(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】1つ又は複数の回転軸受を潤滑するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
F16C 33/66 20060101AFI20230414BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20230414BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20230414BHJP
F16N 7/38 20060101ALI20230414BHJP
G01M 13/04 20190101ALI20230414BHJP
【FI】
F16C33/66 Z
F16C19/52
F16C41/00
F16N7/38 B
F16N7/38 F
G01M13/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554459
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2021054738
(87)【国際公開番号】W WO2021180485
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522355983
【氏名又は名称】エスデーテー・インタナショナル・エスアー-エヌヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハリス・トロブラドヴィク
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・マチャド
【テーマコード(参考)】
2G024
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024CA13
2G024FA04
3J217JA02
3J217JA15
3J217JA24
3J217JB68
3J701AA01
3J701AA62
3J701CA01
3J701FA26
3J701FA32
(57)【要約】
本発明の方法によれば、軸受が動作中である、即ち所与の回転速度で回転している間、潤滑剤は、回転軸受(1)に逐次的に供給される。各ステップにおいて、潤滑剤の規定量の小部分が軸受に供給され、その後、毎回、超音波測定が行われるように、潤滑剤は、連続ステップのシーケンスで供給される。第1の供給ステップ前に第1の超音波測定が実行され、及び第2の供給ステップから開始して、軸受状態を評価し、且つシーケンスを継続するか又はシーケンスを停止するかをこの評価に基づいて決定するために、各測定結果が少なくとも以前の結果と比較される。軸受の潤滑が潤滑成功、潤滑失敗又は潤滑過剰と評価される場合、シーケンスの停止が決定される。本発明は、同様に、前記軸受の各々に本発明の方法を適用する、1つ又は複数の軸受を潤滑するためのシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(3)の少なくとも1つの回転軸受(1)を、1つ又は幾つかの連続供給ステップで前記軸受に潤滑剤を逐次的に供給することによって監視及び潤滑する方法であって、
- 規定の潤滑剤量(G)が判定され、
- 第1の供給ステップ前に、前記軸受に接続して装着された変換器を通して超音波信号が測定され、且つ前記軸受の潤滑状態を表すスカラー指標の初期値(M0)が前記信号から抽出され、及びそれぞれの後続の潤滑剤供給ステップ後に前記測定及び値抽出が繰り返され、各測定は、前記供給に続く安定化期間後に実行され、前記安定化期間の持続時間は、それが、前記供給された潤滑剤が完全に動作可能であることを可能にするようなものであり、
- 前記連続ステップで供給される潤滑剤の量(gn)は、前記規定の潤滑剤量(G)よりも少なく、
- 前記スカラー指標の各値(Mn)は、第2の抽出値(M1)で開始して、前記初期値(M0)に対して評価され、且つ第3の測定値から開始して、以前に抽出された値(M1、M2、...、Mn-1)の1つ又は複数に対して評価され、
- 前記評価の各々に基づいて、潤滑シーケンスの停止又は継続に関する決定が行われる、方法。
【請求項2】
前記スカラー指標は、前記信号の二乗平均平方根(RMS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シーケンスは、抽出値が、前記以前に抽出された値よりも大幅に低い場合に継続される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
抽出値が所与の数の連続測定及び値抽出にわたって同じままであり、その場合に前記シーケンスが停止され、及び前記潤滑状態が成功と見なされない限り、前記シーケンスは、前記抽出値が、前記以前に抽出された値と実質的に同じである場合に継続される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記シーケンスは、抽出値が、前記初期値(M0)よりも高い所与の量よりも高いか又は少なくとも前記所与の量である場合、潤滑過剰のために停止される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記シーケンスは、前記以前の値が、前記以前の値に先行する値よりも大幅に低かった後、抽出値が前記以前の値よりも大幅に高い場合、成功した潤滑状態のために停止される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記シーケンスは、前記以前の値が、前記以前の値に先行する値と実質的に同じであった後、抽出値が前記以前の値よりも大幅に高い場合、失敗した潤滑状態のために停止される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の潤滑剤供給ステップ後及び前記スカラー指標値(M1)の前記第1の抽出前に、前記安定化時間中に超音波信号の中間測定を更に含み、且つ前記中間信号からの前記スカラー指標の値(M’)の抽出を含み、前記第1の抽出値(M1)が前記中間抽出値(M’)よりも大幅に高い一方、前記値M’が前記初期値(M0)よりも大幅に低い場合、前記シーケンスは、疑われる軸受故障のために停止される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記スカラー指標又は追加のスカラー指標は、尖度である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
補給間隔(T)の判定を更に含み、前記補給間隔以下の間隔で複数回実行される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記補給間隔は、請求項1~8のいずれか一項に記載の潤滑方法の後続の適用間で更新され、前記更新は、前記潤滑方法の前記ステップの結果に基づく、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記潤滑シーケンスが停止される前に、前記規定量(G)よりも高い潤滑剤の総量が必要であると判定される場合、より短い補給間隔が適用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
完全に自動化される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
潤滑剤を少なくとも1つの回転軸受に供給するためのシステムであって、
- 少なくとも1つの回転軸受(1)と、
- 潤滑剤供給容器(7)であって、前記容器から出る潤滑剤の流量を制御するための流量制御デバイス(8)が設けられた潤滑剤供給容器(7)と、
- 前記潤滑剤を前記容器から前記少なくとも1つの回転軸受(1)に向けて供給するための少なくとも1つの管(9)と、
- 少なくとも1つの変換器(5)であって、前記変換器が前記回転軸受に接続して装着される場合、超音波信号を測定するのに適している少なくとも1つの変換器(5)と、
- 前記少なくとも1つの変換器及び前記流量制御デバイスに結合された信号処理ユニット(6)であって、
○ 前記軸受の潤滑状態を表すスカラー指標の値を計算及び記憶すること、
○ 請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従い、前記値の評価に応じて前記容器から前記軸受への流れを作動させるか又は停止すること、及び
○ 前記潤滑状態及び/又は軸受状態に関する情報を前記システムのユーザに向けて伝達すること
を行うように構成された信号処理ユニット(6)と、
を含むシステム。
【請求項15】
自動的に動作するように構成される、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械に適用される回転軸受の監視及び潤滑に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受は、殆どの産業用資産を装備し、回転機器の動作に影響を与えることがある損傷の主な原因のままとなっている。軸受の予期しない故障は、生産の望ましくない機能停止を引き起こし、その結果、コスト増加及び計画外のダウン時間の原因である予期しない損失になる。故障の主な根本原因の1つは、潤滑に関連する問題に起因する可動部品の異常な摩耗及び劣化である。軸受は、最小摩擦で力を支持及び伝達しながら、回転部品を案内する機械的接続機能を与える。生産コストと調和して維持しながら、機器の事前に定義された耐用年数を保証するか又は更に延ばすために、振動技法、音響、熱的又は電気的監視技法の発展は、潤滑管理に関する真の問題に現在対処していない。
【0003】
軸受故障の主な原因は、不適切な周期性及び/又は量、汚染などのため、潤滑剤の不足、潤滑剤の過剰な更新である。従って、信頼性を向上させ、故障を制限するために、潤滑の最適形態を維持することが重要である。
【0004】
実証的研究により、潤滑計画を確立する一般式が得られている。現在、軸受を周期的に潤滑する戦略を採用するのが一般的な方法である。軸受の空きスペースの30%を潤滑剤で占めて、軸受の動作を最適化する必要があると一般的に考えられている。製造業者は、周期的に注入される潤滑剤の量及び再潤滑間隔を計算する経験的手法を開発している。
【0005】
例えば、軸受に対するグリース量を計算するために、軸受の幾何学的寸法及び対象とする方法が必要とされる。軸受製造業者SKFは、下記のように規定する。
・軸受の側面からの再潤滑の場合、補給量G=0.005 D B、
・内輪又は外輪の中心における孔を通る再潤滑の場合、G=0.002 D B
ここで、Gは、軸受に補給する場合に追加されるグリース量(グラム)であり、Dは、軸受の外径(ミリメートル)であり、Bは、軸受の幅(ミリメートル)である。この式は、グリース量を計算する最良の方法として広く受け入れられている。
【0006】
必要なグリース量が計算されると、そのグリース量をどの程度の頻度で塗布するかを判定する必要がある。再潤滑間隔をグリース塗布頻度として定義する。計算は、機械の動作状態及び追加軸受情報を必要とする。グリース塗布頻度を判定する好ましい方法は、下記の通りである。
【数1】
ここで、Tは、2つのグリース塗布動作間の時間間隔(時間)であり、Nは、回転速度[rpm(毎分回転数)]であり、dは、軸受の内径(ミリメートル)である。Kは、動作状態の関数である補正係数を示す。Kは、温度、汚染、水分、振動、位置及び軸受設計によってそれぞれ判定される係数の積である。これらの係数の値は、文献で利用できる。典型的には、センサーが必要とされない。
【0007】
各軸受に関する対{G、T}の評価は、潤滑計画を定義することができる。提案される式は、軸受製造業者によって実行された経験的試験の結果である。これらの推定は、製造業者毎に異なり得ることに留意されたい。現場では、幾つか(例えば、数十、数百及び更に数千)の軸受に周期的にグリースを塗布する場合、関連するロジスティックは、間違いの重要な原因と考えられるべきである。これは、例えば、(特許文献1)で提案されている追跡可能性専用の最新の出願によって改善可能である。
【0008】
それにもかかわらず、例えば、上述のような経験式に基づく既存の潤滑方法は、優れた満足度を提供しない。センサーによって与えられる物理的測定、次いで決定ツールを必要とするため、潤滑手順を「無分別に」、即ち潤滑剤の実際の必要性を定量化及び個別化することなく実行することが多い。殆どの場合、おそらく誤った安全上の理由のため、グリース塗布動作をあまりにも早期に実現し、その結果、潤滑過剰として知られている過剰な潤滑になり、回転機器に有害な熱的及び機械的応力を引き起こす。
【0009】
これらの制約を克服するために、自動及び集中再潤滑を採用することが一層多くなっている。自動潤滑器は、規定の時間間隔に基づいて潤滑剤の測定及び/又は規定量を軸受に分配することが多い。この種のデバイスは、位置へのアクセスが難しい場合又は保守要員なしで機器を遠隔で動作させる場合、興味深い利点を提供する。自動潤滑器の幾つかの例が(特許文献2)及び(特許文献3)の文献に挙げられている。しかし、これらのシステムは、供給潤滑剤の結果の十分な検証を含まない。潤滑剤は、障害物、漏れ又はハウジング内の過剰な潤滑剤などのため、転がり界面に達しない可能性がある。酸化、異物による汚染又は単に潤滑剤の経年劣化のため、潤滑剤の物理的及び/又はトライボロジー特性が壊れることもある。更に、異なる動作状態又は装着における2つの同一の軸受は、異なる潤滑剤消費を有する可能性がある。
【0010】
圧力及び/又は温度センサーが搭載された既存の自動潤滑デバイスは、(特許文献4)及び(特許文献5)に記載されている。圧力センサーは、グリースパイプに沿って障害物又は漏れを検出することになっている。上述のように、これらのデバイスは、実際の要件にかかわらず、事前に定義された間隔でグリースの規定量(典型的には一定量)を注入する。振動センサー、タコメーター及び/又は他のセンサーが搭載された他のデバイスは、(特許文献6)、(特許文献7)及び(特許文献8)に記載されており、解析、即ち振動解析から抽出される指示器は、動作中に軸受の潤滑状態を検出することになっている。これらのシステムは、典型的には、低周波数[10Hz、1000Hz]で実行される振動測定に基づく。速度単位(典型的にはRMS速度)で与えられることが多く、この振動測定のスカラー結果は、幾つかの振動モードの組み合わせから構成される。これらの痕跡は、本来、軸受で摩擦に影響を与える痕跡よりも非常に大きいエネルギーであり、従って、痕跡は、潤滑形態の発展及び痕跡の可能な結果を隠す。従って、これらのシステムは、特定の軸受潤滑関連問題を検出できないことが多い。(特許文献9)及び(特許文献10)は、超音波エコー共振方法又は潤滑剤の電気的特性の変動から動作中に潤滑剤膜厚を定量化する他の潤滑器システムを開示している。塗布の大きい変動のため、この手法は、特に、満足できる最適潤滑剤形態及び可能な改造に達するために、値を目標と仮定して複雑な設定、較正手順を必要とし、全潤滑システムのスケーラビリティを制限することがある。
【0011】
例えば、潤滑システムを支援するより多くの成功した潤滑監視システムは、超音波測定に基づいている。携帯超音波潤滑状態モニターは、当技術分野でよく知られており、様々なこのようなデバイスは、本出願人によって開発されている。これらのデバイスは、軸受によって生成される振動又は振動音響応答を測定する回転軸受と接触して装着された場合、例えば20kHz~100kHz(超音波領域)の範囲において、潤滑に適している関連する超音波領域の範囲内で高感度を示す、共振構造体に装着された圧電変換器を含む。共振周波数の励起は、潤滑状態(例えば、転がり摩擦及び欠陥影響)に関する高周波現象の検出を可能にする。ヘテロダイン変換から推測される可聴レンダリングを、ユーザが決定を保存して、潤滑剤の未知量を追加する主観的及び受動的決定ツールとしてリアルタイムで与えることが多い。より客観的であり、再現性を向上させるために、上述の携帯デバイスで実施され、変換器によって生成される信号の処理(即ち取得及びフィルター処理)のために使用される信号処理チェーンも従来技術で周知である。これらの処理方法は、特定の軸受状態に関連する多くのスカラー指標を超音波信号から抽出するように主に構成される。感度を向上させるために、フィルターを変換器応答に従って適用する。最も重要な指標は、デシベル(dB)で表される超音波信号の二乗平均平方根(RMS)である。
【0012】
初期設定及び内蔵電子機器に応じて、規則正しい間隔で配置された、即ち適時に取得されたN個のサンプルx
kから構成される時間信号x(t)の場合、RMS値を下記のように定義する。
【数2】
ここで、1μVは、基準である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/257360号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 704 654 B1号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 806 602 A1号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/145482号明細書
【特許文献5】欧州特許第0 399 323 E1号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第10197044 A1号明細書
【特許文献7】米国特許第9353908号明細書
【特許文献8】仏国特許第3009057号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第102013100988号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0047386号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上述の問題に対する解決策を提供することである。この目的は、添付の特許請求の範囲による方法及びシステムによって達成される。本発明の方法によれば、軸受が動作中である、即ち所与の回転速度で回転している間、潤滑剤は、回転軸受に逐次的に供給される。各ステップにおいて、潤滑剤の規定量の小部分が軸受に供給され、その後、毎回、超音波測定が行われるように、潤滑剤は、連続ステップのシーケンスで供給される。第1の供給ステップ前に第1の超音波測定が実行され、及び第2の供給ステップから開始して、軸受状態を評価し、且つシーケンスを継続するか又はシーケンスを停止するかをこの評価に基づいて決定するために、各測定結果が少なくとも以前の結果と比較される。好ましい実施形態によれば、軸受の潤滑が潤滑成功、潤滑失敗又は潤滑過剰と評価される場合、シーケンスの停止が決定される。換言すれば、本発明は、注入される潤滑剤の量で表される潤滑供給を監視及び自己調節、即ち自己調整する方法を提供する。本発明は、同様に、前記軸受の各々に本発明の方法を適用する、1つ又は複数の軸受を潤滑するためのシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特に、機械の少なくとも1つの回転軸受を、1つ又は幾つかの連続供給ステップで軸受に潤滑剤を逐次的に供給することによって監視及び潤滑する方法であって、
- 規定の潤滑剤量(G)が判定され、
- 第1の供給ステップ前に、軸受に接続して装着された変換器を通して超音波信号が測定され、且つ軸受の(初期)潤滑状態を表すスカラー指標の初期値(M0)が信号から抽出され、及びそれぞれの後続の潤滑剤供給ステップ後に前記測定及び値抽出が繰り返され、各測定は、供給に続く安定化期間後に実行され、安定化期間の持続時間は、それが、供給された潤滑剤が完全に動作可能であることを可能にするようなものであり、
- 連続ステップで供給される潤滑剤の量(gn)は、規定の潤滑剤量(G)よりも少なく、
- スカラー指標の各値(Mn)は、第2の抽出値(M1)で開始して、初期値(M0)に対して評価され、且つ第3の測定値から開始して、以前に抽出された値(M1、M2、...、Mn-1)の1つ又は複数に対して評価され、
- 評価の各々に基づいて、潤滑シーケンスの停止又は継続に関する決定が行われる、方法に関する。
【0016】
好ましくは、潤滑シーケンスの停止又は継続に関する決定は、自動決定である。
【0017】
実施形態によれば、規定の潤滑剤量(G)をデフォルト値として使用して方法を初期化する。更なる実施形態によれば、規定の潤滑剤量(G)は、各ステップ間で実行される超音波測定に応じて連続的に調整することができる。規定の潤滑剤量は、連続測定に応じて増加又は減少させることができる。例えば、時間と共に、回転軸受は、例えば、異常使用、異常完了又はシール若しくはパイプを通る漏れに起因する、超音波測定によって示された異常レベルのために大量の潤滑剤を必要とすることがある。その後、規定の潤滑剤量を増加させて、大量の潤滑剤を回転軸受に供給することを保証し得、潤滑剤が本発明に従って供給される。
【0018】
実施形態によれば、スカラー指標は、信号の二乗平均平方根(RMS)である。
【0019】
実施形態によれば、シーケンスは、RMSの抽出値が、以前に抽出された値よりも大幅に低い場合に継続される。これに関連して、「大幅に低い」又は「大幅に高い」は、好ましくは、RMSが略少なくとも1dBであることを意味する。これに関連して、以前の値と「実質的に同じ」は、好ましくは、RMSが以前の値と比較して-1dB~+1dB(これらの値を含むか又は除く)の範囲内であることを意味する。
【0020】
実施形態によれば、抽出値が所与の数の連続測定及び値抽出にわたって同じままであり、その場合にシーケンスが停止され、及び潤滑状態が成功と見なされない限り、シーケンスは、抽出値が、以前に抽出された値と実質的に同じである場合に継続される。
【0021】
実施形態によれば、シーケンスは、抽出値が初期値(M0)よりも高い場合、潤滑過剰状態を回避するために停止される。シーケンスの第1のステップ中、典型的には潤滑過剰又は潤滑過剰状態が起こる。その結果、潤滑過剰の検出時に少なくとも1つの回転軸受に供給される潤滑剤の量は、典型的には、規定の潤滑剤量(G)よりも少ない。
【0022】
実施形態によれば、シーケンスは、前記以前の値が、前記以前の値に先行する値よりも大幅に低かった後、抽出値が以前の値よりも大幅に高い場合、成功した潤滑状態のために停止される。
【0023】
実施形態によれば、シーケンスは、前記以前の値が、前記以前の値に先行する値と実質的に同じであった後、抽出値が以前の値よりも大幅に高い場合、失敗した潤滑状態のために停止される。
【0024】
実施形態によれば、方法は、第1の潤滑剤供給ステップ後及びスカラー指標値(M1)の第1の抽出前に、安定化時間中に超音波信号の中間測定を更に含み、且つ中間信号からのスカラー指標の値(M’)の抽出を含み、第1の抽出値(M1)が中間抽出値(M’)よりも大幅に高い一方、値M’が初期値(M0)よりも大幅に低い場合、シーケンスは、疑われる軸受故障のために停止される。
【0025】
実施形態によれば、スカラー指標又は追加のスカラー指標は、尖度である。
【0026】
方法は、補給間隔(T)の判定を更に含み得、本発明による方法は、補給間隔以下の間隔で複数回実行される。好ましくは、補給間隔(T)は、最適補給間隔である。
【0027】
実施形態によれば、補給間隔は、本発明による潤滑方法の後続の適用間で更新され、更新は、潤滑方法のステップの結果に基づく。
【0028】
実施形態によれば、潤滑シーケンスが停止される前に、規定量(G)よりも高い潤滑剤の総量が必要であると判定される場合、より短い補給間隔が適用される。
【0029】
実施形態によれば、方法は、完全に自動化される。
【0030】
本発明は、同様に、潤滑剤を少なくとも1つの回転軸受に供給するためのシステムであって、
- 潤滑剤供給容器であって、容器から出る潤滑剤の流量を制御するための流量制御デバイスが設けられた潤滑剤供給容器と、
- 潤滑剤を容器から少なくとも1つの回転軸受に向けて供給するための少なくとも1つの管と、
- 少なくとも1つの変換器であって、変換器が回転軸受に接続して装着される場合、超音波信号を測定するのに適している少なくとも1つの変換器と、
- 少なくとも1つの変換器及び流量制御デバイスに結合された信号処理ユニットであって、
○ 軸受の潤滑状態を表すスカラー指標の値を計算及び記憶すること、
○ 本発明による方法に従い、値の評価に応じて容器から軸受への流れを作動させるか又は停止すること、及び
○ 潤滑状態及び/又は軸受状態に関する情報をシステムのユーザに向けて伝達すること
を行うように構成された信号処理ユニットと、
を含むシステムに関する。
【0031】
有利には、システムは、少なくとも1つの回転軸受を含む。有利には、本発明のシステムは、少なくとも1つの変換器を含むセンサーを含む。好ましくは、変換器は、センサーの感知部を示す。有利には、センサーは、超音波信号を測定するのに適している。好ましくは、センサーは、回転軸受に接続して装着される。
【0032】
有利には、システムは、少なくとも1つの回転軸受への潤滑剤供給を自己調節、即ち自己調整するシステムである。好ましくは、システムは、少なくとも1つの回転軸受への潤滑剤供給を自己調節することができる。有利には、システムは、本発明の方法を実行することができる。
【0033】
有利には、信号処理ユニット(6)は、規定の周波数範囲で超音波信号を取得、フィルター処理及び処理するように更に構成される。好ましくは、軸受の潤滑状態を表すスカラー指標の値を計算及び記憶する前に、超音波信号が取得、フィルター処理及び処理される。
【0034】
好ましくは、容器から軸受への流量は、超音波値に応じて潤滑剤の連続量(gn)に調節される。
【0035】
好ましくは、伝達される情報は、潤滑状態及び/又は軸受状態のデータ及び状態を含む。好ましくは、情報は、ソフトウェアシステム及び/又はシステムのユーザに伝達される。
【0036】
本発明のシステムは、自動化決定の追跡可能性を維持しながら、人間の介助なしに動作することができる。関連スカラー指標の使用により、人間の意思決定を置き換えることができる。更に、関連スカラー指標の使用により、システムは、少なくとも1つの回転軸受に供給される潤滑剤の量を適切に自己調節することができる。そのために、システムは、潤滑剤の流量制御と超音波結果との間の双方向及び対話型交換を含む調節ループを含む。
【0037】
実施形態によれば、システムは、自動的に動作するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1a】潤滑剤を軸受に供給し、軸受の潤滑状態の超音波測定を実行するためのシステムを例示する。
【
図1b】潤滑剤を軸受に供給し、軸受の潤滑状態の超音波測定を実行するためのシステムを例示する。
【
図2】軸受の異なる潤滑領域を表す非共形接触に関するストライベック曲線の形状の一般的画像である。
【
図3】前記方法の実施形態による本発明の方法の初期シーケンスのフローチャートである。
【
図4a】
図3のフローチャートによる可能なシーケンスにおいてdBμVで変換される測定RMS値の例である。
【
図4b】
図3のフローチャートによる可能なシーケンスにおいてdBμVで変換される測定RMS値の例である。
【
図4c】
図3のフローチャートによる可能なシーケンスにおいてdBμVで変換される測定RMS値の例である。
【
図4d】
図3のフローチャートによる可能なシーケンスにおいてdBμVで変換される測定RMS値の例である。
【
図5a】
図3のチャートに続く後続ステップのフローチャートである。
【
図5b】
図3のチャートに続く後続ステップのフローチャートである。
【
図6a】
図5aのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図6b】
図5aのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図6c】
図5aのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図6d】
図5aのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図6e】
図5aのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図7a】
図5bのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図7b】
図5bのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図7c】
図5bのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図7d】
図5bのフローチャートによる可能なシーケンスにおける測定RMS値の例である。
【
図8a】本発明によって適用できる方法ステップのシーケンスにおけるn番目のステップの一般的なフローチャートである。
【
図8b】本発明によって適用できる方法ステップのシーケンスにおけるn番目のステップの一般的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、1つ又は複数の回転軸受を含む機械の有効使用期間中に繰り返し実行され、方法は、前記軸受の各々に適用される。所与の速度で回転する所与の寸法の軸受の場合、既存の方法に従い、好ましくは上述の式(1)により、必要な潤滑剤補給の間隔Tを計算し得る。更に、各補給で供給される潤滑剤の規定量Gをそれ自体知られている上述の方法で計算する。しかし、全量Gを供給する代わりに、本発明の方法は、軸受状態に対する各小部分の影響を判定するように構成される連続超音波測定によって監視されたGの小部分の逐次供給を行う。従って、本発明の方法は、潤滑剤の規定量(G)から潤滑剤の実際の所要量の自己調整を可能にする。
【0040】
好ましくは、本発明の方法は、
図1a及び
図1bに例示のような本発明による「スマート」自動潤滑システムによって自動化方法で実行される。
図1aは、1つの機械3の回転軸2を支持する回転軸受1を概略的に例示する。システム4は、潤滑剤(例えば、所与の粘度のグリース)を軸受に供給し、超音波測定を実行して評価するように構成される。
図1bは、システム4の構成要素(超音波測定を実行するのに適している圧電変換器5、信号処理ユニット6及び供給管9を介して、容器7からの流量及び軸受への流量を調節する流量制御機構8が設けられた潤滑剤供給容器7)を示す。信号処理ユニット6は、変換器5によって生成された超音波信号から、軸受の潤滑状態を表す1つ又は複数のスカラー指標(例えば、RMS値)を抽出するように構成される。処理ユニット6に存在する電子信号処理構成要素は、例えば、従来技術の一部である携帯超音波潤滑モニターに実装されるような既知の設計に従い得る。信号処理ユニット6は、測定値を評価し、本発明の方法による供給ステップのシーケンスを制御するように更に構成される。ユニット6は、例えば、画面(図示せず)上にメッセージを示すことにより、軸受及び/又は潤滑状態に関するデータをシステムのユーザに伝達するように更に構成される。本発明によるシステムは、機械又は幾つかの機械上の異なる位置に置かれた幾つかの軸受を潤滑するように構成され得る。単一処理ユニットは、複数の軸受の潤滑状態を監視し、単一の容器から複数の軸受位置への潤滑剤流量を制御するように構成され得る。流量制御機構は、潤滑剤の流れを軸受位置に向けるポンプを含み得る。システムは、複数の変換器を含み得、変換器の一部又は全部を軸受位置に永続的に装着し得る。
【0041】
与えられた周期性で潤滑剤の目標値を必要とする先行技術の方法とは対照的に、本発明の方法は、アルゴリズム収束を使用する。アルゴリズム収束は、自己調節ループによって段階的に実行される補給処理をもたらす。その結果、回転軸受に供給される潤滑剤の量は、直接測定によって設定される潤滑剤の最適量である一方、先行技術の方法は、間接測定(例えば、潤滑膜の厚さ)又は人間の決定に依存することが多い。
【0042】
本発明による潤滑剤供給ステップのシーケンスは、トライボロジーの分野で周知のストライベック曲線に基づく決定木アルゴリズムと均等である。
図2は、非共形接触に関するストライベック曲線の全体的な外観の概略図を例示する。共形接触に関するストライベック曲線は、同様の全体的な形状を有し、本発明は、共形接触又は非共形接触が生じる軸受に適用できる。曲線は、無次元潤滑関連スカラー指標(即ちより多くの潤滑剤が接触面、好ましくは軸受内の接触面間の界面に存在する場合に増加するスカラー指標)に応じて摩擦係数を例示する。これは、例えば、軸受内の接触面間の潤滑剤膜厚と接触面の粗さとの間の比を表す特定の無次元膜厚(ラムダ)であり得る。摩擦係数は、例えば、軸受の内輪及び外輪に対する玉軸受の球の転がり面間の軸受に影響を与える摩擦力の関数である。ストライベック曲線は、
図2における符号I、II、III及びIVで示す4つの動作領域の外観を特徴とする。
I:境界潤滑:固体表面は、直接接触し、荷重は、表面の凹凸(金属-金属接触)によって主に支持され、高い摩擦を引き起こす。この領域は、非常に潤滑の不足している軸受について典型的である。
II:混合潤滑:幾つかの凹凸接触が生じ、荷重は、凹凸及び粘性潤滑剤の両方によって支持され、摩擦の重大な変動を引き起こす。この領域は、潤滑不足軸受に潤滑剤を供給する場合、挙動の変化を特徴付け、この潤滑剤を追加するにつれて(曲線に沿って左から右に進む)、粗さは、潤滑剤によって徐々に覆われ、潤滑剤の膜厚が増加するにつれて、摩擦係数は、急速に減少する。
III:最適形態を特徴付ける弾性流体力学的(EHD)薄膜による流体潤滑
IV:流体力学的形態(完全膜HD)による流体潤滑
領域III及びIVは、無視できる凹凸接触を特徴とし、荷重は、潤滑剤の揚力、圧力、物理的特性などのために潤滑剤によって主に支持される。摩擦係数は、EHD領域で低いが、HD領域における膜厚対粗さの比に応じて徐々に増加する。EHD領域は、軸受の理想的な動作形態と考えられる。
図2に示すグラフは、ストライベック曲線の例に過ぎない。詳細は、各軸受について異なり得る。例えば、EHD領域及びHD領域における摩擦係数の変化率は、
図2に示す曲線と異なり得る。
【0043】
再潤滑間隔Tは、上述の段落に記載のように計算され、軸受の温度、水分、汚染などに左右される経験的に判定された要因に左右される。同様に、再補給量Gも経験式に基づいて判定される。それにもかかわらず、軸受の実際の潤滑剤要件は、これらの2つの経験値T及びGにより、決して全状況で正確に推定することができず、時間的に変化する要因又は軸受を設置する機械の特定の構造上の詳細について典型的な要因の影響を受けることがある。このため、状況によっては、間隔TでのGの供給は、軸受の潤滑不足若しくは潤滑過剰を引き起こすことがあるか、又は動作不良軸受の検出を妨げることがある。
【0044】
本発明は、Gの全量を同時に供給するのではなく、潤滑剤を段階的に供給する、好ましくは潤滑剤の連続追加の効果を検証する超音波測定を伴って潤滑剤の量を段階的に自己調整することによってこの問題に応える。多くの超音波ベースのスカラー(特にRMS)は、ストライベック曲線によって表されるように、軸受の摩擦挙動を表す。従って、本発明者らは、正確に動作すると仮定され、潤滑剤の補給を必要とする軸受の場合、EHD領域又はHD領域の下部領域で軸受が動作する点に達するまで、ストライベック曲線を左から右にたどるように本発明の方法が潤滑剤を供給できることを見出している。更に、方法の特定の実施形態は、ストライベック曲線から許容できない方法で外れる挙動を検出することにより、軸受の疑われる動作不良、軸受の潤滑失敗又は潤滑過剰を検出することができる。本発明の方法は、方法を適用する軸受に関するストライベック曲線の正確な知識を必要としないが、任意のストライベック曲線で観測可能な一般的な傾向(例えば、領域IIの下降傾向後に領域III及びIVの上昇傾向が続く)に基づく決定論理を適用する。潤滑過剰を検出した場合、規定の潤滑剤量(G)を自動的に調整して(ここでは減少させて)、次のシーケンスで潤滑過剰を回避することができる。代わりに又は更に、潤滑過剰を検出した場合、初期時間間隔(T)を自動的に長くすることができる。
【0045】
本発明による決定木アルゴリズムの好ましい実施形態について、詳細に後述する。しかし、下記の説明は、本特許出願の範囲を限定しない。
図3は、
図1a及び
図1bに示す設備を用いて回転軸受で実行される、好ましい実施形態による方法の第1のステップを表すフローチャートを示す。対象の軸受について、パラメータT及びGを判定する。シーケンスは、軸受への潤滑剤の以前の補給からT秒以下で開始する。シーケンスは、最後の補給からT秒よりも早く、例えば0.5T又は0.7Tなどの比で開始され得る。方法を適用する初期設定を規定する場合にこれを決定し得る。本発明に従って適用されるシーケンスの結果に従い、Tの比を軸受の寿命中に変更し得る。更に、方法を適用する初期設定を調整するために、システムのデータ記憶装置を使用し得る。
【0046】
シーケンスは、電圧単位で測定され、dB(μV、ここで、基準電圧V0は、1μVである)で表されるRMS値M0を与える初期超音波測定で開始する。M0は、処理ユニット6に組み込まれるか又は結合されたメモリに記憶される。次に、0.25Gに等しい潤滑剤の量g1を、制御方法で流量制御機構8を開始することによって供給管9を介して軸受に供給する。安定化時間は、好ましくは、経験的及び科学的データに基づいて判定され、その結果、この安定化時間が経過した後、追加潤滑剤は、軸受内で完全に動作可能であると想定される。安定化時間は、下記の表に従い、[mm/min]において、
【数3】
(ここで、d及びDは、軸受の内径及び外径(mm)であり、ωは、軸受の回転速度(rpm)である)
として定義される軸受速度パラメータに応じて計算され得る。
【0047】
【0048】
安定化時間中、即ち安定化動作領域に達する前に、中間RMS値M’を測定する。値M’は、好ましくは、安定化時間全体にわたって短い間隔(例えば、250ms)でリフレッシュされるRMS値を計算することによって判定される。安定化時間の最後に、取得RMS値の最小値は、メモリに保持され、値M’として決定木アルゴリズムで使用される。
【0049】
次に、安定化時間が経過したとき又はその直後に、g1の追加に続いて安定化軸受の潤滑状態を表す更なるRMS値M1を測定する。次に、下記の差分スカラーを計算して記憶する。
Δ1=M0-M1
Δ’=M0-M’
【0050】
次に、下記の評価を
図3のフローチャートに従って行う。
【0051】
Δ’>3&Δ’-Δ1>3の場合、軸受状態を動作不良と評価する。これは、M’がM0及びM1よりも3dBを超えて低い場合に対応し、即ち、RMS値は、安定化間隔中、3dBを超えて減少し、3dBを超えて再度増加する。この時点でシーケンスを停止し、軸受を検査する。
【0052】
Δ1<-1の場合、軸受状態を「潤滑過剰」と評価する。M1は、M0よりも1dBを超えて高い。正常なストライベック傾向がより厚い潤滑膜に応じて下降するとき、上昇傾向は、追加のグリースを必要とせず、処理を停止することを意味し、好ましくは後に軸受を検査する。
【0053】
軸受状態を「潤滑過剰」と評価しない場合、次の検証ステップは、条件「-1≦Δ1<1」を満たすか否かである。条件「-1≦Δ1<1」を満たさない場合、これは、Δ1≧1、即ちM1がM0よりも少なくとも1dB低いことを意味する。この場合、潤滑状態が改善していると考えられ、潤滑剤の量を更に追加することができると考えられる。条件「-1≦Δ1<1」を満たす場合、これは、M1がM0に対して-1dB又は+1dBの範囲内にある、即ち潤滑状態があまり変化していないことを意味する。状態「変化なし」を登録し、更に、シーケンスは、潤滑剤の更なる追加に進む。
【0054】
図3のフローチャートを再度参照する。g1供給後の結果「潤滑改善」又は「変化なし」に続いて、0.15Gに等しい量g2を軸受に供給する。供給g2に続いて、安定化間隔を経過させることができ、更なる超音波測定値M2を取得して記憶し、その後、下記のように評価する。
【0055】
Δ
2(=M0-M2)<0の場合、軸受状態を「潤滑過剰」と評価する。換言すれば、RMS値M2が初期RMS値M0よりも高い場合、M0よりも1dBを超えて低いか又はM0に略等しい第1の値M1に続いて、軸受を潤滑過剰と評価し、シーケンスを停止し、好ましくは、その後、軸受検査が行われる。このシーケンスを
図4aに例示する。
【0056】
軸受が潤滑過剰でない場合、次の条件「Δ
2-Δ
1<-1」を検証する。この条件を満たす場合、潤滑状態を「潤滑成功」と評価し、シーケンスを停止する。換言すれば、M1がM0に略等しいか又はM0よりも少なくとも1dB低かった後、M2(M0よりも低い)がM1よりも1dBを超えて高い場合、潤滑状態は、十分であると考えられる。状態「潤滑成功」を登録し、シーケンスを停止する。このシーケンスを
図4bに例示する。
【0057】
「Δ
2-Δ
1<-1」を満たさない場合、条件「-1≦Δ
2-Δ
1<1」を検証する。条件「-1≦Δ
2-Δ
1<1」を満たす、即ちM2がM1に等しいか又はM1から上方若しくは下方に1dB以内である場合、状態を「変化なし」と再度表し、更なる供給ステップを実行する。このシーケンスを
図4cに例示する。-1≦Δ
2-Δ
1<1を満たさない、即ちM2がM1よりも1dBを超えて低い場合、潤滑状態を「改善」と評価し、シーケンスを継続し、更なる供給g3(=0.1G)及び取得M3に進む。このシーケンスを
図4dに例示する。g3から開始する潤滑剤のその後の供給後、評価は、後述のように、事前ステップの結果によって異なる。例えば、状態「変化なし」が3つ連続する場合、手順を停止することになる。
【0058】
図5a及び
図5bは、シーケンスの次のステップを例示する。量g3=0.1Gを供給し、安定化時間が経過することができる。次に、更なるRMS値M3を取得し、ここで、評価は、事前ステップの結果によって異なる。
図5aは、g2に続いて「変化なし」の状態後にg3を追加する場合に適用できるフローチャートを例示する。
【0059】
まず、条件「Δ3(=M0-M3)<0」、即ちM3がM0よりも高いかを評価する。Δ3<0を満たす場合、潤滑状態を「潤滑過剰」と評価し、シーケンスを停止し、好ましくは、その後、軸受の検査が行われる。このシーケンスの例を
図6aに例示する。Δ3<0を満たさない場合、条件「Δ3-Δ2<-1」、即ちM3がM2よりも1dBを超えて高いかに関して更なる検証を行う。「Δ3-Δ2<-1」を満たす、即ちg2後の「変化なし」の直後、g3後に1dBを超える増加がある場合、軸受の潤滑状態を「潤滑失敗」と評価する。このシーケンスの例を
図6bに例示する。シーケンスを停止し、軸受を検査する。定性的に、これは、M3がM0よりも依然として低い一方、第2の供給g2後の「変化なし」に続いて第3の供給後に1dBを超える増加が異常な軸受挙動を示すことを意味する。RMSの増加は、軸受が、この時点において、ストライベック曲線のHD領域IVに非常に遠く離れて動作している可能性があることを意味する。
【0060】
「Δ3-Δ2<-1」が真でない場合、条件「Δ3-Δ1<-1.5」、即ちM3がM0よりも低く、且つM2よりも1dB未満だけ高く、M1よりも1.5dbを超えて高いかに関して追加の検証を行う。「Δ3-Δ1<-1.5」を満たす場合、潤滑状態を「失敗」と評価し、シーケンスを停止する。換言すれば、g2後の「変化なし」後、M1と比較して1.5dBを超える増加がある場合、潤滑状態は、「失敗」である。このシーケンスの例を
図6cに示す。
【0061】
「Δ3-Δ1<-1.5」が真でない、即ちM3がM1よりも1.5dB以下だけ高く、またM3がM2よりも1dB以下だけ高い場合、条件「-1≦Δ3-Δ2<1」を評価する。この条件「-1≦Δ3-Δ2<1」が真である、即ちM3がM2に等しいか又はM2から上方若しくは下方に1dB以内である場合、潤滑状態を「変化なし」と評価する。しかし、この第3の段階では、追加の検証、即ちこの「変化なし」が、評価されている第3の連続的な「変化なし」状態であるか否かという検証が行われる。「-1≦Δ3-Δ2<1」を満たす場合、軸受状態は、安定しており、許容できることが分かり、「潤滑成功」を記録し、シーケンスを停止する。このシーケンスの例を
図6dに示す。この時点において、軸受は、EHD領域に入っており、このEHD領域は、摩擦係数の非常に低い変化率を示すと想定され得る。「-1≦Δ3-Δ2<1」を満たさない場合、即ちM3が、g2後の「変化なし」に続いてM2よりも1dBを超えて低い場合、潤滑状態を「改善」と評価し、更なる量g4を供給する。このシーケンスを
図6eに例示する。
【0062】
図5bは、「潤滑改善」の状態後にg3を追加する場合に適用できるフローチャートを例示する。
【0063】
まず、
図5aのチャートのように、条件「Δ3(=M0-M3)<0」、即ちM3がM0よりも高いかを評価する。Δ3<0を満たす場合、軸受は、潤滑過剰と考えられ、このシーケンスを停止し、好ましくは、その後、軸受の検査が行われる。このシーケンスを
図7aに例示する。Δ3<0を満たさない場合、条件「Δ3-Δ2<-1」、即ちM3がM2よりも1dBを超えて高いかに関して更なる検証を行う。「Δ3-Δ2<-1」を満たす、即ちg2後の「潤滑改善」(M1よりも1dBを超えて低いM2)後、1dBを超える増加(M3は、M2よりも1dBを超えて高い)がある場合、潤滑状態を「潤滑成功」と評価し、シーケンスを停止する。このシーケンスの例を
図7bに例示する。定性的に、これは、軸受が、事前ステップで下降傾向に続く上昇傾向によって判定されるようなEHD領域に入っていることを意味する。
【0064】
「Δ3-Δ2<-1」が真でない、即ちM3がM2よりも1dB以下だけ高い場合、条件「-1≦Δ3-Δ2<1」を評価する。この条件「-1≦Δ3-Δ2<1」が真である、即ちM3がM2に等しいか又はM2から上方若しくは下方に1dB以内である場合、潤滑状態を「変化なし」と評価する。事前条件が「潤滑改善」であったという事実を考えると、「変化なし」は、第3の連続的な「変化なし」状態ではない。この場合、更なる供給ステップg4を実行する。このシーケンスの例を
図7cに示す。「-1≦Δ3-Δ2<1」を満たさない場合、即ちM3が、g2後の「潤滑改善」に続いてM2よりも1dBを超えて低い場合、潤滑状態を「改善」と評価し、更なる量g4を供給する。このシーケンスの例を
図7dに示す。
【0065】
図5a及び
図5bに示すシーケンスは、一般化され得、その結果、n≧3の場合、測定値Mn-1の結果を考慮して測定値Mnの評価を説明する、
図8a及び
図8bに示すフローチャートが得られる。
【0066】
決定木アルゴリズムは、常に、所与の最終状態(「潤滑成功」、「潤滑失敗」又は「潤滑過剰」)に収束する。
図4a~
図4d、
図6a~
図6e及び
図7a~
図7dにおけるグラフを見ると、n≧3の場合、潤滑成功は、3つの連続供給を介したRMSの安定化又はRMSの先行する大幅な減少に続くRMSの大幅な増加に関連することが明らかである。これらの状態は、軸受がEHD領域にある場合又は混合潤滑領域でRMSの下降傾向後に軸受がEHD領域に入る場合、それぞれストライベック曲線を反映する。潤滑失敗を示すグラフは、軸受の最適動作に望ましくないHD領域に軸受が入っていることを示す、RMSの先行する安定化後のRMSの増加に関連する。
【0067】
これにより、潤滑剤の段階的供給は、Gの全量の供給と比較して非常により詳細な方法で軸受状態を評価することができ、その結果、潤滑失敗をより効果的に検出することができる。
【0068】
記載のように、上述のアルゴリズムは、可能な決定木アルゴリズムの1つの例に過ぎず、多くの詳細は、上述のシーケンスに関して異なり得る。例えば、小部分g1、g2などは、量Gのより高い若しくはより低い百分率を表し得るか、又は供給量は、nに応じて、事前に定義されたように異なり得る。
【0069】
全ての検証ステップを含める必要があるわけではない。例えば、Δn-Δn-2<-1.5の追加検証を省略することができる。更に、中間測定値M’を省略することができる。
【0070】
シーケンス又は残りのシーケンスを開始する前に、M0及び好ましくは更にM1の絶対レベルの追加検証を実行し得る。M0又はM1が、事前に定義された絶対レベルの周りの特定の安全領域の範囲外にある場合、警報を発することができる。
【0071】
g1=0.25G、g2=0.15G、gn=0.1G(n≧3の場合)の潤滑剤量は、例えば、転動体軸受に供給されるグリースに対して殆どの潤滑剤に適用できる好ましいシーケンスを表す。しかし、本発明の範囲内でGの他の比を適用し得る。殆どの場合、方法は、供給量の合計がGに達する前に、「潤滑成功」又は「失敗/潤滑過剰」状態に収束する。しかし、Gの推定が非常に控えめであることを示す、供給量の合計がGを超えることもできる。実施形態によれば、方法がn≧9で収束していないと判定される場合、補給間隔Tを短くする。
【0072】
RMSの代わりに又はRMSに加えて、他の潤滑関連スカラー指標(例えば、下記のように定義されるx
K(尖度))を本発明の方法で使用して、決定を強化することができる。
【数4】
【0073】
各ステップでこのスカラー指標を評価する正確な基準は、RMSの評価と比較して異なり得る。
【0074】
上述のように、本発明の方法は、本発明によるスマート自動化潤滑システムによって完全自動化方法で適用されるのに特に適している。これは、
図2に例示のようなシステムであり得、処理ユニット6は、方法のステップを自動的に実行する、即ち決定木アルゴリズムを実行し、「潤滑過剰」、「潤滑成功」又は「潤滑失敗」の状態に達するまで逐次的方法で補給を実行するように構成される。第1及び第3の場合、システムは、検査又は修理される軸受に関する信号又はメッセージを生成し得る。システムは、例えば、T秒以下で区切られた事前に定義された間隔で複数の補給を実行するように構成される。システムは、決定木アルゴリズムの結果に基づいてT間隔を自動的に再計算し得る。システムは、複数の軸受と永続的に接触して装着される複数の変換器を含み得る。
【0075】
本発明は、図面及び上述の本明細書で詳細に図示及び説明されているが、このような図示及び説明は、図示又は例示であり、限定的ではないと見なされるべきである。開示の実施形態に対する他の変型形態は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求される本発明を実施する際に当業者によって理解及び達成され得る。特許請求の範囲において、用語「含む」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを使用して利益を得ることができないことを意味しない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【国際調査報告】