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特表2023-517158非磁性オーステナイト系ステンレス鋼
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  • 特表-非磁性オーステナイト系ステンレス鋼 図1
  • 特表-非磁性オーステナイト系ステンレス鋼 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-24
(54)【発明の名称】非磁性オーステナイト系ステンレス鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230417BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502544
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 KR2020019437
(87)【国際公開番号】W WO2022145539
(87)【国際公開日】2022-07-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジスウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジョンジン
(57)【要約】
【課題】非磁性オーステナイト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】本発明の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.01~0.1%、Si:1.5%以下(0除外)、Mn:0.5~3.5%、Cr:16~22%、Ni:7~15%、Mo:3%以下、N:0.01~0.3%、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなり、下記の式(1)の値が負の値であることを特徴とする。
式(1):3*(Cr+Mo)+5*Si-65*(C+N)-2*(Ni+Mn)-28
上記式(1)中、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mnは、各合金元素の含有量(重量%)を意味する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.01~0.1%、Si:1.5%以下(0除外)、Mn:0.5~3.5%、Cr:16~22%、Ni:7~15%、Mo:3%以下、N:0.01~0.3%、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなり、
下記の式(1)の値が負の値であることを特徴とする非磁性オーステナイト系ステンレス鋼。
式(1):3*(Cr+Mo)+5*Si-65*(C+N)-2*(Ni+Mn)-28
(上記式(1)中、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mnは、各合金元素の含有量(重量%)を意味する)。
【請求項2】
重量%で、Cu:2.5%以下をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項3】
重量%で、C:0.01~0.1%、Si:1.5%以下(0除外)、Mn:0.5~3.5%、Cr:16~22%、Ni:7~15%、Mo:3%以下、N:0.01~0.3%、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなり、
下記の式(2)の値が70以上であることを特徴とする非磁性オーステナイト系ステンレス鋼。
式(2):ΣA/ΣA×100
(上記式(2)中、ΣAは、面積が5μm以下のフェライト粒子の面積の和であり、ΣAは、全体フェライト粒子の面積の和である)。
【請求項4】
重量%で、Cu:2.5%以下をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項5】
1mm以下の厚さで、透磁率が1.02以下であることを特徴とする請求項3に記載の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性オーステナイト系ステンレス鋼に係り、より詳しくは、各種電子機器用素材に適用可能な非磁性オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、多様な機能を有するスマート機器が使用されるに伴い、電力損失の低減および誤作動の防止のために、磁性が低減された鋼材の要求が増大している。300系ステンレス鋼は、オーステナイト相を主組織として通常は非磁性特性を有するので、電子機器用素材に広く用いられている。
【0003】
しかしながら、通常のSTS304またはSTS316オーステナイト系ステンレス鋼は、製鋼/連続鋳造時にδ-フェライトが1~5%の分率で形成される。形成されたδ-フェライトは、磁性を誘発する組織であって、最終製品が磁性を示す問題点がある。したがって、通常のSTS304や、STS316のオーステナイト系ステンレス鋼は、δ-フェライトの混入のために非磁性特性を確保できない問題がある。
δ-フェライトは、1,300~1,400℃の温度範囲での熱処理により分解することができる。しかしながら、δ-フェライトは、圧延および焼鈍工程において完全には除去されずに、組織内に残留することがあり、残留するフェライトにより磁性が発生して、非磁性特性を確保できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2018-0068542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、各種電子機器用素材として適用可能な非磁性オーステナイト系ステンレス鋼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、本発明の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.01~0.1%、Si:1.5%以下(0除外)、Mn:0.5~3.5%、Cr:16~22%、Ni:7~15%、Mo:3%以下、N:0.01~0.3%、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなり、下記の式(1)の値が負の値であることを特徴とする。
式(1):3*(Cr+Mo)+5*Si-65*(C+N)-2*(Ni+Mn)-28
上記式(1)中、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mnは、各合金元素の含有量(重量%)を意味する。
【0007】
本発明の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、Cu:2.5%以下をさらに含むことができる。
【0008】
また、上記目的を達成するための他の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.01~0.1%、Si:1.5%以下(0除外)、Mn:0.5~3.5%、Cr:16~22%、Ni:7~15%、Mo:3%以下、N:0.01~0.3%、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなり、下記の式(2)の値が70以上であることを特徴とする。
式(2):ΣA/ΣA×100
上記式(2)中、ΣAは、面積が5μm以下のフェライト粒子の面積の和であり、ΣAは、全体フェライト粒子の面積の和である。
【0009】
本発明の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、Cu:2.5%以下をさらに含むことができる。
本発明の非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、1mm以下の厚さで、透磁率が1.02以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁性を誘発するフェライト相の分率を低く制御して、各種電子機器素材に適用される非磁性オーステナイト系ステンレス鋼を提供することができる。
本発明によれば、合金成分を制御して、フェライトの形成を抑制したり、または微細組織の制御を通じてフェライトの分解を加速化することによってフェライト相の分率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】表1の式(1)の値によるフェライト分率の変化を示すグラフである。
図2】表2の式(2)の値による透磁率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一例による非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.01~0.1%、Si:1.5%以下(0除外)、Mn:0.5~3.5%、Cr:16~22%、Ni:7~15%、Mo:3%以下、N:0.01~0.3%、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなり、下記の式(1)の値が負の値である。
式(1):3*(Cr+Mo)+5*Si-65*(C+N)-2*(Ni+Mn)-28
上記式(1)中、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mnは、各合金元素の含有量(重量%)を意味する。
【0013】
以下では、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は、様々な他の形態に変形でき、本発明の技術思想が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野における平均的な知識を有する者にとって本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。
本発明において使用する用語は、単に特定の例示を説明するために使用されるものである。したがって、単数の表現は、文脈上明白に単数でなければならないものではない限り、複数の表現を含む。しかも、本発明において使用される「含む」または「具備する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、段階、機能、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを明確に示すために使用されるものであり、他の特徴や段階、機能、構成要素またはこれらを組み合わせたものとの存在を予備的に排除するために使用されるものではないことに留意しなければならない。
【0014】
なお、別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるのと同じ意味を有するものと見なすべきである。したがって、本明細書で明確に定義しない限り、特定用語が過度に理想的または形式的な意味と解釈されるべきではない。たとえば、本明細書で単数の表現は、文脈上明白に例外がない限り、複数の表現を含む。
また、本明細書の「約」、「実質的に」などは、言及した意味に固有な製造および物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味で使用され、本発明の理解を助けるために、正確なまたは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用するのを防止するために使用される。
【0015】
本発明の一例による非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.01~0.1%、Si:1.5%以下(0除外)、Mn:0.5~3.5%、Cr:16~22%、Ni:7~15%、Mo:3%以下、N:0.01~0.3%、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなる。また、Cu:2.5%以下をさらに含んでもよい。
以下では、上記合金組成に限定した理由について具体的に説明する。下記成分組成は、特別な記載がない限り、全べて重量%を意味する。
【0016】
炭素(C):0.01~0.1重量%
Cは、強力なオーステナイト相安定化元素であり、凝固時に磁性の増加を抑制する元素である。本発明においてCは、オーステナイト相安定化効果のために0.01重量%以上添加されることがよい。しかしながら、C含有量が過剰となると、Crと結合して粒界に炭化物を形成し、結晶粒界の周囲のCr含有量を局部的に下げて、腐食性を低下させる虞がある。したがって、十分な耐食性を確保するために、本発明においてC含有量の上限は、0.1重量%に制限されることが好ましい。
【0017】
シリコン(Si):1.5重量%以下(0除外)
Siは、耐食性を向上させる元素である。しかしながら、Siは、磁性を誘発するフェライト相安定化元素であり、Si含有量が過剰となると、σ相などの金属間化合物の析出を促進して、機械的特性および耐食性を低下させる虞がある。このため、本発明においてSi含有量の上限は、1.5重量%に制限されることが好ましい。
【0018】
マンガン(Mn):0.5~3.5重量%
Mnは、C、Niのようなオーステナイト相安定化元素であり、非磁性の強化に有効である。このため、本発明においてMnは、0.5重量%以上添加されることがよい。しかしながら、Mn含有量が過剰となると、MnSなどの介在物を形成して耐食性を低下させ、表面光沢を低下させる虞がある。このため、本発明においてMn含有量の上限は、3.5重量%に制限されることが好ましい。
【0019】
クロム(Cr):16~22重量%
Crは、代表的なステンレス鋼の耐食性向上元素であり、本発明では、十分な耐食性の確保のために、Crは、16重量%以上添加されることがよい。しかしながら、Crは、磁性を誘発するフェライト相安定化元素である。また、Cr含有量が過剰となると、非磁性特性を得るために、多量のNiが含まれなければならないので、費用が増加し、σ相の形成が促進されて、機械的物性および耐食性が低下する。このため、Cr含有量の上限は、22重量%に制限されることが好ましい。
【0020】
ニッケル(Ni):7~15重量%
Niは、最も強力なオーステナイト相安定化元素であり、本発明において非磁性特性を得るために、Niは、7重量%以上で添加されることがよい。しかしながら、Ni含有量が増加すると、原料コストが上昇することになるため、Ni含有量の上限は、15重量%に制限されることが好ましい。
【0021】
モリブデン(Mo):3重量%以下
Moは、耐食性を向上させる元素である。しかしながら、Moは、フェライト相安定化元素であり、Mo含有量が過剰となると、σ相の形成が促進されて、機械的物性および耐食性を低下させる虞がある。このため、本発明においてMo含有量の上限は、3重量%に制限されることが好ましい、
【0022】
窒素(N):0.01~0.3重量%
Nは、オーステナイト相安定化元素であり、本発明において非磁性特性を得るために、Nは、0.01重量%以上で添加されることがよい。しかしながら、N含有量が過剰となると、鋼の熱間加工性を低下させて表面品質を劣化させるので、N含有量の上限は、0.3重量%に制限されることが好ましい。
【0023】
本発明の一例による非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、選択的にCu:2.5重量%以下をさらに含んでもよい。以下では、Cu成分を限定した理由について具体的に説明する。
銅(Cu):2.5重量%以下
Cuは、オーステナイト相安定化元素であり、高価なNiの代わりに使用できる。しかしながら、Cu含有量が過剰となると、低融点の相を形成して熱間加工性を低下させて表面品質を劣化させる。したがって、本発明においてCu含有量の上限は、2.5重量%以下に制限されることが好ましい。
【0024】
通常、STS304または316ステンレス鋼は、オーステナイト相を主組織として構成され、製鋼/連続鋳造時に形成されたフェライト相が残存する微細組織を有する。オーステナイト相は、面心立方構造を有して磁性を示さないが、フェライトは、体心立方構造を有するので、磁性を示すことになる。すなわち、残存するフェライト相の分率によって本発明が目的とする非磁性特性を確保しにくい。これによって、非磁性特性を確保するために、磁性を誘発するフェライト相の分率を最大限低く制御しなければならない。以下では、本発明が目的とする非磁性特性を確保するための具体的技術手段について詳述する。
【0025】
合金成分の制御
合金の成分組成は、初期に生成されるフェライト相の分率に重大な影響を及ぼす。例えば、Ni、Mn、C、Nなどオーステナイト相安定化元素は、添加時にフェライト相の分率を減少させ、Cr、Moなどの成分元素は、フェライト相の分率を増加させる。本発明者は、これを考慮してフェライト相の分率を制御できる下記の式(1)を導き出した。
式(1):3*(Cr+Mo)+5*Si-65*(C+N)-2*(Ni+Mn)-28
上記式(1)中、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mnは、各合金元素の含有量(重量%)を意味する。
本発明によれば、式(1)の値が負の値を有する場合、初期に生成されるフェライト相の分率が0%でありうる。
【0026】
微細組織の制御
一方、製鋼/連続鋳造時に残存するフェライト相は、以後に行われる熱処理工程により分解することができる。本発明者らは、式(1)の値が正の値を有するときフェライト相が残留し、これによって、鋼が磁性を示すことになる場合にも、微細組織の制御を通じて熱処理工程でフェライト相の分解を加速化できることを見出した。フェライト相の分解の加速化は、残存するフェライト相のサイズと分布に関連して、分析を通じて下記の式(2)を導き出した。
式(2):ΣA/ΣA×100
上記式(2)中、ΣAは、面積が5μm以下のフェライト粒子の面積の和であり、ΣAは、全体フェライト粒子の面積の和である。すなわち、式(2)は、全体フェライト粒子の面積の和に対する5μm以下の微細フェライト粒子の面積の和の百分率を意味する。
本発明の一例によれば、上記式(2)の値が70以上になるように制御することがよい。本発明は、以上のように、微細フェライト粒子の面積の和を高く制御することによって、熱処理工程でフェライト相の分解を加速化できる。その結果、熱処理後に透磁率が1.02以下にすることができ、特に、1mm以下の厚さの鋼板の透磁率を1.02以下とすることができる。
【0027】
フェライト相のサイズ分布は、上記式(2)の値が70以上になるように制御すれば十分であり、多様な工程により制御できる。例えば、鍛造または圧延工程などを通じて制御でき、圧下率、圧延回数などを多様に調節して制御できる。しかしながら、以上の例示は、本発明に対する理解を助けるために例示を列挙しただけであり、特に本発明の技術思想を限定するものではないことに留意する必要がある。
本発明によれば、上述したように、合金成分を制御したり、微細組織を制御したり、または合金成分、微細組織を全部制御して、磁性を示すフェライト相分率を最大限低く制御できる。これによって、本発明は、各種電子機器用素材に適用される非磁性オーステナイト系ステンレス鋼を提供できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではないという点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求範囲に記載された事項とこれから合理的に類推される事項により決定されるのであるためである。
【0028】
{実施例}
まず、鋳造したスラブを1,250℃の温度で2時間の間再加熱した。以後、再加熱したスラブを6mmの厚さまで熱間圧延した後、1,150℃の温度で焼鈍熱処理した。
表1の式(1)の値は、表1の各合金元素の重量%を下記の式(1)に代入して導き出した値である。
式(1):3*(Cr+Mo)+5*Si-65*(C+N)-2*(Ni+Mn)-28
表1のフェライト分率は、焼鈍熱処理した熱間圧延コイルのフェライト分率を接触式フェライトスコープを用いて測定して導き出した。接触時に値が表示されない場合、フェライト相の分率を0%と判断した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示した通り、鋼種17~30は、本発明において限定する合金組成の範囲を満たし、式(1)の値が負の値を有するので、フェライト分率が0%であった。反面、鋼種1~16は、各合金成分が本発明において限定する組成の範囲内であるが、式(1)の値が正の値を有するので、熱処理後にもフェライトが残存した。
【0031】
図1は、表1の式(1)の値によるフェライト分率の変化を示すグラフである。図1に示したとおり、式(1)の値が0から正の値に変わる地点でフェライト分率が上昇する傾向があることを確認できる。すなわち、本発明において式(1)の値が負の値を有するように制御した結果、フェライト分率が0%になる傾向を図1から確認できる。
上記結果から、本発明は、式(1)の値が負の値を有するように制御することによって、フェライト分率を0%に制御でき、その結果、目的とする非磁性特性を確保できることが分かる。
一方、フェライト分率が0.0%を超過する鋼種1~16も、微細組織の制御を通じてフェライト分解を加速化して透磁率を低く制御できる。下記の表2の評価結果は、表1でフェライト分率が0.0%を超過して、フェライト相が残存する鋼種1~16を対象とした。鋼種1~16を厚さ6mmの熱間圧延コイルを1mm以下の厚さにまで冷間圧延した後、焼鈍熱処理した鋼板の結果である。
【0032】
表2の式(2)の値は、冷間圧延した後、光学顕微鏡を用いたイメージ分析を通じて導き出した。
表2のフェライト分率は、焼鈍熱処理した冷間圧延コイルのフェライト分率を接触式フェライトスコープを用いて測定して導き出した。接触時に値が表示されない場合、フェライト相の分率を0%と判断した。
表2の透磁率μは、接触式透磁率測定機フェロマスタを使って測定した。鋼種1~16は、多様な圧下率を適用して1mm以下の厚さに冷間圧延した。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示したとおり、式(2)の値が70以上になるように、微細組織を制御した場合、圧延後に焼鈍熱処理時に残留フェライトの全べてが分解されて、フェライト分率が0.0%であり、その結果、1.02以下の透磁率を確保できることが分かる。反面、式(2)の値が70未満の場合には、圧延後に焼鈍熱処理時に残留フェライトが完全に分解されないため、透磁率値が1.02を超過した。
【0035】
図2は、表2の式(2)の値による透磁率の変化を示すグラフである。図2に示したとおり、式(2)の値が70からそれ以上に変化する地点で透磁率が1.02より減少する傾向が確認することができる。すなわち、本発明において式(2)の値が70以上になるように制御した結果、1.02以下の透磁率が確保される傾向があることを図2から確認することができる。
上記結果から、本発明は、熱間圧延、焼鈍熱処理後に残留するフェライトがある場合にも、式(2)の値が70以上になるように制御することによって、冷間圧延後に焼鈍熱処理時に残留フェライトの分解を加速化して、目的とする非磁性特性を確保できることが分かる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は、これに限定されず、当該技術分野における通常の知識を有する者なら、下記に記載する請求範囲の概念と範囲を逸脱しない範囲内で多様な変更および変形が可能であることを理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明による非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、各種電子機器用素材に適用可能である。
図1
図2
【国際調査報告】