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特表2023-517089成形可能なカテーテルの制御システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】成形可能なカテーテルの制御システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/092 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554457
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 US2021021253
(87)【国際公開番号】W WO2021183397
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/987,680
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB07
4C267BB52
4C267CC08
4C267EE03
(57)【要約】
血管内デバイス10は、近位端および遠位端を有する細長い本体12と、細長い本体内に延びる複数のエネルギー伝達導管20とを含む。エネルギー伝達導管の遠位端は、細長い本体の遠位端に沿った異なる軸方向位置で終端となる。一実施形態では、エネルギー伝達導管の数が2本のみで、細長い本体の遠位端によってとられる複合曲線の曲げ部の数が2つだけであるが、エネルギー伝達導管の数は任意の適切な数であってよい。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内デバイスであって、
近位端および遠位端を有する細長いカテーテル本体と、
前記細長い本体内に延びる複数のエネルギー伝達導管であって、前記エネルギー伝達導管の遠位端が前記カテーテル本体の遠位端に沿った異なる軸方向位置で終端となる、複数のエネルギー伝達導管と、
制御機構と、
前記エネルギー伝達導管の近位端と前記制御機構との間に結合されたエネルギー伝達リンケージであって、前記制御機構によって前記エネルギー伝達リンケージに加えられる単一のエネルギー入力に応答して、複数のエネルギー出力を予め設定された制御パラメータ比で前記エネルギー伝達導管の近位端に同時にそれぞれ加えるように構成されたエネルギー伝達リンケージとを備え、
前記細長い本体の遠位端が、前記エネルギー伝達リンケージにより前記エネルギー伝達導管の近位端に複数のエネルギー出力を加えることに応答して、複数の曲げ部を含む複合曲線の態様をとるように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内デバイスにおいて、
前記細長い本体の近位端に取り付けられたハンドルをさらに備え、前記制御機構およびエネルギー伝達リンケージが、前記ハンドルによって支持されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の血管内デバイスにおいて、
前記エネルギー伝達導管の数が2本のみであり、前記細長い本体の遠位端によってとられる複合曲線の曲げ部の数が2つのみであることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の血管内デバイスにおいて、
前記エネルギー伝達リンケージの制御パラメータ比が1とは異なることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の血管内デバイスにおいて、
前記エネルギー伝達リンケージの制御パラメータ比が調節可能であることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の血管内デバイスにおいて、
前記エネルギー伝達リンケージの予め設定された制御パラメータ比を調節するように構成された制御パラメータ比調節機構をさらに備えることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の血管内デバイスにおいて、
前記制御パラメータ比調節機構が、前記エネルギー伝達リンケージの予め設定された制御パラメータ比を連続的な範囲内で調節するように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項8】
請求項6に記載の血管内デバイスにおいて、
前記制御パラメータ比調節機構が、前記エネルギー伝達リンケージの予め設定された制御パラメータ比を離散的な範囲内で調節するように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項9】
請求項1に記載の血管内デバイスにおいて、
前記エネルギー伝達導管が機械的エネルギー伝達導管であり、前記エネルギー伝達リンケージが機械的エネルギー伝達リンケージであり、前記単一のエネルギー入力が単一の機械的エネルギー入力であり、前記エネルギー出力が機械的エネルギー出力であることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の血管内デバイスにおいて、
前記機械的エネルギー出力が、予め設定された力比および予め設定された線形変位比のうちの一方に従って前記機械的エネルギー伝達導管の近位端に加えられることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の血管内デバイスにおいて、
前記機械的エネルギー伝達導管がプルワイヤであり、前記予め設定された力比および前記予め設定された線形変位比のうちの一方が、プルワイヤ張力比およびプルワイヤ変位比のうちの一方を含むことを特徴とする血管内デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の血管内デバイスにおいて、
前記予め設定されたプルワイヤ張力比および前記予め設定されたプルワイヤ変位比のうちの一方が、予め設定されたプルワイヤ張力比を含み、前記機械的エネルギー出力が、引張出力であることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項13】
請求項12に記載の血管内デバイスにおいて、
前記機械的伝達リンケージが、前記プルワイヤのうちの第1のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第1のモーメントアームと、前記プルワイヤのうちの第2のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第2のモーメントアームと、前記第1のモーメントアームおよび前記第2のモーメントアームに動作可能に結合された駆動アセンブリとを備え、前記制御機構が、第1の軸および第2の軸の周りに前記第1のモーメントアームおよび前記第2のモーメントアームに同じモーメントをそれぞれ生じさせるために前記単一の機械的エネルギー入力を前記駆動アセンブリへ加え、それにより、前記予め設定されたプルワイヤ張力比に従って、前記第1のモーメントアームが前記第1のプルワイヤの近位端に前記引張出力のうちの第1の引張出力を加え、前記第2のモーメントアームが前記第2のプルワイヤの近位端に前記引張出力のうちの第2の引張出力を加えるように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項14】
請求項13に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1のモーメントアームおよび前記第2のモーメントアームが異なる長さを有し、それにより前記第1の引張出力および前記第2の引張出力が異なることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項15】
請求項13に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1の軸および前記第2の軸が共通であることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載の血管内デバイスにおいて、
前記駆動アセンブリが、前記制御機構が機械的エネルギー入力を加えるように構成された軸と、前記第1のプルワイヤの近位端がループ状に巻かれたホイールとを含むプーリを備え、前記機械的伝達リンケージが、レバーアーム有するレバーと、共通の軸に対応するヒンジとを備え、前記第1のプルワイヤの近位端が第1のアンカー点で前記レバーアームに係合して前記第1のモーメントアームを形成し、前記第2のプルワイヤの近位端が第2のアンカー点で前記レバーアームに係合して前記第2のモーメントアームを形成することを特徴とする血管内デバイス。
【請求項17】
請求項16に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1のアンカー点が、前記第2のアンカー点と前記ヒンジとの間に位置し、それにより、前記第2の引張出力に対する前記第1の引張出力の予め設定されたプルワイヤ張力比が、1よりも大きくなることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1のプルワイヤの近位端が前記レバーアームにスライド可能に係合し、それにより前記第1のアンカー点が前記レバーアームの長さ方向に沿って調節されて、前記第1のモーメントアームの長さを調節することができ、それにより前記第2の引張出力に対する前記第1の引張出力の予め設定されたプルワイヤ張力比を調節することができることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の血管内デバイスにおいて、
前記レバーアームの長さ方向に沿って前記第1のアンカー点を調節するように構成されたワイヤ張力比調節機構をさらに備えることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項20】
請求項19に記載の血管内デバイスにおいて、
前記ワイヤ張力比調節機構が、前記第1のプルワイヤの近位端が取り付けられたスライダキャリッジを備え、前記スライダキャリッジが、前記レバーアームの長さ方向に沿って前記第1のアンカー点を調節するために前記レバーアームに沿って変位するように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項21】
請求項20に記載の血管内デバイスにおいて、
前記レバーアームが長さ方向のスロットを有し、前記スライダキャリッジが、前記第1のプルワイヤの近位端が取り付けられる突起を有し、前記突起が、前記レバーアームのスロットとスライド可能に係合するように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項22】
請求項20に記載の血管内デバイスにおいて、
前記スライダキャリッジが、前記レバーアームに横方向に跨る第1および第2のカラーを備え、前記ワイヤ張力比調節機構が、前記スライダキャリッジの第1のカラーおよび第2のカラーにそれぞれネジ係合する第1のロッドおよび第2のロッドと、前記第1のロッドに取り付けられた駆動歯車と、前記第2のロッドに取り付けられた遊び歯車とをさらに備え、前記駆動歯車および前記遊び歯車が互いに噛み合っており、前記第1のロッドの回転により、前記駆動歯車と前記遊び歯車との噛み合いを介して、前記第2のロッドが回転し、それにより前記スライダキャリッジが前記レバーアームに沿って変位することを特徴とする血管内デバイス。
【請求項23】
請求項16に記載の血管内デバイスにおいて、
前記駆動アセンブリが、2本のアームを有するヨークをさらに備え、前記プーリの軸が、前記ヨークの2本のアームの間に回転可能に取り付けられ、前記制御機構が、前記プーリの軸に機械的エネルギー入力を加えるために前記ヨークに結合されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項24】
請求項11に記載の血管内デバイスにおいて、
前記予め設定されたプルワイヤ張力比および前記予め設定されたプルワイヤ変位比のうちの一方が、前記予め設定されたプルワイヤ変位比を含み、前記機械的エネルギー出力が、線形変位出力であることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項25】
請求項24に記載の血管内デバイスにおいて、
前記機械的伝達リンケージが、前記プルワイヤのうちの第1のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第1のカムと、前記プルワイヤのうちの第1のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第2のカムと、前記第1のカムおよび前記第2のカムに動作可能に結合された駆動アセンブリとを備え、前記制御機構が、前記駆動アセンブリに機械的エネルギー入力を加えることにより、前記予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、前記第1のカムが、前記第1のプルワイヤの近位端に前記線形変位出力のうちの第1の線形変位出力を加え、前記第2のカムが、前記第2のプルワイヤの近位端に前記線形変位出力のうちの第2の線形変位出力を加えるように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項26】
請求項25に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1のカムが、前記第1のプルワイヤの近位端が取り付けられた第1の線形要素を含み、前記第1のカムが、前記駆動アセンブリと係合する第1の回転要素を含み、前記第2のカムが、前記第2のプルワイヤの近位端が取り付けられた第2の線形要素を含み、前記第2のカムが、前記駆動アセンブリと係合する第2の回転要素を含むことを特徴とする血管内デバイス。
【請求項27】
請求項26に記載の血管内デバイスにおいて、
前記制御機構が、前記機械的エネルギー入力を前記駆動アセンブリに加えるように構成され、前記第1の回転要素および前記第2の回転要素が同じ角変位を有し、前記第1の回転要素および前記第2の回転要素が異なる半径を有し、それによって前記第1の線形変位出力および前記第2の線形変位出力が異なることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項28】
請求項27に記載の血管内デバイスにおいて、
前記駆動アセンブリが、第1の歯車状側面と、前記第1の歯車状側面と反対側の第2の歯車状側面とを有する線形駆動ラックを備え、前記第1の線形要素が、前記第1のプルワイヤの近位端に取り付けられた第1の線形歯車を備え、前記第1の回転要素が、第1の回転歯車と、前記第1の回転歯車に対して固定された第2の回転歯車とを備え、前記第1の回転歯車が前記第1の線形歯車と噛み合い、前記第2の回転歯車が前記線形駆動ラックの前記第1の歯車状側面と噛み合い、前記第2の線形要素が、前記第2のプルワイヤの近位端に取り付けられた第2の線形歯車を含み、前記第2の回転要素が、前記第2の線形歯車と前記線形駆動ラックの第2の歯車状側面との間に噛み合う第3の回転歯車を含み、前記制御機構が、機械的エネルギー入力を前記線形駆動ラックに加えることにより、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、前記第1の回転歯車および前記第2の回転歯車が一体的に回転して前記第1の線形歯車を直線的に変位させ、それによって、前記第1の引張出力を前記第1のプルワイヤの近位端に加えるとともに、前記第3の回転歯車が回転して前記第2の線形歯車を直線的に変位させ、それによって、前記第2の引張出力を前記第2のプルワイヤの近位端に加えるように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項29】
請求項28に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1の回転歯車の半径が、前記第3の回転歯車の半径と異なり、それにより前記予め設定されたプルワイヤ変位比が1とは異なることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項30】
請求項27に記載の血管内デバイスにおいて、
前記駆動アセンブリが軸を含み、前記第1の線形要素が第1のベルトを含み、前記第2の線形要素が第2のベルトを含み、前記機械的伝達リンケージが、前記第1の回転要素を形成する第1の環状溝と、前記第2の回転要素を形成する第2の環状溝とを有するホイールアセンブリを備え、前記第1のベルトが、前記ホイールアセンブリの第1の環状溝の周りにループ状に巻かれて、前記第1のプルワイヤの近位端に結合された第1の遠位端と、第1のアンカー点と結合された第2の遠位端とを形成し、前記第2のベルトが、前記ホイールアセンブリの第2の環状溝の周りにループ状に巻かれて、前記第2のプルワイヤの近位端に結合された第1の遠位端と、第2のアンカー点に結合された第2の遠位端とを形成し、前記制御機構が、前記軸に線形入力力を加えることにより、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、前記第1の環状溝が回転して前記第1のベルトが直線的に変位し、それにより前記第1のプルワイヤの近位端に第1の線形変位出力を加えるとともに、前記第2の環状溝が回転して前記第2のベルトが直線的に変位し、それにより前記第2のプルワイヤの近位端に第2の線形変位出力を加えるように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項31】
請求項30に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1のループ状ベルトが、第1の半径を有し、前記第2のループ状ベルトが、前記第1の半径とは異なる第2の半径を有し、それにより前記予め設定されたプルワイヤ変位比が1とは異なることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項32】
請求項30に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1のループ状ベルトが、第1の半径を有し、前記第2のループ状ベルトが、第2の半径を有し、前記血管内デバイスが、前記第1のループ状ベルトの第1の半径および前記第2のループ状ベルトの第2の半径のうちの少なくとも一方を調節するように構成されたプルワイヤ変位比調節機構をさらに備えることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項33】
請求項32に記載の血管内デバイスにおいて、
前記ホイールアセンブリが、
前記軸上に配置された第1および第2の外側プレートであって、前記軸に沿って横方向に固定され、互いに向かい合う凸状円錐面をそれぞれ有する第1および第2の外側プレートと、
前記第1および第2の外側プレートの間に前記軸に沿ってスライド可能に配置された内側プレートとを備え、前記内側プレートが、前記第1および第2の外側プレートの凸状円錐面にそれぞれ対向する第1および第2の凸状円錐面を有し、それによって、前記第1の環状溝が、前記第1の外側プレートの凸状円錐面と前記内側プレートの第1の凸状円錐面との間に形成され、前記第2の環状溝が、前記第2の外側プレートの凸状円錐面と前記内側プレートの第2の凸状円錐面との間に形成され、
前記第1のベルトが、前記第1の外側プレートの凸状円錐面および前記内側プレートの第1の凸状円錐面にそれぞれ一致する内向きに角度を付けた両側面を有し、それによって、前記第1のループ状ベルトの第1の半径を設定し、前記第2のベルトが、前記第2の外側プレートの凸状円錐面および前記内側プレートの第2の凸状円錐面にそれぞれ一致する内向きに角度を付けた両側面を有し、それによって、前記第2のループ状ベルトの第2の半径を設定し、
前記血管内デバイスが、プルワイヤ変位比調節機構をさらに備え、前記プルワイヤ変位比調節機構が、前記軸に沿って前記内側プレートを横方向にスライドさせることにより、前記第1の環状溝の幅が増加して、前記第1のループ状ベルトの半径が減少し、それにより前記第1の引張出力が減少する一方、前記第2の環状溝の幅が減少して、前記第2のループ状ベルトの半径が増加し、それにより前記第2の引張出力が増加し、その結果、前記予め設定されたプルワイヤ変位比が修正されるように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項34】
請求項33に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1および第2のベルトの各々が、台形断面を有することを特徴とする血管内デバイス。
【請求項35】
請求項33に記載の血管内デバイスにおいて、
前記プルワイヤ変位比調節機構が、前記軸の方向に沿って横方向に変位するように構成されたスライダキャリッジを備え、前記スライダキャリッジが、前記内側プレートの外側部分が配置される溝を有し、前記スライダキャリッジの変位によって前記内側プレートが前記軸に沿ってスライドすることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項36】
請求項35に記載の血管内デバイスにおいて、
前記プルワイヤ変位比調節機構が、前記軸に沿った方向に延びる一対のレールをさらに備え、前記スライダキャリッジが、前記一対のレールに沿ってスライドするように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項37】
請求項30に記載の血管内デバイスにおいて、
前記駆動アセンブリが、2本のアームを有するヨークをさらに備え、前記軸が、前記ヨークの2本のアームの間に回転可能に取り付けられ、前記制御機構が、前記プーリの軸に機械的エネルギー入力を加えるために前記ヨークに結合されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項38】
請求項26に記載の血管内デバイスにおいて、
前記第1の回転要素および前記第2の回転要素が同じ半径を有し、前記制御機構が、前記駆動アセンブリに機械的エネルギー入力を加えるように構成され、前記第1の回転要素および前記第2の回転要素が異なる角変位を有し、それにより前記第1の線形変位出力および前記第2の線形変位出力が異なることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項39】
請求項38に記載の血管内デバイスにおいて、
前記駆動アセンブリが、第1のコーンと、前記第1のコーンに対して逆向きであり、前記第1のコーンと回転可能に係合する第2のコーンと、前記第1のコーンと前記第2のコーンとの間に摩擦的に配置されたベルトとを備え、前記第1の回転要素が、前記第1のコーンの基部に隣接して取り付けられた第1の回転歯車を含み、前記第2の回転要素が、前記第2のコーンの基部に隣接して取り付けられた第2の回転歯車を含み、前記第1の線形要素が、前記第1の回転歯車と動作可能に噛み合う第1の線形歯車を含み、前記第1の線形歯車が、前記第1のプルワイヤの近位端に取り付けられ、前記第2の線形要素が、前記第2の回転歯車と動作可能に噛み合う第2の線形歯車を含み、前記第2の線形歯車が、前記第2のプルワイヤの近位端に取り付けられ、
前記制御機構が、機械的エネルギー入力を前記ベルトに加えることで、前記第1のコーンおよび前記第1の回転歯車が一体的に回転して前記第1の線形歯車が直線的に変位し、それにより前記第1の線形変位出力を前記第1のプルワイヤの近位端に加えるとともに、前記第2のコーンおよび前記第2の回転歯車が一体的に回転して前記第2の線形歯車が直線的に変位し、それにより前記第2のプルワイヤの近位端に前記第2の線形変位出力を、前記予め設定されたプルワイヤ変位比に従って加えるように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項40】
請求項39に記載の血管内デバイスにおいて、
前記ベルトが、前記第1のコーンの第1の半径と、前記第1のコーンとは異なる前記第2のコーンの第2の半径とに一致する第1の位置で、前記第1のコーンと前記第2のコーンとの間に摩擦的に配置され、それにより、前記予め設定されたプルワイヤ変位比が1とは異なることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項41】
請求項40に記載の血管内デバイスにおいて、
前記ベルトが、前記第1のコーンと前記第2のコーンとの間で横方向に変位するように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項42】
請求項41に記載の血管内デバイスにおいて、
前記ベルトを前記第1のコーンと前記第2のコーンとの間で横方向に変位させるように構成されたプルワイヤ変位比調節機構をさらに備えることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項43】
請求項42に記載の血管内デバイスにおいて、
前記プルワイヤ変位比調節機構が回動可能なキャリッジを備え、このキャリッジが、前記ベルトの長さ方向に沿って前記ベルトを支持するように構成された複数のアームと、前記ベルトの長さ方向に沿って延びるピボットアームであって、その周りで前記複数のアームが回動することにより前記第1のコーンと前記第2のコーンとの間で前記ベルトを横方向に変位させるピボットアームとを含むことを特徴とする血管内デバイス。
【請求項44】
請求項43に記載の血管内デバイスにおいて、
前記駆動アセンブリが、前記回動可能なキャリッジのピボットアームに平行な軸に沿ってスライドするように構成されたスライダをさらに備え、前記制御機構が、機械的エネルギー入力を前記スライダに加えるために前記ヨークに結合され、前記スライダが、前記ベルトの近位端がスライド可能に係合するガイドスロットを有し、前記ガイドスロットが、前記第1のコーンと前記第2のコーンとの間の境界面の角度に対応する角度を有し、それにより前記ベルトが前記第1のコーンと前記第2のコーンとの間で横方向に変位するときに前記ベルトの近位端が前記ガイドスロットに沿ってスライドするようになっていることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項45】
請求項1に記載の血管内デバイスにおいて、
前記エネルギー伝達リンケージが流体エネルギー伝達リンケージであり、前記単一のエネルギー入力が単一の機械的エネルギー入力であることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項46】
請求項45に記載の血管内デバイスにおいて、
前記エネルギー伝達導管が機械的エネルギー伝達導管であり、前記エネルギー出力が機械的エネルギー出力であることを特徴とする血管内デバイス。
【請求項47】
請求項45に記載の血管内デバイスにおいて、
前記エネルギー伝達導管が流体エネルギー伝達導管であり、前記エネルギー出力が流体エネルギー出力であることを特徴とする血管内デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療デバイスおよび血管内医療処置に関し、より詳細には、カテーテルの遠位端における偏向を制御するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用または診断用カテーテルは、患者の体内の非常に小さな空間内で医療処置を行うために一般的に使用される。それらの医療処置の大部分は、正確なカテーテルナビゲーションを要求する。離れた位置から人体内の標的部位にアクセスするために、カテーテルは、通常、血管系など、1または複数の体腔を通って標的部位に通される。血管系を使用する場合、カテーテルは、経皮的に、または患者の身体の比較的小さな切開を介して、動脈または静脈に挿入される。その後、カテーテルは患者の血管系に通されて、目的の標的部位に到達する。多くの場合、ガイドカテーテルなどの送達デバイスの使用により、血管系を通って標的部位に至る経路が作られ、この経路を通して治療用または診断用のカテーテルを標的部位に誘導することができる。
【0003】
ガイドカテーテルの有用性は、小さな血管を通り抜けて、大動脈弓の周りなど、血管系の急な曲がりの周りをうまく進むその能力によって制限される。大動脈弓から離れた大血管へのアクセスは、特に、解剖学的特徴により、デバイスが非常にねじれた経路または十分に支持されていない経路に従う必要がある場合に、課題を提起する。このような課題を克服するために、通される治療用または診断用カテーテルなどの作業用カテーテルを誘導するための予め成形されたガイドカテーテルが開発されている。そのような予め成形されたガイドカテーテルは、大動脈弓から外れた大血管へのアクセスを可能にする軸方向に間隔を置いた複数の曲線を有することができる。例えば、患者の動脈または静脈系で共通のねじれや分岐をうまく通り抜けるのを助けるとともに、心室などの標的キャビティ内に配置されたときに形状を維持するために、様々なタイプの予め成形された遠位端(例えば、シモンズ、ヘッドハンタ、ビテック、ベントソン、ニュートン形状)を有するガイドカテーテルが開発されている。しかしながら、予め成形された曲線は製造時にガイドカテーテルに固定されるため、半径、曲線の範囲および全体的な形状は通常変更することができない。解剖学的バラツキのため、ガイドカテーテルの正しい曲線を決定するには、広範な術前計画が必要になる。
【0004】
その場で形状を変えることができる新しいガイドカテーテルは、標的部位へのアクセスを容易にするために有用である。例えば、ガイドカテーテルを通って延びるガイドワイヤを、特定の血管開口部に向けて正確に導くために、1つのガイドカテーテルの遠位端を成形し/剛性構成にすることができる。その後、ガイドカテーテルの遠位端を、成形されていない/可撓性構成に変換して、ガイドワイヤに沿って血管開口部に向けて、かつ血管開口部内に容易に進めることができ、ガイドワイヤの除去後は、ガイドカテーテルを通して作業カテーテルを進めるための支持を提供することができる。従来、ガイドカテーテルの遠位端は、ガイドカテーテルの遠位端を偏向させることによって、選択的に成形可能または剛性にすることができる。
【0005】
一部の偏向可能なガイドカテーテルは、一部の体腔、特に血管系の曲がりくねった経路をより効果的にナビゲートするために開発されている。例えば、偏向可能なガイドカテーテルは、心内膜組織のマッピングおよびアブレーションのための電気生理学(EP)、および構造的な心臓修復(例えば、経カテーテル大動脈弁修復(TAVR)、心房中隔欠損および付属器閉鎖など)において一般的に使用されている。これらの用途に使用される偏向可能なガイドカテーテルは、一般に、作業カテーテルを支持するかまたは作業カテーテルが特定の組織に正確に接触することを可能にするために、双方向の、時には多平面の、非常に安定した微調節可能なポジショニングを提供する必要がある。
【0006】
偏向可能なガイドカテーテルは、従来、ガイドカテーテルの壁内に埋め込まれた1または複数のプルワイヤを採用している。典型的には、1または複数のプルワイヤは、ガイドカテーテルの遠位端から近位端の1または複数の制御機構まで、ガイドカテーテルの全長またはガイドカテーテルのほぼ全長にわたって壁内に埋め込まれている。偏向可能および/または先端偏向カテーテルの作動のための様々な方法が開発されており、それらは、例えば、米国特許第5,190,050号および第6,913,594号、並びに、米国特許公開第2017/0065415号に記載されているように、カテーテル内のワイヤ張力に影響を与えるために制御システムへ入力されるユーザの力を個別にスライド、回動または回転する手段を含む。単一平面における一方向の偏向の場合、1または複数のプルワイヤがガイドカテーテルの片側に延びる。プルワイヤが引っ張られると、その引っ張る力により、プルワイヤの側のガイドカテーテルの長さが短くなり、それによりガイドカテーテルがその方向に曲がる。ガイドカテーテルを通って延びるガイドワイヤの弾力性により、プルワイヤを緩めると、ガイドカテーテルの遠位端が真っ直ぐな構成に戻ることができる。二方向に偏向可能なガイドカテーテルの場合、第2のプルワイヤを第1のワイヤから180度の位置に取り付けることができる。この場合、ガイドカテーテルは、各ワイヤに荷重がかかると、一方向のデバイスとほぼ同様に屈曲するが、各ワイヤにより生じる屈曲は異なる方向となる。作動中のプルワイヤの反対側のワイヤは、近位端に対して静止したままであるか、または偏向セクションのこの側も収縮するため近位方向に移動することができる。
【0007】
血管系の管腔を通るナビゲーションは、典型的には、分岐部で特定の枝に向けてカテーテル先端を偏向させるだけでよく、これは比較的簡単な操作である。そのような偏向、基本的には単一の曲げ部を形成する能力は、一般に、大動脈弓の大血管にカテーテルをアクセスするには、または心室などのキャビティ内の標的に向けてカテーテルを誘導するには不十分である。例えば、TAVRの場合、左心房または左心室のキャビティ内の僧帽弁を標的とする場合、アプローチのタイプ、解剖学的構造のバラツキ、および僧帽弁に関連する様々な標的、例えば弁尖、交連、自由縁、腱索などの種々の点など、より多くの変数が存在する。それらの変数は、単一曲線カテーテルまたは調節可能な方法で複合曲線を提供しないカテーテルよりも高度な関節運動を提供することができる偏向可能なガイドカテーテルに対する必要性を高める。
【0008】
このため、調節可能な方法で複合曲線を提供することができる偏向可能なガイドカテーテルが設計されている。そのような偏向可能なガイドカテーテルの1つは、カテーテルの異なる側面に沿って延び、カテーテルに沿った異なる軸方向位置に固定される複数のプルワイヤを採用している。プルワイヤは、ガイドカテーテルの遠位端に複合曲線をとらせるために、カテーテルの近位端で別個の機構によって張力をかけられ、複合曲線の各曲げ部が、それぞれのプルワイヤによって独立して関節運動可能である。しかしながら、そのような偏向可能なカテーテルの遠位端を所望の複合曲線に配置することは、複合曲線の1つの曲げ部を形成するためにその制御機構によって1本のプルワイヤに張力を加えなければならず、その後、複合曲線の別の曲げ部を形成するためにその制御機構によって別のプルワイヤに張力を加えなければならないため、困難であり、面倒であり得る。さらに、それぞれのプルワイヤの張力は、所望の複合曲線の曲げ部の大きさを達成するために、バランスをとる必要がある。プルワイヤ間の適切なバランスは、複合曲線の遠位の曲げ部に対する張力が複合曲線のより近位側の曲げ部に影響を与える可能性があり、達成するのが困難な場合がある。このため、そのようなガイドカテーテルの独立に制御可能なプルワイヤの張力は、所望の複合曲線を達成するために前後に繰り返し調節しなければならない場合がある。
【0009】
したがって、ガイドカテーテルなどの細長い血管内デバイスの遠位端に複合曲線を形成するための、より単純で堅牢な手段を提供する必要性が継続的に存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明によれば、血管内デバイスは、近位端および遠位端を有する細長い本体と、細長い本体内に延びる複数のエネルギー伝達導管とを備える。エネルギー伝達導管の遠位端は、細長い本体の遠位端に沿った異なる軸方向位置で終端となる。一実施形態では、エネルギー伝達導管の数が2本のみで、細長い本体の遠位端によってとられる複合曲線の曲げ部の数が2つのみであるが、エネルギー伝達導管の数は任意の適切な数であってよい。
【0011】
血管内本体は、制御機構と、エネルギー伝達導管の近位端と制御機構との間に結合されたエネルギー伝達リンケージとをさらに備える。エネルギー伝達リンケージは、制御機構によってエネルギー伝達リンケージに加えられる単一のエネルギー入力に応答して、予め設定された制御パラメータ比でエネルギー伝達導管の近位端に複数のエネルギー出力をそれぞれ同時に加えるように構成されている。細長い本体の遠位端は、エネルギー伝達リンケージによりエネルギー伝達導管の近位端に複数のエネルギー出力を加えることに応答して、複数の曲げ部を含む複合曲線の態様をとるように構成されている。血管内デバイスは、細長い本体の近位端に取り付けられたハンドルをさらに備えることができ、この場合、ハンドルが制御機構およびエネルギー伝達リンケージを支持することができる。
【0012】
一実施形態では、エネルギー伝達リンケージの制御パラメータ比が、1とは異なる。別の実施形態では、エネルギー伝達リンケージの制御パラメータ比が調節可能であり、この場合、血管内デバイスは、エネルギー伝達リンケージの予め設定された制御パラメータ比を調節するように構成された制御パラメータ比調節機構をさらに備えることができる。制御パラメータ比調節機構は、例えば、エネルギー伝達リンケージの予め設定された制御パラメータ比を連続的な範囲または離散的な範囲内で調節するように構成されるものであってもよい。
【0013】
一実施形態では、エネルギー伝達導管が機械的エネルギー伝達導管であってもよく、この場合、エネルギー伝達リンケージが機械的エネルギー伝達リンケージであり、単一のエネルギー入力が単一の機械的エネルギー入力であり、エネルギー出力が機械的エネルギー出力であってもよい。機械的エネルギー出力は、予め設定された力比および予め設定された線形変位比のうちの一方に従って、機械的エネルギー伝達導管の近位端に加えられるものであってもよい。
【0014】
具体的な一実施形態では、機械的エネルギー伝達導管がプルワイヤであり、予め設定された力比および予め設定された線形変位比のうちの一方が、プルワイヤ張力比およびプルワイヤ変位比のうちの一方を含む。
【0015】
予め設定されたプルワイヤ張力比と予め設定されたプルワイヤ変位比のうちの一方が予め設定されたプルワイヤ張力比を含む場合、機械的エネルギー出力が引張出力である。この場合、機械的伝達リンケージは、プルワイヤのうちの第1のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第1のモーメントアームと、プルワイヤのうちの第2のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第2のモーメントアームと、第1のモーメントアームおよび第2のモーメントアームに動作可能に結合された駆動アセンブリとを含むことができる。制御機構は、第1の軸および第2の軸周りに第1のモーメントアームおよび第2のモーメントアームに同じモーメントをそれぞれ生じさせるために単一の機械的エネルギー入力を駆動アセンブリへ加えることにより、予め設定されたプルワイヤ張力比に従って、第1のモーメントアームが第1のプルワイヤの近位端に引張出力のうちの第1の引張出力を加え、第2のモーメントアームが第2のプルワイヤの近位端に引張出力のうちの第2の引張出力を加えるように構成されるものであってもよい。第1のモーメントアームおよび第2のモーメントアームは異なる長さを有することができ、それにより第1の引張出力および第2の引張出力が異なる。
【0016】
一実施形態では、第1の軸および第2の軸が共通であってもよく、その場合、駆動アセンブリは、制御機構が機械的エネルギー入力を加えるように構成された軸と、第1のプルワイヤの近位端がループ状に巻かれたホイールとを含むプーリを備え、機械的伝達リンケージが、レバーアーム有するレバーと、共通の軸に対応するヒンジとを備える。駆動アセンブリは、2本のアームを有するヨークをさらに含むことができ、プーリの軸が、ヨークの2本のアームの間に回転可能に取り付けられ、制御機構が、プーリの軸に機械的エネルギー入力を加えるためにヨークに結合され得る。
【0017】
この実施形態では、第1のプルワイヤの近位端が第1のアンカー点でレバーアームに係合して第1のモーメントアームを形成し、第2のプルワイヤの近位端が第2のアンカー点でレバーアームに係合して第2のモーメントアームを形成する。第1のアンカー点は、第2のアンカー点とヒンジとの間に配置することができ、それにより、第2の引張出力に対する第1の引張出力の予め設定されたプルワイヤ張力比が、1よりも大きくなる。第1のプルワイヤの近位端は、レバーアームにスライド可能に係合することができ、それにより第1のアンカー点がレバーアームの長さ方向に沿って調節されて、第1のモーメントアームの長さを調節することができ、それにより第2の引張出力に対する第1の引張出力の予め設定されたプルワイヤ張力比を調節することができる。
【0018】
この実施形態では、血管内デバイスが、レバーアームの長さ方向に沿って第1のアンカー点を調節するように構成されたワイヤ張力比調節機構をさらに備えることができる。例えば、ワイヤ張力比調節機構は、第1のプルワイヤの近位端が取り付けられたスライダキャリッジを含むことができる。スライダキャリッジは、レバーアームの長さ方向に沿って第1のアンカー点を調節するためにレバーアームに沿って変位するように構成されるものであってもよい。レバーアームは長さ方向のスロットを有することができ、スライダキャリッジは、第1のプルワイヤの近位端が取り付けられる突起を有することができる。突起は、レバーアームのスロットとスライド可能に係合するように構成することができる。スライダキャリッジは、レバーアームに横方向に跨る第1および第2のカラーを備えることができ、ワイヤ張力比調節機構は、スライダキャリッジの第1のカラーおよび第2のカラーにそれぞれネジ係合する第1のロッドおよび第2のロッドと、第1のロッドに取り付けられた駆動歯車と、第2のロッドに取り付けられた遊び歯車とをさらに備えることができる。駆動歯車および遊び歯車は互いに噛み合っており、第1のロッドの回転により、駆動歯車と遊び歯車との噛み合いを介して、第2のロッドが回転し、それによりスライダキャリッジがレバーアームに沿って変位するようになっている。
【0019】
予め設定されたプルワイヤ張力比および予め設定されたプルワイヤ変位比のうちの一方が、予め設定されたプルワイヤ変位比を含む場合、機械的エネルギー出力が線形変位出力である。この場合、機械的伝達リンケージは、プルワイヤのうちの第1のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第1のカムと、プルワイヤのうちの第1のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第2のカムと、第1のカムおよび第2のカムに動作可能に結合された駆動アセンブリとを含むことができる。制御機構は、駆動アセンブリに機械的エネルギー入力を加えることにより、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、第1のカムが、第1のプルワイヤの近位端に線形変位出力のうちの第1の線形変位出力を加え、第2のカムが、第2のプルワイヤの近位端に線形変位出力のうちの第2の線形変位出力を加えるように構成されるものであってもよい。
【0020】
第1のカムは、第1のプルワイヤの近位端が取り付けられた第1の線形要素を含むことができ、第1のカムは、駆動アセンブリと係合する第1の回転要素を含むことができ、第2のカムは、第2のプルワイヤの近位端が取り付けられた第2の線形要素と、駆動アセンブリと係合する第2の回転要素とを含むことができる。制御機構は、機械的エネルギー入力を駆動アセンブリに加えるように構成されるものであってもよく、それにより、第1の回転要素および第2の回転要素が同じ角変位を有し、第1の回転要素および第2の回転要素が異なる半径を有することができ、それによって第1の線形変位出力および第2の線形変位出力が異なる。
【0021】
一実施形態では、駆動アセンブリが、第1の歯車状側面と、第1の歯車状側面と反対側の第2の歯車状側面とを有する線形駆動ラックを備えることができ、第1の線形要素が、第1のプルワイヤの近位端に取り付けられた第1の線形歯車を備えることができ、第1の回転要素が、第1の回転歯車と、第1の回転歯車に対して固定された第2の回転歯車とを備えることができ、第1の回転歯車が第1の線形歯車と噛み合い、第2の回転歯車が線形駆動ラックの第1の歯車状側面と噛み合い、第2の線形要素が、第2のプルワイヤの近位端に取り付けられた第2の線形歯車を含むことができ、第2の回転要素が、第2の線形歯車と線形駆動ラックの第2の歯車状側面との間に噛み合う第3の回転歯車を含むことができ、制御機構が、機械的エネルギー入力を線形駆動ラックに加えることにより、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、第1の回転歯車および第2の回転歯車が一体的に回転して第1の線形歯車を直線的に変位させ、それによって、第1の引張出力を第1のプルワイヤの近位端に加え、第3の回転歯車が回転して第2の線形歯車を直線的に変位させ、それによって、第2の引張出力を第2のプルワイヤの近位端に加えるように構成されるものであってもよい。第1の回転歯車の半径は、第3の回転歯車の半径と異なるものであってもよく、それにより予め設定されたプルワイヤ変位比が1とは異なる。
【0022】
別の実施形態では、駆動アセンブリが軸を含み、第1の線形要素が第1のベルトを含み、第2の線形要素が第2のベルトを含み、機械的伝達リンケージが、第1の回転要素を形成する第1の環状溝と、第2の回転要素を形成する第2の環状溝とを有するホイールアセンブリを備える。第1のベルトは、ホイールアセンブリの第1の環状溝の周りにループ状に巻かれて、第1のプルワイヤの近位端に結合された第1の遠位端と、第1のアンカー点と結合された第2の遠位端とを形成し、第2のベルトは、ホイールアセンブリの第2の環状溝の周りにループ状に巻かれて、第2のプルワイヤの近位端に結合された第1の遠位端と、第2のアンカー点に結合された第2の遠位端とを形成し、制御機構は、軸に線形入力力を加えることにより、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、第1の環状溝が回転して第1のベルトが直線的に変位し、それにより第1のプルワイヤの近位端に第1の線形変位出力を加えるとともに、第2の環状溝が回転して第2のベルトが直線的に変位し、それにより第2のプルワイヤの近位端に第2の線形変位出力を加えるように構成されている。第1のループ状ベルトは、第1の半径を有することができ、第2のループ状ベルトは、第1の半径とは異なる第2の半径を有することができ、それにより予め設定されたプルワイヤ変位比が1とは異なる。
【0023】
この実施形態では、第1のループ状ベルトが、第1の半径を有し、第2のループ状ベルトが、第2の半径を有し、血管内デバイスが、第1のループ状ベルトの第1の半径および第2のループ状ベルトの第2の半径のうちの少なくとも一方を調節するように構成されたプルワイヤ変位比調節機構をさらに備える。ホイールアセンブリは、軸上に配置された第1および第2の外側プレートを含むことができる。第1および第2の外側プレートは、軸に沿って横方向に固定され、互いに向かい合う凸状円錐面をそれぞれ有する。ホイールアセンブリは、第1および第2の外側プレートの間に軸に沿ってスライド可能に配置された内側プレートをさらに含むことができる。駆動アセンブリは、2本のアームを有するヨークをさらに含むことができ、軸は、ヨークの2本のアームの間に回転可能に取り付けられ、制御機構は、プーリの軸に機械的エネルギー入力を加えるためにヨークに結合され得る。
【0024】
内側プレートは、第1および第2の外側プレートの凸状円錐面にそれぞれ対向する第1および第2の凸状円錐面を有することができ、それによって、第1の環状溝が、第1の外側プレートの凸状円錐面と内側プレートの第1の凸状円錐面との間に形成される。第2の環状溝は、第2の外側プレートの凸状円錐面と内側プレートの第2の凸状円錐面との間に形成され得る。第1のベルトが、第1の外側プレートの凸状円錐面および内側プレートの第1の凸状円錐面にそれぞれ一致する、内向きに角度を付けた両側面を有することができ、それによって、第1のループ状ベルトの第1の半径を設定することができ、第2のベルトは、第2の外側プレートの凸状円錐面および内側プレートの第2の凸状円錐面にそれぞれ一致する、内向きに角度を付けた両側面を有することができ、それによって、第2のループ状ベルトの第2の半径を設定することができる。血管内デバイスは、プルワイヤ変位比調節機構をさらに備えることができ、プルワイヤ変位比調節機構が、軸に沿って内側プレートを横方向にスライドさせることにより、第1の環状溝の幅が増加して、第1のループ状ベルトの半径が減少し、それにより第1の引張出力が減少する一方、第2の環状溝の幅が減少して、第2のループ状ベルトの半径が増加し、それにより第2の引張出力が増加し、その結果、予め設定されたプルワイヤ変位比が修正されるように構成されるものであってもよい。第1および第2のベルトの各々は、台形の断面を有することができる。
【0025】
プルワイヤ変位比調節機構は、軸の方向に沿って横方向に変位するように構成されたスライダキャリッジを含むことができる。スライダキャリッジは、内側プレートの外側部分が配置される溝を有することができ、スライダキャリッジの変位によって内側プレートが軸に沿ってスライドするようになっている。プルワイヤ変位比調節機構は、軸に沿った方向に延びる一対のレールをさらに備える。スライダキャリッジは、一対のレールに沿ってスライドするように構成することができる。
【0026】
さらに別の実施形態では、第1の回転要素および第2の回転要素が同じ半径を有することができ、制御機構は、第1の回転要素および第2の回転要素が異なる角変位を有することにより第1の線形変位出力および第2の線形変位出力が異なるように、駆動アセンブリに機械的エネルギー入力を加えるように構成され得る。アセンブリは、第1のコーンと、第1のコーンに対して逆向きであり、第1のコーンと回転可能に係合する第2のコーンと、第1のコーンと第2のコーンとの間に摩擦的に配置されたベルトとを備えることができる。第1の回転要素は、第1のコーンの基部に隣接して取り付けられた第1の回転歯車を含むことができ、第2の回転要素は、第2のコーンの基部に隣接して取り付けられた第2の回転歯車を含むことができる。第1の線形要素は、第1の回転歯車と動作可能に噛み合う第1の線形歯車を含むことができ、第1の線形歯車は、第1のプルワイヤの近位端に取り付けられ、第2の線形要素は、第2の回転歯車と動作可能に噛み合う第2の線形歯車を含むことができ、第2の線形歯車は、第2のプルワイヤの近位端に取り付けられるものであってもよい。制御機構は、機械的エネルギー入力をベルトに加えることで、第1のコーンおよび第1の回転歯車が一体的に回転して第1の線形歯車が直線的に変位し、それにより第1の線形変位出力を第1のプルワイヤの近位端に加えるとともに、第2のコーンおよび第2の回転歯車が一体的に回転して第2の線形歯車が直線的に変位し、それにより第2のプルワイヤの近位端に第2の線形変位出力を、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って加えるように構成されるものであってもよい。
【0027】
ベルトは、第1のコーンの第1の半径および第1のコーンとは異なる第2のコーンの第2の半径と一致する第1の位置で、第1のコーンと第2のコーンとの間に摩擦的に配置されるものであってもよく、それにより、予め設定されたプルワイヤ変位比が1とは異なる。ベルトは、第1のコーンと第2のコーンとの間で横方向に変位するように構成され得る。血管内デバイスは、ベルトを第1のコーンと第2のコーンとの間で横方向に変位させるように構成されたプルワイヤ変位比調節機構をさらに備えることができる。プルワイヤ変位比調節機構は、回動可能なキャリッジを備えることができ、このキャリッジは、ベルトの長さ方向に沿ってベルトを支持するように構成された複数のアームと、ベルトの長さ方向に沿って延びるピボットアームであって、その周りで複数のアームが回動することにより第1のコーンと第2のコーンとの間でベルトを横方向に変位させるピボットアームとを含む。駆動アセンブリは、回動可能なキャリッジのピボットアームに平行な軸に沿ってスライドするように構成されたスライダをさらに備えることができる。制御機構は、機械的エネルギー入力をスライダに加えるためにヨークに結合され得る。スライダは、ベルトの近位端がスライド可能に係合するガイドスロットを有することができる。ガイドスロットは、第1のコーンと第2のコーンとの間の境界面の角度に対応する角度を有することができ、それによりベルトが第1のコーンと第2のコーンとの間で横方向に変位するときにベルトの近位端がガイドスロットに沿ってスライドすることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝達リンケージが流体エネルギー伝達リンケージであってもよく、単一のエネルギー入力が単一の機械的エネルギー入力であってもよい。この場合、エネルギー伝達導管が機械的エネルギー伝達導管であってもよく、エネルギー出力が機械的エネルギー出力であってもよい。代替的には、エネルギー伝達導管が流体エネルギー伝達導管であってもよく、エネルギー出力が流体エネルギー出力であってもよい。
【0029】
実施形態の他のおよび更なる態様および特徴は、添付の図面に考慮して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面は、開示の発明の好ましい実施形態の設計および実用性を示しており、図面中、同様の要素には共通の符号が付されている。なお、図面は縮尺通りに描かれてらず、類似の構造または機能の要素は、図面全体を通して同様の符号で表されていることに留意されたい。また、図面は、実施形態の説明を容易にすることのみを意図していることに留意されたい。それらは、本発明の網羅的な説明または本発明の範囲の限定として意図されものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定されるものである。さらに、開示の発明の例示的な実施形態は、開示の態様または利点のすべてを有する必要はない。さらに、開示の発明の特定の実施形態に関連して述べた態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、そのように示されていなくても、他の任意の実施形態で実施することができる。
【0031】
開示の発明の上記および他の利点と目的がどのように得られるのかをよりよく理解するために、添付の図面に例示されているその特定の実施形態を参照しながら、上で簡単に述べた開示の発明のより具体的な説明を行う。それらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、よって本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解した上で、添付の図面の使用を通じて、本発明をさらに具体的にかつ詳細に説明および解説することとする。
【0032】
図1図1Aは、開示の発明の一実施形態に従って構築されたカテーテルの平面図であり、特に、直線構成のカテーテルの遠位端を示している。図1Bは、図1Aのカテーテルの平面図であり、特に、曲線構成のカテーテルの遠位端を示している。
図2図2A図2Cは、直線構成から曲線構成に移行する図1Aのカテーテルの平面図である。
図3図3A図3Cは、直線構成から曲線構成に移行する先行技術のカテーテルの平面図である。
図4図4Aは、図1Aのカテーテルの細長いカテーテル本体の一実施形態の平面図であり、特に、直線構成のカテーテル本体の遠位端を示している。図4Bは、図4Aの細長いカテーテル本体の平面図であり、特に、予め設定されたある制御パラメータ比に基づく曲線構成のカテーテル本体の遠位端を示している。図4Cは、カテーテル本体の長手方向軸に沿った、図4Aの細長いカテーテル本体の部分的に切り取られた断面図である。
図5図5Aは、図4Aの細長いカテーテル本体の平面図であり、特に、予め設定された別の制御パラメータ比に基づく曲線構成のカテーテル本体の遠位端を示している。図5Bは、図4Aの細長いカテーテル本体の平面図であり、特に、予め設定されたさらに別の制御パラメータ比に基づく曲線構成のカテーテル本体の遠位端を示している。図5Cは、図4Aの細長いカテーテル本体の平面図であり、特に、予め設定されたさらに別の制御パラメータ比に基づく曲線構成のカテーテル本体の遠位端を示している。
図6図6Aは、図1Aのカテーテルの制御機構および機械的エネルギーリンケージの一実施形態を含む、ハンドルの平面図である。図6Bは、図6Aのハンドル、制御機構および機械的エネルギーリンケージの断面図である。
図7図7は、図1Aのカテーテルに使用される機械的伝達リンケージの一実施形態の平面図である。
図8図8は、図7の機械的伝達リンケージの具体的な一実施形態の平面図である。
図9図9は、図1Aのカテーテルに使用される機械的伝達リンケージの別の実施形態の平面図である。
図10図10は、図9の機械的伝達リンケージの具体的な一実施形態の平面図である。
図11図11は、図9の機械的伝達リンケージの別の具体的な実施形態の斜視図である。
図12図12は、図11の機械的伝達リンケージの部分的に切り取られた斜視図である。
図13図13は、図11の機械的伝達リンケージの正面図である。
図14図14は、図11の機械的伝達リンケージの部分的に切り取られた別の斜視図である。
図15図15は、図11の機械的伝達リンケージによって使用されるカムアセンブリの正面図である。
図16図16は、図11の機械的伝達リンケージによって使用されるカムアセンブリの側面図である。
図17図17は、図1Aのカテーテルに使用される機械的伝達リンケージのさらに別の実施形態の平面図である。
図18図18は、図17の機械的伝達リンケージの具体的な実施形態の斜視図である。
図19図19は、図18の機械的伝達リンケージの斜視図である。
図20図20は、図18の機械的伝達リンケージの平面図である。
図21図21は、図18の機械的伝達リンケージの側面図である。
図22図22は、図18の機械的伝達リンケージの正面図である。
図23図23Aは、図18の機械的伝達リンケージに使用される円錐形駆動部の正面図であり、特に、ある横方向位置における円錐形駆動部のベルトを示している。図23Bは、線分23B-23Bに沿った、図23Aの円錐形駆動部の断面図である。
図24図24Aは、図23Aの円錐形駆動部の正面図であり、特に、別の横方向位置にある円錐形駆動部のベルトを示している。図24Bは、線分24B-24Bに沿った、図24Aの円錐形駆動部の断面図である。
図25図25は、図1Aのカテーテルにおいて代替的に使用することができる流体伝達リンケージの一実施形態の平面図である。
図26図26は、図1Aのカテーテルにおいて代替的に使用することができる流体伝達リンケージの別の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで、図1Aおよび図1Bを参照しながら、本発明の一実施形態に従って構築された偏向可能な細長い血管内デバイス10の一実施形態について説明する。図示の実施形態では、偏向可能な細長い血管内デバイス10が、作業カテーテル(例えば、治療または診断カテーテル)または他の器具を患者の体内の標的部位に導くために構成されたガイドカテーテルとして記載されているが、細長い血管内デバイス10は、複合曲線の使用から利益を得ることができる医療処置を実行することを目的とした選択的カテーテル、ガイドワイヤまたは作業カテーテル自体を含む、任意のデバイスの形態を取り得ることを理解されたい。
【0034】
偏向可能なカテーテル10は、概して、近位端24および遠位端26を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体12の近位端24に取り付けられたハンドル14と、ハンドル12に付随する制御機構16とを備える。カテーテル本体12の遠位端26は、以下にさらに詳細に説明するように、ハンドル14に付随する制御機構12の手動操作に応答して、直線構成(図1A)と曲線構成(図1B)との間で選択的に変換するように構成されている。
【0035】
ハンドル14は、操作者によって手動で把持されるように構成され、医療グレードのプラスチックなどの耐久性があり剛性のある材料からなり、操作者が偏向可能カテーテル10をより容易に操作できるように人間工学的に成形され得る。曲線構成は、複合曲線28(すなわち、互いに面内または面外にある複数の異なる曲げ部を有する曲線)によって特徴付けられている。カテーテル本体12の遠位端26が複数の複合曲線の態様をとり得る代替例では、複数の制御機構16を提供することができる(すなわち、複合曲線の各々に関連する1つの制御機構16を提供することができる)。さらに、カテーテル本体12の遠位端26は、ハンドル14上に位置する制御機構16の手動操作に応答して複合曲線28の態様をとるが、偏向可能なカテーテル10の代替的な実施形態におけるカテーテル本体の遠位端は、例えば近位アダプタに結合される自動駆動ユニットによる、近位アダプタに関連する制御機構の自動操作に応答して、複合曲線の態様をとることができることを理解されたい。
【0036】
重要なことは、カテーテル本体12の遠位端26が、操作者による制御機構16の単一動作の操作に応答して複合曲線28の態様をとるように構成され、それによって複合曲線28を形成するためのより単純でより堅牢な手段を提供することである。この単一動作の操作の特徴は、制御機構16と、カテーテル本体12を通って延び、その遠位端26に沿った異なる軸方向位置で終端となる複数のエネルギー伝達導管20(図4Cを参照)との間に動作可能に結合されたエネルギー伝達リンケージ18(図6Aおよび図6Bを参照)の使用によって可能になる。図示の実施形態では、エネルギー伝達導管20の総数が2本(20aおよび20b)であるが、任意の数のエネルギー伝達導管20を使用することが可能である。原則として、複合曲線28、または偏向可能なカテーテル10の遠位端26がとる複合曲線における曲げ部の総数は、エネルギー伝達導管20の最小数に等しくなる。したがって、複合曲線が2を超える曲げ部からなる場合、またはカテーテル本体12の遠位端26が複数の複合曲線の態様をとる場合、一般に、2を超えるエネルギー伝達導管20が採用される。
【0037】
以下でさらに詳細に説明するように、エネルギー伝達リンケージ18は、制御機構16によりエネルギー伝達リンケージ18に加えられた単一のエネルギー入力に応答して、予め設定された制御パラメータ比で、エネルギー伝達導管20a、20bの近位端に複数のエネルギー出力をそれぞれ同時に加えるように構成されている。予め設定された制御パラメータ比は、複合曲線の曲げ部にそれぞれ影響を与えるパラメータの値間の任意の比率とすることができる(すなわち、パラメータの第1の値が複合曲線の第1の曲げ部に影響を与え、同じパラメータの第2の値が複合曲線の第2の曲げ部に影響を与える等とすることができる)。パラメータは、エネルギー伝達リンケージ18の出力、例えば、力、線形変位、体積、圧力、アンペア数、電圧、ルーメンなどであってもよく、またはエネルギー伝達リンケージ18の内部(例えば、モーメントアームの長さ、ピストン面積、プーリ半径、歯車半径、ネジのピッチなど)にあってもよい。
【0038】
また、以下でさらに詳細に説明するように、偏向可能なカテーテル10のいくつかの実施形態では、カテーテル本体12の遠位端26によりとられる複合曲線28の最終形状が、エネルギー伝達リンケージ18の予め設定された制御パラメータ比を調節するように構成された制御パラメータ比調節機構22を介して(連続的または離散的に)調節可能である。
【0039】
図2A図2Cは、偏向可能なカテーテル10のカテーテル本体12の遠位端26が、直線構成から、複合曲線28からなる曲線構成に徐々に変換される様子を示している。図示の実施形態では、カテーテル本体12の遠位端26が、カテーテル本体12の長手方向軸34から離れる90度の近位側曲げ部30を有し、その後、カテーテル本体12の長手方向軸34に向かって戻る180度の遠位側曲げ部32を有し、近位側曲げ部30と遠位側曲げ部32が同一平面上に配置されている複合曲線28が示されている。図2Cに示す複合曲線は一例に過ぎず、偏向可能なカテーテル10の代替的な実施形態は、互いに面外にある曲げ部を含む、異なる形状または異なる数の曲げ部を有する異なるタイプの複合曲線、または複数の複合曲線を含むことができることを理解されたい。
【0040】
図2Aに示すように、カテーテル本体12の遠位端26は、直線構成にある。偏向可能なカテーテル10のハンドル14に付随する制御機構16の単一動作の操作に応答して、カテーテル本体12の遠位端26は、図2Bに示すように、同時に関節運動する、部分的に形成された近位側曲げ部30’と、部分的に形成された遠位側曲げ部32’とを有する複合曲線28’の形態を部分的にとり始める。制御機構16の更なる単一動作の操作に応答して、カテーテル本体26の遠位端26は、図2Cに示すように、同時に関節運動する、完全に形成された近位側曲げ部30(すなわち、90度の曲げ部)および完全に形成された遠位側曲げ部32(すなわち、180度の曲げ部)とを有する複合曲線28の形態を完全にとる。
【0041】
偏向可能なカテーテル10の単一動作の操作機能は、操作者が複合曲線の複数の曲げ部の関節運動のバランスを長々とる必要がある、複数の独立制御可能な機構を用いて複合曲線を徐々に形成する先行技術の偏向可能なカテーテルと対比されるべきである。例えば、ここで図3A図3Cを参照すると、先行技術の偏向可能なカテーテル1のカテーテル本体2の遠位端3が直線構成から偏向可能なカテーテル10の複合曲線28に類似する複合曲線4からなる曲線構成に徐々に変換する様子が記載されている。図3Aに示すように、カテーテル本体2の遠位端3は、図2Aに示す偏向可能なカテーテル10のカテーテル本体12の遠位端26と同様の直線構成にある。先ず、操作者は、一方の制御機構(図示せず)を作動させて、図3Bに示すように、カテーテル本体2の遠位端3に複合曲線4の遠位側曲げ部6を形成し、次に、他方の制御機構(図示せず)を作動させて、図3Cに示すように、カテーテル本体2の遠位端3に複合曲線4の近位側曲げ部5を形成する必要がある。図3A図3Cに示す先行技術の偏向可能なカテーテル1は、図2A図2Cに示す偏向可能なカテーテル10と同じ複合曲線を最終的に実現することができるが、先行技術の偏向可能なカテーテル1で複合曲線を形成するには複数のステップが必要である。さらに、近位側曲げ部5の形成が遠位側曲げ部6に影響を与える可能性があるため、複合曲線において適切な形状を達成するには、操作者は遠位側曲げ部6と近位側曲げ部5とを繰り返し形成する必要があり得る。このため、先行技術の偏向可能なカテーテル1は、複合曲線を作成する際に、偏向可能なカテーテル10ほど使い勝手が良くない可能性がある。
【0042】
偏向可能なカテーテル10の配置および機能を概略的に説明したが、次に、カテーテル本体12、ハンドル14、制御機構16、エネルギー伝達リンケージ18およびエネルギー伝達導管20a、20bをさらに詳細に説明する。
【0043】
図4A図4Cを先ず参照すると、偏向可能なカテーテル10のカテーテル本体12は、実質的に柔軟性または可撓性を有し、患者の体内に進められたときに、カテーテル本体12が患者の内部経路(例えば、胃腸管、血管など)の形状または曲線に適合、適応または一致することとなる。代替的には、カテーテル本体12は、例えば硬い材料で作られることにより、またはコーティングまたはコイルで補強されることにより、半剛性であってもよく、それにより屈曲の量を制限することが可能である。カテーテル本体12は、好ましくは、直径が約2フレンチ~9フレンチであり、長さが80cm~150cmである。カテーテル本体12は、好ましくは、円形の断面形状を有する。しかしながら、楕円形、長方形、三角形、および様々なカスタマイズされた形状など、他の断面形状も同様に使用することができる。カテーテル本体12は、好ましくは、その形状を保持し、体温で著しく軟化しない不活性で弾力性のあるプラスチック材料、例えば、Pebax(登録商標)、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミドまたはHytrel(登録商標)(ポリエステル)によって予め形成されている。代替的には、カテーテル本体12は、金属およびポリマーを含む様々な材料から形成されるが、それらに限定されるものではない。カテーテル本体12は、標的部位、例えば心臓内の領域に至る蛇行した経路を通って曲がることができるように、可撓性を有することが好ましい。カテーテル本体12は、カテーテル本体12の長手方向軸に沿って高い軸方向剛性を提供しながら低い曲げ剛性を示す、材料の複数の層および/または複数のチューブ構造で構成することができる。典型的な設計には、編組に封入されたニチノールスパインと、任意の可撓性、柔軟性を有する又は適切なポリマー材料または生体適合性ポリマー材料、または低デュロメータプラスチック(例えば、ナイロン-12、Pebax(登録商標)、ポリウレタン、ポリエチレンなど)からなる編組プラスチック複合構造体とが含まれる。
【0044】
この実施形態では、カテーテル本体12は、機能的に、無傷遠位先端34、遠位関節セクション36、中間移行セクション38および近位シャフトセクション40の4つのセクションに分割されている。
【0045】
無傷遠位先端34は丸みを帯びており、中央作業ルーメン42(図4Cに示す)と連通する出口ポート(図示せず)を含み、そこから作業カテーテルまたはガイドワイヤが遠位方向に延びることができる。無傷遠位先端34は、適切なポリマー材料(例えば、Pebax(登録商標))から構成することができる。
【0046】
遠位関節セクション36は、好ましくは、適度な軸方向圧縮および最適な横方向の可撓性を可能にする。遠位関節セクション36は、適切なポリマー材料(例えば、Pebax(登録商標))からなる異なる外側チューブを有することにより形成された異なる剛性を有するいくつかの部分を有する。図示の実施形態では、遠位関節セクション36が、(図4Bに最もよく示されているように)複合曲線28の近位側曲げ部30を形成すべく関節運動するように設計された相対的に柔軟な近位セグメント36aと、相対的に柔軟な近位セグメント36aに隣接する相対的に剛性の高い近位セグメント36bと、相対的に剛性の高い近位セグメント36bに隣接する、複合曲線28の遠位側曲げ部32を形成すべく関節運動するように設計された相対的に柔軟な遠位セグメント36cと、相対的に柔軟な遠位セグメント36cに隣接する相対的に剛性の高い遠位セグメント36dとを備える。遠位関節セクション36の長さは、偏向可能なカテーテル10に対する性能要件に応じて変化し得る。より長い遠位関節セクション36は、到達領域を増加させるのに有益であり、一方、より短い遠位関節セクション36は、解剖学的血管系におけるきつい側枝にカニュレーションを挿入するのに有益であり得る。その軸方向の剛性および弾性特性を高めるために、遠位関節セクション36は、外側ポリマーチューブ内に埋め込まれた編組層(例えば、2対2のパターンで68ピック/インチ(ppi)で編組された16本の0.0005インチ×0.003インチのスプリングテンパー304Vステンレス鋼ワイヤ)を含むことができ、または可変ピッチのコイルを含むことができ、または遠位関節セクション36の柔軟性および曲げ面を調節するためにスロット付きの(例えば、微細加工された)ハイポチューブを含むことができる。
【0047】
中間移行セクション38は、軸方向の圧縮に抵抗して、遠位関節セクション36の近位端を明確に規定し、エネルギー伝達導管20a、20bの動きを遠位関節セクション36に伝達する一方で、偏向カテーテル10が曲がりくねった解剖学的構造を辿ることができるように横方向の可撓性を維持する。中間移行セクション38は、適切なポリマー材料(例えば、Pebax(登録商標))からなる外側チューブで形成することができる。
【0048】
近位シャフトセクション40は、適切なポリマー材料(例えば、Pebax(登録商標))からなる異なる外側チューブを有することによって形成された異なる剛性のいくつかの部分を有することによって、カテーテル本体12を、中間移行セクション38からカテーテル本体12のより剛性の高い残りの部分へと徐々に移行する。近位シャフトセクション10は、その軸方向剛性を高めるために、外側ポリマーチューブ内に埋め込まれた二重編組層(例えば、2対2のパターンで68ピック/インチ(ppi)で編組された16本の0.0005インチ×0.003インチのスプリングテンパー304Vステンレス鋼ワイヤ)を含むことができる。
【0049】
図4Cに最もよく示されているように、中央作業ルーメン42は、作業カテーテル(図示せず)または1または複数の器具またはツールをカテーテル本体12の近位端24からカテーテル本体12の遠位端26まで送達するためにカテーテル本体12の全長にわたって配置されている。この作業ルーメン42の性質は、偏向可能なカテーテル10の使用目的に依存することになる。例えば、図示の実施形態では、偏向可能なカテーテル10はガイドシースとして使用され、この場合、作業ルーメン42は作業カテーテルまたは他の器具を収容する役割を果たすことになる。偏向可能なカテーテル10が作業または選択的カテーテルとして使用される場合、作業ルーメン42は、ガイドワイヤ(図示せず)を収容する役割を果たすことになる。カテーテル本体12を通って延びる作業ルーメン42の少なくとも一部は、内側ポリマーチューブ(例えば、0.001インチの厚さのポリテトラフルオロエチレン(PTFE))によって形成され得る。
【0050】
図示の実施形態では、エネルギー伝達導管20a、20bが機械的エネルギー伝達導管であり、特に、細長いカテーテル本体14内に延びるプルワイヤの形態をとる。プルワイヤ20a、20bの各々は、金属ワイヤ、ケーブルまたはフィラメントであってもよく、またはポリマーワイヤ、ケーブルまたはフィラメントであってもよい。また、各プルワイヤ20a、20bは、天然材料または有機材料または繊維から形成されたものであってもよい。各プルワイヤ20a、20bは、変形、著しい変形または破断を生じることなく、様々な種類の荷重を支えることができる任意のタイプの適切なワイヤ、ケーブルまたはフィラメントであってよい。機械的エネルギー伝達導管がプルワイヤ20a、20bであると述べたが、機械的エネルギー伝達導管はプルワイヤに限定されるべきではないことを理解されたい。例えば、機械的伝達導管20a、20bは、軸方向に剛性であるが横方向に柔軟な小径のチューブまたはロッドの形態をとることができる。さらに、偏向可能なカテーテル10の代替的な実施形態では、非機械的な伝達導管、例えば、流体伝達導管(例えば、液圧または空気圧)、電気伝達導管(すなわち、電気配線)、電磁エネルギー(例えば、光学)伝達導管などをエネルギー伝達導管として使用することができる。基本的に、遠位関節セクション36を複合曲線28へと関節運動させるために、カテーテル本体12の近位端24から遠位端26に任意のエネルギーを伝達することができる任意のエネルギー伝達導管を使用することができる。
【0051】
細長いカテーテル本体12の遠位端26に沿って異なる力を付与して複合曲線28を形成するために、図4Cに最もよく示されているように、プルワイヤ20a、20bは、カテーテル本体12を通って延びる1または複数のプルワイヤルーメン44内にスライド可能に配置されている。プルワイヤルーメン44は、低摩擦材料で構成されるか、またはプルワイヤ20a、20bがそれぞれ浮遊する支持されていない単なる管状キャビティであってもよい。図示の実施形態では、2つのプルワイヤルーメン44a、44bが、180度周方向に離間した関係でカテーテル本体12に設けられている。3本以上のプルワイヤ20a、20bが使用される代替的な実施形態では、追加のプルワイヤルーメン44をカテーテル本体12に設けることができる。図示の実施形態では、プルワイヤルーメン44が、遠位関節セクション36から近位シャフトセクション40を通って近位方向に延びている。代替的な実施形態では、中間移行セクション38が、遠位関節セクション36の2つのプルワイヤルーメン44a、44bを、近位シャフトセクション40を通って延びる単一の中空補強チューブ(図示せず)へ移行させることができる。
【0052】
プルワイヤ20a、20bの近位端は、(図6Aおよび図6Bに示す)エネルギー伝達リンケージ18を介して制御機構16に動作可能に結合される一方、プルワイヤ20a、20bの遠位端は、それぞれ異なる軸方向位置でカテーテル本体12の遠位端26に取り付けられており、その結果、制御機構16の手動作動によるプルワイヤ20a、20bの操作によって、異なる軸方向位置でカテーテル本体12の遠位端26に力または張力が加えられ又は変更され、それにより、カテーテル本体12の遠位端26の一部をプルワイヤ20a、20bの方向に(例えば、アップ、ダウン、ピッチ、ヨー、またはそれらの間の任意の方向へと)操縦して又は関節運動させて複合曲線28を形成することができる。制御機構16は、プルワイヤ20a、20bが常に緊張状態にあるように、プルワイヤ20a、20bに予張力をかけるバネ(図示せず)を含むことができる。このため、制御機構16は、プルワイヤ20a、20bにかかる張力を増加または減少させて、プルワイヤ20a、20bをそれぞれのプルワイヤルーメン44a、44b内で近位方向または遠位方向に変位させる役割を果たす。
【0053】
図示の実施形態では、一方のプルワイヤ20aの遠位端が、遠位関節セクション36の相対的に柔軟な近位セグメント36aの遠位範囲で、カテーテル本体12の遠位端26に取り付けられ、その結果、プルワイヤ20aに対する張力が増加すると、相対的に柔軟な近位セグメント36aが関節運動して複合曲線28の近位側曲げ部30になり、一方、他方のプルワイヤ20bの遠位端は、遠位関節セクション36の相対的に柔軟な遠位セグメント36cの遠位範囲で、カテーテル本体12の遠位端26に取り付けられ、その結果、プルワイヤ20bに対する張力が増加すると、相対的に柔軟な遠位セグメント36cが関節運動して複合曲線28の遠位側曲げ部32になる。図示の実施形態では、偏向可能なカテーテル10の遠位関節セクション36は弾力性があり、制御機構16の手動作動を介してプルワイヤ20a、20bを解放すると、遠位関節セクション36にかかる内力または張力が解放されて、直線構成に戻ることが可能になる。
【0054】
遠位関節セクション36の遠位端26へのプルワイヤ20a、20bの取り付けを容易にするために、偏向可能カテーテル10は、カテーテル本体12の遠位端26に沿った異なる軸方向位置で作業ルーメン42の周りに固定された複数の制御リング46(網掛けで示す)、この場合、近位制御リング46aおよび遠位制御リング46b(各プルワイヤ20a、20bに対して一つ)をさらに含む。プルワイヤ20a、20bの遠位端は、それぞれ制御リング46a、46bに固定され又は取り付けられ、その結果、制御機構16の手動作動を介したプルワイヤ20a、20bの操作により、制御リング46a、46bに力または張力が加わり、それによりカテーテル本体12の遠位端26が関節運動する。図示の実施形態では、近位制御リング46aが、遠位関節セクション36の相対的に柔軟な近位セグメント36aと相対的に剛性の高い近位セグメント36bとの間に位置し、遠位制御リング46bが、遠位関節セクション36の相対的に柔軟な遠位セグメント36cと相対的に剛性の高い遠位セグメント36dとの間に位置する。プルワイヤ20a、20bの遠位端は、180度だけ周方向に離間した制御リング38a、38bの位置にそれぞれ取り付けられ、その結果、プルワイヤ20a、20bの張力付与に応答して、複合曲線28の近位側曲げ部30および遠位側曲げ部32が同一平面上に配置される。代替的には、プルワイヤ20a、20bの遠位端が、180度とは異なる大きさ(例えば、90度)だけ周方向に離間した制御リング38a、38bの位置にそれぞれ取り付けられ、その結果、プルワイヤ20a、20bの張力付与に応答して、複合曲線28の近位側曲げ部30および遠位側曲げ部32が異なる平面内に配置されるようにしてもよい。
【0055】
代替的な実施形態では、偏向可能なカテーテル10において制御リングが使用されない。その代わりに、プルワイヤ20a、20bの遠位端が、カテーテル本体12のセクションまたは部分に直接取り付けられ(例えば、編組の2つの層の間に直接固定され)、そこで操縦され、関節運動し、または曲げられるようにしてもよい。プルワイヤ20a、20bは、カテーテル本体12の遠位端26に沿った特定の位置、この実施形態では、遠位関節セクション36の相対的に柔軟な近位セグメント36aと相対的に剛性の高い近位セグメント36bとの間の一方の位置と、遠位関節セクション36の相対的に柔軟な遠位セグメント36cと相対的に剛性の高い遠位セグメント36dとの間の他方の位置とに、圧着、半田付け、溶接または任意の適切な方法で連結することができる。
【0056】
図示の実施形態では、エネルギー伝達リンケージ18が、機械的エネルギー伝達導管20a、20b(この場合、2本のプルワイヤ20a、20b)の近位端と制御機構16(代替的には、複合曲線が細長いカテーテル本体12の遠位端26に自動的に形成される場合は、駆動ユニット)との間に動作可能に結合された機械的エネルギー伝達リンケージであり、制御機構16が、機械的エネルギー伝達リンケージ18に単一の機械的エネルギー入力を加えるように構成されている。この場合、機械的エネルギー伝達リンケージ18は、制御機構16によって加えられた単一の機械的エネルギー入力に応答して、予め設定された制御パラメータ比で、機械的エネルギー伝達導管20a、20bの近位端に複数の機械的エネルギー出力をそれぞれ同時に加えるように構成されている。制御機構16および/または機械的伝達リンケージ18には引張要素(例えば、バネ)を組み込むことができ、その結果、プルワイヤ20a、20bに常に張力がかけられ、それにより制御機構16の作動がプルワイヤ20a、20bの張力を増加または減少させる機能を果たすことができる。機械的伝達リンケージ18の様々な実施形態を論じる更なる詳細は、以下に記載される。
【0057】
図示の実施形態では、機械的エネルギー伝達導管20a、20bが2本のプルワイヤであるため、プルワイヤ20a、20bに引張出力または線形変位出力を加えることにより、機械的エネルギー出力が機械的エネルギー伝達リンケージ18によって同時にプルワイヤ20a、20bの近位端に加えられる。この場合、予め設定された制御パラメータ比は、予め設定されたプルワイヤ張力比(2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に加えられる2つの引張出力(すなわち、プルワイヤ張力出力)間の比)または予め設定されたプルワイヤ変位比(この場合、2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に加えられる線形変位出力(すなわち、プルワイヤ変位出力)間の比)の形態をとることができる。制御パラメータ比として予め設定されたプルワイヤ張力比または予め設定されたプルワイヤ変位比の何れかを選択することは、カテーテル本体12の遠位端26がとる複合曲線28の所望の性能に依存し得る。例えば、カテーテル本体12の遠位端26が、動的な力(例えば、カテーテル本体12の遠位端26に周囲の組織によって加えられる外力、カテーテル本体12によってプルワイヤ20に加えられる内力、またはカテーテル本体12の遠位端26に隣接する作業ルーメン42の部分を介して作業カテーテルまたはガイドワイヤを伝達する間にカテーテル本体12の遠位端26に加えられる内力)に関係なく、複合曲線28の態様を一貫してとり、それを維持することが望まれる場合には、制御パラメータ比として予め設定されたプルワイヤ変位比を選ぶことが望ましい可能性がある。対照的に、作業カテーテルまたはガイドワイヤがカテーテル本体12の遠位端26に隣接する作業ルーメン42を介してより容易に伝達されるように、複合曲線28にある程度の柔軟性を提供することが望ましい場合、制御パラメータ比として予め設定されたプルワイヤ張力比を選択することが望ましい可能性がある。
【0058】
エネルギー伝達導管20a、20bが流体エネルギー伝達導管である代替的な実施形態では、エネルギー伝達リンケージ18が、制御機構16によって加えられる単一の機械的エネルギー入力に応答して、複数の流体エネルギー出力を予め設定された制御パラメータ比で流体エネルギー伝達導管の近位端にそれぞれ同時に加えるように構成された液圧/空気圧エネルギー伝達リンケージであってもよい。この場合、予め設定された制御パラメータ比は、例えば、予め設定された体積比、予め設定された圧力比、予め設定されたピストン面積比などであってもよい。エネルギー伝達導管20a、20bが電気配線である代替的な実施形態では、エネルギー伝達リンケージ18が、制御機構16によって加えられる単一の電気エネルギー入力に応答して、複数の電気エネルギー出力を予め設定された制御パラメータ比でプルワイヤ20a、20bの近位端にそれぞれ同時に加えるように構成された電気エネルギー伝達リンケージであってよい。この場合、予め設定された制御パラメータ比は、例えば、予め設定された電流比、予め設定された電圧比などであってもよい。
【0059】
上で簡単に説明したように、任意選択的な制御パラメータ比調節機構22(図6Aおよび図6Bに示す)は、エネルギー伝達リンケージ18の予め設定された制御パラメータ比を調節するように構成され、それにより、カテーテル本体12の遠位端26によってとられる完全に形成された複合曲線28の近位側曲げ部30および遠位側曲げ部32の相対範囲を設定することができる。例えば、それぞれのエネルギー伝達導管20に関連する制御パラメータの値、図示の実施形態では、プルワイヤ20a、20bに関連するプルワイヤ張力またはプルワイヤ変位の値を、制御パラメータ比調節機構22により調節することができ、それによりカテーテル本体12の遠位端26によってとられる完全に形成された複合曲線28の遠位側曲げ部32を減少させことができる。
【0060】
例えば、図5Aに示すように、完全に形成された複合曲線28の遠位側曲げ部32の程度は、180度から135度に減少しており、近位側曲げ部30の程度は90度で変化していないままである。この場合、複合曲線28の遠位側曲げ部32に関連するプルワイヤ20bの張力または変位に対する、複合曲線28の近位側曲げ部30に関連するプルワイヤ20aの張力または変位の比が、制御パラメータ比調節機構22によって(例えば、1:2から2:3に)増加されている。完全に形成された複合曲線28の遠位側曲げ部32の程度は、180度から135度まで調節されるように示されているが、制御パラメータ比調節機構22は、完全に形成された複合曲線28の遠位側曲げ部32を任意の角度に調節するように操作することができるが、通常は180度未満、例えば160度、120度などである。
【0061】
別の例として、図5Bに示すように、完全に形成された複合曲線28の近位側曲げ部30の程度は90度から135度まで増加しているが、遠位側曲げ部32の程度は180度で変化していないままである。この場合、複合曲線28の遠位側曲げ部32に関連するプルワイヤ20bの張力または変位に対する、複合曲線28の近位側曲げ部30に関連するプルワイヤ20aの張力または変位の比が、制御パラメータ比調節機構22によって(例えば、1:2から2:3に)増加されている。図5Cに示すように、完全に形成された複合曲線28の近位側曲げ部30の程度は90度から45度に増加しており、遠位側曲げ部32の程度は180度で変化しないままである。この場合、複合曲線28の遠位側曲げ部32に関連するプルワイヤ20bの張力または変位に対する、複合曲線28の近位側曲げ部30に関連するプルワイヤ20aの張力または変位の比は、制御パラメータ比調節機構22によって(例えば、1:2から1:4に)減少している。
【0062】
以下でさらに詳細に説明するように、制御パラメータ比調節機構22は、オペレータによって操作可能な外部構成要素、例えば、ダイヤル、スライダ、レバーなどと、制御パラメータ比調節機構22の外部構成要素をエネルギー伝達リンケージ18に結合する内部構成要素とを備えることができる。
【0063】
ここで図6Aおよび図6Bを参照すると、制御機構16は、プルワイヤ20a、20bの張力の粗調節および微調節を選択的に提供して、カテーテル本体12の遠位端26の直線構成と曲線構成との間の変換を粗調節または微調節する手段を提供するように構成されている。
【0064】
この目的のために、制御機構16は、ハンドル14の周りに配置されたカラースリーブ48と、ハンドル14のキャビティ52内にスライド可能に配置された線形歯車50とを備える。カラースリーブ48は、ハンドル14に対して直線的および回転的に変位することができる。線形歯車50は、ハンドル14内の線形歯車50の線形変位がハンドル14に対する線形歯車50の唯一の運動の自由度を構成するように、ハンドル14によって回転可能に拘束されている。カラースリーブ48は、ネジ付きボア54を有し、線形歯車50は、線形歯車50の長さ方向に沿って延びる複数の歯56を有する。制御機構16は、単一のプルワイヤ58をさらに備え、その近位端が、線形歯車50に取り付けられ、その遠位端が、機械的伝達リンケージ18を介してプルワイヤ20a、20bに動作可能に結合されている。
【0065】
カラースリーブ48のネジ付きボア54は、線形歯車50の歯56と噛み合い、その結果、カラースリーブ48のネジ付きボア44が線形歯車50の歯56に沿って進み、ハンドル14を中心とするカラースリーブ48の時計回り方向または反時計回り方向の回転に応答して、ハンドル14に対する線形歯車50の微細で(すなわち相対的に小さく)連続的な長手方向の平行移動をもたらすことができる。特に、カラースリーブ48を時計回り方向および反時計回り方向の一方に(矢印60で示すように)手動で回転させると、線形歯車50が近位方向(矢印62aで示す方向)に微細に平行移動する。線形歯車50が近位方向に微細に平行移動すると、ハンドル14内の受動的張力付与要素(図示せず)のバネ力およびカテーテル本体12の弾力性に対抗して、単一のプルワイヤ58が近位方向に微細に変位し、それによりプルワイヤ20a、20bの張力が微細に増加して、カテーテル本体12の遠位端26によりとられる複合曲線が微細に狭められる。これに対し、時計回り方向および反時計回り方向のうちの他方にカラースリーブ48を手動で回転させると、線形歯車50が遠位方向(矢印62bで示す方向)に微細に平行移動する。線形歯車50が遠位方向に微細に平行移動すると、ハンドル14内の受動的張力付与要素のバネ力およびカテーテル本体12の遠位端26の弾力性により単一のプルワイヤ58が遠位方向に微細に平行移動し、それによりプルワイヤ20a、20bが微細に緩められて、カテーテル本体12の遠位端26がその直線構成または弛緩構成に微細に戻ることができる。
【0066】
また、カラースリーブ48のネジ付きボア54は、カラースリーブ48のネジ付きボア44が線形歯車50の歯56にロックされるように、線形歯車50の歯56に噛み合い、それにより、ハンドル14に対するカラースリーブ48の線形変位に応答して、ハンドル14に対する線形歯車50の粗い(すなわち相対的に大きな)連続的な長手方向の平行移動をもたらすことができる。カラースリーブ48が近位方向(矢印64aで示す方向)に線形変位すると、線形歯車50が近位方向(矢印62aで示す方向)に粗く平行移動する。線形歯車50が近位方向に粗く平行移動すると、ハンドル14内の受動的張力付与要素(図示せず)のバネ力およびカテーテル本体12の弾力性に対抗して、単一のプルワイヤ58が近位方向に粗く変位し、それによりプルワイヤ20a、20bの張力が粗く増加して、カテーテル本体12の遠位端26によりとられる複合曲線が粗く狭められる。これに対し、カラースリーブ48が遠位方向(矢印64bで示す方向)に線形変位すると、線形歯車50が遠位方向(矢印62bで示す方向)に粗く平行移動する。線形歯車50が遠位方向に粗く平行移動すると、ハンドル14内の受動的張力付与要素のバネ力およびカテーテル本体12の遠位端26の弾力性により単一のプルワイヤ58が遠位方向に粗く平行移動し、それによりプルワイヤ20a、20bが粗く緩められて、カテーテル本体12の遠位端26がその直線構成または弛緩構成に粗く戻ることができる。
【0067】
制御機構16は、カテーテル本体12の遠位端26を直線構成と複合曲線との間に細かく配置することも粗く配置することもできるものとして説明したが、代替的な実施形態では、制御機構16が、粗調節も微調節もせずに、カテーテル本体12の遠位端26を直線構成または緩和構成と複合曲線とに単に変換することができることを理解されたい。さらに、カテーテル本体12の遠位端26が複数の複合曲線の態様をとることができる場合、カテーテル本体12の遠位端26が複合曲線の何れかの間で、または複合曲線と直線的な弛緩構成との間で変換するように、複数の制御機構16を設けることができる。例えば、カテーテル本体12の遠位端26が2つの複合曲線の態様をとることができる場合、2つの制御機構を設けることができ、そのうちの第1の制御機構が、カテーテル本体12の遠位端26を第1の複合曲線と第2の複合曲線または直線構成または緩和構成との間で変換するために、2本のプルワイヤに結合され、第2の制御機構が、カテーテル本体12の遠位端26を第2の複合曲線と第1の複合曲線または直線構成または緩和構成との間で独立して変換するために、別の2本のプルワイヤに結合されるようにしてもよい。
【0068】
ここで図7を参照しながら、機械的エネルギー伝達リンケージ18aの例示的な一実施形態について説明する。機械的エネルギー伝達リンケージ18aは、制御機構16(図1に示す)による入力力Fに応答して、予め設定されたプルワイヤ張力比に従って、2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に同時に2つの引張出力T、Tをそれぞれ加えるように構成されている。
【0069】
機械的エネルギー伝達リンケージ18aは、プルワイヤ20間に予め設定されたプルワイヤ張力比を作り出すための複数のモーメントアーム100、具体的には、第1の軸104aおよび第2の軸104bを中心にそれぞれ回転して2本のプルワイヤ20a、20b間に予め設定されたプルワイヤ張力比を作り出す第1のモーメントアーム100aおよび第2のモーメントアーム100bを備える。モーメントアーム100a、100bはそれぞれ、長さL、Lを有する。第1のプルワイヤ20aの近位端は、第1のモーメントアーム100aに動作可能に結合され、第2のプルワイヤ20bの近位端は、第2のモーメントアーム100bに動作可能に結合されている。
【0070】
機械的エネルギー伝達リンケージ18aは、モーメントアーム100a、100bに動作可能に結合された駆動アセンブリ102をさらに含む。制御機構16は、モーメントアーム100a、100bに同じモーメントMを生じさせるように、線形入力力F、この場合は引張入力を駆動アセンブリ102に加えるように構成され、その結果、予め設定された引張比に応じて、第1のモーメントアーム100aが第1のプルワイヤ20aの近位端に第1の引張出力Tを加え、第2のモーメントアーム100bが第2のプルワイヤ20bの近位端に第2の引張出力Tを加えるようになっている。
【0071】
第1の引張出力Tは、次の式によれば、第1のモーメントアーム100aの長さLおよびモーメントMの一次関数であることが分かる。
同様に、第2の引張出力Tは、次の式によれば、第2のモーメントアーム100bの長さLおよびモーメントMの一次関数である。
また、第1の引張出力Tと第2の引張出力Tとの比は、次のように特徴付けることができる。
【0072】
このため、機械的エネルギー伝達リンケージ18aのプルワイヤ張力出力比は、モーメントアーム100a、100bのそれぞれの長さを設定することによって、予め設定することが可能であり、引張出力T、Tが、それぞれ関連するモーメントアーム100a、100bの長さL、Lに反比例する。図示の実施形態では、モーメントアーム100a、100bのそれぞれの長さL、Lは等しくないため、機械的エネルギー伝達リンケージ18aのプルワイヤ張力比は1とは異なる。
【0073】
図示の実施形態では、第1のモーメントアーム100aの長さLは、第2のモーメントアーム100bの長さLよりも短く、その結果、第1のプルワイヤ20aの近位端に加えられる第1の引張出力Tは、第2のプルワイヤ20bの近位端に加えられる第2の引張出力Tよりも大きい(すなわち、機械的エネルギー伝達リンケージ18aのプルワイヤ張力比は、1よりも大きくなる)。その結果、プルワイヤ20a、20bは、カテーテル本体12の遠位端26によってとられる複合曲線28の近位側曲げ部30と遠位側曲げ部32にそれぞれ関連しているため、近位側曲げ部30の程度は遠位側曲げ部32の程度より大きくなる。
【0074】
当然のことながら、第1のモーメントアーム100aの長さLが第2のモーメントアーム100bの長さLよりも長い代替的な場合、第1のプルワイヤ20aの近位端に加えられる第1の引張出力Tが、第2のプルワイヤ20bの近位端に加えられる第2の引張出力Tよりも小さいくなる(すなわち、機械的エネルギー伝達リンケージ18aのプルワイヤ張力比が1よりも小さくなる)。その結果、プルワイヤ20a、20bは、カテーテル本体12の遠位端26によってとられる複合曲線28の近位側曲げ部30と遠位側曲げ部32にそれぞれ関連しているため、近位側曲げ部30の程度は遠位側曲げ部32の程度より小さくなる。
【0075】
3本以上のプルワイヤ20a、20bが使用される場合(すなわち、複合曲線28が3以上の曲げ部を有する場合)、機械的伝達リンケージ18aは、追加のモーメントアーム100(すなわち、追加のプルワイヤごとに1本の追加のモーメントアーム)を含むように修正することができ、そのモーメントアームに追加のプルワイヤ20a、20bの近位端が動作可能に結合され、そのモーメントアームに制御機構16が同じモーメントMを加えることを理解されたい。
【0076】
ここで図8を参照しながら、予め設定されたプルワイヤ張力比に従って2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に2つの引張出力T、Tを同時にそれぞれ加える機械的伝達リンケージ18a(1)の特定の一実施形態を説明する。
【0077】
機械的伝達リンケージ18a(1)は、図7の機械的伝達リンケージ18aの駆動アセンブリ102に対応するプーリ106およびヨーク108を備える。プーリ106は、制御機構16が線形入力力F(この場合、引張入力)を加える軸110と、第1のプルワイヤ20aの近位端がループ状に巻き付けられるホイール112とを備える。ヨーク108は、プーリ106の軸110が回転可能に取り付けられた2本のアーム114(1本のみ図示)を備える。
【0078】
機械的伝達リンケージ18aは、レバー116をさらに備え、このレバーは、レバーアーム118および(図7の軸104に対応する)ヒンジ120を有し、このヒンジを中心にレバーアーム118が(矢印122で示すように)回転する。第1のプルワイヤ20aの近位端は、第1のアンカー点124aでレバーアーム118と係合して、図7に示す第1のモーメントアーム100aを形成し(第1のモーメントアーム100aの長さLは、ヒンジ120と第1のアンカー点124aとの間の距離に等しい)、第2のプルワイヤ20bの近位端は、第2のアンカー点124bでレバーアーム118と係合して、図7に示す第2のモーメントアーム100bを作成する(第2のモーメントアーム100bの長さLは、ヒンジ120と第2のアンカー点124bとの間の距離に等しい)。
【0079】
このため、制御機構16がヨーク110を介してプーリ106の軸108に引張入力Fを加えると、予め設定されたプルワイヤ張力比に従って、第1のアンカー点124aでレバーアーム118により第1の引張出力Tが第1のプルワイヤ20aの近位端に加えられる一方、第2のアンカー点124bでレバーアーム118により第2の引張出力Tが第2のプルワイヤ20bの近位端に加えられる。図8に示す機械的伝達リンケージ18aの予め設定されたプルワイヤ張力比(すなわち、引張出力T、T間の比)は、上記式[3]に規定されている。第1のアンカー点124aは、第2のアンカー点124bとヒンジ120のとの間に配置され、その結果、第1のプルワイヤ20aに付随する第1のモーメントアーム100a(図7に示す)の長さLが、第2のプルワイヤ20bに付随する第2のモーメントアーム100b(図7に示す)の長さLより短くなる。このため、第2の引張出力Tに対する第1の引張出力Tの予め設定されたプルワイヤ比は、この実施形態では常に1より大きくなる。
【0080】
図示の実施形態では、機械的伝達リンケージ18aの予め設定されたプルワイヤ張力比を調節することが可能である。具体的には、第1のプルワイヤ20aの近位端がレバーアーム118にスライド可能に係合し、その結果、第1のアンカー点124aがレバーアーム118の長さ方向に沿って調節可能であり、それにより第1のモーメントアーム100aの長さL、よって第2の引張出力Tに対する第1の引張出力Tの予め設定されたプルワイヤ張力比を調節することができる。この目的のために、機械的伝達リンケージ18aは、レバーアーム118の長さ方向に沿って第1のアンカー点124aを調節するように構成されたワイヤ張力比調節機構22aをさらに備える。
【0081】
この目的のため、ワイヤ張力比調節機構22aは、スライダキャリッジ126を備え、このスライダキャリッジには、第1のプルワイヤ20aの近位端が取り付けられている。スライダキャリッジ126は、レバーアーム118の長さ方向に沿って第1のアンカー点124aを調節するために、レバーアーム118に沿って変位するように構成されている。レバーアーム118は、長さ方向のスロット128を有し、スライダキャリッジ126は、(第1のアンカー点124aに対応する)突起130を有し、この突起には、第1のプルワイヤ20aの近位端が取り付けられている。スライダキャリッジ126の突起130は、レバーアーム118のスロット128にスライド可能に係合するように構成されているため、第1のアンカー点124aは、レバーアーム118のスロット128の上下に移動させることができる。図示の実施形態では、スライダキャリッジ126が、レバーアーム118に横方向に跨がる第1のカラー132aおよび第2のカラー132bを備える。ワイヤ張力比調節機構22aは、第1のカラー132aおよび第2のカラー132bを貫通してそれぞれ配置された第1のロッド134aおよび第2のロッド134bをさらに備える。カラー132a、132bは内側にネジが切られ、ロッド134a、134bは外側にネジが切られており、それにより、第1のカラー132aおよび第1のロッド134aが互いに螺合し、第2のカラー132bおよび第2のロッド134bが互いに螺合するようになっている。このため、ロッド130a、130bをその軸(矢印136a、136bで示す)に沿って回転させると、ロッド130a、130bの回転方向に応じて、スライダキャリッジ126を(矢印138で示すように)ロッド130に沿って上下に直線的に変位させることができる。
【0082】
ワイヤ張力比調節機構22aは、第1のロッド134aに取り付けられた円形駆動歯車140aと、第2のロッド134bに取り付けられた円形遊び歯車140bとをさらに備える。円形駆動歯車140aおよび円形遊び歯車140bは互いに噛み合っており、第1のロッド134aが(矢印134aで示すように)回転すると、円形駆動歯車140aと円形遊び歯車140bとの噛み合いを介して、第2のロッド134bが反対方向に(矢印134bで示すように)回転し、それによってスライダキャリッジ126が(矢印136で示すように)レバーアーム118に沿って直線的に変位するようになっている。一方向に駆動歯車140a、そして第1のロッド134aが回転すると、遊び歯車140b、そして第2のロッド134bが反対方向に回転するため、第1のロッド134a上のネジは、第2のロッド134b上のネジと逆向きに巻かれており、その結果、ロッド134の回転が一致して、レバーアーム118に沿ってスライダキャリッジ126が直線的に変位するようになっている。レバー116のヒンジ120は、フレーム146に対して固定されており、ネジ付きロッド134は、フレーム146に回転可能に取り付けられている。ワイヤ張力比調節機構22aは、第1のロッド134aに取り付けられた制御ダイヤル142をさらに備え、制御ダイヤル138を一方向(矢印144で示す方向に)回転することにより、第1のロッド134aが(矢印136aで示すように)回転し、円形駆動歯車140aと円形遊び歯車140bとの噛み合いを介して、第2のロッド134bが(矢印136bで示すように)回転し、最終的に、レバーアーム118に沿ってスライダキャリッジ126が直線的に変位するようになっている。なお、制御ダイヤル142は、(図6Aおよび図6Bに示すように)ハンドル14の外部に配置することができる。
【0083】
ここで図9を参照しながら、機械的エネルギー伝達リンケージ18bの別の例示的な実施形態を説明する。機械的伝達リンケージ18bは、(図1に示す)制御機構16による入力力Fに応答して、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、2つの線形変位出力D、Dをそれぞれ2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に同時に加えるように構成されている。これは、予め設定されたプルワイヤ張力比に従って2つの引張出力T、Tをそれぞれ2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に同時に加える図7に示す機械的エネルギー伝達リンケージ18aと対比されるべきである。
【0084】
機械的エネルギー伝達リンケージ18bは、複数のカム150を利用して、プルワイヤ20の間に予め設定されたプルワイヤ線形変位比を作り出し、具体的には、2つのカム150a、150bを利用して、回転運動(矢印154a、154bで示す)を線形運動に変換して、2本のプルワイヤ20a、20bの間に予め設定されたプルワイヤ線形変位比を作り出す。第1のプルワイヤ20aの近位端は、第1のカム150aに動作可能に結合され、一方、第2のプルワイヤ20bの近位端は、第2のカム150bに動作可能に結合されている。機械的エネルギー伝達リンケージ18bは、カム150a、150bに動作可能に結合された駆動アセンブリ152をさらに備える。制御機構16は、入力力Fを駆動アセンブリ152に加えるように構成され、それにより、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、第1のカム150aが第1のプルワイヤ20aの近位端に線形変位出力Dを加え、第2のカム150bが第2のプルワイヤ20bの近位端に線形変位出力D加えるようになっている。すなわち、カム150a、150bは、駆動アセンブリ152によってカム150a、150bに提供される回転エネルギーを直線運動に変換して、それぞれの第1および第2のプルワイヤ20a、20bの近位端に線形変位出力D、Dを加えるようになっている。
【0085】
図示の実施形態では、第1のカム150aが、第1のプルワイヤ20aの近位端が取り付けられた第1の線形要素156aと、駆動アセンブリ152と係合する第1の回転要素158aとを備える。第2のカム150bは、第2のプルワイヤ20bの近位端が取り付けられた第2の線形要素156bと、駆動アセンブリ152と係合する第2の回転要素158bとを備える。回転要素158a、158bは、それぞれ半径R、Rを有する。駆動アセンブリ152は、第1のカム150aおよび第2のカム150bを同じ角変位αで回転させる。この場合、第1の線形変位Dは、次の式によれば、第1のカム150aの半径Rの一次関数であることが分かる。
同様に、第2の線形変位Dは、次の式によれば、第2のカム150bの半径Rの一次関数である。
第1の線形変位Dと第2の線形変位Dとの間の比は、次のように特徴付けることができる。
【0086】
このため、機械的エネルギー伝達リンケージ18bの変位比は、回転要素158a、158bのそれぞれの半径R、Rを設定することによって予め設定することができ、線形変位出力D、Dが、それぞれ関連するカム150a、150bの回転要素158a、158bの半径R、Rに正比例する。図示の実施形態では、回転要素158a、158bのそれぞれの半径R、Rが等しくないため、機械的エネルギー伝達リンケージ18bのプルワイヤ変位比は1とは異なる。
【0087】
図示の実施形態では、第1の回転要素158aの半径Rが、第2の回転要素158bの半径Rよりも大きく、その結果、第1のプルワイヤ20aの近位端に加えられる第1の線形変位出力Dが、第2のプルワイヤ20bの近位端に加えられる第2の線形変位出力Dよりも大きくなる(すなわち、機械的エネルギー伝達リンケージ18bのプルワイヤ変位比は1よりも大きくなる)。その結果、プルワイヤ20a、20bは、カテーテル本体12の遠位端26によってとられる複合曲線28の近位側曲げ部30および遠位側曲げ部32にそれぞれ関連しているため、近位側曲げ部30の程度は、遠位側曲げ部32の程度よりも大きくなる。
【0088】
当然のことながら、第1の回転要素158aの半径Rが第2の回転要素158bの半径Rよりも小さい代替的な場合には、第1のプルワイヤ20aの近位端に加えられる第1の線形変位出力Dが、第2のプルワイヤ20bの近位端に加えられる第2の線形変位出力Dよりも小さくなる(すなわち、機械的エネルギー伝達リンケージ18bのプルワイヤ変位比は1未満になる)。その結果、プルワイヤ20a、20bは、カテーテル本体12の遠位端26によってとられる複合曲線28の近位側曲げ部30および遠位側曲げ部32にそれぞれ関連するため、近位側曲げ部30の程度は遠位側曲げ部32の程度よりも小さくなる。
【0089】
なお、3本以上のプルワイヤ20a、20bが使用される場合(すなわち、複合曲線28が3以上の曲げ部を有する場合)、機械的伝達リンケージ18bは、追加のカム150(すなわち、追加のプルワイヤごとに1つの追加のカム)を含むよう変更することができ、そのカムに追加のプルワイヤ20a、20bの近位端が動作可能に結合され、そのカムに制御機構16が駆動アセンブリ152を介して入力力Fを加えることを理解されたい。
【0090】
ここで図10を参照しながら、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に2つの線形変位出力D、Dをそれぞれ同時に加える機械的伝達リンケージ18b(1)の具体的な一実施形態を説明する。
【0091】
機械的伝達リンケージ18b(1)は、図9の機械的伝達リンケージ18bの駆動アセンブリ152に対応する線形駆動ラック160を含む。制御機構16(図1に示す)は、入力力F(この場合、線形入力力)を線形駆動ラック160に加えるための介在要素に結合することができる。線形駆動ラック160は、第1の歯車状側面162aと、第1の歯車状側面162aと反対側の第2の歯車状側面162bとを有する。機械的伝達リンケージ18b(1)は、図9の機械的伝達リンケージ18bの第1の線形要素156aおよび第2の線形要素156bにそれぞれ対応する第1の線形歯車164aおよび第2の線形歯車164bと、図9の機械的伝達リンケージ18bの第1の回転要素158aに対応する第1の回転歯車166aおよび第2の回転歯車166bと、図9の機械的伝達リンケージ18bの第2の回転要素158bに対応する第3の回転歯車166cとをさらに備える。第1の線形歯車164aは、第1のプルワイヤ20aの近位端に取り付けられ、第2の線形歯車164bは、第2のプルワイヤ20bの近位端に取り付けられている。第2の回転歯車166bは、第1の回転歯車166aに対して固定されている。第1の回転歯車166aは、第1の線形歯車164aと噛み合わされている。第2の回転歯車166bは、線形駆動ラック160の第1の歯車状側面162aと噛み合わされている。第3の回転歯車166cは、第2の線形歯車164bと線形駆動ラック160の第2の歯車状側面162bとの間に噛み合わされている。
【0092】
制御機構16が線形駆動ラック160に入力力Fを加えると、線形駆動ラック160が(矢印168で示すように)線形変位し、その結果、第1の回転歯車166aと第2の回転歯車166bが一体的に回転して第1の線形歯車164aを線形変位させ、それにより第1の線形変位出力Dを第1のプルワイヤ20aの近位端に加えるとともに、第3の回転歯車166cが、(矢印170a、170bで示すように)166a、166bと反対方向に回転して、第2の線形歯車164bを線形変位させ、それにより、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、第2の線形変位出力Dを第2のプルワイヤ20bの近位端に加えるようになっている。
【0093】
図10に示す機械的伝達リンケージ18b(1)の予め設定されたプルワイヤ変位比(すなわち、第1の線形変位出力Dと第2の線形変位出力Dの比)は、上述した式[6]で規定される。また、第1の線形変位出力Dと第2の線形変位出力Dとの比は、第1の回転歯車166aの歯数を第3の回転歯車166cの歯数で割った値として規定することも可能である。第1の回転歯車166aは半径Rを有し、第2の回転歯車166bおよび第3の回転歯車166cの各々は半径Rを有する。第2の回転歯車166bと第3の回転歯車166cは同じ半径Rを有するため(すなわち、第2の回転歯車166bの歯数と第3の回転歯車166cの歯数は同じであるため)、第2の回転歯車166b(ひいては第1の回転歯車166a)と第3の回転歯車166cが線形駆動ラック160の線形変位によって変位される角変位αは、常に同じであると考えられる。しかしながら、第1の回転歯車166aは、第3の歯車164cの半径Rとは異なる半径Rを有する(すなわち、第1の回転歯車166aの歯数は、第3の歯車164cの半径Rとは異なる)。したがって、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は、1とは異なる。この実施形態では、第1の回転歯車166aの半径Rが第3の歯車164cの半径Rよりも小さく、この場合、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は、1よりも小さくなる。代替的な実施形態では、第1の回転歯車166aの半径Rが第3の歯車164cの半径Rよりも大きく、その場合、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は、1よりも大きくなる。
【0094】
ここで図11図16を参照しながら、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って2本のプルワイヤ20a、20bの近位端にそれぞれ2つの線形変位出力D、Dを同時に加える機械的伝達リンケージ18b(2)の具体的な別の実施形態を説明する。
【0095】
機械的伝達リンケージ18b(2)は、図9の機械的伝達リンケージ18bの駆動アセンブリ152に対応する軸174およびヨーク176を備える。図11図14に最もよく示されるように、ヨーク176は、2本のアーム178を備え、それらの間に軸174が回転可能に取り付けられている。制御機構16(図1に示す)は、入力力F、具体的には引張入力を軸174に加えるために、ヨーク176に結合されている。
【0096】
機械的伝達リンケージ18b(2)は、図9の機械的伝達リンケージ18bの第1の線形要素156aおよび第2の線形要素156bにそれぞれ対応する第1のベルト180aおよび第2のベルト180bをさらに含む。図15および図16に最もよく示されるように、機械的伝達リンケージ18b(2)は、図9の機械的伝達リンケージ18bの第1の回転要素158aおよび第2の回転要素158bにそれぞれ対応する第1の環状溝184aおよび第2の環状溝184を有するホイールアセンブリ182をさらに備える。第1のベルト180aは、ホイールアセンブリ182の第1の環状溝184aの周りにループ状に巻かれて、第1のプルワイヤ20aの近位端に結合された第1の遠位端186aと、第1のアンカー点188aに結合された第2の遠位端186bとを形成し、第2のベルト180bは、ホイールアセンブリ182の第2の環状溝184bの周りにループ状に巻かれて、第2のプルワイヤ20bの近位端に結合された第1の遠位端186cと、第2のアンカー点188bに結合された第2の遠位端186dとを形成している。第1のベルト180aおよび第2のベルト180bは、それぞれの第1および第2の環状溝184a、184bの周りに同じ回転方向でループ状に配置されている。
【0097】
このため、制御機構16が軸174に引張入力Fを加えると、ホイールアセンブリ182が(矢印190で示すように)軸174とともに回転し、その結果、第1の環状溝184aが回転して第1のベルト180aを直線的に変位させ、それにより、第1のプルワイヤ20aの近位端に第1の線形変位出力Dを加えるとともに、第2の環状溝184bが回転して第2のベルト180bを直線的に変位させ、それにより、予め設定されたプルワイヤ張力比に従って、第2のプルワイヤ20bの近位端に第2の線形変位出力Dを加える。
【0098】
図11図16に示す機械的伝達リンケージ18b(2)の予め設定されたプルワイヤ変位比(すなわち、第1の線形変位出力Dと第2の線形変位出力Dとの比)は、上述した式[6]で規定されている。図16に最もよく示されるように、第1のループ状ベルト180aは第1の半径Rを有し(すなわち、第1の環状溝184aは有効半径Rを有し)、第2のループ状ベルト180bは第2の半径Rを有する(すなわち、第2の環状溝184bは有効半径Rを有する)。第1の環状溝184aと第2の環状溝184bは同じ軸174を中心に一緒に回転するため、軸174の回転によってループ状ベルト180a、180bが変位する角変位αは常に同じである。しかしながら、第1の環状溝184aの半径Rは、第2の環状溝184bの半径Rとは異なる。したがって、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は、1とは異なる。この実施形態では、第1の環状溝184aの半径Rが、第2の環状溝184bの半径Rよりも小さく、この場合、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は、1よりも小さくなる。代替的な実施形態では、第1の環状溝184aの半径Rが、第2の環状溝184bの半径Rよりも大きく、その場合、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は、1よりも大きくなる。
【0099】
図示の実施形態では、機械的伝達リンケージ18b(2)の予め設定されたプルワイヤ張力比を調節することが可能である。具体的に、環状溝184a、184bの有効半径R、Rは調節可能である。図11図14に最もよく示されているように、機械的伝達リンケージ18b(2)は、両環状溝182a、182bの有効半径R、Rを反比例する形で調節するように構成されたプルワイヤ変位比調節機構22bをさらに含む。
【0100】
この目的のために、ホイールアセンブリ182は、軸174上に配置された第1の外側プレート192aおよび第2の外側プレート192bを備える。図13および図15に最もよく示されているように、外側プレート192a、192bはそれぞれ、互いに向かい合う凸状円錐面194a、194bを有する。ホイールアセンブリ182は、外側プレート192a、192bの間に軸174上に配置された内側プレート196をさらに備える。図13および図15に最もよく示されているように、内側プレート196は、外側プレート194a、194bをそれぞれ向く第1および第2の凸状円錐面198a、198bを有する。図示の実施形態では、外側プレート192a、192bおよび内側プレート196は、軸174に回転可能に取り付けられている(すなわち、外側プレート192a、192bおよび内側プレート196が軸174と一緒に回転する)。外側プレート192a、192bは軸174に横方向に固定され(すなわち、外側プレート192a、192bは軸174に沿って横方向にスライドすることはできず)、内側プレート198は軸174に沿って横方向にスライド可能に配置されている(すなわち、内側プレート198は軸174に沿って横方向にスライドすることができる)。内側プレート196は、例えば軸174の溝(図示せず)に沿ってスライドする突出ピン(図示せず)を有し、それにより内側プレート198が軸174に沿って横方向にスライドすることができる一方で、内側プレート198が軸174に対して回転するのを阻止する。
【0101】
図15に最もよく示されているように、第1のベルト180aは、第1の外側プレート192aの凸状円錐面194aおよび内側プレート196の第1の凸状円錐面198aにそれぞれ一致する内向きに角度を付けた両側面200aを有し、それにより第1のループ状ベルト180aの第1の半径を設定することができ、第2のベルト180bは、第2の外側プレート192bの凸状円錐面198bおよび内側プレート196の第2の凸状円錐面198bにそれぞれ一致する内向きに角度を付けた両側面200bを有し、それにより第2のループ状ベルト180bの第2の半径を設定することができる。図示の実施形態では、ベルト178の各々が、それぞれの角度を付けた両側面200を形成する台形の断面を有する。
【0102】
プルワイヤ変位比調節機構22bは、(図15に矢印202で示すように)軸174に沿って内側プレート196を横方向にスライドさせるように構成されている。図11図14に示す実施形態では、プルワイヤ変位比調節機構22bが、軸174の方向に沿って変位するように構成されたスライダキャリッジ204を含む。プルワイヤ変位比調節機構22bは、軸174に沿う方向に延びる一対のレール206をさらに備える。スライダキャリッジ204は、一対のレール206に沿ってスライドするように構成されている。図13に最もよく示されているように、スライダキャリッジ204は、内側プレート196の半径方向外側の部分が配置される溝208を有し、スライダキャリッジ204の変位に対応して、内側プレート196を軸174に沿ってスライドさせるように構成されている。プルワイヤ変位比調節機構22bは、スライダキャリッジ204に取り付けられた制御スライダ(図示せず)をさらに備え、制御スライダがスライドすると、スライダキャリッジ204がスライドするようになっている。そのような制御スライダは、ハンドル14の外部に配置することができる。
【0103】
その結果、第1の環状溝184aの幅が変更され、それによって第1のループ状ベルト180aの半径Rが変更されて、第1のプルワイヤ変位Dが変化し、一方、第2の環状溝184bの幅が、第1の環状溝184bの変更された幅に反比例して変更されて、それにより第2のループ状ベルト180bの半径Rが、第1のループ状ベルト180aの変更された半径Rに反比例して変更され、その結果、第2のプルワイヤ変位Dが、第1のプルワイヤ変位Dに反比例して変更される。
【0104】
例えば、図15に最もよく示されているように、内側プレート196を軸174に沿って(矢印202に沿って右方向に)スライドさせると、第1の環状溝184aの幅が減少し、第2の環状溝184bの幅が増加する。その結果、第1のループ状ベルト180aは、第1の外側プレート192aの凸状円錐面194aと内側プレート196の第1の凸状円錐面198aとの間で圧迫される。この作用により、第1のループ状ベルト180aは、第1のループ状ベルト180aにかかるバネによる引張力に抗して半径方向外側(矢印210aに沿って上方)に変位し、それにより、その半径Rが大きくなり、これに対応して第1のプルワイヤ変位Dも大きくなる。同時に、第2のループ状ベルト180bは、第2の外側プレート192bの凸状円錐面198aと内側プレート196の第2の凸状円錐面198bとの間で解放される。この作用により、第2のループ状ベルト180bにかかるバネによる引張力により促されて第2のループ状ベルト180bが半径方向内側(矢印210bに沿って下方)に変位し、それにより、その半径Rが小さくなり、これに対応して第2のプルワイヤ変位Dが減少する。この場合、予め設定されたプルワイヤ変位比は増加する。
【0105】
これに対して、内側プレート196を軸174に沿って(矢印202に沿って左方向に)スライドさせると、第1の環状溝184aの幅が増大し、第2の環状溝184bの幅は減少する。その結果、第1のループ状ベルト180aは、第1の外側プレート192aの凸状円錐面194aと内側プレート196の第1の凸状円錐面198aとの間で解放される。この作用により、第1のループ状ベルト180aにかかるバネによる引張力により促されて第1のループ状ベルト180aが半径方向内側(矢印210aに沿って下方)に変位し、それにより、その半径Rが小さくなり、これに対応して第1のプルワイヤ変位Dが減少する。同時に、第2のループ状ベルト180bは、第2の外側プレート192bの凸状円錐面198aと内側プレート196の第2の凸状円錐面198bとの間で圧迫される。この作用により、第2のループ状ベルト180bにかかるバネによる引張力に抗して第2のループ状ベルト180bが半径方向外側(矢印210bに沿って上方)に変位し、それにより、その半径Rが大きくなり、これに対応して第2のプルワイヤ変位Dも大きくなる。この場合、予め設定されたプルワイヤ変位比は減少する。
【0106】
ここで図17を参照しながら、機械的エネルギー伝達リンケージ18cのさらに別の例示的な実施形態を説明する。機械的伝達リンケージ18cは、制御機構16(図1に示す)による入力力Fに応答して、予め設定されたプルワイヤ張力比に従って、2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に2つの線形変位出力D、Dをそれぞれ同時に加えるように構成されている。機械的伝達リンケージ18cは、図9に示す機械的伝達リンケージ18bと同様である。しかしながら、カムのそれぞれの半径に基づいてプルワイヤ変位比を設定する機械的伝達リンケージ18bとは異なり、機械的伝達リンケージ18cは、カムのそれぞれの角変位に基づいてプルワイヤ変位比を設定するようになっている。
【0107】
機械的エネルギー伝達リンケージ18cは、複数のカム250を利用して、プルワイヤ20の間に予め設定されたプルワイヤ線形変位比を作り出し、具体的には、2つのカム250a、250bを利用して、回転運動(矢印254a、254bで示す)を線形運動に変換して、2本のプルワイヤ20a、20bの間に予め設定されたプルワイヤ線形変位比を作り出す。第1のプルワイヤ20aの近位端は、第1のカム250aに動作可能に結合され、一方、第2のプルワイヤ20bの近位端は、第2のカム250bに動作可能に結合される。機械的エネルギー伝達リンケージ18cは、カム250に動作可能に結合された駆動アセンブリ252をさらに備える。制御機構16は、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、第1のカム250aが第1のプルワイヤ20aの近位端に線形変位出力Dを加え、第2のカム250bが第2のプルワイヤ20bの近位端に線形変位出力D加えるように、入力力Fを駆動アセンブリ252へ加えるように構成されている。すなわち、カム250は、駆動アセンブリ252によってカム250に提供される回転エネルギーを線形運動に変換して、D、Dの線形変位出力をそれぞれの第1および第2のプルワイヤ20a、20bの近位端に加える。
【0108】
図示の実施形態では、第1のカム250aが、第1のプルワイヤ20aの近位端が取り付けられた第1の線形要素256aと、駆動アセンブリ252と係合する第1の回転要素258aとを有する。第2のカム250bは、第2のプルワイヤ20bの近位端が取り付けられた第2の線形要素256bと、駆動アセンブリ252と係合する第2の回転要素258bとを備える。回転要素258a、258bはそれぞれ同じ半径Rを有する。駆動アセンブリ252はカム250a、250bを異なる角変位α、αで回転させる。
【0109】
この場合、第1の線形変位Dは、次の式に示すように、第1のカム250aの角変位αの一次関数であることが分かる。
同様に、第2の線形変位Dは、次の式に示すように、第2のカム150bの角変位αの一次関数である。
第1の線形変位Dと第2の線形変位Dとの間の比は、次のように特徴付けることができる。
【0110】
このため、機械的エネルギー伝達リンケージ18bの変位比は、回転要素258a、258bのそれぞれの角変位α、αを設定することによって予め設定することができ、線形変位出力D、Dが、それぞれ関連するカム250a、250bの回転要素258a、258bの角変位α、αに正比例する。図示の実施形態では、回転要素258a、258bのそれぞれの角変位α、αが等しくないため、機械的エネルギー伝達リンケージ18bのプルワイヤ変位比は1とは異なる。
【0111】
図示の実施形態では、第1の回転要素158aの角変位αが、第2の回転要素158bの角変位αよりも大きいため、第1のプルワイヤ20aの近位端に加えられる第1の線形変位出力Dは、第2のプルワイヤ20bの近位端に加えられる第2の線形変位出力Dよりも大きくなる(すなわち、機械的エネルギー伝達リンケージ18bのプルワイヤ変位比は1よりも大きくなる)。その結果、プルワイヤ20a、20bは、カテーテル本体12の遠位端26によってとられる複合曲線28の近位側曲げ部30と遠位側曲げ部32にそれぞれ関連しているため、近位側曲げ部30の程度は遠位側曲げ部32の程度よりも大きくなる。
【0112】
当然のことながら、第1の回転要素158aの角変位αが第2の回転要素158bの角変位αよりも小さい代替的な場合、第1のプルワイヤ20aの近位端に加えられる第1の線形変位出力Dが第2のプルワイヤ20bの近位端に加えられる第2の線形変位出力Dよりも小さくなる(すなわち、機械的エネルギー伝達リンケージ18bのプルワイヤ変位比は1よりも小さくなる)。その結果、プルワイヤ20a、20bは、カテーテル本体12の遠位端26によりとられる複合曲線28の近位側曲げ部30および遠位側曲げ部32にそれぞれ関連するため、近位側曲げ部30の程度は遠位側曲げ部32の程度より小さくなる。
【0113】
3本以上のプルワイヤ20a、20bが使用される場合(すなわち、複合曲線28が3以上の曲げ部を有する場合)、機械的伝達リンケージ18cは、追加のカム250(すなわち、追加のプルワイヤごとに1つの追加のカム)を含むよう変更することができ、その追加のカムに追加のプルワイヤ20a、20bの近位端が動作可能に結合され、その追加のカムに制御機構16が駆動アセンブリ252を介して入力力Fを加えるものとなる。
【0114】
ここで図18図24を参照しながら、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って2本のプルワイヤ20a、20bの近位端に2つの線形変位出力D、Dをそれぞれ同時に加える機械的伝達リンケージ18c(1)の具体的な一実施形態を説明する。
【0115】
機械的伝達リンケージ18c(1)は、第1のコーン260aと、第1のコーン260aに対して逆向きに向けられ、第1のコーン260aと回転可能に係合する第2のコーン260bと、コーン260a、260b間に摩擦的に配置された(すなわち、挟まれた)ベルト262とを備える。コーン260a、260bおよびベルト262は、図17の機械的伝達リンケージ18cの駆動アセンブリ252に相当する。機械的伝達リンケージ18c(1)は、図17の機械的伝達リンケージ18cの第1の線形要素256aおよび第2の線形要素256bにそれぞれ対応する第1の線形歯車264a(すなわち、ラック)および第2の線形歯車264b(すなわち、ラック)と、図17の機械的伝達リンケージ18cの第1の回転要素258aに対応する第1の回転歯車266a(すなわち、ピニオン)と、図17の機械的伝達リンケージ18cの第2の回転要素258bに対応する第2の回転歯車266b(すなわち、ピニオン)とをさらに備える。第1の回転歯車266aは、第1のコーン260aに対して固定され、第2の回転歯車266bは、第2のコーン260bに対して固定され、その結果、第1の回転歯車266aと第1のコーン260aが一体的に回転し、第2の回転歯車266bと第2のコーン260bが一体的に回転するようになっている。第1の線形歯車264aは、第1の回転歯車266aと動作可能に係合し、第1のプルワイヤ20aの近位端に取り付けられている。第2の線形歯車264bは、第2の回転歯車266bと動作可能に係合し、第1のプルワイヤ20bの近位端に取り付けられている。
【0116】
図示の実施形態では、機械的伝達リンケージ18c(1)が、第1のコーン260aおよび第1の回転歯車266aが取り付けられた第1の軸268aと、第2のコーン260bおよび第2の回転歯車266bが取り付けられた第2の軸268bとを備える。第1の回転歯車266aが第1のコーン260aの基部(すなわち、円形平面)に隣接して第1の軸268aに取り付けられ、第2の回転歯車266bが第2のコーン260bの基部(すなわち、円形平面)に隣接して第2の軸268bに取り付けられているが、代替的には、第1の回転歯車266aが第1のコーン260aの頂点に隣接して第1の軸268aに取り付けられ、第2の回転歯車266bが第2のコーン260bの頂点に隣接して第2の軸268bに取り付けられるものであってもよい。
【0117】
機械的伝達リンケージ18c(1)は、コーン260a、260bおよび線形歯車264a、264bが取り付けられるフレーム270をさらに備える。コーン260a、260bは、フレーム270に対してその軸を中心に回転可能に平行移動可能であり、一方、線形歯車264a、264bは、フレーム270に対してその軸に沿って直線的に平行移動可能である。第1の軸268aの両端は、フレーム270の対向する壁272a、272bに形成された穴274a内に回転可能に配置され、第2の軸268bの両端は、フレーム270の対向する壁272a、272bに形成された穴274b内に回転可能に配置されている。第1の線形歯車264aおよび第2の線形歯車264bは、フレーム270の対向する壁272a、272bの内部に沿ってそれぞれスライドする。
【0118】
制御機構16は、ベルト262に入力力F、具体的には引張入力を加えるように構成されている。図示の実施形態において、制御機構16は、図6Aおよび図6Bに示す制御機構16の変形例である。具体的に、図18図22に示す制御機構18は、ベルト262の近位端が取り付けられたスライダ276と、スライダ276のネジ穴(図示せず)に回転可能に係合するネジ機構278とを備える。以下にさらに詳細に説明するように、ベルト262の近位端は、スライダ262とスライド可能に係合し、コーン260a、260bの間のベルト262の横方向の変位を容易にする。フレーム270は、それぞれの壁272a、272bに形成された2つのスロット280を含み、それらスロット内でスライダ276の両端がスライドする。制御機構16のカラースリーブ48は、ネジ機構278の近位端に取り付けられており、制御機構16の回転変位により、フレーム270の対向壁272a、272bのスロット280に沿って直線的にスライダ276が微細に変位し、制御機構16の線形変位により、フレーム270の対向壁272a、272bのスロット280に沿って直線的にスライダ276が粗く変位するようになっている。
【0119】
ベルト262は、コーン260a、260b間に摩擦係合しているが、このベルトが(矢印282で示すように)線形変位すると、第1のコーン260aと第1の回転歯車266aが(矢印284aで示すように)一体的に回転して第1の線形歯車264aが直線的に変位し、それにより第1の線形変位出力Dが第1のプルワイヤ20aの近位端に加えられるとともに、予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、第2のコーン260bおよび第2の回転歯車266bが(矢印284bで示すように)一体的に回転して、第2の線形歯車264bが直線的に変位し、それにより第2の線形変位出力Dが第2のプルワイヤ20bの近位端に加えられるようになっている。
【0120】
図18図24に示す機械的伝達リンケージ18c(1)の予め設定されたプルワイヤ変位比(すなわち、線形変位出力D、D間の比)は、上述した式[9]で規定されている。ベルト262は、第1のコーン260aの半径rと第2のコーン260bの半径rとが一致する位置で、第1のコーン260aと第2のコーン260bとの間に摩擦的に配置されている(図23A図23B図24A図24Bを参照)。コーン260a、260bの間のベルト262の横方向の位置に応じて、コーン260、260bはそれぞれの角変位α、αで回転する。回転歯車266a、226bの半径Rは同じであるが、コーン260a、260b間のベルト262の第1の横方向位置において、第1のコーン260aの半径rは第2のコーン260の半径rと異なっている。このため、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は、1とは異なる。この実施形態では、第1のコーン260aひいては第1の回転歯車266aの角変位αは、第2のコーン260aひいては第2の回転歯車266bの角変位αより大きく、この場合、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は1よりも大きくなる。代替的な実施形態では、第1のコーン260aひいては第1の回転歯車266aの角変位αが、第2のコーン260aひいては第2の回転歯車266bの角変位αよりも小さく、この場合、第2の線形変位Dに対する第1の線形変位Dの予め設定されたプルワイヤ線形変位比は1よりも小さくなる。
【0121】
図示の実施形態では、機械的伝達リンケージ18c(1)の予め設定されたプルワイヤ張力比は調節可能である。特に、コーン260a、260b(および回転歯車266a、266b)の角変位α、αは調節可能である。図18図22に最もよく示されているように、機械的伝達リンケージ18c(1)は、コーン260a、260b(および回転歯車266a、266b)の角変位α、αを反比例する形で調節するように構成されたプルワイヤ変位比調節機構22cをさらに備えている。
【0122】
この目的のため、プルワイヤ変位比調節機構22cは、ベルト262をコーン260a、260bの間で、例えば、第1の横方向位置(図23Aを参照)と第2の横方向位置(図24Aを参照)との間で横方向にスライドするように構成されている。図示の実施形態では、プルワイヤ変位比調節機構22cが、張力をかけた状態でベルト262を支持する複数のアーム286を有する回動可能なキャリッジ284を備える。図示の実施形態では、回動可能なフレームは4本のアーム286a~286dを有し、最も近位側のアーム286aがベルト262の近位端を支持し、最も遠位側のアーム286dが、ベルト262の遠位端に結合されたバネ288の遠位端を支持し、中間のアーム286b、286bがコーン260a、260bのすぐ近位側および遠位側でベルト262の中間部を支持している。
【0123】
プルワイヤ変位比調節機構22cは、フレーム270を貫通して形成されたボア(図示せず)を通って長手方向に延びるピボットアーム290をさらに備え、このピボットアーム290を中心にキャリッジ284が回動可能となっている。ピボットアーム290は、ベルト262の長さに沿った方向に延び、このピボットアーム290を中心にキャリッジ284が回動するときにベルト262がコーン260a、260bの間で横方向に変位するようになっている。図19に最もよく示されているように、制御機構16のスライダ276は、コーン260a、260b間の境界面の角度に対応する角度を有するガイドスロット292を含む。ベルト262の近位端は、スライダ276のガイドスロット292内にスライド可能に配置され、それにより、キャリッジ284がピボットアーム290を中心に回動されるとき、ベルト262がスライダ276に対して横方向に変位することを可能にする。その結果、第1の回転歯車266aの角変位αが変更されて第1のプルワイヤ変位Dが変化する一方、第2の回転歯車266bの角変位αが、第1の回転歯車266aの変更された角変位αに反比例して変更されて、第2のプルワイヤ変位Dが第1のプルワイヤ変位Dに反比例して変更されることとなる。
【0124】
例えば、ベルト262がコーン260a、260bの間を(図20の矢印294aに沿って下方に)スライドするとき、変更された横方向位置に一致する第1のコーン260aの半径rが増加し、それにより第1の回転歯車266aの角変位αが減少し、それに対応して第1のプルワイヤ変位Dが減少する一方、変更された横方向位置に一致する第2のコーン260bの半径rが減少し、それにより第2の回転歯車266bの角変位αが増加し、それに対応して第2のプルワイヤ変位Dが増加する(例えば、図24Aおよび図24Bを参照)。
【0125】
これに対して、ベルト262がコーン260a、260bの間を(図20の矢印294bに沿って上方に)スライドするとき、変更された横方向位置に一致する第1のコーン260aの半径rが減少し、それにより第1の回転歯車266aの角変位αが増加し、それに対応して第1のプルワイヤ変位Dが増加する一方、変更された横方向位置に一致する第2のコーン260bの半径rが増加し、それにより第2の回転歯車266bの角変位αが減少し、それに対応して第2のプルワイヤ変位Dが減少する(例えば、図23Aおよび図23Bを参照)。
【0126】
簡単に上述したように、エネルギー伝達リンケージ18は、代替的に流体エネルギー伝達リンケージであってもよく、制御機構16によって流体エネルギー伝達リンケージに加えられる単一のエネルギー入力は、単一の機械的エネルギー入力であってよい。エネルギー伝達導管20は、例えば、機械的エネルギー伝達導管であってもよく、その場合、流体エネルギー伝達リンケージによって機械的エネルギー伝達導管に加えられるエネルギー出力は、機械的エネルギー出力であってもよく、あるいはエネルギー伝達導管20は、例えば、流体エネルギー伝達導管であってもよく、その場合、流体エネルギー伝達リンケージによって流体エネルギー伝達導管に加えられるエネルギー出力は、流体エネルギー出力であってもよい。
【0127】
図25を参照しながら、流体エネルギー伝達リンケージ18dの例示的な一実施形態を説明する。流体エネルギー伝達リンケージ18dは、制御機構16(図1に示す)による機械的入力力Fに応答して、予め設定された機械的力比に従って、2本のエネルギー伝達導管20a、20bの近位端に機械的出力F、Fをそれぞれ同時に加えるように構成されている。この場合、制御機構16による機械的入力力Fは入力シャフト300を介しており、およびエネルギー伝達導管20a、20bは、軸方向に剛性であるが横方向に柔軟なロッドの態様をとる機械的伝達導管である。
【0128】
流体エネルギー伝達リンケージ18dは、圧力Pabで液体304を含む分岐チャンバ302を備える。分岐チャンバ302は、入力チャンバ部分306と、入力チャンバ部分306から分岐する第1のチャンバ部分308aおよび第2のチャンバ部分308bとを備える。入力チャンバ部分306および出力チャンバ部分308a、308bは、液体304を介してすべて流体連通しており、よって同じ圧力Pabである。流体エネルギー伝達リンケージ18dは、入力ロッド300の遠位端に取り付けられ、入力チャンバ部分306内でスライド可能に配置された入力プランジャ312と、第1の機械的伝達導管20aの近位端に取り付けられ、第1の出力チャンバ部分308a内でスライド可能に配置された第1の出力プランジャ314aと、第2の機械的伝達導管20bの近位端に取り付けられ、第2の出力チャンバ部分308a内でスライド可能に配置された第2の出力プランジャ314bとをさらに備える。
【0129】
入力プランジャ312は、入力チャンバ部分306の壁に密封係合し、出力プランジャ314a、314bは、それぞれの出力チャンバ部分308a、308bの壁に密封係合し、その結果、入力プランジャ312が入力チャンバ部分306内で下方に変位すると、入力チャンバ部分306の圧力Pabが増加し、よって、分岐した出力チャンバ部分308a、308b内の圧力Pabが増加し、一方、入力プランジャ312が入力チャンバ部分306内で上方に変位すると、入力チャンバ部分306内の圧力Pabが減少し、よって、分岐した出力チャンバ部分308a、308b内の圧力Pabが減少する。
【0130】
その結果、出力プランジャ314a、314bは、出力プランジャ314a、314bの面積間の比に従って、機械的伝達導管20a、20bの近位端に力出力F、Fを加える。図示の実施形態では、第2の出力プランジャ314bの面積が、第1の出力プランジャ314aの面積よりも大きく、よって、第2の機械的伝達導管20bに加えられる力出力Fは、第1の機械的伝達導管20aに加えられる力出力Fよりも大きくなる。当然のことながら、第1の出力プランジャ314aの面積が第2の出力プランジャ314bの面積より大きければ、第1の機械的伝達導管20aに加えられる力出力Fは、第2の機械的伝達導管20bに加えられる力出力Fよりも大きくなる。
【0131】
図26を参照しながら、流体エネルギー伝達リンケージ18eの別の例示的な実施形態を説明する。流体エネルギー伝達リンケージ18eは、制御機構16(図1に示す)による機械的入力力Fに応答して、予め設定された流体体積比に従って、2本の機械的伝達導管20a、20bの近位端に体積出力V、Vをそれぞれ同時に与えるように構成されている。この場合、制御機構16による機械的入力力Fは、第1のアーム322aおよび第2のアーム322bを有するヨーク320を介しており、エネルギー伝達導管20a、20bは、液圧ラインの態様をとる流体伝達導管である。
【0132】
流体エネルギー伝達リンケージ18dは、第1の圧力Pで液体326aを収容する第1のチャンバ324aと、第2の圧力Pで液体326bを収容する第2のチャンバ324bとを備える。チャンバ324a、324bは、互いに流体的に隔離されており、よって圧力P、Pは互いに独立している。流体エネルギー伝達リンケージ18eは、ヨーク320の第1のアーム322aの遠位端に取り付けられ、第1のチャンバ324a内でスライド可能に配置された第1のプランジャ328aと、ヨーク320の第2のアーム322bの遠位端に取り付けられ、第2のチャンバ324b内でスライド可能に配置された第2のプランジャ328bとをさらに備える。
【0133】
第1のプランジャ328aは、第1のチャンバ324aの壁に密封的に係合し、第2のプランジャ328bは、第2のチャンバ324bの壁に密封的に係合し、その結果、プランジャ328a、328bがチャンバ324a、324b内で下方に変位すると、チャンバ324a、324b内の圧力P、Pが上昇し、一方、プランジャ328a、328bがチャンバ324a、324b内で上方に変位すると、チャンバ324a、324b内の圧力P、Pが下降する。それぞれのチャンバ324a、324b内の圧力P、Pは、出力プランジャ328a、328bの面積に比例することになる。
【0134】
その結果、プランジャ328a、328bは、出力プランジャ328a、328bの面積間の比に従って、流体伝達導管20a、20bの近位端に体積出力V、Vを与える。図示の実施形態では、第2のプランジャ328bの面積が第1のプランジャ328aの面積よりも大きく、よって、第2の流体伝達導管20bに加えられる体積出力Vが、第1の流体伝達導管20aに加えられる体積出力Vよりも大きくなる。当然のことながら、第1のプランジャ328aの面積が第2のプランジャ328bの面積よりも大きい場合は、第1の流体伝達導管20aに加えられる体積出力Vが、第2の流体伝達導管20bに加えられる体積出力Vよりも大きくなる。
【0135】
本明細書において特定の実施形態を開示および説明してきたが、それらは開示の発明を限定することを意図したものではなく、開示の発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更、並び替えおよび修正(例えば、種々の部品の寸法、部品の組合せ)をなし得ることは当業者に明らかであろう。開示の発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定されるべきものである。よって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で捉えられるべきである。本明細書に開示および説明された様々な実施形態は、開示の発明の代替物、修正物および均等物を包含することを意図しており、それらは添付の特許請求の範囲内に含まれ得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2022-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項25
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項25】
請求項10に記載の血管内デバイスにおいて、
前記機械的伝達リンケージが、前記プルワイヤのうちの第1のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第1のカムと、前記プルワイヤのうちの第のプルワイヤの近位端が動作可能に結合された第2のカムと、前記第1のカムおよび前記第2のカムに動作可能に結合された駆動アセンブリとを備え、前記制御機構が、前記駆動アセンブリに機械的エネルギー入力を加えることにより、前記予め設定されたプルワイヤ変位比に従って、前記第1のカムが、前記第1のプルワイヤの近位端に前記線形変位出力のうちの第1の線形変位出力を加え、前記第2のカムが、前記第2のプルワイヤの近位端に前記線形変位出力のうちの第2の線形変位出力を加えるように構成されていることを特徴とする血管内デバイス。
【国際調査報告】