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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-24
(54)【発明の名称】導電線状ヒータ素子
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20230417BHJP
   D07B 1/04 20060101ALI20230417BHJP
   D07B 1/16 20060101ALI20230417BHJP
   D02G 3/12 20060101ALI20230417BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
H05B3/10 A
D07B1/04
D07B1/16
D02G3/12
D02G3/36
H05B3/10 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546627
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021055265
(87)【国際公開番号】W WO2021175894
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】20161121.7
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520423404
【氏名又は名称】エヌブイ ベカルト エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリース,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン カンペ,マジョレイン
【テーマコード(参考)】
3B153
3K092
4L036
【Fターム(参考)】
3B153AA33
3B153AA45
3B153BB01
3B153CC11
3B153CC55
3B153DD23
3B153DD25
3B153EE15
3B153FF35
3K092PP15
3K092QA03
3K092QB02
3K092QB65
3K092QB68
3K092VV40
4L036MA04
4L036MA33
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA21
4L036PA26
4L036RA24
4L036RA25
4L036RA30
4L036UA08
4L036UA25
(57)【要約】
本発明は、合成繊維から製作されるコアと、前記コアの周囲に複数のヒータ導電線と、を含む導電線状ヒータ素子を提供する。コアは、所定の方向Xに捩られ、複数のヒータ導電線は所定の方向Yに巻き回される。所定の方向Xは所定の方向Yとは異なる。所定の数の前記ヒータ導電線は個別に非導電材料で被覆される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電線状ヒータ素子であって、
所定の方向Xに捩られた合成繊維から製作されるコアと、
前記コアの周囲に、所定の方向Yに巻き回された複数のヒータ導電線と、
を含み、前記所定の方向Xは前記所定の方向Yとは異なり、所定の数の前記ヒータ導電線は個別に非導電材料で被覆される、導電線状ヒータ素子。
【請求項2】
前記所定の方向XはS方向であり、前記所定の方向YはZ方向である、請求項1に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項3】
前記所定の方向XはZ方向であり、前記所定の方向YはS方向である、請求項1に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項4】
前記捩られたコアのピッチ長さは2~25mm、好ましくは2~20mm、より好ましくは2~15mm、最も好ましくは5~15mmの範囲である、請求項1~3の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項5】
前記複数のヒータ導電線は、銅又は銅合金から製作される、請求項1~4の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項6】
前記ヒータ導電線は相互に平行な状態である、請求項1~5の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項7】
前記複数のヒータ導電線は前記コアの表面の少なくとも50%を被覆する、請求項1~6の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項8】
前記複数のヒータ導電線は前記コアの表面の100%を被覆する、請求項1~6の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項9】
前記所定の数の前記ヒータ導電線は個別に樹脂でラッカリングされる、請求項1~8の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項10】
前記所定の数の前記ヒータ導電線は個別に1つ若しくは複数の非導電フィラメントで包まれ、又は個別に非導電ファイバで包まれ、又は個別に1つ若しくは複数の非導電テープで包まれる、請求項1~8の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項11】
絶縁ジャケット層は前記ヒータ導電線の外周に形成される、請求項1~10の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項12】
前記導電線状ヒータ素子の電気抵抗は0.2~1000オーム/メートルの範囲である、請求項1~11の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項13】
前記導電線状ヒータ素子の直径は0.1~1ミリメートルの範囲である、請求項1~12の何れか1項に記載の導電線状ヒータ素子。
【請求項14】
導電線状ヒータ素子の製造方法であって、
(a)合成繊維で製作されるコアを所定の方向Xに事前に捩るステップであって、好ましくは前記事前に捩られるコアのピッチ長さは2~25mmの範囲であるステップと、
(b)複数のヒータ導電線を前記事前に捩られたコアの周囲に所定の方向Yに、好ましくは0.1~10mmのピッチで巻き回すステップと、
含み、前記所定の方向Xは前記所定の方向Yとは異なり、所定の数の前記ヒータ導電線は個別に非導電材料で被覆される、製造方法。
【請求項15】
前記複数のヒータ導電線は相互に平行な状態である、請求項14に記載の導電線状ヒータ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
技術分野
本発明は、電気ヒータケーブルを含むフレキシブルヒータ素子、例えば車両(自動車)用座席ヒータ素子の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
金属フィラメント(例えば、15~150の金属フィラメント)を含む電気ヒータケーブルが知られており、自動車内の座席ヒータに使用されている。金属フィラメントの各々は、大きさが約50μmの直径を有し得る。自動車座席ヒータは、座席内に、例えば1つ又は複数のループの形態の電気ヒータケーブルを取り付けて、自動車座席ヒータ素子を形成することによって実現できる。自動車用座席ヒータ素子において、そのようなヒータケーブルは、電流を送達する電源ユニットに接続され、それによって素子を適温まで加熱できる。
【0003】
自動車用座席ヒータシステムのための要求事項の中でも重要な要求事項は、自動車用座席ヒータシステムが正しく確実に動作する寿命が長いことである。
【0004】
自動車座席ヒータ素子又はシステムにおいて、電気ヒータケーブルには動的な屈曲力がかかる。したがって、屈曲破損寿命(動的屈曲に対する抵抗力)はヒータケーブルの、ひいては自動車用座席ヒータ素子又はシステムの耐久性と寿命にとって重要なパラメータである。ヒータケーブルの、及びしたがって自動車用座席ヒータ素子の屈曲破損寿命又は屈曲耐久性を求められるレベルまで増大させる1つの方法は、ヒータケーブル中により小径の金属フィラメントを使用することである。しかしながら、金属フィラメントの直径の縮小に伴い、ヒータケーブル及び自動車用座席ヒータ素子の製造コストが指数関数的に増大する。
【0005】
自動車座席ヒータ素子のヒータケーブルの個々の金属フィラメントが損傷を受け、又は破損すると、ヒータケーブルの全長の中で局所的に電気特性が変化する可能性がある。破損したフィラメントの位置にはいわゆるホットスポットが発生する可能性があり、そこでの発熱はヒータケーブルの長さに沿った他の部分より高くなる。ホットスポットは、これらが安全上の危険要因を生じさせるため、回避すべきである。国際公開第01/058315号は、自動車環境内のコンポーネントを加熱するための装置に関し、ヒータケーブルの金属フィラメントの一部の中断(破断)箇所で発生するホットスポットの形成を解消する方法を説明している。この解決策は、複数のストランドから構成され、そのうちの所定の数のストランドが絶縁ラッカ層により個別に電気的に絶縁されるヒータケーブルを提供する。
【0006】
ストランドの、又は金属フィラメントのラッカリングによる個別の絶縁はホットスポット形成を解消するための有効な方法ではあるものの、ヒータケーブルのストランドの、又は金属フィラメントの個別のラッカリング又は個別のコーティングは、細い金属フィラメント又はストランドにラッカを均一且つ有効に塗布することが技術的に非常に難しいという重大な欠点を有する。ラッカ層が均一に塗布されないか、又は適正に乾燥され硬化されない場合、使用中のヒータケーブルの屈曲がラッカ層に損傷を与える可能性があり、その結果、ヒータケーブルの寿命が短くなり、又はホットスポットの防止が不十分となる。
【0007】
腐食から(特にガルバニ腐食から)金属フィラメントを保護し、ヒータケーブルの屈曲損傷寿命を自動車座席ヒータ用に求められるレベルまで延長するために、自動車座席ヒータ素子のヒータケーブルに、ポリマのシースを設けることができる。屈曲破損寿命の最善の数値を得るためには、グレードの高いポリマコーティングが必要となる。このような高グレードのポリマコーティング(例えば、パーフルオロアルコキシポリマ、PFA)には、これらが高価で、塗布が難しいという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の開示
本発明の目的は、特に自動車内装ヒータ用途、例えば自動車座席ヒータ、ヒータパネルアームレスト及びヘッドレスト等に有効であり、適正且つ確実に機能する長い寿命を有する(優れた屈曲破損寿命及び有効なホットスポット防止を有することを含む)、製造が容易な導電線状ヒータ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、合成繊維から製作されるコアと、前記コアの周囲の複数のヒータ導電線と、を含む導電線状ヒータ素子が提供される。コアは、所定の方向Xに捩じられ、複数のヒータ導電線は所定の方向Yに巻き回される。所定の方向Xは所定の方向Yとは異なる。所定の数の前記ヒータ導電線は個別に非導電材料で被覆される。例えば、所定の方向XはS方向であり、所定の方向YはZ方向である。他の例として、所定の方向XはZ方向で、所定の方向YはS方向である。このように、導電線状ヒータ素子の「S」及び「Z」トルクはバランスがとられ、したがって、導電線状ヒータ素子は回転しない。
【0010】
コア素子は好ましくは、例えば芳香族ポリエステル繊維の合成ヤーンで製作されるロープである。本発明によるコアは、捩られた構成を有する。コアは、合成繊維のヤーンから製作されるストランドとすることができる。本発明によるコアとして使用され得る合成ヤーンは、完全合成ロープでの使用が知られている全てのヤーンを含む。このようなヤーンには、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルの繊維で製作されるヤーンを含み得る。好ましくは、高弾性繊維のヤーン、例えば液晶ポリマ(LCP)の繊維のヤーン、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(Kevlar(登録商標)として知られる)等のアラミド、高分子量ポリエチレン(HMwPE)、Dyneema(登録商標)等の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)、PBO(ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)、及び芳香族ポリエステル(Vectran(登録商標)として知られる)の繊維のヤーンが使用される。コアとしては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維若しくはポリエステルファイバ(例えば、ポリエチレンテレフタレート)等の有機繊維、脂肪酸ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、及び全芳香族ポリエステル繊維のモノフィラメント、マルチフィラメント、又は紡績糸を使用できる。それに加えて、上述の繊維の組合せもまた使用できる。
【0011】
コアは捩られ、好ましくはそのピッチ長さは2~25mm、好ましくは2~20mm、より好ましくは2~15mm、最も好ましくは5~15mmである。ピッチ長さが長すぎると、1つのコアストランドが押されたときにコアがヒータ導電線により完全に被覆されていなければ中央に実質的な隙間ができる。ピッチ長さが短すぎると、ストランドが詰め込まれ、中央に隙間のできる余地はなくなるが、コアストランドが固くなり、その柔軟性が損なわれ、これはフレキシブルなヒータ素子にとって望ましくない。
【0012】
ヒータ導電線に関して、従来知られている材料を使用できる。例えば、銅線、銅合金線、ニッケル線、鉄線、アルミニウム線、ニッケル-クロミウム合金線、鉄-クロミウム合金線を使用できる。より高い抵抗力を有するヒータ素子が求められた場合には、ステンレススチール線又は銅クラッドスチール線が適用され得る。銅合金線としては、例えば錫銅合金線、銅ニッケル合金線、及び銀含有銅合金線を使用できる。上に列挙した材料の中でも、銅線と銅合金線は、コストと特性のバランスの点で使用するのが好ましい。銅線と銅合金線に関しては、軟質及び硬質材料のどちらでも使用でき、準硬質材料は、屈曲抵抗の点で軟質及び硬質材料より望ましい。
【0013】
複数のヒータ導電線は、コアの周囲に螺旋状に巻き回される。ヒータ導電線をコアの周囲に相互に平行に、又は一緒に捩じった状態で巻き回す場合、平行な状態は捩じった状態より好ましい。なぜなら、ヒータ導電素子の直径が小さくなり、表面が滑らかになるからである。平行な状態と捩じった状態に加えて、導電線はコア材料の周囲に編み込むこともできる。ヒータ導電線の数と巻き回し又は捩じりの撚り長さは求められる抵抗力に依存する。好ましくは、複数のヒータ導電線はコアの表面の少なくとも25%を被覆する。より好ましくは、複数のヒータ導電線はコアの表面の少なくとも50%を被覆する。例えば、複数のヒータ導電線はコアの表面の100%を被覆する。このような場合、ヒータ素子は最大の導電性を提供する。他方で、捩じったコアはよく保護され、コアの隙間が回避される。
【0014】
本発明によれば、前記ヒータ導電線は個別に非導電材料が被覆される。非導電性コーティングは、ニスを塗り、それを乾燥させることにより製作できる。所定の数の前記ヒータ導電線には、個別に樹脂を塗ることができる。代替的に、好ましくは、前記所定の数の前記ヒータ導電線は個別に1つ若しくは複数の非導電フィラメントで包まれ、又は個別に非導電繊維で包まれ、又は個別に1つ若しくは複数の非導電テープで包まれる。原則的に何れの非導電フィラメント、繊維、又はテープも、金属フィラメントを包むために使用できるが、好ましいフィラメントの例はポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ファイバグラス、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、溶融ヤーン、二成分繊維、二成分フィラメント(好ましくは、より低融点のシースを有するタイプ)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。高強力ポリエステルフィラメントはより好ましく、これは、それらより高い引張強度の結果として、ヒータケーブルの屈曲破損寿命がはるかにより顕著に長くなるからである。包むためのフィラメントは好ましくは、直径が12~70マイクロメートルである。個別の長さの繊維もまた、金属フィラメントを包むために使用でき、その例は天然繊維(例えば、綿)又は合成繊維(ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等)である。この点で、包むための材料及び方法については欧州特許第2761977 B1号を参照でき、その内容を明確な引用により本発明の開示に援用する。
【0015】
それに加えて、絶縁ジャケット層をヒータ導電線の外周に形成できる。絶縁ジャケット層は好ましくは、導電線の外周上に形成される。偶然ヒータ導電線が切れた場合、他の部材のための電源は絶縁ジャケット層によって絶縁される。さらに、火花が発生しても、発せられる高温の熱が断熱される。絶縁ジャケット層を形成する際、形成方法は特に限定されない。好ましくは、押出成形を使用できる。絶縁ジャケット層が押出成形により形成される場合、ヒータ導電線の位置は固定される。銅電線の位置の変位により生じる摩擦と屈曲を防止できるため、屈曲抵抗が改善される。絶縁ジャケット層を形成する材料としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、脂肪酸ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、変性ノリル樹脂(ポリフェニレンオキサイド樹脂)、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム、フッ素ゴム、エチレン系熱可塑性エラストマ、ウレタン系熱可塑性エラストマ、エチレン系熱可塑性エラストマ、及びポリエステル系熱可塑性エラストマが含まれる。特に、好ましくは難燃性を有するポリマ組成物が使用される。難燃性材料に関して、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の金属水和物、酸化アンチモン、メラミン組成物、リン組成物、塩素系難燃剤、及びブロミン系難燃剤を使用できる。例えばPFAコーティングは、異なるグレードのものが存在し、より温度安定性の高いグレードは、より長い屈曲破損寿命へとより大きく寄与するが、材料及びコーティング塗布のコストがより高い。温度安定性が260℃のパーフルオロアルコキシ(PFA)グレードは温度安定性が225℃のPFAグレードよりはるかに高価であり、塗布プロセス中により高い温度が必要となる。個別に絶縁された導電線が存在するおかげで、ポリマコーティングはより低いグレード又は安価なコーティングとすることができ(例えば、ポリアミド12又はTPE)、高いグレードのコーティングはヒータケーブルの屈曲破損寿命に寄与するが、その寄与は本発明によるヒータケーブルではそれほど、又は全く要求されず、それは、捩られた合成コア自体が、導電線状ヒータ素子の屈曲破損寿命を決めるからである。
【0016】
所定の数のヒータ導電線は個別に非導電材料で被覆される。好ましくは、ヒータ導電線の全てが個別に非導電材料で被覆される。他の例として、ヒータ導電線は絶縁層で被覆された導電線と絶縁層で被覆されていない導電線を交互に配置することによって形成できる。
【0017】
本発明の導電線状ヒータ素子の電気抵抗は0.2~1000オーム/メートルとすることができる。特定のケースでは、導電線状ヒータ素子の電気抵抗は0.2~3オーム/メートルとすることができる。本発明は特に、抵抗が1オーム/メートル未満(20℃で測定)のヒータケーブル及び0.75オーム/メートル未満(20℃で測定)のヒータケーブルを含む自動車用座席ヒータ素子にとって有利である。
【0018】
導電線状ヒータ素子の直径は、0.1~1ミリメートルの範囲、好ましくは0.3~1範囲、より好ましくは0.5~0.8ミリメートルの範囲である。直径と言った場合、等価直径を意味し、これは丸以外の断面の場合、その丸以外の断面と同じ表面を有する円の直径である。
【0019】
本発明の第二の態様によれば、導電線状ヒータ素子の製造方法が提供され、これは、(a)合成繊維で製作されたコアを所定の方向Xに捩るステップであって、前記事前に捩られたコアのピッチ長さは2~25mmの範囲であるステップと、(b)前記事前に捩られたコアの周囲に複数のヒータ導電線を所定の方向Yに、好ましくは0.1~10mmのピッチで巻き回すステップと、を含む。前記所定の方向Xは前記所定の方向Yとは異なる。例えば、所定の方向XはS方向であり、所定の方向YはZ方向である。他の例として、所定の方向XはZ方向であり、所定の方向YはZ方向である。所定の数の前記ヒータ導電線は個別に非導電材料で被覆される。好ましくは、前記複数のヒータ導電線は相互に平行な状態である。
【0020】
本発明の自動車内装ヒータ用途のための、例えば座席ヒータ、ヒータパネルアームレスト及びヘッドレスト等のためのフレキシブルな導電線状ヒータ素子の、それが適正且つ確実に動作する長い寿命は、ホットスポットの発生の防止と屈曲疲労抵抗の増大の相乗効果により得られる。ホットスポットの形成は、ヒータ導電線の絶縁によって有効に防止される。他方で、驚くべきことに、捩られた繊維のコアによって屈曲疲労抵抗が大きく増大し、その結果、フレキシブルヒータ素子が適正に機能する、より長い寿命が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面中の図の簡単な説明
図1】本発明による導電線状ヒータ素子の断面の例を示す。
図2】本発明による導電線状ヒータ素子の長さ方向の図の例を示す。
図3】本発明によるヒータケーブルの長さ方向の図の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための態様
図1は、導電線状ヒータ素子10の断面を示し、これは車両座席ヒータのヒータケーブルとして使用できる。
【0023】
導電線状ヒータ素子の構成は図1に示されている。外径が0.15mmの繊維のマルチフィラメントバンドルで形成されるコアストランド12が提供される。コア材料は4-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボキシル酸の重縮合により生成される芳香族ポリエステル、例えば市販のVectran(登録商標)である。平行な捩られていないコアはまず、S方向に300回/mだけ事前に捩られる。錫含有銅合金線で形成される、直径0.12mmの10本の導電線14がコアストランド12の外周に沿ってZ方向に200回/mだけ螺旋状に、相互に平行な状態で巻き回される。導電線14は個別に、非導電材料、例えばシリコン樹脂が約8μmの厚さに、アルキドシリコンニスを塗布し、それを乾かすことによってラッカリングされる。導電線状ヒータ素子10は、導電線14をコア12の周囲に隣接する巻き間にギャップ16を設けて巻き回すことにより形成される。例えば、ギャップの大きさは導電線の直径と同程度である。その後、0.25mmの厚さのポリアミド12樹脂の押出カバリングが巻き回された導電線14の外周に絶縁ジャケット層18として形成される。前述の導電線状ヒータ素子10の完成時の断面積は0.12mmであり、電気抵抗は約0.5オーム/mである。
【0024】
この実施形態では、図2に示されるように、導電線状ヒータ素子20のコア22は完全に被覆されているわけではない。導電線24は、コアの表面の約90%を被覆している。折り曲げ耐久性試験では、本実施形態の導電線状ヒータ素子20の屈曲破損寿命は約40,000である。
【0025】
同様のサンプルが比較のために制作され、これはコアが平行なマルチフィラメントで製作されるが、捩られていない点を除き、同じ構成を有する。平行な、捩られていない繊維のコアを有する導電線状ヒータ素子の屈曲破損寿命は、約22,000である。
【0026】
第二の実施形態として、コア(図3では見えない)は完全に被覆される。図3に示されるように、導電線34は、コアの表面を完全に被覆する。2つの隣接する巻き間に距離のない状態で、コアの周囲に平行な状態で巻き回される11本の導電線34があった。この第二の実施形態のこの導電線状ヒータ素子30の屈曲破損寿命は、第一の実施形態と同等であるが、導電線が完全に被覆されている場合は導電線状ヒータ素子の導電性はより高い。
【0027】
本発明の導電性状素子は、大幅に長くなった屈曲破損寿命を有する。捩られているが、平行な合成繊維コアを持たない同等の導電線状素子より45%長い屈曲破損寿命が得られた。より長い屈曲破損寿命は、動きの激しい用途、例えば自動車座席ヒータにとって有利である。実験結果は、上記の導電線状ヒータ素子を含む自動車座席ヒータが効率的なホットスポット防止と優れた屈曲破損寿命を有することを示している。
【0028】
様々な実施形態及び例の要素と特徴を組み合わせても、本発明の内容と範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】