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特表2023-517066経カテーテル弁尖置換デバイス、送達、誘導および固定システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】経カテーテル弁尖置換デバイス、送達、誘導および固定システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554190
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 US2021021764
(87)【国際公開番号】W WO2021183679
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/988,253
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520490716
【氏名又は名称】スートラ メディカル,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sutra Medical,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ファム,トゥイ
(72)【発明者】
【氏名】マーチン,ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】ハミデフ,ヌアー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC12
4C097CC18
4C097MM09
4C097SB03
(57)【要約】
経カテーテル心臓弁尖置換システムは、弁プロテーゼと、プロテーゼを自己弁輪に誘導および移植するための多段階マルチルーメン(MSML)心臓弁送達移植システムとを含む。プロテーゼは、上部心房フレア部分および下部心室部分を含むステントフレームと、複数の人工弁尖と、少なくとも1のライニングスカートとを含む。プロテーゼは、MSML送達移植システム内に収まり、その後、弁輪内で展開されると、作動サイズおよび位置に選択的に拡張されるように構成可能または他の方法でサイズ調整可能である。プロテーゼの一部は、プロテーゼを弁輪に案内および固定するために、デュアル案内固定(DGF)部材と結合するように構成され得る。一態様では、MSML送達移植システムが、主ドッキングシステムと、DGF部材送達システムと、弁ハウジング・ポジショニング・ロッキングシステムとを含む。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
罹患心臓弁の治療のために人工心臓弁を移植するための心臓弁尖置換送達システムであって、
複数の貫通孔を有するステントと、少なくとも1の人工弁尖とを含む人工弁と、
デュアル案内固定(DGF)送達システムと、弁ハウジング・ポジショニング・ロッキング(VHPL)システムとを含み、作動位置に前進するために、複数のDGF部材を作動位置に送達および移植するために、かつ人工弁を作動位置に誘導、送達および固定するために協働的に構成された多段階マルチルーメン(MSML)送達システムと、
人工弁の誘導および固定を補助するために、複数のDGF部材を自己弁輪に埋め込むように構成されたDGF送達システムであって、各DGF部材が、組織内に埋め込まれるように構成されたヘッド部分と、固定機構を含む本体部分と、前記本体部分から前記DGF送達システムの近位側に延び、前記複数の貫通孔を介して人工弁の送達をガイドするテール部分とを含む、DGF送達システムと、
VHPLシステムであって、先に埋め込まれたDGF部材の所望の移植位置まで複数のDGF部材のテール部分を辿り、人工弁の最近位部分から人工弁の最遠位部分へと人工弁を縮められた状態から段階的に解放し、前記固定機構を介して人工弁をDGF部材に固定するように構成されたVHPLシステムとを備えることを特徴とする心臓弁尖置換送達システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
各ヘッド部分が、直径0.25~1.0mmのワイヤで形成された、長さ4~10mmかつ直径2~5mmの螺旋により構成され、各DGF部材が、螺旋の中心を通って軸方向に延びる直径0.25~1.0mmの直線状ワイヤとして構成された安定化部材をさらに備え、その鋭利な先端が螺旋の端部の先に1~3mm延びることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
各本体部分が、それぞれのヘッド部分に取り付けられ、分離に抵抗するように構成され、各本体部分が、前記DGF送達システムと係合するように設計された複数の係合構造を有するように構成され、かつ、複数の通路を含み、少なくとも1の通路が、前記固定機構を前記本体部分に固定するように構成され、少なくとも1の通路が、前記安定化部材を取り付けるためのものであることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記固定機構が、少なくとも1のロック部材および少なくとも1のテザーを備え、前記テザーが、前記少なくとも1のロック部材を前記本体部分に取り付けるように構成され、少なくともロック部材が、人工弁の貫通孔を一方向にのみ通過するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、
少なくともロック部材が、外側にフレア状に広がる複数の半径方向に圧縮可能な脚部を有し、円錐またはドーム形状を形成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1のロック部材が、前記本体部分の通路を通ってループ状になっているテザーを介して前記本体部分に取り付けられ、前記テザーが、それぞれのDGF部材のテール部分を選択的に取り付けるための近位ループを有するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記VHPLシステムが、
弁チャンバを保持する遠位端を含む弁チャンバシースであって、前記VHPLシステムの近位側まで延びる弁チャンバシースと、
前記弁チャンバ内に収容されるステントホルダを保持するステントホルダシースであって、前記弁チャンバシースの上を移動して前記VHPLシステムの近位側まで延びるように構成されたステントホルダシースと、
前記ステントホルダの近位側に配置されて前記VHPLシステムの近位側まで延びる複数のロックカテーテルと、
前記ステントホルダシースおよびロックカテーテルを収容するマルチルーメンガイドシースとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、
縮められた人工弁が、縮められた送達状態で、前記VHPLシステムの遠位端にある弁チャンバ内に収容されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記弁チャンバが、閉じた遠位面と、動作中の組織の損傷を防ぎナビゲーションを補助するための非外傷性遠位先端と、前記VHPLシステムの近位側で弁チャンバシースを操作することにより前記弁チャンバの位置が制御可能となるように前記弁チャンバを前記弁チャンバシースに取り付けるための機構とを含むシリンダとして構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記弁チャンバが、前記弁チャンバの近位端から延びる複数の軸方向スリットを有するように構成され、前記人工弁が縮められて前記弁チャンバ内に装填されたときに、前記スリットが人工弁のそれぞれの貫通孔と整列することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記VHPLシステムが、前記VHPLシステム内の縮められた人工弁の近位側に配置された複数のロックカテーテルで、弁の送達前に埋め込まれたDGF部材の後続のテールを受け入れるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記VHPLシステムの近位端が、人工弁の送達および固定をガイドするために、テール部分に個別に選択的に張力をかける縫合張力付与機構を備えるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記縫合張力付与機構が、ラチェットギアのアセンブリを備え、前記DGF部材が前記アセンブリに対して選択的に着脱可能であり、一方の回転方向にギアを選択的に回転させると前記テール部分の張力が増加し、他方の回転方向にギアを回転させると前記テール部分の張力が取り除かれ、回転しないと前記テール部分の先に得られた張力が維持されることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記人工弁ステントが、前記ステントの下部フレア部分から約2~6ミリメートル(2~6mm)延びる少なくとも1の細長い部材を有するように構成され、前記下部フレア部分が、真っ直ぐに、または半径方向内側に湾曲するように構成され得ることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記VHPLシステムから前記人工弁を選択的に取り外す前に、前記人工弁を複数のDGF部材の位置に誘導、拡張および固定することができるように、前記少なくとも1の細長い部材が、前記VHPLシステムに選択的に係合するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、
前記細長い部材の遠位先端の少なくとも1のタブは、前記人工弁が弁チャンバ内で縮められたときに、前記人工弁の遠位側に配置されたステントホルダの少なくとも1の凹部内に嵌るように構成され、前記人工弁は、前記少なくとも1のタブを前記ステントホルダの少なくとも1の凹部内に入れ、前記タブが前記弁チャンバの内壁と前記ステントホルダの少なくとも1の凹部との間に挟まれるように前記ステントホルダを前記弁チャンバ内に挿入することによって、前記VHPLシステムに選択的に取り付けることができ、前記人工弁は、前記弁チャンバを前記ステントホルダに対して遠位方向に進めて前記ステントホルダの少なくとも1の凹部を露出させて前記タブを解放することによって、前記VHPLシステムから選択的に取り外すことができることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項3に記載のシステムにおいて、
各ヘッド部材が、前記人工弁の上部フレア部分を通して埋め込まれるように構成され、複数の追加のDGF部材が、DGFロック部材を有する複数の先に埋め込まれたDGF部材によって定位置に固定された後に作動位置の人工弁の上部に埋め込まれることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、例えばヒトまたは動物の罹患僧帽弁および/または三尖弁を置換するための、心臓弁置換システムおよび人工心臓弁の経カテーテル移植に関する。より詳細には、主題の実施形態は、組織ベースの弁尖置換システム、および置換弁尖をその標的位置に動作可能に送達および固定する方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月11日に出願された同時係属中の米国仮出願第62/988,253号の利益を主張するものであり、かつ2017年3月8日に出願された同時係属中の出願第15/453,518号の一部継続出願であり、これは、2016年3月8日に出願された米国仮出願第62/305,204号、2016年10月27日に出願された第62/413,693号、および2016年11月29日に出願された第62/427,551号の利益を主張するものであり、かつ2020年12月14日に出願された同時係属中の出願第17/121,615号の一部継続出願であり、これは、2019年6月17日に出願された国際出願第PCT/US2019/037476号の継続出願であり、これは、2018年6月15日に出願された米国仮出願第62/685,378号の利益を主張するものであり、明細書および図面を含むこれらの開示はすべて、引用によりその全体が本明細書に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
僧帽弁(MV)は、ヒトの心臓の左心房(LA)と左心室(LV)の間にあり、通常、僧帽弁輪(MA)、2つの弁尖、腱索(「索」)、2つの乳頭筋および左心室心筋から構成されている。僧帽弁輪は前部と後部とに細分される。
【0004】
僧帽弁が閉じているとき、それぞれの前尖および後尖が密着して単一の並置領域を形成する。当業者であれば理解できるように、正常なMVの機能は、適切な力の均衡を伴い、その構成要素の各々が心周期中に調和して働く。MVの構成要素のいずれかに影響を与える病理学的変化、例えば、腱索断裂、弁輪拡張、乳頭筋の変位、弁尖の石灰化および粘液腫性疾患などは、MV機能の変化に繋がり、僧帽弁逆流(MR)を引き起こす可能性がある。
【0005】
僧帽弁逆流は、収縮期(すなわち、血液がLVから大動脈内に移動する心周期の駆出期)にLVから左心房に戻る血液の異常漏出を引き起こすMVの機能不全である。
【0006】
MV疾患の現在の治療法には、MVの外科的修復と置換があり、最近では、MVの経カテーテル修復と置換が行われている。
【0007】
有効なMV置換デバイスに対する注目されている課題には、概して、動作的な送達の課題、位置決めと固定の課題、密封と弁傍漏出の課題、および左心室流出路(LVOT)閉塞などの血行動態機能の課題などがある。
【0008】
上記動作的な送達の課題に関しては、従来の人工僧帽弁は従来の人工大動脈より大きいため、従来の経心尖部送達技術または経大腿送達技術のいずれかによる展開および回収のために、より大きな人工僧帽弁をカテーテル内に折り畳んで圧縮することはより困難である。
【0009】
位置決めと移植の課題に目を向けると、僧帽弁は高い経弁膜圧力勾配と拍動する心臓の動的な動きにより、心周期で高い反復負荷に曝されるため、不安定性と移動が最も顕著な障害となる。
【0010】
密封と弁傍漏出に関しては、僧帽弁輪は大きいため、弁傍漏出を最小限に抑えるような自己弁輪と人工弁の良好な適合が望まれる。通常、人工僧帽弁は、大きく張り出した心房部分またはフレアを有するため、漏れを防ぐことができるが、問題なのは、人工弁が自己MVにしっかりと装着されるように、心室レベルで大きな弁サイズを必要とすることである。従来、人工僧帽弁は、罹患した自己弁よりも小さく、大きな自己僧帽弁輪を補うために人工弁の周りに追加の材料が加えられる。望ましくないことに、人工弁にさらに材料を追加すると、送達システムのサイズが大きくなり、弁血栓症を引き起こす可能性がある。
【0011】
現在の経カテーテル送達システムのいくつかは、置換弁ステントの折り畳み構造を利用して、自己弁尖と弁輪を捕捉して掴み、置換弁を固定する。そのような方法は、インプラントと自己組織との間の不十分な相互作用力、あるいは自己組織の損傷(例えば、引き裂き)および/またはリモデリング(例えば、伸長、再形成)を引き起こす過剰な相互作用力によって、デバイスが脱離することが多く、それがインプラントの不安定性および/または移動を引き起こす原因となる。
【0012】
最後に、血行動態機能の維持に関して、上述したように従来から大きい人工僧帽弁デバイスの作動位置は、僧帽弁輪の前部分でLVOTを妨害してはならず、生来の大動脈弁および/または僧帽弁の関連構造と干渉してはならない。
【0013】
したがって、現在のシステムの欠点および欠陥に悩まされない心臓弁尖置換デバイスおよび送達移植システムを有することが有益であろう。人工僧帽弁置換システムを自己僧帽弁輪に固定することが望ましい。また、人工僧帽弁の位置決めを改善し、LVOTの閉塞を回避し、人工僧帽弁と自己MVとの間の血液の漏出を防止することも望ましい。さらに、他の望ましい特徴および特性は、添付の図面および前述した技術分野および背景技術と合わせて考慮して、後続の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0014】
本明細書には、心臓弁尖置換デバイス(例えば、人工僧帽弁置換デバイス)と、心臓弁尖置換デバイスを1または複数の自己弁輪に案内および固定するための多段階マルチルーメン(MSML)心臓弁送達移植システムとを含む心臓弁尖置換システムが記載されている。一態様では、MSML心臓弁送達移植システムが、僧帽弁置換デバイスを自己僧帽弁輪に案内および固定するように構成され得る。別の態様では、MSML心臓弁送達移植システムが、人工三尖弁置換デバイスを自己三尖弁輪に案内および固定するように構成され得る。明確にするために、本開示は、機能性および変性の僧帽弁逆流の治療のための弁尖置換デバイスの送達および移植に焦点を当てているが、弁尖置換デバイス、MSML送達移植システムおよび関連方法が、他の弁疾患を治療してヒト心臓の他の弁を置換するために使用され得るか、または使用されるように他の方法で構成され得ること、または弁欠損症に苦しむ他の哺乳類若しくは動物にも同様に使用され得るか、または使用されるように他の方法で構成され得ることが企図される。
【0015】
一態様では、心臓弁尖置換システムが、MSML送達移植システム内に収まり、その後、心臓内でMSML送達移植システムから取り外されると、作動サイズおよび位置に選択的に拡張されるように構成可能または他の方法でサイズ調整可能な心臓弁尖置換デバイスまたはプロテーゼを備えることができる。さらなる態様では、プロテーゼの少なくとも一部が、上部心房フレア部分と下部心室部分とを有するステントを含むことができる。一態様では、心房フレア部分が、ステントを弁輪上に案内および固定するために複数のデュアル案内固定(DGF)部材と結合するように構成され、それにより、移植後のプロテーゼの弁傍漏出および外れを防止するのに役立つことができる。プロテーゼの下部心室部分は、自己弁尖の一部を血流路の外に変位させ、少なくとも1のプロテーゼ弁尖を収容することができる。別の態様では、心臓弁尖置換デバイスが、ステントの内面および/または外面の少なくとも一部に結合され得るライニングスカートを備えることができる。任意選択的には、ステントの外面が、弁傍漏出を防止するために追加のスカート材料を有するように構成され得る。例示的な一態様では、少なくとも1の人工弁尖を、ステントの内側ルーメンおよび/またはステントの外側の少なくとも一部に取り付けることができ、これは、正常な弁機能を回復するために、例えば、僧帽弁逆流を防止するために、少なくとも1の自己弁尖の代わりに機能することができる。
【0016】
例示的な実施形態では、MSML送達システムが、2ステップの手順で心臓弁尖置換システムを移植するように構成され得る。ステップ1では、複数のDGF部材が、罹患弁の自己弁輪に埋め込まれる。ステップ2では、人工心臓弁尖置換デバイスが移植され、埋め込まれたDGF部材の位置に固定される。
【0017】
当業者には明らかなように、半分の弁であるか完全な弁であるか、円形であるか非円形であるかにかかわらず、様々な他の人工弁置換デバイスを、本開示に記載のMSML送達方法を使用して送達および移植することが可能である。
【0018】
一態様では、プロテーゼの送達は、例えば、限定することを意図するものではないが、低侵襲手術、経中隔または経心房アプローチなどのいくつかの所望の送達アクセスアプローチを使用して実施することができる。例示的な一態様では、経中隔アプローチが、心臓の右心房内に流れる上大静脈または下大静脈を通じて、心臓弁尖置換デバイスまたは人工デバイスの一部のその後の低侵襲送達のために内頚静脈または大腿静脈に開口部を作成することを含むことができる。この例示的な態様では、経中隔アプローチのアクセス経路が心臓の心房中隔を横切り、達成された時点で、心臓弁尖置換デバイスの構成要素が、左心房、自己僧帽弁および左心室内に動作可能に位置決めされることができる。
【0019】
一態様では、MSML送達移植システムが、主ドッキング/ガイドシステム、DGF部材送達システム、および弁ハウジング・ポジショニング・ロッキング(VHPL)システムを備えることができる。
【0020】
例示的な一態様では、VHPLが、ガイドシース、複数のロックカテーテル、ステントホルダシースおよび弁チャンバシースを含むことができる。
【0021】
一態様では、心臓弁尖置換システムの所望の構成要素が合併症なく左心房内に動作可能に位置決めされることを可能にするために、主ドッキングシースがアクセス経路内に配置され得ることが企図される。
【0022】
一態様では、心臓弁尖置換デバイスの1つの構成要素が、プロテーゼの送達前に、自己弁輪の所望の位置に動作可能に位置決めされて埋め込まれるDGF部材を含むことができる。この態様では、DGF部材が、その後のプロテーゼの正確な位置決めおよび固定をガイドすることができる。さらなる態様では、複数のDGF部材が、動作可能に配置されたプロテーゼと自己僧帽弁輪との間の血液の漏出を防止するのに役立つことができる。一態様では、DGF部材は、取り外し可能な構成要素および永続的な構成要素を有するように構成することができ、取り外し可能な構成要素が、心臓弁尖置換デバイスを作動位置に導くことを助け、プロテーゼを固定した後に患者の体から取り外されることができ、永続的な構成要素は、心臓弁尖置換デバイスを自己弁輪に固定したまま患者の体内に留まることができる。
【0023】
例示的な態様では、DGF部材が、ヘッド部材、ボディ部材およびテール部材などの複数のセクションを含むことができる。一態様では、DGFヘッド部材を環状組織内に動作可能に挿入し、埋め込むことができる。一態様では、DGF本体部材が、心臓弁尖置換デバイスを自己僧帽弁輪に固定するためのDGFロック部材を有するように構成され得る。別の態様では、DGF本体部材が、カテーテルに係合され、DGFヘッド部材を組織内に埋め込み、カテーテルから離脱してDGF部材全体を弁輪に永続的に移植したままとすることができるように構成され得る。DGF部材は、取り外して再配置できるように設計されている。一態様では、DGFテール部材を、DGF本体の近位部分からMSMLシステムの近位端まで延びる柔軟な構成要素として構成することができる。任意選択的には、DGFテールは、心臓弁尖置換システム移植術の完了時に身体から取り外すことができるように、選択的に取り外し可能に構成することができる。
【0024】
当業者は、手術中、患者の心臓が鼓動し、弁輪組織が動いているため、1)弁輪組織と係合し、2)DGF部材の移植中、DGF送達システムの適切な配置を維持することが困難であり得ることを理解することができる。そのような条件下では、安定化部材が必要であると考えることができる。この態様では、DGFヘッド部材が、DGF部材の移植中にDGF部材およびDGF部材送達機構を安定させるように作用する安定化部材、例えば、DGFヘッド部材内の同心針を有するように構成されることが可能である。一態様では、安定化部材が、真空吸引、クランプおよびリリース、または電磁場若しくは熱場によって引き起こされる変化による他の機構など、組織と係合および/または離脱することができる他の機構を有するように構成されることが可能である。
【0025】
一態様では、DGF本体部材が、複数のDGFロック部材を含む人工弁固定機構を有するように構成することができる。一態様では、DGFロック部材が、人工弁を作動位置に固定するために、人工弁と係合するように構成することができる。
【0026】
例示的な態様では、DGFロック部材を、柔軟な構成要素を介してDGF本体部材に取り付けるように構成することができる。
【0027】
DGFロック部材は、DGFテール部材と係合するように構成することができる。
【0028】
一態様では、プロテーゼが、ステントフレームの心房フレア部分の複数の貫通孔を介してDGFロック部材に係合するように構成され得る。この態様では、DGFテール部材をテザーとすることができ、テザーは、その一端がDGF本体部材に取り付けられ、他端が本体から出ることができるように構成される。その後、テザーを、ステントの心房フレア部分の孔に通すことができ、それにより、プロテーゼをDGFテール部材上に送達し、ステントの心房フレア部分を弁輪に埋め込まれたDGF本体部材に正確に送達することができる。
【0029】
一態様では、そのようなDGF部材の配置はランダムではない。弁輪上のDGF部材の間隔は、後部弁輪内のプロテーゼの正確な位置決めおよび配置を確保するために、プロテーゼステントの貫通孔の間隔と密接に一致させるべきである。
【0030】
別の態様では、2セットのDGF部材を別々に展開させることができる。この態様では、DGF部材の最初のセットを、自己弁の交連の近傍と後部弁輪の中間に埋め込むことができる。DGF部材のこのセットは、プロテーゼの正確な位置決めと展開をガイドすることとなる。弁の展開後、DGF部材の第2のセットを、展開されたプロテーゼの上部に直接埋め込むことができる。別の態様では、DGF部材の第2のセットを、プロテーゼステントのフレアセクションの上部に展開させることができる。後部弁輪に埋め込まれた追加のDGF部材によって、人工弁輪と自己弁輪との間のギャップが小さくなり、よって、弁傍漏出、最終的には人工弁の脱離を防止することができることを理解されよう。
【0031】
一態様では、DGFロック部材が、ステントの心房フレア部分の孔を通過できるように、その孔の直径よりも小さい直径に選択的に圧縮されるように構成され、その後、ステントのフレア部分の孔を通ってDGFロック部材が後方に移動するのを防ぐためにその孔の直径よりも大きい元のサイズに選択的に再拡張するように構成されることが可能である。
【0032】
例示的な一態様では、DGFロック部材が、複数の半径方向に圧縮可能な脚部を有するように構成されることができ、例えば、円錐形状を形成して、その近位先端がステントの心房フレアの孔よりも小さな直径を有し、円錐形状の遠位基部がステントの心房フレアの孔よりも大きな直径を有するように構成されることができる。動作中、DGFロック部材の近位先端をステントの心房フレア部分の孔に引き込むようにDGFテールに張力をかけることができ、ロック部材脚部が孔の縁部に接触すると、ロック部材脚部が半径方向に圧縮されて、DGFロック部材が孔を通って完全に引き込まれることが可能になる。ロック部材がステントを完全に通過すると、DGFロック部材の脚部が、心房ステントフレアの孔を通ってDGFロック部材が後方に移動するのを防止するために、フルサイズに再拡張することができる。
【0033】
一態様では、VHPLシステムが、ドッキングシースのルーメン内に収まり、他のVHPLシステムの構成要素をすべて収容することができるガイドシースを備えることができる。例示的な一態様では、ガイドシースが、遠位先端にセパレータを有するように構成され、それにより、すべての内側のチューブが整理されて、DGFテールおよびロックカテーテルの絡まりや重なりが防止される。
【0034】
別の態様では、ガイドシース全体が、内側のチューブを整理するために複数のルーメンを有するように構成され得る。例示的な一態様では、セパレータが4つのルーメン:3つの外側ルーメンと、それらに取り囲まれた1つの中央ルーメンとを備えることができる。ステントホルダシースは、セパレータの中央ルーメンを通ることができ、ロックカテーテルは、3つの外側ルーメンの各々を通ることができる。
【0035】
一態様では、VHPLが、弁チャンバを備えることができる。この態様では、心臓弁尖置換デバイスは、VHPLシステムの遠位端の弁チャンバ内に収まるように縮められ/クリンプされ、その後、VHPLシステムの弁チャンバから取り除かれると、動作可能なサイズに選択的に拡張されて位置決めされることができる。
【0036】
一態様では、ステントホルダが、弁チャンバのルーメン内に収まり、人工弁の解放を促すように構成され得る。この態様では、ステントホルダを、VHPLシステムの近位側に延びるステントホルダシースの遠位先端に取り付けるように構成することができ、VHPLシステムの近位側でステントホルダシースを操作することにより、弁チャンバ内のステントホルダ位置を制御することができる。
【0037】
一態様では、弁チャンバシースを、ステントホルダシースのルーメン内に収まるように、操縦可能または非操縦可能に構成することができる。弁チャンバシースは、任意選択的には、チューブまたは中実ロッドとして構成することができる。
【0038】
例示的な態様では、ステントを、ステントホルダの近位側でステントホルダシースの上で縮めて、弁チャンバ内に装填することが可能である。その後、プロテーゼは、ステントホルダの位置を固定したまま、弁チャンバシースを遠位方向に前進させることによって、弁チャンバから解放することができる。ステントホルダはプロテーゼの遠位方向の動きを阻止し、弁チャンバが遠位方向に移動すると、人工弁が弁チャンバから、初めに人工弁の近位側が解放されて、最後に人工弁の遠位側が解放される。
【0039】
例示的な一態様では、3つのDGFヘッド部材を最初に弁輪に埋め込むことができ、1つを内側交連に、1つを外側交連に、1つを後部弁輪の中心に埋め込むことができる。弁チャンバ上のスリットは、縮められた人工弁の心房フレア部分の内側縁部、外側縁部および中央の孔とそれぞれ整列し、その結果、後続のDGFテールは、対応する心房フレアの孔を通り、その後、弁ハウジング・ポジショニング・ロッキングシステムの対応するロックカテーテルを通って容易に送り込まれることができる。
【0040】
一態様では、VHPLシステムを患者の体内に挿入し、DGFテールを緊張させて弁チャンバ、ひいては人工弁を、先に埋め込んだDGFヘッド部材の作動位置まで誘導することができる。僧帽弁輪の位置に来ると、弁チャンバシースを前進させて、人工弁を心房フレア部分から解放することができ、これを、人工弁の心室部分全体が解放されるまで続けることができる。
【0041】
一態様では、心臓弁尖置換システムのより良い位置決めを行うために、MSML送達システム内の1または複数のシースを、偏向可能かつ/または操縦可能に構成することが可能である。さらにこの態様では、心臓弁尖置換システムが、経大腿、経中隔処置によって僧帽弁輪に移植されることが企図される。このため、ドッキングシースを大腿静脈に挿入して、下大静脈まで進めた後、左心房へのアクセスを得るために、遠位先端を関節運動により下大静脈から卵円窩の経中隔穿刺部位を通して曲げることができる。VHPLシステムをドッキングシースから挿入して、左心房まで前進させることができる。ステントホルダおよび弁チャンバシースを前進させ、ステントホルダシースを関節運動させてステントホルダシース先端を左心室の方向に曲げ、弁チャンバを僧帽弁輪開口部の中心に配置することが可能である。
【0042】
一態様では、それぞれのDGFテールを緊張させて、対応するDGFロックデバイスをプロテーゼに係合させることにより、弁チャンバから縮められたプロテーゼを完全に解放する前に、1または複数の埋め込まれたDGFヘッド部材の位置にプロテーゼを固定することができる。
【0043】
一態様では、VHPLシステムは、心臓弁置換システムの位置決めおよび固定をガイドするために、DGFテールに個別に、または任意選択的には複数のDGFテールに同時に、張力をかけるように動作させることができる縫合張力付与機構を備えるように構成することができる。
【0044】
一態様では、弁の展開後、DGFテールに張力をかけながらステントの心房フレア部分に対して遠位方向に複数のロックカテーテルを前進させることにより、DGFロック機構をプロテーゼに係合させることができる。
【0045】
一態様では、ロックカテーテルが可撓性を有するように構成され、プロテーゼの固定中に他の操縦可能なシースとともに曲がることができる。別の態様では、ロックカテーテルの遠位先端が、DGFロック部材の上を通過できるように、DGFロック部材よりも大きな内径を有する。この態様では、DGFロック部材が心房フレアの孔を通って引っ張られるまで、ロックカテーテルがプロテーゼの心房フレア部分に押し付けられることになる。
【0046】
一態様では、プロテーゼが高度に制御された方法で定位置に誘導、位置決めおよび固定され得るように、ステントの下部心室部分が、VHPLシステムを選択的に係合する機構を有するように構成されている。例示的な一態様では、ステントホルダがステントフレームの下部心室部分のタブと相補的な形状を有する凹部を有するように構成され、それにより、タブがステントホルダの凹部内に収まり、弁チャンバがタブの凹部を露出させるのに十分なほど遠位方向に前進するまで、凹部が弁チャンバ内壁に対してステントフレームのタブを保持する機能を果たす。
【0047】
一態様では、ステントフレームの下部心室部分が、ステントの残りの部分よりも長い延出部材の先端にタブを備え、動作中に、タブがステントの最下点となるように構成され得る。例示的な一態様では、ステントフレームがアカエイと形状が類似するように構成され、延出部材がアカエイの尾に似ていてステントフレームの本体よりも長く延びることができ、延出部材の先端が、ステントホルダと係合するように構成されることができる。別の態様では、ステントフレームの下部心室部分が、ステントの残りの部分よりも長い複数の延出部材の先端に、複数のタブまたは孔、または他の係合部材を有するように構成されることができる。係合部材は、ステントホルダまたはステントホルダシースの凹部または突起などの相補的な係合部材と動作可能に係合させることができる。
【0048】
任意選択的な態様では、プロテーゼが、ステントホルダに係合した延出部材のタブのみを残して弁チャンバから解放され、それにより僧帽弁輪内で完全に拡張することができる。ステントタブをステントホルダに係合させたまま、ロックカテーテルを前進させ、埋め込まれたDGF部材の位置でプロテーゼを固定するために、DGFテールに張力をかけることができる。当業者であれば、プロテーゼが解放されると、プロテーゼを定位置に保持する機構がなければ、左心室内の血圧によってプロテーゼが望ましくない移動を引き起こす可能性があることを理解するであろう。プロテーゼがDGFロック部材によって固定されるまで、プロテーゼを弁チャンバ内に拘束する機構を含むことによって、送達および移植プロセスの安全性が大幅に改善される。この機構は、人工弁の展開プロセス中に人工弁デバイスをVHPLシステムの一部と係合および係合解除させることができる様々な異なる係合部材によって実現することができる。
【0049】
一態様では、人工弁およびDGFロック部材の展開に続いて、作動位置に弁傍漏出または弁の不安定性が存在する場合、複数の追加のDGF部材を、DGF送達システムにより人工弁尖の上部に展開することができ、それにより、DGF本体部材の本体部分がプロテーゼの心房フレア部分と同一平面上に来るまで、追加のDGF部材の各DGFヘッド部材が、プロテーゼの心房フレア部分のスカート材料を通して駆動されて筋性弁輪組織内に埋め込まれることが企図される。この態様では、DGF本体部材に追加の固定機構、すなわちロック部材は必要とされない。
【0050】
心臓弁尖置換システムの移植に続いて、MSML送達システムのすべての構成要素を取り外し、ドッキングシースを介して中隔閉鎖デバイスを挿入して心房中隔の穴を閉鎖することができると考えられる。その後、MSML送達システム全体を身体から取り除くことができる。
【0051】
本開示に記載の様々な実施態様は、追加のシステム、方法、特徴および利点を含むことができ、それらは必ずしも本明細書に明示的に開示されていないが、以下の詳細な説明および添付図面を検討すれば、当業者には明らかであろう。すべてのそのようなシステム、方法、特徴および利点が本開示に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本主題の特徴および利点のより良い理解は、例示的な実施形態を記載した以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られるであろう。以下の図面の特徴および構成要素は、本開示の一般原理を強調するように示されている。図面全体を通して対応する特徴および構成要素は、一貫性および明瞭性のために、一致する符号によって指定される場合がある。
【0053】
図1図1A図1Dは、人工弁の様々な概略図を示している。図1Aは、人工弁のステントフレームの正面図を示し、複数の貫通孔を特徴とする心房フレア部分と、タブを有する細長い部材を特徴とする下部心室部分とを示している。図1Bは、人工弁のステントフレームの側面図を示している。図1Cは、人工弁の正面図を示し、3つの弁尖を示している。図1Dは、人工弁ステントへの弁尖の取り付けの側面図を示し、ステント内面への中間弁尖の取り付けのプロング構造を示している。
図2図2A図2Cは、DGF部材の例示的な態様を示している。図2Aは、DGF部材の各構成要素を示している。図2Bは、DGFヘッド部材の上面図を示している。図2Cは、DGFロック部材とその構成要素を示している。
図3図3Aおよび図3Bは、複数のDGF部材によって定位置に固定されたステントの概略図である。図3Aは、ステントの心房フレア部分がDGFヘッドとDGFロック部材との間に挟まれた状態を示す側面図である。図3Bは、人工弁ステントのフレア部分に沿った3つのDGF部材の位置を示している。
図4図4は、DGFロック部材のない追加のDGF部材がステントの心房フレア部分に移植される一態様を示す概略図である。
図5図5は、角度の付いたベースに取り付けられたドッキングシステムおよび弁ハウジング・ポジショニング・ロッキングシステムの概略図である。
図6図6は、弁ハウジング・ポジショニング・ロッキングシステムのカテーテルの概略図であり、弁チャンバが遠位セクションに取り付けられ、続いてステントホルダが操縦可能なステントホルダシース上に取り付けられ、複数のロックカテーテルが設けられており、いずれもガイドシース内に存在し、セパレータによって分離されている。
図7図7は、弁チャンバシースの遠位端に取り付けられた弁チャンバの斜視図である。
図8図8A図8Dは、心臓弁尖置換システム、および人工弁を装填、解放および固定するためのステップを示している。図8Aは、人工弁(明確化のため、ステントのみ)が弁チャンバ内に装填されている様子を示している。図8Bは、弁チャンバを遠位方向に前進させることにより人工弁が解放される様子を示している。図8Cは、人工弁が弁チャンバ内の機構によって固定中に安定化され、ロックカテーテルがDGF部材テール(図示せず)によって人工弁フレアセクションのDGF部材(図示せず)に案内され、人工弁を定位置に固定している様子を示している。図8Dは、人工弁が最初の3つのDGF部材で固定され、弁ハウジング・ポジショニング・ロッキングシステム全体が取り外され得ることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、以下の詳細な説明、実施例、図面および特許請求の範囲、並びに、それらの前後の説明を参照することにより、より容易に理解することができる。しかしながら、本発明のデバイス、システムおよび/または方法が開示および説明される前に、本発明は、特に明記しない限り、開示された特定のデバイス、システムおよび/または方法に限定されるものではなく、よって当然のことながら、変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明する目的だけのものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0055】
以下の説明は、デバイス、システムおよび方法の例の有効な教示として提供される。このため、当業者は、本発明の有益な結果を得ながら、本明細書に記載の様々な態様に多くの変更を加えることができることを認識および理解するであろう。また、本発明の実施形態の所望の利点のいくつかは、特徴のいくつかを選択することによって、他の特徴を利用せずに得ることができることも明らかであろう。
【0056】
したがって、当業者であれば、多くの変更および適応が可能であり、それらが特定の状況において望ましくさえあり得ること、そして本発明の一部であることを認識するであろう。よって、以下の説明は、本発明の原理を例示するものとして提供されるものであり、本発明を限定するものでない。
【0057】
明確にするために、本開示は機能性僧帽弁逆流の治療に焦点を当てることを理解されたい。しかしながら、心臓弁尖置換システムおよび関連する方法は、他のタイプの僧帽弁逆流を治療するために、または三尖弁などのヒト心臓の他の罹患弁を置換するために使用され得るか、使用されるように他の方法で構成され、または弁欠損に同様に悩まされる他の哺乳動物に使用され得るか、使用されるように他の方法で構成され得ることが企図される。
【0058】
全体を通して使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。このため、例えば、「弁尖」への言及は、文脈がそうでないことを示さない限り、2以上のそのような弁尖を含むことができる。
【0059】
範囲は、本明細書では、「おおよそ」ある特定の値から、かつ/または「おおよそ」別の特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表されるとき、別の態様は、ある特定の値から、かつ/または他の特定の値までを含む。同様に、「約」という先行詞の使用により、値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されよう。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、他の端点から独立しても重要であることが理解されよう。
【0060】
本明細書において、「任意選択的な」または「任意選択的に」という用語は、その後に説明する事象または状況が発生する可能性または発生しない可能性があること、並びに、その説明に、その事象または状況が発生する場合と発生しない場合とが含まれることを意味する。
【0061】
本明細書で使用される「または」という語は、特定のリストの任意の1つの要素を意味し、そのリストの要素の任意の組合せも含む。さらに、特に「できる」、「可能性がある」、「かもしれない」または「場合がある」などの条件付き言語は、特に明記されていない限り、または使用される文脈内で理解されない限り、一般に、特定の態様が特定の特徴、要素および/またはステップを含むが、他の態様がそれらを含まないことを伝えることを意図していることに留意されたい。このため、そのような条件付き言語は、特徴、要素および/またはステップが1または複数の特定の態様に何らかの形で必要であること、または1または複数の特定の態様が、ユーザ入力または促しの有無にかかわらず、それらの特徴、要素および/またはステップが任意の特定の実施形態に含まれるかまたは実行されるか否かを決定するためのロジックを必ず含むことを意味することを一般に意図していない。
【0062】
開示の方法およびシステムを実行するために使用することができる構成要素が開示されている。それらおよび他の構成要素は本明細書に開示されており、それら構成要素の組合せ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、それらの様々な個別のおよび集合的な組合せおよび置換の各々の具体的な参照は明示的に開示されていないが、各々は、すべての方法およびシステムについて、本明細書に具体的に企図および記載されているものと理解されたい。これは、開示の方法におけるステップを含むがそれに限定されない、本願のすべての態様に適用される。このため、実行可能な様々な追加ステップがある場合、それらの追加ステップの各々は、開示の方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組合せで実行可能であることを理解されたい。
【0063】
本方法およびシステムは、好ましい実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0064】
本明細書を通じて、「人工弁」、「プロテーゼ」、「弁ステント」、「心臓弁尖置換デバイス」および「弁デバイス」という用語は、互いに交換可能に使用され、本明細書に記載の心臓弁置換デバイスとして企図される。
【0065】
本明細書を通じて、「遠位」および「近位」という用語は、送達システムの使用中のオペレータに対して表現される。「遠位」は、オペレータから離れた装置部分、またはオペレータから離れる方向を示し、「近位」は、オペレータに近い装置部分、またはオペレータに向かう方向を示している。
【0066】
当業者であれば、人工弁を心臓内に首尾よく配置するために使用される経カテーテル術およびシステムの複雑さを理解することができる。そのような方法は、多数の構成要素および多数のステップを含む。それらの構成要素およびステップが本明細書の異なる部分に記載されていたとしても、それらの構成要素およびステップは、必ずしも本明細書に記載の順序で使用および実行される必要はないことを理解されたい。
【0067】
本明細書に記載の心臓弁置換システムは、任意の心臓弁置換デバイスまたはプロテーゼとともに利用することができる。本明細書に記載の心臓弁置換システムは、人工弁2を対象の心臓内に送達するために同時に使用できる一連のシステムを含むことが企図される。
【0068】
一態様では、心臓弁置換システムが、心臓弁置換デバイスまたはプロテーゼ2を移植部位または自己僧帽弁輪に送達するように構成することができる多段階マルチルーメン(MSML)送達システムを含む。そのようなシステムは、デュアル案内固定(DGF)送達システムおよび弁ハウジング・ポジショニング・ロッキング(VHPL)システムを含むことができる。一態様では、本明細書に記載のDGF送達システムが、複数のDGF部材を生来の弁輪に埋め込み、人工弁を標的移植位置に誘導および固定するのを支援するように構成されている。一態様では、新規なVHPLシステムが、複数のDGF部材のテール、クリンプされた人工弁を収容および整理するように構成され、クリンプされた人工弁を段階的に解放し、DGF本体固定機構を介して埋め込まれたDGF部材で人工弁を固定するように設計することが可能である。
【0069】
一態様では、MSML送達システムが、下大静脈を介して僧帽弁にアクセスし、右心房に入り、心房中隔を横切って左心房に入り、その後、自己僧帽弁輪に向けて下方に関節運動することができる。MSML送達システムは、上大静脈を介して移植部位にナビゲートされ、自己僧帽弁輪に向かう前述と同じ経路を辿ることが企図される。
【0070】
図1A図1Dを参照すると、一態様では、MSML送達システムの三日月形のステント3が、心房フレア部分4、心室部分5およびネック部分6を含むことができる。一態様では、心房フレア部分4、心室部分5およびネック部分6が、連続的に接続されて、単一体を形成している。心房フレア部分4の少なくとも一部および/または心室部分5の一部は、所望の作動位置まで自己拡張可能またはバルーン拡張可能に形成され得る。この態様では、ステント3が、半径方向に折り畳み可能かつ拡張可能な所望の形状に、従来のようにレーザカットされるか、または編み込まれることが企図されている。したがって、ステント3が、金属、ポリマー材料または生物学的に生成された材料で作られ得る拡張可能なメッシュ状体または非メッシュ状体を形成するために、複数の動作可能に連結された構成要素を含むことができ、そのような材料には、コバルトクロム、ステンレス鋼、またはニチノールを含む固有の形状記憶特性を有する金属に限定されるものではないが、それらが含まれることがさらに企図される。任意選択的に、ステント3は、生体組織、ポリマーなどの合成材料などの柔軟性を有する材料によって連結された複数の垂直剛性構造を含むことができることが企図される。ステント3は、残りの1または複数の自己弁尖の自然な動的運動が1または複数の人工弁尖10と接合することを可能にするように構成することができる。
【0071】
一態様では、移植時に、ステント3の心房フレア部分4が、自己弁輪および/またはその上方に配置されるように構成できることが企図される。この態様では、ステント3の心房フレア部分4が、プロテーゼ2を容易に固定および密封するように構成され、それにより、移植後の弁傍漏出および脱離の防止を支援することができる。僧帽弁輪は、非対称である。プロテーゼ2の心房フレア部分4は、3つのスカラップ、すなわちP1、P2およびP3に分割される僧帽弁輪の後方部分を覆うかまたは被せるように構成することができる。一態様では、心房フレア部分41が、2つの交連、すなわち、AC-前交連およびPC-後交連に跨ることができる。別の態様では、心房フレア部分4が、動作可能に配置されたときに僧帽弁の全周を覆うように、前心房フレア部分だけでなく後心房フレア部分も含むことができる。
【0072】
一態様では、図1Aおよび図1Bに示すように、心房フレア部分4の少なくとも一部が屈曲部14を有する。この態様では、屈曲部が、心腔壁から離れる上向きのカールであり、心臓組織の深い貫通をもたらし得る心腔の過剰な拡張を防止することができる。さらなる態様では、上向きカール部分が、心房フレア部分4から約90~120度(90~120°)の方向に向いている。さらなる態様では、この屈曲部14が、心房フレア部分4のセルストラットにのみあり、よって、心房フレア部分4の貫通孔9の円形の形状に干渉したり歪ませたりすることはない。
【0073】
別の態様では、心房フレア部分4の少なくとも一部が、DGF部材101と選択的に係合する複数の貫通孔9を有するように構成されている。一態様では、貫通孔9が、円形の形状を有するように設計され、セルストラットを接続し、隣接するセルとのブリッジ接続を形成することができる。貫通孔9は、心房フレア部分4のブリッジ接続ごとに設計することができる。別の態様では、貫通孔9を、心房フレア部分4のブリッジ接続の総数よりも少ない位置に設計することができる。
【0074】
一態様では、ステントの心室部分5の全周を、左心室壁に向けて曲げることができる。図1Bを参照すると、その曲げ角度15を、ステント3の心房フレア部分4に対して60~120度(60~120°)とすることができる。
【0075】
図1Aおよび図1Bを参照すると、一態様では、ステント3が、延出部材7を備えるように構成されている。一態様では、延出部材7を、直線セグメントとして構成することができる。別の態様では、延出部材7を、短い長さ部分と、直線セグメントに連続的に接続される遠位端のタブ8とを有するように構成することができる。
【0076】
一態様では、延出部材7の残りの部分よりも大きな幅を有するようにタブ8を構成することができる。
【0077】
例示的な態様では、ステントの心室部分5の遠位部分の中心に少なくとも1の延出部材7を設計することができる。この態様では、作動位置において、延出部材7が、左心室内に最も遠くまで延びるステント3の最長のセクションである。この態様では、延出部材7が、ステント3の他の部分よりも約2~7ミリメートル(2~7mm)長い。
【0078】
例示的な態様では、図1Bに示すように、延出部材7を、動作中に心室の後壁との干渉を避けるために半径方向内側に湾曲するように構成することができる。
【0079】
任意選択的な態様では、延出部材7を、ステントの心室部分5の円周に沿った他のセクションに配置することができる。例示的な態様では、図1Aに示すように、延出部材7が、ステント3の心室部分5の1または複数の下部セルから延びることができる。
【0080】
図1Aを参照すると、一態様では、延出部材7のタブ8が、VHPLシステムからの解放中にプロテーゼを保持して、DGF固定機構が係合される前にそれが不意に移動するのを防ぐように構成されている。この態様では、プロテーゼが標的移植位置に固定されるまで、(VHPL)システム1が延出部材7のタブ8に接続されるように選択的に設計されている。プロテーゼ2が移植位置に完全に固定されると、タブ8は(VHPL)システム1から選択的に解放されて、プロテーゼ2を(VHPL)システム1から離脱させることができる。
【0081】
一態様では、タブ8が、ドーム状、円形、正方形、長方形、三角形または不規則な形状を有するように構成される。別の態様では、タブ8が、少なくとも1の貫通孔を有するように構成される。
【0082】
一態様では、少なくとも1の人工弁尖10が、図1Cおよび図1Dに示すように、ステント3の心室部分5の内面に取り付けられる。さらなる態様では、複数の人工弁尖のうちの少なくとも1の人工弁尖10が、異なる形状を有する。別の態様では、少なくとも1の人工弁尖10の少なくとも1のプロング構造11が、複数のプロング構造11を含む。少なくとも1のプロング構造11は、弁尖の自由端に結合されることが企図される。
【0083】
MSML送達システムの一態様では、人工弁尖10を、自己僧帽弁後尖と同様の形状に構成することができる。
【0084】
少なくとも1の人工弁尖10および少なくとも1のプロング構造11は、生体組織、ポリマー材料または布地のような柔軟な材料の単一の平坦片で構成することができ、ステント取付点から半径方向内側に膨らむ3Dドーム状構造を形成するようにステント3に取り付けられ得ることが企図される。人工弁尖10は、心周期中に可動であるように構成することができ、人工弁尖10は、拡張期にはステントの内面に近づき、収縮期にはステントの内面から遠ざかるように移動する。
【0085】
図1Cを参照すると、一態様では、少なくとも1の人工弁尖10が、3つの弁尖:2つの小さい側弁尖と、1つの大きい中央弁尖とを含むことができ、それらが、ステント3の心室部分5の内面から半径方向に延びる3つの異なるドーム状構造を形成する。この態様では、3つの弁尖を、ステントの下部心室部分の外周に跨るように構成することができる。人工弁尖10は、動作中の弁横断漏出を防止するために、ステント3の内面に互いに密着して取り付けることができる。さらに、この態様では、弁尖は、動作時に血流経路に配置され、収縮期血圧下で僧帽弁口を閉じることができるように、ステント3から半径方向内側に膨らむように構成することができる。
【0086】
例示的な一態様では、図1Cおよび図1Dに示すように、より小さい側弁尖が、非対称であり、ステント3の下部心室部分5の形状に対応する側縁の長さがより短い。一態様では、より大きな中央弁尖が、対称的な形状を有し、2つのプロング構造11が弁尖の自由端から延びている。さらに、この態様では、例えば、プロング11の端部をステント3の下部心室部分5の貫通孔12を介してステントに縫合することによって、プロング11の自由端をステント3の一部に取り付けることができる。この態様では、プロング構造11が、大きな中央弁尖の過度の膨らみおよび逸脱を防止し、また耐久性に重要な人工弁尖10における応力を均等に分散させるのにも役立つ。任意選択的には、1または複数のプロング構造11を側弁尖に追加することができる。
【0087】
図5を参照すると、MSML送達移植システムは、ドッキングシステム326、DGF部材送達システムおよびVHPLシステム1を含むことができ、それらを、送達プロセスを容易にするためにハンドルプラットフォーム301に取り付けることができる。ハンドルプラットフォーム301は、ベース324に取り付けられている。
【0088】
一態様では、ベース324が、身体のアクセス部位に最適に入るようにMSMLシステムの角度を調整できる機構を特徴としている。ベース324は、金属、プラスチックなどの剛性材料で作ることができるが、それらに限定されるものではない。
【0089】
一態様では、ドッキングシステム326は、ドッキングシース327およびドッキングハンドルを含む。ドッキングシース327は、最初に、イントロデューサシースを通して体内に入ることができる。例示的な一態様では、ドッキングシース327を、移植部位にアクセスするために偏向可能に構成することができる。この態様では、ドッキングシース327の遠位端を、シースの近位端に対して最大180度(180°)まで曲がるように構成することができる。
【0090】
ドッキングシステム326が定位置に配置されると、DGFシステムを導入することができる。この態様では、例えば図2に示すような複数のDGF部材101を順次または同時に送達して、弁輪の所望の位置に埋め込むことができる。
【0091】
さらなる態様では、プロテーゼ2の送達前に、DGF部材101を埋め込む方法が実施されることが企図される。
【0092】
図2Aを参照すると、一態様では、DGF部材101が、DGFヘッド部材102、DGF本体部材103、DGFロック部材105およびテザー114を備えることができ、それらは僧帽弁輪内に恒久的に埋め込まれることが意図されている。
【0093】
別の態様では、プロテーゼ2の送達および固定の後に、追加のDGF部材101Aの埋め込みを実施することができる。この態様では、DGF部材101Aが、DGFヘッド部材102と、DGF本体部材103と、ループを形成するDGFテザー114とを有するように構成することができる。
【0094】
一態様では、図2Bに示すように、DGF部材101が、弁輪またはその周囲の組織と係合するヘッド部分102と、DGF送達カテーテルと係合する係合具109を有する本体部分103とを備えるように構成されている。
【0095】
DGFヘッド部材102は、自己環状組織に埋め込まれ、移植後の分離に抵抗するように構成されることがさらに企図される。例示的な態様では、DGFヘッド部材102が、環状組織に係合する螺旋形状、コイル形状、プロング形状、ネジ形状および棘付きのフック形状を有することができるが、これらに限定されるものではない。DGFヘッド部材102は、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、ポリマーなどで形成することができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
例示的な一態様では、DGFヘッド部材102が、約4~10ミリメートル(4~10mm)の長さ、約2~5ミリメートル(2~5mm)の直径を有するコイル108を有するように構成され、0.25~1ミリメートル(0.25~1.0mm)の直径を有するワイヤで形成されている。
【0097】
一態様では、DGFヘッド部材102が、動作中のDGF送達システムを介した環状組織へのDGFヘッド部材102の制御された移植を容易にするために安定化部材111を備えるように構成することができる。例示的な一態様では、安定化部材111が、螺旋の中心を通って軸方向に延びる直径約0.25~1ミリメートル(0.25~1.0mm)の直線状ワイヤであって、螺旋の端部の先に約1~3ミリメートル(1~3mm)延びる鋭利な先端を有するワイヤとして構成されている。さらなる態様では、安定化部材111を、DGFヘッド部材コイル108の先に約1~5ミリメートル(1~5mm)だけ軸方向に延びる鋭利な遠位先端112を有する針として構成することができる。動作中、安定化部材111は、DGFヘッド部材102を組織中にねじ込む前に環状組織に係合するために使用することができ、これは、DGF送達システムの望ましくない動きを防ぐのに役立ち、よってDGFヘッド部材102を弁輪に沿った所望の位置に容易に移植することができる。このような安定化部材111は、好ましい移植部位でDGF部材を組織と係合させ、移植中にDGF部材が標的位置から移動するのを防ぐために使用できることを理解されたい。
【0098】
さらなる態様では、図2Aに示すようなDGFヘッド部材102のコイル108の先端119を、環状組織中への貫入を容易にするように成形および構成することができる。例示的な一態様では、コイル108の先端119が、鋭利であり、コイル108の残りの部分と同じピッチで湾曲している。別の例示的な態様では、先端119が直線状であってもよい。別の任意の態様では、先端119が、約1~3ミリメートル(1~3mm)の円弧長を有することができる。
【0099】
別の態様では、図2Bに示すように、DGF本体部材103が、基部と、DGF送達カテーテルと係合するように構成された押出セクション109とを備える。この態様では、基部および押出セクションを一体とすることができる。さらなる態様では、押出セクション109は、DGF送達カテーテルがそれに係合できるように、基部の外径よりも小さな寸法を有する。
【0100】
一態様では、押出セクション109が、3つの貫通孔を有し、孔110のうちの2つが、テザー114を介してDGFロック部材105を取り付けるように構成されている。この態様では、テザー114の遠位セクションが、2つの取付孔110を介してDGF本体に固定され、DGFロック部材105がテザー114に沿って動くのを拘束するように、テザー114の中間部がDGFロック部材105を通ってループを形成するように構成され、DGFロック部材105の近位側のテザー114の近位セクションが、ループを有するように構成されている。
【0101】
一態様では、DGFロック部材を有するDGF本体部材103が、テザー114の近位側のループを介してDGFテール部材104を取り付けるように構成されている。
【0102】
一態様では、テザー114を、直線、曲線、単線、または二重線若しくは複数線とすることができる。
【0103】
一態様では、ステント3の心房フレア部分4が作動位置においてDGF本体部材103とDGFロック部材105との間にぴったりと嵌合できるように、DGF本体部材103とDGFロック部材105との間の距離を約0.4~1ミリメートル(0.4~1.0mm)にすることができる。任意選択的には、各DGF本体部材103が、複数のDGFロック部材105を含むことができ、隣接するDGFロック部材105間の間隔を、約0.4~2ミリメートル(0.4~2.0mm)とすることが可能である。DGF本体部材103およびDGFロック部材105は、例えば、テザー114上に複数の結び目を結ぶことによって、テザー114上で分離することができる。さらなる態様では、テザー114が金属またはプラスチックなどで作られている場合、間隔を維持するために、小さな突起を柔軟な構成要素に溶接、成形または付着させることが可能である。
【0104】
一態様では、DGFロック部材105を含むテザー114が、縫合糸、ストリング、ワイヤまたはポリマー材料から作られたテザーで形成されることが企図されている。
【0105】
図2Aを参照すると、DGFヘッド部材103およびDGF本体部材103は、単一の構成要素として、または任意選択的に、インビボ装填中の分離に抵抗し得る溶接、接合、接着などのうちの1または複数によって異なる部品を結合することによって、形成されることが企図されている。さらに、この態様では、DGFヘッド部材103およびDGF本体部材103を、例えば、ステンレス鋼、コバルトクロム、ニチノール、非吸収性ポリマー、生物由来材料などに限定されるものではないが、人体に恒久的に埋め込まれて損傷に抵抗できるような、丈夫で生体適合性のある材料で形成することができる。
【0106】
例示的な一態様では、DGFロック部材105が、DGFテール部材104によって案内されるステント3の心房フレア部分4の一部の一方向への通過のみを可能にし、反対方向へのステント3の心房フレア部分4のその後の移動に抵抗するように構成されることが企図されている。
【0107】
一態様では、DGFロック部材105が、ステント3の心房フレア部分4の貫通孔9の直径よりも小さい直径に選択的に圧縮されて、孔を通過できるようにし、その後、貫通孔9の直径よりも大きい元のサイズに選択的に再拡張されて、孔を通過するDGFロック部材105の後方移動を防止できるように、構成することも可能である。
【0108】
例示的な一態様では、図2Cに示すように、DGFロック部材105が、近位部分107および遠位部分106を有するように構成されている。一態様では、ロック部材105が、約1.5~3.5ミリメートルの全長を有することができる。近位部分107の長さは、約0.5~1.5ミリメートルとすることができる。遠位部分106の長さは、約1~2ミリメートル(1.0~2.0mm)とすることができる。
【0109】
一態様では、近位部分106は、約0.5~1.5ミリメートルの範囲の外径と、約0.4~1.2ミリメートルの範囲の内径とを有する管状の形状を含む。一態様では、DGF部材101の遠位部分106が、元の状態で円錐形状を形成する複数の半径方向に圧縮可能な脚部を備える。一態様では、ロック部材の近位部分の外径が、ステント3の心房フレア4の貫通孔9の内径よりも小さい。さらに、この態様では、DGFロック部材105の遠位先端107は、貫通孔9を通過することができないように、ステント3の心房フレア4の貫通孔9の内径より大きい最大完全拡張外径を有するように構成され得る。DGFロック部材105の近位部分107および遠位部分106は、連結して連続させることができる。
【0110】
動作中、DGFロック部材105の近位部分107を貫通孔9内に引き込むためにDGF部材テール104に張力をかけることができ、DGFロック部材の遠位部分106が貫通孔9の縁部に接触すると、その外径が貫通孔9の内径より小さくなるように半径方向に潰れ、それによりDGFロック部材105が貫通孔9を通過することができるようになる。DGFロック部材105が貫通孔9を完全に通過すると、DGF遠位部分106は、その元のサイズに再拡張して、貫通孔9を通るDGFロック部材105の後方移動を防止することができる。
【0111】
DGFロック部材105は、例えば、チューブをレーザカットして複数のスリットを形成し、それら脚部を半径方向外側に曲げて脚部を変形させることによって製造されことが企図される。例示的な実施形態では、スリットが、約0.3~0.6ミリメートルの幅と約0.6~1.5ミリメートルの長さを有することができる。熱処理プロセスを実行して、最終的なフレアコーン形状のジオメトリを形成することができる。脚部は、選択的に圧縮されて貫通孔9を通過した後、貫通孔9を完全に通過したら再拡張して元の形状に戻ることができるように設計されている。
【0112】
一態様では、1または複数のDGFロック部材105を、ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ステンレス鋼、ニチノール、および金属様材料、またはそれら材料の組合せで形成することができるが、それらに限定されないことが企図される。
【0113】
一態様では、DGF本体部材103の押出セクション109を、DGF送達カテーテルの遠位先端の相補的凹部にぴったりと嵌まるような形状の突起として構成することができ、この突起が遠位DGF送達カテーテルと係合した場合に、DGF送達カテーテルを一方向に回転させるとDGFヘッド部材102が組織と係合し、別の方向の回転させるとDGFヘッド部材102が組織から離脱するようになっている。
【0114】
例示的な態様では、図2Bに示すように、DGF本体部材103の押出セクション109が、DGF本体部材103の基部から約0.5~2ミリメートル(0.5~2mm)隆起した丸みを帯びた矩形状を有することができる。
【0115】
一態様では、図2Aに示すように、テザー114のループが、DGFテール部材104と係合するように構成することができる。例示的な一態様では、DGF部材テール104の一端がテザー114のループを通して挿入され、DGF部材テール104の両方の自由端が、MSML送達システムの近位側を通って、MSML送達システムの近位側から延びることができる。
【0116】
一態様では、DGF部材テール104が、DGF送達システムおよびVHPLシステム1をリンクする。この態様では、DGF部材テール104が、VHPLシステム1をアクセス部位から移植部位に案内するブリッジ要素として機能する。
【0117】
一態様では、DGF部材101の展開後、DGF部材テール104の2つの自由端が、プロテーゼ2の心房フレア貫通孔9を通して挿入されることが企図される。このため、DGF部材テール104の両方の自由端がVHPLシステム1にも挿入され、オペレータがDGF部材テール104の出ている自由端を本体から引き離すように引っ張ると、DGF部材テール104が緊張してVHPLシステムの構成要素が弁輪に埋め込まれたDGF部材101に向けてガイドされるようになっている。DGFテール部材104のさらなる張力は、DGF部材101のDGFロック部材105を介してプロテーゼを弁輪に固定するのを補助する。デバイスの埋め込みに続いて、DGF部材テール104の一方の自由端を引っ張ることによって、DGF部材テール104をVHPLシステムから、そして身体から除去することができる。
【0118】
別の態様では、DGFテール部材104の一端をループに結びつけ、他端を本体からMSML送達システムの近位側に延ばすことができる。この態様では、心臓弁尖置換デバイスが移植されて定位置に固定されたら、後続のDGFテールを、従来の切断方法または経カテーテル縫合糸切断デバイスによって切断することができる。
【0119】
DGFテール部材104は、MSML送達システムの内側カテーテル内に収まるように構成され、DGF本体部材103から延びてMSML送達システムから出るのに十分な長さとすることが企図される。この態様では、DGFテール部材104が、約0.1~0.5ミリメートルの直径を有し、少なくとも約2.5メートルの長さを有することができる。
【0120】
図3Aに示すように、一態様では、プロテーゼ2の移植後、プロテーゼ2の心房フレア部分4が、DGFロック部材105とDGF本体部材103との間に挟まれることになる。DGFロック部材105とDGF本体部材103との間の間隔は、移植後のプロテーゼ2の動きが制限されるように最適化されることを理解されたい。
【0121】
図3Bに示すように、一態様では、少なくとも3つのDGF部材101が埋め込まれ、2つのDGF部材101がステント3の側部に、1つが心房フレア部分4の中央に埋め込まれる。
【0122】
MSML送達システムを使用する方法の一態様では、VHPLシステム1を介してプロテーゼ2を移植する前に、少なくとも3つのDGF部材101が弁輪に埋め込まれる。プロテーゼ2が移植されると、少なくとも1の追加のDGF部材101A(DGFロック部材105の無いDGF部材)がプロテーゼ2の心房フレア部分4の上に埋め込まれる。DGF部材101Aは、プロテーゼのスカート材料を貫通して組織内に固定することができる。別の態様では、DGF部材101Aが、心房フレア部分4の貫通孔9を貫通するように構成され得る。図4を参照すると、図示のように、3つのDGF部材101が心房フレア部分4の側方(P1およびP3)に埋め込まれ、1つのDGF部材101が心房フレア部分4の中央(P2)に埋め込まれている。P1とP2のDGF部材101の間と、P2とP3の位置の間には、追加のDGF部材101Aを埋め込むことができる。追加のDGF部材101Aを埋め込むことにより、当業者が理解するように、プロテーゼ2と弁輪との間の弁傍漏出を排除することができるとともに、プロテーゼ2の外れを防止することができ、よって人工弁尖と自己弁尖との間の正常な接合を可能にすることができる。
【0123】
明確にするために、以下の説明では、プロテーゼを首尾よく送達および固定するための1つの例示的なVHPLシステム1の設計を概説している。外側コンパートメントの形状および設計、VHPLシステム1のコントロールの構造およびアセンブリは、同じ一般的な機能、すなわち、シースの並進または制限された動き、ワイヤまたはテザーの引張りなどを実行できる限り、変更することが可能である。したがって、ここに示す例は、より良い説明と明確化のためのものであり、いずれかの構成要素の特定の設計に限定されるものではない。
【0124】
図6に示すように、一態様では、VHPLシステム1が、プロテーゼを送達するように機能する複数のカテーテルおよびチューブを収容する外側シース306を備えることができる。
【0125】
一態様では、外側シース306は、ガイドシースとすることができる。この態様では、ガイドシース306が、縮められた段階にある人工弁を収容する弁チャンバ201に取り付けられるステントホルダシース206を収容することができる。この態様では、ステントホルダシース206が、弁チャンバ201をアクセス部位から左心室へ案内して位置決めするために撓むことができる。この態様では、弁チャンバ201が、ステントホルダシース206の内側ルーメンに沿ってスライド可能な弁チャンバシース203に接続されている。この態様では、弁チャンバシース203のスライドが人工弁を解放する機構である。
【0126】
一態様では、外側シース306が、複数のロックカテーテル317を収容することができる。この態様では、ロックカテーテル317およびステントホルダシース206を、マルチルーメンガイドシース306で整理することができ、そのすべてを、より大きな直径のドッキングシース327を介して体内に挿入することができる。動作中、人工弁2は、DGFテール104の上を辿ることによって、先に埋め込まれた複数のDGF部材101に導かれ、DGFテールは、縮められた人工弁2の心房フレア孔9を通り、対応するロックカテーテル317を通ってVHPLシステム1の近位端に装填される。
【0127】
この態様では、弁チャンバシース203、ステントホルダシース206、ロックカテーテル317およびガイドシース306が、ドッキングシース327とは独立に移動して適切な位置決めを行うように構成されている。さらに、弁チャンバシース203およびステントホルダシース206は、ロックカテーテル317およびガイドシース306から独立して、一緒に移動するように構成されている。弁2を展開するために、弁チャンバシース203を、ステントホルダシース206に対して相対的に前進させることができる。プロテーゼ2を定位置に固定するために、各ロックカテーテル317を個別に前進させながら、DGF部材テール104に個別に張力をかける必要がある。プロテーゼ2が完全に解放されて定位置に固定されたら、すべてのシースを患者の体外に一緒に引き抜くことができる。
【0128】
当業者であれば、正確で安定した弁解放機構の必要性を理解することができる。したがって、VHPLシステムは、例えば、図5に示すように、ハンドルプラットフォーム301上に取り付けることができる。図示の例では、ハンドルプラットフォーム301が、ベース324上のドッキングシステム326の近位側に位置している。ハンドルプラットフォーム301上の、最も外側のガイドシース306および関連する内側シースは、ドッキングシース327内に挿入される。ハンドルプラットフォーム301は、ガイドシース306、ステントホルダシース206および弁チャンバシース203がベース324に沿って特定の距離で同時にスライドすることができるように構成されている。さらなる態様では、ハンドルプラットフォーム301が、バルブ送達プロセス全体を通してガイドシース306の回転を防止するように設計されている。ハンドルプラットフォーム301は、金属、プラスチックなどの任意の耐久性のある剛性材料で作ることができる。
【0129】
一態様では、ガイドシース306が、遠位部分および近位部分から構成されている。
【0130】
一態様では、ガイドシース306の遠位部分を、自己心腔(そのうちの1つが下大静脈から中隔までを含む)における展開経路の鋭い湾曲に適合する柔軟な材料の組成物で作ることができ、ガイドシース306の近位部分を、送達プロセス中の座屈を防ぐ目的で遠位部分よりも硬質な材料の組成物で作ることができる。
【0131】
一態様では、ガイドシース306の遠位端を、セパレータ307を備えるように構成することができる。この態様では、ガイドシース306のセパレータ307が、人工弁送達プロセス全体にわたって絡まるのを避けるために、ガイドシース306内の内部シースを分離するオーガナイザとして機能する。
【0132】
一態様では、ガイドシース306のセパレータ307が、ガイドシース306の遠位部分に固定された別個の構成要素である。一態様では、セパレータ307が、複数のルーメンを有するシリンダ構成要素であってもよい。一態様では、セパレータ307が、複数のルーメン、例えば、4つのルーメンを有し、1つの中央ルーメンと、中央ルーメンを取り囲む3つの外側ルーメンとを含むことができる。この態様では、偏向可能なステントホルダシース206を収容する中央ルーメンと、ロックカテーテル317を収容する3つの周辺ルーメンとがある。理解できるように、セパレータ307は、ガイドシース306内の内部シースを整理して、人工弁2の送達プロセス全体にわたって絡まるのを回避する。
【0133】
別の任意選択的な態様では、ガイドシース306を、追加のセパレータ307を用いずに、その全長にわたってマルチルーメンチューブとして構成することができる。この態様では、マルチルーメンガイドシースが、中央に1つ、周辺に3つの、4つのルーメンを有することができ、すべてのルーメンが壁によって分離されている。
【0134】
一態様では、ステントホルダシース206が撓むことができ、ハンドルプラットフォームに沿って並進することができる。この態様では、ステントホルダシース206をハンドルシステム309、301に取り付けることができ、それにより、オペレータがステントホルダシース206の遠位部分を偏向させることができる。さらなる態様では、ステントホルダシース206を、スライド可能なハンドルシステムに取り付けることができる。
【0135】
図6に示すように、一態様では、偏向可能なステントホルダシース206を、ガイドシースセパレータ307の中央ルーメンに配置することができる。一態様では、偏向可能なステントホルダシース206を、押し込み性やキンク抵抗などの他の注目すべき特性のうち、剛性および柔軟性が変化する部分を含む複合シースとして構成することができる。それら特性により、ステントホルダシース206は、その完全性および内部に含まれるシースを撓ませる能力を維持しながら、0°~180°まで撓むことができる。
【0136】
一態様では、偏向可能なステントホルダシース206が、3つのセクション、すなわち、遠位セクション、中間セクションおよび近位セクションを含むことができる。この態様では、遠位セクションが、人工弁2が縮められた剛性直線セクションである。偏向可能なステントホルダシース206の中間セクションは、キンクすることなく、あるいは中に存在するシースに損傷を与えることなく、小さい半径で曲がる固有の能力を有する柔軟なコイル状セクションである。偏向可能なステントホルダシース206の近位部分は、VHPL1全体に跨る安定性および剛性を提供する長い剛性セクションである。偏向可能なステントホルダシース206の壁内には、少なくとも1のプルワイヤが埋め込まれている。少なくとも1のプルワイヤに選択的に張力をかけることによって、柔軟な中間セクションの撓みを制御することができる。
【0137】
この態様では、人工弁が完全に展開されて自己僧帽弁に固定される前に、ステントホルダ207が、人工弁の制御および再配置可能性を維持するために送達システム内の安全機能としての役割を果たす。ステント3の延出部材7のタブ8は、弁チャンバ201がステントホルダ207を越えて遠位方向に平行移動したときにステントホルダ207から解放され、それによって弁チャンバ201から人工弁を完全に解放する。
【0138】
一態様では、VHPLシステム1の遠位セクションが、VHPLシステム1内に人工弁2を収容するための弁チャンバ201を含むことができる。この態様では、人工弁2は、VHPL1の遠位端の弁チャンバ201内に収まるように縮められ、その後、弁チャンバ201から解放されると、作動サイズに選択的に拡張されて位置決めされることが可能である。
【0139】
一態様では、図7に示すように、弁チャンバ201が円筒または円錐形状を含むことができ、その遠位端が閉鎖され、約6~8ミリメートル(6~8mm)の内径、または縮められた人工弁2を収容するのに十分な大きさの内径と、約7~9ミリメートル(7~9mm)の外径、またはドッキングシース内に収まるほど十分に小さい外径とを有する。弁チャンバルーメンの長さは、縮められた人工弁2の全体を内部に収容できるように、縮められた人工弁2の長さよりも長くなるように構成することができる。弁チャンバルーメンの長さは、約20~50ミリメートル(20~50mm)とすることができる。
【0140】
さらなる態様では、より小さな直径の弁チャンバシース203を、VHPLシステム1の近位側に延びる弁チャンバ201の遠位端の閉鎖端に取り付けるように構成することができ、弁チャンバ201、よって人工弁3の心臓内での位置を、VHPLシステム1の近位側、すなわちオペレータ側の弁チャンバシース203を操作することにより制御することが可能となっている。
【0141】
弁チャンバの遠位端204および弁チャンバ201の円筒形部分は、材料の1つの中実片から作られ、または任意選択的には一緒に取り付けられる別々の類似または非類似の材料片から作られることが企図される。図6に示すように、任意の態様では、弁チャンバ201の遠位端が、弁チャンバシース203への取り付けを容易にするための中央ルーメンと、動作中に周辺組織への損傷を防ぐための丸みを帯びた縁部とを有するように構成することができる。
【0142】
弁チャンバシース203は、任意選択的に、チューブまたは中実ロッドとして構成することができる。一態様では、弁チャンバシース203を、その長さに沿って剛性が変化する複数のセクションを有するように構成することができる。理想的には、弁チャンバシース203は、弁チャンバ201内の剛性の遠位セクションと、それに続く、曲げることができ、患者の体内でのVHPLシステム1の操縦を容易にするための柔軟な中間セクションと、それに続く、押し込み性を提供するための近位端における別の剛性セクションとを有するように構成することができる。
【0143】
一態様では、ステントホルダ207が、縮められたプロテーゼ2と同じ外径を有する弁チャンバ201のルーメン内に収まるように構成することができる。ステントホルダ207は、VHPLシステム1の近位側に延びるより小さい直径のステントホルダシース206の遠位先端に取り付けるように構成され、VHPLシステム1の近位側のステントホルダシース206を操作することによって、弁チャンバ201内のステントホルダ207の位置を制御することが可能となっている。
【0144】
一態様では、動作中、弁チャンバ201内で縮められたプロテーゼ2の遠位側にステントホルダ207を配置することができる。このため、弁チャンバルーメンは、ステントホルダ207と縮められたプロテーゼ2の長さを合わせたものより長く構成することができる。
【0145】
人工弁2は、ステントホルダ207の近位側においてステントホルダシース206の上(周囲)で縮められ、弁チャンバ201内に装填されることが企図される。その後、弁ステント2は、弁チャンバシース203をステントホルダ207に対して遠位方向に前進させることによって、弁チャンバ201から解放される。ステントホルダ207は、プロテーゼ2の遠位方向の動きを防止し、弁チャンバ201が遠位方向に動かされると、プロテーゼ2は、弁ステント2の近位側から始まってプロテーゼ2の遠位側で終わる形で、弁チャンバ201から解放される。
【0146】
一態様では、図6に示すように、ステントホルダ207が、人工弁ステントフレーム3の延出部材7のタブ8を収容するよう構成された凹部208を含むことができる。動作中、ステント3の延出部材7のタブ8は、ステントホルダ207上の凹部208内に挿入され、ステントホルダ207は、凹部208と弁チャンバ201の内壁との間にタブ8を挟むように弁チャンバ201内に前進されることとなる。プロテーゼ2は、ステントホルダシース206の周りに縮められ、ステントホルダ207は、縮められたプロテーゼ2を弁チャンバ201に装填するために、弁チャンバ201の遠位端まで前進されることとなる。プロテーゼ2を解放するには、ステントホルダ207の位置を固定したまま、弁チャンバシース203が遠位方向に前進されることとなる。この態様では、弁チャンバ201がステントホルダ207の凹部208を見せるのに十分なほど前進されるまで、タブ8がステントホルダ207と係合することとなる。当業者は、この凹部208が、プロテーゼ2をVHPLシステム1に固定する安全機構として機能し、それにより、プロテーゼが選択的に解放されるまでVHPLシステム1のコントロールを使用して心臓内で位置決めおよび操縦することができることを理解するであろう。
【0147】
一態様では、弁チャンバ201が、弁チャンバ201の近位端から軸方向に延びる約1~5ミリメートル(1~5mm)の長さの複数のスリット205を有することができる。スリット205は、縮められたステント3のフレア部分の孔9と整合するように弁チャンバ201に配置することができ、DGF部材101の埋め込みに続いて、後続のDGF部材テール104を弁チャンバ201のスリット205を通して挿入することができ、弁チャンバのスリットは、埋め込まれたDGF部材101の数および位置に対応するように設計することができる。
【0148】
例示的な一態様では、3つのDGFヘッド部材102を最初に弁輪に埋め込むことができ、そのうちの1つはP3位置を示す内側交連に、1つはP1位置を示す外側交連に、1つはP2位置を示す後部弁輪の中央に埋め込むことができる。スリット205は、縮められたプロテーゼ2が弁チャンバ201内に装填されたときに、縮められたプロテーゼ2の内側縁、外側縁およびフレア部分の中央の孔9とそれぞれ整列するように弁チャンバ201の外周に沿って配置され、後続のDGFテール104がスリット205を通って対応するフレアの孔9内に、その後、VHPLシステム1の対応するロックカテーテル317に容易に通される。
【0149】
一態様では、VHPLシステム1を患者の体内に挿入し、DGF部材テール104を緊張させて、弁チャンバ201、よって弁ステントを、僧帽弁輪の位置にある先に埋め込まれたDGF部材101の作動位置まで一旦案内し、その後、弁チャンバシース203を前進させることにより、心房フレア部分4からプロテーゼを解放し、プロテーゼ2の心室部分5全体が解放されるまでそれが続けられる。
【0150】
一態様では、プロテーゼ2の心房フレアの孔9を通してDGF部材101のロック部材105を引っ張るために、複数のDGF部材テール104に張力が与えられている間に、複数のロックカテーテル317が使用されて、プロテーゼ2の近位方向の動きが防止され、それによりプロテーゼ2が生来の僧帽弁輪上の位置に固定される。ロックカテーテル317は、例示的な一態様では、プロテーゼ2の固定を容易にする3つの異なるセクションからなる複合シースである。ロックカテーテル318の近位セクションは、長い剛性の金属チューブを含むことができるが、これに限定されるものではない。金属チューブ318は、送達システムの大部分に跨ることができ、弁収容・位置決め・ロックシステムのハンドル1を通ってロックカテーテル317を並進させるコントロールとして機能することができる。ロックカテーテルの中間部分319は、展開経路の鋭い湾曲に適合する可撓性材料を含むことができる。ロックカテーテル317の可撓性部分319は、弁輪のすべての部分に沿ってロックを達成できるようにするために、小さな曲げ半径で約90度(90°)以上屈曲することができる。可撓性部分319は、金属、ポリマーまたはゴム材料などから作ることができるが、これらに限定されるものではなく、任意選択的には、低い曲げ剛性を可能にするとともに、内側ルーメンが潰れるのを防止するためにコイル構造を特徴とすることができる。ロックカテーテルの遠位セクション320は、ロック部材105および人工弁2の心房フレア部分4と係合して、DGF本体部材103での人工弁2の固定を補助する金属ロックインサートを含むことができる。
【0151】
例示的な一態様では、オペレータが把持して固定プロセスを容易にするために、ロックカテーテル317にハンドルに取り付けることができる。
【0152】
一態様では、DGFロック部材105の各々が弁4の心房フレア部分の上部の位置に独立して固定されることを可能にするように縫合張力付与機構を構成することができる。この態様では、個々のDGF部材テール104の各々が、縫合張力付与機構において制御される。
【0153】
一態様では、DGFテール張力付与機構が、ラチェットギアとターンノブのアセンブリを含む。ラチェットギアは、回動可能な歯を有する丸いギアを含む。バネ荷重のフィンガ構成要素がギアの歯に係合する。ギアの歯は均一であり、歯の両方の傾斜が対称であり、歯が前後両方向に動くことができる。バネ荷重のフィンガの剛性およびギアの歯の傾斜により、ギアの制御された漸増的な回転が可能になり、それによりDGF部材テール104の制御された漸増的な引張が可能になる。
【0154】
別の態様では、ギアが、一方向の回転を可能にするために非対称の傾斜を有するように構成することができ、それにより、処置中にDGFテール部材104が緩むのを防止することができる。
【0155】
さらに、代表的な実施形態を説明する際に、本明細書は、方法および/またはプロセスをステップの特定のシーケンスとして提示している場合がある。しかしながら、方法またはプロセスは、本明細書に記載のステップの特定の順序に依存しない限り、記載のステップの特定のシーケンスに限定されるべきではない。当業者であれば理解するように、ステップの他のシーケンスも可能である。したがって、本明細書に記載のステップの特定の順序は、特許請求の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【0156】
本発明は、様々な修正および代替的形態が可能であるが、その具体例が図面に示され、本明細書に詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、開示の特定の形態または方法に限定されるものではなく、反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るすべての修正、均等物および代替物を包含するものであることを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
【国際調査報告】