(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(54)【発明の名称】劇症肝障害を処置及び/又は防止するための肝幹細胞様細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/074 20100101AFI20230414BHJP
A01K 67/027 20060101ALI20230414BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230414BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20230414BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
C12N5/074 ZNA
A01K67/027
C12Q1/02
A61K35/407
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555111
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021056574
(87)【国際公開番号】W WO2021180984
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522362361
【氏名又は名称】ゴーリヴァー・セラピューティクス
(71)【出願人】
【識別番号】507421289
【氏名又は名称】ナント・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】NANTES UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トゥアン・フイ・グエン
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリーク・フーリエ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・リスパル
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・デルボス
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QX01
4B065AA90X
4B065BA22
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
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4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA75
(57)【要約】
本発明は、劇症肝障害の処置及び防止のための、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団及びこれらの治療的使用に関する。本発明に従う肝幹細胞様細胞は、多能性幹細胞から、安全に、かつ、再現可能な形で作出されうる。加えて、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、アルブミン発現マーカーを欠いている(ALB-)ので、生理学的に成熟した肝細胞の表現型を提示しないが、なお、急性不全を伴う罹患肝臓に移植され、罹患肝臓をレスキューし、肝再生を促進するであろう。更に、全てが、高品質かつ高収量の作製を結果としてもたらす、本発明に従う肝幹細胞様細胞の、多様な調製プロトコールも実施されうる。最後に、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、凍結保存が可能であり、また、スフェロイド粒子としても調製されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5%の、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、特に、分離細胞集団、又はこれらの抽出物。
【請求項2】
肝幹細胞様細胞が、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び/又は肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)、好ましくは、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)を更に発現している、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項3】
肝幹細胞様細胞が、凍結保存されている、請求項1又は2に記載の細胞集団。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団又はこれらの抽出物を含む粒子、特に、スフェロイド。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団又はこれらの抽出物を含む懸濁液。
【請求項6】
(i)請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は少なくとも1つの、請求項4に記載の粒子、及び/又は請求項5に記載の懸濁液と、(ii)薬学的に許容される媒体とを含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は少なくとも1つの、請求項4に記載の粒子、及び/又は請求項5に記載の懸濁液、及び/又は請求項6に記載の医薬組成物を含む医療機器。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む異種細胞集団又はこれらの抽出物を含む非ヒト動物モデル。
【請求項9】
医薬としての使用のための、請求項1から3のいずれか一項に規定の肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は請求項4に記載の粒子、又は請求項5に記載の懸濁液、又は請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
劇症肝障害の防止及び/又は処置における使用のための、請求項1から3のいずれか一項に規定の肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は請求項4に記載の粒子、又は請求項5に記載の懸濁液、又は請求項6に記載の医薬組成物、又は請求項7に記載の医療機器。
【請求項11】
劇症肝障害が、急性肝不全(ALF)又はACLF(acute chronic liver failure)である、請求項10に規定の使用のための、請求項1から3のいずれか一項に規定の肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は請求項4に記載の粒子、又は請求項5に記載の懸濁液、又は請求項6に記載の医薬組成物、又は請求項7に記載の医療機器。
【請求項12】
ACLFが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);アルコール性肝炎;ウイルス誘導性肝炎;原因不明肝疾患;肝細胞癌及び胆管癌等の悪性肝疾患;自己免疫性肝炎、バッド-キアリ症候群等の血管性肝疾患;胆汁鬱滞性肝疾患;並びにウィルソン病及び尿素サイクル異常症等の遺伝性代謝性肝疾患からなる群から選択される肝疾患と関連する、請求項11に規定の使用のための、請求項1から3のいずれか一項に規定の肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は請求項4に記載の粒子、又は請求項5に記載の懸濁液、又は請求項6に記載の医薬組成物、又は請求項7に記載の医療機器。
【請求項13】
請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む凍結保存細胞集団又はこれらの抽出物を調製するための、請求項4に規定の粒子の使用。
【請求項14】
薬物をスクリーニングするためのin vitro法であって、
a)少なくとも1つの請求項1から3のいずれか一項に規定の、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は請求項4に記載の粒子、及び/又は請求項5に記載の懸濁液を用意する工程と;
b)工程a)による、前記少なくとも1つの細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は前記細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は前記粒子、及び/又は前記懸濁液を、薬物候補物質と接触させる工程と;
c)1つ又は複数の生物学的パラメータを測定し、任意選択で、前記1つ又は複数の生物学的パラメータを、1つ又は複数の参照パラメータと比較する工程と;
d)薬物候補物質が、治療目的及び/又は診断目的の薬物候補物質であるのかどうかを決定する工程と
を含むin vitro法。
【請求項15】
劇症肝障害を処置及び/又は防止するためのキットであって、
a)請求項1から3のいずれか一項に規定の、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は請求項1から3のいずれか一項に記載の、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は請求項4に記載の粒子、又は請求項5に記載の懸濁液、又は請求項7に記載の医薬組成物と;
b)前記細胞若しくはこれらの抽出物、集団若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液若しくは医薬組成物を投与する手段と
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、並びに劇症肝障害を処置及び/又は防止するためのそれらの治療的使用に関する。特に、マーカーであるALBを発現せず(ALB-)、マーカーであるAFPを発現する(AFP+)肝幹細胞様細胞であって、例えば、多能性幹細胞(pSC)から得られる肝幹細胞様細胞は、急性肝不全(ALF)又はACLF(acute chronic liver failure)等の劇症肝障害を有する肝臓への注入が可能であり、肝臓の再生を促進しうる。
【背景技術】
【0002】
肝障害は、世界中で、数百万人の人々に影響を及ぼしている。肝障害の中で、劇症肝障害は、肝生理学的機能の、急速かつ重度の不全により特徴づけられ、急性肝不全(ALF)、及びACLF(acute chronic liver failure)等の障害を包含する。ACLFは、それ自体、例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝炎、ウイルス誘導性肝炎、原因不明肝疾患、肝細胞癌及び胆管癌等の悪性肝疾患、癌腫、自己免疫性肝炎、バッド-キアリ症候群等の血管性肝疾患、胆汁鬱滞性肝疾患、ウィルソン病及び尿素サイクル異常症等の遺伝性代謝性肝疾患等の慢性肝疾患と関連する進行性肝損傷の帰結である、肝不全の急性エピソードにより特徴づけられる肝疾患を包含する。言い換えれば、劇症肝障害は、Model for End-stage Liver Disease(MELD)(Martinら、2014)等、臓器割当てのための評定システムを使用する場合に、肝移植のために優先される、任意の疾患を指す。
【0003】
肝移植は、現在のところ、劇症肝障害及び/又は重度の代謝性肝障害を伴う患者を処置するためのゴールドスタンダードと考えられている。西欧諸国では、数万人の患者が、肝移植のための待機者リストに掲載されている。欧州では、1968~2015年において、約130,000例の肝移植が実施された(European Liver Transplant Registry)。しかし、患者のうちの10~20%は、肝移植のための待機者リストに掲載されながら、臓器ドナー不足のために、移植を施されなかったことが原因で死亡している。
【0004】
ALF及びACLFは、短期的な致死性疾患であり、肝の急速な悪化が、ALFを伴わないか、又は既知の既存の肝障害であるACLFを伴う個体における、意識状態の変更及び凝固障害を結果としてもたらす、稀な状態である。ALF及びACLFの、主要な臨床的徴候は、軽度の昏迷として始まり、昏睡から、肝臓外多臓器不全へと進行しうる、皮膚及び眼球の黄疸、腹痛、悪心、嘔吐、衰弱、及び意識状態の変化の急速な発生である。ALF及びACLFの生化学的顕在化は、通例、生化学的値の異常及び肝凝固障害を含む。臨床的慣行に従い、かつ、上記で言及された通り、ALF及びACLFの重度形態のための、現行の第一選択処置は、同所肝移植(OLT)である。
【0005】
しかし、OLTは、ドナー不足のために、厳しく限定されている。現在のところ、肝細胞移植(HT)は、OLTの代替法と考えられるようになり、患者における肝機能を改善することが見出されている。HTは、技法の安全性及び初期段階の有効性を示すことが裏付けられ、世界中に公表されている(Dhawanら、2010;Hanselら、2014;Dhawanら、2019)。しかし、大量の機能的肝細胞を得、しかも、再現可能な品質を伴って得ることは、困難である。加えて、HTを受ける患者はまた、移植拒絶を限定するように、免疫抑制剤と共に処置される場合もある。
【0006】
したがって、in vitroにおいて増幅され、その後、肝細胞へと分化させられる、幹細胞を含む新たな細胞型の潜在的可能性について探索することが、火急に必要とされている。例示的に述べると、確定内胚葉幹細胞、ヒト胚性幹細胞(hESC)、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)、及び間葉系幹細胞等の複能性幹細胞が、肝細胞又は肝細胞様細胞(HCL)を作出するのに使用されている(Parejaら、2017)。
【0007】
例えば、WO2016043666は、肝細胞様細胞(HLC)を得るために、確定内胚葉幹細胞を分化させる方法について開示した。
【0008】
実際、ヒト胚性幹細胞(hESC)は、理論的には、肝再生のための、機能的肝細胞の、非限定的供給源を表す。中間細胞は、未成熟の遺伝子発現プロファイルを提示しうるが、ヒト胚性幹細胞(hESC)は、in vitroにおいて、肝細胞様細胞(HLC)へと、効率的に分化させうる(Cameronら、2015を参照されたい)。これらのHLCは、成人肝臓において見出される細胞と、機能及び遺伝子発現プロファイルのうちの多くを共有する(Payneら、2011)。研究者らは、マウスのアセトアミノフェン誘導性急性肝不全モデルにおいて、in vivoにおいて、新生児HLCが、腫瘍を誘導せずに、再集団化し、罹患肝臓を再生することが可能であることを示しえた。これらのデータは、hESC由来のHLCが、肝疾患を処置するために、肝移植の代替となる有効な処置でありうることの概念実証となっている(Tolosaら、2015)。
【0009】
同じ精神において、Roelandtら(2010)は、最新技術に、分化培養培地により、hESCに由来する肝細胞をもたらした。確定内胚葉細胞の、肝細胞への分化は、生理学的シグナル伝達経路の、多様な活性化因子及び/又は阻害因子の、一連の精密な誘導の他、多様な増殖因子の存在を伴うプロトコールの実行を必要とする。肝細胞様細胞は、20日以内に作製され、これらの細胞は、アルブミン及びCyp450等、成熟肝細胞に固有のマーカーを発現する細胞であるので、それらの解毒能により更に特徴づけられる。Sillerら(2015)は、増殖因子非含有培養培地中で、多能性幹細胞を、肝細胞へと分化させるための方法を更に提示した。
【0010】
更に、WO2019055345は、再生医療のために、肝細胞様細胞(HLC)を、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)から作出するための方法について開示した。HLCは、マーカーであるアルブミンを発現し(ALB+)、劇症肝不全を伴う患者を処置するために使用されうるので、アンモニウム代謝が可能であり、解毒特性を有する。
【0011】
加えて、Takayamaら(2013)は、最新技術に、hESC由来肝線維芽細胞様細胞、及びhiPSC由来肝線維芽細胞様細胞(HBC)をもたらした。Takayamaらは、初期継代HBC(第0代;ALB-細胞)、及び後期継代HBC(第10代;ALB+細胞)のいずれも、肝臓に移植されうることを示した。移植後における、hESC由来第0代HBC又は第10代HBCの肝細胞機能性は、レシピエントマウスにおける分泌ヒトALBレベルを測定することにより評価された。Takayamaらは、第10代HBCを移植したところ、極めて弱いALB発現を結果としてもたらすにとどまる第0代HBCと比較して、ALB発現レベルが上昇することを観察した。まとめると、結果は、ALBと関連する解毒特性が、最も高度であるので、肝移植のために、第10代HBC(ALB+細胞)を利用すべきことを示唆する。これらの観察に従い、Takayamaら(2017)は、その後、肝臓治療における細胞移植のための、第一選択細胞として具体的に使用された、後期継代HBC(第10代)を使用する研究を公表した。
【0012】
肝疾患の処置のために、ヒト胎児肝細胞移植もまた、広く評価されている(例えば、Pietrosiら、2015;Raoら、2008;Zhengら、2006;Jochheimら、2004を参照されたい)。Roelandtらにより開示された肝細胞と同様に、これらの研究により開示されたヒト胎児肝細胞も、成熟肝細胞のマーカーである、アルブミンタンパク質を発現する(ALB+)細胞である。
【0013】
まとめると、最新技術の実践において、これらのプロトコールにより作出される肝細胞が、通例、健常肝臓に由来する肝細胞の成熟状態を表すマーカー、すなわち、尿素代謝、並びにCYP2E1、CYP3A7、及び一部のCYP3A4活性等のCYP450解毒特性等、成熟肝細胞の他の特性と関連するマーカーであるアルブミンの発現(ALB+)により特徴づけられることが明らかになっている(Carpenterら、1996;Chinniciら、2015;Pietrosiら、2015を参照されたい)。
【0014】
驚くべきことに、理論的には、非成熟肝細胞を移植することも実現可能であるが、科学界では、以下の言明:「移植細胞は、肝機能を、速やかにレスキューする必要があるため、完全成熟細胞であることが要求される」(Goldman及びGouon-Evans、2016)により例示される通り、成熟肝細胞を移植用とすることについての合意が確立されている。しかし、高度に再現可能であるが、これらのプロトコールは、時間がかかり、ウイルス汚染及び/又は細菌汚染を受けやすい、長大な工程を伴う。
【0015】
最後に、肝細胞の凍結保存は、ALF及びACLFを伴う患者における、救急移植のための細胞療法における鍵である。しかし、凍結保存に伴う困難は、細胞が、凍結工程及び融解工程の両方において、細胞生存率の低下をもたらす損傷条件下に置かれるための困難(Terryら、2010)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO2016043666
【特許文献2】WO2019055345
【特許文献3】WO2007/69666
【特許文献4】EP2096169
【特許文献5】WO2010/042490
【特許文献6】WO2006/040763
【特許文献7】米国特許第5,843,780号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、肝移植のための肝ドナー不足を解消し、肝臓治療を必要とする対象において投与されうる肝細胞、特に、限定された長さの時間内で、高収量を伴い、高品質を有する肝細胞を容易に作出する手段を提供することが必要とされている。また、罹患肝臓、特に、劇症肝障害、より特定すると、ALF又はACLFを経た肝臓を再生及び/又は修復するために適合的である、大量かつ高品質の細胞を提供することも必要とされている。肝ドナーが不足しているのかどうかにかかわらず、自家移植療法及び同種(異種)移植療法の両方を可能とする、肝細胞の非限定的供給源を提供することも、更に必要とされている。また、凍結保存を含む、保管条件に耐性である肝細胞を提供することも必要とされている。普遍的に移植可能であるので、免疫抑制剤の共投与を伴わずに投与されうる肝細胞を提供することも、更に必要とされている。最後に、治療的価値の大きな肝細胞を作出する、新たな手法、特に、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)に準拠する手法を提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様は、少なくとも5%の、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、特に、分離細胞集団、又はこれらの抽出物に関する。
【0019】
ある特定の実施形態では、肝幹細胞様細胞は、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び/又は肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)、好ましくは、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)を更に発現している。
【0020】
一部の実施形態では、肝幹細胞様細胞は、凍結保存されている。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団又はこれらの抽出物を含む粒子、特に、スフェロイドに関する。
【0022】
一態様では、本発明は、本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団又はこれらの抽出物を含む懸濁液に関する。
【0023】
本発明の更なる態様は、(i)肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、並びに/又は少なくとも1つの、本発明に従う粒子及び/若しくは懸濁液と、(ii)薬学的に許容される媒体とを含む医薬組成物に関する。
【0024】
本発明のなお更なる態様は、本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、並びに/又は少なくとも1つの粒子及び/若しくは懸濁液、並びに/又は医薬組成物を含む医療機器に関する。
【0025】
一部の態様では、本発明はまた、本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む異種細胞集団又はこれらの抽出物を含む非ヒト動物モデルにも関する。
【0026】
本発明の別の態様は、医薬としての使用のための、本開示で規定される肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物に関する。
【0027】
本発明の更なる態様は、劇症肝障害の防止及び/又は処置における使用のための、本開示で規定される肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物、又は医療機器に関する。
【0028】
一態様では、本発明は、劇症肝障害が、急性肝不全(ALF)又はACLF(acute chronic liver failure)である、本開示で規定される肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は本発明に従う使用のための、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物、又は医療機器に関する。
【0029】
本発明のなお更なる態様は、ACLFが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);アルコール性肝炎;ウイルス誘導性肝炎;原因不明肝疾患;肝細胞癌及び胆管癌等の悪性肝疾患;自己免疫性肝炎、バッド-キアリ症候群等の血管性肝疾患;胆汁鬱滞性肝疾患;並びにウィルソン病及び尿素サイクル異常症等の遺伝性代謝性肝疾患からなる群から選択される肝疾患と関連する、本発明で規定される肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は本発明に従う使用のための、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物、又は医療機器に関する。
【0030】
更なる一態様において、本発明は、本明細書で規定される粒子を調製するための、本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む凍結保存細胞集団又はこれらの抽出物の使用に関する。
【0031】
本発明の別の態様は、薬物をスクリーニングするためのin vitro法であって、
a)少なくとも1つの、本明細書で規定される肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は粒子、及び/又は懸濁液を用意する工程と;
b)工程a)による、前記少なくとも1つの細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は前記細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は前記粒子、及び/又は前記懸濁液を、薬物候補物質と接触させる工程と;
c)1つ又は複数の生物学的パラメータを測定し、任意選択で、前記1つ又は複数の生物学的パラメータを、1つ又は複数の参照パラメータと比較する工程と;
d)薬物候補物質が、治療目的及び/又は診断目的の薬物候補物質であるのかどうかを決定する工程と
を含むin vitro法に関する。
【0032】
一態様では、本発明は、劇症肝障害を処置及び/又は防止するためのキットであって、
a)本明細書で規定される肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物と;
b)前記細胞若しくはこれらの抽出物、集団若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液若しくは医薬組成物を投与する手段と
を含むキットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本発明では、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0034】
数に前置される「約」は、前記数値から±10%以内を包含する。「約」という用語が言及する値は、この値自体もまた、具体的に開示され、そうであることが好ましいことが理解されるものとする。
【0035】
「~を含む」は、「~を含有する」、「~を包含する」、及び「~を含む」を意味するように意図される。一部の実施形態では、「~を含む」という用語はまた、「~からなる」という用語も包含する。
【0036】
「劇症肝障害」とは、既知の肝疾患の既存又は診断を伴うか、又はこれを伴わない、個体における、急速かつ重度の肝状態の悪化を指す。劇症肝障害は、それ自体は、非慢性疾患であるが、慢性肝状態から生じうることが理解されるものとする。本明細書で使用される、劇症肝障害とは、MELD(Model For End-Stage Liver Disease)(Martinら;2014)等、臓器割当てのための評定システムを使用する場合に、肝移植のために優先される任意の肝疾患を指す。肝移植のために優先される肝疾患の例は、急性肝障害(ALF)及びACLF(acute chronic liver failure)を含む。
【0037】
「肝移植」とは、罹患肝臓又は傷害肝臓を摘出し、別人(すなわち、ドナー)に由来する健常肝臓の全部又は一部で置き換えるために実施される手術手順を指す。肝臓は、自己再生することが可能な、体内で唯一の臓器であり、移植された肝臓のセグメントは、数週間以内に、正常サイズへと増殖しうる。
【0038】
また、「ALF」とも称される、「急性肝不全」は、基礎慢性肝疾患を伴わない個体における、肝血液検査の急性異常により特徴づけられる、高度に特異的であり、希少である症候群を指す。ALFは、公表文献である、Larsenら(2016)により認められている通り、肝移植の非存在における、80%の死亡率により、主に特徴づけられる。
【0039】
また、「ACLF」とも称される、「ACLF(acute chronic liver failure)」は、基礎慢性肝疾患を伴う個体における、肝血液検査の急性異常により特徴づけられる、高度に特異的であり、希少である症候群を指す。一部の実施形態では、ACLFはまた、Arroyoら(2016)において開示される通り、「ACLF(acute-on-chronic liver failure)」とも称される。
【0040】
「肝幹細胞様細胞」は、適切な培養条件下で増殖することが可能であり、いくつかの細胞型、特に、肝細胞(hepatic cell)(また、肝細胞(hepatocyte)とも称される)又は胆管細胞へと分化することが可能である自己再生性肝幹細胞を指すがこれらに限定されない。本発明に従う「肝幹細胞様細胞」は、特に、特異的マーカーのセットの発現及び/又は非発現により特徴づけられる。本明細書で使用される、本発明に従う肝幹細胞様細胞はまた、「pStemHep」とも称され、マーカーであるAFPを発現し(AFP+;未成熟肝細胞のマーカー)、かつ、マーカーであるALBを発現しない(ALB-)点で、成熟肝細胞と異なる。実際、マーカーであるALBは、通例、成熟肝細胞の代謝特性及び解毒特性と関連する。
【0041】
本明細書で使用される、「肝幹細胞様細胞に由来する細胞」とは、肝幹細胞様細胞から、分化細胞型へと分化させた細胞を指す。例示的に述べると、肝幹細胞様細胞に由来する細胞は、肝様細胞(HLC)及び胆管細胞を包含する場合があり、本発明に従う肝幹細胞様細胞の後代を構成する。
【0042】
本明細書で使用される、「幹細胞様細胞」又は「HLC」とは、in vitroにおいて作出され、通例、機能的健常肝臓内で見出される、成熟肝細胞の主要なマーカーを有する肝細胞を指す。特に、HLCは、マーカーであるALB及びCYP3A4等、機能的健常肝臓の解毒特性と関連するマーカーを有する(これを発現する)。
【0043】
「~を発現すること」又は「発現」とは、核酸(RNA)レベル、及び/又はポリペプチドレベル若しくはタンパク質レベルにおける、著明な検出可能レベルの、目的のマーカーの合成を指す。転じて、「~を発現すること」又は「発現」はまた、レベル自体も指す。
【0044】
「~を発現しないこと」又は「非発現」とは、核酸(RNA)レベル、及び/又はポリペプチドレベル若しくはタンパク質レベルにおける、著明な検出可能レベルの、目的のマーカーの合成の非存在を指す。転じて、「~を発現しないこと」又は「非発現」はまた、レベル自体も指す。
【0045】
「マーカー」とは、所与の細胞又は細胞集団により発現されるか、又は発現されない、特に、示差的に発現されるか、又は発現されず、それらの発現レベルが、前記細胞又は細胞集団を特徴づけるための、適切な技法(例えば、RT-PCR、RNAシーケンシング、ELISA、FACS、ウェスタンブロット、プロテオミクス、免疫蛍光法染色、タンパク質活性)によりにより測定されうる分子、好ましくは、タンパク質、糖タンパク質又はリポタンパク質を指す。
【0046】
「分離された」とは、この細胞又は細胞集団の作出を可能とした、初期培養培地から取り出された細胞又は細胞集団を指す。
【0047】
「抽出物」とは、細胞質ゾル画分、細胞質画分、細胞膜画分、可溶性画分、不溶性画分、小胞、エキソソーム、及びこれらの組合せを含む、任意の細胞画分;又は本発明に従う、肝幹細胞様細胞、若しくは肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、特に、分離細胞集団の培養物から得られる培養物上清を指す。一部の実施形態では、抽出物は、細胞外小胞(EV)、エキソソーム、又はエキソソーム様粒子等の粒子を含む。
【0048】
「エキソソーム」とは、多小胞体(MVB)である、エンドサイトーシス中間コンパートメントの、細胞外ナノ小胞との融合時に、細胞から、天然に分泌される/放出される、細胞外ナノ小胞を指す。言い換えれば、エキソソームは、細胞外環境へと分泌される/放出される、管腔内小胞に関するように意図される。
【0049】
「懸濁」とは、細胞が3Dで培養されている状態を指し、培養培地の浮遊を指す。
【0050】
「粒子/スフェロイド」は、細胞が互いと凝集した3D粒子を指すことが意図される。「スフェロイド」という用語がまた、球形を伴う粒子を具体的に指すようにも意図されるのに対し、「粒子」は、卵形を有する場合もあり、管形を有する場合もある。
【0051】
「体外バイオ人工肝臓」又は「EBAL」は、肝機能を伴う細胞を含む体外医療機器を指すことが意図される。前記デバイスは、全身循環により、肝障害を伴う患者へと接続され、機能的健常肝臓に特化した解毒活性を実現するように意図される。
【0052】
「~を処置すること」又は「処置」又は「緩和」とは、治療的処置、及び標的の病理学的状態又は障害、特に、肝障害、より特定すると、劇症肝障害を防止又は緩徐化する(軽減する)ことを目的とする、予防的措置又は防止的措置の両方を指す。処置を必要とする個体は、前記障害を既に伴う個体の他、障害を発症しやすい個体、又は障害が防止されるべき個体を含む。治療量の、本発明に従う肝幹細胞様細胞を施された後で、個体が、肝障害(特に、劇症肝障害)と関連する症状のうちの1つ又は複数の、観察可能な低減若しくは非存在、及び/又は測定可能な低減若しくは非存在;罹患率及び死亡率の低減; 並びに生活の質問題の改善を示す場合、個体は、肝障害、特に、劇症肝障害のための「処置」に成功している。処置の成功及び疾患の改善について評価するための、上記のパラメータは、医師又は正規の担当者が精通している、規定の手順によりたやすく測定可能である。
【0053】
「~を防止すること」とは、臓器、組織、若しくは細胞の機能の欠損又は非存在と関連する、肝疾患、肝障害、若しくは肝状態、特に、劇症肝障害、又はこれらの少なくとも1つの有害作用若しくは症状が起こらないようすること、及び/又はこれらの発生の可能性を低下させることを指す。
【0054】
「治療有効量」とは、標的に対して、著明な負の副作用又は有害な副作用を引き起こさずに、(1)肝疾患、肝障害、若しくは肝状態、特に、劇症肝障害の発生を遅延させるか、若しくは防止すること;(2)肝疾患、肝障害、若しくは肝状態、特に、劇症肝障害の1つ又は複数の症状の進行、増悪、若しくは悪化を緩徐化するか、若しくは停止させること;(3)肝疾患、肝障害、若しくは肝状態、特に、劇症肝障害の症状の改善をもたらすこと;(4)肝疾患、肝障害、若しくは肝状態、特に、劇症肝障害の重症度又は発生率を軽減すること;又は(5)肝疾患、肝障害、若しくは肝状態、特に、劇症肝障害を治癒させることを目標とする、活性薬剤のレベル又は量を指す。治療有効量は、予防措置又は防止措置のために、肝疾患、肝障害、又は肝状態、特に、劇症肝障害の発生の前に投与されうる。代替的に、又は加えて、治療有効量は、治療措置のために、肝疾患、肝障害、又は肝状態、特に、劇症肝障害の発生の後で投与されうる。一実施形態では、組成物の治療有効量は、肝疾患、肝障害、又は肝状態、特に、劇症肝障害の、少なくとも1つの症状の軽減において有効な量である。
【0055】
「肝再生」とは、肝臓が、その機能的な生物学的特性又は機能的特性を取り戻す能力を指す。「肝再生」は、内因性「健常」肝細胞又は内因性幹細胞の増殖の増大、及び、その後における、「罹患」肝細胞の死を補償し、健常肝組織重量及び健常肝重量の増大をもたらす、それらの肝細胞への分化を包含しうる。「肝再生」はまた、肝疾患と関連する、肝炎症の軽減も包含しうる。
【0056】
「薬学的に許容される媒体」とは、動物個体、好ましくは、ヒト個体へと投与された場合に、有害反応、アレルギー反応、又は他の望ましくない反応をもたらさない媒体を指す。「薬学的に許容される媒体」は、任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、並びに吸収遅延剤等、並びにこれらの全てを含む。ヒト投与のために、調製物は、例えば、米国における食品医薬品局(FDA)、又は欧州連合における欧州医薬品庁(EMA)等の規制機関により要求される、無菌性基準、発熱性基準、全般的安全性基準、品質基準、及び純度基準を満たすものとする。
【0057】
「個体」は、動物個体、好ましくは、哺乳動物個体、より好ましくは、ヒト個体を指すように意図される。目的の非ヒト哺乳動物個体の中で、イヌ、ネコ、モルモット等の愛玩動物;ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サル等、経済的重要性を有する動物に、非限定的に言及することができる。一実施形態では、個体は、医療ケアの受診を待っているか、若しくは医療ケアを受けつつあるか、又は医療手順の目的であった/医療手順の目的である/医療手順の目的となるか、又は疾患、障害、若しくは状態、特に、肝疾患、より特定すると、劇症肝障害の発生についてモニタリングされている、「患者」、すなわち、温血動物、より好ましくは、ヒトでありうる。一実施形態では、個体は、成体(例えば、18歳を上回るヒト対象)である。別の実施形態では、個体は、小仔(例えば、18歳を下回るヒト対象)である。一実施形態では、個体は、雄である。別の実施形態では、個体は、雌である。
【0058】
詳細な説明
予測外に、本発明者らは、成熟肝細胞のマーカープロファイルに準拠しないマーカープロファイルを有する、本発明に従う肝幹細胞様細胞が、肝臓の極めて迅速な再生、特に、罹患肝組織内の、健常肝組織の再生を要求する劇症肝障害、特に、急性肝不全(ALF)又はACLF(acute chronic liver failure)を処置するための、治療的使用でありうることを示した。最新技術における先入観に反して、本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、すなわち、マーカーであるAFPを発現するが、一般に、マーカーであるCYP3A4と併せて、成熟肝細胞の解毒機能と関連するマーカーであるALBを発現しない細胞集団は、血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)濃度、及び肝細胞壊死等のパラメータを、極めて迅速に、すなわち、注入後24時間以内に、著明に低減することがなおも可能である。
【0059】
言い換えれば、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、成熟肝細胞ではないが、健常肝組織の、極めて迅速な再生を要求する、劇症肝不全を伴う個体における、罹患肝臓の再生を達成することが可能である。
【0060】
理論に束縛されずに述べると、本発明者らは、マーカーであるALB及びCYP3A4により表される、成熟肝細胞において通例見出される解毒機能の存在が、処置の開始時において必要ではなく、分化状態がそれほど進んでいない細胞集団に依拠する幹細胞ベースの細胞療法が、肝移植の技術分野における先入観に反して、治療的に十分であると考える。
【0061】
加えて、本発明者らは、多数の分化プロトコールを経て、非限定量の肝幹細胞様細胞が、ヒト多能性幹細胞(hPSC)、特に、ヒト胚性幹細胞(hESC)から作出されうることを示した。
【0062】
最後に、本発明者らは、本発明に従う肝幹細胞様細胞の移植が、免疫抑制剤の非存在下であってもなお実施されうることを示したが、これは、急性移植拒絶の危険性が、極めて低度であることを示唆する。したがって、これらの結果は、本発明に従う肝幹細胞様細胞の同種移植が、肝臓治療を必要とする患者、特に、肝移植を必要とする患者において、安全に実施されうることを強く示唆する。
【0063】
本発明の一態様は、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞、特に、分離肝幹細胞様細胞又はこれらの抽出物に関する。
【0064】
本発明の範囲内では、アルファ-フェトプロテイン(AFP)はまた、非限定的に、アルファ-フェトプロテイン、アルファ1-フェトプロテイン、アルファフェトグロブリン、HPAFP、AFPD、及びFETAも指す。本発明の範囲内では、アルブミンはまた、非限定的に、血清アルブミン、PRO0883、PRO0903、PRO1341及びHSAも指す。
【0065】
ある特定の実施形態では、細胞、特に、ヒト細胞は、マーカーであるヒトアルファ-フェトプロテインを発現しており(AFP+)、かつ、マーカーであるヒトアルブミンを発現していない(ALB-)。
【0066】
本発明はまた、マーカーであるヒトアルファ-フェトプロテイン(AFP+)を発現し、かつ、マーカーであるヒトアルブミン(ALB-)を発現しない肝幹細胞様細胞のin vitro細胞培養物又はこれらの抽出物も指す。
【0067】
本発明はまた、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞を含む細胞集団又はこれらの抽出物にも依拠する。
【0068】
より特定すると、本発明は、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、特に、分離細胞集団、又はこれらの抽出物に関する。
【0069】
一部の実施形態では、細胞集団は、ヒト細胞集団である。
【0070】
よって、本発明の別の態様は、少なくとも5%の、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、特に、分離細胞集団、又はこれらの抽出物に関する。
【0071】
本発明に従い、本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団は、細胞のうちの、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は100%が、本発明に従う肝幹細胞様細胞である集団を包含することが理解される。
【0072】
本発明の範囲内では、「少なくとも約5%」という表現は、約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び100%を包含する。
【0073】
一実施形態では、細胞のうちの少なくとも約5%、好ましくは、細胞のうちの少なくとも約10%は、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞である。
【0074】
一部の実施形態では、細胞集団は、in vitro細胞集団、特に、in vitro分離細胞集団である。
【0075】
本発明はまた、細胞集団、特に、ヒト細胞集団を含むin vitro細胞培養物も指し、この場合、前記細胞のうちの、少なくとも約5%は、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現する(AFP+)、特に、マーカーであるヒトアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)、特に、マーカーであるヒトアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞、特に、ヒト肝幹細胞様細胞、又はこれらの抽出物である。
【0076】
一部の実施形態では、肝幹細胞様細胞は、マーカーであるヒトアルファ-フェトプロテインを発現しており(AFP+)、かつ、マーカーであるヒトアルブミンを発現していない(ALB-)。
【0077】
ある特定の実施形態では、集団は、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現する(AFP+)、特に、マーカーであるヒトアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)、特に、マーカーであるヒトアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞を含む分離細胞集団である。
【0078】
一部の実施形態では、分離集団は、肝幹細胞様細胞のうちの、少なくとも約50%、好ましくは、本発明に従う肝幹細胞様細胞のうちの、少なくとも約70%を含む。ある特定の実施形態では、分離集団は、本発明に従う肝幹細胞様細胞の、実質的に純粋な集団である。本発明の範囲内では、「実質的に純粋な」という表現は、前記肝幹細胞様細胞が、前記集団の総細胞含量のうちの、少なくとも約50%を表す集団を指すことが意図される。
【0079】
本明細書で使用される、「少なくとも約50%」という表現は、約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び100%を含む。
【0080】
ある特定の実施形態では、本発明に従う分離集団は、本発明に従う肝幹細胞様細胞のうちの、少なくとも約75%、好ましくは、少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約90%を含む。
【0081】
実際的に述べると、本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団又は分離細胞集団は、肝幹細胞様細胞及び、例えば、改変線維芽細胞等、他の細胞型を含む。実際的に述べると、他の細胞型の性質は、本発明に従う肝幹細胞様細胞を作出するのに使用される細胞の性質に依存しうる。
【0082】
これらのマーカーの発現又は発現の非存在(非発現)は、当技術分野で公知である、任意の適切な方法により、核酸(mRNA)レベルでモニタリングされる場合もあり、ポリペプチドレベル又はタンパク質レベルでモニタリングされる場合もある。例示的に述べると、これらの方法は、核酸レベルでは、培養細胞から、特異的プライマーにより抽出されたRNAについての、リアルタイムRT-PCR(qPCR)解析、RNAシーケンシング(RNASeq)を包含しうる。ポリペプチドレベル又はタンパク質レベルでは、これらの方法は、マーカー特異的抗体による免疫蛍光解析、ウェスタンブロット法、ELISA、フローサイトメトリー(また、蛍光活性化細胞分取又はFACSとも称される)、又は任意の機能的タンパク質活性アッセイを包含する。
【0083】
本発明に従う細胞集団に含まれる肝幹細胞様細胞の百分率は、前記細胞集団内の、選択されたマーカー、等、特に、マーカーであるAFP及びALBの発現を定量するのに使用される方法ごとに変動しうることが理解される。
【0084】
一部の実施形態では、細胞内AFP mRNAの全相対発現は、最新技術から公知である、任意の適切な方法、又はこれに由来する適合法により測定されうる。例示的に述べると、細胞内AFP mRNAの全相対発現は、qPCR(また、リアルタイムPCR又はRT-PCRとも称される、定量的PCR)により評価されうる。実際的に述べると、細胞内AFP mRNAの全相対発現は、適切なプライマーを伴う、Taqman(登録商標)技術により評価される。一部の実施形態では、細胞内AFP mRNAの相対発現は、例えば、GAPDH等のハウスキーパー遺伝子の発現に照らして正規化される場合があり、未分化hESC細胞内で見出されるレベルの倍数として表される。
【0085】
ある特定の実施形態では、細胞内AFP mRNAの全相対発現レベルは、qPCRにより評価される場合に、AFP非発現細胞内で検出される発現レベルの、少なくとも約102倍である。本明細書で使用される、AFP非発現細胞は、qPCRにより評価される場合に、著明な検出可能レベルのAFP mRNAが達成されえない細胞を指すように意図される。
【0086】
本発明の範囲内では、「少なくとも約102」という用語は、約102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、又はこれを超える量を含む。一部の実施形態では、細胞は、AFPの相対発現が、qPCRにより評価される場合に、AFP非発現細胞内で検出される発現レベルの、少なくとも約103倍、好ましくは、少なくとも約105倍である。
【0087】
一部の実施形態では、本発明に従う細胞集団内の、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)細胞の百分率を測定する免疫蛍光アッセイは、適切な抗AFP抗体及び抗ALB抗体により実施されうる。例示的に述べると、適切な抗体は、例えば、Sigma Aldrich(登録商標)社製の市販抗体(マウス抗AFP抗体;A8452)及びCedarlane(登録商標)社製の市販抗体(マウス抗ALB抗体;CL2513A)でありうる。実際的に述べると、免疫蛍光アッセイは、最新技術による標準プロトコール、又はこれに由来する適合プロトコールに従い実施される。一部の実施形態では、本発明に従う細胞集団、特に、分離細胞集団は、免疫蛍光法により評価される通り、本発明に従う肝幹細胞様細胞のうちの、少なくとも約50%を含む。
【0088】
一部の実施形態では、本発明に従う細胞集団内の、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)細胞の百分率を測定するフローサイトメトリーアッセイは、最新技術による標準プロトコール、又はこれに由来する適合プロトコールに従い実施されうる。一部の実施形態では、本発明に従う細胞集団、特に、分離細胞集団は、フローサイトメトリーにより評価される通り、本発明に従う肝幹細胞様細胞のうちの、少なくとも約5%を含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、発現されたAFPを分泌させる。
【0090】
一部の実施形態では、AFPの分泌は、最新技術から公知である、任意の適切な方法、又はこれに由来する適合法により評価されうる。例示的に述べると、AFPの分泌は、ELISA法により評価されうる。実際的に述べると、ELISA法は、最新技術による標準プロトコール、又はこれに由来する適合プロトコールに従い実施されうる。一部の実施形態では、ELISA法は、例えば、ABCAM(登録商標)社製のHuman AFP ELISA Quantificationキット等、市販のキットにより実施される。細胞培養物中の、ALB分泌の非存在は、ELISA、特に、例えば、Bethyl(登録商標)社製のHuman Albumin ELISA Quantificationキット等、市販のキットによりにより確認されうる。市販のキットを使用する場合、プロトコールは、製造元の指示書に従い、適切な対照を伴い実施される。一部の実施形態では、肝幹細胞様細胞は、24時間当たり細胞106個当たり少なくとも約25ngの、発現されたAFPを分泌させる。
【0091】
本発明の範囲内では、「24時間当たり細胞106個当たり少なくとも約25ngの、発現されたAFP」という用語は、24時間当たり細胞106個当たり25ng、50ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、又はこれを超える量を含む。一部の実施形態では、細胞は、24時間当たり細胞106個当たり少なくとも500ng、好ましくは、24時間当たり細胞106個当たり少なくとも1μgの、発現されたAFPを分泌させる。一部の実施形態では、肝幹細胞様細胞は、24時間当たり細胞106個当たり約0.1μg~24時間当たり細胞106個当たり約100μgの、発現されたAFP、好ましくは、24時間当たり細胞106個当たり約1μg~24時間当たり細胞106個当たり約70μgの、発現されたAFPを分泌させる。
【0092】
ある特定の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び/又は肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)、好ましくは、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)を更に発現する。
【0093】
ある特定の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、ヒトT-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び/又はヒト肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)、好ましくは、ヒトT-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及びヒト肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)を更に発現する。
【0094】
ある特定の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、少なくとも1つのマーカー、特に、少なくとも2つのマーカー、より特定すると、3つのマーカー、好ましくは、KRT19、EPCAM、及びTTRからなる群から選択されるヒトマーカーを更に発現する。一部の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、少なくとも1つのマーカー、特に、少なくとも2つのマーカー、より特定すると、3つのマーカー、なおより特定すると、4つのマーカー、好ましくは、KRT19、EPCAM、TTR、及びHGFからなる群から選択されるヒトマーカーを更に発現する。
【0095】
一部の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、少なくとも1つのマーカー、特に、少なくとも2つのマーカー、より特定すると、3つのマーカー、好ましくは、KRT19、EPCAM、及びTTRからなる群から選択されるヒトマーカーを更に発現し;かつ/又はHGF、好ましくは、ヒトHGFを更に発現する。
【0096】
ある特定の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現する(AFP+)、特に、マーカーであるヒトアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)、特に、マーカーであるヒトアルブミンを発現せず(ALB-);T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)(特に、ヒトTBX3+)、及び/若しくは肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)(特に、ヒトHNF4A+)、好ましくは、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)(特に、ヒトTBX3+及びHNF4A+)を更に発現し;少なくとも1つのマーカー、特に、少なくとも2つのマーカー、より特定すると、3つのマーカー、好ましくは、KRT19、EPCAM、及びTTRからなる群から選択されるヒトマーカーを更に発現し;かつ/又はHGF、好ましくは、ヒトHGFを更に発現する。
【0097】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるAFP、TBX3、及びHNF4Aを発現し、マーカーであるALBを発現しない。ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、及びHGFを発現し、マーカーであるALBを発現しない。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、及びTTRを発現し、マーカーであるALBを発現しない。ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、HGF、及びTTRを発現し、マーカーであるALBを発現しない。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、及びEPCAMを発現し、マーカーであるALBを発現しない。ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、EPCAM、及びHGFを発現し、マーカーであるALBを発現しない。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、EPCAM、TTR、及びKRT19を発現し、マーカーであるALBを発現しない。ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、EPCAM、TTR、KRT19、及びHGFを発現し、マーカーであるALBを発現しない。好ましくは、マーカーは、ヒトマーカーである。
【0098】
一部の実施形態では、前記本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるEPCAMを更に発現し(EPCAM+)、かつ/又はことチトクロームマーカーであるCYP3A4を発現しない(CYP3A4-)細胞である。
【0099】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、マーカーであるヒトEPCAMを発現し(EPCAM+)、かつ/又はチトクロームマーカーであるヒトCYP3A4を発現しない(CYP3A4-)細胞である。
【0100】
一部の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、マーカーであるSOX17を更に発現し(SOX17+)、好ましくは、マーカーであるヒトSOX17を更に発現し、かつ/又はマーカーであるAPOA1を更に発現し(APOA1+)、好ましくは、マーカーであるヒトAPOA1を更に発現する。
【0101】
一部の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、マーカーであるSERPINA1を更に発現し(SERPINA1+)、好ましくは、マーカーであるヒトSERPINA1を更に発現する。
【0102】
ある特定の実施形態では、本発明に従う幹細胞様細胞は、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現する(AFP+)、特に、マーカーであるヒトアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)、特に、マーカーであるヒトアルブミンを発現せず(ALB-);T-Box転写因子3マーカーを更に発現し(TBX3+)(特に、ヒトTBX3+)、かつ/又は肝細胞核内因子4アルファマーカーを更に発現し(HNF4A+)(特に、ヒトHNF4A+)、好ましくは、T-Box転写因子3マーカーを更に発現し(TBX3+)、かつ、肝細胞核内因子4アルファマーカーを更に発現し(HNF4A+)(特に、ヒトTBX3+かつHNF4A+);少なくとも1つのマーカー、特に、少なくとも2つのマーカー、より特定すると、3つのマーカー、好ましくは、KRT19、EPCAM、及びTTRからなる群から選択されるヒトマーカーを更に発現し;かつ/又はHGF、好ましくは、ヒトHGFを更に発現し;かつ/又はマーカーであるSOX17(SOX17+)、好ましくは、マーカーであるヒトSOX17、及び/又はマーカーであるAPOA1(APOA1+)、好ましくは、マーカーであるヒトAPOA1を更に発現し;かつ/又はマーカーであるSERPINA1を更に発現し(SERPINA1+)、好ましくは、マーカーであるヒトSERPINA1を更に発現する。
【0103】
一実施形態では、特に、細胞集団内の肝幹細胞様細胞は、マーカーであるALBを発現せず(ALB-)、マーカーであるCYP3A4を発現しない(CYP3A4-)が、特に、マーカーであるAFPを発現する(AFP+)ことが理解される。ALBタンパク質及びCYP3A4タンパク質のいずれも、健常成人肝臓の代謝特性及び解毒特性に参与することが公知である。したがって、前記実施形態では、細胞集団内の肝幹細胞様細胞は、マーカーであるALB及びCYP3A4と関連する、代謝特性及び解毒特性を有さない。
【0104】
ある特定の実施形態では、特に、細胞集団内の肝幹細胞様細胞は、以下の特色:
・以下のマーカー、好ましくは、ヒトマーカー:APOA1、APOA2、APOA4、APOB、APOC3、APOE、BMP2、BMP4、CD164、CD24、CXCR4、DLK1、DPP4、FOXA2、GATA4、GATA6、GJA1、GSTA1、GSTA2、HNF1B、HNF4A、KI67、KRT18、KRT19、KRT8、SEPP1、SMAD7、SOD1、SPARC、TBX3、TTR、VIM、VTNのうちの1つ又は複数の発現;
・以下のマーカー、好ましくは、ヒトマーカー:ABCB11、ASGR1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2B7P、CYP2C9、CYP2E1、CYP3A7、F9、NAGS、PDX1、UGT1A1のうちの1つ又は複数の発現の非存在(非発現)
のうちの、少なくとも2つの組合せにより、更に特徴づけられうる。
【0105】
一部の実施形態では、本発明に従う特に、細胞集団内の肝幹細胞様細胞は、以下の特色:
・好ましくは、APOA1、APOA2、APOA4、APOB、APOC3、APOE、BMP2、BMP4、CD164、CD24、CD99、CXCR4、DCN、DLK1、DPP4、EPCAM、FGF19、FOXA2、GATA4、GATA6、GJA1、GPC3、GSTA1、GSTA2、HGF、HMOX1、HNF1B、HNF4A、IGF1、IGFBP3、IL6ST、ITGA6、KI67、KRT18、KRT19、KRT8、LCP1、MKI67、MYDGF、NODAL、PITX2、PROX1、SEPP1、SERPINA1、SMAD7、SNAI2、SOD1、SOX17、SPARC、TBX3、TTR、UGT3A1、VIM、及びVTNからなる群から選択されるヒトマーカーであるマーカーのうちの1つ又は複数の発現、並びに/又は
・好ましくは、ABCB11、ASGR1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2B7P、CYP2C9、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A7、F9、NAGS、PDX1、UGT1A1からなる群から選択されるヒトマーカーであるマーカーのうちの1つ又は複数の発現の非存在(非発現)
のうちの、少なくとも2つの組合せにより、更に特徴づけられうる。
【0106】
本発明の範囲内では、EPCAMはまた、非限定的に、上皮細胞接着分子、TACSTD1(Tumor-Associated Calcium Signal Transducer 1)、GA733-2(major gastrointestinal tumor-associated protein)、TROP1(Trophoblast surface antigen 1)、腺癌関連抗原、細胞表面糖タンパク質であるTrop-1、上皮糖タンパク質314、TACSTD1、EGP314、MIC18、TROP1、M4S1、KSA、モノクローナル抗体であるAUA1により同定される抗原、ヒト上皮糖タンパク質2、上皮細胞表面抗原、上皮糖タンパク質、KS 1/4抗原、CD326抗原、GA733-2、HEGP314、HNPCC8、Ep-CAM、DIAR5、EGP-2、EGP40、KS1/4、MK-1、M1S2、ESA、及びEGPも指す。
【0107】
本発明の範囲内では、CYP3A4はまた、非限定的に、チトクロームP450ファミリー3サブファミリーAメンバー4、チトクロームP450サブファミリーIIIAポリペプチド4、チトクロームP450ファミリー3サブファミリーAポリペプチド4、アルベンダゾールモノオキシダーゼ(スルホキシド形成性)、タウロケノデオキシコール酸6アルファ-ヒドロキシラーゼ、1,8-シネオール2-エキソ-モノオキシダーゼ、コレステロール25-ヒドロキシラーゼ、アルベンダゾールスルホキシダーゼ、キニン3-モノオキシダーゼ、チトクロームP450 NF-25、チトクロームP450-PCN1、チトクロームP450 3A3、チトクロームP450 3A4、チトクロームP450 HLp、ニフェジピンオキシダーゼ、CYPIIIA3、CYPIIIA4、CYP3A3、チトクロームP450、サブファミリーIIIAポリペプチド3、グルココルチコイド誘導性P450、ステロイド誘導性P450-III、アルベンダゾールモノオキシダーゼ、P450PCN1、P450C3、CYP3A、NF-25、CP33、CP34、及びHLPも指す。
【0108】
本発明の範囲内では、APOA1はまた、非限定的に、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質A-I、Apo-AI、ELSPBP(epididymis secretory sperm binding protein)、Apo(A)、ApoA-Iも指し;APOA2はまた、非限定的に、アポリポタンパク質A2、アポリポタンパク質A-II、Apo-AII、ApoA-II、及びApoAIIも指し;APOA4はまた、非限定的に、アポリポタンパク質A4、アポリポタンパク質A-IV、Apo-AIV、及びApoA-IVも指し;APOBはまた、非限定的に、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質B-100、アポリポタンパク質B48、ApoB-100、ApoB-100、ApoB-48、LDLCQ4、FCHL2、及びFLDBも指し;APOC3はまた、非限定的に、アポリポタンパク質C3、アポリポタンパク質C-III、Apo-CIII、ApoC-III、及びAPOCIIIも指し;APOEはまた、非限定的に、アポリポタンパク質E、アルツハイマー病2(遅発性、APOE*E4関連タンパク質)、アポリポタンパク質E3、LDLCQ5、APO-E、ApoE4、Apo-E、LPG、及びAD2も指し;BMP2はまた、非限定的に、骨形成タンパク質2、骨形成タンパク質2A、BMP2A、BMP-2A、SSFSC、BMP-2、及びBDA2も指し;BMP4はまた、非限定的に、骨形成タンパク質4、骨形成タンパク質2B、BMP2B、BMP2B1、MCOPS6、BMP-2B、OFC11、BMP-4、ZYME、及びDVR4も指し;CD164はまた、非限定的に、CD164分子、MUC24(Multi-Glycosylated Core Protein 24)、シアロムチンタンパク質24、CD164抗原、シアロムチン、エンドリン、MGC-24v、MGC-24、MUC-24、難聴常染色体優性66、CD164抗原、DFNA66も指し;CD24はまた、非限定的に、CD24分子、CD24抗原、シグナル伝達剤CD24、CD24A、小細胞肺癌クラスター4抗原、CD24抗原も指し;CD99はまた、非限定的に、CD99抗原、モノクローナル抗体である12E7、F21、及びO13により同定される抗原、T細胞表面糖タンパク質E2、E2抗原、MIC2X、MIC2Y、MIC2、細胞表面抗原HBA-71、細胞表面抗原12E7、細胞表面抗原MIC2、HBA71、MSK5X、12E7も指し;CXCR4はまた、非限定的に、C-X-Cモチーフケモカイン受容体4、白血球由来7回膜貫通型ドメイン受容体、リポ多糖関連タンパク質3、間質細胞由来因子1受容体、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4、C-X-Cケモカイン受容体型4、LPS関連タンパク質3、SDF-1受容体、CD184抗原、フシン、LAP-3、LESTR、NPYRL、FB22、HM89、LCR1、脾臓7回膜貫通セグメント受容体、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4、7回膜貫通ヘリックス型受容体、神経ペプチドY受容体Y3、神経ペプチドY3受容体、ケモカイン受容体、D2S201E、HSY3RR、NPYY3R、CXC-R4、CXCR-4、CD184、NPY3R、WHIMS、LAP3、NPYR、WHIM3も指し;DCNはまた、非限定的に、デコリン、SLRR1B、骨プロテオグリカンII、DSPG2、PG40、デルマタン硫酸プロテオグリカンII、小型ロイシンリッチタンパク質1B、プロテオグリカンコアタンパク質、デコリンプロテオグリカン、PG-S2、CSCD、PGII、PGS2、DCN5も指し;DLK1はまた、非限定的に、DLK1(delta like non-canonical Notch ligand 1)、プロテインデルタ相同体1、DLK-1、DLK、PG2、デルタ様1相同体、デルタ様相同体、前脂肪細胞因子1、デルタ様1相同体、胎児性抗原1、セクレデルチン、デルタ1、Pref-1、PREF1、FA1、及びZOGも指し;DPP4はまた、非限定的に、ジペプチルペプチダーゼ4、アデノシンデアミナーゼ複合タンパク質2、ジペプチジルペプチダーゼIV、CD26アデノシンデアミナーゼ複合タンパク質2、T細胞活性化抗原CD26、ジペプチルペプチダーゼIV、EC 3.4.14.5、ADCP-2、DPPIV、ADCP2、ADABP、TP103、CD26、ジペプチルペプチダーゼ4、ジペプチジルペプチダーゼ4、CD26抗原、及びDPPIVも指し;FGF19はまた、非限定的に、線維芽細胞増殖因子19も指し;FOXA2はまた、非限定的に、フォークヘッドボックスA2、肝細胞核内因子3-ベータ、フォークヘッドボックスタンパク質A2、転写因子3B、HNF-3-ベータ、HNF-3B、TCF-3B、及び幹細胞様核内因子-3-ベータも指し;GATA4はまた、非限定的に、GATA結合性タンパク質4、転写因子GATA-4、GATA結合性因子4、GATA結合性タンパク質4、TACHD、ASD2、VSD1、及びTOFも指し;GATA6はまた、非限定的に、GATA結合性タンパク質6、転写因子GATA-6、GATA結合性因子6、及びGATA結合性タンパク質6も指し;GJA1はまた、非限定的に、ギャップジャンクションタンパク質アルファ1、ギャップジャンクション43KDa心臓タンパク質、ギャップジャンクションアルファ1タンパク質、コネキシン43、GJAL、眼歯指異形成症(シンダクチルIII型)、ギャップジャンクションタンパク質アルファ様、コネキシン43、AVSD3、EKVP3、HLHS1、PPKCA、CMDR、CX43、EKVP、ODDD、Cx43、及びHSSも指し;GPC3はまた、非限定的に、グリピカン3、腸タンパク質OCI-5、グリピカンプロテオグリカン3、グリピカン-3、GTR2-2、OCI-5、SGBS1、DGSX、MXR7、SGBS、SGB、硫酸ヘパランプロテオグリカン、分泌型グリピカン3、SDYS、OCI5も指し;GSTA1はまた、非限定的に、グルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ1、グルタチオンS-トランスフェラーゼA1、13-ヒドロペルオキシオクタデカジエノエートペルオキシダーゼ、アンドロスト-5-エン-3,17-ジオンイソメラーゼ、GSTクラスアルファメンバー1、GST HAサブユニット1、GST-イプシロン、EC 2.5.1.18、GSTA1-1、GTH1、グルタチオンS-トランスフェラーゼHaサブユニット1、S-(ヒドロキシアルキル)グルタチオンリアーゼA1、グルタチオンS-アルキルトランスフェラーゼA1、グルタチオンS-アリールトランスフェラーゼA1、精巣組織タンパク質Li80、グルタチオンS-トランスフェラーゼ2、EC 1.11.1.、EC 5.3.3.、及びGST2も指し;GSTA2はまた、非限定的に、グルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ2、グルタチオンS-トランスフェラーゼA2、GSTクラスアルファメンバー2、GST HAサブユニット2、EC 2.5.1.18、GSTガンマ、GSTA2-2、GST2、GTH2、精巣組織精子結合性タンパク質Li 59n、S-(ヒドロキシアルキル)グルタチオンリアーゼA2、グルタチオンS-アラルキルトランスフェラーゼA2、グルタチオンS-アルキルトランスフェラーゼA2、グルタチオンS-アリールトランスフェラーゼA2、肝GST2、及びGTA2も指し;HGFはまた、非限定的に、肝細胞増殖因子、HPTA、SF、肝細胞増殖因子(ヘパトポエチンA、SF(scatter factor))、線維芽細胞由来腫瘍細胞傷害性因子、肺線維芽細胞由来マイトジェン、ヘパトポエチン-A、SF(scatter factor)、F-TCF、HGFB、DFNB39も指し;HMOX1はまた、非限定的に、ヘムオキシゲナーゼ1、HO-1、ヘムオキシゲナーゼ(デサイクリング)1、BK286B10、熱ショックタンパク質32-KD、HMOX1D、HSP32、HO1、HOも指し;HNF1Bはまた、非限定的に、HNF1ホメオボックスB、肝細胞核内因子1ベータ、ホメオプロテインLFB3、HNF-1ベータ、HNF-1B、VHNF1、TCF-2、TCF2、変異体幹細胞様核内因子、変異体幹細胞様核内因子1、転写因子2幹細胞様、転写因子2、HNF1ベータA、HNF1ベータ、HPC11、LF-B3、MODY5、FJHN、HNF2、及びLFB3も指し;HNF4Aはまた、非限定的に、肝細胞核内因子4アルファ、核内受容体サブファミリー2群Aメンバー1、肝細胞核内因子4アルファ、転写因子HNF-4、転写因子14、TCF-14、TCF14、NR2A1、HNF4、幹細胞様核内因子4アルファ、HNF4アルファ10/11/12、HNF-4アルファ、HNF4アルファ、HNF4a7、HNF4a8、HNF4a9、NR2A21、FRTS4、MODY1、MODYandTCF3も指し;IGF1はまた、非限定的に、インスリン様増殖因子1、IGF-I、Mechano増殖因子、ソマトメジン-C、IGFI、IGF、MGF、インスリン様増殖因子IB、IGF1A、IBP1も指し;IGFBP3はまた、非限定的に、インスリン様増殖因子結合性タンパク質3、IGF結合性タンパク質3、IBP3、酸安定性サブユニットOf140KIGF複合体、増殖ホルモン依存性結合性タンパク質、結合性タンパク質53、結合性タンパク質29、IGFBP-3、BP-53、IBP-3も指し;IL6STはまた、非限定的に、インターロイキン6シグナル伝達剤、インターロイキン6受容体サブユニットベータ、オンコスタチンM受容体サブユニットアルファ、Gp130オンコスタチンM受容体、IL-6受容体サブユニットベータ、膜糖タンパク質130、IL-6Rサブユニットベータ、CD130抗原、IL-6RB、SGP130、CD130、GP130、関節リウマチ抗原性ペプチド保有可溶性形態であるGp130、インターロイキン受容体ベータ鎖、インターロイキン-6シグナル伝達剤、膜糖タンパク質Gp130、IL-6R-ベータ、CDW130、HIES4も指し;ITGA6はまた、非限定的に、インテグリンサブユニットアルファ6、CD49抗原様ファミリーメンバーF、インテグリンアルファ6、CD49f、VLA-6、インテグリンアルファ6B、CD49f抗原、ITGA6Bも指し;KRT18はまた、非限定的に、ケラチン18、細胞増殖誘導性遺伝子46タンパク質、I型ケラチン細胞骨格18、I型ケラチン18、CK-18、CYK18、K18、サイトケラチン18、サイトケラチン18、及びケラチン18も指し;KRT19はまた、非限定的に、ケラチン19、I型ケラチン細胞骨格19、40KDaケラチン中間径フィラメント、40Kd I型ケラチン、I型ケラチン19、サイトケラチン19、CK-19、K19、サイトケラチン19、ケラチン19、CK19、及びK1CSも指し;KRT8はまた、非限定的に、ケラチン8、II型ケラチン細胞骨格8、II型ケラチンKb8、II型ケラチン8、サイトケラチン8、CK-8、CYK8、K8、ケラチン8、CARD2、K2C8、CK8、及びKOも指し;LCP1はまた、非限定的に、リンパ球細胞質ゾルタンパク質1、LC64P、PLS2、L-PLASTIN、プラスチン-2、LCP-1、CP64、L-プラスチン(リンパ球細胞質ゾルタンパク質1)(LCP-1)(LC64P)、BA139H14.1(リンパ球細胞質ゾルタンパク質1(L-プラスチン))、リンパ球細胞質ゾルタンパク質1(L-プラスチン)、リンパ球細胞質ゾルタンパク質-1(プラスミン)、精巣上体分泌タンパク質Li37、プラスチン2、L-プラスチン、HEL-S-37、LPL3も指し;MKI67はまた、非限定的に、増殖についてのマーカーであるKi-67、モノクローナル抗体により同定される抗原であるKi-67、タンパク質ホスファターゼ1調節性サブユニット105、増殖についてのマーカータンパク質であるKi-67、抗原であるKi67、増殖関連のKi-67抗原、抗原であるKI-67、PPP1R105、MIB-1、MIB、及びKIAも指し;MYDGFはまた、非限定的に、骨髄由来増殖因子、仮称インターロイキン27、C19orf10、R33729_1、IL25、SF20、間質細胞由来増殖因子SF20、第19染色体オープンリーディングフレーム10、UPF0556タンパク質C19orf10、EUROIMAGE1875335、インターロイキン25、IL27w、及びIL27も指す。NODALはまた、非限定的に、Nodal増殖分化因子、Nodal相同体、Nodalマウス相同体、HTX5も指し;PITX2はまた、非限定的に、Paired様ホメオドメイン2、Paired様ホメオドメイン転写因子2、ARP1、ALL1応答性タンパク質であるARP1、ホメオボックスタンパク質PITX2、下垂体ホメオボックス2、ソルルシン、Otlx2、RIEG1、Brx1、IGDS、RIEG、RGS、RS、Rieg Bicoid関連ホメオボックス転写因子1、RIEG Bicoid関連ホメオボックス転写因子、All1応答性遺伝子1、ASGD4、IGDS2、IRID2、IDG2、IHG2も指し;PROX1はまた、非限定的に、Prosperoホメオボックス1、ホメオボックスProspero様タンパク質であるPROX1、Prospero関連ホメオボックス1も指し;SEPP1はまた、非限定的に、セレノプロテインP、セレノプロテインP血漿1、SELP、SeP、及びSEPPも指し;SERPINA1はまた、非限定的に、セルピンファミリーAメンバー1、アルファ1-アンチトリプシン、AAT、セルピンペプチダーゼ阻害剤クレードA(アルファ1抗プロテイナーゼ、アンチトリプシン)メンバー1、プロテアーゼ阻害剤1(抗エラスターゼ)アルファ1-アンチトリプシン、アルファ1プロテアーゼ阻害剤、アルファ1-抗プロテイナーゼ、セルピンA1、アルファ1AT、A1AT、A1A、PI1、PI、セリン(又はシステイン)プロテイナーゼ阻害剤クレードA(アルファ1抗プロテイナーゼ、アンチトリプシン)メンバー1、セルピンペプチダーゼ阻害剤クレードA(アルファ1抗プロテイナーゼ、アンチトリプシン)メンバー1、アルファ1-アンチトリプシン短鎖転写物変異体1C4、アルファ1-アンチトリプシン短鎖転写物変異体1C5、セルピンペプチダーゼ阻害剤クレードAメンバー1、ELSPBP(epididymal sperm binding protein)、アルファ1-アンチトリプシンヌル、アルファ1アンチトリプシン、PRO2275、NNIFも指し;SMAD7はまた、非限定的に、SMADファミリーメンバー7、MAD(Mothers Against Decapentaplegic)相同体7、MAD(Mothers Against DPP)相同体8、MAD相同体8、HSMAD7、MADH7、MADH8、MAD、MAD(Mothers Against DPP)相同体7、MAD相同体7、SMAD7、CRCS3、及びSmad7も指し
;SNAI2はまた、非限定的に、Snailファミリー転写抑制因子2、SLUGH、Snailファミリー亜鉛フィンガー2、亜鉛フィンガータンパク質SNAI2、タンパク質Snail相同体2、SLUGH1、SNAIL2、SLUG、Slug相同体亜鉛フィンガータンパク質(ニワトリ)、Slug(ニワトリ相同体)亜鉛フィンガータンパク質、神経堤転写因子SLUG、神経堤転写因子Slug、Snail相同体2(ショウジョウバエ属(Drosophila))、Snail相同体、WS2D3も指し;SOD1はまた、非限定的に、スーパーオキシドディスムターゼ1、可溶性スーパーオキシドディスムターゼ1、スーパーオキシドディスムターゼ[Cu-Zn]、EC 1.15.1.1、HSod1、筋委縮性側索硬化症1(成人型)、精巣上体分泌タンパク質Li44、細胞質ゾルスーパーオキシドディスムターゼ、Cu/Znスーパーオキシドディスムターゼ、インドフェノールオキシダーゼA、可溶性ホモ二量体SOD、HEL-S-44、IPOA、ALS1、SOD、及びALSも指し;SOX17はまた、非限定的に、SRYボックス転写因子17、SRY(Sex決定領域Y)ボックス17、転写因子SOX-17、SRYボックス17、SRY関連HMGボックス転写因子SOX17、及びVUR3も指し;SPARCはまた、非限定的に、酸性/システインリッチ分泌型タンパク質(secreted protein acidic and cysteine rich)、酸性/システインリッチ分泌型タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine)、基底膜タンパク質40、オステオネクチン、BM-40、ON、酸性システインリッチ分泌型タンパク質、システインリッチタンパク質、及びOI17も指し;TBX3はまた、非限定的に、Tボックス転写因子3、Tボックス3、Tボックス転写因子TBX3、Tボックスタンパク質3、膀胱癌関連タンパク質XHL、尺骨乳房症候群、TBX3-ISO、XHL、及びUMSも指し;TTRはまた、非限定的に、トランスサイレチン、プレアルブミンアミロイドーシスI型、PALB、ATTR、TBPA、精巣上体管腔タンパク質111、サイロキシン結合性プレアルブミン、手根管症候群1、プレアルブミン、HsT2651、HEL111、CTS1、及びCTSも指し;UGT3A1はまた、非限定的に、UDPグリコシルトランスフェラーゼファミリー3メンバーA1、UDPグリコシルトランスフェラーゼ3ファミリーポリペプチドA1、UDP-グルクロシルトランスフェラーゼ3A1、UDPGT3A1、FLJ34658も指し;VIMはまた、非限定的に、ビメンチン及びELSPBP(epididymal sperm binding protein)も指し;VTNはまた、非限定的に、ビトロネクチン、血清細胞伸展因子(serum spreading factor)、補体S-タンパク質、ソマトメジンB、S-タンパク質、V75、VN、血清細胞伸展因子(serum-spreading factor)、エピボリン、及びVNTも指す。
【0109】
本発明の範囲内では、ABCB11はまた、非限定的に、ATP結合性カセットサブファミリーBメンバー11、胆汁塩排出ポンプ、ATP結合性カセットサブファミリーB(MDR/TAP)メンバー11、進行性家族性肝臓内胆汁うっ滞2、ATP結合性カセットサブファミリーBメンバー11、ABCメンバー16MDR/TAPサブファミリー、BSEP、SPGP(sister of p-glycoprotein)、EC 3.6.3.44、EC 7.6.2.、EC 3.6.3、PFIC-2、ABC16、BRIC2、PFIC2、PGY4、及びSPGPも指し;ASGR1はまた、非限定的に、アシアロ糖タンパク質受容体1、C型レクチンドメインファミリー4メンバーH1、幹細胞様レクチンH1、CLEC4H1、HL-1、ASGP-R1、ASGPR1、ASGPR1、及びASGPRも指し;CYP1A2はまた、非限定的に、チトクロームP450ファミリー1サブファミリーAメンバー2、チトクロームP450、サブファミリーI(芳香族化合物誘導性)ポリペプチド2、チトクロームP450ファミリー1サブファミリーAポリペプチド2、ヒドロペルオキシエイコサテトラエノエートデヒドラターゼ、コレステロール25-ヒドロキシラーゼ、チトクロームP450 1A2、チトクロームP(3)450、チトクロームP450-P3、チトクロームP450 4、CYPIA2、フラビンタンパク質連結型モノオキシダーゼ、アリール炭水化物ヒドロキシラーゼ、ミクロソームモノオキシダーゼ、生体異物モノオキシダーゼ、ダイオキシン誘導性P3-450、EC 1.14.14.1、EC 1.14.14、EC 4.2.1.152、4型P450、P450(PA)、P3-450、及びCP12も指し;CYP2A6はまた、非限定的に、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーAメンバー6、チトクロームP450サブファミリーIIA(フェノバルビタール誘導性)ポリペプチド6、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーAポリペプチド6、1,4-シネオール2-エキソ-モノオキシダーゼ、クマリン7-ヒドロキシラーゼ、チトクロームP450IIA3、チトクロームP4502A6、チトクロームP450(I)、CYPIIA6、CYP2A3、フラビンタンパク質連結型モノオキシダーゼ、生体異物モノオキシダーゼ、EC 1.14.14.1、EC 1.14.13、P450C2A、P450PB、CYP2A、及びCPA6も指し;CYP2B6はまた、非限定的に、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーBメンバー6、チトクロームP450サブファミリーIIB(フェノバルビタール誘導性)ポリペプチド6、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーBポリペプチド6、1,4-シネオール2-エキソ-モノオキシダーゼ、チトクロームP450 IIB1、チトクロームP450 2B6、CYPIIB6、チトクロームP450サブファミリーIIB(フェノバルビタール誘導性)、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーB、EC 1.14.14.1、EC 1.14.13、CYP2B7P、CYP2B7、CYP2B、CPB6、EFVM、IIB1、及びP450も指し;CYP2B7Pはまた、非限定的に、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーBメンバー7シュード遺伝子、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーBポリペプチド7シュード遺伝子1、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーBポリペプチド7シュード遺伝子、チトクロームP450サブファミリーIIB(フェノバルビタール誘導性)ポリペプチド7、チトクロームP450 2B7Shortアイソフォーム、チトクロームP450 2B7アイソフォーム、CYP2B7P1、CYP2B7、及びCYP2Bも指し;CYP2C9はまた、非限定的に、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーCメンバー9、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーCポリペプチド9、チトクロームP450PB-1、チトクロームP4502C9、チトクロームP-450MP、CYP2C10、CYPIIC9、チトクロームP450サブファミリーIIC(メフェニトイン4-ヒドロキシラーゼ)ポリペプチド9、チトクロームP-450S-メフェニトイン4-ヒドロキシラーゼ、フラビンタンパク質連結型モノオキシダーゼ、(R)-リモネン6-モノオキシダーゼ、(S)-リモネン6-モノオキシダーゼ、(S)-リモネン7-モノオキシダーゼ、S-メフェニトイン4-ヒドロキシラーゼ、コレステロール25-ヒドロキシラーゼ、ミクロソームモノオキシダーゼ、生体異物モノオキシダーゼ、チトクロームP450MP-4、チトクロームP450MP-8、EC 1.14.14.53、EC 1.14.14.51、EC 1.14.14.52、EC 1.14.14.1、EC 1.14.14、P450IIC9、CYP2C、及びCPC9も指し;CYP2E1はまた、非限定的に、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーEメンバー1、チトクロームP450サブファミリーIIE(エタノール誘導性)ポリペプチド1、チトクロームP450ファミリー2サブファミリーEポリペプチド1、4-ニトロフェノール2-ヒドロキシラーゼ、チトクロームP4502E1、チトクロームP450-J、CYPIIE1、CYP2E、フラビンタンパク質連結型モノオキシダーゼ、ミクロソームモノオキシダーゼ、生体異物モノオキシダーゼ、EC 1.14.13.n7、EC 1.14.14.1、EC 1.14.14、P450C2E、P450-J、及びCPE1も指し;CYP3A7はまた、非限定的に、チトクロームP450ファミリー3サブファミリーAメンバー7、チトクロームP450ファミリー3サブファミリーAポリペプチド7、チトクロームP450サブファミリーIIIAポリペプチド7、チトクロームP450-HFLA、チトクロームP4503A7、CYPIIIA7、P450HLp2、フラビンタンパク質連結型モノオキシダーゼ、アリール炭水化物ヒドロキシラーゼ、ミクロソームモノオキシダーゼ、生体異物モノオキシダーゼ、P-450(HFL33)、EC 1.14.14.1、EC 1.14.14、P-450111A7、P450-HFLA、及びCP37も指し;F9はまた、非限定的に、第IX凝固因子、血漿トロンボプラスチン成分、血漿凝血誘発性成分、クリスマス因子、EC 3.4.21.22、PTC、第IX因子であるF9、血友病B、第IX因子、EC 3.4.21、因子9、F9P22、THPH8、HEMB、FIX、及びP19も指し;NAGSはまた、非限定的に、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ、N-アセチルグルタミン酸シンターゼミトコンドリア、アミノ酸アセチルトランスフェラーゼ、EC 2.3.1.1、AGAS、及びARGAも指し;PDX1はまた、非限定的に、膵/十二指腸ホメオボックス1、インスリンプロモーター因子1ホメオドメイン転写因子、ソマトスタチントランス活性化因子1、膵/十二指腸ホメオボックスタンパク質1、ソマトスタチン転写因子1、インスリン上流因子1、膵島/十二指腸ホメオボックス1、グルコース感受性因子、IDX-1、IPF-1、IUF-1、PDX-1、STF-1、IPF1、GSF、膵/十二指腸ホメオボックス因子1、インスリンプロモーター因子1、PAGEN1、MODY4、IUF1、及びSTF1も指し;UGT1A1はまた、非限定的に、UDPグルクロシルトランスフェラーゼファミリー1メンバーA1、UDPグリコシルトランスフェラーゼ1ファミリーポリペプチドA1、ビリルビン特異性UDPGTアイソザイム1、UDP-グルクロシルトランスフェラーゼ1-1、UDP-グルクロシルトランスフェラーゼ1-A、UDP-グルクロシルトランスフェラーゼ1A1、EC 2.4.1.17、UDPGT1-1、HUG-BR1、UGT1-01、UGT-1A、UGT1*1、UGT1.1、UGT1A、GNT1、UGT1、UDPグルクロシルトランスフェラーゼ1ファミリーポリペプチドA1、ビリルビンUDP-グルクロシルトランスフェラーゼアイソザイム1、ビリルビンUDP-グルクロシルトランスフェラーゼ1-1、ビリルビンUDP-グルクロシルトランスフェラーゼ、BILIQTL1、及びUDPGTも指す。
【0110】
例示的に述べると、UGマーカーであるT1A1は、通例、アンモニアの解毒及びビリルビンの抱合と関連する。一実施形態では、特に、細胞集団内の肝幹細胞は、UGマーカーであるT1A1の非発現(UGT1A1-)、好ましくは、ヒトUGマーカーであるT1A1の非発現により特徴づけられる。実際的に述べると、前記肝幹細胞様細胞は、アンモニアを解毒し、ビリルビンを抱合する能力が損なわれている。
【0111】
尿素サイクルを介するアンモニア代謝は、成熟の進行状況において、肝細胞の不可欠の機能であることが理解される。一部の実施形態では、アンモニア代謝は、尿素サイクル遺伝子(NAGS等)の発現の非存在、又は既知濃度の塩化アンモニウムの添加後24時間にわたる、細胞培養物上清中のアンモニウム濃度の変化により査定されうる。実際的に述べると、1mMの塩化アンモニウム標準物質を、細胞培養物へと添加し、塩化アンモニウム添加の24時間後に、上清を回収し、例えば、比色アンモニアアッセイキット(BioVision(登録商標)社製)を使用して、アンモニウム濃度を測定することができる。
【0112】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、少なくとも1つのマーカーである増殖因子、特に、マーカーである肝細胞増殖因子(HGF+)、及び/若しくは少なくとも1つのサイトカイン、並びに/又は抗炎症性特性、免疫抑制特性、抗線維化特性、抗脂肪症特性、及び/若しくは抗酸化ストレス特性等を有する、少なくとも1つの分子を発現する。一部の実施形態では、前記肝幹細胞様細胞は、多能性幹細胞(pSC)、人工多能性幹細胞(ipSC)、複能性幹細胞、分化肝細胞、及び分化形質転換非肝細胞からなる群から選択される前駆細胞に由来する。
【0113】
本明細書で使用される、「多能性細胞」という用語は、適切な条件下で、全体として、3つの胚葉(内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)に由来する細胞系統と関連する特徴を呈する細胞型への分化を経ることが可能な後代細胞を作出する能力を有する細胞を指す。多能性幹細胞は、出生前生物の組織に寄与する場合もあり、出生後生物の組織に寄与する場合もあり、成体生物の組織に寄与する場合もある。細胞集団の多能性を確立するのに、8~12週齢のSCIDマウスにおいて奇形腫を形成する能力についての検査等、当技術分野で許容される標準的検査が使用されうる。しかし、多様な多能性幹細胞特徴の同定はまた、多能性細胞を同定するのにも使用されうる。
【0114】
本発明の一部の実施形態では、多能性幹細胞は、動物多能性幹細胞、より好ましくは、ヒト多能性幹細胞である。
【0115】
ある特定の実施形態では、ヒト多能性幹細胞は、SSEA-3、SSEA-4、TRA-I-60、TRA-I-81、TRA-2-49/6E、ALP、SOX2、E-カドヘリン、UTF-I、OCT4、LIN28、REX1、及びNANOGからなる群から選択される、13のマーカーのうちの、少なくとも2つを発現する場合があり、任意選択で、これらの全てを発現しうる。本明細書で使用される、「少なくとも2つ」という表現は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、及び13を含む。
【0116】
本明細書で使用される、「人工多能性幹細胞」(iPSC)は、非多能性細胞に、人工的に由来する多能性幹細胞を指す。非多能性細胞は、自己再生し、分化する能力(又は潜在的可能性)が、多能性幹細胞と比較して、小さな細胞でありうる。潜在的可能性が小さな細胞は、体細胞性幹細胞、組織特異的前駆細胞、初代細胞、又は二次細胞でありうるがこれらに限定されない。iPSCは、胚の発生、増殖、及び細胞周期の制御に重要な因子、特に、OCT4、SOX2、c-MYC、及びKLF4による転写因子カクテルの強制発現、誘導発現、及び/若しくは過剰発現を介して、又はKLF4及びc-MYCを置き換えるか、若しくはNANOG及びLIN28を追加する、代替的な因子の組合せを介して、又は再プログラム化工程を改善することが当業者に公知である、任意の方法(DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤、miRNA、ビタミン等、低分子の使用の実行、低酸素状態等・・・)を介して、異なる細胞型を再プログラム化することにより、再現可能な形で得られている。
【0117】
本明細書で使用される、「再プログラム化」という用語は、所与の細胞内における、因子(又は再プログラム化因子)のセットの強制発現により、所与の細胞の運命を、異なる細胞型の運命へと変化させる工程を指す。再プログラム化因子をコードする発現ベクターに基づき、iPSCを作出するための方法については、当技術分野において、例えば、WO2007/69666、EP2096169、及びWO2010/042490において記載されている。実際的に述べると、再プログラム化は、再プログラム化因子の異所性発現を可能とする発現ベクター、特に、細菌人工染色体(BAC)ベクター、コスミドベクター、プラスミドベクター、トランスポゾンベースのベクター(PiggyBac)、ウイルスベクター、RNA、タンパク質、低分子等の使用を介して達成されうる。適切な発現ベクターについては、例えば、Gonzalezら(2011)において開示されている。
【0118】
一部の実施形態では、iPSCは、動物iPSC、より好ましくは、ヒトiPSC(hiPSC)である。ある特定の実施形態では、iPSC、好ましくは、hiPSCは、健常対象又は肝障害を伴う対象から、無差別的に得られた細胞に由来する。一部の実施形態では、iPSC、好ましくは、hiPSCは、肝障害を伴わない個体、特に、慢性肝障害を伴わない個体から得られた細胞に由来する。一部の代替的実施形態では、iPSC、好ましくは、hiPSCは、iPSC、好ましくは、hiPSCが、肝細胞に由来しないことを条件として、肝障害、特に、慢性肝障害を伴う個体から得られた細胞に由来する。実際的に述べると、iPSC、特に、hiPSCの選択は、自家移植を実施するために有利でありうる。iPSCの供給源の非限定例は、末梢血単核細胞(PBMC)、線維芽細胞、間葉系幹細胞、尿細胞等である。
【0119】
実際的に述べると、iPSCは、例えば、ATCC(登録商標)社製の市販品が入手可能である。iPSCの非限定例は、包皮線維芽細胞に由来するiPSC(ATCC(登録商標)ACS-7030);骨髄CD34+線維芽細胞に由来する、センダイウイルス再プログラム化hiPSC(ATCC(登録商標)ACS-1027;ATCC(登録商標)ACS-1028;ATCC(登録商標)ACS-1029;ATCC(登録商標)ACS-1030;ATCC(登録商標)ACS-1031);皮膚線維芽線維芽細胞に由来する、山中レトロウイルス再プログラム化hiPSC(ATCC(登録商標)ACS-1023);iPSC由来間葉系幹細胞(ATCC(登録商標)ACS-7010);肝臓線維芽線維芽細胞に由来する、センダイウイルス再プログラム化hiPSC(ATCC(登録商標)ACS-1020);心臓線維芽線維芽細胞に由来する、センダイウイルス再プログラム化hiPSC(ATCC(登録商標)ACS-1021)である。
【0120】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団は、任意選択で、固体支持体上の、間葉系幹細胞等の複能性細胞の分化から得られうる。
【0121】
本明細書で使用される、「複能性」という用語は、少なくとも2つの最終分化細胞型への分化が可能な細胞を指す。一部の実施形態では、本発明に従う複能性細胞は、動物複能性細胞、より好ましくは、ヒト複能性細胞である。
【0122】
本明細書で使用される、「間葉系幹細胞」(MSC)とは、一般に、特化組織(また、分化組織とも称される)に由来し、生物の生涯にわたる自己再生(すなわち、自己の同一のコピー)が可能であり、複能性分化の潜在的可能性を有する間質細胞を指す。一部の実施形態では、本発明に従うMSCは、動物MSC、より好ましくは、ヒトMSC(hMSC)である。
【0123】
実際的に述べると、したがって、本発明を実施するのに適するMSCは、任意の適切な分離法を使用して、任意の適切な組織から派生させた任意の適切なヒト複能性幹細胞を包含する。
【0124】
例示的に述べると、hMSCは、MIAMI(adult multilineage inducible)細胞(D'Ippolitoら、2004)、臍帯血由来幹細胞(Koglerら、2004)、MAB(mesoangioblast)(Sampaolesiら、2006;Dellavalleら、2007)、及び羊膜幹細胞(De Coppiら、2007)を包含するがこれらに限定されない。更に、臍帯血バンク(例えば、Etablissement Francais du Sang、France)は、移植のためのこのような細胞の、安全かつ容易に入手可能な供給源となる。hMSCは、例えば、CREATIVE BIOARRAY(登録商標)社製の市販品が入手可能である。hMSCの非限定例は、HMSC.BM-100;HMSC.AD-100;成人ヒト間葉系幹細胞(HMSC-Ad);ヒトホゥートンゼリー由来間葉系幹細胞(HMSC-WJ);臍帯マトリックス由来ヒト間葉系幹細胞(hMSC-UC);脂肪由来ヒト間葉系幹細胞(HMSC-ad);骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(HMSC-bm);肝臓由来ヒト間葉系幹細胞(HMSC-he)である。
【0125】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団は、分化肝細胞、すなわち、成体肝臓から分離された細胞(例えば、肝細胞性前駆細胞)の分化から得られうる。一部の実施形態では、分化肝細胞は、動物分化肝細胞、より好ましくは、ヒト分化肝細胞である。
【0126】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団は、非肝細胞の分化形質転換、すなわち、線維芽細胞等の体細胞の転換から得られうる。一部の実施形態では、分化形質転換肝細胞は、動物分化形質転換肝細胞、より好ましくは、ヒト分化形質転換肝細胞である。
【0127】
一部の実施形態では、前記多能性幹細胞(pSC)は、胚性幹細胞(ESC)から得られ、好ましくは、ヒト胚性幹細胞(hESC)から得られる。
【0128】
本明細書で使用される、「胚性幹細胞」とは、3つの胚葉、すなわち、内胚葉、外胚葉、若しくは中胚葉のうちのいずれか1つの細胞への分化、又は未分化状態における維持が可能な胚細胞を指す。このような細胞は、妊娠の後に形成された胚組織(例えば、胚盤胞)であって、胚の着床前における胚組織(すなわち、着床前胚盤胞)から得られる細胞、着床後/プレ原腸形成期胚盤胞から得られる、拡張胚盤胞細胞(EBC)(WO2006/040763を参照されたい)、妊娠期間中の任意の時点において、好ましくは、妊娠の10週間前に胎児の生殖器組織から得られる胚性生殖(EG)細胞、及び単為生殖法又は核移植等、非受精卵を伴う、他の方法により得られる細胞を含みうる。
【0129】
実際的に述べると、適切な胚性幹細胞は、周知の細胞培養法を使用して得られうる。例えば、hESCは、ヒト胚盤胞から分離されうる。ヒト胚盤胞は、典型的に、ヒトin vivo着床前胚、又は体外受精(IVF)胚から得られる。代替的に、単一細胞ヒト胚は、胚盤胞期胚へと拡張されうる。hESCを調製する方法についての更なる詳細は、米国特許第5,843,780号において見出されうる。
【0130】
実際的に述べると、hESCは、Chungら(2008)により記載されている通りに、胚を破壊せずに、又は、Sagiら(2016)により記載されている通りに、未受精卵母細胞の、単為生殖活性化により得られると有利でありうる。
【0131】
一部の態様では、本発明は、本発明に従う肝幹細胞様細胞に由来する細胞に更に関する。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞に由来する細胞は、肝細胞様細胞(HLC)及び胆管細胞を含む。本明細書で使用される、「胆管細胞」という用語は、胆管の上皮細胞を指すように意図される。本明細書で使用される、本発明に従う肝幹細胞様細胞に由来する細胞は、前記肝幹細胞様細胞の後代を構成する。
【0132】
本明細書で使用される、「これらの抽出物」という用語は、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、特に、分離細胞集団の抽出物を指す。「抽出物」という用語は、抽出物が、肝幹細胞様細胞の特性、特に、これらの治療特性を保存すると仮定した場合に、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、特に、分離細胞集団の培養物から得られる、任意の細胞画分又は培養物上清を指す。
【0133】
細胞画分は、最新技術から公知である、任意の適切な方法、又はこれに由来する適合法に従い得られうる。細胞画分の取得は、機械的細胞溶解、化学的細胞溶解、及び/又は酵素的細胞溶解、遠心分離、超遠心分離、アフィニティークロマトグラフィーを含みうる。細胞画分は、細胞質ゾル画分、細胞質画分、細胞膜画分、可溶性画分、不溶性画分、小胞、エキソソーム、及びこれらの組合せを包含する。
【0134】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞、又は肝幹細胞様細胞を含むか、若しくはこれらからなる細胞集団、特に、分離細胞集団の抽出物は、エキソソーム又はエキソソーム様小胞を含む。
【0135】
本明細書で使用される、「エキソソーム」という用語は、体内のほぼ全ての細胞型により天然に分泌される、エンドサイトーシス由来ナノ小胞を指す場合がある。エキソソームは、タンパク質、核酸、及び脂質を含む、脂質性小胞である。実際的に述べると、エキソソームは、最新技術により公知である、任意の適切な方法、又はこれに由来する適合法に従い回収、分離、及び/又は精製されうる。
【0136】
例示的に述べると、エキソソーム画分は、分画遠心分離により、培養培地から分離される場合もあり、ポリマー沈殿により分離される場合もあり、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離される場合もある。培養培地からの分画遠心分離法の非限定例は、以下の工程:
1)細胞を除去するような、約300×g~約500×gの速度における、10~20分間にわたる遠心分離;
2)死細胞を除去するような、約1,500×g~約3,000×gの速度における、10~20分間にわたる遠心分離;
3)細胞破砕物を除去するような、約7,500×g~約15,000×gの速度における、20~45分間にわたる遠心分離;
4)エキソソームをペレット化するような、約100,000×g~約200,000×gの速度における、30~120分間ずつ、1回又は複数回にわたる、超遠心分離を含みうる。
【0137】
代替的に、エキソソーム又はエキソソーム様小胞の分離は、例えば、exoEasy Maxi Kit(QIAGEN(登録商標)社製)、又はTotal Exosome Isolation Kit(THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)等、市販のキットにより実施されうる。
【0138】
一部の実施形態では、エキソソーム又はエキソソーム様小胞は、約1nm~約250nm、好ましくは、約20nm~約200nm、より好ましくは、約90nm~150nmの範囲の平均直径を有する。本発明の範囲内では、「約1nm~約250nm」という表現は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、及び250nmを含む。
【0139】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるアルファ-フェトプロテインを更に含み(AFP+)、マーカーであるアルブミンを含まない(ALB-)。
【0140】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び/又は肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)、好ましくは、T-Box転写因子3マーカー(TBX3+)及び肝細胞核内因子4アルファマーカー(HNF4A+)を更に含む。
【0141】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、少なくとも1つのマーカー、特に、少なくとも2つのマーカー、より特定すると、3つのマーカー、好ましくは、KRT19、EPCAM、及びTTRからなる群から選択されるヒトマーカーを更に含む。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、少なくとも1つのマーカー、特に、少なくとも2つのマーカー、より特定すると、3つのマーカー、なおより特定すると、4つのマーカー、好ましくは、KRT19、EPCAM、TTR、及びHGFからなる群から選択されるヒトマーカーを更に含む。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、少なくとも1つのマーカー、特に、少なくとも2つのマーカー、より特定すると、3つのマーカー、好ましくは、KRT19、EPCAM、及びTTRからなる群から選択されるヒトマーカーを更に含み;かつ/又はHGF、好ましくは、ヒトHGFを更に発現する。
【0142】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるAFP、TBX3、及びHNF4Aを更に含み、マーカーであるALBを含まない。ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、及びHGFを更に含み、マーカーであるALBを含まない。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、及びTTRを更に含み、マーカーであるALBを含まない。ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、HGF、及びTTRを更に含み、マーカーであるALBを含まない。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、及びEPCAMを更に含み、マーカーであるALBを含まない。ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、EPCAM、及びHGFを更に含み、マーカーであるALBを含まない。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、EPCAM、TTR、及びKRT19を更に含み、マーカーであるALBを含まない。ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、マーカーであるAFP、TBX3、HNF4A、EPCAM、TTR、KRT19、及びHGFを更に含み、マーカーであるALBを含まない。好ましくは、マーカーは、ヒトマーカーである。
【0143】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞から得られる抽出物は、ACTB、ATG1、AFP、ANXA2、ANXA5、ANXA6、APOA1、APOA2、APOA4、APOB、APOC3、APOE、BMP2、BMP4、CD164、CD24、CD63、CD81、CD9、CD99、CLTC、CXCR4、DCN、DLK1、DPP4、EEF1A1、EEF2、ENO1、EPCAM、FGF19、FOXA2、GAPDH、GATA4、GATA6、GJA1、GPC3、GSTA1、GSTA2、HGF、HMOX1、HNF1B、HNF4A、HSP90AA1、HSP90AB、HSPA8、HSPG2、IGF1、IGFBP3、IL6ST、ITGA6、KRT18、KRT19、KRT8、LCP1、MKI67、MYDGF、NODAL、PKM、PITX2、PROX1、SEPP1、SERPINA1、SMAD7、SNAI2、SOD1、SOX17、SPARC、TBX3、TFRC、TUBA1A、TUBB、TUBB3、TUBB6、TUBB4A、TUBB4B、TUBA1B、TUBB2A、TUBB2B、TTR、UGT3A1、VIM、及びVTNからなる群から選択されるマーカーのうちの1つ又は複数を含む場合があり、かつ/又はALB、ABCB11、ASGR1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2B7P、CYP2C9、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A7、F9、NAGS、PDX1、UGT1A1からなる群から選択されるマーカーのうちの1つ又は複数を含真ない場合がある。
【0144】
本発明は、本明細書で開示される肝幹細胞様細胞を作出するための方法であって、
a)マーカーであるアルファ-フェトプロテインを発現し(AFP+)、かつ、マーカーであるアルブミンを発現しない(ALB-)肝幹細胞様細胞を作出するように、誘導培養培地中で、確定内胚葉細胞を培養する工程;
b)工程a)で作出された肝幹細胞様細胞を分離する工程
を含む方法に更に関する。
【0145】
一部の実施形態では、分離肝幹細胞様細胞は、細胞集団を構成する。
【0146】
本明細書で使用される、「確定内胚葉細胞」とは、マーカーであるSOX17及びFOXA2を含むがこれらに限定されない、分化の確定内胚葉段階に特徴的な表現型マーカーを発現する細胞を指す。加えて、確定内胚葉細胞は、マーカーであるALBを発現しない(ALB-)細胞である。
【0147】
本明細書で使用される、「誘導培養培地」とは、本発明により規定される、確定内胚葉細胞の、肝幹細胞様細胞への分化を誘導することが可能な培養培地を指す。
【0148】
実際的に述べると、「培養培地」とは、細胞生物学の分野において、一般に許容される定義の培地、すなわち、目的の細胞の増殖の促進に適する、任意の培地を指す。一部の実施形態では、適切な培養培地は、既知組成培地、すなわち、指定された成分、好ましくは、化学構造が既知の成分だけを含有する栄養培地を含みうる。
【0149】
一部の実施形態では、既知組成培地は、無血清培地の場合もあり、かつ/又はフィーダーフリー培地の場合もある。本明細書で使用される、「無血清」培地は、血清の添加を含有しない培養培地を指す。本明細書で使用される、「フィーダーフリー」培地は、フィーダー細胞の添加を含有しない培養培地を指す。
【0150】
本発明に従う使用に適切な培養培地は、1つ又は複数の塩、炭素供給源、アミノ酸、ビタミン、鉱物、還元剤、緩衝剤、脂質、ヌクレオシド、抗生剤、サイトカイン、及び増殖因子等の物質の組合せを含みうる水性培地でありうる。適切な培養培地の例は、限定せずに述べると、上記で言及された物質のうちのいずれか1つを更に補充されうる、RPMI培地、ウィリアムE培地、イーグル基礎培地(BME)、イーグル最小必須培地(EMEM)、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF-10、ハムF-12培地、ハムF-12(Kaighn's modified Ham's F-12)培地、DMEM/F-12培地、及びマッコイ5A培地を含む。一部の実施形態では、本発明に従う培養培地は、RPMI(Roswell Park Memorial Institute)培地、又はCMRL(Connaught Medical Research Laboratory)-1066培地等の合成培養培地でありうる。
【0151】
実際的に述べると、培地は、更なる添加剤を補充されうる。例示的に述べると、INVITROGEN(登録商標)社から市販されているB-27サプリメントは、インスリン、アルブミン、スーパーオキシダーゼディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、及び他の抗酸化剤(GSH)、並びにリノール酸、リノレン酸、及びリポ酸等、固有の脂肪酸を含むので、適切なサプリメントを表しうる。
【0152】
一部の実施形態では、工程a)は、骨髄形成タンパク質、好ましくは、BMP4を含み、かつ/又は線維芽細胞増殖因子、好ましくは、FGF10を含み、任意選択で、肝細胞増殖因子(HGF)及び/又はGSK3阻害剤、好ましくは、CHIR-99021を含む、誘導培養培地中において、約5日間~8日間にわたり実施される。
【0153】
一部の実施形態では、骨髄形成タンパク質(BMP)は、例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF-8/ミオスタチン、Nodal、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3等、AR Smadを活性化させる分子と;例えば、BMP2、BMP4、BMP6、BMP8a、BMP8b、GDF5、GDF6、GDF7、AMH等、BR Smadを活性化させる分子とを含む、TGF-ベータスーパーファミリーのメンバーである、増殖因子の群から選択される。本発明に従う、適切なBMPは、例えば、Miyazonoら(2019)において開示されている。
【0154】
一部の実施形態では、線維芽増殖因子(FGF)は、FGF1(また、aFGFとも称される)、FGF2(また、bFGFとも称される)を含む、FGF1サブファミリーに由来するFGF;FGF4、FGF5、FGF6を含む、FGF4サブファミリーに由来するFGF;FGF3、FGF7、FGF10、FGF22を含む、FGF7サブファミリーに由来するFGF;FGF8、FGF17、FGF18を含む、FGF8サブファミリーに由来するFGF;FGF9、FGF16、FGF20を含む、FGF9サブファミリーに由来するFGF;FGF11、FGF12、FGF13、FGF14を含む、FGF11サブファミリーに由来するFGF;及びFGF15/19、FGF21、FGF23を含む、FGF19サブファミリーに由来するFGFからなる群から選択される。一部の実施形態では、線維芽増殖因子(FGF)は、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF15/19、FGF20、FGF21、FGF22、及びFGF23からなる群から選択される。
【0155】
実際的に述べると、骨髄形成タンパク質(BMP)及び/又は線維芽増殖因子(FGF)は、誘導培地中に、約0.01ng/ml~約500ng/ml、好ましくは、約0.5ng/ml~約250ng/ml、より好ましくは、約1ng/ml~約50ng/mlの濃度で存在する。本発明の範囲内では、「約0.01ng/ml~約500ng/ml」という表現は、0.01ng/ml、0.05ng/ml、0.1ng/ml、0.5ng/ml、1.0ng/ml、1.5ng/ml、2.0ng/ml、2.5ng/ml、5.0ng/ml、7.5ng/ml、10.0ng/ml、12.5ng/ml、15.0ng/ml、17.5ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/ml、150ng/ml、200ng/ml、250ng/ml、300ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、及び500ng/mlを包含する。
【0156】
一部の実施形態では、BMP4は、誘導培地中に、約0.1ng/ml~約100ng/ml、好ましくは、約0.5ng/ml~約50ng/ml、より好ましくは、約1ng/ml~約25ng/mlの濃度で含まれる。
【0157】
一部の実施形態では、FGF10は、誘導培地中に、約0.1ng/ml~約100ng/ml、好ましくは、約0.5ng/ml~約50ng/ml、より好ましくは、約1ng/ml~約25ng/mlの濃度で含まれる。
【0158】
本発明の範囲内では、「約0.1ng/ml~約100ng/ml」という表現は、0.1ng/ml、0.5ng/ml、1.0ng/ml、1.5ng/ml、2.0ng/ml、2.5ng/ml、5.0ng/ml、7.5ng/ml、10.0ng/ml、12.5ng/ml、15.0ng/ml、17.5ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、及び100ng/mlを包含する。
【0159】
誘導培地中に存在する場合、肝細胞増殖因子(HGF)は、約0.5ng/ml~約150ng/ml、好ましくは、約1ng/ml~約100ng/ml、より好ましくは、約5ng/ml~約50ng/mlの濃度で含まれる。本発明の範囲内では、「約0.5ng/ml~約150ng/ml」という表現は、0.5ng/ml、1.0ng/ml、1.5ng/ml、2.0ng/ml、2.5ng/ml、5.0ng/ml、7.5ng/ml、10.0ng/ml、12.5ng/ml、15.0ng/ml、17.5ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/ml、110ng/ml、120ng/ml、130ng/ml、140ng/ml、及び150ng/mlを包含する。
【0160】
本発明の範囲内では、「約5日間~約8日間にわたり」は、5、6、7、及び8日間を包含する。
【0161】
一部の実施形態では、工程a)の前に、マーカーであるFOXA2及びSOX17を発現する確定内胚葉細胞を作出するように、多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は複能性幹細胞を、培養培地中で培養することを含む工程a1)が行われる場合もある。とりわけ、確定内胚葉細胞は、マーカーであるALBを発現しない(ALB-)細胞である。
【0162】
ある特定の実施形態では、工程a1)は、GSK3阻害剤、好ましくは、CHIR-99021を含み、任意選択で、形質転換増殖因子ベータ化合物、好ましくは、ACT-A、及び/又はWntシグナル伝達経路の活性化因子、好ましくは、Wnt3Aを含む培養培地中において、約3日間~約6日間にわたり実施されうる。
【0163】
本発明の範囲内では、「約3日間~約6日間にわたり」は、3、4、5、及び6日間を包含する。
【0164】
一部の実施形態では、GSK3阻害剤は、3F8(CAS登録番号:159109-11-2)、アルステルパウロン(CAS登録番号:237430-03-4)、CHIR-98014(CAS登録番号:252935-94-7)、CHIR-99021(CAS登録番号:1797989-42-4)、インジルビン-3'-オキシム(CAS登録番号:160807-49-8)、ケンパウロン(CAS登録番号:142273-20-9)、SB216763(CAS登録番号:280744-09-4)、TC-G24(CAS登録番号:1257256-44-2)、TCS2002(CAS登録番号:1005201-24-0)、及びTWS119(CAS登録番号:601514-19-6)、リチウム、銅、水銀、タングステン、亜鉛-クルクミン、ベリリウム、6-BIO、ジブロモカンタレリン、ヒメニアルデシン、インジルビン、メリジアニン、CT98014、CT98023、CT99021、SB-41528、AR-A014418、AZD-1080、カズパウロン、マンザミンA、パリヌリン、トリカンチン、TDZD-8、NP00111、NP031115、チデグルシブ、HMK-32、L803-mts、バルプロ酸、クルクミン、アロイシン、IM-12、LY2090314からなる群から選択される。実際的に述べると、GSK3阻害剤は、例えば、SANTACRUZBIOTECHNOLOGY(登録商標)、SELLECKCHEM(登録商標)、及びTOCRIS(登録商標)社製の市販品が入手可能である。
【0165】
一部の実施形態では、GSK3阻害剤は、培養培地中に、約0.01μM、~約50μM、の濃度で存在する。本発明の範囲内では、「約0.01μM、~約50μM、」という表現は、0.01μM、0.02μM、0.03μM、0.04μM、0.05μM、0.06μM、0.07μM、0.08μM、0.09μM、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1.0μM、1.5μM、2.0μM、2.5μM、3.0μM、3.5μM、4.0μM、4.5μM、5.0μM、5.5μM、6.0μM、6.5μM、7.0μM、7.5μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、及び50μMを包含する。
【0166】
一部の実施形態では、GSK3阻害剤は、CHIR-99021である。一部の実施形態では、CHIR-99021は、培養培地中に、約0.1μM、~約15μM、好ましくは、約0.5μM、~約10μM、より好ましくは、約1μM、~約5μM、の濃度で含まれる。本発明の範囲内では、「約0.1μM、~約15μM、」という表現は、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1.0μM、1.5μM、2.0μM、2.5μM、3.0μM、3.5μM、4.0μM、4.5μM、5.0μM、5.5μM、6.0μM、6.5μM、7.0μM、7.5μM、8.0μM、9.0μM、10.0μM、11.0μM、12.0μM、13.0μM、14.0μM、及び15μMを包含する。
【0167】
一部の実施形態では、形質転換増殖因子ベータ化合物は、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、AMH、BMP2、BMP4、BMP6、BMP8a、BMP8b、GDF5、GDF6、GDF7、GDF-8/ミオスタチン、Nodal、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3からなる群から選択される。
【0168】
実際的に述べると、形質転換増殖因子ベータは、培養培地中に、約0.01ng/ml~約1,000ng/ml、好ましくは、約0.5ng/ml~約500ng/ml、より好ましくは、約1ng/ml~約250ng/mlの濃度で存在する。本発明の範囲内では、「約0.01ng/ml~約1,000ng/ml」という表現は、0.01ng/ml、0.05ng/ml、0.1ng/ml、0.5ng/ml、1.0ng/ml、1.5ng/ml、2.0ng/ml、2.5ng/ml、5.0ng/ml、7.5ng/ml、10.0ng/ml、12.5ng/ml、15.0ng/ml、17.5ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/ml、150ng/ml、200ng/ml、250ng/ml、300ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、500ng/ml、600ng/ml、700ng/ml、800ng/ml、900ng/ml、及び1,000ng/mlを包含する。
【0169】
一部の実施形態では、形質転換増殖因子ベータ化合物は、アクチビンA(ACT-A)である。培養培地中に存在する場合、ACT-Aは、約1ng/ml~約500ng/ml、好ましくは、約25ng/ml~約250ng/ml、より好ましくは、約50ng/ml~約150ng/mlの濃度で含まれる。本発明の範囲内では、「約1ng/ml~約500ng/ml」という表現は、1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、50ng/ml、75ng/ml、100ng/ml、150ng/ml、200ng/ml、250ng/ml、300ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、及び500ng/mlを包含する。
【0170】
一部の実施形態では、Wntシグナル伝達経路の活性化因子は、Wnt-1(また、Int-1とも称される)、Wnt-2(また、Irp(Int-1関連タンパク質)とも称される)、Wnt-2b(また、Wnt-13とも称される)、Wnt-3(Int-4と称される)、Wnt-3a、Wnt-4、Wnt-5a、Wnt-5b、Wnt-6、Wnt-7a、Wnt-7b、Wnt-8a(Wnt-8dと称される)、Wnt-8b、Wnt-9a(Wnt-14と称される)、Wnt-9b(Wnt-14b又はWnt-15と称される)、Wnt-10a、Wnt-10b(Wnt-12と称される)、Wnt-11、Wnt-12(また、Wnt-10bとも称される)、Wnt-13(また、Wnt-2bとも称される)、Wnt-14(また、Wnt-9aとも称される)、Wnt-14b(また、Wnt-9abとも称される)、Wnt-15(また、Wnt-9bとも称される)、及びWnt-16からなるWntファミリーの群から選択される。
【0171】
実際的に述べると、Wntシグナル伝達経路の活性化因子は、培養培地中に、約0.01ng/ml~約1,000ng/ml、好ましくは、約0.5ng/ml~約500ng/ml、より好ましくは、約1ng/ml~約250ng/mlの濃度で存在する。
【0172】
一部の実施形態では、Wntシグナル伝達経路の活性化因子は、Wnt-3aである。培養培地中に存在する場合、Wnt-3aは、約1ng/ml~約250ng/ml、好ましくは、約5ng/ml~約150ng/ml、より好ましくは、約25ng/ml~約100ng/mlの濃度で含まれる。本発明の範囲内では、「約1ng/ml~約250ng/ml」という表現は、1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、50ng/ml、75ng/ml、100ng/ml、125ng/ml、150ng/ml、175ng/ml、200ng/ml、225ng/ml、及び250ng/mlを包含する。
【0173】
実際的に述べると、工程b)は、当技術分野で公知である、任意の適切な方法により、例えば、FACSにより実施される場合があり、任意選択で、望ましくない成分を、培養培地から除去するように、細胞の、適切な培地(培養培地又は適切な細胞緩衝液)中の、1回又は複数回の洗浄が実施されうる。
【0174】
ある特定の実施形態では、工程a)に後続して、工程a)を実施するのに使用される培養容器からの、細胞のストリッピングを含む工程b1)が行われる場合があり、かつ、工程b)に先行して、これが行われうる。実際的に述べると、ストリッピングは、細胞を、EDTA及び/若しくはトリプシンと接触させることを含む、化学ストリッピング並びに/又は酵素的ストリッピングにより実施される場合もあり;かつ/又は適切なツール(例えば、スパチュラ)によるスクレーピング、若しくはエブ/フローの創出によるストリッピングを含む、機械的ストリッピングにより実施される場合もある。
【0175】
本発明者らは、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、機能的健常肝臓内の肝細胞の成熟特徴を提示する、肝細胞様細胞(HLC)と比較した場合に、容易に操作されることを観察した。実際に、in vitroにおいて作出されたHLCは、互いに強く接着し、培養容器にも強く接着する。したがって、HLCの回収は、化学的ストリッピング及び/又は酵素的ストリッピング及び/又は機械的ストリッピングの過酷な条件を要求する。産業的スケールでは、機械的ストリッピングは、実施が可能でないことが多い結果として、収量に対して、否定的影響を及ぼす。HLCとは対照的に、本発明に従う肝幹細胞様細胞は、例えば、化学的ストリッピングによる、低度~中程度のストリッピング条件が、肝幹細胞様細胞のうちの90%を超える細胞を回収するのに十分であるので、それらを作出するのに使用される培養容器から、容易に回収される。
【0176】
本明細書で使用される、低度又は中程度の化学的ストリッピング条件及び/又は酵素的ストリッピング条件は、最終濃度を、最大で約0.5%(v/v)以下とし、かつ/又は最大で約1mMのEDTA以下とする、トリプシンの使用を含む。
【0177】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞の、培養容器からの酵素的ストリッピングは、前記細胞を、約0.0125%~約0.5%のトリプシンと接触させることを含む。本発明の範囲内では、「約0.0125%~約0.5%のトリプシン」という用語は、0.0125%、0.015%、0.0175%、0.02%、0.0225%、0.025%、0.0275%、0.03%、0.0325%、0.035%、0.0375%、0.04%、0.0425%、0.045%、0.0475%、0.05%、0.0525%、0.055%、0.0575%、0.06%、0.0625%、0.0650%、0.0675%、0.07%、0.0725%、0.075%、0.0775%、0.08%、0.0825%、0.085%、0.0875%、0.09%、0.0925%、0.095%、0.0975%、0.1%、0.125%、0.15%、0.175%、0.2%、0.225%、0.25%、0.275%、0.3%、0.325%、0.35%、0.375%、0.4%、0.425%、0.45%、0.475%、及び0.5%を含む。一部の実施形態では、トリプシンは、例えば、TrypLE(商標)Express又はTrypLE(商標)Select等、THERMOFISCHER SCIENTIFIC(登録商標)社製の市販品が入手可能である。
【0178】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞の、培養容器からの化学的ストリッピングは、前記細胞を、約0.01mM~約1mMのEDTAと接触させることを含む。本発明の範囲内では、「約0.01mM~約1mMのEDTA」という用語は、0.01mM、0.02mM、0.03mM、0.04mM、0.05mM、0.06mM、0.07mM、0.08mM、0.09mM、0.1mM、0.15mM、0.2mM、0.25mM、0.3mM、0.35mM、0.4mM、0.45mM、0.5mM、0.55mM、0.6mM、0.65mM、0.7mM、0.75mM、0.8mM、0.85mM、0.9mM、0.95mM、及び1mMのEDTAを含む。
【0179】
一部の実施形態では、複能性幹細胞(PSC)は、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)、好ましくは、胚性幹細胞(ESC)、より好ましくは、ヒト胚性幹細胞(hESC)である。
【0180】
実際的に述べると、温度、pH、塩分濃度、O2及びCO2のレベル等の培養パラメータは、最新技術により確立された基準に従い調整される。
【0181】
一部の実施形態では、培養経過中のCO2レベルは、一定に維持され、約1%~約10%、好ましくは、約2.5%~約7.5%の範囲である。本発明の範囲内では、「約1%~約10%」という表現は、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、及び10%を包含する。
【0182】
例示的に述べると、本発明に従う細胞を培養するための温度は、約30℃~約42℃、好ましくは、約35℃~約40℃の範囲であることが可能であり、より好ましくは、約36℃~約38℃の範囲でありうる。本発明の範囲内では、「約30℃~約42℃」という表現は、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、及び42℃を包含する。
【0183】
ある特定の実施形態では、培養培地は、培養経過中に、少なくとも隔日で、好ましくは、毎日交換される。実際的に述べると、培養培地は、除去され、細胞は、未使用の培養培地で、1回又は2回洗浄される場合があり、未使用の培養培地が、細胞へと供給される。
【0184】
一部の実施形態では、肝幹細胞様細胞を作出するのに適切な培養培地中の、細胞の培養は、マトリックス、例えば、細胞外マトリックスの存在下で実施されうる。
【0185】
本明細書で使用される、「マトリックス」という用語は、in vitroにおける培養細胞(例えば、平面状のプラスティック製容器等の培養容器)に、in vivo様の形状及び生理学的に妥当な環境をもたらすポリマー性ネットワークを形成する天然の成分/材料、合成の成分/材料、又はこれらの組合せを指す。言い換えれば、マトリックス、特に、細胞外マトリックスは、培養される細胞に、細胞間相互作用を強化し、細胞付着を容易とし、細胞の増殖及び分化を改善することが意図される、より現実的環境をもたらす。
【0186】
一部の実施形態では、マトリックス、特に、細胞外マトリックスは、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの成分を含みうる。
【0187】
ある特定の実施形態では、マトリックス、特に、細胞外マトリックスは、少なくとも1つのラミニンを含むか、又はこれらからなり、この場合、好ましくは、前記少なくとも1つのラミニンは、ラミニン111(LN-111)、ラミニン211(LN-211)、ラミニン332(LN-332)、ラミニン411(LN-411)、ラミニン421(LN-421)、ラミニン511(LN-511)、及びラミニン521(LN-521)、並びにこれらの機能的フラグメントからなる群から選択される。本明細書で使用される、「機能的フラグメント」という用語は、全長ラミニンタンパク質の生物学的機能を再現するラミニンフラグメントを指す。
【0188】
一部の実施形態では、前記ラミニンは、動物ラミニン、好ましくは、ヒトラミニン、より好ましくは、ヒト組換えラミニンである。本明細書で使用される、「組換え」という用語は、対応するコード核酸からの発現により作製されるラミニンを指す。様々な異なる宿主細胞内の、ポリペプチドのクローニング及び発現のためのシステムは、当技術分野で周知である。実際的に述べると、例えば、組換えヒトLN-111又はLN-521等の組換えヒトラミニンは、BIOLAMINA(登録商標)社製の市販品が入手可能である。
【0189】
本発明の一部の実施形態では、プレート(例えば、ペトリディッシュ)又はバイアル等の固体支持体(培養容器)は、約0.02μg/ml~約50μg/ml、好ましくは、約0.1μg/ml~約10μg/ml、より好ましくは、約5μg/mlの範囲の濃度のラミニンでコーティングされうる。本発明の範囲内では、「約0.02μg/ml~約50μg/ml」という表現は、0.02μg/ml、0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.5μg/ml、1.0μg/ml、1.5μg/ml、2.0μg/ml、2.5μg/ml、5.0μg/ml、7.5μg/ml、10.0μg/ml、12.5μg/ml、15.0μg/ml、17.5μg/ml、20μg/ml、25μg/ml、30μg/ml、35μg/ml、40μg/ml、45μg/ml、及び50μg/mlを包含する。
【0190】
本発明の一部の実施形態では、プレート(例えば、ペトリディッシュ)又はバイアル等の固体支持体(培養容器)は、約0.02μg/ml~約100μg/ml、好ましくは、約0.1μg/ml~約50μg/ml、より好ましくは、約25μg/mlの範囲の濃度のラミニンの機能的フラグメントでコーティングされうる。本発明の範囲内では、「約0.02μg/ml~約100μg/ml」という表現は、0.02μg/ml、0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.5μg/ml、1.0μg/ml、1.5μg/ml、2.0μg/ml、2.5μg/ml、5.0μg/ml、7.5μg/ml、10.0μg/ml、12.5μg/ml、15.0μg/ml、17.5μg/ml、20μg/ml、25μg/ml、30μg/ml、35μg/ml、40μg/ml、45μg/ml、50μg/ml、60μg/ml、70μg/ml、80μg/ml、90μg/ml、及び100μg/mlを包含する。
【0191】
ある特定の実施形態では、マトリックス、特に、細胞外マトリックスは、特に、約5%/95%;10%/90%;20%/80%;25%/75%;30%/70%;40%/60%;50%/50%;60%/40%;70%/30%;75%/25%;80%/20%;90%/10%;95%/5%のそれぞれの比における、LN-521と、LN-111との混合物を含みうるか、又はこれらからなりうる。
【0192】
一部の実施形態では、細胞外マトリックス中に含まれる、少なくとも1つのコラーゲンは、線維状コラーゲンである。一部の実施形態では、前記線維状コラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、XI型コラーゲン、XXIV型コラーゲン、XXVII型コラーゲン、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、コラーゲン、好ましくは、線維状コラーゲンは、培養培地中に、約0.25mg/ml~約3.00mg/mlの濃度で存在する。本発明の範囲内では、「約0.25mg/ml~約3.00mg/ml」は、約0.25mg/ml、0.50mg/ml、0.75mg/ml、1.00mg/ml、1.25mg/ml、1.50ng/ml、1.75mg/ml、2.00mg/ml、2.25mg/ml、2.50mg/ml、2.75mg/ml、及び3.00mg/mlを包含する。
【0193】
一実施形態では、存在する場合、フィブロネクチンは、約0.01mg/ml~約10mg/mlの濃度である。本発明の範囲内では、「約0.01mg/ml~約10mg/ml」は、約0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/ml、0.25mg/ml、0.50mg/ml、0.75mg/ml、1mg/ml、1.25mg/ml、1.50ng/ml、1.75mg/ml、2mg/ml、2.25mg/ml、2.50mg/ml、2.75mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、及び10mg/mlを包含する。
【0194】
一実施形態では、存在する場合、ゼラチンは、約0.01mg/ml~約10mg/mlの濃度である。本発明の範囲内では、「約0.01mg/ml~約10mg/ml」は、約0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/ml、0.25mg/ml、0.50mg/ml、0.75mg/ml、1mg/ml、1.25mg/ml、1.50ng/ml、1.75mg/ml、2mg/ml、2.25mg/ml、2.50mg/ml、2.75mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、及び10mg/mlを包含する。
【0195】
一部の実施形態では、方法は、工程b)において分離された、本発明に従う肝幹細胞様細胞を凍結させる工程c)を含む。
【0196】
実際的に述べると、本明細書で開示される方法により得られる肝幹細胞様細胞を、回収し、洗浄し、任意選択で、これらの抽出物を得るために分画し、好ましくは、DMSOを、約0.1%(v/v)~約20%(v/v)、より好ましくは、約10%(v/v)の濃度で含む保存培地中に再懸濁させうる。代替的に、保存培地は、PRIME-XV(登録商標)MSC FreezIS DMSO-Free(IRVINE SCIENTIFIC(登録商標)社製)、STEM-CELLBANKER(登録商標)DMSO free(AMSBIO(登録商標)社製)、Ibidi Freezing Medium DMSO free(IBIDI(登録商標)社製)、CryoSOfree(商標)DMSO free Cryopreservation Medium(SIGMA ALDRICH(登録商標)社製)、トレハロース含有溶液(例えば、Ntaiら、2018を参照されたい)等、DMSO非含有でありうる。例示的に述べると、保存培地は、市販品(CRYOSTOR(登録商標)社製)が入手可能であり、例えば、MERCK(登録商標)から購入されうる。
【0197】
本発明の範囲内では、「約0.1%~約20%」という表現は、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、及び20%を包含する。
【0198】
肝幹細胞様細胞又はこれらの抽出物は、適切な保存培地中に入れられたら、最終温度が、約-80℃~約-196℃の範囲である、凍結工程にかけられうる。
【0199】
ある特定の実施形態では、細胞集団に含まれる肝幹細胞様細胞は、凍結保存されている。
【0200】
本明細書で使用される、「凍結保存された」及び「凍結させた」は、互換的でありうる。
【0201】
別の態様では、本発明はまた、本発明に従う方法に従い得られる凍結保存肝幹細胞様細胞又はこれらの抽出物にも関する。
【0202】
本発明の一態様は、本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む凍結保存細胞集団又はこれらの抽出物、特に、本発明に従う方法に従い得られる集団に関する。
【0203】
本発明は、本発明に従う方法に従い得られる肝幹細胞様細胞の凍結保存in vitro培養物又はこれらの抽出物に更に関する。
【0204】
本発明の別の態様は、本発明に従う肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物を含む粒子、特に、スフェロイドに関する。
【0205】
一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団又はこれらの抽出物は、粒子又はスフェロイドの形態である。
【0206】
ある特定の実施形態では、粒子は、スフェロイド、好ましくは、約50μm~約250μmの平均値直径を有するスフェロイドの形態である。
【0207】
本発明の範囲内では、「約50μm~約250μm」という用語は、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、及び250μmを包含する。
【0208】
一部の実施形態では、粒子は、粒子1つ当たりの肝幹細胞様細胞2~粒子1つ当たりの細胞約2,500個を含む。ある特定の実施形態では、粒子は、粒子1つ当たりの肝幹細胞様細胞250~粒子1つ当たりの細胞約1,500個を含む。本発明の範囲内では、「粒子1つ当たりの細胞2~約2,500個」という表現は、粒子1つ当たりの細胞約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,050、1,100、1,150、1,200、1,250、1,300、1,350、1,400、1,450、1,500、1,550、1,600、1,650、1,700、1,750、1,800、1,850、1,900、1,950、2,000、2,050、2,100、2,150、2,200、2,250、2,300、2,350、2,400、2,450、及び2,500個を包含する。
【0209】
実際的に述べると、粒子又はスフェロイドは、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団を、任意選択で、HGF、並びに/又は1つ若しくは複数のサイトカイン、並びに/又は1つ若しくは複数の抗炎症特性及び/若しくは免疫抑制特性を有する成分を補充された培養培地中において培養することにより得られうる。
【0210】
一実施形態では、培養培地中に存在する場合、HGFは、約0.1ng/ml~約1,000ng/ml、好ましくは、約1ng/ml~約500ng/ml、より好ましくは、約10ng/ml~約30ng/mlの濃度で含まれる。本発明の範囲内では、「約0.1ng/ml~約1,000ng/ml」という表現は、約0.1ng/ml、0.25ng/ml、0.5ng/ml、0.75ng/ml、1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、50ng/ml、75ng/ml、100ng/ml、200ng/ml、300ng/ml、400ng/ml、500ng/ml、600ng/ml、700ng/ml、800ng/ml、900ng/ml、及び1,000ng/mlを包含する。
【0211】
一実施形態では、培養培地中に存在する場合、サイトカインは、約0.1ng/ml~約100ng/ml、好ましくは、約1ng/ml~約50ng/ml、より好ましくは、約10ng/ml~約30ng/mlの濃度で含まれる。一実施形態では、サイトカインは、オンコスタチンM(OSM)である。本発明の範囲内では、「約0.1ng/ml~約100ng/ml」という表現は、約0.1ng/ml、0.25ng/ml、0.5ng/ml、0.75ng/ml、1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、50ng/ml、75ng/ml、及び100ng/mlを包含する。
【0212】
ある特定の実施形態では、培養培地は、抗炎症特性及び/又は免疫抑制特性を有する成分、好ましくは、コルチコステロイドを更に含む。培養培地中に存在する場合、コルチコステロイドは、約0.01μM、~約10μM、好ましくは、約0.1μM、~約5μM、の濃度で含まれる。一実施形態では、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。本発明の範囲内では、「約0.01μM、~約10μM、」という表現は、0.01μM、0.025μM、0.05μM、0.075μM、0.1μM、0.25μM、0.5μM、0.75μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、5μM、7.5μM、及び10μMを包含する。
【0213】
一部の実施形態では、粒子は、適切な条件下において、1日、2日、又は3日後に得られうる。実際的に述べると、肝幹細胞様細胞は、それらの凝集を優先するように、固体支持体(培養容器)上で培養されうる。例示的に述べると、適切な支持体は、例えば、Aggrewell(登録商標)プレート等、STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製の市販品が入手可能でありうる。
【0214】
一部の実施形態では、粒子又はスフェロイドは、凍結保存肝幹細胞様細胞、本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む分離凍結保存細胞集団又はこれらの抽出物から調製される。
【0215】
理論に束縛されることを望まずに述べると、本発明者らは、スフェロイド等の3D構造へとアセンブルされる肝幹細胞様細胞を含む細胞懸濁液が、例えば、腹腔内細胞移植等、一部の投与部位に、単一細胞懸濁液より適しうると考える。一部の実施形態では、本発明に従う粒子又はスフェロイドは、肝臓治療を必要とする個体へと投与されるのに適するバイオ人工肝臓(BAL)を表しうる。
【0216】
本発明の別の態様は、本発明に従う肝幹細胞様細胞から分化させた細胞、又はこれらの集団を含む粒子に関する。
【0217】
本発明の別の態様は、本発明に従う肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物を含む懸濁液に関する。
【0218】
一部の実施形態では、本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む、分離細胞集団又はこれらの抽出物は、懸濁液の形態である。本明細書で使用される、「懸濁液」という用語は、細胞又は材料が、浮遊細胞又は浮遊材料である組成物を指す。
【0219】
ある特定の実施形態では、懸濁液は、1ml当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個を含みうる。本発明の範囲内では、「1ml当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個」は、1ml当たりの肝幹細胞様細胞101、5×101、102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、109、5×109、1010、5×1010、1011、5×1011、及び1012個を含む。
【0220】
一部の態様では、本発明は、本発明に従う肝幹細胞様細胞から分化させた細胞、又はこれらの集団を含む懸濁液に関する。
【0221】
本発明は、(i)本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、並びに/又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、並びに/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、並びに/又は少なくとも1つの粒子及び/若しくは懸濁液と、(ii)薬学的に許容される媒体とを含む医薬組成物に更に関する。
【0222】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される媒体」とは、任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び/又は抗真菌剤、等張剤、並びに吸収遅延薬剤等を指す。
【0223】
実際的に述べると、薬学的に許容される媒体は、ポリペプチド;アミノ酸;脂質;及び炭水化物からなる添加剤の群から選択される、1つ又は複数の成分を含みうる。炭水化物中では、単糖、二糖、三糖、四糖、及びオリゴ糖;アルジトール、アルドン酸等の誘導体化糖、エステル化糖等;並びに多糖又は糖ポリマーを含む糖を挙げることができる。
【0224】
例示的な、薬学的に許容される、ポリペプチド剤の媒体は、ゼラチン、カゼイン等を含みうる。
【0225】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1ml当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個を含みうる。本発明の範囲内では、「1ml当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個」は、1ml当たりの肝幹細胞様細胞101、5×101、102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、109、5×109、1010、5×1010、1011、5×1011、及び1012個を含む。
【0226】
一態様では、本発明は、(i)本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、並びに/又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、並びに/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、並びに/又は少なくとも1つの粒子及び/若しくは懸濁液と、(ii)薬学的に許容される媒体とから本質的になる医薬組成物に関する。本明細書で使用される、「は、から本質的になる。」という用語は、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、並びに/又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、並びに/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、並びに/又は少なくとも1つの粒子及び/若しくは懸濁液が、組成物の唯一の有効成分であることを意味するように意図される。
【0227】
一部の態様では、本発明は、本発明に従う肝幹細胞様細胞から分化させた細胞、又はこれらの集団と、薬学的に許容される媒体とを含む医薬組成物に関する。
【0228】
本発明の別の態様は、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、並びに/又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、並びに/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、並びに/又は少なくとも1つの粒子及び/若しくは懸濁液、並びに/又は医薬組成物を含む医療機器に関する。
【0229】
ある特定の実施形態では、医療機器は、ポンプ、フィルター、チューブ、カテーテル等からなる群から選択される、1つ又は複数の品目を含む。
【0230】
一部の実施形態では、医療機器は、体外バイオ人工肝臓(EBAL)の形態である。一部の実施形態では、医療機器、特に、体外バイオ人工肝臓は、本発明に従う肝幹細胞様細胞、及び/又は細胞集団、及び/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞を含むバイオリアクターを含む。ある特定の実施形態では、医療機器、特に、体外バイオ人工肝臓は、少なくとも1つのヘパリンポンプ、少なくとも1つの血漿フィルター、少なくとも1つのローラーポンプを更に含みうる。
【0231】
実際的に述べると、医療機器、特に、体外バイオ人工肝臓は、人工心肺装置に相似するユニットを含みうる。実際的に述べると、医療機器、特に、体外バイオ人工肝臓は、患者の血漿を処理してから、患者に戻すように構成される。
【0232】
本発明を実施するために適する医療機器の非限定例は、Strueckerら(2014);Gloriosoら(2015);Chenら(2019)において記載されている。
【0233】
一部の実施形態では、本発明に従う医療機器は、体外肝療法のために使用される。
【0234】
本発明の別の態様は、異種肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は肝幹細胞様細胞を含む異種細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は肝幹細胞様細胞に由来する異種細胞若しくはこれらの抽出物を含む非ヒト動物モデルに関する。
【0235】
本明細書で使用される、「異種」という用語は、非ヒト動物と、細胞とが、同じ種に由来しないことを意味するように意図される。
【0236】
一部の実施形態では、非ヒト動物モデルは、ヒト化非ヒト動物モデルである。本明細書で使用される、「ヒト化された」という用語は、非ヒト動物モデルが、ヒト肝幹細胞様細胞、ヒト本発明に従う肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物を含むことを意味するように意図される。
【0237】
一部の実施形態では、非ヒト動物は、好ましくは、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラマ、サルからなる群から選択される非ヒト哺乳動物である。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
【0238】
実際的に述べると、非ヒト動物モデルは、動物の肝臓が、異種肝幹細胞様細胞、及び/又は異種肝幹細胞様細胞に由来する細胞、及び/又はこれらの抽出物を含むように、本発明により開示される、肝幹細胞様細胞、及び/又は細胞集団、及び/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞、及び/又はこれらの抽出物を投与される。一部の実施形態では、非ヒト動物モデルは、薬物候補物質の肝毒性について評価するのに使用されうる。本明細書で使用される、「肝毒性」という用語は、肝臓に対して毒性である程度を指すように意図される。転じて、「薬物候補物質の肝毒性」という用語は、薬物候補物質肝臓が、健常な機能的肝臓と比較して、その天然の解毒機能及び生理学的解毒機能を果たすことを、制限するか、制約するか、阻害するか、不可能とするか、又は阻止する程度を指すように意図される。
【0239】
薬物候補物質は、例えば、温度、体重の増加又は体重の減少、呼吸能力、脳造影図、心電図、認知能力、運動能力、血清マーカーレベル、血液計数等、モニタリングされる生物学的パラメータに対する、その影響の評価を介して査定されうる。
【0240】
一部の実施形態では、非ヒト動物モデルは、肝障害を作出させるのに適する化合物で処置されうる。前記実施形態では、肝障害を伴う、非ヒト動物モデルは、前記肝障害を処置又は防止する、特に、罹患細胞のアポトーシスを促進し、かつ/又は罹患細胞を、非罹患細胞、特に、正常細胞へと修復し、かつ/又は非罹患細胞の増殖を刺激することが意図される、薬物候補物質の有効性について評価するのに使用されうる。肝障害を作出するのに適する化合物の非限定例は、アセトアミノフェン(APAP)、アルコール、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、及びチオアセトアミドを含む。一部の実施形態では、非ヒト動物モデルに、病原性細菌及び/又は病原性ウイルス等の感染作用物質を感染させる場合もある。
【0241】
本発明の別の態様は、医薬としての使用のための、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物に関する。
【0242】
本発明は、医薬調製又は製造のための、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物の使用に更に関する。
【0243】
本発明の別の態様は、肝障害を処置及び/又は防止するための使用のための、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物、又は医療機器に関する。
【0244】
本発明の更なる態様は、肝障害の処置及び/又は防止のための、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物、又は医療機器の使用に関する。
【0245】
本発明は、それを必要とする個体における肝障害を処置及び/又は防止するための方法であって、治療有効量の、本発明に従う、肝幹細胞様細胞及び/若しくは集団、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物の投与を含む方法に更に関する。
【0246】
本発明は、それを必要とする個体における肝障害を処置及び/又は防止するための方法であって、本発明に従う医療機器を組入れる工程を含む方法に更に関する。本発明は、それを必要とする個体における肝障害を処置及び/又は防止するための方法であって、
a)体外血液回路により、個体を、本発明に従う医療機器へと接続する工程と;
b)血漿が、医療機器により解毒されるように、前記個体の血漿を、医療機器に供給する工程と;
c)工程b)において作出された解毒血漿を、個体に供給する工程と
を含む方法に更に関する。
【0247】
別の態様では、本発明は、それを必要とする個体における肝障害を処置及び/又は防止するための方法における、本発明に従う医療機器の使用に関する。
【0248】
ある特定の実施形態では、肝障害は、アラジール症候群;アルコール関連肝疾患;アルファ1抗トリプシン欠損;自己免疫性肝炎;良性肝腫瘍;胆管閉鎖;肝硬変;ヘモクロマトーシス;肝性脳症;A型肝炎;B型肝炎;C型肝炎;肝腎症候群;妊娠性肝内胆汁うっ滞(ICP);リソソーム酸リパーゼ欠損(LAL-D);肝嚢胞;肝癌;新生児黄疸;非アルコール性脂肪肝疾患;非アルコール性脂肪性肝炎;原発性胆汁性胆管炎(PBC);原発性硬化性胆管炎(PSC);進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC);ライ症候群;I型糖原病;急性肝不全(ALF);ACLF(acute chronic liver failure);非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);アルコール性肝炎;ウイルス誘導性肝炎;原因不明肝疾患;例えば、肝細胞癌及び胆管癌等の悪性肝疾患;自己免疫性肝炎、例えば、バッド-キアリ症候群等の血管性肝疾患;胆汁鬱滞性肝疾患;ウィルソン病及び尿素サイクル異常症等の遺伝性代謝性肝疾患からなる群から選択される。
【0249】
ある特定の実施形態では、肝障害は、劇症肝障害である。
【0250】
上記で言及された通り、劇症肝障害とは、MELD(Model For End-Stage Liver Disease)等、臓器割当てのための評定システムを使用する場合に、肝移植のために優先される任意の障害を指す。
【0251】
本発明の別の態様は、劇症肝障害を処置及び/又は防止するための使用のための、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物、又は医療機器に関する。
【0252】
本発明の更なる態様は、劇症肝障害の処置及び/又は防止のための、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物、又は医療機器の使用に関する。
【0253】
本発明は、それを必要とする個体における劇症肝障害を処置及び/又は防止するための方法であって、治療有効量の、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、又は集団、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物の投与を含む方法に更に関する。
【0254】
一部の実施形態では、前記劇症肝障害は、急性肝不全(ALF)、及びACLF(acute chronic liver failure)からなる群から選択される。
【0255】
ある特定の実施形態では、ACLF(acute chronic liver failure)は、肝疾患、特に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);アルコール性肝炎;ウイルス誘導性肝炎;原因不明肝疾患;肝細胞癌及び胆管癌等の悪性肝疾患;自己免疫性肝炎、バッド-キアリ症候群等の血管性肝疾患;胆汁鬱滞性肝疾患;並びにウィルソン病及び尿素サイクル異常症等の遺伝性代謝性肝疾患からなる群から選択される慢性肝疾患と関連しうる。言い換えれば、ある特定の実施形態では、ACLFは、特に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);アルコール性肝炎;ウイルス誘導性肝炎;原因不明肝疾患;肝細胞癌及び胆管癌等の悪性肝疾患;自己免疫性肝炎、バッド-キアリ症候群等の血管性肝疾患;胆汁鬱滞性肝疾患;並びにウィルソン病及び尿素サイクル異常症等の遺伝性代謝性肝疾患からなる群から選択される基礎慢性肝疾患を伴う個体における肝血液検査の急性異常により特徴づけられる、高度に特異的かつ稀な症候群を指す。
【0256】
一部の実施形態では、前記劇症肝障害は、急性肝不全(ALF)又はACLF(acute chronic liver failure)である。
【0257】
ある特定の実施形態では、ACLF(acute chronic liver failure)は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);アルコール性肝炎;ウイルス誘導性肝炎;原因不明肝疾患;肝細胞癌及び胆管癌等の悪性肝疾患;自己免疫性肝炎、バッド-キアリ症候群等の血管性肝疾患;胆汁鬱滞性肝疾患;並びにウィルソン病及び尿素サイクル異常症等の遺伝性代謝性肝疾患からなる群から選択される肝疾患と関連する。
【0258】
一部の実施形態では、劇症肝障害は、急性肝不全(ALF)である。
【0259】
ある特定の実施形態では、劇症肝障害は、ACLF(acute chronic liver failure)である。
【0260】
理論に束縛されることを望まずに述べると、本発明者らは、本発明に従う肝幹細胞様細胞の、ALF及びACLFに対する肝再生特性は、罹患肝臓内の健常肝細胞の増殖を促進することを介した、罹患肝臓内の健常肝細胞に対する、本発明に従う肝幹細胞様細胞の作用により駆動されると考える。言い換えれば、肝再生特性は、罹患細胞を置き換えることにより媒介されるのではなく、罹患肝臓の健常肝組織の再生を主に促進することにより媒介される。
【0261】
本発明は、肝障害、特に、劇症肝障害を伴う個体において、肝臓を再生するための方法であって、前記個体へと、治療有効量の、本発明に従う肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物を投与する工程を含む方法に更に関する。
【0262】
本発明の更に他の態様はまた、肝障害、特に、劇症肝障害を伴う個体の血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)レベルを低下させるための方法であって、前記個体へと、治療有効量の、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物を投与する工程を含む方法にも関する。
【0263】
本発明の別の態様は、肝障害、特に、劇症肝障害を伴う個体における肝壊死を減少させる方法であって、前記個体へと、治療有効量の、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は懸濁液、又は医薬組成物を投与する工程を含む方法に更に関する。
【0264】
実際的に述べると、肝障害、特に、劇症肝障害を伴う個体は、当技術分野における適正実施及び基準に従う、臨床検診及び/又は血液検査及び/又は肝生検により診断されうる。
【0265】
本発明の一態様は、本開示で規定される粒子を調製するための、本発明に従う、肝幹細胞様細胞を含む凍結保存細胞集団又はこれらの抽出物の使用に関する。
【0266】
一部の実施形態では、粒子は、スフェロイドの形態である。
【0267】
ある特定の実施形態では、投与される、治療有効量の、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、及び/又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、及び/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞、及び/又はこれらの抽出物、及び/又は粒子、及び/又は懸濁液、及び/又は医薬組成物は、熟練の従事者及び/又は公認の従事者により容易に決定されうる。
【0268】
実際的に述べると、治療有効量は、投与のために選択される材料、投与が、単回投与であるのか、複数回投与であるのか、並びに年齢、健康状態、サイズ、体重、性別、及び処置される劇症肝障害の重症度を含む、個体のパラメータを含む、様々なパラメータに依存しうる。
【0269】
一部の実施形態では、治療有効量は、1ml当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個である。実際的に述べると、治療有効量は、1ml当たりの肝幹細胞様細胞101、5×101、102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、109、5×109、1010、5×1010、1011、5×1011、及び1012個を含む。ある特定の実施形態では、治療有効量は、1cm12当たりの肝幹細胞様細胞101、5×101、102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、109、5×109、1010、5×1010、1011、5×1011、及び1012個を含む、1cm3当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個である。一部の実施形態では、治療有効量は、投与1回当たりの肝幹細胞様細胞101、5×101、102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、109、5×109、1010、5×1010、1011、5×1011、及び1012個を含む、投与1回当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個である。
【0270】
治療のために、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、粒子、懸濁液、及び医薬組成物は、異なる経路を介して投与されうる。投与量及び投与回数は、当業者により、公知の方式で最適化されうる。
【0271】
一部の実施形態では、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、局所投与又は全身投与されるものとする。
【0272】
一部の実施形態では、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、局所投与されるものとし、限定せずに述べると、肝臓内、肝臓周囲、肝臓近傍、肝間葉内、肝グリソン鞘下、腎皮膜下、脾内、膵内、腹膜内、及び大網嚢内における、本発明の肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、粒子、懸濁液、又は医薬組成物の注入(injection若しくはinfusion)又は着床を含む。好ましくは、局所投与は、肝臓を灌流する血管(門脈、動脈、静脈、腸管脈静脈)を介する注入(injection若しくはinfusion)又は着床である。
【0273】
一部の実施形態では、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、腹腔内投与、静脈内投与、門脈内投与、又は脾臓内投与を介して、特に、腹腔内注射、静脈内注射、門脈内注射、又は脾臓内注射を介して投与されるものとする。
【0274】
別の実施形態では、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物本発明のヒト肝幹細胞様細胞集団のための、分化環境において投与されるものとする。
【0275】
このような投与経路は、手術手順により達成される場合もあり、腹腔鏡下手術により達成される場合もあり、腹腔内のカテーテルシステム又は植込みを介して達成される場合もある。
【0276】
一部の実施形態では、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、全身投与されるものとし、限定せずに述べると、腹腔内投与、皮下投与、腸内投与又は非経口投与を含む。
【0277】
注入(injection又はinfusion)又は植込みへと適合させられた製剤の例は、溶液又は懸濁液、注入(injection)の前における、液体中の溶解又は懸濁に適する固体形態を含むがこれらに限定されない。注入(injection)の例は、門脈内注入、脾臓内注入、静脈内注入、動脈内注入、腹腔内注入、皮下注入、筋内注入、皮内注入、及び腹腔内注入(injection)、又は灌流を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、注入された(injected)場合、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、無菌である。滅菌医薬組成物を得るための方法は、GMPに準拠した合成(GMPは、「医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準」を表す)を含むがこれらに限定されない。
【0278】
一部の実施形態では、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、カプセル化される。カプセルの例は、限定せずに述べると、生体適合性ハイドロゲルである、Matrigel(登録商標)を含む。当業者には、生物学的有効成分を、ハイドロゲル内にカプセル化する方法が公知である。Perez-Lunaら(2018)を参照することができる。
【0279】
本明細書で使用される、「ハイドロゲル」は、大量の水又は体液を取り込むことが可能であり、細胞が封入される、親水性の三次元ネットワークを指すように意図される。実際的に述べると、ネットワークは、ホモポリマー又はコポリマーを含み、不溶性である。ネットワークを構成するために適するポリマーは、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸、硫酸セルロール、エチレングリコール、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシエトキシエチルメタクリレート(HEEMA)、ヒドロキシジエトキシエチルメタクリレート(HDEEMA)、メトキシエチルメタクリレート(MEMA)、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、PEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート(PEGMA)、PEGジアクリレート(PEGDA)、PEGジメタクリレート(PEGDMA)、シラン化ヒドロキシプロピルメチルセルロール(si-HPMC)等を含むがこれらに限定されない。
【0280】
ハイドロゲルについては、特に、Peppasら(2000);Narayanaswamy及びTorchilin(2019)において開示されている。
【0281】
一部の実施形態では、カプセル化された、肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液又は医薬組成物は、腹腔内注入、静脈内注入、門脈内注入、組織内注入、又は他の任意の適切な注入方式を含む、任意の経路により投与されうる。
【0282】
実際的に述べると、ハイドロゲルは、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物を濃縮するのに用いられうる。ある特定の実施形態では、ハイドロゲルは、パッチ剤、特に、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物の持続放出及び/又は機能性のためのパッチ剤中に組み込まれうる。
【0283】
本発明の一態様は、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物と、任意選択で、ハイドロゲルとを含むパッチ剤に関する。
【0284】
実際的に述べると、パッチ剤は、肝臓又は任意の臓器において局所投与されうる。
【0285】
一部の実施形態では、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、持続放出形態で投与されるものとする。別の実施形態では、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、薬剤の放出を制御する送達システムとして製剤化される。
【0286】
一部の実施形態では、治療有効量の、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、対象における治療利益を得、かつ/又はこれを維持するように、対象の生涯において、少なくとも1回、又は何回かにわたり投与されるものとする。
【0287】
実際的に述べると、本発明の肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物の投与は、グラフト又は移植片と考えられうる。
【0288】
例示的に述べると、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物の投与は、グラフティング又は移植と称されうる。
【0289】
ある特定の実施形態では、移植は、自家移植である。この特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物を調製するために使用される細胞は、移植を受ける個体と同じ個体に由来する。
【0290】
代替的実施形態では、移植は、同種移植である。この特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物を調製するために使用される細胞は、移植を受ける個体と同じ種に由来するが、異なる個体に由来する。
【0291】
一部の実施形態では、肝障害を伴う個体、特に、劇症肝障害を伴う個体は、罹患肝組織、特に、壊死肝組織のうちの、少なくとも一部を除去するために、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物の投与の前に、手術を受ける場合がある。
【0292】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、肝再生を促進する又は優先するように意図された、1つ又は複数の更なる活性薬剤と共に共投与されうる。本明細書で使用される、「共投与された」という用語は、同時投与及び逐次投与を含む。
【0293】
本発明はまた、同時投与、個別投与、又は逐次投与のための、
少なくとも1つの、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、及び/又はこれらの抽出物、及び/又は粒子、及び/又は懸濁液、及び/又は医薬組成物と;
肝再生を優先するように意図された、少なくとも1つの更なる活性薬剤と;
を含む、組合せ生成物にも関する。
【0294】
本明細書で使用される、「肝再生を優先する」とは、肝組織の分解の停止又は低下を指し、健常肝組織の生理学的機能の部分的回復又は完全な回復を包含する。適切な更なる活性薬剤の非限定例は、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗生剤、抗酸化剤、抗線維化剤、解毒剤でありうる。
【0295】
抗炎症剤の非限定例は、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトリコキシブ、イブプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸、及びナプロキセンを含む。
【0296】
免疫抑制剤の非限定例は、例えば、シクロスポリン、タクロリムス等のカルシニューリン阻害剤;例えば、バシリキシマブ、ベンラリズマブ、ブロダルマブ、ダクリズマブ、デュピルマブ、イキセキズマブ、マポリズマブ、サリルマブ、トシリズマブ等のインターロイキン阻害剤;例えば、アダリムマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、及びインフリキシマブ等のTNFアルファ阻害剤を含む。
【0297】
抗生剤の非限定例は、例えば、アンピシリン、アモキシリン、及びジクロキサシリン等のペニシリン;例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、エラバサイクリン、ミノサイクリン、オマダサイクリン、及びテトラサイクリン等のテトラサイクリン;例えば、セファクロル、セフジニル、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、及びセルロキシム等のセファロスポリン;例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、及びモキシフロキサシン等のキノロン;例えば、クリンダマイシン及びリンコマイシン等のリンコマイシン;例えば、アジトロマイシン、クラリスロマイシン、及びエリスロマイシン等のマクロリド;例えば、スルファサラジン、スルファメトキサゾール、及びトリメトプリム等のスルホンアミド;例えば、ダルババンシン、オリタバンシン、テラバンシン、及びバンコマイシン等の糖ペプチド;例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、及びトブラマイシン等のアミノグリコシド;例えば、ドリペネム、エルタペネム、及びメロペネム等のカルバペネムを含む。
【0298】
抗酸化剤の非限定例は、例えば、ベータ-カロテン、リコペン、ルテイン、及びゼアキサンチン等のカロテノリド;セレニウム;ビタミンC及びビタミンEを含む。
【0299】
抗線維化剤の非限定例は、ニンテンダニブ及びピルフェニドンを含む。
【0300】
解毒剤の非限定例は、N-アセチルシステインを含む。
【0301】
一部の実施形態では、更なる活性薬剤は、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物の投与の前に投与される場合もあり、これらの投与時に投与される場合もあり、これらの投与の後で投与される場合もある。
【0302】
ある特定の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞、肝幹細胞様細胞を含む細胞集団、肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物は、免疫抑制剤と共に共投与されない。下記の実施例節により例示される通り、本発明に従う肝幹細胞様細胞による処置後におけるALFマウスの生存は、免疫抑制剤が共投与されたか、共投与されなかったかにかかわらず観察されえた。本発明に従う肝幹細胞様細胞による処置は、同種(異種)グラフト療法のためのベースとして想定されると有利でありうる。
【0303】
本発明の別の態様は、薬物候補物質をスクリーニングするためのin vitro法であって、
a)少なくとも1つの、本発明に従う、肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、及び/又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は粒子、及び/又は懸濁液を用意する工程と;
b)工程a)による、前記少なくとも1つの細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は前記細胞集団、及び/又はこれらの抽出物、前記肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、及び/又は前記粒子、及び/又は前記懸濁液を、薬物候補物質と接触させる工程と;
c)1つ又は複数の生物学的パラメータを測定し、任意選択で、前記1つ又は複数の生物学的パラメータを、1つ又は複数の参照パラメータと比較する工程と;
d)薬物候補物質が、治療目的及び/又は診断目的の薬物候補物質であるのかどうかを決定する工程と
を含むin vitro法に関する。
【0304】
本明細書で使用される、「薬物候補物質」という用語は、潜在的な治療特性及び/又は商業的目的を伴う化合物を指す。本発明の範囲内では、薬物候補物質は、鎮痛特性、抗生剤特性、抗癌特性、抗凝固特性、抗利尿特性、抗炎症性特性、抗ウイルス特性、止血特性、神経弛緩特性、増殖性活性、抗線維化活性、抗脂肪症活性、抗酸化ストレス活性等を有しうる。一部の実施形態では、薬物候補物質は、肝再生特性を有する。
【0305】
一部の実施形態では、肝幹細胞様細胞に由来する細胞、特に、肝細胞様細胞又は本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団に由来する肝細胞様細胞(HLC)を含む細胞集団は、マーカーであるALBを発現し(ALB+)、かつ/又はマーカーであるCYP3A4(CYP3A4+)、好ましくは、マーカーであるALBを発現する(ALB+)細胞集団であり、マーカーであるCYP3A4(CYP3A4+)の両方を発現する細胞集団である。一部の実施形態では、本発明に従う肝幹細胞様細胞を含む細胞集団に由来する肝細胞様細胞(HLC)は、マーカーであるAFPを発現しない(AFP-)HLCである。ある特定の実施形態では、HLCは、本発明に従う肝幹細胞様細胞に由来するヒトHLCである。
【0306】
ある特定の実施形態では、工程a)は、本発明に従う、肝幹細胞様細胞、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団を、HLC分化培養培地と共にインキュベートすることにより実施されうる。適切な培養培地は、例えば、RPMI培地等、本発明に従う肝幹細胞様細胞を作出するように記載された培養培地と同様の培養培地である。一部の実施形態では、HLC分化培養培地は、デキサメタゾン、FGF(線維芽細胞増殖因子)、FSK(また、6-[(1Z)-3-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)プロプ-1-エン-1-イル]-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンとも称される)、HGF(肝細胞増殖因子)、KGF(ケラチン増殖因子)、GSK3阻害剤(例えば、CHIR-99021等)、オンコスタチンM、TGF/Smad阻害剤(例えば、SB431542等)、notch阻害剤からなる群から選択される化合物を含みうる。
【0307】
一部の実施形態では、生物学的パラメータは、細胞の増殖条件、細胞のアポトーシス条件、細胞の壊死条件、酵素(例えば、ALAT、ASAT等)又は目的の化合物(例えば、インターロイキン、サイトカイン等)の血清中レベル、目的のバイオマーカーレベル等からなる群から選択される。実際的に述べると、生物学的パラメータは、例えば、RT-PCRによる等、核酸レベル、特に、mRNAレベルで測定される場合もあり、例えば、免疫蛍光法、FACS、ELISA、酵素的アッセイ等による等、ポリペプチドレベル又はタンパク質レベルで測定される場合もある。
【0308】
一部の実施形態では、参照パラメータは、健常個体に由来する場合があり、特に、前記パラメータについての平均値である。一部の実施形態では、参照パラメータは、薬物候補物質と比較して同一な条件に従いアッセイされたプラセボに由来しうる。
【0309】
一部の実施形態では、本発明に従う、薬物候補物質をスクリーニングするためのin vitro法は、前記薬物候補物質の肝毒性について評価するため、及び/又は薬物スクリーニングのために使用されうる。一部の実施形態では、本発明に従う、薬物候補物質をスクリーニングするためのin vitro法は、特に、罹患肝臓を治癒させるか、又は再生するように、肝臓に影響を及ぼす、前記薬物候補物質の能力について評価するのに使用されうる。
【0310】
本発明はまた、劇症肝障害を処置及び/又は防止するためのキットであって、
a)少なくとも1つの肝幹細胞様細胞若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞を含む細胞集団若しくはこれらの抽出物、又は肝幹細胞様細胞に由来する細胞若しくはこれらの抽出物、又は粒子、又は、懸濁液、又は医薬組成物と;
b)前記細胞、集団、前記肝幹細胞様細胞に由来する細胞、これらの抽出物、粒子、懸濁液、又は医薬組成物を投与する手段と
を含むキットにも関する。
【0311】
一部の実施形態では、肝障害は、劇症肝障害である。
【0312】
ある特定の実施形態では、前記劇症肝障害は、急性肝不全(ALF)、及びACLF(acute chronic liver failure)からなる群から選択され、この場合、ACLFは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);アルコール性肝炎;ウイルス誘導性肝炎;原因不明肝疾患;肝細胞癌及び胆管癌等の悪性肝疾患;自己免疫性肝炎、バッド-キアリ症候群等の血管性肝疾患;胆汁鬱滞性肝疾患;ウィルソン病及び尿素サイクル異常症等の遺伝性代謝性肝疾患からなる群から選択される肝疾患と関連する。
【0313】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1ml当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個を含む。
【0314】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、1cm3当たりの肝幹細胞様細胞約101~約1012個を含む。一部の実施形態では、前記細胞又は前記集団を投与する手段は、シリンジ又はカテーテルである。一部の実施形態では、キットは、特に、抗炎症性薬剤、免疫抑制性薬剤、抗生剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、1つ又は複数の更なる活性薬剤を更に含む。更なる活性薬剤は、肝再生を優先するように意図されることが理解される。
【0315】
一部の実施形態では、キットは、細胞植込み(体内療法)を実施するために有用な場合もあり、代替的に、体外肝臓治療を実施するために有用な場合もある。一部の実施形態では、本発明に従うキットは、本明細書で開示される医療機器、特に、体外バイオ人工肝臓(EBAL)を作出するのに有用でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0316】
【
図1A】11日目(pStemHep)において、RT-qPCRにより決定される、多能性(OCT4)(パネルA)、確定内胚葉(SOX17)(パネルB)、及び肝前駆細胞遺伝子(HNF4A)(パネルC)、AFP(パネルD)をコードする、マーカーのmRNAの相対レベルを示すヒストグラムである。相対遺伝子発現は、GAPDH値に照らした正規化の後に、2
-ΔΔCt定量法を使用して計算し、未分化hESC細胞内で見出されるレベル(D0)の倍数として表す。SOX17(パネルB)、HNF4A(パネルC)、及びAFP(パネルD)についての相対遺伝子発現レベルは、Log10スケールである。
*P<0.05である。
【
図1B】11日目(pStemHep)において、RT-qPCRにより決定される、多能性(OCT4)(パネルA)、確定内胚葉(SOX17)(パネルB)、及び肝前駆細胞遺伝子(HNF4A)(パネルC)、AFP(パネルD)をコードする、マーカーのmRNAの相対レベルを示すヒストグラムである。相対遺伝子発現は、GAPDH値に照らした正規化の後に、2
-ΔΔCt定量法を使用して計算し、未分化hESC細胞内で見出されるレベル(D0)の倍数として表す。SOX17(パネルB)、HNF4A(パネルC)、及びAFP(パネルD)についての相対遺伝子発現レベルは、Log10スケールである。
*P<0.05である。
【
図1C】11日目(pStemHep)において、RT-qPCRにより決定される、多能性(OCT4)(パネルA)、確定内胚葉(SOX17)(パネルB)、及び肝前駆細胞遺伝子(HNF4A)(パネルC)、AFP(パネルD)をコードする、マーカーのmRNAの相対レベルを示すヒストグラムである。相対遺伝子発現は、GAPDH値に照らした正規化の後に、2
-ΔΔCt定量法を使用して計算し、未分化hESC細胞内で見出されるレベル(D0)の倍数として表す。SOX17(パネルB)、HNF4A(パネルC)、及びAFP(パネルD)についての相対遺伝子発現レベルは、Log10スケールである。
*P<0.05である。
【
図1D】11日目(pStemHep)において、RT-qPCRにより決定される、多能性(OCT4)(パネルA)、確定内胚葉(SOX17)(パネルB)、及び肝前駆細胞遺伝子(HNF4A)(パネルC)、AFP(パネルD)をコードする、マーカーのmRNAの相対レベルを示すヒストグラムである。相対遺伝子発現は、GAPDH値に照らした正規化の後に、2
-ΔΔCt定量法を使用して計算し、未分化hESC細胞内で見出されるレベル(D0)の倍数として表す。SOX17(パネルB)、HNF4A(パネルC)、及びAFP(パネルD)についての相対遺伝子発現レベルは、Log10スケールである。
*P<0.05である。
【
図2A】免疫蛍光アッセイ(OCT4、FOXA2、AFP、及びALB)(パネルA)、SOX17/HNF4A(パネルB)及びCXCR4(パネルC)についてのフローサイトメトリー、並びにAFPの、細胞上清中の分泌を測定するELISA(パネルD)により、0日目(D0)、5日目(D5)、11日目(D11)からの、hESCの肝臓分化を介する、異なる鍵となるマーカーの発現又は非発現を示す、写真及びプロットである。HPH:ヒト初代肝細胞であり、
*P<0.05である。
【
図2B】免疫蛍光アッセイ(OCT4、FOXA2、AFP、及びALB)(パネルA)、SOX17/HNF4A(パネルB)及びCXCR4(パネルC)についてのフローサイトメトリー、並びにAFPの、細胞上清中の分泌を測定するELISA(パネルD)により、0日目(D0)、5日目(D5)、11日目(D11)からの、hESCの肝臓分化を介する、異なる鍵となるマーカーの発現又は非発現を示す、写真及びプロットである。HPH:ヒト初代肝細胞であり、
*P<0.05である。
【
図2C】免疫蛍光アッセイ(OCT4、FOXA2、AFP、及びALB)(パネルA)、SOX17/HNF4A(パネルB)及びCXCR4(パネルC)についてのフローサイトメトリー、並びにAFPの、細胞上清中の分泌を測定するELISA(パネルD)により、0日目(D0)、5日目(D5)、11日目(D11)からの、hESCの肝臓分化を介する、異なる鍵となるマーカーの発現又は非発現を示す、写真及びプロットである。HPH:ヒト初代肝細胞であり、
*P<0.05である。
【
図2D】免疫蛍光アッセイ(OCT4、FOXA2、AFP、及びALB)(パネルA)、SOX17/HNF4A(パネルB)及びCXCR4(パネルC)についてのフローサイトメトリー、並びにAFPの、細胞上清中の分泌を測定するELISA(パネルD)により、0日目(D0)、5日目(D5)、11日目(D11)からの、hESCの肝臓分化を介する、異なる鍵となるマーカーの発現又は非発現を示す、写真及びプロットである。HPH:ヒト初代肝細胞であり、
*P<0.05である。
【
図3A】hESCの、HLCへの肝臓分化後D21における、免疫蛍光試験による、ALB、AFP、及びHNF4Aの発現(パネルA)、位相差顕微鏡法により検討された、pStemHep及びHLCの細胞形状(パネルB)、並びにELISA試験により測定された、HLCによる、ALBの、細胞上清中の分泌(パネルC)を示す写真及びグラフである。
*及び
**P<0.05である。
【
図3B】hESCの、HLCへの肝臓分化後D21における、免疫蛍光試験による、ALB、AFP、及びHNF4Aの発現(パネルA)、位相差顕微鏡法により検討された、pStemHep及びHLCの細胞形状(パネルB)、並びにELISA試験により測定された、HLCによる、ALBの、細胞上清中の分泌(パネルC)を示す写真及びグラフである。
*及び
**P<0.05である。
【
図3C】hESCの、HLCへの肝臓分化後D21における、免疫蛍光試験による、ALB、AFP、及びHNF4Aの発現(パネルA)、位相差顕微鏡法により検討された、pStemHep及びHLCの細胞形状(パネルB)、並びにELISA試験により測定された、HLCによる、ALBの、細胞上清中の分泌(パネルC)を示す写真及びグラフである。
*及び
**P<0.05である。
【
図4】体重1kg当たり400mgのアセトアミノフェン(APAP)を施されなかったマウス(プロット1、APAPを伴わない対照動物、n=10)、又はこれを施されたマウス(プロット2及びプロット3)、並びに実施例1に記載される通り、プロトコールAに従い調製された、1×10
6個の凍結pStemHepの移植を更に施されたマウス(プロット2、APAP+pStemHep、n=10)、又はこれを施されなかったマウス(プロット3、APAPだけを伴う、対照ALF動物、n=10)の生存百分率を示すプロットである。
【
図5】
図4の通りに処置された、APAPを施されなかったマウス(APAPなし、n=5)、APAPだけを施されたマウス(APAPだけ、n=6)、又はAPAP及び1×10
6個の凍結pStemHepを施されたマウス(APAP+pStemHep、n=8)の血液中の、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)レベル(U/L単位で表される)を示すプロットである。血清ALATは、細胞注入の24時間後に測定した。
*及び
**P<0.05である。
【
図6】
図4の通りに処置されたマウス(APAP+pStemHep、n=10;APAPだけ、n=8;APAPなし、n=5)の3つの群の、細胞注入の24時間後における、健常組織の百分率を示すプロットである。各ドットは、動物に対応する。
*及び
**P<0.05である。
【
図7】
図4の通りに処置された、APAPだけを施される動物(APAPだけ、n=3)、及びAPAP及びpStemHepを施される動物(APAP+pStemHep、n=9)において、ELISAにより測定された、動物血清中のヒトAFPの産生レベルを示すプロットである。ヒトAFPレベルは、1×10
6個の凍結pStemHepの移植の24時間後に決定した。各ドットは、動物に対応する。
*P<0.05である。
【
図8】PCR解析、及びキャピラリー電気泳動によるPCR単位複製配列の検出により測定された、
図4の通りに処置されたマウスの3つの群から、1×10
6個の凍結pStemHepの移植の24時間後に回収された肝生検中の、ヒトAlu配列の存在を示すプロットである。矢印は、Alu PCRの単位複製配列に対応する。レーン1~レーン4:APAP+pStemHep;レーン5~レーン6:APAPだけ;レーン7~レーン8:APAPなし、細胞なし;レーン9:陽性対照(ヒト細胞を移植されたマウスの肝臓);レーン10:ブランク;レーン11:ラダーである。
【
図9】RT-qPCRにより決定された、実施例2に記載される、プロトコールA、プロトコールB、又はプロトコールCに従い調製されたpStemHep内の、特徴的細胞マーカーのmRNAの相対レベルを示すヒストグラムである。相対遺伝子発現レベルは、未分化hESC内で見出されるレベルの倍数として表した。pStemHepにおける発現レベルは、hESCと有意に異なる。相対遺伝子発現レベルは、Log10スケールである。
【
図10】DGE-Seqにより決定された、実施例2に記載される、プロトコールA(n=11;ダークグレーバー)、又はプロトコールB(n=3;ライトグレーバー)に従い調製されたpStemHepによる、一部の特徴的細胞マーカーについての、mRNAの発現又は非発現を示すヒストグラムである。描示される発現遺伝子は、mRNAの数が、全mRNA分子百万個当たりの分子200個を上回る遺伝子(高発現遺伝子;セット1)、及びmRNAの数が、全mRNA分子百万個当たりのmRNA分子5~200個の間であり、かつ、未分化hESC(n=14)と対比した誘導変化倍数が、5を上回る遺伝子(セット1と比較した、低発現遺伝子)として規定される。描示される非発現遺伝子は、mRNAの数が、全mRNA分子百万個当たりの分子ゼロ個又は5個を下回る遺伝子として規定される。
【
図11A】実施例2に記載される通りに、ELISA試験を介する、プロトコールA、プロトコールB、又はプロトコールCに従い調製されたpStemHepによる、AFPの発現及びALBの非発現(パネルA)、並びに免疫蛍光試験を介する、プロトコールCに従い調製されたpStemHepによる、AFP、CK19、EPCAM、FOXA2、HNF4A、KI67、SOX17の発現、及びALBの非発現(パネルB)を示す、プロット及び写真である。
【
図11B】実施例2に記載される通りに、ELISA試験を介する、プロトコールA、プロトコールB、又はプロトコールCに従い調製されたpStemHepによる、AFPの発現及びALBの非発現(パネルA)、並びに免疫蛍光試験を介する、プロトコールCに従い調製されたpStemHepによる、AFP、CK19、EPCAM、FOXA2、HNF4A、KI67、SOX17の発現、及びALBの非発現(パネルB)を示す、プロット及び写真である。
【
図12】実施例2の表2に記載される通り、プロトコールBに従い、凍結pStemHepを調製したことを除き、
図4と同様に、マウス(各群内のn=10)の生存百分率を示すプロットである。プロット1:APAPなしの対照、プロット2:APAP+pStemHep、プロット3:APAPだけである。
【
図13A】実施例2の表2に記載される通り、プロトコールBに従い調製されたpStemHep(パネルA)、又はプロトコールCに従い調製されたpStemHep(パネルB)の移植の直前に、マウスが、肝臓のうちの約3分の1を除去するように、手術を受けたことを除き、
図12と同様であるマウスの生存百分率を示すプロットである。パネルA:プロット1:APAP+pStemHep(n=5);プロット2:APAPだけ(n=10);パネルB:プロット1:APAP+pStemHep(n=5);プロット2:APAPだけ(n=5)である。
【
図13B】実施例2の表2に記載される通り、プロトコールBに従い調製されたpStemHep(パネルA)、又はプロトコールCに従い調製されたpStemHep(パネルB)の移植の直前に、マウスが、肝臓のうちの約3分の1を除去するように、手術を受けたことを除き、
図12と同様であるマウスの生存百分率を示すプロットである。パネルA:プロット1:APAP+pStemHep(n=5);プロット2:APAPだけ(n=10);パネルB:プロット1:APAP+pStemHep(n=5);プロット2:APAPだけ(n=5)である。
【
図14A】(パネルA)実施例2の表2に記載される通り、凍結pStemHepが、プロトコールCに従い調製されたことを除き、
図4と同様であるマウスの生存百分率;プロット1:APAP+pStemHep(n=4)、プロット2:APAPだけ(n=5);(パネルB~パネルC)体重1kg当たり700mgのアセトアミノフェンを施された動物(APAP+細胞;パネルB)、又はAPAPだけを施された非処置動物(対照APAP;パネルB)における、1×10
6個のpStemHepの注射の24時間後における、KI67(MKI67)に対する抗体を使用する免疫組織化学による、肝臓切片内の増殖細胞数を示すプロット及び写真のセットである。KI67(MKI67)陽性細胞核は、暗色のドットに現れている。元の拡大率×10である。
【
図14B】(パネルA)実施例2の表2に記載される通り、凍結pStemHepが、プロトコールCに従い調製されたことを除き、
図4と同様であるマウスの生存百分率;プロット1:APAP+pStemHep(n=4)、プロット2:APAPだけ(n=5);(パネルB~パネルC)体重1kg当たり700mgのアセトアミノフェンを施された動物(APAP+細胞;パネルB)、又はAPAPだけを施された非処置動物(対照APAP;パネルB)における、1×10
6個のpStemHepの注射の24時間後における、KI67(MKI67)に対する抗体を使用する免疫組織化学による、肝臓切片内の増殖細胞数を示すプロット及び写真のセットである。KI67(MKI67)陽性細胞核は、暗色のドットに現れている。元の拡大率×10である。
【
図14C】(パネルA)実施例2の表2に記載される通り、凍結pStemHepが、プロトコールCに従い調製されたことを除き、
図4と同様であるマウスの生存百分率;プロット1:APAP+pStemHep(n=4)、プロット2:APAPだけ(n=5);(パネルB~パネルC)体重1kg当たり700mgのアセトアミノフェンを施された動物(APAP+細胞;パネルB)、又はAPAPだけを施された非処置動物(対照APAP;パネルB)における、1×10
6個のpStemHepの注射の24時間後における、KI67(MKI67)に対する抗体を使用する免疫組織化学による、肝臓切片内の増殖細胞数を示すプロット及び写真のセットである。KI67(MKI67)陽性細胞核は、暗色のドットに現れている。元の拡大率×10である。
【
図15A】体重1kg当たり1,500mgのチオアセトアミド(TAA)を施され、実施例2の表2に記載される通り、プロトコールCに従い調製された、1×10
6個の凍結pStemHepの移植を更に施されたマウス(プロット1、TAA+pStemHep;パネルAについて、n=9であり、パネルBについて、n=5である)、又はこれを施されなかったマウス(プロット2;TAAだけ;n=10)の生存百分率を示すプロットである。処置マウスに、1mg/kgのタクロリムス(毎日5日間にわたり、細胞注入の24時間前に開始する)を、更に施す(パネルA)か、又はこれを施さなかった(パネルB)。
【
図15B】体重1kg当たり1,500mgのチオアセトアミド(TAA)を施され、実施例2の表2に記載される通り、プロトコールCに従い調製された、1×10
6個の凍結pStemHepの移植を更に施されたマウス(プロット1、TAA+pStemHep;パネルAについて、n=9であり、パネルBについて、n=5である)、又はこれを施されなかったマウス(プロット2;TAAだけ;n=10)の生存百分率を示すプロットである。処置マウスに、1mg/kgのタクロリムス(毎日5日間にわたり、細胞注入の24時間前に開始する)を、更に施す(パネルA)か、又はこれを施さなかった(パネルB)。
【
図16】ELISAにより、実施例2の表2に記載される通り、プロトコールCに従い調製された、1×10
6個の凍結pStemHepの移植を施されなかった、TAA中毒C57BL/6マウス(対照)、又はこれを施されたTAA中毒C57BL/6マウスにおいて測定された、ヒトAFPの産生レベルを示すプロットである。ヒトAFPレベルは、移植の24時間後のマウスにおいて決定した。各ドットは、動物に対応する。
*P<0.05である。
【
図17A】実施例3に記載される通り、Aggrewellプレートへの播種、及び2日間にわたる培養の後に、新規調製pStemHep(パネルA)、及び凍結保存pStemHep(パネルB)から調製されたスフェロイドの作出を示す写真である。パネルCは、Live/Deadアッセイ免疫蛍光試験により測定された、スフェロイドの生存率を示す写真である。LIVE:エステラーゼ活性、DEAD:エチジウムホモ二量体1による死細胞の染色、NUCLEI:Hoechst 33342による細胞核染色、LIGHT:位相差顕微鏡法である。
【
図17B】実施例3に記載される通り、Aggrewellプレートへの播種、及び2日間にわたる培養の後に、新規調製pStemHep(パネルA)、及び凍結保存pStemHep(パネルB)から調製されたスフェロイドの作出を示す写真である。パネルCは、Live/Deadアッセイ免疫蛍光試験により測定された、スフェロイドの生存率を示す写真である。LIVE:エステラーゼ活性、DEAD:エチジウムホモ二量体1による死細胞の染色、NUCLEI:Hoechst 33342による細胞核染色、LIGHT:位相差顕微鏡法である。
【
図17C】実施例3に記載される通り、Aggrewellプレートへの播種、及び2日間にわたる培養の後に、新規調製pStemHep(パネルA)、及び凍結保存pStemHep(パネルB)から調製されたスフェロイドの作出を示す写真である。パネルCは、Live/Deadアッセイ免疫蛍光試験により測定された、スフェロイドの生存率を示す写真である。LIVE:エステラーゼ活性、DEAD:エチジウムホモ二量体1による死細胞の染色、NUCLEI:Hoechst 33342による細胞核染色、LIGHT:位相差顕微鏡法である。
【
図18】RT-qPCRにより決定された、実施例2に指し示される通りに培養された新規調製pStemHep(pStemHep FRESH)、又は凍結保存pStemHep(pStemHep FROZEN)、実施例3に指し示される通りに作出され、2日間にわたり培養された、新規調製pStemHepから調製されたスフェロイド(SPHE FRESH)、又は凍結保存pStemHepから調製されたスフェロイド(SPHE FROZEN)における、マーカーであるSOX17、HNF4A、及びAFPのmRNAの相対レベルを示すヒストグラムである。相対遺伝子発現レベルは、Log10スケールである。全ての相対遺伝子発現レベルは、未分化hESCの相対遺伝子発現レベルと有意に異なる。
【
図19】免疫蛍光試験により測定された、pStemHepから調製され、2日間にわたり培養されたスフェロイドによる、AFP、CK19、FOXA2、HNF4A、及びSOX17の発現、並びにALBの非発現を示す写真である。
【
図20A】ELISA試験を介する、pStemHepから調製され、Aggrewell 400(商標)内で、2日間にわたり培養されたスフェロイド(SPHE)による、AFPの発現及びALBの非発現を示すプロットである。pStemHep及びHLC(実施例1で指し示された通りに作出された)を、それぞれ、ヒトAFP(パネルA)及びヒトALB(パネルB)の分泌についての陽性対照として使用した。
*P<0.05である。
【
図20B】ELISA試験を介する、pStemHepから調製され、Aggrewell 400(商標)内で、2日間にわたり培養されたスフェロイド(SPHE)による、AFPの発現及びALBの非発現を示すプロットである。pStemHep及びHLC(実施例1で指し示された通りに作出された)を、それぞれ、ヒトAFP(パネルA)及びヒトALB(パネルB)の分泌についての陽性対照として使用した。
*P<0.05である。
【
図21】実施例2の表2に記載される通り、凍結pStemHepが、プロトコールCに従い調製されたことを除き、
図4の通りであるマウス(各群内のn=5)の生存百分率であり、体重1kg当たり700mgのアセトアミノフェンを施され、更に移植された腹腔内に2×10
7個のpStemHepを施されたC57BL6マウス(プロット1)、又はこれを施されなかったC57BL6マウス(プロット2)における生存百分率を示すプロットである。
【
図22】ELISAにより測定された、腹腔内に移植された、無細胞/あらかじめモールド成形されたアルギン酸ハイドロゲル、若しくは1×10
7個のpStemHepから調製され、2日間にわたり培養されたスフェロイドを含有し、あらかじめモールド成形され、腹腔内に移植された、アルギン酸ハイドロゲルを施されなかったC57BL/6マウス(対照、n=3)、又はこれらを施されたC57BL/6マウス(Alginate、n=5;若しくはSPHE Alginate、n=3)による、3つの群のin vivoにおける、ヒトAFPの産生レベルを示すプロットである。ヒトAFPレベルは、移植の24時間後のマウスにおいて決定した。各ドットは、動物に対応する。
*P<0.05である。
【
図23】Live/Deadアッセイ免疫蛍光試験により測定された、移植され、移植後8日目において、
図21に描示された動物から採取されたスフェロイドの高生存率を示す写真である。マウス腹腔内における8日間の後、SPHEにおける細胞の大半は、高エステラーゼ活性(LIVE)を有し、少数の細胞だけが、エチジウムホモ二量体1に照らして陽性であった(DEAD)。細胞核を、Hoechst 33342で染色した(NUCLEI)。
【
図24A】リアルタイム RT-qPCRにより決定される、in vitroにおいて、8日間にわたり培養されたpStemHepから調製されたスフェロイド(SPHE D8 in vitro)、及び移植され、移植後8日目において、
図21に描示された動物から採取された、アルギン酸ハイドロゲル中に包埋されたスフェロイド(SPHE D8 Alginate)における、肝臓分化の鍵となるマーカー、すなわち、AFP(パネルA)及びHNF4A(パネルB)のmRNAの相対レベルを示すヒストグラムである。相対遺伝子発現レベルは、Log10スケールである。
*P<0.05である。
【
図24B】リアルタイム RT-qPCRにより決定される、in vitroにおいて、8日間にわたり培養されたpStemHepから調製されたスフェロイド(SPHE D8 in vitro)、及び移植され、移植後8日目において、
図21に描示された動物から採取された、アルギン酸ハイドロゲル中に包埋されたスフェロイド(SPHE D8 Alginate)における、肝臓分化の鍵となるマーカー、すなわち、AFP(パネルA)及びHNF4A(パネルB)のmRNAの相対レベルを示すヒストグラムである。相対遺伝子発現レベルは、Log10スケールである。
*P<0.05である。
【
図25】PARTICLEMETRIX(登録商標)社製のZetaView装置によるナノ粒子トラッキング解析(NTA)を使用して、細胞上清中のpStemHepにより分泌された粒子のサイズ分布を示すグラフである。
【
図26A】pStemHepにより分泌された細胞外小胞(EV)における、ExoViewデバイスによる、テトラスパニンの検出を示す、スキーム及びプロットのセットである。EVは、まず、スポット上において、抗テトラスパニン抗体により捕捉され、次いで、同じテトラスパニンに対する蛍光標識化抗体の組合せが適用され、読み取られる(パネルA)。結果は、4つの異なるスポット上の蛍光による、粒子の検出(粒子は、読み取られた面積により正規化される;MIgG:アイソタイプ対照)を裏付ける(パネルB)。最後に、全てのスポットにおいて発現されたテトラスパニン数の分布を表す(パネルC)。3つのマーカーは、CD63、CD81、及びCD9である。
【
図26B】pStemHepにより分泌された細胞外小胞(EV)における、ExoViewデバイスによる、テトラスパニンの検出を示す、スキーム及びプロットのセットである。EVは、まず、スポット上において、抗テトラスパニン抗体により捕捉され、次いで、同じテトラスパニンに対する蛍光標識化抗体の組合せが適用され、読み取られる(パネルA)。結果は、4つの異なるスポット上の蛍光による、粒子の検出(粒子は、読み取られた面積により正規化される;MIgG:アイソタイプ対照)を裏付ける(パネルB)。最後に、全てのスポットにおいて発現されたテトラスパニン数の分布を表す(パネルC)。3つのマーカーは、CD63、CD81、及びCD9である。
【
図26C】pStemHepにより分泌された細胞外小胞(EV)における、ExoViewデバイスによる、テトラスパニンの検出を示す、スキーム及びプロットのセットである。EVは、まず、スポット上において、抗テトラスパニン抗体により捕捉され、次いで、同じテトラスパニンに対する蛍光標識化抗体の組合せが適用され、読み取られる(パネルA)。結果は、4つの異なるスポット上の蛍光による、粒子の検出(粒子は、読み取られた面積により正規化される;MIgG:アイソタイプ対照)を裏付ける(パネルB)。最後に、全てのスポットにおいて発現されたテトラスパニン数の分布を表す(パネルC)。3つのマーカーは、CD63、CD81、及びCD9である。
【
図27】3例の試料から検出されたタンパク質(閾値>1 PSM(peptide spectrum match))に基づくベン図による、細胞溶解物、細胞上清、及び精製小胞についてのプロテオミクス解析を示すスキームである。
【
図28】ELISA試験により測定された、プロトコールCに従い調製されたpStemHepの培養物上清中における、HGFの発現を示すプロットである。
【実施例】
【0317】
本開示及び本発明は、以下の実施例により、更に例示される。本明細書では、そうでないことが言明されない限りにおいて、「pStemHep」という用語は、本発明に従う肝幹細胞様細胞を指す。
【0318】
(実施例1)
1.1 材料及び方法
a)細胞培養物
ヒト胚性幹細胞(hESC)系は、ヒト線維芽フィーダー細胞層上、最新版「医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準」(cGMP)条件下で派生させたものであり、調査研究/臨床グレードフォーマットで入手可能である。hESC(ESI-BIO社製)は、37℃、5%CO2インキュベーター内、5μg/mlのLaminin LN521(BIOLAMINA(登録商標)社製)でプレコーティングされた培養ディッシュ上、mTeSR1(商標)培地(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)中、フィーダーフリー条件下で、毎日培地を交換して培養し、TrypLE(商標)(THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)を使用して継代し、次いで、10μMのRock inhibitor Y-27632(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)の存在下、24時間にわたり培養した。
【0319】
b)in vitroにおける肝臓分化(肝幹細胞集団の作出)
細胞(1cm2当たりの細胞75,000個)を、10μMのRock inhibitor Y-27632(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)を含有するmTeSR1(商標)(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)中に5μg/mlで、Laminin LN521(BIOLAMINA(登録商標)社製)上に播種した。24時間後、分化を開始させるために(0日目)、hESC維持培地を、B27無血清サプリメント(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)を補充されたRPMIで置き換え、その後、細胞を、毎日交換した。確定内胚葉分化誘導の1日目に、100ng/mlのアクチビンA(MILTENYI BIOTEC(登録商標)社製)、50ng/mlのWnt3a(R&D SYSTEMS(登録商標)社製)、及び3μMのCHIR-99021(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)の存在下で、細胞を培養した。次いで、細胞を、100ng/mlのアクチビンA(MILTENYI BIOTEC(登録商標)社製)及び50ng/mlのWnt3a(R&D SYSTEMS(登録商標)社製)の存在下で、1日間にわたり培養し、次いで、100ng/mlのアクチビンA(MILTENYI BIOTEC(登録商標)社製)の存在下で3日間にわたり培養した。内胚葉形成の後、肝臓への特化を誘導するために、10ng/mlの線維芽細胞増殖因子10(FGF-10)(MILTENYI BIOTEC(登録商標)社製)、及び10ng/mlの骨形成タンパク質4(BMP-4)(R&D SYSTEMS(登録商標)社製)を、5日間にわたり使用した。この肝臓分化プロトコールAを使用した後、pStemHepを、CryoStor(商標)CS10(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)中で凍結させた。肝臓成熟により、肝細胞様細胞(HLC)を作製するために、細胞を、20ng/mlの肝細胞増殖因子(HGF)及び20ng/mlのオンコスタチンM(OSM)(MILTENYI BIOTEC(登録商標)社製)を補充された肝細胞培養培地(HCM)(LONZA(登録商標)社製)中で培養し、培地を、2日間ごとに交換した。
【0320】
c)RNAの抽出及びリアルタイム定量的PCR
全mRNAは、製造元の推奨に従い、RNeasy Miniキット(QIAGEN(登録商標)社製)を使用して、培養物から抽出した。リアルタイム逆転写は、5ngのRNAから出発して、Applied Biosystems社製のViiA 7リアルタイムPCRシステム、及びTaqmanアッセイ(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)に適切なプライマー:OCT4(Hs00999632_g1)、SOX17(Hs00751752_s1)、HNF4A(Hs00604435-m1)、AFP(Hs00173490_m1)、及びGAPDH(Hs99999905_m1)を使用する、Taqman(登録商標)技術を使用する、1工程RT-PCRキット(AgPath-ID(商標)One-Step RT-PCR;LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)により実施した。相対遺伝子発現は、GAPDH値に照らした正規化の後で、2-ΔΔCt定量法を使用して計算し、未分化hESC細胞内で見出されるレベルの倍数として表した。
【0321】
d)フローサイトメトリー
細胞を採取し、氷上で、Fixable Viability Dye eFluor(商標)450(eBioscience(商標)社製;65-0863-14)と共に、20分間にわたりインキュベートした。細胞内染色は、製造元の指示書に従い、SOX17に対する一次抗体(Allophycocyanin Goat anti-SOX17;R&D SYSTEMS(登録商標)社製;型番:IC1924A)、及びHNF4Aに対する一次抗体(Alexa Fluor 488 Mouse anti-HNF4A;SANTACRUZ(登録商標)社製;型番:SC-374229)の存在下又は非存在下で、Fixation/Permeabilizationキット(eBioscience(商標)社製;00-5123-43及び00-5223-56)を使用して行った。CXCR4の検出は、細胞透過化を伴わずに、anti-CXCR4 monoclonal mouse IgG2b antibody(R&D SYSTEMS(登録商標)社製;型番:Mab173)、及びAlexa Fluor 568 anti-mouse IgG2bにより実施した。解析は、FACSCanto II(BD BIOSCIENCES(登録商標)社製)、及びFlow Joソフトウェア(TREE STAR(登録商標)社製;Ashland、OR、USA)により実施した。ヒト初代肝細胞は、Biopredic International社から得た。
【0322】
e)免疫蛍光細胞染色アッセイ
培養された細胞を、4%のパラホルムアルデヒドにより、室温で、15分間にわたり固定し、PBS中に0.5%のTriton X-100により、15分間にわたり透過化し、PBS中の1%BSA/0.1% Tritonにより、30分間にわたりブロッキングした。一次抗体を、PBS中の11%BSA/0.1% Triton中で希釈し、室温で、1時間インキュベートした(マウス抗AFP、SIGMA ALDRICH(登録商標)社製、型番:A8452、1/50;マウス抗ALB、CEDARLANE(登録商標)社製、型番:CL2513A、1/300;ウサギ抗FOXA2、ABCAM(登録商標)社製、型番:ab108422、1/100;マウス抗HNF4A、SANTACRUZ(登録商標)社製、型番:SC-374229、1/100;ウサギ抗OCT4、SANTACRUZ(登録商標)社製、型番:SC-9081、1/50)。二次抗体を、PBS中の1%BSA/0.1% Triton中で希釈し、室温で、1時間にわたりインキュベートした(Alexa Fluor 488 Donkey anti-mouse IgG、INVITROGEN(登録商標)社製;型番:A21202、1/200;Alexa Fluor 488 Goat anti-rabbit IgG、INVITROGEN(登録商標)社製;型番:A21206、1/200)。カバースリップ及びProLong Gold Antifade Mountant(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)を使用して、細胞をマウントした。全ての写真は、Zeiss社製の蛍光顕微鏡下で観察した。
【0323】
f)酵素免疫測定アッセイ(ELISA)解析
培養培地へと分泌されるヒトAFP及びヒトALBは、製造元の指示書に従い、ヒトAFP Elisa定量キット(ABCAM(登録商標)社製)、及びヒトアルブミンELISA定量キット(Bethyl;http://www.bethyl.com)により決定した。
【0324】
移植された動物の血清へと分泌されるヒトAFPは、製造元の指示書に従い、ヒトAFP Elisa定量キット(EHAFP;THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)により特異的に決定した。
【0325】
g)動物及び急性肝不全(ALF)の誘導
細胞移植の3時間前に、雄NOD/SCIDマウス(6週齢)を、1kg当たり400mgのアセトアミノフェン(APAP)で処置して、急性肝不全(ALF)を誘導した。ALFは、組織学的染色、及び処置された動物の血清中のトランスアミナーゼの決定により査定した。APAPの注射の3時間後、動物に、50μLのRPMI/B27培地(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)中に1×106個の凍結pStemHepinの脾臓内注入を施した。全てのアッセイは、凍結保存され、融解させられたpStemHepを使用して行った。対照マウスには、APAP中毒を施すが、処置は施さなかった。24時間後に、マウスを、麻酔(イソフルラン)下で屠殺した。血液、血清、及び肝臓を回収し、解析まで、-80℃で保管した。組織学的解析のために、ホルマリン固定肝臓を脱水し、パラフィンブロック内に包埋し、5μmの切片へと切断した。肝臓切片を、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色し、デジタルスライドスキャナー(Nanozoomer S360;浜松ホトニクス株式会社)により、20倍の拡大率で走査した。デジタル画像は、8ビットグレースケールへと転換し、正常組織面積及び壊死組織面積を、定量的に査定するように、ImageJソフトウェアを使用して、グレー値を測定した。APAPで中毒にならなかったマウスの肝臓を使用して、正常肝臓のグレー値を規定した。
【0326】
h)Alu PCR
製造元の推奨に従い、Genomic DNA from organs and cells Kit(MACHEREY-NAGEL(登録商標)社製)を使用して、ゲノムのDNAを、組織から抽出した。2つのプライマー:hAluR:5'-TTTTTTGAGACGGAGTCTCGCTC-3'(配列番号1)、及びhAluF:5'-GGCGCGGTGGCTCACG-3'(配列番号2)を使用して、Alu PCRを行った。PCRは、10ngのゲノムDNAを伴う、25μLの総容量中で、Herculaseキット(AGILENT(登録商標)社製)により行った。PCRは、10ngのゲノムDNAを伴う、25μLの総容量中で、Herculase(登録商標)キット(AGILENT(登録商標)社製)により行った。PCRの実行条件は、製造元により推奨される条件である。
【0327】
i)統計学的解析
データは、平均値±SEMとして表す。統計学的解析は、GraphPad Prism(登録商標)7ソフトウェア(GraphPad Software社、San Diego、CA製)を使用して行った。統計学的有意性は、群間の比較のための、スチューデントのt検定を使用して評価した。生存データは、カプラン-マイヤー検定により解析した。生存率の統計学的有意性は、ログランク検定により決定した。全ての検定について、P<0.05を、有意であると考えた(*)。
【0328】
1.2 結果
a)hESC cGMPの、肝幹細胞(pStemHep)への分化
分化プロトコールの0日目に、hESC cGMP培養物は、多能性マーカーであるオクタマー結合性転写因子4(OCT4)について陽性であった(
図1及び
図2A)。hESC cGMPを、3工程の分化プロトコールにかけた。細胞を、確定内胚葉(DE)へと誘導するのに続き、5日間にわたる肝臓特化にかけ、肝幹細胞様細胞(pStemHep)へと細胞分化させた。
図2Aは、多能性細胞(OCT4)、DE(FOXA 2)、肝前駆細胞(AFP)、及び成熟肝細胞(ALB)の鍵となるマーカーの動態:OCT4発現の消滅、DE誘導の後(5日目)における、FOXA2の発現、肝臓誘導の後(11日目)における、AFPの発現及び、アルブミン(ALB)の非発現を示す。11日目に、pStemHepは、RNA、免疫蛍光法、及び/又は細胞蛍光法解析により測定される通り、AFP、CXCR4(DEマーカー)、FOXA2、HNF4A、及びSOX17(DEマーカー)を発現した(
図1B~
図1D及び
図2A~
図2C)。したがって、pStemHepは、AFPを分泌したが(
図2D)、ALBを分泌しなかった(
図3C)。
【0329】
凍結保存及び融解手順は、分離したての細胞と比較した場合に、初代ヒト肝細胞の生存率及び機能に対して、有害な影響を及ぼすことが報告されている。pStemHepの凍結保存の成功は、2~9カ月間にわたる高生存率の保持に成功した(表1)。
【0330】
【0331】
b)HLCへと分化する、hESCの潜在的可能性
pStemHepの、HLCへの肝臓成熟の後、分化細胞の形状は、多角形形状、顕著に異なる円形核又は二核、及び多数の液胞又は小胞を含む、多くの特徴を、成人初代肝細胞と共有した(
図3B)。HLCはALBを分泌した(
図3C)。これは、成熟肝細胞によりもたらされる重要な機能である。細胞免疫染色は、HLCが、ALB、AFP、及びHNF4Aについて陽性であることを示した(
図3A)。
【0332】
c)pStemHepによる、APAP誘導性ALFからのレスキュー
in vivoにおける、pStemHepの治療可能性について評価するために、ALFを模倣する、免疫障害マウスにおけるアセトアミノフェン毒性(APAP)モデルを使用した。
【0333】
マウスモデルにおいて、一貫した肝毒性が示され、ヒト肝臓において、肝細胞損傷が示されているため、まず、このモデルを選んだ。西欧諸国では、パラセタモール中毒は、ALFの第1原因である。
【0334】
体重1kg当たりのアセトアミノフェン用量400mgは、APAP投与の24時間後という早期における、対照動物の急死を結果としてもたらした。pStemHepの移植は、対照ALF動物と比較した場合に、動物の生存率を有意に増大させる(>90%の生存率)(
図4)。
【0335】
したがって、ALFの誘導は、血中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT、主要な肝損傷マーカー)の急速な放出と共時的であった。pStemHepの移植は、対照ALF動物と比較した場合に、細胞療法の24時間後という早期における、ALAT値の低減を結果としてもたらした(
図5)。
【0336】
更に、組織学的解析は、細胞移植後24時間以内に、APAPだけを施される対照動物群において、APAP及びpStemHepを施される動物群と比較して、高度の肝壊死(
図6)を指し示したことは、pStemHep療法の、迅速な治療利益を示す。
【0337】
細胞注入の24時間後に、ヒトAFPが、移植マウスの血清中では検出されたが、対照の非移植マウスの血清中では検出されなかった(
図7)ことは、pStemHep融解の後における、迅速な細胞の回復及び機能性を示す。
【0338】
移植細胞が、レシピエントマウスの肝臓内に生着したのかどうかについて探索するために、ヒトAlu PCR(高度に反復される特異的配列)を使用して、ヒトpStemHepの存在を検出した。ヒト細胞は、移植のわずか24時間後に、肝臓内で検出された(
図8)。
【0339】
1.3 結論
凍結保存手順及び融解手順は、分離されたばかりの細胞と比較した場合に、初代ヒト肝細胞の生存率及び機能に対して、有害な影響を及ぼすことが報告されている(Terryら、2010)。高生存率のほか、培養され、更に分化させられる能力を保持するヒト肝前駆細胞の凍結保存に成功すれば、後続の調査研究及び臨床適用に要求される、長期にわたる細胞の貯蔵が可能となるであろう。肝幹細胞様細胞は、増殖し、HNF4A及びAFP等の肝特異的マーカーを発現することが可能であった。更に成熟させたところ、細胞は、アルブミン分泌等の肝特異的機能を示した。
【0340】
細胞注入の後、pStemHepは、凍結保存状態から、迅速に回復し、生着し、マウスを、致死性の急性肝不全から保護することが可能であった。細胞は、24時間後に、移植マウスの肝臓内で検出された。血清ALAT及び肝組織壊死の、対照APAP-ALFマウスと比較した、有意かつ迅速な低下もまた報告された。
【0341】
本実施例では、ヒト多能性幹細胞から作製された凍結未成熟肝細胞は、肝臓における健常組織の再生を加速化することにより、マウスを、APAP-ALFからレスキューすることが可能であることが示された。pStemHepは、迅速に回復し、移植の24時間後以内に機能的となる。まとめると、したがって、これらの結果は、pStemHepの移植時における、健常肝組織の高度な再生が、ALF等、劇症肝不全の処置に利益をもたらすことが可能であり、また、ACLF等、既存の慢性肝疾患を伴う、劇症肝不全の処置にも利益をもたらしうることを示す。実際、ALFと同様に、ACLFも、劇症肝不全を処置するための、罹患肝臓内における健常肝組織の再生から利益を得る。
【0342】
(実施例2)
2.1 材料及び方法
a)細胞培養物
ヒト胚性幹細胞(hESC)系は、ヒト線維芽フィーダー細胞層上、最新版「医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準」(cGMP)条件下で派生させたものであり、調査研究/臨床グレードフォーマットで入手可能である。hESC(ESI-BIO社製)は、37℃、5%CO2インキュベーター内、5μg/mlのLaminin LN521(BIOLAMINA(登録商標)社製)、又は0.5μg/cm2のビトロネクチン(GIBCO(商標)社製)でプレコーティングされた培養ディッシュ上、mTeSR1培地(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)中、フィーダーフリー条件下で、毎日培地を交換して培養し、TrypLE(商標)(THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)を使用して継代し、次いで、10μMのRock inhibitor Y-27632(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)の存在下、24時間にわたり培養した。
【0343】
b)in vitroにおける肝臓分化及び肝幹細胞の特徴づけ
細胞(1cm2当たりの細胞20,000~50,000個)を、5μg/ml(プロトコールA及びプロトコールB)で、Laminin LN521(BIOLAMINA(登録商標)社製)上に、又は0.0625μg/cm2(プロトコールC)で、LN511(iMatrix 511;AMSBIO(登録商標)社製)上に播種し、mTeSR1(商標)(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)中で、毎日培養物を交換して培養し、TrypLE(商標)(THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)を使用して継代し、次いで、10μMのRock inhibitor Y-27632(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)の存在下、24時間にわたり培養した。
【0344】
次いで、48時間後に、培養プロトコールを提示する表2に従い、実施例1で実施された通りに、hESCの肝臓分化を開始させて、pStemHepを作出した。
【0345】
【0346】
上記のプロトコールにより作出された肝幹細胞様細胞集団を、in vitro及びin vivoにおいて特徴づけた。
【0347】
in vitroにおける特徴づけのために、採取細胞の密度、収量、細胞の生存率、FOXA2及びSOX17等、DE特化についてのマーカー、AFP、APOA1、APOB、HNF1B、HNF4A、TBX3、KRT19、及びTTR等、肝幹細胞特化についてのマーカー、並びにALB、ASGR1、CYP、F9、NAGS、及びUGT1A1等、成熟肝細胞特化についてのマーカーのレベル等のパラメータについて評価した。
【0348】
マーカーのレベルは、言及された通りに、リアルタイムRT-PCR、ELISA、FACS、免疫蛍光細胞染色により評価した。TaqmanアッセイのためのqPCRプライマーについての情報は、実施例1に指し示された通りであり、FOXA2(Hs00232764_m1)、HNF1B(Hs01001602_m1)、TBX3(Hs00195612_m1)、TTR(Hs00174914_m1)のためのqPCRプライマー(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)を伴う。免疫蛍光細胞染色のための抗体についての情報は、実施例1に指し示された通りであり、抗EPCAM(R&D SYSTEMS(登録商標)社;型番:AF960)、抗CK19/KRT19(DAKO(登録商標)社製;型番:M0888)、抗SOX17(R&D SYSTEMS(登録商標)社;型番:AF1924)抗KI67(ABCAM(登録商標)社製;型番:Ab15580)、及びAlexa Fluor 568 Donkey anti-goat IgG(INVITROGEN(登録商標)社製;型番:A11057)を伴う。
【0349】
代替的に、マーカーのレベルは、3'DGE(DGE-Seq)を介する、mRNA発現プロファイリングにより評価した。Kilensら(2018)により記載される通りに、10ngの全RNAに対して、RNAシーケンシングプロトコールを実施して、全mRNA分子百万個当たりのmRNA分子数を決定した。
【0350】
c)動物及び急性肝不全(ALF)の誘導
in vivoにおける特徴づけのために、肝幹細胞は、NOD/SCIDマウスにおけるAPAP誘導性ALFをレスキューする、それらの能力について、400mg/kg又は720mg/kg(上記の実施例1を参照されたい)の用量において評価した。
【0351】
代替的に、APAP誘導性ALFを伴うNOD/SCIDマウスに、表示の通りの、1×106個の凍結保存pStemHepによる移植の前に、肝臓のうちの約3分の1を除去するように、手術を行った。
【0352】
代替的に、実施例1に記載された通りに実施される1×106個の凍結保存pStemHepによる移植の24時間前に、雄C57BL/6マウス(6週齢)を、1kg当たり1,500mgのチオアセトアミド(TAA)で処置して、ALFを誘導した。
【0353】
屠殺時に、血液を回収し、血清アリコートを、光から保護し、実施例1に記載された通りに、ELISAによりヒトAFPを測定する解析まで、-80℃で保管した。
【0354】
KI67(MKI67)陽性細胞の存在は、体重1kg当たり700mgのAPAPを施された動物、又はAPAPだけを施された非処置対照動物における、1×106個のpStemHep(プロトコールCにおける通りに調製した;表2を参照されたい)の注入の24時間後の、ホルマリン固定/パラフィン包埋肝臓切片(3μm)上の免疫組織化学により評価した。切片からパラフィンを抽出した後で、Avidin/biotin blocking kit(THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製;型番:00-4303)を使用して、内因性アビジン/ビオチン結合性部位をブロッキングし、PBS中に3%のH2O2溶液中、10分間にわたるインキュベーションにより、内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害した。Animal Free Blocker(VECTOR LABORATORIES(登録商標)社製;型番:SP-5030-250)中、1時間にわたるインキュベーションの後、Animal Free Blocker中で、1:1,000に希釈されたウサギポリクローナル抗KI67一次抗体(ABCAM(登録商標)社製;型番:ab15580)を、4℃で、一晩にわたり適用した。KI67陽性細胞は、ビオチニル化ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン、及びジアミノベンジジンを、発色性基質として使用する、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(ABCAM(登録商標)社製;型番:ab64261)により明らかにした。スライドは、ヘマトキシリン/キシレンにより対比染色した。
【0355】
d)統計学的解析
統計学的解析は、実施例1で指し示された通りに実施した。
【0356】
2.2 結果
a)3つの異なるプロトコールに従う、hESC cGMPの、pStemHepへの分化
表2の通りの、3つのプロトコール(肝臓分化のための、異なるマトリックス及びカクテル)のうちの1つに従い、hESCを、肝幹細胞へと分化させた。
【0357】
RTqPCR解析により評価される通り、異なるプロトコールに従い作製されたpStemHepは全て、AFPを発現したが、また、FOXA2、HNF1b、HNF4A、TBX3、及びTTRも発現した(
図9)。更に、pStemHepについてのRNAseq解析(プロトコールA及びプロトコールB)は、以下の遺伝子:AFP、APOA1、APOA2、APOB、APOE、CD164、CD24、DPP4、EPCAM、GlA1、GSTA2、KRT18、KRT19、SEPP1、SOD1、SPARC、TTR、VIM、VTNの高発現を示した(
図10)。これらのpStemHepはまた、これらの遺伝子:APOA4、BMP2、BMP4、DLK1、GATA4、GATA6、GSTA1、HNF1B、HNF4A、SMAD7、TBX3も、低相対レベルで発現した。かつ、これらのpStemHepは、成熟肝細胞に特徴的な、以下の遺伝子:ABCB11、ASGR1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2B7P、CYP2C9、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A7、F9、NAGS、UGT1A1を発現せず、PDX1も発現しなかった。
【0358】
したがって、プロトコールA、プロトコールB、及びプロトコールCを使用して作製されたpStemHepは、AFPタンパク質を、産生し、分泌したが、ALBタンパク質は、産生も分泌もしなかった(
図11A及び
図11B)。
図11Bはまた、pStemHepが、HNF4A、SOX17、EPCAM、CK19(KRT19)、FOXA2のタンパク質について陽性であったことも示す。pStemHepはまた、増殖細胞のマーカーであるKI67タンパク質についても陽性であった(
図11B)。
【0359】
b)pStemHepによる、APAP誘導性ALFからのレスキュー
プロトコールA、プロトコールB、及びプロトコールCにより作出された、凍結保存pStemHepを、NOD/SCIDマウスにおけるAPAP誘導性ALFをレスキューする、それらの能力について評価した。
【0360】
図4、
図12、
図13A~
図13B、及び
図14Aは、それぞれ、これらのプロトコールにより作出されたpStemHepが、全て、アセトアミノフェン誘導性ALFを伴うNOD/SCIDマウスの生存の有意な延長を促進することを示す(
図4:プロトコールA、
図12:プロトコールB、
図13A~
図13B:それぞれ、プロトコールB及びプロトコールC、
図14A:プロトコールC)。
【0361】
プロトコールB及びプロトコールCにより作出されたpStemHepは、これらの細胞による移植の前に、肝臓のうちの約3分の1を除去する手術を受けた、NOD/SCIDマウスにおけるアセトアミノフェン誘導性ALFをレスキューすることが可能であった(それぞれ、
図13A~
図13Bを参照されたい)。
【0362】
pStemHepは、非処置対照マウス群において、2日以内に、マウスの死亡率100%を結果としてもたらす、高用量のアセトアミノフェンで中毒になったNOD/SCIDマウスにおけるALFをレスキューすることが可能である(
図14A)。
【0363】
図14B~
図14Cにおいて示される通り、pStemHepは、細胞注入24時間後において、アセトアミノフェン誘導性ALFを伴い、pStemHepを施されなかった、非処置対照マウス(
図14C)と比較した、アセトアミノフェン誘導性ALFを伴うNOD/SCIDマウスの肝臓内の増殖細胞の有意な増大(
図14B)を促進する。これらの結果は、APAP誘導性ALFマウスにおける、pStemHep細胞療法後の、より迅速な肝再生を裏付ける。
【0364】
c)pStemHepによる、非APAP誘導性ALFからのレスキュー
作出された、凍結保存pStemHepを、肝毒素であるチオアセトアミド(TAA)を、非アセトアミノフェン誘導ヒトALFについての動物モデルとして使用するマウスにおいて誘導されたALFをレスキューする、それらの能力について評価した。
【0365】
図15A~
図15Bは、プロトコールにより作出されたpStemHepが、タクロリムス(免疫抑制剤)の存在下で、又はこの非存在下で、免疫コンピテントマウスを、TAA誘導性ALFからレスキューすることを示す。まとめると、これらの結果は、細胞の低免疫原性についての証拠を提示する。
【0366】
図16は、細胞注入の24時間後に、ヒトAFPが、移植マウスの血清中では検出されたが、対照の非移植マウスの血清中では検出されなかったことを示すが、これは、pStemHep融解の後における、迅速な細胞の回復、及びマウスの非APAP誘導性ALFにおける機能性を示す。
【0367】
2.3 結論
本実施例では、いくつかのプロトコールが、マウスモデル急性肝不全を処置するのに、有意に同等な治療結果を伴って実施されうるので、hESCからの、肝幹細胞様細胞(pStemHep)調製物の取得が、限定的工程ではないことが示される。更に、pStemHepは、APAP誘導性ALF及び非APAP誘導性ALFをレスキューしうる。
【0368】
pStemHepは、細胞融解及び細胞移植の後、マウスを、ALF(最初の死が、24時間以内に生じる)からレスキューするのに十分に迅速に(24時間以内に)、かつ/又は免疫抑制の非存在下で治療的に活性となる。まとめると、これらの結果は、pStemHepの移植が、ALF等の劇症肝不全状態のほか、ACLF等、既存の慢性肝疾患を伴う劇症肝不全状態においても、健常組織によるより高度の肝再生を可能とすることを示唆する。ここでもまた、ALFと同様に、ACLFも、劇症肝不全を処置するのに、罹患肝臓内の、健常肝組織の再生から利益を得る。
【0369】
(実施例3)
3.1 材料及び方法
a)pStemHepからの、スフェロイドの作出
pStemHep特化の分化段階(実施例2に記載されたプロトコールを参照されたい)の最終段階において、pStemHep細胞を、Ca/Mg free PBS(GIBCO(登録商標)社製)ですすぎ、37℃で、10分間にわたり、TrypLE(商標)(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)と共にインキュベートした。RPMI/B27(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)を添加して、細胞懸濁液を解離させ、細胞を、静かにフラッシングして、完全に解離させた。次いで、10μMのY27632(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)、20ng/mlのHGF(MILTENYI(登録商標)社製)、20ng/mlのOSM(MILTENYI(登録商標)社製)、及び1μMのデキサメタゾン(SIGMA ALDRICH(登録商標)社製)を補充された、完全HCM(LONZA(登録商標)社製)中に、スフェロイド1つ当たりの細胞1,000個の最終密度に達するように、細胞を、Aggrewell 400(商標)プレート(STEM CELL TECHNOLOGIES(登録商標)社製)へと播種した(0日目:SPHE)。培地交換を伴わずに、細胞を、37℃、5%CO2で、48時間にわたりインキュベートした。
【0370】
b)遺伝子発現解析
マーカーのレベルは、上記で言及された通りに、RT-qPCR及びELISAにより評価した。
【0371】
免疫蛍光細胞染色のために、スフェロイドを、Ca/Mgを補充されたPBSですすぎ、4%PFAを使用して、30分間にわたり固定し、PBS中に0.5%のTritonで、15分間にわたり透過化した。細胞免疫染色は、スフェロイドを、室温において、0.1%Triton及び1%BSA(ブロッキング緩衝液)を含有するPBS中で、一次抗体と共に、1時間にわたりインキュベートし、適切な二次抗体と共に、1時間にわたりインキュベートすることにより実施した(表3)。
【0372】
【0373】
b)細胞の生存率
in vitroにおける細胞の生存率について評価するために、イメージングの前に、30分間にわたり、0.4μMのカルセインAM及び4μMのエチジウムホモ二量体1(LIVE/DEAD viability/cytotoxicity kit;LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)、及び10μg/mlのHoechst 33342(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)を、培養培地へと添加した。
【0374】
c)スフェロイドの移植及びin vivoにおける機能性
移植の前に、スフェロイドを、アルギン酸ハイドロゲル中に包埋した。このために、上記で記載された通りに、2日間にわたり培養されたスフェロイドを作出し、Aggrewellから採取し、100×gで、5分間にわたり遠心分離し、カルシウム/マグネシウム非含有PBS(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)中に再懸濁させた。1ml当たりの細胞20×106個(約2×106個のスフェロイド)の最終細胞濃度に達するように、スフェロイドを、低粘度で、高濃度のグルクロン酸を伴う、8.9%の高純度アルギン酸ナトリウム(Pronova SLG20;NOVAMATRIX(登録商標)社製)と混合し、次いで、0.0225MのCaCO3(SIGMA ALDRICH(登録商標)社製)、及び0.045Mのグルコノ-d-ラクトン(SIGMA ALDRICH(登録商標)社製)と、静かに混合した。250μlハイドロゲルのゲル化は、室温で、3分間にわたり行った。スフェロイドを含有するか、又は含有しない、250μlの、あらかじめモールド成形されたアルギン酸ハイドロゲル2つを、開腹術下で、免疫コンピテントC57BL/6へと腹腔内移植した。
【0375】
in vivoにおけるスフェロイドの生存率について評価するために、移植後8日目に、アルギン酸ハイドロゲルを、移植された動物から採取し、0.1MのEDTA(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)、及び0.2Mの三塩基性クエン酸ナトリウム(SIGMA ALDRICH(登録商標)社製)を含有するカルシウム/マグネシウム非含有PBS(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)溶液を使用して解離させた。ハイドロゲルを完全に解離した後、スフェロイドを、100×gで、5分間にわたりスピニングダウンし、イメージングの前に、90分間にわたり、0.4μMのカルセインAM、及び4μMのエチジウムホモ二量体1(LIVE/DEAD viability/cytotoxicity;LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)、及び10μg/mlのHoechst 33342(LIFE TECHNOLOGIES(登録商標)社製)を含有する、新鮮なRPMI/B27中でインキュベートした。
【0376】
スフェロイド内の遺伝子発現レベルは、移植の8日後に、上記で記載された通りに、アルギン酸ハイドロゲルを採取し、解離させた後で、リアルタイムRT-PCRにより評価した。移植された動物の血清AFPは、製造元の指示書に従い、AFP Elisa Quantification Kit specific for human AFP(EHAFP;THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)により決定した。
【0377】
d)統計学的解析
統計学的解析は、実施例1で指し示された通りに実施した。
【0378】
3.2 結果
図17A~
図17Cにおいて示される通り、新規調製pStemHep又は凍結保存pStemHepは、Aggrewellプレートへの播種後48時間以内の凝集及びスフェロイド形成が可能であった。採取時に、スフェロイドは、高エステラーゼ活性を有し、エチジウムホモ二量体1染色について陽性ではなかった。非凝集細胞だけが、エチジウムホモ二量体1について陽性であり、エステラーゼ活性を示さなかった。これらの結果は、全てのスフェロイドの高生存率を示した。加えて、新規調製pStemHep又は凍結保存pStemHepから調製されたスフェロイドは、これらが調製されたpStemHepと同様の、高レベルのAFP、HNF4A、及びSOX17 mRNAを発現した(
図18)。
【0379】
肝臓分化の鍵となる一部のマーカー発現レベルについて評価するために、スフェロイドに対して、免疫蛍光アッセイを、更に実施した。結果は、スフェロイドが、AFP、CK19(KRT19)、FOXA2、HNF4A、及びSOX17のタンパク質を発現するのに対し、ALBタンパク質を発現しないことを示した(
図19)。
【0380】
最後に、細胞上清試料に対して実施された、AFPについてのELISAは、スフェロイドが、AFPを分泌し、このレベルが、pStemHepのAFPレベルと同様のレベルであることを確認した(
図20A)。
【0381】
加えて、HLCとは対照的に、2日間にわたり培養されたスフェロイドによるALBの分泌は見出されなかった(
図20B)。
【0382】
in vivoにおけるスフェロイドの機能性について査定するために、全pStemHep約10×10
6個を含有する、あらかじめモールド成形されたアルギン酸ハイドロゲル2つを、C57BL/6マウスへと腹腔内移植した。加えて、2×10
7個のpStemHepを、CB57BL/6 ALF-マウスへと、腹腔内移植し、生存をレスキューした(
図21)。
【0383】
図22は、ヒトAFPが、移植の2日後に、C57BL/6マウスの血清中に、スフェロイドを、約320ng/mlの平均値レベルで含有する、あらかじめモールド成形されたアルギン酸ハイドロゲルと共に検出されたことを示す。
【0384】
移植の8日後に、アルギン酸ハイドロゲル中に包埋されたスフェロイドは、生存率が高度であり(
図23)、AFP及びHNF4Aを、in vitroにおいて、8日間にわたり培養されたスフェロイド(アルギン酸ハイドロゲル中に包埋されていない)と同様のレベルで発現した(
図24A~
図24B)。
【0385】
3.3 結論
本実施例では、新規調製分離pStemHep又は凍結保存分離pStemHepから、スフェロイドを、迅速かつ効率的に作出することが可能であることが示された。スフェロイドは、in vitroにおいて、高生存率を示し、pStemHep細胞と同様に、それらの前駆細胞状態を維持し、特に、マーカーであるAFPの発現を伴い、マーカーであるALBの発現を伴わない。アルギン酸ハイドロゲル中に包埋された、これらのスフェロイドは、in vivoにおいて、AFPを分泌し、マウスを、急性肝不全(5日以内に死亡する;実施例1及び実施例2を参照されたい)からレスキューするのに十分な時間である、少なくとも8日間にわたり、免疫コンピテント動物の腹腔内で存続する能力を有する。加えて、腹腔内に移植されたpStemHepは、マウスを、ALFからレスキューする。まとめると、したがって、これらの結果は、ハイドロゲル中に包埋されたpStemHepが、ALF等の劇症肝不全の処置に利益をもたらし、また、ACLF等、既存の慢性肝疾患を伴う劇症肝不全の処置にも利益をもたらすことを裏打ちする。
【0386】
(実施例4)
4.1 材料及び方法
a)細胞上清中のpStemHepにより分泌される細胞外小胞(EV)の精製及びサイズ分布
細胞破砕物を除去するように、2,000×gで、10分間にわたり、細胞上清を清澄化させた。次いで、細胞上清を、40mlの試験管にアリコート分割し、-80℃で凍結させた。3本の試験管を融解させ、粒子サイズ分布及び濃度は、ZetaView(PARTICLEMETRIX(登録商標)社製、Germany)を、405nmのレーザーと共に使用する、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)により決定した。測定の前に、EVを、滅菌PBSにより、100倍に希釈した(NTA測定により、粒子非含有であることが確認される)。各試料について、感度を、80に設定し、シャッターを、100に設定した。
【0387】
b)EVの更なる特徴づけ
optima MAX-XP ultracentrifuge(BECKMAN COULTER(登録商標)社製、UK)を使用する、150,000×gで、90分間にわたる、2回連続の超遠心分離試行により、EVを、細胞上清から濃縮し、精製した。濃縮EVは、ExoView(NANOVIEW BIOSCIENCES(登録商標)社製、USA)により解析した。試料を、キットの試薬A中、1ml当たり1×108個のEVに希釈した。試料を、24ウェルプレート内に入れた、ExoView Tetraspanin Chip for human EV上、室温で、16時間にわたりインキュベートした。チップを、試薬Aにより、3回にわたり洗浄した。チップを、抗CD81 Alexa-555、抗CD63 Alexa-488、及び抗CD9 Alexa-647からなるExoView Tetraspanin Labelling antibodiesと共にインキュベートした。抗体を、免疫蛍光用ブロッキング溶液中で、1:600に希釈した。チップを、250μl標識化液と共に、1時間にわたりインキュベートし、溶液A(0.05%Tween-20を伴うPBS)中で洗浄し、次いで、溶液B(PBS単独)中で、3回にわたり洗浄し、乾燥させた。NScan acquisition softwareを使用するExoView R100 readerにより、チップをイメージングした。データは、ExoViewerを使用して解析した。
【0388】
製造元の指示書に従い、Human HGF Elisa Quantification Kit(THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)により、ヒトHGFを、特異的に決定した。
【0389】
c)NanoLC-MS/MSによるタンパク質の同定及び定量
S-Trap(商標)micro spin column(PROTIFI(登録商標)社製、Hutington、USA)による消化は、製造元の指示書に従い、40μgの細胞溶解物、上清、及び細胞外小胞に対して実施した。略述すると、タンパク質を、5%SDS/1.2%リン酸水溶液中に50mMのヨードアセトアミドによりアルキル化させた。6倍試料容量のS-Trap biding buffer(90%メタノール水溶液、100mMのTEAB、pH7.1)を添加することにより、コロイド状タンパク質微粒子を形成した。タンパク質混合物を、S-Trap micro columnへと移し、4,000×gで、30秒間にわたり遠心分離し、150μLのS-Trap biding bufferで洗浄した。次いで、試料を、4μgのトリプシン(PROMEGA(登録商標)社製)により、47℃で、1時間にわたり消化した。ペプチドを、製造元のプロトコールに従い、溶出させ、Speed Vacuum内で乾燥させた。
【0390】
nanoRSLC-Q Exactive PLUS(RSLC Ultimate 3000(THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製、Waltham MA、USA)を使用するLC-MS+MS解析のために、ペプチドを、HPLCグレード水中の、10%ACN/0.1%TFA中に再懸濁させた。ペプチド(1~2μg)を、マイクロプレカラム(Acclaim PepMap 100 C18,cartridge,300μm i.d.×5mm,5μm、THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)へとロードし、移動相A(0.1%ギ酸を伴うH2O)、及び移動相B(80%アセトニトリル、0.08%ギ酸)を使用して、50cm逆相液体クロマトグラフィーカラム(0.075mm ID,Acclaim PepMap 100,C18,2μm,C18,2μm、THERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)社製)上で分離した。ペプチドを、120分間にわたる、5%~40%の勾配、1分間にわたる、40%~80%の勾配により、カラムから溶出させ、次いで、勾配を、5分間にわたり、80%に維持し、この後、5%へと戻して、カラムを、20分間にわたり再平衡化させてから、次回の注射を行った。
【0391】
溶出されたペプチドは、上位10位収集法を使用する、DDA(data dependent acquisition)により解析し、高エネルギー衝突解離(HCD)によりフラグメント化した。MSスキャン及びMS/MSスキャンは、それぞれ、70,000及び17,5000の解像度で実施した。MS及びMS/MSの自動利得制御(AGC)目標は、最大注射時間を、それぞれ、200ミリ秒間及び120ミリ秒間に設定した場合のカウント数3×106及び1×105に設定した。MS走査範囲は、400~2,000m/zとした。ダイナミックエクスクルージョンは、30秒間に設定した。
【0392】
MSファイルは、Proteome Discoverer software version 2.4.0.305により加工し、Mascot search engine against the UniProtKB/Swiss-Prot Homo sapiens database(公開年月日:April 15, 2019、登録数:20415)により検索した。親質量及びフラグメントイオンを検索するために、質量偏差を、それぞれ、3ppm及び20ppmへと設定した。他の検索パラメータは、トリプシンによる切断についての厳密な特異性を伴う、7アミノ酸の最小ペプチド長、固定修飾としてのカルバミドメチル化(Cys)、これに対する可変修飾としての酸化(Met)及びN末端アセチル化を含んだ。
【0393】
4.2 結果
a)細胞上清中のpStemHepにより分泌されるEVの精製及びサイズ分布
細胞上清を、NTAにより研究した。1mL当たりの粒子4.2±0.4×10
9個という大きな数が測定されたが、これは、播種細胞2×10
9個当たりの全粒子(2.0±0.2)×10
12個に対応し、細胞1個当たりの粒子約10
3個を意味する。それらのサイズである、約100nmは、EVの分布によく対応する(
図25及び表4)。
【0394】
【0395】
b)EVの更なる特徴づけ
得られたデータは、EVを、3つの被験抗テトラスパニン(CD63/CD81/CD9抗体;
図26Aを参照されたい)により免疫捕捉することができ、スポット1つ当たり約150~300個の粒子が検出されることを指し示した。シグナルの大半は、マーカーであるCD63と関連し(40~70%)、より小さな程度で、マーカーであるCD81(35~70%)と関連した(
図26B)。免疫捕捉されたEVのうちの、それぞれ、2及び16%は、3つのテトラスパニンマーカーのうちの3つ又は2つを発現するEVであった(
図26C)。これは、精製粒子中の、EV(テトラスパニン陽性)の存在を確認する。
【0396】
c)NanoLC-MS/MSによるタンパク質の同定及び定量
精製小胞についてのプロテオーム解析を、細胞溶解物に由来するタンパク質、及び全上清のタンパク質と比較した。解析された0.5μgのタンパク質から、小胞試料は、発現タンパク質において、最高度の多様性を示し、これらの大半は、細胞溶解物と共通であった(
図27)。EV中に常套的に存在する、多くの細胞質ゾルタンパク質及び細胞膜タンパク質は、小胞試料中でも、高濃度で認められた。このプロテオーム解析により、培養細胞の上清中には、著明量のEV及びエキソソームが存在し、これらを精製することも可能であることが確認された。EVが、EV内で通例見出されるタンパク質(表7)だけでなく、AFP、HGF、アポリポタンパク質(表5及び表6、
図28)等、これらの細胞と同じ、目的のタンパク質も含有することは、注目に値する。
【0397】
【0398】
【0399】
【0400】
【配列表】
【国際調査報告】