(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】心室補助装置に無線電力伝送するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/875 20210101AFI20230414BHJP
A61M 60/183 20210101ALI20230414BHJP
A61M 60/876 20210101ALI20230414BHJP
A61M 60/878 20210101ALI20230414BHJP
【FI】
A61M60/875
A61M60/183
A61M60/876
A61M60/878
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554293
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 US2021021628
(87)【国際公開番号】W WO2021183599
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ジョン フレディ
(72)【発明者】
【氏名】リー、エリック
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD01
4C077EE01
4C077JJ09
4C077JJ15
4C077KK27
(57)【要約】
本開示は、無線電力伝送システムに関する。本開示の無線電力伝送システムは、外部送信共振器と、植込み型受信共振器とを備える。外部送信共振器は、電力を無線送信するように構成される。植込み型受信共振器は、外部送信共振器から無線送信された電力を受信し、受信した電力を使用して対象に植え込まれた心室補助装置(VAD)に電力を供給するように構成される。外部送信共振器は、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの一方を含み、植込み型受信共振器は、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの他方を含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送システムであって、
電力を無線送信するように構成された外部送信共振器と、
前記外部送信共振器から無線送信された電力を受信し、受信した電力を使用して対象に植え込まれた心室補助装置(VAD)に電力を供給するように構成された植込み型受信共振器と、を備え、
前記外部送信共振器は、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの一方を含み、
前記植込み型受信共振器は、(i)前記1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)前記複数の積層板のうちの他方を含む、無線電力伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線電力伝送システムであって、
前記外部送信共振器は、前記1つ以上のリッツ線のループを含み、
前記1つ以上のリッツ線のループは、前記対象の上半身に巻き付けるように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線電力伝送システムであって、
前記外部送信共振器は、前記対象の肩から臀部にかけて、前記対象の上半身に斜めに巻き付けるように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線電力伝送システムであって、
前記外部送信共振器と一体に形成されたハブをさらに備え、
前記ハブは、電源から提供される第1の電力を前記外部送信共振器が受け取る第2の電力に変換するように構成された電力変換器を含む、無線電力伝送システム。
【請求項5】
請求項1に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型受信共振器は、前記対象の胸腔内に植え込まれるように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項6】
請求項5に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型受信共振器は、前記心室補助装置(VAD)のポンプに近接して配置される、無線電力伝送システム。
【請求項7】
請求項1に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型受信共振器は、前記対象の肺の下側かつ前記対象の横隔膜の上側に植え込まれるように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項8】
請求項1に記載の無線電力伝送システムであって、
前記心室補助装置(VAD)に電気的に接続される植込み型電池モジュールをさらに含む、無線電力伝送システム。
【請求項9】
請求項8に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型電池モジュールは、前記植込み型受信共振器と前記心室補助装置(VAD)との間に電気的に接続され、
前記植込み型受信共振器は、前記植込み型電池モジュールを充電することによって前記心室補助装置(VAD)に電力を供給するように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項10】
請求項8に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型受信共振器は、前記心室補助装置(VAD)に直接電気的に接続される、無線電力伝送システム。
【請求項11】
無線電力伝送システムであって、
電力を無線送信するように構成された外部送信共振器と、
前記外部送信共振器から無線送信された電力を受信し、受信した電力を使用して対象に植え込まれた心室補助装置(VAD)に電力を供給するように構成された植込み型受信共振器と、を備え、
前記植込み型受信共振器は、前記対象の胸腔内に植え込まれるように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項12】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型受信共振器は、前記心室補助装置(VAD)のポンプに近接して配置される、無線電力伝送システム。
【請求項13】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型受信共振器は、前記対象の肺の下側かつ前記対象の横隔膜の上側に植え込まれるように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項14】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記外部送信共振器は、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの一方を含み、
前記植込み型受信共振器は、(i)前記1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)前記複数の積層板のうちの他方を含む、無線電力伝送システム。
【請求項15】
請求項14に記載の無線電力伝送システムであって、
前記外部送信共振器は、前記1つ以上のリッツ線のループを含み、
前記1つ以上のリッツ線のループは、前記対象の上半身に巻き付けるように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項16】
請求項15に記載の無線電力伝送システムであって、
前記外部送信共振器は、前記対象の肩から臀部にかけて、前記対象の上半身に斜めに巻き付けるように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項17】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記外部送信共振器と一体に形成されたハブをさらに備え、
前記ハブは、電源から提供される第1の電力を前記外部送信共振器が受け取る第2の電力に変換するように構成された電力変換器を含む、無線電力伝送システム。
【請求項18】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記心室補助装置(VAD)に電気的に接続される植込み型電池モジュールをさらに含む、無線電力伝送システム。
【請求項19】
請求項18に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型電池モジュールは、前記植込み型受信共振器と前記心室補助装置(VAD)との間に電気的に接続され、
前記植込み型受信共振器は、前記植込み型電池モジュールを充電することによって前記心室補助装置(VAD)に電力を供給するように構成される、無線電力伝送システム。
【請求項20】
請求項18に記載の無線電力伝送システムであって、
前記植込み型受信共振器は、前記心室補助装置(VAD)に直接電気的に接続される、無線電力伝送システム。
【請求項21】
電力を無線送信する方法であって、
外部送信共振器から植込み型受信共振器に電力を無線送信するステップであって、前記外部送信共振器が、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの一方を含む、該ステップと、
前記植込み型受信共振器が、前記外部送信共振器から無線送信された電力を受信するステップであって、前記植込み型受信共振器が、(i)前記1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)前記複数の積層板のうちの他方を含む、該ステップと、
前記植込み型受信共振器が、前記外部送信共振器から受信した電力を使用して対象に植え込まれた心室補助装置(VAD)に電力を供給するステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
前記外部送信共振器は、前記対象の上半身に巻き付けるように構成される、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記外部送信共振器は、前記対象の肩から臀部にかけて、前記対象の上半身に斜めに巻き付けるように構成される、方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、
前記植込み型受信共振器は、前記対象の胸腔内に植え込まれるように構成される、方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、
前記植込み型受信共振器は、前記心室補助装置(VAD)のポンプに近接して配置される、方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法であって、
前記植込み型受信共振器は、前記対象の肺の下側かつ前記対象の横隔膜の上側に植え込まれるように構成される、方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法であって、
植込み型電池モジュールが、前記心室補助装置(VAD)に電気的に接続される、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
前記植込み型電池モジュールは、前記植込み型受信共振器と前記心室補助装置(VAD)との間に電気的に接続される、方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、
前記植込み型受信共振器は、前記心室補助装置(VAD)に直接電気的に接続される、方法。
【請求項30】
電力を無線送信する方法であって、
外部送信共振器から植込み型受信共振器に電力を無線送信するステップと、
心室補助装置(VAD)が植え込まれた対象の胸腔内に植え込まれた前記植込み型受信共振器が、前記外部送信共振器から無線送信された電力を受信するステップと、
前記植込み型受信共振器が、前記外部送信共振器から受信した電力を使用して前記心室補助装置(VAD)に電力を供給するステップと、
を含む、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、
前記植込み型受信共振器は、前記心室補助装置(VAD)のポンプに近接して配置される、方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、
前記植込み型受信共振器は、前記対象の肺の下側かつ前記対象の横隔膜の上側に植え込まれるように構成される、方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法であって、
前記外部送信共振器は、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの一方を含み、
前記植込み型受信共振器は、(i)前記1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)前記複数の積層板のうちの他方を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、
前記外部送信共振器は、前記対象の上半身に巻き付けるように構成される、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、
前記外部送信共振器は、前記対象の肩から臀部にかけて、前記対象の上半身に斜めに巻き付けるように構成される、方法。
【請求項36】
請求項30に記載の方法であって、
植込み型電池モジュールが、前記心室補助装置(VAD)に電気的に接続される、方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
前記植込み型電池モジュールは、前記植込み型受信共振器と前記心室補助装置(VAD)との間に電気的に接続される、方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法であって、
前記植込み型受信共振器は、前記心室補助装置(VAD)に直接電気的に接続される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月10日出願の米国特許仮出願第62/987、468号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、無線電力伝送システムに関し、より詳細には、心室補助装置に電力を供給するために使用される無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0003】
VADとして知られる心室補助装置は、植込み型の血液ポンプであり、一般に心不全またはうっ血性心不全と呼ばれる心臓が十分な循環を提供することができない症状を患っている患者において、短期(すなわち、数日または数か月)及び長期(すなわち、数年または生涯)の両方で使用される。心不全を患っている患者は、心臓移植を待つ間に、または、長期のDT治療(destination therapy)として、VADを使用することができる。別の例では、患者は、心臓手術後の回復期に、VADを使用することができる。このように、VADは、弱った心臓を補助したり(すなわち、部分的に補助したり)、自然の心臓の機能を効果的に置き換えたりすることができる。
【0004】
VADへの電力供給には、無線電力伝送システムを使用することができる。このような無線電力伝送システムは、一般に、外部送信共振器と、患者の体内に植え込まれるように構成された植込み型受信共振器とを備える。このような無線電力伝送システムの課題の1つは、患者の体内の温度が過度に上昇するのを防ぐために、植込み型受信共振器から熱を放散させることである。さらに、無線電力伝送システムは、電力を効率的に伝送するとともに、患者の体内での位置決めが比較的容易であることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、無線電力伝送システムに関する。本開示の無線電力伝送システムは、外部送信共振器と、植込み型受信共振器とを備える。外部送信共振器は、電力を無線送信するように構成される。植込み型受信共振器は、外部送信共振器から無線送信された電力を受信し、受信した電力を使用して対象に植え込まれた心室補助装置(VAD)に電力を供給するように構成される。外部送信共振器は、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの一方を含み、植込み型受信共振器は、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの他方を含む。
【0006】
また、本開示は、無線電力伝送システムに関する。本開示の無線電力伝送システムは、電力を無線送信するように構成された外部送信共振器を備える。また、本開示の無線電力伝送システムは、外部送信共振器から無線送信された電力を受信するように構成された植込み型受信共振器を備える。植込み型受信共振器は、外部送信共振器から受信した電力を使用して対象に植え込まれた心室補助装置(VAD)に電力を供給するように構成される。
【0007】
また、本開示は、電力を無線送信する方法に関する。本開示の方法は、外部送信共振器から植込み型受信共振器に電力を無線送信するステップであって、外部送信共振器が、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの一方を含む、該ステップを含む。本開示の方法は、さらに、植込み型受信共振器が、外部送信共振器から無線送信された電力を受信するステップであって、植込み型受信共振器が、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの他方を含む、該ステップを含む。本開示の方法は、さらに、植込み型受信共振器が、外部送信共振器から受信した電力を使用して対象に植え込まれた心室補助装置(VAD)に電力を供給するステップを含む。
【0008】
また、本開示は、電力を無線送信する方法に関する。本開示の方法は、外部送信共振器から植込み型受信共振器に電力を無線送信するステップを含む。本開示の方法は、さらに、心室補助装置(VAD)が植え込まれた対象の胸腔内に植え込まれた植込み型受信共振器が、外部送信共振器から無線送信された電力を受信するステップと、植込み型受信共振器が、外部送信共振器から受信した電力を使用して心室補助装置(VAD)に電力を供給するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、例示的な無線電力伝送システムの簡略化された電気回路図である。
【
図2A】
図2Aは、心室補助装置(VAD)に電力を供給する
図1の無線電力伝送システムの例示的な構成を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、心室補助装置(VAD)に電力を供給する
図1の無線電力伝送システムの別の例示的な構成を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、心室補助装置(VAD)とバッテリモジュールとが電気的に接続された
図1の無線電力伝送システムの構成例を示す概略図である。
【
図4B】
図4Bは、心室補助装置(VAD)とバッテリモジュールとが電気的に接続された
図1の無線電力伝送システムの別の構成例を示す概略図である。
【
図4C】
図4Cは、心室補助装置(VAD)とバッテリモジュールとが電気的に接続された
図1の無線電力伝送システムの別の構成例を示す概略図である。
【
図4D】
図4Dは、心室補助装置(VAD)とバッテリモジュールとが電気的に接続された
図1の無線電力伝送システムの別の構成例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、心室補助装置(VAD)に電力を供給する
図1の無線電力伝送システムの別の例示的な構成の概略図である。
【
図6】
図6は、電力を無線送信する例示的な方法のフローチャートである。
【
図7】
図7は、電力を無線送信する別の例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、無線電力伝送システムに関する。本開示の無線電力伝送システムの植込み型受信共振器は、熱の放散を向上させるために患者の胸腔内に植え込まれるように構成される。いくつかの実施形態では、本開示の無線電力伝送システムは、リッツ線のループを含む第1の共振器と、積層板を含む第2の共振器とを使用するハイブリッド型システムであり得る。
【0011】
次に図面を参照すると、
図1は、例示的な無線電力伝送システム100の簡略化された電気回路を示す。無線電力伝送システム100は、外部送信共振器102と、植込み型受信共振器104とを備える。無線電力伝送システム100は、コンデンサCx、CyがインダクタLx、Lyに電気的に直列接続される直列接続型であるが、無線電力伝送システム100は、送信共振器102または受信共振器104に対して直列に接続してもよいし、並列に接続してもよい。
【0012】
この例示的な無線電力伝送システム100では、電源Vsが送信共振器102に電気的に接続されており、送信共振器102に電力を供給する。受信共振器104は、負荷106に接続されている。受信共振器104及び負荷106は、スイッチングまたは整流デバイス(図示せず)に電気的に接続されてもよい。
【0013】
例示的な本実施形態では、送信共振器102は、コンデンサCxによって電源Vsに接続されたコイルLxを含む。また、受信共振器104は、コンデンサCyによって負荷106に接続されたコイルLyを含む。コイルLx(インダクタLx)とコイルLy(インダクタLy)とは、結合係数kで接続される。Mxyは、2つのコイル間の相互インダクタンスである。相互インダクタンスMxyは、結合係数kと下記の式(1)に示すような関係にある。
【0014】
【0015】
動作中、送信共振器102は、電源Vsから供給された電力を無線送信する。受信共振器104は、送信共振器102から無線送信された電力を受信し、受信した電力を負荷106に供給する。
【0016】
図2A及び
図2Bは、無線電力伝送システム100を使用して、患者の身体204に植え込まれた機械的循環補助システム202に電力を供給する例示的な構成を示す。機械的循環補助システム202は、植込み型血液ポンプアセンブリ206を含む。この血液ポンプアセンブリ206は、血液ポンプ208、心室カフ210、及び流出カニューレ212を含む。受信共振器104は、血液ポンプアセンブリ206に電力を供給する。
【0017】
血液ポンプアセンブリ206は、図示のように左心室の頂部、右心室、または、心臓214の両心室に取り付けられた心室補助装置(VAD)に実装することができる。血液ポンプアセンブリ206の一端は、心臓214に縫い付けられた血液ポンプアセンブリ206に結合された心室カフ210を介して、心臓214に取り付けられる。血液ポンプアセンブリ206の他端は、流出カニューレ212を介して上行大動脈または下行大動脈に接続される。血液ポンプアセンブリ206は、弱った心室から血液を効率的に分流させ、流出カニューレ212を介して大動脈に供給し、患者の血管系の残りの部分へ循環させる。
【0018】
心室補助装置(VAD)用の電力伝送システムにおける課題の1つは、植込み型モジュールによって発生する熱を放散させることである。例えば、胸部領域に配置された植込み型コイルモジュールは、約0.4Wの熱収支を有し、それを超えると、2°Cを超える温度上昇が生じ得る。しかしながら、植込み型コイルモジュールの電気工学設計は、コイルの巻線だけで0.4Wを超える熱を放出する傾向がある。また、交流(AC)から直流(DC)への整流や、経皮エネルギー伝達システム(TETS)の様々な電子機器、マイクロコントローラ、及び、デジタル信号プロセッサによっても熱が発生する。腹部の植え込み位置は、周囲組織における灌流が比較的高いために、熱の管理が容易であるが、それでも、植え込まれたモジュールから放出される熱の量を考慮すると、依然として許容しにくい。さらに、患者の腹部に受信共振器を植え込むためには比較的複雑な手術(例えば、横隔膜を貫通する手術)が必要となるため、外科的観点から、腹部への配置は望ましくない。
【0019】
したがって、図示の実施形態では、熱の管理を容易にするために、受信共振器104は、患者の胸腔217内に配置される。いくつかの実施形態では、受信共振器104は、患者の肺220の下側、かつ、横隔膜222の上側に配置される。あるいは、受信共振器104は、横隔膜222の上部に植え込んでもよい。その結果、受信共振器104は、一般に、肺220と熱的に接触し、熱は、肺循環を介して放散される。
【0020】
受信共振器104は、1つ以上のリッツ線216のループ、または、複数の積層板218を含む。例えば、いくつかの実施形態では、送信共振器102が1つ以上のリッツ線216のループを含み、受信共振器104が複数の積層板218を含む。あるいは、受信共振器104が1つ以上のリッツ線216のループを含み、送信共振器102が複数の積層板218を含む。さらに別の例では、送信共振器102及び受信共振器104の両方が、1つ以上のリッツ線216のループを含んでもよいし、または、送信共振器102及び受信共振器104の両方が複数の積層板218を含んでもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、受信共振器104は、(
図2B及び
図5に示すように)血液ポンプアセンブリ206に結合される。例えば、受信共振器104に含まれる1つ以上のリッツ線216のループは、心室カフ210の周りに巻き付けられる(
図2Bに示す)。別の構成では(
図5に示す)、受信共振器104に含まれる複数の積層板218は、血液ポンプ208に結合される。この場合、心室カフ210は、積層板218によって画定される開口を貫通して延びるように構成される。これらの構成では、受信共振器104は血液ポンプアセンブリ206と熱的に接触し、熱は血液ポンプアセンブリ206を通る大動脈流を介して放散される。
【0022】
この例示的な実施形態では、無線電力伝送システム100は、送信共振器102が、(i)1つ以上のリッツ線216のループ、及び(ii)複数の積層板218の一方であり、受信共振器104が、(i)1つ以上のリッツ線216のループ、及び(ii)複数の積層板218の他方であるハイブリッド型システムとして構成される。例えば、
図2Aに示す実施形態では、無線電力伝送システム100は、1つ以上のリッツ線216のループを含む送信共振器102と、複数の積層板218を含む受信共振器104とから構成される。対照的に、
図2Bに示す実施形態では、無線電力伝送システム100は、複数の積層板218を含む送信共振器102と、1つ以上のリッツ線216のループを含む受信共振器104とから構成される。一般に、リッツ線216のループの幾何学的形状は、比較的容易に変化させることができる。したがって、リッツ線216のループは、患者の身体204の周りに巻き付けたり(
図2Aに示すように)、血液ポンプアセンブリ206に巻き付けたりすることができる(
図2Bに示すように)。比較すると、積層板218を含む共振器は、リッツ線216を含む共振器よりも高い電力伝達効率を有する。したがって、各タイプの共振器を1つずつ使用するハイブリッド型の無線電力伝送システムは、両方のタイプの共振器の利点を実現することができる。
【0023】
動作時、送信共振器102及び受信共振器104は、互いに近接して配置される。例えば、受信共振器104が患者の胸腔217内に配置される場合、送信共振器102は、患者の胸部領域の側面に配置されるか、または患者の胸部領域の周囲に巻き付けられる。
【0024】
図3Aは、複数の積層板218を含む積層板型共振器300である共振器102、104の構成を示す模式図である。
図3Bは、
図3Aに示した積層板型共振器300の分解図である。同様の積層板型共振器が、「Thin Self-Resonant Structures with a High-Q for Wireless Power Transfer" by Stein et al., March 4, 2018, Thayer School of Engineering, Dartmouth College, Hanover, NH.」に記載されている。分かりやすくするために、積層板218の厚さは誇張されている。実際には、各積層板218の厚さは、10~200μm(例えば、より具体的には、20~70μm)の範囲であり得る。積層板型共振器300は、複数の積層板218を含んでいる。当業者であれば、積層板型共振器300が任意の適切な数の積層板218を含んでもよいことを理解するであろう。積層板218は、磁性コア306に積層される。
【0025】
磁性コア306は、底部310と、周壁部312と、ポスト部314とを含む。
図3A及び
図3Bに示すように、各積層板218は、ポスト部314を受け入れるように寸法決めされた開口部320を有し、ポスト部314を概ね取り囲むようにして、ポスト部314と磁性コア306の周壁部312との間に配置される。
【0026】
積層板218は、複数の誘電層322及び導電層324を交互に積層させることにより形成される。
図3A及び
図3Bに示す実施形態では、各誘電層322は、略O字状の形状を有する環状プレートであり、内径と外径との間に延在する。各導電層324は、ノッチ326を画定するように略C字状の形状を有し、内径と外径との間に延在する。各導電層324は、ノッチ326を画定するために360°未満の角度(本明細書では「角度スパン」と称する)にわたって周方向に延在する。
【0027】
さらに、各導電層324は、誘電層322を挟んで互いに隣接する導電層324のノッチ326が互いに180°の角度をなすように、誘電層322を挟んで隣接する導電層324に対して反対方向に配向される。このような反対方向の配向により、誘電層322を挟んで互いに隣接する導電層324によって、2つのコンデンサが形成される。
【0028】
一実施形態では、1つの導電層324は、2つの端子332を有する底部導電層330である。この2つの端子332によって、積層板型共振器300は、例えば、電源(送信共振器として機能する場合)や負荷106(受信共振器として機能する場合)に接続される。さらに、いくつかの実施態様では、積層体の頂部及び底部を形成する積層板218は、誘電層322ではなく、導電層324である。あるいは、誘電層322を、積層体の頂部及び/または底部に配置してもよい。
【0029】
動作中、電力が送信共振器として動作する積層板型共振器300に供給されると、その電流は導電層324によって形成されたコンデンサを通って流れ、それにより、誘導電流ループが形成される。具体的には、積層板型共振器300は、並列LC共振器として機能し、受信共振器104に電力を無線送信したり、送信共振器102から無線送信された電力を受信したりすることができる。
【0030】
積層板型共振器300の共振周波数は、例えば、6.78MHz程度とすることができる。具体的には、積層板型共振器300の共振周波数は、積層板型共振器300のインダクタンスとキャパシタンスとの積の平方根に反比例する。インダクタンス及びキャパシタンスは、積層板型共振器300の設計に基づいて決定される。したがって、積層板型共振器300の設計を変更することによって、共振周波数を変更することができる。
【0031】
無線電力伝送システム100が機能するためには、送受信の共振器102、104の共振周波数が互いに重なり合う必要がある。リッツ線のループを含む共振器の共振周波数は、一般に、最大2.8MHzであり、積層板を含む共振器の共振周波数は、約6.78MHzであり得る。また、共振器102、104の共振周波数は、共振器102、104のインダクタンスとキャパシタンスとの積の平方根に反比例し、インダクタンスはコイル径に比例する。積層板を含む共振器102、104の場合、キャパシタンスは積層板の面積に比例する。積層板の半径方向の幅が同じであれば、キャパシタンスもコイル径に比例する。積層板218が血液ポンプアセンブリ206を取り囲む実施形態では、積層板218の共振周波数がリッツ線216のループの共振周波数の上限範囲内に収まるように、積層板218のコイル径を増大させる。共振周波数の重なりをさらに容易にするために、誘電層322の材料の誘電率を調整するか、または誘電層322の厚さを調整することによって、積層板218間のキャパシタンスを変更することができる。
【0032】
無線電力伝送システム100は、血液ポンプアセンブリ206に電気的に接続された植込み型バッテリモジュール402をさらに備えることができる。
図4A~
図4Dは、受信共振器104、バッテリモジュール402、及び血液ポンプアセンブリ206の例示的な構成の概略図である。これらの実施形態では、第1の電気ケーブル404及び第2の電気ケーブル406を使用して電気接続を提供することができる。
図4A~
図4Dでは、1つ以上のリッツ線216のループを含む受信共振器104が例として使用される。当業者であれば、1つ以上のリッツ線216のループを含む受信共振器104の代わりに複数の積層板218を含む受信共振器104を使用し、バッテリモジュール402及び血液ポンプアセンブリ206に接続してもよいことを理解するであろう。
【0033】
図4A及び
図4Bでは、第1の電気ケーブル404を用いて、受信共振器104が血液ポンプアセンブリ206に直接電気的に接続されている。これにより、受信共振器104及びバッテリモジュール402の両方が、血液ポンプアセンブリ206に電力を直接供給することができ、互いにバックアップとして機能することができる。例えば、受信共振器104は、第1の電気ケーブル404を介して血液ポンプアセンブリ206に電気的に接続されており、第1の電気ケーブル404の第1の端部408が受信共振器104に接続され、第1の電気ケーブル404の第2の端部410が血液ポンプアセンブリ206に接続されている。また、バッテリモジュール402は、第2の電気ケーブル406を介して血液ポンプアセンブリ206に電気的に接続されており、第2の電気ケーブル406の第1の端部412がバッテリモジュール402に接続され、第2の電気ケーブル406の第2の端部414が血液ポンプアセンブリ206に接続されている。
【0034】
図4C及び
図4Dでは、バッテリモジュール402は、受信共振器104と血液ポンプアセンブリ206との間に電気的に接続されている。例えば、バッテリモジュール402は、第1の電気ケーブル404を介して受信共振器104に電気的に接続されており、第1の電気ケーブル404の第1の端部408が受信共振器104に接続され、第1の電気ケーブル404の第2の端部410がバッテリモジュール402に接続されている。また、バッテリモジュール402は、第2の電気ケーブル406を介して血液ポンプアセンブリ206に電気的に接続されており、第2の電気ケーブル406の第1の端部412がバッテリモジュール402に接続され、第2の電気ケーブル406の第2の端部414が血液ポンプアセンブリ206に接続されている。
【0035】
図5は、心室補助装置(VAD)に電力を供給する無線電力伝送システム100の他の構成を示す。この実施形態では、送信共振器102は、1つ以上のリッツ線216のループ(
図2Aに示す)を含み、無線電力伝送システム100の受信共振器104は、複数の積層板218(
図2Aに示す)を含む。受信共振器104は、血液ポンプアセンブリ206に近接して配置される。また、受信共振器104は、肺220の下側かつ横隔膜222の上側に配置される。無線電力伝送システム100はさらに、送信共振器102と一体的に形成されたハブ502を備える。ハブ502及び送信共振器102は、ウェアラブルアクセサリ504内に含まれ得る。ウェアラブルアクセサリ504は、例えばメッセンジャーバッグであり得る。したがって、送信共振器102は、患者の肩部506からその反対側の患者の臀部508にかけて、患者の身体204に巻き付けるように構成されている。例えば、受信共振器104が心臓214の左室心尖部またはその近傍に配置される場合、最適には、ウェアラブルアクセサリ504は左肩から右臀部にかけて装着される。いくつかの実施形態では、ウェアラブルアクセサリ504は、プラスチックピンやプラスチックメッシュなどの、ねじれに対するウェアラブルアクセサリ504の剛性を高める構造的な非磁性部品を含み得る。このような構成では送信共振器102の磁界が部分的に相殺されないように、ウェアラブルアクセサリ504が8の字にねじれるのを防止することが望ましい。このような補強要素は、ウェアラブルアクセサリ504がわずかに撓むことを依然として可能にする。すなわち、ウェアラブルアクセサリ504を楕円と見なした場合、楕円の長軸及び短軸の長さは、快適性のために変化させることができる。
【0036】
例示的な実施形態では、ハブ502は、電源から供給された電力を、送信共振器102に供給する電力に変換するように構成された電力変換器(図示せず)を含み得る。電力変換器は、電源から供給される直流電力(DC電力)を、無線電力伝送システム100の動作周波数の交流電力(AC電力)に変換するように構成され得る。直流電力(DC電力)は、外部バッテリから供給するようにしてもよい。ハブは、任意選択で、壁コンセントから供給される交流電力(AC電力)を、バッテリが供給するのと同じ直流電圧を有する直流電力(DC電力)に変換する電力変換器を含み得る。あるいは、電力変換器は、ハブ502とは別個の構成要素、例えば、別個の電力モジュールなどに配置してもよい。
【0037】
図6は、電力を無線送信する例示的な方法600のフローチャートである。本方法600は、外部送信共振器から植込み型受信共振器に電力を無線送信するステップ606であって、外部送信共振器が、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの一方を含む、該ステップを含む。本方法600はさらに、植込み型受信共振器が、外部送信共振器から無線送信された電力を受信するステップ608であって、植込み型受信共振器が、(i)1つ以上のリッツ線のループ、及び(ii)複数の積層板のうちの他方を含む、該ステップを含む。本方法600はさらに、植込み型受信共振器が、外部送信共振器から受信した電力を使用して心室補助装置(VAD)に電力を供給するステップ610を含む。
【0038】
図7は、電力を無線送信する別の例示的な方法700のフローチャートである。本方法700は、外部送信共振器から植込み型受信共振器に電力を無線送信するステップを含む。本方法700はさらに、心室補助装置(VAD)が植え込まれた対象の胸腔内に植え込まれた植込み型受信共振器が、外部送信共振器から無線送信された電力を受信するステップ708を含む。本方法700はさらに、植込み型受信共振器が、外部送信共振器から受信した電力を使用して心室補助装置(VAD)に電力を供給するステップ710を含む。
【0039】
本明細書に開示される実施形態及び実施例を、特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本開示の原理及び適用の単なる例示であることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態及び実施例に対して様々な変更を加えること、及び、他の構成を考案できることを理解されたい。したがって、本出願は、これらの実施形態及びその均等物の改変及び変形を包含することを意図している。
【0040】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ、本発明を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに組み込まれた任意の方法の実施を含む)することを可能にする。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、当業者が想到可能な別の実施形態も含まれ得る。そのような別の実施形態は、各請求項の文言と相違しない構成要素を含む場合、または、各請求項の文言とは実質的に相違しない均等な構成要素を含む場合、その請求項の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】