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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-24
(54)【発明の名称】環境に優しい紙コップ用原紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/82 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
D21H19/82
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020546168
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 KR2020007088
(87)【国際公開番号】W WO2021187668
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0031855
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333491
【氏名又は名称】ハンクク ペイパー マニュファクチャリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,イク-スン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ハク-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ノー,ヨン-ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンーソ
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AG70
4L055AG71
4L055AG86
4L055AG89
4L055AH35
4L055BE09
4L055EA14
4L055EA20
4L055EA32
4L055FA30
4L055GA05
4L055GA30
(57)【要約】
本発明は、環境に優しい紙コップ用原紙に関し、より詳しくは、紙コップ用原紙に求められる耐水性、耐油性、ヒートシール性及び耐ブロッキング性などを保持しながら、リサイクル性及び生分解性を有することで環境に配慮したことを特徴とする、環境に優しい紙コップ用原紙を開示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙と、前記基紙上に形成された二重コーティング層と、を含み、
ヒートシール性、耐水性及び耐ブロッキング性を有し、リサイクルが容易であり、自然状態で生分解されることを特徴とする環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項2】
前記二重コーティング層は、前記基紙上に塗布された第1コーティング液により形成される第1コーティング層と、前記第1コーティング層上に塗布された第2コーティング液により形成される第2コーティング層を含むことを特徴とする請求項1に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項3】
前記二重コーティング層は、前記第1コーティング層によりヒートシール性及び耐水性が与えられ、前記第2コーティング層により耐ブロッキング性が与えられることを特徴とする請求項2に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項4】
前記第1コーティング液は、ヒートシール性及び耐水性を与える第1樹脂と気泡を除去する第1消泡剤とを含むことを特徴とする請求項3に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項5】
前記第1樹脂は、紙コップ製造時の温度よりも低いガラス転移温度を有し、紙コップ用原紙にヒートシール性及び耐水性を与えることを特徴とする請求項4に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項6】
前記第1樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、
固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃であることを特徴とする請求項5に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項7】
前記第1消泡剤は、前記第1樹脂に対して、0.002重量部が添加されることを特徴とする請求項4に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項8】
前記第1コーティング液のコーティング量(g/m)は、7g/mを超え、18g/m未満であることを特徴とする請求項4に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項9】
前記第2コーティング液は、耐ブロッキング性を与える第2樹脂と、気泡を除去する第2消泡剤と、表面ベタツキを防止するシリカと、コーティング被覆率を向上させる湿潤剤と、を含むことを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項10】
前記第2樹脂は、紙コップ製造時の温度よりも高いガラス転移温度を有し、紙コップ用原紙に耐ブロッキング性を与えることを特徴とする請求項9に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項11】
前記第2樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、
固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃であることを特徴とする請求項10に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項12】
前記第2消泡剤は、前記第2樹脂に対して、0.002重量部が添加されることを特徴とする請求項9に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項13】
前記シリカは、前記第2樹脂に対して、0.05重量部を超え、0.21重量部未満で添加されることを特徴とする請求項9に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項14】
前記湿潤剤は、前記第2樹脂に対して、0重量部を超え、0.02重量部未満で添加されることを特徴とする請求項9に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項15】
前記第2コーティング液のコーティング量(g/m)は、1g/mを超え、5g/m2未満であることを特徴とする請求項9に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項16】
前記二重コーティング層は、前記基紙の片面上にのみ形成されることを特徴とする請求項3に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項17】
前記二重コーティング層は、前記基紙の両面上に形成されることを特徴とする請求項3に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項18】
前記第1コーティング層の第1樹脂は、80℃以上150℃以下でヒートシール性を示し、前記第2コーティング層の第2樹脂は、80℃以上120℃以下で耐ブロッキング性を示すことを特徴とする請求項3に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項19】
前記第1樹脂がヒートシール性を示す温度は、前記第2樹脂が耐ブロッキング性を示す温度よりも高いことを特徴とする請求項18に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項20】
前記第1樹脂は、コーティング面とコーティング面との間の接着時には、80℃以上145℃以下でヒートシール性を示すことを特徴とする請求項19に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項21】
前記第1樹脂は、約115℃でヒートシール性を示すことを特徴とする請求項20に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項22】
前記第1樹脂は、コーティング面と非コーティング面との間の接着時には、90℃以上150℃以下でヒートシール性を示すことを特徴とする請求項19に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項23】
前記第1樹脂は、約130℃でヒートシール性を示すことを特徴とする請求項22に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項24】
前記第2樹脂は、コーティング面と非コーティング面との間の接着時には、90℃以上120℃以下で耐ブロッキング性を示すことを特徴とする請求項19に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【請求項25】
前記第2樹脂は、約100℃で耐ブロッキング性を示すことを特徴とする請求項24に記載の環境に優しい紙コップ用原紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しい紙コップ用原紙に関し、より詳しくは、紙コップ用原紙に求められる耐水性、耐油性、ヒートシール性及び耐ブロッキング性などを保持しながら、リサイクル性及び生分解性を有することで環境に配慮したことを特徴とする、環境に優しい紙コップ用原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙コップを製造するには、紙の表面にバリア(Barrier)特性とヒートシール性(Heat Sealability)を備えた材料をコーティングする必要がある。
汎用の紙コップ製造で最も広く使用されている方法の一つによると、紙の表面はt-ダイ(T-die)プロセスで融解(Melting)させたポリエチレン(PE)がコーティングされている。
【0003】
ポリエチレン(PE)は、紙コップに最も広く使用されているコップコーティング材料の一つである。ポリエチレン(PE)はバリア(Barrier)特性もあり、コーティング面と紙との間のヒートシール、コーティング面とコーティング面との間のヒートシールが可能で、紙コップの製造に最適な特性を有している。
【0004】
しかし、ポリエチレン(PE)は、自然状態では生分解されず、紙コップに使用されたパルプを再使用するための再パルプ化(Repulping)工程で別の除去工程を経る必要があり、実際には90%以上の紙コップは回収されずに廃棄されている。
従って、関連業界では、ポリエチレン(PE)以外の材料で紙をコーティングすることにより、環境に優しい紙コップを製造する試みがなされてきた。
【0005】
現在商品化されている環境に優しい紙コップの代表的なものには、ポリ乳酸(PLA)を使用したコーティング紙コップがある。ポリ乳酸(PLA)は、石油系の化合物でなく天然素材から調製された高分子であり、ポリ乳酸(PLA)は特定の条件で生分解が可能であるという事実により、関連業界は、ポリ乳酸を使用して製造された紙コップが環境に優しい紙コップであると主張している。
【0006】
しかし、ポリ乳酸(PLA)は、自然状態で分解されないが、特定の条件でのみ分解される高分子であるため、通常、埋没状態では生分解されない。また、資源のリサイクルの側面では、ポリ乳酸(PLA)コーティングは、実際にはポリエチレン(PE)コーティングよりもパルプ回収が困難であるため、ポリ乳酸(PLA)でコーティングされた紙コップが環境に優しい紙コップであると結論付けることは不合理である。
【0007】
原紙には、環境に優しい紙コップを製造するために、リサイクル性と生分解性が求められるが、このような特性を重視すると、紙コップ用原紙が基本的に保持する必要がある耐水性、作業性などが確保できない場合がある。
【0008】
図1は、紙コップを製造するための従来のプロセスを示す。図1を参照すると、一般的な紙コップの製造工程は、紙コップ用原紙を紙コップの展開図に沿って切断した後、図1に示されるように、切断された原紙の紙コップの側面を形成する側面紙S部分を図示のように巻き、側面紙Sの両端部を繋がるようにする。
【0009】
紙コップ用原紙には、紙コップの耐水性を確保するためのコーティング面が形成されているため、側面紙Sを巻いて端部を繋ぐと、コーティング面と非コーティング面が接着されるため、これらの表面間のヒートシール性に優れている必要がある。
【0010】
コーティング面と非コーティング面との間の接着により、側面紙Sを円筒状に巻く場合、紙コップの底面を形成する底面紙Bを用意し、円筒状に巻かれた側面紙Sの下側の部分に前記底面紙Bを接着する作業を進めることになる。この過程で、底面紙Bは、図2に示されるように、折り畳まれた側面紙Sと接着されるので、コーティング面と非コーティング面との間の接着だけでなく、コーティング面とコーティング面との間の接着にも優れていることが求められる。
【0011】
結局、液体等が入る紙コップの基本特性を実現するためには、紙コップ用原紙に耐水性を発現させるためのコーティング面を形成し、さらにコーティング面と非コーティング面との間、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性に優れていることが重要である。
【0012】
しかし、前述したように、優れたヒートシール性が要求される状況であっても、過度なヒートシール性が紙コップの製造工程を困難にする要因となることがある。その理由は以下の通りである。側面紙Sと底面紙Bとが接着された製造時の紙コップを金型にのせたまま回転させ、製造装置が回転する紙コップの上部を押圧してカール部Cを形成する。この工程で、紙コップのヒートシール性が必要以上に高いと、紙コップのコーティング面と金型との間に接着が生じ、カール部Cの形成後、金型から紙コップの分離が不十分になる。製造中の紙コップが金型から時間通りに分離されないと、カール部Cの形成作業が停止していまい、最終的には全作業工程で不具合が発生する場合がある。また、紙コップ製造のために積み重ねられた原紙同士がくっついたり、完成された紙コップを積み重ねた時、積み重ねられた紙コップ同士がくっついたりする場合がある。
【0013】
従来のアクリル系共重合体樹脂を適用した技術は、ヒートシール性を有するコーティング層の設計は容易であったが、実際の紙コップ成形工程ではヒートシール性に対抗する耐ブロッキング性(Block Resistance)が必要となり、この両者を一つの層で両立させることは困難であった。
【0014】
このように、紙コップ用原紙は、コーティング面の耐水性、耐油性に加え、ヒートシール性及び耐ブロッキング性に優れている必要があるので、このような特性を基本的に満たすためには、環境に優しい紙コップ用原紙を提供する必要があり、さらにリサイクル性及び生分解性を備える必要がある。前記すべての性能を満足できる原紙を製造することは容易でなく、ある一つの性能が満たされたとしても、他の性能が満たされない問題があった。
【0015】
資源枯渇と環境汚染により、関連業界では、環境に優しい紙コップ用原紙に対する需要は徐々に高まっており、従来の環境に優しい紙コップ用原紙として発売された原紙は、リサイクルが可能と言われているが、実際の再パルプ化(Re-pulping)はスムーズに行われず、廃棄された紙コップのほとんどは6カ月が過ぎても分解されなかった。また、従来の原紙は、紙コップ用原紙としての基本的な要件すら備えていなかった。従って、本願発明の出願人は、紙コップ用原紙としての基本的な特性を保持しながら、環境にやさしい紙コップ用原紙の開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】韓国 公開特許公報 第10-2016-0035576号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、前述のような問題を解決するためになされた。
本発明の目的は、ヒートシール性、耐水性及び耐ブロッキング性に優れ、作業性が良好で、使用済み紙コップの再パルプ化が可能であり、土壌又は空気にさらされたとき、自然分解された環境に優しい紙コップ用原紙を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、基紙上に二重コーティング層を形成し、環境に優しい紙コップ用原紙でありながら、コーティング面とコーティング面との間、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性を高めて、紙コップの耐水性、耐油性などが確保され、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性を高めて、金型からの製造中の紙コップの分離を容易にするか、積み重ねられた原紙同士又は完成された紙コップ同士の接着が生じないようにする、環境に優しい紙コップ用原紙を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、紙コップでの成形が容易で、漏水などがなく、紙コップのコーティング面が人体に無害であるため使用上の問題がなく、使用済み紙コップに対して別途のフィルム除去工程を実行しなくても、リサイクルが可能な環境に優しい紙コップ用原紙を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、基紙上に第1コーティング液を塗布して第1コーティング層を形成することにより、前記第1コーティング層によるヒートシール性及び耐水性に優れた環境に優しい紙コップ用原紙を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、第1コーティング層上に第2コーティング液を塗布して第2コーティング層を形成することにより、前記第2コーティング層を通して優れた耐ブロッキング性が保証される環境に優しい紙コップ用原紙を提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、ガラス転移温度が比較的低い第1樹脂から第1コーティング液を製造することにより、低温でもヒートシールが可能な環境に優しい紙コップ用原紙を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、第1コーティング液を製造するとき、第1樹脂に第1消泡剤を添加することにより、気泡の発生を防止及び除去することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、基紙上に塗布される第1コーティング液のコーティング量が7g/mを超えるようにして、紙コップの耐水性及び耐油性が急激に低下することを防止し、第1コーティング液のコーティング量が18g/m未満になるようにして、原紙のリサイクル性を高めて、第1コーティング液のコーティング量増加に伴う原紙コストの上昇を防止することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、ガラス転移温度が比較的高い第2樹脂で第2コーティング液を製造し、これを第1コーティング層上に塗布して、第1コーティング層上に第2コーティング層が形成されるようにすることにより、第2コーティング層によって原紙の耐ブロッキング性を高めることである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、第2コーティング液を製造するとき、第2樹脂に第2消泡剤を添加することにより、気泡の発生を防止及び除去することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、第2コーティング液を製造するとき、シリカを添加して表面ベタツキを防止することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、第2コーティング液の製造時に添加されるシリカの量が第2樹脂に対して、0.06重量部を超えるようにして、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性の急激な低下を防止し、シリカの量が第2樹脂に対して、0.21重量部未満になるようにすることによって、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性が正常範囲を外れることを防止することである。
【0029】
本発明のさらに別の目的は、第2コーティング液を製造する時に湿潤剤を添加し、表面張力差によるコーティング液の凝集を防止し、第2コーティング液が第1コーティング層の表面全体に均一に塗布されるようにすることである。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、第2コーティング液の製造時に添加される湿潤剤の量が、第2樹脂に対して、0重量部を超えるようにして、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性の低下を防止し、湿潤剤の量が、第2樹脂に対して、0.02重量部未満になるようにして、熱水耐水性とリサイクル性の低下を防止し、湿潤剤の過剰添加による製造コストの上昇を防止することである。
【0031】
本発明のさらに別の目的は、第1コーティング層上に塗布される第2コーティング液のコーティング量が、1g/mを超えるようにして、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性の急激な低下を防止し、第2コーティング液のコーティング量が5g/m未満になるようにして、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性が正常範囲を外れないようにすることである。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、第1コーティング層と第2コーティング層を含む二重コーティング層が基紙の片面上にのみ形成されるようにして、紙コップ用原紙の製造コストを低くすることである。
【0033】
本発明のさらに別の目的は、第1コーティング層と第2コーティング層を含む二重コーティング層が基紙の両面上に形成されるようにして、紙コップの耐水性及び耐油性確保が重要な場合、二重コーティング層が基紙の両面に形成された原紙が使用できるようにすることである。
【0034】
本発明のさらに別の目的は、紙コップの側面紙には、二重コーティング層が基紙の片面上にのみ形成された原紙を使用し、紙コップの底面紙には二重コーティング層が基紙の両面上に形成された原紙を使用するようにすることによって、紙コップの製造コストを低くしながらも、優れた品質の紙コップが生産できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、前述した目的を達成するために、以下の構成を有する実施形態により具現される。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、基紙と、前記基紙上に形成された二重コーティング層と、を含み、ヒートシール性、耐水性及び耐ブロッキング性を有し、リサイクルが容易であり、自然状態で生分解されることを特徴とする環境に優しい紙コップ用原紙が提供される。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、前記二重コーティング層は、前記基紙上に塗布された第1コーティング液により形成される第1コーティング層を含み、前記第1コーティング層上に塗布された第2コーティング液により形成される第2コーティング層を含む。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記二重コーティング層は、前記第1コーティング層によりヒートシール性及び耐水性が与えられ、前記第2コーティング層により耐ブロッキング性が与えられる。
【0039】
本発明の別の実施形態によれば、前記第1コーティング液は、ヒートシール性及び耐水性を与える第1樹脂と気泡を除去する第1消泡剤とを含む。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、前記第1樹脂は、紙コップ製造時の温度よりも低いガラス転移温度を有し、紙コップ用原紙にヒートシール性及び耐水性を与える。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、前記第1樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃である。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第1消泡剤は、前記第1樹脂に対して、0.002重量部が添加される。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第1コーティング液のコーティング量(g/m)は、7g/mを超え、18g/m未満である。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第2コーティング液は、耐ブロッキング性を与える第2樹脂と、気泡を除去する第2消泡剤と、表面ベタツキを防止するシリカと、コーティング被覆率を向上させる湿潤剤と、を含む。
【0045】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第2樹脂は、紙コップ製造時の温度よりも高いガラス転移温度を有し、紙コップ用原紙に耐ブロッキング性を与える。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第2樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃である。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第2消泡剤は、前記第2樹脂に対して、0.002重量部が添加される。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記シリカは、前記第2樹脂に対して、0.05重量部を超え、0.21重量部未満で添加される。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記湿潤剤は、前記第2樹脂に対して、0重量部を超え、0.02重量部未満で添加される。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第2コーティング液のコーティング量(g/m)は、1g/mを超え、5g/m未満である。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記二重コーティング層は、前記基紙の片面上にのみ形成される。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記二重コーティング層は、前記基紙の両面上に形成される。
【0053】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第1コーティング層の第1樹脂は、80℃以上150℃以下でヒートシール性を示し、前記第2コーティング層の第2樹脂は、80℃以上120℃以下で耐ブロッキング性を示す。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第1樹脂がヒートシール性を示す温度は、前記第2樹脂が耐ブロッキング性を示す温度よりも高い。
【0055】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第1樹脂は、コーティング面とコーティング面との間の接着時には、80℃以上145℃以下でヒートシール性を示す。
【0056】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第1樹脂は、約115℃でヒートシール性を示す。
【0057】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第1樹脂は、コーティング面と非コーティング面との間の接着時には、90℃以上150℃以下でヒートシール性を示す。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態によれば、記第1樹脂は、約130℃でヒートシール性を示す。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第2樹脂は、コーティング面と非コーティング面との間の接着時には、90℃以上120℃以下で耐ブロッキング性を示す。
【0060】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記第2樹脂は、約100℃で耐ブロッキング性を示す。
【発明の効果】
【0061】
本発明は、前述した実施形態、構成、組み合わせ及び使用関係により、以下の効果を奏することができ、以下説明する。
【0062】
本発明は、優れたヒートシール性、耐水性及び耐ブロッキング性により、作業性が良好であり、使用済み紙コップの再パルプ化を可能にし、土壌又は空気にさらされた状態で自然分解される環境に優しい紙コップ用原紙を提供する効果を奏する。
【0063】
本発明は、基紙上に二重コーティング層を形成し、環境に優しい紙コップ用原紙でありながらも、コーティング面とコーティング面、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性を高め、紙コップの耐水性、耐油性などが確保され、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性を高め、製造中の金型からの分離を容易にするか、積み重ねられた原紙同士又は完成された紙コップ同士の接着が生じないようにする環境に優しい紙コップ用原紙を提供する効果を奏する。
【0064】
本発明は、紙コップへの成形が容易であり、漏水がなく、紙コップのコーティング面が人体に無害であるため、使用上の問題がなく、さらに、使用済み紙コップに対して別途のフィルム除去工程を実行しなくてもリサイクルが可能になる環境に優しい紙コップ用原紙を提供する効果がある。
【0065】
本発明は、基紙上に第1コーティング液を塗布し、第1コーティング層を形成することによって、前記第1コーティング層により優れたヒートシール性及び耐水性が確保されるようにする環境に優しい紙コップ用原紙を提供する効果を奏する。
【0066】
本発明は、第1コーティング層上に第2コーティング液を塗布し、第2コーティング層を形成することによって、前記第2コーティング層による優れた耐ブロッキング性が確保されるようにする環境に優しい紙コップ用原紙を提供する効果を奏する。
【0067】
本発明は、ガラス転移温度が比較的低い第1樹脂から第1コーティング液を製造することにより、低温でもヒートシールが可能な環境に優しい紙コップ用原紙を提供する効果がある。
【0068】
本発明は、第1コーティング液を製造するときに、第1樹脂に第1消泡剤を添加することによって、気泡の発生を防止及び除去する効果を奏する。
【0069】
本発明は、基紙上に塗布される第1コーティング液のコーティング量が7g/mを超えるようにして、紙コップの耐水性及び耐油性の急激な低下を防止し、第1コーティング液のコーティング量が18g/m未満になるようにして原紙のリサイクル性を高め、第1コーティング液のコーティング量の増加による原紙コストの上昇を防止する効果を奏する。
【0070】
本発明は、ガラス転移温度が比較的第2樹脂から第2コーティング液を製造し、これを第1コーティング層上に塗布し、第1コーティング層上に第2コーティング層が形成されるようにすることによって、第2コーティング層により原紙の耐ブロッキング性を高める効果がある。
【0071】
本発明は、第2コーティング液を製造するとき、第2樹脂に第2消泡剤を添加することによって、気泡の発生を防止及び除去する効果を奏する。
【0072】
本発明は、第2コーティング液を製造するとき、シリカを添加して、表面ベタツキを防止する効果を奏する。
【0073】
本発明は、第2コーティング液の製造時に添加されるシリカの量が第2樹脂に対して、0.06重量部を超えるようにして、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性の急激な低下を防止し、シリカの量が第2樹脂に対して、0.21重量部未満になるようにすることによって、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、熱水耐水性、冷水耐水性が正常範囲を外れることを防止する効果がある。
【0074】
本発明は、第2コーティング液を製造するとき、湿潤剤を添加して、表面張力差によるコーティング液の凝集を防止し、第2コーティング液が第1コーティング層の表面全体に均一に塗布されるようにする効果を奏する。
【0075】
本発明は、第2コーティング液の製造時に添加される湿潤剤の量が、第2樹脂に対して、0重量部を超えるようにして、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性の低下を防止し、湿潤剤の量が、第2樹脂に対して、0.02重量部未満になるようにして、熱水耐水性とリサイクル性の低下を防止し、湿潤剤の過剰添加による製造コストの上昇を防止する効果を奏する。
【0076】
本発明は、第1コーティング層上に塗布される第2コーティング液のコーティング量が1g/mを超えるようにして、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性の急激な低下を防止し、第2コーティング液のコーティング量が5g/m未満になるようにして、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性が正常範囲を外れないようにする効果がある。
【0077】
本発明は、第1コーティング層と第2コーティング層を含む二重コーティング層が基紙の片面上にのみ形成されるようにして、紙コップ用原紙の製造コストを低くする効果がある。
【0078】
本発明は、第1コーティング層と第2コーティング層を含む二重コーティング層が基紙の両面上に形成されるようにして、紙コップの耐水性及び耐油性確保が重要な場合、二重コーティング層が基紙の両面に形成された原紙が使用できるようにする効果を奏する。
【0079】
本発明は、紙コップの側面紙には二重コーティング層が基紙の片面上に形成された原紙が使用できるようにし、紙コップの底面紙には二重コーティング層が基紙の両面上に形成された原紙が使用されるようにすることによって、紙コップの製造コストを低くしながらも、優れた品質の紙コップが生産できるようにする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】従来の紙コップ製造過程を示す図である。
図2】紙コップの断面を示す図である。
図3】本発明の一実施例による環境に優しい紙コップ用原紙を示す図である。
図4】本発明の別の実施例による環境に優しい紙コップ用原紙を示す図である。
図5】本発明の一実施例による紙コップ用原紙サンプルを解離させた後、製造した手漉紙を示す図である。
図6】ポリエチレン(PE)コーティングされた紙コップ用原紙サンプルを解離させた後、製造した手漉紙を示す図である。
図7】ポリ乳酸(PLA)コーティングされた紙コップ用原紙サンプルを解離させた後、製造した手漉紙を示す図である。
図8】生分解性実験の結果を示す図である。
図9】本発明の一実施例による環境に優しい紙コップ用原紙の製造方法を示す図である。
図10図9の第1コーティング層の形成ステップを示す図である。
図11図9の第2コーティング層の形成ステップを示す図である。
図12】本発明の他の実施例による環境に優しい紙コップ用原紙の製造方法を示す図である。
図13図12の方法によって製造される紙コップ用原紙を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、添付図面を参照して、本発明による環境に優しい紙コップ用原紙及びその製造方法の好ましい実施例を詳細に説明する。以下の説明において、本明細書に組み込まれた公知の機能及び構成の詳細な説明が、本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。特段に言及されない限り、本明細書で使用される用語は当業者によって理解される用語の一般的な意味と同じであり、本明細書で使用される用語が対応する擁護の一般的な意味と矛盾する場合、これらの用語は、本明細書で定義されている意味に準拠する。
【0082】
紙コップ製造に使用される原紙である、本発明の環境に優しい紙コップ用原紙1は、紙コップ製造時に原紙として求められる加工特性と使用特性の両方を満たしつつ、リサイクル性及び生分解性により環境に優しい特徴を有する。図3は、本発明の一実施例による環境に優しい紙コップ用原紙を示す図である。図3を参照すると、環境に優しい紙コップ用原紙1は、基紙10と二重コーティング層30とを含む。
【0083】
前記基紙10は、後記する二重コーティング層30が形成される基礎紙であり、紙コップ製造に使用可能なあらゆる種類の紙の総称と言える。前記基紙10は、特定の種類の紙に限定されないが、好ましくは、180~380g/mの範囲の坪量を有し、蛍光物質を含まない100%天然パルプを使用して製造されるKAce PNC(Hankuk Paper Co., Ltd.製)であってもよい。
【0084】
前記二重コーティング層30は、前記基紙10上に形成されている。図3に示すように、前記基紙10の片面上にのみ形成されていてもよく、図4に示すように、前記基紙10の両面上に形成されていてもよい。また、前記二重コーティング層30が前記基紙10の片面上にのみ形成された原紙1と、前記基紙10の両面上に形成された原紙1とを区分して製造し、前記基紙10の片面上のみに前記二重コーティング層30が形成された原紙1は、紙コップの側面紙として使用してもよく、前記基紙10の両面に前記二重コーティング層30が形成された原紙1は、紙コップの底面紙として使用してもよい。前記二重コーティング層30は、第1コーティング層31及び第2コーティング層33を含む。
【0085】
前記第1コーティング層31は、前記基紙10上に形成されるコーティング層である。前記第1コーティング層31は、第1コーティング液の一定量を前記基紙10上に塗布することにより、前記基紙10上に形成されるコーティング層であってもよい。前記第1コーティング層31により、紙コップ用原紙にはヒートシール性及び耐水性、耐油性などが与えられている。前記第1コーティング層31によるヒートシール性は、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール温度が80℃以上145℃以下であり、好ましくは、115℃であってもよい。また、前記第1コーティング層31によるヒートシール性は、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール温度が90℃以上150℃以下、好ましくは130℃であってもよい。このような数値は、後記する実験1により導出されたものである。前記第1コーティング液は、第1樹脂と第1消泡剤とから製造され、前記基紙10上に塗布される前記第1コーティング液のコーティング量(g/m)は、7g/m以上18g/m2未満であることが好ましい。前記第1コーティング液のコーティング量(g/m)範囲については、後記する。
【0086】
前記第1樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃である。好ましくは、前記第1樹脂は、APEC社製のACRYCOTE(登録商標)APC-200であり、アクリレート共重合変性高分子樹脂46~47重量%、水52.9~53.9重量%、その他0.1重量%の成分を含み得る。
【0087】
前記ガラス転移温度(Tg)とは、高分子物質を加熱したとき、即ち、ガラス転移(Glass Transition)が生じたときに、剛性ガラス状態からゴム相に変化する温度を指す。
【0088】
前記第1樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が低く、好ましくは紙コップ製造時の温度よりも低いガラス転移温度を有するため、高いヒートシール性を示すが、低い耐ブロッキング性を示している。そのため、低温で紙コップを製造したとしても、金型と紙コップ用原紙との間の接着が生じ、製造中の紙コップが金型から適時分離されなくなる場合がある。また、紙コップ製造のために積層された原紙同士がくっついたり、完成された紙コップを積み上げたとき、積層された紙コップ同士がくっついたりする場合がある。
【0089】
そこで、本願発明は、前記第1コーティング層31によるヒートシール性及び耐水性を向上させながら、後記する第2コーティング層33による耐ブロッキング性が供えられた紙コップ用原紙1を提供する。
【0090】
前記第1樹脂は、80℃以上150℃以下でヒートシール性を示し、前記第1樹脂がヒートシール性を示す温度は、後記する第2樹脂が耐ブロッキング性を示す温度よりも高いことを特徴とする。好ましくは、前記第1樹脂は、コーティング面とコーティング面との間の接着時には、80℃以上145℃以下でヒートシール性を示し、より好ましくは、約115℃でヒートシール性を示す。また、前記第1樹脂はコーティング面と非コーティング面との間の接着時には90℃以上150℃以下でヒートシール性を示し、より好ましくは約130℃でヒートシール性を示す。
【0091】
前記第1消泡剤は、気泡発生を防止及び除去するために用いられ、前記第1樹脂の量を1としたときの前記消泡剤の添加量は、0.002重量部が好ましい。より好ましくは、前記第1消泡剤は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(Saehan Silichem Co., Ltd.製)を主原料として含むシリコーン系消泡剤であり、固形分は38重量%、pHレベルは7.0の白色懸濁液であってもよい。より好ましくは、第1消泡剤は、モノステアリン酸ソルビタン1~5重量%、ポリジメチルシロキサン30重量%、水55~65重量%、ナトリウムカルボキシメチルセルロース1重量%、ソルビタン、トリオクタデカノアート、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)誘導体5~10重量%であるFD-330(Saehan Silichem Co., Ltd.製)であってもよい。
【0092】
前記第2コーティング層33は、前記第1コーティング層31上に形成されるコーティング層である。第2コーティング液の一定量を前記第1コーティング層31上に塗布し、前記第1コーティング層31上に形成されるコーティング層であってもよい。前記第2コーティング層33により、紙コップ用原紙には耐ブロッキング性が与えられる。前記第2コーティング層33による耐ブロッキング性は、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール温度が90℃以上120℃以下、好ましくは、100℃である。このような数値は、後記する実験1により導出されたものである。前記第2コーティング液は、第2樹脂、第2消泡剤、シリカ及び湿潤剤から製造され、前記第1コーティング層31上に塗布される前記第2コーティング液のコーティング量(g/m)は、好ましくは1g/mを超え、5g/m未満が好ましい。前記第2コーティング液のコーティング量(g/m)の範囲についても、後記する。
【0093】
前記第2樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃である。好ましくは、前記第2樹脂は、APEC社製のACRYCOTE(登録商標)APC-0829であり、アクリルエステル共重合体45~47重量%、水53~55重量%、その他0.1重量%の成分を含み得る。
【0094】
前記第2樹脂は、前記第1樹脂よりも比較的高いガラス転移温度(Tg)、好ましくは紙コップ製造時の温度よりも高いガラス転移温度を有しているので、耐ブロッキング性に優れた特徴を有する。従って、前記第2樹脂により、低温での紙コップ用原紙と金型との間の接着が防止され、、積層された紙コップ用原紙同士又は積層された紙コップ同士の接着を防止することができ、高周波シールやヒートシールなどの高温での接着性能を発現することができる。
【0095】
このような前記第2樹脂を含む第2コーティング液を前記第1コーティング層31上に塗布することによる前記第2コーティング層33の形成は、ヒートシール性、耐水性、耐油性及び耐ブロッキング性に優れた紙コップ用原紙1を提供することができる。
【0096】
前記第2樹脂は、80℃以上120℃以下で耐ブロッキング性を示し、前述したように、前記第1樹脂がヒートシール性を示す温度は、前記第2樹脂が耐ブロッキング性を示す温度よりも高い。好ましくは、前記第2樹脂は、コーティング面と非コーティング面間の接着時には90℃以上120℃以下で耐ブロッキング性を示し、より好ましくは、約100℃で耐ブロッキング性を示す。
【0097】
前記第2消泡剤は、気泡発生を防止及び除去するために使用され、好ましくは、前記第2樹脂の量が1に設定される場合、前記第2消泡剤の添加量は0.002重量部であってもよい。より好ましくは、前記第1樹脂に添加される第1消泡剤と前記第2樹脂に添加される前記第2消泡剤は、同じ種類であってもよい。つまり、前記第2消泡剤はポリジメチルシロキサン(PDMS)(Saehan Silichem Co., Ltd.製)を主原料としたシリコーン系消泡剤であり、固形分は38重量%、pHレベルは7.0の白色懸濁液であってもよい。
【0098】
前記シリカ(Silica)は、表面ベタツキを防止するために添加され、前記シリカ(Silica)の添加量(重量部)は、前記第2樹脂に対して、好ましくは、0.06重量部より多く、0.21重量部未満であり、このような範囲の導出は後記する。前記シリカの種類は特定の種類に限定されないが、100%二酸化ケイ素(SiO)であり、白色粉末形態を有していてもよい。より好ましくは、シリカは、微粉末シリカ、SS-65B(S-CHEMTECH Co., Ltd.製)であり、二酸化ケイ素、アモルファス100%で構成され得る。
【0099】
前記湿潤剤は、コーティング被覆率の向上のために添加される。本明細書の湿潤剤は、湿潤効果を有するレベリング剤を含む広い概念を有する。耐水性と耐油性を有する第1コーティング層31上に前記第2コーティング液を塗布する過程では、表面張力差によるコーティング液の凝集が起こり得るので、第2コーティング液が前記第1コーティング層31の表面全体に均一に塗布され、それによりコーティング層の流動性と平滑性を改善し、優れた被覆率を有するコーティング面が得られる。前記湿潤剤の種類は限定されないが、好ましくは、BYK社製のBYK-3410製品であり、主成分は、ブタン二酸、2-スルホ-、1,4-ビス(2-エチルヘキシル)エステル、ナトリウム塩であり、固形分は50重量%である黄褐色液体が使用することができる。
【0100】
前記第2コーティング層33の一部の耐ブロッキング性が低下すると、製造中の紙コップと金型との間にヒートシールが生じ、金型から分離されて次の工程に移動しなければならない製造過程上の紙コップが円滑に移動することができず、積層された原紙同士の接着が生じたり、完成された紙コップを積み重ねたとき、積層された紙コップ同士の接着が生じたりするため、このような耐ブロッキング性は一定水準以上に維持される必要がある。従って、前記湿潤剤を前記第2コーティング液に添加することにより、前記第2コーティング液の耐ブロッキング性が適正水準以下に低下するのを防止することができる。
【0101】
以下、特定の実験を通じて、紙コップの要求特性、リサイクル性及び生分解性満足の有無を確認し(実験1参照)、実際の製造工程におけるヒートシール性、成形性及び漏水を確認し(実験2参照)、第1コーティング液のコーティング量の適正範囲を確認し(実験3参照)、第2コーティング液のコーティング量の適正範囲を確認し(実験4参照)、第2コーティング液の製造時に添加されるシリカ添加量の適正範囲を確認し(実験5参照)、第2コーティング液の製造時に添加される湿潤剤添加量の適正範囲を確認(実験6参照)した。実験データの測定方法は以下の通りである。
【0102】
<測定方法>
1.ヒートシール性(Heat Sealability)
ヒートシール性は、紙コップ成形時のコーティング面とコーティング面との間の接着、コーティング面と非コーティング面との間の接着が生じる工程を評価するために、ヒートシールが発生する温度を測定した。圧力を100KPaに設定し、時間を1秒に設定し、ヒートシールテスターで接着を実施した。一定の圧力と時間で温度を5℃間隔で上げながら複数の試片を接着し、接着された部分に力を加えて引き剥がしたとき、コーティング面が全体的に完全に引き剥がれた温度をデータとして記録した。温度が低いほど、コーティング面とコーティング面との間(紙コップの底面紙接着時)のヒートシール性が良好であり、温度が低いほど、コーティング面と非コーティング面との間(紙コップの側面紙接着時)のヒートシール性が良好であった。
【0103】
2.耐ブロッキング性(Block Resistance)
耐ブロッキング性については、紙コップ成形において、コーティング面が成形設備との間に生じる接着を評価するために、ヒートシールが生じる温度を測定した。圧力を100Kpaに設定し、時間を5秒に設定して、ヒートシールテスターを使用して接着を実施した。一定の圧力と時間で温度を5℃間隔で上げながら複数の試片を接着し、接着された部分に力を加えて引き剥がしたとき、コーティング面が引き剥がれない最高温度をデータとして記録した。コーティング面と非コーティング面との間(原紙同士、原紙と金型との間)の耐ブロッキング性については、測定温度が高いほど、原紙同士の付着や原紙と金型との間の付着の発生が少なく、コップ成形性に優れていると評価した。
【0104】
3.耐水性
紙の表面を通る水の浸透の特性を評価するために、コブサイズ試験法(Cobb Size Test)を適用した。TAPPI T 441コプサイズ試験法に基づいて、コーティング面に所定時間水を接触させ、水の浸透量を測定して評価した。このとき、水の量を100mLに設定し、接触時間は30分を基準とし、最終的な目的に応じて熱水(90℃)と冷水(1℃)を使用して水の浸透量を測定した。好ましくは、冷水に対する耐水性よりも熱水に対する耐水性が優先され得る。測定値は、紙の表面から受け入れた水の量であり、その値が低いほど耐水性に優れている。
【0105】
4.リサイクル性
紙原料として再利用することを想定して、サンプルを解離させ、解離された原料を手漉紙とし、製造された手漉紙の地合い(Formation)値をデータとして記録した。地合い(Formation)とは、紙のパルプ繊維がどのように均一に分布しているかを指し、紙の通気度(紙が空気を透過する程度)、不透明度、印刷品質に大きい影響を及ぼす。地合いの測定は、TechPAP光学測定器で測定し、前記地合い測定器で測定された値は、紙を水に再び解離させて紙にしたときの地合い(Formation)値である。その値が低いほど、リサイクル性に優れている。
【0106】
5.生分解性
自然界の生分解をシミュレートするために、空間を仕切って得られた4つの領域を有するプラスチック製のフレーム上に原紙を置き、その原紙の上に前記フレームをさらに置き、得られた構造物を花壇に埋めた。次に、土壌と接触ししている原紙の一部について経時的な形態の変化を観察した。原紙が通常の紙と同様の形で分解された場合、自然界に生分解性であると評価した。
【0107】
6.コップ成形テスト
一般的なコップ成形機での紙コップの大量生産の可能性を評価するために、ヒートシールと高周波シールを使用するコップ成形装置で通常の作業を行いながら、作業性と成形されたコップのヒートシールの状態及び漏水などを評価した。
【0108】
<実験1の内容>
-実験目的:紙コップの要求特性、リサイクル性及び生分解性を満たしているかどうかの確認
-実験方法:3種のアクリル系共重合体樹脂を製造した。
【0109】
第1樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下でのアクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃である。
【0110】
第2樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下でのアクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃である。
【0111】
第3の樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下でのアクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.0重量%、ガラス転移温度(Tg)が10℃、最低造膜温度(MFFT)が25℃である。
【0112】
前記第1、第2、第3樹脂は、それぞれ、ヒートシール性に優れているが耐ブロッキング性が低い製品を、耐ブロッキング性に優れているがヒートシール性が低い製品を、ヒートシール性と耐ブロッキング性が中間程度の製品を示し得る。
【0113】
実施例1-1
用意された前記第1樹脂に、第1樹脂に対して、消泡剤0.002重量部を添加して第1コーティング液を製造した。また、第2樹脂に、第2樹脂に対して、シリカ0.12重量部、湿潤剤0.01重量部、消泡剤0.002重量部を添加して第2コーティング液を製造した。このようにして得られたコーティング液を介して、350g/m基紙上に、前記第1コーティング液12g/mを塗布し、第1コーティング層を形成し、前記第1コーティング層上に前記第2コーティング液3g/mを塗布し、第2コーティング層を形成することによって、前記基紙の片面上に二重コーティング層を形成した。
【0114】
実施例1-2
250g/mの基紙を使用し、基紙の両面上に実施例1-1と同じ二重コーティング層を形成した。
【0115】
比較例1-1
用意された前記第1樹脂に、第1樹脂に対して、消泡剤を0.002重量部添加してコーティング液を製造した。15g/mのコーティング液を350g/mの基紙上に塗布して単一のコーティング層を形成した。
【0116】
比較例1-2
用意された前記第2樹脂に、第2樹脂に対して、シリカ0.12重量部、湿潤剤0.01重量部、消泡剤0.002重量部を添加してコーティング液を製造した。15g/mのコーティング液を350g/mの基紙上に塗布し、単一のコーティング層を形成した。
【0117】
比較例1-3
用意された前記第3の樹脂に、第3の樹脂に対して、シリカ0.12重量部、湿潤剤0.01重量部、消泡剤0.002重量部を添加してコーティング液を製造した。15g/mのコーティング液を350g/mの基紙上に塗布し、単一のコーティング層を形成した。
【0118】
比較例1-4
比較例1-4は、現在市販品として製造されているポリエチレン(PE)がコーティングされた原紙であり、300g/mの基紙に、30g/mのポリエチレン(PE)がコーティングされている。
【0119】
比較例1-5
比較例1-5は、現在市販品として製造されているポリ乳酸(PLA)がコーティングされた原紙であり、300g/mの基紙に30g/mのポリ乳酸(PLA)がコーティングされている。
【0120】
<実験1の結果>
【0121】
【表1】
【0122】
表1を参照すると、二重コーティング層を有する実施例1-1及び1-2は、紙コップに求められる特性である、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性及び耐水性のすべてが、正常範囲内の数値を示した。
【0123】
とりわけ、実施例1-1及び1-2において、リサイクル性を示す地合い値が40以下の正常範囲内であるので、リサイクル性が高いということが数値的に立証された。また、図5は、実施例1-1の紙コップ用原紙サンプルを解離させた後、製造した手漉紙を示し、図5を参照すると、本発明の原紙サンプルから製造された手漉紙は、均一に分布したパルプ繊維を示し、優れたリサイクル性を立証した。
【0124】
図6は、ポリエチレン(PE)でコーティングされた紙コップ用原紙(比較例1-4)サンプルを解離させた後、製造した手漉紙を示し、図7は、ポリ乳酸(PLA)コーティングされた紙コップ用原紙(比較例1-5)サンプルを解離させた後、製造した手漉紙を示した図である。図6及び図7では、図5とは異なり、手漉紙上にコーティングフィルムが残り、パルプ繊維が均一に分布していないことを確認し、ポリエチレン(PE)コーティングされた紙コップ及びポリ乳酸(PLA)でコーティングされた紙コップの場合は、リサイクル性が悪いことが確認された。
【0125】
図8は、生分解性実験の結果を示し、一般紙、実施例1-1の原紙、比較例1-4の原紙、比較例1-5の原紙を花壇に埋めたときの外観を経時的に示した。
コーティングされていない一般紙の場合、時間の経過とともに自然に分解され、6カ月経過後には、土壌に接触した4つの領域すべてが完全に分解された。
実施例1-1は、一般紙に比べて4週経過時点までは大きな変化はなく、その後分解され、6カ月後、一般紙と同様に、土壌と接触した4つの領域すべてが完全に分解された。
ポリエチレン(PE)コーティングを施した比較例1-4では、6カ月後もコーティングフィルムの部分が腐食せず、ポリ乳酸(PLA)コーティングを施した比較例1-5では、紙部分のみが分解され、コーティングフィルムの部分は6カ月後も分解せずにそのまま残っていた。
【0126】
結果的に、従来の紙コップ用原紙は、環境に優しいものではなかったが、本発明での紙コップ用原紙は、生分解性の環境にやさしい材料であることが確認された。
【0127】
第1樹脂で単一のコーティング層を形成した比較例1-1において、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性が正常範囲よりも低く測定されたので、比較例1-1の原紙を使用して紙コップを製作するときには原紙と金型との間などに接着が生じ、作業が中断される問題が発生する可能性があった。第2樹脂、シリカ、湿潤剤及び消泡剤で単一のコーティング層を形成した比較例1-2において、コーティング面とコーティング面、コーティング面と非コーティング面とのヒートシール性が正常範囲よりも大幅に非常に高かったので、ヒートシールに必要な温度が高すぎた。
比較例1-3では、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性が正常範囲を外れており、熱水に対する耐水性及び冷水に対する耐水性が正常範囲を満たさなかった。
【0128】
<実験2の内容>
-実験目的:実際の製造過程でのヒートシール性、成形性及び漏水の確認
-実験方法:一般的な紙コップ成形機での大量生産の可能性を評価するために、ヒートシールと高周波シールを使用したコップ成形装置で通常の作業を実施した。紙コップ成形機は自社製であり、作業条件は分当り55個の紙コップを製造し、側面紙に電流3Aでの高周波シールを施し、底面紙シール温度は340℃であった。
【0129】
実験2の実施例2-1では、市販の紙コップ成形機において、実験1の実施例1-1を紙コップの側面紙として、実験1の実施例1-2を紙コップの底面紙として使用して成形作業を行った。
実験2の比較例2-1~2-3では、実験1の比較例1-1~1-3を紙コップの側面紙として、実験1の実施例1-2を紙コップの底面紙として使用して、市販の紙コップ成形機で成形作業を行った。
実験2の比較例2-4及び2-5では、実験1の比較例1-4及び1-5の原紙を使用して、市販と同じ条件で、市販の紙コップ成形機で成形作業を行った。
【0130】
本実験2は、実際の製造工程におけるシートシール性、成形性、漏水を確認するために行われたものであり、前記の測定方法とは異なる方法で測定された。
【0131】
ヒートシール性については、シール部を強制的に分離して引き剥がれた状態を評価した。ヒートシール性は、紙面が引き剥がれた場合は良好、接着面が引き剥がれた場合は不良と評価した。
【0132】
成形性1については、トンプソン加工後の原紙に水を噴霧することで、成形時に原紙を柔軟にすることができ、この場合、積層された原紙同士がくっつき、単枚供給が困難になる。このようなくっつきを確認するために、トンプソン加工及び水噴霧後に原紙を1枚ずつ十分に分離されているかどうかを評価した。
【0133】
成形性2については、成形工程で原紙が金型に付着することなく、通常金型から分離されているかどうかを評価した。原紙と金型の分離が良好で、原紙と金型との間に接着が生じた場合、成形性2は不良と評価した。
【0134】
成形性3については、1時間、60個/分の速度で作業を行った場合、停止することなく通常の作業が可能かどうかを評価した。成形性3は、停止がない場合には良好、停止があった場合は不良と評価した。
【0135】
漏水については、90℃に加熱されたコーヒーを成形コップに流し込んだ場合、30分間の漏水がないかを調べた。漏水がなければ良好、漏水があれば不良と評価した。
【0136】
<実験2の結果>
【0137】
【表2】
【0138】
表2を参照すると、実験2の前記実施例2-1は、市販品である比較例2-4及び2-5と同様に、ヒートシール性、成形性及び耐水性の観点から良好な製品品質を示した。
一方、実験1の比較例1-1の原紙を紙コップの側面紙として使用し、実験1の実施例1-2の原紙を紙コップの底面紙として使用した、実験2の比較例2-1ではヒートシール性が良好であったが、表面のベタツキがあり、成形性が悪く、適切なコップを製造することができなかった。その理由は、実験1に示したように、比較例1-1の原紙の耐ブロッキング性が著しく低く、コーティング面と非コーティング面との間の接着が生じたためである。
【0139】
また、実験1の比較例1-2の原紙を紙コップの側面紙として使用し、実験1の実施例1-2の原紙を紙コップの底面紙として使用した、実験2の比較例2-2では、通常の作業が可能であったが、成形されたコップの接着面を強制分離したとき、接着面が引き剥がれ、ヒートシール性が悪く、完成された紙コップから漏水が見られた。
【0140】
実験1の評価項目では、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性が正常範囲を外れており、熱水に対する耐水性及び冷水に対する耐水性が正常範囲を満たさなかった比較例1-3の原紙を紙コップの側面紙として使用し、実施例1-2の原紙を底面紙として使用して、紙コップの製造工程を行った結果、ヒートシール性が悪く、比較例2-1と同様に全体の作業性も悪かったので、紙コップ製造自体が不可能であった。
【0141】
結論として、実験1の実施例1-1を紙コップの側面紙として使用し、実験1の実施例1-2を紙コップの底面紙で使用して、市販用紙コップ成形機で紙コップ成形作業を実施した結果、紙コップの中には、リサイクル性と生分解性に加え、紙コップに求められる基本的な特性を備えた環境に優しい紙コップが製造されたことを確認した。
【0142】
また、実験1の比較例1-3の原紙を紙コップの側面紙として使用した場合、作業性が悪く、実際の紙コップの製造では、紙コップ成形作業ができなかった。したがって、樹脂のガラス転移温度(Tg)がヒートシール性と耐ブロッキング性を満足する中間水準であっても、ヒートシール性及び成形性の両方を単一コーティング層だけでは満たすことができなく、耐水性が大幅に低下されることが分かった。
【0143】
<実験3の内容>
-実験目的:第1コーティング液の適切な範囲のコーティング量の確認
-実験方法:反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃であるアクリル系共重合体の第1樹脂に、第1樹脂に対して、消泡剤0.002重量部を添加して第1コーティング液を製造した。
そして、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃であるアクリル系共重合体第2樹脂に、第2樹脂に対して、シリカ0.12重量部、湿潤剤0.01重量部、消泡剤0.002重量部を添加して第2コーティング液を製造した。
350g/mの基紙上に、前記第1コーティング液のコーティング量(g/m)を調節することにより、第1コーティング層を形成し、形成された前記第1コーティング層上に前記第2コーティング液3g/mを塗布し、第2コーティング層を形成することによって、前記基紙上に二重コーティング層を形成した。前述した<測定方法>により、本工程で製造した原紙の、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性、リサイクル性及び生分解性を測定した。
【0144】
<実験3の結果>
【0145】
【表3】
【0146】
表3を参照すると、実施例3-2~3-5において、第1コーティング液のコーティング量が8g/m以上の場合、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性、リサイクル性及び生分解性がいずれも正常範囲内であることが確認された。
【0147】
ただ、第1コーティング液のコーティング量が7g/mである実施例3-1では、熱水及び冷水に対する耐水性が急激に低下した。従って、前記第1コーティング液のコーティング量は7g/mを超えるように構成することが好ましいことが分かった。
【0148】
また、実施例3-4及び実施例3-5を比較する場合、コーティング量の増加が原紙品質にほとんど影響を及ぼさない点、実施例3-5では、リサイクル性を判断する地合い値が増加傾向を示した点、第1コーティング液のコーティング量が増加するにつれて、原紙価格が上昇する点に照らして、前記第1コーティング液のコーティング量は18g/m未満に構成するとことが好ましい。
【0149】
結局、本実験3を通じて、第1コーティング液のコーティング量(g/m)の適正範囲は、7g/mを超え、18g/m未満であることが最も好ましい。
【0150】
<実験4の内容>
-実験目的:第2コーティング液の適切な範囲のコーティング量の確認
-実験方法:反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下でアクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃であるアクリル系共重合体第1樹脂に、第1樹脂に対して、消泡剤0.002重量部を添加して第1コーティング液を製造した。
また、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下でアクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃であるアクリル系共重合体第2樹脂に、第2樹脂に対して、シリカ0.12重量部、湿潤剤0.01重量部、消泡剤0.002重量部を添加して第2コーティング液を製造した。
350g/mの基紙上に、前記第1コーティング液12g/mを塗布し、第1コーティング層を形成し、形成された前記第1コーティング層上に、前記第2コーティング液のコーティング量(g/m)を調節することにより、第2コーティング層を形成することによって、前記基紙上に二重コーティング層を形成した。その後、前記<測定方法>により、第2コーティング液のコーティング量が異なる紙コップ用原紙のコーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性、リサイクル性及び生分解性を測定し、その結果を以下の表4に示した。
【0151】
<実験4の結果>
【0152】
【表4】
【0153】
表4を参照すると、実施例4-2~4-4で第2コーティング液のコーティング量が2g/m以上の場合、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性、リサイクル性及び生分解性がいずれも正常範囲内であることが確認された。しかし、第2コーティング液のコーティング量が1g/mである実施例4-1では、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性が急激に低下した。従って、前記第2コーティング液のコーティング量は1g/mを超えるように構成することが好ましいことが分かった。
【0154】
また、第2コーティング液のコーティング量が5g/mである実施例4-5では、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性が正常範囲から大きく外れていることを確認した。従って、前記第2コーティング液のコーティング量は5g/m未満に構成することが好ましい。
【0155】
従って、第2コーティング液のコーティング量(g/m)は、1g/mを超え、5g/m未満に構成することが好ましい。
【0156】
<実験5の内容>
-実験目的:第2コーティング液の製造に添加されるシリカの適切な量の確認
-実験方法:350g/mの基紙上に、第1コーティング液12g/mを塗布し、第1コーティング層を形成し、形成された前記第1コーティング層上に、第2コーティング液3g/mを塗布し、第2コーティング層を形成することによって、前記基紙上に二重コーティング層を形成した。
このとき、前記第1コーティング液は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃であるアクリル系共重合体第1樹脂に、第1樹脂に対して、消泡剤0.002重量部を添加して製造した。
また、前記第2コーティング液は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃であるアクリル系共重合体第2樹脂に、第2樹脂に対して、湿潤剤0.01重量部、消泡剤0.002重量部、及び様々な量のシリカを添加することによって、複数の第2コーティング液を製造した。
【0157】
シリカを様々に加えて製造した紙コップ用原紙を、前記<測定方法>により、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性、リサイクル性及び生分解性を測定した。
【0158】
<実験5の結果>
【0159】
【表5】
【0160】
表5の実施例5-1~5-5を参照すると、第2樹脂に対して、シリカの添加量を0.05重量部にした実施例5-1では、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性の急激な低下を示し、第2樹脂に対して、シリカの添加量を0.06重量部にした実施例5-2では、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性が正常範囲内を示した。従って、第2コーティング液の製造に添加されるシリカの添加量は、第2樹脂を1に設定したとき、0.05重量部以上が好ましいということを確認した。
【0161】
しかし、実施例5-4では、シリカ添加量が0.20重量部のときには、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性、リサイクル性及び生分解性がいずれも正常範囲内を示したが、実施例5-5では、シリカの添加量が0.21重量部のときには、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性が正常範囲内を外れていることが確認された。
【0162】
従って、本実験を通じて、第2樹脂に対して、シリカの添加量(重量部)は、0.05重量部を超え、0.21重量部未満にすることが好ましい。
【0163】
<実験6の内容>
-実験目的:第2コーティング液の製造に添加される湿潤剤の適切な量の確認
-実験方法:基紙350g/m上に12g/mの第1コーティング液を塗布し、第1コーティング層を形成し、前記第1コーティング層上に3g/mの第2コーティング液を塗布し、第2コーティング層を形成することによって、二重コーティング層を有する紙コップ用原紙を製造した。
前記第1コーティング液は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造されて、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃であるアクリル系共重合体第1樹脂に、第1樹脂に対して、消泡剤0.002重量部を添加して製造した。
前記第2コーティング液は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスで、固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃であるアクリル系共重合体第2樹脂に、第2樹脂に対して、シリカ0.12重量部、消泡剤0.002重量部、及び様々な量の湿潤剤を添加することによって、第2コーティング層を形成した。
【0164】
湿潤剤を様々に添加して製造した紙コップ用原紙を対象に、前記<測定方法>により、コーティング面とコーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間のヒートシール性、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性、熱水に対する耐水性、冷水に対する耐水性、リサイクル性及び生分解性を測定し、その結果を以下の表6に示した。
【0165】
<実験6の結果>
【0166】
【表6】
【0167】
表6の実施例6-1~6-5を参照すると、第2樹脂に対して、湿潤剤を全く添加しなかった実施例6-1ではコーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性が大きく低下することが確認された。
一方、湿潤剤を0.005重量部添加した実施例6-2では、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性が正常範囲内であった。従って、コーティング面と非コーティング面との間の耐ブロッキング性を高めるためには、湿潤剤の添加が必要であることが分かった。
【0168】
しかし、湿潤剤の添加量が増えるにつれて紙コップ用原紙の製造コストが増加し、湿潤剤の添加量が0.02重量部である実施例6-5では、正常範囲内であったが、熱水での耐水性とリサイクル性は劣化傾向を示した。従って、湿潤剤の添加量は0.02重量部未満にすることが好ましいことが実験により確認された。
【0169】
従って、第2樹脂に対して、湿潤剤の添加量(重量部)は、0重量部を超え、0.02重量部未満構成することが好ましい。
【0170】
図9は、本発明の1実施例による環境に優しい紙コップ用原紙の製造方法S1を示した図である。図9を参照すると、前記環境に優しい紙コップ用原紙の製造方法S1は、優れたヒートシール性、耐水性及び耐ブロッキング性を有し、リサイクルが容易で、自然状態で生分解される環境に優しい紙コップ用原紙を製造する方法に関し、基紙の供給ステップS10と二重コーティング層の形成ステップS30とを含む。
【0171】
前記基紙の供給ステップS10は、抄紙部が基紙10を供給するステップである。前記基紙10は、二重コーティング層30が形成される基紙であり、紙コップ製造に使用できるすべての種類の紙の総称とみなすことができる。前記基紙10は、特定の種類の紙に限定されるものではないが、200~350g/mの範囲であることが好ましく、蛍光物質を含まない100%天然パルプを使用して製造される市販のKAcePNC(Hankuk Paper Co., Ltd.製)であってもよい。前記抄紙部は、基紙10を直接製造し、連続的にコーター部に基紙10を供給する(On-Machine)だけでなく、リールに巻かれた状態で運搬された基紙10をコーター部に供給する(オフマシン)を含む広い概念とみなすことができる。例えば、前記抄紙部による基紙10の製造は、重力による1次脱水を行い、プレスにより含水率50~60%のウェブを形成した場合、再度乾燥をさせて2~7%水準に含水率を低下させる。その後、乾燥された状態のウェブをサイズプレスでデンプンベースのサイズの液体でコーティングし、これを再び乾燥部で乾燥させることによって、含水率を2~10%にした。最終的に、紙の厚さを調整し、紙の表面を滑らかにし、それによって基紙10を形成した。
【0172】
前記二重コーティング層の形成ステップS30は、前記基紙の供給ステップS10の後に、コーター部が前記基紙上に二重コーティング層30を形成するステップをいう。コーター部は、前記基紙の供給ステップS10を通じて抄紙部から供給された基紙10上に二重コーティング層を形成する。前記コーター部は、製紙用コーターだけでなく、オフマシンタイプのコーターであるグラビアコーター、フレキソコーター、ロール・ツー・ロールコーターなどが含まれるが、特定のコーターに限定されない。前記二重コーティング層30は、前記基紙10の片面上にのみ形成されてもよく、前記基紙10の両面上にも形成されてもよい。このような前記二重コーティング層の形成ステップS30は、第1コーティング層の形成ステップS31と第2コーティング層の形成ステップS33とを含む。
【0173】
前記第1コーティング層の形成ステップS31は、第1コーター部が前記基紙10の一側面上に第1コーティング層31を形成するステップをいう。前記第1コーター部は、第1コーティング液を供給する第1コーティング液の供給部と、基紙10上に第1コーティング液を塗布する第1コーティングヘッド部と、塗布された第1コーティング液を乾燥させる第1乾燥部とを含む。前記第1コーティング層31は、前述した通りに、第1樹脂及び第1消泡剤を含む第1コーティング液により形成される層であり、紙コップ用原紙の優れたヒートシール性、耐水性及び耐油性が発揮できる部分とみなすことができる。図10は、図9の第1コーティング層の形成ステップS31を示した図である。前記第1コーティング層の形成ステップS31は、第1コーティング液の供給ステップS311と、第1コーティング液の塗布ステップS313と、第1コーティング液乾燥ステップS315とを含む。
【0174】
前記第1コーティング液の供給ステップS311は、第1コーティング液の供給部が前記基紙10上に塗布する第1コーティング液を供給するステップをいう。前記第1コーティング液は、第1樹脂及び第1消泡剤を含み、前記第1樹脂は、前述のように、紙コップ製造時の温度よりも低いガラス転移温度を有するので、ヒートシール性及び耐水性を与える。具体的に、前記第1樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が46.5重量%、ガラス転移温度(Tg)が3℃、最低造膜温度(MFFT)が32℃でであってもよい。前記第1消泡剤は、前記第1樹脂に対して、0.002重量部が添加されるのが好ましい。
【0175】
前記第1コーティング液の塗布ステップS313は、前記第1コーティング液の供給ステップS311の後に、第1コーティングヘッド部が前記基紙10上に第1コーティング液を塗布するステップをいう。前記実験から分かるように、塗布される前記第1コーティング液のコーティング量(g/m)は、7g/mを超え、18g/m未満になるように構成されている。コーティングの種類には、ブレードコーター(Blade Coater)、ロッドコーター(Rod Coater)、エアナイフコーター(Air Knife Coater)、カーテンコーター(Curtain Coater)等であり、環境に優しいコーティングに適した種類は、エアナイフコーター(Air Knife Coater)、ロッドコーター(Rod Coater)、ブレードコーター(Blade Coater)の順である。しかし、本発明は、前記第1コーティングヘッド部のコーティング方式は、特定タイプに限定されず、様々な方法のいずれかを使用することができる。
【0176】
前記第1コーティング液乾燥ステップS315は、前記第1コーティング液の塗布ステップS313の後に、第1乾燥部が前記基紙10上に塗布された第1コーティング液を乾燥させるステップをいう。前記第1乾燥部は、IR型のヒータであり、汎用コーターに使用するスカーフドライヤー、ドラムドライヤーなどを含む概念と見なされている。前記基紙10の両面に第1コーティング層31が形成されたとき、一側面に第1コーティング液を塗布して乾燥させた後、他側面に第1コーティング液を塗布して乾燥させることが好ましい場合がある。
【0177】
前記第2コーティング層の形成ステップS33は、前記第1コーティング層の形成ステップS31の後に、第2コーター部が前記第1コーティング層31上に第2コーティング層33を形成するステップをいう。前記第2コーター部は、第2コーティング液を供給する第2コーティング液の供給部と、基紙10上に第2コーティング液を塗布する第2コーティングヘッド部と、塗布された第2コーティング液を乾燥させる第2乾燥部とを含む。前記第2コーティング層33は、前述のように、第2樹脂、第2消泡剤、シリカ及び湿潤剤を含む第2コーティング液により形成される層であり、紙コップ用原紙の優れた耐ブロッキング性を発揮できるようにする部分とみなすことができる。図11は、図9の第2コーティング層の形成ステップS33を示した図である。図11を参照すると、前記第2コーティング層の形成ステップS33は、第2コーティング液の供給ステップS331、第2コーティング液の塗布ステップS333、第2コーティング液乾燥ステップS335とを含む。
【0178】
前記第2コーティング液の供給ステップS331は、第2コーティング液の供給部が前記第1コーティング層10上に塗布する第2コーティング液を供給するステップである。前記第2コーティング液は、第2樹脂、第2消泡剤、シリカ及び湿潤剤を含む。前記第2樹脂は、紙コップ製造時の温度よりも高いガラス転移温度を有するので、耐ブロッキング性に優れている。好ましくは、前記第2樹脂は、反応性乳化剤及び多機能性シリコーン重合体の存在下で、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体を含む単量体混合物の乳化重合により製造され、アクリル系単量体及びカルボン酸系単量体から由来する繰り返し単位を全繰り返し単位に対して、80%以上の割合で含む水性共重合体ラテックスであり、固形分が45.7重量%、ガラス転移温度(Tg)が22℃、最低造膜温度(MFFT)が20℃であってもよい。前記第2消泡剤は、前記第2樹脂に対して、0.002重量部が添加されるのが好ましく、前記実験から分かるように、前記シリカの添加量(重量部)は、第2樹脂に対して、0.05重量部を超え、0.21重量部未満になるように構成し、前記湿潤剤は、第2樹脂に対して、0重量部を超え、0.02重量部未満になるように構成することができる。
【0179】
前記第2コーティング液の塗布ステップS333は、前記第2コーティング液の供給ステップS331の後に、第2コーティングヘッド部が前記第1コーティング層31上に第2コーティング液を塗布するステップをいう。前述したように、塗布される前記第2コーティング液のコーティング量(g/m)は、1g/mを超え、5g/m未満になるように構成することが好ましい。コーティングの種類には、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター等であり、環境に優しいコーティングに適した種類は、エアナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーターの順である。しかし、前記第2コーティングヘッド部のコーティングタイプも特定のタイプに限定されず、様々なタイプすべてを含む。
【0180】
前記第2コーティング液乾燥ステップS335は、前記第2コーティング液の塗布ステップS333の後に、第2乾燥部が前記第1コーティング層31上に塗布された第2コーティング液を乾燥させるステップをいう。前記第1乾燥部と同様に、前記第2乾燥部もIR型のヒータであってもよく、汎用コーターに使用するスカーフドライヤー、ドラムドライヤーなどのすべてを含むことができる。前記基紙10の両面に前記第1コーティング層31が形成されたことを前提として、前記第2コーティング層33を形成する場合、一側面上の第1コーティング層31上に第2コーティング液を塗布して乾燥させた後、他側面上の第1コーティング層31上に第2コーティング液を塗布して乾燥させることが好ましい。
【0181】
図12は、本発明の別の実施例による環境に優しい紙コップ用原紙の製造方法を示した図であり、図13は、図12によって製造される紙コップ用原紙を示した図である。前述した図9の実施例では、前記基紙10の片面上にのみ前記二重コーティング層30が形成されているが、図12及び図13の実施例では、前記基紙10の両面に前記二重コーティング層30を形成されている。また、この場合、前記基紙10の片面と他面にそれぞれ二重コーティング層30が形成される。
【0182】
紙コップの底面紙は、より高い耐水性及び耐油性が求められるため、紙コップの側面紙は、その片面にのみ二重コーティング層30を形成し、紙コップの底面紙には両面に二重コーティング層30で形成され、紙コップ用原紙の製造コストを大幅に増加させることなく、紙コップの優れた性能を実現している。
【0183】
図9の実施例とは異なり、図12及び図13の実施例では、前記第1コーティング層の形成ステップS31と前記第2コーティング層の形成ステップS33との間に第3コーティング層の形成ステップS32がさらに含まれる。前記第2コーティング層の形成ステップS33の後に、第4コーティング層の形成ステップS34が追加される。
【0184】
前記第1コーティング層の形成ステップS31が、第1コーター部により、前記基紙10の一側面に第1コーティング層31を形成する工程である場合、前記第3コーティング層の形成ステップS32は、第3コーター部が前記基紙10の他側面に前記第1コーティング層30と同じ第3コーティング層32を形成する工程であってもよい。すなわち、前記第1コーティング層の形成ステップS31と前記第3コーティング層の形成ステップS32により形成されるコーティング層は、互いに同じであり、コーティング層が形成される前記基紙10の面のみが異なる。従って、前述した前記第1コーティング層31に関する説明は、そのまま前記第3コーティング層32に適用することができ、前記第1コーティング層の形成ステップS31に関する説明も、前記第3コーティング層の形成ステップS32にそのまま適用することができる。
【0185】
前記基紙10の両面にそれぞれ第1コーティング層31と前記第3コーティング層32が形成される場合、前記第3コーティング層の形成ステップS32の後に、前記第2コーティング層の形成ステップS33が行われ、前記第2コーター部が前記第1コーティング層31上に前記第2コーティング層33を形成する。前記第2コーティング層の形成ステップS33の後、第4コーター部が前記第3コーティング層32上に前記第2コーティング層33と同じ第4コーティング層34を形成する第4コーティング層の形成ステップS34が行われる。
【0186】
前記第2コーティング層の形成ステップS33は、前記第2コーティング層33を前記第1コーティング層31上に形成し、前記第4コーティング層の形成ステップS34は、前記第4コーティング層34を前記第3コーティング層32上に形成するという点でのみ異なり、前記第2コーティング層33は、前記第4コーティング層34と同一である。従って、前述した前記第2コーティング層33に関する説明は、そのまま前記第4コーティング層34に適用され、前記第2コーティング層の形成ステップS33に関する説明も前記第4コーティング層の形成ステップS34にそのまま適用される。
【0187】
以上の詳細な説明は、本発明を例示するものである。また、前記説明は、本発明の好ましい実施形態に関するものであり、本発明は、他の様々な組み合わせ、変形、及び環境で使用することができる。すなわち、本明細書に開示された概念の範囲、開示された内容に想到する範囲及び/又は当該技術分野又は知識の範囲内で変更又は変形が可能である。前記の実施例は、本発明の技術的思想を具現するための最善の状態を示しており、本発明の特定の適用分野及び用途に必要な様々な変形が可能である。従って、以上の発明の詳細な説明は、開示された実施状態に限定することを意図するものではない。さらに、添付の特許請求の範囲は、他の実施状態も含むと解釈されなければならない。
図1
図2
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図5
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図8
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【国際調査報告】