してもよい。追加の洗浄剤としては、石炭酸塩(phenate)、サリチル酸塩、フェノラート(phenolate)、ホスホン酸塩(phosphonate)、チオホスホネート(thiophosphonate)、イオン性界面活性剤などが挙げられる。いくつかの実施形態では、追加の洗浄剤としてはハイブリッド及び/または複合洗浄剤が挙げられる。
【0047】
潤滑油組成物
本開示の抗酸化組成物は、潤滑油に酸化安定性を付与するために潤滑油中で使用されてもよい。一次抗酸化剤、二次抗酸化剤、及び1つ以上の洗浄剤は、それらの濃度が本明細書で提供されるガイドライン内に収まる限り、任意の比率で存在し得る。
【0048】
一般に、抗酸化剤組成物は油溶性であり、油溶性とは、例えば、油が使用される環境で意図した効果を発揮するのに十分な程度まで油に溶解または安定に分散可能であることを意味する。さらに、必要に応じて、他の添加剤をさらに組み込むことにより、より高いレベルの特定の添加剤を組み込むことも可能である。油溶性という用語は、必ずしも化合物または添加剤が、すべての比率で油に可溶性、溶解可能、混和可能、または懸濁可能であることを示すわけではない。他の抗酸化剤が潤滑油組成物中に存在する場合、より少量の本発明の抗酸化剤を使用してもよい。
【0049】
基油として使用される油を、所望の最終用途及び完成した油中の添加剤に応じて選択またはブレンドして、所望のグレードのエンジンオイル、例えば、0W、0W-8、0W-16、0W-20、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、または15W-40という米国自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)(SAE)粘度グレードを有する潤滑油組成物を得る。SAE30、40、50、及び60などのストレートグレードのベースのオイルも使用され得る。
【0050】
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれる場合もある)は、潤滑剤の一次液体成分であり、添加剤及び場合によっては他の油をブレンドして、例えば、最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を生成する。濃縮物を作製するため、及びそこから潤滑油組成物を作製するために有用な基油は、天然(植物性、動物性、または鉱物性)の潤滑油及び合成潤滑油ならびにそれらの混合物から選択され得る。
【0051】
本開示におけるベースストック及び基油の定義は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509 Annex E(「API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils」December 2016)に記載されているものと同じである。グループIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%未満の飽和硫黄及び/または0.03%を超える硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックには、グループI、II、III、またはIVに含まれないすべての他のベースストックが含まれる。
【0052】
天然油としては、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、ならびに鉱油が挙げられる。好ましい熱酸化安定性を有する動物油及び植物油を使用してもよい。天然油のうち、鉱油が好ましい。鉱油は、それらの原油源に関して、例えば、パラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン系-ナフテン系であるかどうかに関して、大きく異なる。石炭または頁岩(シェール)由来の油も有用である。天然油はまた、それらの生成及び精製に使用される方法、例えば、それらの蒸留範囲、ならびにそれらが直溜(ストレートラン)であるか、または分解(クラッキング)されているか、水素精製されているか、もしくは抽出された溶媒であるかによっても異なる。
【0053】
合成油としては、炭化水素油が挙げられる。炭化水素油としては、重合及び相互重合したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が挙げられる。合成炭化水素油には、ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックが一般的に使用される。例として、C8~C14オレフィン、例えば、C8、C10、C12、C14オレフィン、またはそれらの混合物に由来するPAOを利用してもよい。
【0054】
基油として使用するための他の有用な流体としては、高性能特性を提供するために、好ましくは触媒的に処理された、または合成された非従来型もしくは従来と異なったベースストックが挙げられる。
【0055】
非従来型または従来と異なったベースストック/基油としては、1つ以上のガスツーリキッド(GTL)材料に由来するベースストック(複数可)の混合物、ならびに天然ワックスまたはワックス状供給原料に由来する異性化/イソ脱ロウ化ベースストック(複数可)、鉱油及び/または非鉱油ワックス状供給原料ストック、例えば、スラックワックス、天然ワックスならびにワックスストック、例えば、ガスオイル、ワックス状燃料ハイドロクラッカーボトム、ワックス状ラフィネート、ハイドロクラッケート、熱クラッケート、または他の鉱物、鉱油、さらには非石油由来ワックス状材料、例えば、石炭液化またはシェールオイルから受け取ったワックス状材料ならびにそのようなベースストックの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0056】
本開示の潤滑油組成物で使用するための基油は、APIのグループI、グループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、好ましくはAPIのグループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、より好ましくは、グループIII~グループVの基油に対応する種々の油のいずれか(それらの卓越した揮発性、安定性、粘度測定及び清浄度特徴に起因して)である。
【0057】
典型的には、基油は、2.5~20mm2/s(例えば、3~12mm2/s、4~10mm2/s、または4.5~8mm2/s)の範囲で100℃での運動粘度(ASTM D445)を有する。
【0058】
本潤滑油組成物はまた、補助機能を付与するための従来の潤滑剤添加剤を含有して、これらの添加剤が分散または溶解される完成した潤滑油組成物を得てもよい。例えば、潤滑油組成物は、抗酸化剤、無灰分散剤、摩耗防止剤、金属洗剤などの洗剤、防錆剤、曇り除去剤(dehazing agent)、解乳化剤、摩擦改質剤、金属非活性化剤、流動点降下剤、粘度改質剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食防止剤、染料、極圧添加剤など、及びそれらの混合物とブレンドしてもよい。種々の添加剤が公知であり、市販されている。これらの添加剤、またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順によって、本発明の潤滑油組成物の調製に用いてもよい。
【0059】
前述の添加剤の各々は、使用されるとき、機能的に有効な量で使用され、潤滑剤に所望の特性を付与する。したがって、例えば、添加剤が無灰分散剤である場合、この無灰分散剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の分散特徴を付与するのに十分な量である。一般に、これらの添加剤の使用時の各々の濃度は、別段の指定がない限り、約0.001~約20重量%、例えば、約0.01~約10重量%の範囲であってもよい。
【0060】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【0061】
実施例
図1に示すように、完全に調合されたエンジンオイルの酸化誘導時間を試験した。完全に調合されたエンジンオイルには、1つ以上の抗酸化剤及びスルホン酸塩洗浄剤、ならびに分散剤及び腐食防止剤などの一般的な潤滑油添加剤が含まれている。
【0062】
最初のエンジンオイル試料(「DPAのみ」)には、スルホン酸塩洗浄剤及びアルキル化ジフェニルアミンが含まれている。アルキル化ジフェニルアミンとは、ノニル化ジフェニルアミンまたはジフェニルアミン(プロピレン四量体でアルキル化された)である。プロピレン四量体でアルキル化されたジフェニルアミンのガスクロマトグラフィー分析を以下の表1に要約する。この分析は、試料の約半分がモノアルキル化ジフェニルアミンであることを示している。試料のあと半分は、ジアルキル化ジフェニルアミンである。C3-C8アルキル基を有するジフェニルアミンがごく少量存在する。
【表1】
【0063】
他のエンジンオイル試料には、1つ以上の追加的抗酸化剤(すなわち、モリブデンスクシンイミド、ヒンダードフェノール、ジチオカルバメート)が含まれている。複数の抗酸化剤を含む混合エンジンオイル試料では、存在している各抗酸化剤は、同等の処理レベル/重量パーセントで存在する。
【0064】
2種類の抗酸化剤を特徴とする試験エンジンオイル試料には、アルキル化ジフェニルアミンと、モリブデンスクシンイミド(「DPA/Moスクシンイミド」)、ヒンダードフェノール(「DPA/ヒンダードフェノール」)またはジチオカルバメート(「DPA/ジチオカルバメート」)とが含まれる。3種類の抗酸化剤を特徴とする試験エンジンオイル試料には、アルキル化ジフェニルアミンと、モリブデンスクシンイミド及びヒンダードフェノール(「DPA/Moスクシンイミド/ヒンダードフェノール」)、モリブデンスクシンイミド及びジチオカルバメート(「DPA/Moスクシンイミド/ジチオカルバメート」)、またはヒンダードフェノール及びジチオカルバメート(「DPA/ヒンダードフェノール/ジチオカルバメート」)とが含まれる。4種類の抗酸化剤を特徴とする試験エンジンオイル試料には、アルキル化ジフェニルアミンと、モリブデンスクシンイミド、ヒンダードフェノール、及びジチオカルバメート(「DPA/Moスクシンイミド/ヒンダードフェノール/ジチオカルバメート」)とが含まれる。
【0065】
各試験試料について、スルホン酸塩洗浄剤(低及び中過塩基性スルホン酸塩)は78mMで存在するが、抗酸化剤(複数可)の総濃度は、1.5重量%である。
【0066】
このデータによって、ノニル化ジフェニルアミンを含む試料と比較して、プロピレン四量体でアルキル化されたジフェニルアミンを含む試料の酸化誘導時間が一貫してより高いことが示される。
【0067】
ASTM D6186試験プロトコルに従い、加圧示差走査熱量測定(PDSC)を使用して、酸化誘導時間を評価した。酸化誘導時間が長いほど、酸化安定性の向上が示された。
【国際調査報告】